09/12/01 平成21年12月1日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会議事録         薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会農薬・動物用医薬品部会議事録 ○日 時:平成21年12月1日(火) 14:00〜16:35 ○場 所:経済産業省別館共用会議室944号 ○出席者: 委  員 生方委員、尾崎委員、加藤委員、斉藤委員、佐々木委員、志賀委員、松田委員、      山添委員、鰐淵委員 事 務 局 俵木基準審査課長、工藤課長補佐、小木課長補佐、猿田課長補佐、      浦上専門官、中田専門官 関係省庁 農林水産省消費・安全局農産安全管理課農薬対策室 渡辺専門官      農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課     峯戸松係長 1.開  会 2.議  題  (1)食品中の残留農薬等に係る残留基準設定について    ・スピロテトラマト(農薬)    ・ブタミホス(農薬)    ・ミルベメクチン(農薬)    ・d−クロプロステノール(動物用医薬品)    ・イミドカルブ(動物用医薬品)  (2)その他 3.閉  会 ○事務局 それでは、定刻になりましたので、ただいまから薬事・食品衛生審議会食品衛生分科 会農薬・動物用医薬品部会を開催させていただきます。  本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。どうぞよろしくお願い いたします。  本日は、青木委員、豊田委員、吉池委員、由田委員より御欠席なさる旨の御連絡をいただいて おりますが、農薬・動物用医薬品部会の委員15名中11名の御出席をいただいており、部会委員 総数の過半数に達しておりますので、本日の部会が成立いたしますことを御報告いたします。  それでは、大野部会長に審議の進行をお願いしたいと思います。今後の御審議どうぞよろしく お願いいたします。 ○大野部会長 それでは、議事に入らせていただきたいと思います。初めに、事務局から配付資 料の説明をお願いいたします。 (配付資料確認) ○大野部会長 いかがでしょうか。よろしいですか。  それでは、農薬・動物用医薬品について審議していただく前に、前回報告させていただきまし た、メソトリオンの追加資料を今日配付していただきました。これは先日の分科会での審議を踏 まえて、食品安全委員会の方に照会状を出したものです。それに対する食品安全委員会としての 回答をいただきました。簡単に説明させていただくと、最初の照会事項1というのは、ラットの 2年間の慢性毒性、発がん性の併合試験でいろいろな症状が出ているんですが、それについて特 に軽度な変化とみなしていて、それを最終的なADI設定のときのNOELに組み込まなかったと ころがございまして、それはなぜですかということを聞いたものです。特に、目に対する影響で すが、それに対する回答は、一番低い用量での7.5ppmでの発生頻度が非常に低かったということ、 それから、そのときに現れた病変は軽度であったということです。ここが一番重要ではないかと 思うんですけれども、発生頻度の病変の程度については、最初私どもがいただいた資料には書い ていなかったんですね。発生頻度だけ書いてあったので、7.5ppm以上でかなり強い変化が出てい るのではないかと、そういう想像もできたので、そこをとらないのはおかしいのではないかとい うこともございました。それは分科会でも指摘されたものです。  その結果、申請者から修正された報告書が出されまして、その資料を見ましたら、7.5ppmでは 一番軽度なところが多かったと。重度のところもあったんですけれども、それ以上の用量と比べ ると明らかに発生頻度は低いし、病変の程度も弱かったということを確認できたということです。 私もそれについては確認させていただきました。  それ以外の体重増加抑制とか腎臓の痰明化といった変化は大きな問題はないと、場合によって はこの薬物の影響とは考えられないという回答だったと思います。  それから、2番目のメソトリオンのヒドロキシフェニルピルビン酸ジオキシゲナーゼ阻害によ りもたらされる高チロシン血症のエンドポイントは目に対する影響として考えられたという回答 が来ています。  投与期間にかかわらず、毒性量と無毒性量との間に差は認められていないということ。それか ら、血中チロシン濃度が急な傾きで上がっていくということが確認されました。特に、この7.5ppm という用量より低いところでも上がってきているんですけれども、その前後で1,000ppmぐらいに 血中濃度が上がっています。その辺から目に対する毒性が出ているということを確認できました。  照会事項2の方は、HPPDの阻害に関することと種差にかかわることについていろいろ聞いた ものですけれども、今申し上げましたが、1,000ppm以上で大体目に対する毒性が現れていること と、それから、ヒトの志願者に4mg/kgを投与しても血中濃度の上昇は309μgということで、ラ ットのオスで毒性の現れる血中濃度1,000ppmをはるかに下回っているということです。  分科会では、ヒトでは2つの代謝経路があって、それがラットのオスでは一方だけなので、 HPPDの方が抑制されて血中濃度が高く上がるけれども、ヒトは2つあるので余り上がらないん だということを説明させていただいたんですが、そういった内容の回答がここに書いてあります。 ヒトでは、たとえ遺伝的な高脂血症によってHPPDが欠損したりとか、もう1つのTATかどち らかが抑制されても、血中チロシンの濃度の上昇は極めて少ないと想定されるというような回答 です。そういうことで、特にヒトにおける血中チロシン濃度の上昇がこの農薬で起きて、重篤な 目の障害が起きるというような可能性については低いと。ADI設定の根拠にはしなくてもいい んじゃないかというような、そこまで書いてあるわけではないですけれども、そういった内容だ と思います。  これについて読ませていただいて、よろしいのではないかと私は思っています。明日の分科会 でこの内容に沿って食品安全委員会の回答を説明させていただいて、審議していただく予定です。 何か御質問ございますか。  メスのラットでも目の障害が起きていたんですが、メスのラットではやはりチロシンの血中濃 度が1,000〜2,000ぐらいまでで、その中間以上に上がるとやはり目に障害が起きてくるんですね。 オスでもそうですし、メスでもそうだということで、血中濃度に依存した毒性じゃないかと思い ます。  それから、この障害が4HPPDaseの活性阻害が非常にリバーシブルな変化であるということも 指摘されました。酵素の阻害がリバーシブルだし、このものも12時間以内に尿中に排泄されるも のであるということで、そういう蓄積性の毒性を表す可能性は少ないということもありますので 安心かなというところです。  鰐渕先生、何かございますか。 ○鰐渕委員 先生の説明で、特にチロシンが上昇したところの話は非常に納得できる説明になっ ていると思いますし、ましてや、HPPD自身が可逆性の変化であることから大丈夫だと、これを ADI設定の根拠にするのはヒトとは違い過ぎるということで、今の説明で大丈夫ではないかと 思います。 ○大野部会長 ありがとうございます。  最終的に、安全性については食品安全委員会が責任を持って審議するということなんですけれ ども、私どもも説明責任を問われますので、これに基づいて説明したいと思っています。よろし いでしょうか。  それでは、今日の審議品目について審議していただきたいと思います。今日は農薬の3剤、動 物用医薬品の2剤について御審議していただきます。先生方にはあらかじめ資料をお送りし事前 にチェックしていただいて、必要な事項を修正させていただいています。お礼申し上げます。  それでは、まず1番目として、農薬スピロテトラマトの審議に入りたいと思います。事務局か ら資料の説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは、資料に基づきまして御説明いたします。まず、資料1−2をごらんくださ い。スピロテトラマトの部会報告書案となってございます。  今般の残留基準の検討につきましては、最初のところに記載しておりますとおり、関連企業か らいわゆるインポートトレランスに基づく基準値設定要請を受けたものとなってございます。本 剤は、環状ケトエノール系殺虫剤でございまして、アブラムシ類、コナジラミ類等のアセチルCoA カルボキシラーゼを阻害、ひいては脂質の合成を阻害することにより殺虫効果を示すと考えられ ております。  化学名及び構造式等につきましては、記載のとおりとなってございます。  ここで24ページのこれまでの経緯をごらんいただきたいと思います。先ほど御説明いたしまし たけれども、平成20年7月にインポートトレランスに基づく要請がなされておりまして、バレイ ショ、ハクサイ、トマト等への基準値設定ということで要請がなされました。こちらの要請を受 けまして、同年8月に食品安全委員会あてに食品健康影響評価を依頼してございます。その後、 食品安全委員会において審議が進んでいる中ではございますけれども、同年11月に追加でのイン ポートトレランス申請ということで、今度はタマネギ、ワタ、マンゴー等への基準値設定の要請 がなされました。そちらの分も含めまして評価がなされまして、平成21年5月に評価結果が通知 されているものとなってございます。  その評価結果につきましては、資料1−1の食品安全委員会による食品健康影響評価書に記載 されておりますので、そちらの38ページをごらんください。こちらに本剤の食品健康影響評価が まとめられております。まず、ラットにおける動物体内運命試験の結果でございますけれども、 ほとんどが尿中から排泄されたということで確認されております。体内では腎臓・肝臓等で比較 的高い分布が認められたとのことです。畜産動物、ヤギや産卵鶏ですけれども、こちらの体内運 命試験の結果でも、ラットに類似した傾向が認められております。  リンゴやレタス等の植物体内運命試験の結果ですが、こちらの親化合物そのものの残留性は低 い、可食部への移行性も低いと考えられております。ただし、作物によって広範に代謝されると いうことで、それぞれ代謝物にかなり差があるということが認められております。  また、作物残留試験等が行われておりまして、最高ですとホップの約5.5mg/kgという値が出て おります。  各種毒性試験の結果からは、スピロテトラマト投与による影響は主に肝臓、腎臓、肺及び精巣 に認められたとのことです。また、神経毒性、発がん性、繁殖能に対する影響及び遺伝毒性は認 められておりません。  発生毒性試験におきましては、ラットで骨格変異が認められておりますが、奇形の増加は認め られなかったということと、ウサギでは奇形または変異の発生は認められなかったことから、ス ピロテトラマトによる催奇形性はないと考えられたとの結論に至っております。  これらの各種試験結果から、食品安全委員会におきましては農産物中の暴露評価対象物質とい たしましてスピロテトラマト、親化合物と代謝物M1、M5、M7及びM1グルコシドというこ とで設定されております。  実際のADIの評価になりますが、次ページの下から無毒性量の効果について記載がございま す。各試験で得られた無毒性量の最小値は、ラットを用いた2年間発がん性試験の12.5mg/kg体 重/日であったということから、これを根拠といたしまして安全係数100で除した0.12mg/kg体重/ 日をADIとして設定したということで結論付けられております。  それでは、資料1−2の2ページにお戻りいただければと思います。こちらのページから本剤 の適用について記載してございます。記載のとおりばれいしょ、さといも類等多くの作物につき まして、インポートトレランスに基づく基準値設定の要請がなされております。  本剤につきまして、申し遅れましたけれども、現在いわゆる暫定基準を含めまして現行の基準 は設定されておりませんので、今回が初めての基準設定となるものです。よって、国内登録もな されておりませんので、こちらにはインポートトレランス要請がなされた作物に係る海外での適 用、米国と欧州での使用方法について記載しています。  5ページ以降には、作物残留試験の結果を記載してございます。作物残留試験におきましては 分析対象の化合物といたしまして、こちらに記載してございます親化合物のほか、代謝物M1、 M5、M7、M1グルコシドということで4つの代謝物の分析がなされております。この作物残 留試験のデータをとるに当たりましては、[2]分析法の概要にございますとおり、各分析対象の安 定同位体を用いた方法となっています。  こちらは大変申し訳ないのですが、定量下限の記載に修正がございます。いつもですと定量限 界は作物ですとか分析した機関で幅があるときには、その幅をもって例えば今回では高い値です と0.2という定量下限値なんですが、そういうものも0.010〜0.2と記載しているところですが、そ の辺の記載が漏れておりましたので、これは後ほど修正させていただきたいと思います。  実際の詳細な作物残留試験結果につきましては、海外で実施された結果ということで、これま で同様、表に別紙1としてまとめさせていただいております。  続きまして「7.乳牛における残留試験」ですが、今回、畜産物への基準設定の要請もありま したので、それにかかわる試験の結果を記載してございます。乳牛に対して飼料中濃度としてス ピロテトラマト3、9及び30ppm相当を含有するゼラチンカプセルを29日間にわたって摂食さ せた場合の飼養試験の結果が記載されています。  乳牛における分析対象につきましては、親化合物と代謝物M1、あとはM1のグルクロン酸抱 合体ということで、略語ではM3となっていますが、こちらを測定しています。ご覧いただきま したとおり、代謝物M1は割と高濃度で出ているんですけれども、あと3ppmの腎臓の0.02とい うことで若干検出されているんですが、ほとんどが定量限界未満という結果が示されております。  7ページの冒頭に、この結果に関連する米国やカナダの評価結果を記載しておりますが、これ らの国においては畜牛における最大理論的飼料由来負荷は1.2ppmと評価されているところでご ざいます。  次に「8.ADIの評価」となりますけれども、先ほど御説明いたしましたとおり、0.12mg/kg 体重/日ということで設定されております。  「9.諸外国における状況」ですが、こちらの剤につきましては2008年にJMPRにおける毒性 評価が行われておりまして、実は本年のコーデックス総会で採択されました国際基準が設定され ています。ばれいしょ、トマト、仁果果実等ということですが、実はこの部分の記載につきまし て、委員の皆様に事前にお配りした段階では、基準値の表には国際基準の数値を入れていたんで すけれども、ここの部分が設定されていないというややこしい記載をしておりましたので、修正 させていただいております。  そのほかの海外における状況といたしましては、米国、カナダ、オーストラリアにおきまして、 様々な作物に基準値が設定されているところでございます。  以上を踏まえて「10.基準値案」ですけれども、今の部会報告書案では規制対象につきまして は、親化合物と代謝物M1をスピロテトラマト含量に換算したものの和とする案でお示ししてお ります。ここの規制対象につきましては、後ほど特に御審議いただきたいと考えているのですが、 現時点での事務局の考えにつきまして、その次の部分にまとめさせていただきました。というの も、先ほど御説明しましたとおり、食安委における暴露評価は、このほかの代謝物は4つ含めた 形での評価となっておりますので、その辺の暴露評価と規制対象の違いということを少し詰めて おかなければいけないと考えております。  今のところの理由としては、作物残留試験においては親化合物のほか、報告書にもまとめまし たとおり、代謝物のM1、M5、M7及びM1グルコシドについても分析がなされておりまして、 繰り返しになりますが、暴露評価対象物としてもスピロテトラマト及び4代謝物と設定されてい るところですが、かなり作物によって残留する代謝物が異なる傾向もあります。  (3)に暴露評価で参考として示しておりますけれども、仮に4代謝物を規制対象に含めた場合の 想定基準値からTMDI試算を行った場合のADI占有率も一番高い幼少児において22.3%程度で あるということ、また、JMPRにおきましても、残留の規制対象は親化合物と代謝物M1である ということも踏まえまして、残留の規制対象を親化合物と代謝物M1としたという書きぶりでま とめさせていただいております。  この規制対象ということでの基準値案を19ページ以降の別紙2に記載してございますので、ご らんいただきたいと思います。規制対象が同じと先ほど説明いたしました国際基準ですとか、米 国の作残結果のうち親化合物と代謝物M1の残留量の和から考慮した基準値案を置かせていただ いております。21ページの表の脚注にも示しているんですけれども、ここに書いてある数字の意 味合いとしまして、基準値案は親化合物と代謝物M1の和、国際基準も同じ規制対象ということ になります。  参考基準値の欄、外国基準値で「アメリカ」となっている部分につきましては、規制対象が親 化合物と代謝物4つを含んだ形での基準値となっております。オーストラリアにつきましては、 今の基準値案ですとか国際基準と同じ親化合物とM1を規制する基準値となっております。  一番右の作物残留試験成績につきましては、親化合物と代謝物M1の和の数値を記載していま す。  補足で基準値案について説明したいんですけれども、19ページ下のウリ科野菜のブロックのう ち、スイカとメロン類果実、まくわうりの基準値につきましては、我が国における規制対象が皮 を除くものとなっているのに対しまして、国際基準や米国における分析部位は果皮を含めたとい うことで、そのまま引けないということで、若干それを考慮した設定となっています。  基準値案の0.03ppmという数値そのものは、右の欄の米国作残のメロンの0.020ppmという定 量下限値を根拠として設定しておりますが、これに当たっては事前に加藤委員よりコメントを頂 戴しておりまして、リンゴの代謝試験の結果においては、その散布後63日でも果実における総残 留放射能48.5%が表面の残留物であったという報告もなされていることから、その経過日数が1 日のメロン、スイカでは表面残留物で果肉からはほとんど検出されないのではないかと推察され るということですとか、食品成分表の廃棄率がスイカで40%、メロンで50%ということを推定し ても、果肉の値としては定量限界付近になるのではないかという推測もなされることから、今回、 定量下限から基準値案を設定することは可能ではないかという御助言をいただきましたことから、 この案としてお示しさせていただいております。  20ページの下、畜産物の基準値案につきましては、先ほど7で御説明した飼養試験の結果から 設定された米国基準値について、そちらの値を採用するものとなってございます。先ほど説明が 足りなかったんですけれども、米国では畜産物の規制は親とM1となっていますので、そこの基 準値をそのまま引いても過剰な規制にはならないと思いましたので、そのまま採用した形となっ てございます。  続きまして、21ページは国際基準で設定している加工食品と、米国ではポテトフレークという ことで設定されておりますものについてもインポートトレランスによる基準設定要請がなされて おりましたので、これらについて基準を設定する案としております。これらについては、JMPR や米国におきまして加工係数が算出されておりまして、その内容につきましても関連資料で確認 しているところでございます。  以上の基準値案により推定摂取量を算出いたしましたのが、22ページからの別紙3です。23ペ ージの一番下をごらんいただきたいのですが、ここに算出しましたADI比を記載しておりまし て、一番高い幼少児で19.6%の占有率となってございます。  25ページ以降には答申案を記載しております。今回は新規の設定ということになりますので、 設定する作物すべてについて記載しているところです。今の段階の案では、親とM1を規制対象 とした基準値案となっておりますので、規制対象についての注釈も一番上にその説明として書い ているところです。  事務局からの説明は以上です。御審議のほどお願いいたします。 ○大野部会長 どうもありがとうございました。  それでは、審議していただきたいと思います。まず、薬理作用のところで尾崎先生、いかがで しょうか。 ○尾崎委員 特にありません。 ○大野部会長 ありがとうございます。  ほかの先生、御意見ございますか。よろしいですか。  それでは、物理化学的な性状とか構造式とか、その辺はよろしいですね。代謝のところは山添 先生、いかがでしょうか。 ○山添委員 基本的に動物の代謝の場合はM1というか、エステルの加水分解で消失性が高くな っていくということがメインで非常に早いと思いますので、その経路で比較的代謝が早いのでは ないかと思います。今日問題になっているのはリンゴの代謝物なのだろうと思うんですけれども、 ここだけ還元体ができているということなんですが、私としては代謝物のM5というのは多分、 異性体のどちらができるかもわからないし、測定上非常にあいまいになる可能性も出てくるので はないかという気がします。そういうことで、事務局から出されているように、測る対象として はM1と変化体の方がすっきりしているのではないかと思います。 ○大野部会長 ありがとうございます。  私の方で見たところだと、部会報告案の5ページに書いてあるM1からM5、M7、M1グル コシド、その辺が植物体内で出ているんですけれども、一般的な部会で基準としている10%を超 えるようなものは親化合物以外にはM1とM1グルコシドがレタスで11.4%と若干高いんですけ れども、それ以外では試験では高くなっていません。ワタで、M5は9%とか、リンゴで7.7%、 レタスで6.2%というのがあります。あと、M7がリンゴの実で15.7%と若干高くなっています。 最初、見ながらどれを入れるのかなと思ったんですけれども、全部入れるという案だったのでそ れもありかなと思っていました。ただ、9ページ以降に実際に残留試験をこの4つについて調べ たところだと、代謝物M7とM1グルコシドについてはほとんど出ていないということで、それ はなくてもいいのかなと思っていました。M5については結構残留しているものもありました。 そういうことで、M5を入れるかどうかは皆さんの御意見を伺っていきたいと思います。  そういうことで、M7とM1グルコシドについては省いてもいいのかなと思いますが、M5に ついては皆さんの御意見を伺ってから決めさせていただきたいと思います。何か御意見ございま すか。 ○志賀委員 ほかのことでいいですか。その前部分ですけれども、またぞろ虫の名前の話で恐縮 なんですが、これは何せアメリカでの適用害虫なので、日本語で適用害虫の名前を書くのは前に も苦労したことがあると思うんですけれども厄介なんですよね。ただ、少なくとも何々虫類とい うものと何々虫というものがありますが、例えば、最初のものでも果菜類とアブラナ属と非アブ ラナ属の一番下の虫、それから、3ページでの「カイガラムシ、アブラムシ類」は1つで続いて いるのかどうかわかりませんけれども、ほかのところでもカイガラムシあるいはコナカイガラム シ、それから、キジラミというのがいっぱいありますけれども、この辺がみんな特定の害虫名で はなくてグループ名、生物的に言うとファミリーネームなんですね。片一方で、アブラムシ類、 コナジラミ類というふうに「類」となっているのはグループで複数称を含んでいる。日本での登 録でよくこういう表現を特定種にしたり、グループで共通にしたりとありますけれども、アメリ カでそこがどうなっているかわからないんですが、ただ、少なくともキジラミであれば○○キジ ラミと特定種があるのか、あるいは原文で複数形になっていれば「類」だろうと思うんですよ。 その辺を整理しておいた方がいいんじゃないかと思いました。これは原本はあるんですよね。複 数形になっていれば「類」にすればいいと思います。もし、わかりにくいところがありましたら、 私の方に送っていただければ、私のわかる範囲でチェックいたします。私のところでわからなけ れば農水にお願いします。 ○事務局 ありがとうございます。 ○大野部会長 では、志賀先生に問い合わせが行くと思いますけれども、よろしくお願いいたし ます。  ほかに今までのところで御意見はございますか。代謝物については、どれを代謝物にするかは また後で、全部意見を伺ってからにしたいと思います。  毒性の部分はいかがでしょうか。鰐渕先生、何かございますか。 ○鰐渕委員 特にございません。 ○大野部会長 ほかの先生何かございますか。それでは、分析方法、分析値の辺りでいかがでし ょうか。 ○松田委員 この分析法というのは非常に簡単で、アセトンと水の混合液で抽出して、蒸発乾固 して水に溶かしてLC/MS/MSということで、ほとんど精製というものがないんですが、これで 例えば肝臓とかそういうものがちゃんと測れたのかに若干疑問を感じるのですが。 ○大野部会長 概要のところで重要なステップが抜けているということですか。 ○事務局 [2]に記載している分析法は一応農産物の残留ということで、代表的な部分を書かせて いただいております。確かに畜産物の分析法については詳しく書いていないところがありました ので、この辺は確認しまして御連絡させていただいてよろしいでしょうか。 ○大野部会長 では、確認して必要に応じて追加をお願いいたします。  ほかにございますか。 ○加藤委員 今の点にも関連するんですけれども、この分析を見ていただくとわかるんですが、 内標を使っているということ。ですから、回収率はほとんど問題にする必要がない、通常の外部 標準で。ですから、こういう簡単な方でいけているということです。ですから、通常の方法でい ったらLC/MS/MSを使っていますので、かなりの感度にはなると思うんですけれども、きちん とした回収率で適正な分析がこのとおりの方法でいくかどうかは非常に疑問であると考えた方が いいと思います。  以上です。 ○大野部会長 ありがとうございます。今の御意見は、畜産物についてもそれを使っていれば大 丈夫だろうという御意見でしょうか。 ○加藤委員 というよりも、先ほどの規制対象にもかかわますけれども、この分析法が日本での 通常の試験法として採用できるのかどうか。すべての代謝物について安定同位体を入手できるの かどうか、この辺の問題が一つ。  それから、もう一つ、規制対象と絡みましては、各国での規制対象の状況を21ページの表で見 ていただきたいんですが、4種類の代謝物すべてを規制対象に入れているのはEPA、アメリカ だけです。JMPR、コーデックス、オーストラリアにしても規制対象にしているのは、もう少し合 理的な形でのもの。先ほどM7とM1グルコシドが残留のデータを見ていただくとわかりますけ れども、検出はもちろんされていますが、量的にはM1とか親化合物に比べて非常に少ないもの です。それから、M5につきましては一部で比較的高く出ていることは確かなんですが、その場 合でも親化合物とかM1よりは同等かM1とか親化合物の方がやや多めの量で、そちらで確実に 押さえられると、使い方を間違えたような異様な使い方をしているかどうかの規制は確実にでき る状態だと思います。  それから、先ほど山添先生がおっしゃっていたM1の構造上の問題もありますので、そういう 点からいって、この化合物について毒性の面から見た場合には、当然グルコシドも含めた毒性に 絡む全ての代謝物を規制対象にするというのは非常によくわかるんですが、残留値としての規制 対象の面から言った場合は、やはり親化合物プラス代謝物の中で一番多くて毒性も何となくこの 評価書を見ていますと精巣との関係で少し出ているような感じもしますが、疑いが出るM1を含 めた代謝物とするのが一番合理的なところではないかと私は考えておりますが、いかがでしょう か。 ○大野部会長 分析対象物のところに話が入りましたので、そこについて御意見を伺いたいと思 います。 ○斉藤委員 分析対象物というのは、先ほど加藤先生からちょっとおっしゃられた内標準物質を 使われている云々の件ですが、多分、内標準物質を使われていてもよくないという御意見だと思 うんですけれども、確かに5種類すべて内標準が使われていますからC12の方のC13に対する回 収率というのは100%近く来ると思うんですが、肝心のサロゲート自体の回収率がこの方法では見 られていないので、もしかするとサロゲート自体の回収率が例えば20%を割るという可能性があ るわけです、その場合には分析法自体のバリデーションが使えないということになりますから、 そこをまず押さえなければいけない。安定同位体を使っていれば何でもかんでもOKだというわ けではないので、そこはまずきっちり押さえなければいけないというのが第1点です。  それから、これからの御審議になるかと思うんですけれども、代謝物の件で言えば、先ほど加 藤先生が親とM1を抑えればというお話でしたが、M5の方が倍以上出ているのもあるんですね。 特にアブラナ科ですね。ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、カラシナ。特にブロッコリー ですけれども、倍以上出ているものを無視してよろしいものかなという気が個人的にはします。 特に、ブロッコリーは一応今回の基準値が1ppmということですけれども、例えば、ブロッコリ ーで一番高いものになると0.7ppmとか0.8ppm近くまで出てしまうものがM1とM5を足すとあ ると思うので、その辺を考えると、ちょっとこのまま無視してしまっていいのかなという気がし ます。 ○佐々木委員 基準値そのものは大半が国際基準を参照しているものが多くて、代謝物を含めて のアメリカの基準値を引いてきているのはごく少ないですから、国際基準は親とM1だけですの で、M5をあえて含める必要はないのではないかと思います。 ○大野部会長 ありがとうございます。  ブロッコリーのデータがどこにあるかわからなかったんですけれども、何ページですか。 ○加藤委員 9ページです。 ○大野部会長 そうですね、倍くらいありますね。それはブロッコリーだけですか。キャベツも そんな感じですね。それ以外のものは大体M1の方が2倍以上多いと。安全性の面ではどうです か。M1、M5を比較して鰐渕先生、何か御意見ございませんか。 ○鰐渕委員 科学的なことは専門外なんですけれども、植物の代謝でこういうふうにものによっ てはなるんでしょうけれども、これによって毒性試験がどれだけ変わってくるのか、その結果が どう変わってくるのかというところまでは多分明確なデータは出ていないんじゃないかと思いま す。 ○大野部会長 食品安全委員会の報告書の28ページに代謝物の急性毒性試験の結果があります ね。それでは、M5からM8まで急性毒性的には弱いということですね。M1はどこかにありま したか。もともとそのものも急性毒性が低いから比較にならないですね。  整理させていただくと、M5について定量法が日本では対応しにくい可能性があるということ でしょうか。安定同位体が得られにくいからと。これは基準値を決めると、実際の分析方法につ いて新たに定めることになるわけですか。 ○事務局 先生から御指摘のあったとおり、こちらの試験法は今後開発していくということにな るんですけれども、農薬メーカーに確認したところ、現在、安定同位体ではなくて標識体ではな いものの標準品の製造も勿論視野には入れていると。その中でM1グルコシドの合成はかなり難 しく、そのほかのM1であれば加水分解されたものであるので、親化合物から比較的容易に可能 と考えられるんだけれども、M5、M7は少し難しいと推察されるというコメントはもらってい るところです。なので、分析法そのものは今後検討いたします。 ○山添委員 1つは、このM5とM7が実際に吸収されるかどうかということですよね。それが 何かのデータで動物実験でもほとんど吸収されないというデータがあれば、事実上無視していい と思うんですね。ほかで測れるもので暴露という意味で。ですから、1つはそのデータがあるの かないのかを聞いてみると。  もう一つ、それがない場合に、例えばM5に関してlogP値が出ているかどうかが知りたいです。 logPが0.7以下だとほとんどの場合、酸化的代謝にならないし、多分抱合系に入ってしまうだろ うと思うんですね。そういうことの理由付けがあれば、経口の暴露の場合には事実上体内に取り 込まれない可能性が高いと持っていければ一番いいと思うんです。 ○基準審査課長 食品安全委員会のレポートの10ページに、代謝物ごとの吸収代謝等についての データがあります。 ○山添委員 M5ですね。これなんですけれども、どれだけ入ったかというパーセンテージがよ くわからないんですよね。 ○大野部会長 表6のCmaxが2mg/kgで1.26ですね。8ページの表1のCmaxが同じ用量で 4.41です。それと比べると吸収は3分の1ぐらいというような感じですね、簡単に考えると。た だ、半減期が元の方がずっと長いですね。 ○山添委員 だから、入ったとしても速やかに出ていくということですよね。ですから、このM 5そのものに重篤な安全性上の懸念がなければ、基本的には未変化体として既に暴露の実験をし てトータルで評価しているとみなして、このものについては事実上それほどないと評価すればい いんじゃないかと思いますが。 ○大野部会長 ありがとうございました。  9ページに、ラットでM5がそれなりに尿中に排泄されているということが出ていますね。M 1が62.5%で、M2が24.4%、M5は0.81%と少ないですけれども、それなりに生じていると。 特に、この構造からいって、このものが親化合物やM1と比べて毒性が特に強いと思われるよう な、そういう考えは余りないですかね。 ○鰐渕委員 ないと思います。急性毒性で見た場合ほとんど変わらなかったですから。 ○大野部会長 M5はM1とか親化合物と比べて、毒性的に強いということは余り考えられない と。それから、体内動態面から見ると、この化合物の吸収は正確に測ったものはありませんけれ ども、Cmaxで比べると親化合物の3分の1ぐらいであって、半減期が親化合物のβ相が20で、 こっちが4.23ですから5分の1ぐらいということだと、AUCもそれに応じて少なくなるだろう ということで、体内動態的に可能性は少ないと。そういう面でも毒性が特に強く出るという可能 性は少ないと。  それから、分析法上の問題で、M5とM7は分析しにくいのではないかというコメントが申請 者の方からあったということですけれども、私は何とも言えないんですが、専門家の先生方はい かがでしょうか。そのように考えてよろしいものでしょうか。最初に、山添先生から光学異性体 のところで若干面倒くさいところがあるのではないかというような発言だったかなと思いますけ れども。  それと、若干ブロッコリーとかキャベツではM5の方がM1よりも倍ぐらい多く残留している ものがあるけれども、ほかのところでは大体M1の方が多いということで、M1を親化合物と合 わせれば大体フォローできるだろうというような御意見を加藤先生からいただいたかと思います。  総合的に判断して、今回事務局の提案で親化合物とM1というような提案ですけれども、アメ リカを除く諸外国と同じような暴露評価になるかと思いますが、よろしいでしょうか。 ○斉藤委員 先ほど私はM5を含めた方がいいのではないかという発言をさせていただいたんで すけれども、その後の御審議の中にあったように、毒性が低い、それから、吸収が低いというこ とをもって外してもいいのではないかということであれば、そのとおりで結構だと思います。た だ、実際に作残データでアブラナ科の植物が出ているのにもかかわらず、ほかと十把一絡げにし て出ていないと切り捨ててしまったり、安定同位体の供給が不安定だから規制対象外にするとい うのは本末転倒なので、なぜM5を外したかというのは明確にしておいた方がよろしいかと思い ます。 ○大野部会長 先ほど私がサマライズさせていただいたところで、総合的に判断してM5を外す ということだったらよろしいと。ありがとうございます。  それでは、代謝物についてはM1だけということにさせていただきたいと思いますけれども、 よろしいですか。  それでは、そのほか国際的整合性とか、基準値案についてはいかがでしょうか。 ○山内委員 確認したいことと質問が3つほどあります。1つは、19〜21ページ基準値案表を拝 見したときに、「IT」と書いていないけれども基準値案が設定されているものは、今回インポー トトレランス申請をきっかけに、具体的にインポートトレランスの申請の品目ではないが、基準 値を設定しようということで考えられたということでよろしいですよね。これは確認です。  2つ目は、インポートトレランスの申請がないもので基準値設定のところで、例えば、20ペー ジの「ももネクタリン」を見ていただきますと、モモは設定がないので0.01ppmの一律基準でと いうことだと思いますが、ウメは3ppmに設定してあるんですね。この辺りの違いはどのように 生まれているのでしょうか。  もう一点ありまして、同じページの肉とその上を比べていただけれけばいいと思いますが、ホ ップ、その他のハーブは基本的に国際基準で設定されています。その下の筋肉関係のところは国 際基準があるんですけれども、アメリカの0.02ppmに全部そろえられているんですが、この辺り の基準の考え方の違いが出てきているのはなぜか教えていただきたいと思います。  以上です。 ○事務局 まず、1点目の「IT」と書いていないところで基準値が設定されているものにつき ましては、こちらの説明が不足しておりまして申し訳なかったんですが、今回基準を設定したい と考えております作物につきましては、インポートトレランスによる要請がなされたものと、本 年のコーデックスで採用されました基準値があったものは、これまでの並び同様、国際基準があ るのであればそれも設定していこうという考えに基づいて設定したものとなってございます。 ○山内委員 では、ウメは国際基準が3ppmだから、3ppmに設定したということですか。 ○事務局 そのとおりでございます。  その中でミカンとモモということであったんですが、これは毎度話題に出ているんですけれど も、日本における分析部位に皮が入らないですが、それに比べて国際基準は皮が入っている基準 値ということで、これについては若干メロン類で説明したような理屈も今回はなかったので、こ の2つについてはインポートトレランス要請も分析部位が違うということでなされなかったとい う背景もありまして、今回は設定しない案とさせていただいております。  あと、3点目の畜産物については、アメリカの基準値そのほかはITと書いているけれども、 国際基準を採用しているという部分につきましては、農産物は特にアメリカと国際基準で規制対 象がそもそも違うということから、いろいろアメリカの作物残留試験の結果が代謝物を含めた形 で数値が出ておりまして、そのうち親とM1だけを足した場合の作残から判断して、どちらの基 準値が適切かというのを農産物の場合は比較して、コーデックスを採用しているものは採用して いるといったような部分がございますけれども、畜産物の場合はもともとアメリカも親とM1の 規制ということもありまして、これはそれに基づくインポートトレランスの要請を優先して考え た形で設定した経緯となっております。 ○山内委員 牛の肝臓以下は、コーデックスを採用しないでアメリカを採用したのはなぜですか。 ○事務局 確かに、ここでコーデックスの肝臓以下0.03ppmという基準の方が高いので、ここを 採用するという案にすることもできるんですけれども。 ○大野部会長 両方ある場合にはどっちを優先するんですか。国際基準とインポートトレランス の申請と。 ○事務局 これまでの傾向として優先するのは、もちろん占有率の範囲内ですけれども、高い基 準値があればそちらを採用してきている経緯がございます。  すみません、もう一つ説明を忘れました。実はコーデックスの畜産物につきましては、またち ょっと規制対象が異なっておりまして、実は代謝物M1のみを親化合物換算したものとなってい ました。そういう根拠の違いもあったので、今回は主要試験として親とM1のデータが出ている アメリカの方を採用しております。 ○大野部会長 それでは、まず、基本的な考え方として、国際基準があっても測定部位などが違 う場合には採用しない。それから、インポートトレランスと国際基準と両方ある場合は、大体多 い方を採用する。勿論、全体のトータルの許容される範囲内ということですけれども。コーデッ クスとか国際基準があるものについては、問題がなければそのまま採用と。山内先生、よろしい でしょうか。 ○山内委員 はい、ありがとうございました。 ○大野部会長 では、ほかに基準値の設定、国際整合性とか全体を含めて御意見ございますか。  それでは、分析法について調べて、追加が必要になった場合は追加するということがございま したけれども、修正点はそれだけで。 ○事務局 あと、先ほど皆様に御審議いただいた内容として、規制対象の理由付けの部分を少し 修文したいと思いますので、また、修文案ができ次第、皆様に御確認いただければと思いますが、 よろしいでしょうか。あと、適用害虫の部分の確認も含めまして、よろしくお願いいたします。 ○大野部会長 今御説明があった修正をした上で、この案をこの部会の報告としてよろしいでし ょうか。 (「異議なし」と声あり) ○大野部会長 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。  それでは、次の品目農薬のブタミホスについて審議していただきたいと思います。それでは、 事務局から説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは、農薬2剤目のブタミホスでございます。まず、資料2−2をごらんくださ い。ブタミホスの部会報告書案となってございます。本剤に係る今般の残留基準の検討につきま しては、農林水産省より魚介類への基準値設定依頼がなされたことと、もともとポジティブリス ト制度導入時に、いわゆる暫定基準を設定しておりますので、そちらの見直しが今回の検討の対 象となっております。  本剤は有機リン系の除草剤でして、主として雑草の生長点に作用しまして、細胞分裂阻害によ る生育異常等を起こすことにより雑草を枯死させるということで作用すると考えられています。  化学名・構造式及び物性につきましては、記載のとおりとなってます。  21ページのこれまでの経緯をごらんください。本剤は、登録としては大分前の剤でして、昭和 56年7月に初回の農薬登録がなされておりまして、平成8年9月に告示となった残留基準がもと もとございました。その後、平成17年11月、ポジティブリスト制度の導入に伴いまして、当時 の登録保留基準を参照として、平成8年に設定された基準値以外の部分でも暫定基準が設定され てございます。この暫定基準の見直しにつきまして、平成20年3月に食品安全委員会に対して食 品健康影響評価を依頼したところでいますが、同じ時期に農林水産省から魚介類への基準値設定 依頼がなされましたので、その後すぐ4月に追加で評価依頼を行っており、その後、審議がなさ れまして、本年2月に結果通知がなされたという経緯のあるものでございます。  こちらの評価結果でございますが、資料2−1、食品安全委員会における食品健康影響評価書 の28ページをごらんいただければと思います。本剤につきまして、ラットを用いた動物体内運命 試験におきましては、経口投与されたブタミホスは速やかに吸収・代謝されたということで、投 与後168時間でほぼ定量的に糞尿中に排泄、主要排泄経路は尿中であったということが観察され ています。投与後、投与放射能の臓器・組織残留量は少ないということでした。  また、植物体内運命試験ですけれども、水稲やキュウリ等を用いた試験が行われておりまして、 幾つかの微量な代謝物B等が検出されておりますが、いずれの植物においても残留放射能の大部 分は極性残留物及び多数の微量成分であったという結論が出ております。  作物残留試験、また、魚介類の最大推定残留値につきましても記載がなされておりますが、各 種の毒性試験結果からはブタミホス投与による主な影響は、脳、赤血球のChE活性の阻害、有機 リン系ですのでこういう阻害があったとのことです。あと、鶏の遅発性神経毒性試験において、 この毒性が示唆されておりますことと、こちらは多分抜けていると思うんですが、ラットの繁殖 試験では、哺育中の生存児数の減少が認められたということですけれども、発がん性、催奇形性 及び生体において問題となる遺伝毒性は認められなかったとのことです。  これらの試験結果から食品安全委員会におきましては、食品中の暴露評価対象物質をブタミホ ス、親化合物のみと設定されております。  各試験で得られた無毒性量の最小値ですけれども、こちらに若干の検討の経緯が書かれており ますが、数値的に見るとラットを用いた90日間急性神経毒性試験の0.6mg/kg体重/日ということ だったんですが、より長期の2年間慢性毒性/発がん性併合試験を見てみると、無毒性量が 0.8mg/kg体重/日であったということと、最小毒性量との接近度等を考慮すると、ラットにおける 無毒性量はこちらの数値の方がより妥当と考えたとの結論に至っているようでございます。  以上より、こちらの値を安全係数100で除した0.008mg/kg体重/日がADIとして設定されてご ざいます。  それでは、資料2−2の2ページにお戻りいただければと思います。このページから本剤の適 用について記載しておりますが、一年生雑草等への適用となってございます。  3ページ、3%粒剤の適用表ですが、こちらも若干事前にお配りした資料から訂正した箇所が ございまして、事前にお配りした資料では適用雑草名に3か所ほど畑部分の一年生雑草という記 載があったんですが、現在は適用雑草は全部一年生雑草になっているという農林水産省からの連 絡がありましたので、このように修正してございます。  4ページからは作物残留試験について記載してございます。分析の対象といたしましては、ブ タミホス親化合物のみになっておりまして、試験結果といたしましては記載のとおりとなってご ざいます。  この作物は適用が多いんですけれども、13ページ35番、セリの作残ですが、こちらも事前送付 資料からの訂正がございまして、多分事前にお送りした資料では0.005ppm未満という結果が並ん でいたと思うんですが、正しくは今回お配りした資料の0.01ppm。あと、適用範囲以外の試験で あるという旨のコメントをつけてしまっていたんですけれども、こちらの試験は適用範囲内であ るということを再度確認いたしましたので、その部分の記述を修正してございます。これに伴い まして、別紙1と関連する箇所も修正してございます。  その次からは魚介類への推定残留量に関する記載となっておりまして、本農薬につきましては、 先ほども御説明しましたとおり、魚介類への基準設定依頼がなされておりますことから検討いた してございます。  この農薬につきましては、水田及び水田以外のいずれの場面においても使用されることから、 それぞれの水田PECを算出いたしまして、非水田PECの0.038ppbを採用してございます。  また、生物濃縮係数ですが、コイを用いた12日間の取り込み期間を設定した濃縮性試験が実施 されておりまして、この分析結果から84、128というそれぞれの濃度でBCFssが算出されており ます。  これらの結果を考慮いたしまして、水産動植物被害予測濃度0.038ppbとBCF128を掛け合わ せて、いつもの計算式に入れまして、最終的には推定残留量としておよそ0.024ppmという数値を 算出しています。  次に「7.ADIの評価」となっておりますが、項目番号で7番が続いておりまして、以降1 番ずつずれております。ADIの評価は8番になります。すみません、これも後で直します。A DIにつきましては先ほど御説明いたしましたとおり、0.008mg/kg体重/日という結果で通知され ております。  「8.諸外国における状況」ですが、本剤につきましてはJMPRにおける毒性評価はなされて おりませんで、国際基準も設定されておりません。また、いつも参照する関連国について調査い たしましたが、現在におきましては、いずれの国及び地域におきましても基準値は設定されてご ざいません。  これらを踏まえました基準値案といたしまして、ブタミホスにつきましては残留の規制対象を 親化合物のみとさせていただければと思っております。  基準値案の詳細ですが、18ページ以降の別紙2をごらんください。暫定基準見直しのいつもの 書き方ですが、左から3列目の基準値現行欄の網掛けがかかっているものが、いわゆる暫定基準 が設定されているものとなります。その隣の登録有無の欄に「○」が記載されているものが国内 登録のある作物ということになります。  今回、国内作残結果を基に暫定基準とともに一部本基準も見直しております。その結果、今回 作物残留試験データが提出されなかったものについては基準を削除しまして、そういった作物に ついては今後一律基準による規制とする案となってございます。  特に、メキャベツとまくわうりにつきましては本基準が設定されていたんですが、現在登録が ないということでしたので、今回、本基準ではありますけれども削除する案としております。  19ページをごらんください。その他のハーブの欄ですけれども、実はこちらの分類に該当する 作物としてアサツキがあるんですが、アサツキが農薬登録上の根拠としては葉ネギの作残を用い て設定しているということから、今回その葉ネギの作残のデータを根拠として、その他のハーブ に0.05ppmという基準値を置く案としてございます。もともと現行も暫定基準は0.05ppmなんで すが、値的には変わらないんですけれども、本基準として設定し直すということになります。  これらの基準値案により推定摂取量を算出いたしましたのが次の別紙3でございます。TMDI 試算によりまして、一番高い幼少児で10.5%のADI占有率となっております。  最後のページが答申案となりますが、基準値が今回変わったもの、数値は同じでも暫定基準か ら本基準に移行するものにつきまして記載しております。  また、先ほど御説明いたしました本基準を削除するメキャベツとまくわうりにつきましては、 脚注として一番下に注意書きを付け加えているところでございます。  事務局からの説明は以上です。御審議のほどお願いいたします。 ○大野部会長 ありがとうございました。  それでは、御審議をお願いいたします。まず、薬理作用のところはいかがでしょうか ○尾崎委員 少し細かなことになるんですけれども、食品安全委員会の書類の7ページ「7.開 発の経緯」の下から3行目に「作用機構は、微小管重合の阻害である」とはっきり書かれていま す。とすれば、案では1行目の後半部分に「微小管重合阻害により細胞分裂を阻害し生育異常、 さらには」と続けるのがいいのではないかと思います。ただ、大野先生から御指摘いただいて分 厚い資料を見たんですけれども、こちらの農薬抄録の16ページが生物活性について書かれている 場所なんですが、「重合阻害」という記述が見当たらないんですね。ですから、ここは何か原著に 当たって調べられた方がいいのかなと思います。 ○大野部会長 では、原著で確認できたら、そういう表現に変えるということにしますか。あり がとうございます。その点について、ほかの先生いかがでしょうか。よろしいですか。  では、これは水産物への追加ということで以前審議していただいたところなので、簡単にいき たいと思いますけれども、代謝面では何かコメントはございますか。特によろしいですか。残留 農薬の規制対象についても先ほど御説明がございましたけれども、残留しているのはほとんどが ブタミホスであって、そのほかは特性代謝物であるということが食品安全委員会の報告書に書い てありますので、特に問題ないと思います。  安全性の面で何か御意見ありますか。よろしいですか。それ以外に、今までのところで何か御 意見ございますか。  それでは、残留基準の設定ということで、魚介類への設定が中心になると思いますけれども、 その辺はいかがでしょうか。通常の設定方法に基づいて推定残留量を0.024ppmと推定したという ことでございますけれども、よろしいでしょうか。  基準値設定についていろいろ暫定基準値の見直しと、それ以外の説明がございましたけれども、 それについてはいかがでしょうか。 ○佐々木委員 質問なんですが、現行の暫定基準で0.05ppmというのがたくさん並んでいたんで すけれども、これは暫定基準を決めたときに検出限界から決められた値ではなくて、当時、登録 があったから決められたという経緯があるのでしょうか。今回はもう登録がないから、これらた くさんの作物全部で基準値が削除されるということなんでしょうか。 ○事務局 こちらの0.05ppmにつきましては、当時の登録保留基準を参考としていました。 ○佐々木委員 グループで0.05ppmが入っていたということですね、わかりました。 ○大野部会長 ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。全体的に見て御意見ございますか。  それでは、若干確認するところ等、必要に応じて修正するところはございますけれども、その 修正を踏まえた上で、この案を本部会の報告としてよろしいでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○大野部会長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。  それでは、次の農薬ミルベメクチンについての審議をお願いいたします。事務局から説明をお 願いいたします。 ○事務局 それでは、引き続きまして、資料3−2をごらんいただきたいと思います。こちら農 薬、ミルベメクチンの部会報告書案となってございます。本剤の残留基準の今回の検討につきま しては、農薬取締法に基づく適用拡大申請がなされたことと、こちらの剤につきましても暫定基 準が設定されておりましたので、こちらの見直しとなっております。  本剤は16員環マクロライド骨格を有する殺虫剤ということでございまして、品目名に若干注釈 を付け加えさせていただいておりますが、ミルベメクチンA3とA4という2つの物質の混合物と なっておりまして、検体中の存在比といたしましてはA3の方が22〜32%、A4が60〜70%という 規格となっているものでございます。  作用機序といたしましては、ダニ、昆虫等の神経筋接合部位の塩素イオンチャンネルに作用い たしまして、殺虫活性を示すものと考えられているということです。  化学名は記載のとおりとなっております。2ページには構造式及び物性ということで、こちら をごらんいただければ、どこが違うかというと、構造式の右上が違う物質の混合物ということに なっています。  それでは、32ページのこれまでの経緯をごらんください。本剤は、平成2年11月に初回農薬登 録がなされておりまして、その後、平成15年5月に農林水産省より適用拡大の申請に係る基準値 設定依頼がなされました。対象といたしましては、ダイズですとかエダマメ、サヤインゲンとい ったものでございます。  こちらを受けまして平成17年11月に食品安全委員会あてに食品健康影響評価を依頼しており まして、その後、ポジティブリスト制度の導入ということで平成17年11月の暫定基準の設定を 挟んでおりますけれども、その直後に今回暫定基準告示がされているということです。  本剤につきましては、登録保留基準ですとか、当時の分析法の定量下限を参考とした残留基準 が設定されておりまして、この部分の暫定基準の見直しについては平成18年7月に食品安全委員 会に対して追加で食品健康影響評価を依頼いたしまして、さきに依頼していた適用拡大の部分と 一緒に食品安全委員会で審議がなされまして、本年4月に評価結果の通知がなされているという 経緯のある剤となってございます。  評価結果でございますが、資料3−1の42ページをごらんいただければと思います。こちらの 剤につきましては、ラットを用いた動物体内運命試験が実施されておりまして、血漿中放射濃度 の推移ですとか、その雌雄差、排泄についての観察がなされています。排泄は速やかで、主要排 泄経路は糞中であったということが観察されてございます。また、組織中における減衰が速やか で、組織残留性は認められなかったということです。  植物体内運命試験の結果ですが、ミカン及び茶の葉に塗布処理した試験では、A3とA4の速や かな消失と複数の代謝物の生成が確認されております。また、A4の散布処理を行ったイチゴでは、 大部分はA4のままです。1つの代謝物のみが確認されたということでした。  ナスの土壌混和処理試験では、吸収、移行性は少ないということで、高極性の代謝物のみがわ ずかに根や葉茎部に移行したとの結果が確認されております。  各種毒性試験の結果ですけれども、ミルベメクチン投与による影響は主に体重、腎臓、副腎及 び血液、げっ歯類の切歯に影響があることが認められております。一方で、発がん性、繁殖能に 対する影響及び遺伝毒性は認められておりません。  ラットを用いた発生毒性試験におきましては、胎児に腎盂拡張が認められているとのことです が、試験に用いたSD系統のラットでは好発することが知られている変異だということと、発生 頻度等のデータからも投与の影響とは考えなかったとの結論に至っているようでございます。ま た、奇形の増加は認められておりません。  ウサギの発生毒性試験におきまして胎児の異常は認められなかったことからも、ミルベメクチ ンに催奇形性はないと考えられたとの結論に至っております。  これらの各種試験結果からは、農産物中の暴露評価対象は親化合物のみと設定されているとこ ろでございます。  また、無毒性量の最小値につきましては、イヌを用いた1年間慢性毒性試験の3mg/kg体重/日 だったということから、これを安全係数100で除しまして、0.03mg/kg体重/日がADIとして設 定されております。  それでは、資料3−2の2ページにお戻りください。2ページの下の部分から本剤の適用につ いて記載してございます。今回、作物名等に囲みがついているものが適用拡大申請がなされたも のを示しております。主にチャノホコリダニですとかリンゴハダニ等そういった病害虫への適用 となっています。  6ページ以降に、作物残留試験について記載してございます。分析対象の化合物といたしまし てはミルベメクチンということで、A3とA4の合量で分析されております。  こちらも結構適用の多いものとなっておりますけれども、21ページですが、今回こちらの剤は 魚や畜産物の設定がございませんので、作物残留試験結果以降にADIの評価として先ほど御説 明いたしました0.03mg/kg体重/日という評価結果を記載してございます。  「8.諸外国における状況」でございますけれども、この剤もJMPRにおける毒性評価はなさ れておりませんで、国際基準も設定されておりません。関係諸国に関して調査した結果、オース トラリアにおいてイチゴに基準が設定されてございます。  以上を踏まえた「9.基準値案」ですが、残留の規制対象といたしましてはミルベメクチンと して、A3とA4の和とする案とさせていただいております。これらはミカン、ナス等を用いた植 物体内運命試験の結果を受けまして、いろいろ代謝物は確認されているところなんですけれども、 いずれも微量であるということから規制対象物質には含めないこととしたと、理由として書かせ ていただきました。  基準値案の詳細については27ページ以降の別紙2をごらんいただければと思います。先ほどの ブタミホス同様、基準値現行欄が網掛けとなっておりまして、こちらがいわゆる暫定基準となっ ております。本剤につきましては全部が暫定基準となっておりますけれども、その隣の登録有無 の欄に「申」が記載されているものが、今回適用拡大申請がなされた作物です。この表の中で1 つ修正があるんですけれども、27ページの下に「その他のきく科野菜」がございます。こちらは 今、登録有無の欄に「○」と「申」が入っているんですが「申」が間違っていますので、後ほど 削除して修正したいと思います。申し訳ございませんでした。  これら適用拡大申請のあった作物は勿論ですけれども、「○」がついております既登録の作物に ついてもこれまで暫定基準という扱いでしたので、国内作残を見直した基準値案としてお示しし ております。よって今回、作物残留試験データが提出されなかったものにつきましては、暫定基 準を削除いたしまして一律基準による規制とする案としております。  この剤につきましては、基準値現行、暫定基準が0.02ppmというそれなりの根拠が当時の分析 法の定量限界ということでしたので、そういったものについては勿論、作残結果はありませんの で、そういったものも削除するものとなっております。  次に、28ページの一番下「その他の野菜」について説明を加えさせていただきたいのですが、 こちらの基準値案は今回、シソの葉の残留データを参照して設定してございます。実はシソの葉 というのは食品衛生法の分類上ではその他のハーブに該当するところなんですけれども、農薬登 録の上ではシソ葉菜類ということで、食栄法上のその他の野菜に含まれるエゴマの葉の登録等も なされておりますことから、同じグループのシソの葉の残留量を根拠として、その他の野菜の基 準値も設定させていただいているところでございます。  29ページで、ミカン以外の柑橘類につきましては、なつみかんの果実全体を参照いたしました。 あと、イチゴにつきましては、国内基準から設定した基準値案でございますけれども、たまたま オーストラリアとも同じ基準値となっております。  30ページの一番下「その他のハーブ」につきましては、過去にサンショウの葉の残留データか ら緊急登録を行った経緯があるということで農林水産省から説明を受けましたので、そちらを考 慮して現行暫定基準の5ppmをそのまま設定する案となっております。  これらの基準値案により推定摂取量を算出いたしましたのが、31ページの別紙3です。一番下 のADI比でございますけれども、一番高い幼小児で12.3%、TMDI試算で12.3%という結果に なっております。  最後のページが答申案となっておりまして、こちらも先ほどのブタミホス同様、基準値が変わ ったもの、そもそもこちらは暫定基準なので数値は同じでも本基準に移行するものにつきまして 記載しております。規制の対象としてA3、A4の和を言うという意味でも注釈を加えているとこ ろでございます。  事務局からの説明は以上です。御審議のほどお願いいたします。 ○大野部会長 ありがとうございました。  それでは、御審議をお願いいたします。まず、薬理作用のところ、尾崎先生、いかがでしょう か。 ○尾崎委員 1行目の「ダニ、昆虫及び線虫」という表現については、後ほど志賀先生からコメ ントをいただいた方がいいのかなと思いますが、その次の「神経筋接合部位の塩素イオンチャン ネル」という表現があるんですけれども、このたぐいの薬、ミルベメクチンを初めとして獣医学 領域では非常によく使うんですが、教科書を見ても神経筋接合部というところまで踏み込んだ表 現はないんですね。神経系と少し大ざっぱに書いた方がいいと思います。「神経系の塩素イオンチ ャンネルを活性化し、運動麻痺により殺虫活性を示すものと考えられている」という表現がよろ しいかと思います。 ○大野部会長 ありがとうございます。  志賀先生、いかがですか。 ○志賀委員 ちょっとこれは事前に確認していないものですから、実際のところわからないんで すけれども、少なくとも適用を見る限り線虫はございませんね。だけれども、適用はないけれど も薬理作用として線虫でも効くのかどうなのか。 ○尾崎委員 線虫に効くことは間違いありません。フィラリアの予防剤として使いますので。た だ、「ダニ、昆虫」となっていますけれども、昆虫全部なのか。 ○志賀委員 これは、ある種の昆虫ですね。そこまで書くかどうかですね。 ○尾崎委員 限られているわけですね。全部とは限らないです。 ○志賀委員 そうですね。ただ、こういう場合は今までどうしていましたか。一部の昆虫でもや はり「昆虫」と書いていたのではないかと思うんですが。 ○事務局 はい。 ○志賀委員 逆に言いますと、昆虫一般と言ったときに、特にかなり前からの殺虫作用がある物 質というのは、それなりに選択毒性を持っていますから、そうすると昆虫と大ざっぱに言えない ものの方がほとんどになってしまうのではないかと。ちょっと一般的な感想ですけれども、その ようには思います。 ○尾崎委員 獣医学領域では、毛胞虫症というのがあるんですね。毛の生え際の毛胞のところに ヒゼンダニというダニがくっつくんですけれども、その治療薬として使われているという経緯は あります。 ○志賀委員 もともとダニ剤としてはかなり広い範囲に効いている、農業場面での適用もありま すし効くものなんですけれども、虫の方は一部の害虫ということにはなります。 ○大野部会長 昔、小学生のときに習った気がしますけれども、ダニは昆虫じゃないんですね。 ○志賀委員 むしろクモに近いんです。  私からいいですか。化学名の一番下ですが、こういうふうに表記されているから、このとおり になされているのかとは思いますけれども、〜ethylmilbemycin B mixture with〜methylで すね。この表題はミルベメクチンA3とA4なんですけれども、この2つのメチルとエチルが4と 3に対応するということではないんでしょうか。エチルの方が4ですよね。 ○大野部会長 最初がM.A3で、mixture with何とかが4ですね。……ごめんなさい逆ですね。 ○志賀委員 この場合に、M.A3は何とかかんとかmethyl、M.A4はethylの方とここの化学名は記 載しなくても、結局これは一括でミルベメクチンがmixtureだということでこう書かれているん ですかね。 ○事務局 そのようです。混合物ということでこのような表記になっています。 ○志賀委員 わかりました。 ○大野部会長 でも、何か変ですね。M.A3、M.A4をミルベメクチンとして「:」で書くのだった らわかりやすいですよね。 ○事務局 それでは、一番下のM.A3、M.A4という書き方をしているんですけれども、ここはミ ルベメクチンとした方がわかりやすいですか。わかりました、ありがとうございます。 ○大野部会長 ありがとうございます。  それでは、このものの代謝はいかがでしょうか。 ○山添委員 この物質そのものは結構代謝物、いろいろなものになってしまうみたいですけれど も、比較的速やかに、しかも、分子量が大きい関係で、ほとんどが単純に出てしまうとなってい ます。もう一つは、ここに多分記載がないんですけれども、いわゆるトランスポーターのMDR に乗りやすいので、比較的排泄は早い物質だろうと思いますので、特に代謝の点で問題はないか なと思います。ただ、お茶のところで葉っぱによる代謝はゆっくりしていると書いてあったんで すけれども、光によってたしか分解すると書かれていたと思います。そういうことで、実際に散 布したものが体内に暴露されるときには大半のものは処理されているので問題はないのではない かと思っています。 ○大野部会長 ありがとうございます。  私も植物の代謝を見てみますと、先ほど事務局で説明がありましたように、ほとんどが非常に 多くのものに代謝されるけれども、極性の高い代謝物が生成したということで、ミルベメクチン について規制対象物とするのはよろしいのではないかと思いました。  安全性のところは鰐渕先生、いかがでしょうか。 ○鰐渕委員 長期暴露によって問題の起こってくるような発がん性とか催奇形性とかはないので 大丈夫だと思います。LD50も700前後ぐらいですけれども、今回十分量の毒性量をとればこう いうことも回避できますので、大丈夫だと思います。 ○大野部会長 ありがとうございます。  歯が伸びてくるというのは、こういうもので特徴的なんですか。それともそういうことは一般 的にあるんですか。 ○鰐渕委員 剤によっては歯が伸びてくるものもありますので、この剤もその中の一つなのかも しれないと思います。 ○大野部会長 何か歯が痛くてかじれなくなってしまうとか。ただ、非常に高い用量で出ている ので、特に問題はないかなと思いました。  ここまでで御意見ございますか。それでは、分析法、基準値の設定で御意見ございますか。 ○山内委員 30ページの一番下の「その他のハーブ」の緊急登録について教えてください。これ はどういう手順で決まるものですか。 ○事務局 こちらは以前に御審議いただいた剤でも何剤か緊急登録の扱いがあったんですけれど も、平成14年以降の無登録農薬の販売等に関連して今後、農薬を食用作物に使用する場合には登 録された使用方法に従って使用することが義務付けられたということを受けての対応となってい るんですが、いわゆる登録の少ないマイナーな作物を救う措置といたしまして、形状や利用部位 などから類似性の高い作物を登録適用にしたという経緯がございまして、その際に参照する作物 の作残に安全率を掛けるとか、作物によって対応がいろいろあるんですけれども、そういった対 応がなされたということでお聞きしておりますが、農水省さんから補足はございますか。 ○農林水産省 そのとおりでございます。 ○山内委員 今回は、サンショウの葉の作物残留試験データを活用して、この基準値を設定した と。 ○事務局 はい。それで設定されていた経緯があるので、今もその内容で登録されているものが あるということから、今回も引き続きこのまま維持ということです。 ○大野部会長 ありがとうございます。  ほかに御意見ございませんか。それでは、全体を通して御意見ございますか。よろしいですか。  それでは、若干表現の修正がございましたけれども、それをもってこの部会の報告としてよろ しいでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○大野部会長 ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。  次は、動物薬のd−クロプロステノールについて御審議いただきたいと思います。事務局から 説明をお願いいたします。 ○事務局 それでは、資料4−2に基づきまして御説明させていただきたいと思います。  今般の残留基準の検討でございますけれども、薬事法に基づくd−クロプロステノールを有効 成分とする注射剤の承認事項の変更、現行では食用に供するため、と殺する前3日間または食用 に供するために搾乳する前12時間というものがございますけれども、搾乳する前12時間を削除 するという「申請」と書いてありますが、要望があったということでございまして、これに伴い まして農薬・動物用医薬品部会において御審議をいただいて報告書を取りまとめるというもので ございます。  なお、この注射剤につきましては承認に当たりまして、この部会で平成18年5月に御審議いた だいたものでございます。  「1.概要」の(2)用途でございますが、ウシの発情周期の同調、黄体退行遅延に基づく卵巣疾 患の治療、それから、ブタの分娩誘発でございます。  クロプロステノールにつきましては、プロスタグランジンF2αの類縁体ということでござい まして、黄体を退行させ、発情を同期化する目的や子宮収縮作用による分娩誘発の目的で汎用さ れているものでございます。我が国においてはd体のほかにラセミ体(dl−クロプロステノール) を有効成分とする注射剤も同じ適用方法で承認されているものでございます。  化学名、構造式及び物性については記載のとおりでございます。構造式をごらんいただきます と、右側のプロスタグランジンF2αに対しましてクロプロステノールにつきましては、構造の 右下の部分が異なるということでございます。  2ページ(5)適用方法及び用量でございます。我が国における用法・用量は記載のとおりになっ てございます。ウシの発情周期の同調等々につきまして、それぞれについて所定の量を注射する というものでございます。  使用禁止期間の改正ということで、今回搾乳牛から搾乳する際は12時間という下線部を削除す るということで御審議いただくものでございます。  「2.残留試験結果」にまいりまして、分析の概要につきましては記載のとおりでございます。  (2)組織における残留でございますけれども、今回の使用禁止期間の変更につきましては搾乳牛 の部分になりまして、組織中については前回御審議いただいたときと変わりませんので、搾乳牛 の部分を御説明させていただきたいと思います。  まず、[2]でございますけれども、搾乳牛における乳汁中の残留試験が行われております。これ は現行の使用禁止期間の設定の際に提出されたデータでございますが、その結果は3ページの上 の表になりまして、常用量、2倍量がそれぞれ投与されておりますけれども、この際の乳中の残 留量が示されております。結果につきましては、いずれの用量についても注射を12時間の時点で 検出限界である0.1ppbを下回っているということで、これを根拠に薬事法に基づく使用禁止期間 12時間が設定されているということでございます。  [3]で四角で囲ってございますが、今回の使用禁止期間の変更の要望に伴いまして新たに行われ た残留試験の結果でございます。ここで修正がございまして、お送りさせていただいたものには 検出限界が記載されていなかったという御指摘をいただきましたので、検出限界2pptを確認しま して、その部分と投与後24時間の数値を2ppt未満ということに修正させていただいております。 結果については表をご覧いただきますと、常用量を注射して2時間の時点で90.47ppt程度という ことで、単位が先ほどのppbと違うので少し紛らわしい部分もあるんですけれども、注射後2時 間でも0.1ppb程度まで下がるということが示されているということでございます。  「3.食品健康影響評価」については、平成18年2月17日付で食品安全委員会あてに意見を 求めた食品健康影響評価の結果を記載させていただいております。これについては平成18年に承 認に当たっての残留基準の設定について御審議をいただいたものをそのまま引用させていただい ているわけですけれども、今回の残留基準の検討に当たっても、この評価に基づくことが可能と 考えておりますので、まず、この内容を御説明させていただきたいと思います。  d−クロプロステノールにつきましては、遺伝毒性、発がん性を示す可能性は低い。それから、 催奇形性はないと認められる。また、毒性試験において認められた主な影響はプロスタグランジ ン作用によるものと考えられる。臨床用量を投与した対象動物の試験においても、いわゆるプロ スタグランジン作用以外の異常な副作用は認められていないと。  更に、薬剤の性質から使用機会が限定されている、それから、動物体内における代謝・排泄が 早く、投与1日後にはppbオーダーでほとんど検出不可能になる。これらのことから、本製剤が 適切に使用される限りにおいて、ヒトが食品を通じてd−クロプロステノールを継続的に摂取す る可能性は事実上ないものと考えられるということでございまして、結論といたしまして、適切 に使用される限りにおいて、食品を通じてヒトの健康に影響を与える可能性は無視できるものと 考えられるという評価をいただいたところでございます。  「5.残留基準の設定」ですけれども、この食品健康影響評価の結果を受けまして、平成18年 の承認時の御審議におきましては、残留基準を設定しないことが適当であるという結論をいただ いているところでございますけれども、今回の薬事法に基づく承認事項変更の要望に当たりまし て、先ほど御説明させていただきました新たに提出された残留試験データによりますと、投与2 時間後においてppbのオーダーで検出が不可能になっていると。「不能」というのは食品安全委員 会の評価に合わせて「不可能」に修正させていただきたいと思います。このことから、この食品 健康影響評価の結果に基づいて検討することが可能と考えておりまして、今回も現行の取扱い、 すなわち残留基準を設定せず、一律基準が適用されるという、前回評価いただいた結論から変更 する必要はないとさせていただくことができるのではないかと事務局では考えているところでご ざいます。  したがいまして、6ページの答申案でございますが、同様に食品中の動物用医薬品の残留基準 を設定しないことが適当であるとしたいと考えております。御審議のほど、よろしくお願いいた します。 ○大野部会長 ありがとうございます。  これは前に審議しましたのでざっといきますけれども、問題があればその都度指摘してくださ い。まず、用途のところに示された薬理作用は何か問題ございますか。よろしいですか。 ○志賀委員 あえてと思ったんですが、一般向けにといいましょうか、わかりやすくするのに蛇 足かもしれませんけれども、プロスタグランジンF2αは一般的に何とかホルモンという日本語 はありますか。グループの一つだと思うんですけれども。例えば、成長ホルモンだとか黄体ホル モンだとか、そういう類で何かありませんか。なければいいです。一般名があれば「何々ホルモ ン(プロスタグランジンF2α)」とか書いておけば割とピンと来るかなと思っただけです。なけ れば結構でございます、失礼いたしました。 ○大野部会長 なかったと思います。  ほかに何かございますか。代謝のところで追加はございませんか、よろしいですか。先ほど御 説明がありましたように、非常に早いうちに消失してしまうという結果が出ていましたので、そ れで特に問題はないと思います。もともと基準値を設定していませんけれども、そういうことで 全体的に見渡して御意見ございますか。  それでは、このものについては食品規格を設定しないという結論でございますけれども、そう いう答申案でよろしいでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○大野部会長 ありがとうございます。では、これを当部会の答申とさせていただきます。  次も動物用医薬品ですが、イミドカルブについて御審議をお願いいたします。では、事務局か ら説明をお願いいたします。 ○事務局 資料5−2に基づきまして御説明させていただきます。イミドカルブの本部会報告書 案でございます。  まず、今般の残留基準の検討でございますけれども、厚生労働大臣からイミドカルブについて 食品中の残留基準の設定、これはポジティブリスト制度の導入時に設定したいわゆる暫定基準の 見直しに係る意見聴取がされたことに伴いまして、食品安全委員会において食品健康影響評価が なされたことを踏まえて、本部会において御審議いただくものでございます。  「1.概要」といたしまして(2)用途でございますけれども、寄生虫の駆除剤、ウシ、ヒツジ等 の内寄生虫の駆除でございます。イミドカルブについては抗原虫活性を持つカルバニリド誘導体 の寄生虫駆除剤であり、ジプロピオン酸塩として使用されることが多い。作用機序につきまして はあまり明確ではございませんけれども、2つのポリアミンの生産または使用に干渉する作用、 それから、バベシアを取り込んだ赤血球へのイノシトールの流入阻害作用の2つが提唱されてい るというところでございます。この中の[1]ポリアミンの生産及び干渉する作用ですけれども、斉 藤委員から意味が不明確ではないかという御指摘をいただいておりますので、後ほどより適切な 表現等について御意見をいただければと考えております。  我が国の使用状況でございますけれども、イミドカルブを含有する動物用医薬品は承認されて ございませんが、海外ではウシ、ウマ、ヒツジ及びイヌのバベシア症及びアナプラズマ症を含む 原虫症の治療に使われているものでございます。  化学名、構造式及び物性については記載のとおりでございます。  (5)適用方法及び用量でございますけれども、EU及びオーストラリアにおいてウシ及び泌乳牛 に使用が認められておりまして、休薬期間がウシに対して28日間、泌乳牛に対してはEUにおい てのみ2日間が設定されております。  使用方法については記載のとおりでございますけれども、EUにおいては4週間後に2回目の 投与を行う場合があるということでございます。  「2.対象動物における分布、代謝」でございますが、「(1)」は「(2)」がございませんので削 除させていただきます。ウシにおける投与試験を2つ紹介させていただいておりますが、まず1 つ目につきましては、14C−標識イミドカルブジプロピオン酸の単回皮下投与試験が実施されてお りますけれども、結果といたしまして、投与後28日間で投与量の39%が糞中、15%が尿中に排出 された、これらについては未変化体のイミドカルブであったということでございます。  [2]でございますけれども、同様の試験が行われまして組織中の残留と未変化体の割合について 検討がされております。数値をごらんいただきますとおわかりになるかと思うんですけれども、 イミドカルブは比較的長い間組織に残留することが示されております。また、組織中の未変化体 の割合について調べられておりますが、休薬期間であります28日の時点で肝臓中では66%、腎臓 では82%、筋肉では79%が未変化体であったという結果が得られております。また、乳汁中にお きましては70〜79%が未変化体のイミドカルブであったということでございます。  「3.対象動物における残留試験結果」でございます。分析対象化合物としてはイミドカルブ。 分析法の概要といたしましては、分光光度法及びガスクロマトクグラフ/質量分析法等において 残留が検証されているところでございまして、ここも当初送らせていただいたものは非特異的分 光光度法と書いておりましたところ、松田委員と斉藤委員から御指摘をいただき確認をいたしま して、分光光度法と訂正をさせていただいております。  (2)組織における残留でございます。組織の方は[1]、泌乳牛が[2]でございますが、まず[1]は、筋 肉内投与した後7日、14日、28日、それから、2回目投与後14日、28日等々の組織中の濃度が 調べられているところでございます。投与後28日を見ていただきますと、こちらが先ほど御説明 させていただいたように、EU及びオーストラリアの休薬期間の時点でございますが、筋肉中に 最高で0.8ppm程度、それから、脂肪は検出限界以下、肝臓は4.8ppm、腎臓3.1ppmそれぞれ残 留していることが確認されております。2回目投与後28日ですけれども、1回目よりも更に多く 残留しているという結果が出ております。  [2]乳汁中の濃度ですが、表2のEUの休薬期間である2日間の時点をごらんいただければと思 いますけれども、最高で0.55ppm程度が検出されている。また、30日のところで2回目投与後2 日というのがございますけれども、こちらについては1頭のデータでございますが、1回目の残 留よりは少なかったという結果が出ております。  4、食品健康影響評価の結果でございます。済みません、また訂正がございまして「第24条第 1項第2項」と書いておりますが「第1項」を削除させていただきたいと思います。食品安全委 員会の食品健康影響評価結果でございますけれども、記載のように示されているところでござい ます。まず[1]ADIの設定でございます。イミドカルブは遺伝毒性、発がん性を示さないと考え られることから、ADIを設定することは可能であるということでございます。  その下のパラグラフがEUの評価の状況、それから、その下がオーストラリアの状況を記載し ておりまして、いずれもADIが設定されているということでございます。  我が国の今回の食品健康影響評価の結果でございますけれども、毒性学的試験において最も低 い用量で投与の影響が認められたと考えられる指標は、イヌを用いた90日間亜急性毒性試験にお ける血液学的及び臨床化学検査値、肝細胞変化であり、これに基づきNOAELを5mg/kg体重/日 と考えられたということでございます。  ADIの設定に当たりましては、安全係数として種差10、個体差10、発がん性試験が必ずしも 十分でないということと、コリンエステラーゼ阻害作用に関する情報が十分でないことを考慮し て追加の10、合計1,000を適用いたしまして、ADIとしては0.005mg/kg体重/日と設定すること が適当と判断されているところでございます。  5の諸外国の使用状況については、既に御説明させていただいたとおりでございます。なお、 JECFAにおきましてはADIとして0.01mg/kg体重/日が設定されているということでございます。  「6.基準値案」でございますけれども、残留の規制対象としてはイミドカルブ。基準案とし ましては別紙1、6ページをごらんいただければと思います。最初に脚注の一番上ですが、暫定 基準部分を網をつけて示したというところですが、基準値現行に網がかかっております。基準値 案ですけれども、ウシの筋肉、脂肪、肝臓、腎臓、それから、乳につきましてはコーデックス基 準、国際基準がございますので、これを採用いたしましてそれぞれ設定させていただきたいとい う案にさせていただいております。  また、ウシの食用部分でございますけれども「*2」に腎臓の値を参照したと書いてございま すが、肝臓、腎臓と同程度の残留が認められることを想定いたしまして、高い方の腎臓の値を参 考に設定する案とさせていただいているところでございます。  なお、先ほど御説明した3ページの残留試験で、例えば、投与後28日の筋肉においては基準値 案より高い0.8ppm程度残留するというデータが得られております。しかしながら、JECFA、コー デックスにおいて、JECFAの方で摂取量等を踏まえてこの残留基準を設定しておりまして、国際 基準としても採用されているということでございますので、我が国といたしましても、これを採 用することが適切と考えているところでございます。  暴露評価につきましては、7ページの別紙2でADI比を算出させていただいているところで ございます。まとめたものは5ページに戻りまして、国民平均、幼小児、妊婦、高齢者それぞれ 計算させていただいておりますけれども、いずれもADIの範囲内に十分収まっていますので、 基準値案として問題ないと考えております。  最後に(4)でございますけれども、現行基準はすべて暫定基準でございますが、今般の見直しを 行うことに伴いまして暫定基準を削除するということでございます。  9ページでございますが、答申案といたしまして、先ほど御説明をさせていただきました残留 基準案のようにさせていただきたいと考えております。御審議のほどよろしくお願いいたします。 ○大野部会長 ありがとうございました。  それでは、御審議をお願いいたします。用途と薬理作用のところはいかがでしょうか。尾崎先 生、何かありますか。 ○尾崎委員 斉藤先生から何か御意見があるようですが。 ○斉藤委員 私は専門ではないので、こちらがこういう表記で全く問題がなければよろしいんで すけれども、ただ「ポリアミンの生産及び/又は」というのはどう考えても英語の「and/or」を そのまま直訳したもので日本語の表現としてなじまないのではないかと、これがまず第1点です。  それから、このままを見ると、寄生虫の駆除に当たってポリアミンの生産、要するに生合成を 増加させるから駆除できるのかと読めてしまいました。それから、「/」の後の「又は使用」とい うのは生合成されたポリアミンの使用に干渉するというのが果たしてどういう意味なのかなと。 ポリアミンを寄生虫が使用するのを妨げるからなのか、ポリアミンを使用し過ぎてエンハンスメ ントすることによって駆除しているのかが「干渉」という言葉だけではどちらもとれるのではな いかと質問させていただきました。先ほどお聞きしたんですけれども、これはどちらも抑制だと いうことですので、それであれば、ポリアミンの生合成を抑制すること、または生合成されたポ リアミンの使用を抑制すること、あるいは両者どちらかその3種類のパターンがあるということ を内容的にはっきりと明記された方が、よりわかりやすいのではないかと質問させていただきま した。  以上です。 ○大野部会長 ありがとうございました。 ○事務局 安全委員会のをそのまま使用しておりますが、こちらが引用しておりますのはEMEA の評価書です。 ○大野部会長 それは皆さんのところに行っていないんですね。 ○事務局 事前にお送りさせていただいておりますけれども、英語としましては…(以下、英文 朗読)…妨げるという意味で間違いないものと考えております。 ○大野部会長 それでは、これは確認してポリアミンの生産を抑制するということと、利用を抑 制するということの両方があるということですね。 ○山添委員 抑制されていないんじゃないですか。 ○尾崎委員 [1][2]を分けてしまえばいいんじゃないですか。私も斉藤先生が最後に言われた意見 に賛成で、ただ、少しすっきりさせるために[1]ポリアミンの生合成阻害作用、[2]ポリアミンの生 体での利用阻害、[3]バベシアを取り込んだ云々と書けばいいのではないかと思います。 ○大野部会長 その3つが提唱されているということですかね。今の英語のところで、作用機序 は不明確であるけれどもと書いてありましたよね。それは不明確であるけれども、これまでにこ ういうことが提示されていると、「不明確」というのを入れた方がいいんじゃないですか。 ○事務局 わかりました。 ○大野部会長 よろしいでしょうか。  では、化学名、構造式及び物性で何か御意見ございますか。よろしいですか。  それでは、代謝のところではいかがでしょうか。 ○山添委員 経口投与されたラットと対象となるウシのところでデータがかなり違うんですね。 経口投与した場合に、ラットではほとんどAUCが計算できないと書いてあって、ウシの場合に は半減期に血中濃度等が出ているというのがあります。したがって、1つは種差がある可能性、 もう一つ考えられることは、ウシで投与されたものについて肝臓の中での濃度が測られていると ころが食品安全委員会の資料の8ページの(5)牛の一番下のパラグラフにあります。そこを見ます と、一旦入った薬物は比較的長い間肝臓にとどまって、代謝を受けることなくそのままの形で排 泄されると考えられます。だから、もともと吸収はよくない。だけれども、一旦入ると血中では なくて肝臓にたまっているから、血中の濃度は非常に低いと。だから、ラットも半減期が計算し にくかったのだろうと全体像を見ると説明がつきます。そうすると、一旦入ると肝臓の部分につ いては若干心配ですけれども、筋肉とかそういう部分の濃度は非常に低いと考えられます。また、 未変化体のまま尿中あるいは糞中に肝臓から再度出ていって排泄されると考えればいいんじゃな いかと思います。 ○大野部会長 ありがとうございました。  マウスでも同じように肝臓と腎臓に結構な量が存在していますね。残留するものがほとんどイ ミドカルブであるということで、これは非常に代謝が遅いので、「あれ?」と思ったんですけれど も、この構造からしてそういうものと考えてよろしいですか。 ○山添委員 1つは多分、それほど吸収はもともとよくなくて、消化管で多分MDRに乗るのだ と思うんです。それで排泄も胆汁の側から糞中に出ていくときには、多分MDRに乗ってゆっく り出ていく。ただし、一旦入ってしまうと肝臓の中、脂質の中で塩基性の物質はある程度あると 比較的たまることがあるので、それに乗って入るのだと思います。  だから、逆に言うと、排泄として1回に出ていく量にリミットがあって、出ていくのは出てい くんだけれども、ゆっくり出ていくタイプなので、ここで考えるような微量のヒトへの暴露の場 合には、それほど心配しなくてもいい。大量に投与した場合には肝臓に一旦入ってしまうと理解 すればいいんじゃないかと思います。 ○大野部会長 ありがとうございました。  残留するものは、ほとんどイミドカルブだということで、乳汁中に排泄されるのもイミドカル ブがほとんどということですので、基準値設定のための規制対象物質もこのイミドカルブで私は よろしいかと思います。  毒性の方ではいかがでしょうか。 ○鰐渕委員 食品安全委員会のまとめの表3が15ページにあるんですけれども、発がん性試験が ラット1種類しか、104週の慢性毒性/発がん性試験しかされていないということがあって、この ときに発がん性はまずないというデータが出ているんですが、良性腫瘍としての幾つかの腫瘍が 高用量では出ているということと、ただ、そのデータも毒性が強くて死んでいる動物の数が多い ので、有意というのもなかなか疑わしいということもあって、発がん性に関してはちょっと不明 確なところがあるということで、安全率を通常だったら10×10の100なんですけれども、諸外国 では更に5を上乗せして500、日本では更に5ではなくて10にして1,000にしているということ で、これだけしていれば大丈夫かなと考えられます。 ○大野部会長 ありがとうございます。  発がん性実験のデータが不十分なので安全係数は1000を使ったというところで、ちょっとよく わからなかったんですけれども、死亡例が多く十分な発がん性評価ができなかったというような ことでよろしいんですかね。コリンエステラーゼ阻害に関しては、たしかイヌのデータで設定し たと思うんですけれども、イヌは90日間で設定したということで血中のコリンエステラーゼ活性 を測ったとは書いていなかったんですね。それがちょっと不十分で、もうちょっと低い用量で抑 制が出ていたかもしれないということもあるので、そういう意味では食品安全委員会が1,000とい うのはちょっとあれですけれども、私はよろしいのではないかと思いました。  ここまででほかに御意見ございますか。よろしいでしょうか。  それでは、残留基準の設定で分析方法等はいかがでしょうか。 ○佐々木委員 残留試験の結果で28日の値を見ると、基準値を各組織で超えていると思うんです けれども、これは休薬期間がもっと長いからコーデックスではそういう厳しい値を設定したとい うことなんでしょうか。 ○事務局 JECFAの方ですけれども、その辺りの詳細はわからないんですが、暴露評価において 摂取量が筋肉は300gとか牛乳は1.5kgといった値で暴露評価をしておりまして、この基準値案に おいてもADIが87%にいっているということで、恐らく暴露評価の結果を踏まえて基準値案を 下げて設定しているのではないかと考えます。 ○佐々木委員 日本とは食品の摂取量、暴露評価の摂取量が全く違うということですね。日本の 摂取量で暴露評価を行えば、数倍高い値に設定されていても余裕がありそうなんですけれども、 国際的には肉とか牛乳の摂取量は多い量が使われているということですね。 ○事務局 そういうことです。 ○大野部会長 今ADIで幼小児は16.6%だから、肉を0.3から0.8ですと3倍ぐらいきつくなっ ていますね。よろしいでしょうか。ほかに御意見ございますか。  それでは、若干、用途、薬理作用のところで変更がございましたけれども、その変更した上で の答申案をこの部会の御報告としてよろしいでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○大野部会長 ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。  今日御審議していただく品目はこれで終わりましたけれども、今後の手続についての御説明を お願いいたします。 ○事務局 本日御審議いただきました農薬3剤及び動物用医薬品2剤につきましては、食品安全 委員会からの通知を受けておりますので、一部確認・修正等ございますけれども、修正をした上 で部会報告書とさせていただきたいと考えております。  それから、今後の手続でございますが、明日、食品衛生分科会がございますが、これには諮る ことができませんけれども、それ以降の食品衛生分科会にお諮りすることと、残留基準値の設定 等を行う農薬3剤及び動物用医薬品1剤については、パブリックコメント、WTO通報等の必要 な手続を進めるという予定にさせていただいております。 ○大野部会長 ありがとうございます。  ほかに議事はございますか。 ○事務局 特にございません。次回の本部会の開催日程でございますけれども、来年になります が、1月27日水曜日の午後を予定させていただいております。後日、先生方の日程につきまして 御確認させていただきたいと思います。詳細につきましては、追って御連絡差し上げます。 ○大野部会長 ありがとうございます。  その他、先生方から、事務局からございますか。よろしいですか。  それでは、部会はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。 照会先:医薬食品局食品安全部基準審査課残留農薬係、乳肉水産基準係 (03−5253−1111 内線4281、2487、2489)