10/03/04 第6回ナショナルミニマム研究会議事録 ナショナルミニマム研究会(第6回)議事録 1.日時  平成22年3月4日(木)17:00〜18:29 2.場所  厚生労働省 省議室(9階) 3.出席者  雨宮委員、貝塚委員、菊池委員、駒村委員、神野委員、竹下委員、橘木委員、湯浅委員、長妻 厚生労働大臣、細川厚生労働副大臣、長浜厚生労働副大臣、清水社会・援護局長、間杉政策統括 官(社会保障担当)、三石社会・援護局保護課長、伊奈川参事官(社会保障担当)、酒光参事官 (労働政策担当)、寺尾社会・援護局地域福祉課長 4.議事内容 ○伊奈川参事官 定刻になりましたので、ただいまから第6回のナショナルミニマム研究会を始 めさせていただきます。  今日はお忙しい中先生方にお集まりいただきまして大変ありがとうございます。  大臣でございますけれども、ちょっと今はまだ国会の関係で戻っておりませんので、とりあえ ず始めさせていただくということでよろしくお願いいたします。  本日の議事でございますけれども、雨宮委員と湯浅委員からご発表いただくということになっ ておりますので、まず順番としましては初めに雨宮委員、その後湯浅委員という順番で発表して いただいた後、質疑のほうは一括して行わさせていただくということで考えておりますので、よ ろしくお願いいたします。  それでは、早速でございますけれども、雨宮委員のほうから発表をお願いいたします。 ○雨宮委員 よろしくお願いします。  では、資料1の多様なナショナルミニマムというのと、資料1(参考[1])、資料1(参考[2]) というのが私の発表の原稿なんですけれども。  まず、実態の把握が必要だということで、いろいろな調査の提案とお願いをまずはしています。 それをまず読んでいくと。一口にナショナルミニマムといっても現在の「生」は多様だけれども、 長い間貧困問題に関心が向かなかったので、多様な実態を十分に把握できていないので、実態を 正確に把握することが重要だと思うので、以下の調査をお願いしますということで。  まず、1が失業・ホームレス、これ何度か広義のホームレス状態にある人の実態調査というの をここでも2回ほど提案してきたんですけれども、今のホームレスの調査は「都市公園、河川、 道路、駅舎その他施設を故なく起居の場所として日常生活を営んでいる者」のみが調査対象で、 その他施設というのは港湾とか公民館とかバスターミナルとかなんですね。今の調査ではホーム レス、路上生活をしている人の数自体は減少しているんですが、ホームレス状態にある人の数は 炊き出しなんかを見ても明らかに増加しているので、そういう人たちも含めた調査ですね。あと、 住む場所がなくてネットカフェの調査なんかやられていますけれども、ネットカフェ、サウナ、 カプセルホテル、個室ビデオ店とか、あるいはホームレスの人の自立支援センター、緊急一時保 護施設、宿所提供施設、無料低額宿泊所などにいる人も「広義のホームレス」としてカウントす べきではないか。あと、飯場とか派遣会社の寮とかで暮らしている人の中にも失業したら路上に 行く人が一定数いるので、これらの層も含めた調査の実施というのを提案とお願いをします。  この調査の実施に当たって、海外のホームレスの定義の調査もお願いしたいと思っています。 イギリスだったらホームレスの数3万人のうち実際は2,000人しか路上生活をしていないので、 あとの2万8,000人はどういう状態を指してホームレスとカウントされているのか。国によって は家がなくて友だちとか親戚の家にいる人もホームレスとして、状態としてのホームレスとして カウントされているので、そういう各国の定義みたいなものが調査できるといいと思います。  次ですけれども、2011年度にホームレス大規模調査の実施ですね。今の「ホームレスの自立の 支援等に関する特別措置法」は時限立法のため、2012年に期限が切れてしまうので、その前に大 規模調査をしてほしいと思っています。詳しい聞き取り調査もぜひしてほしくて。例えば私が取 材している限りは、養護施設出身の方がすごく多いなという印象を受けるので、そういう聞き取 り調査とか、あと養護施設出身の方はホームレスになりやすいというのは海外では結構常識とい うかみんな知っていて、そのことから特別な支援があったりするので、そういう聞き取り調査と 対策をしてほしいということですね。  次は行旅死亡人ですね。路上の病死、凍死、餓死とか、行き倒れというかホームレス状態にあ って亡くなった人の数の調査、あと路上から病院に運ばれて亡くなった人数の調査と公表を毎年 お願いしたいです。  次、住み込み就労している人の人数の調査ですね。失業したら路上に行ってしまう人が一定数 含まれているため、どれぐらいの人が労働型の住居に暮らしているのかというものも調査してほ しいです。  あと、生活保護の補足率、これは一番重要な問題で、いろいろな学者さんなんかが10%から 40%ぐらいとか出していますけれども、政府で調査をしていないのでどれぐらいの人が生活保護 を受ける状態にあるかということを、これは最重要課題として考えていただきたいと思っていま す。  次、雇用保険カバー率の調査。今ILOの調査では23%の人しか雇用保険を受けられていない 状態なので、これの調査です。  雇用保険の失業給付を受けている人のうち給付基準が生活保護水準以下の人数の調査もお願い したいです。これは生保基準に達しない失業給付を受けている人がどれぐらいいるのかという詳 しい数字を調べてほしいということと。  次、国民健康保険の保険料滞納によって無保険になっている大人の調査。これ子どもだと3万 人が資格証を発行されているという数字が出ていると思うんですけれども、大人の数、そして資 格証を発行されていない大人の数というのは数字が出ていないと思うので、この調査も必要だと 思います。  次、失業した人で国民健康保険に加入していない人の数の調査。これは国保に自動的に替わら ないので、そのまま無保険になっている人の数の調査です。  次、2が女性ですね。まず、全ての人を対象とした統計はジェンダー統計とすることをお願い したいです。  あと、フリーターの定義に既婚女性を含め統計をとってほしいということですね。今学生と主 婦は除かれているという状況です。  次、派遣労働者の詳細にいたるまでの男女別統計。  次、パートタイム労働者、アルバイト等の労働に関する男女別統計。  次のページにいきます。有期雇用労働者の男女別統計ですね。  そのほか、労働統計に性別を入れること。  あと、真の育児休業取得率の調査。これは分母に出産・育児をきっかけにした退職者も含めて の育児休業取得率の調査をしてほしい。  次が、非正規公務員の待遇別男女別統計。  次が、ひとり親ですけれども。ひとり親家庭の貧困率の男女別(母子家庭・父子家庭別の)数 字。  次が、ひとり親家庭の子どもの進学希望、進学希望に関する調査。これ98年以来は母子家庭等 調査で廃止されています。  次、ひとり親家庭の数を同居母子世帯、親との同居をしている母子世帯ですね、を含めたもの を確定して発表すること。これも2006年からやめているそうです。  次、ひとり親家庭になった理由別のひとり親家庭の年収、就労率等のクロス集計を公表するこ と。  その次、4が障害者ですけれども。障害者の統計を男女別にし、障害女性の収入、貧困率の測 定の調査要求です。  次は無年金の問題なんですけれども、今60歳から65で無年金者、年齢別・男女別の人数の調査 と、女子の場合は脱退手当金の受給で無資格の人の数の調査。そのうち自分の分は無資格でも夫 の死亡により遺族年金は受給している数の調査。  ねんきん特別便が未着の数の調査。平成9年データベースに住所を入れたとき、既に無年金者 である人は住所がないのでどうなっているのか。  次のページが、無年金者と確定した人の納付金は総計幾らで、未納した人の掛け金はどう使わ れるのかということも調べてほしいということです。  次、6、セクシャルマイノリティ。全国的な実態調査と、各種調査に可能な限り性自認・性志 向の属性を立てて統計をとること。  7が、外国人ですね。労働力調査、賃金構造基本統計調査に「国籍」別集計を加える。  国民生活基礎調査に「国籍」別。  日本人を対象とした「全国母子世帯等調査」に加えて、「外国籍母子世帯実態調査」を行う。  文科省に対する外国人生徒の進学率の国籍別統計の算出。  外国人学校を含めて、学卒者のその他の就労実態の調査。  ここまでが調査の提案と要求なんですけれども。  それ以外の提案・要求として、公的シェルターを増やすということですね、ホームレス状態に いる人のための。これに当たって、アメリカとかヨーロッパの公的シェルターの数がどれぐらい あるかの調査をお願いしたいのと。民間のシェルターに国が補助してどれぐらいの金額を補助し ているのかを調べてほしいです。  あと、雇用保険とか生活保護の補足率に関して「目標値」の設定ですね。  次、生活保護の申請に当たり、「世帯」が壁とならないようにする。出稼ぎの人のケースなん ですけれども、世帯単位、生活保護の考え方が世帯単位なので、保護義務が出稼ぎ元にあるから、 例えば東京で一文無しになっても生活保護を受給できないというそういう制度の壁があるので、 この辺りを、ケースによっては個人単位の対応をしてほしいということなんですけれども。  ここまでで、次資料(参考[2])というのが「在日外国人と貧困―現状と提言」というものなん ですけれども。これはさっきの7の外国人の貧困の問題に関して、派遣切りによって日系南米人 の4割の人が現在推定失業率があるだとか、約9割の人が非正規雇用だとか、そういう実態が詳 しくここで書いてあります。  あと、外国籍のシングルマザーの問題とか、進学格差という問題がここに書いてあるので。  1ページの雇用・失業対策で、厚労省は雇用企業調査を除き、国籍と雇用に関わる統計を整備 していないが、出稼ぎが始まってから20年たった現在も日系南米人の約9割は非正規雇用で、派 遣切りの影響を集中的に受け、現在の推定失業率は約4割、日本人との失業率格差、OECD中 最大と思われるということで。  3ページ目に表1というのがあって、経済危機以降に行われた日系南米人調査での失業率とい うのがあるんですけれども、ここで失業率がやはり40%台なんですね、全て。こういう問題と。  あと、その次のページがフィリピン人母子世帯と生活保護の問題もあります。日本人に比べて 外国籍のシングルマザーはより困難な状況にあるということですね。  あと、その次の5ページ、DVを理由として婦人相談所に保護された女性の割合は、図3を見 ても分かるように、外国籍女性のほうが何倍にも、5倍ぐらいとかになっている状況です。  では次に、黄色い資料1の参考[1]の説明もしたいんですけれども。これは日本版貧困削減目標 で、今反貧困ネットワークとか国際NGOの人たちでつくっているんですね。国連のミレニアム 開発目標が2015年までに世界の貧困を半減するとうたっていることに倣って、その日本版を作成 している最中で、まだ作成途中で現在進行形なので検討中のところとかもあるんですけれども。 ちょっと説明させていただくと。大目標として貧困の解消ですね。相対的貧困率の削減。一番右 上にあるのは貧困格差の補助が社会的損失につながることを明らかにし、日本のナショナルミニ マムを設定、抜本対策を立て、予算を重点的に投下するという、これが大目標の手法となってい ます。  目標1がディーセントワークの確保。次のページの目標2が社会保障制度への普遍的アクセス の保障。目標3が、居住環境の充実、3ページ目ですね。目標4、教育の充実とアクセス拡大。 次の5ページ目、目標5がジェンダー・セクシュアリティの平等推進と女性の地位向上。目標6、 妊娠・出産・子育てにおける貧困の解消。目標7が、自殺の減少。次のページ、7ページ目、目 標8が多重債務の解消。9が差別や社会的排除の解消。10が貧困解消のための社会的連帯の推進、 という感じで。  第1目標としては2012年3月、例えば大目標だと相対的貧困率を2007年比30%削減する。すみ ません。今1ページ目の一番上です。第2目標、相対的貧困率を2007年比で50%削減する。現状 というか2007年の数字が15.7%の貧困率ですね。  その次はひとり親家庭の貧困率を2007年比30%削減。2015年にはひとり親家庭の貧困率を2007 年比50%削減。現状が54.3%。  次の目標1のディーセントワークだと最低賃金を2009年比20%の上昇。第2目標が2009年比 45%まで上昇。現状は平均で713円、地域格差が162円と。  こういう形でいろいろな労働とか社会保障、年金の問題だとか、あと低所得者の住宅の問題、 教育の問題といったことに関して、一つ一つ貧困削減目標というものを立てていますので、さっ きの最初のほうに言った雇用保険や生活保護の補足率に関して目標値を設定するというのはこう いう手法をこっちでは考えていますよというのの参考として出させていただきました。  時間もないので、この辺で私の発表は終わりたいと思います。 ○伊奈川参事官 ありがとうございました。  先ほど大臣到着いたしましたので、恐縮でございます、湯浅委員の発表の前に大臣のほうから お言葉をいただければと思います。お願いいたします。 ○長妻厚生労働大臣 どうも皆様、こんばんは。ちょうど5時でございますので。ちょっと遅れ ましたのは、ちょうど今まで参議院の予算委員会が開かれておりまして、基本的質疑というのは 全閣僚が一堂に会する質疑ということで、昨日、今日の2日間ございました。やはり社会保障に 関する関心が高く、与野党議員から社会保障の質問が出まして、私も第2のセーフティネットあ るいはポジティブウェルフェアのような考え方を申し上げてきたところであります。  ナショナルミニマム研究会も第6回目ということで、本当に連日皆様方この会に出ていただく、 あるいはその以前の準備も含めて、本当にありがたく、私もこの会に出られないときは皆様方の 議事録も拝読をさせていただいて、大変参考になっているところであります。  今もこの意欲的な資料1の[1]では具体的な数値目標ということで非常に示唆に富む形をいただ いているところでありまして、私の考え方というのは、抽象的な議論、哲学というのが背景にあ るというのが大前提で、その後に具体的な数字、具体的な基準というのがきちっとあるというの が一つの理想であるというふうに考えておりますので、ぜひ皆様方のお知恵をいただいて、ナシ ョナルミニマムの具体化、具現化ということにこれからも取り組めればありがたいというふうに 考えているところであります。  今後ともよろしくお願いをいたします。 ○伊奈川参事官 大臣、ありがとうございました。  引き続きまして、湯浅委員のほうからの発表ということで、その後、先ほど申しましたように 一括して質疑ということにさせていただきたいと思います。湯浅委員、お願いいたします。 ○湯浅委員 よろしくお願いします。  私の発表は資料2で、ナショナルミニマムの“条件”というタイトルにしましたけれども、地 方分権とナショナルミニマムの問題を少し考えてみたいということです。  これについては、以前ちょっと議論の中で触れたところ、岩田さんのほうからまだちょっとそ の議論は早いんじゃないかというお話がありましたし、もともとこの研究会には神野さんがいら っしゃるので私がこの分野で話をするのは非常に恐縮ですけれども。でも、やはり今ナショナル ミニマムというのをあえて考えようとするときには、その地方分権の問題とかを抜きには考えら れないんじゃないかと思っていて。それで、いろいろご意見をいただければと思って、本当につ たないものですが、考える素材として聞いていただければというふうに思っています。  資料のほうはお手元に渡ってはいるんですけれども、一応アニメーション設定とかをしていま すので、もしあれだったらこっちを見ていただくと分かるかなと思うんですけれども。国という のがある中で、この間国の機能というのが、例えば小泉政権時代とかそういうのは市場に解放し ていくと、規制緩和だということで国の機能をどんどん市場に譲っていったという経緯があり、 そういう中で分権の議論もつい最近までは国の権限もどんどん地方に譲っていくんだという文脈 で行われてきたと思います。そうやってどんどん国の機能が減っていくという流れをたどってき たんだと思うんですけれども。  この分断というのは当事者の側からいうと、国にいるのは国民であり、市場にいるのは消費者 であり、労働者ということもありますが、地方にいるのは住民だということになると、基本的に 当時規制緩和などがかなり大きく叫ばれていたころは、やはり国民としての幸福よりも消費者と しての幸福のほうが大きいんだと、あるいは地方分権というようなことが言われていたときはや はり住民としての幸福のほうが大きいんだというような話がずっと出てきていたのではないかと 思っています。  そういう中で私常々気になっているのは、この地方分権なりの議論がナショナルミニマムの上 に地方分権が加わるような形になるのか、あるいはそのナショナルミニマムと地方分権というの が対立的な話になるのか、そういうところがどう落ち着いていくのかというのが気になっていま す。  保育の施設最低基準などいろいろ議論が出ていたところですけれども、基準の最低基準に関し て言うと、選択肢は三つあると、これはある方から教えていただいたんですが。要するに基準を 引き上げるか、基準を維持するか、基準を引き下げるかだと。基準引き上げるなり基準を維持す るというのは、これは別に保育の最低基準を外さなくてもできる、つまり現行で可能。保育で外 すことで唯一新たに可能になることは基準の引き下げだというようなお話も伺ったことがありま す。  でも、問題はこの先にあるんだろうと思っていて、にも関わらず地方分権が希求されるのかと いうようなところではないかと思っています。地方分権の話ではいろいろ言われているところを ちょっと聞きますと、住民により近い地方自治体のほうが住民のニーズをきめ細かく把握してい る、きめ細かなサービスができるという話とか。不要不急の規制が多すぎる。国が要するに余計 なところまで口を出し手を出している。あるいは、規制は結局既得権益の保持のための方便なん だという言い方ですね。三位一体改革のときなどは責任だけ押し付けられて結局財源はついてこ なかったじゃないかというような議論。そういうのが繰り返しあって。そういう中での地方分権 ということだと思うんですけれども。  私、でも根底にあるのは、やはり国は信頼できないということなんじゃないかというふうに感 じています。いろいろな理由はあるけれども、やはり中央政府、地方分権とか文脈では中央政府、 地方政府と言われますが、そういう文脈の中でやはり信頼できないという話が根底にあって、そ れの不信感の裏返しとしてどんどん切り分けていっちゃえばいいじゃないか、こういう理屈は規 制緩和のときにもある程度言われていた論理なんだと思うんですね。  こういう議論に対して、また他方の側からは、じゃあ、国よりも地方がましだという根拠はあ るのかと、地方自治体のほうがもっと縦割りで、もっと融通が効かなくて、地方のボスみたいな 人がドンと座っていて、という話は他方である。偏見が強いとかですね。必要な規制とかナショ ナルミニマムと不必要な規制は選り分けるべきで、何でもかんでも外せばいいというもんじゃな いというような反論もある。一定の規制は国民サービスを守るために必要なんだという議論もあ る。国にだってお金はないんだという反論の仕方もある。いろいろあるんですけれども。  やはりさっきの真ん中の不信感が根底にあるんだとすると、私は国というのは人々の命と生活 を守るために必要なんだということをどれだけ訴えられるかで地方分権がナショナルミニマム込 みのものになるのか抜きのものになるのかというのが分かれるんじゃないかというふうに思って います。  そのときに、どうせ国民は理解できないから痛い目に遭わないと分からないんだよと、いろい ろ状況が厳しくなって、やはりこれじゃ駄目だというふうにならないと分からないんだよという ふうに言っているようでは、やはりその不信感というのは維持し続く。いい方向にいかないんじ ゃないかと思っています。  では、そういうふうにその信頼を得るに足ることをしてきたか、ナショナルミニマムの維持向 上に努めてきたかというふうに考えてみると、やはりこの間十分だったとは言えないのではない かというふうに思っていて。去年の10月にようやく発表していただきましたが、貧困率ずっと出 さなかった、あるいは捕捉率は今でも出ていないというような問題はあるわけです。  原口総務大臣なんかよくおっしゃっていますが、最低基準を外すな外すなというけれども、最 低基準一人当たり3.3平米60年間放っておいたのはだれなんだというようなことを言う意見もあ って、それは一つ理があるわけですね。  また、そういうところからこぼれちゃう人に対して積極的に呼びかけずに、だったら来ればい いじゃないかと、来ないほうが悪いんだというような理屈で自己正当化してきたこともありまし た。  実態をなかなか把握しようとしてくれない、苦しい当事者の声を聞いてくれない、そういうこ との結果の中で「すべり台社会」化に責任が一定あるんだろうとやはり私は思っていて。  そういう中でこういうことがそのまま放置されてしまうと、ナショナルミニマムの議論をして も結局こういう話というのはどうせ箸の上げ下げまで指示して自分たちの権益を守りたいから言 ってるだけなんだよみたいに非常に斜めからしかとらえてもらえなくて、真正面から考えてもら えない、いろいろな議論の蓄積があっても、それがきちんと現実に生きないということがあるん じゃないかということを危惧しています。  実際に私が関わったこの間のワンストップサービスとかそういうのの分野でいうと、ワンスト ップサービスデイというのは2度やって、11月30日と12月21日に行ったわけですが。1回目のと きに広報に課題があるということでいろいろお願いしたんですが、2回目のときに改善されない ところがあって。その上と下で色分けしましたけれども。その広報の仕方あるいは周知の仕方に 改善が見られたところは利用者も増えていて、改善が見られなかったところは利用者が減ってい るというようなことがありました。これは後日担当の方から住宅手当や総合支援資金貸付の連絡 票が増えたので来所者数が減ったんだというふうに説明も受けたんですけれども。  実際、じゃあその後の連絡票の発行件数とか見てみると、これ若干数が一部間違っていて、一 番下の梅田の左から2番目、75、42となっている42は実際には17で、新宿の一番右の193という のは191なんですけれども。やはり12月21日とかで伸びているところ、増えているようなところ は連絡票の発行件数も全体として多い。そして、12月21日に減っているようなところは連絡票の 発行件数も少ないというような数になっているようです。  じゃあ、ハローワーク梅田、大阪にはそういうニーズがないのかといえば、今大阪市は生活保 護の急増で大騒ぎになっているわけで、現実にそこで手前で止まるべき人というのはいないとい うことはない。だけれども、そこがきちんと伝わっていない、広がっていない、伝えられていな いというところがあるんじゃないか。  右下に出したのは、足立区の広報誌ですけれども。足立区はその点非常に一所懸命やられてい て、一緒に内閣府の参与をやっていた清水さんという方なんかもコミットしてやっているわけで すが。この間来所者、あそこは11月30日から21日の間にもずっとワンストップサービスやってま したので、来所した方なども入れたらものすごい数が増えているんですね。増えているというの は要するにそれだけの人が生活再建の足がかりをつくって次の生活に踏み出したということであ って、それができてないところはやはり少ないわけです。少ないということはつまり漏れ続けて いるということです。  これについてある人がうまいことを言ってましたけれども、頼んでくれれば餃子はあるんだ、 頼めばいいじゃないかと、頼まないヤツが悪いんだといって店主がメニューに餃子を載せないお 店があったらどう思いますかと。来ればいいんだと、必要があったら来りゃいいじゃないか、来 ないヤツが悪いんだというふうに言って、結果的に人々が漏れるのをそのままにしておくという のは、これは形だけ福祉と言うんですよと。これは実は山井さんなんですけれども、そういうふ うにおっしゃっていました。  やはりそういうところで人々の生活を支えるということがどれだけ丁寧にできるかというのが 国への信頼の回復とかそういうものに結びついていくんだろうと思うんですね。  これはついこの間日経新聞に出た第2のセーフティネットの利用者数ですが。全体で7.7%と いうことで、ものによっては2年分のあるいは3年分のお金を積んでいる、その全体の想定利用 者数ですから、今の段階で7.7%というのは、始まってまだ数カ月ですので今後の伸びを考えれ ば必ずしも少なすぎるということは今の段階で言うのは早計かもしれませんけれども。でもやは り当初予定されていたよりも少ない利用だというのは間違いないと思うんですね。  大臣も所信表明演説でおっしゃっていましたけれども、先ほどのポジティブウェルフェアです ね、やはり社会保障が機会の平等を後押しして、多くの人がチャレンジできる環境を整備すれば、 広く国民全体の能力を生かすことができると。つまり、福祉的なサポート、セーフティネットの 整備でそこで多くの人の能力が引き出されていけば、それによって社会的な成長もあるし、そう いう話。でも、そこが効いてなければ多くの人は漏れ続けるので、つまりマイナスがさらに大き なマイナスを呼び込むということになるわけです。  私は現場でたくさん、5年も10年も放置される中で、本当に働けなくなってしまった人をたく さん見てきました。精神的に病んでしまっている人も見てきました。その人たちはもう本当に一 生働けません。そういう状態になるまで放っておくのか、それとももっと手前で支えられるのか。  神野さんも出てらっしゃる原口大臣の地域主権改革宣言というのを読んでおったら、埼玉県の 平均以下、平均以上、それから全国平均の平均以上ということが分かるよう図表にして、ご丁寧 に毎年矢印もつけて上がっているのか下がっているのか出すんだと、これをやるだけですごくよ くなるんですとおっしゃっていて、これは税金の徴収の話だったんですけれども。私二つの発言 から思うのは、やはり国が国民の側に立って地方自治体を競わせるぐらいのスタンスと能力が必 要なんじゃないかということです。そういう中で全体のレベルアップを図っていくというふうな そういう機能を国はもっと強化する必要があるんじゃないかと思っています。  そういう全体の中で、地方分権、地域主権時代のナショナルミニマムの条件ということで思う ところを言うと。やはり実態把握や調査能力を高めるということがとにかく必要なんじゃないか と思っています。以前この会議でも少し議論になりましたけれども、貧困率全国平均が15.7と出 ているわけですが。だけれども、都道府県レベルの貧困率というのは出ていないわけですね。そ れは総務省の統計局からもご指摘があるんだとおっしゃっていましたけれども、でもそれをやる ためにはやはり大規模調査が必要なので、それは何年か後になってしまうし、予算もなかなかな いんだというようなお話がありましたが。  やはりそういうことで、例えばある地域がある地域に対してとても貧困率が高いというような ことであれば、その地域の全体としててこ入れしていく必要があるんじゃないかとか、あるいは 何か問題があるのかもしれないとか、いろいろそういうものの材料として使える。だけれども、 その都道府県別というのは出なければその議論はそもそもやりようがないわけですよね。  分析能力を高めるというのも同じで、いろいろ細かいことから大きなことまでいろいろなこと があると思うんですけれども、やはり国というのは全国を見ているわけなので、その全国の様々 な実態というのを把握して、それがどういうふうになっているのかというのの分析能力というの が問われていく。それをきちんと情報公開をするということ。つまり、悪く言えば競わせるとい うことですね、そういうことが必要だし。  やはり国民・住民の立場から自治体を競わせ、底上げを図って、「標準」と言われるようなレ ベルを上げていく。そのために国はこれだけの役割を果たしているんだということを示す必要が、 また示せないといけないのではないかと思っています。  特に気になっているのは、やはりそういう中で埋もれがちな少数者の立場や意見というのをき ちんとくみ上げるということですね。例えば弱い立場に置かれている人たちというのはやはりな かなか発言することが困難です。障害者にしろ、私たちのような分野にしろ、全国で集まって何 とか何千人とか1万人という数になるわけですけれども。やはり都道府県単位ではそれがさらに 少なくて、そういう中でものを言える人というのは必ずしも多くない。そうすると、国で見るよ りもさらにさらに地方単位にばらしてしまうと、そうした少数者の意見というのは声をどんどん 上げづらくなっていきますから、やはり埋もれてしまうんですね。それは、ホームレスとかそう いう分野でいえばもうなおさらです。そういうときに、じゃあその意見を埋もれないように全国 レベルでこの問題は大事なんだということを言っていくと、これも国の重要な役割なのではない かというふうに思っています。  そういう中で、先ほどの話につなげて言えば、具体的なところでは、ワンストップサービス、 利用者の評判よかったわけです。7割から8割の方がよかったと言っていて。だけれども、残念 ながら自治体やハローワークの評判は悪かった。そういう貧困・困窮者支援としてのワンストッ プサービスというのは、今後各労働局単位設置の就労支援協議会の意向に委ねられました。それ で結局事実上とまってしまうのか、そこからより発展的に展開していくのか。それに対して労働 局とかハローワークというのはどういうイニシアティブを発揮するのか。各都道府県単位で決め たからじゃあもうそれでしょうがないですよねといってやらないというのは結局やらないままに するのか。就労生活支援アドバイザーというのはどれだけ機能するのか、どれぐらいの人が生活 再建に結びついていくのか、そういう中で国はどう働きかけるのか、やはり私はとても気になっ ているんですね。  就職生活支援アドバイザーについてはもう既に採用の内定の出ている方たちが出始めています けれども、採用の担当の方にどうせ人は来ませんからと言われて内定をもらった人からお怒りの メールが私のところに来ていました。そんなやる気あるのかというような話がやはり出てしまう と、結果的に何も動かなかったという話になるのかと。それでは今国が人々の生活を支えるとい うことが現実のものとして動きだすということがなければ、やはり国に対する不信感というのは 払拭されない、そこを不都合なことを余り表に出さないようにして覆って覆っていくのか、それ ともそういうことも含めて表に出して、だからこそ社会全体とか国が中心になって頑張っていき ますというふうに言い切れるのか、やはりそこはナショナルミニマムの内容も重要ながら、そう したそれに対する信頼ですよね、これをみんなで守っていこうという、そういう雰囲気づくりと いうか、そういうのをつくるためにとても重要なことなのではないかと思っています。  なので、私はそれで何かよくなかったということが言いたいのではなくて、やはりこういうこ とを含めて、じゃあどうしたらもっとよくできるのかということを、厚労省はもちろんですけれ ども、国全体を挙げて具体的なところで前向きにやっていっていただくことを望んでいます。  以上です。 ○伊奈川参事官 どうも、お二人の委員から貴重なご意見含めまして、ありがとうございました。  とりあえずいろいろと発表の内容についてご質問等もあるかと思いますので、質疑に移りたい と思いますけれども、どなたからでも結構ですのでお願いいたします。 ○長妻厚生労働大臣 どうもありがとうございます。大変貴重なご意見をいただきまして、ご意 見を質問という形でいただきたいんですけれども。  湯浅さんがずっと縷々言っておられたことというのは私もかなり同感する部分が多いんですけ れども。結局今私もこの立場になって非常に痛感していますのは、厚生労働行政を変える、よく していくというのはかなりの部分この組織をよくするというか、厚生労働省の役所文化を変える ということイコール厚生労働行政にもちろん言うまでもなく直結するということで。非常に私も 問題意識を持っていますのは、その組織の在り方ということ、そして人事評価基準ということ、 どういうインセンティブで公務員が働くべきかということ、これをきちっとやはり背景に考え方 を持って変えるということが、それは厚生労働行政の変化に直結するというふうに非常に最近そ ういうことを強く思っております。  よく考えると、例えば私が自分の経験で言いますと、かつてNECという企業でコンピュータ の営業マンをしていたと。一所懸命働くわけですけれども、何で働くのか、それは皆さんに喜ん でほしいと、いいコンピュータシステムを入れてというのも一つありますが、やはり支店ごとに 売上のノルマというのは当然どの企業でもやはり課せられておりまして、それを達成できないと 支店長ははっきり言えば飛ばされてしまうということで。支店長あるいは支店自体がお取りつぶ しになるということもこれはよくあるわけでありまして。そういう意味では必死にそういう目標 に向かって努力をしていくということもある。  当然数字だけではありませんで、仕事の意義を日々支店長なりが部下に言い聞かせて、こうい う意味がある仕事だから一所懸命やると、こういうことになったわけです。で、私のいる職場で、 売上のある意味では目標が設定されているわけですけれども、そうするとこういうことが起こっ たわけですね。本社から売上の目標だと値引きを結構するということが起こって、売上はノルマ は達成したけれども、値引きをして利益が出ないと、利益が非常に少ないということになって、 それで会社全社的に利益の目標で設定をしていこうと、売上だけじゃなくて。そうするとやはり 営業マンの社員の行動マインドも変わって、何でも売るんじゃなくて、一定の利益を確保して値 引きをしないで売りましょうと、これは行動原理が変わるわけです。  何でこういうことを長々と言うかというと、例えばハローワークでありますけれども、まさに 湯浅さんが指摘された点私も同感なのは、つまり公務員の皆さんにとって、別に皆さんのことを 悪く言うわけではありませんけれども、やはり自分たちがお給料を税金でもらって世の中の皆さ んに喜ばれようと、役に立ちたいと、こういう思いでもちろん仕事をされておりますけれども、 人間というのは弱いもんですから、それだけで全て仕事するわけではないと思いまして。  もう一つは、やはり、仮にいい政策をしてお客さんがいっぱい来ちゃうとそれは忙しくなるわ けでありまして。あるいはお客さんが来ようが来まいが自分の給料は変わらないということが、 あるいは自分の身分も完全に保証されている。ある意味ではマンガなんですね。ハローワークで 仕事をして職を提供する、情報提供する人は絶対安全地帯で絶対に首にならない安全地帯にいる。 しかし、職を探して来る人は非常に不安定な立場になる。つまり、絶対安全地帯で一生職が保証 されている方が不安定な方のお世話をするというところについて、じゃあその職を保証する公務 員、安定的な身分でないと公益が保てないということもあるのはそのとおりでありますけれども、 多くの人が余り宣伝をしないで来なくて来ても全く給料も変わらずに自分の地位も変わらないと いうことであるとすると、それは皆さんに喜ばれようということで仕事をされておられると思い ますけれども、それが本当にそういう状況が長く続いていくと、創意工夫をして少しでもお客さ んを呼び寄せていい処遇をして手当てをしていこうというマインドがどこまで保てるのかという ことがありましょうから。  ですから、私も性悪説に立つばかりではありませんけれども、もちろん理念や仕事の意義とい うのは重要でありますが、そのときに例えば全体の社会保障政策を担う公務員の在り方として、 一定の政策目標を立てて、そのサービスに達成するようなお客さんを呼び込むということについ て、これもノルマというのもよくないですな、社会保険庁がノルマ達成するために分母対策とか 何とか、そこもでもノルマ自体を否定するということにあれはつながりましたけれども、そこも 一概に○か×かではないんですが。  何らかのインセンティブというか、職員がそういう一定の数値の目標なり政策目標を達成すれ ばきちっと評価をされる。それが達成できなければ残念ながら降格がなされたり、あるいは何ら かのそういう形になったりするというようなことというのはどういうふうに考えればいいのかと。 それが適切に働くと、それは言われなくても、一々私ががみがみ言ったり外部の有識者の方にチ ェックをしていただかなくても、役所文化が変わって、自動的にだれにも言われなくても政策目 標と達成数値が提示すれば、適切に創意工夫をしてそれが物事が運んでいくというのが理想であ りまして。  一々一つ一つ、今回のワンストップサービスも、私も拝見していると、ビラのつくり方からホ ームページのつくり方から一つ一つ、ある意味では私も初めはチェックしてまして、課長みたい な仕事をずっとしているわけでありまして、そんなことしていたらきりがないので、膨大な役所 の中でありますので。それが本当に皆さんの創意工夫で自発的に動けるようなそういう組織や評 価基準や人事の体系、組織の在り方というのも非常に重要だと思っておりますので。  仮に、これ私も国会議員ですけれども、選挙がなくて国会議員の身分が永久に保証されている とすれば、恐らく、私は別に選挙目当てでやっているわけじゃありませんけれども、地元で自分 の国政の報告をする報告会というのも当然回数はどんどん減っていくでしょう。やはり選挙があ るということで、それだけではありませんけれども、地元に自分の成果を報告したり、あるいは いい仕事をしようというのもやはり選挙で洗礼を受けるというのももちろん意識の中にあって、 それでそういうある一定のモラルが保たれるということも、人間弱いもんでありますからそうい うことはあるので。  そういう皆様からどういうふうに考えればいいのか、社会保障でノルマを課してそれで給料を 上げるとか、降格するとか人事評価を上げるとか、それは余りにも一面的ではありましょうけれ ども、全くそれがなくて、仕事があってもなくても、宣伝をしてもしなくても同じお給料で全く 地位が変わらないと、こういう体制であると、今指摘したような問題も起こってくるのではない かということで。それについてちょっとご意見をいただければ。 ○湯浅委員 私も分からないんですけれども、一つ、おっしゃられているポジティブウェルフェ アというのが社会保障を負担として見るんじゃなくて将来的な投資として見るんだということで あれば、やはりもっと積極的なものとして位置づけるようにしていけないものかと思っているん ですね。というのは、今までその手の数値目標というのは、例えばそれこそ経済成長とか、ある いは税金の徴収率とかそういうことであれば、つまり入ってくるほうのお金だったらあらゆる数 値目標が立てられるし。  また逆に、社会保障についてはよく出てくるのは、減らすための数値目標というのは今までも ありましたけれども、でもそれは将来の投資だというふうに位置づけるということは本当のこと をいうと、それがもっと増えたほうがいいという話になるはずなんですよね。だとすれば、そう いうものについての数値目標というのが立ってもいいはずで。例えば貧困率が減るというの自体 も数値目標だし、生活保護の捕捉率が上がるということも数値目標だし、こういう第2のセーフ ティネットの利用者数が増えていくというのも数値目標だし。そういうところでそれが一つゴー ルとして入ってくるだけじゃなくて出て行くお金もいずれ戻ってくるという発想に立つならば、 そういったものになじむのではないかということが一つと。  あと、これは会計とかそういうものの出し方自体がそうですけれども、そういうお金っていつ も出ていくように図になっていて、これは出ていったらいかにも返ってこないお金のような表記 の仕方をされるんですけれども。やはりそのお金というのは例えば単年度では出ていくけれども、 何年かの後に返ってくるということであれば、そういうトレンドでそうした社会保障の投資の効 果みたいなのを見るような指標というのがあってもいいんじゃないか。そういうふうなところで 一つ一つの役所の文章をつくったり報告したりするというその一つ一つにそういう社会保障の投 資としての性格みたいなのを具体的に反映していく方法というのがきっとあるんじゃないかと思 っていて。そこをきちんと示せると、本当の意味でそれが単に言っているだけではなくて具体的 に返ってくるのが見えるようになる。そこが出てくると多くの、私なんか本当にそう思うんです けれども、セーフティネットがきちんと張られていない中で失われてきた経済的な損失というの はものすごい数になっていると思っていて、そこが張られることによる将来的なそれは安心感と いうようなものも大きいけれども、本当に将来的なコスト的に見てもそれがどんどん安く進むよ うになるということをやはりいろいろな場面で示していけると。例えばそうしたところで具体的 に呼びかけてそこで対応するということ。個々の現場の職員さんたちはそういうことをやってお られるわけなので、それの意味みたいなのももっと強く実感できるんじゃないかというふうに思 って。  役所文化を変えるということというのは、例えばそうした一つ一つのことにポジティブウェル フェアの理念を落としていくということなのかなと思ったりします。 ○伊奈川参事官 雨宮委員、何か。 ○雨宮委員 現場の話でいうと、ノルマとか、例えば生活保護の現場とかだと、2年前の2倍と かに新宿とかはなっているんですけれども、職員が一人しか増えていないとかで、かなりオーバ ーワークになっていることもあるので、すごく過労な現場の人がなかなかノルマとかをすると大 変なのかなと思ったり。まず人を増やす、すごく生活困窮している人が増えているのに対応する 人が全く増えていないという問題があるので、それが一つ重要なことかなと思いました。 ○伊奈川参事官 駒村先生、お願いします。 ○駒村委員 お二人のご報告お聞きして非常に納得する部分が多くて、例えば湯浅さんのお話の ところでも、ナショナルミニマムの保育所の面積3.3をずっと、それが積極的にどういう意味が あるのかも検証しないで放置しておいて、今ごろそれを下げるのは何事かという話をしていると いうのはそのとおりだと思っております。  厚労省の政策全般、これは福祉の性格もそうなんですけれども、成果を測定することが全然行 われていなくて、どちらかというとインプットだけを見て、アウトプットをどう評価するかとい う測定、政策効果の制度政策の測定技術というのが全然発達していないのではないかと思うんで すね。  例えば福祉サービスというのはなかなか測定しにくいと、質だとよく言われるわけですよね、 保育にしろ介護にしろ質を高めるんだと、現場の方も厚生労働省の方も言うんですけれども、じ ゃあ質って何ですかというと、これは質はだれも定義しようがないと。そうこうしているうちに 市場規制緩和を進める方は、消費者満足度が質を指しているんだという話になってきて、サービ ス業としての福祉みたいな話になってきてしまうと。しかし、本当にその消費者満足度みたいな ものがアウトプットと、質として考えていいのかというと、それは分からない。もしかしたら間 違っている可能性もあるわけですね。  そういう意味では、福祉の分野についてもアウトプットの測定、質とは何なのかということを ちゃんと検証する努力をしてこなくて、結局インプットコントロールだけ、何をどれだけ投入し たのか、そこにギチギチの会計基準や規制を組み込んで、インプットだけコントロールしてきた というのが状況じゃないかと思うんですね。  その結果この規制が強すぎるとか分権化しろとかいうことから、際限なく掘り崩されていると。 どこがコアの規制であって、ナショナルミニマムを守るための規制であって、どこがそうじゃな い規制なのかというのが分からないと。結局その規制が部分的には特定団体の参入障壁になって 利害を確かに生んでいる可能性もあるんだと。それがどこがその本質的な部分なのかと、必要な 規制であって、その規制を緩めるとアウトプットにどう反映しちゃうのかということを測定して こなかったと。  同様に、どういう政策を打てば例えば貧困率とか社会参加自立がどのぐらい進むのかという、 政策制度投入とパフォーマンスの間の関係も、これは厚労政策全体にアウトプットの測定という ことを非常に軽視してきて、ここもチラシをすればいいんだとか、人員をつければいいんだとか、 制度をつければいいんだとか、予算を投入すればいいんだとか、そのインプットの量だけであた かもやったような気になっていると。だから、アウトプットをどう、政策効果をどう測定するの かと。それを測定方法を誤るとまた大変なことになってしまいますので、そこは非常に工夫しな ければいけないんですけれども、厚労政策の様々な制度政策のアウトプットをどう評価するかと いう測定、実態把握ですね、そこも実態把握なんですけれども、というのをとってきたのかなと 思います。  またもう一つ、湯浅さんのお話、お二人のお話に少し私も大臣の両立というような話もそうな んですけれども。例えばこういう研究もあるわけですね。アメリカとフィンランドでは子どもの 学力のばらつきが全然違うと。どっちに、アメリカの子どもたちの下位層は、もしフィンランド ぐらいの学力の分布のまとまり、非常にばらつきの多いアメリカと非常に分布にまとまりがある フィンランドの子どもたちの程度の学力になったときに、アメリカのGDPはどれぐらい本来な らば今よりは高かったはずなんだという研究もあるわけですね。つまり、機会の保障や積極的に 実質的な機会を保障することによって、それは親とか学力への支援を行う。しかも、低いほうに 実は投入したほうが、再分配やったほうが実は成長率も高くなるというような研究もありますの で。  この辺も踏まえて、両立できる政策というのをこれから検討していただきたいなとこういうふ うに思っております。  以上です。 ○伊奈川参事官 竹下先生、お願いします。 ○竹下委員 二つ、感想意見と、それから調査とも絡むんですけれども。雨宮さんがおっしゃっ たホームレスの人の生活歴、例えば養護施設出身者が多いとかいうことは僕ものすごく本質的に 重要な部分だと思っています。というのは、例えば国の調査でホームレスの原因別3分類という のがあるんですけれども、それ自身にも疑問はあるわけですけれども。そうではなくてもっと大 事なのは、生活歴あるいはどういう成長過程をたどってきたかということが貧困と直結している 問題が僕はあるんではないかと思っています。  例えば日本の社会で今言われていることだと思うんですけれども、生まれたときに既に貧困と の絡みでその人の一生が決まってしまうという非常に恐ろしい指摘があるわけで。現実に子ども の貧困の問題をきちっと捉えないと、それは将来における貧困をいわば拡大させていく、あるい は国民の総生産であろうがそういう社会の成長というものをいわば阻害していくということを捉 えないと駄目だと思っているので。湯浅氏や大臣の指摘も含めて言えば、そういう意味ではホー ムレスの人たちの生活歴やそういう生活過程を分析するだけでもそのことの貧困がもたらしてい る社会の損失みたいなのが僕は明確に出てくるんじゃないかと思っているんですね。  それから、もう1点、生活保護の関係で、これ岩田先生なんか指摘しておられるわけですけれ ども。僕は今の生活保護の運用というのは非常に不幸だと思っているのは、簡単にいえば窓口規 制としての水際作戦を徹底的にやるだけやっておいて、そこで入口のところで保護費の支出を防 ごうということだけが目が向くために、結局は早めに生活の立て直しが可能な人を排除したため に何が起こるかというと、一人の人間、あるいは大量的にそういうもう一度社会復帰が早くでき る人たちのチャンスを奪うことによって一人一人の人生も奪うし、社会の損失を拡大してしまう。 そうしておいて、結果的には最後生活保護を受給した人たちが就労に向わないということを批判 する、それはむちゃくちゃな話であって。もっと早めにその人たちの立ち直りといいますかいろ いろな意味で就労に結びつくあるいは自立に結びつくような支援を早めに施しておくことによっ て、いわば入りやすく出やすいという形で表現がいいかどうか知りませんが、生活保護のいわば 果たす積極的な面が見えてくる。そのことによって社会保障費の硬直も防げるし、生活保護が膨 らむだけではなくて、生活保護を利用した人たちがその後そういう制度を利用しない状態にまで 大きく前進していくことをなぜ今まで、分かっているはずなのにしてこなかったというところを、 経済全体から見ても僕は十分に改善すべき点があるんではないかと思うんで。  そういう意味では生活保護の部分でいえば、調査としてもどういう段階からきちっと捕捉率を 高めていって支援することによって、その人の十分な立ち直りを実現できるかというそういう結 果に結びつくような分析あるいは調査がぜひ実施してほしいなというふうに思います。  以上です。 ○伊奈川参事官 では、順番は、お二人今手が挙がりました、橘木委員、その後菊池委員という 形でお願いできますでしょうか。 ○橘木委員 まず、雨宮さんの報告、二つございます。雨宮さんの報告なんですが、これ私全部 してほしいと、全部してほしいから日本のこういう実態が全て分かると思うんですが。何か大蔵 省的な答えなんですが、これ全部やっていたら人手と予算がものすごい枠になると思うですよね。 したがって、優先順位をつけるということと。それともう一つは、既存のデータで分かるやつも あるんですよ、ざっと見たときにね。だから、その既存のデータから分かるということを事務局 の方からお教えいただいたらこれだけ全部やらなくてもいいということになると思いますので。 それが私雨宮さんに対するコメントです。  それから、2番目は、湯浅さんの報告で、非常に難しい問題を投げかけて申しわけないんです が。地方に競わせるということをまずやったときに、じゃあ恵まれたところと恵まれていないと ころが出てくるんですよ。そうすると、ここに財政の研究者が二人おられるので、足による投票 という議論がございまして、みんな人は移るんですよ、いいところに。それはもう湯浅さんも言 われたように、今大阪市は生活保護が出やすいというところで全国的に有名になって、全国から みんな片道切符で大阪市に移りなさいという奨励を各県がやっているんですよね。そういうこと が起きるということを考えたら、これは地方に競わせていいのか悪いのかというのはもう一度や はり検討して、全国統一したほうがいいという議論だってあり得るのかなというふうな印象を持 ったんですが。それに関しては湯浅さんはどんなご意見をお持ちか、これは質問です。 ○伊奈川参事官 とりあえず菊地先生のご意見いただく前に、まず事務局からでございますけれ ども。雨宮委員からいただきましたいろいろな調査ですけれども、私どももちょっとよく精査し てみないといけないんですけれども、今日拝見した限りでは今までの調査でも分かるものもある んじゃないかなという感じがいたしますので、ちょっと検討させていただければと思います。 ○雨宮委員 はい。では、こっちで優先順位もつけます。 ○伊奈川参事官 よろしくお願いいたします。  あと、湯浅委員。 ○湯浅委員 今おっしゃったようなことは現実にあると思うんですね。特に全国的に雇用が流動 化している中で、全国渡り歩く労働者の人、派遣の寮から寮へとか増えていますから、いわゆる 住所不定状態ですね。今自分の体のあるところと住民票が合致していない人、そういう人という のは何もホームレスの人に限らずどんどん増えている。それは国策として進めてきたことですか らね。それはある中で、汗をかく自治体が損をして、汗をかかずに知らんぷりしているところが 得はしないけれども損もしないというような話の中でなかなか動きが出ないということはあると 思うんですけれども。  それについてはやはり何らかの財政負担の調整機能というのをビルトイン、組み込んでいくと いうことが必要なんじゃないかというふうに思っています。それがどういう形なのかというのは 私も答えが見えているわけではないんですけれども。もちろんいわゆるナショナルミニマム、駒 村さんがおっしゃったようなコアな部分ですね、必要なものについて最低ラインをつくって、そ こについては全国一律でというのはもちろんですが。ただ、その上乗せ部分についてはどうして も地方間格差というのは出てきてしまう。そのときに、調整の仕組みがきちんと組み込まれてい るかあるいは組み込まれていないかで打ち捨てられてしまう人たちが出るかどうかというのはや はり分かれてくると思うので。  私としては、こう言ってしまえば当たり前のことなんですけれども、汗をかいたところがきち んと報われるような調整システムというのをつくる必要があるんじゃないかなと思っています。 ○伊奈川参事官 そうしましたら、菊池委員、お待たせいたしました。お願いいたします。 ○菊池委員 まず、先ほど大臣がおっしゃった件ですけれども、私たまたま厚労省の政策評価の 有識者会議の委員とそれから社保庁の政策評価の委員を拝命しております関係でいろいろな数値 を出されまして。私政策評価の専門家ではないのでそもそもよく分かっていないんですけれども。 目標何人とか何%、達成できたとかできないとかというそこで基本的に評価されるんですけれど も。なかなかそれは、知りたいのは中身がどうであったかというところなんですけれども。つま り、大臣がおっしゃった利益が上がっているかどうかということですね。なかなかそこが厚生労 働行政でつかみにくいんだなという、どうやったらもう少し実質的に評価ができるのかというの が私もちょっと悩みながらさせていただいているので。ただ、私はその政策評価の専門家ではな いので答えはないんですけれども、非常に難しい分野ではあるのかなという感じはいたします。  それから、湯浅さんのご報告についてなんですが、3点ほど感じた部分があるんですけれども。 一つは、何人かの方からも出ましたが、資料の3ページでこの最低基準のところですけれども。 この[1]、[2]、[3]というこれはこのとおりだなとは思うんですが。ここで挙げられているのは3.3 平米のところですけれども。二つあって。一つは最低基準といってもいろいろなファクターがい ろいろなものが入り込んでいて、本当に国が守るべき部分、3.3平米というのは多分そうだと思 いますけれども、あと保育所の配置ですとか。そうでないものも、つまり地方自治体の創意工夫 に委ねていいものもあるかもしれないとも思うんですね。  余り思い浮かびませんけれども、例えば、これ適切かどうか分かりませんけれども、東京のあ る自治体で認証保育所ですかね、あるんですけれども、園庭、お庭が基準のものがとれないと。 なので認可保育所に基本的になれないと。ただ、すぐそばに公立の保育園があって、とても広い お庭があると。そこを兼用で使わせてくれたらいいのになという話を聞いたんですけれども。例 えばその辺も柔軟に運用すれば、同じ認可保育所として認めてもいいということになるかもしれ ないとか。  ですから、その辺の国が守るべきものと必ずしもそうでないものという検証作業というのは必 要ではないかというのが一つと。  もう一つは、先ほど湯浅さんが60年間触れられなかったという、それはそのとおりだと思うん ですけれども。前々回の私の報告でも、児童養護施設15人部屋という基準のことをお話ししまし たが、やはりそれも今日的な意味での最低基準は何かということを精査するという作業をもう一 つやる必要はあるのではないかなという感じがします。それについてもし何かコメントがあれば ちょっと湯浅さんからお聞きしたいということです。  それから二つ目が、これも8ページのところでお話になったんですけれども。これは法的にと いうか法律的にいうと申請主義という問題で。日本の社会保障制度は基本的には申請主義をとっ ていると。全て何もしなくてももらえるということになると、これはいいように見えて逆にいう と全て生活を国に管理されるということにもなりかねないわけで、申請主義という考え方自体は 私も妥当だと思うんですけれども。ただ、ありとあらゆる方に対して申請主義の原則を貫いてい いのかという、そういうお話だったのかなと思うんですね。  例えば湯浅さんご存じかどうか分からないんですけれども、去年の11月に東京高裁で和解があ ったんですが。それは宇都宮市で、宇都宮訴訟と言っているんですけれども、重度の知的障害の 方が長期間精神病院、閉鎖病棟に入れられていてほっぽり出されて、そこでやくざまがいの男に 囲われて年金を取られたり虐待を受けたりと。何人かですね。その中の一人が新宿まで宇都宮か ら自転車で逃げてきて、新宿のホームレス団体に保護されたという、そこから明るみに出たとい う事件なんですが。例えばそういった重度の知的障害の方に役所に来て申請せよといっても、こ れはそもそも不可能な話でして。そういった部分で先ほどお話のあったような制度の運用部分と か、もっとも制度の仕組みづくりのところでその申請主義の弊害を緩和するようなものをどうや って組み込んでいくかというのが多分重要なんだなというふうに感じました。  最後になんですけれども、9ページで第2のセーフティネットの施策を挙げてくださっていた んですが。これはこの研究会の守備範囲がどこまでかということにも関わるんですが。仮にナシ ョナルミニマムの中身の一部としてこういった第2のセーフティネットといわれる施策も土俵に 乗り得るのであれば、ぜひ、これは事務局へのお願いになりますけれども。これらの施策につい てもう少し詳しい、法的な根拠とかそういったものをお示しいただきたいなという、これは事務 局へのお願いです。これは非常に私も参考になりました。ありがとうございます。  以上です。 ○伊奈川参事官 第2のセーフティネットの宿題として作業したいと思います。  湯浅委員、コメントがあればお願いいたします。 ○湯浅委員 1点目と2点目についてですけれども。ナショナルミニマムのいろいろなものにつ いての仕分けですよね。それについては、私は結構単純で、やはり当事者に聞くべきだと思って います。例えば保育なら保育を利用しているお母さんとか、学校のことなら子ども、生徒とか、 ホームレス施設であればそこに住んでいる人たち、そういう人たちがどこをどういうふうに感じ ているのか、どこに問題があると思っているのか。救護施設とか更正施設とか、やはりそういう ところを利用している人たちの意見が重要なんだと思うんですね。そういう中でそれを参考に仕 分けていく。でも、こういう話をしだすと、必ずだれを呼んでだれを呼ばないんだとか、そこに 公平性が担保されないとかという話になって。  でも、それはもちろんそうなんですけれども、そういうことが余りにも今までおろそかにされ すぎているんじゃないかという思いはあります。いろいろなことを利用している人とか、実際に 現場はそれぞれの厚労省とか霞が関の外にあるわけなので、そこで生き暮らしている人たちの意 見というのをオープンにくみ上げるということが十分じゃなかったんじゃないかという思いがあ って。やはりそういうのを継続的にあるいはねばり強くやる中で、本当に必要なものと必要でな いものというのを選り分けていくという作業が必要なんじゃないかと。それは今ある施設基準、 運用基準、人的配置基準のリストが全部出てきて、これはどうかねと多分ここでやっていても答 えは出ないんじゃないかという気がするということですね。  2点目の申請主義について言うと、私は申請主義を否定したいということではなくて、申請主 義の上にあぐらをかいてはいけないだろうということのつもりでした。それは、そのアウトリー チというのはだから申請主義とは矛盾しないとは思っているんですね。やはり必要な人の申請を 促す。我々が日常的にやっているのも結局はそういうことで。結局最後は本人が決めるという。 でも、その本人が考える材料とかこちらの意見とかそういうのを多様に伝える中で、本人が本当 の意味で判断できるようにするというかな、そういうことが、やはりそれも十分やられてこなか ったということではないかと思っていて。  なので、原則を申請主義から職権にというふうに切り変えるべきだという意見ではないです。 ということです。 ○伊奈川参事官 すみません、時間が来ておりますので、貝塚先生、最後ご発言いただいて。す みません、今日は事務局からの資料説明というのがございますので、最後簡単にさせていただい て終わりというような形にさせていただければと思いますけれども、よろしゅうございますでし ょうか。 ○貝塚委員 私が申し上げたいのは、福祉サービスのある意味で質の問題なんですね。要するに だから量的に福祉サービスを拡大したという話では片付かない問題があって、要するに簡単に言 えば、それぞれ相手方の事情に即して適切な福祉サービスを提供できると。そのときはやはり、 先ほどの大臣のお話にもありますが、職員の方のインセンティブというんですかね、それが重要 で。そこで質の高いのがうまくできればその人の処遇が上がるとか、ある種のそういうものがな いと。そこのところは非常に難しい問題ですが、やはりそういう問題が内在しているということ だけちょっと申し上げたいと思います。 ○伊奈川参事官 大変申しわけございません。ご発言いただけなかった先生いらっしゃるんです けれども、時間の関係で、資料の残りの説明に入らせていただきたいと思います。  二つございます。資料3と4ということでありますけれども。資料4のほうは前回あったこれ までの社会保障の給付の範囲とか、あるいは適用対象といったようなことでございますので、こ れはご覧いただければと思います。説明のほうは資料3、生活保護の関係についてのみさせてい ただきます。事務局のほうから説明いたします。 ○三石保護課長 保護課長でございます。資料3につきましてご説明をさせていただきたいと思 います。これは前回たしか橘木先生から、現在の生活扶助基準、水準というのは一般国民の消費 実態と比べてどの程度のところにあるのか、どういう形で決めたのかというご質問であったかと 思います。  若干経緯を申し上げさせていただきたいと思いますけれども。現在のいわゆる水準均衡方式へ の移行のきっかけとなりましたのが昭和58年の中央社会福祉審議会意見具申、その中で当時の生 活扶助基準を一般国民の消費実態との均衡上ほぼ妥当な水準に達しているというような評価をし ております。具体的にはこの1枚目の一番下のところにその抜粋を掲げさせていただいておりま すけれども。  そのときに、ほぼ妥当と評価した根拠でありますが。これが一般世帯と被保護世帯の消費支出 の格差ではなく、変曲点という概念を用いておりました。具体的には2枚目をお開きいただきた いと思いますけれども。そちらに図がございますが、横軸に収入階級、縦軸に消費支出をとりま して、所得が低下するにつれて消費支出もなだらかに低下してくるわけでありますけれども、あ る所得以下になると消費支出が急激に低下する。特に社会的経費、いわゆる交際費とかあるいは 教養娯楽費とかそういったものが急激に低下することが認められると。この点を変曲点と呼んで おりまして。その点に至るまでが大部分の国民が維持してきたいわゆる生活様式が保たれる限界 点と解釈をしておりました。  この変曲点における生活扶助相当経費をあるべき生活扶助基準とみなして、生活扶助基準額と 比べますとほぼ均衡していると。左のところに数字がございますが、AとBを比較しますと 97.8%ということでほぼ均衡しているということで、生活扶助基準と消費実態と比較した結果ほ ぼ妥当という結論に至っております。  この点を、3枚目でございますけれども、一般世帯と被保護世帯の一人当たりの消費支出格差 で見てみますと、この検討を行ったのは昭和58年でございますが、その時点で用いられた検証デ ータということで、右上の昭和54年度のところをご覧いただきたいと思いますけれども。家計調 査による一般勤労者世帯が5万9,261円、それから生活保護の被保護勤労者世帯が3万6,752円、 この割合が62.0%ということで、ここが6割であったということでございます。岩田先生が前回 言われたのもそういう意味と解釈しております。  ちなみに、54年で62%ということでございましたけれども、今一番直近の数字をとりますと、 19年度が一番直近で右の下にございますけれども、一般勤労世帯9万4,332円、被保護勤労者世 帯7万2,132円で、76.5%となっておりますが。特に最近のところをご覧いただきますと、やは り景気の関係で一般勤労者世帯の平均消費支出額が平成9年をピークに減ってきております。一 方で、生活保護の基準のほうは基本的に据え置かれておりますので、その関係で格差が縮小して いるということでございます。  ただ、統計学的には、左の一番下にございますように、そもそも一般と被保護世帯の世帯人員 あるいは世帯類型というものを合わせておりませんので、厳密な比較ではございません。トレン ドということでご理解をいただきたいと思います。  以上でございます。 ○伊奈川参事官 駒村先生、お願いします。 ○駒村委員 前回何か5年に一度検証作業をされているというふうにおっしゃられたので、ちょ っとそれどういうふうにやられているか、次回また教えていただきたい。一応僕と菊池先生が入 っていた扶助基準の検討会では、モデル世帯との比とか単身高齢世帯との比とかいうのが出てい て、あそこでも検証していると思うので、そういう検証の成果というか評価というのは全然出て こないので、ちょっとどういう。単純に、例えば3ページのように一人単位に切り替えただけの 話なのか、それともモデルで何か比較している話なのか、ちょっと今日はそういう意味では概略 資料だけだなというイメージなので、できたら次回、その5年に一度やっている検証の内容を含 めて教えていただければ。よろしくお願いいたします。 ○間杉統括官 分かりました。 ○伊奈川参事官 宿題とさせていただくことにしまして。時間の関係がございますので、今日は ここまでとさせていただきたいと思います。  次回の日程の関係でございますけれども、3月23日、17時から18時20分、場所はここ、省議室 のほうで予定をしておりますので、よろしくお願いいたします。  また、次回は委員の先生からの発表につきましては、神野先生、あと橘木先生、お二人からと いうことでありますので、よろしくお願いいたします。  また、お手元に配布しております卓上配布資料2でございますけれども、4月以降の日程につ いては必ずしも先生方皆様の出席が可能な日程となっておりませんけれども、その点はご容赦い ただければと思います。第8回が4月9日、金曜日の17時30分から19時、また第9回を5月10日、 月曜日、17時30分から19時ということで予定をしておりますので、よろしくお願いいたします。  本日はどうもお忙しい中、ありがとうございました。 照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 政策第一係 代)03−5253−1111(内線7692) ダ)03−3595−2159