09/11/10 第1回肺移植の基準等に関する作業班議事録            第1回肺移植の基準等に関する作業班 日時 平成21年11月10日(火) 15:00〜 場所 厚生労働省省議室(9階) ○大竹補佐 ただいまから「第1回肺移植の基準等に関する作業班」を開催いたします。 班員の先生方におかれましては、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうござ います。本作業班は、先の国会で「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律」が成 立したことを受け、改正法の施行にあたり肺移植に関する移植希望者選択基準、臓器提供 者の適応基準を検討することを目的としております。本日は第1回目の会議ですので、班 員の先生方のご紹介をさせていただきます。大阪大学教授の奥村先生、埼玉医科大学教授 の金子先生、せんぽ東京高輪病院の川合先生、信州大学教授の久保先生です。広島大学の 河野教授におかれましては、本日ご欠席の連絡をいただいております。東北大学の近藤先 生、東邦大学医療センター大森病院の佐地先生です。国立感染症研究所の佐多先生にもご 欠席の連絡をいただいております。続きまして千葉大学の巽先生です。  続きまして事務局の紹介をさせていただきます。本来ならば室長である峯村からご挨拶 させていただくところですが、国会等の所用により、少々遅れております。続きまして、 竹内補佐、井原主査、最後に私、大竹と申します。どうぞよろしくお願いいたします。  当班の班長につきましては、事務局としましては久保教授にお願いしたいと思いますが よろしいでしょうか。               (異議なし) ○大竹補佐 ありがとうございます。それでは久保班長に以降の議事の進行をお願いいた します。カメラ等につきましては、ご退席のほどをよろしくお願いいたします。 ○久保班長 この作業班は、先般改正された法律の施行に向け、厚生科学審議会疾病対策 部会臓器移植委員会での審議に際し、専門的な観点から検討が必要な事項について議論を 行うということになっております。まず、これまでの法改正の概要と先般行われました臓 器移植委員会について、事務局から説明をお願いします。 ○大竹補佐 まず資料の確認をさせていただきます。議事次第がありまして、1枚めくっ ていただきますと、本日の班員名簿、資料1、資料2に関しては資料2-1、資料2-2、資料 3-1、資料3-2、資料4、5、6、7と続いています。右上のナンバーをご確認ください。ま た、参考資料の1から7までつけさせていただいています。併せてお手元にファイリング させていただいた「審議会作業班参考資料」というのがあります。こちらに関しては、こ れまでの法律、改正法の新旧対照表等、法律に関する部分を中心に記載させていただきま した。不足等ありましたら、事務局までお申しつけください。  続きまして、班長からご提示があった資料についてご説明させていただきます。資料1 法律改正の概要をご覧ください。先般7月に公布された法律ですが、資料の2頁にわかり やすく現行法と改正法の比較表があります。まず1点目ですが、「親族に対する優先提供」 です。現行法では「当面見合わせる」とガイドラインに記載していますが、改正法におい ては、「臓器の優先提供を認める」とされています。こちらに関しましては、施行日が平成 22年の1月17日ということになっています。  「脳死判定・臓器摘出の要件」に関しましては、現行法では「本人の生前の書面による 意思表示があり、家族が拒否しない又は家族がいないこと」となっておりますが、改正法 においては1つ目の○は変わりません。  2つ目の○として、「本人の意思が不明であり、家族の書面による承諾があること」とな っています。本人の意思が不明であった場合にも、臓器の摘出ができるということが大き く変わった点です。  3点目の「小児の取扱い」ですが、現行法においては、「15歳以上の者の意思表示を有効 とする」。つまり15歳未満については、意思表示を認めないということになっています。 しかし、改正法におきましては、「年齢に関わりなし」とされています。これが大きな改正 点です。  「被虐待児への対応」として、現行法では規定がありません。しかし改正法では「虐待 を受けて死亡した児童から臓器が提供されることのないように適切に対応」となっていま す。  「普及・啓発活動等」です。現行法では特に規定はありませんが、今後は「運転免許証 等への意思表示の記載を可能にする等の施策」があります。以上が大きな改正点で、施行 日に関しましては、1点目は来年の1月17日、以下については、来年の7月17日が施行日 となっています。本日は、1月17日の施行日に向けまして、親族に対する優先提供をいか にレシピエントの基準の中に盛り込むかについてご議論いただければと思います。よろし くお願いいたします。 ○久保班長 どうもありがとうございました。今日特に決めていただきたいのが、親族に 対する優先提供をどうするかということです。併せましてドナー、レシピエント等の従来 の判定基準との相違点等を明らかにするということです。何か質問等ありましたらお願い します。 ○巽班員 本作業班と別に、新聞報道によりますと、厚生労働省の作業班で新美教授が班 長である作業班での審議によると、優先提供の指名や順位を認めずという報告がなされて いると思うのですが、その辺りはどうなのでしょうか。 ○大竹補佐 こちらにつきましては、資料3でまたご説明したいと思います。資料2と3 も続けてご説明させていただきます。 ○久保班長 そうですね。一緒に説明していただいて、もう1回議論しましょう。 ○大竹補佐 それでは先に資料2をご覧ください。資料2ではこの作業班の位置づけをご 説明させていただきます。わかりやすい資料として、資料2-2の3頁目に、表になってい るような絵があります。まずいちばん右に厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会と いう委員会がありまして、こちらが審議会になっております。法律の先生方、また現場の 医療の関係者の方々に入っていただき審議をいただいています。その左の検討体制ですが、 上から3点目に、臓器毎による作業班というのがあります。こちらが先生方にお願いして いる作業班でございまして、臓器ごとに7つの作業班を設定しています。肺に関するワー キンググループもここに位置づけられており、内容としては、親族優先、小児からの臓器 提供に伴うドナー適応基準、レシピエント選択基準についてご審議いただくことになって おります。  上からご説明させていただきますと、臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等 に関する作業班で、先ほど巽先生からご指摘いただいた新美座長の下、親族の範囲につい て、あるいは15歳未満の者に対する拒否の意思表示について、さらには有効な意思表示が できない者の取扱いについてなどご審議いただいています。これまで3回ワーキンググル ープを行いまして、親族への優先提供について大方の方針が出されています。  2番目は普及啓発に関する作業班です。ドナーカードの様式、登録システム、普及啓発 の具体的な方法について現在審議いただいています。  いちばん下ですが、こちらは研究班として位置づけられているのですが、脳死の判定基 準、臓器提供施設の体制、虐待を受けた児童への対策を貫井先生にお願いいたしまして、 現在研究班を進めています。こうした大きな枠組みの中、それぞれの作業班で決定された 事項を親委員会である臓器移植委員会に報告し、さらに審議いただき、パブリックコメン トを経て、省令やガイドラインとして発行するという手続になります。  一番左に主な検討課題としてI〜Vまであります。特にこの作業班にお願いしたいのが Vの臓器移植の実施に係る課題というところです。1点目、ドナーの適応基準、レシピエ ントの選択基準について決めていただく。また、臓器移植に係る体制整備等についてもご 議論いただきたいと考えております。日程等が限られていますが、まずはドナー基準、レ シピエント基準をご審議いただきたいと考えています。  資料2-2の2頁をご覧ください。具体的なスケジュールです。改正法の施行に向けたス ケジュールとして、先ほど申し上げたとおり、本年の7月17日に改正法の公布がなされま した。それを受け、9月から臓器移植委員会や臓器移植の作業班を適宜開催しています。 さらには平行して研究班を実施し、パブリックコメントを受け、省令、ガイドラインの改 正をしたいと考えています。また、施行に関しては、その下にあるように、平成22年の1 月17日に改正法の一部の施行があります。これは親族優先に係る提供の部分です。また、 7月17日に改正法の全面施行があります。先ほど申し上げた虐待の取扱い、小児に関する こともここから施行になるというスケジュールになっています。  順番が前後して恐縮ですが、資料2-1の説明をいたします。先ほど申し上げた臓器移植 委員会は厚生科学審議会の疾病対策部会という位置づけなのですが、ここにおける検討と しましては、1頁目の1つ目にありますように、臓器移植法に基づく手続等について、厚 生労働省令、運用上必要な事項について厚生労働省がガイドラインを定めており、これを 定める際には、臓器移植委員会において議論をお願いするということです。  2点目は今回の法律改正を受けた対応として、先ほどご説明したスケジュールがこのよ うになっているということです。2つ目の○をご覧いただきますと、改正法の施行に向け て、年内にも親族優先提供の実施に必要な事項についてガイドライン等の改正が必要であ る、ということが記載されています。さらに改正に当たっては、臓器移植委員会等におけ る専門家のご議論をいただきまして、パブリックコメントを経た上で行う予定であるとな っています。  資料2-1の2頁目です。臓器移植委員会につきましては、本年の9月15日に第1回目の 委員会を開催させていただき、その中で検討課題を提示いたしまして、課題ごとに作業班 と研究班を設置して、検討を行うということでご了承いただきました。それが先ほどご紹 介した枠組みです。具体的には以下のとおりですが、意思表示等に係る作業班、臓器毎に よる作業班、ここでドナー、レシピエントの選択基準をご審議いただきたいということが 決定された次第です。その他の議論としまして、親族への優先提供、小児からの臓器提供、 普及啓発などの検討を要する課題を、今後作業班等において検討を行う際に留意すべき事 項として、各委員から意見を聞きました。また、審議の過程で、親族優先提供に係る親族 の範囲について、各委員より国会における提案者の答弁を尊重し、親子と配偶者とすべき との意見が出されました。3つ目の○として今後は臓器移植委員会のご意見を踏まえなが ら、作業班において詳細な検討を行い、ガイドライン案を作成し、さらに臓器移植委員会 に報告するということが決定されました。以上が資料2-1、資料2のご説明でした。 ○久保班長 では資料の3-1、3-2、法律の専門家による「親族への優先提供について」、 説明をしていただきましょうか。 ○大竹補佐 資料3-1、資料3-2についてご説明させていただきます。こちらは、親族へ の優先提供についてこれまでどのような議論がなされていたのか、その概要です。  資料3-1です。1点目として親族に臓器の優先提供を認める規定が条文にありますので、 これを読み上げさせていただきます。具体的には第6条の2に記載されています。「移植術 に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思を書面により表示している者又は表 示しようとする者は、その意思の表示に併せて、親族に対し当該臓器を優先的に提供する 意思を書面により表示することができる」。  2点目にこれに関する国会会議録の抜粋をご説明させていただきます。平成21年5月27 日、衆議院の厚生労働委員会で、河野太郎議員が以下のように答弁しています。「親子及び 配偶者に対しては親族の優先提供を認めるということで、かなり厳しい枠をはめて、その 中に限り優先提供をこれは心情を考えて認める」というような答弁をしています。また、 同じく7月7日の参議院厚生労働委員会での山内康一議員の答弁ですが、「A案におきまし ては、親族への優先提供の意思表示の規定を設けることとしておりますが、この場合にお きましても、その意思表示を踏まえた上で、最終的には血液型が適応するかどうかなどの 条件に照らし合わせて順位が判定されることとなると想定しており、決して順位の判定が 恣意的に行われることはないと認識しております」、と答弁しています。  続きまして資料3-2です。こちらは新美座長の下で行われた法律に関する作業班で、ど のようなやり取りが行われたかということですが、1点目として、10月1日に臓器提供に 係る意思表示・小児からの臓器提供に関する作業班を設置し、参考人として医療従事者の 先生方も加わって、親族優先とレシピエント選択基準の関係について議論が行われました。 その結果として、親族への優先提供の意思がある場合、レシピエントの選択において、優 先順位の第一位として取り扱うこと。これを基本として臓器毎の作業班において検討を行 うこととなりました。先般、肝臓移植に関する基準が10月29日に議論されました。法律 の作業班での主なご意見として、優先提供を受ける親族はあらかじめレシピエント登録を されていることを前提とすべき。親族優先はレシピエント選択基準の優先順位の第一位と するのが妥当である。さらには、法律に規定されていることであり、医学的緊急度などよ りも優先されると解釈する。同時移植希望者よりも単独での移植を希望される親族が優先 されると解釈される。虚血許容時間の位置づけは、臓器毎の作業班において検討してはど うか。その他の親族への優先に伴う事項としまして、移植を必要とする親族に対する心理 的な影響。さらには、特に、心臓で言われているのですが、生体移植の行えない心臓移植 における、親族の自殺の誘発についてご懸念が示されました。こうした議論が法律のワー キンググループで行われました。以上です。 ○久保班長 どうもありがとうございました。本作業班の役割、位置づけ、今日議論して いただく親族優先についての専門家による臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供 等に関して、作業班でこのような議論があったということですが、質問やご意見などあり ましたらお受けしたいと思いますが、いかがでしょうか。 ○川合班員 せんぽ東京高輪病院の川合です。1つ質問ですが、家族への優先提供という のが臓器毎によって違うというような結果になっても構わないということなのでしょうか。 ○大竹補佐 基本的には各臓器ともなるべく整合性をとりたいと考えています。ただ、お そらく臓器毎の事情、疾病の特性などもあろうかと思います。そこは十分ご議論いただけ ればと思います。 ○巽班員 すみません、1つ教えてください。いまのところで、同時移植希望者よりも単 独での移植を希望する親族が優先される。ここの裏にある考え方に関して教えていただけ ますか。 ○大竹補佐 これまでは親族の優先提供というのがありませんでしたので、例えば心臓と 肺の待機者がいれば、そのレシピエントが第一位として上がってきます。ここも後ほどご 議論いただきますが、それがもし単独の希望者がいた場合に、その方が親族であった場合 には、同時移植対象者を通り越して、第一位に上がってくるということで、それだけ親族 優先が今回強く打ち出されてご議論がされたということです。 ○久保班長 一応、親族優先に関しては、法律家のほうである程度統一見解を出すと認識 していますが、よろしいですか。よろしければ、レシピエント選択基準について検討を行 いたいと思いますので、現在の基準、今回の改正の内容を踏まえた基準案について事務局 から説明をお願いします。 ○大竹補佐 それでは資料4をご覧ください。資料4については、「肺移植希望者レシピエ ント選択基準(案)」とさせていただいております。また、資料5では、「心肺同時移植希 望者(レシピエント)の選択基準(案)」としています。この2点についてご説明をさせて いただきます。  まずは資料4についてご説明させていただきます。レシピエント基準に関しては、ご存 じのとおり、「適合条件」「優先順位」の2項目立てとなっています。まず適合条件ですが、 変更点、追加点を赤字で示しています。(6)虚血許容時間に関して、これまでは優先順位に あったところですが、各臓器とも横並びにしまして、適合条件というところに挙げさせて いただきました。こちらに関しましては、虚血許容時間、臓器提供者(ドナー)の肺を摘 出してから8時間以内に血流を再開することが望ましいとなっております。これまでは血 流を再開することと断定して記載されておりますが、これは手術に関することですので、 個別の事例があります。「望ましい」という表現がふさわしいのではないかということで、 入れさせていただきました。  優先順位につきましては、2頁をご覧いただきますと、(1)優先すべき親族。当該親族を 優先するということで、優先順位の第一位として挙げさせていただいています。  次からは変わらないのですが、ABO式血液型、待機期間、術式による優先順位というこ とで、それぞれ決めさせていただいています。  3頁目に「その他」として基礎疾患、重症度による医学的緊急度が将来考慮されるべき である。この基準は実績を踏まえて見直しを行う必要があるということで、これは従来ど おりでございます。以上が肺移植希望者選択基準(案)です。 ○久保班長 とりあえず肺移植のほうから検討をしますが、虚血許容時間を優先順位から 適合条件にあげるということについてはいかがでしょうか。特に移植されている先生方の ご意見をお聞きしたいと思いますが。8時間というのは何か根拠があるようです。8時間以 上になると、かなりよくないというデータが出ているようですので、できれば8時間以内 と。「望ましい」というのをつけて少し間を持たせるということだと思いますが、どうでし ょうか。 ○奥村委員 実際、8時間を術式の関係で超えてしまうこともありますし、両肺の場合は、 片方が8時間以内だけれども、もう1つのほうが8時間を超えてくることはたまにあると 思いますので、これはこのように記載していただいたほうが無難かと思います。 ○久保班長 虚血許容時間を優先順位から適合条件に上げまして、8時間以内に血流を再 開することが望ましいということでよろしいでしょうか。                (異議なし) ○久保班長 今回のいちばんの検討事項ですが、優先順位の、いちばんに優先すべき親族 は当該親族を優先するというのを第1項目になるということですが、これについてはいか がでしょうか。 ○川合班員 単純に「優先する」ではなくて、医学的な条件を満たした上でということで すよね。小さな子どもの肺を大人に移植することはできませんので、その辺の縛りといい ますか。もう1つは、肺の大きさの予測値なのですけれども、予測肺活量というのは、あ まり詳しくないのですけれども、年齢、身長。これは小児にもそのまま適用される公式な のでしょうか。そうすると小児の場合、このままのレシピエント選択基準というのが困る かもしれないと思うのですが。米国のUNOSのランガルケーションシステムだと年齢で12 歳以下は12歳以下というような区切りがありますので、小児に対する選択基準は、また別 個にプラスアルファで作っていかないといけないと思います。 ○久保班長 適合条件の2の肺の大きさのところですね。 ○川合班員 そうですね。 ○久保班長 これはあくまで成人を対象に作っているわけですが、これを小児にも変えな ければいけないということになりますかね。 ○川合班員 心臓の場合には大人、子ども関係なしに体重プラスマイナス20%、30%で何 とかなるのですけれども、肺の場合はちょっと入らないとか、閉められないとか、そうい うことがあるので。 ○佐地委員 12歳。 ○川合班員 UNOSはそうですね。12歳以下はスコアリングもなしということで、ファース トカム・ファーストゴーですか。スコアリングを適用しないということをやっていますの で、日本の場合どうやってやるかということですね。 ○近藤班員 小児はまた別に議論しなくてはまとまらないかもしれません。これは結局レ シピエントを選ぶときに、まず何を見るかという順位を見ている、その原則を書いてある のですよね。ただ、親族がいればということではなくて、親族がいて、なおかつ先生がお っしゃったように血液型であり、体格というか、小児に関してはまた別に議論しなければ いけないでしょう。そういった条件を満たすものがあれば親族にいくと。満たすものがい ない場合には、次はABO型を見るという順位を書いてあるのです。だから、書き方はこれ でいいのかなと。親族を優先するかどうかは別として、書き方としては、優先するのであ ればこういう書き方にならざるを得ないかなと思います。 ○久保班長 当然適合条件をすべて満足した上で、なおかつそのあとの優先順位をどうす るかというところで、いちばんに親族を持ってくるということについて、今日できれば決 めていただければと思います。 ○川合班員 反対はないです。 ○久保班長 よろしいですか。小児のことについては、7月まで時間がありますので、小 児の条件はまた詳しく議論したいと思いますが、今回は親族優先についてこれでアグリー するかどうかということですけれども。 ○奥村班員 優先すべき親族だから1番の条件というわけで、ABO血液型のidentical、 compatibleよりも優先するということなのですが、これで肺の場合よろしいのかというこ とがあると思うのですけれども、血液型がidenticalであればもちろんいいと思うのです けれども、compatibleの場合でも親族の優先ということを決めていいかということが問題 になると思うのですけれども、いかがでしょうか。 ○久保班長 どうなのでしょう、先生のご意見は。 ○奥村委員 compatibleももちろん、生体肺移植の場合に経験があって、うまくはいって いるのですが、希ですけれども、一時的には術後の溶血による重度の貧血が起こったりし たこともありますので、その辺をよく理解していただいた上で、場合によってはそういう 説明を十分加えた上でということになるかと思うのですが。 ○近藤班員 ABOを上に持っていくという議論もありますね。 ○大竹補佐 そうですね。 ○久保班長 一番をABO式血液型。ということは血液型の一致するものというのを一番に 持ってくる。 ○近藤班員 その中に親族がいれば親族を優先するということで、そういう考え方もあり 得る。 ○奥村班員 ABO式に血液型がidenticalである場合の親族に関しては優先する。 compatibleの場合、ちょっとどのようにしたらいいか決めかねますけれども。 ○久保班長 1のところは例えばABO式血液型の一致する親族を優先する。 ○近藤班員 順番としては、一致を優先するとなると、(1)と(2)を入れ替える。 ○久保班長 そうですね。 ○近藤班員 適合の移植の経験はないのですが、合併症の頻度が高いだろうとか、あるい は成績が落ちるかもしれないということがもしあるのであれば、一致を優先するというよ うにしたほうがいいかもしれないですよね。 ○奥村委員 日本では岡山大学で何例かの報告があるのと、私たち大阪大学でも脳死から の1例、生体で1例か2例あったと思うのですが、3例ほど経験があったと思うのですが、 長期成績的には問題はありません。ですので、可能は可能ということは言えると思います。 ○久保班長 適合条件のいちばん最初にあるはずですよね、ABO式血液型が。肝臓のこの 前行われた肝臓移植の希望者の選択基準もあるのですけれども、一応これとほぼ同じで、 いちばん最初に適応基準があって、ABO式血液型で一致だけではなくて、compatibleの待 機者も考慮すると同じになっていまして、具体的な基準は優先すべき親族を優先するとい うことで、血液型は肝臓の場合は、「その他」のほうになっていますが。 ○川合班員 このソーシャルな基準と医学的基準というのを同じコンセプトでディスカッ ションするのは非常に難しいと思うのです。ですから、どうしても家族優先ということが 今回の法律の1つの目的であるならば、ABOよりも上にいってしまうのかなとは思うので すが。たぶん生体の腎や肝をやっている先生から、まず出てこないディスカッションは、 養子縁組の親族をどうするかということだと思います。実際には腎移植のための婚姻です とか、肝移植のための養子縁組というのが現実にはある。生体移植であれば、ドナーの方 も生きていらっしゃいますし、何らかの報酬があるとか、そういうことは、我々医学が関 与すべきところではないのかもしれませんが、脳死移植となってくると、実はそういう養 子縁組であると、移植医療に対する信頼感が非常に揺らぐと思うのです。そこはここでデ ィスカッションすることではなくて、もうちょっと上のところでディスカッションしてい ただきたいと思うのですが、うまく歯止めを作ってくださいということですね。 ○久保班長 法律については何か情報がありますか。3回まで議論があるようですけれど も、何かそこに関しては情報ございますか。 ○井原主査 まず1点、親族の範囲というところで、原則親子、配偶者でいいのではない かというご意見で、パブリックコメントを今後かけるという形になります。その中で子ど もの取扱いについては、養子は特別養子縁組みという、裁判所が必要性を判断するものに 限るということになっております。特に日本の場合、養子縁組みの制度が非常に財産分与 などの目的とした養子縁組が行われやすいという状況を踏まえまして、養子については特 別養子縁組みに限るという形でご意見をいただいています。  配偶者に関しても、事実婚が法律婚と同等な効果を得るというような流れがあるという 社会的な背景を踏まえた上で、事実婚としての婚姻関係の安定性などを一律に判断するよ うな手段はなかなか難しいということで、配偶者については、法律婚に限るという見解を いただいています。  血液型の点なのですが、現在の基準においては、血液型が一致しているもの、適合して いるものの両方を合わせて、優先順位づけの中に入ってくるのですが、選択基準の3頁の 3)のところに、まずは一致するものの中から、それぞれ術式等を基準に選択されまして、 それでも適合となる方がいらっしゃらない場合に、血液型が適合する人の中から、また選 択を行うという形になっております。そういった意味で、ABOが適合する方を一致する方 より越えるのか、もしくは一致の中でいちばん上にする、また適合の中でいちばん上にす るというほうが、医学的に妥当であるのか、そういった観点からご意見をいただければと 考えています。 ○金子班員 いまお話があったように、(1)と(2)の順位は、社会的な問題と医学的な問題 のどちらを優先させるかということだと思うのです。この法律が社会的な要請で親族優先 ということが成立したのであれば、医学的安全性と、社会的な要求と、どちらを優先させ るかという問題だと思います。ですから、医学的な安全性を優先させるのであれば、2番 と1番をひっくり返すということです。この法律がどういう経緯で、どういう重みでとい うところで判断せざるを得ないところだと思いますが、あえて、いろいろな状況をお聞き すると、親族優先というのは、かなりの重みがあるというように解釈すれば、やはりある 程度移植医療の安全性に問題があったとしても、そうせざるを得ないのかなというように 感じます。 ○近藤班員 なかなか難しい議論ですが、個人的には社会的な要請よりも医学的な安全性 を最優先すべきだと思います。肺の移植の成績は、考えると心臓はものすごくいいのです けれども、肺は世界的なものよりはいいけれども、成績がちょっと落ちるのです。肝臓よ りも結構落ちるところがあるので、そこら辺を厳密にしなければいけないのだろうと思う のですが、先生がおっしゃるように、適合の1例か2例あったかもしれないのですが、適 合をやったケースで特に大きく問題になったというケースはなかったような気もするので すが、あまり大きな違いがなければ、この順番でも私自身は構わないかなと。特に著しく 安全性を害すると考えなくてもいいのかなと思いますが、どうですか。 ○川合班員 compatibleが悪いというと、記憶の中では、OからAのサブタイプのA1がリ ジェクションが多いという論文を見たことがあるのですけれども、そういうのは長期成績 などで悪いということは言われていませんし、分けてディスカッションしている論文もあ まり見たことがないのです。生命予後としてはあまり変わらないのかもしれません。 ○佐地班員 UNOSのアロケーションシステムの論文を、今日持ってきてはみたのですけれ ども、心臓に関しては、ブラッドグループで、compatibleでオーケーになっているのです が、実際生体肺移植のときに、家族の中で適合するかどうかというのは、現実に現場で計 算してみると、生体であっても37%ぐらいしか家族間で肺移植ができないのです。実際、 ABOとかいろいろ組み合わせてみると、本当に一致となると、ものすごく少ないですね。 compatibleでも36、7%ぐらいで、一致となると、極めて家族間でも低い確率になってし まうのです。そういう希望があったとしても。 ○久保班長 ということは、compatibleでもいいのではないかというご意見ですね。 ○佐地班員 ブラッドグループとしてひとまとめにしたらいいですが。 ○奥村班員 結構だと思います。 ○久保班長 では、そういう形でお認めいただくということでよろしいでしょうか。あと は、いままでのものとほとんど同じですので、資料5の心肺同時移植希望者の選択基準に 移ります。説明をお願いします。 ○大竹補佐 かしこまりました。それでは資料5をご覧ください。「心肺同時移植希望者選 択基準(案)」と記載されたものです。適合条件に関しては、先ほどのものと変わりません。 1から7までありまして、7の許容時間を新たに入れさせていただきました。そこで、「心 肺を摘出してから4時間以内に血流再開することが望ましい」という記載にさせていただ きました。  また、1枚めくっていただいて優先順位に関しては、「適合条件に合致する移植希望者(レ シピエント)が複数存在する場合には、優先順位は、以下の順に勘案して決定する」と。 そして、一番として優先すべき親族、当該親族を優先する、としています。  また、参考資料1をご覧いただきながら、次以降をご説明したいと思います。恐縮です が、お手元の参考資料1、横になった表があるので、ご覧いただければと思います。資料5 の2頁の(2)ですが、「心臓移植希望者選択基準で選ばれた移植希望者が、心肺同時移植の 待機者であって、なおかつ臓器提供者(ドナー)から心臓及び両肺の提供があった場合に は、当該待機者が肺移植待機リストで下位であっても、当該待機者に優先的に心臓及び両 肺を同時に配分する」。この文章に関しては、参考資料1の1番の上段、左側、「これまで」 という表がありますが、具体的には先ほど巽先生からご質問がありましたが、これまでは 待機リストで肺が第3位であっても、心肺同時移植を希望する方については優先的にそれ を提供しましょうということになっていました。ただし書きを付け加えさせていただいた ところですが、「ただし、肺移植待機リストで選択された移植希望者が優先すべき親族の場 合はこの限りでない」。具体的に申し上げますと、参考資料1の右側です。「今後(案)」と いうのがありますが、ここにありますとおりbの方が親族の該当者になれば、この心肺同 時移植者を越えて第一位になるということです。これを文章にさせていただきました。  続いて(3)についてご説明します。(3)は「肺移植希望者選択基準で選ばれた移植希望者 が、心肺同時移植の待機者である場合であって、かつ、臓器提供者から心臓及び両肺の提 供があった場合には、当該待機者が心臓移植待機リスト下位であっても、当該待機者に優 先的に心臓及び両肺を同時に配分する」としています。こちらは参考資料1にあります下 の表です。これの左側にありますとおり、これまでは心臓の待機リストが下位であっても、 心肺同時移植を希望する方がいらっしゃれば、そちらを優先するということでした。しか しながら、「ただし」以下、赤字ですが、「ただし、心臓移植待機リストで選択された移植 希望者(レシピエント)が優先すべき親族の場合にはこの限りでない」。これも先ほどと同 様に、もし心臓の待機リストで一位の者が単独であった場合、なおかつその方が親族であ った場合には、これまで心肺同時移植の対象者を飛び越えて、親族優先が上に繰り上がり ます、という表現を文章でさせていただきました。文章だけ読むと非常に難しいところが あるので、お手元の参考資料をご覧いただきながら、ご説明させていただきます。  また、(4)に関してはこれまでと変わらないことでして、心臓待機移植者の選択基準及び 肺移植希望者の選択基準で待機された者が別になった場合ということの枠組みを、1番か ら4番まで記載してあります。  また、変わった点だけご説明させていただきますと、3頁をご覧ください。これまで附 則になかったのですが、附則に関しては、「基準全般については、今後の移植医療の定着及 び移植実績の評価等を踏まえ、適宜見直すこととする」とさせていただいております。以 上です。 ○久保班長 どうもありがとうございました。心肺同時移植希望者の選択基準については、 こういう優先すべき親族というのをいちばんトップにするので、具体的には心肺、あるい は心臓だけ、肺だけ、心肺同時という3つの場合の選択基準が少し複雑になりますが、い かがでしょうか。こういう形で、もう自動的に決めていただくということになるわけです ね。 ○近藤班員 確認をします。たまたまかもしれないですが、今後の案の所で、どちらも親 族該当に○になっている人が、上の段では肺の待機リストの一位で、下は心臓の待機リス トの一位になっているとして仮定されているのですが、これは別に二位でも三位でもいい ということですよね。これは別に一位でなくてもいいということですよね。 ○井原主査 親族に該当したため一位になったということです。 ○近藤班員 なるほど。 ○井原主査 それぞれの基準で親族の取扱いというのはご議論いただいております。まさ にいま、この前にご議論いただいた肺移植の基準では、親族に該当すると自動的に一位に なるので、そういう意味で1と書かせていただいております。 ○近藤班員 わかりました。 ○久保班長 心肺同時移植よりも、もし親族がおられた場合には、その親族の単独移植の ほうが優先されるということになるのかと思いますが、心肺同時移植については、心臓移 植のほうの作業班とまたすり合わせがありますが、一応肺移植のほうではこういう形で認 めてよろしいでしょうか。  では、レシピエントの選択基準においては、親族優先の取扱いはここに記載されている ような案でお認めしますが、よろしいでしょうか。確認しますが、適合基準を満たした場 合には、優先順位の一位に親族優先を持ってくるということにしたいと思います。  続きまして、レシピエントについては既にかなりご意見をいただいておりますので、こ こでいくつか意見をいただいておいたほうがよろしいかと思います。例えば疾患ごとの緊 急性だとか、あるいは年齢のマッチング等、いくつか先生方から既にご意見をいただいて はいるのですが、こういうのは是非入れておいてほしいというのがありましたら、お受け したいと思います。  これはまた7月の最終案に向けての議論で、いましっかりと議論を出しておいてもらっ たほうがいいのかなと思うので、是非お願いします。 ○川合班員 何かしらのスコアリングができるのであれば、それがいちばん望ましいとは 思うのですが、非常に難しいとは思います。ただ、UNOSみたいに細かくDMとかPCO2のイ ンクリーズィブルがどれだけとかではなくて、やはり年齢とか疾患くらいの、少なめの項 目でのスコアリングというのがあれば、来年7月になれば、それまでに多少なりとも待機 中の死亡例がどれくらいかとか、データが出るかもしれないと思います。 ○奥村班員 それに関してですが、とにかく間質性肺炎が、非常に登録後予後が悪くて、2 年生存率が20%くらいですが、LAMは7、80%とかあるので、やはり疾患ごとに重症度を つけて、優先を考えるというのが理に適っていると思うのですが。 ○久保班長 肝臓のレシピエントの基準を見ますと、一応、点数化はしているのですよね。 予測の余命が1ヶ月以内の者は9点とか、1年を越える者は1点ということで、ある程度レ シピエントの基準に残った時点で点数をつけていて、たぶんその点数の多いほうの方から 優先的に持っていくのだろうと思うのですが、そういうこともやって、そうすると呼吸器 のほうは、肺のほうでは疾患で分けるということになるのでしょうか。あるいは予測余命、 これを判断するのは非常に難しい気がするのですが。 ○奥村班員 予測余命は非常に判断するのが難しいと思うのですが、先ほど申しましたよ うに疾患は、やはり非常に大きなファクターであろうということと、もう一つPPHが最近 非常に内科的治療が発達してきていますので、かなりぎりぎりまで待てるようになってき ていますので、その点ではその都度その都度の内科治療の発展などに合わせて、見直しな がら決めていくというのが現実的のように思います。 ○久保班長 この肝臓の予測余命というのは、具体的にどのようにして判断するか、もし わかれば教えていただけますか。 ○井原主査 肝臓に関しては、予測余命をスコアリングする際に、移植の適応となる疾患 ごとに、それぞれ条件を先生方のほうで定めておりまして、それに基づいて点数をつけて います。例えばC型肝炎による肝硬変の方でビリルビンがどういう値であれば何点とする というような、そういう詳細な基準がございます。おそらく肺もそれぞれ移植を必要と主 治医の先生が判断された場合、学会の先生方でその適応を評価されて、ネットワークに登 録という形をとっているかと思うのですが、肝臓の場合そちらでしっかりと判断をして、 点数をつけて登録という形になっていると聞いています。 ○久保班長 非常に難しいですね。 ○近藤班員 非常に難しいと思います。間質性肺炎とか、ああいう疾患、あるいは感染性 の疾患は、その感染の増悪で一気に悪くなるという、いわゆるリニアに病状が悪くなって いくようなものばかりでないというところが非常に難しくて。 ○久保班長 肝臓の場合は、確かに血小板の数とか、出血時間だとか、ある程度客観的に 評価が可能ですが。 ○近藤班員 必ずしも血液型で判断できるようなものでもないし、大変難しいですね。 ○久保班長 難しいです。 ○近藤班員 疾患でやるとすれば、疾患別にプラスアルファを付けるか、スコアを上げる か、そういったことを考えてもいいかと思うのですが、なかなか難しいのは診断かなとい う。診断もなかなか難しくて、これは内科の先生にも多く関わるところだと思うのですが、 特にああいう間質性肺炎系統の疾患は、一応17疾患あるのですが、どれにも当てはまらな いような、あるいは中間的なものとかいろいろな、必ずしも典型的なものばかりでないと いうところが、なかなか難しいところはありますよね。  だけど、そこら辺は割り切って、疾患別に少しそういう、特に先生がおっしゃるように 間質性肺炎は非常に悪いので、そこにプラス何かをしてあげるというのは、あったほうが いいかもしれないですね。 ○川合班員 スコアリングの目標というのは、待機中の死亡をいかに減らすかということ にあると思うのです。それが目標だと思います。それが結果として公平な移植になるとい う。 ○近藤班員 結局、いろいろな長いものと短いものがミックスされてイーブンになってい ると、要するにいちばん長い人ばかりが上に溜まってくるわけですよね。だから、あとか ら登録した人が、いわゆる予後の悪い人が登録しても、全然上に上がれなくて、亡くなっ てしまうということがあるので、そういう意味で公平というか、そういうところを是正し ていくという意味では、そういうスコア化というのはそろそろ考えたほうがいいのかもし れませんね。 ○久保班長 しかし、これは順序を科学的につけられているのですよね。例えば病気が間 質性肺炎だからというだけでは、ちょっと説得力がないような気がするのです。間質性肺 炎であって、どうも余命がそんなに長くないというのがもっと客観的なデータを示さない と納得されないと思います。その辺、UNOSでは6minutes walkとか、そういうファンクシ ョナルステータスが入っていますよね。ですから数字で現われてくる客観データをかませ ていくということで、それをこの審議会、作業班でやるべきなのか。アメリカなどはUNOS という大きな団体がありますから、そこでやっていますが。でも、ここしかないのかもし れないと思います。 ○近藤班員 でも、日本のある意味いいところは、全国で一つですよね。最終的に適応判 断する組織が、各施設ごとに判断するのではなくて、最終的には久保先生が委員長をして いる委員会でやるわけで、だからある意味、ある程度公平に判断するというか、そういう ことができるかもしれません。 ○川合班員 そうですね。透明性は高いと思うのですが、公平かというところで、重症例 は死んでいくというところが。 ○近藤班員 これまで、結構300人以上登録していますからね。400人近く登録している から、先生のところでどうですか。何かそういうデータはないのでしょうか。 ○久保班長 私のところは、ただ返すだけですので、これはやはり中央の肺移植のほうが、 どれくらいで亡くなったかという情報はきますが、私のところはただ適応のあるなしを判 断するだけの話なのです。データを取ることは可能ですが。 ○奥村班員 いま問題になるのは、一旦登録したときのデータでずっと移植待機までいっ ているということで、その間の経過というのはあまり考慮されてないと思うのですが、例 えば本当にPPHの症例であれば、10年前だったら亡くなっていた患者さんが、いまでもず いぶん長期生存して、移植までこぎ着けている、その片一方では間質性肺炎の患者さん、 登録したときより1年後には、かなりまたどんどん進行していて、もうあと1年はとても 待てないという状況になっている、その間の評価というのが優先順位のところにあまり反 映されてこないので、疾患によって全く同等に扱われているのが、先ほどの話にあった、 どれだけ待機患者を死なせないようにするかというところに反映されてないというところ があるので、できたらやはり例えば1年くらい待っていた間にどうなっているかというの を、もう一回把握し直して、そこで優先順位を考えるとか、非常に手間なことになります が、そういった話も今後、何とか検討していただくほうがいいかなと思っています。 ○川合班員 確かに先着順ということでやっていれば、データをアップデートする必要は 全くないわけですね。アップデートしても変わらないわけですから。だけど心臓の場合な どは、半年ごとにデータをアップデートします。これは、もうステータスシステムがあっ てステータス1ステータス2があるので、アップデートしないとフェアでないということ です。  ですからデータのアップデートというのは、アップデートすることによって順位が変わ るということが前提となったものです。 ○奥村班員 大阪大学などで、そのステータス1、2といった患者さんたちを、私たちもた くさん見ていますので、やはり両方見ている立場から言うと、肺のほうがステータスの評 価がないというのは、ちょっと逆に違和感を感じてしまうというところがあります。 ○久保班長 心臓のほうは半年ごとですか。 ○川合班員 心臓は半年ごとに、データを全部出し直しになっています。 ○久保班長 それは各施設のほうから。 ○川合班員 はい、登録施設が出し直しになります。 ○久保班長 そのときに緊急順位の基準を、やはり作らないといけないですね。 ○川合班員 また、その経過中に変わった場合には、ステータス1で再登録ということで、 2の方が人工心臓にのったといえば、1に上げるという形になりますね。 ○久保班長 肺移植の適応のほうは、確かにないのですよね。緊急度が1、2、3というの をつければいいのですが、それがないからちょっと困るのですね。 ○近藤班員 やはり緊急度は、かなり難しいですよね。いわゆる血管性の疾患、気道の疾 患、感染性の疾患、そういうかなり性格の違う疾患、ヘテロな疾患が入り交じっているの で、共通の基準を作るというのは非常に難しいのですよね。  だから、そういうことがあって作らなかったというのもありますし、いままで単に待機 順にしてきたというのは、待機期間がみんな長くなっているのですよね。かなり長くなっ ているので、さすがに待てるといっても待っている状況というのは、元気に普通の生活を して待っているわけではないので、相当酷い思いをして待っているので、命があるとはい っても、それを後からきてポンと通り越していってしまうというところは、なかなか厳し いかなと。  例えばいま先を越されても、数ヶ月後にはまず間違いなく回ってくるだろうといったレ ベルであれば別ですが、そうではなかったことが、やはり登録順でいきましょう、いちば ん単純だからということで、いままでやってきたのですが、これから一般的な医療として やっていこうというのであれば、先ほど言ったような意見というのは、少しずつ取り入れ てやっていかなければいけないのだろうと思います。 ○川合班員 そういった意味では、親族優先というのはいままでのファーストカム、ファ ーストゴーを飛び越えるのをやったわけで、それに対して何かカウンターアクションがな いと、本当の意味の公平さは保たれないのではないかということです。 ○久保班長 おっしゃるとおりです。これは、まだもう少し時間があるので、是非何かい い考えがあれば聞かせてください。年齢などはどうですか。今度は15歳以下までオーケー なのですが、そこのところで議論をいただければと思います。 ○川合班員 私は肺はアメリカでの経験ですが、同じ50kg、150cmでも、子どもの肺は非 常に小さいです。気管支も小さい、肺動脈も全部小さい、パーツが小さいので、同じ身長・ 体重の大人に移植するのは非常にリスキーだと思います。外科医として難しいということ で、いくら体格が小さくても、子どもの臓器は子どもへとしたほうがいいかなということ です。UNOSも12歳以下は12歳以下へというレギュレーションを引いていますので。 ○久保班長 身長・体重ではなくて、年齢でいくと。 ○川合班員 ええ。 ○久保班長 その年齢は、例えば±5とか±2くらいは。 ○川合班員 いや、たしか。 ○佐地班員 3つに分けています。12歳未満、12〜17歳、18歳以上です。12歳以下の人 は、12歳以下がファーストプライオリティーで、セカンドプライオリティーが12〜17歳、 段々大きくなって、段々プライオリティーが下がっています。 ○久保班長 といいますのは、12歳以下ですと別にそこの間はそれほど問題にしないと。 ○佐地班員 分けてないのです。 ○川合班員 分けてないのですが、これはもう1歳と12歳は全然違います。あとは具体的 にということで。 ○久保班長 体格よりも年齢でマッチングしたほうがいいと。 ○川合班員 そうですね。彼らはそういうコンセプトでやっているということです。子ど もというのは12歳なのか、15歳なのか、16歳なのか、その辺はまたディスカッションし ないといけないと思うのですが。 ○佐地班員 実際、肺移植の7、8歳以下というのは2、3%と、アメリカでも数が非常に 少ないです。 ○川合班員 米国は高校生も車を運転するので、高校生のドナーというのは結構あるので す。高校生のドナーから非常にいい臓器をいただけるのは事実ですが、やはり小さいのは 小さいです。 ○久保班長 体格が大人並みでも、やはり小さいですか。 ○川合班員 大人並みでも小さいです。 ○久保班長 なるほど、それは貴重です。 ○川合班員 テレスコープが逆テレスコープになってしまうのです。 ○久保班長 なるほど、わかりました。 ○巽班員 そのまま移植待機までという話ですが、移植した後の成績ということは全く加 味しなくて、公平性という問題から外れると思うのですが、例えば間質性肺炎の患者さん でも、結局重症な方というのは、心臓のほうの障害が出ていますよね。そういう方に肺を 移植した場合、公平性という点から優先順位が高くて、実際に手術した場合に、その手術 が上手くいったかどうかということは、そこは全く考慮しないで、あくまでも手術するま でのスコアリングということになるのですか。外科の先生の立場から、手術して上手くい かないと、結局元も子もないですよね。その辺りというのは、どのようにお考えでしょう か。 ○川合班員 2005年にUNOSのランガルケーションスコア制度が出来て、その後の成績が いま4年目なので、ぽつぽつ論文で出だしているところだと思うのですが、結果として待 機時間はpulmonary fibrosisが減って、COPDが増えた。成績に関しては、やはりハイス コアの症例の成績が悪いというデータが出ています。ただ、ハイスコアが先に受けるのだ けれど、ハイスコアが悪いということになって、先生のおっしゃっているとおりの心配が 出てはいます。 ○巽班員 たぶん小児と大人の区別というのが、そこのところもあるのではないかという か、年齢が若い人というのは、例えば肺が悪くて、肺を移植すれば心臓もある程度ついて いくというか、リバーシビリティーがある点というのが、大人と子どもで大きく違うので はないかという気はするのですが、そういう観点で大人と子どもというのを分けているの ですか。 ○川合班員 いや、スコアリング自体は内容に6minutes walkとか、年齢にディペンデン トしたファクターが結構入っているので、それでだと思うのですが、小児はそれで計れな いという、スコアリングできないということで、12歳以下はスコアリングに載ってないの です。スコアリングではなくて、12歳以下はファーストカム、ファーストゴーで先着順と いうことです。 ○巽班員 いずれにしろ日本の場合、たぶんそんなに移植医療がワッとは進まないですよ ね。そのときに、やはり常に術後の成績ということも考えていかないと、どうなのかなと いうか。 ○川合班員 そうですね。近藤先生たちと作ってきたのは、ダブルラングはシングルラン グに優先するというのは、その辺のことがあったように記憶しているのですが、ダブルラ ングのほうが成績がいいから、シングルではなくてダブルでいこうみたいな。優先順位は ダブルのほうが高いですよね。 ○近藤班員 いや、そんなことはないです。優先順位はダブルがトップにくればもちろん ダブルにいきますが、シングルがトップにきたときに、そのペアが下になければダブルが そこの次のダブルにいくという。 ○川合班員 シングルはスキップされるわけですよね。 ○近藤班員 ええ、ペアがなければということでね。だから予後の観点で優先順位を決め ているというわけではない。 ○川合班員 ではなくて、臓器を無駄にしないという。 ○近藤班員 いままでの実施例でも、数はそんなに多くないのですが、シングル、ダブル ではっきりした差は別に出てないですし、疾患ごとの予後の差もはっきりしたものは出て ないです。 ○久保班長 他にはよろしいですか。レシピエントについて特に議論することがなければ、 次にドナーの基準について移りたいと思います。事務局から現行のドナーの適応基準等に ついて、説明をお願いします。 ○大竹補佐 それでは資料6、7に沿って、臓器提供者、ドナーの適応基準についてご説明 します。まず資料6、肺の臓器提供者(ドナー)の適応基準の法改正に係る主な意見とさせ ていただきました。こちらは1番から4番までありますが、1、2、3は変わりません。た だ、4番において「年齢:70歳以下が望ましい」と現行はなっていますが、そこに下限を 設けるかどうか、小児の移植が可能になったときに、ドナーの年齢の下限を設けるかどう か、というご意見をいただいておりまして、ご議論をいただければと思っています。  また、4番の注意書き3に、小児の肺の機能評価について、胸郭の測定を行うこと、ま た、予測肺活量の計算式を用いること、こちらのご意見をいただいておりまして、こうし たことを適応基準に盛り込むべきかどうか、ご意見をいただけたらと思っています。  また、資料7については、こちらも心肺同時移植の関係ですが、5の年齢の部分に下限 を設けるか。また、注意3として同様の記載をさせていただきました。以上です。 ○久保班長 どうもありがとうございました。まず資料6のほうからですが、肺の臓器提 供者、ドナーの適応基準ということで、今回の法改正に伴いまして、大きく5の年齢と、5 の注3の小児の肺の機能評価ということで、2つ大きな問題があります。まず年齢につい ては下限を設けるかということですが、これは具体的には何歳くらいまでを考えているの ですか。事務局のほうでは、特に考えてはいないのですか。いかがでしょうか。 ○川合班員 他の臓器との整合性というのは、どうなのでしょうか。 ○井原主査 上限を定めているケースはありますが、下限については特段記載はありませ ん。 ○久保班長 そうですね。この前の肝臓のほうの会議でも、特に年齢については制限を設 けないようになっていますが、これはもう「70歳以下が望ましい」でよろしいですか。  では、そうさせていただきます。注3ですが、この小児の肺の機能評価というのが、今 回いちばん大きく問題になると思うのですが、先ほどの川合先生の意見ですと、ここにも やはり年齢というのがくるのですか。 ○川合班員 そうです。機能評価そのものが年齢ということではないのですが、ファンク ションというのは、この酸素化能、これでよろしいかと思うのですが、要はサイズの問題 ですね。size issueというのは非常に大きいと思います。 ○久保班長 サイズの問題は年齢ではなくて、胸郭のこういう測定とか、そういうので。 ○川合班員 先ほどの計算値、予測肺活量からはちょっと外れてくると思うので、具体的 にドナー、レシピエントのマッチングというのを何らかの形で行わないと。 ○久保班長 私も専門外でわからないのですが、この胸郭の測定とか、あるいは予測肺活 量の計算式というのは、もう決まっているものがあるわけですね。 ○近藤班員 あまり詳しくはないのですが、ちょっと調べさせたのでは、何通りかあるみ たいです。これ1個だけというのではなくて、いくつか提案されているものがあるみたい ですが、小児呼吸器疾患学会というので昨年スパイログラムの基準値の作成というのを、 小児で作ったらしいのですが、先生はご存じですか。 ○佐地班員 独協のだと思います。最近出来たのですが。 ○近藤班員 例えばそういったものが1歳も2歳も当てはまるのか、よくわからないので すが、そういう計算式を用いれるのであれば、先ほどの年齢別区分というのは考えなくて もいいのかもしれないのですが、もしそういう適当なものがなければ、先ほど言ったよう な年齢区分みたいなものでやらなくてはいけないのかもしれないと思っていたのですが。 これは、ちょっと小児は。 ○佐地班員 8歳以上でないと、なかなかスパイロが上手くできませんので、信用ができ ないといいますか、信用度は低いです。 ○近藤班員 そうか。いわゆる基準値作りのが信用できないということですね。 ○川合班員 いまのはドナーのほうですよね。 ○近藤班員 ドナーです。 ○久保班長 実際のところ、もう臓器提供者ですので、可能なのは確かに胸郭の測定と、 もちろん年齢もですが、予測肺活量というのは、これはどうやって決めるのですか。身長・ 体重だけで決めるのですか。 ○佐地班員 実測できないのは、もう身長と年齢だけです。 ○久保班長 なければね。 ○佐地班員 この式で。 ○久保班長 それがレシピエントと大体マッチすればいいということになるわけですね。 では、これはまた具体的にいくつか資料を集めて、ここで出すということにさせていただ きたいと思います。  では、その次の資料7、心肺の同時臓器提供者、ドナーの適応基準についても、これは 先ほどの肺のほうと同じでよろしいですか。年齢も含めて、先ほどの注3の小児の肺の機 能評価も、先ほどの議論と同じようにやっていくということでよろしいでしょうか。 ○近藤班員 小児の肺のサイズ評価ですよね。先生がおっしゃったのは、機能ではなくて。 ○川合班員 そうですね。サイズもしまらないというのがあるものですから。 ○近藤班員 サイズマッチングのための基準というか、そういうことですね。 ○久保班長 では、これは小児の肺の大きさでいいですか。 ○近藤班員 容量か、ボリュームか、サイズか、そういったような言葉で。 ○久保班長 大きさの評価ですね、わかりました。ということで、一応ある程度ドナーの ほうについても、大体こういうところを検討していけばいいのではないかという専門的な 議論をいただきましたので、先ほども最初に説明しましたように、これは少し時間がある ので、またこの会で議論したいと思います。こちらで考えている議題は、他に何かありま すか。 ○井原主査 事務局から1点確認ですが、年齢にかかわらず、肺のコンプライアンスや酸 素化能の評価については、いまのドナーの基準でよろしいでしょうか。 ○久保班長 注の1、2ですね。 ○井原主査 はい、注の1、2で15歳未満に関しても、コンプライアンス等の評価は可能 ということでよろしいでしょうか。 ○久保班長 よろしいですね。よければ一応、今日はレシピエントの選択基準と、ドナー の適応基準について、事務局のほうで改正案を作成していただいて、その作成案は私のほ うでチェックするので、私のほうに最終的なまとめは一任させていただいて、また先生方 にその後で提示するということにさせていただきたいと思います。事務局のほうから他に 何かございますか。 ○大竹補佐 ありがとうございました。今回のご指摘を受けて、また改正案については班 長とご相談の上、皆様にご提示させていただいて、しかるべきときに臓器移植委員会に報 告し、新たな基準とさせていただく手続をしたいと思っています。また、特段今回ご議論 いただいた件については、日を改めるなりして、皆様方からご意見をいただきたいと思っ ています。 ○久保班長 では、今日はこれで終わります。どうもありがとうございました。またよろ しくお願いします。 【照会先】  厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室  代表 : 03(5253)1111  内線 : 2366 ・ 2365