09/11/06 第5回社会保障審議会少子化対策特別部会保育第一専門委員会議事録 社会保障審議会少子化対策特別部会 保育第一専門委員会 (第5回) 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局 社会保障審議会少子化対策特別部会 保育第一専門委員会 第5回議事録 日時:2009年11月6日(金) 16:00〜18:00 場所:厚生労働省 専用第21会議室 出席者:  委員   大日向委員長、岩村委員長代理、飯塚委員、市原委員、川崎委員   木原委員、駒村委員、榊原委員、佐藤委員、高橋委員、椋野委員   吉田昌哉委員、吉田正幸委員   内海委員(少子化対策特別部会)  事務局   伊岐雇用均等・児童家庭局長、香取審議官、田河総務課長   今里保育課長、朝川少子化対策企画室長 議題:    新たな次世代育成支援のための保育制度について    ・保育の質の確保・向上について 等 配付資料:   資料1-1  保育の質の確保・向上について   資料1-2  保育の質の確保・向上について 参考資料  参考資料1  柏女委員提出資料  参考資料2  佐久間委員提出資料  参考資料3-1、3-2、3-3  佐藤委員提出資料 議事: ○大日向委員長  定刻になりましたので、ただ今から「第5回保育第一専門委員会」を開催いたします。委 員の皆さま方におかれましては、ご多用のところをお集まりくださいまして、ありがとうご ざいます。  議事に入ります前に、事務局より、委員の出席に関する報告と資料のご確認をお願いいた します。 ○今里保育課長  まず、委員の出席状況でございますが、本日は柏女委員、佐久間委員から都合により欠席 とのご連絡をいただいております。また、榊原委員は若干遅れていらっしゃるようでござい ます。ご出席いただいております委員の皆さま方は定足数を超えておりますので、会議は成 立しております。また、本日は、少子化対策特別部会から内海委員が出席していらっしゃい ます。  続きまして、お手元に配布させていただいております資料の確認をさせていただきます。 最初に議事次第がございまして、資料1-1は「保育の質の確保・向上について」、資料1-2 は、その「保育の質の確保・向上について」の参考資料、参考資料1といたしまして柏女委 員から提出いただきました「保育の質の向上について〜保育士資格と養成に限定して」とい う資料、参考資料2といたしまして佐久間委員の提出された「保育の質の確保・向上と量的 拡大について」という資料、参考資料3-1、3-2、3-3はいずれも佐藤委員の提出資料でござ いますが、参考資料3-1は「『保育に関する費用保障(給付)の仕組み』に対する全国保育協 議会の意見」、参考資料3-2は「子どもの育ちを『ひとしく』保障してください」という「地 方分権改革推進委員会第3次勧告に対する厚生労働省の対応方針」に関する意見、参考資料 3-3は「子どもの最善の利益のもとに子ども家庭政策を実現させる緊急アピール(案)」とい うものです。  また、資料とは別に、事務局より先日、厚生労働省で記者発表いたしました「地方分権改 革推進委員会第3次勧告(地方要望分)に対する厚生労働省の対応方針について」という資料 を配付させていただいております。  もし、不足等がございましたら、事務局の方にお声を掛けていただければと思います。以 上でございます。 ○大日向部会長  ありがとうございました。それでは、議事に入りたいと思います。まず事務局から資料 1-1および資料1-2について説明をいただきました後、皆さまにご議論をお願いしたいと思 います。 ○佐藤委員  議事に入る前に、意見表明だけさせていただきたいと思います。まず、3枚の参考資料を 出しましたけれども、今日のPress Releaseにあるような、第3次勧告に対する厚生労働省 の対応方針は、一部ではあっても大都市では面積基準などを緩和してもよいというような対 応をするということ自体は、この委員会それから少子化対策特別部会で論議してきた「質」 というところからすると、かなりずれているのではないかと思います。ですから、特に今日 は質の向上・維持という話をするのであれば、この委員会はそれを守っていくのか、そうで はなくてこの対応を弾力的に私たちは理解するのかというところを委員長の見解も含めて お聞かせいただければと思います。 ○大日向部会長  第3次勧告に関する厚生労働省の対応方針をお配りいいただいておりますが、これはまさ に今日これから皆さまにご議論いただくものと一致いたしますので、議論の中で考えていき たいと思います。議事に入ってよろしいでしょうか。  それでは事務局、よろしくお願いいたします。 ○今里保育課長  資料1-1「保育の質の確保・向上について」に沿いまして、説明させていただきます。ま ず、第1次報告における本件に関する取りまとめ内容でございますけれども、1ページござ いますように「認可保育所の質の向上」という観点で、最低基準のあり方として、まず地域 によって子どもに保障される保育の質が異なることはあってはならず、最低限の水準を確保 すべきであるということが第1次報告でいわれています。  その上で、「保育の質の具体的向上」ということで、まずは子どもの健やかな育ちを支援 するため、子どもの視点をいかに担保できるかという視点に立って、新しい保育所保育指針 に示された保育を真に実現するために、保育の質の維持・向上を図っていくことが必要であ る。その上で、保育の質を考える上では、子どもとともに親が成長することの支援、子ども と親が地域社会とのつながりを強める場としての機能等の視点も重要であるといわれてい るところであります。  認可保育所は、もちろんこういった質を確保しながら量の拡充という、両方を図っていく ことが必要であるとした上で、保育の質の向上について親支援の必要性や障害児の受入れの 増加等の保育所に求められる役割や専門性の高まり等に対応して質を向上させるというこ と。具体的には、括弧書きの中にありますように、職員配置、保育士の処遇、専門性の確保 等について、財源確保とともに詳細な検討が必要であるとされているところでございます。  2ページにまいりまして、この質の向上という観点で、研修のことにつきまして、施設長 や保育士に対する研修の制度的保障の強化や実務経験と研修受講を通じてステップアップ が図れる仕組みについて、また研修の受講を可能とするためにも配置基準の見直しが財源確 保とともに詳細を検討すべしということでございます。そして、今申しました実務経験と研 修受講を通じてステップアップした者の配置に関しては、費用の支払いにおいて評価する等 で処遇改善を併せて進めていくことについて、財源確保とともに詳細な検討が必要であると いうことでございます。量の拡充に必要な保育士の計画的養成、研修の制度的保障の強化に 当たっては、認可外保育施設まで含めて、地域内のすべての保育研修者に対して行うという 方向で考えていくべきであるということでございます。  また、保育の質に関する継続的な検証を行っていく仕組みが必要だということ。以上が第 1次報告でいわれていることでございます。  3ページにまいりまして「保育の質を支える要素」ということで、まず保育の質といった ときに、どのようなものが質を支える要素として挙げられるのかということを(1)〜(4)の四 つに整理しております。物理的環境、保育者の配置等、保育内容、それから保育者の質や専 門性といったことでございます。上の説明書きにございますように、こういった要素につい て、児童福祉施設最低基準およびそれに基づく設置認可、指導監査などによって最低限度の 質の確保、また研修、評価等による質の向上のための取組が行われているというのが基本的 な仕組みでございます。  実際に仕組みがどうなっているかというのを、それぞれについて見たものが4ページ以降 でございます。まず(1)の「最低基準」でございますが、現行制度において、すべての子ども に健やかな育ちを支える環境を保障するために、施設設備や保育士資格者の配置について、 全国共通の最低基準が定められていて、この基準を満たさなければ認可は行われないという ことでございます。その「主な内容」としては、設備の基準として部屋の面積でありますと か、職員配置の基準として年齢ごとに保育士1人当たりの子どもの数といったものの基準が ございます。そのようなことが、児童福祉施設最低基準の保育所に係る主な内容でございま す。  5ページございますように、質を支えるもう一つの具体的な仕組みといたしましては(2) 「保育所保育指針」がございます。参考資料の方を若干ご参照いただきたいと思います。1 ページに「新保育所保育指針」の全体的な構造を第1章〜第7章で示しています。保育内容 について、このような保育所保育指針により保育の目標・内容・計画などについて定めてい るところでございます。そして、この保育所保育指針の周知・徹底を図っているというのが 現在のところでございます。この保育所保育指針は本年4月から施行されている新しいもの でございます。  (3)は「保育士の養成、研修」ですが、参考資料の方でいきますと2ページの「保育士資格 取得方法」でございます。保育士資格は指定保育士養成施設(大学、短大、専修学校等)にお いて2年以上の養成課程を履修することが一つの方法でございます。もう一つは、都道府県 の実施する保育士国家試験の合格によって保育士資格を取得するという仕組みになってお ります。資格取得後の研修については、各保育所において、または地方公共団体や保育団体 による研修への任意の参加等が行われているわけでありますが、専門性の向上に向けた研修 の制度的な体系というものは、残念ながら整備されているとはいえない状況でございます。 また、自治体によっては認可外保育施設等も含めて保育従事者に対する研修や情報共有を積 極的に実施している所もございます。  6ページにまいりまして、(4)の「評価」につきましては、そこにございますように、まず は社会福祉事業でございますので、社会福祉法でサービスの質の評価を行って、良質かつ適 切なサービスを提供するという努力義務がありますし、また国の責務というところがござい ますので、これに基づきまして福祉サービスの第三者評価事業を実施しているところでござ います。  保育所につきましては、参考資料の11ページをご覧いただきたいと思いますけれども、 保育所保育指針の中に、保育の質の向上を図るために保育内容等について自己評価を行って、 その結果を公表する努力義務というものがございます。この自己評価については「保育所に おける自己評価ガイドライン」を定めているわけでございますが、右側の下のがサイクルの ようなイメージでございますけれども、「保育士等による自己評価」という保育の振り返り というところからスタートいたしまして、それがだんだん大きく広がっていくことによって 「保育所による自己評価」を通じて質の向上を図っていく。これが保育所内にとどまるわけ ではなくて、その自己評価の結果を公表することによって、外からも質の向上のためのきっ かけをもらおうという仕組みになっているわけでございます。また、12ページでは、そう いったときの実際の自己評価の観点ということで、「保育理念」や「子どもの教育・発達援 助」、「保護者支援」「組織性」といった保育所保育指針を基準としての自己評価の観点が示 されているところでございます。  (5)が「指導監督」でありますけれども、本体の資料の方に戻っていただきまして、6ペー ジの下のところでございます。先ほど申しましたように、保育所は児童福祉法に基づきまし て設置時、それからその後におきましても、常に最低基準に定める設備と運営の基準に適合 していることが必要でございます。それをきちんと守っているかどうかということについて、 定期的に都道府県知事等の監督指導を受け、基準に達しない場合には改善勧告、改善命令、 さらには事業の停止、認可の取消といったところまでいく処分があり得るという体系になっ ているところでございます。  7ページにまいります。ここまでは主に現在の保育所、保育士に焦点を当てて現状を説明 してまいりましたが、今回、公的な保育サービスの広がりを考えますと、保育所以外の家庭 的保育や一時預かり、認可外保育施設といった多様なサービスがあるわけでございますが、 これについての基準の現状を7ページにまとめております。  まず、一時預かり事業でございますが、これは児童福祉法上に位置付けられているもので ありまして、この法律に基づいて保育所に関する児童福祉施設最低基準に準じることが規定 されているところでございます。  家庭的保育事業につきましては、児童福祉法が改正されて事業が法定化されました。この 改正法の施行は来年4月からとなっていますけれども、これに伴いまして省令に規定する実 施基準に基づいてこの家庭的保育事業を行うということになるわけであります。  では、そこまでの間は何も基準がないかというと、そういうことではございません。現状 は国庫補助がございますので、この補助対象という形で基準を示しているということでござ います。例えばそこに例としてございますけれども、保育士または看護師の資格を有する者 1人に対して就学前児童3人以下(補助者を雇用する場合は5人以下)、専用の部屋を有する こと(居室は9.9平方メートル、3人を超える場合は1人超えるにつき3.3平方メートルを加算)ということがござ います。なお、改正児童福祉法の施行に伴いまして、保育に従事する家庭的保育者になれる 者は保育士と同等の知識および経験を有する者として市町村が認める者であって、さらに所 定の研修を修了した者にまで広がっていくということになっています。  認可外保育施設についての基準でございますけれども、劣悪な施設の排除という観点から、 職員、設備等に関する認可外保育施設指導監督基準というものがございます。そして、制度 上、設置の届出義務が課せられておりまして、都道府県知事による指導監督・勧告・公表・ 事業停止命令の対象となるという仕組みになっているところでございます。ここまでが、現 状どのような形で質を確保する仕組みが形づくられているのかというところでございます。  そして、新しい制度の下でそれぞれの観点から、どのようなことが具体的な論点になるの かというのが8ページ以降でございます。まず(1)「最低基準」の面積基準についてでござい ます。現行の最低基準の面積基準は、昭和23年に定められたものでございまして、当時と 同じ数値基準を定めているところであります。限られた空間では、子どもに主体的な活動を 促すことが難しく、子ども同士のかかわりも少なくなるということがございます。また、保 育室の面積だけでなく、全体の生活の空間があるかどうかという点も重要でございます。そ のようなことを踏まえて、新しい仕組みの下での保育所の面積基準についてはどのように考 えるかということが論点の一つになってくると思います。なお、「機能面に着目した保育所 の環境・空間にかかる研究事業」の研究会では、「現行の面積基準を切り下げることや切り 下げられるような仕組みを導入することは、一人ひとりの子どもの発達に応じた保育をより 困難にするものであることから、少なくとも、現行の基準以上であることが必要」という報 告が取りまとめられているところでございます。  9ページの(2)「職員の配置基準」ですけれども、ご案内のように保育従事者は保育士資格 を有するということを求めております。保育は、乳幼児期の子どもの発達過程を踏まえて保 育環境を構成し、養護・教育を一体的に行うという特性がございます。さらに、親支援や障 害のある子どもの受入れなど、保育所の役割の深化・多様化もございまして、保育従事者に 求められる資質や専門性はますます高まっている。翻って現行の保育士の配置基準を見ます と、年長児を中心に、特に国際的にも手薄いという指摘がございます。また、8時間の保育 時間を前提とした配置でありながら、実際の利用時間は開所時間11時間となっている。こ のようなところの乖離についても指摘されているところでございます。このようなことを踏 まえて、新しい仕組みの下での職員の配置基準についてどう考えるのかということが論点に なろうかと思います。  なお、先ほどから話題になっております地方分権の関係でございますけれども、保育所に 係る最低基準につきましては、子どもの生活の安全、健やかな育ちの保障ということで、国 が最低限度必要な基準を全国共通のものとして定めているわけでありますが、地方分権改革 推進委員会の第3次勧告では、これを地方分権の観点から、廃止または条例へ委任すべきと して勧告がなされて勧告がなされているところでございます。  別紙でお配りした資料でございますけれども、厚生労働省の対応方針といたしましては、 2枚目の紙をご覧くいただきたいと思います。この表は、必ずしも保育所だけに係るもので はなく、社会福祉施設全般にかかわるものでございます。その際に、(1)(2)(3)(4)・・とござい ますが、全体的にはやはり地方分権を推進するという観点から、「対応案」という欄のとこ ろをご覧いただきたいのですけれども、(4)「上記以外の施設・設備・運営基準」については 「参酌」と書いております。これは「国の基準を参考にして、条例で定めてください」とい う意味でございます。さはさりながら、人員配置基準、保育所でいえば保育士の配置基準、 それから保育室等の居室の面積基準、それから保育指針でありますとか、そういった関係の、 ここでは「人権に直結する」するという整理の仕方をしておりますが、最低限必要であるも のについては、国が定める基準に従って、そのとおりの基準を条例で定めるようにという回 答をしているところでございます。ただし、その「従うべき」という水色で塗ってある所の 右側でございますけれども、このような全体の仕組みを国のナショナルミニマムとして保障 した上で、東京等に限り、待機児童解消までの一時的な措置として、「居室面積基準」のみ 「標準」とする。この「標準」という言葉の意味は、国の基準と違う基準を定めることが可 能になるけれども、その場合は定める地方公共団体に合理的な説明が必要になってくるとい うものでございまして、「参酌」という単に参考にすればよいというものとは若干異なった カテゴリーになっているところでございます。以上、本日の資料からは離れましたけれども、 地方分権改革推進委員会の勧告関係のことを説明させていただきました。  資料の9ページ、先ほどのところに戻りますが、(3)の「多様な保育サービス」について、 現状はどのような基準になっているかということを申し上げましたけれども、当然論点とい たしましても、新しい仕組みの下での短時間保育や一時預かり、家庭的保育等の多様な保育 サービスそれぞれについて、一定の基準と質を担保するための仕組みが必要であるというこ とでございます。  10ページにまいりまして、「保育内容」でございますが、先ほど申しましたように、保育 所保育指針が改正されたところでございますので、これを踏まえた保育の実践・展開を推進 するために職員等への周知や理解増進・現場の保育実践を担保するとともに、今後行ってい く取組が必要であるということ。さらに、保育所保育指針は評価の際の基準となるものとし て機能すべきであって、外から見て客観的な評価へ活用できるようにする必要があるのでは ないかという点。また、将来的には、保育指針のさらなる改善というものが必要であると考 えられますので、そのためにも保育実践を踏まえた科学的・実証的な調査研究が必要であろ う。そして当然、多様な保育サービスについても、その保育内容の基準としての指針が必要 であるということを挙げております。  次に「保育者」でございますけれども、まず保育士の位置付けについてということであり ますけれども、保育サービス従事者の中での保育士、つまり、現在は指定保育士養成施設の 卒業者の46%が保育所、23%が幼稚園に就職ということで、大部分が乳幼児の集団保育に 従事している状況ですけれども、新たな仕組みにおける多様なニーズに対応した多様な給付 メニューの中で、保育士の専門性をどのように位置付けていくかということが課題になろう かと思います。また、児童福祉事業従事者の中での保育士といたしまして、保育所以外にも 児童養護施設、児童自立支援施設等の小学校入学前の児童に限らない児童福祉施設職員の保 育士は任用資格となっておりますけれども、その養成課程等に照らした専門性をどのように 考えるかという点があろうかと思います。  続きまして、保育士の質や量の確保、計画的な養成とが量の抜本的な拡充のために必要で あるという前提に立ちまして、i)でございますけれども、まずは求められる専門性に対応 した保育士養成課程となっているか。さらに、いくつかの年限の複数のカリキュラムや多様 な人材の活用を可能にする養成の仕組みは考えられないか。  ii)といたしまして、制度的に研修を保障するということについては、受講を可能とする ために配置の見直しや財源確保と併せて実施する必要がある。その際に、どこまでの保育従 事者を、研修を制度的に保障する対象とするかということがございます。  iii)でございますが、先ほどご紹介いたしましたように、第1次報告では実務経験と研修 受講を通じてステッアップが図られる仕組みが提唱されておりますけれども、このステップ アップというものを具体的に考えるときに、保育所の中で、誰がどのような役割分担をする のか。それからマネジメント体制をどう取るのかということが一つ、検討することになろう かと思いますし、またステップアップの頻度などについてどう考えるか。さらに、ステップ アップした者によるサービスが費用の支払いにおいて評価されることが必要で、それが処遇 の改善につながるべきである。また、第1次報告では「実務経験と研修受講」と言っている のですが、これ以外に今、ステップアップの基準とすべきものがあるのかないのかというこ ともございます。  iv)でございますけれども、保育士が長期的な視野を持って充実できるようにするために、 キャリアプランの広がりといったようなことも考えるべきではないか。例えば、参考資料の 8ページに「介護職員の養成研修体系とキャリアパス」という資料がございます。つまり、 単に養成と研修だけではなくて、その後、保育の現場から例えば外の職場で専門性を生かし つつ活躍するキャリアコースを提示することができないか。  v)は、保育現場を離れている保育士の再就職支援の観点です。  vi)は、当然保育士以外の担い手が多様なサービスにおいてはあると考えられますが、そ の専門性の向上のための研修等の支援の推進が必要であると。  最後になりますけれども、12ページの(4)「指導監督、評価」です。先ほどもありました ように、客観的基準に基づく事前規制、そして行政による指導監督、情報公開制度等の事後 規制、自己評価や第三者評価、情報公表等による質の確保されたサービスの保障。これを制 度的に担保するための課題として、まず(1)「指導監督」については、新たな仕組みの下での 公的責任を行政が果たすことがより重要になってくるわけですけれども、そのときに質の確 保のための指導監督もその一つの要素であろうと。そのための実施体制などはどう確保する べきなのか。  (2)は「評価等」です。質の向上のためには、保育内容、マネジメント体制を含めた保育サ ービスの運営すべてについて、評価や検証が必要です。そのためには、第三者評価のあり方、 その受審の促進。第三者評価の意義として、第三者評価を受ける以前に自己評価を実施する ことが重要で、これらについてのサービスの質の評価といったPDCAサイクルを組み込ん でいくことが必要ではないか。  さらには、この評価について、家庭、地域、小学校等と保育は密接な関係を持っておりま すので、これらとの連携そしてその視点を生かした評価も必要ではないか。ただし、その際 に、それぞれの視点にはそれぞれ限界がある。外部から見ることには外部から見るなりのデ メリットといいますか、限界があるということについても留意する必要があるということで す。  13ページは「情報公表」です。もちろん適切な利用者の選択ということに情報公表は必 要ですけれども、サービスの質の向上の観点からも、例えば職員の保育経験や職員配置、キ ャリア形成の実施体制といったことについての基本的情報、そして質の確保のための取組、 サービスの内容、これらに関する情報を提供して、さらには自己評価や第三者評価の結果の 公表等と行政による情報提供を適切に行うことによって質の確保を図る。そのために制度的 な位置付けの検討が必要ではないかという論点に基づき、公表すべき情報や方法・頻度につ いて検討が必要ではないかとしているところです。以上、本日の資料1-1に基づきまして説 明させていただきました。 ○大日向委員長  ありがとうございました。本日のテーマは、保育の質の維持・向上ということです。保育 の質に関しましては、施設設備の機能、面積等の物理的な環境、保育者の配置、保育内容、 保育者の質や専門性がありますが、いずれも相互に関連していると思いますので、本日は特 段区切らずに、保育の質の維持・向上の点で、ここからは皆さまにご議論をいただきたいと 思います。資料は8ページ以降に「具体的な論点」をまとめていただいておりますので、で きればそれに即してご意見をいただければと思います。  お待たせいたしました。佐藤委員どうぞ。 ○佐藤委員  冒頭に申し訳ないことをいたしましたが、あらためて、今回の資料の中の最初に付いてい ます「最低基準のあり方」は、これまでもそうですけれども、子どもに保障される保育の質 が地域によって差があってはいけない。それが大前提で第1次報告を出されたと思います。 そういう意味では、それを力とし、昨日、全国保育協議会と全国保育士会は「子どもの育ち を『ひとしく』保障してください」という意見表明を厚生労働省大臣あてに出させていただ きました。そして何よりも、例えば都会であっても居住空間だけであったとしても、それが 一時的にでも、もしかすると子どもにとって、ごめんなさい、下がってもよいと容認してこ の議論をすること自体が、この委員会として適切なのかどうかというのは、やはり違うので はないかと思います。そうでないと、本日の保育の質の話はできない。大前提として全国一 律にきちんと子どもたちが育つ基準は守る、高めていくのだと。それが大前提でこの議論が 始まったと私は理解したいと思っております。その辺りのことを皆さまと共通に認識しない と、ここから先は議論できないのではないかと思います。特に質のことに関連しているので、 そこのところを特に話していただければということです。  前回、最後のおまとめのときに大日向委員長がおっしゃっていたのが、少子化対策特別部 会も保育専門委員会も保育を守るためにやっているという覚悟を示されました。そういう意 味では、今回暫定的であっても、都会の面積基準うんぬんが報道されることというか、対応 されること自体が少し違うのではないかという意見を述べさせていただきたいと思います。 ○大日向委員長  ありがとうございます。先ほどの繰り返しになりますが、保育の質には先ほど申しました 4項目があります。第3次勧告はこのすべてに関して地方に委任ということでしたが、それ に対して、今日配付されています厚生労働省の対応では、この内の三つは「従うべき基準」 として、何とか今回は守られたと理解できるかと思います。ただ、面積基準に関しては、都 市部に関して一部緩和とされたことについて、佐藤委員から強いご懸念が示されました。ど うぞ他の委員の方のご意見も承りたいと思います。それでは飯塚委員、吉田昌哉委員の順に お願いいたします。 ○飯塚委員  今のお話に反論するわけではないのですが、まず地方分権ということでこの話があったと 思います。この地方分権は私なりの理解では、地域のことはそれぞれの地域で決めるという ことが多分前提にあるのだろうと思います。そのようなことを踏まえまして、私も保育の質 は保育を運営していく上で、最優先で取り組まなければいけないことと十二分に承知してい るつもりですが、地域によっては、特に保育の質を求めるより要件を緩和して1人でも多く 入れてほしいという住民の意見が優先される地域も中にはあるのではないかというお話な のだろうと思います。それは私が実際に窓口に立って、電話等でもそのようなご意見を実際 にいただいております。例えば、定員の120%というところで機械的に切ってしまって、あ と1人や2人は何とかならないのかというお話は、結構いろいろな保護者の方からご意見を 伺っております。それが、より切実といいますか、深刻といいますか、特に都会ですと、そ のようなことが多い所については、保護者のニーズがやはりそれを上回るぐらい深刻といい ますか、本当にそこで保育してもらわないと、明日からクビを切られてしまうなど、切羽詰 まっている状況も実際に出てきているのだろうと思います。これは地域で、議会の条例で決 定するというお話のようですが、その議会の中で住民の代表の方がきちんと話し合った中で、 仮にやはり一時的にはそちらを優先すべきだろうという住民の声が上回ったとすれば、それ は何を優先するかといったら、やはり住民あっての行政ですので、住民の意見を最優先すべ きではないかという観点に立たれて、このような勧告を出されたと私なりに理解しました。 質は質で、最優先で取り組むべきですけれども、一方でそのようなこともあると。  もう一つ申し上げたいのは、このような話をするには、待機児童の解消についてやるべき ことをやって、それでもやり足りなければこのような手段になると思いますけれども、私な りに待機児童の解消について、まだやるべきことをやれていないのではないかと思っていま す。具体的に言いますと、例えば施設整備の補助金である「安心こども基金」が昨年度から 創設されて、私どもも使って整備しておりますけれども、その中には対象として、社会福祉 法人、学校法人は認定こども園、幼保連携型を設置するのみで、日本赤十字社、公益社団法 人、公益財団法人、特例社団法人もしくは特例財団法人ということで、公益法人に限定され てしまっているのです。特に市町村が直営で整備する場合には当然対象にもなりませんし、 株式会社が整備するときにも対象にならないということで、ここで非常に限定的な形で枠組 みされてしまっているので、特に直営でやりたいという市町村も中には結構あると思います が、財源的に確保できないので断念せざるを得ないところがあります。この辺の基金の拡充 といいますか、要件の緩和は、まずは取り組んで、それでもなかなか施設整備が先に進まな いということであれば、このような手段も取り得るのだろうと個人的には思っているところ です。以上です。 ○大日向委員長  ありがとうございます。吉田昌哉委員、お願いいたします。 ○吉田昌哉委員  最初に、地方分権改革推進委員会の第3次勧告に対する厚生労働省の対応方針についてで すけれども、やはり従うべき基準となっても、国の基準から条例に移譲することによって、 質の切り下げという結果になるのではないかということを深く懸念しております。やはり、 今この保育第一専門委員会や少子化対策特別部会で議論している例外なく利用保障をして いく新たな制度と財源保障がセットでないと、やはり地方分権で質を確保しながら量的拡大 も図るのは難しいのではないかと考えております。  本日の議題に入るのですが、(4)の指導監督です。とりわけ行政の指導監督について幾つ か意見と確認したいことがあります。市町村の関与になりますので、前回議論しました費用 保障について少し蒸し返すような結果になることをご了承いただきたいと思います。  前回の保育第一専門委員会で、私自身は初めて費用保障という考え方を目にしたのですが、 私なりに解釈しますと、今までは市町村が事業者に委託して保育という現物サービス、つま り現物給付を個人に対して給付していた。それを今回、個人に対して費用を保障するという ような金銭給付に変わったことは、私自身は今回の新しい制度の骨格、根幹にかかわること ですので、先ほどの地方分権の動きもありますのでスピード感も持ちつつ、やはり少し丁寧 に議論していく必要があると思います。現行の保育制度では、やはり先ほど言ったように現 物給付になっている。前回に例に出された医療においては直接的な委託関係ではないけれど も、地方厚生局が医療機関を指定することによって、言うならば準委託契約に基づいて個人 に対して療養というサービス、現物を給付しています。一方で、介護の方は介護費用を個人 に対して給付する現金給付になっていると解釈しております。その場合に、介護費用を個人 に給付して、そこから事業者に対して料金が支払われるので、非常に市町村と介護事業者は 対面的な関係にないということが言えると思います。そのために、市町村が介護の事業者の 運営に直接関与できない。  一方で、指定権者は都道府県ですので、指定制に基づいて事業者規制はできるのかもしれ ませんけれども、あくまでも指定権者は県であると。今回の保育制度でも指定するのは県で あるということで皆さまは議論を進めていると認識しております。そのように権限が県と市 で分化された場合に、市町村が本当に指導監督するような権限が担保されるのかということ を非常に私自身は理解できないでいる状態です。  第1次報告では、公的保育契約は保育所と利用者が向き合う点では非常に評価できるもの だと考えております。ただ、この公的保育契約を読みますと、市町村が公的責任を果たす三 者の枠組みの中で、事業者と利用者が直接契約を結んでいく。ただ、この公的責任が今回の 費用保障であれば、果たしていくことができるのかということを疑問に思っている次第であ ります。例えば第1次報告で、今回の資料の2ページの2番目の丸ですが、「実務経験と研 修受講を通じステップアップした者の配置に関しては、費用の支払いにおいて評価する」と。 それが費用保障です。直接個人に対する金銭給付になった場合に、そのような評価を配慮し ていくことをどうしていくのかという疑問があります。例えば介護のように加算などでやっ ていく方法もあると思いますけれども、なぜ現在、利用保障という事業者と市町村が対面す る関係を崩して、指定権者の県と市町村のそれぞれに指導監督の権限を与えるという複雑な 仕組みにしていく必要性があるのか、理解できないでいます。  そこで具体的に質問をさせていただきたいのですが、繰り返しになりますが、指定権者は 県で市町村に代わって指定しているという解釈もありますが、そのような仕組みの中で果た して市町村が事業者に対して指導監督していく、関与していくような権限をどのように担保 していく方法があるのか。  2点目が、先ほど言いましたように、勤務年数や保育所の配置などについてどのように費 用に反映していくことができるのか。  3点目が一般的な質問で恐縮ですが、例えば利用保障の仕組みを残したまま、使途制限の 一部を緩和するような選択肢もあると思いますけれども、なぜそのような費用保障にしなけ ればいけないのか。私の解釈では、費用保障にしてしまうと使途制限はしないという選択肢 しか残らないと、いろいろと勉強して解釈しているのですが、なぜそのように利用保障では なく金銭給付の費用保障に移行する理由があるのか。この3点について事務局でなくても結 構ですので、もし理解されている方がいましたらお教え願いたいと思います。以上です。 ○大日向委員長  ありがとうございます。ただ今のご質問は多分前回もご説明があったと思いますが、十分 ご理解いただけるまでの質疑応答に至らなかったのかもしれません。繰り返しになって恐縮 ですが、朝川少子化対策企画室長からもう一度ご説明をお願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  不十分なところがあれば、またどなたかに補足していただければと思います。1点目は、 仮に指定権者が都道府県になったときに、実施主体である市町村と都道府県という行政の役 割が分かれてしまう。指導監督は基本的には指定権者である都道府県がやることになるだろ うから、市町村は関与できないのではないかというご疑念だと思います。そもそも前回ご説 明しましたとおり、指定の法的な性格としては、本来、事業者と市町村の間で、このような ルールに則って公的保育のサービスを提供すれば公的な財源保障をしますと。そのような約 束をするという性格が本来的にはあるわけです。それを市町村ごとに指定するのではなく、 都道府県が代わって指定するという約束事ですので、元をただせば実施主体である市町村の 権限に由来するものであるというような考え方ができると思います。その一部を都道府県に お任せしているということだと思いますので、法律上仕組んだ先は、都道府県と市町村でど のような役割分担をして指導監督をするかという問題になりますので、全く同じ指導監督を 県からも市町村からも受ければそれは二重でダブりだという話になると思います。その役割 分担はやりながらだと思いますが、都道府県よりも住民に一番身近な市町村がやるべき指導 監督というものの役割の整理をした上で、市町村が関与するのは法律上仕組むことは十分に 可能だと思います。  2点目は、職員の配置状況などが単価、費用に反映できるのか。それは利用者に対する補 助の仕組みにしたら、利用者に対する補助だから、それは事業者側の要素が考慮できないの ではないかというご疑念だと思います。それについては、他制度でも既に類似例はたくさん あると思っています。例えば医療制度でいえば、同じ病院に入院することでも看護師の配置 が手厚いか薄いかによって診療報酬の額は変わっていますし、介護保険でも似たような仕組 みはあろうかと思います。それは要するに事業者から提供されるサービスの質と言ってよい のでしょうか、内容が違うことを評価しているということですので、そのサービスの内容に 応じて単価の内容も変えるというのは合理的な話で、仮に費用の払い方の考え方が利用者に 対する補助だということにしたとしても、それは事業者側の状況は当然考慮できるというこ とになると思います。  3点目は、利用者に対する支払いという構成を採ると、原則使途制限ができなくなるので はないかと。そうであれば、あえて利用者に対する補助という仕組みを導入するのかという ご疑念だったと思います。まず、前段の利用者に対する補助の仕組みで、かつ代理受領にす るというセットの仕組みにしたとしても、それはお金の支払い方の問題なので、使途制限と は直結しないということは前回ご説明したとおりです。それはできるだろうというのが我々 の考え方です。それは要するに、どこまで規制するかという話なので、それは合意の範囲が どこまで規制するかということを見出していけば規制する手法はあるだろうということで す。  直接は関係しないのですけれども、あえて利用者補助にしなくてもよいではないかという 点について言えば、これは今回の新しい保育の仕組みの基本的な考え方にかかわるところだ と思いますが、行政主体、要するに市町村からの委託によるサービスを開始するというとこ ろを改めて、当事者同士の契約を出発点としてサービスの利用が始まるという仕組みにする ことにより、現行制度の諸々のネック、ボトルネックになっている例えば量が増えないなど、 そのようなことを解消していこうということですので、当事者同士の契約からサービスの提 供がスタートするのであれば、それはそこでかかった費用を払う利用者に対して、一度お金 の払い手である市町村が払うという構成が非常に自然に出てきます。そういったことから、 しかし、そこで問題が起きることについては、法定代理受領でカバーしましょうということ ですので、そのような内容の提案をしているとご理解いただければと思います。 ○吉田昌哉委員  度々申し訳ありません。少し理解が進んだのですが、3点目の利用者補助について、私は なぜ利用者補助にしたかということではなくて、なぜ医療制度のように保険者と医療機関が 一緒になって指定という契約に基づいて、被保険者に対して療養という現物を給付する、つ まり市町村と保育所が指定という契約に基づいて、利用者に保育というサービス、現物を給 付する制度にしなかったのか。なぜ費用を保障する制度したのかというメリットについてお 聞きしたのが1点目です。  2点目は確認ですが、最初のルールに基づいた市町村と事業者の約束と言ったのですが、 これは何かしら、指定以外の契約でやっていくのか。つまり今の医療や介護にはない関係と いいますか、そのようなことを新たにつくっていくということなのでしょうか。 ○朝川少子化対策企画室長  1点目は失礼しました。少し質問を取り違えていたようです。今、吉田昌哉委員がおっし ゃったのは、医療保険制度は介護保険制度と違って保険者が現物給付をするという構成にな っている。医療そのものを提供すると規定した上で、それを指定された医療機関に対して委 託してという構成になっている。なぜ、その方式が採れないのかというご質問であったと思 います。これは私の理解なので必ずしも正しくないかもしれませんが、例えばサラリーマン が加入する健康保険制度では、確かにサラリーマンの被保険者本人については今おっしゃっ たような構成になっていますけれども、被扶養者については家族療養費ということで必ずし も現物給付構成になっていない。まさに利用者に対する支払いの代理受領という構成になっ ていて、家族が医療機関にかかったときに、サラリーマン本人がかかったとき違うことが起 きているかというと起きていないのです。ですから、歴史から来ている経緯のような要素が 多分にあると私は理解しています。最近の制度の基本的な仕組みとしては、利用者を主体と した仕組みを作るという意味合いもあると思いますので、利用者に対して支払うという自然 に出てくる流れを尊重した上で、しかしそこで出てくる問題点を解消するために法定代理受 領という形を採る方法が自然ではないかということだと思います。  2点目は市町村と事業者に新たな契約関係のようなものが発生するかどうかということ ですよね。  これは法的に整理すれば、恐らく都道府県が指定するということで、それを由来として市 町村と事業者の関係もあるということだと思いますけれども、法律上の条文に則すればその ようなことになるのではないかと思いますが、もともと今回の新しい仕組みでは市町村に保 育の実施責務を掛けると言っていますので、そういったところから市町村と事業者の関係も 当然出てくる。条文上はそのような規定を書けばそのような権限ができますので、そのよう なことなのではないかと思います。 ○香取審議官  若干補足しますと、「指定」の話ですが、この場のでは指定を都道府県にするかというこ とを前提に議論しているわけではないのではないかと思います。というのは、医療保険なり、 介護保険でなぜ都道府県指定を前提とするかというと、サービスの利用のエリアが市町村の 圏域を越えることになるからです。保険者は市町村ですから市町村ごとに指定するという構 成を採ると、例えば東京都千代田区にある医療機関は、東京都中の全市町村から指定を受け る形にならないと皆が利用できない構成になるので、基本的には都道府県指定という構成を 採る。更に都道府県が指定すると、日本中の人が受けられる。いわば日本中の保険者が指定 したのと同じ効果が働くことになっているのですが、昔はそうなっていなかったので、東京 の医療機関は東京の指定を受けていると東京の人しかかかれない。神奈川県の人が受けよう と思うと、神奈川県の指定も取らないといけない仕掛けになっていました。今は全国通用に なっていますが、そのようなことから都道府県で指定するということになっていたわけです。 サービスの性格上、地域性の高いもの、サービスの利用エリアが特定の市町村を単位にして 提供されるようなものは、例えば介護保険の地域密着型サービスのようにそもそも指定権者 を市町村に下ろしています。今回の場合は保育のサービスをどのように考えるかと。基本的 は市町村のエリアでサービスが完結する、地域の人が利用するものだと整理すれば市町村が 指定する構成を採ることも当然可能なのです。都道府県か市町村かというのは、そのような 技術的な法律の構成の問題で、市町村の指定という形で組むとなればそのようにすればよい ということだと思います。  それから、現物給付、現金給付のお話は、先ほど朝川少子化対策企画室長からご説明した とおり、医療保険が現物給付構成を採って、いわゆる10割給付構成を採っているというの は、もともと健康保険法の本人給付は10割給付で、一部負担のない構成を採っていて現物 そのものが100%の給付だったのでそのような構成が恐らく歴史的には通ったのではない かと思います。お話ししたように家族療養費は当初5割給付、その後で7割給付になったの で、当然一部負担が発生していたので、当初から療養費構成を採って、代理受領の形を取る 構成を採っていたのだと思います。そのことは何をもってわかるかというと、10割給付で 医療保険制度、それからその後1割負担とか一部負担を入れていったのですが、現物給付の 10割給付あるいは現物給付の給付であっても、一部負担は、基本的には医療機関と患者の 間で支払いが行われるという構想を採っていたわけですから、その意味では論理的にもし利 用者とその支払機関との間に関係がないと考えるのであれば、一部負担も保険者との間に本 来は発生するはずですから、そのように構成していたというのは、むしろ考え方としては当 事者間の利用に対して費用保障をする考え方で基本的には法律構成としてはできていたと いうことなので、介護保険あるいは今、議論されているような形の方が、法律の仕組みとし ては多分自然な形なのではないか。もちろんそれはこの間の議論でもあったように、サービ スを利用する市民の側、利用者の側の当事者性というものをきちんと制度の中に位置付ける という考え方が基本にあって、そういう構成を考えるということになっている。これは前回 お話したことですが、そういうことだろうと思っています。 ○大日向委員長  よろしいでしょうか。 ○吉田昌哉委員  大変理解を進めることができました。例えば市が指定者になることによって、市の関与を 担保する方法もあるということもわかりました。ただ利用者性だとか事業者と利用者が対面 する構造というのも大事で、そちらも担保していくべきだとは思うのですが、市町村が関与 していく。とりわけ事業者の保育の実施に関与していく制度も、この議論または少子化対策 特別部会の中の議論で担保していきたいと思っています。 ○大日向委員長  他にいかがでしょうか。市原委員、お願いします。 ○市原委員  ありがとうございます。本日の具体的な論点で挙げられた中で、実際に基礎自治体として この論点で挙げられた課題を克服するために取り組んでいる点について、ご紹介させていた だければと思います。  まず10ページの(2)「保育内容」としまして、保育所保育指針の改定に伴って実際に保育 現場で働いている職員の周知・理解を増進するということですとか、また保育指針そのもの を保育の実践にどのように具体的に結びつけていくかという部分について、まず1点目事例 としてお話します。  三鷹市では平成16年度に三鷹市が持つ地理的な要因ですとか、また市の考え方を盛り込 んだ保育現場で生かすべき保育のガイドラインを策定しまして、こちらにつきましては保育 関係者が現場で日々保育にかかわる上で判断をする際の判断材料ですとか、行動の指針とし て活用しているわけです。また、このガイドラインをさらに保育指針の改定に伴い、現場レ ベルで保育指針をどのようにガイドラインに落とし込んで、日々使っていけるかという調査 研究を昨年度いたしまして、今年度実践に結び付けています。さらに、保育指針の改定の中 にも謳われています保育要録の活用といった部分につきましても、現場レベルでどのような フォームが望ましいか学習・検討の場を設けているところです。こうしたガイドラインにつ きましては、三鷹市では直営の公設公営保育所のみならず、公設民営や民説民営、それから 認可外の認証保育所まで含めて、保育現場の職員として持つべき共通理解に結びつくツール として使っているということが、まず1点目のご紹介です。  11ページの (3)保育者の中でii)研修についてです。この研修の受講につきましては、特 に私立の保育所に向けましては、実際に国庫負担金での研修に係る補助、助成金というもの もありますが、基礎自治体においては独自助成制度というものをかなりの市町村が持ってい まして、三鷹市につきましても、私立保育所の職員研修また能力開発に向けては、市の独自 助成制度の中で施設に対する補助ですとか、研修に参加する私立保育所の職員が不在の際の 代替のパートの配置に対しての助成ですとか、そうした意味でのバックアップをしていると いうのが二つ目のご紹介です。  その下のiv)の保育士のキャリアプランの持ち方ですとか、またキャリアコースの提示と いう部分ですが、この部分につきまして三鷹市においては保育士に限らず全職員にキャリア プランの設計と実施に向けての計画を、毎年度キャリアシートに落とし込むことを義務付け ており、その達成度によって職員の処遇に結び付けている人事制度を持っています。こうし たものが現実的に公設公営保育所の現場においても、保育士を含む各専門職がいかに自分を スペシャリストに高めていくためのキャリアパスを設けることができるか、また達成するた めの手法、努力義務というものを自分で課してキャリアプランとして描いていくという制度 を運用しています。ただ、これは現在、公設公営保育所の職員に対しての制度運用ですので、 こちらがどのように他の私立なり認可外の保育所の人材育成に結び付けていけるかという 辺りは、まだまだこれから検討の余地が残されています。  12ページの(4)「指導監督、評価」の部分ですが、こちらにつきましては三鷹市において の一つの指導監督、評価の実施と外部公表、それは主に保護者に対してですが、そうした公 表のサイクルを一つ確立しておりますのでご紹介したいと思います。私立の保育所と認証保 育所につきましては当然、東京都の指導検査が2年に1回あります。それに加えまして三鷹 市では市の事業として第三者評価を福祉施設全般に毎年度実施を義務付けております。保育 施設につきましても、大体3年に1回第三者評価を認可・認可外を含めて受審しています。 その結果につきましても、東京都の持っている東京都福祉ナビゲーションというウェブサイ トで公表するという手法を採って、評価結果を広く公表しています。  それから、公設公営保育所と公設民営保育所につきましては、全園で年に1回は必ず保護 者、利用者の満足度調査を行っていまして、それと同時に内部的にも職員の満足度調査を行 っています。そうしたもので外側・内側からの評価を得まして、その結果については保護者 に対して公表しているというシステムを持っています。その他にも、各園に市の子育て支援 関係者を中心に、保育園を訪問して保育園現場での保育の質を現場と一緒に考える機会を持 つとか、また保育園ごとに保護者や近隣住民を含めた運営委員会という検証のための委員会 を持っていまして、園ごとに年に最低2回はその委員会を設け、園の運営実績と次年度の運 営計画についての議論をする場を持っています。そうした要素を組み合わせまして、年度ご とに一定の保育施設の検証サイクルにしているという事例としてご報告をさせていただき ました。以上です。 ○大日向委員長  ありがとうございます。他にいかがでしょうか。佐藤委員、お願いいたします。 ○佐藤委員  すみません。あらためて、淡々とこうやって四つの論点で進んでいくことに限りなく危惧 を持っています。例えば保護者の方たちが確かに待機児童がいて子どもたちが保育を受けら れないというニーズはわかります。その間、保育保障を受けられない子どもたちがいること もわかります。それは私も保育者としてとてもつらいことです。だからといって、例えばあ る一部の地域の中で、「あなたたちにはこれだけの広さが必要だけれども、あなたたちは都 会に生まれたから、この小さな所で我慢してね」。それがこの国の覚悟かと言われたら、私 はそれは違うだろうと思います。この保育専門委員会そのものの中で、保護者のところだけ ではなくて子どもの生活の安全や健やかな育ちも保障をするという両方を論議すると言っ たではないですか。現行今それを土台を揺るがすかもしれない。今の新しい仕組みではない ですよ。そうではなくて今現行の仕組みの中でそれを若干緩めて高めるのではなくて下げて いくということを容認しながらこの委員会そのものが協議をしていくことは価値があるこ となのかどうかが私にはわからないのです。 ○大日向委員長  一つ確認をしていただきたいと思います。この委員会は何か結論を出すという委員会では ありません。佐藤委員が先ほどからおっしゃっているご意見は大変貴重なご意見だと思いま すので、そういうご意見をどうぞ皆さんからも、積極的にお出しいただきたいと思います。  他にいかがでしょうか。木原委員、この件に関していかがですか。その前に香取審議官が お手をお挙げくださいました。 ○香取審議官  すみません。別件で遅れてきたので、もしかしたらこの議論はあったかもしれないので、 今の事実関係といいますか、今回資料が出ている第3次勧告の関係について報告をしておき ますと、今どういうステージになっているかということを申し上げますと、ご案内のように、 地方分権改革推進委員会から第3次勧告が出ていて、その勧告に対して、これはもちろん厚 生労働省だけではなくてさまざまな分野についてご指摘があって、それについて各省の側が 基本的にどのようにものを考えるのかを回答することになって、その回答が今回お出しした ものということになっています。ご案内のように、この政権は基本的には政治主導でものを 考えるという政権なので、基本的にはそういった政治家同士の、あるいは政務三役といいま すが、そういったプロセスを経て、政府全体としての最終的な決定を出していくということ になります。従って、最終的に政府全体としてこの問題をどのように考えるかについては、 さらにこの後政府部内で政務レベルでの折衝が何回か繰り返されて、最終的な決定に至るこ とになると思います。この問題については、当事者は直接的には地方分権改革を担当してい る大臣、地方主権担当大臣、これは原口大臣ですが、原口大臣はこの問題は総務大臣として かかわっているわけではなくて、地方主権担当大臣としてこの問題にかかわっておられます。 私ども厚生労働省は厚生労働大臣になりますが、それ以外にも少子化担当大臣等さまざまな 方々がかかわっているので、そうした方々を含めての全体の議論になると思います。  本件については国会等でも既に議論になっていて、原口大臣、あるいは私どもの大臣、少 子化担当の大臣それぞれからさまざまなご発言があるのですが、先ほどもちょっとお話があ りましたように、少子化担当大臣の国会でのご発言を引用しますと、この問題には四つの論 点がある。一つは地方分権の問題。もう一つは保育の質の問題。もう一つは待機児童の問題。 そしてもう一つは財源の問題。この四つの問題を同時にといいますか、四つの問題それぞれ について、一定の満足が得られる解決を図ることが必要なので、そういった観点からの議論 が必要だというご発言をされていて、恐らく今日の議論でも多分出たと思いますが、この問 題はさまざまな切り口から、ある意味それぞれに違う論点からの議論になりますから、そう いったものを合わせながらこれから最終的に、恐らく年末あるいは年明け、年度末かもしれ ませんが、議論をしていくことになります。最終的にいずれの事項も何らかの法律改正を必 要とすることになりますので、法律改正をする以上は政府全体としての意思決定が必要とな りますので、そのプロセスの中でこの後も議論されていくことになると思います。言わずも がなですが、今の福島大臣のご発言にもありましたように、基準を決める権限を国におくか 地方におくかという問題と、基準の中身の水準をどのように考えるかは別の問題ということ になりますので、地方に下ろすということと、下ろした場合でもどのようなルールに基づい て、あるいはどのような考え方で権限を下ろすかは恐らく別の次元の議論になります。今回 もさまざまな形で条例に委任する形を私どもの方としてはご回答申し上げていますが、その 下ろし方は実は事項によってさまざま違っていますし、それぞれについてもさらに当然なが らさまざまなステイクホルダーが存在していまして、政府部内での関係者もいますから、議 論になっていくことになります。  これも言わずもがなですが、そういったこととそれはそれとして新しい制度の中でこの問 題をどのように考えていくかは、恐らくそれはそれとして議論すべき部分が恐らくあると思 いますので、このことがあるがゆえに、ここでやっている議論が制約されるとお考えになる 必要はないのではないかと私は思っています。 ○大日向委員長  ありがとうございます。私の進め方が淡々としているように思われることはよく分かりま す。この保育第一専門委員会、もう一つの第二保育専門委員会、いずれも会の設置に当たっ てご理解いただいたことと思いますが、特別部会の議論に資するためのご意見を皆さまにい ただく会です。ここで何か決議をしたり、あるいは勧告が意に沿わないから議論をやめると いうことは、専門委員会の趣旨ではありません。皆さまにどうぞ率直なご意見を出していた だき、それを特別部会に上げていく。さらにその特別部会のさまざまな意見を今、審議官が 言われたように、いろいろなツールを使って国に届けていただく。そのための場ということ をどうぞご理解いただきまして、残った時間も皆さまにいろいろなご意見をいただければと 思います。  お待たせいたしました。木原委員、お願いいたします。 ○木原委員  失礼いたします。今の地方分権の話であります。先ほどから、佐藤委員がおっしゃってい ます。気持ちは本当に私はよくわかりますが、ここは審議会、あるべき良い姿、仕組みを考 えるところだと思いますし、今決定してきたのは政治だろう。若干次元が違うかなと思いま すから。ただ、今回の政治レベルでの勢いは最低基準すべてが地方に任されて、非常に私た ちは危機感を持ちました。しかしながら、制限がもたれていて、私たちが思っていた時限的、 つまり待機児解消までということと、待機児のいる大都市という「東京等」となっています が、そのように限定されたということ。少なくとも国の基準、ナショナルミニマムは守られ ていると理解していますし、百歩譲って、譲るのも許せないと佐藤委員はおっしゃると思い ますが、緊急避難的にこれはやむを得ないと私自身は理解しています。速やかに待機児解消 も併せて、大都市圏での待機児解消に向けて取り組んでいかなければいけないと思っていま すし、さらに最低基準は、ここの議論では仕組みを変えるとともに、そういう保育の質を支 える条件の向上をぜひ望んでいるところでありますし、そういう意味でここの委員会がまと めというか整理、メッセージとして発信していただけるということは、今の政権にも届けて いただきたいと思いますし、当然そういう形で保育の質も上げていきたい。上げていくため のこの審議会であると思っていますので、そういう感じで私たちはとらえています。以上で す。 ○大日向委員長  ありがとうございます。駒村委員、お願いいたします。 ○駒村委員  私も今の木原委員とほとんど考え方が同じで、もう少し時間があればこういった問題を議 論ができたのですが、福島大臣がおっしゃるように地方分権と質と量と財源という四つの変 数を考えなければいけないわけですが、不幸にして今回のような経済危機が来てしまって議 論が煮詰まらないうちに膨大な待機児童が出てしまったという現状があります。そういった 中で緊急避難的に、一時的にということである種やむを得ない部分はあるかと思いますが、 ここにいらっしゃる皆さんが決して望ましいこととは思っていないと思います。早急に議論 を進めていって、このシステムを作って実を上げていくことを取り決めていかなければいけ ないだろうと思います。  その上で、今日お配りいただいた資料について、幾つか補足の説明、または後日資料をい ただきたいのですが、本体資料の9ページから、もっともなご指摘が出ていると思います。 これも現在の面積基準が、これまでの検討会でも出された資料でもわかるように、国際的に もかなり既に低い状態であるというのは確認されていますので、人的配置については保育資 格についても国際的にここに低いと書いてありますが、他の国に比べてどういう状況なのか ということをデータをもって見せていただきたいと思います。ここに書いてある8時間保育 の時代から11時間保育の時代へということで、これはいつ決まったのかも知りたいのです が、その次にさらに書いてある保育の役割の深化、多様化に伴う保育士の業務の負担。これ も多分そうなのだろうと思うものの、そこできちんと説得力を持つようにするためには、ど のようなことを指していてどのような問題が現場で起きているのか。どういう点で保育士さ んの負荷が高まっているのかということをきちんと挙証した上で、この部分も「さらに手厚 くしていく必要がある」という結論につなげていく必要があると思います。  それから、今日はあまり議論の中心になるかどうかわかりませんが、第三者評価について は、これは今の仕組みが果たして良いのかどうか。情報というのはシステムを機能させるた めの公共財的な意味がありますので、今のような第三者評価のコストの問題とか、今のあり 方そのものが良いのかどうかも含めて、前からこれを申し上げていますが、この場でよいの かどうかわかりませんが、厚生労働省として福祉サービスの第三者評価のシステムが、より 効果を出すような形に見直す必要があると思っています。以上です。 ○大日向委員長  ありがとうございます。今ご要請のありました資料につきましては、次回にでもご用意い ただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。  他にいかがでしょうか。 ○岩村委員長代理  先ほどの地方分権との関係ですが、木原委員あるいは駒村委員がおっしゃったので、その 辺のところなのかなと私も思うわけですが、ただ、恐らく今回の経緯の一つの問題は、政権 が変わったということもあるのですが、例えば専門家が集まって出した研究会の報告書、あ るいは少子化対策特別部会でやっていた議論であるとか、ここでやっている議論というもの が、全部すっ飛んでしまって、政治主導という名の下に、ある日突然方向性が決まってしま う。もちろん事務方が大変苦労されていることは十分承知しているのですが、そのように少 なくとも見えてしまう。そこにある意味、政治主導というものが持っている危うさというか、 そういったものを何となくこの場にいらっしゃる委員の方々が感じているのではないかと 思います。ですから、ぜひ厚生労働省の三役の方々にも、専門家あるいは審議会、こういっ た検討会での議論にも耳を傾けた上で決断していただきたいというのが、何となくこの場の 委員の皆さま方がお持ちの気分ではないかと思いました。  それからもう一つ、先ほど駒村委員がおっしゃったところは、私もそのとおりだと思いま す。ご指摘になった国際的標準に比べたニーズの問題や評価の問題はおっしゃったとおりだ と思っています。評価との関係でいうと、インターネットでというのは確かに今、一つの評 価の結果を知る手段ではあるのですが、もう少し簡単に一目でわかるような形で評価の結果 がわかるような工夫はないのかなという、その辺もご検討いただければというのが一つの意 見です。  最後にもう1点、指導監督と評価ということで挙がっているのですが、あともう一つは保 護者と保育所との間での保育の内容をめぐる意見の違いや、苦情などといったものの処理を どうするのか。そのことについての何か仕組みなり体制を考える必要があるのではないかと いう気もします。ただ、モンスターぺアレントなどいろいろあるとは思いますが、評価との 関係でいうとそういった仕掛け。今申し上げたような苦情などの処理の仕掛けを何か工夫し て仕組んでおく必要があるという気がします。以上です。 ○大日向委員長  ありがとうございます。高橋委員、お願いいたします。 ○高橋委員  私も今、岩村委員長代理がおっしゃいましたように、今日何となく元気が出ないのは、そ の政治主導のことで、専門委員会や部会でいくら議論をしてもそれが本当にうまくいくのか という、やや空しい気分にもなっていましたのであまり元気がなかったのですが、しかし、 それはそれで言うべきことは言っておかなければまずいなということで、今回の保育の質の 確保・向上については、できることはどんどん進めていっていただきたいというのが総論的 な考えですが、一つだけ、以前から少し話があったようですが、今日の資料の中にいわゆる 施設長資格のあり方ではないけれども、施設長資格の考え方が出てきていないのですが、何 かその辺りのことがありましたら、ご説明いただけたらと思います。 ○大日向委員長  施設長資格ですか。では保育課長、お願いいたします。 ○今里保育課長  施設長の法的な資格については、現行の基準では特段の定めがないのですが、今、高橋委 員からご指摘いただきましたように、施設長が保育士として現場の経験を踏まえつつ、全体 のマネジメントをするという両方の役割を担わなければいけないという観点がありますの で、今回の資料では特に入れてはいませんが、そういった観点からいかにあるべきかについ ては当然ご議論いただければと思います。 ○大日向委員長  よろしいでしょうか。他にいかがでしょうか。木原委員、お願いいたします。 ○木原委員  先ほどの話に戻るのですが、私の理解もよくないのかもしれませんが、吉田委員がおっし ゃった現金給付・現物給付の話と絡んでくるのですが、前回に朝川室長からご説明いただき ました。現金給付・現物給付、両方の良さもあると思いますので、できたら最低基準との絡 みで現金給付になったときに非常にその辺がもろいのではないか。つまり保育単価設計の問 題だと整理はしておられたのですが、単価設計のときに最低基準との絡みで現行は保育単価 が設定されていますので、そういう意味では、結論を言いますと単価設計では2段階、2階 建てのような形で、最低基準で保障されるようなものプラス利用者補助に加算したものとい うような形で、そういう組み合わせができないものか。制度設計の中で可能ではないか。随 分違うのですが、幼稚園では就園奨励費と施設補助のようなものがありますけれども、そう いう2階建ての仕組みも制度の中で考えていく。一番心配していますのは、最低基準との連 動が非常に薄くなってくる気配がします。先ほど医療などでそういうことに着目しながら、 看護師がたくさんいるような場合は費用単価が高いとか、そういう設計ができるということ でありますが、その理論的な背景がきちんとあれば、非常に安定してくるのではないかと思 いますので、ぜひ考慮に入れていただきたいと思います。 ○大日向委員長  朝川室長、お願いいたします。 ○朝川少子化対策企画室長  前回も申し上げたのですが、幼稚園の例を引かれて施設補助と利用者補助の組み合わせを するという点は、幼稚園の施設補助・私学助成は個人給付ではなくて非常に弱い保障の仕方 ですので、それを想定して2階建てとおっしゃっているのならば現行より弱まってしまいま すから、それはご留意された方が良いと思います。  ただ、そうではなくて単価設定をする上で、要するにお金の支払い方のルールの話ではな くて単価設定の話として、1階建て・2階建てとおっしゃっているのであれば、それは確か に共通経費という部分は当然あるはずなので、利用の量に応じた部分と共通経費のようなも のは分かれるはずで、共通経費部分を1階部分という考え方で評価するということは十分あ ると思います。それはご意見を踏まえながら今後、制度設計していくということだと思いま す。 ○木原委員  ありがとうございます。後者の方でございますので。わかりやすく言っただけです。 ○大日向委員長  他にいかがですか。川崎委員お願いいたします。 ○川崎委員  12ページの「評価」のところですけれども、質を上げていくということは、評価の実効 性を高めていくことがやはり必須になっていくと思います。今回も評価の観点というところ で幾つか挙げていただいていますけれども、ぜひ実効性のある評価の仕組みをつくっていた だきたい。そのためには、自己評価、第三者評価とありますけれども、やはり実際に使う側 の保護者ないしは家庭の評価がどうかというような観点も汲み取っていく必要があると思 います。今、モンスターペアレントなどいろいろな問題も出ていますけれども、実際その保 育のサービスを利用する子どもがどういう状態かは保護者も見ているわけで、保護者の評価 といったところも、万全とは言いませんけれども、評価の観点としては設計上は反映したも のを考えていってほしい。それを公表していく仕掛けも、なるべくいろいろな人が容易にア クセスできるような形を組んでいってほしいと思いますので、お願いします。 ○大日向委員長  ありがとうございます。他にいかがでしょうか。まだご発言のない委員もいらっしゃいま すが。椋野委員お願いいたします。 ○椋野委員  認可保育所の質をさらに高めようということで、それは当然のことだと思いますが、私が 一貫して気になっているのは、認可保育所以外の保育サービスを受けている子どもの話です。 地域によって子どもに保障される保育の質が異なることはあってはならないというのはそ のとおりですけれども、同じ地域の中で認可保育所で保育を受けられる子どもと、それ以外 の、認可外が全部悪いとは言いませんが、認可外の中には非常に低い質のサービスを受けて いる子どもがいますので、認可保育所の中での地域格差があってはならないだけではなく、 地域を問わず子どもに保障される保育サービスの質に格差があってはいけないと思います。 ですから、私はサービスの専門家ではないので具体的には言えないのですけれども、認可保 育所以外の保育サービスの質を高める方法を、ぜひ具体的に今回の新しい仕組みに入れてい きたい。例えば認可保育所は保育士ですけれども、認可外あるいは家庭的保育、あるいはベ ビーシッター、ファミリーサポート、一時預かりでしょうか、考えられる多様なサービスは、 保育士が望ましいでしょうけれども、それだけの保育士が確保できるか、払えるだけの財源 が確保できるかということもあるでしょうから、もしそれが難しいのであれば、例えば介護 の方で介護福祉士が望ましいけれどもヘルパー研修を受けた方が実際に介護サービスを担 っているような仕組みも。この中に、多様な保育の研修も少し書かれてはいたとは思います けれども、その辺りを具体的にどのような研修の仕組みにするのか。研修だけではなくて、 人的、あるいは施設を伴うのであれば物的、あるいはその内容について、保育指針で言うよ うな保育計画は必要ないでしょうけれども、やり方についてもできるだけ質の高いサービス が保障されるような仕組みを、ぜひ忘れずに入れていっていただきたいと思います。  ついでに、その観点から言うと、今回の地方分権の関係で、これは待機児童がある間の一 時的措置ですから、待機児童は母親が働かずに家で保育している人ばかりではなく、実際に 質の低いサービスを受けている子どもたちがいるわけです。これを緩めたからどれだけ増え るだろうかということはありますけれども、少し基準を緩めて、認可保育所のサービスを受 けられない子どもたちのサービスの質が上がるというのであれば、それはそれで、やむを得 ないと思います。とにかく待機児をなくすのが最優先であろうと思います。これだけでは、 とても待機児がなくなるとは思えないので、いろいろな仕組みを当然やるべきだと思ってい ます。 ○大日向委員長  ありがとうございます。榊原委員、お願いいたします。 ○榊原委員  私の考え方も、基本的に今、椋野委員がおっしゃった話と同じようなところにあります。 今ご意見が出たようなある種の空しさを私も感じているのですけれども、若干、保育団体の 方たちと違うと思っているのは、政治主導で勝手に決められてしまう空しさと違って、なぜ 今このような議論が起きているのか、なぜ保育にとってこんなに望ましくないことを、世論 があげてやろうとしているのかということに、あらためて目を向けてみると、前回も申し上 げましたけれども、待機児童をこの間、10年以上も放置してきて、現場からも改革をしよ う、何とかしようという動きが起きてこなかったがゆえに、それならもう詰め込むしかない というような、非常に乱暴な議論が起きてしまっているのではないかという気がするのです。 その中で、せっかくすべての子どもに、今まで保育の中では認可園の枠の中の議論が多かっ たと思いますけれども、それ以外のそこに漏れてしまっている子どもたちも含めて、みんな に必要な保育を届けていこうという議論がここで起きている。この中で揉めている時間はな いはずなのです。地方分権でとりあえずこういう結果を出してやるというのであれば、それ をさらに飲み込むようなもっと良い案があるといって、もっと前に進んでいこうと世論に投 げかけることを急がなくてはいけないときに、この中で内輪揉めをしている暇はないはずな のです。保育の現場にこれまで責任を持って取り組んでくださった方たちにとっては、かつ てなかったような大変な思いに直面してもらわなければいけない部分もあるかもしれない けれども、ある意味、肉を切らせて骨を守るくらいの気持ちでないと、子どもたちを守れな い事態に来ているところで、私たちはそういう意味でここで心を一つにして、きちんと改革 を進めていくことを早急にやらなければいけない場面にあると思っています。外の風に向か っていって、もっと良い保育にするためには、それしかないのではないかと思っています。  具体的に、今日論点が出ている中では、保育士の専門性を高めるところはぜひやってほし いと思っています。とりわけ社会的養護の世界では全く専門性が足りない状況にあるので、 そこのところは、一般保育とはまた違う段階の専門性ということを早急に議論し、対応を整 えるべきだと思っていることだけ申し添えさせていただきます。 ○大日向委員長  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。吉田正幸委員は、まだご発言がありま せんね。 ○吉田正幸委員  最後の一人まで黙っていようと思っていたのですが。共通しているのは何とはなしに空し い気分のようですが、せっかくなので幾つか申し上げたいと思います。一つは「現物給付」 の話が出ていましたが、理論的に仕組みの上での現物給付どうこうということと、実際にい わゆる現金のイメージとがかなりごっちゃになっている部分が恐らくあるのではないかと 思います。今回、いわゆる保育の必要性、必要量に基づいて、かつては報酬と言っていまし たが、それを法定代理受領でということでお金に着目しているのですが、では保育の必要性 を認められた利用者が、保育園に行かないから現金を児童手当のようにもらえますかという と、そういう話ではないのです。どうも先ほどの現金給付の議論は、多少そういう感じがち らちらするので、理論的な現金給付と現物給付をもう少し正確に押さえて議論する必要があ るだろうというのが一つです。  それから、「最低基準」の話ですが、今回の資料にあるように、まさに質の確保と向上で、 確保というのは維持、要するに質を落とさないという仕組みと、向上で上げるという仕組み をうまくクロスさせていかなければいけない。そうすると、最低基準がすべて保育の質の確 保・向上を背負い込んでいるわけではないというのが一つです。もっと多面的な質の確保・ 向上の担保を、仕組みとしていろいろと工夫しなければいけない。そのアイデアが実は欲し いのだろうということです。それから最低基準に関して言うと、確かに懸念はあるのですが、 では今の最低基準でも、その基準ぎりぎりで自治体は全部やっているかというと、むしろ上 乗せの規定をしている。例えば1、2歳が国の最低基準では6対1ですけれど、これを5対 1にしている自治体があったりするのが現実ですし、そういう意味では今回、これは決定し たわけではないので、明らかに地方分権で迫られた中でとりあえずぎりぎりのところで厚生 労働省としてこういう対応方針を示したということで、先ほどの審議官のお話のように、ま だこれからもう少しいろいろなやり取りもあるのだろうと思います。そのことと同時に、今 の最低基準であっても自治体でもっと高い基準を目指している所もあるし、そうでなくても 今度は現場が、一般の認可保育所が実際の最低基準よりも面積も職員配置基準もかなり努力 して、その上でやっているケースが私はかなり多いと思っています。そういう意味では、地 方に基準の権限を委譲するだけで、直ちにすべての質が一気に下がってしまうというのは、 かなり乱暴な議論だと思います。ただ、その恐れが全くないとは言えないので、そこのリス クをどうやって回避できるのか、そして落とさないだけでなく、むしろもっと上げるような インセンティブをより強く示せないのかという視点が、多分大事なのだろうと私は思います。  それから「評価」に関して申し上げると、現在の第三者評価というのは、介護・障害もそ うですが、もともとは社会福祉基礎構造改革ということで利用者とサービス提供者が向かい 合って契約をする中のセーフティネットの一つとして出てきている。これが一つです。一方 で、前回お話ししたかもしれませんが、今の最低基準に象徴される外形的な事前規制として の許認可等ではなくて、いわゆる質を上げていくというインセンティブを持ったアクレディ テーションとしての基準認定の第三者評価という議論が必要だということ。それから今日の 資料にあるように、新しい保育所保育指針に基づいて、これが自己評価をかなり重視して、 それに基づいてPDCA的な改善しようという、保育指針ベースで保育指針が要請するよう な観点からの第三者評価。大げさに言うと、基礎構造改革が求める第三者評価と、アクレデ ィテーションとしての第三者評価と、保育所保育指針が要請する第三者評価、これをうまく 整理して、どうしたら質を上げていける評価になるのかという観点の議論が必要なのだろう と私は思います。  最後に、おまけのような話ですが、最低基準がらみで申し上げると、何対何という配置も もちろんあるのですが、福祉は一人一人に着目していますから一人何平方メートルなのですが、教育は 幼稚園の場合は例えば35人に先生1人という「集団」という単位で捉えている。そうする と今後、養護と教育が一体となった保育ということで、少なくとも3、4、5歳児の幼児教 育無償化はわからなくなりましたけれども、その部分で考えると1人何平方メートルの発想はもちろん 大事にしながら、しかし子どもの集団での面積も当然あるので、20人で例えば66平方メートル、では 10人だったら33平方メートルと、単純に半分でよいのか。それはちょっと乱暴だろうと思いますので、 これを最低基準にするかどうかは別として、1人何平方メートルだけではない、もう少しクロスさせる ような発想も、質という点では要るだろうと思っています。  それから、「研修等」が出ていましたが、参考までに申し上げますが、例えばこれも幼稚 園、あるいは小中高校もそうですけれども、まず免許が1種・2種という形で、1種免許の 教員が多いところは私学助成で少し補助金を加算しているというケースがあります。それか ら、まだ学校教育法を改正して間がないので、しっかりやっている所はあまりないと思いま すが、今まで、いわゆるフラットな教員組織であったものが、幼稚園でいうと、園長、副園 長、教頭、主幹教諭、指導教諭、そして一般教諭という、かなりグラデーションを作ってあ ります。良いかどうかは別にして、しかしそういう発想が確かにある。一方で保育所は、一 般の保育士以外でいうと主任保育士という存在がある。しかしこれも主任加算があるのかも しれませんが、まだ位置付けとしてはそれほど、先ほどの施設長の資格化問題もありました けれども、主任というものをどうするのかという視点も恐らくもっと要るのだろうと思いま す。保育士だけでなく、保育所が多様な機能を持っていくということは、看護師や管理栄養 士、調理員などの多様なスタッフも当然サポートするわけですから、そういう専門スタッフ を、やはり質に絡めてどのようにデザインするかも恐らく必要だと思います。もっと言えば、 人材が多分これから厳しい時代ですから、そういう意味では良い意味でもっと男性保育士が、 きちんと処遇もできてキャリアアップ、キャリアパスが作られて、あるいは一生保育所でな くてもその後大学・短大に行けるなど、いろいろな形で男性保育士を人材確保の観点からも っと採用できるような仕組みを考える。あるいは一度お辞めになった方の再就職ということ であれば、市町村を巻き込んで、例えば何らかの保育人材バンクの全国ネットワークを整備 するとか、この委員会は何かそういうアイデアを出す場だろうと私は理解していますので、 そのことだけ申し上げておきたいと思います。 ○大日向委員長  ありがとうございます。まだもう少し時間が余っておりますが、いかがですか。もう少し ご発言があるという方。それでは、駒村委員お願いいたします。 ○駒村委員  今のところはちょうど介護士の確保、まさに資料でいうと11ページです。保育所の処遇 に関する似たような議論が出ていますので、まず実態を教えていただいた上で、どのような キャリア形成と処遇をセットにすれば保育士の能力を一番生かせるのかという議論は、やは りぜひやっていただきたいと思います。この辺は、今日のこの紙だけではまだどういう状態 なのか、質と量とおっしゃっても、全国的に今どのような状態になっていて、質・量の見通 しがどうなっているのか、この我々のプランが仮に動き始めたときに、それが十分確保でき る、マクロで確保できるからといって地域的に確保できているかどうかわかりませんし、も う少し突っ込んだ資料がないと、この辺は質・量・処遇の問題が議論できないと思いますの で、事務方にお願いできればと思います。 ○大日向委員長  ありがとうございます。他にいかがですか。香取審議官、どうぞ。 ○香取審議官  今日は十分資料が用意できなかったので、私が言うのも何ですが、参考資料の8ページを お開けください。これは平成17年・18年に、前回の介護保険法の改正をし、まさに同じよ うな介護職員のキャリアパス、それから処遇の改善の話をしたときに、介護の場合には保育 士に相当するのは、恐らく介護福祉士になると思いますが、実際にはもちろんすべての介護 職員が介護福祉士ではないわけで、事実上はその絵で言うところの、今はヘルパー2級とい う130時間の資格があるのですが、これを事実上基礎資格のようにして実際は機能をして いるのですが、全体を介護福祉士レベルまで引き上げていくことと、その先のキャリアパス をどのように考えるかを、2年ほどかけて議論したときに作ったものです。詳細はご説明し ませんが、量的に確保するという話がまず基本にあるのですが、もう一つキャリアパスをど う作っていくか、あるいは専門性をどうやって上げていくか、あるいはそれに伴って処遇を どう考えていくという議論は、実は現場の介護でいえばその介護の形、つまりどのような職 制を敷いてどのような形のサービスを提供するかということと完全にリンクしています。今、 介護の世界は基本的には個別処遇、いわゆる集団処遇から個別処遇へということで、ユニッ トケアあるいはグループホームのような小規模の形でのケアを中心に、小集団のケアを作っ ていき、そこにそれぞれ責任者を置いてチームケアをしていくという形に流れていて、そう いった現場の職制あるいは職階の作り方と、このキャリアパスと、それにふさわしいそれぞ れの職能の体系立った研修がセットになっている。その上で、リーダーあるいは管理者、施 設長という形で、組織内部でキャリアパスを作っていく人、あるいは外部へ出て教育機関で の教育や、専門性を高めて例えば認知症専門のケアワーカーであるとか、そういった形で処 遇を作っていく。あるいは学校の先生、あるいは教育者、研究者、行政に行くといった流れ でいくという形で、そういう現場のケアの形と、処遇と、それを支える研修といいますか、 研修というのは結局は上級資格ということにもなるわけですが、そういうものを多分セット で考えることになっている。実際には介護福祉士のところまでどうやって引き上げていくか が当面の大きな課題なので、ヘルパー2級の上に500時間の基礎研修を作って、そこから介 護福祉士に引き上げていくというのは今大きな課題になっているのですが、恐らく保育の場 合でも、そういった専門性の話は当然処遇の話、キャリアパスとリンクします。それは現場 の保育所あるいはさまざまなサービス提供機関でのケアの形や、そこでの職制をどのように 作っていくかということと恐らくリンクするので、そういう観点で少し全体を俯瞰した議論 を、多分法人の規模の形ということとも関係すると思いますが、少しそういう形で今後さら に議論を続けていただければということです。以上です。 ○大日向委員長  他に、いかがでしょうか。 ○岩村委員長代理  今の審議官の話の続きのようなものですけれども、実は今、介護保険の方でまさに審議官 がおっしゃった話を検討していまして、そこでの一番の問題は結局、施設なら施設、あるい は事業者なら事業者で、専門性のある仕事についてのニーズがなければ、いくらこちら側で 資格を作っても、事業者や施設の側がそういう資格のある人は要らないと思っていると結局 駄目なのです。処遇は上がらないし、そうすると一生懸命資格を取っても良い処遇はもらえ ないということで、結局入ってこないということになってしまう。ですから、保育士につい ても恐らく同じようなことが言えるわけで、やはり専門性ということを言うのであって、そ れで質を高めていこうということであれば、やはり保育所なら保育所で専門的な仕事が現に あるのだと、あるいはあるようにしなければいけないし、そのように構築すべきだというこ とがまずあって、そのプランがあった上で、保育士という資格なり上級資格をどうマッチン グさせるかを考える必要があると思います。ですから、保育士の資格の議論を先にやると介 護福祉士の二の舞になる可能性があります。そこのところを意識していただいて、とりわけ 保育所関係の方々にぜひそういう見通しなりアイデアなりを提供していただけると、非常に 有益な議論になるのではないかと思います。 ○大日向委員長  ありがとうございます。木原委員、どうぞ。時間はまだございます。 ○木原委員  一つだけ気になっていて、先ほどの榊原委員のご発言で、認可保育園が今まで十数年改革 の邪魔をしているような。基礎構造改革が出てから十数年経ちます。あのときに駅伝方式と いう形で行って、保育については徐々に変わっていこうということだったように理解してい ますし、現場でも待機児の解消についてはとても努力しているわけです。それは知っておい ていただきたいと思っています。分園とか定員の弾力化は大体2割近くが採っていると思い ますが、本当に、廊下やホールを含めて最低基準にうまく組み込みながら、何とか入っても らおうという努力はしていますので、それはまず承知しておいていただきたいと思います。 待機児解消については決して私たちは無関心ではなくて、やはり解消しなくてはいけないと。 先ほど椋野委員がおっしゃったように、認可保育園に入っている人は良いけれど入っていな い人はどうするのかという話は、我々は本当に身につまされる思いです。同じでありますの で、どうぞその辺は誤解のないようにして、いただきたい。  それから、先ほど吉田委員のおっしゃった最低基準が地方に任されて、すぐに保育の質が 下がるわけではないというのは、確かにそうです。そんなにすぐに下がるわけではないです。 ただし、その後、私が懸念しますのは、各地方で基準がばらばらの場合に、一般財源の引き 上げになってしまわないか。既に法律がいっているわけですから、その辺はどうなのかなと いう疑問、懸念があって、今の最低基準をナショナルミニマムとして守らなくてはならない とともに、一般財源もやはりまずいのではないかと思ったりしています。 ○大日向委員長  ありがとうございます。では、榊原委員どうぞ。 ○榊原委員  言葉足らずだった面があったのかもしれませんけれど、実は前回、相当長時間をいただい て、保育との個人的なかかわりや思いについてはお話しさせていただいたので、今回は割愛 したところがあるのですが、私は基本的には保育の仕事をされている方たちを非常に尊敬し ているし、尊いお仕事、大切なお仕事をしてくださっていると思っている上で、ということ だったのです。今の保育園がいっぱいいっぱい、本来の定員を超えてまで受け入れてという ような非常時に入っていることももちろん承知しています。ですが、例えば東京のように夜 間の受け皿がこれだけ必要になっている子どもたちがいるのに、認可の保育園で夜間の受け 皿をつくってくださっているところがどれぐらいあるのか。休日・祝日の保育を必要として いる人たちが増えてきている、その流れにどれくらい応じてくれているのか。東京では今も ベビーホテルが増え続けています。そういった状況をどう思っていらっしゃるのか。そうい った利用者側の切実な思いと対したときの改革のスピードの遅さがあったのではないかと 実は感じているのです。今、これだけ保育を必要としている人が増えている中で、例えば 10年前から直接契約の議論があったり、三位一体改革といわれる議論の中でもまた分権の 議論が出ていたりと、何度も何度も保育に対して変わってくれという要請が世間からあった と思うのに、基本的な構造がほとんど変わらずにここまで来ている。やはり今ここで求めら れているのは、利用者の立場、住民の立場に立った保育というものにもっと向き合う必要が あるのではないかということだと思います。そこの転換が非常にデリケートなところでもあ るけれども、ほとんどの福祉の体系の中で今、利用者本位、利用者を主体にしたサービスの あり方とはどのようにできるのかという転換が行われてきた中で、保育は今その前段階のと ころにあると思っています。もう少し利用者を主体にした議論・改革を進めていけば、自ず と待機児童や夜間保育の子どもたち、夜間保育を拡大していくことが望ましいと思っている わけではなく、親たちの働き方がこうなってしまっている現実の受け皿として、もっと保育 の方も考える必要があるのではないかという意味ですけれども、そういう中でまだまだやれ る改革が行われていないものがあるのではないかという趣旨で申し上げました。 ○大日向委員長  前回の議事録をお読みいただくとおわかりになるかと思いますが、榊原委員は働く母親の 一人として、日本の保育を非常に高く評価されていらっしゃいます。その上でなお、だから こそ期待を込めたエールというか、苦言であったかと思います。  そろそろ時間も。この辺りでよろしいでしょうか。今日は高橋委員がお静かでいらしたの が気になったのですが・・・。先ほど、たしか元気がなくなってしまったとおっしゃいまし たでしょう。ただ私は、この委員会も少子化対策特別部会も決して元気をなくす必要はない と思っております。地方分権改革推進委員会の第3次勧告が出たときは、日本の保育の設置 基準が全部外されてしまうのではないかというような危惧を等しく皆が持ったのではない かと思いますけれども、今日配られた厚生労働省の対応を拝見いたしますと、とにもかくに も、ここまでぎりぎり打ち返していただけたということではないかと思います。事務方の大 変なご苦労もあったと思います。同時に、少子化対策特別部会、保育事業者検討会、そして 保育専門委員会でのこれまでの議論がバックにあったのではないかと思います。今、まさに、 こうした議論をしっかりと固めていかなくてはいけないと考えております。  保育の質に関しては、保育の量を増やすということと同時に、それと同じぐらいに大事な 議題として、保育の質の大切さについて、少子化対策特別部会も保育事業者検討会も、そし て保育専門委員会でもずっと議論をしてまいりました。従いまして、佐藤委員が強くご懸念 されているところは、本当にその通りかと思います。誰も否定はしないと思います。むしろ、 同じ思いで聞いていると思います。緊急避難的に時限付きに施設のところだけが「標準」に 下がってしまったことは大変残念ではありますが、何人かの委員もおっしゃったように、そ の背後にはここまで待機児対策を急がなくてはならない事情があるということについて、今 一度しっかり踏まえる必要があるでしょう。そのうえで、具体的に保育の質とは何かについ て検討を深めること、とりわけ認可外で保育を受けている子どもたちへの視野も忘れずに、 この議論はぜひとも前に進めていかなくてはならないのではないかと思います。  なお、この保育専門委員会はもう少し回数もございますので、今日言い足りないところが おありになると思いますので、その辺りはどうぞ事務局に紙ベースでお届けいただければと 思います。  それでは事務局から、次回の日程等も含めて、よろしくお願いいたします。 ○今里保育課長  本日は、誠にありがとうございました。次回の日程につきましては、11月16日月曜日、 時間が半端ですが9時45分から、場所は経済産業省別館10階の1012号会議室を予定して おります。お忙しいところ、恐縮でございますけれども、ご出席いただきますよう、よろし くお願いいたします。 ○大日向委員長  それでは、本日の委員会はこれまでといたします。ありがとうございました。 【照会先】 厚生労働省雇用均等・児童家庭局保育課企画法令係