09/12/18 第53回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会議事録 第53回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会 日時 平成21年12月18日(金) 09:00〜 場所 厚生労働省職業安定局第1会議室 ○清家部会長 ただいまから、第53回労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会を開催 いたします。本日の出欠状況ですが、委員の皆様全員にご出席いただいております。本日の 議題は前回に引き続いて、「雇用保険制度について」です。これまでの議論を踏まえつつ、 報告書案について具体的に議論できるようにお願いをしておりましたが、私と事務局とで相 談し、その資料を事務局に準備していただいておりますので、まず、資料について事務局か らご説明をいただき、その後質議に入りたいと思います。では、事務局からお願いします。 ○篠崎雇用保険課課長補佐 本日の資料は「雇用保険部会報告(案)」1つです。この報告 書の案について説明させていただきます。報告書の案は、前回たたき台ということでお示し し、また、これまでの議論を踏まえて事務局で作成いたしました。  まず第1に、「現状及び課題」ということで、現状認識と、それから出てくる課題を記載 しております。1つ目の○が現状認識です。これまでの状況として、平成20年度後半から 雇用失業情勢については下降局面になりました。実際数値を見ましても、有効求人倍率が 0.4倍台、完全失業率は5%台で推移するという厳しい状況が続いています。また、今後更 なる悪化が懸念されます。特に平成20年度後半以降につきましては、派遣労働者、パート タイム労働者、契約社員等の非正規労働者の方に影響が大きく、これら非正規労働者の雇用 の安定に大きく影響を与えてきたということで現状を認識・分析しております。  次の○は平成21年の雇用保険法改正で対応したことを記載しております。平成21年に 雇用保険法改正等を行いまして、非正規労働者に対するセーフティーネット機能及び離職者 に対する再就職支援機能の強化を図るために、具体的には労働契約が更新されなかったため に離職した有期契約労働者の方の受給資格要件の緩和、また適用範囲の拡大、個別延長給付 の創設等を行って対処しています。  次の○は、足下の平成21年以降の雇用保険財政の現状について書いております。雇用保 険財政の収支につきましては、上で見たように雇用失業情勢が厳しい中で、失業等給付費が 増加をしております。平成21年度の1次補正予算ベース、これは6月のものですが、それ で見ますと、積立金を約8,000億円取り崩すことが必要な状況にあります。それから雇用保 険の二事業につきましても、全般的に雇用情勢が厳しい中で、雇用調整助成金をはじめとし て支出が大幅に増加しており、現状のまま推移すれば雇用保険二事業の安定的な運営の確保 は困難な状況になっております。  次の○ですが、そういった現状と今後の見込みがある中で、先般12月8日には、政府と いたしまして、現下の厳しい経済・雇用情勢・状況等を踏まえ、景気回復を確かなものにす るためということで、「緊急経済対策」を閣議決定しております。その中におきましては、 雇用調整助成金の要件緩和をはじめとして、雇用対策が盛り込まれました。  ○はこういった現状と直近に打ち出した緊急経済対策等を踏まえますと、雇用保険制度に おいても、非正規労働者に対するセーフティーネット機能の更なる強化を図るとともに、雇 用保険の財政基盤の強化を図ることが喫緊の課題になっています。  ○では、以下で記載いたしますが、「このため次のとおり、雇用保険制度の機能強化を図 るための見直しを行っていくことが適当である」としております。  第2が、具体的な「雇用保険制度の見直しの方向」です。1「適用範囲について」という ことで、(1)非正規労働者に対するセーフティーネットの強化ということで記載をしており ます。1つ目の○ですが、短時間労働者の適用基準については、従来、業務取扱い要領にお いて「1年以上雇用見込み」と定めておりました。これについては、平成21年の雇用保険 法改正に合わせて業務取扱要領を改正し、これを「6か月以上雇用見込み」まで緩和いたし ました。  ○このため、現在短時間労働者については「週所定労働時間20時間以上、6か月以上の 雇用見込み」という適用基準が設けられていますが、特に「6か月以上の雇用見込み」要件 のために適用を受けられない者がいます。  ○そういった現状を踏まえて、非正規労働者に対するセーフティーネット強化の観点から、 こうした者に対しても雇用のセーフティーネットが必要であり、離職しても受給資格を得ら れない層の発生は懸念されるものの、「週所定労働時間20時間以上、31日以上雇用見込み」 の者については、雇用保険の適用対象にすべきであるということで、「6か月以上の雇用見 込み」を「31日以上」に拡大すべきと記載しております。  次の○で、拡大した場合について「その際」ということで、離職と受給を繰り返す層の発 生防止や雇用保険財政への影響を考慮し、現行の受給資格要件で、先ほどの31日以上とい うのは適用するときの要件です。一方で受給資格要件について現行は、原則として離職日前 2年間のうち12月以上の被保険者期間が必要である。また非自発の特定受給資格者等につ いては、離職日前1年間のうち6月以上の被保険者期間があること、という受給資格要件が ありますが、これについては維持することとすべきであるとしております。  こういった形で適用範囲を拡大した場合、被保険者資格の取得手続が増えてきますので、 次の○にあるように被保険者資格の取得手続について、事業主の事務負担が増加することを 考慮し、被保険者資格取得届において必要とされている添付書類について、簡素化を図るべ きであると、事務負担の増に配慮して事務の簡素化を検討することにしております。  次頁の次の○、こちらは若干法律の技術的な整理の部分もございますが、一般被保険者が 拡大することに伴い、短期雇用特例被保険者や日雇労働被保険者との関係について必要な整 理を行うとしております。具体的には、今回31日以上ということで拡大しますと、30日以 下の日雇労働者や短期雇用特例被保険者との関係を整理する必要があると記載しておりま す。  (1)では、短期雇用特例被保険者のうち1年未満の雇用に就くことを常態とする者(短期常 態)については、季節的に雇用される者に該当し短期雇用特例被保険者となる場合を除いて 一般被保険者として適用することとする、と記載しております。これは、短期雇用特例被保 険者のうち季節的に働く方と、季節性はないが短期に働くことを常態としている方、その両 方が含まれるわけですが、季節性に関係なく短期間の雇用を常態としているという方につい ては、被保険者資格が拡大されているわけですので、一般被保険者として適用すべきであろ うという整理にいたしました。  (2)は、日雇労働被保険者が同一の事業主に31日以上継続して雇用された場合は、原則と して一般被保険者へ切り替えることとすべきであると記載しております。  次の○で、適用基準として、「6か月以上の雇用見込み」が現行業務取扱要領で記載され ておりますが、国民にとってわかりやすいものとする観点からは、可能な限り法律に規定す べきである。具体的には「6か月以上の雇用見込み」から31日以上に拡大しますので、「31 日以上雇用見込み」の者を適用対象にする旨のほか、「週所定労働時間が20時間未満の者」 「昼間学生アルバイト」、や「4か月以内の期間を定めて季節的に雇用される者」を適用除 外とする旨は、法律に規定することとすべきであるということで、これまで要領記載されて いたもの等について、法律できちんと明確化していこうということです。  (2)は雇用保険に未加入であった者への対応、いわゆる遡及適用の関係です。1つ目の○が 現状と方向性です。現状ですが、事業主が被保険者資格の届出を行わなかったことにより、 雇用保険に未加入となっていた者について、現行制度においては、被保険者であったことが 確認された日から2年前まで遡及して適用できるとなっております。しかしながら、2年前 の遡及の場合は、2年以上前の期間において事業主から雇用保険料を控除されていたことが 給与明細等において明確に確認できる場合については、事業主が届出を行わなかったことに より所定給付日数が短くなるという不利益が労働者に生ずることがありますので、そういっ たことが生じないようにするため、2年を超えて遡及して適用することとすべきであるとし ております。  次の○にいきます。また、2年を超える遡及適用の対象となった労働者を雇用していた事 業主のうち、事業所全体として保険関係成立届を提出しておらず、保険料も納付していない ことが明らかな場合には、保険料の徴収時効である2年経過後でも納付できる仕組みとすべ きであるとしております。  適用について遡及した場合、その事業所として雇用保険成立届も出していないような場合 には、徴収時効を超えて保険料を納付できる仕組みを構築するとしております。  「さらに」ということで次の○で、そもそも未加入という状態が発生しないようにするこ とが重要であるというご指摘がありましたので、そういった関係の記載をしております。遡 及適用が必要となるような未加入のケースの発生を防止することが重要であり、このため、 事業主を通じて被保険者である労働者に雇用保険被保険者証を交付することを確実に履行 するとともに、労働者がこれを保有しているか、自ら確認することを促すなど、雇用保険の 適用手続について運用面での必要な改善を図るべきであるとして、運用面でも労働者被保険 者証がきちんと渡る。また、労働者自らが被保険者であることを確認できるといったことが 改善されるようにしていくとしています。  2は「財政運営について」です。まず(1)は失業等給付に係る国庫負担についてです。1つ 目の○では現状を書いております。失業等給付に係る国庫負担割合は、平成19年度から、 暫定措置として、法律の本則(1/4)の55%、具体的には13.75%の国庫負担割合とされてお ります。  次の○ですが、こうした中で、先般12月8日に閣議決定された「緊急経済対策」におき ましては、当面の失業等給付の費用の一部に充てるため、平成21年度に一般財源を投入す るとともに、平成23年度以降について、安定財源を確保した上で、国庫負担を法律の本則 に戻す旨を雇用保険法に規定すると明記されています。  次の○です。雇用保険の保険事故である失業というのは、政府の経済対策、雇用対策との 関係が深く、政府もその責任を担うべきであり、失業等給付に係る国庫負担割合は、法律の 本則である1/4とするのが本来であるが、国の厳しい財政状況を勘案すると、平成21年度 において一般財源を投入すること、及び平成23年度から国庫負担を法律の本則である1/4 に戻すことが明確にされたこともやむを得ないものと考えるが、これを確実に実現していく べきであると記載しております。  (2)は雇用保険二事業の安定的な運営の確保についてです。まず1つ目の○が現状です。 平成20年度の決算後におきまして、雇用安定資金残高は約1兆260億円となっておりまし たが、平成21年度末(2次補正の予算案ベース)では3,467億円、平成22年度末(概算要 求ベース)では約1,061億円の見込みです。雇用調整助成金をはじめ、現下の雇用失業情勢 に対応した雇用対策を実施していくため、雇用保険二事業の安定的な運営の確保が必要とな っているというのが現状認識です。  ○こうした中における足下の状況ですが、「緊急経済対策」において、雇用調整助成金の 要件緩和が決定され、雇用保険二事業から更なる支出が必要となっております。したがいま して、雇用保険二事業の財源不足を解消するための方策を検討することが必要とされていま す。  次の○です。一方で、失業等給付に係る積立金については、雇用失業情勢が厳しい中で失 業等給付が増加し、平成21年度、これは2次補正予算案ベースですが、結果として、平成 21年度積立金を見ますと、約5,000億円取り崩すことが必要な状況となっているものの、 平成22年度末における残高(概算要求ベース)は約4兆8,000億円と見込まれています。  次の○です。こうした状況や国の厳しい財源状況を勘案すると、雇用保険二事業の財源不 足の解消という課題の解消にあたっては、暫定的な特例措置として、雇用調整助成金等のた めに必要な額について、失業等給付に係る積立金から借入れを行うことはやむを得ないと考 えているとしております。  次の○です。このように、雇用保険二事業については、未だかつてない危機的な財政状況 にあることから、これまでのPDCAサイクルによる目標管理を徹底することはもとより、 事業費全体の絞り込みを図るため、失業予防や能力開発という雇用保険二事業の趣旨に照ら し、現時点で必要か否かという観点から事業内容を再度精査するなど、徹底的な見直しを行 っていくこととすべきである。  次の○では、その上で、雇用保険二事業に積立金から借入れを行うのであれば、平成22 年度の雇用保険二事業に係る保険料率については、特例的に弾力条項を発動しないこととし、 3.5/1000とすることが適当であると記載しております。この弾力条項につきましては平成 20年度決算の判断をしますので、1兆円積立安定資金残高があったときの元金を勘案しま すと3.0/1000になるわけですが、厳しい状況であり、借入れを行うということであれば 3.5/1000にすることが適当であると記載しております。  (3)は平成22年度の失業等給付に係る雇用保険料率についてです。平成21年度の雇用保 険料率は、1年限りの特例措置として8/1000となっていたところであるが、平成22年度の 失業等給付に係る保険料率については、厳しい雇用失業情勢が続くことが懸念される中で、 失業等給付に係る収支の悪化は懸念されるものの、積立金の状況を勘案し、原則16/1000 であるところ、弾力条項により12/1000に引き下げることとすべきであるとしております。 これは、弾力条項で原則は16/1000というところを、12/1000まで引き下げることができる という中で、下限である12/1000に引き下げることとすべきであるという意味で記載して おります。  3の「今後の課題」は大きく2つ記載されていますが、まず雇用保険関係です。(1)は平 成21年1月7日の雇用保険部会報告において「今後の課題」とされた事項等についてです。  ○平成21年1月7日の雇用保険部会報告報告において「今後の課題」とされた事項など、 上記1及び2以外の諸課題については、5つ掲げております。  (1)マルチジョブホルダーへの対応については、これらの者の就業の実態を可能な限り把握 した上で議論すべきである。  (2)65歳以降への対処については、雇用保険制度の課題としてだけでなく、65歳以降の企 業における働き方や年金との関係を含めた全体的な議論の中で考えるべきである。  (3)基本手当については、労働市場の変化や雇用就業形態の多様化に対応した基本手当日額 の上限下限額、給付率、給付日数等のあり方について、上記1及び2の緊急に対応すべき課 題とは別に改めて議論すべきである。  (4)高年齢雇用継続給付については、平成19年1月9日の雇用保険部会報告において、改 正高年齢者雇用安定法等を踏まえ、原則として平成24年度までの措置とすべきこととされ ているが、60歳代前半層の雇用の状況を踏まえ、平成25年度以降のあり方をあらためて検 討すべきである。  (5)教育訓練給付については、効果的な実施が図られているかとの観点から、制度の活用状 況を十分に把握すべき等の意見があったことに留意し、今後の雇用失業情勢や社会経済情勢、 高齢者雇用を取り巻く状況等を勘案しつつ、労働政策全体の議論も踏まえながら、引き続き 検討していくこととすべきである。  (2)訓練期間中の生活を保障する制度の恒久化について、これは現行平成21年度から行っ ている緊急人材育成支援事業の実施状況等について報告しており、その関係です。  ○平成21年度から、雇用保険を受給できない者に対して訓練期間中の生活保障を行う緊 急人材育成支援事業を実施しているが、同事業は平成22年度末に終了することとされてい る。  ○緊急人材育成支援事業として現在実施している訓練期間中の生活保障については、雇用 保険を受給できない者に対する「第2のセーフティネット」として必要な施策であることか ら、平成23年度以降は恒久的な制度とすべきである。  ○このため、給付対象者の範囲、給付の内容をはじめとする制度の基本的な仕組みについ て、雇用保険の適用範囲との関係も考慮しつつ、現行事業の実施状況を十分に把握した上で、 当部会において、早期に具体的な検討を進めていくべきである。以上です。 ○清家部会長 ただ今事務局から説明がございました資料をもとに、委員の皆様方にご議論 をいただきたいと思います。どうぞご自由にご意見をいただければと思います。どなたから でも、どうぞ。 ○栗田委員 4頁の「財政運営について」です。まず前回の中で、雇用保険料率の表記とい うことで修文といいますか、工夫していただいたことに対してお礼を申し上げたいと思いま す。  その上で1点質問です。財政運営で、緊急経済対策について、平成21年度に一般財源を 投入するとともに平成23年度以降については、安定財源を確保した上で、国庫負担を法律 の本則に戻す旨を雇用保険法に規定することと記載されているのですが、「安定財源を確保 した上で」という記載の中で、これは一般財源のことなのか、それとも雇用保険財政の安定 のことなのかという点について少しお聞きしたいということが1点です。  もう1つ、国庫負担の本則戻しということでは、この間議論されているように、早期かつ 確実に行えるようなことを再度お願いしたいと思います。 ○坂口雇用保険課長 いまの点ですが、今回平成21年度の2次補正予算で、平成22年度 の国庫負担1/4引き上げ相当分を上回る額3,500億円の一般財源を投入ということに予算案 としてなったわけですが、平成23年度以降の問題につきましては、いまご指摘の安定財源 の確保ということは、国庫を本則に戻すために、どういう形で一般財源を安定的に政府全体 として確保するかという趣旨でございます。国庫負担を1/4に戻すために、方策としては、 いろいろな形の方策があろうかと思いますが、一般財源の安定的な財源確保を行っていこう という趣旨でございます。 ○三木委員 関連して伺います。安定財源の「安定」というのはどういう状態を言うのか、 私にはよく分からないので教えてほしいのです。かつて年金も、財源が確保できないからと いうことで、繰り延べされた経過もあるのではないかと思っているのですが、そういう意味 で、平成23年度以降に本当に確保できるのですか、そこら辺がどうなのか。  それと関連して言いますと、もう1つ下の段の○で明確にされたということになっている のです。そういう意味からすると、これは平成23年度以降1/4に戻すことが明確にされた という意味で解釈してよろしいのかということです。 ○坂口雇用保険課長 安定財源を確保するための方策としては、いろいろな方策が考えられ るし、工夫をしていかなければいけないということかと思います。そこで「安定」と申しま すのは、雇用保険制度の国庫負担というのは、給付費に対して一定の割合の国庫負担をする ということですので、失業と給付は義務的なもの。いわゆる雇用情勢に伴って、失業が出た 場合には義務的に支払わなければならない。その費用について一定の割合を負担するという ことですので、必ず一定の額を、その年度年度に国庫として負担をしなければいけないとい うことです。そういったことが必ずできるような財源をしっかり確保するという趣旨です。  もう1点の「明確にされたことで」は上の「緊急経済対策」を受けての記述になるわけで すが、そこの部分については、平成23年度以降は安定財源を確保した上で国庫負担を法律 の本則に戻すということを雇用保険法に規定する。いわば、そういったプログラムをしっか り法律の規定上も明確に規定されたという趣旨で記述をさせていただきました。 ○清家部会長 三木委員、よろしいですか。 ○三木委員 はい。 ○豊島委員 私も同じような趣旨なのですが、心配しているのは、ここでこの間紹介された 緊急経済対策の部分は、平成23年度予算編成過程において検討し、安定財源を確保した上 で、国庫負担を本則に戻す。これを雇用保険の改正に盛り込むと書いているのです。一言で 平成23年度は本則に戻すと書けばいいのを、余計なことを四の五の書いてあるので心配で すよと。ですから、これからもしっかり頑張っていかないと、こうなりませんよというのは、 たぶんここの共通の認識なのではないかと思うのですが、そのことを確認していただきたい ということです。  また、それを言うならば、2つ目の○。これは基本的には経済対策を引用されていると思 うのですが、これを受けて「明確にされた」と言うのは、こちらがこう読んでしまうよとい う宣言として受け止めてよろしいのですか。 ○坂口雇用保険課長 いま豊島委員、それから三木委員からお話があった点については、ま さしく皆様方のお気持をこの部会報告として書いている所が3つ目の○です。「やむを得な いものと考えるが、これを確実に実現していくべきである」と。そういう形で雇用保険法上 に規定するということにはなるのだけれども、しっかりこれを確実に実現していかなければ いけないということが、今まさしく豊島委員がおっしゃった、部会の委員の皆様方のご意見 ではないかということで、このような記述として事務局としても提示させていただきました。 ○遠藤委員 財政運営の項目につきまして、まず前回の議論を踏まえ、書き加えや修文をし ていただきまして、どうもありがとうございます。その関連でもございますが、二事業の記 述で、5頁の3つ目の○のところです。今回の積立金からの借入れは「暫定的な特例措置と する」という位置づけです。そして、続いて、「雇用調整助成金等のために必要な額」とあ り、この部分について、もう少し解説をいただくことがありましたら説明していただけます か。 ○坂口雇用保険課長 この部分は前回の部会において事務局からも提案をし、ご意見も受け た上で書いたところです。前回もこういう形で、雇用調整助成金の要件緩和、あるいは8 月、10月の概算要求時に比してまだ不足するであろうことから、積立金からの借入れを行 おうということで、やむを得ないという記述です。いまもございましたし、あるいは前回も、 このような形で積立金から二事業のお金の貸し借りを行うということは、前回の部会の委員 のお言葉を借りると、いわば禁じ手というようなものではないかというご意見もございまし た。そういう意味で、こういった措置を講ずるのはあくまで暫定的な特例措置であるという こと。あとは、今般そういう形で特例措置を講じなければいけないという意味合いとしては、 まさしく失業給付の抑制につながる、失業予防のための雇用調整助成金、あるいはここで言 う「雇用調整助成金」に類似して中小企業についての特例的な雇用助成金事業をいま行って おりますが、そういったもののために必要な額であれば、やむを得ない。そういう趣旨で、 このような形の記述がよろしいのではないかということで、書いたものです。 ○遠藤委員 「等」の中身については、中小企業緊急雇用安定助成金と読み換えていいとい うことでよろしいわけですね。 ○坂口雇用保険課長 はい。 ○遠藤委員 そこでまた関連して伺います。1つ○を飛ばした所の読み方なのですが、「平 成22年度の雇用保険二事業に係る保険料率については、特例的に弾力条項を発動しないこ と」と、書いてあることをストレートに読んでしまうと、平成23年度以降の部分について は、どのような読み込みができるのか、もし何かご説明いただけることがあれば教えてくだ さい。 ○坂口雇用保険課長 いちばん下の○の部分は先ほど補佐から説明したとおり、平成22年 度の二事業の保険料率については、平成20年度の決算額を基にしますと法律的には弾力発 動になるところを、特例的に弾力発動をせず、平成22年度という形で押さえているのです。 平成23年度以降につきましては、先ほど質問がありました積立金からの借入れを行うとい うこととの兼ね合いで、私どもとしても法制的にも詰めなければいけないと考えています。 実質的には、そういう形で積立金からの借入れを行っている中で、弾力条項の発動という計 算をどういう形でやるか。あとは、実質的なことを考えますと、平成20年度の決算ベース では1兆を越える安定資金残高です。予算ベースではありますが、上記の記述の所にもあっ たとおり、平成21年度あるいは平成22年度になりますと、予算ベースでも3,000億円あ るいは1,000億円程度しか安定資金残高がないということで、いまのままで計算しても、平 成23年度以降の弾力発動というのはなかなか難しいというのが数字的にも言えると思いま す。ここでは平成22年度の決算ベースでの法律に基づく計算との兼ね合いで、このような 記述をいたしました。 ○岩村委員 5頁、いま議論になっているところの上から2番目の○なのですが、「一方で、 失業等給付に係る積立金については」ということで積立金の残高状況を書いた上で、次の○ で「こうした状況や国の厳しい財政状況を」とつながっているのです。少し気になったこと は、上の○の「一方で」というのを書くのが得策なのかどうかです。要するに、ある意味で は積立金の残高がこれだけあるからということで、借り入れしましょうという話になってい るのです。そうすると、積立金の残高がそれだけあるのだから、またやりなさいと、そうい うことへの道を開いてしまうのではないかという気がするのです、微妙なところなのですが。 ちょっと工夫をする。いっそのこと、この○は取ってしまって「国の厳しい財政状況を」と するのか。今後につながらないような形に工夫して書いてもらったほうがいいような気がし ます。 ○清家部会長 この部分は、いかがですか。 ○坂口雇用保険課長 岩村委員から前回も貸し借りの問題についてもご指摘があり、いまの ご指摘も、その意見と同趣旨の部分を含めてということかと思います。私どもとしましても、 部会の委員の皆様方の総意としても、次のパラグラフにあるような積立金からの借入れとい うのはやむを得ない措置ですので、そういった意味では限定的な形につながるように記述の 工夫をしなければいけないと思っております。積立金の高があまりにないとすると、こうい うこともまず難しいというのがある一方で、積立金の高があれば自動的にこういうことをど んどんやっていいではないかという趣旨でも当然ない、その点はごもっともだと思いますの で、文章の接続詞等で工夫ができないか検討させていただきたいと思います。 ○清家部会長 その点について、労使から何かございますか。 ○長谷川委員 私もそう思うのです。積立金の残高が4兆4,000億円。これをどう考えるか というのは根底にあるわけです。以前、保険料率を上げて、かつ給付の内容を見直したわけ ですが、そのときの私の組織の中央執行委員会は、ものすごく混乱したのです。担当者が真 っ青になるぐらい構成組織から責められたわけですが、それは給付内容を変えたからなので す。雇用保険はそうやって努力して4兆4,000億円を積んだのですが、それはおそらく、ま た次に大変なことが起きるだろうと、経済がいつもいつも順調ではないわけですから、落ち 込むときもあるだろう、そのとき、あのときのような思いは二度としたくない、というのは 公労使で一致していたのです。あのときの思いを二度としたくない、だからきっちりと積ん でおこうねと、そういうお金なのです。それを、国の財源がないから、こっちからこっちに 貸していいではないか、というのは本当はやってほしくない。それと、財政規律から言えば、 特別会計をそういう形で使うことは如何なものかと思うのです。特別会計だから、もっと慎 重に、きっちりとやらなければいけない。いま岩村先生もおっしゃいましたけれども、ここ はもう少し書き具合というか、何かひと工夫あってもいいのかなと思います。あえて言えば、 4兆4,000億円もあるのだったら給付を戻してくれと、労としてはそういう意見です。  ついでにもう1つ言わせてください。二事業のほうに借り入れるわけですが、前回のとき も、返済を可及的速やかに行っていくべきだという話があったと思うのです。やはりこの審 議会としては、借りたものは可及的速やかに返すこと、また、そのための方策だとか考え方 もきっちり書いておかないと。具体的にとは言いませんけれども、その考え方はきっちり書 いておかなければいけないと思うのです。次回も会議があるわけですから、是非これはひと 工夫していただきたいと思います。 ○清家部会長 岩村委員のご意見について、使用者側からはご意見やご提案が特段ございま すか。ないようですので、この点につきましては、この項目を残すかどうかも含めて、事務 局と私で次回の最終報告までの間にもう一回検討させていただきます。長谷川委員は、それ でよろしいですか。 ○長谷川委員 それで結構です。 ○清家部会長 では、そのようにさせていただきます。ほかに何かございますか。 ○長谷川委員 使用者の方には言いにくいのですが、適用範囲の所、3頁の(2)に「雇用保険 に未加入であった者への対応」というのがあります。それはそうなのだけれども、これはも っと正確な表現が必要だと思うのです。○の所に「事業主が被保険者資格取得の届出を行わ なかったことによって未加入であった者」ここをもうひと工夫できないのか検討していただ ければと思います。 ○清家部会長 表題ですね。 ○長谷川委員 そうです。 ○清家部会長 これについて、使用者側はいかがですか。 ○遠藤委員 明快な回答が出せるわけではないのですが、今回行おうとしている内容は必要 なことだと理解いたしておりますので、いま長谷川委員がおっしゃったような趣旨を踏まえ る形での修文については、もし使用者側委員のご賛同が得られれば、部会長にご一任という ことでよろしいでしょうか。是非お願いいたします。 ○清家部会長 この点については、事務局と私とで少し考えさせていただきたいと思います。 ○坂口雇用保険課長 見出しの部分ですので、冗長にならないような形で書けるかどうか工 夫できないかということで検討したいと思います。 ○清家部会長 ほかにはよろしいですか。特にこれ以上ないようでしたら、今いくつか修文 あるいは我々で検討すべき課題もいただきました。次回報告書の取りまとめを行いたいと思 いますので、今いただいたご意見等を踏まえて、事務局と私とで少し相談をさせていただき、 必要な部分に修正・加筆を行って取りまとめの報告書(案)を次回にお諮りしたいと思いま す。また次回は、前々回の部会でご指摘がありました、緊急人材育成支援事業の実績などの データについても事務局に準備をしていただいて、ご報告をお願いしたいと思っております。 なお日程につきましては、事務局において調整をしていただいた上で、各委員にご連絡をお 願いするという段取りにさせていただきます。  本日の署名委員は、雇用主代表は西馬委員、労働者代表は古川委員にお願いいたします。 委員の皆様、お忙しいところ、どうもありがとうございました。本日の会議はこれで終了い たします。 照会先:厚生労働省職業安定局雇用保険課企画係     03−5253−1111(内線5763)