10/03/31 第1回社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会議事録 10/03/31 社会保障審議会児童部会      児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会      第1回         厚生労働省 雇用均等・児童家庭局      社会保障審議会児童部会 第1回児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会 議事録 日時:平成22年年3月31日(水) 15:00〜17:00 場所:厚生労働省 共用第7会議室 出席者:  委員   才村委員長、磯谷委員、大村委員、長委員、佐藤委員、庄司委員   松風委員、豊岡委員、中島委員、松原委員、水野委員、吉田委員  オブザーバー   最高裁判所  小田第一課長、進藤局付   法務省    飛澤参事官、羽柴局付  厚生労働省   伊岐雇用均等・児童家庭局長、香取大臣官房審議官   藤原家庭福祉課長、杉上虐待防止対策室長、千正室長補佐 議題:  1. 開会  2. 議事   (1)委員長の選出について   (2)児童虐待防止対策について   (3)児童虐待防止のための親権制度研究会報告書について   (4)その他  3. 閉会 配布資料:  資料1  児童虐待防止のための親権の在り方に関する専門委員会の設置について  資料2  児童虐待防止のための親権制度の見直しについて  資料3  児童虐待防止対策について  資料4  児童虐待防止のための親権制度の見直しに関する主な論点  資料5  対応に苦慮する場合として指摘されている主な事案  資料6  児童虐待防止のための親権制度研究会報告書  資料7  児童福祉法28条事件の動向と事件処理の実情(平成21年1月〜12月)  資料8  児童福祉法28条1項事件の既済事件の推移  資料9  親権・管理権の喪失の宣告・取消し事件の事件数等の動向       (平成21年1月〜12月) 参考資料1 参照条文 参考資料2 各団体からの要望書 議事: ○杉上虐待防止対策室長  定刻になりましたので、ただ今から「第1回児童虐待防止のための親権の在り方に関する 専門委員会」を開催させていただきたいと思います。委員の皆さま方におかれましては、御 多用のところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。  第1回ということで、会議に先立ちまして事務局より委員の皆さまの御紹介をさせていた だきたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。  まず、磯谷文明委員でございます。くれたけ法律事務所の弁護士でいらっしゃいます。  大村敦志委員でございます。東京大学法学部教授でいらっしゃいます。  長秀幸委員でございます。東京家庭裁判所判事でいらっしゃいます。  才村純委員でございます。関西学院大学人間福祉学部教授でいらっしゃいます。  佐藤進委員でございます。埼玉県立大学学長でいらっしゃいます。  庄司順一委員でございます。青山学院大学教育人間科学部教授でいらっしゃいます。  松風勝代委員でございます。大阪府福祉部子ども室家庭支援課参事でいらっしゃいます。  豊岡敬委員でございます。東京都児童相談センター次長でいらっしゃいます。  中島圭子委員でございます。日本労働組合総連合会総合政策局長でいらっしゃいます。  松原康雄委員でございます。明治学院大学社会学部社会福祉学科教授でいらっしゃいます。  水野紀子委員でございます。東北大学大学院法学研究科教授でいらっしゃいます。  吉田恒雄委員でございます。駿河台大学法学部の教授でいらっしゃいます。  御出席いただいております委員の皆さまは定足数を超えておりますので、会議は成立して おります。  続きまして、事務局側の紹介をさせていただきます。まず、オブザーバーとして最高裁判 所と法務省から御出席いただいておりますので、御紹介させていただきます。  最高裁判所事務総局家庭局の小田第一課長でございます。  同じく、最高裁判所事務総局家庭局の進藤局付でございます。  法務省民事局の飛澤参事官でございます。  同じく、法務省民事局の羽柴局付でございます。  続きまして、事務局の厚生労働省のメンバーを紹介させていただきます。まず、雇用均等・ 児童家庭局長の伊岐は出席の予定ですが、国会用務が入っておりまして遅れております。  大臣官房審議官雇用均等・児童家庭担当の香取でございます。  家庭福祉課長の藤原でございます。  そして、私は虐待防止対策室長の杉上でございます。どうぞよろしくお願いします。  隣におりますのは、虐待防止対策室長補佐の千正でございます。事務局のメンバーは以上 でございます。  それでは、本日は第1回の会議ということで、伊岐雇用均等・児童家庭局長より御挨拶申 し上げる予定でございましたが、先ほど申しましたとおり遅れておりますので、審議官の香 取より御挨拶申し上げます。 ○香取審議官  審議官の香取でございます。今、申し上げましたように、局長は今、国会用務で大臣と随 行しております。追っ付けまいると思いますが、冒頭、大変恐縮でございますが、私から一 言御挨拶申し上げます。  本日はお忙しい中、第1回の「社会保障審議会児童部会児童虐待防止のための親権の在り 方に関する専門委員会」に御出席いただきまして、ありがとうございます。虐待防止の問題 につきましては、御案内のように平成12年に児童虐待防止法が制定されております。その 後、平成16年、19年と二度の制度改正がございまして、その間、基幹法であります児童福 祉法につきましても、何回かの改正をいたしております。その過程で、児童相談所の権限強 化あるいは支援メニューの強化など、いろいろな手当てをしてきたところでございますけれ ども、児童虐待の現状は決して予断を許すものではございません。児童相談所における虐待 相談対応件数は、平成20年は4万件を超え4万2,664件という数に及んでおります。また、 虐待の疑いによって亡くなる子どもが年間約50件程度で推移しております。ここ1か月の 間でも既に新聞で私が覚えているだけでも4、5件が報道されておりまして、非常に厳しい 状況にあるということでございます。虐待の問題は、国ももちろんそうですが、地域や自治 体あるいは親御さんを取り巻くさまざまな要素を含めた社会全体で解決していかなければ いけない問題であると考えております。  子どもの問題は少子化対策あるいは子ども子育て施策ということで、この政権におきまし ても非常に重要な政策課題として、さまざまな取組を進めているところでございます。御案 内のように、今度の国会にも子ども手当法案、児童扶養手当法案といった法案を出しており ますし、また、先般取りまとめられました子ども・子育てビジョンの中でも、この社会的養 護、虐待の問題についても記述がなされているところでございます。  先ほど申し上げました平成19年の改正の中で、児童虐待に対するいろいろな制度的な対 応の中の一つとして、親権と虐待の関係あるいは親権と社会的養護に携わっております児童 相談所や施設の関係、さまざまな法律関係も含めて、その在り方について検討する旨の規定 がございます。これを受けまして、先週は法務省でも同様の趣旨で法制審議会の部会がつく られております。今日のメンバーの中にも何人か兼ねてお願いしております先生方がいらっ しゃいますけれども、それぞれ連携しながら、この問題について検討を進めて一定の対応を していくことになっているところでございます。  この問題は非常に論点が多岐にわたっております。さまざまな難しい問題あるいは虐待以 外のさまざまな子どもと親、地域の関係をどのように整理していくかという問題があるわけ でございますけれども、直面している児童虐待の問題の深刻さということを考えますと、や はり我々は最善の努力をできる限りやっていくことが必要であるということで、今日お集ま りの皆さまのさまざまな専門的な知見をいただきながら、具体の形として法律改正・制度改 正をやっていかなければいけないと思っているところでございます。なかなか難しいテーマ で、我々もできるだけお手伝いをしながら、良い議論ができるようにと思っております。ど うぞ、委員の皆さま方には、この会議で良い成果が得られますように、よろしく御支援いた だければと思っております。以上、簡単でございますが冒頭の挨拶として申し上げました。 どうもありがとうございました。 ○杉上虐待防止対策室長  それでは、議事に移らせていただきたいと思います。  まず、委員長を選任していただく必要がございます。大変恐縮ですが、事務局としまして は、社会保障審議会児童部会の委員でもあり、虐待対策あるいは児童福祉対策に精通されて いる才村委員に委員長をお願いしたいと思っておりますが、御異存等がございますでしょう か。 (「異議なし」の声あり) ○杉上虐待防止対策室長  それでは、才村委員に委員長をお願いすることとしまして、以降の議事運営をお願いした いと思います。委員長席への移動をよろしくお願いいたします。 ○才村委員長  委員長を仰せつかりました才村でございます。よろしくお願いいたします。委員の皆さま の御協力をいただきまして、円滑な議事運営に努めてまいりたいと思いますので、よろしく お願いいたします。  それでは早速ですが、はじめに本専門委員会の会議の公開の扱いと資料の確認について、 事務局からお願いしたいと思います。 ○千正室長補佐  それでは、まず本専門委員会の会議の公開の扱いについてです。会議そのもの、それから 資料については公開とさせていただきます。また、議事録につきましては後日、委員の皆さ まに御確認いただいた上で厚生労働省のホームページ上で公開させていただきたいと思っ ております。  続きまして、お手元に配布させていただいております資料の確認をさせていただきます。 最初に議事次第、座席表がございます。資料1としまして「児童虐待防止のための親権の在 り方に関する専門委員会の設置について」、資料2が「児童虐待防止のための親権制度の見 直しについて」、資料3が「児童虐待防止対策について」、資料4は「児童虐待防止のための 親権制度の見直しに関する主な論点」、資料5は事例が書いてありますけれども「対応に苦 慮する場合として指摘されている主な事案」、資料6が「児童虐待防止のための親権制度研 究会報告書」、資料7が「児童福祉法28条事件の動向と事件処理の実情」、資料8が「児童 福祉法28条1項事件の既済事件の推移」、資料9が「親権・管理権の喪失の宣告・取消し 事件の事件数等の動向」であります。それから、参考資料1といたしまして参照条文を、参 考資料2としまして、さまざまな団体からの要望書を付けております。  以上です。不足等がございましたら、お申し出ください。 ○才村委員長  資料の方は、よろしいでしょうか。  本日の議事進行についてですが、本日は第1回でございますので、本専門委員会において 議論を始めるに先立ちまして、本専門委員会の設置の趣旨、さらに今後のスケジュールにつ いて事務局より説明をいただきたいと思います。その後「児童虐待防止対策について」と「児 童虐待防止のための親権制度研究会報告書」について、事務局より説明いただいた上で、今 日はフリートーキングということで、御自由に御議論いただければと思います。  まず、事務局より設置の趣旨と今後のスケジュールについて、説明をいただきたいと思い ます。 ○杉上虐待防止対策室長  それでは、事務局から順次御説明申し上げます。私からは本専門委員会の設置の趣旨と児 童虐待防止対策について御説明申し上げた後、最高裁判所からも資料の提供がございますの で、家庭裁判所における児童虐待関連事件の現状について御説明いただき、さらに「親権制 度研究会報告書」の中身について、事務局より御説明したいと考えておりますので、よろし くお願い申し上げます。  まず、資料2を御覧いただきたいと思います。「児童虐待防止のための親権制度の見直し について」ということであります。第1に掲げてありますとおり、現在の制度では、児童虐 待の事案等において、子の利益の侵害を防ぐという現実の必要性に応じた適切な親権制度が 困難であることなどから、児童福祉法及び児童虐待防止法における諸課題と併せて、民法の 親権に関する規定の見直しを検討する必要があるという趣旨につきまして、冒頭で審議官か ら御説明申し上げましたように、第2の1にありますが、平成19年の児童虐待防止法等を 改正する法律の附則により、政府は施行後3年以内に親権に係る制度の見直しについて検討 を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとされております。  これにつきまして、第2の2にありますとおり、平成21年6月から「児童虐待防止のた めの親権制度研究会」を法務省、それから私ども厚生労働省と最高裁判所事務総局担当官も 入った上で、幅広い分野の方から論点整理あるいは民法改正の要否の検討等ということで御 議論いただきました。この結果については、平成22年1月に研究会の報告書の取りまとめ という形で取りまとめられたところです。この報告書の中身につきましては、後ほど御説明 したいと考えております。  この報告書を受けまして、「法制審議会への諮問等(民法関係)」ということで平成22年2 月5日に法制審議会へ諮問されております。さらに、それに基づきまして「児童虐待防止関 連親権制度部会」が設置されまして、3月25日に第1回の会議が開催されたところであり ます。本専門委員会の複数の委員については、この部会にも所属していただいているという 形で、連携を取りながら審議を進めていきたいと考えております。  第2の4でございますが、社会保障審議会においても児童福祉法や児童虐待防止法関係の 議論をする必要があるということで、平成22年2月17日の社会保障審議会児童部会にお いて、この専門委員会の設置について了承いただいたということで本日、第1回専門委員会 を開催させていただく運びになったわけでございます。  次に、資料1でございますけれども、社会保障審議会児童部会では、このような形で御了 承いただいております。設置の趣旨は、先ほど申したとおり、児童福祉法及び児童虐待防止 法に関して、児童虐待の防止等を図る観点から親権の在り方についての検討を行うためにこ の委員会を設置するということです。専門委員会の委員については、幅広い分野から委員へ の就任をお願いいたしまして、今日お集まりの皆さま方でという形にさせていただいたとこ ろであります。また、2の(3)にありますとおり、司法関与の問題等がございますので、専 門委員会については法務省及び最高裁判所に参加を求めるということと、特に必要があると 認めるときは関係者を招聘して意見の聴取等を行うことにさせていただいております。  専門委員会での検討事項につきましては、後ほど報告書の中身の説明の中で申し上げます が、児童福祉法関連の分野としましては、ここに書いてある四つの事項が中心になるのでは ないかと考えております。この事項に限るかというと、関連する部門が当然出てくると思い ますので、必ずしもこれに限定するわけではありませんけれども、スケジュール等を考えつ つ、委員の皆さま方と御相談しながら進めさせていただきたいと思っているところでありま す。  恐縮ですが、資料2に戻っていただきまして、最後のページに「今後のスケジュール」と いうことで、これは社会保障審議会児童部会で専門委員会の設置を求めたときに、このよう な形でやらせていただきたいということで御説明したところであります。いずれにしても、 今日が第1回ということで、皆さまの御意見等も踏まえながらやっていきたいと思いますの で、これに限るわけではございませんが、第2回以降のスケジュールについては「第1回専 門委員会で御議論」いただくとしておりますが、少なくとも5回程度は開催する必要がある のではないかと考えております。また、後ろについては、冒頭で申し上げたとおり「3年以 内に見直しを行う」ということで、平成23年2月には何らかの取りまとめをお願いしたい。 このような形で進めさせていただきたいと考えております。  また、これも後ほど報告書の中身の説明の際に申し上げますが、親権と施設入所中の子ど もの監護との関係等がございますので、施設の関係者あるいは里親の関係者からのヒアリン グ等も考えていきたいと思っております。設置の趣旨と進め方については、以上のとおりで ございます。  続きまして、資料3の「児童虐待防止対策について」でございます。ここにお集まりの皆 さまは児童虐待に造詣の深い方々でございますので、ポイントだけを御説明申し上げます。 また、資料の追加等の御要望がありましたら、事務局に言っていただければと思います。  1枚おめくりいただきまして、「児童虐待防止対策の経緯」でございますが、これも審議 官から御説明申し上げたとおり、平成12年に児童虐待防止法が成立しております。その中 で、児童虐待を身体的虐待、性的虐待、ネグレクト(養育放棄)、心理的虐待という4類型で 定義したということであります。それまで「要保護児童」というひとくくりの中でやってい たものを「虐待」と明記したということであります。併せて、「虐待を受けた児童」の通告 義務も設けられたところであります。平成16年には第1次の改正がなされまして、虐待の 定義の見直し、拡大でございますけれども、同居人による虐待を放置すること等も虐待であ るという位置付けにした。あるいは通告義務の範囲の拡大ということで、先ほど「虐待を受 けた児童の通告義務」と申しましたが、このときには「虐待を受けたと思われる場合」も通 告の対象としたこと。あるいは、市町村の役割を明確化した。また、市町村で虐待の対応を していただくに当たって、要保護児童対策地域協議会を設けて関係機関が連携してやってい くという法律改正もなされたところであります。また、平成20年4月に児童虐待防止法・ 児童福祉法の改正ということで、これが直近の改正となるわけでございますけれども、児童 の安全確認等のための立入調査等の強化、あるいは面会・通信等の制限の強化といったもの が盛り込まれたところでございます。また、この中で社会的養護の拡充等、子育て支援事業 等を拡充して、結果的に虐待の予防対策を進めるということで、平成21年4月から児童福 祉法において乳児家庭全戸訪問事業や養育支援訪問事業等子育て支援事業の法定化を行い まして、これらを市町村に努力義務をかけて推進しているところであります。また、この法 律改正の中におきましては、要保護児童対策地域協議会の機能強化や里親制度の拡充等も盛 り込まれたところであります。  次に2ページでございますけれども、直近の数字で4万2,664件が児童相談所における虐 待相談対応件数であるということです。その下でございますけれども、残念なことに制度的 な枠組みをつくっていただいているにもかかわらず、虐待によって子どもが死亡した件数は、 年間概ね50件程度で推移しているということを表しております。  親権といいますか児童相談所の強制的な権限等に関連する部分だけを御説明したいと思 います。11ページでございますが、「家庭への立入調査」ということで、児童相談所は立入 調査ができる権限を持っているわけでございますけれども、その件数の推移について入れさ せていただいているものでございます。平成16年度に287件とピークを迎えて平成20年 度は148件と、数字的には減っておりますが、これも後ほど御説明申し上げますが、この 間、児童相談所が一時保護した件数は減っているわけではありません。また、28条の申立 てにつきましても増加の傾向が見られます。いろいろな権限を付与されたことに伴いまして、 児童相談所としては立入調査という権限行使ではなく、家庭訪問の一環として家庭に入ると いう形で保護者とうまくやりながら対応しているケースが増えているのではないかとも考 えられるかもしれないということであります。  それに関連しまして、次の12ページには「児童相談所における一時保護の状況」につい て、入れさせていただいております。直近の数字でいいますと、平成20年度の総数で1万 9,220件ということで、そのうち一番多いものが左端の「児童虐待」ということで7,674件 と全体の4割を占めています。先ほど申しましたとおり、虐待に伴う一時保護の状況は増加 傾向にあるということでございます。  それから、14ページの「児童福祉法第28条及び第33条の7の件数」でございます。家 庭裁判所の承認を得て行う施設入所措置ということでございます。児童相談所は保護者の同 意を得て施設入所ということを心掛けていますけれども、なかなか同意が得られないケース で家庭に帰すことができないケースが当然ございます。「28条による施設入所措置の承認申 立」ということで、直近の数字でいいますと請求件数が230件、承認件数が173件(75%) という数字になっております。これは後ほどの最高裁判所の資料にあると思いますけれども、 請求件数と承認件数の差分がすべて承認されなかったというわけではなく、この中には取下 げ等、努力した結果として同意入所に切り替えたケースもあるのではないかと思います。そ れから「33条の7による親権喪失宣言の請求」ということで、児童相談所長の権限として 親権喪失の申立ての請求ができることになっております。数字的にはここに掲げているよう な数字ということでございます。  次の15ページには施設の状況について書かせていただいております。我々は「社会的養 護」と言っておりますけれども、そこに書いておりますように「里親」は家庭で子どもを預 かるような形態のもの。それから、いわゆる施設ということで乳児院・児童養護施設等ここ に書いてある施設が虐待を受けた子どもが行かざるを得ない施設ということになっており ます。これらすべての数字を合わせますと、大体4万人ぐらいの子どもが家庭外で暮らすこ とを余儀なくされているということになっております。  それから、21ページでございますが、前回の児童虐待防止法の改正の概要を付けさせて いただいております。前回の改正は平成19年6月に成立したわけでございますけれども、 平成16年改正法附則に基づいて3年後の見直し規定がありました。これについて超党派の 議員立法として改正案がまとめられまして、平成20年4月から施行されているということ でございます。  次の22ページでございますけれども、その中で一番大きく話題になったもので「解錠等 を可能とする新たな立入制度の創設」ということで、ここに掲げさせていただいております 「平成20年度において実施された出頭要求等」であります。児童相談所が家庭訪問をする わけですけれども、子どもの姿が見えないというようなケースにどのような対応をしていく かということで、手順を踏んだ上で裁判所へ許可状を請求して、実力行使をするという流れ になっていまして、黒塗りになっているところが新しくできた制度ということで、出頭要求 をかけても応じない場合は立入調査をする。それでもうまくいかない場合は再出頭要求をし て、さらにうまくいかない場合は、裁判官への許可状を請求して許可状の発付を得て、臨検・ 捜索という解錠等を伴う実力行使ができるようになったということです。臨検・捜索まで至 ったケースについては1年間で2ケースでした。また、その前提として出頭要求等が28ケ ースあるわけですが、その中で出頭要求をかけることによって在宅支援につながったケース もここに書いてあるケースとしてあります。また出頭要求に応じなかったのですが、その後 家庭訪問をした後、一時保護に至ったケースやさまざまなケースについて取りまとめさせて いただいたということです。  それから、27ページです。今回の議論の一つにもなると思いますが、面会・通信制限の 強化ということです。平成19年の改正前と改正後ということで付けています。一時保護の 場合、同意入所の場合、28条の強制入所等の場合ということで三つに分けていますが、平 成19年改正以前につきましては、強制入所のときだけが面会・通信制限をかけることがで きたと見ていただけたらと思います。改正後につきましては、一時保護、同意入所のときで あっても面会・通信制限ができるようになった。さらに言うと強制入所措置の場合について は、それに加えて接近禁止命令、いわゆるつきまとい・はいかいを禁止することの命令が出 せるようになったことを表しているわけです。  また、28ページですが、それに関連しましてこの図をどのように見るかですが、例えば 一時保護をしている場合は接近禁止命令はかけることができないと今、申し上げました。た だ、ここについて緊急性がある場合については、28条措置を申立てるとともに、裁判所の 保全処分としてつきまとい・はいかいの禁止をかけることができるという枠組みもこの時に つくられております。端折りましたが虐待防止対策ということで関連事項になると思われる 部分を中心に御説明申し上げました。よろしくお願いいたします。  引き続きまして、最高裁判所からです。 ○小田第一課長  それでは、私から御説明いたします。資料の7、8、9でございます。児童虐待関連事件 として児童福祉法28条関連事件と親権喪失関連事件を取り上げ、その動向と実情について 簡単に御説明いたします。  まず、児童福祉法28条関連事件でございます。資料7がそれでございます。今、申し上 げたとおり、事件数の動向その他の項目をかいつまんで御説明いたしますが、まず3ページ の児童福祉法28条1項で定められた施設入所措置承認の審判申立事件の事件数の動向でご ざいます。先ほど厚生労働省から御説明のありました参考資料2の12ページとはそれぞれ 把握している数字が異なることから、若干異なったものとなっております。申立件数につい て多少の増減はありますが、ここ10年間増加を続けており、平成21年の申立件数は平成 11年の約2倍となっております。なお、この後1枚紙であります資料8ですが、こちらの 司法統計に基づいて既済事件の終局事由別の割合の推移を示したものです。その終局分です が、近年は取下げが少しずつ減る傾向にあることに伴って、認容率は上昇傾向にあり80% 台で推移しています。  今、申し上げたとおり4ページ以下はそれぞれ項目に応じてですが、時間の制約もありま すので、およそ3点ほどに分けて御説明いたします。一つ目が虐待の態様別件数、二つ目が 審理期間、三つ目が保護者指導と平成16年の法改正により導入されました都道府県への保 護者指導勧告制度が3点目です。いずれの数値も司法統計上の既済件数207件のうち、私 どもで把握できた172件の事案を分析したものですので、おおよその傾向を指摘するにと どまるものであることにご留意ください。  まず、虐待の態様についてはこの資料の6ページでございます。平成21年についてこち らに記載がありますが、重複があります。その中でネグレクトが125件と最も多くなって います。その次が8ページの審理期間ですが、こちらに記載されていますとおり、平成21 年については2か月以内に36.1%の事件が、3か月以内に58.2%の事件が終局しています。 裁判所の手続きとしては調査官による調査、また裁判官の審問というものがありますが、そ のような手続きを踏みながら相当な期間内に終局しているものといえると思います。3点目 の保護者指導勧告ですが、概況の9ページになります。平成21年については28条1項の 申立てが認容されて、かつ家庭局で把握しました152件のうち20件、率にしますと約13% の事件について保護者指導勧告がなされています。この制度は平成16年の児童福祉法改正 に伴って導入されたものですが、平成17年以降は平成21年と同様で毎年十数%に当たる 事件で勧告がされています。  10ページ以下は今度は28条2項の事件です。平成16年の児童福祉法の改正によって施 設入所措置期間が2年という期限が定められました。これに伴って導入された28条2項の 期間更新承認申立事件についてでございます。概況の10ページでございます。こちらに記 載のとおり、この司法統計ですが、平成21年の新受件数は92件です。1割弱の事件が取下 げにより終了していますが、残り約9割は認容により終局しています。その次に事件処理の 実情ですが、13ページです。先ほどと同様に保護者指導の勧告です。平成21年については 母数が77件ですが、そのうち22件、率にしますと約28.6%の事件について保護者へ指導 勧告がなされました。この制度は、先ほど申し上げたとおり16年改正によって入ったもの ですが、2項の勧告に関しては利用状況が年によって大きく異なりますので、傾向が先ほど の1項とは異なりまして読みにくい状況です。  次に、15ページを御覧ください。先ほどの厚生労働省からの御説明の中にもありました 裁判所の特別家事審判規則18条の2による審判前の保全処分事件の事件数の動向です。審 判前の保全処分は平成16年改正に伴ってまず平成17年に面会・通信制限として新設され ました。その後、平成19年改正によりまして18条2の条文はそのままであったのですが、 内容がつきまとい・はいかい禁止に改められたものです。15ページにありますとおり、こ のつきまとい・はいかいの禁止については現時点で申立てがあった事件を把握していません。 制度としての利用状況は極めて低調な状況にあります。  それから、概況には掲載されていませんが、先ほど厚生労働省の資料の22ページにあり ましたこの導入された制度として臨検・捜索令状事件があります。先ほど御説明のあったと おり現時点で2件発令された事案があると聞いています。  資料9の親権喪失関連事件です。こちらも司法統計に基づくものが主ですが、資料9に少 し注釈を加えますと、親権喪失事件だけではなくて、司法統計の中では管理権喪失、それか ら親権なり管理権の喪失の取消し事件を含むものですが、ほぼ親権喪失事件が100%とお考 えいただいてよろしいものと思っています。新受事件全体で見ますと年間100件を超えて いますが、取下げにより終局する事件が多く、認容される事件は年間20件前後にとどまっ ています。そこで、申立人別で御説明してまいります。3ページを御覧ください。既済事件 111件について申立人と終局事由の別を取りまとめたものです。申立人別に見ますと親族に よる申立てが大半です。親族申立事件の合計105件のうち73件は取り下げ、11件は却下で 終局しています。認容は16件にとどまっています。また、他方で児童相談所長申立事件は 6件にとどまっていますが、そのうち5件が認容で、1件のみが取下げで終局しています。 親族申立ては今大体申し上げたとおりです。児童相談所長申立事件の特長について簡単に御 説明します。今、申し上げたとおり児童相談所長申立事件は5例です。終局した5例のうち 4例が認容で、このうち3例が性的虐待を理由とするもの。1例は少し特殊な事情のようで すが、未成年者が28条審判によって施設入所した後、実母が施設職員に対する傷害、脅迫 事件により服役し、出所した後も未成年者の福祉を害する言動があったことを理由としてい ます。取下げにより終局したものが1件ありますが、これはいわゆる輸血拒否事案でありま して、審判前の保全処分が発令された後、法案が取下げられたものです。  以上、御説明しましたとおり28条審判事件については立証が難しいといわれるネグレク ト事案についても積極的に申立てがされていますし、認容もされる傾向にありますし、審理 期間も相当の範囲内に収まっているものと思われます。他方で、先ほどの厚生労働省の資料 の2ページにもありましたとおり、児童虐待相談対応件数は増加の一途をたどっていますが、 28条1項事件の申立てについては大幅な伸びは見られない状況でございます。また、従前 の改正で導入された面会・通信制限やつきまとい・はいかい禁止などの審判前の保全処分、 臨検・捜索令状などの制度については、その申立件数は極めて少ない状況にあり、保護者指 導勧告の利用も一定割合、十数%と申し上げましたが、その状況にとどまっています。この ように児童虐待分野における司法手続き全般について、児童相談所などによる利用が差し控 えられているものと思われ、家庭裁判所にとっては児童相談所などの児童虐待の現場におけ る制度利用の必要性や制度運用上の課題などが見えにくい状況が続いております。これらの 必要性や課題などについて、十分に御議論いただくことを期待しております。以上でござい ます。 ○千正室長補佐  続きまして、親権制度研究会の報告書の内容について御説明申し上げます。資料4と5 を御覧いただければと思います。親権制度研究会では、まず資料5にありますような具体的 に対応に苦慮する場合として指摘されている事案を想定しまして、それぞれについて具体的 に制度的にどのような対応が可能なのかということを整理して、それぞれの論点について課 題や積極的な意見あるいは消極的な意見というものを論点によっては両論併記のような形 で取りまとめた形になっています。  資料4の構成ですが、白い丸が付いているものは、この研究会の中では特に民法に関する もの、児童福祉法あるいは虐待防止法に関するものを区別せずに議論がなされたところです。 具体的に制度に落とし込むに当たっては、白丸のものは主に民法に関係する論点、黒丸は主 に児童福祉法あるいは虐待防止法に関する論点ということで整理させていただいておりま す。審議会との関係でいいますと、白丸は民法の関連ですので、主に法制審議会で御議論い ただいているもので、黒丸の方が児童福祉法あるいは児童虐待防止法の関係ですので、社会 保障審議会で主に議論をするという関係になっています。ただ、両者は有機的に関連するも のですから、ここでは黒丸を中心としながら必要に応じて白丸を含めて御議論いただければ と思います。  まず、資料5の事案について御説明申し上げます。まずAですが親権者による児童虐待 があるために、親族が子を養育するのが本来は適当である。しかしながら、親権者がそのこ とに納得しない。そのような状況にあるのですが、親権を喪失させるほどではない。喪失さ せるのは躊躇される事案というのがあります。  Bは親子分離した後ですが、施設入所中あるいは里親と委託している最中、また一時保護 中の児童の監護・教育に関する事項について、児童の親権者が施設入所中も親権喪失宣告が なされていない場合は、実親には親権がありますので、親権者が不当な主張をする場合に施 設長、里親あるいは児童相談所長が児童の福祉のために必要な措置を行うのに支障が生じる ような事案というケースです。  それからCですが、親権者がその精神上の障害等により子を適切に養育することが著し く困難な状況ですが、現行の親権喪失宣告の要件であります親権の濫用また著しい不行跡と いう原因に該当するとは必ずしもいえない事案についてどのように対応していくかという ことです。  Dです。親権者が民法に規定している懲戒権を盾に、しつけだということで児童虐待を正 当化するケースがあります。そういった態度の保護者に対して児童相談所の児童福祉司等に よる指導を受けたり、あるいは養育態度を改善しようとする姿勢が見られない。しかしなが ら、親権を喪失させるまでは躊躇されるという事案です。  Eは医療ネグレクトの事案です。これは例えば施設に入っている子どもで、本当は適切な 治療を受けさせた方が本人のためには良いと客観的に思われるケースにおいて、例えば手術 をするときは医療機関で親権者の同意を求めることが実情としてありますので、親権者が適 切な治療を受けさせることに同意しない場合には、その治療ができないという事案がありま す。  それからFです。これも施設入所等のケースですが、例えば高校生くらいの年長の子ど もが自らアルバイトで稼いだお金などで自分の名義で携帯電話を利用契約する。これは一般 の家庭におきましては親御さんの同意があって自分で携帯電話を持てるわけですが、施設入 所中の場合にも携帯電話会社から親御さんの同意を求められたときに、親権者が同意しない ということで、子どもの名義で携帯電話を持てないというケースが指摘されているところで す。  Gですが、例えば高校を卒業した子どもや年長の未成年者が児童養護施設等から退所した 後に、実際には親から独立して1人でアパートを借りたり就職をしようとしたりするわけで すが、例えばアパートを借りる貸借契約や、職業への同意、雇用契約の同意について親権者 が同意しないケースの場合に、契約の締結をすることができず、自立が阻害されるケースが あるのではないかという事案です。  Hですが、同じように年長の未成年者が施設から退所した後に、実際には自立して生活 をしているわけですが、親権者が子どもにつきまとったり、その周囲をはいかいしたりする 事案について実態的にどのような対応ができるかという事案です。  Iですが、これは親権者の態様が非常に悪い。親権喪失の原因はあるのだけれども、実際 に喪失させた後に未成年後見人を引き受けてくれる人がいないことから、本来ならば親権喪 失宣告の申立てをした方が良いと思われるけれども躊躇される事案です。  このような事案を想定して、それぞれ制度的な対応についてまとめたものが資料4でござ います。資料4を御覧ください。まず1番の「親権に係る制度について検討するに当たって の一般的な視点」ですが、これは基本的な認識、考え方です。まず親権は子の利益のために 行わなければならないものであるということで、児童虐待が親権によって正当化されること がないようにといった基本的な認識が検討に当たっての重要な指針となる。このような認識 のもと議論がなされてきたと思います。  そして2番以下が具体的な論点でございます。まず一つ目が「現行の親権喪失制度の見直 し」についてです。現行の親権喪失宣告は親権の濫用または著しい不行跡ということが要件 となっています。こうした要件の規定ぶりが親権喪失の申立てや、あるいは審判そのものの 在り方が親を非難するような形になってしまうという指摘もあり、また、子どもの方の利益 の観点を中心とした書き方にすべきではないかといった指摘がなされたところです。概ねそ のような方向性で議論は進んだと思いますが、そのような見直しを行う場合の要件の定め方 について、一定の論点が整理されたところです。それから親権喪失の申立人の論点です。現 行は子の親族及び検察官が民法上の申立人ですけれども、それに加えて児童福祉法の規定に より、児童相談所長も親権喪失の申立権者となっています。児童の意見表明権をできる限り 保障するなどの観点から、申立人に子を加えるべきという意見があります。そういった意見 に対して、必ずしも強い反対意見はなかったところですが、もっとも児童相談所長等の申立 権者が適切に申し立てることが本来は重要であろう。子どもに申立権の行使を期待するのは 酷ではないかといった意見や、子の申立てにより親権制限が実際になされた場合は、その後 恐らく再統合が事実上不可能に近いのではないかといった意見、あるいはそもそも子が親に ついて親権の喪失の申立てをするという家族の在り方について、さまざまな意見が社会には あるのではないかといった指摘もなされたところです。  次は「親権の一時的制限制度の創設」です。今の親権喪失宣告の仕組みは、要件が先ほど 言いましたようにかなり厳格であることに加えて、親権全部を無期限で喪失させるという非 常に強い効果を持つ仕組みとなっています。従いまして、本来ならば親権を制限した方が良 いと思われるケースでも、申立てをするのは躊躇されるケースが多いということを指摘され ているところです。そのため、もう少し柔軟な親権制限の仕組みを設ける必要があるのでは ないかといった議論の中で、一時的な制限を行う制度の創設について議論がなされました。 現行の親権喪失宣告についても取消しの手続きがありますので、喪失宣告をしてから取り消 すまでの期間が親権が制限される期間と考えることもできるわけで、そのようなことからす ると、一時的な制限は現行の仕組みと質的に大きな差もなく、そうしたことから強い反対意 見はなかったところです。論点整理としては、その期間の定め方あるいは親権喪失宣告その ものとの関係もありますが、原因・要件をどのように定めていくかということについて、さ まざまな論点が整理されており、引き続き詳細な検討が必要であるといったところでござい ます。  次が黒丸で「施設入所等の措置または一時保護が行われている場合に親権を部分的に制限 する制度の創設等」ということでございます。施設入所中または里親等に委託中の児童につ いて、施設長等は監護・教育・懲戒に関し、その児童の福祉のため必要な措置を取ることが できるといった規定が児童福祉法にあります。しかしながら、その施設長の措置と親の親権 との関係が法律上必ずしも明確でないために、親権者が異を唱えた場合に必要な措置が取ら れないなどの指摘がなされているところです。親権者の主張に正当な理由がないにもかかわ らず、親権者が異を唱えた場合に必要な措置が取られないというのは子どもの福祉の観点か らは適切ではないのではないかという考え方から、施設長、里親あるいは児童相談所長の児 童の監護に関する権限が親権者の親権に優先するような仕組みが考えられないかというこ とで論点整理をしたものです。この論点についても強い反対意見はなかったところですが、 施設長等による措置に対して、親権者が不当な理由ではなくて相当の理由を示して異を唱え たことなどにより、施設長等においても本当に押し切っても良いのかという判断に悩む場合 には、例えば児童相談所長あるいは都道府県知事さらには県に置かれている児童福祉審議会 などの意見を聞くような、少し慎重な仕組みについても、仮にこうした仕組みを設けるとす れば検討した方が良いのではないかという指摘がなされているところです。今のような仕組 みを一時保護中も導入することを検討することが併せて議論されていたところです。  次の2ページですが、「一時保護についての見直し」ということで、現行の一時保護の仕 組みは行政権の判断のみで同意をとって一時保護をすることも多いのですが、仮に同意がな くても職権で一時保護ができることになっています。そして、一時保護の期間は児童福祉法 の規定により2か月を超えてはならないとなっています。なっていますが、児童相談所長ま たは都道府県知事において必要があると認めるときは引き続き一時保護ができる。要するに 原則2か月ですが延長ができる仕組みになっているところです。仮に、先ほど言ったように 一時保護中に児童相談所長の身上監護権を親権に優先させるような仕組みを設けるとした 場合に、実質的には親権が制限されるようなことが起こるわけですが、そういった場合に現 行の一時保護の仕組みで良いのかということが議論になったところです。それについては三 つほど案がありまして、一つは現行の規律を維持するというもの。二つ目は28条審判まで の申立ての期間をもう少しかっちりした形で制限するというもの。それから三つ目は一定期 間を超える一時保護については、裁判所の承認、いわゆる一時保護の司法関与ということで、 そういった仕組みを設ければよいのではないかということが議論されたところです。これに ついては、理論的に合理的な整合的な仕組みをするという要請と、それから児童相談所や司 法の体制の問題もありますので、そういったものを前提としながら、例えばかなり複雑な仕 組みを設けることによって、かえって子どもの保護に欠けることにならないように、そうい った観点も大事にすべきであるという両面からの意見があったところです。  その次が「親権の一部制限制度の創設」ということです。これも一時制限と同じように、 より柔軟な仕組みを設けるべきではないかということです。柔軟な仕組みを設けるべきで、 かつ制限される部分は必要最小限であるべきという考え方から、一部で事足りるのであれば 一部制限をする仕組みでよいのではないかということで議論されたものです。これについて は切り分けがどうできるのか、あるいは一部を制限した場合に、その受け皿となる人が必ず いるわけですから、もともと持っている人と受け皿となった人の間で混乱が生じるのではな いか。かえって子どもの安定的な監護につながらないのではないかといった指摘もなされた ところです。  3番は「親権を行う者がない子を適切に監護するための手当てに関する論点」です。一つ 目は民法の関係ですけれども、「法人による未成年後見導入」です。現行の民法では、未成 年後見人は個人で1人という仕組みになっていますけれども、なかなか未成年後見人の引き 受け手が少ないという実態がありますので、引き受け手の選択肢を広げるためにも、法人を 未成年後見人に選任できるような制度改正ができないかということです。この議論の中で少 し出たのは、実際にそれほど受け皿となる法人があるのかどうかの検討が必要ではないかと いうことと、それに対して例えば児童養護施設等を退所した年長の未成年に対して、施設を 経営する社会福祉法人は想定されるのではないかという指摘があったところです。  次は、「親権者等がいない児童等の取扱い」です。里親等委託中または一時保護中の児童 に親権者等がいない場合です。児童養護施設等に入所している場合には、児童福祉法第47 条第1項の規定によって、施設長等が親権を行い、または未成年後見人が見つかるまでの間、 親権を行うという規定があるところです。施設の場合はありますけれども、里親委託中や一 時保護中にはそういった規定がないものですから、そういった場合にも親権を行うという同 じような規定を設けるべきではないかという論点です。  それから施設入所等の措置あるいは一時保護が行われていない未成年者。いわゆる在宅の ケースについてですけれども、その場合に児童相談所長が親権を行うなどするといった仕組 みができないかという論点です。これについては、施設入所も一時保護もしていない未成年 の監護等を本当に児童相談所が適切に行えるのかどうかといった実務的な問題が指摘され ています。また、あるいはそのような未成年者について、児童相談所長が親権を行う、ある いは未成年後見人になるといったことにしても、公的な機関が出ていくのは、真に未成年後 見人の引き受け手を確保できない場合に限られるのではないかといったことが指摘された ところです。  それから3ページにいきまして、その他の論点です。一つ目が「接近禁止命令の在り方」 です。先ほど御説明申し上げましたように、現在は強制入所措置の場合にのみ、接近禁止命 令を都道府県知事が出すことが可能となっている仕組みです。これについて、一つは強制入 所措置の場合だけではなく、一時保護や同意入所、場合によっては在宅のケースでも不当な 侵害をしてくる場合にはかけられるようにする必要があるのではないか。併せて、行政権が 発動する命令という形でよいか、裁判所が命令する形式もあるのではないかといったことが 議論されたところです。他の場合に比べて強制入所措置の場合は親が入所に反対しているわ けですから、こういった命令の必要性が高いケースではないかと考えられますが、現状の平 成20年度の実績を見ると、児童虐待防止法に基づく接近禁止命令も今実績がない状態であ ります。そういった中で対象をさらに広げるような必要性が現実にあるのか、さらに検討が 必要ではないかといったことが整理されています。  次は「保護者指導に対する家庭裁判所の関与の在り方」です。これも現行は児童福祉法第 28条第6項の規定で、強制入所措置の家庭裁判所の審判の際に都道府県知事に対して裁判 所が保護者指導を行うように勧告することができるという仕組みがあります。その限りにお いて、保護者指導について家庭裁判所は現状では関与しているという状況です。これについ て実態としては、かなり保護者が児童相談所と対立構造にあってなかなか指導を聞かないと いう現状を少しでも改善するように、もう少し公正中立な立場にある裁判所が保護者に指導 を受けなさいという命令を出す、あるいは勧告を出して関与するような仕組みをもう少し設 けられないかといった論点です。これについては、さまざまな意見が出たところですけれど も、例えば具体的に指導の当否について裁判所が判断するのは難しい、あるいは三権分立の 下において司法が行政権の行使をチェックするという本来の役割がある中で、行政側に立っ て、保護者に命令や勧告をするのは、その役割を曖昧にする恐れがあるのではないかといっ た慎重な意見。一方で、現実の問題を解決するために、理論的な整理をした上で導入できる 制度を検討すべきだというような実態を解決するためにやるという積極的な意見もあった ところです。  最後は懲戒権と懲戒場に関すること。これは民法の方の話ですけれども、懲戒権があるこ とにより虐待を正当化する親がいる、あるいは懲戒場ということはこの民法第822条に規 定されていますけれども、現実にはそういったものは存在しないものですから、この規定は 削除した方がよいのではないかという指摘がなされているところです。これについては、現 在ある規定を削除して、どのような解釈がなされるのか。例えば明文の規定は削除するけれ ども懲戒は可能なのかどうかといったこと。それから削除することそのものが社会的にどの ように受け止められるかといったことも検討する必要があるといった意見が出されたとこ ろです。報告書の説明は以上です。 ○才村委員長  どうもありがとうございました。以上、御説明いただいたわけですが、最後に「児童虐待 防止のための親権制度研究会報告書」について御説明いただきました。この研究会の座長を 務めておられました大村委員から、何か補足等がありましたらお願いしたいと思いますが、 いかがでしょうか。 ○大村委員  東京大学の大村です。今、御紹介がありましたように、児童虐待防止のための親権制度の 見直しにつきまして研究会の座長をしておりましたので一言だけ発言させていただきます。 直前の事務局の御説明で内容についてはすべて尽きていると思いますけれども、少しだけ補 足させていただきたいと存じます。  これは最初の方でも御説明があったのですけれども、資料2を御覧いただきますと、今回 の私どもの研究会に至る経緯も書き込まれております。平成19年度の改正法の附則で、親 権に係る制度の見直しについて検討を行うということでしたので、これを受けまして研究会 が設置されたということです。ですから研究会としましては、親権に係る制度の見直し全般 として取り上げるということで臨んでまいりました。  先ほどの資料4につきまして白丸、黒丸という区別がありましたけれども、検討に当たり ましては、これが民法であり、これが児童福祉法あるいは児童虐待防止法だという仕分けを あらかじめして検討を行ったということではなくて、必要な政策が何であるかということを 検討した上で、立法するとしたらどちらの法律の問題になるかということで最終的に調べた のがこの主な論点というものです。  現在、二つの審議会で並行して検討していただいておりますけれども、全体として調整を 図っていただきまして、衝突ないし谷間ができることがないように進めていただけると幸い に存じます。  それから、これも先ほどの御説明に出ていたことですけれども、虐待防止のために必要に 応じて的確に親権を制限することが求められるわけですが、他方で過度な制限に陥らないと いうことでバランスを取っていただく。また、理想的な制度の在り方はいろいろと考えられ るところですが、現実的で実効性のある制度を作っていきたいという観点でこの報告書を取 りまとめさせていただきました。以上です。 ○才村委員長  どうもありがとうございました。  それでは委員の方々から御意見や御質問を頂戴したいと思います。まず、先ほどの御説明 の前半の部分です。本専門委員会の設置要綱や今後の進め方について、御意見等があればお 伺いしたいと思います。いかがでしょうか。吉田委員、お願いいたします。 ○吉田委員  駿河台大学の吉田でございます。進め方についてですけれども、先ほど事務局から御説明 があったような配慮でお願いできればと思います。と言いますのは、今回の委員で児童福祉 の実務にかかわっておられるのは東京都児童相談センターの豊岡委員だけです。施設関係者 や里親が入っておりません。これらの人は、この問題に関してはとても大きな影響を受ける と思われますので、ぜひヒアリングをお願いしたいということで、先ほどの御提案を実現し ていただきたいということです。  もう一つは論点です。必ずしもこの資料に示された論点に限るものではないということで 先ほどお話がありました。現にこの白丸、黒丸を見ていると、必ずしも厳格に分けられるも のではないので、この辺りも柔軟に見ていくのがよろしいのではないでしょうか。両方の面 から見た方が適切な点も多々あると思いますので、その点も進行上あまりはっきりとした枠 組みの中で議論する必要はないのではないかということで、この2点だけお願いしたいと思 います。 ○才村委員長  どうもありがとうございました。先ほど事務局からもお話がありましたように、里親と施 設のヒアリングはぜひということですね。それから白丸、黒丸は柔軟に一つの目安としてと いうお話であったと思います。ありがとうございました。他に御質問や御意見は。磯谷委員、 お願いいたします。 ○磯谷委員  今後のスケジュールのところですけれども、法制審議会の方では夏前ごろに中間試案を取 りまとめてパブリックコメントにするというような御説明があったかと思いますが、こちら の社会保障審議会の方はどのような形になりますか。 ○才村委員長  事務局から、お願いできますか。 ○杉上虐待防止対策室長  今のところ予定しておりませんが、皆さま方の御意見を踏まえて進めてまいりたいと思っ ております。法制審議会と違うのは、私どもは御意見を取りまとめていただいて、政府とし てどうやって法案を出していくかという形になると思います。その過程で国民の皆さまの御 意見を聞くこともあるかと思いますけれども、現時点予定していないところです。 ○才村委員長  よろしいでしょうか。他に御質問・御意見はいかがでしょうか。  ないようですので、それでは後半の児童虐待防止対策について、さらには児童虐待防止の ための親権制度研究会報告書、また最高裁判所より御説明いただきました家庭裁判所におけ る児童虐待関連事件の現状について、御意見や御質問を頂戴したいと思います。本日は第1 回ということですので、できるだけ皆さまに御発言いただければと思っておりますので、恐 縮ですがなるべく手短にお願いできればと思います。それではお願いしたいと思います。 ○松原委員  明治学院大学の松原です。冒頭にありましたように、まず子どもの利益を守ることが大切 だと思っております。そのときに全体の議論としては何らかの形で、ある種の親権の制限を 強化していこうということですから、そのときに一部にせよ、一時にせよ、親権が制限され たときに、それに代わって担う者あるいは法人の質の担保ということが大きな課題で、これ はこちら側の審議会で議論すべき論点ではないかと思います。実態的に入所児童に関して先 ほど事務局からの御説明で、今までの委員会の中で出てきたということで、子どもが生活し ていた児童養護施設の社会福祉法人というお話がありましたが、実際には一法人一施設とい うところが結構多くて、法人としての力量がそこまで期待できるのかということもあって、 それは一律に法人ということでなく、法人規模や法人の力量を考えなければいけないでしょ うし、やはり施設といってもさまざまですから、特に現行では施設長には誰でもなれる制度 になっておりますので、そこもやはり一定の質の担保が必要になってくるということが第1 点です。  2点目は親権を制限していくわけですから、一方で親権者について、いわゆる審判プロセ スでの支援もそうですけれども、この決定の前後のところで親権者に対してどのような支援 や援助ができるか。ここも制度設計の大きな課題だろうと思っております。  それから非常に細かい点ですが、今までは特に厚生労働省の社会的養護関連の議論のとき には、施設として母子生活支援施設が入っていたはずなのです。去年の資料の中に母子生活 支援施設が入っておりませんでした。しかし、これも社会的養護の施設ですし、ある意味で 地理的というか、場所的には親権者が一緒に生活をする。しかし、社会的養護を担う施設と して特徴ある施設だと思います。そのような意味で、この運用を考えていくところで言えば、 親子分離をしていくケースも結構あるのですけれども、現実的には母子生活支援施設はむし ろ良く見えてしまうのです。少し議論の中に母子生活支援施設も、今までの議論の延長線上 ということも含めて視野を広げるべきではないかと思いました。以上、3点です。 ○才村委員長  どうもありがとうございました。特に母子生活支援施設については、つまり親権者である 母親も一緒に生活する所で、他の児童福祉施設とは少し性格が違いますが、その母親自身が 親権を制限されたり、喪失された場合、ではそのときに母子生活支援施設の担う役割は何か ということだと思います。ありがとうございました。他に、いかがでしょうか。松風委員、 何かおっしゃりたい御様子ですが。お願いします。 ○松風委員  先ほどの研究会で御議論いただいたかもしれませんが、一つ現実的な問題としまして、乳 幼児期に同意施設入所した後に親権者が行方不明になった、または里親委託については拒否 をしながら、その後行方不明になる、2年ごとぐらいに現れて一度顔を見に来るけれどもま た親としての必要な手当てをせずに行方不明になるといったような事例がたくさんありま して、子どもたちは愛着関係を構築するようないわゆる里親委託といった措置変更に支障を 来してしまう。これがネグレクトだと判断して、第28条を提出するかどうかといったとこ ろでは現場では非常に躊躇するところです。このような場合の親権の制限、もしくは第28 条にそれを組み込んでいただくといったようなことが必要ではないかということを考えて おります。  もう一つは今回の論点についてですが、先ほどの御発言にもありましたように、どのよう な場合に施設長の権限が優先するのか。親権者の申し出がすべて否定されるわけではないと 思われまして、調整機能が非常に重要になってくるだろうということと、それから児童相談 所長と施設長の権限が強化されるということになりますと、その適正行使についてのチェッ ク機能をどのように作っていくのかといったことが非常に重要になってくると思います。  もう1点。そうなりますと、児童相談所の機能といったところで、何を今後プラスして担 っていくのかといったことを明確に議論する必要があると思いますし、児童相談所の在り方、 機能強化等についても必要になってくるのではないだろうかと考えているところです。以上、 3点です。 ○才村委員長  ありがとうございます。今、何点か御発言いただいたのですが、その中で施設長における 調整機能について少しお話しされたと思いますが、もう少し具体的にお話しいただけないで しょうか。 ○松風委員  具体的なイメージはなかなか持ちきれないのですが、やはり児童相談所が担うことになる かと思いますけれども、そうしますと措置の決定や措置権限と内容に関する調整といった両 面を担うことになります。ですから、そこでの機能の明確化といったことをしないと混乱が 生じるのではないだろうか。要するに、親は対立してしまって施設入所を拒否して第28条 にずれ込むといったことが多発するのではないかと。そうなる前に調整機能が必要であると すれば、児童相談所のいわゆる措置権を持っている担当者が一元的にそのようなことをやる ことに問題があるのではないかといったことを感じているところです。 ○才村委員長  最後におっしゃった児童相談所の在り方とも密接に関連したテーマであるという部分で すね。  1点だけ。最初におっしゃった委託後に行方不明になってというところは大村委員にお伺 いしたいと思いますが、研究会の中でそういった議論があったのかどうか、そこだけお答え いただけますか。 ○大村委員  今、具体的に指摘されたような事例について、立ち入って議論があったかどうかは記憶し ていないのですけれども、ただ、同意でカバーされない問題があるだろうということは認識 しておりました。同意が与えられていたけれども、それがあるとはいえない状態になる。そ のときにどうするかという問題についての対応策は考えたということです。ただ、常に28 条に乗せていけるかという点について問題があるのではないかという御指摘はごもっとも だと思って伺っておりました。 ○才村委員長  よろしいでしょうか。ありがとうございました。他にいかがでしょうか。庄司委員、お願 いいたします。 ○庄司委員  青山学院大学の庄司と申します。子どもにとって親の存在自体が非常に大きな意味を持っ ている。親の在り方が子どもに影響を与えることを考えると、この親権を制限する面が今回 の議論のポイントになっているように思いますけれども、これは親権者が親権を濫用したり ということで接近禁止命令が出せるかどうかということが論点になっていますが、「来るな」 と言うのではなく、面会に「来なさい」という形で、法律マターは必ずしもなくて、実務上 の指導的なもので対応できるのかもしれませんし、あるいは来ない場合には、親権の一時的 あるいは部分的な制限につながるのかどうかということを一つ考えられたらと思います。  もう1点は、これも法律マターではなく、実務上の問題かもしれませんが、里親委託を希 望しない親が多いということがあって、特に施設に入所した後に里親に委託するのが難しい ことが時々あるわけですけれども、これは措置変更がそのままでできないのか、一度措置を 解除して新たに委託しないとできないのか。その辺も議論しなくてもよいのですけれども、 教えていただければと思います。 ○才村委員長  ありがとうございます。最初に言われた子どもにとって親は非常に重要で、まずは親に何 とか支援して親子関係が再構築されるようにということが本来は一番望ましい姿だと思い ますけれども、現実になかなかそうは言っても非常に難しい。決して数は多くはないと思い ますが、やはり難しいケースもあるのが現実ですから、やはりそのようにいかなる事情の子 どもたちにとっても最善の利益を保障するという観点からこの委員会があるのではないか と私は解釈させていただきました。他にいかがでしょうか。吉田委員、お願いいたします。 ○吉田委員  中身の点ですけれども、やはり見方です。どのような視点で考えたらよいのかということ で私なりにいろいろと考えてみたのですけれども、やはりまず一つは子どもの視点です。特 に子どもの権利の視点は外せないだろうと思います。先ほどの御説明の中で、過剰な制限に ならないようにというお話がありましたけれども、これは親に対する過剰な権利制限になら ないのと同時に、福祉という名前で子どもの権利を制限することもあるという視点で制度の 在り方をまず見ていく必要があるだろうと。そういう意味では、子どもの権利条約なども随 時検討しながらということになるのでしょうか。私もある所で、例えば一時保護所や施設の 子どもから直接ヒアリングをしたことがありますが、大変不自由な生活を強いられている場 面もあります。そのような子どもを見ていくと、ではどこまで生活についての説明を受けて いるのか、どこまで納得しているのかということに疑問を持たざるを得ないです。そうした ことを考えると制度の在り方は、一番のサービスの受け手である子どもを中心に考えるべき だろうということがまず一つあるのです。  2番目は親権喪失請求するときの親ですけれども、やはりネグレクトのケースがとても多 い。特に裁判所に上がってくるケースに多い。このネグレクトのケースでは、親に何らかの 障害があるケースが少なくありません。例えば精神障害であったり、知的な障害があったり という親が対象ということになってくると、親権制限をするのが合理的な判断力のある人を 対象とするモデルでよいのかどうかということなのです。さらに言えば、虐待する親は児童 相談所と敵対している人もいます。その親が素直にサービスを受け入れるかどうか。もう一 つは法的なサービスを利用しようとしたときに適切に利用できるかどうか。本人の能力や資 力の問題もありますし、周りの支援の問題もあります。ですから、ここで考えるべき法制度 はそのような親をも対象にした制度なのだとして見ていく必要があるだろう。そのようなと ころからしていくと、かなり後見的な観点がここで必要になってくるのではないかと思いま す。成年後見の法制化のときに議論されたと思いますけれども、今回の親のなかには社会的 に見て孤立していたり、不信感が強かったりする人がいます。また同時に子どもの目から見 ると、子どもにとって味方になり得ない親でもあるわけです。子どもの利益のために法的な 手段を使ってくれない親もいるでしょう。そうした親にどのように対応していくのか。ここ がまず特徴としてあるだろうということです。  3点目は現場の話です。御承知のように虐待対応で児童相談所も施設も大変な御苦労をさ れている。これは才村委員長のお言葉ですが「叱咤激励路線」です。そのような形できた。 施設の拡充、児童相談所の拡充がなされてきたにもかかわらず、一向に親との対立関係が減 っていない。むしろ最近はインターネットなどを見ると、それが激化しているような印象す ら受けます。そうした場合に、現場の努力、現場のやる気だけで果たしてそれが乗り越えら れるのかどうか。見方を変えて言えば、施策の充実ということだけで、乗り越えられるのか どうかということです。ある意味では、それらの人たちの熱意を活かすのであれば、それに 必要な制度をきちんと設けるべきだろうということで、必ずしも施策だけに期待することは できない状況にまできているだろう。だからこそ、このような法改正が必要だということが 虐待防止法の附則で出たわけです。  今、子どもの点、親の点、現場と言いましたが、やはり実情なのです。実情に即した制度 をどのようにつくっていったらよいのか。かなり特殊な実情なのだというところで、制度設 計の方向性をまず理解しておく必要があるし、私もそうしたいと思っています。 ○才村委員長  今、吉田委員から検討していく上での基本的な視点について、御提言・御提案いただきま した。どうもありがとうございました。特に子どもの権利を中心にということと、いろいろ な社会的なハンディキャップにおかれた親に対する貢献的な視点といいますか、姿勢といい ますか、その点についてはこの研究会の報告書の中でも触れられていたと思いますが、今日 はフリートーキングということですので、今の吉田委員の御発言に関しまして、大村委員の 方で何かありましたらお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○大村委員  吉田委員の御意見を大変興味深く拝聴いたしました。幾つかあった御発言の中で、一つ研 究会でも話題になったことは、虐待を行う親の中にはいろいろな人がいる。一概に親を非難 するだけで問題は解決しないというケースも少なからず存在するということでした。ですか ら、ともかく親権を制限しないことには子どもが危ないというときに、親に対する非難をす るのではない形で、親権の制限をかけていくような制度を構築する必要があるだろうという ことは、一つの論点になりました。先ほどの資料4で申しますと、2の「親権を必要に応じ て適切に制限するための手当に関する論点」というところの白丸の一つ目の「親権喪失原因 の見直し」という項目で、主としてこれにかかわる形で議論されたところです。現行法では 親権の濫用または著しい不行跡という形で、いわば親の行為態様に着目した形で規定が書か れているわけですが、そうではない形で書くことも考えていく必要があるのではないかとい うことは意識しているところです。とりあえず、以上です。 ○才村委員長  ありがとうございました。吉田委員が最後におっしゃった、今の児童相談所だけではなく て施設もそうだと思いますが、現実にいろいろな問題・課題を抱えていて、そのような現実 に即した制度の検討をというお話であったと思います。これは最初に松原委員がおっしゃっ たように、親権を担う機関・人の質的な担保、それにかかわってくるテーマと思います。非 常に大事な御提言をありがとうございました。他はいかがでしょうか。佐藤委員、お願いし ます。 ○佐藤委員  佐藤です。よろしくお願いします。私は障害を持つ子どもや人たちの地域での生活を支援 することがそもそものテーマで、児童問題あるいは児童虐待の問題について、さほど詳しい 資料を持っているわけでもなく、いろいろなことを勉強したということもありません。もち ろん法律の専門家でもありませんので、この委員会に招請されたことに当初は戸惑ったくら いでありますので、大変素人っぽい意見を申し述べることになるかもしれませんが、先ほど 吉田委員がおっしゃった障害のある人たちとの関係でこの児童虐待の問題を見ますと、一つ は子どもが被害者になるケースがあるわけです。つまり、非常に難しい子育てを迫られた親 がだんだんと追い詰められていって虐待に走る。もう一つは、当然のように障害のある方も 子どもを持つこともあるわけで、そのような場合に十分な子育てができなくて、これは意図 的なネグレクトというよりも能力の問題で、難しい。そのような人たちには援助が必要であ るし、現にそのような人たちといろいろとかかわりを持ってきたということもあるわけです が児童虐待、とりわけ毎年例えば平成19年度は、今日の資料を見ますと70人もの子ども が命を失っているということで、一体何人の子どもが死ねばこのようなことが起きないよう な社会、あるいはその中でのいろいろなシステムが出来上がっていくのかということを考え るのは、本当に我々の責任の一つだろうと思います。  一方、この現在の親権の問題で最高裁判所の資料を見ますと、新たに受ける件数が年間 100件くらいで推移しているということで、児童虐待の通告数が4万件を超えていて、その 中でどれくらいがということがありますが、少なくとも400分の1でしかないということ も考えますと、制度をきちんと整備しないと。  私の議論の前提は、親権の一時停止あるいは一部制限ということを有効に作動させて、 一刻も早く救わなければいけない子どもを救えるようにするということを急がなければな らないということを基本的には主張したいわけですが、とにかく通告される事件数やあるい はその中で命を落としていく子どもたちの数から見ると、実際に現行の制度の中で親権問題 が俎上に乗っているのは非常に現実の問題として少な過ぎるということが、はっきり数字の 上からはいえるのではないか。専門的な、特に法律の立場からいろいろな御意見があるのだ ろうと思いますが、私はあまりこのような議論は、例えば先ほどの事務局の説明の中でこの ような意見もありましたという中に、「基本的な家族の在り方として、子どもの側が親の親 権に取消しを求めるのはいかがなものか」とか、「今の家族観と合わないのではないか」と か、あるいは「家族の再統合が難しくなるのではないか」という意見があったとのことです が、もう少しリアルに考えると子どもを死に追いやるまで虐待している状態にある人と、そ れからもう一度この親子を再統合していくこととは、相当本当は距離があるように思います。 確かに理屈の上ではそのようなことが語れるとは思いますが、リアルに見たらそこは子ども を救うということが何よりも急がなければならないことではないか。  現実にいろいろな新聞報道の範囲ですが、それを読む限りにおいては普通の感覚でいう と想像もつかないような現実があるということ。そういうところはきちんと普通の目線で見 ていく必要があるのではないかと私は思っています。議論としては元に戻りますが、親権の 一時停止や一部制限というものが子どもを守るために早く整備されるべきだろうというこ とを思って、今後の議論に参加していきたいと思います。 ○才村委員長  どうもありがとうございました。今、佐藤委員がおっしゃった家庭裁判所関与、これは多 分28条だと思いますが、全体の400分の1で非常に少ないのではないかとおっしゃったの が、これが多いか少ないか、どう見るかは議論のあるところだと思います。大半のケースは 児童相談所と保護者との話し合いで、何とか裁判所のところまでいかずに同意のもとで施設 入所なり里親委託になっているのではないかと推測いたします。従って400分の1が多い か少ないかというのは議論をしていかないといけないと思いますが。ただ、どうしても児童 相談所としての限界もありますから、漏れがあっては駄目なので、安全面としていかに親権 の在り方を検討していくかということだと思います。どうもありがとうございました。大村 委員、お願いします。 ○大村委員  今の佐藤委員の御意見は方向として大変ごもっともだと思いますが、御発言との関連で二 つだけ補足させていただきたいと思います。一つは親権の制限が現在どのように機能してい るかということにかかわる点ですが、これは最高裁判所からも資料を出していただいたもの があり、先ほども御説明があったのですが、申立ての件数自体が非常に少ないわけです。申 し立てたにもかかわらず裁判所が法律の規定が厳格であるために認められなかったケース がどれぐらいあるのかというと、必ずしもそれほど多くはないのではないかと思います。む しろ適切に申立てをすることができない、申立てを躊躇させるような事情が何であるかを考 えることが必要だと思っています。その観点から法改正ということも考えていく必要がある だろうと思います。  もう一つは家族の在り方や再統合の可否ということで、親権の制限を躊躇してはいけない という御発言であったと思いますが、それもおっしゃるとおりだと思います。ただ、先ほど の事務局の説明で、そのことが直接に言及されたのは、子どもの申立権を認めるかどうかと いう点についてでございまして、子どもに申立てをさせることが果たして良いことなのかど うか。これは吉田委員の御発言ともかかわりますが、意見表明権は確かに重要ですが、子ど もに親の親権を制限させるということをしなくても済むような制度をつくった方が良いの ではないかという意見の一環として、先ほど言及された部分が出てきたということを申し添 えさせていただきます。以上です。 ○才村委員長  よろしいでしょうか。ありがとうございました。豊岡委員、お願いします。 ○豊岡委員  児童相談所で実際に虐待対応をしている立場から申し上げますと、先ほど佐藤委員が言わ れました4万件を超す件数ということですが、圧倒的に虐待の程度も軽く、そして児童相談 所も支援をする立場でかかわっているものが半数以上です。そして、その通告のあった4 万件の中には実は非該当というものもありまして、調査をすると東京の場合は大体2割くら いが非該当になりますので、そのような中で本当に重度のケース、そして親権の制限も含め て検討せざるを得ないケースというのは本当に限られた数だと思います。このような現状が ある中で、児童相談所もどのように支援の関係をつくっていくか、その関係がなかなかでき ないというところで苦労している。こちらの意図が通じないというか、例えば職権保護など を1回しますと、その入り口の段階で既に対立になってトラブルに発展しやすくなる。そし て、先ほど言われたように児童相談所非難という行動に出たりするわけですので、このよう な親権制度の仕組みがうまくできていけばありがたいというのが現場の実感ではあります。  もう1点ですが、児童相談所が親権喪失の申立てをする際には、後見人の選定ということ がありますので、やはり後見人が探せない、適切な親族がいらっしゃれば良いのですが、親 族でもいらっしゃらないときに、後見人探しで非常に躊躇してしまうというか、適切な方が いない。かといって児童相談所長でできるではないかということですが、児童相談所長もあ る程度未青年後見人が見つかるまでの間は対応できるという制度ではありますが、そこのと ころで実際には戸籍記載を含めて課題があって、うまくいかないところがありますので、そ この仕組みをぜひ今回の制度の中で変えていただければ、より使いやすいものに、そしてス ピーディに動けるのではないかと思っています。以上です。 ○才村委員長  どうもありがとうございました。水野委員が先に手を挙げられましたので。 ○水野委員  私も大村委員と一緒にこの研究会に加わっておりました。私も研究会の議論を代表すると いうわけではありませんが、そこに加わっていた私が何を考えていたかということを、今ま での御発言を考えながら少しお話ししたいと思います。民法の親権の現在の制度設計、つま り民法の親権が非常に広範な形で規定されていて親権制限ができないことの問題性につい て、あるいは本当であればもっとたくさんの親権制限が裁判所にかかるべきであるのに、実 際には提訴件数が非常に少ないことの問題性についても、それらは確かに問題ではあるので すが、現実には児童福祉法で相当のことができるように法的にはなっています。例えば一時 保護ですと2か月間、行政権が司法の許可なく子どもを親と隔離することができるわけで、 これはある意味では諸外国の親権制限と比べると比較にならないほど、行政権が非常に強大 な権限を認められていることになります。そして、その背景から申しますと、法律をいじる ことによって解決がつく問題は実は非常に少ないのではないかというのが実感です。  先ほど、吉田委員が、子どもを中心にということで、児童の権利条約、子どもの権利条 約を挙げられて、子どもの説明や納得ということを言われましたが、このような抽象論はマ スコミ受けはいいのですが、現実にはむしろ危険があります。現場の児童虐待、被虐待児に かかわっていらっしゃる方はよく言われますが、子どもの意見は非常に危ないのです。子ど もは虐待を否定します。子どもの意見を聞いたところで、親の虐待を絶対に認めなかったり、 子ども自身も世界に対する認知が非常に歪んでいることもあるわけで、そのときに形式的に 子どもに説明し、子どもの意見を尊重することが、むしろ子どもの保護にならない現実があ るわけです。もちろん子どもに詳しく説明して子どもを精神的にも受容していくことは必要 ですが、それはプロでないとできません。児童の臨床心理について勉強したようなプロフェ ッショナルでないと上手くできないことです。このようなプロフェッショナルたちが欧米諸 外国の場合は多量に養成されていて、そのような人々が行政施設でも働いているし司法施設 でも働いていて、そのようなたくさんの人々のサポートの上に児童虐待の問題は解決されて います。ところが、そのようなまさにインフラにおいて、日本は非常に不備です。  それから、先ほどの松風委員の御発言の中で、措置権限と調査機能を一元的にすることの 問題をおっしゃっていましたが、おそらくこれは実務では非常に実感なのではないかと思い ます。私が少し勉強しましたのはフランスの制度ですが、その場合ですと措置機能に当たる ものを裁判官が担い、調整機能に当たるものを日本でいう児童相談所が担います。ですから 児童相談所のケースワーカーは、調整役、親のサポーターとして振る舞い、措置権限を持つ 判事に理解をしてもらいましょうねと親に言いながら、親の援助をすることになりますので、 大変うまく機能するわけですが、これについても日本に輸入できるかというと、背景にある インフラの不備がネックになります。フランスの場合は司法の親権制限判決を受けている子 どもたちが約20万人います。年間10万件の親権制限の判決が下されます。そして裁判官 たちはそれぞれ自分の担当する子どもたちをずっと見ていまして、児童相談所のケースワー カーから絶えず報告を受けることになります。そして子どもも「私の判事さんはあの人だ」 と認識していて、その調整権限を持っている判事が決めたことについて、具体的にケースワ ーカーにサポートをされながら生きているわけです。親権制限下にある子どもたちだけでそ れだけいまして、日本の人口はフランスの2倍ですから、フランス並みだとすると、40万 人くらいの子どもたちが親権制限の判決を受けていて、私の判事さんはあの人だと思いなが らサポートを受けている状況です。その子どもたちのうちには家庭で育っている子どももた くさんいるのですが、その場合も毎週サポーターが家庭に通うわけです。そして子どもたち と親の関係を援助していて、親子の様子を見ているサポーターがこれは親子関係が危なくな ってきたと判断すると、裁判官に連絡をして直ちに裁判官が引き離しなどの命令を臨機応変 に出すという仕組みになっています。これを日本でしようとしても、判事の数が全然足りま せん。比較にならないくらいの少なさです。日本の家庭裁判所の判事が担っている任務は児 童虐待の問題だけではありませんし。そのようなことすべてを考えますと、何もかもインフ ラの人手が足りません。司法についても足りないし、行政についても足りません。先ほどか ら、後見人のなり手がいないので施設長に任せるのはどうかとか、お話がありますが、本来 ならば後見人がいればいいというものではないでしょう。後見人という親族に任せてしまっ て、後見人がいるからということで公が手を引いてしまいますと、後見人という個人はむき 出しで親と対峙しなければならないことになりますので、とてもではないけれども深刻なケ ースほど対応できないことになるだろうと思います。  本当はそのような公のサポートがはるかに多く必要なのですが、残念ながら子どもたち の保護のために税金が使われてこなかったというのがこれまでの日本の実情です。そのよう な悲しい現実を前提にして、法律に何ができるのか。もちろん現状を改善しなくてはなりま せんし、できることを前向きにしていかなければならないのですが、法律で何かを決めて、 かたがつくものではありません。抽象的な文言は無力なだけではなく、悪影響も与えます。 例えば児童の権利条約が大切だから子どもの意見を聞かなければならないとして、子どもの 意見に従って運営するという一文を入れてしまうことの危うさを考えます。司法審査が行政 の最低限の支援さえストップさせてしまう負担にもなりかねません。日本の実状を見据えて、 相当慎重に法的な設計をしなければいけないと思います。 ○才村委員長  ありがとうございました。それでは長委員、お願いします。 ○長委員  第1回ですので、基本的なことですが考えているところを述べさせていただこうと思いま す。児童の虐待の防止、児童の保護ということを考えるときには、家庭裁判所でも子の福祉 を第一に考えています。子どもについてはいろいろな発達段階があるものですから、きめ細 かく考えていかなければいけないと思っています。かつ、このような重大な結果を生じさせ るような場合にはかなり迅速で臨機応変の対応が必要になってまいりますので、行政のより 一層の充実が今回の課題の一つであろうと理解しています。親権と行政の権限をどのように 調和していくかという問題ですが、現在の法律の中でも生じている状況に応じていろいろな 段階が設けられています。そして本日の会議で配布されています資料3の8ページを拝見し ますと、行政がどのようにして援助していくか、非常にいろいろなことを配慮した上で段階 的に援助していることがよくわかります。結果の重大性や子どもの発達段階の問題、子ども を取り巻く環境にもいろいろな状態があるということを前提としながら、それぞれの段階で の親権と行政の権限の調和をどのように図っていくかということを今後の議論の中で考え ていきたいと思います。基本的なところしか今日は開陳できませんが、以上のようなことを 考えてこの会議に臨んでいます。 ○才村委員長  どうもありがとうございます。磯谷委員、お願いします。 ○磯谷委員  弁護士をしております磯谷です。今日はフリートーキングということで本来の論点とは少 し違いますが。また、今、長委員から司法と行政の役割分担という話もありました。これに 関連して一つ申し上げたいと思います。というのは、28条の構造といいますか、現状措置 する施設の種別については裁判所が判断するという実務になっているわけです。つまり、児 童養護施設を選択するのか、里親を選択するのかといったところについても裁判所が判断す る実務になっている。施設の種別を特定しない形での審判例も紹介されていますが実際上は そういうことです。しかし、これが果たして良いのかどうかというところは常々疑問に思っ ています。先ほど、児童養護施設から里親に委託を変更するときに、非常にトラブルになる という話がありました。確かに現場ではそうであって、これは親からすると里親に委託する ということは、自分以上の親が登場するようなイメージになりまして、そこで里親と自分の 子どもが愛着関係が形成されると困る。それは許せないということから強く反対して施設に 入れるということにこだわる方がしばしばいらっしゃいます。しかし、児童相談所の立場か らすると、まさに愛着形成をするために集団の施設ではなくて、個別的に見てくれる里親に 委託したいと思うのだけれども、そこのところで非常に対立ができてしまうということがあ ります。先ほど、そのような場合に28条が使えるのかという話がありました。最終的には ケース・バイ・ケースで裁判所のご判断ということになるのでしょうが、確かに施設種別の 選択が適切ではない場合に、直ちに28条で強制的に入れられるということにもなっていな いと思います。しかし、施設種別の問題は、先ほどこの点は長委員がおっしゃったところで もありますが、本当に適切な施設、措置というのは変わり得るわけです。例えば子どもの状 況を見ていて、うまくいきそうだということで、ではこれは里親にやってみようかというこ とになる。ところが実際に里親に委託してみると、いろいろな問題が生じて結局うまくいか なくて施設に戻さざるを得ないということもある。現状では一つ一つこれは行政処分として 別という形になりますので、もし親の同意がなければ28条を取るということになるわけで す。しかし、今のようなことを考えますと、むしろそういったことについては裁判所ではな くて児童相談所が判断する。どのような施設なのか。施設に措置をするのか。あるいは里親 に委託するのかということについても児童相談所が判断をするという枠組みの方がより柔 軟にいけるのではないかと考えています。実際に最近の施設ないし里親を見ていますと、ま ず施設も小規模化が進んでいまして、非常に小さい施設で少人数の運営をしているところが あります。一方で里親についてもファミリーホームという形で人数が1人や2人ではなくて、 多い子どもたちを受け入れて面倒を見ることもある。そのような意味では里親にしても施設 にしてもかなり境界はありますが、しかし曖昧にもなってきていると考えると、一層裁判所 がそれを判断するということは必ずしも適当ではないのではないか。最も施設をよくわかっ ている行政がきちんと判断すべきではないかと思っています。この辺りのことは今回の報告 書の過程では特に議論にならなかったわけですが、実務上とても重要な部分だと思いますの で、あえて時間もないのですが発言させていただきました。 ○才村委員長  どうもありがとうございました。まだまだ御意見等はおありかと思いますが、残念ながら 時間がまいりました。この辺りで議事を終了させていただきたいと思います。  次回の予定について、事務局からご連絡をお願いします。 ○杉上虐待防止対策室長  次回についてですが、委員の皆さま方の日程調整をしているところですが、今の時点で次 回は5月31日10時から、御都合の悪い委員もおられるわけですが、ぜひその日程でよろ しくお願いしたいと思います。場所についてはまた追って御連絡、あるいは3回目以降につ いても併せて日程調整をやっていますので、近日中にお知らせしたいと考えています。大変 恐縮ですが、どうぞよろしくお願いしたいと思います。なお、次回については施設長の権限 が親権に優先する制度を中心に各論ということで議論させていただけたらと思っています。 以上です。 ○才村委員長  それでは、本日はこれで閉会といたします。ありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課虐待防止対策室 電話  03−5253−1111(内線7799)