09/11/02 第4回チーム医療の推進に関する検討会議事録 第4回チーム医療の推進に関する検討会 日時 平成21年11月2日(月)13:00〜15:00 場所 厚生労働省専用第18〜20会議室 ○永井座長   時間になりましたので、第4回チーム医療の推進に関する検討会を開催させ ていただきます。お忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうござ います。  最初に事務局から出欠状況、本日、お出でいただいている先生方のご紹介、 資料の確認をお願いします。 ○石川補佐  事務局です。本日は、山本(隆)先生がご欠席です。また、大熊先生、太 田先生、海辺先生、有賀先生、羽生田先生が遅れてご出席です。本日はチー ム医療の推進に関する話題提供をお願いしています、日本慢性期医療協会の 会長、武久洋三先生、青梅慶友病院老人看護専門看護師の桑田美代子先生に お越しいただいています。なお、事務局の一部ですけれども、政務案件への 対応のため冒頭少し遅れてまいりますのでご容赦ください。ここで、カメラ の方は一旦、ご退室をお願いします。  お手元の資料の確認をお願いします。まず議事次第、座席表があります。 資料1として武久先生の配付資料、資料2として桑田先生の配付資料がありま す。また参考資料として、第2回チーム医療の推進に関する検討会の議事録を おつけしています。以上です。不足している資料がありましたら事務局まで お申しつけください。それでは、よろしくお願いします。 ○永井座長  ありがとうございました。では議事に入ります。本日の議題は、「慢性期医 療の場面におけるチーム医療の実態について」。日本慢性期医療協会会長の武 久洋三先生、青梅慶友病院老人看護専門看護師の桑田美代子先生にお出でい ただいております。最初に話題提供をいただいて、そのあと、お二人への質 疑応答を含めまして皆さま方のご意見をお聞きし、議論を進めたいと思いま す。早速ですが、武久先生からよろしくお願いします。 ○武久先生  どうもご紹介ありがとうございました。日本慢性期医療協会の会長をして おります武久です。慢性期医療におけるチーム医療の実態についてお話をさ せていただきます。  この検討会の検討課題として、ここに書いてある3つは書いてあったと思う ので、現在までの討議内容を見ていますと主にNPの話が中心で、総論的な話 だったように理解しています。今回、このように私としては、チーム医療は 専門多職種によるものをチーム医療というふうに思っていましたので、今回、 このような機会を与えていただきまして誠にありがとうございます。  2番ですが、このチーム医療は専門多職種で、ここに代表的な職種が書いて あります。こういう職種の方が、病院及び病棟でどのような業務が可能かと いうことを右側に書いてあります。このように専門の教育を受けたそれも高 等教育を受けた、国家資格を持ったコメディカルがたくさん病院にはいるわ けです。その人たちを活用せずに、これらの職種が病棟にないところでは、 看護師さんがこれらのことをすべて担ってやっているのではないかと思いま す。看護師としてはより専門的な業務に専念するほうがいいのではないかと 思っています。チーム医療の評価としましては、実はこういうコメディカル が病棟に関与していましても実際上は、診療報酬の入院基本料は主に医師と 看護師の数によって決められていまして、これらの職種が病棟で関与しても ほとんど評価されていないというのが現状です。  7対1の看護の高度急性期を見ましても、看護師さんがシーツ交換や現状介 護行為等も行っているやに聞いていますので、誠にお気の毒ではないかと思 っています。現実問題としては、看護師本来の業務を行うために国家資格を 有効に使っていただけたらと思っていますので、我々の日本慢性期医療協会 では調査についてまたご報告いたしますけれども、実はこの急性期と慢性期 というところの両極が非常に現場が忙しくなっています。療養病床も平成18 年7月から医療区分が入りまして、急性期病院から非常に重度な患者さんのご 紹介を受けるようになってまいりました。そういう事実があり、次の5頁です が、今年の4月にこの調査をしました。37,000床あまりの病床から調べました が、これを見ますと多彩なケアミックスの病棟を持った病院が多いことがわ かります。  6頁です。これは医療療養の患者さんの状態を見ていますが、医療区分1は、 医療区分2、3という重度の患者さん以外の者という括りになっています。医 療区分1の患者さんが比較的少ない病棟では、実に100人のうち、経管栄養は 45人、気管切開が実に17人、喀痰吸引が42人等、非常に重度な患者さんであ ります。  7頁ですが、病態から見るとICUと類似していると。ただ、病気にかかって からの期間によって違うわけですが、現実問題としては非常に重度な患者さ んを診ているのが現状です。  医療療養は、そういうことで大変忙しいわけです。これはどうしてかとい うと一般に比べ医療療養というのは、医師の数が3分の1になっているからで す。一方、高度急性期病院におきましては、介護施設等から慢性期療養中で 急性期増悪した患者が救急でまいりまして、本来であれば高度急性期で治療 すべきでないような、ミスマッチングな患者さんまでくるということです。 我々は大阪と東京で緊急連携ネットワークという、ミスマッチングな患者さ んを引き受けるというモデルネットワークをやって、非常に大きな成果を得 ています。  ただし、高度急性期病院もいわゆる13対1、15対1の一般病床も医師の法定 数は一緒でして、高度急性期病院では特に勤務医が疲弊していると聞いてい ます。またミスマッチングな患者さんが増えれば増えるほど大変だと。当然、 そのことに対して医師の補充もしたりしていると思いますが、現実には診療 報酬には反映していないので、勤務医が労働基準法から言われて大変困るよ うな状況であると聞いていますし、また給与も低いと聞いています。私は高 度急性期病院もチーム医療を促進すると共に、ミスマッチングな患者さんは 慢性期医療で診たほうがいいと思っています。  8頁です。看護・介護職以外に雇用している職種というのは、こういうふう な職種があります。ドクターは、100床当たり法定数は3人ですが、実際はそ の1.5倍はいることがわかります。  9頁です。病棟でコメディカル職員の配置状況ということでありますけれど も、ほとんどの病棟でコメディカル職員は配置されているということです。  10頁です。この赤で囲んでいますのは、慢性期病床での療養病床と一般病 床の中で、実数として、専従で病棟にいる人の数です。こうしますと、一般 病床より療養病床のほうに非常に多くのコメディカルがかかわっているとい うか、かかわらざるを得ないというか、非常に忙しいので、医師の数が不足 ということもあり、コメディカルによるチーム医療が実態として行われてい る状況があります。  11頁です。これはチーム医療でリーダーを担っている職種はどういうのか というと当然、医師、看護師ですけれども、それ以外の職種でも結構チーム リーダーとして役立っています。現実問題として、看護詰め所を看護詰め所 と言わず、スタッフステーションというふうに呼んでいる病棟が、慢性病床 では非常に多くなっています。また、どの職種を重点的に配置すれば、看護・ 介護職員の業務の軽減になるかということの調査によりますと、これは看護 師に聞いていますが、医療クラークとか薬剤師、理学療法士と臨床検査技師 なんかも入っています。それから、チームとしてどのような会議があるかと いうことですが、当然、このような会議にチームのメンバーが非常に多く入 っているということです。構成メンバーもこのように多職種でやっていると いうことです。7-2として15頁ですが、このように会議には多彩なコメディカ ルが関与しているということです。  16頁は看護師に聞いています。病棟看護業務の中で、どのような職種がど のような業務を分担してくれるかが、病棟看護師の業務の効率化に繋がるか ということを聞いています。薬剤師は非常に期待が大きい医療クラークです。 医師は当然ですけれども、歯科衛生士や管理栄養士、言語聴覚士、臨床検査 技師、理学療法士、作業療法士、また臨床工学技士等も少ないけれども、希 望としてあります。と申しますのは、機械が非常に高度になってきますと、 専門的な知識を持った者が病棟にいるほうが事故が少ないであろうと。  17頁は、急性期治療が終わってからも、高齢者は直ちに在宅復帰できると いうわけではありませんので、現実に急性期の平均在院日数が短くなれば、 ますますその傾向が強いのではないかと。  次のスライドが改革シナリオです。これをトータル利用数として、私が足 してみますと、現状が454万で改革シナリオのBシナリオが757万と。要するに、 たった15年の間に利用者が、300万人ほど増えるということで、これを見てみ ますと300万人増えるうちの250万人をシニアリビング及び在宅で見るように ということに、将来予想図ではなっています。  次です。爆発的に増える高齢患者さんを現状の病床数のままで対処すると、 平均在院日数が約半分にならなければならない。ということは、これは急性 期だけでなく慢性期の平均在院日数も半分にならざるを得ないのではないか と思っています。病院での平均在院日数を短縮し、短期間で集中的に治療す ることになれば、医師と看護師を中心とする医療だけではなく、多職種によ る集中的チーム医療が必要になるのではないかと思っています。  21頁です。これは、医療療養病床におけるチーム医療の推進に向けてです。 これは慢性期に関してですが、要するにチーム医療を推進しようとすれば制 度と診療報酬を整備しなければなかなか進まないのではないかと思っていま す。  最後に参考資料です。一般病床と療養病床は、このような図式になってい ます。一般病床がすなわち急性期病床ではないということです。超慢性期の 特殊疾患や難病の患者さんもいるということで、この辺の整理も必要ですけ れども、現実に一般病床は7対1から15対1まであり、看護師として倍の開きで あるということです。その7対1、10対1の高度急性期の病院に特にしわ寄せが いっている。また、それらの患者さんの紹介を受けた医療療養が、意外にも 非常に重度な患者さんで病棟がなかなか回らない現状です。以上です。あり がとうございました。 ○永井座長  ありがとうございました。議論は、また後ほどということで、続きまして、 桑田先生からご説明をお願いします。 ○桑田先生  桑田です。  武久先生が慢性期医療という大きなところでお話をしてくださいましたの で、私は実際、老人看護専門看護師として青梅慶友病院でどのようにチーム 医療、チームの連携を推進しているか、それをチームでどう活動をしている のかということについて、お話をしたいと思っています。  まず、青梅慶友病院の概要ですけれども、ベッド数は736床。内訳はここに 書いてあるとおりです。いま現在、入院している患者さんの平均年齢は約88 歳です。90歳以上が4割強、100歳以上の方が21名入院していらっしゃいます。 100歳の人口密度が濃い病院です。平均在院期間は、世間と逆行していまして 3年4カ月。入院している方の8割、大体85%が認知症の方です。そのほか、例 えば認知症で悪性腫瘍がある。あとは、慢性疾患を持っていらっしゃる。循 環器、内分泌等、そういったような疾患の方が入っていらっしゃいます。約9 割の方が当院で亡くなるという特徴を持っている病院です。  2頁です。そこの中でどのような職種が、患者さん・家族を支えているのか ということですけれども、看護、介護、医師、もちろん理学療法士、作業療 法士、言語聴覚士等がここに書いてあるとおりです。当院独自で言うならば、 余暇支援を専門にするレクリエーションワーカーを置いている。全部で14病 棟あるのですが、各病棟に生活を活性化するための役割機能を持たせている 生活活性化員、介護職の中には、これは常勤換算している人数なのですけれ ども、実は食事介助を専門にする短時間のパート、入浴介助を専門にする短 時間のパートというようなスタッフマネージメントをしています。そういっ た短時間のパートの人たちにも、トレーニングをして、病棟の中でOJTで教育 訓練をしていく形で運営をしています。なぜ、調理士、管理栄養士を書いた のかと思うかもしれませんが、病棟にわざわざ出向いてくれて、病棟の中で 調理をしてくれています。  3頁です。当院の理念は、ここに書いてあるとおりで、「豊かな最晩年をつ くる」ということです。そして、目標は、「自分の親もしくは自分を安心して 預けることができる施設づくり」と考えています。  4頁です。機能としてはここに書いてあるとおりです。私はここの病院に就 職して約16年になります。以前は、急性期にもいましたし、教員もしていま した。ここの病院に来て、何がほかと違うのかと考えたときに、全職種、慶 友病院に勤務している職種がみんなこの理念・目標に向かって自分の役割を 遂行していく。同じ目標を共有するということがすごく大事だと思っていま す。  療養病床にはもちろん医療機能がありますけれども、医療だけではなく、 やはり生活・介護の部分も大きく占めています。その裏に、黒子のように医 療がついているからこそ、患者さん、家族は安心感に繋がるのかと思ってい るわけです。そう考えますと、医療・介護・生活に精通しているのは、看護 職かと思いながら活動をしてきました。  5項ですが、急性期ではやはり身体的なことがすごく大きなウェイトを占 めるかもしれませんが、やはり生活の部分もなければ入院している患者さん の生活の質は保てません。ですので、こういった3つのバランスを考えながら 慢性期の中では、チームでケアを実践していると思っています。このような 状況の中で当院では、看護職を患者さん・家族の代弁者であると言っていま す。  先ほども申しましたように、高齢者にとって生活の視点が欠かせないこと、 食事、排泄等の生活支援は看護職のほうが長けている、医師よりも看護職の ほうがよくわかっている。超高齢者にとって、時には医療行為が苦痛なとき もあるということで、看護職は患者さん・家族の代弁者であり、医師のほう に「それは先生苦痛なのではないですか」ということを伝えてもよい。ケア の最高責任者は、だから病棟師長だと言ってくれています。そのため、私た ちは「先生、それはちょっと苦痛かもしれません」というようなことを伝え ても良いな役割を与えられて、日々実践をしています。  8頁です。専門看護師の役割は、ここに示したとおりで第3回のときに中村 さんがお話してくれましたので、詳しくお話しませんが、私はその中でも相 談、調整、倫理調整、教育が慶友病院の中で実践しているときに、役割とし ては大きいと考えています。チームの取組みの一例としまして、2003年から1 年間、便秘対策プロジェクトチームということで浣腸・摘便をなくそうとい うような取組みをしてきました。チームメンバーは、ここに書いてあるとお りで、ここに書かれているような内容のことを実践してきました。  10頁です。とてもお恥ずかしい数かもしれませんが、2002年12月に浣腸液 の請求本数が3,030本ありました。この取組みは何でこういうような形になっ たかといいますと、スタッフが「毎回浣腸・摘便をして大変苦しそうにして いる患者さんがいる、何とかならないか。」という相談を受けて、「じゃあ、 病院全体で取り組もう。」当院は、臭いをなくしてきた。褥瘡もなくしてきた。 今度は、浣腸・摘便をなくそうということで取り組んできました。もちろん 医師もチームに入ってもらい、この頃は下剤の調整を医師に聞かなければい けないような状況もありましたので、そこの中で一緒に取り組んできました。 いま、現在も継続してその効果がある状況です。  次に、食べるということです。栄養管理の視点だけではなく、やはり食べ て楽しむ、そういった視点を大事にしよう。スタッフ側の安易な理由からチ ューブケアを行わないようにしようということで取り組んできました。チー ムで情報を共有した計画立案に関しては、ここをご参照ください。  実際に13頁の図は経管栄養を行っている患者さんの推移です。ここ数年胃 瘻の患者数が多くなっていますが、これは当院で胃瘻を作っているわけでは ありません。胃瘻を作って入院してくる方が大変多くなったという現状があ ります。ですけれども、胃瘻が入ってきてもあきらめません。お口から召し 上がれる方はチームで評価をしつつ、お好きなものを召し上がってもらう等 して、なるべく口から食べていただくという取組みをしています。なるべく お口から召し上がってもらうような1つの結果として、褥瘡を持って亡くなる 患者さんの数も少ないかと思っています。褥瘡は作らない。絶対治すという ところで、これも看護・介護、リハビリ等のチームで対応しています。  15頁です。平成19年12月に医政局から医師及び医療関係職と事務職員等と の間等といった通達がありました。これを受けて私たちは、どのように解釈 をし、医師の負担を軽減し、私たち看護職もケアを行いやすい方向に持って いけないかと考えたわけです。  16頁からは、医師との連携・調整の内容です。この療養生活に関すること に関しては、この通達がくる前から当院の中では、これは看護職が判断し実 施することだということで、行われていました。やはり生活介護が大きなウ ェイトを占めていますので、これこそが看護職の専門分野ではないかと私自 身も思っていまして、医師のほうも協力的で看護職が判断することと思って くれています。実際に「共通・電話指示」でいいものの院内ルールを作成し、 それをルール化する。ご家族への説明に関しても原則は看護職でよいと。そ の代わり定期的な面談等も実施しており、医師・看護師が同席し、行ってい ます。  薬剤に関することは、便秘対策プロジェクトでやってきましたので、いま 現在、下剤は看護職が調整をしています。随時、定期薬の見直し等に関して 救護医療を考えて多剤併用を避けるようにこちらのほうから医師に伝えてい く。発熱等の事前指示については、患者さんのリスクを考え、予測指示をも らっておく。こういったような形で連絡調整をしています。  18頁です。感染症のこと等に関してです。ありがたいことに新型インフル エンザは1名も出ていませんが、季節のインフルエンザ等の場合は、看護師の 判断で、簡易キットを使ってそのことを報告してもいい。ノロウィルス等の ことに関しては何か発生すれば、これも私のほうが司令塔として対応をする という形になっています。緊急時の対応のことに関しても申し合わせをし、 「どこまでだったらナースが行ってもいいですよ」というようなことについ ては、医師とコミュニケーションを取って決めていっています。なおかつ、 看護と介護の連携も大事ですので、看護職員の教育指導等も行っていってい ます。  最後に終末期ケアは9割亡くなる病院ですので、いかに大往生していただく かということで、入院時よりチームで終末期の対応については確認をし共有 するようにしています。そして、退院ケースカンファレンス等を開催してい ます。いま現在は、リハビリスタッフは病棟配属になっていますので、リハ ビリスタッフ、介護・看護でいかに拘縮がない姿で亡くなっていただくかと いうことで拘縮予防対策を行っています。  22頁のほうに実際の効果として、保有している患者の数が少なくなってき た。これは拘縮予防対策ですので、介護職の人たち等が主体になって行って いますけれども、連携を取って行ってきています。看護・介護との連携・協 働ですけれども、ここに図を示しましたが、このようにスッキリとするわけ ではありませんが、療養病床、慢性期の中で介護職との連携は欠かせません。 当院の中では、何らかの物を使用し、体内に入れる場合は看護職が行うとい うような基準を設けています。しかし、介護職員への教育等は必要ですので、 ここに書かれている内容のことを毎年1年スケジュールとして行っています し、緊急時の対応等に関してはアンビューバッグの使用方法、吸引器の設置 の仕方等についても指導をしています。  ということで、私はやはりチームで目的を共有することもすごく大事かと 思っていますが、医師は医師本来の業務に専念していただく。生活援助に関 してはこちらで判断し、行っていく。そのためには、看護職の意識の向上や スキルアップも必要ですし、それは介護職員も同様です。多職種との連携は 欠かせないと思っています。それが何よりも患者さん・家族の満足度につな がると思っているわけです。それに対してのコミュニケーションを取ってい くこと、手順書の整備、私たちの更なる能力の向上が必要かと考えています。  日本は、多死社会に入ってきています。今回、私は慢性期病床としてここ でお話をしていますけれども、今後、看取りの場は拡大していきます。医療 施設だけではないところでもどんどん看取りを行っていく。そう考えたとき に包括的な指示をいただいて、ナースが判断し実施していく。特養等は、そ ういうような形にしていくことで、もしかしたら高齢者の生活の質が上がる かと思っているわけです。  これは個人的な意見ですけれども、特養等の施設長が看護職だったらいい のではないかというようなことを思わなくもありません。多死社会における チーム医療が目指すものとして、これは私の考えですけれども、やはり“良 き旅立ち”、“人間らしい美しい死”をいかにコーディネートしていくか。そ れは、やはり苦痛がなく、惨めな姿でなく、大切にしてもらえていたという ことが、そろってこそ尊厳の保持でして、亡くなるご本人、家族が納得でき るものを提供していくということ。なおかつ、ケアする私たちも納得するこ とが大事ではないかと思います。以上です。ありがとうございました。 ○永井座長  ありがとうございました。時間が十分にありますので、どなたからでもど ちらの先生にでも結構ですので、ご意見を伺いたいと思います。  最初に私のいまの印象ですが、武久先生のお話を伺っていますと、これは かなり医療報酬との関係も非常に大きいような気がしました。ある程度多職 種のコメディカルをきちんと確保できる医療体制が必要だと思いましたが、 その点どのようにお考えでしょうか。 ○武久先生  病院全体では法定数がありまして、薬剤師さんであったら調剤数などいろ いろなことがあるのですが、その法定数だけでは病棟の薬剤業務のヘルプが できませんので、それに対しては、やはりそれなりの人件費をある程度みて あげるような制度でないといけない。ただ、薬剤師はいま4年制から6年制に なっていますが、ほかのコメディカルの職種につきましては、まだまだ病院 に就職したくても就職できない人もおります。栄養士であれば、各病棟に管 理栄養士を置くということによって、食事の内容が良くなったり、摂食が良 くなったりして、栄養改善をしていく。やはり生物体ですから、栄養を摂ら ないと病気も良くなりませんので、そういう意味で、そういう制度になって いくと、どんどんと良くなっていくように思います。 ○永井座長  人数的にいまの医療報酬制度で確保できるのですか。もっと診療報酬を上 げないと難しいように思うのですが。 ○武久先生  この日本慢性期協会の会員の調査では、報酬がないままの中でも、それな りに努力しています。逆に言うと、医師の業務が従来の療養病床は、軽い患 者を入れているというイメージから、平成18年からドンドン変わってまいり まして、重度の患者さんがいっぱいいるのに、場合によっては一般病床が13 対1、15対1の所よりも重度な患者さんが多い。しかも医師の数は3分の1で診 ていると。とても診切れないから、医師をたくさん雇うよりは、コメディカ ルの人に助けてもらうと。そういう面もあると思うのですが、そのようにし てチーム医療で、何とか患者さんを良くして返したいという努力の表れかと 思っております。 ○永井座長  3頁目の下の図はどのように読むのでしょうか。10番の図ですが。この数字 は。 ○武久先生  スライドで言ったら何番でしょうか。 ○永井座長  10番ですが。 ○武久先生  これは、要するに普通の急性期病院の一般病床でなしに、ケアミックスの 病院の一般病棟と療養病床と比べているわけですが、薬剤師や臨床検査技師 たち、こういう職種の人たちが、現実にこれだけ専従で病棟にいるという実 数です。 ○永井座長  ちょっと待ってください。これは全国の話ですか、それともある病院につ いての話ですか。 ○武久先生  3万7,000床の中で。 ○永井座長  3万床の中で薬剤師さんは4人ということですか。 ○武久先生  そうです。実数ですから。病棟ですね。各病棟ですから、 ○永井座長  50床病棟当たり。 ○武久先生  そうです。 ○朔委員  私は急性期病院の経験しかないもので、少し教えていただきたいのですが、 慢性期病院の看護師の仕事の中で、例えば食事のケアなどそれほど高度な技 術を要しない部分もあると思うのですが、看護師の中で仕事のワークシェア リングはなさっているのでしょうか。例えば准看護師と正看護師の仕事を分 けるとか、そういうことを現実になさってるのかどうか教えていただきたい と思います。  それから、准看護師さんと正看護師さんの比率が慢性期病棟でどうなのか、 あるいは慶友病院でどうなのかということを少し教えてほしいのですが。 ○武久先生  先にお答えします。人工呼吸器の患者さんは私の病院で210床の病床数で、 25台、1割以上入っています。そういうものの管理は全部正看が行っておりま すし、高度な医療技術につきましては、正看が主に行うようになっています。 慢性期医療の場合では、正看の割合いが20%以上、40%以上となっておりま すが、現実的に我々のところでは、慢性期棟でも60%以上の正看です。そう でないとなかなか診切れないようなレベルの患者さんが現実にたくさんいる ということです。 ○桑田先生  慶友病院では准看、正看の比率は2割が准看、8割が正看というような形に なっています。食事の援助ですけれども、大変申し訳ありませんが、簡単で はありません。大変難しいです。その方が何が好きなのか、ポジショニング はどうなのか、一口の量はどうなのか、右から入れるか左から入れるか。何 からだったら食べてもらえるか、飲み込みはどうなのか、食べているときは きちんと口の中の物を飲み込んでくれているのか。食べ終わったあとはどう なのか。なぜかというと、食事のあとに急変するケースが多いですので、そ のあとの観察もしていくと。食事介助は大変高度な技術を要するものです。 ○朔委員  食事介助が難しい仕事であるということはよく理解出来ました。慶友病院 では准看と正看で仕事の内容をきちんと分けていらっしゃるのですか。それ とも両方で何となくその勤務時間帯で一緒にやっているのか、その辺はどう なのでしょうか。 ○桑田先生  何とはなくではありません。勤務表作成時、准看と正看の比率は考えて勤 務表を作っております。ですが、これは正看、これは准看というような形で、 はっきりと分けてはおりません。 ○山本(信)委員  武久先生にお伺いしたいのですが、資料を拝見しますと、薬剤師に期待が 大きくて、特に薬に関していろいろとやれば助かるという話で、医師の方を 増やすよりも、その方が良かろうというご意見を、私は大変ありがたく伺っ ているのですが、その中で、かなりの薬剤師が雇われていて、リーダーを担 っている部分があるという中で、先ほどのパワーポイントの資料10なのです が、50床に4人という一般病床で、そう考えますと、50床に56人ということに なるのでしょうか。ちょっとその数字が、いままでお話を伺っていますと薬 剤師が足りないよというのが、やたらと数字が大きいものですから、その辺 の数字を、片方は4人と。ご説明いただければ。 ○武久先生  1病棟辺りではなしに、3万7,000床で、病棟で50で割った数の中に、全国で それだけいるということですから、逆に言ったらほとんどいないのです。ケ アミックス病院の中での一般病床と療養病棟との差でやっていますので、現 実問題としては、私の博愛記念病院には薬剤師は8名いまして、ミキシングは すべて薬剤師が行っていますし、薬剤投与も全部バーコードで薬剤師が配っ ております。バーコードをしなかった場合に、たまにずぼらな人がいて間違 うという場合もありますが、看護師による薬剤の間違いはほとんどありませ ん。 ○永井座長  この図の表がわからないのですが、例えば医療クラークが50床辺り38人と はとても思えませんし。 ○武久先生 いや、50床辺りで、1病棟にどれだけいるかという実数ですから、 3万7,000床の対象の病院に聞いたら、うちは1人いるとか、1人もいないとか、 3人いるということを全部足してこの数の実数です。パーセンテージはござい ません。約200ぐらいの病院が答えておりますから、そのうちの50何人しかい ないということです。逆に言うと、いる所がほとんど少ないということです。 ○永井座長  母数はいくつなのでしょうか。いくつ辺り38とか60とか96という数字にな るのかが。 ○武久先生  1病棟辺りではございません。専従ですから、病棟に専従している人が全部 の190いくつかの病院の中でこれだけの実数しかいないと。 ○永井座長  190いくつかの病院ということですね。 ○武久先生  そうです。最初に出ております。 ○永井座長  190の病院当りということですね。 ○武久先生  はい、そうです。 ○永井座長  そのほかいかがでしょうか。 ○有賀委員  座長が診療報酬のことを少しお聞きになったので、たぶんここでは診療報 酬のことは、真正面からとはあまり思えませんので、いまここで聞いておき たいのですが、青梅慶友病院の大塚先生には、あちらこちらでいろいろと何 年も昔から勉強させていただく機会を持っているのですけれども、大塚先生 がおっしゃるには、とても医療保険や最近では介護保険もそうだと思うので すが、保険診療でやれることは相当程度限られていて、私たちの病院は、厚 生労働省からたぶんにらまれているのではないか。それぐらいに、ご家族か らいろいろな形で補助を受けてやっているというようなことを聞いて、その ことは、良いことをやろうと思ったときには絶対必要なのだと。大塚先生ご 自身は、胸を張って必要なものはいただかざるを得ないと、従来からおっし ゃっていたのです。私は全くそのとおりだと思うので、定性的なことだけで もいいのですが、つまり、これだけ良いことをガンガンおやりになるという 中で、保険診療の範囲内で、これだけのことができているのかできていない のかという話は、大塚先生はたぶんできていないのではないかと言うと思い ますが、婦長さんの立場なので、そんなに難しい話を聞かれても困るとおっ しゃるかもしれませんが、保険診療とそうではない部分は、青梅慶友病院の 全体の景色の中でどのような感じなのか教えてもらえますか。でないと、こ れだけのことができるよねと言ったときに、普遍的な話でもっていこうと思 ったときに、すぐにデッドロックに乗り上げるのではないかなという観点で す。 ○永井座長  私からも追加させていただきたいのですが、平均在院日数が3.4年、3年と3 分の1なのです。1ベッド当り年間0.3人が使っているということになります。 760を掛けると、稼働率がもっと低ければ200になるかもしれませんが、年間 の新入院患者は220人ぐらいです。つまり年間200人の新入院患者さんだけで、 どうしてこんなことができるのだろうということなのです。 ○桑田先生  おっしゃりたいことはよくわかります。診療報酬等、大塚の考えについて は大塚に直接聞いていただければと思いますが。 ○有賀先生  大塚先生からそのようにお聞きしていましたので。 ○桑田先生  私はここに来て今日この発表をしたことは、診療報酬等にどれだけ関係す るのかといえば、これはケアとしては当り前の部分をお話したつもりです。 ○永井座長  それで結構なのです。 ○桑田先生  武久先生はたぶんお金の話をされるかなと思っていたので、お金のことに 傾きが変るかなと思っていたのですが、ある意味国民に対して、きちんとし たケアを提供しようというときには、お金は必要な部分もあるのではないの かなと思います。 ○永井座長  この委員会は、もちろん意識の問題もきちんとしないといけないし、チー ム医療としてするべきことはしないといけないのですが、それでもできない 事情があるのならば、制度の問題なのか、機構的な問題なのか、あるいは運 営的なものなのか、そういうことまで含めて問題点洗い出しをして、いかに 慶友病院のような医療を日本全体に普及させるには、どうしたらいいのかと いうことが目的です。個々の問題と一般性の問題の両方を考えないといけな いのです。ですから、いかに現場が大変な問題を抱えているかというところ を教えていただけるとありがたいと思います。 ○武久先生  青梅慶友病院は東京にありますが、私どもの病院は徳島という田舎にあり ますので、地方と都市の格差は明らかに違います。我々の病院では、保険外 負担は一銭もいただけません。現状としては、両極端な病院がたまたま出て きたということですが、それをいかにして保険外負担なしにレベルを上げて いくかというと、やはり検査技師さんや管理栄養士さんとか、看護師さんよ りも給料が少し安い方、またクラーク。クラークについては診療報酬が全然 ついていませんが、医師には医療秘書を常に2人ずつ付けております。電子カ ルテを打つときも医師が打たないで、それを全部打つようにして、効率化し ていかないことには、医師を1人雇うと非常に高いですが、パートのクラーク を雇うことによって、省力化して、チームとして何とかこの苦境というか。2、 3年ぐらい前に比べると非常に重症者が増えましたので、それを乗り切ってい る現状でして、東京の場合とは、多少違います。うちの場合は平均在院日数 は200日切っておりまして、180日ぐらいです。だから同じ療養でもだいぶ違 います。 ○永井座長  大体わかったのですが、そうするとそれをもっと皆さんの負担にならずに やっていくにはどうしたらいいのか、どのようなところが課題なのかという ことを教えていただきたいのですが。 ○武久先生  いまは診療報酬が全然ないのに、クラークを付けたり、いろいろな職種を 病棟に付けていますから、それに対して、せめて人件費だけでもいただける と非常にありがたいということです。 ○西澤委員  桑田さんに聞きたいのですが、病院の患者さんの状況を聞きたいのですが、 まず医療保険の239、医療養ですから医療区分があると思うのですが、医療区 分の患者のそれぞれの比率を教えていただきたいことと、介護療養の場合の 要介護度の比率を教えていただきたいなと思います。  3頁目に職種で、数えて450ぐらいだと思うのですけれども、常勤換算とす れば、100名の方はどのような方が職員としていらっしゃるのかということを 教えていただければと思います。以上2点です。 ○桑田先生  医療区分は大体平均が2です。要介護度は現在4.3ぐらいだと記憶していま す。職員の構成ですけれども、いちばん最後がちょっと聞こえなかったので すが。 ○西澤委員  [2]のスライドですが、各職種人数が換算され、それを合計したのと、職員 数の差が100名ぐらいあるので、その方で、事務職がいらっしゃると思うので すが、ほかに何かありますか。 ○桑田先生  先ほど言った短時間のパートは、食事介助だけを専門とするパート、90分 の人とか、入浴介助だけをする2時間のパートであったりとか、調理のパート であったりとか、メッセンジャー業務をするパートであったり、お掃除に関 しても業者を入れていませんので、自前の職員でしていますので、そういっ たような人たちの、短時間のパートの人たちで頭数が多い。それを常勤換算 するとこういった形になるというような内訳です。 ○西澤委員  そうすると、もう1つは、医療療養病床と、介護療養病床と入院の方をどの ように入院させるときに分けているのか、あるいは両方の病棟によって、ケ アの違いがあるのかどうか、その2点をお願いします。 ○桑田先生  入院に関しては、医療相談室が窓口になっていまして、そのあと必要があ れば医師が面談をしています。そしてどこの病棟にしようかというような選 定をして、介護保険がいいのか、医療保険がいいのかというようなこと以前 に、認知症の病棟がいいのか、それとも非認知症の病棟がいいのかというこ とも含めて判断をしています。実際に入院して医療の質は、私はそんなに変 わらないと思っています。また変わってもいけないのではないかと思ってい ます。ただ、人員の配置に関して言えば、医療保険の病床と介護保険の病床 では看護職の配置は違いますし、そういったところのスタッフ数の違いはあ るかと思います。  すみません、先ほどのことについて、私の意見としてです。食事の介助に ついて、先ほどそんなに難しくないのではないかと言われましたけれども、 医療行為に関して、薬剤を使うことに関してはお金がつきますけれども、例 えばチューブでご飯を召し上がっていた方とか、注入されていた方が、私た ちのケアによってそれが外れたということに関しては、何らお金がつかない。 でもそのほうがよっぽど手間暇がかかるのです。もちろんチューブフィーテ ィングをしている方のリスクもありますが、それをきちんと回避するような 対策をすれば、そのときには職員がずっとそこに1人付き添っているわけでは ありません。ですが、経口的にお食事を召し上がってもらおうとか、あとは 寝かせ切りではなく、離床をしようとか、そういった人間らしい生活、高齢 者のQOLを向上する取組みは、すごく手間暇、時間がかかります。それはナー スばかりではなくリハビリ、介護職もです。でもそういったことにはあまり お金がつかない。私たちの手で行ったケアに関してはお金がつかない。  反対に医療区分でいうならば、高カロリー輸液をしていた患者が経口的に 少しずつ召し上がるようになって、それが外れると医療区分が低くなってし まうといったような現状があります。そういう点で、当院の理事長の大塚は 診療報酬に関係なく高齢者に良いことをするのだと言い切ってくれています ので、私たちケアスタッフはそういった点で気持ちがなえなくて済むという ことはあります。それを外すことで、より人間らしく、口から一口でも好き なものを召し上がってもらって、味わってもらうと、お金が減るというのは どうかなと思ったりしています。その現状を療養病床に勤務しているナース、 ケアワーカーは疑問に思っている人が、大変多いというように私は思います し、そういった声を聞いています。私たちが一生懸命やった技術、備わった 知識に関して、お金がいただけないというのは、そのこと自体が、やる気が うせる、活き活きできないというところはあるのかなと思います。 ○川嶋委員  このチーム医療の会議が始まってから、前回保助看法の看護というお仕事 が、どちらかというと、保助看法の中の診療の補助業務と医師とのチーム医 療というところに焦点化されていた感じがしていたのですが、桑田さんのお 話を伺っていて、やっと看護が看護らしさを取り戻してきたな、出てきたな というので、とても嬉しいのです。  先ほど何人かの先生方が、こんな素晴らしいことをやるのにお金がいるの ではないかとおっしゃっていましたように、印象としては素晴らしいとお感 じになったということは、本来の看護の仕事をきちんとするということが、 いかに素晴らしいかという表れではないかと、私は勇気を持ちました。と申 しますのは、桑田さんがずっとおっしゃっているような、食べることや、ト イレに行くこと、褥瘡をなくすこと、歩けるということについての、看護本 来の仕事がいまの急性期病棟の中ではできないというのが、看護のジレンマ になっていまして、その背景に医師不足だけではなくて、看護師不足もすご く影響があります。  どちらかというと、診療報酬は診療報酬ですから、いま具体的なことをお っしゃったけれども、尿道留置カテーテルにしてもそうですよね。自然排尿 をちゃんと尿感覚をチェックして、トイレに連れて行ってというのは、1銭の お金にもならないけれども、非常に苦労するのですが、ご本人にとっては、 トイレで排泄をしたいというお気持ちがあるわけですから、そちらを尊重し たくても、チューブを入れたほうが医療費になっていくわけです。やはり急 性期病棟のほとんどは、医療収入を上げる仕事のほうに看護が非常に追われ ています。どちらかと言えば、一般の市民の方たちも、ドクターたちも、と にかく看護という仕事が、診療に非常に偏ったほうの看護業務ということに 焦点化されたのかなと思います。  先ほど武久先生がおっしゃったように、チーム医療というのは定義、理念 をやっていませんが、専門多職種の協業とおっしゃったように、私はその専 門多職種といったときに、チーム医療というのは、やはりそれぞれの専門職 がそれぞれの専門性を発揮して、それをどう協業して、オーバーラップする 部分をどうするのか、何を専門に分担するかということをしていかないとい けない。いままでの看護の話を聞いていると、ドクターや栄養士さんとか、 理学療法士のお仕事というのはわりと目に見えて、皆さん理解されているの ですが、看護というお仕事は、非常に日常的で普通にしていることを専門的 に支援しなければいけないために、なかなかわかっていただけない部分が多 いので、こういうことになってしまったのかなと思います。  最後に感想ですが、私は今日の青梅慶友病院は、これだけのことをするの は本当に大変だと思います。結果的には素晴らしいという印象は強いのです が、これだけのことをやろうとしたら、本当に大変だし、やってもやっても お金にならないわけですよね、この点については。ですから、いま私は日本 の医療福祉制度の中で、診療報酬制度と介護報酬制度があるのですが、看護 についての報酬制度がないということが、非常に看護職を不幸にしているし、 一般の方たちも不幸にしていると思います。療養病床だけではなくて、術後 の患者さんだって、急性期の患者さんだって、いま青梅慶友病院がなさって いることをちゃんとやれば、かなり回復にも役立ちますし、その面での医師 を手助けすることにもなると私は思います。本当に桑田さんありがとうござ いました。 ○永井座長  前回は先生はいらっしゃらなかったかもしれませんが、チーム医療の何を 検討するかということをお話しました。チーム医療とは、分担と連携の問題 です。それぞれの専門職の特色を活した分担をしつつ、いかに連携するかと いうことで、それに対して何が障害になっているかを明らかにすることが重 要です。制度なのか、マンパワーなのか、意識なのか。そこについて議論し ていただきたいという話になっていますが、よろしいでしょうか。 ○川嶋委員  根本的には制度だと思います。 ○永井座長  制度とすると、制度のどこが問題かを明らかにしないといけないと思いま す。また、意識の問題もありますし、運営の問題とか、いろいろな問題があ ります。できるだけ、うまくいっている例と、いかに負担が大変でうまくい っていないのは何故かを議論していただきたい。制度の問題は非常に重要で す。それは、各職種の権限の問題もあると思いますし、診療報酬の問題もあ ります。そういう面をできるだけ上げて、報告書を書きたいと思います。 ○宮村委員  また高邁なことではないのですが、桑田先生の高齢者ケアなどのお話は、 大変感動したのですが、私は実は歯医者なのです。人間年を取ってくれば食 べて出して風呂に入って、見た目がいいというのがあると思うのです。食事 が極めて大事だとおっしゃって、それをやっていてもなかなか評価されない から滅入ってしまうというお話がありましたが、今日の20頁位でも、衛生士 というのは出るのですが、歯科というのはない。さすがに食べさせるときで も歯がないと駄目だろうと思うし、入れ歯が痛いと困るんだろう、そういう ことが感じられて、私は今日聞いて、だいぶ滅入ってしまったのです。 ○桑田先生  先生、そんな滅入らないでください。大変申し訳ありません。歯科衛生士 さんは、近所の歯科の方が往診診療で、ほぼ毎日来てくれます。1室を歯医者 さんのために準備していて、午前午後いてくれます。ですから、当院の中で 歯科医、歯科衛生士を置いているわけではなく、ほかの歯科医院から出向い てきてくれます。それこそ病棟の搬送から、病棟に行って口腔清掃の指導を 歯科衛生士さんがしてくれていますし、歯医者さんには感謝しております。 ありがたいと思っております。 ○宮村委員  今度機会があったら、そこのところを話してください。 ○太田委員  桑田さんのお話を非常に納得しながら聞かせていただきました。2点大きな ことがあるのですけれど、医師と看護師の連携の場合、医師が看護師に指導 や教育はあまりしないと思います。ところが看護師は介護職員に指導や教育 をされるというところでちょっと気になることがありました。看護職が医師 へ助言や忠告ができる環境がいいとおっしゃったと思うのです。こんな治療 は苦痛だとか、下剤は私たちが面倒をみますと。それは素晴らしいことです が、介護職が看護職へ助言や忠告をするという場面はないのかということが1 点です。  これだけ素晴らしいナーシングができると、医者は一体何をしているのか。 急性期の合併のときには、医者は少々役立つと思うのですが、不断は要らな いのではないかとか、その辺の本音を聞かせていただきたい。大往生という 言葉があって、何が大往生なのか、これはお考えですが、ちょっとお聞かせ いただければと思います。 ○桑田先生  おっしゃるとおり、なかなか介護と看護というところでは、介護職が看護 職に何かを言いやすいかと言えば、言いにくいというようなことがあると思 います。ですが、やはり介護職は1つの専門職ですし、その専門性を高めたい とは思っております。病棟師長がドクターに言っているように、介護職が看 護職に言っている場面を見るかと言えばあまり見ないですが、そういった連 携が増すような努力をしております。例えば、看護と介護と同じ話し合いの 場を持つなどです。なぜかと言うと、ナース自身は介護職に言いやすい環境 をつくっていると思っていたが、実際に聞いてみたらそうではなかったとい う現状があったりするので、そのようなところでコミュニケーションが増す ような努力をしております。  ドクターは要らないのではないかと言われましたが、決してそのようなこ とはありません。たしか当院は常勤換算にすると19名という医者の数です。 このベット数で19名です。そして、医療依存度が高い方が入院していないわ けではありませんから、ドクターは大変忙しい状況です。入院患者の層が変 わってきているという部分では、それほど楽ではないと。 ○太田委員  医者が何をしているかということは。 ○桑田先生  もちろん、患者さんを診療していますし、ご家族と面談をしたり、CVライ トを入れるなどといった医療行為を行ったり、医師にしかできない仕事はき ちんとしてくれております。私は当院のドクターに大変感謝しております。 ○坂本委員  大変良いチーム医療をされていると思いますが。先ほどの桑田さんの話の 中に、インフルエンザが疑われるときは、ドクターから事前に検査キットを 依頼されていて、それで行ってよいという話し合いをしているというのがあ りました。ドクターは19名のみで大変忙しいと思いますから、そういった連 携についてはどのように取り決めているのか、そして、どんな種類があるの か。もう1つは、介護の人たちが何らかの異常を発見したら、どのようにナー スに言うことになっているのか、その取り決めなどはどういった場面で話し 合うのか。また、これだけたくさんの患者さんをみていれば問題も生じると 思いますし、ナースは療養上の何か変化を発見しなくてはいけないと思うの ですが、ドクター、ナース、介護職のお互いのピアレビューと言うか、ドク ターが行ったことに対してナースが何か話をする、助言するなどの場面とい うものはどのように持っていっているのか。診療行為に関して、あることを やっていいと決めているならば、どのような取り決めをしているのかという ことと、介護と看護の間の取り決めはどのようにしているのか、話し合う場 があるのかについて伺いたいと思います。 ○桑田先生  インフルエンザのことに関してですが、医師の数が少ないのに、各病棟に 呼ばれていちいち指示を書くのはとても大変であるという医師からの申し出 がありました。どういった状況か、例えば家族との面談があったか、インフ ルエンザに罹患するリスクがあるかどうか、関節痛はあるか、どういった熱 の状況かなど、フローチャートのようなチェックリストを作り、このような 状況ならば簡易キットを使う、このようなときは使わないなど、そのような ものを紙面にしました。これは私が作るのですが、ドクターにも見てもらい、 そこでディスカッションをし、まずこれでやってみようということになり、 そこで簡易キットの使い方は臨床検査技師からナース全員が講習を受けまし た。そのような時間を持ち、できるようにしてから実施となるわけです。し かし、やったらやりっ放しではなく、そこで必ず報告をし、後で医師に来て もらうという約束事の下で動いています。私たちがやってよかったというわ けではなく、少ない医師の中でどのように、ある意味役割を担っていくか。 何かあれば私のほうに上がってくるという状況になっていますし、何かあれ ば私も院長、副院長にすぐ言いますので、やはりコミュニケーションが大事 であると。医局内で感じている問題は院長、副院長から上がってきて、看護 部のほうは私のところでという形になっています。問題があがってきたら即 話し合いの場を持つようにしております。何らかの会があるわけではなく、 何かがあれば、すぐ話し合っています。  看護と介護の連携については、もちろんミーティングやカンファレンスは ありますが、たぶんインフォーマルな場でいろいろ話し合っていることがい ちばんフランクなのではないか、そのときに本来の意味での情報交換ができ ているのではないかと思っております。ただ、そのような話し合いの機会と して私が担当している看護・介護の指導者話し合いの場があったり、短時間 のパートであっても、ミーティングには必ず参加してもらうなど、まだまだ の部分はありますが、情報の共有に関してはかなりエネルギーを費しており ます。介護職に対しては、「ちょっとおかしい」にちゃんと気付いてねと。そ れは生活援助の中で、いつもと違う感じということが非常に大事だからです。 何がおかしいのかはナースが判断するから、ちょっとおかしいと思ったら報 告してほしいと。それに対して、ナースは「ありがとう」と言おうねと言っ ています。 ○坂本委員  そのような取り組みをしている中で、もっとこのようにすれば効率的で患 者さんのためになるのではないかと、課題として桑田さんが抱えているもの は何かありますか。 ○桑田先生  先生が言われる質問の意味はよくわかります。これがあったら、こうした らというのがパッと浮かんでこないのが残念ですが、当院の場合は私がCNSと して調整的役割を担わされて、病棟ではない看護介護開発室長というポジシ ョンをもらい、14病棟と各部署の隙間を埋めているという感じかなと思いま す。そのような役割機能を持つ人がいることによって、連携が非常にうまく いく。何回も話し合う中で、同じADL等でもリハと看護の使い方の違いがわか り、それの通訳をする。いま700床ですので私1人ではちょっと荷が重いとこ ろがありまして、同じような人がもう少しいてくれると濃くなるかなという 感じがしております。 ○島崎委員  いまの坂本委員の質問とも関連するのですが、今日の話を伺っていると、 実際の運用の中でも相当程度できるということかもしれません。確かに、先 ほども話があったように、平成19年の通知を機にいろいろと業務の見直しを されたわけですが、医師と看護師との関係で言うと、このような弾力化がよ り図られると、一層主体的な活動が行われ、医療の質、効率性の面でより向 上する、うまくいくということはありますでしょうか。もう1つは、他の職種、 例えば看護師と介護職との間で、端的に言えば医療行為の範囲ということに なってしまうかもしれませんが、もう少し弾力的な運用あるいは見直しが必 要だと日ごろから感じられていることはありますでしょうか。病院一般とい うことではなくて、療養病床に限定して結構ですので、もしそのようなこと があればご指摘いただきたいと思います。 ○桑田先生  実は平成19年の通達前から実践しておりましたので、大きな声を出しては 言えなかったというところがあります。通達が出たことによって、医局のほ うからはもう少しシステマティックにできないかという申し出があったぐら いですから、療養病床の中では、ある意味そのような役割を担っていくこと こそが、私たち以前に患者、家族にとって必要ではないかと思っております。 もちろん、チームというのは看護、医師だけではなく、歯科のドクターもそ うですし、薬剤師の薬剤に対する知識はナースより長けていますから、開か れた薬局のような感じで薬剤師をどんどん活用することで知識をもらうと。 リハビリは本当に車の両輪で、療養病床には絶対欠かせないと思っておりま すし、私自身がPTないしOTになりたいぐらいです。彼らは本当に貴重な存在 で、一昨年ごろから病棟配属となって、病棟にずっといてくれるのですが、 部屋に帰るのではなく、スタッフルームにいてくれることが非常に助かるの です。 ○永井座長  島崎先生の質問は、いまの法律の中で問題はないのかということです。保 助看法と医師法の中で、人数さえいれば多職種のコメディカルがいればいい 医療ができるのか、あるいは法律をもっと考え直さないといけないのかどう か、そこをお聞きしたいのです。いまの法律でも、人数さえそろえば十分や っていけるということですか。 ○桑田先生  やっていける、やっていけないということは今ここでは即答できません。 そこまで責任を負えないと言っては何ですが、法律を熟知しているわけでは ないので、返事を迫られても困ります。現状をお話して、委員の皆さんが今 後検討してくださればいいと思っておりますが、駄目でしょうか。島崎先生、 駄目ですか。 ○島崎委員  立場上、こうした場ではおっしゃりにくいこともあるかもしれませんので 無理にとはもうしませんが、もう1つ違う質問をします。看護師さんと言って も、非常に意欲ある人からそうではない人もいらっしゃる。そこは人間です からいろいろとだと思いますし、専門性という面でも、専門看護師もいれば 認定看護師もいますが、チーム医療の議論をしていて、責任をどのように分 担するかということが1つの論点としてあります。つまり、最終的な指示者が 責任を全部負うのかということですが、権限と責任とは随伴します。今日の 話を聞いていると、それぞれの職種が責任を分有する形になるように思うの ですが、権限と責任のジレンマについてはどんなお考えでしょうか。もっと 端的に言うと、看護師であれば誰もが皆このようなことをしていくというイ メージなのでしょうか。それとも、例えば専門看護師あるいは認定看護師の 下で業務をもっと弾力化していく、看護師がキーになって全体を動かしてい くようなイメージでしょうか。 ○桑田先生  そのとおりでして、裁量権や役割が拡大されれば、そこには責任が絶対伴 いますから、責任なくしてそれはないと思っております。今後私が慶友病院 の中で実践していく大きな課題は、いかに質の高いナースを育成していくか ということです。責任を全うできる人を増やさなければいけないし、それは もしかしたら日本の看護界の中がそうなのかもしれませんが、1つそれを思っ ております。今日ここでお話した趣旨は生活援助に関して、療養病床の中で はナースが責任を負い、行うことが患者、家族のためになるのではないか、 医師は医師の役割のためにエネルギーを費すということですが、これでお返 事になっていますか。 ○島崎委員  結構です。 ○坂本委員  少ないの数のドクターしかいない状況でも、いろいろとたくさんの医療行 為を行う場面があり、24時間患者さんを見ている中でドクターも大変だとい うことがわかります。夜間何かあったときは、どのようなレベルの問題に、 どのように対応しているのか。医療行為に関しては、侵襲性が低いものから そうでないものまであると思いますが、全部ドクターに話しているのか、そ れともある程度役割分担をして看護師が行っているのか、そこを教えてくだ さい。 ○桑田先生  当院の場合、急変は急かつ予期せぬ状態です。この年齢の方はある程度予 測がつく部分もあるので、それに関しては事前に家族、医師、それこそチー ムで話し合って、どのように亡くなっていただくかといった話はしておりま す。3年4カ月という平均在院期間の方もおりますが、数カ月単位の方もおり ますし、数日という方もおりますので、そこのところのリスクは把握をして 対応をしていく。しかし、急かつ予期せぬ場合は、もちろんドクターに連絡 します。酸素は2Lまでならナースの判断でいいなどと事前に決めてはありま すし、気道の確保はそれこそナースの判断でできますから、そのようなこと はもちろん行ってもいい。ドクターが来る間は、私たちができる範囲内のこ とを図式化しておりまして、例えば人工呼吸器をどこどこに借りに行けと、 それはケアワーカーが借りに行けるようにするとか、救急カートは持ってく ることができるようにする、吸引はセットできるようにするなどといったと ころでナースとケアワーカーの連携を取っております。 ○坂本委員  人工呼吸器の設置はナースがやっているのですか。 ○桑田先生  やっております。 ○有賀委員  いろいろな聞き方をされて、桑田先生には申し訳ないです。 ○桑田先生  武久先生にも是非質問していただきたいと思います。 ○有賀委員  武久先生にも同じ質問で答えていただきたいと思います。救急病院の医師 との連携をずっと見ていくと、確かにいわゆる包括的な指示というか、最近 の言葉ではクリティカルパスとかパス法などといった中でルール化されて普 段のパフォーマンスを説明していく部分と、例えば下剤は看護師が調整する、 定期処方についてもドクターにそれなりのインフォメーションをする。自分 も結構たくさんの経験がありますので、景色そのものは分かるのですが、い まの質疑応答の文脈でいくと、ナースとして処方できることがあったほうが いいだろう、そのためにはそれなりの権限が与えられたほうがいいだろう。 そのようなことができる技量を備えた教育のシステムや、具体的にそのよう な人が現場にいることが患者にとっていいだろう、このような話でいいので はないかと思うのです。法律を作れと桑田さんが直接的に言うことは、たぶ んないと思います。  ちなみに、終末期のケアの往生の場面について、急性期の話は坂本先生が 言われたとおり、そんなものかなと思うのですが、圧倒的多数はそうではな い形で天国に召されていく。そのような状況があったときに、ここから先は サイエンティフィックな医療をやるのはやめようではないか、ここから先は 純然たる看取りの局面であることを、たぶん看護師たちは判断しているので はないかと思うのです。最終的にここから先は何もすまい、そのような意味 では極めて重要なクライマックスです。もし、その場を看護師たちがチーム の一員として決めている、ドクターはそれについては120%任せているという 状況があったとすると、臨終というところまでを含めて、最終的には看護師 がやってしまっても、つまりそれに至るまで随分たくさんの看護職がご家族 と面談をしたりしていますから、そのような意味では患者さんの家族もチー ムの一員になっている可能性があります。  そうすると、いま言ったこれ以上何もやらないと決めるクライマックスも、 ご臨終です、何時何分ですというのも、場合によってはナーシングスタッフ だけでやってもいいのではないか。つまり、相当程度に裁量を持ち得るので はないか。ドクターはいなくていいとは言いませんし、もちろんその場でや ってくれても構わないですが、質のいい看取りを展開するのであれば、たま たま通りかかった医者よりは、ずっと見続けていたナースのほうがいいので はないかという観点で、本音をちょっと言えますか。 ○桑田先生  どういった亡くなり方をしてもらおうかというか、その方にとっていい亡 くなり方、当院は「大往生の創造」と言っていますが、大往生の要因として は十分長生き、惨めではないこと、ご家族に良い余韻を残すといった定義づ けをしております。それを提供するために、チームはどのような対応をして いくかということです。ナースが死亡確認をする、反対に秋山先生にお聞き したいぐらいですが、在宅などの場合はそのようなこともあるかもしれませ んが、病院という括りの中で家族の満足というところでは、亡くなった瞬間 を目にしても、やはりドクターに連絡をし、ドクターに死亡診断をしてほし いというように感じます。ご家族に医師の方がいたときも、その瞬間に立ち あっているのですが、ご家族に確認し、一応医師に来ていただいて死亡診断 したということもありました。 ○有賀委員  わかりました。いま言った、もうここで第4コーナーを回るね、という判断 についてはいかがですか。 ○桑田先生  もう第4コーナーを回るねという判断はナースがしています。そうだと思う ということを病棟師長が医師に伝えていて、そこで医師と話し合いをしてお ります。 ○有賀委員  ありがとうございました。 ○武久先生  青梅慶友病院の話に偏っていますが、療養病床というのは、青梅慶友病院 のように平均在院日数が1,200日以上の所が普遍的ではありません。現実問題 として、全国の医療療養病床の平均在院日数は200日を切っており、180何日 です。これは特殊な例です。特殊な例を普遍的に話すことは気を付けないと いけない。というのも、東京都の場合は特養・老健が一杯だからです。普通、 病院というのは病気の人が入院して、できるだけ早く適切な治療をし、良く して帰すのが理念だと思いますから、そのような意味では熱が下がれば帰す、 それが普通の療養病床です。しかし、帰ったら二度と入れない、特養には行 けないという特殊な事情があるから、保険外負担をある程度払ってでもずっ と置いてもらうという状況で、全国的には非常に珍しい病院です。  普通、病院であれば医師がすべて判断し、医師が全部指導します。在宅で も老健でも特養でもしていない。老健で金曜日の昼間に先生が回診して、月 曜日の早朝亡くなった場合、48時間以上経っているわけだから、本当は診断 書は書けなくて検死になる、そのような時代の法律の中で、在宅や病院でな い所で亡くなるということは非常に難しいわけです。その辺の法律的なもの も考えないと、1週間に1回往診に来る先生は、1週間前にしか診ていないから 診断書は書けないとなると、在宅やシニアリビングで看取りをするというの は、もうそこで終わりです。  それはここでの話ではなく、あくまでもチーム医療ですから、病院や在宅 でのチーム医療ということでは、病院としてはできるだけ病気の人が入院し、 少しでも良くなればすぐ帰すと。したがって、医療療養では、いま平均の医 療区分のうち、医療区分1が10%前後になっている病院も非常に多いです。ま た、そのような病院が高度急性期病院や急性期病院からポストアキュートを 引き受けているわけですし、そうした機能がなければ慢性期医療としては成 り立たないわけです。そのような意味では、青梅慶友病院のような病院も全 国にはありますが、これは病院と老健と特養とシニアリビングの機能をすべ て包括した700床ではないかと思うのです。その中で100人ぐらいが重度で、 亡くなる寸前という状況の方がいるのを、桑田さんを中心としたチームナー シングで見ていらっしゃるのだろうと思います。  というのは、700何床で20人以下の医師では、とても対応できないと思いま すし、現実にその状況を思い浮かべますと、先生も言われたように、医師の 関与が非常に少ない、いわゆる施設的な病院の一部の機能があるのではない かと思います。これは普遍的な状態ではありませんが、東京都にとってはな くてはならない病院だと思います。地域的な差はありますが、全国の療養病 床などの慢性期医療は平均6カ月以内で回転しておりまして、これを平均3カ 月以内で回転させなくてはと。今後は亡くなる方が1.5倍、160万人になるわ けですが、朝行ったら亡くなっていたという人ばかりではないわけですから、 何らかの医療の必要性は増大します。結局我々慢性期医療の立場の者も、で きるだけ早く治療して早く帰すという方向に行くべきで、そのための前向き なチーム医療が必要ではないかということを述べておきます。 ○永井座長  そのときに、制度が、このようになっていたらもっと効率よく、またクオ リティも高められて、負担も少なく、先生が目指すような医療を日本全体に 実現できるか、そこをご指摘いただければと思います。 ○武久先生  まず、ベットを増やさないのであれば、在宅やシニアリビングで亡くなる 方が必然的に増えます。そうすると、先ほど言ったように、48時間以内に見 ていないと診断書が書けない、それで検死になる、医療安全の事故調に行っ てしまうなど、そのような状態では進みません。また、病院というのは先ほ ど言ったような理念で動いていくべきものであって、亡くなるまでずっと置 いておくというのは、病院としての理念とは少し違う面があると思います。 我々は病院としての機能を誠実に果たしていくために、チーム医療を積極的 に行わなければいけない。そのためにはコメディカルが看護師と医師の2つの 職種のチームの中に入って行き、それぞれの専門職を活かした仕事をし、看 護職が本来の専門職の仕事ができるようにと。それには当然のことながら、 法制上の問題と診療報酬、すなわち給料をどこから出すかという問題がある と思いますし、チーム医療はたぶん在宅、病院の両方を見ると思いますから、 在宅と病院の双方で是非検討していただきたいと思います。 ○永井座長  法制上の具体的なご指摘をお伺いしたいのです。 ○武久先生  病棟に専従でいることによって、これは診療報酬の上ではそうですが、専 門職に関しては、この業務はこの職種でないとできないという部分がありま す。例えば、薬剤師が薬を調合したりすることは非常に専門的なことなので すが、実際の現場では看護師がしている。このことを薬剤師に聞くと、調剤 というのは経口薬のことですか、注射薬を混ぜるのは調剤とは言わないので すかと言うと、それは調剤と言いますと。注射薬を混ぜるのと、内服薬を混 ぜるのと、どちらがリスクが大きいか聞くと、当然注射薬だと言いながら、 自分たちは経口薬だけを調剤するのを調剤と言い張るのです。このように非 常におかしなところがありますので、薬に関しては薬剤師さんに関与してい ただくほうが、事故のときには非常に有効だと。看護師ならば保助看法とそ れぞれの専門職の法律をきちっと照らし合わせて、それの専門性を評価して あげるような体制というものがいちばん必要だと思っております。 ○永井座長  後日で結構ですので具体的な例、つまり今ここが制約になっていて、こう すればいいのではないかという提案をいただければと思います。 ○井上委員  武久先生の資料の2枚目、スライド番号の3と4は最初から大変感動いたしま した。3のスライドで先生は、これだけ各種の専門職がいて、高等教育を受け て国家資格を持っている。いないとナースが担うと言われたのです。全くそ のとおりで、ナースは何でも屋でいろいろなことをやっていたと。ただし、 議論があったように、ナースの質、善かれと思ってやること、例えば患者さ んが口から食べられるようになるとか、バルーンカテーテルを抜くというこ とはプラスアルファの仕事になったのです。その原因は何にあるかと言うと、 4番目の診療報酬の在り方でというもので、先ほど川嶋先生もおっしゃいまし たが、医師と違って看護師はあくまでも頭数なのです。そうなると、30年の ベテラン選手よりも、今年出たばかりの人のほうが給料は安いということが 何十年も繰り返されてきました。今回は診療報酬のことは抜きで、包括指示 でどこまでできるかと思っていたのですが、看護師を含めたチーム医療の各 職種の報酬、各チームに位置づけて、それに看護報酬、名前はともかく報酬 を付ける。それをやらない限りは、ここでチーム医療の会議を何回やっても、 包括指示の中でやれと言われても、限界があると思います。過去の出来高払 いのときに、ナースが呼吸器系合併症予防と思っても、病院にとっては肺炎 を起こしたほうが収入が増える、そのような矛盾したベースがある、それが 今までの診療報酬だったと思うのです。  いま看護にも道が開かれて、看保連として診療報酬を申し出ることができ るようになったのですが、いままでの内保連、外保連と同じ扱いを受けてい るのでものすごく大変なのです。私も小さな学会を持っているのですが、エ ビデンスは何か、書類は山のようで、いくつも選別されてもなかなかです。 例えば口腔ケアの資格などは、あっという間に歯科衛生士さんに持っていか れてしまったのですが、挿管されて人工呼吸器が付いている人の口腔ケアを ICUのナースがやっても、それは全くのゼロ、そのような矛盾はいくらでもあ る。  今回は慢性期ということで、人に看護が見えやすかった。川嶋先生が心配 されている部分だと思うのですが、特に急性期になると、侵襲的な医療処置 は医師と乗り合う部分がありますが、看護がそれをやりたいというのではな く、看護の本質とは一緒だと思うので、それとは別に、率直に言うと医師不 足、過疎地において医師の役割を担う、手術室の中で新しい職種をつくるな どといったことは分けて考えて、今ある医療職がやっていることが人々の生 活や医療に添うような診療報酬の裏づけがあってこそ、この話し合いが実り あるものとなっていくのだと思います。申し上げたいことは、武久先生の資 料のスライド3と4に尽きていると思いました。 ○永井座長  ご指摘のとおりで、以前からお話しているように、制度と意識とコストの 問題です。制度には当然権限の問題もありますし、診療報酬の問題も入って くるので、多角的に議論していただいて結構なのです。 ○海辺委員  そもそもなぜ私が委員になってここにいるのかと疑問に感じながら、今日 はずっとお話を伺っておりました。がんの患者会にはがん難民などいろいろ な人たちがいて、そのような人たちは高度な急性期の医療が受けられないと いったところで、限りある命の中で活動しているわけです。いままでのお話 はケアの部分とキュアの部分、どちらかと言うとケアにシフトした部分が語 られていたと思います。それを否定するわけではなく、全部が非常に大切な ことであり、それを必要とする人たちにとっては本当に必要なものだという ことはよく分かるのです。前回は休んでしまったのですが、第1回の検討会で は、チーム医療という言葉自体が非常に曖昧だから定義する必要があるので はないかという話が出て、前回は取りあえずその方向性が決まっていたのか なというのに私は付いていけていなかったというのが1点あります。お話を伺 っていると、それが介護なのか、医療なのかは別にしても、よい医療が評価 されない、無駄な検査をしたほうが病院がまだやっていけるなど報酬上には いろいろな問題点があるから、そのような問題は当然正されてほしいと思い ました。  今日のお話を伺っていて、医療なのかとちょっと思ったのです。私が所属 している「がんとともに生きる会」は、比較的働き盛り世代や若いがん患者 さんが受けたい医療が受けられなくて、ドラッグラグの問題などを取り込ん できたような患者会ですので、医療費がないのだ、治らないがん患者がいつ までも高度な医療を求めるから医療者が疲弊して医療の財源が不足していく、 圧迫されるのだということを散々聞かされてきた中では、医療費をいくら膨 ますと言っても限界がある中、大往生するための医療費を膨ますことで、ど うせ治らないのだからがん患者は諦めろという議論になりはしないかという ことを非常に危惧いたしました。介護保険やいろいろなところの使い勝手が 悪く、矛盾があるところは考えなければいけないとは思いましたが、医療と は非常に難しいなと。どちらかと言うと、患者代表の席に座る人は私ではな く、むしろ介護の現場で苦しんでいる方、そのような方々をサポートしてい る人がここにいらっしゃればよかったのにと思いながら伺っておりました。 ○永井座長  チーム医療の定義の話がまた出ましたが、前回私は結構お話したのです。 おそらくお二人とも前回は欠席されていたと思いますが、これは別に急性期 だけでなく、慢性期も介護も議論するのです。それぞれの立場でチーム医療 というのは違うということなのです。要するに、機能分担と連携の問題です。 いかにそれぞれの機能を果たしながら分担していって、かつ連携するかを議 論していただきたいと前回お話しております。その視点としては、今日も何 度かお話していますが、制度なのか、意識なのか、コストの問題なのか。制 度については権限の問題と責任の問題、そして診療報酬の問題といった辺り が論点になります。何も急性期に限っているわけではないのです。ですから、 海辺さんがいらっしゃることは非常に重要で、広い視点でお話いただければ と思います。とにかく今の問題点はどこにあるかを挙げて、何らかの提言を しようというのがこの検討会の目的です。 ○坂本委員  はっきり言わせていただきますと、桑田さんは専門看護師で、青梅慶友病 院の中で大変活躍されていると思うのです。おそらくドクターもインフルエ ンザのことにしろ、その他のことにしろ、お互いの信頼関係の中で、プロト コールはあるにしても桑田さんにある程度の権限を、包括指示の中で与えて 認めてやっていると思うのです。私がここで提案したいのは、桑田さんのよ うに非常に勉強した人たちに対して、病院の中だけで活動を認めるというこ とではなくて、もう少し公的に認められた状況の中で積極的に活動できるよ うな仕組みを提言したいということです。ただ、桑田さんの病院で働いてい るナースの中で、そのような勉強している人というのはご本人しかいないわ けですので、果たしてすべてのナースができるかどうかということについて はこれからの課題であって、調査してみないとわからないと思います。しか し、一定の高い教育を受けた人達が、包括指示下でドクターと連携していろ いろなことをしていることに対して、ここでは制度の問題として少し認めて いく方向で動いていただきたいと思います。 ○川嶋委員  桑田さんに1点だけ質問いたします。いまナースの離職率が問題になってい ますが、桑田さんの病院の場合は定着率とか応募率は一般病院に比べていか がでしょうか。 ○桑田先生  離職率はそれほど悪くなかったと思います。きちんとした数を申し上げら れなくて申し訳ありません。応募は時期によってですが、そんなに悪いわけ ではないと人事と話し合っております。 ○朔委員  急性期医療でチーム医療を語る場合はクリティカルパスは避けて通れない 話題ですが、慢性期医療におけるクリティカルパスの取扱いはどのようにさ れているのですか。例えば老人が肺炎を起こして、重症になった場合のみパ スがあるというような状態なのでしょうか。クリティカルパスはどれぐらい 運用していらっしゃるのでしょうか。 ○武久先生  多くの病院でやっておりますし、私ども日本慢性期医療協会では慢性期医 療認定講座というのを作り、そこでパスもやっております。私どもの病院の 場合は、血液検査6項目の値によって64通りの病状パターンを作っておりまし て、それぞれに対する治療法をすべて記載したマニュアル本があります。そ れを中心にして、あとはバリエーションで医師が治療しております。例えば 低栄養、脱水、高血糖、貧血、低コレステロール、高BUN、ナトリウムの値等 によって行っておりますが、それとは別に脳卒中パスや大腿骨パスは急性期 病院からのパスです。特に、慢性期の回復期やポストアキュートの場合は、 陥る状態が非常に込み入っており、高齢者ですと、いろいろな因子がたくさ ん入った複雑なパズルになっておりまして、どれからほぐしていくかという のはパスがないととてもできない。輸液に関しても、3号輸液をするのか、生 食にするのか、5%糖液にするのかというのも全部治療法があって、当然学会 でもわかっていますし、全部パスでやっております。どの医師が受け持とう とも普遍的に最低レベルの治療はできるようにしておかないと、言い方は悪 いですが、例えば急性期の先生で高齢者の状態を診ていないとラシックスを 使い過ぎるなど、いままでのいろいろな癖が出てきて、医原性のいろいろな 病態も出てきたりするのです。ですから、高齢者の慢性期の込み入った病態 を解きほぐすようなパスはきちんと作っております。 ○島崎委員  武久先生にお伺いします。今日は診療報酬の個別の政策論などにはあまり 立ち入るべきではないと思うのですが、せっかくいろいろなご提言をいただ いているので、1つだけお聞かせいただきたいと思います。先ほど言われたよ うに、確かに今の診療報酬の入院基本料は、基本的には医者と看護師の数で 決められており、他のコメディカルの配置について十分配慮されていない面 があるのはそのとおりかもしれないし、もう1つ、例えば慢性期のケースミッ クスタイプの診療報酬では、医療の必要度と介護の必要度を組み合わせて一 定の評価をしている。もちろん、細かいことを言い出すとキリがないわけで すが、その中でどのような職員配置をするのかというのは、結局はそれぞれ の病院の判断の問題であるように思えます。むしろ、その結果質がどうかと いうQuality Assuranceをどうするかということで評価したほうが、例えば外 形的に人を何人配置したからその分だけ何点か加算していきましょうという ことよりも、むしろ総合的評価としては適切ではないかという考え方もある と思いますが、そういった考え方についてはどのようにお考えですか。 ○武久先生  おっしゃるように、確かに人さえいれば質がいいわけではありません。病 棟の看護師さんの数が多くなればなるほど、患者さんは良くなるとおっしゃ る方もいますが、先ほど井上さんが言われたように、7対1を5対1にするより、 それぞれの専門職が看護師と一緒にやったほうが効果が上ではないかと思っ ております。診療の質ということは避けては通れないと思いますから、我々 の病院でも、MOFになった人をいつまでも治療するということはしておりませ んし、ある程度のターミナル宣言もしておりますから、やはり良くなる可能 性がある間は一生懸命治療する、これが病院だと思うので、そのような意味 ではきちんとやっております。ケースミックスについてですが、私どもの病 院は医療必要度、看護必要度、介護必要度とを一緒にしたようなものを作っ ておりまして、医療関与度、介護関与度が5対5以上の者は医療保険で行うべ きと思っておりますし、それ以下の者は介護保険なりで対応するべきだし、 施設だろうと思っております。  我々は数だけいても烏合の衆にならないように注意をしながらやっている わけですが、かと言って、ある程度の数はいないと負担が1人にかかることに なるわけです。桑田さんが言われたように、経管栄養から経口摂取に変わっ た割合が何パーセント以上の病院は評価するとか、細かな配慮にしてもそう ですし、医療区分3から1になって、良くなって帰った率がどのぐらいあるか などといったことも入れていかなければならない時期にきていると思うので す。これは保険局だけではなく、医政局としてもトータルで考えていかない といけないことであり、制度上の問題も大いにあると思いますので先生のお 考えには賛成です。 ○島崎委員  もう1つお伺いしたいのですが、例えば医療法上、病床数に応じて医師は何 人配置しなければいけないとか、外来患者何人に対して医師は何人配置する とか、機能分化が進んでいなかった時代に作られた規制がある一方、診療報 酬では、こうした条件を満たせば、このような点数が付くというように細か い誘導措置が講じられています。雑駁な言い方をすると、規制的な手法と経 済的誘導的手法の両立てになっているということがありますが、医療法上の 規制に関して言うと、そこの点については不満というかご意見はおありでし ょうか。つまり、機能分化がこれだけ進んでいる以上、あるいは地域によっ て医療資源の分布や住民意識など実情が全然違う以上、規制をこれ以上設け るべきではなく、方向観としてはむしろざっくりとしたものとすべきだとい うようなことをお感じですか。 ○武久先生  外来患者50人に対して医師1人ということについてですが、慢性期の高血圧 の患者さんがどんどん来る所と、非常に高度な医療を行う所とでは当然違う わけです。小児も非常に手間がかかりますが、長く待たせればクレームがき て、そこの病院は流行らなくなり、自然淘汰されていくわけです。というこ とは、準夜で2人の看護師さんがいることが決まりであっても、手術後の患者 さんが4人も5人もいれば、当然on demandで、必要に迫られれば現場で4人、5 人の準夜にするのが当たり前の話です。そのようにしないで、その結果患者 さんが悪くなると病院が悪く言われるわけです。  厚生労働省というのは、どちらかと言うと取締りというか、戦前からその ような傾向があったと思います。我々のほうもそれなりの反省をしなければ いけないですが、きちんとした法律があれば遵守するという前提に立ってや っている以上は、あまり細かな縛りがないほうが、よくやる所はそのほうが 伸びるのではないか。伸びた所を真似して、また頑張っていこうという病院 が出てくる可能性もあるのです。これだけの数でやりなさいというけれども、 高度急性期病院のように、医師数は100人に6人と言っても、実際はその3倍も いるわけです。しかし、それは3倍分の診療報酬が出されているわけではない わけで、そのような意味では高度急性期病院は非常に窮屈になっております し、慢性期医療はその3分の1でいいのですが、実際は結構重い患者さんを診 ているわけです。別の所から来た患者さんが入院した途端、IVHも何もかも抜 いてしまって放っておくなどということは、どこの医者にもできないわけで すから、継続的な医療というのは非常に手間がかかるということを皆さんに お伝えして、その代わりをするのがこのコメディカルのチーム医療だと。あ る意味、医師、看護師の働きのカバーをすると。例えば療養病床ですと20対1 ですが、介護も20対1いますので、トータルでのマンパワー10対1でやってい ても忙しいという現状ですから、ある程度自由に、1人、2人足りないからと か増えたからという箍は、できれば外していただいたほうがいい医療ができ るのではないかと思います。 ○永井座長  先ほど海辺委員は急性期医療と療養型の医療とは違う世界のようなことを 感じられたようですが、療養病床での医療がしっかりしていないと、患者さ んはすぐ悪くなるのです。その方々が急性期病院に来ると、今度は急性期病 院が動かなくなるのです。ですから、これは両方をきちっとさせていかない といけない、そのようにご理解いただきたいと思います。 ○海辺委員  そのような意味で申し上げたのでは決してなくて、いま点数が完全にない ところにどんどん付けていくという中で、介護の領域に対して医療の財布か ら振り出していくという方向になることはどうなのかと思ったという話です。 ○武久先生  癌のことですが、いま高度急性期病院はレテディーフ、つまり再発の患者 さんまではなかなか受けられないので、癌が再発した患者さんがセカンダリ ーに化学療法をするような場合は、療養病床が受け持っているのです。もち ろん、できる所もあるし、できない所もありますが、前向きにそのような患 者さんを受けないと、急性期病院にはどんどん新しい患者さんが来るのに、 再発の患者さんを最後まで全部診ようとすると、急性期病院では新しい患者 さんを診ることができなくなるわけです。これは慢性期医療の受持ち分野だ と思っておりますから、癌に関しては日本慢性期医療協会でも積極的に治療 して、もちろんQOLもそうですが、何とか延命というか快適に暮せる年限を増 やすような勉強をしていかないといけないと思っております。 ○永井座長  そのためにはどのような課題があるかを是非教えていただきたいと思いま す。 ○武久先生  それはもう抗がん剤がマルメになっているとか麻薬がどうのこうのとか。 ○永井座長  それについては後ほどリストでもいただければと思います。 ○武久先生  レポートでお出しいたします。 ○羽生田委員  チーム医療の話に戻させていただきたいのですが、多職種の専門職が集ま っていろいろな議論をしていくということには大賛成です。いま制度あるい は意識といった話がありましたが、制度とする場合は、どこでどのような線 を引くかというところが非常に問題となってくると思うのです。有賀先生は 既にチーム医療をやっていると話されていましたが、医師にしても専門職に しても、それぞれのレベルというのは全部違うというところで、このような 専門職がいればチーム医療が成り立つというものではなく、意識も含めて、 その人たちがどこまでできるかというレベル、専門職の出来、不出来が、不 出来と言っては失礼ですが、実際の業務に非常に関係してくると思うのです。 やはり、チーム全体でどこまでできるかというそれぞれの判断はチームでし ていく、つまり、この人であればここまでできるということは当然出てくる だろうと思うのです。今日のお話の中でもかなりの部分が、いわゆる包括指 示という中でできてきている。最初のころに座長が言われたのですが、それ をずっとやっていったときに、ここでは法律改正が必要だと、最終的にその ようなものが具体的に出てくることはあり得るだろうと思います。その具体 的なことは座長もいろいろと言われていましたが、そこまでまだ出てきてい ないので、いまのチーム医療に対しての今までのヒアリングの中では、包括 指示の中でかなりの部分はできている、私はそう思ってずっと聞いておりま した。こういうことはどうだというのは法律上何も仕切られているわけでは ありませんから、解釈で済むことなのか、法律改正が必要なのか、最終的に はその具体的な話になっていくだろうと思っております。 ○瀬尾委員  私は麻酔科で超急性期ですから、今日の武久先生の話は非常に参考になり ました。目からうろこと言いますか、結局そこの部分がきちんと動かないと 急性期も動かないし、いろいろなものがうまくいかないのではないか。そこ のところは今医師が不足しているから、それに対して非常に努力をして、い ろいろな業種の人に入ってもらい、うまくいかせようとしているので、これ をいかに伸ばしていくか、いかに制度上バックアップしていくか、財政上バ ックアップするかということが、いわゆるシームレスな医療と言いますか、 診療・治療、介護、看取りといったところをうまく動かすためには必要では ないか。高齢者が増えて死ぬ人たちも増えてきているわけですから、病院だ けで最後を看取ることは非常に難しいというシナリオもありますので、武久 先生が言われたあの部分がうまく動けるように、制度なり報酬なり法律など も変えると。今日お話を聞いていると反対のことを言っているような気がし たのですが、ナースがナースの仕事をするということはナースの役割が少な くなって、他のチームメンバーが入ってくることができる、この会と逆行し ているような感じもしましたが、全体的に見れば、チーム医療をするという ことはそういうことであって、ナースがやっていることが、いろいろなチー ムが入ることによって動くようになるのだと。武久先生の所のような病院が スムーズに、200日が100日ぐらいでうまく回せるような制度がいいのかなと いう感想を持ちました。 ○永井座長  そろそろまとめに入りたいと思います。 ○武久先生  いまのことについてですが、私が高度急性期病院の先生方に何をしてもら いたいかと言うと、高度急性期病院たろうとすれば、地域に良質な慢性期医 療、すなわちポストアキュートをフォローできる病院を、高度急性期病院が 指導してつくらないといけないということです。例えば、慢性期病院の地域 連携の営業マンが来てお願いしますと言ったら、よしよしと言って患者を配 っているだけでは、悪い病院にかかったら結果が悪いわけで、結局紹介した 元が言われるようになる。ということは、ポストアキュートを1週間ぐらいで どんどん出していけるような信頼できる慢性期病院を地域に醸成しないこと には、その病院は高度急性期病院になるチャンスを逃がしてしまうのです。 私は徳島ですから徳島日赤とのチーム医療の連携、急性期と慢性期のチーム 医療の連携でPTをやり取りしたり、看護師さんをやり取りしたり、医師が行 き来したりしながら急性期病院のチーム医療と慢性期病院のチーム医療をク ロスすることによって、スムーズに患者を引き受けることができる体制を取 ろうと今やっております。そのようなことがこれからの高度急性期病院の先 生方には必要ではないか。我々受ける側も、当然、看護師ともども一生懸命 勉強していかないと、日進月歩ですからとてもついていくことはできません。 やはり、そのように前向きにチーム医療を捉えていくことが必要だと思いま す。 ○永井座長  最後に井上委員、大熊委員からお願いいたします。 ○大熊委員  いま急性期病院がうまくいくためには、慢性病棟を、と言われましたが、 忘れられているのは在宅医療です。太田先生や秋山先生のような在宅ケアを すすめている方々との連携が極めて大切です。それをおろそかにして慢性期 医療の病院をやたらに増やすというのは世界的な流れから外れていると思い ます。  桑田先生が特養ホームのトップはナースがなれるといいと言われたのはも っともなことで、国際的にはそれが当然のことになっています。青梅慶友病 院の場合も、病院と名前が付いているからナースがトップになれないけれど も、あのような機能を持っているところではナースがトップになってよいと いった制度改正もあり得るのではないでしょうか。  3つ目に、先日チーム医療の協議会という組織がお披露目されたのですが、 そこではコメディカルという言葉をこれからは使わないでほしいと。医師・ 看護師・その他みたいなイメージだからです。医師、ナースを含めメディカ ルスタッフとか医療スタッフという言葉を使ってほしいという訴えがありま したので、ご紹介させていただきます。 ○井上委員  先ほど瀬尾先生が、看護がいろいろなところを仕分けしていくと看護には 何が残るのか、少し矛盾するようなことを言われました。先生の真意はわか っているのですが、是非強調しておきたいのは、看護を筆頭として大綱化し て大学レベルで学んでいる専門職は、チーム医療としてやっていこうという こと。そうすることによって、ナースはよりナースらしいこと、ナースがや りたいこと、つまり先ほど経管栄養ではなくてというところをもっとやって いきたい。それには訓練された認定看護師、専門看護師を取っ掛りに、いろ いろなことに端的に言うと報酬を付けてほしいということです。 ○永井座長  申し訳ありませんが時間となりました。さらに議論は続きますが、年内か らまとめに入りたいと思います。次に、事務局から連絡事項をお願いいたし ます。 ○石川補佐  次回の検討会は11月24日(火)14時半〜16時半、場所は本省省議室の予定 です。別途ご連絡いたしますので、よろしくお願いいたします。 ○永井座長  以上で本日の検討会を終了いたします。どうもありがとうございました。 -了- (照会先) 厚生労働省医政局医事課 石川義浩、石川典子 (代表)03−5253−1111(内線2564、内線2563)