10/02/22 平成22年2月22日薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成22年2月22日(月)  16:00〜 厚生労働省共用第8会議室 2.出席委員(13名)五十音順    飯 沼 雅 朗、 岡   慎 一、 守 殿 貞 夫、 清 水 秀 行、    竹 内 正 弘、 田 村 友 秀、 土 屋 友 房、 浜 口   功、    早 川 堯 夫、○堀 内 龍 也、 前 崎 繁 文  溝 口 昌 子、     ◎吉 田 茂 昭  (注)◎部会長 ○部会長代理    欠席委員(3名)   新 井 洋 由、 庵 原 俊 昭、 山 添   康    3.行政機関出席者    岸 田 修 一(大臣官房審議官) 成 田 昌 稔(審査管理課長)、 豊 島   聰(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査センター長)、 松 田   勉(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監)、 赤 川 治 郎(独立行政法人医薬品医療機器総合機構審議役)、 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 定刻となりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を開催さ せていただきます。本日はお忙しい中御参集いただきましてありがとうございます。現在 のところ、当部会の委員数16名のうち12名の委員に御出席いただいております。定足数 に達しておりますことを御報告させていただきます。  はじめに委員の退任がございましたので、御紹介させていただきます。本日の部会より、 池田康夫委員が本部会の委員を退任されております。  本日は新井委員、庵原委員、山添委員より欠席との御連絡をいただいております。また、 田村委員は遅れて来られます。それでは吉田先生、よろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 本日の審議に入ります。事務局から配布資料の確認と審議事項に関する競 合品目・競合企業リストについて報告をお願いします。 ○事務局 まず資料の確認です。席上には、議事次第、座席表、当部会委員名簿を配付し ております。議事次第に記載されている資料1〜6までをあらかじめお送りしておりま す。このほか資料No.7「審議品目の薬事分科会における取扱い等の案」、資料No.8「専門 委員リスト」、資料No.9「競合品目・競合企業リスト」を配付しております。また、当日 配付資料として「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」に関する資料が1 部、当日配付資料2として、新型インフルエンザワクチンに関するノバルティスファーマ 社からの資料を配付しております。これらに関しては、本日の最後に御説明させていただ きます。  続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。 資料No.9を御覧ください。本日の審議議題に関する競合品目の選定理由については、次の とおりです。1ページ、本日の審議議題1のベクティビックスです。本剤は完全ヒト型I gG2モノクローナル抗体であり、本品目と同様の結腸・直腸癌の効能・効果を有する化 学合成製剤としてオキサリプラチン及びモノクローナル抗体製剤であるベバシズマブな どを選択し、さらに本品目と同様の作用機序を有するキメラ型IgG1モノクローナル抗 体であるセツキシマブの、これら3品目を競合品目として選択したとのことです。  続いて2ページです。本日の審議議題2ドキソルビシン塩酸塩注射液50mg「サンド」 です。本申請品目は、ドキソルビシンを有効成分とする医薬品で、本申請品目と同一の有 効成分を有する品目は、こちらの競合品目に掲げている3社の品目のみですので、これら を競合品目として挙げています。以上でございます。 ○吉田部会長 今の事務局からの説明に、特段の御意見等はございますか。  ないようですので、本部会の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、 皆様の御了解を得たものとします。各委員からの申出状況について、報告をお願いします。 ○事務局 各委員からの申出状況については、次のとおりです。議題1の「ベクティビッ クス」について、退室委員は田村委員、議決には参加しない委員は堀内委員です。  議題2「ドキソルビシン塩酸塩の毒薬劇薬指定の要否」については、退室委員、議決に は参加しない委員は、ともにいらっしゃいません。以上でございます。 ○吉田部会長 本日は、審議事項2議題、報告事項が3議題、その他1議題となっており ます。それでは、議題1に入ります。田村委員は議題1の審議の間、別室で待機していた だきます。 ── 田村委員退室 ── ○吉田部会長 議題1について、医薬品機構から概要の説明をお願いします。 ○機構 議題1、資料1「医薬品ベクティビックス点滴静注100mg及び同点滴静注100mg 『タケダバイオ』の製造販売承認の可否等について」、医薬品医療機器総合機構より説明 させていただきます。  本剤は、上皮細胞増殖因子受容体、以下、EGFRと略しますが、EGFRに対する免 疫グロブリンG2サブクラスのヒト型モノクローナル抗体であるパニツムマブ(遺伝子組 換え)を有効成分とする抗悪性腫瘍剤です。  本剤はEGFRに結合することで、内在性リガンドのEGFRへの結合とその後に引き 続くEGFRを介したシグナル伝達を阻害し、その結果、腫瘍の増殖を抑制すると考えら れています。  本剤は、海外では34の国又は地域で承認されています。本品目の専門協議に御参加く ださいました専門委員は、資料No.8にございますとおり、11名の委員です。以下、本剤 の臨床試験成績を中心に御説明いたします。  今回の承認申請では、主な臨床試験成績としては、海外で実施された二つの第III相試験 と、本邦を含む一つの国際共同第III相試験が提出されました。  有効性については、審査報告書56ページの下から6行目以降、及び100ページ上から 14行目以降に示しますように、三つの第III相試験の結果、KRAS遺伝子野性型の進行 ・再発の結腸・直腸癌患者に対して、一次治療として本剤を標準レジメンであるFOLFOX4 と併用投与した場合、及び二次治療として本剤をFOLFIRIレジメンと併用投与した場合 に、それぞれ対照群に対する無増悪生存期間の延長が検証されました。  また、三次以降治療として本剤単独投与した場合、レトロスペクティブな解析結果では ありますが、KRAS遺伝子野性型の患者における無増悪生存期間に高い臨床的有用性の 期待される成績が示されました。以上のことから、本剤の有効性は示されたと判断いたし ました。  安全性については、忍容可能と判断いたしました。ただし、本剤の使用において注意す べき有害事象としては、審査報告書62ページの上から6行目以降、及び101ページの上 から8行目以降に示しますように、infusion reaction、発疹・皮膚障害、心臓障害、呼 吸器障害、電解質異常、眼障害及び消化器障害が認められております。また、国内臨床試 験では、本剤単独投与のみが検討され、二次治療例を対象とした国際共同試験に参加して 本剤とFOLFIRIレジメンが併用投与された日本人症例も9例であり、FLLFOX4及びFOLFIRI との併用における日本人の安全性の情報については、海外試験からおおむね類推可能であ ると判断しております。  しかし、日本人の情報が限定的であること、製造販売後には、がん化学療法に十分な経 験と知識のある医師による慎重な観察と適切な処置が可能な状況での使用が必要である こと、また、審査報告書72ページの下から18行目以降、及び105ページの上から15行 目以降に示しますように、製造販売後には全例調査により有害事象を迅速に把握し、速や かな情報提供を行う必要があると考え、承認条件として設定することが適切であると判断 いたしました。  以上のような審査の結果、機構は、「KRAS遺伝子野性型の治癒切除不能な進行・再 発の結腸・直腸癌」を効能・効果として、本剤を承認することは可能と判断いたしました。  本剤は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間を8年とすることが適当で あり、原体及び製剤は劇薬に該当すると判断いたしました。また、生物由来製品に該当す ると判断いたしました。御審議のほど、よろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 委員の先生方からの御質問、御意見等をお願いします。 ○堀内部会長代理 先ほど高い有用性、特にKRASに変異のないものについて、高い有 用性があるということでした。これは無増悪生存期間についてですよね。ですから、全体 の生存期間は変わらないですよね。本来、抗がん薬というのは、生存期間がどのくらい延 長するかを、主要評価項目にすべきではないかと思いますが、添付文書を見ても、無増悪 生存期間のKaplan-Meierは出ているのだけれども、全体の生存期間については出ていな いです。これは抗がん剤の評価として妥当なのでしょうか。 ○機構 今回提出された試験成績については、いずれもPFSが主要評価項目という形で 設定されておりまして、OSについては副次評価項目として検討されています。  ファーストライン、セカンドラインについては、すべてのイベントが出てきている状況 ではないので、差がないようには見えますが、これが将来的にいろいろとイベントが出て くれば、また審査報告に描いてある絵も少しは変わるとは思います。当該領域の患者にお いては、PFSで評価していくことは可能だろうと判断しております。 ○堀内部会長代理 どういう根拠に基づいてですか。一般的にそれは通るのですか。 ○機構 この治療の後に、実際は様々な治療が行われるわけですが、その後治療として、 既に生存期間が示されている薬剤があれば、実際にその影響を受けるので、今回の場合で すとPFSでも一定の評価ができるだろうと考えております。 ○堀内部会長代理 余りよく分からないのですが、要するに化学療法をやって、効かなく なった患者さんにやっているわけですよね。ですから、その後の治療というのは、余り考 えられないだろうと思うのですが、ある可能性はあるのですが、結局OSを見ると、ほと んど差はないと思いますが。 ○機構 今の先生からの御指摘は、「三次治療以降」の試験成績というところでしょうか。 ○堀内部会長代理 いいえ。すべてのデータがそうなっていませんか。OSで有効だとい うデータは、私は余り見付からなかったのですが。 ○審査第五部長 補足させていただきます。まず、大腸癌領域の治療体系としましては、 今、現時点で生存期間の延長効果が認められている薬剤が幾つもありまして、今回の本薬 に関しては、まずファーストラインで、PFSに関しては有効な延長が認められました。 OSは一体どうなっているのかというところですが、まずイベント数として、その議論を 最終的にできる話ではない、副次というところもありますが、そういう状況であることが まず一点です。  また、PFSが延びることにどういう意義があるのかということは、このラインにおい ては、次の治療に有効な治療、つまりOSに影響のあるような治療法が存在すると。例え ばファーストラインではFOLFOX系の治療法が行われるわけですが、その後にFOLFIRIの 治療が行われます。FOLFIRIのレジメンを用いることによって、延長化を来すというよう なことがあります。  したがいまして、ファーストラインでPFSが延長するということは、その後の治療の スタートラインが遅らせられるという観点もあります。 ○堀内部会長代理 FOLFOXとかFOLFIRIとの併用については、既にやって比較をしてい るわけですよね。それで、余り差がないというデータになっていると思いますが。 ○審査第五部長 余り差がないというのは、何と何の比較でしょうか。 ○堀内部会長代理 併用しているのと、例えばFOLFOXと比較をして。 ○審査第五部長 FOLFOX versus FOLFOXプラス本剤に関しては、PFSが延びていると いう事実がございます。 ○堀内部会長代理 これは本来の抗癌薬のところに戻るから、ここで議論をしてもしよう がないのかもしれませんが、例えば6か月延びたというのだったら十分に分かりますが、 有効性があるのとないのとデータによってかなり違いますね。 ○審査第五部長 1日延びた、2日延びたでは意味がないのだという御発言でしょうか。 ○堀内部会長代理 1日延びた、2日延びたでは意味がないと思います。この薬が承認さ れると、高価な薬価が付くと思います。我々が使用する場合に、薬価も考慮していかない と、これまで抗がん薬が分子標的薬によって医薬品費を押し上げるという議論もされてい るわけですので、ここに書いているように、余り条件を付けないで、KRASが野性型で あるということだけで承認をする。そうすると、これまでの例もそうだと思いますがかな りの患者に使われることになります。ところが、これまでのデータを見ると、無増悪生存 期間は一定程度あるとしても、OSについては、余り明確ではないというように思います。 この辺をどう評価するかということになると思います。 ○吉田部会長 PFSで有意差が出ていて、OSで有意差が出ていない状況で承認するの はいかがなものかということですか。 ○堀内部会長代理 そうです。 ○吉田部会長 最近では大腸癌の患者さんでもセカンドライン以降の化学療法が効いて、 大分長生きするようになりましたので、臨床試験の場合でも、乳癌と同じでなかなか亡く ならない、つまり、イベントが起こりません。このため、データが固まるまでに相当な期 間がかかってしまうということもあって、PFSをプライマリーエンドポイントに持って くる場合が、最近は非常に多くなっております。この辺について、竹内先生から御意見は ございますか。 ○竹内委員 一番はじめのベストサポーティブケアで実施したものは、途中から後治療が 入ってしまっていますので、多分OSを検証したとしても、この薬が入ってしまうので、 多分結果は出ないと思っています。  一つお聞きしたいのは、FOLFOXとFOLFIRIの場合には、途中で後治療を加えているの かということです。PFSでは差が出ていて、OSでは差が出なかったというのは、クロ スオーバーが許可されているせいですか。 ○機構 ファーストライン、セカンドラインに関しては、クロスオーバーはされていない 試験です。ただ、その後にセツキシマブが入るような例があったり。 ○竹内委員 そこの影響が出てしまうということでしょうか。 ○機構 機構の判断としては、ファーストライン、セカンドラインに関しては、その後の 治療として、生存期間の延長を示すような薬剤がありまして、それまでの期間を延長する ことに意義があるだろうという判断の下、PFSで判断をしたというところです。 ○竹内委員 一点だけ教えていただきたいのですが、FOLFOXとFOLFIRIで中間解析をや っているのですが、それはPFSではなくOSでやっているのです。普通だったらPFS で中間解析するのに、この場合には、なぜOSで解析を実施したのか。もともと中止する 意図はなくてやったのか。既にFDAと協議の下でされたと書いてあったので、何らかの 理由があったかとは思ったのですが、なぜ主要評価項目で中間解析をしなくて、副次評価 項目のOSを中間解析の評価項目にしたのかというのは。 ○機構 PFSの主要解析のときに、OSの中間解析をしているという試験の設定になっ ています。したがって、主要評価項目はPFS、副次評価項目はOSでありますが、OS の中間解析結果のみに基づいて試験を早期有効又は無効中止する計画ではありませんで した。 ○竹内委員 最終的には申請される方はOSを見なかったということの理解でよろしい ですか。それとも、PFSで主要解析をしてしまって、もうそこで終わってしまったと。 ○機構 OSの結果について全く見ていないということではありませんで、OSの Kaplan-Meierの図等を見て、OSが延長傾向があることについては確認していますが、 基本的な評価としては、後にOSの延長が確認されているような治療がある、ファースト ライン、セカンドラインに関しては、PFSでの評価を、PFSの延長によって臨床的な 意義が期待できると判断させていただきました。 ○吉田部会長 質問は違うのです。なぜOSを出してしまったのか、多分答えられないと 思うのですが。それは難しいと思いますが、どなたか御存じですか。 ○堀内部会長代理 ついでに言うと、これから抗がん薬の承認審査の場合に、OSでなく て無増悪のものを主要評価項目としてやっていくということでよいのか聞きたいです。 ○審査第五部長 単純に一律なものではなく、適切な評価項目であれば、評価としては成 り立つと思います。具体的に、PFSはこの部分ではよい、この部分では駄目だという判 断をしているわけではなくて、治療法の状況、薬効を評価する上で、後治療がどのように 影響しているのかも含めて、エンドポイントとして何がよいのかということは必ず議論し ているところです。それも審査報告書に正確に書いているつもりです。  また、以前の例ですが、アバスチン等に関してもPFSの評価も行っているというとこ ろで、大腸癌領域ですと、かなり複雑な治療領域であるために一概にOSの差が出なけれ ばならないということで判断するのは、なかなか乱暴だろうという、様々な御意見もいた だいているところです。したがいまして、今回に関してはPFSをもって承認しても構わ ないのではないかということで、我々としては審査報告書を書いているということです。 ○吉田部会長 この辺は化学療法が進歩してしまったから、こういうことになったのです ね。昔と違い治療法が多彩になって、セカンドの化学療法が効く、サードの化学療法が効 くなんてことが起こると、確かにOSで見る意味がどれ位あるか疑問ということになりま す。乳癌の場合も評価はPFSがメインですので、そういった意味で、PFSで見てはい けないとは私も思いませんが、根拠を明確にしていただければ、それでいいのだろうと思 います。 ○堀内部会長代理 特にこれは大腸癌とか、そういうものの場合ですから、こういうこと が起こってくるのかもしれませんが、今、部会長からお話があったように、その辺の根拠 を明確に出していただければ結構だと思います。 ○審査第五部長 もちろんそういう先生方の御指摘もございます。そのためにも、審査報 告で透明性を高めたいと考えて、いかなるエンドポイントを取るべきだったかという議論 をさせていただいているところでございます。もちろん、それに関しまして最終的に様々 な外部の委員からの意見等を聞いて、ここに至るという流れで、PMDAの判断としては、 審査報告書に細かく書いてあるつもりでして、御指摘のような内容についても、書かせて いただいているところです。 ○吉田部会長 PFSがいやらしいのは、検査間隔が違ってしまったりすると、結果が簡 単に変わってしまうところだろうと思います。PFSの定義がしっかりしているかどうか ということと、取扱いはイベントが起こる前に、きちんと戻って期間を取っているかをプ ロトコールで明確にしているかどうかということだと思うので、その辺さえしっかりして いれば、PFSそのもの自体のうさん臭さというのは、今は大分なくなっていると思いま す。ほかにございますか。 ○清水委員 名称のことで確認です。今回の名称は1物2銘柄に一応なりますね。商標は 同じ商標で、Aの方は商標のみ、Bの方はAと同様の商標プラス会社名という名称の付け 方になっていますが、一般的にこういうルールというのは前例等ございますか。 ○審査管理課長 これについては、武田薬品と武田バイオの関係と、導入品の権利関係が ございまして、最終的にどちらか片方で売るとなっていると聞いています。つまり、今両 方から申請は出ているのですが、どちらかにするとなっています。併売する場合には、ど ちらかが名称を変更する予定であると聞いておりまして、現時点では販売方法が明確にな っていないということで、取りあえずここではこれでと考えております。 ○清水委員 市場に出るときには、違う商標で。 ○吉田部会長 どちらかが消えるのです。 ○審査管理課長 それでどちらかが、通常のルールにのっとった名称にすると。 ○清水委員 通常のルールにのっとった名称にするというのは。 ○審査管理課長 前の方は同じ名称になると問題と思いますので、そこは変えるようにす るということです。 ○清水委員 違う販売名を付けて発売することになるのですか。 ○審査管理課長 はい。 ○清水委員 このベクティビックスという商標は、どちらが使うかはまだはっきりしてい ないのですか。 ○審査管理課長 今のところは武田の方でと聞いております。 ○清水委員 バイオの方が名称を変える可能性があるのですか。 ○審査管理課長 はい。そちらが売り出すときには変更することとなります。 ○清水委員 通常、商標が明確になっていない時点での審査というのはあるのですか。 ○審査管理課長 上程のときにそうしますという条件であれば、そういうことも、契約上 の問題も絡みますので、そこは医療現場で問題のないような前提であれば、対応させてい ただこうと思っております。 ○清水委員 是非そこは医療現場で混乱がないように、確認をよろしくお願いします。 ○吉田部会長 ほかにございますか。 ○堀内部会長代理 EGFレセプターに対するモノクローナル抗体となっていて、EGF レセプターの有る無しに有効性はかかわらないということですが、添付文書を見るとEG Fレセプターうんぬんと作用機序が書いてあります。その点はどう考えたらよろしいので しょうか。 ○機構 御指摘ありがとうございます。その点に関しては、まず本剤に関しては、ファー ストライン、セカンドラインの試験に関して、EGFRの発現が免疫染色により確認され なかった患者さんも組み入れて、検証された試験であるということから、今回の効能・効 果等については、EGFRに関する文言は付け加えなかったというところです。  一方、EGFRの発現と本剤の有効性に関しては、現時点で行われている検査法による 免疫染色による患者選択に関しては、有効な検査方法がないのですが、本薬の薬理学的観 点からはEGFRの発現しているがん細胞に対して、本剤の有効性は期待できると機構と しては考えております。しかし実際に患者選択を行う上では、適切な検査方法が現時点で はないというところで、添付文書等からはEGFRの文言については記載しなかったとい う判断です。 ○堀内部会長代理 臓器で見るようなマクロで見た場合には、EGFレセプターのスペシ フィックな存在というのが、臓器によっては有る無しということを議論していますが、余 り明確ではないので、培養細胞の中でEGFレセプターポジティブのA431とか、そのよ うな細胞であれば、ヌードマウスに入れたような場合には有効性が出るけれども、だから 一応EGFレセプターを介しているだろうと考えられるけれども、その場合ですと的確に 評価できないから、まだどちらとも分からないということでよろしいですか。 ○機構 現時点の方法では、閾値の感度等の問題もありまして、どのぐらいのEGFRの 発現量があれば本剤が有効なのかという明確な相関関係に関する情報は得られていない 状況で、将来的に感度の十分な検査方法等が確立された後には、EGFRの発現と本剤の 有効性の相関等が検討できるのかもしれません。現時点においてできる検査法では、患者 選択を行う検査方法として、適切な方法がないというところです。 ○吉田部会長 禅問答のようですが、よろしいですか。 ○審査第五部長 御説明になるかどうか分かりませんが、審査報告書の102ページの辺り に、先生が御指摘のように、EGFRという抗体ですので、それに関して、効能に付ける かどうかの議論をさせていただいております。最終的には、EGFRの文言に関しては効 能に付けないという判断をした、その件がこの辺りに書いてあるところです。  EGFRの抗体で医薬品が開発されるのであれば、EGFRが強陽性の患者さんに効果 が得られるのではないかというような考えで、当然のようにproof of conspntとして、 II相試験のレベルではされてきたところです。  しかしながら、EGFRの下流にあるKRASが、様々なシグナル伝達にかかわってい るところであり、ある抗体薬で、KRASがミューテーションを持つか持たないかにより 効果が異なる可能性が示唆され、結局、ワイルドタイプに効果があるという研究がされて きたという歴史があります。そのような情報を踏まえ申請者としては、試験としてKRA Sのミューテーションの有り無しで評価をして、最終的な結果を出してきたところです。  したがいまして、EGFRが強陽性では、今測定される方法論では、患者の効果、予測 としては役に立たないという判断が結論に至っていること、効能・効果に記載すると、現 場が混乱に陥るという議論もありまして、付けなかったという審査の流れです。 ○堀内部会長代理 EGFレセプターの情報のカスケードの下流にKRASがあるわけ ですよね。KRASに変異がある場合には、そこでもってぐるぐるリン酸化が回ってしま っているから、情報伝達がどんどん動いてしまっていると。ですから、KRASに変異が ある場合には、その作用が余り明確に出ないという捉え方でよいですか。それで、その変 異がない場合には、まだあいまいではあるけれども、EGFレセプターからKRASへの 経路のところも、この抗体が効いているのではないかという捉え方でよいですか。 ○機構 少し解釈が違いまして、基本的には、薬剤の性質上EGFRを発現している細胞 に本剤は効果があると理解しております。ただ、検査方法として、免疫染色であると感度 の問題が出てきますので、現時点では感度の十分な検査方法が確立されていないので、現 在の利用できる検査方法で検査してしまうと、投与すべき患者さんに投与できない状況に なってしまうだろうというところもあります。今回提出された試験では、現在の方法で陰 性例の患者さんも試験に組み入れられて試験が実施されたところです。 ○審査第五部長 補足させていただきますと、EGFRに対しては、もちろん抗体ですの でターゲットとしてそれは必ずあると思います。しかしながら、この免疫染色という方法 論では、今回効果予測にはならないと判断しただけです。先生のおっしゃるようなメカニ ズムが全くないというつもりで言っているわけではないのですが、今はクリアにはなって いないというのが状況なので、我々としても言及することが難しいところです。 ○吉田部会長 この点について、実は類薬のアービタックスもKRASで効果予測ができ ることが分かっていまして、結局、これらのEGFRに対する抗体の作用は、スモールモ レキュールのようにポイントで効いているのではなく、抗体がある一定の領域を抑えるこ とで抗腫瘍効果を発揮していると考えられています。その辺のメカニズムについては、実 はよく分かっていなくて、抗EGFR抗体として開発したのだけれども、効果の出方を見 てみるとEGFRよりもKRASの発現状態の方に相関していることが判ったというこ とのようです。つまり、理屈はよく分からないけれども、効果予測の再現性はきわめて高 いし、薬効との関係もきちんと成り立っているということなので、その理屈の立たないこ とに関しては腹立たしい部分もありますが、事実としてはそうだということで、認めるし かないのではないかと思います。  ややこしいのは、抗EGFR抗体と書いておいて、EGFRの発現とは関係ありません となってしまうことです。しかし、そのメカニズムを一緒に追及すべきであると言われて も、現時点では多分誰も説明できないと思います。現実的にこういった事実があって、あ とは薬効と有害事象との兼ね合いを見て、妥当と考えられたので認可するというふうにや らないと、多分説明は難しいと思います。今回、KRAS野性型の症例に対して承認する という態度を明らかにしたのは、わが国が世界で初めてということですが、この方向性に ついて私は強く支持したいと思います。  とは言え、やはりものがそうだから、抗EGFR抗体と書かざるを得ないのでしょうね。 ただ、EGFRの発現とは関係ないので、作用機序のところには書けないと思います。で すから、当初EGFR抗体として開発したけれども、実は想定していないようなことで、 KRASの野性型に対してのみ、効果の発現が確認できたためとか、何か少し説明があっ てもいいかもしれません。 ○堀内部会長代理 そうじゃないと、使う方はなかなか大変だと思います。 ○審査第五部長 ややこしい話で、我々も審査の中でこの件に関してはかなり議論をさせ ていただいております。アバスチンの例を挙げると、VGFRの抗体ですが、決してVG FRの抗体とは書いていないということもあります。EGFR抗体であることは間違いな いのでEGFRをターゲットとして作用を現しているのだろうと薬理学的には想定され るわけなのですが、これを効能にEGFRと書いた場合の弊害等も加えて議論をさせてい ただき、最終的にはここに至ったというところです。もちろんEGFR抗体であることは 間違いないです。 ○吉田部会長 書き様としては、添付書類をみるとEGFRとの関係は一切合切無視して ますよね。抗EGFR抗体と書いてあるから、「何で」という疑問は分からないわけでは ないのですが、この辺に関して御意見はございますか。しようがないということでしょう か。 ○堀内部会長代理 添付文書の「薬効、薬理」の「作用機序」のところに、今のような議 論は入れられないのでしょうか。これだとEGFRのことしか書いていない、いわゆる一 般的な話で言えばそうなのですが。薬効との関係が余り書かれていないのです。今言った ように、いろいろな作用機序で働く可能性はあるとは思いますが、それをもう少し書き込 んだらどうでしょうか。 ○機構 非臨床の方で、様々な検討が行われているわけですが、作用機序のところにすべ ての結果を載せているわけではありません。ただ、KRASの話については、開発の当初 は全然そういったものは想定されていないので、そういった非臨床実験が実際どこまでや られているのか疑問です。書ける話なのか、それともまだ検討されていないような内容で あれば、ここにも書けないとなりますので、会社の方でどのような実験がやられているの か含め確認しないと、ここに直ちに何か書けるとはならないと思っています。 ○堀内部会長代理 添付文書というのは、我々使用する立場で考えるから、使用する方に 親切でないといけないと思うのです。ですから、できるだけ正確に、こういうようなこと が考えられるとか、分かっている範囲内で記載をすべきかと思います。 ○審査管理課長 この辺は添付文書もございますし、それから情報提供資材の方が、かな り自由に書ける可能性もあると思いますし、情報提供について検討させていただければと 思いますが、そういうことでよろしいでしょうか。 ○堀内部会長代理 前から主張していますように、添付文書というのは公文書にすべきで あるという議論をやっております。そこは責任を持って、機構としても公的に出ているも のはこの添付文書しかないわけですよね。ですから、書き込めることについては、きちん と書いていただきたいと思います。 ○審査管理課長 分かりました。どのように書き込めるかは、また検討させていただくと いうことでよろしいでしょうか。根拠の文献等々も確認しないといけないと思いますの で、それを含めて検討させていただきたいと思います。 ○吉田部会長 KRASの話のいろいろなベーシックな話はたくさん出ていますので、そ れを引用されるのもいいと思います。取りあえず、なぜそれが引っ掛かるかと言うと、K RASの野性型だけに認めるということをしているので、KRASがミュータントかそう でないかというのは大きな問題になります。その大きな問題が、どうして薬効と関係して いるのだというのが、分からないままというのは、少し不親切かもしれないと思いますの で、どのような理由が考えられるとか、今想定されているメカニズムはこうであるとか、 あるいは新しいことが分かったら追加して説明していくというようなことをしておかな いと、唐突な感じがするかもしれませんね。もし対処できるのであれば、具体的な対応で お願いしたいと思います。 ○審査第五部長 分かりました。検討させていただきます。 ○吉田部会長 よろしくお願いします。 ○堀内部会長代理 添付文書に承認条件が書いていないのですが、これは入るのですよ ね。大抵の場合は、案のところにも承認条件が入っているのですが、これには入っていな いのです。 ○審査管理課長 これは案ですので、最終的には承認条件が固まった段階でフィックスさ れて、出ることになります。 ○堀内部会長代理 本来なら、案の段階で承認条件に入れていただいて、部会でもディス カッションをやっています。 ○審査第五部長 添付文書に反映させる承認条件の文言については、メーカーさんの方が 熟知しているわけではないと思います。承認条件に関しては、審査報告という形で承認条 件をこうしてはどうかということで、結論としては書かせていただいています。4ページ になりますが、承認条件としての提示をさせていただいて、諮問させていただいていて、 議論の場としては、ここに記載されているとおり、条件としたらどうかということで出さ せていただいております。 ○吉田部会長 ですから、規制当局が承認条件を決めたら、それを企業側が添付文書に書 くということですね。今提出されているのはあくまでも案なので書いていないということ ですね。  それから、KRASの野性型と変異型をスクリーニングする場合の、定性試験のバリデ ーションというか、進み具合がどうなっているかを少しお話をしていただけますか。例え ばKRASの野性型だけ承認すると言っておいて、実はKRASの野性型は正確には測れ ませんというと困ると思うのです。 ○機構 この第III相試験で使われたKRASの測定と同じものについて、今申請されてお りまして、審査段階にあると聞いております。このものが実際に発売される頃には、そこ の手当てもできるようになるのではないかと考えています。 ○吉田部会長 同時に世の中に出ていくという方向で準備中ということですか。 ○機構 そのようになるように、審査が進められていると聞いています。 ○吉田部会長 ほかにございますか。ほかになければ、議決に入ります。なお、堀内委員 におかれましては利益相反に関する申出に基づき、議決への参加を御遠慮いただくことに いたします。本議題について、承認を可としてよろしいでしょうか。  御異議が無いようですので承認を可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。 ── 田村委員入室 ── ○吉田部会長 続きまして議題2「医薬品ドキソルビシン塩酸塩注射液50mg『サンド』 の毒薬又は劇薬指定の要否について」です。事務局から概要説明をお願いします。 ○事務局 資料2を御覧ください。ドキソルビシン塩酸塩注射用50mg「サンド」に係る 毒薬又は劇薬指定の要否について御説明いたします。資料を2枚おめくりいただいて、 「概要」について御説明します。  現行の規定についてですが、抗悪性腫瘍剤であるドキソルビシンは、現在その化合物及 び製剤が毒薬に指定されており、「1バイアル中ドキソルビシンとして20mg力価以下を 含有するもの」は毒薬から除外されておりまして、劇薬となっております。したがって、 先発品のアドリアシン注用10は毒薬から除外されております。しかしながら、今回の品 目は先発品と同一濃度の入れ目違いですので、先発品と同様、劇薬に指定して毒薬から除 外することは適当であると考えております。  したがいまして、下の方の3.の「薬事法施行規則の改正案」ですが、新旧対照表にな っていまして、上の部分については毒薬から除外するというところで、下の方の四角は、 新たに毒薬から除外されたものを劇薬として指定する部分です。それぞれ20mg力価とあ るところを50mgに改正したく存じます。以上、御審議のほどお願いいたします。 ○吉田部会長 御質問、御意見はございますか。単的に言えば横並びにしたいということ のようですが。 ○清水委員 競合品のリストに挙がっているドキソルビシン塩酸塩注射用50mg「NK」 については、今は取扱いはどうなっているのでしょうか。 ○事務局 こちらの日本化薬から出るものについても、今回、毒薬指定の解除となります と同じ扱いになります。 ○吉田部会長 これは薬事法の改正になるのですか。 ○事務局 施行規則の改正になります。 ○吉田部会長 ということは、省令扱いですか。 ○事務局 省令でございます。 ○吉田部会長 ですから、ドキソルビシンの入っているものはすべて同じということです ね。 ○事務局 そうでございます。 ○吉田部会長 よろしいですか。御意見がないようですので、議決に入ります。本議題に ついて、指定案を可としてよろしいでしょうか。  御異議がないようですので、指定案を可として、薬事分科会に報告いたします。続いて 「報告事項」についての説明をお願いします。 ○機構 報告事項の議題1「医薬品注射用ノボセブン1.2mg及び注射用同4.8mg並びに同 HI静注用1mg、同HI静注用2mg及び同HI静注用5mgの製造販売承認事項一部変更 承認について」報告いたします。資料3を御覧ください。  本剤は、遺伝子組換え活性型血液凝固第VII因子製剤であり、現在は「血液凝固第VIII因子 又は第IX因子に対するインヒビターを保有する先天性血友病及び後天性血友病患者の出 血抑制」の効能・効果で承認されております。今般、ノボノルディスクファーマ株式会社 から、「先天性第VII因子欠乏症患者における出血傾向の抑制」の効能・効果及び用法・用 量を追加する製造販売承認事項一部変更承認の申請がなされたものです。医薬品医療機器 総合機構における審査の結果、本剤を承認して差し支えないと判断いたしました。  続きまして、報告事項の2番目で、議題2「医療用医薬品の再審査結果について」報告 いたします。資料4は、一般的名称は「デスモプレシン酢酸塩水和物」、販売名は「デス モプレシン注4協和」の医薬品再審査確認等結果通知書です。この品目につきまして、市 販後の使用成績調査等に基づいて再審査申請が行われ、審査の結果、薬事法第14条第2 項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効 果、用法・用量等の承認事項について変更の必要はない「カテゴリー1」と判定したもの です。 ○事務局 続きまして議題3「優先審査指定品目の審査結果」につきまして、資料5「□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□」について御報告いたします。  優先審査の取扱いについて、資料の2ページに概要を示しております。この制度は、薬 事法第14条第7項に基づき、希少疾病用医薬品やその他医療上、特に必要性が高いと認 められる品目について、他の品目に優先して審査を行うものです。その指定に当たっては、 参考にお示ししている適応疾病の重篤性と医療上の有用性を総合的に評価して判断され ております。  資料の1ページにお戻りください。今回承認申請とともに、優先審査の指定申請が出さ れ、指定しないこととした品目は、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□成分 名は□□□□□□□□□□□□□です。□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□  □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□以上より、本剤の 適応疾病は重篤であるものの、本剤は既存の治療法と比較して特段の有用性は認められて いないことから、本剤については優先審査品目に指定しないことといたしました。この品 目については、通常の審査を経た後、またこの部会で御審議いただくことになると思いま すので、その節にはよろしくお願いいたします。以上です。 ○吉田部会長 委員の先生方から、御質問等がございましたらお願いします。よろしいで しょうか。ノボセブンは公知申請でやっていきたいということ、デスモプレシンは234例 の成績が集積されたので、再審査としてこのまま承認したいということと、□□□□□□ □□に対する有効性の審査については優先審査としないという三点です。よろしいでしょ うか。  御意見がないようですので、報告事項については御確認いただいたものとします。「そ の他」について事務局からお願いします。 ○事務局 資料No.6を御覧ください。「希少疾病用医薬品の指定解除の申し出について」 です。1枚おめくりいただくと、希少疾病用医薬品指定書の写しがあります。本題の対象 となる医薬品の名称は「抗II型志賀様毒素ヒト型化モノクローナル抗体」で、予定される 効能又は効果は「II型志賀様毒素を産生する大腸菌感染症による溶血性尿毒症症候群、脳 症又は溶血性貧血の阻止」について、希少疾病用医薬品として、平成15年11月に指定を されたところです。本剤の詳細については2ページです。  資料の3ページを御覧ください。今般、開発企業の帝人ファーマ株式会社から、本剤の 研究開発中止について、申出がきたところです。4ページを御覧ください。その研究開発 の中止に至った結論について、4ページの1.の1)〜5)までをお示ししております。具 体的に申し上げますと、そもそも本剤の対象となる溶血性尿毒症症候群、HUSと称して いますが、こちらについて海外での第II相臨床試験の結果、発症率が非常に低く、有効性 の確認ができなかったことが一点目でございます。  二点目として、その開発過程において、HUSの代替指標、あるいは発症を予測するよ うなマーカーについても検討していたのですが、これもかなわなかったということです。  その結果を踏まえて、米国のFDAにおいては、臨床試験ではなく非臨床試験の成績に 基づいて、有効性を評価する申請区分があるということで、これについて適用をFDAと 協議した結果、これがまた否定されたという状況です。  以上の点から、開発が非常に困難であったこと、さらにそれに加えて4番目ですが、海 外アライアンスによる開発継続を模索しまして、いわゆる海外での共同開発などを模索し ていたのですが、こちらもかなわなかったということで、以上の結果として、本剤の有効 性を示す用法・用量が確認できないということで、今後もその見込みが立たないというこ とから、帝人ファーマ株式会社から申出があったところです。  通常、オーファン指定の解除については、例えば海外開発中に有効性が否定されたとか、 あるいは同種同効薬が既に承認され、開発の意義が薄れたというようなケースで、これま でここ近年オーファンの取下げを認めてきたところですが、今回このような申出があった ことについて、やむを得ないものとしまして、オーファンの指定解除をして差し支えない かどうか、先生方の御意見を賜れればと思っております。以上です。 ○吉田部会長 HUSの発症率が非常に低く、試験の継続ができない。そこで、いろいろ なライセンスを売り渡す交渉もしたけれどもうまくいかない。FDAに基礎研究でいいか と相談しても駄目だと言われ、八方塞がりということですが、O157はなかなか大変な 病気なので、ないと困るではないかという御意見もあり得るかとは思いますが、いかがで しょうか。特に御意見はなしでよろしいでしょうか。  それでは、この報告も了承したということで進めさせて頂きます。本日の議題は以上で すが、事務局から、昨年11月の当部会で審議した「アブラキサン点滴静注用」について、 「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」について及び新型インフルエンザ ワクチンについて等の報告があるとのことです。 ○事務局 アブラキサンからお話をさせていただきます。アブラキサンはパクリタキセル とヒト血清アルブミン1対8の重合比率で製造されるナノ粒子製剤です。昨年本部会にて 御審議いただきましたものです。本剤については大鵬薬品工業株式会社より申請がされ、 昨年11月に開催された医薬品第二部会において審議された結果、承認して差し支えない とされ、薬事分科会に報告することとされました。その後、申請者より本剤が異物混入に よる品質上の問題のため、欧米にて本製品の回収が行われたことなどの報告がされまし た。それを受け、昨年12月に開催された薬事分科会においては、医薬品第二部会におけ る審議結果について報告したものの、最終的な承認の可否につきましては、GMP調査の 実施を含め、品質に関する調査等の結果を踏まえて行う予定であると御報告しておりま す。  現在の状況を簡単に御説明させていただきます。本年1月に申請者が海外製造所を査察 した上で、2月22日に総合機構により当該製造所のGMP調査を行っているところです。 その後、必要に応じて国内製造所についても調査を行う予定でございます。異物の混入と は、有機物タルク等の粒子状の異物で、今後も十分に調査を行うこととしております。ア ブラキサンの状況につきましては以上です。 ○審査管理課長 続きまして「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」につ いて御報告させていただきます。当日配布資料を御覧ください。  目的といたしましては、欧米等で使用が認められているが、国内では承認されていない 医薬品や適応について、医療上の必要性を検討するとともに、公知申請への該当性や承認 申請のために追加で実施が必要な試験の妥当性について検討するということです。未承認 薬使用問題検討会議と、小児薬物療法検討会議を発展的に改組しているものです。  2ページは、構成員のメンバーです。座長には未承認薬の座長をお願いしました堀田先 生に引き続きお願いすることとされました。  3ページです。この検討会議に先立ちまして、昨年の6月から8月にかけまして、未承 認薬・適応外薬についての要望を、学会あるいは関係の患者団体等から募集したものです。 3ページの左側の下の方に、「学会、患者団体等」とありますが、205の団体・個人から 651の御要望をいただきまして、重複をまとめると未承認薬が89件、適応外薬が285件 ということで、374件の要望をいただいております。これについては海外での状況等を確 認したわけではないのですが、御要望の状況をまとめたものが374件ということです。こ れらにつきましては、未承認薬・適応外薬検討会議で医療上の必要性について御検討いた だき、製薬企業に対して開発要請をしようというものです。  4ページ、検討会議における検討の進め方ですが、2月8日に第1回の検討会議を開催 して検討を開始しております。その下に、ワーキンググループを設けまして、医療上の必 要性、各臨床領域について御検討いただくというもので、できた段階で3月末に第2回を 予定しております。まとまった段階で、医療上の必要性があると評価いただいたものにつ いては、各企業に開発要請をしていきたいと思っております。これに関しましては、下の 方に「中医協」とありますが、5ページで、中医協で「新薬創出・適応外薬解消等促進加 算」を22年度から試行的に行われることになっておりまして、それに併せて中医協でも 開発状況について確認していただくという形になっております。そういうスキームです。  8ページ以降に表がありますが、それが実際に御要望をいただいたリストで、374ござ います。これについては、外国での承認状況等について確認した上で、ワーキンググルー プで評価をいただいたき、検討会議でその評価が妥当かどうか等について御検討いただく という予定です。  なお、要請されたもので企業で資料が整ったものについては、順次、関係の部会、医薬 品第一部会、第二部会に上がってまいりますので、それについてはまた御審議等をお願い することになります。  続きまして、新型インフルエンザ関係について御報告をさせていただきます。 ○事務局 それでは当日配布資料2を御覧ください。ノバルティスファーマ社より、「乳 濁細胞培養A型インフルエンザHAワクチンH1N1『ノバルティス』筋注用」のマルチ ドーズバイアルの保存効力について、28日間の保存効力試験結果が提出されましたので 御報告いたします。  2ページを御覧ください。これによりますと、いずれのロットにおきましても、日本薬 局方及び諸外国の薬局方で求める保存効力は認められているということです。抗体の効力 の存続など不明の点も残りますが、現在の他社のA/H1N1ワクチンにおいても、当日中又 は24時間以内の使用が認められていることを踏まえれば、2ページの下の方に書いてあ りますが、申請者の提案どおり、「室温で6時間又は2〜8℃で24時間」という、開封 後の使用期限に改正するということで差し支えないと事務局では考えております。以上で す。 ○吉田部会長 以上の新しい報告議題について、委員の先生方、コメントをお願いいたし ます。 ○飯沼委員 ワクチンのことで二点お伺いします。2ページに今おっしゃったように「室 温で6時間、又は2〜8℃で24時間」と書いてあるのですが、これはどのデータを根拠 にしているのですか。後ろの方を見てもないのです。 ○事務局 事務局より回答いたします。今回、保存効力試験の結果は出ておりますが、6 時間、24時間を厳密に裏付ける試験データは出ていません。もともとの本剤の安定性に ついては、当時の審査報告書によれば、マルチドーズバイアル製剤である本剤に添加され ているチメロサールの保存効力については、本剤を用いた欧州薬局方に準じた保存効力試 験により、開封後の使用期限は初回薬液採取から6時間以内とされたという経緯があった のですが、その後、保存効力試験の結果が28日目まで出たということで、その間の効力 試験に大きな問題はないということと、あとは他剤等の使用方法等を踏まえて、そのよう な改正ができるのではないかと考えています。 ○審査管理課長 補足させていただきますと、これはドイツで承認されたものですが、も ともと特例承認の際に開封後室温で6時間という規定があったものですから、そのまま特 例承認ということで室温で6時間とさせていただきまして、設定されております。その後、 先生方からもやはり6時間では使いにくいということで、保存効力試験を行った上で考え ようということです。国産のワクチンにつきましては10℃以下で当日使用ということに なっておりますが、Q&A上24時間使ってもよいという形で御説明させていただいてお ります。  もう一方の特例承認させていただいたGSKの品目ですが、それも同じく24時間とい うことになっておりますので、基本的にそれぞれ保存効力試験のデータからということで すので、今回も28日間のデータがそろいましたので、他剤と合わせまして、もともと室 温で6時間でしたので、それに加えまして、2〜8℃で24時間を加えさせていただこう というものです。 ○飯沼委員 どう読んでもTeble1からそれは読めないのですが。ですから、何かデータ が欠落しているのでしょうか。例えばこの表1では何℃でやった実験か書いていないので す。後ろの洋文の所にも書いていないです。そこからこの結論が出てきては、少し無理が あるのではないかということです。また御回答くだされば結構です。  もう一つは、開封してから6時間とか24時間と書いてありますが、抗原性は大丈夫な のですか。その試験はやってあるのですか。 ○審査管理課長 保存効力試験自体が最初に細菌と真菌を添加しまして、室温で28日間 保存する試験ですので、基本的には添加してから室温ということで、それはカバーできる のではないかと。 ○飯沼委員 室温ということですね。 ○審査管理課長 試験方法が室温です。細菌や真菌を添加してからの効果を見るというこ とになっております。  それから、抗原性については、基本的には製剤の有効性の確認ということで、有効期間 の設定ということで、10℃以下、加速試験で一応は見ていますので、少なくとも24時間 は担保できるのではないかと思っています。有効期間は6か月ですけれども、それは10 ℃以下で6か月ですので。 ○堀内部会長代理 最近大きなバイアルのものを1回量ずつ薬剤部で無菌的に注射筒に 取って、それを出すというようなことを、いろいろな病院でやっていると思うのです。そ うすると無菌的に取って詰めたものも、24時間以内に使わないといけないということに なるのですか。 ○審査管理課長 基本的にはそうです。 ○堀内部会長代理 それはものすごく大変なことだと思うのですが、24時間という根拠 が余り明確ではないと思います。要するに、無菌的にクリーンベンチの中で詰めて、それ を無菌的にやっているわけですよね。机の上でスタッフセンターとかナースセンターと か、いろいろな所で使っている場合と条件がいろいろ違いますよね。それでも24時間と 言わざるを得ないのですか。 ○審査管理課長 基本的に添付文書上で、通常、本当に無菌的にやっていればどうかとい うのも問題はあろうかと思いますが、通常の使い方で、少なくともここまでは担保できる のではなかろうかということを示しております。もっと言えば、これを超えたら直ちにお かしいかという話ではないと思っております。 ○吉田部会長 早川先生、教えていただけますか。28日間常温に置いて何ともなければ、 冷蔵庫で24時間は大丈夫だというのですが、代替するようなデータは何かあるのですか。 ○早川委員 これは普通の安定性の問題を言っているわけではないですよね。要するに薬 液を取ってからほかのものに感染されないということをテストしているので、室温で感染 されなければ、普通考えれば、一言で言えば、もっと低い温度であればそれは感染されな いだろうということだと思います。 ○吉田部会長 24時間の根拠というのは、単なる目安ですか。例えば36時間放ったもの を注射したら罰せられるとか、そういうことになるのですか。 ○審査管理課長 マルチドーズですので、どういう使い方をされるか想定がなかなか難し いのですが、一応今回は保存効力試験ということで、指標菌を五つ取ってきて、それを打 った形でやっております。ただ、実際にやった場合に、どういう菌が入ってきてそれがど うかというのは、なかなか難しいところもありますが、そこは少なくともこのくらいでは、 10℃以下で24時間であれば説明できるのではなかろうかと。ほかの国産のワクチン、G SKのワクチンと同等程度までは少なくともいけるのではなかろうかと、そういう程度の ところです。 ○吉田部会長 経験値もあるのですね。要するにほかの薬剤の経験等を踏まえて、24時 間で大体これだったら安心と言えるということなのだろうと思います。 ○堀内部会長代理 これに加えて、例えば無菌的に分種した場合には、この限りではない とか、何日間とかそういう表現はできないのですか。例えば金曜日に調製し、月曜日にた くさん患者が来る予定で、使う予定であると。ですから、月曜日にやったのでは間に合わ ないというケースだってあるわけです。ところがこれだと金曜日にやったのは月曜日には 使えないのですよね。現実問題として、医療の現場では、かなりいろいろ不都合が起こり 得ます。特に患者が一度にたくさん来た場合です。流行してくると、患者が一度に来るこ とがあり得ると思うのです。そういうことも考慮した形にしていただかないと。これはや ってはいけないという話になってしまうのですか。 ○審議官 今回のは特例承認で、やむを得ずといいますか、海外で10mLバイアルのもの を認めたということですので、現在のところは、輸入ワクチンについての購入規模が今の ところありませんが、今後こういったものを承認していく際には、やはりマルチドーズと いうよりは、もう少し単回投与のものの必要性を今回、非常に感じさせられたことではな かろうかと思っておりますので、今後、こういったことを参考にしていきたいと思います。 ○吉田部会長 厚労省側に対応を迫っても、役所で実験できるわけではないので、会社の 方でやってもらうしかないということになるのですが、それでやる気がないというとなか なか難しい話になるのだろうと思います。ただ、今のお話のように、マルチドーズの使い 方に関しては、これからもいろいろと良い指導をしていただけるようですので、期待した いと思います。ほかにございますか。  私から一つ質問させて下さい。未承認薬・適応外薬検討会議の話なのですが、国内未承 認薬についてはこれまでの検討会で一生懸命頑張っていただいて、ドラッグラグもほとん どなくなってきて素晴らしいのですが、適応外薬は雲霞のごとくありますので、本当にで きるのですかと言ったら失礼ですが、下手すると対象となる薬がものすごい数になると思 うのです。この辺の仕分けというのは、大体年間どれぐらいやろうとか、努力水準、ある いはこういう条件があれば適応外使用を積極的に認めていくのだという話になるのかと いうのを御紹介いただければと思います。また、私はこういう形で適応外を承認された場 合は、薬価を下げるべきだと思うのですが、そういったことも含めて何かお考えがあった ら教えてください。 ○審査管理課長 適応外で、今まで残っている理由はいろいろあると思います。開発が難 しいとか、市場性の問題とかいろいろあると思うのですが、取りあえず今回、意見を募集 をしましたところ、適応外につきましては280くらいの意見をいただいております。これ については、募集の要件がありますので、それに合致するかどうかについても判断させて いただいて、そうすると、大分減るものがあろうかと思います。 ○吉田部会長 むしろ、これを聞いて「私も」、「私達の学会も」、となると思います。 ○審査管理課長 それについては、検討会議のときにも御意見をいただいたのですが、当 面はこの280件くらいを対応させていただいた上で、今までも年4回くらい会議を開催さ せていただいておりますので、取りあえず今回多いので、これをクリアさせていただいた 上で、また要望についてはお受けしようと思っております。取りあえず、数については、 開発の要請をするという段階がまずありますので、ものによって、時間の掛かるものと、 すぐできるものとがあると思いますので、280が一緒に出てくることは余りないのではな いかと思っております。  検討会でもいろいろ御指摘いただいたのですが、とにかく通常品の審査よりも、当然な がらこの部分が上乗せになって申請が上がってまいりますので、それについての対応はど うするのかというのがありましたが、それについては21年度の補正予算と、少なくとも 22年度の予算の中で、PMDAの方に審査員を増員するということで、予算措置はさせ ていただいております。ですので、内容をこれから精査していただくのですが、それによ って支障がないようにさせていただきたいと思っております。 ○吉田部会長 大いに期待しております。頑張ってこなしていただければ、患者さんにと って大変大きな福音になると思いますので、よろしくお願いいたします。ほかにございま すか。  特にないようですので、よろしいでしょうか。事務局から何か御報告はございますか。 ○事務局 次回の部会ですが、既に御案内のように、4月26日(月)午後2時から開催さ せていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。 ○吉田部会長 ありがとうございました。本日はこれにて終了とさせていただきます。あ りがとうございました。 ( 了 ) 連絡先:医薬食品局 審査管理課 課長補佐 中山(内線 2746)