09/11/11 平成21年度第1回肝炎治療戦略会議議事録 ○日時:平成21年11月11日(水) 15:00〜17:00 ○場所:厚生労働省省議室 ○出席委員:林座長、飯沼委員、泉委員、岡上委員、熊田委員、脇田委員   ○肝炎医療専門官 定刻でございますので、ただ今より平成21年度第1回「肝炎治療戦略会議」 を開催させていただきます。  委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして誠にありがとうございま す。  事務局を担当いたします、肝炎対策推進室の丸本でございます。  まず、初めに山井和則厚生労働大臣政務官からごあいさつを申し上げます。 ○山井政務官 この度、厚生労働省の政務官を拝命いたしました、山井和則でございます。何よ りも本日は、この第1回の肝炎治療戦略会議、大変お忙しい中をお集まりをいただきまして誠に ありがとうございます。  肝炎の問題は、昨日も鳩山総理大臣に対しまして、首相官邸で薬害肝炎の原告の方々、B型肝 炎訴訟の原告の方々、日肝協の方々が面会をされました。  その中で、鳩山総理からも、大変対策に時間が掛かって申し訳ないというおわびの言葉、そし て、6月30日、政権交代前に患者の皆さん方にお目にかかって政権交代をしたら、この対策に大 急ぎで取り組みたい、そして、法案の成立も含めた、そういう約束を早急に果たしたいというこ とのお話がありました。  そして、命を大切にする鳩山政権の政治の1つの象徴がこの肝炎対策であろうと思っておりま す。  特に、肝炎治療戦略会議の具体的な論点は、インターフェロン治療の医療費助成の拡充、すな わち自己負担を今の所得に応じて1万、3万、5万からもっと引き下げるべきではないか。  更に、今、医療費助成の対象となっていないB型肝炎に効果があると言われている、抗ウイル ス剤への医療費助成ということについて、更にインターフェロンの複数回の治療、インターフェ ロンの少量長期投与等についても御教示をいただきたいと思っております。  御存じのように、2年前に、舛添前厚生労働大臣が7か年の医療費助成の計画を掲げられまし て、インターフェロン治療にしても、年間10万人という目標を掲げられました。そのこと自体は 非常にすばらしいことであります。  しかし、非常に残念ながら、実績を見てみれば、初年度は目標10万人に対して4万5千人、そ して128億円獲得した予算を60億円も余らせてしまって国庫に返してしまったと、本当に全国の 350万人とも言われる肝炎感染者の方々、そして、患者の方々が一日千秋の思いで治療費の助成を 待っておられるにもかかわらず、128億円獲得した予算を半分余らせて国庫に返していく。  これは、厚生労働省、そして私も含めた国会議員の大きな責任であると思っております。やは り、そういうふうな反省に立ち、今日からのこの会議の中で、やはり治療費助成、医療費助成に よって確実に救える命があるということで、先生方に御指導いただきたいと思っております。  私のような、先生方に対して勉強不足の人間が言うのも、本当におこがましいんですが、例え ば、もし、目標どおり10万人の方々がインターフェロンの医療費助成を受けられていたら、プラ ス5万5千人、そして例えば6割の方々が完治されていたというふうにすれば、それだけでもも しかしたら、3万人ぐらいの方々が、もう少しいいやり方をすれば、治療費助成を受けて既に完 治しておられたかもしれない。  そういう意味では、厚生労働行政に数ある課題の中でも、最も人の命を救うために重要で切実 で、本当に大切な議論というのがこの会議での議論になると思っております。  個人的なことになりますが、熊田先生の論文も、資料も拝読させていただいて、国会でも何度 も取り上げさせていただいて、そういうことが1つのきっかけになって、今の肝炎対策が進んで いるということもありますが、本当に熊田先生のみならず、今日お越しの先生方の御指導をいた だきながら、与野党を超えて今日まで肝炎対策を進めさせていただきました。  これから、もっともっと先生方の御指導をしっかりと受け止めて、すぐに政策に反映して、ま さに先生方の御指導によって、1人でも多くの救える命を救っていきたいと思っております。  前の厚生労働大臣の舛添さんも、先日会ったら、とにかく大臣は辞めたけれども、この肝炎対 策は、これからも引き続き全力で力を入れていきたいということをおっしゃっておられましたし、 その言葉どおり、先週の国会の予算委員会の中でも、この肝炎対策について舛添前大臣も力を入 れて取り組むようにという御指導を込めた質問を鳩山総理にしてくださいました。党派を挙げて、 厚生労働省を挙げて、この問題について取り組んでいきたいと思います。大変お忙しい先生方と は思いますが、どうか、よろしくお願いいたします。  そして、この検証結果を踏まえて、今、肝炎の医療費助成は、残念ながら事項要求というもの になっております。最近有名になっております事項要求、何かといいますと、具体的な額を入れ て概算要求で財務省に要求するのではなく、事項要求というのは額が入っていないわけです。予 算委員会の答弁でも、ここまで言うと少し言い過ぎかもしれませんが、藤井財務大臣は、事項要 求というのは、ほとんど通らないと思ってくれた方がいいという厳しい答弁をされておられます。  しかし、長妻大臣も、昨日鳩山総理に患者の方々とともに面会をして、鳩山総理に是非ともこ の事項要求は獲得して、1人でも多くの肝炎患者の方々の治療を推進したいということを直訴ま でされました。  こういう総理大臣に首相官邸で大臣が直訴するということは、この政治の世界では異例なこと でありますが、そういう思いで何としてもこの事項要求となっている予算でありますが、B型肝 炎に効果のある抗ウイルス剤、そして、インターフェロン治療のさらなる医療費助成、何として もやっていきたいと思います。まさに、そのための大切な御指導をこの場でいただくんだという ふうに期待をしております。  どうかよろしくお願いします。ありがとうございました。 ○肝炎医療専門官 ありがとうございました。撮影はここまでとさせていただきますので、御了 承ください。  それでは、本日出席の方々の御紹介をさせていただきます。  まず、座長の林紀夫先生。大阪大学大学院消化器内科教授でございます。  続きまして、泉並木先生。武蔵野赤十字病院副院長でございます。  続きまして、岡上武先生。済生会吹田病院院長でございます。  続きまして、熊田博光先生。国家公務員共済組合連合会虎の門病院分院長でございます。  続きまして、脇田隆字先生。国立感染症研究所ウイルス第二部部長でございます。  なお、飯沼雅朗先生、日本医師会常任理事は遅れて御出席との連絡をいただいております。  また、金沢大学大学院医学系研究科恒常性制御学教授、金子周一先生、鹿児島大学大学院医歯 学総合研究科消化器疾患・生活習慣病学教授、坪内博仁先生、国立病院機構長崎医療センター臨 床研究センター治療研究部部長、八橋弘先生は、本日、御欠席でございます。  次に、事務局の紹介をさせていただきます。  先ほどごあいさついただきました、山井政務官を始め、厚生労働省健康局長、上田でございま す。  厚生労働省肝炎対策推進室長、伯野でございます。  厚生労働省健康対策調整官、和田でございます。  そして、私、肝炎医療専門官の丸本と申します。よろしくお願いします。  以上で、出席者の紹介を終わらせていただきます。  それでは、議事に入ります前に、配布資料の確認をさせていただきます。  まず、議事次第と座席表、配布資料一覧が1枚紙として付いております。  資料1として、熊田委員提出の「虎の門病院におけるB型・C型肝炎の治療の現状」。  次に、事務局提出資料として、資料2−1「B型慢性肝疾患に対する核酸アナログ製剤治療の 有効性、安全性について」。  資料2−2「C型慢性肝疾患に関するインターフェロンの複数回治療の有効性、安全性につい て」。  資料2−3「C型慢性肝疾患に対するインターフェロン少量長期投与の有効性、安全性につい て」となっております。  また、参考資料1−1として「肝炎治療戦略会議開催要領」。  参考資料1−2として「肝炎治療戦略会議名簿」。  参考資料2として、厚生労働省研究班より「B型慢性肝炎の治療ガイドライン」となっており ます。  配布資料は以上でございますが、不足等はございませんでしょうか。何かございましたら、事 務局へお申し出いただきたいと存じます。  また、昨年度に引き続き、座長は林先生にお願いしたいと思いますので、ここからの議事の進 行は林座長にお願いいたします。 ○林座長 それでは、議事を進めさせていただきたいと思います。  本日の第1回の肝炎治療戦略会議でございますが、お手元にお配りしてございますが、ウイル ス性肝疾患に対する治療の現状ということと、その他の2件でございます。  それでは、まず、1の議題でございますが、まず、熊田委員より、虎の門病院におけるB型・ C型肝炎の治療の現状についてというプレゼンをいただきまして、次に、事務局より提出の資料 を御説明いただきたいと思っております。  それでは、まず、熊田委員、よろしくお願いいたします。 ○熊田委員 それでは、現時点の私たちの病院のB型とC型の治療の現状についてお話をしたい と思います。 (PP)  B型は、治療法の変遷を見てみますと、1988年にいわゆるインターフェロンの4週間という、 極めて短い期間の投与が薬事承認を受けた。  その後、4週間はあまり効果がないということで、2002年になりまして、課長通達によりまし て、24週間投与が承認となりました。  その後、2008年から自己注射が承認されました。そういう現状でございます。  一方、核酸アナログの方は、2000年にラミブジン、2004年にアデホビル、2006年にエンテカビ ルと、現在この3剤が使用されております。 (PP)  まず、インターフェロンの長期成績ですが、インターフェロンは非常に早くから使われており まして、当院で560例の人が使われております。  その後どうなったかということを、最長21年、中央値7.5年でのデータをお示しします。  それから、ウイルスのタイプですが、もともと日本はジェノタイプのCがメインですが、全体 の8割、453例がジェノタイプのCですが、海外種由来のAも20例入っております。 (PP)  治療効果の判定ですが、治療効果はインターフェロンを終了して、いわゆるドラッグフリー、 何もしない状態でe抗原陰性が持続し、なおかつHBV DNAが低い。今の値で言うと、5.0以下に なりますが、それに肝機能、トランスアミナーゼが正常というものを効果が著効というふうに判 定しますと、インターフェロンの6か月投与では20%、1年投与では約31%の効果が出ておりま す。4週間より6か月、6か月より1年ということであります。 (PP)  それから、タイプによって日本は治療効果が変わります。先ほどもお話しましたように、日本 は、Cというタイプが一番多いんですが、残念ながらインターフェロンで最もいいのはタイプB というタイプでありまして、次いで外国種のタイプAであります。Cが最も悪いんですが、全体 として、タイプは問わずして30%は著効になっております。  このジェノタイプも、今、国がPMDAで審査をしておりますので、こういうタイプが早く認可 されると、患者さんにとってどれを選ぶかという点では非常に利益になるんではないかと思いま す。 (PP)  以上、インターフェロンのまとめをしますと、年齢のデータが今日は抜けたんですが、若い人 は、よくインターフェロンが効きます。35歳未満の若い人に効果が高い。タイプAが効果が高い。 逆にタイプCが効果が悪い。  それから、トランスアミナーゼALTが高くて、ウイルス量が低いと効果が高い。なるべく長い 期間がいい、最低6か月という結果であります。 (PP)  一方、2000年からは核酸アナログ、これは内服剤、飲み薬であります。従来のインターフェロ ンと違って副作用がほとんどなく、核酸アナログを飲むと速やかにウイルスの低下と、トランス アミナーゼの正常が続くんですけれども、第1世代の核酸アナログのラミブジン、現在はエンテ カビルが第一次選択となっております。 (PP)  まず、現在、最も日本でいいとされているエンテカビルの成績ですが、371例であります。まだ 3年前に承認されたばかりですので、投与期間は、中央値で1.3年であります。 (PP)  核酸アナログによるウイルスの陰性化、血液中からウイルスが消える率なんですが、半年で、 タイプAが最も悪いんですが、それでも43%。タイプBは半年で100%。タイプCは半年で70%。 1年はそれぞれ75、100、87という非常にいい成績が出ております。 (PP)  次に、第1世代の核酸アナログでありますラミブジンを使いますと、耐性ウイルスが出てきま す。これは、ウイルスが形を変えてなかなかラミブジンが効かなくなることです。そういう人に 対してアデホビルを投与した症例が323例あります。 (PP)  これも非常に効果がよくて、ラミブジンを既に使って耐性株が出た人にアデホビルを使います と、1年で6割、3年で8割、5年で9割という人たちは肝機能が全く正常になりまして、ウイ ルスも陰性化するという状態であります。 (PP)  当院での核酸アナログの使用例は、症例1,409例であります。今のエンテカビル、ラミブジン、 それから、アデホビルという薬剤を使いますと、多剤耐性株と言われているのは、わずか3例で ありまして、3例だけが、今、困っているという状況でありまして、日本で今ある3種類の核酸 アナログをラミブジン耐性株にはアデホビル、最初に使うときにはエンテカビルというやり方を すれば、かなりのB型肝炎の人で安定化が得られているという結果であります。 (PP)  そんなことから、B型肝炎は、現在、インターフェロンだけが助成されておりますが、核酸ア ナログとインターフェロンというのは、いわゆる治療の2本柱であるということで、今後、多分 日本のB型肝炎の治療の柱となることは、まず間違いないだろうと考えております。 (PP)  次にC型であります。C型は単独療法、それから、今、リバビリン併用療法であります。  単独療法の時代は1992年から2001年まで、約10年ありますので、単独療法の方が多いんです が、単独療法ではどのくらい治ったかというと、低ウイルス量の人は非常によく治りまして、74% の人が治癒いたしました。  高ウイルス量でも特に1型の高ウイルス量の人は残念ながら12%しか治っていない。それがリ バビリン併用療法になりまして、1型の高ウイルス量も51%、2型の高ウイルス量は90%という ように、治療効果は極めて上昇したんですが、問題は1型の高ウイルス量、ここが日本人で最も 多いタイプでありまして、半分しか治らない。ここを限りなく全症例を治癒させれば、日本のC 型肝炎は撲滅できるということになります。 (PP)  それで、今日お出しするのは、昨年の有識者会議で、72週投与の医療費助成が決まったんです が、既に過去にインターフェロンを使って再燃した人、あるいはだめだった人。  それから、リバビリンを使っても再燃したり、だめだった人に対して72週投与したらどうなる か。  それから、今、治験が進んでおります、ペグインターフェロンとリバビリンと、プロテアーゼ 阻害剤の成績。それから、α製剤が、今まで主体できていますけれども、α製剤にはどうしても うつといった副作用がありまして、そういう人たちで投与中止になった人に、β製剤を使用した 成績の3点をお示しいたします。 (PP)  まず、72週を再投与した人は、当院で、今、86例終わりました。1回目インターフェロン単独 で再燃した人に、リバビリン併用療法をやりますと、72週やりますと73%治ってまいります。    1回目リバビリン併用療法やってウイルスが消えたんだけれども、再燃した人になりますと 71%治ってまいります。  一方、インターフェロン単独でウイルス消えなかった人、あるいはリバビリン併用療法をやっ てもウイルスが消えなかった人に、リバビリン併用療法を72週やりますと、リバビリン併用療法 でウイルスが全く消えなかった人に72週やっても、13%しか治らないという結果でありました。 (PP)  それから、2型の高ウイルス量でございます。2型の方はほとんど9割の人が治るんですが、 7例が治っておりませんでした。その中で、再燃例に使うと、48週、倍使うと全例が治りますが、 ウイルスが消えなかった人にやっても、3割しか治らないという結果です。 (PP)  以上、当院のデータをまとめてみますと、1型の高ウイルス量で、1回インターフェロンをや って、再燃例のペグインターフェロンとリバビリンの72週の再投与は非常に有効であります。2 型に関しても同じ傾向があります。 (PP)  海外からの報告があります。まだ論文化をされておりませんが、1回ウイルスのレスポンスは よかったんだけれども、最終的に治らなかった。いわゆる再燃例に72週投与を行いますと、約50% は治癒がありましたという効果のデータが報告されております。  日本よりも少し悪いんですが、やはり半分は、再燃例に関しては、もう一回72週をやれば治る という結果が出ました。  無効例に関しては、やはり効果は悪くて、今回の発表でも1〜5%ぐらいしか治らないという ことで、無効例に無駄な治療はしない方がいいと書いてあります。 (PP)  最近、新しい薬剤、今、日本でほぼ同時に治験が進行しているプロテアーゼ阻害剤があります。 これの再燃例の成績だけをお示ししますが、プロテアーゼ阻害剤は世界でも今注目されている薬 剤で、ペグインターフェロンとリバビリンにプロテアーゼ阻害剤を加えて6か月使いますと、極 めてよく治るということが、パイロットスタディで出ていますので、今、最終試験が行われてお ります。 (PP)  現在までの試験をお示しいたしますけれども、当院での29例の治験のデータがあるんですが、 終了して12週のところで、86%の人は治っている。しかも、治療期間は半年であるという非常に 短い期間でのデータでありますので、72週を選ぶか、あるいは比較的近い将来出てくる24週の投 与を選ぶかというのは、やはり専門家の先生たちがどう考えて対処していくかということと、い つこれが承認されるかにもかかってくるんではないかと思います。 (PP)  インターフェロンの再燃例のリバビリンの併用投与72週やプロテアーゼ阻害剤の3者併用24 週で、海外も日本もほぼ同じ結果だと思います。 (PP)  もう一つは、副作用の中止の中で、全身倦怠感とまとめておりますが、当院で815例のペグイ ンターフェロンとリバビリンを行ったうちの99例が、途中で副作用中止になっております。いろ んな中止の起こり方があるんですが、うつとか、倦怠感、食欲不振とか、不眠とか、こういうも ので中止するのは、全体の約4割であります。  それで、このα製剤というは、どうしてもうつ傾向になったり、全身倦怠が強いということで、 現在、βインターフェロンとリバビリンの併用試験が終わりました。  それで、当院のうつとかで使えなかった人、14例の結果をお示しいたします。 (PP)  まとめますと66歳の男性で、αインターフェロンとリバビリンを使ってウイルスは12週で消 えたんですが、うつが出現しまして、これ以上できないということでやめてしまいましたら、ま た出た。  今回は治験で、βインターフェロンとリバビリンをやりましたら、ちょうど13週目、ほぼ同じ 時期に陰性化して最終的には治ってしまった。こういう症例は結構多いわけであります。 (PP)  それで治験で、全部αインターフェロンで、うつが出てきてしまって中止になった症例を、β とリバビリンで行いましたら、全症例が完遂しまして、その中の35%が治癒したという結果にな りました。 (PP)  こうしたαでもどうしても避けられない副作用で中断した人に、βとリバビリンが、10月から 保険が通るという薬事承認が下りましたので、こちらに関しても、再投与するには有効であろう と考えます。 (PP)  最後に、インターフェロンを少量使うことによって、がんを防止できないかということであり ます。特に既に肝硬変になった人たちに関しては、がんになるのは、そう遠くはないという思い があります。  それで、インターフェロンあるいはリバビリンの治療をやってもだめだったという人に対して、 肝硬変に対してインターフェロンを少量長期でいったらどうなるかということであります。 (PP)  これは当院での肝硬変の症例の165例に対して、インターフェロンをずっと打っているんです が、3年以上打ったのと、3年未満の分での発がん率を比較しますと、長く打った人の分に有意 に0.03の値でがんが抑えられている結果になりました。 (PP)  実際に、インターフェロンでだめだった、それを肝がんの予防という形で見た165例の発がん に寄与する因子を見てみますと、年齢では若い人がなりにくい。それから、AFPが低い人がなり にくい、それから、アルブミンが高い人がなりにくいという以外に、インターフェロンの投与期 間は0.01、つまり3年以上長く打たないと発がん予防にはならないという結果になりました。 (PP)  この結果から見ますと、肝硬変に対してあるいは慢性肝炎でも肝硬変に近いという人に対して、 日本での私たちの成績では長期投与をすれば、発がん率が有意に下がったという結果であります。 (PP)  一方、海外からは更に質の高いコントロールスタディが行われました。HALT-Cと言われており ます、米国肝臓学会での報告がNEJMのトップ雑誌に出ております。  これは、ペグインターフェロンとリバビリンが無効だった人に、ペグインターフェロンだけを ずっと打った群と打たなかった群で発がんに差があるかということを見た無作為比較試験であり ます。 (PP)  結果は、有意差はないという結果なんです。問題はアメリカの対象と日本の対象が大分違いま して、彼らは非常に若いということと、使わなくてもがんが3年でわずか2割という低い値にな ります。つまり、日本と違って高齢ではないので、使っても使わなくてもあまり差がないという 結果であります。 (PP)  それを更に肝硬変と慢性肝炎に比較しても差がない。特に慢性肝炎では、逆に何もしない方が いいと。これも変な話なんですが、そういう結果でありますが肝硬変になると、最初はいいんで すが、最後は一緒である。  ただ、これは3年半までのデータですので、日本のデータは3年以上やらないと価値がないと いうわけですから、矛盾するものではないんですが、まだデータとしては十分世界、日本もそろ っていないんではないかというふうに思っておりまして、少量長期に関しては、今の段階でどう するかということは、是非、議論をしていただきたいと思っております。  以上であります。 ○林座長 どうもありがとうございました。虎の門病院の膨大なデータをおまとめいただきまし たけれども、まず、御質問を受けさせていただこうと思いますが、前半のB型肝炎のところで何 か御質問がございましたらお願いします。いかがでしょうか。今のところB型肝炎については、 インターフェロン治療と核酸アナログ製剤による治療ということで、インターフェロン治療につ いてはもう少し治療期間を伸ばした方が効果はよくなるだろうと。核酸アナログ製剤については、 今のところ、エンテカビルとラミブジンの耐性については、アデホビルで今のところうまくコン トロールができていて、多剤耐性は今のところ3例しかない。  どうぞ。 ○脇田委員 B型の方のインターフェロン治療ですが、ペグインターフェロンは、今、どのくら い使われているんでしょうか。 ○熊田委員 現在、治験中でありまして、日本のデータがまだ出そろっていないので、むしろ林 先生が最高責任者ですので、先生が御存じかと。 ○林座長 ほぼデータが出そろってきていますので、おそらく来年の初めにはデータをお示しで きると思います。今のところ1年間にすると6か月よりもいい成績になると思います。  ほかには、よろしゅうございますでしょうか。核酸アナログ製剤を3剤使うだけで今のところ うまくいけているんですが、これよりもおそらく治療期間を長く治療しなければならないと思う んですが、米国では核酸アナログ製剤というのはどんどん新しい種類が導入されておりますけれ ども、日本の場合に今後、新しい核酸アナログ製剤を導入しないと何か問題が起こってくるでし ょうか。 ○熊田委員 一番の問題は、現在、エンテカビルが一番いいと、これはどこも全く同じ成績です が、今のところ耐性株が出るのが3年で約3%、それが、4年、5年で何%になっていくかとい うのが一番問題だと思います。  その一つ前のアデホビルでいきますと、アデホビルの3年は、実は、8%か9%なんです。と ころが4年になりまして、15%になって5年で30%まで行っているんです。ですから、アデホビ ルみたいに、エンテカビルが3年以降にどんどん変異株が出てくるか、あるいは今の3%のまま でいってしまうかによって、今後の日本の治療の方針は随分変わると思うんですが、現在あるも のとしてはテノホビルという薬剤が、今、HIVで既に使われております。  この薬剤は、実は3例は、テノホビルを倫理委員会の承認を受けて使いますと、皆全部よくな ります。ただ、日本で最初からテノホビルを使うかというほど今は困っていないということです から、将来的に言えば、予備としてテノホビルというのを日本には現在既に製剤としてはあるん だけれども適用がないということで、将来的にもしエンテカビル、アデホビル、ラミブジンの3 剤全部だめということになりますと、その時点で、やはり考えなければならない薬剤ではないか と思っております。 ○林座長 よろしゅうございますか。どうぞ。 ○泉委員 熊田先生は、虎の門病院の専門医が全部見ておられるデータも御紹介くださったと思 うんですが、やはり、結構非専門医のところで、ちょっと途中で薬をやめて、かなり悪くなって しまってお見えになるとか、それとか、耐性変異が出てしまっていろいろ薬を使っていかないと 治ってこないという症例が、私のところにときどき来られるので、やはり専門医がずっと見てい るときちんと治療できるけれども、ちょっと患者さんも十分治療をしなかったりとかそういうこ とで、十分な治療効果がなくて、むしろ後で難渋してしまうというケースも、おそらくたくさん あるんではないかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。 ○熊田委員 当院は、かつてラミブジンという薬剤が2000年に出たときに、虎の門だけが長期と いうことを主張したんです。全国は、核酸アナログ製剤は変異株が出るから、やめよう、やめよ うという流れだったんですが、患者さんに、やはりやめることに対して危ないということを徹底 したということもありまして、当院でスタートした人は、ほとんどは、今、言った全例がフォロ ーされていて悪くなっていないんです。  ところが、よそでやはりラミブジンは耐性株ができるということでやめた、という人が当院に いらっしゃってますけれども、今のところは早くしていただければ大丈夫ですが、中にはやはり 重症になっていて、来られたときには黄疸があり、腹水がありということで、実際に治療に難渋 したという症例が年間4、5例ぐらいいらっしゃいます。 ○林座長 どうぞ。 ○岡上委員 B型のテノホビルの話ですけれども、この前のアメリカ肝臓学会でもテノホビルが 話題でした。日本でエンテカビルが発売になって3年ですのでまだ耐性株は問題になっていませ んが、おそらく5年経過すると耐性株が問題になってくると思います。テノホビルを近いうちに 導入することを真剣に考慮すべきと思います。今、泉先生が言っていたように診療する医師全員 が肝臓のことをよく知っているわけではなくて、特に都道府県によっては、御承知のとおりほと んど肝臓の専門医がいないという問題があります。私はテノホビルに関しては、早目に手を打つ ように考えるべきではないかと思います。  それから、B型もC型も虎の門は、かなり若い条件のいい患者さんが結構いらっしゃると思い ますが、地方ではC型肝炎患者は非常に高齢化しており、肝機能は比較的良いが70代の後半から 80代にかけて肝がんが出てくるケースが増加しています。そういう患者さんこそ専門医の下で治 療しないと、副作用での中止や中断率が上がってきます。その辺のことも考えておかないと、全 国で一律で判断できないのでないかと危惧します。  それから、この前の米国肝臓学会でフィラデルフィアのレディー教授が進行したC型肝炎イン ターフェロン少量長期投与での発癌抑制効果について懐疑的な意見を述べていましたが、我々も 慎重に判断すべきと考えます。インターフェロンの発がん抑制効果について従来過大評価されて いたように考えます。効果のある患者さんと効果のない患者さんがいるわけで、そのあたりをき ちんと分けて考えるべきと思っています。  すなわち、インターフェロン投与でALTが有意に低下しない患者に、2年、3年と投与しても 無意味です。そういう意味の歯止めが必要と思います。我々肝臓学会も厚労省も本当に意味ある ところにお金をつぎ込む、意味のないところはそこで歯止めをかけるということを議論すべきで はないでしょうか。 ○林座長 とりあえず、B型については次の薬剤を準備しておくというのは重要なことではない かという気がします。  C型に踏み込んでいただきましたので、後半のC型で御質問ございましょうか。特に前半は再 治療の問題を取り上げていただきましたが、再治療のところで何か御意見ございますでしょうか。  どうぞ。 ○泉委員 β型のインターフェロンをちょっとお伺いしたいんですけれども、確かに日本はC型 肝炎の患者さんの対象は高齢化してきているということで、確かにペグインターフェロン、リバ ビリン、α製剤ですと、はっきりうつとまではいかなくて、うつ様症状です。結構やはり多いよ うに思うんですけれども、今日、熊田先生がお話したβ型とリバビリンの効果が、それでも副作 用があまりなくて、しかも効果がクリアーできたら非常に結果もよかったという話をしてくださ ったんですけれども、これは特にはっきりうつということまで症状が行かなくても、今回の対象 に含めて解析していただいたんでしょうか。なかなかαで耐えられない方が結構いらっしゃるん だと思いますけれども。 ○熊田委員 今日お示ししたのは治験ですので、全国治験の中の一部ですので、明らかにαでう つ及びうつ状態になって中止になったという、そういう症例ばかりが全国で50数例集めた成績の 中の3分の1が虎の門で知見が行われたということですので、ほとんどという症例になっていま す。  これとは別に、当院でのオープンスタディーのデータの成績が63例ありますが、それでの中止 率がやはり2例で2.3%なんです。α製剤とリバビリンでの中止率はやはり全体としては12.3%い きますので、特にβインターフェロンが最初に出たわけですけれども、そういうのに慣れた人た ちというのは、やはりβの方を使うことになる。  ただ、患者さんは利便性が悪いんです。βの場合は週3回ずっと打たなければいけないし、ペ グインターフェロンの方は週1回ですから、ですから使い分けというか、αがどうしても存続が 不可能な人とか、あるいは高齢者ですね。そういう人にはやはりβになると思うんです。そうい う選択肢に一つのポジションニングが決まると思うんですが、今回は再燃という面では、やはり うつとか全身倦怠感そういうα製剤ではだめだった人というのは、もう一回やってもだめに決ま ってますから、そういう人に対してのデータのリバビリンというのは価値があるというふうに思 っております。 ○泉委員 そうすると、必ずしもうつという症状は、やはりα製剤に耐えられなかったような有 害事象で完治できなかった方ということですね。 ○熊田委員 今回のβとリバビリンの承認は、PMDAもその辺を十分考えてうつというしばりを つくっていないんです。使用可能な症例はペグインターフェロンとリバビリンと全く同じ条件に していますので、その辺は非常に配慮した効能・効果の適用にしてあると思います。 ○林座長 熊田さん、再治療のところで、初回治療がインターフェロン単剤あるいはペグインタ ーフェロン、リバビリンで、再燃型については72週にすると治療効果がいいという、それはよく 分かるんですが、先生の成績で、初回インターフェロン治療の無効例の成績を示しましたが、思 ったより悪いですね。ペグリバ無効例は当然悪いと思うんですけれども、インターフェロン単独 の無効例について、50%ぐらいと、私が思っていたよりも悪いかなと思って、大体あの程度です か。 ○熊田委員 今回72週をした症例のインターフェロン単独無効というのは、途中ではなくて完遂 できた症例になっていますので、途中でやめてしまったりとか、そうではなくて1回目のインタ ーフェロンがちゃんときちんと行った症例だけでやりますと、49%という形になりますので、や はりインターフェロン単独無効の中での72週投与、いわゆる反応しない人はこんなものかなとい うふうに思っております。 ○林座長 ほかに再治療のところはよろしゅうございますか。最後に少量の長期ですが、先ほど 岡上先生から、先日ございました米国の肝臓学会の成績を踏まえて少し御意見をいただきました が、どうぞ。 ○脇田委員 すみません。その前にβのこともちょっと聞きたいので、βはナチュラル製剤で、 生物学的な活性が高いということは理解しているんですけれども、α製剤で耐えられない方がβ がよく効くというのは、リコンビナントとナチュラル製剤との違いということではなくて、βだ からいいということなんでしょうか。βとαは同じレセプターを使っているんですけれども、実 際には生物学的活性が少し違うんではないかという話が最近出ているようなんですが。 ○熊田委員 効果は多分変わらないというか、比較試験が、今回のβインターフェロンとリバビ リンを承認したときにα製剤と比較試験が行われておりますが、全く効果は同じであります。で すから、効果は変わらないんですけれども、今までなぜ使われなかったかというと、αの方は週 1回でβは単剤投与しかできなかったんです。今度はリバビリンと併用できるようになりました から、αの副作用とかそういうものに対しては、髪の毛も抜けませんし、それからうつにもなら ないとは言いませんけれども、うつはほとんどいないということからいいということだけで、機 序と効果。 ○脇田委員 肝炎の効果は同じだということですね。ただ副作用が違うということですね。 ○熊田委員 違うということです。コントロールスタディーが出ていますので。 ○林座長 よろしいですか。それは最後の少量長期で、岡上さんから御意見がございましたが、 ほかに御意見ございますでしょうか。確かにまだ成績は日本も米国も不十分なので、本当にどう いう対象に効果があるのかというのが非常に不明確な面もございますので、今後成績を集めてい かなければ、最終的な意味づけというのはできないような気がします。  ただ日本の場合、ますます高齢化してまいりますので、そのときにどういう使い方をするのか というのが、今後、非常に重要な問題だと思っております。  よろしゅうございましょうか。また、後ほど御質問がございましたらしていただくということ で、それでは続きまして、事務局の方から作っていただきました資料の御説明をいただけますで しょうか。 ○肝炎対策推進室長 肝炎対策推進室長の伯野でございます。資料に沿って説明をさせていただ きます。少し長くなりますので、座って失礼いたします。  資料2−1、資料の19ページを御覧いただければと思います。  B型慢性肝疾患に対する核酸アナログ製剤治療の有効性、安全性についてということで、専門 家の先生方から事前に御意見をいただいて、また、論文を送っていただいて、それを取りまとめ たものでございます。  まず、1番の有効性でございますが、論文でございますが、(1)、こちらは海外の文献でござい ます。HBs抗原陽性、HBe抗原陽性の患者さんで、また、肝線維化が高度な方々に対して、ラミ ブジンを投与した群とプラセボ群に分けて、ランダム化比較試験を行った研究でございます。  結果でございますが、病態の進行、こちらに記載がございますとおり、肝不全等による肝疾患 関連死というものをプライマリーエンドポイントとしまして比較したところ、ラミブジン投与群 で7.8%プラセボ群で17.7%と、投与群で有意に病態の進行が低かったという結果が出ております。  また、発がんという観点だけを見た場合においても、2年間の投与でラミブジン投与群が3.9%、 プラセボ群が7.9%ということで投与群の方が発がんの割合が有意に低かったという結果でござ います。  (2)でございますが、こちらは日本の研究結果でございますが、後ろ向きの研究でございます。 肝生検が実施されているB型肝炎患者さんであって、肝がんを発症している方々を後ろ向きに検 討したものでございます。  ラミブジン投与群とコントロール群をそれぞれ比較しておりまして、下の方にございますが、 コントロール群からラミブジン投与症例と背景因子をマッチさせた群を抽出して、ケースコント ロールスタディを行ったところ、肝がんの発症率というものは、ラミブジンの投与で0.4%/年、 コントロール群で2.5%/年という割合で発症するということで、ラミブジン投与群の方が有意に 肝がんの発症率が低いという結果でございます。  (3)でございますが、こちらは米国から出ている総説でございます。  肝がんの予測因子といたしまして、30歳以上では、HBV DNA量が非常に重要であるというこ と。また、その根拠としては、HBV DNAの陰性群、HBV DNAの低値群、高値群を比較しており ます。  肝がんによる死亡率のリスクというものがDNA量高値群で有意に高いという結果でございま す。  したがいまして、ラミブジンによる治療はその効果が続く間、肝がん等合併症の危険性を低下 させて、肝臓の病変の進行を遅らせるという結果でございます。  4番目でございますが、次の20ページを御覧いただいて、B型肝炎の肝線維化進行例をエンテ カビルとラミブジンで48週間投与したものでございますが、こちらはアウトカムを肝線維化の改 善というところで取っておりまして、核酸アナログ製剤、初回投与でかつe抗原陽性のものにつ いて、エンテカビルについては57%の肝線維化の改善があった。ラミブジンについても49%の改 善があったという結果です。  また、初回投与で、かつe抗原陰性の事例であってもエンテカビルが59%、ラミブジンが53% の改善という結果でございます。  2番目の安全性についてでございますが、(1)でございます。こちらは特に、耐性のところの論 文を記載させていただいております。(1)のところでございますが、エンテカビルを5年間投与し、 初回投与例で耐性の出現率というものは1.2%であったということ。また、ウイルス学的なブレー クスルーというのが0.8%という結果でございました。  ラミブジン耐性出現例で更にエンテカビルを投与した場合に耐性の出現というのは51%、ブレ ークスルー・ヘパタイティスが43%起こったという結果でございます。  (2)でございますが、5年以上のラミブジン投与にて耐性が出現した、既に耐性を持っている19 例にエンテカビルを投与した例でございまして、その結果、82%で組織学的活動性が改善してお ります。  また、エンテカビル耐性が26%出現しまして、40%がヘパタイティスの増悪を認めたという結 果でございます。  3番でございますが、有効性・安全性についての整理でございますが、こちらは文献以外に専 門家の先生方から事前に意見を聴取したものも反映して記載させていただいております。  有効性についてでございますが、核酸アナログ製剤によって発がん抑制及び肝線維化抑制は有 効であるという結果でございます。  2点目、安全性についてでございますが、まず、1番目の○にございますとおり、副作用につ いては耐性出現あるいは薬剤中止による肝炎の増悪以外の重篤な副作用というのはほとんど見ら れないということ。  また、注意すべき副作用として、ラミブジン投与中のブレークスルー・ヘパタイティスあるい は中断による肝炎増悪あるいはアデホビル投与による腎障害というものがございます。  3点目でございますが、現在、初回治療第一選択のエンテカビルの耐性出現率は、先ほど申し 上げたとおり、5年で1.2%という報告でございまして、非常に低いという結果でございます。  最後でございますが、ラミブジン耐性及びエンテカビル耐性出現例については、原則ラミブジ ン+アデホビルの投与が推奨されております。  これは、熊田先生が厚生労働科学研究で発表されているガイドラインの中でも、明記されてい るものでございます。  B型肝炎の核酸アナログ製剤については、以上でございます。 ○林座長 どうもありがとうございました。まず、御質問を受けてから、下の最後の3番のとこ ろの御意見をお聞きしようと思います。  1の有効性、安全性について御質問はございますでしょうか。  それでは、3番のまとめでございますが、有効性は、日本の論文、外国の論文とも核酸アナロ グ製剤でウイルスの増殖レベルを抑えると、肝がんの発がん、それから線維化の進展等を抑制で きるということについては、すべての論文がそのような結果ではないかと思いますが、この有効 性については、よろしゅうございますか。先ほど熊田先生の成績を拝見してもそういう感じがし ますが。 ○熊田委員 そうですね。1番はやはりエンテカビルが主体にこれからなっていくと思うので、 これの4年目、5年目の成績が一番問題である。  今回の健康局の医療費助成の中での核酸アナログ製剤の位置づけは、やはりインターフェロン と並びというよりも、むしろ核酸アナログ製剤の方が上だと思うんですけれども、いいんですが、 問題は核酸アナログ製剤、これは7年計画ですけれども、7年終わった後どうなるかというとこ ろまで考慮していかないと、7年間使ったらみんな治ってしまったというふうにBはいきません から、多分8年、9年もっとという人は今後出てくる。当院もラミブジンの治験からずっと今だ に、現在、保険が通ってますからいいんですが、1995年からスタートして、もう14年間使って、 経過がいい人はそのまま使っているわけですが、14年経ってもウイルスが消えたのは2割ですの で、今後のこと考えると、やはり、今回の肝炎対策ということの先のことも考えながらやらなけ ればいけないんではないかと思います。 ○林座長 熊田さんがおっしゃるとおりで、今のところエンテカビルでも同じだろうと皆さん推 測はしているんですが、実際の成績はまだないということで、実際にその成績をある程度将来的 には得る必要があるだろう。  それと、今のところ治療をやめる方策というのはございませんので、おそらく非常に長期にわ たって、この核酸アナログ製剤を使わざるを得ないというところで、そこを最終的にどうチェッ クしていくのかというのが今後大きな問題だろうということで、それはまさにおっしゃるとおり だと思います。  ほかの委員の先生方、それでよろしゅうございますか。  それから、下の安全性の問題ですけれども、インターフェロンに比べますと、ミューテーショ ンの問題、ほかにはあまり大きな副作用、一部腎障害がございますが、それ以外は今のところ特 に問題がありませんが、まず腎障害も日本では今のところ全然問題になっていませんか。 ○熊田委員 やはり、アデホビルは起こりますけれども、うちでアデホビルをまとめた300何例 の中では、クレアチニンが上がったのが10例です。ですから、3%ぐらい。そのうち1.5以上と いう症例が2例ぐらいですから、専門家が使っている分には大丈夫だと思います。 ○林座長 先ほど泉先生も御意見がございまして、今後、非専門家が使われるようなときに、少 し問題が起こってくるかも分からないという。  どうぞ。 ○泉委員 投与中、確かに熊田先生がおっしゃったように、アデホビルがクレアチニンが少し上 がるぐらい以外には内服中の有害事象というのはほとんどないので、極めてそこは安全だろうと 思うんですけれども、確かにクレアチニンが1.5までと言うと、あまり日常的に気にされない先生 もたくさんいらっしゃるので、そこは十分注意をすべきだろうと思います。 ○林座長 それから、エンテカビルについては、今のところ3年ぐらいまではそれほどミューテ ーションが起こらないので、普通の先生にお使いいただいてもあまり大きなトラブルは今のとこ ろないだろうと推測できるということで、ラミブジンの耐性についても、アデホを使ったら、今 のところ大きな問題はないだろうというところで、安全性のところで、先生4つ書いていますが、 先生方御意見ございますでしょうか。  どうぞ。 ○泉委員 ここに一応書いてあるんですけれども、どういう症例に使うのか。飲み出してしまう と、やめるのが難しいので、やはり、最初に内服を始めて、治療を始めるときに、ある程度きち んと対象を限定する。それから専門医がなるべく判断した方が私はいいのではないかと思います。 ○林座長 熊田先生の班会議のガイドラインでも、一応そこのところを記載していただいていま すが、確かに対象は重要でしょうね。もう少し様子を見てから投与した方がいいという患者さん に投与すると、投与期間が非常に長くなってしまうという問題がございますので、どういう対象 に投与していただくのかというのを、今でもある程度書いてありますが、少し明確にする必要が あるのかもしれないというのは、そのとおりかもしれません。  岡上先生いかがでしょうか。 ○岡上委員 先生方のおっしゃるとおりで、最近アメリカでもB型では40歳以上の患者ではALT 高値例は3か月から6か月フォローしてから自然経過を評価した上でよくならない可能性の高い 患者を治療対象とすることになっています。それで、ALTが上限値の2倍以上とか、そういう規 定を設けています。その辺も含めて来年1月に熊田班で検討予定ですので、欧米と日本では感染 経路や遺伝子型に差がありますが、アメリカの検討を参考に日本でもきめ細かな基準は作成する 必要があると考えています。肝臓非専門医にも分かりやすく、有用な治療アルゴリズム作成が重 要と考えます。 ○林座長 C型に比べると、B型はおそらく治療対象者をどう選択するかということが、一番難 しい点だと思いますし、専門家でも少し意見が分かれるところがありますが、専門家は一応の基 準の下にやっていますが、そこの点が一番重要だと思います。  どうぞ。 ○熊田委員 そこは、疫学的に、この30年間のB型の肝臓がんの死亡数が全く減っていないとい う現実があるんです。ですから、今までのやり方では、やはり減らないということを考えると、 ガイドライン、泉先生も、林先生も、みんな一緒にやっていただいているんですけれども、少し 厚く、治療をオーバーぎみに基準をしていますね。ですから、むしろそうなった人たちが、本当 に肝がんが出ていないかどうかということを検証して、何しろ30年間肝がんが減っていないとい う現実を覆すということになれば、ある程度やはり副作用が少ない核酸アナログ製剤を使うとい う方に行かざるを得ない。  ただ、何でもかんでも不必要な人に使うということへの歯止めに関しては、やはりこういう医 療費助成ということを絡めると、専門医がそこの判断をするということであれば、良識的な判断 ができるんではないかなと思っていますし、基本的にはガイドラインというのは、年々やはり進 歩すれば、その都度変えていけばいいと思いますので、その辺を十分今年度も考えてやろうとは 思っております。 ○林座長 よろしゅうございますか。班会議でもそこのところは十分考慮していろんなガイドラ インを作っておりますけれども、どうぞ。 ○泉委員 やはり一番もう一つ大事なのは、絶対に中途半端にやめないということを、きちんと 最初に十分に患者さんに説明しておくと、そういう薬剤なんだということをよく知っておいて使 っていただく。それが医療費助成の対象にするときに、非常に必要なことだろうと思います。 ○林座長 おっしゃるとおりだと思います。よろしゅうございますか。  それでは、次の資料2−2でございますが、御説明をよろしく。  どうぞ。 ○肝炎対策推進室長 すみません、ちょっと事務局から御質問なんですが、先ほど腎障害がアデ ホビルで発生するということがあったかと思うんですが、その対処法というか、例えば腎障害が 発生しましたというときに処方量を下げるとか、あるいはいきなり中断してしまったらヘパタイ ティスの増悪ということがあるんでしょうか。その対処法というのを。 ○林座長 どうぞ。 ○熊田委員 アデホビルの治験のときに、PMDAは5ミリ製剤というものの治験ができないかと いうことを言われているんです。ところが、製剤として10ミリ1つしかなかったんです。それで 5ミリでも効いている可能性があるということで、現実には、当院の10例も1日おき10ミリと、 5ミリ製剤がありませんので、1日おきにしますと、みんな下がってきますので、アデホビルは ラミブジンとの併用ですけれども、ラミブジンは毎日で、アデホビルを1日おきという対処をす れば、それでいける。  それよりも、あまり上がってから気がつかないようにしないといけないということです。クレ アチニンが1.5を超えた段階では、もう既にそういう1日おきの投与に切り替えていくということ を考えれば対処できると思います。 ○林座長 どうぞ。 ○肝炎対策推進室長 もう一点だけ、耐性出現によるヘパタイティスの増悪の件なんですが、こ れがある一定の割合で発生する可能性は、エンテカビルは非常に低いかと思うんですが、ラミブ ジンはかなり高いという結果が出ておりますので、そういうものをなるべく早く発見して、それ をなるべく早く対処するという方法というのは標準化されているんでしょうか。 ○熊田委員 それに関しては、既にガイドラインで切り替えのガイドラインというのができてお りまして、残念ながら、今、ラミブジンの変異株の測定が、保険が通っていないんですが、ウイ ルス量が上がってきた段階で、ラミブジンの変異株と考えて、インフルエンザと同じでタミフル をすぐ投与するみたいな形のガイドラインに昨年から変わっておりますので、そこは対処可能な ようにガイドラインができております。 ○林座長 それと、日本の場合は欧米と違いまして、かなり肝機能を頻回に測っておりますので、 ある程度、ブレークスルーが起こると気がつかれると思いますので、欧米よりは、そこのところ はより安全ではないかという気はいたします。  ほかによろしゅうございますか。それでは、次の再治療のところでございますけれども、資料 の2−2でございますが、御説明をよろしくお願いします。 ○肝炎対策推進室長 また、事務局の方から座って失礼いたします。  資料の2−2、21ページからでございますが、インターフェロンの複数回治療の有効性、安全 性についてであります。  まず、1番の有効性についてでございますが、(1)、インターフェロンの単独療法で再燃した例 と無効の事例を対象に、ペグインターフェロン+リバビリンの併用療法で48週の治療を行った結 果、SVRは、再燃例で61%無効例で43%であったという結果でございます。  2点目でございますが、ペグインターフェロン+リバビリンの48週投与の再燃例、48週投与し た後に、再燃した例に対して、ペグインターフェロン+リバビリンの72週間を投与した場合、SVR が50%という結果であったというものでございます。先ほどの熊田先生の発表とも重なるものか と思います。  3番目でございますが、こちらはペグインターフェロンα2b+リバビリン療法で、無効であっ たものに対して、ペグインターフェロンα2a+リバビリンで72週間投与したものあいは48週間 投与して再治療を行ったところ、SVRはそれぞれ14%、9%と比較的低値であったという結果でご ざいます。  安全性についてでございますが、これは有効性の論文と同じ論文でございますが、1番目有害 事象については、再治療において、72週間で18%、48週間で11%ということで、初回の発現頻 度と大きく異なるものではないという結果でございます。  22ページでございます。3番目の整理でございますが、まず、有効性についてでございますが、 すべての患者において再治療による効果が期待できるわけではございませんが、初回治療による 結果あるいは初回治療の内容によって再治療の効果が異なるということでございます。  2点目でございますが、初回治療による結果が再燃あるいは中断の場合は、再治療による効果 は十分期待できるのではないかということ。  3点目でございますが、初回治療の方法がインターフェロン単独であった場合、あるいは薬剤 投与量が十分ではなかった場合に、再治療による効果は十分に期待できるのではないかという専 門家の方々の御意見をいただいております。  安全性でございますが、副作用については、先ほど申し上げたとおり、初回治療と安全性に関 しては、同程度と考えられるということでございます。  以上でございます。 ○林座長 ありがとうございました。先ほどの熊田先生の御発表の数字とも非常に近い数字では ないかと思いますが、まだそれほど症例数が多く報告があるわけではございませんが、再治療は、 初回治療がインターフェロン単独療法かペグインターフェロン併用療法かによって大きく変わる ということと、初回の治療効果が再燃例か無効例によっても大きく今のところ変わってきている ということで、すべての症例に再治療を行っても非常に高い有効率が得られるわけではございま せんが、うまく対象者を選別すると非常に高い有効率が得られるというところでございますが、 先生方、何か御意見ございますでしょうか。  初回治療、再燃例については、72週でペグインターフェロン+リバビリンの治療が行われれば、 かなり高い有効率を得ることができるということについては、これは問題ございませんね。  それから、ペグインターフェロン+リバビリンの48週無効例については、今のところあまり高 い治療効果を得ることができない。インターフェロン単独治療の無効例については、先ほど熊田 先生から50%というお話がございましたが、これは43%ということで、大体それくらいの有効率 だろうというところだと思います。  熊田さん、1点、初回治療が完遂された例はそれでいいと思うんですが、初回治療を、例えば 途中副作用で中断した例がございますね。そういう例はどういうふうに考えていけばいいでしょ うか。 ○熊田委員 中断の理由にもよると思うんですけれども、なかなかその辺が難しいんですが、や はり中断するというのは、医師の方もやめるし、患者さんもやらないという合意の下に中断して いるわけです。その中に、やはり先ほどお示ししましたけれども、血球系ですね。血小板が下が り過ぎた、あるいは貧血が強過ぎたというような中断と、それから全身倦怠感でとてもインター フェロンに耐えられないという中断をちょっと分けて考えなければいけないだろうと思っていま す。  私自身は、やはりやめた人たちの中で、ウイルスが全く消えないから、患者さんも医者もやめ ようと、これはもう再治療はやるべきではないんですけれども、副作用の症状で分けて、そうい ううつ的な傾向がどうしても強いという人にはβをやれば大丈夫だろうと思っていますけれども、 血球系の異常の人に関しては、工夫をするといっても、本人の因子というのは、そう変わりませ んので、なかなか難しいかなと思っています。 ○林座長 どうぞ。 ○泉委員 やはり、まだ、ペグインターフェロン+リバビリンが十分な経験がなかったときに、 ほかの病院で治療されたのを見ると、かなり少ない量で不十分治療かなという患者さんも結構い らっしゃるんです。  ですから、そういう方については、やはりもう一回治療してあげて治るチャンスがあれば、や はりもう一回治療してあげるということも選択肢に残しておくべきではないかと思います。 ○林座長 前治療の内容を少し基本的にはチェックすべきだろうということになると思います。 よろしゅうございますか。  どうぞ。 ○熊田委員 特に半年以内で中断したという人たちというのは、きちんと治療ができれば治る可 能性がありますから、中断ともう一つは再燃という2つになるんではないかと思うんです。 ○林座長 安全性については、ここに書いてございますが、今のところ再治療をされて問題にな った例というのは、先生方、御経験はございますか。 ○岡上委員 ペグリバ再治療で副作用の頻度が高いのは皮疹・掻痒ですね。インターフェロン単 独に比べて、どうしても皮疹が強くなります。 ○林座長 それから、先ほど、熊田さんの御講演の中で、少し再燃例についてもう一度ペグイン ターフェロン+リバビリンで72週の再治療をするか、新しい薬剤を付け加えるということで、数 年待ってから再治療するか、これはおそらく両方のデータをお示しして患者さんに選択していた だくということになると思いますが、ほかの先生方、何か御意見はございますか。これは今後デ ータがどんどん出てまいりますので、そのデータを患者さん側にお示しして、どちらの選択をす るかということになる気がしています。  この件につきましては、何か事務局から御質問はございますでしょうか。 ○肝炎対策推進室長 大丈夫です。 ○林座長 ということで、再治療はよろしゅうございますでしょうか。  それでは、3点目の少量あるいは長期投与でございますけれども、事務局の方から御説明をい ただけますか。 ○肝炎対策推進室長 資料の方でございますが、23ページでございます。資料2−3、インター フェロン少量長期投与の有効性、安全性についてでございますが、まず1番の有効性についてで ございます。  (1)でございますが、こちらは米国のデータでございます。これは、先ほど熊田先生の方からお 示ししていただいた、HALT-Cの結果でございます。  こちらはランダム化比較試験でございまして、HCVのRNA量だとか、肝機能あるいは組織像 というのは、投与群で改善しましたが、エンドポイントを死亡、肝がん、肝不全で見た場合には、 肝硬変群、非肝硬変群に分けて検討しても改善は認められなかったという結果でございます。  2点目、こちらはヨーロッパのデータでございますが、ペグインターフェロンα2bの単独長期 投与療法というのが、発がんリスクは変えないという結果でございます。  一方で、門脈圧亢進症状というのは改善するという結果でございます。  3点目、こちらはアメリカのガイドラインでございますが、前治療ペグインターフェロン+リ バビリン併用療法で効果がなかった肝線維化進行例及び肝硬変に対して、メンテナンス療法を行 うということは推奨されていないというガイドラインでございます。  4点目でございますが、ジェノタイプ1の高ウイルス量であって、60歳以上のインターフェロ ン少量長期投与について、こちらは日本のデータでございますが、慢性肝炎26例、肝硬変18例 で、次のページでございますが、発がんに関して慢性肝炎では有意な変化がなく、肝硬変で、イ ンターフェロン少量長期投与に比してコントロール群でリスクが高かったという結果でございま す。   5点目でございますが、こちらは、先ほど熊田先生がお示しされていた結果かと思います。 慢性肝炎若しくは肝硬変症例のうち、インターフェロン少量長期群と、そのコホートにマッチン グさせた非投与群ということで比較をしておりますが、これは多変量解析を行っていたかと思い ますが、肝発がんを抑制する因子として肝線維化の進行度、治療後のAFPの値、インターフェロ ン治療の有無が解析上重要であるという結果でございます。  2点目の安全性についてでございますが、これもHALT-Cの結果でございますが、3.5年間観察 した結果、投与群、非投与群の有害事象の発生に差はなかったということでございます。  最後の整理でございますが、まず、有効性についてでございますが、インターフェロン少量長 期については、欧米の研究において肝線維化抑制・発がん抑制効果はなかったと結論づけられて おります。  ただし、この研究については、対象者が日本の発がん年齢と比較して若年であるということ。 また、もともと欧米では発がんの率が低いということ。ウイルスのタイプに違いがあるというこ と。  3点目は、観察期間が短いということから、本研究結果をもって日本における少量長期投与が 否定されるものでは当然ないという見解でございます。  2点目でございますが、日本においては、先ほど熊田先生のお示ししていただいたデータのと おり、インターフェロン少量長期投与により3〜4年以降に、発がん抑制効果があったという研 究結果もございますが、ただし、先ほどの欧米のランダム化試験を覆すほどの研究結果はまだ出 ていないということで、まだ議論が分かれることということでまとめさせていただいております。  安全性については、先ほど申し上げたとおり3.5年間の観察期間で、重篤な副作用の報告はない ということでございます。  以上でございます。 ○林座長 ありがとうございました。先ほどの熊田先生の御報告とかなり重なる部分がございま すが、今のところ欧米の方では少量の長期では、肝発がん抑制効果、線維化抑制効果については、 明らかなものが今のところ認められていないということでございますが、対象等に日本との違い があるだろうということだと思います。  日本の方では、ランダム化試験がないという少し弱点がございますので、まだはっきりとそう 言い切れる状況にはないのかも分かりませんが、これは非常に重要な問題ですので、今後検討し なければならないと思いますが、先生方、御意見はいかがでしょうか。  どうぞ。 ○泉委員 なかなかデータが難しいんですが、1番も2番も両方ともペグインターフェロン+リ バビリンをやって、途中でウイルスが消えない人がインターフェロンの維持療法をやっていると いう試験で、その結果として発がん抑止効果はなかったということで、これは若いということも 1つあるんですけれども、基本的にインターフェロンの効果がなかった人がここの群に入ってい るというのがこの背景だと思うんです。  日本の場合にはリバビリンが適応でなくて、高齢者とか貧血があったりとかで、リバビリンが 非適応の方で、最初からインターフェロンを単独でなさっている高齢者の方がいらっしゃる。そ こが非常に大きい背景の違いだろうと思います。  ですから、やはり確かに欧米のデータが覆るほどの大規模スタディーはないんですけれども、 やはり発がん抑止効果、効果が見られる方については、発がん抑止効果があるんだろうと思うん ですけれども、なかなかエビデンスが乏しいということです。 ○林座長 先ほど熊田先生も途中でALTが下がらないにもかかわらず、長期投与されている例が あるということで、すべての人では効果はないかも分かりませんが、特定の対象を選ぶと、そう いう効果を期待できることは、そのとおりだと思いますので、それをどううまく明らかにしてい くかということではないかという気はいたします。  ほかに、先生方、御意見はいかがですか。  どうぞ。 ○岡上委員 C型からの発がんで最も重要な因子は線維化の程度で、次に炎症の程度です。そう すると、インターフェロン投与でALTが有意に低下あるいは正常化すれば発がん抑制につながり ます。その点を留意して投与の継続、中止を決める必要があります。例えばインターフェロン投 与3-6か月以内にALTが前値の半分以下になったとか、3分の1以下に低下すれば発がん抑制に つながるがそうでない例は無効であり中止すべきである、というような基準が必要と考えます。 発がんリスクの高い、すなわち線維化進展例ほどインターフェロン投与でALTは低下しません。 すなわち、肝硬変へのインターフェロン治療で有意な発がん抑制効果が見られなかった理由はそ こにあると考えます。もともと肝硬変はALTが低いですから、例えばALT30-40の患者にインタ ーフェロンを投与してもあまりALTは低下しません。 ○林座長 これはかなり難しいので、線維化が進行している例は、ウイルスの排除を起こすくら いじゃないと有意差が出ないかも分からなくて、逆に線維化があまり進展していないのはALTが 下がって、炎症を抑えるだけで発がん抑制効果が出るかもわかりませんね。 ○岡上委員 投与するとすれば、例えば投与2-3か月後にALTの有意な低下がないものは、対象 外にするとかすべきと考えます。 ○林座長 それは、かなりの症例数がないと、なかなかうまく層別を解析して、どの層に有効か というのがなかなか難しい解析かもわかりません。  どうぞ。 ○熊田委員 実際に、うちでまとめたデータ、今日は出していないんですけれども、ALTとAFP と両方下がっている人は、ものすごい発がんが少ないんです。だけれども、先生が言われたよう に、AFPも下がらない、ALTも下がらないものは、何もしないと同じ結果になっていますから、 やってもだめな人はだめと。効果がある人をやっていくと、確かにいいということになりますか ら、そこの見分けが分からないんです。  ですから、現段階では、なかなか難しいんだけれども、将来的には、それをきちんと出して、 例えば今、言われたように2か月目で、72週と同じですね。どこで判定をして、それ以上はだめ ということをやっていくということが将来の道ではあるんではないかと思います。 ○林座長 よろしゅうございますか。それから、安全性は、熊田先生のところがおそらく一番症 例数が多いんですが、特に長期に使われて、何か問題が起こった例とかございますか。 ○熊田委員 やはり年齢的な問題ですから、リバビリンに比べれば、はるかに安全性はいいわけ で、しかも少量ですから、ほとんど問題ないと思います。 ○林座長 泉先生、いかがですか。 ○泉委員 実際に、確かにインターフェロン単独で、しかもウイルス排除まで目指さない治療で すので、ですから、実際の重篤な有害事象というのは、ほとんど経験していない。 ○林座長 ほかによろしゅうございますか。何か事務局の方から御質問はございますか。 ○肝炎対策推進室長 すみません、ちょっと戻ってしまうんですが、複数回投与のところで出て いた投与量が不十分であった事例に対する再治療についてなんですが、これのエビデンスみたい なものはございますでしょうか。 ○林座長 おそらく泉先生がおっしゃったのは、投与量が不十分でNRになってしまったんだけ れども、今回、NRは再治療しても有効性が低いと言われて、その人が再治療できなくなると困る かもわからないという、そういうのはございますかね。 ○熊田委員 まだ2回目で、再治療の成績そのものがまだ十分でないので、今後の課題です。症 例報告レベルではありますけれども、十分なまとまった成績はないです。 ○林座長 ほかによろしゅうございますか。ということで、一応、3つの課題につきまして、熊 田先生の御報告と事務局でおまとめいただいたものを議論させていただきましたが、全体を通じ て、何か先生方、付け加えることがございましたら、お願いしたいと思います。 ○岡上委員 熊田班ではB型肝炎治療で、e抗原陽性例とe抗原陰性例の治療を分けて提示して います。これは重要なことですが、いまだにe抗原陽性は予後不良でe抗体陽性は予後良好と思 っている医師が沢山います。実際はe抗原陰性でウイルスが増殖している例が最も予後不良です。 今、世界的にもe抗原陰性者のB型の肝炎をどういうふうに治療したらいいのか、いつ治療を中 止できるのかが問題になっており、肝臓専門医でさえ答えを持っていません。このあたりの議論 と正しい情報の提示が必要と考えます。 ○林座長 これは、非常に重要な問題で、先ほど熊田先生がB型の肝がんが減らない理由はそれ ですね。高齢者のe抗原陰性とDNA陽性例に経過を見ているので、そこからがんができてくるん ですね。ですから、これの対策は非常に重要だと思いますね。 ○岡上委員 自然経過でe抗原陰性になった患者さんで、自然経過でe抗原陽性になる例が結構 あります。 ○林座長 熊田先生、どうですか。 ○熊田委員 やはり1つは啓蒙だと思うんですが、非専門医の先生の頭の中をe抗原、e抗体か らHBV DNAに切り替えてもらわなければだめなんです。だから、そこなんですが、やはり一番 の問題は、インターフェロンの治療とか、添付文書にe抗原陰性が書いていないんです。PMDA の方は治験をやらない限り添付文書は変わらないんです。例えば今、だれも使わないDNAポリメ ラーゼとまだなっているわけですね。  ところが、現実はそんなのは関係なくて、肝がんの、今、当院で言うと、65%から7割はe抗 原陰性から出ているんです。ですから、そこをやはり啓蒙していくということも1つこの中の役 割だろうと、大切なのはHBV DNAであると。 ○林座長 添付文書を変えるのは難しいですね。確かに、ドクターはあれを見て処方される方が 多いですから、あそこの記載を少し変更しないと、なかなかうまくいかないというのは、そのと おりですね。 ○岡上委員 あるいは厚労省のレベルで変えることはできないんですか。 ○林座長 申請時の添付文書がそのまま使われていますが、その後、いろんな知見が合わさって いって、添付文書の記載が問題あるんですが、その変更は難しいので、確かに少し困る点が出て きている。 ○肝炎対策推進室長 すみません。所管が違いますので確認してみます。 ○林座長 e抗原陰性の高齢者の人の治療をどこまで続けると、本当に肝がんの発生を抑制でき るかというのは、日本には非常に重要な問題だと思います。 ○岡上委員 30代、40代でもこのような患者さんがかなりいますからね。e抗原陰性でALTが低 いにもかかわらず肝生検をすると、病気が進んでいる例が結構ありますね。 ○林座長 学会レベルでも、どうしてもe抗原陰性については少し安心感があって、なかなか積 極的に治療をしないという傾向が日本にもあると思いますので、ここは非常に重要な問題だと思 います。  ほかに何か御意見はございますか。  飯沼先生、最後、何か御質問はございますか。 ○飯沼委員 私ら古い人たちはe抗原の問題は、抗体プラスで抗原がないからいいねという言い 方をしていましたからね。 ○林座長 よろしゅうございますか。それでは、ここで議論を終わらせていただいてよろしゅう ございますか。  最後にその他のところで、何か事務局の方から御意見はございますか。 ○肝炎対策推進室長 特に意見はございませんが、本日いただいた御意見を踏まえて、今後のス ケジュールでございますが、事務局、また、座長にも御協力をいただいて報告書の案を作成させ ていただいて、できましたら、来週18日にまた再度開催させていただいて、その段階でまた案を 提示させていただいて、報告書を確定できればというふうに考えておりますので、引き続きよろ しくお願い申し上げます。  次回の会議でございますが、11月18日の水曜日10時から12時で開催させていただきたいと考 えております。是非よろしくお願い申し上げます。 ○林座長 それでは、ほかに御意見がございませんようでしたら、これで本日の会議を終了させ ていただきたいと思います。  本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、本当にありがとうございました。 (了) ○照会先 健康局疾病対策課肝炎対策推進室             丸本(2944)