09/12/16 第38回労働政策審議会安全衛生分科会議事録 第38回労働政策審議会安全衛生分科会 議事録 1 日時 平成21年12月16日(水)10:00〜11:10 2 場所 経済産業省別館944号会議室 3 出席者 (委員) 公益代表  相澤委員、今田委員、露木委員、土橋委員、内藤委員、中原委員 労働者代表  市川委員、犬飼委員、高橋委員、谷口委員、古市委員、眞部委員、 使用者代表 明石委員、伊藤委員、瀬戸委員、高橋委員、豊田委員、中村委員、三浦委員 (事務局) 金子労働基準局長、平野安全衛生部長、高崎計画課長、田中安全課長、 鈴木労働衛生課長、半田化学物質対策課長 4 議事録 ○分科会長 ただいまから「第38回労働政策審議会安全衛生分科会」を開催いたします。今回初めて ご出席いただいています委員をご紹介、また簡単に自己紹介をお願いします。土橋委員です。 ○土橋委員 東京大学の土橋です。前回お休みしまして、今回から初めて参加させていただきます。 専門としては、燃焼学、安全工学をやっていまして、爆発、火災が専門です。そのほか、化学物質の リスク評価もやっていますので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○分科会長 同じく、内藤委員お願いします。 ○内藤委員 慶応大学の内藤です。前回は、大学の校務の関係でお休みさせていただき、誠に失礼い たしました。専門は、労働法と社会保障です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○分科会長 中原委員、お願いします。 ○中原委員 京都大学医学部の中原と申します。前回は、よんどころない事情でフランスへ出張して いて、欠席をさせていただきました。専門は医学、その中でも公衆衛生学です。どうぞよろしくお願 いいたします。 ○分科会長 ありがとうございました。本日は、名古屋委員、芳野委員が所用のため欠席されていま す。労働政策審議会で第9条に規定する定足数を満たしていますので、当分科会が成立していることを 申し上げます。  それでは、本日の議題に入りたいと思います。議題は、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令 案要綱」及び「労働安全衛生規則第四十四条第三項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準を定め る告示の一部を改正する告示案等要綱」についてです。本件は、厚生労働大臣から労働政策審議会会 長あての諮問案件であり、当分科会において審議を行うこととしたいと思います。では、事務局から 説明をお願いします。 ○安全衛生部長 安全衛生部長の平野です。本日の諮問案件の「労働安全衛生規則の一部を改正する 省令案要綱」及び「労働安全規則第四十四条第三項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準を定め る告示の一部を改正する告示案等要綱」についてご説明します。要綱については、資料No.1-1をお配り しています。今回審議いただく案件は、次の2点です。まず1点目は、定期健康診断における胸部エッ クス線検査等の対象者の見直しです。これは、事業者に義務付けている労働者に対する定期健康診断 の胸部エックス線検査及び喀痰検査について、有識者の検討会報告書等を踏まえて、当該検査の対象 者を見直すために労働安全衛生規則及び関係告示について、所要の改正を行うものです。  2点目は、労働者死傷病報告の様式の改正についてです。これは、事業者に報告を義務付けています 労働者死傷病報告の様式について、派遣先事業者からの提出の徹底を図り、派遣先の事業場における 労働災害防止対策の推進に資するため、労働安全衛生規則について所要の改正を行うものです。以 上、詳細は担当からそれぞれ説明させますので、ご審議のほどよろしくお願いいたします。 ○分科会長 それでは、「定期健康診断における胸部エックス線検査等の対象者の見直し」について ご説明をお願いいたします。 ○労働衛生課長 それでは、説明します。資料1-2から説明したいと思いますので、よろしくお願いし ます。1番に「趣旨」がありますので、この順で説明します。  現在、事業者は、労働安全衛生法で定期健康診断において、原則として胸部エックス線検査及び喀 痰検査を行うこととされています。平成17年4月に結核予防法、これは統合されまして「感染症法」に なっていますが、当時、結核予防法が改正されまして、結核の早期発見のために行われてきた結核予 防法でいう定期の健康診断については、結核患者の発見率の低下等により、一律的・集団的な実施か らリスクを考慮した実施へと見直されたということです。  一時期、結核の発症率が横ばいだったものが、上昇あるいは最近ですと派遣村の方から結核が発症 したなどという話題がありましたが、経年的に見ますとこの数年は減少傾向にあります。例えば20歳 代でも、人口10万人当たりの罹患率は平成16年は15.3、昨年平成20年ですと同じく人口10万対で12.4 と。15.3から12.4と、この数年でもまた減少傾向に着実にあります。このようなことから、結核の定 期健診の有効性あるいは診断する側の精度管理がなかなか難しくなる、1,000人に1人いるかどうかを 見つけるという意味では、非常に難しいというような状況がありまして、一部のハイリスクの方、例 えばここには対象者が学校、医療機関、社会福祉施設等の労働者等に限定されたということです。労 働者以外では、一般の方では65歳以上、それから生徒さんですと高校あるいは大学の入学時の健診に 限定されたところです。  一方、労働安全衛生法に基づく定期健康診断における胸部エックス線検査については、結核の早期 発見以外にも労働者の健康を確保する観点という要素がありますので、平成17年以降その取扱いに関 して調査研究等を行ってきたものです。この経緯については、またあとで説明したいと思います。  今般、今年の1月から開始しました「労働者に対する胸部エックス線検査の対象のあり方等に関する 懇談会」の報告書が11月に取りまとまりましたので、これを踏まえまして定期健康診断における胸部 エックス線検査等の対象者を見直すために、規則あるいは告示について所要の改正を行うものです。 改正の内容については、下記のアに定めるとおり一部の者を除く40歳未満の労働者について、医師が 必要でないと認めるときには省略することができることとする、ということです。なお、40歳以上の 労働者については、現行どおり胸部エックス線検査等を実施するということで、これはこの懇談会で 最新の知見を踏まえて最終的に判断したところ、40歳以上については40歳未満と比較して、有意に有 所見率が高いことから、現行どおり継続して行うということです。  具体的な内容については、2頁の上です。40歳未満の労働者については、「20歳、25歳、30歳及び35 歳の者を除く」ということですので、逆に言いますと、我々は節目健診と呼んでいますが、この方々 は5歳刻みでやっていただくと。次の(1)及び(2)のいずれにも該当しない者については、医師が必要でな いと判断したときには省略することができるということです。(1)については、結核予防法が統合され た感染症法で対象とされている学校、医療機関、社会福祉施設等に勤務する労働者が結核に感染する と、二次感染を引き起こすということで、入所者あるいは学校の生徒さんなどに対する非常に大きな 影響を及ぼすことから、このような方々は省略すべきでないと規定するものです。  (2)ですが、じん肺法で3年に1回のじん肺健康診断の対象とされている労働者については、3年に1回 はこのじん肺法で行うわけですが、従来その間については定期健康診断で行われることから、特段じ ん肺法で毎年行うというような定めをしていなかったわけです。今回見直すとなりますと、この方々 についてはやはりその間の2年分についても定期健康診断でカバーすることが適当であるという懇談会 の報告をいただいたところです。この(1)(2)、それから5歳刻みの節目の方々は、必ず行うと。これに該 当しない方についてはさらにもう一段、医師が必要かどうかについて判断を行うということですの で、それについては具体的には(ア)の最後の2行「自覚症状または他覚症状、既往歴等から、医師が 必要でないと認めるときである」ということです。既往歴というのは、例えば過去に結核を起こしや すいような基礎疾患がある、あるいは渡航歴がある等。それから全般的には「等」という中には、例 えば結核の蔓延地域が一部の保健所管轄内にあれば、そういったところで特に窓口で非常に多くの方 々と触れ合うような業務については、やはり必要ではないかというようなことを医師に判断していた だくということです。  それから(イ)の「喀痰検査」です。胸部エックス線検査によって病変の発見されない者、又は胸 部エックス線検査によって結核発病のおそれがないと診断された者については、従前医師が必要でな いと認めた場合には省略されていました。今般これに加えて、今申し上げました(ア)に掲げる者 で、結果的に医師が必要でないと判断した方については、省略できるという規定を盛り込むもので す。  次のイですが、「定期健康診断の特例の廃止」です。これは、従来17、18歳の労働者で前年度の雇 入時の健康診断で結核に関して要観察とされなかった場合などには、要するに前年度の健康診断です ので、その次の年についてはレントゲン検査を行わなくてよいとされていたものですが、これはそも そもこれを引用していた結核予防法で同様の規定が廃止されましたので、これについても並びで特例 を廃止したいと考えているところです。  今申し上げましたようなことについては、3頁以降に参照条文がありますので、こちらでまた少し説 明したいと思います。3頁の労働安全衛生規則が2つ目の○に書いてあります。この第四十四条の第三 項に、厚生労働大臣の定める基準に基づき省略するという根拠規定があります。また、その前の第二 項の一号と二号に、今申し上げた17、18歳に係る特例の規定があります。先ほど言いました第三項で 厚生労働大臣の定める基準に基づき省略できるということについては、ここにありますように第一項 の三、四、六号〜九号、それから第十一号で、具体的には身長、体重や胸部エックス線検査、六の貧 血検査から九の血糖検査まで、それから十一の心電図検査ということでした。四の胸部エックス線検 査及び喀痰検査については、具体的には胸部エックス線検査の省略基準がありません。先ほど申し上 げたように喀痰検査は胸部エックス線検査の結果によって省略できる場合には省略されていたという ことですので、今回胸部エックス線検査の省略できる基準については初めて規定されるということで す。  この省略できる基準については、さらに具体的には5頁にありますが、厚生労働大臣が定める基準 (平成10年労働省告示第88号)に、これまでの検査項目についての省略することのできる者というこ とで、右側に基準が規定されてきたところです。内容は以上ですが、ここで先ほど申し上げました、 なぜこういう省略基準の案に至ったかという検討経過の詳細について、若干追加で説明します。  平成17年4月に結核予防法が改正されたことを受けまして、平成17年度は行政検討会で学識経験者に お集まりいただきまして、どのような対応をすべきかについて検討をお願いしたところです。これは 特段資料はありませんので、口頭で失礼します。この際、それまでの一般的に認識されている知見か ら40歳以上の労働者については、従来どおり検査を実施すべきではないかと。40歳未満については、 基本的に医師の判断で省略していいと思われますが、5歳ごとの節目については健診で何か有所見があ った場合に、過去の経過を把握したうえで詳細に鑑別診断ができるという観点から、実施すべきでは ないかというご意見をいただいたところです。  ただし、具体的な見直しに関しては、労働者の健診に関してまだ十分なデータがありませんでした ので、これについて調査研究を行うべきとのご意見をいただきました。続いて、平成19年度に厚生労 働科学研究において、約300万人の健診データを基に胸部エックス線検査の有効性に関する科学的エビ デンスを確認したところです。その中で、行政検討会で提言がありました40歳以上と40歳未満の比較 においては、異常所見率に有意差があると。具体的には男性に限って紹介しますが、40歳未満では 1,000人当たり3.4人に有所見があります。これが40歳以上では、9.9人と約3倍の開きがあるというこ とで、40歳以上で区切るというのは科学的に一定の合理性があるという結論をいただいたところで す。  そのほか、特に結核に罹患しやすいハイリスクの従業者に関しては、アンケートを行いまして、労 働の現場あるいは医療機関のアンケートなどから、極めて多数のこういう施設で従事する方について はやるべきではないかと。これは、エビデンスというよりも、そういう現場の感覚でお答えをいただ いたものです。これについては地域保健で実施すべきものなどが混在していましたので、その辺りに ついて整理するために、今度は今年の1月から懇談会と称して、学識経験者にお集まりいただいて、最 新の知見をさらに文献収集することによって確認しました。それによって、基本的には新たな疾患に ついて、こういう疾患の発見を目的に、こういう業態についてはすべきであるというような新たな知 見はありませんでしたが、今申し上げましたような結論に至ったというところです。  資料1-1をご覧ください。以上の見直し内容を省令改正として反映させたものが、2頁の改正する省 令案の要綱です。第一については、先ほど言いました17、18歳に係る特例の廃止だけです。この省略 自体については、胸部エックス線及び喀痰検査ということで、そもそも省令自体に根拠があります。 今回これについては、特段改正をする必要はありません。3頁の省略基準に関するものについては、今 説明してきました、具体的には40歳未満の者で節目の方を除く、それから感染症法に定める対象者は 従来どおり、じん肺法に掲げる者の3年のうちの2年分ということで、こういった方については引き続 き行う。これ以外の者について、医師が必要でないと認めたときには、胸部レントゲンを省略でき る、また喀痰検査を省略できることを規定したものです。以上です。 ○分科会長 ありがとうございました。ただいまの説明についてご意見、ご質問がありましたらどう ぞ。 ○古市委員 専門家の「労働者に対する胸部エックス線検査の対象のあり方等に関する懇談会」の報 告書というのは、私どもは見せていただいたことがあるのでしょうか。 ○労働衛生課長 個別には配付していないかもしれませんが、ホームページ上に公表しまして、11月 に出したところです。 ○古市委員 こういう場合にそういう説明をするときは、ここに用意していただくのが普通のあり方 ではないかなと思うのですが、素人だからあなたたちに見せてもわからないよということであれば、 そういうことかもしれません。こういう議題を提示するときに専門家の検討をいただいたので、この ように改正しますという提案をしているのに、その肝心な報告書を提示しないのは、いくら何でも少 し具合が悪いのではないかと私は思います。そこで、少し意見を申し上げます。  実は私は建設業に携わっていまして、建設のことについて少し申し上げたいと思います。労働安全 衛生法で40歳以下の皆さんは5年ごとだったりして外そうというご提案なわけです。実は、最近医療保 険者に特定健康診断が義務付けられまして、私の所の健康保険で健診を行っています。その健診結果 について、医療保険の特定健診はレントゲンを行うことになっていますので、建設業ではアスベスト の被害が非常に懸念をされています。昨年1年間(平成20年度)の厚生労働省の発表ですと、アスベ ストで労災認定をされた方が1,063人おられます。そのうち、建設業が占める割合は498人で、アスベ ストで労災認定された方の46.8%は建設業という状況ですので、非常に個々に気を使っています。特 定健診は、40歳以上が対象なのですが、組合にもそういう特性に鑑みて、私どもは組合員全員を対象 にして実施しています。  その結果ですが、実は中央建設という建設国民健康保険組合がありまして、その32県支部の2万 2,539人のレントゲンフィルムで、健診では所見がありませんと言われたレントゲンフィルムを、アス ベストの専門医にもう一度見てもらう。私たちは再読影と言っていますが、再読影をしていただいた ところ、2008年の数字なのですが8.97%の方が胸膜肥厚斑がありますということでした。胸膜肥厚斑 というのは、アスベストにばく露して吸い込んで、アスベストが体の中にあることを証明するものだ そうで、全国的に29都道府県ですが、医者がレントゲンフィルムを見て「あなたは所見はありませ ん」と言った人のうち、8.97%には専門医に見てもらったら所見がありますとなったわけです。  これは、全国の29都道府県でありますので、年齢を見ていませんので年齢別に見たらどうなのかと いうことについて、もう1つの例を申し上げます。実は、埼玉県の健康保険組合が、2007年ですが3万 7,771人の医療保険者の特定健診を行ったレントゲンフィルムのうち、所見がないと言われたフィルム を専門家に見てもらいました。もう一度アスベストの専門医に見てもらったところ、20代で7人、0.3 %、30代で90人、1.3%、40代で258人、5.7%、50代では947人、17.4%、60代では1,268人、24.2%、 70代では242人、25.1%の方に胸膜肥厚斑がありますという診断でした。  このようにみていきますと、50代を超えると医者がレントゲンフィルムを見て所見がありませんと 言ったフィルムをもう一度専門家に見ていただくと、アスベストを吸った形跡がきちんとありますと なるのが、非常に高い数字で出現をしてくるのが現状です。ここに「医師が必要でないと認めるとき は省略することができる」という表現ですが、そこについてレントゲンフィルムを見て所見がありま せんと専門医が言ったにも関わらず、これだけたくさん所見があるという事実についてどのように考 えたらいいのだろうかと。私は従って、40歳未満の人を5年ごとにやるのだからいいではないかという ことについては、非常に強く危惧します。  もう1つ、アスベストの被害がどんどん多くなっていまして、40歳未満の方で建設業だけではなく て、子供のときに学校や保育園で知らないうちに(アスベストに)ばく露している可能性もあるわけ です。学校の教員などで、アスベストの被害者がどんどん出てき始めていると聞いていますし、それ から新聞で報道されましたのでご承知の方も多いと思いますが、例えば文京区の保育園でアスベスト のばく露問題があって新聞でだいぶ報道されました。その子供たちは経年的にずっと調べていくのだ よと、子供のときにアスベストにばく露したので、これから発症しないかどうか、ずっと追い掛けて 見ていきますということを聞いています。アスベストの被害は20、30年と非常に長期間を経て初めて 症状が出てくるので、40歳未満の人たちは大丈夫なのだろうという考えだろうと思いますが、小学校 や保育園などでばく露をしていて知らないまま過ごして建設業に入っていると、もう30代のときは30 年間既にばく露された状態ということがあり得るわけです。この提案は、非常に危ない提案だと私は 大変危惧しています。  課長から科学的エビデンスがあるのだというお話でしたが、40歳未満でもアスベスト肺が出てこな いというわけではありませんので、このように事実医師が所見なしと言った方の中でも、ある一定の 確率で出てくるということですので、この提案をなかなか「はい、わかりました」と言いにくいなと いうことを申し上げたいと思います。 ○労働衛生課長 お答えさせていただきます。まず、ご指摘いただいた今年の懇談会の報告書につき ましては、配慮が足りなく申し訳ございません。中身につきましては、科学的データの部分は確かに 難しいところはありますが、結論部分については、一般の方がお読みになってもわかりやすいような 表現に努めたところですので、後先逆になりますが、委員の皆様方に配付させていただきたいと思い ます。  後段のご指摘は、大きく3つほどに分かれるかと思います。対象をどうするかということにつきまし ては、特にアスベストに関しましては、石綿健診の対象となっている方は、現役であればそうでござ いますし、また、一定の所見、従事歴があれば、離職後も健康管理手帳で国による制度で健診が受け られるのです。問題は一時期勤務していて、例えば今は別の職場にいる、所見も特段今はないけれど も、初期の胸膜プラークなどの有所見から、いずれは石綿肺、その他の疾患になるという可能性のあ る方々についてどうするのかというお話だと思います。現在の石綿健診で、あるいは健康管理手帳の 対象にならない方についても、自他覚症状、既往歴等に書いてありますように、基本的には健康診断 を受ける際には、健診機関が事前の問診表、生活歴や最近の症状をチェックするようなものを配付し て、参考にしていますが、そういったものを活用する中で、過去の職歴等についても、個人の同意な どを基に、できるだけ細かく問診をしていただいて、医師がそれに基づいて、省略するとなればそこ で十分に配慮した上で、省略するというような手順が行われるように、現場に指導していきたいと考 えております。  一旦、特定健診で所見なしと言われたものにつきまして、専門医に診ていただいたところは、先ほ どご紹介いただいたような所見があったということです。これは健診の精度管理に関わる問題だと考 えております。基本的には安衛法で行われた健診は、保険者が求める場合には、引き渡して、それが 特定健診を行ったということにみなされますので、労働者に関しては、ほとんどが職場における健診 において、所見がないというように判断されていたとすれば、非常に大きな問題かと思います。そも そもじん肺や石綿を対象に健診をする際には、その精度管理については、全国的な健診を行っている 所と連携を図りながら、精度管理については努めているところですが、最近はデジタル検診車なども 普及してまいりましたので、それによる精度管理についても課題になっているところです。  また、今ほどご紹介いただいたようなことについて、ほかの領域でも起こっているのかどうかなど についても確認させていただいた上で、引き続き健診に携わる方の精度管理については、向上するよ う努めていきたいと考えております。  子供の際にアスベストにばく露した方、あるいは家族でお父様が例えばそういう扱いを行ってい て、洗濯物などを処理する中で、奥様が石綿関連疾患になるというような事例が最近非常に大きな問 題になっております。一般環境、職場以外の所でばく露した方については、現在環境省が法に基づい た救済を行うということで、この健診も行っておりますが、まだ国民全般に、過去のばく露はなかな か日常で行われていたものについて、きめ細かく把握し切れていない部分もあろうかと思います。石 綿の診断基準等に関しましても、環境省と連携を図りながら進めています。一義的に、子供のときに ばく露したことについては、安衛法の健診で見つけるという義務は課せられていないわけですが、少 なくとも健診を受ける機会に、先ほど言いましたような、精度管理の問題で見逃されてしまうという ようなことがないように、資質の向上には努めていきたいと思っております。そういった方について どのように早期発見するのかということについては、環境省に今のご意見を伝えて、検討していただ くようにお願いしたいと思います。 ○古市委員 私ばかり言うのはいけませんので、これでやめますが、医師が必要でないと認めるとき は省略することができるということですが、私どもは直感的に健康診断を行う立場からいうと、医師 が必要でないと認めるときと書いてあるのだけれども、実際は、医師が必要であると認めたときだけ 行われるのではないかということを、非常に危惧します。あなたは受けないといけませんよと言われ た人だけ受けるということになるのではないかということを、非常に心配をいたします。医師が必要 でないと認めるときというのは、自覚症状、他覚症状、既往歴等から、医師が必要でないと認めると きですよというように書いています。健康診断ですから、自覚症状がなくても健康診断を受けるわけ で、自覚症状がある場合は健康診断を受けるというよりも、実際に医療機関を受診するわけですの で、そういうことでいいのかなと疑問を抱きます。 ○労働衛生課長 最初のほうでご指摘いただいたようなことが起こらないようには、きちんとこの趣 旨を周知徹底したいと思います。具体的には結核予防法改正から、これだけの年月をかけて検討した ところには、まさに現場の健診機関では有所見率が低いといっても、具体的に有所見者が見つかっ て、それが医療に結びつく、重大な病気になっているという一つひとつの例を目の当たりにしていま すので、省略する基準については非常に慎重にすべきだという意見も多々いただいたわけです。そう いう意味から、検討会、研究、懇談会ということで、慎重に学識経験者のご意見をいただいたところ です。その思いは懇談会の報告書にありますので、その趣旨が十分に伝わるように、必要な通達など で、趣旨の徹底を図っていきたいと思います。具体的に医師が判断する場合といっても、例えば結核 の蔓延地域がどの辺にあるのか、海外渡航歴がある方について、どの国の結核発症率が高いとか、そ ういった情報を十分に収集して、現場に提供していきたいと思います。  最初のご懸念については、決して必要な部分だけ限定的に規定して、その方だけにやるというよう な裏返しのような実施が行われないように徹底したいと思います。自覚症状は確かに急性期のものは すぐに医療機関を受診すると思うのですが、往々にして、少し気になっているが、不安で重大な病気 だと言われたらどうしようということで、ついつい受診が遅れがちになるというようなことはありま す。自覚症状は十分に把握した上で、少しでも呼吸器疾患に関連するというようなことがあれば、胸 部レントゲン検査の実施を徹底しなければいけないのではないかと思っています。  具体的には結核も、結構咳があっても半年ぐらい受診しないで、風邪が長引いているというふうに 思って、結果的にあとで見つかって、職場や学校などで集団感染を起こすという例がほとんどですの で、やはり自覚症状はバカにならないのではないかなと考えています。もちろん、他覚症状につきま しても、たまたま自覚症状はなかったが、健診の現場で聴診してみたら何か異常な音が聞こえたとい う場合には、柔軟に対応できるようなことを、現場にお願いしていきたいと思います。 ○分科会長 よろしいでしょうか。 ○犬飼委員 古市委員の懸念されていることはそのとおりですし、この前にもう前段でやられている 貧血検査、肝機能、血中脂質、血糖、心電図の今の現場でのやられ方です。まさに古市委員が懸念さ れているように、これは私たちの職場でも、まず本人が何を希望しますかと。あなたはちょうど節目 の年齢ではないので普通は受けないのですと、こうなるのです。今回の改正が感染症法から受けて研 究されてというなら、わかりますよ。以前に血液検査はそのようにやられている。そのことが現場で どのようにやられているか、ご存じではないのではないか。まさに懸念があるように、医師が問診を したというのが前提にあって、それから健康診断が行われているというならわかるのです。現場は違 います。一律です。極論を言えば、ずっと検査を行ってきて、最終のあなたの生活習慣の指導は、問 診が最後なのです。そういう健診が一般的に行われています。とすると、まさに古市委員が言われた ことは、懸念というよりも実際、前段で行われている、省かれているものが、もう既に通達のとおり になっていない。省令のとおりになっていないということです。そこが現場に貼り付いたことを確認 してから、次のステップに移ってください。300万人やられたかもしれませんが、いみじくも最初に書 かれているように、本当の目的は、労働者の健康を確保する観点から行われている。「ため」という 言葉は、おそらく、前のフレーズを受けていると思うのですが、感染症法ではこうなったけれども、 安衛法では労働者の健康管理が行われるためだからということだと思うのですが、これは趣旨が違う と思います。検討会で皆さんが検討されたときに、何か見誤られたのではないか。本来の目的を忘れ てはいけないわけです。労働者の健康を確保する観点から、早期発見、早期治療、それが目的なので すから。それを踏まえないで、何百万人の検査をしても、それは目的に合っていません。その反対 に、例えばX線被曝によるリスクがあるというなら、私も腹に入りますけれども、そういうものがない としたら、省略するということは、私が先ほど申し上げたように、現在行われている省略する部分 は、この省令のとおり、現場に貼り付いていない。違うといったら使用者から言ってもらえればいい ですけれども、私が知る限りでは、現場に貼り付いていません。まず貼り付けてからやってくださ い。  それから1つ思うのは、例えば血糖値なども省かれていますけれども、今食生活の変化で、若年齢層 化しています。では省いたものをそういう傾向があるとしたら、もう1回復活させて、やはり必要では ないのということが行われるかどうかです。一度省かれたら、4年間の間に病気にかかった人は、不幸 としか言いようがないです。先ほど古市委員がおっしゃったように、自覚症状なんかほとんどないの ですから。それを発見するのが健康診断ですよ。本来の目的から言って、ちょっと違うと思います。 先ほど有意差で男性のところを教えていただきましたが、是非女性のところも教えてください。  それから、古市委員のご懸念を払拭するには、例えば業種別、そういう業種に就いていらっしゃる 労働者については、省くことができないぐらいのことをしないと、駄目だと思います。ボタンのかけ 違いは、いちばん最初に何を目的にやるかということ自体から、もうボタンをかけ違えられたのでは ないですか。そして、定着のところを教えてください。そういった健診をやっていないというのな ら。まず、問診があって、医者が決めているのですということを明確におっしゃっていただけるな ら、私は結構です。 ○労働衛生課長 従来から省略規定があるものについて、機械的に省略されているのではということ ですが、例えば貧血検査について、省略の規定はありますけれども、平成20年の定期健康診断の状況 報告で、これは50人以上の報告義務のところだけですが、受診者数全体が1,400万人ほどですが、その 中で貧血検査を実施している方は、1,163万人ほどとなっておりまして、全受診者の83%です。逆に言 えば17%ほどが省略されているということで、この数字をどう読むか、その内容は、どういうプロセ スを経て省略されたかということは、個別には把握できません。8割強の方が受けているということ は、一律に、例えば若くて、ほとんど貧血の心配がないということで、そういう方は、ほとんど現場 では受けられていないということかなと理解できます。今、委員がご指摘の部分がないかと言われれ ば、それは健診機関と事業所の契約の中で、簡単に行われている危険性はありますので、それについ ても、懇談会のときに、十分な議論、そういう懸念についても、含めた上で、現場を知っていらっし ゃる委員がいらっしゃいまして、そういうことを含めての結論です。一応科学的なエビデンスから言 えば、節目とか、今言ったようなあたりを押さえておけば、早期発見という観点からは、大きな間違 いにはならないだろうということです。  ただ、やはり業態別と言われましたが、年齢や業種をもう少し、きめ細かく、継続的にデータを取 っていく必要があるのではないかなと思っておりますので、節目健診の検査結果などを比較対象群に して、今後の評価はしていく必要があると認識しております。危険性も含めて、エビデンスと学識経 験者のこれまでの知見などから、とりあえずこの範囲で医師の判断付きですが、省略することは妥当 ではないかというご意見をいただいています。今回の見直し案については、ご理解をいただければと 思います。  それから、先ほど男性の分をご紹介いたしましたが、人口1,000人対女性の分ですけれども、40歳 未満では、2.6人、40歳以上では7.7人ということですので、ほぼ3倍というような数字で傾向は同じで す。 ○犬飼委員 今、貧血だけおっしゃったのですけれども、自分の職場を調べたのですが、節目ではな い40歳未満のところを調べたら、心電図の受診は49%、血液検査の受診率は69%、しかもうちの職場 は、もう少し事業者の理解があって、希望する者は受けています。希望する者は受けていいよという ことになっていますから、この数字です。だけれども、一言が入らない限り、先ほど言われたよう に、非常に労働者に不安があるということと、今30歳以上でないと、うちの職場の希望者も受けられ ないのです。希望しても30歳以上の希望者なら受けられますが、30歳以下の希望者は受けられないよ うになっているのです。若者の中には、希望したら受けさせてくれと。そういう者もいっぱいいるわ けです。基本的な思いから、何に問題があって、こうしなければならないということが、懇談会資料 は見ていませんけれども、例えば経費がかかり過ぎるから駄目なのだとか、よくわからないわけで す。今やって、1%、2%でも発見ができるのなら、いいことはやろうよというならわかるのですが、 何らかの弊害があって、これは一般健康診断の受診率のこの項目は減らさなければいけないというこ とになって、やむなくこうなっているというのならわかるのですが、そこがしっくりこないのです。 本来の目的とのギャップが。そこがしっくりこないので、ご理解願いたいといっても、絶対理解でき ないというのはそこなのです。 ○労働衛生課長 レントゲンの被曝のリスクについては、それも含めて検討しましたが、この範囲で あれば、メリットのほうが大きいと判断できるものだというように思います。ちょっと今手元に、省 略の実態についての数字を持ち合わせておりませんが、もちろん健診機関が事前の問診表をチェック しているはずですので、結果としては年齢とか何かそういうもので一律にというか、大きな部分は省 略ということになっているかもしれません。それはそれなりに、医学的に、例えばある年齢に達する までは、ほとんど異常値が出ない。少なくとも業務起因性という観点からは省略していいのではない かという、一定の判断がなされているのではないかと思っております。ただ、ご懸念の部分について は、このたび、また新たな規定を設けるわけですので、そのほかについても徹底するということは、 行政として、いわゆる機械的に、そういう省略が起こらないようにするということは検討してまいり たいと思います。  それから、先ほどの質問に答えるのを忘れたのですが、業態別のデータといいますと、やはり特定 の業務に関して、例えば胸部X線の所見が出やすいというのは、そういうことについてもエビデンスを 収集したのですが、なかなか見つかりませんでした。ただ、基本的に胸部レントゲン検査は、従来か らあるかなり古い検査で、そういう研究自体をされている先生方もあまりいらっしゃらないと聞いて おります。もし一対一の関係で、有所見があるとなれば、過去に特殊健診、あるいは特定業務という ことで、必要性がどこかで指摘されて、健診に結びついていたのではないかと思いますので、少なく とも今の科学的エビデンスでは、そういった分に配慮して、省略不可とするような判断はできなかっ たということです。以上です。 ○分科会長 よろしいですか。 ○犬飼委員 よろしいですかで、理解されては困るのですよ。理解できないと言っているのだから、 予防の観点でやる一般健康診断を、なぜ省略しなければならないかという、目的のところをはっきり おっしゃっていただかないと。 ○労働衛生課長 これは安衛法に基づいて行うものですので、例えば100%業務起因性があるものは、 職業病ということで、これは特殊健診などの明確な一対一の関係で健診があるわけです。作業関連疾 患となりますと、生活習慣の寄与するパーセントなどが、大きい部分から小さい部分までかなり幅広 いわけです。例えば労災認定ですと、そういうものを総合的に判断するわけですが、健診となります と、例えば半々以上の寄与だということになれば、安衛法の定期健診として行う意義が強いというこ とになると思います。それは対象疾患として認識して、健診を省略してはいけないということになろ うかと思いますが、そういう意味で、業務起因性という観点から、事業者に費用負担を課しているわ けです。そういう趣旨からしますと、少なくとも40歳未満の今申し上げました、例外的な省略不可と いうものを除くと、これを事業者責任として、かなり業務起因性が高いという観点から、規定するの は困難だと、それが懇談会の総合的な結論と考えていただければ、今のご質問に関しては答えになる のではないかと思います。 ○犬飼委員 だから当然労働者側とすれば、事業主の負担が大きいところもあるというところからお っしゃれば、労働者側の権利として、いままでやっているものを省略されるというのは、承服しかね るというのが当然のことなのです。そこをどのように縦割なり線引きかというのはあるのでしょうけ れども、医師が必要と認めるというところが、古市委員もおっしゃったように、現場ではそういうこ とが行われていないのです。周知するよう努力しますと言われたところで、それがどれほどやられる かということに対しても、現在までの検査が、先ほど80何%は貧血とおっしゃったのですが、うちの 現場はこんな程度ですから、しかも希望する者が入ってこんな程度ですから。私は一般の事業所にお いて、これが一旦出てしまうと、医師が必要と認めたというところが、何かこのとおりに運用されな くて、この年齢の者以外は受けなくていいよということがまかり通るのではないか。いくら厚労省が 頑張って周知しようとしても、そのような難しさがあるのではないか。ここの表現を何らかに変えて いただかないと、例えば、希望する者はオーケーだよとか、何か釈然としないのです。 ○労働衛生課長 40歳未満で省略すべきでないというのは、科学的エビデンス、アメリカで行われて いる健診のプログラムなどを参考に規定したものです。それ以外については、先ほど申し上げました が、かなり科学的エビデンスを収集しても、それに該当するようなものがないということですので、 この部分だけをやっていれば安心だということは、労働者にも周知していただきたい。ただ、もちろ んこれまでやってきたものが、節目でいえば5年に1回となるご不安はあると思いますが、健診という のはエビデンスに基づいて、いくら被爆のリスクは少ないといっても、ないことはないわけですし、 安衛法に基づいて、義務を課してやるわけです。そこには相当の医学的な判断が、もちろん自覚症状 が何か不安が具体的にあって希望するということであれば、それは医師の判断に結びつくべきです。 漠然とした不安に関して、そこは十分にご理解いただいた上で、かつ、自覚症状、他覚症状、職歴、 渡航歴、蔓延地域であるかどうかという、まさに科学的に拾える部分を組み合わせて、きちんと診断 していただければ安心ということが、懇談会の科学的な結論です。むしろその部分も十分に啓発し、 かつ入念的に費用の関係とか、何かだけで限定するということが起こらないという周知を徹底すれ ば、結果としても手遅れになるということは、今の科学的なエビデンスからすれば、考えにくいと思 います。 ○犬飼委員 いつまでこういうことを言っては駄目なので、現場で医者の問診が優先的に行われて、 医師が受診者に対して、あなたは必要ありませんということがまず前提に行われるということである ならば、私は結構だということを申し上げたい。それは引続き追っていただきたい。  あと1点、先ほどの私の質問の、前に省かれていた、血糖値なんかが若年化してきたという場合は、 そういうものを追いかけて、見直しが行われることになっているのかという点だけ答えてください。 ○労働衛生課長 この胸部X線の見直しを検討していく中で、胸部の疾患は密接に心疾患とも関係する 心電図なども、いままでは基準に基づいて省略されていたものについて、もう少しきめ細かく見直す 時期があるのではないかというご意見はいただきました。当然その流れの中でこれまでほかの省略さ れてきた項目についても、その実態を踏まえて、適正な方向にもっていくべきではないかというよう なご意見を、特に健診機関の団体のほうからいただきました。実態を把握するには時間のかかること ですので、これについてもエビデンスが揃ったわけですから、先行させて議論させてください。その 他については、そういったニーズがあるのであれば、実態を把握した上で検討する必要があるという ようにお答えしておりますので、今委員からもご指摘をいただいたところですので、今後、その辺り については検討していきたいと思います。 ○分科会長 よろしいですか。大変貴重なご意見をいただきありがとうございました。今のご意見を 踏まえて、当局でも対応していくということです。よろしくお願いいたします。ほかにご意見はござ いますか。 ○高橋(信)委員 改正案を見ますと、このまま手続が進められますと、施行が平成22年4月1日から ということになっていますが、告示日をいつとお考えであるかということをお聞きしたいのですが。 と言いますのは、我々、今話に出ていましたように、健診機関に委託してやっているところもござい ます。そういうところとの調整。それから多量にやるものですから、システムを使っていまして、実 務的な問題として、調整が必要になってきますので、できましたら十分な猶予期間がほしいというこ とです。よろしくお願いいたします。 ○労働衛生課長 告示日の予定は、現時点では1月中ということで考えております。4月1日からという ことにつきましては、年度の健診の契約というのは、かなり早い時期に行われますので、例えばこれ を10月1日とか、そのようにしますと、実質、今年度は空振りに終わってしまうということもありま す。この趣旨をなるべく早く伝えて、データなり体制が整って、十分な配慮のもとに、省略できるよ うな事業所については、そういったことで対応していただけるのではないかと思っております。  ただ、逆に必要で追加するのに、短かいということでありますと、非常に問題ですが、逆ですの で、整わない場合は、今年度はとりあえず全員やるという対応も可能ですので、その辺は柔軟に現場 で対応していただきたいと思います。それにしても、周知が遅くて、もう少し早ければ体制が間に合 ったのにということのないように、できるだけ早く周知徹底に努めていきたいと思います。 ○市川委員 労働側からいろいろ意見を申し上げましたが、その意味で7頁の表。一般の方は、文章が つらつらと書いてあるものよりも、このように見やすいパワーポイントの図のようなものを見るわけ ですが、この書き方の2.を見ますと、逆さまな表現なのです。エを見ると、「医師が総合的に判断し た上で、必要性を認めた労働者が対象だ」と。しかし、縦書きのほうを見ると逆ですよね。「必要で ないと認めた場合は省略することができる」。これは先ほどから古市委員、犬飼委員がおっしゃった 懸念が、図の中にははっきりこのように書いてあって、非常にミスリーディングなのではないかと思 いますので、これまでの2人の労働側の委員の意見も含め、こういったところもきちんとやっていただ かないと困るなと申し上げておきたいと思います。 ○労働衛生課長 先ほど文章編を説明して、ちょっと省略してしまったのですが、ア、イ、ウ、エ は、省略すべきでない人という意味で、表現を揃えるのに、裏返しの関係で「必要を認めた労働者」 という言い方がわかりやすいのかなと思いまして、書いたのです。趣旨は、今ご指摘のとおり違うわ けですので、必要性を限定的に認めた場合ということでは決してありません。事務的に、各方面に説 明するときの資料ということで作って、今回もこれを使わせていただいたところですが、事業者、労 働者に周知する際には、表現ぶりをもう少し正確、かつわかりやすい形に変更したいと思います。 ○分科会長 はい、ということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。ほかにはご意見、 コメントございませんか。  それでは次の議題ですが、「労働者死傷病報告の様式改正に関して」です。ご説明をお願いいたし ます。 ○安全課長 安全課長の田中です。労働者死傷病報告の様式改正についてご説明申し上げます。資料 1-3をご覧ください。先ほど安全衛生部長のほうから説明しましたとおり、派遣先の事業者からの死傷 病報告の周知の徹底を図ることによりまして、派遣先の事業場における労働災害防止策の推進に資す るということを目的として改正をするものです。  まず最初に、現行の規定から説明させていただきます。この労働者死傷病報告にきましては、労働 者が労働災害等により、死亡又は休業したときに、安全衛生法100条に基づく安全衛生規則第97条の規 定によりまして、事業者に対して、所轄の労働基準監督署長に提出を義務付けています。派遣労働者 の場合ですが、被災した場合には、労働者派遣法第45条第15項等の規定によりまして、派遣元及び派 遣先双方の事業者に対して、それぞれの所轄労働基準監督署長のほうに提出を義務付けているという ことです。  さらに、労働者派遣施行規則の第42条の規定によりまして、派遣先の事業者は、派遣労働者が被災 した場合には、休業4日以上の労働者死傷病報告を労働基準監督署長に提出したときには、その写しを 派遣元の事業者に送付しなければならないという規定になっています。  改正の背景ですが、2頁目をご覧ください。右側が現行の様式です。真ん中辺りの上辺りですが、提 出事業者の区分というのがあります。これは平成16年に改正して加わったものですが、派遣元の事業 者が提出する場合には、派遣元の分に○をする。派遣先の事業者が提出する場合には、派遣先の分に ○を付けることによりまして、派遣先、派遣元、どちらの事業者が提出されたか区別できるようにな っています。これに基づきまして、報告件数を集計するというシステムになっています。  この集計した結果が、3頁目です。ご覧いただければ一目瞭然ですが、派遣先の事業者からの提出が 派遣元の事業者からの提出に比べ少ない状況になっています。その比率を見ますと、年々、改善をし ていますが、平成20年をご覧になっていただきましても、報告件数が、派遣元に対し、派遣先の比率 が81.2%ということで、派遣先からの事業者の提出の徹底が求められています。  こういった状況を踏まえ、労働者死傷病報告の様式につきまして、派遣労働者が被災した場合にお いて、派遣元の事業者が、派遣先の事業者の郵便番号を記入する欄を設けるなど、様式の改正を行う ものです。  2頁の左側をご覧ください。真ん中に追加部分がありますが、矢印で示していますが、その右の部分 が、派遣先の事業場の郵便番号を記入する部分です。郵便番号を記入することにより、つまり、派遣 元の事業者から提出のあった労働者死傷病報告の郵便番号の情報によりまして、私どものコンピュー ターのシステムにおいて、派遣先からの事業者の提出状況を確認し、派遣先の事業所が特定できるよ うになるということです。特定できたときには、未提出の場合につきましては、所轄の労働基準監督 署に連絡の上、報告の督促などを、必要に応じて対応を行うということを考えています。  施行日につきましては、平成22年の4月1日を予定しています。簡単でございますが、以上です。 ○分科会長 ありがとうございました。今のご説明に対して、質問、ご意見がありましたらよろしく お願いします。よろしいでしょうか。 ○分科会長 ご発言がなければ、「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」及び「労働安全 衛生規則第四十四条第三項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準を定める告示の一部を改正する 告示案等要綱」について、当分科会として妥当と認めることとしてよろしいでしょうか。                (異議なし) ○分科会長 ありがとうございます。それでは「労働安全衛生規則の一部を改正する省令案要綱」及 び「労働安全衛生規則第四十四条第三項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準を定める告示の一 部を改正する告示案等要綱」について、それぞれ当分科会として妥当と認めることになりましたの で、その旨報告を私から労働政策審議会会長あて、行うことといたしたいと思いますが、報告書につ きましては、私に一任させていただくということでよろしいでしょうか。                (異議なし) ○分科会長 ありがとうございます。それではそのようにさせていただきます。本日の会議は以上を もって終了いたします。議事録の署名ですが、犬飼委員、伊藤委員にお願いしたいと思います。よろ しくお願いいたします。それでは、本日はお忙しいところありがとうございました。終了いたしま す。 (照会先) 厚生労働省労働基準局安全衛生部計画課 03−5253−1111(内線5476)