09/12/02 第7回厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門委員会議事録 第7回 厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針の見直しに関する専門 委員会 ○日時 平成21年12月2日(水)15:00〜 ○場所 中央合同庁舎4号館108会議室 ○出席者   【委員】 永井委員長、位田委員、梅澤委員、高坂委員、澤委員、中内委員、中畑委員   西川委員、本田委員、町野委員、武藤委員、山口委員  【参考人】青井参考人  【事務局】田邊専門官、秦健一郎 ○議事 1)新規のヒト幹細胞を用いる臨床研究を開始する要件について 2)指針の見直しの論点について 3)その他 ○永井委員長 それでは定刻となりましたので、第7回「ヒト幹細胞臨床研究指針の見直しに関する 専門委員会」を始めさせていただきます。まず、事務局より本日の出席状況をご確認お願いいたしま す。    ○事務局 委員の先生方におかれましては、ご多忙なところご出席いただき、誠にありがとうござい ます。お手元の委員名簿をご覧ください。本日の出席をご確認させていただきます。本日は佐藤委員、 鹿野委員、水澤委員が欠席とのご連絡をいただいております。位田委員、中内委員、本田委員、町野 委員は遅れて来られると聞いております。全委員15名のうち12名の委員に出席をいただく予定となっ ておりまして、過半数を超えまして本会議は成立することを報告申し上げます。 ○永井委員長 ありがとうございます。では配付資料のご確認をお願いいたします。 ○事務局 次に配付資料につきましてご説明いたします。議事次第にございますように、議事次第、 座席表、委員名簿、資料1と2が事務局より提出の資料で、資料3から資料7までは委員から提出され ている資料です。また、参考資料1から10と、過去の専門委員会の配付資料は、机上にのみご用意し ております。確認の上、過不足等ございましたらお知らせいただきますようお願い申し上げます。 ○永井委員長 ありがとうございます。前回の第6回委員会では、iPSを用いる研究の現状ということ で、慶應義塾大学の須田先生から、iPS細胞の遺伝子安定性につきましては、東京大学の小川先生から お話を伺いました。また意見交換も行っていただきました。さらに、医政局経済課からは「再生医療 における制度的枠組みに関する検討会」について、澤委員からは「ヒト幹細胞臨床研究のためのGTP策 定について」、それぞれご報告をいただいたところであります。  今日はこれまでのお話を踏まえまして、iPS細胞、そしてES細胞を用いる臨床研究の問題点につい てご議論をいただく。そして、どのように指針に組み入れるかをご討議いただきたいということです。 それでは、本日の議論の進め方につきまして、事務局からご説明をお願いいたします。 ○事務局 前回の委員会の主な意見につきましては、資料1にまとめさせていただいております。資料 1を簡単にご説明いたします。前回の委員会では、特にiPS細胞、ES細胞についてのご議論を重点的に やっております。そのような細胞を用いる臨床研究の対象疾患については、いままでいろいろご討議 されてきた意見とほぼ同様の内容でした。  特に議論が必要なところは、「iPS細胞の安全性について」です。iPS細胞というのは、非常にリス クが高いと考えられ、腫瘍化のリスクも完全に避けるのはなかなか困難であろうということです。そ ういった安全性と実際の有用性といったところの平衡点を考えながらやっていく必要がある。実際の 安全性を検討する方法として、遺伝子的なものだけではなく、エピジュネティックな異常などの検出 も必要であろう。もしくは、さまざまな動物モデルの開発が必要であろうとご意見をいただいており ます。  さらに臨床研究を始めた際に、安全性の確保をその後にでもしっかりと担保する必要がある。例え ば例ですけれども、自殺遺伝子などを組み込んでおいて安全性を確保するというのも1つの方法であろ う、という意見をいただいております。または、何らかの腫瘍が発生したときも、すぐに治療する方 法を、対応策を検討しておく必要があるという意見がございました。現在はiPS細胞の将来性を見据え て目標を作って進めていく、指針を作っていくという考えであるという認識です。  ES細胞につきましては、さらに倫理性の問題がございます。基礎研究はいま行われておりますけれ ども、臨床研究に応用するという倫理性に関しましては、特に容認されるところであろうというご意 見がございました。  そのほか、インフォームド・コンセントの取得の方法についてはさまざまな指針ごとにかなりの違 いがあり、ここを検討する必要もあろうといったご意見がございます。また、現在あるES細胞などを そのまま使っていいものかなど、細かいところでさまざまなご意見がなされております。  その次に「再生医療における制度的枠組みについて」の報告がございました。簡単に付け加えさせ ていただきますと、現在のヒト幹細胞に用いる指針では、単施設の臨床研究が基本的になっておりま す。この「再生医療における制度的枠組みに関する検討会」は、そういった再生医療、または細胞医 療の一般化・普及化を行うというために、投与を行う施設とCPCなどで細胞の培養を行う、2つの施設 を想定した場合のことの検討をしております。  現在出されている意見としましては、医療法の中で行うという考えに立ちますと、それぞれの施設 は医療施設である必要があるということ。あとは共同診療の体制として、インフォームド・コンセン トをしっかりと取得するということ、それぞれの施設の倫理審査委員会などとは診療情報などをしっ かりと共有して、複数の医療機関間で実施していく連携が大事であろうといったご意見がなされてい ます。こちらにつきましては、今年度及び来年度にかけて検討がなされていくといったことが報告さ れております。  最後には澤委員から、今後ヒト幹にGTPの新たな形を加えていく必要があるといったことで、今後さ らに提案をしていただくといったことが前回の委員会の中ではご議論をされております。  次に資料2をご覧ください。「本日、検討すべき論点」を書いております。特にES細胞やiPS細胞 を用いる臨床研究がヒト幹指針の対象となり得るか、というところにご議論をいただく予定となって おります。iPS細胞を用いる臨床研究の具体例を数名の委員から提示していただくという予定にしてお ります。西川委員、澤委員、中内委員、中畑委員の代理といたしまして、京都大学iPS細胞研究センタ ーの青井参考人からご説明をいただきます。それらの研究を具体的に出していただきまして、安全性 を担保するための条件を検討していただきます。  その後、ES細胞を用いる臨床研究については、梅澤委員からご意見をいただきます。さらに現行の ヒト幹指針と文部科学省の基礎ES指針との違いについては、今回はご意見をいただきまして、次回以 降の委員会で整理をさせていただこうと考えております。それらの検討内容を反映させまして、ヒト 幹細胞臨床研究が適正に実施・推進されるように指針の改正を今後行っていくという形にしておりま す。以上でございます。 ○永井委員長 ありがとうございます。それではまず議論の前に、いま事務局よりご指示がありまし た資料1につきまして、これまでの専門委員会の主な意見、これについて何かご確認いただく点はござ いますでしょうか。ちょっとお目通しいただいて、ご確認いただけますでしょうか。iPS細胞について これまでの議論をまとめますと、こちらで少し事前に検討した結論的なことですが、iPS細胞の臨床研 究は、現時点では造腫瘍性が予測できないため、時期尚早という意見があるということ。しかしなが ら、急速な科学の進歩に伴い、早ければ数年以内にiPS細胞の臨床研究が開始される対象疾患も想定さ れる。ここまではよろしいでしょうか。 ○西川委員 ちょっといいですか。実際には、日本の役所は一般的にいまiPSの安全性についてはまだ まだ時間がかかると思われている気がしています。この引用だと必ず安全性がないほうにより片寄っ ているような気がします。やはり社会的な状況も含めて考えると、要するに科学的に安全性をどう確 かめていくかということは、必ずディスクローズして患者さんにわかるようにしていくということが 重要ですけれども、原理的にさまざまな問題は結構オーバーカムされているという感覚ではないかと、 私自身は思っています。ですから、実際に安全性に留意しなさいということは当然な話ですが、安全 性に確実に問題があるという引用は問題があると。 ○永井委員長 腫瘍性が予測できないため、まだ時期が早いのではないかという意見があるというこ とです。現状の認識ということでは、いまだ時期尚早であるというところまでは踏み込まないほうが いいということですね。 ○西川委員 実際にいろいろな役所の方とも話をしていると、安全性に問題があるからほかのところ で頑張るのだという言い方をされるのです。しかし、やはりそれはたぶん間違っていて、かなりの部 分がもう解決しているわけですから、やはりその気のある人はストレートにどうしたらベッドサイド にもっていけるかということをしっかり考えてくださるということが大事である。 ○永井委員長 そうですね。ですからとりあえずの認識として、一応そういうことも配慮、考慮して いると、あるいはそういう意見も聞いているという立場です。それから、「数年以内にiPS細胞の臨床 研究が開始される対象疾患も想定される」というところをまず現状認識としてスタートして、それで 今後どうするかということなのですけれども、それについての考え方ですが、よろしいでしょうか。 「再生医療の将来的な進展を期待しつつ、遵守すべき事項を指針に定める」ということです。ここま でよろしいでしょうか。「特にiPS細胞をヒトに初めて投与する際に求められる、造腫瘍性の可能性に 対しての配慮を策定する」と。 ○位田委員 すみません、いまおっしゃっていることはどこかに書かれているのですか。ちょっと、 文言を出していただかないと判断しにくいので。 ○永井委員長 委員会での意見をまとめているだけです。 ○位田委員 たぶんそういう話なのだろうと思うのですけれど、ずっと読み上げられているだけだと ちょっと分かりにくいので。  ○永井委員長 はい、ではワンセンテンスごとにいきましょうか。ワンセンテンスごとに書き留めて いただきます。まず全体的な考え方です。「iPS細胞の臨床研究は、現時点では造腫瘍性が予測できな いため時期尚早という意見がある。しかし急速な科学の進歩に伴い早ければ数年以内にiPS細胞の臨床 研究が開始される対象疾患も想定される」。現状の理解ということです。それから今後の方向性、予 定ですが、書き留めていただけますでしょうか。「再生医療の将来的な進展を期待しつつ、遵守すべ き事項を指針に定める。特に、iPS細胞をヒトに初めて投与する際に求められる、造腫瘍性の可能性に 対しての配慮を策定する」。この辺が今後の方向性、また今日の課題でもあるという認識、方向性を まず共有しておきたいということです。これについてよろしいでしょうか。 ○位田委員 ありがとうございます。  ○永井委員長 その上で今日は具体的な例が提起されるということかと思います。よろしいでしょう か。それでは、iPS細胞を用いる臨床研究の具体例について、それぞれの委員からご説明をお願いした いと思います。まず、西川委員からお願いいたします。 ○西川委員 本来は高橋先生が来てお話をするところだと思うのですが、基本的に神戸地区でやって いる例としてお話をします。神戸地区では、井村先生が提唱されるICRを、すなわち、Integrative Celerity Researchというお話を実現したい。それはどういうことかと言うと、もうシーズの段階から 治験まで考えて、バリアを全部リストして、チームを組んで最後までやれという話です。そこに関し て、ですからほとんどの人間は直接の実施者ではなくて協力員という形になります。  ここに紹介するのは高橋先生のプロジェクトで、私も笹井先生も、それから例えば澤先生と一緒に 研究をされてきた松山先生とか、それから先端医療財団知財を担当している武田さんとかがチームを 組んでサポートをするという仕組みをとっています。何を議論しているかというと、高橋先生が治療 をしたいと言われる2つの疾患について、どういうパスで実際にiPSを使った治療ができるかというこ とを科学的な見地、あるいは知財・倫理の点から議論し助言する。このプロジェクトが始まったのは、 それ自身にまだ問題はあるのかもしれませんが、センダイウイルスを使ってiPSが作れて、ゲノムに全 く傷が残らないという点が分かった時点で、安全なiPSを使える可能性が高いということで始めました。 そこで議論をしたことは、まず2つの疾患があって、加齢性黄斑変性症というのは現在可能な細胞治療 テクノロジーの対象ではあるけれども、代替治療とかそういうものがあって、実際に実施するにはバ リアは高いという認識の上です。次に網膜色素変性症に関しては、完全に視力を失っておられる方に 関しては、将来、視細胞の移植ということも含めて対象になっていただけるのではないかということ で、Double Trackという仕組みを考えています。  次の頁を見ていただきますと、ここの「現状」が書いてあって、現在の段階は安全性の確認です。 このiPSテクノロジーというのは素晴しいことに、インフォームド・コンセントを臨床の研究とは切り 離して、まず安全性確認というか、プレクリニック、非臨床の段階の安全性確認だけで取るというこ とになるのです。すなわち、動物やin vitroで分化した細胞の中に未熟な細胞が混じっていないか、 腫瘍性がないかということを確かめるためのいま患者さんのリクルートが始まっていて、現在7例の患 者さんが、これは全部色素変性症の方ですが、最終的に15例までそれが集められるという仕組みにな っています。その中でiPSが作られ、網膜色素細胞が作られるわけですが、作りにくい患者さんと作り やすい患者さんが出てくる。できた患者さんに関しては、詳しいことは言えませんが、in vitroの方 法とin vivoの方法で、1年間かけて安全性を確認するということで、まず1段階が終わる。  次に、これからが臨床試験で、ここの部分に関しては、明らかにヒト幹の指針に申請をするという ことになるわけです。それが2012年秋に、2012年というタイムラインを決めて、次にphaseI安全性 確認のためだけの網膜色素細胞の移植をやると考えています。これに関しては、実際に効果があるか どうかは分からないということを理解していただいた上で、網膜色素変性症の患者さんを対象にする ということも決まっております。  それで安全性が確認された時点で、次に効果の、これは安全性確認が2回続いていますが、効果のた めというふうになっています。ただその間に研究が進んで、安全な視細胞の移植が可能になった場合 には、網膜色素変性症の患者さんに関しては視細胞移植をターゲットにするという仕組みをしていま す。  こういうプロジェクトをいまの段階でどのように運営しているかというのが、次の頁に示していま す。Retina Project定期MTというので、例えばもちろん高橋先生は必ず入られるわけですが、私がい るときには私も出て、例えば松山先生も出て、いろいろな人が出て来て、これに関して月1回進捗及び 安全性等々に関するアイディアの交換をやっています。  問題点の議論もしておりまして、例えば議題を、次の頁を見ていただきますと、企画及び試験方法、 長期腫瘍化の評価方法、継続検討項目というようなことがあって、次の頁を見ていただきますと、結 構細かい問題を議論しています。例えば、黄斑変性症に関しては、既存薬との比較による問題点の洗 い出しというような問題も議論しております。ですから、ここでどのぐらいバリアが高いかというの は、バリデーションも完全にやっておりまして、プロトコルもここに書いてある、あるいは血清であ るとか、分からないところに関しては松山先生を通し、早川先生に直接お聞きするというようなこと を全部リストして、これを進めるということをやっています。ですから基本的に2012年前後に神戸地 区では、このiPSからの臨床研究を行いたいという方向で、一丸となってやっているということで、そ れぞれいろいろなデータが出てきたら必ずディスクローズするつもりですので、その進捗に応じてこ ういう問題があるということを逆に皆さんに提供できれば、指針策定についてもお役に立つのではな いかと思っています。以上です。 ○永井委員長 はい、ありがとうございました。それでは、ただいまのケースについて、何かご意見、 特に安全性を担保する条件という観点から、ご意見をいただけますでしょうか。 ○高坂委員 綿密な計画でやられていると思うのですが、3頁の安全制の確認で、非臨床のところで、 一応動物レベルを含めて安全性を確認ということなのですけれども、実際、ヌードマウス等を使われ てやるのかということですか。 ○西川委員 実際に安全性確認で、現在チャートは2つの方法が考えられています。1つは、iPS・ES 細胞が、もっとも増殖できるコンディションで、移植予定数の100倍の細胞を培養する。移植予定細胞 というのは、その条件で死んでしまうということがわかっていますから、in vitroでまず1つの試験 をやると同時に、SCIDでやることが決まっているのですが、NOD/SCIDかSCIDかの議論もして、SCID でいいという話までしています。  ただ、それで理解していただけるかどうかというのは、次の問題で、いま、さらに高いレベルのも のができないかということで、新しい開発項目としてヒトのエンブリオニックカルシノーマがありま す。ヒトのエンブリオニックカルシノーマとヒトのES細胞を増すSCIDの条件というのを、いま調べて います。エンブリオニックカルシノーマが少なくとも1個の細胞が増えるという条件がみつかれば、最 終的にはそれを使おうと。ただし、ここは現在のチャートの中に入れるという話にはなりません。議 論の結果、新しい開発項目があれば、これは高橋先生ではなくて、誰か手を挙げてやっていただく。 ○高坂委員 最近よく問題になっているのは、iPS細胞を樹立するときに、由来の細胞によって腫瘍化 も違ってくる、分化も違ってくるということがあるとよく言われていますけれども、この網膜色素変 性症、すなわち色素細胞への分化という意味では、最適のヒューマン由来の、どこの細胞から取った のがいちばんいいかということは、検定されているのですか。 ○西川委員 実際には、センダイウイルスで作ったケラチノサイトとファイブロブラストは、どちら も同じということがわかっているのです。遺伝的要因が多い色素変性症治療の将来を考えると、臍帯 血からiPSがうまくできますので、これを使う仕組みのプランが新たに検討項目になっています。ただ、 現在は、エントリーの方というのは、一緒に取れますから、ケラチノサイト、ファイブロブラストと いう話でやっています。 ○高坂委員 ありがとうございました。 ○中畑委員 臨床での安全性の評価の経緯ということで、一応1つSCIDを考えているということです けれども、花園先生が出されたデータで、要するに、造腫瘍性があって、テラトーマ形成があっても、 それはSCIDレベルではリジェクトされるということで、やはりもう少し厳密なイムロサプレッシブな 動物で評価すべきだということです。だから、現時点では、NODマウス、NOD/SCIDのコモンγのノック アウトマウスが最適なマウスではないかと思うのですけれども。SCIDだとおそらく、テラトーマみた いなものが入ったとしても、SCIDマウスはリジェクションしてしまうので、それでは評価できないの ではないかと思うのですが。 ○西川委員 コモンガンマは意味があると思っていますが、NOD/SCIDに関しては、CD47でしたか、ジ ョン・ディックの仕事がありますから、基本的に最終的な免疫不全の問題、あるいはNKの問題ではな くて、これは、骨髄移植に特化したものだろうと思っています。ですから、基本的にコモンガンマ、 いわゆるNKもないものであればいいと思っていますし、いまのところはできればそこでやりたいとい う議論をしたのですが、ただ、いまおっしゃった部分に関して、in vitroでかなりやれるのではない かという点が1点。  ですから、実際に生産されてきたものに関して、そこに未熟なものが混じっているかどうかという ものを、どうすればいちばんセンシティブにアッセイできるかといったときに、in vivoのアッセイが いいのかin vitroのアッセイがいいのかということに関しては、結論が出ていません。まだ僕らはin vitroのアッセイがかなりパワフルではないかということで、チャートとしては両方やろうと、その結 果は全部開示しますから。 ○中畑委員 もう1つは、センダイウイルスだと要するにインテグレーションもないから、より安全で はないかという議論があるのですけれども、一方、センダイウイルスだとトランスジーをしっかり定 量的にできないのではないかというようなことも。 ○西川委員 トランスジーンと何がですか。 ○中畑委員 トランスジーンがシャットダウンされているかどうかということが、しっかり。 ○西川委員 それも、実際には、レトロウイルスを入れたGFPを使って、レトロウイルスGFPを使って、 どういうカイネティックスでサイレンシングが起こっていくかというのを全部、確かめてあります。 ○中畑委員 センダイでいけば安全にできるということが。 ○西川委員 ただ、センダイより、もっといい技術が出たら、それをやればいいわけで、例えばリガ ンドであるとか、いまタンパクがもっとエフィシェントになればタンパクでいいわけです。ですから、 いまはセンダイしかないという認識であって、条件は明確ですから、ゲノムが変わっていない、セン ダイウイルスが残っていないというものに関して、安全性を評価する。リクルートに1.5年かかります から、その間にもっといいものが出てくるということは、当然期待しています。ですから、最終的に ヒト幹細胞に申請をするときには、もっといい方法であればいいと思います。 ○中畑委員 センダイウイルスがいない条件を作ることが、いま、可能になっているのかどうか、そ こもちょっと問題だと思うのですけれども。 ○西川委員 それは、可能になっています。 ○中畑委員 そうですか。 ○永井委員長 ゲノムの変化が起こっていないかどうか、GWASぐらいのことはなさるということです か。 ○西川委員 いえ、エピジェネティックな変化があることは、たぶん間違いがないと思っていますし。 ○永井委員長 いわゆる、遺伝子の増幅、欠損については。 ○西川委員 それに関しては、ホールゲノムでシークエンシングするというとこまでは考えていない。 ○永井委員長 アレイでも結構なのですが。 ○西川委員 そうですね。CHGアレーは、もちろん入れてあります。 ○中内委員 黄斑変性は非常にいいターゲットだと思いますけれども、2頁のDouble Trackというの が、よく理解できないのですが。Aでヒトの安全性を確認後、Bでヒト幹申請というのは、どういう。 ○西川委員 それで、どれですか。 ○中内委員 2頁の下に。 ○西川委員 何段目ぐらいですか。 ○中内委員 臨床研究の流れというものの下に、Aでヒトの安全性を確認後、Bでヒト幹申請というの は。 ○西川委員 Aでヒトの安全性を確認後、Bでヒト幹申請というのは、加齢黄斑変性症の話です。実際 にAでの臨床試験というものは安全性までであって、本当の意味で効果が確認できれば、○○先生は効 果が確認できるとおっしゃっているのですが、僕らとしては、それに関して、完全にアーギューをし ていて、安全性以上のものは期待できないということを、患者さんに伝えるべきであるというふうに 言っています。色素細胞だけの移植の場合はですね。 ○中内委員 加齢黄斑変性症のほうでは、効果は期待できる。 ○西川委員 それは、期待できると思います。ただし、オルタナティブがあるし、視力はもともと持 っておられますから、さまざまなバリアはあります。ですから、かなり煮詰まった手技等がないと、 たぶん難しいと思っています。 ○中内委員 iPSを使うと、RPEにしても加齢黄斑変性にしても、いろいろな病態があって、例えば、 最近FDAにINDを出したアドバンスセルテクノロジーは、遺伝性の若い患者さんに限定する。それは、 ESですけれども、iPSだと本人がジェネティックな異常があると、それでは治せないのですが、そうい ったターゲット疾患に対しては、何か厳密な。 ○西川委員 ES細胞は、MHCのマッチングをする必要は絶対あります。私たちのスキームは、基本的に 自己細胞のラインで書いていますが、今後予想されるのは、高坂先生たち、あるいは、中内先生たち が進めてきた臍帯血バンクというものを利用することが重要かと思っています。臍帯血は、完全にGMP 化されて取られて、しかもクラスマッチできたものを利用できます。臍帯血を同種と括ってしまうか どうかのポイントになってくると思うのですね。臍帯血に関しては、基本的にマッチングしておれば 自己という話で入れていただくと、実際、網膜色素変性症で遺伝的な方に関しても、治療の道が開け るわけです。ですから、これは今後ここで議論を是非していっていただきたいと思っています。 ○中内委員 視細胞は、どっちみち拒絶されにくいので、あとでも大丈夫ではないのですか。 ○西川委員 色素細胞がですか。 ○中内委員 いや、視細胞のほうが。だから、こういう形になっていたのだと思うのですけれども。 ○西川委員 ただ、色素変性も起こっていますから、基本的には色素細胞を入れる必要は絶対あるの です。というのは、高橋先生の認識で、これは私は専門ではないので。その場合に色素細胞というの は、大変リジェクションが強いということを聞いていますから、やはり両方入れるということが必要 になったときに、マッチングというのは絶対必要だというふうに、高橋先生は思っておられて、僕ら もそれをサポートすると。 ○永井委員長 何個ぐらいの細胞を、どういう形で入れるのですか。シートにするのか。 ○西川委員 実際には、最初のphaseIでは、105というものを基本的には注入します。シートをその まま入れるのではなくて、ばらしたものを注入するということを、いま、プロトコルにしていますが、 これはまだ1年半ありますから変わるかもしれません。 ○永井委員長 万一、腫瘍化してしまったときには、レーザーで焼灼するということでしょうか。 ○西川委員 今日は時間がないので、たぶん、眼科の先生に詳しく聞いてもらった方がいいのですが、 私もびっくりしたのですが、本当に眼底に関しては光学的に極めて高いレゾリューションの映像が、 しかも断面で撮れます。そういう意味で、もちろんレーザーがありますし、さまざまな方法でのリゼ クションというのがあり得るだろうと。もちろん、そういうことがないようにするということが大事 ですが、早期診断は可能であるという認識でいます。 ○永井委員長 まだ、ご意見もあろうかと思いますが、少し先へ進ませていただきたいと思います。 澤委員から、次にお願いいたしたいと思います。 ○澤委員 私のは「iPS cells」と書いた資料で、「重症心不全に対する自己iPS細胞由来、心筋細胞 シート移植治療法の確立」です。これは、最終的に自己に限るかどうかは、まだ議論のあるところで あると考えていますが、私たちがこれまで開発してきたシート技術といま開発中のiPSから心筋への分 化をミックスさせた治療法で、重症心不全と申しましても、対象疾患は拡張型心筋症、もしくは虚血 性心疾患(ICM)の末期移植適用のレベルか、その直前ぐらいのレベルを想定しております。  3頁。女子医大の岡野光夫先生が発明された「温度応答性培養皿」というのは、とにかく蛋白構造を 完全に保ったまま細胞を回収いたしますので、このように基底膜や蛋白発現をプリザーブします。で すから、もっとも心臓で必要な電気的なコネクション、コネクシン43のような電気的なギャップジャ クションを保存して移植するということが、いま行われている治療より効果の高い治療法として、よ り高い効果をもたらすだろうということが予想されます。  4頁。実際には、心筋梗塞の真ん中の青いドットから比べて、心機能の改善もしくはリモデリングの 抑制というものが、既にマウスのiPS細胞シートの移植で証明できております。  5頁。この組織構造は、いままで臨床で行っております自己の足の筋肉の細胞のシートと比べても、 組織構造的にずいぶん異なったリモデリングの抑制、もしくは再生効果が見られると。筋芽細胞の場 合は、やはり自己修復起点と我々呼んでおりますが、増殖因子ですとかステムセルが介在するような、 いわゆる炎症反応的な組織修復が起こっていますが、iPS細胞の場合は、次頁でもっと拡大しておりま して、ぼけてしまっているのですが、内側の梗塞部位に対して、細胞組織、心筋用組織の層がきっち りと確立し得ているのではないかと考えられまして、いま電気的なつながりとかこの辺りを研証しつ つ、かつ、やはり、造腫瘍性についても克服を目指して研究を進めております。  7頁です。ヒトiPS細胞の心筋への分化につきましては、これはいま検証中でありまして、ある程度 の進展は見られておりますが、まだ大量に再現性が高くヒト由来のiPS細胞からの心筋の分化は、完全 には確立されていないというのが現状です。  最後の頁、このような心筋再生のiPS細胞の臨床応用ということです。前回のこの会でお話をさせて いただきましたGTPの基準というものをいま作らせていただいておりますが、これは、現在あります 1314号を基準にしまして、ヒトFirst in manの臨床研究から治験レベルまで、ある程度共通する内容 というものを考えて、いまGTP(案)を作成しているところでありますが、その骨子、ミニマムリクワ イアメントは、培養中のコンタミネーションとか培養サンプルの取り違いと、副作用という、特にiPS の場合は造腫瘍性、そういった心臓の場合は、やはり不整脈の発生ということが中心になってくるか と思います。要は、iPS細胞であってもES細胞であっても、また自己、他家のステムセル系由来の細 胞治療であっても、根本的なところはGTP基準では変わらない。ですから、先ほど来の議論のように、 造腫瘍性ということをいかに克服するかということが基準になってくると思います。  そういうことをいかに解決していくかということだと思いますが、我々の場合ですと、いま考えて いるのは、心筋細胞で、最終分化した段階で移植するのが正しいのか、一歩手前の段階のステムセル レベルで移植するのがより効果が高いのかを検証している点が1つあります。そこでも、やはり造腫瘍 性ということは、in vivoで完全にフォローしないといけないと考えております。ただ、対象疾患とし ては、重篤で致死性の高い疾患を踏まえますと、いま私たちは足の筋肉の筋芽細胞で臨床研究を行っ てきましたように、ノーオプションで心臓移植を待期している補助人工心臓装着下の患者さんが、や はり最初の対象になるのではと考えます。以上です。 ○永井委員長 はい、ありがとうございます。ただいまのご講演に、何かご意見ございますでしょう か。 ○梅澤委員 疾患名がわからなかったのですけれども、教授いただけますか?。 ○澤委員 拡張型心筋症及び虚血性心筋症です。 ○永井委員長 ヒトの心筋に貼り付けるシートを作るには、相当の細胞数が必要だと思うのですけれ ども、それはいつごろまでに開発できそうなのですか。 ○澤委員 大体、いま予測しているのが、109個前後かと考えておりまして。 ○永井委員長 何層ぐらいですか。 ○澤委員 やはり、いまの段階で、5層ぐらいでやってきたのですけれども、これを10層以上にとい うことで考えております。 ○永井委員長 マウスで5層で、人ですと50層とかですか。 ○澤委員 マウスでは、1層か2層ですね。 ○永井委員長 2層でいいですか。 ○澤委員 2層ぐらいですね。 ○永井委員長 2層ぐらい。 ○澤委員 はい。 ○永井委員長 人ですと、5〜10層。 ○澤委員 大動物だといまの印象では、3層ぐらいですね。 ○永井委員長 そのときに、虚血になる可能性はないのか、つまり冠動脈の灌流を確保しておかない といけないと思うのですが、そこは何か手段がありますか。 ○澤委員 そこの工夫は、いまやっていますのは、大網を上から貼り付けるという方法が、1つの血流 確保の手段という形で、ステルセムの場合もそうやっているのですが、さっき申しましたように、最 終段階に分化させた心筋細胞のシートを貼ることが本当にいいのか、その1つ手前のステルセム系でよ り虚血耐性の高いレベルで移植してから数が増えてくるほうがいいのかは、これは少しいままでの細 胞治療がサイトカイン療法である点から見たら、ずいぶんポイントになってくると思います。 ○永井委員長 心筋細胞でなくても、サイトカインを分泌するような細胞であればよいかもしれない。 ○澤委員 いままではそうだったと思いますが、いま、やはりiPSに求められるのは、ギャップジャン クションでつながる、電気的に興奮し得る細胞であるとするならば、やはりそこでは、いま永井先生 がおっしゃった点をクリアにしないといけない。それをいまやっているところなのですけどね。 ○武藤委員 ご説明、ありがとうございました。素人なので的外れかもしれないのですけれど、先生 が最後におっしゃった、最初に患者さんになり得る方は拡張型心筋症で、補助人工心臓を装着下で、 心移植待期中で、ノーオプションの方ということですよね。現在、そういう方々で、臓器移植ネット ワークに登録して待期されている状態の方もいらっしゃるのかなと思うのですけれども、その先生が 想定されている疾患の方は、例えば、いま待期者のリストの中で言うと、かなり移植も受けられる機 会が高そうな方々ですか。 ○澤委員 そうですね。移植を受ける可能性、もちろん全員が可能性があるのですけれども、3年間の 待期がそれだけ患者さんにとって不利益がないかどうかですよね。3年間が安全に経過できるならいい のですけれども、常に人工心臓による合併症のリスクとの闘いの中で3年間待期されているというのは、 非常に大きな、毎日がリスクなので、そういう意味から言うと、たとえ最終的に心臓移植であっても、 人工心臓から離脱した形で待期していただくほうがいいと。実際、我々が1例目、足の筋肉の細胞で治 療した方も、現在移植待期リストには載っていただいたままで、ステータス2という状態になって、移 植の機会はいまも継続しておりますので。一度、登録した場合、1か2か、その条件で変わってくるの ですけれども、いずれにしても3年の待期というのは過酷な状況ですので。 ○武藤委員 そうしますと、先生の研究に協力された方が、待期しながら先生の研究にご協力もでき ると。 ○澤委員 そうです。もう、最初から、そういう項目になっていまして、待期することはそのままで、 この研究に参加するというのが、いまの条件になっています。 ○武藤委員 ありがとうございます。 ○永井委員長 それで、明らかに有効であった場合には、人工心臓を離脱することが可能ですね。離 脱してしまった場合にはステータス2になりますので、優先順位は下がるということです。 ○武藤委員 ありがとうございます。 ○西川委員 戦略的な、基本的には澤先生がやってられる部分ではないのだけれども、先ほど永井先 生も聞かれたのですが、細胞数を大量に注射するというのは、なかなかバリアが高いところがある。 私自身がやっているわけではないのですが、例えば、ドイツのハノーファーの心臓のグループなんか は、アトリアルセルを始めから対象にして、結局は悪性の不整脈、アブレーションしてもなかなか治 らないようなものを狙うと細胞数が少なくて済むのではないかという話はあるのですが、そういう研 究所は日本ではあまりないのですかね。 ○澤委員 そうですね。日本ではないですね。ほとんどないと言っていいと思います。まだ、本当に 我々がやった足の筋肉の細胞の細胞数も妥当かどうかわからなくて、実際、いままで世界でやられた のを完全にミミックしたという形ですので、だから、ドーズフルまではいかないです。 ○西川委員 そうですね。もし、心臓全体でやはり戦略を練っていくということは、やはり結構重要 だと思っています。そういう場合に、当然心筋を作るということの1つの延長線上に、侵出したアトリ アルセルの分別、あるいはもっと極端な話では、ペースメーキングができる細胞を作るということは あっていいと思うし。順番に移植して、本当に使えますよということをみなさんに見ていただく意味 では、少数の細胞でいくものも、ある程度ターゲットにしていただけるとありがたいという感じがし ます。 ○澤委員 ありがとうございます。先ほど、西川先生のところの網膜は、非常に参考になって、筋芽 細胞でもそうだったのですが、まず、私たちも安全性をまず見る。安全性を見させていただく条件は、 補助人工心臓が付いている患者さんがいちばんよくて、不整脈が起こっても本人はほとんど気づかな いぐらいの状況ですので。 ○永井委員長 ありがとうございました。 ○山口委員 ちょっと、お伺いしたいのですけれども、先ほどから問題となっている造腫瘍性の問題 なのですけれども、たぶん非臨床の段階で100%というのは、たぶんあり得ないと思うのですね。そう すると、やはり投与した後の評価、モニタリングが非常に重要だと思うのです。眼の場合には、先ほ どご指摘いただきましたように、外からかなり見えるという話があります。心臓の場合、そういうモ ニタリングをどうしたら造腫瘍性が評価できますか。 ○澤委員 おそらく、いままでマウスでもそうなのですけれども、エコーでもはっきりイントラマス クルの部分では極めて初期の段階では難しいかもしれません。ある程度マチュアになってくると、は っきりわかりますが。ですから、初期の段階は、まだやっていませんけれども、ほかの画像診断を駆 使するのがいちばんいいと思っています。 ○永井委員長 MRIを組み合わせていけばわかるのではないかと思いますけれども。よろしいでしょう か。 ○高坂委員 1点だけ教えてください。6頁なのですが、この組織図の拡大を拝見しているのですが、 先ほどおっしゃったマチュアなものをシート作るかインマチュアなものを作るかというのをおっしゃ ったのですが、この例というのは、どちらのケースなのでしょうか。 ○澤委員 この例は、マチュアなほうで、実は2頁目にある真ん中の絵は、紙なので見えませんが、あ れは拍動した段階で、2層を貼り付けているというところです。 ○高坂委員 測定上、できる限りは、2層ではなくて。 ○澤委員 2層ではないですね。 ○高坂委員 増殖したと考えるのですか。 ○澤委員 これだけ見た場合には、増殖した可能性があるということです。マチュアかどうかは、拍 動しているだけで認識はなかなかしにくいですね。拍動を始めてさらにマチュレーションしている可 能性もあるので、そこの状況は判断しにくいところではあるのですけれども、拍動した段階での細胞 を貼り付けてということです。 ○高坂委員 増殖部位で分化というのは、細胞のマイグレイションみたいなものはあるのですか。 ○澤委員 まだ、検証を進めているところなのですけれども、この段階で見た限りでは、上に新たな 層が乗っているという状況で。これは細胞シートの特色で、細胞シートを作った段階から、ある程度 の細胞外マトリックスを作っていますので、細胞は弾力性に動く可能性ももちろんありますけれども。 ○中畑委員 心筋の場合は、胎児型であればある程度増殖できると思うのですけれども、iPSから誘導 してきた心筋の場合は、胎児型の心筋が出てきているのか、あるいはアダルトタイプの心筋で、全く 増殖のないようなものしか出てこないのか。もし胎児のものであれば、ある程度移植した後も心筋の 状態でも増殖できるということが予想されるのですけれども、その辺はいまどんな状況なのか教えて ください。 ○澤委員 先生のおっしゃるとおりで、そこは明確ではないのでなかなか先ほども言えなかったので すが、通常のフィータスの心筋細胞は拍動しながらある程度増殖しますし、完全なマチュレーション とともに変わりますので、その点はまた検証したいと思います。 ○永井委員長 ちょっと時間が押してますので、次に中内委員からiPS細胞由来血小板誘導する臨床研 究について、ご説明をお願いします。 ○中内委員 ヒト多能性幹細胞由来の血小板の臨床研究を考えております。2頁目に、血小板について 簡単な説明があります。血小板は、骨髄中の巨核球という細胞の細胞質がちぎれたもので、巨核球は 図の四角の中に示す大きな細胞なのですが、そのため、細胞質のみから構成されていて核を持ってい ないという、そういう特徴があります。寿命が非常に短いというのも、もう1つの特徴だと思います。  次頁に、iPS細胞からいろいろな血液系細胞を分化誘導することについてまとめて書いてあります。 いま少子高齢化によって献血者数が減っている。赤血球や血小板は凍結保存できないために保存期間 が短く、血小板は4日、赤血球は2週間ということで、供給は常に不安定である。一方、iPS細胞は無 限に増やせますので、産生法が確立されれば、献血によらない安定した供給が可能になると。また、 献血ですと、どうしても感染初期の献血者などによる感染リスクがあるのですけれども、これをかな り減らすことができるだろうと。  それから、血小板の輸血には、臓器移植と違ってHLAのタイピングが通常いらないですね。ただし、 繰り返し輸血が必要な特種な患者さんはHLAタイピングが必要です。ということから、Rh-でO型のES 細胞又はiPS細胞が一株あれば、世界中の血液を理論的には供給できるはずである。繰り返し投与が必 要な患者さんの場合には、患者由来のiPS細胞を作ればいいだろうと。最大の特徴、利点は、血小板は 先ほど申しましたように核を持っていないため、放射線を照射してから移植できます。したがって、 造腫瘍性の心配というのは、ほとんどないと考えられます。したがって、安全性の確保が容易であり、 また、遺伝子操作をして血小板を作りやすくしたiPS細胞を使ったとしても、それが腫瘍性につながる ということもないという特徴があります。  4頁に我々が開発した血小板分化を誘導する過程がありますが、ここで強調したいのは、やはり3週 間という長い間培養をしなくてはいけないということと、いまの状況ではマウスの細胞と共培養が必 要である。それから現在はウシ胎児血清を使って産生をしているという特徴というか課題があると思 います。  5頁に、実際に作られた血小板が本当に役に立つのかということが示されています。これまでにin vitroの試験管の中でいろいろな検査をしましたが、それでは正常だと。しかし、体内でどうかという ことがなかなか分からなかったので、最近動物の中でヒトのiPS細胞より産生された血小板がちゃんと 血栓形成能を持つということを証明することができましたので、in vitroだけではなくてin vivoで も機能を確認しているという状況です。  6頁に「臨床研究の目的・意義」が書いてあります。iPS細胞由来の血小板が輸血血小板と遜色なく 機能をして、安全であることを確認する、これが目標です。これの将来的な意義としては、先ほど言 いましたように、安定した血小板の供給。安全で安定した血小板の供給法の確立。iPS細胞由来の血球 産生法の開発につながるために、種々の血液疾患の病態解明とか、将来の輸血体制改善の契機となる だろう。再生医療の進展の発端になり得るのではないか。繰り返し輸血の必要な患者に対しても対応 できるような輸血法ができるのではないか、等です。  7頁に課題をまとめてあります。先ほど言いましたように、1)マウス細胞との共培養がいまのところ 必要です。しかし、これはJACEの製造にも使われていますし、この方法の妥当性を考察する。駄目だ と言うのでしたら駄目なような対応をしますし、これでいいのだったら現状でもいいだろう。それか ら、2)ウシ胎仔血清使用というのも同様です。ウシ胎仔血清を使用しています医薬品の前例はたくさ んありますので、本当にこれを無血清にするとか、あるいは何か別な形にする必要があるかどうか、 これを考える必要があるのではないか。3)は血小板産生効率で、どれぐらいの数の血小板を投与すれ ば臨床研究として成り立つのか。もちろんその用量を検討することも研究の目的の1つなのかもしれま せんが、どの程度までの数の血小板を入れるべきなのかというのは、考えなくてはいけないことであ ると思います。  4)投与対象疾患ですが、やはり重篤な患者さんであるということが1つの要件になると思いますので、 現在考えているのは、DICの治療を要する末期がん患者を対象に最初の臨床検究を行うのはどうだろう か。そして安全性・有効性を予備的に検討していって、将来の十分な評価につなげるのがいいのでは ないかと考えています。  最後「HLA適合血小板の供給」の原理をお示ししたのです。遺伝性の血小板減少症、血小板無力症の 患者さんで、非常に運悪く非常に希なHLAのタイプを持っている方は、なかなかドナーが見つからない ので苦労をしているのです。この場合はHLAが適合した健常人ドナーからiPS細胞を作って、血小板を 作ってあげればドナーに対する負担がなく、HLA適合血小板が供給できる。この1つの例を示していま す。以上です。  ○永井委員長 どうもありがとうございます。これは同種他家のiPSということでよろしいですね。 ○中内委員 そうですね。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○中畑委員 私は以前、造血幹細胞から血小板を作るということで工場を作って、私がその社長にな ろうなんて考えた時代もあったのですが、結局いろいろ計算をすると、対費用効果で膨大な、1パック の血小板を作るのにおそらく数100万とか、1,000万とかかかってしまう。その当時の計算ではなかな か難しいなということを考えていたのですが、その辺についての先生方の、何か特殊な使い方もある と思うのですが、その辺についてのお考えをお聞かせください。 ○中内委員 いろいろな考え方があると思うのですが、私はいまのところお金のことは考ておりませ ん。まずは原理を示して、本当に有効であるのだったら、それはそれなりの大量培養の研究をやって いる人もおられると思いますので、そういう所の協力を得て一般化すれば、だんだん安くなっていく のではないか。最初はちょっと高いかもしれませんが、それは新しい医療をやっていく上での必要経 費ではないかと私は考えています。 ○永井委員長 ほかにいかがでしょうか。 ○山口委員 7頁で、中内先生が問題提起をされておられるところの、たぶん1番と2番のところにつ いては、これまでJACEの場合は違うのですが、いまOP9でやられるとすると、OP9を評価すれば、た ぶんメインにはウイルスの安全性だと思うのです。そこと、あと不純物というか、細胞由来の不純物 がどれだけくるかという話になると思うのです。それはいわゆるセルバンクを作ればきちんとした評 価は一応できるはずだろうと、理論的にはできるはずだと思うのです。血清についても、これまでの 細胞治療の中で、ウシ血清を使ったヒト使用はもちろんやられているわけですので、この3つに関して 言えば、克服できない課題ではないのではないかという気がするので。ただ、プライマリセルを使わ ないとなると、かなりハードルは高くなると思うのです。 ○中内委員 どうもありがとうございました。いまの我々の目的は、むしろ効率に向かっていて、ガ イドラインで例えばセルバンクの細胞だったらいいとか、あるいはウシ胎仔血清を使ってもいいとい うのであれば、非常に我々にとっては楽なのですが、もしそれが何かあって駄目だというのであれば、 今度はそれにガイドライン用に適合した形の研究開発をして、それに対応できるようにしようかと考 えています。 ○山口委員 ですからその解析をしたとき、もし生きているレトロウイルスがいたりすると、ストロ マセルとかフィーダーセルも、なかなかそれが使いにくい。 ○中内委員 その場合も作り直すか、共培養が不要な培養法を考えることによって対応しようと考え ています。 ○山口委員 わかりました。 ○高坂委員 腫瘍性、造腫瘍性がないというか、かなりこれはプロミッシィングではないかなという 気がして聞いていたのですが、このiPSから樹立して作られた血小板というものの性質なのですが、こ れは例えばターンオーバーは正常と変わりないとか、あるいはATPに対する応答性が全く変わらないと か、そういったキャラクターゼーションはどの程度まで進んでいらっしゃるのでしょうか。 ○中内委員 それはヒトのiPSをネズミに入れるというタイプの実験ですが、一応in vivoでもう調べ てありまして、in vitroのADPとかトロンビンとかに対する反応性も、まあちゃんと見ています。in vivoでもハーフライフや血栓形成能も最近示すことができましたので、それなりに機能し得る血小板 であるというふうには考えています。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。それでは次に京都大学iPS細胞研究センターの青井先生に、参考 人としておいでいただいております。iPS細胞バンクについてご説明をお願いいたします。 ○青井参考人 よろしくお願いします。京都大学の青井と申しますが中畑先生の代理ということで、 今日は「iPS細胞による再生医療の課題」について、3つの話をさせていただきます。  まず1つ目は「iPS細胞による再生医療の将来的な‘出口'はどこに設定すべきか」と、やや総論的 なところになります。3頁、iPS細胞による再生医療の目指すべき将来像というのは、医療一般と同じ で、もちろん同様でありまして、十分に安全で十分に有効で、そして適用対象となるすべての患者さ んに施行可能なものとなるということです。  そう考えますと、自家移植、それからバンクも含んだ他家移植、これは「産業界との連携」と書い ていますが、産業界の参画というのが必須ではないか。もちろん、やがては保険適用への道というこ とが考えられます。もちろん最初の一歩を踏み出すわけですが、その一歩目というのが、この出口に 向かう道筋になった一歩であるべきということを、諸制度に当てはめて考えますと、その詳しいこと は触れませんが、私の理解ではやはりiPS細胞の薬事承認を目指すことが必須にやがてなってくるので はないかと考えております。  4頁、その薬事のほうは早川先生の研究班でいま見直しして、先日ファーストドラフトが上がってま いりましたが、こちら薬事治験のガイドラインでは、同種、自己ともに想定されております。異種成 分導入遺伝子残存、フィーダー細胞あるいは海外からの細胞輸入と、いずれも想定された間口の広い ものになっていまして、やはり、ここに前頁で申しましたところにつながるような臨床研究であるべ きであろうとの考え方から、このヒト幹臨床研究のほうも、これらのことが可能であるようなフレキ シビリティと申しますか、そういったものがあるほうが望ましいのではないかと考えています。  5頁の話は、臨床研究開始、先ほどFirst in manという言葉が出ていましたが、その要件となる科 学的妥当性に関する問題です。  6頁。iPS細胞を用いた再生医療というものは、樹立、増幅、保存、分化誘導、そして必要な細胞を 選び出して移植すると、非常にたくさんの、ここに書いていない部分もありますが、たくさんのプロ セスがございます。この赤の矢印のどのプロセスで評価すべきか、そしてどのように評価するかとい うことを考えていくことは重要かと思われます。  7頁、この問題について考えるときに、「iPS細胞の多様性」について考えることが重要です。iPS 細胞は由来細胞をどうするのか、導入因子をどうするか、因子導入法をどうするのか、さらには保存 法だとか、培養の培地だとか、フィーダーをどうするか、そういった辺りが現時点では、まだどれで いくか、どれが最善かというのはきちんとは定まりきってはいません。  8頁。いろいろな可能性があるのですが、前頁で示しましたような異なった作製法というのは、出来 上がったiPS細胞の安全性や分化能力の違いにつながることが、さまざまなデータから分かっておりま す。さらにiPS細胞の場合は、同様の作製法、さらに言うなら1回の作製工程で、1枚の同じお皿の中 に出来る複数のクローンで、クローンごとに安全性や分化能力が違う、多様であるということが、こ のiPSの幹細胞研究の特殊性だと考えております。  9頁。そういったことを考えますと、私の意見としましては、少なくとも2つのプロセスでの評価、 さらにはレギュレーションというものも必要ではないか。即ち多くは最終的に投与する、薬事でいう ところの製品である、移植細胞のところでの安全性の評価が、先ほども何名かの先生でご議論になっ ていましたが、やはり、ことiPSの医療に関しては、右上のほうの矢印、未分化iPS細胞としての状況 での評価があるべきであろうと考えています。iPS細胞というのはたくさん増やせますので、例えばゲ ノムを調べるにしても、そのサンプル等がたくさん取れるということがありますし、同ロットのたく さんの保存検体というのは、常にそこまで戻って同じ条件のものを製品化したり調べたりすることが できることになります。  10頁。さらにプロセスに関しては、いま言ったように2つのプロセス。西川先生のお話がありまし たが、具体的にどうやって評価するかという評価の方法、それから何回その試験をやればいいのだと いうところにまで、具体的に現時点でどうすれば科学的に妥当だと言えるのかということのコンセン サスを作っていき、また、それを更新していくようなことを、もちろんそれは例えば未分化のiPSの状 態でしたら、私たち京都からたたき台を、あるいはいろいろなデータを皆さんにお出しいたしますが、 そのシステムとしてそういうものがあるほうが、むしろブレーキではなくてアクセルにきちっと推進 して、腰が引けずに前に進めのアクセルになるのではないかと考えております。  11頁、3つ目の話、制度的枠組みの整備について最後に触れます。  12頁。従来の幹細胞治療は採取医療機関があって、調整機関、これ医療法では加工医療機関という 文言かと思いますが、移植医療機関という関係です。  最後13頁。iPS細胞を用いた再生医療を考えたときに、この採取医療機関と移植医療機関の間にiPS 細胞樹立機関と分化誘導機関、これが必ずしも1つではなくて、異った機関である可能性もございます。 それはいずれの工程でも非常に高い専門性を要するものでありまして、特に分化誘導に至っては、そ の細胞種によってもそれぞれ異った専門的技術が必要です。一方で先ほど澤先生がおっしゃったよう に、医療機関である必要は必ずしもないであろうということがある。このように採取機関と移植機関 の間が複数であるということ。もう1つは、iPSは1つのiPSから複数の分化誘導機関、こちらでは神 経を作るのが得意な機関があり、こちらでは神経に特化した機関がある。そういったところに複数で それを使用する可能性があり、さらに1つのiPSから1つの分化誘導機関で作った最終的な移植細胞、 分化細胞というものが複数の移植機関で複数の患者さんに投与される、といったことが考えられます。 これはもちろんiPSの特徴であり、そして利点というべきものですので、このiPS細胞の利点を是非と も活かせるような制度設計、そこにつながる臨床研究の開始が望まれるというふうに考えております。 以上です。 ○永井委員長 ありがとうございました。いまの青井先生の件だけでなくて結構なのですが、本日の 臨床研究の例示全体をまとめまして、ご意見を少しいただけますでしょうか。 ○西川委員 いつも山中さんとも議論をしているのですが、いつまで高い専門性が要求されるかとい うことに関して違う意見を持っています。私はiPS技術の最も大きな点というのは、最終的にはPCRと 同じぐらいのユニバーサリティを獲得しているという点が、世界中が期待するところで。確かに今は 私もそれでいいと思うのですが、わりと短い期間で、いろいろなインフラが整い、例えばメディウム が作られ、いろいろなパッケージが作られた時点で、比較的多くの人が低い技術でと言ったらおかし いですが、低い技術で作っていける時代が来るということも考えて制度設計をしていく必要があるの ではないかなと、私自身は思っているのです。これはちょっと先の話でいいと思うのです。  もう1つは、自己の細胞に関してiPSを作るという治療を考えたときに、そのiPS段階で大量に増や すことを要求されるかどうか。ですからこのiPSのところでバリデーションをするというスキームが常 に必要とされるかどうか。あるいは最後にiPSでバリデーションすること自体が、最終的にどのぐらい コストがかかるだろうか。即ちこの3つが、いますぐ答が出ないと思うのですが、議論をいちばんして いかなければいけないことかなと思っています。 ○青井参考人 ありがとうございました。先生がおっしゃるように、確かにiPSというのは簡単である べきで、そして、おそらく今でも相当簡単。これだけ期待感のある中では簡単な技術ではあるのです が、ただ、少なくとも設備ということで申しますと、やはり作るための設備、結局清潔環境下でいろ いろな機械とか動具を入れないといけないということがありますので、ここでのポイントといたしま しては、そこが複数の機関にまたがることを是非可能にしていただきたいというところです。  それからバリデーションに関しましては、少なくとも私たちがいまのところ得られている知見では、 例えば1回でiPSを作って、同じお皿の中で10個あったら10個ともが大体同じクオリティだろうとい う作り方というのは、私たちはまだ達成していませんので、今の感じですと、やはりiPSの状態でのバ リデーションはあるべきではないかというふうに考えています。 ○永井委員長 具体的にはどういう点をチェックしておけばよろしいのですか。特にエピゲノムの問 題が出てくると思うのです。 ○青井参考人 そうですね。おっしゃるように特にバンクとかいうセッティングを考えますと、ゲノ ムは全ゲノムシークエンスも、私たちは将来的には想定をしています。それからエピゲノムを網羅的 に読む技術がいま可能になっています。ただ、そういった技術は先だっての小川先生の素晴らしい技 術があるのですが、その生物学的な意義付けというのを、私たちはいま取り組んでいるところです。 その意義付けが西川先生の先ほどのご発表で、最終的な色素細胞のところではなくて、もう少し簡便 な手前のところ、もう少しというか、iPSのところで出来るバイオロジカルアッセイを、きちんとここ 1、2年で作っていきたい、完成させたいとやっております。 ○永井委員長 西川先生がいつもおっしゃるのですが、完璧を求めていると何も出来なくなってしま うということもあるので、ある程度はプラクティカルに、臨床の現場で何か問題があったらすぐ取り 除けるような疾患であれば、またその辺の基準も変わる可能性はあると考えてよろしいでしょうか。 ○青井参考人 ただし、これはヒューマンの個別の細胞でということが原則です。マウスの治験です が、神経分化誘導をして免疫不全マウスに移植した。脳に移植をして造腫瘍性がどうかというデータ を我々報告いたしましたが、それによりますと、悪いクローンというのは繰り返しの実験を行っても やはり悪い。そこでvitroで十分評価できるような、それは未分化細胞がどれだけ分化抵抗を示して、 それが残ったかということだったのですが、そういうことがありますので、やはり最終的には先生、 あるいは先生方がおっしゃるようなことですが、未分化の段階で現実的なレベルで見ておきさえすれ ば避けられるということまでは、きちんとやっておかないといけないと考えています。 ○西川委員 反論するわけではないのですが、逆にこのエリアというのは、ものすごく新しいことが 今でも生まれてきている一方、例えば未分化性を保ったまま細胞が自己再生するということ自体は異 常なのですね。私がいちばん最近の仕事の中で面白いと思ったのは、例えばマウスのES細胞やiPSで は発見されていなかった全く新しいメチレーションの仕組みが、ヒトのES細胞で見つかってきていま すよね。それがしかもメチレーションの2割、3割を占めるという状況になっているというようなこと があると、これ自身が私たちが持っている基礎的にものすごく面白いものを徹底的に追及していった 結果、安全性が分かるという話になると、これは難しいだろうというふうに思います。ですから、も っともっと安全性に絞った、しかもヒトに限ってやっていくことが大事で、先ほど青井先生がマウス の話をされましたが、マウスとヒトがこれだけ違いますから、やはりもう少し集中してヒトのiPSの安 全性をどうしてたしかめるかを、研究も含めて議論をしていくことが大事で、軽々にマウスの結果を 外挿してもらうのはちょっとしんどいと。 ○青井参考人 すみません。ちょっと誤解を招く言い方をしましたが、マウスでそういうこともあり ましたので、いまヒューマンで未分化の状態で何か意味付けができるアッセイを、データがもう少し まとまりましたら必ずこれは早い段階で開示させていただいて、共有という形で進めて取り組んでお ります。 ○中畑委員 先ほど西川先生が比較的特殊な、例えばiPSを作る段階からしても、特殊な所で作るとい うことは、もっと一般化して進めるべきではないかという意見があったのですが、前回のこの幹細胞 の委員会で問題になったのですが、こういった新しい医療というのは、やはり施設を限定してやるべ きではないか。  日本が医療という点では世界的に見て非常に特殊な環境に置かれている。例えば骨髄移植とかほか の臓器移植を考えても、日本みたいに何百も移植施設があるなんていう国はおよそ世界のどこを見て もない。例えばイギリスとか近くの韓国にしても、例えば骨髄移植などは数施設しかないわけですね。 だから1つの施設にたくさんの患者さんが集まって、明らかなそのエビデンスを作っていく形で医療が 進んでいるのに、日本はどこの施設も同じような医療ができるという、世界で唯一特殊な国だという ことで、むしろそういう形でこれからの再生医療を進めていくのには、私は大反対ですね。それなり の施設を限定して、そこで安全性とかをしっかり担保ができた段階で、一般的な医療になるという形 で進めていくべきで。この委員会としても、今回作る指針もそういった方向で出すべきではないかと 私は思います。 ○永井委員長 それはおそらく先進医療に乗っていくので、全国どこでもというわけにはいかないと 思います。 ○中畑委員 iPSを作る段階にしても、やはり 。 ○西川委員 いいですか、骨髄移植もそうですし、逆に骨髄移植でなくても心臓移植の例を見ても、 アメリカで心臓移植をやっている症例数もそれぞれの病院の数で全く違っていて、明らかに症例数が 100以上のほうがいいのに決まっているのです。ですから、それは医療システムの問題であって、即ち 集中していって単純な総合病院モデルをとらないということ自体は、医療施設の問題で、最初から作 るという部分に関して制限を設けるのは、私はiPSが本来持っているポテンシャルを殺すというふうに、 私自身は思っています。  最終的にテクノロジーで誰でもが安全なものを作れるようにするということは、やはり研究として はいくべきものであって、最初にどこかでそういうメッセージを示す。もちろん必ず限定された所で やるべきだと私も思います。しかし、最初からそのメッセージを出してしまえば、これはたぶん間違 った方向に行くのではないかと私自身は思います。個人的意見です。 ○永井委員長 青井先生、いまの時点ですと、ヒトのiPS細胞の安全性をクリアするための基準という のは、まだ難しいということですか。 ○青井参考人 はい、今はきちんとした形で、少なくともこれというのはまだ申し上げられませんの で、それがまとまり次第報告いたします。 ○永井委員長 ある程度ここも意見を集約しながら進めていかないといけないので、場合によっては 今回の意見を集約したところ、先生にもご覧いただいて、妥当なところを現在の認識としてご意見を いただければ有難いと思いますが、いかがでしょうか。また、事務局でも意見を取りまとめるときに、 各委員の先生方だけではなくて青井先生にも少しご意見をいただくということで、現時点の問題点等 をまとめたいと思いますが、よろしいでしょうか。それは次回のこの委員会で提出させていただきま すので、よろしくお願いいたします。  次がES細胞を用いる臨床研究です。先ほどiPSにつきまして私が口述いたしましたが、ES細胞につ いては事務局で内容をコピーしていただきましたので、これをお読みいただきましてご意見をいただ きたいと思います。私のほうで読み上げます。  現在、日本国内では5株のES細胞が樹立されているが、これらはあくまでも基礎研究目的に作成さ れ、病原微生物その他疾病の原因となるものによる汚染に対する措置は不十分である。また、提供者 に対する臨床使用のインフォームド・コンセントも適切さに欠ける。ヒトに投与するための安全性 (感染・造腫瘍性等について)が担保されたES細胞を新たに樹立する必要がある。なお、そのために、 すでに廃棄されることの決定したヒト胚(余剰胚)を疾病の治療を目的とした研究に利用することは、 生命倫理的に容認されうると考える。  この辺が現状認識かと思いますが、いかがでしょうか。この点につきましてはご確認いただけます でしょうか。もしよろしければ次の「今後の予定」、まさに今日の検討課題です。ES細胞の樹立は臨 床研究から製品化までを想定し、品質と安全性を確保するための要件を定める。現行指針における安 全性と倫理性を保つ条件と、文部科学省のES樹立・分配指針との相違点を明らかにして、必要な倫理 的要件を加味する。これが今後の課題であるということです。 ○西川委員 前に指摘した部分で、厚生労働省の方ともお話をしているのですが、たぶんいくつかの 国でGMP基準化された、ES細胞のデュストリビューションが始まるだろうと思うのです。そういうも の自体が日本に輸入されるというシミュレーションは必ず考えておいて、これ自身はある程度バリデ ーションも受けたES細胞で、しかも例えば200種類というものは輸入可能になるということを、どこ かで議論をしておいたほうがいいのではないか。日本でそれを全部作るというのは、確かにここに書 かれているとおりでいいと思うのですが、若干、研究のときに位田先生たちと議論をした、外国から の輸入の問題とは違った内容を含んでいるのではないかな、という感じがします。 ○位田委員 質問なのですが、ここでは一応、文部科学省の指針に沿って樹立したESは、臨床用には まだ安全性というか、使える意味の安全性は考えていない。今度こちらで作るというか厚生労働省で 臨床研究を想定した形で作るES細胞というのは、また違う基準で作 らないといけないと、そういうことになるのでしょうか。 ○西川委員 プラスアルファーですね。 ○位田委員 前回、私は欠席をしていたのでが、何か話としてはできるだけ文部科学省でも厚生労働 省でも統一して、最終的に臨床研究までいけるようにという話があったように議事録を読ませていた だいたのです。  こういうふうに書いたことによって、特に「今後の予定」で、相違点を明らかにしてということに なると、文部科学省は基礎研究だけ。これはこれでいいのですが、基礎研究の条件と臨床研究の条件 を変えて、では、ある機関では基礎研究だけやっていて、でも、それは臨床研究には使えないという 話ですよね。だけどいまES細胞で研究されているのはみんな臨床応用を考えた上で、いろいろな細胞 に分化させるという研究をされているので、こういう予定だと、もう少し一本化するということのほ うを予定にされたほうがいいのではないかと。 ○西川委員 文科省も来ておられますが、これはたぶん一本化するための努力をやること。例えば単 純な話、この前議論になったような、完全に非連結で匿名化がされているという問題に関して、例え ばいいのかとかいう問題は、実際に臨床に使う場合には、新しい問題として上がってくるわけですね。 ですから別々の指針が2つあるという形は、私は文科省の主査として本当は望ましくない。より安全性 を高めた形で作成のための要件が加わったと同時に、やはり厚生労働省の指針をES細胞にも適用して いく時期がくるとすれば、いくつかの研究と使用との相違点をきちんと洗い出して、そこについては 一本化したほうがいいというふうに思います。 ○位田委員 その上で、先ほど西川先生がちょっと示唆されたかと思うのですが、海外から輸入され て臨床研究に使う場合、海外ではこういうふうな基礎研究用と臨床研究用というか、基準を変えてや っているのでしょうか。もしくは今は基礎研究だけれど、当然臨床研究を目指しているので、最初の 段階から臨床研究用の基準というのが作られているのか。その辺りはいかがですか。 ○西川委員 日本のように樹立機関において受精卵の完全な匿名化非連結化を要求をしていることは ないと思うのですが、私はこれ明確に申し上げられないです。たまたま1月にいろいろな人と話をする 予定があるので、そこに関してはきちんと調べてきます。 ○永井委員長 ここをどう表現するかなのですが、相違点を明らかにしていくことがよいということ でよろしいですか。もう少し内容を具体的に詰める必要があるかと思いますが、中畑先生何かご意見 がございますか。 ○中畑委員 永井先生が出されたこの方向で、私はいいのではないかと思います。 ○永井委員長 いろいろな解釈の中でフレキシブルに対応するということだと思います。梅澤委員か ら、ES細胞を用いる臨床研究に関するご説明をお願いいたします。 ○梅澤委員 お手元の資料7をご覧ください。2頁目に病名が書いてあります。私自身も小児科医では ありませんので、中畑委員にお助けいただきながらご説明させていただければと思います。  病名です。先天性代謝異常症という病気です。この病気の下に、その中の1つですが、リソソーム病 という病気があります。遺伝的な要因によってリソソーム酵素の活性が低下、即ち遺伝子が破壊され ているために、酵素活性がなくなるため、体中にその基質、壊されるべきものが壊されずに溜まって いくということになります。左の下はその写真、右側にはその酵素によってできる病気の名前、I型、 II型、VI型、Sandhoff、VII型と書いてありますが、いずれも症状は似か寄っています。  症状です。まず、3行目ぐらいから「聴覚・視覚・心血管異常」「関節可動域の異常」と書いてあり ますが、簡単に言いますと、動けない、聞こえない、見えないそして精神発達遅滞、これは遅滞とい うよりも後退する。そして10歳に至らないまでに残念な結果になることもある。患者様によっては20 歳まで生きられる方もいらっしゃるということです。簡単に言うと致死性の疾患だというふうにご理 解ください。  3頁、現在この先天性代謝異常症に対する治療戦略ということで、1.と2.をご覧ください。1.酵素補 充療法という薬と、2.骨髄移植が行われています。3.4.5.は行われていませんので省略いたします。  骨髄移植にきまして統計をご紹介いたします。4頁。私、辻省次先生、日本小児血液学会合同調査で す。特に加藤俊一教授が中心となって行いました、「先天性代謝異常疾患に対する造血幹細胞移植の 実施状況」を紹介します。移植実施期間は1985年から2004年です。  5頁。私がここで申し上げたいのは、骨髄移植の概要です。移植細胞源は骨髄が103例、臍帯血が19 例、末梢血と骨髄で1例ということで、123例の子どもたちに骨髄移植が行われているのが現状です。 現在もそのフォローアップが行われていて、いい結果が得られているというふうに伺っています。  そして、ここで申し上げたいことは、骨髄移植の結果のいちばん下の赤字で書いてあるところです。 死亡24例(19.5%)という結果が出ていますが、これは分かりづらいのですが原病でお亡くなりになる わけではないのです。これは治療によってお亡くなりになる方で、19.5%です。治療をすることによ ってお亡くなりになった。しかし、この治療は有効だということを意味して、実際にいまも継続的に 行われています。  いまもう1つの治療薬が出てきた。6頁目になります。「治療法、根治療法は難しい」となっていま すが、酵素補充療法で、右側にI型MPS1と書いてあります。これはムコ多糖症のI型に対して、 Aldrazymeがございます。  2006年10月に日本で薬事承認を受け、昨年3人の子どもたちに、いま現在10人の子どもたちにこ の薬が使われ、私も外来に伺っていますが、子どもたちが元気いっぱいに注射されるのを嫌がってい る姿を見ます。動けなかった子どもたちが嫌がって、アンパンマンのビデオを見せないと注射をさせ ていただけないという状況ぐらいまで暴れることができるということです。薬は効くということです。 この薬1週間に大体、小学生ぐらいのお子様に20万円。そして毎週外来治療を受けます。計算いたし ますと大体年間1,000万〜2,000万、大きなお子様ですと、5,000万円ぐらいかかるということです。 そういうことで大変だということが1点目です。もう1点目が、これI型のお薬なのですが、開発され ていないお薬がほとんどで、今後も開発される予定はありません。  7頁目、胚性幹細胞、ES細胞です。ES細胞は少なくとも遺伝子チップ解析を見る限りにおいては、 これらで欠損している遺伝子を発現しています。また、その上清中にここではその1つの酵素を出すた めに、GUSBと書いてありますが、β‐glucuronidaseという酵素活性を極めて高い値で産生している。 酵素活性を有していること。ES細胞が酵素活性を有していることを示してあるものです。即ちこのES 細胞は製剤として、この欄に記載している病気に対して使える可能性があるということを考えており ます。 ○永井委員長 ありがとうございました。これは骨髄に注入するということですか。 ○梅澤委員 簡単にいうと、現在は骨髄移植の場合は静脈注射ですが、肝臓の場合などを想定いたし ますと、門脈の中に移植する場合もございます。それから、別の病気ではありますが、先天性代謝異 常症の中の1つであるMetachromatic leukodystrophy (メタクロマスティック・ロイコジストロフィ ー)という病気は、骨髄の間質細胞を静脈注射しています。では、ES細胞についてはどこに打ちます かというのは、私はもうどこでもいいというのが答です。それで脳の中にも神経に分化させて、髄注 することも可能だというふうに考えています。  ○中畑委員 要するにこの酵素を産生する細胞を治療薬として使うという、いままで議論になかった あれだと思うのです。その場合ES細胞はもちろん未分化の状態であれば、テラトーマを作りますので、 それを何らかの方法で、例えばチェンバーの中にES細胞を閉じこめて、そしてファクターだけが出て いくようなものを皮下に埋め込んで、問題があればそのチェンバーを取り出すということも考えられ ます。あるいは当然ES細胞に自殺遺伝子を入れておいて、問題があればすぐ殺す。さまざまなそうい った、いままでにない新しいES細胞とかiPS細胞を、新しい医療に応用できるのではないかという可 能性は示したということではないか、そういう理解でよろしいでしょうか。 ○梅澤委員 ありがとうございます。中畑委員がおっしゃったとおりです。もちろん分化させても結 構です。神経へ分化させてもある種の酵素は非常にたくさん産生されます。なぜES細胞がいいかとい うと、不死だということです。非常に量的にも多く、では、いま現在は何をやっているかというと、 先天性代謝異常症の子どもたちに、肝臓移植をこの2年間の間に生体肝移植で112例行っています。 ○永井委員長 不死ということは、腫瘍性と表裏一体なわけで、そのときにどうするかという問題が あります。 ○梅澤委員 不死というのは、確かに永井委員長がおっしゃるとおり、増殖するということです。け れども、こちらの委員会は基礎の先生が多くいらっしゃいますから、先ほどから議論のあるヌードマ ウス、SCIDマウス、NODスキッドマウス、NOGマウスにヒトのESを移植した場合に、入れた細胞分以 上の数の腫瘤、それは奇形腫という意味で結構です。奇形腫ができますかという、出来ていないです よねということを申し上げたいと思います。 ○永井委員長 そうしますと、このES細胞の安全性の確認方法について、これから基準を作ろうとす ると、どういう点がポイントになるでしょうか。  ○梅澤委員 是非、(ES細胞の安全性の確認方法、基準に関して)専門家の方にご示唆をいただきた いというふうに考えております。そのときにリスク・ベネフィットを、念頭においていただきたい。 いま治っていない子どもたちが、時間が経過すると、残念な結果になっているということを十分にご 理解いただいて、そのときの安全性に関する基準をご指示いただければと思います。 ○永井委員長 時間ごとに違うわけですね。 ○西川委員 私たちの月1回のミーティングでもこの問題を1回議論したことがあって、いちばん重要 なポイントとして私たちが気がついたのは、いままで結構ES細胞が出来たために忘れ去られていた、 あるいはiPSが出来たために忘れ去られていた分化能のあるエンブリオニック・カルシノーマを1回ス タンダードにしようということで。先ほど梅澤先生がおっしゃった、ES細胞からのテラトーマだとエ フシェンシーが低いと。では、まずエフシェンシーの高いもので条件を決定しようという方向性を、 それがうまくいくかどうかは分かりませんが思いついて、いまそういう方向でやっています。ですか ら、最終的にはin vivoに関しては、やはりいろいろなトライアルが必要だろうと。 ○高坂委員 いま7頁でβ‐glucuronidaseのデータを見せていただいたのですが、これはES細胞か らの分化細胞、リバーでも何でもいいのですが、どういった分化細胞で最もこの活性、メインテイン されていますか。 ○梅澤委員 今の高坂委員のご質問は非常に重要な問題です。今日ご提示させていただいたのは、未 分化状態の酵素活性をこちらに示させていただきましたし、また、神経系への分化をさせた細胞にお いて、その酵素活性が上昇しているということを示しています。ちょっと細かくなりましたので話を させていただきませんでしたが、そういった観点からいたしますと、高坂委員がご専門でいらっしゃ いますが、ES細胞を神経へ分化させてから細胞製剤として使用したときのほうが好ましい対象疾病も あるということを意味しています。 ○高坂委員 非常に単純に考えて、やはり安全性とかということを考えると、いま中畑先生がおっし ゃったように、これは昔からカプセル療法というのがずいぶん試されていて、腫瘍細胞であってもカ プセルに封入をして、そこからディフューズにものが出ていけるというようなものについては、有効 であるということがあるので。1つはこれでglucuronidaseが果たして分泌性かどうかというようなこ とも、検討していかなければいけないし。 ○梅澤委員 検討は終わっております。まず分泌性かという質問に関しましては、分泌性です。それ が1点目。それから、それは正常の酵素ですから、細胞内で働く酵素を外から酵素の蛋白質を入れて働 きますかということがよく質問されますが、細胞に受容体がございまして、注射しただけでも十分効 果があるものです。ですので、役に立つということです。それから安全性、これ非常に大事なのです が、もしこれをデザインしたときは、同種移植になります。ですから免疫抑制剤を使うことが必要に なります。FK506またはステロイドをそれなりの量使うことになりますが、拒絶されたときも酵素が出 てきますから、一過性ではありますが、症状は改善するだろうというふうに予想しております。  ○山口委員 梅澤先生からなぜこの話をお聞ききしたいかはあれなのですが、ベネフィットのところ は、たぶんXSCIDの例の白血病みたいなものと同じようなレベルを考えないといけないのだろうと思う のです。もともと非常にリーサルな病気であれば、それに見合うリスクがあると、もし患者さんがこ れを望むのであればその治療を選択していいのだろうと。できる限りの安全性は担保した上で、そう やっていくべきではないかという気がするのです。  もう1つ教えていただきたいのですが、2頁のところで遺伝子治療というのは欠損遺伝子治療とかそ ういうことですよね。それはまだ今は行われていないというか、世界的にはこの開発そのものが難し いと考えたほうがよろしいのでしょうか。要するに選択肢の幅として。 ○梅澤委員 動物実験では遺伝子治療をすると、いま現在、骨髄間質の話をさせていただくと、やは り遺伝子を入れたときのほうが、全然酵素活性が高いです。我々が発表したデータでは、遺伝子を使 ったほうが1万倍、104倍酵素活性が高い。ですが、遺伝子の話をすると時間がかかるので話はしない と決めております。 ○高坂委員 参考のため伺いたいのですが、先ほど治療で死に至ったというのは、どういう形で亡く なっていらっしゃっているのですか。 ○梅澤委員 二通りあります。これは私よりも中畑委員のほうがご専門でいらっしゃいます。 ○中畑委員 私自身がこの病気におそらく10例ぐらいに移植をしているのですが、その移植関連死と いうのがあって、完全に白血球がゼロの状態にしないと移植が成立しません。そうしますと、非常に 重症な感染症が起こることと、骨髄移植の場合はHLAの問題もあって、GVHDというちょっと特殊な免 疫反応が起こって、それが重症だと死に至るということ。そのほか、いくつかの移植に伴う合併症に 伴って命を落とすこともあるという、そういったことです。 ○梅澤委員 そういうリスクに関しましては、少なくとも説明がされています。2割の方が治療でお亡 くなりになるということはご説明を受けた上で、この治療にチャレンジしているという事実があると いうふうにご理解ください。 ○永井委員長 そのほか、文科省の基礎ES指針と、このヒト幹指針との相違点について何かご意見を いただければありがたいのですが。 ○高坂委員 その現状というか、結論のほうなのですが、「余剰胚を疾病の治療を目的とした研究に 利用することは、生命倫理的に容認されうる」という文言があるのです。これはそうなのかなという ふうにも思うのですが、一方では、いまのiPSのところでも非常に議論になっているとおり、特に安全 性というものを検討するためには、相当数の株というか細胞を樹立していくことが必要に当然なりま すね。  そういったことを考えると、当然ヒトに応用する場合には、ESであっても非常に多数の細胞もこれ からどんどん樹立をして、それぞれの細胞についての分化能であるとか安全性というものを確認して いくことになると、それだけの多数の細胞をヒトの萌芽である生命を滅失して、そういったものをこ れからどんどん作っていいのかということは、別途、倫理的にはたぶん問題になってくるのだろうと 思います。そういう多数の細胞を樹立することが容認され得るかどうかということは、今後たぶん問 題になってくるということはあると思います。 ○位田委員 先ほどいただいたものは、クローン由来のES細胞も含めて考えているということですね。 ○永井委員長 はい。 ○位田委員 その上で現状認識のほうですと、このままでは使えないということの理由が、汚染に対 する措置が不十分だということと、インフォームド・コンセントも欠ける。インフォームド・コンセ ントはこれから取れば問題はないと思うのですが、汚染に対する措置だけなのでしょうか。それとも ほかにも基礎研究用のESと、臨床研究のESに差がある部分があるのでしょうか。 ○山口委員 この間、私は会議に前回は出席させていただかなかったのですが、ヒトES細胞は作った ものはみんなプライマリーセルカルチャーのフィーダー細胞が使われているのです。これは調べてみ ないと本当に正確なところは分からないのですが、齧歯類の細胞だと、ほとんどの齧歯類の細胞はレ トロウイルスをもう持っていますので、レトロウイルスの汚染が起きている可能性が非常に高いので すね。もし一旦、汚染が起きてしまったら、それを取り除くというのは不可能に近いのです。もう一 度確かめないといけないとは思います。 ○中畑委員 実際アメリカでFDAで認められたジェロン社の計画と、もう1つ新しい会社もいま臨床研 究をスタートしようとしているということを聞いているのですが、そこで使われているES細胞という のは、どういう要件で作られているのかということ。いろいろなことは耳には入ってくるのですが、 本当の意味での正確な情報というのは私たちも分からないものですから、その辺を是非厚労省のほう で調べていただいて。本当の意味で、どういう要件で作られた細胞がアメリカでは医療用に認められ ているかということを、そこのところを正確に我々は把握する必要があるのではないかと思います。 何かアメリカで使っているから日本でも使っていいのではないかという形で、本当に許される問題な のか。その辺をしっかり検証してから、日本でも海外のES細胞を輸入して使うというのも、ある一定 の調査をしっかりしてからのほうがいいのではないかと思います。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。これも事務局でまとめて、次回整理した問題点を提示させてい ただきたいと思います。ちょっと時間も押してしまったのですが、今回の現行指針の内容の確認です が、事務局から簡単にご説明いただけますでしょうか。 ○事務局 現在、新規の幹細胞の臨床研究を指針に組み入れるということを特にご議論いただいてい るところですが、現行ある指針の問題点と、修正すべき点についても少々ご意見をいただきたいと考 えております。今後の指針をすべて全部確認していくか、もしくは項目を決めてそれぞれ確認してい くかといった見直しの進め方については、メール等にて委員の方に確認させていただきたいと考えて います。  時間もほとんどないのですが、最後に1つだけ是非確認させていただきたいことがございます。参考 資料の1にありますが、指針の第1章の総則のところに、第1「目的」がございます。こちらには目的 ということで項目が書かれています。 「ヒト幹細胞を用いる臨床研究は、臓器機能再生等を通じて、国民の健康の維持並びに疾病の予防、 診断及び治療に重要な役割を果たすものである。この指針はこうした役割にかんがみ、ヒト幹細胞臨 床研究が社会の理解を得て、適切に実施・推進されるよう、個人の尊厳と人権を尊重し、かつ、科学 的知見に基づいた有効性及び安全性を確保するために、ヒト幹細胞臨床研究にかかわるすべての者が 遵守すべき事項を定める等を目的とする」という項目があります。これは平成18年に作成されたもの ですが、現在の科学技術の進歩や社会的な情勢の変化を踏まえた上で、こういった目的に、特に変更 がないかということだけを、まずご意見がもしありましたら是非お願いしたいのです。 ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○位田委員 西川先生が帰られたのが残念なのですが、西川先生のプレゼンテーションのところで、 安全性のみを確認するために臨床研究なり、臨床試験なりをする可能性があるのだというふうにおっ しゃったのですが。通常、臨床試験というのは安全性と有効性、両方を見るのだと思うのです。有効 性を放っておいて安全性だけを見る臨床試験というのは、これまでもあるのですか。 ○永井委員長 臨床研究ではまず安全性の試験を始める。それは少数例ですので、それでは有効性は、 わからないことが多いわけですね。安全性が確認された上で症例数を増やして、有効性を確認すると いうステップになりますので、安全性のみを検討する臨床試験があっても不思議ではないのですが。 ○位田委員 西川先生がおっしゃったのは網膜の話ですので、話は安全性が確保されれば自動的に効 果が出るという前提なのでしょうか。そこがよくわからなかったのです。安全性のみを確認するのだ とおっしゃった意味が、少しわからなかったのです。 ○永井委員長 いかがでしょうか。上手に説明していただける方。 ○山口委員 臨床のところはあまり詳しくはないのですが、ただ、確認申請とかそういうところで考 えるのですが、まず投与量というものを動物実験でやる。でもその投与量そのものが有効でない投与 からまず入っていく。I相はその安全を確認して、III相に入るまでに投与量を増減したりして、有効 な投与量にするように上げていくわけですね。簡単に言ってしまえば、まずI相で安全性、II相で投 与量の設定、III相でその投与量での有効性の比較ということになるのかなと思うのです。 ○位田委員 私も薬の場合はそれで理解しているのですが、ESの場合に投与量の多い記載というか。 ○山口委員 でも、それは例えば海外の場合でも日本の場合でも、どのぐらいの細胞を投与するかと いうのは、その有効性がどれだけ変わるかということが。細胞数の、増幅するのであればまた別にな りますが、その投与量というのはどのように設定するかというのが、やはり臨床開発のときの1つの大 きな課題になると思います。 ○武藤委員 ちょっと違う話でもよろしいですか、短かく。今日は先生方にお礼を申し述べたいとい うか、今日いろいろな疾患の臨床研究の具体的なテーマを聞かせていただいて、大変勉強になりまし た。私はいろいろな難病の団体にかかわっているものですから、それぞれ患者会の人の顔を思い浮か べながらお聞きしていたのですが、1つ思いましたことは、たぶんこれから患者コミュニティー全体に 対して、それぞれの疾患の違いとか課題はあるとは思うのですが、共通して知っておいてもらったほ うがいいことというのがおそらくあるのではないかと、今日お聞きしていて思いました。  たぶんこの指針が取りまとめられるときには、結構注目されると思いますので、単に指針が改正さ れてこういうことになりましたということとは別に、こういったことを是非、最低限知ってチャレン ジできる方にはチャレンジしていただきたいというメッセージを、疾患共通で出したほうがいいので はないかというのが1つあります。それがFirst in manのトライアルを始める前の、科学コミュニテ ィーの責任かなというのが1つです。  もう1つは、青井先生の最後の資料を見ても思ったのですが、多施設共同研究の臨床研究全体に起こ る倫理審査の問題と、この幹細胞の臨床研究に関連して起こる多施設共同研究における倫理審査の問 題の違いが、どの辺にあってどの辺にはないのか。同じようなつまづきなのか、それともこういった トライアルのために検討すべきことがあるのかという辺りを、今後課題として自分自身もちょっと勉 強をさせていただきたいと思います。現在、一応の機関ごとの審査で他施設に依頼もできるというこ とは、だんだん出来てきていますが、これほど役割が異なって、かつ、樹立された細胞がいろいろな 所にいくというとこで、しかもトライアルまでいくという中で、できるだけシームレスでかつ質の高 い審査で、あまり時間をかけ過ぎないと。特に患者さんの状態が悪い方がいらっしゃるということも 含めると、いろいろな意味で課題があるなということは感じました。以上です。 ○永井委員長 とりあえずこの指針の「目的」のところはよろしいでしょうか。 ○町野委員 何か問題があるって、何か少しお考えがあるのですか、どの点を検討しなければいけな いとか、どこが問題かと聞かれても「ああ、結構ですね」と言うしかおそらくないのです。 ○事務局 まず1つ目は書き方の問題なのですが、ヒト幹細胞を用いる臨床研究というのは、疾患の予 防診断などまでかかわってくるのかどうかといったことを聞かれたことがございまして、そういった 言葉が大丈夫なのかどうかということ。これは基本的にはこのものは「臓器機能再生等を通じて」と、 再生治療をターゲットとしているということは間違いないかということを、一応確認させていただき たいということが2つ目の目的でございます。 ○永井委員長 現実に可能かどうかは分かりませんが、例えば心臓の不整脈を起こしやすい、失神し た経験、ヒストリーがあって、心電図も少しおかしいという方のiPSを作って、本当にvivoを再現で きれば、それを使って解析して、この方は突然死のリスクが高い方であるという予防あるいは診断と いうことは、あり得ると思うのですね。現実にそれが達成できるかどうかは分かりませんが、考え方 としてはあり得ると思います。 ○高坂委員 それはヒト幹指針には関係があるのですか。 ○永井委員長 診断には、iPSを樹立してそれを用います。 ○高坂委員 それで臨床研究をやるのは、いまの指針で十分、臨床研究指針でできるわけですから。 ○永井委員長 予防診断は、むしろ関係ないということになりますか。 ○高坂委員 予防診断のための、いわゆる全臨床研究です。その分もここには関係がないですか。 ○永井委員長 予防診断は、戻すわけではなければよろしいのでしょうか。 ○山口委員 それはたぶん指針かなと思っていたのですけれども。 ○中畑委員 その疾患によっては、最悪な事態になる前に再生医療を行って、それを避けるというよ うな治療のスキームというのもあるのではないかという気もしますけれども、広い意味ではそれは予 防と言えることだと思うのですけれども。 ○永井委員長 予防なのか治療なのかというのは、微妙なところがありますね。 ○中畑委員 そうですね。その辺は実際に起こってしまったのを、病態を改善するというのは、確か に治療ということになりますけれども、先ほど先生が話された、例えば非常に重症な不整脈があって、 普段は不正脈がないのだけれども、そういうことが非常に起こりやすいという人であれば、ある細胞 を投与することによって、それが起こらないように治療をする。それは確かに治療とも言えますが、 予防という見方もできるのではないかと思います。 ○永井委員長 予防的治療というのはあるということですね。しかし、基本的には体内に戻すという ことがポイントになるわけですね。 ○山口委員 いままでヒト幹細胞では再生というタームが非常に強くて、例えば奥村康先生がやって いらっしゃる免疫抑制状態を作り出すとか、移植のときの。ああいうふうな研究だと、ちょっといま のヒト幹細胞の研究の審査にはかかってこない可能性があるわけですね。その辺をちょっと広げたほ うが、私などは前からいいかなと思ってはいるのですが。 ○位田委員 作ったときのことを完全に記憶しているわけではありませんが、「等」というのを使っ て、いろいろなものが入るという。考えていたのは、体性幹細胞で臓器再生なり組織再生なりという のが念頭にあったのは確かなのですが、でも、それだけかというと、おそらくそうではないので、そ れは全部「等」でひっくるめてということだと思います。 ○町野委員 この目的というのは指針の目的であって、幹細胞の臨床研究の目的ではないですよね。 この指針の目的ですから、幹細胞の臨床研究というのは、こういうようなことに使えるものであると いうことについては、皆さん認識は一致しているわけですよね。ただ、この指針を定める目的という のは、それが適正に行われるようにということで、私はこれで結構だろうと思います。 ○永井委員長 先ほどは勘違いということになるのですが、しかし、はっきりそれが適用外とも書い てないのですね。ですから運用のところで問題ないようにしていただければ、この目的の書きぶりで よろしいように思うのですが。 ○位田委員 私も町野先生のご意見に賛成なのですが、もしこれを疾病の予防、診断というのを外す と、疾病の治療だけに重要な役割を果たすのだという形になるのと、おそらくそうではなくて、もう 少し広い意味で臨床研究を行うことによっていろいろな影響。直接には確かに治療なのですが、ある 意味ではその影響というか反映する部分も含む、そういうことも考えながら、たぶん臨床研究をやら れると思うので、目的は比較的広めのほうが私はいいのではないかと思います。こんなことを言い出 すと、国民の健康の維持というのはどうするのだという話になるので。 ○永井委員長 あえてヒト幹細胞を体内に投与する臨床研究ということですか。そういうふうに書く 必要はないのでしょうか。ただ、用いる臨床研究でよろしいのですか。 ○山口委員 例えばヨーロッパ医学のガイドラインでは、体外循環もセルセラピーの中に入っている のですね。肝臓のリバーの外にある。 ○永井委員長 それはヒト幹指針に該当するのですか。 ○山口委員 それは議論をしていただかないといけない。ガイドラインではセルセラピーの中に入っ ています。 ○高坂委員 先ほど申し上げたキャプセル化した細胞なども想定はしていたのです。 ○永井委員長 体内循環は対象になるということですか。それを一概に全部ここであらかじめ記述す るよりはいまのままにしておいて、適宜ケース・バイ・ケースで議論したほうがよさそうだというこ とでしょうか。 ○位田委員 いまの話はむしろ目的ではなくて、どの範囲までがこの指針がカバーするかという話な ので、目的のところで議論をするものではないと思いますけど。 ○永井委員長 分かりました。そうすると当面目的はこのままの形でということで進めていただきた いと思います。そうしますと次回以降、指針の各項目についての見直しを進めていくことにしたいと 思いますが、よろしいでしょうか。事務局から連絡事項がございますか。 ○事務局 本日はお忙しい中、遠方よりご参加いただきましてありがとうございました。次回の日程 は12月25日の17時からの開催を予定しております。詳細につきましては追ってご連絡をいたします。 ○永井委員長 どうもありがとうございました。これで終了させていただきます。 照会先:医政局研究開発振興課 田邊(2545)