10/02/19 第2回職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会議事録 第2回職場における化学物質管理の今後のあり方に関する検討会          日時 平成22年2月19日(金)          10:00〜          場所 経済産業省別館827号室                     (担当)厚生労働省労働基準局安全衛生部                      化学物質対策課 奥野               〒100−8916                       東京都千代田区霞が関1−2−2            TEL 03-5253-1111(内線5517)           FAX 03-3502-1598 ○奥野安全専門官 本日は大変お忙しい中、ご参集いただきまして誠にありがとうございま す。定刻となりましたので、ただいまより「第2回職場における化学物質管理の今後のあり 方に関する検討会」を開催いたします。初めに、前回ご欠席の委員が本日よりご出席ですの でご紹介いたします。化成品工業協会技術委員長の塩崎委員です。また、事務局におきまし ては、化学物質対策課奥村調査官が本日より出席いたします。  次に、資料の確認をいたします。お手元の配付資料をご覧ください。まず、会議次第、配 付資料一覧があります。1頁が資料2-1で第1回職場における化学物質管理の今後のあり方 に関する検討海議事要旨です。5頁は資料2-2で、論点の整理です。6頁は資料2-3-1で、 事業場内において使用する容器への表示等に係る各国の規制状況です。7頁は資料2-3-2で、 各国の規定です。10頁は資料2-4-1で、見直しのイメージ案です。11頁は資料2-4-2で、 事業場内表示の考え方です。12頁は資料2-4-3で、各種容器への事業場内表示の案です。  13頁は資料2-5-1で、MSDS対策対象物質の追加です。14頁は資料2-5-2で、追加スケ ジュールイメージです。15頁は資料2-5-3で、追加予定の460物質の選定イメージです。 16頁からは参考資料となっており、16頁は参考2-1-1で、第11次労働災害防止計画の推 進状況、17頁は参考2-1-2で、リスク評価制度の概要、18頁は参考2-2で、災害調査の概 要の補足です。20頁は参考2-3で、産業保健調査研究報告書です。32頁は参考2-4で、化 学物質等の表示文書交付制度のあらましです。また、委員の方々には産業保健調査研究報告 書という冊子を配付しております。資料は以上ですが、落丁等があれば事務局までお知らせ ください。 ○名古屋座長 議事に入る前に、前回の議事録概要について事務局より説明をお願いいたし ます。 ○奥村調査官 それでは、1頁の資料2-1の第1回目の議事概要について説明いたします。 まず、全体に関する事項は第11次労働災害防止計画の達成状況をレビューすることで、今 後検討していかなければいけない事項を抽出すべきとのご意見がありました。さらに、同災 害防止計画にも記載されている「規制と自主管理の適切な組合わせ」を今後いかに推進して いくかということを考えていく必要があるといったご指摘がありました。次の段は化学物質 の危険有害性情報の「伝達」と「活用」に関する事項です。まず、農薬の扱いについて疑義 があり、家属従事者などを除けば、農業従事者も労働保護法法規の適用対象となる者である ことを含めて、広く検討することを事務局よりお願いしております。  さらに、ILO170号条約の批准に向けた検討になるのかというご質問があったのですが、 今回の検討会はあくまでも現在の化学物質管理のあり方を検討していただくという趣旨で あり、ILO170号条約の批准に向けても前向きに対応していきたいと事務局より答えており ます。さらに国際的には、市場においてあらゆる有害物をラベルで知らせるシステムが確立 しているが、我が国においては、そのような概念の基本となる法律がないというご指摘があ りました。  次に、化学物質にどのような危険性があるか、入手した危険有害性情報をどのように活用 すればよいかといった教育が、労働者、管理者双方について不十分であり、MSDSの普及 や活用に係る教育などが同時に促進されないと、MSDSの制度は空回りに終わってしまう というご指摘がありました。表示については、現場の実態に応じてGHS勧告書でも示され ている代替手段を認め、柔軟に自主的なやり方を促進できるものを検討する必要があるとい うご指摘をいただきました。さらに、製品を小分けする際、小分けしたものにすべての要件 を記載することは物理的に困難であるため、GHS代替手段を含め、ラベルの名称は最低限 絵表示を記載するなどといった柔軟な対応を考慮すべきとのご指摘がありました。また、中 毒にかかった労働者が、原因となった物質の名称さえ知らないことがあり、病院における診 療方針の決定に苦慮することもある、有害物についてはそういった視点からも表示が必要で あるというご指摘もありました。  次に、リスクアセスメントの普及に関する事項ですが、どの程度のリスクアセスメントを 実施すればよいかということを明確にする必要がある、最低限実施しなければいけない事項 をはっきりさせるべきとのご指摘がありました。さらに、リスクアセスメントの最も高度な ものとして、REACHで要求されるCSR(化学物質安全衛生報告書)作成レベルのアセス メントができる能力のある会社は限られているというご指摘がありました。リスクアセスメ ントの実施状況の資料として、厚生労働省の労働者健康状況調査ではかなり普及しているよ うに見えるが、現場の実態を見るとまだまだであるというご指摘がありました。さらに、ア メリカの制度も紹介されまして、事業場のリスクアセスメントを実施するに当たり、まず現 場を見て、ばく露評価することから始めているということでした。  さらに、コントロール・バンディングという管理手法がありますが、リスクを判定すると きはばく露限界値が基本であり、コントロール・バンディングによるリスク判定が難しい場 合に初めて測定が実施される、日本では公的なばく露限界値が示されていないといったご指 摘もありました。アメリカでは、コンサルタント会社にコントロール・バンディングを含め、 リスクアセスメント全般を依頼しているという会社もある。また、リスクアセスメントの実 施に当たっては、主に専門家が担当している。日本は法令によって仕組みががんじがらめに 縛られているため、人材が育ちにくい環境であるといったご指摘もありました。  コントロール・バンディングを管理手法に取り入れるという考え方はよいが、国が現在行 っているリスク評価との関係性を明らかにするというご指摘もありました。リスクアセスメ ントを実施するにはある程度の専門性が必要で、やみくもに個々の事業場がリスクアセスメ ントを実施するよりは、専門家が実施したほうがいいというご指摘もありました。中小企業 において、リスクアセスメントはどのように普及されるべきかというのが重要だという結論 だと思います。  4番目に、現行の規制における目標達成手段の限定に関する事項ですが、現行ではリスク がなくても繰り返し作業環境測定をしなければならないこととなっており、その点過剰であ る。測定により作業環境が良好であることを確認した上で、さらに局所排気装置の稼動要件 を課すというのは二重規制ではないか。技術がない人でもできるやり方と、技術がある人が 工夫してできるやり方の両方のやり方があるべきである。リスクアセスメントが提唱されて から、まだ年限が経っていないので定着していないのが当然ではないか。事業者の自主管理 を促進できる体制を盛り込み、インセンティブを付与しつつ、事業者の自主的管理意識を高 めることが必要。技術専門家がいなければ、自主的な管理と言ってもうまく回らない、自主 的な管理には技術専門家がいるというご指摘です。  世界は自主的な管理に移行している一方、日本は従前どおり法規準拠型で管理が行われて いる。ガイドラインにより、化学物質管理の大きな枠組み全体を示し、その中で法規制はこ こを押さえているという位置づけが必要ではないか。この要件を受ける形で、作業環境測定 は健診よりも強い罰則が課されているにもかかわらず、監督署へ届出が義務づけられていな いので、監督署への届出義務のある特殊健診のほうがきちんと実施されているのではないか。 屋外事業場における作業環境測定はガイドラインによって実施が示されているが、実際は実 施されていない、ガイドラインと法令の住み分けが十分行われていないのではないかという ご指摘がありました。  日本の作業環境測定は法令に定められた事項のみをやっていればよいという状況にあっ て、人材が育ちにくいのではないか。健康診断や過重労働、メンタルヘルス対策では、結果 を安全衛生委員会に報告して自主的に事業場内で管理を行っている動きがある。自主的な管 理意識の向上のためにも、作業環境測定を事業場内で周知したり、労働者に健康状況を知ら せることができる体制を整備することが必要。個人ばく露測定結果が労働者に通知されるよ うな仕組みは検討されるべきである。作業環境測定結果に報告の義務を課すのは、やはり抵 抗があるのではないかという懸念も示されました。以上が前回の議事概要です。 ○名古屋座長 ただいまの説明に対して、ご質問等があればお願いいたします。 ○塩崎委員 前回は欠席いたしまして大変申し訳ありませんでした。意見というか質問に近 いかもしれませんが、リスクアセスメントと法規制の関係、もう一面では規制と自主管理の 関係で少し意見を申し上げたいし、ご見解があればお聞かせ願いたいと思います。リスクア セスメントが普及していないので普及させようと一方では進めておりますが、現在の法規制 はそのままになっていること、あるいは法規制の下、有害物に関するばく露調査を基に、国 のほうでリスク評価をやり、リスクが高ければ法規制に持っていこうといった動きがあると 思っております。ですから、自主的なリスク管理と国のリスク管理とが、重複して行われて いるのではないだろうかという気がしております。  さらに、リスクアセスメントの結果を法規制に何らか反映させる検討、あるいは論点が必 要ではないかと思います。例えば、リスクアセスメントをやってリスクが低い場合は、現在 の法規制に対して何らかの緩和措置を取るなど、リスクアセスメントと法規制との関係につ いても論点が要るのではないかと思いますが、この辺いかがでしょうか。 ○半田化学物質対策課長 国が行っているリスクアセスメントについても後ほど簡単にご 紹介しますので、そこで改めてご議論いただきたいと思いますが、私どもとしては一応この ような整理にしております。基本的には危険有害物質すべてについて、事業者の皆様に自主 的なリスクアセスメントをやっていただくこととしております。これは法律の第28条の2 に基づく告示であり、やっていただいているところです。これを進めていただく一方で、事 業者にすべてお任せでいいのかと。やはりリスクの程度、例えば日本全国で広く使われ、非 常に重篤な疾病をもたらす危険性があるようなものについては特別規制の中にきちんとか けていく必要もあるだろうということで、国自らもリスク評価を行うといった二本立てにな っておりまして、事業者にやっていただくリスクアセスメントと私どもがやっているリスク 評価とを区別して行っているということです。ただ、今回の検討会の趣旨というのは、そう いったことも含めた化学物質管理のあり方を今後どのようにしていったらいいかというこ とですので、いま法令はこのようになっていますが、ここでの議論を踏まえ、見直すべきと ころは見直していきたいと。そのための委員会ですので、是非、忌憚のないご議論、ご検討 をお願いできればと考えております。 ○塩崎委員 わかりました。ありがとうございました。 ○名古屋座長 ほかにないようですので、次に進めていきたいと思います。前回、事務局に 要請した事項の中で宿題になっていた部分がありましたので、その報告をお願いいたします。 ○奥村調査官 お手元の資料16頁の参考2-1-1から説明いたします。これは平成20年度か ら平成24年度までの第11次労働災害防止計画のうち、化学物質管理に係る事項を抽出し たものです。第11次災害防止計画の中に6.化学物質対策という項があり、その中から5つ 選んでおります。まず、アの(ア)は危険性又は有害性の調査等の普及促進で、災害防止計 画において、MSDSを活用したリスクアセスメントの普及を図るため、GHS分類を実施し、 モデルMSDS作成を行う。表示対象物質及び文書交付対象物質の拡大について検討する。 事例集の作成、研修の実施、モデル事業場の選定等の支援を行う。  現状ですが、GHS分類を行ってモデルMSDSを作成中であり、平成20年度は355物質、 平成21年度は500弱物質ということです。化学物質管理者研修を全国で実施しており、平 成20年度は15会場、平成21年度は14会場となっております。モデル事業場を通じ、リ スクアセスメントによるMSDSを活用したリスクアセスメントによる自主的な管理の普及 を促進しており、モデル事業場は平成20年度は46、平成21年度は45を選定し、普及を 図っております。今後の方針としては、引き続きこれらの事業を継続していきたいというこ とです。また、表示及びMSDS対象物質の拡大、教育の推進等については、本委員会で検 討していきたいと考えております。  次に、化学物質による健康障害防止に係る措置の徹底については、特定化学物質、有機溶 剤、一酸化炭素等の化学物質による健康障害を防止するため、法令に定める措置の徹底を図 るとともに、安全衛生教育の促進を図るという内容となっております。現状ですが、法令に 基づき推進しているところであり、今後の方針としても、引き続き法令の徹底に努めていく。 教育の推進については、本委員会でも検討したいと思っております。作業環境管理の一層の 促進ということでは、第11次災害防止計画において、「適切に作業環境測定を行い、結果の 評価を行うとともに、評価結果に基づいて事後措置を徹底する」としております。現状は法 令に基づき推進中であり、今後の方針についても、引き続き検討を行う。現行規制の柔軟化、 性能要件化については、本検討会で検討していきたいということです。  リスク評価に係る化学物質管理の一層の推進については、計画では「国においてリスク評 価を行い、リスクが高いとされた化学物質等については順次規制を行うとともに、規制と自 主管理の適切な組合わせにより、化学物質管理を一層促進する。発がん性等が判明した物質 については、健康障害を防止するための対策について指導を行う」としております。現状と してはリスク評価を実施しており、平成20年度は44物質、平成21年度は20物質、がん 原性試験を踏まえた有害性及び指導を実施ということです。今後の方針としては、引き続き リスク評価を実施し、リスクが高いものについては必要な規制を実施する。引き続き、がん 原性試験を踏まえた有害性評価、指導を実施するということです。  ここで17頁の参考2-1-2をご覧いただくと、国のリスク評価について、「リスク評価制度 の概要」ということで1枚紙にまとめたものがあります。この制度は2006年1月に創設さ れた制度です。有害物ばく露作業報告制度を創設し、報告のあった事業場の一部に対して作 業実態調査を実施しております。2006年は5、2007年は10、2008年は20の事業場に対 して調査を実施しておりまして、リスクが高いと認められたものについては、必要な規制を 実施しているということです。右下の表にあるように、このような評価の結果、平成19年 12月にはホルムアルデヒド、1,3-ブタジエン及び硫酸ジエチルの規制措置を強化。平成20 年11月の改正ではニッケル化合物、ヒ素及びその化合物の規制の強化。主要な措置として は、容器への表示、発散抑制措置、漏えい防止のための措置、作業主任者、作業環境測定、 健康診断その他の措置ということが結果として出ております。  16頁の第11次災害防止計画に戻りますが、国際動向を踏まえた化学物質管理のあり方の 検討及びその推進という項目があります。2002年の世界サミット(WSSD)、SAICM、 REACH等の動向を踏まえ、官民の役割分担を含めて検討を行い、対応を進めるという計画 となっております。現状としては、関係省庁連絡会議を開催しており、GHSについても厚 生労働省が事務局となっておりますが、検討については本委員会というのが今後の方針とな ります。  引き続き、参考2-2を説明いたします。この表は第1回の検討会でお配りした表のうち、 表示があれば防げたのではないかと思われる災害の例としてお示しいたしました。その際、 参集者の皆様から労働者の管理状況、教育の有無等も重要ではないかという指摘があり、右 のような黒枠で災害当事者のプロフィール、化学物質管理の概要等を追加し、災害調査復命 書に戻って災害調査の情報を追加いたしました。細かくは説明しませんが、表示がなかった ため取り違えて混ぜてしまったといった災害が多くなっております。また、労働者のプロフ ィールを見ると、やはり経験がない方が圧倒的に多く、しかも教育がなされていないという 実態が明らかになっております。19頁にもこの表が付いておりますが、ほとんどが経験が ない、教育がなされていなかったという状況があります。  次に、参考2-3ですが、労働者健康状況調査ではリスクアセスメントとMSDSは普及し ているように見えるが、実態はそうではないのではないか、もう少し丁寧に見る必要がある のではないかという指摘がありました。労働者健康福祉機構の神奈川産業保健推進センター では、まさにGHSの普及についての調査研究が行われておりまして、これを抽出したもの を資料としてお示しております。23頁ですが、MSDSは事業場の規模によらず、おおむね 提供されているが、1,000人以上の事業場でも請求すれば提供されるといった実態が多いと いうことです。24頁は、MSDSはGHS対応になっていますかという問いに対して、3割 ぐらいがなっているものの、6割は確認できない、GHS対応はされていないのではないか という実態があります。  25頁ですが、GHSの表示、文書交付の事務の任期の事務化については承知しているかと いう質問に対しては、6割が知っていますが、事業場規模が小さいほど知っている人は少な くなっております。26頁ですが、MSDSの職場内表示又は備え付け状況については、300 人以上の事業場で9割以上、30人以上300人未満では6割程度、30人未満では4割弱など、 規模によって大きな差があるという実態が明らかになっております。27頁ですが、職場に 掲示又は備え付けられたMSDSを労働者が理解しやすいように書き換えている事業場があ り、その例として、31頁に「トルエン取扱マニュアル」という分かりやすいポスターのよ うなグラフが入っております。これはMSDSの情報を労働者に分かりやすく伝えるために、 神奈川産業保健推進センターが工夫し、作ったものですが、このようなやり方をしています かという質問に対しては、このようなことはしていないという答でした。  30頁ですが、入手したMSDSを活用している事業場は19人以上の事業場を除き、おお むね8割を超えており、規模が大きいほど活用度は高い傾向があるということです。実際に MSDSを活用したことがありますかという質問に対しては、全体では83.7%が活用してい ると答えております。今回この資料を紹介するに当たって、神奈川産業保健推進センターか ら是非報告書も配ってほしいということでしたので、員の皆様には机上にお配りいたしまし た。以上、前回のご指摘、要望への回答について、参考資料でお答えいたしました。 ○名古屋座長 ただいまの説明について、ご質問等があればお願いいたします。 ○豊田委員 全体を見直すと、例えば参考2-2では業種が病院以下造船業とか、化学の上流 の製造業者ではなくて、下流側、しかも中小と言いますか、規模もそれほど大きくない所で 化学物質を使用する人たちです。このような所に労働者教育というか、MSDS の活用など がなされていないのではないか。資料後半のアンケートを見ても、19人以下の所のMSDS の活用がなされていないというのが浮きぼりにされているのではないかと思いますので、こ の辺のところに焦点を当てて、MSDSの活用などといったことをやっていかないと、MS DSの対象物をいくら増やしても参考2−2にあるこういった30件の災害概要というのは なくならないのではないか。そのような意味では、参考2-2のタイトルに書いてある「労働 者及び容器等への適切な表示がなされていれば」という所を、MSDSの活用も含めた労働 者教育、このようなことが十分なされていればということを付言しておく必要があるのでは ないかと思います。その辺の対策をかなり十分にやらないと、このような災害というのはな くならないのではないかと思います。 ○名古屋座長 この辺は今日これから議論していくところだと思いますので、1つのいい資 料を提供していただいたかなと思っております。たたき台にしていきたいと思います。その 他、何かあればお願いいたします。 ○福岡委員 同じく参考2-2の関係ですが、先ほどお話があったように、業種を見ると製造 業関係が少ないことと、前回の資料の中では、たしか化学物質を扱っている事業場について 調べた情報というのがあったかと思いますが、参考2-2を見ると、被災した従業員やそこの 事業者は自分たちの会社は化学物質を扱っているという意識があるのか、ないのかといった 辺りから疑問な点があるのではないかという気がしました。そのようなことからいくと、前 回の参考資料6頁の化学物質を扱っている事業場のうち、化学物質に関するリスクアセスメ ントを実施している従業員の内訳で規模別の話がありましたが、自分の所は化学物質を扱っ ているか、いないかという意識が対象となる事業場にないと、このような調査は全体を網羅 しているとは限らないのではないかといった感じがします。  また、本日配付の参考2-2には、被災者のプロフイールが若干書かれてありますが、実際 はどのような人たちに情報が伝えられるべきかということをもう少し議論するためには、で きればこのような事例をたくさん集めていただきたい。これだと、まだちょっと偏りがある のではないかという感じがします。 ○名古屋座長 ここはもう少し資料を調べるという形にしましょうか。 ○奥村調査官 できる限り情報の収集に努めたいと思います。 ○名古屋座長 先に進めたときに、必要であれば集めるということでよろしいですね。 ○豊田委員 16頁の参考2-1-1で、第11次労働災害防止計画の説明がありましたが、この 中で最初に課題抽出するとしたら、どのようなことになるかといったことも説明していただ ければと思います。 ○奥村調査官 結局、どのようなところが課題として残っているかということですか。 ○豊田委員 そうです。先ほど説明がありましたが、行政当局としてここから課題を抽出す るとしたら、どのようなものがあるのでしょうかという質問です。 ○半田化学物質対策課長 その点は、まさに右のほうに書いてあるように、例えばMSDS 対象物質の拡大の話とか、今ご指摘いただいている教育の話、アの(ウ)の現行規制の柔軟 化、性能要件化についても検討していくということを入れておりますので、まさに今回のテ ーマにかなっているのではないかと考えているところです。 ○豊田委員 そのような意味では、いちばん上のアのモデル事業場の選定等ということが、 もともとの計画では活発になされていたと思うのですが、ここがかなり不活発ではないかと いうこと、また、いろいろな災害のデータを見ると、ここがモデル事業場の選定として、先 ほど災害の多かった下流側の中小の事業場を選んでやっていけば、かなり効果が上がってく るのではないかということ、今回はそういったところの見直しも必要ではないかという気が いたします。  もう1点、下から2段目のリスク評価に基づく管理の一層の推進のところでは、規制と自 主管理の適切な組合わせによる一層の推進というのが、具体的にどのような形でなされたの かが現状のところには書かれていませんから、ここが課題ではないかという気がいたします。 ○奥村調査官 モデル事業場については中小企業を中心に選び、推進しております。先ほど 行政としての問題意識はどのようなところにあるかという質問をいただきましたが、第11 次労働災害防止計画でも自主的管理の促進ということが大きなテーマとなっております。し かし、このような事業を実施している当事者としては、自主的管理という考え方が思ったよ うにはなかなか普及していかないというのが大きな課題だと思っております。 ○豊田委員 モデル事業場については中小と言われましたが、先ほど福岡委員からもあった とおり、災害が起こっている所というのは、化学物質を扱っているという意識が本当にある のかというところもありますから、今回はそのような所も選んで重点的に見直していく必要 があるのではないかと思います。 ○半田化学物質対策課長 実はここでご報告しておかなければいけないのですが、このモデ ル事業場については、財政の厳しい折、大変残念なことに平成22年度の予算からはカット されてしまいました。ですから、この辺りは過去の事業で得られたものをどう活用するか、 普及促進するについてはどのようなやり方をするか。いわゆる委託費で、新たに何かを作り、 お配りする、周知するのがなかなか難しい状況です、そうは言いながら、この辺りの必要性 は十分認識しておりますので、事業の進め方を工夫してやっていきたいと思います。ご期待 に応えられない状況でして、申し訳ありません。 ○福岡委員 いまのモデル事業場の話ですが、たしか、これは厚生労働省が中災防に委託し てやられた仕事だったと思います。一応私もこれに関係したのですが、たしか化学物質管理 者研修会を実施した中から、もっと勉強したいという事業場に挙手してもらい、このような ことをやったと聞いております。モデル事業場になった事業場は割と意識が高く、レベルア ップしたいという、いわゆる優良企業であり、先ほど議論のあった災害が起こっている事業 場などとは全然違うレベルの事業場が対象になっているわけです。そのような所に化学物質 のリスクアセスメントの具体的な手法を定着させていこうという流れだったと理解してい たのですが、違っていますか。 ○小泉課長補佐 モデル事業場の事業については、他の事業場のモデルとなる所を育てると いうことを事業の趣旨として、財務省に対しては予算を要求しておりました。まさに今お話 があったように、非常にやる気のある所に他の事業場のモデルになっていただくという趣旨 で行っておりました。そのため選定の仕方についても、やりたいという所に手を挙げていた だくというやり方をしていただいたものです。ただ、化学物質のモデル事業場の事業とは別 に、安全又は衛生管理の特別指導ということで監督署で指定し、みっちり取り組んでいただ くというやり方もありますので、災害を発生させた事業場などについても、今後はそのよう なやり方で取り組んでいこうと考えております。 ○名古屋座長 設定の方法が若干違ったのかと。 ○橋本委員 私は中災防に依頼されて、このモデル事業場のリスクアセスメント関連の委員 をやっておりまして、モデル事業場の1つにも行ったことがあります。実情としては、リス クアセスメントをやると言っても方法がないとできないので、中災防で1つのやり方のモデ ルを作ってやっていただくということで、それを2年間、数十事業場について行いました。 実態を見ると、確かに中規模の事業場なのですが、比較的しっかりしている会社ではありま した。ただ、リスクアセスメントをやると言っても、方法が具体的にある程度ないと小さい 事業場などには展開していくことができませんから、客観的に見て、そのような意味ではこ のモデル事業場でやったということは大変よかったと思っております。まずはそれぐらいの 中規模の、まあまあできそうな所で行い、手段についても確認しながら、さらに小さい所に 発展させていくというステップで、その途中段階ですから、その段階においては妥当な内容 だったと感じております。ただ、今後はできなくなったということで、極めて残念なことだ と思います。 ○名古屋座長 モデル事業場の選定方法としては、若干意識のある所という言い方でしたが、 実際を見てみると、これからはそこをうまく活かしていく方法をそこから汲み上げていくと いうことではないかと思います。次回の検討会でそれをうまく活かしていくことができれば いいかなと思います。それでは、次に本日の議題に入りたいと思います。化学物質管理の今 後のあり方に関する論点整理について、事務局からの説明をお願いいたします。 ○半田化学物質対策課長 資料2-2に即して説明いたします。前回の会合において、私ども からは現状と課題ということで大きく3点をお示しいたしました。アの化学物質の危険有害 性情報の伝達・活用が十分ではないのではないか、リスクアセスメントの普及状況が低調で はないか、現行規制は目標の達成手段を限定し過ぎているのではないか、このように大きく 3点の現状認識、課題を提示し、議論していただいたところです。皆様方のご議論を踏まえ、 本日ア、イ、ウ、エの4点に整理させていただいております。項目としてはアの「危険有害 性情報の伝達・活用の促進」、イの「自主的化学物質管理の促進」、ウの「より柔軟な規制へ の見直し」、エの「その他」です。  アの危険有害性情報の伝達・活用の促進については、(1)として化学物質の危険有害情報 の伝達のあり方、その中の細目として、事業場内で使用する容器への表示などということで す。前回説明したような、現場で実際に化学物質を取り扱う方に情報が行きわたるようにす るにはどうしたらいいかということで、事業内表示といったことも考えております。そのこ と自体はいいとしても、実際問題としてどのようなやり方で行うのか。いま私どもがやって いるラベルを小物にまですべてに貼れと言われても、とてもできることではないというご指 摘が多々ありましたので、ラベル表示ができない場合の代替措置などはどうしたらいいかと いうのが1つの論点かと。また、表示の内容の範囲をどこまで求めるかといったことが[1]の 項目として挙げられると考えております。  [2]の表示対象物質、MSDS交付の対象となる化学物質の範囲は、ご案内のように、例え ばMSDSでは指導レベルで危険有害な物質についてはお願いしますと申し上げると同時に、 特に危険有害性が懸念されるものについては640物質を政令で指定し、罰則はありません が、義務としてMSDSの交付をやっているという二重構造になっており、このような構造 の中でどのようにやっていくか。特に、MSDSの伝達をしっかりとお願いするという物質 を今後は広げるといったことも、先ほどの11次防の説明の中にもあったように、課題とし て挙げられているわけですが、然らばどこまでやっていくのか、その選定基準はどうしたら いいか。また、MSDSの取りあえずの考え方について、昨年の夏ごろパブリックコメント をかけたところ、現実にそれを作成する方々からすると、現場での対応ができるかどうかと いう懸念も寄せられましたので、選定基準をご議論いただいた後に、実際にはどのようなス ケジュールでやっていけばいいかということについても議論していただく必要があると考 えております。  (2)(3)は前回のご議論ですが、表示制度、MSDS制度などを普及促進していくことがそも そも大事なのではないかというご指摘がありましたので、この辺りはどのようなことが考え られるか、ご議論いただければと思っております。また、前回や先ほども議論に出ておりま したが、化学物質情報を伝達するのはいいが、それを扱う労働者自身の教育の問題を充実さ せていく必要があるといったご指摘をいただいておりますので、そういった観点の議論もア の危険有害性情報の中でお願いする必要があると考えております。  前回リスクアセスメントの普及状況が低調ではないかという提言をさせていただき、これ について議論していただきましたが、イは自主的化学物質管理の促進という項目に括り、(1) として専門人材のいない中小、零細事業場あるいはサービス業などにおける自主的化学物質 管理をどのようにしていくかということで、コントロール・バンディングのような考え方を きちんと位置づけ、普及促進を図っていってはどうかということがあると思っております。 これについても前回ご指摘をいただきましたが、コントロール・バンディングといったやり 方と、従来からの化学物質リスクアセスメント、いわゆる測定をして評価をきちんとしてい くというやり方、この辺りとの位置づけ、整理をどうするかという点が重要な論点と考えて おります。  ウのより柔軟な規制への見直しということについては、(1)としてインセンティブの付与 などにより、事業者、事業場の自主的な管理を促進していく。法令準拠による観点、これは どちらかと言うと思想的なことになると思いますが、法令準拠型で進んできたこれまでの化 学物質管理のあり方に対し、自主的管理というのをもう少し強調していく必要があるという ことです。(2)以下はもう少し具体的になっていますが、(2)は従来の、いわゆる作業環境測 定だけではなく、個人ばく露測定といったことも、場合によっては導入するということを考 えていく必要があるのではないか。(3)として、測定の結果をどう取り扱うかといったこと について議論していただく必要があると思っております。  (4)はちょっと個別的な事案になってきますが、ご案内のように、いまの作業環境測定で は屋外作業については測定が課せられておりませんが、溶接作業などの屋外作業であっても 測定をしていただき、ばく露防止措置をきちんとやる必要があるのではないか。(5)(6)は先 ほど議事内容の中でも説明したように、前回多々ご指摘があった局所排気装置の稼動要件の 規制です。作業場は管理濃度できちっと管理しなさいと言っている一方で、局所排気装置の 稼動要件を抑制濃度や制御風速ということで規制しているわけで、この辺りが二重規制、場 合によっては過剰な規制になっているのではないかというご指摘、ご意見を踏まえた論点で す。  (6)は、そもそもの話として測定・局排・健診と、いわば3点セットのようなやり方でこ れまでずっとやってきておりまして、それなりに効果は上げてきているわけですが、今後も これでいいのかどうか。これも議事概要にありましたが、そういったやや堅い規制を課して きた結果、成果もありましたが、一方で現場の専門家が育たなかったり、工夫する芽を摘ん でいるのではないかという指摘もありますので、発散抑制方法について、もう少し緩和とい うか、いろいろなやり方を認めるような仕組みに変えていいのではないだろうかという思い で(6)を用意しました。  エはその他で、このような自主管理を進めていくことになると、個々の現場で化学物質を 取り扱う人への教育も大事ですが、同時に専門的な人材、特に個人ばく露測定なども入れて 作業場の評価をきちんとやっていこうということになると、もっと高度な専門家が必要にな ってくるのかもしれません。そのような人材をどのように育成していくか。そして、そうい った専門人材を育成し、あるいは自ら抱えることができる大企業はいいのですが、そうでな い中小、零細企業では、自ら抱えるというよりも外部の専門家を活用する、手伝ってもらう ということも重要になってくるのではないかと考えております。そのようなことから、専門 人材の育成、外部専門機関の活用という1項目を起こしております。このように整理してお りますので、ご検討をよろしくお願いいたします。 ○名古屋座長 いま説明があったように、化学物質管理の今後のあり方ということで危険有 害性情報の伝達・活用の促進、自主的化学物質管理の促進、より柔軟な規制への見直しにつ いて説明していただきました。このほかで何か検討しておく事項、あるいは全体を通じての 質問、意見等があればお願いいたします。ないようですので、引き続き、今回のメインテー マになると思われるアの危険有害性情報の伝達・活用の促進について具体的に検討していた だきます。まず、事業場内で使用する危険有害物質の容器、ラベルについて、事務局から説 明をお願いいたします。 ○奥野安全専門官 6頁からの資料2-3-1を使い、説明いたします。事業場内において使用 する容器への表示で、ラベル表示になりますが、現行法令では100物質について譲渡提供 時の容器にラベル表示が義務づけられているところです。販売後、相手先に入った後、事業 場内において使用する容器へ、さらにラベル表示が行われているかということについて各国 の規制状況をまとめております。事業場内において使用する容器への表示について義務づけ を行っているのは、表の中で「義務」と書いてある国です。アメリカ、イギリス、フランス、 オーストラリア、韓国といった国々においては、ラベル表示が義務づけられております。一 方、ドイツでは事業場内表示の規定がありません。EUのCLP規則については事業場内表 示の規定はないのですが、イギリス、フランスなどにおいては、先ほど述べたとおり、それ ぞれの国で労働安全衛生を所管する官庁によって義務づけられております。  7頁からの資料2-3-2には、それぞれの国の規定を記しております。9頁の真ん中にGHS とありますが、これはGHSの国連勧告で、ここでは作業場用の表示として記載しておりま す。1つ目のパラグラフをご覧いただくと、作業場に供給される時点でGHSのラベルが付 けられているのですが、ラベルは作業場においても供給された容器にずっと付けておくべき である。また、GHSのラベルあるいはラベル要素は、作業場の容器にも使用されるべきで あるとされております。所管官庁が同じ情報を作業者に伝える代替手段として、異なる表示 様式を用いることを許可することができるとされており、第1パラグラフの上から5行目に、 「例えば」とあるように、「ラベル情報を個々の容器上に付すのでなく、作業区域内に表示 することもできる」とされているところです。また、GHSの最後のパラグラフの「このす べてのシステムにおいて」から始まる所ですが、労働者に作業場で用いられる情報伝達の方 法を理解できるような訓練をすべきであるとしております。また、4行目にあるように、フ ローチャートなどを用いる方法も示されております。  10頁の資料2-4-1は、現行の規制からの見直しのイメージを表したものです。譲渡提供 時のラベル表示対象物質は100物質ありまして、これについてはポツにあるように、表示 やMSDSのいずれも義務つけられております。先ほど海外の規制状況にあったような事業 場内の容器への表示については、特定化学物質に義務づけられております。100物質の中の 特定化学物質以外の物質については、化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針の中で、 事業場内の容器にラベル表示する旨記載されております。その下の白い中にMSDS対象物 質が記してあり、640物質ありますが、このうちの100物質については、先ほどお伝えし たラベル表示が義務づけられております。  MSDSの3つのポツにあるのは、表示対象物質以外のMSDS対象物質で、表示について は先ほどの指針により、義務づけではないのですが付けるよう指導しております。MSDS については罰則はありませんが、義務づけがされております。事業場内表示については、譲 渡提供時の表示同様、指針で指導しております。いま申し上げた表示とMSDSについては、 32頁からの参考2-4にパンフレットのコピーを添付しておりますので、必要があれば後ほ どご覧ください。MSDS対象物質以外の危険有害な化学物質は、640物質に限らずたくさ んあるわけですが、これらについては譲渡提供時の表示、MSDS事業内表示のいずれも、 化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針で対応をお願いしております。  下の「管理」にあるように、MSDSだけでなくMSDSの周知、労働安全衛生法第57条 の2でMSDSが規定されているわけですが、ここで通知された物質についてはMSDSを事 業場内で周知することが安衛法第101条第2項に規定されております。また、化学物質の リスクアセスメントということでは、MSDSによって化学物質に関する情報を収集し、リ スクを洗い出し、リスク低減措置を実施することが指針に記されております。また、指針で は教育によってMSDSを活用することなどについても触れられております。現行のハザー ドコミュニケーションについては以上のような形で行われているわけですが、見直しのイメ ージとしては、1つ目の○にあるように、ラベルの表示を事業場内において使用する容器に 拡大してはどうかということがあります。2つ目の○として、表示対象物質、MSDS対象物 質の段階的な拡大、3つ目の○として、化学物質を取り扱う労働者に対する安全衛生教育の 充実を図ってみてはどうかということを挙げております。  11頁の資料2-4-2は、事業場内で使用する容器への表示について、事務局が作成したた たき台です。[1]原則にあるように、容器に譲渡提供時と同様のラベルを貼付すること、[2]容 器にラベルを貼ることが困難である場合として、例えば容器が小さいなど、注1に例示して ありますが、そのような場合は容器に入っている化学物質の名称を労働者に伝えるとともに、 当該化学物質に係るGHSラベル情報を伝えることで代替できないかということです。注2 にあるように、名称の伝達については、化学物質の正式な名称ではなく、略称なども認める。 また、名称だけでなく、絵表示などを追加してもよい。さらに配管などについては配管名な どを労働者に示した上で、作業指示書などによって労働者に伝えることも含んでいいのでは ないかとするものです。注3、ラベル情報の伝達につきましては、作業場にラベル情報を掲 示したり、作業場に一覧表の形で備え付けること。あるいはMSDSの利用といったことも 利用しても差し支えないとするものです。  簡単な事業場内表示の例として、例えば化学物質名と絵表示を容器に貼っていただいて、 それ以外のものについてはラベル情報の掲示としてもいいのではないかと考えております。 右にあるのは、譲渡提供時のラベルの例です。こういった譲渡提供時のラベルの情報を労働 者に事業場内で使用する容器を取り扱う労働者にどう伝えるか、というところをご検討をい ただければと考えております。 資料2-4-3、12頁、各種容器への事業場内表示の案です。譲渡提供時の表示につきましては、 左にあるように、すべて容器に表示していただくこととしております。事業場内での表示で、 原則としては表示をする者の氏名、住所、電話番号以外のものについて、容器に付けていた だくことを原則としたらどうかと考えておりますが、容器が小さい場合につきましては、名 称は容器に示していただく。注1にあるように、略称でも差し支えないとするものです。容 器が小さいので大きなラベルが貼れないことになりますので、成分から絵表示のつきまして は、作業場内での掲示で差し支えないのではないかとするものです。タンクや配管などにつ いては名称は付けるのですが、注2にあるように、容器名を表示した上で作業指示書などに よって名称を伝えてもいいのではないかとするもので、小さい容器と同様、そのほかのラベ ル情報については掲示してもいいのではないかとするものです。一時的に使用する容器につ いても、タンクや配管などと同じように取り扱ってもいいのではないかというものです。事 業場内で使用する容器への表示に関する説明は以上です。 ○名古屋座長 ありがとうございました。ただいまの説明につきまして、ご質問等はありま すか。 ○西野委員 いちばん最後に説明していただいた資料2-4-3に「名称」というところがあり ますが、この名称というのは化学物質名をイメージされているのですか。 ○奥野安全専門官 そのとおりです。 ○塩崎委員 私ども事業場では単に化学物質名というか、商品名を扱う場合が多いのです。 例えば、Aという商品名の中にBという化学物質が入っています。そういう場合、化学物 質を書かれても、作業者にはピンとこないとか、商品名を言ってもらったほうがわかりやす い、というようなことも実態としてあるのではないかと思うのですが。 ○奥野安全専門官 略称、番号、記号でも差し支えないというところで、商品名もそれに含 まれると考えております。 ○塩崎委員 事業場内の表示ですが、原則及び容器にラベルを添付することが困難である場 合と分けてご検討をいただいて非常にいいと思うのです。ところが、作業の災害の事例を見 てみますと、ただ単にラベルが貼っていたから防げた、というのは逆に少ないのではないか と思います。  と言いますのは、その物質の特性をきちんと教育することができないといけないのであっ て、例えば、混合していけないものを誤って混合した。あるいは誤って飲んだ。あるいは容 器を入れるべきものでなく、違う容器に誤って入れた。いわゆる誤る「誤」という字がたく さん出てきます。ということは、ただ単に貼っておけばいいということではなくて、その物 質の特性をきちんと教育することと、表示する場合には事業場に応じて、かなりの柔軟性を 持たせておかないと、ただ一律に貼ったら作業者が全部わかるということではないと思うの です。そういう意味では、各事業場の作業に応じた表示というものを広く勘案していく方向 にすべきではないかと思います。例えば、混合作業をするのであれば、混合作業する所にそ ういうところの問題点をきちんと書いておくとか、作業に応じた表示を認めていくべきでは ないかと思います。 ○奥野安全専門官 おっしゃるとおりだと思います。災害を防ぐためには、混ぜてはいけな いものという教育が大変重要だと思っております。ただ、個々の災害の事例を見ますと、作 業標準としては、この物質をこのタンクにこのボトルから入れると書いてあったのですが、 容器の形状が似ていたりとかして紛らわしくて、それでうっかり違ったものとは気付かずに 間違ったものを反応するほうにいってしまったという災害もかなりあるということで、名称、 あるいは容器の形状などで取り間違いがないようになっていれば、結構かなりのものが防げ たのかなと分析した結果はあります。ただ、おっしゃったとおり、これとこれを混ぜると危 険だよという教育までするのは重要で、表示の枠を超える教育になるかもしれませんが重要 だと思っております。 ○塩崎委員 私は表示が目的ではなくて、労働者の災害を防止することが目的ですから、そ れに有効な手段を事業場に応じて認めていくべきだと思います。 ○西委員 私もかつて化学会社で有機合成実験とか製造現場に携わったことがあります。そ こで塩崎委員の発言に関連することなのかもしれませんが、悩ましいのはラベルや表示をす ると。表示をしますと最初は見てくれるのですが、そのうちに見なくなるのです。 ごちゃごちゃ書いてあると、作業をするときは労働者というのは全部読まないのです。書い てあればいいとか、貼ってあればいいというものでもないということが1つ悩ましいのです。  先ほどおっしゃったように、教育をきちんとやらなければなりません。先ほどの事故事例 からいくと、化学物質を扱っていない業者で結構起こしている。しかし、彼らは労働者教育 はやっていますよとたぶん言っているのではないかと思うのです。例えば、建設業であれば、 高所作業は気を付けましょうとか、そういうことはやるかもしれませんが、取り扱っている 物質については、我々のメインの危険性ではなく、危険性から言ったら下位のほうだから、 教育時間も限られているからオミットされてしまった。そこでよく知らないままに作業をし て起きてしまったと。そういう事例等もあります。これは今回だけでは十分納まり切れない 大きな問題ですが、そういう心理学的なものも含めて、何か対策を立てないと、折角やって も作業ばかり増えて効果が上がらなかったということにもなるかと思いますので、その辺も 含めてお考えいただいたらと思います。 ○山本委員 10頁の3つのポイントのところにも、事業場内、あるいは対象物質の段階的 拡大、安全衛生教育の充実、これはどれも異論はないのですが、いまの労働者は3分の2 以上がサービス産業で働いているのです。労働安全衛生法というのは工業、製造業、運輸、 建設とそれらにターゲットがあるのではないかと思われます。この場でも自覚なき化学物質 取扱い、それによるいろいろな事故が、先ほどの事例にもありましたが、深掘りで事業場内 でここは掌握できることのやり方で、いま起きているような事故の防止とか、減少ができる のか。最近頭を見ていると茶髪にしている人が大勢います。茶髪も相当いろいろな薬剤を使 うわけです。そうすると、茶髪をする人も、されている人も化学物質という自覚がなくて、 これは美容だと、ファッションだという形で茶色にしたり、紫にしたりしている。しかし、 こういう人から何か出ているのですかと言ったら、誰も何もたぶん言ってこないと思います。  そういうものも含めて、この問題の改正というのは、例えばGHSがあったり、SAICAM があったり、REACHがあったり、国際的な動向の調和があるのでしょうが、いま現実に世 の中で起きている問題にどう対応していけるのか。その辺を見ていると、もう少し広げれば いいという問題ではないかもわかりませんが、実際に起きているいろいろな問題に現実的 な対処ができないのか、そんな感じがいたしました。 ○半田化学物質対策課長 西委員のご意見に対して先にお答えしておきたいと思います。心 理的側面ということは非常に重要だと思っております。これは特に行政ではあまりやってお りませんが、中災防へ依頼して、心理学者の先生にも入っていただいて、いろいろな調査研 究をやっているのですが、これは長年の課題で、これはと言ったものがなかなかないと。た だそういう認識は持っているということはご説明して、ご理解をいただきたいと思います。 これは取り組んでいかねばならないと思っております。  いま山本委員からご指摘がありましたがおっしゃるとおりで、先ほどご紹介した災害事例 でもおわかりいただいたように、化学物質はいろいろな所で使われていて、自覚がない取扱 い者が多いということが問題になるわけです。だからこそ、あなたが使っている化学物質は こういうものなのですよ、とわかるような情報がきちんと伝えられる仕組みを広く整備して いきたいと考えているわけです。  ですから、事業場内表示云々ということが、どういうことになっていくかと言いますと、 それこそマニキュアを塗っているネイルサロンでも、除光液にはこういう物質が入っていて、 こういう危険性があるよと。だから、こういうことに気を付けてやりなさいよということが 入ってくるようになる。お茶にまでは付かないと思いますが、こういったものに名前とラベ ルが付くようになっていく。そういうことが自覚なき取扱い者の皆さんをリスクから守るこ とにつながっていくのではないかと考えているわけです。 ○山本委員 関連して少し言わせていただきますと、どうしても法の立場とか、規制の立場 というのは税金を含めてやりやすい所、取りやすい所に赴きがちですが、やはり、必要な所、 薄くてもいい、深くなくてもいいから、とにかくいまちゃんと見ておかなければいけない所、 あるいは予見しておかなければいけない所を広く見て、最初からきついものではそこに入っ てこれないでしょう。いま課長がおっしゃったのは、是非そういう視点を重視していただき たいと思います。 ○半田化学物質対策課長 ありがとうございます。何をやってくださいと、これまでそれば かりを私どもはお願いしてきたのですが、そのことの前に、どういうものを取り扱っている のかという情報をできる限り広く行き渡らせるような仕組みにしていきたいと思います。そ こが第一歩かなと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。 ○名古屋座長 そうすると、表示の考え方というのは、(いわゆる製造業等の)化学物質を 取り扱っている所ばかりではなくて、あまり自覚なく取り扱っている所までを考えて議論す る形になるということですか。 ○半田化学物質対策課長 左様でございます。 ○名古屋座長 そうすると、かなり広い範囲ということで。自覚なき人たちの表示と工場と たぶん表示も違ってくるのではないかという気がします。その辺は末端のところまで考えた 表示にしておけば、当然上流の人たちはよく知っているからいいよという形か、それとも段 階的に業種別に表示のあり方を分けていくほうがいいのか。その辺は皆さんで議論してもら えればいいということですか。 ○半田化学物質対策課長 はい、そうです。よろしくお願いいたします。 ○名古屋座長 わかりました。 ○廣川委員 私どもは加盟組合を小分けしたときに表示しているかどうかというのを、中小 も大手も含めて調査したのです。18社から回答があり、全く表示していないのは1社だけ で、17社が表示されている状況でした。その内容はまちまちであるということです。事業 場は製造現場をイメージしていると思うのですが、同じ事業場内であっても、製造現場と研 究している所、あるいは品質保証とか、品質管理をしている所と、労働者のレベルに応じて 表示の中身を変えているという所があります。その辺の柔軟性というのもこれから議論して いく必要があるのかなと思うのです。事業場内、あるいは海外の所では「作業場」という言 葉も出てきておりますが、念頭に置いているのは、製造ラインだけではなくて幅広くという 理解でよろしいのですか。 ○奥村調査官 はい。 ○橋本委員 1つ確認したいのは、11頁の注3、ラベル情報を伝えるということで掲示とい うのがあるのですが、これは例えば作業場に一覧表の形で備え付ける。MSDSを利用して も差し支えない。この辺は例えばMSDSのハードコピーのファイルがその部屋にあって、 いつも利用できれば、それでもよいということなのか。それともそれも掲示しなさいという ことなのか。例えば、多くの物質を使っている場合に、それぞれのMSDSなり、ラベル情 報を掲示していくと大変なことになるので、そこまでこれを求めるという意味なのかどうな のか。そこを確認したいのです。 ○奥野安全専門官 掲示に限定するものではないので、一覧表を備え付けるということは掲 示の形ではなくて、すぐ取り出せる形で置いておくということです。 ○橋本委員 わかりました。 ○豊田委員 いまのに関連するのですが、基本的にGHSについて反対するわけではないの ですが、先ほど来、いろいろな委員の方から出ているとおり、導入の仕方を上手にしないと 本来の目的は達成しないと思いますので、そこには特段の配慮をお願いしたいのが1点です。  11頁目、容器等にラベルを添付することが困難な場合に、注1から注3までいろいろ書 いてあります。これは現場の実態を踏まえて、特に注1と注2辺りが、9頁にあるGHS勧 告書に書かれていた「代替手段」のことを示されていると理解しています。先ほども質問が あったように、ここに関しては、これを本当に法制度化した場合いろいろな質問が出てくる と思うのです。ですから、これに対してのガイドラインを何か作ってやらないと、いま言っ たような質問がたくさん来ると思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  また、注1に「反応中の化学物質が入っているもの」という表示がありますが、これは単 なる1例ではないかと思います。言葉を替えますと、「容器等の表示と、内容物を一致させ ることが困難な場合」ということになるのではないかと思います。反応器のほかに抽出機と か、乾燥機でも時々刻々と場所に応じて溶媒等が飛んでいくわけですから、組成が変わって いくわけです。そういったものは表示できませんから、もう少し注1のここの表現も広く捉 え、変えないといけないと思います。いま言ったのは1例ですが、そういったガイドライン は是非とも必要ではないかと思います。  注3のところでも、一覧表は今ほとんどの工場は電子媒体で、パソコンとかCRT画面等 を活用していますから、そういったものはいいのでしょうかというような問合わせもあるか もしれません。そういったことはひとつお願いしたいと思います。  もう少し大まかなところで言いますと、対象物質の範囲をどういうふうにお考えになるの か。対象の容器と書いていますが、その範囲をどういうふうに考えるのか。もう1つ大事な のはスケジュールだと思います。これは先ほど来出ていますが、例えばGHSの対象者を自 覚なき人までと出ましたが、そうしますと、MSDSは10年ぐらいかかっていると思います。 中小でも、先ほどデータがありましたが、28%の人がMSDSを知らないと答えられていま す。10年かかってもMSDSを知らない人がいる状態ですから、GHSに関していえば、い ま化学協会でも深く知られているわけではないと思います。製品の譲渡提供について言いま すと、製品の充填作業を行う所のオペレーターの方は、GHSをよく知っているかもしれま せんが、それ以外の部署のオペレーターは、GHSについてはよくわからないと思います。 そういった意味ではスケジュールを考えるときに重要なのは、GHSをまず周知、普及する 期間を十分取る必要があるのではないか。  もう1つは、GHSに関しては分類ということが出てきますから、現在、分類のインフラ 整備について化学業界も手伝わせていただいています。こういったインフラ整備も整えた上 で、次に整えた成果物を普及定着しなければいけない。そういった期間も十分に取る必要が ある。そういう仕方がわかった上で、暫く法対応が可能で、その準備が必要ですから、法対 応の準備期間も必要ということになります。以上、そういった期間を十分に考える必要があ るのではないかということです。  もう1つのポイントは、純物質と混合物です。混合物まで一気にやるのでしたら、それな りの所要の期間を取っておかないと大変なことになるのではないかと思います。例えばEU は2010年に純物質を導入しましたが、まず純物質のデータが決まらないと、混合物の分類 はできませんから、敢えて混合物は、2015年としていますが、そのような所要期間も取る 必要があるのではないかと思います。 こういった事業場内にGHSの導入をしている国が、先ほどの紹介で端折っておられました が、6頁目の下に記載されているように、オーストラリア、韓国ではGHSの勧告に対応し た表示等に合わせる動きがある。いま事業場内の表示にGHSを検討している国にはこうい う所があるわけです。オーストラリアはモデルの法律を検討している云々とか、省庁連絡会 議でも出たように聞いております。ようやくこういった国が出ている段階ですから、日本も いまこういうことを検討しているのでしたら、私の提案ですが、年2回、ジュネーブでGHS の小委員会がありますが、こういったこと(GHSの事業場内表示)も俎上に上げて、まさ にGHSは制度調和が問題ですから、各国の案をお互いに持ち寄って、それで制度調和を保 つ場も必要ではないかと思います。以上です。 ○名古屋座長 いまお話に出たように、GHSは城内先生が国連でその委員として活躍され ていますので、城内先生から総括的な適用範囲とか、その辺のところをお話できますか。 ○城内委員 危険有害性を労働者とか、消費者に伝えるというのが、たぶん化学物質を管理 する上でいちばん重要だと思います。それ故に、GHSができてきて、欧米を初めとして世 界各国でそれを取り入れようとしているわけです。  前回も申し上げましたが、日本には危険有害性を労働者とか消費者に伝えましょうという 法律がありません。ありませんというのは、包括的に伝える法律はなくて、1つだけ労働安 全衛生法の57条があるのですが、それも物質数が100と限られていて、そこがいちばん問 題だと思っているわけです。そこをクリアすると、つまり、化学物質の有害性をラベルでち ゃんと伝えることが成立すれば、今いろいろな意見が出されたかなりの部分が解決するので はないかと個人的に思っています。  事業場内表示がテーマですと前回の会議で言われたので、私はそれをやる前にもっと前段 階でやるべきことがあると申し上げました。それは事業場内表示というのは、GHSもそう ですが、二の次でいいことだと思っています。最初にやらなければいけないのは、譲渡提供 される製品にすべて危険有害性を付ける。そうすれば、それを見ない人もいるかもしれませ んが、見る人がいてどういう有害性があるかわかるわけです。そこでまず教育効果もあるだ ろうし、前回掘江委員から発言がありましたが、ラベルをはがしてそれを緊急で持っていく こともできると思うのです。現在の法体系ではそういう情報さえもない、書かなくてもいい ことになっているわけです。そこがまず問題だと思っています。  もう1つ、対象の問題について言えば、GHSは労働の現場だけではなくて、農薬も消費 者製品も全部対象になっているわけで、ラベルが統一されて表示されるということは、先ほ どの例のような認識しないでばく露を受けているところにも、かなりメリットがあるだろう と思っています。  今日出された資料の検討項目にもあるように、いつも日本で危険有害性の話ではMSDS がメインになるのですが、これは私から見ると本末転倒で、ラベルの話があってMSDSの 話があるのがたぶん本当だろうと思います。それは欧州のGHSを導入したCLP規則でも はっきり言っていますが、危険有害性はまずラベルで労働者に伝えましょうと。労働者が理 解できないことがあったりしたときに、MSDSを見ましょうと書いてあるわけです。です から、日本みたいにMSDS制度があります、MSDS制度は事業者間では80%、90%やり 取りがあります、成功です、みたいな話はやはりおかしくて、それを現場で使うかどうかが 問題です。では現場での使い方はどうかというと、日本では労働者が見ていないのだから、 それは役に立っていないというのはおかしな話で、ラベル表示でわからないところを、 MSDSで見るというのが世界の常識だと思います。それが逆転していて、教育をしなけれ ばいけないという議論が前回からもたくさんあるわけです。  そして、労働安全衛生法で言われている事業主責任として、危険有害物質を扱っている労 働者教育はどうなっているのですかという議論にいくのだろうと思うのです。その辺の議論 がMSDS制度のほうからだけ入っていくと、ちょっとおかしくなっているかなという懸念 があります。そういうことで、私としてはGHSに15年ぐらい携わってきたということも あるのですが、やはり、危険有害性の情報をちゃんと使う人に伝えるラベルのシステムを確 立するのが、最初ではないかと思っています。  参考2-2に、災害の例がいろいろ書かれていますが、私がいちばん懸念している災害の例 というのは、危険有害性情報がないがために、それを安全だと思って使う災害であり、その ほうがずっと重大だと思っています。それは過去十数年の間に日本でもたくさんあったわけ です。厚生労働省で数年前に、規制対象物質外のところで災害が起きている。それが半数に も上るという報告もあるわけです。ですから、まず情報を伝える。そこから何をするかとい う議論がないと、各論ばかり先に行って問題が解決しないという従来のままになるのではな いかと懸念しています。  それはこの会議もそうかもしれませんが、いつも化学物質管理に関する委員会というのは、 法律からものを見て解決しましょうという話なのです。現状の化学物質管理に関する法律は 措置に関するものなので、具体的な措置をどうしましょうかという議論だけを過去にしてき たわけです。いまもそういう議論になりつつあるので、それは是非やめていただいて、根本 的にどうすればいいかという議論をする。  つまり、労働安全衛生法の57条の枠を少し超えて、もともとの労働安全衛生法や労働基 準法で言っている健康を維持するためにはどうするかということを議論すべきではないか と思っています。以上です。 ○半田化学物質対策課長 いま豊田委員、城内委員から貴重なご提言をいただきました。私 どももできるだけ現場を見ながら謙虚に見ていたつもりですが、やはりどうしても現行の法 令などからつい発想してしまうところがありまして、やはりそういうところが限界かなと感 じるところでもあります。  まさに両委員からご指摘をいただいたことをここでご検討いただきまして、それを踏まえ て私どもは対処していきたいと思いますので、是非、率直な忌憚のないご討論、ご議論をお 願いしたいと思います。  1つだけ申し上げておきますと、先ほど豊田委員からご質問がありましたがどの範囲を考 えているのかということは、実はこのあとでご説明しようと思っておりましたが、いまの城 内先生のお話を伺うと、少し違うのかもしれませんが、一応、簡単に申し上げます。  最初の論点整理でご説明したときに、いわゆる情報伝達ということで申し上げましたが、 伝達の仕組みとしては、広く危険有害物質に対して指導でやっている部分と、法令でガチガ チにやっている100の物質という二重構造になっております。私どもとしては、危険有害 性を広く伝達するには、罰則とか義務でなくてもよろしいのですが、やはり、法令の中にき ちんと位置づけた伝達という仕組みを1つ作りたい。その上で、非常に重要な物質につきま しては、いまの物質を指定して表示やMSDSをお願いしている部分については、これにつ いても要らないというわけにはいきませんし、これはこれなりに必要だと思っていますので、 その見直しもやっていきたいと思います。こういう大きな二重構造の中での見直しをやって いきたいというのが、私どもの当初の考え方ですが、この辺も含めて、先生方のご議論をい ただきたいと思います。さらには化学物質を取り扱っている業界は非常に広い。極端に言え ば全業界と言っていいぐらい裾野の広い所ですので、先生方のご議論を踏まえて、さらにそ ういった方面との意見交換といったようなことも経てやっていく必要があるだろうと思い ます。よろしくご議論をお願いします。 ○名古屋座長 ちょっとお聞きしたいのですが、例えば城内先生の話だと、表示があって MSDSがあると。比べて、いまの日本というのは表示が100しかなくて、MSDSが640あ ると。そこのところというのは、いまの考え方は表示をすぐMSDSの数まで増やすという ことは可能ですか。要するに100の枠を取っ払って、ある程度拡大していく手法をとらな いと、いま基本的な世界の流れの中で日本は離れてしまっている感じがするのですが、その 辺はこの辺で議論してもよろしいですか。表示物質の段階的な拡大のところに絡んでくるの ではないかと思うのですが、その辺はどうなのでしょうか。 ○半田化学物質対策課長 そこの部分は法令的な話になってきますが、もう少し詳しく申し 上げますと、いわゆる表示57条は罰則付義務ということになっておりまして、MSDSの 640物質は罰則なしの義務となっております。その他は全部単なる指導という状況です。  名古屋先生のご質問は、罰則付き100をMSDSの640物質に合わせられるかというご指 摘かと思います。この辺はここで直ちに即答することは難しいですが、普通常識的に考えて、 大変難しいだろうなと。罰則をもってまで強制しなければいけないというのは、相当強烈な 理由がないと難しいと思っていますので、これを広げることは大変厳しいものがあるだろう と思います。  ただ先生方のご議論として、こういう方向が必要なんだということをいただけば、私ども もそれに沿ってできるだけの努力をします。できないものは大変申し訳ありませんが、こう いうことはできませんでしたとご説明できるように将来的にはしていきたいとは思ってい ます。 ○城内委員 GHSのほうから追加させていただきます。ラベルが先で次がMSDSだという 話は、情報の伝達の仕組みとしてそうだということです。逆に言うと、MSDSを作る分類 作業があれば、その情報ですべてラベルは簡単にできてしまうこともあります。  先ほど豊田委員からのご指摘だったと思いますが、制度を整備しないとできないというの はたしかにそうだと思います。日本では残念ながら分類をこのようにしましょうという法律 がありませんでした。それはどうしてかというと、全部リストアップされた物質について、 この有害性について気を付けなさいということしか言っていなかったのです。分類に関して はたしかに調和みたいなことが必要で、現状では日本だけでやる話ではなくて、世界で一緒 にやっていきましょうということになっています。それからGHSはもともとそんなに厳し く何でもかんでもちゃんと情報を書きなさいではなくて、ないものは書かなくてもいいです よという緩い規制なので、法律の中に入れても私はそんなにギリギリの感じはしないのでは ないかと思っています。 ○豊田委員 その硬い規制というときに、問題になるのが例えば資料2-4-2(今回はそこは 改善されていると思うのですが)のラベル表示のフル要件なのです。こういうのをがんじが らめに何もかも揃えないといけないと言ってしまうとなかなか実行は難しいです。場合によ っては、現場の実態と捉え、この中の絵表示だけでも臨機応変に採るとか、こういうことも 柔軟に行う(今回はそういうご提案になっていると理解しておりますが)そういう必要があ るのではないかと思います。 ○名古屋座長 伝達情報としたら、文章よりも絵表示でまず見ていって、それからその文章 を見ていく。 ○豊田委員 必ずしもそれがすべてとは言えませんが、そういうケースも柔軟にあり得るの ではないかと思います。 ○名古屋座長 わかりました。いまのお話ですと、ある程度GHSが100物質に限られてい る。そうすると、表示にないような範囲というのはどういうふうな形になるのか、少し議論 をしていただきたいと思うのですが。あとMSDSのところにもまた資料がありますので、 そこへいかないといけないと思うのですが、いまのところ全体としてこれはよろしいですか。 ○福岡委員 2つほど意見があります。1つは災害事例の話から、実際自分たちが化学物質 を扱っていても、そういう意識があるかないかという話もありましたが、我々が災害現場を 見て思うのは、実は作業する末端の人は、例えば11頁の「現行ラベル例」のような資料は まず読まないのです。しかし、その場合にはその仕事を計画し、あるいは管理監督する人は よく知っていて、今日のこの作業ではどれとどれが大事なのか、ということをちゃんと作業 班に伝えると、その作業班はそれを守る。そういうふうな仕組みになっていくことが望まれ ます。A4で8頁もあるようなMSDSを作業者が読めるはずは無い話なのです。中小規模 事業場の管理監督者になりますと、そういう立場の人でもA4の8頁もあるものを全部なか なか読めないので、せめて11頁の「現行ラベルの例」程度のものは読んでほしいわけです。 よく勉強して、大事な個所を労働者にちゃんと伝える仕組みが出来て欲しいと思います。  いまのラベルの話はどちらかというと、作業者にわかりやすいものがまず最初に求められ るのではないかと思います。そういうことと、管理監督者がよく知ってほしいことは少しレ ベルが違うので、その辺をラベル表示を考える場合には区別して考えたらいいのではないか と思います。それを例えば化粧品とか、あなたの住む所という現場の話がありましたが、そ この仕事をする人は自分たちが使うものはどんな危険性があるかよく知っていて、実際にそ ういう作業をする人には、今日のこの作業ではどういう注意がいるのかということをちゃん とやると。そんなふうな仕組みが一緒に付いていけば事故は出ないのではないかという感じ がします。  もう1つは、物質指定の範囲に関係することですが、例えば塗装の現場へ行きますと、石 油缶に入ったシンナーが置いてあります。缶毎にラベルがはってあるわけです。ところが、 シンナーにご存じのように火災の危険もあるわけですが、ラベルに書かれている第2石油類 とか第1石油類というのを見ただけで大体の検討がつくわけです。そういう末端で作業をす る人は防火管理の知識があまりなくても、どうも第1石油類というのは火がつきやすいなと か、ある程度の勘はあるわけです。危険性、有害性についても物質名だけで言うだけではな くてもっとわかりやすく、結局、試験方法で分類することになるのかもしれませんが、そん なことを考えることもこれからの課題にあるのではないかという感じです。そうしますと、 物質の数が多い、少ないではなくて、末端の現場へ行きますと、いろいろな混合物を扱って いる場合、その中には指定されたものもあれば、指定されていないものもある。しかし、現 場で使うことで大事なことは、中身、化合物の名前よりも、今日扱う品物はどんなふうに健 康障害に注意しなければいけないのか、ということがわかるほうが先になってくるのです。 そうすると、物質を指定するというのはどこか限界があって、そういう情報と言いますか、 どういう方法で測った有害性かということで表示することも、ラベル表示の中にも検討課題 としてあるのではないかという感じがします。  実際には、例えばポロイソシアネートプレポリマーという表現の物質がありますが、それ は分子量が数千レベルで末端にNCO基がある化合物であって、それにアミン化合物を現場 で混ぜて(2液タイプ)コーティングの作業をします。原料の低分子化合物(=通知対象物) そのものの危険性・有害性はよくわかっていますが、プレポリマー(通知対象物質ではない、) になっていますとあまり蒸発もしないので、危険を感じ難い。しかし、作業者は皮膚に触れ ると危ないなという感覚は持っていました。要するに物質指定しているとそういう限界があ るような感じがするので、その辺りも実際現場の末端で使われている商品を見ていますと、 ラベルも大事ですが、有害性の中身の区分け・表現の仕方にも議論の余地があるのではない かと思っております。 ○名古屋座長 表示につきまして多く議論していただいてありがとうございました。次悔以 降すぐ振り返ると思いますが、先にMSDS対象物質の追加のところだけ説明をしていただ きます。議論は時間的に難しいと思いますので、説明をしていただければそれを持ち帰った ときに参考になるかと思います。事務局から説明だけよろしいですか。 ○半田化学物質対策課長 それでは担当から資料2-5-1、資料2-5-2辺りをご説明させてい ただきます。ただいまの先生方のご議論を伺っておりまして、私どもも広く危険有害物質全 体に対する部分と、特に名指しをしてこれだけはきちんとやるというのを法律でお願いする MSDSという二重構造で考えておりましたが、そういいつつ、私どもはつい法律の義務に 頭がいってしまって、いましたが、幅広く危険有害物質についての情報伝達をどうやるかと いうことが大きな課題だと改めて認識しましたので、そういったことを含めた考え方を少し 整理して、次回はご説明をさせていただきたいと思います。これからご説明するのは、特に これだけはきちんと法律上の義務としてやっていただきたいと考えておりますMSDSです。 これはいま640あると申し上げましたが、それにしても640というのは少ないという認識 を持っております。これまでどういう考え方でこの物質をノミネートしてきたか。今後はど ういうふうにやっていくべきか。特に法律の義務としている部分で限定された説明になりま すが、それをお話させていただきたいと思います。 ○奥野安全専門官 お手元の資料2-5-1の13頁をご覧ください。MSDS対象物質の追加に ついて、たたき台のところも含めた資料となっております。平成12年に638物質でスター トしており、当初は有害物、具体的にはACGIH、米国労働衛生専門家会議が許容濃度を勧 告した物質などから選定しております。その後、平成18年には危険物である3物質が追加 されております。  平成22年のところで、GHS分類を実施した結果、注意喚起語を示すこととされた化学 物質のうち、優先度の高い物質を追加したらどうかと考えております。注意喚起語と申しま すのは、GHSによる分類を行った結果、危険有害性が定まるわけですが、危険有害性の項 目や程度によって、危険または警告が示すとされております。警告や危険といった注意喚起 語を示すとしたものから追加してはどうかというものです。点線で囲んで「将来構想」とあ りますが、GHS分類を実施した結果、注意喚起語を示すとした物質を引き続き追加しては どうかとするたたき台です。  14頁、資料2-5-2、追加スケジュールのイメージです。[1]国がGHS分類を実施した結果、 注意喚起語を示すとした物質、環境有害性のみを有するものを除くとありますが、739物質 あります。[2]他法例でMSDSが義務づけられている物質が389物質あり、これを対象とし てはどうかというものです。[3]発がん性を有する物質が11物質。[4]のとおり、安衛法の危 険物であり、さらに有害性も有するものが60物質含まれております。[2]から[4]までを合計 すると460物質あるわけですが、これを平成22年度の改正で追加してはどうかと考えるも のです。739物質のうち460物質以外のものが[5]になるわけですが、これについて平成24 年度以降に段階的に追加してはどうかと考えております。  [6]は本年度と来年度に国でGHS分類を行う物質についても、分類の結果注意喚起語を示 すとしたものについては、MSDS対象物質に追加してはいかがかと考えているものです。  15頁、資料2-5-3は[2]から[4]をさらに詳しくしたものです。他法例でMSDSが義務づけ られているものは安衛法以外では毒劇法と化管法になるわけですが、この対象物質であって、 現在の安衛法の対象物質になっていないものが389物質あります。[2]高い発がん性を有す ると評価された化学物質、IARCのグループ2Aです。これは作用因子、おそらくヒト発が ん性があるというものです。またEUのカテゴリー2はヒト発がん性とみなされるべき物質 であり、GHSでは発がん性の区分1Bとされるものです。739物質の中に他法例の対象と なっていないもので、これに相当するものが11物質あります。  [3]安衛法で危険物とされる物質で形状、例えばアルミニウムについてはアルミニウム粉と 粉の状態で危険物と指定されているわけですが、そういったものを除いてさらに有害性を併 せもつものが60物質あって、これをMSDS対象に追加してはどうかと考えるものです。な お、一定の周知期間については設けていく必要があると考えております。MSDS対象物質 の追加については以上です。 ○名古屋座長 ありがとうございました。本来的にはここを議論しなければいけなかったの ですが、時間の関係でありませんので、次回以降追加物質かつ選定の基準や、物質の追加ス ケジュールを、皆さんには今日説明をいただいたところをイメージしながら次回以降に検討 していきたいと思います。  本来は表示、MSDSの普及促進や安全教育の充実、(2)、(3)も今日議論しなければいけな かったのですが、先ほど来、「伝達のあり方」のところが活発に議論されましたので、そこ まで踏み込めませんでしたので、次回以降はMSDSの拡大と表示の促進・普及についてど うしていこうか、安全教育の充実について議論していきたいと思います。ここのところを手 元に参考として、次回以降選定や追加スケジュールについてご意見をいただければありがた いと思います。申し訳ありませんが、それでよろしいですか。そうしましたら、今回は特に 表示等につきまして、多岐にわたりご議論をいろいろありがとうございました。今後の予定 等につきまして、事務局から説明をいただきます。よろしくお願いします。 ○奥野安全専門官 本日ご議論をいただいたご意見を事務局でまとめて、次回以降、本日了 承をいただいた論点事項などについて、より深くご検討をお願いしたいと考えております。 今後の予定は、第3回の検討会を3月4日(木)14時から16時、経済産業省別館825会 議室、第4回の検討会を4月15日(木)10時から12時、場所は未定ですが、それぞれ開 催したいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。なお、委員の皆様に第5回の 検討会を5月21日ということでご案内していましたが、一部の委員からご都合が悪いとご 連絡をいただきまして、大変申し訳ないのですが、再調整させていただければと考えており、 近日中に改めて連絡させていただきたいと考えております。以上です。 ○半田化学物質対策課長 再調整をお願いしておりますが、5月21日も一応念のためいま しばらくご留保をいただければと思います。再調整をしてみますが、その結果、あまり先に しかないということでしたら、申し訳ないですが、場合によっては5月21日はそのまま開 催という線も残しておきたいと思いますので、急ぎ調整をしますので、よろしくお願いいた します。 ○名古屋座長 どうもいろいろご議論等ありまして、議事進行が悪くて先に今日の議題のと ころまで到達しませんでしたが、忌憚のない良い意見をいただきましたので、それを次回以 降に反映していきたいと思います。本日はありがとうございました。