10/04/09 第8回ナショナルミニマム研究会議事録 ナショナルミニマム研究会(第8回)議事録 1.日時 平成22年4月9日(金)17:30〜19:00 2.場所 厚生労働省 省議室(9階) 3.出席者 雨宮委員、岩田委員、貝塚委員、菊池委員、駒村委員、神野委員、竹下委員、橘木 委員、長妻厚生労働大臣、山井大臣政務官、清水社会・援護局長、間杉政策統括官(社 会保障担当)、三石社会・援護局保護課長、伊奈川参事官(社会保障担当) 4.議事内容 ○伊奈川参事官 事務局でございます。ほぼ定刻で、大体先生方おそろいになって、ちょっとま だ遅れておられる先生おられますけれども、始めさせていただければと思います。  ただ今から、ナショナルミニマム研究会の第8回の会合を開催いたします。  参加者の先生方におかれましては、いつもお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとう ございます。  本日は長妻厚生労働大臣、出席いただいておりますので、最初に大臣のほうから挨拶をいただ きたいと思います。  大臣、よろしくお願いいたします。 ○長妻大臣 今日も第8回目ということで、いつもいつも本当にお忙しい中、長時間ご議論をい ただきまして、心より感謝をいたします。  前回は神野先生や橘木先生からご示唆をいただきまして、大変参考となりました。これまで5 回にわたって、皆様からナショナルミニマムの在り方についてお伺いして、検討していただいた ところでありますけれども、本日は生活保護世帯の実態に関する新たな調査結果も報告させてい ただくということで、本当にこれもご尽力いただいた皆様にも感謝を申し上げるところでありま す。  今、国会でも、ときどきナショナルミニマム研究会の話題が出るようになってまいりまして、 大変この注目度も高まっておりますので、ぜひ皆様方の今後ともご指導賜りますよう、よろしく お願いをいたします。どうもありがとうございます。 ○伊奈川参事官 ありがとうございました。  カメラのほうはここまでとなっておりますので、退室をお願いいたしたいと思います。その後 議事を始めますので、しばらくお待ちください。 (カメラ退室) ○伊奈川参事官 そういたしましたら、これから本日の議題に入りたいと思います。  本日でございますけれども、大きく2つございます。1つは、お手元の資料にもございますけ れども、これまでのナショナルミニマム研究会における各委員からの主な意見についてというこ とでございます。こちらについては、後ほど私のほうから簡単に紹介をさせていただきたいと思 います。  その後でございますけれども、生活保護の関係につきまして、前回説明ができませんでした宿 題事項、そしてそれ以外に新しく幾つか調査の結果が出ておりますので、それについて説明をさ せていただきたいと思います。  ということで、かなり盛りだくさんになっておりますので、大きく2つに分かれるかと思いま す。各委員からの主な意見を半分ぐらいの時間を割いてご議論いただければというふうに考えて おります。  早速でございますけれども、私のほうから、簡単に資料1の各委員からの主な意見について紹 介をさせていただきたいと思います。  これは、大臣からも話がありましたように、これまでの先生方のご意見、そしてまた発表の中 のエッセンスと思われる点につきまして、私ども事務局のほうで整理をさせていただいたもので ございます。  大きく、これ、パラパラとめくっていただきますと、一つはナショナルミニマムの歴史的経緯 から始まりまして、構造、そしてナショナルミニマムの保障に係る施策、そしてその保障責任、 特に国と地方の関係、そして貧困、格差等の概念・指標、さらに最後に、貧困・格差是正と経済 成長という構成をとりあえずさせていただいております。  最初のナショナルミニマムの歴史的な経緯でございます。これは、前回のお2人の先生からの 発表の際にもあったものでございますけれども、特にナショナルミニマムに関しましては、イギ リスの救貧法以来の歴史の中で、例えばベヴァリッジの前のウェッブ夫妻なんかがこのナショナ ルミニマムということについて議論を展開したと。そして、その後、ベヴァリッジのいろいろな 提言といったようなものにつながっていくということで、現在でも5番目の項番に書いてござい ますけれども、ベヴァリッジの考え方というのは、この均一拠出・均一給付といったようなこと で、ナショナルミニマムということにも非常に深い関係のある社会保険制度の考え方が提示をさ れていると。  それに対しまして、現在においてもビスマルク型のドイツ的な比例拠出・比例給付といったよ うな社会保険制度もあるということでございます。  6番目のところにありますように、我が国おいては、ナショナルミニマムに関しては、憲法25 条の「健康で文化的な最低限度の生活」といったことで、この中でも特に生活保護の基準という ことをめぐっていろいろな議論が展開されてきておりますけれども、その最低生活費ということ に関しては、生活保護の基準というものが実際上それを規定してくるということで、国会、裁判 所という中の議論の中では、具体的な内容については確定したことはないといったようなご意見 でございます。  2枚目でございます。ナショナルミニマムの基準ということであります。ナショナルミニマム の基準に関しましては、最低生活費ということに関して、だれでも該当する水準ということでは なくて、それ以下での生活を社会が容認しないという水準という考え方でございます。  ただ、重い障害とか居住地域の特殊性といったような特殊要因は、このナショナルミニマムの 上乗せという形で考慮されるべきということであります。  そして、低所得者の家計支出を見る場合には、低所得者に支出抑制がかかるといったことで、 単に支出だけではなくて、家計構造、消費内容、生活実態等の分析が必要ということであります。  最低生活費の算定方法については、マーケットバスケット方式の改良型、あるいはそういった 手法を複合化するということについて関心が高まっているといったような点がございました。  10番目の項番でありますけれども、生存権の憲法25条の基準でありますけれども、これは27条 勤労権といったような点も踏まえれば、本来労働によって維持されるべきものと考えられるので はないかというようなご意見であります。  そして、ナショナルミニマムと憲法25条との関連については、社会保障法学の有力説では、1 項2項分離説ということを前提として、このナショナルミニマムについては、1項の規範内容の 実現として理解されているといったようなご意見がございました。  次のナショナルミニマムの構造でありますけれども、このナショナルミニマムについて、生活 構造というものについては、通常消費する財やサービスに加えて、住居、耐久財、貯金、社会や 市場との関わりにおける慣習・様式などからなっており、ナショナルミニマムを最低生活のニー ズの充足と考えると、最低生活費は無償で供給される社会サービスを除いた部分となるといった ようなご意見でございます。  13番目であります。現在、日本におけるナショナルミニマムは、最低生活費に加えて、共同生 活環境を考慮した政策公準ととらえられるのではないかといったご意見がございます。  1枚めくっていただきますと、14番目であります。特に医療等の社会サービス給付につきまし ては、施設の設置・運営基準等のミニマムということだけではなくて、むしろオプティマムとい った最適基準が保障されるというものであるというご意見であります。  ナショナルミニマムの保障に係る施策に関しましては、15番目でありますけれども、現在の非 正規労働者の増加等によりまして、社会保障の網の目が粗くなるとともに、そこから落ちた人を 行政が把握できなくなっているといったようなご意見がございまして、そういった点で制度の再 設計が必要であるというご意見であります。  次であります。生活保護制度につきましては、貧困削減策としての効率性は高いけれども、貧 困削減自体には余り寄与できていない可能性があるということで、公的年金制度が高齢者層の貧 困削減に重要な役割を担っているのではないかという点であります。  17番目であります。所得基準で見た生活保護の捕捉率は全体的には低いが、その中でも地域間 で安定的な差がある可能性があるというご意見であります。  18番目、ケースワーカーの関係であります。ケースワーカーに聞きますと、生活保護水準が高 過ぎるといったような評価があるからといって、安直に高いという議論にはならないけれども、 なぜ現場でそういうように思われているのかについて考えないといけないというご意見でありま す。  同じく、ケースワーカーの関係でありますけれども、過度の負担がかかっているんではないか と。その結果として、専門性、経験・知識が劣化しているというような点であります。  20番目です。生活を保障するという思想から脱却をして、就労支援のような要素を組み込んだ 考え方を基礎としたほうがいいんではないかということであります。  次のページになります、21番目。ナショナルミニマム、イコール生活保護ということではなく て、労働による生活保障、社会保険の適用拡大、住宅手当や家族手当、さらに「第2のセーフテ ィネット」、最低保障年金、給付付き税額控除など、生活保護に至る前の段階の施策の充実が重 要という点であります。  次の22、フレクシキュリティといったような考え方に基づきまして、生活保護と雇用保険の間 に失業扶助のような訓練付き手当を導入をして、流動性はあるが資格や経験が生かされる専門的 な労働市場を確立すべきという意見であります。  23、社会保険のアクセス保障の観点から、社会保険料体系を応能負担型にして、低所得者に対 しては税財源で補助するやり方が考えられるのではないかという意見であります。  24、貧しい人だけに限って現金給付を行うと、かえって格差が拡大するという「再分配のパラ ドックス」が存在しているという学説があると。また、サービス給付には不正受給が生じにくい というメリットもあるため、現金給付よりサービス給付を重視するべきではないかという意見で あります。  25番、福祉分野では成果がはかり難いが、これまでは何をどれだけ投入するかというインプッ トの量だけを見てきており、今後は政策のアウトプットの測定方法を検討してもらいたいという 意見であります。  次の、ナショナルミニマムの保障責任、国と地方の関係であります。26は、社会保障に関しま して、中央政府、地方政府、そして社会保障基金政府というふうに分けた場合に、中央政府は狭 義の最低生活費を直接保障することに加えて、主に対人社会サービスを提供する地方政府や、主 に賃金補償を提供する社会保障基金政府の役割についても、国としてのミニマムを規定をして、 地方政府や社会保障基金政府がミニマムの基準を満たしていない場合は、中央政府が最後保障す る責任を有しているというご意見であります。  27、ナショナルミニマムは社会保障のサービスの質の面でも保障される必要があり、中央政府 が憲法25条の基準を積極的に保障する責任を負っていることを踏まえれば、本来的に地方政府の 裁量に委ねてはならない限界があると考えられるという点であります。  28であります。そういった点で、国と地方の役割分担については、ナショナルミニマムをきち んと固めた上で議論すべきという意見であります。  29、ナショナルミニマムの設定の仕方について、現場の意見を参考にすべきではないかといっ たような意見とともに、そういった点について継続的に検証作業を進めていく必要があるという 意見でございます。  30番目、地方分権の時代のナショナルミニマムという点については、住民の立場から、自治体 を競わせ底上げを図ることでレベルを上げていくという必要があると。ただ、弱い立場に置かれ ている少数者の意見は埋もれがちなので、全国レベルでそれらを汲み上げるというような国の役 割が重要というご意見であります。  31番目、自治体の中には、汗をかかない自治体が得をすることがないように、汗をかいた自治 体が報われるような何らかの財政調整機能が必要ではないかという意見であります。  貧困、格差等の概念・指標に関連しましては、貧困や格差の実態把握に当たっては、金銭所得 や資産保有の状況だけではなくて、家族関係、人間関係、さらに社会活動への参加、社会サービ スへのアクセスといったような社会的な要因にも目配りする必要があるという意見であります。  33、OECDの相対的貧困率の関係につきましては、格差指標の側面があり、実際にどのよう な生活像なのかが分かりにくいということで、国際比較の意味あるけれども、それ自体を政策的 な基準とすることには慎重であるべきというご意見であります。  34、そういった貧困の、あるいは格差の指標に関しまして、「相対的剥奪」という概念がある ということで、その中で社会的に合意された最低限必要とされる生活水準以下にある個人は貧困 であるというような考え方であります。  最後のページであります。ホームレスなどの方への関係であります。そういった路上生活者だ けではなくて、自立支援センターやネットカフェ等で暮らす事実上ホームレスの状態にある人も いるということでの、広義のホームレス調査や、生活保護の捕捉率調査など様々な調査を行い、 貧困の実態をより正確に把握すべきという意見であります。  36、様々な貧困に係る指標があるが、基となった統計調査の特徴等の影響を受けることは避け られないので、実態をできるだけ正確に把握するためには、複数の指標を複合的に参照する必要 があるという意見であります。  最後の、貧困・格差是正と経済成長の関係です。社会保障が機会の平等を後押しして、多くの 方がチャレンジできる環境を整備すれば、広く国民全体の能力を生かすことができるようになる といったようなことで、こういったサポート、セーフティネットを整備するということで、最終 的には経済成長の基盤づくりにもなるといったようなご意見であります。  また、そういった成長との関係では、日本の高度成長期、あるいは北欧諸国では、経済は好調 であるとともに分配も平等という事例もあるということで、効率性と公平性が常にトレードオフ というわけではないというようなご意見です。  39になります。社会保障に関しましては、これまで給付抑制的なことが多かったけれどもとい うことで、今後は社会保障を将来への投資と位置付けるならば、給付や利用者数の増加や投資の リターンを目標にするほうがなじむのではないかというご意見です。  最後、子供の貧困の問題に関しまして、きちんと取り組まなければ将来の貧困が拡大をし、経 済の成長も阻害されるといったようなことであります。子供の貧困を解消することの社会政策上 の収益率は高いという研究もあるというご紹介がございました。  以上、これまでの議論をこういった形で簡単にまとめておりますので、いろいろと私ども事務 局のほうで酌み取れていない部分等があろうかと思いますので、先生方のほうから、こういった こともあるといったようなことで、さらにご意見をちょうだいできればと思います。よろしくお 願いいたします。 ○橘木委員 3つほどあるんですが、1つは、私がお話ししたことで、16番なんですが、この文 章、分かりにくいですよね。貧困削減策としての効率性は高いが貧困削減には余り寄与していな い、これ何となく矛盾しているように映ります。  私の言いたかったのは、こういうことです。生活保護制度は、貧困者に多額の支給をしたりあ るいは非貧困者に支給しないといった側面からすると効率的に運営されているけど、貧困削減に は余り寄与できていないという意味なんですよ。ここの文章、私は矛盾があると思いますが、事 務局どう思われますか。  それと次、ついでに言いますと、33番、相対的貧困、私も相対的貧困の限界はよく分かるんで すが、貧困をやっぱり語るときは、相対的貧困と絶対的貧困の両方を加味しながら議論すること のほうが大事であるというふうに理解したほうが、私は33番目の話はうまくいくんじゃないかと 思います。  最後は、最低賃金制度の言及、まあ過去のことは言っていますが、今の日本の社会において最 低賃金制度、やっぱり民主党も1,000円と言っていますから、そういう意味で、最低賃金制度と いうことの、やっぱり考慮というのがあってもいいんじゃないというのを付け加えたいと思いま す。  以上です。 ○伊奈川参事官 16番につきましては、私どものまとめ方が不十分だったと思いますので、直し たいと思います。失礼いたしました。 ○駒村委員 今の橘木先生のところの33番のところは、多分こう読むんだと思うんですね。相対 貧困基準がけしからんと言っているんではなくて、恐らく今の生活保護制度の水準というのは概 ね絶対貧困基準でなくて、中位の方の何%という、6割とかで決まっているので、それは相対貧 困基準なんですけれども、OECDの基準で使っている相対貧困基準というふうに、これはかか っていると思うんでですね。つまり、中位の2分の1という貧困基準そのものは国際比較として は有効だと言っているんで、ここは相対貧困基準を否定しているんではなくて、OECDの使っ ている相対貧困基準は国際比較としては有効だということを言っているだけだと思うんです。 ○橘木委員 いや、私もそう思いますよ。あなたの言うとおりだけど、相対的貧困率だけで政策 目標を立てては駄目だとも言っているわけでしょう。だから、絶対的貧困という概念も同時に考 慮して、貧困削減策を考慮しにゃいかんというふうに変えたほうがいいんじゃないかというのが、 私の提案です。 ○伊奈川参事官 今、お二人の先生から、相対的貧困率そして絶対的貧困といったようなお話が ございました。  ほかの先生、いかがでございましょうか。 ○岩田委員 今、駒村先生がおっしゃったのは、相対的貧困といってもいろんなやり方があって、 OECD基準はその一つでしかない。逆に言うと、絶対的貧困といっても、そのやり方はいろい ろあり得るんですね。だから、割合今の貧困の議論の中で誤解が結構ありまして。ですから、ち ょっと表現の仕方が難しいかもしれないですね。  それから、ちょっともう一つ別のところなんですけれども、ちょっと細かい話で、最初の1な んですけれども、私たち参加していて、こういうふうに書いていいのかと怒られそうなのでちょ っと言うわけですけれども。イギリスの救貧法は非常に長い歴史を持つので、その間ちょっと結 構いろいろ変遷があるんですね。ですから、「働けない者には現金を給付し」ときっぱり言い切 ってしまうとちょっと難しいので、ここは削除して、「働ける者は強制労働させた」だけでいい んじゃないかと思うんです。 ○橘木委員 橘木ですが、これも私が話した部分だと思うんですけれども、もう岩田先生の言わ れるとおりで、1,000年の歴史を持っている救貧法を語るというのは、もう一、二行で語るのは 無理なので、まあ、でも救貧法の16世紀あたりは現金支給していたなというふうに見れば、16、 17世紀あたりですね。それは10世紀あたりはそんなことやっていなかったかもしれないけどとい う意味であったら、まあ現金を給付しと、教会なんかが払っていましたからね、そういう意味で、 この文章は残してもいいと思いますけど。  なぜいいかというと、今の日本のいわゆる救貧法的な対策というのは、現金給付じゃないです か。だからやっぱり現金給付はやっていたという表現を入れてもいいと思いますけど。 ○伊奈川参事官 岩田先生、何か。 ○岩田委員 いや、まあ、ちょっと。厳密に言うと3分類して、子供の扱いというのが1つあり ますので、子供は救貧院へ送ってしまったりしたわけですから。それから時代によってかなり違 っているし、地域によっても違っている膨大な研究があるので、言い切ってしまうと、ちょっと 叱られそうかなということなんで。 ○橘木委員 でも、例えば地域によって、子供によって、働けない者に現金給付をしていたこと もあるということは確かでしょう。これだと、現金給付していない。あなたのようにこの文章を とると、現金給付していなかったって誤解される可能性があるんじゃないですか。 ○岩田委員 いえいえ、ですから、そこを取っちゃったらどうですかという。つまり、要するに 労働意欲を阻害するという観点から、働ける場合の救済……救済したということは一つ大事なん ですけれども、労働による救済なんですよね。ですから、そこだけ書くか、あるいはもうこれは 全部、ナショナルミニマムというよりはこれは救貧法の話ですから、前段ではあるけれども、む しろ2から始まってもいいかもしれないなと思います。 ○伊奈川参事官 事務局でございますけれども、ちょっとまとめるときに舌足らずだったとすれ ば、いつの時代のどういう人なのかというのをある程度はっきりさせて書くという手もあります し、岩田先生がおっしゃるように、すぱっと落としてしまうのもありますけれども。  橘木先生、この点、ナショナルミニマムにとって重要だということで前回お話があったんじゃ ないかと理解しておりますけれども、いかがでございましょうか。 ○橘木委員 でも、2行でまとめるのは大変ですからね。だから、そんな、いつの時代にだれに 現金給付していたなんて書いたら、もう10行ぐらい必要じゃないですか。だから「働けない者に は現金給付をしていたこともある」ぐらいであったら、もういいんじゃないですか。 ○伊奈川参事官 分かりました。とりあえずそういうふうに直すようにさせていただきます。  よろしければ、ほかの先生からもご意見いただければと思いますけれども。  竹下先生、お願いします。 ○竹下委員 14と16なんですけど、14のところ、多分、菊池先生の発言をまとめていただいてい るのかというふうに思ったんですが、気になるのは14のところで、ここに項目として例えば保育 とか入っていないんですけれども、保育とか、それから場合によったら住居もそうなんでしょう けれども、多分最低保障というところを考えるときに、この14の言い方でいいのかどうか、ちょ っと気になったんですね。  というのは、例えば保育とかそういう一定の部分を見たときに、最低保障という考え方なのか、 それともあるべき保障というものは、低所得者とは無関係に保障されるべき基準というものがあ るはずですから、これと医療については最低保障として取り上げることには誤解を招くんではな いかという懸念があったので、若干このまとめ方が気になりました。  それから16のところは、多分橘木先生の発言をまとめておられるのだと思いますが、この前半 の読み方として、削減策としての効率性は高いけれども、生活保護の適用を抑制しているために 削減に寄与していないというふうに読むとあかんのですかね、ということです。 ○伊奈川参事官 14番の点につきましては、医療サービスが代表的だということで、あとは「等」 という形になっておりますけれども、先生方におきましては、今のご指摘からいいますと、例え ば保育なんかもこのオプティマムといったほうに入るんではないかといったことで、何かその関 連でございましたら、まずその点についてご意見をいただければと思います。  菊池先生、お願いします。 ○菊池委員 私が申し上げたのは、医療に関しては議論があって、ミニマムではなくそれを超え たオプティマムなんだという考え方が割と有力に主張されていると思うんですが、逆にそれ以外 の社会サービスについてどうなのかという、例えば保育についてはどうかというのは余り議論さ れてこなかったので、そこをどうするかというのは私自身も……まあミニマム、オプティマムと いうのは、ある意味で相対的な概念ですけれども、そこは私としては積極的にこっちだというよ うな議論はしなかったんです。医療についてオプティマムだというところを主張したかったとい うことであります。 ○伊奈川参事官 16番目の点につきましては、先ほど橘木先生からもご指摘がありましたので、 少し文章としては工夫したいと思っておりますけれども、竹下先生のご指摘としましては、抑制 しているというようなことをむしろ言及すべきというご趣旨と。 ○竹下委員 そういう趣旨です。 ○伊奈川参事官 その点に関しまして、何か。  また、文章については直してご相談をさせていただきたいと思います。 ○菊池委員 多分7番は、ここは私の意見ではないと思うんですが、重い障害等という特殊要因 ということは上乗せということで書かれていますが、これは単なる確認というか指摘ですけれど も、そうすると、この重い障害等の部分は、11番にありますが、ナショナルミニマム水準、イコ ール憲法25条の水準だとすると、重い障害の部分は、その25条の最低限の保障を超えた部分の上 乗せ部分という理解になるという、つまり25条の基準と乖離してくることになるのだなという、 これは確認です。  それから、私の意見との関連では11番ですが、これは私のレジュメ自体もちょっと不正確だっ たなと思っているんですが、有力説ではといっているのは、後から違うというお叱りを受けると いけないのでここで言っておきたいんですけれども、そもそも法学の世界で、ナショナルミニマ ムという議論は余りしてこなかったので、正確に言うと、例えば最低生活保障と憲法25条の関連 についてはと言うとほぼ間違いないんですけれども、括弧付きナショナルミニマムというか、ニ アリーイコール最低生活保障という、そういう内容のものとしてお話ししたということでありま す。  なので、ナショナルミニマムと25条との関連については理解されているという、ちょっと誤解 を招く可能性があるかなという形で、括弧、「(最低生活保障)」とでもしていただいたほうが いいかもしれません。  それともう一つですが、これも私の説明の仕方が不正確だったんですが、21番ですが、正確に 言うと、ナショナルミニマム保障、イコール生活保護ではなく、つまりナショナルミニマム保障 が生活保護のみによって実現されるという理解ではなくて、それ以外の生活保護に至る前段階で の保障施策の充実が重要であると、こういうお話をさせていただきました。そういう意味での重 層的なナショナルミニマム保障の理解が重要ではないかということですので、正確に言うと、最 初、「ナショナルミニマム保障=生活保護」としていただいたほうがいいかもしれません。  以上です。 ○伊奈川参事官 11番のところと21番のところは、そのように直したいと思います。  その上で、今、菊池先生からございました7番については、ちょっと事務局のほうからどうこ うコメントがしにくい点でございまして、まさにミニマムをどう考えるかという点に関連すると 思いますので、先生方のできましたらご意見をいただければと思います。 ○竹下委員 この7番、僕が読んだときに、僕は個人的には……7番じゃないわ、憲法の何番な んだ……。 ○伊奈川参事官 今のは11番です。 ○竹下委員   憲法25条1項2項の解釈に関し、単に表現の問題にとどまらず、憲法論に関わってくるので 非常に気になるんですけれども、1項2項分離論がいわば通説になっていると受け取られかねな い表現になっていると思うので、これは菊池先生の主張としてならば僕は何もコメントを挟む立 場じゃないんですけれども、そうではなくて、これが通説だと書かれると僕は非常に気になりま す。憲法25条の1項2項分離論というのは、確かに朝日訴訟の控訴審判決以来、ずっと今でも主 張されている考え方ではあるんですけれども、それが社会保障法では何か通説であるとか言われ ると、そうなんだろうかと。そうではなくて、憲法25条1項、2項を合わせて最低生活保障とい うものが位置付けられているということが、私は通説だと理解しておったので、ここはそういう ことをもう少し、もしくは何か文献を示せというなら示したいと思うんですが、この書き方は少 し私は抵抗があるんですけれども。 ○菊池委員 学説論争する気はないんですけれども、有力説と書いていますけれども、通説は確 かに憲法論の通説は竹下先生がおっしゃるとおりだと思います。従来からの考え方は、1項、2 項の規範的な効力を分けて考えないという考え方が通説だったと私も思っています。  その上で、有力説とは何かという非常に幅のある概念ですので、竹下先生、違和感がおありで あればあえてもう少し表現を、こういう見方も有力であるとか、あるいはそういう見方も最近は 唱えられているとか、あるいはその前に、まあ2行ですのでちょっと入らないかもしれませんが、 従来の憲法学の通説では一体的にとらえてきたと、最近では分離して規範的な効果を分けて考え る考え方も見られるとか、そういう表現にしてもいいんではないかと。余りそこは学説の論争に なってしまうんで、私は全然こだわりません。 ○竹下委員 そうですね、そこにこだわるつもりはないんで。 ○伊奈川参事官 時間が限られた中でございまして、ちょっとまたこの文章については、先生方 と事務局のほうで整理をしまして、ご相談をさせていただきたいと思います。  貝塚先生、お願いします。 ○貝塚委員 16番のこの文章は、ちょっと何が書いてあるのかよく分からない。生活保護制度は あれですよね、貧困削減策として有効であるけれども、貧困それ自身を削減……元来の貧困自身 を、それ自身を与えられたものとして結果的に直しているわけで、貧困の発生それ自身を、には 寄与しているわけではないというのは当たり前の話ですけれども、大体そういう話でしょう。そ このところを分かりやすく書いておいたほうが。事後的に助けているわけですが、元来、貧困そ れ自身を発生しないようにする、そういうものではないということでしょう。だから、そこのと ころをちょっと分かりやすく言っておいたほうが。これ読むと分かりにくいんで。  よろしいですか、橘木先生、それで。まずい? ○橘木委員 いや、別にまずくはない。これ本当に、これ全部文章を変えないと、これ分かりに くいと思いますよ、この16番は。  ついでながら、私は21番いうのが非常に重要な指摘だと思いますので。私が一番最後に言った 最低賃金というのは、このどこかに1つ入れていただいたら、もうそれで済むことですので、そ れで結構ですということです。 ○伊奈川参事官 承知いたしました。  16番のほうは、我々のほうで少し工夫をさせていただきます。  21については、最賃についても入れたいと思います。  ほか、いかがでございましょうか。  竹下先生。 ○竹下委員 そうすると、この28番が間違っているのかどうか分からないんですが、非常に気に なる表現でして、「国と地方の役割分担については、ナショナルミニマムをきちんと固めた上で 議論すべきものである」ところの意味なんですけれども、これ自身は言っていることに間違いだ と言っているわけではなくて、ナショナルミニマムと言うからには、本来、日本における水準が 確定されるわけで、それは地方分権であろうが地方の独自性であろうが、それを下回るものが許 されないと考えるのは、僕はミニマムだと理解しているんですよね。だから、この言い方が正し いのかどうかよくわからないんですよね。  例えば、地方一括分権の改正の議論がされていると思うんだけれども、その中で、例えば項目 によって基準を守るとか、参考にするのか、尊重するのか、指標にするのかという表現で改正さ れようとしていますが、その改正には非常に危険性があると思うのは、このナショナルミニマム の持つ意味そのものが、この表現だと曖昧にされてしまう。非常に僕は懸念を持ちました。あく までもナショナルミニマムということが確定される以上は、それを下回る水準というのは、国だ ろうが地方だろうが、それは全て憲法25条違反になるということが基本であって、それにプラス することによる独自性や地方性というものが、それが求められているものであるということが、 誤解のないような形で表現されることが必要ではないかと思っています。  以上です。 ○岩田委員 この発言は私がしたんですけれども、これはもしかすると30番とかかったというか、 湯浅委員の発言に対して、私が今の竹下さんのような意味で申し上げた部分です。ですから、こ れだけを採っちゃうと、何か変かもしれないので。 ○竹下委員 私も同感です。 ○伊奈川参事官 そういう点からしますと、事務局がまとめる際に、少しはしょってしまってお りまして、元は、ナショナルミニマムというのは国民最低限なので、国か地方かという前に国民 の最低限という考え方があると、それをどうするかというような話でしたので、元のように近い 形に直したいと思います。失礼いたしました。  すみません、よろしければ、次に生活保護の関係について調査結果等の発表がございますので、 そちらのほうに移りたいと思います。よろしゅうございますか。  はい、ありがとうございます。  そういたしましたら、まず、前々回、駒村先生のほうからお話のありました、生活扶助基準の 定期的検証という点と、それと、生活保護関係の調査結果、それを受けての対応等について、三 石保護課長のほうから説明をさせていただきます。 ○三石保護課長 それでは、まず資料の2、「生活扶助基準の定期的検証について」からご説明 をさせていただきたいと思います。  駒村先生からご指摘がございましたけれども、最近では平成15年にでき上がりました生活保護 制度の在り方に関する専門委員会、ちょうど岩田先生が委員長をされていました専門委員会で一 つ検証がなされております。この際には、具体的には年間収入階級「第1/10分位」の世帯の消 費水準に着目をするということで、「第1/10分位」の勤労者3人世帯の消費水準について、生 活保護の生活扶助基準と比較した分析を行っております。  詳しくは2枚目にございますけれども、結論といたしましては、1枚目の一番下にございます ように、検証・評価した結果、その水準は基本的に妥当であったけれども、今後定期的に見きわ めるために、全国消費実態調査等を基に5年に1度の頻度で検証を行う必要があるということで ございました。  その結果を踏まえまして、その後、一番新しい全国消費実態調査が平成16年のものでございま して、それに基づく検証を行うということで、3枚目に参りますけれども、平成19年に生活扶助 基準に関する検討会、これは慶應の樋口先生が座長になられまして、ここにおいでになる駒村先 生あるいは菊池先生もご参画いただいていた検討会でございますけれども、こちらで19年に報告 書を出されております。  その内容についてご紹介をさせていただきたいと思いますけれども、具体的な数字あるいはビ ジュアルなものについては、その次の4枚目の右側の棒グラフに示されておりますので、そちら をご覧いただきながらご説明させていただきたいと思います。まず一つは、夫婦・子1人(有業 者あり)の世帯の年間収入階級「第1・十分位」における生活扶助相当支出額、これが14万 8,781円であった。一方、生活扶助基準額のほうは15万408円であるということで、生活扶助基準 額がやや高目になっている。  「第1・五分位」で比較をいたしますと、前者が15万3,607円、後者が15万840円であり、やや 低目となっているという結果でございました。  一方、単身世帯(60歳以上)の場合の、この「第1・十分位」における生活扶助相当支出額、 これが6万2,831円でございました。一方、生活扶助基準額のほうが7万1,209円ということで、 生活扶助基準額のほうが高目になっている。  「第1・五分位」で比較をいたしますと、前者のほうが7万1,007円、後者のほうが7万1,193 円で、均衡した水準となっているということでございます。  総じまして、これまで生活扶助基準額については、「第1・十分位」の消費水準と比較するこ とが適当とされてきたけれども、この研究会報告におきましても、これを変更する理由は特段に ないというような結論をいただいております。  なお、この検討会では、この基準額の検証のみならず、3ページ目の一番下のアスタリスクに ございますが、生活扶助基準の体系、あるは地域差、それから勤労控除の在り方、こういったも のについても評価・検証を行っていただいております。  具体的なデータなどにつきましては、4ページ、5ページ以降ございますが、ちょっと時間の 関係ございますので割愛させていただきまして、これが平成19年の検証結果でございますけれど も、その後ということでございまして、12枚目、一番最後のページをおめくりいただきたいと思 います。  平成19年検証以後の生活扶助基準の改定率と消費の動向ということでございますけれども、先 ほど申し上げましたように、平成19年の検討会の検証結果によりますと、平成16年度の生活扶助 基準額は「第1・十分位」の生活扶助相当支出額に比べ、夫婦・子1人世帯(有業者あり)では やや高目、単身世帯(60歳以上)では高目という結果でございました。  2番目の「〇」でございますけれども、生活扶助基準はそもそも政府経済見通しにおける民間 最終消費支出の伸びを基礎とします水準均衡方式により改定するということになっておりますの で、17年度から22年度までといいますのは、19年の検討会が16年の全国消費実態調査を使ってお りますから、17年から直近22年度までの民間最終消費支出の伸び率を下の表に示しております。  最近ですと、平成20から22、22年度は見通しでございますが、デフレの関係もございまして、 やや伸び率がマイナスになっているということでございます。  3番目の「〇」のところでございますけれども、この生活扶助基準はこういった最終消費支出 の伸び率に着目をしまして改定をするということになってはおりますけれども、20年度以降、原 油価格の高騰、あるいは世界的な経済危機の深刻な影響というようなことで、国民生活の安心が 優先されるべき状況にあるということから、下の表の改定率のところをご覧いただいてもお分か りのように、据え置きを図っているところでございます。  以上でございますけれども、この15年の検討委員会、あるいは19年の検討委員会に携わってお られた先生方もいらっしゃいますので、もし補足があれば後ほどお願いしたいと思います。  続いて、資料の3−1についてご説明をさせていただきたいと思います。  「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について」ということで、これは本研究会で昨年の 12月に、生活保護基準に至らないような低所得者の方が実際どのぐらいいるのかということにつ いての推計方法についてご報告させていただきまして、概ねご了解をいただいたわけですが、そ のやり方に従いまして推計をしたものでございます。  具体的には、2枚目でございますけれども、調査といたしましては2種類使っております。1 つが、平成16年の全国消費実態調査、それからもう1つが、平成19年の国民生活基礎調査であり、 いずれも個票データを特別集計をしております。  そして、生活保護基準額以下の世帯数を出すために、まず最低生活費の基準につきましては、 それぞれの調査の個票データから、個々の世帯の最低生活費というものを算定をいたしました。 また、その世帯について個票には収入が書かれておりますので、そこから税、社会保険料、勤労 控除、こういったものを控除して認定所得というものを算定しております。  そして、今申し上げた最低生活費と認定所得とを丈比べをいたしまして、認定された所得が最 低生活費を下回る世帯を生活保護基準未満の低所得世帯というように定義付けております。  この後、結果についてご報告させていただきますが、その留意点がございます。まず今回の統 計データでは、保有する住宅・土地等の不動産、あるいは自動車・貴金属等の資産の評価額、こ れは全国消費実態調査あるいは国民生活基礎調査上も把握できておりませんので、推計には限界 がございます。資産については、基本的に預貯金あるいは有価証券といったもののみ把握してい るということでございます。  では、この基準以下の方々が生活保護が本来適用されるべき方であったかどうかということに なりますと、ご案内のように、収入と保有する資産だけではなくて、親族からの扶養あるいは稼 働能力の有無によって、実際には生活保護の適用というのは決まってまいりますので、そういっ た点は今回の推計作業では考慮されていないということでございます。  さらに、生活保護は申請に基づく制度ということでございますので、この後お示しします生活 保護基準未満の低所得者世帯数というのが、いわゆる申請の意思がありながら生活保護の受給か ら漏れている要保護世帯、漏給と言われますけれども、この数をあらわすものではないというこ とでございます。  ちょっと長くなりましたが留意点を申し上げさせていただきました。  3枚目、4枚目は具体的な推計方法を記載したものでございますので、割愛させていただきま して、結果の概要をご説明させていただきます。5枚目でございます。  2つのデータを使っております関係で、推計結果も大きく異なっております。そのまず要因と して考えられますのは、最初の「〇」にございますように、16年の全国消費実態調査の推計結果 のほうが、19年の国民生活基礎調査の推計結果よりも低所得世帯率が小さく、逆に言えば低所得 世帯数に対する被保護世帯数の割合、ここでは保護世帯比というような用語を使わせていただい ておりますけれども、この保護世帯比が大きい傾向が見られます。  その原因といたしましては、この全国消費実態調査のほうが国民生活基礎調査よりも世帯当た りの年間収入と貯蓄現在高の推計値が高いことによる、いわゆる統計のクセの影響かと考えてお ります。具体的に、先生方ご存じの方々ばかりかと思いますけれども、両調査の調査手法あるい はサンプル数等異なっておりまして、その比較については11ページにございますので、後ほどご 覧いただければと思います。  また、2番目の「〇」でございますけれども、この保護世帯比、すなわち低所得世帯数に対す る被保護世帯数の割合、これを推計するに当たりましては、生活保護基準未満の世帯は全て生活 保護を受給していないというような仮定をとっております。  ただ、実際には、この生活保護基準未満の世帯に被保護世帯が含まれている可能性もございま すので、その場合には保護世帯比というのは過少評価されるということとなります。  そういったことをご考慮の上、表をご覧いただきたいと思いますけれども、3つ欄がございま すが、最初の2つは全国消費実態調査で、最後の欄が国民生活基礎調査でございます。全国消費 実態調査の最低生活費1とございますのが、生活扶助と教育扶助だけ考慮いたしまして、住宅扶 助を入れずに計算したものでございます。真ん中がさらに住宅扶助を入れたものでございます。  19年の国民生活基礎調査では、家賃等のデータがございませんので住宅扶助を入れず、生活扶 助、教育扶助、さらには17年にでき上がった高等学校等就学費、これを考慮した結果でございま す。  それぞれ数字を並べておりますけれども、例えば一番上の全国消費実態調査の最低生活費1の 4.9、0.3、29.6、87.4の算出方法でございますが、6枚目をお開きいただきたいと思います。6 枚目の表の上のところに、総数とございますけれども、ここに先ほどの数字が出てまいります。 まず総数の総世帯数A、これはオールジャパンの総世帯数4,674万世帯。そして、今申し上げた 推計方法で最低生活費未満の世帯と推計されたものが231万世帯。そのうち、資産要件を満たす 世帯が、231万からさらに14万世帯に絞られることになります。一方、この時点での被保護世帯 数は、別の調査によりますと97万世帯という数字が出ておりますので、これらの数字を使って割 合を出しております。  まず、全世帯に占める低所得世帯の割合、(1)でございますが、これはA分のBという形で 4.9%、それから資産も加味しますと、A分のCとなりますが、これが0.3%という形になります。 一方で、先ほど申し上げた保護世帯比、低所得世帯数に対する被保護世帯数の割合ですが、これ はBの最低生活費未満の世帯数とDの被保護世帯数の合計を分母にとりまして、分子にDの被保 護世帯数をとるというような形で出したものが29.6%。さらにこれに資産要件を加味いたします と、保護世帯比は87.4%になるということでございます。  このような出し方で、同様に最低生活費の2、あるいは国民生活基礎調査で計算いたしまして、 その結果が5ページの表のような形になります。  調査推計方法によってかなり数字が異なってまいります。またこの点についても、先生方から のご評価といいますか、考え方などもお聞きかせいただければと思っております。  このようなやり方で単身世帯、2人以上の世帯、あるいは高齢者、母子世帯等、あるいは子供 のいる世帯等々、細かい分析を行っておりますけれども、説明のほうは割愛させていただきたい と思います。  そして、この結果を踏まえての、私ども行政としての対応についてでございますが、資料の3 −2という1枚紙がございます。「生活保護基準未満の低所得世帯数の推計と今後の対応につい て」でございます。  結論の繰り返しになりますけれども、今回の推計によりまして、一定の資産の保有要件も考慮 した場合、生活保護基準未満の低所得世帯数に対する被保護世帯数の割合、保護世帯比というの が得られました。  今回推計した保護世帯比は、先ほど冒頭の繰り返しになりますが、申請の意思がありながら生 活保護の受給から漏れている要保護世帯、いわゆる漏給をあらわすものではございませんけれど も、現状把握の指標としてとらえるべき数字であると考えております。  これを踏まえて、今後どう対応するかということでございますが、「今後の対応」の1でござい ますけれども、いわゆる漏給の割合をあらわすものではございませんが、一方で資産や稼働能力 等を活用してもなお保護の要件を満たしかつ保護を受給する意思のある方が、保護を受けられな いことはあってはならないということでございますので、今回のこの推計結果を各自治体に周知 する中で、もし仮にそのような不適正な取扱い、運用があれば、そういったものについて是正を 図るよう通知で徹底をしてまいりたいというように考えております。  また、低所得者対策といった場合には、先ほどもご議論ございましたように、生活保護以外の いわゆる第2のセーフティネットなどの施策もございますので、そういったものの充実も図って まいりたいと考えておりますし、また今回の調査、こういった形で推計を出すということは初め ての試みでございます。こういった調査・推計を今後定期的に実施していくことによって、大き なトレンドというものを把握してまいりたいというように考えております。  最後でございますけれども、資料の4−1、「生活保護受給者の自殺者数について」をご説明 させていただきたいと思います。  現在、内閣を挙げまして自殺者対策に取り組んでいるところでございますが、これまで生活保 護受給者に関しての自殺者の方の実態というものを把握ができておりませんでした。大臣からの ご指示もございまして、今回調査をした結果について、こちらの研究会でご報告をさせていただ きたいと思います。  調査方法については、2枚目でございますけれども、調査期間としては平成19年1月から21年 12月の3年間について、生活保護受給中に自殺あるいは自殺と推定された死亡者の方の状況をま とめております。実際には、今年の1月に全国の自治体に依頼をいたしまして、私ども厚生労働 省で集計させていただいたものでございます。  ただ、これは今回初めての調査でございまして、毎年行っているものではございませんので、 福祉事務所が過去3年の状況について、職員の記憶やあるいはケース台帳を基に報告したもので ございます。したがって、3年間の結果も出ておりますが、記憶の新しい直近年に比べて古い年 次のデータには報告漏れがある可能性がございますので、年次推移をご覧いただく際にはこの点 にご留意をいただきたいと思います。  さらには、都道府県別の数字でございますが、1都道府県当たりの件数が極めて少ないような 県もございます。結果的に不安定であること、あるいは極めて件数の少ない県については個人の 方の特定につながる可能性があるということから、今回の公表には入れておりません。  結果の概要でございますが、3枚目でございます。下の表に、平成19年から21年の数字があり ますが、生活保護受給者と全国の一般的な方々の自殺者の数や自殺率を出しております。それを ご覧いただきますと、生活保護受給者の方の自殺率は、平成19年で被保護人員10万対38.4、20年 で54.8、21年で62.4となっておりまして、いずれも全国一般の自殺率よりも高いという結果とな っております。  その原因については様々考えられるかと思いますが、一つ大きな要因として考えられるものと いたしましては、生活保護受給者には、自殺の大きな要因と考えられます精神疾患を有する方の 割合が全国一般の平均よりも高いということが考えられるかと思います。  具体的には10ページをご覧いただきたいと思いますが、10ページの表のうちの左上のところで ございますが、これをご覧いただきますと、被保護者のうちの自殺者のうち、精神疾患を有する 方が3年間の累計で1,633人、66.2%という数字になっておりまして、この割合は3年間を通じ てほぼ同様でございます。  被保護者数に占めます精神疾患、あるいは障害者加算などが付いております精神障害を有する 方の割合というのが16.4%であるのに対しまして、全人口に占める推定精神疾患患者の割合は 2.5%となっております。このように、生活保護受給者の方の場合には精神疾患あるいは精神障 害を有する方の割合が高いというのが、自殺者の方の割合が高い一つの要因かと考えております。  なお、この要因などにつきましては、これも今回初めての調査でございますので、さらに分析 をする必要があるかと考えております。  さらに、この調査データでは、年齢階級別、あるいは世帯類型別、さらには自殺の原因・動機 別などにつきましても分析をさせていただいております。  この結果を踏まえましての今後の対応でございますけれども、資料の4−2をご覧いただきた いと思います。  今申し上げましたように、今回の調査結果を見ますと、被保護者の自殺率は全国一般の自殺率 に比べて高くなっております。その原因といたしましては、自殺の大きな要因と考えられる精神 疾患を有する方の割合が全国一般の平均よりも高いということが一つ推測されるわけでございま す。  そこで、私どもとしては、今回初めての調査でございましたが、22年以降も同様の被保護者の 自殺の実態調査を継続したいと思っております。  さらには、生活保護行政においてこういった精神疾患の方々をケアする体制が必ずしも全国的 に見た場合に十分ではないのではないかという問題意識を持っておりまして、以下のような対応 を、予算措置を含めまして検討したいと考えております。  一つは、福祉事務所における精神保健福祉士のような専門家の方々を増配置して、相談・支援 体制を充実する。  また、現在、救護施設というものがございますけれども、身体上あるいは精神上著しい障害が ある方を入所させて生活扶助を行うという施設でございまして、全国で187カ所ございます。そ のうちの一定の救護施設について精神保健福祉士などを配置をいたしまして、在宅の精神障害者 の方のショートステイ事業でありますとか通所事業などを行う。あるいは、地域の家族会などの ような関連団体、あるいは福祉事務所のみならず保健所あるいは精神保健福祉センターのような 関係機関との連携を図って、地域全体としてこういった在宅の精神障害者の方の自殺防止対策を 充実させてはどうかというようなことを現在検討しているところでございます。  なお、既に幾つかの自治体では、先進的に取り組んでいただいている自治体もございまして、 裏のページに幾つかの例を挙げておりますので、ご参考にしていただければと思います。  また、この自殺率の調査につきましても、繰り返しになりますが、初めてのものでございます ので、また先生方からも様々なご意見、あるいは今後についてのご提言をいただけたらと思いま す。  以上でございます。 ○伊奈川参事官 そういたしましたら、時間の関係もございますので、今の説明ありました資料 全体を通じまして、ご質問、あるいはサジェスチョンも含めましたご意見をいただければと思い ます。  雨宮先生、お願いします。 ○雨宮委員 資料3−2なんですけれども、すごい初歩的な質問で申しわけないんですけれども、 資料3−2の背景の※印のところで、いわゆる捕捉率を推計することはできないというふうに3 行目あるんですけれども、扶養とか稼働能力とか受給要件を満たすかどうか分からないという技 術的な問題があるため、いわゆる捕捉率を推計することはできないとあるんですけど、じゃどう やったら捕捉率を推計できるのかなと。非常に捕捉率が重要だと思うので、その辺のこともし分 かる方がいらっしゃいましたら教えていただきたいと思って質問をしました。 ○伊奈川参事官 とりあえず、保護課のほうで何かありますか。 ○三石保護課長 捕捉率の定義によるかと思いますけれども、いわゆるテイク・アップ・レート と英語で言われておりますけれども、一般的には、生活保護を本来利用できるような方あるいは その世帯に対しまして、実際に生活保護を受給している方あるいは世帯の割合ということになる わけでございますけれども、先ほど来から申し上げておりますように、本来生活保護が利用でき るというところは、ここに書いてあるようなデータの制約がございますので、その点は厳密には 推計はできないということでございます。  ただ、その捕捉率に近いといいますか参考になるような数字という形で、私ども推計をさせて いただいておりますけれども、この点については既に先行研究などされている先生方もいらっし ゃいますので、まさにここでご議論をいただければと思います。 ○伊奈川参事官 はい。 ○橘木委員 やや技術的な問題で申しわけないんですが、ここで資料3−1の5ページを見てい ただいたら、資産を考慮したときと考慮しないときとで数字が大分違うんですよね。これ、資産 をどういうふうに扱っているかという初歩的な質問なんですが、例えばこういう人がいたとしま す。50万円の働いて収入がある人が、150万円の貯蓄があったとしたら、その人の所得は200万円 で計算しているんですか。50万プラス150万で、その人は貯蓄を全部はじき出したら200万円の所 得があるだろうという前提で所得を出しているんですかという質問なんですが、いかがでしょう か。 ○三石保護課長 所得は所得でまず計算をいたしまして、それで考えます。先ほどの数字で言い ますと、「所得のみ」という数字がそれに当たります。  その後に、さらに資産、先ほど150万と言われましたが、通常、生活保護の要件には該当しま せんので、そうしますとその世帯は生活保護基準未満から外れるということになります。 ○橘木委員 じゃ、働いた所得が50万円で、貯蓄が50万円の人は、その人の年間所得100万円で 計算しているんですか。 ○三石保護課長 いや、所得は50万円で計算します ○橘木委員 もう貯蓄があったら、生活保護から昔は排除されていましたよね。その資産はどう やって、資産というのはストックなんですよね、それで所得というのはフローなんですよ。その フローとストックをどういうふうに兼ね合わせるかを。 ○三石保護課長 具体的な計算式は3ページにあります。これは全国消費実態調査の場合でござ いますが、国民生活基礎調査も同様でございます。所得としては、イのところにございますよう に、個票には年間収入で書いていただいておりますので、それを12で割って、所得税、社会保険 料、勤労控除を引いて、これでいったん計算します。このイを使ったフロー所得による生活保護 基準未満の世帯数を出したものが、先ほどの5ページに「所得のみ」と書いていたものの数字に なります。  そしてその次に、エでございますけれども、資産の保有要件も考慮した生活保護基準未満の世 帯数の推計というものを出しておりまして、これは次の条件を両方とも満たす世帯ということで、 まず(1)が、貯蓄現在高が最低生活費1カ月未満に当たるかどうかということです。この場合の貯 蓄現在高は注の4にあるようなもの、すなわち預貯金とか有価証券などでございますけれども、 これらをカウントしております。 ○橘木委員 カウントということは加えたということですか、所得に。 ○三石保護課長 いえ、所得は所得として計算をしております。資産は全く別です。 ○橘木委員 ああ……ごめんなさい、ちょっと考えてみます。 ○伊奈川参事官 資産があったら生活保護は適用されないという説明を、今されているんですね。 ○三石保護課長 はい。 ○橘木委員 ああ、そうか。うん、なるほど……。 ○伊奈川参事官 いいですか。説明はさらに補足することはないですか。 ○三石保護課長 よろしゅうございますか。 ○橘木委員 ええ、大体分かりました。すみません。 ○伊奈川参事官 そうしましたら、竹下先生。 ○竹下委員 2つの質問があります。捕捉率のほうから、1つまず質問なんですけれども、この 資産要件のところについての考え方は分かったつもりですけど、じゃ資産要件を無視したら何ぼ になるのかという数字は出ていますかね。 ○三石保護課長 それが「所得のみ」という数字です。 ○竹下委員 それが何番になるんですかね。 ○三石保護課長 先ほどの5ページでいきますと、大きく3つのケースについて「低所得世帯率」 と「保護世帯比」を出していますが、それぞれ「所得のみ」という欄がございます。一番上の最低 生活費1のケースで計算すれば、低所得世帯率の「所得のみ」で4.9%、保護世帯比の「所得の み」であれば29.6%となっています。 ○竹下委員 分かりました、見落としていました。  そうすると、この数字が持つ意味というものの、僕は分析をしておかないと駄目だろうと思う んですね。ぶっちゃけた話が、橘木先生がおっしゃったような、所得が50万で資産が仮に100万 ある人が排除されて捕捉率を出すことに本当に正当性があるのかどうかですよ。現実にその世帯 をとってみたら、年間所得50万で生活維持されているというふうにはまずならないわけですから、 この資産要件をまず持ち込んだ上での捕捉率を出すときの非常に落とし穴が気になったのが1点 目です。  それからもう1つは、僕は統計は全く理解できない人間ですけれども、個票の特殊集計のやり 方というのが何か分かりにくいのですが、現実に数字だけを見たときに、要するに所得が50万の 人で貯金が1,000万円もあるという人が現実にいるのかが、僕は理解できないんですよね。そう いう人が統計上はここではどう扱われているのかがきになります。そういう点が僕は分からない ということになるわけですけれども、統計上から見るときに、本当に低所得者でかつ資産を持っ ていない人が、本当に個票から選び出されているのかどうかについて教えていただきたいという のが2点目です。  あと、自殺の関係はちょっと後にします。 ○三石保護課長 最初のご質問については、橘木先生にご回答したことと結局繰り返しになりま すけれども、先ほどの3ページの推計方法のところをご覧いただきたいと思いますが、まずは所 得の算定をいたしまして、そのフロー所得による生活保護基準未満の世帯数というのを推計して おります。それが「所得のみ」の推計結果ということになります。 ○竹下委員 だから僕が質問しているのは、その場合に、その「所得のみ」で見た場合の人が必 ずしも統計上の、今度はフロー所得なり貯蓄、資産を持っているということに必ず当てはまるん ですか。 ○三石保護課長 その方の中にはもちろん貯蓄を全く持っていらっしゃらない方もおれば、ある いはそれなりに持っていらっしゃる方もいますので、その次の段階として、その方について、今 度は資産の保有条件も考慮して、生活保護基準未満に当たるか当たらないかをチェックするわけ でございます。 ○竹下委員 個票で? ○三石保護課長 ええ、個票です。所得や貯蓄のいずれも、それぞれ実際にこの全国消費実態調 査なり国民生活基礎調査で集められた個票のデータに当たっております。 ○竹下委員 分かりました。後で確認します。 ○岩田委員 これは、要するに生活保護の開始時の要否判定と同じことを個票レベルで、まあ全 く同じではないわけですけど、当然情報が限定されていますから、その条件を仮に調査時の預金 の現在高というものと、住宅ローンの現状を見て判断したと。つまり要否判定を1個ずつ、その ように擬制するといいますか、やってみたということなんです。  だから、ちょっと妙な言い方なんですけど、生活保護という制度自体が、一つはフローの所得 をまず中心に置いているわけですね。だから、ここで一つ見ればいいわけです。ところが、要否 判定の条件にその資産の活用とか、労働能力の有無と書いていますけれども、有無でなくて活用 ですよね、を求めているわけですね。労働能力については、これはやっていないわけで、ただち ょっと後で現役世帯とか出ていますんで、本当は勤労世帯かどうかという判断を入れられるとよ かったかもしれないんですけれども、やっているわけですね。  だから、現行生活保護制度の矛盾は矛盾として出るわけですけれども、2段階でやっています から、両方を参照して、例えば所得基準でやると、まあいわゆるテイク・アップ・レートなんで すけれども、それが割合低く出る。ところが、資産要件を入れると、比較的把握できているよう に出ますよね。それは、もしかすると1カ月程度の手持ち金というか預金しか認めていないとい うことともちろん関わるわけですね。だからそれをどういう問題だって考えるかは制度論なんで すけど、ここでは現実の制度を前提とした測定なので、統計の個票を使った限界はありますけれ ども、一応そういうものを出したというのはこれまでになかったことなので、その意義はあると いうことだと思います。 ○橘木委員 岩田先生のお答えでかなり分かってきたんですけど、またこだわりますが、働いて 年収50万円の人、その人が最初の段階で預金が10万円あったとしましょうよ。預金を全部おろし て60万円ですよね、1年間の所得が。この人は生活保護をもらえますよね。ところが、今の推定 方法だと、10万円の貯蓄があるという人は生活保護をもらえないというふうに入っているわけな んですよね。これはややテクニカル過ぎるけど、区別せんといかんですよね。というのが私の印 象です。 ○岩田委員 そうですね。ただ、現実にはその10万使ってしまわないと。だから、手持ち金50万 という方、つまり1カ月分しか持っていないという状況で来たときに初めて開始になるわけです ね。仮に50万がラインだとするとね。  確かにおっしゃるとおりですけれども、多分個票でやる場合にはそれしかできないというか、 なかなかそこは難しいと思います。 ○橘木委員 技術的に困難だというのはよく分かりますけど、この数字の意味はよく分かりまし た。 ○岩田委員 ですから、一般的にはやっぱりフローだけでやるんですよね、算定はね。だから、 保護課がおっしゃる厳密にできないというのは、最終的な認定というのは裁量の幅が非常に高い ので、そういう意味では捕捉率って出せないんですよ。つまり、労働能力の活用をどう見るとか 扶養をどう見るということによって違ってきますから、できないので。できるのは、やっぱり厳 密にできるのはフローだけですね。だから、先生のような仮定を置かずに、貯金は貯金として見 るとするとという感じですね。  だから、1日で使い果たせばいいわけですけれども。時にはなる。 ○伊奈川参事官 保護課のほうで何かコメントありますか。いいですか、とりあえず。  ほかの先生、いかがでございましょうか。  貝塚先生、お願いします。 ○貝塚委員 介護保険の話をやっているときに、精神障害者に関する現在の社会的な対応は相当 遅れているというのが私の見方ですね。だから、やっぱりステップとして、精神障害者をどうい う形で社会で受け入れるかということを次の段階できっちりしないと、今は結局年をとっちゃっ てうまく働けないのは、それはそれで介護保険である程度は。だけれども、やっぱり残された人 が依然としてあるということは、以前の制度のままですね、その辺はやっぱり大きな問題じゃな いかというふうには、多分、先進諸国で日本の制度と比較した場合、かなり差異があるのかもし れません。私は全然分かりませんけどね。だから、その辺のところは今後の政策課題であるんじ ゃないでしょうかというのは、全くこれは離れた話ですが、ちょっとそういう感想を持ちました ということです。 ○駒村委員 2つありまして、1つは、この統計データから完全に生活保護の捕捉率を算出する ことはできなくて、やはり一瞬見たこのデータに生活保護制度を適用したらどうなるかであって、 生活保護の実際のいわゆる捕捉率というのは、このデータからは出しようがないというのが。だ から、近似はできるというか傾向は分かると。このくらいのカバーなんだなという程度のものだ と思います。  だから、それをさらに踏み込むと、じゃ要保護世帯とは何なんだというところまでいかなきゃ ならないんで、海外ではそこまでさかのぼって、どこへ脱落していくのかという、その情報とか 申請とか周りの目とか、どこで脱落していくのかということをチェックする研究というのはまた あるんですけどね、日本でそういう研究は今のところないようです。  それからもう1つ、コメントで、自殺のほうなんですけれども、この支援体制なんですけれど も、果たしてこの支援体制、これは応援したいところなんですけれども、非常にこの資料の4− 2を見る限り脆弱なのかなと。例えばこの専門職員という方は、身分はどういう形の人が、つま り正職員なのか、非常勤みたいな形なのか、どういう形で勤めていらっしゃるのか。  あるいは861の実施主体に対してわずか94しか存在しないということや、この3,929人に対して 1,528人、一定の成果というのは一体どうふうな成果を指しているのか、その政策評価はどうな っているのか。あるいはセーフティネット支援補助対策事業費のような、ある意味時限的な予算 措置で、本当にこれがいいのかですね、この辺は議論していかなきゃいけないなと思いました。 ○伊奈川参事官 保護課、お願いします。 ○三石保護課長 専門職員の数でございますが、そもそもこういった自殺者の実態の数を出すの が初めてでございまして、そういう意味ではご指摘のように、そもそも実態把握が脆弱であった のかなと考えております。  また、専門職員のうち、「嘱託等」、すなわち正規職員ではなくて嘱託やほかに本職があってそ の方に委託するというケースも含めて「嘱託等」の数は、資料にございますように21年12月末で 150名です。正規職員の専門職員の方もいらっしゃるんですが、その数は手元にございません。  それから、実際に861自治体のうち、就労支援とかほかの自立支援プログラムなどについては 相当、今、力を入れてやってきておりますけれども、こういった精神疾患の専門職員の方が94と いうことで、そういう意味では手薄になっているのかなと思っております。そういう意味もござ いまして、今後予算措置も含めて、そういう専門職員の方々の増配置等を考えていきたいと思っ ています。  各自治体の評価基準の件ですが、自治体によって結構ばらばらでございますので、ちょっと今 手元に資料がございませんけれども、そういったものも今後ある程度統一したものをつくるとい ったような政策が必要ではないかと感じているところでございます。 ○清水社会・援護局長 自殺対策は、生活保護を受給している人に限らず、重要対策でございま して、政府全体の自殺対策もございますけれども、厚生労働省内でも障害保健福祉部で今、自殺 対策のプロジェクトチームで検討を鋭意やっているところでございます。また、精神保健医療全 体、これについてもいろいろと改革に取り組んでいかなければいけないわけでございまして、先 週の土曜日、大臣に都立松沢病院に赴いていただきまして、いろいろと精神保健医療の関係者の 方々とご論議していただいたわけでございまして、今、保護課長からご報告いたしました、福祉 事務所における対策と、それからオールジャパンでの自殺対策、双方からいろいろとやっていく という形かなと思っております。 ○伊奈川参事官 はい。 ○竹下委員 2点についてお聞きしたいのですが、まず資料3−2について、非常に気になる文 章なんですけれども、3−2の今後の対応(案)のところの1ですけど、これが今日出てくるこ とに極めて違和感を感じるんですね。これ、端的に言えば、今日出てきた捕捉率の資料を前提に、 国は十分やっているよということを何か言いたいがためにしか聞こえてこなくて、これが今日出 てくることに非常に疑問があります。  第一にですよ、この前半の「表すものではないが」というふうに限定しているんですけど、本 当にそうなのかどうか。もっと議論が要るのではないかと思うんですね。  その後の「資産や稼働能力等を活用しても」というところですけれども、この稼働能力の活用 のところですが、私に全体を見る力がないのかもしれませんが、活用というところはその内容を めぐり現場で対応できていないからトラブルになっているわけでしょう。すなわち、稼働能力が あるという形式的な判断だけで、活用という4条の要件が十分に受け止め切れないまま、すなわ ち、あんたは稼働年齢層にあるから駄目だというのが現場の実態になっており、そのことを無視 しているという現実からこの文章は出ているし、その後に、「保護を受給する意思のある方が」 というところはいいけれども、現実には現場では65歳以下の人に対しては、「あんたは保護を受 けられへんよ」と言っており、そう言われている人たちに、私たちが、「あんた、もう病気も持 っているんだから、保護受けに行こうよ」と言っても、「いやだ。65になる前に行ったら、福祉 事務所から冷たい目で見られるから行かへんねん」とおっしゃいます。そういう現実の中で、申 請の意思を問題にしているということには違和感があります。この時期にこんな文章が出てくる ことはなぜなのかなというふうに気になります。  それから、自殺のところですけれども、僕はこの分析を正しくないと端的に思うんですよ。現 に清水さんという、内閣府の参与にまでなっている方で、NPOのライフリンクの代表もされて いる方の分析を見ても分かるわけですけど、自殺の要因は1つじゃないというのはこれまでの分 析から見ても明らかであり複合的というか重層的というのか、ほとんどの場合に2つないし4つ の要因が重なって自殺しているという分析がされているはずですよ。この報告を見ていたら、生 活保護受給者の場合、分析としては精神疾患を持っている人が多いということになるのかどうか が気になりますし、精神疾患を持っている人が自殺率が高いということで済まされてしまうこと になります。  そうではなくて、家庭の問題、それからその他総合的な相談支援の問題、あるいはその方が抱 えているであろう人間関係の問題、そういうところに目を向けないまま、原因をこういう特定の 仕方をすることは極めて危険だというふうに言わざるを得ないと思うんです。  最後に局長が言った点もそこに重なるわけで、国の自殺対策費の付け方というのは非常に分か りにくいというか、僕はぴんと来ないんですね。例えば今おっしゃったように、福祉事務所限り では精神疾患の云々というけれども、自殺対策費を見ていると、国の予算でも見ていると、経産 省にも付いている。それから、文科省にも付いている。それから、内閣府にも付いている。それ で、厚労省にも付いている。それ以外にも付いているかどうか知りませんけれども。  それはなぜかということも想像ができますが、例えば自殺の原因が職場にあったり、それから 学校にあったり、そういう事情があるからこそ、自殺対策費がばらばらに付いていると言わざる を得ないわけでありますから、そうであれば、生活保護世帯についてもそうなんですけれども、 きちっとその自殺の原因ないしは要因というところを、もう少し丁寧な分析の仕方をしてから、 こういう統計的なものも評価すべきであって、一方的に原因を精神疾患に特定することによって、 生活保護世帯の抱えている現実の困難性というものを見なくなってしまうという危険があるので、 もう少し丁寧な分析をしていただきたいというふうに思います。  以上です。 ○伊奈川参事官 ちょっと時間の関係ございますが、ほかにもご質問のある先生いらっしゃいま したら、お聞きした上で、最後、保護課のほうから回答させていただきたいと思いますけれども。  岩田先生、お願いします。 ○岩田委員 質問じゃなくて、ちょっと要望なんですけれども、今の今後の対応とも関わって、 さっきの意見の集約の中にも出てきましたけれども、雇用保険と生活保護をつなぐとか、あるい は稼働者に対するセーフティネットの問題等も絡めますと、この今回の低所得世帯率の中の被保 護世帯者の割合、保護比ですね、保護世帯比の計算をするときに、子供のいる世帯については現 役世帯、非現役世帯という分け方なんですけど、これは年齢だけなので、勤労世帯、失業世帯と か、全消(全国消費実態調査)でも何か分けていますよね。何かちょっとそういうものでもやっ ていただくと。  見た感じだと、やっぱり高齢とか母子の場合はある程度捕捉されているような、ちょっと感じ はするんですけど、でも資料によっては、高齢者よりその他のほうが捕捉率が高く出ているのも あったりして、単身の場合ですね、何かちょっとその他というのはもう一つ分からないので、そ の辺をむしろ、数字それ自体というより全体の傾向ですね、どの辺が現在の生活保護とは非常に フィットしにくいかというようなことをむしろ明らかにしたほうが、別の制度をどう張るかとい う場合にもいい資料になるんじゃないかと思うんです。 ○伊奈川参事官 ほかの先生、いかがでございましょうか。  よろしければ、最後に保護課のほうから一括してお願いします。 ○三石保護課長 まず、竹下先生のご指摘でございます、資料の3−2の「今後の対応」の1がな ぜここで出てくるのかということでございますけれども、まずその前段の、このいわゆる漏給の 割合をあらわすものではないというところにつきましては、先ほどの繰り返しで恐縮でございま すけれども、そもそも今回の推計では、申請の意思のあるなしというのは全く加味しておりませ んので、そういう意味では申請の意思がありながら、生活保護を受けられないというようなもの をあらわす数字ではないという趣旨でございます。  一方で、これは今回初めて推計した数字でございますので、これは地方公共団体の方々にも周 知をさせていただいて、これまでも何度か私どもから地方公共団体に対しまして、ここに書いて いますような運用の徹底ということを行ってきているところでございますが、ここで改めて今回 の調査を契機に運用の徹底を図っていきたいという趣旨でございます。  それから、自殺率の調査のほうでございますけれども、ご指摘のように、自殺に至る経緯、複 合的なものであろうかと思います。そういう意味では、私どもの今回の調査結果、これで全てが 分析できたというものではございません。ただ、その一つの要因としまして、やはり精神疾患、 あるいは精神障害の方が多いというところがございます。実際に、先ほど現状をご覧いただきま したように、福祉事務所でもそういった専門家の方々、大変少のうございますので、これだけが 原因ではございませんけれども、これも一つの要因かと考えておりまして、被保護者の精神的ケ アができる体制の充実を図っていきたいと考えております。  それから、自殺対策全体についてでございますけれども、これは長妻厚労大臣も自ら指示を出 しまして、今、省内に、先ほど局長申し上げましたように、プロジェクトチームを設けて省を挙 げて取り組んでいるところでございます。  また、内閣府のほうでは、清水参与が中心に、政府全体としての取組をまとめているところで ございますので、そういったところと連携を図ってまいりたいと考えています。ただし、これま で生活保護受給者の自殺の実態に関するデータが余り議論されてこなかった、あるいはデータそ のものがなかったものですから、ここで実態を明らかにしましたので、そういった政府全体ある いは省全体の自殺対策の取組の中で、この生活保護受給者の問題についても考慮していきたいと いうふうに考えております。  それから、岩田先生のご指摘の資料の3−1ですが、単純に現役世帯、非現役世帯を年齢で区 分しております。個票データを見ますと、実際に勤労しているか、あるいは失業しているかとい うところも把握できるのかなと思います。もう少し精査は必要でございますけれども、うまくそ れが分析できるのであれば、ご指摘のような方向でぜひ作業に取り組ませていただきたいと思い ます。 ○伊奈川参事官 時間が過ぎましたので、今日はこれで終了とさせていただきたいと思います。  本日……あ、失礼いたしました。 ○雨宮委員 ちょっと今までの内容と関係ないんですけれども、前回の資料4が、前回時間がな くてできなくて、何か次回やるみたいな話があったと思うんですけど、今日なかったので、それ って私の発表への一部回答だったので、それに対しての時間は今後あるのかなというのがちょっ と早急に伺いたい。 ○伊奈川参事官 前回、資料につきましてはお配りをしてそれで終了と思っていたんですけれど も、次回、こちらのほうから説明をさせていただきたいと思います。 ○雨宮委員 ああ、すみません。 ○伊奈川参事官 それで、次回でございますけれども、5月10日月曜日でございます。時間は17 時半から19時までということで、場所はここ、省議室で開催を予定しております。  また、次回につきましては、本日先生方から貴重なご意見をちょうだいいたしましたので、改 めて事務局のほうでこれまでの議論を整理をさせていただいて、そしてお出ししたいと考えてお りますので、よろしくお願いいたします。  どうも本日はありがとうございました。 照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第一係 代)03−5253−1111(内線7692) ダ)03−3595−2159