10/01/15 平成22年1月15日薬事・食品衛生審議会薬事分科会議事録 薬事・食品衛生審議会 薬事分科会 議事録 1.日時及び場所   平成22年1月15日(金) 10:00〜   大手町ファーストスクエアカンファレンス イーストタワー2階 「Room B+C」 2.出席委員(14名)五十音順 赤 堀 文 昭、  飯 島 正 文、 井 部 俊 子、 笠 貫   宏、  木 津 純 子、 黒 木 由美子、 宗 林 さおり、 早 川 堯 夫、   本 田 圭 子、  松 井   陽、 松 本 和 則、◎望 月 正 隆、 ○山 口   徹、  吉 田 茂 昭   ◎薬事分科会長  ○薬事分科会長代理 他参考人8名   欠席委員(9名)   池 田 康 夫、  大 野 泰 雄、 神 山 美智子、 竹 嶋 康 弘、     土 屋 文 人、  永 井 良 三、 西 島 正 弘、 藤 田 利 治、   溝 口 昌 子 3.行政機関出席者 足 立 信 也(厚生労働大臣政務官)   高 井 康 行(医薬食品局長) 岸 田 修 一(大臣官房審議官) 熊 本 宣 晴(総務課長) 成 田 昌 稔(審査管理課長)、関 野 秀 人(医療機器審査管理室長)、 山 本 順 二(化学物質安全対策室長) 森   和 彦(安全対策課長)、 國 枝   卓(監視指導・麻薬対策課長)、宿 里 明 弘(監視指導室長) 亀 井 美登里(血液対策課長)、福 島 靖 正(健康局結核感染症課長) 他 4.備考   この会議は、公開で開催された。 ○総務課長 定刻となりましたので、ただ今から薬事・食品衛生審議会薬事分科会を開催 いたします。本日の分科会は公開で行いますが、カメラ撮りにつきましては議事に入るま でとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解、御協力をお 願い申し上げます。また傍聴者の方々におかれましては、あらかじめお示しをしておりま す傍聴に関しての留意事項、例えば「静粛を旨とし、喧噪にわたる行為をしないこと」、 「分科会長の命を受けた事務職員の指示に従うこと」などの厳守をお願いいたします。  本日はお忙しい中、御参集を賜りまして誠にありがとうございます。当分科会委員数 23名のうち、14名の委員の御出席を賜っております。定足数に達していますことを御報 告申し上げます。また本日の審議事項、議第1及び議題2の参考人としまして、以下の先 生方をお呼びしております。国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第3 室長の板村繁之先生、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター長の井上達 先生、国立病院機構三重病院長の庵原俊昭先生、国立感染症研究所感染症情報センター長 の岡部信彦先生、自治医科大学教授の尾身茂先生、防衛医科大学内科学講座2教授の川名 明彦先生、山形大学医学部付属病院検査部准教授の森兼啓太先生、自治医科大学感染免疫 学准教授の森澤雄司先生、国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部長の山口照英先生です。 なお御都合によりまして、森兼先生は御欠席という連絡を頂戴しています。  本日の薬事分科会は公開とさせていただいております。資料につきましては、企業の知 的財産等に該当するものについてマスキングをしております。また本日配布資料、さらに は事前送付資料のうち、右上に「非公開」と記載している資料につきましては、マスキン グをしておりません。したがって、非公開資料に係る御発言につきましては、知的財産権 等の御配慮をお願いいたします。  本分科会の開会に当たりまして、足立厚生労働大臣政務官からごあいさつ申し上げま す。 ○足立政務官 おはようございます。時期外れかもしれませんが、新年明けましておめで とうございます。皆様方には健康で健やかに、家族の方と一緒に新年を迎えられたことと 思います。私の方は任務と言いますか激務と言いますか、年末も年始も風邪をひいてしま いまして、12月30日まで働いた後、31日にぎっくり腰になってしまいました。カラーを 巻いている先生もいらっしゃいますけれども、体には気を付けていただきたいと思いま す。  さて、年末に8時間を超える審議を経て部会が行われました。十分議論されたことだと 思いますけれども、本日はこの2剤に対しまして、製造販売承認の可否を決めていただく ということになるわけでございます。その中で私は二点、申し上げたいことがございます ので、お願いしたいと思います。  まずは何と言っても、この2剤の有効性と安全性というものをどうとらえるかというこ とでございます。これはある意味、裏表の関係にあるわけでして、それをどのように総合 的に考えるかということを、是非、明示していただきたい。データによりますといろいろ ありますけれども、副反応の報告は報告数だけから見ると、むしろ国産の方が多いのでは ないかという懸念もございますし、有効性と安全性をしっかり議論していただきたいと思 います。  もう一つは、なぜ特例承認をするのかという点も、これは数をどれくらいという議論で はなくて、なぜ特例承認なのかということも、もう一度考えていただきたいと思います。 私も一昨日、地元の大分県に戻りまして、これは定点観測で77という数値までいったの ですが、現場は全くパニックにはなっていない。冷静に対応されておりましたが、もう既 にピークは終わったという感覚が、今広がりつつある。そのような中で沖縄に関しまして は、先週は50を超えていましたし、今週も40を超えているという状況で、これは第2の ピークはあるかもしれない。さらにこの4月からは、国産での新型インフルエンザに関す るワクチンの製造というものは、いったん止まる可能性が高いわけで、次のピークが来た 場合に、どう対応するかということも必要ですし、そして今、特例承認する意義というも のは、私どもは接種を希望する全国民の方々に接種ができるような体制を作るということ で、そもそも決めたわけでございますから、その後、必要量というのは確かに変動してお りますけれども、今、この時点で特例承認が必要であるのか、ないのかという原点に返っ た議論も必要だと、長期的に考えてそれを議論していただきたいと、そのことを申し上げ たいと思います。  国会常会の開会が差し迫っておりまして、私もこの後、公務が重なっておりますので、 冒頭のみ参加させていただきますけれども、皆様方には十分な議論をしていただいて、結 論を導き出していただきたいと思います。どうかよろしくお願いします。 ○総務課長 それでは望月分科会長、以後の進行をよろしくお願い申し上げます。なお、 カメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御退室をいただきたいと 思います。よろしくお願い申し上げます。 ○望月分科会長 それでは、本日の薬事分科会は公開として始めます。事務局から配布資 料の確認と、審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。 ○事務局 資料の確認をお願いします。本日、お手元に、議事次第、座席表、当分科会委 員の名簿、資料No.3「競合品目・競合企業リスト」を配布しています。また審議事項につ きまして、議事次第を併せて御覧いただきたいと思いますけれども、議題1については資 料1-1〜資料1-6まで、議題2については資料2-1〜資料2-8まで、その他、当日の配布 資料として当日配付資料1〜5まで、さらに参考資料1〜5を配布しています。  続きまして、審議参加に関する報告をいたします。申請資料に関与した委員ですが、該 当委員はいらっしゃいません。また本日の審議事項に関する競合品目・競合企業について、 資料No.3として配布していますが、その選定理由等を御説明させていただきます。いずれ も医薬品第二部会で報告した内容となっています。  1ページのアレパンリックス(H1N1)筋注ですが、本品目の申請会社はグラクソ・ス ミスクライン株式会社です。また2ページはノバルティスファーマ株式会社から申請され ている、乳濁細胞培養A型インフルエンザHAワクチンH1N1「ノバルティス」筋注用 となっています。  1ページ、2ページ合わせて御覧いただきたいと思いますが、競合品目1については、 これらの予定される効能・効果は、「新型インフルエンザ(H1N1)の予防」です。本邦 への輸入が予定され、同様の効能・効果を有するという観点から、相互に競合品目として 選定をしております。また競合品目2及び3につきましても、国内の企業でA型インフル エンザHAワクチン(H1N1)を製造しているのは、化学及血清療法研究所、デンカ生検 株式会社、北里研究所、阪大微生物病研究会の4社です。いずれも同様に売上高の観点か ら、上位の化血研及び阪大微研の品目を競合品目として選定しています。競合品目に係る 説明は以上です。 ○望月分科会長 ただ今の事務局からの説明に、特段の御意見等はございますか。よろし いですか。それでは、本分科会における審議の際の申し合わせ事項については、競合品目 ・競合企業の妥当性も含め御了解を得たものといたします。続いて委員からの申し出状況 について、報告をお願いします。 ○事務局 それでは、各委員の申し出状況について報告させていただきます。議題1「ア レパンリックス」については、退出委員、議決に参加しない委員はいらっしゃいません。 議題2「乳濁細胞培養A型インフルエンザHAワクチンH1N1」については、退出委員、 議決に参加しない委員はいらっしゃいません。また参考人の先生におかれましても該当す る方はいらっしゃいません。以上です。 ○望月分科会長 ありがとうございます。本日は、新型インフルエンザワクチンの特例承 認についての審議事項が2議題となっています。それでは審議に入りたいと思います。新 型インフルエンザワクチンの特例承認について、まず、国内外新型インフルエンザの状況 等、輸入ワクチンの必要性について、説明をお願いします。 ○結核感染症課長 当日配付資料1、2、3で御説明をしたいと存じます。当日配付資料 1のインフルエンザの発生状況ですが、全体状況が折れ線グラフになっています。53週 までの累積受診患者数は暫定値で1,816万人と推計されています。入院した方の累積で申 し上げると、時点が少しずれますが、1月12日までで1万5,600人を超える方が入院し ている状況です。死亡者は昨日(14日)までで158名がお亡くなりになっています。ここ にありますように8月3日〜8月9日(32週)は0.99です。季節性インフルエンザでは通 例は1を超えると流行期に入ると言っていましたが、今回はこの後、だらだらと上がり、 11月の48週をピークに減少になっているわけです。通例であれば大体1を超えると8週 ぐらいでピークに達して、また落ちていくというのが見られていますが、今回は非常に緩 やかに上がり、緩やかに落ちています。これは私どもが、もともと新型インフルエンザ対 策として急激に患者が発生していくことを防ぎ、医療に対する負荷を分散していくことを ねらって、国民の方の予防活動を中心に、できるだけ山を低く緩やかにしていく。急峻な 山ではなく緩やかな山にすることを目標としているわけで、そういう面では一定の効果が あったと思っています。  ただ、もう一つ注意が必要なのは、53週について言うと年末年始であり、実際の診療 日が少ない中での数ですので、これがこの後、どうなっていくのかについては、もう少し データを見てみないと分かりません。またここには出していませんが、年齢別に数を見て みると、若年者では数が減ってきていますけれども、中年から高年齢層にかけての数の減 りは余り見られていません。実際の重症化であるとか死亡のリスクが高いグループについ ての状況は、まだそう数が減ってきている状況にはないということです。  私どものインフルエンザ対策については、先ほど言いましたように予防によって山を緩 やかにすることを考えます。そして次に医療を適切に提供していって、かかった方の重症 化の防止あるいは死亡の減少を目指すことをしたわけです。そして、さらにその上でワク チンを確保し、接種を進めていくということで柱立てをしました。もちろん、そのための いろいろな広報も、我々の事業としてやっているわけです。  次のページですが、先ほど政務官からごあいさつがありましたように、これは都道府県 ごとの1医療機関当たり1週間に何人の患者が来たかの数ですが、これで見ると全国的に は下がっていますけれども、沖縄のように逆に49週から上がり始めて、50を超える状況 までなっている所もあり、各自治体の状況ではまだ予断を許さない状況にあるということ です。  当日配付資料2ですが、総理を本部長とする政府の新型インフルエンザ対策本部におい て、ワクチン接種の基本方針を定めています。この基本方針を受けて具体的な中身を決め ているのが、次の当日配付資料3の厚生労働省の新型インフルエンザワクチン接種につい てです。  基本方針ですが、今回の新型インフルエンザ接種は、死亡者や重症者の発生をできる限 り減らすこと、及びそのために必要な医療を確保することを目的として行います。実施に ついては、本来であれば予防接種法を使うべきという議論がありますけれども、病気の性 格等からは、現行の臨時接種というやり方では難しいということがあり、法改正も直ちに はできないということで、今回は国が実施主体となり、国の事業として直接に医療機関と 委託契約を結び、実施しているものです。  2ページに3.優先的に接種する対象者とあります。実際にワクチンの量というのは当 面というか、実際に事業を始めた時点では、国産のものが限られて順次供給されてくると いうことであり、さらに数も限られていたこともあって、このように優先順位を付けて優 先接種対象者、(2)にあるようなそれ以外の優先接種対象者、そしてそれ以外の一般の健 康な成人の方と、このようにグループ分けをして、さらにその中で順番付けをして順次接 種を進めてまいりました。  4.ワクチンの確保ですが、この中にありますように、今後の感染の拡大、あるいはウ イルスの変異等の可能性を踏まえると、上記の優先接種以外の方、つまり(3)にあるよう な方からの重症例の発生もあり得るということで、国内産に加え、海外企業からの緊急輸 入ということでワクチンを確保する方針を出しました。(2)にありますように国内産ワク チンで5,400万回分(成人量換算)程度を確保し、そして海外企業からの輸入をしているわ けです。  接種の実施について、7.ワクチンの安全性及び有効性の確保と健康被害の救済ですが、 ここにありますように、今回の新型インフルエンザについては初めて製造されたものです ので、安全性や有効性について十分検証されていないことから、今後もデータの収集、分 析を行い、情報提供も幅広く行うことにしています。さらに重篤な副反応に限らず、国が 直接に受託医療機関からFAXで情報を提出していただき、それについて専門家による評 価を行っていただいているところです。  4ページでワクチン接種に伴う健康被害については、今回は国の事業として行うため予 防接種法に基づく救済が受けられないことになりますので、先般の臨時国会において特別 措置法が可決され、今施行されているところです。被害を受けた方については、これに基 づく救済が受けられることになっています。  当日配付資料3は、厚労省の具体的な接種の方針です。先ほど申し上げましたように、 今回のワクチン接種の目的は1ページの1.の下の方に下線を引いていますが、死亡者や 重症者の発生をできる限り減らし、そのために必要な医療を確保することにしているわけ です。  2ページに優先接種対象者の考え方を示していますが、その際に死亡者や重症者の発生 を減らすということで、まず医療従事者を先に打ち、それからリスクが高い方から順次打 っていくことにしたわけです。それぞれの考え方については2ページ、3ページ、4ペー ジに順次お示しをしています。  5ページ及び6ページにワクチンの確保についてお示ししていますが、今回御議論いた だく輸入ワクチンの確保を6ページに示しています。ここについては先ほど御説明したと おりですが、輸入ワクチンについては、優先接種対象者以外の方への接種に用いることを 想定しています。ただし、輸入ワクチンを実際に使用するためには、事前に有効性及び安 全性等について手順を踏んだ確認を行うということです。  4.留意事項ですが、7ページのイ.輸入ワクチンの承認時の安全性、有効性の確保につ いては、[1]〜[5]に示すものが国内産ワクチンと違いますので、特に真ん中にある「安全性 に関しては、国内産ワクチンよりも未知の要素が大きく、その使用等に当たっては、より 慎重を期すべきとの懸念も専門家から示されている」とあり、7ページの下に書いていま すが、承認申請の時は十分に御議論いただくことにしているわけです。  実際の予防接種のスケジュールについては、一番後ろに横長のものでお示ししていま す。12月16日現在でのスケジュールですが、このように優先接種対象者の中でいくつか のグループに分けて、上から順次打っていっています。現在、既に1月に入っていますの で小中学生、高校生の接種が始まり、自治体の状況によっては、1月後半から高齢者の接 種が順次始まることになっています。一番下に優先接種対象者以外の方として、これは 20〜64歳までの基礎疾患を持たない一般の方で7,250万人いますが、この方たちに対す る接種を次に開始するかどうかを判断する状況になっています。新型インフルエンザワク チンの状況については以上です。  これまで申し上げましたように、順次ワクチン接種を進めてきましたが、これから健康 な成人の方に対する接種を進めていく中にあって、国内産ワクチンではワクチンの供給量 が不足する状況です。さらに流行状況から見て、今確かにピークは下がりつつありますが、 これから第2波が来ることを想定しなければいけないこと、さらにリスクの高い高年齢者 が患者数についてはなお十分な下がりを見せていない等を御勘案いただき、御検討いただ ければと思います。私からは以上です。 ○望月分科会長 ありがとうございます。続いて特例承認について説明をお願いします。 ○事務局 それでは特例承認について御説明いたします。お手元の当日配付資料4を御覧 ください。通常、薬事法上の承認というのは薬事法第14条に規定されていますが、我が 国で承認のない医薬品で海外で承認のある医薬品について、緊急に輸入しなければならな い事態になった場合に、通常ですと審査の手続など、一定の期間を経て輸入することにな るのですが、緊急性が優る事態の場合には薬事法第14条の3を適用することによって、 極端に言えば、実際の外国の承認のみをもって国内での審査などの手続をすべて省略する 形をとってでも、製造販売の承認を与えることができる制度です。  第14条の3の条文について少し説明させていただきます。14条の「承認の申請者が製 造販売しようとする物が、次の各号の」ということで、一、二と書いてありますが、この 二つの条件に該当する医薬品である場合には、厚生労働大臣は同条第2項、第5項、第6 項、第8項の規定にかかわらずということで、この第2項以下というのは、一番下に「(参 考)」として書いてありますけれども、代表的なものは業の許可を取得しなくてもとか、 有効性・安全性に関する審査を行わなくてもという形、あるいはGMPと申しまして、医 薬品を製造する製造所の品質管理、製造管理の妥当性の確認を行わなくても、承認を与え ることができるという仕組みです。  特例承認を行うための条件としては、どういったものについて特例承認を検討できるか ですが、一つ目は、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある疾病のまん延 その他の健康被害の拡大を防止するためということで、これをするために緊急に使用され ることが必要な医薬品であり、かつ、その医薬品の使用以外に適当な方法がないこと。こ ういう条件が一つあります。二つ目は、その用途に関して外国、この外国とは我が国と同 等以上の承認制度を有している国において、販売、授与ができる医薬品であることという 条件が、二つ目の条件としてあります。  どういった医薬品を特例承認の対象とできるか。また、その医薬品がどこの外国で承認 され販売等が認められていれば特例承認の対象とできるかは、国が定める政令で規定して います。この政令については2ページに載せています。これは平成21年11月11日付け で出ていますが、ここは法律上の条文の書き方ということで、こういう書き方になってい ますが、基本的には新型インフルエンザH1N1のワクチンを、ここで特例承認の対象と なる医薬品として国が定めるとして挙げているわけです。  二つ目のどこの国でというのは、「政令で定める国は英国、カナダ、ドイツ及びフラン スとする」としています。このいずれかの国で販売等が認められていれば、特例承認の対 象となります。今回、御検討いただくGSK社のワクチンについては、カナダにおいて販 売等が認められている状況ですし、二つ目のノバルティスについては、ドイツにおいて販 売等が認められている状況があり、いずれも、この特例承認をすることができる状況を満 たしているところかと思います。  特例承認については、先ほど申し上げた条件に該当するかどうかで適用を検討すること になりますが、臨床試験は、基本的には海外での販売等が認められていることをもってと いうことですので、海外での臨床試験データについては申請資料として提出してもらうこ とになりますが、必ずしも国内での臨床試験データを求めないことになります。ただし、 今回のワクチンについては専門家から、慎重に安全性等の確認を行うべきという指摘が従 来からされていましたので、そこについては今回の特例承認に当たっては、国内での臨床 試験データを可能な限り確認するとしています。細かく言いますと、小児の臨床試験にお いて第1回目の接種まではすべてデータが提出されていますが、2回目の部分は一部提出 されていない部分もあります。可能な限りそういったデータまで確認した上で、最終的な 特例承認の承認の可否を判断いただくことになっているわけです。  通常、こういった臨床試験データが一通りまとまってから申請が行われ、PMDAによ る審査の手続を経ると、やはりどうしても今シーズンと言いますか、この冬にはとても間 に合わないわけです。そこの部分については特例承認という形をとって、今回、分科会で の御審議をいただく形をとっているわけです。  3ページには、今申し上げたことについて一通りの流れを書いてあります。繰り返しに なりますが、前提条件としては、日本と同等の製造販売承認制度を有する国において承認 があるという前提に立ちます。承認申請がされると、臨床試験成績の提出は必要です。少 なくとも海外での臨床試験データの提出は必要ですが、今回は国内も確認しているという 状況です。実際は、品質・有効性・安全性に関する審査及び調査にかかわらず承認可能と いうことで、今回、お手元にいろいろ資料を準備していますが、可能な限り安全性、有効 性についてはしっかり確認するということで手続を進めています。審議会への諮問は必須 ということで、それが12月26日の部会及び今回の分科会の場であるということです。今 回、そのような特例承認の規定を適用した上での承認の可否の妥当性について、御審議い ただくことになりますので、特例承認の制度について御説明申し上げました。以上です。 ○望月分科会長 ありがとうございました。委員の先生方から、ただ今の御説明に対して 御質問、御意見等ございましたらお願いします。 ○宗林委員 数字の確認等をお願いしたいのですが、国内産ワクチンの量、海外からの輸 入ワクチンの量の確認ですけれども、厚生労働省の方の数値と政府が出している数値で差 異があります。これは2回接種を1回接種に変えたことで、こういう何回分という数字が 変わったという理解でよろしいのでしょうか。それに関してもう一点あります。国内産は 5,400万回分、海外企業から9,900万回分の輸入の確保をするという数値が最終的な数値 でしょうか。 ○望月分科会長 いかがでしょうか、事務局からお答えください。 ○血液対策課長 今の宗林委員からの御質問に、お答えさせていただきたいと思います。 ワクチンの量の件ですが、最後に御質問された件については、最初は2回接種前提で人数 を弾き出しました。最終的に成人1人1回接種前提でワクチン量を弾き出しましたので、 輸入ワクチンの輸入量が9,900万回分という数字は、数字としては変わっていません。最 初の御指摘のところは、どこの数字のことをおっしゃっているか教えていただけますか。 ○宗林委員 国内産ワクチン2700万という数字が、基本方針のところでしたか。 ○結核感染症課長 当日配付資料3で、確かに数については5ページに「平成22年3月 までに約2,700万人分のワクチンが利用可能となると考えられる」と書いてあります。こ の時点では2回接種を前提とした数だったものですから、これが1回接種にしますと、健 康成人で言えば5,400万人分になるということです。 ○宗林委員 同じように、輸入ワクチンの方も約5,000万人というのが、9,900万回とい うことで、よろしいわけですか。 ○結核感染症課長 正確に言うと4,950万だったもので、丸めて5,000万と書いていまし たが、それが要するに掛ける2で9,900万回と表記しているものです。 ○宗林委員 あと横長の特例承認の前の図、目安のところの数値で確認したいのですが、 対象者数は書いてありますけれども、そのうち実際に罹患した方の数、またこれまで対象 者が全部接種してきたわけではなく、実際に接種率が低いのではないかということも聞い ていたので、現時点で国内産ワクチンの不足状況というのは、実際どのぐらいの不足状況 なのか。実際に対象者はあっても、接種されていないということもあるのではないかと思 ったので、それが罹患者も引いていくと、どのぐらいの不足なのか教えていただければと 思います。 ○結核感染症課長 接種者数については、医療機関から提出をお願いしているわけですけ れども、まだ10月分の全体像がやっと分かったぐらいで、11月分についてはまだ半分ぐ らいの県からしか提出されていません。ですから、現時点で接種率、対象者ごとの人数、 接種者数については、明確な数字が出せない状況です。  在庫については都道府県を通じて、1月12日現在、医療機関、卸の在庫がどのくらい あるかを調査しているところです。1月下旬に中間報告、2月中旬に最終報告が出される 状況です。ですから数自体は現時点で把握ができていないところです。 ○宗林委員 そうしますと、5,400万回分の国内産ワクチンがあり、罹患者もいて、また 打たない人もいる状況の中で、これは有効期限もあるわけですから、その間でどのぐらい の不足状況があるかは、はっきりは分からないという感じでしょうか。 ○結核感染症課長 そうです。ただ、仮にこれまでの推計患者数を引いて残りを出したも のを、お手元の表で見ると、優先接種対象者以外の方を除くと全体で5,400万人の方がい るのですが、罹患した人は打たないということで考えると、この時点で国内産ワクチンの 余剰は年度末までには数百万人分あると見られるわけです。ただ、一方で、優先接種対象 者以外の方が7,250万人いらっしゃるということで、この方たちの接種率がどれくらいに なるかわかりませんが、国内産ワクチンだけでカバーするのは現時点では難しいのではな いかと考えていますし、同時に国内産ワクチンも1月末までに出るものは、まだ3,000万 強です。これから3月いっぱいまででやっと5,400万までいくということで、今の時点で 順次生産されてくることからすると、ある時期に優先接種対象者以外の方に打とうと考え た場合に、現時点では不足するのではないかと私も考えているところです。 ○宗林委員 今のお話ですと、これから先、対象者の中の半分以上がもし打ちたいとなる と、不足が発生するという概算でしょうか。厳密ではないですが、何となく7,000万人ぐ らいいて、これからまだ3,000ぐらいは余剰がありという数字があったと思いますので、 半分以上の方がもし打ちたいということであると、不足してくるということでしょうか。 ○結核感染症課長 3,000万余剰があるということではなく、実は65歳以上の基礎疾患 を持たない健康な高齢者の方も、もともと優先接種のグループに入っていました。この方 たちの接種が2,100万人いて、この方たちに対する接種がこれから始まります。1月末に 供給されているのが3,300万弱ですが、これからさらに3月までにその2,000万が供給さ れていくわけで、その方たちが全員打ったとして若干は余ります。国内産を使ったとして 数百万人分は、多分それ以外の方が使えるようになるだろうと考えているわけで、7,250 万人のうち、どれくらいが打つかは予測がつかないところです。打ちたい方が打てるよう に供給していく必要があるとすれば、今の時点では国内産ワクチンは年度末までに数百万 人分が、余ってくると考えられるわけですが、その数だけでカバーするには足りないとい うことです。 ○宗林委員 分かりました。先ほどの説明の中で、国内産の生産は4月以降しないという お話がありました。それはそうなのでしょうか。 ○望月分科会長 この点について、事務局からお願いします。 ○血液対策課長 宗林委員の御質問は、今回の新型インフルエンザワクチンの生産の件で すか。これにつきましては年度内で生産は終わりです。と申しますのは、季節性インフル エンザワクチンの生産もしなければいけない時期に来ていて、2月からその準備に入って きています。その関係もありますので、今回の新型インフルエンザワクチンの生産につい ては、2月で生産自体は終了という状況です。 ○宗林委員 そうしますと、来年度以降も含めて新型インフルエンザワクチンが同じよう に発生した場合は、今回の承認をする対象になっている輸入のワクチンで、すべて対応し ていくということなのでしょうか。 ○結核感染症課長 来年度のワクチンをどういう組合せで行うかについては、これからW HOの中で決められていくわけです。通例は季節性のものは3種類のものを混ぜています けれども、このうちの一つを新型に置き換えるのかどうかという議論があります。ただ、 国内産のワクチンでの供給量は、通例で季節性のときで言うと2,700万人分が供給量で す。それ以降については他のワクチンを作ったりする必要があるわけですが、これが実際、 来年度どういう組合せにするかによって、国内での全体の供給量がどれくらいかは議論さ れますが、国内産だけで国民全部の分をカバーするのは、いずれにしても難しいと思って います。 ○望月分科会長 よろしいですか。ほかの委員から御意見等ございますか。 ○吉田委員 沖縄が年末から増えてきたということですが、その年齢構成とか、今までと 少し違う様子があるということはなくて、以前と同じように小児が中心の形でまん延して いるのかどうかを知りたいというのが第一点です。第二点は、特例承認の有効期限みたい なものに関して言及されなかったのですが、特例承認というのは今回限りと理解していい のか、ずっと有効なのかに関しても御説明いただければと思います。 ○望月分科会長 事務局から、二点についてお願いします。 ○結核感染症課長 一点目については私から申し上げます。サーベイランスについては推 計値で、各都道府県ごとの年齢階級ごとの数については、もともと全国値も推計値で不安 定なものですので示していません。各県ごとの年齢階級別は出していませんが、特にある 年齢層が増えているとか減っているとは聞いていません。 ○望月分科会長 第二点目については、いかがですか。 ○審査管理課長 第二点目ですが、当日配付資料4の2ページの政令を御覧ください。1 の後ろの方に「厚生労働大臣が平成二十一年四月二十八日にその発生に係る情報を公表し たものに限る」ということでございまして、今回の新型インフルエンザの流行に限るとい うことになっています。 ○望月分科会長 ありがとうございます。よろしいですか。ほかには何かございますか。 ○岡部参考人 参考人ですが、よろしいですか。サーベイランスのデータなので御参考ま でにですけれども、今厚労省側から発表された沖縄の年齢層、その他は、公式的にはその とおりだと思いますが、その他の情報を組み合わせて私たちが把握しているのでは、小児 が急激に増えているということではなく、いわゆる大人年齢層がそのまま維持されて発生 している状況ですから、割合から言うと大人の年齢の方が増えていることになります。急 激に数が増えているというよりは、12月中旬のような状態が、今出てきているけれども、 年齢層は逆転しているということになります。  ただし、もう一点、これには先ほど事務局からも御説明がありましたが、年末年始の診 療状況はちょっと違うので、それで全部正しいかどうかはなかなか言えません。つまりあ る定点の医療機関に集中して来る可能性もあるので、幾つかを見ながら、もちろん慎重に よく状況を見ていかなければいけないことにはなります。 ○望月分科会長 ありがとうございました。ほかには、黒木委員、お願いします。 ○黒木委員 先ほどの宗林委員の件で確認したいのですが、来年度接種したい方について は、国内産はほとんどなくなってくるので、もうそれは選べなくて、今回承認されるであ ろう海外のものを使っていく。選択の余地が狭まって、ほとんど国内のものは打てないだ ろうという理解でよろしいでしょうか。 ○結核感染症課長 そうではなくて、来年度についてはどういう組合せにするかがありま す。新型のものと季節性のものを混ぜてするのか、それともそれぞれ分けてするのかとい う問題がありますが、国内産ワクチンも一定量は当然作ることになると考えています。た だ、それだけでは、多分国民の皆さんには打てないということもありますし、対象者によ っては国内産をできるだけ使うべきという方もいると思いますので、国内産についても供 給することは考えているわけですが、国内産だけで全部できるということではないという ことです。 ○望月分科会長 よろしいですか。 ○宗林委員 来年度の国内産の生産割合、今までのオーディナリーのものの生産割合を決 めて、来年度の新型インフルエンザワクチンの国内産のものが使えるようになる時期は、 いつごろなのでしょうか。 ○望月分科会長 お答えください。尾身参考人、お願いします。 ○尾身参考人 参考人の尾身です。今の議論をより発展的にするために、万が一、誤解が あるといけませんので情報を提供します。余ったから使えるという話は短期的にはありま すが、普通、インフルエンザワクチンというものは毎年、抗原性が少しずつ変わるのです。 ですから今年余ったという理由で、次の年に自動的に使えるということは今までほとんど ないのです。その年ごとにWHOが中心になって、各地域、各国からのサンプルを採って、 その新しい年にふさわしいワクチンを作るということですから、ここだけは参考に申して おきます。 ○望月分科会長 ありがとうございます。事務局から追加をお願いします。 ○血液対策課長 先ほど宗林委員からあった、いつから供給ができるのかという御質問で すが、もし仮に今シーズンと同じような状況であればという前提であれば10月です。 ○望月分科会長 よろしいですか。黒木委員の御質問は、よろしいですか。 ○黒木委員 私も同じことを聞きたかったのです。結局、4月から秋口までの対応につい て、国内のものが選べない時期があるのではないかということを危惧しています。質問と してはそれで結構です。 ○望月分科会長 ほかには、どなたか質問、御意見等ございますか。よろしいですか。そ れではまたありましたら後ほど出していただいて結構です。議題1に入りたいと思いま す。医薬品アレパンリックス(H1N1)筋注の特例承認の可否、生物由来製品及び特定生 物由来製品の指定の要否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要否についてで す。本品目は特例承認の申請であり、医薬品第二部会での審議結果を踏まえ、また一般の 皆さんからの意見を参考に、この薬事分科会にて特例承認の可否等の審議を行うこととな っています。部会での審議結果等を御報告いただいた後、当分科会で審議をいたしたいと 思います。それでは医薬品第二部会長の吉田委員から、御説明いただきたいと思います。 よろしくお願いします。 ○吉田委員 資料1、アレパンリックス(H1N1)筋注の特例承認に係る報告書の内容に ついて、概要を説明申し上げます。本剤は発育鶏卵を用いて2009年A型カリフォルニア 7(H1N1)ウイルス株より製造された抗原に、免疫補助剤としてAS03アジュバント が添加されたスプリット化ウイルスを含むインフルエンザワクチンです。使用時には別々 のバイアルに充填された抗原製剤、及びAS03アジュバントを混合し、用時に調整する ものです。  海外においてはカナダで承認を取得し、2,300万ドーズ以上が出荷されています。2009 年12月26日に開催された医薬品第二部会において審議した際には、本剤の安全性及び有 効性、抗原製剤バイアル内の凝集物、アナフィラキシー、異常毒性否定試験、情報提供及 び接種対象者等について議論されましたが、新型インフルエンザH1N1の予防を効能と し、部会で議論された個別の論点に対する意見について、適切に対応がなされ承認条件が 付されることを前提として、健康危機管理上の観点から、特例承認して差し支えないとの 判断に至りました。  また特例承認の可否につきましては、社会的関心が極めて高いことから主要資料を公表 とし、一般からの意見を収集し、これを添えて分科会における審議の参考とすることとさ れました。一般からの意見は当日配付資料5として配付しています。以上、本剤の概要を 説明しましたが、詳細につきましては事務局から更なる説明をお願いします。 ○望月分科会長 ありがとうございます。それでは続いて事務局から補足の説明をお願い します。 ○事務局 それでは御説明いたします。資料1-1アレパンリックス(H1N1)筋注の「特 例承認に係る報告書」というものが添付されていると思います。こちらについて御説明し たいと思いますが、これから説明で用いるデータ等に関しては、資料1-1の抜粋を参考資 料4としてお配りしていますので、御覧いただきたいと思います。  参考資料4の1ページの上から3分の1ぐらいにQ-Pan、D-Panと書いてある所を御覧 いただきたいと思います。今回、承認申請のあったGSK社のH1N1ワクチンについて は、カナダのケベック工場において製造されるということで、これからQ-Panと呼びます。 もう一つ、GSK社製のH1N1ワクチンには、ドイツのドレスデン工場で作られるもの もありまして、こちらの方は通称D-Panと呼びます。我が国が輸入の承認の検討をしてい るのはQ-Panですので、まずそこを御確認いただきたいと思います。  Q-Panについてです。カナダのケベック工場で作られるQ-Panについては、D-Panとそ の製造方法及び組成というものが一部異なるものであるということで、その説明が1ペー ジの真ん中から下の部分の表1に書かれているものです。今回のQ-Panの申請について は、いわばD-Panの臨床試験成績をQ-Panに外挿する資料構成でまず申請されたところで すが、申請後にQ-Panの臨床試験成績が次々と得られたというところがありまして、それ が随時追加提出されている状況です。  2ページの免疫原性について、まず有効性の指標とされた免疫原性ですが、表2及び表 3を御覧いただきたいと思います。国内臨床試験では、成人はQ-PanのH1N1の1回目 及び2回目接種後で、表3は小児を対象とした臨床試験とありますが、6か月〜17歳で は1回目接種後までの成績が得られている状況です。ここに書いてありませんが、6か月 〜9歳は0.25mLの投与、10歳〜17歳は0.5mLの投与ということです。この結果を見ます と、いずれの試験においても1回目接種後にヨーロッパ医薬品庁の医薬品委員会(CHM P)が示したパンデミックインフルエンザワクチンの基準としまして、表の右からになり ますが抗体の保有率は70%、抗体の陽転率は40%、幾何平均抗体価増加倍率は2.5より 大きいという基準がありますが、いずれも1回目接種後ということで、その基準を満たし ているという結果が得られています。また1回目接種で、表4で国産インフルエンザワク チン(H1N1)の結果が参考までに付いていますが、これと同等もしくはそれ以上の免疫 原性が得られたという結果が出ています。  なお、高齢者については国内のQ-Panのデータはないわけですが、D-Pan(H1N1)の 海外臨床試験の結果ではありますが、1回目接種でCHMP、すなわち先ほど申し上げた 抗体保有率は、高齢者の場合は60%、抗体陽転率は30%、幾何平均抗体価増加倍率は2.0 より大きいというヨーロッパの基準を満たしているということで、以上のことから6か月 〜9歳はQ-Panを0.25mL、10歳以上は0.5mLを1回接種によって免疫原性が期待できる と考えられるというデータが得られています。  安全性については、3ページ以降にデータがまとめられています。AS03アジュバン トと申しまして、Q-Panにはアジュバントが添加されるわけですが、この影響については 3ページの表5と表6で御覧いただければと思います。AS03というアジュバントを添 加しない場合の抗原15μgの接種というのが、表5と表6の一番右の欄のデータとして出 ています。そういったものに比べて、アジュバントを添加したQ-Panについては、局所、 全身ともに、有害事象の割合が増加しているということがこのデータから分かるかと思い ます。国産ワクチンとQ-Panの違いは、3ページの一番下の表7にもありますが、お手元 にお配りした横表の参考資料2の一覧で並べてある図もあります。ここで見ていただくと 分かりますが、海外のものと国内のものとでは有害事象の収集方法などが異なるために、 厳密な比較は難しいですが、国産ワクチンと比較しますと、Q-Panでは局所反応の注射部 位疼痛と言われるものが非常に高く見られることとか、頭痛などの割合が高く出るといっ たようなところもデータとしてはあります。ただし、輸入ワクチンについては筋肉注射、 国産ワクチンの場合は皮下注という違いはありますが、例えば副反応という比較で言え ば、国産ワクチンの場合、発赤については海外に比べると国産の方が逆に高いデータもあ るというところも、安全性のデータの比較からは言えるかと思います。なお、輸入を検討 しているワクチンについて、国内臨床試験において重篤な有害事象というものは、現時点 では報告されていないところがあります。  1回目接種時と2回目接種時の安全性については、4ページを御覧ください。1回目接 種後と2回目接種後で、副反応の発生の状況がどう違うかというところですが、4ページ の下にあります表8と表9を御覧ください。GSK社のワクチンの場合、2回接種後は1 回接種後より、表9に全身の特定有害事象というところがありますが、特に全身の有害事 象発現というものが増加傾向にある特徴があるかと思います。D-Panを用いて小児を対象 とした海外臨床試験でも、2回目接種後に有害事象が増加したデータもあるということで す。  こういった免疫原性とか安全性のデータなども踏まえまして、用法・用量についてです。 先ほど簡単に触れましたが、1回接種により免疫原性はヨーロッパの基準を満たすこと、 さらには、2回目接種後には1回目接種後よりも有害事象の発現が多くなることも踏まえ ますと、6か月〜9歳の小児には0.25mLを1回、10歳以上には0.5mLを1回筋肉内に注 射することと設定するとされています。  次に、海外における製造販売後の安全性情報ということで、アナフィラキシーの問題が カナダで発生しました。それについて、この参考資料で簡単に触れますと、カナダにおけ る製販後の安全性情報について、5ページの表10にお示ししましたとおり、特定のロッ トでアナフィラキシーの発現が多くなっているということで、その原因についてカナダ政 府によって調査が進められていますが、いまだ明らかになっていないという状況がありま す。  資料1-3に「カナダ調査結果について」という資料があります。背景としては、カナダ で特定のロットにおいて、アナフィラキシーの発現が高い可能性があるということで、特 定のロットについては、使用を差し控える措置が採られたという状況がありました。そこ で厚生労働省としまして、現地に職員を派遣して、実際のカナダ政府による調査結果など について確認をする対応をしました。それについて、調査結果の概要をまとめたものが資 料1-3です。平成21年11月30日〜12月3日にかけて行われたものです。調査項目とし ましては、カナダで使用が差し控えられたH1N1ワクチンについて、カナダ政府やGS K社による原因究明の状況を調査すること。さらには、カナダの予防接種制度とH1N1 ワクチンの接種状況などについても調査していくということで、調査員が派遣されたとい うことです。  詳細については、1枚めくると調査結果がありますので、触れさせていただきます。カ ナダで使用が差し控えられたH1N1ワクチン、ロット7Aについては11月2日の週に かけて医療機関に配布されました。アナフィラキシーは、血圧低下や呼吸困難などを呈す るアレルギー反応ですが、アナフィラキシーが通常予想されるよりも高い割合で報告され たことを受けまして、11月18日にカナダ厚生省からGSK社に対して、予防的措置とし てロット7Aの使用を差し控えるように指導しました。同日、GSK社はロット7Aを今 回のワクチン接種プログラムにおいて使用を差し控えるよう、流通及び接種をしている現 場へ連絡したという措置が行われました。11月18日の時点でロット7Aで6例のアナフ ィラキシーが報告され、流通量は17万2,000ドーズだということです。カナダ政府の予 防接種に対する対応としましては、ロット7A以外のロットでは、アナフィラキシーの報 告率は通常のワクチンに見られる報告率の範囲内であることから、他のロットによる接種 は継続され、その後もずっとそうですが、ワクチン接種を推奨している状況にあります。 GSK社製のH1N1ワクチン全体としては、11月20日現在と書いてありますが、先ほ ど吉田部会長からもありましたとおり2,300万ドーズを超えるぐらいまで出荷されてい る状況ですから、11月20日現在では1,200万回分だということです。  その時点までのカナダ政府の見解としては、ロット7Aのアナフィラキシーについては アナフィラキシーの原因と関連付けられる問題は見付かっておらず、品質上の逸脱も観察 されていない。また、当該ロットに使用された抗原、アジュバントは別のロットにも使わ れているが、アナフィラキシーやその他の有害事象の高い発現は見られていない。アナフ ィラキシーが起こった6例は、すべて回復しているということです。ロット7Aの使用停 止については、ロット7Aの使用停止は予防的措置である。ワクチンの使用停止の措置は 異例の対応ではなく、過去数年においても他のワクチンで使用を停止したことがある。H 1N1ワクチンについては、H1N1ワクチンが安全で高い効果があることが分かってい るということです。調査チームとしてはロット7Aのアナフィラキシーに係るカナダ側の 説明について、解析データ等に基づいて確認をしたということです。医療機関の調査もさ れましたが、これは省略します。カナダ調査結果については以上です。  次に、参考資料4に戻ることになりますが、凝集について説明します。品質に関連する 問題ですが、参考資料4の6ページに表11があります。Q-Panについては、アジュバン トを混合前の抗原製剤のすべてのロットのすべてのバイアルに凝集が観察されるという ことです。なお、抗原製剤については承認書の性状欄では、「本品は乳白光を示す黄白色 から灰色の懸濁液であり、まれにわずかに沈殿を生ずる」という規定がされています。現 時点で、凝集と有効性又は安全性との関連性は、明確に示されてはいない状況です。特例 承認に係る報告書作成時点では、アナフィラキシーの発現が多かった抗原製剤ロットで、 50μm以上の凝集粒子数が他のロットより多かったというような予備的検討が提出されて いましたが、これも部会の審議の時点でこういった状況でしたが、その後ロットを追加し て解析した結果、GSK社から1月6日付けで、50μm以上の凝集粒子数とアナフィラキ シーの発現については、関係はなかったという回答がされている状況です。部会におきま しては、凝集物を管理するための規格設定をすることの要望が出されまして、国内で使用 するロットの凝集の程度と製造販売後の安全性情報の関連性に関する検討など、引き続き 情報集収を行うこととされたということです。凝集物の管理については、比濁法を用いた 試験法の設定が検討されていまして、その試験が開始されるまでの間は暫定的に凝集物の 量と大きさに関する目視検査が実施される予定です。  次に、異常毒性否定試験についてです。これについては、資料1-4-1、資料1-4-2です。 資料1-4-1を御覧ください。これは、国立感染症研究所において行いましたGSK社ワク チンの異常毒性否定試験結果概要です。異常毒性否定試験というのはどういうものかは、 資料1-4-1の2枚目に、参考に書いてあると思います。この後の説明でも出てまいります が、基本的に試験の目的としては、ここに書いてある実験小動物に検体を注射しても、異 常を来さないことを確認する試験方法ということですが、ロットごとの品質に問題がない かどうか、異常が起きていないかどうかを確認する試験という位置付けかと思います。  1枚目に戻って国立感染症研究所において、どういった結果が得られたかということで す。GSK社・新型インフルエンザワクチンについて異常毒性否定試験を行い、モルモッ トの腹腔内にアジュバントを添加した抗原製剤を0.5mL接種した。0.5mLというのは、ヒ トに打つ量と同じです。その量を通常ヒトの場合は筋肉に打ちますが、異常毒性否定試験 は腹腔内に打ちます。0.5mLをモルモットに接種したところ、軽度の異常が見られた。さ らに、その10倍量の5mL接種では、強い急性毒性と死亡例が確認されたということです。 その結果が、この表の上から3、4段目にかかります。  さらにアジュバントのみについて単独で試験を行ったところ、同様の異常所見が見られ たということで、これが5、6段目です。また、さらにマウスに対してもアジュバントを 添加した抗原製剤を接種したところ、0.5mL接種において死亡を含む異常が多数見られた ということです。こういった結果がありました。  これについて、国立感染症研究所所長名で、厚生労働省医薬食品局長に対してコメント とともに提出されました。そこでは、今後輸入が想定されているGSK社のH1N1ワク チンに対する国家検定の準備のために、国立感染症研究所において異常毒性否定試験を参 考試験として実施したところ、明らかに国産のインフルエンザHAワクチンと異なるデー タが得られているので、取り急ぎ報告しますということです。[1]当該ワクチン(アジュバ ントを含む)5mLをモルモットの腹腔内に接種したところ、強い肝毒性と高率の死亡例を 認めた。0.5mL接種時は軽度。[2]アジュバントのみを接種した際にも、同様の強い肝毒性 及び高率の死亡を認めた。アジュバントを含まないワクチン、抗原のみの接種では、明ら かな異常所見は得られなかったということです。  国立感染症研究所においては、「今回得られたデータのみではこれらの異常が発生する 機序などについては十分な分析ができませんので、このモルモットのデータをもって、直 ちに当該ワクチンの安全性に問題ありとの判断を行うことができないと考えています。し かし、GSK社からもモルモットに0.5mL以上の投与を行うと異常毒性が見られるとの説 明を受けていますので、再度GSK社に対して今回の結果がワクチンの安全性に与える影 響に関する見解や、安全性に問題がないとしているデータなどの提出を求め、当該ワクチ ンの承認に当たってはこれらも踏まえて、安全性評価等の検討を行うとともに、別途実施 されている臨床試験の結果等も含めて、総合的に判断する必要があると考えます」とのコ メントをいただいています。  これに対して資料1-4-2で、この結果に対するグラクソ・スミスクライン社からの見解 という文書も提出いただいています。これについてはまずGSK社としては、異常毒性否 定試験の位置付けという観点からいいますと、ヒトには通常0.5mLですので、モルモット に10倍投与をしたとすれば、仮にヒトが50kgでモルモットが400gとして、体重換算に しますと1,250倍にもなるということです。臨床適用としては通常筋肉内投与であって、 今回の場合は腹腔内投与ということで、この結果を毒性評価としてヒトに当てはめること は適切ではないのではないかとグラクソ・スミスクライン社は見解を述べています。  また、さらに先ほど冒頭でも少し触れましたが、異常毒性否定試験はワクチンとしての 安全性を評価する試験ではなく、ロットごとに外来性の毒性物質混入の有無を検出するた めの試験で、その位置付けというものがあるということです。欧州薬局方で規定する異常 毒性否定試験については、モルモットへの接種量はヒトの1回接種量の0.5mLとなってい るということ、欧州薬局方の規定には適合していることと、本接種量についてはドイツ規 制当局からの妥当性についてのレターもあるということで、ここに2枚目として添付され ているようなレターもありますということを示されています。  さらに、毒性試験からの見解ということでは、非臨床の安全性(毒性)評価は、ヒト1回 接種量と同じ量のアジュバント単独及びアジュバントを添加したワクチンを用いたウサ ギに単回又は反復筋肉投与したという幾つかの毒性試験の結果もあります。そこでは一般 状態及び体重には悪影響はなかったということです。その他、特に影響はなかったという ことを言われています。  さらに、臨床試験からの見解としましても、実際に臨床試験においても1万8,000例を 超える使用実績があって、アジュバント非添加ワクチンに比べると注射部位の疼痛とか頭 痛といった副反応は多く見られたけれども、重度なものの報告は少ないということで、ワ クチン接種に起因する予想外の安全性の問題は示唆されていなかった。国内での臨床試験 も実施したけれども、新たな安全性の問題ではないと。  海外ではアジュバントを添加したワクチンについて、1億800万回接種分が出荷され、 少なくとも4,480万回接種分が使用されたと推定されているけれども、臨床使用において も危惧されるような問題は発生していないと考えていますという見解が述べられていま す。  部会においては後ほど触れますが、異常毒性否定試験では異なる投与経路で過量投与さ れているということや、海外の臨床試験実績などにかんがみまして、本結果をもって承認 の可否に関わる問題ではないのではないかという意見が取りまとめられているというこ とです。  製造販売後調査等について御説明します。Q-Panは承認がされましたら、製造販売後の 調査を承認条件として課すこととしていますが、Q-Panは日本人の高齢者に接種した臨床 試験成績がないことから、製造販売後の臨床試験を実施し、免疫原性を確認することとさ れ、さらには使用成績調査についても、現在接種体制などを考慮した具体的な調査計画が 検討されています。  次に、情報提供資材は、資料1-6「アレパンリックス(H1N1)筋注追加提出資料」で す。ここに添付文書(案)や、今回の場合はGSK社製の製品については、アジュバントの 白い液体を抗原液に入れて、そこから0.5mL接種するという接種方法です。通常のワクチ ン接種とは違うこともあって、そういった情報提供についてはしっかりやらなければいけ ないということです。ここで、添付文書(案)や、その後の情報提供資材で接種方法とか副 反応の情報についても、十分丁寧に情報提供をするということで、こういった資材が作ら れているということです。  こういった資料に基づきまして、12月26日に部会審議が行われました。部会の審議結 果報告書は、資料1-1の一番最初の諮問書の次に審議結果報告書があります。この審議結 果報告書は大事な部分かと思いますので、読み上げます。  審議結果としては、「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種の基本方針」において、 「今後の感染の拡大やウイルスの変異等の可能性を踏まえると、上記の優先的に接種する 者以外における重症例の発生があり得るため、健康危機管理の観点から、国内産に加えて、 海外企業から緊急に輸入することを決定し、ワクチンを確保する」ということが、平成 21年10月1日の新型インフルエンザ対策本部決定で方針として決まっています。本品目 は、その対象となるワクチンとして、承認申請があったというものです。本品目について は、平成21年12月26日に開催された医薬品第二部会において、薬事法第14条の3の規 定による特例承認の可否について審議された結果、下記の個別の論点に対する意見の内容 について適切な対応がなされ、承認条件が付されることを前提として、健康危機管理上の 観点から、承認して差し支えないものとされた。また、本品目の特例承認の可否について は、社会的関心が極めて高いことから主要資料を公表し、一般からの意見を収集し、これ を添えて分科会における審議の参考とすることとされた。以上を踏まえて、薬事・食品衛 生審議会薬事分科会に上程するとされた。なお、本剤の審議における主な論点と、それに 対する同部会の意見は下記のとおりであるということです。  記として、用法・用量の設定は繰り返しになりますが、6か月以上10歳未満の小児に ついては、抗原製剤を添付の専用混和液と混合し、通常、その0.25mLを1回、筋肉内に 注射する。成人、さらには10歳以上の小児ですが、抗原製剤を添付の専用混和液と混合 し、通常、0.5mLを1回、筋肉内に注射するということです。  承認条件は、本品目を特例承認する場合については、以下のような承認条件を付すこと が適当である。[1]本剤は薬事法第14条の3の規定により特例承認されるものであり、国 内での使用経験が限られていることから、製造販売後調査を行い、本剤被接種者の背景情 報を把握するとともに、本剤の安全性に関するデータを早期に収集し、本剤の適正使用に 必要な措置を講じること。なお、製造販売後調査中に得られた情報を定期的に報告するこ と。[2]国内において、可及的速やかに高齢者における本剤の安全性及び免疫原性を確認す るための製造販売後臨床試験を国内で実施し、結果を速やかに報告すること。 [3]本剤の使用に当たっては、本剤は特例承認されたものであること、その時点で得られて いる本剤の安全性・有効性の情報及び更なる安全性・有効性のデータを引き続き収集中で あること等について被接種者に対して十分な説明を行い、インフォームド・コンセントを 得るよう医師に対して要請すること。[4]実施予定及び実施中の臨床試験については、可及 的速やかに成績及び解析結果を提出すること。[5]抗原バイアルで認められる凝集につい て、凝集との関連が疑われる安全性についての知見が新たに見られた場合は、可及的速や かに報告すること。[6]本剤は国の接種事業のために特例承認されるものであることから、 本剤の製造販売は国による買い上げ分に限定されること。  3、主な論点とそれに対する意見。(1)安全性及び有効性について。本品目については、 臨床試験結果によれば、国際的に使用されるインフルエンザワクチンの有効性の評価基準 を満たす免疫原性が得られており、また、現時点では承認の可否にかかわる懸念される副 反応の発生は認められていないが、副反応については情報収集に努めるべきである。  (2)抗原製剤バイアル内の凝集物について。凝集物については、凝集物を管理するため の規格設定の検討を要望する。また、現時点で安全性及び有効性への影響を及ぼす関連性 は示されておらず、引き続き情報収集を行うとともに、添付文書等で適切に情報提供を行 うこととすべきである。  (3)アナフィラキシーについて。2009年10月から本品目の接種が開始されたカナダに おいて、特定のロットでアナフィラキシーが高い頻度で確認されている。カナダ政府は特 定のロットの問題としているが、その原因究明は継続している。カナダ政府による調査結 果や、本製剤のカナダでの使用実績や副反応等の情報を収集・評価するとともに、我が国 においても市販後の副反応情報を収集評価し、万一問題がみられた場合は、問題がみられ たロットの使用を控えるなど、適切な措置を講じることとすべきである。  (4)異常毒性否定試験について。国立感染症研究所で実施された異常毒性否定試験の用 量検討において、モルモット及びマウスで急性毒性(肝障害、出血を伴う循環不全、胸水 貯溜を伴う炎症反応)が発現したことが報告されているが、高用量の腹腔内投与における 結果であり、臨床試験成績、EU(同じアジュバントを使用した鶏卵培養のH1N1ワク チンを使用)での使用実績、カナダでの使用実績などを踏まえ、承認にかかわる問題では ないと考えられる。なお、これらの情報や接種に当たっての留意点などを分かりやすくま とめ、医療関係者に対して情報提供をすべきである。  (5)情報提供及び接種対象者について。本品目は、既に承認されている国産のA型イン フルエンザHAワクチン(H1N1株)とは異なり、新しいアジュバントを含有しており、 その性質によって局所や全身の副反応が高い頻度でみられ、中には重度の副反応が見られ ること、筋肉注射により接種することから、その副反応や接種方法等の情報について、医 療関係者や接種を受ける者に分かりやすく情報提供をすべきである。また、妊婦への接種 は推奨しない。基礎疾患を有する者及び小児への接種に当たっては、その妥当性を医師が 慎重に判断すべきと考えるとの意見がまとめられているということです。  最後に、その部会報告があった後、12月28日〜1月11日までパブリックコメントと いう形でこれらの資料を公開した上で、国民の皆様方からの御意見を募集したという状況 があります。その結果の概要については、当日配付資料5です。この資料については、今 審議をいただいているGSK社製のアレパンリックスと、この後、御議論いただくノバル ティスファーマ社のものとが一緒にまとめられているということですが、まずここで説明 をしたいと思います。意見の提出数は、GSK社製ワクチン32件、ノバルティス社製ワ クチン8件となっていますが、実際に意見を募集したときには、会社のところに行くため にそれぞれクリックする形になっていまして、一部全体的な意見としてGSK社製のワク チンが先に書かれていたので、全体としての意見を述べられた方もこの中には含まれてい るものではないかということは御承知おきいただきたいと思います。合計で40件の意見 提出がありました。性別、年齢、職業などについては御覧のとおりです。一つひとつ御紹 介したいところですが、さすがにすべてを読み上げると時間が持ちませんので、主な意見 及び件数ということで、2ページを紹介したいと思います。すべての意見については、こ の後に添付しているとおりです。  件数として一番多かったのは、国産の新型インフルエンザワクチンの流通状況を考えま すと、輸入ワクチンについては不要であるとか、数量の再検討をすべきではないかという 意見が合計22件挙げられました。この件数については、一人がいろいろな意見を述べら れている場合がありますので、延べの件数と思っていただきたいと思います。さらに、輸 入ワクチンの安全性について懸念を感じるが11件。輸入ワクチンの安全性に関する情報 については、積極的に開示すべきであるが7件。接種するワクチンの種類については、被 接種者、医師又は医療機関に選択できるようにすべきであるが5件。新型インフルエンザ のリスクについて、季節性インフルエンザのリスクと大きな違いが感じられず、海外ワク チンの必要性に疑問を感じるが5件。ワクチンの接種の重要性について、より国民に啓発 すべきであるが4件。使用されないワクチンについては、発展途上国等への転売、供与、 寄付等を検討すべきであるが3件挙げられています。  参考までに3ページですが、今回の意見募集については承認の可否について、どちらが 賛成ですかという問いはしていませんが、その中で承認の賛否という観点で、意見を言っ ていただいた方について整理するとという表として御覧いただきたいと思います。輸入ワ クチンを承認すべきが4件。輸入ワクチンを承認すべきであるが、輸入量などについて再 検討が必要であるが3件。輸入ワクチンを承認することを前提とした御意見として6件で すが、例えばいただいた御意見の中では、マルチドーズバイアルであり、集団接種が必要 となることから、医療機関での負担を考慮すべき。インフォームド・コンセントにより、 被接種者が接種の選択をできるようにする必要がある。危機管理上必要であり、国民全員 に接種すべき。海外ワクチンの利点を学ぶ契機として、国内メーカーに改善を求めるべき。 海外ワクチンを嫌うムードに対して対応を検討すべき。免疫反応が亢進した病態の患者に おける安全性について、十分な開示を求める等の御意見をいただいています。  さらに、輸入ワクチンを輸入又は承認すべきでないとされた方は12件。その内数は、 国産品のみで十分な流通量があると考えるため、輸入又は承認すべきではないというのが 8件。安全性に懸念があるためが4件です。その他の理由としては、他のワクチンと比較 して、議論が拙速であると考えるためという御意見もありました。以上がパブリックコメ ントの状況の概要です。以上です。 ○望月分科会長 ありがとうございました。ただ今の説明について、御意見、御質問等を いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○赤堀委員 異常毒性否定試験についてお尋ねします。部会でもそうですし、GSK社か らでもそうですが、この試験で適切でないという判定をされたけれども、この結果は無視 していいだろうと。その理由としては、腹腔内投与であったことと実際に使用する量の 10倍量であることを根拠にして、異常毒性否定試験では適合でなかったけれども、認め ようということだと思います。リスクとベネフィット、緊急性ということを考えたら結論 には異存はありませんが、そうしますと現在の異常毒性否定試験という意義をどうとらえ ていったらいいのか。現在の試験方法は適切でないので、毒性試験法を変えていく、ある いはより適切な新しい試験法を決めていくという対応をなされるということでしょうか。 ○審査管理課長 御説明いたします。異常毒性否定試験については先ほど御説明しました が、ロット間のばらつきの異常を発見するための試験でありまして、製剤についての毒性 を評価するための試験ではありません。今回も0.5ccを投与するという試験を設定しまし て、ロット間での異常を検出する試験として採用しています。毒性については、別途非臨 床試験の毒性を評価している状況です。しかしながら部会では、こういうことがあったの で情報提供等を考慮すべきではないかということで御意見をいただいています。また急性 毒性等、そういう異常毒性否定試験で得られた異常毒性の原因等については、別途検討は されるとは聞いています。 ○望月分科会長 よろしいでしょうか。ほかには御意見等はありますか。 ○井部委員 資料1-1で説明がありました審議結果報告書の承認条件の[5]で、「本剤は国 の接種事業のために特別承認されるものであることから、本剤の製造販売は国による買い 上げ分に限定される」という文言を説明されましたが、国による買い上げ分に限定される ということは、どのような流通ルートになるか説明をお願いしたいと思います。 ○望月分科会長 いかがでしょうか。[6]ですね。 ○血液対策課長 今の御質問の内容は、承認条件の[6]でよろしいですか。 ○井部委員 はい。 ○血液対策課長 流通に関しましては国が関与しないということですが、今回の接種事業 に関しては国の事業という位置付けで、流通上も偏りが出てはいけないということで、あ る程度統制が必要ということがありまして、今回この接種事業のワクチンに関しては、全 部国が買い上げという前提で事業が行われています。逆に申しますと、今回の特例承認の 対象となる製品に関しては、その枠組の中で使われるワクチンをここにお示ししたものだ と思います。 ○井部委員 そうしますと国が買い上げて、1か所に製品が来ることになるわけですか。 ○血液対策課長 御説明が足りず、申し訳ありません。いったん国が買い上げたものを販 社に全部売りまして、そこから価格を統一して流通させるというスキームを採っていま す。どれぐらい供給が必要かということは毎回事前に私どもから都道府県を通して、お聞 ききした上で、その分を供給させていただくスキームを採っています。 ○宗林委員 三点ほどあります。輸入供給量がかなり多く、9,000万あるということが前 提になっていると思いますが、これを見せていただきますとアジュバントの方が使用期限 が長いのでしょうか。そういうふうにも見受けられます。今回特例承認して輸入するもの は、残ったものまでは使うという前提があるということなのかが一点です。  それから安全性の結論として、国内産のものと同一ではないけれども、安全上問題がな いという結論なのかなと思いますが、例えば患者へのインフォームド・コンセントをしっ かりということで、いろいろと副作用の問題とかが書かれていますが、確かに今までのオ ーディナリーのものでも、どこのあれを打ちましたよというものだけは判子を押してもら って、患者側はどこのものを打ったかは承知していると思いますが、この説明をされて患 者側が何かを選択することができるか、言うだけではないかなという感じで、これで何を 受け止めてどうすればいいのかなというところが非常に分かりにくいし、患者側としては 戸惑うのではないかなと思います。それによって、今回は選択をするということもしてい いということであるので、心配だったら国内産のものを選べばいいでしょうという意味で あるのか。  資料1-3のカナダの調査結果の中で気になりました。全然違うかもしれませんが、3ペ ージの医療機関における状況ということで、接種を受けた後、しばらく待合室で待ってい てくださいというステップを踏んでいるようですが、これは直後に起こるアナフィラキシ ーの発生を意識した対応であるのかどうかをお聞きします。 ○審査管理課長 最初の有効期間の関係ですが、GSK社の場合はアジュバントの方が長 く持つことになっています。 ○宗林委員 ということは9,000万でしたでしょうか、輸入したものは使用期限はアジュ バントの方が長いわけですが、その期限までは使うという前提で輸入されるということで すか。量として今年度の状況を見れば、かなり多いのではないかと思います。 ○審査管理課長 GSKの場合は、抗原のバイアルをお見せしておりますが、それとアジ ュバントのバイアルがあります。それぞれの安定性についてはアジュバントの方が長いで すが、製剤としての承認ですので、セットとしての製剤は1年ということで今のところは 設定しています。 ○結核感染症課長 二点目、三点目です。まず選択につきましては、今御指摘のように国 内産も含め、これで海外2社が承認された場合には、その3社について選択ができるとい うことになります。もちろん、どれを取り扱うかということについては、それぞれ購入す るしないというのは医療機関側の判断があります。  三点目の30分ほど待つというのは、御指摘のようにアナフィラキシーを想定したもの で、特に国内産も含め、求めているものです。 ○岡部参考人 今のところの追加のことを述べさせていただいていますが、ワクチン接種 後30分以上静かにお休みをくださいというのは、日本でやっているすべてのワクチンに 共通のものです。それは子供にやる場合も含めて、すべて万が一の異常反応があったとき は、医師がその場ですぐに診なければいけないということで待っていただきます。これは 既に行われていることで、このワクチンだからというルールではないです。 ○宗林委員 認識が薄かったのかもしれませんが、ということは日本の医療機関では、既 に医療機関内で30分はいるようにと十分注意をされているということでしょうか。 ○岡部参考人 例えば母子手帳とか、そういうものには必ず記載がされています。小児の 接種をやっている所では、30分休んでくださいということが必ず説明となっていると思 います。 ○宗林委員 今回は成人も含めて、30分は医療機関の中にいてくださいということです ね。先ほどの説明の中で、国産か輸入を選べるというだけではなくて、輸入のうちどちら にしましょうかということも選択できるという意味でしょうか。 ○結核感染症課長 一応、今のところはそのような方向で考えています。 ○望月分科会長 それは患者が選ぶのですか。3種類のワクチンのうち、どれを使うかに ついてです。 ○結核感染症課長 承認された場合ということですが、そういうことを考えています。た だ先ほど言ったように、医療機関がどれを取り扱っているかにもよりますが、3種類を取 り扱っている医療機関であればということになります。 ○宗林委員 医療機関向けの通知文書を見てそれを思ったのですが、例えば国産のものを かなり選べる余裕がある、国産がいいと言ったら国産を打つという選択肢がかなり残され ていると理解したので最初の質問をしたのですが、いずれかは国産がなくなったときは、 輸入のどちらかですよということになるということでしょうか。 ○結核感染症課長 そのとおりです。 ○山口分科会長代理 それに関連して、医療機関の方もその選択ができるのですか。 ○結核感染症課長 どれを購入するかは医療機関側の御判断ですので、本事業については 医療機関側の実際購入の希望に沿って供給するということを、現時点では考えています。 ○木津委員 基本的なことが少し分からないので教えてください。このバイアルは10回 分のバイアルになっていると思いますが、9,900万回というのはこれを10回全部使った としての換算なのか、それとも9,900万バイアルあるということなのかが一点目です。そ して、それが現実に国産でも全部使い切らないで、捨てている医療機関がたくさんあると 伺って、今後1mLバイアル製剤に切り替わるというお話を伺っていますが、今のような 形でいろいろな人が選んでいったときに、国の事業として非常にお金もかけてやるとき に、この10回分というのをどうとらえたらいいのかをまず教えてください。 ○結核感染症課長 10回分というのは、1バイアルに5mLの10回分入っていて、先ほど の9,000万回とかというのは成人1回換算でのものですから、これは本数ではなく、10 回使うことを前提とした数です。マルチドーズバイアルの残量の問題がありますが、実際 には、5mLきちんと入っているわけではなくて、少し余裕をもって入っていますが、国 産品のものも10mLも実際にはもう少し多く入っております。これはできるだけ有効に御 活用いただくということを我々は考えるわけです。そういう面でも、対象者が健康成人ま で拡大すれば、医療機関側も接種希望者を選びやすくなるといいますか、集めやすくなる ということもありまして、できるだけそういう形でお使いいただければと考えているとこ ろです。 ○木津委員 もう一点教えてください。これは専用の混和液のアジュバントと溶解して合 わせて投与する製剤ですが、医療現場でたまにいろいろな形で溶解し忘れて投与してしま うケースというのが、ほかの製剤でも起こっているのが現状です。もし、これにアジュバ ントを入れないで打った場合はどのようになるのか。逆に、アジュバントで副作用がある ということが報告されているので、これを入れないでという方もいるかとも思うのです が、もしその辺の情報があれば教えていただきたいと思います。 ○望月分科会長 事務局、いかがでしょうか。 ○審査管理課長 アジュバントを混和して合わせて3.75μgの投与になります。通常の場 合ですと、H1N1については、1回0.5mLの中に15μg入っておりますので、抗原量と してはかなり少なくなりますので、効果がかなり減弱するものと思われます。 ○望月分科会長 いいですか。笠貫委員、お願いします。 ○笠貫委員 このワクチンの安全性の問題は、今御指摘のアジュバントの安全性をどう見 るかということにかかると思います。アジュバントも、後に出てくる製剤の場合にはアジ ュバントの種類が違います。アジュバントの種類によってどう違うかということを取り上 げる必要があるかなという感じはいたしました。  その中で、国の事業でやるということと、健康な人の希望者の多くの方に打つというと きに、安全性のレベルは非常に高いものが求められるのではないかという感じがいたしま した。その観点から考えますと、一つは、異常毒性否定試験というのが用量と用法が違っ たとしても、国産では問題なかった用量のところでこれが出ていること、もう一つは、も し国立感染症研究所の方でほかの種類のアジュバントの試験の結果がどうであったか一 つお聞きしたいと思います。  それと気になるのが、アナフィラキシーショックがロットの問題だとすると、先ほど異 常毒性否定試験はロットごとの品質をチェックするのだということであれば、ロットの問 題がやはり問題になってくると思います。特定のロットの問題がなぜ起こったのかまだ分 からない。現在、究明中ということが2番目の問題として気にはなります。  3番目はここにも書いてあるように、局所や全身の副反応のところで、参考資料で見て いきますと、アジュバントのない国産に比べると、2社のアジュバントの方が高いように 思います。その中でも、本剤の有害事象が多いような感じがします。それと1回目から2 回目の方が有害事象も高い。この3番目の問題と、4番目の問題で凝集物について因果関 係がないというお話でしたが、因果関係が有るか無いか、まだ分からないからこのチェッ クをすると思います。こういうことから参考人の先生方に、先ほどの毒性否定試験もそう ですが、全体としてこれで安全性をいいとして、国の事業としてすることが専門家の立場 からどうかということを、是非お伺いしたいと思います。 ○望月分科会長 いかがでしょうか。参考人の先生方から御意見はございますか。 ○川名参考人 防衛医大の川名と申します。既に議論されたことかもしれませんが、私も 一つお伺いしたいことがあります。資料1-1の1.8.1の添付文書(案)に、アレパンリック スの筋注の添付文書(案)があります。その一番上に黒い四角で囲んでいるところに、赤字 で「本剤接種による伝達性海綿状脳症伝播のリスクは理論的に極めて低いものと考えられ るが、本剤の使用に当たっては、その必要性を考慮の上、接種すること」ということが書 いてありますので、この辺については私はよく知らないので情報をいただきたいと思いま す。 ○望月分科会長 分かりました。最初の点を尾身参考人にお願いします。 ○尾身参考人 今の笠貫先生の御質問に対して、我々参考人は全体としてどう思うかとい うことですが、まずは今回は特例承認ということで、現実としてみんなで確認しなければ いけないことは、資料が非常に限られています。本来ならば、もっと時間をかけて、もっ といろいろなデータを集めてやるべきです。これは言ってみれば、基本的には時間の問題 です。時間の制約の中で限られた資料、データの中で判断せざるを得ない。そういう限ら れたデーターの中でどんな判断が専門家としてできるかということだと思います。それに ついて私の考えを少し述べさせてもらいます。  今回の最終的な結論は、恐らく厚生労働大臣が早晩出すと思います。最終的な結論の前 に、ワクチンに関してどういう経過でここまできたかということを、少し考えておいた方 がいいと思います。当初は、今回のワクチンが絶対的に足りないという条件で始まりまし た。国内産ではとても足りないということで、輸入を考慮すべきかどうかという議論が始 まったと思います。その後、いろいろな経過があって、感染の広がりや疫学的な問題もあ りますし、ワクチンの収量がよかったということと、1回接種と2回接種の問題に「けり」 がついたということで、大まかに言えば、国内産で基本的には、今まで我々が言っていた 高齢者も含めた優先グループについては間に合うのではないかということで、今、課題に なっているのはそれ以外のグループです。今までプライオリティグループに入っていない 人は健康な成人ですので、この人たちをどうするかということが、基本的には今回の課題 だと思います。  そういう中で、私は今回の安全性についてどう思うかと。私の個人的な判断は、大体こ んな感じだと思います。もちろんここはデータが完全ではないので、判断というところが あります。今回の輸入品のワクチンについては、いわゆる重篤な有害事象といいますか、 アナフィラキシーを起こして死亡者が出るような、そういう意味で重大な懸念は今のとこ ろないのだろうというのが私の判断です。  もう少し軽度な副作用についてはどうかと。例えば、疼痛やちょっとした倦怠感という ものはどうかということがあるかと思います。  その前に、赤堀委員の例の異常毒性否定試験についてはどう思うかということで、目的 は先ほど事務局が言われたとおりだと思いますが、これも私の判断はアジュバントのこと が関係していると思います。これは国民が一番何を知りたいかというのは、GSKの結果 うんぬんもありますが、国民は既に国産のワクチンについてはある程度感触を持っている わけです。かなりの人がワクチン接種を受けた。国民が一番知りたいのは、国産のワクチ ンと比べて、今回のは副作用、あるいは有効性がどうかというのが、恐らく一般の人が知 りたいところです。  そういう意味から考えると、確かに今回の異常毒性否定試験は国内産のものでは起きな かったわけです。輸入品は、アジュバントの作用があったと思います。局所反応について は、明らかにこれは頭痛や疼痛など、幾つかの項目を見ますと、GSKのものは国内産と 比べてやや多いということは今の段階では言えると思います。軽度のものです。それに比 べてノバルティスのものはやや少ないということです。  私はそのようなことを全体としては特にないが、一部、先ほどの異常毒性否定試験とい うこともあって、一部の副作用については日本のものよりもやや強いということを、国民 にしっかり説明をした上で、そして健康な成人の中で選んでもらい、それを分かった上で 選んでもらう。政府についてはこれからも先ほどから議論が出ているように、モニターを して、また新しい情報があったら開示するということでいいと思います。  最後になりますが、国民の健康成人のすべてのことを分かった上で決めてもらうわけで す。それと同時に、今まで前半のウイルスとの闘いは重症化の防止で、一部の重症例、糖 尿病があるとか、あるいは妊婦の人とか、子供を中心に考えてきたわけです。ここにきて、 国が決めれば健康成人に打てるようになるということで朗報だと思います。そういう中 で、一つ配慮すべきことは、今まではハイリスクグループということで限定して、今回は それが外れる時期に来ているわけですが、そういう意味では、皆さんの自由に任せると同 時に、今までパブコメなどで盛んに言われていた浪人生とか、あるいは保育士、看護関係 者、薬剤師等々にも同時に配慮することが大事ではないか。そういうのが私の個人的な安 全性及びどうしたらいいかということの考えです。 ○望月分科会長 ありがとうございました。 ○井上参考人 ただ今御質問がありました笠貫委員の御発言の中の異常毒性否定試験に 限って、専門の立場から御説明したいと思います。  私は毒性学が専門ですが、我が国では毒性学という分野が、薬学と獣医学の一部で教え られているだけで、社会的な市民権が非常に薄いことを、毒性学を担当している者は非常 に危惧しております。毒性学が果たしていること、果たさなければならないことが誤解さ れることが多いです。先生に失礼なことを申し上げているつもりはないのですが、誤った 発信として受け止められることが多いことに大変危惧しております。そういう立場から、 今回の結論を簡単に御説明いたします。  事務局の報告にもありましたように、結論から申しますと、今回の異常毒性否定試験に ついては、「承認にかかわる問題ではないと考えている」というこれが、文字通りの結論 でございます。ここに私どもは全く危惧を持っておりません。それが結論です。  なぜそういうふうに考えているのかということについては、一部やや誤解があるように 思われますので申し上げます。これは確かにアジュバントを添加することによって、初め て異常毒性否定試験で高用量で動物の死や肝細胞壊死といったものが出たのですが、本来 は、毒性学の立場からすると、あらゆるワクチンで、あるいは化学物質でそういうものが 必ず出るところまで大量にあれして、そして大量に打った場合には、ここには毒物学の先 生もおられますが、大量に打ったときにはどういうことが出るのかということを知りなが ら、その何千分の1であるとか、何万分の1であるから絶対に安全だと。もちろん限定的 ですが、そういうふうな考え方をいたします。それから言いまして、今回の試験は、異常 毒性否定を十分に否定することができた試験であるというふうに、一般の方々には理解し ていただきたいと。これを切にお願いしたいのです。  従って、委員の先生方の中にも、誤解が生まれることが時々あるのですが、これが大量 に打ったから出たのだと。大量に打って、そういう使うもの、実際に一般の方に打ったり することよりも、はるかに多いものを打つのは意味がないという御意見が多いのですが、 これはそれを見ておくことが大事なのです。それを見ておくことによって、現場で、これ は打たれる一般の方には異常体質の方もおられますから、そういう特異体質の方がおられ たときに、担当の医師の方がすぐ気が付いて、それに対応することができることが大事な のです。  化学薬品でもそうですが、何せワクチンというのは、先ほど御説明があったように、投 与してから30分ぐらいは観察した方がいいぐらい、一般的に事故が起こる確率がゼロで はないのです。したがって、こういう否定試験をやっているわけです。今回の試験はそれ を十分に否定することができたと御理解いただきたいと思います。以上です。 ○望月分科会長 どうもありがとうございました。よろしいですか。 ○板村参考人 参考人として、一応、どのように安全性の評価を全体として考えておられ るか、ということに関して少し意見を言わせていただきたいと思います。  確かに論点で幾つか凝集物であるとか、カナダのアナフィラキシーの問題、それは私自 身もカナダに調査へ行かせていただいたのですが、その点に関して質問がありましたの で、その辺を交えて簡単に考え方を述べさせていただきたいのです。  今、実際に持っている、私自身はワクチンの品質等というところが専門ですので、臨床 的な効果は分からないところがあります。品質管理の観点から言いますと、先ほど尾身参 考人がおっしゃられましたように、危機管理上ということで、十分なデータがすべてそろ っている状態で審議していないということは、全くそのとおりだと。そういう意味では非 常に情報不足な点が非常に多々あると。凝集物の管理に関しても、ワクチン全体の品質が 一定であるという前提が当然あって、通常臨床試験なり、すべてが行われて、有効性も安 全性も評価されると。そういった点が当然あるわけですが、若干、その辺に疑義があると いうところです。  全体としてならしたところ、今のところ、例えばアナフィラキシーのカナダの問題にし ても、特定ロットということですが、実際の製造の点での品質上は原因が見付かっていな いと。その言い方が非常に分かりにくいのですが。というのは、出てきたロットというの は、アジュバントと抗原の組合せで決まったのが7Aという特定のものです。実はその同 じ抗原が違うところのものにシューボックスと言われる組合せにも使われていたりして いるのですが、例えば、抗原だけを見ると、そのものは頻度は上がっているかというと、 そういうことはないということで抗原の原因ではない。今度はアジュバントが別のところ で使われていたりするのですが、アジュバントが同一のロットを見てみると、どちらかに 原因があるかというと、そちらでも特に上がっていない。そうすると、アジュバントその ものと、抗原そのものの出荷時においては、特段の問題は見つかりませんでしたが、少な くとも7Aというロットに関しては、頻度としては上がっていると。そういうことで、一 応予備的手法として止めましたと。しかし、原因は品質の観点からは、今現在では分から ないと。ただし、リスク評価としては、データにもありましたように、ならしてしまえば 10万人に0.3というアナフィラキシーの頻度であると。  そういう意味で、全体としてならしてしまうとそういうリスクの中でワクチンの安全性 を確認、認識しているというところで、全体を評価するしかないであろうと。そういうこ とがあるので、もちろん、副反応については随時見ながらということで、もしそういう事 情があれば、当然、何らかの処置がされるということが承認の条件に書かれていることだ ろうかと思います。  異常毒性否定試験に関しては先ほど説明がありましたので、そういう意味で通常の審査 の各細かい点は、詰めていったものではないということを非常に認識しないといけないと 思います。  一方で、実際有効性や安全性を評価するときも、基本的に今どういうリスクがあるのか というと、現状のインフルエンザのリスクというものと、インフルエンザ自身は非常に変 異が激しいということで、今後どう変わるかというのは、ある意味では専門家であっても 予測はつかないことを考えると、その場合に実際に量が足りないということを考えれば、 今のところ国内で製造されているワクチンの安全性や有効性等を含めて、ものがないこと を前提にすると、やはり、そういったものも必要ではないかということです。審議結果の ところでも「健康危機管理上の観点から」ということが入っているかと。つまり、そうい う観点で、実際リスクの予測ができないという意味では、いざ、もしこのリスクが上がっ た場合に製剤がないという状況も起こり得るという意味では、全体として今のリスクの評 価としては承認という方向が、安全性の確認としては私自身はそういう理解をしていると ころです。  もう一点、特例承認の進め方ということで、冒頭、足立政務官から特例承認の方法自身 ということがありましたが、やはり、実際に審査をやられている機構の皆さんが情報収集 を短期間でやられて大変だと思いましたが、実際リアルタイムで進んでいる状況で、例え ば、カナダで承認をされたと言いますが、承認された時点では、カナダのデータというの は、今回いわゆるD-PanとQ-Panという言い方をしていますが、カナダのケベックで作っ ているのはQ-Panになるのですが、実際、カナダで承認された時というのはQ-Panのデー タはほとんどなかったような状況で、先行していたドレスデンのD-Panのデータに基づい て承認している。カナダのを承認したから全部という話にはならないという意味で、特例 承認の現状のリスクを見ながら、どのレベルで判断していくか、進めていく中で非常に難 しいと思いましたので、特にその辺の在り方は、今回特に特例承認というのは初めてと聞 いておりますので、どういった形で実際最終的な評議をして決めるタイミングというの は、今このリスクであるので、多分このぐらいのスピードでよかったのかもしれませんが、 ある意味そのリスクが高まれば、逆に言うと、データが不足していても判断をしないとい けない状況もあるのではないかということで、今後どういう形があるのかというのは議論 されるべきではないかと思います。 ○望月分科会長 ありがとうございました。 ○庵原参考人 ワクチンの感染防御について少し専門的な意見を述べさせていただきま す。一般的に感染防御というのは、大きく免疫という言葉を使うわけです。免疫の中には 幾つかの要素があります。ただ、その要素の中で簡単に測れるのは抗体しかないわけです。 ですから、ワクチンに対して果たして本当に感染防御があるかどうかというのは、実際に 流行したときにかかったか、かからなかったかというデータが出ないと分からないので す。そのデータが出てくるのは今シーズンが終わってからで、来シーズン前でないとその データは出ません。そうすると、今では判断の根拠にはならない。そうしますと、代わり のものとして簡単に測れるものとしては抗体を用いて判断していこうということです。  一般的に感染症に対する防御力というのは、抗体が高ければ高いほど防御力は高いこと になっています。ということは、すなわち、ここで言う免疫原性というか、GMTで表わ せる平均抗体価が高いとか、陽性率が高いとかというところで、そのワクチンの免疫原性 を評価していこうということになると思います。  そうした場合、一般的にワクチンの場合は免疫原性を高めると、臨床反応は高くなりま す。これはある意味では仕方がないわけです。というのは、生体の反応ですので、何らか の反応は出てくるだろうと予測されます。副反応をゼロにせよということは、結局はワク チンの成分をゼロにせよということと一緒です。ですから、ある程度のワクチン成分を入 れて、しかし、どこまで妥協できるところの安全性で担保するか、そこの兼ね合いでもの を考えていかないといけないということになるかと思います。  もう一つは、インフルエンザの場合の変異ということを考えれば、変異したウイルスの ところまで幅広く対応しようとすると、高い免疫原性が出れば出るほど、変異に対する対 応力が高まります。ですから、抗原性を重視するか、安全性を重視するかによってワクチ ンの評価は異なると思います。インフルエンザの場合は変異ということを考えていけば、 抗原性をある程度重視した評価の仕方をするのも一つの考え方ではないかというのが私 の意見です。以上です。 ○望月分科会長 ありがとうございました。 ○早川委員 今、品質と有効性・安全性の問題が出ていると思います。まず、品質という ものを最初に考えてはいけないだろうと思います。薬の一番大事なところは有効性・安全 性です。品質の恒常性を図っていくというのは、品質のレベルで有効性・安全性を保証し ていくという話です。ということは、有効性・安全性がもし認められた知見があれば、そ のロットについて品質上の実態がどうであるかということを把握して、その実態を前提に して、以降もつないでいくという意味合いなのです。  例えば、異常毒性否定試験というのは、先ほど井上参考人がおっしゃったような毒性学 的な観点から、それがどういう毒性を持っているかという話とは別に、現実に有効性・安 全性が立証されている、あるいは相当データが出ているものについての実態としての中身 をどうやって維持していくかというための試験です。そういうことの中で、ここで二つ濁 度の問題と、異常毒性否定試験の問題が出ておりますが、異常毒性というのは、先ほど井 上参考人がお話になったように、毒性学的な観点では確かにそういうことがある。  ところが、品質管理という立場ではヒトでの評価で有効性・安全性上、何にも出ていな い状態での品質の状態がどうかということが、本来はベースになるべきなのです。異常毒 性否定試験は、安全性がヒトで評価されている今のロットが将来もし変わって、何か異常 なものが出てきたときに、それを検出するための方法であるはずなのです。今の投与経路、 投与量、あるいはその前後でもってヒトで問題となることが何にも起こらないということ であれば、異常毒性否定試験でも何も起こらないという条件での試験を設定すべきなので す。極端な例を申しますと、インスリンという製剤があると。インスリンを2倍、3倍量 余計に打ってしまうと、それは当然非常に異常な反応が出てしまう。あるいはエリスロポ エチンを打つと、2倍打ったら赤血球は2倍になりますから、当然そういう毒性は出てく るわけです。それが出ないような1回投与量でやって、それ以外の何か異常なものが、今 まで考えていなかったものが現れてきたときに、それをディテクトしましょうというのが 異常毒性否定試験の本来的な役割です。エリスロポエチンの特性や投与量を考えないで異 常毒性否定試験を型どおりやると、あっという間に異常毒性になってしまうわけです。  先ほど庵原参考人がおっしゃったように、これは抗原性というものを高めるためにアジ ュバントを使っている。そのアジュバントのゆえに、アジュバントの性格として毒性的な 臨床投与量の1200倍とか打ったらこうなりますよということであって、これがちまたに 余りにも異常毒性がある製剤であるというふうにもし言われるとすると、これは全く誤解 だと思います。  濁りについても、結局、蛋白質の製剤と、蛋白質とアジュバントを最後に混ぜる形にな っていますので、これは混ぜてしまったら濁りも何もなくなってしまうというか、もっと 濁ってしまうと思います。やはり蛋白というものは、何かのはずみで濁りは出てくるわけ です。もし、その濁りを問題にするとすれば、そういう濁りが出た製剤が常にある有害事 象と因果関係にあるというときには、その濁りに対しては相当きちんと、いわば枠をかけ ていかないといけません、一定以上な濁りは駄目ですと。  しかし、今の状況の中では、特に因果関係は示されておりません。ですから、もちろん できるだけその濁りがない状態をキープしていきましょうということは否定はしないの ですが、これがあるからということから議論が始まってしまうとずれた話になってしま う。私はこの前第二部会をやった後でとてもびっくりしたのですが、朝日新聞に「新しい 輸入製剤には濁りあり」と書いてあるわけです。それではいかにもこれが品質的に悪い製 品のような印象を持つわけです。しかし、医薬品の品質というものが有効性と安全性との 関係において品質を定めるという考え方からすれば、あるいは蛋白の特性ということを考 えるとすれば、また、今の製剤が最後に混ぜてしまうタイプであるとすれば、それは致し 方のないところだと思います。 ○望月分科会長 ありがとうございました。吉田委員、追加はございますか。 ○吉田委員 私はワクチンの専門ではないのですが、部会の議論だけ少し紹介します。異 常毒性否定試験の概要ですが、足立政務官も参加されましたが、基本的に言うとサイトカ イン・ストームを起こす。そういう生理活性を持ったアジュバントです。ほかのアジュバ ントにはそういう活性は見られない。しかし、そのアジュバントがそういう活性を持って いるがゆえに、逆に高い免疫原性を獲得している可能性もある。結局、希釈を進めて安全 性さえ担保すれば、これは基本的にワクチンにとっては不利益なことではない、という議 論に収拾したということだけ御紹介しておきます。 ○望月分科会長 ありがとうございました。岡部参考人、お願いします。 ○岡部参考人 部会のときにも同じようなことを申し上げましたし、私は諮問委員会の中 のメンバーの一人でもあるので、ずっと同じような意見を持っていました。なぜこのワク チンを特例承認にしなければいけないかの議論が始まったときは、まさしく新型インフル エンザが増え始めていたときですが、病原性からもしかすると多くの人にワクチンを接種 する必要はないのではないか。しかし、それは数少ない情報の中でサイエンスとは別に委 員会の中で、これは政治的な判断であるとして一応輸入を前提にし、そして臨床的な治験 を加えておこう、あるいはデータを集めるということになったと思います。  現在、いろいろな情報が入ってきているわけですが、例えば、重症者で言うと、現在、 8人に1人ぐらい感染している中で、受診者の13万人に1人ぐらいが亡くなっていると いうことで、ほかの国に比べると極めていい状況にあるわけです。部会の方で承認をする というのは、そのワクチンが安全性という構成の面で特例として使えるだろうと。これが 部会、あるいはこの会議の基本的なところだと思います。ただ、それを全国民という形で 本当に使っていいかどうかというオペレーションの議論については、別のところで議論を すべきことではないかと思います。したがって、ここで承認ということが、すなわち全国 民にGOだということとは違うのではないかという意見を申し上げて、今日もそれを追加 しておきたいと思います。 ○望月分科会長 あくまでも薬事分科会で考えるべきことと別のレベルのことだという ことを、今参考人が言っていただいたと思います。今のに関連していかがですか。 ○笠貫委員 特例承認で、しかも、健康人に対するワクチンの在り方ということで、参考 人の先生方のお話で大変勉強になりました。これがパブリックコメントに対するお答えに もなるのではないかという感じはいたしました。その中で、岡部参考人が言われたように インフォームド・コンセントというのは、確かに有効性と安全性の比較衡量をするときに、 そこにエビデンスが十分ないからと言ってサイエンスではないのだと思うのです。  今日、先生方がおっしゃっていただいたことも社会的、科学的、医学的には一つのサイ エンスとして考えて、エキスパートのコンセンサスとしてとらえられるのだろうと思いま す。そのときに先ほどの条件の中にはインフォームド・コンセントと書いてあったのです が、インフォームド・コンセントのところでどこまでこれを知らしむべしなのか。あるい はいかなる方法でやるかというのも、次のところでエキスパートとしてどう考えられるか というのは非常に大事なことではないかと思いましたので、もし、何かインフォームド・ コンセントの具体的なものについてどこまで国民に知らしむべしかということの御意見 をいただきたいと思います。  もう一つ御意見の中でお聞きしたかったのは、アジュバントの添加をしたワクチンが全 体として認められるべきだということは理解できたのですが、アジュバントの中でも差が あるということです。アジュバントの中に種類があるわけですから、そこまで議論しなけ ればいけないのか、あるいはそうではないかということで、今日2剤出ていますので、そ のことについて何か御意見があったらお願いします。これは後でやるべきことかどうか分 からないのですが、従来の認可の話と少し違うところがあるのでお教えいただけたらと思 います。 ○望月分科会長 いかがでしょうか。インフォームド・コンセントについてはどなたから お答えをいただいたらいいでしょうか。 ○結核感染症課長 事務局から申し上げます。予防接種につきましては、本事業に限らず、 もともと予防接種というのは一定の副反応が出ることは知られているものですので、十分 に有効性・安全性についての情報提供をして、同意をいただいた上で接種を受けていただ くことにしているわけです。  本事業につきましても、国産ワクチンの場合であってもその内容については御説明を し、十分に御了解をいただいたということについてきちんと接種を受ける方に同意をいた だいた上で、接種を受けていただくということです。これは医療機関で使っていただく資 料もこちらから提供しておりますし、そのような形で行っているわけです。これは輸入ワ クチンについても同様なことをしていきたいと考えております。 ○望月分科会長 川名参考人、何かコメントはございますか。 ○川名参考人 先ほど岡部参考人も言われましたが、輸入ワクチンを使用するかどうかと いう議論が行われたそもそものところは、確か今年の夏ぐらいで、そのころには病原性も それほど高くないということが既に分かってきた時期だったわけです。例えば、今後その 病原性が高くなってくる可能性がある、あるいは抗インフルエンザウイルス薬の効果が落 ちてくる可能性があるなど、いろいろな可能性がある中で、一つのオプションとして、あ るいは危機管理上の選択肢としてワクチンを輸入するという話になったと思います。  それを使うためには特例承認が必要であるということで、非常にスピーディに話が進ん だと思いますが、今のところは比較的1回打ちでいいということにもなりましたし、病原 性も比較的少ないということになりましたので、ある程度時間的な余裕が確保されたとい うことは言えると思いますので、有効性・安全性についてはじっくり検証するべきだろう と思いますが、病原性が変化するとか、あるいは抗ウイルス薬の効果が変わってくること のリスクについては独立した事象として今後も起こってくる可能性はあるわけですから、 これが採用できるような形で十分議論していく必要はあると思います。  また患者さんに対しての説明については、アジュバントが使われているといったような ことについても当然十分お話をして、例えば国産品でなければ打ちたくないという意見も あるでしょうし、そういったようなものは十分酌み取って接種していく体制をとっていか ないといけないと思っています。 ○望月分科会長 あと、アジュバントの差について笠貫委員から提起されましたが、それ については山口参考人お願いします。 ○山口参考人 アジュバントの専門家ではないのですが、総合機構の専門協議ではインフ ルエンザワクチンで初めてアジュバントを使う製剤ということで、かなり議論がありまし た。そのことを紹介させていただきたいと思います。確かにアジュバントを初めて使うと いうことで、この安全性については非常に議論になりました。ただし意見の中で、例えば アジュバントを使わない、要するにヘムアグルチニンだけの方を打つという選択肢はない かという御意見もあったのですが、当然、これはセットで承認を受けるというか、そのた めの安全性や有効性の評価をしていますので、それはあり得ないと。  ただし、この議論の中でもう一つあったのは、もちろん動物ですが、アジュバントの中 で発生毒性が見られたので、妊婦については積極的に推奨しないという結論になっており ます。 ○望月分科会長 ありがとうございました。参考人、お願いします。 ○庵原参考人 アジュバントに関しては、今世界で使われているアジュバントは3種類あ ります。一つはアルミ系のアジュバントです。これはDPTワクチンに含まれていますし、 日本ではB型肝炎ワクチンにもこのアジュバントは入っています。一応、世界的に広く認 められているアジュバントというのはアルミ系のアジュバントです。  二つ目は、同じGSKが出しているAS04と言いまして、これはアルミとリポポリサ ッカライドでも無毒化したリポポリサッカライドを混合したアジュバントで、これはサー バリックスというパピローマウイルスワクチンに使われています。これが二つ目の種類の アジュバントです。  三つ目のアジュバントは、今話題になっているインフルエンザワクチンのノバルティス とGSKが出しているアジュバントです。スクワレン系のアジュバントで、オイル・イン ・ウォーターで油性のアジュバントです。この3種類のアジュバントがありまして、今の ところ油性のアジュバントをどうするかというところが一つ問題です。今回のH1N1の 抗体に対して、血清のスタンダードがないので、出てきたデータを本当にメーカー間で比 べていいのかどうかという、ワクチンの抗原性を比べていいのかどうかという問題は置い ておきまして、出てきた数字だけを見た場合は、同じオイル・イン・ウォーターのアジュ バントですが、ノバルティスよりもGSKの方が数字はよさそうです。その代わり、副反 応も数字がよさそうだということです。結局は免疫原性と副反応はあるところまではつい ていくという、その結果かなとは思います。以上です。 ○望月分科会長 ありがとうございました。黒木委員、お願いします。 ○黒木委員 私は特例承認に関しては、この薬を認めていく状態にあると思っておりま す。ただ、それをきちんと国民全体に情報を提供していくことが一番大事なことと、冒頭 でも言いましたが、4月〜10月の間は国産のものが少し足りなくなるのではないかとい う危惧がありまして、国民が3種類を正確に理解して選べる状態が作られている体制が必 要だと考えています。  追加資料1-6のところに、医療従事者用説明資料、被接種者用説明資料、予診票があり ます。通常のワクチンとは違って、予診票の一番下の方に「今日の予防接種について、以 下の点に関する説明文を読みましたか」という項目がきちんと付いています。ただ、それ は「特例承認であること、アジュバントの使用、凝集について、アナフィラキシーについ て、ウシ成分の使用」、これを読みましたか「はい・いいえ」というのが付いているのみ です。  前に戻りまして、患者用資料を見ますと、この資料説明はなかなか分かりにくいと思い ます。もう少し実際には工夫が必要で、幾ら健康成人の人たちがメインで接種対象であろ うといえど、それが分かりやすくあること。そして乳幼児の予診票も付いていますので、 乳幼児を抱えてお母さんたちが行ったときに、この説明書では全く分からないと思いま す。  アジュバントの説明についても、きちんと免疫増強剤の主成分はトコフェロール、スク ワレン、ポリソルベートということは書いてありますが、そこには下線は引いてありませ んので、まだ工夫と説明の余地はあると思います。こういったことを今後検討していただ ければと思います。以上です。 ○望月分科会長 ありがとうございました。説明資料に関しては、事務局の方からお願い します。 ○審査管理課長 御指摘どうもありがとうございました。今御説明があった資料1-6です が、いろいろ御指摘を踏まえて修正してより良いものにしたいと思っております。最終的 には国の事業ですので、これを踏まえて、接種要綱の中に中身をもう少し分かりやすく組 み込みたいと思っております。  ウシ成分については先ほど川名参考人からございましたが、BSEの発生国につきまし ては、例えばウシの成分を使っている場合についてはリスク評価を行って、添付文書にそ の旨を記載させていただくということで、ほかのワクチン、あるいはほかの製剤について も同じような取り扱いをさせていただいているところです。  製剤については、先ほど有効期間は1年と申し上げましたが、1年半でしたので修正さ せていただきます。 ○望月分科会長 説明資料は、そういう面で修正をしていただくことにいたします。宗林 委員、お願いします。 ○宗林委員 尾身参考人に御意見を伺いたいと思います。GSKの添付文書を見ますと、 接種不適当者というものが、そのときの急性のものが書かれているだけで、例えば、高齢 者、基礎疾患がある者については実は何となく書かれているのかどうかも分かりにくいよ うになっているのですが、今までの優先対象者は国産のものを打っているというお話でし たが、これからでもその方たちが打つ可能性があるという前提に立った場合に、成人健常 者以外の優先対象者、例えばぜん息の基礎疾患があるとか、そういった方たちに対して新 しい輸入ワクチンの慎重投与であるとか、禁忌であるとか、あるいはもう少し国産をきち んと推奨するとか、そういったことが必要ではないかと思いました。それが一点です。  もう一点ありまして、9,900万人分の輸入ということの数字を決められた根拠と、今G SKとノバルティスと2社の輸入がかかっているわけですが、実際にはまだ二つ目の説明 を受けていないのかもしれませんが、リスクの差があるのかないのか。そして実際に輸入 を想定されている割合に違いがあって、どちらが多いのかというのは決まっているのかど うか伺いたいと思います。それは事務局の方にお願いします。 ○望月分科会長 尾身参考人、お願いします。 ○尾身参考人 宗林委員からの御質問で、各グループについて接種をどう考えるか。これ は先ほど岡部参考人の方から御発言がありましたが、今日の承認とは別に、これは実態的 にどうするかというのは別の会議でやるべきだと私も思います。  そのことを言った上で、私の考えは、先ほど川名参考人が言われましたが、我々、専門 家委員会の方では4月からずっとこの話はやっています。実は、ハイリスクグループとい うのは2つグループがありまして、特に妊婦の人とか、ハイリスクグループの中でも特に ハイリスクグループと、それ以外の高齢者とか、中高生ということで、そういうことを何 回も議論した上で、厚生労働省、あるいは政府のコンセンサスは最初のグループはもとよ り、2番目のグループの高齢者もできればはっきりいろいろな情報が分かっている国産品 を使ったらどうかというのがコンセンサスで、結果的には先ほども私が申し上げたよう に、多少の誤差はありますが、今の私の理解は、高齢者、小児も含めて、大体は賄えるだ ろうというのが私の判断です。したがって、これからこの承認が行われて実態的に使うと なると、健康成人者の中で一体どういう人が使われるかという議論になるのだと思いま す。結論になりますが、私は基本的には高齢者も含めて、いわゆる最初のハイリスクグル ープと言われた二つのグループについては、最初は重症者で、そちらが一番危険だったか ら、その者を守るというのは私は最初の哲学を守るべきだと個人的には思っています。 ○宗林委員 その場合に、添付文書を見て今の先生の御意見を伺いながら、添付文書自体 が適切かどうかという観点で御意見をお話していたのですが、「接種不適当者」というと ころが、急性的な「発熱をしている者」という言葉だけで、その後の方に妊婦などについ ては「接種は推奨されない」という言葉を使っていますが、高齢者には現状の健康状態を 十分に観察することとか、基礎疾患を持っている者についての特段の記述がなかったりす るので、この辺はもう少し改善をしていただいた方がよろしいのではないかと思って御意 見を伺った次第です。 ○望月分科会長 事務局の方から御説明をお願いします。添付文書に関して、健常人以外 の条件を入れるかどうか御説明願います。 ○審査管理課長 添付文書も含めまして、どちらかと言いますと分かりやすくということ かと思いますので、情報提供資材の方でいろいろ触れさせていただいておりますが、高齢 者等については先ほど申し上げたように、外国の情報や添付文書等も含めて情報提供は分 かりやすいものを作っていきたいと思います。 ○宗林委員 受けるときの説明書ではなくて、製剤そのものの添付文書のところを今お話 しているのですが。 ○審議官 基礎疾患を持つ方についての注意書がいるのではなかろうか、という御指摘だ と思うのですが。少なくとも、これまでの臨床試験や海外での使用成績を見る限り、そう いったものの制限をするべき根拠、データがないというところから、そこについては考え ておりません。しかし、妊婦については、先ほどのような懸念があることから添付文書に 書いていると。あとは実際の接種体制としては、基礎疾患のものについては既に打ってお りますので、それ以外のところにこのものが適用されるだろうというものです。 ○吉田委員 何か議論が空回りしているようですが、実は、オペレーションを考えてとい うことは、ハイリスク症例に対しては優先的に国産でいくというように、既に厚生労働省 としては動いているわけです。  今私たちが議論しなければならないのは、残った健常者を中心に海外のワクチンを与え ていくことが妥当かどうか。ということだろうと思います。  それからICの話がいろいろ出ています。この点についてちょっと公開の場では申し上 げにくいのですが、基本的にはマスコミ報道が先行したために、海外のワクチンは非常に 有毒であるとか、副作用が多いとか、副反応が多いということのみが喧伝されています。 しかし、庵原参考人が言われたように、免疫原性と副反応はパラレルなのです。ですから、 免疫原性が弱くなれば、副作用は減るけれども、免疫力は減るという説明をすることで、 私はICとして十分なのではないかと思います。 ○望月分科会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。あとは承認条件というの が、審議結果報告書に入っておりますが、これについては今までのお話を伺った限りでは、 1〜6までの範囲に収まっているような感じがします。  ただ、私は分からないのは「主な論点とそれに対する意見」は、承認条件ではなくて、 「努めるべきである」とか「すべきである」と書いてあるのですが、これはどういうこと を求めて「べきである」となっているのか、事務局から御説明をいただきたいのですが。 「努めるべきである」というのは、承認条件ではないのですよね。 ○審査管理課長 例えば、部会の審議結果報告書の「主な論点」の(1)には、安全性・有 効性で「情報収集に努めるべき」ということがございますが、これに関しては、承認条件 の[1]、製造販売後調査中に得られた情報は「データを早期に収集し、適正使用に必要な措 置を講ずること」ということで、基本的には承認条件の方に該当するところを振り分けて おります。 ○望月分科会長 承認条件に入っているので、これは主な論点とその意見をここにまとめ たということで、承認条件そのものではないということですね。ただ、内容としては承認 条件に入っているということですね。 ○審査管理課長 はい、そうです。 ○望月分科会長 そういう理解ですが、いかがでしょうか。承認条件を付けて、今回のは あくまでも特例承認であるということを理解したら、いろいろな問題がある程度納得でき るかというふうに私は考えるのですが。木津委員、お願いします。 ○木津委員 少し関係のない話で恐縮ですが、アジュバントの方のラベルですが、これが 今提案されているものなのでしょうか。と申しますのは、添付文書にも筋注の使用方法に ついても、中にガラス片、ゴム片がないことを確認するとなっているのですが、これまで ラベルを全部貼られてしまいますと、全く中を見れない状態で、目で見なさいということ が書かれてあるのです。大きい方は、この2種類のバイアルが置いてあって、どちらか分 からないのですが、少なくとも確認できるような形でラベル等も考えていただかないと、 せっかく注意文書を作られても、見ろと言われても無理な状態のような気がしたのです が、その点はいかがでしょうか。 ○望月分科会長 お答えはいかがでしょうか。もう少し実際に見られるような包装にして はいかがかと。 ○審査管理課長 実際に必要なインフォメーション等を書かせていただくと、そんな感じ になってしまいますので、混和して使うときに、もう一度見ていただくというような形で、 そこは対応していただくようにさせていただきたいと思っています。 ○望月分科会長 説明でそれを解決するとどのようになりますか。 ○審査管理課長 いったんアジュバントを吸い上げまして、大きな方の抗原バイアルに全 部入れて、振り分けてもう一度使っていただくというような形になろうかと思います。 ○木津委員 それで分かるのですが、この添付文書、接種用方法に関しては、両方の中身 でガラス、ゴム片がないことを確認するという条項が入っておりますので、これは確認は できないだろうという意見を述べさせていただきます。 ○審査管理課長 分かりました。誤解のないように考えさせていただきます。 ○望月分科会長 ではよろしく対応願います。ほかには問題ございますでしょうか。  それでは、皆さんの意見も大分出尽したということで、議決に入らせていただいてよろ しいでしょうか。  部会の報告を踏まえ、当分科会としても本品目について特例承認を可、再審査期間は8 年、原体、製剤ともに劇薬に該当し、生物由来製品に指定することが適当であると認める 旨議決したいと思いますが、よろしいでしょうか。  異議なしというように考えます。それでは、薬事・食品衛生審議会規程第3条第1項の 規定に基づき、当分科会の議決をもって、審議会の議決とし、厚生労働大臣に答申するこ とといたします。答申書の文案、その他の取扱いについては、私に御一任いただいてよろ しいでしょうか。ありがとうございます。それではそのようにさせていただきます。  続きまして、議題2に入ります。医薬品乳濁細胞培養A型インフルエンザHAワクチン H1N1「ノバルティス」の特例承認の可否、筋注用の生物由来製品及び特定生物由来製 品の指定の要否、製造販売承認の可否、再審査期間の指定並びに毒薬又は劇薬の指定の要 否についてです。本品目は、既承認の類似薬がない新有効成分を含有する医薬品に関わる 事項ですので、「薬事分科会における確認事項」第3項に基づき、医薬品第二部会での審 議結果を踏まえて、薬事分科会にて審議を行うこととなっております。初めに、部会での 審議結果等を御報告いただいた後、当分科会で審議をいたしたいと思います。それでは、 医薬品第二部会長の吉田委員から御説明いただきたいと思います。 ○吉田委員 資料2、乳濁細胞培養A型インフルエンザHAワクチンH1N1「ノバルテ ィス」筋注用の特例承認に係る報告書の内容について、概要を説明いたします。本剤は、 通常の発育鶏卵ではなく、MDCK細胞を用いて、ウイルス株として、2009年A型カリ フォルニア7(H1N1)ウイルス株より製造された抗原に、免疫補助剤として、MF59 アジュバントが添加された不活化表面抗原インフルエンザワクチンです。  本剤は、ドイツ及びスイスにおいて承認を取得しており、2009年12月25日時点にお けるスイス政府の発表では、スイスにおいて、約□□ドーズが医療機関に納入されており ます。2009年12月26日に開催されました、医薬品第二部会におきまして審議した際に は、本剤の安全性及び有効性、MDCK細胞を用いた培養、情報提供及び接種対象者等に ついて議論されましたが、新型インフルエンザH1N1の予防を効能とし、部会で議論さ れた個別の論点に対する意見について適切に対応がなされ、承認条件が付されることを前 提として、健康危機管理上の観点から、特例承認して差し支えないとの判断に至りました。  また、特例承認の可否につきましては、社会的関心が極めて高いことから、主要資料を 公表し、一般からの意見を収集し、これを添えて分科会における審議の参考とすることと されました。一般からの意見は、当日配付資料5として配付しております。以上、本剤の 概要を御説明申し上げましたが、詳細につきましては、事務局から説明をお願いします。 ○望月分科会長 ありがとうございます。では事務局から補足の説明をお願いいたしま す。 ○事務局 事務局から説明させていただきます。資料番号が先ほどと同じようにありまし て、参考資料5に必要データを抜粋してありますので、それを御覧ください。  まず、免疫原性について御説明いたします。これにつきましても、成人を対象とした国 内、海外臨床試験というのが表1に書いてありますが、そこの「国内」を御覧ください。 国内では0.25mLと0.5mLの2用量のデータがきておりますが、今回申請されております のは、0.25mLです。20歳〜60歳までのデータを見ますと、第1回目、第2回目というと ころがありますが、ここでは、20歳〜60歳については、0.25mLの投与でも、1回目の投 与で、ヨーロッパの基準は満たしていたということで、1回で抗体価が十分上がっていっ たということです。下の表2の2段目のV110-05試験(国内)と書いてある所を御覧いた だければ分かりますように、20歳〜60歳の間を10歳ずつの年齢区分に分けて解析いたし ますと、50歳〜60歳の抗体保有率が基準を満たさないということがありまして、20歳〜 50歳については、1回で良さそうだが、50歳〜60歳以上については2回必要ではないか というデータが得られております。  さらに、小児を対象とした国内臨床試験が、6か月〜19歳を対象として実施されてい ます。データを見ますと、やはり1回の接種だけでは抗体保有率が基準を満たさないとい うような状況です。小児については国内の臨床試験としてはこういったデータですが、海 外の臨床試験も合わせますと、基本的には2回目接種後では1回接種後よりも、抗体価が 上昇して、どの年齢層でも基準を満たすという情報もありますので、基本的には6か月〜 19歳までの者に対しては2回接種が必要であろうということです。  念のため付け加えますと、先ほど申し上げたように、20歳〜50歳では1回で良いだろ うとすることと、もう一つの選択肢として18歳〜50歳は1回で良いのではないかという 考え方が、部会でも議論されておりますが、海外の臨床試験データは18歳〜60歳でデー タを得ております。この試験結果を踏まえますと、国内の臨床試験結果と同様であったと いうことから、1回接種の対象としては、18歳〜50歳が適切ではないかというのが部会 での審議でした。以上により、18歳以上50歳未満では、本剤0.25mL1回接種、18歳未 満と50歳以上では、0.25mLの2回接種で免疫原性が期待できると考えています。  安全性につきましては、2ページ〜3ページにデータを載せてあります。表4〜表6と なります。これも先ほどと同様ですが、大まかに申し上げますと、局所反応の疼痛は、若 干国内のワクチンに比べると高い傾向がありますが、それ以外の有害事象は本剤で大きく 増加する傾向は認められていません。1回目接種と2回目接種の安全性の比較ですが、4 ページの表7になりますが、本剤では1回目と比べて2回目接種後の有害事象の増加は認 められていないという状況です。  GSK社製のワクチンは鶏卵培養によって製造されるワクチンでしたが、本剤について は細胞培養によって培養・製造されるワクチンであるということで、培養基材でMDCK 細胞というものがあります。MDCK細胞につきましては、MDCK細胞そのものが動物 の生体内で増殖する腫瘍原性が認められていますが、細胞の溶解液、抽出したDNAとい った細胞成分が、がんを引き起こすような性質、がん原性は認められていません。MDC K細胞につきましては、本剤の製造工程において、ろ過膜等により除去されるということ です。ノバルティス社製のMDCK細胞培養の場合と、鶏卵培養のワクチンがありますが、 安全性のプロファイルの比較をしたところ、大きな違いは見られないということです。こ うした状況を踏まえまして、部会ではMDCK細胞の使用は承認の可否に関わるような問 題ではないと確認されています。  用法・容量につきましては、先ほど申し上げたとおりです。  さらに製造販売後調査につきましても、先ほどのGSK社製と同様で、高齢者を対象と した臨床試験、さらには製造販売後の使用成績調査についても、計画中という状況です。  なお、部会での審議の際に、承認条件として付け加えるべきということで、品質の問題 が挙げられていました。追加で提出された資料2-5あるいは2-6ですが、品質については、 市販後製剤や治験及び治験薬の製造に用いられる、ウイルスシードの一部アミノ酸配列が 異なっているということで、部会においては承認条件として、シードウイルスの同等性を 確認することとされました。これを受けて治験薬の製造に用いたシードと、現時点で市販 製剤の製造に使用する予定とされているシードの抗原性は同等であったという結果が提 出されております。また、別のロットを使用することになっても、同様の確認を行うと回 答されています。  同じく承認条件にされた不純物のβプロピオラクトンの残留量の確認については、原薬 □ロットにおいては、定量限界の□μg/mL以下の結果が得られているということで、提 出された資料からは、専門家との確認も含めますと、問題ないというように考えられてい ます。それらの結果につきましては、部会においても最終的に承認条件を満たしているか どうか確認を行いたいと考えています。  情報提供資材につきましては、資料2-8ということで、先ほどと同様な形で、情報提供 資材が作成されています。  なお、実際にGSK社でも、カナダなどでの現地調査を行いましたが、ノバルティス社 の製剤についても、スイス、ドイツで調査が実施されています。これについて簡単に触れ させていただきます。資料2-3の調査報告のポイントです。スイスの医療機関での接種状 況については、接種を行っている2箇所の医療機関を訪問した。Celturaを含む、新型イ ンフルエンザワクチンの接種が医療現場で行われている状況を確認した。訪問した医療機 関において、特にCelturaでの重大な安全性や供給の問題はなかった。なお、スイスでは Celturaは単回投与用シリンジ製剤ということで供給されていたということです。  スイス連邦政府における承認審査及び安全対策を通じて得られたデータから、Celtura の安全性についても、季節性ワクチンでの副反応の内容、臨床試験での副反応の内容と同 等であるということ。現時点において、重篤な副反応のリスクは新型インフルエンザの合 併症のリスクを上回らないというスイス政府の評価の内容について、スイス連邦医薬品庁 及びスイス連邦公衆衛生局の職員から実地に確認をしました。  ノバルティスにおいては、市販後の副反応の情報の収集・評価体制についての調査を行 い、ノバルティスが必要な情報をスイス当局と違わずに入手、評価していることを確認し ました。現時点では、安全性上問題となる情報は確認されておりません。また、欧州で単 回投与用シリンジ製剤が供給されているということにつきましては、マルチドーズバイア ルの充填工場における品質管理の確認のスケジュールが遅れていたという状況(スイス承 認時)によるものであるということです。  ちなみに、我が国では医薬品医療機器総合機構から、充填工場を含む製造工程の品質管 理等について、実地調査を実施したところであり、大きな問題は報告されていません。  さらにこうした状況を踏まえまして、12月26日、部会審議が行われ、審議結果報告書 がまとめられました。先ほどと同様の文章が多いので、その部分は省きます。  用法・用量につきましては、先ほど申し上げたように、GSK社製のものとは異なりま す。3歳以上と18歳未満で2回、50歳以上も2回ということです。3歳以上と用法・用 量に設定したというのは、3歳未満につきましては海外での使用実績がまだないというこ ともありまして、そこについては接種対象から除くということです。  承認条件につきましても、先ほどとほぼ同様ですが、承認条件の[5]については、細胞培 養時のシードウイルスの同等性及び原薬に残留するBPL濃度について確認することと いうのは、ノバルティス社製特有の条件ということになっています。GSK社製にあった 凝集の問題などその辺については、承認条件はありません。  主な論点とそれに対する意見につきましても、安全性と有効性については基本的に同じ です。(2)のMDCK細胞を用いた培養についてということで、MDCK細胞には腫瘍原 性が認められているが、製造工程で除去されること、MDCK細胞の溶解液、またはDN Aにはがん原性が認められなかったこと、鶏卵培養のインフルエンザワクチンと細胞培養 のインフルエンザワクチンで、副反応の発現頻度等に大きな違いがないことから、承認の 可否に関わるような問題ではないと考えられるという意見をまとめていただいています。 その次の情報提供及び接種対象者についても基本的には同じです。  パブリックコメントにつきましても、先ほど説明させていただきましたので、今回は省 略させていただきます。以上です。 ○望月分科会長 ありがとうございました。ただ今の説明につきまして、御意見、御質問 等、いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○木津委員 この製剤17回分で初回の薬液採取から6時間以内ということになってい て、その根拠がチメロサールの保存ということになっているのですが、先ほどの製剤等と 比べますと、チメロサールが特に少ないということはないのですが、その6時間となった 根拠について、少し教えていただけますでしょうか。 ○審査管理課長 御説明させていただきます。ドイツの承認の関係で、その際に示された データの中で、一部の品種について増殖が見られたということで、使用実態から見て、6 時間でいいだろうというようにドイツでは承認されたと聞いております。ただ、その上が り方につきましても、EP、欧州の薬局方の試験法の規格には入っているというように聞 いております。6時間ですと、なかなか使い勝手が難しいところがあるのではないかとい うことで、今現在、日本の薬局方に基づく保存効力試験を実施中でございまして、今7日 あるいは14日までのデータですが、規定どおりのリダクション、減衰をしておりますの で、最終的に確認された場合については、国産と同じように24時間まで大丈夫という形 で対応させていただきたいと考えております。 ○望月分科会長 ありがとうございました。ほかには御意見等はありますか。 ○松本委員 ワクチン接種後の重篤な副作用の発現頻度と死亡症例は、因果関係が有る無 いに関係なく、反響が非常に大きいわけですが、先ほどのGSKのワクチンの場合は、約 3,150万ドーズ中、死亡7例、重篤副作用4例。大体日本で今まで接種されているワクチ ンと同じぐらいの量、同じぐらいの対象人員に対して、死亡と重篤な副作用の発生頻度が 極めて低いので、かえって心配だったのですが、この場合も、審査報告書の44ページの 表3というのがありますが、合計109の臨床試験における、有害事象の数ということなの ですが、接種総数は幾らか分かりますか。非常に数が多いようなのですが。 ○望月分科会長 いかがでしょうか。 ○審査管理課長 44ページの表3ですが、臨床試験が109行われていて、それを単純に 足した数かと思いますが。N数は、アジュバント入りのものが2万5,929、アジュバント なしが7,798です。 ○松本委員 これは有害事象の例数でしょう。そうではなくて総数ですか。 ○審査管理課長 接種総数です。 ○松本委員 総数としては、ものすごく高いですね。死亡症例が実数で185。下の*1に 書いてありますが、例数は185という数字になっているのですが、そうだとすると、日本 のと比べても大変高い値のような気がするのですが、そうであれば、このワクチンを打っ てこれだけ死亡すれば、今の国産ワクチンどころではない反響だと思うのですが、それで よろしいのですか。 ○望月分科会長 事務局、いかがでしょうか。 ○事務局 御説明いたします。この試験結果は、対象になった試験は、季節性ワクチンの 臨床試験のデータ等なのですけれども、対象者がかなり高齢の方が多かったということ と、臨床試験ですので、通常自発報告で得られる情報と違って、かなり漏れなく拾ってい るので数が多くなっているということで、申請者の方から説明をされております。 ○松本委員 しかし、日本で1,600万ですよね。1,650万ぐらいの人に接種していて、107 ですよね。それについて、たとえそうだったとしても、これだけ高いと、先ほどのGSK のはちょっと低過ぎてかえって心配なのですが、この辺は信頼性が置けるのですか。イン フォームド・コンセントの話もありましたが、こういうことを話した上で、接種するかど うするか選択してもらうのですが、この数値そのものが余りにもいい加減だと、なかなか その辺は難しいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○吉田委員 これはこのインフルエンザワクチンに特化した話ではなくて、MF59をア ジュバントとして使ったワクチンと、そうでないワクチンの比較で、この図表の目的は、 MF59を使用しても使用しなくても、有害事象に差がないということを示すためのもの です。今回のインフルエンザワクチンによって死亡した患者さんがこれだけいるという話 ではないです。 ○望月分科会長 ということだそうですが、いいですか。 ○松本委員 いずれにしましても死亡症例が非常に多いので、その辺が大丈夫であればい いと思います。 ○望月分科会長 その点は事務局の方で整理をして下さい。 ○庵原参考人 少し情報を追加させてください。EUでは、今高齢者向きに、MF59の 入った季節性インフルエンザワクチンが認可されています。ですから、その辺のデータが 入ってくると、これはある年齢層より高い人たちが対象となっているため、こういうデー タが出てきた可能性がありますので、その辺を確認していただく必要があると思います。 以上です。 ○望月分科会長 では確認をお願いします。 ○松本委員 そうだとしても高齢者だとしても、今の日本の国産の高齢者でこれだけ反響 をを受けているのですから、これから大変ですよね。その辺を確認してください。 ○望月分科会長 事務局、よろしいでしょうか。よろしくお願いいたします。 ○審査管理課長 分かりました。 ○望月分科会長 ほかには委員の先生方から御意見ございますか。ただ今の事項を確認し ていただくということ、あとは審議結果報告書にありますような承認条件を付けるという ことが前提ですが、そういう前提の下で、議決に入らせていただいてよろしいでしょうか。 ○松本委員 もう一つ、副反応として、自己免疫性疾患の頻度が非常に高いようなのです が、添付文書にそういうことが起こるということを記載しなくても大丈夫ですか。これぐ らい高いと心配なのですが。その辺、尾身参考人いかがですか。 ○望月分科会長 この点についてはいかがでしょうか。 ○尾身参考人 今の松本委員の死亡例と自己免疫疾患のことも含めて、最終的に承認が行 われたとして、先ほどのインフォームド・コンセントに何を含めるかということですが、 二つ難しいところがあって、一つは国内と向こうのサーベイランスのセンシティビティが 違うといったことがあります。単純な比較ができないということもある。そうすると、今、 直接に比較できるのは、国内での100例のものだけですよね。一つは冒頭で申し上げまし たが、情報の量が限られているということは、絶対国民には知らせる必要があると思いま す。  それから限られた情報の中でも、やはり全体的な厳しい副作用はないけれども、軽度の ものについてはこれだけあるというデータがあるわけですから、そういうことも含めて、 国民にきちんと知らせることが大事だと思います。新たな宿題が事務局側に出たわけです が、そういうことが分かり次第、しかも先ほど黒木委員からお話があった、データを生で やっても国民は分からないので、これを一般に分かるように、科学性は余り落とさないで、 しかし分かるように説明しないと、幾らやっても国民は混乱するだけですから、事務局は いつもやられていると思いますが、今回は特に大事だと思うので、どれだけの情報でこう いう判断をしたと。これからもいろいろ新しいことが起こる可能性があるわけですが、そ ういうこともしっかり情報の中に入れて開示するということが必須だと思います。 ○審査管理課長 どうもありがとうございました。自己免疫疾患群につきましても、後ほ どどのような年齢構成の試験だったかというところも確認させていただいて、適切な情報 提供を検討させていただきたいと思います。 ○望月分科会長 いかがでしょうか。そういうことも含めて、第二部会では御検討いただ いたということだと思います。ほかには先生方から御意見はございますか。 ○宗林委員 先ほどお尋ねした件のうちの一点ですが、輸入の割合がもう決まっているの かどうか、全体量も決定されているということであるのかどうかが一点と、先ほど添付文 書に根拠がないから、また、優先の接種者は済んでいるから、正常の健常人に対して輸入 ワクチンの承認をということでしたが、一般の国民はどういう方がこれから受けるかは分 からない部分もあると思いますので、医療機関への情報という観点では、今回、輸入ワク チンを正常な健常者に勧めること、あるいはそれ以外の方には本当に慎重投与が必要なこ とを含めて、データが足りないということもありますので、それも併せてしっかり情報提 供をお願いしたいと思います。 ○望月分科会長 事務局からただ今のコメントにお答えはありますでしょうか。 ○結核感染症課長 まず、輸入量につきましては、御質問に答えていなかったのでお答え いたします。当初、国内産が2,700万ということを前提として、優先接種対象者が5,400 万人いて、この方たち全員に打てるように、そして、それ以外の健康成人もできるだけ我 々はワクチン接種を提供したいと考えておりましたが、その時点で、健康成人の少なくと も3割は打てるようにということで、合計で7,700万人分を前提に議論をしたわけです。 その後、接種回数の見直しに伴って回数が変更になりましたが、実際の使用については、 また輸入をどれぐらいという議論は、既に契約のことがありますので、そのことは別の議 論にしたいと思います。冒頭に当日配布資料2で御説明した政府の対策本部の方針であり ますように、これから優先的な接種対象者以外の方についての接種を進めていくことにし ておりまして、この中でも特に輸入ワクチンをこの方たちについては使うと。ほとんどは 輸入ワクチンで、一部国産が使えることになりますが、輸入ワクチンを使うということで すので、これまで以上に、十分な情報提供、個別の接種の場面における、十分な情報提供 に努めてまいりたいと思います。 ○望月分科会長 ありがとうございました。 ○宗林委員 すみません。GSKとノバルティスファーマの2社は、同じ量が入ってくる ということなのですか。割合を前から聞いていたので。 ○血液対策課長 輸入ワクチンの輸入量ですが、グラクソ・スミスクライン社が7,400万 回分、ノバルティスファーマ社が2,500万回分を考えています。 ○岡部参考人 先ほども申し上げましたし、尾身参考人からも発言があったと思うのです が、ここで承認をされたものをどのようにオペレーションするかというものは、別の専門 委員も含めたところで検討していただきたいというのがお願いであります。 ○望月分科会長 そういうことで、一応聞きたいということだけですが、ここで決めると いうことではございませんので御了承願います。ほかには御意見ございますか。それでは 先ほどの承認条件の下に、議決に入ってよろしいでしょうか。 ○結核感染症課長 今、岡部参考人からの御意見がありましたが、私ども政府としての決 定としては、できるだけ国民には接種機会を提供したいと考えておりまして、それに基づ いて対策本部としての決定をしているということについては、再度申し上げたいと思いま す。 ○望月分科会長 それでは議決に入ります。部会の報告を踏まえ、当分科会としても、本 品目について、特例承認を可、再審査期間は8年、原体、製剤ともに劇薬に該当し、生物 由来製品に指定することが適当であると認める旨、議決したいと思いますが、よろしいで しょうか。  異議なしと認めます。それでは薬事・食品衛生審議会規程第3条第1項の規定に基づき、 当分科会の議決をもって審議会の議決とし、厚生労働大臣に答申することといたします。 答申書の文案、その他の取扱いについては、私に御一任いただいてよろしいでしょうか。 ありがとうございます。それではそのようにさせていただきます。以上で、本日の議事は 終わりましたが、事務局から連絡事項等があればお願いいたします。 ○審査管理課長 それでは事務局から連絡事項等を御説明させていただきます。新しい抗 インフルエンザ薬で注射剤である一般名がペラミビルの製剤につきましては、先月開催さ れました医薬品第二部会で承認して差し支えないとされました。医薬品第二部会より、分 科会報告等については、事務的な手続を速やかに行って対応するようにというような意見 をいただいた品目でございますので、分科会の先生方に文書により報告させていただき、 御了解いただいたことから、13日付けで承認させていただきましたので、御報告させて いただきます。  次回の薬事分科会ですが、3月の開催を予定させていただいております。以上です。 ○望月分科会長 ありがとうございます。本日の議題はすべて終了いたしましたが、何か 追加の御発言等ございますでしょうか。よろしいですか。それではこれで薬事分科会を閉 会させていただきます。本日は長い時間ありがとうございました。 ( 了 ) 連絡先: 医薬食品局 総務課 課長補佐 高林(内線2714)