10/01/29 第13回高度医療評価会議議事録 第13回 高度医療評価会議 (1)日 時:平成22年1月29日(金) 10:30〜12:30 (2)場 所:厚生労働省9階省議室 (3)出席者:猿田座長、山口座長代理、飯沼構成員、伊藤構成員、        柴田構成員、竹内構成員、田島構成員、堀田構成員、        村上構成員、山本構成員、出口技術委員、谷川原技術委員、        松山技術委員        (事務局)        厚生労働大臣 医政局長 医政局研究開発振興課長   他 (4)議 題 1 条件付き適の評価を受けた技術の評価結果 2 新規申請技術の評価結果について (5)議事録:以下 ○猿田座長  定刻になりましたので、第13回高度医療評価会議を始めさせていただきます。委員の先生方におか れましては寒いところ、また、朝からお忙しいところをどうもありがとうございました。本日の構成 員の出席状況ですが、金子構成員、川上構成員、関原構成員、佐藤構成員、田上構成員、藤原構成員 からは御欠席との連絡を承っております。また、技術委員としまして谷川原委員、出口委員、松山委 員に御出席いただいております。なお、佐藤構成員、藤原構成員におかれましては本日の審議内容に 関しまして事前に検証していただいております。後で意見書を読ませていただきます。それでは、本 日の資料の確認を事務局のほうからお願いします。 ○事務局  配付資料について確認させていただきます。両面印刷にて配付しております。まず、議事次第から 始まりまして、次が座席表なのですが、こちらの不手際で今回は漏れております。次に開催要綱、構 成員・技術委員名簿と続きます。その後に、条件付き適の評価を受けた技術の評価結果についてとい うことで資料1-1、資料1-2と続きます。その後に付いている資料1-3については、前回審議いただい たときの評価結果を添付しております。その次に、新規申請技術について資料2-1、資料2-2、資料2- 3、資料2-4と続きます。その後ろには参考資料として1〜4まで付けております。また、藤原構成員よ り意見書を本日いただいておりますので、別紙として付けさせていただいております。本日の資料は 以上でございます。 ○猿田座長  それでは、今日は案件も多いですから、早速、議事に入りたいと思います。最初に事務局のほうか らご説明いただけますか。 ○事務局  事務局よりご説明いたします。なお、撮影されている傍聴者の方はここまでとさせていただきます ので、よろしくお願いいたします。では、資料1-1をご覧ください。第12回会議にて条件付き適の評 価を受けた、インスリン依存状態糖尿病の治療としての心停止ドナー膵島移植につきまして、会議で の指摘事項を御修正いただきまして、再提出がございました。審査担当構成員は、前回同様、主担当 として柴田構成員、副担当として猿田構成員、田島構成員、谷川原技術委員、松山技術委員となって おります。  利益相反について確認したいのですが、今回、対象となっております医薬品及び医療機器の製造販 売企業のことにつきまして、資料1-1と資料2-1に記載しております医薬品・医療機器情報をご覧くだ さい。事前に確認はとらせていただいているのですが、事前の届出以外に特別に関与するような事例 はありませんでしょうか。該当なしということでよろしいでしょうか。以上です。 ○猿田座長  よろしいでしょうか。お手元のもっとも厚い資料になるかと思いますが、これに関しましては、こ の前の会議のときに条件付きの適ということでしたけれども、いろいろと修正点がありまして、それ を戻させていただいて直していただいたということで、これは全体的には柴田構成員にお願いしまし たので、柴田構成員からよろしくお願いいたします。 ○柴田構成員  主担当の柴田です。こちらの資料1-2をご覧ください。前回第12回でいろいろとコメントさせてい ただきましたが、それに対して申請者の先生方から回答並びに改訂などが出されましたので、それを 再評価した結果についてご報告いたします。猿田構成員からのコメント、実施体制の評価については、 肯定的なご意見をいただいております。時間の都合もありますので全部読み上げるのは省略させてい ただきます。  めくっていただきまして、松山技術委員から技術的なところについてご意見をいただいております。 責任医師の体制、医療機関の体制、医療技術の有用性等についてご意見をいただいております。実施 条件欄の所が大事ですので、こちらについては読み上げさせていただきます。「純粋に技術的要件の 観点からは、臨床膵島移植経験施設にあっては了とすべきであり、臨床膵島移植未経験施設にあって も、経験施設からの応援を受け、当該医師参画の下、概ね3例の膵島分離を実施するということが可能 であれば、技術要件としては了として良いと考えます」とのコメントをいただいております。  続きまして、谷川原技術委員からのコメントですが、こちらにつきましては、特に免疫抑制剤の使 い方について、現在の使い方を正当化する根拠等についてきちんと詰めるべきであろうというコメン トをいただいていたところです。こちらにつきましては、実施条件欄として、「本研究の重要性は十 分に認識しているが、高度医療の枠組みで実施するからには、将来的に本技術を確立し普及させる道 筋が示されるとともに、被験者に対する高度の安全性が保証されねばならない。本研究においては、 単に欧米を追随するのではなく、移植膵島への拒絶反応をモニタリングし免疫抑制剤の用量変更や追 加・削減の判断に利用しうる新たなバイオマーカーの探索をも含める必要があるのではないか。移植 膵島の機能維持を優先するあまり過剰免疫抑制に陥る懸念がある。長期に投薬するシクロスポリン、 タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルの3薬剤については、定期的に薬物血中濃度をモニタリン グすることが被験者の安全性を担保するために必須である。MMFの血中濃度測定は技術的に難しいこと ではなく、ほかの移植領域で有効且つ安全な目標濃度が設定されているため、被験者保護の観点から 追加すべきと考える」との実施条件欄のコメントをいただいております。  田島構成員からの頁に移ります。こちらにつきましては、お答えをいただいたので「適」と判断す る旨のコメントをいただいております。田島構成員の所は「異存ありません」とのコメントをいただ いております。  プロトコールの評価の所で、こちらは私が担当したところですが、いずれも「適」と判断いたしま した。ただし、本申請に係る医療技術については各施設の倫理審査委員会における承認を得ている旨 申請書に記されていますが、臨床試験実施計画書改訂に関してこれまでの経緯もありますので、本臨 床試験が開始される前に、改めて各施設での倫理審査委員会の承認を得ていただくことを前提とした 上での判断であることを付け加えさせていただきます。コメントとして、臨床試験の計画等に関して、 基本的には当該研究に関与する研究者間での、参加される研究者の先生の間でのpeer reviewであると かcritical reviewを経て、各施設で倫理審査委員会での承認を得るべきものであって、本来であれば 計画に関する科学性・倫理性の担保はここではなく、研究者並びに各施設の責任において主体的、か つ自律的になされるべきものであろうと考えておりますので、その点は補足させていただきます。  頁をめくっていただきまして、最終的に実施計画書をfixするまでに検討していただきたい事項とし て書いておりますが、これは、今回これを進めるべきかどうかというところには影響を与えませんが、 最終的に臨床試験を開始される前には詰めておいていただくほうがよいであろうというところを書か せていただきました。本研究の難しいところは、まず、患者さんを登録した後に、ドナー発生後に実 際に「膵島移植実施連絡票」をデータセンターに送付することによって患者さんのデータを登録する わけですが、この2つの登録手続きの間にタイムラグが生じますので、ここのところをきちんと詰めて おかないと、実際に臨床試験として実施する場合に混乱が生じます。そこのところでどういうデータ を採っておくかというところ、あるいはどのような手続きにするかというところの書き方が少し混乱 を招く部分があると思いますので、詰めていただく必要があろうかと思います。プロトコールの評価 については以上です。  最後に「総評」ですが、こちらにつきまして前回は継続審議となりましたが、今回は以下の2点につ いて対応がなされることを条件として、「条件付き適」と判断いたします。  1つ目は、臨床膵島移植未経験施設では、経験施設からの応援を受け、当該医師参画の下、3例の移 植膵島分離を実施すること。2つ目は、将来的に本技術を確立し普及させる道筋が示されるとともに、 被験者に対する高度の安全性が保証されることが重要であるため、移植膵島への拒絶反応をモニタリ ングし、免疫抑制剤の用量変更や追加・削減の判断に利用しうる新たなバイオマーカーの探索に努め るとともに、長期に投薬するシクロスポリン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチルの3薬剤に ついては定期的に薬物血中濃度をモニタリングするよう定めること。以上の2点について対応されるの であれば条件付き適として進めてよいのではないかと判断いたします。以上です。 ○猿田座長  いまお話があったように、かなりの面でご回答いただきまして、条件付きと言っても、ほとんど問 題なく通せるということになりました。一応、いま柴田構成員からお話がありましたけれども、担当 した者としてそれぞれの意見をもう一回述べさせていただきますけれども、私は、実施体制の評価と いうことで、副担当として実施責任者の医師等の体制、実施機関の体制、医療技術の有用性等につい て評価させていただきまして、皆様方はご存じのとおり、糖尿病に対する膵島の移植というのは非常 に重症のインスリン依存性の糖尿患者さんとしては非常に大切な治療法ということで、これは日本で 膵・膵島移植研究会の施設で長年検討されてきているということで、その体制も非常にしっかりして おります。長年経ちまして一部の施設では先生方の交替があったりして、技術面でほかの施設からの 協力が入らなければいけないかもしれませんが、総合的には施設はしっかりとしております。それか ら、この治療法は膵島移植のTR(トランスレーショナル・リサーチ)としてこれから非常に大切な 治療法ということで、その面でも重要です。あと、いまお話がありました免疫抑制剤、膵島分離、倫 理面その他に関しましてはそれぞれ担当していただいておりますので、先生方からお話を伺います。 まず、田島構成員のほうから、副担当でのご意見をいただけますか。 ○田島構成員  倫理面で審査をさせていただきまして、一応、前回述べました意見に対して説明文書の訂正を概ね していただけたということで、この訂正内容で了とするという意見を述べさせていただきましたが、 なお2点ほど付加させていただきたい点があります。1点は、費用の面ですけれども、患者さん負担の 金額については、臨床試験期間中の金額の数値は出していただいていますけれども、その臨床試験期 間終了後の免疫抑制剤等の費用負担につきましては、負担の必要が出てくる可能性があるという記述 をしていただきましたものの、その具体的な数字が書かれておりませんので、できれば、患者さんの ほうにわかっていただくためにも、その数字を入れた形で補足していただけるとより良いものになる と思います。それから、担当医師の問い合わせ連絡先につきましては記入いただいておりますが、で きれば、担当医の方以外の患者さん相談窓口を設置していただき、それも記入していただいたほうが 患者さんにとっては相談がしやすくなると思いますので、それも付加して述べさせていただきたいと 思います。以上でございます。 ○猿田座長  先生方はご存じのとおり、これではいろいろな免疫抑制剤を使うということで値段がかなり高くな るということで、そういうことを患者さんにしっかり明示していただいたほうがいいだろうというこ とかと思います。続きまして、松山技術委員のほうからお願いできますか。 ○松山技術委員  まず、実施責任医師の体制ですが、前回の申請では膵島移植のときの分離をする医師だけが入って おられたのですが、移植医の手技と移植した後のフォローが大事だということで、放射線科医、内科 医を追記すべきではないかというコメントで、しっかり対応していただきました。膵島移植の未経験 施設にあっては、経験施設からの応援を受けて、当該医師参画の下、概ね3例の膵島分離手技を実施す ることということをお願いしております。この精神は、もしうまくいかなかったときに当該患者さん にデメリットが生じるであろうということと、もしうまくいかなかったときに本プロトコールが将来 的に日本では駄目だということになると、実際にはその1型糖尿病の患者さんでメリットがあった場合、 将来の患者さんにとってデメリットが生じてくるという観点から、今回このようなコメントを付けさ せていただきました。  膵・膵島移植研究会に関しましては、各施設が独立で運用されているわけではなく、一体的に運用 されていることを鑑みますと、相互サポートのシステムという、これは非常に素晴らしいシステムだ と思いますので、是非とも、経験施設からの応援を受けて速やかに推進していただければと思います。 ○猿田座長  それでは、免疫抑制剤のことに関して、この技術が非常に重要ですけれども、谷川原技術委員のほ うからお願いいたします。 ○谷川原技術委員  免疫抑制レジメンに関しまして精査をいたしました。そして評価を担当させていただきましたので、 コメントを述べさせていただきます。膵島移植領域で国内外で最も実績のあるレジメンはエドモント ン・プロトコールと呼ばれるものなのですが、本研究ではさらに強い免疫抑制をかけるレジメンを計 画しております。それに関する参考文献はいろいろ挙げられていますが、いずれも微妙に免疫抑制レ ジメンが異なっておりまして、現時点では標準化されたものとは言いがたいと考えられます。特に、 維持免疫抑制において、海外の膵島移植ではいずれもシロリムス(mTOR阻害剤)とタクロリムス(カ ルシニューリン阻害剤)が基幹薬になっているにもかかわらず、本申請計画ではミコフェノール酸モ フェチルと低用量タクロリムスを用います。従来の腎移植や肝移植の他の移植領域でも、その維持免 疫抑制における基幹薬はカルシニューリン阻害剤やmTOR阻害剤であり、代謝拮抗薬のミコフェノール 酸モフェチルは、どちらかといえば併用で使う位置付けの薬剤であり、申請者が参照しているCITプロ トコールでもシロリムスとタクロリムスが基幹薬とされており、ミコフェノール酸に関しては「may be used」という形で代替薬として使ってもいいという位置付けです。また一方で、CITプロトコール にはミコフェノール酸の副作用が現れたらその血中濃度を測ること、と書かれております。すなわち、 申請者が計画している免疫抑制レジメンは実績のあるプロトコールではなく、ミコフェノール酸と低 用量タクロリムスという免疫抑制療法で本当に効果があるのかについては、現時点ではまだエビデン スはないと考えられます。そこで、実施条件欄に書きましたように、免疫抑制剤の追加・削減もしく は用量変更に役に立つような何らかのモニタリング手法もこの研究の中で一緒に研究していただくこ とが必要です。単に欧米でやっていることを追随するだけではなく、一歩前を行く新たなエビデンス の発信ということも目指すような研究計画に是非ともしていただきたいと考えております。  併せまして、従来の肝移植、腎移植等の臓器移植の経験から、免疫抑制剤は画一的あるいは経験的 な投与を行うのではなくて、個々の患者の拒絶反応、副作用、薬物血中濃度など、客観的な指標に基 づいて個別に最適化するということが鉄則であります。したがいまして、用量ベースで匙加減するよ りは、薬物血中濃度に基づいて投薬量を個別に調整するほうがより安全で有効であるということがほ かの移植領域ではもう証明されております。現実に、膵島移植の海外のレジメンを精査しましたとこ ろ、エドモントン・プロトコール以降、キードラッグになるシロリムス、タクロリムスは薬物血中濃 度を非常に厳密にコントロールしながら免疫抑制をかけているということも鑑み、本研究ではシロリ ムスの代わりにミコフェノール酸を用いますので、低用量タクロリムスとともに両薬物の血中濃度を コントロールすべきと考えます。もし過剰免疫抑制に陥ると骨髄抑制もしくは重大な感染症などさま ざまな副作用が懸念されますので、従来の移植領域の経験に基づき、患者の保護と安全性確保の立場 から、定期的な薬物血中濃度測定は必須と考えております。以上です。 ○猿田座長  いまお話がありましたように、これまでのエドモントン・プロトコールをやっていても、さらにも う一歩この膵島移植の効果を上げるためには、今度出されたような新しいタイプでの免疫抑制剤の使 い方をしていこうということで、それに対しては、日本として慎重に対応して血中濃度そのほかを測 ってやっていこうという貴重な意見かと思います。これで皆様方のご意見を伺いましたので、全体と しては前のときよりもほとんど修正されて、ここまで来れば一部条件付きというだけですけれども、 ご意見をいただきたいと思いますが、どなたかご意見ありませんか。 ○堀田構成員  私は、途中からの参加ですので、これまでの議論の経過はあまり踏まえてないかもしれませんが、 こういった技術の意義は大変理解できますし、その重要度もわかり得るという前提でコメントします。 心停止後の膵臓から膵島を分離して、それも1%ぐらい純度のものを濃縮して30%ぐらいにするという ことは、技術的にはある程度確立できたものかと理解しています。これを門脈から入れる場合にどこ に生着して、どのようにそれが増殖するなり、あるいは増殖しないまでもそれは生着しているだけな のかはいかがですか。1回目の移植ではうまくインスリンから離脱できないとなれば2回目の移植はド ナーの個体がもちろん違うわけで、そういう意味では複数の同種移植になるわけですから、どういっ た場合に生着して、どういった場合にそれが拒絶されるのかということがある程度前もってわかるよ うな指標がないものかというのが、こういった研究をさらに一般化して発展させて効果を上げるには 非常に重要ではないかと思った次第です。おそらく、指標がなかなか見つからないからこのようなデ ザインになっているのだというふうには理解していますが、リンパ球のクロスマッチという検査をや って、これが陰性であることを確認すると書いてあるのです。これの意義がよくわからないのですが、 HLAのタイピングではなくて、ドナーのリンパ球とレシピエントの血清の反応を見るということの意義 は何であるか明らかでない。陰性反応が確認できない場合は移植しないのかという辺りが説明されて いないので、きちっとしていただきたいと思いました。  もう1つは、これはあくまで移植そのものの方法の問題になりますが、生着させるための薬剤につい て、私は造血幹細胞移植に多少なりとも関わってきたわけですが、免疫抑制剤の使い方はほぼ確立し ています。本課題ではいろいろな薬を、使えるものは全部使ってしまうというような印象があります。 これとこれの組み合わせの意味は何で、そこにこれを足すことの意義は何だということが不明確なま まいろいろな免疫抑制剤が入っている印象です。例えばサイモグロブリンですが、これは我々も臨床 ではよく使っているのですが、場合によっては好中球や血小板がなくなって無菌室で管理しなければ いけないことも出てくることもあります。それから、エタネルセプトですが、移植領域ではまだ使わ れていないというものですのでこれを使うことの意味と、これだけいろいろな薬剤を組み合わせて使 うことにどれほどの効果とリスクがあるかということは、きちんと説明する必要があるのではないか という印象でした。 ○猿田座長  非常に貴重な点で、いまの谷川原技術委員からのご意見のこともありますけれども、免疫抑制剤の 使い方ということでは非常に重要だと思います。もう1つ、最初にご指摘がありました、門脈から入れ ていって肝臓に生着して、生着する場所と、どういう形でそれが増殖するかとかそのほかに関して、 松山技術委員はある程度わかりますか。 ○松山技術委員  まず、門脈に生着した後に、膵島自身があまり増殖するということは、β細胞自身が増殖するとい うことはあまりないようなのです。ただ、組織学的には、周辺の例えば胆管上皮細胞にインスリン様 の分泌物が出てくる等、何らかの良い影響を与えているだろうと。投与部位としては、実は、肝臓が いちばん良くて、インスリンの標的臓器は肝臓ですので、これを門脈に投与しているというのはいち ばん膵島の量が少なくて済むという意味で非常に合理的であろうと思っています。  次に、その生着の件ですが、今までのデータを拝見させていただいていると、純度が低いと当然悪 いですし、グルコーステストしたときのGIインデックスという、チャレンジテストをしたときのデー タが悪いとやはり良くありません。これが生着しているかどうかは生検ができないですからよくわか らないですが、C-ペプチドがどこまで出ているかということを見ると、そのGIインデックスが悪いと 駄目だということがあるので、これは膵・膵島移植研究会のほうでこれ以下は移植しないという形で 自己基準を設けておりますので、おそらく問題ないだろうと思います。  3点目のリンパ球のマッチングの件ですが、理想としてはHLAのマッチングをするのがいいのだと思 うのですが、実際、ほとんどの場合、心停止の患者さんから腎移植と同時に膵臓をいただいてきます ので、それをプロセスして移植するまでの間にHLAがそのDNAとかでなかなかチェックできないという こともあるので、これはリンパ球でやるというのが現実的にいちばん合理的な方法かなとは思います。 後日データを見るために、例えばバックアップのデータとしてHLAを見ていくというのは1つの方法で はあるかもしれないと、今の先生のご意見で考えさせていただきました。ありがとうございます。 ○猿田座長  免疫抑制剤の使い方に関しましては、今までこの膵島移植のほうはエドモントン・プロトコールで やってきて、さらに効果を上げるためには、外国も同じですけれども、新しいプロトコールでやって いくということで、これからの問題ですから、いま先生にご指摘いただきました安全性等についてし っかりと医療機関のほうにお願いしてやっていただくということだと思うのです。ほかにご意見あり ませんか。柴田構成員、これは随分きれいに回答していただきましたね。最終的に、柴田構成員にご 指摘いただいた点、特に谷川原技術委員からのご指摘の点、そこをしっかりさせていただければいい だろうということですね。よろしいでしょうか。この間1回議論させていただいて、いまご指摘いただ いたことをもう一回踏まえていただいて、一応、この会としては条件付きでいまの条件を満たしてい ただければ許可するという形にさせていただいてよろしいでしょうか。 (承認) ○猿田座長  ありがとうございました。時間の関係もありますので、次に移らせていただきます。次は020番です。 事務局のほうからよろしくお願いいたします。 ○事務局  事務局よりご説明いたします。資料2-1をご覧ください。新規申請技術の評価結果としまして、整理 番号020、021、019とあります。020の高度医療名としまして、再発卵巣癌、原発性腹膜癌、卵管癌に 対する標準化学療法とベバシズマブの併用療法およびベバシズマブ単独の維持療法です。適応症は上 皮性卵巣癌、原発性腹膜癌、卵管癌です。承認状況は適応外医薬品としてベバシズマブが対象となっ ております。実施医療機関は埼玉医科大学国際医療センターです。審査担当構成員としまして、主担 当として柴田構成員、副担当として村上構成員、田島構成員となっております。  続きまして、整理番号021ですが、高度医療名は上皮性卵巣癌・卵管癌・腹膜原発癌に対するパクリ タキセル毎週静脈内投与併用カルボプラチン3週毎腹腔内投与です。適応症以下はご覧のとおりとなっ ておりまして、審査担当構成員としまして、柴田構成員、村上構成員、田島構成員となっております。  続きまして、整理番号019です。高度医療名は高齢者、および、腎機能低下症例に対する血液透析併 用バルーン塞栓動脈内抗癌剤投与法(BOAI)、および、放射線照射による集学的膀胱癌治療です。適応 症以下はご覧のとおりとなっております。審査担当構成員は、主担当としまして山本構成員、副担当 として山口構成員、佐藤構成員、出口技術委員となっております。以上です。 ○猿田座長  今日は出口技術委員がお昼でお帰りになられるということで、019からでよろしいですか。それでは、 山本構成員のほうからお願いいたします。 ○山本構成員  高齢者、および、腎機能低下症例に対する血液透析併用バルーン塞栓動脈内抗癌剤投与法、および、 放射線法による集学的膀胱癌治療ということで、申請は大阪医科大学附属病院から出されております。 医療技術の内容につきましてはこちらに書いてあるとおりですが、一つ一つにつきましては、今回は 適応外となっておりますけれども、それほど新しい先端的な技術等ではなく、その組み合わせを上手 に使っておられるというような形で、結果的に膀胱全摘に至らず膀胱を温存するという治療になって おります。まず、実施体制の評価ですが、ここは山口構成員が担当されまして、すべて「適」といた だいておりますが、コメント欄に「対象を75歳以上、あるいはクレアチニン1.5mg以上としているが、 むしろ正常腎機能の患者を対象に、本法の有効性を検証すべきではないか。有効性が検証された後に、 腎機能低下、高齢者などにおける安全性を検証する試験を行うのがよいのではないか」というコメン トをいただいております。  それから、実施体制の評価、こちらは出口技術委員にいただいておりますが、こちらもすべて「適」 としていただいております。コメントとしましては「有用な技術である。安全性についても重篤な有 害事象は認められない」としていただいております。  倫理的観点からの評価は佐藤構成員からいただいておりまして、すべて「適」といただいておりま す。コメントですが、「説明文書・同意書は、必要な事項は網羅されている。問い合わせ先について も、泌尿器科教室のほか、病院医療相談部が上げられており、患者相談等の体制も適切と思われる」 ということです。  プロトコールの評価は私が担当いたしました。8番の「被験者の適格基準及び選定方法」と10番の 「有効性及び安全性の評価方法」に「不適」とさせていただいております。コメントですが、これは デザイン上の問題なのですが、治療方法を今回は無作為割付ではなくて、この新しい治療、膀胱温存 治療か膀胱全摘をするか、この2つを患者さんの自由意思で決定していただくということになっており ますが、その一方で、目標症例数はその膀胱温存の試験群と全摘のコントロール群が1対1で割り付け られるというふうになっておりまして、この2つの治療法のモダリティが完全に異質でありますので、 無作為割付が困難ということはもちろんわかりますので、患者さんの意思にお任せするということに ついては、ここのところは受容せざるを得ないのかと思いますが、その場合に1対1の比率には到底な らないということが予想されます。予想といたしましては、この試験群のほうに大きく偏ることが簡 単に予想できます。ですので、1対1で割り付けられるということはないので、1つは症例群が試験群 に大きく偏る、そして極く少ないコントロール群ができるということをあらかじめ仮定して症例数の 設定等をしていただくか、あるいは単一群のオープン試験として他の研究かデータベースからコント ロールを求めるか、何か、コントロール群についての工夫が必要だと思います。ここにつきましては 生物統計家の先生も研究グループの中にお入りのようですので、一度よく検討されるほうがよろしい のではないかと思います。そのデザインによって目標症例数が変更されるのではないかと考えます。  もう1つは、盲検化ができませんので、有効性・安全性の評価の信頼性を担保するためには評価担当 者を独立させる必要があると思います。主要評価項目は無再発生存期間に置かれていますので、そち らにつきましては特に揺るがないのですが、さまざま画像上の評価等々が必要になってくると思いま す。もう1つは、この治療が抗癌剤の局所療法をする所というところで、安全性が高いという1つの期 待がありますので、そちらにつきましても独立した評価が必要だと思います。ただ、現在の効果・安 全性評価委員が研究会組織や試験実施責任者・担当者等が含まれた形になっておりまして、独立して おりませんので、評価メンバーを再考していただきまして、独立した評価委員あるいは評価委員会に していただく必要があると思います。こちらについてプロトコール上は修正が必要だと思います。  整備事項ですが、試験実施要綱の付録1から12、これはいわゆるCRFにあたるものですけれども、 こちらがすべて冒頭に「患者イニシャル」「カルテ番号」「生年月日」「身長」「年齢」という個人 情報記載欄がありまして、これはわざわざデータセンターを外に置いて出すということからも、個人 情報保護の観点から、これらの情報はすべてマスキングしていただきまして、登録番号のみで管理し ていただくことが必要かと思われます。  ということで、「総評」は「条件付き適」とさせていただきました。上記の指摘、それから本会議 の議論でほかの指摘が出るようでしたら、それについての修正が必要だと思います。コメントですが、 今、膀胱全摘の対象になっておられる方のかなりの部分が、ひょっとするとこの治療が入ることによ って全摘しなくて済むという、一つの新しい治療の段階ができるかもしれないという有用性がありま すので、体制、デザイン、その他、適切に整備して実施していただきたいと思います。 ○猿田座長  一応、条件付きで、そこの条件をしっかりしてくださればということですね。この案件に関しまし ては山口構成員のほうからお願いいたします。 ○山口座長代理  実施体制とか、そういうことは問題ないと思います。コンセプトに関しましても、大変面白いやり 方で、確かに高度の新規性はありませんけれども組み合わせてやるということで、良いと思います。 ただ、一つ、このレポートは70例ぐらいやっているのですが、かなり長い期間にわたって行われてい るということと、単一の施設だけの報告であるということで、本当に安全に行われていたかどうかが 必ずしも明らかにされていないということが気になります。おそらく、70例の検討の中で、副作用が 大変少ないということは事実だろうと思います。したがって、そこに目をつけて、高齢者や特にリス クの悪い方にこれはいいのではないかということでこういうことが出てきたのだと思います。だとし たら、対象は手術をできないような方、つまり最初から手術が選択肢がないような方にこういう治療 を行って、その結果がよかったということを証明されたほうがいいのではないか。と申しますのは、 このエンドポイントが、両群に分けて成績を比較しているようであったり、高齢者にもできるという、 要するに安全性が高いということを示すようであったり、もう一つフォーカスがあってないと思うの です。できたら、手術不能例に関してこういう治療法が安全にできますというスタディを組んでいた だけると大変面白いのではないかと思いました。 ○猿田座長  貴重なご意見をいただきました。出口技術委員のほうからお願いできますか。 ○出口技術委員  先ほど山本構成員から技術についてのお話があったとおりでありまして、本来、従来からある技術 を組み合わせたというのが今回の方法だと思っております。これは、おそらく、始めたのが10何年ぐ らい前から始めていらっしゃって、学会でも聞いたことがあるのが頭の隅に残っていたのですが、確 かに、シスプラチンを投与することによって、全身の副作用、特に腎毒性が強いものですから、これ をどうにか回避するということで、局所注入ということ、しかもダブルルーメンを使っておりますの で、そこに低酸素状態を引き出すということでさらに増強効果を得る。さらに、放射線を利用してい ますのでさらに良いということで、ある意味では、治療としては症例を選べばかなり期待できる方法 と思っております。  その効果についても、その70例ですか、85.5%ということで、全身投与に比べるとかなり良いと思 いますので、そういう意味で1つ。それから、山口構成員がおっしゃったとおり、透析をすることによ って副作用がかなり回避されているということで、全身に対する副作用が非常に低減している。もち ろん、腎毒性もほとんど影響を受けていないということを考えまして、技術としては評価できると思 います。 ○猿田座長  実は、私も泌尿器学会の状況、そのほかの意見を聞いてみましたところ、だいぶ前から70例ぐらい やっていて、今までは全身投与として抗癌剤を使って、それで見ていると、どうしても副作用が強い ものですから、そこが問題でした。放射線療法を加えたりしてやっていましたが、もう一つ効果が上 がっていなかったということで、この方法がいちばん良いところとされました。先ほど出口技術委員 からお話がありましたように、潅流して透析をしているということで、全身に抗癌剤の効果が回らな いようにしているということで、利点が出てきています。それから、一般的に見て、技術的に両側の 動脈に対していろいろなカテーテルを入れてやるのでかなり大変専門的になってくれば大丈夫だとい うことを伺いました。あと、いま山口構成員がお話されましたが、症例を選んで、特に重篤な症例の 患者さんに対してうまくやっていきながら広めていければということかと思います。  それでは、委員の方々からご意見をいただければと思います。調べると、日本ではこの施設しかこ ういう方法をやっていないようです。 ○事務局  藤原構成員より意見書をいただいておりますので読ませていただきます。「添付されてきました申 請書が、当該療法をこれまで実施してきた臨床研究(試験)結果報告の公表論文を見ると、1998年か ら2006年にかけてだけでも40例前後の症例で実績があり、今回の高度医療評価制度での実施後、いか に保険診療へ貢献するのかロードマップが見えないことに不安を感じました。内容は注目すべきもの ですし、プロトコールもしっかりされておられるだけに、シングルアームでの症例集積の積み重ねの 臨床研究の一般化可能性に懸念があるというところです。評価表を支持します」。以上です。 ○猿田座長  藤原構成員のご意見ということで、一部問題はあるけれども技術的には非常に画期的なものではな いだろうかということです。山口構成員、症例の選び方ですかね、どうですか。 ○山口座長代理  やはり、このエンドポイントを少し考え直していただいたほうがいいのではないかと私は思います。 それだけで十分に意義があると思うのです。つまり、極めてプアリスクの人に対してこういう方法で いいのか20例ぐらいやった毎に、そういう治療が完遂できたのかどうか確認することです。それから、 安全とおっしゃっていますけれども、本当にそれが担保されたのかどうかということを報告いただい て、万が一その状況がまずいようであれば途中でストップするというようなやり方が良いと思います。 ○猿田座長  そうすると、先ほどお話があった評価委員会のメンバーにそういうことをしっかりやっていただく ということですね。 ○山本構成員  藤原構成員からのコメントにもあるように、たぶん、申請されているグループの先生方が、いろい ろな可能性のある治療法なので、対象を絞りきるところで迷いがまだあるのかなという感じのところ があります。もちろん、症例の積み重ねだけではいけないと思うのですが、山口構成員がおっしゃる ように、例えば手術不能例に対する治療効果を先ず見るとか、絞られた対象群を置いて、そこでその ときにその対象群ごとにエンドポイントについては考えていけばいいと思うのです。  おそらく、理想的には、いま全摘対象になっている方の多くにこの治療が行われて膀胱が温存され るということが最終的な目標だと思うのですが、一気にそこに行けるかどうかということがあります ので、まず、より効果を見やすい、安全性があるということをアピールしやすい対象を狭いところか ら選んで、はっきりとした有効性・安全性を示されるほうがいい。特に、ものすごく目立った先進技 術ではないので、集学的治療ということですから、一応、適応外の薬剤・機器がありますのでこうい う高度医療の対象になっておりますが、物としましては、どちらかというと、いろいろな治療の組み 合わせを見ているということですので、医薬品のように無作為割付をして1対1で比べるというデザイ ンですぐできるかというと、ちょっとそこは難しいところがあると思います。 ○猿田座長  それは、結局、エンドポイントのところの問題ですね、プロトコールの問題ということで。ほかに ご意見ありませんか。 ○堀田構成員  いま出された議論で大体尽くしていると思いますが、単施設でずっとやってこられて、非常に卓越 した技術を伝承してこられたのだと思います。膀胱へ行く動脈の両端をバルーンで締めて、逆流もし ないようにして、しかも圧がある程度かからないと逆流もしてしまうと思いますが、そうすると高齢 の方だと動脈硬化も進んでいるということから考えると、動脈が裂けたりするといったリスクもない わけではない。今までは非常に安全にやってこられたかもしれませんが、これを一般化する技術とし て、ここでの医療評価が一般化可能性を追及するための試験であるということだとすると、もう少し 多施設という形をとれないものかと考えます。その中で安全性がどのぐらいあるか、あるいはその実 行可能性がどのぐらいあるかということを見てほしいというのが私の意見です。 ○猿田座長  実際、高度医療の場合、特に先生がおっしゃった実施施設というのが非常に重要な問題なのです。 いまお話がありましたが、私のほうも少し調べてみて、泌尿科学会のほうにきくと、ここの施設でず っとやってきたと。もう1つは、いま先生からお話があったとおりの技術面が果たしてどれぐらい専門 的かということで聞いたら、ある程度までずっと症例をこなしてくるとかなりできそうだということ を聞いたのですが、その辺りのところも条件付きということで、その部分と症例の選び方をしっかり させていただいたらいいと思います。 ○山口座長代理  本来であれば、これは普通のリスクの方にやって同等あるいは優れた治療法であるということが示 されて、その次に副作用の少ないメリットを活かしてハイリスクの人にやるというのが本来のやり方 だと思うのです。新しい治療法をリスクのある人に突然やるのは本来危険なのですが、おそらく、好 意的に解釈をしたら、今までの経験の中で極めて副作用が少ないという感触を得ているのでしょう。 現場で例えばほかの治療ができない患者さんがたくさんいて、そういう方にできる可能性があるのだ という意味ではこういう先進医療にはふさわしいので、そこのところがはっきりわかるようなプロト コールにしていただいたほうがいいというのが私の意見です。 ○猿田座長  是非とも、その点はこちらから戻すときにそういう意見を書いていただいてご意見いただきたい。 ほかにご意見ありませんか。 ○柴田構成員  いまご議論いただいたところが重要なところで、これからお話するのは細かいところになりますけ れども、エンドポイントの中で、例えば「無再発生存」あるいは「無増悪生存」というように、エン ドポイントが場所によって違うように書いてあったりするのですが、ある対象患者は今回の試験治療 にはなったけれども、膀胱全摘をされる方もいらっしゃいますし、CRにならずにそのまま膀胱全摘に 行かれる方もいるので、無再発生存あるいは無増悪生存の定義というのは非常に難しいものになりま す。そこのところはきちんと詰めておかないと、結果を解析するときに解析できなくなります。です ので、そこは整備していただく必要があるかと思います。あと、解析方法についてはいろいろやると は書いてありますけれども、どうするのかというのがはっきり書いてないので、そこもあらかじめ示 していただくことが必要だと思います。  最後に、山本構成員からコメントがありましたけれども、これは患者さんの意思によって選ばれま すので、検出力の計算などはこれより検出力が低くなるはずです。あと、比較可能性を担保するため に例えば予後に影響を与える因子などについてはきちんと採っておいて、それについて群間の比較可 能性が担保できるように解析上調整をするなどといった探索的解析も併せてやっていただくことが必 要かなと思います。 ○猿田座長  貴重なご意見をいただきました。山本構成員、戻すときにいまのお話も入れていただいて。ほかに ご意見ありませんか。ご意見がなければ、いまいろいろご指摘になりました点を直していただくとい うことで、こことしては条件付きで認めるという形にさせていただきたいと思いますが、これに関し てはもう一回ここに出してこないといけないかもしれませんが、よろしいでしょうか。そうであれば、 そういう形で処理をさせていただきたいと思います。 (承認) ○猿田座長  ありがとうございました。続きまして、今度は020です。柴田構成員、村上構成員、田島構成員に見 ていただきました再発の卵巣癌、原発性腹膜癌、卵管癌に対する標準化学療法とベバシズマブの併用 療法およびベバシズマブ単独の維持療法です。これは柴田構成員のほうからお願いします。 ○柴田構成員  主担当の柴田です。お手元の資料2-2をお開きください。020番です。こちらの申請は再発卵巣癌、 原発性腹膜癌、卵管癌を対象とした現在の標準的化学療法であるカルボプラチンとパクリタキセルの 併用療法に対して、それにベバシズマブという新しい薬を上乗せし、なおかつその後に維持療法とし てベバシズマブを続けるという、そのような新しい治療法の評価をするランダム化比較試験になって おります。医療技術の概要としましては、いまお話した化学療法に新しいベバシズマブを併用、維持 療法として投与するということです。それによって難治性疾患の予後を改善しようとするものとなっ ております。  こちらについて村上構成員からは、実施体制としては「適」としていただいておりまして、予後改 善が期待できるという肯定的な意見をいただいております。ただし、留保として、「申請医療機関以 外の施設を増やす場合には、医療機関内にベバシズマブの投与経験のある医師が居ることを求める」 とのコメントをいただいております。  倫理的観点については田島構成員にご評価いただいておりまして、いずれも「適」になっておりま す。こちらは外国との国際共同試験ですので、プロトコールとか同意・説明文書が英文のもの、日本 語のもの、同意・説明文書については英語と日本語が載っているものとそれを日本語で説明するもの がありますが、日本語訳付の英語で書かれた説明文書とその補足のための説明・同意文書をセットで2 つ組にして交付することを徹底していただくべきであろうとのコメントをいただいております。  プロトコールの評価は私が担当しましたが、期待される適応症、効能及び効果から個人情報の保護 まで、いずれも「適」だと判断いたしました。「期待される適応症、効能及び効果」に関してコメン トさせていただくと、こちらの申請資料の2-2に「承認に関する情報」がまとめてありますが、こちら を拝見すると、別の適応で薬剤そのものに対する米国FDAからの承認はあるものの、再発卵巣癌、原発 性腹膜癌、卵管癌といった適応に対するFDAからの承認はないものとなっております。つまり、米国・ 欧州・日本とも、薬事上は同様の状況にあると言えると思いますが、このような状況において新たな 治療法確立を目指すために国際共同臨床試験に参画することは、本適応に対する開発着手ラグを回避 するという面からも意義があると考えます。  臨床試験の実施計画書は十分に検討されていると見受けられますので、特段のコメントはありませ ん。あと、これは手続的なことになるかと思いますが、対象の申請書の中の「予定の試験期間及び症 例数」に50症例と書いてありますが、この中で高度医療の対象となるのはベバシズマブ群に割り付け られた患者さんだけになりますので、おそらく、半数の25例になるのではないかと思いますが、ここ のところは記載を修正しておいたほうがいいかなと思います。  最後ですが、これは明確な答えをここで出すことは難しいと思いますので、医療技術ごとにケース ・バイ・ケースの判断になると思いますが、この臨床試験では、ベバシズマブの維持療法というのは 患者さんが増悪されるまで続くことになりますので、いつ終わるというのが事前に決められません。 見込みとしては登録期間が2年で、追跡期間が1.5年とされていますので、トータルで3.5年になるか と思いますが、3.5年の段階で、場合によっては治療継続されている患者さんも出るかもしれないとい う状況ですので、そういう場合に高度医療としての実施期間をどこまでと区切るのかというのは整理 をしておくことも必要かなと思います。まとめですが、最終的にこちらについては特段の特記事項な しで「適」と判断してよいのではないかと判断いたしました。以上です。 ○猿田座長  いまお話にありましたように、これは国際試験への参加のこともありますが、まず、村上構成員の ほうからお願いします。 ○村上構成員  実施体制の評価をさせていただきましたので、いまの柴田構成員のお話に少しだけ補足させていた だきたいと思います。実施責任医師等の体制ですが、十分な卵巣癌の治療実績があり、かつ今回申請 された投与方法、レジメンでの使用経験もお持ちであるということで「適」としております。実施医 療機関の体制につきましても、癌に対する高度専門医療に特化した十分な体制を有する機関であると いうこと、並びに大腸癌を対象としてベバシズマブの使用経験が多数あることから、問題なく「適」 としております。  最後に、医療技術の有用性につきましては、これまでに同じ適応疾患である再発卵巣癌、腹膜癌、 卵管癌に対して行われました第II相臨床試験、文献情報の9番目ですが、GOG(Gynecologic Oncology Group)の臨床試験の結果に基づきますと、十分な予後改善、すなわち生存期間と無増悪生存期間の延 長、またはQOLの改善が期待できると報告されていること。一方で、FDAのほうでは、今回申請された 併用療法であるベバシズマブをパクリタキセル及びカルボプラチンに併用することにつきましては、 肺癌のほうですでに承認されているということを考慮いたしまして、医療技術の有用性につきまして も「適」としております。  今回の申請のようなこのような申請につきましては、適応拡大にかかわる抗癌剤の臨床試験に対し て、高度医療評価制度を活用するということの門戸を開くものでもありますので、それの意義は非常 に大きいものであって、是非、本制度で進めていただきたいと考えております。ただ、コメントでも 書いておりますが、ベバシズマブにつきましては、頻度は低いですけれども生命にかかわる有害事象 等々が起こり得ますので、十分に使用経験のある施設で実施されることが必要であると考えておりま す。今回申請されました責任医師、実施医療機関につきましては何ら問題ないと判断しておりますが、 今後これを他施設に広げるにあたりましては注意が必要だということで、コメント欄に記載させてい ただきました。しております。申請用紙の第9号のところで、いちばん下の欄にこういった旨が書いて ありますが、他施設に広げられるときには十分な注意をお願いしたいと考えております。以上です。 ○猿田座長  どうもありがとうございました。それでは田島構成員、コメントをいただけますか。 ○田島構成員  倫理的観点からの評価をさせていただきました。本試験は外国との共同試験ですので、説明文書に つきましては、米国で用いられる米国の患者さん向けの英文の文書に日本語訳を付けたものと、米国 と一致しない点についての日本での臨床試験の方法について補足の説明を付ける形での日本語の説明 文書と、2つに分ける形で説明文書が作成されております。それぞれ内容はすべて網羅しておりますが、 これらを必ず2つセットで患者さんに渡していただく必要がありますので、くれぐれも臨床研究機関で 片方だけ渡すということのないようにご注意をいただきたいと考えております。  なお、当初日本語版のほうで、患者相談等の窓口の欄はあったものの、内容の記入がありませんで したので、その内容については試験責任医師と患者様対応窓口の欄をすべて具体的に記入することを 条件にさせていただきました。以上です。 ○猿田座長  先ほども柴田構成員からお話がありましたように、必ず英文と翻訳したものと一緒に回させていた だくということです。柴田構成員のほうからのご説明、村上構成員、田島構成員からのご説明では、 一部のところをちょっと検討すれば認めていいということです。いまご討議をいただいた点に関して、 どなたかお願いします。谷川原技術委員、どうぞお願いします。 ○谷川原技術委員  担当でなくても質問してもよろしいですか。 ○猿田座長  よろしくお願いします。 ○谷川原技術委員  このプロトコールは明らかにベバシズマブという薬剤の適応外使用のための試験ですが、従来、こ のようなスタディは治験とか、医師主導治験という枠組みでやっていたのですが、いわゆるGCPでクオ リティを担保されていない高度医療で実施した場合に、試験のクオリティをどう担保して、この結果 がどのように薬事承認に結び付いていくのかがよく見えません。私の理解では、確かにGOGという米国 のスタディグループのプロトコールは非常にしっかりしているのですが、INDをFDAへ提出し、しかる べき審査を受け、実施時のモニタリング・監査も入るというのは、あくまでアメリカの事情でありま す。アメリカと日本は体制が違い、米国ではGOGのようなスタディグループでもINDの提出は義務づけ られており、それ故試験のクオリティが担保されるのですが、日本の高度医療はGCP外の試験として実 施しますので、その場合のクオリティの担保をどのように行い、将来、薬事承認にこれがどうつなが るのかというところがよく見えないのですが、どうなのでしょうか。 ○猿田座長  その辺りを柴田構成員、あるいはおわかりの方お願いします。 ○柴田構成員  私の理解としては、これを治験の代わりにするというのは、たぶん当然無理であると思いますので、 それは先生のおっしゃるとおりだと思います。仮に使われるとすれば、現状の制度の下では、この結 果が医学薬学上、将来公知となったのであれば、それが公知申請の通常の論文に基づく薬事法上の適 応拡大というものに使われる可能性はあるけれども、現行のまま、この臨床試験の結果が、普段、医 師主導治験であるとか、製薬企業が行われている治験と同列に扱われることはないと理解しています が、事務局の方はいかがでしょうか。 ○猿田座長  高度医療の考え方としてはおっしゃるとおりのあり方ですが。 ○事務局  柴田構成員のおっしゃるとおりでございます。 ○治験室長  柴田構成員からおっしゃられたとおり、基本的に研究目的自体が臨床研究ということですので、必 ずしもGCPの適用は受けないということになりますと、そのまま申請データとしては使えない。ただ、 今後の高度医療自体が薬事申請、承認までつなげるという目的の中で、1つのステップとして日本にお けるデータの蓄積をし、さらにこれがこのデータによって企業主導の治験、あるいは医師主導の治験 ということでデータを収集して、最終的に承認申請へという段取りというのを、私どもは予想をして いるところです。 ○猿田座長  ですから、この高度医療のシステムがそういう形になっているということで、いま先生が言ったよ うに、すぐ治験とするのとは全然違うのだということです。 ○谷川原技術委員  その回答は、私も想像していたものですが、何となく回り道をしているような印象があります。本 当にいま必要なのは、医師主導治験のように申請の根拠になりうるデータを収集できる形にすること で、例えば、高度医療の中に米国のようなINDの仕組みを取り入れて、高度医療下で行われる試験のク オリティを担保する新たな仕組みを作れば、それによって得られる臨床成績を薬事承認に利用するな ど、もう少し効率的に適応外使用を解決できる道筋が作れるのではないかと思います。 ○治験室長  ご指摘をありがとうございました。現行制度の下で、こういう研究をいかに薬事申請に迅速に結び 付けるかということと、谷川原技術委員がおっしゃったように、制度改正を踏まえてもっと効率、迅 速化をするかということは、またちょっと別な観点で私どもも考えさせていただければと思います。  ただ、現行の薬事法があり、かつ高度医療評価制度という中で、よりベターな選択といいますか、 先ほど先生がおっしゃったように、なかなか治験をいきなりやるというのが難しい環境の中で、より 次に確実に結び付けるためには行政側としても何があるか、あるいはそれぞれの医療機関、大学がど うしていくかというところを考えた結果、まず高度医療の中でこういうデータを集めていくというの が、いろいろな選択肢、厳しい選択肢の中で、いちばん最善のものをとられたのではないかと私ども は理解をしているところです。 ○猿田座長  谷川原技術委員はご存じのとおり先進医療のメンバーですので、私はよくあの会でも申し上げます が、その1つの流れといったことで、だんだん整理させていただかなければいけないということですの で、厚生労働省に私のほうから申し上げてあります。ありがとうございました。そういったことで、 ほかによろしいですか。 ○堀田構成員  少しマイナーな点で申し訳ないのですが、柴田構成員にお伺いします。これは全体で660例の無作為 割付試験の中で、日本がこれから入って50例をエントリーするとして、一群25例で、全生存期間と無 増悪生存期間の類似性というのを評価するとなっていますが、このサンプルサイズで評価できるので すか。ちょっと気になるのでお伺いします。 ○柴田構成員  厳密に評価をしようと考えた場合には、そこは厳しいところがあると思います。 ○堀田構成員  ですから、瀬踏みというか、大よそということで理解すればいいと思います。  もう1点は、9番の被験者の補償の問題です。このケースは補償ありとしてあるのです。先ほどの2 件は補償なしとなっていて、中身はほとんど同じことが書いてあります。要するに、通常医療を提供 して、金銭的なものはやりませんと、同じことが書いてありながら、一方ではあり、一方ではなしと なっているので、この辺はやっぱり整理をしなければいけない。何をもって補償ありとするかという ことの定義をもう少しきちんとしないといけないのではないかと思います。 ○猿田座長  いま堀田構成員がおっしゃったことは非常に重要なことですが、実際、いままでをみると各施設に おいてちゃんと補償する所と、そうでない所があって、そこのシステムが非常に問題なのです。いま ご指摘をいただいたことは宿題事項として、私も非常にそれは気になっておりました。高度な医療で あればあるほど、その点で問題がありますので、ここもちゃんとはっきりしたいと思います。ありが とうございました。ほかにご意見はございますか。全体的には柴田構成員がおまとめいただいたとお りでお認めいただくということで、細かい点、注意点は先ほど言ったように、英文と日本文と併せて やるといった点は、こちらから指摘させていただきたいと思います。                  (承認) ○猿田座長  それではお認めいただいたということで、どうもありがとうございました。  続きまして、今度も柴田構成員から021番です。これは腹腔内投与と静脈投与ですが、それでは柴田 構成員、よろしくお願いいたします。 ○柴田構成員  お手元の資料2-3をご覧ください。番号021です。こちらは上皮性卵巣癌・卵管癌・腹膜原発癌に対 するパクリタキセルの毎週静脈内投与併用カルボプラチン3週毎腹腔内投与を評価する臨床試験となっ ております。こちらについては、パクリタキセルの毎週とカルボプラチンの腹腔内投与の部分が適応 外使用になるということで高度医療として出されたものになります。  村上構成員から、実施体制の評価をいただいておりますが、いずれも「適」と印を付けていただい ております。「予後改善が期待できる」と肯定的なコメントをいただいております。もう1つ補足とし て、本申請で計画されている臨床試験は、PhaseII/III試験というデザインになっており、まず、Phase II段階で一旦評価をして、より広い多くの患者さんでPhaseIIIに進むというデザインになっております。 weeklyパクリタキセル静脈内投与とカルボプラチン腹腔内投与、今回の試験治療ですが、その併用療 法に関しては、第III相試験に移行させる前に、第II相試験の結果を厳格に評価する必要があるであろ うとのコメントをいただいております。  頁をめくっていただいて、田島構成員に倫理的観点からの評価をいただいている部分に進みます。 いずれも「適」の印を付けていただいております。コメント欄に利益相反の話、費用負担の説明ぶり、 患者相談等の対応についてコメントをいただいておりまして、実施条付欄に利益相反の話と費用負担 に関するご指摘をいただいておりますが、こちらは事前に修正がなされたとのことで、「適」として いただいております。  プロトコールの評価は私が担当しましたが、6番から16番まで、いずれも「適」と判断させていた だきました。6番の「期待される適応症、効能及び効果」に関しては、申請書2-2「承認に関する情報」 に記されている内容をまとめますと、カルボプラチンについては、日本・米国・英国・ドイツともに、 卵巣癌に対する適応が承認されています。しかし、腹腔内投与の承認は、いずれの国でもなされてい ません。ただし、日本以外の米国・英国・ドイツでは、一般臨床で腹腔内投与として用いることに制 限はないとされております。もう1剤のパクリタキセルについても、日本・米国・オランダ・フランス ・ドイツ・イタリアともに卵巣癌に対する適応が承認されていますが、日本以外の欧米では、一般臨 床においてweekly投与として用いることに制限はないとされております。つまり、薬事上の扱いとい うのは、日本も欧米も同じ状況にあるということです。即ち、言い換えますと、巷で、海外では承認 されているけれども、日本でのみ薬事法の承認を得ていないから薬が使えないというのは、問題の原 因を正しく捉えていない説明であるということです。こういう状況にありますので、日本においての み、企業に治験実施を求めることは非現実的であろうと思われますので、本試験によって、新しい治 療法の根拠が確立するのであれば意義あることと考えます。  デザインに関するコメントをもう1つ補足させていただきます。村上構成員のコメントに関連します が、PhaseII/III試験という臨床試験デザインを採用されています。このデザインを選択した経緯とい うのは、適切に説明されていて問題ないと思います。第II相部分のFeasibilityの解析の方針について は、効果安全性評価委員会での審議の前に明らかにしておくことが望ましいと考えます。Feasibility の評価を総合的に判断するという規定そのものは適切だと考えますが、総合的とは言っても、想定外 に毒性が強かったとか、想定外に有効性が低かった場合にはPhaseIIIに移行しないという、無効中止を 判定する意味の効安であるということをあらかじめ明らかにしておくほうがよいであろうと考えます。 以上です。 ○猿田座長  どうもありがとうございました。それでは少し中断させていただきまして、長妻厚生労働大臣から ご挨拶をお願いします。 ○長妻厚生労働大臣  猿田座長をはじめ、いつも精力的なご議論をしていただきましてありがとうございます。初めての 方もおられますので、私は厚生労働大臣の長妻でございます。私もこの議論は関心を持って議事録等 を拝見しております。国民の皆様の安全性と有効性とともに、やはり、薬事法の承認が得られていな い医薬品、医療機器の中にも、本当に良いものもあると思います。そういう意味では、皆様方の慎重、 かつ、前向きな議論を通して、これは広い意味で成長戦略ということにも結び付くわけです。これも 繰り返しになりますが、その一方で、安全性と有効性と科学的な分析ということも不可欠ですので、 そういう制約の中で、本当に皆様の見識をいただいて、ご議論をいただくことが日本の国益にも大き く資すると考えておりますので、私も関心を持って今後とも見ていきたい。また、皆様方から個別に、 こういう点を改善したらどうだとか、あるいは法律上の問題で、こういう法律を作ったらどうなのか、 あるいは政令、省令でここをこう変えたらどうなのかということについても、事務方経由でも、ある いは直接大臣室にもご指示をいただければ、我々も勉強させていただきたいと思いますので、よろし くお願いいたします。 ○猿田座長  それではまとめのところを、もう一回柴田構成員にお願いいたします。 ○柴田構成員  先ほど各構成員の先生からの評価をまとめてご説明いたしましたが、最終的に「総評」としては、 特記事項なしの「適」ということで進めてよいのではないかと判断いたしました。 ○猿田座長  ありがとうございました。村上構成員のほうからお願いします。 ○村上構成員  柴田構成員のほうからご説明をいただきましたように、この申請は、卵巣癌の標準治療であるパク リタキセルとカルボプラチンのTC療法に関してですが、その用法・用量を薬事法上の適応外に変更す ることによって、卵巣癌の予後の改善を期待するといった試験計画でございます。  実施医療機関ならびに実施責任医師等の体制につきましては、特に問題はないということで「適」 とさせていただいております。  医療技術の有用性等についてです。まず、パクリタキセルのweekly、毎週投与に関しては、文献情 報の2で示されているJGOGの3016という第III相の臨床試験がすでに実施されておりまして、weekly、 毎週投与のほうが予後を改善するということが報告されております。また、カルボプラチンの腹腔内 投与につきましては、用量設定試験の結果を踏まえて、文献情報の10で示されているように、パクリ タキセルの3週間投与、この場合は3週間ごとの投与ということですが、その併用によりまして第II相 臨床試験が実施されて、予後改善に期待が持てるデータが報告されております。これらのことを踏ま えて、両薬剤についての安全性、有効性は十分確保されると考え「適」としております。  ただ、コメント欄にも記載しましたが、また、先ほど柴田構成員からも説明していただきましたが、 毎週ごとのパクリタキセルの投与とカルボプラチンの腹腔内投与の併用に関しては、これから第II相 の試験が始まるということですので、その試験結果を厳格に評価され、不用意に第III相試験に移行し ないように注意していただければよろしいかと考えます。以上です。 ○猿田座長  ありがとうございました。要するに一歩一歩やっていってもらいたいということです。以前、腹腔 内に対する抗癌剤の投与には、前のときの委員会でも別のもので出てきております。やり方としては 同じやり方かと思います。田島構成員のほうからご意見をお願いします。 ○田島構成員  倫理的観点からの評価をさせていただきました。当初の段階で、私は同意に係る手続き、同意文書 につきましては、「不適」とさせていただきました。利益相反の点、費用負担の点、患者相談等の対 応で不十分な面があるということを指摘させていただきました上で、修正すれば「適」としてよいと 考えました。  その点について、利益相反については審査が行われることを説明されていただけでしたので、それ では不十分で、具体的に利益相反を有する者がいるのか、いないのか、いる場合はどのような内容か を記載すること。  費用負担につきましては、このケースでは臨床試験にかかわる部分の薬剤提供は、製薬企業より無 償で行われますが、それ以外の保険適用の部分は患者さん負担となるといった点、それから、腹腔内 投与の場合のリザーバーポートにつきましては、その手技の費用は逆に患者さん負担になるというと ころで、非常に記載ぶりが分からない点がありましたので、その分かりにくいところを整理していた だきたいとお願いしたところ、事前に事務局のほうから、申請者側にそれをお伝えいただきまして、 訂正された説明文書をいただきました。それによりますと、この費用の点もしっかり図示して分かり やすくしていただきましたし、利益相反の内容についても変えていただきました。  患者相談等の対応につきましては、担当の医師の連絡先、あるいは窓口の連絡先も記入していただ きましたので、この段階で「適」としてよいというふうに判断しております。以上です。 ○猿田座長  特に、いまお話がありました費用の問題については、臨床試験に対しての提供のところは無償で行 われるのですが、それ以外のところも患者さんにしっかりとさせていただきたいと思います。柴田構 成員、総括的に何かありますか。 ○柴田構成員  特に付け加えることはございません。 ○猿田座長  そうしますと、皆様方のほうから何かご意見はございますか。 ○山口座長代理  ちょっと利益相反と関係するかもしれませんが、この試験は米国の臨床試験を日本において一部分 担するということですが、これは米国から依頼があったのでしょうか。もう1つ、なぜこの施設が選ば れたのか、その辺りがもしわかっていたら教えていただきたいと思います。 ○猿田座長  埼玉医大のほうがかなり積極的にやって、それでチームを組まれているのです。チームのメンバー を見ると、日本でこういった卵巣癌をすごくやっている所がまとまってやっていらっしゃるというこ とで、私はそう理解いたしましたが。どなたかほかにご意見はございますか。国際試験に一緒になっ て、参加するということでは非常にいいことではないかと。いままで日本はどうしても遅れていたも のですから、そういった点では非常に評価できるのではないかと思います。ただ、進め方に関しては おっしゃるとおり慎重にやっていかなければいけないと思います。 ○谷川原技術委員  大臣がいらっしゃったので、先ほどの議論をここで是非聞いていただきたいと思います。高度医療 というのは、本当に画期的な制度だと思います。従来の限界を超えて、薬剤の適応外使用の問題を早 く解決するためのいち方策として、多くの期待が寄せられています。しかしながら、現行の薬事法下 で進める限り、回り道というか、二度手間的なところがありまして、高度医療でこれだけ厳密にやっ ても、やはり、そのあとで改めて治験をやらないと現行の薬事法下では、なかなか承認に結び付かな いというところがございます。  厚労省の方も、先ほど「現行の薬事法下でやれる精一杯のことです」とおっしゃっていました。ま さしくそのとおりだと思うのですが、やはり、そこをもう少し制度を変えていただいて、例えば、高 度医療の位置付けと実施監理体制を整備して、高度医療下で行われる試験のクオリティを担保できる 仕組みがきちんとできれば、これは治験に準ずるようなデータとして将来の薬事申請に使える、そう いう仕組みにできれば、もっと早くいまの適応外使用の問題は解決するのではないかということを、 先ほど発言させていただきましたので、改めて大臣にお伝えさせていただきます。ご検討をよろしく お願い申し上げます。 ○長妻厚生労働大臣  本当に貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございます。これは我々もいろいろ不断の見直 しをしなければいけないわけで、例えば、EPAでEU諸国などから似たような問題を指摘され、いまの は高度医療の話ですが、独立行政法人のPMDAが非常に時間が遅い、あるいは不透明だ、あるいはどう いうプロセスで決まるのかが開示が不十分等々、指摘も受けていますので、その体制の問題と、いま は薬事法という法律の縛りの中で、どれもこれも基本的には安全性というのをかなり重視した取り決 めだと思いますけれども、ただ、間違いなく安全なものをまた屋上屋で同じようなことをやると、そ れはタイムラグというか、ドラッグラグということも生じかねないわけでしょうから、これについて 本当に具体的にどういうことが適正なのか、世界の事情も見ながら適正なのかというのは、今日は事 務方も来ておりますので、是非、検討して、論点ペーパーをいま言われた話について、次回こちらで お配りを申し上げて、すぐにという話ではないでしょうけれども、時間をかけて議論をしていく必要 があると。  例えば、再生医療にしても、この話と直接結び付くかわかりませんが、折角のベンチャー企業が日 本国内で立ち上がっても、結局、日本国内での手続きが不透明ということで、いまフランスに行って しまうということも起こっております。そういうことも含めて、見直す必要があれば議論をしていき たいと思いますので、論点ペーパーを次回配っていただきます。 ○猿田座長  ありがとうございました。要するに、この高度医療評価会議でいちばん重要なのは、各大学でやっ ている最先端の研究をいかに実用化するか、そのいちばんのステップとしてこの評価会議があるもの ですから、本会議の意義は非常に重要であって、これをやればいかに早く国民に最先端の医療が届け られるかという点で、谷川原技術委員のおっしゃったシステムをうまく考えてやっていくということ かと思います。               (長妻厚生労働大臣退室) ○猿田座長  どうもありがとうございました。いまの021番に関して、ほかにご意見はございませんか。竹内構成 員、どうぞ。 ○竹内構成員  私はこの試験にかかわっておりましたので、利益相反の点から黙っていたのですが、この試験に関 しては、国際共同試験ではなくて国内試験です。 ○猿田座長  ほかにご意見はございませんか。  それでは、いま柴田構成員におまとめいただいた形で「適」とさせていただきたいと思います。ど うもご協力をありがとうございました。これで新しい案件に関しては終わりです。次に、事務局から 次のステップで、膀胱に関しての案件のご説明をお願いします。第11回の高度医療評価会議の、5-ア ミノレブリン酸を使った蛍光膀胱鏡を用いた膀胱癌の光力学的診断につきまして、事務局からお願い します。 ○事務局  事務局でございます。5-アミノレブリン酸を使った蛍光膀胱鏡を用いた膀胱癌の光力学的診断です が、修正をしていただきまして、さらに変更の届けがございました。実施経験症例数が前回の会議で は20例必要ということでしたが、10例にしたいと。その理由は、協力医療機関の要請がかなりきてい るということで、そこの部分の普及性を考えたいということです。申請医療機関の高知大学がしっか りと技術を指導したうえで参加するということを条件に、出口技術委員、山口構成員、主担当伊藤構 成員、猿田座長に確認していただきまして、認めていいのではないかということで伺っております。 以上です。 ○猿田座長  ありがとうございました。この高知の施設はしっかりそういった形を考えてやっていくということ ですので、これはその変更点というだけでここへ諮らせていただきました。よろしいですね。それで はこの点もお認めいただいたということでお願いします。そうしますと、本日審議するところは以上 です。  全体として何かご意見はございますか。大臣がいらっしゃって中断したこともございまして、ご迷 惑をおかけいたしました。今日は、一部、条件付きがありますが、一応、すべてのものを「適」とさ せていただいたということで、条件付きに関しては、各施設からもう1回しっかり回答をいただくとい うことで、必要なものがあれば、ここでまたかけさせていただく、そうでないものは、そのまま通さ せていただきます。それをもし通す場合には我々が必ず確認をさせていただいて、許可させていただ くことにいたします。全体的に何かご意見はありますか。  今日はちょうど高度医療評価会議に関する話がありましたが、私がいちばん心配しているのは、こ の高度医療評価会議で認められてから今度、先進医療専門家会議に回るのです。こちらは医政局でや っていて、向こうは保険局でやっているわけですが、その辺りの連携ということです。要するに私が 大切に思っているのは、折角、皆様方はこれだけ苦労していろいろな議論をしていただいております ので、それが少しでもスムースに流れて早く国民のもとに届けられることが、この本会議のいちばん の使命です。先ほど大臣も言っていましたように、いろいろなふうに考えて必ず意見をくださるとい うことですから、私のほうからお願いしていきたいと思います。 ○谷川原技術委員  今日初めて高度医療の評価会議の委員として出席させていただきました。私は先進医療の委員をや っておりますが、この両者を見てみて、先進医療の方は保険診療の一歩手前の辺りの技術で、相当の エビデンスがあり実績もあります。  一方、高度医療は、膵島移植の審議の際に発言しましたように、実施してみないとわからないこと が多く、ですから、あくまでこれは試験なのです。ですから、私が前回会議でコメントさせていただ いたのは、すでに実績のあるプロトコールならば、有効性・安全性も相応にわかるのですが、それと は違う新しいやり方にチャレンジするプロトコールであるならば、新しい方法が従来のプロトコール に比べて、本当に安全なのか、本当に有効なのかというのは、やはりこの試験で評価していただかな ければいけないわけです。「当然、新しく企てた方法は前より良いはずだ」という考えではなくて、 高度医療の段階はあくまで試験であり、最先端技術の評価をこの試験で行うという意味を、是非、実 施医療機関の方には認識をお願いしたいと思っております。 ○猿田座長  谷川原技術委員がおっしゃるとおりです。ですから、ここの高度医療で通ったものが、また今度、 先進医療にいきますと、先進医療の先生方の考え方は少し違うものですから、先生はよくおわかりの ように、あそこで議論が出てしまうのは、そういうことなのです。  ここは本当の最先端のものを受けて、臨床試験としてやっていく形ですから、治験とも違います。 そういったことの、しっかりした段階的なことと、構成員の先生方にも理解をいただきたいと思いま す。私はいつも厚生労働省の方に言っているのは、その流れをスムースにやってもらいたいと言って おります。これはまたこれからも相談させていただいて、国のほうもよろしくお願いいたします。  それでは、本日審議することは全部終わりました。次回の予定を事務局からお願いします。 ○事務局  次回の日程は、2月25日、15時から17時を予定しております。詳細等決まりましたら、追ってご連 絡させていただきます。本日の議事録については、作成次第、先生方にお配りして、回覧して確認さ せていただきますので、よろしくお願いします。以上です。 ○猿田座長  どうもありがとうございました。先生方、ご協力をありがとうございました。これで高度医療評価 会議を終了させていただきます。 照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課 TEL 03−5253−1111 高度医療係 松本 内線2589