10/03/25 第56回厚生科学審議会科学技術部会議事録 第56回厚生科学審議会科学技術部会 ○ 日時 平成22年3月25日(木)15:00〜17:00 ○ 場所 厚生労働省 省議室(9階) ○ 出席者   【委  員】永井部会長         石井委員   今井委員   岩谷委員   川越委員         佐藤委員   西島委員   廣橋委員   南(裕)委員         福井委員   松田委員   宮田委員   南(砂)委員         望月委員   森嶌委員 ○ 議  題   1.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについて   2.平成22年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業(二次)について   3.ヒト幹細胞臨床研究について   4.戦略研究について   5.今後の厚生労働科学研究について   6.その他 【配布資料】   資料1−1. 厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(案)   資料1−2. 厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針 新旧対照表   資 料 2. 平成22年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(二次)   資 料 3. ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について   資 料 4. 新規戦略研究の課題(案)について   資料5−1. 今後の厚生労働科学研究について(論点整理)   資料5−2. 前回の科学技術部会(平成22年2月18日開催)における          ご意見等   資 料 6. 総合科学技術会議の動向について(第4期科学技術基本計          画骨子(素案)/科学・技術政策上の当面の重要課題)   参考資料1. 厚生科学審議会科学技術部会委員名簿   参考資料2. 厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成21年          12月28日)   参考資料3. ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考          資料 ○坂本研究企画官  傍聴の皆様にお知らせします。傍聴に当たっては既にお配りしております注 意事項をお守りくださいますようお願いします。  ただ今から第56回厚生科学審議会科学技術部会を開催いたします。委員の 皆様にはご多忙の折、お集まりいただき御礼申し上げます。本日は井部委員、 金澤委員、木下委員、桐野委員、末松委員、橋本委員、宮村委員からご欠席の ご連絡をいただいています。遅れてみえる委員もいらっしゃいますが、委員22 名のうち出席委員は過半数を超えていますので、会議は成立いたしますことを ご報告します。  続いて、本日の会議資料の確認をお願いします。資料の欠落等ありましたら、 事務局までお申し出いただくようお願いします。議事次第に配付資料一覧があ ります。資料1-1が「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(案)」、資 料1-2が「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針 新旧対照表」、資料2 が「平成22年度厚生労働科学研究費補助金公募要項(二次)」、資料3が「ヒ ト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」、資料4が「新規戦略研究の課題 (案)について」、資料5-1が「今後の厚生労働科学研究について(論点整理)」、 資料5-2が「前回の科学技術部会(平成22年2月18日開催)におけるご意見 等」、資料6が「総合科学技術会議の動向について(第4期科学技術基本計画 骨子(素案)/科学・技術政策上の当面の重要課題)」となっています。その他 参考資料として3点の資料をお配りしています。資料はよろしいでしょうか。  それでは、部会長、議事の進行をよろしくお願いします。 ○永井部会長  議事に入らせていただきます。最初に厚生労働省の科学研究開発評価に関す る指針の見直しについてです。事務局よりご説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについてご説明させ ていただきます。関係します資料は資料1-1、資料1-2と参考資料の2です。 昨年末、12月25日の本科学技術部会において、「厚生労働省の科学研究開発評 価に関する指針」の見直しについてご審議いただき、改定を行っています。改 正したものについては本日の参考資料2としてお配りしています。昨年の12 月28日に既に改定したものは通知しています。  この指針の対象となっています研究機関で本年4月から独立行政法人となる 機関がありまして、今般それに伴う規定の改定を行おうとするものです。資料 1-1は改定案となっています。資料1-2が新旧の対照表となっています。  資料1-2の左側が新しいもので、右側が旧の新旧の対比です。修正箇所です が、資料1-2の一番最後23頁、右側の欄で下線を付しているところがありま すが、独法化によって、指針の直接的な対象から外れる機関となるものがあり、 それに伴った表現の修正等を行おうとするものです。  資料1-2の2頁の下の方ですが、「定義」の4に「国立医療機関等研究機関」 が今までありましたが、これがなくなりますことから削除しています。また、 「定義」の1の研究事業等の「(1)から(6)までに」という表現は、改正すべき ところが改正の手当ができていませんで、申し訳ありませんが、(6)は(5)とな り、数字が変わりますので、その点も修正いたします。  なお、今回の修正事項ではありませんが、2頁の半ばから上に独立行政法人 評価等の関係があります。独立行政法人の研究機関については大綱的指針及び この指針に沿って同様な事項について各法人が明確なルールを定めて評価を 行うことが求められるという規定が既にございます。  続いて4頁上の方の「対象範囲」の「研究開発施策」についても修正を行い ます。18、19頁についても、独法化に伴う表現の修正と19頁には一部必要の ない記載がありましたので、その除削も含めた修正をします。内容的には独法 化に伴う修正です。説明は以上です。 ○永井部会長  ありがとうございます。ただいまのご説明にご質問、ご意見はありますでし ょうか。 ○廣橋部会長代理  規定、法律などに基づくと、いまのような整理が必要になると思います。も う一方で厚生科学を推進するという広い意味においては、独立行政法人化する ナショナルセンター、他の国立の研究機関、厚生科学研究費によって支援され る研究の全部が重要なのであって、その全体がいかによくコーディネートされ ているかという評価がこの厚生科学審議会科学技術部会で必要ではないかと 私は思うのです。それが十分できるように担保されているのでしょうか。 ○坂本研究企画官  独立行政法人には一定の独立性がありますが、これまでもそちらの活動につ いてこちらの部会でご説明いただいたこともあります。そういった形も含め、 当然連携は図りますが、独立行政法人というものの性格上、やはり規定の整備 は必要であると理解いただければと思います。 ○永井部会長  他にいかがでしょうか。 ○西島委員  言葉のことですが、最近金澤先生が科学技術という言葉について、科学技術 と言った場合に技術が中心で、科学が修飾的だとされる。本来はそうではなく、 科学と技術はイーブンで、科学技術という言葉の真ん中に「・」を入れて、「科 学・技術」にするのがいいのではないかと提案しています。  これを読んでいて類似なことを感じたのですが、「研究開発」という表現で すが、これは「リサーチアンドデベロッメント」、「R&D」という意味合いかと 思いますが、この表現だとそういうところが伝わってこない。むしろ開発研究 という表現の方が適当ではないかと思いました。いかがでしょうか。 ○坂本研究企画官  表現については、確認しなければいけないところもあり、直ちにお答えしに くいのですが、政府全体の大綱的指針の表現と合わせるべきところもあったと 思います。そちらの表現も確認しませんと、こちらだけ修正というのではかえ って混乱のもとではないかと思います。「研究開発」は我々の理解としてはか なり広い概念で使っています。大綱的指針でも、何か狭めているような解釈と いうのはこれまで聞いていませんので、その点は特に問題はないのではないか と思っています。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。 ○西島委員  研究なのか、開発なのかだと思うのですが、この表現だとちょっと分からな いと、私は非常に強く感じたもので、今日は発言させていただきました。 ○坂本研究企画官  先ほど申しましたように、大綱的指針等の表現について事務局で改めて確認 させていただきます。今後の課題として受け取らせていただければと思います。 ○永井部会長  いまのことに関して5頁の2「評価者の責務」の(1)の5行目「独創的で有望 な優れた研究者や研究開発を発掘し」、これは「研究開発テーマを発掘」でし ょうか。あるいは「研究・開発テーマを発掘し」がいいと思うのですが。 ○西島委員  その辺のところも「開発の発掘」もちょっと分からないのです。今後の検討 課題でよろしいかと思います。 ○坂本研究企画官  いまのところは事務局で表現を確認して、研究開発テーマと直すのがよろし いようであれば、部会長とご相談させていただくということで対応させていた だければと思います。 ○今井委員  単純な質問で申し訳ないのですが、資1-2の23頁の国立高度専門医療セン ターと一体化した研究機関についてです。呼び名としては附属云々みたいな形 になるのですか。 ○坂本研究企画官  いえ、呼び名はここにありますように、例えば、国立がんセンター研究所と いう表現になっていたものです。ここにありますのがいままでの名称です。 ○今井委員  そうしますと、国立がんセンター附属国立がんセンター研究所みたいになる のですか。 ○坂本研究企画官  いえ、今回は、国立がんセンターそのものが独立行政法人化されますので、 直接的にはこの評価指針の対象から外れるので、そのための規定の整備を行お うとするものです。 ○今井委員  研究所が一体化でその研究所の呼び名みたいなのですか。 ○三浦厚生科学課長  おそらく、お尋ねのむきは、国立がんセンター研究所はそれが正式の名称か、 あるいは国立がんセンター附属国立がんセンター研究所なのかということか と思います。研究所としてはこういう名称で特定できるということで、これが 正式名称と理解しています。廣橋委員もそれでよろしゅうございましょうか。 ○廣橋部会長代理  国立がんセンターという組織がありまして、その中に研究所、病院、それか らがん対策情報センターがありまして、一つの組織の部分を特定する場合には、 続けて国立がんセンター研究所、国立がんセンターがん対策情報センターと呼 んでいます。今回、独立行政法人化すると、おそらく独立行政法人国立がん研 究センター研究所となると予想されます。 ○今井委員  附属とかは。 ○永井部会長  それはセンターと一体化したという表現がいいのか、センターに附属したと いうのがいいのか、どちらでしょうか。 ○廣橋部会長代理  「附属した」という言葉については、いろいろ議論がありまして、使わない で、中の組織として病院・研究所が対等にあるという形で、その全体を国立が んセンターあるいは国立がん研究センターと呼ぶと理解しています。 ○今井委員  分かりました。 ○永井部会長  他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。もしご異議がなければ、ただ いまの点のご説明をご了解いただいたということで、議事の2に進めさせてい ただきます。平成22年度厚生労働科学研究費補助金公募研究事業(二次)に ついてご審議をいただきたいと思います。事務局からご説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  資料2についてご説明いたします。平成22年度の厚生労働科学研究費補助 金の公募に関しては、昨年11月の第53回の当部会においてご審議いただきま して、昨年11月9日から12月17日まで公募を行いました。その後、研究事 業ごと担当課等において、応募された研究課題を整理し、事前評価委員会にお いて評価を行っています。応募がなかった課題あるいは応募はあったが、適切 な応募課題がなかったものなどがありました。このため、今般、二次公募を行 うこととして、資料2はそのための公募要項(案)となっています。  1頁の枠囲みの中にあります「臨床応用基盤研究事業」、「第3次対がん総合 戦略研究事業」、「生活習慣病・難治性疾患克服総合研究事業」、「長寿・障害総 合研究事業」、「感染症対策総合研究事業」、「健康安全・危機管理対策総合研究 事業」、これらは大きい括りの事業名ですが、こちらの6事業について二次公 募を行うべき課題があったということです。  今回、修正した点としては、10頁からの応募書類等作成時の注意点について、 e-Radで用いるべきソフトウエアに関する情報のより詳細な記載の追加等を行 っています。具体的には11頁の上の方でPDF変換アプリケーションについて の推奨について、「Windows版Adobe Acrobat5/6/7を使用することを推奨しま す」と追記をしています。これについて申し訳ありませんが、その後、「8」と 「9」も推奨の対象という確認が取れましたので、ホームページに掲載する際 には、そういうところは新しいものに修正させていただくこととしています。  11頁真ん中から下の辺ですが、今回の公募期間については、いまの段階では 調整等がありまして、明記しておりませんが、できるだけ早期に研究が開始で きるように準備作業を進めています。できましたら、4月上旬から開始し、少 し期間を取って5月のゴールデンウィークの次の週の頭くらいまで公募を行う ことを検討しています。  事業の概要等については、16頁の下の方から公募研究事業の概要等がありま す。大分類ではなく、その下の分類で言いますと、17頁から「臨床研究基盤整 備推進研究」があります。そして、20頁から「がん臨床研究事業」がありまし て、23頁から「難治性疾患克服研究事業」、27頁から「障害者対策総合研究事 業」、30頁から「エイズ対策研究事業」、31頁から「生活環境安全対策研究分 野」について、これら各分野等についての公募課題の説明を記載しています。 一次公募と内容を大きく変えたものは特にありませんが、より公募課題の内容 を分かりやすくするための記載の修正やターゲットの明確化を図るという意 味での修正は一部行っています。  また、資料2の後の方には、e-Radへの入力方法について図解でお示してい ますが、こちらについても先ほど申したものも含めて、最近の経験も踏まえて 改定した解説を付けることとしています。資料2に関しての説明は以上です。 ○永井部会長  ありがとうございました。ご質問ご意見をお願いします。 ○廣橋部会長代理  これを拝見すると、最初の一回目の公募とほとんど内容は同じであります。 そうだとすると、あまり適切な良い課題申請がなかったのかと想像するのです が、この課題を見ますと、大変重要なテーマが残っているのです。何が問題で 適切な応募がなかったのかも考えなくてはいけない。何か考えられることがあ るのでしょうか。極めて重要なテーマがここに残っているような気がします。 ○坂本研究企画官  はい。そういうこともありまして、あえて二次公募をしようとしているとこ ろがあります。いま先生ご指摘の点は、この後の「今後の厚生労働科学研究に ついて」の議論においても論点の一つとしてお示ししたいと思っています。た だし、現状においては、その点について時間をかけるよりは、まず公募をして おきませんと、研究をする期間が十分に確保できなくなってしまう状況もあり ますので、十分な分析が今できているわけではありませんが、まずは二次公募 すべきものについて整理をしたということです。 ○永井部会長  今回の二次募集で何か特徴的なところというのはないのでしょうか。 ○坂本研究企画官  一次公募のときに検討したものを踏まえていますので、特に特徴的なという ものはないと思っています。 ○永井部会長  いかがでしょうか。よろしいでしょうか。もしご意見ありませんでしたら、 ただいまご説明いただいた「平成22年度厚生労働科学研究費補助金公募研究 事業(二次)」については資料のとおり進めさせていただきたいと思います。 また、字句の修正等がある場合には、事務局で行い、必要に応じて部会長の方 で確認させていただいたうえで、確定したいと思います。よろしくご了承いた だきたいと思います。 ○永井部会長  では、議事の3にまいります。ヒト幹細胞臨床研究についてご審議をお願い いたします。名古屋大学医学部附属病院など4機関より申請がございました。 平成22年3月10日に厚生労働大臣から諮問され、同日付で当部会に付議され ております。末松委員はご欠席ですが、慶應義塾大学医学部の審議につきまし ては、ご発言を控えていただくということでお願いします。では、事務局から ご説明をお願いいたします。 ○研究開発振興課  ヒト幹細胞臨床研究につきましては、冊子となっております資料3を用いて ご説明させていただきます。ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針に基づ いて申請されました臨床研究計画について、今回は新たに諮問、付議がなされ ました申請4件につきましてご報告申し上げます。今回、新たに申請され、新 規性が認められ、諮問、付議されましたのは、名古屋大学医学部附属病院、慶 應義塾大学医学部、国立大学法人高知大学医学部、財団法人住友病院からの実 施計画です。  1頁目が本申請に関する諮問書、2頁目が付議書です。平成22年3月10日 付で諮問、付議されております。  まずは名古屋大学医学部附属病院からご説明をさせていただきます。3頁の 研究計画申請書に続きまして、4頁に本実施計画の概要があります。研究課題 名は「培養骨髄細胞移植の併用による骨延長術」です。対象疾患は骨欠損のた め骨延長を要する疾患で、具体的には「軟骨無形成症」、「軟骨低形成症」など の骨系統疾患及び外傷やその他の先天疾患です。骨欠損のため骨延長術を施行 する際に、培養骨髄細胞移植を併用する治療を本施設は開発してきました。本 研究は、ヒト幹細胞臨床研究に関する指針が施行される以前から既に行われて いる研究でございまして、現在まで既に40例以上の実績があります。安全性 と有効性につきまして、既に数編の論文を報告してきました。今回の申請につ きましては、さらに臨床応用へ向けまして、GMP基準に準拠した細胞調製施設 を用いて研究を継続いたしまして、高度医療評価制度への申請なども想定した 臨床研究を行っていきたいということです。  9頁にポンチ絵がありますので、そちらで説明させていただきます。被験者 から採取された骨髄細胞を培養しまして、培養後に多血小板血漿と混合したあ とに、トロンビンやカルシウムと共に注入することで、骨新生を促進する効果 を期待しております。研究計画は、従来の骨延長術単独治療をコントロールと いたしまして、統計学的に有意差を評価する臨床研究計画です。  次に慶應義塾大学からの申請です。本研究は今回の4件目の、財団法人住友 病院と同様に、既に本部会で了承され、臨床研究が開始されておりますプロト コールによる多施設共同臨床研究の参加機関です。  二つの実施計画の概要につきましては、慶應義塾大学医学部の申請書類を用 いてご説明させていただきます。10頁をご覧ください。慶應義塾大学医学部か らの申請で、研究課題名は「末梢動脈疾患患者に対するG-CSF動員自家末梢血 単核球細胞移植治療のランダム化比較試験」です。  11頁が研究実施計画の概要です。この研究の対象は既存の治療に抵抗性の末 梢動脈疾患で、慢性閉塞性動脈硬化症やバージャー病となっております。臨床 研究はG-CSFの皮下注射から4日目に自己末梢血を採取いたしまして、アフェ レシスを行い、単核球を採取する。得られた単核球を末梢動脈疾患患肢に筋肉 内注射をいたしまして、末梢血管の再生効果を見るというものです。本研究は、 用いる幹細胞や対象疾患としての新規性はありませんが、計21施設が参加予 定の多施設臨床研究として実施されまして、推奨療法群あるいはG-CSF動員自 家末梢血単核球細胞移植併用治療群のいずれかに無作為に割り付け、有効性や 安全性を比較・評価する研究です。主任研究者は札幌北楡病院外科の堀江先生 で、多施設の共同研究としてプロトコールが作られております。今回の申請で は、研究実施計画の施設基準と所属機関の倫理審査委員会での疑義につきまし て、今後委員会で審査を行うというように考えております。  58頁には財団法人住友病院の臨床研究実施計画申請書がございます。概要と 計画書はただいま説明しました慶應義塾大学医学部の臨床研究と同様の内容 で申請がされております。  次は国立大学法人高知大学医学部からの臨床研究計画です。23頁に申請書、 24頁には本実施計画の概要があります。研究課題名は「小児脳性麻痺に対する 自己臍帯血幹細胞輸血による治療研究」です。対象疾患は、小児脳性麻痺です。 出産時に採取された自己のさい帯血を用いるという治療計画です。本研究の要 約が55頁、臨床研究の流れが57頁にありますので、そちらの方もご参照くだ さい。研究計画は、出産時にさい帯血が採取され、それが民間のさい帯血バン クであるステムセル社に凍結保存されている乳幼児、小児のうち、脳性麻痺の 発症した患児に対しまして、生後1週間から8歳までの間に高知大学医学部に て自己さい帯血の静脈内投与を行います。主要評価項目としましては、安全性 を見るということになります。副次項目として、神経医学的評価と各種の画像 検査により、有効性を評価します。本研究と同様の研究が、既に米国のDuke 大学で複数例の被験者を対象に行われており、現在は、FDAに二重盲検試験と して研究計画が申請されているという段階と聞いております。  ただいまご説明いたしましたこれらの4件の申請は、本部会で了承が得られ ましたら、4月2日に開催されます第11回ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委 員会にて審議を開始する予定となっております。審査委員会の議論を基に、臨 床研究計画がヒト幹の指針に適合するよう修正いたしまして、ヒト幹臨床研究 を推進していく予定です。ヒト幹細胞臨床研究実施計画につきまして、ご報告 いたしました。 ○永井部会長  ありがとうございました。ただいまのご説明にご質問、ご意見ございますで しょうか。 ○廣橋部会長代理  私の質問は、国立大学法人高知大学医学部の小児脳性麻痺に対する自己さい 帯血幹細胞輸血による治療研究に関してです。普通、再生療法というのは、骨 髄のstem cellを使いましても、一つの細胞の方向に分化し、それが欠損して いるものを補うということかと思うのですが、本治療の場合には、さい帯血の 中の幹細胞が、一つには血管内皮になって血流を回復させる。同じさい帯血の 中にある細胞が、神経細胞になることにも貢献する。さらに血流が増えたこと によって、もともと脳にある幹細胞が増える可能性もあるという、非常に複雑 な仕組みで治療することになっているのです。そういったことを申請者は研究 しておられないのですが、ほかの人たちが基礎研究としてやっておられるよう なので、折角新しい臨床応用をするのならば、基礎研究者と連携を取って、少 しでもそういうものに役に立つ治療効果が次に活かせるようにすすめて欲し い。そうすれば、単に米国で行われているものを日本でも再現するということ にとどまらない意義があるのではないかなと思うのですが、何かそういう議論 はありましたでしょうか。 ○研究開発振興課  十分に説明ができていなかったのですが、29頁にございますが、本研究機関 はNOD/scidマウスに対しまして、ヒトのさい帯血幹細胞を投与するという前 臨床研究を行っております。実際には脳虚血モデルしかまだ作れないというこ とで、もちろん脳性麻痺ではないのですが、免疫不全マウスに対してヒトのさ い帯血を投与することで効果を確認しているという段階です。作用機序として は、先生がおっしゃいましたように、投与された幹細胞が受傷部位にまず集約 されるというところが第1点です。2点目としては、血管再生が進んでくると いう段階までは確認ができています。その後のさらに詳しい機序については、 なかなか証明することが難しいというような説明がなされています。  これらの内容を審査委員会で審議させていただきまして、もし必要であれば、 さらに前臨床研究を追加していただきます。その様な形で研究を進めていくよ うな形で考えております。 ○永井部会長  先生ご指摘のように外国でやっているから日本でもやるというようなスタ ンスの研究は、特にヒトを対象にした場合にはすべきでないと思うのです。申 請する以上は自分たちのプロジェクトとしてコミットして、自分たちのクエッ ションを追究するという科学的姿勢が最低限求められる。それは審査会の中で もそういう姿勢が見えないものに対しては厳しく指導するということにして おります。いまのご意見は、審査委員会の方でさらに議論を深めたいと思いま すので、よろしくお願いします。 ○岩谷委員  2点あります。最初に、名古屋大学の計画ですが、対象疾患に「骨欠損のた め骨延長を要する以下の症例」とありまして、各種骨系統疾患、先天性とあり ますが、各種骨系統疾患ですが、軟骨無形成症は、骨欠損があるわけではあり ませんので、骨欠損があるために、骨延長を要するというこの表現は、おかし いと思いますので、ご検討いただきたい。単純に「骨延長を要する以下の症例」 でもよろしいのではないかと思います。  もう一つは、高知大学の小児脳性麻痺の対象疾患が55頁の要約にあります が、対象疾患が小児脳性麻痺、年齢1週から8歳とあります。脳性麻痺のお子 さんを1週間で診断するということは、通常はできません。もともとの定義か らして、脳性麻痺の定義がそのようにはなっておりません。新生児または幼児 の小さいときに脳性麻痺と診断すること自体、極めて難しくて、昔も脳性麻痺 が治ったとか治らないとかいう議論は何十年と繰り返されているわけで、もう 少し診断基準をはっきりとすべきであろうと思います。 ○永井部会長  ありがとうございました。これも委員会でさらに議論を深めていただきたい と思います。 ○石井委員  まだよく分かっていないのですが、いまの高知の件なのですが、脳性麻痺と 診断されたものに、自己のさい帯血。そうすると診断前にさい帯血は保存する 必要がある。ということは、高知で生まれた子どもの全部というか、まず高知 の病院で出産する人には、こういうものをしますから、あなたのさい帯血を保 存させてください。脳性麻痺だったらそれを使いますよという形で同意を取る。 そういう研究計画になるということなのでしょうか。 ○研究開発振興課  これは当然、臍帯血の採取をするときには、発症することは分かりません。 民間のバンクで将来もし万が一のためにということでさい帯血を保存された 方のうちの、さらに発症したときに、臨床研究自体がスタートするということ になります。 ○永井部会長  保存するかどうかはこの研究とは別個にお母さんの方が判断すると。たまた ま取ってあった場合に、そしてもし発症した場合には、この研究に参加されま せんかという説明をされるということですね。 ○今井委員  そうするとこの場合に、自己さい帯血ではなく、母体さい帯血になると思う のです。自己のものはもういわゆるクリップした段階、遮断した段階からここ しかないわけで、自己は。 ○研究開発振興課  大変難しい問題だと思いますので、勉強させていただいて、回答が分かりま したらできる限り早くお伝えするようにさせていただきます。 ○永井部会長  ほかにご意見ございませんでしょうか。 ○宮田委員  ステムセルサイエンスという民間のさい帯血バンクが関与している研究で す。その会社は慈恵医大の先生がサポートしている会社ですから、いままで技 術的にも10年近く実績があると思いますので、疑う必要はないと思うのです が、それでもやはりさい帯血の保存状態やそういったものが、臨床効果や安全 性に関係してくると思いますので、審査会で審査なさるときには、そういった ところまで遡って是非確認をしていただきたいと思います。 ○永井部会長  ありがとうございました。そのほかございませんでしょうか。ただいまのご 意見につきましては、事務局を通じて審査委員会にお伝えするということで、 また論点整理を行っていただきまして、検討結果はこちらの部会にご報告する ということにしたいと思います。  続きまして議事の4にまいります。戦略研究についてご審議をお願いいたし ます。事務局よりご説明をお願いいたします。 ○三浦厚生科学課長  それではお手元の資料4を用いましてご説明申し上げます。戦略研究につき ましては、前回のこの部会でもご議論いただきまして、継続案件となっている ものです。ご案内のように介入という手段を用いて仮説を説明、あるいは証明 するために、この戦略研究の取組が行われています。戦略研究の中には、期間 が終了するものもありますので、新規の課題を見つけるべくご議論をいただい ています。前回ご説明いたしましたが、いきなりテーマが見つかって本格的な 研究に入るというのではなくて、課題が適切に実施できるのかどうかを検証す るために、1年間フィージビリティスタディを行い、そしてそのフィージビリ ティスタディを通じて、5年間の介入研究が実施できることが見定められたも のを対象として、最終の研究課題とするというステップを踏みます。今日お示 ししているものはそのフィージビリティスタディにそもそも入るかどうかと いうことを決めるために、この部会にお示ししているものです。テーマは前回 と同様、二つのテーマで、いずれも子どもの健康に関わるものです。  まず1頁ですが、「乳幼児の事故を予防するための戦略研究」です。我が国 の母子保健の水準は世界一というような状況の中で、1歳から4歳の死亡率は OECD諸国の中でも第17位と、必ずしも芳しいものではないということで、子 どもの死亡率の1番を占めている不慮の事故に対応する必要があるのではない かというようなことから、この研究においては、「研究の目的」に書いてある ように、事故による乳幼児の医療機関受診、入院、最終的に死亡を減少させる ために、事故の発生を未然に防ぐ方策について検証することが目的です。仮説 としましては、各市町村で保護者への事故予防指導プログラムを作りまして、 そのプログラムを各市町村で実施していただきます。乳幼児、0歳から4歳の 事故による死亡、救急搬送、外来の受診がその結果減ることを検証するという ことです。  研究方法ですが、概ね20万人から30万人程度というのが二次医療圏の平均 的な人口ですので、そのうち協力をいただける介入医療圏と対照医療圏を抽出 いたします。それぞれについて二つから三つ程度の医療圏を対象といたします ので、合計四つから六つ程度の医療圏がこの戦略研究に参加していただくこと を想定しています。介入するかしないかにかかわらず、対象となる二次医療圏 ということでは、必要な施設間の連携が進んでいて、既に事故予防のための積 極的な介入を実施している市町村を含んでいない、既にもう取組を行っている という所ではなくて、まだ真っ新な状況の医療圏を選んで介入、非介入に分け て行うということです。対象者は妊婦及び0歳から4歳児の子どもを持つ父母 ということです。  次の頁になりますが、不慮の事故のうち、約8割を占めておりますのが、1) から4)まで窒息、溺水、転倒・転落、交通事故ということでございまして、こ れらの事故について、どのような状況が生じるかということを検証するもので す。介入方法は、五つの手法で行うこととし、介入医療圏に該当した市町村で は、それぞれの市町村保健センターを中心として、この五つの事業を行ってい ただきます。  出産前の妊婦さんに対して、妊婦健診の場で、医師などから事故予防のため の保健指導を行う。また、妊婦・産後の母親が参加する母親学級で、事故予防 のための保健指導を行う。子どもが生まれたあとは、新生児訪問で保健指導を 行う。さらには健診の場で保健指導を行う。何重にも保健指導を行うというこ とです。5番目は保健師等が訪問しまして、自宅の環境の改善を行う。危ない 状況がないかどうかをチェックするということです。もちろん指導を行うとい うことではありますが、いろいろな要素がこの事故発生に関与するであろうと いうことを想定して、背景となる要因、例えば家庭内外の環境、親の状況、世 帯構成などについてもデータを取りたいということです。  なお、介入の方法については、「※」にありますが、既に先行研究で作成さ れておりますマニュアル、あるいはチェックリストと併せて日本小児科学会が 提言しているものがありますので、それらを適宜改善しながら使用するという ようなものです。  どのような指標で改善が見られたかどうかを評価するかということが、(5)の 「評価項目」です。介入した医療圏と、介入していない医療圏それぞれについ て、4種類の事故が救急の医療機関、これには初期、二次、三次の救急医療機 関が該当しますが、そこでの外来受診件数、また、搬送件数などを指標として 評価する。なお、副次的に評価する指標としては、救急医療機関への搬送後の 転帰、予後についても調査するということです。この課題が介入研究の候補に なるということでお認めいただけましたら、フィージビリティスタディをでき るだけ複数の研究者の方々に行っていただきたいと思っておりまして、フィー ジビリティスタディとしては、市町村が本研究に参加していただくべき要件、 またどの程度の人口が必要か、データを収集するシステムはどうあるべきか、 介入の体制はどうあるべきか、実際に何度にもわたる介入を行うに当たっての オペレーションをどうするかなどをフィージビリティスタディで検証をして いただくというものです。  4〜5頁はそれらを絵で表現したものです。4頁の右の枠囲みの中の上の方で すが、検証する研究仮説は、もうでき上がっているものですが、先ほど申し上 げた事故予防指導プログラムを、各場面を通じて実施していただく。それによ って事故の件数が減るかどうかなどを評価するものです。  5頁はその際に介入する医療圏と介入しない医療圏でどのような結果が出る のか比較することを表したものです。いま説明したのが1番目のテーマです。  6頁目は2番目のテーマで、周産期医療についてです。この必要性について も、前回ご説明申し上げたように、いまや周産期医療がさまざまな体制を取り ながら整備されているところですが、周産期医療体制になお課題が残っている ということで、「研究の必要性」のカラムの下から3行目ですが、具体的には 新生児予後を一層改善する、つまり死亡率を改善するということですが、これ もさることながら、生存されたお子さんについても重度の障害がなるべく残ら ないようにする、このような視点も重要です。  施設間に全く同じ患者さんが来た場合でも、違う結果が出るということがあ るのではないかということから、ばらつきがないようにしていく。また、そも そもEBMについても、エビデンスを集積する必要があるということです。  「研究の目的」に書いてありますように、この介入研究においては、いずれ も先行研究で作成されている「周産期医療標準化プログラム」をシステムとし て確立したい、そしてその効果を検証したいということです。研究の仮説はそ のプログラムを実施することによって、この研究の対象となる総合周産期母子 医療センターの極低出生体重児等の退院時の死亡率等が改善することを証明 したいということです。  研究方法ですが、介入の対象は、もちろん最終的には個別の患者さんですが、 施設ごとに割り振りを行います。全国で77カ所、総合周産期母子医療センタ ーがありますが、そのうちこの戦略研究に参加していただけるセンターを無作 為に介入群と非介入群の2群に割り付けます。一つのセンターでは、すべてが 介入された患者さんを受け入れる。もう一つの非介入群では介入を行わないと いうことになります。介入群に含まれるセンターについては、介入チームが訪 問しまして、標準化プログラムを実施するということです。  評価項目としましては、死亡率や長期的な質的指標を用いて、予後を評価す るということです。この課題がフィージビリティスタディの対象になるとお認 めいただければ、フィージビリティスタディにおいてはこのプログラムを実施 するためのマニュアルの最終整備をしたい。またどれぐらいの対象施設に参加 をしていただければ証明ができるのかということについて検討を行いたいと いうことです。  7頁には、いま申し上げたことを絵に書いていますが、周産期集中治療の課 題として3点挙げられていますが、その右側に、診療行為のばらつきというの があります。たとえ同じ患者さんが周産期医療センターに搬送されたとしても、 それぞれのセンターによってはある行為を行ったり、あるいは行わなかったり ということがあるのではないかというようなことがそもそもございます。  周産期医療標準化プログラムはどういうイメージかというのが図の下の左 にございます。医療技術的な側面と、マネジメントでの側面、例えば医療行為 として母体に対してステロイドを投与しているかどうか、酸素を投与している かどうか、挿管を行っているかどうか、インダシンを投与しているかどうかな どについて評価を行う。また、マネジメント面での介入ができるかどうかとい うことで、人材配置を適切なものにしていただく、人事管理をしていただくと か、さまざまな面で介入を行うというものです。介入群と非介入群で総合母子 医療センターを2群に分けてランダム化比較試験を行うということです。以上、 長くなりましたが、二つの戦略研究の将来課題についてご説明申し上げました。 ○永井部会長  ありがとうございました。ただいまのご説明に対しましてご質問、ご意見を お願いいたします。 ○廣橋部会長代理  前回より大変分かりやすくなったのですが、この二つの研究に共通したこと を二つ質問したいと思います。一つは、フィージビリティスタディの中で十分 ご指導されるのだろうと思うのですが、介入は施設ごとにばらばらに行うので はなく、標準的に一定のレベル以上のものであるということをきちんと担保し ないと、介入群と非介入群の比較になりませんので、フィージビリティスタデ ィの中でかどうか分かりませんが、是非それを担保していただきたいと思いま す。  もう一つ、この研究デザインなのですけれども、こういう戦略研究に興味が あるという所に、まず最初に手を挙げていただいて、その中をランダム化して 二つに分けて、介入する群と介入しない群に分けると。そうすると介入しない 群に当たった人たちにとっては、非常にディサポインティングですよね。2群 に分けて介入する研究をするということが本当に可能なのかどうかというこ とに、私は疑問があるのです。例えばがん予防などの研究でも、肺がんでヘリ カルCTまでやるけれども、もう1群の方は、今までのコンペンショナルな検 診をやって比較する研究はありますが、全く介入しないのと、こういう介入を する二つの群に分けて、確かにその方が差は大きく出て、研究自体としてはい いのだと思いますが、果たして本当に参加者の理解が得られるか疑問があるの で、こういう分野のご専門の方にお伺いしたいと思います。  あと言葉ですけれども、6頁で総合周産期母子医療センターを介入と非介入 に分け、介入方法として「科学的エビデンスに基づいた」とあります。この研 究自体が科学的エビデンスを求めるための研究であって、既に科学的エビデン スがしっかりしているのだったら、こういう研究は要らないはずなのです。こ こは、むしろ今までの先行研究によって予備的に、これがいいだろうという意 味でのエビデンスがあるということなので、ちょっと言葉の使い方を注意され た方がいいのではないかと思いました。 ○永井部会長  ありがとうございます。ほかに、福井委員、どうぞ。 ○福井委員  私も似たようなことですが、1)については、保護者への事故予防指導プログ ラムが、本当に効果があるかどうかを検証しようとしているのかどうか。2)の 方も、標準化プログラムの実施により、死亡率等が改善するかどうか見ようと しているということですが、廣橋先生と同じように、おそらくこれは今までの いろいろなエビデンスをまとめて、それを実施するかどうかが問題であって、 それぞれ効果があるかどうかを検証しようとするようには見えません。研究と いうよりも事業としてそれぞれの施設に、こういう内容の医療を実施するよう に促すのが、本来的なものではないかという印象が非常に強くします。研究と いうよりも、実施を促すタイプの国の事業のように捉えたほうが、いいのでは ないかという印象です。 ○永井部会長  その点は、いかがでしょうか。 ○三浦厚生科学課長  まず廣橋委員からご指摘のありました、介入しない群への対応ということで すが、フィージビリティスタディでは、こういう介入群、非介入群という形で やってみて、その結果、ある程度の有効性が出てきたということであれば、例 えば介入前、介入後の比較というやり方もあるかもしれません。また介入しな かった群に対しては、その後、時期を遅らせて介入を実施する方法もあると思 いますので、委員がご指摘のように、せっかく関心を持っているセンターの意 欲を損なわないように対応していきたいと思います。  福井委員からご指摘がありました、これは研究というよりも事業ではないか ということですが、この介入方法について、ある程度の有効性は、例えば諸外 国での取組などから見ても認められるものではないかと思っています。ただ、 総合周産期母子医療センターにそのような事業が拡大できるのかとなれば、ま さに予算の確保も含めて、さまざまなことを乗り越えていかなければいけない。 その時にある一定のエビデンスをもって、例えば予算の確保などの際にも働き かけることができるのではないか。十分な予算が確保されれば、やってみれば いいという議論もできるかもしれませんが、現時点では大変厳しい状況もある ので、まずはパイロットスタディとして総合周産期母子医療センターでの戦略 研究を行い、その有効性を証明した上で、さらに事業として広げていくことが できると考えています。 ○南(裕)委員  私は、こういう研究は非常に重要な研究だと考えています。ただ、何を検証 するかが、こういう時はすごく難しいことです。アウトカムはその地域の介入 医療圏と対照医療圏の結果が、例えば乳幼児の不慮の事故が減少しているかど うかという、いわゆるポピレーションです。人口の調査ですが、介入の方法は それぞれのお母さんたちに対して介入していくわけで、それも五つの方法があ ります。例えば介入圏においては、あるお母さんは1と4は受けたけれども、 3と5は受けていないとか、あるお母さんは1は受けたけれど、あとは全く受 けていないとか、そういうばらつきは、こういう人口に対するプログラムでは どうしても出てきます。その時に、いくつ以上のプログラムを持ったお母さん たちの群を増やしていく努力を、どうやってしていくか。そういう事柄が大変 難しいところだろうと思います。だから何を結果として見ているかです。たっ た1回しか受けていないのに、結果が上がることになれば非常に簡単なのです。  かつて私は、博士課程の学生が、中国で乳幼児死亡事故を減少させるため、 お母さんに対する健康教育の研究をやったのを指導したことがあります。1回 の指導でかなり中国では効果があったのです。だからこんなに五つもやらなけ ればいけないのか、どのプログラムなら効果があるのか、その判定も含めた研 究をされたらいかがかと思います。  もう一つよく分からないのは、このフィージビリティスタディは手上げにな るのでしょうか。研究者が誰なのかが非常に重要になってくると思います。 ○三浦厚生科学課長  南委員からのご質問ですが、フィージビリティスタディについては公募をと りたいと思っています。私どもが誰かを指名してということではなく、広くこ の研究に参加していただくことで考えています。 ○宮田委員  私もこれは重要な研究だと思います。いわゆる科学の成果をいかに国民に返 すか、その橋渡しの研究として非常に重要だと思っています。ですから、なる べく成功していただきたいと思っていて、まず研究を整理しないといけない。 これはかなり因子が多いので、先ほど南先生もご指摘のとおり、要するに介入 する手法が有効なのかどうかを確かめるのか、その介入する手法をお母さんや 医療関係者に伝える手法を、どういうものとするのか。介入の内容でなく介入 のやり方、その影響を調べるのかを頭の中で整理した上で、どれをもって検証 するのかを考えないといけないと思います。  いま、このペーパーを読む限りでは暗黙の前提として、介入する方法に関し ては一定の効果を期待できるという前提にありますので、その場合には、介入 の仕方のところで橋渡し研究というか、政策を普及するためのやり方、howが いちばん重要になってくるのではないかと思います。フィージビリティスタデ ィでプロトコールを作るときには、そこが重点になることを明示的にする。も し公募するのでしたら、そうすべきだろうと考えています。  もう一つお願いしたいのは、是非、複数のチームにフィージビリティスタデ ィをやっていただきたいということです。なぜかと言うと、前のこういう戦略 研究の反省もあるのですが、たった1人の先生しかできないような研究をやっ て、その先生が途中でギブアップしてしまい、なかなか研究の継続ができなか ったことがあります。このようなテーマは決してそうではないと思っています ので、複数のチームにプロトコールを作っていただいて、その良い点をマージ した形で、次のスタディに進むような柔軟性があってもいいのではないかと思 っています。 ○岩谷委員  1)の方ですが、こういう4種類の事故を対象に集めるとなれば、バータード チャイルドが必ず紛れ込むと思うのです。そういう子どもたちが来たときに、 この研究で扱わないけれども、どこかに必ず行ってもらう道筋を作っておかな いと、研究そのものが評判を落としてしまう恐れがあると思いますので、そこ だけお願いしておきます。 ○佐藤委員  先ほどの廣橋先生のご質問の繰り返しになるかもしれませんが、1)の研究で 介入しない医療圏というか自治体ですか、それをどうするかきちっと押さえて おかなければいけないと思います。おそらく放っておくと、見様見真似で始め たりする所があると思うし、介入研究のコンタミネーションというのはあり得 る話だと思います。そういう意味で先ほど課長が言われたように、あとからや るとクロスオーバーでないけれども、擬似クロスオーバーみたいな感じで待っ てもらうか、よく分かりませんが、その辺の検討をよくフィージビリティスタ ディでやっていただければと思います。 ○川越委員  2)のほうですが、前と比べて非常に分かりやすくなった感じがします。まず その点を申し上げたいと思います。質問したいのは、介入群と対照群を持つと いうことですが、介入の内容は介入チームが行って指導するのか、あるいは介 入チームが実際にやるのか。つまり、これは医療行為がほとんどではないかと 思いますので、その点をまず教えていただきたいと思います。 ○三浦厚生科学課長  いまのご質問ですが、介入チームは基本的には自分たちで何かをやるという のではなく、そこにいる方々の能力を引き出すということが仕事になりますの で、具体的にセンターの問題を、お互いに話し合いながら課題を抽出して、で きていない部分については、こういう事をやればできるのではないかと、お互 いにコミュニケーションを繰り返しながら介入をしていくということです。 ○川越委員  その場合、これは先ほどの福井委員の話とも通じるところがあるのですけれ ども、周産期医療の標準化プログラムを検討するのか。あるいは、このプログ ラムの実効性と有効性が確立されているとすれば、それをいかに実行すること を目指しているかです。そこをもっとはっきりした方がいいのではないか。と いうのは、ここの必要性の中に書いてある施設間でもばらばらだからです。き っちりやっている所もあるし、やっていない所もある。その結果、新生児の予 後が良い所と悪い所があると記載されていますので、そういう具合にした方が いいのではないかと思います。いかがでしょうか。 ○三浦厚生科学課長  プログラムにつきましては、ほぼ完成しているということですが、実際に現 場で使いやすいものになるかどうかは、フィージビリティスタディで検証して、 本番の戦略研究に持ち込むということです。プログラムの微調整というのは、 フィージビリティスタディで若干はあるのだろうと思いますが、そこで新たに 作ることではないということです。 ○川越委員  最後の質問ですが、これが戦略研究なのか戦略なのかで、ちょっと変わって くると思います。研究のための研究をやっているわけでは当然ないわけで、ま ず大きな戦略があって、そのための戦略研究があると思います。診療行為のば らつきがあって、非常に良い成績を出している所と、そうでない所がまず挙げ られていますね。たぶん規模によって、ばらつきがあるのではないかと思うわ けですが、そういうことがあると仮定すると、総合周産期センターをもっとも っと大規模化すべきではないか。そういう議論にいくのではないかという気が します。つまり戦略部分です。あとスタッフ間の交流ということも、当然成績 と関係してくると思いますので、その辺のことをどう考えているのか。ただ行 って指導し、それで終わりということでいいのか。これを戦略として考えてい くとすれば、もっともっといろいろなことを考えなければいけないのではない か。 ○三浦厚生科学課長  お尋ねのことですが、それぞれの総合周産期母子医療センターのある地域の 特性もあるでしょうし、また総合周産期母子医療センターが置かれている病院 の特徴とか、さまざまな要素が、この周産期の成績に影響していることは容易 に想像できますので、私どもとしては総合周産期母子医療センターをいくつか の類型に分けた上で、同じ類型の中で介入の効果を検証していってはどうかと 思っています。そのために7頁にあるとおり、クラスターランダム化比較試験 ということで、クラスター化をした上でランダマイズすることを考えています。 川越委員が言われるようなさまざまな要素というのは、なるべくルールアウト してできればと考えているところです。 ○今井委員  私も2)の方の話ですが、ご承知のように出産時、巷では皆さん、行く病院が なくてとても大変という状況があります。いわゆる正常分娩と思われるような 人たちは、こういった総合的な病院や大学病院に行くのがなかなか大変なので す。例えばこういう総合周産期母子医療センターみたいな所は、特に都会がそ うですが、何らかの障害があるような患者さんを、地域医療の先生たちが送り 込んでいる状況が多いので、もともと検証しようと思う被験者そのものを、ど ういう形で捉えているかによると思います。その辺のところによっては検証す るおおもとの部分に、何らかのぐらつきが出てしまうのではないかと思います。 ○三浦厚生科学課長  いまのご指摘は、それぞれの病院ごとに来る患者さんも違うのではないか、 あるいは同じような患者さん同士で比較しなければ、なかなか難しいのではな いかということかと思います。ご指摘のように非常に重度な方と重度でない方 を比較して、予後が良かった悪かったと言っても、なかなか評価しにくいとこ ろがありますので、施設間も先ほどクラスター化すると申し上げましたが、患 者さんについても同じように標準化と言いますか、分類して行いたいと思いま す。もともと総合周産期母子医療センターというのは、県内に1、2カ所とい う非常に数少ない施設であり、言わば周産期医療のその地域における拠点です ので、そういう意味で、ここで主に扱うのは正常のお産というより、ハイリス クの妊婦さん、あるいは周産期の患者さんということになります。そういう意 味でここで受け入れる患者さんは、概ね重度ないし超重度に分類されると思い ますが、いま言われたような患者さんごとの細かな状態というのは、標準化し ないといけないところがあると考えています。 ○松田委員  1)の戦略研究で、何か揚げ足を取るような意見で恐縮ですが、「既に事故予 防のための積極的な地域介入を実施している市町村は含まない」と書いてあり ます。そういう地区があればわざわざ研究しなくても、施策としていろいろ効 果のあるようなアイディアを分析して、それを展開する施策の方がいいのでは ないかという気がします。いかがですか。私の限られた狭い知識で言いますと、 市町村によっては子育て支援というのは非常に大きなばらつきがあるような 感じがしますので、そういうところをしっかりと調査すれば、わざわざ研究に 至らなくてもいいのではないか。2)は研究のような感じはします。 ○永井部会長  大事なご指摘だと思いますが、いかがですか。 ○三浦厚生科学課長  私どもも、専門家や担当者から話を聞いているところでは、少なくとも事故 予防について強力に事業を実施している市町村は、まだあまりないようです。 そういう意味ではほとんどの市町村が対象となるのではないかと思っていま す。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。 ○宮田委員  いまのところは結構本質的な議論で、要するにwhatでなくhowを研究する のかということになります。そうすると乳幼児の死亡率の低下は当然見なけれ ばいけないですが、例えば全国的に政策展開したときに、カテゴリーAに類似 するような地域に対してはこういう施策を行って、均質的な成果を上げるため の資源投入が、どれぐらいなのかというところを測る必要があるのではないか。 ところが、国の研究予算というのはみんな使い切ろうとしますから、研究費当 たりのパフォーマンスというと測れなくなってしまうので、例えばその医療セ ンターに何時間ぐらい、どういうふうに訪問したとか、本当にどういう働き方 をしたのかというパフォーマンスを測定するのも、アウトカムの一つとして記 録する必要があるのではないかと思います。 ○三浦厚生科学課長  いまのご指摘は、おそらく2)の周産期の話だと思いますが、両方とも共通す ることとしては、何と言ってもまずプログラムを明確にすることと、そのプロ グラムがたとえあったとしても、それが確実に実施できるマニュアルを併せて 整備しなければいけないと思います。これは先ほど廣橋委員からもご指摘があ ったところで、たまたまいい介入者が行けば良くなったけど、うまくない介入 だったらあまり効果がなかったということではいけないので、介入は標準化し なければいけないと考えております。その標準化のプログラムについては、現 にあるものに基づき確立した上で、フィージビリティスタディに入っていきた いということです。 ○宮田委員  それは非常に微妙なお話です。標準化は必要ですけれども、先ほどおっしゃ ったように今回の乳幼児の事故とか周産期の話というのは実は地域性がすご くある。だから、その地域性とか歴史的な背景を除いて、同じことをやればい いというのが今までの行政だったと思いますが、そういう行政でなく、きちっ と地域性や歴史的な背景を認定した上で、このマニュアルの何番と何番と何番 を、この地域には適用しようというアウトカムを要求した方がいいのではない かと思います。 ○三浦厚生科学課長  何度も恐縮です。先ほど南委員からご指摘がありました。特に1番で5通り の介入をするので、これをどのように評価するのかということがありましたが、 まさにそういうこととも関係してくると思います。つまり、例えば1)の研究で 言うと五つの手段がありますと言ったときに、果たしてその五つの手段のどれ が一番有効性があったのか。しかもそれは、どういう特性を持つ地域において 有効だったのかが分かれば、さらにピンポイントでの介入が可能になると思い ますので、そういう点では宮田委員が言われたように、howの部分とwhatの部 分の両方を組み合わせたような研究になるのではないかと思います。 ○廣橋部会長代理  関連することは十分議論されたのかもしれませんが、研究は基本的に観察研 究があって、それから介入研究に進むのだと思います。先ほどの松田委員から のご意見も、現に優れた地域があって成果を上げていると、また地域差もある といったことについての十分な観察研究があって、それが新しいプログラムに 活かされ、それによって介入研究が行われることを、きちんと担保していただ ければいいのではないかと私は思いました。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。 ○石井委員  全く違う発言になるのですが、先ほど虐待の問題が指摘されましたけれども、 いま大きな問題になっているので、1)の研究のような介入研究をするのであれ ば、虐待予防のための介入研究のようなものも、お考えいただけたらと思いま す。人とお金を注ぎ込んで予防すれば予防できると、そういう科学的なものが 研究として示せればいいのではないかと思います。 ○永井部会長  いかがでしょうか。 ○三浦厚生科学課長  今後のフィージビリティスタディに持ち込む際に、いまご指摘のあった虐待 をどう扱うかを、もう少し明確にしていきたいと思います。また改めて戦略研 究が別途必要だとなれば、この場でご説明申し上げたいと考えています。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。 ○川越委員  先行研究として周産期医療標準化プログラムが、ある程度できているとおっ しゃったわけですが、この内容についてはどういうものなのか。先ほど廣橋委 員もおっしゃっていた観察研究というか、何か頭の中で作ったプログラムが走 っていくことは、我々としていちばん注意しなければいけないところだろうと 思います。現実をちゃんと踏まえたプログラムになっているのかどうか。しか も、そのプログラムがうまくいっている所を参考にしているのか。私の先ほど の質問とも関連するのですが、非常に高い成績を上げている総合周産期母子医 療センターが既にあるわけですから、そういう所の成果を踏まえたプログラム ができているのか。あるいは頭の中で作ったものになっているのか、それは 我々として厳重にチェックしておかなければいけない問題だと思いますので、 よろしくお願いします。 ○永井部会長  ただいまいただいたご意見を踏まえて、この戦略研究を前に進めさせていた だくということで、よろしいでしょうか。                   (了承) ○永井部会長  ありがとうございます。そのように進めさせていただきます。では議題5の 今後の厚生労働科学研究について、ご審議いただきたいと思います。事務局よ りご説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  関連する資料は資料5-1、資料5-2、資料6です。まず資料6をご覧くださ い。総合科学技術会議の動向に関し、前回の部会以降のものについて最初に説 明させていただきます。1〜9頁は、2月23日に総合科学技術会議の基本政策 専門調査会が開かれましたが、その時の資料で第4期科学技術基本計画骨子(素 案)です。今後、議論を進めていく上でのたたき台的なものと理解しています が、3頁の上の「2.次期基本計画に向けて」の最初の「○」で、新たな国家戦 略としての新成長戦略では、2020年を見据え、グリーン・イノベーション及び ライフ・イノベーションの2つのイノベーションを推進するとともに、「成長 を支えるプラットフォーム」として「科学・技術立国戦略」を位置付けている、 との記載があります。次の○では、次期科学技術基本計画は、10年先を見通し た5年間の計画として、新成長戦略を深化、具体化し、我が国の科学・技術及 びイノベーション政策の基本的な方向性を示す、と記載されています。  6頁の「III.成長を牽引する課題解決型イノベーション」については、3,に ライフ・イノベーションで健康大国を目指すと記載されています。8頁のV. 科学・技術・イノベーション促進のためのシステム改革では、(3)のイノベー ションを誘発する新たな仕掛けという項目があり、こういったことも今後議論 される見込みと理解しています。  資料6の10頁からですが、3月9日の総合科学技術会議において、科学・技 術重要施策アクション・プラン等の策定に向けた科学・技術政策上の当面の重 要課題について意見交換が行われ、その際に総合科学技術会議の有識者議員が 提出した資料です。  12頁の(2)にライフ・イノベーションの推進という項目があります。ゲノム 情報等に基づく疾患解明と予防医学の推進等により健康社会を実現する。革新 的診断・治療法の開発等により医療の安全性・信頼性を向上する。システム開 発や技術の推進等により高齢者・障がい者のQOL向上と子どもの成育環境を整 備する。こういった記載があります。  14頁の「4.平成23年度の科学・技術関係予算編成に向けた取組」ですが、 (1)の政府全体としての対応では、この重要課題に対して、連携し、集中して 科学・技術関係施策を展開することを関係府省に求めるとされています。(2) の科学・技術重要施策アクション・プランの策定では、本「重要課題」関連施 策の重点化、連携強化内容を取りまとめて着実に推進し、課題解決に資するた め、「科学・技術重要施策アクション・プラン」を総合科学技術会議が中心と なって、関係府省と協力しつつ、外部の意見も聴いて4月下旬以降に策定する となっています。  平成23年度に向けて、グリーン・イノベーションとライフ・イノベーショ ンに関わる主要推進項目について、先行的に課題解決型イノベーションとして 取りまとめ、また別途、研究開発システムの改革については、競争的資金の使 用ルール等の統一化について取りまとめるとされています。  関係府省には、アクション・プランに沿った施策の実施を求めること、それ から、総合科学技術会議が実施内容を確認・評価するほか、毎年アクション・ プランの見直しを行うとされています。  15頁の(3)の資源配分方針の作成等ですが、本年4月を目途に資源配分の方 針の基本指針を策定し、6月頃を目途に資源配分の方針を策定して、我が国と して重点化すべき施策を明らかにし、各府省には、これらに沿った概算要求を することを求めるとされています。前回の部会以降、総合会議の方で検討され ている内容について、まだ完全に固まったものではないと理解していますが、 こういう状況であるということです。  資料5-2は、前回の当部会でいただいたご意見の概要です。厚生労働科学研 究の性格、評価、産業界との連携でアカデミアや公的研究機関のあり方も含め たご意見、予算、総合科学技術会議の動き等について、ご意見を頂戴したもの をまとめています。  資料5-1が「今後の厚生労働科学研究について(論点整理)」です。1頁の真 ん中辺りの「※」ですが、この資料では主に大きな方向性等の論点を整理する ということで、個別課題の提案等の論点は含めておりません。  まず、前提ですが、厚生労働科学研究は、国民の保健医療、福祉、生活衛生、 労働安全衛生等に関する行政施策上の課題を解決する目的志向型の研究で、幅 広い分野を対象としており、行政施策に資する研究が求められ、年次計画等に より計画的に研究を進めることが適当な分野がある一方で、時々の行政的課題 に対応する研究が必要となることも多く、各分野毎に、必要に応じ、適切な年 次計画を立案するとともに、機動的な対応も必要と記載しています。  新成長戦略等の状況を踏まえると、健康長寿社会の実現に向けた研究、及び 少子化・高齢化に対応し、活力あふれる社会の実現に向けた研究等が、厚生労 働科学研究の今後の主な課題となると記載しています。  厚生労働科学研究が対象とする分野は幅広く、ニーズの把握とシーズの創出 に向けた探索的な研究や基盤整備に取り組むとともに、選択と集中による有望 なシーズの迅速な社会還元を目指す必要があり、その際、ニーズの把握、シー ズの創出、成果の社会還元に向けた研究に、バランスよく取り組むことが重要 となると記載しています。  こういうことを前提とした上で、「厚生労働科学研究の性格・役割・独自性 について」を論点1として示しています。この中で、行政意図の明確化につい て8点の事項を示しています。一つ目は、課題を解決する目的志向型の研究で あり、方針を明確にして、個々の研究課題の設定について行政意図が明確に伝 わるようにする必要があるのではないか。二つ目は、専門家の協力も得て、各 研究課題について、研究目的、研究の性格や内容、課題設定の背景と現状認識、 研究期間内に求めている具体的な成果、研究計画に盛り込まれるべき事項等の 説明が明確にされている必要があるのではないか。  2頁、三つ目は、これまで行われた研究のデータを示し、何が不足している か等を公募要項に示すことを検討すべきではないか。四つ目は、行政の意図す るものが複数ある場合には、留意事項の軽重を示すべきではないか。五つ目は、 先ほどご指摘がありましたが、行政意図に適合しない応募が多かった課題につ いては、評価委員会において、公募要項の記載内容について再検討する等、改 善に向けた対応を行うことも必要ではないか。六つ目は、公募課題の設定につ いて、事前評価委員会等外部の有識者から意見を聴取する手順を明確化すべき ではないか。明確化が課題ではないかということです。七つ目は、人材養成等 研究の裾野を広げる意図、あるいは現状に関する探索的な研究を行い、新たな 視点での現状把握を行う等の研究分野であれば、行政が枠を示して、その範囲 内であれば、ある程度自由に研究課題の設定を行っても可とするべきではない か。そういうこともあるのではないかということを論点としています。八つ目 は、ガイドラインの作成、規制の国際調和への対応等、行政施策に直接結びつ く研究を実施できる研究者は限られており、一般に応募しにくく、行政目的達 成の観点から、行政主導の指定研究もより活用すべきではないか。  次に、基礎的な研究への取組については、前回ご議論があったところですが、 最初の「○」では、厚生労働行政施策への反映が想定されていない基礎的な研 究は対象外とした上で、研究ニーズの把握や新たなシーズの開発を行っていく 必要もあり、行政施策への関連が明らかな基礎的な研究には、厚生労働科学研 究として実施すべき課題もあるのではないか、と記載しています。次に、事後 評価では、基礎的な研究に関しても計画通りに進捗したのか等について評価し、 次回以降の事前評価にもつなげる必要があるのではないか、と記載しています。  FA、PD/POの機能等についてでは、4点示しています。厚生労働科学研究費 の課題設定には、長期的な戦略と目標設定、及び当該分野の専門家と行政担当 者との継続的で緊密な連携が必要で、PD/POの拡充に努める必要があるのでは ないか。FA及びPD/POの役割は、研究進捗の管理、研究結果の行政や医療・予 防への実践、及び次期研究計画の策定、他の研究助成制度への橋渡しへの関与 等を含むべきではないか。  3頁ですが、FAの機能として、指導窓口、研究費の説明会の実施等を含むべ きではないか。また、個別の研究成果を一般国民やメディアにわかるような形 で発表することも、FAの機能に含むべきではないか。研究支援に従事する人材 の確保や、そういった方々のインセンティブの向上が図られるよう、研究費の 配分等においても留意すべきではないか。  論点2は「評価について」まとめています。その中の全般的事項についてで は6点の事項示しています。細分化された研究を限られた評価委員で正しく評 価することは難しく、より多くの専門家を評価委員とすべきではということ。 外部専門家による行政評価については、中立性、公平性の確保に十分留意した 上で、評価の視点等を事前に明示すべきではないか。評価の透明性の確保に一 層配慮するため、中間評価結果の公開や評価委員会の議事録の開示も検討して はどうか。厚生労働科学研究費の審査システムの中に患者等の当事者の評価の 導入を検討すべきではないか。研究成果が、行政、国民生活にどういかされた かの評価を研究終了後に行う必要があるのではないか。厚生労働科学研究費の 案件によっては行政ニーズを踏まえた評価基準で評価すべきものがあるが、そ の場合でも客観的かつ定量的な評価指標を設定し、評価基準をより明確にすべ きではないか。こういう論点を示しています。  事前評価についてでは6点の事項を示しています。事前評価者に、各公募課 題における行政的意図を示した上で評価を依頼する必要があるのではないか。 評価の視点・手順を明確化し、ハンドブック等により応募者及び評価者の双方 に示すべきではないか。申請金額についての査定の強化が必要ではないか。応 募書類には、各年度における研究の目標を含む工程、実用化の目処等を明記さ せるべきではないか。4頁ですが、過去の実績は、次回以降の事前評価の参考 とするべきではないか。特に過去の成果が論文化されていない場合等について は、適正に評価するシステムの構築が要るのではないか。評価を適正に実施す る観点から、研究課題数が多すぎるという指摘もあり、課題数を絞る必要はな いか。こういったことを論点としています。  中間・事後評価についてでは8点まとめています。研究目的を研究期間内に どこまで達成できたのか、評価時点で報告を求め、計画変更の場合はその根拠 も含めて、分かりやすい説明を求める必要があるのではないか。客観的に評価 するために、専門外の評価者にも分かりやすい報告を求めて、隣接領域や専門 外領域の評価者を活用すべきではないか。評価の結果を研究者へ伝達する際に は、評価における議論等が関係する研究者全員に伝わるように留意すべきでは ないか。また、それに対する研究者の対応を必要に応じて調査する等、PDCAサ イクルを回す観点が必要ではないか。中間評価においても、研究進捗の管理、 研究結果の保健医療行政や医療現場等への実践並びに次期研究計画策定・反映 等も念頭に置くべきではないか。研究費の内訳も、中間評価時の資料とする等、 研究費使用の妥当性を確認するシステムの構築も必要ではないか。臨床研究や 疫学研究は、論文化されるまでに時間がかかり、長期的な評価が必要ではない か。研究者が厚生労働科学研究の要望にどう応えたかの評価データを蓄積し、 その後の審査に活用すべきではないか。事後評価は行政施策に反映できる成果 に重点を置くべきではないか。研究を更に継続するべきかどうか等についても、 行政施策に反映し得る成果が得られる見込み等を検討した上で判断する必要 があるのではないか。  論点3「広報等について」ですが、広報・成果の公表等について、5点の事 項を示しています。ハンドブックの作成や、より幅広く大学等への案内や、学 会誌等への案内の掲載を行うべきではないか。成果については、行政への貢献 の実例及び可能性等についても具体的に説明した上で公表すべきではないか。 5頁ですが、成果発表会の拡充や成果の周知のためのワークショップの開催、 関係の深い学会誌での公開等を行うべきではないか。また、研究者へのインセ ンティブを高めるため、特に優秀な成果については表彰すること等も検討すべ きではないか。研究者自身の成果還元を評価することも必要であり、応募様式 に過去の実績欄を設け、そういったことも評価に反映させること等も必要では ないか。幅広い人々が理解できるように、研究課題毎に成果の分かり易い説明 資料を作成し、ホームページ等で公表するべきではないか。  成果データベースの改善についてでは、研究成果についての分かりやすい解 説を、成果データベースに掲載すべきではないか。キーワード検索の改善を図 るべきではないか。他の政府系データベースや学会のホームページとの連携を 検討し、また、検索ソフトのヒット率を高める手法の活用も検討すべきではな いか。成果の公表においては、その課題の必要性、期待した成果、実際に得ら れた成果、費用の情報も公表すべきではないか。進行中の研究についても、研 究者名、課題等の情報が容易に確認できるようにすべきではないか。こういっ た論点を示しています。  その他ですが、応募の際に、e-Radを用いるようになったこと等を考慮し、 応募期間をより長くすべきではないか。課題名の英語記載を求めるべきではな いか。また、成果を英文化して評価を受けたものは、次回以降の事前評価の参 考にするべきではないか。評価結果を政策に結びつける過程は、各担当課室で 事前によく検討しておく必要があり、必要に応じ、その概要を公募要項に予め 示すべきではないか。研究費に関する諸規程は、分かりやすいことを第一とし、 また、改訂により現場に混乱をもたらさないよう留意すべきではないか。採択 の公平感の確保という観点から、「マスキング審査」の状況等を確認した上で、 対象範囲を拡大すること等も検討すべきではないか。関係予算の拡充に努める べきであるが、そのためにも、政策に結びつけた必要性の説明の強化等に努め るべきではないか。こういうことを論点としています。  以上、これまでのご議論を踏まえ、大きく論点整理ということで、ここに50 の事項がありますが、これらについてご意見をいただきたいのと、この他にも こういったことがあるというご指摘も含めて、ご審議をいただければと思いま す。よろしくお願いします。 ○永井部会長  ありがとうございました。たくさんの情報が提供されていますが、どなたか らでも結構です。 ○廣橋部会長代理  私、これ読んで、今までの議論を上手に取り込んでいただき、ありがたいと 思っています。2カ所だけ申し上げたいと思います。FA、PD/POは本当に重要 なのです。本当にこれを増やさなければいけないのですが、日本ではPD/PO、 プログラムオフィサーとしての役割の人を確保するのが困難で、このPOをや ったことが、研究者のキャリアとしてのインセンティブになる社会になってい ないこともあって、本当に難しいのです。言葉で重要だと書くだけでなく、ど うやったらPOを増やして、そういう仕事ができるようにするかを具体的に考 えないといけないのではないか。  それに関係があるのでしょうか、このPD/POのパラグラフの中に、研究支援 に従事する人材の確保や、当該人材のインセンティブの向上が図られるよう、 研究費の配分等においても留意すべきではないかとあるのが、それにつながる のかなとは思いますが、私、これは決して間接経費でごまかしてほしくないの です。間接経費というのは、それぞれ個別の研究を推進するために施設にいく べきお金であり、この研究事業全体を推進するための事業としてPD/POが必要 なのであり、そういった人たちを十分にサポートする仕組みを、考えなければ ならないと思います。これが1点です。  もう一つはマスキング審査です。要するに名前を消して、所属もわからない ようにして審査しようということで、確かに公平感が確保されることはあるの だろうと思いますが、これを実際にやるのは難しい。しかもある程度大型の研 究だと別に名前がなくても、どういうことをやっているかだけで誰かわかるの です。ですから若手の最初の審査のところには意味があるかもしれませんが、 簡単に増やすのは難しいのではないかと感じました。 ○永井部会長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○南(裕)委員  ライフ・イノベーションが、重点的な研究のジャンルとして位置付けられて いくのは大変歓迎すべきことです。それがどのように、この厚生労働科学研究 の方針の中で組み込まれていくか大変関心のあるところです。  今まで厚生科学研究の研究課題に対して、例えば私は看護学系の人間ですが、 保健医療、福祉の分野の中でも、特にソフトの側面で研究している人たちが応 募しようとしても、なかなか的確に入る部分がなかったり、または応募しても リジェクトされる。それは応募者の研究能力の問題もあるかもしれませんが、 それ以上に評価の基準がハードサイエンス系、または医学系ということがある ものですから、これからの生活の質に焦点を当てた研究等を見ていくとき、ま た生活の質の改善、介入研究を見るときは、看護学や介護福祉、または医師以 外の医療系の視点等が、もっと研究の中に組み込まれたらいいと私は思います。 ○永井部会長  この点、いかがでしょうか。医学研究にもいろいろな分野があるわけですの で、単にハードなイノベーションだけでもないわけです。その辺はいかがでし ょうか。 ○坂本研究企画官  ライフ・イノベーションにつきましては、我々も内閣府の方から情報を取ろ うとしていますけれども、正直なところ、そちらでもまだ検討している最中と いうことと思います。伝わってきているところでは、新成長戦略を中心として 色々なものが考えられているようですので、どうしてもそちらの方面に行って いるようで、いまご指摘のあったようなところもうまく組み込まれるような形 について、話しをしていくことが必要ではないかと認識している状況です。  評価のお話しは、確かに評価基準でそういうのをどうするかというのは、こ こでも課題として挙げてありますので、我々の方でも、そういうものを採択す る際には、予め具体的な評価基準等の検討をする必要があると認識していると ころです。 ○永井部会長  今回のライフ・イノベーションの推進の中に、システム開発や技術の推進等 により、高齢者、障がい者のQOLの向上、子どもの成育環境の整備というのが 挙がっていますので、うまくこれを使っていただければと思います。 ○廣橋部会長代理  鶏か卵かという問題ではありますけれども、そういう分野のプログラムオフ ィサーを育てて、彼らとFAである厚労省が一緒にやる体制を作らないと、結 局のところ、そういう分野の課題は増えないです。 ○永井部会長  ほかに、いかがでしょうか。 ○宮田委員  論点整理はうまくいっていると思いますが、論点1の行政意図の明確化とい うのは、もう少し表現に凝った方がいいのではないかと思います。これはあま りにあからさまというか、要するに行政意図とは何かという議論を置かないで ここに置いて、行政意図を実現するためにこの研究が必要だと立論するのは、 あまり妥当ではない。むしろ厚労省がこの研究プログラムでやらなければいけ ないのは、国民の健康と安全を追求する研究だと思うので、それが行政意図で あると言うならばそれを是としますけれども、この行政意図という何かXの関 数みたいなものを自在に変化させて、この研究プログラムを操作されるのは困 ります。国民にとって必要な研究をやるのだということがこの行政意図である と言うならば、それは私は是としますが、それをちゃんと書くべきではないで すか。厚労省の都合で研究をするのではなくて、国民の都合で研究をするのだ ということを明確に謳うべきだと私は思います。 ○今井委員  関連ですが、2頁の真ん中の四角で囲った基礎的な研究への取組についての 下の「○」で、「厚生労働行政施策への反映が想定されない基礎的な研究は、 厚生労働科学研究の対象外であるが」という文章があります。いまのことと同 じように、この「反映が想定されない基礎的な研究」とは何か。特に昨今、い わゆる西洋医学的なものでなくて、前回のこの会議のときも、首相から統合医 療のお話しが出たという報告をいただきましたが、そうなってくると医学的に 言った場合に、体全体に対する生理的なことはまだしっかりと見えていない部 分がたくさんあって、だけど見えなかったのは仕方がなくて、今までそれを見 る機会がなかったこともあるのです。ここのところはMEが非常に発達してき ていますので、そういう意味では、まさに科学技術で全体の生理学が見えてき ている。それが見えたら、すぐに臨床医学に通用できるものはたくさんあるの です。そういうことを考えると、基礎的な研究の中にそういう分野が入ってし まうと、今後、世界的な動きに追い付いていけなくなってしまう気がします。 まさに、いま世界的にはアメリカでさえ、いわゆる臓器組織的なパーツ医学を 外れて統合医療の方にいっていますから、その辺のところでここの文章の意味 も、どういう文章の意味なのか教えていただきたいのです。 ○坂本研究企画官  前回、それから前々回のご議論でも、文科省も研究を行っているし厚労省も 研究を行っていて、そういったところの住み分けというと言葉がよろしくない かもしれませんが、厚労科研のあるべきところはどこかという議論がありまし た。我々がアンケートでいろいろご意見を頂戴した中でも、そういうところは、 むしろ文科省に任せるべきだといったご意見もあった状況があります。  ただし、他方では、いまご指摘のようにあまりそれをやり過ぎると、まさに うまく回らないといったことがあります。確かにここをどう表現すべきかは非 常に悩ましく、もっとよく分かるような表現にすべきとのご指摘と思いますが、 純粋基礎のような学術研究は、厚労科研が直接手がけるものではないという整 理については、政府全体の研究事業の整理等も考えますと、厚生労働科学研究 はこういうものであるから、こういうことをやっているのだという説明をする 必要が出てきたときに、あまりに基礎的な研究については、たぶん説明がつか なくなるところがあり、対象外といった表現はもう少し工夫が要るのかもしれ ませんが、その辺は今回明確にしておく必要があるという認識です。 ○宮田委員  それはよく分かりますが、一種の仕分けの後遺症かとも思われるのです。 我々にとっては国民に、このお金を使ってきちっと健康というアウトカムをも たらすことが重要です。分けることも必要だという主張はよくわかりますが、 この文章の中に是非「他省庁と連携しつつ」というのを入れていただきたい。 それはなぜかと言うと、日本の最大の問題は基礎研究と臨床研究に断絶があっ て、なおかつ臨床研究から商品化にまた断絶があるので、この予算の中にそう いった構造を埋め込みたくないのです。明確にしたいという意図もわかります。 しかし、一方で連携するということを、きちっと明示していただきたいし、努 力していただきたいので、文章の中に入れてください。たぶんそうやらないと、 これから予算も通らないです。経産省も文科省も厚労省も一緒に、あるソリュ ーションに向かって提供するとして、このパーツは厚労省の予算としてやると いう予算編成になってくると思うので、その文章をまず入れていただきたい。  もう一つ、実は23日にオバマ大統領が保険医療改革の法案にサインしまし た。たぶん大きな研究戦略の中で影響するのは、ペーシェント・センタード・ アウトカム・リサーチ・インストチュートの創設だと思います。あれはノンプ ロフィット・オーガナイゼーションでやりますけれども、いまの既存の医療や 新薬の比較臨床研究をやって、本当にどういうメリットが患者のためにあるの かを明示しようということです。それをガイドラインに直接反映しないと謳っ てはありますが、情報を国民が共有することによって、妥当な医療行為が選択 されていく一助になる可能性があるのですが、そういった観点がここにあまり ないのです。審査の中に患者さんを入れるというのは非常に素晴らしいのです が、もう一歩、国民の立場に立った医学臨床・医療経済研究などの枠組みを想 定させる文章を、そろそろ入れておかないとならないと思います。是非、ご考 慮いただきたいと思います。 ○永井部会長  私も全く同感で、つい研究と言うと開発、開発でくるのです。開発はもちろ んいいのですが、新しいものにしても既存のものにしても評価ということが同 時に行われないと、結局、いろいろなものが山積みになってしまって資源も限 られて、本当にいいことをしているかどうか分からなくなる。ですから開発と 同時に評価研究です。開発があって、実践があって、評価があって、また開発 があってというサイクルになるはずなのです。そういう視点が、先ほどのオバ マ大統領のペーシェント・センター・アウトカム・リサーチで、アウトカムと いうのはまさに評価ということだと思います。そういう思考を、これから国の 研究開発の中に入れておく必要があるだろうと、私も全く同感です。 ○廣橋部会長代理  繰り返しになりますが、私が初めにこれを読んだときは、基礎研究という言 葉が残っていただけでも実はうれしかったのです。だけどよく読んでみると、 本来なら、「行政施策への関連が明らかな基礎的研究は、厚生労働科学研究と して実施すべきである」と言い切っても本当はいいのだと思います。ただし、 いまの状況は確かに厚労省だけで全部の予算をサポートできないし、ほかのラ イフサイエンスとしてやっている基礎研究も十分に役に立つということで、い まお話があったように「他省庁と連携しながら」というのを入れていただくの はいいと思いますが、もうちょっと踏み込んで表現していただければもっとあ りがたいと思います。 ○福井委員  最初の論点1の行政意図の明確化とも関わるのですが、いまのお話を伺って いると、結局、厚生労働科学研究は国民の余命、寿命の延長にどの程度関わる のか、またQOLの改善にどれくらい関わるのかという最終目的との関連を常に 書いてもらう、そういう研究の申請の仕方をしてもらえればよいのではないで しょうか。研究が最終アウトカムにどのように関わるかの明示が、必要ではな いかと思います。 ○森嶌委員  いまのお話とも絡むかもしれませんが、事前の申請といったものを含めて、 一般の方々にできるだけ分かりやすい内容にしていただきたい。その成果等も 国民が分かりやすい内容にしていただきたい。本当は研究だけですということ でなく、ここにお金を使って、こういう成果を出そうとしている、あるいは出 たんだなということが、よく分かるような形の公表にしていただきたい。成果 発表会と書いてありますが、これは非常にいいと思います。そこで理解を得ら れるような内容に、できるだけ易しい言葉で特に最終結果はやっていただきた いと思います。  その際には研究者だけでなく、その裏で大変苦労されている方々がおられる のではないかと思います。例えば先ほど廣橋委員がおっしゃいましたがPD/PO ですね、こういった方々がどういう役割をしたのか、そういった方々がいるた めにこの研究が進んでいくのだろうと思います。そういう方々ができるだけ光 を浴びるようにしないと、育てよう育てようとしても、興味を持ってもらわな ければ誰もそこをやりたいと思いませんから、そういう面では成果のときには 主任の研究者だけでなく、そういう方々にも光が当たるような成果発表あるい は最終的な成果を公表する。こういう形で是非検討していただきたい。何しろ すべてをできるだけ公開していただいて、国民が読んだときに全部は分からな いけれど半分ぐらいは分かるとか、その理解度が年々進んでいけば、こういう 研究は大切だと理解できると思います。是非、ご考慮いただきたいと思います。 ○永井部会長  最後に、どうぞ。 ○西島委員  指定研究のことですが、私たちの研究所は一つFAを持っていて、化学物質 のレギュラトリーサイエンスということでやっています。そのような中で、ど うしても大学の先生方にはやってもらいにくい研究が非常に多くあります。そ ういう研究については、その中の委員の方たちからも意見がたくさん出ていま すが、指定研究にしてみたらどうかという話が非常に多くあります。したがっ て、フィールドによって違うと思いますが、指定研究の枠について大枠どのく らいにしたらいいのか、大ざっぱなところでもいいですけれども、なるべく早 いうちに指針を示していただきたいということが1点です。  あと、その中で大学の先生でも大変協力してくださる方がいますが、どうし ても行政的な視点が薄い先生が多くて、だけれども研究は、それなりに指導す れば行政に結び付くいい研究もあるのです。そのような中で私が思うには、先 ほど来出ているPD/POです。この人たちのイニシアティブが、もっと発揮され るようなシステムにしていただきたいと思います。 ○永井部会長  昔は、いろいろな標準化や基盤を試験するような試験所というのが、結構あ ったわけです。おそらく、それが日本の近代化のときにものすごく役に立った と思いますが、今、いろいろな試験所が全部研究所になっていって、標準化し てくれる所がないということが、実は開発にもずいぶん支障になっていると聞 いたことがあります。おそらく今のご発言も、そういうことと関係があるので はないかと伺いました。 ○西島委員  私共の研究所も今は国立医薬品食品衛生研究所ですけれども、昔は国立衛生 試験所です。今でも試験所の方がよかったのではないかと言う方が何人かおら れます。 ○永井部会長  そういうことも含めまして、また次回もこの議論は続けたいと思いますので、 よろしくお願いします。事務局から最後にお願いします。 ○坂本研究企画官  ご意見、ありがとうございました。また整理させていただきます。  次回につきましては日程調整をさせていただきますので、その際にはよろし くお願いします。 ○永井部会長  今日はこれで終了させていただきます。長時間、ありがとうございました。                                 −了− 【問い合わせ先】  厚生労働省大臣官房厚生科学課  担当:情報企画係(内線3808)  電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171