10/02/04 第67回労働政策審議会職業安定分科会議事録 第67回労働政策審議会職業安定分科会 1 日 時 平成22年2月4日(木)9:15〜9:50 2 場 所 厚生労働省9階省議室 3 出席者 委員(公益代表委員)          大橋分科会長、清家委員、征矢委員、橋本(陽)委員、          宮本委員         (労働者代表委員)          石村委員、澤田委員、新谷委員、古市委員、堀委員、吉岡委員         (使用者代表委員)          荒委員、市川委員、上野委員       事務局 山田職業安定局次長、森岡審議官、松本建設・港湾対策室長 ○大橋分科会長 出席予定の方が全員そろわれましたので始めたいと思います。ただ いまから「第67回労働政策審議会職業安定分科会」を開催いたします。  (出欠状況確認)  議事に入ります。本日の議題は「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案につ いて」の諮問です。はじめに事務局よりご説明願います。 ○建設・港湾対策室長 建設・港湾対策室長の松本です。本日はどうぞよろしくお願 いいたします。  「雇用保険法施行規則の一部を改正する省令案」についてご説明申し上げます。資 料はNo.1-1からNo.1-4まで4種類セットしています、お手元にございますでしょうか。  まずは資料1-2をご覧いただければと存じます。今般の省令案のポイントは、「建設 労働者緊急雇用確保助成金」を創設するという内容でございます。この助成金は(1)の 新分野教育訓練助成金、(2)の離職者雇用開発助成金の2種類からなっています。  この内容をご説明するのに、資料No.1-4をご覧ください。まず、これを構成する経緯 からご説明申し上げますと、1-4の2頁から4頁までの3枚をご覧ください。これは昨年 の12月8日に取りまとめられた「緊急経済対策」第2弾の抜粋です。この資料の4頁、最 終頁の真ん中辺に「○その他」とあり「建設労働者の雇用の確保及び再就職の促進」とい う一文が入っています。今般、省令改正により創設する助成金はこれを実現しようとい う内容でございます。  その概要についてご説明申し上げます。No.1-4の1枚目をご覧ください。まず、建設労 働者の雇用の確保という観点から、上の2つの助成金で対応しようと考えています。いず れも、中小建設事業主がその雇用する労働者に対し教育訓練をした場合に、教育訓練費 用や賃金に対し助成するものであります。いちばん上は現在、既に設定されている助成 金でして、建設事業の範囲内での新規事業にかかる訓練については既に運用されている ところです。今回、新設いたしますのは真ん中の「新分野教育訓練助成金」です。建設 業以外の事業に関する訓練を実施した場合も教育訓練費用の3分の2、また賃金額を日額 7,000円を上限として助成対象にする、というのが今般の新設助成金の内容であります。  次に、同じく1-4の1枚目のいちばん下、「建設業離職者雇用開発助成金」です。これ は残念にして離職が発生した場合の対応として、建設事業以外の使用者が45歳以上の建 設業離職者を継続して雇用する者として雇い入れる場合に助成をしようとするものであ ります。6カ月後、1年後の2回に分けて、大企業の場合は合計50万円、中小企業の場合 は合計90万円を助成するという雇い入れ助成であります。  これを実現するための省令が資料No.1-1、今般諮問申し上げる施行規則の内容です。1-1 の2枚目をご覧ください。第1の1として、「平成23年3月31日までの間、この助成金を支給 する」と規定しています。これは雇用保険法施行規則の附則に、また、期限をこのように 明記して設定する。あくまでも臨時的、緊急対応の助成金として設定するものとして 考えています。  2、3、4とあるのは先ほど概要でご説明したとおりです。教育訓練助成金と雇用開発助成 金の2種類を設定し、その内容を3、4で書き下しています。2頁の第2でございます。「施行 期日」については本日、仮に答申を頂戴できますれば、これを官報に登載し、官報登 載日から助成金の制度を運用してまいりたいと考えています。  以上が今般お諮りする、省令案要綱の概要です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大橋分科会長 本件についてご質問、ご意見がありましたらご発言をお願いします。 ○古市委員 ただいまご説明いただいた内容に反対するわけではないのですが、ご説明いた だいたように建設業が非常に大変なことになっているので、離職者が発生することが予想さ れる。こういうことでの提案であろうというように思います。いま、建設業がどう いうようになっているのかということについて若干申し上げたいと思います。  もう既に新聞等で、皆さんご承知のことかと思いますが、いま新築住宅がどれぐらい建 っているかというと、2006年までは少ない年でも120万戸台の新設住宅着工があったのです が、2007年には耐震偽装に端を発した建築確認の厳格化ということがあり、建設業界が 大混乱をきたしたわけであります。大幅に着工戸数が下がったのですが、それでも106万戸建 ちました。2008年は少し持ち直して109万戸まで行ったのですが、昨年はどうかと いうと実は78万戸ということでした。私たちの目から見ると、100万戸から下がったというよ りも、120万戸から78万戸に下がったという感じでした。大変激減をしているとい う状態です。昭和39年に東京オリンピックがありましたが、去年は45年前の水準に落ち込ん でしまったというのが1つです。  いまのは住宅の話ですが、建設業全体はどういうようになっているかというと、いちばん 多かった1990年の建設投資は官民合わせて84兆円ありました。1996年でも81兆円、それから どんどん下がってきまして2008年には44兆円台になった。去年はまだ、数字が確定 しておりませんので見通しですが、42兆円だろうというように建設経済研究所は発表してい ますし、2010年の見通しは37兆円だろう。半分以下だということであります。  そのように建設投資は大きく落ち込んでいるのですが、建設業の就業者はどういうように なっているかというと、1997年に685万人いた就業者が2008年には537万人まで、150万人離職 をしたということであります。昨年の数字がつい2、3日前発表されましたが、建設業で就業 している人が517万人、1年間でまた20万人減ったということであります。いま、国会で審議 されています来年度の国の予算では、公共事業費は18%削減をするという 予算になっています。  こういう状況の中で、今回示された対策については反対というわけではありません。ただ、 あまりにも対策が小粒なのではないかという印象を持ちます。新聞報道によると、住宅が昨 年これほど落ち込んだ理由が2つ書いてありました。1つは雇用不安、2つ目は所得の目減り で住宅がこれほど建たなくなったというのが各紙の報道内容です。雇用も、所得も厚生労働 省が所管をしている仕事であります。厚生労働省が所管をしている仕事のところでうまく行 っていないので住宅が建たなかった。建設・港湾対策室長のせいだとは言いませんが、厚生 労働省が果たす役割が非常にたくさんあるのではないかということであります。  今回はこういうことで了承せざるを得ないわけですが、いま国会で予算審議している最中 でありますから、次の機会が近々あるのかどうかわかりませんが、次にまた何か対策を打た なければいけない事態になったときのために、少し提案をさせていただきたいと思います。 民主党の政権公約、マニフェストに「住宅政策を転換する」と書いてあります。「リフォ ームを最重点に行っていきます」、こういうように書いてあります。加えて、 「木造住宅産業を地域資源活用型産業として推進する」、「健全な地域の建設、建築産業を 育成していく」というようにマニフェストに書いてあります。このような与党の政策に適合 するような建設雇用対策というか、建設業の就業対策を行うべきではないかというのが私の 考え方であり、いくつか具体的な提案を申し上げたいと思います。  住宅だけではありません。「耐震改修促進法」という法律に基づいて、昭和56年5月以前 に建った住宅については耐震診断と耐震改修を行うということが義務づけられています。 ところが、国と都道府県はこのための計画を作るということが法律で義務づけられています ので、国と都道府県は計画を作っているのですが、実際にこの仕事を担う市町村も計画を作 ることになっていますが、まだ半分も行っていません。耐震診断や耐震改修を行うための国 の補助事業があるのですが、市町村が計画を作っていないために、国の補助事業を受けられ ないという市町村がまだ半分以上あります。  私どもはこういったことをもう少し推進できるように、進捗が図られるような対策が必要 だと思っています。要するに住宅を耐震改修したくても、自分の住んでいる市町村が計画を 作っていないために、この補助事業の補助を受けられないという住民が多数存在するという ことです。  もう1つ例を挙げます。消防法によって、住宅には火災警報器の設置が義務づけられていま す。新築だけではなく、既存の住宅についても同様であります。義務づけられているのであ りますが、地域によって義務化の開始年に違いがあります。例えば、千葉県や埼玉県は平成 20年から既に義務化されているのでありますが、残念ながら実施率といいますか、取り付け られている率が非常に低い。東京都は今年、平成22年の4月1日から義務化されるのですが、 東京は全国の都道府県の中では設置がいちばん進んでいますが、それでも50%ちょっとであ ります。法律で実施が義務づけられる直前になっても、いちばん高い東京都でさえも半分と いうこと、ほかの県、隣の山梨県などで言うと非常に低いレベルであります。  こういうことをしっかり進捗をさせるということが必要なのではないか。そのための就業対 策というか、そういったことが打てるのではないかというのが私の考え方であります。例えば 1つ、目黒区の例を紹介いたします。目黒区では、目黒区内にあります4つの建設労働組合及び 建設業の団体を区役所が束ねて、火災警報器を設置するための事業者のグループのようなもの を作っています。区役所に相談すると、そこから業者が派遣をされて火災報知器の取付けをす る。金額は非常に安いのですが、そういうときに区役所から紹介をされた業者が個々のお宅を 訪問しますので業者の信頼度が高い。火災警報器を取 り付ける作業だけが依頼されているわけですが、客がその業者に対して「ふすまの張り替えを してくれませんか」とか、「畳の表替えをしてくれませんか」「トイレの修繕をしてくれませ んか」という仕事がたくさん起こるのです。火災警報器を1つ付けるだけではなくて、その他 の需要がその事業を行うことによってたくさん起こる。このお金は補助とは何の関係もありま せん。その仕事を発注する住民が自分で負担するということです。  こういう事例がほかにもたくさんあり、実は家具の転倒防止器具を設置するという事業を全 国のかなりたくさんの市町村で行っています。こういったとき、役場から紹介をされて行った 先で新たな仕事がたくさん発生する。市町村によっては、「住宅リフォーム助成制度」という 制度を作っている市町村もたくさんあります。県レベルでは今年、秋田県が県レベル全体で住 宅リフォーム助成制度を作り実施をする。こういうような施策があります。  既にある、住宅系の政策が政策としてあるのですが、いずれも思うように進捗していないの です。ここを建設・就労対策という観点から厚生労働省が国土交通省、消防庁、経済産業省な どとよく話し合いをして、建設業者の就労対策という観点からこれら既にある住宅系の事業を 進捗させる。そういう手立てが考えられないか、是非検討していただきたいと思っています。  私どもは市町村役場や都道府県、国土交通省に「地域にたくさん労働者がいて、きちんと協 力をしますので、どうぞ私たちの技能を使ってください」というお願いを一生懸命しているの ですが、なかなか進捗が思うように行っていないということであります。  先般、鳩山総理の施政方針演説で「人のいのちを守る」というお話をされました。その中で、 「防災と減災に万全を期す」というようにおっしゃられました。特に耐震改修がもう少し進捗 するような、それが建設業の就労者対策に資するような施策を厚生労働省をあげて是非、取り 組んでいただきたいという要望を申し上げておきたいと思います。すみません、長くなりまし た。以上です。 ○大橋分科会長 いかがですか。 ○建設・港湾対策室長 今回の対応とは別に、「業としてのあり方としての国土交通省が果た すべき事項があるのではないか」というご意見について、そのように受け止めさせていただき、 関係省庁と検討といいますか、前向きに進めていきたいと思います。引き続き、 ご意見なりご提案を頂戴したいと思います。どうもありがとうございます。 ○市川委員 雇用保険二事業の財政がどうか、収支がどうかというところもかなり気になると ころでございます。資料No.1-3にありますように、既に15本のいろいろな助成金があるところ に、16本目として今回の助成金が加わるということであります。特に、この中で1の「雇用調 整助成金」については、昨今の経済状勢から非常に多額の助成金が支出をされている。その 中で、新たに16本目ということでございます。そこのところの財政状況に若干心配なところが あります。  ただ、古市委員からもご紹介がありましたように、昨今の建設業界は非常に厳しい状況にあ るということは、私ども全国中小企業団体中央会の中にも建設業の各種の組合があります。 私どもとしても、中小の建設事業者ができるだけ公共事業の受注を受けやすいように、例えば 「官公需適格組合制度」というようなものを作ったり、そうした努力もさせていただいている ところでございます。そういう中で、地方の中小建設業の非常に厳しい状況を私どもも、ひし ひしと感じていますので、雇用保険二事業財政状況はかなり厳しいとは認識をしております。 そういう中でも今回の処置、補正予算で、かつ来年度までという措置ですので、こうした措置 は必要なのではないかと私どもも考えております。 ○吉岡委員 質問なのですが、先ほどのパワーポイントのチャートの中で、建設業において離 職者が発生する懸念が非常にあるとか、長期的な低迷が予測される、大幅な公共事業削減があ るということで真ん中には新しい分野に取り組んでほしいということでした。その際の補助金、 訓練の助成金という形でお出しをすると謳われています。  厚生労働省として、またいろいろな省庁との連動もあろうかと思います。具体的に建設業以 外の業種に対し、積極的に新しい事業を開発してくださいというような取組み、働きかけとい うことは今後どのようなことが具体的に考えられているのかあるのですか。例えば、農林・観 光・介護ということで「グリーン雇用」の部分が書かれていますが、このことに対して積極的 に建設業の方に、こういうような新規のビジネスを立ち上げてほしいとか、そのようなことに 対してどういうようなことがいま考えられているのか、いまお答えをいただければと思います。 ○建設・港湾対策室長 緊急経済対策でも、今後雇用が見込まれる産業はいくつかグリーン雇 用として挙げられているところです。ただ、建設業がそこに行ってくださいという性格のもの ではなくて、まさに需要が見込める産業について関係省庁が、常々できることを積み上げてい くという形になっています。  一方、国土交通省がモデル事業としてなのですが、現に他産業への展開を支援するような事 業を今年度実施しているところです。来年度予算案におきましては大変厳しい状況であると側 聞しているところですが、モデル事業の事例を広く周知することにより、国土交通省としては 建設産業の新事業展開、転業ということだけではなく、副業化という観点も含めて取り組んで いるということであります。厚生労働省としては、国土交通省を中心とした各業所管官庁とも 協力しながら情報提供をはじめ、お支えしていきたいと考えている ところです。 ○大橋分科会長 その他、いかがでしょうか。 ○新谷委員 古市委員にもおっしゃっていただきましたので、今日、ご説明いただいた内容に ついては異論を唱えるつもりはありません。  日本経団連の委員の皆さんがおっしゃるかと思ったのですが、おっしゃらなかったのであえ て一言申し上げておきたいと思います。今日、ご提案いただいた内容というのは、12月初旬に 政府から発表されました「緊急経済対策」に盛り込まれた新たな制度ということで説明を受け たわけです。既に、今年度の第2次補正予算については、先月末に成立をしているという状況 の中で分科会が今日開かれて、制度の内容について説明を受けるということについては、あま り前例のない話ではないかと思っているところでございます。今後のこの審議会の運営日程に ついてはよくご留意をしていただきたいということで、あえて苦言を申し上げておきたいと思 っています。  それから、内容について2点確認をさせていただきたいと思っています。省令案の要綱の中 に2つ、「厚生労働大臣が定める」というところがございます。第1の3、経費の算定の方法に ついて、「厚生労働大臣の定める方法により算定した額」となっています。この厚生労働大 臣が定める方法というものは一体どういうものなのか、概略で結構ですから教えていただき たいと思います。  もう1点は4のところ、建設者の離職者の定義について、「建設業に従事していた者として厚 生労働大臣が定める者」とあります。これについても、助成対象となる労働者が一体どういう 方々なのかについて教えていただきたいと思います。 ○建設・港湾対策室長 ご質問の1点目、訓練において「厚生労働大臣の定める方法により算 定した額」とありますのは、これは上限額を設定するものです。対象訓練経費に3分の2を掛け て、対象額が1日当たり20万円を超える場合は上限として20万円とするという意味で厚生労働 大臣の定める方法として設定をします。また、支給対象日数は60日分を限度とするといった ことを定める予定です。  次に、雇用開発助成金の「従事していた者」については2つあります。労働者であった場合 と事業主、または非労働者、一人親方のような方なのですが、労働者であった場合は「過去1 年間で6カ月以上建設業に従事していた者」、事業主であった場合には「過去1年間に建設業 を営んでいた者」ということを基準として考えています。 ○大橋分科会長 よろしいでしょうか。 ○新谷委員 1点目についての見解はありませんか。 ○建設・港湾対策室長 失礼いたしました。補正予算との関係で申し上げれば、安定分科会 での議論を実質的にあらしめるという観点からのご意見を重く受け止めなければならないと考 えているところです。  一方、補正予算の成立後に審議会にお諮りするというのが、過去にお願いした類似の経済対 策でもそのようなことになっていたところです。いずれにせよ、新谷委員のご意見は非常に 重く受け止めなければならないと思いますので、私どもとしてもよくよく改めて検討させてい ただきたいと思います。 ○新谷委員 それともう1点、要望を申し上げておきたいと思います。これは新聞にも報道さ れまして、私も拝見して「アレッ」と思ったのですが、1月22日に総務省から厚生労働省に対 して「行政評価・監視結果に基づく勧告」が出ています。これについて、特に雇用保険二事業 の内容についての勧告が出ておりました。この中で、事業業績が低調になっているものがいく つか出ており、それらについては事業の有効性を向上させるまたは廃止を含めた事業のあり方 を検討するという勧告が出ていたと思います。今回、新たな助成金の制度が増えたわけです。 これがきちんと、有効に活用していただけるように、政府としても広報の徹底を是非お願いを しておきたいと思います。要望です。 ○大橋分科会長 その他、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。特にご質問、ご意見がな いようでしたら、当分科会としては厚生労働省案を妥当と認め、その旨、私から労働政策審議 会長にご報告申し上げたいと思います。よろしいでしょうか。 (異議なし) ○大橋分科会長 事務局から報告文(案)の配付をお願いします。お手元の報告文(案)によ り、労働政策審議会長宛て報告することにしてよろしいでしょうか。 (異議なし) ○大橋分科会長 それでは、そのように報告させていただきます。その他、何かご意見等あり ますでしょうか。特にないようでしたら本日の分科会はこれで終了させていただきます。 (署名委員指名) どうもありがとうございました。 (照会窓口) 厚生労働省職業安定局総務課総務係 TEL:03-5253-1111(内線 5711)