10/03/12 第5回化学物質のリスク評価検討会(ばく露評価小検討会)議事録

化学物質のリスク評価検討会第5回ばく露評価小検討会


                                        日時 平成22年3月12日(金)
                                              10:00~
                                        場所  経済産業省別館827会議室
               
               
               
               (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部
            化学物質対策課化学物質評価室 井上
                     〒100-8916 東京都千代田区霞が関1-2-2
            TEL 03-5253-1111(内線5511)
            FAX 03-3502-1598


○井上労働衛生専門官 ただいまより「化学物質のリスク評価検討会第5回ばく露評価小検討会」を
開催いたします。本日は大変お忙しい中ご参集いただきまして誠にありがとうございます。本日の出
席状況ですが、委員全員の出席をいただいております。
 議事に入る前に事務局より1点、本日の検討会の位置づけについてご説明いたします。本日の検討会
は、議事(1)「平成21年度ばく露実態調査対象物質の測定分析法について」は公開とさせていただきま
すが、議事(2)「平成21年度ばく露評価について」は、事業場ノウハウ等に係る部分があるため非公開
とさせていただきます。このため傍聴の方におかれましては、大変恐縮ではございますが、議事(1)が
終了した時点でご退席をお願い申し上げますので、あらかじめご承知おきください。なお、追って取
りまとめ、公表する予定のリスク評価書におきましては、本日の議事対象の物質に係るばく露状況、
有害性評価結果共に明らかになりますので、併せてご承知おきいただきたいと思います。以下の進行
につきましては名古屋先生にお願いいたします。
○座長(名古屋) 議事に先立ちまして、事務局より資料の確認等よろしくお願いいたします。
○井上労働衛生専門官 資料についてご説明いたします。まず議事次第。資料1、平成21年度のリス
ク評価の進捗状況。資料2、ばく露実態調査対象物質の測定分析法(案)。資料3、平成21年度リスク
評価対象物質に係る有害性評価関係資料。資料4、平成21年度ばく露実態調査対象物質の測定方法。
資料5「平成21年度ばく露実態調査結果。資料3~5は非公開資料となっています。資料6、今後の予
定。参考1、労働者の有害物によるばく露評価ガイドライン。参考2、詳細リスク評価対象物質の初期
リスク評価書。これは机上配付のみとさせていただいております。以上です。
○座長 資料はよろしいでしょうか。それでは本日の議題に入ります。議題第1「平成21年度ばく露
実態調査対象物質の測定分析方法について」。事務局から説明をお願いいたします。
○井上労働衛生専門官 議事(1)、資料1と資料2についてご説明いたします。まず資料1、平成21年
度リスク評価進捗状況(本日現在)です。こちらにつきましては表と裏ということで、有害物ばく露
作業報告の対象年に着目して2つに分けてございます。資料1の表面につきましては、平成21年の1
~3月までの報告対象物質(20物質)のうち報告がありました(18物質)の中で、初期リスク評価に
(7物質)着手したところです。アクリル酸エチルから酢酸ビニルまでについて、有害性の評価とばく
露評価として、ばく露調査を実施したところです。ばく露調査7物質の内訳につきましては、当初調査
する予定だった候補数と、その中の実施状況の内訳ということで、(調査)(事前調査のみ)などに
分けています。
 初期リスク評価着手7物質の中で、赤字下線にしている物質につきましては二次評価値を超えるばく
露が見られたものです。報告があった18物質のうち、初期リスク評価に着手した7物質以外のものに
つきましては、その下の「有害性評価のみ実施」の(11物質)ということで、(3)のアンチモン及びそ
の化合物から(20)のヘキサクロロエタンまでを「有害性評価のみを実施」ということにしております。
 その下のものは有害物ばく露作業報告がなかったものでございますが、有害性情報の収集を行うと
されているものです。(20)ヘキサクロロエタン、(13)テトラニトロメタン、(19)4-ビニルシクロヘキセンジ
オキシドの3物質につきましては、次回の有害物ばく露作業報告の対象物質で新たに報告を求めること
にしております。
 裏面の(その2)につきましては、有害物ばく露作業報告の報告対象年がさらに1年前の平成20年1
~3月までの報告対象物質です。報告があったもの(24物質)、なかったもの(20物質)になってお
り、報告があったもののうち20について、初期評価を昨年度実施済み、残りの4物質につきましては、
昨年度有害性評価だけを実施したものです。この初期リスク評価を実施した20のうち、詳細リスク評
価に移行した物質は(1)の2-クロロ-1,3-ブタジエンから(7)の1,3-プロパンスルトンまで(7物質)ござ
います。このうち(3)の酸化プロピレンと(4)の1,4ジクロロ-2-ブテンの2物質については二次評価値が
見られたというところで、今回の詳細リスク評価の中のばく露調査において二次評価値超えが見られ
たものです。右側につきましては、追加調査、詳細リスク評価でのばく露調査の内訳、またその中で
も特殊な用途と考えられるものの数とその例をお示ししてございます。
 その下にいきます。初期リスク評価を昨年度実施した20のうち、詳細リスク評価に移行しない残り
13につきましては評価が終了と位置づけ、また、報告があった24のうち、有害性評価を昨年度実施し
たものについては、今年度初期リスク評価に着手するということで進めてまいりました。この4物質の
うち、(3)の1,2-ジブロモエタンのみ今回ばく露調査することができ、二次評価値超えが見られました。
ただし、この二次評価値については未確定で、候補値という前提での二次評価値超えですので、ご注
意いただければと思います。
 最後に、報告がなかった20物質につきましては、今年度有害性ばく露情報の収集を行っております。
この中で(15)ヘキサクロロベンゼンと(19)りん化インジウム以外の緑色太字の物質につきましては、次回
の有害物ばく露作業報告の対象物質としています。資料1については以上です。
 続いて資料2に移ります。資料2につきましては、今年度ばく露実態調査を行うこととしていた物質
に係る測定分析方法のうち、承認されていないもの(この検討会で報告していないもの)承認されて
いないもの、それから2番目のその他(参考)報告、作業環境の測定手法のみ「労働安全衛生法第28
条第3項に基づく指針策定を予定している物質」が2物質、1-ブロモブタンと2-アミノ-4-クロロフェ
ノール。またその他の「その他」としてニッケル化合物と砒素及びその化合物。これらにつきまして
は、いずれも昨年の4月1日に特化則の中の特定2類物質とされたものでありますが、平成22年4月1
日から作業環境測定が義務づけられることになっているものです。これら指針物質(2物質)と法規制
を受けた2物質につきましては参考として報告することになっています。
 いま私のほうから申し上げたニッケル化合物と砒素及びその化合物につきましては、資料の中で特
定第2類物質としてありますが、正しくは「特定化学物質の管理第2類物質」の誤りですので、この場
を借りて訂正させていただきます。
 資料の中身につきましては、今年度測定分析手法に係る検討を行ったものをすべて網羅する形で添
付させていただいております。中身の詳細につきましては、この検討を行った中央労働災害防止協会
から説明していただきます。
○棗田(中災防) まずアンチモンから説明させていただきます。「アンチモン及びその化合物」と
いう題にはなっているのですが、4頁でお分かりのように、溶解性試験を行った結果、現在のところ、
三塩化アンチモンと三酸化二アンチモンしか基本的に溶けていない。そういうことで、ではこれがど
れぐらい使えるかというと、2頁にあるように、アンチモンの86.9%が三酸化二アンチモンであり、と
りあえず、この三酸化二アンチモンが溶ける手法であれば大部分の所は測定可能かもしれないという
ことで、この手法について検討を続けたという形になっています。
 手法としては、9頁の「まとめ」で標準分析法ということでまとめてあるのですが、サンプラーは作
業環境測定と個人ばく露で分けてあります。作業環境のほうが47mmψ、個人ばく露のほうが35mmψ。
どちらもメンブランフィルターで行います。サンプリング流量が2~10.0L/minなのです。35mmψのメ
ンブランで10.0L引くというのは厳しい、35mmのメンブラン10.0Lというのは厳しいのですが、基本
的には個人ばく露を2.0L、作業環境のほうは10.0L/minという形で考えています。ただし、採気量が
100L以上ないと定量下限値があまり採れなくて、それ以上の所で引いていただくという形になるかと
思います。
 保存性ですが、少なくとも溶解後7日間で安定ということで、金属ですのでそんなに不安定なもので
はないという形になります。回収率は化合物で83~96%という形です。7頁の表にある添加回収という
のは、フィルターに添加してフィルターごと単純に溶かすという実験です。採気量比で考えると、三
酸化アンチモンのほうは大体90何パーセントという形なのですが、三硫化二アンチモンの場合、回収
率が非常に低くて、この手法ではまず使えないという形になっています。
 分析方法なのですが、ICP発光分析方法がNIOSHで推奨されており、ICP、発光分析方法で行ってい
ます。
 回収率、検出下限を見ていただくと分かるのですが、3σで0.01、10σで0.05。これを定量下限値、
採気量を10分として考えると、10Lで10分、100Lで0.01mg/m3。個人サンプラーで0.001mg/m3という
値となっています。
 ただ、大変申し訳ない話なのですが、本来であれば、最初に全部溶けるような酸を試すのが常套の
ような感じがするのですが、我々の中で分別をしたいという強い意気込みがあったようで、こちらを
優先してやってしまった結果、全部溶かす酸をまだ試していないのです。我々がやるかどうかは別の
問題としても、このままだと混合されているような所では使えないのです。分析方法としては、酸が
変わってもそんなに感度が変わることはないと思いますので、ICPでいけるということについて問題は
ないと思うのですが、酸に関してはもう少しきつい王水みたいなものを試さざるを得ないかなと思っ
ております。以上です。
 次はりん化インジウムです。このりん化インジウム自体はすでにご検討いただいてOKをいただいて
いるのですが、今年は「インジウム及びその化合物」となっていましたので、りん化インジウム、酸
の方法でほかのインジウム化合物が実際に溶けるかという溶解性試験の確認をしております。この溶
解性試験に関しましては、実際に我々が事前調査に伺った際にそちらからいただいたサンプルとMSDS
のものです。下にA・B・Cでパーセンテージが書いてありますが、その含有率はもともとのサンプルを
秤量したもののパーセンテージからインジウム添加量を計算したものです。それと、実際に溶かした
後にICP-MSで定量した際の値を比べて、回収がきちんとできているかを比べる形になっています。我
々のほうに手に入ったもの、いただいたものとしては、インジウム、スズ、銅、銀の混合物、いわゆ
る合金です。あとはIZO、それと水酸化インジウム。IZOが97とか91と少し低めなところが出ている
のですが、基本的には90%以上の回収率となっておりますので、いま使っている酸(水:硝酸:塩酸
=4:1:3)ホットプレート160℃、希釈用酸40mLで定容したもので十分いけるのではないかという結果
になっております。
 次はカテコールです。まずカテコールの捕集方法です。30頁を開いていただくとXAD-7を使ってい
ますが、その前にさらにグラスファイバーフィルターを付ける。カテコール自身が常温で固体の場合
もありますので、固体と蒸気を両方採るような手法となっております。
 脱着率は、アセトンによる脱着になります。25頁の表4と表5を見ていただくと分かるのですが、
基本的に酢酸エチル、アセトン、メタノールで比べていますが、酢エチがいちばん良いのです。酢エ
チの場合は少しピーク妨害があるということで、92.2%の脱着率を示したアセトンのほうを使うと決
めております。
 捕集管のアセトンによる脱着率を見ていただくと分かるのですが、この手法の問題点としては、2層
目の脱着率を見ると分かるように、低濃度になったときに11.04μg。脱着率は2層目の所に必ず10%
前後出てしまうという結果になっています。添加量が101.82μgになりますと2層目の脱着率が1.1。
基本的に、添加量が多くなると前の所にきちんと保持されて2層目に抜けないのですが、なぜこちらが
こういう結果になるのかというのは、いろいろ検討してみるのですが、いまのところはよく分からな
い状況になっています。
 1層目、2層目を合計するとほぼ85%以上の回収率があります。これは実際に調査をしていないわけ
です。実際のサンプリングの際には、両方を一緒に分析するか別々に分析してきちんと値を取ってお
けば、そんなに大きな問題はないのかもしれないのですが、少し検討していただくか、ここの委員会
で何かアドバイスをいただければと思います。分析方法としましてはガスクロマトグラフィーにFIDと
いう形で、非常に一般的なものになっています。
 通気試験による回収率も同じような形でやっておりますので、94.2%程度。定量下限、これはまだ
統一されていないのですが、10σで計算しているものとして、10Lサンプリングで0.071、240Lサンプ
リングで0.0030という形になっております。
 次はフェニルヒドラジンですが、これは足かけ3年かかっております。最初に他のヒドラジン類と同
じように硫酸含侵フィルターでいけるのではないかということで検討は始めたのですが、理由はよく
分からないのですが、硫酸含侵フィルターでは安定して採ることはできないということが分かりまし
て、インピンジャー法で基本的にいくという形になっております。
 特徴としては、インピンジャーで採ってもこのままでは安定化しないので、フルフラール誘導体と
いう形で誘導体化をして、誘導体化のものを分析するという手法になっています。
 こちらの場合ですと保存性が悪かったのです。フルフラール誘導体化したものに関して保存性の結
果を見ますと、36頁の表4を見ると分かるように、採気直後で93.8、86.09という形で、液の状態で
採っても7日間、アルミホイルのようなもので包んで遮光して保存しておけば88.96%ですので、そん
なに大きな問題がありません。
 40頁を見ていただきますと、ミジェットインピンジャー。インピンジャーの中身としては0.1Mの硫
酸15mL、サンプリング流量が0.2~1.0ですが、基本的には120L以上の採気量をすると逆に播種率が
悪くなるということですので、MAX120Lでやっております。検出下限値は3σで0.045μg、定量下限値
は10σ、0.151μg。定量下限気中は基本的に10Lで0.0036、120Lで0.0005ppmという形になっていま
す。分析方法としては、HPLC-UV法です。誘導体化しないと安定しない。安定というよりは、これでな
いと感度がとれないということもあるのですが、4%フルフラール水溶液3mLで2時間放置します。そ
して3mLをn-ヘキサンで抽出し、ヘキサン相を2.4mLで分取し、35℃以下の温浴中で、窒素気流下で
濃縮するという形になります。それをアセトニトリルに転溶し、HPLCで分析する、という少し複雑な
手法となっています。
 ただ、これもインピンジャーを2連結にしてどれくらい抜けているのか等が検討されていませんので、
もう少し検討の余地があるのかもしれません。
 次は1-ブロモブタンになりますが、ここからは先ほど井上専門官からもご説明があったとおり、リ
スク評価の対象物質ではなくて指針の対象物質ですので、作業環境測定方法のみを検討するという形
になります。
 1-ブロモブタンの手法としては2つ試しております。1つが固体捕集の溶媒抽出、もう1つが加熱脱
着法の2つを検討する形になっています。本当は、53頁と62頁を比較して見ていただくといちばんい
いのですが、まず53頁をご覧ください。
 結論からいくと、活性炭捕集の二硫化炭素脱着がいちばん成績が良くて、脱着率も1.0μg・20μg、
平均回収率95%以上。捕集率も、60分引いて、1.0μg・20μg、ともに90%以上の平均回収率となっ
ています。
 それに比べると、62頁にある加熱脱着法の添加量は0.5μg・85%、6.0μg・85%となっているので
す。ただ、58頁で分かるように、通気量が10分までは非常に回収率がいいのですが、20分を過ぎると、
78、81、91と非常に落ちてきます。ですから、採気量が大きくなると抜けてしまっているという形に
なると思います。作業環境測定ということで考えれば、10分というような決め事があるので確かにこ
ういう方法でもいいのかもしれないのですが、安全性を考えれば、活性炭捕集の二硫化脱着であれば、
回収率は非常に安定していますので、こちらのほうがいいのではないかということになっております。
ただ、我々のほうも折角検討した結果ですので、両方付けるような形になっています。こちらのほう
は逆にご検討いただいて、こちらも参考程度にするのか、どうするのかを検討していただければと思
います。
 48頁を見ると分かるのですが、これはどの方法にもよく起こるのですが、我々が最近この検討を始
めて、低濃度にすると回収率が非常に悪いという結果が出ております。この方法も、基本的に見てい
ただくと0.05μgを添加した際には70~60%台と、非常に回収率が悪いです。ところが1.0μgとか、
作業環境測定で通常考えられるような20μgぐらいの添加量で見ると非常に安定した結果になっている
のです。低濃度になるとどうして抜けるのかというのが、我々もいろいろ検討したり、文献を調べた
りしているのですが、いまのところ、抜ける物質がかなりあるということしか分かっていなくて、こ
こをどうするのかというのは、我々のほうでもまだアイディアがなくて、今後の検討課題だと思って
います。リスク評価のほうであれば、この方法は採用が難しいと思いますが、作業環境のレベルであ
れば、そんなに大きな問題ではないのかもしれませんが、そこのところを含めて検討していただけれ
ばと思います。
 次は2-アミノ-4-クロロフェノールの測定法です。結論から言うと、これもアミン類ということで、
酸化反応が非常に強い物質で、基本的には硫酸含侵フィルターで採るという形を採用しているのです。
68頁を見ていただくと分かるのですが、捕集時間で見ていただきますと、10分までは86%、80%、81
%と非常に良い回収率なのですが、採気量が増えると、60分採気で65%、300分になると11%と、ほ
とんど採れないような状況になっています。通気速度も、5Lで見ていただくと分かるのですが、添加
量が多いときには十分いいのですが、5Lで引くと、基本的にもう抜けてしまうのか、酸化してしまう
のか、はっきり分からないのですが、うまくいかないのです。一応1L採気で10分ならいけるのではな
いかということで出してはいるのですが、これを実際に担当された委員の方からは、インピンジャー
法も併用して試してみたいというご意見もいただいております。では、本当にインピンジャーになっ
たらうまく安定するのかというと、我々のほうで絶対的な自信があるわけではないのですが、そうい
った意味でも、どうするのかというところも含めてご検討いただければと思います。
 分析方法としては、高速液体クロマトグラフ法で、UV検出器という一般的な方法になっています。
ただ、検出下限値としては非常に良くて、うまく捕えることさえできれば、定量下限値が0.02μg/mL。
1Lでは10分採気で3ppbまでいけるということですので、基本的には非常に良い分析方法だとは思う
のですが、捕らえるところに問題が残るのではないかと思います。
 次はニッケル化合物と砒素ですが、この2つに関しては今度の4月より測定が義務づけになるという
ことで、「作業環境測定ガイドブック」に載せられるような手法を念頭に置いて我々のほうで検討し
ております。いくつか種類がありまして、81~84頁のような形で種々の方法を試しております。何の
違いかということなのですが、まず別紙1について。分析方法の前処理は一緒なのですが、最後の機器
がICP-AESを使うのか、ICP-MSを使うのかです。フィルターは、グラスファイバーフィルターか、メ
ンブランフィルターです。捕集速度をこういうふうに書くのがいいのかは分からないのですが、名古
屋先生に検討していただいた結果から、面速19cm/sと書かざるを得ない。100マイクロカットという
ことですので、このような形で書かせていただきました。
 前処理方法としては、3Mの塩酸50mLで行う。回収率が精度-1の所に書いてありますが、90.2±6.43、
84.1±3.70という形で、基本的には非常に良い回収率だと思います。定量下限値も0.0024mg/m3で、10
分採気で十分な感度が出ているのではないかと思います。ただ、もっといきたいということであれば、
ICP-MSにしますと0.00005と桁が2つぐらい下になるでしょうか、そのくらいの感度が取れるので、
ICP-MSをお持ちの所は、わざわざICP-AESでなくてもいいのではないかと思います。
 次は別紙2です。分析条件の所で前のものと何が違うかというと、溶かす酸が変わっております。今
度は2.5Mの硝酸50mLという形になっていまして、これを使うと、回収率は良くなる結果になっていま
す。これですと95.0%とか91.5%ぐらいですので、こちらのほうが前の方法よりもさらに望ましいの
かもしれません。同じように分析方法はICP-AESとICP-MSですので、感度に関しては先ほどと全く変
わりません。
 別紙3になりますとまた違う酸で溶かすという方法なのですが、超純水5mL、硝酸9mL、過塩素酸と
いう形でやるのですが、これも回収率的には非常にいい方法になっております。分析の感度は基本的
に一緒です。
 最後の部分はあまり良くないのです。実は回収率を混酸という形で、1.5Mの硝酸と1Mの塩酸を足し
て20mLという形で最初にやったのですが、添加・精度-1の回収率を見ていただくと、ニッケルの粉末
の回収率があまりよくなかったので、混酸の濃度を1.5Mから3MのHNO3に上げて2MのHCLと1対1と
いう形にしますと、回収率が上がって93.7%という形に基本的になっています。ですから、どのやり
方をしても、いわゆる金属粉末も普通のニッケルもどちらも、塩化ニッケルとか硫化ニッケルも、基
本的にはどの方法でも十分対応ができるのではないかと思います。いろいろな手法があって、どうい
った手法がいちばんいいのかというのを決めていただくのか、こういった形で出すのかも含めてご検
討をいただければと思います。
 最後は砒素です。これについては87頁の最初のところを見ていただくと分かるのですが、もともと
砒素自身はガイドブックに載っておりまして、そのガイドブックでは、硝酸10mL、硫酸H2SO46mLで30
分放置するという形になっているのですが、中災防が独自に検討した昔の結果から、硝酸2mL、硫酸
2mLで30分放置しても十分いける。後処理で20mLにメスアップという形で少し簡便化した方法を開発
しているのですが、これで十分いけるのではないかということで、中災防法とガイドブック法を比較
検討したような形になっています。
 88頁の表3と89頁の表4を見ていただくと分かるのですが、ガイドブック法と中災防法で比較して
も、特別に大きな差があるほどのものにはなっておりません。ですから、ガイドブック法よりも単純
化した中災防法のやり方でも、十分感度も出るのでいいのではないかということで今回の報告として
おります。
 91頁のまとめを見ていただきますと、基本的にグラスフィルターで10L/min.ということで採る。前
処理が硝酸2mL、硫酸2mLで30分放置した超純水5mLを加える。そして加熱して酸を入れ、硫酸白煙
が出るまで加熱して100mLにメスアップという形でいけるのではないかということになっています。回
収率も98.1±7.96。三酸化砒素、二砒素でも105という形で非常にいい回収率となっております。
 下と上は、水素化物発生の原子装置とICP-MSでどちらが感度がいいかということです。皆さんはよ
くご存じだと思いますが、ICP-MSを使うと1桁感度が上がりまして、上だと0.0019mg/m3です。砒素は
今度作業環境測定管理濃度が0.003ですから、水素化物発生装置だと少し厳しいかなと。ICP-MSだと
十分な感度が採れるのです。2分の1に近く採れているので水素化物でもいけるのかもしれませんが、
お勧めとしてはICP-MSのほうがいいのではないかという結果となっております。以上です。
○座長 資料1、資料2の中で、ご質問等は何かありますか。
○圓藤委員 「回収率」の48頁では両方で見たのでしょうか。低濃度で回収率が悪いというのは、た
ぶんくっついてしまっているのではないでしょうか。抜けるのではなくて回収できてないと思うので
す。だから他のものも、低いものの回収率が悪いというのは、たぶんそういうことだと思うのです。
直線的に、ある所まで行くと急にみんな採れてくるというのはあると思うのです。ただ、通気時間が
長いのは破過しているのではないかと思いますが。
○座長 これ、流速は変えてないのでしょう。
○棗田(中災防) 変えてないです。
○座長 濃度によって流速を変えると、いまの話は少し解決するかもしれないですね。
○圓藤委員 はい。
○棗田(中災防) あとは、まだやれてないのですが、脱着溶媒の量を増やしてみるようなこともし
てみようかと思っているのです。
○座長 抜けることの確認に。
○棗田(中災防) はい。
○圓藤委員 ただ、そうすると今度は、低いほうが検出下限値との兼ね合いで悪くなると、見かけの
回収率が悪くなってしまう。だから、逆に言ったら、超音波をかけるとか、何かそういうやり方のほ
うが低いところはいいのかなと思います。
○棗田(中災防) わかりました。
○圓藤委員 ニッケルは、原子吸光法というのはなくていいのですか。ICPしかないと言うと、ICPの
ある所は限られるし、ニッケルというのはかなり使われているので、原子吸光を入れておかないと、
ちょっとまずいのではないかなと思ったのです。砒素は逆に、これだけ厳しいと。この水素化法では、
基準値の10分の1の検出が疑問だと思うと、無理ということになってしまいますね。
○座長 管理濃度を決める時は、原子吸光についても検討しています。管理濃度が低くなると原子吸
光での判定は難しくなります。それでICPを入れましょうという形になっているので、たぶん残ってい
ると思います。
○圓藤委員 そうですか。しかし難しいですか。
○座長 はい。管理濃度委員会で分析法を議論する時、10分間で管理濃度の10分の1が定量できるこ
とが基本となります。そうすると原子吸光はきついかもしれませんが、通常の測定の場合、測定時間
が別段10分でなくてもいい訳です。10分以上捕集してもいいわけで、そうすると管理濃度の十分の一
を十分クリアできます。あとは、作業環境中には濃度の高いところも当然たくさんあるわけですから、
そうすると当然原子吸光もOKなのです。ただ、いちばん低いところでどうなのかなということでICP
が入ってくるだけですから、原子吸光は除いていないと思います。
○圓藤委員 わかりました。
○原委員 先ほどのブタンの加熱脱着で、Tenaxだけを検討されているのでは破過されている可能性も
あるのではないかと思います。追加で実験というか、固体捕集剤を変えるような検討はされているの
でしょうか。
○棗田(中災防) Tenaxだけではなくてもう1つ、Air Toxicsという活性炭系のものでやっているの
ですが、活性炭系のものはTenaxよりもさらに回収率が悪いのです、58頁の表3に出ているのですが。
Air Toxicsが本当にどういう活性炭なのかというのは、教義に触れるらしくて教えていただけなくて、
とりあえず活性炭ということです。
○原委員 カーボシールのような。
○棗田(中災防) はい、合成系ではないかとメーカーの方たちは推測しているのですが、本当のと
ころは分からないみたいです。
○座長 もう1つあるのは加熱脱着の場合で、サンプルもそうなのですが、加熱脱着装置の中で一旦測
定物質を捕集しますよね。そこで捕集剤としてTenaxを使うと、結果的にはTenaxでどれだけ捕集でき
るかということになってくるから、捕集管自体ではなくて、加熱脱着装置の捕集剤の所が何で捕集さ
れているかということ、それとSN比を変えたりしてみないと分からないところはあるかもしれません。
作業環境ですから、低濃度には弱いというのは間違いなく出ていますね。ただ濃度測定としてはあっ
たほうがいいのかなとは思いますけれど。
○花井委員 分析技術の化学的な内容ではなくて申し訳ないのですが、この文書の形で2、3気になっ
たことを質問したいのです。この文書は、出来上がると中災防の中の文書という形になるのか、ある
いはパブリックになって、企業とか何かがこういう方法を使って分析することを推奨するものになる
のか、どちらになるのですか。
○島田化学物質評価室長 いまこれを出しているという意味は、本来はリスク評価のために使うとい
うことなので、中災防のほうで利用するための資料です。ただ、折角こういうものをとりまとめたと
いうことで、各企業がご自身で利用する際にお使いになるときの参考資料として提供しようという考
え方もございますので、その辺りが外から見てよろしくなければ、ご指摘をいただければと思います。
○花井委員 形式的なことなのですが、例えば21頁のカテコールの標題に(2005年度における追加検
討)と書いてあるのですが、内容から言うと、これは2005年度に検討した検討結果があって、それに
対して今年度追加した結果である、そういうことですか。
○島田化学物質評価室長 はい。
○花井委員 これだけ読むとよく分からないのです。内部の人は分かるのだと思うのですが、その辺
に気をつけてほしいという気がします。
 それから42、43頁について。42頁にちゃんとした目次が付いているのは非常にありがたいのですが、
43頁に(1)溶媒抽出、あとのほうで(2)の何とかというかなり重要な項目があるのですが、それが目次の
どこにも出て来ないというのは、ちょっとまずいという気がします。
 74、75頁に、ニッケル化合物に関して、後ろのほうに「別紙1~4」、それから80頁に備考というの
があるのです。これは全文を詳しく読めば書いてあるのかもしれないのですが、ざっと見たところ、
別紙との関係とか、備考の位置づけとか、その辺がよく分からなかったので、そういった関係が分か
るような表現をしていただければ、後で使うときに使いやすいのではないかという気がします。化学
的な内容ではなくて形式的なことで申し訳ないのですが、ご検討いただければと思います。
○座長 本省と相談はしてないのですが、ガイドブックのところは、ニッケル等について、そのまま
ガイドブックに反映するのだと思います。
○半田化学物質対策課長 現在作業環境測定協会がガイドブックを作成していることもあり、同協会
も視野に入れて検討していきたいと考えます。この成果物は基本的に国に属することになっておりま
すので、何らかの格好でオープンにします。最終的に測定の仕事をやってくださるのは測定士の皆さ
んですので、その方々に情報が行きわたるようにやっていこうということは考えております。
○花井委員 よろしくお願いします。
○座長 わかりました。どちらにしろ、普及していただければありがたいかなと思います。
○圓藤委員 ニッケルと砒素のICP-MSの測定でヘリウムのコリジョンモードを使っているのですが、
ヘリウムのコリジョンを使わなくてはいけない理由があれば書かないと。もしくはノーガスでやって
おかないと。コリジョンがすべての機関の機器に付いているとは限らないので。コリジョンが最近は
付いていますが、まだ一般的ではないので、コリジョンを使ってやらなければいけないという理由を
書く、もしくはノーガスのデータと合わせる、それをしていただきたいと思います。
○棗田(中災防) わかりました。この原案を担当した委員に相談して、ここがないものはデータを
取ってほしいということで話をしたいと思います。
○圓藤委員 ノーガスだとどうなのか。何かぶつかりましたかね。コリジョンをやっても、生体試料
は難しいのですが。
○棗田(中災防) たぶん特別当たっていないのではないかと思います。単純に、新しい機械が入っ
ているとそのまま使うことが多いので、ここのところはあまり意識せずに、自分の会社の機械がそう
なので、そのままやられているのではないかと思うのです。
○圓藤委員 普通はノーガス、コリジョンのヘリウム、水素、3種一遍にするので、そこでヘリウムを
使っているというのは、たぶん何かあるとは思うのですが。
○棗田(中災防) そうですね。もし、これでなければいけないという理由があれば、それをきちん
と記載するということにしたいと思います。
○圓藤委員 お願いします。
○座長 30頁になると思いますが、グラスファイバーと固体捕集で2つで測定していますね。粒子系
のものがあるかもしれないのでグラスファイバーで捕集し、ガスは固体捕集で捕集していますよね。
グラスファイバーで捕集しきれないもの、あるいは、粒子からの脱着によるガスを捕集するので当然
こうなっているのだと思います。分析する時グラスファイバーと固体捕集を合わせて分析すると書い
てありません。それはどうなのでしょうか。この方法は、あくまでもガスで捕集されたものを脱着す
るというやり方は書いてあるのだけれど、大丈夫なのですか。
○棗田(中災防) 一緒にやっているのではなかったかと思います。
○座長 両方同じように。
○棗田(中災防) はい。
○座長 それでよければ別段大丈夫ですが。
○棗田(中災防) 剥離を確認してみます。たしか両方一遍に、全部脱着するということになってい
たはずなので。ただ、先生のご指摘どおり、XAD-7しか脱着していないように見えますので、確認して
おきます。
○原委員 分析法とは違うのですが、フェニルヒドラジンで、作業環境測定でしたらこれでいいと思
うのですが、個人サンプラーというのは考えられるのですか。
○棗田(中災防) NIOSH、OSHAともにインピンジャーを腰に付けてやるという手法があります。
○原委員 それは昔からですが。
○棗田(中災防) はい。いまだにやっていて、実際に販売もしています。
○座長 イギリスではヘルメットに付けるのですが。
○棗田(中災防) ただ、我々の間でも随分話題になりまして、本当に大丈夫かというのが、ちょっ
と怖いというところは確かにあると思います。場合によっては付けられない場合もあるのかなと思う
のですが、通常の作業であれば、腰なのでそんなに問題はないかなと思うのです。胸だと液が出てし
まうので、安定している所のほうがいいのです。それに、インピンジャーを2連結しないといけない場
合が多いのです。
○座長 ニッケルはこれだけありますが、ガイドブックに書くときは、3、4パターンあるときは書か
れたほうがいいのかなという気がしました。1つだけの方法に固定しなくてもいい。守備範囲を結構広
くしておかないといけないのかなという気がします。砒素も、中災防法と。メンブランとグラスファ
イバーで若干違う理由は何かあるのですか。
○圓藤委員 ブランクだと。
○座長 ブランクではメンブランのほうが低いでしょう。
○棗田(中災防) そうですね、通常はグラスファイバーのほうが高いです。
○座長 ただ、メンブランだからといって安心できないのは、微量になってくると、製造している工
場のコンタミンが結構メンブランに付着していて定量分析に影響を及ぼすことがあります。やはり1回
メンブランでも安心せずにきちんと洗浄してから使わないと、駄目なような気がします。大気中の金
属がメンブランに付着する可能性があるので、アスベストなんかはいいのですが、金属分析すると、
メンブランは意外とバックグラウンドが高いのです。
○圓藤委員 イオン化した粉じんみたいなのがくっついてしまうのですね。
○座長 はい。だから一応洗わないといけないと思うので、その辺のフォローが要るのです。
○圓藤委員 試薬についてのコメントは書くのでしょうね。ニッケルは試薬ブランクが高い。
○座長 そうです、ニッケルと砒素は結構高いから。
○圓藤委員 この回収率、ブランク差引きはしているのですか。
○棗田(中災防) 基本的にはしているはずです、確認はしないといけないのですが。私が直接担当
しているわけではないのです。通常で考えれば、やっているはずですが、再度確認して、そこの部分
も記載するような形にしたいと思います。
○座長 捕集効率からいくとメンブランがいいのだろうけれど、回収率を見るとメンブランが悪いの
はどうしてなのかというのがよく分からないのです。
○圓藤委員 剥がすときに何かあるのですかね、ベーパライズしてしまうとか。
○座長 いや、逆にないと思うのだけれど。
○圓藤委員 グラスファイバーのバックグラウンドが高いのですか。
○座長 それはありますね。でも、グラスファイバーもシリカだから大丈夫だと思いますが。GB100R
だから、シリカですよね。
○棗田(中災防) そうです。
○座長 普通のグラスファイバーだと駄目ですが、シリカを使っているので、たぶん大丈夫だと思い
ます。
 あとはよろしいですか。またお気づきの点がありましたら、事務局を通して聞いていただくという
形にしようと思いますが、よろしいでしょうか。確認事項等はありませんか。第1議題はここまでとし
ます。
○井上労働衛生専門官 事務局よりご連絡がございます。恐縮でございますが、公開とさせていただ
いております議事(1)はここまでとなっておりますので、傍聴の方におかれましては、ここでご退席を
お願いいたします。どうもお疲れさまでございました。


○井上労働衛生専門官 資料6「今後の予定」です。次回の検討会は3月31日(水)午後2時から、有
害性評価小検討会との合同開催です。場所は、経産省別館10階の会議室です。平成21年度リスク評価
対象物質のリスク評価についてを議事とする予定です。以上です。
○座長 ありがとうございました。次回は合同ということですので、よろしくお願いします。本日は
時間が過ぎてしまいまして、検討事項が少し残ってしまいましたが、ばく露小検討会を閉会します。
どうもお疲れさまでした。ありがとうございました。