09/11/24 第5回チーム医療の推進に関する検討会議事録 第5回チーム医療の推進に関する検討会 日時 平成21年11月24日(火) 14:30〜16:30 場所 厚生労働省省議室9階 ○永井座長  時間になりましたので、ただいまより第5回「チーム医療の推進に関する検 討会」を開催させていただきます。本日は、ご多忙のところご参集いただき まして、ありがとうございます。それでは、事務局から委員の出欠状況、本 日お越しいただいている先生方のご紹介と資料の確認をお願いいたします。 ○石川(義)補佐  事務局でございます。本日は、羽生田委員、山本隆司委員がご欠席とのこ とでございます。また、チーム医療の推進に関する話題提供をお願いしてお ります日本胸部外科学会理事長、東北大学大学院医学系研究科教授の田林晄 一先生にお越しいただいております。さらに、本検討会の委員である有賀委 員、井上委員にも話題提供をお願いしております。それでは、ここでカメラ の方は一旦退室をお願いいたします。  お手元の資料の確認をお願いいたします。まず、議事次第と座席表、名簿 をお付けしております。また、資料1として「田林先生配布資料」、資料2とし て「有賀委員配布資料」、資料3として「井上委員配布資料」です。さらに、 参考資料1として「瀬尾委員配布資料」、参考資料2として「永井座長配布資料」、 参考資料3として「第3回チーム医療の推進に関する検討会議事録」をお付け しております。さらに、「看護師を生かす病院経営」という題名の2枚紙の資 料を、有賀委員より当日配布資料ということでご参考にいただいております。 不足する資料がありましたら、事務局までお申し付けください。それでは、 引き続きお願いいたします。 ○永井座長  それでは、議事に入ります。本日の議題は、「急性期医療におけるチーム医 療の実態」というテーマで、周術期の多職種協働について、日本胸部外科学 会理事長の田林晄一先生にお出でいただいております。救急医療の多職種協 働について、検討会の委員であります有賀先生、急性期医療における看護師 の活動の現状と今後目指したい方向性について、検討会の委員であられます 井上委員から、それぞれお話を伺います。そのあとで、質疑応答を含めて、 チーム医療の推進について、委員の皆さんにご議論いただくことになってお ります。  話題提供いただきます前に、事務局から説明がありましたが、瀬尾委員か ら資料のご提供をいただいております。何かご追加はありますでしょうか。 ○瀬尾委員  これは日本外科学会雑誌の所に書かれておりました、ここでは麻酔看護師 という話ですが、向こうでは看護麻酔師という話になっています。それの歴 史的背景とかそういうものを書いており、かなりの資格とか訓練というもの がありますので、一般に言われているような簡単に麻酔をかければいいとい うものではないということを理解していただければと思います。 ○永井座長  参考資料2は私から提出させていただいたもので、本日お出でいただきまし た田林先生からお届けいただいたものです。座長宛の要望書ということです。 日本外科学会、消化器外科学会、心臓血管外科学会、小児外科学会、そして 胸部外科学会の5人の理事長の先生方からの要望書です。  早速、話題提供に移らせていただきます。田林先生、お忙しいところどう もありがとうございました。よろしくお願いいたします。 ○田林先生  本日はお招きいただきまして、どうもありがとうございました。私の資料 で、1枚だけ差替えをお願いしたいのですが、1枚だけのスライドがあると思 います。29番、最後の資料を1枚だけの紙に差替えをお願いしたいと思います。 それでは、始めさせていただきますが、「チーム医療の構築」ということです。 1枚目ですが、本日、話させていただく内容を簡単にここにまとめさせていた だいております。1つは「日本の外科医の置かれている現状」ということで、 医師数とか症例数の分析、それから、そういう体制は国民に安全で良質な医 療提供を損なっているのではないかという観点から、次はいわゆるNP、PA等 が医療の質および外科修練医に対する影響等に関して、これはいままでの報 告の論文等から分析しております。それから、周術期の診療士に関するアン ケート結果がありますので、それを発表させていただきます。最後に、この ような周術期診療士を日本で養成するに当たってのポイントということで、 まとめさせていただきます。  2番目の資料ですが、これは日米の外科、脳神経外科、胸部外科、整形外科 医数の比較です。表のように、米国と日本を比較した場合に、いまここに挙 げている外科系は人口10万人当たりの比を取ってみると、米国に比べて日本 は多いという結果になっております。特に脳神経外科、胸部外科等は、日本 は結構多くなっております。  3番目ですが、1医師当たりの手術症例数を見ております。これは胸部外科 と脳神経外科に限っておりますが、米国と日本の比較で、1年間に行う手術症 例数です。胸部外科の場合は26万、日本の場合は10万で、1医師数当たりの手 術症例数は、計算すると56.1と58.2ということです。脳神経外科においても、 このような割合になっております。特に脳神経外科は、非常に米国の数が多 くなっているという現状があります。  4枚目ですが、このように外科の医師は多くて、手術数は米国と比べると少 ないのですが、外科医の週平均勤務時間はこのような結果になっており、紫 が80時間以上、水色が100時間以上ですが、特に大学病院、国公立病院等では、 このような勤務時間が非常に長くなる傾向になっているということです。  5番目ですが、外科医の当直明けの手術参加という観点からのデータです。 これによると、60%は当直明けの手術参加があるという結果でした。  6番目ですが、最近の外科系基本領域学会の新規入会者数です。これは外科 学会から外科系を並べてありますが、形成外科学会を除いて、最近2004年か ら2007年の入会者数がそれ以前に比べると減少しているということです。特 に外科学会、婦人科学会等の減少が著しいという結果が出てきております。  7番目ですが、この資料では中段の右です。これが日本の外科医の現状とい うことで、人口当たりの外科医数は欧米より多いけれども、手術数は少ない という現状があるわけです。その結果を受けて、上段のような流れです。そ の結果として、1外科医が経験できる症例数が少ない。その経験数が少ないと いう観点から、今後、外科専門医制度の低劣化が起こる可能性があるのでは ないか。その結果、国民に安全で良質な外科医の提供が不可能となる。また、 外科医療の生産性の低下に結び付くのではないかという流れができるのでは ないかと思います。また、下段のように、先ほど申し上げましたが、手術は 少ないにもかかわらず、過重労働である。その結果、明るい将来が見えない ということで、それを受けて外科の入会者数が減少してきている現状があり ます。その結果、最終的に国民に安全で良質な外科医の提供が不可能となる 可能性があると、このような悪循環が生まれてくるのではないかと考えられ ます。このような悪循環の打破をするためには、Nurse practitionerとか Physician assistantのような非医師臨床士との協働が有用ではないかという ことを考えたわけです。  こういう人たちを養成することによるいろいろな方面での効果ですが、9番 目は医療の質への影響ということで、左が死亡率のグラフで、右が費用です。 水色がNPがなし、濃い紫、青がNPがありですが、このようにNPがいることに よって、死亡率、費用が改善するということが得られております。  10番目はインシデントの発生ですが、分母がPhysicianオンリー、医師のみ です。分子がPAがプラスになった場合のインシデント例数の例証を出してお りまして、外来、救急、入院という治療において、これが1以下になっており ますので、Physician assistantが一緒に働くことによって、インシデントの 発生が減少するという報告がされております。  11番目ですが、外科修練医への影響ということで、PAが加わることによっ てPhysician assistantの労働時間が減少していくという結果が報告されてお ります。  12番目は、外科修練医のストレスの軽減効果で、縦軸が修練医が賛同する というパーセントですが、Physician assistantが加わることによってストレ ス軽減効果が得られるという結果が報告されております。  13番目は、モラルの改善効果という報告もあり、加わることによって修練 医のモラルの改善効果も得られるということです。  14番目は、このようにPhysician assistantが周術期に外科の修練医と共に 働くことによって、外科修練医の修練を妨げないかということ。そういう疑 問が湧くのですが、これは30年間PAと一緒に働いた人の報告ですが、レジデ ントのルーティンワークが減ることによって、手術室へ積極的に行けるし、 またいろいろな教育を受ける機会が増えるという報告がされており、外科の 修練の妨げはしないではないかということが報告されております。  15番目からはアンケート結果を報告させていただきますが、1つは外科学会 代議員を対象として、周術期看護師の制度の導入に関するアンケート調査結 果報告です。16番目のように、回答者の診療科がほぼすべての外科系の医師 の総意ということで、消化器外科、簡単麻酔外科、呼吸器外科等が組まれて、 このアンケート結果は外科全体の総意と考えていただきたいと思います。  17番目は、動脈かつモニターライン確保等に関してですが、看護師等の参 入の賛同のアンケート結果が50%以上を得られているということで、そうい う結果でした。  18番目は、麻酔の維持・管理の介助です。これも看護師等が積極的に携わ ってくることに対しては賛同という結果でした。  19番目は、手術の第一助手ということです。これに関しては、看護師たち が加わることは50%ということで、半分が賛同という結果でした。  20番目は、気管内チューブバッカーに関してです。これは看護師等の参画 が約6割で賛成という結果でした。  21番目は、プロトコールに基づく薬剤量の変更です。これも薬剤師、看護 師等の参画が賛成であるというアンケート結果でした。  22番目からは、看護師を対象として周術期管理における業務拡大に関する 意識調査を、東海大学病院の看護師を対象として行っております。アンケー ト依頼数は1,040で、回答数は720で69%の回答でした。意識調査を行うに当 たっては、どういうことを業務拡大のあれにするかということで、22番目の 所に書いたような内容でアンケート調査をやっております。2年間の修士課程、 実習内容はこのようなことで聞いております。  23番目が1つの結果ですが、男性の看護師と女性の看護師で5割から6割で賛 成という結果でした。  24番目は、業務拡大に関する賛成の理由です。キャリアアップに結び付く、 チーム医療に結び付く、医師と同等のレベルで医療に携われる、そういう賛 成の理由が多い結果でした。  25番目は、反対という方もおられたわけですが、その反対の理由として多 かったのは、責任の所在、看護師より医師を増やすべきだ、医師の下働きの ように見える、また修士課程に行く場合の学費・生活費等の問題が挙げられ ておりました。  26番目は、このような修士課程ができた場合に、そこの養成コースに行く かということで聞いたわけですが、全体では約7割が希望しない、20〜30歳代 では55%が希望しないという結果でした。アンケートの回答数が700あったわ けですから、現在の勤務状況が維持されれば受験したいとか、インセンティ ブが得られるなら受験したい等を合わせて、何らかの条件を付けて受験した いという人は200〜300人いるということですので、それはそういう結果で結 構な数がいるなという考え方もできるかなと考えていたところです。  27番目からは、今後日本でこういう周術期診療士等を養成する場合には、 どのような内容で考えていったらいいかという案です。米国等のNP、PAに関 してはオールラウンドプレイヤーを養成しているわけですが、日本の場合に はある特定の分野に特化した教育で、こういう人たちを養成するという方法 も1つあるのかなと考えておりました。その内容としては、外科系、麻酔科、 救急、集中治療を一体化した、その分野での特化した専門教育ということを 考えてみたらどうかという提案です。このような周術期診療士等を養成する 場合には、学習と実習が非常に高度である必要があると考えております。  28番ですが、これはいろいろな非医師診療士養成コースでの学習、実習時 間数の比較です。時間数の算定で若干異なるところがあるかと思いますが、 その部分はお許し願いたいと思います。現在おられる専門看護師、それから 進めたあれで考えておられる高度実践看護師、国際福祉大学のNP養成分野で の時間、我々が検討しております班会議での案です。それから、今年の9月に Emory大学のPA養成分野を訪問して、その所ではこのような学習と実習時間に なっているということです。ご覧になってわかるように、Emory大学では学習 時間、実習時間が、ほかと比べると長時間になっております。Emory大学の先 生がおっしゃっていましたが、医学部の学生とほぼ同じレベルの内容を教え 込む必要がある。そして、医学部では4〜6年かけて教育するわけですが、2年 から長くて3年間でそういう教育をする必要があるのではないか、ということ を強調されておられまして、それが強く印象に残っております。  最後の29番目ですが、今後こういう周術期診療士等を日本に養成する場合 においての提案として、7つほど挙げさせていただきました。1番目は医師と の共同体であるということです。2番目は、先ほど申し上げましたが、高い専 門性とモチベーションが必要ではないかということで、それを得るためには オールラウンドの教育というよりも、ある専門分野への特化した教育が、日 本の実情に合っているのではないかなと考えております。3番目は、これは当 分の間かもしれませんが、医師の監督が必要であると思いますので、その監 督できる診療室を限定するというのが初期段階では必要なのかもしれません。 4番目は、医師が患者の医療管理に責任を持つ。5番目は、ガイドラインに沿 って医療の質を保証するということです。6番目は、当然これは患者さんにも こういう方が診療に当たるということを知らせて、同意を得る必要があると 考えます。7番目に、こういう周術期診療士が養成された場合の人事権に関し てです。これはクエスチョンが付いていますが、1つは看護部から独立させる ということも必要なのかもしれませんし、または病院長と看護部長の両者の 人事権というところも考える必要があるかなと思います。以上です。どうも ありがとうございました。 ○永井座長  引き続き、有賀委員にお願いいたします。 ○有賀委員  昭和大学の有賀です。資料2がありますように、パワーポイントの画面です。 番号でいくと17ですが、画面そのものは表紙も入れて18画面。最後に配られ た「看護師を生かす病院経営」というA4の2枚の記事からのコピーを持ってき ました。これがこれからお話するところの資料です。最初のところにありま すように、とりあえず救急医療をやっていますので、チーム医療という切り 口で救急医療の話をしますが、実は病院そのものは救急医療というのは全体 の一部ですので、病院医療そのものを全体から見るとどうなるかと。このチ ーム医療の検討会で、いまも周術期の管理という観点でのフォーカスを当て た話がありますが、フォーカスを当てた話でピカピカ光らせるのか、また全 体としてどのように考えていくのか。もっと単純に言いますと、病院という のは最初からチーム医療ですし、殊更チーム医療と言わなくても、病院はそ のようにやらないと病院になりませんので、そのような観点でいくと、おそ らく第三者評価などは比較的よい1つのツールになるだろうということがあ りますので、そのようなことでお話させていただきます。  最初の頁の下の1という所は、時々私がクオリティコントロールなどで使う スライドなのです。右側にJCAHO研究会とかありますが、個人的には東京都の 私立病院の先生方と一緒に、いずれDRGなどが来るだろう。そのときに、米国 のJCAHOなどが1つの雛形として考えられるかもしれないということがあって、 勉強会を発足させているのです。それが医療の質に関する研究会でも発展的 になって、その一部というか、かなりの部分を使って、1995年に日本医療機 能評価機構ができている。ですから、私は救急医療の立場でいろいろやって きました。左側にいっぱいありますが、それらは基本的には病院医療のある 一郭を成している救急医療という観点での仕事をしてきたので、今回のチー ム医療の推進に関する検討会も、そのような全体像から見た救急医療という ことでやってきたものです。  次の頁ですが、これは近森先生や青梅慶友病院の例などが慢性期、またう んと慢性期の話としてありましたが、救急医療も私たちが卒業したころとい まとは随分違っていて、この上の図にありますように、早速リハビリテーシ ョンと。リハビリテーションを早速やるという話は、早速、地域全体として その患者さんがそのあとどのように過ごすかという話になりますから、救急 医療を実践することは地域の救急医療そのもの、ないし地域のリハビリテー ションを含めた包括的なことの示唆を持たなければいけないと。ですから、 その下の協働という考え、パートナーシップと書いてありますが、これは近 森病院のときに出てきたあの図、たぶんあの図はこれを真似したのではない かと思いますが、このような観点で患者さんとやっている。  3頁目の上にありますように、例えば私たちが患者さんを早速引き受けたと。 そのときに、太字にしてありますが、肺炎とか、無気肺とか、呼吸口腔機能 のことを考えますと、腹這いにしてどうだとか、口腔器はどうしていた。こ れはみんなそれぞれ分断すれば、口腔ケアについては歯科衛生士や歯科医の 先生方、腹臥位については、リハビリテーションのスタッフがどうした、こ うしたとなりますが、看護師を含めたすべての職種が、何らかの形で合作し ながらやっている。つまり、3つ目の画面でありますように、多職種が各部門 の領域を超えて、お互いに協力している。ですから、座長が時々おっしゃっ ているような役割分担と情報の共有化という話は、病院の景色そのものなの だということになるのですね。  いままであまり出てこなかったかもしれないことを、1つだけ追加します。 それは第6画面目です。これを見ていただくとおわかりのように、実はほとん ど患者さんの相談ごとに応じているというのが、病院のようなものなのです。 (1)から看護部、緩和ケア、わーっとあります。これは昭和大学が別個に、そ れぞれの職種が、それぞれの歴史を刻んできたと。つまり、専門集団が専門 了域の情報を提供するということで、昭和大学病院における相談の業務とい うのは、こんなに山ほどあったのです。  結局、私が副院長になって何年目かに、これはこれで確かに一つひとつは 立派なのですが、やはり職種間の有機的な連携をすべきだと。それから、組 織間の合理的な協働をすべきだと。患者の利便性とか満足度。つまり、あっ ちの窓口で、次こっちの窓口というのではなくて、全体としてシステム化す べきだという話で総合相談センターというのを作ったのです。ここには書い てありませんが、医療安全という観点でいきますと、患者さんの文句はこの 総合相談センターに来るか、または紙媒体で投書箱に入るか。時々メールで も来ますが、主にこのどっちかです。  ですから、そういう観点で、医療安全とか、先ほどちょっとリスクマネー ジメントの話も出ましたが、このような総合相談センター的な、つまり各職 種が合作して協働すると。役割分担しながら協働するという話は病院医療そ のものだということが、これを見てよくわかると思うのですね。その下に相 談、緩和ケア、退院調整、バーッとあります。公費、労災、自賠責とありま すが、このような支払いのものも、患者さんにとっては決して簡単に病院で わかるわけではないという話がありますので、看護職その他の協働で、実は 患者さんもこの中に入れば一緒にやると、そういう話なのです。医療上の安 全に関する相談もここに入ってくるということで、センター長は言い出しっ ぺの副院長の私がいまやっています。これが昭和大学病院のチーム医療の相 当程度の確たる部分で、この確たる部分を中心にして、各病棟や外来その他 でやっていると。  ですから、8枚目の画面と9枚目の画面でわかりますように、質のよい病院 医療というのは、チーム医療そのものなのです。(1)に書いてありますが、こ れは例えば脳卒中から初療で多職種が来て、それから専門医が診てリハビリ に行くと。そのようなことで、クリティカルパスなどは、チーム医療をシス テム化しただけの話なのです。先ほどからお話しているように、これは病院 の中だけの問題ではなくて、地域に広がっていくと。だから、臨床研修で地 域医療を勉強しましょうという話は、病院のチーム医療が地域としてのチー ム医療に広がりを持っていると。そのような話を勉強しに行ったのだと私は 思っているのですが、最近また少し変わってきてよくわかりません。  チーム医療の重視という話は、診療上の責任体制の問題、病院の組織の一 員と。医学部の学生には、昭和大学病院は病院長が飯島というのですが、「お 前ら、飯島組の組員だ」というような言い方で、どういう組織としてリスク マネージメントをやっているか、組織的な展械をしているかという話をよく することがあります。医療の連携という話でいきますと、病院医療もチーム 医療ですが、地域医療もチーム医療と、こういう話になります。それらを少 しシステム的に見ていこうというのが、たぶん医療機能評価機構の仕事なの だと思います。  10画面目ですが、この日本医療機能評価機構が「医師の職務心得として検 討すべき事項」という小冊子を出しているのですが、あまりにも昔の話なの で、何年のものなのか忘れました。スライドを作ってからも、えらい日が経 っているのですが。ここには適切なチーム医療だとか、医療の質の向上のた めの努力だとかとあります。左側の救急医療の所は、救急医療に関連したタ ーミノロジーが並んでいますので省略します。これは「医師の職務行為」。医 師が一番だらしがなかったので、このようなパンフレットが出たのだと思い ますが、これは医師だけの問題ではなくて、看護職も含めて、みんな同じこ となのだと私は思います。これがチーム医療だということです。  医療機能評価機構から少し拝借してきたのが、それら以下です。11画面目 の下にありますように、いまのところ2,500病院が認定を受けているのだそう です。12画面目に書面審査、訪問審査のことが書いてあります。バージョン6 という評価の尺度、客観的に評価をするための物差しのバージョン6を使って いまやっているわけですが、たまたま昭和大学病院は更新審査といって、500 床以上の4の所で、丸々3日をかけて、打合せ云々と書いてありますが、12月 の2、3、4か3、4、5に受けます。  受けて、どうなってしまうかというと、14画面目の所にあります。結局、 組織体制、地域における役割以下、書いてあることはみんなチームとして取 り組むと。先ほど私は、「病院医療そのものがチーム医療なので、殊更チーム 医療と言われても…という発言をしましたが、病院というのは安全の確保と か、患者さんのサービスとか、ここに書いてありますようにいろいろなプロ セスですね。ケアプロセスとか言われていますが、その手のものはみんなチ ームとしてやっていると。  例えばここにあります大項目、中項目、小項目は、もし知らない人がいた らと思って、15画面目を作ってきましたが、2の領域の2の1の大項目、「患者 の権利と医療者の倫理」という所に2・1・1とあります。その右側に5・4・3・ 2・1とあります。2とか1が付くと不合格、3とか4が付くと合格、5が付くと日 本に繁多な水準と言っているようですが、この2の1の1の下位項目があります。 その下位項目の所に(1)とか(3)と書いてありますが、それがスコアリングガイ ドラインで、AとAが付いたらどうだというアグリエーション・ルールを使っ て、バーッと見ていくわけです。ですから、そういう意味での項目が162ある、 5・4・3・2・1が162あるということになります。  患者さんもチームだという話は、2・2・2の所に、「診療への患者参加を促 進する仕組みがある」という所があって、下位項目を見ながら、5・4・3・2・ 1を付けるという話なので、病院医療の第三者評価を取った病院は、そういう 意味ではチーム医療そのものについて頑張っているということになります。  16画面目ですが、領域1や2や6が、どちらかというとチーム医療を受け入れ る土台の部分、ベーシックな部分について聞いていて、4、5領域などは、そ のまま生きた病院の景色、動き方そのもの、「生き物としての病院」とよく言 いますが、その部分を見ているということになります。  17画面目ですが、小さな病院から大きな病院まで並んでいて、どちらかと いうと大きい病院。例えば300、400床未満辺りが、ちょうど病院の中の半分 の病院、右側から3番目のカラムの太字の部分がそうですが、全体の病院の 51%が受けている。そこからいくと、63%、68%とありますが、大きい病院 になってくると、それだけたくさん受けているということになります。その 程度の病院は、チーム医療という切り口で見る限り、病院全体としてその手 のことを実践しているということになります。ここから先はどのように話を 展開していいかわかりませんが、第三者評価を受ければ、受けていない所よ りはチーム医療という観点でいけば、病院としてはそれなりにやっている。  これは、最初の頁の所に全体の引上げの問題か、焦点、フォーカスを当て た問題かと書いてありますが、いまのところ全体の引上げの話を、こういう ようにしながら病院医療としては引上げをしてきたのではないか、という私 の考え方を述べました。フォーカスの話は、先ほど瀬尾先生がNurse anesthetistの話はそう簡単ではないと言っていましたが、そう簡単でなくて も何でも、とにかく病院ではもう麻酔をしてくださる方がいなくて、えらい 騒ぎになっているということがあります。これは『集中』とかいう雑誌の今 月号がたまたま近くにあったので、パラパラ見ていたら出てきたのですが、 ここには認定麻酔看護師の問題や、医師助手、Nurse practitionerの話も出 ていました。要するに現場が大変だから助けてもらう人をつくろうという話 になります。先ほどのナースの周術期の診療士のことも、現場が大変だから 助けようという話ですが、先ほどの全体の引上げという観点からすると、現 場がかなり疲弊していたとしても、万が一、疲弊していなかったとしても、 全体のチームとしてのパワーはアップするだろうという観点で見てもいいの かもしれません。  それから、私があとから付けた資料をめくっていただいて、「患者と都市を 使った学習プログラム」とあります。これは昭和大学の宣伝するわけではあ りませんが、昭和大学病院には患者と都市と健康の森というのがありまして、 そこでは薬剤師が診療科を跨がって、ワーバリンを使っている患者さんに、 ここの図書館で勉強しろというプログラムをやっています。おそらく薬剤師 たちもホーカスを当てていけば、6年間で病院実習もこれからどんどん行きま すので、注射をしたりということも含めて、相当程度に現場でハイレベルの ことをやってくださる可能性もあるのではないか。  最後の頁です。これは、上は日本病院会ニュースなので、こんなこともあ るということでいいと思いますが、下に「食事療法と食餌療法」と書いてあ ります。その右のパラグラフ、下のほうで、「我が国でチーム医療をさせるの はもう何年も経つ。しかし、学会でのシンポジウムは確実に議論されるが」、 ですからここでも活発に議論されるのでしょう。「が、現場の医療はあまり変 わらない。理由は簡単だ。ベッドサイドにいろいろなメンバーが来ない」。こ こでは、管理栄養士も現場にいようということが書いてある。だから、どん な形であれ、すべての職種がいまやっていることをもっともっとハイレベル に展開すれば、私たちの現場のチーム医療は、患者さんにとって良い医療に 向かって驀進できるだろうと思う次第です。全体の話をしているのか、焦点 的な話をしているのか、私自身もよくわからなくなってしまったので、頭を 整理する上で話題を提供させていただきました。以上です。 ○永井座長  続いて、井上委員からお願いいたします。 ○井上委員  資料3をご覧ください。「看護師の認識と実態」というところで、研究途上 ではありますが、データとなり得るものを提供したいと思います。まず、2番 目のスライドで、「我が国の看護職の概観」というところで、何回か話が出て いますが、現在130万人の看護師がおります。これは医師の約25万人、警察庁 警察官29万人に比べると、圧倒的に多い数。極端な言い方をすると、国民100 人に1人が看護師だと言っても過言ではありません。それでいて、毎年5万人 ずつ新人が誕生しておりますが、現在、約2割ちょっとが大卒になっておりま す。その背景としては、看護系大学が180、来年度にはもう200になるのでは ないかと思われますが、大学院は修士課程が119、博士課程が54まで増えてお ります。それから、何回か話題に出た専門看護師です。10年かかって300人ち ょっとで、それに対して認定看護師5,000人以上ということで、この専門看護 師の少なさは1つのネックになっていました。これは許可を得た情報ですが、 今年度の専門看護師の認定試験の申請者が194人です。すなわち、全員通ると は限りませんが、やっと教育の地盤が整ってきて、これからかなりな数が次々 誕生していく余地があるという情報をお話したいと思います。  研究の本題に入りますと、この目的は、いま現在我が国での看護師が侵襲 的医療措置をどれだけ実施しているか、またその際の医師の指示との関連、 あるいは将来はどうかということ。2つ目は、人工呼吸器をはじめ、高度医療 機器が付いている場合の療養生活行動支援です。体を拭いたり、食事の支援。 そういうことに関して、看護師がどのようにケアする前に情報収集、アセス メント、そして判断をしているか、医師へ提言しているかということについ て、調査いたしました。病院要覧等をもとに対象にして、全国200のICU・CCU、 集中治療部、救命センターなど、いわゆるクリティカルケアの部門を併設す る病院200に対して、1施設2名ずつの依頼でアンケートを配布して、有効返信 率52%、209の回答がありました。対象者の選定は、研究に同意した看護部長 の人選により配布してもらい、また、研究同意の得られた方からその人が協 力してもいいというところから、直接返信をしてもらっています。  5番目、6番目が対象者の概要ですが、平均年齢が30代、臨床経験10年から 20年辺りといった、非常に脂の乗り切った人々です。職位でいうと、スタッ フから主任チーフの辺りの人、リーダークラスというところですか。最終学 歴は6割以上が専修学校ですが、短大・大学も2割を超えております。  7番目が看護師以外の保有資格ですが、呼吸療法士を209人中40人以上が持 っておりました。認定看護師も22を超えておりました。  侵襲的医療処置とは何か、その選定なのですが、この領域の経験がある者 のフォーカス・グループ・インタビューで、既にもう一部は看護師が実施し ている、あるいは自分の所は実施していないけれども、ほかでは実施してい る可能性がある。将来は看護師が実施するだろうというもの、いわゆるグレ ーゾーンに当たるものについて、9枚目、10枚目、24項目選び出しました。 次 の頁、11、12が実際の質問紙です。縦列に24項目を並べて、まず「医師の指 示」として、水色の所、現在Aが「日常的に指示される」、Bが「状況により指 示される」、「指示されることはない」ということと、将来的に医師の指示は 必要とするか、しないか、これは全部ベテランナースの認識を聞いておりま す。  下の段の12は、それに対して看護師の実施状況です。現在は、「日常的にや っている」、「時々やることがある」、「一切やっていない」ということと、同 じくそれを将来も聞きました。将来も、「日常的に看護師がやってよい」、「何 とも言えない」、「やらないほうがいい」です。いちばん右の欄、将来の実施 者ですが、1が専門看護師、2が認定看護師、3が経験を積んだ看護師、4が看 護師全般です。  結果です。13番目の現在の実施状況。オレンジが日常的にやっている、緑 が時々やることがある、そのオレンジと緑を足したものの順に左から並べま した。3割の所に線を引いておりますが、24項目中、かなりの項目が緑も足す と3割を超えております。3分の2ぐらいがこのぐらいやっているということで す。  その下の将来の可能性ということで、色をちょっと薄くしておりますが、 オレンジが日常的にやってもよい、グリーンが何とも言えないということで す。これはオレンジの多い順に並べております。上と比べていただくと、折 れ線グラフがグッと上に伸びているのがおわかりになるのではないかと思い ます。  15番目です。現在と将来と比較します。下の欄はオレンジの項目、すなわ ち現在やっている率が高いものからずっと左から右に並べておりますが、ほ とんど緑が現在よりも長く伸びていて、将来は看護師がやってもよいのでは ないかと認識する人々が多いことが分かります。左はかなりやっている、7割、 8割やっている項目ですが、真ん中の3分の1ぐらいが非常に伸び率が高い。グ レーゾーンにある中で、いまはやっていなくても、ここはグッと伸びてくる。 また、右3分の1の部分は、いまはやっていないが、将来はやってもよいので はないかという数値が出てきております。  次に、どういう人ならやってもよいかということ、将来的なことの要件を 聞きました。それが17番目からです。上から、オレンジが専門看護師、応色 が認定看護師、黄緑が経験を積んだ看護師、そしてグリーンが看護師全般誰 でもです。それを全部足して、多い順から左に並べました。見ていただいた らわかりますように、何らかの資格、あるいは看護師全般も含めて、すべて の項目が3割、4割を超えていると。要するに実施者の要件を確定すれば、も っとしてもいいのではないかという結果になってきております。もう少し詳 しい分析で、看護師全般が実施してよいと思うもの、緑だけを取り出して、 多い順から並べました。下の並び、IVHのヘパロックから見ていただきたいと 思います。  次に、19番目、20番目です。19番目も20番目も、下のIVHのヘパロック、下 の横軸は先ほどの濃い緑と同じものを設定しております。黄色が認定看護師 と専門看護師、オレンジが専門看護師だけという形で分析してみました。そ うしますと、明らかに右側に変異してくるのです。看護師全般だと非常に率 が低いものでも、認定看護師、専門看護師、あるいは専門看護師だけという ように資格要件を限ると、右側のほうがグッと伸びてきます。すなわち、要 件を区切って、研修・教育を受けた人々だったらできるのではないかという のが現在の看護師の認識です。  21番目は、専門看護師だけが実施してよいと思うものを高い順に並べ、下 に黄色が認定看護師、緑が看護師全般というように、何位に位置したかを見 ました。そうしますと、特に看護師全般だと24項目ですから、ほとんど下位 というか、底に並んだものが、専門看護師では逆に上位に並んだという結果 になっております。すなわち、先ほどと同じ結論になりますが、いま現在、 曖昧にやっていること、施設によって、やったり、やらなかったりというこ とであっても、きちんと資格要件を付けて訓練をしてやるのであれば可能で はないかという認識が出ているのではないかと思います。  次に、そういう医療機器を装着した人への療養支援です。これは縦の欄に、 食事、移動、運動、清潔のような療養支援の項目を挙げ、横の欄にさまざま な医療処置、人工呼吸器とか、PCPAとか、IABPとか、血漿交換とか、非常に 命にかかわるような高度医療機器が付いているときに、例えば看護師が食事 摂取とか体を動かすときに、5がいちばん看護師の判断度を問いました。医師 の指示がなくとも、看護師が状況判断して実施するのが5、医師が実施する、 あるいは看護師は介助だけ、あるいはいちいち医師の立会いの下というのを1 とか2で聞いてみました。全項目で見ると、ほとんど全部が4から5です。低か ったのは腹臥位。これはいろいろ機器が付いている、あるいは傷があるとい うことで、腹臥位は低かったです。それから、浣腸、これは薬剤を使用する という条件がネックになったのかもしれませんが、それ以外はこれだけの命 にかかわるような機器が付いていても、看護師は事前の指示、あるいは医師 の指示がなくとも、こういう日常生活のことはもう既にやっているというこ とですね。  25、26は、逆に日常生活行動の側から見て、看護師の判断が高いものと低 いものを挙げております。高いもの、ほとんど5となるものは、上に挙げたよ うな口腔ケアから他動運動のもの。看護師の判断度が低かったものは、座ら せるのが4以上あったのですが、ちょっと低いものもありました。PCPAなどが ちょっと低かったです。  これは自由回答なのですが、A「看護師が判断して、医師に提案する」。「こ うしたらどうですか。これはもう始めたらどうですか」ということ。Bが「医 師へ確認もしくは相談」。Cが「医師の指示に従う」ということで、AとBには どんな項目が入っているのかということを、自由記載の中からまとめたもの を抜粋しました。  28番目が看護師が判断して、医師に提案する。例えば食事だったら、嚥下 能力や全身状態で、そろそろ食事を開始してもいいのではないかとか、低張 栄養を早期から開始してはどうかとか、患者の状態に応じて食事内容を変え てはどうかというように、食事、安静度、清潔、排泄に関して、むしろ看護 師がイニシアチブを取って提案しているものです。Bは、医師へ確認したり相 談したりということで、Aと同じ項目が出ている部分もありますが、看護師が 判断を迷うようなものがBに挙がったものということで、あとでご覧になって くださればと思います。  ここからは少し提案なのですが、例の1として、「術後早期離床、これを技 術実施の変遷としてはどうなっているかということを概観します。かつては、 術後は長期の症状安静が常識であった。離被架を使ったり、非常に安静臥床 は長かったのですが、安静臥床が引き起こす問題、肺合併症や褥瘡が問題に なり、ナースの側から見ると、早期離床に対する医師の見解とか指示がばら ついている。ところが、ナースの側から見ると非常に問題意識が高く、早期 離床の促進に関する研究はいろいろなされておりました。その後、エコノミ ー症候群と言われるLong Trip症候群の問題が社会的に顕在化して、やっと注 目されていたという現状があります。  いま現在はどうなっているかというと、術後患者の早期離床は、特別な術 式とか、重篤な合併症を持っている患者を除いて、ほとんどどの施設でも、 パス等もありますが、看護師の判断で実施されている。さらに、もう一歩進 んで、一部の施設では、看護師がエコー等を使って、深部静脈血栓がないと いうことを確認して離床を実施している。この早期離床に関しては、平成16 年ですか、ヘパリンの低用量使用等が診療報酬の対象になりましたが、ナー スがこういうことをやったとしても、まだ現在では報酬の対象にはならない。  例の2として、胸腔ドレーンの抜去です。このようにチューブが入っている ものの抜去に関して、いま現在は医師しかできません。33番ですが、ドレー ン管理、抜去時期の判断、これは管理はもうほとんど全部ナースです。抜去 時期の判断は、医師とともに看護師も十分やっております。抜く時期の判断 に関しては、特に遅延による障害としては、感染とか患者の苦痛、これはも う医師も十分ご存じかと思うのですが、生活行動が阻害されるとか、闘病意 欲が低下する。この辺は看護師が着目して、非常に気にかけているところで はあります。  抜去のときの実際はどうかということなのですが、抜去の判断は、臨床症 状、排液の性状とレントゲン読影まで含めて、ナースもしております。実際、 引っ張って抜くということなのですが、ここに挙げたところで赤字にした所 だけが医師のみが実施できるというか、ナースが実施できないところであっ て、この辺が例えば包括指示とか事前指示で可能であれば、非常に役割拡大 の可能性は高いと思います。  35番目は、専門看護師協議会という304名、全員ではないのですが、その人 たちが入っている報告書で、自分たちは何ができるということを言っており ます。1が「高度生体侵襲管理が起こる全身管理」、2が「緊急時対応」、3が「患 者・家族とのパートナーシップ形成」ということで、単なる技術的なものだ けではなくて、ケア計画を提示したり、ケース管理をしたり、患者への説明、 そういうもっと高度なところを、専門看護師たちは自分たちはできるという ことを報告書で出しております。  それから、田林先生のお話にも出ましたが、高度実践看護職、NP、NPとい うのは何回か話に出ましたが、日本看護系大学協議会ではCNS、専門看護師の 次のバージョンとして高度実践看護職というものを既に考えております。こ れは参考資料を付けましたので、あとでご覧になっていただきたいのですが、 「多死、多老、慢性病社会では、医師以外の医療職者の存在が医療の質を決 める」、これはさんざん言われていることです。「治療がわかり、生活がわか る看護師がチーム医療の要となり、調整役となり得る。看護教育の大学化、 大学院化による準備が十分に整っている」ということで、これは提言です。  37番目ですが、看護師の側から見た相互乗り入れということです。包括指 示、基準マニュアル等の整備ということと、Cure+Careの利点を最大限に活 かすという前提で、まずは専門認定看護師が行えること、教育された看護師 が行えること、看護師全般が実施可能なこと。このように段階的なところで やっていけば、可能なものから広げていけるのではないか。  まとめです。「侵襲的医療処置のかなりの部分を看護師は既に実施している。 看護師は、侵襲的処置を実施することを肯定的に捉え、教育や環境等の条件 が整えば実施できると感じています。また、十余年にわたる専門認定看護師 教育の成果等の準備が進められております。  次からが現在の看護師の教育制度のことです。最後の44枚目だけは説明し たいのですが、現在のCNSの教育カリキュラムは26単位は26単位、それを高度 実践看護師(ANP)とした場合に、既にこの38単位の教育カリキュラムの案を作 って、日本看護系大学協議会では公表しております。NP、NPという話が出て きておりますが、看護系大学協議会、私1人が代表するわけではありませんが、 そこにおいてはNPも包括した高度実践看護師として、足並みを揃えて、次世 代の教育制度、それから役割等を作っていきたいと思っております。その人 たちの準備状況としては、修士課程の修了生は、毎年2,000人ずつおります。 以上です。 ○永井座長  時間どおりお話いただきまして、約1時間、質疑応答、ディスカッションで きます。どなたからでも結構ですが、いかがでしょうか。私から田林先生に お聞きしたいのですが、先生のご提案としては、特に焦点を絞るとしたら周 術期管理士という制度が必要ということでしょうか。 ○田林先生  そうです。私は外科という立場もあるのですが、やはり外科系が日本の医 療の中では疲弊しているところの1つであるという観点から、こういう人たち を養成して一緒にチーム医療を構成していくと、その辺が改善してくるので はないかと考えています。 ○永井座長  先生の資料で1頁目の裏の3番と番号の付いたスライドで、これを見ると、 よく外科医が足りない、足りないと言われるのですが、人口当たりで見ると 日本の外科医は3倍とか4倍いるということでしょうか。ただ、1人当たりの手 術件数は少なくて、広く薄く分布しているという理解でよろしいのでしょう か。 ○田林先生  ええ、そうだと思います。 ○永井座長  そうすると、前に桐野先生からの資料であったのですが、ある年齢になる と外科医の1人当たりの手術件数はすごく減ってしまう。40歳過ぎになると年 間数件しか手術していない外科医がほとんどだということです。そこに何か システムの問題があるだろうというのが私の印象ですが、そんなふうに考え てよろしいですか。 ○田林先生 そうだと思います。特に最近の外科系の医師の分布を見ると、 1980年代とか1990年代の卒業生が多くて、それより若い外科系の医師が非常 に減っている傾向で、バランスが悪くなっていると考えます。 ○永井座長  ただ、この3枚目のスライドで、胸部外科については医師が人口当たり米国 の3倍いて、1人当たり3分の1の手術で大体合うのですが、脳神経外科につい ては4倍以上の医師で、1人当たり20分の1の手術です。アメリカと日本で脳神 経外科の手術の内容が違うのでしょうか。総件数では10倍違っていますけれ ども。 ○田林先生  アメリカは脊椎の外科が、これに含まれてくるのです。日本では脊椎の外 科は整形に入ってきていますから、その辺でアメリカの脳神経外科は脊椎外 科もやっているということで、お考えいただきたいと思います。 ○永井座長  わかりました。 ○朔委員  いまの3枚目のスライドですが、これは実際に外科をやっていない外科医の 数が、相当含まれていることを認識していないといけないと思います。たぶ ん診療所の外科医はほとんど外科をやっていない。 ○永井座長  そこで何かシステムを変える必要があるのではないのでしょうか。 ○朔委員  そうです。 ○永井座長  生涯、外科医をやっていただけるということ、そういう人が必要というこ とと、診療所の外科医はまた別の形で養成する必要がある。いわゆるこの状 態で外科医が足りない、もっと増やせと言っても、うまく機能しないという 懸念を私は感じるのです。 ○田林先生  私もそのように思います。 ○竹股委員  私がいまのお話で思ったのは、1つは外科の先生方だけではないのですが、 日本の医療においては平均在院日数が長いですから、外科の先生方が例えば 手術に特化して、本当にある時期に特化して集中してお仕事ができるだけで はなくて、術後の管理の部分、いわゆる術後の在院日数の差の部分ですね、 その部分に労力もとられているのでしょうし、もう1つは、これはよくわから ないですが、外来のお仕事については、米国の先生方と日本の先生方のかか る時間というのは差があるのでしょうか。その辺はいかがなのかなと思いま した。 ○田林先生  ご指摘のように入院期間は日本が長いわけですが、外科系の手術の場合に は、手術で一旦簡善しますと、術後の患者さんのケアというのはそんなに手 はかからない方が多いわけですから、いちばん手がかかるのは周術期という ことになるので、この労働環境から言うと、米国とそんなに大きな差は出て こないという感じはします。  外来のことは、どれくらい差があるかはっきりしないのですが、外科系の 外来というのは、そんなに忙しくない状況には日本もあると思います。 ○海辺委員  質問ですが、第2回の発表で、先生の名前を忘れてしまいましたけれども、 アメリカでは例えば外科と言っても手術を行う人と、その後縫う人とは分業 でやっているとか、いろいろなお話が出たかと思います。例えば脳神経外科 の1医師数当たり620と、要するに620回も年間に手術するというと、毎日2回 やるぐらいのペースでないとこの数はこなせないと思うので、行っている行 為自体が全く違うのかなと思ったのです。そのあたりはデータ的にはどうい うふうに見たらいいのかと思ったのです。 ○田林先生  これは単純計算ですので、この数字が本当に正確かどうかはあれですけれ ども、おおよそは間違いないと思います。ご指摘のように米国は実際のメイ ンの手術をするのがドクターで、あと開腹とか閉腹のところは、先ほど言い ましたPhysician assistantが参画してやっている状況にあると思います。 ○永井座長  かなり分業制になっているということですね。 ○大熊委員  28頁に国際福祉大学というのがあるのですが、たぶんこれは国際医療福祉 大学ではないかと思いますので、ご訂正をお願いします。いまアメリカでは というお話がありましたが、ヨーロッパの国でも同じような体制なのかどう かを教えてください。 ○田林先生  特にフランスとか、またイギリスなどもこういうチーム医療、分業が進ん できていますので、こういう傾向になってきていると思います。 ○大熊委員  そういう職種のナースの資格があると思っていいですか。 ○田林先生  そういうことです。 ○永井座長  これは、例えば臨床検査なども日本はそうだったですね。昔は検査技師が おられなくて、全部医師が血液検査、血糖を測ったり、尿、便を検査して診 療していたのが、だんだん分化していって臨床検査技師という資格、あるい は仕事の役割が出てきた。そこで今度、どうやって連携していくかという話 とちょっと似ているような気がします。 ○瀬尾委員  結局、皆さんが不思議に思われるように、手術件数が少ないのに働いてい る時間は非常に長い。つまり、たぶん手術以外のことをされているのだと思 います。今までは外科の先生というのは、診断、治療、回復まですべてをみ ろと、それが外科医の仕事だということで、検査をやる、外来をやる、手術 をやる、術後の管理もやる。麻酔もかけますということで、外科の手術以外 の仕事を外科の先生は全部やられていた。いまはどんどん変わってきて、例 えば癌の手術をやるときは腫瘍学がありますから、その専門の人たちが入っ てくるので、だんだん本来の外科の手術の業務そのものに特化してきている はずなのです。もう1つは、欧米と比べて単位手術当たりの時間数が非常に長 いわけです。それで手術件数とのアンバランスがある。もう1つは、いわゆる 外科の手術以外の業務が非常に多い。それで我々の麻酔科医が足りないとこ ろをカバーしていたということもある。 ○永井座長  そもそも麻酔というのも、昭和30年ごろまでは外科医がやっていたわけで す。 ○瀬尾委員  いまも、たぶん半分以上は、いわゆる麻酔専門医以外の方が日本ではされ ていますから、そういう意味で外科の先生が、今日は僕は麻酔係だというこ とでやられているので、手術件数が少ないというのはそこかなと思っていま す。 ○永井座長  日本で最初に麻酔の教室ができたのは、昭和30年です。それ以前は全部外 科の先生がなさっていたわけです。 ○西澤委員  私はあまり詳しくないのですが、PAとNAとの違いというのをもうちょっと 明確にしてほしいのと、特にアメリカでは、PAにはナースはそんに多くなか ったのではないかという記憶がありますので、この後教えていただきたいと 思います。例えば日本では外科の医師の数は圧倒的に多いわけで、10万人対 比で胸部外科では3倍という状況にありますが、これが例えば専門医制度等に なって胸部外科の専門医の数が絞られてくるとなると、いまの学会の方々で 専門医になれるのは、極端なことを言ってアメリカ並になれば3分の1に減る ことになります。そうすると、ほかのところがPAとかNAがカバーするのか。 ○永井座長  NPですね。 ○西澤委員  NPですね、失礼しました。あるいは医師の中で役割分担が出てくるのか、 そのあたりを教えていただければと思います。 ○永井座長  田林先生、いかがですか。 ○田林先生  PAとNPの違いは、一般的にはNPは医師から独立できるというところで、PA は医師の指示の下に働く。そういうところの大きな違いがあるということで、 ご理解いただければと思います。ただ、医師とともに一緒に働くという観点 からすると、PAとNPをそんなに鑑別する必要もないのかなという感じで私は 考えています。  それと、おっしゃるように専門医制度が始まっていて、施設の集約化とい うのも始まっているのですが、ただ、それを急速に進めることができない状 況が日本にはあるのではないかと私は思います。発表の中でも申し上げまし たが、特に若い医師が一生懸命働いて外科系を支えている状況にありますか ら、そういうことで専門医制度を進捗させた結果、若い医師が外科系に来る 数が減ってくると、日本の外科医療体制そのものが崩れてくる危険性もあり ますので、両方向を進めるというか、いわゆる外科系の分業化と施設の集約 化、専門医制度で専門医の数を減らす、この両方を進めていかないとまずい のではないかと考えています。 ○永井座長  NPとPAについて、私は先々週、アメリカのカリフォルニアの病院を見学に 行ってきましたので、いずれこの会で報告させていただきたいと思います。 NPは看護師中心で処方等、かなり独立性も持っていて、その病院では病院長 と看護部長の指示の下で動いているようでした。PAというのはもっと外科的 な、かなり技術的要素の強い職種で、医師の集団に所属している感じでした。 また改めて報告させていただきたいと思います。 ○朔委員  現在の外科臨床の状況を言いますと、国公立病院ですけれども、上級医が 手術をして研修医とか若い人たちが術後管理をするというふうに、医師の中 で現実に仕事の分担がされているのが現状だと思います。 ○永井座長  でも、その若い外科医が40代、50代になって、手術を続けられるのは非常 に少ないわけです。ほとんどの方は診療所なり小さい病院に出て行ってしま われるのではないでしょうか。 ○朔委員  いま40代、50代で、ばりばりでやっている人が定年で辞めますから、その ときに若い人で手術できるようになってくる人が、少なくなる心配が非常に あります。 ○永井座長  そういう意味でもシステムをうまく作らないと、そういう人たちが活かさ れないのではないかと思います。 ○井上委員  田林先生のご発表の中で、かなりナースのことを言ってくださったので補 足させていただきます。NPはアメリカが中心になって北米でかなり発達して きましたが、合衆国ですので州によって違いますし働きも違います。ただ、 NPでプライマリーケアを担当するNPもいれば、病院のICU、NICUにもいますの で、一口にNPと言っても非常にたくさんあり、皆さんが何を思い浮かべるか はなかなか難しいと思います。日本ではNPの導入、特にプライマリーケアで の診療看護師というのが、マスコミ等でセンセーショナルに言われて、皆さ んはそっちをイメージするかもしれないのですが、NPもナースなのです。ナ ースの役割拡大というところで是非、論議をしていただきたいわけで、新た な職種を作って、そこからいまのナースと切り離すというのは、非常にナー ス全体としては不本意だと思いますので、ナースの中でその能力をどうする のか。  それとPAというのは全く新たな職業ですので、特に外科医には非常に恩恵 があるのだろうと思いますが、チーム医療という観点で新たな職種を作ると いうのは、その必要性で皆の合意がないと、自分に役に立つ何とかアシスタ ントをまたいっぱい作りかねなくなる。そういう意味でチーム医療の推進と して、まずは今ある職種をどうやっていくか。だからPAとNPは同じ土俵で論 議するのは私はちょっと困るなと思います。  田林先生のスライドの25枚目が、なかなか蘊蓄が深いなと思って聞かせて いただいたのですが、反対する側の理由は、いまのナースが置かれている現 状をよく反映していると思います。2番は別にして、5番も自助努力というこ とがあるかもしれませんが、1番、3番、4番を解決することなく、ただ単に業 務の移行というのは是非避けてもらいたい。そういうところを付け加えさせ ていただきます。 ○永井座長  いまの点ですが、私がこの間見てきたシーダスサイナイ病院という、アメ リカでも屈指の病院ですが、稼働病床700〜800床に対して看護師が2,500人い るのです。その中でNPと言われている方が60数名、PAが20数名ですから、非 常に層の厚い看護師たちがいて、その上にNPがありPAがあるのです。ですか ら看護師の数がないところで、また新たに職種を作ることが本当に可能なの か。いろんな現場の混乱を招かないだろうかということはずいぶん懸念しま した。  もう1つは、相当しっかりした教育カリキュラムを作っている。資格認定、 資格更新も生涯教育を含めて、かなりがっちりした教育制度を作っています。 田林先生の28枚目のスライドでカリキュラムがありましたが、これはどうい う根拠に基づいて算定されているのか教えていただけますか。 ○田林先生  これは専門看護師や高度実践看護師で、国際医療福祉大学のカリキュラム での学習と実習時間の実時間で算定したものです。エモリー大学のPA養成分 野も、エモリー大学での情報から得たものです。それで班会議での案という のは講演の中でも申し上げましたが、学習、特に実習が非常に重要ではない かという観点から、2年間で最大限入れるだけの学習と実習時間を組み入れた。 その結果がこういう結果になったということです。ただ、これで十分かどう かというところは、ちょっと疑問があって、エモリーでは2,700時間という学 習と実習時間を費やしていますから、永井先生がおっしゃったように教育が 大事だと思いますので、この1,260が十分かどうかは今後、さらに検討する必 要があるし、私自身としてはもっと必要なのかもしれないと思っています。 ○井上委員  このことでも細かいことで恐縮ですが、専門看護師と高度実践看護師は大 学教育、大学院教育で大綱化されていますので、時間というよりは単位なの です。例えば高度実践看護師の案でも10単位なので最低450時間、それでも足 りないと言っているので、この数字は私の出した参考資料の44番目を参照し ていただければと思います。 ○瀬尾委員  参考資料1の296頁に、米国麻酔師の研修のところがあります。学生は平均 して1,696時間の麻酔の臨床の中で、790人以上の麻酔をかけるということで す。いま現在、200例かければ麻酔標榜医になれるのです。それだけ違う研修 内容をやっているということを考えていただいて、いわゆる専門Nurse practitionerとか、看護麻酔師という者の技術、教育を考えていただきたい と思います。 ○坂本委員  先ほど永井座長がおっしゃったことに私は賛成です。というのは、おそら く今、もう既に外科のドクターたちが大変困っている状況ですし、疲弊して いる状況ですので、ここから新たなPAの話を立ち上げるというのは大変だと 思います。日本の文化としては、ケアを行っている看護師にしっかりした教 育を行って、その人たちがチームの中に入っていくほうが適していると思い ます。外科医に付いていく方たちも必要なのかもしれませんが、どちらかと いうとNurse practitionerのほうが、むしろケアのほうも十分わかっていま す。ですから第1フェーズとしては、そういう形でいければ、患者さんにとっ てもいいのではないかという気がします。  ここでの話合いの中では、将来的にどうするかという大変理想的なものも ありますけれども、まずはいま井上委員が説明されたように、もう既にいろ いろな所で実施している医療処置等に対して、どのように整理を付けていく かということが必要ではないでしょうか。どの先生も教育は大事だと言われ るし、アメリカの教育も見ているので、きちっと教育をしていくように、こ こでの意思固めをしていただきたいと思っています。 ○西澤委員  まだ十分理解しているわけではないのですが、PAというのは確かにアメリ カではかなり入ってきている。ただ、日本においては医師の数が現在は非常 に多いわけですし、将来のことを考えての検討になると思いますが、日本な りの教育システムがあると思うので、そこら辺を加味した中でじっくり考え ていっていただければと思います。  NPは私は基本的に反対ではないのですが、ただ、現在の看護職の方が現在 の保助看法下で十分やっているのかというと、できるのにまだまだしていな い事がいっぱいあるのではないかと思います。そういうことでは医師と看護 師との役割分担というか、いま医師がやっているけれども、いまの法律の中 で実は看護師ができるものが十分あるので、その検討を先にしていただく。 まず今の法の中でチーム医療がどうあるべきかを議論して、次にNPの議論を 持ってこないといけない。いまの現場を見ると、今回のアンケートを取った 看護師たちは、かなり意識の高い方々ばかりのアンケートですが、日本全国 を見ると病院でかなり意識にムラがある。片方で非常に先行していることを やってみても、振り返ってみると日本全国では差があるというかムラがある。 それでは日本全体の医療の質は決して上がるわけではないので、そのあたり のもっともベーシックな議論も同時にしていきながら、バランスよく議論し ていただければと思います。 ○川嶋委員  私も、いま西澤委員のおっしゃったことに賛成です。と申しますのは、今 日の論議は救急医療と周術期とクリティカルケアという、どちらかというと 狭い意味での医療に近接した看護のお話がたくさん出てきているので、井上 委員が言われたリスクの高い仕事をかなりのナースがやっているという実態 も、私はよく理解できます。そういった中で仕事をしていることはたしかな のですが、そうした業務は、基礎的な教育があってやっているというよりも、 必要に迫られて、やらざるを得ないからやっている実態のあることを承知し ていただきたいと思います。  それと、いま西澤委員がおっしゃったように、非常に高度なというか、ど ちらかというとレベルの高い人たちの意識であるということです。48年に制 定された保助看法では二大看護業務(診療の補助と療養上の世話)が記され ていますが、この60年間、ナースの本音のところは、本当は療養上の世話を しなければいけないけれど、できないということを言い続けてきた60年だっ たのです。そういうことを考えながらチーム医療と言ったときに、地域とか 慢性、プライマリーケアなどを包含した領域の中でのチーム医療であって、 西澤委員が述べられたように、現在の法律の中で本来看護師は何をすべきか という点からの検討が臨まれます。確かに医師不足という社会現象からこの 検討会が発足していることは承知しています。そして先生方の負担を少しで も軽くするために、できることは何かという視点も大事なのですが、患者さ んにとって誰がその仕事をすることがいちばんいいのかという点から、もう1 回、チーム医療を根本的に見直さないといけないのではないかという印象を、 いま伺っていて感じました。 ○永井座長 田林先生、ご意見はいかがですか。いまの体制の中でもやれる ではないかというご意見が多いように思いますけれども。 ○田林先生  最終的には、患者さんのためにどういう医療体制がいいか、そこを中心に 考えていく必要があるのではないかと思います。その観点から言うと、先ほ ど井上委員からも発表があったように、看護師は結構いるけれども欧米と比 べるとまだまだそこは足りない。日本全体の医師数にしても欧米と比べると まだ少ない。その中でも外科系は医師は多いけれども非常に過重労働になっ ている。そういう観点から言うと、それらがすべて安全な医療を行うのに不 都合な状態を与えていることがありますので、看護師の専門やモチベーショ ンを高めるためには、どういうことをやっていったほうがいいのか。また医 師の専門性を生かすには、どういうことをやるのがいちばん得策かと考えた 場合に、こういう医師と看護師の中間的なレベルの人を養成することは、1つ の手段になるのではないか。それがすなわち看護師のためにも医師のために も、そして最終的には患者さんのためになるのではないか、そういう思いで います。 ○永井座長  いまの医師法、保助看法の中でできることと、できないことがあると思い ますが、その辺は切り分けていらっしゃいますか。 ○田林先生  その辺はなかなか難しいのですが、保助看法では診療の保助というところ が非常に曖昧な表現になっています。そこのところの切り口をどうするかと いうところは、こういう検討会を通して最終的には拡大ということをお願い したいのですが、そこはお互いの意見交換が必要ですし、当然、拡大してい く方向性というのは必要ではないかと私は思います。 ○坂本委員  西澤委員が言われたように、包括的な指示で動いているところが多くある ので、それについてはある意味で納得するのですが、本当にそれでいいので しょうか。こういう検討会を開いていろいろな話合いをしているならば、も う一歩、責任と仕事の仕方に対し1つのあり方を示して、その方向に向かうの だということを制度的なものも含めて検討していただかないといけない。包 括指示でもやれることはあるという状態のままで、医師や患者さんにとって 本当にいいのだろうかと思います。保助看法の中でどういう制度になるかは わかりませんし、あるいは法律を乗り越えるかということもここで議論すべ きだと思いますが、何らかの形で、誰が見てもそうだという公的なものは作 っていただきたいと思います。 ○永井座長  医師法、保助看法以外で医療に関わる職種としては、救命救急士法という のが90年代にできました。おそらくこれは社会的にかなり議論されたと思い ますが、有賀先生、その経緯なり位置付け、あるいは役割、さらに教育につ いて、どういうふうにお感じになっていますか。 ○有賀委員  細かなことは厚生労働省のお役人のほうが、よく知っておられると思いま すけれども、少なくとも救急医療の現場感覚的に言いますと、救急医療の現 場において、いわゆる医行為ができないと救えない患者さんたちがいること は事実だった。したがって、医師が現場に出て行くのか、または新しい職種 を作るのかと議論したときに、新しい職種を作って救急隊の中にそういう人 ができていって、現場でそういうことができればいいだろうということで、 かなり速いスピードで救急救命士法ができたと記憶しています。  彼らは医師の指示の下に、例えば東京では東京消防庁に救急隊を指導する 医師が無線で構えているわけですが、地方に行くと基幹病院などで電話や無 線を使いながら、オンコールでドクターが現場の救命士からの情報を得て、 例えば点滴をしろとか気管挿管をしろとか除細動をしろとか、そういうこと をするのが救急救命士です。彼らは現場と搬送途上においてのみ仕事ができ ることになっています。  教育のことですが、現実問題としては、いま既に看護学校のように学校が できてはいますが、もともと現場で働いていた人たちを救急救命士として認 定していこうと、最終的にはもちろん国家試験を受けてもらうわけですが、 現場の人たちに、私たちのように現場にいるドクターが座学と病院実習をす る。看護師で言えば現任教育のようなものでしょうか、そんな形で施してい った。詳しい座学の時間数、実習の時間数は忘れましたので、場合によって はそちらから補足していただければいいですが、そういう職種の人がいて、 私たち病院にいるドクターたちの手足となって現場で働いてもらっている。 こんなようなことです。 ○永井座長  やはり、かけがえのない存在になっていると。 ○有賀委員  ええ。つまり米国などで言えばいわゆるパラメデックというか、ここでナ ースの方たちが、結構こんなことをやっていますよねという話も含めて、例 えば胸腔ドレーンを入れることも含めて、医行為としてはかなりなことをや っている。日本国においてはまだそこまでいっていません。最近、アナフィ ラキシーショックでボスミンをポンと打てるようになったという話で、じわ じわと広がってはいますけれども。 ○山本(信)委員  ここにおられるメンバーのうち薬剤師だけが法の枠組みからすると所管が 違うという意味でいつも忘れられてしまう存在ですが、今日、井上先生、田 林先生や有賀先生のお話の中でも、それなりに薬剤師というのがずいぶんと 期待されているので安心しました。  その一方で、先ほど坂本先生がおっしゃったように、必要なスタッフがど うやって入っていくのか、制度なのか仕組みなのかと考えたときに、薬剤師 ができる範囲がどのくらいかは様々な議論がありますけれども、看護師の 方々以上に医療の現場では扱える範囲は制限があって、薬及びその周辺の範 囲でしかありません。そう考える制度的にどこまで手を入れられるのかとい うのは、チームを組む上ではたぶん必要なことなのだろうと思います。そう いった意味で制度論であったり法律論であったり、あるいは薬剤師法の範囲 も含めて、おそらく検討が要ると思います。  1点気になるのは、私どもが6年制になった結果、議論の中で現場では必要 だと言われている。ところが、いざチームを組む段階でどうやって参加して いいかわからない。例えば教育の話を例に挙げると、この検討会では、医療 の現場の方々が議論されていますので、ああいう知識も必要だ、こういう知 識も必要だ、こういう現場も必要だと。ところが、いざ専門職を教育する場 へ行くと、実は厚生労働省ではなくて文部科学省の所管に移る。すると、医 師を教育する所、看護師を教育する所、薬剤師を教育する所で、ここの議論 と教育を担当する部局は一体どういう連携をとっておられるのか不安になり ます。もし連携がなければ、いくらここで議論しても教育の現場には全く跳 ね返らない。教育は全く違うところで教えているわけですし、薬学生に対し ては来年から実務実習が始まりますが、例えば病院へ行き、薬局へ行き、そ れぞれの現場では意識を持って帰っても、いざ学校へ帰ると全く違う話をさ れているようでは、実は困るのです。  事務局にお伺いしたいのですが、将来的に看護師の役割、あるいは医師の 役割分担さらに言えばチーム医療の推進という議論をする中で、医療者教育 に対して厚生労働省としてどういう影響力を与えることができるのでしょう か。あるいは、どうすれば役所としてはうまく教育ができるのかということ をお考えなのでしょうか。 ○杉野医事課長  抽象的なお答えになるかもしれませんが、薬剤師はいろいろあるというこ とはお聞きしていますけれども、当然、この議論をするときには、例えば看 護師なら看護師の方々にどういった業務を、従来に比べてより広く担ってい ただくかという話をすれば、今日の議論にもありましたように、どういう教 育課程を経ることが必要なのかという議論になります。そうなると山本先生 がおっしゃるように、まさに一般的に言えば大学あるいは大学の修士課程で、 どういった教育を受けてきたかが問われてくるという話になります。そうな ると、それは文部科学省の協力がなければ、実際には十分な能力を持った看 護師で、かつ十分な量の看護師を養成できないわけですから、当然、そこは 役所として話をしながら、こういった議論は進めていく必要があると思って います。そこはどういう影響力を及ぼすことができるのかというのは、そも そもこの会を起こす段階で文部科学省にもご案内を差し上げて、傍聴してい ただくようにしていますし、当然、こういった動きを踏まえて文部科学省の ほうでも、看護師であれば看護師教育のあり方も十分視野に入れていただい た上で、場合によっては大学あるいは大学の修士課程の認可にも、取り組ん でいただくことをお願いしたいと思っています。 ○海辺委員  2点ほど申し上げたいと思ったのですが、看護の質の向上と確保に関する検 討会というのに、私は前年度参加させていただいて、そこでいかに看護基礎 教育が複雑怪奇なところなのかを知りました。要するに看護専門学校は管轄 が厚生労働省で、4年制大学や短大になると文部科学省で、受けている教育が ずいぶん違うらしいとかいろいろな問題があって、そこへ持ってきてまたこ ういうNurse practitionerの問題が出てくると、これまで出てきたように教 育システムの問題をきちんとさせない限り、まず現場のところだけで急に使 い叩かれるようなことになってしまうと、大変なことだと思います。こうい う検討会に出させていただくと、何か現場と乖離してしまっている部分があ るのかなと。  例えば、看護協会としては一本化とかいろいろ思いがあって、今後、この ような形でとなったときに、田林先生の発表資料で興味深く思ったのが23枚 目のカードです。業務拡大に対する意識調査では過半数が反省なのに、結局、 26枚目で自分がやるかという質問になったときには、希望しない人が過半数 です。20代、30代の方でも過半数だし、全体としたら7割近くが希望しない。 要するにそういうことですと、結局、こういうシステムを作っても本当にな る人がいるのか、現場が変わるのかなというのを印象として持ちました。  もう1点、私が申し上げたかったのは、アメリカは医療においては社会保障 の枠の中で医療が成り立っていないという特殊な環境にあるので、社会保障 の枠の中で医療を行っている国は、なかなかアメリカのようにはいかないと いう実情が絶対あると思います。患者団体でもアメリカの患者団体の方とお 話をしていると、資金も潤沢ですし会もすごく大きくて、マンパワーもある という全然違う中でお話を聞いていても、あまりにも違いすぎて嫌になって きてしまうみたいなことがあります。  ただ、イギリスの患者会の方なんかとお話をしたら、「いやいや、アメリカ は特別なの、私たちだってあなた方と同じで、人もいないしお金もない中で 細々とやって頑張っているのよ」というお話を聞くと、非常に気持が逆に引 き締まったりするものですから、実現可能なマイルストンみたいなのをきち んと積み上げないと、ここでのお話があまりにも非現実的なものになってし まったら、結局のところ、現場が変わらないということになるだろうなと思 ったものですから、そのようなお話を2点ほど申し上げました。 ○永井座長  そう飛んだ結論にはならないと思います。 ○井上委員  教育に携わっている者として、いくつか申し上げたいと思います。役割拡 大にしろ、ひょっとして新たな名称のものができるにしろ、必ず教育が先行 しているはずであって、現場でいきなり登場するわけではありません。そう いう意味では18歳人口の半分以上が大学に進学している中で、大学教育がど ういう状況にあるのかを押えて見ていただきたい。確かに看護教育は非常に 複雑怪奇で、いろいろな背景の人たちが出ている。それを現場では准看と看 護師の違いぐらいで、みんな一様に、皆のレベルアップと言ってきたのが今 までだったのです。それでこういう事態になってしまった。  その中で、医学部、医系大学が80、薬科大学73です。それに対して看護大 学は180、200ある。確かにいろいろなものがあるけれども、その中で大学院 までできていて、こういう教育カリキュラムを準備している。そこを突破口 にしてひとつやるという方略があってもいいのではないか。もちろんナース にやるべきことで、できていないことはたくさんあります。だけどそれはそ れでやるし、違う方略も考えていく。そういう意味では教育の準備体制はか なり整えてはいるし、看護教員も看護を志す学生たちも頑張っていると思い ます。 ○田林先生  看護師たちのほうで看護系の大学、大学院ができていて、教育体制は徐々 に進捗していることは認めますけれども、まだ不十分なところはあるのでは ないか。もっと教育内容を深めることが必要なのではないかと思います。そ ういう教育体制ができたときに、それを卒業した方々はどういう役目ができ るか。それは法的、公的でもいいかもしれませんが、ある程度の制度的なこ とを定めていくことが、今後、必要なのではないかと思っています。 ○永井座長  田林先生、先ほどの海辺さんの質問で希望者はいるのかと、看護師たちは 総論賛成だけど、自分はあまり参加したくないということですが、こういう 職種ができたときに希望者というのは、実際はどうでしょうか。 ○田林先生  先ほどこの資料で申し上げましたけれども、希望しない人が6割から7割い るのですが、条件付きで賛成というのが残りで、その数は200〜300人になり ますから、その中の半分か、3分の1でも4分の1でもいいですけど、それくら い入ればよろしいかなということで、ある程度いるのではないかと思います。 ○永井座長  そんなにたくさんの人が必要なわけではないということですね。 ○田林先生  要らないわけです。 ○加藤委員  田林先生に伺います。28ページを見ると結果的には看護の基礎の上に積み 上げていくことだろうと思いますが、あえて周術期の診療士を立てなくては いけないその理由を伺いたいと思います。いわゆる専門看護師ではいけない 理由も伺いたいと思います。 ○田林先生  先ほど申しましたが、オールラウンド・プレーヤーを育成するのかどうか。 それができれば非常にいいと思いますけれども、エモリーとか米国のPA、NP はオールラウンド・プレーヤーをある程度育て、その後、分化はしていきま すけれども、教育体制はそのオールラウンド・プレーヤーを育成する教育体 制になっているのです。日本においてそれが可能かどうかというところを、 十分考えなければいけないので、教育の中でもある程度特化したところの専 門分野を集中的に教育するのが、実際的かなということで、これを挙げさせ ていただいたということです。 ○加藤委員  日本の専門看護師教育も、かなり特化してやっていると思うものですから、 あえてここにこういう診療士という新たな職種を作ることの意味を検討する 必要があるかと思います。 ○永井座長  これ法律的なことを検討しないといけないと思うのです。保助看法の中で できることであれば、それは今の職種でいいのだと思いますけれども、もし それを超えるような内容が含まれている場合には、法律改正を考えないとい けない。ですから田林先生がどういう医行為を念頭に置いておられるかを、 少し吟味していただく必要があるのではないかと思います。 ○瀬尾委員  もう1つ、チーム医療に関わっている者としては臨床工学士の方がいます。 ここに本当は代表として出てきてほしい職種の人だと思いますが、臨床工学 士が出てきた経緯と、いま、どういう法律でやっているかと考えると、これ を臨床工学士と同じような感じでPhysician assistantと考えるのか。臨床工 学士もある意味ではPhysician assistantのような感じなわけで、うまく成功 してすごく活躍されている。我々はいろいろなところで協力していただいて 助かっているわけですが、そういう形でできるのか。つまりそれは手術に特 化です。あれは血液透析とか人工透析、人工呼吸の管理など、いろいろな方 面でかなり重要な地位を占めていただいているので、そういう形で出すこと ができるのか。つまり、それは歴史的に臨床工学士がどうできて、どういう ふうに計画され、法律がどうなって、どうなったのかということも、ちょっ と。 ○永井座長  いまの臨床工学士はできないです。患者さんに接触して医行為はできない と思います。ですから、もし臨床工学士に医行為をしてもらおうと思ったら、 法律改正が必要だと私は理解していました。 ○瀬尾委員  だけども臨床的なものを、我々とともにやっていますよね。非常に助かっ ています。 ○永井座長  ですから、機械までだと思います。 ○瀬尾委員  機械を回しますけれども、それによって患者の生命を守ることもできるし、 いろんなことができているわけです。 ○永井座長  それは法律の専門の方と検討が必要です。 ○有賀委員  いま瀬尾先生がおっしゃったのは、現場感覚としては全くそのとおりなの です。だけど、例えば患者さんの透析をするときに血絡ラインを確保すると いう話になると、やはりドクターがやっていたり、その後のさまざまなこと はナースがやっていて、最終的に全体としての機械めぐりについては臨床工 学士がやっていますから、現場にとって絶対必要かと言えば絶対必要なので す。そういう意味で座長のセンスで言えば、ぎりぎりのところの法的な範囲 内でやっている。全体の景色からすると、どうやらドクターのお手伝いを相 当程度やっているという感じでの今の発言だと思います。ですから、手術中 も確かにそうですし、透析やその他の機械を回す高気圧酸素療法などもそう ですから、法的にそのとおりだという意味では、そのとおりなのです。  先ほど座長が、救急救命士のことをお聞きになりましたけれども、彼らは 現場と搬送途上オンリーなので、もし法律という切り口で展開して彼らが病 院の中でもできるとしたら、現場でやっているような、この患者さんはどこ の調子が悪そうだから、どこの病院の何科に運ぶという意味では、緊急度の 判断と適切なドクターは誰かを選別しているわけです。そういう意味では救 急外来で十分使える。多くが男性なので、暴力を振る酔っ払いなどに関して は、繁華街に出ていますから日常茶飯事的にやっているわけです。そういう 意味でもドクターのお手伝いをするかどうかは別として、救急外来では極め て使い勝手がいいという話になります。法律のことを考えながら、この職種 を、あの職種をと言うのであれば、それはそれでいくらでも議論ができる感 じはします。  ナーシングスタッフが、どれだけやれているか、やれていないかと言って も、現に包括的な指示の下にこれだけのことをやっている。だから井上先生 の発言されたことで田林先生の言っておられることは、私が今まで働いてき たあのナース、このナースと思い浮かべれば、実はやってくれているのです。 そういうところで保助看法を変えるのかどうかという話になってくると、ど ういうふうに、どこをどうするのか。  もっと言うと、先ほど薬剤師が出ましたけれども、薬剤師はお薬の飲み合 わせにしても、抗生物質、その他の臓器の問題にしても、極めていろいろな 知識を私たちに提供してくれるのです。カンファレンスには必ずいます。そ の薬剤師たちはお薬のプロですが、さっき話した血中濃度を測るといって採 血するのか、点滴をするのか。これだって法律を変えなくても、ひょっとし たら教育をすればできるのかもしれない。そこら辺の何ができるかという話 のところは整理しながら、しらみ潰しに潰すような意味での方法をやらない と、先生、どう思いますかと聞かれても、田林先生からすれば法律を作って くれたほうがありがたいとおっしゃるでしょうが、ナーシングスタッフは、 そんなことをしなくても私たちがやりますとなる。いま言ったフォーカスを 当てた話というのは、必ずこうなってしまうのではないかというのが少し心 配で、救急救命士に合わせて発言した次第です。すみませんけど、もうちょ っと、この職種は、あの職種はという話でまとめてもいいのではないかとい う気が私としてはするのです。 ○永井座長  田林先生の考えていらっしゃる術後管理士というのが、どういう仕事なの か。もうちょっと具体的な医行為の例を挙げていただいて、それが今の制度 の中で本当に看護師の包括指示の中でできるのかどうか。ちょっとそんな情 報をいただければと思います。 ○田林先生  いま考えている外科系での周術期診療士のイメージですが、術前であれば 患者さんへの説明、術前処置等があると思います。手術中は執刀の準備と、 当然手術にも参画していただくことになりますから、いろいろな機器を手術 中に保持したり出したりする。術後に関しては術後管理を責任を持ってやる。 その責任というのは医師の指示の下に責任を持ってやって、当然、いろいろ な薬剤の調節もやる。退院時サマリー、手術時のサマリー等もまとめる。そ ういうところが主なことかなと思っています。 ○永井座長  それを、いまの専門看護師をトレーニングして特化していった場合には、 対応できないのかというのが、皆さんのご意見だったと思います。 ○田林先生  それは可能だと思いますけれども、その場合には今の保助看法に抵触して くるところが、かなりあるのではないかと思いますので、そこのところの制 度設計をどのようにしていただけるかだと思います。 ○永井座長  そこの抵触のところのイメージが、皆さん、まだ描けていないのだと思い ます。 ○田林先生  いまの保助看法では、手術中に手術に参画するということは、いかがなの でしょうか。 ○坂本委員  手術に参加するという意味についいてですが、例えばいまは術中の器械出 し等を看護師が全部やっていますよね。それから麻酔が終わった後の述語管 理は、看護師が麻酔医の下に行い手術室を退室するわけです。周術期診療士 とは手術で切るのか、それとも糸を渡すのか、一体何をする人なのかそこは どういうふうにお考えですか。 ○田林先生  切るとかは難しいと思いますので、第一助手、第二助手というイメージが あると思います。そういう仕事の内容になると思います。だから、いろいろ な手術器具を保持して、いわゆる執刀医とともに手術をやると、具体的には そういうことになると思います。 ○大熊委員  いま、田林先生がおっしゃった内容というのは、外科医が育っていく過程 の修業に欠かせないものである部分と、看護師がこれまでやっていた部分で カバーできてしまうような気がするのです。それで田林先生の最初のお話の 外科医が足りなくて、忙しくて大変だから、こういう職種が要るということ ですけれども、どうやら、なぜ外科医と称する人が外科をしていないかとい う原因を、きちんと突き止めないと駄目なのではないか。 ○永井座長  結局、それは修業で必要なのですけれども、40歳を過ぎるとそんなに手術 をしているわけではないのです。修業で終わってしまう人があまりにも多い ということが、私は外科医の希望者が減っている理由だと思います。 ○大熊委員  ですから、その志望者が減らないほうの手立てのほうが、間に合わせの看 護師より偉いんだよみたいなイメージのものを作るよりも、根本的なのでは ないか。 ○永井座長  むしろ、それで終わってしまうのであれば、そこにちゃんとしたキャリア パスを作っておいたほうが、いいということなのです。そういう専門の人を 作ったほうが分担と連携はしやすいのではないか。つまり外科医は40歳を過 ぎるとそんなに必要ないのだということなのです。ちょっと語弊があります が、手術をしている人は減ってしまうのですから、1人当たりの手術件数は減 ってしまうわけでしょう。 ○大熊委員  手術用の人が執刀すればいいのではないですか。 ○瀬尾委員  それはですね、40歳以上になると優秀な外科医として残っていくのです。 50歳前後がいちばんばりばりですから、そのころに、つまり他の人は「私は 外科医になれないな」ということで諦めていく。だから40歳、50歳の人がき ちんと手術ができるような環境を作ってあげることが必要だと。 ○永井座長  そういうことです。 ○坂本委員  大体わかりました。私は、おそらく手術の中で手を洗って何かをする、例 えば看護師の器械出しとか第何介助というものは、先生がそばにいらっしゃ るわけですからそんなに使われないと思います。この話の中で重要なのは周 術期管理だと思うのです。周術期管理を、先生方がいつもそばに付いていろ いろなことをしていくのか、それとも今よりもう少し看護師が医療的なもの まで入り込んでいって、責任を持ってマネージメントを任されてやるのかど うか。そこだと思うのですが、いかがでしょうか。 ○田林先生  両方を含んでいる。先ほど申し上げたように、術中に外科医とともに働く 周術期診療士と、いま坂本委員がおっしゃったような術後の管理も当然含ま れてくる。だから両面ということです。 ○山本(信)委員  先ほど有賀先生から薬剤師のお話をして頂きました。ここで自分たちの職 種を殊更に主張するわけではないのですが、少なくとも薬に関しては、その ことを専門に勉強していきますので、皆さん方よりよく知っているのだろう と自負しています。そういった意味では場面、場面での薬の相談というのは あり得るだろうと考えます。その中で、いまお話を伺っていて、例えば狭い 手術室にたくさん入るのは大変なので、誰か1人がコントロールすればいいと いう見方もあるのでしょうけれども、きっと薬剤師が加わっていれば麻酔の プロトコールもきちんとできるということもあると思いますし、その結果、 麻酔医の負担を軽くできるかもしれません。そうした意味では、まさにチー ムを組むというのはそういういろいろな職種が、それぞれの専門性を発揮し 連携することと理解しています。そういった意味では、周術期にしても、術 後の医薬品に関しての管理を誰がするのか。  先ほど井上先生のお話を伺っていて、とても大変だなと、これだけのこと をやったら、医師と同じように看護師はバーンアウトしてしまうと思います。 そういった意味で我々がチームとしてサポートできる部分として、手術場も そうですし病棟もそうですし外来もそうですと考えてみれば、それぞれの職 種を主張するのではなく、薬だけはこちらに任せていただければ、それなり のことはできます。外側にいる者として申し上げたのは、たまたま所管する 局が違って別の法律がありますから、薬剤師法を直せとまでは申しませんが、 少なくとも働ける環境をどう作っていくか。そこは制度、仕組みの問題だと 思うので、この検討会で検討いただかないと適切にチームが組めないという 意味で、先ほど申し上げました。 ○永井座長  それは、私も有賀先生、井上先生にお聞きしようと思ったのですが、結局、 マンパワーなり教育なり、それから行為に対する評価というものを、診療報 酬制度の中できっちり認めてもらわないと、結局、みんなバーンアウトする だけです。その辺については何かご希望なり、ご提案はございませんか。 ○有賀委員  実は全体の話をさせていただいたのは、いま薬剤師の立場からのご発言が あったように、結局、病院は現在与えられた状況の中で、したがって医師法 や保助看法の中でチーム医療を一生懸命やっているのです。それははっきり 言って工夫の世界です。つまり新しい職種が入って来るわけでもないですし、 いまある職種がどんなふうにして皆とうまくやっていくか。したがって、そ れが場合によっては病院の第三者評価みたいなところで、とりあえず区分け して、いいほうに入りたくてみんなやっているという話です。東大病院もた ぶん受けていると思いますが、そうやって各職種を横断的にチーム医療を体 系的にやっているというのが、いろいろな意見があるでしょうけれども、こ の医療機能評価機構だと私は思っています。  そういう意味では、いみじくもいま座長がおっしゃったみたいに、診療報 酬の面でクオリティが高い。もし医療をサービスだと言うのであれば、サー ビスに差があれば値段に差があるのは当たり前ですから、そういう意味では 通っている病院、通っていない病院よりも高い診療報酬の中で、少しでも足 りない人たちを雇う金がほしいと、これが正直な話です。  私は、直接的に厚労省の人が言っているのを聞いたことはありませんが、 第三者評価の医療機能評価機構は、法人化されたものであればいいのではな いですかというのが、医療機能評価機構ができたときの厚生労働省の意見だ ったと、私は理解していますけれども、最近は、こんなもの民間がやってい るのだから知ったことではないと、金なんか付ける必要はない、というふう に厚生労働省の人が言っているというのです。私はこの話をするのに医療機 能評価機構の関係者に聞きに行ったのです。あそこにいるスタッフではあり ません。だから、民間がやっているから知らないよなんていう話は口が裂け ても言うべきではなくて、民間だって官だって良いものはいいし悪いものは 悪いのです。ですから、そこのところをはっきり、シャキッとお金を付けて いただきたい。これが、いまの質問に対する答えです。 ○井上委員  先生がおっしゃった、システムとして病院の質あるいは体制としてのチー ム医療がどれだけ整っているかということは、1つ大きなことだと思います。 もう1つは、例えば夜間に医師がいなくて、痛み止めとか不安状態になって何 か鎮静剤といったときに、包括指示のような非常に画一的に医師が書いたも のを、ナースが本当にこれを実施して良いかと迷うなときに、言ったときに、 包括指示と言うと非常に画一的に医師が書いていったもので、それでもナー スが本当にこれを通していいかどうかというときに、当直の薬剤師がいたら 相談したい。あるいは呼吸器とうまく乗らないときには、工学士と相談した いとか、そういうふうに有賀先生が出してくれた3番目のスライドです。医療 チームの医師を中心としたものだけでなく、医療チームの横のつながりの中 でそうやって処方するシステムができれば、永井座長が今度発表してくださ ると思いますが、例えばPA、NPは診療報酬が医師がそうやるものの85%だと 言っていたのです。同じ患者さんに鎮痛剤を投与するのに、その患者さんに 応じた多職種の目でより良いものが投与されて、なおかつ診療報酬が安く済 むのであるならば、これはいろいろな意味でいいのではないか。そういう意 味で、いま医師にしか付かない、医師が関与しないと必ず付かない。どこか ではその担保が必要なのだろうと思いますが、看護職あるいは単独ではなく てチーム医療が力を合わせたら、もっともっとすごいことができるのではな いかと思うので、それの診療報酬のその道を是非考えていただきたい。 ○秋山委員  話題が遡るかもしれませんが、井上先生がまとめのところで、「看護者は、 侵襲的措置を実施することを肯定的に捉え、教育や環境等の条件が整えば実 施できると感じている」の具体例を13と14に示しています。私はこれを見た ときに、これだけ既にある意味、医行為と称するものをやっていて、私もこ れは抵触するのかどうか。地域の在宅でやっているものもあるので、これが 一体保助看法に抵触する内容なのかどうかというあたりが、これは結局、は っきりしないままやられていて大丈夫ということなわけですよね。その辺の 確認というのはどうなのでしょうか。 ○井上委員  これは、太田喜久子先生の研究班のときにも、一体、これのどれが法律に 抵触するのかが問題になって、よくよく考えたら、どれ一つとしてないので はないかと。何をしたらいけないのか。ただし、鎮痛剤の処方とかはできな い。そうすると、例に出したドレーン抜去はできないことになってしまうの です。だけど、たぶんこの24項目で厳密な意味で法律違反になるのがあるの かというと、ないのではないかと私自身は思います。ただ、それが何か起き たときに責任の所在がどこかということと、追及されるべきは誰か、誰が判 断したのかというのが非常に曖昧で、いつも矢表に立たされて追及されるの がナースだから、それは非常に困る。そこら辺は法整備してほしいというこ とです。 ○島崎委員  お話を伺っていての感想ですが、医療の場面は病院もあれば在宅もある。 今日は主に病院の高度な医療の話だったと思いますが、率直に言って、日進 月歩の医療技術の革新や高齢化が急激に進む一方で、生産年齢人口が激減し ていくという歴然とした「事実」の中で、このままでやっていけるのだろう かという印象を抱きます。端的に言えば、個々の職能としての「生産性」も あるし、例えば折角専門医として養成した外科医が40歳でリタイアしてしま うといった、あえて言えば「制度としての生産性」ということになるのかも しれませんが、そうした状態を放置し日本の医療水準を維持できるのかとい う危惧を持ちます。  そういうことを考えていくと、もちろん課題はチーム医療だけでなく、医 療機関の集約化ということもあるでしょうし、マスとしての医療職を増やし ていくということもあるとは思いますが、やはり「生産性」をどうやって上 げていくかを真剣に考えていかないといけないと思います。その対応として は、まず、解釈なりでできることはできるだけやっていく。もちろん、その 裏付けとして一定の研修が必要であれば、そういうこともやっていくことが 必要なのでしょうが、まずそれをきちんとやるのが1つ。2つ目としては、「生 産性」を上げていくために看護の職能を上げていくことも重要な方策の1つだ と思います。さらに、各種の条件等が異なりますので、米国のようなPAそ のものでないにしても、そういう職種を設けることの検討が全く必要ないの かと言えば、必ずしもそうではないのではないか。私は、必ずしもPAを日 本で直ちに設けるべきだと主張しているわけではありませんが、どういう問 題点があるのかということは、もう少し議論してもいいのではないか、そう いう印象を持ちました。 ○永井座長  最後に、簡単にお願いします。 ○竹股委員  どうしても、これだけは言わせていただきたかったので、繰り返しになり ますが、看護職をはじめとしていま医療の現場では、いわゆるコメディカル と言われている方たちがまだまだやることがたくさんあるし、できます。た だ、それが現行の法に縛られて非常に効率が悪いと私は思っています。です から、この議論というのは新たな職種を創設するよりは、現行の医療職が、 もっともっと業務拡大をしていくことが非常に重要ではないかと、私は今日、 ずっとお話を伺っていて思っていました。 ○永井座長  そこはまだ、いろいろご議論があろうかと思いますので、引き続き検討し たいと思います。それでは最後に事務局からお願いします。 ○石川(義)補佐  次回ですが、11月30日(月)15時〜17時、場所は厚生労働省専用第18〜20会 議室で開催予定です。以上です。 ○永井座長  それではこれで、今日は終了させていただきます。ありがとうございまし た。 -了- (照会先) 厚生労働省医政局医事課 石川義浩、石川典子 (代表)03−5253−1111(内線2564、内線2563)