09/12/14 第3回医薬品の安全対策等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会議事録 第3回医薬品の安全対策等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会                  日時  平成21年12月14日(月)                      18:00〜20:10                  場所  厚生労働省共用第7会議室(5階) ○安全対策課長補佐 定刻になりましたので、第3回のデータベース懇談会を開催した いと思います。  本日の懇談会は公開で行うこととしております。カメラ撮りは議事に入るまでとさせ ていただきますので、マスコミ関係者の方々におかれましては、ご理解とご協力のほど よろしくお願いいたします。また、傍聴者は、傍聴に際しての留意事項、例えば「静粛 を旨とし喧噪にわたる行為はしないこと」「座長及び座長の命をうけた事務局職員の指 示に従うこと」などの厳守をお願いいたします。  本日の議題に関係する専門家等としまして、国立医薬品食品衛生研究所の医薬品安全 科学部の頭金先生、浜松医科大学医療情報部の木村教授、懇談会の構成員でもあります 統計数理研究所の藤田先生にご出席いただいております。それでは、これより議事に入 りますのでカメラ撮りはここまでとさせていただきます。 ○座長(永井) まず、事務局から本日の配付資料のご確認をお願いします。 ○安全対策課長補佐 本日の配付資料の確認をさせていただきます。まず、最初は座席 図があります。次に議事次第の1枚紙、次に配付資料一覧、これも1枚紙です。次に開催 要綱、構成員のメンバー表です。次からが資料本体です。資料1-1が頭金先生の「病院 情報システムを用いた医薬品による副作用検出の試み」、資料の1-2が木村先生の「病 院情報システムからの標準データ形式によるデータの取り出しと2次利用」、資料1-3が 藤田先生の「レセプト等を利用した薬剤疫学データベース作成に関する研究」、資料2 が「これまでの主要な議論」、資料3が「提言を考える場合の骨子の方向性について (案)」、資料4が「今後のスケジュール(案)」、最後に参考資料1として「医薬品安 全性監視の計画について」の通知が付いています。以上です。 ○座長 まず、本日は現状認識を共有するということで、医療関連情報を活用したこれ までの取り組みについて、実際に研究を進めてこられた研究者の方々からヒアリングを 行うということでございます。最初に、国立医薬品食品衛生研究所の頭金先生、続いて 浜松医科大学の木村先生、最後に統計数理研究所の藤田先生にプレゼンテーションをし ていただきます。お一人15分ずつということでお願いいたします。全員ご発表いただい た後に、まとめて質疑応答をしたいと思います。それでは、最初に頭金先生からお願い いたします。 ○頭金参考人 ただいまご紹介いただきました国立医薬品食品衛生研究所の頭金と申し ます。私たちの研究部では、医薬品による副作用、特に市販後に問題になるような副作 用に関する研究を行っております。市販後に問題になるということは、開発段階では検 出できない、つまり、それほど発生頻度が高くない副作用についての研究ということに なります。  最近このようなタイプの副作用の研究が進みまして、いくつかの副作用につきまして は、その発症と非常に関連の強い遺伝子多型マーカーというものが示されてきつつあり ます。そのような遺伝子多型のマーカーの頻度に民族差があるという話がだんだんわ かってきております。それでは、実際の副作用の発生頻度に民族差があるのかどうかと いうことが、問題になるのです。人口当たりの発生頻度は、機構への報告数などを基に して計算することは可能ですが、特定の薬剤を服用されておられる患者さん当たりの副 作用の発生率となりますと、いろいろ文献を調べましても、正確な数字というのを見つ けるのが難しいのが現状だろうと思っております。そういうことで、私たちは実際の医 療現場で使われております実態に基づいて、特定の薬を服用されている患者さんでの副 作用の発生率を知りたいということから、今日ご紹介するような調査研究を始めたとい うことでございます。  まず最初に、私の話は、病院情報システム概要ということから簡単にご説明させてい ただきたいと思います。この中にご専門の先生方もいらっしゃるので、釈迦に説法にな りますけれども、私たちなりの解釈ということをご紹介したいと思います。続いて、実 際に私たちがいま取り組んでおりますスタチン類による筋障害に関する調査研究の例を、 ご紹介したいと思っております。最後に、そのような副作用の頻度情報がわかることに よって、どういうような応用例があるのかということに関しまして、私どもなりの考え 方というものをご紹介させていただきたいと考えております。  こちらのスライドは、病院情報システムを巡るさまざまな動きです。上のほうは検討 会等に関する情報、下のほうは推進事業というものについてまとめております。また、 病院情報システムに関する通達とかガイドラインは、これら以外にもたくさん出ている わけですが、こういう動きは、いずれも病院情報システムの普及を促進するという方向 でいろいろな流れが起こっているということでございます。  次に、病院情報システムの概要につきまして、それが発展してきた歴史的な流れに 沿ってご説明をしたいと思います。病院内で発生するさまざまな医療情報の整理や保存、 あるいは伝達共有などの、医療情報に関する病院業務を支援し効率的に行うというのが、 病院情報システムだろうと考えております。歴史的には部門ごと、例えば医事課、薬剤 部あるいは臨床検査部でのそれぞれのデータの整理、保存というところから、そのシス テムが始まっていると理解しております。  次いで、これらの情報というのが、例えば薬剤部ですと処方せんの発行、あるいは検 査部ですと検査のオーダーということで、情報の流れ、伝達というものが必要になって まいりまして、情報のオーダーシステム、あるいは患者情報のような病院内で情報を共 有する必要が出てきてこういうシステムが出てきたということだと思います。  さらに、最近では電子診療録、つまり電子カルテ、あるいは看護記録などが、これら の情報をすべて包括し一体的な運用というものがなされていると考えております。  さらに最近では、地域内での情報を整理、保存、伝達、共有するためのシステムとい うものを目指した開発が行われていると聞いております。  これは、病院情報システムの中の1つのオーダリングシステムの普及状況について示 した図になります。ちょっと数字が細かくて見づらいと思います。お手元のハンドアウ トをご覧ください。データが古いですが、2002年と2005年の、こちらが病院の規模、そ れから実数、そして普及率という形で記載しております。2002年から2005年にかけまし て、いずれの病院でもオーダリングシステムの普及が進んでいます。例えば、2005年で の400床以上の病院におけるオーダリングシステムの普及率は72.9%にも達していると いうことが言えます。  次に、電子カルテの導入状況です。同じように、2002年と2005年の病院規模別の普及 数、それから普及率を示しております。この場合も2005年になりますと、2002年に比べ まして普及はしているわけですが、400床以上の病院での普及率が17.9%となっておりま す。 別の調査の2007年ですと400床以上の病院では、37.7%に達しています。電子カル テのシステムは、先ほどお示ししましたオーダリングシステムに比べれば、普及率は低 いことがわかります。  この図は、私たちの共同研究者の1人であります、NTT東日本関東病院の折井先生から お借りしてきた図になります。これは関東病院の一世代前のシステム図になります。現 在は、もう1つバージョンアップしています。公表しているのはこの年代ということで、 この図を使わせていただきます。こちらには検査系のほうの部門の病院情報システム、 こちらのほうには薬剤部の処方関係のシステム、ここら辺には医事課のシステム、こち らは入院での電子カルテの情報入力、それから入院の支援システム、こちらのほうには 外来でのカルテの端末ということになっています。これら部門ごとの情報システムを、 情報の流れとの観点から、ここでは中央でオーダリングシステム、あるいは患者情報シ ステム、クリティカルパスというもの、これらをつなぐ役割として存在しているという のが、病院情報システムの大まかな概要であると思っております。  実際、このような情報を使って、副作用の安全対策に関する情報のデータベースとし ては、主に2つのデータベースが使えるのではないかと考えております。1つはレセプト のデータベース、もう1つは、いまお話ししております病院情報システムのデータベース ということになります。  病院情報システムのデータベースの特徴といたしましては、ここに書いておりますが、 検査値の生データなどの客観的なデータを入手することができる。先ほど申しましたよ うに、オーダリングシステムに関しては、かなりの病院で導入されている。後ほどご紹 介したいと思いますが、地域での情報の共有化についても実用化するめどが整いつつあ るという点が、病院情報システムでのデータベースを使った副作用の検出というものの 特徴かと考えております。  次に、現在私どもが取り組んでおります研究課題についてご紹介したいと思います。 課題名としましては、ここに書いておりますように、「スタチン系薬剤に関する筋障害 の実態調査」ということです。まだ完結しているわけではありませんが現在進行中の研 究について、ご説明したいと思います。目的は、病院情報システムのデータを利用し、 スタチン系薬剤についての臨床の使用実態下における安全性に関わる情報の収集・評価 を行うということです。  調査実施医療施設ですが、日本病院薬剤師会の学術小委員会メンバーの病院で、今回 は4つの病院にご協力をお願いいたしました。調査対象期間は、ここに書いております1 年6カ月の期間です。対象薬剤ですが、6種類のスタチン系の高脂血症薬を調査対象にし ました。また、検査項目ですが、血清クリアチンキナーゼ(CK)、血清クレアチニン(Cr)、 血中尿素窒素(BUN)の3つの検査値を収集いたしました。調査方法ですが、各施設の病院 情報システムから、調査対象期間におけるスタチン類の全処方データ及びここに上げま した3つの全検査結果のデータをそれぞれ抽出した後、匿名化した患者ID番号を用いて、 両データを結合し、スタチン系薬剤が処方された患者ごとの処方歴・検査歴を作成いた しました。  もう少し具体的に申し上げますと、処方オーダリングシステムにあります処方データ、 それから検査オーダリングシステムにあります検査値のデータというものを、それぞれ エクスポートさせます。それで匿名化した患者IDを指標にいたしまして、両方のデータ を結合して、処方内容と検査値を時系列で列挙いたします。その患者ごとの時系列の データから、検査値の異常を示す患者を抽出してくるということです。  具体的な作業ですが、処方データのほうから、この患者番号の方の処方日、処方量、 処方日数というデータ、これはごく一部なのですが、先ほど申しましたスタチン類に関 しまして、すべてのデータをエクスポートしてまいります。一方、検査値のデータの オーダリングシステムのほうからCK、クレアチニン、BUNに関してのデータ、この一定 期間内のデータをすべてエクスポートしてまいります。この匿名化患者番号を指標にし まして、こちらの下のカラムの患者さん1人当たりの処方の経時的な変化、それから検 査の経時的な変化というテーブルを、患者さんごとに作るということであります。この 中で、検査値の異常を示した患者さんを抽出してくるということです。  今回の調査は4病院のデータを収集できたわけですが、先ほど申し上げた方法で名寄 せを行いまして、調査対象総数が1万48名の患者さんのデータを収集することができま した。また、その患者さんに使われている6種類のスタチンの使用者数、使用頻度とい うものは、こちらに示しております。今回の調査ではアトルバスタチン、プラバスタ チンという薬剤の使用頻度が高かったことがわかります。  それから筋障害の疑いのある症例の抽出方法ですが、先ほど申し上げました1万48例 の症例の中からCKが高値を示した患者、今回は700IU/L以上のCKを示した患者さんを抽 出してまいりました。それが413症例になります。さらに、この中からCK上昇後、スタ チンの処方を止めている患者さん、つまり、これは処方しております医師が、スタチン による筋障害というのを疑ったということを示しているのではないかと考えました。そ のような処方をしている患者さんを抽出してまいりますと、56症例ということに絞られ ました。この56症例を、私たちはスタチンによる筋障害の疑いのある症例と考えており ます。  右のほうのテーブルには、この56症例の中の内訳を示しておりまして、各薬剤ごとの 使用人数とその疑い症例の数というものが計算できまして、こちらにはその割合を示し ております。この56症例はまだ疑いの症例でして、この中から、さらにいま私たち自身 が1例ずつ詳細にその中身を検討いたしまして、筋障害が起こっているかどうかという 判断をしております。将来的には、処方のパターンとかあるいはCKの変動のパターンと いうものを参考にしながら、筋障害のさらに疑いの強い症例を絞り込むような方法を開 発したいと考えております。  次の研究では、薬物性肝障害に関する研究例です。これは、本年度から始めた事業で して、まだ、具体的なデータはございませんが、私たちの現在の研究計画についてご紹 介したいと思っております。薬物性肝障害は、先ほど申しました筋障害と同じように、 市販後に問題になる副作用の1つです。違っている点は、先ほど申し上げました筋障害は、 ある程度スタチンとかフィブラート系という被疑薬が薬効群で絞られているわけですが、 薬物性肝障害に関しましては、原因薬というのは非常に多岐にわたるということです。 しかし、すべての薬剤に関して、私たちの手法でデータを集めるのは、データのボリュー ムからいって難しいことであります。  そこで、薬物性肝障害に関しても、私たちは、比較的薬物性肝障害を起こしやすいよ うな薬物にターゲットを絞って、データを収集することにいたしました。薬物性肝障害 の症例の抽出のストラテジーにつきましては、先ほどの筋障害とほぼ同じストラテジー を採っております。肝機能の検査値、それから処方の状態を参考にしながら、ある特定 の薬物によって生じる肝障害の疑い症例を、抽出してくるということです。肝障害の場 合は、ウイルス性の肝炎あるいは自己免疫性の肝炎などをふるい落とすという面での フィルターをかけるということです。こういうストラテジーを採ることによって、薬物 性肝障害の疑いの症例が抽出できるのではないかと考えております。  以上申し上げたような調査研究を実施しているプロセスで、私どもが気がついた点に ついて、次にまとめております。まず、最初の点ですが、病院情報システムの規格・設 計が医療施設ごとに異なっているために、多施設からの情報を集積するためには工夫が 必要であるということです。2つ目は、医療機関ごとのデータを収集するという方法を 取っておりますと、対象の患者さんが転院したりした場合に、情報がそこで途切れてし まうということがあって、これは非常に大きな問題だと考えております。  それから後発医薬品などですが、今回は私たちが調査をいたしました病院では、処方 オーダリングシステムというのは、基本的にブランド名で入力されております。1つの 医薬品で3つのブランドがありますと、労力が3倍になってしまうことがありました。  もう1つは、電子診療録に記録されております症状・診断名等の文字情報なのですが、 これについても検索したい。つまり、今回ですと、筋痛とか横紋筋融解症とかそういう 言葉も検索したいと考えたのですが、今回調査対象にした病院の中では、そういう検索 ができないシステムもあり、今回の調査からは、そのような文字情報を使った検索は断 念いたしました。しかし、このような点に関しましては、一定の地域内での情報の共有 を目的としたシステムとかあるいは診療録のコーディングあるいはシステム標準化に よって、将来的には、技術的に解決されるのではないかと考えております。  いままで申し上げましたように、特定の薬剤を服用している患者さんの副作用の発生 頻度ということが、比較的簡単にわかればどういうメリットがあるかということについ て、私どもなりの考えをまとめてみました。私どもの手法ですと、基本的にほとんどの 作業が電子情報をコンピューター上で扱うことができ、比較的簡便に、かつ短期間に把 握できるのではないかと考えております。そういうことによって、副作用の発現をリア ルタイムにモニタリングしたり、あるいは安全衛生上の懸念が生じた際の敏速な情報収 集、あるいは、安全対策を行った場合の措置の効果を評価することに、使えるのではな いかと考えております。また、本日は申し上げませんでしたが、スタチン系の調査の際 には性別とか年齢とかの情報も併せて収集しております。また、腎機能のデータも収集 しております。このような患者背景要因が筋障害に与える影響というような調査もでき るのではないかと考えております。また、本日は副作用についてのみ申し上げましたが、 有効性即ちスタチン類の服用患者における心疾患発生率の比較等に応用できるのではな いかと考えております。  最後に、まとめを申し上げたいと思います。病院情報システム、特にオーダリングシ ステムについては、現状でも多くの医療機関で導入されております。また、処方データ や検査データのデータベースを利用いたしまして、スタチン類による筋障害の発症の実 態を調査することが可能であると思っております。また、薬物性肝障害についても適応 できるのではないかと考えております。また、地域内での情報の共有、病診連携された データの利用による個々の症例の継続性の考慮というのは、今後可能になってくると考 えております。市販後の発生頻度に関する情報を比較的容易に把握できれば、市販後の 安全対策にも応用することが可能ではないかと考えております。以上です。 ○座長 続きまして、木村先生から「病院情報システムからの標準データ形式による データの取り出しと2次利用」ということでお話を伺います。よろしくお願いいたしま す。 ○木村参考人 浜松医大の木村と申します。自分のコンピューターでデモをさせていた だきます。私は病院情報システムからデータを標準的に取り出すこと、そしてそれを2 次利用することに関して、最後のほうは僭越な意見も書いてしまいましたが、やらせて いただきます。どのような内容かと言いますと、まず浜松医大で動いている臨床情報の 検索システムをデモしたいと思います。最初は静岡県でやらせていただいた「静岡県版 電子カルテプロジェクト」が、その後、厚生労働省の診療情報標準的交換推進事業 (SS-MIX)となったものの報告。次に、診療情報の扱いに関して、まず静岡で患者相手 ではなく、市民相手にアンケートをやったのですが、今年はアメリカで同じ質問のアン ケートを行いましたので、これらの対比。もう1つは、今年私どものほうで「アジア太 平洋医療情報学会」をやりまして、12カ国の代表から2次利用についてどのような状況か と言いますか、要するに、法規制あるいはIDといった部分が関係あるのですが、その内 容を軽くご報告いたします。  一方、最初にデモする検索システム等が、検索力が向上することによって患者が特定 されてしまうというリスクの例、これは学生にいろいろやらせたのですが、それをご紹 介させていただきます。この部分は先ほどご紹介いただきましたので、病情システムの 中では画像や検体検査結果、処方内容、患者基本といったものはかなり標準化が進みま した。手法はオーダーですが、もともと機械が出す種類のものですし、機械が持ってい るものですので出しやすい。病名も持っていますが、たくさんあって、どれが主病名か わからないということはご理解いただけると思います。先ほど申し上げたように、ここ までは厚生労働省の標準的診療情報交換推進事業に準拠ということで、400床以上の大 病院の半分で対応可となっております。と言いますのは、富士通と日電などの大ベンダー が3年前から出荷しているオーダー、電子カルテはこの機能を持っているからです。後、 報告書の文章、ましてや所見等はしんどいというのは今ご紹介があったとおりです。  さて、ここに私どもの大学の10年分の患者基本、処方、注射、検体検査結果、病名を 持ってきております。もちろん、名前などは、落としても大丈夫のように、ハード暗号 化されております。これを使ったものをデモさせていただきます。スタチン系の新規処 方というイベントがあり、そのイベントから1カ月後にCKが300以上、もう1件はイベン トから3カ月前に遡ってCKが204以下というものです。つまり、処方というイベント前は 低く、最初に処方したということで、その後上がったというのを検索するというのを今 お見せします。私どもの所でやりますともう少し速いのですが、先に練習してしまうと キャッシュができてしまい、10秒ぐらいで返ってきて嘘くさいので、今回はリハせずに やってみます。  初めての処方でという部分と、前はいくら、その後2週間でいくら、前3週間以内でい くらというのがごく最近追加した機能です。これに病院情報システムからデータを出し ている形式はHL7で、これは先ほど申し上げた厚生労働省のSS-MIXの事業で求められて いるデータ形式ですので、要は、大病院の半分で既にその機能を持っている、なぜなら 3年前から富士通や日電、ソフトウェアサービスのものだとその機能を持っているから、 ということになります。                  (デモ開始)  ただいま出たようです。40何件で、89秒かかりました。そのようにリストして、4人 目のこの患者さんのデータを見てみると、この方は2008年11月27日に最初のスタチンの 処方があって、該当する検査結果を出してみると、こんな感じです。ここにカーソルを 持っていくと、11月27日の処方からこのようにあって、「いかん、いかん」とこの辺で ドクターが気付き、たぶんやめたのではないかと思われます。GOTもASTも見ていますが、 ほとんど同じように動いております。このシステムをいろいろと使っていくうちに、初 処方で何が起こったというのが大事だということと、前と後でどうかというのが大事だ と言われたので、そのような機能を付けました。  これを使って、例えば前と後ということでは、2007年にHbA1cが6.6から8.0の糖尿病 の患者さんが、2、3カ月後にもう1回検査してどうだったか、55ケースが5.8以下になっ たと。6.5から5.9の間ですから、少しよくなったのが289ケース、そのままが657ケース、 8.1以上と悪くなったのが192ケースという、いわゆる指標をすぐに出すことができます。  一方、Gemzarの注射をした患者さんは181ケースあって、その後2カ月以内にICD10の J84.xという、いわゆる間質性肺炎の診断名が付いたのが7ケース。一応私は放射線科医 ですのでCTを見てみましたら、なるほどそのような絵になっておりました。これは割と きれいに出るのです。なぜかと言うと、間質性肺炎という病名を付けないと保険が通ら ない検査というのは、薬はあるかもしれませんが、それほどないからです。例えば脳梗 塞を起こして、3年以内にもう1回脳梗塞を起こしたといった場合、脳梗塞という診断名 は当然のことながらCTやMRを撮るための理由に使われる病名ですので、これだけではろ くに出ないわけで、このようなシステムの得意な点、苦手な点というのをご理解いただ けたと思います。  また、各種ケースカードを作るというとき、先ほど申し上げたように検体検査結果、 処方内容、注射内容は既に貯めてありますが、現状のいろいろな研究のケースカード、 あるいは市販後の調査を行うときに、処方歴や併用薬などを記入するのがたまらないと いう話があります。これは先ほど申し上げたHL7の形式で貯めてある検体検査結果、処 方内容、注射内容などのデータを引き上げて、検査結果が自動で記入されたという画面 です。ただ、当然のことながら、有害事象は書いていただかなくてはいけません。この ようなものを使ってさまざまな臨床研究のケースカードとか、あるいは今私どもではこ こからファイルメーカーに落とすということをやっておりますので、各科の先生方、皆 様の研究のデータベースを是非お作りください、としています。専門医の認定の患者集 めの集計も速いので、浜松医大ではそのサービスを行っております。また、この形式で 書類を作って提出するということについてですが、病院情報システム全体を21 CFR Part11に適合させるのは非常にレベルが高く、医療情報の運営をしている立場としては、 毎回パスワードを替えろと義務づける自信がないので、レポートを作るのは青い巻いた 部分で、これは厳しいPart11に対応し、他は普通の業務ということにするといいのでは ないかと考えております。  ただ今デモでお見せしたように、このデータベースはこのように持ち運べるので、例 えば私どもでは内科の先生とゲノムの研究をしたのですが、CKとASTと何と何と何を 引っ張ってきて研究用データベースに突っ込むというのではなくて、病院情報システム の臨床研究データベースのクローンを作ってネットから外し、一方でゲノムのフェロタ イプなどや他の臨床症状等、例えばピロリ除菌の有無などを入れて研究データベースに 使うということをやりました。これは私どもの内科の准教授が書いた論文で、逆流性食 道炎のPPI、タケプロンの維持量はCYP2C19のゲノムタイプが関与するというもので、 125人の該当の患者のCYP2C19を調べられていたので、そのgenotype statusやheartburn conditionなどの臨床症状をこれに突っ込んでどうかなとやった結果、どうもPPIの用法 に大きな違いが出るとのことがわかったのでした。  論文の内容はそれほど大した発見ではないという話だったのですが、その先生はこの スタディをデザインするのに1時間でできたということでした。つまりアルブミンをや ってみようか、何をやってみようか、出ない、出ない、この薬はどうだろうとやってい るうちに、「PPIが全然違う」ということを発見したと。要するに、研究基盤としてど うでしょうかということです。これは入れた画面です。この患者さんのゲノムのプア・ メタボライザー・フェノタイプでタケプロンの投与で該当30患者の中のある方の背景が ここに出ておりますが、こういったことができます。  次はSS-MIX(Standardized Structured Medical Information eXchange)の話題で、 いわゆる厚生労働省診療情報標準的交換推進事業によって、先ほど申し上げた患者基本、 処方、注射、検査結果等を貯めておくソフト、そのようなCDを患者さんに渡したり、紹 介状に添えたり、あるいはケースカードで出したりするのですが、そのようなものを作 るソフトです。外からきた画像CDや検査結果のCD等を院内で見えるようにするソフトは、 この事業によって作り、無償で提供しております。もちろん、ハードとかインストール は必要ですから全部無料ということではありません。  先ほどから申し上げているように、要は病院情報システムが貯めておく部分にデータ を出してくれないといけないのですが、その貯まっているデータから、今お見せした臨 床データベースシステムやケースカードを作るシステムが使えるわけです。出す部分に 関しては、富士通はFXとGX、NECはHRとADv.4以降、ソフトウェアサービスとSBSは2006年 以降既に出荷されているので、2006年以降に入れた大・中病院は、病院情報システムの 入替サイクルを大体5、6年と考えると、半分ぐらいの病院は出す機能はあるということ です。出す機能をきちんと出るようにして、この部分のソフトはタダですからハードで 設定し、各種文書を作るプログラムや先ほどの豪快なデータベースを使うことができる ということです。  日本のオーダーの普及率は非常に高いです。アメリカなどはせいぜい15%ぐらいです が、日本は大病院であれば8割はいっているので、日本にはデータベースがない、ないと 言われるこの分野の劣勢をはね返す、いいアドバンテージだと思っています。現実に静 岡周りでは、ストレージでデータを貯めている病院は既に20あります。保険会社の診断 書システムも静岡県の電子カルテプロジェクト時代からあって、それが利用できるとい うことで入れている所が多いのです。それから、先ほどの検索データベースを持ってい るのは5病院ですが、この5病院で臨床データパネルを組んで、いまPMDAから病院情報シ ステムからの安全衛生情報の抽出(非介入)の対象として、お話を内々にいただいてお ります。  話題の3つ目として、市民の医療情報の扱いに関する意識調査を私が去年行いまして、 静岡県在住の方を電話帳からランダムに選び、510件の有効回答をいただいたというもの です。いろいろな質問をたくさんしたのですが、例えばQ5.は「あなたの情報があなたと は特定できない形で、このようなところで見えるのはどう思いますか」というもので、 こちら側(左側)は問題ではない、こちら右2つはどちらかと言うと嫌だ、絶対嫌だが 6.4です。その病院の診療科の同じ科の他の先生は、ほとんど問題はないということで、 嫌だという人は少ないのです。その病院の他の科、その診療所の分院、つまりその病院 が県立病院であれば、県内の他の県立病院、その病院が全国規模であれば他の組織、例 えば労災とか日赤などになると、ちょっと嫌だと言う人がだんだん増えてきます。  さらに、大学病院になると、他の大学病院は嫌だというのが増えてくる。紹介先が大 学病院ということならば構わないと。地域中核病院でその地域の他の病院と言うと、や はりちょっとと言う人が増えてきます。関係のない診療所が見ることができるというの はいかがなものかと。自分が特定できないとはいえ、ネットワークで他人が見るという のは基本的に嫌だという答が返ってきました。また、「特定できない形であなたのカル テ情報が利用されるのはどうか」という質問に対して、左が問題ではない、右は問題で あるですが、薬害防止を目的として関係機関、製薬会社、厚生労働省などが見ることは、 6割ぐらいが問題ではない、19%ぐらいはちょっと嫌だとしています。薬害防止目的、新 薬開発目的、医療事故防止目的、新しい治療法開発目的、SARSなどの新型感染症防止目 的、病院評価のためと、大体6割ぐらいはいいですよと、2割ぐらいがよく分からない、 15から20%ぐらいがちょっとどうかなということでした。これは特定できない形ですよ。 特定できるバージョンという調査結果もあって、来月の『新医療』にまとめて記事にな ります。  また、同じ質問を機関を変えて厚生労働省ならどうかとしたら、ノープロブレム(問 題ない)は65%、11.5%は嫌だとしていて、大学のほうが嫌というのがほんの少し少ない です。これは大学の研究の目的、大学の企業との共同研究ということになると、ちょっ と増えます。保険会社は22%で、保険会社のほうが製薬会社よりも嫌われ度が少ないよ うです。厚生労働省はより嫌われていなくてよかったですね。要は、公の研究目的と言 うと6、7割ぐらいは問題はないとしていて、10から15%ぐらいが不安という感じになって います。また、「特定の企業がカルテ情報により利益を得られることは問題である」 「特定の病院・診療所がカルテ情報により利益を得られることは問題であるか」という ことについては、とてもそう思うが63%、56%で、これは特定できない形ですが、構わな いとしているのは12から14%です。要は、これ(データを営利目的で販売すること)を 病院のビジネスモデルや企業のビジネスモデルにするのは抵抗があるように思います。  同じ内容をアメリカ人相手にやったのですが、200の回答が返ってきました。あなたの カルテをあなたのものと分かる形で、同じ病院の他の科の先生にと言うと、日本はいい のですがアメリカはいきなり嫌だとしています。やはりアメリカは、「あの先生」なの です。地域連携でよく言われる、地域の中核病院の医者が見るというのは、日本の場合 は嫌としているのが33%ほどですが、アメリカは45%です。アメリカ人は何を聞いても大 体2割ぐらいは嫌で、日本人の場合は何を聞いても2割ぐらいは分からないとしていて、 真ん中を答えるという気もします。  次に、「インターネットであなただけがあなたのmedical recordを見るのはどうか」 と尋ねると、日本の場合は問題なしというのが左側、問題あり、嫌だというのは13%、 アメリカは問題ありが38%あって、ちょっとこれは意外でした。インターネットそのも のに対する信頼ということでしょう。あなたのものと分からない形であなたの病名が厚 生労働省、アメリカはDHHSですが、知るということについては、日本で嫌だという人は 11.5%、アメリカは39%ですから、厚生労働省はアメリカより信頼されていますね。  「あなたの病名が非営利の研究に使われるのはどうか」というのに対しては、アメリ カは31%ぐらい、日本の場合はあまり変わらず、産学共同でアメリカもあまり変わらな いです。11%ぐらいです。アメリカでは医療保険会社は人気がないですが、日本の場合 は保険会社という概念で、しかし、あれは会社と言うよりorganizationと言うべきだと 思います。製薬会社については嫌だとしているのは19%ほど、アメリカの場合は48%です。  「あなたの生涯医療記録を1つにまとめたいですか」、つまり“lifelong medical records”にしたいかという質問に対しては、日本はいいのではないかというのが結構 多く、75%ぐらいあって、嫌だというのは11%です。アメリカはいいというのと嫌だとい うのがちょうど半分ずつで、思っていたアメリカのイメージとかなり違いました。以上 が市民のものです。  4つ目の話題は、アジアの各国にした質問です。まず、national IDがあるか、 national health IDはあるかという質問をしたところ、中国と香港、シンガポール、台 湾はnational IDがあって、かつ医療に使われている、日本はnational IDがあると言い たいところですが、あの住民基本番号は使われていないので、あえて私はノーとしまし た。韓国はイエスですが、ヘルスケアには使えず、この点はアメリカと一緒です。つま り、social security numberを使えないという規制があるからです。  患者の名前があなたのものと分からない形で、同意なしでSecondary UseをPublic Health目的で、Health Policyで、non-profit研究目的で、for-profit研究目的で行うの はどうかと聞くと、アジア地区は感染症の恐れが多いので、これは「あり」が多く、そ の法整備もできていることが多いです。つまり、感染症などは特別にそれ用のルールが あるのです。その場合は患者の名前があっても提供するという国も多いです。研究に関 しては、IRB等でapproveされれば、non-profitよりもfor-profitのほうがXが増えてくる のですが、シンガポールなどはIRB次第ということで、シンガポールが新薬の研究をどう ぞとプロモートしているのもよく分かります。Secondary Useに関してregulationがあり ますかという質問については、オーストラリア、日本、韓国、ニュージーランドは「あ り」で、basicなprivacy law以外の、特にヘルスケアに関してというのは、日本の場合 も個人情報保護法がこれに対応するのですが、ないケースが多いようで、これでは治験 は外へ行くなという気がします。  5つ目の話題ですが、先ほどの高速臨床情報検索システムで、私どもの医学科の4年生 に実習で検索させました。私どもの病院を中心として2007年11月にはHbA1cは7.2、2〜3 カ月後には6.0になり、糖尿病の既往があるという情報です。これを論文にでも書こうと するならば、外科系学会のガイドラインには何月までにはしようということで、合致し ているのです。もちろん患者の名前も年齢も出しておりません。これで検索すると、私 どもの病院でこんなにたくさんあってもたった1人になってしまうのです。つまり、いく ら名前などを全部伏せても、1人にスポットできたら、あとは何月に来て、糖尿病外来に 来ている人の名前を、スパイを置いてリストさせれば特定できてしまうのです。そこで 11月というのをやめて、7.0を可とか良とかいかにも学生らしいですが、「6.5から7.9」 にしようと。よくなったというのを「5.8から6.4」にする、これは糖尿病学会の4段階の 評価レベルです。そうすると該当件数は1から42に増えました。やはり、糖尿病のような common diseaseですら、こんなにスポットされやすいということを注意しなければいけ ないということです。  やはり、利用目的の吟味です。例えば製薬会社で言うならば、安全性の情報を速く検 知する、これはたぶん国民も喜んでくれるでしょうし、それが今回のもともとのスター トです。新薬の開発といった辺りまでは、是非利用してもらいたいのです。一方、営業 的なデータの収集というのはちょっと勘弁願いたい。これをどう区別して、どこまで認 めるかですし、学者の臨床研究も同じことが言えると思います。大学の研究と言うと、 独法化後はどうも企業と仲が良くて、「目的ロンダリング」に利用されるケースもある のですが、目的の吟味は本当に目的の吟味であって、所属の吟味ではないのではないと 思います。  先ほど示したように、単一のガイドラインで、「このガイドラインで守られていれば、 あとは誰が何に使ってもいい」などというものは、たぶん作れないと思います。と言い ますのは、先ほどのケースでもたった1人にスポットできるということに、私も驚きまし た。検索力が本当に上がっていくので、すぐ越えられてしまうので、ガイドラインを作 るのは非常に難しいです。つまり、このように匿名化すれば、誰が何の目的に使っても いいというのを産業界、特に医療産業以外の産業界もビジネスチャンスとして求めてい ますが、かなり抵抗があります。ですから、目的及び利用者の範囲、そして結果の開示 方法によって個別に定められる必要があるだろうと。  我々医療情報を扱う者は、病院が情報をいい加減に扱っている、変に漏らしている、 それで金儲けをしているなどということで、患者さんや国民に不信感を生じさせること を、とにかく私どもは恐れているのです。一部の非常に不埒な利用というのが、信用を すべて駄目にする。先ほどのアンケートで、日本人はどちらとも言えないというのが大 体2割ぐらいあって、それが一気に傾いてしまうというのが日本の国民性なので、それ は恐れております。  10何パーセントはいつも嫌だと言うから、やはりOpt Outが簡単にできるようにしな くてはいけませんが、同意を取ったり、Opt Outの操作や説明というのは医者に結構負 担がかかることをご理解いただきたいと思います。やはり、データは施設内にあっても らいたいと思っている層は多く、名寄せを望まないというのが10何パーセントぐらいあ ることを考えると、まずはナショナルDBで名寄せをすることは次のステップと考えて、 医師にこれ以上負担がかからないようなデータ種にする。例えば所見を入れるなどとい ったことを求めずに、処方や臨床検査結果で、できないこともありますが、一応非介入 でこれだけのことができるのですから、まずはクリーンルーム方式でデータを出さずに 検索結果のみを持ち帰るというのをやって、メリットをしっかり確認して、次のステッ プとして、名寄せでより継続性のあるrecordから、より検出力の高いデータというのを なさるのはいかがでしょうか。ステップとして、どちらにも負担がかからずというのか らなさってはどうか、ということを最後に申し上げまして、私の話を終わらせていただ きます。 ○座長 ありがとうございました。最後に、藤田利治構成員からお願いいたします。 ○藤田委員 スライドは20枚ですが、1枚に1分かからないように、15分にならないよう にしたいと思います。ご報告するのは、今年度から始まった厚生労働科学研究での 「レセプト等を利用した薬剤疫学データベース作成に関する研究」です。私が研究代表 者をしておりまして、前回有識者で報告した保健医療科学院の岡本先生、先ほどちょっ と名前が出たNTT東日本関東病院の折井先生、東京大学の久保田先生が研究分担者で、 あとの方々は研究協力者となっております。内容的な検討、方法論の検討、諸外国の活 用状況の収集と大きく3つあります。  これは研究申請書に書いた目標で、医薬品の市販後のデータ作成へのレセプトの活用 可能性を、実際のデータを用いて具体的に検討し、データベース作成での留意点等を提 示するということです。先ほど述べた3つの検討内容ということで、内容的な検討、方 法論的な検討、諸外国での活用状況の情報収集ということについてざっと報告いたしま すが、内容的な検討についてやり始めましたので、これを主に報告したいと思います。  まず、内容的な検討の中の1つである「使用実態の把握」ですが、重複投薬と併用禁 止薬の併用の実態ということをお話したいと思います。用いたのは、研究協力者になっ ていただいた木村さんが社長をしている日本医療データセンター(JMDC)からデータの 提供を受け、それを分析しております。40歳以上の方で、2006年から2008年の3年間の すべてのデータをいただいております。各レコードの件数ですが、人数としては12万 4,000人余りで、医薬品のレコードは医科と調剤を合わせると700万件を超えるという データです。  重複投薬ですが、薬剤コードで、どこのレベルでやろうかと思いました。薬効細分類 でやろうかと思ったのですが、取りあえずは7桁(一般名)、9桁(商品名)でやってみ ました。調剤のほうは処方年月日がありますので正確につかめますから、調剤だけで やりました。処方期間の型ですが、1日重なっているだけでは重複投薬ではなかろうと いうことで、7日間以上重なっていて、かつ異なる医療施設から出ている場合を重複 投薬としております。そうすると、調剤分は全部で9万人余りの方になりますが、一般 名レベルで561種類の重なりがあったということで、結構、同じ一般名の薬が各患者さ んに出ている実態はありました。その人数の多い順番に並べていますが、レバミピト 錠、エチゾラム錠等々というものがあって、消化性潰瘍用剤や抗精神薬が結構多い かなという気がします。これは患者さんが意図して複数の医療機関を受診して、それ で薬を入手しているものもありますし、患者さんはわからずに複数の医療機関で同一 の薬剤を、あるいは違うブランドかもしれませんが、投与を受けている。その両方が含 まれています。ということで、レセプトはすべての処方について把握できるわけですが、 重複投薬というのは結構あるかなと思います。このデータは、実は2カ月程度前に入 手して分析した段階ですので、これが本当に問題になっているのかどうかは、後々検 討していきたいと思います。  これは商品名レベルで見たものです。同じように消化性潰瘍用剤や抗精神薬という のが結構ある感じがします。このような状況で、商品名レベルですと963種類出ている ということです。本当に多いという実感です。  次は併用禁止薬の併用の実態ということで、一応、内服薬、経口薬に絞っています。 併用禁止のリストをどうしようかということですが、Data Index社からリストを購入し て、それで調べています。商品名レベルで延べ17万組以上の禁忌リストがあって、実際 の組合せとしては13万8,598組あります。これと先ほどの調剤薬局の345万ぐらいの レセプトと突き合わせて、併用禁止薬の併用実態を調べました。調剤だけでやった場 合の一般名のものです。48種類の併用禁止の内服が確認され、延べ人数で言うと 125人です。9万3,000余りに対して125人ですから、先ほどの重複投与薬に比べて 少ないと言えば少ない。実際に併用禁止で、これは添付文書に出ているものと出てい ないものがあるのですが、ここに挙がっているのは全部出ているものかと思います。  Data Index社の併用禁止のリストは、例えばCYP3A4の阻害剤というのがあると、 阻害剤については名前が書かれていなくても併用禁止になり、MAO阻害剤について もそうです。必ずしも全部が添付文書に明示されているわけではありません。しかし、 ここに出ているのはすべて添付文書に明示されているものです。ということで、そんな に多くないながら、併用禁止薬が併用されている実態はあると思います。本当にどの 組合せが問題なのかは、絞り込んで検討する必要があると考えています。  「医科」と「調剤」を併せてやったのですが、「医科」のほうは処方年月までで日が ありませんので、同一月に処方されていた場合に禁止薬の併用がありとみなしたリスト が、これです。  次は使用実態の把握ということで、高脂血症用薬と横紋筋融解症について探索的に検 討してみました。これはレセプトの延べ件数ですけれども、これくらい出ていました。 スタチン系が17万余りで、非常に多くて77%を占めている。こういう状況でスタチン系 とそれ以外で、横紋筋融解症に関わるような診断名が出ているのかどうかを調べました。  研究対象集団としては、高脂血症用薬を新規使用ないしは使用を再開した40歳以上の 者としています。つまり2006年以前からずっと投与を続けている人は、とりあえず除外 しています。少なくとも6カ月以上は処方がなくて、それから処方が始まった人として います。処方が開始された時点から追跡をすることにしています。曝露状況としては、 現在使用というのは処方が開始されてから終了するまでの期間、近い過去使用というの は処方が終了してから90日以内の方、遠い過去使用というのは91日後以降という形で設 定しています。つまり同じ人が異なる状態をとっていくということです。初めは現在使 用だったのですが、近い過去使用になって、遠い過去使用になるという形です。  発生率ですが、割合ではわかりにくいので、普通使われる人時間当たりのいわゆる 狭義の発生率を求めています。これは単に横紋筋融解症という病名が出てきたという ことですから当てにならないのですが、スタチン系で75、その他の製剤では15出てき ていて、観察人年で割ると13.7/1000人年、8.0/1000人年となります。  しかし、これはCKの検査のために付けたりということも十分あります。それでJMDCの ほうではフラッグを付けていて、疑いフラッグというのがあるのですが、そのフラッグ がない人だけを選ぶと、2年半ですけれども8例、2例というように、かなり減少してし まいます。これで本当にいいのかどうか。さらに本当にスタチンをそこで中止したかど うかの情報を加えていませんので、その辺もやってみたほうがいいかなと思います。  この結果、1.45/1000人年がスタチンのほうで、その他が1.06/1000人年です。一般に 言われている横紋筋融解症の発生率より、これでも高すぎる。ですから12万人ぐらいの レベルで、保険者としては33万人ぐらいいるのですが、これくらいの規模ではこの問題 はなかなか解明できない。あるいはもう少し観察期間を延ばさないといけない状況です。 ともかく病名から何らかの形で、こういう発生率を求めて検討していくことは十分可能 であろうと思います。ただ、診断の妥当性を確かめないといけないので、隔靴掻痒の観 があるという気がします。  スタチン製剤を使用している段階、近い過去使用の段階、遠い過去使用の段階で横紋 筋融解症という病名の付く発生率ですが、現在使用のときが多い。近い過去使用では減 っていく。疑いなしのデータだけでも有意にはなりませんが、現在使用のとき、あるい は近い過去使用のときにちょっと多い状況です。  方法論の検討ですが、これは短くやりたいと思います。これは電子カルテ情報等の医 療情報との連結可能性の検討です。ハッシュ関数で匿名化されているわけですが、同じ 情報を使って、ハッシュ値を作成すればリンクができるのではないかを検討しました。 研究分担者のNTT東日本関東病院の対象レセプトで、JMDCのデータベースの中に155人の 受診者がいました。延べとしては615人月のレセプトの件数です。これがきちんと結合 できることは確認しました。  次年度以降はレセプト病名の妥当性の検討ということで、レセプトにある情報の中で 追加情報としてどういうものを使えば、比較的信頼性の高い診断に行き着けるかの検討 を別途していきたいと思っています。  諸外国の活動状況等の情報収集ですが、ここは非常に簡単に説明します。韓国、台湾、 アメリカですが、前回、岡本先生が韓国について報告しました。たまたま私は台湾に行 って、National Health Insurance Research Databaseの情報を少しだけ聞いてきまし た。伺ったのがNational Health Research Institutes(國家衛生研究院)という所で、 ここは保険局からデータの委託を受けてデータの提供を行っている施設です。当時の保 険局の責任者が、重要なデータだから研究者の研究用に使わせないといけないという認 識を持って、この衛生研究院のほうに委託をしたということです。  2001年2月からデータの提供を開始していますが、データそのものは1995年3月以降、 台湾の全人口2,300万人のデータを蓄積しています。2008年には約250の研究の申請があ ったという状況で、英文論文だけでもリストがホームページに上がっていますが、150 を超えている状況です。もちろん生のデータを提供するのではなく匿名化されていて、 かつ多くの場合にランダムサンプルです。そういうことでデータの提供の仕方も工夫さ れています。  久保田教授のほうで1週間前に班会議を行いましたが、非常に長い報告をいただきま した。韓国、アメリカ、それから今後は台湾に行くということですが、100を超えるス ライドですから、かいつまんでお伝えすることもできない状況ですけれども、非常に詳 細な話をお聞きすることができました。これは報告書等で報告させていただきたいと思 っています。そういうわけでレセプトを中心にして、それといろいろな情報をくっつけ ながら、医薬品の市販後の安全対策のための具体的な活用方策を、検討していきたいと 思っています。 ○座長 ありがとうございました。3人の先生方からお話を伺いました。それではどなた に関してでも結構ですので、ご質問、ご意見をいただきたいと思います。いかがでしょ うか。 ○藤田委員 横紋筋融解症に関して、お二人の先生にお聞きしたいと思います。横紋筋 融解症という診断が付いているのかどうかを確かめるのは非常に大変なことですか。 ○木村参考人 ICDコードで検索できます。文字列でも検索はできます。でも先生がご 指摘のように、検査のための病名かどうかというのはわからないです。あとはDPCのコー ドになっていれば、最近DPCのコードをあのデータベースは取り込み出したのですが、 主病名が横紋筋融解症というのもあるかなと思いますので、ちょっと検出力が冴えない かなというところですね、少なくともうちのほうは。 ○頭金参考人 私どもの場合は、調査に協力いただいた病院の中で、診断名について検 索できるシステムはあったのですが、私どもの方法論では検索できないというご返事を いただいた所もあって、今回は診断名での検索はできませんでした。木村先生のおっし ゃっているような方法とか、いろいろ工夫が必要ではないかと考えています。 ○木村参考人 ある程度絞り込めたら、そのカルテをめくりにいくということに、結局 なってしまうと思います。 ○藤田委員 やはり、どこかで、きちんとした妥当性研究というのをやってからでない と駄目かなと思います。全部めくりにいくのは大変でしょうから、どこかでやって、そ の上で使える情報というのを、どういうふうに使えば妥当な診断名かというのがわかっ てくるかなという感じでしょうかね。 ○木村参考人 間質性肺炎のあれは本当に私がちゃんとチェックして、7つ全部ではなか ったですけれども、そういうバリエーションは必要だと思います。 ○頭金参考人 藤田先生がおっしゃっていることは、まさしくそのとおりだと思ってい ます。私たちのシステムにおいても横紋筋融解症と確定診断された方のデータを基本に、 それを基にどういうパターンを示していくのかを検討することによって、本当の意味で の筋障害あるいは横紋筋融解症という症例が、抽出できていくのかなと考えています。 ○座長 いかがでしょうか。例えば昨年ですか、話題になったタミフルでいろいろな異 常行動が見られることは、先生方のデータベースからある程度検索できるのでしょうか。 ○木村参考人 所見は入っていませんから。 ○座長 あるいは病名とか外傷とか、何か工夫すればできないこともないのでしょうか。 ○藤田委員 たぶんその問題は、異常行動というのが医学的に何なのかというのが、よ くわかっていない段階ですから、明確にこれだよという異常行動という診断名はないの ではないかと思います。ですから、その辺のところの問題があるのかなと思います。 ○頭金参考人 私どもは、基本的には検査値の生データというものに基づいて判断しよ うというアイデアです。したがって対象にする副作用に関しても、今回、お示しした筋 障害や薬物性肝障害のように、検査値から検出できる副作用ということで、いろいろア イデアを考えているところはありますが、すべての副作用に関して、こういう手法をと ることには限界があると思います。 ○宮田委員 これは極めて素人的な大ざっぱな質問ですが、たぶんこのデータベースを 使ったスクリーニングというのは、ファーストスクリーニングになるのか、ある仮説を 検証するか、どっちかだと思います。何か新薬が投入されたときに異常なことが起こっ ているというアラートを、このデータベースの検索でできるかどうかというのを3人に 伺いたい。もしそれができないとすると、ある仮説で、いま先生がおっしゃったように 腎障害や肝障害など、比較的出やすい所の検査値にモニタリングしていてアラートを見 つける。つまりラフなファーストスクリーニングで、何か変なことが起こっているとい うことをモニタリンクすることに使えないかどうかを、3人の方に伺いたいのです。そ の後、さっき言ったように病名をきちっと検証していく研究につながれば、役に立つの かなというふうに思っていたのですが、いかがでしょうか。 ○頭金参考人 最後のほうのスライドでお示ししたように、1つは電子情報を使います ので、できれば半自動で簡便に、しかも時間をかけずに、ラフではあると思いますけれ どもアラートを出すような使い方を、1つの目標にしたいということがあります。  それと並行して、先生がいまおっしゃったようなレトロスペクティブなスタディとし て、例えば年齢が筋障害の発症に影響を与えるのかという仮説を検証する、レトロスペ クティブな観察研究にも使えるのではないかと思います。可能性としては両方ともある と考えています。 ○木村参考人 検出する方法が検体検査結果であれば、先ほどの投与の初回投与イベン トということで初めて投与した薬で、それ以前は上がっていなくて上がった、あるいは 白血球が、それまでは普通だったけれどドンと下がったとか、さっきのプロセスを毎晩 流せますので自動で検出できます。あくまでも検体検査で検出できることだけです。そ れはごく一部です。でもそういうのは得意ということです。 ○宮田委員 わかりました ○藤田委員 レセプトがデータとして使えるようになるには、たぶんタイムラグが半年 ぐらいはあるかなと思います。それはあるとして、全く新しい薬ではなくて同種・同効 薬があるということでしたら検討可能ですが、全く新しい薬では1剤ではわからないわけ です。また、見た目でわかるような異常なものだったら、大規模なデータベースを使わ なくてもわかるような話です。問題になるのは非常にたくさん使用され、発生率は微妙 に増加する事象です。大規模なデータベースを使用し、同種・同効薬があって、それを 使用し始めた人という集団を設定し、その新薬を使用した集団を比較する形であればで きるのだろうと思います。 ○佐藤委員 頭金先生にお伺いしたいのですが、スライドの11と12でしょうか。4つの 病院で1万人の患者さんが集まるということで、大きな病院を統合すると非常に大きな 力があるなと思います。いま藤田先生が言われたのですが、スタチン同士を比べるとき に、新たにスタチンを使い始めた人で比べないと本当はいけないのですが、これはある 時点で使っている人ということで、新たに使い始めた人というわけではないのでしょう か。 ○頭金参考人 もちろん先生がおっしゃったように、新たに使い始めた人でということ が非常に重要だと思いますが、今回、私たちの調査では、CKが上がってスタチンの投与 をやめたというところに焦点を当てて、研究を行いました。先生がおっしゃったように、 新たに使用しておられる患者さんで、CKが初めて上がったというイベントは非常に重要 ですので、そういうものを継続してフォローアップするためには、ある地域内での情報 の共有が、今後、必要になってくるのではないかと思っています。つまり、もう既に最 初からCKが高い人という例も入ってきます。今回はそういう方は、何が原因でCKがかか っているのか特定できなかったので、抽出対象からは除いています。  今回のシステムは、あくまでもパイロット的にやっていて、もう少しブラッシュアッ プしていく必要があり、先生がおっしゃったようなストラテジーをこういうところに組 み込んでいく必要性は、私どもも十分感じています。 ○佐藤委員 これはデータベースというよりは、薬剤疫学の方法論に関するコメントで す。スライドの12で、ロスバスタチンの発現率がほかのスタチンよりも倍ぐらい高くな っているのですが、おそらくこれは、スタチンを新たに使い始めた人に限っていないた めに起こる、いわゆるこういうのをサーバイバーバイアスと言うのですが、それだろう と思うのです。つまりプラバスタチンやシンバスタチンは、かなり長期間使って何も起 きていないから、ずっと使い続けている人がたくさん入っているのですが、ロスバスタ チンに関しては割と最近使い始めた人がたくさん入っているのです。横紋筋障害も使い 始めてから割と早い時期にイベントが起きますので、たぶんその違いがここの数字とし て出てきているのではないかと思います。 ○頭金参考人 この調査期間が、ちょうどロスバスタチンが出た直後の調査期間である ことも影響していると先生がおっしゃったことは、私どもも考察として考えています。 ○佐藤委員 新たにスタチンを使い始めた人同士で比べると、たぶん違ったデータにな るのではないかと思います。 ○丸山委員 細かいところで、いまの頭金先生のスライドの8枚目から9枚目ですが、8 枚目の下から2行目のところに、「匿名化した患者IDを用いて」と書いてあり、10枚目 のところだと患者番号をそのまま使われているようですが、これは見方が間違っている のでしょうか。 ○頭金参考人 すみません、10番目のスライドの患者番号というのは匿名化した後の番 号になります。 ○丸山委員 そうなのですね。病院での患者番号ではない。 ○頭金参考人 病院での患者番号ではありません。 ○丸山委員 それと10枚目のいまのスライドで、例えば処方日数が35日の人がこの処方 データのところにないのですが、この表が広くて、35日の人もいた場合に出てくると理 解したらいいのですか。 ○頭金参考人 これは本当にごく一部だけしめしたもので、基本的には1週間の処方の 方もいます。 ○丸山委員 同様に、検査データのほうもCKが112という方はいないのですが、右上の 表がもっと広大で投与サンプルが多い中から、これが抽出された、あるいは突き合わさ れたと理解していいですか。 ○頭金参考人 もちろん処方データ、検査データはほんの一部で、これは、ある一定期 間内の検査が行われた患者さんのデータ全部をエクスポートしています。 ○川上委員 木村先生に伺いたいのですが、私も木村先生と同じ浜松医科大学にいます けれども、普段は先生が作られたシステムを使って処方と検査を組み合わせた検索を、 薬剤疫学の研究であったり、日常の薬剤業務等に使わせていただいています。今日の先 生のお話で、既に50%以上の病院がSS-MIXに簡単に接続できるというお話がありました。 素人質問で恐縮ですが、すなわち、いま浜松医大で私どもがやらせていただいているよ うな検索が、もう既に日本の50%の病院で簡単にできるという意味ではないのですね。 ○木村参考人 あれをやるためには条件があって、HL7という形式で出せること。次は それを留めておくストレージがあること。そしてあの検索システムがあることです。あ の検索システムを持っているのは静岡で5病院です。ストレージからデータをはき出して いるのは静岡県だけではないですが、もう既に20以上あります。HL7という形式ではき 出すことができる病院は、あと100万円か200万円ぐらいのハードを買い、そこにデータ を接続して留め込んで、あれを持って来ればできるのですが、それは先ほどお見せした ように、もう3年前からそういう機能を、富士通、日電、SBS、ソフトウェアサービスは 持っているので可能になると、そういう仕組みです。 ○川上委員 ありがとうございます。 ○座長 3人の先生方に、今までこういうシステムを作ってこられて、患者さんや社会 に警告なり、情報をフィードバックしたことはございますか。要するに、社会にどうい うふうにこれが役に立つかということを、おそらく一般の方は知りたいと思うのです。 ○頭金参考人 私どもはまだ研究の途中ですので、研究としてもう少し完結状態に近づ いてから、基本的には研究の一環として行っていますので、研究者の間には研究論文あ るいは学会発表という形でお話したいと思います。あとは、この研究をやるに当たって この研究のプロトコールを周知することは、私どもの倫理委員会からも言われています ので、それはその学会発表などをわかりやすい形で、その病院で閲覧できるようにする とか、そういうことは考えていきたいと思っています。 ○木村参考人 要するに検索のプロトコールを決めておいて、夜中に検索して該当する 患者さんが存在することをメールで医師に教えるか、それとも薬剤部かに教える、と、 うちの薬剤部の副部長が、TS1で白血球がガンと下がったらメールが来るようにセット してやっておられました。現実にメールが副部長のところに来る。 ○座長 実際にもう使われているわけですね。 ○木村参考人 ええ。それで副部長は処方したドクターに、「大丈夫ですか」という電 話をしてくださっているケースは何回もありました。 ○藤田委員 私どもの研究班は今年度からというか、つい最近始まったところですので、 とりあえずデータを解析し、それから方法論的につながるという話ができて、次は妥当 性研究をやり、諸外国の活用状況を見る。それらを全部一体にして、もう少しきちんと した情報として取りまとめて、その上で公表等をしていきたいと思います。 ○丸山委員 木村先生のスライドで伺いたいのですが、日本の電話帳からの抽出と、 アメリカでの200件の回答者のパネルの同質性というのは、先生はどうお考えでしょう か。 ○木村参考人 ですから日本の場合は電話帳で、なるべく年齢が偏在しないように、そ の所帯で次に初めて誕生日が来る人ということです。要するに老人ばかりが答えないよ うにという配慮はやりました。アメリカのほうは、これも本当にランダム・ダイアリン グでやったようですので、要するにこれはランダム・ダイアリングというパネルです。 ○丸山委員 「回答者パネル」と書かれていると、それをバイトにしているような人を イメージしたのですが、そうではないのですね。 ○木村参考人 違います。 ○丸山委員 わかりました。失礼しました。 ○座長 時間の関係もありますので、ただいまのご議論を踏まえて前回に引き続き、今 後の論点の整理をしたいと思います。議題の2と3について事務局からご説明をお願いし ます。 ○安全対策課長補佐 事務局から議題の2と3、あと4の今後のスケジュールについても、 まとめてご説明したいと思います。資料2は、これまでの第1回、第2回の勉強会で先生 方がなされた議論の主なものを事務局でまとめました。具体的にはスライドの右下頁で 2頁がゴール設定、3頁がメリットの示し方、4頁がデータの種類・活用、5頁、6頁が技 術的基盤の整備、7頁、8頁が連結等技術的手法の開発、9頁、10頁が個人情報保護、倫 理についてまとめたものです。  簡単に説明しますが、2頁のゴール設定で言うと、基本コンセプト、目指すべきゴー ル、目的を明確化すべきではないかといった議論がありました。3頁のメリットの示し 方ですが、例えば国民や医療関係者の理解の促進や、このメリットを国民に提示して認 めてもらうことが大事である。あるいは情報提供のあり方をきちんと考えるべきではな いかといった発言がありました。  4頁のデータの種類・活用ですが、医薬品等の安全対策に資するデータが、どの程度、 レセプトでデータベース等に含まれているかの検証が必要ではないか。他のデータベー ス、例えばDPC、電子カルテ、人口動態統計等の他のデータベースも活用すべきではな いか。データアクセスの範囲や目的、そのバイアスに注意すべきであるといった発言が ありました。  5頁、6頁の技術的基盤ですが、諸外国で大規模なデータベースが構築されている現状 や、医師以外の医療従事者の協力が必要ではないか。レセプトデータを管理する独立し た組織の必要性、このデータベースがないために生じている市販後調査や臨床研究にお ける研究のデメリット、6頁でレセプトデータベースを核にした情報交換を行う体制を 構築すべきである。地域単位のデータベースをまず構築して、それを拡大していくべき ではないかといった議論がありました。  7頁、8頁でデータ連結等技術手法の開発ですが、病院間のデータのリンケージの重要 性、個人を特定した情報提供、国民一人一人の登録番号を付してはどうか。歯科と医科 のレセプト突合、先ほどもあった人口動態統計等、他のデータとのリンケージ、住民登 録番号以外でリンケージを行えるか、ハッシュ関数の限界といった議論がありました。  9頁、10頁で個人情報の保護、倫理ですが、プライバシーに配慮しながら、いかに活 用するか。自己決定権と公益のバランス、個人の権利・尊厳と全体の利益のバランスが 重要、自己決定権も同様に重要ということ。個人情報を知られたくない場合、知らせた くない場合の配慮が必要ではないか。10頁で、データベースの構築と個人情報の保護は 両立可能ではないか。その法律に関しては統計法が活用できるのではないか。同時の医 療情報に特化した個人情報保護法の制定が必要ではないか、といった議論がありました。 以上が資料2です。  次に資料3ですが、この提言を考える場合の骨子の方向性、今後どうするかというこ とです。1は「医療関係データベースを利用する目的と必要性について」です。そもそ も、何のためにこの懇談会を開いているのかを議論する必要があるということで、現在 の課題や欧米主要諸国の現状、医薬品等安全対策を、データベースを活用して行うため の必要性について書いてはどうかと考えています。  2以降が各論です。2は「電子的な医療情報の活用の方向性について」で、データベー スの種類、疫学研究の理念、調査・研究のメリットとデメリット、今後の目指すべき方 向性等です。  3は「データベース利用の社会的な意義と個人の決定権の現状」で、諸外国における 状況、現状でできること、できないこと。我が国における考え方及び国民的な理解を得 るためにはどうするか、といった点があるのではないかと思います。  4は「活用の方向性から見た現状:技術的な課題」で、例えば多施設のデータを合算 した解析、統一的データベースの構築、レセプトと電子診療録等とのデータの連結、個 人の特定、患者個人への通知、セキュリティーについてです。  5は「データの活用のあり方について」ですが、現在できること、将来できること。 そのために制度的に解決すべき点、民間主体が実施すべきでない研究、大学・公的機関 の役割、利益相反、調査研究の支援体制です。  6は「データ活用の倫理方策について(医薬品の安全性評価に用いる調査研究におい て遵守すべき要件)」として、利用の目的、データの種類及び範囲、患者等の事前同意 の取得と手続、個人情報の範囲と保護、データの保存期間、2次利用の取扱い、個人特 定情報の課題、将来的にあるべき制度・法制化等についてです。  7は「実証研究等調査研究の普及と国民への周知の方策について」です。  8は「将来的なロードマップ」として、これは案ですが、2011年のナショナルデータ ベースの開始まで、そしてその開始から二、三年後経ったときにどうなっているか。さ らにその先をどうするか。こういったことを事務局として提案させていただきたいと考 えています。  次に資料4で、今後の検討スケジュール(案)です。今日、これからご議論いただく ことを踏まえ、事務局で原案を作成させていただきます。そして来年2月ぐらいにもう1 回会議を開き、全体の方向性について議論し、4月と5月に各論を2回に分けて議論し、 7月ごろに最終案を固めたいと思います。それをパブリックコメントに書いて、来年8月 ぐらいに提言の最終的なとりまとめを行いたいと考えています。以上です。 ○座長 ありがとうございました。ご質問、ご意見はいかがでしょうか。参考人の先生 方からも是非、ご意見を伺いたいと思います。 ○佐藤委員 資料2の4頁のデータの種類・活用のところで、私の意見として「疫学上の 評価を行う際のバイアスに注意」とあり、その次に「シグナルの検証と仮説の検証を区 別すべき」と書いてありますが、シグナルのほうは、おそらく「シグナルの検出・強化 と仮説の検証を区別すべき」ということかなと思いますので、よろしくお願いします。 ○座長 ほかに、いかがでしょうか。 ○副座長(山本隆) 言わずもがなかもしれないですが、介入研究と観察研究の違いと いうのは、明確に意識をしておいたほうがいいと思います。例えば何かおかしなことを 自動的に検出することは非常に重要な話ですけれども、これは検出できなかった場合に、 非常に不利を起こす可能性もあるわけで、ある意味、ちょっと介入的要素が加わってく る。それに比べてデータベースを単にサーベイするだけだと、そのことによって患者さ ん個人に何か健康被害が及ぶ可能性というのは、まずないわけで、そこは一応区別して、 提言をまとめていくほうがいいのではないかと思います。 ○座長 やはりこの提言の最初に、広く社会に受け容れられるようなまとめが必要だと 思います。何のためにということです。単に行政上便利だから、研究者の業績が出るか らというスタンスでいくと、なかなか受け容れてもらえないと思うので、その辺を上手 にまとめておく必要がまず第1に大事です。その上で、この介入研究とか観察研究、あ るいはこのデータベース自体の限界についても、よく踏まえておく必要があるだろうと 思います。 ○山本(尚)委員 2つあるのですが、1つは、今日、木村先生からも頭金先生からもお 話があったように、病院情報システムに保有されている情報の中で、電子カルテとオー ダリングシステムを比べた時、オーダリングが欧米に比して普及率が高いため、その日 本の特性を生かすべきということがあったと思います。その上で、例えば検査値が疫学 研究においては有用なデータの1つですが、それがオーダリングシステムのオーダーし たレスポンスにデータが保管されているのか、電子カルテ本体の個人の基本情報の中に 保管されているのか、それを特定してどのようにリンケージしていくことが重要になっ てきますので、技術的なサポートをもらうことが重要であると考えます。  もう1つは、この懇談会の第1回目のときに話題になった、この提言がどういうふうに して生かされるのか、参加している先生にわかる形で具体的に示していただければ、構 成員からより効果的な内容の意見を出すことが可能になると思います。 ○座長 どうぞ。 ○丸山委員 質問でもよろしいですか。今日の藤田先生のご報告の16枚目に、ハッシュ 関数を用いた匿名化識別子による連結の可能性が書かれていて、他方、今日の資料2の 8枚目で、両山本先生がハッシュ関数は必ずしも1対1になるわけではないと、リンケージ には限界があると書いているのですが、素人にわかるように解説いただけますか。 ○藤田委員 どのくらいの頻度で起きますか。1万に1つ、10万に1つ、100万に1つ。 ○副座長 もっと大きい。たぶん億とか、それぐらいに1回ですけど、外れる可能性が あって、違う人の情報を同じ人の情報だと思ってしまう可能性は必ずある。 ○丸山委員 億に1つ、もしできれば。 ○副座長 そうですね。ただ、いまの方法ですと毎月、毎月、レセプトにハッシュが振 られていくわけですから、億なんていう数はそんなに大きい数ではなくて、結構起こり 得る頻度になるだろうという気はします。それにしてもそれほど高いわけではないです。 ○座長 よろしいですか。 ○宮田委員 これをどうやってまとめるかのお話で、要するにレセプトデータとか、あ るいは他にもいろいろデータが発生すると思いますが、そういったものが、国民の共有 財産であるという議論を堂々とやるべきかどうかを、少し考えていただきたいのです。 それも個人の情報として考える側面と、固まりにして匿名化した場合に、これは国民の 共有財産であって、これを活用すればこのようないい点がある、リスクはこれぐらいあ るという話をきちっと明示して、報告書を始めるべきではないかと私は思っています。  もう1つ、今日のお話を聞いていても、検出感度とか検出のバイアスというのは相当 あって、どれぐらいの大きさのデータが、意味があるのかの議論もどこかでしておかな いと、それが費用対効果とかレセプトと病院の間の突合とか、そういったことに関係し てくる問題があるだろうと考えています。サイズと検出感度、そのサイズに伴うデータ の意味みたいなものですね、活用できる範囲のスコープをきちんと明示して議論しない と、ごちゃごちゃになってしまうと考えています。  もう1回繰り返しますが、メディアの立場から言うと、これが匿名で出されて固まり になったときに、国民の共有財産として、どんな活用の方策があるのかイメージを与え ていただけると、その後のレポートのトーンが、非常に明確になるのではないかと思っ ています。 ○座長 大変重要なご指摘だと思います。 ○藤田委員 いまの件に関して、前回、統計法を持ち出したのはそういう意味で、国民 の財産にすべきであろうという意味から言いました。サイズと検出感度の話は、ベース ラインに普通にどのくらいの頻度のものがあって、薬によって発生がどのくらい押し上 げられるか、それによるわけです。それを設定すればどのくらいのサイズのデータが要 るかを見積ることはできるわけです。 ○宮田委員 そこから出発するのが必要だと思います。 ○藤田委員 もう1つ、新しい点であり頻度にも関係しますけれども、どういう安全性 の問題を扱うのか。頻度から言って稀なものなのか、その手前の結構あるようなものを やるのかで全然違うと思います。病院のオーダリングシステム、電子カルテ等をやると、 サイズはそんなに大きなものではありません。ただ精度は高いということですから、頻 度の高い副作用は発見できる。しかし、電子カルテ等だけでは資料3の方向性の1の最後 のところにあるVioxxみたいな問題はなかなか検出できない。やはりナショナルデータ ベースのきちんとしたものを作らないと、こういう問題は解決できないと思います。 ○座長 統計学的な意義というのもきっちり、一般の方がわかるように記載しておかな いといけないと思います。何でもこれでわかるということではなくて、どういう限界が あるか。これは統計学の初歩ですけれども、こういうアプローチには限界があります。 でもリアルワールドを見ているということで、ものすごくよくわかることもあるわけで す。そこをきっちり押えて使わないと、過度の期待があっても困ると思います。 ○丸山委員 宮田先生のおっしゃった、国民の共有財産として活用すべきというのは、 私も賛同するところが大きいのですが、他方、国民と言っても必ずしも一枚岩ではなく て、データを提供する側の患者等と、データの活用によって利益を受ける国民と、細か いところになると意見が対立する。そして使われる人たちの気持も配慮する必要がある ことに、留意していただければと思います。 ○我妻委員 関連しまして1点、木村先生のご報告のいちばん最後の提言(2)で、病院の 情報の扱いについての不信が生じると指摘されていますが、せっかく集めたデータにつ いて、もし不正に利用されると出発点に戻ってしまい、せっかく構築されたデータベー スに対する不信、あるいは国民の賛同を得にくい危険性もはらんでいますので、ちょっ と質問ですけれども、現に浜松医科大等で利用されている情報の管理等について、どの ように工夫されているのか等については、いかがですか。 ○木村参考人 当然ながらパスワード等の管理、要するに病院情報システムの業務シス テムとして扱っていますので。 ○我妻委員 例えば、統一のルールというものも明確にされた上でということですよね。 ○木村参考人 統一のルール。 ○我妻委員 利用についての約束事とか。 ○木村参考人 業務システムですから、処方のオーダーとか各種病理のレポートとかと 同じ扱いです。 ○我妻委員 わかりました。 ○木村参考人 私がここで論じたのは、要はああいう検索の結果として得られる情報を、 あまり国民が望まないような、ちょっと出しましたよね、これで営利というビジネスモ デルは、ちょっといかがなものか、というようなことをこの文章では言いたかったので す。 ○座長 木下委員、どうぞ。 ○木下委員 いまの丸山委員と我妻委員のお話に関連して、我が国では、ある個人に非 常に問題になるようなことがあると、それでストップしてしまうような国の状況がある と思います。配慮すればいいとありましたが、配慮のレベルでいいのか。つまり、こう いったことで公益性の問題と守秘義務の問題で相反する問題があったときに、我が国の 中で、少なくとも今後やろうとしていることは問題ないのか。あるいは問題が起こり得 るとすれば、同時並行でいいですから、予めそのことはきちっと押えておかないと必ず 問題になってきます。法律の視点から今のままでいいのか。それとも今まで議論したよ うなことで、何か押えるべき法律を新たに作ったほうがいいのか。外国等ではいくつか あるように思いますが、その辺はどうなのでしょうか。 ○座長 ご存じの方、いかがでしょうか。 ○丸山委員 私の発言の趣旨は、今、おっしゃっていただいた方向と同じ方向だと思い ますが、報告書をまとめる際に配慮していただきたいという趣旨で、あるべき姿として 個人的な意見としては、ここにも書かれているように医療個人情報保護法が望ましいと 思いますが、それはなかなか難しいと思いますので、具体的な論点において然るべき記 載を含めることを求めたいという趣旨で、先ほど述べました。 ○我妻委員 立法ですべてを解決するのは非常に難しいので、まず論点を洗い出した上 でやっていく作業が大事だと思います。だから最初から立法ありきというよりは、むし ろ問題点を明らかにし、例えば個人情報保護法について十分に配慮されているか。丸山 先生がおっしゃったように、医療情報に特化した形での法律が望ましいかもしれないけ れども、現状での問題認識という形で洗い出す作業も大事だと個人的には思います。 ○木下委員 そういうレベルで、何か問題が起こってきたときに解決する範囲のもので はいいのですが、そのもっと前に、少なくとも基本的にこのことだけは押えておけばい いというものはないのでしょうか。いまのような公益性や守秘義務等で、個人情報保護 法の枠の中で何とかなっていく範囲で、でもなおかつ何か起こったときに、いまのよう な議論をしながら解決していくならいいのですが、ある程度いろいろ仕事が進んだ段階 で止まってしまうことが、あり得ることを心配しているのです。そういった非常に基本 的なことで押えるべきものとして、我が国の法律の中でやっておかなければいけないも のがないか。そんなことをちょっと考えたものですから、なければいいのですけれども。 ○丸山委員 どんな問題が起こるかよくわからないのですが、私としては先ほどから質 問を続けていますように、匿名化とハッシュ関数あたりで対応できればと。アメリカで はバイオバンクを、患者から改めて同意を得ることなしに、ハッシュ関数を用いて構築 している大学病院があるようですので、そのあたりができるかなと思っていたのですが、 藤田先生の報告で「できそうだ」と思いました。あと先ほど質問しましたように、必ず しも100%でないというので不安になったり、そのあたりで解消できればいいのだけれ どという気持でいます。 ○副座長 レジスレーション法規制という意味で医療に特化した法規制というのは、お そらくアメリカしかないと思います。それ以外は一般的な個人情報保護に関する法律だ と思います。アメリカの例で言うと、前回、Chan先生がおっしゃったように、アメリカ の厚生省のプライバシー・スタンダードに関しては、いま、かなり強い批判が巻き起こ っていて、見直す動きにあることは間違いない。つまりプライバシーも守れないし、研 究も進められない状態になっているという批判が起こっているようです。ですから、ア メリカでこれからどういう議論になるのかはよくわかりませんが、そういった研究に関 わる個人の権利侵害に関しては、見直される時期にあるのだろうと思います。  一方でデータの安全管理ですが、これは要するに目的が何であれ、例えば病院情報シ ステムからデータが漏洩してしまうとか盗まれることに関しては、どちらかというと我 が国がいちばん緩くて、主な先進国では法的に規制する動きを強めているように聞いて います。ですから、この辺に関しては、もう少し我々も検討していいのではないか。た だ、使うにあたっての個人の権利侵害については、どの国も相当悩んでいて、まだまだ 議論が要るところだろうという気がしています。 ○丸山委員 いま、アメリカについて言及されたところは当たっていると私も思うので すが、他方、ヨーロッパを見ると、ヨーロッパではデータ保護局が、日本のように省庁 ごとに個人情報の規制・取締りをしているのではなくて、あらゆる分野の個人情報保護 を専門に扱っている当局があるわけです。ああいうあり方もひとついいのではないか。 保健情報についてはそれなりの専門的立場から取扱いを定めている。だからアメリカば かりがいいというわけではなくて、日本の状況をちょっと改める必要があるのではない かと考えます。 ○座長 ほかに、いかがですか。 ○宮田委員 個人情報と固まりとしてのデータというのを、もう少し皆さんで区別をし ながら議論したほうがいいと思います。そこら辺をどうやって国民にわかりやすく、報 告書の中で線引きができるかが1つポイントになると思います。もちろん個人情報は非 常に重要ですし、人口動態調査もそうですけれども、統計というのは国が政策的なこと をやる、あるいは自分たちの国民生活がどうなるか、今後のシミュレーションをすると きに絶対重要なものなのです。いま、日本に、そういう医療統計データがないことが最 大の問題であると私は思っていますので、そこから必要性、あるいは国民に対する説明 を解き明かすべきではないかと思っています。  丸山先生に反対されるのではないかと、いちばんドキドキしていたのですが、何とな くきちっとステップ・バイ・ステップで、ご理解を得ながら進めることができそうな雰 囲気が、いま先生の発言にもあったので、私はこの報告書は非常に意味が出てくるので はないかと思っています。  法的にやるかどうかは、みんなでまた議論して、これは絶対譲れないというのが出た ときに、そういうステップでやるべきであって、いま法的にというのはちょっと早いよ うな気がします。たぶん議論すると、先生がご指摘になったように、何か線を引かなけ ればいけないのかもしれませんが、それを含めて、もう少し議論を進めていくほうがい いのではないでしょうか。 ○座長 これは次回、文章となって出てくるわけですね。 ○安全対策課長補佐 そうです。 ○座長 その辺の書きぶりが非常に重要だと思います。 ○副座長 木村先生がご発言されるかと思ったのですが、確かにマスとして出たデータ は国民の財産であり、個として存在する個票は非常にプライバシーを含んでいる。おそ らくここはどなたも反対はないのですが、健康医療情報の場合、この間が存在すること が特徴の1つだろうと思います。先ほどの木村先生のご発表にあったように1例に特定で きてしまう。確かにお名前はわからないですけれども1例に特定できるということは、 それなりの努力を払うと誰の情報かわかる可能性があり得るわけです。  これが例えば、どんなに頑張っても50人までしか特定できないとか、どんなに頑張 っても500人までしか特定できないとか、程度の問題がどうしても出てきてしまうので、 そのあたりは目的との兼合いだと思いますけれども、一定の合意を作る努力はしていか ないといけないのではないかという気はしています。 ○宮田委員 参考データですが、アイスランドで国民データベースを作る法律が7年ぐ らい前に通ったときに、10人まで検索したら検索がストップするソフトウェアになって いました。ですから、いま先生がおっしゃったようなことも議論しなければいけない。 ○座長 それは技術的に可能なのですね。なおかつ重複もしないで、同定しようとする と10人までということですか。 ○宮田委員 はい。 ○丸山委員 先ほどの宮田先生の話を伺っていて、これは数少ない経験からですが、が ん登録でオーストリアとノルウェーだったと思いますけれども、訪問調査したときに、 統計局と個人情報保護の部局が非常にうまく噛み合っていたのです。先ほども先生がお っしゃったように、元は個人情報なのだけれど、集計して得られた統計と個人情報をう まく調和させることができればいいわけです。日本では、もう少しその重要性を認識し て、しっかりとした位置づけを与えることが望ましいのではないかと感じました。 ○佐藤委員 もう1つの論点として、データをどういう形で保持するかと、どういう形 で利用できるようにするかを区別すべきだと思います。通常の研究のために使うような 場合には、もちろん個人を特定することは必要ないことが多いですし、非常に慎重でな ければいけないと思いますが、例えばC型肝炎の危険がある製剤を使った患者さんのリ ストがどうしても必要なときに、それを国として、国民の命を守るためにやらなければ いけない場合もあると思います。ですから、そのことはちゃんとできるように厳密な形 で保持しておくことと、どのような場合には、どのような形で使っていいのかルールを 決めることを、区別すべきではないかと思います。 ○藤田委員 いまの議論から言うと、どこが保持するのかという問題があると思います。 国が保持するのか、いまは支払基金なり国保連が保持するという形になっていますね。 国が集めなくてもいいかなと思うのです。センチネルシステムの場合にはFDAは個人情 報を持たない。そういう形で各所有者が持っている形になるわけで、だから遡れる形は 作るにしても国が持つ必要はない。データの提供にしても提供の仕方は相当考えないと いけないし、台湾でも全部出すわけではなくてランダムに提供する形にしていますので、 セキュリティ、提供の仕方は考えないといけないと思います。  データの連結の話で、資料3の4の3つ目にあるのですが、レセプトと電子カルテ等の データの連結は、結構難しいかなと思います。それをやっても非常に複雑になるだけで、 アメリカの場合は、久保田先生から聞いたところではクエリーで問い合わせる形で、そ んなに詳細な情報はいらない形です。連結までいかなくても、どういう形でシステムを 作れば必要な情報が集まるのか。あるいは医療側からすれば必要な情報提供をしていた だけるのか。そういうものを考えるのも一法かなと思います。 ○座長 これはシステム開発の段階で、専門家が相当協議して、見通しを持って作って おかないといけないですね。それは今の日本のITからすれば可能なのですか。その辺の 専門家の協議は済んでいるのでしょうか。あるいは作りながら考えるのでしょうか。 ○藤田委員 医療従事者の意思の合意とか、そういう話もありますよね。 ○座長 しかし、ITの技術的な面からは、あるいは発想という意味では大体議論は尽く されているということでしょう。 ○副座長 可能です。 ○木村参考人 それがあれば広報のときにはものすごく簡単になりますし、それがなし ということになると、それなりに個別の同意が必要で、その後は、もちろん情報システ ム的には可能ということになります。 ○座長 よろしいでしょうか。まだご議論はあると思いますが時間をオーバーしてしま いましたので、今後、どういう点をさらに議論すべきなのか、またペーパーでも結構で すし、メールでも結構ですので、お寄せいただいて、その上で、原案を次回の懇談会で 提示させていただくことにしたいと思います。来年2月を予定しています。またその以 前にもいろいろ問合せ等、あるいはこちらからもお伺いしたいと思いますので、よろし くお願いします。事務局から連絡事項をお願いします。 ○安全対策課長補佐 今日は活発なご議論、ありがとうございました。本日の議事録に ついては皆様の了解を得た上で公表させていただきますので、よろしくお願いします。 また来年2月ごろの会議につきましては、いま日程調整をさせていただいていますので、 またよろしくお願いします。ご指摘いただいた論点については、座長とも相談しながら 原案を作成して、次回懇談会の前に皆様にお送りしたいと考えています。以上です。 ○座長 それでは、本日はこれで終了させていただきます。遅くまでありがとうござい ました。 照会先:医薬食品局安全対策課 電話番号:03−5253−1111