09/12/25 第54回厚生科学審議会科学技術部会議事録 ○ 日  時 平成21年12月25日(金)14:00〜16:00 ○ 場  所 金融庁 共用第2特別会議室(12階) ○ 出 席 者   【委  員】永井部会長         石井委員   井部委員   岩谷委員   木下委員         桐野委員   佐藤委員   末松委員   西島委員         廣橋委員   福井委員   松田委員   南(砂)委員         宮田委員   宮村委員   望月委員 ○ 議  題   1.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについて   2.ヒト幹細胞臨床研究について   3.今後の厚生労働科学研究について   4.その他 ○ 配布資料   資料1−1.厚生労働科学研究に関する評価指針の見直しについて(案)   資料1−2.厚生労働科学研究開発評価に関する指針 新旧対照表   資料1−3.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(案)   資料2.  ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について   資料3−1.今後の厚生労働科学研究について   資料3−2.科学技術部会における厚生労働科学研究の方向性等に関する         主な意見(平成21年4月以降)   資料3−3.「平成22年度概算要求における科学技術関係施策の優先度判         定等について(平成21年12月9日科学技術政策担当大臣総合科         学技術会議有識者議員)」における厚生労働科学研究の方向         性等に関する指摘事項等(抜粋:個別的な指摘等も含む。)   資料4−1.国立精神・神経センター神経研究所及び精神保健研究所の評         価結果等について   資料4−2.遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について   参考資料1.厚生科学審議会科学技術部会委員名簿   参考資料2.厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(平成20年4月1         日厚生労働省大臣官房厚生科学課長決定)   参考資料3.国の研究開発評価に関する大綱的指針(平成20年10月31日内         閣総理大臣決定)   参考資料4.ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資         料   参考資料5.厚生労働科学研究費の概要   参考資料6.今後の中長期的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委         員会中間報告書 概要   参考資料7.障害者自立支援調査研究プロジェクトの補助金不正事案を踏         まえた再発防止策について ○坂本研究企画官  傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たっては、既にお配りしており ます注意事項をお守りくださるようお願いいたします。  定刻になりましたので、ただ今から「第54回厚生科学審議会科学技術部会」 を開催いたします。委員の皆様にはご多忙の折、お集まりいただき御礼申し上 げます。  本日は、今井通子委員、金澤一郎委員、川越厚委員、橋本信夫委員、南裕子 委員、森嶌治人委員からご欠席のご連絡をいただいております。少し遅れてみ える先生がいらっしゃいますが、委員22名のうち出席委員は過半数を超えてお りますので、会議が成立することをご報告いたします。  次に委員の変更についてご報告いたします。松本恒雄委員と竹中登一委員が 委員を辞任され、新たに協和発酵キリン株式会社代表取締役社長の松田譲委員 にご就任いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。  続きまして本日の会議資料の確認をお願いいたします。配付資料の一覧が議 事次第にあります。資料1-1「厚生労働科学研究に関する評価指針の見直しにつ いて(案)」です。資料1-2が「厚生労働科学研究開発評価に関する指針 新旧対 照表」。資料1-3が「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針(案)」です。 資料2「ヒト幹細胞臨床研究実施計画の申請について」。資料3-1「今後の厚生 労働科学研究について」。資料3-2「科学技術部会における厚生労働科学研究の 方向性等に関する主な意見」。資料3-3は1枚紙の関連した資料です。資料4-1 として「国立精神・神経センター神経研究所及び精神保健研究所の評価結果等 について」。資料4-2「遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告につい て」となっております。  参考資料として、1が委員名簿、参考資料2「厚生労働省の科学研究開発評価 に関する指針」、参考資料3「国の研究開発評価に関する大綱的指針」、参考資料 4「ヒト幹細胞を用いる臨床研究実施計画の申請に関する参考資料」、参考資料5 「厚生労働科学研究費の概要」、参考資料6「今後の中長期的な厚生労働科学研 究の在り方に関する専門委員会中間報告書 概要」、参考資料7「障害者自立支援 調査研究プロジェクトの補助金不正事案を踏まえた再発防止策について」とな っております。資料の関係はよろしいでしょうか。それでは部会長、議事の進 行をよろしくお願いいたします。 ○永井部会長  それでは議事に入ります。最初に「厚生労働省の科学研究開発評価に関する 指針の見直しについて」です。事務局よりご説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  それでは厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針の見直しについて、ご 説明いたします。関係する資料は、資料1-1、1-2、1-3の3点。それから参考資 料の3と7です。参考資料3は見直し後の「国の研究開発評価に関する大綱的 指針」です。参考資料7を先にご覧ください。こちらは厚生労働科学研究では ありませんが、厚生労働省で実施していました障害者自立支援調査研究プロジ ェクトで不正があり、「補助金不正事案の再発防止策の検討に関する会議」が設 けられ、外部有識者のご意見を伺い、再発防止策の取りまとめが行われたもの です。  参考資料7の1頁の真ん中より少し上のところに記載がありますが、厚生労 働省の中にいくつかある調査研究補助金の中に、厚生労働科学研究費補助金も 記載されております。厚生労働科学研究費補助金は今回問題となったものでは ないのですが、今回問題のもの以外についてもこの再発防止策を原則的な考え 方として、必要な見直しを行うこととされているところです。  参考資料7の一番最後、総括表の一番下が厚生労働科学研究費の関係です。 「○」が既に対応しているもので、「→○」が今後対応するというものです。テ ーマ設定についての外部意見聴取、外部委員の参画による採択の事前評価、行 政官の採択への不関与、外部委員の参画による事後評価、外部委員の意見を踏 まえた現地調査の実施、事後評価の結果を以降の選定に活用、OB等の全ての利 害関係者からの働きかけの記録・開示について、これまでも取り組んでいると ころがあるわけですが、厚生労働科学研究費補助金についてはそういった事項 についての充実、徹底を図るということにしているところです。この行政官の 採択への不関与等については、今回の指針の改定で明確化しております。  資料1-1「厚生労働科学研究に関する評価指針の見直しについて(案)」です。 総合科学技術会議における検討を経て、平成20年10月31日に「国の研究開発 評価に関する大綱的指針」が改定されております。これを受け、研究開発を実 施又は推進する各府省において、その特性や研究開発の性格に応じて、改正さ れた大綱的指針に沿った評価を実施することが求められているところです。大 綱的指針の改正を踏まえ、「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」につ いて見直しを行うものです。  見直しの主な内容として、「研究開発評価の方針について」は、研究開発評価 の実施主体の明確化、研究成果を着実に行政施策へ反映すべきであることの明 示、評価実施主体及び被評価者においては、研究開発成果及び評価結果を国民 に対してわかりやすく公表し、説明責任を果たすことで、優れた研究開発成果 を国民、社会へ還元すべきことを明示といったことです。  「研究開発評価の視点について」は、研究開発の評価においては、政策目標 との整合性を重視する、研究開発の国際的な水準の向上の観点等からも評価を 行うこと、研究結果の公表や評価結果の通知に当たっては、国家安全保障等に ついても配慮、研究者等の業績の評価結果については、個人等の処遇や研究費 の配分等に反映させ、国際標準化への寄与についても評価すること、また、研 究の支援を行う者の協力は研究開発の推進に不可欠であることの明示、という ことです。  次頁は「研究開発評価の方法について」です。被評価者による自己点検結果 や個別課題等の評価を活用し、効率的な評価の実施、海外の研究者や若手研究 者を評価に積極的に参加させること、研究開発施策の評価は、外部評価を行う こととして、評価者名を公表すること、若手育成型の研究開発課題の事前評価 において、マスキング評価ができるようにすること、厚生労働科学研究費補助 金における、研究開発課題に対する事前評価委員会には、厚生労働省の行政職 員を含めないこと、独立行政法人研究機関については、各法人が本指針等に沿 って、明確なルールを定めて評価を行うことが求められる、ということがあり ます。  少し細かい点については、資料1-2の新旧対照表、左側が改正案です。1頁、 第1章「目的」の下に、「1経緯」、「2目的」といった項目の設定を行っており ます。経緯のところでは、大綱的指針の改定の方向でもある「優れた研究開発 の成果を創出し、それを次の段階の研究開発に切れ目なく連続してつなげ、研 究開発成果の国民・社会への還元を迅速化する、的確で実効ある評価を実施す ること」、「研究者の研究開発への積極・果敢な取組を促し、また、過重な評価 作業負担を回避する、機能的で効率的な評価を実施すること」、「研究開発の国 際水準の向上を目指し、国際競争力の強化や新たな世界的な知の創造などに資 する成果の創出を促進するよう、国際的な視点から評価を実施すること」、そう いった観点から評価の改善への取組みが求められているといったことを記載し ています。  目的のところでは、研究成果の行政施策への反映、またその成果を積極的に 公表、優れた研究開発成果の国民、社会への還元が求められていることなどが 明記され、研究開発の評価が行政施策との連携を保つべきこと、評価の効率化 を図るべき、といったことが記載されています。2頁の上の方には、国際的な視 点からの評価の実施といったことを追記しております。  独立行政法人については、大綱的指針と本指針に沿って、明確なルールを定 めた上で評価を行うことが求められる、ということです。  「4 本指針の見直し」については、内容の変更ではなく、記載する場所を整 備したということです。3頁の上の方では、「マスキング評価」の導入について 書かれております。  4頁、下の方の「第4章 評価関係者の債務」です。関係者の責務に関し、そ れぞれについての記載整備的なことも含め、対応しております。6頁の真ん中よ り下の方では、「自己点検の活用」といった項目を新たに起こしております。7 頁の下の方では、公表について、大綱的指針の表現に沿った修正をしておりま す。  9頁の上の方で、「(2)人材の確保」という項目がありますが、こちらでは海外 の研究者や若手研究者を評価者として積極的に参加させるといった趣旨を書き、 裾野の拡大を図るべきといった記載をしております。10頁、9として「評価の 国際的な水準の向上」という項目の追加をしております。11頁、「(2)評価者の 選任」ですが、厚生労働科学研究費の事前評価には行政官が参加しないことに なりますので、そういった記載に修正されております。13頁、4の(1)で、マス キング評価に関する例外規定の追加があります。18頁は、評価結果の活用関係 の記載の追加です。研究支援を行う者の専門的な能力、研究開発の推進に対す る貢献度等を適切に評価することが必要といった規定の追記があります。  18頁、「第4編 研究開発機関の評価」の第1章の3で、具体的な目標を設 定しその達成状況等について自己点検を実施するということを記載しています。 また、19頁では、評価者名を公表ということを追加しております。  22頁、「第5編 研究開発施策の評価」では、外部評価により評価を行うとい うこと、それと評価者名を公表という規定が上の方に書いてあります。「評価方 法」について、総体としての目標達成度合いを成否判定の基本とすること、成 否の要因を明らかにすること、重複した評価を避け、効果的・効率的に評価す ることが追記されています。23頁、「第4章 評価結果の取扱い」では、評価結 果の活用や公表についての規定を設けています。  資料1-1に戻りまして、裏面のスケジュールです。平成22年度の研究課題の 事前評価から、新たな「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」による 評価を導入したいと考えておりまして、あまり時間がありませんが、年内にこ の指針の改正を考えております。また平成22年4月1日から、国立高度専門医 療センターが独法化されることに伴い、この評価指針についても関連する所要 の改正を今後行うということを予定しております。資料1-3は、新旧対照表の内 容を反映した指針の案となっております。説明は以上です。 ○永井部会長  ありがとうございます。ただ今のご説明に関して、ご質問等ございますか。 ○廣橋部会長代理  いくつか質問がありますので、続けて質問いたします。まず最初に、今回行 政施策への反映、あるいはそれに沿っているかということが、すなわち政策目 標との整合性が非常に大事な視点であるということになったことと、一方で行 政職員を事前評価には参画させないということ、この二つはどういうふうに関 係しているのか。本来ならば行政ももっと自信をもって一緒にやるべきではな いかというのが私の気持ちですが、どうしてそうなったのかお考えをお聞きし たい。  次に切れ目なく連続してつなげられるようにすること、これは非常に大事な ことで、例えば3年なら3年、5年なら5年の計画が終わってから事後評価が されるのではなくて、終わる前に事後評価をして、研究の発展段階に応じて別 なグラントにつなげていくことを考えたのだろうと思うのですが、実際に運用 するのはかなり難しいのではないかと思う。その辺はどのようにされるのかと いうことです。  それから今回の指針の特徴は、研究者の評価、それと申請に対する評価の仕 方のこともありますが、最終的に研究開発機関の評価、そしてさらに研究開発 施策の評価。つまり厚生労働省のこういう取組みに対する評価までもしろとい うことを書いてあるのではないのですか。こういったことを、今まではどうな っていたのか、あるいはこれから本当にどうなさるつもりなのか、お考えをお 聞きしたい。 ○坂本研究企画官  それでは順にご説明いたします。行政官の事前関与について、これまでも基 本的には課題設定のところについては行政がやりまして、したがって公募要項 等に行政が求めることを詳しく書くようにということにしておりました。一部 例外を設けていたところがありますが、今回いろいろな事案もあり、全体的に そこに対して、いわゆる点数付けというか、採択のときの採点には行政官は参 加しないで、事前の課題設定のところだけ、うまく課題設定をして、それに合 っているかどうかを外部の人に評価していただくという、そこの切分けをしよ うということです。我々も今までも公募要項の作成時には、できるだけ求める ことが分かり易くということでやってきているところですが、それを一層やら なければいけないということになったということであって、それがあれば、あ とはその要件を満たしているかどうか、外部の先生方に評価していただくとい うことが今回のやり方となります。  切れ目なくということですが、これは総合科学技術会議等でもよく言われて いることでもありますが、なかなかどういうふうにするのがいいのか、複数の 研究費をまたいでというような話もありますので、総合科学技術会議での議論 も踏まえて今後とも考えていかないといけないと思っています。今回やろうと しているのは、むしろその手前のところで、いい点数を取った、いい結果を出 したという人が、次の機会にアピールできるようなというところが、この指針 の改定の読み方としてはそういうことだという理解をしております。先生がお っしゃったところまで、直に繋ぐものではなく、ワンステップとして活かすや り方について、政府全体、他の研究資金との関係もありますから、そういうと ころでも考えていく課題だというふうに思っております。  施策の評価について、議題3の方でも本日ご議論をお願いしたいと思ってい るところですが、一応、毎年概算要求前の評価ということで、この部会でご議 論いただいておりますし、公募要項のご議論もありますし、さらに研究成果に ついて総括的にこちらで議論していただいているということがありますので、 そういったところをより体系的に、システマティックという言葉がいいのかど うかありますが、そういう形でやっていくということが今後の課題であろうと 考えております。 ○永井部会長  他にいかがでしょうか。 ○福井委員  海外の研究者を評価者として積極的に参加させるという文言がありますけれ ども、そのためにはかなりの部分は英語で報告書を書いたりする必要があると 思うのですが、そこまで是非、私としてはやるべきだと思うのですが、そのレ ベルを考えられているのでしょうか。 ○坂本研究企画官  ここの具体的な運用については今後検討する必要があると思っておりますが、 今いきなり英語で出せというのは正直難しいところがあると思っていますので、 実際には海外にいらっしゃる日本人の方にお願いするのが早いのかもしれない ということも考えております。申し訳ありませんが、そこは正直日本語で出し たのを英語に訳して見ていただくべきなのか、英語で出してもらうのがいいの か、具体的なことはまだ検討課題が残っている状況です。 ○宮村委員  それに関係して、海外の研究者や若手研究者を評価者として積極的に参加さ せるということですけど、この後者の若手研究者を評価者に積極的にさせると いうことは、一面ではいいかもしれないけれど、本当にいいのかどうかという ことがあります。評価者としてのいくつかのクォリフィケイションもあるだろ うし、ものすごいデューティーがあるわけで、特定の自分が参画している研究 計画ではないということになると、実際にちょっと違った領域で非常に積極的 にやっている人に、余計とは言えないかもしれないけれども、バーデンを与え るということになって。全体として、文言としてはいいことだけれども、具体 的にこれをやっていくことがいいのかどうか、そういう感じがします。 ○坂本研究企画官  若手の先生に入っていただく場合には、期間を区切って短期的にという形で しか、評価を担当すればその研究費が取れなくなるということもありますので、 若い方に長くやっていただくことは当然できないと思っておりますから、そう いうようなところをうまく回すシステムが必要だと考えております。できるだ けそちらの方をということで、無理に若手の方ばかりというわけでもありませ んから、やっていただける方を探してきて裾野を広げようという趣旨で、大綱 的指針も規定しているというふうに理解しております。こういうやり方がある のではないかというようなサジェスションをいただけると、今後の実際の運用 面で参考にさせていただきたいと思います。 ○西島委員  質問です。評価の視点についてのところで、国家安全保障等についても配慮 するということについて、具体的にもうちょっと説明していただきたいという こと。もう1点、研究の支援を行う者の協力は不可欠であるということですが、 この研究の支援を行う者の協力というのは、具体的にはポスドクとかそういう 人のことを言っているのでしょうか。その2点伺います。 ○坂本研究企画官  国家安全保障の方につきましては、我々の認識としては、今までは「国民の 安全の確保」という用語を使っておりましたが、大綱的指針がそういう用語に 統一されまして、これまでのものを含む概念と理解しております。具体的には 外に出すと非常に問題のあるような、例えば違法ドラッグに関係するような研 究成果の一部分とか、テロに関係するような研究の一部分などは、なかなか公 表し難いようなものもあろうかと思いますので、そういったものの取扱いにつ いて、我々も留意する必要があるのではないかと考えております。  支援者については、ポスドクに限らず、これは言葉どおり広く考えておいた 方がよろしいのではと思っています。中心の研究者のみならず、その周辺の方 たちも評価せよという趣旨と考えております。 ○西島委員  それで指針にそういう協力が不可欠であることを明示するということは、こ ういう人たちをもっと活用するように、そういうことなのでしょうか。 ○坂本研究企画官  できるだけそういう方たちの活動も、研究全体の評価の中で評価をしていく という形で運用していくべきと考えております。 ○永請部会長  他にいかがでしょうか。 ○宮田委員  ご趣旨は大分わかると思うのですが、この政策目標との整合性を重視すると いうのを明文化したことはいいと思いますが、逆に言えば、評価の際にどうい う政策目標なのかというのを厚労省の側がきちんと提示する、ということがあ くまでも前提になります。しかもそれもカウンタブルな政策目標にするのかど うかも含めて、要するに事前・事後・中間評価に耐えられるような政策目標と いうものを明確にするということがないと、この評価全体のことができなくな ってしまうというのが1点。  評価者の選任の中で、私の懸念から言って、11頁の(2)の評価者の選任の「イ 評価委員会は当該研究分野の専門家から構成されるもの」というのが前提にな っていますけれども、今回の政策目標の整合性を考えると、各技術とか研究分 野においては、もちろん専門家は必要だと思いますけれど、ただ、もうちょっ と社会的な評価を行うような人たちの選任が絶対に要ると私は思っています。 ここの表現をうまくできないかというふうに思います。よく読むとそんなこと も言っている感じもしますが、もう少し明示的にお示しいただきたいと考えま す。 ○廣橋部会長代理  今のご意見と基本的に同じ見解ですが、政策目標を非常に大事にしたわけで すから、評価の時にどういう政策目標に対してどれだけの成果があったのか、 ということを評価することは重要だと思います。ただし、全部カウンタブルな 評価にするというのは、かなり問題があると私は思うのです。研究を推進して いくときに確かになんとか成果の数とを測れるところもあって、例えばがんの 分野だとどれだけの新しい標準的な医療が開発できたかとか、あるいはより実 地臨床に近いところだとどれだけの数のガイドラインができたかと、そういっ た評価ができる場合もありますけれども、研究全体を推進していく上では、そ ういう数に数えられないような研究もあると思うのです。ですから全部をカウ ンタブルな指標で評価するというのは、行き過ぎかと思います。 ○宮田委員  それはミレニアムの経験から明白な失敗だったと考えておりまして、カウン タブルな要素も含めてという言い方をさせていただきます。 ○永井部会長  事務局、いかがでしょうか。 ○坂本研究企画官  まず1点目の政策目標を明示せよということは、まさにご指摘のとおりと思 っておりますので、先ほどご説明したようにその方向で公募要項等の見直しを 続けてきたのですが、さらに一層はっきり出さないと今後の評価の時に問題が あるというご指摘は、そのとおりと思っております。我々の方としてもそうい うところを出して、こういう政策目標を達成するためのこういう研究をお願い したいということを、はっきり出す必要があるということで、これは今後こち ら側の対応としてやっていきたいところです。  それから評価者のところは先ほど先生がご指摘の資料1-2の11頁のところで、 一応「評価委員会は当概研究分野の専門家から構成されるものとし、必要に応 じて当該研究分野の専門家以外の有識者等を加えることができる」となってお りますので、あとでもご説明しますが、当省のやっている研究の対象範囲が非 常に幅広いこともありますので、こういった規定、それぞれの分野によって、 それぞれどういう方を入れるのがいいとか、いろいろなケースがありますので、 こういう形であれば今のところご指摘のような社会的な評価を行う方が入るべ き時には入れますので、規定としてはこれで十分運用可能ではないかと思って おります。 ○末松委員  論点が外れて申し訳ないのですが、先ほど福井委員からご指摘のあった点は 私も賛成です。全ての厚生労働に関わる科学研究開発全部一度にやれというの がなんとなく無理なのはよく分かるのですが、治験とか臨床研究とか国際的な 連携でやって、絶対必要不可欠で、いろいろなラグを短かくしたりとか、英語 でこちらがプロポーザルを作ったものをまた別で、日本語で別トラックで評価 をするということはナンセンス極まりないフィールドもあって、やはりテスト ケースといえども、英語だけで全部プロポーザルから評価までが全部一貫して いっているというようなものを、トライアルでも作るべきではないかと思いま すので、これは是非検討していただきたいと思います。 ○坂本研究企画官  なかなか今直ぐやりますというと問題が多そうですので、検討課題として、 本日のご提案として少し事務局で検討させていただきたいと思います。今e-Rad を導入しておりますますが、そういったところでもいろいろと実務上難しいと ころがありますので、二つの言語として本当にうまくいくのか、実務的にいろ いろ詰めないといけないところがあると思いますので、本日こういうご議論が あったことで、少し検討させていただきたいと思います。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。続きまして、資料2についてご説明をお願いいたしま す。 ○研究開発振興課  ヒト幹細胞臨床研究についてご説明させていただきます。ヒト幹細胞臨床研 究については資料2を用いてご説明いたします。ヒト幹細胞の指針に基づいて 申請されました臨床研究実施計画について、今回は諮問の取り下げが行われた1 件と、新たに諮問・付議が行われました申請3件についてご報告申し上げます。  今回、島根大学医学部附属病院からのヒト幹細胞臨床研究に関して、研究機 関の名称と申請者の変更に伴って、諮問を取り下げて新たに申請をすることと なりました。1頁目が本臨床研究に関する諮問の取り下げ書です。平成21年8 月27日に島根大学医学部附属病院から申請がありました「重症低ホスファター ゼ症に対する可及的早期に行う同種間葉系幹細胞移植」計画です。2頁目に申請 機関からの取り下げ願がございます。諮問を付議されました内容について、10 月7日に審査委員会にて既に審査が行われております。ヒト幹細胞指針に準拠 するためには、島根大学医学部部長が設置しました倫理審査委員会での審査を 行ったうえで、再度申請を行うのが望ましいという判断がなされております。 したがって、医学部附属病院からの申請は取り下げることとなりました。  続いて、新規の申請についてご説明します。今回新たに申請され、新規性が 認められ、諮問を付議されましたのは、名古屋大学医学部附属病院と、先ほど ご説明しました島根大学医学部附属病院から改めて島根大学医学部、それとは 別の研究について、島根大学医学部から実施計画が提出されています。3頁目が 本申請に関する諮問書です。4頁に付議書があります。平成21年12月9日付 で諮問を付議されています。  それぞれの計画についてご説明いたします。まずは、名古屋大学医学部附属 病院です。5頁目の申請書に続いて、6頁目に本実施計画の概要があります。研 究課題名は「ヒト皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞を用いた重症虚血肢に対す る血管新生療法についての研究」です。対象疾患は閉塞性動脈硬化症、バージ ャー病、膠原病による重症虚血肢です。皮下脂肪組織由来間葉系前駆細胞を腹 部又は臀部の皮下組織から脂肪吸引法により採取しまして、分離装置により回 収します。虚血肢の骨格筋内40〜60カ所に移植しまして、自覚症状の改善など の治療効果と安全性を評価する臨床研究です。  11頁にポンチ絵があります。本研究責任者らは既に難治性の重症虚血肢に対 する自己の骨髄単核球細胞の移植療法を行ってきました。今回は新たな細胞の 供給源として、脂肪組織由来の間葉系細胞を用いる血管再生療法を開発するこ との新規性があり、申請となっています。  引き続いて、次の計画を説明します。先ほど説明した島根大学医学部附属病 院からの申請を取り下げまして、島根大学医学部から申請されています臨床計 画です。12頁の申請書に引き続いて、13頁目に本実施計画の概要があります。 研究課題名は「重症低ホスファターゼ症に対する同種間葉系幹細胞移植」です。 申請内容については前回の報告とは大きな変更がありませんので、省略させて いただきます。  21頁は島根大学からの申請で、研究課題名は「末梢動脈疾患患者に対する G-CSF動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験」です。続い て22頁が研究実施計画の概要です。この研究の対象は、既存の治療に抵抗性の 末梢動脈疾患となっています。G-CSF皮下注射から4日目に自己末梢血を採取 しまして、アフェレシスにより単核球を採取、末梢動脈疾患患肢に筋肉内注射 をします。末梢血管再生効果を見るという研究です。本研究は用いる幹細胞や 対象疾患としての新規性はありませんが、計21施設が参加予定の多施設の臨床 研究として実施されて、推奨療法群あるいはG-CSF動員自家末梢血単核球細胞 移植併用治療群のいずれかを無作為に割り付けるという新規の臨床研究です。 札幌北楡病院外科の堀江卓先生を主任研究者とする多施設共同研究として、プ ロトコールは共通なものを用いていまして、今回は研究実施機関と所属機関の 審査委員会について審査を行っていく予定となっています。  以上ヒト幹細胞臨床研究実施計画について、今回新たに諮問・付議が行われ た申請3件についてご報告します。 ○永井部会長  ありがとうございます。ただ今のご説明に何かご質問がありますでしょうか。 ○廣橋部会長代理  的外れかもしれませんが、この名古屋大学附属病院などからの申請、前に骨 髄由来の幹細胞による治療の検討が行われている、さらに今回は、脂肪組織由 来間葉系幹細胞の検討が行われる背景は、前の研究があまりうまくいかなかっ たから、こういう新しいものに取り組もうとしているのかどうなのか。それに ついての十分な評価がされているのか。あるいは、今度はまた別なものをやる わけですから、その二つの間でどちらが優れているのか、本当に結論が出せる ような研究のデザインになっているのかどうかというのが、重要と感じたので すが、いかがでしょうか。 ○研究開発振興課  先ほど一番初めに説明しました骨髄間葉系前駆細胞を用いる臨床研究の結果 は、既にさまざまなペーパーでは有効性が報告されています。その内容につい ては今回の資料には提示していませんが、本臨床研究の審査委員会申請書類と して提出されています。今回は新たに脂肪由来の幹細胞を用いる研究で、比較 的細胞が多く採取しやすく、負担が少ないであろうと想定され、さらに有効性 が期待できるのではないかという期待を込めて臨床研究を開発していると聞い ています。今回の研究は、脂肪組織由来の研究の評価のみで、特に比較対象な どを置いていませんので、先ほど質問のありました以前の研究との比較という のは計画には入っていません。 ○永井部会長  よろしいでしょうか。他にいかがでしょうか。島根大学の申請は倫理委員会 の問題があって、もう一度提出したということですが、内容に変更はありませ んか。 ○研究開発振興課  大きな内容には特に変更はありません。前回の10月に行われました倫理審査 委員会で指摘された部分が、いくつか変更になっています。 ○宮田委員  参考までに伺いたいのですけれども、産業技術総合研究所のセルプロセッシ ングセンターで、細胞処理して持ってくる。つまり、院外処方に当たると思う のですが、そういう研究というのは、今まで何例ぐらいになりますか。 ○研究開発振興課  現行のヒト幹細胞臨床研究に関する指針では、院外で臨床研究を共同研究と して行う場合には、治療する医師が自分で細胞などを持っていき、自分で加工 するように定めています。つまり、場所を提供していただいて、全て自分の責 任の中でやっていただく形になっています。 ○宮田委員  今回はどうですか。 ○研究開発振興課  多施設を使う場合には、現行の指針では全て医師が持っていき加工する形に なっています。 ○宮田委員  今回もそうですか。 ○研究開発振興課  今回の臨床研究もその形になっています。 ○宮田委員  わかりました。 ○永井部会長  他にいかがでしょうか。よろしいでしょうか。もしご意見がありませんでし たら、ただ今いただきましたご意見について、事務局から審査委員会へお伝え していただいて、少し整理をしていただくことになります。検討結果について は、当部会に改めてご報告がありますので、再度総合的にご検討いただきたい と思います。それでは、議事3「今後の厚生労働科学研究について」、事務局よ りご説明をお願いします。 ○坂本研究企画官  それでは、ご説明します。資料3-1、3-2、3-3、それから参考資料としては参 考資料5と6が本件の関係になります。厚生労働科学研究については、先ほど ご質問がありましたが、毎年度、厚生労働科学研究の概算要求前の評価、厚生 労働科学研究費補助金の公募要項、前年度の研究成果の評価等をこちらの部会 でご審議をお願いしてきています。毎年度、節目節目でご意見をいただいてき ていますが、来年度の平成22年度までが政府全体での第3期科学技術基本計画 の期間になっていることもありまして、今後の厚生労働科学研究の方向性につ いてご意見をいただきたく、資料3-1はそのための検討課題と考えられるものを たたき台的にまとめています。本日は先生方から忌憚のないご意見をいただき まして、それを踏まえて次回以降に取りまとめをさせていただければと考えて います。  資料3-1以外の資料を先にご説明させていただくのがいいかと思います。参考 資料5は「厚生労働科学研究費の概要」となっていまして、全体像について簡 単にご説明させていただきます。参考資料5の上の方にありますが、厚生労働 行政は国民を取り巻く社会環境の変化、国民のニーズの多様化・高度化などに 的確に対応していくことが求められていまして、行政施策が適切妥当な科学的 根拠に立脚する必要があるということで、国立の試験研究機関のみならず、産 官学の各分野が協力して新しい知見を生み出していただく必要があります。厚 生労働科学研究費補助金については、平成21年度には484億円の予算で、1,400 以上の研究をサポートしています。  厚生労働科学研究費の特徴として、これまでここにありますように大きく分 けて、行政政策研究分野、厚生科学基盤研究分野、疾病・障害対策研究分野、 健康安全確保総合研究分野の4分野から構成され、各研究事業で国民の保健医 療、福祉、生活衛生あるいは労働安全衛生等の課題を解決する「目的志向型の 研究課題設定」を行っています。先ほどご指摘があったように、課題設定等で より政策を分かり易くということが検討課題としてあると考えています。  2頁には予算及び採択件数の推移等を示しています。昨年度は難病の研究費の 大幅拡充がありまして、総額として約57億円増額しています。採択件数につい ては1,300件以上でここ数年推移しています。研究費をどういう方が貰ってい るかというと、研究費の割合ですが、過半の研究代表者は「大学」に所属なさ っている方ですが、「その他」に所属されている方も10%を占めています。  3頁に平成21年度に実施しました各研究事業を示しています。研究事業につ いては年度年度で組替え等を行ってきています。できるだけ整理統合をしてき ているという流れがあるのですが、13分野と非常に幅の広い分野で研究を行っ ています。4、5頁には研究事業の流れや課題の評価が書かれていますが、この 評価については少し前のバージョンになっています。  参考資料6は平成17年4月に科学技術部会に報告されました「今後の中長期 的な厚生労働科学研究の在り方に関する専門委員会中間報告書 概要」です。5 頁に別紙として「厚生労働科学研究の具体的見直し案」があります。研究の枠 組みの見直しとして五つの研究類型、一般公募型、指定型、戦略型、プロジェ クト提案型、若手育成型を創設しました。別紙の真ん中辺りですが、この頃は 補助金の早期交付がかなり大きな課題になっていたという状況があります。  資料3-1、3-2、3-3は後ろからご説明させていただきます。資料3-3は総合科 学技術会議が、本年12月9日に示されました概算要求に関しての評価における ご指摘の中から、厚生労働科学研究の方向性等に関する指摘等について、個別 的な指摘も含めて抜粋したものです。  多様な施策が打ち出されている一方、基本的な戦略が見えにくいというご指 摘をいただきました。他府省と本格的に連携し、効率的な研究開発の推進に一 層留意していくべきということも言われました。また、予防、診断、治療の中 で、予防に関する取組みが弱いとのご指摘もいただいています。研究開発成果 を実用化する観点などのご指摘もあります。それから、研究を進めるに当って は、社会への貢献など出口を見すえて行うべきだと、評価体制の改善などのご 指摘もいただいています。  医療費削減への具体策、疾病予防などに絡めてのご指摘もありました。難治 性疾患に関する診断・治療法等の研究推進については、製薬企業の参入が難し く、国が行うべきというコメントもありました。開発リスクの高い医療機器や 対象患者が少なくても当該患者にとって高い効果が見込まれるものは、連携し た開発を進める必要があるというご指摘もいただいています。高齢者や障害者 に関し、社会的サポート体制も含めて考えることが重要であるというご指摘も ありました。  また次頁には、国際レベルでの協調が重要、感染症に関する最近の問題、特 に新型インフルエンザに関する研究に対して、迅速に対応できるように研究を 進めることが重要、臨床研究の推進のためには、支援人材の育成やプロトコー ル作成など、支援する拠点整備が有意義というコメントもありました。これま で得られている成果の社会還元を積極的に進める必要がある、あるいは関係各 省庁との連携、情報交換を十分に行うべきといったご指摘を頂戴しています。  資料3-2は、平成21年4月以降こちらの部会において、いろいろいただいた ご意見の中から厚生労働科学研究の方向性等に関すると思われる主なものをピ ックアップさせていただきましたものです。必ずしも発言のままではなく、少 し整理して書かせていただいています。  「研究事業の在り方」に関しては、配分額が大きい研究事業は、連携をして、 効率よく推進するために、どのように研究事業を進めるかという研究やフォロ ーアップが必要というご指摘をいただいています。あるいは、最先端医療に研 究費を配分して実用化に近づける、そういうものがあるのに、一方で受け皿に 関する研究は見当たらないというご指摘。実用化の際、国民医療、保険医療の 中で賄いきれるか等の行政政策研究を行うべきではないかというご指摘もあり ました。国民医療のための技術革新を、国民皆保険と矛盾なく導入するための 基礎研究を政策研究として取り上げるべき、あるいは医療経済への影響を研究 する人材育成の必要性のご指摘がありました。全体的な観点から、安全・安心 な社会としての医療の供給、医療制度全体のあり方という総合的な観点からの 研究も進めるべきといったご指摘も頂戴しています。  「事後評価」では、総合研究化を推進しすぎると、それぞれの疾患に特有な 事情に対する配慮が失われてしまうので、今後の評価の中では総合化の効果に 関する評価をもりこむべき、それから、評価に関して表現の統一を考えるべき といったご指摘もありました。研究全体のマネージメントなどについても評価 を行うべきといったご意見も頂戴しています。評価については単年度の評価を 行っていますが、3年ぐらいの期間で今年はどうだったかという評価の仕方も検 討課題ではないか、といったご指摘もいただいています。  「研究成果の公表」としては、知財関係などの公表に関しての対応の検討を すべき。「若手育成」では、重複チェックを厳密に行い過ぎ、研究をエンカレッ ジしないということにならないようにといった趣旨のご指摘。ボトムアップの 研究に加えて、厚労省らしいミッション・オリエンテッドな研究等でも若手を 育成すべきといった趣旨のご指摘もいただいています。  こういうものを踏まえて、資料3-1では、たたき台的に今後の厚生労働科学研 究について「検討課題:案」を整理してみました。最初に「厚生労働科学研究 の役割の一層の明確化」として、具体的には、根拠に基づく施策のための研究 であることをより明確にして、成果が具体的にどのような施策に活かされるの か、施策の効果が具体的に想定されて研究が行われるのか、また、実際に反映 されたのかを事後評価するシステム構築等が課題としてあるのではないか。  「研究課題設定の見直し」は、厚生労働省の調査研究分析機能の強化に資す る研究課題の設定ということで書かせていただいています。国が行うべき研究 課題、国民、社会的ニーズの着実な把握をしたうえで研究課題を設定すべきで はないか、厚生労働行政施策への一層の貢献を目指し、国際的な情況の把握、 国際比較分析等の研究の充実、それから、指定型研究、特別研究も含めて、テ ーマ設定についての外部の意見を聞くこと、出口を見すえた研究課題の設定等 が課題としてあるのではないかということです。  「研究の枠組みの見直し」としては、先ほどご説明しましたように5類型を 設定したのですが、実績が乏しいプロジェクト提案型研究類型は廃止してはど うか、戦略研究の進め方の見直しとして、これは例ですが、医療の質の向上や 標準化への結びつきを明確化するべきではないか、若手研究者育成の方策、リ サーチレジデントの確保方策等が検討課題としてあるのではないかということ です。  そして、四つ目は「効率的な調査・研究の実施」。不必要な重複排除、他の研 究との連携強化を目指してe-Radの活用方策等の検討、効率的な調査・研究と なるような評価体制の検討が必要ではないか、中間評価をそれ以降の研究に活 かし、事後評価結果を以降の課題採択に活用するシステムの構築、これについ ては既に本日もご指摘いただきましたが、そういったところに具体的に取り組 む必要があるのではないかというのが検討課題です。  そして、最後は「研究成果が一層活用される方策の検討」として、厚生労働 科学研究成果データベースの充実強化、研究成果をわかりやすく一般国民に示 す仕組みの検討、研究成果を知財につなげる方策の検討等が検討課題ではない かということです。これはあくまでもたたき台ですので、これ以外にもこうい う視点があるのではないか、こういうものがあるというご指摘をいただければ 大変ありがたいので、ご審議のほどよろしくお願いします。 ○永井部会長  ありがとうございます。 ○廣橋部会長代理  今日のこの議題は、極めて重要な議題だと思います。この審議会が一年中こ の議題を議論していてもいいぐらい、重要な議題ではないかと思います。他の いろいろな審議がありますから、それが難しいのであれば、本当はこういうこ とを検討する特別な研究組織、指定型で厚労省が行政的な目的を果たすために 作るような研究組織が作られて、全体像を十分議論したうえで資料が出てきて、 ここで議論するなどの方策を考えないと、予算要求の前に少し議論するだけで はとても済まされない、重大な内容を持っている問題だと思うのです。今日お 話になった一つ一つのことについて、たぶん各委員はいろいろなご意見があっ て、それを議論していたらとても今日は終わらないです。ですから、私は各論 の中には入りませんで、むしろ大枠のことを申し上げたいのです。それがまず 第1点です。  その次に「今後の厚生労働科学研究について」と書いてあって、研究費とは 書いていないところが重要だと思います。それは厚労科研費の問題だけではな くて、この書類の一番上のところには書いてありますが、厚生労働省は施策と して国研、「等」と書いてあるところにはナショナルセンターが入っていると思 いますが、厚生科学課所管の国立研究所、感染研など、それから国立がんセン ターなどのナショナルセンターも研究所があって、それらでも研究が行われて おり、そういう研究施策全体をどういうように進めるべきかを議論するペーパ ーだと思います。  そういうことまでも含めたら、かなり広い問題であります。私は厚生労働科 学研究費としていろいろな方に研究していただいて、広く配分して成果を上げ るのも大事ですが、それと国研あるいはナショナルセンターなどで行われる基 盤的研究が縦軸、横軸のような関係で相互作用して、皆さんが応募される研究 がレベルが高く、狙っていることができるようなものになる体制を、厚生労働 省全体として作り出すのが非常に重要ではないかと思います。  がんの分野などではそういう方向に向けて、まだ不十分ではありますけれど も取組みを進めています。他のいろいろな疾患の分野でも同じような体制を作 る。縦軸と横軸が相互に連関するような体制を作ることが非常に重要ではない かと思います。  今述べたのは研究費を超えたものですけれども、3頁の研究費の中には、疾患 の克服のために疾患別に研究を進める研究費と、横軸になるようなヒトゲノム テーラーメイド研究とか、創薬バイオマーカー探索研究といったところ、特に 横軸で行われるような研究の成果がいち早く疾患研究の方に活かされるような 仕組みを作らないと、本当にもったいないと思うのです。  疾患研究では、例えば難病ですが、難病については昨年大きく研究費が膨ら んだせいもあるかもしれませんけれども、申請書を見ると、厚生労働省傘下で は優れた基盤的な、あるいは先端的な研究が行われている一方で、個別の疾患 に対しては情けない研究申請書がたくさん出てきているというのを常に見ます。 この間を連携して、縦軸の研究と横軸の研究がつながって、良い研究成果が出 るような仕組みを作り出すことをしないと、せっかくの研究費が有効に活用さ れないと思うので、その仕組みを作ることが本当に大事なのではないかと思い ます。個別の項目は言っていたら切りがないのではないかと思います。 ○松田委員  ご指摘のとおり申し上げたいことはたくさんあるわけですが、とりわけ資料 3-3、資料3-2をベースに資料3-1を見てみますと温度差を感じます。たくさん あるのですが特に二つあります。一つは、今、廣橋委員が言われましたように、 研究の成果を結び付ける、具体的に臨床の現場の応用に結び付ける、あるいは 産業の視点が非常に薄いのではないか。  もう一つは他府省との本格的な連携とか、省庁間の連携と書いてありますけ れども、そういうことが資料3-1からはにおいとしては感じられない。もう少し 具体的に言いますと、最初の「○」の事後評価するシステムの構築の中に、か なり本質的な議論の対象が詰まっているのではないかという気がいたします。 ○岩谷委員  廣橋委員からのご指摘は誠にそのとおりだと思います。私は、この会がバイ オロジカルメディスンにあまりにも偏っていることに違和感を感じています。 もともとバイオロジーでいくら攻めてみても病気は治らない、病気が治らない 結果、障害を持った人たちが社会で生活をしていかなければならない。そこに 高齢化の問題が国家の大きな負荷になっているわけです。病気を治すというこ とと同時に、その後、治らなかったところをどのようにサポートするかという 視点を入れていきませんと、厚生労働省としては大変具合の悪いことではない かと思っております。  ライフサポートと申しましょうか、社会保障、福祉関係の理論とか研究手法 は医学に比較して遅れております。これはバイオロジーの世界から見ると、な んでこんなことをしているのだという現状にあります。これをもう一歩でも少 しでも前に進めることをしませんと、ヘルスケアとライフサポートがつながら ないのだと思うのです。是非そういう方向のことの研究をもっとファシリティ するようにしていただきたいと思います。 ○廣橋部会長代理  ただ今ご指摘がありましたけれども、誠にごもっともだと思います。がんの 分野は、がん対策基本法に基づいてがん対策推進基本計画が立てられています。 その目標の一つは患者さんが亡くなることを減らすということですし、もう一 つは患者さんのQOLです。その中には最後の在宅医療であるとか、福祉の問題 までも含めて研究を推進する。研究をベースとしてきちんと進めることになっ ております。次第次第に第3次対がん10か年戦略や臨床研究事業の中でそうい う課題が増えてきております。  がんの場合は法律で定められたのですけれども、他の分野でもそういう目標 をはっきりさせることにより、今のお話のようなことが、新しく治療法を開発 しようという研究と、今あるものを最大限に活かして、それを実際に医療の現 場に応用する、あるいは医療だけではなくて、福祉のところまでも含めて研究 として推進することが必ずできるだろうと私は思います。そのようにしなくて はいけないと思います。 ○岩谷委員  同感です。 ○永井部会長  ただ今ご指摘いただいた点について、事務局はいかがですか。 ○坂本研究企画官  本日は、ある意味キックオフ的に先生方からご意見をいただいた上で、我々 の方としても取りまとめ方策も含めて考えていきたいと思っております。廣橋 先生が言われたようなやり方もあると思いますが、当科学技術部会が今までご 議論いただいている場ですので、まずはこの科学技術部会でご議論いただいて と考えている次第です。最終的にはこちらで取りまとめていただくべきものと 思っております。申し訳ございませんが、今この場でこういうやり方というの ではなく、他の先生方のご意見も含めて、やり方は考えてみたいと思っており ます。 ○宮田委員  それはよく分かりましたけれども、この案のまとめ方がよくないのではない か?というのも本日はずっと議論していると、もちろん案ですからいいのです けれども、本日の先生方のご意見をもう一度反映して、この検討のプロセスに 戻した方がいいと思います。  私の個人的な話をさせていただきますと、これは他の予算になるのかもしれ ませんけれども、基本的な疾病とか健康に関する統計情報というのを、国がし っかり収集していただいて、それを解析する研究をやらないと、基本的にこう いう500億円近い研究費をずっと投入し続けて、国民の健康や国民の幸せが実 現したのかどうかというのは、客観的に評価できないと思うのです。その辺の 研究をまずしっかり入れていただきたい。もちろん統計のための予算は別枠で きちんと取っていただきますが、それを解析して、国民の健康と福祉に資する ような指標を出すための研究がどうしても必要だと思います。 ○南(砂)委員  先ほどの廣橋先生のお話の延長みたいなことで申し上げられることというの は、普段この会では非常に高度先端的な医療の話が多くて、細部がよくわから ないことも多いのです。実感として日ごろ非常に感じますのは、例えば高齢者 医療と呼ばれているような、高齢者が受けるにふさわしいような医療の姿とい うものと、大学の医学部の老年医学などがやっている研究がつながらないとこ ろがあります。老年医学の治験は非常にたくさんあるのだと思いますけれども、 それが必ずしも高齢者の医療や障害者の医療にうまく反映されていない、ある いはちょっと違う方向を見ているのかと思うのです。一方、文部科学省の管轄 の科学技術政策的な視点で、片方は社会保障的な視点という意味で、省庁の壁 にもわたるのかと思われることもあって、ちょっと違和感があります。  先週、たまたま国立社会保障・人口問題研究所の主催する厚生政策セミナー がありました。長寿社会をどう支えるかというような、まさしく高齢者医療み たいなことがテーマだったのでつくづく感じました。今年、とうとう100歳を 超える方が4万人以上になって、一方10年後には18歳人口が減少に転じると いう中で、本当に高齢者が受けるにふさわしい医療施策みたいなものにつなが る老年医学の視点みたいなものが、なくていいのかをつくづく感じます。 ○佐藤委員  大体皆さんがおっしゃったことと同じなのですけれども、特に私が感じます のは、先ほど松田委員がご指摘になられました資料3-3の総合科学技術会議から ご指摘があったところから、資料3-1のところに来る間の化け方があるのだとい う感じがいたしました。特に総合科学技術会議のご指摘の中はそれぞれ重要だ ろうと思うのですけれども、2番目の予防に関する研究をしなさいというところ は非常に重要だと思います。先ほど岩谷委員から、障害を持った人々が生きて いける社会という話がありましたが、予防していくことができればより良いだ ろうと思っています。  ただ、この大規模コホート調査のようなものというのは、なかなか厚生労働 科学研究費のようなものではやりにくいところがあるのだろうと思うのです。 その仕組みを考えていく必要があるだろうと思います。厚生労働科学研究費で はなくて、厚生労働科学研究の中で考えていく必要があろうかと思います。  宮田委員からご指摘のありました、政府統計の利用ができると、疫学調査は 個人情報まで踏み込めれば進んだものになり得るだろうと。今、いろいろな所 で議論されているようなのですけれども、そういうところへ進むべき視点も持 つべきだろうと思います。 ○桐野委員  今までのご発言でほとんど尽くされているのかもしれませんが、500億円の予 算でどれぐらい人材育成に配分できるかというのはよく分かりませんけれども、 やはり若手研究者を育成すると、若手研究者は若くなくなってきます。若くな くなった研究者はだんだん年を取ってきます。こういう研究費の特徴は、若手 に非常勤のような、ごく一時的な人件費を与えて参入させるけれども、あとの ことは知らないという考え方なのです。  すべての研究費にそういう傾向があるのですが、それはキャリアパスのこと を全く考えないで、非常勤タイプの一時的なトランジェントな人件費を続けて いくというやり方が本当に将来の、こういう長丁場の、しかもいろいろな職種 を必要とする、専門家を必要とする研究にとって、将来、どうその役割を果た すのか。参入した人がディスアポインティングな感じで去っていくような世界 をつくるのかどうかというのは、相当大きな問題だと常に思っています。  それは決してここだけではなくて、文科省がやっている大学院のポスドクの 問題も同じなのですが、その辺のところも見すえた上で、若手を養成するとす れば、その人が年を取ったらどうするのかも一応念頭に置いた政策を考えない と、今後は駄目ではないかと思います。 ○廣橋部会長代理  先ほど佐藤委員からコホート研究の話がありました。しかも、これが厚労科 研費ではなくて、厚生労働研究だからとおっしゃったことに意味があると思う のです。このように持続的にきちんと研究を進めなくてはいけないのは、ナシ ョナルセンターが担うというようなことがあるべきだと思うのです。  我々の分野ではがんコホート研究を15、16年前から15万人を対象にしてや ってきてフォローアップ結果が出ております。それで次の世代をまた考えなく てはいけないと思っているのですが、ナショナルセンターに配分されている交 付金の中の研究費を使ってやろうとしているのですけれども、こういう課題は 他のナショナルセンターと合わせて資金を投入して、本当に役に立つものを一 緒に作っていくぐらいのことを他のセンターの総長には考えていただきたいと 思います。そういうものと、こういう厚労科研費の研究費とを有効に使ってい けるような連携ができることが、必要なのではないかと思います。 ○福井委員  今のご意見とも関わりますけれども、ナショナルセンターだけではなくて、 すべての医療機関のデータをもっとみんなが使いやすくする必要があります。 病院の経営上のこともあって常日頃思っていますのは、各病院が電子カルテを 導入するに当たり、さまざまなベンダーから異なるソフトを、しかも高く買わ されて、本当は社会主義的な色彩がどれだけ強くなるかによって皆さん反対意 見もあると思うのですけれども、イギリスなどはナショナル・ヘルス・サービ スで、ほとんど一つか二つの電子カルテに統一したものですから、国のデータ があっという間に集まります。したがって、臨床現場とかケアの問題など非常 に吸い上げにくいデータも、少なくともカルテに書かれている部分については 驚くほどの数のデータが集まってきます。  国全体で電子カルテのあり方を是非考えていただきたいと思います。私たち も5、6年ごとに何十億円もお金を使って、何のためにこんなに電子カルテを一 つひとつの病院がベンダーから買わなければ駄目なのか、本当に疑問というか、 がっかりしています。そういうことも含めて、将来の臨床研究などを考えると、 もうちょっと国が投資をして、国全体の医療内容をフォローできるようなシス テム作りを、ベーシックなところでもう一回考えていただきたいと思います。 ○永井部会長  これは、いろいろな所で今までも指摘されていた点ではあります。しかし、 厚労省とか経産省とか、たぶん省庁横断的な問題が含まれているのではないか と思いますが、是非ご検討いただきたいと思います。 ○井部委員  私も、電子カルテの件は国家プロジェクトでやるべきだということをいろい ろな所で発言しているのですが、なかなかできないなといつも思っております。 話は変わりますが、本日の午前中に特別養護老人ホームの看護師たちの集まり の会に出ていました。そこに参加していたメンバーの中に、特別養護老人ホー ムを支援する市民の会の代表の方が出ていました。彼女たちがいろいろ調査し ている中で、1人が22種類の薬を飲んでいて、それですごく体調を崩してしま っているという報告がありました。その22種類の薬はいろいろな医師から出さ れているので、特養ではそれを一生懸命飲ませるわけですけれども、それで非 常に体調を崩しているということがあるようです。  一方で薬の開発は積極的に行われています。先ほど岩谷委員がおっしゃった ように、最終的にその恩恵を受ける人たちの所に適正に行っていないという状 況があります。介護の体制とか、医療の体制をどうするかをきちんと考えなけ ればいけないのではないか。そういう研究をきちんとやって、どのような提供 体制を整えていかなければならないかというのは、行政の施策にかかわる研究 だと強く思いました。 ○木下委員  こういう厚生労働科学研究というのは、厚労省の一セクションで、今先生方 がお話になったようなことを全部計画できるかというと、実際今のお話を伺っ ていますと厚生労働科学研究省か何かを作らないと駄目だろうと。先ほど廣橋 委員が縦軸、横軸とおっしゃいましたが、そのような大きなカテゴリーの下で、 碁盤の目のようにきちんと有機的に関連させるということは、思いつき的にや ってもとてもできないのだという思いで聞いていました。  当然のことながら、今、先端医療として新しい難病やがんを克服しましょう という研究に、ついつい私たちはそちらに目が奪われがちでありますし、また 大きな大事なことであります。実際に医療の現場を見てみますと、今、急性期 病院では在院日数をいかに減らすかという方向でいっている時にどういうこと が起こっているか。治らない病気が必ずあるわけで、その受け皿病院をまた作 らなければいけないということで、中小病院はどうなっているか。身動きがで きないような方たちだけを集めるような病院ができているというのが実態で、 非常に歪な形がどんどん作られているということがあります。  そういうことになると、先ほど岩谷委員がおっしゃったように、急性期病院、 大学病院は凄いことをやっていると言ったところで、うまくいかなければ早く 病院から出そうという方向というのが歴然で、有名な病院からそういう患者さ んだけを集める病院ができているのが現状です。そうなりますと、今もいくつ かお話がありましたように、そのようなことのデータを、それは宮田委員がお っしゃった統計的なことだと思いますけれども、きちんとしたことを把握した 上で、本当にそういうところから何を研究して新しい方向へ行くのか。先端研 究だけではなくて、変な言い方ですけれども、取りこぼされたような形に対し てもきちんと対応する施策が、大きな分野としてあるのではないかということ を今お話を伺っていて感じました。  そういうことは思い付き的に羅列するのではなくて、きちんとしたカテゴリ ーで分類して、そこのところの領域できちんと検討し、それをまた持ち寄って、 今後どうするかというところまで深い方向を出すというところまでやる。この ペラ1枚の結果、方向ではなくて、もっと大事なものとして出てくるのが本来 の筋ではないかと思います。しかも、今は仕分けが行われていて、この研究費 がどのぐらいになるかわかりませんけれども、これっぽっちで何ができるかと いう思いです。このようなことを、政治家の人たちも本当に考えた上で、研究 というのは国の将来を決めていくような視点であろうと思いますので、そのよ うな視点から是非大きな研究費も、今申し上げたようなきちんとした政策がで きれば輩出するのが当たり前だと思います。そのような組替え方を、もう一遍 考えていただきたいと思いました。 ○西島委員  たぶん桐野委員と木下委員のフォローアップだと思うのですが、リサーチレ ジデント等のその後の手当てということにもつながると思うのです。日本の国 研、我々の研究所あるいは感染研にしても、アメリカのCDC、FDAに比べると 定員が20分の1以下です。つい最近も私たちの研究所である室長が辞めて、次 の室長になった人が、1人では仕事ができないということで非常に悩んで、メン タルなディジーズに陥ってしまったことを間近に経験しております。これは研 究内容の施策ではありませんけれども、研究員の増員は先ほどの500億円のお 金とともに、もっと根本的に考えていただきたいということを申し上げておき ます。 ○望月委員  一つは先ほど出ました難治性疾患の中で、その他の個々の研究がなかなか進 んでいないという廣橋先生のご指摘がありました。それも資料3-3に出ているよ うに、国が相当、関与している大きいプロジェクトと一緒に個々の研究も組み 込んで、縦横とおっしゃいましたような方向に進めないと、いくら予算を増や しても個々の応募が出されず、第2次、第3次募集になってしまってうまく進 んでいないという気がします。  もう一つは薬の話を井部先生がおっしゃったのですけれども、患者さんが22 種類の薬を飲むことによってよくない結果となるということが出ています。そ のような問題に対応しようとして、6年制の薬学教育が4年まできています。年 限は確かに増やしたのですけれども、本当に薬剤師の資質を上げることがあと2 年、合計で6年経ったところでできるのか、問題点が多くなかなか難しいこと です。高い資質の薬剤師を養成することに関する研究というのが、厚生労働科 学研究の中には非常に少ないような気がします。国として文部科学省と厚生労 働省が協力して、薬の適正な使用につながる新しい薬剤師養成に関する研究も 是非進めていただきたいと思います。 ○永井部会長  だいぶ多くの要望と課題をご指摘いただきましたけれども、今後今のご意見 を受けて、どのように事務局として対応されるのかをお聞かせいただけますか。 ○三浦厚生科学課長  大変貴重なご意見をいただきまして誠にありがとうございます。先ほど私ど もの方からご説明申し上げましたとおり、本日はキックオフということで、先 生方の胸の中に溜まったいろいろな思いをとりあえずいただいたという感もい たします。本日の議論は研究そのものもありますし、研究費の問題もありまし た。それから研究の進め方の問題と、具体的な研究テーマの問題もありました。  論点として、本日全てが言い尽くされたとは理解していませんけれども、い ろいろな視点が明確になってきたとは思います。私どもは本日いただいた意見 も含め、もう一度資料をお作りし、また議論のたたきにしていただきたいと思 っております。今後ともこの議論は進めていきたいと思っておりますし、常に こういう形で議論が進められればと考えているところです。 ○永井部会長  これの取りまとめはいつ頃になりますか。 ○三浦厚生科学課長  時期的には来年の後半ということが一つあると思います。今後の予算の取り 方などもありますので、そういう意味でいくつかステップを置きながらやって いくことも可能性があるのではないかと思います。時期的なことについては、 全体の流れと個別の議論がいろいろあると思いますので調整させていただきま す。 ○永井部会長  まだまだ、いろいろなご意見があると思うのですが、例えばメールで委員の 方々から事務局の方へ申し出てもよろしいのでしょうか。 ○三浦厚生科学課長  はい、お願いいたします。 ○谷口技術総括審議官  今課長が申したとおりですけれども、基本的にこの問題は大変大きな問題で、 しょっちゅうこの問題についてやってもいいぐらいだとどちらかの先生がおっ しゃいましたけれども、私もそのとおりだと思っております。平成22年度の研 究の募集要項が出ていますが、それにいきなり反映はできませんけれども、少 なくとも平成23年度の研究の募集要項には今後出されるご意見等も踏まえまし て、そういうものの中に反映できればということが私どもにはあります。  第4期の科学技術基本計画のところに、厚労省だけではできない問題という ことをどなたかの先生がおっしゃいましたけれども、まさにそういう問題がか なり含まれておりますので、そういうところに我々の方から提言ができるもの であれば、それまでにある程度集約していただければそれを持っていくことに もなろうかと思います。その二方向といいますか、厚労省として考えなくては いけない、それとも霞が関全体で考えなければいけない、そういうことも踏ま えながら、いくつかのスケジュール感を持ちながら、やり方については部会長 とご相談させていただいてやらせていただければと考えております。  今後数回この場を利用し、先生方のご意見等をいただきたいと思っておりま すが、今おっしゃいましたようにメールでも何でも結構ですので、アドホック にご意見をいただけましたら、その都度整理をして次回、次々回の検討の材料 にさせていただければと考えておりますのでよろしくお願いいたします。 ○井部委員  先ほど質問を一つ忘れてしまったのですが、NPO法人で市民が自分たちに関 連する調査をするときに、厚生労働科学研究費に申請はできるのですか。 ○事務局  可能です。 ○井部委員  ありがとうございました。 ○永井部会長  ただ今の件は、今後継続して審議させていただきます。次は「議事4 国立精 神・神経センター神経研究所及び精神保健研究所の研究開発機関の評価結果等 について」、事務局より説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  研究開発機関の評価について、本日の参考資料2としてお配りしております 指針で、研究開発機関は各研究開発機関の評価を定期的に実施することになっ ております。その評価報告書については、こちらの厚生科学審議会科学技術部 会に報告がなされてきております。今回は、国立精神・神経センターの神経研 究所及び精神保健研究所の評価結果及び対処方針についてご報告をいただきま す。  本日は、国立精神・神経センター神経研究所の高坂所長、精神保健研究所の 加我所長、国立精神・神経センターの藤崎運営局長にご出席いただいておりま すので、ご報告をお願いいたします。 ○藤崎運営局長  国立精神・神経センターからご報告させていただきます。今のお話を伺って いて元気がなくなってきたのですが、頑張ってご報告したいと思います。よろ しくお願いいたします。資料4に評価概要、報告書、対処方針とありますが、「概 要」については委員等の名簿ですので後ほどご覧いただくことといたします。6 頁の「報告書」、それから関連する部分の「対処方針」に沿ってご説明させてい ただきます。本来であれば、研究所長からご説明申し上げるところですが、私 どもには二つの研究所があるということで、時間の節約上運営局の方からご報 告させていただきます。後ほどの質疑については両所長よりお答えさせていた だきます。  7頁で評価報告書(1)、8頁の(2)のところが基本的な研究所の運営状況と成果、 並びに研究分野の課題の選定についてという大きな部分です。それについてど のような評価をいただいたかということです。神経研究所については、国民の 要求度と関心の大きい、難治性の神経・筋疾患、精神疾患、発達障害の分子病 態解明と治療法開発に向けた研究が、分子遺伝学・分子細胞生物学・脳画像解 析学の領域を中心とした最先端の手法を導入しつつ活発に進めている。研究成 果は、審査の厳しい国際学術誌に数多くの論文として発表され、国際的にも高 い水準の研究活動を維持している。こういう評価をいただいております。  ここにお示ししましたような神経・筋疾患、精神疾患、発達障害の4分野を 当センターはカバーしていて、世界にも珍しい研究領域をカバーしております。 そういう中で最先端の研究を進めているという点の評価をいただいていると考 えております。  続いて精神保健研究所です。精神保健研究所では、我が国の精神保健福祉分 野で重点的に取り組むべき課題について、心理・社会学的解析、健康増進対策・ 医療制度改革等に関する研究等とともに、人材育成のための研修が行われてお り、厚生労働省の施策や事業の策定・推進と普及に大きく貢献している。最近、 重要度が格段に増している自殺予防や触法精神障害者の処遇等の領域等、新し いテーマとして国から付託されるものについて、通常の研究活動を進めながら 行うのは大変なことと思われるが、社会的要請度が高い研究課題でもあり、今 後においても着実にその推進役を果たしていただけるよう期待する。つまり、 精神保健研究所の非常に幅広い、また社会的な影響の大きい、また貢献度の高 いさまざまな研究がされている点を評価していただいていると理解しておりま す。  (2)研究分野の課題の設定について。神経研究所については、難治性の精神神 経疾患の新たな治療・予防法開発を目指した、病因・病態の分子機構解明に直 結した研究課題が設定されている。特に筋ジストロフィーをはじめとする筋疾 患の研究が、世界をリードする成果を継続して発信している点は特筆される。 この研究領域で、基礎研究部門と疾病研究部門が一体となって臨床的問題を解 決してきた伝統が、現在も活かされており、他の疾患に関する研究所内外の共 同研究でも、基礎的研究が疾病研究と有機的な関連性を保って進められ、今後 のさらなる発展が期待できる。  その下は国立長寿医療センターとの認知症関係の研究の棲み分けをどのよう に考えるかという点のご指摘です。これは後ほどの対処方針の方でご説明させ ていただきます。  精神保健研究所の課題の設定等についてです。厚生労働省の施策に関して、 多岐にわたる視点からその進行をモニタリングし、さらに方向性を探るための 研究が精神保健計画部および社会復帰相談部において継続性と一貫性をもって 行われていることの意義は大きいと考える。また、自殺予防の視点から、自殺 予防総合対策センターが設置され、さらに社会精神保健部、精神保健計画部に おいても連動して研究活動を担っていることは意義深いと考える。  先ほど申し上げましたような、幅広い精神保健福祉の領域に関与している、 そのようなテーマを国からの要請も含めて適切に選定している。自殺対策のよ うな社会的な焦眉の急な課題についても対応しているということです。  時間の関係もありますので要点に絞らせていただきますが、9頁です。(4)か ら(6)については評価項目としてこの三つについて、研究を推進していくに当た ってより効率的・効果的な推進をするためのサポート体制、あるいはシステム をどのように構築するかというところの評価です。(4)(5)(6)のところにそれぞれ 書いてありますけれども、この評価の中でご指摘いただいている極めて重要な 事項といたしまして、(4)の2行目にあります、「その意味でもトランスレーショ ナル・メディカル・センター構想は、非常に良いアイデアであり」、また(6)の「ト ランスレーショナルリサーチ」ということがあり、ここのところを私ども精神・ 神経センターにおいては新たな体制の構築ということで鋭意取り組んでおりま す。この点が高く評価をいただいているところです。  資料の19頁から20頁にかけて、その点のシェーマを付けさせていただきま した。先ほどのご議論の中で出てまいりましたような、今の研究の推進におけ る要請にある程度応えられているのかなという気がしております。19頁はトラ ンスレーショナルリサーチ、あるいはメディスンということで、基礎研究から 臨床応用に向けてこのような流れになっていくことについて、私ども研究所の 具体的なシーズ、左から具体的な目標の治療の部分までこういう流れを持って おります。真ん中に赤い丸の線がありますが、ここがトランスレーショナルメ ディカルセンターということで、その両者をつないでいくというシステムを作 っております。そして今後、脳イメージングセンター、あるいは治験病棟等の 整備を行っていくということです。  20頁では、今申し上げましたトランスレーショナルメディカルセンター (TMC)の組織図です。黄色い枠の下にいろいろぶら下がっております。ここの 左の方の三つの臨床開発部、臨床研究支援部、情報管理・解析部という構成を 持ち、臨床開発部であればバイオリソースの管理、先端診断技術開発。また臨 床研究支援部であれば、臨床研究を推進するための支援をしていくテクニカル なサポートをしていく、あるいは治験管理推進のための体制を整備していく。 情報管理・解析部においては、今までいろいろご議論がありましたけれども、 そういう情報をきちんと管理していく部門をやっていきます。  こういうことをやりながら、基礎研究部門と臨床研究部門を結びながら、一 番右の方におきましてはビジネス・ディベロップメント室のように、企業との 連携などを推進する部署を持ち、真ん中の病院の下のところにクラスター病床 管理部門というのがありますが、そこのところで、これはこの間創薬推進5カ 年計画でしょうか、そういう創薬推進の流れの中で整備された部門です。企業 と一緒にラボを活用する、あるいは第I相治験を推進するためのスペースを作 るようなことをやっています。  そういうことを全部合わせたのが21頁のシェーマになっています。一番左の TMCを軸にしながら、センター病院と研究所でつながって、真ん中の点線の臨 床研究病床・検査機器、あるいは企業ブース、ここのところで企業との連携を 具体的に進めていくような物理的なスペースを持つということで、現在進めて おります。そして右の方の、製薬企業・ベンチャー企業、大学・他研究所、あ るいは治験拠点病院としてのネットワーク構築を進めていくという構想です。  現在組織定員が認められておりませんでしたので、すべてバーチャルで、全 部兼務でやっておりますけれども、その活動は非常にレベルの高いもので、職 員の努力に負うところはありますが、そのような取組みを推進しているところ です。  10頁で、(7)研究者の養成・確保・流動性の促進についてです。この点につい ては(7)でいろいろ評価をいただいておりますように、人事交流も盛んにやって いて、連携大学院の構築でありますとか、このようなことを推進していて、研 究者の養成・確保・流動性の促進という領域についても十分に対応できている かと思います。  しかしながらという後段の方で見ますと、やはりご指摘いただいたのは、国 として研究費に人件費を含むというような検討を是非とも期待するとあります。 これは私どもに言われても対応のしようがないのですけれども、是非本審議会 でもご議論いただきまして、こういう研究費の使い勝手がよくなるような対応 がされていくといいのかなと感じております。  (8)専門性を活かした社会貢献に対する取組みについての評価です。社会貢献 について、神経研究所については1行目にありますように、ここでやられてお ります精神神経疾患という難病領域の原因解明、治療方法の探索そのものが社 会貢献なのだという評価をいただいております。また、若い研究者の実践的研 究指導や教育は極めて大きな社会貢献になっている。そのような視点で、広く 社会貢献という評価をいただいております。  精神保健研究所については、一つは技術研修が非常に幅広く長期間にわたっ て展開していて、研修テーマが多様化し、受講生の増加が見られる。こういう 領域の貢献と、さらに3行目以降にありますように、災害や犯罪の現場への PTSD対策のようなもの、あるいは薬物依存研究部では、いわゆる薬物依存の 対策といった社会問題と直結した精神保健領域の取組みが行われていて、社会 貢献に十分資しているという評価をいただいております。  13頁以降の対処方針です。今のような評価をいただく中で、いくつかこうい うことを望む、改善するようにというご指摘をいただいたところがありますの で、いくつかの点について要点だけ報告させていただきます。14頁の(2)研究分 野の課題についてということで、先ほど触れさせていただきましたが、神経研 究所の中の部門の変更で、高齢者認知症が主な研究領域となった点について、 センターの方針云々ということで、長寿センターとの連携を明確にすることが 望まれるとありました。  これは会議の中でも申し上げたことですが、国立長寿医療センターが設立さ れた際に、血管性認知症や、老化に伴う認知症は長寿医療センターが行う、そ して遺伝性認知症は国立精神・神経センターが行うという棲み分けが暫定的に 取り決められております。しかしながら、そういうことでリジッドにやるので はなくて、いずれのセンターだけで完結できるわけではありませんので、やは り密接に連携を取りながら進めていくべきであろう。認知症という非常に重要 な、難しい分野はどこかの施設だけが云々ということではないのだろうという 考え方を持っております。  15頁の(4)は先ほど申し上げましたトランスレーショナル・メディカル・セン ターの推進ということで、基本的にカバーされていく事項ですけれども、この 中で一つご報告しておきたいのは、この両研究所はよく連携をして、人事交流 その他共同研究を進めるようにというご指摘をいただいておりますけれども、 対処方針の中の2行目に「専門疾病センター」という記述があります。これは 新しい試みで、どうしても病院と研究所の連携というのは難しいという恨みが ありますので、専門疾病センターという枠組みを作り、研究所と病院のスタッ フが一緒になってチームを作る。対外的に、患者さんに対しては専門外来をそ の領域で充実し、もう一方で研究はそのチームで推進していくという体制を、 一定の質と量を備えた領域の疾患対応について行っていく。現時点で三つのセ ンターを当方では内部的に承認しております。一つ目はてんかん、二つ目は筋 疾患関係、三つ目は多発性硬化症関係です。これについては基礎分野と臨床、 そして患者さんへの専門外来等における対応を進めているところです。  16頁の(6)共同研究の導入状況、産官学の連携、国際協力等の外部との交流で す。こういう中で民間との共同事業であるとか、そういう支援体制を積極的に 展開するように、また企業や大学から当センターにどのようなリソースといい ましょうか、研究が可能かという情報がなかなかわからないではないか。そう いうものを発信するようにというご指摘をいただいております。  そういう中で私どもは先ほど申し上げましたように、TMCの体制を強化しつ つ、現在共同研究の展開については今年度の先端医療開発特区(スーパー特区) に選定されておりますし、また企業との共同研究施設を有する医療クラスター 病棟を整備する。こういう中で取組みを強化することを進めているところです。  時間がまいりましたようですので、私からの説明は以上で終わらせていただ きます。ご質問があればお願いいたします。 ○永井部会長  ありがとうございました。ご質問がありましたらお願いいたします。 ○廣橋部会長代理  同じナショナルセンターの仲間として言いにくいのですけれども、だからこ そ逆に申し上げなければいけないかなと思います。まず、このような会議に両 研究所の所長がいらっしゃっていて、研究評価の内容を説明するのになぜ運営 局長が説明するのですか。私には理解できません。我々のセンターにはそんな メンタリティはありません。 ○藤崎運営局長  おそらくメンタリティが違うのではないでしょうか。私どもは、研究所が二 つあるということで。 ○廣橋部会長代理  それは結構です。2番目は簡単なことですけれども、トランスレーショナル・ メディカル・センターを新しい組織として設置するということで絵は描かれて います。でも、組織を作り上げる場合には、長い時間をかけて、その分野の人 材を育成し、あるいは実績を積み上げて初めてできるのです。そういう準備が どこまでなされているかが問題なのであって、こうやって絵を描くのは誰だっ てできるのです。そこがどうなのかが2番目です。 ○高坂所長  神経研究所の高坂です。今のTMCへのご質問ですが、これは独法化を控えた 我々の悲願であって、やっとこういう組織をバーチャルで作れたということが あります。これは言ってはいけないことかもしれませんが、ナショナルセンタ ーの中でも、精神・神経センターの場合には3番目にできた、どちらかという と小ぶりなセンターであります。したがって研究所あるいは病院の人材につい ても非常に制限されているということがあります。ご承知のように、毎年ここ は必要な人材だから定員を増加してほしいというお願いをしているのですが、 当然のことながら国家公務員の定員削減ということで、増員を付けてもらえな いか、もしくは削減されるということです。しかしながら、今の研究所でいえ ばスタッフが49名という状況で、これはどういうふうに改革すればいいかを考 えたときに、少なくともこういう組織図を作り、数年後に我々はこういうこと をやるのだということを、我々自身に命ずると。 ○廣橋部会長代理  その思いはよく分かりましたが、やはりこういうのを作るときには長い時間 がかかって、例えばバイオフィンフォーマティックスの人材が日本では少ない のでそういう者を育てるとか、集めるとかいろいろなことが必要なのです。そ ういうことなしに、ただ絵を描いただけでは評価できない。出発点なのだとい う意味で理解しました。 ○高坂所長  事実、これはビジネス・ディベロップメントにしても、他の臨床研究支援、 特にCRCといったところについては既に企業の方に2人非常勤ではありますが 来ていただいています。しかもNEDOフェローのOBに知財の担当者として来 ていただいています。一つ二つは実現しているわけです。 ○廣橋部会長代理  ご健闘を祈っております。もう一つ聞きたいことは、先生の所には神経研究 所と精神研究所と二つの研究所がありますが、この二つが独立で存立してお互 いに相互作用しているのでしょうけれども、その意義。これによって何が新し く生まれて、こういう形があるべき姿なのかということについては、どのよう な考え方を持っていらっしゃいますか。 ○藤崎運営局長  それぞれに意義があるから存在しているわけです。先ほどの評価で申し上げ ましたように、それぞれ神経研究所、精神保健研究所は立派に評価していただ いております。 ○廣橋部会長代理  私は、研究所長にお伺いしたいのです。このようにお互いに存立することに よって、どのように研究の展開・発展が行われているかがすごく大事なのでは ないかと思うのです。 ○高坂所長  3年ほど前に、精神保健研究所が国府台から移転してきた際に議論されたこと ですけれども、当然我々は分子レベルでの疾患に対するアプローチを行う。一 方、精神保健研究所はメンタルヘルスという意味で、精神だけではなくて各疾 患、名前は精神保健と付いているのですが、いろいろな疾患にメンタルヘルス を主体とした、特に心理・社会学的なアプローチをとって患者さんを治す方向 で頑張る。ある意味では全く別のシステムだったのです。それが一つのキャン パスに移って、当然私たちメンタルヘルスは重要なのだけれども、分子のレベ ルでやっている人間にはその重要性がよくわからなかったという点もあります。 一方、精神保健研究所の方は、メンタルヘルスは立派だけれども、分子の方は あまり得意でない方もいた。それが同じキャンパスに来たということは、非常 に重要なことなのです。  これも今先生がおっしゃったように、これから数年かけて良いところは合体 させるし、独立すべきところもたぶんあると思うのです。しかしながら、メン タルヘルスと分子レベルの研究を両立させていくことは世界的にも例がないの です。そういう意味で精神・神経センターというのは非常に存在価値はあると 思っております。 ○廣橋部会長代理  期待しております。 ○松田委員  評価指針の見直しについてが最初の議題でした。その内容のところに「研究 開発評価の方法について」と。最初のポイントで「被評価者による自己点検結 果や個別課題等の評価を活用し、評価者は効率的な評価の実施を行うこととす る」というのが出てきます。自己点検結果とか、自己評価をやったのかどうか、 もしおやりになったのであれば、どのようにこの評価の効率化に貢献したのか どうかをお聞かせください。 ○高坂所長  神経研究所についてご説明申し上げます。3年ほど前から特にパーマネントレ ベルの室長に関して自己点検を行っております。その評価というのは、いわゆ る客観的に自分で評価できる点数、即ちパブリケーションがいくつであって、 インパクトファクターがいくつである。あとは学会で理事はなかなかいないの ですが、役員をやっているかどうかといった社会的な貢献度といったものを5 項目ぐらい設けて、自分で採点させて、それで計100点を付けます。それ以外 に面接等でいろいろ伺って、自分の活動はどうだったかという点を20点、計120 点で採点をさせていただくことをやっています。  その中の客観的評価というのはほぼ自己評価ですので、それで自分は総合で ABCのどこのランクになるかがわかります。必ずそこの自己評価の中で、我々 がこういうことをもう少しやった方がいいのではないかというようなコメント を付けます。そういうもので、この3年間自分はどうしようかということを自 己評価としてクリアになってくることになります。ただ、それは3年に1回し かやっていないのですが、そういう自己評価をやっているのと同時に、この機 関評価についてもいろいろな質問に対して、個々の部に対してこれを投げて回 答を求めます。そのときに自己評価の内容を加味して、自分は今後こういう対 象をやっていきますというようなことに活かしていることになります。 ○加我所長  精神保健研究所では、点数化して評価をすることはまだやっておりません。 現実的に実際の仕事の状況については、個々の研究者の皆さん方と、部長を通 してあるいは室長と直接、かなり頻繁に話を聞きながら仕事を進めるようにし ております。  二つ研究所があるのは意味がないのではないかみたいなことをおっしゃられ たことは、非常に心外に思っております。分子生物学からいく非常に微細な、 細かい病態生理が重要だということは私もよくわかっておりますけれども、遺 伝子がわかっても病気が治らないという現実はまだまだ当分続くだろうと思い ます。  私どもは分子直接をターゲットにするというよりは、ヒトを直接対象とした もの、社会を対象としたもの、そして環境的なこと、生物学的なことも含め、 総体的に患者さんないしヒトにアプローチしてメンタルヘルスを向上させるこ とを考えていきたいと思っております。違うアプローチ、違う手法で最終的に は人々の幸福に貢献できるようなことを考えて研究していますので、両研究所 の存在は、非常に意義のあるものだと考えております。 ○廣橋部会長代理  二つの研究所など要らないのではないか、というふうに私が言ったとお聞き になったのだったら申し訳ないと思います。高坂所長にはちゃんと理解してい ただいて、私はその二つの違った研究所がどういうふうに相互作用されて、新 しい価値を生み出せるのかをお伺いしたのであって、それに対してこれから3 年間ぐらいかけて、そういう相互作用で成果を上げていくとおっしゃったので よく分かっていただけたと思います。 ○加我所長  ありがとうございます。キャンパスが離れておりましたときにも個別の共同 研究が行われておりました。引っ越し後は近くになったことにより、それがよ り研究者どうし、あるいは研究グループどうし近づきやすくなりましたので、 皆様のご期待に応えられるような研究成果を出していくことが今出来つつある と思いますし、今後も出来ていくと信じております。 ○岩谷委員  私の理解するところでは、今精神疾患の患者さんの社会的入院と申しましょ うか、退院して社会で生活をしてもらうということで、厚生労働省は目標を掲 げたと思うのです。そういうことに関する研究というのは絶対に必要なのだと 思うのです。ただ出ていけ出ていけと言っても、決して出ていけるものではあ りません。そのようなことの研究に今後取り組むことをお考えなのでしょうか。 本日のご報告からは、あまりそういう視点の研究がないように思われたのです が、いかがでしょうか。 ○加我所長  ありがとうございます。そのような課題は、まさに私どもの研究所の課題の 一つです。随分前から精神病床がどのように利用されているか、外来の患者さ んがどのように困っていらっしゃるかということに関する調査は、国のモニタ リング研究の一つとしても継続的に行われています。昭和29年度の精神衛生実 態調査の記録も残っております。これ以外にも個々に退院される患者さんをど のようにケアしていくか、地域でどのようなケアをしていったらよいかという ことに関しての研究は、既に十分行われつつあります。  退院された方たちのお住まいをどうするか、地域にいらっしゃる方たちの薬 剤だけではなくて、日常生活のサポート、仕事のサポートといったことに関し ても、ACTと申しまして地域で患者さんやご家族を支える仕組みをモデル的に 作るということを、国府台の時代に既に始めておりました。それを実際に研究 として良い形にブラッシュアップしていく、そしてそれを全国に広げていくと いうことは現在の研究を進めております。既に全国で10カ所以上の核が、市川 地域だけではなくて出来つつあります。現在、私どものセンターがあります小 平周辺でも、確立を目指して用意しているところです。 ○桐野委員  同じナショナルセンターの一つであります国立国際医療センターです。大学 のような教育機関の研究機能に比べて、ナショセンの研究所というのは、若手 がかなりの数集積するという点においてかなわないところがあります。少なく とも、もう少し若手が参入できるような大型研究費の人件費の問題は大きいと 思います。  もちろんナショナルセンターは今後法人化すると交付金という形で、イント ラミューラル研究費が配分されるわけですが、その研究費を通常の人件費以外 のものに薄くばらまくやり方はいいとは思っていません。アメリカのNIHはそ ういう形でイントラミューラル研究費で非常にコンペティティブな、競争的な 関係を保っていますが、日本はイントラミューラルだけでは当然足りないので、 コンペティティブな研究費を獲得しに行く努力をしない限り、少人数でちまち まとやることでまとまってしまう可能性があります。  そういう意味では、交付金として配当される研究経費については、もちろん 活動度とか研究のプロダクトを見ながら、プロジェクトとして人件費に配当で きるような仕組みというか、それができないような規制があれば少し考えてい ただく。例えば、総人件費の抑制などの大枠がありますので非常に難しいので すけれども、そういうことをしない限り、若手が集積するような研究機関でな ければ、やはり長い目で見れば活動度は保てないと思いますので、ここに指摘 されていることは非常に重要だと思いました。 ○永井部会長  時間の関係もありますので、両研究所におかれましてはただ今のご意見を踏 まえ、さらに運営の改善にお努めいただきたいと思います。高坂所長、加我所 長、藤崎運営局長におかれましては、本日はお忙しいところをありがとうござ いました。 ○永井部会長  「議事4 遺伝子治療臨床研究に関する実施施設からの報告について」、事務 局から説明をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  資料4-2についてご説明いたします。内容は4点あります。はじめの2点は 九州大学で実施中の遺伝子治療臨床研究に関する、重大事態等報告と実施計画 の変更報告となっております。1頁からが重大事態等報告書です。九州大学で実 施中の慢性重症虚血肢に対する血管新生遺伝子治療臨床研究において、遺伝子 治療を行った患者さんが間質性肺炎の急性増悪によりお亡くなりになったとい う報告です。  3頁からの重大事態等の内容及びその原因の欄に経過等が書いてあります。過 去にも別件で重大事態等報告をいただいた患者さんですが、他の病院に入院さ れ、そちらで間質性肺炎の急性増悪によりお亡くなりになったということです。  4頁に今回の経過等があります。この患者さんの外来受診が6〜8月にないと いうことに気づいて、9月にご家族に電話連絡して判明したということで、お亡 くなりになった病院から診療情報等の提供を受け、九州大学の委員会で検討が なされております。4頁の下の方にその記載がありますが、死因は間質性肺炎の 急性増悪だろうとする判断は妥当であり、臨床研究薬が直接的な影響を与えた 可能性を積極的に示唆する所見は少なく、臨床研究の継続は可と判断されてい ます。  他方、この事態の認知に死亡後3カ月経過してしまったことから、即刻体制 を整備するようにという指示があり、患者さんとの連絡体制などの整備が行わ れております。本件の対応等については今後もフォローしていくべきところは ありますが、重大事態等の内容については速報をいただいた段階から、本部会 の下の遺伝子治療臨床研究作業委員会の先生方にご確認をいただいております。  6頁からが同じく九州大学からの実施計画の変更報告書です。9頁に変更内容 がありますが、研究期間の延長、研究者の異動等、九州大学内での審査体制の 変更に伴う改訂の他、先ほどの案件を踏まえた同意説明文書の改訂を行うこと になっております。  17頁に患者さんへの説明文書の新しいものが付いております。そして23頁 に、患者さんが他の病院に行くことを想定したカードの見本が付いております。 この変更報告の内容についても、遺伝子治療臨床研究作業委員会の先生方にご 確認をいただいております。  24頁からは筑波大学の遺伝子治療臨床研究実施計画の変更報告書です。研究 の課題名は「同種造血幹細胞移植後の再発白血病に対するヘルペスウイルス・ チミジンキナーゼ導入ドナーTリンパ球輸注療法の臨床研究」というものです。 26頁から変更内容があります。細かく書いてありますが、研究期間の変更、研 究者の変更、検査方法の変更、遺伝子導入を行う際の細胞調整方法の変更、同 意説明文書の変更等です。  28頁から、筑波大学における審査の報告があります。種々修正すべき内容に ついて検討された経緯が記載されております。その後に新旧対照表がかなり分 厚くなっておりますが付いており、69頁から変更理由の書類が付いております。 研究計画を改善したいということで、その根拠について記載されていて、特に 今回大きいところは、細胞調整の方法の修正で、そちらについては詳細な説明 があり、この他にも資料等を提出していただいております。これまでの臨床研 究との相違点について、患者さんへ説明する文書は78頁に別紙3として付いて おります。  79頁からは国立がんセンターからの変更報告書です。81頁の一番上の欄に、 その施設の委員会が実施計画の変更を適当と認める理由が記載されております。 記載整備的なものが主ということです。後ろの方に新旧対照表があり、111頁に 「変更理由一覧」があります。こちらの5-1にあるようなスケジュールの変更、 7-3にあるような移植細胞数の規定の変更等が主なものです。  筑波大とがんセンターの変更報告の内容についても、遺伝子治療臨床研究作 業委員会の先生方にご確認をいただいております。説明は以上です。 ○永井部会長  ただ今の説明についてご質問、ご意見はございますか。 ○永井部会長  ご意見がないようでしたら、ご了承いただいたということで進めさせていた だきます。本日の議事は以上です。事務局から連絡事項等をお願いいたします。 ○坂本研究企画官  次回については、別途日程調整をさせていただいておりますが、平成22年2 月18日(木)の15時30分から開催を予定しております。正式なご案内につき ましては、詳細が決まり次第送付させていただきますのでよろしくお願いいた します。事務局からは以上です。 ○永井部会長  それでは、これで終了させていただきます。どうもありがとうございました。                                                              −了− 【問い合わせ先】 厚生労働省大臣官房厚生科学課 担当:情報企画係(内線3808) 電話:(代表)03-5253-1111     (直通)03-3595-2171