10/03/19 平成22年3月19日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会議事録 日時 平成22年3月19日(金)13:00〜 場所 中央合同庁舎5号館 共用第8会議室 審議事項  (1)平成21年食中毒発生状況の報告について  (2)腸管出血性大腸菌O157広域散発食中毒事例について  (3)その他 出席委員 五十君靜信、犬伏由利子、今村知明、内田健夫、江副久美子、賀来満夫、熊谷進、小澤 邦壽、 小西良子、谷口清洲、丹野瑳喜子、寺嶋淳、中村好一、西渕光昭、◎宮村達男、山本茂貴、 吉川さなえ(敬称略)   注)◎部会長 事務局   石塚食品安全部長、加地監視安全課長、熊谷食中毒被害情報管理室長、道野輸入食品対策室長   蟹江課長補佐、田中室長補佐 ○蟹江課長補佐 それでは、定刻になりましたので、ただいまから薬事・食品衛生審議会食品衛生 分科会食中毒部会を開会いたします。 監視安全課の蟹江でございます。よろしくお願いいたします。  開会に当たりまして、石塚食品安全部長からごあいさつを申し上げます。 ○石塚食品安全部長 食品安全部長の石塚でございます。本日は年度末の大変お忙しい中を御出席い ただきまして、本当にありがとうございます。本年度の食中毒部会を開催するわけでございますが、 前回の開催はちょうど1年前ということでございました。前回の食中毒部会におきましては、前年の 食中毒の発生状況について御議論いただきましたが、ほかにノロウイルスの食中毒対策についての提 言をおまとめいただいたところでございますので、その提言の内容につきまして、その後の進捗状況 についても御審議を賜ったところでございます。  ノロウイルスに関する御提言と申しますのは、厚生労働省のみならず、関係各方面において大変 有用に利用されているものでございます。今後のノロウイルス対策というものを考える上でも大変 貴重な御提言だったということでございます。今後とも我々はこの提言の普及に努めていきたいと 考えております。  本日の部会の議題につきましては、前回と同様に前年、平成 21年に起こりました食中毒の発生状 況について御報告を申し上げ、御審議を賜るということでございます。もう一点は、腸管出血性大腸 菌O157の広域散発発生事例、焼き肉チェーン店を中心に発生しました、かなり社会的にもインパク トのあった事件でございます。こうした食中毒の広域化・複雑化ということを踏まえまして、単に飲 食店の営業者のみならず、一般消費者、国民に対してもいろいろと啓発していくべき点があろうかと 考えておりますので、何とぞ貴重な御意見をお寄せいただきますよう、お願い申し上げたいと思いま す。  また、今回新たに委員として御参画いただきます先生方もおられるところでございます。是非と も各御専門の視点から貴重な御意見、忌憚のない御意見を賜りますよう、お願いを申し上げたいと 思います。  最後になりますが、食中毒ということは国民生活を守っていく上で大変重要なリスク管理の側面が あろうかと考えております。国民生活の安心・安全を確立していくためにも、大変重要な分野である と考えているところでございます。先生方の忌憚のない御意見、貴重な御意見をこの部会でお寄せい ただきますよう重ねてお願い申し上げまして、冒頭のあいさつに代えさせていただきます。何とぞよ ろしく御審議をお願いいたします。 ○蟹江課長補佐 ありがとうございました。  本部会は、昨年4月に委員の人事異動がございまして、委員の改選が行われております。東京都 健康安全研究センターの前田委員の異動がございまして、後任として群馬県衛生環境研究所の小澤 所長に委員として本日出席していただいております。  また、本日は参考人といたしまして、国立感染症研究所感染症情報センターから、岡部センター 長、それから、砂川主任研究官、具先生、古宮先生にも出席いただいております。岡部先生におか れましては、少し遅れて来られると連絡を受けております。 また、本日の食中毒部会でございますが、内田委員から欠席という御連絡をいただいております が、17名の委員のうち過半数の委員に御出席いただいておりますので、薬事・食品衛生審議会の規定 に基づき、本部会は成立していることを御報告いたします。  部会長は、国立感染症研究所の宮村所長、部会長代理は国立医薬品食品衛生研究所の山本部長にお 願いしております。  それでは、議事の進行を宮村部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○宮村部会長 国立感染症研究所の宮村でございます。議事進行をこれからどうぞよろしくお願いい たします。それでは、早速、議事に入りたいと思いますけれども、まず初めに、事務局から配付資料 の御説 明をいただきます。よろしくお願いします。(配付資料確認) ○宮村部会長 それでは早速、議事に入りたいと思います。 まず、資料1になると思いますが、平成 21年度の食中毒発生状況について、事務局から御報告をお 願いいたします。 ○田中室長補佐 それでは、食中毒被害情報管理室の田中から御説明させていただきます。よろしく お願いいたします。  資料1−1になりますけれども、平成 21年食中毒発生状況につきまして、1ページ目をごらんく ださい。年次別食中毒発生状況。一番下が平成 21年となっております。平成 21事件数 1,048件、平 成 20年から 321件の減となっております。次に、患者数でございますが2万 249名。平成 20年と比 較しますと 4,054名の減となっております。死者数ですが、平成 21年は0となっております。それ から、1事件当たりの患者数は 19.3人、10万人当たりの罹患率は 15.9人という数字になっておりま す。  続きまして、2ページ目をごらんください。年次別食中毒事件数と患者数をグラフとして表してお ります。まず事件数ですが、平成 10年をピークに減少傾向にあります。下の患者数ですが、平成 13 年以降2〜4万人の間で推移しております。  続きまして、3〜6ページにつきましては、都道府県別食中毒発生状況を平成 19〜21年の3年間 分を整理させていただいております。特に大きな変化があるというような傾向は見られておりません。  続きまして、7ページに移らせていただきます。患者規模別の発生状況について、過去3年間分を グラフに表しております。1事件当たり1〜 10名の事件が最も多くなっておりまして、患者数が多 いほど事件数が少ないという例年どおりの傾向を示しております。  次に、8ページ目をごらんください。年齢別の食中毒患者数のグラフです。20〜50代の年齢層が多 い傾向は変わっておりませんけれども、平成 21年にあっては 10代が前年に比して約3割の減少を見 せております。  続きまして、9ページ目をごらんください。患者数 500人以上の事例ですが、2件発生しておりま す。ノロウイルスが1件、ウェルシュ菌が1件となっております。給食やバイキングが原因食品 となっておりまして、施設における調理を原因とするものとなっております。  続きまして 10〜13ページにつきましては、月別の発生状況について3年間分をグラフにさせてい ただいております。 10ページの上段に事件数と患者数の一覧が掲載されておりますので、そちらを ごらんください。平成 21年の事件数につきましては、 12月が 129件と最も多く、次いで9月が 108 件、1月が 107件となっております。平成 19年と平成 20年と比較いたしまして、夏場の発生件数 が少ないという傾向を示しております。  また、平成 21年の患者数につきましては、2月が 3,618名と最も多く、次いで1月が 3,223名、 12月が 3,067名となっており、冬場の患者数の発生が多くなっております。  患者数につきましても平成 21年の傾向といたしまして、平成 19年及び平成 20年と比較しまして、 夏場の患者数の発生が少ない傾向を示しております。  なお、平成 21年2月につきましては、岩手県及び福岡県で 500人以上の事例が2件発生した関係 で多くなっております。  続きまして、14〜17ページですが、これまで御説明しました月別の発生状況を病因物質別に整理 したグラフです。  16ページをごらんください。患者数の発生状況を中心に御説明させていただきますが、平成 21 年におきましても例年と同様、夏場には細菌性食中毒が多く、冬場にはウイルス性の食中毒が多く 発生するという傾向が見られております。  続きまして、 17ページをごらんください。病因物質別の月別患者数につきまして、2人以上の事 例を上段、1人事例を下段に示しております。2人以上の事例につきましては、全体と同様の発生 状況となっておりますけれども、1人事例につきましては細菌性食中毒や自然毒によるものが主体 となっております。   次に 18ページをごらんください。原因施設別発生状況の表です。一番左に原因施設の種類、その 次に事件数を示させていただいております。事件数で見ますと、最も多いものが飲食店の 562件、次 いで家庭、旅館、事業場、仕出し屋の順となっております。これら上位5施設で全体の約 77%の割 合を占めております。  患者数ですけれども、飲食店が1万 336名と最も多く、次いで旅館、仕出し屋、事業場、学校の 順となっております。これら上位5施設で全体の約 89%の割合を占めております。  19〜22ページ目までは原因施設の数字をグラフにしたもので、特に大きな特徴は過去と比べて見 受けられない状況となっております。  続きまして 23ページに移らせていただきます。原因食品別発生状況を示した表でございます。最 も多いものがその他の 469件、次いで魚介類、肉類及びその加工品、複合調理品、野菜及びその加 工品の順となっております。これら上位5品目で全体の約 76%の割合を占めております。  続きまして患者数ですが、患者数につきましてもその他が最も多く1万 3,044名、次いで複合調 理食品、肉類及びその加工品、野菜及びその加工品、魚介類の順となっておりまして、これら上位 5品目で全体の約 83%になります。  24〜27ページは、これをグラフにしたものでございます。 続きまして、 28ページに移らせていただきます。病因物質別発生状況の表になりますが、事件で 最も多いものはカンピロバクター・ジェジュニ/コリ 345件。次いでノロウイルス 288件。続きまし て、サルモネラ、植物性自然毒、ブドウ球菌の順になっております。これら上位5つの病因物質で全 体の約 76%を占めている状況となっております。  患者数を見ますと、ノロウイルスが1万 874名、カンピロバクター・ジェジュニ/コリが 2,206 名、次いでウェルシュ菌、サルモネラ属菌、ブドウ球菌の順となっております。これら上位の5物質 で患者数全体の約 83%を占めている状況となっております。  29〜32ページにつきましては、今の病因物質別の数字をグラフで表したものです。  また、33〜34ページをごらんください。病因物質の中の細菌の部分をピックアップして整理したグ ラフでございます。例年と大きな動向の変化はございませんが、カンピロバクターを除いて細菌性食 中毒の事件数は年々減少傾向にあることが示されております。  続きまして、 35ページ以降のグラフは、前回の食中毒部会におきまして熊谷委員から病因物質別 に見た原因施設がわかる資料があるとよいとの御提案をいただきましたので、新たに主な病因物質別 に見た原因食品別、原因施設別の事件数及び患者数の年次推移のデータを資料として追加させていた だいております。  本日は時間に限りがございますので詳細な説明は省略させていただきますが、事件数及び患者数が ともに上位を占めておりますノロウイルスとカンピロバクターにつきましては、その発生状況につき まして別途資料を御用意させていただきました。また昨年、複数の飲食チェーン店におきましてO157 による広域散発食中毒が発生しましたことから、本日の議題にもさせていただいております腸管出血 性大腸菌につきましても、別途資料を用意しておりますので、併せて御説明させていただきます。  まず、資料1−2をごらんください。まず、腸管出血性大腸菌について御説明させていただきたい と思います。こちらの資料は、小児の養育者等に対します腸管出血性大腸菌感染症の予防啓発の重要 性について、昨年8月に地方自治体の関係部局あてに厚生労働省の関係部局連名で発出した事務連絡 の別添資料です。事務連絡本体は参考資料4として配付しておりますので、後ほど御参照いただけれ ばと思います。  まず、図1をごらんください。この統計は感染症法に基づきまして届出がなされた腸管出血性大腸 菌感染症の年間累積報告数を示した図になります。 2000年以降はおおむね 3,000〜4,000例で推移し ておりましたが、 2007年、2008年は 4,000例を超えており、一向に減少傾向は見られておりません。  続きまして、図2をごらんください。報告数のうち約 40%は 10歳未満の症例が占めていることが 示されております。  続きまして、図3をごらんください。腸管出血性大腸菌の合併症の中でも重篤なものである溶血性 尿毒症症候群、HUSと略させていただきますが、 15歳未満の小児、 65歳以上の高齢者で発症率が 高くなっております。また、感染源といたしましては、肉類を喫食した患者の情報のうち、 40%以 上が生肉を喫食しており、生肉、生レバーの喫食による3歳以下の小児のHUS症例も報告されてお ります。  続きまして、図4をごらんください。腸管出血性大腸菌の食中毒の発生状況でございますが、過 去 10年間の患者発生動向は、 10歳未満の小児が患者数全体の約2割を占めるという傾向を示して おります。また、原因食品といたしましては肉類及びその加工品が多くなっております。  なお、2007年に患者数の大きなピークがございますが、これは東京都の大学の食堂で発生いたし ました 400名規模のO 157食中毒が要因となっております。  これらの状況を踏まえまして当該資料におきましては、小児の養育者、保育施設、介護保険施設 等に対する腸管出血性大腸菌感染症予防の啓発は、小児や高齢者の感染者数、特に重症合併症であ るHUSを減少させ、ひいては全体の感染者数、死亡者数を減少させるために重要だというまとめ をさせていただいております。  最後のページになりますけれども、今回の部会用資料といたしまして平成 21年、2009年のデータ を反映した図の更新情報を追加させていただいております。2009年は事件数、患者数ともに増加が 見られておりますけれども、昨年発生いたしました複数の飲食チェーン店での広域散発食中毒の発 生が影響しているものと考えられます。  続きまして、資料1−3をごらんください。カンピロバクター食中毒の現状と対策について御説 明させていただきます。この資料は、今年1月に感染症情報センターで発行されております病原微 生物検出情報( IASR)の特集記事にて公表させていただきました資料となります。  まず、図1をごらんください。カンピロバクター食中毒の発生状況は、赤いラインになりますけ れども、患者数2名以上で見ますと、事件数、患者数ともに増加傾向を示しております。また、年 間患者数は 2,000〜3,000人となっております。  1997年から患者数1名事例の事件数が急増しておりますが、これは一部の自治体で患者数1名の 散発食中毒事例が多数報告されるようになったことが影響しております。  原因食品としましては、鶏肉や牛、レバーなどの肉類及びその加工品が多くを占めておりまして、 生肉の喫食や加熱不十分が主な原因となっておりますけれども、調理過程での二次汚染による食中毒 事件も発生しております。  また、病因物質はカンピロバクター・ジェジュニが大半を占めておりまして、原因施設といたし ましては飲食店が大半を占めております。  図2をごらんください。カンピロバクター食中毒の発生時期は5〜8月がピークとなっておりま すけれども、年間を通じて発生しているという特徴が見られております。なお、当該資料におきま しては、これまで厚生労働省が進めてきた予防対策、汚染実態調査の情報も併せて掲載させていた だいておりますので、御参照ください。  こちらの資料も最後のページに今回の部会用資料といたしまして、平成 21年のデータを反映させ た図の更新情報を追加させていただいております。  続きまして、資料1−4をごらんください。ノロウイルスについて御説明をさせていただきます。 ノロウイルスにつきましては、平成 19年 10月に本部会で御提言いただいた、ノロウイルスの食中毒 対策についての疫学関連情報の更新情報を資料として用意させていただきました。  まず、(1) 2009年ノロウイルス食中毒の発生状況について御説明させていただきます。 2009年の ノロウイルス食中毒は事件数 288件、患者数1万 874名となっておりまして、 2008年と比較とい たしまして事件数 15件増、患者数 744名増となっております。そのうち患者数が 500名以上の事 例は1件ございました。都道府県からの調査報告によりますと、ノロウイルスに感染した調理従事 者等による二次汚染や汚染された二枚貝の生食が主な原因と推察されております。  月別の発生状況につきましては、 2009年1月に事件数 82件、患者数 2,732名で、12月も事件数 82件、患者数 2,709名の発生となっておりまして、冬場に集中して発生しております。  原因食品といたしましては、食事等が事件数 205件、患者数 8,073名と最も多く、次いで魚介類、 複合調理品の順となっております。  原因施設といたしましては、飲食店が事件数 191件、患者数 4,964件と最も多く、次いで旅館、 仕出し屋の順となっております。  ここで参考資料3を御用意ください。別添になりますけれども、右上の平成 19〜21年のところ に括弧書きでパーセンテージが入っております。これは平成 21年の速報におきまして貝類による 発生の増加傾向が見られましたことから、今年1月に生食用カキを原因とする食中毒予防の通知を 発出させていただいております。  資料1−4に戻らせていただきますけれども、疫学情報につきまして(2)以降の情報についてです が、ノロウイルスの発生動向につきましては、国立感染症情報センターにおきましてお取りまとめ いただいている感染症発生動向調査及び病原微生物検出情報等の動向が参考になりますことから、 感染症疫学情報及び分子疫学的解析の情報も併せて更新情報を掲載させていただいておりますので、 御参照いただければと思います。  以上、平成 21年の食中毒発生状況につきまして御説明を終わらせていただきます。 ○宮村部会長 ありがとうございました。 ただいまのは平成 21年の食中毒の発生状況に対する説明でした。この御説明に対して何か御意見・ 御質問はありますか。 ○谷口委員感染症研究所の谷口と申しますが、毎年出てくることなんですけれども、実は先だってち ょっと困ったことがありまして、学術雑誌のエディターをいろいろさせていただいているんですけれ ども、ある国の研究者から自分の国と日本の食中毒の集団発生事例の比較検討という論文が出てまい りまして、日本は今の発表のデータでございますので、アウトブレイクの1例当たりがとても低い。 非常に1例の報告も多い。これは我が国ととっても違う。当然、普通の国はアウトブレイクというと 1例は含まれませんが、日本は含まれていますから、それが入っているわけです。これは多分、日本 では家庭におけるアウトブレイクがとても多いのだろう。家庭における衛生管理がよくないのだろう という考察がしてありまして、ちょっと困りまして、各国の食中毒事例報告の定義をもう一度見直し て考察を考えてくださいというコメントを出して返したんですけれども、多分、ダウンロードしたデ ータに基づいていると思うので、定義というものをデータのところにわかるように書いていただける と、こういった誤解が少なくなるかなと思いまして、これはお願いというか毎年出てきていることで すので、申し訳ありませんが、お願いします。 ○宮村部会長 今の先生のお話の定義の中で、日本の1例でもというのは、今言われた比較の対象 となった国などと比べたときに非常にユニークなんですか、世界レベルで。 ○谷口委員 一応、普通アウトブレイクというのは2人以上の疫学的関連を持つ同一疾患の集団発生 ですので、普通はそれを採用している国が多いわけで、アウトブレイクという言葉自体がたくさんの 患者が出るということを皆さん想定して報告されているわけで、日本の定義を御存じなくてそのデー タを見ると、日本は1アウトブレイク当たりの事例がめちゃくちゃ低いということになる。そこに関 連して、カンピロが多いということになるわけです。 ○宮村部会長 わかりました。そういうことはとても大切な指摘なので、御留意いただきたいと思い ます。 ほかにございますか。今のは平成 21年の御報告でしたけれども、それに加えて直近の新しいインフ ォメーションで何か御報告されることはありますか。 ○田中室長補佐 それでは、ノロウイルスにつきまして、今年の1〜2月に入っての直近の情報を調 べた数字を用意しておりますけれども、そちらを報告させていただいてよろしいでしょうか。 ○宮村部会長 お願いいたします。 ○田中室長補佐 あくまでも速報になりますけれども、併せて資料1−1の 14ページと 16ページを ごらんいただければと思います。こちらの資料は平成 21年までということで、 12月までの情報とな っておりますけれども、今年の1月、2月のあくまでも速報になりますが、ノロウイルスの発生状況 について数字を調べてみました。1月につきましては、ノロウイルスの食中毒、事件数 74件、患者 数 1,794名となっております。2月は事件数 74件、患者数 1,544名となっております。昨年同期と 比較させていただきますと、昨年1月は事件数 80件、患者数 3,532名、2月は 60件、患者数 2,123 名となっておりまして、今年に入ってから発生状況が際立って高いという状況は見られておりません。 しかしながら、先ほどの資料1−4をごらんいただければと思いますが、2枚目の図1です。ノロウ イルス等のウイルス性感染症が大半を占めると言われております感染性胃腸炎の定点当たりの報告 数につきまして、赤丸のラインになりますが、2010年に入ってから例年を上回る推移が見られており ます。この点は留意すべき点かと考えております。 以上です。 ○宮村部会長 ありがとうございました。このノロウイルスのウイルス型には変化はあるんですか。 ○田中室長補佐 同じく資料1−4の2番、分子疫学的解析情報と(3)病原微生物検出情報を御参照い ただければと思いますが、GIIが大半を占めているという状況は変わっておりません。それぞれ細か い解析につきましても、こちらの資料に掲載させていただいておりますので、御参照いただければと 思います。 ○宮村部会長 ありがとうございました。ほかに御質問・御意見ありませんか。 ○今村委員意見なんですけれども、今年の患者数を見ていると非常に少ない。多分向こう 20年ぐら いで見てもこんなに少ない、2万になったことは余り見たことがないんです。基本的には、こ こ 50年で3万を中心に上がったり下がったりしていて、そのある程度の下線を下回って落ちる と いうのは疫学的に見たら事件だと思うんです。揺れている幅が広くなったとも考えられますけれど も、減ってくる前兆のようにも考えることができる。特に低かったことについて、もし何か考察を されているのだったら、是非お教えいただきたいと思います。 ○宮村部会長 事務局いかがでしょうか。 ○熊谷食中毒被害情報管理室長 先ほどの事務局の説明にもありましたように、資料の11ページ、 12 ページを開けていただきますと、月別の発生状況の患者数の状況が見られるかと思いますが、夏場の 食中毒がかなり発生数が減って、患者数も減っています。細菌性食中毒によるものがかなり減少して いるという傾向があったかと思います。新型インフルエンザの流行などで手洗いが励行されておりま したことも一つの要因になって、患者数の減少につながっているのではないかと考えております。 そういう形で夏場は減っておりましたが、冬場に感染性胃腸炎がかなり増加している状況の中でノロ ウイルスの食中毒も増えておりましたので、トータルとしたら患者数は減っておりますが、全体とし ては思ったほど減っていないという状況だったと考察しております。以上です。 ○加地監視安全課長 新型インフルエンザのおかげということは断定できないと思うので、あくまで も一つの仮説ということで御理解いただければと思います。 ○宮村部会長 ありがとうございます。今のトータルの御報告に関しまして、事務局から何か補足は ございますか。 ○田中室長補佐 平成 21年の食中毒発生状況につきましては、確定作業が終了次第、ホームページ等 で公表させていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。 ○宮村部会長 ありがとうございました。 それでは、次に移りたいと思います。先ほど平成 21年の食中毒発生状況について御報告をいただい た中に、腸管出血性大腸菌O 157における広域散発食中毒事例について説明がありましたが、その事 例の詳細について、もう一回事務局から改めて御説明をいただければと思います。 ○田中室長補佐 引き続き田中から御説明させていただきます。資料2−1をごらんください。平成 21年におきましては、患者数 20名を超える腸管出血性大腸菌O 157の広域散発食中毒事例が3件発 生しております。この広域散発食中毒事件ですが、食中毒菌に汚染された共通の原因食品が広域に流 通し、離れた地域で、または時間的差を持って患者が発生する事件をこのように呼ばせていただいて おります。また、これから御説明させていただきます事例は、いずれも飲食チェーン店において食材 が一括管理されていた事例でございまして、1店舗における患者数の発生が1名から数名程度となっ ており、少数の患者が広域かつ散発的に発生したことが特徴となっております。  まず、1件目のステーキチェーン店における事件を御説明させていただきます。本事件は昨年9 月、山口県の事件を端緒といたしまして、 16自治体、17店舗において 38名のO157患者が広域かつ 散発的に発生した事件でございます。うち1名がHUSを発症しております。  患者の共通食から原因食品といたしまして、角切りステーキが推定されましたことから、当該品 のさかのぼり調査を実施いたしましたところ、原料はすべて岐阜県内の食肉加工施設において結着 加工された牛肉であることが判明いたしました。この食肉加工施設が保管していた食中毒患者の喫 食日から推定されたロットと、推定されましたロットの保存サンプルを検査いたしましたところ、 出血性大腸菌O 157が検出されまして、食中毒患者から検出された菌株とも遺伝子パターンが一致 いたしました。  当該ステーキチェーン店における角切りステーキの提供方法は、生肉を 260度に加熱した鉄板に のせた状態で提供し、客が自ら加熱して喫食するという提供形式のもので、結着加工によりO 157 が内部まで入り込んだ食肉を加熱不十分な状態で喫食したことが一要因であると推定されており ます。  なお、当該事件につきましては、国立感染症研究所の実地疫学専門家養成コースによる調査が実 施されております。  続きまして2件目ですが、ステーキチェーン店における事件でございます。本事件は昨年9月、 埼玉県の事件を端緒といたしまして、7自治体、 13店舗において 20名のO157食中毒患者が広域散 発的に発生した事例となっております。  患者の共通食から原因食品といたしまして角切りステーキが推定されましたことから、当該品の さかのぼり調査を実施したところ、すべて埼玉県内の食肉加工施設において、牛横隔膜をカットし た後に軟化剤調味液を加えて真空包装したものであることが判明いたしました。  当該事例につきましては、加工段階の漬け込みによりO 157が食肉の内部まで入り込み、繁忙期 において調理時の不手際等により加熱が不十分な状態で提供されたことが一要因であると推察さ れております。  この2事例の発生を受けまして、飲食店における腸管出血性大腸菌O 157食中毒対策ということ で、結着や漬け込みを行った食肉等を提供する飲食店に対する有効な加熱調理の指導を実施するよ う、昨年9月に都道府県あてに通知を発出させていただいております。参考資料5として配付させ ていただいておりますので、後ほど御参照いただければと思います。  続きまして、3件目の事例になります。焼き肉チェーン店における事件を御説明いたします。本 事件は昨年 12月、東京都の事例を端緒といたしまして、6自治体、 17店舗において 20名のO157 食中毒患者が広域散発的に発生した事件となっております。  毒素型の違いから患者数は大きく2つのグループに分かれておりまして、いずれの患者も喫食品 目が多岐にわたっていたことから、疫学的に有意な食材の特定はされておりませんけれども、3店 舗で収去された牛横隔膜から分離されたO 157の菌株と患者の菌株の遺伝子パターンが一致して おります。  当該に事件につきましては、事例1と同様に、国立感染症研究所の実地疫学専門家養成コースによ る詳細な疫学調査が実施されているところでして、現在も一部調査中となっておりますけれども、牛 横隔膜からO 157が分離された患者の株と遺伝子型が一致していることなどから、喫食者が加熱不十 分な状態で喫食をしたことが一要因であると推察されております。  概要の御報告は以上となります。 ○宮村部会長 ありがとうございました。 続きまして、この3ケースにつきまして、国立感染症研究所実地疫学専門家養成コースの砂川先 生と具先生に出席していただいていますので、ステーキチェーン店において発生した腸管出血性大 腸菌O157における広域散発食中毒事例の調査結果について、御報告をお願いいたします。 ○具参考人 国立感染症研究所実地疫学専門家養成コースの具です。本日はよろしくお願いいたし ます。私からは資料2−2に沿いまして、ステーキ全国チェーン店における腸管出血性大腸菌O 157広域散発食中毒事例の調査報告をさせていただきます。  これは、先ほど田中室長補佐からお話がありました資料2−1の事件1と同じものです。事例の 経過ですが、2009年9月1日、奈良県で調査が開始されております。これは先ほど山口県というお 話がありましたが、ほぼ同じ時期に各県で発生したという状況です。  調査を開始しましたところ、ステーキチェーン店であるAチェーン店で食事をしていたことが判 明しました。  その後、9月3日に4府県で同じAチェーン店の関係が疑われるO 157感染症の発生が判明いた しました。調査により角切りステーキの喫食との関連が疑われました。  9月9日になりまして、角切りステーキを成型して生産している工場のサンプル肉からO 157 が検出されたことがわかりました。この時点で患者報告が各地域から増加しておりまして広域散発 発生と考えられたために、我々、国立感染症研究所の実地疫学専門家養成コースに調査依頼をいた だきました。私たちとしては、今回広域にわたっておりましたので事例の全体像を把握するという こと、それから、原因について詳細に調べることを目的といたしました。  我々はまず、症例定義を定めております。昨年 2009年8月1日以降に血便、下痢、腹痛のいずれ かの症状を呈し、便培養で同じ PFGEパターンの大腸菌O 157が検出されたものといたしました。 症例定義では、Aチェーン店の関連が非常に疑われてはいたんですけれども、ほかのところで出て いないかどうかということがわからなかったこともありまして、症例定義にはAチェーン店のこと は入れておりません。  症例の基本属性に移ります。調査を9月 14日に開始しましたが、広域にわたっていることもあ りまして、各自治体にお願いしまして追加の調査票を配付して追加調査を依頼しました。この時点 で関係している症例が 37例ありましたが、 100%の回収をいただきました。そのうち症例定義を 満たすような症状を呈し、 PFGEパターンが一致した症例数は 28例でした。その 28例の年齢は 中央値 7.5歳、2〜 81歳までの幅がありました。性別を見ますと男性 17例、女性 11例。入院し た方が 11例というような状況でした。この時点で全員にAチェーン店での角切りステーキの喫食 歴がありました。  左下の図をごらんください。各症例のAチェーン店での喫食日と発症日のグラフです。青い棒グラ フが発症日です。8月 16日から9月2日まで2週間以上の幅を持って発症しております。2つ山が あるような形に見えまして、非常に時間も2週間以上と広くわたっていることがわかりました。赤い 折れ線グラフは喫食日を示します。それぞれの症例について全員Aチェーン店の角切りステーキの喫 食歴がありましたので、その喫食日をグラフとしましたが、発症の数日前に喫食していることがわか ります。潜伏期間については中央値4日、1〜8日の幅を持っておりました。 右の図をごらんください。患者発生店舗及び発生人数を示します。こちらにありますように、西 は山口県から近畿地方、それから、関東甲信越まで幅広い地域の店舗で患者さんが発生しておりま した。  2ページに移ります。各症例に認められた症状をお示しします。腹痛、下痢、血便といった症状 が多く認められました。溶血性尿毒症症候群(HUS)を呈したのは1名のみでした。この1名の 方も入院後速やかに改善したと聞いております。  角切りステーキ肉の製造は、B食肉供給センターで行われておりました。製造工程につきまして は、オーストラリアからの輸入肉に北海道産の和牛、国内で流通している牛脂を2日かけて製造し ておりました。1日目に原料を混ぜて成型して凍らし、2日目に角切りステーキの形にカットして 包装して出荷するという流れです。この工場で角切りステーキ肉をつくっているラインはすべてA チェーン店に納入されておりました。Aチェーン店のほかのメニューに関しては、ほかの食肉工場 で製造されておりました。  流通過程につきましては、3か所の物流センターを経由して各店舗に行くという流通経路でした。  次に、細菌検査の状況ですが、発症者のさかのぼり調査が行われておりまして、8月3日製造の 角切りステーキの汚染が疑われておりました。B食肉供給センターで自主検査ということで毎日製 品の自主検査を行っていましたが、O 157は全く検出されておりませんでした。工場保管サンプル の細菌検査を工場のあった岐阜県で行っておりますけれども、こちらでは3検体のうち1検体から O157が検出されております。  この事例が発覚した後に8月3日の製造品が回収されておりますけれども、その培養検査を国立 医薬品食品衛生研究所、小西先生のもとで行われております。こちらでは 29検体中 18検体で患者 検体と同じパターンの腸管出血性大腸菌O 157を検出しております。  汚染が疑われた8月3日製造の角切りステーキ肉は流通経路をたどりますと、全体の4分の3が 関西、4分の1が関東へ出荷されておりまして、それぞれ出荷日がずれておりました。発症日と地 域を重ねますと、発症日2週間以上幅があったのは、この出荷の時期がずれていたことに起因する ものということがわかりました。  店舗での提供状況につきまして調査をいたしました。この角切りステーキ肉を店員が素手でとっ て電磁調理器、 260度に熱したところにのせ、その手で野菜をつかんでのせるというような状況で した。それを余熱で調理するということで、お客さんの前に出すという形で提供されておりました。 鉄板の上で肉の一面のみ焼いた状態で客の前に出るという状況でした。したがいまして、加熱不足 は十分に考えられますし、素手で扱うことによる二次汚染のリスクも考えられました。ただ、社内 マニュアルに沿った形での提供方法で、明らかなマニュアル違反は認められませんでした。  記述疫学のまとめは、そこにあるとおりですので、ごらんください。  その後、私たちは解析疫学を行っております。3ページに移ります。症例対照研究を行いまして、 Aチェーン店での特に角切りステーキの喫食によって感染したという仮説の検証をいたしました。 今回はインターネットを用いた調査を行っております。インターネットを用いまして、あらかじめ 協力していただけると言っていただいている方に協力をお願いして、アンケートに答えていただく という形で行っております。  右側の表にありますように、 26例の症例に対して 175の対照群を得られました。外食に関連する リスクファクターを検討いたしましたところ、外食の利用、また、Aチェーン店の利用が非常に高 い関連を示しました。これはオッズ比が非常に高くなりました。  食品についての検討を行いましたところ、生か半生のその他の肉料理の項目がオッズ比が高くな りまして、関連が高いものと考えられました。更に細かく食品を見ているんですけれども、特に牛 肉に強い関連が示唆されました。  このように、解析疫学では外食、中でもAチェーン店の利用、それから、生か半生のその他の肉 料理、特に牛肉との強い関連が示唆されましたが、そのほかの食材やリスクファクターとの間には 強い関連は認められませんでした。  これらの結果から、私たちの考えた仮説は十分に裏付けられるものと考えました。  疫学調査全体のまとめになります。 2009年8月から9月に認められた同一の PFGEパターンを 示すO157食中毒集団発生は以下のようにして発生したと考えられました。まず、角切りステーキ肉 の成型・製造過程でO 157による汚染が発生した。そして、本来十分に加熱すべきである成型肉で すが、Aチェーン店各店舗で不十分な加熱状況で提供されておりました。そのために汚染された成 型肉が加熱不十分なまま喫食されて広域での患者発生に至ったと考えました。ただし、この汚染の 原因について各工場からのさかのぼり調査がなかなかできませんで、汚染の原因を確定することは できませんでした。また、Aチェーン店各店舗の提供方法に問題があるということがわかりました。  今回の調査では幾つか制限が考えられるんですけれども、やはり時間が経ってから後から食べた ものを思い出してもらうということがありますので、そういったバイアスが考えられるということ が主な制限になります。  4ページに移りますが、私たちは今回のこの調査を通じて提言をまとめさせていただきました。ま ず、Aチェーン店及び関連各社に対してですが、Aチェーン店本社に対しては、成型肉を用いたメニ ューの在り方、また、食事の提供方法を改めること。各店舗従事者の衛生教育を実施すること。消費 者に情報を提供するよう努めることとしました。  それから、B食肉供給センターに対しては、自主的な細菌検査の方法についての見直し、自主管 理を徹底するよう提言をいたしました。  Aチェーン店各店舗に対しては、製造加工方法、加熱処理の必要性の有無等に応じて適正に管理 すること。交差汚染が起きないような見直しを行うこと。食材・調理器具の適切な管理・記録を徹 底すること。従事者の衛生教育を適切に実施することの4点を提言とさせていただきました。  続きまして、行政各機関に対しての提言といたしましては、まず、成型肉の調理に関して外食産 業並びに市民に対する注意喚起を行うこと。食肉の安全な提供について確認と指導をより確実に行 うこと。広域食中毒事例に対応するための体制整備に努めることという3点を提言とさせていただ きました。  広域食中毒事例に対する対応としては以下の点を挙げましたが、これについては後ほど砂川から もお話をさせていただきます。  最後になりましたが、今回の依頼元であります食中毒被害情報管理室には全面的にサポートをい ただきました。また、調査に実際に協力していただいた各自治体、こちらにいる委員の先生方を初 め、多くの専門家の先生方から貴重なアドバイスやサポートをいただきました。改めて御礼を申し 上げます。  私からは以上です。 ○砂川参考人 国立感染症研究所感染症情報センター主任研究官の砂川です。私の方からは、それ 以降のスライドにつきましての説明をさせていただきます。  資料2−2の「広域事例対応について:国内における広域食中毒調査体制の現状と課題」というこ とで、先ほど具から説明のありました事件1に関する事例、事件2の2つの事例につきまして、自治 体における調査の体制でどのような課題があるか、どのような解決方法があるかにつきまして、研究 班のスキームを用いまして調査をいたしました。この研究班は「食中毒調査の精度向上のための手法 等に関する調査研究」、研究代表者は岡部信彦感染研感染症情報センター長です。  真ん中の右側のスライドですが、我々、国立感染症研究所実地疫学専門家養成コースあるいは感染 症情報センターといたしましては、幾つかの広域事例に調査としてかかわらせていただきました。そ の中で幾つかの課題を感じることがあったわけですけれども、それぞれ調査の探知から結果の公表・ 介入に至るまでの幾つかのポイントの中で我々が感じた課題をこちらに述べさせていただいており ます。  最初に、例えば、事例について発見することが遅れたりする探知の遅れというものがある場合も ありますし、また、事例が探知されましても広域であるということが認識されない場合があるとい うことで、広域としての調査開始の遅れがあったりすると。それから、一つ一つの事例につきまし ては散発事例になりますので、いわゆる通常の調査の手法でありますところのコホート研究などが できないという問題があります。コミュニティーレベルでの症例対照研究実施の困難さというもの があります。また、調査が首尾よくできました際にも、結果の公表につきまして自治体同士の足並 みをそろえて、どのようなところに提言を持っていくかということが、それほど容易でないことも あると。それぞれの幾つかの課題にこれまで直面してまいりました。  左下のスライドですけれども、そういったことがありましたので、今回の事件1、事件2のそれ ぞれの事例に対しまして、研究班といたしまして本事例発生時の自治体の初動、同一自治体内での 保健所間の連携、複数自治体にわたる保健所間の連携、そして、本事例における検査診断の体制、 過程などを中心にいたしまして、調査を行ったわけでございます。  調査対象につきまして、施設のみ、それから、患者が発生した自治体のみ、あるいは両方が発生 した自治体ということで、このような数になっているところです。  スライドの右下ですけれども、事例発生時の自治体主導に関する主な所見ですが、今回得られま した我々の結果の中では、第一報といたしまして、それぞれの事例におきまして医療機関からのい わゆる三類の感染症発生動向というところで事例が上がってくると。 75%ぐらいが食中毒というよ りは、むしろ感染症の散発事例ということでの情報を得ているということがわかりました。そして、 そのような状況がありますので、実際に初動を行った担当部署といたしましては、感染症担当課が Aチェーン事例につきましては 50%、Bチェーンにおきましても 50%ということで、両課が行っ ているのも3割もしくは5割というような状況になっております。  そのような形で感染症担当課が調査を開始するという状況の中ではありますけれども、実際にこ れは食品に関係するものであるというところで、食品担当課に引き継がれたというものはそれぞれ 90%、75%ということになっております。また、引き継がれたタイミングといたしましては、それ ぞれ8割、6割が保健所が情報を最初に探知して3日以内に食品担当部署がこのような調査にメー ンでタッチしていくという体制の変化があったという状況がありました。  5ページ目の左上ですけれども、事例発生時の自治体から感染症発生動向への報告状況ということ で、Aチェーン事例、Bチェーン事例 70%、100%というところで保健所が探知して1週間以内には 感染症発生動向調査へのシステム入力が行われているということがあります。このような状況から一 つ言えることは、やはり単発事例として自治体で探知されるこのような事例につきまして、感染症部 門、それから、食中毒部門の連携が非常に重要になってくるということであろうと思われます。  そして、自治体の中というよりは、周辺の自治体との連携についてもいろいろ情報を伺っており ますけれども、この中で見てみますと、平常時の自治体及び近隣の自治体などとの連携につきまし ては、4割ぐらいの自治体が実際には連携の構築をしているということがありましたので、これに つきましては、比較的近隣の自治体における対応に対する体制が整われているのかなということを 感じた次第です。  調査自体は、非常に膨大ないろいろな調査をいたしまして、この情報というのは一端なんですけ れども、とりあえず今現在のところでごく一部についてまとめさせていただいたところです。  右上の考察1でまとめさせていただいておりますが、今回O 157という事例につきましてまとめ たものではあるんですが、実際まとめてみますと、すべての広域食中毒事例に適用できるのではな いかと思われる考察ですが、まず、自治体への対応といたしまして、いわゆる自治体のみに関係す る単発事例についての対応は整備が比較的進んでいたのではないか。特に、食中毒事例としての対 応・体制というのは進んでいるのではないかということが感じられました。  次に、近隣に限られた範囲での感染源に共通点があるような事例につきましても、対応できる体 制が比較的整っていたというところがあります。しかしながら、近隣の圏域を越えるような広域事 例につきましての情報共有を行う仕組みなどの整備は不十分であろうということが推察されました。 また、これが全国規模になりますと、広域事例に対応する仕組みが十分ではないと。対策が遅れ、 被害が拡大する可能性が示唆されたということです。  遺伝子検索情報の共有の迅速化などについても、いろいろな情報が今回の調査の中で浮かび上が ってきておりまして、現在まとめているところでございます。  それから、左下の考察2ですが、これもすべての広域食中毒事例に適用できると思われることで すが、自治体からの要望という項目で挙げさせていただきますと、いわゆる遺伝子検査、 PFGEが 実施できない自治体があるので、そういった自治体への感染研の協力体制の整備ということ。それ から、休日を含めた検査体制をどうするか。そして、広域事例が疑われた場合の迅速な情報提供の 仕組み、それから、食品の流通経路に関する情報提供の仕組みについて整備をする必要があるだろ うということが、自治体からの要望として上がってまいりました。  以上の情報を元にしまして、まだ中間報告の段階ではありますが、可能な提言ということでまと めさせていただいたのが、最後のスライドです。散発する事例、これを感染症事例ということで探 知されることが大半であるということですが、散発するこのような事例を広域事例ということで認 識するための仕組みが必要であろうということです。自治体間での感染症あるいは食中毒事例とし ての、今回は大腸菌感染症ということで EHEC事例の情報の共有ということがあります。ただ、 EHECだけではなくて、実際にはサルモネラであるとか、赤痢であるとか、いろいろな広域食中毒 の可能性がある事例についても、同じような体制整備が必要であろうということ。それから、平常 時から菌株の遺伝子情報をどのように共有してやっていくかということが必要になってくるだろ うということがあります。  このような自治体の努力に裏打ちされた広域の対応がありますけれども、なかなかそれが全国規 模、非常に広域ということになりますと、自治体の対応だけでは限界があることも今回の調査の中 で見えてきたことでもありますので、厚生労働省が主体的に連絡調整や調査支援などを行う体制を 整備していただくと。そして今後、食品流通の広域化・迅速化がますます拡大していくことが考え られますので、このようなものに対応する体制の整備、早期全容の把握に努めていただくというこ とが必要になってくるだろうと思われます。  我々の方からは以上です。 ○宮村部会長 ありがとうございました。 それでは最初、事務局から平成 21年度に発生した3事例の広域散発食中毒事件の概要が説明された 後、最初の事例1につきまして、感染研の FETPから詳しい調査報告がありました。その後、砂川 先生からこれらを踏まえて、特に1例目、2例目のケースを踏まえて広域事例対応について新たな提 言がなされたわけです。これについて、皆さんの御意見やコメントをいただきたいと思います。 ○賀来委員東北大学の賀来ですが、詳細な解析をありがとうございました。もしかしたら今回の解析 の対応ではないのかもしれないんですけれども、治療に難渋した症例みたいなものはございましたか。 ○具参考人私の方で説明させていただいた事例に関しては、HUSを発症した方も1名のみ、それ以 外の方は本当に軽症で済んでいるということでした。HUSの方も透析を回したりというような重症 になることなく改善したと聞いております。 ○賀来委員先生が解析なさった症例で、砂川先生が言われたように多分、感染症事例として最初に報 告が上がると思うんですけれども、ほとんどの例で抗生物質が使用されておりましたか。 ○具参考人 抗菌薬に関しては余り詳細な解析は実はできていないんですけれども、使った事例と使 っていない事例とあります。軽症例に関しては、たしか余り使っていませんでした。ですので、今回 は使っていない事例が多かったと記憶しています。ちょっと数字が出なくて申し訳ありません。 ○賀来委員わかりました。腸管出血性大腸菌でいつも議論になるところで、抗菌薬を使うかどう かというのは、毒素の誘発も含めていろいろな議論があるところなんですけれども、一つ気になって いるのが、大腸菌を含めた腸内細菌が非常に急速に薬剤耐性が進んでいて、私たちの病院の検索デー タでも、セイヘン向けの抗菌薬に対する酵素を不活化するようものが出てきたり、キノロン薬の効か ない耐性菌が出てきているので、そういう意味でも、アウトブレイクへの対応については勿論なんで すけれども、治療的なところも少し気になるところがあって、これから治療に難渋するような症例が 出てくるのではないかということを懸念しております。先ほど砂川先生が言われたように、菌株の解 析の中で遺伝子のパターンとともに薬剤耐性の進捗状況といったものが進んでいないかどうかとい うことも是非解析していただくと、非常に治療では有用な情報になると思いますので、是非ともその 辺りもよろしくお願いしたいと思います。 ○宮村部会長 ありがとうございました。ほかにございますか。 ○中村委員 自治医科大学の中村でございます。資料2−2を非常に興味深く拝見させていただいた んですけれども、さすが FETPの調査ということで、すばらしい結果だと思うんですが、ただ、1 点だけ3ページの上段で出ております解析疫学、ケースコントロールスタディについては本当にやる 必要があるのかなという疑問を若干、私自身は持っております。というのは、それまでの記述疫学で もリスクファクターについては明白でありまして、これに対してケースコントロールスタディを行っ てだめ押しするという考え方はあってもいいと思うんですけれども、それにしてはインターネットを 使ったコントロールを集めてということで、3ページの左上の表にもありますように、 455人に恐ら く送って、最終的に使ったのが 175例ということで相当数が減っております。そこまでしてやる必要 があるのかなという疑問がありますし、だめ押しするのであれば、例えば、インターネットを使うの ではなくて、やはり聞き取りでネバーフットコントロールを使うとか、そんなこともあったのかなと いうことがあります。勿論これはきちんとした報告書を読むと、その辺も書かれているのかもしれま せんが、本日の御報告と資料2−2で若干のそういう疑問がございましたので、御検討のほどよろし くお願いいたします。 ○具参考人御意見ありがとうございます。だめを押しました。私たちとしては、今御指摘いただいた ように、記述疫学のところまででもかなりリスクファクターに関してはしっかり見えているというの がありましたけれども、私どもとしては、今回インターネットを用いた調査を行ったというのは、イ ンターネットを用いた調査がケースコントロールスタディとして本当にふさわしいかどうかという 研修も含めたという意味合いがありました。ですので、今回の事例にとどまらず、今後のケースコン トロールスタディのやり方の一つの取っかかりとして今回インターネットの調査を行ったというと ころがあります。  それから、下の表に関しては、説明を先ほどはしょってしまったところなんですが、 455とあり ますのは協力してくれますかという依頼をしたのが 455です。そのうち協力をすると答えてアンケ ートに答えてくださった方が 217ということになります。したがいまして、依頼をしたのが 455 で、そのうち半数近くの方が協力に応えてくれたということで、インターネット調査で半数ほどが 協力してくれるというのは非常に高い数値かなと思いますので、そういったことがわかったという ことも、今回の一つの調査の意義になるのかなとは思っております。 ○砂川参考人 ちょっと補足をさせていただきます。これまでの広域事例は各自治体では非常に数が 少ないということがありましたので、その中で断定的に原因がこれだという情報が先行してしまって、 その後の調査にいろいろなバイアスというか影響を与えることが多かったということが過去に経験 されてきたことですので、このような解析疫学、今回はかなり答えが明らかだろうなと思いながらや った部分もあるんですけれども、解析疫学をある程度一つ一つしっかりステップを踏んでいくという ところが重要ではないかということで、愚直にこのような検証をさせていただいたというところです。 また、実際に日本国内で特にコミュニティーを対象にしました解析疫学というものが非常に個人情報 の観点から難しいということがありましたので、そういったところでインターネットを使った調査が どれくらい実施可能かというところを今回の調査の中でテストさせていただいたところも実際には ございます。 ○宮村部会長 ほかにございますか。 ○谷口委員詳細な御報告をありがとうございました。私が言うのも何ですが。広域食中毒事例に対す る提言をいただいておりますが、これはやはりこの部会としても実際に移していくためにどうしたら いいかということを考えてみてはどうかなと思いました。例えば、認識する仕組みが必要であるとい うのは、今実際に電子データで報告されているわけです。例えば、これをいわゆるクラスターとして 類似の症例をひっつけてくるというのは、今のIT技術をもってすればそんなに難しいことではない と思いますし、また、発生動向調査システムの NESIDというのは、基本的に感染症部局で運用され ていると思うんですが、ただ、感染症部局も食品衛生部局も国としても同じ厚生労働省のなかですし、 地域も同じ部門にあるわけですから、これらのデータを感染症部局と食品衛生部局のシステム間で何 らかの連携をかけるというのもIT的にはそんなに難しくないことではないかと思いまして、そうい ったことが可能であれば、最初の数例で似たような食品を喫食したとか、同じレストランを利用した とかから、早期探知のきっかけにできると思います。今後ちょうど NESIDは来年度改修がかかって いると思いますので、いい機会なのではないかと思います。 最後に、実際の情報共有という点でも、例えば、アメリカなどはHAN(Health Alert Network)と いう専門家の内部の共有システムがありますので、広域事例というのは先ほどの御指摘もあったよう に、探知が遅れればどんどん広がるという危険性がありますので、そういった具体的な案として考え ていってはいかがかなと思いましたので、お願い申し上げました。 ○宮村部会長 どなたかございますか。 ○熊谷食中毒被害情報管理室長 御意見ありがとうございます。現在、監視安全課で食中毒調査支援 システムというのを構築しているところでございます。このシステムは自治体間の食中毒に関する情 報の共有、自治体と国との情報の共有を強化しようということをコンセプトにやっておりまして、併 せて、感染症の情報システム( NESID)とも連携をとりまして、そういう情報とも共有できるよう な形でやっていこうということで構築しているところでございまして、来年度から稼働させ ていこうと考えているところです。略してネスフド( NESFD)と呼ばさせていただくことにしてお ります。 ○宮村部会長 いろいろなところで今回の調査が生きてきたと思います。 ○今村委員 先ほどのネット調査のバイアスについてですけれども、私はそのネット調査のバイアス そのものを研究しておりまして、大体事件が起こってから1年以内にやると結構大きなバイアスがか かるというのは、今は周知のことになっておりまして、1年ぐらい経ってやると収まってきていると いうのが現状だと思うんですね。ですから、もしバリデーションに使われるのであれば、1年後の結 果と今出された結果を比較することで、その加工分を加味して考えてオッズ比を出していくことを考 えたらどうかなと思います。 以上です。 ○具参考人どうもありがとうございます。検討させていただきます。 ○宮村部会長 ほかにございますか。 ○五十君委員 食品の立場で EHECの場合、食中毒事例が起こっても食品から分離というのはなかな か難しくて、いつも困っているんですが、今回は凍結残品等が随分残っていたようでして、ここに結 果が書いてあります。もし、定量的な考察を行っているようでしたら、どのレベルで今回混入があっ たかの情報をいただきたいと思うのですが。 ○熊谷食中毒被害情報管理室長 御質問ありがとうございます。Aチェーン店の食中毒について、残 っていた残品の成型肉についてO 157の検査をしたところなんですが、国立衛生研究所衛生微生物部 の小西先生のところでやっていただきました。回収されたそのものにつきまして、製造工程中の時系 列の記録が保管されておりませんでしたので、検査の結果、検出していただいているところではあり ますが、製造段階のどの段階で汚染があったのかというところまで解析することは、今回の結果をも っては難しかったというような状況でございます。 ○五十君委員 保存検体中の菌数レベルがどのレベルだったかわかりますか。 ○小西委員 今、資料が手元にないので私の記憶でよろしければお答えさせていただきたいと思いま すが、検出されました 18検体におきましては、定性の検査では定量限界、定性限界以下である 1.5MPN以下のものが定量では3検体出ておりまして、あとはすべて定性検査の定量限界よりも上 のものでございました。一番多かったのが8 MPNでございまして、平均がたしか 2.29とか 2.3MPN/gだったと記憶しております。 ○五十君委員 ありがとうございました。 ○具参考人 小西先生のおっしゃったとおりですが、報告書で報告させていただいた数値としては、 平均 2.28MPN/gということで報告させていただいております。これは摂取すれば十分発症を引き起 こせる菌量ではあると考えました。 ○宮村部会長 よろしいでしょうか。 それでは次に移ります。続きまして、腸管出血性大腸菌O 157における広域散発食中毒対策の案につ いて、事務局から説明をお願いいたします。 ○蟹江課長補佐 それでは、資料3に基づきまして御説明させていただきます。資料3につきまし ては、先ほど御説明のありました3事件を踏まえた本部会の意見として、事前に委員の先生方から 御意見をお伺いいたしまして、事務局で整理したものでございます。  まず、1といたしまして食肉処理施設等における衛生管理ということで、(1)と畜場における衛 生管理の徹底、(2)食肉処理施設、いわゆる加工施設になるわけですが、そこでの微生物管理の徹 底という内容になっております。  2といたしまして飲食店における対策ということで、 (1)は飲食店業者が調理して提供する場合、 (2)が客が自ら加熱処理をする場合、それぞれに分けて加熱調理等に関します内容となっております。 3につきましては、食中毒調査について整理をしております。(1)探知及び初動調査の迅速化という ことで、今もいろいろ御議論がございましたけれども、[1]として食品衛生部局と感染症部局の共同調 査の推進ということで、調査票のガイドラインを示して統一的に共同調査を推進するという内容とな っております。[2]は情報の集約化の体制の整備ということで、厚生労働省及び関係都道府県それぞれ どういう役割を果たすかという役割分担を中心とした内容になっております。[3]といたしまして菌株 の遺伝子解析情報の共有化ということで、現在も国立感染症研究所で対応をいただいておりますけれ ども、更にそれを発展させて、より効率的に活用できるシステムの構築に努める必要があるという内 容になってございます。 (2)でございますが、症例対照研究の推進。今も御議論がございましたとおり、今後いろいろな研究 を進めていく必要があるという内容となっております。 (3)につきましては、食中毒調査の結果に基づく対応といたしまして、広域散発食中毒事件の場合で すと、やはり調査に一定の時間を要するということで、食中毒事件と断定する以前に必要な措置を講 ずるということで、[1]原因食品が調査中ということであった段階でも関係する食品の流通販売を一時 的に見合わせるというようなことを事業者に協力を求めると。[2]は主に施設の衛生管理でございます が、検証・改善について指導をするということで、更に、食中毒として原因施設が確定すれば、その 段階で発生要因に基づいて新たな対策が必要かどうかを検討して、必要と判断される場合にあっては、 追加的に措置を命ずるという体制にしたらどうかということで御意見をいただいております。  最後のページでございますが、問題点と対策を簡単にまとめたものでございまして、と畜場段階、 食肉処理施設の段階、飲食店の段階で、従来からの対策と3事件の問題点の概要でございます。最後 に、今後の対策のポイントということで整理してございますので、ごらんいただければと思います。  以上でございます。 ○宮村部会長 ありがとうございました。ただいまの事務局案につきまして、御意見・御質問をよろ しくお願いします。 ○熊谷委員1番と2番につきまして、この中の項目は新しいものなんでしょうか。従来から行わ れているものと新しいものとの区別はどこにあるんでしょうかというのが1点。それから、私自身 がよく行く焼き肉屋はレバ刺しを出すんですけれども、メニューに書いてあるんですが、それは 例えば、2番の(1)ということで今後はなくなるのでしょうか。それとも、やはり主体的な努力 に任せるということになるのでしょうか。その2点をお願いします。 ○蟹江課長補佐 1と2の対策につきましては、従来から行っているものを基本的には徹底するとい う内容になっております。 それから、レバ刺しの御質問がございましたが、これも従来から食肉等につきましては、十分加熱し て提供するように関係自治体を通じて指導をしておりまして、加熱調理の必要性を3事件を踏まえて 今回は記載させていただいたという内容になっております。 ○加地監視安全課長 私から追加をさせていただきますと、平成9年のO 157の集団学校給食で起こ ったときというのは、非常に焼き肉店も一般消費者も関心が高くて、よく焼いて食べましょうという 意識があったんですが、それからもう 10年以上経っておりまして、そういう意味では記憶が風化し てきましたので、こういうことは時に応じてやはり何回も何回もリマインドしていく必要があるのか なと思います。おっしゃるように、特段新しいところを入れているわけではございません。 ○犬伏委員 全然中毒と関係ないと言われてしまうと困るんですけれども、今回も結着肉という言い 方がありますが、家に持って帰るときに、お店の人がよく焼いてくださいね、これは結着肉ですと言 うかなと考えると、多分おっしゃらないんじゃないかと思うんです。上等ステーキだと思ってレアで 食べてしまうことも起こり得るような気がするので、表示がないと危ないのかなという気がしていま す。加工した食肉というのは、人の手がたくさん入って汚染されやすいのかなと思いますので、その 辺の書き方、対面販売時の説明とか、表示みたいなものは必要なのかなと思いながら、これを読ませ ていただいたんですけれども。飲食店に限るときは、まだそこに義務付けできるかもしれませんが。 ○加地監視安全課長 もう既に包装された形態で販売される結着肉については、表示の義務がかかっ ております。これは今回新しいと言えば、お店で提供する結着肉については、そういうインフォーム がされていなかったということが一つ新しいと言えば新しいわけでございまして、そこを2の(2)で 結着あるいは漬け込み肉を提供する場合にあっては、客が自ら加熱調理を行う場合には、そういう処 理が行われていますよということ、飲食に供するまでに加熱が必要ですよということをお店の従業員 の方が提供するときに、必ずお客様にお伝えするということをここで提言していただいております。 ○今村委員 事前に意見を出すというのを見落としていまして、今更言って申し訳ないんですけれど も、これはミキシングと結着肉のパターンで、肉の中にO 157が入るということであれば、通常もう 一つテンダライズとタンブリングというのがあったと思うんですが、要は肉を軟らかくするために筋 切りに刃物を入れて、中に味をつけるパターンがあったと思うんです。これは両方とも同じくらい肉 の中に入るという意味では危ないと思うので、同じパターンであれば、それも通知の中に入れて考え た方がいいのかなということが一つ。  もう一つは、結局肉の中にO 157が入ってくるということを考えると、最後はよく焼くしかない と思うんですね。それは事業者だけに限らず、消費者の皆さんが最後に焼くときに、今まで肉は表 面さえ焼けば安全だったわけですけれども、中まで焼かないと安全でない肉があるということなの で、食べるときには最後によく焼きましょうというのは、消費者の皆さんにも広く働きかけた方が いいのかなと思っております。  以上2点です。 ○宮村部会長 2番目の方は、まだこの案では生ぬるいというか、生焼けであると。もう少しという 宿題でしょうか。 ○今村委員 これは事業者向けということであれば、事業者の方にはよく焼きましょうという形で書 かれているので、これはこれでそのとおりだとは思うんですが、その事業者が出すものに限らず、消 費者が直接買う物についても同じことが言えるということがあるので、それは別に考えることが必要 なのかなと思います。 ○宮村部会長 今回のところで学んだことですから、それを反映させていただきたいということです。 ○加地監視安全課長 今の御意見は、この中に盛り込みたいと思っています。 それから、1点目は、結着及び漬け込み肉等の「等」の中に私ども入れたつもりで、あえて表示はし なかったんですが、表示の義務も、それから、こちらで言う加熱をしてくださいよというインフォー ムする方も私どもは想定しております。 ○山本委員 ちょっとよろしいですか。1番の食肉の処理の(2)の処理施設に対してなんですけれど も、こういう指示を出してあって、これをそれぞれ報告書の中にあったと思うんですが、加工センタ ーで検査したけれども見つからなかった。小西先生のところでチェックされると、ちゃんと出てきて いるわけですが、その辺の検査体制については何か言及することはあるのでしょうか。 ○加地監視安全課長 これも先生方から御意見もいただいたところでございますが、表現としては微 生物管理を徹底するということの中に、もう一度出そうと思って出す場合と、出ては困るなと思って やる検査とは、やはり温度差が出てくるのかなと思いますので、もう少し感度のいいものをまた先生 方に教えていただいて、そういうものがあるんだということを周知したいと思っております。 ○宮村部会長 ありがとうございました。ほかに宿題といいますか、御意見・コメントはございます か。なければ、今いただいたものを導入していただきまして、最終的な事務局案を提示していただき たいと思います。 今日準備しましたディスカッションは以上ですけれども、事務局から何かほかの連絡事項等はござい ますか。 ○蟹江課長補佐 特にございません。 ○宮村部会長 それでは、今日の食中毒部会はこれにて終了いたします。どうもありがとうございま した。 −了− 事務局:厚生労働省医薬食品局食品安全部     監視安全課食品安全係(内線2478)