09/12/28 第143回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会議事録 第143回 労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 1 日時  平成21年12月28日(月)11:00〜 2 場所  厚生労働省議室(9階) 3 出席者   委員   公益委員 :鎌田委員、柴田委員、清家委員        労働者代表:小山委員、長谷川委員、古市委員        使用者代表:秋山委員、市川委員、高橋委員   事務局  森山職業安定局長、山田職業安定局次長、鈴木需給調整事業課長、        鈴木派遣・請負労働企画官、浅野主任中央需給調整事業指導官        大塚需給調整事業課長補佐、小園需給調整事業課長補佐、        小野寺需給調整事業課長補佐、高西需給調整事業課長補佐、        鶴谷需給調整事業課長補佐 4 議題  (1)今後の労働者派遣制度の在り方について ○清家部会長 ただいまから、第143回労働力需給制度部会を開催いたします。本日は、欠席者 はいらっしゃいません。本日は、今後の労働者派遣制度の在り方についてご審議いただきたいと 思います。それでは、議事に入ります。  前回のこの部会におきまして、年内の取りまとめを前提に、できればこの案の内容で取りまと めていただけないかというお願いをしたところです。そのうえで、どうしても労使で意見が食い 違う部分については、各側意見を付すというような形で、報告案を修正したうえで、いま一度ご 議論いただきたいとお願いしていたところです。  本日は、各側から事務局にご提出いただきました少数意見を部会報告案に付したものを提示さ せていただいています。本案について最終的にご確認いただいたうえで、部会報告としての取り まとめをしていただきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。それでは、 まず事務局より部会報告に付された各側意見について読上げをお願いいたします。 ○大塚補佐 それでは、資料1の部会報告案に付されました各側意見について、読上げをさせて いただきます。  まず、2頁をお開きください。「登録型派遣の原則禁止」に付された使用者側意見について読み 上げます。「なお、使用者側代表委員から、暫定措置を講じる場合に、経済状況や労働者のニーズ も十分考慮に入れた上でその範囲や期間の在り方を検討すべきことに加え、そもそも登録型派遣 は、短期・一時的な需給調整機能として有効に機能しており、これを原則として禁止することは 労働市場に混乱をもたらすことから、妥当ではないとの意見があった。」。  続きまして、2番目の製造業務派遣の原則禁止に付されました使用者側代表の少数意見につい て読み上げます。「なお、使用者代表委員から、まずは真に問題がある分野を的確に見極める必要 があるところ、製造業務全般への派遣を原則禁止することは、国際競争が激化する中にあって、 生産拠点の海外移転や中小企業の受注機会減少を招きかねず、極めて甚大な影響があり、ものづ くり基盤の喪失のみならず労働者の雇用機会の縮減に繋がることからも反対であるとの意見があ った。」。  続いて、3頁の6番「違法派遣の場合における直接雇用の促進」の部分に付されました使用者 代表意見です。3頁の真ん中より下です。「なお、使用者代表委員から、仮に規定を設ける際には、 派遣先の故意・重過失に起因する場合に限定した上で、違法性の要件を具体的かつ明確にする必 要性があることに加え、そもそも雇用契約を申し込んだものと見なす旨の規定を設けることは、 企業の採用の自由や、労働契約の合意原則を侵害することからも反対であるとの意見があった。」。  続いて4頁です。IIの1番に付されました労働者代表意見が2点ありますので、読み上げます。 「なお、労働者代表委員から、その他の検討項目とされている派遣先責任の強化や派遣先・派遣 先労働組合への通知事項の拡大、及び特定労働者派遣事業の届出制から許可制への移行などにつ いても、速やかに改正法案に盛り込んでいくべきであるとの意見があった。また、労働者代表委 員から、登録型派遣禁止の例外とされている専門26業務について、見直しの検討が必要であると の意見があった。」。以上です。 ○清家部会長 ありがとうございました。ただいま、事務局から各側の少数意見を付した部分に ついて読み上げをしていただきました。それぞれの各側の意見について、何か補足的な趣旨説明 等がありましたら、よろしくお願いします。 ○秋山委員 今回も、公益の先生方と事務局のご協力により、労使双方の少数意見もくみ上げて いただきまして、部会としての報告書をまとめていただきましたことに、感謝いたします。そし て、報告の最後の部分にも「必要に応じて見直しを行うことが適当である」と記載されています ので、今後この規制による特に次の3点への影響を留意していただきたいと考えています。  1点目は、派遣制度のそもそもの趣旨である停滞する産業から発展する産業への労働力の流動 化、即ち需給調整機能が阻まれるのではないかという点です。2点目は労働側がおっしゃるよう に、いま派遣で働いている人たちの雇用が安定するのか、そして3点目は、企業及びそこで働く 労働者への影響です。特に体力の弱い中小企業への影響及び、中小企業で働く労働者の影響等を よくよく調査し、適宜必要な見直しをしていただきたいと考えています。 ○清家部会長 ありがとうございます。ほかに何かご意見はありますか。 ○市川委員 派遣についてのイメージといいますか、一般的に国民がおそらく抱いておられるで あろうイメージは、大企業、そしてそこに派遣をされる派遣労働者というイメージではないかと 思うわけです。まさに今朝の朝日新聞の社説で、全くステレオタイプのイメージから、企業側の 意見はこういうことではないかというような書きぶりになっているわけです。私がこの部会で 縷々申し上げていますのは、そういったイメージと全く違う観点から申し上げているわけです。 そういった観点が、この社説において全く取り上げられていないということについては、私とし ては大変不満に考えています。つまり1つは、派遣労働者の側から見て、ワークライフバランス の実現をするために、この派遣という形をうまく活用しておられる方が、働き方の多様化に伴っ て大勢おられるのだと。そういう方々が、今回の原則禁止で相当影響を受けるのではないか、あ るいは選択肢の1つとしてこの派遣という働き方ができなくなるという問題があります。  2つ目は、中小企業にとっての派遣の有効性が非常に大きな影響を受けるということです。中 小企業の場合には知名度がないということから、なかなか直接雇用で人を募集しても思うような 人数の採用ができないという問題や、あるいはフルーツ加工のような場合に季節的に相当必要な 人手の変動があるというようなことも申し上げました。それから、めっき屋さんの事例で申しま すと、とにかく在庫を持たない時代になってきていますので、発注量が非常に差し迫った時期に しかわからないという状況の中で、派遣労働者の人手というものが非常に有効になっていること を申し上げてまいりました。  従って、中小企業、そもそも派遣制度は、日本においては外資系企業に対する派遣労働者とい うことから始まっていまして、徐々に日本の大企業が派遣労働者を活用することになり、さらに 人材派遣会社がPR、営業活動をして、その結果中小企業も多く派遣労働者を活用させていただく という時代になってきています。その中小企業にとっては、1社だけではなかなか募集、採用が ままならないというときに、派遣会社がそこのところを1社だけの需要ではなくて、まとめて顧 客である中小企業を何十社か何百社かわかりませんが、そういったところをまとめて募集、採用 という機能を果している。さらに、いろいろな細かい手続き、給料の支払いや保険、事務などを まとめて派遣会社がその機能を果している。あるいは、マッチング機能ということで、例えば食 品会社であればこれは衛生観念のある方でないと、工場で働くことは好ましくないというような マッチング機能も、派遣会社が大勢の登録あるいは常用雇用の場合もあるでしょうが、大勢の派 遣労働者の中から適切な能力あるいは適切な職業観がある方を適切な所に派遣していただくとい うような機能があることを縷々申し上げてまいりました。  こういった観点は、中小企業にとっては非常に大きな論点です。従って、ステレオタイプ的な 派遣についての大企業の問題であるというような考え方ではなくて、現実にそういう中小企業、 特に零細企業に派遣労働者が非常にうまい形で活躍をしていただいている。そして、また派遣労 働者にとっても、それを自らのワークライフバランスにうまく活用をしていただいているという 論点を、是非国民全体の問題としてお考えをいただきたいと思います。ステレオタイプ的なもの の考え方だけでは足りないのだということを、私は縷々訴えてきたつもりです。そういう意味で、 今回この1と2に使用者側意見を出させていただいたわけですが、大変な公益委員の努力により まして、製造業の原則禁止については、専門職という考え方から常用雇用を例外にするというよ うな考え方に改めていただいたということや、施行期日については3年というかなり長い期間、 さらに9の暫定措置においてさらに2年ということで、合計5年の猶予期間が設けられたところ ですので、この期間を十分に活用して中小企業が困らないように、あるいはまたその中小企業で 現に働いておられる派遣労働者の方々が困らないようなことを同時に考えていきながら、そうい う方々のご意見を私は声なき声と申し上げたのですが、なかなか大新聞の社説には載ってこない というような事情があります。  そういう中で、今朝の毎日新聞では、高齢者がこの労働者派遣法が改正されると大変お困りに なるというような論点の記事がありました。これは、高齢者に限ってそういう論点を紹介してい ただいたわけですが、高齢者に限らず働く派遣労働者のワークライフバランスという論点もある かと思いますので、そういった論点を是非国民の側からもいろいろな形で表明をしていただき、 そうした世論を受けてこの猶予期間の間に是非また議論を煮詰めていけたらと考える次第です。 以上です。 ○清家部会長 ほかに何かございますか。 ○小山委員 これまでも再三申し上げてまいりましたが、今回の派遣法の見直しは、どうして見 直しをしなければならなかったのかということを、改めて考えていただきたいと思います。景気 が悪化をすると、たちまち失業が増える。そこでは、直接雇用をしていない使用者は、本当に簡 単に契約を打ち切ってしまう。そこで働く派遣労働者の保護が十分されていない。それは、そも そも派遣という働き方自体が雇用責任を負わないで、人を自由に必要なときだけ使って、必要が なくなったらすぐに切ることができる派遣という制度の本質だったわけです。これが、1985年の 派遣法制定以来、ずっと規制の緩和ということで原則自由にし、そして本当に経営者にとっては 使い勝手のいい制度として、それは経営側の皆さんにとっては大変有効な制度だったのだろうと 思います。  その裏側では、派遣労働者がいかに無権利に、そしてまた雇用の不安にさいなまれながら、あ るいは今後40、50と年を重ねるごとにどういう生活設計が立てられるのか、そういう未来に対す る期待ももてないまま働かざるを得ない、こういう働き方がこの派遣労働の本質だったわけです。  このことが、昨年からの急激な失業の増大の中で、やはりこの本質的な派遣制度自体を見直さ なければいけない、これが世論だったわけです。そして、そこで働く派遣労働者の声であったわ けです。ですから、今回この派遣法を大きく改正、見直しをされていくことは当然必然であった とは思うのですが、とはいえ決して十分に保護策がこの中で確認し得たとは思っていません。ま だまだ多くの課題があります。とりわけ派遣先責任の問題など、多くの問題を残しているわけで、 このことが今後しっかりと見直しをされ、本当の意味で派遣労働者が安心して、そして将来に対 する安心ももって働けるようなそういう制度に変えていかない限りは、日本の働く者、そして結 果的には日本の経済の発展にも繋がるわけです。是非そうした意味で、今後ともしっかりとした 見直しをしていくべきだということを、最後に申し上げておきたいと思います。 ○古市委員 取りまとめに当たってご尽力いただいた皆さんの努力に感謝を申し上げたいと思い ます。そのうえで市川委員にお尋ねなのですが、市川委員の所属している中小企業の団体に、派 遣の事業者の中小事業者のグループが加盟しておられるのでしょうか。 ○市川委員 派遣会社という意味ですか。それは、私どもの会員にはなっていません。 ○古市委員 そこでお願いですが、この取りまとめの後もしっかり積残しの課題について議論を していこうということですので、経済団体の皆さんや中小企業団体の皆さんは、是非この派遣業 の会社の業界団体をしっかりつくっていただきたいと思います。いまでも業界団体はあるのだと お聞きしていますが、派遣事業を行う許可を受けたり、登録をしている事業者は8万社を超えて あるわけで、業界団体に加盟している派遣事業者は、7、800社の水準だと聞いていまして、非常 に少ないということです。そのようなこともあって、派遣事業者の中には、社会的批判を浴る今 回の問題で、こういう議論をせざるを得なくなったような行儀の悪い事業者が非常にたくさん存 在しているわけです。是非市川委員の所に限らず、経済団体の皆さん、中小企業団体の皆さんに 頑張っていただいて、事業者をしっかり組織して、社会的に信頼をされるような事業活動を行う 啓蒙を是非行っていただきたいとお願いしたいと思います。 ○清家部会長 ほかに何かご意見はありますか。 ○市川委員 いまの論点は、私は賛成です。まさに、そのために必要なこと、ということで私は 適正化パッケージの提示をさせていただきました。適正化パッケージの中にも、5で派遣事業者 団体による業界自主規制の強化支援を、ということを書かせていただいたわけです。そして、さ らに派遣元責任者講習を国家試験という形にするべきではないかと申し上げたのも、まさにいま おっしゃられた8万有余の事業者の中に非常に行儀の悪い所があるのではないでしょうかと。そ ういった所をきちんと淘汰をし、きちんとした派遣事業を行うことが必要なのではないかという ことを、私も縷縷申し上げてきたわけです。いまのご意見には、私としては全く賛成です。 ○清家部会長 ほかに何かご意見はありますか。よろしいですか。それでは、補足的な趣旨説明、 あるいはご意見等は以上とさせていただきます。今回まで9回に渡ってご審議をいただいたとこ ろですが、私としてはこの報告案をもって、当部会として取りまとめたいと考えていますが、お 認めいただけますでしょうか。 (異議なし) ○清家部会長 ありがとうございます。それでは当部会としては、この報告案の内容で、労働政 策審議会から厚生労働大臣へ答申すべきという結論に達した旨、この後開催されます職業安定分 科会へ報告したいと思います。それでは、事務局は職業安定分科会への報告文案を配付してくだ さい。 (報告文案配付) ○清家部会長 よろしいですか。それでは、ただいま配付いただいた報告文案で職業安定分科会 へ報告することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。 (異議なし) ○清家部会長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。では、ここ で森山職業安定局長より発言があるということですので、お願いします。 ○森山局長 職業安定局長の森山です。一言御礼のご挨拶をさせていただきます。委員の皆様方 には、10月から本日まで短期間でしたが、9回にわたり精力的にご審議をいただきました。また、 本日は報告をまとめていただきまして、誠にありがとうございました。部会長はじめ委員の皆様 方には、改めて深く御礼を申し上げる次第です。  今後事務局としては、早期の法案の提出を目指しまして、この報告を踏まえこれから法案の作 成作業に着手をさせていただきまして、年明けにも法律案要綱でまたご審議をいただきたいと思 っています。引続きご指導のほどよろしくお願い申し上げたいと思います。簡単ですが、御礼の ご挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。 ○清家部会長 どうもありがとうございました。ほかに何かありますか。よろしいですか。それ では、本日の部会は以上とさせていただきますけれども、私からも一言、委員の皆様に御礼を申 し上げたいと思います。以前にも申し上げましたが、こういった雇用に関する規制というのは、 基本的には労使が合意したもとでつくられることが、法律を最終的に施行するうえでも重要だと 思っています。今回、三者構成の審議会において、この答申案が取りまとめられたことは、私も 非常にありがたく思っています。労使双方の委員、それから公益の委員の皆様のご協力に、私か らも改めて御礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。  それでは、事務局より何かありますか。 ○大塚補佐 次回の部会については、現在日程調整中です。決まり次第、事務局よりご連絡させ ていただきます。 ○清家部会長 それでは以上をもちまして、第143回労働力需給制度部会を終了いたします。な お、本日の署名委員は、使用者代表市川委員、労働者代表長谷川委員にお願いいたします。それ では、委員の皆様どうもありがとうございました。   照会先    厚生労働省職業安定局需給調整事業課調整係    〒100-8916東京都千代田区霞が関1−2−2    TEL03(5253)1111(内線5747)