09/11/02 第27回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録        第27回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会 日時 平成21年11月2日(月)                       15:00〜 場所 厚生労働省議室 ○長岡補佐 ただいまより第27回 厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会を開催 いたします。本日は町野委員、松原委員、山本委員から欠席のご連絡をいただいておりま す。また、木下勝之先生から遅れて到着されるとご連絡をいただいております。本日は委 員会の委員17名中、定足数を満たす14名、現在12名でございますが、ご出席を賜っ ておりますので、こちらで報告をさせていただきます。また、永井委員長ですが、別の会 議のため、少々遅れて到着されるという連絡をいただいております。つきましては委員長 到着までの間は、委員長代理の貫井先生に議事の進行をお願いしたいと思いますがよろし いでしょうか。まもなく永井委員長到着でございますので、よろしくお願いいたします。  次に資料の確認をさせていただきます。資料、議事次第をご覧ください。配付資料の所 ですが、まず資料1「作業班における検討状況と親族優先提供の施行までのスケジュール」 これが1枚紙です。  資料2「親族への優先提供に係る諸課題に関する検討状況について」これが最後の親族 の範囲という絵まで含めて7頁あります。それから資料3-1「親族優先提供と移植希望者 (レシピエント)選択基準の関係について」これは1枚です。続きまして、資料3-2「肝 臓移植希望者(レシピエント)選択基準(案)」これが2頁です。最後、資料4「普及啓発 に関する検討状況について」これは1枚です。  その次に参考資料としまして、「親族の範囲について」これが1枚の紙を付けております。 そのほか、机の上にファイルで前回第26回の際にお付けしました参考資料、現行法ですと か、現行ガイドラインなどですが、こちらのほうに置かせていただいておりますので、議 論の際に参考にしていただければと思います。お揃いでしょうか。不備がありましたら、 事務局までお伝えを願えればと思います。それでは議事進行を永井委員長の到着まで貫井 委員長代理にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。報道のカメラはこちらで ご退出をお願いします。よろしくお願いします。 ○貫井委員長代理 永井委員長が来られるまでの間議事の進行をさせていただきます。本 日は改正臓器移植法が成立してから2回目の改正となります。前回の委員会は改正臓器法 の施行に当たっての検討課題を整理し、検討体制について委員会として確認したところで す。各作業班や研究班において、検討が進められておりますので、本日は1つ目の議題と いたしまして、親族優先提供の施行までのスケジュールを確認した上で、これまでの作業 班での検討状況について事務局より報告を受け、これについてご議論をいただきたいと思 っております。それではまず全体のスケジュールの確認を事務局でお願いいたします。 ○峯村室長 臓器移植対策室長の峯村でございます。よろしくお願いいたします。まず資 料1ですが、「作業班における検討状況と親族優先提供の施行までのスケジュール」という 資料につきまして、今後のスケジュールと作業班における検討状況について、簡単にご報 告いたします。9月15日に第26回の臓器移植委員会を開催いたしまして、その中で検討 課題についてお諮りをし、その検討課題につきましては、専門的な観点からの論点の整理 を各作業班で検討していただくという指示を受けまして、優先提供等につきまして、各作 業班における検討を進めてまいったところです。この間の状況ですが、10月1日から29 日の間にかけましてそこに書いてありますとおり、5回ほど作業班の議論がなされており ます。その中で、優先提供に関します法律的な論点の整理をしていただく臓器提供にかか る意思表示・小児からの臓器提供に関する作業班につきましては、10月1日に第1回、そ れから16日に第2回、27日に第3回という都合3回の議論を行いまして、論点の整理を進 めてきたところです。  また、カードの様式、あるいは今後の施行に向けての普及啓発に関する論点の整理とい うことで、普及啓発に関する作業班が10月13日に第1回を開催しているところです。ま た、臓器別の作業班は全部で7臓器について、それぞれ作業班が設けられておりまして、 そのうち肝蔵移植の関係の作業班につきましては、1回目の作業班が29日に開催されてい るところです。本日は11月2日のこの臓器移植委員会におきましては、これまで議論が進 められました優先提供に関する法律的な観点からの論点の整理、それから普及啓発および レシピエント選択基準に関する各作業班の検討状況についてご報告することとしておりま す。  今後のスケジュールですが、本日作業班で検討いただいた内容についてご確認、ご意見 ご検討をいただいた上で、了解が得られれば、ガイドラインの案の作成という手続を進め ていきたいと考えております。その後、パブリックコメントを1か月ほど取りまして、国 民の議論を伺った上で再度その内容をふまえて、臓器移植委員会でご議論をいただくとい うことで、今後進めたいと思っております。その上で、来年1月17日の親族優先提供に関 する規定の施行を行いたいと考えている次第です。資料の説明は以上です。 ○貫井委員長代理 ありがとうございました。永井委員長が来られましたので、進行を永 井委員長にお願いいたします。 ○永井委員長 どうも大変失礼いたしました。ただいまのご説明をふまえて、まず各作業 班の検討状況をご報告いただきます。先行して施行される親族優先提供の問題もあります ので、パブリックコメントが必要なガイドライン事項に関係する臓器提供に係る意思表示、 小児からの臓器提供に関する作業班での親族優先提供の意思表示にかかる諸問題について の検討状況ということでご説明をお願いいたします。 ○峯村室長 それでは資料2に基づきまして、「親族への優先提供に係る諸課題に関する検 討状況について」臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供に関する作業班での検討 状況について、ご説明します。まず1頁、第1点といたしまして、「親族の範囲等について」 ということですが、親族優先提供の関係につきまして、臓器移植法における親族の範囲に ついて、どのように扱うかということですが、論点といたしましては、仮に制限を加える 場合にどのような範囲が考えられるのかという点、それから国会での立法者意思というこ とで、提案者からご説明がありました配偶者及び親子という範囲について、考えてもよい のかどうかという点について、議論が行われたところです。作業班の見解といたしまして は民法における親族の範囲、いわゆる6親等までの血族、3親等までの姻族、それから配 偶者、その範囲についてはその成り立ちが広く設定されているということを考えますと、 合理的な法的な権利義務を与える範囲として、合理的な基準ではなく、これとは同様にす る必要はないというご意見がありました。  また、「有償性の回避」と申しますか臓器売買の防止との観点からは、範囲をできるだけ 狭く解すべきではないかという見解が出されたところです。こういった見解をふまえまし て、家族概念の最小単位として、1つは「婚姻関係」、「夫婦関係」ということになるわけ です。それから「親子関係」この2つの要素が、やはり家族概念の最小単位として考え合 わせますと、立法者が国会で立法者意思として示された「配偶者及び親、子」という解釈 が妥当ではないかという意見が多数を占めたところです。  また、この立法者意思についてはかなり明確にほかの場面でも示されているところです ので、この解釈を変更する十分な理由は見当らないのではないかという意見が示されまし た。付随意見ということですが、尚書きのところですが、移植医療の現場におきましては、 兄弟姉妹への移植希望事例もあることに配慮すべきではないかというご意見もあったとこ ろです。親族の範囲につきましては、お手元の資料の中で参考資料ということで資料2の いちばん最後に付けていますが、ここは「親族の範囲」と書かれておりますが、いちばん この外延ということで考えますと、7頁の後ろですが前提としまして民法第725条におけ る親族の範囲ということで、血族は●姻族は○で示しておりますが、6親等までの血族、3 親等以内の姻族、それから配偶者ということで本人を基点として、かなり広い範囲での親 族の範囲として位置づけられるわけです。  このうち国会審議において、提案者が答弁した立法者意思ということで、示された親族 の範囲が親、子と配偶者ということで、真ん中の本人を中心として枠で囲った部分がその 範囲ということになろうかと思います。したがいまして2親等であります兄弟姉妹、ある いは祖父母、孫といった方々は当然外れますし、叔父叔母ともあるいは義理の祖父母につ いても対象からは外れるということになるわけです。  1頁に戻りまして養子の点ですが、養子の点については以下の点をどのように考えるか ということです。「嫡出子」としての身分を取得して、身分上は血族間におけると同一の身 分関係を生じるという民法上の扱いが1点あると、この点はどう考えるかということです。 また臓器移植法の基本原則として公平性の観点、移植を受ける機会を公平に与えるという 観点、それから移植の意思表示は強制をされるのではなくて、任意に行われなければなら ないと任意性の確保、また臓器売買等の回避ということで有償性の回避といった基本原則 との関係で、この養子の位置づけをどう考えるのか。また提案者の意思として示された親 子、及び配偶者の考え方として、強い絆で結ばれた家族として自然に持つ心情への配慮と いうことで示されたわけですが、こういった基本的な理念等の関係で養子をどのように考 えるのかという論点の下で、作業班で議論が行われたところです。作業班での見解ですが、 我が国の養子縁組制度は諸外国と比較して、成年養子を広く認めるという観点下の非常に 幅広い制度の組立てがされているということを考えますと、有償性の回避を図る観点から 養子については限定的に取り扱うべきではないかという見解が示されております。その中 で、養子の範囲として、どこまで限定的に取り扱うかということですが、要件として厳し く家庭裁判所がいわば、その許可に関わる特別養子縁組という制度があります。養うこと ができないといったお子さんを養子として養う養父との親子関係を築き上げる、そういう 養子縁組制度でして、実方との親子関係は完全に切れて、戸籍上も実子という扱いになる 特別養子縁組という制度がいちばん要件が厳しいわけですが、この範囲内に限るべきであ るという意見で作業班の見解が示されたところです。  それから事実婚の扱いですが、この点については基本的に現在の法律上の流れとしまし て、同居ですとか協力・扶助義務といった観点で法律婚と同様夫婦の実質があれば、保障 する必要があるということで、事実婚にはいま認められているという状況があります。た だ、一方でごく一部の権利については事実婚に認められていないものがあります。例えば 相続等、「取引の安全性等を考慮して、画一的に決まる必要があるもの」については現在事 実婚には認められていない、そういった状況があるところです。こういった点をふまえて、 法律上の枠組をふまえてどのように考えるのか、合わせて提案者意思の先ほど示された「強 い絆で結ばれた家族として自然に持つ心情への配慮」といった点も含めて、事実婚の扱い をどうするかという点を作業班で検討がなされました。  その中で作業班として出された見解といたしましては、事実婚は確かに法律婚と同様の 権利を認めるという流れにあるわけでして、配偶者に含めないとするのは難しいというこ とですが、事実上婚姻関係と同様にあることを形式だけでなく、その安定性も含めて統一 的に確認をするということが、やはり移植医療の場面において非常に難しいのではないか ということで、法律上の地位を差別する趣旨ではありませんが、法律婚に限るべきではな いかという見解が作業班では示されたところです。親族の範囲については以上です。  続きまして、「意思表示内容について」の検討課題についてご報告いたします。まず特定 親族の指定ということで、親族の範囲についてのガイドラインで決められた範囲内の親族 について、指定をする場合にどのような意思表示を認めるのかということですが、意思表 示の内容として、「親族」とのみ表示することとするのか、それとも特定の親族を指定する 子どもとか、あるいは長男、あるいは父という形でそういう指定する意思表示も認めるの かという論点が1点あります。また、仮に親族のみと表示するとした場合に、実際に特定 の親族を指定する意思表示があった場合、どのように取り扱うのか、という論点が2点目 の論点です。作業班の見解といたしまして、親族優先提供の意思表示につきましてはあく までも臓器移植法の特例的な取扱いであるということ、また様々な親族間の運用上のトラ ブルを防ぐということを考えますと、意思表示の仕方としては「親族」とのみ表示をする という運用をすべきであるということが作業班の見解でした。  その場合に特定の親族を指定した意思表示が現実に出された場合、あるいは第1順位が 父、第2順位が子どもといったような順位づけがされていたような意思表示がされていた 場合、どのように取り扱うのかということにつきましては指定された親族を含んで親族一 般への優先提供意思と解すべきということで、親族の中の一構成員という形で扱うという ことにすべきであるという見解が作業班で示されたところです。したがいまして、複数親 族という意思表示の下で優先提供の対象者が生じた場合は、同率の1位という扱いで優先 順位の1位という位置づけにした上でその後の順位づけについては、医学的な観点からの 選択基準にしたがって優先順位を決定すべきであるということが作業班の見解です。なお、 付随意見ですが、本人意思の尊重を貫徹する立場から、特定の親族を指定した意思表示、 あるいは順位付けがあった場合に、それを認めるべきではないかというご意見も示された ところです。  次に範囲外の指定、全く親族の範囲を超える方の指定があった場合、あるいは第三者で も構わないのですが、そういう指定があった場合にどうするのかということですが、作業 班の見解といたしましては、優先とならない親族への優先提供の意思表示やカード等も含 めて、指定された場合はこの意思表示は無効であると、親族優先提供の意思表示は無効で あるという扱いにまずすべきであるということです。ただし、親族への優先提供が法律上 の構成で申し上げますと、臓器提供の意思表示の際に併せて、親族への優先提供の意思を 表示することができるという構成になっている観点から、親族への優先提供の意思表示が 無効であっても、根幹にある臓器の提供意思は有効であると解すべきであるという見解が 示されまして、この場合は家族の承諾等を伺った上で、一般的な臓器提供プロセスに移行 するかどうかということに進むことを検討すべきであるという見解でした。  4頁、親族限定提供ということですが、親族のみへの提供意思が表示されていた場合、 いわば第三者への提供意思を全く拒否をして、親族のみへの意思表示のみを認めてほしい という表示がされていたためにどのように取り扱うのかということです。先ほど申し上げ ましたとおり、親族優先提供の意思表示はそもそも大元にある臓器提供の意思表示、これ があって初めて親族優先提供の意思表示というものが有効になるという解釈をふまえまし て、親族以外への第三者への提供意思が全く明確に認められないという場合につきまして は、親族優先提供の前提となる根幹の臓器提供の意思がないというふうに解しまして、親 族優先提供もまた根幹にある臓器提供もいずれも無効ということで、臓器提供プロセスに 移行すべきではないという見解が示されたところです。なおこの点につきましては、付随 意見といたしまして本人意思の尊重を貫徹する観点から、親族のみへの臓器提供も認める べきではないかという意見が示されたところです。  それから、次の点は前回の臓器移植委員会でもやりとりがあったところですが、親族優 先提供の意思表示というのは書面で示すことになっているわけですが、これが可能となる 年齢は、何歳からかということですが、これにつきましては臓器提供の意思表示と同様の 扱いということで、15歳からということでするのが適当ではないかという見解が示されて おります。  また親族提供にかかる意思表示に基づいて、臓器提供を受けることが可能となる年齢に つきましてはどのように考えるのかということですが、提供を受ける年齢につきましては 現行法上特に制限がないということから、優先提供にかかる意思表示に基づいて、臓器提 供を受ける年齢も制限はないという扱いにすべきであるという見解が作業班で示されたと ころです。 5頁、「意思表示方法について」ということです。この意思表示方法についての基本的な法 律の作業班での議論として、やはり従来の臓器提供の意思表示と比較して、親族への優先 提供の際には、提供を受ける相手方が事前にはっきりとわかっていると。通常のいままで の臓器提供の意思表示ですと、レシピエントにはドナーの情報というのはいかない形にな っているのですが、親族優先提供の場合は優先提供を受けるべきレシピエントの方がその 事実内容を事前に知っているということをふまえて、非常に相手に対する一種の期待権の ようなものを生じさせるのではないかという議論の下で、意思表示に当ってはできるだけ トラブルを防ぐ、いわば偽造ですとか、複数枚出てくるといったことを防ぐことが従来以 上に必要があるのではないかという問題意識の下で論点の整理がされているところです。 まず、ドナーカードに記載する際に留意すべき点はあるかということですが、この点につ きましては偽造や複数枚出てくるといったことを防ぐために、1人1枚所持する運転免許 証、あるいは健康保険証などに記載させるのが望ましいという扱いにすべきではないかと いう見解が示されました。  ただし、現行ドナーカードへの記載を無効とするのは、これは困難であるという見解で した。また平成19年の3月ということで、一昨年の3月からですが、インターネットを通 じて、臓器提供の意思を登録することが可能なシステムがいま動いております。臓器移植 ネットワークで運用しているシステムですが、カードを持つということはそれはそれとし て進めるとして、本人の意思内容をより確実に把握するということを進める観点から、こ の臓器提供意思登録システムへの登録といったことも十分活用すべきではないかという見 解が示されました。また現行の臓器提供意思表示システムについては本人確認をより厳格 にするという点についても検討すべきであるという意見が示されているところです。また 今後の議論と検討課題になるわけですが、親族への優先提供と併せて臓器提供を拒否する 意思表示の確認といったことも今後議論をすることになりますので、この意思登録システ ムのあり方についての検討というのは将来的な課題になるという見解が示されております。  最後ですが、「親族の確認方法について」ということですが、親族優先提供の場合には、 ドナーとレシピエントの間で親族であるという確認をきちんと行うことが必要になるわけ ですが、最終的にその確認というのは戸籍謄本、抄本に基づく確認で行われる必要がある ということを考えますと、こういった公的証明書が入手困難な場合、休日連休が続く場合、 あるいは夜間、そういった場合にレシピエント選択の開始をどのような条件下で求めるの かということについて、作業班での見解として3点が示されておりますが、作業班の見解 として、特に意見が出されたのは3点目の・になるわけです。  まず1点目といたしましてはその場で提示可能な証明書類で確認をして、手続を進めた 上で、事後的に証明書を追完していただくと。2点目が親族からの証言、あるいは文書で の確認といったことを基礎として手続きを開始して、事後的に公的証明書を追完していた だくと。3点目は上2つの内容合わせて行って、その上で手続を開始して、できるだけ早 く事後的に公的証明書によって追完をするという方法が作業班の見解として示されたとこ ろです。付随意見という形で、※で書いてありますが、やはり戸籍謄本による確認は必須 であるということで、レシピエント選択の前までに戸籍謄本による確認がなされない場合 は、親族優先提供は行うべきではないと。親族優先提供を行うべき者は優先提供の意思表 示と併せて、常に身分関係を明らかにする戸籍謄本の所持を義務づけるべきであるという ことの前提で※のような見解がいたされているところです。  以上が作業班におきまして、親族優先提供にかかる諸課題に関して、検討された内容に ついての報告内容でございます。よろしくお願い申し上げます。 ○永井委員長 ありがとうございました。いかがでしょうか。  まず、いまの1の「親族の範囲」について、ご質問、ご意見がございましたら。はい、 どうぞ。 ○奥山委員 1つ確認をさせていただきたいのです。親子の場合なのですけれども、これ は例えば0歳で離婚して親権がなくても、実親と実の子であれば親子と認めるということ になるわけですね。 ○峯村室長 お答え申し上げます。いまの場合ですと、婚姻関係がなくなっておりますの で、その場合は認めないという扱いになるということです。 ○奥山委員 そうすると、親権があるかないかが影響してくるのですか。つまり例えば、 離婚の中で、親権は父親にあるけれど監護権は母親に置いておくというような例もなくは ないのです。そういった場合はどうなるのですか。 ○峯村室長 いまの場合、ちょっと分けて考えないといけないのですが、親権がある場合、 血のつながりがある親子の間の場合につきましては、この親族の範囲に含まれるという形 になろうかと思います。ただ連れ子のような場合には、その場合には養子という扱いにな りますので、その場合には親族の今回の範囲の対象からはずれるということです。 ○奥山委員 いまお聞きしたのは、離婚をされました、父親には親権が行きます。でも大 きくなるまでは母親の元で看護してもいいですという形で、一緒に住んでいて育ててもら っているのは母親、親権は父親に行っているという場合もなくはないのです。それでも親 権がある人だけが優先と考えていいですか。 ○峯村室長 その場合は、父親と母親のほうに両方に親族の範囲として認められるという 形になろうかと思います。 ○奥山委員 そうすると、実親であって、同居をしていればというような感じになります か。どこでそう線が引かれるのか、確認だけしたいのです。 ○長岡補佐 いま補足しますと、実親の場合は、同居要件に関わりなく血のつながりがあ るということになりますので、対象となるということです。 ○奥山委員 ただそれは親権がある場合ですね。親権がなければ実親であっても対象では ないのですね。その辺がちょっとこれだけだとわからないので、確認をしたいのですけれ ども。 ○大久保委員 はい、血のつながりです。 ○奥山委員 ということは、血がつながっていればもう0歳のときに離婚をしていても、 何でも構わないと考えてよろしいのですか。 ○大久保委員 そうです。最初の答弁がちょっとおかしかったので。 ○永井委員長 そういう理解でよろしいですか。血族ということを重視すると。 ○長岡補佐 はい、その通りです。血族ということですので、親権には関わりなく血のつ ながりがあるないというところで判断するということになります。 ○相川(直)委員 親族の範囲等については、大体私としては納得のいくと言うのですか、 検討なさっていただいたのですが、1件だけ確認、あるいは意見を申し上げたいのは、1 頁の要旨の所の「作業班の見解」の2つ目です。特別養子縁組については、親族優先提供 の範囲に含めるというご意見でありますけれども、特に有償性の回避等の点で問題になり 得る事例というのがあり得るかと思います。それは、レシピエントとなり得る方が慢性腎 不全に明らかになってしまっている後に、特別養子縁組をした場合ということです。もち ろんその腎不全になった方に強い絆で思い入れがあり、家族として特別養子縁組を行って その人にあげたいという気持ちがある一方で、場合によっては、その方の財産を引き継げ ることの代償として、特別養子縁組をして親族優先というようなことが行われないかどう かというのを危惧するわけです。性悪説になって恐縮ですけれども、その辺の特別養子縁 組をした時点と、それからレシピエントとなる人が臓器移植を必要になった時点との時間 関係については検討なされたのでしょうか。 ○峯村室長 レシピエント登録の時期と、この養子縁組の時期との関係についての議論は 特段なされておりません。 ○相川(直)委員 そうしますと、やはり先ほど言ったような危惧が発生しますので、そ の辺の所をどのように処理したらいいのか、あるいはこのままでもよろしいか。私自身と しては、その辺の所がそのようなことが起らないようなガイドラインなり、規則なりを検 討していただきたいと思っております。  ○永井委員長 いかがでしょうか。 ○峯村室長 もしこの委員会でご要望がなければ、そういったご意見を踏まえまして、内 容についての検討をさせていただきたいと考えております。 ○奥山委員 特別養子縁組は、確か児童相談所か、公的に認められた斡旋機関が行って、 家庭裁判所が申請を許可するという形ですね。かなりその辺の所は注意をして調べていけ ば調べられるからということで、ここに入っているのではないかなと思うのです。ただ1 つ問題になるのは、公的に認められない斡旋機関が斡旋している例がなくはないというと ころはあるとは思います。 ○相川(直)委員 そういうことであって、特別養子縁組を承認するときに、全てそれが 完璧に行われればよろしいわけですけれども、行われないことを考えて、それから逆に、 では臓器移植が必要な人には特別養子縁組はできないのかということにもなってきてしま うのです。ですからその辺の所も、例えばですけれども、臓器移植を必要となった、ある いは登録をした人と特別養子縁組を行う場合には、親族優先の提供はできないとか、何か その辺の所でしっかりと決めておいたほうがよろしいかと思います。 ○相川(厚)委員 意見を言ってよろしいでしょうか。東北大学の相川でございます。生 体腎移植の場合でも、やはり養子縁組をされた方の生体腎移植というのは非常に注意を要 するわけで、我々も養子縁組をした期間、レシピエントが病気になって登録をした時期で すね、そういうものをよくよく調べて判断をして、普通は施設の倫理委員会、そして日本 外傷学会の倫理委員会に2段構えで倫理委員会にかけるというのが実情です。それから考 えると、やはりこの時期に関しては非常に重要な問題であると私も考えます。 ○永井委員長 事務局いかがでしょうか。 ○峯村室長 そもそも養子縁組制度の中で、この特別養子縁組につきましては、非常に年 少者と申しますか、6歳以下ということで、対象者が非常に限られている。またその中で、 裁判所と児相がからんで関係して養子縁組が行われるということで、慎重な判断がなされ た上でこの養子縁組が行われるという実態を踏まえまして、かなり問題となるべき事故が 起こり得ない範囲ということで、法律の作業班では議論がされたと私ども聞き及んでおり ます。したがいまして、例えばレシピエント登録との関係でそこまで見るのかという点に ついては、そこまでの議論ということでは、特段そこまでの具体的な議論はなされません でしたけれども、この移植委員会の委員の皆様のご意見として、例えばそういった点につ いて有効な期限を設けることができるのかどうかといった点について、もしご議論が出さ れれば伺いたいと思います。 ○永井委員長 何か具体的な提案がございますでしょうか。 ○相川(直)委員 具体的な提案、例えば何年間ということではないのですけれども、ま た、臓器移植のレシピエントを登録してから、例えば特別養子縁組になった子ですね、子 が自分の意思表示ができる15歳になるまで、というのは9年とかそのぐらいありまして、 その間にレシピエントがずっと生き長らえて臓器移植のレシピエントになるということは 非常に稀なことではありますけれども、何らかのやはり附則なり条文なりでそのようなこ とが起らないように。何故ならば、先ほど相川厚委員がおっしゃった生体の場合にはある 程度時間があるのです。倫理委員会に提示してその倫理委員会の判断を求めるのに時間が ありますけれども、脳死移植の場合には、そのような時間的余裕がないので、また、提供 者の意思の大切な臓器を無駄にしてもいけないということもあるので、前もってある程度 なことは定めておいたほうがいいのではないかと私自身は考えます。 ○永井委員長 いまの点を含めて、ほかの件でも結構です。 ○木下(茂)委員 ほかの点でよろしいですか。京都府立医大の木下です。親族の範囲の ことなのですけれども、これ基本的に1親等というのは、これは立法の場での答弁という のが非常に大きく入っていると思うのですけれども、私は角膜移植をしているのでちょっ と事情がほかの臓器移植とは違うのかもわかりませんが、過去30年ぐらいしている臨床の 中でどういう要望があったかというと、ほとんどの場合が、例えばお祖父さん、お祖母さ んが孫に何とか提供したいとか、あるいは兄弟で提供したいとかということであって、親 子とかというのはですね、非常にむしろそういうことは稀だったように思うのです。ほか の臓器移植の場合年齢的なことが、ドナーの年齢のことがあるからかもわかりませんけれ ども、臓器移植をよりある意味で前にもう少し動かしてという場合にですね、血族の2親 等までの、ですから兄弟、孫、というようなところを含めるときに、何らかの不都合があ るのかなとちょっと思いました。そこで法律的な問題云々というところ、あるいは間がな いのであれば、血族に限っては2親等までということにしても、それほど不都合は起らな いのではないかなとちょっと感じたのですけれども、いかがでしょうか。 ○峯村室長 法律の作業班での議論といたしまして、1つは提案者の意思ということで、 国会の場で示された発言、これが注視されたのですが、もう1点といたしましては、やは り1つは公平性の観点の特例であると、そういう観点からこの臓器優先提供の取扱い、親 族の範囲については限定的に扱うべきであるという見解が示されたということでして、そ の考えの元で、いちばん家族関係として基本となる夫婦及び親子という関係を基本とした 親子、配偶者という範囲を認めるべきではないのかという意見があったところです。それ から3点目として、やはり現場での意見、ご意向というのはいろいろあろうかと思います。 より広く2親等までという意見もあれば、もっと狭くという意見も。あるいはこの優先提 供自体を認めるべきではないという議論もありまして、さまざま議論があるわけですが、 やはり広げると当然それへの確認といった点での手間、一応現場の関係を確認する難しさ と、まずその場合に有償性なりの入り込む、そこの部分の排除というのはより難しくなる といった点も踏まえて、親族の範囲については法律の作業班において親子と配偶者という 取扱いにされたと考えております。 ○永井委員長 先へ進ませていただきます。2番目の意思表示内容について、ご意見をい ただけますでしょうか。 ○大久保委員 これを見ると何か名前を書くのではなくて、親族で書くという形になると 書いてあります。基本的には相手というのは当然登録しているわけですから、確定してい ますね。それで何故これを親族にするというのはちょっとよくわからないのですけれど。 基本的に誰にあげるかということは当然確定をしているわけですね。非常に限定的な話で、 いま言ったように配偶者と1親等しかいないし、その中でレシピエント登録している人は そんなたくさんいるわけではないし、何故ここを親族として、誰でも適当に書けば親族と 書いてもいいような形で、誰でも書けるような形にわざわざする必要がどこにあるのかな と私は思うのです。 ○峯村室長 親族の提供意思の表示の仕方といたしまして、やはり作業班で問題になりま したのは、運用上のトラブルをできるだけ防ぐというのがまず1つございます。したがい まして、レシピエント登録をされている方が当然おられる、それが前提でこの移植医療は 行われるわけですけれども、その際例えば複数名おられた場合に、出て来たカードが複数 で全部別な内容で示されたようなものが出てくるというような懸念、そういったものをで きるだけ少なくする必要があるのではないか。また順位付けについても同様でして、順位 が違うものが出てくる、あるいは偽造がされるということが当然考えられるだろうという ことが議論の場で出されたところです。今回の場合は、先ほど申し上げました通り、法律 の作業班の中での共通認識として、親族優先提供の場合は、提供すべき親族が予め指定さ れておりますので、明示されている、いわば提供されるべき親族の方に期待といったもの を生じさせるということがありますので、さまざまな親族関係の内容を解決し、トラブル が生じないようにするためには、一律親族という内容で意思表示をしていただいて、その 上で複数名の方が候補者としておられた場合については、医学的な優先順位付で優先順位 を決めていくというやり方がいちばん望ましいのではないかということで、親族という表 示をすべきであるという見解が示されたということです。 ○永井委員長 遺伝性疾患であれば、レシピエント候補者が複数のことはあり得ると思い ます。そうすると例えば、自分の子にといったときに、どちらの名前を書くかは、なかな か難しいように思いますが。 ○大久保委員 ただこれ全体のを見ていたら、この後からも出てくるのですけれど、運転 免許証に記載するとかと、非常に一般的になってしまうのです、これ。これもだから運転 免許証に記載欄を作るということになるわけですね、これは5頁に書いてある。健康保険 証もしくは運転免許証に記載欄を作って、なおかつ親族から書けるとなると、要するにい くら周知しても全く関係のない人もどんどん書く可能性が出てくると思うのです、私これ。 だからどんどん何か広げてみんな書いてくださいという方向にこれ作っているような気が してならないので、そんなものではなくてものすごく限定的なものなのに、何か広く誰で も書ける、親族で書けるし、免許証にも書けますよ、カードにも書けますよ、誰でも書い てしまいますよ、そういう形の何か方向に議論が行っているのではないかなと私は思うの です。 ○峯村室長 いまの免許証への記載というのは、広げるという意味ではございませんで、 法律の作業班で議論された内容としては、いま1憶2千万枚ドナーカードは配付している わけですけれども、その中でいろいろ複数たくさん所持している方がおられると、署名欄 と日付欄があるわけですけれども、ただその中でできるだけ複数の物、あるいは偽造され るといったことがないような、本人の物であると、いわば遺言ではないのですけれど、1 つの遺言だという仮定の元で考えれば、本人の物だと、それが本人の生前の意思が継続し ている内容の物だというものを特定するには、1人1枚、免許証であれば複数ということ もあれだけれど、1人1枚の運転免許証、あるいは保険証といったものに記載するのが原 則とすべきではないかという議論が示されたところです。したがいまして、あちこちにた くさん書けということではなくて、法律の作業班の中での議論としては、むしろドナーカ ードは当然持っていただくのですが、それと併せて本人が特定できる、本人意志がきちん と特定できるものに収束するような方向で誘導すべきであるということで、今回例えば免 許証であるとか、あるいは意思登録のシステムへの登録といったことを原則とすべきでは ないかという意見が出されたということです。 ○大久保委員 要するに意思登録ではなくて普及啓発班のほうで話をしたときには、別の カードにしたほうがいいのではないか、要するにドンドン発行する物ではなくて、基本的 にレシピエント登録をした人しか関係がないわけですから、もう少し厳選してカードを別 にしたほうがいいのではないかという意見も出ていて、一般的なカードに記載欄でも作ら ないほうがいいのではないかという議論にはなっているのです。その辺の所との整合性と いうか、私はそのほうがいいと思うのです。この免許証だとか、それからカードにドンド ン記載欄を作るということは、どう考えても少し逸脱をしてくることが大きいのではない かと私は考えます。 ○峯村室長 今回の改正法の中で、従前、運転免許証については記載欄を設けることがで きなかったわけですが、今回そのための根拠規定が整備されている。また、保険証につい ても同様に、その同じ条文の中で表示欄を設けることができるという扱いになっておりま す。それを踏まえて、運転免許証なり保険証への記載といったことは、1つの偽造なりあ るいは複数枚出てくるといったことを防ぐという点では有効な意思表示の手段かと思いま す。もちろん合わせて、いまある現行のカードへのもう少し本人が特定できる形でいまの 登録カード自体の内容を見直すというのは、それはそれで併せて検討すべきことだと思い ます。お互いが相矛盾するという見解が法律の作業班で示されたわけではございませんで、 1つの。 ○大久保委員 いや、まだそれは示していないですけれどね、議論として。 ○峯村室長 そういう1つの特定すべき手法として、免許証や保険証が考えられるのでは ないかということです。 ○大久保委員 私は反対です。健康保険証だとか免許証に優先提供の表示欄を設けること は、本当に全く必要ないと私は考えています。別の方として考えるべきだと思います。誰 でも書けるようにするべきではないと思います。 ○白倉委員 カードに書くという、いろいろな考え方がいま錯綜していますけれど、内容 がちょっと違うと思うのですけれど、カードに対する思い入れが。しかし、これ現場でカ ードに書いてあってということからレシピエントの選択が始まったら大変です。ですから こそ、ネットワークに意思表示をこのシステムを使って登録したらどうかという意見も出 ていると思うのです。現場では、これその日にこの人が親族優先権の希望者ですよという のがわかってから、それから本人の確認だの何だのやっていたら、いまでも時間がかかっ ているのにもっと時間がかかるのではないかと思うのです。実際に臓器が提供が始まるま でに。そうではなくて、こういうシステムをもうちょっとセキュリティとか、守秘義務と かをきちんとして、システムの中に提供者の希望というのが入っていて、その希望は誰々 さん、あるいは数名でも構わないと思うのです。双子の子がいて、2人ともなっていると いう場合もあるかもしれませんけれど、それも含めてその意志表思がレシピエントにつな がるようなデータバンクがあって、それでどちらからの検索でレシピエントがわかるとい うシステムにしておけば、先ほど言われたような利害関係があって金銭がどうのこうのと かいうのも、ある意味ではそのデータベースの中からピックアップして、これおかしいの ではないかというのは審議会にかけてもいいと思うのです。前もって評価委員会に。だけ れど評価委員会にするのではなくて、私はヒアリングがいいと思うのですけれど、その人 の真意がどこにあるのかというのは前もってきちんと評価して、そういう人だけを親族優 先の提供にする。それはネットワークとしては把握している。その人の意思が誰に対して あるのだというのは、別に公表する必要もないし、レシピエントに伝える必要もないけれ ども、データとしてはきちんとつながっている。その日にレシピエントの状態が把握でき てやれば、あとは医学的評価でその人が対応になるかどうかだけが、優先権が一般の人よ りもあるのだということは決められると思う。それはもうコンピューターで優先権の所に 親族提供というのがポンと出れば、HLAの順番だの何だの上に来るわけです。それがピッ と出てくるわけですから、やはり前もって把握するというシステムを考えるべきではない か。カードに書いておいて当日というのは、僕もまず現実的には無理だと思います。これ は大変ですよ。一般の人と別にしてそれだけのデータを当日集めて、この人にやるべきか どうかなんていうのは、これはまた余分に1日かかるのではないかと思います。ですから、 せっかくこういう臓器提供意思登録システムというのがスタートし始めているわけで、こ れをだからシステムとして改良すれば、そういったきちんとしたことができるのではない か。ちょっと提供というか、現場からは非現実的な話ではないかなと思いました。 ○相川(直)委員 いまのことに関連して、私もその意見には賛成です。臓器提供側にし ますと、例えばAさんという方が脳死になり、それが親族に優先、親族の所に○が付いて いるなり何なりというカードがあったということになって、そのコーディネーター等々か ら、ではそのAさんの親族というのは誰なのかというときに、そのレシピエント登録をし ている人しか親族がいない場合もあるわけです。それを調べて、この6頁の4に「親族の 確認方法」ということも書いてありますが、後追いで戸籍謄本の確認というようなことも 場合によってはする。短時間に、まず対象の親族を確定し、その人がレシピエント登録を しているかを確定し、それで親族関係が間違いないということを確認して、後追いで正式 に確認するというようなことですが、これは提供施設の現場としては大変なことになって しまうと思います。ですから、いま大久保委員がおっしゃったようなことも含めてですが、 親族優先提供をする場合には、すでにレシピエント登録がされているわけですから、期待 感が出てしまうということはあっても、いずれにせよレシピエントも知るわけですよね。 その場合にはレシピエント登録のほうにも、「この人は親族1親等の人から親族優先提供が あるのだよ」ということを登録しておくことによってかなり特定ができる。それも、登録 をするときには前もって戸籍謄本を確認した上で、この親族提供をすると言っていた人と レシピエントとは間違いなく1親等であるということも確認できていますので、そのよう な方法をとることも必要ではないか。そうしますと、大久保委員がおっしゃったように、 親族の名前も、順番は書かないとしても、複数ある場合には複数の姓名と、場合によって はレシピエント登録の番号か何かがあるのでしょうかね、そのようなものもはっきり書い ておけば、現場で今までの確認等についても確実に早くできるということもあり得るので はないかと思います。 ○大島委員 1つ確認しておきたいのですが、登録をするときに、意思表示カードを持つ ときに、将来、自分の親族1親等が、今は元気だけれども将来病気になるかもわからない ということも含めてこういう議論がされたのか。そういったことは全く考慮されずに議論 されたのか。その点はいかがですか。 ○峯村室長 そこは明示的にそういった形で議論がされたかどうかというと、いまの点に つきましては議論はされておりません。 ○長岡補佐 補足しますと、その場合の議論ですが、例えば意思表示をした後にお子さん が生まれるとか結婚をするということは当然あるかと思いますので、そういった場合につ いてのご指摘は出ました。その際、例えば何々さんと書いた場合に、後からお子さんが生 まれた場合に、実はその方が遺伝性の病気でレシピエントになり得るという形の場合はど うするのだという疑問は、詳しく議論にはならなかったですが、そういったご指摘は出て おります。そういったものを踏まえて「親族」と書くのがいちばんトラブルが少ないので はなかろうかという議論になりました。 ○佐野委員 私は心臓外科医で、提供される側のほうなのですが、オーストラリアにいま したけれども、そのときは運転免許証にカードが付いていましたが、もう少しシンプルで、 当然、優先登録などというのはありませんでした。これは、白倉先生が言われたように、 実際に脳死の判定がされていろいろなことをされる側からすると、ものすごく大変なこと だろうと思います。とてもではないけれども現実的ではあり得ないと思います。ですから、 前もって事前にそういうふうなことが登録されているほうがトラブルが少なくていいと思 います。  もう1つは、これとはあまり関係ないかもしれませんが、例えば心臓移植であれば、一 応、臓器の保存からすると、今は4時間以内に移植をするというので探します。向こうで も、例えばシドニーで出ると、その州内で4時間以内に移植ができる施設を第1優先で考 えるわけです。それで駄目な場合には次の所に行くわけです。もしも、親族にしてほしい という人が出た場合、その人にやろうと思っても4時間以内にできないという場合はどち らが優先されるわけですか。もしそれを親族というふうにどうしても優先される場合は4 時間以内という原則が崩れてしまうので、逆に言えば、心臓の場合だけですが、この臓器 は使えないということになります。今までの心臓移植の現場では、移植の判定というか、 そういう連絡があって80何%の臓器が現実的には使われている。それは、世界はその反対 に20とか30%ぐらいの所もあるのですが、それに比べると日本は、ある意味では、意思 表示をされた方の意思がかなりの率で今は現実的には表現されているのですが、そういう ときには親族提供が優先されるのですか。それとも、4時間というのが優先されるのです か。 ○永井委員長 それは臓器摘出してから4時間ですよね。ですから、親族優先の議論はそ の前に、脳死状態になったときから始まるのではないでしょうか。そうすると、もう少し 時間的余裕はあるように思うのです。ただ、それが現場では非常に大変だというのが白倉 先生のご意見だと思います。 ○佐野委員 そうですね。特に心臓の場合はそれでまた現場がすごく混乱すると思うので す。 ○白倉委員 議論が少しごちゃごちゃになっていますが、親族の優先権を実行するために といっても、例えばそういう医学的な要素、適合条件と言われているものですよね。だか ら、ABOが合わないのはしないという臓器があると思うのです。それは、この両者がきち んと登録されればネットワークのほうで前もってチェックできるわけです。ですから、「こ れはABO型が違うからこの方には優先は成立しませんよ」というのを言ってあげないとい けないと思うのです。そこの中に、今度、4時間なら4時間というのがあった場合、子ど もが北海道にいて親が鹿児島のほうにいてあの子にあげたいといったときには、それは前 もってわかるわけですから、それなりの工夫をしておかないと折角の優先権が実行できな いということがあるのですね。ですから、その意思をきちんとシステム上に登録しておく ということと、その対象者がどこのレシピエントなのかというか、きちんと結び付いてい ればそういった問題は全部解決できるのではないかと思うのです。 ○小中委員 いまお話のように、確かに、現場においてはその関係性を確認するのに時間 がかかるのでどうしようかというのは、とても悩んでいるところですし思っているところ ではあるのですが、また一方、逆に言いますと、今現在のネットワークの中で登録システ ムを用いていますが、この登録を普及していくのに本当に思っている方々が皆さん登録で きるかどうかというところに1つ疑問がある。もう1つは、法律の中に書かれているのは 書面で表示できるということが法律用語で書かれていますので、例えばネットワークとし ては多くの意思表示カードを配付してきておりますので、突然、その意思表示カードを持 ってきて、「書面で表示しているものが残っているよ」というようなことを言われた場合に、 登録すべしということが法律できちんと決められたらそれでいいのですが、もし決められ ていない場合に書面で親族に提供したいというものが出てきた場合に、我々はそれを無視 はできないというか、その意思を尊重するような動きを片方ではしないといけないわけで すので、さらに問題が生じていくのではないかというような懸念もあって、いまの確実に 登録しておくというものがあって、実際にその方からの提供であれば確実に登録している レシピエントから選ぶというのは、やり方としては非常にやりやすい部分ではあるのです が、我が国の法律の中で書面で表示して過去10年近くのカードを配付している状況を見る と、その表示も無視はできないところではありますので、そちらはそちらで問題になるか と思ってしまいます。 ○峯村室長 何点かあったわけですが、意思表示の登録自体の問題と、関係性も含めた登 録をそのときにどうするかという点と2つありまして、いちばん最後のほうの報告書には 出ていましたが、関係性をできるだけ短い時間で確認するというのは現場にとって負担が かなりかかるということを踏まえて、最終的には追加ということでどうかという意見が示 されているわけですが、法律の作業班の議論としては、レシピエント登録の際に関係性を あらかじめ登録しておくという意見も出されて、それについて検討もされたのですが、そ の点については、1つはネットワークにおける事務処理、業務処理上、ドナーの状況、現 実に誰がドナーになるかということがない中で登録をさせるというか、戸籍抄本等に基づ いてするということについての難しさと、また、任意性ということでしょうか、1対1で 関係性が結び付きますので、ドナーサイドに対する任意性という点でそれはいかがであろ うかという議論がありまして、レシピエント登録の際に関係性まで含めた情報を入れると いう点については、合意があまりなされなかったという点が1つあります。  それから、意思表示の仕方として、今まで意思表示の登録システムとカードとの関係で どう扱うのかという点につきましては、本人の意思表示というのは登録システムの中で、 厳密に成済ましというのを防ぎきれるかというとそういう水準までまだいっていないので すが、本人とその表示内容との間の特定が事前に十分登録されている中でできているとい うことで、この親族優先提供の場合については特にこの登録システムをできるだけ活用す る、これを原則とすべきであろう、という議論が多かったということです。したがって、 当然、カードに書くという意思表示が無効ということではないのですが、後々トラブルが 生じないような形で1つのシステムにできるだけ誘導していくということを根底に、今回 を契機として考えるべき時期ではないのかという点がありました。それから、相川先生か らお話があったレシピエント登録時期と特別養子縁組との関係で、例えば直近でレシピエ ント登録をした直後に特別養子縁組をしているような事例も含めて、そういった事例も排 除するべきではないかというお話がありましたが、現実問題として、特別養子縁組の制度 の運用なり実態を見ると、かなり厳格に運用されているということを考え併せると、考え 得る限りでは非常に少ない事例ではないかなと思いますので、運用の場でそこはいろいろ 慎重に考えるということで、親族の範囲という扱いでは特別養子縁組という形で記載させ ていただくということでよろしいでしょうか。 ○相川(直)委員 それは特別養子縁組の記載は結構です。ですから、特別養子縁組を決 めるときに臓器移植という観点からも「しっかりと見てください」ということを言ってお かないといけないと思います。 ○永井委員長 意思表示方法についても一緒にご議論いただきたいと思います。運転免許 などに記載するのが望ましいと書いてありますが、これは大久保委員から反対意見が出て おりますが、いかがでしょうか。この場合には登録のシステムも併用するという意味です か。 ○大久保委員 併用というより、そういう所に記載欄をつくること自体が私は反対だと言 っているのです。要するに、運転免許証とか保険証のカードの裏に優先提供の記載欄をつ くるのに私は反対だと言っている。それは誰でも書けるようになって混乱を招くだけです から。これは本当に特別なことであって、実際にいま登録している人は1万人ちょっとし かいないわけですから、そのご家族しかいない、本当に限定された方しか記入しないわけ です。日本で8,000万人ぐらい対象者がいるわけで、そのうちの極くわずかの人しか実際 には対象にならないのに、それを全部が書けるような形にするべきではないと私は思いま す。 ○峯村室長 若干補足ですが、いまの大久保委員のご意見もありましたが、意思登録シス テムにつきましては、先ほど、資料に書かせていただきましたが、拒否の意思表示という 点について把握するという点からも臓器移植の意思登録システムの活用を1つ基軸に置く べきであろうという意見が法律作業班ではありました。登録者数については、正確な数は いま資料が手元にないのですが、この意思登録システムの登録者数も4万人か5万人ぐら いの数になってきていると伺っていますので、世間的に周知が徐々にはされてきているシ ステムだというふうに思っております。大久保委員のご意見もあるのですが、法律の中で は免許証及び保険証にという話がありますので。 ○大久保委員 それは意思表示を書く部分に関して、私は運転免許証とかカードはやって いいと思う。ただ、そこに優先提供の欄をつくるべきではないと言っているだけです。も ちろん、当然、運転免許証とか保険証のカードに意思表示欄を書くのは絶対にやってほし いと思いますが、そこにわざわざ優先提供をするための欄をつくる必要はないと私は言っ ているだけです。そういう意味ですからね。 ○峯村室長 法律作業班での議論を紹介いたしますと、ご意見は大久保委員の意見と全く 反対になってしまうのですが、むしろ健康保険証に、優先提供についてはそこに限って設 けるべきではないかという意見のほうが多かったと伺っております。 ○佐野委員 運転免許証とか、そういうものは、大久保先生と一緒なのですが、優先登録 というのは書くべきではないと思います。というのは、例えば若い人で運転免許証を持っ てどうこうしたときに、そういう欄があると人情的に誰でも関係なく○をしますよね。も し自分が何かあったときには親からとか何とかしてほしいなと誰でも思いますから。でも、 これと今回の優先提供というのは全く別の話なので、そういう誤解を招くようなことはし ないほうがいいと思います。これはものすごく希なことだと思うので、心臓関係ではまず はあり得ないような事由なので、そういうことは一般的な誰でも持つようなカードで、若 い人がいつでも○をできるような所にはするべきではないと思います。 ○永井委員長 ただ、同定はしないといけないでしょうから、何か別のきちんとしたシス テムをつくれないのでしょうか。どこかお役所でも行ってそういう証書をつくってもらう ような。つまり、そんなにある話ではないのだということですよね。 ○佐野委員 そうです。だから、そういう人はそういう所で登録を別個にするようにした ほうが、はるかにクリアカットで混乱もないと思うのです。 ○永井委員長 法律家の先生が心配されたのは、アイデンティフィケーションということ だと思うのですが、それだったら別の方法があるのではないかというのがいまの先生方の ご意見だと思います。 ○相川(厚)委員  大島委員が発言されたように、将来的なことを考えて、一般の方に 関しては訳もわからず親族に○をする方がものすごく多いと思います。もしそういうカー ドをつくったり運転免許証に、非常に希なケースであるにもかかわらず「親族」と書いて あったら、実際に親族が登録していなくても、親族が病気になっていなくても、おそらく、 ○を書く人は非常に多いと思います。それは現場を混乱させる原因にかなりなると思いま す。 ○長岡補佐 いまのご指摘につきまして、法律班での議論をご紹介しますと、まず、書面 でということが法律に書かれておりますので、書面に書いてしまうのは法律上しかたがな いということです。もう1点は、親族優先の意思表示は親族にレシピエントがいらっしゃ る方しかできないのかというと、そこも法律上は何も規定がありませんので、先ほど少し 申し上げましたが、将来的に要るかもしれないということで書く。これも禁止はできない だろうということでした。一方で、その意思表示の方法につきまして、システムという話 が大きく出てきまして、ご本人の意思を亡くなられた後最大限に尊重するためにははっき りした形で残すのがよかろうと。それにはシステムがいいだろうということで、これは臓 器移植委員会とか普及啓発の班でシステムをどういった形で前面に出してやっていくかと いうことを議論したらいいのではないか、というご指摘をいただいているところです。 ○永井委員長 運転免許証に優先提供の欄があって○が付いてあった場合に非常に混乱が 起こるという問題はどうでしょうか。あるいは、システムのほうに同時に入力されていな い場合には免許証の優先表示は無効になるという方法もあると思います。免許証の情報だ けですと、これを基にいろいろ確認をしないといけないですね。 ○白倉委員 ネットワークにお聞きしたいのですが、運転免許証の親族の所に表示がある として、それが、実際のレシピエントがいない人も含まれていたとき、現場で当日それを 見て、この人は対象のレシピエントがいるのだろうかどうだろうかという検索をするのは ものすごく大変ではないのですか。 ○小中委員 検索自体はご家族に承諾をいただいてからの話になりますので、ご家族から その親族がいるかどうかをとりあえずは確認することになるかと思います。臓器不全でネ ットワークに登録している方がいるかどうかということを伺えばすぐ確認できますので、 カードを見た段階だけでそれをするということはしないです。 ○白倉委員 そうではなくて、レシピエントがいないにもかかわらず○を付けている人が たくさんいる場合、それを家族のチェックを全部しないといけないことになりますよ。家 族がすべてが知っているわけではないので、本人さんとレシピエントの患者さんとの間で はある程度の意見交換があっても、そこの現場に来られた家族がみんな、この人は親族優 先提供の希望をしていてレシピエントがいる、というのを知っているかどうかですよね。 知らないと言われたとき、実際にはいないから知らないのであって、確認にはならないと 思うのです。結局はデータを調べないといけないですよね。 ○小中委員 いまのお話ですと、まず私たちの所に連絡が入るのは、ご本人さんが1親族 優先の書面を残されていて、ご家族から申し出られるか何かによって病院から呼ばれるわ けなのです。ですから、私たちがお伺いするときには、すでにご本人さんの書面とご家族 がそこにおられるわけですので、その書面の親族をすべて私たちが登録者の中からすると いうことは不可能ですので、ご家族に伺ってご家族が承諾した場合においてのみレシピエ ントを検索することになりますので、いまの先生のお話の、すべてを探すというのは私の 頭の中にはありませんでしたので、そういう手続が必須になると捉えなければいけないも のなのか。話が前後しますが、いまのお話ですと、血族の親子であり配偶者であるという、 そこの方々が臓器不全かどうかは知らないご家族はおられないのではないでしょうか。で すから、まずは書面と家族の承諾を得て選定をするということはすぐできることですので、 関係性を確認するのは非常に難しいかと思うのですが、選定においてはあまり心配すると ころではないとは思います。 ○奥山委員 本当に例外的かもしれないのですが、今現在結婚しているパートナーは、亡 くなった方のその前の前の結婚のことをご存じなくて、そこに子どもがいるということは あり得ない話ではないのです。生体移植などでもそういう相手えおにいったりはされてい ます。ですから、それはないとは言えないので、ないということを証明するのはかなり難 しいことかなとは思うのです。 ○永井委員長 そこの問題なのですね。 ○相川(直)委員 臨床の現場にいますと、脳死でない場合でも危篤の場合に、ご家族を 呼ぶと言ってご家族が来る場合でも、姻族、血族でのご家族でない場合もありますし、は っきり言えば、事実婚の方がいらしているということもあります。いま委員がおっしゃっ たように、本当の血族の1親等あるいは、昔の配偶者はどうするかということは駄目なの でしょうけれども、いずれにせよ、血族の1親等がいま来ているご家族が知らない場合と いうのはそれほど希ではない、あり得ますので、その辺のところは運用でしっかりしてい くべきかなと思います。 ○永井委員長 名前が同定されていないとわからないということにもなりませんか。そう すると、先ほどの親族と記載というところに抵触してきますね。 ○相川(直)委員 実際に、臨床現場では、ご家族と言って呼んできても、その人が本当 の配偶者なり親子なりかということを確定すること自身もそもそも難しいのです。後で、 実際には事実婚の方だったり、事実婚でも非常に難しい関係にあったということがあるの です。でも、ご本人からは言ってくれませんのでそれはなかなか難しいし、こちらが、そ のようなときに、家族が危篤とか脳死になったときに、「あなたはどうでどうです、戸籍謄 本を取ってきなさい」とかということはなかなか聞きにくいということもあります。でも、 脳死の場合にはそこまで突っ込んで聞かなければいけないのだとは思いますが、なかなか 難しいことはあり得ると思います。 ○永井委員長 親族の確認方法も含めてご議論いただけますか。 ○大島委員 もう一回確認したいのですが、個人名を特定するというのがなぜいけないの かということが1点です。それから、いまいろいろな議論があったのですが、法律ですか ら例外の例外のようなことまで想定しながらいろいろ議論をしていると思うのですが、一 応考えられる制約の中でこういうふうにやろうと。それは始めから不可能な話では別です が、いろいろな制約があるけれども可能な中でこういうふうにやろうと決めたら、手順を 決めて、現実的にそれを行っていくと。実際、そこからできなかったケースも出てきます よね。そういったケースが出てきた場合には、これはもうやむを得ないと考えるしかない と私は思っています。だから、時間的な制約とかいろいろなことがあって、その場合に基 本的な精神としては、この臓器を使っていただきたいということを最終的には優先させる という点でコンセンサスを得ておいて、その場合に本人の希望が技術的な問題あるいは時 間的な問題、医学的な問題等によって不可能であれば、これはやむを得ないと私は考えて います。そういうことで、最初の質問についてお答えいただけますか。名前を特定するの はなぜいけないのか。 ○峯村室長 先ほど3頁のほうでもお話させていただいた内容になるわけですが、法律の 作業班においては、法律の条文では親族としか書いてないわけですが、その中で特定親族 への指定というのが可能かどうかということですが、その際、親族優先の意思表示という のは、移植機会公平に分配するという観点から、親族に限らずある特定者を指定するとい うことについては、移植法の公平性の原則から考えるとそこは含まれていないのではない かと。もう1点は、運用上のトラブルという点をできるだけ防ぐ必要があるということか ら、特定人の指定ということについては行わずに「親族」という一般で表示をすることが 望ましいという見解が示されたということです。今現在の法律案では、第三者に対する指 定はガイドライン上できないことになって、その背景としてはそもそも臓器前移植自体が 公平に臓器を必要な方に分配する、公平性の原則をかなり高く謳っているわけですが、そ の中で親族の優先提供というのは非常に特例的な扱いとして今回入ってきた。そういうこ とを考え併せますと、特定人への指定という、そもそもそういう思想自体ができるだけ薄 める必要があるということで、「親族」という表示という形で認めるべきであるという見解 が示されたということです。 ○大島委員 この問題自体が初めから例外的な扱いであるという議論で、私自身もそう思 っているのですが、それが1点です。もう1つは、トラブルを回避するということなので すが、ある面から見たトラブルとこっちの面から見たトラブルと、いろいろなトラブルが あるわけです。それを総合的に見た場合に、トラブルはできるだけ総合的に小さくしたほ うがいいだろうという観点からいけば、むしろ特定したほうがトラブルを回避するという 点では有効ではないかと思います。法律的な解釈の仕方とは違うかもわかりませんけど。 ○貫井委員 親族としても、実際の現場では移植ネットワークの人たちが必ず名前を聞く のです。そうでないと検索ができない。あとの作業に関しては今までの経験があって、ど こにいるかわからない親族を探したり、相当経験を積んでおられるので、あとの手続に関 してはあまり議論してもしょうがないのではないかと私自身は思います。大久保さんが言 われた書き方、どこに書くか、これがいちばん大きな問題ではないか。もう1つは、いま お話に出ている、名前を書いてはいけないのか、書かしたほうがいいのではないかと。だ けど、これは現実には現場ですぐ聞きますよね。そうでなければ検索できない。だから、 いま大島先生のお話のように、臓器移植は公平性を保たなければいけないというのは大原 則ですが、今回は特殊な事情がありますので、名前を書くのが実際的ではないかと私自身 は思います。なぜ書いてはいけないのかよくわからない。実際的には名前をすぐ聞きます よね。 ○大島委員 私も、複数いる場合はどうなのかと思って。複数書いてもいいわけですね。 ○貫井委員 両方書いてもいいのではないですか。 ○大島委員 複数いて、それで医学的にどちらが優先かということで決めていく。確かに、 いるかいないかわからない親族を探すということの手間ですね。それで、後でもし出てき た場合とか、いろいろなトラブルが起こるような気がしますが、どうでしょうか。 ○峯村室長 法律の作業班において、特定親族の指定という形については、基本的に「親 族」という表示で書いていただくと。しかし、実際にそういう記載が出てきた場合につい ては、同列と扱ってレシピエントの選択基準に従って選定をしていくという見解で示され ているのですが、特定名の事実名を書くということについて非常に問題になったのは、要 は移植を受けれる人間が今回は特定されると。ですから、遺産相続の場合と類推するわけ ではないのですが、優先提供の場合は利益を受ける個人が特定される。それは、法律作業 班の見解では、今までの臓器提供の場合とはパラダイムの転換があったのだという認識で 今回整理がされているということです。したがって、特定されて、しかも現実に利益を受 ける人間が自分がもらえるというのを把握している場合に、そこに対してさまざまな人間 関係上の問題でトラブルが生じないようにするには「親族」という書き方で書いておくの がいちばんトラブルが生じないのではないかと。順位付けをしたり、あるいは複数名が出 たりということについては、この場合、そういったことによって親族間で確認なり協議が 非常にトラブルになるということが防げるであろうということがあって、今回、親族とい う表示でどうかという結論になったということです。  それから、例えば親族の中で確認漏れの議論がありましたが、当然、臓器提供の場面で 考えれば、同意・承諾を与える方々というのがおられて、その中で親族関係についての議 論がされるのであろうと思います。その総意を喪主が取りまとめるという過程の中で今ま で運用がされてきていますので、非常にレアなケースの、例えば本当にどこかわからない 所に親族がいるということについては、それが指定された親族なのかどうかという部分に ついては、その場でできるだけ承諾を得る親族・家族の方に確認するという手続の中で探 していくしかないのではないかというふうに考えております。 ○大久保委員 登録システムをつくると、当然、登録システムだとレシピエントにつなが るではないですか。基本的には、この人のこれだと決まるわけですから、誰がというのが わかるわけではないですか。ただ、特定が2人いる場合もあるので、それで2人いるとい うことがすでにわかってしまうわけではないですか。だから、それを運用しようとしてい るのに、それでいまの話は非常に矛盾するような気が私はするのです。 ○長岡補佐 まさに、いまのご指摘の点でして、例えばレシピエントの候補者が2人いる 場合に1人を書くプレッシャーというのはかなり大きいのではないかと。2人書けばいい のですが、例えば1人しか書かれていなかった場合に、それを法律的にどう解釈するかと。 例えば、「親族」と書けば2人の方を同列に扱って、レシピエント選択基準の中でどちらを 優先するかということを決められるが、1人しか書いてない場合は、例えば意思表示を貫 徹するという観点からすると、その方にいかないと今度はおかしいのではないかというこ とで、これはかなりトラブルのもとだというご指摘がありました。  もう1点、先ほど大島先生にご説明しましたが、その後、意思表示をした後に、もう1 人が産まれたとか、レシピエントとなり得る方が新しく夫婦になったとかいう形の場合に、 その場合はどうするのかというご指摘もありました。また、結局は現場で名前を聞くとい うことがありますので、まずは親族ということを書かせていただいて、これを大原則とす る。ただし、個人名を書いた場合には、ここの3頁に記載しましたが、当然、それは親族 一般とか、そういう形でできる限り拾っていこうと。そういうものが、先ほど大島先生が おっしゃった現場でのトラブルと、法律家が考える相続争いのようなトラブルの両方に対 応できるのではないかということでご議論いただいたということです。 ○大久保委員 「親族」と書くほうがトラブルが起こると思うのです。2人いるのだった ら、2人書いてもいいし、私は絶対にこの子にやるのだと言って書いてもそれもその意思 だと思うので、それをただ「親族」で書いて、あの人はこう思っていたからどうのこうの とか、こっちのほうが優先で医学的には上だよと。それが同じだったらどうするのですか。 同じように登録して、同じ日にちの登録のシステムも全く一緒で、ステージも1だったら どうするのですかね。そういうことが起こるのだったら、それはきちっと書くほうがトラ ブルが起こらないと思う。先ほどみたいな登録システムだったら、当然、特定をされるわ けですから、それをわざわざ「親族」を書くという理由はないのではないかと私は思いま す。 ○相川(直)委員 いまの大久保委員の発言の中で1つ混乱しているのは、例えばレシピ エントが1親等の中に2人いた場合に、どちらかを指定して、AにはやるけれどもBにはや りたくないと。そのAの親族優先をやりたいということは、この3頁の2行目ですでに処 理されているのだと思います。ですから、Aとしか名前が書いてない場合でもBにも行く し、Bが医学的に優先だったらBにも行くということで書かれている。それはこの3頁で 処理されているのではないかと思うのです。  1つ、大久保委員のおっしゃる意見で、私もなるほどなと思ったのは、親族という説明 が本当にこの委員会で了解しているまで一般の人に行くでしょうかということです。多く の人は、親族というと民法上の親族とか、まず、血族と姻族のこともあまりわからない方 がたくさんいるのではないか。いわゆる、親子配偶者といっても、例えば義理の親はどう だとかいう疑問が出てくる。ですから、「親族という優先に○を付けろ」と言っても、かな りの誤解が起こって、○を付けた人には、どうして兄弟は駄目だったのだと。いや、ここ にこういうふうに書いてあります、兄弟は親族ではないので駄目なのですと。そういうと ころで、私はその誤解のほうが非常に怖いような気がします。例えば、自分の兄弟が臓器 移植のレシピエント登録をしていて、それは親族だとその人は解釈して親族優先に○を付 けてしまったと。そのようなともあるので、本当に親族ということを書く場合に、そこに 細かいことで、ここで言う親族とは何とか何とかで、ほかは駄目ですよということを書く のがいいのか。それとも、A,B,Cと。つまり、親は2人しかいません、配偶者も1人しか いないわけです。そのほかには子です。そうすると、せいぜい10人でしょう。だから、そ のようなところではっきりとそれを書いたほうがいいのかということも含めて、これは具 体的な運用のことになるのでここのレベルでやることではないかもしれませんが、その辺 のところも検討していただいたほうがいいのかなと思います。 ○永井委員長 いまの点については、事務局とたたき台をつくり、また先生方に、こんな 表現でどうでしょうか、ということでメール等でご意見を伺った上でパブコメにいたした いと思います。ただ、問題はまだいろいろあります。つまり登録の方法です。運転免許証 なのか、併せてシステムでいくのか。それから、最後の確認の方法ですが、これについて はいかがでしょうか。確認も非常に厳格にしようということで、免許証、パスポート、事 後的でもよろしいので公的証明書ということですが。 ○大久保委員 ですから、先ほど、白倉先生がお話されたように、事前に登録するのを基 本とすれば、そのときに確認が取れると思うのです。免許証とか保険証に親族に提供した いと書いてあって、これをとるのは大変なことになると思うので、先ほどもお話しました ように、これは非常に限定した人しか提供できないのですから、登録を基本として、法律 上は書面で書いたもので全部有効になりますので、それはしかたがないのですが、わざわ ざそこの欄をつくらないで、かなり限定した形での運用にしたほうが混乱が少ないのでは ないかと思います。そうすると、確認方法も、事前に登録していれば確認もしっかりでき ますから、それがいいのではないかと私は思います。 ○小中委員 実際の現場においては、確実に確認できるものがすでにそろっていれば私た ちも非常安心なのです。ただ、先ほども申しましたように、それ以外はすべて優先提供で きないとするということはないということですね。そうなりますと、今の段階で登録シス テムはそのまま運用していくとして、いちばん心配しているのが、その登録システムに登 録されてなく、親族優先提供という意思をお持ちの方がドナーになられたとき、そこのこ とが現場では非常に大きなことになると思います。もちろん、システムに登録するのだっ たら、そこで公的証明書を送るということも1つですが、そうではない場合の部分をどう するかというところが現場はいちばん大きなところになるかと思います。それで、公的証 明書であれば、その公的証明書は何にするのか。それを家族が持って来られるなり、どう いう形にするかによって時間もかかることでしょうし、その部分をどのようにするかとい うところがいちばん大きいかなと現場では思います。 ○白倉委員 今あるシステムを使う使わないは別にして、これはシステムをつくって登録 をするべきだと思います。登録をしておけば、いま出てくるいろいろなケースとか、いろ いろな心配が全部なくなると思うのです。この親族の優先移植というのは本来の移植とは 違うわけですよ。全く違う関係の間だから、公平性とか、そんな問題は必要ないのであっ てね。ただ、ほかの人よりも優先させるというところでみんなが納得しなければいけない わけで、そこは重要なのですが、全く違う移植だと思うのです。ちょうど、脳死のこれま でやってきた移植と生体移植との間だと思うのです。だから、ある部分は生体移植の考え 方で考えてあげなくてはいけないし、脳死になってから臓器提供という意味であればこれ までの移植のシステム、考え方を入れてあげないといけないけれども、本来の移植の中に 突っ込もうとするから矛盾があるのであって、そこはきっぱり分けて、レシピエントと提 供希望者との間の関係などは全部押さえておくべきだと思うのです。 ○相川(直)委員 そこで確認ですが、複数のレシピエントが親族にいた場合にはその間 の優先はなくて、それをして特定することはできないと。これは原則だと思うのですけど。 ○白倉委員 ですから、どうしてもこの人という場合は、もちろんそれを優先する方法を 考えてあげるべきだと思います。でも、そうではなくて、2人いて、どちらかにしようと いう場合に、それは医学的に振り分けられると思うのです。そうでなくて、この人だとい うのを決めてきたときにどうするか、これは前もってそれがわかっていれば、ヒアリング するなり何なりしてその妥当性を審議しておけばいいわけですよ。 ○永井委員長 これは法律家のワーキンググループはどう考えておられるのですか。つま り、これは別枠で考えようというご意見ですね。 ○峯村室長 登録を原則とすべきであるという文言に現れているとおり、目指すべきとこ ろとしてこのシステムへの登録というものを中心に据えていくという形で持っていくべき であるという見解は法律の作業班でも同様でした。結局、先ほど小中委員のほうからもあ りましたが、法律上は書面によって意思表示を示すことができると書いている関係上、例 えば登録システムには登録せずに意思表示カード、あるいは保険証でも運転免許証でもい いのですが、そちらに「親族」という記載をして出てきた場合の扱いをどうするのかとい うところも1つありまして、それで2つ併用のような形での議論が今されているというこ とです。その中で、書面で出てきた、特にドナーカードがたくさん配付されているのです が、その中では、免許証、被保険者証に記載すれば偽造や複数枚出てくるということは軽 減されるだろうと。もちろん、大久保委員のお話になったとおり、そもそも書くべきでは ないと。ドナーカードを含めて、欄自体を設けないと。 ○大久保委員 ドナーカードではなくて、優先欄を設けないということです。 ○峯村室長 ですから、優先提供については、ドナーカードであれ、運転免許証の欄であ れ、そもそもその欄自体を設けないということが貫徹できるかどうかというところなので す。そこにもし書かれた場合にどう扱うのかという点が1つ出てくるのだと思うのです。 ○大久保委員 それはしょうがないです。だから、向こうが適当に隙き間に書くのはしょ うがないと思いますが、わざわざそこの所に優先を書く欄を設ける必要は全くないという ことです。 ○峯村室長 ですから、システムの基本という話は、私がいま申し上げたような、一方で ドナーカードというものがある中で、そこでできるだけ今のカードのシステムを活用する 方向で考えていくとした場合には、そういう特定なりをきちんとする仕組みとしては保険 証なり運転免許証があるのではないかという話がありましたので、一部の委員からは、記 載欄自体をなくすべきという、いわば、あくまで特例の扱いですのでカード自体の中にそ ういう優先提供の意思表示については設けなくてもいいのではないかという意見も議論の 過程では出ましたが、最終的にはいま示されているというような見解という形で示された ということです。したがって、いま1億数千万枚配られているドナーカードなり、あるい はどんどん切替によって所持率が大幅に上がっている保険証、運転免許証、そういった既 存システムとの関係で、できるだけ運用上トラブルが少ないやり方を考えるには、システ ムの登録を原則としつつそちらの既存システムの中で。 ○永井委員長 優先提供をする方は、何か書面をネットワークに提供しておいていただく というのはどうですか。 ○佐野委員 いまの優先提供というのは、もしあるとしても1,000人に1人とか1万人に1 人ですね。運転免許証にわざわざ1,000分の1か1万分の1をするために書くと、逆に言 えば、それはあればポッと○をする人はたくさんいます。そうすると、それは事前登録も していないし事前調査もしていないし、何もしていないわけですね。その人たちが例えば ネットワークでポッと来たら、これは登録されていればオーケーで、されていないのはい ちいちそれを調べろと言われても、その間に時間がすごく経って、折角のその意思がある とする臓器がそのためにどんどん悪化していって、現場で私たちが使おうとして、とても ではないけれども使えませんよとなったら、その提供しようとする人の意思も全く反映さ れないような悪い法律になってしまうと思うのです。 ○相川(厚)委員 先生がおっしゃるように、臓器移植ネットワークで年間どれぐらい優 先提供を望んでいるご家族がいたのかというと、前も発言しましたが、年間2、3例です。 心臓、肝臓、肺に関しては今のところ皆無です。腎臓に関してはそのぐらいです。それで、 今、ネットワークにお願いをして、どういう関係の方に優先提供していたのかということ を調査していただいていますが、感覚としてはご兄弟のほうが多いというふうに言ってい ます。ですから、先生がおっしゃるように、もっと少なくなる可能性はあると思います。 ○奥山委員 ドナーカードだったら、まだいろいろと事前に情報を書き込めるかもしれな いのですが、免許証ということになると、その余裕はありません。先ほども出ていました が、私があの人に提供できるかもしれないという期待を持たせるわけですね。ところが、 それがガイドラインに合っていないとしたら、つまり、情報がきちんと提供されて親族と はこういうものなのだということがわかっていないとしたら、それは倫理的にちょっと問 題なのではないのかなという気がするのですが、その辺の議論はなかったのでしょうか。 ○長岡補佐 倫理的にというところまでの議論はなかったのですが、記載については、ま ずシステムを原則とすべきではないのかという議論がありました。それから、カードに書 くことも、書面である以上は止めることはできないと。書かれている場合は認めざるを得 ないと。ただし、先ほどの大久保委員、それからいまご指摘がありましたように、例えば 欄を設けるのかどうかといったことについては、これは法律班では特段立ち入った議論は なく、今後のこの委員会とか普及啓発の中で、いろいろな条件を踏まえて、書いたほうが いいのかよいか検討すべきであるというご議論でしたので、いまの奥山委員のご指摘も踏 まえて、カード欄をつくるか、つくらないかとか、現実にシステムをどう普及啓発してい くのかということはご議論が可能かと思います。 ○宮坂委員 両方にかかわっているのですが、どちらかというと提供側のほうが多いと思 うのですが、基本的に大久保先生の意見に賛成です。臓器提供に親族優先というのが今回 加わったことですので、それに○を付ける。次には、親族にしか提供しないとか、この人 にしかやらないという思いが浮かぶと、むしろ臓器提供の気持ちを狭めることになるので はないかと思いますので、一般論として免許証とかに「親族」と特に書く必要はない。も う1つ、今までのドナーカードには基本的に親族優先を記す項目がないという前提ですの で、いずれはその人たちの意思を改めて登録し直す必要もあるわけですから、脳死移植で 親族優先というのは、気持ちでは理解しても、実際には非常に特殊な特別な状態なので、 別のシステムをつくるのが現実的かなと思います。 ○木下(茂)委員 私も大久保先生の意見に賛成です。基本的には書くべきではないと思 います。いちばん最初に言いましたが、ここではコンセンサスとして1親等ということが 法律の作業班の中から持ち上がってきていて、あたかもそのようなコンセンサスがあるよ うに聞こえるのです。ただ、兄弟というところはかなりあって、少しでも臓器移植を推進 させるというか、そういう気持も含めてということであれば、その血族2親等というとこ ろはどうなのかということをいま一度検討すべきではないかと、私は個人的には思います。 ○永井委員長 もう時間がありませんので、継続的検討課題ということでよろしいでしょ うか。 ○木下(茂)委員 はい。 ○山勢委員 私も大久保先生の意見に賛成なのです。私は看護大学生に教えている立場と して、看護大学生というのは医療のことも少しわかりながらも、まだまだ一般の人たちの 感覚を持っているのですが、「今度、特例だけれども親族にできるようになる法律になるの だけれども」と話すと、「あっ、そうしたら○をする」と言うのですね。それが一般国民の 意見だろうと私は思います。ですから、そういう私の実際の感覚からしても、学生の100 名中80名ぐらいがそれだったら○をする、という形、そうしたらかえって移植医療という のが変な方向に行ってしまうかなということ。それから、兄弟というところに関しまして は、私は木下先生と同じ意見で、まだはっきり決まっていないのであれば、看護学の中で も家族とは何なのだろうということはよく考えられるのですが、いろいろな定義がありま して、血族ということを全く謳っていない家族の定義もたくさんありますので、そうする ともっと広い範囲になる。だけど、もっと心情的に考えていくと、せめて兄弟というのは 外せないのではないのかなというふうに考えております。 ○永井委員長 とにかく、これは1月施行なのですね。また振出しに戻っても時間がかか ってしまいますので、とりあえず、今日の先生方のご意見を踏まえて事務局と私とでたた き台をつくって、メールで回覧させていただきます。ただ、これで決定というわけではな いので、またパブコメを踏まえてさらに検討が必要だと思いますので、いまの優先的な親 族への提供というのはやや別システムかなという感じはいたしますね。そういうことでさ らにご議論いただきたいと思います。  今日は時間がなくなってしまったのですが、実は一点相談があります。これは次回以降 の検討課題でよろしいのですが、私が理事を務めております日本循環器学会から、親族の 優先提供で自殺を誘発するようなことはあってはならないのではないかという意見書が出 ています。 ○大久保委員 禁止事項とすべきですね。 ○永井委員長 それについてまた改めてご議論いただきたいと思います。ただ、心臓はど うか、腎臓はどうなのか、小腸はどうなのかという話が出てくるのですが、そういうとこ ろも。 ○大久保委員 それは除外したほうがいいですね。 ○永井委員長 是非、次回以降ご議論いただきたいと思います。ということで、事務局か ら次回以降の連絡事項をお願いします。 ○峯村室長 今日は長時間のご議論ありがとうございました。今日いただきましたご意見 等を踏まえまして、1月の親族提供の意思表示に係る施行に向けたガイドライン作成につ きましては、委員長である永井先生と事務局との間でご相談させていただいて、また委員 の先生方にお諮りするということで考えていきたいと思います。今後の予定ですが、本日 の議論を踏まえて作成したガイドライン案につきましては、パブリックコメントを踏まえ て最終的な案を当委員会でご議論いただくという手順で進めさせていただきたいと思いま すので、どうぞよろしくお願いいたします。また、次回の日程につきましては、各委員の 日程を調整させていただきまして、決まり次第ご連絡させていただきます。本当にご多忙 の中を恐縮でございますが、日程の確保方どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○貫井委員 1つだけ確認しておきたいのですが、最近の臓器移植法の改正で、今日はマ スコミの方もおられるのですが、脳死は人の死であるという報道が広くなされまして、実 際に現場で脳死は人の死だという認識が非常に広がっているのです。実際に、救急医学会 ではいろいろなことを考えて、人工呼吸器を外す基準もつくっていたりしていますので、 臓器移植に関係なくとも法的脳死判定をすれば、人工呼吸器をはずしても、法的に「担保 されたぞ」という認識を持つ人が出てきました。ある病院に行きましたら「そのこと検討 しています」と言っていました。また日本世論調査会という、マスコミが入っている調査 会があるのですが、今回の法改正で脳死は人の死と決まったことに関して評価できるかと いう質問がありまして、マスコミの中でも相当広く誤解を招いているのではないかと思い ます。私自身は脳外科医ですから、現実には脳死は人の死と思いますが、法律的にはどう も違うという話を聞いておりますので、そこら辺をはっきりと今日お聞きだけしておきた いと思ったのです。これは大変な問題で、それを信じて、法的脳死判定をしたら人工呼吸 器を臓器移植に関係なく止められるぞと考えている人もいるのですね。そうすると、もし 法解釈がそうでなければ殺人罪で訴えられてしまう。そこだけ確認させてください。 ○峯村室長 いまのお話の点ですが、今回の改正法によりまして、脳死した者の身体の定 義が今回変更されているわけなのですが、改正後であっても、現行法と同様に、臓器移植 の場合に限って脳死が人として扱われるという旨の提案者及び国会審議の場面での法制局 の見解が示されているところです。その回答箇書がいま手元にありますので読み上げます と、衆議院の厚生労働委員会での提案者のご説明として、「今回の臓器移植法はそもそも臓 器移植に関連して脳死判定や臓器摘出の手続等について定める法律であって、臓器移植以 外の場面について一般的な脳死判定の制度や統一的な人の死の定義を定めるものではあり ません。この文言を削除したとしても、臓器移植以外の場合において、A案による改正後 の6条2項の規定により脳死が人の死として扱われることはありません」。こういう答弁が されているところでございます。以上です。 ○永井委員長 よろしいですか。 ○貫井委員 はい。 ○永井委員長 それでは、今日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうござ いました。 【照会先】  厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室  代表 : 03(5253)1111  内線 : 2366 ・ 2365