10/01/25 第1回地域医療再生計画に係る有識者会議議事録 10/1/25 第1回地域医療再生計画に係る有識者会議議事録 ○日時 平成22年1月25日(月)13:00〜16:00 ○場所 厚生労働省 省議室(9階) ○出席者   【委員】梶井座長        内田委員 水田委員 田城委員 藤本委員 正木委員 ○議題  1.地域医療再生計画について   (1)「地域医療再生基金におけるIT活用による地域医療連携について」(平成 22年1月22日・IT戦略本部医療評価委員会)   (2)各都道府県地域医療再生計画に対する意見について       ・医師確保関係事業       ・医療機関の機能分担・連携関係事業       ・救急・周産期・小児医療関係事業       ・在宅医療関係事業       ・その他  2.その他 ○資料  資料1 「地域医療再生基金におけるIT活用による地域医療連携について」(平成 22年1月22日・IT戦略本部医療評価委員会)  資料2 各都道府県の地域医療再生計画(概要)  資料3 地域医療再生計画に対する意見  委員提出資料 内田委員提出資料 ○武田室長 定刻となりましたので、ただいまより「地域医療再生計画に係る有識者 会議」を開催します。委員の皆様方には、本日、大変お忙しい中、遠方よりご出席を 賜りまして誠にありがとうございます。開催にあたりまして、厚生労働省足立大臣政 務官よりご挨拶申し上げます。 ○足立大臣政務官 皆さん、こんにちは。足立でございます。本日はお集まりくださ いまして、ありがとうございます。いま国会のほうは不透明な状況になっていますけ れども、本日はよろしくお願いしたいと思います。  ご案内のように、もともとこの会議の設置の必要性ということについては、「地域 医療再生基金」の中で、5年間、100億円の所を10カ所と、25億円の所を84カ所と いう中で、コンペと言いますか、100億円の部分をどのように選び出していただくか、 そういう趣旨で会議が必要であったということだったわけですが、この地域医療再生 基金の見直しにあたり、各都道府県2カ所、5年間、25億円、合計94カ所になるわ けです。その中でこの会議の位置づけとしましては、「地域医療再生計画にかかる有 識者会議」という形にしまして、私の意見も取り入れながら皆様方の人選をさせてい ただき、お集まりいただいたわけでございます。  何と言っても今の経済状況下の中で、各都道府県の自主性に任せた各2カ所の選出 であるとは言いながら、その中でも似たような取組みをする所、あるいは本日も内閣 府のIT戦略本部医療評価委員会の方に来ていただきましたけれども、同じITを使う にしても、さらに有効的な使い方、効率的な使い方というものは必ずあるものだと思 います。そこで有識者の皆様方に大所高所から、さらにいい計画はできないのか、そ ういったようなアドバイスを是非、私としてはお願いしたいと、そのように思ってい ます。  また「地域医療再生計画」そのものは、先ほど来申し上げているように5年間のも のでございますから、これで終わりというわけではなくて、その執行状況、進捗状況 等も議論していただいて、有効な使い方、そして何よりも今、まさに診療報酬が話題 の中心ではありますが、その両輪であります医療提供体制、これをどうしていくかと いうことを検討していただく場でございます。5年間の長い期間にわたりますけれど も、どうかよろしくお願いしたいと思います。本日はお忙しいところ、ありがとうご ざいました。よろしくお願いします。 ○武田室長 続きまして、委員の皆様を五十音順に紹介させていただきます。社団法 人日本医師会常任理事の内田健夫委員です。自治医科大学地域医療学センター長の梶 井英治委員です。国立大学法人九州大学理事・副学長の水田祥代委員です。順天堂大 学医学部公衆衛生学講座准教授の田城孝雄委員です。NPO法人地域医療を育てる会理 事長の藤本晴枝委員です。社会福祉法人恩賜財団済生会横浜市東部病院院長補佐の正 木義博委員です。  続きまして、事務局職員を紹介します。医政局総務課長の岩渕です。医政局指導課 長の新村です。私、同じく医政局指導課の武田と申します。よろしくお願いします。  次に、当会議の座長につきましては、自治医科大学において地域医療学センター長 を務められ、地域医療に関する研究や教育に当たっておられます梶井委員にお願いし ています。以降の進行は梶井座長にお願いします。 ○梶井座長 本会議の座長を仰せ付かりました梶井でございます。よろしくお願いし ます。本日は円滑な運営に努めたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いし ます。最初に事務局より資料のご確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いし ます。 ○武田室長 それではカメラはここまでとさせていただきます。資料の確認です。資 料は4部ですが、その前に、資料ナンバーを振ってない委員のメンバー表と、当有識 者会議の位置づけ等についての資料があります。各委員におかれましては委員就任時 にご説明したとおりですが、ここに書いていますように会議の趣旨として、地域にお ける医療課題の解決を図るために都道府県に地域医療再生基金を設置し、地域医療再 生計画に基づく取組みを支援する。それにあたり、この計画に対して評価・技術的助 言を行うために、本有識者会議を開催することとしているものです。役割としては、 先ほどの足立政務官のご挨拶にもございましたが、地域医療再生計画の開始にあたり、 基金のより効果的・効率的な活用に向けての評価・技術的助言というものを行う。そ れから中間、事後的な評価として、計画の達成状況について確認し、今後の計画改善 等に向けて引き続き計画に対する評価・技術的助言を行っていくことが、主な会議の 役割でございます。年に1回程度のペースで開催を予定しているものです。  続きまして資料ですが、資料1は、内閣府のIT戦略本部医療評価委員会からの「地 域医療再生基金におけるIT活用による地域医療連携について」です。資料2は、各 都道府県から提出された「各都道府県の地域医療再生計画の概要」、大まかに1枚で それぞれポンチ絵を使ってまとめたものです。資料3は「地域医療再生計画に対する 意見」となっていますが、これは昨年12月から各委員に全計画を事前に見ていただ き、それに対する意見等を提出いただきました。それを各計画ごとにまとめたもので す。また委員提出資料として内田委員から提出いただいた資料があります。  なお、「各都道府県の地域医療再生計画」そのものについては大部になりますので、 委員の皆様方にのみ机上のファイルでご用意しています。本日、傍聴されている方、 その他の方におかれましては、厚生労働省のホームページに掲載していますので、後 ほどご確認いただければと思います。 ○梶井座長 早速、議題に移らせていただきたいと思います。意見交換におきまして は、意見がおありの委員の方は挙手をお願いしたいと思います。そして指名された後 にご発言をお願いしたいと思います。今回の地域医療再生計画を読ませていただくと、 IT化に関わる事項もずいぶんございました。IT化に関してまず取り上げたいと思い ますが、内閣府のIT戦略本部医療評価委員会で取りまとめられた「地域医療再生基 金におけるIT活用による地域医療連携について」、内閣府の津村大臣政務官からご発 言いただき、引き続いて、IT戦略本部医療評価委員会の山本座長から、資料のご説明 をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。 ○津村大臣政務官(内閣府) ご紹介いただきました内閣府でIT担当をしておりま す政務官の津村啓介と申します。貴重なお時間をいただきましてありがとうございま す。少し短めにご紹介をさせていただこうと思います。  実は、たまたま私の兼務の関係で国家戦略室の政務官を兼務しているのですが、今 年の一連の政策議論でひとつ意識しておいたほうがいいのかなと思うのは、新政権と して今年6月までにまとめようとしている、いわゆる「成長戦略」です。旧政権下に おいても毎年、年度の前半にいろいろな政策の議論が審議会や戦略本部で行われて、 それは6月、7月の骨太の方針を視野に入れながら、そこで、どうやって翌年度の予 算編成に生かしていくかということで、議論をしていくというのが流れだったと思い ます。  当然、新政権においても1月から6月にかけて、さらにその次の年の予算編成を見 据えた議論をするのは避けられないことですけれども、もう一つ今年の特徴的なタイ ムスケジュールとして、新政権として6月までに多少尖った成長戦略を作っていく。 それがニアリーイコール参議院選挙のマニフェストになって、国民の皆様に問うてい こうという年にも当たるものですから、成長戦略と各施策の関係をよく整理した上で 議論することが生産的なのかなと思っています。そういう中で、実はこの地域医療再 生基金におけるIT活用というのは、非常に大きな可能性を秘めた施策だと思うもの ですから、成長戦略との関係だけ少しお話させていただきたいと思って、今日伺いま した。  成長戦略というのは六つポイントがあり、多少総花的に聞こえてしまうのですが、 よく突き詰めると、実は二つのイノベーションを成長戦略と位置づけています。一つ は、大きく言うと課題解決型ということですが、いま日本が直面している困難に各国 に先駆けて対応することで、世界に先駆けてイノベーションを行っていき、それを他 国にも今後、システムとして輸出していこうという話です。その二つの柱として、一 つは環境・エネルギー分野、これをグリーンイノベーションと呼んでいます。これは 地球温暖化に対応していこうという話です。  もう一つ、これが非常に重要だと思いますが、世界に先駆けて長寿化し少子高齢化 を迎えているのが日本で、長寿社会というのは決して悪いことではなく、むしろ誇る べきことです。これからアジア各国も世界各国も、日本を追いかけるように高齢化が 進むわけですから、日本は医療の技術やいろいろなシステムも含めて、世界に先駆け てそういう長寿社会のひとつのモデルを作っていくことで、今後、20年、30年、そ のシステム自体を海外に、ある意味で普及し輸出していくことで世界をリードできる のではないか。そういう野心的な成長戦略です。この二つ目のイノベーションを、私 たちは「ライフイノベーション」と呼んでいます。これは医療、介護、さらにいろい ろなものがつながってきます。この成長戦略の二つの柱を支えるものとして、地域活 性化、科学技術、雇用などを位置づけているのが今回の成長戦略の全体像です。  そう考えてくると、地域医療再生計画をITという横串でしっかりとシステム化し ていくことが、これからの国の予算の話もそうですし、あるいはもう少し民間も巻き 込んだ成長戦略もそうですし、もっと言えば将来のアジアなり各国に対してそれを輸 出というか、どんどん日本のモデルを採用していただくことも含めて、非常に今日の このテーマは夢のある、将来性のあるテーマだと思うものですから、今日は足立政務 官もお見えですけれども、これから省をまたがった議論をしていくときに、これは非 常にポテンシャルの高いテーマであり、委員の皆さんに、政権として注目しています よということもお伝えしたかったですし、積極的なご提言をいただいて、6月にまと まる新成長戦略の方針しか今は出ていませんが、本文のほうにこのテーマが大きく扱 われるように、一緒に知恵を絞っていきたいと思っています。  具体的な施策については、山本先生から紹介させていただきますが、考え方は非常 にシンプルです。90以上の地域が今回、地域医療再生計画に取り組んでいますけれど も、そのうちの8割、9割の所がITについても触れているようです。これから地域主 権の時代で、各都道府県や市町村の計画に、あまり国からああしろ、こうしろという のは流行らない時代です。逆にサポートする面からはある種の標準化というか、一つ のフォーマットとかモデルケースとして、これから法制化される国と地方の協議の場 などの枠組みを通じ、規格を統一していくことでコストが下がったり、さらに94地 域以外の地域に広げていくときに、より汎用性の高いものになると思います。そうい う技術的、システム的なところで、あまり地方に任せて縦割りや地域割りになるので はなく、厚労省に是非イニシアティブを取っていただきながら、場合によっては私ど ももお手伝いさせていただきますし、横の情報連携、横串をきちんと入れて、縦割り にならないようにするという発想だけは、一つの省の中だけの議論ではあるかもしれ ませんが、目配りをしていただきたいことを今日は申し上げて、私からのお話を終わ らせていただきます。 ○梶井座長 ありがとうございました。それでは山本座長、お願いします。 ○足立大臣政務官 ちょっといいですか。せっかく津村政務官から成長戦略の話が出 ましたので、厚生労働省のその部分だけお話しておいたほうがいいのかなと思います。 厚生労働省としては、私が取りまとめで成長戦略会議に出ています。政権獲得後、若 手の方々を中心に10数名から成る医療・介護・保育「未来への投資」プロジェクト チームというのを作り、これの議論の内容がそのまま成長戦略に近いものになってい くだろうと、そういう捉え方です。  いま有効求人倍率が0.45という中で、医療、介護、福祉の分野は平均すると2倍 以上の有効求人倍率があって、供給は足りない状況にある。まずそれを満たすことに よって国民の皆さんの納得度、満足度を上げることにより、さらに新たな需要を生ん でいく。それはまずは内需の問題になるでしょうが、それが成長戦略と相俟って科学 技術、そしてアジアを中心とした観光、さらに日本の医療における知名度を生かしな がら、観光、科学技術、健康が結び付いた部分を、内需から外需へという形で厚生労 働省が引っ張って行く、そのように捉えています。  私は成長戦略のコアの部分が、厚生労働省分野であると申し上げたのですが、経済 産業省の近藤政務官は「厚生労働省があんこである」と言われました。同じようなこ とだと思いますが、胸焼けしないように現実に即した成長戦略を立てていきたいと思 っていますので、よろしくお願いします。 ○梶井座長 それでは山本座長、よろしくお願いします。 ○山本座長(IT戦略本部医療評価委員会) 本日はお時間をいただき、ありがとうご ざいます。資料1で「地域医療再生基金におけるIT活用による地域医療連携につい て」という文書を、この有識者会議にお出ししています。  1頁は柱書きです。2頁、3頁はIT戦略本部医療評価委員会からの意見具申という ことで書いています。当然ながら地域医療の再生というのは、地域の特性、個性によ ってさまざまな違いが出てくるものですから、地域それぞれが、ご自身の事情に応じ た計画を立てられると思っています。そのこと自体は地域個性があって非常にいいと 思いますが、ITを活用するということになると、これまでさまざまな医療のIT化の 施策が行われてきましたけれども、若干、sustainabilityに欠ける、あるいは何が良 くなったのかわからないというふうなものもあったように思います。  我々、戦略本部の医療評価委員会は「全体最適化」ということを最も大きなテーマ に、これまで検討をしてまいりました。したがって個性を大事にする中でも、我が国 全体として最適なITの導入を考えていただきたいということで、このようなドキュ メントを出しました。書いていることは極めて当たり前のお話で、今日も本有識者会 議の内田委員から資料が出されていますが、ほぼ似たようなことで、おそらくITに 関して知見がおありの方は、ほとんど同じ結論に達するのではないかという程度のこ とを書いています。  2頁の1.が、ITを導入する以前の段階における留意事項です。ITというのはツー ルにすぎませんので、道具が先行しては決してプロジェクトが成就することはないと 思います。つまり何に使うために使うのか、どうやれば道具が使えるのかを、まずし っかりご検討いただきたい。大事なことは1ポツの人的連携です。これは道具ですか ら、使うのは医療、健康の場合は人ですので、人の連携をまずしっかりと確立してい ただき、その上で必要なITシステムを導入する過程が大事だろうと書いています。  2ポツも得てして逆さまになってしまうのですが、ITというのは人を助けるために あるもので、ITを導入したから人の仕事が増えるということがあると、 sustainabilityが損われて使われないシステムになってしまうということで、そうい ったことに十分留意していただきたい。  3ポツは現場のニーズを確認してやるということ。つまりシステムを入れることが 目的になってしまって、ニーズではなくシーズを作るような形でそのシステムを入れ てしまうと、あまり使われないシステムになって困ることになりますから、この点も よくご指導いただければと思います。  2.ですが、これは最低限のことで具体的なことを書いています。(1)は sustainabilityが非常に大事であるということ。つまり5年間の基金ですが、5年経 ったら止めてしまうみたいなことであっては困りますから、地域で持続的に稼働でき るようなものです。そのためにはコストを抑えることが非常に大事で、厚生労働省で は医療情報システムのコストを抑えるためのさまざまな施策に、かなり熱心に取り組 んでいるとお聞きしています。したがって、そういう成果を生かしてコストを下げて 持続可能なものにしていただく。いろいろな方式があり、それは4頁以下にモデルプ ランという形で図示していますので、後で参考にしていただければと思います。  (2)は安価で拡張性があること。これから先、ITというのはある目的で導入しても、 それ以外の目的でも使いたいということが、特にネットワークの場合はあります。そ のたびに別のネットワークを引いてくるみたいなことでは、コスト的にも見合いませ んし、同じことを繰り返すという意味で、さまざまなプレーヤーの意気を沈めてしま うみたいなことが起こると思いますから、拡張性を十分考えていただきたいというこ と。  (3)も非常に重要ですが、扱うのが健康情報、医療情報です。医療情報本来は患者さ んが最も活用すべき情報であり、地域再生、地域医療連携とは言いながら、その患者 さんがその地域から外に転居される、出て行くことは、いくらでも考えられるわけで す。したがって、その時に、ある地域で活用できていた情報が、よそには全く持って 行けないということでは、1人の人として見た場合の医療の継続性が著しく損なわれ ることになりかねない。もしくはそれを達成するために、せっかくITを導入しなが ら、医療従事者が詳しい提供書みたいな形で手書きをしなければならないことになろ うかと思います。それはあまりにも労力の無駄です。幸い、いま厚生労働省が取り組 んでいる事業の中にも、こういったそれぞれの医療機関ないしは地域で収集された情 報を、相手に理解できる形で、利活用できる形で渡す仕組みが、ほぼ完成していると 聞いています。したがって、たとえ患者さんがその地域から移動しても、その情報が 使えるようにすることだけは最低限確保することをご指導いただければと思います。  もちろん、この中には標準化というキーワードがあります。形式の標準化、用語の 標準化、コードの標準化というのがあって、ここに書いてあるのは本当に最低限の部 分です。既に厚生労働省が取り組んでいる分野では、これより広い範囲の標準化を進 めていると聞いていますから、これはあくまでもミニマムということで、計画によっ てはもう少し広い範囲で標準を採用していただくように、ご指導いただければと思い ます。以上が、医療評価委員会からの文書の内容です。  4頁以下、横書きのパワーポイントの資料は、いま申し上げたことを少し詳しく図 示しているものです。有識者会議の構成員の方におかれましては、後ほど参考に見て いただければと思います。以上です。 ○梶井座長 大変貴重な資料とご説明、ありがとうございました。実は本会議のメン バーである内田委員からも、先ほどご紹介がありましたように資料が準備されていま すので、内田委員からご説明をお願いします。 ○内田委員 それでは「内田委員提出資料」となっている資料をご覧ください。いま 説明のありました問題意識とかなり共通した問題意識と思っています。右下に1とあ る頁の3ポツ目で、各都道府県が立てた地域医療再生計画(案)には、情報技術(IT) を用いた計画案が多く見られる。4ポツ目で、IT活用については、詳細な計画案から、 今後内容を詰めていくと思われるものまで千差万別という状況である。ただ、今回の 計画のうち、約1割弱の予算がここに投入されるのではないかと考えています。従来、 ITということで事業を立ち上げると比較的容易に予算は付きました。しかしながら経 年的に見ていくと、予算が切られた瞬間に事業が終わってしまうとか、あるいはモデ ル事業で何カ所かやった中で、事業が終了した後も継続して活用されている事例が、 極めて少ない現状がありました。今回の事業の中で同じようなことが展開されると、 せっかくこれだけの予算を付けて、地域全体として医療提供体制を進展させるという 本来の趣旨から言うと、だいぶ外れてしまうことが懸念されますので、お出ししたわ けです。本当に内閣府の問題意識とかなり近いと思っています。  そこで懸念事項ということで次の頁に出していますが、地域で統一感なくITシス テムを採用することで、一時的にシステムの運用はできますが、その後に問題が発生 してくることを懸念しています。独自仕様によるカスタマイズが多く発生し、高コス ト体質に陥る。また独自仕様、システムの閉鎖性というところから、他の地域と連携 しようとしても連携できないシステムとなってしまう。連携できたとしても、連携に 要するシステム改良に多額の費用がかかってしまう。また将来のシステム更新時に入 力されたデータが移行できない、もしくはそれにも多額の費用がかかってしまうとい うことで、実際に運用する医療機関、利用する医療機関に非常に大きな負担がかかっ てくる可能性もあるということです。  平成12年に経産省が26カ所の地域を選んで、56億円程度の補正予算を投入した「先 進的情報技術活用型医療機関等ネットワーク化推進事業」というのがありましたが、 これは現在稼働しているのが、たぶん8カ所ぐらいということで、問題が指摘されて いることも伺っていますので、この辺のところを厚生労働省が、この事業の中でIT を取り上げている地域に対し、何らかの手立てをする必要があるだろうという問題意 識で出させていただきました。 ○梶井座長 ありがとうございました。委員の方から、ITについて何かございますか。 ○田城委員 順天堂大学の田城です。各委員がコメントしていますが、全く同じ認識 でいます。山本先生に伺いたいことがあるのですが、その前に別件ですけれども、私 は内閣官房の地域活性化統合本部地域活性化戦略チームの委員をはじめ、いくつかや っています。地域の元気再生事業は2桁少ない金額ですし、仕分けにあってしまった のですが、過去2年間において非常にいい効果もありました。例えばメディカル・ツ ーリズムを群馬県や長崎県でやるとか、今回と同じように地域の人材やアイディアを 拾い上げて全国に普及しようというプログラムでやっていますので、同じ内閣の本部 ですけれども、そちらの話をちょっとさせていただきました。  本題に戻って、今回の各県の事業を見ていると、一つは、例えば経済産業省の資金 を使っているのだと思いますが、香川県の情報ネットワークシステムのK-MIXです。 地域医療連携を地域で始めて全県にいき、兵庫県をはじめ、今回は近隣の近畿、瀬戸 内海地方でK-MIXに乗っかろうというやり方で、経済産業省が推し進めたものに今回、 県を越えて共同でやろうということですが、そういう意味では非常に効率的なやり方 です。  その一方で、ある県ですが、医療連携のためのIT化促進の支援ということで、ウ ェブ型の電子カルテシステムをやるときに積算資料を見ると、病院の場合には1ベッ ド当たり75万円です。その地域の病院を全部合わせると2,000床あるので75万円× 2,000です。診療所の場合には、1診療所当たり600万円で50診療所という積算の仕 方を、ウェブ型でされていますが、これはどうなのかと思います。こういう計算は本 当に妥当なのかを山本先生にお伺いします。これは、業者の方が「相場でこんなもん ですよ」と言って弾いた数字を、たぶんそのまま写しただけだと思いますので、そう いう場合には業者の方に対する指導が、これは経済産業省なのかどうかわかりません が、こういう積算をそのままスッと出すというのは、どうなのだろうかという疑問も ありましたので質問させていただきました。 ○山本座長 私は計画書を読んでいませんから、どの程度のシステムに対してその値 段かというのは少しわかりかねますので、絶対的なことは申せませんけれども、現在、 医政局医療技術情報推進室を中心に、システムのメンテナンスコスト、導入コストを より下げるための外部への委託が行われるような、ある意味、ガイドラインをしっか り作っているのと、ある種の規制緩和をする可能性があると聞いていますので、そう いうことを前提にすればコストは下がるだろうと考えています。ただ、いまのお話は、 おそらく数年前の価格で、こういうITの技術の場合は時間が経てば下がっていくの が当たり前ですから、これからきちっと積み上げられるときには、多少変わってくる のだろうと期待はします。 ○梶井座長 そのほか、よろしいですか。 ○正木委員 私は、いまの東部病院に来る前は熊本の済生会におりました。熊本地区 の病診連携というのは、意外にモデルになるような発達をしています。そこにはこう いったITの機械は一切入っていないのですが、いろいろな意味で連携は非常にうま くいっています。いまの済生会熊本病院でも電子カルテがない状況で、ITの価値は私 も十分理解していて、必要なことだと思うのですが、基本的にはなくても済むところ も無きにしもあらずなのです。ですから作っていくとすれば、よほど価値が出てくる ものにしていかないと、いまの医療の問題を解決する策にはならないのではないかと 思います。  先生からご説明いただいたように、ここに人的連携を構築するとありますが、この ことがまず一番で、お互いに病院施設が連携をして、本当に地域のために頑張ろうで はないかという姿勢が、まずあるべきではないかと感じています。道具としてのIT というのは価値があると思いますし、このことを見つけるまでの時間ももう少しかか るのではないかと思います。各病院とも全部が全部、電子カルテが揃っているわけで はなく、一部の病院にしかありません。熊本なんかでやろうとすると、大きな病院で あればできると思いますが、例えば連携先のクリニックの先生方となってくると年輩 の先生方で、ほとんどお使いにならないとか、病院全体でお互いに連携をするメリッ トがどこにあるのか。いわゆる情報が速いという価値はあると思いますが、お互いに それなりに連携をしていくとなってくると、こういった地域連携のためにネットワー クを構築すること自体が、この地域医療再生計画を救うかどうか、少し疑問に思って いるところです。 ○山本座長 おっしゃるとおりで、ITが地域医療再生に必須だとは私も考えていませ ん。ただ、計画を読ませていただくと、ずいぶんITのことに触れている計画が多い ことを踏まえて、ご提言申し上げているということです。当然ながら最も大事なのは 人の連携であり、ITは必要に応じて用いればいいと思います。ただ、一方で、我が国 の場合は対人口当たりの医療従事者数も少ないですし、医療費も国民1人当たりの GDPに換算すると低いわけです。つまり、もともと効率高くやっていかなければいけ ない状況で、そういう意味では適切に導入されれば、おそらくITというのは役に立 つのだろうと思います。  ただ、正木委員がご指摘のように不適切にやってしまうと、結局は無駄な投資と使 われない物が残ってしまうことになりかねなくて、そこは我々も非常に危惧している ところです。ここに書きましたように、まずは人の関係を作っていただいて、ニーズ がどこにあるのか。どうすれば医療従事者が助かるのかをよく検討してからITに手 を付ける形で、ご指導いただければと考えています。 ○梶井座長 ありがとうございました。いろいろご意見も出ましたけれども、先ほど ご説明いただきましたIT戦略本部医療評価委員会のご意見に関しては、厚生労働省 を通して各都道府県に伝達申し上げたいと考えています。委員の意見に関しては、今 日、これからいろいろ議論していきますけれども、そういう議論を踏まえて都道府県 に対する技術的助言を作成しますので、その中に盛り込ませていただきたいと考えて います。 ○津村大臣政務官 中身のお話は今のお話でと思いますが、大事なのはそれをフォロ ーアップすることで、お伝えさせていただく以上ということですと、この後、それが どういうふうに担保されたかというのを、この場なのか、私たちとのパイのやり取り は別として、どうやってフォローアップするのかというPDCAのCAのところを、ちょ っと。 ○梶井座長 私たちの有識者会議に関しては、1年間に一度、フォローアップのため に集まるということにもなっていますので、私たちの立場としては、どういうふうに それが取り組まれて進展したか、1年ごとに評価していくことになろうかと思います。 そのあたりはいかがですか。 ○武田室長 いま座長からお話がございましたように、ITに限らずいろいろな取組み が計画の中に盛り込まれていると思います。それらについての進捗状況の確認と、適 宜、それに対して必要な助言を行っていくことを、有識者会議の役割として位置づけ ていますので、引き続きよろしくお願いしたいと思っています。 ○水田委員 フォローアップのやり方ですが、1年に1回では、不十分ではないでし ょうか。特に、最初のうちはもう少し頻回にやらないと本当に始めているのかどうか もわからないし、いろいろなことを一度にやり出すと、どこから手を付けていいかわ からない状況になると思います。ですから、この会議としても1年に1回のフォロー アップというのではなくて、ある程度頻回にしていったほうがいいのではないかと思 います。そして最初に例えばITにしても何にしても、導入のときにもう一度指導す る。指導と言うとおこがましいですけれども、知らないで、ただトレンディにITを すればいいとか、寄附講座をすればいいと書いてありますが、その意義をどこまでお わかりなのか、具体策があまりないこともいろいろ問題が出てくると思うので、委員 会でもう少し頻回にフォローしたほうがいいのではないかと思います。 ○藤本委員 こうしていろいろな計画が出されていますが、それを、該当する各地域 の人たちにきちんと情報を公開して、地元の方たちに周知することを義務化する必要 があると思います。私の地域も当該計画の地域になっていますが、一般の人たちに対 する情報の公開がいかにも行政的で、ホームページに載っていますとか、その程度の 話で終わってしまいがちなのです。でもこの地域医療再生計画というのは、そこの地 域にいる人たちが一緒になって理解し、ネットワークを作りながらやっていかないと 絶対うまくいかないものが多いので、その辺の情報の出し方について厚労省から、必 ずこういう形で情報をきちんと周知するように、という指導があってもいいのではな いかという気がしています。 ○足立大臣政務官 正木さんの熊本のネットワーク、特に脳卒中を中心としたネット ワークは非常によくできていると私も認識しています。この計画でどこが違うかとい うと、熊本はある意味、施設が飽和とは言いませんが非常に多かった。それをうまく 整理していくためにはという解決論のひとつであったわけです。  この多くの計画は、そうではなくて足りない所、むしろ医療過疎の所をどうやって 繋いでいくかということが多いので、いま藤本委員のおっしゃるように、人的連携が 最初で肝心であることは間違いないのですが、その中で周知という話がありました。 会議体、合議体をどう形成していくか、これが何よりも大事だと私は思っていますの で、その段階では水田先生がおっしゃるように、少し最初のフォローが密でないと、 なかなかいい計画にはならないような気がします。その点を申し上げたいと思います。 ○梶井座長 津村政務官、いかがですか。 ○津村大臣政務官 基本的に水田先生と全く同じことが言いたかったのです。私たち としても1年後でなく、1カ月後なのか3カ月後なのかわかりませんが、この話がど う進んでいったのか、是非フォローアップさせていただきたい、コミュニケーション できる場を作っていただきたいと思います。 ○梶井座長 ありがとうございました。いまのご意見も踏まえながら、今日、さらに 意見交換を進めていきたいと思います。いまのフォローアップに関しては、この有識 者会議で決めるというよりも、有識者会議としてはそこに対しても意見を述べさせて いただき、それを厚労省のほうで検討していただくことになろうかと思います。  いま、ITについてはいろいろご意見をいただきましたが、実はここにある資料は、 たぶん私を含めて6名の委員は非常に思い出深い年末年始になったと思います。これ は両面コピーしてありますので相当なボリュームなのです。そして各都道府県ですの で94計画あり、1計画を精読するのに相当な時間がかかったのではないかと拝察する ところです。私自身は相当かかりました。その上でお一人おひとりが、この委員に選 ばれたことを大変光栄に思っておられると思います。そうでなければなかなかこれは 読み切れないと思います。私自身は大変光栄に思っています。  そして限られた予算というか、私にとっては膨大な予算だと思いますが、それが先 ほどお話がありましたように、より効果的、効率的に使われて、日本の各都道府県の 医療がより良い方向にいくように、私たちの会議でいろいろな意見を集約させていた だいて提言させていただくことかなと思っています。  というものの、今から4時までですから2時間少しということで、どういうふうに 議論を進めていこうかと考えましたが、94計画すべてを進めるわけにはまいらないと 思います。私は読ませていただいて、各都道府県の特性、現状が非常によくわかって きたと思います。まだまだ十分にわからないところは質問という形で入れさせていた だきましたが、よくわかってきたように思います。そういう特性を踏まえながら各都 道府県が課題を持っていて、その課題を解決するためのいろいろな事業計画を立てた ということだと思います。しかしながら、大きな方向性、流れがあるのではないかと 感じました。そういう意味で各都道府県の圏域を越えて、その大きな方向がどの方向 に向いているかを、この有識者会議で少し議論させていただき提案させていただけれ ば、それがこれからのひとつの羅針盤になっていくのではないかと思う次第です。で すから、各計画について一つひとつ議論を進めていく時間はありませんので、そうい ういくつかの事業、大きな枠組みをお示ししながら、その枠組みの中で議論していき たいと思っています。委員の先生方、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。  ITの話は、いま議論しました。医師確保関係事業はすべての計画に入っています。 医療機関の機能分担・連携関係事業もほとんど入っているように思います。救急・周 産期・小児医療関係事業が三つ目で、四つ目が在宅医療関係事業です。この四つの大 きいカテゴリーに分けて、これから議論を進めていきたいと思います。もちろん、そ のほかの事業でも各県でお考えいただきたい重要な事業もありますので、それはその 他として後で議論を進めていきたいと考えています。早速、一つ目の議論に入りたい と思います。  医師確保関係事業はどの都道府県もお困りだと思いますが、これについては各委員 の先生方のご意見をお伺いできればと思います。いかがですか。 ○水田委員 多くの県が寄附講座を置くということにメインを置いているのですが、 それを置いてすぐに医師を育てるのも大変ですし、その寄附講座そのものをどういう ふうに動かせばいいのかということも、まだわからないところがたくさんあると思い ますが、それで医師確保ができると思っているのか、「具体策はお持ちですか」と私 は聞きたい気がするのです。何かトレンディに寄附講座を置いてとか、いくつかの大 学がある県は、そこに全部置くとか皆さん書いていますが、それが本当にいいのかど うか。  寄附講座を置いたときに、寄附講座でどういうことをするのか、そういう話合いを 本当になさったのか。自治医大は別として、全部の県が地域医療の講座を開設できる だけの力があるとは思えないわけです。地域医療医を養成するノウハウをお持ちで、 ちゃんとやろうとしているのか。あるいは今からそれを築いていくのか。そうなると 10年ぐらいはサッと経ってしまう気がするのです。 ○田城委員 この医師確保関連事業、特に大学病院との関係で大体三つですね。修学 資金には奨学金などいろいろな種類があります。それから大学院や研修医に対する助 成と寄附講座というのが入り混じっていて、確かに理解できないところがあります。 もう一つ、島根県などは既にいろいろなことに取り組まれていて、他県から来るとか 兵庫県の大学から来る往復の交通費を補助するとか、非常に具体的で、現実的なもの もありました。  水田先生がおっしゃるように、私も頭を捻っていたところです。石川県の地域再生 計画に非常によく書かれていて、タイムスケールが書いてあります。寄附講座という のは速効性がある、計画を始めたらすぐ寄附講座を作る。他の県ではどこどこ病院に 3名のための寄附講座とか、どこどこ病院、どこどこ大学の寄附講座とか、それが寄 附講座という名前なのかどうなのかもありますが、そういうのがあって、次に、初期 研修医に対して月々10万円ですと、大体、計画が始まってから3年後ないし4年後に 何年間か確保できて、それが終わったころにちょうど医学部の1年生からやるのがで きるというように、短期、中期、長期というのが書いてあり、それでやっと私も腑に 落ちたというか理解できています。  たぶん、よその県はそこまでオーガナイズされていないかもしれないけれども、そ の三つの組合せでいかざるを得ないところまではやっていると思いますから、この石 川県のようにはっきりと、この時期に即戦力として人材を投入できるのはこの方策で、 そこから先は水田先生がおっしゃったように47都道府県でベタッと書いてあるけれ ども、中身がかなり違っていますので、それはすり合わせというか、最も進んでいる 県のやり方を真似するようにというか、地方の元気再生事業も全くそうでしたが、非 常に優れたアイディアを出す県がありますから、それを全国に広めていくというやり 方でいいと思います。  そうすると、確かに先生が先ほどおっしゃったように、最初にボタンを掛け違えて しまうと1年後にガタガタとなってしまうというのも、おっしゃるとおりです。ただ、 事業も始まっていないうちからというのが悩ましいところです。先生の先ほどのお話 も含めると、最初のボタンを掛けるところから、良いアイディアがということです。 先生はご専門だと思いますが、ほかにこういう良いアイディアがありますよというこ とを示してあげるということで、よろしいかと思います。 ○水田委員 そうですね。 ○梶井座長 ここで津村政務官が公務でご退室なさいます。ありがとうございました。 この寄附講座の件は大変重要だと思いますが、正木委員、いかがですか。 ○正木委員 水田先生、大学のほうの準備ですが、各県がお願いするというのはこれ でスタートするのでしょうけれども、そのことを各大学が受けますよということで、 実際に4月から寄附講座というのはできるのでしょうか。 ○水田委員 いやいや、それはなかなかではないでしょうか。講座を一つ作るという ことは文科省との関係もあり、クリアーすべき課題は多いのではないでしょうか。 ○正木委員 そこに集まって来る先生方の意識が変わっていかないと、誰も来ません。 ○水田委員 そうです。大学が、まず寄附講座というのを理解しないと。 ○正木委員 その話し合いも必要かと思います。 ○水田委員 でも企業からの寄附講座というのは最近各大学にできていますので、そ ういうやり方でするかどうかでしょうね。 ○正木委員 企業の寄附講座は大学のニーズを汲んだ講座になりますので、意外と早 いかもしれませんけれども、総合医として地方に行きたいという先生方に、どれだけ 集まっていただけるかというのが、いちばん問題かなと思います。 ○藤本委員 それに関連してですが、これだけ同じようなことをやる大学がいっぱい あるということは、またそこで横並びになってしまったということだと思います。私 は計画のところに再三コメントしたのですが、ここの地域の売りは何かというのが見 えない計画が非常に多かった。例えば大学に医師が来たとしても、そこから先、魅力 のない所に派遣されるとなったら、最初からそこの大学を選ばないこともあり得ると 思います。ですから研修する医療機関、研修する地域にどのような売りがあるかとい うことを、もう一度考えていただきたいと痛感しました。 ○内田委員 いまの点に関しては、具体性に欠ける計画が結構多いことと、実際に動 かしてみないとなかなかわからないところもあると思います。寄附講座に関しては、 5年後にどうなるか先が見えないところで講座を増やして、でも5年後にはお金は付 きませんよという話になると、ランニングコストを結構食う話ですし、そこの担保が ないと踏み出せないところもあるのではないか。 ○田城委員 水田先生は大学の副学長ですけれども、私どもは、この基金ではない別 の事業のほうで地域枠の学生を引き受けています。私が引率して離島実習に自治医科 大学の先生と一緒に行っていますので、半分当事者のようなものですし、あと寄附講 座に関しては、都道府県によってかなりばらばらで幅が非常にあります。先ほども言 いましたが、ここの大学で、ここの病院に3名送るということまできっちり書いてあ る寄附講座もありますし、教授の人件費が1,000何百万円で、准教授がいくらという 積算の仕方をしていたり、ばらばらですけれども、概ねここの地域に何名の医師を派 遣するというのは、昔ですと別のやり方で医師を確保していたものを、寄附講座とい う名前に変えて金額もむしろ増えた形でやるというか、直接、そこの地域の人件費を、 寄附講座というものを通して確保しているというやり方が多い感じがします。  もちろん、地域で求められている医療のあり方はどういうことか、どういう人材が 必要だという研究事業もあります。これは同じことを繰り返すことになってしまいま すが、かなり幅があるので、こういうあり方が望ましいとして推奨されるものを、全 国の中の先進的な寄附講座をもう一度精査して、こんな感じでやったらいかがでしょ うかと提示するのが、いちばんではないでしょうか。  こういう大学にお金を出す仕組みの中では、確かに即戦力は速効性があるものとし て、寄附講座を活用するのが一番ではあります。ただ、大学人としては講座であれば 研究や教育も必要ですから、そうすると先ほどから例に出している、ここに3名置く のに寄附講座という名称を使うというのも、大学人としてはどうなのかなという疑問 がないわけではありませんが、そこでいろいろ研究とかに結び付けていけばいいと思 います。寄附講座自体が3年ないし5年の時限ですので、この基金による事業以外で も良いものであれば、たぶん別の予算でと思います。  もう一つだけ付け加えさせていただきたいのですが、この基金は25億円もしくは 一つの県で50億円ですけれども、大体、一つの大学に平均で5億円から、もしかす ると10億円を超えるお金が寄付講座として、それから修学資金というのは授業料に なるわけですから、学生さんにはいきます。そうすると、50億円のうち、1割ないし は2割近い、これは文教予算とも関わってくるのではないかということで、ここで幼 保一元化にコメントするのは、もしかするとあれかもしれません。  文教予算と厚生予算の一体化というのはいいことだとは思いますが、それはもっと 上の仕組みだと思いますけれども、そういう話合いというと変ですが、そういうこと も。特に国立大学にこの基金から5億〜8億円が4年間で行くというのが、もっと別 のとか、いろいろ考えることもあるのかなと思いました。 ○梶井座長 この基金全般に通して言えることですが、最初に私が言った非常に限り ある予算と言いましょうか、資源をどのように有効に利用していくかというのが、い ちばん大きい、効果ある結果を出していくかということだと思います。  いまの寄附講座から派遣という形にとらわれると、たぶん各都道府県全体の医療の 提供体制そのものにどれだけ効果があるか、関わっていけるかということだと思いま す。そう考えてみると、各都道府県がもう少し全体を見渡して医師の配置を大学とと もに考えていく。そして、いくつかの計画の中には、寄附講座がそのような分析を行 うという計画を謳ってあるところもありました。ですから、今後の方向としては、各 大学はいままでは医局単位でいろいろ派遣があったと思いますが、こういう時代、状 況になってまいりましたので、県とともにそういうことを分析、計画を立てていただ いて、個を超えてと言いましょうか、全体で考えていただくのが、限られた医療資源 をより有効に活用していくための方向性としてはいいのかなと。  そして、そこの中で寄附講座がどのように関わりを持っていくか。超短期的には田 城委員が言われたように、本当に足りなくて大変なところを手助けする。しかし、そ れで終始するのではなく、それをいつまでもしなくてもいいように、次のステップに 向かって中長期の計画を立てていただくという、明確な計画を打ち立てていただいて スタートしていただかないと、そういう講座に優秀なスタッフが集まるかどうかとい うことにもつながるだろうと思います。  それから、たぶんこの5年が終わったころに、ようやくいろいろなことが動き始め る。そこのところを担保しておかないと、優秀で、しかもいろいろなことに対する先 見の明を持ちながら、積極的にやっていただけるスタッフが集まるような状況には至 らないのかと思うのですが、さて、いかがでしょうか。 ○藤本委員 私はネットワークの視点から計画を見させていただいたのですが、医師 を育てる、研修をするということについては、地域のネットワークが大変重要だと思 います。  例えば、岐阜県の計画ではすでに保健、医療、福祉といった連携体制が地域にでき ていて、そこを次のステップとして、医師の研修のフィールドとして使う可能性のあ る計画がありました。  それから、高知県では実際に、どのように地域を回るとどういうステップアップが できるかという、研修コースみたいなものがポンチ絵で描いてありましたが、そのよ うに地域で医師を育てることにも着目している所がいくつかあります。  先ほどから話に出ているように、医師不足ということを考えますと、大学で高度で 専門的な医師を育てることと、地域で全般的な疾患をひと通り診られるという医師を 育てる、この両方が必要です。しかも、後者の医師には、そこの地域でどういう保健 事業があり、どのような介護がありというところまで見渡した上で、医療を展開して いく力量が今後求められてくると思います。そのような方たちは地域で育てたほうが いいと思います。大学で育てる医師、そしてそこからさらに大学病院で育っていく医 師と、あとは地域に出ていって育つ医師という両方の支援・育成体制を考えるといい のではないかと思います。 ○梶井座長 ここで足立政務官は公務でご退室なさいます。どうもありがとうござい ました。  いま藤本委員のご発言にもありましたように、個々の医師確保関係事業について、 寄附講座から入りましたが、それぞれの医師が実際に行ってみようというインセンテ ィブと言いましょうか、モチベーションが高まるようでなければという意見も出まし た。そういう意味では、たぶん一つひとつ点で話をしていても、なかなか個々の議論 の集約にはならないと思います。  私自身が思うのは、先ほど言いましたが、県と地元の大学、さらに医師会が、医師 をどのように県下に配置していくかという議論と共同の作業がなければいけないの だろうと思う次第です。もう一つは、そこの例えば研修医が研修プログラムに参加す る魅力、藤本委員がおっしゃる魅力をどう付けていくか。水田委員、いかがでしょう か。 ○水田委員 皆さんとても都会へ出たがるという一極集中的な考え方が多いのです が、なぜ都会なのか。都会がそれほど魅力的なのか。それを知ることも必要かと思い ます。 それから、平成16年に新臨床研修医制度が始まってから5年経っています が、当時の研修医だった方々が研修後にどうなったのだろうというフォローアップが 全然ないわけです。私が病院長のときに見ていますと、九州大学の場合、研修医の人 たちは一度は大学を出ていくのですが、2、3年経つと、研究をしたいという気持で大 学へ帰ってくる人が多くいました。そのあとどうなったかというところまではまだわ からないのです。ですから、全国全部やるのは大変にしても、少し地区をピックアッ プしてでも、一度大学を出た研修医たちが、どういう道を通ったのか、地域に帰って きているのか、都会へ行ってそのまま残っているのかを調べてみるのも大事ではない かと思います。  私は自分もインターンのときに一度外に出ました。そういう場合はある程度自分の 大学を背負うのです。よその大学の人に負けないぞと競争しますので、そういう意味 では非常にいいことだと思います。  私は研修制度で大学から一度出ていくことには賛成ですが、帰ってこないのはちょ っと困るなと思います。別に大学に医師がいなくなるとかいうことではなく、若いと きに大学で研究したり、指導を受けることも大切なことですから、それをわかってほ しいと思います。大学から一度外へ出ると、自分の大学もなかなか良い大学だという ことを理解するのではないかと思います。ですから、そのような教育をしなければい けないということもあるし、できれば研修医の1年目は全部外の病院に出して、2年 目の臨床研修は全部自分の大学に帰すというぐらい、やり方を変えてもいいのではな いかと思います。そうすると、外で競争してきたことで自分の大学をもう一度見直し て、いいなと思うのではないかというような夢みたいなことを言っているのです。  どのようにしたらいいかは、なかなかアイディアがありませんが、自分の大学を愛 するような教育をしないと駄目なのではないかなと思います。都会へ出ていくには何 かがあるのだと思います。そこをもう一度考えて。ただ、ただ嘆いて「うちの田舎の 大学は誰も来てくれない」と言う前に、来てくれるような大学づくりをしないと。大 学人の責任もあるのではないかと思っています。 ○田城委員 先ほど申し上げましたように、うちの大学、地域枠の学生、この基金で はありませんが、学生と直接接してみますと、志の高い学生はいっぱいいると思いま す。そういう点では期待できると思います。来年度はこの地域枠ではないのですが、 入学定員の10%が地域枠の学生になってきます。最初は5人だったので、学年全体に 与える影響等もいろいろ考えたのですが、1割になると学年全体でも、地域枠ではな い学生も地域医療のことを考えるようになるのだろう期待しています。  もう一つは、3年生に在宅医療のことを教えると、非常に目を輝かせるのですが、 学年進行とともに、だんだん専門性が高くなっていくということがあって、専門医と 地域医や家庭医は永遠の課題だとは思いますが、そこのところは大学全体で、日本中 でいろいろ考えることかと思います。  あとは家庭医のプログラム、特にアメリカでやっているプログラムを導入している 県が二つありました。あとは地域で開業されている先生の活力を使おうというプログ ラムもありますから、そこのところはもう一度地域医療のあり方とか。総合医という のはなかな難しいところですが、専門性を高めるということ。プライマリ・ケアはと ても重要なことだと思いますし、専門性も高めて、プライマリ・ケアもできる。縦に も横にも広めるというのは学校教育のあり方だと思いますが、それは大学全体として もう一度考える時期かもしれません。 ○内田委員 いまのお話を聞いていて思ったのですが、そもそもこの計画に地域医療 再生のお金を付けるというときに、地域医療協議会を立ち上げてというか、使って、 大学、医師会、地域の病院の代表、場合によっては患者さんとか、地域の方の代表も 入って計画を立てているわけですから、今後、これを作ったらお仕舞いということで は当然ないわけで、そこの検証がすごく大事になってくるし、具体的な運用をしてい く中での具体的な連携。いま地域に出して、地域で研修をして、また大学に戻してと か、これはへき地のキャリアパスの話でも出てきましたが、そういううまい組合せを 地域で工夫して、よく動かして、いい人材を地域全体で育てるという意識がすごく大 事だと思いますので、計画を作る段階だけではなくて、実際の運用から、さらに評価 して回すというところまで関わって、しっかりやっていただきたい。  先ほどから話が出ている情報提供に関しても、こちらから、これはいい所だからと いうポイントを示して提供するのももちろん大事ですが、これを全部都道府県に流し てしまえばいいではないですか。折角これだけの資料を作っていただいたのですから、 しっかり見ていただいて、これはうちで使えるというところを、是非活用するような 方策も考えていただければと思います。 ○梶井座長 いま委員の皆様から示していただきましたようなことを、また各県に助 言としてお返しするということで、実際の事業を始める前に、その辺りのご議論をも う一度検討していただくことかと思います。いまいろいろなことが出ました。 ○内田委員 医師確保で追加します。いまのは養成と確保の話だと思いますが、もう 一つの側面として、地域医療を確保するという意味でマグネットホスピタルという考 え方を出している所が兵庫県、奈良県(中南和)という地域で出ています。  このマグネットホスピタルという考え方は、集約化と効率的な医療提供というとこ ろでは非常に効果があるのですが、一方で、住民の医療のアクセスという点で非常に 問題があると思います。ただ、マグネットホスピタルで集約して医療を提供するとい う体制だけではなくて、適切な地域の医療連携ということも住民に示していかなけれ ば、ただ集約して効率化というだけでは、当面は乗り切れても、中長期的には非常に 問題が大きくなるかなという印象を持ちました。  もう一つ、マグネットホスピタルと同じような考え方で、公的病院の機能強化、統 合・再編整備も、いろいろな地域で出されていましたが、中核病院の統廃合も同じよ うな視点ですごく問題が出てくる可能性があるので、そこの手当てをどうするかとい う具体的なプランも同時に示さないと、それだけで問題が解決するものではないとい うことをすごく感じます。 ○梶井座長 おっしゃるとおりだと思います。いま内田委員からご指摘のあった点に ついては、次の医療機関の機能分担・連携関係事業のところで、もう少し進めていき たいと思います。医師確保のところでお願いします。 ○藤本委員 ずっと医師確保、医師確保できたのですが、看護師の確保についてもい ろいろな医療圏で計画が立てられております。看護学生の教育、それから現場に出て からの研修体制についても各地域で考えていただけたらと思います。特に現場に出て から3年以内に辞める看護師がすごく多いという点については、現場と教育の間でも う少し調整が必要なのではないかという気がしました。 ○水田委員 その医師確保のことで、いま若い方ばかりの確保ということになってい ますが、年をとって辞められた方をもう一度呼び戻すようなやり方はだめでしょうか。 まだまだ仕事ができる方もたくさんおられます。医師会の医師バンクは、そういう人 たちは登録させていないのですか。 ○内田委員 している地域もありますが、日本医師会でやっているのは女性医師だけ です。 ○水田委員 看護師さんに対しては看護学講座の寄附講座を作って、看護師の養成を するという県もありました。  それから、看護師さんたちが、いま専門看護師の資格を取るときに、大学もそうで すが、なかなか休めないし、お金もないので、結局辞めて資格を取るということまで しないと取れない状況もありますので、そういうことができるようなシステムを作っ てあげたら、もう少し教育効果も上がるのではないですかね。 ○田城委員 医師確保の件ですが、いくつかの県でそういうプログラムがありました が、自治医科大学の義務年限終了者、9年経って、ちょうど10年目以降の医師で、い ちばん脂が乗っている医師に引き続き都道府県で、中枢で頑張ってもらえるというの が、その県は必ずしもそうではないという問題意識からプログラムを書こうと書いて ありましたから、それはその県に特有のことではないのだろうと思いますし、実際に 私の出身県の公立病院へ行くと、内科、外科、地域医療科という科の構成になってい たりということもあります。 いちばん地域のことがわかって、脂が乗っている自治 医科大学の義務年限終了者に、その都道府県でどうやったらいちばん活躍してもらえ るのかというのは、都道府県でも違うとは思いますが、それを考えるのは即戦力とい う点ではいいのではないかと思います。 ○正木委員 いまの計画の中では、先ず最初に医師を確保したいという考えがあって、 その中で確保できるという確信があるので動いていますが、万が一これでも確保でき なかった場合に、例えば5年経ったときには地域医療が崩壊してしまうということに ならないような、医師が地域に帰ってきてくれないときの材料というか、何か手を打 っておく必要があるのではないかと思っています。  計画の中では公立病院が主体で動いていますので、公的な病院とか、地域の中核と なる大きな病院などを含めて議論をすべきではないかと感じています。公立だけで苦 しまなくても、公的病院も入れて、更にもう少し大きな所も。例えば地方では、熊本 病院でも後期研修医は40〜50人いて、いまは地域に派遣しようという試みをやって います。そういう病院も中にはあると思いますので、是非とも公的病院を巻き込むと か、地方のたくさん研修医を抱えている病院も少し巻き込んで地域全体で医師を確保 するということを明確にしていけばいいのではないかと思います。 ○梶井座長 そういう意味では医師の派遣の重点的な地域あるいは順位は明確に出 していただいて、先ほど言いましたように、県を挙げてそこにどのように充当してい くかということだと思います。そこにもちろん短期的には寄附講座も関わっていって、 そこに医師を派遣していただくということで、まず最初のステージのステップは乗り 切っていただくということかと思います。  それから、医師の確保、支援という意味では、実はへき地医療支援機構というのが、 へき地を有している県にはあるはずです。そして、その支援機構と一緒にへき地拠点 病院が実際に医師を派遣したり、代診医等を派遣することになっていますが、必ずし もこれが有効に機能しているということではないと思います。ですから、従来あるべ きものをきちんと有効に機能すべく活性化していくということだと思います。  計画を見ますと、さらにへき地という対象ではなく、地域全体ということで、これ を地域と置き換えている計画もありますが、それが計画だけではなく、実際に有効性 のあるものにしていただく。そして、そういう所にも医師をプールしていただく。ど うしても大学の医局に入局してということを、いまはすべての若い研修医がよしとし ているわけではありません。そういう人たちの拠り所、因って立つ所を明確に示して あげて、その人たちが地域に行くという気持になるようなキャリアパスとか、キャリ アデザインを示してあげなければいけないのではないかと思います。  それから、先ほど出ていた総合医の育成に関しては、地域の中核病院に専門医がい るが、特に救急で疲れてしまっているのです。ですから、幅広い診療ができる専門医 であったり、幅広い診療ができる総合医であったり、そういう医師が、たぶんいまは 求められているのだと思います。そういう医師を、どのように県を挙げて大学と一緒 に育てていくかということではないかと思います。  そういうときに、いわゆる2年間の臨床研修を終わった医師が後期研修として対象 になりますが、専門医から今度はそのような幅広い医師になりたいという人たちも、 私たちの所に来てくれます。ですから、そういう人たちも含めて研修体制を充実して いく。先ほどお話があったように、そういう人たちを指導する指導医を一生懸命急速 に育てていかなければならない。そういう方々と言いましょうか、そういう素質を持 った人はたくさんおられますので、そういうことも踏まえながらということかと思い ます。  いろいろ意見が出ましたが、時間があればあとでご議論を続けていただきたいと思 います。それでは、次の事業に入りたいと思います。  先ほど少し頭出しを内田委員からしていただきましたが、医療機関の機能分担・連 携関係事業について、皆様のご意見を伺いたいと思います。 ○田城委員 大体どこの都道府県もトップダウン型と言いますか、もちろん大学の意 見も、医師会の先生方の意見も聞きながらという形ですが、わりとトップダウン的に 決めている。それから内田先生がおっしゃったように、何分の1かは公的病院の再編 という事業がメインだったり、ある方のコメントに公立病院のことしか書いてないの だが、民間病院だって地域資源としてあるだろうというようなコメントもあります。  そういう中で申し上げたいのが、地域医療を支えているのは診療所だと思います。 本当に過疎の所に行きますと、公的病院や国保診療所以外に医療を提供する所がない という所もありますが、大部分の所は診療所の先生、医師会の先生が地域医療を支え ていますので、こういう地域医療連携の協議会には、必ず医師会の先生に入ってもら う。これは意見の中で繰り返し私も触れていますので、そこの協議会で、行政と病院 の責任ある地位、決定権を持っている方と医師会の先生方で話し合っていただく。そ れは普通にやると議論がまとまらないので、コーディネーター、双方の意見の間に入 って、これはこういう意味ですよとちゃんと翻訳して議論をまとめる人が必ず必要で す。  自分自身の経験でも、私は横須賀市や板橋区でそういうことをやって、ちょっと手 前味噌ですが、私が来てから議論が進むようになったと言っていただいていますので、 そういう方を抜きでやるとまとまらなかったりすると思うので、是非、そういう会議 のあり方を。  それから地域連携パスのことがいろいろ書いてありますが、地域連携パスというの はトップダウンで、都道府県が専門病院を集めて、そこで作れと言って、作ってもパ ス表は出来上がるかもしれませんが、それが実際に地域で運用できるか、回るかとい うと、回らないのです。地域の組織づくりの観点を抜きにやるとうまくいかない。事 前に皆様にお配りできるかどうか、部数がわからなかったので、事前資料としては付 けていませんが、机上配付で先生方の所にはお配りしてあります。  これは板橋区の医師会が2年以上かけて作ったもので、別の研究班の事業です。実 は2月からお披露目だったので、これはフライングです。この会議で全国で初めてや りますが、この会ですとすぐできるのです。なぜかというと、医師会の先生方が自分 たちで話し合って、誰がやるかもちゃんと3回ぐらい意思確認をしてとなっています。 いろいろな所を見ていますと、県庁で病院を呼びつけて「やれ」と言って、パス表は いろいろ参考にして作ったが回らないということがありました。地区医師会の尾道と か、有名な所はいっぱいあります。これは顔の見られる医療連携というのは郡市区で す。今回の計画は二次医療圏が単位なので、一つの郡市区だけでは収まらないので、 そこのところで少しギャップがあると思います。是非、医師会の先生方が入って。上 から言われたことではなく、自分たちが話し合って決めたことならすぐ実行するわけ ですので、そういう観点から協議会を作ってやっていただきたい。これは救急でも母 子でも在宅でもすべてに通じると思います。 ○梶井座長 そのほかにいかがでしょうか。 ○藤本委員 病院の再編・統合の計画をいくつか見たときに最初に心配したのは、住 民の皆さんにどのように説明して合意形成できているのかということです。先ほど内 田先生が言われたように、それは大変気になりました。自分の近所の病院がダウンサ イジングするとか、機能が落ちる時には住民はものすごく不安がるのです。そして、 自分の近くにある病院のことしか普段は考えていないので、地域全体でどのように医 療機能が最適化されるのかということ、さらには再編・統合することによって、いま よりも安定した医療が提供できるということを、きちんと情報として出してもらわな いと、不安な住民感情だけが先走って、いろいろな政治家の方がいろいろ言って、再 編・統合が進まなくなってしまうという例も無きにしも非ずです。まず住民や、もち ろん地元の医師会の先生方とどういう合意形成がされているかは、大変重要なポイン トだと思います。  もう一つ、ポイントになるのは、そこで働いている医療従事者が、その再編・統合 をどうお考えになっているかです。中には集める、集める、患者の受入れを増やすと 書いてある計画がありますが、医療現場の方たちの負担がどうなってしまうのだろう と心配になるような計画もいくつかありました。ですから地域のニーズに合わせた医 療提供はもちろん必要ですが、いまは提供できる医療に合わせた機能再編というのも バランス良く考えていく必要があります。そうでないと、新しい病院はできたが、一 遍に医師がいなくなってしまったとなりかねません。その辺の合意形成は慎重にやっ ていただきたいと感じました。 ○梶井座長 いかがでしょうか。 ○田城委員 内田委員も藤本委員も言われたのですが、確かに地域の公的病院の再編 は、マグネットホスピタルもそうですし、医療の効率化を考えると300床、400床の 規模がないと救急医療としないと。医師が摩耗・摩滅してしまうのも事実です。それ をやっている所が必ずしもすべてがうまくいっているわけではないというか、特にダ ウンサイジングした所の不安はありますし、アクセスを考えると、住民サービスとし て、本当に100%そうなのかというのはおっしゃるとおりだと思います。  そこで、夕張でもそうですが、家庭医、小児・外科ができて、小児科のことがわか って、精神科ができて、整形外科ができて、耳鼻科の知識もあるという能力のある医 師、これはいままで自治医科大学以外では育ててこられなかったのではないかという 気もしますが、民間や地域でそういう教育プログラムはいっぱいありますので、そう いう方々を活用するのがいちばんとは思います。  もう一つですが、これは救急のところでも述べようかと思ったのですが、地域住民 も、例えば何々病院の小児科を守る会というものもあります。そういうのに助成をし ているプランもあります。地域住民の意識のあり方というか、100何床の、行ってい た便利な病院がなくなって困る、困るだけではなく、病気にならないためにはどうす ればいいのかとか、コンビニ受診という言葉はあまりいい言葉ではないのですが、気 軽に身近にあるので、チープな医療というと変ですが、薄利多売的な医療として使っ ていたのではないかということで、何よりも病気にならないのであれば病院に行かな くて済むわけです。そういう点では、住民の方々の啓発とか、共に考えようというこ とも一緒にやって、住民啓発や予防と。  ある県は、自分の健康に責任を持とうというスローガンがありましたが、そういう ことにも十分なお金を使っていただければと思います。 ○水田委員 いま先生が言われたように、住民の意識改革といえば、患者さんの意識 改革が必要です。全部が全部マイホスピタルだけで、「おらが村に何もかもないと気 が済まない」というのではどうしょうもないのですが、本当の意味での家庭医をきち んと持って、専門の所に送ってもらうためには、医師会に絶対この計画に参加してい ただいて、一緒にやっていくことがものすごく大事です。この全体計画を読んで、医 師会の関与があまりにも少なかったので、ちょっとびっくりしたのです。なぜ入らな いのだろうと思います。こういうことには強いリーダーシップが必要ですので、行政 もそうですし、医師会にきちんと入っていただいて、それから大学とか大きな病院が、 全部一緒にやっていかないと、絶対うまくいかない計画だと思っています。 ○内田委員 医師会にエールを送っていただいてありがとうございます。そもそも、 金が付くという計画を始めるときに、私も都道府県の医師会を全部回りました。医師 会は絶対噛んでくれと。医師会にしっかり中心になってイニシアティブを発揮してい ただいて、地域医療をどうするかという視点でちゃんと取り組んでもらいたいという ことを、さんざんお願いしてまいりました。それでもこの程度とおっしゃられるかも しれませんが、地域の先生方に本当に一生懸命やっていただいていると思っています。  これからの話ですが、これからもちろん医師会も行政も含めて、みんなで地域医療 に取り組むという体制は非常に必要です。連携の核になるのはかかりつけ医であり、 地域で開業されている先生方が、いちばん身近に患者さんや住民に接するというとこ ろでの役割は大きいと思っています。それは住民の皆さんの啓発ももちろんすごく大 事ですが、一方でシステム的なものも必要になってくるかと思っています。  いまコンビニ受診という話がありましたが、とにかく軽症でも重症でも、みんな大 きい病院に行けば何とかなる、全部診てもらえるという意識がすごく強くありますが、 決してそうではないということがあるので、それをシステムとして何とかできないか なということも感じています。   ○正木委員 医療連携の体制は熊本地区は進んでいますので、少しお話したいと思い ます。基本的には自然発生的な医療連携、自分たちの病院の機能を特化していきなが ら、そうでない所と一生懸命やる。このときの考え方のいちばん中心になるのは、患 者さんのためになるかどうかです。どの病院も成功する秘訣はそこにあります。患者 さん中心に、いわゆる大きな病院の急性期の機能とか、救急の機能とか、開業の先生 方のプライマリ・ケアの機能とか、これがうまくマッチングしていくということです。  病院のほうも考えなければいけないのは、自分たちが何でもかんでもすべてやって しまうのだという観念をどんどん出していかないと、何から何まで自分たちで抱えな がら、連携だ、連携だと言っても、なかなか始まりません。  もう一つは、地域連携がうまくいくか、いかないかの問題では、神奈川県などは、 例えば、急性期の病院と、回復期・慢性期の病院との連携をしようとしてもなかなか うまくつながらないのです。宇都宮もそうですし、この中でもありましたが、連携を したいと言っても、なかなか次の病院が見つからないですし、そのような役割を持っ た病院が出てこない。ですから、基本的に待っていても駄目だと思います。  だから、どんどん急性期の病院が逆に動いていって、いろいろなお願いをしながら、 自分たちでちゃんと作っていかないと、なかなか連携の仕組みは作れないのではない かなという気がするのです。ですから、どこかで一生懸命頑張ってやる人が、中には 必要で、地域連携は患者さんのためにと、最後に思いながらやらなければいけないの ではないかという気がします。 ○田城委員 まず医師会にお願いするというか、オルグするときに、都道府県医師会 ではなくやはり郡市区医師会、郡市区医師会は非常に活力があって、若手が頑張って いる。若手、中堅、50代ぐらいが頑張るということは、その地域の長老も若手に自由 にさせているという非常に風通しがいいという意味もあります。いろいろ見ています と、都道府県医師会にいろいろオルグするよりは、郡市区医師会にオルグして、伸び ている所が周辺に波及効果というのがいちばんかなと思います。  救急は実は次だと思います。一次、二次、三次救急も大事ですが、やはりワンスト ップ型、例えば、育児の経験があまりない母親が、これが一次救急か二次救急か、夜 間・休日診療所が夜の10時までで、9時45分に熱が出たときにどちらに行けばいい のか悩ましいと思います。そういう意味では住民や母親の利便性を考えるとワンスト ップ型で、いくつかの県にあります。東京でも実際にありますが、同じ敷地の中に医 師会等がやっている夜間・休日診療所があって、壁を隔てたら次とか、そういうやり 方もあります。  女子医大の八千代でも、東邦大の大森病院でもそうですが、夜の10時までの小児 科の外来は地区医師会の方々がやって、重症であれば、当然当直している大学の研修 医や中堅所が診ていくということで、場所は1カ所ですが、そこで働いている人たち は、ちゃんと中で分かれていて、負担にならないようにするというやり方もいいと思 います。  同じことを繰り返しますが、この時間はどちらに行ったらいいか母親は困ると思い ます。そういうことも考えれば、全く別の場所に医師会がやっている夜間・休日診療 所があって、違う所に救急があって、迷ったら大きい病院に行くというのが人間の性 ですので、そういうことまで慮ってあげないと酷かなと思います。ワンストップ型と いうのはいくつかありますよね。 ○藤本委員 連携と救急いずれかのテーマの話になるのか迷いながら考えていたの ですが、いまの患者さんをどのように受け入れて治療するかということと並行して、 これから先、この計画自体は5年間かけてやっていくものですので、5年後に私たち の地域ではどういう患者さんが増えるか等考えながら手を打っていくことも大変必 要だなと思いました。  香川県(中讃)の計画では、患者推計が出ていて、すばらしいと思ったのです。た だ、推計がそのまま計画にきちんとつながっているかというと、それはまたちょっと 別の話になってしまうのですが、推計が出ている計画が一つあったということは、私 にとりましては大変新鮮でした。  これは国レベルでも言えることですが、実際にいまどういう疾患の患者さんがどれ だけいるのかとか、どういう医療が足りないのかということが救急に関してはデータ としてあるのですが、いわゆる慢性疾患の患者さんのデータをなかなか得られない。 私たちはNPO活動をしていて知りたいなと思っても、得られる所がないのです。それ は国レベルでも、データとしてはあっても、一般の方たちに対してきちんと出るよう な形になっていないと伺ったことがありますので、行政の責任というのはそこだと思 います。データをきちんと把握して、何年後にはこのようになるだろうから、そのた めに必要ないまの施策は何だろうと考えることも、いまの応急処置と同時進行でやっ ていくことが、大変重要なのではないかと思いました。  それから、山口県(萩)の計画では、二次、三次医療を支えるために、一次救急に 力を入れるということで、きちんとそこで三次を守るための二次、一次という位置づ けがされていました。どの地域においても救急が大変なのであれば、病気予防も含め て、救急の負荷をどうやって軽くするのかかという政策も、併せてやっていく必要が あると思いました。 ○梶井座長 大体皆様のご意見は出たと思います。これから集約化あるいは統合が進 む計画もいくつも盛り込まれておりました。そうでなくても、現在基幹的な病院には 患者さんがかなり集中しています。いまの傾向としては、こういう言い方は良くはな いと思いますが、専門医大病院集中型というか、志向型と言って、そういう所にはま すます集まるのではないかということは予想されます。  当初お話しましたように、限られた資源をどのようにうまく使っていくかというの は、その反対の方向に分散していかなければ、あるいは機能を分担して協力していか なければ、たぶん対応はできないのだろうと思います。  そういう意味では、いま皆さんが言われたように、地域の中の一つの病院を点とし て捉えるのではなく、面として捉えていく。そのためにはかかりつけ医の先生方の役 割は、ますます大きくなって、それがきちんと住民に示されていかなければならない だろうと思います。例えば、集約化してセンター化した病院はより遠くなるとよくお っしゃるのです。ですけれども、日常茶飯事そこに行くというわけではなくて、隣の 先生の所に行かれれば多くの問題は解決するわけですから、そのようなご説明できち んと住民に、ともに一緒に考えていただくという視点が必要かなと思います。  それから、内田委員が言われたようにシステムとして、政策誘導がどこまでできる かはさることながら、システムとしてここまではというところも踏み込んでいかなけ ればいけないのではないかと思いました。ということで、機能分担・連携関係事業に 関しては以上としたいと思います。  次に、救急・周産期・小児医療関係事業ということで、これも先ほど来、いくつか 出ておりますが、この点について、ご意見を賜りたいと思います。いかがでしょうか。 ○藤本委員 細かいことになってしまいますが、周産期のところで、ハイリスク出産 や、低出生体重児の割合が増えている地域が結構あったのです。その理由というか、 原因の分析みたいなものを、私は素人なので、なぜそれが増えているのかというのを 知りたいのです。そして、それが増えている原因の中で予防できるものがあるのなら、 保健事業などにそれを盛り込んでいく必要があるのではないかと思ったのですが、い かがでしょうか。 ○水田委員 原因はいろいろあると思いますが、なかでも大きな原因は、赤ちゃんを 産む母親の年齢が上がっているのです。いちばんピチピチ元気な成熟児で3,000g前 後ぐらいの赤ちゃんが産まれるためには18歳ぐらいから25、6歳ぐらいまでのお母 さんがいちばんいいわけです。  しかし、いまは仕事をする方が非常に多くて、遅くなって産む方が多い。ある一面 では医学の進歩によって40歳になっても子どもが産めるわけです。ところが、そう いう方たちの赤ちゃんは低体重が多い、出生時に1,000g以下とか、中には400g、500g の赤ちゃんもいるわけです。そういう人が増えてきたというのは一つの原因だと思い ます。 ○内田委員 いまのとちょっと違います。救急に関しては、先ほど田城先生から話が ありましたが、一次、二次、三次の棲み分けと言いますか、特に一次の部分に関して 診療所の先生方がどれだけ関わっていくかということは非常に大きなテーマです。い まはかなりの地域でそういうことが展開されていると思っています。  展開の仕方はいくつかありますが、休日・夜間診療所をつくってもらって、そこに 出動するというのがこれまでの一般的な形でした。これからは病院の救急体制の中に 組み込まれて、特に準夜帯までそこで開業医の先生方が受け持つということも、かな り展開されていると思っていますので、これはいろいろな所で非常に有効な手立てだ と思います。それにしてもしっかり診られる医師がその地域にいないとそれが担えな い。月に3回も4回も出るのかという話になると、なかなか協力してもらえないとい うことになりますので、そういう条件が整った所でないと、なかなか厳しいかなとい う感じもします。それは非常に取り組む価値のある課題だと思っています。  もう一つは、どうしても初期の救急医療体制ということに目が行きがちですが、い まはNICUも含めて、救急を診たあとの体制をどうするかというところが、結構視点 で抜けている地域があるので、そこは一緒に組み合わせて検討していかないと、救急 体制だけは整ったが、あとの行き場がなくなるということがすごく増えてきているの で、そこをよくやってもらいたいと思います。 ○田城委員 まさに内田先生がおっしゃったとおりで、救急体制の強化で人員の確保 とか、設備にお金をとか、ITとかというのもあるのですが、やはり救急に集中する人 たちをどう減らすか、これ以上増やさないかというのが一つです。  それから、特に青森県のことに触れようと思うのですが、NICUとか、日本語が難し いので慎重にしなければいけないのですが、そこを埋めてしまって、次の方を引き受 けることができないということもあって、そのためにはということで、一つは啓発活 動が大事ですし、再発予防も大事だと思います。地域医療計画にもちゃんと救護とか、 急性期医療のほかに、重症化予防というのが回復期にありますので、それはかかりつ け医の先生方、地区医師会の先生方に頑張ってもらって、重症化や再発しない。メタ ボではなく、1回病院行きになってしまった方の疾病としての二次予防、予防医学で は三次予防になりますが、診療報酬でやっていくことだと思います。保健師も必要で すが、医療行為の中での二次予防は医師会を中心に地域医療としてしっかりやるべき だと思います。  これは乳がんのものですが、中を見ると、実は血圧とか、コレステロール、血糖・ HbA1cと書いてあって、ある意味では健康管理二次予防手帳となっていますので、こ ういうのも活用していただければと思います。  先ほども触れましたが、後方支援で、特に青森県の周産期医療を救うために後方病 院や福祉施設、療育施設で救急医療を確保するのだということですが、これはほかの 県でもありますが、是非各都道府県でやっていただきたいと思います。目先のところ だけにとらわれて、そこにひたすら人を集めて、お金を注ぎ込めば何とかという発想 ではなくて前後を総合的にちゃんとやる。そういうことを考えついている県も中には あるわけですので、すべての県でそういうことができるようになればと思います。 ○水田委員 それは随分前から周産期医療をやっている者たちは言ってきているこ とです。産科救急のタライ回しがなぜ起こるかというと、要するに赤ちゃんを受け取 るベッドがないわけです。というのは、NICUに入る赤ちゃんを受け取るベッドがない わけです。というのは、NICUに入る赤ちゃんの中には家に退院できずに長いことずっ と入院治療が必要な場合があります。しかし、そのような場合必ずしも急性期病院の 必要はなく、慢性期治療のできる後方ベッドで十分ですし、むしろそのような環境の 方が、ご両親も面会が自由となりますし、少しずつお子さんの病態に慣れることがで きます。NICUには後方ベットが必ず必要なのです。だから、青森県の計画は、たぶん 周産期がわかっている方が入っているのだと思います。これは非常にいいし、こうい うのを是非広げていってほしいと思います。  私たちが後方ベッドが必要と声を上げたときに、行政から「重心のベッドを使えば いいではないか」と言われたのですが、それはまたちょっと違うのです。家には帰れ ないが、母親たちが自由に来られて、何とかして慣れながら、少しずつ家に帰ってい けるようにしなければいけないので、後方ベッドの確保というのは非常に大事になっ てくると思います。 ○田城委員 福祉も含めて。 ○水田委員 はい、そうです。福祉も含めてです。そうしないと親の負担がものすご く大きくなりますから。先ほど小さい子が産まれるのは、高年齢の母親から産まれる 場合が多いと言いましたが、もちろんそれだけではないということもご理解ください。  もう一つは、生殖医療と言って、医学の進歩とともに、子どもができなかった方が、 いろいろな治療をしながら産む場合もあります。そういう方の場合は、1胎ではなく て、双子とか、三つ子が産まれる場合も多いのです。そうすると、小さくなっている こともあります。最近はそういう方が多くなりました。 ○梶井座長 救急の初期医療に関しては、先ほど来、出ていますように、開業医に取 り組んでいただいて、休日夜間急患診療所、センター等で守っていただいています。 これは一晩中ではなくても、例えば10時まででも、随分違うようです。そして、二 次、三次の医療機関に勤務している先生たちの負担が減ってきているという傾向があ りますから、まだそういう取組みをしていない地域は、是非、皆さんで協議していた だくことが大切なのかと思います。  救急に関しては、どの医療機関がやって、やらないということではなくて、全体で 取り組んでいただく。病院に関しては公立・公的・民間病院を問わず、それから開業 医の先生方、皆さん共同でやっていただくという方向を、是非示していただければと 思う次第です。  藤本委員の地域等で示しておられるように、住民が住民に問いかけていただく。行 政とか、医療機関から問いかけると反発になって返ってきます。それから、実際に来 られた患者さんにそういうことを申しますと、これも反発になって返ってきますので、 住民が住民に対して一緒に考えていただくような場を設けるというのも、あとで出て こようかと思いますが、大切かと思います。  それから、専門外のプライマリ・ケア研修事業を計画に取り上げている所もありま す。私たちの近くでも実際に小児科診療について、こういうことをやっていて、非常 に効果が上がっています。ですから、専門だけで救急にということではなく、特に初 期救急の場合には、このような事業を組み込んでいただいて、より多くの方が初期救 急に参加できるような体制を作っていただくことも大切かと思いました。  いま周産期の話が随分出てきましたが、周産期も一次、二次、三次という考え方で いきますと、病院で1人産科医で二次的なこともやっている所もあります。これにつ いてはいかがでしょうか。 ○水田委員 どちらも危ないですね。患者さんも危ないし、医師も疲れてしまって辞 めていくということになりますから、1人では何もできないということです。 ○梶井座長 もしやれるとしたら、正常分娩のみですね。 ○水田委員 助産師もいて、一緒にやっていくということにしないと、何かあったと きのことを考えると、母体も危ないし、胎児も危ないし、先生たちも危ないというこ とになります。 ○梶井座長 急ぐあまりに、そのような機能を付与してしまわないということが大事 なのかと私も思います。  それから、救急のところは、実は多くの事業が割かれています。例えば田城委員が 言われたように、救急にかからないようにするための予防事業、あるいは一般診療が 大変だと書いておられて、救急のところだけ取り上げているような計画もあります。 ですから、もう少し全体を、一般診療のほうが底辺としては非常に広いわけですから、 そういうところをきちんと考えていただいて、救急をどう位置づけていくかを考えて いただく必要があるかなと思います。  それから、二次救急の体制がうまくいっていない所に、救命救急センターを作ると いう話も出てきます。そこはきちんと割り切っていただいて、二次医療圏を超えて、 隣接する医療圏との連携を考えていただかないと、あまりにも計画が大きくなりすぎ て、実際に現場で働いている医師はますます疲弊して、そこから立ち退いてしまう、 離職してしまうということが起こりかねないようなイメージを受ける計画も入って いたのです。ですから、その辺りはあまり背伸びをしすぎないで、まず現状をきちん と押さえて段階的に計画を、事業を進めていくという作戦のほうが私はいいと思う計 画がいくつかありました。 ○水田委員 救急のことですが、よくいろいろな所でドクターヘリとか、ヘリポート と言われるのですが、すぐ隣に空港があるような所で、ヘリポートを考えるよりも、 私はある程度救急で集中的なものをするなら、むしろ陸上の搬送体制を拡充した方が 良いのではないかと思います。確かにいま救急車をタクシー代わりに使うという意見 もあるのですが、いまはものすごく道路が良くなっていますから、それよりももっと 救急車の整備をきちんとしたほうがいいのではないかと思うのです。 ○田城委員 我が順天堂も、静岡病院で伊豆半島の救命救急を担ってドクターヘリを やっております。ちょうどテレビでオンエアされているかと思いますが、テレビの影 響も確かにあるかもしれません。ただ、直接いろいろお話を聞くだけではなく、テレ ビ等の知識ですが、交通事故とか重傷な事故ですと、どうしても地上を行くと1時間 や2時間かかるのが、15分で済んでしまうという、事故の場合の時間は確かに致命的 な差になるということはあるようです。そうしょっちゅうそういう事故はないと思い ますが、交通事故、転落事故等に限れば、ドクターヘリというのはそれで命を助ける ということはあるのかもしれません。  あとは先生がおっしゃるように、どこにどれだけというのと、この基金を使うべき なのか、もう少し別のレベルの財源なのかというのは、議論の余地があるかと思いま す。確かに、それで助かる命があるのは事実で、ただ、どれだけの数があるかという のは難しいですが。 ○藤本委員 搬送のこととは別になりますが、周産期や小児は、救急もそうだと思う のですが、訴訟リスクがほかの科に比べて高いと。それで医者がなかなかやりたがら ないという話を聞いたことがあるので、周産期、小児医療の医師の確保も含めて、ど こか1か所ぐらいはそういったところに触れている計画事業はあるかなと思ったので すが、そういう点でのフォローは見当たりませんでした。例えば、いまADRというも のがありますが、裁判の形ではなくて、いろいろな納得のいく解決方法が複数選択肢 としてあるような所のほうが、お医者さんも安心して働けるのではないかと思います ので、訴訟リスクに着目した体制づくりが、一つぐらいモデルとしてあってもいいの ではないかなという気がします。 ○内田委員 地域医療提供の話とは少し違うかなという感じはするのですが、非常に 重要なテーマではあります。いま政権が代わって、あまり先行きがはっきりしないと ころもあるので、しかもいまの政権はその話題よりもほかの話題でお忙しいところが あるので、ちょっと動いていない気もするのですが、せっかく医政局だから。 ○岩渕総務課長 「産科無過失補償制度」という制度がスタートしておりまして、ま だ1年で実績は少ないのですが、これも委員がおっしゃったような懸念には一定程度 対応するものではないかと考えております。 ○正木委員 救急医療に関して、いろいろな施策を各地区が打っておりますが、対象 になるのが公的、いわゆる公立病院が多いのです。地域によっては民間とか、済生会、 赤十字みたいな所が一生懸命頑張っているところがありますので、その辺もインボル ブするような形にしていって、例えば二次輪番制などというのもある程度条件があっ て、非常に堅苦しいルールの中でやられてしまうのです。ところが、毎日やっている 病院もありますから、基本的にはそういったもので、当番を決めるのではなくて、毎 日やっている実績に基づいていろいろなものを支出していくとか、費用を分担してい くとか、先ほどの救急車についても買える所と買えない所があって、いわゆる補助金 が付く所と付かない所があるのです。ですから、三次救急の救命救急センターには、 救急車とか、ドクターカーとかを買うようなお金が付くのですが、そうでない輪番制 の所にはなかなか付かないのです。だから、その辺を少し補助してあげるといいかと 思います。 ○梶井座長 正木委員がおっしゃったように、先ほどの地域医療の機能分担の連携で もそうですが、救急でも十分に話し合って、できるところ、できないところと補完体 制を作っていただくことは、非常に地域の力を引き出してくるには必要かなと思いま す。そのほかにはよろしいでしょうか。  それでは、続きまして第4点目に入りますが、「在宅医療関係事業」ということで ご意見をいただければと思います。 ○田城委員 在宅医療推進のいろいろな仕事をしておりますので、トップバッターで お話させていただきます。「在宅療養支援診療所」という制度が、平成18年の診療報 酬の改定で出ました。ただ、世田谷区等々でお話しますと、一般診療所の外来の延長 線で在宅医療をやっている、地区医師会の役員をされているような先生方と、在宅療 養に特に特化してやっている方々と、連携が取れている所も取れていない所も結構あ るようです。ですから、よく病診連携と言いますが、診診連携、在宅医療をやってい る診療所も機能分化しています。診療所によっても、自分たちができること、自分た ちのワーキングアワーの何パーセントを割けるかということもありますので、是非そ ういうことをきちんと理解して、在宅医療に特化した所、そうでない所でも在宅療養 支援診療所の資格は取れますし、患者さんごとに診療報酬を別々に請求はできるので すが、在宅医療を専門的にやる診療所と一般診療所の棲み分けをして、その中におけ るチーム医療、医療連携をきちんとやる。  そのためには協議会、医師会の先生方、もちろんこれは介護も含んできますから、 ケアマネージャーや地域包括支援センターも含みます。そうすると厚労省の局の所掌 をまたいでしまうので、なかなか難しいかもしれませんが、そういうものを作ってと いうことが一つです。  いろいろな県の計画を見ると、薬局とか在宅歯科にお金を割いている所もあります。 それは非常に良いことだと思います。それよりも、全体としてとにかく話合いをする 場、それも枠組みを作ることと、実際に一人ひとりの患者さんにおいてケアマネジメ ントをやるという2段階の協議体が必要だと思いますので、そういう構造をきちんと 理解した上で、とにかく話し合えばいいだろうではなく、何をどう話し合う、そのた めにはどういう組織をどれぐらいの頻度で、この回は年に1回でいいのかという議論 と一緒ですが、そういうことをきちんとわかった上で話合いの場を作っていただけれ ばと思います。  それから、在宅医療の機器、チューブなどの供給体制です。それはどこか一つの県 だけで触れていたかと思うのですが、在宅医療をやっている先生方のお話を聞くと、 いろいろな病院がいろいろな種類の、例えば医療のチューブとかコネクターにしても、 A病院とB病院で全然違うと。それを買おうと思うと、問屋から買うとバルクで買わ なければいけない。それがいかに診療所の経営を圧迫しているかということがありま すので、薬や麻薬の供給体制ということも触れられていますが、医療材料の共同購入 と言うと変ですが、供給体制、千葉県の市川市の医師会は取り組まれていますが、そ ういう物品をそれこそ行政が音頭をとることではないかなと思います。 ○内田委員 在宅医療は、診療所の先生が中心になってやるケースがほとんどだと思 います。これはものすごく大きなテーマで、看取りだけを考えても現在100万人ちょ っとが年間お亡くなりになりますが、我々が80過ぎになる20年後ぐらいになると、 年間165万〜170万人ぐらいお亡くなりになる。ベッド数は絶対に増えないでしょう。 そうなると、60万、70万増えるお亡くなりになる方の看取りをどこでやるかという と、在宅でやらざるを得ない状況が出てくるのです。ベッド数を増やしてくれれば別 です。医者もものすごく増えれば。そういう状況になったときに、在宅をどうやって やるかということを考えると、人口の多い地域では、たぶん在宅を担う専門の医療機 関がこれからどんどん出てくると思いますし、診療報酬も手厚くなると思っています が、過疎の地域はどうしようもないですね。1軒に行くのに1時間もかかるような所 で在宅で看取ってと。特に終末期をどうやるかは非常に大きな課題になってきます。  これを解決するのは、一つはチーム医療、もう一つは後方ベッドだと思います。あ とは、いろいろなツールを使って、遠隔的なところでカバーできるところをカバーす るシステムの構築が必要だと思うのですが、そこまで踏み込んだ検討は今回の中では あまりなかったような気がします。これからのニーズを考えると、本当に必要だよと いうアナウンスが必要なのではないかと思っています。 ○水田委員 九州大学の病院の中では「在宅医療支援センター」というものがありま して、在宅医療そのものはやっていないのですが、在宅医療をする施設と連携を取っ て、患者さんが望めばそこに紹介するとか、在宅で何かするものを、物品を大学で支 給できるような、もちろん料金はいただきますが、そういうシステムを作っていまし て、それは非常にみんなが喜んでいます。 ○田城委員 補足が数点あります。先ほど言い忘れたのですが、退院支援の中でこの 患者さんを在宅に帰せるのか帰せないのかが非常に悩むのです。順天堂でも退院支援 回診を始めましたが、アイディアとしてあるのが、在宅医療をされている先生、特に 在宅医療に特化している所ですと人的な余裕があるので、そういう方が病院に来て、 月に1回でいいと思いますが、在宅医療推進というか、支援回診のような形で、リス クマネジメントとか褥瘡とかNSTの回診に準じてやっていくと。それはその先生が全 部自分の所で持っていけることでもないわけですから、この地域にはああいう先生が いて、この方はこうやれば帰せるということで、医療連携の最たるものは、その医者 とか看護師がどこの組織に所属しているかという壁を乗り越えて、診療所の先生が病 院に来て、病院の医者が地域で働くという、給料と社会保険がどこから出ているかに 関係なく、地域でやるのがいいのではないかと。オーストラリアやスウェーデンなど はそうしていますから、その典型が在宅医療ではないかと思います。  もう一つは、有床診療所の復権です。これは九州の熊本か鹿児島だったと思います が、堂園先生の所で、緩和ケアのコンビネーションといって、同じケアチームが外来 と入院と在宅を全部やると。そうするとメンバーが変わらないので、患者さんも家族 もとても親和性が高いということがあって、それを試算したことがあるのですが、い まの緩和ケアの病床の3分の2ぐらいの金額でそういうことができると。緩和ケアと かターミナルケアに有床診療所を復権というか、再活用というやり方が良いのではな いかと思います。一つだけ有床診療所のことに触れている県があったと思います。  私は東大で医療社会福祉部を立ち上げ、平成9年からやってもう5年か6年になり ますが、いまはむしろ国立大学のほうが退院支援や医療連携のセクションが、協議会 を作っています。私立大学のほうが昭和40年代、50年代は先行していたのが、国立 が出て先に進んでいて、いまは私立大学でもそういうセンターを作って、医療連携の 一元化という形になっていると思います。国立大学の先生方が協議会でやっているの を、内輪だけではなくて、すべての大学や地域にノウハウを提供してくださればとお 願いします。 ○梶井座長 いま在宅医療回診のお話をお聞きしながら、この計画の中で例えば医師 の研修、あるいは訪問看護師養成のための研修を挙げておられましたが、実際に講義 だけではなくこのような場にいていただいて、より実践的で具体的なイメージを持っ ていただくことも、非常に重要かなと思いながら聞かせていただきました。 ○田城委員 特に看護師の研修事業で、看護師は医者よりも家庭に入って、地域で眠 っている方が多いということもあって、私はコメントもしたのですが、病院で働いて いる看護師に訪問看護の研修をしていただいて、その看護師が訪問看護師にならなく ても、病棟で働いている看護師やドクターが在宅医療のことがわかっていれば、「こ の人は在宅に帰せるよね」と病棟でちゃんと考えてくれるという意味で、歩留まりを 考えて、訪問看護師にならないという人には、研修のお金がもったいないという発想 もあるかもしれませんが、なるべく多くの医師や看護師の方に、期間はいろいろだと 思いますが、在宅医療の研修や実習をする。学生でもすべての学生ではないのですが、 早期にやるのですが、医者になってから在宅医療の研修や地域医療の研修をやるとだ いぶ違うのではないかと、それだけで風通しが良くなるのではないかと思いました。 特に看護師ですね。 ○藤本委員 研修と関連して、薬剤師の活躍が大変重要だと思います。私たちの地域 では、調剤薬局も訪問看護ステーションも病院も診療所も一つのネットワークに入っ て、同じ情報を共有できる「わかしおネットワーク」があります。薬剤師の所に来る と患者さんもリラックスして、普段の薬の飲み方とかいろいろなことをお話されて、 それを薬剤師がドクターのほうにフィードバックすることができるのです。  それから、私たちの地域では急激にお医者さんが減ってしまって、いままでここの 病院で診てもらっていたが、次にどこの病院に行ったらいいかわからないという患者 さんが大量に出たことがありました。その場合でも、薬剤師はある程度処方せんとか いろいろ情報をリアルタイムで持っているので、「こちらの病院だったら専門の先生 がいらっしゃいますよ」ということは、ある程度アドバイスしてあげることもできる。 在宅のこともご存じです。家に薬を配達にいけば、その家で患者さんがどのように過 ごしているかも、薬剤師は結構把握していらっしゃるのです。これから先、薬学部も 6年制になって、いま地域に出ていく薬剤師を育てたいということでご努力されてい る大学の先生もいらっしゃいますので、薬剤師や薬剤師になろうとしている学生さん を地域のネットワークの中に入れて育てていく、あるいは一緒になって医療者を育て ていただくことも大事かなと思いました。中には薬剤師も入って連絡協議会を作ると いう計画も見受けられましたので、これはすばらしいと思います。 ○内田委員 訪問看護の話が出たのですが、いま訪問看護ステーションは結構つぶれ ているのです。チーム医療をやる上で、特にがんの終末期などだと、訪問看護ステー ションのサポートがなければとてもやっていられないのですが、診療報酬に非常に問 題があるということと、終末期でも二つの訪問看護ステーションを使うとなると、片 方は計算できないとか、そういう制度上の問題が非常にあるのです。これは今日の話 題ではないとは思うのですが、そういうことは絶対改善していかないと、これからの 非常に大きな支障になると思います。 ○梶井座長 ありがとうございました。在宅医療関係事業については、以上でよろし いでしょうか。残った時間でそれ以外の事業に関してということで、実はそれ以外の 事業でもたくさん議論しなければならないことがあります。委員の方々から順番に挙 げていただければよろしいのでしょうけれど、少し私なりに考えてみました。一つは、 先ほど藤本委員から医師確保のところで看護師確保のことが出ました。助産師の確保 も非常に大事だろうと思いますが、まずこの辺りについてご意見を伺えればと思いま す。 ○内田委員 看護師は、養成数は非常に多いですね。5万人ぐらい養成されているの ですが、定着率が悪くて、3年目ぐらいになるとかなりの人が辞めていくという状況 があるので、就労しやすい環境の整備に事業化を考えていただければと思います。一 つはそれです。  もう一つは、地域に定着するということを考えますと、いまの看護大学4大学で高 等な看護教育をしなければいけないという流れになっていますが、これまでの看護養 成が、良し悪しはまた別にして、実際に働きながら看護師の勉強をするとか、そうい う方をしっかり養成することも、地域定着という点では非常に有効なのではないかと 思います。予算的にもその辺が非常に手薄になってきていて、どんどん減らしていこ うと、4大学化しようという流れがありますので、そこは検討の余地があるかなと思 います。 ○正木委員 看護師の雇用問題で、私もワーク・ライフ・バランスの普及に努めてい るのですが、基本的に看護師たちが働きやすい職場という問題を考えますと、いちば ん最初に入ってくるときに、何でこの病院を希望するかというと、教育システムとか 卒後のシステム、きちんと面倒見てくれるということを見極めて、入りたい病院の条 件にしているのです。それがないと看護師たちはなかなか選択しませんし、入ってき ても3年ぐらいで辞めるというのは、その辺で自分の限界を感じながら離脱していく と思うのです。ですから、医療人育成というか、そういったものの人材開発プログラ ムとか、もちろん事務職もそうですが、コメディカルなどもちゃんとした育成をする というプログラムをきちんと作っていかないと、どこかでバーンアウトする形になろ うかと思うのです。多くの病院職員を見てみるとそのように感じられます。 ○梶井座長 ありがとうございました。確かに医師の場合と違って、新人看護師の研 修制度はないのです。ですから、個々の病院でそれが行われているということかと思 うのですが、そのほかに何かございませんか。 ○藤本委員 一般的にお医者さんは大変だということはだいぶ周知されているので すが、看護師が大変なお仕事だということは、まだまだ周知されていないなと思いま す。私も知らなかったのですが、3交替制で1日の3分の1だけ働けばいいのかなぐ らいの感覚でいたのですが、そうではないと。お仕事が終わって家に帰って、仮眠を 1時間、2時間取ったら、またすぐ出勤という生活の中で子育もしていらっしゃる方 がいるのだと聞いたときに、愕然としたのです。ですから、私たちがもっと看護師の お仕事を、ライフステージも含めて理解していく必要があるなと思います。そういう 意味では、病後児保育とか病児保育をやるというのは、大変有効なのではないかと思 いました。  また、先ほど梶井座長がおっしゃったように、現場で若い看護師を指導する立場の 看護師は、さらにお忙しいのではないかなと。先ほど指導医という話がありましたが、 指導をされている看護師に対する支援とか、看護助手を少し補助して、指導をするた めの時間を確保する、あるいは金銭的な手当てを付けるとか、そういった形で指導す る看護師へのケアも必要なのではないかと思います。 ○水田委員 これは女性医師もそうなのですが、結婚して家庭に入ったときに、次に また仕事をしたいと思っても同じ職場のポジションがないとか、そういうことが多い わけです。ですから、そうではなくて、もしお休みの場合には、例えば1年間育休を 取るなら、その間のリプレースを作ってあげてまた元に戻れるようにしてあげないと、 何か辞めなければいけないように思ってしまうのです。そうすると、何年間かブラン クがあると、遅れていると思って科を変えたり、パートになったりするのです。パー トというとあまり身が入らないので、単時間であっても正規雇用というやり方をして いかないと、離職率が多くなっていくと思います。  また、研修のシステムを看護師や助産師さんたちにも病院全体として、病院がする こともあるし、その人たちが講習などを受けに行くときに、病院が出してあげるとい う形にしていかないと、もうやめておこうということになるし、「忙しいから行かな いで」と言われてしまうと意欲もなくなるから、そういうことはエンカレッジすると いう病院全体としてそういう環境にしてあげないといけないと思います。いま、保育 所は病院の中にも随分定着してきました。 ○田城委員 いま思い出したのですが、休職とか家庭に入っている方々が社会復帰す ることも含めて、e-ラーニングでそれをサポートしている会社が、ビジネスモデルと してありますね。ですから、いま医療の技術の進歩がものすごく激しいので、2年と か3年現場から離れるとついていけなかったり、同期生が主任になっていたりという のが復帰を妨げるのは事実ですので、e-ラーニング、これはビジネスモデルでもある のですが、それをもっとパブリックなものとして活用すると。  また、ドクターなどはそうなのですが、むしろ家にいるからこそできる仕事、メー ルで相談を受けるとか、立場が逆で家にいるからこそできる仕事が、ITを使えば実は ある。そういうことももう少し考えると、健康指導とか、それこそ、こういう状態で は病院に行くべきなのか、朝まで待てばいいのかなどというのはメールでもできるこ となので、そういうシステムを考えると、ドクターもそうですが、家庭にいる資源を 活用できるかもしれません。そういうものは、たしかどこの県にもなかったですね。 ○正木委員 医師用のシミュレーションと言われる技術向上のためのシミュレータ は古くからあったのですが、看護師たちのシミュレーションの場所も作ってあげる。 採血とか導尿とか、そういったもののモデルを用意してあげて、事前に現場に入る前 にトレーニングする。また、先ほどのe-ラーニングのモデルは、すでに徳島大学の付 属病院などでは既に作っておられて、全部病院のホームページで自分が勉強できるシ ステムがあるのです。このような教育に熱心に取り組んでいる病院では、離職率が非 常に低くなってきていますので、積極的に取り組むべきだと思います。 ○梶井座長 今回の計画を見ると、シミュレータの購入は随分挙がっています。です から、一つの医療機関にそれを配置ということになろうかと思うのですが、それをセ ンター化して、やはり外部の方が利用できるようにしていただきたいと思います。 ○正木委員 いまのところ一緒に使うのです。 ○梶井座長 それは医師だけでなく、看護師もということですね。そのほかにござい ませんか。ありがとうございました。  続きまして、住民の方々にどのようにアプローチしていくかということが、今日の 議論のときどきに入ってきていましたが、これは系統的に体系立てて議論しておいた ほうがいいのかなと思うのです。つまり、計画を見るとパンフレットを作りますとか テレビで流しますとか、一方向の情報提供的なところが非常に多いのです。それも大 事だと思うのですが、双方向性に持っていかなければならないのではないかと。それ から、住民の中からどのようにそれが自然発生的に生まれてくるとか、そのような環 境作りが必要なのではないかと思うのです。そういう視点を踏まえて、皆様のご意見 をいただければと思います。 ○田城委員 その観点で言うと、兵庫県がいちばん、柏原があるので。兵庫県の地域 に含まれていませんが、県として良い影響があるみたいです。「三木すこやかCOCCO クラブ」という、住民の方がやっている会を支援する形で、基金のお金を使うという のがありますね。パンフレットも大事だし、そこから始めないといけないとは思いま すが、物を作ってというのも大事ですが組織を。うまく言えませんが、誘導するわけ でもないですが、自発的に組織ができるように支援し、さらに集まるだけで会場費と か少しは出費が出てしまいますので、そういうものを支援するやり方がいちばんです。 ノウハウはやった人でなければ気づかないところがあるので、そういう先進的なとこ ろ、これは別の事業でもそういうことを考えているのですが。  柏原の育てる会のお母さんはいま日本全国で呼ばれてお忙しいと思いますが、あれ も聞いてみると、地元の新聞記者が座談会を作って、水を向けてそういう組織を作る ように下支えをしたと聞いています。ですから、そういう役割は誰かが。何か結晶す るときにいちばん最初の刺激を作るというのは、住民を待つだけではなく、誰かが要 るのです。そういうところを行政か大学でやっていけばいいのではないかと思います。 ○梶井座長 住民活動というのはいろいろな広がりがあって、今日も出てきている地 域の魅力とか、地域で研修をして、その地域の医師になろうと思うような広がりが出 てきているのです。そういう意味では、まさにそういう観点から住民活動、市民活動 に取り組んでおられる藤本委員に、ここでお話を伺えればと思います。 ○藤本委員 ありがとうございます。私たちが「NPO法人地域医療を育てる会」とい う会を立ち上げるに至りましたのは、地域の病院の医師不足問題がきっかけでした。 一般市民は、建物が建っていると何となく安心なのです。特にそれが立派で新築だっ たりすると、これで私たちは安心だみたいに、建物に騙されてしまうというか、異な ったイメージを抱いてしまうのです。その病院の建物の中でお医者さんがどのように 大変なのか、看護師がどのように忙しくしていらっしゃるのかが見えないのです。だ んだんお医者さんが減っていく、診療科目がなくなった、これはあってはならない事 態だと、誰の責任だと、そのように考えてしまう。  でも、一歩病院の建物の中に入ってみれば、どれだけ現場の先生方が大変な思いを していらっしゃるか、看護師もどれほど一生懸命やっていらっしゃるかが見えてくる。 こういう情報をもし一般の者が知っていれば、もっと違った形で医療に関わっていく ことができるのではないかと。それがそもそものきっかけで、いまは情報紙を毎月定 期的に出して、例えば私たちの地域では救急の医療は残念だけれどここまでしかでき ないと。だから、できない部分については私たち自身が気をつけることによって、で きるだけ救急のお世話にならないようにしましょうとか、そういった情報を発信して いるのです。  先ほど梶井座長がおっしゃったように、コンビニ受診だと思わずに来た方がいたと します。救急外来で、「あなたのやっていることは、この地域ではタブーなのですよ」 とその場で言われると、絶対トラブルの元になるのですが、あらかじめ、ここの地域 でこういうことをやると、医療現場の方がすごく困るのですよということをアナウン スしておくと、たとえ結果的にそうなったとしても、「すみませんでした」とか「あ りがとうございました」ということで、良好な関係が築けると思うのです。そういう 情報発信を一つの活動としてやっております。  もう一つやっているのは、まさに住民がお医者さんを育てるお手伝いをしましょう ということで、千葉県立東金病院に来られている後期研修医の先生方のコミュニケー ションスキル研修に、一般市民が参加しています。何も医学的な予備知識というか、 いろいろな情報をトレーニングによって得ていない、全く素朴な一般市民の方たちが ボランティアとしてそこに加わっています。その方たちがレジデントの先生の病気予 防のお話を聞く、そして、その先生のお話がわかったかどうかを、アンケート用紙み たいなものに書いてフィードバックする。そういうことを毎月1回、1年間繰り返し ていく中で、一般の人たちにわかる説明の仕方、あるいは話の聞き方、意見調整の仕 方などを、レジデントの先生が身につけていくという研修をしております。  これが実は大変ドクターに好評です。というのは、診察室以外のところで一般の人 とコミュニケーションする機会は、一旦お医者さんになってしまうとなかなか取れな いそうなのです。主治医・患者という関係でできるコミュニケーションは、どうして もお互い緊張関係がありますし、他人行儀なところがありますが、コミュニケーショ ン研修の場になるとお互いに腹を割って、「先生、そんなこと言ってるけど、実はこ うなんですよ」みたいな話ができるようになっていって、本音の部分を知ることがで きます。このような機会が大変役立つと言ってくださる先生方が多いです。そういう 形で、私たちも実際にできるところでお手伝いをしながら、コミュニケーション能力 をお互いに高めていこうと活動しております。 ○梶井座長 ありがとうございました。計画を見ますと、行政とNPOとが連携を図り ながら、どんどんやっていこうという計画も入っています。ですが、ごくごく一部で、 多くは情報の一方向の発信に終始しておられるようです。このような視点も盛り込ん でいただきながら、地域を挙げて、地域の力を引き出しながら、みんなで考えて取り 組んでいくという姿勢も今回お考えいただければと、私も思いました。この点に関し てはよろしいでしょうか。 ○内田委員 私は実は学校保健も担当しておりまして、今回の事業仕分けの中で、「学 校・地域専門家連携推進事業」というのが仕分けで半額になって、来年度は消滅とい う話になっています。これはどういうことをやっているかというと、1億円ちょっと の予算で、各都道府県に割り当てるので200万ちょっとなのですが、例えば地域の医 療関係者が学校に行って禁煙の話をするとか、産婦人科ですと病気の話や妊娠・出産 の話をするとか、そういうことをこれまで事業としてやっていたのですが、モデル事 業的な事業を全国一律にやるのは非常に問題があるという話でした。それで中止の方 向で、これは都道府県で担えという話なのです。  これは是非省庁の縦割りではなくて、都道府県単位、あるいは二次医療圏単位でい いのですが、縦割りの壁を破って、こういう事業の中で取り組んでいただけると非常 にすばらしいと思っています。これは各都道府県からは全然上がってきていないので すが、提言として是非付けてほしいのです。そのツールは私たちの学校保健委員会の 中で用意していまして、いろいろなテーマで、整形外科ですと運動のしすぎによる障 害と運動をしないことによる障害とか、いくつかのテーマでそれぞれやってもらって います。そういう事業も、今後の医療を考える上ではとても良いですよということを、 是非盛り込んでいただければと思います。 ○田城委員 それに関して、足立区の糖尿病対策協議会でもそれが話題になりまして、 たぶん学校保健だけ文部科学省の管轄になるのです。私はそのように授業で教えてい ますが。メタボ対策は親子、要するに保健師さんやお医者さんが「食事に気をつけま しょう」といくら言っても反発されるのですが、何が効果的かというと、子どもに言 わせるのがいちばん良い。食生活は遺伝的な要素、メタボとか肥満はありますが、食 生活というのもありますから、家庭ぐるみでやるのが良い。国立市の保健所が文部科 学省の予算を使って「親子健康教室」をやって、非常に良い効果を出したということ もあります。愛知県の健康推進センターはメタボ対策のプログラムをいろいろ作られ ているのですが、そこも「いのちの教室」というのをされています。そういうやり方 も、いま内田委員がおっしゃったことと関連するかもしれませんが、同じ予算ではな いと思います。そういう意味では学校は校医さんが頑張る、それは医師会の先生に頑 張っていただくのですが、なかなか衛生部局ではタッチできない部分があります。 ○内田委員 教育委員会との関係もあります。 ○田城委員 そうなのです。教育委員会を通さなければいけないので、区でもそうで すし、なかなか理解を得られないということがあるようなので、そこは何とか乗り越 えて、全県一致でやっていただければと思います。 ○梶井座長 とても重要な指摘をいただきました。是非これは盛り込ませていただき たいと思います。啓発に関しても、いろいろなことがご議論の中で大きく広がってき たと思います。そのほか、例えば田城委員がおっしゃった病気の予防のこと、これを どのように進めていくか。あまり盛り込まれていなかったものですから。ただ、こう いうことを検討していただくことは提言として入れたほうがいいのかなと思います。  少し地域連携パスの話も出ましたが、田城委員がおっしゃったように、これをどの ように進めていくか。しかし、この疾病治療の標準化とか合併症の予防という意味で は非常に大事な視点だと思います。かなりの計画に連携パスの話が入っていました。 また、先ほどの子どもたちへのアプローチのところで、高校生の早期体験学習、医療 現場に入って実際に体験してみると。これは医師だけではなくて、看護師、助産師等々 医療関係者の職場体験だと書いておられまして、こういうことを取り上げた計画もあ ります。  このように見てみると、物とか人づくりもそうですが、全体として意識に触れてい くというのは、なかなか表には出しにくいところですが、是非この計画の中で、底流 に、このような意識に触れる部分がずっと流れているような感じで、計画を再検討し ていただければと思います。 ○田城委員 先生に取り上げていただいて、大変嬉しく思います。予防とか二次予防 というのは、急性心筋梗塞でも脳卒中でも、糖尿病もそうだと思いますが、都道府県 地域医療計画に明記されていることなので、確かに医療再生ですが、都道府県の保健 衛生部局が立てている計画ですから、ちゃんと地域医療計画を踏まえて、回復期や療 養期のこともしっかり意識した計画を立てていただくというのは当然と言えば当然 なので、そのことを再認識いただいて、見直していただければと、梶井座長のおっし ゃったとおりだと思います。 ○梶井座長 ありがとうございます。女性医師や看護師の支援事業も先ほど来出てい ますが、こういうこともいま随分あちこちで取り上げられていますが、これが一部で はなく全体に普及していくべきであろうと考えました。  また、当初出た地域医療再生計画の実効性がどのように進められているのか、それ にどのように我々が関わるのかということも大事ですが、各都道府県で管理・運営体 制を述べておられる所も、ごく一部ですがあるのです。ですから、別々にではなく全 体を見て、その中からモデル化して県下全域に広めていただく。そのためには全体を きちんと管理・運用していただくことが必要なのではないかと思いました。実際にそ ういうしっかりとした体制を作ると述べておられる所もありました。  これも随分出てきましたが、計画を読んでいて、もっと地域医療に関するデータに 基づいた計画がなされていれば、より説得力があるのではないかと考えました。例え ば、疾病のことについても、先ほど藤本委員が言われたとおりです。また、事業の流 れ、事業動向はどうなっているかとか、そういうことを各県、あるいは各医療圏でき ちんと把握する必要があるのではないかと思います。把握しているのかもしれません が、ほとんどそれが出てきていないと感じました。ですから、今後そのような体制を この計画の中でどうやって作っていかれるのかと思いました。等々私の考えた所感も 入れさせていただきました。  時間もそろそろなのですが、最初に有識者会議としてどのように関わらせていただ くか。これは有識者会議からの意見として、最後に皆様の意見を聞かせていただけれ ばと思います。いかがでしょうか。 ○田城委員 二つコメントを用意していたのですが、その前にいま梶井座長に与えら れたテーマ、水田委員がおっしゃったことにもコメントしたいと思います。6名とい う限られた人数で、十分に話せと。特に私がいちばんしゃべっていましたが。こうい う会は年に1回でもいいかもしれませんが、水田先生以外は大体関東近県ということ もありますし、別に隠れてやるわけではなく、委員だけで集まってきちんとディスカ ッションすると、かなり具体的なお話ができるのではないかと。このメンバーですと、 もっと頻繁に集まることが可能かなと思いました。  二つ用意していたコメントがあって、一つは公立病院の再編があるのですが、舞鶴 がそうなのです。設立母体をまたぐ感じで、市立と赤十字とか、独立行政法人国立病 院機構と市という形の再編がありまして、これは日本全国ほかにもあると思うのです。 これは兵庫県の方も言っておられましたが、150床程度の済生会や赤十字と、150床、 120床のというのがあって、それの再編というのはいままでは誰も思いつかなかった のですが、地域の医療提供体制を考えると、効率化という意味ではそれはやるべきだ ろうと思います。それを成し遂げた所がそのノウハウを。また、それぞれ済生会にし ても日赤にしても、本部の意向もあるかもしれませんが、それはちゃんと大所高所か らと思います。  もう一つ、一部の雑誌や報道で言われている、バラマキではないかということもあ るのも事実だとは思うのですが、これだけのものを全部読むと、本当にすばらしいア イディアがあるということがよくわかりますし、そうでもないところがあることも同 時にわかります。行政力とか企画力の均てん化も図るべきだと。それは国の責任かな と思います。委員以外の方も、都道府県の方もそうですが、これを読むと、いろいろ ここから得て学んで考えることがとてもありますので、是非委員だけでなく、ここに いる皆さん読んでいただければと思います。地域の優れたアイディアが、思わず膝を たたきたくなるようなすばらしいアイディアがいっぱいありますので、それを発掘す るという意味で、この事業はすごく効果があると思います。  最後に、記事になるときに、誰々がこう言ったというのはちゃんと本人の確認を取 って活字にしてもらったほうが、後々首が危なくなったりすると困るので、できれば 確認していただければと個人的に思います。 ○正木委員 折角これだけのアイディアが出てきていますので、この中から地域医療 再生計画のモデルみたいなものを我々で作ってもいいのではないかと思うのです。果 たして本当に良いものができるかどうかわかりませんが、これだけのアイディアがそ れぞれに分散されて各県だけで進められるのはもったいないような気がします。これ から先半年か1年ぐらいかけながら、こういったことはどうでしょうかというエキス、 エッセンスを集めてモデル病院を作ってあげられたらいいのではないかと思います。  もう一つ、これは私の感想なのですが、公的な、いわゆる公立の自治体別病院だけ でやるとすると、医療はもたないと思うのです。ですから、先ほど先生方がおっしゃ ったように、医師会も含めて公的な、普通の民間病院も含めてもう1回、地域の計画 をどう考えるのかという話合いの場を作るようなお願いをしたらどうかと思うので す。そうしないと、県の関連病院や市の関連病院だけで努力しましょうという話では 医療がもたないような気がしますので、その辺をもう少し進めたらいいかと思います。  先ほどのバラマキではないかという話も、私もいろいろ先生方から聞いていますが、 私は良いきっかけだと思うのです。5年間自由に使えるお金は、いままでなかったと 思います。5年間の中でいろいろなことをやっていただくことで、いまからでももし 修正されるのであれば、もう一回修正してでも5年間の中で有効に使っていただく。 また、5年が終わったときにどうするかという問題も、どこかで議論をしていかなけ ればいけないのではないかという気がします。 ○水田委員 いちばん恐いのは、計画倒れになることなのです。バラマキと言われよ うと何と言われようと、これだけの計画を県の人たちが出した以上は、責任を持って きちんとしていただきたい。これを見ると、ものすごく力を入れてやるなと思う県と、 ただただ書いたなという県が出てきているのです。だから、そういう県にはモデル例 をいくつか示してやるというのが大事だと思います。こういう考え方もあるのですよ ということをしないとできないと思います。  また、誰がリーダーになるかは別として、強いリーダーシップを持った人が引っ張 っていかない限り、本当にバラマキだけになるおそれがあります。ですから、「5年後 にはちゃんとしたことができているようにやってもらいますよ」ということを、厚労 省が県にばっちり言ったほうがいいのではないでしょうか。厚労省もきちんとフォロ ーすることが必要です。県の行政が変わろうが政府が変わろうが、そういう問題では ないのです。医療は続きますから、そこをきちんとしていだきたいと思います。 ○藤本委員 今後のことを考えたときに、最も理想的なのは、計画ごとにその地域の 住民の皆さんを巻き込んだ形での住民公開型、参加型のフォーラムを開催すると。そ こで、例えばこの有識者のメンバーの中の誰か、1人でも2人でもコーディネーター として出向いて、計画の説明と、そのときに、こんなにすばらしい計画を作った所が あるよというような話をしてもいいと思うのです。それで、こちらの地域はどうでし ょうと、住民の皆さんはどうお考えですかということで、そこの地域の方たちで計画 を共通の情報にする作業ができればいいなと。ただこれを県の行政、自治体の行政に 任せているだけでは足らないし、もったいないかなという気がします。私が申し上げ たのは最も理想的な形で、スケジュール的にはどうなのだろうとは考えてないのです が、そう思いました。  また、ITのことが冒頭でありましたが、あくまでも地域医療再生計画で、基金で使 うお金の計画しか載せていない地域と、地域医療再生計画全体を載せた中で、基金と してはこれだけのものを使いますということで、全体像を載せた地域とがあると思う のです。ですから、こちらでどうかなと思うようなものに関しては、担当の方とのキ ャッチボールをする機会は絶対必要だなと思いました。  もう一つ、今回は都道府県の行政を通してのプランの吸い上げという形で出ました が、もしもまた別の機会があるならば、行政を通さずに本当に民間レベルで、NPOで も民間の団体でも、いろいろな方たちがいろいろなプランを出せるような場所もある と、活性化するのではないかと思いました。 ○内田委員 私は当初から申し上げていますが、これまでの医療は、診療報酬と政策 的な医療に対する補助金ということで、個別の医療機関にお金が付いて、その中で医 療を提供するという体制でした。今回の事業は、地域全体の医療をどうするかという 視点でついた初めてのお金だと思っています。そういう点では非常に評価できるけれ ど、一方でリスクも非常に大きいだろうと思っています。  そのリスク回避には何が必要かというと、一つは情報提供と共有化でしょう。質の 担保をするのも、「担当者だったらこれぐらい読みなさいよ」というぐらいのことを 言わなくてはいけないと思います。それでしっかり質の担保をするのが一つです。も う一つは、事業計画から実施、その結果まで、いろいろな段階できちんと評価をする。 評価をして次のステップにつなげるという、PDCAをしっかり機能させることだと思い ます。  これはいつ、どこで、誰がということですが、誰がという点で言えば医療提供者と か患者さんの代表とか行政は必須ですが、先ほどから私も藤本委員も言っているよう に、その地域に情報を共有していただいて、そこで評価をすることがすごく大事かな と思いました。いつということに関しては、計画策定の段階、固まった段階、動き始 める段階で1回チェックを入れる必要がどうしてもあるなと思います。それがなけれ ば、次のステップに進めないという気がします。 ○梶井座長 ありがとうございました。5名の委員の皆様のお気持ちは大体一つかな と。私も皆様と同意見です。ですから、この会議の委員すべてがいま同じ思いに至っ て、今日の議論を終えようとしているということだろうと思います。  私たちの意見は「地域医療再生計画に対する意見」ということで、全部この1冊に 取りまとめられています。これを見ますと、いろいろな質問事項もたくさん載ってい るのです。なぜかというと、イメージがつかめないというところがあります。イメー ジがつかめなくて、その計画事業内容を精査・評価というのは難しいのです。ですか ら、ここにいながらもそこの地域の状況が、手に取るようにとは言わないまでも、様 子がよくわかるような内容にしていただく必要があろうかなと思います。助言ではな く、感想もたくさんあります。でも、感想は非常に率直な気持ちが各委員から出され ていると思います。その率直な気持ちは大きなヒントになろうかと思います。  実は、今日の皆様の3時間にわたるご意見、ご討議の結果は、技術的な助言として 厚生労働省を通して各都道府県にお返しいただくことになろうかと思います。今日の 議論を踏まえた技術的な助言の最終的な部分は、座長である梶井が取りまとめさせて いただこうと思います。  最後に、実はバラマキという声は私のところに伝わってきました。ですが、そうい うネガティブな発想ではなくて、皆様がおっしゃったようにこれは大きなチャンスだ と捉えて、各県で二つの事業、大きなモデル事業に取り組んでいただくことが大事だ と思います。計画を見ると、この二つのモデル事業がうまくいくと、県全体の地域医 療、県の医療がうまくいくという意見もいくつもあるのです。ですから、そのような ことを考えると非常に大事であろうと思います。また、この二つの事業ではとても足 りないという意見もたくさんあります。そういう不公平感はどうなのかと。ただ、こ れは公平、不公平ということではなくて、あくまでも全国にいろいろな環境の違い、 あるいは特性の違いに合わせてモデルを立ち上げていくのだと思います。そこでうま くいった所、当然うまくいってほしいのですが、うまくいった所は全国に広めていた だく、また、厚生労働省、国にそれを広めていただく。そういうプロセスの中のまさ に入口であろうと思います。  私たちの立場は先ほど委員の先生方がおっしゃってくださいましたが、私たちはこ れを引き受けたからには、今後の成り行きをきちんと見守っていこうという覚悟をそ れぞれがお持ちのようですので、ある意味でニュートラルな立場として、いろいろな 地域の計画を見せていただく。ときにコーディネーターとして、対立の構図が起こら ないようにいろいろ意見を言わせていただくというのも我々の立場かなと思います。 ということで、この部分は技術的助言の中には盛り込まれないと思いますが、会議の 委員の総意として是非受け止めていただきながら、今後どのようにこの計画をフォロ ーしていくかという上でご検討いただければと思います。  時間となりました。座長でありながら個人的なことも随分述べてきてしまいました が、この計画が良い方向に進んでいっていただければと思います。最後に、新村指導 課長からお一言お願いいたします。 ○新村指導課長 本日は、長時間にわたり活発なご議論をいただきましてありがとう ございました。いま梶井座長からもお話がありましたが、「各計画に対する技術的助 言」につきましては、個別の計画については今日の資料にもありますが、今日、せっ かくいろいろ貴重なご意見をいただきましたので、その内容もできれば取りまとめて、 梶井座長とも相談して、交付決定時に合わせて各県にお伝えして、参考にしていただ きたいと思っております。  今後の各再生計画の進捗状況の確認や改善に向けてご助言いただくという役割も ありますので、もともと年1回程度の開催を考えておりましたが、もっと頻繁に開い たほうがいいのではないかというご意見もあり、モデルなり良い計画を示したほうが いいのではないかというご意見もありますので、今回技術的助言をして、その後各県 が具体的に来年度何をやるのかという詳細な実施計画を作って、提出していただくこ とになっています。その中で、今回お示しする助言をどの程度踏まえて反映するか、 その辺もフィードバックしていただくことになります。そういう意味で、担当同士の キャッチボールもありますので、それを踏まえて、その内容も各委員の皆様方にもご 覧いただいて、その上でどのような形でこの有識者会議を持つのか、年1回でいいの か、もう少し頻繁にしたほうが実りあるものになるのか、座長ともご相談して考えて いきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。 ○武田室長 それでは、委員の皆様方、本日は大変長時間の中、それにも増して、冒 頭に座長からもありましたが、年末年始の貴重なお時間も含めまして、延べ1か月以 上にわたって丁寧に見ていただきまして、いろいろご意見をいただきました。どうも ありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。 (了) 照会先:厚生労働省医政局指導課     電話:03-5253-1111(2557)