09/11/24 第1回膵臓移植の基準等に関する作業班議事録       第1回膵臓移植の基準等に関する作業班          日時 平成21年11月24日(火)          13:00〜          場所 経済産業省別館1042号会議室 ○大竹補佐 それでは、定刻になりましたので、「第1回膵臓移植の基準等に関する作業班」 を開催いたします。本日は、先生方、お忙しいところ、お集まりいただきまして、まこと にありがとうございます。本作業班につきましては、先の国会で「臓器の移植に関する法 律の一部を改正する法律」が成立したことを受けまして、改正法の施行に当たって「膵臓 移植におけるレシピエント選択基準」また、「ドナー適応基準」を検討することを目的とし ております。  本日は、第1回目の会議となりますので、班員の先生方のご紹介を簡単にさせていただ きます。まず、埼玉医科大学教授、雨宮伸先生です。続きまして、杏林大学教授、石田均 先生です。奈良県立医科大学講師、石橋道男先生です。大阪大学教授、伊藤壽記先生です。 独立行政法人国立病院機構千葉東病院臨床研究センター長、剣持敬先生です。国立感染症 研究所部長、佐多徹太郎先生です。藤田保健衛生大学教授、杉谷篤先生です。大和生活習 慣病研究所所長、谷口洋先生です。本日、ご欠席でございますが、横浜市立大学教授、寺 内康夫先生も委員となっていただいています。続きまして、独立行政法人労働者健康福祉 機構千葉労災病院院長、深尾立先生です。ありがとうございました。続きまして、事務局 の紹介をさせていただきます。臓器移植対策室長、峯村でございます。 ○峯村室長 室長の峯村でございます。よろしくお願いいたします。短い時間でございま すが、活発なご議論のほどをよろしくお願い申し上げます。 ○大竹補佐 続きまして、竹内補佐です。 ○竹内補佐 竹内です。よろしくお願いいたします。 ○大竹補佐 長岡補佐です。 ○長岡補佐 長岡です。よろしくお願いします。 ○大竹補佐 井原主査です。 ○井原主査 井原でございます。よろしくお願いいたします。 ○大竹補佐 最後に、私、大竹と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。  それでは、第1回目の班会議でございますので、当班の班長ですが、事務局といたしま しては、深尾先生にお願いしたいと思っておりますが、皆様、よろしいでしょうか。あり がとうございます。それでは、深尾班長に席にお移りいただきまして、議事をお願いした いと思います。よろしくお願いいたします。報道カメラ等、いらっしゃいましたら、ご退 席のほどをお願いいたします。  それでは、以後の議事を深尾班長、よろしくお願いいたします。 ○深尾班長 それでは、皆様、どうぞよろしくお願いいたします。まず、事務局から、資 料の確認をお願いいたします。 ○大竹補佐 それでは、資料一覧に沿いまして、ご説明をしたいと思います。まず、議事 次第がございまして、中程から配付資料、参考資料一覧表がございますので、ご確認くだ さい。次に、作業班班員名簿がございます。その後、資料1、資料2がございます。次に、 資料3、こちらは、「ガイドラインの一部改正概要について」です。資料4に関しましては、 1と2に分かれておりまして、資料4-1、資料4-2がございます。資料5、「レシピエント選 択基準(案)」です。資料6、「ドナーの適応基準(脳死下)」です。資料7、「ドナー適応基 準(心停止下)」の法改正に係る主なご意見です。以上、資料1〜7が資料です。以下、参 考資料として、1〜4まで添付してあります。また、お手元にファイルがございますが、こ ちらは法律に関する資料を添付してございますが、大変恐縮ですが、お帰りの際には、机 の上に置いておいていただければと思います。お持ち帰らないよう、お願い申し上げます。  以上、不足がございましたら、事務局までお申し付けくださればと思います。よろしく お願いします。 ○深尾班長 それでは、皆様、よろしいでしょうか。もし、資料が足りなければ、随時お 申出いただきたいと思います。  それでは、この作業班は、法律の改正に当たりまして、特に親族優先条項ということに 関しまして、特に今日はその点に関してご審議いただくことになります。すでに他の臓器 に関しては、大体作業は終わっているようで、残るのは確か膵臓ともう1つぐらいだそう です。ですから、あまり揉めることはないかと思いますけれども、十分、慎重にご審議い ただきたいと思います。先ほど、パブリックコメントも18日から始まったようでございま すけれども、法改正の概要と作業班の位置付けなど、事務のほうからご説明ください。 ○大竹補佐 それでは、資料1と2について、ご説明させていただきます。  まず、資料1ですが、先般成立しました法律の概要です。資料1、2頁、「臓器の移植に 関する法律、現行法と改正法の比較表」で、新旧比較表となっています。5点、主な改正 点がございます。  1点目、「親族に対する優先提供」。現行法では当面見合わせるとガイドラインに書いて ありますが、改正法では、臓器の優先提供を認めるという一文が付された次第です。こち らの施行日ですが、平成22年1月17日となっています。  2点目、脳死判定・臓器摘出の要件。現行法では、本人の生前の書面による意思表示が あり、家族が拒否しない、または家族がいないことを条件としています。改正法では、本 人の意思が不明の場合であっても、家族の書面による承諾があることをもって、脳死判定・ 臓器摘出の要件とすることができることになりました。ここが大きな改正点です。  3点目、小児の取扱い。これまでは15歳以上の者の意思表示を有効とする、つまり15 歳未満の意思表示は認めないとなっていたのですが、改正法では、年齢に関わりなしとな りました。  4点目、被虐待児への対応。これまで規定はなかったのですが、今後は虐待を受けて死 亡した児童から、臓器が提供されることのないよう、適切に対応をすると記載されました。  5点目、普及・啓発活動等。これまで規定がなかったものが、運転免許証等の公的な書 類に、意思表示の記載を可能とする旨の施策を行う、と付された次第です。2点目から5 点目の施行日は、平成22年7月17日です。以上が法律の主な概要です。  資料2、本作業班の位置付けについてです。2頁、臓器移植に関する法律の一部を改正す る法律の施行に向けた検討体制という表です。  まず、厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会ですが、法律が公布され平成21年7 月17日以来、9月、10月と約月1回のペースでこちらを進めてきています。  本審議会において、今後施行に向けてどういう課題があるか、またどういう体制で検討 していくかということが審議されています。その中で、主な課題として、5点、示されて います。  I、親族への優先提供。こちらでは、親族の範囲について、また、あっせん手続き、さ らには親族への優先提供意思の取扱いについて。  II、小児からの臓器提供に関して。小児の脳死判定基準について、さらに、被虐待児の 取扱いについて。  III、本人意思が不明の場合。意思表示していないことの確認について、また有効な意思 表示ができない者の取扱いについて。  IV、普及啓発の関係。臓器提供意思表示のカードについて、また、インターネット等を 利用した登録システムについて。また、普及啓発の対象者、方法、さらに内容について。  V、臓器移植の実施に係る課題。ドナーの適応基準、レシピエントの選択基準について。 本日は、膵臓のレシピエント選択基準についてご議論いただきたいと考えています。  次に検討体制について説明をします。以上の課題をどのように検討するかについてです が、臓器提供に係る意思表示、小児からの臓器提供等に係る作業班、主に法律の先生方に 入っていただいて、こちらのほうも数回議論を重ねております。その中で、後ほど紹介い たしますが、親族の範囲について、さらに拒否の意思表示について、さらに有効な意思表 示ができない者の取扱いについて、検討されています。また、普及啓発に関する作業班と して、ドナーカードの様式、さらに、臓器ごとに関する作業班が7つありますが、先ほど 班長からもご紹介がありましたとおり、順次進行している次第です。本日は、膵臓に関し てご議論いただきたいと思っております。  最後に、研究班なのですが、山梨大学の貫井先生にお願いして、小児の脳死判定基準、 さらに臓器提供施設の体制整備、虐待を受けた児童への対策、このようなことが今後ご議 論されていき、この検討の内容を11月、12月と順次行われていく臓器移植委員会に報告 し、こうしたことを受けて、省令やガイドラインを策定していきたいと考えております。 具体的なスケジュールなのですが、9月15日、審議会としての臓器移植委員会第1回を開 催いたしました。順次、法律の作業班ですとか普及啓発に関する作業班を開催しておりま す。また、臓器別の作業班としては、10月29日に肝臓、11月10日に肺、11月13日に心 臓、11月18日に腎臓、それぞれ作業班を順次進めている次第です。本日、膵臓の基準に 関する作業班を開催いたしまして、順次、臓器移植委員会に進捗状況を報告するとともに、 親族の優先提供に関する規定の施行に向け、審議を行っていきたいと考えている次第です。 ○長岡補佐 続きまして、現在厚生労働省で実施しておりますパブリックコメントについ て、説明をしたいと思います。  まず、資料2、3頁目をご覧ください。黒く塗ってある部分があるかと思いますが、こち らは、臓器移植委員会ですとか法律の作業班で主に議論いただきました内容を基に、平成 22年1月17日の親族優先提供に向けた改正事項のガイドラインや、省令といったものに ついて、現在厚生労働省においてパブリックコメントを実施している次第です。平成21 年11月18日から開始いたしまして、平成21年12月17日までの約1カ月間を取って、広 く一般から意見を募集するということで、パブリックコメントを実施しています。  パブリックコメントの内容については、資料3をご覧ください。これは、ガイドライン についてパブリックコメントに付しております資料をそのままお付けしたものです。  2番、改正の概要をご覧ください。今回、親族優先提供の実施に向けて大きく変わりま すのが(3)の部分でございます。  親族に対し臓器を優先的に提供する意思の表示について、以下のとおり規定する、とい うことで、親族優先提供の実施に際して、その運用の指針を定めているということでござ います。順に説明したいと思います。  アをご覧ください。アは、親族の範囲です。これは、先ほども説明があったかと思いま すが、親族優先提供と申しますと、親族の範囲について法律では特段の規定が設けられて おりませんので、こちらのガイドラインでお示ししているということでございます。内容 ですが、「臓器を優先的に提供する意思表示に関して法に規定する『親族』の範囲について は、立法者の意思を踏まえて限定的に解釈し、配偶者、子及び父母とすること」というこ とにしております。括弧書きの部分でございますが、これは養子と事実婚に関する定めで ございまして、まず、養子の部分が括弧書きの前半です。特別養子縁組以外の養子につい ては、認めないということとしています。また、後半部分ですが、届出をしていないが、 事実上婚姻関係と同様の事情にある者を除く。これは、事実婚は認めず、法律婚に限ると いうことで、定めを置いているものでございます。  この考え方については、3頁をご覧ください。3頁は、親族の範囲についてこれまでの審 議会でのご議論を踏まえて、まとめている、基本的な考え方ということでございます。1 つ目が、親族の範囲は、配偶者、子及び父母とするという部分ですが、1点目、親族の範 囲については改正法の国会審議で立法者から親子と配偶者といった形で、明確な答弁をい ただいているということでございます。2点目、同じく国会審議においては、臓器移植の 公平性の原則に極力抵触しないような仕組にする必要があるという答弁をいただいている ということでございます。3点目、臓器売買の防止などの観点からも、範囲はできるだけ 狭く解したほうがよいだろうという議論をいただきました。4点目、これらを踏まえて家 族概念を考えた場合に、その最小単位としては、「婚姻関係」と「親子関係」が考えられる のではないか。その結果、立法者による「配偶者及び親、子」の意思は妥当ではないのか というご議論をいただいているところでございます。  以下は、特別養子縁組、配偶者事実婚の部分ですけれども、こちらは省略させていただ きたいと思います。  資料3、2頁、イの意思表示の方法をご覧ください。こちらは、親族に対して臓器を優先 的に提供する意思を表示する、そのやり方について規定したところです。親族に対し臓器 を優先的に提供する意思の表示は、移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供す る意思に併せて、書面により表示することができること、となっています。また、特定の 親族を指定して、その臓器を優先的に提供する意思が示されていた場合には、当該臓器を 当該親族を含む親族、これは他の方も含めた親族へ優先的に提供する意思表示として取扱 うということで、定めを置いております。  親族優先提供の意思表示の考え方が、4頁に書いてありますのでご覧ください。親族優 先提供の意思表示は、移植機会の公平の特例であるということ。また、運用上のトラブル を防ぐ必要があると言ったことを踏まえて、特定の親族を指定した意思表示があった場合 には、例えば順位付けがある場合も含めて、指定された親族を含む親族一般への優先提供 意思と解すべきであるといった考え方で、このような定めを置いているということです。2 つ目の考え方は、その場合の考え方なのですけれども、その結果、優先提供の対象となる 親族が、複数人となるケースがあるかと思いますが、その場合はレシピエント選択基準に 従って、医学的に優先順位を決定するということで、基本的な考え方をお示ししていると ころです。  2頁、ウ、実際の提供事例が発生した場合の、親族関係の確認という方法について示し たものでございます。親族への優先的な臓器のあっせんに際しては、親族関係及び当該親 族本人であることについて、公的証明書で確認をしていただくといった定めを置いており ます。移植希望者、レシピエント選択の際に、親族関係を確認できる公的証明書の入手が 困難であることが明らかな場合は、入手可能なその他の公的証明書の情報及び家族・遺族、 これは複数が望ましいとしておりますけれども、証言によって、レシピエントの選択を開 始して差し支えない。ただし、その場合も可能な限り速やかに親族関係を確認できる公的 証明書を用いて、確認をいただくといった手続きを置いております。  次に、エ、その他の留意事項について定めた部分です。1つ目、医学的な理由などから、 親族優先提供の意思表示があった場合であっても、必ずしも親族に対して移植術が行われ るとは限らないということを示しています。2つ目、臓器を提供する意思に併せて、親族 以外の方に対して優先的な提供意思が示されていた場合は、優先提供の部分は要件を満た しませんので無効ということですけれども、単に臓器を提供する意思表示として取扱うと いうことで定めを置いています。3つ目、臓器の提供先を限定する意思が示されていた場 合、この場合は親族に限定する場合も含めて、脳死・心臓死の区別とか、臓器の別に関わ らず意思表示を行った者に対する脳死判定及び臓器摘出は見合わせるということで定めを 置いております。  これも最後の4頁に考え方を書いておりますので、ご紹介します。限定提供ができない といったことに対する考え方としては、1つ目、先ほども申し上げました、親族優先提供 の意思表示、これは臓器提供の意思表示に併せて行うことができるということとされてい るということです。したがって、限定的な提供意思は、親族への優先提供の前提となる臓 器提供の意思がないと解して、臓器提供を行うべきではないといった議論をいただいたこ とを背景にして、このような定めを置いたということです。ガイドライン(案)の説明は 以上です。 ○深尾班長 では、いまのご説明に関してご意見、ご質問がありましたら、どうぞおっし ゃってください。いかがですか、特別ありませんか。 ○谷口班員 1つだけ、親族は親子と、それから配偶者ですね。その誰か1人に限定して おいた場合にも、その人に行かずにほかに行く可能性があるということなのですね。その 親族のどこに行くかわからないということなのですよね。 ○長岡補佐 ご指摘の、親族だけにあげますと、それ以外にはあげませんと言った場合に は、臓器提供はこちらのエの3つ目のところですが、行わないということで定めを置いて いるということです。 ○谷口班員 それはいいのですが、例えば、お父さんにあげますといった場合に、親族に は提供できますね、いまのご説明では。そのときにはお父さんではなくて、子どもに行く 可能性もあるということでよろしいですか?その医学的判断で。 ○長岡補佐 はい。 ○谷口班員 わかりました。必ずしもその人に行かないということですね。 ○深尾班長 ほかにはございますか。腎臓の場合などは2人レシピエントがいて、それが 2人とも、例えば子どもが2人腎疾患で移植が必要だった場合には、これはもうその2人 に限定していくのですか。それとも、1つは親族優先で、もう1腎はほかの人に行くのか、 その辺はどうなっていますか。 ○峯村室長 いろいろなケースが考えられると思うのですが、例えば、お2人の方がレシ ピエント登録されている場合に、お子さんなんかの場合は優先順位の一位という形で、お 二方が選択基準上位置づけられるわけですが、その際に医学的な必要性に応じて、移植の 順位づけをその中でするということになります。例えば、それぞれ1つずつ、1腎ずつの 移植ということでは、このお二方が移植の対象として、それぞれご両親のどちらか側の臓 器をいただくことになるわけです。また、1人しかお子さまがいない場合で、その方に対 して優先提供の指定があった場合、優先提供の指定をされたお子さまが医学的観点から言 えば1腎しか必要がないということであれば、1腎について提供を受けて、残りの1腎に ついてはご家族が了解した上で第三者への提供にいくということになります。医学的な理 由から2腎移植が必要だということであれば、その2腎についてはそのお子さまに移植が されるという整理になろうかと思います。 ○深尾班長 膵腎同時移植では、腎臓が関係するので、ちょっとその辺を確認しておきま したが、よろしいですか。 ○谷口班員 親族の指名があって、例えばお父さんとした場合に、お父さんが証明すると いうのですか、それを本人さんがおっしゃったときにはまだ生存されておられると、病気 で亡くなったと。そうした場合は、そのあとの親族とかには配偶者とかは入るのですか、 入らないのですか。  私のお父さんに移植をしたいと。ところがお父さんが突然お亡くなりになったと。お父 さんいませんよね。その親族ということで、それはお亡くなりになっておったとしても、 一応親族としてその子どもさんとか、配偶者には移植可能という理解でよろしいのですか。 ○井原主査 親族への優先提供の意思表示があったということで、解釈をします。 ○谷口班員 お亡くなりになった後もよろしいわけですね。例えば、それは離婚されてお ってもよろしいわけですね。 ○井原主査 離婚は法律上の婚姻関係がなくなっておりますので、そこはあくまでも今回 は夫婦間というのは、法律上の婚姻届を出したというケースを想定しておりますので。 ○谷口班員 HLAや血液型適合の有無にかかわらずということですね。それでよろしいで すね。 ○井原主査 はい。 ○谷口班員 わかりました。 ○剣持班員 要するに、本人が番号をつけているのは尊重されないということですか。膵 臓移植の場合でおそらく2人というのはまずないケースだと思うのです。例えば、こちら のほうにこれ1番、この子は2番ということは駄目で、親族優先というのだけが生きて、 その中で医学的に高いほうが、2番でもいくという理解でよろしいのですか。 ○大竹補佐 そのとおりです。あくまでも親族全体ということに対しての優先提供の意思 表示であって。その方々が複数いらっしゃる場合には、いまのレシピエント選択基準、医 学的な条件によって第1候補の方から順番に移植の希望があるかどうかというご意思を聞 いていくという形を考えております。 ○深尾班長 よろしいですか。ほかにどなたか、伊藤先生。 ○伊藤班員 膵臓ではないのですが、例えば、亡くなった方が子どもに心臓を提供したい という場合に、4類型以外の病院でそうなったときにはできないということになるのか、 あるいはちゃんとできるところに移してということになるのでしょうか。 ○深尾班長 それはドナーがあれですか。 ○伊藤班員 そうですね。 ○深尾班長 ドナーが判定できない、脳死で提供できない。 ○伊藤班員 ドナーが提供できない所で、臨床的に脳死となった場合に。 ○井原主査 それはあくまでも法律に基づいた脳死判定をやるという大前提になりますの で、違う施設であれば、法的脳死判定自体ができないということになります。 ○伊藤班員 そこで、できないということですね。 ○井原主査 あくまでも4類型、現行で考えれば4類型のところで亡くなった人に関して の指針ということです。 ○峯村室長 若干補足で、脳死の場合はいま説明のあった扱いです。膵臓の場合はたぶん そういう扱いになろうかと思うのですが、心停止下での移植の場合についても、この優先 提供はできるようになります。腎臓と角膜については4類型施設以外でもその提供の可能 性、あるいは優先提供の事例というのは起こり得ると考えています。 ○杉谷班員 脳死の場合と心停止の場合、いま腎臓、そして膵臓両方、医学的には提供で きますね。 ○峯村室長 ええ。 ○杉谷班員 心停止の場合で、優先提供があって亡くなられた、4類型の病院ではなかっ た。そういった場合に、腎臓と同じように膵臓も、心停止の場合優先提供を4類型でなく とも認めるということに、いまおっしゃったことは。 ○峯村室長 そうですね。 ○杉谷班員 で、いいことですね。 ○峯村室長 そうです。 ○杉谷班員 わかりました。 ○深尾班長 脳死でもって提供する場合には、決められた施設からしかできない。しかし、 心停止でもって亡くなった場合にはその限りではないわけね。 ○杉谷班員 ということですね。 ○深尾班長 いまというか、親族優先条項はそのまま生きている、提供ができるというこ とですね。提供できるから提供できる以上は、親族優先条項が生きてくる。よろしいです か。  それでは次に、親族優先に伴う自殺の誘発ということがかなり、心臓なんかでは特に問 題になりますが、いかがですか。子どもさんに是非自分の心臓をあげたいと、かなり悩ま れる親御さんはいらっしゃるのですね。自分が死んであげたいというようなことに起こり えるのではないかというので、心臓グループは大変心配しております。これに関して膵臓 は、どうお考えですか。膵臓ではあまりそういうことは起こらないと思うのですが、心臓 ではいままで既に、臓器提供目的の自殺の場合にはもう臓器提供できないということにし ているのでしたか、どうなりましたか。臓器提供目的の自殺の場合の臓器提供は。 ○大竹補佐 循環器学会から、そのようにしてほしいとのご要望はいただいています。ま た、さまざまな作業班の中でも、何らかの措置を講ずるべきだというご意見をいただいて います。多臓器に、心臓だけの話ではありませんし、また法的解釈もある話なので、ちょ っといま話を預からせていただいて、どのようにすべきか検討している次第です。 ○深尾班長 まだ検討中なのですね。 ○大竹補佐 はい。 ○深尾班長 どうでしょうか、検討中であるということでよろしいですか。この膵臓グル ープとしてはいかがですか。膵臓グループとしては反対、そういうことは認め難いと言う のか、あるいは場合によっては認めてもいいのではないか、こんなご意見の方いらっしゃ いますか。たぶんいないでしょうね。では、膵臓グループとしても、臓器提供目的の自殺 は認めないということで、親族への特にあげるための自殺は認めないということで決めた いと思いますが、お願いいたします。 ○剣持班員 例えば、自殺目的で、心停止のドナーは、いま腎臓に使っていますね。それ が、例えば親族優先だった場合は、ほかの人には行って、本人には行かないということに なるのでしょうか。要するに、心停止の場合です。いま、蘇生後脳症という方はたぶん腎 移植ではかなり多いですね。その場合は家族が提供を言えば、我々も移植していますけれ ども。その人が、たまたま親族を指定していた場合、自殺だから駄目で、ほかの人にはい いと言う、整合性がなくなるような気がしますけれども、その辺は検討されていますか。 腎臓のところで、何か出ましたか。 ○深尾班長 事務局のほう、いままでの議論入れてください。いままで自殺された方でも、 一般的に臓器提供していただいていますね。 ○峯村室長 死因については私どものほうで一切公表しておりませんので、自殺が含まれ ているかの有無についても、我々としてはお答えができないということです。それが大前 提になります。  私どものほうとしては、現在死因によって臓器提供について何ら制限はかけてはいませ ん。そういうことです。したがいまして、その中で、例えば今回の場合、優先提供の場合 にその死因によって差異を設けることを認めるのかどうかというご議論をしていただくこ とになろうかと思います。公表されている以外の死因については、一切私どもでその内容 の有無も含めてお答えができないということで、いままで通しています。あったかどうか も含めまして、ちょっとお答えできません。 ○深尾班長 親族に移植を望む者がいる。それで、たまたまその人が親族にあげたいため に自殺するのかはっきり分からないけれども、そういう状況だった場合には限りなく黒に 近いということで、親族にはあげない。しかし、ほかの人にはあげてもいいのではないか という意見もありますね。これに関しては、いままでのほかのグループあるいは法律グル ープの作業班の意見はどんなことが出ているのですか。親族にはあげないけれどもほかの 人にはあげるとか、あるいは親族優先条項が入ったら、もうすべて駄目とするのか、その 辺はいままで議論されていますか。 ○剣持班員 脳死の場合は死因が不明な場合は、ドナーになりませんよね。ただし自殺は、 ある意味では死因は不明ではないです。だからドナーになると思いますね。その場合に、 親族優先というのがそこに入ってしまうと、それは自殺を認めないということであると、 いままでのように第三者には行って、親族には行かないという、おかしなことになるのか なと思うのですね。 ○大竹補佐 その辺りも含めて、いまどのようなことが一番ふさわしいのか検討している ところでありまして、ほかの班ではそこまでの議論というのはまだ至っていない次第です。 ちょっとそこも含めて、問題提起とさせてもらいます。 ○深尾班長 わかりました。 ○谷口班員 尊厳死は、自殺とはどう関係するのですか。  尊厳死は、例えば心臓移植なんかのときはそうだと思います。すぐ死ぬかもわからない ということでね。ちょっと早く私が亡くなると、この息子は助かるのだという可能性があ りますよね。尊厳死を選ばれますよね。それは自殺に入るのですか、入らないのですか。 その議論、いままでにないのですか。私はもう老人で、もう90だと。時代を捨てたみたい な、そういう考え方はたくさん出てくると思うのですが……。 ○大竹補佐 おそらくそこも取扱いは同じになってくると思うのですね。つまり、臓器移 植を前提とした尊厳死がどのように取り扱われるかということが、やはり議論になってく ると思うのですね。 ○谷口班員 いままでのこの議論を法律家はどのように考えているのですか。 ○井原主査 そこは明確にご議論いただいておりません。ただ、臓器移植は、あくまでも 亡くなった方に対して、亡くなったという事実の後に出てくる話ですので、その前の部分 と連動してお話をすることはあまり考えていないのではないかというふうに思います。 ○谷口班員 でも大変重要なことだろうと、私は思います。 ○井原主査 もう1点、尊厳死ということで、かなりご高齢の方にそういうケースになっ た場合、そもそもドナーの方の要件として一定の年齢であるとか、そういった部分も関与 してきますので、もし、その死因、亡くなる理由などを考えることと、臓器移植という部 分とは少し分けて考えられるべきものかなと。 ○谷口班員 自殺は1つはある意味では尊厳死なのですね。自分の意思を断つわけだから。 だから若い人でも、それが起こる可能性はあるのですよ。有名ないろんな作家の自殺、い までは、若い作家の自殺はほとんどが尊厳死の可能性があるのですね。自分の時間をそれ で止めることが自分にとって最高であるというのが、自殺の1つの考え方ですから。  そういたしますと、法律家は、そこのところはお考えいただかないと、どうも難しいの ではないかというように、私は考えたりしますので、一遍ちょっとお尋ねいただいて。 ○石橋班員 原則的なことはある程度決められるとは思うのですが、おそらくそのケース バイケースで非常に難しい状況があるので、結局、運用の体制というのをやはりご検討し ていただくとよろしいのではないかと思うのです。例えば、前もって議論していなかった ことが発生した場合に、その対応を誤ると、非常に国民に対する影響というのが出てくる と思います。そういう非常に難しい問題をどういう場でどういうふうに解決していくかと いうことを、ひとつ運用の問題としてご検討していただけますか。 ○深尾班長 自殺に絡むものは、尊厳死もそうかもわかりませんけれども、これは膵臓に 限った問題ではありませんので、もっと大きな法律作業班がありますから、そちらで先ず 検討していただくことにしたらどうでしょうか。まず、そちらの意見が出てきてから、ま た膵臓に特別に限った問題があるようでしたら、この作業班でも検討するということにい たしましょう。 ○石橋班員 わかりました。 ○深尾班長 よろしいですか。今度、レシピエントの選択基準について検討を行いたいと 思います。では、事務局のほうからレシピエント選択基準について、案をお示しください。 ○大竹補佐 資料4についても説明させていただいてよろしいですか。  では、親族優先とレシピエント選択基準の関係等について、法律のワーキンググループ を中心に議論されていますので、そこをご紹介したいと思います。資料4-1「親族への優 先提供について」をご覧ください。「親族に臓器の優先提供を認める規定」というのが法律 に規定されていますので、こちらを簡単にご紹介いたします。読み上げさせていただきま す。  「第6条の2 移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思を書面によ り表示している者又は表示しようとする者は、その意思表示に併せて、親族に対し当該臓 器を優先的に提供する意思を書面により表示することができる」。このように、法律内で規 定されています。本条項をもって、親族の優先提供が規定されている次第です。  また、それに先立ちまして、国会でどのような議論がされているかをご紹介いたします。 衆議院の厚生労働委員会における河野太郎議員のご発言です。○の1つ目の下から3行目 を読み上げます。下線部からです。  親子及び配偶者に対しては親族の優先提供を認めること、ということで、かなり厳しい 枠をはめて、その中に限り優先提供を、これは心情を考えて認める、というご発言がござ いました。  また2点目として、参議院での山内議員からのご発言です。こちらも下線部、下から5 行目からです。A案におきましては、親族への優先提供の意思表示の規定を設けることと しておりますが、この場合におきましても、その意思表示を踏まえた上で、最終的には血 液型が適応するかなどの条件に照らし合わせて順位が判定されることになると想定してお り、決して順位の判定が恣意的に行われることはないと認識しております。  代表的な2つのご答弁を紹介いたしました。  資料4-2について、先ほど来ご紹介している、法律のワーキンググループ、意思表示・ 臓器提供に関する作業班においての議論をご紹介いたします。まず、中段から、主なご意 見ということでいただいている意見を6点ご紹介いたします。  1点目は、優先提供を受ける親族は、予め、レシピエント登録されていることを前提と すべきというご議論をいただいています。2点目は、親族優先は、レシピエント選択基準 の優先順位の第一位とするのが妥当ではないか。3点目、法律に規定されており、医学的 緊急度などよりも優先されると解釈される。4点目、同時移植希望者よりも単独での移植 を希望する親族が優先されると解釈される。さらに、虚血許容時間の位置づけは、臓器毎 の作業班において検討を行ってはどうか。また、先ほど来ご議論いただいています親族へ の優先提供に伴う心理的な影響、特に生体移植の行えない心臓移植における、親族の自殺 の誘発についてのご懸念が出されたということです。以上が、親族優先と、それからレシ ピエントの選択基準の関係についての説明です。 ○深尾班長 いまのご説明に関して何かご質問がありましたら、どうぞ。  ここでは、同時移植希望者よりも単独での移植を希望する親族が優先されると解釈され ると。これが膵臓の場合は、膵腎同時移植か、あるいは膵臓だけとかいろいろな組合わせ がありますので、そこが問題になるかと思います。虚血許容時間などは、これはまた別な 問題かと思います。よろしいですか。  では、次のご説明をお願いいたします。 ○大竹補佐 資料5に沿って、レシピエント選択基準(案)を事務局案としてご提示いた します。「膵臓移植希望者(レシピエント)選択基準(案)」という資料です。従来のこれ までの既存の基準に沿って、朱書きで私どもの案を記載いたしました。  レシピエント選択基準(案)として、まず適合条件は変わりはありません。ABO式血液 型とリンパ球直接交差試験の陰性ということです。さらに2点目の優先順位に手を加えて、 まず適合条件に合致する移植希望者が複数存在する場合には、優先順位は以下のように勘 案して決定するとしています。まず1番として、優先すべき親族、こちらを優先するとい う親族優先の条項を入れました。また、順次、ABO式血液型、そしてHLAの適合度、さら には2頁目ですが、膵臓移植と膵腎同時移植に関すること、そして(5)待機時間、(6)搬送 時間と続いています。また(7)の膵腎同時移植と腎臓移植ですが、こちらに関しては、(1) から(6)で選ばれた移植希望者が膵腎同時移植の待機者であって、かつ、臓器提供者から膵 臓と腎臓の提供があった場合には、当該待機者が腎臓移植待機リストで下位であっても、 当該待機者に優先的に膵臓及び腎臓を同時に配分する。文章で書きますと、ちょっと煩雑 ですが、膵腎同時移植の待機者に優先的に腎臓を配分することが、この条項で記載されて います。  ただし、膵腎同時移植の待機者が優先されるのは、DR座1マッチ以上のHLA型の適合が ある場合に限られるが、当該待機者が優先すべき親族である場合は、DR座2ミスマッチで あっても優先される、と規定しています。  なお、選ばれた膵腎同時移植の待機者が優先すべき親族でない場合であって、腎臓移植 待機者リストで選択されたレシピエントが優先すべき親族である場合には、当該腎臓移植 希望者が優先される、という記載です。  参考資料1をご覧ください。先ほど口頭でご説明したことを図にしたものです。今後(案) の1ですが、こちらは膵臓選択基準で、第一位が膵腎同時移植の親族である場合には腎臓 がその方に行くという、親族の膵腎同時移植の優先順位の事項です。ただ、2番で、膵腎 同時移植者の待機者が優先すべき親族でない場合の考え方ですが、こちら2番の(1)で、膵 腎同時移植待機者が第一位で、これまではこの方が優先されたものであったのですが、今 後、腎臓移植の単独待機者が親族の該当である場合には第一位、第二位それぞれに1つず つ行きます。右側、腎臓が1つしかない場合には第一位に行きます。さらには(2)として腎 臓移植希望者のうち1名が優先すべき親族である場合には、まず腎臓単独である親族の方 に1つの腎臓が行きまして、もう1つの腎臓はこれまでどおり、膵腎同時移植の待機者に 行きますということを整理したものです。先ほどの言葉をこのように整理しました。  また資料5(8)附則を説明いたします。附則(臓器摘出術の開始以降に移植に適さないこ とが判明した場合の取扱い)(1)(1)〜(7)により膵腎同時移植希望者が選定されたものの、 臓器摘出手術の開始以降に膵臓が移植に適さないことが判明した場合には、腎臓移植希望 者の選択をやり直すことなく、既に選ばれた当該膵腎同時移植希望者に腎臓のみを配分す る。また(2)(1)〜(7)により膵腎同時移植希望者が選定されたものの、臓器摘出手術の開始 以降に腎臓が移植に適さないことが判明した場合には、膵臓移植希望者の選択をやり直す ことなく、既に選ばれた当該膵腎同時移植希望者に膵臓のみを配分することを記載いたし ました。レシピエント選択基準に関しては以上です。 ○深尾班長 ありがとうございます。なかなか複雑なのですが、いかがですか。いままで は膵腎同時移植のほうが腎移植よりも優先するということでとってきたのですね、そのほ うが必要度が高いということで。ところが、親族優先条項が入ったために、その辺がこの 表に変わることになりました。これでよろしいかどうかということになりますが、いかが ですか。 ○伊藤班員 この(8)附則の(1)(2)の(1)は以前のままですね。(2)が入ったわけですね。この(2) は、現実的には膵腎を待っている方で、膵臓だけを移植するという場合はあまりそのレシ ピエント好まないといいますか、場合が多いように思います。杉谷先生、そんな感じでは なかったですか。膵臓だけもらっても、透析を続けるというQOLから考えると。といいま すのは、膵臓を移植して、今度は腎臓だけ待つことになりますね。そうすると、なかなか 回ってこないということがあるので、現実的にはこのケースは少ないというように私は思 います。 ○石橋班員 でも先生、膵単独の方がだいぶおられますね。そういう方にずっと行くので はないですか。 ○伊藤班員 これは膵腎ですよ、膵腎同時。 ○杉谷班員 いままでは従来の中で、それはないんです。 ○伊藤班員 ないですよね。 ○杉谷班員 だから膵腎同時を希望していて、腎臓が駄目だったから、その人が膵だけを 希望して、もらったというのはないのですよ。だけど、その場合にはいままでは膵単独の 人たちにその膵臓は別個に、優先として行っていたはずなのです。 ○伊藤班員 そうです。 ○杉谷班員 だから、この(2)のところは、確かに新しいことなのです。膵腎のときに、膵 が駄目だったと言った場合に腎だけもらうというという場合はいままでに数例あった。だ けど、今後そういうことを希望される方というのが出たときには。 ○伊藤班員 そうですね、腎臓がたくさん出てきて、かなり当たりやすい状況になればい いかとは思うのですがね、腎単独で待つというのは。膵臓だけまず入れておいて。 ○杉谷班員 膵臓だけでも欲しいとポジティブに考える人というのがもしおられたら、状 況があるかもしれない。こういう規定がないと、どういうふうにしていいかわからなくな りますね。使える膵臓を結局あきらめないといけないというのが出てくるようになってし まうの。 ○伊藤班員 これが入ったという背景というのは、何か。 ○井原主査 これまで(8)附則の(1)については参考資料2にございます。これまでの基準の (3)膵臓移植の(3)の部分に記載があります。これは、あくまでも摘出手術の開始以降に膵臓 が適さない場合にはやり直すことがないと。逆を言えば、開始以前にもう同時が難しいと いうことであれば、必ずやり直していました。これと同じように、平成9年当時に使われ ていた膵臓レシピエント選択基準においては、第一位として選択されたレシピエントが膵 腎同時移植の待機者であっても、腎臓の提供を受けられない場合は次の順位の待機者を選 択する、という記載がありまして、先生方お話いただいたとおり、膵腎同時移植希望者が 膵臓のみの移植を希望されない場合には膵単独の方に回っていました。それについて、明 文化されたものが今の基準では落ちていましたので、今回改めてその部分を(8)(2)として書 かせていただきました。  その際に(8)(1)の条件と同じように、臓器摘出の手術が始まった後にもう適応がないとわ かった場合には、基準をやり直すというのが時間的にかなり難しいということになります ので、そうした形で書いています。 ○杉谷班員 いまので分かりました。そうなのです、だからもう摘出を始めたらというこ となのですね。取ってみて駄目だったというときとおっしゃっているのは、そうなのです。 いままでは、摘出する前だったから膵単独に選び直して、そうすることが出来ていたので す。 ○井原主査 その部分に関しては現行の運用どおり、(8)(2)の記載であればやっていただけ ると考えています。 ○杉谷班員 わかりました。 ○深尾班長 これはどうですか、膵だけだったら困るという人もいるかもわからないです ね。 ○剣持班員 それは、本人が希望しなかったらどんどん下りていくわけですよね、ですか らこれはあくまで原則なのです。 ○井原主査 選択基準というのはあくまでも順番に、移植を受けるかどうかという意思を ご本人に確認するための順位づけですので、一位の方が必ず移植を受けられなければいけ ないというものではありません。この基準に沿ってご希望、移植を受けたいかどうかを聞 いていただくというものになります。 ○深尾班長 無理やり移植をするわけではないですから。ほかに何かご質問はありません か。 ○杉谷班員 要するに、今回は優先提供のことだから議論になっているのですが、ドナー さんが、私が死んだら1型糖尿病で透析している息子に膵臓と腎臓をやってくれと言って、 死んだ場合。私が死んだら、透析を受けている長男と次男に腎臓をやってくれと言った場 合、後半の部分は腎臓だけの場合になりますが、これはどんなふうになりますか。  いまのルールで言うと、参考資料の1、2名とも優先すべき親族の場合、2名とも腎臓の 場合には優先されて、膵腎の場合は臓器から見たら、膵臓も腎臓も優先してその人にあげ るということで、いいのですか。 ○井原主査 膵腎同時移植希望者も、腎臓の移植希望者も親族であったという場合ですか。 ○杉谷班員 まあ、そうですね、はい。それでもいいのですが、2つを分けますと、自分 の息子に膵と腎をやってくれと言った場合は、認めるのですか。 ○深尾班長 医学的条件も関係してきますね。 ○杉谷班員 ですから、1型糖尿病で透析をしている息子に対して、この子は膵腎同時の 登録でずっと10年間待っている。だけど、私が死んだ後には膵臓と腎臓を一個を、この息 子にあげてくれと言った場合、それはいいのですか。 ○峯村室長 膵腎同時移植の登録はされている息子さんですよね。 ○杉谷班員 はい。 ○峯村室長 優先提供の意思を表明された方が腎臓と膵臓を優先的に提供してほしいとい う意思表示をしていたという場合は、膵腎同時にその方に行くという形になろうかと思い ます。 ○杉谷班員 ということでいいのですか。 ○峯村室長 はい。 ○杉谷班員 そうすると、私が死んだら心臓は、心臓病で登録している長男に、私が死ん だら腎臓は、透析をしていて、いま腎臓を待っている長女にやってくれと。それも認める という、全く別個の条件なのです。だって膵腎のときは、実はここでルールの中で見ると、 同じような塊として考えていますが、全く違う2個の臓器ですが。そこのところ、よろし いのですか。 ○長岡補佐 指定ができるかということですね。 ○杉谷班員 そうです、そういうことになります。 ○深尾班長 それって、腎臓2つの場合に、1腎ずつ親族2人いた場合に、親族優先条項 が両方に掛かるわけですよ。 ○杉谷班員 掛かりますね、ここに書いてあるのを見れば。 ○深尾班長 だから心臓と腎臓とか、心臓と肝臓だったら、やはり親族優先条項が優先す るのではないですか。親族へ心臓と、それから親族に肝臓と行くのでしょう。 ○峯村室長 レシピエント登録されているという前提とありますね。 ○杉谷班員 ええ。先ほどいくつかの意見があった中にありましたね。まず、登録はして いないと、優先提供はあげられないのではないか。 ○深尾班長 登録していなければ駄目と。 ○杉谷班員 はい、登録していなければ駄目かと思うのです。 ○深尾班長 よろしいですか、登録していなくともやはり人情としてあげたほうがいいの ではないかというご意見はありますか。 ○杉谷班員 いや、登録をしていないといけないのではと思うのですが。 ○雨宮班員 いまのご議論で、1型糖尿病のことを考えると、膵の単独移植を希望すると いうことが可能なのかということで、基本的に1型糖尿病の膵臓の荒廃だけで、多少その 問題があったとしても、少なくとも自己免疫の問題で、少なくともそれが親族で、非常に 優先順位が高くなる可能性は高いわけですね、HLA型と血液型から言えば。ただし、それ が移植の適応になるかということを、どこのところで線を引くのでしょうか。つまり、2 型でというのならいいですけれども、1型の場合には、あくまでも移植の適応になるのか どうかということは、外国ではいまでも相当コントロールが目茶苦茶になっているような 1型なら適応になりますけれども、膵臓は荒廃しているに決まっているわけなのですが、 それを適応にするかということになると、膵腎ですとそれは可能だという考え方はあると 思うのです。  もう1つは膵島移植というのがいま認められていないとすれば、これは膵島移植が認め られて、もしそういう方向にいったとすれば、それはそれで可能だと思うのですが、現実 にはちょっと専門家ではないのでその辺のことは。 ○剣持班員 それはいま膵臓単独移植の登録も、地域の適応検討委員会で通ってこないと、 ネットワークに登録されていないので、適応がある人しかいわゆるネットワークには登録 されていないので、単独の人がいたとしても、その適応はいまのところその適応検討委員 会を通った方のみに移植されるということなので。 ○雨宮班員 つまり医学的に、4-2を見ますと、医学的緊急度などよりも優先されると出 ているわけですね。 ○剣持班員 だから登録の時点で一応適応ありとなっているわけです。 ○雨宮班員 だから、適応をそこの時点で適応がありと認められた人は、少なくともレシ ピエントとしての登録がオーケーだよと。 ○剣持班員 そういうことですね。 ○雨宮班員 誰でもいいというわけではないと。 ○深尾班長 厳しい条件がありまして、移植調整委員会でもって全国的に全部集めて検討 していますので、それを通らなければレシピエント登録ができないのです。 ○雨宮班員 そこのところが強調されないと、むしろ逆に言うと1型の人たちはみんな待 っているのだけれども、実際は駄目ですよという話が、なかなかパブリックコメントに入 っていないわけですよね。そうすると、逆にいまは厳しいからそれでいいけれども、もし そういうことでなくなるとすると、認識としては非常に一般の人はそうは考えていないと。 ○深尾班長 石橋先生、膵臓移植の中央調整委員会としてはいかがですか。 ○石橋班員 金澤先生が中央調整委員会の委員長で、各地域に糖尿の専門の先生と腎臓の 先生で地域適応検討委員会というのがありまして、そこでC-ペプタイドとか、いわゆるグ ラフトタイプ的なものとか、臨床的なもので一応評価をされている方に、現状では限って いまして、膵単独を今後、その辺の適応基準が変わるかどうかはやはり糖尿病の専門の先 生方と議論していただかないといけないことになるのではないかと思うのですが、一応現 状は糖尿の先生方のご意見で膵単独移植のほうの適応された方を登録しているというよう な状況です。 ○谷口班員 雨宮先生のおっしゃったのが理論的にはごもっともで、私どもはそれを考え てきました。私はときどき近畿の膵臓移植レシピエント適応検討本会議に出させていただ きまして、大阪大学の松久先生が実務上の代表としてご担当なさっていますが、ここに来 るにあたって、私もその辺りを近畿としてはどのようにいままで問題点があったか、とい うことでいろいろとコメントをもらってきています。親族の移植というのは、先生がおっ しゃいますようにHLAとかABAの型とか似た方が非常に多くて、自己免疫疾患である限り、 むしろ拒絶されやすいです。それを先生はおっしゃっておられるのだろうと思います。膵 腎同時移植後でなくて、膵臓だけの移植という場合には、非常に考えなければいけないの ですが、では、いままでどういうことの結果になっているかということで、これは深尾先 生とか皆さん方外科の先生方のほうがご専門ですけれども、私は昔アメリカにおりました ときにミネソタ大学に内科の先生がおられました。外科のサザーランド教授などと一緒に やっていまして、そこでの問題点で、やはり最初は1型糖尿病の片割れ、1卵性双生児の 膵臓を移植いたしますと、やはり拒絶を受けやすいということで問題になりました。その 後、免疫抑制などが非常に改良されまして、先ほどから問題になっています膵腎同時移植 の場合は腎臓移植のときに免疫抑制剤を非常に強くしますので、かなりうまく膵臓移植は いきます。ところが、その後、免疫抑制剤が非常に進んできたということがあります。使 い方も外科の先生が大変お上手になられたて、外科の先生方の功績だろうと思いますが、 現在ではその懸念は大変少ないというふうに私は理解しています。  したがって、移植後の免疫抑制のかけ方ということです。ドナー臓器の親族への優先提 供移植は、確かにかわいそう、かわいそうという、親族にやりたい気持から、法律が先行 しているようなところがあって、医学的なディスカスは国会でもたぶんなされていないの だろうと思います。しかしながら、いまのところは大丈夫ではないかというふうに私は見 ていますが、外科の先生方はいかがですか。 ○剣持班員 雨宮先生の疑問は非常にもっともで、ただ、我々生体の膵臓移植というのを 15例すでにやっていて、そのほとんどが親子なのです。親から子です。2例だけ兄弟間が あります。その方たちもすべて特に、まだ最長で5年10カ月ですから、長期に見ていませ んけれども、いままでのところはいわゆる親族だからといって、拒絶反応が多いとか、新 たに1型糖尿病の再発とかは見られていないということもありますので、谷口先生が言っ たように、サザーランドが昔1970年代にやったころはやはりそういうことがありましたが、 いまはかなりそれはほとんど臨床的には問題にならないレベルになったのではないかと思 います。だから、先生のお考えはありますが、私は親族優先で適応しても、医学的には問 題は少ないのではないかというふうには思います。 ○雨宮班員 はい。 ○深尾班長 ほかにご質問はございますか。レシピエントの選択基準に関しまして、親族 優先でも配偶者はだいぶ違いますから、医学的条件が血縁関係のある人と違いますが、そ れでも全部これでカバーしているというふうに考えてよろしいでしょうか。いかがですか。 よろしいですか。それではここにあります原案どおりということでいってよろしいですか。  はい、原案どおりでいくことにいたしましょう。次は、親族の膵腎同時移植の場合、HLA のDRが2ミスマッチでも優先すべきだろうかという場合、その辺はどうでしょうか。 ○剣持班員 それをしないと夫婦間は、絶対に入りませんよね。 ○深尾班長 入らないですね。 ○剣持班員 だから良いのではないでしょうか。 ○深尾班長 よろしいですか。 ○剣持班員 腎臓の人はこれでいいのですか。いちばん問題なのはそこなのですが。 ○杉谷班員 腎臓がどうしてあるか。膵腎同時の……。 ○大竹補佐 腎臓の場合は何マッチ以上ということではなくて、点数化されていますので、 それをHLAの適合度による点数よりも、上に親族がきておりますので。 ○深尾班長 膵臓がこのDRがミスマッチでもいいにしたことで。 ○杉谷班員 腎臓の人たちはどう言われるかです。DRが1つ以上合わないと2腎のうちの 1腎を膵腎同時にあげないよというのはいままでのルールですよね。それを今度は夫婦間 であげるというふうになったときに、DRが1つも合っていなくても、腎臓を1個、膵腎同 時の夫婦にあげていっていいか。 ○大竹補佐 その点は腎臓の作業班の先生方に確認をしておきます。 ○深尾班長 では、それは腎臓のほうでやってもらいましょう。あとは皆さん方のご意見 の中で問題点として挙げられている中で、地域性の問題があるのですが、腎臓はかなり地 域性を優先しますね。膵臓移植の場合に地域性を考慮したほうがいいのではないかという ご意見もいただいています。これに関しまして剣持先生もそういうご意見ですね。 ○剣持班員 地域性に関しまして、この後の心停止下のところで議論すると思うのですが、 基本的に心停止下になった場合にはなかなかいまのルールだと難しいというところがある ので、これはすぐに地域性を導入してシステムを作るのは非常に難しいと思いますが、将 来的な課題としては、それはやはり必要ではないだろうか。特に心停止ドナーの膵臓移植 をやる場合には、これは条件として必要です。 ○深尾班長 早ければ早いほどいいわけですから。 ○剣持班員 ウエイティングで何日も待たなければいけないというと、具体的にいまの脳 死の体制でも難しいかなということであります。 ○深尾班長 これは後で検討することにいたしましょうか。次がドナーの適応基準につき まして、ご説明願います。 ○井原主査 それではドナー適応基準について脳死下及び心停止下についてご説明をさせ ていただきます。資料6、7に沿いましてご説明させていただきたいと思います。まず資料 6、脳死下の場合の方のドナー適応基準として、法改正にかかわる主なご意見ということで、 先生方からいただきましたご意見のうち、朱色の下線が引いてあります3番、年齢につい て下限を設ける必要があるか。これは今後、来年7月以降、15歳未満の方からの臓器提供 が可能になるということに伴いまして、年齢について一定の下限を設ける必要があるかと いう点をご指摘いただいております。  続いて資料7に関してですが、こちらは心停止下の方の場合のドナー適応基準というこ とになっております。この点についてはいまご覧いただきました資料6、脳死下からの臓 器提供者の適応基準と統一してはどうかというご意見をいただいております。なお、参考 として2番、移植の適応を慎重に検討する項目の(4)から(10)に関しては、心停止下の場合 に設けられている項目となります。また3番、年齢は40歳以下が望ましいとされています が、この点、60歳に引き上げてはどうか。また、脳死下と同様に年齢について下限を設け てはどうかという点で、ご意見をいただいています。この点についてご議論をいただけれ ばと思っています。 ○深尾班長 まず、年齢の下限ですけれども、今度小児の提供ができるようになりました。 下限を設けるかどうか、この辺に関していかがでしょうか。石橋先生、たしか下限の年齢 制限についてご意見がおありでしたね。 ○石橋班員 以前にちょっと申し上げた点は、腎臓の場合に臓器の成熟というのが1つ考 え方の根底にありまして、しかし、2歳ぐらいと言われるのですが、昔、米国から腎臓が 輸入されたときには6カ月という症例もあったりして、なかなか具体的に何歳ということ を決めるのは非常に正直言って難しいのではないか。一般的にはある程度マチュレーショ ンというのが基本だと思うのですが、では何歳かと言われると、正直難しいと思います。 ○深尾班長 雨宮先生いかがでしょうか。 ○雨宮班員 実際、昔の日本の話ではないですが、無脳症のお子さんたちの腎臓が提供さ れたという、向こうの救助に措置されるような話があったような気がするのですが、そう なると下限というのは膵腎の話で、膵臓は別ですが、確かにあり得るのかなとは思います。 ○深尾班長 石田班員いかがですか。 ○石田班員 移植されたのですか。 ○雨宮班員 いや、それはよくわからないです。確かに先生がおっしゃるように機能的に 考えると、その年齢では少し無理かなという気はするのですが、どこにマチュレーション を。 ○深尾班長 ほかにもいらっしゃいますね、下限を設けたほうがいいのではないかという 方は、どなたでしたか。どなたか班員の中で事前にそういうご意見があったかと思うので すが。 ○杉谷班員 いままで文献でも私がアメリカに行ってもあった部分は下限というのは無脳 児ぐらい若い人はないのです。だけど、10歳以下で子どもの場合の膵臓は、以前ですけれ ども、あまりにも血管系が小さくて、これは血栓を作りやすい。だから総体的に禁忌にし ておこうという意見はありました。その後、年齢というよりも、そこの大きさが問題にな るのですが、いま大体10kgというと、日本の場合はもう5歳になっていますので、私は文 面上は下限を作ることはしないほうがいいと思うのです。ただ、それをその場に合わせて 膵臓を取ったとき、どういうレシピエントに移植するのか、慎重に考えておかないと、い まご指摘があったようなことはあると思います。 ○伊藤班員 私も基本的には同じで、腎臓と同じ考えでいいと思うのですが、テクニカル フェイラーが増えるというのは、年齢ではなくて体重的に25kgというのが1つの基準だっ たと思うのです。だから血管系統の問題だと思います。 ○深尾班長 小児の場合は膵島移植はこの作業班は関係ないのでしたか。膵臓に限るので したか。 ○井原主査 法律に基づく臓器別ということですので、膵臓に限られます。 ○深尾班長 小児のものの場合、膵島を取って、それを移植するということはあり得ない ことはないですね。血管系は大変ですから、膵島を移植するのは大変楽ですから。今回は 膵臓に限るそうですから、膵島はちょっと置いておきますが、いかがでしょうか。 ○剣持班員 腎臓の場合は、例えばすごく2歳、3歳の場合に1腎では足りないというこ とで2腎を大動脈でということが可能な場合があるわけですね。心停止でそうやったこと もあるのですが、それは基本的に脳死だとできません。このルールからいくと膵腎であれ ば1腎と膵臓というのは決まるわけです。確認だけなのですが、そういうことは例えばそ のケースで2腎いけば大丈夫だというようなときでも、それは法律的には無理だというこ とですよね。 ○深尾班長 小児で移植を待っていらっしゃる方がいればいいですが、もしいなかった場 合にはどうでしょうか。 ○剣持班員 例えば心臓などだと大きさと年齢があれなので、たぶんエイジマッチングと いうのはするわけですよね。まだ決まっていないのですか。 ○井原主査 そのエイジマッチングについて、心臓の場合は基本的に心臓の大きさである 程度年齢は絞られてきてしまうと思うのですが、ある程度体ができて、15歳前後になりま すと、成人にいく場合も同じような年齢の方にいく場合もありますので、レシピエントの 選択の際に、エイジマッチングという考え方を取り入れてはどうかというご指摘はいただ いていますが、現時点ではまだ決まっていません。 ○剣持班員 先ほど雨宮先生が言ったように今後、例えば小児が膵臓単独移植の登録を適 応判定して登録するということが出てきた場合には、やはりそういうことも含めて考えな ければいけないのかなということですね。 ○杉谷班員 いま2歳の子どもさんのが出たときに、ローリーポップで2腎を1人にあげ るかどうかというのは決まっていたのですか、腎臓で。それと同じになるのですか。 ○剣持班員 そうですね、それはそのときの判断です。 ○杉谷班員 そのときの判断でしたっけ。 ○剣持班員 決まりはないのです。 ○杉谷班員 だとすると、その小さい腎臓を、これは2つに分けられないから、1人の人 に1つとして、2歳の腎臓を2個あげるということをするのなら、膵腎のときにその腎臓 をどうするか。でも、この文面があったら、いま剣持先生がおっしゃったように無理です ね。分けることができない。 ○深尾班長 どうですか。この文面があると無理ですかね。だけど、もらう人がいなけれ ばしょうがないですね。1腎ではどうしようもないというのだったら。 ○杉谷班員 ええ、それで小さめの膵臓と腎臓を2つ、いまのだともらって膵腎として。 ○深尾班長 膵臓が小さくてもまだいいと思うのです。 ○杉谷班員 いいと思うのですが。 ○深尾班長 腎臓がやはり機能しないと透析だってできなければ、これは移植する意味が ないので、そのようなことで腎移植ではやっているので。 ○杉谷班員 腎はどうでしたっけ。 ○井原主査 腎臓のドナー適応基準についてということでしょうか。 ○杉谷班員 はい。 ○井原主査 腎臓の場合には慎重に適応を決定するということで、血液生化学、尿所見等 による器質的腎疾患の存在ということ以外書いてございませんので、その機能評価、1つ の腎臓で足りるかどうかということは、適応基準という中では盛り込まれておりません。 あくまでもドナーの方の状況を踏まえて、実際の臨床でご判断いただいている事項になり ますので。 ○杉谷班員 そうですよね。 ○井原主査 統一的な基準の中に、細かい医学的な条件という形では盛り込んでおりませ ん。 ○杉谷班員 今後も入らないのですね、いままでも入っていなかったのですね。 ○井原主査 現行の基準で問題ないという点でご指摘をいただいておりますので。 ○深尾班長 これに関しては特別な場合ですので、いまはペンディングにしておいて、ま た後で考えたらどうですかね。それではあと、脳死下と心停止下の基準を同一にするかど うかという問題がございます。いかがでしょうか。ここに事務局のほうで用意されている のは資料7ですね。 ○井原主査 資料7は心停止下のドナー適応基準です。 ○深尾班長 資料7は心停止下のドナー適応基準なのですね。それで脳死下の提供基準は これと同じにしていいかどうかということですが、まず最初の1の以下の疾患または状態 を伴わないことと、これは当たり前のことですね。全身性の活動性感染症がないこと。HIV、 HTLV-1、HBs、HCV抗体が陽性、クロイツフェルト・ヤコブ病の疑いがない。悪性腫瘍がな い。これいいと思います。  2のほうはいかがでしょうか。いままで脳死下の場合には2のほうは(1)から(3)までが あって、それ以下の(4)以下はないのですね。これをどうするか。心停止下の場合だけにこ れを付けていくのか。いかがかということですが、どうでしょうか。脳死下にも付けるの か、脳死下ではあまりこういうことが起こり得ないという前提があったのだと思うのです が、いかがでしょうか。 ○剣持班員 これは石橋先生が委員長で膵・膵島移植研究会というところでかなり長く、 もう何年も心停止ドナーも適応基準を見直す委員会があって、いろいろ議論されて、石橋 先生はその辺は後でお話してもらおうと思うのですが、今回思ったのは、適応基準と適合 条件はやはり分けるべきで、脳死であってもいろいろな条件で提供できなくなることもあ りますし、心停止でも逆にいい条件ならできるということがあるので、医学的な適応基準 というのは違うということが、医学的適応基準と適合条件が混ざっているので、なかなか 決着がつかないのではないかと思って、私の意見としては、いままで実はいろいろと石橋 先生と議論をしてきましたが、今回の適応基準に関しては同じでいいのではないかという 意見を出したのです。これは決して基準が同じで、その後の経過によって心停止のほうは ドナーとして適さなくなることは圧倒的に多いとは思いますが、それと最初の適応基準と は違うものだと分けて、だから、同じようにしたほうがいいのではないかという意見です。 その後、たぶんこの一過性の心停止以降のものは、脳死では必ず起こらないものでもない のです。心停止のほうはもちろん起こり得ることは多いのですが、不確定要素は医学的適 応基準に入れなくてもいいのではないかということで、そういう最初の一緒にしたらどう かという、かなり極論に聞こえるかもしれませんが、そういう意味で私は意見を出しまし た。 ○深尾班長 伊藤先生いかがでしょうか。 ○伊藤班員 いま剣持先生がおっしゃったように、これは当初、確か同時にしてきたわけ ではなくて、脳死下の基準があって、その次に心停止というものを考えようということで、 ただ、少し差別化しようということで年齢を下げました。最近、石橋先生の委員会で年齢 は60歳というのは、これはもう皆さん合意が得られていますので、そうすると、ここの(4) から(10)というのは、これは特別心停止に限ったことではなくて、脳死でもこういう一過 性の心停止など、いろいろなことが起こり得るので、内容的には同じになっているという ことで、基本的には剣持先生の意見と同じです。  ただ、心停止の運用の規則といいますか、いわゆるレスピレーターオフとか、カリベー ションの問題というのは、まだ皆さんの合意は得ていないというか、そういうところです。 ○杉谷班員 そこがいちばんの問題ですね、先生。これ文面が書いてあっても、適応を慎 重に検討すると書いてあるから、別に(4)以降が書いてあっても、それは慎重に適応を検討 すればそれでいいわけなのですよ。ところが問題なのは、あそこに書いてあった案のまま で、レスピレーターオフを保護しないといけない。40歳以下が望ましい。この文が同じよ うに書いてあったから、案のままで、それでできない条件になっていたのです。私は剣持 先生の言われている意見に賛成です。それはもう心停止も脳死も同じ条件で適応としてお かないと、ここで考えるのを。  そこが一番の問題ですね。レスピレーターオフが案になったまま、現実には「レスピレ ーターをしないと心停止下の膵臓提供はできない」というふうに運用されているところで す。ドナー適応条件としては脳死も心停止も同じにするとういふ剣持先生の意見に賛成で す。 ○深尾班長 いかがですか、石橋先生。 ○石橋班員 以前、心停止の話をしたのは、要するに脳死判定基準というのがストリクト にされるということで、ただ、それに合致しないケースもあっても、臨床的に非常に脳死 にほぼ同じものを、我々としては想定していて、ですから具体的には一応暗黙というか、 我々の中ではレスピレーターの停止があるというのが一応前提に、それは非常に近い状態 を想定していましたので、それが今回変わった形でどういうように運用されるのかという ことがあって、この研究会では一応60歳に上げているのですが、研究会としてこのまま法 律が通ってから、どういうふうに考えるかということで、ちょっとペンディングになった 状態ですが、その辺の対応としてはどういうように経過を。 ○深尾班長 医学的適応に関しましては膵移植研究会でもってもう少し検討していただい て、再度ここで最終的に決めたらどうかと思います。あと年齢のほうですが、これはいか がでしょうか。60歳に引き上げたらどうか。心停止下でも60歳以下に引き上げたらどう か。脳死のほうは60歳以下が望ましい。年齢に下限のほうは先ほどもう少し考えるという ことになりましたが、心停止下の提供の場合には、いままでは40歳以下、これを60歳以 下に変えたらどうかというご意見がありますが、これはいかがでしょうか。 ○石田班員 実際、内科医でよくわからないところがあるのですが、移植を受けたときに は40歳から60歳の人であっても、十分移植できる条件の臓器は確保できるということで すか。 ○剣持班員 そうですね、これ心停止だから40歳にしてという、脳死は60歳以下という ことだったのですが、その間の要するに心停止と脳死の間にあるのは条件がいろいろ悪い とか、そういうことが加わったときにということですが、具体的には非常に条件の悪い脳 死もあるし、良い心停止もあるということで、これを20歳違う、もちろん平均的には40 歳より60歳のほうが内分泌機能は悪いと思いますけれども、当時やった生体膵移植などを 見ると60歳以上の人でも20代の人でも、同じようにそれはフリーになるので、40歳にす るエビデンスというのはないのではないかということで、実は石橋先生の委員会でも、こ れは60歳に上げようということには大体のコンセンサスは得られています。 ○石田班員 内科の先生のご意見が、あまり腎膵の分泌機能とか、そういう面で60歳では 駄目だという。 ○石橋班員 それはないと思いますけど。 ○石田班員 ないと思う。 ○石橋班員 ええ。ですから一応60歳までに年齢を上げてみようかという話になったと思 うのですけど。 ○杉谷班員 あのときは40歳で切るということの確固たる医学的な理由というのはなか ったのですよ、心停止だから60歳で切るとか、いまの石田先生のご質問はそのことですよ ね。だから、脳死のドナーでも圧倒的に日本はマージナルドナーで、そんなの40歳以下に、 もう平均年齢はずっと上ですね。それで50歳を超えたドナー、そういうことで60歳近い ドナーであっても、きちんと機能していて、それだけの定着率を、結果をもう出していま す。 ○石橋班員 最初は非常に慎重に脳死の法律ができて成績をよくしないといけないので、 できるだけ慎重に対応しようという、そういうのがいちばんの根拠だったと思うのです。 ○杉谷班員 そういう根拠で40歳と決めただけのことですね。全然それはないです。 ○深尾班長 よろしいですか、谷口先生。 ○谷口班員 私はその委員会をたぶん欠席していたときでないかと思うのですが、言い訳 ではないのですが、2回ぐらい欠席をしたと思うのです。膵臓や膵島移植について、もし そのときに議論したとすれば。この年齢のことはよく覚えていないのですが、剣持先生が 先ほどおっしゃったように、条件とその基準というのは、医学的なものとそうではない社 会的なものも含まれたものというように、言葉の使い分けをするとすれば、それらが重要 なことになってくるかもわかりません。1特に今度は近親者が入りますので、そのときに この年齢というのが問題として重要になってくるのではないかということは、考えなけれ ばいけない。というのは、糖尿病の患者さんに糖尿病の身内から移植するわけですから、 かなり糖尿病に将来なりやすい。そのときに60歳の人の膵臓を移植した場合に、移植後そ の膵臓は70、80歳となっていくわけです。だから糖尿病になりやすいのではないかという ことの、その将来の見通しのプレディクターが、現在のところははっきりとわからないの ではないかと思うのです。ただ石田先生にお聞きしなければいけないのですが、移植後の 膵臓のインシュリン分泌を見ていれば承知できるという、その辺りが予知ファクターとし て、かなり確実な問題があるということがわかるのでしたら、それに応じて今度は医学的 な基準を入れてもいいかと思います。他に、いま先生方のお話のように、かなり社会的な ファクターがありまして、かっちりと膵臓移植は成功させなければいけないというのが大 前提だったと思います。2つ目は、年齢を上げようとされた先生方は、たぶんドナーが不 足していて、これではいけないということで、ドナーの拡大ということで年齢を上げよう としていたこともあります。やはり我々移植に携わる者としては、これらについて考えて あげなければ、レシピエントの方は大変困るだろうと思うので、ドナーの拡大の1つの方 策として、60歳ということを考えるのは、私は悪くはないと思います。一般的には石田先 生がおっしゃいましたように、40歳から60歳というのはそんなに大きな差があるように 私も思いませんけど、近親者間の移植についてはどのように取り扱うかというのは、ちょ っと私、年齢に関しては気にかかります。近親者が入ってきたばかりに、そこはどうする のかということはもう少し詰めなければいけないかと思ったりもします。文献的な考察が 終わらないかもしれませんが、いずれにせよ7月17日までに決めなければいけないという のだったらですね。 ○深尾班長 佐多先生、何か専門外ですけれども、ご意見は。 ○佐多班員 私は1のほうは特に意見がないのでこのままということでいいです。 ○深尾班長 そうですか、では年齢を上げるところに関しては、いままでの40歳というの も確たる科学的な根拠がなかった。しかし、慎重にとにかく成績を上げていかなければな らないという社会的な情勢があったということで、40歳に決めたけれども、だいぶ実績を 積んできたので、60歳に上げていいのではないか。今後、科学的な知見が増えてきたら、 また考え直すということで、今回は60歳に上げるということでよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○深尾班長 はい、どうもありがとうございます。そうしますと、ほとんど終わりました けれども、年齢の下限のほうはまだ何ともここでは、やはり科学的知見がないものですか ら決められないので、もう少し科学的知見を膵移植研究会を中心にして検討していただい て、ある線を出していただくということでよろしいでしょうか。  それから心停止下の条件の(4)から(10)までの条項に関しても、どちらかというと、脳 死の基準にあわせるというご意見が強いようですけれども、これはもう少し科学的に検討 していただき、その上で決めようということでよろしいでしょうか。  そうしますと、今回の一番重要な問題の親族優先条項の取扱いということに関しては、 原案でよろしいということになったと思います。特に修正意見はなかったように思います が、それでよろしいでしょうか。                  (異議なし) ○深尾班長 それでは原案どおりでもって、親族優先条項に関してはやっていただく。年 齢は60歳に引き上げるということが今日は決まったということでよろしいですか。  何かほかにご意見がございましたら何でも出してください。 ○石橋班員 先ほど医学的適応ということについて先生のほうからお話がありましたので、 そういう適応に関しては、内科の先生が主にいろいろ検討されているので、医学的にちょ っと駄目ですよというようなケースがあるかもしれませんので、その点は糖尿病内科の先 生を中心に、親族からの提供といっても、医学的に困難な場合があれば、それを検討課題 としてお願いしたいなと思います。 ○深尾班長 こういうガイドラインは常に最新の医学的知見に基づいて変えていくべきも のですから、いま決めたら30年、40年やるというものでもありませんので、科学的知見 に基づいて、随時変更していくということで、皆さんのご意見はご一緒だと思いますので、 そういうことでいきたいと思います。  ではほかになければ、本日はこれで終わりにしたいと思います。よろしいですか。本日 はどうもありがとうございました。では事務局からどうぞ。 ○峯村室長 それでは今回のご指摘を踏まえまして、改正案を作成しまして、班長の深尾 先生とご相談した上で、案を取りまとめまして臓器移植委員会のほうに報告をさせていた だくことにしたいと思います。また、いろいろとご指摘を受けました点については、また 今後継続的に検討を進めていきたいと思いますので、例えば年齢の点、あるいは脳死と心 停止の適応基準の検討については、科学的知見の集積等も踏まえまして、先生方からご指 導いただければと思います。長時間活発なご議論をありがとうございました。今後ともよ ろしくお願い申し上げます。 ○深尾班長 どうもありがとうございました。 【照会先】  厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室  代表 : 03(5253)1111  内線 : 2366 ・ 2365