10/02/17 第68回労働政策審議会職業安定分科会議事録 第68回労働政策審議会職業安定分科会 1 日時 平成22年2月17日(水) 10:00〜 2 場所 厚生労働省9階省議室 3 出席者 委員(公益代表委員)          大橋分科会長、清家委員、征矢委員、橋本(陽)委員         (労働者代表委員)          石村委員、斉藤委員、澤田委員、新谷委員、堀委員、吉岡委員         (使用者代表委員)          荒委員、市川委員、高橋委員、橋本(浩)委員       事務局 森山職業安定局長、山田職業安定局次長、森岡審議官、           宮川総務課長、鈴木需給調整事業課長 ○大橋分科会長 定刻になりましたので、ただいまから「第68回労働政策審議会職業安定分科会」 を開催いたします。 (出欠状況確認)  議事に入ります。本日の議題は、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業 条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱について」の諮問です。 本法律案要綱については、平成21年12月28日付で労働政策審議会から厚生労働大臣宛てに行われ た答申に沿って作成され、本日付で厚生労働大臣からの諮問を受けていますので、 これについてご審議いただきたいと思います。事務局からご説明をお願いします。 ○需給調整事業課長 事務局です。資料のNo.1が大臣からの諮問文と要綱です。「参考資料」とい うところに、ただいま分科会長からご指摘がありました12月28日付の審議会の答申を参考にお付 けしていますので、併せてご覧いただきたいと思います。  本日の要綱については答申の内容、すなわち平成20年法案の内容に、今回答申が出されました 内容を付加、追加・変更することが適当だということを受け、平成20年法案でお出しした内容は 基本的に維持しつつ、それ以降の答申の内容を付加して、それと矛盾する点については変更ない し削除して出しているものであります。  要綱をご覧いただきたいと思います。全体として、大きく2つの部分に分かれています。施行の 時期が6カ月後施行と3年後施行、2つに分かれていますので、いわゆる「二段階ロケット改正」 というものであります。答申の内容と順番が変わっていますのは、要綱という性質上、改正され た後の法律の条文順に並べているということですので、同種類のものが同じところに並んでおり ません。ちょっと見にくいかと思いますけれども、ご容赦いただきたいと思います。  要綱を最初からご説明いたします。第一の部分ですが、これが「6カ月後施行分」です。まず、 新しく変わっているところを中心にご説明いたしますと、一が「題名及び目的の改正」であり、 「派遣労働者の保護」ということを目的及び題名に加えているところでございます。  二「欠格事由の追加」ですが、これは20年法案でお出しした欠格事由の追加をそのまま移して きているものです。例えば許可の取消し等をされた場合、ほかの法人を作って、そこで新たな許 可を得ることができなくなるように欠格事由の追加を行っているものであります。  3頁、三と四が同じ、一連の規定であります。これについてはグループ派遣の8割規制であります。 具体的には四の(二)、派遣元事業主は、関係派遣先への派遣割合を100分の80以下となるように しなければならないということで、グループ会社において関連グループへの派遣は80%以下とする という内容のものであります。これは20年法案にあった内容をそのまま移してきているところでご ざいます。  五については、20年法案でありましたマージン率等についての一般公開の規定です。これについ ては、マージン率の平均値についてインターネット等で関係者に公開しようというものであります。  続いて、六は今回新たに設けている規定であります。これについては昨年3月、指針の改正でいわ ゆる派遣切りの際の中途解約時における損害賠償等の規定について整備いたしましたが、それを法 律に格上げするものであります。(一)については派遣契約の締結の際、契約の解除に当たっての 事項をいろいろ定めておくという部分があります。(二)については実際、派遣先都合による解約 が行われた場合において、派遣元で6割の休業手当等を払う場合には、負担について必要な措置を 講じるというものです。  これについて若干コメントさせていただきますと、指針の中では「損害賠償」という言葉を使っ ていたかと思います。法制的に見ますと、例えば派遣契約の合意解除などの際には「損害賠償」で はなく、違約金の支払いとか、いろいろな性質の金銭の授受が出てきますので、一般的な費用の負 担という言葉を使わせていただいたものです。  次に七、「紹介予定派遣」について、20年法案にあった明示事項の追加であります。これは例え ば紹介予定派遣で、「正社員になるだろう」という予想の下に派遣をされて6カ月後に紹介をされた ところ、例えば提示されたのは契約社員だった。ならば、最初から紹介予定派遣に行かなかったの にということのないように、予めわかっている事項については派遣契約の締結の際、労働者に対し て明示等をするというものであります。  次の頁、八も20年法案にあった内容です。期間を定めないで雇用される労働者については、いわ ゆる派遣先において、派遣元・先指針に規定されております特定目的行為、いわゆる事前面接等の 禁止規定ですけれども、これについて適用しない。併せて、その際には差別は禁止するということ であります。これは無期雇用への誘導策として20年法案に盛り込まれたものであります。  九も20年法案にあった内容です。同じく無期雇用への誘導策でありまして、厚生労働省令で定め てありますが、派遣先の努力義務として「継続勤務1年以上の者が希望する場合には、無期雇用への 誘導策として、例えば派遣元での無期雇用化、紹介予定派遣で派遣先に就職させる、もしくは無期 雇用にふさわしい能力を身に付けた者に教育訓練をさせる。こういった3つから選択して講じること を努力義務を課すという内容です。  十ですが、これについては20年法案にあった規定と今回新たに答申された均衡の規定を合わせてま とめた規定です。(一)が賃金に関するものでして、今回の答申では「派遣先の労働者との賃金水 準の均衡を考慮する」という規定があります。これを規定しつつ、一昨年の20年法案においては例 えば同種の労働者の一般の賃金水準や職務の内容、意欲、能力、経験などを勘案して賃金を決める ようにという規定がありましたが、それを後段に書き、賃金の決定についての派遣元の配慮義務と いう形で規定しているものであります。  (二)、ここは新設ですが、均衡について(一)が賃金であることに対し、(二)は教育訓練と 福利厚生について、派遣先の同種の業務に従事する労働者について均衡を考慮するという規定を新 設しています。  十一は20年法案にあった規定です。キャリアパスを踏まえた教育訓練を実施するよう、派遣元事 業主に努力義務を課すものです。  十二についても、これも20年法案にあった規定ですが、派遣元事業主が派遣労働者を雇用しよう とする場合、例えば賃金の見込み額でありますとかマージンの率等、事業の実情について説明をし て、派遣労働者が適切な派遣元を選択できるようにするという規定です。  十三が今回新設の規定です。これについては、個々の労働者の派遣料金額について派遣労働者を 雇い入れようとするとき、派遣をしようとするときと料金を変更しようとするとき、この3つの場面 において個別に明示をしようという規定です。  十四については昨年、20年法案にあった規定です。派遣労働者が無期かどうかによって、今回いろ いろ特例を設けています。ただ、無期かどうかというのは派遣元は知り得ますけれども、派遣先は知 り得ないということで、派遣先に対して無期かどうかを通知するという規定であります。  続いて、十五については日雇労働者の派遣禁止であります。このベースは20年法案です。基本的に 日雇派遣については原則禁止ですが、変わっていますのはもともと日雇労働者の定義について「日々 又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者」という形にしていましたが、今回の答申を踏まえ、「日 々又は二月以内の期間を定めて雇用する労働者」と変えています。ただ し、例外規定については政令で定めるという形です。これについては20年法案を踏襲しているものです。  十六も20年法案にありました「離職した労働者についての労働者派遣の禁止」です。例えば、ある会 社を辞めた労働者を派遣会社で雇用して、そこの派遣会社から元の会社に派遣する。いわゆる、リスト ラの際にたまに使われたケースですが、これについては派遣の本来の趣旨ではないということで20年法 案に盛り込まれていた事項でございます。これをここに盛り込んでいるところです。  十七が新設の規定です。これは均衡の関連です。派遣元で派遣先との均衡を保つ場合、派遣先の労働 条件等を知らないと派遣元でいかんともしようがないということですので、そういったことに必要なも のについては派遣先に対し提供するよう努力義務を課しているものです。  十八は20年法案にありました無期雇用への誘導策の3つ目です。これについては、26業務で派遣先に3 年を超えて勤めている場合について、同種の業務の労働者を派遣先で募集する場合には派遣労働者を優 先的に雇用するよう申し込むという規定がありますが、派遣元で無期雇用の場合にはその適用を除外す るというものです。  続いて十九です。これは今回新設の規定でして、違法派遣の場合の労働契約申込みみなし制度であり ます。派遣先が違反行為を行った場合には、その時点において派遣元での労働条件と同一の条件を内容 とする労働契約の申込みを派遣先から労働者に対してしたものとみなす。ただし、派遣先が違法行為に 該当することを知らず、かつ知らなかったことにつき過失がないときは、この限りではないという規定 です。ここの段階では禁止業務違反、無許可無届け派遣、期間制限違反、(ニ)のところは偽装請負で す。「この法律又は第四節の規定」というのは労働基準法等の派遣先への適用の特例の部分ですが、そ の規定により適用される規定の適用を免れる目的で、請負その他、派遣以外の名目で契約を締結し、二 六条というのは派遣契約の条文ですが、そこに掲げる事項を定めずに派遣の役務の提供を受けることと いう定義を置き、4つについて違反をした場合には派遣先で申込みみなしが生じるという規定を設けてい ます。この段階ではまだ、登録型派遣の原則禁止については施行されておりませんので、それについて は第2のところで追加することにしています。  ロとハについては申込みをみなされたあとについて、申込みを撤回ができると規定の意味がありませ んので1年間は撤回ができないというものと、逆にずっと派遣労働者が申込みに対して応諾しない場合に ついては、この1年という同じ期間の内に意思表示をしなかったときには、その申込み自体が効力を失う という規定であります。  ニのところについては、派遣元と同条件の契約が派遣先から申し込まれることになります。ただ、派遣 元との契約内容というのは派遣先は知り得ませんので、それについては派遣元から先に通知するという規 定を盛り込んでいます。  (二)の部分、イ・ロ・ハと3つございます。1つ目のイについては、規定については答申にもございま すとおり民事訴訟で争うことも当然可能でありますけれども、行政が支援をしてくれというケースも考え られます。あと、みなしの効果が発生しているかどうかを労使から聞かれた場合には、具体的には都道府 県労働局になろうかと思いますが、それについて「これはみなしが発生しています」「発生していません」 といった助言をすることができるという規定を新設しています。  ロとハが答申にありました勧告の新設です。みなされた契約に対して労働者が承諾した場合、この場合 は労働契約が締結されているということでありますけれども、それでも派遣先が就労を拒むような場合につ いては「必要な助言・指導・勧告を行うことができる」とした上で、その勧告に従わなかった場合には 「公表ができる」。これは通常の派遣法の派遣先指導のパターンですが、こういったものを新設するとい う規定を設けています。  二十は20年法案にありました部分です。派遣法の勧告というのは、現在、助言・指導が前置になってい ますが、悪質な違反については前置をする必要もないだろう、いきなり勧告でもいいだろうということで、 それを撤廃するというものです。以上が6カ月後施行です。  続いて、第2の部分が「3年後施行」です。1つ目は「製造業務派遣の禁止」です。これについては、物 の製造の業務をいわゆる禁止業務を規定する派遣法の第4条に追加するということであります。ただし、 例外としては「常時雇用労働者を派遣する場合」というものです。1行目のカッコの中で、「物の加工、 組立てその他の物を製造する工程における作業として政令で定めるもの」と書いてありますが、これは平 成11年改正法の附則において、製造業務派遣がいわゆる11年改正ではネガティブリスト化しましたが、当 分の間は製造業務派遣はやってはいけないという規定がありました。  そのときに製造業務派遣の定義を置いています。読み上げますと、「物の製造業務(物の熔融、鋳造、 加工、組立て、洗浄、塗装、運搬等、物を製造する工程に作業に係る業務)」という定義を置いています。 これを今回の製造業務派遣禁止の際、製造業務の定義にするということです。ただ、法制的な整理として、 ここにつきましては政令で落としているというものでございます。  二のところ、「派遣先への通知」です。先ほど、「6カ月施行分」で無期かどうかを派遣先に通知すると いうのがありましたが、今回は常時雇用かどうかという点について派遣先は知り得ないということなので、 ここで常時雇用かどうかについても派遣先に対して通知するということを追加する規定になっています。  次の頁、三、いわゆる「登録型派遣の原則禁止」です。ここについては、「常時雇用する者ではない者 について労働者派遣を行ってはいけない」という規定を新設するものです。  そのあと、例外が4つございます。1つ目はいわゆる26業務です。ちょっと書き方が入り組んでいますが、 法制的な整理として「日雇派遣の禁止」というのが6カ月後に施行されます。日雇派遣というのは基本的 に登録型派遣ですので、日雇派遣ができる部分が、登録型派遣の禁止で例外とされて出来る部分よりも大 きくなるというのはあり得ないだろう。  そこで、その包含関係を明確にするために、まず第一の十五の(一)、日雇派遣の禁止の例外の業務を 書き、そのあとに「それ以外の26業務」を加えて、全体として26業務という意味であります。  ロが「産前産後休業と育児休業、介護休業の代替要員派遣」です。これも第四十条の二、同じく期間制限 でも、産前産後休業代替派遣等については例外とされていますので、そこで書いてある条文をそのまま引け という法制的な整理でして、こういう書き方をしています。ハが高齢者派遣、60歳以上です。ニのところが 紹介予定派遣です。この4つが登録型派遣の原則禁止の例外であるという書き方をしています。  次の頁、(三)、いまの点、「派遣元は派遣してはいけない」という規定に対し、「派遣先はそれを受け 入れてはいけない」という規定を(三)で書いています。(四)についてはそれに違反して受け入れた場合 には、第一の十九(一)のイが申込みみなしの規定ですが、申込みみなしの対象となるという規定を追加し ています。  四については暫定措置でございます。登録型派遣の原則禁止について、これは施行後3年ですが、そこから 起算して2年間は一定のものを猶予する。その猶予の対象については政令で定めるという内容を盛り込んでい ます。以上が派遣法本体の改正です。  第三と第四がその後ろに付いているかと思います。これは20年法案の中で、「労災補償保険法の一部改正」 と「高齢者雇用安定法の一部改正」を併せて規定していたものをそのまま持ってきているところです。第三に ついては労災法の改正です。これは派遣先で労災事故等が起こった場合について、派遣元の保険を使って給付 を行うわけですけれども、その際に派遣先に故意や重過失がある場合には、その費用について派遣先から徴 収できるという規定があるわけです。その実効をあらしめるために、派遣先に対し報告文書の提出や出頭の 命令を行える、もしくは立入り検査ができるという規定を追加する。これは20年法案にあったものを追加し ています。  第四ですが、シルバー人材センターが現在日雇派遣をやっているケースがあります。その際、シルバー人材 センターは指定法人ですので、「届出で派遣ができる」となっているところを今回、日雇派遣ができなくなる と日雇い紹介に移行する。その際には合わせまして、有料職業紹介について届出でできるようにするという規 定でございます。以上が実質的な内容です。  第五が「その他」です。施行期日については、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定 める。第二、登録型派遣の原則禁止と製造業務派遣の原則禁止ですけれども、ここについては3年を超えない範 囲で政令で定める日でございます。  二のところですが、これは法律の施行後の見直し規定です。施行後3年を目途として、必要があると認めると きには見直しをするという規定でございます。  三の部分については、答申の中の暫定措置の並びで出てきたものです。この法律の施行によって派遣就労がで きなくなるケースがありますので、政府においては、そういった者の雇用の安定を図るとともに、派遣から職業 紹介に移行する場合の整備を図るという規定でございます。  以上が要綱の内容です。基本的に、昨年12月28日に出していただきました答申の内容をいわゆる法案の形に直 したものです。今後の予定を申し上げますと、これは予算非関連法案ですので、3月上旬までに国会に提出する 必要がありますので、何とぞ速やかなご審議をいただきますようお願い申し上げます。以上です。 ○大橋分科会長 ありがとうございました。本件についてご質問、ご意見がありましたら、ご発言をお願いいた します。 ○新谷委員 今回の法律案要綱の審議に当たり、一言申し上げたいと思っています。改めて申し上げるまでもあ りませんが、今回の法改正の審議というものは、昨年の年末ぎりぎりまでになりましたけれども、「労働力需給 制度部会」において清家部会長はじめ、部会の皆様のご努力により、労使がぎりぎりのところで判断をし、労働 現場の実態を踏まえて合意に至った内容であると受け止めております。我々としては、この改正法案が部会報告 のとおりに法案として国会に提出され、早期に成立をし、1日も早く施行されることを望んでいるわけであります。  そういった意味では、ただいまご説明いただきましたこの法律案要綱が昨年の年末にまとめていただきました 部会の報告の内容そのまま、何も足さず、何も不足もないという形で、法律案要綱として今回諮問されたと認識 しています。そのとおりの内容で間違いないかということをまずご確認させていただきたいと思っています。 ○需給調整事業課長 最初申し上げたとおり、昨年の答申を受け、それを法律案の形に直したものであります。 基本的には何も引いておりませんし、何も足しておりません。 ○新谷委員 確認をさせていただきましたので、今後の審議に当たりましては、これまでの経緯もありますし、 中身の詳細についてはもう1度「労働力需給制度部会」で論議をいただくことでいかがでしょうか。 ○大橋分科会長 それでは、本件について本日の議論を踏まえ、具体的な内容については当分科会の「労働力需 給制度部会」でご審議いただくことが適当かと考えますので、そのように取り計らうことにしてよろしいでしょ うか。 (異議なし) ○大橋分科会長 そのようにさせていただきます。その他、何かご意見はありますでしょうか。特にないようで したら、本日の分科会はこれで終了いたします。 (署名委員指名) どうもありがとうございました。 (照会窓口) 厚生労働省職業安定局総務課総務係 TEL:03-5253-1111(内線 5711)