10/04/16 第6回雇用政策研究会議事録 第6回 雇用政策研究会(議事録)                       1 開催日時及び場所   開催日時:平成22年4月16日(金) 17時30分から19時30分まで   開催場所:厚生労働省・省議室(9階) 2 出席者   委 員:阿部委員、加藤委員、玄田委員、小杉委員、駒村委員、佐藤委員、白木委員、 諏訪委員、鶴委員、橋本委員、樋口委員、江崎岐阜県商工労働部長、木村三菱 総合研究所研究部長、久古谷JILPT調査・解析部長、横山三菱UFJリサ ーチ&コンサルティング主任研究員 事務局:細川厚生労働副大臣、太田厚生労働審議官、森山職業安定局長、山田職業安定 局次長、酒光労働政策担当参事官、伊奈川社会保障担当参事官、前田労働基準 局総務課長、高橋職業能力開発局総務課企画官、吉本雇用均等・児童家庭局雇 用均等政策課長、三浦大臣官房参事官、宮川職業安定局総務課長、小川雇用政 策課長、里見雇用政策課企画官、平嶋雇用政策課長補佐  他 ○樋口座長 定刻より少し早いですが、第6回雇用政策研究会を開催いたします。委員の皆 様におかれましては、ご多忙の中お集まりいただきましてありがとうございます。  今回は、岐阜県商工労働部長の江崎禎英様にお越しいただきまして、初めに地域の産業政 策について、雇用の観点も交えてご報告いただきたいと思います。よろしくお願いいたしま す。 ○江崎岐阜県商工労働部長 岐阜県商工労働部長の江崎でございます。本日は貴重な機会を 与えていただきまして誠にありがとうございます。  ご覧のとおり、岐阜県ですが、日本の真ん中に位置しておりまして、標準的な地方都市と いいますか、地方経済の代表かというふうに思っています。したがいまして、大都市とは多 少異なる問題を抱えておりまして、今回の不況の中で何が起きて、そして今後どのような方 向に進もうとしているのかと、これについてお話することができれば、多少本研究会のお役 に立てるのではないかと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  お手元に資料をご用意させていただきました。  資料1で、まず岐阜県の構造から簡単に触れさせていただきます。1ページの左の上のグ ラフです。岐阜県ですが、大体、就業構造としまして、製造業がいちばん多くて、卸売・小 売、サービスと、比較的バランスよく各業種があります。特に製造業ですが、左の下の円グ ラフにありますように、半分ぐらいが地元、地場産業ですね、後はご案内のとおり自動車、 その他で構成されております。  右の棒グラフですが、各業種ごとの働く人の雇用形態をまとめてみました。まず製造業で すが、ご案内のとおりやはり短期雇用・派遣が多いというのが特徴です。それから、卸売と 小売り職種枠についてはパート・アルバイト、これは一般的な傾向かと思います。  2ページ目ですが、その中で、従業員の業種別の構成です。グラフが2つあります。左が 出荷額の推移、右が従業員です。この、岐阜県の20年間のトレンドですが、ざっと見てい ただきますと、地場産業が衰退し、代りに電機・自動車等が伸びてきたというのが、左のグ ラフから見ていただけると思います。特にこの10年ぐっとそこが伸びてきております。他 方、右のグラフですけれども、従業員はその傾向、特に地場産業のほうは、繊維が非常に見 事に落ちていますけれども、他方で、伸びている産業の雇用はそれほど大きく出ておりませ ん。特に特徴的なのは、少し薄いマルを付けておきましたけれども、自動車関係ですね、売 上は伸びているのですが、逆に先行して人が削減されるという動きがあるのも特色と思われ ます。  次のページをご覧ください。今回、大変な不況、一昨年の秋以降、岐阜県も相当打撃を受 けたわけなのですけれども、3ページ目のグラフにありますように、非常な勢いで昨年秋以 降、失業が増えました。これは雇用保険の受給者の数で見ておりますけれども、一気に上が ると。その内訳が右側のグラフにありますように、まずはやはり製造業が非常に大きいとい うことです。ちなみに、雇用保険受給の青いグラフですね、最近下がってきておりますが、 これは景気がよくなったわけではなくて、現場の声(ハローワーク)、下に3行書いてあり ますが、時系列に並べてあります。基本的には6月の段階で雇用保険の利用者は落ち着いて きているという数字は出てくるのですが、別に就職できているわけではない。それから9 月になり、いよいよ個別に受給期間が切れ始め、この11月以降現在に至るまで支給切れが 増えているだけという状況です。  4ページ目ですが、そうした中で需給のギャップを簡単にご紹介させていただきますと、 やはり製造業が非常に大きいということです。左のグラフにありますように、生産工程、労 務、いわゆる工場ですね、ここに大きなギャップがあるというのが注目されるところです。 ここは、最新のグラフなものですから、ギャップが8,818人となっておりますが、ここの部 分だけ右上のグラフに取り出してあります。いちばんひどかったのは去年の5月ぐらいなの ですが、15,000人ほどのギャップがありました。ここにきて少し縮んでようやく8,000と いう数字になっているところです。特にご注目いただきたいのは、専門・技術、サービス職、 ここの部分は一貫して募集人数が希望者を上回っております。即ち、足りないという状態で すね。右のグラフにありますように、サービス、専門・技術職は昨年の秋以降、一度も足り たことがないという状態です。他方で製造のほうは非常に大きくギャップがあるというとこ ろです。  次のページをご覧いただきますと、このギャップ、15,000から8,000になった、この約 数千はどこに行ったのだということなのですが。まずは生活保護が大きく伸びてしまってお ります。これはよくあるグラフですがちょうど平成21年1月、申請が楽になったところか ら一気に増えておるというところなのですが、その内訳をその隣に示しています。特に、こ れまでやはり生活保護といいますと、母子、傷病、障害、高齢ということがあったのですが、 ここにきてその他というのが激増しております。これは、ご案内のとおり、収入減・生活困 窮を理由とした保護世帯ですね、ということはもう明らかということで、ここで約2,000 人増えているということです。  それから6ページ目でありますように、もう1つ、岐阜県の特徴でありますが、県外に大 量の人が出て行きました。この1年間で10,000人、岐阜県の人口が減りました。ご案内の とおり、岐阜県ではいち早く外国人帰国支援を実施をいたしまして、これは特に、日本語が できず仕事もない、帰りたくても帰れないという700名をターゲットとして始めたわけで すけれども、お金がある人はその前に既に2,000〜3,000人帰っておりましたので、都合数 千人の外国人が帰りました。グラフを見ていただいてお気付きになる方も多いと思うのです けれども、特に右側の岐阜県の国籍別人口の推移、これは多分各地域、地方都市の共通する 悩みだと思いますが、一貫して日本人が減っております。これは、大体3月に減って4月に 戻るというこのパターンを繰り返しながら、着実に減ってきております。これはいわゆる人 口減少をはるかに越えた減り方をしています。即ち、若者が毎年3,000〜4,000人ずつどん どん県外に流出をしていくと。岐阜県の場合は、ご案内のとおり、自動車産業を中心として 日系ブラジル人の方がたくさん来ておられます。したがって、ここしばらくまで岐阜県人の 人口全体はほぼ横ばいだったのですが、日本人が減ったところを外国人が埋めてきたという 構造になってます。それを今回の不況で、外国人もいなくなる。そうすると一気に人がいな くなるというのがいまの状況です。特に、下にちょっと細かい表なのですけれども、どの都 市からいなくなりましたかというところなのですが、ご案内の方も多いかもしれませんが、 岐阜県でいいますと、加賀美原とか美濃加茂、これは外国人が非常に多い地域ですし、イコ ール工場が多いところです。工場労働の可能性の高いところ、ここからやっぱり人がいなく なる、即ちオレンジで書いておきましたが、結局製造業、先ほど非常に伸びてきたところで ペコッと下がったところは、派遣労働者や外国人で支えられていたということが、逆に証明 された形になったわけです。特に、日本人がずっと下がってきた、ここを地方経済の現実と してどうやって止めるのかということが大きなテーマということはご理解いただけると思 います。  次のページは、ちょっと面白い数字というわけではありませんけれども、岐阜県もこの結 果、完全失業率の動向というのはちょっと変な動きをしています。左の上のグラフにありま すように、黒いのが岐阜県で、グーッと上がっていまピョコッと下がっています。これが景 気がよくなったのかというと、どうもちょっとそうではない。右にカラフルなグラフがあり ますけれども、これは時系列で見ますと、平成19年は景気がよかったのですね、この頃は、 むしろ非労働力人口が減り、市場に出てきて仕事があったという時代です。それから平成 20年になりまして、だんだん景気が悪くなると、そうすると非労働力人口が市場に出てく る。特に、リーマンショック以降は、主たる収入を稼ぐ人の収入が減ったこともあって、主 婦の方が出てこられた。ところが仕事がないのでそのまま失業者になってきたという動きが あります。それが最後、平成21年の縦にテンテンとあるところで、ここで「もうアカン」 ということで、これはハローワークからの聴き取りもそうなのですが、もう諦めて市場から 退出してしまったと。その結果、非労働力人口が増えたのですね。他方で、水色が下がって いるように、雇用が増えているわけではない。ただ失業率だけが下がるという、そんなこと が起きたと。結局、この中でいろいろ右往左往したのですが人が動かないという状況が分か ったものです。  8ページ目です。総括的に申し上げますと、今回の急激な不況に伴います大量な失業。こ れで我々もいろんな分野に人が動くのではないかと相当期待をしました。それでいろいろ取 り組みをやったのですが、結局は動かなかったと。それで総括的な課題ということで書いて おりますが、特に製造業の派遣の方々ですね、巷間よく言われていることなのですが、やは り同じ業種に就きたい、対人業務は嫌だ、というのがありました。製造業なら何でもいいか というと、食品関係は非常によかったです。堅調だったのですが、これも土日の勤務とか深 夜があるから嫌とか、給与の計算の仕方が違うから嫌と言って動かない。特に、生活保護が 楽になってから、自分の望む仕事が見つかるまでは待つと。したがって、たまに出てくる製 造業からの募集に人が殺到するという状況がいまだに続いているというのが現状です。  介護については、我々も期待はしたのですが結局あまり動かなかった。当初、相当人は来 たのですけれども、やはり最終的にはいろんなミスマッチがあって入らなかったと。  いちばん最後のページ、すみません、先にちょっとだけ触れさせていただいて、14ペー ジ目に、ここはちょっと参考になるかなということで付けておきました。参考3の、現場の 声というところだけご覧いただきたいと思います。これは時系列になっています。これは毎 月聴き取りをやっておりますので、現場の実感ということなのです。まず、昨年の4月、い ちばん厳しいといわれたこの頃、介護の求職者が増えました。ところが、どこへ行っても現 場を見ると驚いて数日で辞めてしまうというのが、非常に声として聞かれました。その後な のですが、実は受け入れるほうも福祉の報酬の関係でやはり高い人がいいと。特に、一定量 の従業員はあったので後はできるだけ有資格者のほうへということで、募集のほうのレベル も上がってしまって、なかなか入らない。10月になって、若干製造業で上向き感が出て、 いま申し上げたようにこぞってそこに集中して、介護関係は減るという状況。そして今年に なって2月では、一旦就職してもなかなか定着しない。最後は直近ですけれども、結局残っ た人は他業者の分野からではなくて、もともとやっていた人だけだったというのが残念なが ら現実の状況だったというところです。  8ページ目に戻っていただきまして、農業・林業、これも岐阜県は非常に広うございまし て期待をしたところなのですが、どちらも相談件数は激増しております。非常にたくさん来 ておるのですが、農業についてはやはり経験者が少ないということでまだ研修中。特に林業 のほうは、これもかつてないほど応募があるのですが、やはり現場に行ったら3日で辞めて しまうというのがほとんどです。それと、今度は林業のほうの悩みとしていま来てくれるう ちはいいのですけれども、継続的に彼らを雇いきれるほどの仕事がないということで、痛し 痒しの感じがあります。建設業を林業にという議論もありました。ところが、建設業のほう はこれからますます人が余ってきます。ここをどうするのかということは地方経済としては 非常に悩ましい状況です。  これが正に岐阜県で起きてきたことでございます。  ここからが本日のテーマなのですけれども、こういう中で人は動かないと。そうすると地 方経済はただひたすらに景気回復を待つのかという悩みがあります。そうすると、また外国 人が帰ってきて埋めるのかという議論なのですが、現場を回っていると、ややそういうこと ではなさそうだなと。特に、今回の不況はいままでとやや様相が違うというのが現場の声で あります。ちょっとまとめておきましたが、今回の不況から学ぶべきものということで、ま ずこれは巷間言われております、マネーゲームに振り回されるリーマンショックということ なのですが、問題は特に岐阜県は中部にございますので、経営の合理化・グローバル化によ って生産活動が瞬時に影響を受ける。ご記憶にあろうかと思いますが、今回の不況は中部で は「トヨタ不況」といわれておりました。トヨタショックをいろいろ言われてましたけれど も、実際に肌で感じている感じからすると、これまでの不況というのはアメリカがおかしい と、そうすると輸出が止まる、在庫が積み上がる、いよいよ地場の中小企業の発注が止まる までに1カ月から場合によっては3カ月かかったのですけれども、今回はもう翌日止まった というのが、非常な実感です。もっと言いますと、いわゆるジャスト・イン・タイム方式、 カンバン方式ですけれども、これは逆回転するのだということを地場の産業は痛いほど感じ たということです。  それから特にここにきて非常に大きな悩みは、3つ目にありますが、中国製品の品質が非 常によくなっております。これはいままでのように今回の不況をしのげばまた仕事は戻って くるかというと、どうやらそうではないかもしれない。今日はテーマではありませんので省 いてありますが、いま岐阜県でもお陰様で多少景気回復している兆しはあります。ただこれ は明らかに2つの理由でありまして、1つはエコカー絡みのところですね。もう1つは中国 への輸出です。これは今朝のニュースでもやっていましたけれども、中国頼みということに なっていますが、注意しなければいけないのは、今回の景気回復のところでいちばんおいし いところは中国が持って行っているのです。それのおこぼれに日本が与っているという感じ になっているかなと。景気回復感という感じがあるのですが、まだその程度。もはや中国製 品は安かろう悪かろうではないというのは、現場の競争している者からすると非常に感じて きております。  目指すべき経営のあり方ということで、じゃあどうするのだというのが、我々の非常に大 きな悩みなのですけれども、まずは理想を言えば、景気の変動に左右されにくいビジネスモ デルができればありがたい。そんなものあるのかということなのですが。分かりやすく言え ばコピー機です。一旦コピー機を入れれば、その後ずっとトナーで儲けていける。県内を回 っていて非常に面白かったのは、エレベーターの会社がありまして、「建設不況だから大変 でしょう」と聞いたら、「いやいや、全然そんなことはありません」。「なぜですか」と聞い たら、窓の外を指しまして「ビルが建っているでしょ」と。「ビルの中に全部エレベーター があるんです。エレベーター業界というのは基本的にメンテで儲けていますから、ビルが建 たなくても大丈夫です」と言われて、そういう形にできないかなあというのが、1つ、県内 でやっている議論なのですが。  他方で、実感とは次の2つが問題でありまして、やはり中国製品とはちゃんと差別化をし ないといけません。岐阜でいいますと、伝統産業の刃物というのがあります。刃物もそれな りに不況を乗り越えて頑張っているのですが、汎用品を作っているときは軒並み倒れていま す。汎用品であれば中国製でなければいけないと。もう1つの模索は、中国と差別化を図る か、もう中国を使って儲けると。生産能力の活用ということで、直近でもそうなのですが、 中国に岐阜県企業のための工業団地を作って欲しいという声が非常に多いです。これは岐阜 県企業から来ています。生き残るためにはしょうがないのかなと思うのですが、雇用の観点 からは最悪の話でありまして、これはなかなか厳しいかなと。ただ、やはり現場の企業の方々 とお話をしていると、分野を問わずですけれども、物を作って売るだけというビジネスモデ ルは早晩限界にくるなというのが実感であります。その下に赤いところで書いておきました けれども、他方で、今後成長が期待されますエコカーとか環境関連の分野、具体的には太陽 光パネルとかリチウム電池、燃料電池、モーター、この辺りは付加価値は確かに高いです。 我々も誘置に向けていろいろやっております。ただ他方で、やはりここの分野についても低 コストの労働力を求めるという方向は変わりません。いずれこれも中国が作ってきますので 必ずそちらに行くだろうと。ちょうど半導体が負けていったのと同じ構造になるかなという 気がしておりますが、今後安定的に雇用確保できるかはやや不透明かなと。加えて、いま政 策的に進めております派遣の制限とか最低賃金を上げるというのであれば、生産活動を海外 にシフトすることはある程度覚悟しなければいけない。そういう中で、地域の雇用を支えて 特に若者、先ほど見ましたどんどん人口減少以上に出て行ってしまう若者に、どう魅力のあ る職場を作るのかというのが我々の大きなテーマでございます。  そんな中で県内をぐるぐる回っていると、意外な動きがあるというかちょっとありがたい、 今日是非ご紹介したいことなのですけれども動きがございます。先ほど申し上げましたよう に、岐阜県は地場産業が非常に多くございます。この中に、「大変でしょう」と言って回る と「いやいや、結構儲かってますよ」というのが結構ありまして、今日ちょっとエピソード でご紹介しますけれども、木工家具とか利益率もみんな最低2桁です。いいところは25% ぐらいの利益率で回していますけれども。木工家具が非常に分かりやすい例だと思います。 もちろん不況です。この業界は非常に苦しいのですけれども、その中で、ここも流通も含め てほぼ死に絶えたと。特に、岐阜の場合は飛騨の家具というのは有名なのですが、ここでご 紹介したいのは美濃の家具といいまして、そんなものがあるのかと私も最初は思いましたけ れども、行ってみたら社長さん曰く、これまで流通に渡して終わりだったところがみんな見 放していったと。それで直接お客さんに仕事を取りにいくようになったら最近非常に人気が あるのは、これは一般家庭ではありません。一般家庭はニトリの独り勝ちと言われていて、 そうではないのですがいま飲食店で、特に飲み屋さんを中心として居抜きという形で前のお 店が潰れた後の場所をそのまま借りて、ちょっと高級感を出してその店を造り直して低コス トでやる、そういうところからのニーズとしてある程度高級感を出したいので高級家具を買 おうとすると、店のサイズが先に決まっているので合わないのですね。ちょっと大きいちょ っと小さい、というのがあって、この店の大きさに合った形でちょっと高級感のあるものを 作ってくれないかというのが、これまでの流通ルートではなかったのだそうです。それを1 つひとつ丁寧に仕事をしていったら、もう日本中から注文が殺到するようになりまして、向 こう2年間お断りしなければいけないぐらい仕事がきていますと。後はこれを友だちとどう やって分けてやろうかなどと話をしていましたけれども。面白いニーズというか企業秘密な のでこれ以上は申し上げられませんけれども。特に高級料亭から、やはり彼らもちょっと安 くていいものをというニーズがありまして、非常に単純な技術なのですけれども、うまく組 み合わせることによってそれを見事に満たせるということで、これから広げていこうという ことをやっています。  それから、陶磁器。美濃の陶磁器はあまりご存知ないかもしれませんけれども、シェア日 本一です。ところが、伊万里・有田の地のものはほとんどが中国か岐阜です。岐阜のものに 色を着けて伊万里や何やと売っているわけなのですけれども、残念なことにものすごく利益 率が低いのです。ここもあまりにも大変なので、自らブランドを作って売ったところが、直 接お客さんとの関係で売り始めたら大変なことが起きまして。本人にとっては「こんなに高 くていいのか」と言われるものが、最終消費者は「こんなに安くていいのか」と。実は、陶 磁器は、ご案内の方も多いかもしれませんが、多重中継の構造になっていまして、生産のほ うで2つか3つ仲買がいます。それから販売のほうでも2、3段階ありますから、都合6、7 段階あるのです。その間にどんどん情報が錯綜し価格が上がりとんでもないことになってい る。結果何が起きたかというと、生産量はかなり減ったのですが価格が上ったので、総売上 はむしろ増えたということなのです。お陰で今度、若手を中心に新しいデザインでやってい いのだということが分かりましたので、これでいますごく売上を上げているというのが陶磁 器です。  農業は、これもエピソードなのですが、農協ではなくて直接最終消費者とやることによっ て価格を、ただしこれは単純に作ればいいというものではありませんが、そこを越えるとか なりの利益率が上がったという食品が、これは後で話しますけれどもあります。  特に、流通をスキップしたために消費者の声が直接届くと。冒頭ご紹介しました木工の社 長が言っていたのですが、いままで大体伝統産業は仲買に売る、仲買からの情報に基づいて ものを作るというのが一般的でした。特にこういう不況になると、「社長、いまはこういう モデルが売れます」「こういうサービスをしないと売れません」と言われて作ってきたので すが、直接お客さんとやり取りしてみるとどうやら違うということが分かった、ということ を言っていましたが、ほかの業界でも皆同じことを言っています。  そういうことを踏まえて県内を回ってみると意外なことが分かってきまして、この青いと ころに書いておきましたけれども、伝統産業、地場産業は、消費者の顔を見ないビジネスモ デルです。これは仲買人に売ってお終い。農業もそうです、農協に売ってお終い。関心は農 協がいくらで買ってくれるかであって、最終消費者がどうかということは知らないというこ とが大きいです。特に2つ書いてありますが、見込み生産モデル方式になっているものが多 いです。これは典型的には衣料関係です。皆さん今日は男性の方が多いですが、紳士服です けれども、これは大体どういう構造になっているかというと、昔のまま、即ち吊しのものは ほぼ中国で作っています。最近1着買うと2着目は198円で買えるというのがあります。 これは多分経済学の先生から見ると変だと思われると思いますが、ちょっとデフォルメして 申し上げると、このスーツ関係のビジネスモデル、単純に言うと5着作って2着売れれば何 とかなるというビジネスモデルです。そうするとほかはどうしているのだというと、いまま で燃やしていたのです、本当に。それが産業廃棄物がお金がかかるようになってからこのモ デルが始まったのですが、要するに廃棄物処理をしてもらっていると、お客さんにですね。 したがってこれは本当であれば半分でいいわけです。私も1度、「2着目はいらないから半 額で売ってよ」と言ったら、「それは困ります」と言われ、これは正にそういう構造になっ ているのです。ただしそれぐらいの量を作ることで、中国も含めて全体の生産活動が回って いるので半分でいいとは言えない。その中に膨大な流通構造があるのでそこで食べているの ですが、そこからすると変な話ですが製品の価値を自ら毀損をする。それをやると衣料の場 合は大体そうですが、季節が終わるとバーゲンで売りますね。この構造は見込み発注の大量 在庫モデルといわれていて、これをやめられないかということをいまやっています。最近そ れを普通のニーズで、その価格で最もいい品質のもので売るということをやっているのがユ ニクロなのです。ユニクロは特殊なビジネスモデルでやっているわけではなくて、普通のこ とをやっているだけなのです。最近またテレビで出ていますけれども、鎌倉シャツというの がありますね。あれも正に全部日本製なのですけれども、ちょうどお客さんが必要とするも のを必要だけしか売らない。あそこは絶対にバーゲンはやりません。売り切りモデルをやっ ていまして、早速私も買ってきて、これそうなのですけれど、やはり全然違います。10,000 〜15,000円のものをいま4,900円で売っています。昔、繊維課長に聞いたことがあるので すが、これは10年以上前ですが、日本でちゃんと作れば10,000円を超えるワイシャツは 4,000円でできると言っていました。それを実現したのは鎌倉シャツです。これは着ていた だければ説明するよりも分かりやすいと思うのですが、非常にいいです。ボタンの嵌め方、 体へのフィットの仕方、テレビではこうやって上げても脇が上がらないと言っていました。 これは笑い話ですけれども、私のサイズよりはるかに大きいものを着ています。ところが袖 からこれだけしか出ていないでしょう。私、通常のよりも4cmぐらい大きいのを着ている のですけれども、これがここで溜まるようにできているのですね。こういったことは、縫製 の技術からするとそう難しいことではない。ところがそれをちゃんとやらずに全部投げてい る。それから特にネクタイですけれども、これは1日していても絶対緩まない。これも4,900 円で、これぐらいのことはできるのです。だけれどいままでやってきたビジネスモデルから 変えられないということで、自ら負ける体質になっているなというのが正直なところです。  我々はよく繊維産業は構造不況業種だと勝手に思っていますけれど、実は日本の繊維は異 常で、普通先進国は衣料というのは輸出の上位に入ってきます。日本は輸出の比率が数十倍 というか1対60とか1対100なのです。これは明らかに何かがおかしいということを、い ま触り始めていますけれども、正にそういうモデルに結構多くの地場産業がなっています。  次に、流通先行の経済。これは特に不況のときに、消費者第一主義ということでスーパー がやるのですけれど、これは結構な落とし穴が地場産業的にはありまして、ご案内の方もあ るかもしれませんが、岐阜は飛騨牛の偽装問題で大変なことになりました。これはこれでよ くないことですけれども、これを調べていくと、意外に同じような声が食品関係である。何 かというとまず不況だと、飛騨牛を例に取って申し上げると「うちは飛騨牛をお客さんのた めに3,000円で売るのだ」と、普通これは5,000円の商品なのですけれど、そうすると何が 起こるかというと、流通業者に「2,500円のものを入れてこい」と。そうすると中継ぎが、 「分かった、2,000円の飛騨牛を持ってこい」と。そうやってだんだん生産者のところでは 「1,500円の飛騨牛を持ってこい」と。そうすると、嫌とは言えないのでそういうことにな るのですけれども、当然のことながら疑装だろうと言われると、これは「2,500円の飛騨牛 だよな」と言うと「飛騨牛です」。「これは2,000円の飛騨牛だよな」、「飛騨にいたかもしれ ません」。「これは1,500円の飛騨牛だよな」、「牛だったかと思います」と、そういうことが 起きるのですね。最終的に誰かが嘘をつかなきゃいけないビジネスモデルになっているとい うことはいわれます。  あの生協ですら、食品でいうと、生産原価というのは2割です。したがって、そうすると、 ほかの食品界はどのぐらいになっているのだと。この次にくるだろうと言われているのが、 無農薬野菜の嘘。本当に無農薬で野菜なんかはできませんから、それをやはり流通先行で、 こうでないとお客さんには売れないのだということを先に決めてしまう。それによってもの すごく生産現場が圧迫されるというのが、やはり地方を回っていると非常に感じます。これ は結局いいものが作れなくなるのですね。  この典型が実は林業であります。林業は駄目だと皆さん勝手に思っていると思いますが、 実はご案内のとおり、価格自体は昭和50年以来ずっと下がってきています。岐阜は木の国、 山の国でありますので林業も盛んなのですけれども、ずっと下がってくるこの数十年間を追 いかけてみると非常に面白いことが起こりまして。これは3段階なのです。販売のところ、 加工のところ、山元。これを追いかけてみると、ずっと価格は下がってくるのですけれど、 流通・販売のところの価格帯はむしろ増えているのです。加工のところはほぼ横ばいです。 山元はほぼゼロです。実は私も山を持っていまして、昔だったら1本数十万円もするヒノキ ですね、車一杯、10トントラックですから10本ぐらいになりますか、これがいま10万円 です。ところがこの10万円のためにトラック代が7万円です。運転手代が1万円です。山 から下ろす代が2万円です。都合1万円の赤です。これを23台出しましたから23万円の 赤字になりました。ところが家をちょっと直していて材が1本足りないので、5,000円近く のヒノキを頼んだら、「お客さん、日本材って高いのですよ。1本5万円です」と言われて、 それからもう出すのをやめてしまいましたけれども。そのようなことが普通に起きている。 ここを直さない限り、実はこの国で育っている木の量と、ある意味、建材で必要になってい る木の量はほぼイコールなのです。それを敢えて、外材に負けるような構造にしながらやっ ているなというのが、正に実感としてあります。地元産業を回ってみると、仕入れ業者から の指示で質の高い商品を安く作るということを一生懸命やっています。ただこれは、市場拡 大期にはそれでも十分よかった、先ほどの繊維もそうです。見込みでどんどん作ったほうが、 余計な調査をしていなくても儲かったのですけれど、それがいよいよ駄目になってきている にもかかわらずそこから抜けられないというのが地元の偽らざる感じです。  変な話ですけれども、生産効率を上げて早く安く大量に作るということは日本のお家芸だ と言われていましたけれども、ほぼこれは中国でできるようになってしまいました。したが って、価格だけで勝負をすると確実に負けるというのが、いま地場でやっている感じです。 中国には勝てない。  それから逆にいうと、お客様は決して安いものだけを求めているのではないというところ を、今回の不況を1年間ずっと追いかけてみても、理由があるものは売れています。とにか く安くなければいけないというわけではなくて、ちゃんとしたものは売れているなというこ とが実感としてあります。  次のページですが、そういうことを踏まえまして、岐阜県として始めておりますのは、や はり雇用というのはそう動かないということも踏まえて、やはり地域経済、雇用の受け皿と しては、パイが大きいのは『製造業』、これは地場産業ですね。それから、『卸売・小売』、 『サービス』ということで、何とかここで高い利益率を確保するというふうに転換できない かと。いま申し上げたように、斜陽産業といわれている地場産業というのは、業種的な問題 以上に、実はこれまでの産業構造の歪みが利益構造を圧迫していると。結果的に若者が就労 できないという構造になっています。よく言われていることですけれど、伝統産業は大体お 年寄りが多いです。そうすると何が起こるかというと、大体生活できればよいという方が多 いです。これは笑い話みたいですけれども、ほぼ社長や皆さんの給料はないです。「何でや っているのですか」というと、「年金と野菜は裏で作っていますからいいです、従業員に払 えればいいです」と言って仕事をしている方が非常に多い。いくら安くても仕事を引き受け てしまうのです。陶磁器のところで調べていて、いかんなと思ったのは、若手がある程度い いものを作って1,000円で売ると、翌週には隣の会社まで「そんなものだったらうちも作れ ます」と800円で作る。更にその翌週には600円で作るということでほぼ自滅の構造にな っているなと。したがっていまこういう不況のときは、仲買が買いたたきにくれば応じてし まうのですね。どうしてもそんなところでは仕事はできないと言って若者が逃げてしまう。 そこからすると新たな販路拡大を求めるとともに、やはりマーケットから円滑な撤退をして もらうということも必要だなということを実感をしています。  そこで今回岐阜県では、緑のところに書きましたけれども、産業構造転換を徹底的にやる ということで、新たなマーケティング手法の確立ということで、インターネットとかセレク トショップを活用して、いままでと違うルートでものを売れということを県を挙げてやって います。具体的には、楽天を使っているのですが。ネットというと皆さんヤフーだと誤解さ れると思いますが、ヤフーと楽天とは全然ビジネスモデルが違いまして、インターネットと いうと皆さんホームページを出して誰かがヒットするだろうと思われるかもしれませんけ れど、楽天はそうではなくて、徹底的に相手にアプローチをしてます。これは自動販売機で はないので、やはりネットを通じた接客業というように、ものすごく手間かかります。ただ 一旦始まると、大変売れていまして、これは冗談みたいですけれども、県庁、これは田んぼ の中にあるのですが、そのすぐ横にあるパン屋さん、これは学校給食のパン屋さんなのです が、ほぼ倒産直前だったのですが、ベーグル、ご存知の方もあると思いますが、それしか作 れないのでお嬢さんが作り始めた。いま月商2,000万円です。これは楽天のアワードを取り ましたけれども、要するに年商に直せば2〜3億円ですね。あまりにも売れるので、今度は 伊勢丹から出店してくれと。これは言ってもいい、エルクアトロギャッツという名前です。 もともとアリス開運堂という普通のパン屋さんだったのですけれども。  これだけかと思ったら県内で結構あります。アパレルでも正に月商3,000万円という、高 山の会社なのですけれども、すべてのクレームをお受けしますということで売り始めて結構 行けている。また、スポーツ用品店、月商1億円。それから学生服でも月商1,000万円で、 これは3カ月で売上が3倍になりました。そういうことが普通にできるのだということをい ま感じ始めていただいておりまして、いま県内、商工会、商工会議所挙げて、何百社単位で 説明会をやっていまして、月当たり20〜30社オープンしています。この間、岐阜県産品展 がありましたけれども、これまで数百万円かけて2,000万円売れればいいというものが、200 万円で8,000万〜1億円売れました。これで、やはりルートを変えると売れるのだというこ とを皆さん実感し始めておられまして、いま説明会をやると500人いつも一杯になってし まうという状況です。  他方で、いま申し上げましたけれども、廃業支援、これは去年の夏全国に先がけてまたや ってみました。これは、始めてみるといろんなことが分かりまして、伝統産業では、辞める に辞められない企業がいかに多いかということですね。特に昨年、不況になったときに貸し 渋り対策ということで政策が打たれました。この結果何が起きたかというと、金融機関の方 がとにかく借りてくれというのが、ちょうど年度末の直前の2月、すごいことが起きました。 これは陶磁器の例なのですが、本当に頼むから借りてくれと言って、お付き合いもあるので。 資金ニーズないのですね、ずっと下がっている業界ですから。取り敢えず借りてどうするか というと、農協に預けるのです。3カ月経ったら農協から下ろして銀行に返す。金利分損す るのですけれども、いま低金利ですからまあいいやということなのですが。この中で、これ は3つの組合から同じことを言われたのですが、「江崎さん、これ危ないですよ」と。何か というと、「やはりこの業界は正にじり貧で、お年寄りも多くてもう駄目だと思っています」 と。今回の不況で、さすがにあの会社とあの会社とあの会社は潰れると思ったところが全部 残っているのです。何かというと、そのお金に手を付けているのです。すると回ってしまう のですね。じゃあいいじゃないかと。確かにあの時期一旦、倒産件数は減りました。ところ が皆さんおっしゃるのは、多分、2回目の借り替えができませんから、この後、目一杯貸し てしまうと4,000万円貸します。4,000万円というのは非常に悪い額なのです。何かという と、いちばん人が死にやすい額なのですね。生命保険で何とかなってしまう。だから、これ から自殺と夜逃げが増えますよと言われて、これはいけないということで始めたのがこの廃 業支援です。それで、もちろんこれには殺到しないと思いましたし、本人からなかなか言っ てこないかなと思ったのですが、ここまででいまのところ20件弱手を付けております。見 事な傾向を示しておりまして、10とすると3割ぐらいは社長が鼻息荒く絶対辞めないと頑 張っている。2割ぐらいは直ちに辞めたほうがいいのでこれは辞める。残りの半分は、みん な辞めたがっているのですが辞められませんと。これは何かというと、想像に難くないと思 いますけれど、連帯保証人に迷惑がかかるからと。したがって会社を続けていなきゃいけな いのです。これが先ほど申し上げたように結構な数あるのです。その結果、つないでなけれ ばいけないので、とにかく仕事はいくらでもいいから受けますという形になりますので、ま すます価格帯を下げてしまうと、正に自滅の構造に拍車をかけているという感じが分かって きました。特に、地場産業の場合、そういうところというのは地元の名士であることが多い ものですから、あまり表立ってやると危いと。非常に残念なことですが、この間、多治見で 東のほうでお二人亡くなられてしまいました。やはり複雑な関係というか、あの人に借りた、 この人に義理があるということで、それだったらやはりということで、老夫婦だったのです が、神奈川のほうに行って、お亡くなりになってしまいました。この方は組合の理事長まで やられた立派な方だったのです。  とにかく、撤退というとすぐ潰す云々となるのですが、そうではなくて、やはり「自宅と メンツを潰さない」ような形でうまく撤退をさせてあげる。特にこういうところで、にっち もさっちもいかなくなったところというのは、息子さんの名前でお金を借りてしまったり、 自分たちも分からなくなってしまうと、信用保証協会というのは絶対これを免除してくれま せんので、息子さんが永久にお金を払い続けるんですね。したがってそういうところは活生 化できないのです。これをやはり撤退させることによって、うまく回すということをいま始 めました。お陰様で大垣共立銀行が賛同してくれまして、この4月から廃業支援融資という 金融商品を作ってくれました。これは名前が非常によくて、「カーテンコール」ということ で、お疲れ様でしたと、もう一度人生をやり直しましょうということで。これは、早く手を 付けると、実は再興処理するとプラスが出るのです。そこで金融商品として成立するのです。 やはりどうしてもお金が、回さなければいけない部分をやればですね。これがある意味、い ちばんの自殺者対策だなということは実感しておりまして、そういったことをやっていけな いかと。  いずれにしても新しい流通ルートを開く。それからやはり、円滑な撤退をすることで、産 業構造が変わる。そうすると利益率の高い地場産業は作れるなと、実はこれは、農業・林業 でも同じことだなというのを感じております。こうした中で、岐阜県としては、成熟した社 会としての制度設計をしたい。特に、高齢化社会と人口減少を前提にする。農業というのは、 変な話、手間がかかるのです。手間かけないようにと行き過ぎるから中国に負けるのです。 そうしたときに、手間かけてもいいという人はたくさんいるのですね。そういう人たちにう まくビジネスをやり、かつ、農協に売ってお終いということではない仕組みをやれば、これ は結構売れる仕組みはできます。  そういうことに向けて、ある意味政策を打ち、頑張ってもらわなければいけないというこ となのですが、12ページに、我々も使わせていただいております雇用対策、そういう方向 でできないかと。ふるさと雇用と緊急雇用があるのですが、緊急雇用は最初は草刈りばかり でした。これではいけないということで今年度から、右下のグラフにありますように、いろ いろ仕組みを変えました。これも自治体の偽わらざるところからすると、手続きに手間かか り過ぎるのです。したがって市町村経由をすると、みんな嫌がるので、去年の夏に岐阜県は もうやめました。全部岐阜県で契約するので、やって欲しいことだけ言えと。商工会議所と やっていたのですが、結構出てくるのです。それから民間に、やって欲しいことを言えと言 ったら、出るわ出るわで、お陰様で先般50億円いただきましたけれども、もう既に行く先 は全部決まりました。  こういう中で、特にご説明したいのは次のページで、特に手間のかかる仕事ということで、 サービス系ですね、ここはやはり移行したいということでやりました。半年以上やってみて、 使った人からの声を調べてきましたけれども、圧倒的に多かったのが、「挨拶ができない。 何とかしてくれ」というのが多かったです。それから、「頑張ってやるという気概がない」 と。「頑張らなければ動けないので辞めてしまう」というのが多くて、「言われたことはでき るけれどもそれ以上を考えてやらない」とか、まあ愴々たるものでした。でした、というの は、半年ぐらいやると何とかなりました。そういう人たちでも、ある意味、企業さんの覚悟 の問題もあるのですけれど、それをやっていくことによって、岐阜駅前のいろいろなサービ ス、これは町づくりにも使わせていただいていますけれど、それなりに何とかなるのだとい うことが、ようやくちょっと出てきました。ただその下にありますように、やはりいま2 つ、緊急雇用とふるさと雇用をやらせていただいていますけれど、やはり期間の問題という のは企業の方から非常に大きかったです。特に、そういう人たちが大半なのですね、実は。 そういう人たちを教育するためには、なかなか組識に入れてやるというのは覚悟がいると。 したがって、相当の訓練もいるし、いい人は短期は嫌だということなので、その辺を何とか してくれないかという議論があります。ちなみに、募集をすると緊急雇用が約2倍の応募が あります。ふるさと雇用が約7倍の応募があります。やはりちゃんと働こうと、その後正式 な仕事に就くということを考えると、やはり仕組みを考えていき、取り敢えずつなげばいい というよりは、そういうふうにちゃんと、先ほどのネットもそうですけれど、接客業をして いくのだというぐらいの方向でやらないと、これからのビジネスコードは変わらないし、そ ういう方向で持っていけば、意外に地場産業も含めて変わるのだということを実感し始めて おります。  ちょっと長くなりましたが、そんなことに向けていま岐阜県は取り組んでいるところでご ざいます。私からは以上でございます。 ○樋口座長 ありがとうございました。それではただいまの報告につきまして、ご意見、ご 質問、お願いいたします。加藤さん。 ○加藤委員 非常に参考になるお話を伺いまして、ありがとうございました。1点だけなの ですが、10ページの資料の中で、さまざまに高い利益率を実現したということで、いろい ろな事例をお話いただいたのですが、この高い利益率は雇用に直接結び付いているのでしょ うか、どうなのでしょうか。その点だけ教えていただければと思います。 ○江崎岐阜県商工労働部長 はい、これはですね、繊維の所がそうなのですけれども、実は 高い利率を上げていたのは息子さんたちなのです。先ほど高いものの例はそうなのですが、 やはりもともと戻りたかったという息子さんが帰ってきています。それから、食品は先ほど 大体お嬢さんと申し上げましたけれども、大体この方も東京から戻ってきています。大体そ のお父さんが行き詰まったので子どもが助ける。それで、先ほどのエルカトルギャッツさん もそうなのですが、最初は弟と二人でやっていたのですが、やはりそこに1日12万通のメ ルマガを出していますので、それをやるために雇用をいま5人まで雇ったと言っていました けれども、みんな若い人です。そういう人たちは、今度は工夫ができるので面白いと言って ですね、どんどん伸びているという感じになっていまして、そこは雇用には直結しています。 ○樋口座長 他にどうでしょうか。1つ教えていただきたいのです。先ほど、新しいビジネ スモデルに展開して、片方でそれができない所は撤退を促進する、こういうリフレッシュと いうか、サイクルは必要だと。片方で、最近の引き上げというのはなかなか雇用を減らすの ではないかというご指摘があったわけですけれども、ある研究だと最近の引き上げがこれを 促進するのではないかと、撤退を増やし、新しいビジネスモデルにどうしても移らざるをえ ないというようなことを促進するという効果を持っているというようなものの指摘がある のですが、その点はどうでしょうか。 ○江崎岐阜県商工労働部長 そうですね、現場の声からすると、最賃を気にする人というの はどちらかというと工場なのです。一般的な地場産業ウケというのはあまり最賃って考えて いないので、したがって、あれが強制されるのでしたら工場を出さなければいけないといっ て、割と中堅から大手の雇用は非常に多いです。ですから、もう現実に先ほどの中国に岐阜 県のための工業団地というのは中堅です。大きい所はもう出る準備をしています。したがっ て、その人たちが出たときに余った人たち、そこであぶれる人たちがどこへ行くかというの はまた別の問題で、経営者は基本的に出ます。ですから、本当に置いていかれた人をまたど うするのかというのは我々の問題になっていて、したがって、行き先があれば、むしろそう いうあまり安い企業は出て行ってもらうというのは1つの判断であるのかもしれませんけ れど、余ってしまったから産業が興るかというとそれは興ない。さっきの話で、結局製造か らあぶれた人は製造にしか行けないので、岐阜県から出るか、生活保護にいってしまってい るだけというのが残念ながら現実で、こういう政策的な、特にふるさと雇用ぐらいでひっか かってきた人が、何とか継続雇用に行けるかなというのがいまのところですが、現実かなと いう感じがします。 ○樋口座長 どうぞ、玄田さん。 ○玄田委員 廃業支援について教えていただきたいのです。大変示唆に富む施策だと思いま した。これは、金融機関の協力を借りえることでビジネスモデルとしてちゃんと定着したと いう話も大変素敵だと思ったのですが、これはどういうふうにしてその金融機関を口説いた のかということがとても知りたくて、さっきの資金に関して本当に余っている状況でよくこ ういう、ある意味では資金のルートがまた1個減るようなことをどうやって口説いたのだろ うかなということが1つと、もう1個、自治体自体がこの廃業支援に関してどういうふうな アクションをとられているのかと、いわゆるそういう廃業を考えている所の相談窓口になる とか、何らかの免除特例措置のようなことを自治体として検討されているのか、その具体的 な取組について少し教えていただければと思います。 ○江崎岐阜県商工労働部長 わかりました。ちょっと端折って説明してしまいましたので、 実は廃業支援の施策は、最初は金融機関は関係がなかったのです。特に廃業を考えている方 のためにということで、まずは中小企業診断士、この方の人権費、それから弁護士の人権費、 ここをまず県で確保しました。したがって、まず相談無料という形にして。ただこれはご案 内のとおり、そういうことを相談しているということ自体がわかるだけでも、やはり風評被 害があるので、岐阜はいささか広いので、東濃の会社には西濃の父なし、西濃の会社には東 濃の師なしという形で、とにかく徹底的に情報を管理せよというのが1つ。それからもう1 つは、やはり本人から言ってくる例はあまりないのです。2件ありましたけれど、大体は業 界団体、それから商工会、商工会議所ということで始めたのですが、なかなか人のことを言 えないのです。それで最終的にどこへ行ったかというと金融機関でありまして、知っている だろうと。そしたら金融機関もさすがに守秘義務があるので言えないと。ただ金融機関から 口説いて本人からOKが出たら言ってこいと言って、それが最初は16件出てきました。潜 在的にいうと100件ぐらいあると言っていましたけれども、ただこの金融機関も単純では ありませんでなかなか協力はしてくれませんでした。その中で県は、雇用を維持するとか、 いまのところ利子補給ぐらいしか県もあまりお金がないものですから、ここについては全額 利子補給するという制度を作ったのです。そうしたらまた、メガバンクも含めて殺到しまし て、もともとそんなに余裕はありませんから、特にもうお客さんに約束してしまったのだか ら何とかしてくれというのが結構きたのです。みんな集めて、県は別にこれは何でもかんで もつなぐわけではないと、廃業支援とセットにして考えているから、これをやりたかったら きちんと考えを持ってこいという話をして、それでいくつか恐る恐る持って来始めていただ いたというのが実際のところです。それで十数件をやってみて、先ほど申し上げた傾向があ ると。それで、年明けの新年の挨拶のときに、金融機関の方もいらっしゃるものですから、 頭取と話をして、実はこういうことをやっているのだと、それで実際に地元を回ってみても 企業さんがおっしゃるのは、ベンチャーだとか新規事業の指南本はいくらでもあるけれども、 会社をたたむという本は見たことがありませんという話をして、そうかもしれないと。金融 機関も勢いがいい所は貸すのだけれども本当は責任があるよねという話になって、これはあ る意味、この大垣共立銀行の頭取のご英断なのですけれど、社長がでは考えましょうと言っ て、まだ他の所は追随してきていませんけれども、ここがそれで3カ月で商品を作ってくれ たと。したがって、まだこれはどれくらいいけているかわかりません。特に金融機関として やる以上は、先ほど申し上げたように、最終的に廃業して黒が出なければいけないのです。 そうしないと商品にならないわけです。これはいまいくつか手掛けていただいていますけれ ど、これ次第でもう少し広がるかどうかというのと、いま我々が狙っているのは、廃業して も決して悪いことではないのだということです。先ほど申し上げたように、よくあるのは、 自宅も何も取ってしまうと、とにかくいまやっているのは自宅の所有権は変わってもいいか ら、自宅に住み続けられるようにすればですね、ああいう終わり方があるのだというのを地 元に見せようではないかと、それができれば畳むことは悪いことではないし、要するに息子 さんとかが場合によってはもう1回仕事ができるかもしれないし、そのノウハウを他の若い 人に伝授してくださいということでいまお願いをしていて、まだ我々も手探りなのですけれ ども、ようやくいくつかの傾向が出てきたかなという、そんな状況です。 ○樋口座長 廃業する企業にお金を貸すというのは、リスクはないわけですよね。これ担保 評価がきちんとできれば。 ○江崎岐阜県商工労働部長 そうです。 ○樋口座長 成長するわけ、成長するかしないかとあれでしかないわけですから。 ○江崎岐阜県商工労働部長 はい、成長する方向のある意味可能性はないのですけれども、 大体ビジネスモデルがおかしくなっている会社でも在庫があるわけですね、在庫があります し、会社の資産もありますし、それを要するに処理するためには一旦換金しなければいけな いのです。その換金をするときに傾くと誰も貸さないので、どんどんおかしくなって、行く ところまで行ってしまうのですけれども。早目にそれを換金し流動化させることができれば、 やはり最終的に黒が出るだろうというところを、ここは金融機関としてのある意味、力なの ですけれども、それを見ながら、これは売れるかどうか、そこまで支援をして金融商品とし て成り立たせるというのがいまのところのモデルです。    ○阿部委員 いまのお話は面白いのですけれども、ただそのときに、雇用があった場合にそ れはどういうふうに対応するのでしょうか。 ○江崎岐阜県商工労働部長 これは実は、我々が手掛けている、キーカさんのほうはまだこ れからなのでわかりませんけれども、やはり他所に逃がしていくというのが1つ。それから 社長さんたちは、お陰様でいまいろいろな政府の支援策がありますので、ここに逃がせるの です。もっと言うと、いま手掛けている所というのは、従業員は4、5人なので、もうあか んなと思っている人も結構多いですし、ある意味他の所が元気になれば動かせますし、しば らくつなぐことができます。そこはその、いきなりそこまで心配をしなくてもいけていると いうか、もっと言うと、明らかにこの後半年引っ張ったら全員、路頭に迷うだろうなという ことはわかっていますから、そういう点ではスピードが命ということです。 ○樋口座長 はい、まだいろいろあるのだと思いますが、時間の関係でこれで江崎商工労働 部長のお話は終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。                   (拍手)                    それでは次に、現在政府で取りまとめています新成長戦略の前提に、JILPTが行った産業 別の労働力需給推計結果について報告をお願いいたします。    ○久古谷JILPT調査・解析部長 JILPTの久古谷です。お手元に資料を3種類準備してい ます。資料2-1、どういうことをやったのか、それで具体的にどういう結果が出たのか書い てあります。本日はこの資料2-1に沿って主に説明したいと思います。ただ、概要だけだと 具体的に何をやったのかがあまりよくわからないので、その辺りをもう少し詳しく書いたの が、資料2-2、及び資料2-3ということになりますので、順次参照する形で説明したいと思 います。  まず最初に資料2-1の頭の方に書いてありますように、この推計につきましては、当機構 の労働力需給推計研究会において行った結果の、いまは試算ということで、しかもここに【暫 定版】というような言葉も書いています。この暫定版という意味は、また後ほどもう少し詳 しくお話ししますが、政府の新成長戦略でいくつか項目があるのですけれども、まだ反映で きていない項目があるので、そういう意味で暫定版と書いています。それで具体的にどうい うことを行ったかについて説明します。1枚めくっていただきまして、まず推計方法の概要 ということで記載しています。いくつか経済的な前提、あるいはモデルの形を決めてそれに 従って計算していくという手順で行っています。まず最初に、経済成長に関しては、新成長 戦略の中期目標である年2%成長というのを前提に置いて計算しています。それと、経済の 支出構造ということでは、項目別の最終支出(GDE)構成を、日本経済研究センターの最 新の予測であります36回の予測をベースに推計しています。また、産業別の具体的な構造 を考える必要があるのですが、基本は、産業連関表ベースの投入係数と最終需要の財構成と いうのを考えています。これにつきましては、そこに書いてあります3種類の推計を試みて います。1つは、2005年の構造がそのまま継続するというケース。もう1つは、もう少し トレンドを使って2000年から2005年のトレンドを反映したらどういう産業構造になるの かという推計を行っています。もう1つは、RAS法という方法を使った推計を行っていま す。RSA法というのは、あまり馴染みでない方もいらっしゃると思うのですけれども、具 体的な方法は、資料2-3の参考4ということで最後のほうに書いてあります。いろいろな行 列の外側を仮定して、中を変化させて外側の構造に合うような形のものを推計するという、 数学的な手法を用いて推計しています。その3種類の方法で産業構造を推計しています。そ れで、推計方法の概要の1番目と2番目の項目を使って、まず基本的な2020年の産業構造 を推計して、それに対して、現在政府の方針として出されています新成長戦略での各重点分 野の要素を加味した形で新成長戦略シナリオというものを考えています。そうやって仮定し た経済の構造を前提にして労働力需要関数というものを考えました。  これぐらいの付加価値を生み出すには就業者が何人ぐらい必要なのか、あるいは、そうい った生産額を生み出すには何人ぐらいの人が必要であるかというようなことが計算できる ような生産関数というものを推計して、そういった経済成長に見合うだけの活動を行うには 各産業ごとにどれぐらいの就業者が必要かを計算しました。最終的には、現在、厚生労働省 のほうでなされています就業率目標(56.9%)、現在の就業率がそのまま続くという仮定の下 で最終的な就業者の人数を考え、その人数に合うように調整した形で計算しております。  具体的に何をやっているかにつきましてもう少し詳しくご説明いたします。次の3ページ が新成長戦略における2020年までの数値目標です。これは簡単に抜粋したのですが、そこ に書いてある各分野ごとに新規市場規模や新規雇用の目標数値が設定されています。ただ、 そのうちでアジアと科学・技術のところがどういう市場構造を仮定しているのかという具体 的な資料がまだ入手できておりませんので、ここの部分には手が付いていないと。そういう 意味で、現在、暫定版ということで計算を行っております。  あともう1つ。今回の推計は市場規模を使っての推計なので、政府の数値目標の新規雇用 3万人という数字を直接使って推計したわけではありません。生産活動に基づいたらこれく らいになるということでやっておりますので、必ずしもこの数字とは合っていない結果には なっています。具体的に新成長戦略のどこの部分をどのように使ったかが次の4ページに書 いてあります。  まず地球温暖化対策で市場規模が45兆円というのと、医療・介護につきましても、市場 規模が45兆円、観光の関係だと、外国人の旅行者の数が2,500万人になるというのに対し まして、関係する業界でどの程度の波及効果を得るかというのも加算していると。あとは食 料自給率の改善ということで、これによって輸入が減って生産が増加するという部分を勘案 したものと、あとはもう1つ、最後に書いてあります農産物関係の輸出増ということで、こ れに伴って生産が増加すると、こういった要素を組み込んでおります。具体的にどのように 組み込んだかに関しましては資料2-2の、3ページ目に書いてありますような形で推計を行 っております。詳しい内容は、説明時間の関係で割愛させていただきます。  そういった仮定を置いて具体的にどういう形になったかというのは、次の5ページにグラ フの形で準備しております。具体的な数字は資料2-2のいちばん最後のページに掲載してお りますが、それをグラフ化したものがその棒グラフです。主な結果としましては、医療・福 祉とかその他の事業サービス、その他の事業サービスは、具体的に言いますと人材派遣業と か警備業とか、そういったものが入っているのですが、そういうところとか輸送用機械器具 製造で増加して卸売・小売とか鉱業・建設業といった分野で減少しているというのが、多少 の差はあるのですが、3種類の推計法のどれを取っても同様の傾向が出ています。これは付 加価値ベースでの結果なのですが、生産ベースでの推計も行っております。それが次のペー ジです。こちらも、傾向的には、付加価値ベースとそれほど大きな差は出ていない結果にな っています。  あとは、最後のページに、具体的にどのような産業連関モデルを考えたのか、あるいは労 働力需要関数を考えたのかを簡単に書いております。産業連関モデルに関しましては、わり とよくあるI−M型の産業連関モデルを考えておりますし、労働力需要関数につきましては、 コブ・ダグラス型生産関数を前提にした形で回帰分析を行う形で推計しております。この辺 り、具体的なものにつきましては、資料2-2、資料2-3に具体的な関数係等は記述しており ますので、またご質問等があれば、そちらの資料に沿った形でご説明したいと思います。私 からは以上です。 ○樋口座長 ご質問もあるかと思いますが、一通り説明を聞いてからご質問いただきたいと 思います。続きまして、厚生労働省が取り組んでいる地域雇用対策について説明をお願いし ます。 ○三浦大臣官房参事官 地域雇用対策ということで、お手元の資料の3に沿いましてご説明 を申し上げたいと思っております。  まず、早速ですが、1ページ目です。地域の雇用失業情勢というところをご覧いただきま すと、平成14年から15年が左端のところですが、雇用情勢が悪化した局面があります。 それから、平成16年以降20年ぐらいまでで雇用情勢がよくなって、全体としてリーマン ショック以来非常に厳しい状況が続いているわけです。下の有効求人倍率の下位の8道県が ありまして、ここの傾向をずっと見てみますと、確かに景気がいいときも景気が悪いときも やはりずっと底這いの状態だということが言えるのではないかと思います。  そこのところを少し詳しく見てみたのが右側のところです。リーマンショックの直前と現 在の比較ということで2ページ目にお示しさせていただいております。具体的には、平成 20年9月にリーマンブラザーズが破綻しまして、これをきっかけに世界的な金融危機が発 生したわけですが、その前後の都道府県別の有効求人倍率ということです。平成20年8月 と平成22年の比較ですが、愛知県が1.64から0.58、群馬県が1.50から0.58ということ で、製業業が集積している地域を中心に有効求人倍率が高かった都県におきまして大幅に低 下しているということです。一方で、沖縄県が0.37から0.30、青森県が0.41から0.32、 秋田県が0.46から0.38と低下はしているものの、低下幅が数字としては少ないので、結果 としてリーマンショックの前後で都道府県別の有効求人倍率の差は少なくなっており、今は もう全国的に一律に雇用情勢が厳しくなっているというような状況です。  次のページです。今日は、主にこの表に沿いまして私どもの地域雇用対策もお話させてい ただければと思っております。地域雇用対策として講じられる施策といいますのは、従来か ら、地域雇用開発促進法に基づきまして、雇用機会の不足している地域におきまして雇用拡 大や就職の促進のための施策を講ずることにより地域的な雇用構造の改善を図ってきたと ころです。それで、どのような地域を対象として設定してどのような支援を行うかというこ とで、経済社会情勢の変化に応じて変遷はしていますが、現在は大きく2つの考え方でやっ ているわけです。それが資料の3ページの上の2つの囲いがあるところです。  1つ目が雇用情勢の特に厳しい地域ということです。雇用開発促進地域に対しては、不足 している雇用機会の量的拡大を図るために求職者の雇入れを伴う事業所の設置設備を支援 するということで、これは従来からやっている施策です。  それから、右側ですが、自ら工夫して自主的、主体的に地域の活性化に取り組む市町村を 政府全体で支援する取組が進められてきた中、ある程度雇用情勢が厳しい地域であって市町 村と地域の関係者の連携により地域の雇用創出に向けた取り組む意欲が高いところ、これを 自発雇用創造地域と言いますが、これを対象に地域資源を活用した産業振興施策とともに連 携した雇用拡大や人材育成などの取組を支援しております。これを平成19年の法律改正の ときからやっております。このように、雇用機会の不足している地域における事業所単位に おける雇用機会の量的拡大から地域の自主性、自立性を重んじまして、地域の関係者の創意 工夫や意欲を活かして将来の雇用の拡大につながるような支援へと発展させたというのが 平成19年の改正です。  それで、地域雇用開発促進法に基づく体系的な支援に加えまして、中段にありますのはそ れ以外。法律によるものではありませんが、主に上の2つ、いま法律に基づく支援は8道県 あるいはその周辺が主体になりますが、さらに中段のところは21道県にやや拡大しまして、 雇用機会の拡大のための支援を強化しているところです。具体的には、左側にあります、地 域における重点分野に該当する事業分野で創業して労働者を雇い入れた事業主に対する支 援。これは地域再生中小企業創業助成金と言っております。右側としまして、今後の雇用が 期待される分野として、いま社会的雇用などということがよく言われていますが、NPOや 社会的企業に対してその雇用管理体制の整備や労働者の雇入れや定着を支援するというこ とで、地域貢献活動支援事業というものをやっているところです。  さらに、昨今のリーマンショック以来の全国的な雇用情勢の急激な悪化を受けまして、3 つほど囲いがあるわけですが、これは(平成23年度末まで)と書いてありますが、これは 全国的に施策を打っているということです。これは地域における雇用の確保ということで、 平成20年度の補正予算以来、ずっと雇用創出の基金事業を創設しているところです。この 基金事業につきましても、雇用情勢の悪化に対応しまして、主として一時的な雇用の場を確 保することを目的とする緊急雇用創出事業、その発展形として介護、農業等、今後の成長分 野での雇用創出や人材育成を目的とする事業が重点分野、雇用創造事業です。さらに、地域 の創意工夫により今後の地域の発展に資するような分野での雇用の創出を目的とする事業 がふるさと雇用再生特別基金事業の両輪で事業を実施しているわけです。  いずれの基金事業につきましても、各自治体におきまして雇用改善をしようという意欲や アイディア雇用という形でつくり出す事業で、厚労省としても力を入れてやっているところ です。このように地域における雇用創出のための施策としましては、雇用情勢の特に厳しい 地域における雇用の量的拡大を図る施策と創意工夫を何とか雇用に結びつけていくという 施策の両面から実施しているところです。  法律の上にありました自発雇用創造地域の中身ですが、6ページをめくっていただきまし て、代表的にわかりやすいところだけをお話させていただきたいと思っております。実は地 域雇用の開発促進法に基づく事業で、(パッケージ事業)と言っております。これは、地域 のご提案や創意工夫で人材育成や就職促進の雇用対策事業を実施していただくもので、地域 の産業振興等の取組と一体となって雇用機会の創出につなげていくものです。これは具体的 には、市町村や商工会議所からなる協議会が実施主体となって第三者委員会の評価を経て人 材育成メニューなどを実施して雇用創出に結びつけるものです。具体的には、次の7ページ で1例だけご紹介させていただきますと、北海道の天塩町。これは稚内のすぐ南の町ですが、 ここは肉牛の飼育事業の規模を拡大するための専門的な人材をこの事業の人材育成メニュ ーで育成しまして、牧場スタッフをたしか14名雇用したり、あるいは、海沿いでシジミの 新しい食品を開発しまして販路開拓の事業を創業されたりで、合計で50名以上、3年間で 雇用を実現したと聞いております。その実施状況ですが、これまでに全国で108の地域に 実施していただいております。これらの地域における3年間の雇用創出目標が、今のところ、 合計で2万7,000人に上っており、各地域で効果的な事業の実施に取り組んでいただいてい るということです。  それから、先ほど最後に申し上げました最近の厳しい雇用情勢を踏まえました施策としま しては、12ページ以降の基金事業のところです。雇用創出基金事業につきましては、大き く分けまして、ふるさと雇用再生特別基金事業、緊急雇用創出事業、重点分野雇用創造事業 と3つの事業があるわけですが、これまで何度かの拡充を経まして、現在、総額で8,500 億円の事業規模で運営させていただいているところです。都道府県につくられた基金を活用 しまして、各自治体で創意工夫をしていただきまして、地元の企業やNPOによる雇用を現 在までに全国で16万人以上生み出しているところです。自治体によりましては、事業アイ ディアを地元企業やNPO法人から公募式に募って事業化している自治体も見られまして、 雇用創出の政策ツールとして定着している制度です。  具体的な事例をご覧いただければイメージが湧くかなと思うのですが、15ページ目です。 最初に申し上げました緊急雇用創出事業のところを見ていただきますと、秋田県のにかほ市 の事例でいきますと、海岸漂着ごみの収集作業で、これが雇用創出30人。それからその横 ですが、埼玉県の、これは荒川べりのブラックバスの外来魚を駆除するということで県内 20カ所でやりまして、この雇用創出数が18名ということです。それからその下にあります ふるさと雇用再生特別基金事業ですが、これは佐賀県の事例で見ますと、シャッター街にな ってしまった鹿島市の中心市街地を活性化するためにまた店舗づくり等々いろいろな新し い動きを始めたということで、これは人数的には少ないのですが、雇用を4名創出したりと いうような事例があります。  ちょっと急ぎ足で恐縮ですが、最後のページにいかせていただきます。今後の地域雇用対 策ということです。現時点において雇用の受け皿の量的拡大という意味でも地域の創意工夫 や意欲を雇用に結びつけていくという意味でも地域における雇用創出のための政策ツール として大きなウエイトを占めています雇用創出基金事業は、雇用情勢に対応した緊急対策と いうことでもあり、平成23年度で終了することになっています。その時点で地域における 雇用情勢が再び地域間格差の拡大するものになっているかどうかということにもよります が、雇用情勢を踏まえつつ、その後の雇用創出施策の在り方を検討していくことが必要です。 この場合に、構造的に雇用機会の不足している地域に対しまして主として企業の設置設備に よります雇用機会の創出を図ってきました今の地域法ですが、この平成19年改正により新 たに加えました地域の創意工夫を雇用に結びつけていくパッケージ事業のような施策をさ らに今後どのように発展させていくか、あるいは地域雇用開発促進法の枠組みについても、 今後の在り方を議論することが必要になってきているのではないかと考えております。さら に、地域の自主性が一層重視されるとともに、新しい雇用などの議論が注目されている中、 地域ごとの成長が見込まれる分野における地域の自主性や創意工夫を活かしました雇用創 出を推進するため、NPOや社会的企業等の活用による雇用創出を含めました地域への支援 の在り方という視点も必要ではないかと考えております。以上を踏まえまして、先生方の忌 憚のないご意見を頂戴できれば幸いです。以上です。 ○樋口座長 ご意見もあれですが、その前にNPOや社会的企業についてということで、新 しい公共についての雇用の現状と課題につきまして、三菱UFJリサーチ&コンサルティン グからご報告をお願いいたします。 ○横山三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 三菱UFJリサーチ&コンサルテ ィングの横山でございます。この研究会でも何度かご議論になりました非営利セクターです とか社会的企業に関して整理をしております。併せて、別途実施しましたNPO法人へのア ンケート調査結果についてもご報告をさせていただきます。  まず、お手元の資料4-1をご覧ください。こちらで非営利セクター・社会的企業の雇用を 中心に整理をしております。我が国の非営利セクター、いろいろな定義で推計されています が、かなり広義、広い範囲で推計したものとして、2004年度ですが、23.8兆円ぐらいだろ うと言われています。これは、日本のGDPの4.8%程度という規模かと思います。  では、どういう分野にそれが広がっているのかと言いますと、次のページです。表の中で 上のほうに付加価値(総)とあります。今のところ、日本で言う法人種別に分割したものに なります。これを見ますと、これはかなり広い範囲で非営利団体を定義していますが、医療 法人が46.2%と非常に大きな割合を占めていると。そのほか、公益法人ですとか社会福祉 法人がウエイトが高いと。一方でNPO法人は、右から2列目ですが、0.5%程度ということ になります。  雇用のほうですが、3ページ目になります。雇用についてもいろいろな推計があるわけで すが、こちらで分野別の構成ということでご紹介をしたいと思います。全体の、こちらの推 計の規模ですと490万人ぐらいになるのですが、そのうち40.7%が保健医療、先ほどの付 加価値の構成からも推察されますが、そのような構成となっています。あるいは社会サービ スが27.6%、合わせて7割程度を占めているというような状況です。  次の4ページ目ですが、非営利セクター、こちらは先ほどの推計と規模が少し違うのです が、国際比較をしたものがあります。日本は、有給の雇用者とボランティアを合わせて全体、 労働力人口に対する比率で4.2%程度とこちらの資料では出ています。これに対して、オラ ンダ、ベルギー、アイルランドといったところでは10%を超えるような比率になっている ということです。  以上が非営利セクター全体の概要なのですが、この中でNPO法人、特定非営利活動法人 について少し整理をさせていただいています。  まず5ページです。NPO法人の数ですが、2009年末で3万8,997ということで、ずっと 伸び続けているという状況です。ただ、毎年の増加数を見ますと、2003年ごろをピークに して減少してきていて、2009年は、2008年に対する増加数ですが、2,700余りということ で、減少傾向が見られるという状況です。  続きまして6ページです。では、そのNPO法人はどういった分野で活動しているのかと いうのを見たものです。こちらは複数回答になっていますので、2つ以上丸を振っていると いうような状況です。右から3列目に赤字で書かせていただいたところが構成比です。多い のが1、2、3という、保険・医療あるいは社会福祉、社会教育、まちづくりの推進、ある いは、真ん中から少し下のところですが、子どもの健全育成を図る活動といったところ、そ れから17号、いわゆる中間支援のような団体のところが多いということです。15号の下か ら3行目ですが、こちらがいわゆる雇用支援のところです。構成比としては2割弱ですが、 最近、2005年から2009年の増加数あるいは増加率で見ますと、非常に高い増加率。152% ということですので、増加率としては雇用支援のところが増えているかなというところです。  続きまして7ページ、3ポツです。では、そのNPO法人の有給職員、ボランティアはど れぐらいいるのだろうかということです。こちらも統計が少し古いのですが、有給職員で約 7.2万人、ボランティアで17.2万人ということです。その以降もNPO法人の数が増えてい ますので、一団体の規模が変わらなければこの2倍ぐらいにはなるのではないか、というこ とが推察されます。8ページがNPO法人の職員の月間給与です。月給ベースで概ね16万円 から17万円ということがわかります。  9ページですが、NPO法人の職員のNPOからの年間収入といったものを見たものがあり ます。大きいところですと、「200万円から300万円未満」が(33%)程度、「100万円から 200万円未満」が(30%)程度ですので、300万円未満が全体の4分の3を占めているという ような状況です。  10ページです。では、NPO法人のスタッフはどれぐらいいるのだろうかと、一団体当た りどれぐらいいるのかを見たものです。有給の職員を見ますと、全体で3.2人、無給職員を 含めた合計ですと、約5人という規模になります。平均で見ますと、人数規模が非常に小さ いということがわかります。  13ページです。NPO法人が行政からの委託収入を受けているかどうかを分野別に見たも のです。それぞれ、分野によって違うのですが、3割から5割程度の団体では行政からの委 託事業の収入を受けているということがわかります。  15ページ、8ポツです。こちらでいくつか雇用支援・就労支援に取り組むNPOの事例を 紹介しております。詳細は割愛いたしますが、いちばん上のところですと文化学習協同ネッ トワーク、三鷹市にある団体です。こちらで不登校の中学校を卒業するようになるとなかな か就労の場がないということから、就労の場をつくっているような事例があります。いずれ も、厚生労働省の若者自立塾事業ですとか政府の関係の事業を併せて受託して実施している ところが多いという状況です。  続きまして18ページです。社会的企業について簡単に整理をしております。ソーシャル ビジネス研究会というところがおよその日本のソーシャルビジネスの市場規模を推計して おり、約2,400億円、雇用規模は約3.2万人ということを出しています。事業規模ですが、 19ページ(2)ですが、5,000万円未満ぐらいの事業規模でほぼ半数ぐらいを占めているとい うことです。その下のグラフですと、事業収入が5割から8割、規模によって違いますが、 事業収入は5割から8割ということがわかります。  20ページ(3)です。事業者の従業員数ですが、上の現在の従業者数というグラフを見ます と、ちょうど50%辺りに線が引かれているのが9人ぐらいまでというところで、10人未満 のところが半分ぐらいを占めているということがよくわかります。  21ページの下のグラフをご覧ください。ソーシャルビジネスの組織形態を見ますと、半 分近くはNPO法人ということですので、先ほどご紹介したNPO法人とかぶってくるとこ ろが多いということがわかるかと思います。  22ページです。こちらでは、英国の社会的企業について簡単に整理をしております。ホ ームページを見ますと、社会的企業は現在6万2,000事業者あって、算出規模で240億ポ ンドと言われています。その中の年間取引額の構成をグラフで見たものがあります。換算レ ートでどれだけかによって違いますが、1億円程度未満ということを見ますと、ほぼ3分の 2を占めている状況です。  22ページの下半分から23ページにかけて、英国の社会的企業に対する施策を整理してい ます。少し紹介しますと、22ページの下ですと、社会的企業の文化の醸成といったこと。 23ページに行きますと、事業における助言、情報提供、支援の実施、それから、資金調達 の障害の除去、それから、社会的企業と政府と連携していくというようなことに支援をして いると。いずれもいろいろな省庁と連携しながら施策を実施しているということがわかりま す。  その英国の社会的企業ですが、どういう現状なのかを見たものが24ページ以降です。ま ず収入構成ですが、収入のおよそ8割以上が事業収入になっていると。ただ、下の表でご覧 いただきますと、交付金・寄付の構成比が2割から、25%から49%ぐらいまでのところが 6割近くを占めているということで、かなり偏りがあるのかなということです。  英国の社会的企業の労働力の現状ですが、25ページになります。文章のところに書いて あるのですが、「全体として47万5,000人ぐらいが社会的企業に雇用されている」とあり ます。ボランティアを含めますと、75万人ぐらいになるということです。  では、どういう分野で社会的企業が活動しているかということですが、26ページをご覧 ください。これを見ますと、全体のほぼ95%が人への支援に関わるものをやっていると。 そのうち、雇用の提供を直接やっているところはそれほど多くなく、「財やサービスの提供 を通じた支援」といった部分が多いかなということです。具体的な活動対象としては、下の グラフにありますが、障がい者、子ども・若年者、中高年齢・低所得者といったところが中 心になっているということです。 27ページには英国の社会的企業の事例をご紹介しております。2つ割愛しますが、真ん中 のThe Big Issueというのは、皆さんもご存じかと思いますが、雑誌を少し低価格で仕入れ て売ることでその収益を得るということです。日本でもやっているかと思います。  28ページではイタリアの社会的協同組合について少し整理をさせていただいています。 イタリアは共同体的な活動が盛んな国ということでご紹介するということです。そのグラフ を見ますと、全体としてその組合数が7,300余りあるということです。タイプAというの がいわゆる社会サービス、健康ですとか社会教育サービスの提供をしているところ、タイプ Bというのがソーシャルインクリュージョン的な話です。  29ページには社会的協同組合の従業員の規模を見たものを整理しております。こちらも やはりそれほど大きな規模ではないのですが、9人ぐらいまでの規模で約4割、20人ぐら いまでいくと、3分の2程度というような規模になるかと思います。ただ、イタリアの場合、 いろいろ歴史的な経緯もあるようで、賃金労働者と言いますか、従業員と位置づけられる人 が多いというのが特徴かと思います。  最後に、31ページからになりますが、国民のボランティアあるいは寄付の状況を整理し ております。ボランティアの活動の参加率、参加したことがあるかという問いの答ですが、 2006年ですと、26.2%となっています。それに参加した人が年間どれぐらいの時間ボラン ティアに参加しているかというのがおよそ144時間という結果です。  32ページがボランティアの規模を見たものです。これはどういう推計によるかによるの ですが、いわゆるスペシャリスト法と言われる方法ですと、およそ7兆円になるのかなと。 GDPに対して1.4%程度ということです。分野をそちらの下にグラフで示しておりますが、 「文化・レクリェーション」、「開発・住宅」、地域活動ですね、それから、「教育・研究」と いったところが多いかなということです。  我が国の寄付の規模ですが、34ページをご覧ください。最近話題になっている部分です が、こちらも推計によってかなり洞見しますが、諸外国と比べますと、アメリカ、イギリス と比べたところですが、特に個人の寄付の規模が小さいということになります。下に、これ は日本がないのですが、米国ですと、個人の寄付の対名目GDP比が1.7%ぐらいですが、 日本ですと非常に小さいと、桁が違うというような状況です。  35ページからは公契約に関する動きを少し整理しております。例えば千葉県野田市の公 契約条例が制定されましたが、こちらでは公共事業等の事業を出すときに低価格入札のよう なものに対応するということから、最低賃金を上回るような賃金を設定して、それ以上の価 格で出すというような条例の制定を出しているというところです。  最後の37ページでは、こちらも最近ニュースになりましたが、ワーク・ライフ・バラン スを公共調達に織り込むということで。実際、内閣府からの調査関係の公示の中でも、下の 四角にありますが、女性の雇用率的な話ですとかワーク・ライフ・バランス的な話を1つの 要件にしているようなものが出てきています。  続きまして4-2です。こちらは非営利法人、具体的にはNPO法人になりますが、非営利 法人の雇用の在り方を見ようということで、アンケート調査をNPO法人にさせていただい ております。少しご紹介しますと、下の分析を見ていただくときに軸となるものを設定して おります。全体としては、有料・有償で社会的なサービスを提供する事業型のNPOと寄付 やボランティアを中心に政策提言や主義主張型の活動をするという、アドボカシー型という、 大きく2つ分けているのですが、その中から介護保険を使っているような事業者も多いだろ うということから、事業型の中から介護型を別掲しています。なお、中間型は、参照という ことでご理解ください。  資料の6ページです。『介護型』、『事業型』あるいは『アドボカシー型』といったそれぞ れのNPO法人がどういう財源構成になっているかを見たものです。介護型ですと、6割ぐ らいが「自主事業」です。事業型になりますと、「会費あるいは小口の寄付」、「自主事業」 ですとか「行政からの委託」といったいろいろな財源からなっています。アドボカシー型で すと、「会費や小口の寄付が中心」になっている、ということが現状として見て取れます。 一方で、今後どういう財源構成を目指しますかという問いに対しては、多くは「自主事業が 中心です」と回答している状況です。  6ページに年間収入を見たものがあります。介護型ですと、約1,000万円から3,000万円、 あるいは3,000万円から1億円程度といったところが多い。一方でアドボカシー型になりま すと、100万円未満といったところがいちばん多い状況で、規模としては、かなり小さい団 体が多いということがわかります。  1ページ飛びまして9ページです。NPO法人の中の有給職員とボランティアの構成を見 たものです。これも、どういう職員あるいはボランティアが中心ですかという問いに対して 答を見たものです。  まず介護型ですと、「有給職員を中心」、あるいは「有給職員のみ」といったところがかな りの割合を占めます。事業型ですといろいろ分かれるのですが、アドボカシー型ですと、「ボ ランティアのみ」といったところが7割程度、それにボランティア中心を含めますと、90 何パーセントになるというところです。一方で、図表11ですが、今後どういう構成を目指 しますかとなりますと、やはり有給職員の割合を少し増やしていくという考えが見られると いうところです。  11ページです。正規職員、非正規職員の人数を見たものです。正規職員の人数を見ます と、この真っ黒で塗った所が0人というところです。正規職員が0人の場合は、当然、非正 規職員がいる、あるいはボランティアがいるということになるわけですが、事業型あるいは アドボカシー型ですと、0人のところが多く、介護型になりますと、5人から9人、あるい は10人以上のところが少しあるという状況です。  12ポツ、13ページです。こちらで正規職員の年間収入の状況を見ております。中ほど、 50%程度を挟んで、左側がちょうど200から250万円未満といったところです。300万円 までいきますと、ほぼ7割で、7割程度が300万円未満というところです。では、今後の職 員の生活の安定などから望ましいと考える水準はどれぐらいかと聞いたものが下の図表17 なのですが、300万円以上と答えたのが8割以上と。20%のラインより右が300万円以上 になります。あと、60%のラインより右、40%部分が400万円以上と答えています。  17ページです。では、NPO法人に対して過去に有給職員の雇用の安定が高まった時期が ありますかというような問いをしております。それを見ますと、事業型あるいはアドボカシ ー型ですと、その飛び出た棒グラフですが、そちらのところが、それまでに雇用の安定が高 まったようなことはないと答えています。アドボカシー型ですと、それが9割近くに達して いるという状況です。介護型ですと、4割近くは、これまでに有給職員の人数が増えたとか、 年間収入が増えた、あるいは非正規の有給職員を正規の有給職員に転換したことがある、と いうようなところがそれぞれ4割程度あるというような状況です。  では、その有給職員の雇用の安定が高まったのはどういう要因ですかと聞いたものが18 ページ以降です。19ページのグラフをご覧いただきながら説明したいと思います。50%の 所に線を引かせていただいております。  多く見られるのが、その中ほど、下の所にありますが、「既存の事業規模を拡大させたた め」。それから、もう少し下の所ですが、「専門的な知識やスキルを持つ有給職員を採用・確 保することができた」と。規模を拡大し、スキルの高い人を確保できたところであると雇用 の安定が図られると。どちらが先かわからないところはありますが、そういう状況です。タ イプによっても少し違うのです。「事業収入が増加したため」あるいは「事業収入が安定し ているため」というところが介護のタイプで出てきているとか、「行政からの委託事業ある いは補助金、助成金が増加したため」といったところが雇用の安定に寄与していると。いず れも、行政からの収入といったものが重要な要素を占めているということがわかります。  24ページです。事業運営が安定しているかというところです。立上げの時期は「概ね円 滑であった」と言っているのですが、現状の事業運営の安定ですと、半分ぐらいは安定して いるけれども、半分ぐらいはあまり安定していないというようなことになっています。  28ページになります。現在の事業を安定的に運営するための課題や鍵ということで整理 をしております。こちらを見ますと、いちばん上の「法人の活動内容の周知や利用者の理解 の向上」といったところ、あるいは、少し下の所で「日常業務に必要な運転資金の容易な確 保・調達」といったところ、それから、下のほうにもありますが、「専門的なスキルを持っ た人を確保できる」といったところが出ているかと思います。  資料4-3は割愛させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。大変失 礼いたしました。 ○樋口座長 ありがとうございます。それでは、順番は問いませんので、どなたからでもご 質問、ご意見がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。 ○鶴委員 地域における雇用の創出という資料をご説明していただきまして、15ページで 新事業の取組の例ということで教えていただきました。そして、このような公的雇用の問題 点というのは、このような職に一度テンポラリーに就いたあと、どうしてもその財源が切ら れるので、そこでずっと働き続けるのはなかなか難しい。そうした場合に、そこでの経験が その人が次に職を得るために非常に役立つかどうか。そこでのスキルが役に立つかというの はやはり非常に大きなポイントになってくるのだと思うのです。  例えば緊急雇用創出事業という所を見ると、なかなか。確かにゴミの集収とかブラックバ スを駆除するとか、やはり非常に重要なことであるし、政府がそのお金を補助してやるべき だと。それは確かにそうなのですが、そこでのスキルが次に何か非常に役立つかと言うと、 なかなか難しいのかもしれない。  一方、下のふるさと雇用再生特別基金事業などを見ますと、若干、もう少しここで書かれ ていることを見ますと。例えば岩手県の農林・水産関係雇用創出50人と出ていますが、こ のような事業に何らかの形で運良く携わることができたら、たぶんその経験がその後のあれ にもかなり活かされていくのではないのかなという感じはするわけですよね。そうすると、 せっかく政府がそれなりのお金を出す場合には、その人がそのあとわりと安定的な雇用に就 けるようなスキルを得られるようなものというのをもう少し何か考えると、わりと効率的な 使い方ができるのではないか。  当然、そうは言っても、失業している人を何とか雇用に就けさせるためにはなかなかそう 悠長なことは言っていられない、だから、その緊急雇用創出事業というのはあるのだと。そ の役割は、私は非常にわかるのです。ただ、どうしてもそのあとのことを考えないと雇用創 出の問題はなかなか解決していかないのかなということで、その辺はどのような重点配分み たいなことを考えていらっしゃるのか、教えていただければと思います。 ○三浦大臣官房参事官 配分ということで答えさせていただきます。緊急雇用の基金といい ますのは、実は今回、平成11年の補正のときと平成13年、14年と非常に厳しいときにこ ういった、いま、非常に期間が短いということでやらせていただいております。このふるさ と雇用再生特別基金事業といいますのは、これはまさに平成20年度の第2次補正で初めて 考え出したもので、いままさに先生がおっしゃったようなご意見もあったものですから、と にかく緊急はつなぎの雇用で、とにかく失業者を救うという発想でやっております。それで、 ふるさとは3年間ということで、つなぎというよりも継続ができるような事業をお願いして 事業をやっておりますので、観点としては、もちろんそちらのほうが望ましいですし、その ような事業がいいのかなと思います。  ちなみに、もう1つの事例で挙げさせていただいております、17ページの少し前の所で 挙げておりますが、パッケージ事業などは、これもやはり3年間の雇用なのですが、人材育 成ということでいろいろなセミナーを受けていただいて、そこでスキルを身につけていただ くというようなことで。天塩町でやっておりますような肉牛の。これは牧場のスタッフその ものがやはり10名以上しっかりと。これはおそらく定着するだろうということでやってお ります。こういったメニューも今後重要になってくるかなとは思っております。よろしいで すか。 ○鶴委員 ありがとうございます。 ○江崎岐阜県商工労働部長 現場から今のご質問に対してお答をさせていただきます。岐阜 県ですが、15ページに岐阜県の例も挙げていただいております。実は、先ほどご紹介した のはここです。やはりふるさと雇用のほうが圧倒的に人気があり、きちんと人が育てられる ということで、これは非常に人気があります。  他方で、では、緊急雇用で全くつながっていないかと言うと、調べてきました。いくつか あります。どういうものが多いかと言うと、まちづくり活性化ということで、街の商店街の 応援をしたり、接客業で何かいろいろ情報を提供したり。これは、最終的に雇用されたとい うのは半分ぐらい出はじめています。ただほかは実際、まさに先生ご指摘のとおりやはり草 刈・掃除型が非常に大きいのです。  いま岐阜県でいろいろやらせていただいて1つ思っておりますのは、緊急雇用もそうなの ですが、実は地方都市でいちばん大きいのはやはり建設業なのです。今のように金の切れ目 が縁の切れ目というのはそうなのですが、建設業の場合その人そのものが雇用につながるの もありますし、せっかく草刈りをやっても、また草は生えてくるのです。今は、どちらかと 言うと農業に行けとか林業に行けとか、やや乱暴な議論があるのです。実は、建設業のビジ ネスモデルというのはものすごく借金して、ものすごく儲けて、一気にひっくり返すと。そ ういうビジネスモデルの人は、やはり農業のような地道なことはできないのです。  他方で、農業の場合は、先ほど申し上げたように、高齢者を中心にやりたい人は多いので す。岐阜県の場合は耕作放棄地がすごくたくさんあるのですが、ここを要するに重機を使っ て、これは公共事業ではありませんから、耕作できるようにできないかと画策をしたのです。 実はこれ、緊急雇用のあれで半分人件費というのがありまして重機を使うと、重機は高いの です。ですから、重機を除いて半分が人件費になればやった作業自体が次の雇用につながる かなというのは、正直感じております。  特に地方の場合、いま建設業が廃業になって、重機は手放すのです。そうすると何が起こ るかと言うと除雪とか災害時に、地元に重機がないというのは非常に危険な状態です。そう いう意味では、建設業を維持すると同時に、彼らがやった作業で次の雇用につながるという ものを、この緊急雇用のやり方として入れていけると現場としてはいいかなという感じがし ています。  それから先ほどの教育のほうは、実は介護がそうです。介護はやはりレベルが相当高くな いと入れません。したがって今回重点のところは、いま人が相当来ていますが、これはみな 勉強してもらっています。その結果として行くという、やはりその業種と何かをターゲット にしたお金の使い方があると、現場としてはその次につながるかなという感じがしています。 ○鶴委員 ありがとうございます。 ○佐藤委員 最後、非営利セクター、社会的企業の雇用就業のところで、たぶん新しい公共 ということで、この分野が新しい雇用機会とか就業機会、もう1つ社会的な新しい社会をつ くっていくことは大事だと取り上げられていると思うのです。  ただ、社会的企業と言ったときは、営利セクターも入るわけですよね。前のほうは非営利 セクターということで、そういう意味で全部が少しずつ重なっている。ですから例えば介護 分野だと、非営利と言うと社会福祉法人ということになるのですが、実際上社会的企業と言 うと、営利でもそういう事業をやっているというのも入ると思うので、この辺、どのように 考えていくかというので、雇用就業機会とか社会的な役割・機能でいくのか法人の性格みた いなところでいくのか、少し整理していただいたほうがいいかなということだけです。これ から議論をしていく上でどうするのかと、そのことだけです。 ○樋口座長 何かございますか。 ○横山三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 まさにおっしゃるとおりなので すが、やはりなかなか難しい部分があるのかなと感じています。 ○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。 ○小杉委員 では、1ついいですか。 ○樋口座長 どうぞ。 ○小杉委員 今の社会的企業の件なのですが、これ人についてもあまりどんな人がという調 査はあまり書いていなかったのでしょうか。と申しますのも、社会的企業に参加する人には 年金があって、生活は何とかなるからというようなタイプの人と、家族として税金がかから ない範囲だけで働くというタイプの人と、それで生計を立てていこうという人と、いろいろ な人が混ざっていると思うのですが、それで生計を立てていこうという人の場合がこの300 万円に達しないような状態の中で非常に難しくて。そういう年齢とか、要するに、個人のキ ャリアの中でどの位置にあるかということが大事だと思うのです。そういう情報がないかと いうのが1つ。  私がいつかヒアリングをした中では、そういう若い人の場合には、やはりここでやった経 験がほかで評価されないということが非常に問題で、本人としてはかなり一生懸命にいろい ろなことをしているのですが、それが次の雇用のチャンスにはつながっていかない。つまり キャリア、よく言われていることが、こういう業界だと男性の結婚退職と言われているので すが、これでは食べていけなくなるから辞めるのですが、辞めてそのあと次の職場を探す、 雇用される職場を探そうというときに、民間企業で勤めてきたのではない、こういう社会的 企業でやってきた人は、やってきたことが評価されないわけです、つまり、キャリアとして つながらない、デッドエンドのキャリアになってしまっているというのが大変問題だと思う のです。何かここの中で本人のキャリアというか、どんなタイプの人がとかそんな情報が少 しでもわかると、その辺の問題点が浮彫になっていいのではないかと思うのです。 ○横山三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 すみません、なかなか答えにく いというか、なかなかないのかなと思います。この事業でインタビューをさせていただいた のですが、やはり社会的企業、基本的に項目が拡大してくるのはむしろ民間部分の営利企業 のほうからの拡大で、それが社会的なところを目的にしながら拡大してくるというか、だん だんニーズを満たしてくると。一方でいまあるNPO法人、もちろんそれも一緒になるので しょうけれども、残る部分は当然あるというようなご認識をされていたと思います。ですか ら、むしろ今の非営利セクターから広がってくるというよりは営利セクターから広がってく るというような動きなのかなということをおっしゃっていました。 ○樋口座長 今の関連で。 ○駒村委員 資料3の所ですが、16ページの都市部から地方へ紹介すると、有利な人材を 地方にも紹介する。活性化するという趣旨はよくわかるのですが、一方では、資料を見せて いただくと、リーマンショック前ですが、有効求人倍率にかなりの地域間の差があるわけで すよね。これはやはり政策としては、この逆というのはやはり考えてはいけない政策なので しょうか。ここだけ教えてください、そこは絶対に考えてはいけない政策なのか、人の逆の 移動については政府は何か絡んでいるのかどうなのか。 ○樋口座長 お願いします。 ○三浦大臣官房参事官 16ページの所に出させていただいているのは友愛タウン対策です。 これは簡単に申し上げますと、通常ハローワークなどでも求人を。例えば、卒業したての方 が田舎に帰りたいということでハローワークに行けば、公益で紹介すれば、自分の行きたい 所の就職先がわかるわけです。それに加えて、行きたい所がいま、例えば住宅がどれぐらい の値段のものがあるかとか、生活情報と言うのですか、スーパーがどこにあって交通情報が どこになっているかとか、そういう自治体の情報とうまくマッチすれば友愛タウンも人がも う少し、ニーズが引き出せてできるのではないかということで、いろいろな支援コーナーと いうのを設けまして、6カ所ほどでやっているわけです。  施策としてどうなのかなということになると、では、地方の方がどう考えているかという ことからお話したほうが早いのかなと思うのですが。これはあくまでも最近、自治体の方か ら直接聞いた、九州なのですが、やはり日本の端のほうの自治体の方々は、少なくとも友愛 タウン対策は是非是非充実させてくれという声があったのは、これは間違いのないことで、 やはり結構根強い需要があるのかなと。我々としては、いまこういう形でお答をしていると いうことです。 ○小川雇用政策課長 若干補足すると、要するに、駒村先生がおっしゃるように、人が余っ ている所から大変な所に持っていくという話ですよね。ですから、それはまさにハローワー クの全国ネットワークの1つの効果なわけです。例えば沖縄とか、どこでもいいのですが、 そういう所に東京とか何かの求人を出して、もしくは愛知の求人を出して。そうしたら、そ の企業の人事担当者がそのハローワークに行って、その出張選考というか、管理選考すると いうようなことをやっているわけです。そういう意味では、ハローワークのネットワークを 通じて、余っている所から足りない所にという労働移動は当然あるということです。 ○樋口座長 ただ、それはかなり議論のあるところで、実態として、都道府県の移動が最近 減っている。むしろ都道府県内の、近隣の市町村内における移動が高まっている。それはや はり少子・高齢化で長男・長女ということになって、地元への指向がすごく強まっていると。 統計で見るとそうなっているので、人を必要としている所に移動するというものと現実のと ころは必ずしもうまくマッチしていないという感じはします。 ○江崎岐阜県商工労働部長 現場から少し補足させていただきます。冒頭のご質問にありま したように、実はこの友愛タウンの議論は有効求人倍率はたぶん関係ないです。要するに、 求めている人材の質が違うので、何でもいいから仕事が欲しいというのと、やはり企業が求 めるのはそれなりに活躍できる人で、東京に行ってしまっている人を何とか欲しいと。これ は根強くありますので、たぶんこれは意味があるのだろうと思います。  それから、いま座長がおっしゃったように、地元でどう動いているかと言うと、おっしゃ るとおり、確かに地元指向はあるのですが、本当に通える範囲になければ、その隣の市に行 くのではなくて、一気に名古屋とか東京に飛びます。ですから、通えるか通えないかで一気 にこの動きが違うかなと。中でぐるぐる回るというのは実際にはあまりないというのが岐阜 の場合の状況です。 ○樋口座長 私が言ったのは、中で動くというのは、家を親の近くに求めて、就業先を移動 するのではなくて、独立して住む。東京に行くというのではなくて、その地区で親が金を出 して住まわせているということです。 ○江崎岐阜県商工労働部長 失礼しました。そうですね。そういう意味からすると実は、若 者の動きを我々はフォローしているとどうなるかと言うと、やはり職場なのです。仕事があ るかないかがほぼ9割方の理由になっていて、教育環境がいいとか何とかはありますが、や はり働く場所が前提でいま動いているなというのが正直なところです。あればおっしゃると おり、親のそばがいいというのは、まさにそのとおりだと思います。 ○樋口座長 ほかにどうでしょうか。 白木委員 資料4のほうですが、今日はNPOの雇用についてのお話ですから、その組織し ている人たちのキャリアはどうなっているのかなというのは関心があります。と言いますの は、私とは直接は関係ないのですが、ものすごくビジネス精神のあるのがそこに入っている のがいるのです。邪道なのですが、それは創業しやすいからそこに入ったというのも結構い るわけです。ですから、そこで創業して立ち上げていろいろ動かしていくというのは、民間 企業でも十分通用するスキルだと思うのです。その人たちを無理矢理民間に連れてくるとい うのは、もともと目的が違うのだから目的外使用みたいな感じになってしまうかもしれない です。そういうキャリア上のパスがどうなっているかというのもたぶんここで調査されヒア リングなどで出てきたのかなという感じがするのですが、わかりましたら教えていただけれ ばと思います。 ○横山三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 直接にはなかなかお答えしづら い部分がありますが、いろいろお聞きすると、例えば阪神大震災のときにいろいろ法人同士 のネットワークが出来たとか、それがやはり今の人脈になっていて広がっているとかという ことはお聞きしています。  それからもう1つ言われるのが、いま高齢化が進んでいて、要は若い次の次の世代なのか もしれませんが、創業してひとりで頑張ってきたのだけれども、それを組織として次にどう つなげていくか、事業をどうつなげていくかが課題だというところは、経営者という意味で は聞いている課題になるかと思います。すみません、キャリアについては存じていないので すが。 ○樋口座長 よろしいですか。時間もまいりましたので、議論も尽きないと思いますが、今 回はここまでとさせていただきたいと思います。次回は、労働市場から見た産業社会の在り 方というテーマで議論を深めたいと思います。事務局から何かありますか。 ○平嶋雇用政策課長補佐 次回、第7回の研究会は、5月14日午後5時からこちらの省議 室で開催することとしております。ご案内は後日お送りいたします。今後のスケジュールに ついては資料5をご参照ください。 ○樋口座長 本日は以上で終了します。どうもありがとうございました。 照会先 厚生労働省職業安定局雇用政策課雇用政策係  〒100−8916 東京都千代田区霞が関1−2−2  電話 03−5253−1111(内線:5732)