10/02/25 第14回高度医療評価会議議事録 第14回 高度医療評価会議 (1)日 時:平成22年2月25日(木) 15:00〜17:00 (2)場 所:厚生労働省7階第15会議室 (3)出席者:猿田座長、山口座長代理、飯沼構成員、伊藤構成員、        竹内構成員、柴田構成員、佐藤構成員、村上構成員、        堀田構成員、藤原構成員、田島構成員、山本構成員       (事務局)        医政局研究開発振興課長        医政局研究開発振興課治験推進室長        保険局医療課企画官        医薬食品局審査管理課長        医薬食品局審査管理課医療機器審査管理室長  他 (4)議 題 1 条件付き適の評価を受けた技術の評価結果 2 新規申請技術の評価結果について 3 その他 (5)議事録:以下 ○猿田座長  時間になりましたので、第14回高度医療評価会議を始めさせていただきます。いろいろとお忙 しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。本日の委員の出席状況ですが、 金子構成員、川上構成員、関原構成員、田上構成員からはご欠席との連絡をいただいています。 早速ですが、事務局から資料の説明をお願いします。 ○事務局  配付資料について確認させていただきます。議事次第、座席表、開催要綱、構成員及び技術委 員名簿。その後に、資料1-1は第7回高度医療評価会議にて継続審議の評価を受けた技術の再評 価結果、資料1-2は高度医療再評価表(番号008)、資料2-1は新規申請技術の評価結果、資料2-2 は高度医療評価表(番号022)、参考資料1〜4、また別紙として「前回の高度医療評価会議で指 摘された論点の整理について」を付けています。本日の資料は以上です。過不足等がありました ら事務局までお知らせいただくようお願いします。 利益相反についてですが、対象となる医薬 品及び医療機器の製造販売企業のことについて、資料1-1、資料2-1に記載している医薬品・医療 機器情報をご覧ください。対象となる製造販売企業又は競合企業に関して、事前に確認をさせて いただいていますが、事前の届出以外に特別に関与するような事例はありませんでしょうか。該 当なしということでよろしいですか。ではお願いします。 ○猿田座長  それでは早速、議事に入りたいと思います。議題1ですが、「条件付き適の評価を受けた技術の 評価結果」について、まず事務局から説明をお願いします。 ○事務局  撮影をされている傍聴者の方は、ここまでとさせていただきますので、お願いします。  資料1-1をご覧ください。第7回高度医療評価会議にて継続審議の評価を受けた、重症虚血性 心疾患に対する低出力体外衝撃波治療法について、会議での指摘事項を修正していただき、再度 提出がありました。適応症は重症虚血性心疾患です。審査担当構成員は前回同様、主担当に山本 構成員、副担当として猿田座長、田島構成員となっています。以上です。 ○猿田座長  いま、お話がありました最初の議題ですが、今日は14回目ですから少し古くて、第7回目の会 議で継続審議の評価を受けた、重症虚血性心疾患に対する低出力体外衝撃波治療法です。前のと ころで、技術的にはいいものではないかと私は申し上げましたが、総括的に山本構成員、よろし くお願いします。 ○山本構成員  主担当の山本でございます。重症虚血性心疾患に対する低出力体外衝撃波治療法ですが、前回 継続審議とさせていただき、本日再評価となっています。まず実施体制の評価ですが、これに関 しては猿田座長より、以前から「適」という評価をいただいています。  倫理的観点からの評価ですが、田島構成員より、同意に関する手続き、同意文書について「不 適」があります。補償内容については「適」としていただいています。コメント欄にありますよ うに説明の抜け、患者相談等の対応整備ということでいただいています。  プロトコールの評価ですが、これは私が担当し、前回の指摘からかなり修正をいただいていま すけれども、被験者の適格基準及び選定方法と、試験に係る記録の取扱い及び管理・保存方法に ついて、「不適」とさせていただきました。ここの2つに当たるのかどうかよくわからないのです が、一応、この2点についてとしています。  コメント欄に書いていますが、1つは、この試験自体は対照群を置かないsingle arm trialデザ インとされていて、主要及び副次評価項目は、治療前の状態と治療後3ヶ月目以降の状態の比較 ということが明記されています。これについては妥当と考えます。おそらく機器の性状から、ブ ラインドは非常に困難と考えています。  しかし、症例数設定が、以前に実施された15例の対照群を置いた試験での治療群と対照群との 差を基に計算されていて、本試験における効果判定とは推定方法が全く異なっていますので、症 例数設定の前提がおかしいのではないかと考えています。本試験の場合は、治療前の状態におけ るニトログリセリン使用量の信頼区間をベースに、決定したほうがいいのではないかと思います。  これは私も正確には計算していませんが、現在、挙げていただいている症例数よりも計算上、 もう少し減少することができるのではないかと考えています。もし減少するのであれば、これは 臨床試験ですので必要最低限の症例数にしていただくほうが、倫理的にも望ましいと考えます。  今までの経験症例数を本試験に追加して解析する、と書いてあるのですが、それは今回、新た にプロトコールを立てて試験をすることになっていますので、それはちょっと難しく問題がある と思いますから、実施症例数は症例数設定の人数をそのまま使っていただくべきだと思います。  症例報告書ですが、主要評価項目であるニトログリセリン使用量、副次評価項目に挙げてある CCSクラススコア等の記載箇所が見当たりません。また、身体所見にも「その他の所見」という ところがありますが、具体的にどういう内容を指すのかがよくわからないということです。この 試験は5年にわたって行われる予定になっていますので、これではデータが適切に収集できない 可能性があり、CRFについて改訂の必要性があります。  有害事象発生報告に使用する様式が全くなく、どのような形で報告されるかが示されていませ んので、こちらについても作っていただいたほうがいいのではないかと思います。  総評ですが、各項目のところで指摘された内容を修正していただければ、「適」となるのではな いかと思います。症例数設定については、計算等前提を立てるところからなかなか難しい問題が ありますし、研究協力に統計家がいらっしゃるようですので、そちらとよく相談していただきた いと思います。症例報告書については、単施設で行われる研究ですけれども、試験期間が長いの でデータ収集が、関わる人間が替わっていくにつれて、おそらく変わっていく可能性があります。 ですから今よりはきちっと、少なくとも主要評価項目、副次評価項目、有害事象について、具体 的に記載できる形に整えていただくほうが望ましいと思います。以上です。 ○猿田座長  いま、お話がありましたようにプロトコールの立て方で、特にこの技術に関しては皆さんも覚 えているかもしれませんが、要するに胆石や腎臓結石を壊すような衝撃波を、約10分の1ぐらい の強さで与えます。特に処置ができそうもない、かなり重篤な虚血性心疾患の患者さんに対し、 そういった衝撃波を徐々に与えていくと血流が良くなり、心臓の状態が改善してくる可能性があ ります。ほかの治療法がない状態で、これをやればかなり効果的だということです。  そして実際、これを始めたのは、いま東北大学に行っている教授ですけれども、その前に九州 大学のほうでこの治療に専念したということで、先ほど山本構成員からお話があった症例のこと は、九州大学でやっていた症例と東北大学でやった症例と、そういうことの絡み合わせがあった ということです。もう1つは、これから5年間ということで、なかなかこういう症例を見つけて いくのは大変ですから、かなり時間がかかっているということかと思います。  いま、山本構成員からお話がありましたように症例数のことや、いくつかの試験のやり方、特 に東北大学の場合には生物統計をやっている方もいますから、そういう方とももう1回相談して、 最終的な修正をして出していただきたいということかと思います。田島構成員、何かございます か。 ○田島構成員  特にありません。 ○猿田座長  そういったことで山本構成員とすれば、いまのところを直していただければいいということで すね。以上ですが、どなたか構成員の先生方からご質問はありませんか。私としても技術として は慎重に行われるテクニックで、あまり危険なことはないということと、今までほとんどいい治 療法がない患者さんに対して行って、効果が得られる点での利点があるということで、技術的に も私としてはいいのではないかと思った次第です。 ○山本構成員  症例報告書ですが、おそらく当初、申請のときに症例報告書をきれいに作って出していただく という、そういう指示がなかったのかもしれないと思います。プロトコールを作る中できれいに できないと、症例報告書が作れないという問題もあって、順番としては、プロトコールが固まっ てから症例報告書を作る形になると思いますが、一方で高度医療評価の場合は、データの信頼性 を担保しないといけないという問題がありますから、どこまで完成度の高いものを求めるかは、 ケース・バイ・ケースかなとは思いますけれども、今回に関しては主要評価項目、副次評価項目、 安全性について、いまのままではデータの信頼性に問題が出る可能性がありますので、指摘させ ていただきました。 ○猿田座長  ということですが、今日はこの2つの案件が終わった後、そういう高度医療のことに関して少 し議論させていただきますけれども、いまの山本構成員のご説明でおわかりいただければ、そこ のところを直して通させていただくことになると思います。条件付き適ということで、よろしい ですか。それではそういう形で進めさせていただきます。次にいきたいと思います。事務局から お願いします。 ○事務局  資料2-1をご覧ください。新規申請技術の評価結果として整理番号022、高度医療名は、胃癌 に対する胃切除術後の抗悪性腫瘍剤の腹腔内反復投与法です。適応症は、腹膜転移高リスク進行 胃癌および腹膜転移を有する進行胃癌が対象となっています。実施医療機関は名古屋大学医学部 附属病院です。審査担当構成員として主担当は竹内構成員、副担当として山口構成員、佐藤構成 員となっています。以上です。 ○猿田座長  この高度医療に関しては、類似したものがこの前に出てきた形で、少しやり方が違うわけです けれども、腹腔内に抗癌剤を投与するというものです。それでは竹内構成員から、ご説明いただ けますか。 ○竹内構成員  私から報告させていただきます。この申請は先ほどご紹介がありましたように、予後が悪い胃 癌の患者さんに対して胃癌の手術をした後に、通常はS-1+シスプラチン、またはS-1を入れる療 法がありますが、その前にpaclitaxelを腹腔内に投与したらどうかという申請です。実施体制の 評価は山口座長代理に評価していただいていますので、山口座長代理からコメントをいただけま すか。 ○山口座長代理  胃癌はいま、よく治る病気になってきましたが、進行胃癌に関してはまだ60〜70%の生存率で す。ところが、今回の対象になっている肉眼的に見て腹膜に転移がある症例、それから肉眼的に はないのですが、取れたと思って洗ってみると癌細胞がいるという症例が意外に予後が悪く、も し肉眼的にあった場合には5年生存率はほぼゼロに近い。細胞がいた場合、要するにCY1という のは10%そこそこしかない。ほぼ絶望的といっていい。これに対していろいろなことが行われて きましたが、こういう腹腔内投与というのは実は長い歴史があって、20年以上前にそういうトラ イアルがあったのです。少数例でいいデータがありましたけれども、その後、なかなか臨床試験 がうまく行われなくて、証明されていないという経緯があります。  小寺先生は前の施設におられたときから、ずいぶん興味を持っておられて、今回出てきたわけ ですけれども、この基になるpaclitaxlは、米国では既に婦人科の癌でかなりいい成績が出ている ので、こういう細胞診だけがプラスといった症例とか、ごく少数、肉眼的に転移があるものに関 して、今まで絶望的だったものに対して、少しでも良くなる可能性は十分あると思います。この 施設を含めてやる体制は十分整っていますし、意義も高いと思います。  ただし、システミックにやるのと違って、腹腔内投与というのは器具のセッティングとか注意 事項など、ここにも書いてありますけれども、いろいろと格段に注意すべき要件がありますので、 いろいろな施設で簡単にやるということは避けたほうがいいと思います。この施設においても、 特に副作用がないか、うまくいっているのかをなるべく短期間で評価して、厳密にその効果を検 定すべきだと思います。 ○竹内構成員  山口座長代理、ありがとうございました。倫理的観点からの評価としては、佐藤構成員からコ メントいただけますか。 ○佐藤構成員  倫理的観点から審査をさせていただきました。評価表にはいろいろと書いてあるのですが、結 論としては、この点についてすべて事務局を通して対応いただいて改善されたと判断し、最終的 には「適」という判断をしています。  資料3が患者さんに対する説明文書です。1点目は「はじめに」というところの4行目、「日常 診療を踏まえた上で」というのが、もともとは「日常診療の一環として」と書いてありましたの で、これはあくまでも臨床研究であることをはっきりさせてもらうために、このように書き替え ていただきました。2点目は、paclitaxelのわかっている一般的な副作用、リザーバ留置に伴うリ スクということは、研究結果書には書いてあったのですが、説明文書になかったものですから、 それについて書いていただいたということです。あとは少し細かなことでした。最終的には相談 体制等も含めて、よくできていると判断し「適」という判断をしました。以上です。 ○竹内構成員  プロトコールの評価については、私が評価させていただきましたのでご報告させていただきま す。1〜16の案件についてすべてよく書かれていて、私もすべて「適」という判断をさせていた だきました。  先ほど山口座長代理から、手術をしてポートを置いてこいないといけないということがありま したので、その点について私のコメント欄の9の後ろに、「腹腔内投与の手技に関して、ポート挿 入法、腹腔内投与法の詳細については、事前に研修を開催し、標準化された方法の徹底化を図る ことによって、医療機関のばらつきを最小に努力することは本臨床試験を実施することに対して 不可欠であると判断します」と書いています。この件についても申請書に書いていましたので、 先生方が理解されていると私は判断しています。  また、この件については、アメリカから発表された卵巣がんの同じような試験に関して、論文 上でもこの点は注意するようにと書いてありましたので、胃癌の申請書についても注意をしてい ただくということで、非常によくできていると思います。  もう1つ、ここで私が少し危惧しているのは、手術をする術中に無作為化をやりますので、提 出していただいたCRFのときに、どのようにして無作為化をやるのかと思ってCRFを見せてい ただいたのですが、手術をやっている最中にCRFを記入して、それをFAXするということがあ りましたので、そのFAXがうまく届くかどうかとか、術中時にやりますので、そこら辺の観点を 注意していただきたいと思っています。  10ですが、後治療としてS-1または、S-1+シスプラチンを使います。これも主要評価項目が2 年生存割合、無増悪生存期間、あと全生存期間ですので、S-1を使うかS-1+シスプラチンを使う のかによって非常に影響されると思います。ですから先ほど申し上げましたように、この無作為 化のプログラムがよくできているということが1点と、先ほど申し上げたように術中にFAXで無 作為化が実施されますから、しっかりとそこは対応できているかという点を、よく確認していた だければと思っています。  11に関してですが、本申請では最初の10例は認容試験と判断されていて、全ての10例はプロ トコール治療、いわゆる腹腔内治療を行って、実際に米国における卵巣癌の投与用量、すなわち 60mgがいいかどうか検討されます。その点は非常にいいのですが、その後の登録終了後に、1年 目で中間解析をするということが、この申請書ではありませんけれども、添付されていたプロト コールに書いてあり、どういう中間解析をやるのか詳細がはっきりしませんでした。この申請さ れた高度医療評価の治療に関しては問題ないと思いますが、中間解析のところはしっかりと詳細 な記載をしていただけたらと思います。これはあくまで私のコメントです。  総評としては、実施体制、倫理面、プロトコール、すべて「適」が付いていますので、私とし ても総評として「適」と判断しました。ただし、先ほど山口座長代理からもご発言がありました ように、S-1+シスプラチンで有害事象が起こるかもしれないということがありますし、試験を実 施している間は、副作用等のモニタリングが非常に重要かなと思っていますので、そこは注意し て、この試験を進めていただきたいというのが私のコメントです。 ○猿田座長  いま総括的に竹内構成員にまとめていただきましたが、この技術に関する実施体制の評価に関 しても、倫理的な観点からも、さらにプロトコール面からもしっかりしていて大きな問題はなく、 このまま認めていいのではないかということです。どなたかご意見はございますか。 ○柴田構成員  プロトコールの内容については、既にご議論いただいたところで十分だと思いますが、結果の 解釈について念のためにコメントさせていただきたいと思います。この試験は、サイモンのセレ クションデザインという臨床試験の方法を使っていますが、この方法は有効性を証明するもので はなく、開発の流れの中で、次の段階で有効性を証明する試験にどちらの治療法を進めたほうが いいか、それを判断するための前捌きをするための試験です。ですから、この会議の中では、出 てくる申請について常にロードマップを考えていただくことが重要であるというコメントが出て いるところですが、これについてもこういうものをやって、次にどのようなことをやるのかが重 要になってくると思います。  資料5にプロトコールが付いていて、2頁の目的を拝見すると、「腹腔内投与治療法の開発を目 的とした無作為化第II相臨床試験であり、今後の無作為化比較第III相試験の試験アームの選択を 行うものである」と書いてあります。将来、どういう方向に進めるかについての予定も明らかに されているので、これは非常に重要なところだと思います。  内容について、プロトコールの中で気になったところを1つだけ、追加でコメントさせていた だきます。同じく資料5の11頁になります。先ほど山口座長代理からもお話がありましたが、卵 巣がんでは米国における標準治療の1つとなっていると。一方、我が国では受けられない状況に あり、それでこの高度医療評価制度に出てきていると思います。  前回の会議で出てきた卵巣がんに対して、薬は違いますけれども、例えばカルボプラチンの腹 腔内投与については、日本では承認されていないので適応外で、臨床試験がうまくできないと書 いてありました。そのときにも米国、英国、ドイツは、ともに卵巣がんにおける腹腔内投与に対 し、薬事上の承認はなされていないということでした。つまり米国においても薬事上の承認がな いし、日本においても薬事上の承認がない腹腔内投与に関する臨床試験です。一方で日本におい ては、それが適応外使用ということになってしまって臨床試験がなかなかできないので、このよ うな制度の中に出てきている状況であったかと思います。  つまり、承認がある、ないという単純な問題ではなくて、どこまで日常臨床の中で許容される かの線引きが、外国と日本で大きく違いますので、そこの部分を注意して議論しなければ、何で もかんでも細かい使い方の違いまで、薬事法上の承認が必要であるのかといった話にもなってく る部分があるかと思います。これについてはきちんとした計画をして、質の高いデータを出して、 将来につなげる方向で開発されていますから、高度医療の中で行われることは適切だと思います が、一般論として注意が必要な部分かなと思います。 ○猿田座長  いま先生が言われた問題は、今日の後のところで、高度医療のデータをどう評価するのかなど で議論させていただきます。こういう状況で症例数が60というのは、ちょうどいいということで すね。 ○竹内構成員  はい。 ○猿田座長  いまご説明いただきましたが、どなたかご質問はございませんか。山口座長代理、よろしいで すか。特にご意見がないようでしたら、この事例に関しては適ということで通させていただきま す。今日、評価した技術はこの2つですが、これからいちばん重要なところです。事務局から説 明をお願いします。 ○事務局  別紙「前回の高度医療評価会議で指摘された論点の整理について」をご覧ください。読み上げ ます。  1 論点。薬事法上、医薬品の承認申請のデータはGCP基準に適合する治験(製造販売承認申請 のために実施される臨床試験)により収集される必要がある。※GCP基準:臨床試験のデータの 信頼性等を確保するための国際的な基準。  高度医療評価制度のもと行われる臨床研究のデータ(GCP非適合)についても、薬事承認のデ ータとして、活用できないか。  2 高度医療評価制度のデータの位置づけ。薬事承認の根拠となる治験については、GCP基準を 適合することは必須。  治験に先立って実施される高度医療のデータについては、必ずしもGCP基準に適合しなくても、 高度医療のデータを治験の計画根拠に使用することは、現在でも可能である。(注)未承認医薬品 の薬事承認までの流れ(一例)。臨床研究→臨床研究(高度医療)→治験(GCP)→薬事承認。  その際に、適宜、医政局研究開発振興課、医薬食品局審査管理課、医薬品医療機器総合機構 (PMDA)と連携し、支援を受けることについても可能である。  以上です。 ○猿田座長  この高度医療評価会議で、高度医療制度に係るいちばん重要な点ですけれども、ここで行われ る臨床試験をどう考えるかということです。もちろん日本の医薬品の承認申請は、国際的な基準 であるGCPに則ってやることが必須ですが、この間から議論させていただいたように、ここには ファースト・イン・マンのようないろいろな問題が出てくるということで、その問題をこの間議 論させていただき、この高度医療のデータをどこまで使用していいかを、特に医政局と医薬食品 局の間で議論していただきました。事務局としては、薬事法、GCP省令の解釈、高度医療のデー タの扱いとして、こういう形を考えているということです。  皆様方ご存じのとおり、いま文科省でトランスレーショナルリサーチが行われています。その トランスレーショナルリサーチの研究では、いろいろな形で高度医療に出そうか、先進医療に出 そうかということがありますが、ともかくそういった最先端の研究を少しでも臨床へ持っていく ためには、未承認の薬とか機器を使う場合が多いですから、この高度医療に出てくることが多い ので、果たしてこの高度医療のデータをどういうふうに扱っていったらいいか。事務局にはずい ぶん苦労していただいていますので、いまお読みいただいた紙を見ていただきながら、どうして いったらいいかを議論していただきたい。要はここから進めて、最終的には薬事承認に持ってい く流れをここに書いていますが、このあたりで皆さんの意見を聞いて、また先へ議論を進めてい きたいと思います。  実際に今まで見ていて、私は先進医療をやっていますけれども、先進医療の委員の先生方の理 解もかなり違います。高度医療の先生方は、ここでの臨床試験はおわかりいただけますが、問題 はこのデータをどう使用していったらいいかで特に議論いただきたい。 ○山口座長代理  本来の流れというのは、臨床試験をきちっとやることであるということを常に考えておかない といけない。それがメインストリームで、それがボリューム的にも臨床試験の中では大河として 流れている。何で高度医療のような仕組みがあるかと言ったら、いちばん大きいのは、極めて急 に解決すべき問題、極めて予後の悪いもの、どうしようもなくて何とかしてほしいもの、要する に国民の視点から見てぜひ早急に試してみたいものを、ある程度科学的裏付けをもってちょっと 認めてあげようと、そういう基本線があるべきだと思います。基本的な流れはこういう考え方で いいと思いますが、これはメインストリームにならないということが1つと、高度医療で有効性 の蓋然性を評価するということですが、これは相当いいかもしれないという気持が我々にもなか ったらいけない。でもそれを厳密に臨床試験の流れで見てしまうと、全部バツにせざるを得なく なります。ここで何とか拾おうという気持になることが大事だと思います。基本的には、こうい うことを明快にしてもらうと大変ありがたいと思います。 ○猿田座長  私がトランスレーショナルリサーチのところをやっていてわかったのは、最先端の研究を少し でも臨床へ持ってきたいということなのですが、本来であればGCP基準に則って各企業が治験で やればいちばんいいわけですが、企業は利益を考えますから、なかなかそうはいかない。特に患 者さんの命を考えると、本当に稀な疾患に対する治療や特殊な治療法はなかなかそうはいかない。 企業が乗ってくれるわけでもない。そうなると医師主導でやらなければいけない。その中でも特 に臨床研究としてやっていく形になると、ここでやっていかざるを得ないだろうということです。  最初、この高度医療ができたときには、この間議論したように初めて人に使うようなものでも、 ここに出してもいいのではないかということであったので、そういったことから考えても、この 高度医療のデータをどう使っていくかです。ここが非常に重要な点だと思います。 ○山口座長代理  もう1つは、そういうポジティブな面と、世の中では非常に怪し気な治療がずいぶん行われて いて、しかもそれが水面下でずっと広がっていてまずいので、そういうものはむしろ積極的にこ こに引っ張り出して、少ない症例数でも本当にそうか、きちっと見る責任もあるのではないかと 思います。そういうものを頭から否定せず、ネガティブな面で検証する役割もあるのではないか と思います。 ○藤原構成員  がんセンターの藤原です。前回、私は欠席したので谷川原技術委員のご趣旨は聞いていないの ですが、この論点の整理には全然異存はありません。ただ、将来的な課題としてまだ残っている ところとして、例えば適応外使用です。抗がん剤の場合、がんの領域だと非常に稀ながんという か、がんの中にもいろいろな病理の名前があったり、さまざまな稀少がんもあって、そのすべて に薬事法の承認を取らせることは不可能だと思います。そういうときに例えば高度医療評価制度 を利用して臨床試験を実施して、企業はたぶん、そういうときにはビジネスの観点から治験はし ないでしょうから、将来的に二課長通知といったものを使った申請の資料に、この高度医療評価 制度で実施した臨床試験を使うという流れが想定できます。  また、5,000例とか8,000例といった術後の補助療法を、観察期間として5年とか10年やって 初めて生存率に差が出るような試験が、最近はよく出てきます。それを企業治験でやろうとする と何十億というお金がかかってしまい、ビジネスの観点からわりに合わないことが想定されます。 こういう場合に、高度医療評価制度で、術後の補助療法の検討を5年、あるいは10年かけてやる。 その後、添付文書を見ると使用上の注意のところに、術後の補助療法については安全性が確立し ていませんといった記載があって、保険で査定される根拠になっている部分を、この高度医療評 価制度下でやった臨床試験の成績でもって削除してもらう流れも必要だと思います。たぶん応用 編はこれから多々出てくると思うので、その辺を将来、保険局と医薬食品局と医政局のほうで考 えていただければと私は思います。 ○猿田座長  重要な点です。ほかにご意見はございませんか。 ○堀田構成員  高度医療評価制度に期待する国民の目線、あるいは臨床研究に携わっている者の視点から言う と、臨床研究で新しい治療法の開発で何かエビデンスを作っていこうと思うときに、問題になる のが保険の償還の問題です。未承認の場合は治験が前提というのは崩せないところですが、ただ、 高度医療評価制度で得られたデータを、どこまで申請資料の一部あるいは前段階として使えるか という議論に、どうしてもならざるを得ないと思います。ここを崩してしまうと、要するにダブ ルスタンダードになっていってしまう可能性があると思います。  ただ、極めて稀少疾患で重篤性の高いものに対しては、いつまで治験や臨床試験を待てるのか という話もあって、それについては別途議論が要ります。コンパッショネートユース制度を入れ るのか、あるいは治験という枠組みの中で、最初から海外のデータで申請しながら、治験という 枠組みの中で患者さんを取り込んでいけば、併用療法が可能であるという流れもあるかと思いま す。この辺の整理を付けていく必要があるだろうと思います。  高度医療評価制度は「高度」と名が付くものですから、先進的で極めて実験的なニュアンスが どうしても高くなるのですが、実際に現場で求められているものはそんな高度先進的なものばか りではない。むしろ日常診療の中で困っていて、解決したいものをどうするかの視点が、結構大 事ではないかと私は思っています。  その点で、こういった高度医療評価制度で先ほど山口座長代理がおっしゃったように、何だか わからないようなものをみんな認めてしまうのではなく、きちっとしたデータを出せる、それだ けのプロトコールと実施体制が不可欠です。そして承認申請できるかどうかはそのデータを吟味 してということですから、最初から承認につながることを前提にはできない。これはやはり見な いとわからないということかと思います。 ○猿田座長  いま先生が言われたように、特にこれは高度という言葉が付いているものですから、実際に今 までも高度ではない、ただ未承認のものをポンとこっちへ持って来て、ここしか出せる所がない からということもあって、それでは困ることがあります。それと堀田構成員が言われたように非 常に稀な病気で治療法がなく、ほんの数例のようなものの場合にはこの制度でやれば、ある意味 で混合診療ですから、その点で患者さんにも負担が少なくてできるメリットもあります。  私がひとつ思うのは、高度医療の内容がまだ皆さんに理解してもらっていないのではないか。 もう少し幅広く、この高度医療制度というのはどういう形で、どういうふうに皆さん方がここに 出せばいいか、そういったことをもう少し理解していただくこと。まずアピールすることが重要 ではないかと感じます。 ○山本構成員  この高度医療評価制度というのは、日本独特の保険制度と臨床試験というものを、何とか整合 性を合わせるために作られている部分もある程度あって、そういう意味でかなり日本独自の制度 だと思います。一部の臨床試験について、いま日本でこうやってやられているものは、結局、施 設の倫理委員会で倫理的評価を行っていて、ここでプロトコールと倫理審査の両方が行われます が、プロトコールについて、かなりここで科学的評価がなされ、事前評価をして、その上で走ら せることになっています。  これは、EUのClinical Trial Directiveの一部版というような形になっていて、いまEUでは 2002年ぐらいから、医薬品に関して、すべてのクリニカル・トライアルは、スポンサーが誰かを 問わず、プロトコールの事前審査を各国の規制当局が見ている。同時にEUの場合は施設でない 場合もあるのですが、必ずあるethical committeeが見ている。医薬品に関しては、すべてのクリ ニカル・トライアルでそれが行われている。  高度医療評価制度は逆に言うと、そのうちの一部を、EUと同じスタイルでやっていると言って もいいと思います。この場合に問題になるのは、EUの場合はファースト・イン・マン・トライア ルも含めて、すべてかかるのですが、この高度医療評価制度は保険の制度の問題があって、ファ ースト・イン・マン・トライアルは基本的に見ないことになっています。逆に言うと、いちばん 危険性の高いところを施設の倫理委員会にだけお任せしていて、ある程度安全性が大丈夫かなと いうものがここに挙がってくるという、ちょっと矛盾した状況になっています。  最初に保険の問題等々いろいろあって、始まった制度とは思いますが、保険を重視して制度を 作るのかどうか。臨床試験というのは必ず被験者にリスクがかかりますので、そのリスクを下げ るためにどうすればいいのかという目的から考えると、本当はこういうプロトコールの事前審査 を行うのは、どちらかというと、より早い段階で事前評価が行われていくべきだと思われます。 そこのところが、私がこの高度医療評価会議で評価をしていて、いつも気になっているところで す。ですから制度自体をどういう制度設計にするかというのは、今後、考えていただきたいと思 うのが1つです。  それと、どうしてもこういう形でやりますと必ず数カ月以上の時間がかかりますので、コンパ ッショネートユースというか、ものすごく人数の少ない場合はトライアルとして成立しない場合 もあると思います。それを無理やりクリニカル・トライアルという形でこの会議に乗せるという のも、結局、保険との兼合いでそうせざるを得ないということになって、科学性とか倫理性とい う観点から見たら、あまり効率的でも効果的でもないように思いますので、本当にコンパッショ ネートユースというやり方を別途立てていく。保険の中でどうやってやるかというところで始ま った制度だとは思いますが、もうちょっと全体を見回して制度設計し、将来的には科学性、倫理 性を保って、被験者の安全性をいちばん担保できる方法は何かということも含めて、制度設計を 見直していく必要があるのではないかと私は思います。 ○猿田座長  いま、先生からお話がありました保険との関係ですが、この高度医療評価会議はあくまでも医 政局ですし、先進医療専門家会議のほうは保険局がやっていますので、そこのところで私がいつ も議論するのは、ここで通したものが向こうへすぐ回るでしょう。そこが親会議になっていて、 そこで潰れてしまうこともあるわけです。そこは何度も私は保険局に言ってきたのです。この制 度は非常にいいし、この制度をしっかりさせる必要があって、いま先生がおっしゃったように本 当に保険にいかないものがあるわけです。しかしながら患者さんにとっては非常に重要です。  日本の政府が始めたことも、いわゆる総合政策企画会議で私たちが言われたことは、要するに どうして最先端のものが患者さんのところに届けられないのだと。本当に安全性があって少しで も効果があれば、すばやく患者さんに臨床試験として持って行くべきではないかというのが、最 初にトランスレーショナルリサーチを作ったときの基本です。そこでやってきた技術というのは、 どうしたってすぐ保険に持っていけるものではないですから、ではそれをどこに出すかというと、 やはりここへ出してくる。ここでかなりの症例を積み、これを次のステップとして、どこへ持っ ていくかを医政局で議論していただきました。かなりここまで持って行ってくださったというこ とは、非常にうれしいのです。ただ、いまの保険との関係はもう少しすっきりしないと、そこの ところはいつも引っかかってしまうのです。  私はいつも先進医療専門家会議のほうだと言うのですが、先進医療の先生方というのは保険に かなり近いと思っていますから、何でこれはということで必ず議論になってしまうのです。そこ のところをどういうふうに持って行くかを、いつもお願いしているのです。ここまで持って来て くれましたから、その先のところをどうするかです。医政局で決めていることを、今度、保険局 のほうの先進医療専門家会議にかけて議論になるのは当たり前ですから、そこのところをどうす るかは非常に大切だと思います。  ただ、トランスレーショナルリサーチをやってみて、本当にいい、本当に大切な技術もあるの です。ほんの少ししかエビデンスがないけれども非常に重要だというのは、どうしても高度医療 で出てきますから、そういった点では理解していただきたい。ただ、前へ進めていただくことに 関しては私どもは非常に感謝しています。もうちょっと頑張っていただきたい。 ○柴田構成員  論点メモのほうに書いている、「必ずしもGCP基準に適合していなくても、高度医療のデータ を治験の計画根拠に使用することは、現在でも可能である」と線が引かれている部分です。これ は明確になったということは大きなことだと思いますが、ちょっと懸念することがあります。そ れについてコメントさせてください。  仮にこれが世の中に出て、これから高度医療に出てきたものが薬事承認のときに、治験の代わ りということではないにしても、治験を計画するときの根拠情報として使われるケースが、これ から出てくると思います。そういう場合に、そういうものは認められないというふうに厚生労働 省あるいはPMDAの側が判断することも、きっとあると思います。どちらかというと、そういう ことのほうが多いのではないかというのを懸念しています。  というのは、手続上そういうことが可能であるということと、実際にそういう根拠に使えるよ うにきちんとデータが取られている臨床試験であるのかというのは、全く別の次元の問題です。 このようなものを書いていただけたことは非常にありがたいことですが、逆に外にいて研究をし ている側としては、こういうものに応えられるように、きちんとした研究計画を立案できないと まずいと思います。制度がないから研究が進まないのだとだけ言い続けていると、十分な質が担 保できていない研究のまま研究がなされることになってしまって、それは将来的に、その医療行 為を保険診療の中に投入しようとするときに、足枷になってしまうことはどうしても否めないと 思います。  もちろん、すべてが大規模なランダム化比較試験の必要な医療行為ばかりであるとは限りませ んが、single armの小規模な試験であっても、その試験なりのきちんとしたデザイン、データの 集め方、研究の実施の仕方、倫理的な側面というのはあるはずで、そこの部分が研究者の側でき ちんと詰められていないのではないか。そのことがすごく懸念されます。  これまで20数件、申請が上がってきたものの中で、すんなりとすぐ通ったものが数件、もたつ いてしまったものがたくさんあるという状況にありますが、現状、すべて医療機関側で専門の先 生方がプロトコールを書かれて、医療機関側のIRBで承認されているにもかかわらず、見解の相 違とかそういったレベルではなく、もうちょっとプリミティブなところで問題のあるプロトコー ルが多いというのは、現状の問題として把握しておかなければいけないと思います。せっかくこ ういうものを明らかにしていただいても、新しい医療行為が臨床現場に出て行くまで、まだまだ 解決しなければいけない大きな問題があるというのを、研究者側がきちんと理解できるようにな っておかないと、例えば3年後、5年後に、また同じような問題が繰り返されるのではないかと 懸念していますので、そこのところは、できる限りきちっとしたプロトコールを立てられるよう にと思います。 ○猿田座長  先生がおっしゃったとおりで、トランスレーショナルリサーチをやっていていちばんわかった ことは、プロトコールをきっちり作成して、本当に臨床統計がしっかりできる人が日本では非常 に少ないのです。だから高度医療の構成員に負担がいってしまっていますけれども、村上構成員、 一言ありませんか。 ○村上構成員  いや、もう何もございません。 ○猿田座長  本当に臨床統計がしっかりできる人が日本では非常に少ないことをすごく感じました。そんな ことでTRの拠点を作って、そこで少しでも先生方に、そういうことをわかっていただこうとい うことで、いま日本で7カ所作っているのです。そこを見ていても本当に人がいないのです。だ から、いま先生がおっしゃったことは非常に重要で、プロトコールのしっかりした立て方が重要 なのですが、なかなかまだうまくいっていないというのが現況です。 ○伊藤構成員  今日は物議を醸す発言をしても、大丈夫な日のように思うので言うのですが、藤原構成員あた りが言うのだろうと思っていましたけれども、いまの高度医療の制度というのは大変画期的な制 度で、もともと適応外の医薬品を使えるような形にするのに、いちばんいい制度だろうと思って いますけれども、究極はアメリカのリサーチINDのような話を、目指していかなければいけない のではないか。高度医療制度というのがここで良しとするのではなく、次のステップに向けての 議論をしなければいけないのではないか。そういう問題提起はしておかないといけないと思って 発言しています。  ただ、現在の治験の制度は大変タイトなので、それを研究者レベルでやれと言われても大変な のです。医薬品の企業に求める基準と、リサーチINDに求める基準を明確にするようなところも 含めて、次の制度設計に向けての議論がされるとありがたいと思います。  研究とは別にして、実際に困っている患者さんに関しては、コンパッショネートユースのよう な形というのが制度としてあるほうが、医療現場は楽ではないかと思います。ただ、コンパッシ ョネートユースがあまりにも広く使われすぎると、データとして得られないまま使われることだ けは避けなければいけない。そういう二律背反はあるのかなとは思っています。 ○猿田座長  医政局と医薬食品局とが、ずいぶん議論していただいたのですよね。藤原構成員、ご意見はあ りませんか。 ○藤原構成員  リサーチINDは、いつも言っていることですが、今日は川上構成員がいなかったから、川上構 成員がいたらたぶんおっしゃっていたと思いますけれども、山本構成員が先ほどおっしゃってい たファースト・イン・マンのところで大事です。去年ぐらいに、ファースト・イン・マンの話は、 ここでは取り上げないという話になりましたけれども、私どもがこれまで、この20数件の高度医 療評価のプロトコールを見てくると、日本の医療機関の各IRBの科学的審査の質があまり高くな いと感じるのです。サイエンティフィックなrationaleや臨床試験の方法論が全然ディスカッショ ンされないまま承認され、ここに挙がってきて、こちらでプロトコールをよく見てみたら、全然 評価に耐えないというものが結構あるのです。  そういう実態の中で、ファースト・イン・マン・トライアルを、先ほど山本構成員がおっしゃ ったように、医療機関の院内製剤を使ってフリーハンドのまま、施設のIRBがいいと言っただけ で、患者さんに投与されている今の日本の実態というのは、非常に危ないと思います。ファース ト・イン・マンを高度医療評価制度で面倒をみないと決めたのは、保険財政の観点から、そんな ものはお金でフォローすることはできませんというのが、たぶん主因だったと思いますが、被験 者の安全性という観点からすると、きちっとした第三者評価を、そういういちばん危ない、リス クの高い試験に対して行うのが、国の責任だと思うので、将来的にはファースト・イン・マン・ トライアルを、第三者の目が入る所でプロトコールを評価する仕組みを、それはたぶんリサーチ INDになると思いますけれども、導入していただきたいと思いました。 ○猿田座長  なかなか難しいところですね。ほかにご意見はございますか。 ○審査管理課長  医薬局の審査管理課の成田です。遅れて参りまして申し訳ありません。前半の議論を伺ってい ませんが、私どもの医薬品のほうの承認審査という観点からすると、高度医療の部分については、 まだそこまでの手続が入っていない段階です。日本の新しい科学技術の実用化という意味では、 高度医療はいいのですが、その高度医療で止まっていただくわけにはいかないわけで、その先に ついてのステップはどういうのが必要かの話ではないかと思います。  そのときに、リサーチINDとかコンパッショネートユースという話もありますが、基本に返る と、どこがどうなのかわかりませんけれども、研究開発体制の強化のところのサポートをどうす るか。体制ができていないからそういう話になっているのであって、そこを審査のほうに置き換 えていただくとすれば非常に困った話だなと思っています。そこは是非、研究体制の整備をやっ ていただくところを強調していただきたいと思っています。 ○研究開発振興課長  一言、申し上げます。いま審査管理課長からご指摘があった点ですが、いろいろこれから検討 する必要があると思っています。まさに先生方からご指摘いただいた点も、我々はいま論点を共 有していると思っています。そういうところの1つとして、これから研究体制というか研究のレ ベルというか、それをどう我々として引き上げていくことを考えるのか。先生方からどうご協力 がいただけるのかということも重要なポイントの1つだと思っています。  そういうところと、こういったところでのいろいろな議論と、もう1つは薬事法の承認申請と の関係といったところを、ある程度同じ土俵に乗せられるようにするというのは、これからどの くらい時間がかかるのかわかりませんが、議論の方向としては考える必要があるのかなと個人的 な見解も含めて申し上げます。その中でこれからどういうところから仕事を進めていくのかは課 内、局内あるいは省内でも議論を進めたいと思います。また先生方ともいろいろご相談はさせて いただきたいと思っております。 ○猿田座長  かなり進めていただいたことは私どもはありがたいのです。藤原構成員、先ほど言った各施設 の問題、少なくとも臨床研究の倫理指針はしっかり出ましたよね。あれをもう少しきちんと読ん で、各施設やってくれと言っても、あれをまずきちんと理解してくれていない所が多いのです。 それで全国を回ってみると本当にそれを感じます。やはりあれをしっかり読んでいただきたい。 それから先ほど言ったように、全国の各施設を回ってみると、やはりプロトコールがきちんと作 れる人、本当に評価できる人、生物統計などをしっかりやっている人が日本では少ないです。そ れがないためになかなか進んでいけないということです。ただ、この高度医療は、うまくこれか らもっと伸ばしていけば確かにいい制度なのです。だからこの後どのようにしていけばいいか。 そこのところを皆様方の力を借りて、きちんと出口をしっかり、安全性と有効性をうまく持って いきながら、このデータを使っていくということは、非常に重要だと思うのです。 ○竹内構成員  柴田構成員が言われていたことなのですが、線が引いてある「必ずしもGCP基準に適合しなく ても、高度医療のデータを治験の計画根拠に使用することは、現在でも可能である」と。これは 非常にいい手法だと思います。ただ高度医療の臨床試験の計画根拠として上がってくるデータは、 絶対にGCP準拠は出ないと思います。 ○猿田座長  そうでしょうね。 ○竹内構成員  非常にGCPががっちりしておりますので、高度医療に上がってきたもので、有効性があるかも しれない、でも安全性のところは定期的なモニタリングをするなど、そういう形である程度安全 性は保っていくことだけは保証していただいて、あとは治験に持っていかないといけない。とこ ろがいま希少疾病についてのデータが高度医療に上がってくると、どうしても私たち統計家から 見ると、検証するためには統計的に考えて、これこれのデータ数が要ると。そうすると申請者に してみれば、とんでもないけれども、そんなことはできませんよと。ですので治験という枠組み の中でももちろん生物統計は大事だと思うのですが、現場のニーズとどこまで統計の有効性、安 全性の検証をするかが、少し各疾患別に考えていただければ、非常に高度医療に上がってきたデ ータを次の治験に考えていく場合に、どのくらいのデザインをやって、しっかりとしたGCPに基 づく臨床試験をやっていただく形につなげていただけると、非常にいいのかなという気はしまし た。 ○猿田座長  なるほど。 ○山本構成員  高度医療評価制度が、結局猿田座長がおっしゃったように、トランスレーショナルリサーチか らすぐ出てくるような、非常に臨床評価の入口のごく入口に近い部分から、承認申請という出口 の直前まで全部をカバーできる、そういう制度ではないと思うのです。 ○猿田座長  そうです。 ○山本構成員  やはりどうしてもいま確立している保険制度に、すべてを合わせようとして、逆にいろいろな 所にゆがみが生じているような気がしますので、1つは保険制度と臨床研究、臨床試験がきちん と両立するようなところは、それは根本的に整備をしていただかないと、それが両立しませんと、 両立しませんと言っていらっしゃるかどうかは確実ではありませんが、一般的に両立しないと思 われている状況の中で、抜け道を作るような形でいろいろな制度を特別の道というように作って いるのでは、おそらくいつまで経っても根本的な解決にはならないだろうと。  ただ、日本の臨床開発に問題は山積しており、それこそ統計家が少ないというところから、モ ニタリングはできない、プロトコールを作ることができない、施設のIRBのレベルがいろいろあ りますが、お粗末な所も多いと。それから医学教育の中でも、臨床評価に関する教育ができてい ないなど、それはもう、1つのことで解決できる問題ではないので、いろいろな手をいくつか打 っていかないと無理だと思いますが、臨床試験、臨床研究に関しては一つは前提として、やはり 保険医療と両立できるような形での整備は必須だろうと思います。  あとはその上で高度医療評価制度のこのやり方をどこまでやるかという問題ではなくて、リス クベースで考えていく。だからリスクの高いものには、より科学的な事前の調査がしっかりとか かるような形にするべきだと思います。その後出口に近い所では、むしろ大量のデータの信頼性 をどのようにして保証するかという問題になってくると思いますので、そこのところはもう少し いまの制度に寄り沿っていく形ではなくて、本来あるべき形にどのようにしてシフトしていくか を、これはかなり何年もかけてたくさんの方々が、行政の方もおそらく皆さん、状況とその問題 点については十分ご承知だと思いますので、あとはそれをどのようにどこから手をつけていくか という問題だと思いますので、この高度医療評価制度も発展的に何らかの形にシフトしていって いただきたいなと思います。 ○猿田座長  先生ご存じのとおり、見ているとここに出てくる技術はもう本当にいろいろな技術なのです。 それですから当然もう保険にいかないものはいくらでもあります。しかしそれで患者さんが助か る部分もあります。ですからそういうところはどうしていったらいいかというのが、やはり非常 に気になるのです。本当に保険に近いもの、それから先ほど山口座長代理がおっしゃったように、 かなり施設を絞らないととんでもないものが上がってきますが、それをどうするかという問題。 そこを縛るために、かなり施設の基準を高くしてやっているわけです。 ○堀田構成員  従来この制度ができる前は、言ってみれば適応外、あるいは未承認のものについて、個人輸入 などをして、それで何となくあまり合法的でない恰好で臨床試験らしきものがいっぱいやられて いるという状況がありました。その中には非常に質の高いものもありますが、どうも臨床試験と いう名前は使っているけれども、ほとんどデザインもないというような、ただ集めて見るだけの ようなものも含めて、学会発表がたくさんあります。そういう中で、この制度ができたことによ って期待されたことは、質の高い研究であれば、それに登録される患者さんの保険診療が併用で 可能になる。したがって良いデザインでここに出して、研究を活性化できるのではないかという 期待が、現場では非常に高かったのです。ところが現実はなかなかそうはいっても質の高い臨床 研究のプロトコールがなかなかできないなど、いろいろな問題があって、ハードルはまだまだ高 いところだと思うのです。  一方で考えてみると、現状で日常診療に近いようなレベルで適応外も含めて、あまりしっかり してない研究も一方では残っている、そういう現状もあるのです。最近はきちんとしたジャーナ ルは、掲載に当たって登録を義務づけています。臨床研究の倫理指針もありますし、ずいぶん環 境は変わってきました。一方で、臨床研究を適応外なり未承認でやっていく環境が、高度医療評 価制度に乗せなければもうやれないのかどうかというところが、現場の人たちは戦々恐々として いるという状況もあります。ですから臨床研究の活性化のためにあまりハードルだけを高くする というのはどうかと思います。それで結果的に例えば、保険承認申請に使えるに近いような質の 高いデータにセレクションをかければいいのではないかというのが私は実感です。研究者サイド にいるとそのようなことも考えます。 ○猿田座長  特にこの制度でわかったことは、プロトコールを担当してくださった先生方には、本当にいろ いろな形の研究が出ています。大変苦労して、何だこれは、というようなもので出てくることが あり、その辺りのことをもう少しともかくプロトコールを担当している先生方が負担にならない ように、もう少し絞って出てくればと思うのですが。どうしたらいいかはなかなか難しいです。 プロトコールを見ているといろいろなものが出てきますが、何かありますか。 ○柴田構成員  いま堀田構成員からお話がありましたように、あまりハードルを高くしすぎるのもどうかとい うのは現実問題としてあると思います。基本的にはおっしゃるとおりだと思いますが、一方で目 標を掲げないままズルズルやってしまうと、質が上がるインセンティブがかからないという問題 も出てくると思います。例えば、しっかりした計画が出てくれば、高度医療評価会議の中でもス ッと通っている、あるいはしっかりした計画でなければ高度医療評価会議にかかっても1年かか ったり、2年かかったりするものがあるという現実をきちんと詳らかにして、そうであれば「う ちは時間がかかってもいいから、これぐらいのレベルでしかできないけれども頑張る」という施 設もあるでしょうし、「うちはもっと早くやりたいから体制整備をして一発で通るようにしたい」 という施設も出てくるかもしれません。最低限の倫理性と科学性が担保されていれば、それは施 設の事情により決めていただければいいところもあるかもしれません。そこの部分のインセンテ ィブをかけないまま、どのようなものであっても結果の平等が保証されるというプロトコールの 評価をしていると、たぶん質の高いものを作るというインセンティブがかからないままになって しまうと思います。そこは危険ではないかなと思います。  現状は、やはりすべてのものの質を完璧に治験に揃えろなどということは無理であるし、非現 実的ですが、例えばGCPに適合している、していないという観点だけではなくて、プロトコール をしっかり書ける、あるいは臨床的な仮説を明確にできる、あるいはアンメット・メディカル・ ニーズが何なのかを明示できるということは、研究者の側の知恵を絞ればできる部分のはずです。 知恵を絞ればできる部分については、やはり質を上げるような努力が研究者の側でできるような 仕組みにしておかないと、それを何でも薬事規制のせいだという話にしておくと、進歩が滞って しまうのではないかなと危惧します。  これを申し上げるもう1つの理由は、適応外使用を伴う治療開発に、よく企業の側が承認申請 しないからまずいのだという話はあります。例えば、オーファンであったりして出来ようがない というのもあります。それだけではなくて、薬だけ独立して評価のしようのない治療法はやはり あるわけです。例えばがんの領域では、化学療法と手術とを組み合わせた一連の治療法などとい うものであれば、化学療法だけ抜き出して評価をして、薬事申請するというのは、やはり難しい 部分はあると思います。一連の行為として、それがよいものであるのかを評価するというときに は、やはり薬事法の側からそういう治療評価を見ると、うまくいかない部分が出てくるのです。  つまり治療法の評価を薬事法の側から見て、それを拡大するという議論ばかりしてしまうと、 そもそも患者さんにどのような医療行為を、どういう治療法を届けたいのかという議論が抜け落 ちてしまう危険性もあります。そういうところも考えるとやはりしっかりした研究計画を立案で きる研究関係の体制整備が抜け落ちてしまうと、折角いい制度を作っていただいても、いいもの が出てこないことになってしまって、危険だと思います。いまの時点で百点満点をすべて目指す べきだということを申し上げているわけではなく、少し長いスパンで考えるとそういう方向性に、 インセンティブをかけるような運用をしていただければいいのではないかなと思います。 ○猿田座長  ずいぶん貴重なご意見をいただきました。要は、高度医療をこれからどのように持っていくか が非常に大切なので、ずいぶん医政局にも苦労していただき、医薬食品局とも相談していただき ました。どのように進めていけばいいかはこれからも議論していただきたいのですが、高度医療 評価制度は、非常に大切ないい制度だと思っているのです。ただ、もう少しそれが磨きがかかっ てきて、特に保険との関係がどのようになっていくかということの見通しが立つようになればと 思います。先進医療との関係はずっとこのようにいくのですか。私はいつも気になっているので すが、どうですか、ご意見ございますか。 ○保険局医療課企画官  猿田座長には先進医療の会議においても、議論の取りまとめ、進捗などについてお力添えいた だいており、両方でこの制度自体は少しずつ手直しをしながら、経緯がある中でなるべく保険適 用、先ほど山本構成員から主にこの制度設計が保険適用に重きを置いて、制度が運用されてきた のではないのかなというご指摘と私は理解したのですが、事実関係としてある一面それはあるの だろうと思います。しかしここでご議論があったように、それがすべての軸ではないのだという ことも踏まえて、両方の会議でいろいろなご指摘を現に受けておりますから、ここに並んでいる 事務局のそれぞれの所管とうまく整理をして、最終的にはやはりいかに早くいい技術を保険適用、 あるいはさまざまなエビデンスの収集に資するような形にできるのかなということを少し勉強し ていきたいと思っております。 ○猿田座長  どうもありがとうございました。是非よろしくお願いいたします。今日はこういう時間ができ ましたので、議論していただき、特に問題点もよくわかりました。先生方からもどんどん意見を 出していただき、少しでも実り多いものにしたいと思います。要するに大切なことは、患者さん に良い医療を届けることがいちばん基本的なことですので、もしほかにご意見がなければ一応こ ういう形でここまで議論していただいたということで、問題点も少しずつわかっていただけたか と思います。時間があればこういう機会を作っていただき、是非、研究開発振興課もこれからも PMDAなど、特に医薬食品局とも相談しながら先をどのように進めていけばいいかなど、そうい うことを議論していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。特にご意見がな ければ、少し時間は早いですが、これで第14回の高度医療評価会議を終わりたいと思います。ど うもご協力ありがとうございます。 ○事務局  次回の日程は、3月26日16時30分から18時30分を予定しております。場所等は決まりまし たら、追ってご連絡申し上げます。本日の議事録については作成次第、先生方にご確認をお願い し、その後公開させていただきますので、併せてよろしくお願いいたします。 ○猿田座長  どうもありがとうございました。それでは終わりたいと思います。ご協力ありがとうございま した。 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課 TEL 03−5253−1111 高度医療係 松本 内線2589