10/02/18 第5回臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班議事録     第5回臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班            日時 平成22年2月18日(木)         15:00〜17:00            場所 厚生労働省共用第21会議室 ○長岡補佐 それでは、お揃いでございますので、ただいまより、第5回臓器提供 に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班を開催いたします。  本日は、山本班員より欠席の連絡をいただいております。  また、前回に引き続きまして、オブザーバーとして、筑波大学の宮本信也先生に 御出席をいただいております。  また、本日は、社団法人日本臓器移植ネットワークのコーディネーター芦刈淳太 郎さんにもオブザーバー御出席をいただいております。  どうぞよろしくお願いいたします。  続きまして、資料の確認を行います。議事次第に沿って、確認いたします。まず、 「脳死判定・臓器摘出の要件の変更に伴う検討課題について」と題された資料があ るかと思いますが、これがページ数で5ページと思います。  次が参考資料1、「コーディネーター業務基準書(抄)」ですが、こちらが4ペー ジございます。  次が参考資料2、「検討課題に関する国会及び審議会での議論の状況について」と 題された資料でございますが、こちらが2ページでございます。  最後に、参考資料3、「検討課題に関する国会審議の状況について」と題された資 料がございますが、こちらが7ページでございます。  また、いつものように、机の上に紙ファイルを置いてございます。こちらは法律 やガイドラインについてまとめたものですので、議論の際に参考にしていただけれ ばと思います。また、終わった後は、この紙ファイルは置いていっていただければ と思いますので、よろしくお願いします。  資料について、揃ってないようでしたら、事務局までお知らせをください。  それでは、特にないようでございますので、以後の進行は新美班長にお願いした いと思います。  こちらで、報道のカメラは御退席をお願いします。 (報道関係者退室) ○長岡補佐 それでは、よろしくお願いします。 ○新美班長 お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。  早速議論に入ってまいりたいと思いますが、前回の会合では、改正法の内容を確 認していただいた上で、施行に向けた検討課題について、論点整理ということで、 全般的に幅広く御議論をいただきました。  本日は、その検討課題のうち、資料に配られておりますように「脳死判定・臓器 摘出の要件変更に伴う検討課題」について、前回の議論をベースにしながら、個別 に課題を整理してまいりたいと思います。  それでは、議事に入ってまいりますので、まず、事務局から資料について御説明 をいただきたいと思います。  よろしくお願いします。 ○辺見室長 それでは、私の方から資料の御説明をさせていただきたいと思います。  資料、表紙をおめくりいただきまして、(検討課題1)となっております。  基本的には、前回の検討課題の立て方に沿った形になっています。一部ちょっと 分割をしたところもございますけれども、順序としては、その順番で揃えていると ころでございます。  まず、(検討課題1)でございますけれども、「本人(15歳以上の者)の臓器提供 の意思が不明の場合(臓器を提供する意思や提供しない意思が明らかでない場合) に、脳死判定・臓器摘出を行うことを書面により承諾する遺族(家族)の範囲につ いて」ということでございます。  【現行制度】に書いてある2つの○の部分については、前回の作業班における資 料でお示ししたものと同じでございますけれども、現行ガイドラインにおいて、本 人が臓器を提供する意思表示を示している場合に、承諾を行う「遺族(家族)」の範 囲については、「原則として、配偶者、子、父母、孫、祖父母及び同居の親族」とさ れており、喪主又は祭祀主宰者が「遺族(家族)」の総意を取りまとめるとされてい るところでございます。  また、「角腎法」の廃止に伴う経過措置でございますけれども、これは臓器移植法 の附則において、本人意思が不明の場合、遺族から書面により承諾を得た上で、摘 出が可能ということが記載されておりまして、この場合の遺族の範囲も上記と同様 の取扱いにしているところでございます。  【検討の視点】ということで、これは前回の御議論を踏まえまして、事務方でこ ういう方向性でよいかということで書いてございますけれども、その範囲につきま しては、現行のガイドラインで定める範囲と同じでよいか。同じ法律上において、 同じ言葉で遺族(家族)と書いてあるものでございますので、同じ範囲でよいかと いうことで書かせていただいております。  こちらに書いてはいないのですけれども、先生方御存知のとおり、法律上、従来、 本人の意思が表明されている場合には、遺族(家族)が拒まないときといった記載 がされていたところです。今回、本人意思が不明な場合については、法律上「書面 により承諾」しているときというような書きぶりがなされております。これは紙フ ァイルの参考資料4に、法律の改正案の新旧が書いてございますので、こちらの下 の方が現行法、上の方が改正案でございます。本人が意思を表明している場合は、 要件的には変わらず、「拒まないとき」と書いてございますけれども、第6条第1項 の2号のところは、書面により承諾と書いてあるところでございます。  一方、この現行法の運用につきましては、省令上の記録書類に関する記述の中に 記載がございますけれども、家族からの承諾を記載した書類を記録に添付すること ということになっております。条文的には、参考資料2に、臓器移植法の施行規則 が書いてあるところでございますけれども、第5条に、脳死の判定に関する記録が 規定をされております。この第5条第1項に、医師が作成する記録自体の記録の中 身が書いてございますけれども、ページ的にはおめくりいただきまして、次のペー ジの第5条の第2項に、この記録に添付する書類が書いてございまして、そこの第 3号に、判定を受けた者に家族がいる場合において、当該家族が判定を拒まない旨 を表示した書面を添付するということになっております。  したがいまして、運用上、このような書類が残っているということが、脳死判定 なり、臓器摘出の前提というふうになっているというのが現在の位置づけでござい ます。あえて申し上げますと、証拠書類的な位置づけで残しているものと、今回の 法律でいきますと、法律上の要件という形の違いが出てくるところではございます けれども、現行、事実上、前提条件として要件的に運用しているところにかんがみ ると、今後の取扱いについて、同じような形で運用していくということでよろしい かどうかということも、できれば併せて御議論いただければというふうに思います。  ちょっと長く時間を取りまして、申しわけございません。  次のページ、資料の2ページ(検討課題2)でございます。  「小児(15歳未満の者)の場合に、脳死判定・臓器摘出を行うことを書面により 承諾する遺族(家族)の範囲について」ということでございます。  【現行制度】これは前回の資料と同じですけれども、心停止後に行われる角膜及 び腎臓の移植について、同様の扱いとなっているということでございますけれども、 これを踏まえて【検討の視点】ということで、どう考えるかということでございま すけれども、2つ目の○にございますように、法律上の整理として、定義として、 遺族の違いを考えるというよりも、コーディネーターが遺族の意向を確認する際に、 小児の特性を踏まえて、すなわち、特に父親・母親の親権者たる両親の意向を確認 するといったようなことでございますけれども、こういったようなことについてガ イドライン上、どのように規定をするのかということが検討の視点になろうかと思 っております。  続きまして、資料3ページでございます。  「小児(15歳未満の者)の臓器を提供しない意思表示について」でございます。 現行のガイドラインについては、御存知のとおりでございますけれども、【検討の視 点】でございますけれども、改正法における国会審議の過程において、提案者から、 15歳未満であっても、拒否の意思表示について有効なものとして取り扱うとの答弁 があったことを踏まえてどのように考えるか。また、民法上、意思能力が備わって いない子どもの意思表示は無効とされるが、このことを踏まえてどのように考える かということで、【参考】として、民法の教科書から関連部分の引用をさせていただ いているところでございます。  また、【参考】の後段には、「諸外国の状況」ということで、2007年に調べました 状況ですけれども、整理をさせていただいております。こちらをごらんいただきま すと、表の中で見る限りでは、まず、オーストラリアやデンマークは、承諾の下限 年齢はありますけれども、拒否については下限年齢の定めはない。フランス、ドイ ツ、イタリア、オランダといった国はそれぞれまちまちでございますけれども、下 限が規定されている。欄外で、※1ですけれども、イギリス、スペイン、スウェー デン、韓国といった国については、年齢の定めがないといったような状況というこ とでございます。  (検討課題4)でございますけれども、前回、小児の取扱いのところと併せて提 示をさせていただいたところですけれども、課題としてくくり出しております。「知 的障害者等の意思表示の取扱いについて」ということでございます。  【現行制度】ですけれども、ガイドラインにおいては「知的障害者等の意思表示 については、一律に意思表示を有効と取り扱わない運用は適当ではないが、これら の者の意思表示の取扱いについては、今後さらに検討すべきものであることから、 主治医等が家族等に対して病状や治療方針の説明を行う中で、患者が知的障害者等 であることが判明した場合においては、当面、法に基づく脳死判定は見合わせるこ と」とされているところでございます。  【検討の視点】といたしまして、改正法に係る国会審議の過程において、提案者 からは、知的障害者等については拒否の思いを持っていた可能性が否定できないた め、現行のガイドライン上の取扱いは今後も維持すべきとの答弁があったことを踏 まえ、どのように考えるか。  また、今後の「知的障害者等の意思表示」の取扱いについては、拒否の思いは有 効と考えるか、又は、拒否の思いも含めて今後さらに検討すべきものと考えるか。  ということで、【検討の視点】ということでお示しをさせていただいているところ でございます。  (検討課題5】でございます。「臓器を提供しない意思を表示していなかったこと を確認する手段及び手順について」ということでございます。  【現行制度】というところで、ガイドラインでこの手続を書いているところでご ざいます。  【検討の視点】の1つ目の○のところに[1]〜[3]まで書いてございますけれども、 前回お示しした資料の中では、確認する手段としては、[1]〜[3]にあるような、要は、 意思の表明の仕方として、カードに書く、登録システムに登録する、家族に話をす るといったようなことがあり得るという話をしましたところ、それを確認するとい うことでいいのではないかという方向性であったと思いますので、今は引っくり返 しでございますけれども、こういったことを確認する手続をとるということが考え られるといたしまして。2つ目の○ですけれども、臓器提供に関する意思が不明で あったとして、遺族の書面による承諾で移植を進める際に、[1]〜[3]を行うことで、 移植医療に従事する者が“臓器を提供しない意思”がなかったことについて確認す る注意義務を果たしたと考えてよろしいかということでございます。  以上、ちょっと長くなりましたけれども、資料の説明でございます。よろしくお 願いいたします。 ○新美班長 どうもありがとうございました。  それでは、検討課題5つ摘出して、ここで示していただいたわけですけれども、 順次、検討課題1から御議論いただきたいと思います。なお、その際に、各課題に ついて、ただいまの説明に関連して御質問がありましたら、その際に御質問してい ただければと思います。  それでは、どうぞ御遠慮なく、質問あるいは御議論をお願いします。  ここでは、遺族の範囲と、それから、もう一つ、書いてはございませんけれども、 書面の取扱いをどうするかということで御議論をいただきたいということでござい ました。前回の議論でも、遺族の範囲は、現行どおりでよろしいではないかという 方向を示されておりましたが。  水野さん、どうぞ。 ○水野班員 現段階でもう反対を言うつもりはないのですが、これは非常に問題の ある制度であり、運営であるとは思っております。まず、法的に言いますと、「喪主 又は祭祀主宰者」という概念がここででてくると、民法学者であれば驚倒するので はないでしょうか。その定義はどうするのかということから、どういう手続きで誰 が決めるのか、複数が名乗り出たときにどうするのかということまで、問題が山積 です。  それから、非常に広範囲の人々が家族として発言権があるということになってい るのですが、この中にはいろいろな経緯が含まれてしまっていて、混乱があるよう に思います。1つには、恐らく死者が拒絶の意思を表示していたことを証言する範 囲を幅広く求めようとして、情報を持っているかもしれない人々に発言権を認めて、 本人の拒絶の意思表示を確認しようという意図があったのだろうと思います。それ から、限られた家族に順番に当たっていくのではなく、日本人の中に脳死に対する 拒否感が強くあるのをとらえて、親族の中に誰かいやだと言う人がいるときには、 その拒絶によって提供がストップしてもかまわない、それぐらい慎重にしてもいい のではないかという判断もあるでしょう。  それから、諸外国のこういう規程を見ますと、非常に限られたメンバーを第1順 位は誰、第2順位は誰、第3順位は誰と法定で決めていって、そのような方々にコ ーディネーターが順番に意思を確認していくことによって行うことになるわけです が、それが現在の日本の現実の運営でできるのか、という判断があります。ボラン ティア的に一生懸命やってくださっているコーディネーターで、それほどの強い法 的な権限も与えられていらっしゃらない方が現場で、そういう諸外国のようなこと はとてもできないという配慮です。そういうふうに順番を決めてきちんとやるとい うことであったら、ガイドラインではなく、法で決めなくてはならないのではない かという判断もあるでしょう。そういう様々な配慮が入った上で、こういう現在の ような形になっているのだろうと想像はいたします。  そして、これをにわかに変えるとなると、それこそ現場の運営を変え、順位を決 め、そして、それを法定するというような手続でないと、うまくは回らないだろう と思いますので、現段階では私はこれに反対はいたしませんが、これは、すごくお かしい運営方法であろうし、法的な観点から言うと、長期的に維持できるようなも のではなかろうとは思っております。 ○新美班長 ありがとうございます。  これは当初から、なかなかやっかい規定ぶりだということは議論していたところ ですが、今、水野さんがおっしゃったように、そろそろ検討をしてもいい時期にか かっているのではないかという御意見だと思います。現時点では無理だとしても、 そろそろ整理したらどうかという御意見だと思います。  ほかにいかがでしょうか。 ○町野班員 ちょっと質問だけですけど。1ページの下の【検討の視点】のところ ですね。現行のガイドラインと同じでいいかという趣旨が、何か違えた方がもしか したらいいことがあるかもしれない、そういう趣旨ですか。 ○辺見室長 格別そのような他意はございません。 ○新美班長 確認の意味でということですね。踏襲してもよろしいかという。 ○辺見室長 はい、おっしゃるとおりですございます。 ○新美班長 町野先生、何か違う御意見。 ○町野班員 何でこれが出てくるのか、ちょっとわからなかったので。これは心停 止後だけに限っていますよね。【検討の視点】のところ。 ○辺見室長 結論的には、全部です。「踏まえ」の前の前のところが。 ○町野班員 わかりました。 ○新美班長 丸山さん、何かございますか。 ○丸山班員 直接関係ないのですけれども、室長が先ほど触れられた、拒まないと 法で定められているにもかかわらず、ガイドライン等で承諾という文言が使われて いるのが少なくないのを今回改めていただいたらいかがかと思うのですが。現状で は、脳死臓器移植で、本人意思がある場合でも、それから「角腎法」の名残といい ますか、附則4条で角膜と腎臓に限って心臓死体から摘出する場合、遺族の意思の 位置づけというのは、脳死移植の場合は、本人意思があれば拒まないということで いいはずで、附則4条の心臓死体からの角膜・腎臓、眼球・腎臓の場合は、積極的 に遺族が提供するという意思表示なのですが、用いられる用紙は、ネットワークは 同じものを使っておられますね。その辺りが、せっかく法律の方が、本人意思があ る場合は、遺族の意思の要件を弱めようというので、拒まないというふうに定めた にもかかわらず、積極的な承諾の意思を求めているというのは、これまでもおかし かったのですが、今回、一般的に脳死の体からも遺族の承諾で摘出できるようにな りましたので、より問題がクローズアップされたと見ることもできると思うのです ね。ですから、その辺り、ちょっと整理するのが必要じゃないかと思います。 ○新美班長 ご意見は、拒絶をしないという意思を確認するようにすべきだという、 そういうことですね。 ○丸山班員 そうです。  それと、現在は、先ほど室長が御指摘になったように、拒まないという意思を確 認する書面を取っているのですね。だけど、実体法的に言うと、遺族が何も言わな いで黙っている、行為をしないというのも「拒まない」ですよね。証拠方法として、 書面があった方が事務はやりやすいでしょうけれど。だから、その辺りが、これは 教室事例かもしれないのですが、遺族としては、あまり積極的になれない、書面を 書くのはためらわれるけど、本人が提供すると言っているので、やりたければやっ たらいいというので黙っている、何もしない、関与しないというような場合、法的 にはできるのだけど、今の厚労省の定めている手続ではできないことに、あるいは ネットワークの手続ではできないことになってしまうので、その辺りちょっと整理 してほしいなというふうに思います。 ○新美班長 そうすると、丸山先生のおっしゃることは、拒絶の意思表示とともに、 書面も取るなと、そういうことですか。 ○丸山班員 取るなとは言わない。取れる場合は取った方が、後々もめごとは少な くなると思いますが。だけど、取れない場合も、本人の提供意思が書面で表示され ていて、遺族が黙っているというのであれば、ネットワークとしては、医学的な要 件が満たされれば摘出を進めていいのではないかと、そういう体制を用意するのが 法の規定に即したということになると思います。 ○新美班長 今の点について、ネットワークにおける実情はどうですか。 ○芦刈参考人 確かに丸山先生おっしゃるように、この法律の言葉から見ますと、 家族が拒まない場合ということで進められることにはなりますが、実際、家族が承 諾書を書くことまで積極的になれないけれど、いやとは言わない、拒まないという 状況を想像しますと、現場では、それはやはり拒んでいるというふうに受け取れま すね。それで進めるということを考えますと、後から何かトラブルが起こる可能性 は、そちらの方が高くなるのではないかというところは危惧します。 ○丸山班員 現場の方の気持ちとしては、そういうのはよくわかるのですがね。 ○新美班長 理論的には丸山先生のおっしゃることは私も理解するのですが、そう すると、現場でいわばグレーになっているところをどっちかに決め切るべきだとい うことになってしまう。そこで安全性の観点、あるいは、トラブルを防止するとい う観点で運用しているということなのですけれども、その辺はどうですかね。 ○丸山班員 そこはよくわかるのですが。ですから、そこはとりあえずは強く求め ないにしても、少なくとも本人が提供意思を表示している場合とそうでない場合と、 使う書面ぐらいは変えた方が、一方は拒まないということで、他方は遺族の責任で 提供するということですから、異なる書式を用意するということが、運用規則とか ガイドラインで必要じゃないかと思うのですね。 ○新美班長 わかりました。  その点はどうですか。現場では、そういう対応は可能になりますか。 ○芦刈参考人 可能か可能じゃないかという観点から言えば、可能だとは思います が。ただ、書面を2種類用意をするということになりますので、それで、脳死判定 承諾書、臓器摘出承諾書の2種類について、それぞれ2種類用意をするということ になりますので、非常に間違いのもとにもなりますし、現場でそういったことを防 ぐという意味では、今現状の形式が運用上はやりやすいとは思います。 ○町野班員 恐らくは、これは単に書面を変えるだけの問題じゃなくて、要するに、 現行法の趣旨からすると、遺族がいないときは、遺族の承諾もなんにも要らないの ですよね。ですから、今、丸山さんが言われるように変えるということは、現在の やり方をかなり変えるということを意味するわけですね。現在は、遺族がいないと きについては、拒む者がいないとして、臓器の提供に踏み切った例は恐らくないの じゃないかと思うし、それだけの準備も皆さんしていらっしゃらないと思うのです よね。これが法律違反だと言えばそうなのかもしれない。しかし、そこははっきり させるということになりますと、思い切ってそっちに踏み切るということですから、 かなりの重要な問題だろうと私は思います。 ○芦刈参考人 今、町野先生が御指摘のように、非常に重要なことであるというこ とは認識はありますが、現場の運用の混乱が生じないような方法を考えていかない といけないと思います。 ○丸山班員 現場で、現実にそれに則ってやるかどうかは別として、制度として、 書面を別のものを用意しておくというのは、あるいは町野先生が先ほど指摘された 遺族がないときというのは、拒否する者がないので、本人意思があればできるので すね。だから、できる体制を用意しておくということは、法に基づく行政、あるい は運用ということで必要じゃないかと思います。  他方、法律の方は、こういう要件が満たされれば、臓器を摘出することができる ということで、臓器の摘出を求める権利までは認めていませんので。だから、制度 は用意しておいて、あとはそれ以下のガイドライン以下のレベルですかね。これま で議論しました親族優先の場合でも、一定の場合については、臓器提供を受けない ものとするというようなことがガイドラインで定められたと思いますが、ああいう ような扱いで対応することも可能なのですが、基本的に、枠組みとしては用意して おかないと、法律に基づく制度ということで問題が出てくるのじゃないかと思いま す。 ○辺見室長 丸山先生御指摘のポイントは幾つかあるのだと思うのですけれども、 まず、ガイドラインの記載に関することにつきましては、紙ファイルの参考資料の 3にガイドラインが掲載されておりますけれども、このガイドラインの3ページ目、 第3のところ、ここがまさに遺族及び家族の範囲ということで規定しているところ でございます。ここの書き方が「臓器の摘出の承諾に関して、法に規定する遺族の 範囲については」というふうに書かれておりまして。ここはまず第1点、丸山先生 が御指摘される「承諾」という言葉ではなくて、改正法によって加わったところは、 まさに「承諾」なんですけれども、従来のものは、こういう形で遺族というのが出 てくるわけではないという、法律がそれぞれ先ほどの第1項の1号と2号では違う わけでございますので、むしろそれに即した形で書いた方がよろしいのではないか というガイドライン上の書き方の話が多分1つはあるのだと思います。  もう一つは、芦刈さんの方からのお話もありました、いわゆる書面の話ですけれ ども。これは書式例自体は、省令では、項目を定めるまででございまして、先ほど 申し上げましたように、「判定を拒まない旨を表示した書面」と省令には書いてあっ て、「拒まない旨を表示した書面」という、まさに法律のそのとおりのことが書いて ございます。多分、先生の御指摘は、それに基づいて私どもが、あくまで例ではあ るということなんですけれども、書式例として示しているもののタイトルが「脳死 判定承諾書」と書いてあるという、このところでございます。  恐らく、さらに申し上げると、脳死判定承諾書の中身は、「脳死判定が行われるこ とに依存がありません」ということでサインをしているので、「異存がありません」 ということについての意思確認書といったような恐らく名前であれば御異論はない んだと思うんですけれども、「承諾書」という名前がついているということについて のお話かと思います。 ○丸山班員 今、タイトルは「承諾書」で、本文は「異存がありません」という文 章が、本人意思が表示されている脳死移植の場合にも、それから、本人意思がない 心臓死体からの角腎摘出の場合にも使われているんですね。ですから、本人意思が ある場合については、その表題が問題で、本人意思がない心臓死体からの角腎の場 合については、「異存がありません」では足らないんですね。「摘出を承諾します」 と書かないといけないので、だから、その辺りが問題だという指摘ですね。 ○辺見室長 わかりました。  書式の種類のお話でございますけれども、実は、脳死判定承諾書は、若干要約し て申し上げますと、御本人が臓器提供するという旨を書面で表示をしています。家 族として脳死について説明を受け、理解をした上で、脳死判定が行われることにつ いては異存がありません、としてサインをする形になってございますので、ちょっ と現場向けには申しわけないんですけど、今の前提の部分、本人が表示しています といった部分が入った形での書面になっているので、これは書類を分けないといけ ないんだろうというふうに思っております。  その分けたときに、丸山先生がおっしゃられたような「異存がありません」とい う言葉と「承諾」という言葉辺りをどのように書いていくかという問題はあるかと 思いますので、その辺の法律上の話とこれまでの現場での取扱いの話との整合性と いうことについて、もう少し検討をしてみたいと思います。 ○新美班長 今の議論は、1つのポイントは、本人承諾がある場合とそうでない場 合というのは、中身を分けた方がいいだろうというのは室長がおっしゃったとおり ですが。もう一つ、「異存がない」というのと「承諾します」というのは、少なくと も民法上そんなに差はない。「アクセプトします」でもいいし、「差し上げます」で もいい。 ○丸山班員 それについても一言。昭和54年の「角腎法」制定の際には、そこが有 意な違いがあるとして立法者は制定されましたので、「異存がない」というのは、今、 新美先生がおっしゃったような受け取り方もできるんですが、「拒まない」という趣 旨を述べるものとして使われたと思います。 ○新美班長 「拒まない」というのは、「承諾」と一緒ですよ。 ○丸山班員 黙っているというのは。 ○新美班長 黙っていたって、「うん」と言えば、それは「承諾」ですから。 ○丸山班員 「うん」と言うのは、黙ってないんですけど。 ○新美班長 オプト・アウトのもとでは、「いやだ」と言わない限りは「うん」と言 ったことなる。 ○町野班員 恐らく法律の方では、丸山さんが言われたような区別をしております から、それはやっぱり重視しなければいけないと私は思いますけれども。勿論、日 常用語としてはいろいろなことは言えますし、民法学者はそう解釈するのも自由で すけれども、法律の方では、今のような考え方で文言をつくっているということで すから、一応それは尊重しなければいけないだろうと思います。 ○新美班長 そうすると、拒絶を表明した書面が出されない限りは、証拠上は、拒 絶がないということになる。したがって「承諾書」なんか何も要らない。 ○丸山班員 最初に言いましたように、普通はそうなんですが。ですけど、実際は 後で拒絶があったということが出てくるとやりにくいだろうから、確保できるので あれば「拒みません」という書面を遺族から出していただいてというのは、ネット ワークの事務上は望ましいんじゃないかと思いますけどね。 ○新美班長 これは細かい解釈論ですけれども、拒絶をするかしないか。法律論か ら言ったら、「拒絶しません」というのは、明らかにこれは「承諾」で。「拒絶しま す」と言ったら、これは「拒絶」なんですよ。ですから、「拒絶しません」というの を書面にしたら「承諾書」なんですよ。 ○丸山班員 だから、現在の運用で使われている要件というのは、法律が求めるよ り厳しい扱いになっているということは言えると思います。 ○新美班長 それはあります。それはおっしゃるとおりです。ですから、「承諾」ま で要求しているというのは、そのとおりだと思います。 ○丸山班員 ええ、そうですね。 ○新美班長 ですから、法律どおりやるというのだったら、「拒絶」の書面を出さな い限りは、拒絶したことにはならない。 ○町野班員 恐らく、もし法の趣旨に従って、本当に最後までやるかという話です よね。もしそうだとするならば、遺族がいないときについても、本人の承諾があっ たときは、臓器を提供すると。遺族が何かいろいろ言ってわからない、まだちょっ と考えているというときは「拒絶がない」ものとしてやっちゃうと。そこまででき るかということが一番の問題なんですよね。  丸山さんは、書面だけは区別しておいて、あとは運用と言いますけど、恐らく考 え方としてはそれはできないだろうと。法の趣旨を実行するなら、実行すべきだと いうことだったら、そうするのが私は筋道だろうと思いますし、これは権利の問題 ではないと言いますけど、恐らく提供者の方の生前の意思決定がどのように扱われ るかですから、これは一応権利の問題ではあるだろうとは私は思います。だから、 これをどこまでやるかという問題ですね。それから、書面をもらうかどうかという ことは、これはやはり私は書面をもらわなければだめだろうと思います。現在、到 底危なくて、そういうことだと後でトラブルがありますから。「拒絶」のときについ ては書面を取らなくていいという理屈に。勿論、実体要件はそうですけれども、手 続要件としては、すべて取るというやり方、私はこれは維持すべきだろうと思いま す。 ○新美班長 私も基本的には同じ考え方で、書面があることは望ましいし、取るべ きだと、現状で行くべきだということは思うのですけれども、それはタイトルを 「拒絶しません」という書面ですというふうにするかどうかというのはあんまり意 味がないのではないか。これは私の意見です。この問題を実務的にどういうふうに するか。本人意思があるときとないときのどうせ中身を変えるわけですからね。そ のときに、取扱いをどういうふうに変えるかは検討課題として残しておいて良いと 思います。。いずれ2種類必要になるわけですから。  それでは、検討課題1につきましては、遺族の範囲については、水野さんからあ ったように、問題はあるけれども、現状やむなしということで、維持するという方 向。それから、書面については、丸山さんの問題指摘もありましたし、それから、 室長からありましたように、本人意思があるときとないときと分けるべきだという のは当然だと思いますので、その過程でどういう表現をするのか、これはもう少し 詰めていく。とりあえず検討課題1については、以上のようなまとめでよろしいで しょうか。  では、続きまして、検討課題2について、御質問あるいは御意見がございました ら、お願いします。  これは、15歳未満の場合なのですが特に親子という関係を考えた場合に、家族 (遺族)の範囲について、15歳以上の場合と同じような扱いでいいのかどうかとい うことが1つ問題意識としてはあるということだと思います。これはガイドライン でどう書き込むのかということも念頭に入れながら、御議論をいただければと思い ます。 ○町野班員 先ほどからの議論で、第1のところとこれは恐らく関係すると思うん ですね。ちょっと調べてみないといけないんですけど、たしかフランス辺りは、子 どもの臓器提供については、元の保護者というのがたしか承諾権を持っているとい う具合になっていた気がするんですけど、これは調べてみなければわからないとこ ろがあります。それは先ほどの議論と関係するんですけれども、拒絶の意思を表示 できるといいますか、そういう重視すべき親族の範囲と、あるいは同意をして初め て臓器提供できる範囲と同じなのかなというのが私はちょっとわからない。これは まさに小児の場合については、積極的に承諾するわけですから、非常に近しい人に 限られてくるということになってくるのかなと。そうすると、元両親とかそういう 話になるのかなと。  そこらを含めて、勿論、今は法の方は同じような書き方になっていますから、こ れを区別するということはなかなか難しい話だろうと思いますけど。コーディネー ションするところで恐らくそういうことを考えられるだろうということになるだろ うと思いますけれども、そういう点では、基本は、ガイドラインをどういじるかと いう、そこまで書くかどうかの問題なんですけれども、小児の方については、そこ らをもうちょっとはっきりさせた方がいいかなという感じはいたします。 ○新美班長 ありがとうございます。  いかがですか。 ○水野班員 町野先生と同じ意見ということになるのでしょうけれども、ともかく 検討課題1のところで、非常に漠たる、とんでもなく広い同意見かつ拒否権を認め てきている現行をこのまま子どものときにスライドさせるというのは、非常に違和 感があることは確かです。この小児の場合には、常識的に考えれば、両親が第1順 位に来るはずであって、両親と遠縁の御親族みたいなものが、子どもに対して同じ 発言権と同じ思いを持つはずはないと思いますから、第1順位になるのは両親であ ることは間違いないと思います。  ただ、検討課題1のところと同じ問題なのですが、法にそういう順位づけがされ ていないときに、この場合だけ両親という形でガイドラインで指示できるかという 難点がここでも生じてきてしまいます。  それから、ちょっと話は変わってしまうのですが、検討課題1のところとも、こ れもまた重なってくるのですけれども、現実には、家族の中に、家族の自治にお任 せして、家族の中で何らかの話をまとめてくれたのを承りますという形にするのが、 非常に楽ちんであることは確かです。戦前の家制度は、そういう形で家つまり家族 の自主的な解決に任せてしまって公権力が一番楽ができるからという仕組みになっ ていたわけですけれども、それが事実上何をするかというと、その家族集団の中で の力の強い者が力の弱い者を抑圧することを是認する結論になってしまうリスクが 非常に高いのです。ここでは、両親の意思が重要ですが、、例えばお父さんが「みん な、いいと言っている」と言ったときに、お母さんが本当にいいと思っているのか どうかには不安が残ります。  少し突飛な例ですが、例えば欧米諸国では離婚合意があるときでもすべて裁判離 婚にしていて、制度的に完全に公的介入を確保した上で、一人一人の意思を確認す る手順をふんでいますが、日本協議離婚はそうではありません。日本の協議離婚制 度を裁判離婚に改めるように、もっと全体的に改革するというならともかく、現場 でコーディネーターの方が一人ずつ聞くというだけで、果たしてどれだけお母さん の方がお父さんと違う意見を言えるかどうかということは、そういう意味では危惧 は残ります。本当は「そういう権利があるのですよ」と言って、一人ずつきちんと 聞けるような体制が、もうちょっとサポート体制があってという方が望ましいので すが。それにしても、御面倒ですが、一人ずつ御意見を聞いて、御両親については 少なくとも聞いていただくという運用がある方が、「いやなのだけれども、言えなか った」というお母さんがいなくなる可能性は、少なくとも増えるだろうという気が いたします。大体が家族の自治に任せるという枠組み自体に、検討課題1のところ の枠組みに、私は、やむを得ないとは言いつつ不満はずっと持ち続けていますので、 ここで、せめてその程度の本筋に近づける努力はしていただければと思います。 ○新美班長 ありがとうございます。  ほかに御意見いかがでしょうか。  順位づけは難しいけれども、個別にきちんと確認できるようなことをガイドライ ンに書いたらいいのではないか。書くべきだという御意見だと思いますが、この点 はいかがでしょうか。 ○宮本参考人 今の水野先生の御意見に、私も小児科医として賛成です。私たちは いろいろな患者さんの治療の選択を親御さんから同意を得るわけですが、御両親一 緒、御家族一緒の場合と、一人一人では、かなり反応は変わります。したがって、 今のようなことは考慮された方が私もよろしいと思います。  それと、問題は、離婚している家庭の場合で、つまり、実の父親あるいは実の母 親がいない場合、特に実の父親がいない場合に、継父の意見が非常に強く通ってし まうと、実母は何も言えないという状況がありますので。勿論、脳死判定云々のと きに、離婚した元の親御さんを探し回るという時間的余裕ももしかしたらないかも しれませんので、そうすると、そういったところをどうするのかというのも大きな 課題かと思いますので、なおさら、どなたか1人の意見で遺族の総意とするのは、 しかも、小児の場合、小児の意思とは関係なく、遺族の意思だけで行けるわけです から、慎重にあっていいのではないかと思います。 ○新美班長 いかがですか。  もしもガイドラインに書くとすると、今の宮本先生のお話ですと、離婚なんかを 考えると、親権のある父または母に個別にきちんと意見を聞きなさいというような ことになりますかね。 ○宮本参考人 現実的に可能なのかどうかはわかりませんが、私が若干想定するの は、勿論、ほとんどの場合は問題ないのかもしれませんが、私がここでオブザーバ ーとして参加したのは、むしろこういった問題よりも虐待関連なのだと思いますが、 特に継父と実母でのもし虐待に近い状況があった場合には、継父の意見に実母は何 も言えないという状況がほとんどですので。 ○本山班員 基本的に父母が第1位に来るのだろうと思いますけれども、親権の帰 属だけで決めてしまうと、実際の離婚なんかでは、子どもと一緒に暮らしてない父 親を親権者にして、一緒に暮らしている母親は監護者という形で離婚紛争をまとめ ることがあるのですね。ですから、子どもの面倒を見ている人が親権者じゃないと いう場合は決して少なくないので、親権者だけにしてしまうというのはやっぱり問 題だろうと思いますし。離婚していて、一緒に暮らしてない父親を探すのに手間暇 がかかるとしても、やはり法律上は父親であることは変わりがないので、見つける のが困難だから、そっちは放っておいていいという話には恐らくならなくて、基本 的には実父母、それから、養父母なんかがいれば、養父母を父母として、順位をど うつけるかという問題はあると思いますけれども、全員の承諾が必要なんじゃない かというふうに考えますが。 ○新美班長 単身の成年者で、両親が離婚しているようなケースはありませんでし たか。 ○芦刈参考人 成年者の場合で、両親が離婚している場合ですか。それは実際にあ ります。心停止後の腎臓提供においては、未成年者15歳未満であっても、両親が離 婚しているケースは、今まで経験はあります。 ○新美班長 先ほどのように探しますか。 ○芦刈参考人 はい。探しますし、その継父母も同席をして、それも含めての承諾 の手続ということはしております。実務上はそういうふうにしております。  水野先生がおっしゃったように、個別で聞くというのは実際はしておりません。 同じ場で、それぞれについての意見というのは発言をそれぞれ「お母さんどうです か」「お父さんどうですか」ということでお聞きすることは実際はあります。ただ、 おっしゃったように、その同席している中で発言ができないというケースは、もし かしたら、それは想定されるものではあるかと思います。ただ、実際上、心停止後 の腎提供であっても、これまで本人の意思が不明である15歳未満のお子さんでも、 その家族の同意で、総意で承諾をいただいて、提供しているという事例はこれまで もありますので、その際は、これは原則としてこのように書いておりますが、「喪主 又は祭祀主宰者」が取りまとめるということになっていますので、お子さんの場合、 勿論、父母がその祭祀主宰者、キーパーソンとなりますので、その意見は重視する ということで、中心に話をしていくというのは、当然その運用上は行われています。 ○新美班長 いかがでしょうか。  そうすると、今のお話ですと、祭祀又は喪主というところで、御両親の意見はこ れまでは反映されてきたということですね。 ○芦刈参考人 そうですね。 ○新美班長 ただ、個別に聞くということはしてない。 ○芦刈参考人 はい。 ○手嶋班員 実際問題として、コーディネーションなさった後、その場ではよかっ たけど、後で不満が出るというふうな御経験はこれまでされたことはありますか。 その点をちょっと確認をしたいのですが。 ○芦刈参考人 その不満とおっしゃるのは、例えばどういったことでしょうか。 ○手嶋班員 例えば水野先生がおっしゃったように、その場では言えなかったけれ ども、本当はこうしたかったのだというふうなことが後になって伝わってくるとい うふうなことは実際には起こっているのでしょうか。 ○芦刈参考人 その家族の中でのそういった、後から「いや、実際は自分は提供し たくなかった」というようなことは聞こえてきたことはありません。実際に、我々 に言って来ないだけということも勿論可能性としてはありますけれども、少なくと も聞いている範囲ではございません。 ○新美班長 柳田先生のところで、フォローアップ、心情調査をやっていたのです が、そういう例の報告はありませんでしたか。提供者の御家族のその後どういう状 況かというのを。 ○辺見室長 すみません。ちょっと手元の資料と知識が不足しておりまして。確認 をしたいと思います。 ○新美班長 それがもしも公表できるようなものがありましたら、お願いします。 ○辺見室長 はい。 ○新美班長 ほかに。 ○丸山班員 感想なのですけど。当初、いろいろな改正案が出されたときに、町野 案として出されたものは、こういう場合については、元親権者が承諾権者とされて いたと思うのですね。私なんかも違和感がなかったので、今、水野先生、本山先生 がおっしゃったようなところに賛成するのですが。そうなると、御両親個別に聞い ているのですね。御両親それぞれの提供なり拒否なりを問題にしているので、現在 のガイドラインの第3の書き方で「喪主・祭祀主宰者」が取りまとめるというのは かなりイメージがずれている。「喪主・祭祀主宰者」が取りまとめるというこの書き 方は、54年の「角腎法」が制定されたときにつくられたガイドラインに始まったも のだと思うのですね。そのときには、現実には脳死の議論はありましたけど、「角腎 法」自体は、脳死の問題を扱っておりませんので、純粋というか、伝統的な死体に ついて、そこから摘出される臓器の問題をということで、死体管理者というか、死 体処分権者が誰かということから、この「喪主・祭祀主宰者」というのが出てきた と思うのですね。  現在の特に改正後の臓器移植法だと、まさに「脳死は死か」という問題をまだ引 きずっていると思うのですね。新聞報道なんかだと、今回の法律は一律に「脳死は 死だ」と扱ったとされていますけど、そこまで言い切れるかというと、そうでない という見方もできると思います。そういうような内容だとすると、死体を前提とす るこの喪主とか祭祀主宰者というのは、こういうくくりで、特に子どもの場合の遺 族による承諾での摘出の場合、このガイドラインでやっていいのかなと思いますけ どね。むしろ、順位をつけて、その親権者であった者とかというようなのを1位と してやる。これまでの指針とはちょっと違うので、作業は大変になるかもしれない のですが、そういうものを考えてもいいかもしれないですね。 ○新美班長 順位をつけるとなると、法律の文言から相当外れてしまいますよね。 ○丸山班員 運用として、まず、元親権者。 ○新美班長 それはガイドラインの中で、親権者又は監護者である父母の意見を慎 重に見極めるべきだというのをガイドラインに書き込むというくらいで、それ以上 に順位をつけるとなると、今度は、15歳以上の場合はどうなるのかという話にもな ります。 ○丸山班員 だから、順位をつけるというところに力点があるのではなくて、この くくり方ですね。喪主・祭祀主宰者でくくるというこの枠組み、さっきも指摘され たように、拒否する立場の場合と、それから、本人意思がない場合に承諾する場合 と、全部にこれを使うというのは、ちょっといかがなものかという面はありますね。 ○新美班長 それはおっしゃるとおりです。 ○辺見室長 今御議論をいただいた点で、1つは順位の話について、新美班長がお 話しになられたような、そのガイドラインの中で両親を遵守してということを書き 込んでいくというのは、これは一つの方針として十分あり得るのだと思っておりま すが、ちょっと1点実務的なことを考えて気になりましたのが、一人一人、一人ず つというお話をしたときに、それはどこの時点からなのかということでございまし て。説明をして理解をしていただいた上で納得をしていただくという話になったと きに、説明の時点から分けるのか、それとも、最後の同意のところで分けるのか。 実務的に見たときに、説明の時点で分けると、それ自体を不信がる人もいる可能性 はあると思いまして。そうすると、そこから分けるのは実務に落ちるのか。それと も、同じ説明をした上で、さて、最後同意をいただけるかどうかはちょっと別室で というふうにするのが実務に合うのか。それとも、先ほどの承諾書のようなところ にお二人でそれぞれサインをくださいといったようなことが実務に合うのか。この 辺のレベル感が、今御議論をいただいた流れだと、ちょっとどのレベルかというの がつかみにくい部分があるかなというふうに思っております。 ○新美班長 確かに、承諾いただく現場のことを考えると、どういう場を設定して やるかというのはなかなか浮かばないかもしれませんね。 ○宮本参考人 ただいまの室長の3つの場合を考えますと、小児科医としては、同 意を得るときに、親を別々で十分やれると思います。それは、子どもが亡くなる場 面に散々出くわした身としては、その場で父親と母親別々に意見を聞くことは何ら 異議はないと思います。多分、御家族もそんなに変には思わない。むしろ、自分た ちの意見を尊重されているというふうに考えるだろうと思います。 ○新美班長 可能性としては、十分あり得るという御意見ですね。 ○宮本参考人 はい。 ○新美班長 別々に聞いた上で、両親の意見を慎重に確かめるというのは、別々に やるか、一緒にできないかというのは少し残しておいて、宮本先生は、十分可能性 があるという御意見ですね。  もう一つは、順位をつけるかどうかとか、そういうことまでガイドラインに書き 込むべきかどうかですが、15歳以上の場合に用いられているのと同じ文言でありな がら、15歳未満の場合についてガイドラインで順位までつけてしまうというのは、 課題1との間での説明がつきにくいように思います。座長で権限を行使するつもり はありませんが、むしろ、ここでは両親の意見を極力慎重に伺った上で、遺族全体 の意見をまとめてもらうというようなガイドラインをつくるのがいいように思いま すけれども、その辺はいかがでしょうか。ほかにやりようがあるということであれ ば、御意見をいただければ。 ○町野班員 私は、それでやむを得ないだろうと思いますけどね。先ほど、私たち の案を紹介されましたが、あれは国会にも何も出ている案ではありませんし、しか も、法律の中で「両親」という具合にきちっと書いてあるわけですけれども、現行 法は違うわけですから、その中でそれを変えちゃうわけにはちょっといかないとこ ろがある。実際の運用として重視するのはこちらだという話だろうと思います。  そして、個別的かどうかというのは、子どもの場合、15歳未満だけ皆さん考えて いらっしゃいますけれども、我々の頭の中では、20歳未満はみんな同じですから、 そこらを当然。15歳で切るというのは、法律上の根拠も何も実はないのですね。と にかく親権のもとにあった子どもについてそう考えているわけですから、それが1 つと。  もう一つは、今のやり方というのは集団的決定で、しかも、その中でとにかくキ ーパーソンの意見を聞きながらコーディネーターが進めるということで何とかでき ているのが、もし、これが一般的に個別的にみんな同意を取らなければいけないと いうことになりますと、これは恐らくコーディネーションはできないということに なるだろうと思います。もし、そういう運用でするということになったら、法律を 変えて、恐らく第1順位は配偶者とか、そういう具合にしていって、そして、やる ならそれは可能だろうと思いますけれども、今のような状態で、集団の中で全部で 決定するということになって、個別的に聞けというのは、これは到底できないのじ ゃないかと私は思いますけど、できますかね。 ○芦刈参考人 今の議論の趣旨から言って、15歳で切るのか、二十歳で切るのかは わかりませんけれど、そういった未成年の場合において、その父母を個別に聞くと いうふうに私は受け取りました。例えば、父母を聞いて、祖父母を4人聞いて、兄 弟は入っていませんけど、同居の親族ですから、というふうになってくると、それ は到底できませんし。  非常に懸念することは、例えば、誰か1人反対したので、これは家族の総意とし て同意をいただけません、承諾をいただけませんということを伝えたときに、そう したら「誰がそれを言ったのだ」とか何か後の問題を我々はどう処理したらいいの かなというのは非常に懸念するところです。 ○新美班長 そうですね。犯人探しと言うと語弊がありますけれども、その可能性 もあるということですね。 ○丸山班員 15歳の線がこの改正法で消えるかなと一瞬思ったのですけど、本人意 思による提供はやっぱり15歳以上にするのですね。だから、そこは残りますよね。 逆に言いかえると、15歳か20歳かわかりませんが、本人意思の提供ができないもの について、これまで法定代理人であった者の意思は尊重するとかというような言い 方で、15歳未満なり未成年者だけ親の意向を重視するというのはできないかなと思 うのですけどね。それだけをちょっと感じました。 ○新美班長 もう少し詰めておく必要はありますが、両親、父母の意見は格別に慎 重に聞くべきだという点では、ほぼ皆さん共通した御意見だと思います。あと、そ れをどうやってガイドラインに書き込んでいくのか。順位づけをやるのか、個別に 聞くのかというのは、まだ現場はどうなるかということも確認できませんし、宮本 先生からは医師の立場ではできるとおっしゃるのですが、医師とコーディネーター とでは一緒になるかどうかという議論もありますから、その点は、次回の課題とし て、事務局の方で原案をもう少し練っていただいて、議論することにしたいと思い ます。  よろしいでしょうか。  それでは、続きまして、検討課題3につきまして、御質問あるいは御意見があり ましたらお願いします。  ここでは、基本的には、提供しない意思の表示ということについて、例を出して いましたが、外国でも年齢を決めているところと、年齢を書かずに、意思能力ある いは判断能力の有無で処理していくところがあるとのことですが、この点について、 どうぞ御意見をいただければと思います。 ○水野班員 資料的なことで、内田先生の教科書が挙がっているのですが、ちょっ とここにはふさわしくないかなという気がいたします。「表意者保護の制度であるこ とが強く意識されるようになり、本人以外は主張できない無効と解すべきだと考え られるようになっている」というのは、これは契約無効の話で、取引の安全等を配 慮した話です。ここではむしろ臓器についての提供する意思等というのは、取引安 全というよりも、そもそもそんな処分権があるのかということ自体非常に疑わしい 場面です。むしろ公序の話で、公序無効になりましたら、公序無効は第三者でも誰 でも主張できるという枠組みですから、むしろそちらの方に入ってくるのだろうと 思います。意思表示というものを非常に大切にしなくてはならない、かつ、代理人 ではなく、本人の意思表示を大切にしなくてはならないという文脈ではとらえられ ますけれども、この引用はちょっと違うようにいます。  それから、前回の議論で、身振りで拒絶したときはどうするかという話がありま したけれども、私自身は、15歳未満であったとしても、その拒否の意思表示につい ては有効なものとして取り扱うということについて反対をする気はないのです。た だ、少なくともこれを意思表示と言えるからには、その本人が中身を理解していな くてはいけないと思います。中身が理解できるような幼い子どもが、何だか身振り で「いやだいやだ」と言っていたとか、そういうことを外側から、これは拒絶の意 思表示であるという意味づけをしてしまうのは、むしろ子どもの保護にならないよ うに思います。子どもが自分でそう言ったのだからとしてしまうのはよくないだろ うと思うのです。少なくとも自分の意思表示がどういうことかということを理解で きる年齢の子どもが拒絶の意思表示を明らかにしているという場合には、それを有 効にして扱ってあげようということで、拒否の意思表示の方を下げている国におき ましても、ドイツでも、16歳が14歳に下がっているぐらいで、フランスの場合は 13歳以上、やっぱりこれぐらいになるのだろうなと思います。 ○新美班長 水野さんのご意見は、年齢をかちっと決めた方がいいのじゃないかと いうことでしょうか。 ○水野班員 何事もかちっと決めた方が法的にはやりやすいのですけれども。 ○新美班長 理屈としては、意思能力の有無で決めてもいいけれども、制度として は年齢で決めた方がいいだろうという御意見ですね。  この点については、ほかに御意見はございますでしょうか。 ○町野班員 私は反対でして。これは結局本人がノーという意思表示を、もしそれ が尊重すべきだとするならば、これは絶対に臓器提供できないわけですよね。ただ、 それがもし下がって、何歳まで下げられるかと。14歳までだと仮にそういう考え方 をとったとすると、13歳の子どもがノーと言ったとしても、これは無視して、遺族 の承諾だけで取れると。それでできるのかなというのが私最大のそれなのですよ。 勿論、どんどん下げていって、3歳だとか、2歳はどうするとか聞かれたらそれは 困る。それは当たり前の話で、困りますけれども。しかし、年齢をそのようにどこ かでかちっと区切るというのは、どうも適切ではないというふうに私は思います。 ○水野班員 法律で決められることではなくて、あくまでもガイドラインですので、 町野先生の御反対というのもわかるところがございます。もしガイドラインとして 要件を入れることができるのだとすれば、法定ではなので、年齢では切りにくいで すから、そうだとすると、拒絶の意思表示を十分に理解した年齢の者の拒絶の意思 表示があったという、そういう形で運用するというのがぎりぎりのところなのかも しれません。 ○丸山班員 前回、これは意思能力の問題だと、きょうも意思能力について資料が 出ていますが、意思能力の基準の立て方として、決定を下すことができたら認める という説と、ある程度対象を把握して理解した上で決定できなければ認めないとい う、ほかにも立場はいくつかあるのですけど。決定ができれば、もう意思能力あり とするという立場に立つと、もういやだということが、そして、その「いやだ」の 対象がある程度本人が把握しておれば、もう認めるということになって、水野先生 が最初におっしゃったところの前半部分、一般論は私は賛成なので、それをかなり 緩やかに考えて、もうちょっと1桁幼稚園ぐらいでも、テレビで何かのドラマなど を見ていて「私だったらいやだわ」と言うような発言があれば、やっぱり拒否の意 思と認めていいのかなというようなぐらいに。だから、各論になると、もう少し低 い子どもの意思も認めざるを得ない。本人がいやだと言っていることはしないとい うのが一つ生命倫理の原則として重要だと思うので、なるべく広く認めてあげたい なというふうに思いますが。 ○新美班長 例えばそれは何年くらいの前の「いやだ」という意思を容認しますか。 そういう問題があるのです。幼いころ「いやだ」と言っていて、その後ずっとだま っていて、13〜14になって脳死状態になったというときに、「いや、あの子は4歳か 5歳のころに、いやだと言っていた」と。やっぱり臓器は摘出できませんというこ とでいいのかどうかという問題はありますね。 ○丸山班員 人は考えが変わりますからね。 ○新美班長 ええ、変わりますから。  その辺をどうするかという問題も実は出てきてしまう。 ○町野班員 その点、現行法は便利なので、最後は遺族がいますから、もし先ほど の丸山さんのように、遺族はいないときについてはできるという考え方を取るとか なり厳しいですけど、現在は、とにかく遺族は恐らくそういうときはノーと言うと いうことになりますから、安全弁は一応現在は準備はされているということだろう と思います。ただ、その限りでは、水野先生のような書きぶりでガイドラインをつ くるというのが一ついいところかなと思います。 ○新美班長 深刻なのは、町野先生がおっしゃったように、遺族は「うん」と言う けれども、本人がかつて「いやだ」と言っていたという事実がでてきた場合に、そ れをどうに扱うかということだと思うのですけどね。 ○芦刈参考人 僕は年齢を区切ることによって一番懸念するのは、町野先生がおっ しゃったようなケースで、稀ケースかもしれませんけれど、家族が「それでも提供 するのだ」と主張してきたときに、このガイドライン、法律に則って照らし合わせ ると、それは進めざるを得ない。ただ、我々コーディネーターとしては、当然それ を本当に行っていいのかどうかという倫理的な呵責というのが起こってきますし、 現場でそれはかなり混乱が起こってくるのではないかということは懸念をします。 ○新美班長 仮に、年齢を区切らずに、水野先生がおっしゃったように、意思能力 がある者が拒絶した場合というような書きぶりをしたとしたら、現場でそれを確認 できますか。 ○芦刈参考人 何をもって意思能力があるかということですけれど、それは家族か らの聞き取りということにはなってしまいますよね。間接的に、家族が、例えばこ ういう状況の中で本人に説明をした、で、本人は「いやだ」と言ったというような 状況で確認をしていく方法しか考えられないですね。 ○新美班長 事実の問題としては、遺族は「本人はいやだと言っていたけれども、 私は提供する」ということを言うのがあり得るかどうかですよね、そういう意味で はね。これは、町野先生、安全弁だというよりも、ほとんど遺族はというか御両親 は「こう言っていた」と、本当に意思能力があって「いやだ」と言っていたという ことを言いながら、「私はそれを無視して提供する」と言うのはちょっと考えられな いですけどね。  書きぶりとしては、ガイドラインに、年齢というのを区切らずに、意思能力があ る者が拒絶の意思表示を示していたときには、その意思能力の有無について確認し なさいということを書いておくしかないのかなとは思います。それで現場は困らな いですか。 ○丸山班員 ちょっと難しいのじゃないですか。拒絶の意思が表示されたというこ とは、意思能力があることが前提になるので。ですから、拒絶の意思表示があれば しないというそれだけで、意思能力には触れない方がやりやすいのじゃないかと思 いますが。 ○新美班長 拒絶の表示の有無について慎重に調査をするということですか。 ○水野班員 もし何かつけ加えるとすれば、「臓器提供に関して十分な理解をした上 で」というふうなことを付け加えていただければと思います。 ○新美班長 そうすると、意思能力というのを匂わせることができると。  いかがでしょうか。今のようなことでガイドラインに書くという方向で検討して みようということです。  よろしいでしょうか。 ○辺見室長 いただいた内容を検討してみたいと思いますけれども、ちょっとペー ジ飛んで申しわけないのですけれども、一部先取り的に、よく見ると書いていると ころがございまして。5ページ目の検討課題5のところで、ここの検討課題5自体 は、提供しない意思表示をしていなかったことを確認する手段ということで、ここ はきっと子どもの部分がかかってくるものですから、その整理として、[3]のところ の括弧がくっついていまして。家族に御確認する際に、(小児については、さらに家 族間で臓器提供に関する会話の有無やその際の本人の様子について家族に確認する こと)というふうに見ております。これでよろしいかどうかというのもあるのです けれども、こういった書き方をする中で、御家族の間で、臓器提供についての会話 があったのか、そういったことを踏まえて、本人がどういった対応をしてきたのか ということを確認することといったようなことを書いてあるというのが一つの考え かなと思います。 ○新美班長 水野さんの御指摘は、それに近いと思いますが、水野さんはどうです か。こういうような形で提供しない意思を、それがちゃんとした意思表示かどうか を確かめていいかということですが。臓器移植を理解した上で、提供しない意思の 有無の確認ですけれども。 ○水野班員 これでその趣旨になるのでしょうか、ということがちょっと不安で。 ○新美班長 これだけではないと。 ○水野班員 小児について、会話の様子の有無を確認して、そこからコーディネー ターが十分に理解した上での意思表示であると確認したときはというのがここに含 意されているというふうに読むのであれば。 ○新美班長 確認のためのどういう資料を集めるかということで、ここでは、十分 理解した上でというのがここで入ってくるならば、この中身についても少し変わる ことになるだろうと。会話があったかどうかだけではなくて、御両親からは、十分 にこの点について理解していましたかということまで聞くことになると思います。 ○丸山班員 今、水野先生の発言を何回も繰り返されると、私は「十分に」という 辺りを求めるのはちょっとハードルが高くなるなと思いますね。子どもの医学研究 参加なんかでは、一応の理解があれば本人意思尊重ということだったと思うので、 ちょっと「十分」と言われるとハードルが高いような懸念を感じました。 ○水野班員 「十分」は取っていただいても結構なのですが、ただ、民法的な意思 能力だけで言いますと、まさに6〜7歳という非常に低いところで決まってきます けれども、それとは違う要件はかかるだろうとは思っております。 ○新美班長 対象が臓器移植だということになるわけですからね。  ほかに御意見はございますか。 ○本山班員 先ほど、承諾書の話がありましたけれども、ということは、この15歳 未満の場合に、両親に対してお子さんがそういった拒否の意思は表明していません でしたということを書面か何かで確認して、それを徴求するということにならざる を得ないと思うのですけれども、そういうことになるのでしょうか。 ○辺見室長 まだ具体的に書き下ろしていないので、少し検討が必要かもしれませ んけれども、先ほど申し上げましたように、現在の承諾書は、御本人が承諾をして います。「家族たる私は説明を十分に聞いて、異論はございません」ということで 「承諾」ということでございます。これに代えた今回の新しいものについては、「本 人の意思が不明であります。つきましては、承諾いたします」ということですので、 不明であるということも含めてその書面の中身ということになるのかなというふう に考えております。 ○町野班員 確認ですけど。現行法では、腎臓・眼球についてはそういう扱いです ので、そのときも同じような扱いをされたのでしょうか。 ○辺見室長 現行法の部分については、前提条件のところは書いてございません。 読み上げますと、「私は臓器の摘出について説明を受け、十分に理解した上で、上記 の者(死亡した者)が心臓を停止した死後、移植のために臓器の摘出を受けること に依存はありません」というふうに書いてあるところでございます。 ○町野班員 だけど、現行の附則の条文というのも、結局、本人が拒絶した場合は 除いていますよね。ですから、もし、それのやり方を今度も同じように持ってくる ということになりますと、本人の拒絶の意思がなかったということの確認のそれと いうのは入らないという話になりますよね。どうされるかということは、統一すれ ば済む話だろうと思いますけれども。 ○新美班長 わかりました。どうもありがとうございます。  ほかに御意見はございますでしょうか。  課題の3につきましては、臓器移植を理解した上での提供しない意思が表示され ているかどうかというようなことで、慎重にそれを確かめるという方向で最終案を まとめて、とりあえずそういう方向性だということでよろしいでしょうか。 ○町野班員 私は、その点は丸山先生と同じで、臓器提供の何たるかを理解しない で、とにかくいやだと言ったら、実際ちょっと取れないのじゃないかと思うのです けどね。それは、承諾するときについては、そういう議論はあり得るだろうと思う のですよね。しかし、これは拒絶ですから、いやと言ったら絶対いやと言ったとき も、やっぱりそれはできないのじゃないかと思いますけれども。 ○新美班長 基本的には、先ほど町野先生がおっしゃったように、どういう状況で いやと言ったかというのは、親の判断というか遺族の判断で決まると思いますので、 ある意味で遺族の判断を引っくり返すだけの効力をどこで認めるかということにな るでしょう。それは「いやだ」と言えればいいというふうに言うのか、もう少し臓 器移植を理解した上での「いやだ」と言ったときに、両親の承諾を引っくり返せる かということだと思いますけれども。どうしましょうか。それはいまだに両論併記 で、とりあえず最後まで持ち越して、今のままだとまだ決着つきませんので、次回 に最終的にお決めいただくということで。 ○手嶋班員 ちょっと気になったのですが、先ほど、新美先生の方から、そんな親 はいないだろうというふうなことで、あんまり考えなくてよろしいでしょうという ふうなお話だったかと思うのですが、最悪の場合、そういう親もいるかもしれない ということもある程度考えておく必要はあるのかなと。そうしませんと、現場の方 の負担が増えるかなというふうに思います。 ○新美班長 わかりました。  それも含めて、少しここは整理しておきたいと思います。 ○丸山班員 ちょっとその前の「十分」か「いやだ」かなんですけど。対象が移植 のための臓器を自分の死体から摘出されることですから、ある程度の理解は要ると 思うのですけど。だから、そこも含めて移植用死体臓器の摘出について拒む意思が というふうに書けば、私もそうなのですけど、お二人、その趣旨は満たされるかな と思うのですけど。 ○新美班長 要するに、拒むということについてきちんと意味がわかっているかど うかということだったらいいということですか。 ○丸山班員 そうですね。それは何を拒んでいるかというと、移植のための臓器摘 出ということですので、ある程度の認識は必要なのですね。だけど、それが正確十 分というところまでは、私は要らないのじゃないかなと思うのです。 ○新美班長 そこは、もう少し次回の議題で詰めていきたいと思います。  それでは、続きまして、検討課題4につきまして御議論いただきたいと思います。 どうぞ、御質問・御意見ございましたらお願いします。  これは前回も大議論になりました、知的障害者等であることが判明した場合にお いては、とりあえず脳死判定は見合わせるという現行制度をどうするかということ なのですが。 ○宮本参考人 私よく理解できていないので、この条件は、小児であることとどち らが優先するのでしょうか。 ○新美班長 これはまだ実は全然決めていないのです。事務局の方としては、どう 考えていらっしゃいますか。要するに、一番の問題は、小児で障害者だった場合で すね。 ○宮本参考人 そうです。 ○辺見室長 座長御指摘のとおり、基本的には、そこも含めて御議論をいただくこ とかなと思っております。  今回、ちょっと説明の中で省略してしまいましたけれども、参考資料3を付けて おりまして。参考資料3について、前回、国会の審議の状況等について切り出した 形で付けておりますけれども、今回、その関係する部分、前後も含めて、知的障害 者の関係は、2ページ目からこの資料の終わりまでですけれども、参議院厚生労働 委員会における議論を引用しております。ここは一つ前提となるわけでございます けれども、これがこの中において、子ども15歳以下なのかどうかということについ てのお話が必ずしもあるわけではありませんので、今の宮本先生の御質問について は、一義的にお答えするというのはちょっと難しい状況でございます。 ○宮本参考人 質問した理由は、と申しますのは、小児の場合、この子は知的障害 であるということをもうわかる事例があるわけですね。例えば染色体異常であると か、あるいは脳損傷が広範にあるとか。そうすると、そういうのは、これが優先さ れるのであれば、最初から除外されることになるのですが、実際には、広範囲な脳 損傷での脳死状態というのは十二分にあり得ることですので。そうすると、基本的 に、この条文が優先されれば、脳損傷がある小児は最初から除外されるということ になりますので、その辺がどうなのかなと思っています。 ○新美班長 国会での議論は、そういうことについてはあまり意識をされてなくて、 小児の扱い方と知的障害者の扱いについて論理的な整合性は考えられていなかった ように思われます。どうするかというのはなくて、その辺が理屈の上ではなかなか 明確ではないと。 ○町野班員 どっちを優先するかということで、もし、このような内容で、全然変 えないということであるならば、とにかく知的障害の方が、そちらの方が適用にな ることは、これは恐らく明らかで、そういうことになるだろうと思います。問題は、 そのように考えていいかということですね。 ○水野班員 前回も申し上げたことなのですが、知的障害者と小児の取扱いを整合 的に説明するということはできないだろうと思います。普通の小児は提供ができる のだけれども、知的障害者の小児は提供できないということの合理的な説明は非常 に難しいと思います。成人の知的障害者について、なぜできないかということの説 明も、これは非常に難しいのですが、前回も申し上げましたように、日本の知的障 害者についての成年後見の意思表示のシステム、意思表示の代行のシステムなどが 非常に不備なので、現状は、日本法が成年の知的障害者の意思表示について非常に 不備であるがゆえに、様々なリスクがあるから、とりあえず全部できないというこ とにしておきましょうという説明はかろうじてできるかと思いますが。つまり、子 どもの場合には、意思決定の代行をずっと親権者がいるという形でできているわけ でしたし、じゃ、子どもの知的障害児はなぜできなくて、障害者ではない子どもは できるのかという説明は非常に難しいと思います。 ○新美班長 いかがでしょうか。  これは国会の議論をどう理解するのかという問題で、町野先生がおっしゃったよ うに、知的障害者はカテゴリカルに一切やらないという政策判断をしたのであると 読もうと思うと読めるのですけれども、その政策判断があまりにも大胆過ぎるもの ですからね。本当に小児の知的障害者は一体どうするのかということは悩ましい問 題です。 ○丸山班員 現在の心臓死体からの角膜・腎臓の摘出について、知的障害と絞って しまうと狭くなるのですが、精神障害も含めて、そういう方から遺族の承諾で摘出 した例というのはないのですか。 ○芦刈参考人 御家族の方の承諾ということですので、個別事例に関しては申し上 げられませんけれど、そういった可能性は当然あります。 ○丸山班員 これまで、附則4条に基づくのがあったとすると、今回これを幅広く 適用すると、それもできなくなってしまうというのを懸念しますね。もっと議論し てからの方がいいのですが、知的障害、広く精神障害と言うと、前回の町野先生の 御指摘で我々も入ってしまうということもありますが、どの範囲を意味するかはと もかくとして、個人的には、そういう方も子どもと同じように、対象として含めて しまって、さっきの「いやだ」と拒む意思については緩やかに認めるというのがす っきりとはすると思うのですけど。 ○辺見室長 今、芦刈さんの方に御質問されたところについてのガイドライン上の 整理でお話しいたしますと、現行制度のところに御紹介しておりますように、知的 障害者等について、法に基づく脳死判定は見合わせるということになっております ので、心停止後の話はこのガイドラインがかかるところではございませんので、こ のガイドラインで見合わせておりますのは、脳死判定の部分ということでございま す。 ○新美班長 歯止めがあるわけですね。 ○丸山班員 このガイドラインは、そういうふうに臓器摘出と脳死判定を分けて、 脳死判定についてだけ見合わせるという趣旨なのですか。文言はそうなのですけど ね。 ○辺見室長 文言のとおりだと思います。 ○新美班長 入口ではねてしまうということですね。 ○町野班員 しかし、これからは恐らくこれは変えざるを得ないですよね。脳死臓 器移植のときだけ本人のオプトインが必要だというので、そのオプトインについて の能力ということでこういう条文が出てきているわけですから、今度は一般的にオ プトアウトの場合だけだという話になってきますから、しかも、少なくとも脳死と 心臓死と区別しないということですから、このガイドラインはその点を維持するこ とは難しいだろうと思いますね。それは、言われましたように、どうして脳死のと きだけ取っちゃいけなくて、心臓死になったら取って構わないのかと言われたら、 これは全然理屈も何もないですからね。  だから、恐らくそこまで含めた上で議論をしなければならないのじゃないかとい う具合に私は思いますが、もう一つの問題は、この間ちょっとありました「知的障 害者等」というのはどこまで入るかという話ですね。だから、精神障害者は全部入 るという理解では恐らくないだろうと。判断能力について著しく限定されたものと いう考え方だろうと思いますから、それはそれでよろしいのじゃないかなという具 合に思います。もし、精神障害者全部入るということになりますと、これは一般的 な効果というのは非常に大変なことになりますよね。精神障害者一般的について、 みんな判断能力がないという前提でこれから動かなければいけないか。それはそう いうことはないだろうと思います。 ○丸山班員 精神障害を患う人の中で、判断能力が認められない人は含めるという ことなのですか。 ○新美班長 この前ありました知的障害の定義というか、ここはどこなのかわかり ませんが、IQでどれくらいかという判断能力を考えて限定したらどうかというの が1つだったのですが、ただ、「等」がどこまで含まれるかというのは実はどこも出 てこない。例のALSでしたっけ、要するに、意識はあるけれども、表示ができな いという人も含むとか、体が全部動かなくなって、ロックティンしてしまったよう な人も含めるのかどうか。○丸山班員 それは何かおぞましいというか怖い。最近 だと、ファンクショナルMRIで、思考はちゃんと維持されていることが実証され たというような報告もありますので。その辺り、どこまでこれを含めるように理解 するのか辺りをちょっと。 ○新美班長 整理してからの方がいい。 ○丸山班員 ええ。 ○新美班長 何を想定しているかというのは、必ずしもこの言葉からは出てきてな いということはおっしゃるとおりです。  一番の問題は、町野先生がおっしゃったように、角膜の場合の扱いは、理屈から 言ったら、今のままでは維持できないということは注意をしておく必要があるだろ うと思います。そこまでを含める趣旨だったのかということも考えなければいけな い。 ○町野班員 拝見した国会の答弁資料を見ると、これはそこまで引っくり返すつも りの答弁ですよね。 ○新美班長 答弁ぶりはまさにそのとおり。 ○町野班員 まさにそうなので。これをそのとおり尊重して進むべきかというかな りの問題だろうと思います。私は理屈に合わないし、水野先生も言われるように、 説明はつかない話であって、むしろ、これは障害者について差別感を助長するだけ であって、その権利を守るものにはならないと私は思いますけれども。しかし、そ れで、前に申しましたとおり、あえて、波風をここで立てるかという話だと思いま すね。これだけ国会ではっきりと変える趣旨はないということを言っているわけで すから。 ○新美班長 そうは言うけれども、ガイドラインには書き込めないという返事はあ り得るのですよ。それは臓器移植委員会で。 ○町野班員 よろしいのですけれど。もし、ここの結論がそのようなものであるな らば、そのとおりいくだろうと思いますが。臓器移植委員会で引っくり返る可能性 もあると思いますけれども、それはあるだろうと思います。  ただ、そのときに文言は、このときにオプトインのことについてだけの能力に、 知的障害者等については、その承諾の意思はなかったものとして扱うべきであると。 それ以外は全部書かないという話ですね。提供はしないと。それをやると、明らか に今までの取り扱い方と違うと。しかし、法律が変わったのだから当然だというの は私などは考えますけれども、皆さんは、国会の答弁を見て、変える趣旨はないと 答弁しているじゃないかと、これを覆すのかという話ですよね。 ○新美班長 ええ。ですから、おっしゃるとおり、ここでは書けないというのは、 この部分については、要するに、提供のところについては、承諾のところについて はいいけれども、意思がないということについてまで維持できるかどうかというこ とでは考えたけど、書き切れないということはあり得ると。 ○町野班員 書いてあるのをそのまま維持するかどうかなので、これは取ってしま うというのは、理屈としては後段の方ですね。これは書き切らないのではなくて、 現行法を変えたということをはっきり書くわけですから、これはかなり大きい。書 けないというのではないですね。 ○新美班長 そういう意味で指摘をしろということですね。  これは相当大きな問題になりますので、きょう、皆さんにフリーに議論をしてい ただいた方がいいと思います。あえて、今、私が極論を吐いて、そんなことは書け ないという返事もありますよと言ったのはそういう趣旨です。  どうぞ、水野さん。 ○水野班員 私も、これは町野先生と同じように、本当は逆差別になってしまうも のだろうという理解をしております。知的障害の方々だけは脳死の対象から外すと いうのは、そのような方々を保護したり尊重したりするというよりも、むしろステ ィグマになる、我々と同じ次元には立てない人々だということになってしまいかね ない、論理的にはそうなのだろうと思います。ただ、従来の経緯というものがあっ て、このような知的障害の方々は、要するに、脳死に対する不信感と、あるいは脳 死に対する無理解と言いかえてもいいかもしれませんが、そのようなことが影響し ていたのだろうと思いますけれども、それに対する警戒感から、ずっと対象から外 してほしいという動きがずっとあって、それをあえて抵抗するまでもないというの で今まで流されてきたのではないかと思いますけれども、子どもの問題で一歩進ん だことを契機に、本当に筋論で脳死の問題についてきちんと筋の立った立法をとい うことになりましたら、これは本当に筋が悪いでしょう。拒絶の意思表示ができな い子どもでも提供できるのですから、拒絶の意思表示ができないことを理由にする ことも困難です。無理にその筋で合わせると、逆差別をするのだとしか言えなくな ってしまうと思います。先ほど言いましたように、その理屈を使わないでぎりぎり 正当化するとすれば、成年の知的障害者について意思表示の制度が整っていないが ゆえに、従前の扱いをそのまま続けるとしか、そのぎりぎりのところでしか言いよ うがない。そうでなければ、我々は、知的障害者について逆差別をするのだと言っ てしまうことになりはしないかと危惧いたします。 ○新美班長 いわば、ぎりぎりの妥協案として、小児の障害者については小児の扱 いをするという御意見ですね。ただ、国会答弁でそうはなってないというのはなか なか難しいところです。 ○町野班員 今のはちょっと具合が悪いと思うのですけどね。成人については知的 障害者であっても提供できないけれども、小児のときだけはできるという話にはそ れはならないので、これはまさに筋道が通らないと思います。 ○新美班長 オプトアウトの議論からいくと、そうはならないということで、意思 が不明であれば提供できるということになる。 ○水野班員 筋論で言うと、町野先生のいわれるとおりであることはよくわかって おります。 ○新美班長 ほかにいかがでしょうか。  この国会答弁をある意味でどういうふうに生かしていくかということなのですけ れども、今、中身自体は、ここでの議論としては、障害者だけ特にカテゴリカルに 臓器移植から外してしまうというのはおかしいのではないかというのは、基本的な 了解はある。ただ、それをこの国会答弁があることがゆえにどうしたらいいのかと いう悩みがあるということですね。 ○町野班員 私は、結論から言うと、このままで行くしかないと。脳死だけという ことではないですからね。全部についてこれをやらざるを得ないだろうと思います けど。そのときに国会の中で出ているのは、拒絶意思が知的障害者については見過 ごされる可能性があるという言い方をしていますよね。じゃ、子どもについては本 当にないのかと言うと、それはおかしいのだけれども、それが先ほど水野先生が言 われたような、本人の意思を尊重するシステムが日本にできてないんだいうことで そうなっていると理解するしかないと。それが唯一つく理屈だろうと思いますよね。 ただ、これが本当に実際に子どもの場合と権衡するのかと。非常に臓器移植に反対 されてきた人たちは、小児の自己決定ということを一生懸命言っていたにもかかわ らず、今度はそっちの方に乗り換えるのか。ますます私は理屈に合わないとは思う けれども、恐らくそれしかないのではないかという具合に思います。 ○新美班長 そうすると、小児の障害者はどうしますか。 ○町野班員 勿論、障害者である方が優先するわけでしょうね。それは当然のこと ですね。 ○新美班長 障害者であるから、親権者の判断は認めないということをどうやって 理屈づけるかということですね。 ○町野班員 それは、先ほど言いましたとおり、知的障害者については、拒絶意思 があるのが非常に高いので、それを無視するようなことになっては絶対いけないか ら、タブーにしましょうと、ただそれしかないですね。 ○新美班長 そういう割り切りをするということですね。 ○町野班員 それしかないですよね。 ○新美班長 あと、ほかに御意見はいかがでしょうか。  きょうは、この問題はそういう意味では非常にデリケートな問題も含んでおりま すので、御自由に御発言いただいて、次回に最終的な方向をまとめたいと思います が、御意見がございましたら、お願いします。 ○芦刈参考人 1点、今、町野先生がおっしゃった意見に対して確認をさせていた だきたいのですけど。今、先生がおっしゃったように、今の文言では、法に基づく 脳死判定を見合わせることというふうになっていますので、脳死判定を見合わせる。 つまり、脳死からの臓器提供はできないという文言になっているのですが、臓器提 供そのものを見合わせることというふうに理解してよろしいでしょうか。 ○町野班員 そういう趣旨です。  結局、おっしゃられる趣旨というのは、脳死臓器移植のときに脳死判定はできな い。だからやめておきましょうと。それから、心臓死を待ってのときはできるかと いったら、今は、先ほどの御説明のとおり、今までの理解では、そうしていたと思 われますよね。しかし、それは理屈に合わないのだろうという具合に私は思います。 知的障害者等からの臓器の提供は見合わせるというのがこの趣旨だとするならば、 これは心臓死も脳死も区別がなくて臓器提供はできない、そちらの方に本筋がある ように思います。 ○芦刈参考人 知的障害者等に関しては、本人の意思表示ができるかどうか、その 意思表示能力の問題でこの文章があったのだと理解しているのですが。この法改正 によってそこはまた変わってくるという理解でよろしいでしょうか。 ○町野班員 そのとおりですね。私はそう思います。つまり、前のときには、オプ トインの能力について問題にしていたわけですけれど、今度は一切だめだというこ とになりますと、国会答弁の中にあります「本人の意思不明のとき」として、遺族 の承諾が取れることになるのではないかと。「いや、それはありません」という答弁 をしていますから、そうなってくると、一般的に拒絶の意思があるのではないかと いうことでしかないだろうと。国会の質問もそうだし、それに対する受け答えもそ のようになっていますから、そう見なければいけないのではないかと思います。だ から、脳死判定ということではないだろうと思います。 ○新美班長 ほかにいかがでしょうか。  国会での議論を見る限りは、町野先生がおっしゃるように、脳死に限った議論で はなくて、移植提供そのものを全部を見て言っています。臓器提供そのものをにら んだ議論をしていますので、筋論から言ったらそうなるだろうと思います。  議論をもう少し深めた上で、最終的な方向に行きたいと思いますので、ここはこ のくらいにして。  では、次に、検討課題5について、御質問・御意見がありましたら、お願いしま す。  これは、確認方法をどこまでやったら、提供しない意思の確認がリーズナブルに 行われたかというところですが。  事務局からは、考え得る確認方法として、[1][2][3]が挙げられておりますが、これ で十分と言えるかどうかということで問題提起がなされております。 ○丸山班員 前回も申し上げたのですが、提供意思登録システムが、現在は、15歳 未満の者の意思が入らないようになっているということだそうですけど、それにつ いては、システム上、年齢制限を取り払うのはそんなに問題なく、比較的容易にで きるということでよろしいのですか。 ○芦刈参考人 私、直接の担当ではありませんが、コンピュータのプログラム上の 問題を変えれば、恐らくできるかと思います。 ○新美班長 ほかにいかがですか。  ただ、この提供しない意思について、年齢制限もせずに緩めるとなると、登録シ ステムに登録していたかどうかというのはあんまり意味を持たなくなりますね。 ○丸山班員 登録システムに拒否の意思を登録するということです。 ○新美班長 拒否の意思を登録するということは、登録システムに登録するという 判断能力があるかないかという議論が別に出てきます。要するに、提供しない意思 について極めて緩やかに能力を要求するというときと、登録システムに登録すると いうのとでは、全然判断レベルは違うと思います。そうすると、例えば4歳、5歳 の子どもが登録したいと言ってくるときに、これは、本人が言ってくるのはちょっ と考えられないから、親が言ってくる。それでも、本人の登録として位置づけるか どうか。 ○丸山班員 だから、登録ではなくて、「いやだ」というほうですよね。 ○新美班長 「いやだ」というのをシステムに載せるかということですよね。 ○丸山班員 最近の子だったら、小学生ぐらいだとできるのじゃないですか。 ○新美班長 そういうのでも、いわゆるシステムとしてはオープンにしなさいとい うことですね。 ○丸山班員 ええ。 ○新美班長 いかがでしょうか。  ほかに御意見はございますか。 ○手嶋班員 検討課題5とはちょっとずれるのですけれども、先ほど申し上げた親 御さんとの関係ですね。これによれば、勿論、家族(遺族)の確認さえすればよい ということで、注意すべき義務は果たされるということになりますけれども、例え ば、中学生が同級生と話をしていて「私は提供はいやだわ」と言っていたというこ とが後でわかったりした場合、ここには載ってこない話ではありますけれども、実 際問題として、親は提供拒絶の意思がなかったというような話で話が進んでしまっ た後で、そういった話が出てきたらどうなるのかなというようなことをふと気にか かったのですが。 ○新美班長 要するに、親にも言わないけど、親友には話していたというようなと きで、合理性を十分確認したかどうかの担保ができるかということですね。 ○手嶋班員 はい。 ○新美班長 確かに、カレン・クインラン事件なんかは、友達との会話で「いや だ」と言っていたということですので、ない話ではないとのすが。そうすると、遺 族に確認しただけではだめだということになりましょうか。 ○町野班員 それはまさにポイントで、この書き方は、誰に確かめて、例えば家族 の人に聞いてみて、学校では何と言っていたかとか、そういう話まで、あるいは友 達の間。だから、そのルートをまず確定しておかないと、到底全部について手を回 してやれということはコーディネートできないということで、このようにしている わけですよね。だから、これで十分と考えるかどうかですよね。家族に聞いても、 そのルートだけでは信用できないという話もあり得るかもしれない。  ただ、一方で、特にドイツ辺りですと、直近の親族に聞けと、それ以外のことは 書いてないのですよね。恐らくこれが行い得る一番いい方法じゃないかと。つまり、 前の方で日本法の方は、[1][2]のような形式的な制度を一応持っていますから、まず こっちの方から見てみて、そして、最後にそれを拾うものとして家族を持ってくる と。私はこれが合理的ではないかという具合に思います。 ○新美班長 いかがでしょうか。  考え得るルートを全部探せなんていうのは、これはある意味で不可能なことです ので、ここまでやったらとりあえずは容認できるとして。後で出てきたときに責任 は追及されないようなことでどうだということですね。  いかがでしょうか。  町野さんはこれでいいのではないかという御意見ですが、ほかにいかがでしょう か。  私も、これ以上のことは求められないのではないかという気はするのですが、ほ かに御意見あれば。 ○丸山班員 海外の立法例だと、合理的な調査をして、その拒む意思がわからなか ったけど、後でわかってしまったような場合は免責されるというような規定がある ものがみられたかと思うのですが。だから、ガイドラインではできないのでしょう けれども、何かそういう趣旨のことを書いておく方がいいかもしれないですね。 ○新美班長 いかがでしょうか。  そういう意味ではガイドラインの範疇をちょっと踏み外すかもしれないけれども、 書いておいた方が好ましいということなのですが。  いかがですか。  中身については、丸山さんはこの[1][2][3]くらいをやればいいという御意見でしょ うか。 ○丸山班員 私はそう思います。 ○新美班長 ほかにいかがでしょうか。  コーディネーターの立場から見て、まだほかにもあり得るということはあります か。そんなに負担にならなくて。 ○芦刈参考人 この[1][2][3]が非常に合理的で、実際にできる範囲だと思います。 ○新美班長 ほかに御意見はいかがでしょうか。  では、確認の方法としては、[1][2][3]で十分かどうかですが、必要なことはやって いるだろうということで、考える範囲では合理的な確認方法だろうと、こういうこ とでよろしいのでしょうね。  あと、ほかにいかがでしょうか。  では、検討課題5につきましては、事務局から御提示いただいた方向で、確認は これでいいではないかということで御意見がほぼ集約されたということでまとめた いと思います。  一応検討課題1から検討課題5まで御議論いただいて、検討課題4はちょっと深 めただけで、収斂はしておりませんで、むしろ散漫になったかもしれません。司会 があまりうまくなくて。検討課題4については、そういう意味では大きな宿題が残 りましたが、検討課題1から、4を除いた5まではほぼ方向性を示していただいた と思いますので、それに基づいて次回はさらに深めていきたいと思います。  実は虐待の問題がきょうは出ておりません。次回は、虐待の課題について検討を 行うとともに、きょうの一定の方向性を示していただいた課題についてまとめを行 っていきたいと思います。  それでは、次回以降の日程について、事務局から御案内をお願いします。 ○長岡補佐 それでは、本日は御議論ありがとうございました。  次回以降の日程につきましては、また、各委員の日程を調整させていただきまし て、文書にて御連絡を差し上げたいと思います。本日の議論を事務局の方で整理し て、また、次回以降の御議論につなげていきたいと考えておりますので、よろしく お願い申し上げます。  先生方におかれましては、お忙しいところを恐縮ですけれども、日程の確保をよ ろしくお願いいたします。  本日は、どうもありがとうございました。 ○新美班長 それでは、きょうの会議はこれでおわりたいと思います。  どうもありがとうございました。 【照会先】  厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室  代表 : 03(5253)1111  内線 : 2366 ・ 2365