10/04/21 第7回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会議事録 第7回 厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会 議事録 【日時】平成22年4月21日(水) 14:00〜17:00 【場所】厚生労働省 省議室(9階) 【出席委員】(50音順) 飯沼委員、今村委員、岩本委員、宇賀委員、加藤部会長、木田委員、北澤委員、倉田委員、黒岩 委員、坂谷委員、櫻井委員、澁谷委員、廣田委員、宮崎委員、山川委員 【行政関係出席者】 足立政務官、上田健康局長、中尾大臣官房審議官、鈴木健康局総務課長、鈴木新型インフルエン ザ対策推進本部事務局次長、福島健康局結核感染症課長、正林新型インフルエンザ対策推進室長、 松岡健康局生活衛生課長、土肥健康局健康対策調整官、佐藤医政局治験推進室長、高井医薬食品 局長、岸田大臣官房審議官、熊本医薬食品局総務課長、成田医薬食品局審査管理課長、亀井医薬 食品局血液対策課長、 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 それでは、第7回「厚生科学審議会感染症分科 会予防接種部会」を開催いたします。まず事務局から本日の委員の先生方のご出欠の状況につい てご報告をいたします。本日は、岡部委員、古木委員よりご欠席とのご連絡をいただいておりま す。また、宮崎委員から所用のため、遅れるというご連絡をいただいておりますので、17名のう ち、15名のご出席ということで、会議が成立いたしますことをご報告いたします。それでは、こ れから加藤部会長に議事をお願いしたいと思います。 ○加藤部会長 皆さん、こんにちは。本部会長の加藤です。お忙しいところをありがとうござい ました。皆さんご承知と思いますが、ちょっと喉を痛めておりまして、足立政務官がいらっしゃ るのに大変失礼ですけれども、無理にやれと言われればやれますが、ますます声が出なくなりま すと、明日からの仕事に差し支えますので、もし足立政務官のお許しをいただければバトンタッ チをさせていただいてもよろしいですか。  厚生科学審議会感染症部会運営細則というのがありまして、そのうちの雑則第2条に基づき、 私のアポイントメントにより、それからもう1つは、私は今日は出席しましたので、無理やりや ればやれますが、座長はご承知のとおり、そう発言はないのですが、昨日、一昨日は途中で突然 声が出なくなったこともありましたので、議事進行に差し支えると政務官ご出席の中で進みませ んと大変失礼ですので、恐縮でございますが、私はここに座っておりますので、うまくいかなく なりましたら指示をさせていただきますが、倉田先生に全面的にお願いいたすことにいたします。 これは雑則に書いてあるとおりですので議決は行わないでお願いすることにいたしますので、倉 田先生、よろしくお願いします。突然で申し訳ありません。  というのは、岡部先生が副部会長として、私がアポイントメントをしたのですが、アイスラン ドの例のことがあって飛行機が飛べないという事態が起きて、間に合わないということです。私 が来ないとこの会議は流会になってしまい、政務官、健康局長、医薬局長に折角時間を取ってい ただきましたのに、大変失礼に当たりますところから、頑張って出てまいりました。そういう理 由がありますのでお許しをいただき、以後は倉田先生に譲りまして、私はお話しないということ でよろしくお願いします。 ○倉田委員 加藤部会長のピンチヒッターの倉田です。加藤先生の意に沿えるように努めたいと 思いますので、よろしくご協力をお願いします。それでは、本日のヒアリングの趣旨と目的及び 資料の確認について説明をお願いします。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 それでは、ご説明します。まず、本日の趣旨・ 目的等ですが、前回、資料も出しましたが、この予防接種法の改正はなかなか幅広い課題もあり ます。6項目ぐらいの議論を中心にしていただくということですが、それぞれについて専門家の 先生からプレゼンテーションをいただいて、皆さん方からも質疑をしていただいた上で、課題の 洗い出しを夏ぐらいまでにしていこうということです。その上で夏にはどういう課題があるのか という整理をさせていただいて、それ以降、精力的に個々の課題について結論を出す議論をして いただき、最終的なまとめに至るという道筋を考えております。  それに沿って今日のお手元の資料ですが、座席図、議事次第、部会の先生方の名簿、配布資料 があります。資料1は、今日のヒアリングについてはこんな進み方だというのが書いてあります。 まず事務局から、最近の動向について説明をさせていただいた後、研究者として臨床研究から神 谷先生、基礎研究から山西先生。ここで1回ご議論いただいて、産業界の立場から国内として荒 井先生、海外として杉本先生。ここでまたご質疑をいただいて、そのあと品質管理・承認審査等 について渡邊先生、鹿野先生ということで考えております。  資料2-1は事務局提出の最近の動向の資料、資料2-2は神谷先生の資料、資料2-3は山西先生 の資料、資料2-4は荒井先生の資料、資料2-5は杉本先生の資料、資料2-6は渡邊先生の資料、 資料2-7は鹿野先生の資料です。  資料3は議事の第2に関係するものですが「今後の疾病ワクチンの検討の進め方について」で、 別紙が3枚付いています。資料4は以前も議論のあった予防接種制度の見直しに向けてのご意見 を募集したらどうかということについて、こんな形で進めたいということです。資料5は3月31 日以降、新型インフルエンザの対策の総括会議をしておりますので、そのご報告です。  あとは参考資料として「ワクチン産業ビジョン推進委員会ワーキンググルプの検討とりまとめ (平成20年3月)」というもの。それから、テーブルに座っておられる方だけですが、小児保健 研究の平成22年3月第2号と、それに関するお知らせをお手元に配っており、148頁に「正しい 知識予防接種を」という論文がありますので、ご参照していただければと思います。以上です。 ○厚生労働大臣政務官 皆様お疲れさまです。足立信也です。先週の金曜日に参議院本会議で、 皆様方にご議論いただいた予防接種法の改正案が通過いたしました。ありがとうございました。 本日は、いつものように会議がめじろ押しで冒冒頭しかおられません。もし時間があれば後半部 分でまたここに参加したいと思います。  本日は、先ほど事務方からありましたように、ワクチンの研究開発の促進と生産基盤の確保に ついてヒアリングを行い、そのあとに予防接種法の対象となる疾病、ワクチンの検討の進め方に ついてご議論いただくということです。  参議院は通過したわけですが、その議論の中で皆様方もお聞き及びだと思いますが、抜本改正 あるいは抜本的議論について、議員からも多くの発言がございました。先日来、私が申し上げて おりますように、まず第1段階で穴を埋める。対策本部として対策がとり得るようなカテゴリー を設ける必要があるという必要性から、今回の法改正をしたわけです。抜本的議論はそのあとに 必ず控えている。それから、ここにご参加の委員の先生方も皆さんそのことに対して非常に熱意 があるということを、改めて委員会の席で申し上げて、委員の皆さんも相当期待されているし、 国民の皆さんも期待されていると私は感じております。  そして、いよいよ第2ラウンドがスタートするわけですが、これも皆様方の議論の中にありま した新型インフルエンザ対策の全体の対策の検証が必要である。まさにそのとおりでして、3月 31日からいままでで2回開いているわけです。この対策本部の全体の検証については、もちろん 予防接種部会よりも幅が広い議論ですので、その中で特にワクチン、予防接種、そして医療体制 も一部含まれるでしょう。その共通する部分については検証会議での議論の内容を概要の形で必 ずこの部会の中に反映させるという方針です。  つまり、ワクチン部門、予防接種については車の両輪と捉えて検証をしつつ、これから何が必 要なのかを議論していただくという方向性で考えておりますので、皆様方もこれまで少し時間が 空きましたが、いろいろ蓄積されて、いよいよの議論に前向きに臨んでくださることだと思って おります。  最後に加藤先生、あまりご無理なさらずにお大事にしてください。まずはここで一旦私は退席 いたしますが、活発な議論をどうかよろしくお願いいたします。本日はありがとうございます。 ○倉田委員 ありがとうございました。それでは、議事に入りたいと思います。前回、第6回の 本部会において、今後の予防接種制度の見直しについての議論を進めていくに当たりまして、ま ずは有識者の方々からヒアリングを行うということで了解をいただきました。ヒアリングのテー マについては、第1次提言の今後討論が必要と考えられる事項として挙げられた6項目について 行います。資料1にありますように、本日は「ワクチンの研究開発の促進と生産基盤の確保」を ーマにして、有識者の方々からヒアリングを行いたいと思います。  資料1にありますように、6名の方に参考人としてお越しいただいております。非常に時間が 短くて申し訳ないのですが、それぞれの参考人から15分程度でお話をしていただきます。そのあ と15分程度の質疑応答を行いたいと思います。誤解がないように、最初に学術的な立場から2人 お話をいただいたあとに15分、それから産業界の立場からも2人お話していただいたあとに15 分ということになりますので、全部で30分が3回で90分、90分プラス45分ということになっ て、ちょっと時間がハードになりますが、よろしくお願いいたします。  それでは、質問に関しては1の人1分程度でお願いします。時間が限られていますので、ご意 見をするときに適切な意見をおっしゃれない方は、あとで文書にして事務局にお届けいただくの も結構ですし、メールでも結構です。そういう形にして意見は上にあがるようにしていただくよ うにしたいと思いますので、よろしくお願いします。特に意見のない方は、あとでそのようにし てもいいわけで、いま全員が一言というわけではありません。  それでは、最初に事務局より「ワクチン開発の最近の動向等について」をお願いします。 ○血液対策課長 それでは、事務局から「ワクチン開発の最近の動向等にについて」、資料2-1で 簡単にご説明します。2頁のワクチン類の製造販売業者名・業者別品目一覧表は、平成22年3月 時点における日本国内で製造輸入されているワクチン類の品目の一覧、ワクチン類の製造販売業 者の一覧です。  製剤は全部で26種類で、左の縦のカラムを見ますと、このうち製造している会社は国内企業が 7社、外資系が5社です。メルクという外資系の会社の関連会社です。ですから△が輸入されて いる製剤で計8製剤です。  同じく2頁の下の「国内ワクチンの年間生産額の内訳」という表ですが、この表は国内のワク チンの年間の生産額の推移と、その大まかな内訳を示したものです。見ていただいたとおりです が、1995年(平成7年)、2005年(平成17年)、2007年(平成19年)のものを示しています。 全体の額は1995年が大体400億円程度ですが、10年後の2005年(平成17年)には700億円、 直近の2007年(平成19年)には900億円と倍以上に伸びており、確実に規模は大きくなってい る状況です。  内訳としてはご覧のとおり、インフルエンザワクチンの伸びが非常に大きくなっており、1005 年(平成17年)、直近の2007年(平成19年)のいずれも全体のワクチンの過半数を占めるまで に伸びております。そのほかにBBT(ジフテリア)、百日せき、破傷風の三種混合が、近年伸び てきており、1995年と比べると2007年(平成19年)では1.4倍ぐらいの伸びになっています。  さらに2006年から本格的に生産が開始され、定期接種化されたMR2混(麻疹、風疹2種混合) ワクチンについても2007年(平成19年)で非常に大きな伸びを示しております。逆に麻疹及び 風疹の単身ワクチンが減少しておりまして、2005年より接種の積極的な勧奨が差し控えられた日 脳ワクチンの生産量については、大幅に減少しているところです。  3頁はインフルエンザワクチンの製造量の推移を示しております。先ほども説明しましたとお り、現在、過半数を占めるインフルエンザワクチンの生産量・製造量については、この推移を1mL の換算の本数で示したグラフですが、平成6年が最低です。予防接種法の改正の影響などもあっ て、約30万本まで落ち込みました。ただ、平成13年(2001年)には、さらに予防接種法の改正 があって、高齢者を対象とするなど、種々伸びてきており、平成20年度(2008年)には2,696 万本生産されています。大体生産能力としては2,700万本前後あるだろうと言われています。た だ、平成21年度は新型インフルエンザワクチンの生産がありましたので、いつもの生産量の約8 割方の製造量となっています。  下の表は、主なワクチンの承認時期の日米比較のまとめです。これを見るとおわかりのように、 1995年〜2005年の間は我が国には承認が全くなく。ワクチン開発においては空白の10年となっ てしまいました。しかしながら、この数年、2007年以降は新たなワクチンの承認が随時出てきて おり、特に2009年の世界初の乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンをはじめ、確実にその実績を上げて きているところです。現在もロタウイルスワクチンの承認申請がなされ、あるいは不活化ポリオ ワクチンの治験が第III相など、継続的に開発が国内でなされているところで、いわゆるワクチン ギャップは改善傾向であり、さらに開発も促進されているところです。  4頁の「最近の行政の取り組み」を簡単に触れたいと思います。ワクチン産業ビジョンは平成 19年(2008年)3月に策定されたものです。先ほどもご紹介したとおり、アメリカに比べると 20年遅れていると言われるワクチン政策を、テコ入れするために関係者で議論して、今後のワク チンのビジョンについて、一定の方向性を示したものです。ワクチン施策に係る国関与の必要性、 あるいは開発や安定供給など、国の開発が非常に必要だということ。さらにはワクチン需要の展 望。感染症対策を支え、社会的期待に応える産業としていく上での課題を整理するなど、その下 にアクションプランを7つほど示していますが、こういった項目について随時施策として頑張っ てまいろうという中身です。  成果としては下のほうに書いてありますが、いままでのところ、具体的にはフォローアップを 目的としたワクチン産業ビジョン推進委員会を設置して、随時議論をしております。さらには今 日もこれからお話があると思いますが、医薬基盤研究所でワクチン開発研究機関協議会を設置し て、ワクチンの開発に鋭意取り組んでおられるところです。  また新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備臨時特例交付金による基金の造成などを 行って、国内体制の強化にも努めておりますし、近々出来上がる予定のワクチン開発のための非 臨床・臨床試験ガイドラインを作成しているところです。  5頁は、簡単ですが「一般的な医薬品の開発の基本的な流れ」を示しています。これはあくま でも参考ですので、すべてがこれに当てはまるかというと、製剤によって違ってくるかと思いま すが、一般的ものということでご紹介いたします。基礎研究が2〜3年、非臨床研究が3〜5年、 臨床研究(治験)が3〜7年、そして承認申請を行い、審査で1年〜2年で、ワクチンが実際に市 場に出回るまでには10年程度必要です。ワクチンを含む医薬品開発の促進を行う場合、特に規制 関係ですが、この観点から申し上げれば、各段階にかかる時間をいかに短縮するかが非常に重要 な課題となっています。  その下の「次世代・感染症ワクチン・イノベーションプロジェクト」は、4頁の「ワクチン産 業ビジョン」の中のアクションプランの1に基礎研究から実用化(臨床開発)への橋渡しの促進 という事項がありますが、これを具体化したプロジェクトです。このプロジェクトについて詳し くは山西先生からお話があるかと思いますが、産官学が協力してワクチンの開発・研究・治験・ 臨床研究等を行うということで、いまワクチンの開発を推進しているところです。この協議会が 基盤となって、現在、スーパー特区事業としてこのプロジェクトが進めておられているというこ とです。  6頁は、先ほどのワクチン産業ビジョンのアクションプランの3の新型インフルエンザなど、 危機管理上必要だが民間の採算ベースに乗りにくいワクチンに対する国の税制、研究開発助成等 の支援。4の疾病のまん延に備えた危機管理的なワクチンの生産体制の確保のための国の支援と いった観点から、平成21年度の補正予算において、新型インフルエンザワクチン開発・生産体制 整備臨時特例交付金を予算措置したものです。この交付金で基金を造成して、細胞培養法を用い た新型インフルエンザワクチンの開発あるいは生産体制の整備を行う企業を支援することを目的 としています。  目標はここにも書いてありますとおり、全国民の新型インフルエンザワクチンを、約半年で生 産可能な体制を5年を目処に作るというもので、この中には第三世代のワクチンの開発推進など も含まれています。  6頁の下は「細胞培養法インフルエンザワクチン開発等のスケジュール案」で、スケジュール をイメージしたものです。具体的な開発の方法や進捗は各社によって随分異なってくると思いま すが、約2年間でパイロットプランの整備、非臨床試験を実施し、その後随時、臨床試験の実施、 実生産体制を確立していきたいと考えています。  7頁は「ワクチンの臨床試験・非臨床試験ガイドライン」です。先ほどの産業ビジョンでご説 明した5のワクチンの薬事承認実用化に向けた制度基盤の整備に当たるものを施策化したもので すが、これについては現在新査部門を中心に学会の先生方にもご協力を賜って、これらガイドラ インの作成が進められており、近日中に作成されるものと聞いております。  ここに取り上げたほかにも厚生科学研究などにおける各種の調査、あるいは業界においての既 存のワクチン企業や国内外の大手企業との連携などもなされています。以上、簡単ですが、ワク チンの開発の最近の動向等について紹介をさせていただきました。以上です。 ○倉田委員 血液対策課長からワクチン開発の最近の動向について説明がありましたが、ご質問 ありますか。 ○廣田委員 開発の件でご説明いただいたわけですが、2頁の下のグラフのインフルエンザワク チンが、このように生産量が増えたというのとは別に、1945年にここまで減ったということが非 常に大きなことだろうと思います。  今後はほかのワクチンについてもいろいろ考えることになろうかと思いますが、ハードとは別 にソフト面で国民にとって非常に大事な身近なものです。どのようにワクチン接種が行われてい るか、という実態などをきちんと把握するという意味からも、例えば日本の国民栄養調査のよう なもの、米国で行われている国民予防接種調査のようなものをきちんとして、予防接種の現状を 確認することが必要ではないかと思います。  具体的には、例えば国民生活基礎調査に項目として盛り込むことは直ちにできるでしょうから、 そういったソフト面にも気を配っていただきたいと思います。 ○倉田委員 これについては事務局、ご意見はありますか。 ○結核感染症課長 国民生活基礎調査の企画については、今後調整をしていきたいと思います。 ○倉田委員 ほかにどなたかご意見ありますか。先に行って、もしあった場合は時間があれば、 このほか時間内でご質問いただきます。そうでない場合は文書にしてお送りいただいて、それに 対してお答えをいただくことにしたいと思いますので、よろしくお願いします。  それでは、臨床研究及び基礎研究についてのヒアリングを、お二人にお願いしてあります。参 考人の1人目が独立行政国立病院機構三重病院長の神谷先生、2人目が医薬基盤研の理事長の山 西弘一先生です。最初に神谷先生からお願いします。神谷先生と山西先生のお話が済んだあとで 質疑を行いたいと思います。 ○神谷参考人 ご紹介いただきました神谷です。資料とスライドは全く同じですので、どちらか をご覧いただければいいかと思います。  予防接種そのものは、有効性の科学的実証がされたのは歴史的に見てみますと、18世紀の末に ご承知のEdward Jennerが種痘を確立したというのが最初です。その当時は実際に経験的に実用 化されている状況でしたが、それを学問的に概念を確立したのは、その後10年ほど経ってPasteur が行ったと考えられています。  このような歴史をたどってきたわけですが、ワクチンの特徴という点でいろいろなことを考え るのが大事だと思います。ワクチンというのは生物学的製剤です。そして、予防接種に使う薬液 をワクチンと呼んでおります。それを注入することによって生体が抵抗力を作り出すわけで、ワ クチンそのものが効くわけではありません。ワクチンを接種して、生体で抵抗力(抗体)ができ たところでワクチンの効果を示すわけです。薬としてそのものが効くのではないというところを 押さえておいてほしいと思います。  ワクチンは、ウイルスや細菌の増殖力を弱くしてワクチンとして利用する方法と、それがうま くできない場合には増殖力を止めておいて免疫源だけを残した増殖力をなくするという形をとり ます。先のほうを「弱毒化」と言いますし、あとのほうは「不活化」ということになります。し たがって、いずれにしろ増殖力を弱くしたり、あるいは毒性を弱くはしてありますが、病原体と してのものは、もともとの性質がありますので、それにワクチンとして安定のために添化物を加 えてありますから、副反応というのはワクチンには付き物であるということであります。  したがって、予防接種の重要性を考えますと、感染症にかからないように予防をするというこ とですが、それは個人の予防ももちろんのこと、もう1つは国民全体をもって次世代の健康を守 るということが大切です。すなわち、それは社会を守るということにつながっているというもの です。  また、感染症の側から見ますと、感染症そのものを制圧するということになって、ご承知のよ うに天然痘は既に世界から制圧されておりますし、ポリオもあと一歩の所まで来ております。は しかがこの次ということになっておりますが、まだ進んでおりませんけれども、このようなほか に動物の中間宿主がない病原体については、人間のところをしっかり埋めれば病気は根絶できる という方向を示しております。  そのほか最近では、ほかのウイルス性疾患、例えば日本脳炎、水痘、おたふく風邪、あるいは 細菌性疾患、例えばヘモフィルスインフルエンザb型菌、肺炎球菌等にもワクチンができました。 また子宮頚がんやB型肝炎のようながんの発生を減らすワクチンも出てきておりまして、ワクチ ンの幅は大変広がってきております。  成功した例ですが、日本で成功したのはスライド右側にある絵のような、ポリオで麻痺が起こ ります。足の麻痺を起こします。この方は生きておりますが、もちろん亡くなる場合もあるわけ ですが、このような麻痺も残ります。右の絵にあるように本当に少量の生ワクチンを投与するこ とによって(0.05ml)、ポリオの疾患はこのグラフにありますように、非常に減少しました。これ は、当時の厚生労働大臣の古井氏が生ワクチンの輸入を決断したことによってこういうことが起 こったのですが、不活化ワクチンでは流行が治らなかったのが、生ワクチンで治りました。  また歴史的には、百日ぜきもそういうことが起こっておりまして、基本的にワクチンは、以前 は菌全体を使って作っておりましたが、副作用もかなりあったわけです。それでも病気は接種を することによってどんどん減ってはきておりましたが、ここで死亡事故が起こりました。愛知県 と岐阜県で2名の子どもが亡くなって、一時中止をしたところ、このような疾患の増加が起こり、 またワクチンを改良して、ここから現状に至っております。細かい問題はいろいろありますが、 この2つは世界的にも日本の事例として非常に有名になっていることです。  以上、お話しましたように、21世紀までは治療が中心になって、いまのような予防というのは 二の次という形になってきましたが、いま医学の中でも言われていますように、21世紀は治療か ら予防の時代ということで、そこにはワクチンは予防医学の中核としてなくてはならないものに なってきております。  ワクチンの研究開発の促進をするためには、そのワクチンというものの正しい理解が必要で、 いまいろいろなことをお話しましたのも、これをしっかりわかった上で、研究開発をしなければ いけないからです。もちろんワクチンの主反応は免疫力の高揚ということですが、それに伴って 起こる副反応もゼロではありません。これは人間が雑種ですので、純系動物の実験のようなわけ にはいきませんから、そういうことは十分踏まえた上での健康被害に対する対策は、十分やらな ければいけないということです。  さて、日本のワクチンですが、ここに示しましたように、日本は定期接種、任意接種と分けて おりますが、定期接種のワクチンが8種類、任意接種のワクチンは、12です。これを見ますと、 日本で使用できるワクチンについては、数の上では英国、米国にかなり近づいており、まだいく つか不足はありますが、ほとんど大きな差はありません。  ところが、接種のシステム自体に大きな差があります。すなわち、定期接種と任意接種に分か れており、任意というのはやりたい人はやりなさいというような予防接種法の外の取扱いになっ ており、ここが大きな間違いの根源です。  もう1つは、外国では同じような時期にやらなければならないものは同時に接種を積極的に勧 めておりますが、日本は定期接種と任意接種に分かれて、定期の集団接種も残っているために、 任意接種が非常にやりにくい状態です。医師の判断によってということにはなっておりますが、 それはごく一部でしかやられていないということで、予防接種が非常に進みにくくなっていると いう現状があります。  もう1つは、子供の時代に打つワクチンがどんどん増えておりますが、外国では5つ、6つの ワクチンを全部混ぜられるものは一緒にして、多価混合ワクチンという形で、1回の接種で5種、 6種の免疫を付けることになっていますが、日本で持っている混合ワクチンはDPTとDPとMR だけで、非常にプリミティブルなことしかできていないということになります。  それから、外国のワクチンはすべて輸入しろというわけではありませんが、不活化ワクチンで も、外国では原則筋肉内注射をやっております。これについても特に小児については大腿四頭筋 短縮症以来、ワクチンで起こったことではありませんが、ずっとそのままになっていますので、 今後このことについても検討して、入れるべきワクチンが早く入れられるような方法も考えてい かなければいけないと思っております。  臨床から考える研究開発の促進ですが、日本にはワクチンギャップがあると言われています。 ワクチンの種類と同時に、ワクチンそのものが国産を中心に使用されています。また、米国や英 国では常にワクチンは基本的に国が全額カバーするというやり方でやっておりますが、日本はそ うではありません。したがって、親の経済的な格差が子どもに影響しているというのが現状です。 これも接種率を非常に低くしている1つの原因です。ワクチンは国防の一環として、予防医学に お金を使ってきたかということを考えてみますと、いかがでしょうか。これも今後検討していた だく問題だと思います。  定期接種でさえ、予防接種率が低いのはなぜでしょうか。これは次のところでお話をしますが、 この原因を一つひとつ解決することによって、すべて研究開発の行き先は見えてくると思います。 すなわち、厚生行政の中に、10年先を見据えたワクチンビジョンはいままではなかったと思いま す。はっきりした計画がなくて、その場その場でやってきているので、こういうことを招いてい るのではないかと私は考えております。  また、国としての感染症対策の中でワクチンが重視されていない、軽視されてきたということ があると思います。また、感染症のサーベイランスシステムが万全ではありません。定点の観測 はありますが、完全にはチェックができておりません。感染症の動向が正しく把握されないと、 どんなものが必要かということもわかりません。  それから、今回のインフルエンザもそうですが、危機管理として使用できる特枠の予算が全然 組まれていないということで、その点では日本は非常に遅いわけです。アメリカのCDCは自国の 兵隊の派兵のこともあるでしょうが、外国で何か起こればジェット機を飛ばして行きますが、日 本は新幹線に乗るのも大変だという状況がいま残っているということは、どういうことでしょう か。  もう1つは、ワクチンの接種率が低いという問題があります。これはいちばんの根本は疾患疾 病教育の不備だと思います。国民のワクチン効果の理解不足が、実際に外来でワクチンを打って おりますと知らない方がたくさんおります。したがって、もう少しここを考えなければいけませ ん。  それからマスコミが、ワクチン効果の不平等な報道を過去にはやってきました。現在だいぶ変 わっていただいて、大変ありがたいと思っております。1例亡くなりますと、その報道は非常に 大きくされますが、その陰で1,000人に打ったら、残念ながら1人の死亡事故があっても999人 は助かっているということが報道されておりません。そこが大変大事だと思います。  それからワクチン接種後の評価で、打ったあとのポスト・ワクチネーションサーベイランス、 ワクチンが本当に効いたかどうかがしっかり調べられておりません。ここも問題です。  さらにワクチンの研究組織として、いま山西先生の基盤研がやっとできたところですが、基礎・ 臨床・疫学等が合同で討議する組織がありません。これは米国のCDCの組織と国立感染症研究所 の組織構成データをよく比較してくださいますと、それは分かるはずです。したがって、そのこ とが今後いろいろ問題になるだろうと思います。  ワクチン開発の臨床応用に充てる資金の不足です。ワクチンというのは、病気の防疫ですから、 感染症防疫というのは国策としての取組みが必要だと思います。厚生労働省は、いわば健康の防 衛庁というような考えで、防衛省がジェット機を買うのと同じようにワクチンにかける予算を作 ってもらうことが非常に大事だと思います。そちらが忘れられてきて、国防だけをやっても、人 が死んでしまったらワクチンの必要などは全然なくなるわけですから、まず人間の健康を守るこ とが大事だと思います。ワクチンの使用数が確保されている保証があれば開発は進むと思います ので、いままでとはもっと変わっていくだろうと思います。これが改善されれば臨床研究開発は 進むのではないでしょうか。  さて、ワクチンの研究開発についてですが、Hibワクチンの例を出させていただきますと、開 発申請の遅れと審査に時間がかかったということがありました。これはヘモフィルスインフルエ ンザ感染症の把握ができていない。すなわちサーベイランスがなくて、本当にワクチンがどれが 必要かということが、それまで認識されておりませんでした。  また、そのほか培地や培養法の問題がありましたし、検査技術の遅れが根底にあって、全国同 じような検査ができなかったこともあります。私たちはそれで研究グループを作って実態調査を やりました。その結果を出すまでに3年かかり、それからあと外国で既にできていたワクチンを 導入するのに6年ぐらいを要して、10年かかったというわけです。すなわち治験環境の遅れがあ って、こういうことが1つの原因ではなく、複合要因で遅れてきたと思います。  したがって、必要なワクチンについては海外開発で行われていても、早く日本がそれをキャッ チして治験を国内で早期に始める姿勢が重要で、これをメーカーが申請しないから知らないとい うことではなく、国がそういうものに対して必要なものは取り入れていくという姿勢を、今後作 り上げていくことが大事だと思います。臨床的には感染症対策の基盤整備が重要だということに なるかと思います。産官学の協力体制の構築が必要ですが、これについては、あとで山西先生が お話になると思います。  それともう1つ、国際共同治験というのが最近行われておりますが、欧米のように特に有効性・ 安全性の確認は数万例規模の臨床試験が必要ですが、それは日本では現実にはやりにくいのです。 したがって、特に有効性や生存率等の臨床的エンドポイントが必要な治験では、迅速な常市化と 開発ラグの解消が必要ですから、国際共同治験ということも考えなければいけない。  いま日本では渡航者用のワクチンが非常に少ない。利用も少ない。これについても薬事法施行 規則の改正が2006年3月に行われており、ワクチンはいわゆる希少薬品として指定をされていま す。これは作るメーカーも数が売れないから作らないという傾向がありますが、少ない数でも造 る道はできていますので、メーカーも改善していかなければならないと思います。  私は国民の予防接種の認識が非常に弱いということから、ワクチンは医療用医薬品等適正広告 基準から外して、ワクチンのベネフィットはテレビあるいは新聞等を通じて、国民に情報が提供 できるようにしていただくことが大変大事ではないか。これによってもう少し国民がワクチンに 対する理解ができると考えております。  最後ですが、いまのような問題を臨床的にはいろいろありますので、各学会がいろいろありま す。お手元の配布資料の後ろに要望書が出してあります。いま7つほどの学会が参加しておりま すが、この現状を見て、もう少し学会間で意見を統一していこうという申し出も増えています。 これは最初は足立政務官から小児学会の横田会長に対して、学会も1つの学会だけではなく、全 体が統一した意見を作って持って来るように言われたということで、それに基づいて小児学会が 音頭をとって、各学会の代表の先生に集まっていただいて、予防接種推進専門協議会を作りまし た。その中身は学会間専門家の意見調整会議的組織です。  その要望内容については、お手元に本物が行っておりますので、それを後でゆっくり読んでい ただいたらいいと思いますが、1〜5の5つの要点について、今回は要望しております。これはい ま申し上げた中の大枠ですので、これを基に、今後この部会で積極的な検討をしていただけるこ とを、私たちは大変期待しております。以上です。 ○倉田委員 それでは、2人目の山西先生、お願いいたします。 ○山西参考人 医薬基盤研究所の山西です。私のは、お手元の資料で説明いたします。まず最初 のスライドは、先ほどご説明のあったワクチン産業ビジョンの案です。それ以後、いくつか日本 ではワクチンの申請、承認がされていますが、日本とアメリカのワクチンの開発、導入の時期を 見ますと、一目瞭然です。このうち日本の跨るべきワクチンは1987年の水痘生ワクチンだと思い ます。これは日本でもちろん開発したワクチンですが、世界でこのワクチンのみ使われており、 このワクチンは世界的に非常に評価の高いワクチンです。それ以後、種々のワクチンの開発が行 われましたが、米国と比べると非常に少なく、先ほど言われたとおりです。特にこの20年ほどは ほとんどワクチンの開発はされてきませんでした。これはなぜだろうということで、次の頁です。  そこで私は厚生労働省の予算をいただいて、なぜそういうことが起こったかを調査しました。 国内外のワクチンの開発の研究の現状とか、いろいろ調べた結果、日本のワクチンの基礎研究は 非常にレベルが高いことがわかりました。  それでは、将来、どのようなワクチンの研究が行われるべきかというのが調査結果ですが、1 つは新しいベクターの開発が必要です。これはB型肝炎をはじめ、いろいろなサブユニットワク チンに用いられておりますが、蛋白質の発現には新しいベクターが必要であろうと思われますし、 海外などでは生ワクチンにベクターを使ったものの治験を始めているということもありますので、 新しいベクターの開発が重要であろうと考えられます。  2つ目はアジュバントの開発です。アジュバントというのは免疫の賦活剤で、特に不活化ワク チン、ポリペプタイドのワクチンなどは、アジュバントなしには免疫を付与することはなかなか 困難であるということで、アジュバントの開発が重要であります。  3つ目は投与経路(デリバリー)と書いてありますが、現在ほとんどのワクチンは注射法です。 その方法はかなり限度があるということで、非常に効率よく、また免疫力が非常に良くなるデリ バリーシステムを考えるべきである。例えば、経鼻接種です。粘膜に免疫を付与するようなワク チンというのは、これから開発が重要になってくるだろうという結論に至りました。  その結論をもとに、我々はワクチンの開発研究機関協議会を立ち上げました。これはもちろん 先ほどのワクチンの産業ビジョンがバックグラウンドにありますが、日本国内で基礎研究をして いる所、特に、国立感染症研究所、東京大学医科学研究所、大阪大学微生物研究所、それと我々 の研究所の4つが幹事の団体となって、それから数多くのオブザーバー、特にワクチンを開発す るためのメーカー、厚生労働省、医薬品医療機器総合機構も一緒になって、このワクチン開発研 究の協議会を立ち上げました。  ここではワクチンの開発の方向性の意見交換をしたり、ワクチン開発研究のセミナーを含めた 普及事業を行っていこうということで、毎年普及事業を行っております。その1つとしてワクチ ンの特区の話が出てきました。  これはいわゆるスーパー特区です。これは最新の医薬品の開発に関する公募が行われ、140〜 150件の応募があったと聞いておりますが、そのうち24件が採択されました。そのうち、我々が 提案した次世代・感染症ワクチン・イノベーションプロジェクトというのも採択していただくこ とができました。  このイノベーションプロジェクトの説明ですが、まず新興・再興感の染症の対策は国家的な課 題であり、ワクチンというのは薬剤の耐性のような問題がないということ。ワクチン開発に関し て、世界の高水準の基礎研究を我々の国が持っている。例えば、リバースジェネテイックス方法 とか、自然免疫の研究は、非常に世界に誇るべき研究が進んでおりますし、先ほど申しました水 痘ワクチンは世界に冠たるワクチンだと私は思っています。  このようなことがあって、従来型の経験的なワクチン開発から、分子生物学的な手法を用いた 次世代の高付加価値型の感染症ワクチンに転換すべきであるということを旗頭にして、我々はこ のスーパー特区に申請したわけです。  そこでスーパー特区の我々が申請した内容ですが、例えば新型インフルエンザワクチン、マラ リア、エイズは国を挙げた対策が必要であろうと思われます。そこで高付加価値型のワクチンと は、例えばインフルエンザであれば、あらゆる型に対応できるようなワクチンにするためのウイ ルスのバンクを作ったり、基礎研究を行う。粘膜ワクチンを開発する。これは動物実験では非常 に広範囲にこの効果が発揮できるので、ヒトにもこれを応用していきたい。それとともに、アジ バントの研究を行うというのが我々の提案の内容です。  それとともに、先ほど少しご紹介いただきましたような臨床・非臨床アジュバントのガイドラ インを作成するとこによって、よりワクチン開発が促進されると考えられます。  次の頁は特区の社会的な意味、有用性ですが、安心・安全な社会の実現出来て、途上国に普及 して国際貢献につながるのではなかろうかと考えます。例えば、粘膜型のワクチンは注射器不要 であり、副作用の被害原因の低減につながるだろうと考えられますし、それからワクチン産業の 高度化が進むことによって製薬企業等が新規参入して、バイオ産業全体の構造改革が実現できる だろうと思っております。  次はスーパー特区の推進体制ですが、私が責任者で、ここに書かれているような研究グループ ですが、厚生労働省、文部科学省のみならず、農水省関連機関にも入っていただいた研究グルー プとしてワクチンのスーパー特区を申請しました。それとともにワクチンというのは、将来実用 化するということは重要ですので、ワクチンのメーカー、製薬メーカーの方も一緒に入っていた だき、定期的な会合を持つとともに、報告を行っていくことが、この特区の推進体制であり、将 来は治験、臨床にも重要ですから、国立病院機構や東大の医科研に入っていただいて、臨床研究 にまで持っていきたいというところです。  次はスーパー特区のロードマップです。左側には次世代の高付加価値のワクチンが書かれてお りますが、粘膜ワクチン、マラリアワクチン、エイズ、水痘のベクターについては多価ワクチン の研究が進みつつあります。将来は臨床研究ですが、臨床研究の前には動物実験特にサル等の霊 長類を用いた実験も安全性を担保するのに重要だろうと思いますので、そこも行いたいと思って おります。  それとともに先ほど言ったようなガイドラインを作成し、これはほぼ出来上がりましたので、 そのガイドラインに沿って促進していきたいと思っています。最終目標として、日本発・世界初 のワクチンが、世界的に感染症制圧に貢献できるというのが我々の願いです。  5頁の最後のスライドですが、最近、我々はそれをもう少し具現化するために新型インフルエ ンザに即応できる次世代ワクチンの臨床幇助に向けた研究を始めました。ご存じのように、A型 のインフルエンは144種の抗原型に分かれていて、どれが入ってくるかわからないということで、 この144種類のワクチンを作るのはなかなか大変なことなので、144種類の型の原型を持ってい る北海道大学の喜田先生と一緒になって、そのうちいくつか将来新型として、我々の所に現れる という予想をして、その何種類かのワクチンを作っておこうと考えております。細胞レベルで非 常に増殖のいいウイルスを我々の所でストックしておき、出てきたらすぐそれがワクチンとして 使えるような状況にしておこうということが、我々のプロポーズです。 なぜかと言いますと、 現在はマウスのレベルですが、粘膜ワクチンを開発しますと、多少の抗原性の変動があっても効 果があるという結果が出ておりますので、これが本当にそうであるのかを霊長類を使って検証す るとともに、将来そのような新しいインフルエンザができると、それに即対応できるようなワク チンの基を作っておくというのが、このプロポーズです。  6頁は先ほど申しましたワクチンのガイドラインの作成がほぼ終わって、3年間の研究の結果、 非臨床・臨床のガイドラインがほぼ作成されましたので、将来、皆さんのお手元に届くものと思 います。将欄はアジュバントのガイドラインも作成するつもりです。  6頁のいちばん下ですが、これは私の私見も入っておりますが、我が個で今後ワクチン開発か 期待されるものにはどういうものがあるかです。いままでは小児のワクチンがほとんどです。将 来は思春期、青年、成人、老人のワクチンの使用の可能性があるのではないかと思います。現在 使われているものとして、子宮頚がんのワクチンのパピローマのワクチン、帯状疱疹ワクチン、 外国では使用されているが、日本では使用されていない新しいワクチンである混合ワクチン、改 良ワクチンです。これは先ほど神谷先生が述べられたとおりです。それから現在のワクチンの有 効性・安全性・利便性を向上させる研究開発は、粘膜免疫を誘導する改良型のインフルエンザワ クチンが今後期待されるものだろうと思っています。  7頁は「今後のワクチン開発と政策提言」です。これは神谷先生とオーバーラップするかもし れません。新興・再興感染症、例えば新型インフルエンザ、天然痘などは国家の対策が非常に肝 要であると思います。緊急の場合に誰も助けてくれる余裕がないのではないかと思いますので、 国としてまず対策を打っておくべきだろうと思います。  それから、たゆまぬ国家レベルのサポートによる研究開発が必要と思います。研究開発を一旦 やめると再び研究をやることはなかなか難しいと思います。感染症学と免疫学の基礎的な研究が、 将来の感染症以外のワクチンの開発につながるものと信じております。  最後のスライトですが、ワクチンの宿命と問題点について若干お話いたします。ワクチンは健 康な人に接種するもので、安全性の確保が絶対条件です。効果は当たり前のことですが、安全性 は非常に重要な条件です。それとともに、ヒトはマウスと異なり、遺伝的に多様で、適当な動物 実験がほとんどありません。絶対的なワクチン安全性のテストが非常に困難です。霊長類が比較 的人間に近いものであると私は思います。  副反応と一般的に言われておりますが、副反応の中には副作用と言われる方もおりますが、実 際には免疫反応である場合がたくさんあります。これは接種者への説明と理解が必要であると思 われます。  結論として、以上の条件のもとに、ワクチン接種のメリット、デメリットをよく考えて)ワクチ ンを選択していくようにお願いしたいと思います。以上です。 ○倉田委員 それでは、神谷先生と山西先生のお二人の参考人に質問、あるいはご意見がありま したら簡潔にお願いします。 ○櫻井委員 神谷先生に伺いたいのですが、言葉遣いの確認です。国防の一環として予防医学に というフレーズがあって、お金を使うべきだということですが、国防というのはどういう意味で 使っておられるのか。本当にミリタリーの意味で使っておられるのか、あるいは人間を守るべき だというレベルの話でよろしいのでしょうか。 ○神谷参考人 国民の感染予防のためにということですから、人間を守るためにと意味で、感染 症の国防という意味です。 ○飯沼委員 山西先生の資料の5頁目のウイルスの144種類のストックは非常にいいと思います が、セル側はどうですか。細胞側もやられるのですか。 ○山西参考人 細胞に関しては現在日本で認可されたインフルエンザ製造用の細胞はありません。 ありませが、私はこれを申請するに当たって、ワクチンメーカーの方と相談しております。ワク チンメーカーが、たぶんこれは認可されるであろうという細胞をいただいて、将来それにつなが るようなワクチンの細胞を用いて、それで増殖の良いものをピックアップしていきたいと思いま す。 ○飯沼委員 課長にお聞きします。6頁の細胞培養の話ですが、このぐらいのお金を何社ぐらい にやってもらうのですか。 ○血液対策課長 いま申し上げられることは、前年度に評価委員会を立ち上げて、そこで応募さ れたメーカー、細胞培養については6社ありますが、それらについては、評価しているところで す。 ○飯沼委員 すると、後で縛られるのですね。これぐらいのお金では、あまり分けないほうがい いというのが私の意見なのです。 ○血液対策課長 これは予算の仕組みというか、予算措置の都合上、パイロットのところで第1 段階です。それから実製造のところで次の段階というように、2段階方式で考えてまいりたいと 思っております。 ○飯沼委員 もう1つ、神谷先生のお話ですが、行く行くは多価にしないと、子どもさんも医療 機関もまいってしまうと思うのです。ですから多価は絶対に進めなければいけないと思います。 多価が日本ではできにくい要因を皆さんに明らかにしておいていただいたほうがいいと思うので す。どのぐらいのファクターがあるのか、ご存じだったら教えてください。 ○神谷参考人 現在、多価でいちばん問題になっているのは、多価のワクチンが不活化のほうで DDTが基本になっているところです。このDDTワクチンが基本になるのですが、特にジフテリ アとベタンの2つについて、世界のワクチンと日本のワクチンを比べますと、倉田先生たちが感 染……前に、もうデータを出しておられますように、日本のワクチンのほうがかなりきれいです し、ワクチンがいいのです。したがって、外国で開発している多価のワクチンを輸入すれば今で もあるのですが、それではいけないと。日本のワクチンに何とか外国での単離元素を混ぜて、1 つのワクチンを作り上げるという方向性が必要なのです。そのために時間がかかっているわけで す。これはやはり日本の企業も、ひとつ頑張らないといけません。それに対しては資金援助もし っかりしないとできません。しかし子どもたちも何十本も打たれるわけです。3回ずつ打つワク チンがいっぱいあるわけですから、早くまとめてあげないといけません。  生ワクチンのほうは、外国ではMMRというのをかなりやっていて、それに先ほど来、山西先 生がお話された膵島を入れてやっているのです。しかし日本の規定の問題で、検定の方法におい て外国と合わないのです。外国では5億人ぐらい、もうMMRワクチンが使われているのですが、 日本は10頭のサルの研究もやっていないということで、遅れているという事実があります。その 辺は今後、もう少ししっかりとディスカッションをしていくと。人間でもやられているデータを、 本当にどこまで信用するかという問題がありますので、その辺も今後の検討が必要です。それが 遅れている、大きな2つの要因ではないかと思っております。 ○飯沼委員 薬事法の縛りはないのでしょうか。 ○神谷参考人 薬事法で特に多価にするほどの縛りはないと思います。あとはガイドラインでど ういうように、このワクチンを作っていくかだと思います。 ○倉田委員 薬事法は当然、きちんと存在しています。いま神谷先生が指摘された外国のワクチ ンの安全なものを5つ足したら、安全でないという証拠が出ました。その証拠を出したのは日本 のグループです。それで今、WHOがガイドラインを書き替えています。12月には出来上がる予 定です。ですから使われているものが7価、8価としたらどうなるかということは、安全なもの を足したら全部安全かというと安全でないということで、ヒスタミン分泌が起こって大変なこと が起きることがわかりました。最初は信用しなくて、米国のFDAは拒否していました。しかし、 それを実際に試してみたら実際にそうなったので、いま全部のやり方を変えていますので、多価 でやればいいという話にはならない。ですから全部、日本は日本で薬事法に基づいて安全性テス トをしないとえらいことになります。起こった時点で、後でなぜやったのかという話になると、 またいろいろなことが出てきます。少しいろいろな対応を見て、慎重にやるべきです。余計なこ とですが、それに手を付けた者としてはっきり言っておきます。 ○黒岩委員 神谷先生にお伺いします。ワクチンギャップを招いた原因の中に、感染症のサーベ イランスシステムが完全でないという話があります。これは具体的にどういうことか、そしてど うすればいいかを教えてください。 ○神谷参考人 感染症のサーベイランスシステムはいま、日本では「定見報告」と言って、各県 で選んだ方からの報告だけがきております。これである程度の傾向はつかめております。外国の 例を取ると、すべての病気がインターネットを使って全部上がってくるわけです。ワクチンも、 イギリスなどでは接種したワクチンが全部登録されていて、厚生省は全部わかるわけです。日本 はコンピューターでやれる時代に遅れているわけではないので、診た先生がきちんと登録すると いう方向を取れば、もっと完全なものが集まるはずです。そういう努力が全然されていないとこ ろが問題だということを申し上げております。 ○坂谷委員 ワクチン創製を国家プロジェクトにすることは大賛成です。それでガイドラインま で作られているということは、見事なことだと思います。ただ、2つの問題点を申し上げたいと 思います。1つは、お2人ともおっしゃいましたが、安全性の確保が絶対条件ということです。 この「絶対条件」という言葉を入れていいかどうかということはありますが、日本人の特性とし て、1例でも2例でも副反応で命を落とすことがあったときには、マスコミの問題とおっしゃっ たように、大問題になるということです。これは民度の問題です。  もう1つは、臨床治験の体制をきちんとするということです。専門家が集まってガイドライン というところまではいいのですが、それを実際に動かす場合に、そのフィールドが確立していな いという問題があろうと思います。この前、神谷先生が主導権を握られて、国立病院機構でイン フルエンザワクチンの治験をやりましたね。あれは非常にうまくいきました。私どもの病院でも 400例入れて、きちんと動きました。しかし、例えば国立病院機構の病院群など、治験を引き受 けるフィールドをきちんと確立することが、もう1つ大事かと思います。もちろん、それらを動 かすための資金を国に十分付けていただくことが、必須の条件であろうと思います。 ○倉田委員 神谷先生、何かありますか。いいですか。 ○神谷参考人 おっしゃるとおりです。 ○倉田委員 ほかにどなたかどうぞ。 ○北澤委員 基本的なことで教えていただきたいと思います。神谷先生から、ワクチン接種後の 評価が行われていないというお話がありました。それは先ほどの黒岩さんのご質問にあった、サ ーベイランスがきっちり行われていないのと同じことなのでしょうか。それと、もう1つ質問が あります。これはどちらの先生に伺ってもいいと思うのです。私は素人なのでよく分からないの ですが、非臨床・臨床試験のガイドラインがもうすぐできるというお話がありましたね。それで は今まではどうだったのでしょうか。今まではガイドラインもなしに、ワクチンの開発が進めら れていたのか。その辺りについて教えていただきたいと思います。 ○神谷参考人 では、先のほうを私が答えます。病気のサーベイランスというのは、どういう病 気が起こっているかと。例えば、日本で水疱瘡にどのぐらいの単検があって、人の数が何万人ぐ らいあるか、それを予防するためにどういうワクチンが必要かというように、基の病気がどうな っているかということが、感染症サーベイランスのほうです。私の言っているポストマチネーシ ョンサーベイランスというのは、例えば膵島のワクチンができますね。これを70%接種したら、 どれだけの病気が減ったのか、90%までいったらほとんどなくなったというようなデータがない。 日本はワクチン開発として、使用までは許可されます。非常に難しい基準を作って許可はされる けれども、打ち始めたらそれから先がどうなったか、効いたか効かないかというデータはきちん と出ておりません。したがって何例打ってどうなったというデータを見ようと思うと、非常にわ かりにくいのです。そこをしっかりしないと、ワクチン効果についての国民の評価も上がってこ ないだろうという意味です。 ○山西参考人 ガイドラインについてです。ガイドラインがなくても、今までもワクチンの開発 はやってきましたし、これからもできると思うのです。ただ、新しいメーカーやベンチャーを含 めて、新しいアイデアでワクチンの開発をしようとすれば、やはりガイドラインがなかったら、 なかなか出来にくいわけです。また、私は法律は存じ上げませんので、たぶん機構の方、審査課 の方に聞かれたらわかると思います。ただ、スピードはだいぶ変わってくるのではないかと私は 思います。 ○倉田委員 これについては医薬局から、立場上のお答えをください。 ○審査管理課長 ワクチンの審査については、対象疾患と品質の有効性、安全性を個別に見るわ けですので、特別にガイドラインがなくても評価できます。しかし先ほど山西先生がお話になり ましたように、一般的にどういう観点から臨床試験や非臨床試験をやるのかという考えがあった ほうが、開発に当たってはいいだろうということで、山西先生を中心に作成していただいている ところです。 ○岩本委員 神谷先生の7頁のスライド14のいちばん下で、広告基準というのが書いてあるので すが、ワクチンのベネフィットを国民に情報提供しにくいというのは、簡単に言うとどういうこ とか、少し詳しく教えていただきたいと思います。 ○神谷参考人 薬の広告というのは今、日本ではやってはいけないことになっておりますので、 薬の名前を出して「こう効きます」というような話は、テレビではやれないのです。ところがワ クチンについて外国の例を見ますと、例えばファーバリックスのHPVは、オーストラリアでもイ ギリスでも「私、打ったわよ」というようなスライドがあって、テレビに出てくるわけです。そ ういうものを若い子が見て、「あの子もやったなら私もやろうか」というような方向に向いていっ ているわけです。予防接種のように接種率を上げて、国民が認識しなければいけないものについ ては、そのほうが早いのです。要するに、医学教育だけでなく、小学校、中学校の学校教育での 予防接種の教育というのは、今までほとんどしていません。感染症教育もしていないのです。そ れを今、全国民に手っ取り早く知らせるにはワクチンぐらいです。特にワクチンそのものが効く わけではありません。それは人間の免疫をつくってくれるものですから、薬の副作用とはちょっ と違います。そういう意味で、ワクチンぐらいは許可してもいいのではないかという意味です。 ○北澤委員 神谷先生のお答えの中で、実際に使用が認められてから、そのワクチンがどのぐら いの人に接種されて、どのぐらいの人に効いたのかというデータがないということでしたが、そ れはとても問題ではないでしょうか。そういうデータもないのに、どうやって国民に「このワク チンを打ちましょう」と言えるのか、よく分かりませんでした。 ○倉田委員 接種された量に関しては販売された量と返された例で、そういう届け出が出てくる のではないかと思うのですが、それは全部出ていますか。 ○神谷参考人 そういうことでは完全なサーベイランスで、そこをもっと正確にやったほうがい いと思うのです。 ○今村委員 神谷先生にお伺いします。7頁の13のスライドのいちばん下です。臨床的な感染症 対策の基盤整備が重要ということですが、具体的にもう少し教えていただけますか。 ○神谷参考人 それは今、お話になっているようなことも含めてです。要するに、感染症対策と してはどういう病気が流行っているか、ワクチンとしてはどういうものが必要かということが、 いちばん基になります。その調査をしっかりやっていないといけないということと、今まで一般 的に言っていることのまとめみたいなことですが、お金を使ってきちんと整備をして、データを きちんと出しておくということです。日本では大雑把なまとめはできているのですが、これは概 数だけです。しかし日本の国としてやれないことではないし、先ほどどなたかがおっしゃいまし たように、いわゆる住基ネットなどを上手に使って、どういうワクチンを打ったとか、どういう 病気にかかったということをきちんと本人の記録をやっておけば、自分は忘れてしまっても、市 役所へ行って自分のカードを入れればすぐに出てくるわけです。そういうことがもうできる国に なっているのにやっていないというのは、非常に情けないと思います。 ○木田委員 神谷先生のワクチンギャップの話で、予防接種率が非常に低いために、PRが必要だ というお話がありました。そのとおりだと思うのですが、国民的な考え方からいくと、価格の問 題もあると思うのです。市場原理でいきますと、たくさん売れれば安くなるというのが普通です。 ところが今回のインフルエンザのワクチンでも、何億と作られても価格が変わらない。この辺り にも大きな問題があって、これを安くする方策というものも、国を中心にして考えていかなけれ ばならないと思うのです。その辺りはどうでしょうか。 ○神谷参考人 アメリカのCDCの例などを取りますと、ワクチンというのは流通機構がずっとあ ります。卸から始まって、すべてのものが順番に行きますよね。アメリカの場合は機構のその部 分をCDCが買う場合の値段と、実際に最後まで流通機構を通っていた値段とが、我々もしっかり インターネットで見られるようにはっきりしております。例えば国が国策としてワクチンをやる と。例えば全員に無料なり、いくらかのお金を取ってやるということになれば、そういう買い方 を国がすることができるのです。企業そのものは、別にそれで損はしないわけです。いま売って いる値段と同じですから。開発にそれが影響するわけではないので、その辺はやはり流通機構も 含めて考えなければいけないという意味です。 ○岩本委員 最初に、感染症対策の基盤整備、感染の動向調査の話です。日本だけが遅れている ということはないだろうと思います。先進諸国が完璧にやっていて、日本が随分遅れているとい う話のように聞こえますが、そうではないと理解したほうがいいと思います。また、神谷先生の7 頁の14に、「国際共同治験の実施体制の整備」の2行目に書かれておりますが、これも大変な話 です。我々の病院でダムという呼吸器難病に関して、アメリカ、カナダと3国で国際共同治験を やりました。これは大変なことです。体制の整備、能力、ノウハウを持つこと、これは非常に大 事なことですが、しんどい仕事だという感想です。 ○倉田委員 ワクチン打つ打たない、打った後のサーベイランスの問題というのは、医療制度の 違いとか、いろいろなことも非常に大きく影響しています。米国のシリーズでは非常にガッチリ していますが、そのほかは今、アメリカでももめているように、医療がどうこうということで、 それによって随分違いますので、一概に比較はできません。ただ、日本では日本のいちばん良い ところと、外国の良いところを拾って考えていくと、いろいろなことができると思います。今後 のために、また検討していただければと思います。  次にワクチンの開発・製造について、製造に直接かかわっている製剤協会理事長の荒井さんと、 日本製薬団体連合会の杉本さんのお2人にお願いしたいと思います。最初に荒井さん、お願いし ます。 ○荒井参考人 社団法人細菌製剤協会の荒井でございます。ワクチンの国内生産基盤の確保とい うことで、時間をいただきたいと思います。お手元に資料がありますので、参考になさってくだ さい。                 (スライド開始)  最初の点ですが、これは平成19年3月に公表された、厚生労働省のワクチン産業ビジョンです。 これはいろいろと提言をされておりますが、重要な部分と思われる所を書き出したものです。こ のビジョンの中では、ワクチンの位置づけというものがきちんと定められております。すなわち、 国の安全保障政策上でも重要な役割を担っている重要な物資で、国民の命を感染症から守り、テ ロ等の危機管理という観点からも、国内でのワクチン開発力を強化して、国内でのワクチン生産 が重要であるということです。また、国内において優れたワクチンを安定的に供給ということに なりますと、ワクチン産業体制の構築には国の政策的関与が不可欠であるという認識を関係者が 再認識して、導入すべき時期にきているという提言がされているわけです。  次の頁が、「ワクチン供給について国内ワクチン産業が果たしてきた役割」です。もちろん、こ れがすべてではなくてその一部です。日本はいわゆるワクチン産業というものを有し、多数のワ クチンを自国で自ら供給できる、世界の中でも数少ないと言いますか、類い稀な国の1つである と思います。これまでに感染症対策に必要なワクチン開発、国内製造、供給というところで、主 に安定供給を通じて感染症対策に貢献してきたと自負いたしております。日本はまだ20年遅れて いると言われておりますが、先人たちは1981年には、DTaPワクチンを世界に先駆けて開発し、 全菌体ワクチンからアセルラという、いわゆる精製ワクチンに改良しました。これは米国にも輸 出されたという実績もありますし、一時問題になった狂牛病、あるいは添加物の問題といった部 分に関しても、政府の施策、政策に速やかに対応する努力をしたということです。  また、一部には非常に緊急性はあるけれども、年間の消費量の少ない、例えばボツリヌスやジ フテリア、あるいはガス壊疽といった抗毒素製品についても供給しています。また、ご承知のよ うに高病原性の鳥インフルエンザ、H5N1の感染爆発(パンディミック)に対応するために、国 からの要請に応じた必要なワクチンを製造し、備蓄を行っております。昨年はH1N1の発生があ り、備蓄はできませんでしたが、これまで3,000万人分の備蓄をしているところです。  次の頁が、この5年間で国内で新たに承認されたワクチンです。先ほど亀井課長から既に話さ れましたが、1番、2番、4番、5番が国内開発で、3番、6番、7番が外国からの導入品です。な ぜ日本のワクチンが20年も遅れていると言われるかというのはよく分からないのですが、実は3 番のHibワクチンは、アメリカでは1987年に承認されています。日本では2007年です。それか ら、ここには書いてありませんが、不活化ポリオも同じく、米国では1987年に承認されているけ れども、日本では開発途中です。そういう意味も含めて、20年というのが出てきたのかと思いま す。しかしここ5年間、国内のメーカーも頑張っていると思います。ちなみに、2番の「H5N1」 と言われている新型インフルエンザワクチンは、新しいシステムと言いますか、いわゆる医師主 導の治験として、日本医師会治験促進センターとの協力で、II相、III相は促進センターに行って いただいております。そういう意味では産官学を挙げて新たなワクチンを開発した、1つの大き な先端事例だと思っております。  次の「ワクチンの製造販売業者」というのも、先ほど亀井課長が触れられましたのでスキップ させてください。  以下に私ども細協の要望が、3つほどあります。最初が「予防接種に関する恒常的な評価、検 討組織の設置」です。これは多分、以前からもいろいろな所からこういう要望があったと思いま す。アメリカのACIPのような、ワクチンによって予防可能な疾患であるVPDに対する助言指導、 ワクチンの接種の回数、間隔、注意点等を定期的に提言する組織の設置が望ましいのではないか ということです。最初はワクチン行政を考える際に組織と言いますか、制度というものを変えて いくことも必要ではないかと思います。この目的も、やはりこういった開かれた所で協議をする ことが、今後の日本にとっても、国民が納得するワクチンビジョンを持つための1つの大きな手 段であろうと思われます。  これは順番が逆になるかもしれませんが、いまのACIPというのは、アメリカの連邦保健省 (DHHS)の構成組織にあたる、CDCのいわゆる諮問委員会です。その下に「ワクチン行政にかか わる各部署を調整(統合)する機能の強化整備」と書いてあります。これはDHHSの中にある NVPO(National Vaccine Program Office)と言う組織なのですが、政府の各関係機関というか部署 を統括して、ワクチンタイプを含めた総合的な予防接種施策の立案、実施に権限と責任を持つ、 いわゆる各省庁横断的な組織が必要ではないかということを提案したいと思います。  各ワクチン行政組織に横櫛を入れてワクチン行政を統括し、日本のワクチン計画が策定できる ような組織があるのが望ましいのではないかと思われます。現在、例えば医薬食品局、健康局、 あるいはPMDA、NIH等、いろいろな組織があります。もちろん、それはそれぞれに非常に大き な意味があるわけですが、ワクチン行政をより改善していくためには、そういった政府機関の中 における新たな組織、あるいは政府機関の外部に位置する諮問機関というものを新たに設置する ことが必要ではないかと感じております。  次の頁が要望の2番目です。これは先ほど申し上げた、アメリカのACIPのようなものができ れば、そこで検討されるものかもしれません。例えば、どのようなワクチンが開発されるべきか、 どのようなワクチンを定期の予防接種に採用すべきかということが明らかになりますと、企業サ イドとしてはより的確な開発判断の動機づけになっていきます。いわゆる開発すべきワクチン、 あるいは定期と任意のワクチンの関係の中で、そういった指針が示されることは、企業としても 非常にありがたいと思います。  また、その下にありますように、いわゆるワクチンの市場経済面、あるいは疫学面の研究を進 めるべきだということになるわけです。現在もそういう研究が進められているとは思われますが、 当該分野の研究支援を図る、あるいは公的研究費の確保等を図ることによって得られたデータは、 ワクチン行政はもちろん、企業の活動のための意思決定として大きな位置づけになるでしょう。 また、そういったいろいろなデータを提示することによって、国民の予防接種の意義に対する理 解を高めるための、1つの大きなツールになると思います。  次の頁が3番目の要望です。これがいちばんプリミティブな重要なことかもしれません。ワク チンや予防接種に対する国民の理解の増進に対して、十分に取り組む必要があるということです。 これは前のお二方の先生のお話の中にも、十分に出てきたことではあります。ワクチンというの は治療薬とは異なり、どこかが痛くなって仕方なく病院に行くというものではなく、健康人に接 種するという大きな特殊性があります。そのためには被接種者ないしその保護者、関係者の理解 や納得が特に重要であろうと思います。ワクチンを接種しよう、接種すべきだという強い動機づ けを、ご本人もそうですが、保護者がそういう意識を持てるような環境をつくることが、ワクチ ン行政の非常に重要なことだと思われます。そのためには国、公的機関の一層の取り組み、例え ば省庁の枠を超え、保護者教育や学校教育においてワクチンや予防の普及に取り組んでいくこと も必要だと思います。  先ほどもお話が出ましたが、ワクチンも医療用医薬品ということで、医薬品等の適正広告基準 によって、ワクチンメーカーが個々のワクチンのベネフィット、リスクも含めて、直接的に広く 国民に対し、例えばメディアを通じて情報提供をすることが非常に規制されています。特に任意 接種ワクチンの情報提供は、どうしても少なくなりがちです。これも法整備も含められるのかも しれませんが、感染症対策の一環として、ワクチンに関する適切な情報を広く国民に提供できる 具体的な方法を検討する必要と言いますか、そういう時期にきているのではないかと思っており ます。もちろん産業側としても、指をくわえているわけではありませんが、各ワクチンを販売し ている企業にとっては制約が多く、国民にあまねく情報を伝えることは大変難しいという状況で す。  我々細菌製剤協会の啓発事業としては、出版物の刊行、あるいは医療関係者、市町村予防接種 従事者や担当者に、研修会や講演会の開催も行っておりますが、それはいわゆる地道な活動で、 努力のわりには伝わり方が遅いと思っております。最後の頁は、我々細菌製剤協会の啓発活動一 般です。そこには7種類書いてあります。予防接種に関するいろいろな刊行物を出版しておりま す。1番、2番については市町村の担当者、医師、保健師等の専門家向けです。3番については被 接種者や保護者向けということで、いろいろな啓発活動を行っております。左側の下の写真は、 講習会の写真です。協会としてもワクチンの啓発活動をできるだけ促進しているということです。 以上でございます。                 (スライド終了) ○倉田委員 ありがとうございました。続いて杉本参考人にお願いいたします。 ○杉本参考人 GSKの杉本でございます。本日は日薬連に属する外資系ワクチンメーカー10社 を代表して発表いたします。お手元の資料をご覧ください。日本におけるワクチンの研究開発促 進と、生産基盤の確保の施策を検討していただくに当たり、技術ベースで海外における、特に欧 米における施策と事例を紹介させていただきたいと思います。そして最後に、若干の意見と要望 を述べさせていただきます。                 (スライド開始)  まずヨーロッパの事例、英国、ドイツ、フランスの政策と事例です。ヨーロッパでは必要なワ クチンを、いつでも安心して接種できる体制をつくることが基本となっています。イギリスにお いては保健省がワクチンに関する政策を決定して、ナショナルイミナイゼーションプログラムを 策定し、それに従ってワクチンの開発あるいは推進を行っています。開発の後期に対象を絞って、 少額の研究資金援助を行っているというのが実情です。新規のワクチンに関しては経済性を重視 して、投資判断ができる民間製薬工程に委ねているというのが事実です。安定供給を確保するた めに複数のメーカーの存在と、その間に存在する競争原理が適正に働くことが望ましいと考えて います。  一方、開発リスクの高いもの、例えばバイオテロ対策用の炭素菌ワクチンについては、公的な 義務が必要だということで、健康保健局が開発、製造をしているということです。ただし新規ワ クチンの研究・開発については完全に企業に任せるということではなく、企業の原理が働かない ように、またワクチンの基礎研究から製品開発までのスピードアップを図ることが必要というこ とから、医薬研究局がトランスレーショナルリサーチに対して2007年に、インフルエンザ、マラ リア、子宮頸がんの3つのワクチンを採択して、約7億円の資金援助をおこないました。また2005 年には政府が60億円を投じて、ナショナルバイオマニュファクチャリングセンターを開設しまし た。バイオベンチャーや大学が治験薬を製造する共同の施設を造って、支援を行うという計画を 発表しました。このような計画は、開発の後期に焦点を絞り、少額の研究資金援助をするという のが事実ということを表わしています。  ドイツにおける事例ですが、ワクチンの開発と支援の促進という方針に基づいて、トランスレ ーショナルリサーチを行っております。イギリスと同様に国立バイオテクノロジー研究所で2002 年から10年間にわたって、40億円の助成金で新規ワクチンの開発を支援しております。また、 ここには種々の製造設備が設置されており、必要に応じて民間企業や大学等の治験製造が行えま す。  フランスにおいては、公的な研究的援助及び生産基盤の整備は行いません。以上のことからヨ ーロッパをリードする3つの国の政策あるいは事例は、それぞれの国によって大きく異なること が、これで分かっていただけたと思います。EU並びにイギリスでは開発のガイドラインがきちん と整備されています。すでに日本でも山西先生を中心として、ガイドラインの作成をすすめてお られる途中ですが、ガイドラインが存在することで、求められる開発要件等が明確となります。 したがって開発ステージでの必要な投資も明確で、そのうえで開発後期における支援がおこなわ れています。  また、ワクチンを導入する、あるいは接種するに当たっての財源に関しても、きちんとした施 策がなされています。先ほど神谷先生からもご発表がありましたように、イギリスは国策として ワクチン接種をとらえています。したがって、国がワクチンを買い上げて接種するという形です。 一方、ドイツとフランスではワクチンの接種を健康保険制度を適用して、実際に接種を希望する 方の費用負担を大幅に軽減するという形で、ワクチン接種がちゃんと行えるという政策を取って います。このように、ヨーロッパにおいてはワクチンの財源がきちんと確保されているので、実 際のワクチンメーカーの開発に対する意欲、活動をバックアップし促進していくという形になっ ています。   一方、アメリカです。先ほどの細菌製剤協会荒井理事長のご発表にもありましたように、ア メリカではワクチンの位置づけが非常に重要です。「基本は、ワクチンで予防可能な疾病は、まず ワクチンで予防します。それでも罹患すれば治療を行う」という方針が明確に打ち出されていま す。この方針にもとづいて政策と支援体制が出来上がっています。実際の政府支援体制ですが、 保健社会技術局(HSS)がすべてをリードして、まず基本方針を策定します。ストラテジックナシ ョナルイミナイゼーションプランの下に、HSSがNIH(感染症研究所)とBARDAという2つの 部局を下に持って、互い補完的な仕組みで推進しています。  研究ですが、研究期間のみならず対象にも縛られない、自由に重要なワクチンの研究ができる 環境を、NIHの中に置いています。実際にこれを推進する部局はNIAIDです。このNIAIDの予 算は、年間3,000億円程度と聞いております。そのうちの半分以上が、ワクチン研究に投じられ ています。実際にここから出てきた成果としては、パピューマウイルスワクチン(子宮頸がんワ クチン)の研究です。その研究成果と研究ノウハウが別々に企業化に活用されたという事例があ ります。  一方、BARDAでは先ほどの研究に対して実際に製品に近づけていくというところに注力して 援助をしています。次の頁に図でお示ししています。例えば細胞培養インフルエンザワクチンの 開発、商業生産プラントに対して約1,300億円、またアジュバントの研究開発に、500億円相当 の給付がなされております。アメリカでは産官学のネットワークにより、評価協力体制が敷かれ ており、必要とされるワクチンは国産・輸入にかかわらず、積極的に開発しているという傾向が 見られます。  次の頁が、BARDAのパンデミックインフルエンザワクチンに関する支援例です。このように アメリカベースの会社、あるいはヨーロッパベースの会社に対して、わけへだてなくその技術に 応じて2005年から2009年に、パンデミックインフルエンザ対策として支援をおこなっています。 また、非常に重要なことは、アジュバントに対する投資が積極的に行われています。2010年には 2品目のBLAを予定しています。また、アジュバントと抗原の組合わせを検討し、複数のサプラ イヤーによるアジュバントと抗原を柔軟に使用できる体制をつくることを目指しているように思 われます。アメリカはアジュバントに対して慎重だという話もありますが、積極的にその活用を 考えているということが伺えると思います。アメリカでは緊急性の高いワクチンについては、国 内で生産基盤を構築すべく、内資外資にかかわらず資金提供などの支援をおこなっています。  以上が事実ベースです。最後に、意見と要望を述べさせていただきます。まずはじめに長期的、 戦略的観点を基に、包括的な予防接種の基本計画策定が必要です。具体的に何年にどの疾病をど こまで減らすかという数値目標を立てて、ワクチン接種を進める等の施策が必要と考えています。 また、ワクチンの研究開発を進める枠組みと、それに対する資金援助を行う体制の確立が必要と 思われます。すでに事例をお話しましたが、少し私見を述べさせていただきたいと思います。  先ほど神谷先生が、国際共同治験の実施体制整備の必要性について触れておられました。国際 共同治験の実施は非常に難しく、大変だったという声もありましたが、私どももこの国際共同治 験の実施体制整備が非常に重要だと考えています。「ワクチン開発における世界の常識」と言うと、 言葉がきついかもしれませんが、有効性、安全性を確実に検証するものであって、現在では1万 例、場合によっては5万例という治験例を数えるメガスタディーが行われております。日本もこ ういうグローバル治験に入り、日本での臨床試験を通じて、世界的なエビデンスづくりに参加す ることが求められています。これは平たく言えば、日本では2,000例ないし3,000例の治験例が 必要ということになろうかと思われます。  このような欧米先進国並みの開発をすることは、その開発環境が整備されることが必要になり ます。この際に現在の日本の治験のあり方から、開発コストというものが問題になると思います。 どれぐらいがリーズナブルなコストなのか。せめてアメリカ並みというのが、1つの指標になる のではないかと思います。ちなみにワクチンの開発コストを日本と欧米で比べますと、日本は欧 米に比べて5倍ないし10倍かかるようです。このような環境では日本が国家として損をするとい うことになりかねないのではないかと危惧しております。ワクチン開発の推進にとって、国際共 同治験への対処が、重要なポイントだと考えています。  元に戻って3番目です。欧米や世界の多くの国では、ワクチンの意義がきちんと認識されて、 国の方針として無償、あるいは低負担で提供する体制が整っています。それによってワクチンメ ーカーも、投資回収のめどが立てられるので、積極的にワクチン開発ができる状況になっている と思います。また、先ほど細菌製剤協会からもご発表がありましたが、ワクチンの意識の向上、 すべてのワクチンにおける定期接種が重要ではないかと思っております。  4番目ですが、国民の公衆衛生上重要なワクチンであれば、国産、輸入にかかわらず、積極的 に研究開発の促進を図り、生物学的製剤基準等を弾力的に運用し進めるべきだと思っています。  最後ですが、緊急性を要する、例えばパンデミックインフルエンザワクチンのようなものに関 しては、国内外企業にかかわらず、生産基盤を国内に持つことが必要だと思います。また、国内 の供給体制を充実させる目的でいろいろな研究投資がなされていますが、研究開発体制が整備さ れるまでは、柔軟に輸入ワクチンを活用することも考えるべきではないかと思っております。以 上で発表を終わります。 ○倉田委員 ありがとうございました。製造販売関係のお2人からご説明がありましたが、何か ご質問はありますか。 ○澁谷委員 まず、荒井理事長さんに教えていただきたいと思います。ご提言の中で、ACIPのよ うな組織を設置するのが望ましいということがありました。もし日本でそういうことを考えると すると、産業界や企業はどのような位置づけ、あるいは役割で関与すべきか、どのような働きを したらいいとお考えでしょうか。その辺りのお考えをお聞かせいただきたいというのが、まず1 点目です。  それから、杉本参考人にお伺いしたいと思います。フランスでは公的な資金で基盤整備が行わ れていないのは、なぜかということです。やはり国民性が違いますし、国民性の問題というのも あると思うのですが、例えばヨーロッパでは寄付による基金のようなものを、予防接種について はどのように考えているかというところも、わかれば教えていただきたいのです。 ○荒井参考人 ACIPについては、これまでもいろいろな話がありました。もし日本でACIPのよ うなものができるとしたら、それを構成する人たちというのは民も官も入りますが、例えば感染 症の専門家や小児科医、公衆衛生の専門家、ワクチン専門家、人権問題の専門家、それからワク チンで予防できる疾病で亡くなった親御さんとか、健康被害関係者、メディア等で構成されると 思います。 ○澁谷委員 その辺は入ると思うのです。産業界や企業の役割、位置づけとしてはどういうよう にお考えかということです。 ○荒井参考人 そういう構成になると思うのですが、たぶんワクチン産業そのものがそのコアメ ンバーに入ることにはならないだろうと思います。もし今後、そういう話題が出れば、どこに属 するかということもあると思います。しかし産業界が直接そこに資金の寄付をしたりということ は、全く考えられないわけです。直接的には関与しないのではないかと思います。○杉本参考人  ご質問の1番目、フランスでそういう施策がない理由はわかりません。フランスにはサノフィパ スツールという、世界で2割のワクチンの売上げを誇る大きなメーカーがあります。そこの方に お聞きしても「理由はわからない」とのことですので、私のほうからこれ以上申し上げられませ ん。  ドネーションに関してですが、ヨーロッパ系の会社はWHOを通じて、積極的にドネーション をやっております。特に低開発国に対しては価格を下げる、あるいは無料でワクチンを供給する ということをやっております。アメリカでも最近、ビルゲーツ財団がワクチンに関連するドネー ションをやっておられます。 ○廣田委員 荒井さんと杉本さんに、1つずつ質問いたします。最初に荒井さんにお願いします。 ACIPのような組織といった要望がありました。ワクチンメーカーにはやはり国の支援というもの が必要だとは思うのですが、例えば医療経済学的な分野での研究支援の要望ということになると、 そういうものはメーカーサイドで研究を進めてもいいのではないかという気もするわけです。ど こまでメーカーサイドでやるかという点を考えると、私はちょっと消極的ではないかという気が するところもあります。それとの絡みでの質問です。かつてインフルエンザワクチンの無効論が 跋扈して、あれだけ製造が壊滅的になったときに、メーカーとしてほとんど反論がなかったので す。普通、医薬品のメーカーとすれば、自分の所が作ったものが効かないと言われると、やはり 反論するのではないかと思うのですが、その時はなぜそうだったのかというのを一つ質問させて ください。  もう1つ、杉本さんには先ほどアジュバントの話がありました。アジュバントについては国か らの支援が相当あったということですが、今後はこのアジュバントで当然特許も絡んで利益が出 てくるでしょうから、国のほうに対してはどのような取扱いになるのかということです。 ○荒井参考人 最初のご質問です。ただいま先生からご指摘がありましたが、企業が全くそれを やらないということではないわけです。これは程度の問題と言いますか、基本的には米国でもサ ーベイランスとか統計とか、あるいは疫学的調査は主にCDCが、政府機関がやっているわけです。 原則的には、基本的には政府がやって、客観性を持たせてきちんとしたデータとすべきだと思い ます。 ○杉本参考人 ご質問のアジュバントの研究については、アジュバント自体が長らく使われてき たものです。何十年と使われてきたものですが、「バイオロジカルアジュバント」という免疫力を 非常に高めるものの開発が近年各国で進んでいます。例えばGSKの場合は各種のワクチンにアジ ュバントをどんどん組み込むということを考えております。このアジュバントの研究というのは、 約20年続けてきた成果が、ようやく実り出したというのが事実です。したがって長年にわたる研 究開発投資を行ってきたわけで、それなりの投資回収をすることになります。先ほどのご質問で1 つわからなかったのが、国に対する利益とおっしゃいましたが、どのような意味でおっしゃった のですか。 ○廣田委員 今回、アジュバントの質の違いということで、H5Yワクチンのときに国内と国外で、 相当差が出ましたよね。そういう意味でアジュバントを作ることによって、いまからアジュバン ト自体も輸出するという状況がどんどん出てきて、利益が出てくると思うのです。それに対する 国からの研究開発の支援、ここでは書いてありますよね。 ○杉本参考人 アメリカのケースですね。 ○廣田委員 はい。そういった国の支援です。そういうことで利益が出てきたときに、その利益 は国に対してどういう取扱いになるのかということです。まだ利益が出ていないので考えていな いのだったら、それはそれで結構です。 ○杉本参考人 製造には、もちろんコストがかかりますので、その部分は回収いたしますが、実 際にアジュバントに対してアメリカで取っている施策というのは、一定の量のアジュバントを入 手されて、実際の使用に向けた、いろいろな検討をなさっているという具合に理解しています。 これは我々のアジュバントだけではなく、各社のアジュバントを購入されて、いろいろな形で混 合されて使われていると理解しています。いまアメリカでは3億人の国民全員にワクチンを接種 するということを前提に、いろいろな会社から抗原とアジュバントを別々に購入されて、それを 自国にあるプログラムに基づいて混合するということを進めておられます。お答えになっていま すか。 ○倉田委員 アジュバントを混合するテストをやっているという話は知っていますが、それを実 際に今回のインフルで、米国で使った例はないですね。これは米国の厚生省(FDA)がはっきり 言っていますから、テストしているという話と使ったという話は全部別な次元ですので、気を付 けてお話ししていただいたほうがいいかと思います。ほかにどなたかありますか。 ○坂谷委員 お2人とも国家的プロジェクトでというお話の中に、1つは社会防衛上、日本全体 として必要であるという理由からと、もう1つは小出しにされていますが、資金回収のめどが立 たない場合、非常にリスクが多い場合もやり続けるために、何らかの援助がほしいというように 聞こえるのです。それが1つです。そこで今の廣田先生のご質問と関係あるわけですが、すべて の開発に援助があるわけではなく、リスクが高いけれども、成功すれば利益が大きいものには援 助をすると。しかし、それで随分ゲットするものがあったときには、やはり国家へ還元するとい うシステムがあってもよかろうかと思います。  それから、荒井さんにご質問です。日本では医師主導ではなく、企業主導で行われるのが普通 ですが、稀に資金回収のめどが立たないという見通しが立ったようなものは、企業はなかなか乗 ってこないけれども、医師のほうでやってみたいというときには、医師主導でやることがあるわ けです。そのときには企業が絡まないのが普通ですが、スライドの4頁の2で、沈降型のインフ ルエンザワクチンに対しては企業も積極的に関与して成功したとおっしゃいましたが、これはど ういう事情と、どういう関与をされたのでしょうか。 ○荒井参考人 積極的に関与したというより、協力したと言う表現が正しいと言うことです。ワ クチンの配布や抗体測定などに関与しました。 ○倉田委員 細かい話になりますが、この分に関しては先ほど言いましたように問題点の指摘が なされましたので、これに関してさらに詳しく知りたいときは、是非文書で事務局にお送りいた だいて、きちんとした文書を、この委員会に公開していいという条件で書いていただきたいと思 います。  時間が食い込んでしまって大変申し訳ないのですが、休憩はカットさせていただきます。時間 ができれば休憩をしたらいいかなというメモが入っていますが、休憩なしでいきます。どうもあ りがとうございました。  それでは、最後の部分ですが、ワクチンの品質管理と承認審査の問題について、国立感染症研 究所所長の渡邉さん、医薬品医療機器総合機構生物系審査第二部長の鹿野さんのお2人に続けて 説明していただき、そのあとで質問をしたいと思います。 ○渡邉参考人 国立感染症研究所の渡邉です。よろしくお願いします。ワクチンの品質管理につ いて概略をご説明します。  資料2-6の1頁目をご覧ください。ワクチンの品質管理、あとでPMDAから説明があると思い ますが、非臨床試験と臨床試験を終えた製剤が、厚労省の製造承認を得たあとに販売される場合 実際の製剤の品質が確保されるか、つまり承認ロットと同等の品質が確保されるかという観点か ら、生物学的製剤基準及び検定基準に基づいて国家検定を行うのが、この品質管理です。ここに 書いてありますように、生物学的製剤基準は、承認にされたときの基準値に基づいて、どれぐら いの値があれば承認されたものと同等の品質が確保されるであろうかという点で基準が決められ ております。各メーカーが自分の所で試験を行い、いわゆる自家試験ですが、その結果が同時に 報告されます。  国家検定というのは、設定された試験項目に関して検査を行い、最終的に品質が保証されてい るかどうかを判定することになります。その結果、合格したものがロットリリースという形で世 の中に出て、皆さんがそのワクチンを使うことになります。その使ったワクチンに対して、副反 応がどれくらいあるのかのモニタリング、またはそのワクチンが効果があったのかどうかを、血 清サーベイランス等で調査をしていることになります。  2頁目をご覧ください。なぜロットリリースが必要なのかということで、1つは、ワクチンとい うのはほかの医薬品と違って健康者に用いる、つまりその免疫を高めることによって、次に感染 する病原体の感染力を弱めて、発病阻止等に持っていくために使うものですので、それなりの品 質が保証されたものも健康人に打たないと、いろいろな問題点が生じることになります。  製剤の特性として、先ほどからも説明がありましたように、ワクチンの中には弱毒性のワクチ ン、つまり微生物を弱毒化したもの、または不活化してその抗原を、我々の体に投与するものが ありますので、その製剤に起こる質の変動が避けられない点があります。そのために、ロット間 での差違が生じるということがありますので、そこの品質を保証するロットリリースという形で 担保するのがもう1つです。  品質を確保するために用いる生物試験法、つまりバイオアッセイは、いろいろ動物を使ったり 細胞を使ったりしますので、そのときの実験条件によって値に少し変動が起こるということがあ りますので、これを担保するためにはそれなりの試験方法に基づいて検査しなくてはいけないと いうことになります。  ロットリリースの比較ですが、2頁目の下のスライド、4枚目のスライドに、WHOと欧州と日 本における比較が書かれております。WHOは「Recommendation Guideline」、欧州では薬局法、 日本では生物学的製剤基準という基準に基づいて試験をしているわけです。もう1つ「Protocol Review」と書いてありますが、製造記録を各ステップごとに書かれたものを提出するということ です。「Summary Lot Protocol(SLP)」と書いてありますが、WHO、欧州等ではこれが行われて おります。日本はまだSLPと名付けられたものに相当するものはありませんが、それと類似のも のとして自家試験記録の成作を行っています。提出されたサンプルについての試験ですが、WHO は全ロット、または一部ロット、場合によってはそのロットについての試験をやらなくてもいい という規定があります。欧州も一応は全ロットですが、国によっては一部が省略されることもあ ります。日本は、全ロットについて試験を行うということで行ってきております。  5頁目をご覧ください。これは、あとでPMDAから説明があると思いますが、製造販売業者か らPMDAに申請が来て、まずPMDAで審査が行われます。そのときに承認前検査が国立感染症 研究所で行われます。承認前検査がどんなものかは次のスライドにありますが、ここに書かれて おりますように、医薬品の製造販売承認のため厚生労働大臣が必要と認める試験は、医薬品製造 販売承認申請の者の規格及び試験方法について、試験研究機関(感染研)において実施し、検討 を行うということになっておりますので、提出された規格及び試験方法が妥当なものであるかを 検査するわけです。近年出されているものは、先ほどから説明があったようなワクチン、乾燥弱 毒生ワクチン、風疹・麻疹ワクチン、肺炎球菌ワクチンなど、ここに書いてあるようなものが、 いままでに承認前検査を行ってきております。  次のスライドの7枚目が検定業務の流れです。販売業者がロットリリースすべき主体ロットに 関して検定申請という形で薬務主管課に提出し、その書類が国立感染症研究所に行き、そこで先 ほど言ったような実地試験及び自家試験記録の精査を行って、合否判定をします。その通知が販 売業者に行きます。そのときに合格証紙が貼られることになります。もし不合格等の問題点があ った場合には、厚生労働省の医薬食品局監視指導麻薬対策課に連絡をし、それがPMDAに行き、 GMP査察等を行い、企業で問題点等の対処を行うことになっています。  国家検定の品目としてどのようなものがあるかということで、8頁にそれが示されています。 沈降肺炎球菌結合型ワクチンに関しては、ここに書かれているような試験方法を取られています。 問題点は省略させていただきます。  9枚目には、人工精製ジフテリア・百日咳・破傷風混合ワクチンに関して、最新バルク及び小 分け製品に関して、このような試験設定がされております。インフルエンザHAワクチンについ ては、小分け製品についてそのような、日本と欧州を比べた場合に各製剤によって少し異なって おりますが、ほぼ同じようなことの試験が行われていると理解していただいて結構だと思います。  6頁目のスライド11は、輸入A型インフルエンザHAワクチン、今回の新型ワクチンに関して の検定、特例承認になりますが、そこで行われた検定の基準です。  過去に国家検定を行った場合、どのぐらいの不合格がでているかというのが、12枚目のスライ ドに書かれております。戦後間もないころは、ワクチンの品質がそれほどよくないという時代が ありましたので、合格率15%ぐらいを示しておりましたが、だんだんその向上が図られて、つま り検定結果に基づいてメーカー等が品質改良にそれを利用してきたという経過とともに、不合格 率がだんだん少なくなってきておりますが、2001〜2005年にはこのような割合で見られていま す。  13頁目は、「品質管理に向けた今後の取組み」ということで、先ほどお話した「Summary Lot Protocol」は製造記録及び製造過程、またその製造過程においてどのような試験が行われてきたか その試験結果の要約が提出され、審査されるということが欧米で行われております。日本もこれ に準じたようなことを行うべく、どのような形で行うかを検討しているところです。  このような検定を行う場合に重要な点は、トレンド解析を行うことで、それが14のスライドで す。定量的な試験について、複数ロットの結果を時系列に並べて、数字の変動に一定の傾向がな いかどうかを分析するわけです。そうすることによってそこの製剤に含まれている、例えば異常 なものが含まれていたかどうか等が、それによって判明するということです。そういう形で、ト レンド解析が行われて異常があった場合には、その結果を検定またはGMP査察等に反映させる ことによって、品質の向上及び確保をより一層図るということになっております。また、このよ うなことをやることによって、問題点があった場合に早期発見、健康被害を未然に防止すること に結びつけられると考えております。  最後の頁、14枚目のスライドですが、先ほどから出ているように、ワクチンからのいろいろな 生体防御反応の結果として、副反応という形で表れるものもありますし、そこに含まれている汚 染物質なりがそういうものを起こすということもあるわけですが、そういうものをできるだけ早 期に発見することによって、ワクチンによる健康被害を防ごうということで、その1つとして検 定も存在しているわけです。ただ、生体防御としての副反応がこの検定ですべてわかるかという と、それはなかなか見えない点もありますので、その辺は限界を考慮しながら、我々はこういう 検定をやらなければならないと考えております。以上です。 ○倉田委員 ありがとうございました。それでは、鹿野さん、お願いします。 ○鹿野参考人 医薬品医療機器総合機構におきまして、ワクチンの承認審査を担当しております 生物系審査第二部の鹿野と申します。  お手元の配付資料2-7に従ってご説明します。まず医薬品医療機器総合機構の組織ですが、1 頁の下にあるように独立行政法人の組織で、厚生労働大臣の委託により、承認審査業務、安全対 策業務、健康被害救済業務の3本の業務を行っております。左の2つにつきましては、いわゆる 薬事法に則って業務を行っているわけですが、薬事法第1条の目的のところには、……有効性・ 安全性の確保のために必要な規制を行うということの他に、必要性の高いものについては、研究 開発の促進のために必要な措置を講ずるということが謳われており、我々はこれに従った業務を 行っています。  2頁ですが、これが先ほど渡邉先生もご説明にもあった審査の流れです。これは一般的な医薬 品全般についての説明になりますが、申請者と審査チームとの間で、面談あるいは文書を介して 申請内容について質問させていただき、審査内容を審査報告(1)としてまとめます。その結果に基 づいて、外部専門家、品質については感染研の先生方が参加されることがほとんどで、臨床、非 臨床の専門の先生についても、ワクチンの特性に応じてお願いして、専門協議を開催します。先 生方のご意見を伺いまして、特に問題がなければやらないのですが、承認の可否にかかわる問題 がある場合には、面接審査会という会議を開き、申請者も交えて、我々審査担当、専門委員の先 生方とで議論をします。そのあと、さらに先生方のご意見を再度確認した上で、審査報告(2)をま とめて、最終的な審査結果と共に厚生労働省に報告します。厚生労働省からは、我々の審査結果 も含めて薬事食品衛生審議会にご意見を伺って、承認して差し支えないという答申がなされれば、 承認に至ります。  我々の審査チームの業務内容としましては、承認審査の他に、開発に関する対面助言があり、 これはどのような開発計画がよいか、品質や非臨床、臨床試験に亘り、助言をするものです。  ガイドラインについては先ほどから山西先生のご説明にもありましたが、ワクチンといえども 通常の医薬品に係るガイドラインはほとんどのものが適用されますが、ワクチンに特化したもの ということで、山西先生の研究班で検討いただいているものです。また、渡邉先生のお話にも出 てきたGMP調査ですが、これはワクチン製造所への立ち入り調査をする部署がPMDAにありま すが、その調査と連携しております。また、臨床試験データの信頼性を確認する医療施設等への GCP調査の実施にも協力をしております。  下の表は、最近数年の我々の部の職員数です。上に2つ括弧してありますのは、いまは部が2 つに分かれていますが、部が分かれる前、1つしかなかったときのものです。ご覧いただけます ように、おかげさまでかなり増員をしていただいて、だんだん承認数が増えてきているところで す。  6頁目ですが、我々が審査した内容は、審査報告書として公開しております。これはホームペ ージでご覧いただけますので、興味のある方は是非ご覧いただきたいと思います。そのスタンス としては、審査情報は国民の利益に還元すべきであろうということ、2点目に、第三者の立場で の客観的評価を情報提供することで科学的な評価、審査時に見られる問題点を踏まえて、潜在的 なリスクとして何があるかという事も含めて情報提供しております。もう1点としては、審査の 透明性の確保です。  下のほうですが、審査の視点です。有効性・安全性・品質恒常性というのは、医薬品の審査の 基本ですので、これを中心に評価します。ワクチンに特徴的な視点ですが、ほかのワクチンと同 時接種されるような場合、最近承認されたアクトヒブとかプレベナーなどはDPTと一緒に接種す るケースが多くなると想定されます。そういう場合に、お互いのワクチンの有効性・安全性に影 響が認められるのかどうかということも評価します。また、既存ワクチンと置き換わる、あるい は同じような選択肢の一つとして使用するような場合には、同等以上の有効性・安全性が確保で きるかどうかという視点で評価します。  複数メーカーから、供給されるワクチンを複数回接種している場合、例えばDPTは4社で製造 されておりますが、1回目と2回目、3回目で違うメーカーのワクチンが接種されることも珍しく ないわけです。そういうものの互換性については、いわゆる生物学的製剤基準で品質基準のほう から担保していくという考え方です。  9頁目ですが、有効性評価に対する考え方です。中段の四角囲みの中ですが、病原体が感染し て病気を発症すると、免疫が活性化されて治る方もいらっしゃれば、発症して重症化し、障害が 残ってしまう方も希にいらっしゃるということです。ワクチンを評価する場合は、赤字で書いて ありますが、感染あるいは発症か重症化か等、それぞれのワクチンによって目的が違うのですが、 それぞれの目的とする段階を予防できること、ここではTrue Endpointと記載していますが、そ れを臨床試験で評価をすることになります。  しかし、右側に書きましたが、最近は衛生環境の改善もありまして、感染症の発症頻度が非常 に低下しておりますので、臨床試験ではワクチンの接種した群と接種していない群で病気の発症 がどれぐらい下がるかを評価するのですが、そのために非常に膨大な症例数が必要となります。 例えば、500人に1人発症するような疾患が対照ですと、5,000人の対照群で10人の発症者が出 るのが、ワクチン接種群ではそれが一人とか二人に減ることを確認するということです。そのよ うな試験の実施が難しいということで、右上のほうに書いておりますが、代替となる指標、 Surrogate Endpointでの評価が検討され、良く用いられるのが免疫の活性化を評価するというこ とです。  下のほうですが、免疫原性、よく使われるのは血中体価ですが、そういうものを代替の指標と して有効性を評価する場合は、予防効果とその免疫原性は関連性があることを説明する必要があ るということになっております。ワクチンは人にとって異物ですので、何らかの免疫反応が起き るのですが、その反応で必ず予防できる保証はないということです。  左側の四角囲みの内容ですが、その免疫学的な指標と予防効果の関連性は、通常は大規模な疫 学的調査の結果や、類似ワクチンの長期的な使用経験に基づいてわかるものですので、全く新規 のワクチンでいきなりこれを使うことは、非常に難しいということがあります。ただ、H5系鳥イ ンフルエンザのように非常に死亡率が高い、どのような予防の指標があり得るかという情報が限 られている状態でありますが、有効性評価にリスクがあることを勘案した上で、その時点では不 確定な代替指標を使用せざるを得ないケースもあり得ます。  10頁目ですが、これは海外ワクチンの日本申請時期です。上の2つは、海外でかなり前に承認 されていますが、赤いハートで示した日本への申請時期まで非常に時間が長いのです。これらは この時間が長いので、海外での使用実績から先ほど出てきた予防効果と関連する代替指標が使え て、少ない症例の臨床試験で日本での効果を証明することができ、開発のコストが非常に少なか ったということです。これは海外でも散々使われて有効性は十分認められており、開発のリスク も低いわけです。しかし、やはり日本への導入がかなり長期間遅れてしまうということです。  下のほうですが、サーバリックス、ガーダシルはパピローマウイルスに対するワクチンですが、 いわゆるがんの発症予防だけではなくて、代替指標でも発症に近いところの代替指標を使った開 発で、国内でも早期に開発に着手していただいています。このときは必要性が高いということで、 国内臨床試験が終わらない段階で前倒しして申請していただいて、早期に承認に至ったものです。 サーバリックスについては少し前に承認されています。緑色の部分が審査期間ですが、これは我々 としても、ワクチンだけでなく通常の医薬品含め、短縮すべく努力しているところです。  下のほうですが、先ほど言いました臨床試験の症例数を、まとめました。最近、新規のワクチ ンで数千から数万例規模の臨床試験が必要になっています衛生環境の改善や治療法進歩により、 発症の頻度が少なくなるということで、どうしても本当に有効なのだということを確認するため には、そういう規模の試験が必要になってしまうと、やはり国内だけでやるのでは難しいので、 国際共同試験にすることが必要となります。先ほど神谷参考人、杉本参考人がおっしゃいました が、国内の治験体制を早急に整備しないと、日本人についての直接的なデータはなかなか得られ ない状態になりかねないということです。  ワクチンの治験は、いわゆる治療薬の治験と違い、入院とか他のいろいろな治療を施すとか、 そういう必要性がほとんどないので、本当はコストはそれほど高くないはずなのですが、日本で はなかなかその辺が効率的にうまくいかないような話をよく聞いております。  次の頁になります。6頁ですが、国際共同治験を含め、海外でやった治験結果を利用する場合 の留意点なのですが、よくある問題は、分布している病原体の型が日本と海外で若干違うケース があります。そうすると、ワクチンの効き方に違いが出る可能性があります。それから、生活習 間、衛生環境等々が病気の状態、ヒトの免疫状態の及ぼす影響があります。  民族差ですが、不思議なことに、ある種のワクチンでは明らかに東アジアと欧米等と反応性が 違うのです。いま審査報告書が公開されておりますが、プレベナーなどは明らかに、東アジアで は欧米より抗体価の上昇が高いです。また、ほかのワクチンと併用する場もあるのですが、その 国その国のいろいろなワクチンの接種スケジュールの中で、接種年齢や月齢、併用ワクチンの違 いが影響する場合があります。それから、先ほど神谷先生からお話があった投与経路の違いの影 響等、そういうことも考慮して、用量とか免疫持続性を考慮して、必要であれば追加接種時期な どを検討していくことが必要になります。それぞれのワクチンの留意点は個々に違いますので、 開発の早い段階から、PMDAの対面助言の利用を考慮していただくよう助言しています。  下のほうの安全性評価ですが、ワクチンはほとんどが健康な方対象、多くのものは小さい子ど もが対象になるということで、安全については非常に慎重にしていただきたいと思います。開発 時に治験で接種される症例数はある程度限界がありますが、承認後は非常に多数の人に接種され るワクチン、定期接種ワクチン等については、そういうリスクにも対応する必要があります。  7頁目の上ですが、安全性への対応例です。日本脳炎ワクチンは従来のマウスの脳を培養した ものではなくて、細胞培養で製造されたものが昨年承認されていますが、そのときは600例程度 の使用実績に基づいてこれを承認しました。すぐに多くのお子さんに接種されるということにな りますので、記の1のところですが、可及的速やかに重篤な副反応に関するデータを収集し、段 階的に評価を行うとともに、その結果を踏まえ適正使用に必要な措置を講じること。  2点目ですが、重篤な副反応を速やかに収集・解析し、その評価結果を医療機関等へ情報提す ることとなっていることから、各医療機関においては重篤な副反応情報の迅速な提供にご協力い ただくとともに、業者から提供される安全性情報にご留意いただきたいという、審査管理課長通 知で注意喚起させていただきました。以上でございます。 ○倉田委員 ありがとうございました。これについては、いまお話いただいたわけですが、何の ためにやっているかというと、ただ1つ「ミニマイズ」、リスクを最小限に減らすためとかワクチ ン利用という言葉がありますが、それだけです。これについては、仕切りの時間はほとんどあり ませんので、何かどうしてもという方がいらっしゃれば一言お願いして、あとは文書でいただい てお答えすることにしたいと思うのですが、どなたかいらっしゃいますか。 ○宮崎委員 いろいろな民族差も含めて、日本では導入するときに必ず国内治験をやって、確認 をして入れると。ただ、多くの国では、例えばヨーロッパでは中央の組織が承認し、それを各国 が利用する、そしてある判断で導入するということが行われていると思うのですが、日本ではい まのシステムが続いていくのかどうかと、もう1つ、治験終了前の前倒し申請は誰が判断してや っていくのか、その2つをお聞きしたいと思います。 ○鹿野参考人 まず、EUの中央審査方針ですが、ご質問は、日本と同等以上の審査制度のある海 外で承認を得れば、国内では審査は必要ないということでよろしいでしょうか。 ○宮崎委員 必要ないかというか、現状、ほかの国では改めて治験をせずに入れている国が多い のではないかと。 ○鹿野参考人 そこは、個別によってだいぶ違うということがありますが、日本の場合は現在の ところ海外データだけで承認した事例は通常の医薬品でもはありませんが、今後そういう申請が 来た場合には、個別のケースによって先ほど示したような論点も含めて検討していくのだと思い ます。 ○倉田委員 古木委員の先ほどのコメントについてですが、これは山西さんの研究班で昨年度報 告書が出て、そこに詳しく書いてありますが、27の国が加盟しているEUのワクチンや医薬品に 関するEMEA(欧州医薬品丁)で、各国は最低1人品質管理担当の人がそこに入っているのです。 そこでみんな議論に加わって、疑問があれば更に時刻に戻って、それを全部テストしているわけ です。ですから、EMEAで承認されたからといってスルッとスルーするわけでは全くないのです。 各国のNational Cotrol Laboratoryは、それに対して調べる権利と権限と、拒否することもあり ますが、それは全部が一様に入っているわけではないので。EU全て一緒ですよということでは全 くないので、そこは勘違いされないでください。 ○鹿野参考人 もう1点、 ○宮崎委員 わかりました。 ○鹿野参考人 もう1点、サーバリックスの前倒し申請ですが、厚生労働省から指導されたもの です ○倉田委員 ありがとうございました。もう1つ、人数が鹿野さんの発表にありましたが、参考 のために言っておきます。米国の医薬品総合機構は、2年前で全部で1万2,500人います。生物 製剤で2,000人います。その生物製剤2,000人に属するところが先ほどの30人ですので、米国並 みのスピードを要求するならばということが、今後いろいろ出てくると思います。私の意見はそ ういうことで、予計なことを言って申し訳ありませんが、事実を言っただけです。 ○審査管理課長 パピローマウイルスのワクチンの件で、臨床試験が終了する前に申請を認めた ということですが、これに関しては例外的な取扱いです。基本的に、その当時承認申請前の審査 という仕組みはなかったのですが、昨年度から新たに申請前に申請資料の一部を評価する制度を 導入しましたので、そういう制度を利用していく形で今後対応していくことになるのではないか と思っております。 ○倉田委員 この問題についてはあとでご検討いただくことにします。ご発表ありがとうござい ました。  時間がかなり遅れ気味なので、議題2「予防接種法の対象となる疾病ワクチンの検討の進め方 について」について、事務局より説明をお願いします。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 資料3をご覧ください。冒頭でも申し上げまし たが、2月の部会の際にも6つの今後検討すべき事項の筆頭に挙げられております、これから予 防接種法の対象となる疾病やワクチンをどう考えていったらいいかという大きな課題がありまし た。これについては近々ご議論いただく予定ですが、その前に各疾病もしくはワクチンについて 基本的な、試みに我々は「ファクトシート」と呼んでいますが、これは米国におけるACIPでも 同様なやり方をしていますが、きちんと事実関係を整理した上で先生方にご覧いただこうという ことで、裏に別紙1が付いております。これを「ファクトシート」と呼んでおりますが、どうい う病気なのか、どういう症状が出て、どのぐらいの頻度で起こるのか、検査法があるのか、治療 法はどうなのか、患者数はどのぐらい出ているのか、ワクチンがどのくらい効くのか、ワクチン を打つことの費用とそれによってセーブされる費用はどうなのか等々について、安全性・有効性 も含めて、現在わかっているものの1つひとつの疾患について、ファクトシートの整理をしてい ただこうと思っております。  1頁にお戻りください。今日特段のご異論がなければ、2に書いてあるようなHib(インフルエ ンザ菌B)、肺炎球菌、HPVの感染症、水痘、B型肝炎、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)につ いて整理をしていただきたいと思っております。これについては、3の「やりの方」ですが、今 日は所長に来ていただいておりますが、国立感染症研究所を中心に実施していただくと。  また、冒頭にプレゼンテーションしていただいた神谷先生が代表を務めておられる「予防接種 推進専門協議会」が今般できたようですので、これについて協力を得ると。別紙3ですが、3月3 日に作られたということで、神谷先生が委員長ですが、代表委員をご覧いただくとウイルス学会、 ワクチン学会、感染症学会、細菌学会、産婦人科学会、小児科医会、小児科学会、小児保健協会 等々、関係すると思われる学会がほぼすべて網羅されておりますので、こことご相談をいただい た上で、国立感染症研究でファクトシートをまとめていただきたいということです。大変タイト なスケジュールで、感染症研究所には恐縮ですが、5月末を目途に整理をしていただいた上で、 先生方にそのファクトシートを中心に議論をしていただくということでいかがでしょうか、とい うことです。 ○倉田委員 いま事務局から説明がありました点について、予防接種法の対象となる疾病、ワク チンの検討の背景となる資料について、いま事務局から提案していただきましたが、これに関し て異論はありますか。 ○黒岩委員 異論ではなくて教えていただきたいのですが、先ほどの神谷先生の発表の中で感染 症のサーベイランスシステムが完全ではないとか、ワクチン接種後の評価も十分できないような 体制だという中で、このファクトシートはちゃんとしたものができるのでしょうか。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 ファクトシートの各疾患について、すべてきれ いに埋まるわけではないかもしれないと思っております。それはまさに黒岩委員がご指摘のとお り、もし必要な情報が埋まらなければ、そこは逆に今後きちんと強化をして、そういうデータを 取るようにしなければいけないということだと思います。そういうことがわかるためにも、この ファクトシートを作るということです。 ○倉田委員 宮崎委員、感染症のサーベイランスの問題についてご意見があれば、是非お願いし ます。 ○宮崎委員 ここ数年で、かなりデータは出てきているのです。5年前と比べると、全然違う状 況にはなっていると思います。海外での有効性等々はかなり出ていますが、日本での疫学はいま 整えられつつあるところです。先ほどの人数の話からいくと国立感染症研究所もとても大変だと 思うのです。CDCと比べると、本当に少ない中でよくやっておられると思うのです。ですから、 こういうベーシックな大事なデータを作るところには、是非人と予算をきちんと付けていただい て、我々臨床家が安心して議論ができるようにしていただきたいと思います。かなり多くの感染 症についてのデータ収集が必要ですので、学会委員、専門家を総動員して、短期間に仕上げるこ とが必要かと思っております。 ○今村委員 確認に近いものですが、予防接種の対象の疾患について、定期接種となっていない 疾患あるいはワクチンということで、1頁の2に「等」と書いてありますが、正確に言ったらい くつあるのですか。いまHIVとかヒトパピローマとか書いてありますが、いくつの感染症ですか。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 原則的には、少なくともこれについては、是非5 月末までに必ず上げてくださいということで、予防接種部会で必ず議論をすることが必要ですか ら。また、感染症研究所、もしくは先ほど申し上げた予防接種推進専門協議会の目からご覧にな って、こういうところについてデータを予防接種部会の先生方に是非検討していただきたいとい うものがあれば、それは時間の許す範囲でまとめていただければということです。 ○倉田委員 櫻井委員、ヤマカワ委員、何かご意見はありませんか。いままでいろいろなところ でご意見があるかと思いますが、よろしいですか。あと、どなたかご意見等ございますか。 ○廣田委員 ワクチンを接種する際の適用法ですが、インフルエンザワクチンの場合は、抗体を 持っている、持っていないにかかわらず、とにかく打ちますね。ところが、現在、B型肝炎ワク チンの場合などは、抗体を持っているか持っていないかチェックして、持っていない人に打ちま すね。そのあと抗体が上がったかどうか確かめて、上がっていないならまた打つといったワクチ ン特有の対処法、適用法がありますので、今回考える対象とする疾患の場合は一律かどうか、も し特殊な状況があるのだったら、その辺も併せてご報告いただければと思います。 ○倉田委員 ありがとうございました。澁谷委員、ヤマモト委員、今村委員、いかがですか。 ○今村委員 先ほどの質問でいいです。 ○倉田委員 それでは、何か気がついたらあとで言っていただくことにしたいと思います。よろ しくお願いします。飯沼委員、何かございますか。 ○飯沼委員 ACIPに関する具体的な規模とか予算とか、そういうことの一覧表を作っていただき たい。それがないと議論にならないと思うので、次回までにお願いします。 ○倉田委員 これは事務局からお願いします。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 その議論は、必ず用意してやりたいと思うので すが、次回に出せるかどうか、我々の能力の観点もありますが、それは宿題として必ずやらせて いただきます。 ○倉田委員 それでは、資料3については事務局の提案で進めてよろしいですか。 (異議なし) ○倉田委員 それでは、そのようにさせていただいて、何か問題がありましたら折々言っていた だいて、そこで修正を加えるなり新たに追加することにしたいと思います。  議題3になりますが、「その他」ということで、事務局から報告をお願いします。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 資料4をご覧ください。報告事項1としては、 「予防接種制度の見直しに向けたご意見の募集について」ということで、これは以前北澤委員か らもこういうことをしたほうがいいのではないかということでご指摘がありました。これは2月 におまとめいただいた予防接種部会で、こんなことを議論していくということで、囲みの中に1 から7までありますが、1〜6はそのときの6つの大きな課題です。どういうワクチンを加えるか、 もしくは費用負担をどうするか等々です。こういうことについて、この段階で国民の皆様方のご 意見を一度お伺いしておこうと思っております。できれば明日ぐらいから始めて、5月末までに ご意見をメールなりでお寄せくださいということにしたいと思います。その際、定型的なもので すが、3頁以降にあるような大体の年代、性別、職業を書いていただいた上で、どの項目につい ての意見だということを明示していただいた上でお寄せいただきたいと思います。また、当然な がらこの予防接種部会等で一定程度まとまってきたら、それについてのご意見の募集を別途考え ておりますので、よろしくお願いします。 ○倉田委員 それでは、5番目の報告をお願いします。 ○新型インフルエンザ対策推進室長 資料5をご覧ください。前回もご報告しましたが、前回総 括会議を立ち上げますとお話しましたが、3月31日に1回目を開き、2回目を4月12日に開いて おります。メンバーは、その裏の頁に載せてあります。1回目は、専ら事実関係の整理と、今後 どのように進めていったらいいか、例えば水際対策とか医療対制とかワクチンとか、そういうテ ーマごとにその分野に携わった現場の方々をお呼びして、一緒に議論しましょうという今後の議 論の進め方について議論をいただきました。  2回目は広報をテーマに、3頁目にメンバーリストがありますが、広報の関係者、マスコミ関係 者や大学の先生等さまざまな方にお越しいただいて、議論をしていただきました。例えば、国の 方でホームページで随時更新しながら情報発信していったことは評価できるといったご意見、あ るいは国立感染症研究所などで専門家と記者が意見交換する場があったことはよかったといった ご意見もありましたが、一方で広報関係についてはもっと人員を増やし、予算を増やすべきでは ないかとか、正確な情報に基づいた冷静な対応ということを繰り返し発信しましたが、具体性が なければかえってパニックや反発を起こしかねないとか、正確な情報をどう入手すればよいか、 併せて提示しなければ意味がないのではないか、対策についても、その理由や背景についてきち んと説明する必要があったのではないかといったご意見もいただいております。  そのほか、地方自治体や医療機関からも、国の情報発信は少し遅かったと、マスコミの報道が 先で後から通知が来るので、対応が非常に困難になって混乱を招くという厳しいご意見もいただ きました。今後は、医療体制、ワクチン等々それぞれのテーマで、4月28日、5月12日、5月 19日と引き続き進めていって、何とか6月中にはまとめていただきたいと思っております。 ○倉田委員 ありがとうございました。これはまとまったころにご意見をいただくということで いいと思います。最後に、6の「参考資料」については、よろしいですか。わかりました。報告 はこれで全部終わりになります。  いま駆け足でやってしまったのですが、まとめた資料が全部ありますので、これについてご意 見がありましたら、メールなり文書にて事務局にお問い合わせいただいて、今日発表された方か らお答えしたほうがいい場合にはそちらからお答えをいただくと。そうでない場合は事務局から お返しすることもあるかもしれませんが、そういうことでお願いします。  政務官はご多忙で、終わりのほうで時間があればとおっしゃっていましたが、おいでになれな いということですので、何か特別にご発言があればお受けして、なければ終了したいと思います。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 次回は5月の開催予定ですが、日程、中身等は また委員の先生方にご相談したいと思います。よろしくお願いします。 ○倉田委員 先ほどの数字のところの、今後の予定の日にちでやると。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 先ほどのは総括会議の予定ですので、予防接種 部会については、また委員の先生方にお知らせいたします。 ○倉田委員 失礼しました。どうもありがとうございました。予定については、次の会は決まっ ているのですか。 ○新型インフルエンザ対策推進本部事務局次長 いま日程調整をしております。 ○倉田委員 それでは、これで終わりにしたいと思います。遅くまでどうもありがとうございま した。 照会先:健康局結核感染症課(03−5253−1111 内線:2077)