09/12/15 第2回「日本人の食事摂取基準」活用検討会議事録 第2回「日本人の食事摂取基準」活用検討会 議事録 1.日時:平成21年12月15日(火) 16:00〜18:00 2.場所:厚生労働省共用第8会議室 3.次第 (1)「日本人の食事摂取基準」活用検討会報告書 骨子(案)について (2)その他 ○木村生活習慣病対策室長 それでは、定刻より少し早いですけれども、委員の皆様全員お そろいになられましたので、第2回「日本人の食事摂取基準」活用検討会を開催させていた だきたいと思います。  まず初めに、委員の皆様方には、年の瀬も押し迫ったこの時期に、非常に御多忙のところ 御参集賜りまして、誠にありがとうございます。  本検討会は、第1回目が7月30日に開催されまして、これは5月末に2010年度版の日 本人の食事摂取基準についての報告書が公表されたことを踏まえて、その活用のための検討 会ということで、給食管理における活用方策とか、あるいは推定エネルギー必要量の変更に 伴う食事バランスガイドの見直しといった食事改善における活用方策について、多角的な面 から有意義な御意見を賜ったところでございまして、大変感謝申し上げております。  本日は2回目の検討会ということでございまして、私ども年度末には報告書を取りまとめ るということも考えております関係上、本日は報告書の骨子案を御提示させていただきまし て、その全体の構成ですとか、あるいは記載で追加すべき点があるかないかといったような 点、また個別の事項につきましても、食事摂取基準の見直しにおける食事バランスガイドな どの影響等については、第1回目の後にワーキンググループを設置しまして検証作業が進め られてきたところでございますけれども、本日はその内容の報告も踏まえまして、それぞれ 御忌憚のない御意見を賜りたいと考えているところでございます。  何分、本日の検討会は非常に盛りだくさんの検討内容となってございますけれども、何と ぞよろしく御検討のほどお願い申し上げまして、まずは会議冒頭のごあいさつに代えさせて いただく次第でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○河野栄養・食育指導官 それでは、議事に入ります前に、事務局より配付資料の確認をさ せていただきます。 (配付資料確認) ○河野栄養・食育指導官 不足等はございませんでしょうか。  それでは、これ以降の進行につきましては、中村座長にお願いいたします。 ○中村座長 中村でございます。それでは、これから議事に入らせていただきます。本日は 骨子案について十分議論していただきたいと思います。  まず、資料1の骨子案について、事務局から御説明をお願いいたします。 ○河野栄養・食育指導官 資料1の骨子案につきましては、今後、報告書作成に盛り込んで いく内容ということで整理させていただいております。骨子案につきましては、表の左側に ございますが、「I はじめに」、「II 食事摂取基準の活用における基本的な考え方」、IIと して2つ事項がございます。「1.食事摂取基準の基本を理解する」、更に「2.食事摂取基 準を活用する場合の基本的考え方を理解する」。4ページに「III 食事改善、給食管理を目 的とした食事摂取基準の活用の基本的考え方とそのポイント」ということで、具体的内容と しましては「1.食事改善(個人)を目的とした活用」「2.食事改善(集団)を目的とし た活用」「3.給食管理を目的とした活用」となってございます。また、8ページには「IV  国レベルにおける食事改善を目的とした食事摂取基準の活用方法について」ということで、 食事バランスガイドの見直しの必要性並びに国民健康・栄養調査の適応に向けた課題につい てという骨子案になってございます。  また、1ページに戻りまして、記載内容の主なポイントにつきましては、表の冒頭に書い てございますとおり、記述や整理の方向性といたしましては「◆」等マークが記載してある ものについては、丁寧に解説を記述していく。また、「→」でお示ししている事項につきま しては、わかりやすい表現として必要な情報、策定検討会報告書の図表等を盛り込む。更に 「★」につきましては、別途解説を加えた方がよい事項についてコラム的に整理をすること を想定して記述してございます。  まず、「I はじめに」につきましては、2005年版の食事摂取基準で総論において活用に 関する基本的な考え方が示され、更に2010年版で活用の基礎理論を新たに項立てし、記述 されていること、また、今回そうした基礎理論を踏まえまして、食事摂取基準の活用におけ る基本的考え方が共有され、その活用が進むよう食事摂取基準を活用したマネジメントサイ クルが積極的に導入されるよう活用の考え方やポイントを整理するということになってご ざいます。具体的には、食事摂取基準講習会におけるアンケート調査結果ということで、参 考資料4におつけしてございますが、おかげさまで9〜11月まで全国でブロック別講習会 を行った結果、約6,600名の方々の御参加をいただきまして、アンケート調査も行っており ますので、その中に含まれています2005年版及び2010年版の理解度等が取りまとまれば、 そういうデータを組み込んでもいいのではないかというところで記述してございます。  「II 食事摂取基準の活用における基本的な考え方」としましては、「1.食事摂取基準 の基本を理解する」ものとして、「食事摂取基準は健康な人々を対象としている」「真の望ま しい摂取量はわからない、だが、食事摂取基準を使えばその人やその集団の習慣的摂取量が 適切な摂取量かどうかの可能性(確率)を知ることができる」。また、活用の目的に応じて 指標を用いることで、各指標の説明であるとか、指標の概念や特徴を理解することが活用の 理解を深めるということで、指標の概念や特徴について解説を行うこととしております。  また、「2.食事摂取基準を活用する場合の基本的な考え方を理解する」という部分につ きましては、マネジメントサイクル(PDCAサイクル)に基づいて食事摂取基準を活用す る、更に、その場合アセスメントすることから始まるということで、食事調査等のアセスメ ントにおける留意点を記述するとともに、前回若干議論になりましたが、「★」がついてい ます「習慣的な摂取量を把握するための食事調査とは」という部分につきましては、そこに 解説例をお示ししてございますが、別途コラム的に詳細を記述してはどうかということでご ざいます。  このほか「食事摂取基準の指標別にみた活用上のポイント」に関連して、別途解説に盛り 込むものとしましては、目標量を活用する場合には予防を目的としている生活習慣病が関連 する他の栄養関連因子等を考慮する必要があるということでございますので、その方法、あ るいは対象とする個人や集団の特性、食事摂取基準の活用目的に応じた栄養素の優先順位の とらえ方については、別途解説を設けることでいかがかということで記述しております。  「III 食事改善、給食管理を目的とした食事摂取基準の活用の基本的考え方とそのポイン ト」として、1つ目の個人の食事改善を目的とした活用の場合は大きく2つ、食物摂取状態 の評価(アセスメント)と食事改善の計画と実施ということで、アセスメントの部分につき ましてはエネルギー摂取量の過不足の評価、栄養素の摂取不足の評価、栄養素の過剰摂取の 評価、生活習慣病の一次予防を目的とした評価について記述を行い、こうした部分の食物摂 取状態の評価に対応する形で、それぞれどのように食事改善の計画、実施をするのかという ことを記述していく構成となっております。  食事改善(集団)を目的とした活用も同様の構成になっておりまして、食物摂取状態の評 価、アセスメントとしてエネルギー摂取の過不足を評価する場合、栄養素の摂取不足の評価、 更に、栄養素の過剰摂取の評価、生活習慣病の一次予防を目的とした評価ということで、こ れに関連しましては、確率法、カットポイント法とは、また、集団の摂取量の平均値を推奨 量で割るような使い方というのが若干見受けられますので、そういったものをアセスメント に用いない理由については別途、解説を設けて記述してはどうかということでございます。  食事改善の計画と実施につきましては、エネルギー摂取の過不足に関して、続いて、栄養 素の摂取不足からの回避のために、更に、栄養素の過剰摂取からの回避のために、このほか 生活習慣病の一次予防のためにという事項になってございます。  「3.給食管理を目的とした活用」につきましては7ページになりますが、食事摂取量の 評価につきましては、摂取量調査の方法について、すべての食事を対象とすること、その中 での給食からの寄与についての情報を得ることが望ましいとございますが、そうしたことが 難しい場合の対応方法も含めて言及していくことで解説を設けてはどうかということでご ざいます。  このほかに栄養素の摂取不足の評価、栄養素の過剰摂取の評価、生活習慣病の一次予防を 目的とした評価ということに対しまして、食事計画の決定の中では提供するエネルギー量の 算出、決定の仕方、この場合、対象集団の特性が性・年齢階級・身体活動レベルから見て2 つ以上の群(階級)に分かれる場合の決定の方法については別途、解説を設ける形でどうか。 更に、摂取不足からの回避を目的とする栄養素について、過剰摂取からの回避を目的とする 栄養素について、更には、生活習慣病の一次予防を目的とする栄養素について、それぞれ記 述を行いますとともに、「★」の部分でございますが、一部の食事、例えば、昼食のみを提 供する場合の食事計画の決定方法について解説を行いますとともに、文部科学省の方で山本 委員を座長とした検討会において調査を進めていらっしゃるとお伺いしておりますので、学 校給食基準の策定のプロセス例も、こういった辺りで盛り込んでいくことになります。  最後、「IV 国レベルにおける食事改善を目的とした食事摂取基準の活用方法について」 は、いずれも後ほど個別の課題で御意見をいただくことになっております。1つ目の食事バ ランスガイドの見直しの必要性につきましては、作業部会での検証結果について後ほど吉池 委員から御報告をいただくことになっておりますので、その検証結果を踏まえての記述とい うことになります。また、国民健康・栄養調査の課題につきましては、前回の検討では時間 の関係で十分御議論いただくことができませんでしたので、本日はここに示しております2 つの観点、1つは、国民の習慣的摂取量の把握を目的とした国民健康・栄養調査の食事の在 り方について、前回不連続な2日を基本としてはどうか、その一方で対象者の負担であると か経費の増加等、総合的に慎重に検討すべきではないかという御意見もいただきましたので、 国民健康・栄養調査そのものの変更を視野に入れるのか、あるいは補完的にサブグループを 対象とした調査研究を行うような仕組みにするのか御意見をいただきまして、総合的に判断 して、その方向性について記述していくこととなります。  また、2点目の国民健康・栄養調査結果におけるエネルギー・栄養素の摂取量の食事摂取 基準を活用した評価方法につきましては、今申し上げたような調査の在り方自体が整備され ないと対応できないものなのか、あるいは現行の調査結果でも適用できる部分があるとした らどういう方法があるのか、本日具体的に御意見をいただきまして、その方向性について記 述することになります。  以上でございます。 ○中村座長 ありがとうございました。  それでは、まず、骨子案について御議論をいただきたいと思いますが、本日は資料2の検 討事項に沿って御意見をいただきたいと思っております。また、大きく2つに分けまして、 全体の構成内容について御意見をいただいた後、前回時間の関係で十分議論できなかった、 いわゆる個別の事項についても御意見をいただきたいと思います。  まず、骨子案の全体の構成について御意見をいただきます。特に、全体の構成については 3つの観点からの報告書作成となっておりますので、重要な事項が網羅されているか、具体 的な御意見をいただきたいと思います。  最初に、骨子案の構成についてということですが、「I はじめに」から「II 食事摂取 基準の活用における基本的な考え方」「III 食事改善、給食管理を目的とした食事摂取基準 の活用の基本的考え方とそのポイント」「IV 国レベルにおける食事改善を目的とした食事 摂取基準の活用について」という流れで構成されています。まず、これはいかがでしょうか。 ○佐々木委員 非常によくできていると私は思います。1つだけお願いといいますか、この ようにしていただけると更によくなると思うんですが、「III 食事改善、給食管理を目的と した食事摂取基準の活用の基本的考え方とそのポイント」ですが、ここだけ「ポイント」が ついているんですよね。基本的な考え方にのっとってというところが、恐らくこの検討会報 告書の全体の流れの中心になるのではないかと、この骨子を見て思いました。そうすると、 ポイントだけが浮くのではなくて、基本的考え方のこの部分を使うとこのポイントができる というような、この考え方があるからこういうポイントがあるんだな、だからこう使うんだ なというところがわかると、使うという観点から見ますと、とても使いやすい、わかりやす いものになるのではないかと感じました。 ○中村座長 ありがとうございました。  先生、IIIのタイトルはこのままでもいいですか。 ○佐々木委員 このままで。 ○中村座長 ほかにございますか。 ○吉池委員 内容的には大変よく整理されていると思います。「おわりに」の辺りに入るこ とかもしれませんが、食事摂取基準の今後の活用・展開に向けての教育ですとか、人材育成、 活用にかかわる研究の推進といったような仕組みについて、言及していただくとよいのかな と思います。テクニカルな部分が整理されているように思いますので、本検討会の報告書と しては今申しましたように、基盤整備的な部分についても触れていただければと思います。  以上です。 ○中村座長 ありがとうございました。 ○田畑委員 それに関連するんですけれども、大事な項目についてはコラム的に記述すると 書いてあるのですが、それは読ませるということですよね。ということは、これはどこかで 出版されるということをお考えなんでしょうか。 ○河野栄養・食育指導官 基本的に、これそのものを出版するということは考えておりませ ん。ただ、この内容が基本的な考え方を中心に整理するということになっておりますので、 それを踏まえていろいろな活用の目的によって内容も異なってくると思いますので、自由に 出版して理解を深めていただくような形は、むしろ民間レベルも含めて進めていっていただ けたらと考えております。 ○田畑委員 今言われたように内容を切り張りという、今、吉池先生が言われたような、し っかり育成するという問題と見せるという問題はちょっと合わないのかなと思いましたの で、質問しました。 ○中村座長 ありがとうございました。  ほかに御意見ございますか。 ○由田委員 報告書の活用の基礎理論にも記述されておりますが、食事摂取基準は欧米諸国 にも活用の考え方というものがあるのですけれども、日本では異なる諸条件があって、欧米 諸国の活用方法をそのまま用いることができないということで、その部分のこれからの研究 が非常に重要になってくると思います。最後のところでも構わないので、当該部分について、 これからエビデンスを蓄積していく必要があるという記載を入れていただくと良いと思っ ております。 ○中村座長 ありがとうございました。  吉池先生と由田先生の意見は共通するところがあるんですが、今後の教育とか研究の進め 方というのは、この4つの項目のほかに別立てした方がいいという御意見でしょうか。 ○吉池委員 この検討会の中心的な議論がどこにあるかにもかかわるとは思うのですが、本 体の報告書の中でこれからの研究の必要性がかなり述べられています。そういうことを考え ると、本検討会の方が政策的な展開も含めての議論だと私は認識しておりますので、可能で あれば1つ項を設けていただいて、研究基盤や教育基盤の充実について触れていただければ と思います。 ○中村座長 ありがとうございました。事務局からそれに関して意見はありますか。 ○木村生活習慣病対策室長 それについては御意見として賜って、また総合的に検討させて いただきたいと思います。 ○中村座長 とても貴重な御意見だろうと思いますので、検討をさせていただきたいと思い ます。  骨子について、ほかにございますか。なければ、2番目の骨子内容の主なポイントで追加 すべき点について御意見をお伺いしたいと思うのですが、骨子案の右側に記載されておりま す記載内容の主なポイントについて、何か追加すべきポイントはございますか。かなり詳細 に書かれているので読むのにちょっと時間がかかるかと思いますが、御意見ございますか。 大体いいでしょうか。ないようでしたら、記載内容のポイントはこれに従って進めていきた いと思います。  では、3番目の解説を加えた方がよい事項で追加すべき点はございますか。骨子案の中、 例えば3ページの「★」で「習慣的な摂取量を把握するための食事調査とは」とあるように、 現時点では7つの事項について示してありますが、別途解説を加えた方がいいような事項が あれば御意見をお伺いしたいと思いますが、いかがですか。 ○山本委員 これは、そのままを採用されているということなのか、たまたま置いてあるも のなんですか。 ○中村座長 これは、現時点では大体7つぐらいの事項であろうということでやってあるわ けです。だから、この事項に関しては必ず触れるということですね。 ○河野栄養・食育指導官 前回の御議論も踏まえて、この部分については盛り込んでいく方 向で考えております。 ○中村座長 山本先生、何かありますか。 ○山本委員 ここでは不連続な2日間、できれば3日間というような書き方で、一般的にそ うだと思うので特にそこには異存はないんですけれども、長さとしてもこの程度で書いてい くという感じなんですね。詳しさというのも。 ○河野栄養・食育指導官 長さについては、あくまでもここは解説例ですので、もう少し補 足して丁寧に書いた方がわかりやすく伝わるものについては記述をすべきだと思います。ま た、この部分につきましても、先ほど研究の話が出ましたが、どこまでが具体的に、現時点 でわかっていることとして記述ができて、一方、今後こういった部分の研究がこの観点で必 要だということであれば、具体的に併せて御意見もいただければと考えております。 ○山本委員 では、この部分の解説例について議論を今してもいいということですか。2日 間とか3日間ということで、2日間でも十分大丈夫かということを聞いてもいいんですか。 ○中村座長 山本先生、ここでは中身の議論は今日は避けたいと思います。記載する項目だ けに限定させていただきます。  ほかにございますか。今日はそれぞれの分野から出ていただいているので、御自分の分野 で抜けているような事項がありましたら。  佐藤委員、いかがですか。 ○佐藤委員 それでは、6ページになりますが「食事改善(集団)を目的とした活用」のと ころで「★」で「『集団の摂取量の平均値/推奨量』をアセスメントに用いない理由とは」 とありますが、是非ここは丁寧に解説していただきたいと思うところでございます。と申し ますのは、集団における摂取量の平均値/推奨量は解釈困難な指標であるとされていますが、 実際には使われているのではないかと思うのです。栄養管理報告書を例にとりますと、都道 府県によってフォーマットは違うのですが、そこでは提供の平均量を出すように示されてお り、実際に現場では摂取量の平均値を取るということが日常的になっているかと思いますの で、ここで明確にアセスメントには用いない、解釈が困難な数値なのだということをわかり やすく丁寧に書いていただけると、現場はこの意味合いが理解できるのではないかと思いま す。  もう一点よろしいでしょうか。8ページに「一部の食事を提供する場合の食事計画の決定 方法とは」というのがありますが、これに関しましても、例えば、事業所給食の場合ですと 昼食のみを提供するというケースが非常に多いので、そのときにどれくらいのパーセントを 昼に持ってくるかというのは、これから研究をされなくてはいけないというところではある と思うのですが、そうはいっても現実的に給食の現場が動いている中で、やはり現在のとこ ろはこういう数字が望ましいのではないかという明確な数字を出していただけるといいの かなと。活用の基礎理論の中にも18%、34%、40%、8%で、お昼は34%だというような 数字がありましたが、一方で、都道府県、都市によっては、1対1.5対1.5で、お昼は1.5 にすると望ましいなどというのを現在も参考値として出しているところもございますので、 その辺りである程度これを目安にするといいというような具体的なものをお示しいただけ ると、現場では活用しやすいのではないかと思います。  以上です。 ○中村座長 御意見ありますか。  石田先生、いかがですか。給食に関して出ましたけれども。 ○石田委員 数値を示すのは今の時点では難しいと思います。この報告書の中では、具体的 に数値を示すのが難しいということがわかるように、また、今後数値を示せる努力をしてい かなければいけないということがわかるような書き方に、結果的にはならざるを得ないのか なと理解しています。1日のうちの一部の食事の給食が非常に多いので、そのときに報告書 のプロセスでは、例えば「摂取不足から回避を目的とする栄養素について、推定平均必要量 を下回るものがほとんどいなくなる(2〜3%以下)」とはっきり今回書かれています。一 部の食事で本当にそのことがかなう給食ができるかということは難しいですね。給食は一食 分の費用が決まってしまいますので、そのことを考えたときに、一食分でこれはまずかなわ ないだろうという限界もございます。その辺りの限界をどう解釈したらいいかというところ を考えるヒントというか、その辺りを示していただけると、みんな解釈がしやすくなってく るのかなと思います。 ○中村座長 ほかに御意見ございますか。 ○佐々木委員 石田先生の御意見は重要だと思います。ここで数値を出しますと、ネガティ ブな言い方をしますと、その数値を是として使うと食事摂取基準のこの報告書で理解してい ただきたいところが十分でないままに数値が使われる、そして、状況判断が十分でないまま に数値が使われるということがあっては、せっかくここまで来た努力がまた元に戻ってしま うかなという危惧があるのではないかと思います。そういう意味で、数値を示すときには非 常に慎重に慎重さを重ねて書いていただきたい。そして、現在はここまでしかわかっていな いとか、数値を出してもいいのですが、それは今後調査が進めば変わり得るものであるとか、 ほかの状況を十分に加味した上で使ってほしいとか、そういう現場における状況判断の重要 性も十分にその周りに書いていただいて、一つの参考値として数値を示していただくという ような方針がよいのではないかと思います。 ○中村座長 ありがとうございました。ほかに御意見ございますか。  では、全体の構成に関してはこれでいいでしょうか。 ○佐々木委員 1つだけいいですか。多分、余りに当たり前なので書かれていないと思うの ですが、食事摂取基準2010年版を読むというのが前提と考えていいんですよね。その代わ りにつくられるものではないですね。その点はよろしいですね。 ○山本委員 私は必ずしも反対ではないんだけれども、何のためにここに活用の会を特別に つくるんだと。つくるという背景には、もう一方、実用・活用という面で使いやすいものを つくろうというのがあるんじゃないかと、それが目的でこの会が動いているのではないかと いう理解があるんです。だから、読むなというのではなくて、勿論あそこにはある。それを 更に現場とか活用の場所で使いやすいものをもう一つつくるんだというのが前提にあるの かなと。そのために活用というこの検討会が立ち上がっているのではないかと理解するんで すけれども、違っていますか。 ○伊達委員 私は、より深く活用の部分を理解するということで、この会議があると思って いましたので、やはり最初の食事摂取基準の内容を理解していただいて、この部分だけを取 り上げて活用していただくというのは危険じゃないかと思いますので、ある程度入れていた だいた方がいいかなと。最初にこの報告書の総論部分があるということは明示されると、よ りいいのかなと思います。 ○山本委員 説明等はしないけれども、やはり更にプラスアルファで深く活用という視点は 入れていくと。 ○伊達委員 やはりあの部分よりも相当これは実際に向かって書かれていますので。 ○山本委員 ということは同じ意見と考えていいんでしょうか、違っているんでしょうか。 ○伊達委員 佐々木先生とは一緒ですけれども、山本先生はもう要らないとおっしゃったん じゃないですか。 ○山本委員 いや、要らないではなくては、もう一つ会を更に立ち上げるということは、あ れを基本にした上で更に深いものがもう一つあった方がいいんじゃないかと思って、要らな いとは言っていませんので、基本は要るのだろうと思いますけれども。活用に進んでという 意味ですよね。私も活用の方に進んで、もう一歩活用に特化したようなものがあのベースの 上にあるのが望ましいのではないかと。 ○佐々木委員 ベースの上にという言葉が大切だと思うんですよ。代わりではないというこ とです。 ○山本委員 多分同じことだと思います。 ○伊達委員 佐々木先生が心配されているのは、こういうものが出るとこれだけ見たらいい という、例えば食事摂取基準だったら、内容よりも後ろの表というか数字だけを適用したら いいという、そういうことを心配されて初めに書いておいた方がいいだろうという御意見だ と思いますので、それは賛成です。 ○山本委員 書くなとは言わないんだけれども、そうすると、活用書が物すごく厚いものに なってしまうから、やはり基本は大事ですと書いた上で、更に活用を深めていくという形に なるんじゃないでしょうか。 ○伊達委員 そうではなく、私が今、佐々木先生の御意見を聞いて思ったのは、「はじめに」 とかそういうところに重要性を書いていただくと理解したんですけれども。別に前に総論を つけるというわけではないですよね。 ○佐々木委員 むしろ、食事摂取基準を読みましたね、では始めましょうという感じです。 ○山本委員 だから、基礎を理解した上で活用していこうということですね。 ○中村座長 ほかにございますか。ないようでしたら、全体的な骨子案についてはこれで終 わりたいと思います。  それでは、続きまして、個別の事項について議論に入りたいと思います。まず、小児の身 体活動レベルの判定方法についてでございますが、食事摂取基準では6〜11歳につきまし て身体活動がI(低い)、III(高い)を含む3区分で示されていますが、それに応じて活動 内容や活動時間の考え方を示していません。そこで、小児についての身体活動レベルの判定 について、まず、田畑先生から御説明をお願いしたいと思います。 ○田畑委員 参考資料1を御参照ください。このように2005年版から、2010年版に変わ ったわけですけれども、一番大きいのは6〜11歳のところに「低い」というのができたこ とにあります。更に6〜7歳では「高い」も入っております。この理由は、食事摂取基準に 書いてあるわけですけれども、食事摂取基準2010年版における子どもの身体活動レベルで すが、これについて普通は6〜7歳が1.55、8〜9歳が1.60、10〜11歳が1.65、12〜14 歳が1.65と決められております。そして、「低い」と「高い」の間のそれぞれの値が身体活 動レベルとして0.2違うということになっています。このようなものが示されているわけで すが、この身体活動レベルの身体活動はどのような程度であるかということについてですが、 私たちが2010年版をつくるときにレビューをしました論文から見ますと、子どもにおいて は質問紙などから身体活動レベルを推定する方法は、まだまだ国際的には確立されていない というのが私たちの判断でした。勿論いろいろな生活環境の差もあります。したがって、エ ビデンスレベルは低いという観点から、エビデンス有意の食事摂取基準には判定方法を示し ませんでした。しかし、活用を考えた場合に、数字のみが出ていて活用法がないというのは 使いづらいという面がありますので、最も確からしい判定法を活用に提示することとしてお ります。  その理由ですけれども、子どもを対象とした論文における身体活動レベルと活動の対応と いうことで、2010年版では以下の4つのもの、(1)Ramirez-Marreroとか(2)Spadano、(3) Anderson、(4)Franksというようなものを使っております。これはすべて日本のデータで はなく欧米のデータになっています。いずれも平均年齢は6〜12歳の間です。  これら4つの要約ですけれども、(1)Ramirezらのものは身体活動レベルの平均値が1.29 (女性)、1.40(男性)とやや低めです。これについては身体活動量、運動量の記載はあり ません。(2)と(3)というのは家事や庭仕事などの軽度の活動を含む歩行程度の活動とか、運動 とか心拍数・呼吸数が増えて少し汗をかくような遊び、仕事、スポーツなどの活発な運動の 合計が3時間強/日、そのうち運動・スポーツ、余暇活動が1〜1.5時間/日となっていま す。(4)Franksらにおいては、スポーツや余暇活動、活発な活動が平均一日1時間強です。 (2)〜(4)における運動・余暇活動時間の標準偏差は0.3〜1時間という大きい値となっており ます。いずれも厳密な活動記録、私たちが使うようなものについての記録に基づいていない ということで、これは休憩時間も含みます。例えば、45分運動していたというと、その間 休憩時間が何分あったということは書かれておりません。おおよその時間となっております。  ということから、私たちが考えた身体活動レベルに対応する身体活動量は、「低い」は大 体30分程度、「ふつう」は1時間程度、更に、「高い」は一日当たり2時間程度であろうと 推測しました。こうして見ますと、案としては「低い」の身体活動量は、体育とか休み時間 以外は活発な活動がほとんどない子どもたち、これが活発な活動が一日当たり30分程度、 体育の時間は3〜4時間あるわけですけれども、それを一日当たりにしてしまうと非常に少 ないということになります。ですから、体育とお昼遊びを足しても平均するとこれぐらいに なってしまうということになります。「ふつう」は放課後一日当たり、その後1時間ぐらい よく外遊びをするという子たちです。更に、「高い」は「ふつう」に加えて週末などに活発 なスポーツ活動、例えばスポーツ少年団だとかサッカーとか一日4時間とかやっているよう な子たちについては「高い」と示せば、食事摂取基準活用のときに使えるのではないかと思 いましたので、提案させていただきます。 ○中村座長 田畑委員からこのような御提案がございましたが、御意見ありますか。 ○山本委員 質問いいですか。例えば6〜7歳だけをとって見て、3レベルでありますよね。 結局、例えば真ん中の1,550kcalとか1,650kcalと、その3つのレベルの中での幅というこ とになんですよね。実際の活用に当たっては、多分1,200kcalぐらいから始まっているのだ と思いますが、6〜7歳の男子は1,700〜1,800kcalと。そうすると、これを使っていくと きには、給食の場合なんですけれども、この中だとどこに入れ込んでいってもいいというこ とに、こちらでは一応活動のアセスメントはするとして、そのどれかに当てはめてしまえば いいという考えでよろしいわけですね。 ○田畑委員 ここに関しては推定エネルギー必要量というのが3段階で出ておりますので、 これを中心にやるわけですが、この一番もっともらしい、確からしい活動量の表現が今のよ うな値であるということです。 ○山本委員 これがそれぞれのIのレベル、IIのレベル、IIIのレベルの真ん中ぐらいのとこ ろと考えておいて、そうすると、いろいろなレベルの子どもたちがいるから、どれを使って いってもその子どもたちに合わせた部分を使っていけばいいということですか。 ○田畑委員 個人ということですか。 ○山本委員 あるいは小さなグループ。個人はちょっと難しいと思うんですけれども。 ○田畑委員 そうですね。大きくざくっとということだと思います。 ○山本委員 ざくっとで全部物すごく幅が広いので、Iを使おうが、IIを使おうが、IIIを使 おうが、適切なその子どもたちのグループで見て、それに近いところであげていくというこ とですよね。 ○中村座長 ほかにございますか。 ○佐々木委員 プリバレンスの推定になるようなデータはあるんですか。「低い」と「ふつ う」と「高い」がそれぞれ、ある子どもたちの集団で何パーセントずつぐらいいた、または いるであろうというような。 ○田畑委員 日本のデータがないので。これは外国の4つの例で日本人の子どもたちの推定 される一日の活動を考えたということです。 ○由田委員 この部分は、来年の国民健康・栄養調査において、すぐに対応しなければなら ないのですけれども、「ふつう」というところを中心に見ておいて、それよりも活発な子に 関しては「高い」、余り動いていないなという子に対しては「低い」というような形で、見 ていくのが一番考えやすいと思ったのですが、そういう解釈でよろしいでしょうか。 ○田畑委員 確かに、「ふつう」という値で先ほど言ったように外国のデータをうまく計算 してやって、仮想的ですけれども、この3つが多分当てはまるだろうということではありま す。ですけれども、今言われたように、どこが普通だということについてのデータはないわ けですから、まずは真ん中を中心に考えていただければいいとは思いますけれども。 ○中村座長 ほかにございますか。なければ、この田畑先生の案でいいということで進めさ せていただきます。 ○佐々木委員 注書きですね。 ○田畑委員 是非、来年の国民健康・栄養調査でやれればいいですよね。もともと国民健康・ 栄養調査に「低い」というのが今はないわけですから、これに「低い」が追加されるという のは大きなことです。子どもたちの身体活動の変化を見てみると、6〜7歳はそれほどでも ないですけれども、やはり10歳を超えると二極化するというようなことも出ておりますの で、そういうデータが出てくると活用には非常に役に立つかと思います。 ○山本委員 もう一点よろしいでしょうか。高齢者の方では逆に上がってくるわけですけれ ども、半健康というか、健康をとって半健康の区別、これは健康人を対象にしているという ことだろうと思いますが、なかなか食べられないというような人たちがいるときに、全体的 にレベルが高いですよね。これはどう対応していけばよろしいですか。 ○田畑委員 それは個別対応というか、その人の体重も全然違いますし、身体活動も違いま すので、どうすればいいですかね、体重は非常に大きな影響もありますし、それを身体活動 レベルIIでやるかIでやるかというのは、まず、医師の方たちに判断していただいて、それ が本当に合っているかというのは体重の増加とか筋肉量の低下ということを見ながらやっ ていただくしかないのではないかと思います。 ○山本委員 この人たちは、割と元気でも体重が既に低下している人たちが結構多いですよ ね。そうすると、割と高い設定になっているんだけれども、ここまで与えるとどうしても食 べ残しが出るとか、そういうケースがあった場合には、それはそれで更にこの数値にこだわ らずに下げていっても構わないということですか。 ○田畑委員 そうですね。それで体の機能が変化する、例えば、食事を余り与えないことに よって筋肉量が減るとか身体活動が減るというのがない場合には、それは可能だと思います。 ○山本委員 要するに、最終的には結果の評価から判断していけば、これに徹底的にこだわ る必要はないということですね。 ○田畑委員 こだわるというのは、どれだけこだわるかというのはありますが。 ○山本委員 この数字そのものを与えないといけないというか。 ○田畑委員 それは十分いいと思いますが。 ○山本委員 かなり低い人が出てくると思うんですよね。体重の低い人がいるので。 ○中村座長 ありがとうございました。ほかにないですか。  では、引き続きまして、食事摂取基準の改定を踏まえて食事バランスガイドを見直す必要 につきまして、作業部会に検証作業をお願いしておりました。そこで、作業部会のリーダー である吉池委員に検証結果について御報告をお願いしたいと思います。 ○吉池委員 3回のワーキンググループでの整理の結果については、参考資料2の1枚目に 示していますが、まず、参考資料1の1ページ、先ほどの推定エネルギー必要量の表をごら んください。各性・年齢グループのEERの変更及び6〜9歳で身体活動レベルが3区分に されたことに伴い、まず、この対応を検討しました。この表をごらんいただくと、6〜7歳 の身体活動レベルIでは1,250kcal、また15〜17歳の身体活動レベルでは3,100kcalとい うエネルギーのレンジがあるわけです。  参考資料2の4ページをごらんいただきたいと思うのですが、食事バランスガイドについ て、「コマの基本形」を中心とし、その上、下に、SVの調整による3区分を設けておりま した。これに対して性・年齢階級、また身体活動レベルに応じた形で線を引いております。 ここについての微調整及び線の引き方を変える必要があるかどうかをまず検討いたしまし た。  そこで論点となりましたこととして、先ほどお話しした6歳の身体活動レベルIや身体活 動レベルIIIについて積極的にカバーするとなると、従来の枠組みである1,600〜2,800kcal 程度を想定した枠からはみ出るグループが出てくることになります。これについてどのよう に考えるかという議論をいたしました。「コマの基本形」も含めて、この枠組みを変えるか 否かということも含めて議論はいたしましたが、基本的には食事バランスガイドの性質等を 考えて、特に基本形の部分については、できるだけ現行のままでいくという前提で議論・検 討をいたしました。  その結果、まず、身体活動レベルI、II、IIIで細かく分け、更に、行き着く点についてエ ネルギーのレンジを設けるとよいのではないかという検討を最初にしました。一方、食事バ ランスガイドの利用上の観点から言うと、余りここで複雑に線が入り乱れて、「私はどこに 行くの?」ということがわからなくなっても困るだろうと考えられ、その結果、ワーキング グループとしては、従来どおり普通以上についてはIIとIIIを分けずに整理をするのがよいの ではないかと考えました。  また、小児の6〜11歳では、身体活動レベルがI、II、IIIに分かれたとは言いながら、 先ほど田畑委員から御説明があったように、特に一般の方々を対象として身体活動レベルの 区分を考えながら場合分けしていくことにはまだ問題もあり、これは、小児についての適用 の検討が進んでから、また、身体活動レベルの振り分けについて現実的な整理がされてから 対応してもよろしいのではないかと考えました。その結果、現状の身体活動レベルIIのみを 整理したらよろしいのではないかという結論に至りました。  そういうことから、小児の身体活動レベルIについては行き先を設けない、また、身体活 動レベルIIIについても行き先を設けないということ、この3つの区分や枠については増やす ことなく、グレーで書いていますが、上下のところでカバーする範囲、例えば、下は 1,600kcalで終わりではなく1,400kcalぐらいはSVの調整でカバーするようにいたしまし た。また、上の方も2,800kcalまでで切れるのではなくて、3,000kcalぐらいまでカバーで きるようになっています。従って、線で明確に区切るというよりは、上下のところはグラデ ーション的な意味合いを残すということで、複雑にせずにカバーして範囲を少し広げるとい う議論になったところでございます。  一方、「コマの基本形」の部分ですが、参考資料の2ページをご覧ください。このような 形でイラストとして既に定着し、いろいろなところで活用されているということがあります。 今回示された食事摂取基準への対応について、もう一度このイラストであり、また、食事バ ランスガイドの報告書で例示されている百十数種類の料理のデータベースの成分値を使っ ての確認作業を行いました。併せて、日本人を代表するサンプルということではありません が、料理に関するより詳細な検討・分析がなされているデータベース、これは既に論文とし て発表されているものですが、そのデータベースを用いてSVの5つの料理区分の組み合わ せで計算した栄養価あるいはエネルギーの計算結果と食事摂取基準との比較・検討をすると いう作業を行いました。  その結果が3ページです。先ほど4ページ目でお話しいたしましたように、上下について はグラデーション的な気持ちで少し緩やかに広げていくということで、下に書いてある表が 今回修正を加えてお示しする案です。結論としては、まず、赤の矢印で示されている2,000 〜2,400kcalに対するSVについては、特に変更する必要はないだろうということで5〜7、 5〜6、3〜5、2、2ということになっております。また、下についても特に変更する必 要はないだろうということですが、1点だけ一番高いエネルギーのグループ、2,400kcal以 降のところですが、この主食については7〜8となっておりましたが、6〜8と少し幅を広 げた方が適用しやすいだろうと考えました。これは先ほど紹介しました、ある集団での研究 から得られた詳細な料理データベースを用いてのシミュレーションから得られた結果です が、ほんの1SVの違いですが、変更を加えた方がよりよく食事摂取基準に適用する、また 実際の活用上もよろしいのではないかということで、ワーキンググループとしてはこの1点 のみ変更するということで提案させていただきたいと思います。  一方、食事バランスガイドの適用の対象としては、例えば、中年の男性などではエネルギ ーの過剰摂取を押さえながらも、食事内容の構成をよりバランスよくとるという観点があり ますが、15〜17歳といったような活動盛り、育ち盛りでしっかりとエネルギー・栄養素を とらなければいけない対象についてもより積極的に適用することを考え、注釈として3ペー ジの表の下に「※」で書いてありますが「成長期で、身体活動レベルが特に高い場合は、主 食、副菜、主菜について、必要に応じてSV数を増加させることで適宜対応すること」とい う表現を加えたらいかがかという提案をさせていただいております。  これらの検討に用いました背景データですが、6ページをごらんください。先ほど紹介し ました2つのデータベースのうち1つ目の2005年に食事バランスガイドを検討したとき に用いた、当時の栄養調査から得られている料理のデータベースです。そこで、主食、副菜、 主菜、牛乳・乳製品、果物について、データベースで登録されている中から、複合的なもの を除いた、いわゆる「単品」のものについて列記して、その中央値ないしは平均値の両方確 認し、そちらを用いてSVで掛け合わせ足して計算をした作業が次の7〜11ページでござ います。このような形で、各エネルギー区分でカバーすることが想定される食事摂取基準と のかかわりについての検討を行ったということです。  最初のページにお戻りいただきたいと思います。今、資料をごらんいただきながら説明し た点についてもう一度整理しますと、ワーキンググループからの提案としては、食事バラン スガイド、これは「コマの基本形」を指しているものですが、これについては現行のままの SVとする、すなわちイラスト等の変更は伴わないということです。  2については、上下のカバーする範囲を多少広げたところについて書いております。また、 1点だけ主食のSVについて、幅の中での下の数値を1つ下げたということです。「※」で 書いたように、身体活動レベルの高い成長期においては留意する点を付記したということで す。身体活動レベルにつきましては、先ほど申しましたように、12歳から下の年齢につい ては現行どおり、小児については「ふつう」のみにする。ただし、70歳以上については、 現行では「ふつう」のみの矢印となっておりましたが、今回は身体活動レベルが「低い」と 「ふつう以上」と2つに分類を分けるとして考えています。  また、3点目の妊産婦の食事バランスガイドについては、妊娠末期、授乳期での付加量を 5つの料理区分についてすべてプラス1としているものです。妊産婦の食事バランスガイド については、付加量について食事バランスガイドの料理区分との比較という作業をしました。 資料としてはお示ししておりませんが、食事摂取基準そのものの付加量、エネルギー、主栄 養素、その他について、この食事バランスガイドのSVの付加量を変えなければいけないほ どの変更が食事摂取基準でございませんでしたので、これについても現行のままとするとい う結論でございます。  以上です。 ○中村座長 ありがとうございました。  以上、3点を検討していただいたわけですが、今の御報告に関していかかでしょうか。 ○石田委員 7ページからの図の見方ですけれども、この区分でカバーする推定平均必要量 や推奨量がプロットされていて、薄いブルーの「●」が推奨するサービングを食べると大体 このぐらいとれますよということです。そうすると、例えば、カルシウムだけが推定平均必 要量レベルのカバーになると。 ○吉池委員 はい。ちょっと図が見にくくて申し訳ありませんが、青い「●」は最終的に残 った案を示して、実は3つほど並べて検討していて、今回ワーキンググループとしてお示し したものが青で、中央値的なところでデータを示しております。 ○中村座長 ありがとうございました。  いいでしょうか。 ○山本委員 あとの国民健康・栄養調査の結果とも絡んでくるのだと思いますが、これは一 日の食事調査の結果ですよね。 ○吉池委員 食事バランスガイドについては、観察したデータというよりは食事バランスガ イドを組み立てるのに使われた料理のデータベースからSVを合わせて掛け算し、足し合わ せるとこうなるということです。ですから、現実的な数字というよりは、モデル的な栄養価 の計算結果ということです。 ○山本委員 調査自体は一日の調査ですよね。 ○吉池委員 データソースそのものは国民健康・栄養調査で一日調査のデータを基にして料 理のくくりをつくって、標準的と思われる料理データベースを作成してということです。 ○山本委員 エネルギー区分を高くしていけば、結果的に左の縦軸の栄養素とかエネルギー 等は全部当然高くなっていきますよね。その辺、私も問題点がよくわかっていないんだけれ ども、エネルギーを高くしていけば当然左の方も高くなっていくというので、それから算定 はできる、それは特に無理はないんですよね。 ○吉池委員 SVとして示された数の増やし方というようなことで、当然エネルギーが増え ると各栄養素について積み上げられた摂取量も増えるというデータです。 ○中村座長 ほかにございませんか。 ○田畑委員 ちょっとお願いですけれども、4ページの身体活動レベルのところなんですが、 「低い」と「ふつう」とあるんですが、「低い」というのは座り仕事が中心だが、歩行・軽 いスポーツ等を5時間程度行うという、これは資料1の2ページの食事摂取基準の身体活動 レベルと性格、内容とはかなり異なります。これは多分、6次改定のときの表現ではないか と思いますので、こちらは2005年版と2010年版に書き換えていただければと希望します。 ○吉池委員 ありがとうございます。ここについては、その表現は当然2010年版に沿った 形とし、一般の方にもわかりやすくということが必要と思います。また「低い」と「ふつう」 としておりますが、先ほどお話ししたように身体活動レベルIIIの人もある程度カバーすると いう観点からは、「ふつう以上」ということで表現の整理をしたいと思います。 ○中村座長 ありがとうございました。  ほかにございますか。なければ、食事バランスガイドに関してはこれで終わりたいと思い ます。  最後になりますが、食事摂取基準の適用に向けた国民健康・栄養調査の課題についてです。 前回実は時間がなかったために十分御意見をいただくことができませんでしたので、改めて 御意見を伺うことにいたします。資料2にお書きしましたように、2つの課題について議論 を進めていきたいと思います。  まず1つは、国民の習慣的摂取量の把握を目的とした国民健康・栄養調査の食事調査の在 り方についてでございますが、調査日数について非連続2日間という御意見もありましたが、 対象者の負担増、協力者率の低下、必要経費増加等、関連する要因を加味した調査デザイン について慎重に検討していくべきだろうという御意見もありました。具体的にどういう手順 で進めていったらいいのか、そのときにどういう検討が必要になるのか具体的に御意見をお 伺いしたいと思います。  まず、吉池先生、どうでしょうか。 ○吉池委員 まず、理屈としては、一日調査だけでは分布として必要な情報が得られないと いうことは確かなことです。特に、食事摂取基準のEARとの関連についての検討が非常に 困難であるという現状があります。  一方、今、座長からもお話がありましたように、協力率の低下については、現場サイドで 最も危惧されている問題であり、その両方をうまくカバーするという話になったときに、こ の委員会での議論の範囲を超えるかと思いますが、食事調査方法そのものの再検討も必要か もしれません。今、世帯をベースとして各世帯に対する秤量記録をお願いしていますが、違 う方法、選択肢があれば検討していくということをセットにしながら複数日数のデータが結 果として集まるよう方法論を検討していく必要があるのではないかと思っています。 ○中村座長 ありがとうございます。  ほかにございますか。 ○山本委員 質問でよろしいでしょうか。座長も吉池先生も御指摘のとおり、一番最初は春 夏秋冬5日からスタートしていますよね。非常に重い仕事をしていた。だんだんできなくな ってきて、現実に現在の1日というところに至ったわけですけれども、2日にする、あるい は3日にする、今のところ2日という提案が出ているんですが、2日にすると今言われたよ うな大きなメリットが出るのかということで考えていくと、私は自分が栄養調査をする中で 3日やっても4日やっても、勿論精度は少しずつ上がっていくのでしょうけれども、国民栄 養調査の性格というのは集団での性格であって、例えば、Aさんのものを調べて、Aさん、 あなたが肥満なのは食べるものが多いからですよとか、栄養調査の結果をそのまま栄養指導 とかそういうところには使えないように思うんです。そうすると、結果的には中央値だとか 個人の栄養素の摂取量と健康状態という形での使い方ができないのであれば、人数を十分量 増やしていって中央値に正確な数字を出してくればいいということなら、1日ではいけない んですかねという質問なんですけれども。2日、3日にすると物すごく大変になってくると いう苦労が先に私の方で見えてくるので。 ○中村座長 吉池先生、いかがですか。 ○吉池委員 まず、基本的に2日という発想そのものが個人の習慣的な摂取量をアセスメン トするというよりも、むしろ集団に対するアセスメントのために分布を調整するという意味 合いです。集団のアセスメントにおいて平均値だけでは根本的な問題の検出ができないこと になります。 ○山本委員 1日から2日にすると、多分中央値とか平均は余り変わらないと思うんですが、 幅の問題ですよね。幅が変わったことのメリットというのは、どういうところが出てきます か。 ○吉池委員 単純に2日間の平均値を個人のデータとして分布を書くと分布の幅は縮まり ます。更に、統計学的な手法で個人の中でのばらつき、変動についての推定ができますので、 仮に習慣的な摂取量を想定したとき分布がどうなるかというのは計算上は可能です。それに ついては既に現実的なフィールドでの調査データで論文も出されておりますし、また、その ような調整をするソフトウェアも関連する研究班で提示し、国立保健医療科学院における保 健所、県等の管理栄養士に対する研修の中で、習慣的な摂取量の分布を評価するための手法 のトレーニングプログラムも昨年度から開始されており、ツールはそろってきたと思います。 ○山本委員 では、1日が持つ問題点というのは、多分2日、3日と長くすればするほど精 度は高まっていくと思うんだけれども、2日という線がいいのはあるんですか。 ○吉池委員 1日というのは個人内での変動に関する情報は無です。2日が十分であるとは 言っておりませんが、無か、あるかの違いは大きいので2日間。 ○山本委員 それは3日の方がよりいいわけですね。 ○吉池委員 よりよいわけですが、統計学的な手法でカバーするということについては、実 際にアメリカの国民健康・栄養調査で行われておりますし、ほかの国でも、例えばオースト ラリアでの国民栄養調査でそういう手法を使うとどのようなアセスメントができるのかと いった基礎的な検討がなされております。 ○山本委員 アメリカのことを非常によく言われているように見えますけれども、アメリカ はつい最近まで電話で1日しかやっていませんでしたよね。1日は中に入っていって、多分 2日目は電話とかそういう形になっていると思うんですけれども、アメリカはそんなに日本 よりすぐれていますか。 ○吉池委員 面接とプラスの1日をとるための電話インタビューと私は理解していますけ れども、理論的な枠組みとしては、1日よりはすぐれた方法だと思っています。 ○山本委員 それは認めるんですが、多分、2日にしても平均値だとか中央値ぐらいでしか 勝負できないんじゃないかと。今も国民健康・栄養調査は現実に1日でやっていて、すばら しいデータが日本で出ていると思うんですよ。それをあえてまた苦労して2日に持っていく のか。それは2年か3年、5年に1回に減らすのだったらいいんだけれども、毎年毎年で今 の1日を2日に持っていくというのは、現場がすごく大変になるんじゃないかと思うので、 そちらの点も心配なんですが。 ○中村座長 由田先生、何かありますか。 ○由田委員 いろいろな御意見があるかと思います。私個人としては、やはり2日間あった 方が、より習慣的な摂取量を見ることができる可能性が高くなると考えています。ただ、そ の場合十分考慮しておかなければならないのは、今の枠組みのままで2日というのは厳しい でしょうと。ですので、2日間実施する場合は、デザインそのものも再考しながら、あるい は、対象者の数も考えながら対応する必要があると思います。  2日間実施することで分布を調整することはできるのですが、分布を調整するために必要 なベースとなるデータを何年に1度大規模な調査を行わなければなりません。5日間とか 10日間とかそういうものがないと、統計学的に正しい調整ができなくなるということもあ ります。そういうことも含め、考慮しながら対応していくことが必要になると思います。  それから、協力率のお話が先ほど出ておりました協力率につきましては、国民健康・栄養 調査がある意味では煩雑と思われてしまうような部分もありますが、それ以外に現在の社会 状況の問題も考慮しておかなければなりません。対象者の勤務状態などによって、全くコン タクトが取れないというような状況もありますので、一概に拒否だけされているということ ではないのであろうと考えられます。  私どもの研究所もかかわらせていただきながら、何とか協力率を上げるためのいろいろな 工夫や努力も行っています。うまく対応できているところでは、かなり高い協力率を得られ ている場合もあります。ですから、一概に2日間だから協力率が下がるということではなく て、お願いの仕方であるとか、調査の趣旨を上手く伝える方法を駆使するということで、あ る程度のところはカバーできるのではないかと考えております。 ○山本委員 日数が増えれば精度が上がるのは間違いないことで、そんなことは最初から誰 でもわかっていることだと思うんですけれども、2日が可能なのかどうか、そして、協力が 上がるというのは、それは熱心な人たちに偏りが生じる危険性もあり、代表性という点から は遠ざかることを意味するのではないでしょうか。 ○由田委員 済みません、そこのところはまだ細かく検証はしておりません。 ○山本委員 特定の団体でそれは言えないですよね。協力率が上がるとか下がるというのは。 ○由田委員 そうですね、今のところは。 ○山本委員 2日、3日すればいいと思うんだけれども、すごく大変だと。私も若いときに はずっと3日とかの調査をやってきたんだけれども、行くと石を投げられそうになるぐらい 大変だったから、もう一回というのはつらいなという気はするんですけれどもね。 ○伊達委員 やはり、日差変動も出してこの分布を調整するということは、ほかの国々との 比較ということで理論の枠組みは必要だと思うんです。そうすると、今の方法、秤量記録法 というのは協力率が大変です。ほかの国とも国際的にも比較できるとなれば、24時間思い 出し法かなと思うんですけれども、24時間思い出し法は対象者の記憶力に依存するという ことで非常に難しい。それと、面接者の訓練、標準化というのが非常に大変だと思います。 しかし、せっかくいろいろお金と力をかけて国全体の国民健康・栄養調査をするならば、や はり世界の中でどの位置にいるかということも出せるならば、24時間思い出し法をできれ ばいいかなと。  そこで、今の日本全体の状況を見て、携帯電話の普及率を考えると携帯電話のカメラ機能 を利用して、そういう意味では本来の24時間思い出し法と違うかもしれませんが、電話の 24時間思い出し法もあるというならば、それで撮ってもらったものを見ながら思い出して もらうということになると漏れが少なくなるということと、あと、面接者の訓練という問題 はありますけれども、そういう方法はどうだろうかということで、今、吉池先生の研究班で 妥当性研究をさせていただいているんですが、まだ今年度は50〜60代の男性ということで 研究中ですけれども、終わった方を見ると、1日ですけれども、それほど負担には感じなか ったということでした。 ○山本委員 済みません、私は反対しているわけではなくて、3日でも4日でも5日でも長 い方が信頼度は高まると思うんですよ。だけれども、それは毎年やるという方向で1日なの か、3年で3日にするのか、5年で3日にするのか、そういう対策がなければ。それから、 毎年はかることに意味があるのかどうかとか、その辺りを考えていって、やるところの軽減 をしていって精度を上げていくということができれば、それはすばらしいと思っていますけ れども。 ○伊達委員 やはり毎年ということについても十分考えた方がいいかもしれませんね。それ だけの余力が非常に大変になってくるということで。ただ、増やせば増やすほどいいか、精 度が高まるかどうかは非常に負担が大きくなるというので、3日は学生でも大変だと言いま すから、一般の方々に利用していただいて、そして、分布も評価できるというならば、2日 ぐらいまでが実際的ではないかと思います。それを毎年できるか、隔年になるか、その辺り はわかりませんけれども。 ○山本委員 もし延ばすなら延ばしてもいいと思うので、やはり何年置きにするかという視 点をもう一回考えて、2日でも3日でもいいんだけれども、何年ごとにやるかというのは考 える必要があるだろうと思います。 ○由田委員 今ほど食事調査の方法についてお話がありました。食事調査の方法はどの方法 をとっても、必ずメリット、デメリットがあるというのが一般的な考え方かと思います。も し、食事調査の方法を今の国民健康・栄養調査の方法と違う方法にした場合に、過去のデー タとの比較が非常に難しくなる場合もあります。それから、写真法の場合では例えば、ナト リウムのようものの評価は非常に難しくなります。勿論、今の比例案分法にも欠点はありま すが、その辺りの食事調査方法について検討する場合、国の施策あるいは地方自治体の評価 等も含めて慎重に考えることが必要なのだろうと思います。 ○中村座長 佐々木先生、御意見ございますか。 ○佐々木委員 非常に難しい話ですよね。申し訳ないんですけれども、私は国民健康・栄養 調査がどのように行われているのかを全く知らない人間です。報告書で出てくるものを読ん でいるだけですので。そういう人間のどうしたらいいかという発言は、全く見当外れなこと を言うかもしれないということをあらかじめお許しいただいての発言とさせてください。  といいますのは、論文であれば何人を対象として何人が答え、そこからどのような欠損の データを除き、有効なものはどれで、どういうところが弱点であり、どういうところが長所 であるということが書かれた上で表が出てまいりますので、その数値等の評価も第三者、あ る程度の知識を持ち得る専門家であればできるのですが、残念ながら、報告書の体裁ですの で、そこまでどうしても書けないのであろうと読者の1人としては感じております。  したがって、それによってどのようにすればよいかも変わってきますので、といいますの は、先ほどから参加率の話が出ておりました。一体、真の参加率は幾つなんだろうとか、そ れから、参加率だけではなくて解析可能でない人はどれくらいいるのだろう、それが結果に どのような影響を及ぼすのだろうというような、過去のデータに戻った分析を十分に行うこ とが必要ではないかと思います。  それから、ほかの国、特に欧米の流れを見ておりますと、このような国の大きな調査をど のようにするかは、それを取り囲む小さな研究がたくさんありまして、それが論文として出 ている、はっきりと書いてある、そして、その情報を国等が使う使わないを判断し、どのよ うな調査法を使えばよいのか、どのような評価をすればよいのかということを決めていくと いうスタンスであろうと思います。そうでなければ、そのときのはっきりしたデータではな いもので大きな意思決定がなされるというのは、長い目で見ますとやはりリスクを伴うので はないかという感じがいたします。  日数の問題なんですが、これも日本で十分なデータがあるかと言われればそうではないの ですが、まず、海外の論文に基づきますと、日数が増えるとそれに伴って平均の摂取量、そ れから、ある特定の食品の摂取の申告が歪んでしまうという報告もあります。そして、日数 が増えることによって日間変動の調整が理論的にやりやすくなるというメリットとデメリ ットを持っております。そして、2日間というのは日間変動を出し得る理論的最小単位です。 したがって、ないよりはよいという数値です。かといって、もしも本当に分布だけを、しか も、ここまでの信頼度だったら許そうということをあらかじめ決めておけば、この対象者の データをそのまま使うのではなく、別の対象者のデータを使って、その形を借用するという、 これはかなり非科学的ではありますが、現実的な方法ではないかと思います。しかし、だか らといって外国のものを借りようとか、違う年齢のものを借りようではなくて、やはりまず 日本人において、そして、ある程度代表性、それほど高い代表性は必要ではないと思うので すが、日本人の性・年齢階級別ぐらいまではある程度地域や職業を勘案した上で、この日間 変動の問題がどのよう特徴を持っているのかということを調べて、かなり日本でも論文が出 ておりますので、それを十分に読みこなすことである程度の解決策は得られるのではないか と思います。  それと、人数を少なくして日数を増やすと、今の議論に出ていないデメリットといたしま しては、ほかの健康状態もこの調査に乗せて同時にやっているんですよね。例えば、歯であ るとか。そうすると、その解析をするときに全体に対象者を小分けして集計していかなけれ ばなりません。そのセルの分け方は変数によって変わります。そうすると、その分けたセル の単位が必要人数を満たしていることが必要になりますので、そうすると、かなり全体とし ての人数は大きくならざるを得ないというのが、この国規模の調査の宿命であり、責務であ ろうと思います。このようなことを考えますと、全体像をよく見た上で、この調査の中で複 数日を用いるのか、用いる場合も次は全体に用いるのか、一部集団に対して用いるのか。そ の次は、ここには用いないで1日のままにしておいて、ほかの集団を設定して日本人のこう いう食べ方ゆえに関するキャラクターを調べてそれを借用するのかというような決定を、十 分な今までのデータを見直した上で行う必要があろうと。そうすれば、私自身の意見は結局 そのデータを見ていないので出し得ないのですが、かなりレベルの高い決定はある程度の先 生方が集まれば可能ではないかと考えております。  もう一点よろしいでしょうか。思い出し法というのは、ほかの国が用いているかなり標準 的な方法ですが、非常に大切なことはインタビュアーのトレーニングが大変だということで すね。そのためのシステムをつくり、継続的にやっていくということをしないと、恐らく比 較的小規模なまま使われても、全国で十分な標準化して使おうと思うと、そこのところがネ ックになるかなという気がするんです。 ○伊達委員 本来の24時間思い出し法では、国レベルでするならば現状では困難だと思う んです。そこで、写真を取り入れて補えばどうかなという考え方です。 ○佐々木委員 その基礎研究はやっても大丈夫ですよね。 ○伊達委員 今手がけ中です。 ○佐々木委員 それが出て、それを見て決めるという感じかなと思います。 ○伊達委員 できるかなというのを今研究中です。 ○山本委員 過去は実測ではかっていたわけですよね。私が若いころには実測で家庭に入っ た。やはり実測は、食べたものそのものに関しては精度としては一番高いかもしれないけれ ども、逆にその日によって変わってくるんですよね。調査に来るからということで。そこで 当然24時間の問題が出てくるのと同じようにそういう問題も出てくる。  それから、写真法に関しては、これまでかなり企業などもやりましたよね。企業が顧客ベ ースみたいな形で携帯電話で送るという。ああいう結果はうまくいっていないんですか、最 近は余り聞かなくなったんですが。 ○伊達委員 私自身は1つぐらいの企業しか知らないんですけれども、妥当性ということに ついては念頭になかったようで、出てきたものをやればいいという感じでしたので、やはり 使えるようになるには、今一番正確な方法という秤量記録法をゴールドスタンダードに置い て、データを蓄積、24時間思い出し法の妥当性をしないとだめだなと思います。 ○山本委員 準備段階ですね。 ○伊達委員 準備段階です。けれども、そういうデータを蓄積していかないと身動きがとれ ないなという状況になっております。 ○中村座長 ほかにございますか。 ○由田委員 今の調査方法でも、例えば、携帯電話の画像を活用するということも可能です。 それから、日本人の食事パターンというのは海外に比べて非常に複雑であるという特徴があ ります。私は以前に、多分日本で一番大規模な24時間思い出し法による食事調査に携わり ましたけれども、標準化は非常に難しく、手間もお金がすごくかかります。実際にそれを誰 がやるのかというところも、考えていかないといけません。難しい問題が山積みです。決し て否定しているわけではないんですが、そういうところも含めた議論が必要ではないかと思 います。 ○伊達委員 実際の研究レベルとして妥当性研究とかそういうものが要るんですけれども、 そのときに出たものを最も厳密な方法でしたもの自体が国レベル調査にそのまま応用でき るかどうかという問題だと思うんですが、できないと思います。今、由田先生が実際に研究 レベルでされたものは非常に大変だったと思いますけれども、ああいうものを実際にやれと 言ったら、ちょっと無理だと思います。ですから、正確度がこの程度でこれだということを 示せるようなところで決めないと、究極の精度になると難しいかなと思います。 ○佐々木委員 そういう場合は、わざと手抜きをするんですよ。目的に合わせて手抜きをし てやると。それがどのくらいの信頼度を持つかを見ると。 ○伊達委員 そうです。ですから、もともとは標準化というのが一番重要だとは思いますけ れども。 ○中村座長 ほかにございますか。 ○山本委員 いずれにしても、食事調査は非常に難しいし、アメリカの調査などでもこの前 ヒスパニックの太った女の人が1,200kcalとか1,500kcalとか物すごいデータを出してきて いるんですよね。そこで多分チェックが入っていないのだと思います。私も報告書を3冊持 っていますけれども、想像できないような低さの数字もいっぱい出ていますよ。ですから、 物すごいアンダーエスティメートがあそこの中に入っているだろうと思います。ですから、 栄養調査自体は常にそういう多くの難しい問題点を持っているし、現在の栄養調査は結構い いのではないかと思うんですけれども。 ○中村座長 今のはかなりいいところであるんでしょうが、でも、1日というのはどう考え ても習慣摂取にはならないので、日にちを2日にするか3日にするかという議論が必要なの だろうと思います。  御意見はございますか。まだ定刻まであと20分あるんですが、大体意見が出たというこ とになりましたので、これで終了させていただきますが、よろしいでしょうか。 ○河野栄養・食育指導官 あと、もう一点だけ、国民健康・栄養調査結果におけるエネルギ ー・栄養素の摂取量の食事摂取基準を活用した評価方法について、もし御意見がございまし たらお願いします。 ○中村座長 余りにも1番で盛り上がってしまったので忘れておりましたが、次の課題の国 民健康・栄養調査結果におけるエネルギー・栄養素の摂取量の食事摂取基準を活用した評価 方法でございますが、現行の調査方法でも適用可能な評価方法があれば適用していくべきだ と思いますので、その点について御意見をお伺いしたいんですが、吉池先生、いかがでしょ うか。 ○吉池委員 基本的に1日調査ということの問題点はありますが、まず、分布を1日調査で あっても示すということ、それに対して例えばEER、EAR、RDA、AIを並べて比較 できるような形、これは現行の国民健康・栄養調査報告書にも収載されているパーセンタイ ルの表そのものです。そういうような表し方とそれをどう解釈するかというのは、もう一ひ ねりしなければいけないのですが、基本的な整理とデータの提示をするということは、これ からも行っていく必要があると思います。 ○中村座長 由田先生、この食事摂取基準への活用の評価はいかがでしょうか。 ○由田委員 今ほど吉池先生が言われたように、現行の報告でもパーセンタイル値が示され ています。ただ、1日の調査という限界がありますので、そこは十分注意して見ていただき たいということです。  それから、まだ本当に検討の段階ではありますけれども、個人の推定エネルギー必要量を 含め、集団を個別に少しばらして見ていったときの散らばり具合も考慮した分布の示し方の 試作的なものは、準備しています。ただ、これが本当に妥当かどうかという検証はまだでご ざいますので、すぐに外にはお出しできない状況です。その他、食事摂取基準を活用した分 布を加味しながらの図示の仕方等については、今後、幾つか今後考えて提案していければと 思っております。 ○中村座長 ほかに御意見ありますか。 ○佐々木委員 今日出ていないのが、全体が低めに出てしまうという問題なんですけれども、 推定エネルギー必要量と国民健康・栄養調査の平均摂取量の差を見ますと、中年と若年成人 のところでかなりの乖離があって、男性などはたしか推定エネルギー必要量に対して摂取量 平均値が500kcal/日ぐらい低いですね。女性がたしか300kcal/日ぐらいいっていますよね。 だから、日間変動の問題の前に、この平均的に低くなってしまうという問題も議論の対象と いうか問題として記述しておいて、そこをどうするかと。ということは、過少申告がどれく らい起こっているかということを、これもこの参加者の中のデータではなくて、ほかの研究 でこのようになっているというものからの類推でしかないと思うのですが、それでもそのよ うな論文があればないよりはよくて、それを用いて過少申告を計算上除くということは一応、 「一応」を3回くらい言わないといけないと思うんですけれども、できなくもないかもしれ ないというようなアプローチを、周りの研究を少しずつ進めていって、論文を丁寧に解読し ていくことによって、ある程度暫定的な評価方法の試案がつくれるのではないという気はし ます。 ○由田委員 そこで留意しないといけないのは、御本人さんの過少申告の問題と、サーベイ を実施する調査員側の精度管理と標準化の状況という問題の2つの要因が考えられますの で、そこはきちんと分けて考えることが大事なのだろうと思います。 ○山本委員 国民健康・栄養調査とDLWの結果は、そんなにアンダーエスティメートして いますか。そんなに私はしていないように思っていたんですけれども。 ○田畑委員 実際のデータを見てみますと、確かに20歳代の男性は400kcal、500kcalく らいずれていると思います。 ○山本委員 それは現実に食べていないからじゃないですか。実際の独身男性は余り食べな いから。朝食を抜いて。 ○田畑委員 いや、食べているはずです。20歳代の男性たちの同じようなデータが出てい ますから。ですから、そういう点では食事調査とDLWの研究というのは非常に大事になっ てくるとは思いますので、大体600〜700例、もうすぐ1,000例ぐらいになれば、少ないで すけれどもそういうことを示していけるのではないでしょうか。どうして20歳代が一番多 くて、段々30歳、40歳になってくると収れんするのかとか、エネルギーの摂取量がここ数 年少なくなっているように見えるというようなことについても、やはり議論していかなけれ ばならないのではないかと思います。 ○中村座長 ありがとうございました。  ほかに御意見ございますか。 ○石田委員 食事調査と計画をするときの両者にかかってくる問題ですけれども、調理によ る栄養素量の変動といったものがどのくらい加味されているのかということもきちんと明 記した上で評価しなければいけません。これは計画の段階でもそのところをどうしていくの かというのは大きな課題と思っております。 ○中村座長 ありがとうございます。  佐藤先生、御意見ありますか。 ○佐藤委員 実際に、給食の現場では、アセスメントに関しても評価にしてもなかなかデー タがとれないので、国民健康・栄養調査の結果というのは非常に期待しているところでござ います。一般対象者の方々に日本人の傾向はこうなんですと示せるのは非常に説得力があり ますので、データについては、日間変動ですとか、過小評価の問題も、確かに脂肪のエネル ギー比など本当にこんなに低いのだろうかというものもありますので、そういったところも 精度が上がってくることを期待しております。  あと、今、石田先生からありました調理による損失の問題につきましても、こういった栄 養価に対しては食品1つずつを足しているところで、調理の損失の扱いについては、いろい ろなデータを用いて現場では活用しているものの、その辺りがまだ標準化されていないとい いますか、一定の指標で現場ではできていないという課題もありますので、今、石田先生が おっしゃられたことに関しては、新たな数値みたいなもの、方法論みたいなものが定義され てくるとありがたいと思います。 ○中村座長 ありがとうございました。ほかに御意見ございますか。  本日は、とても貴重な御意見をたくさんありがとうございました。食事調査の基本的な考 え方あるいは食事摂取基準の活用の基本的な考え方まで深く議論できたのではないかと思 っております。  定刻より10分早いのですが、これで終了させていただきますが、本日の会議を踏まえて 御意見などがございましたら事務局まで御連絡ください。  それでは、事務局から今後のスケジュールを踏まえまして一言お願いいたします。 ○河野栄養・食育指導官 本日は貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。 特に国民健康・栄養調査につきましては、先生方、非常にそれぞれに思いがあって、お考え いただいていることを大変ありがたく心強く思いました。ただ、この場は国民健康・栄養調 査の在り方そのものを議論する場ではございませんので、今日いただいた意見も踏まえまし て、一方で、今動いている研究あるいは今後検証していかなければいけない部分も踏まえま して、食事摂取基準の適応という観点から最終的な報告書にどの程度記述するかは、整理さ せていただければと思います。  本日いただきました御意見を踏まえまして、骨子案を基に報告書の作成に取りかかってま いりますが、内容に応じて先生方には個別に御相談を申し上げることになるかと思いますの で、今後とも御協力をお願いいたします。  また、2月中には報告書案につきまして整理をさせていただきまして、次回3月上旬の検 討会において最終的な審議をいただき、取りまとめをさせていただきたいと考えております ので、よろしくお願いいたします。  本日はありがとうございました。 ○中村座長 それでは、本日の委員会はこれで閉会といたします。ありがとうございました。 照会先 厚生労働省健康局総務課 生活習慣病対策室(2343)