09/10/29 第2回医薬品の安全対策等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会議事録 第2回医薬品の安全対策等における医療関係データベースの活用方策に関する懇談会          日時 平成21年10月29日(木)          18:00〜20:00          場所 厚生労働省共用第8会議室(6階) ○安全対策課長補佐 定刻になりましたので、第2回医薬品の安全対策等における 医療関係データベースの活用方策に関する懇談会を開催します。  本日の懇談会は公開で行うとしていますが、カメラ撮りは議事に入る前までとさせて いただくので、マスコミ関係者の方々におかれましては、ご理解とご協力をよろしくお 願いします。また、傍聴の方におかれましては、傍聴に際しての留意事項、例えば「静 粛を旨とし喧噪にわたる行為はしないこと」「座長及び座長の命を受けた事務局職員 の指示にしたがうこと」などの厳守をお願いします。  本日の議題に関係する専門家等として、国立保健医療科学院経営科学部経営管 理室の岡本先生、医薬品医療機器総合機構安全第1部の三澤部長、産業界の代表 として山本尚功構成員からお話を伺うことにしています。これより議事に入りますので、 カメラ撮りはここまでとさせていただきます。 ○座長(永井) それでは議事に入ります。まず、事務局から本日の配付資料の確認 をお願いします。 ○安全対策課長補佐 それでは事務局より、配付資料の確認をさせていただきます。 まず、お手元に議事次第がございまして、次に配付資料の一覧、次にこの懇談会の 開催要綱、次に懇談会の構成員一覧。次に資料1-1として、岡本先生の「韓国におけ るレセプト情報の活用 薬剤を中心に」、資料1-2として、医薬品医療機器総合機構の 「市販後安全対策における電子診療情報の活用」。資料1-3が2つございまして、両 方ともタイトルは同じですが、「日本の「医療情報DBの活用における連携」のあり方 (案)」、資料1-3-1と資料1-3-2があります。次に資料2というものがございまして、こ れが「主要な論点(たたき台案)」というもの。そして最後に参考資料1、「米国の医療 情報に関する個人情報保護に関する法規について」。このようになっています。配付 資料の不足、乱丁等がありましたら、事務局までお願いします。 ○座長 ありがとうございます。それでは議題に入りますが、まず、本日の懇談会での 現状認識を共有するということで、医療関連情報を活用したこれまでの取り組みにつ いて、研究者等からヒアリングをするということから始めたいと思います。  議題(1)に「有識者等からのヒアリング」とありますが、最初に国立保健医療科学院 の岡本先生、次に医薬品医療機器総合機構の三澤部長、3番目に日本製薬団体連 合会及び日本製薬工業協会の山本構成員の3人に、続けてプレゼンテーションをし ていただくことになっています。お一人15分程度でおまとめいただきたいと思います。 また、全員のプレゼンテーションの後に、まとめて質疑応答、ご意見を伺うことにしま す。  それでは最初に資料1-1ですが、韓国の状況及びタミフルに関する研究について、 ということです。資料1-2が医薬品医療機器総合機構の取り組み、資料1-3が製薬産 業の視点ということです。  それでは最初に岡本先生からお願いします。 ○岡本参考人(国立保健医療科学院) 国立保健医療科学院の岡本です。韓国にお けるレセプト情報の活用について、特に薬剤の例からプレゼンさせていただきたいと 思います。  まず最初の写真は、韓国のレセプトのデータベースを管理運営している審査評価院 という機関の建物です。一見しておわかりのように、超ハイテクなビルでして、当然出 入りなども非常に厳重です。  この審査評価院の概要ですが、レセプトの審査及び医療の適正性の評価を一元的 に行う公法人と位置づけられています。職員の数は1,760人となっていますが、特に 特記されるのは、この中には研究職が73人、IT技術者が155人と、審査の職員だ けではなく、研究職やIT技術者もたくさん含まれています。レセプトの取り扱い件数 は年間で約10億件、しかしその電子化率はほぼ100%に達しています。  これは、その組織です。特記されるのは、右下のほうに書いてありますが、研究開 発センターや薬剤情報に関する管理・分析の専門部署が置かれているということで す。  これは、韓国の国民健康保険法に規定されている審査評価院という機関の業務と、 その法的根拠です。まず第1に療養給付費、医療費の審査を行うということ。これは 我が国と違いはありませんが、特筆されるのは、医療の給付の適正性に対する評価、 並びにその評価の基準の開発を所掌している、と規定されていることです。その下に は施行規則が書いてありまして、医療機関別、傷病別にそういった評価を行って公表 する、ということが規定されています。  これはデータベースに収集されるレセプトデータの内容ですが、一口で言って全ての データが収集されています。入院、外来、調剤、漢方、あらゆるレセプトに含まれるデ ータで、これは当然ながら医療費の支払いのために使いますから、個人情報もそのま ま集められていますし、傷病名に関してもICD10のコード化が義務づけられていま す。  この審査評価院のデータシステムのことを、データベースではなくデータウェアハウ ス(DW)と呼んでおり、約5,000万人の全国民から年間10億件のレセプトを5年間 にわたって蓄積していまして、ちなみにそのファイルの容量は100テラバイトを超える ということです。  韓国で特筆されるのは、各個人が全て総背番号制をとっていて、それは住民登録 番号と呼んでいますが、それによって一人の人間をずっと追跡したりすることも可能で すし、他のデータとリンクすることも可能である、ということです。ここには、その韓国の 13ケタの個人の番号の仕組みを書いています。誕生日、姓などといったものですが、 普通、研究目的だけのリンクであるならば、13ケタ丸々でなくても12ケタで十分であ ると言われています。  この個人を識別する番号による分析のメリットは、レセプトの件数だけではなく、疾 病ごとに名寄せすることで、実際の患者数を把握することができる、ということです。こ こに示してあるのは、審査評価院のウェブサイトに載っている、誰でもダウンロードで きるエクセルファイルですが、悪性新生物、がんの種類別の患者数やレセプトの件数 が示されています。例えば、アスベストが原因で起こる中皮腫というまれな肺がんはレ セプトの件数でいうと575件ですが、実人員では147人が、この病気で外来受診して いるということが示されています。この辺がわが国と違うところでして、わが国では疾 病ごとのレセプトの件数はわかっても、名寄せした実人員が把握できない、という点が 大きく違うところです。  審査評価院の業務は、もちろん第一義的には医療費の審査・支払いにあります。そ こで医療機関単位の評価を行っているわけで、医療機関単位に医薬品の使用実態な ども分析しています。これをDrug Utilization Reviewと呼んでいます。例えば、脳 梗塞に対してtPAという薬を早期に投与することが有効とされていますが、それぞれ の医療機関の種類ごとに、脳梗塞を主傷病とするレセプトの件数の中で、その薬が 投与された割合は何パーセントか、このように出しているということです。  もう1つは、これは上気道炎という病名で、抗生物質を処方している割合はどうかと いう評価結果です。ご覧のように、左側のグラフを見てわかるように、上気道炎という 病名でも、ほぼ全ての患者さんに抗生物質を投与している医療機関もありました。し かし、この分析結果を公表すると、なぜか何もしなくても自然に、ほぼ全ての患者さん に抗生物質を投与している医療機関の割合が減少した、という結果が報告されていま す。  次は、全ての外来患者の中で注射剤が投与された割合です。この評価をする前は、 外来患者に対して注射をする割合が非常に高いという指摘がありました。これも実際 に、医療機関ごとに数値を出して公表することによって、2002年には39.11%あった のが、2006年には自然と下がっていったと報告されています。  これはHIRAのウェブサイトです。もちろんハングル語ですが、外来患者で注射剤 が処方されている割合というのが、全ての医療機関ごとに表示されて、誰でも検索で きるようになっています。  この懇談会に、より関係があると思われますのは、患者単位の医薬品の適正性の 評価だろうと思います。審査評価院のデータベースを韓国の食品医薬品庁が使って、 老人患者に対する薬物使用の評価を行っています。そのためには評価基準として、 何が適正で何がそうでないかという基準がいるわけですが、アメリカのBeerという研 究者がBeer's criteriaという、適・不適を判断する基準を出しているので、それを韓 国でも使ったようです。ちなみに、日本語版は科学院のウェブサイトにも掲載されてい ます。そして2003年から2005年の推移を見ました。  これは2003年から2005年までの、韓国における高齢者の医薬品の処方実績です。 ご覧のように高齢化が進んでいますから、高齢者の数も増えているわけですが、処方 件数はそれを上回る勢いで増えていて、薬剤費も増えている。つまり高齢者に対して 多剤投与の傾向が進んでいるということが、わかります。  次に、このスライドで少し訂正があります。左下の部分はDiazepamと書いているか もしれませんが、これは処方件数の誤りです。老人患者の処方の内容に、この Beer's criteriaを適用したところ、2005年を例に取りますと、6,835万件の処方があ ったのですが、そのうちの12.8%に当たる876万件がBeer's criteriaを適用すると、 何らかの不適切があったといった評価結果が得られています。  もう1つは、これは血液製剤事件と書きましたが、具体的には被害があったわけで はありません。これは2006年にあったそうですが、議員より「本来は献血したらいけ ないはずの薬物を投与されている人が献血しているのではないか」という指摘があっ たようです。国会議員の要求に応えて国が審査評価院に「Acitretinという薬を処方さ れた患者のリスト、個人情報を赤十字社に提供せよ」と命令したそうです。その結果、 2003年から2006年7月までの間に、Acitretinという薬が処方されたレセプトの分 析をすると、処方された人数は25万1,861人もあり、おそらく住民登録番号や氏名と いったものを赤十字へ提供した。赤十字はそのデータと献血した人のリストを個人単 位で照合し、本来だったらこの薬を投与されている人は献血したらいけないわけです が、そういう人がいなかったか、あるいは医療機関に納入されていないかといったこと を確認したということです。その結果、この25万人余りのうち1,285人が2,679回献 血していたということが判明し、かつ、本来輸血されてはいけない血液が、3,980単位 輸血されていた、ということが明らかになったということです。  その後、審査評価院と赤十字の間で個人情報のやり取りをしていたわけですが、今 度は、個人情報を2つの機関間で共有することが問題になったそうです。ではやめる、 というのではなくて、2009年に今度は血液製剤管理法を改正して、献血と血液製剤 の安全のために、審査評価院と赤十字が個人情報を共有することが法的に認められ たということです。現在では、審査評価院は2週間毎に、一定の献血の禁忌薬を処方 された患者のリストを赤十字に提供し、そういう患者から献血された血液は使用しな いようにしているそうです。  このように、医薬品の安全対策として審査評価院がやっていることは、まず防止策と しては、審査評価院はソフトウェアの技術、IT技術者も持っていますので、ソフトウェ アを開発して、医療機関に配付している。つまり禁忌とか、小児に投与したらいけない ような薬に関しては、医師が誤って処方しても、その処方した段階で警告を出す、とい うようにしているそうです。  それでも誤って禁忌の投薬がされた、あるいは重複投薬があったという場合には、 審査評価院はレセプトデータをチェックして、そういうケースについては患者と医療機 関の双方に手紙を出したりして、警告をする。そうすることによって、薬物の不適正使 用を防止している。現在では重複多剤投薬のチェックも行っているということです。  また、このデータベースは医療費の審査・支払いだけではなくて、様々な疫学研究や いろいろな目的にも使われています。これはHIRAの審査評価院のウェブサイトをコ ピーしたものですが、研究者がデータを外部利用したい場合には、どのような手続き を取ればよいかといったことが流れ図で示されています。  無論、提供するといっても、どのような場合でも認められるわけではなくて、このよう に条件が定められています。もちろん公益性が強い研究であるということと、個人情 報をそのままでは提供できませんから、その場合は通し番号を振るとか、そういった 手続きが定められています。  これまでに、どのようにどれだけ提供されたかが、医療経済研究機構の最近の報告 書に載っていました。もちろん手数料は取られます。いろいろな要望に応じて、必要な データを抽出するために、4人くらいのITの専門家がデータセットの作成に専属して いるということです。2008年中にはこういう研究利用目的の申請が、全体375件のう ち30ないし40件で、それ以外はマスコミや専門誌からの依頼。それ以外に国、官邸、 先ほどのような議員からの要求も別に150件程度あったということです。  最後に、これは韓国のものではないのですが、私自身、レセプトの分析をしているの で、参考までに来月学会で発表する内容のさわりだけを報告させていただきます。こ れはインフルエンザに罹患した直後に外傷がどの程度発生しているのかという分析で す。その動機というのは、2年前にインフルエンザに対してタミフル、オセルタミビルを 投与すると異常行動が発生して、怪我や死亡に至るのではないかという指摘がありま した。それを何とか確かめられないかと思ったわけです。この場合、評価のエンドポイ ントをどこに置くかということですが、残念ながらレセプトをいくら分析しても、異常行動 があったかどうかということはもちろんわかりません。しかし怪我をして医療機関に運 ばれたら、当然それはレセプトとして出てくるということで、異常行動ではなく、怪我の 有無をエンドポイントにして、分析したということです。  これは、1回目の懇談会の資料にもありましたが、日本医療データセンター社が、健 保組合のデータを保有しておりますので、それを文部科学研究費で使用させていただ きました。延べ14万件のインフルエンザの受診について、他の医療機関の、つまり怪 我をした場合は小児科ではなく外科に行きますから、レセプトとリンクしました。  さらに、分析手法として、これは観察研究に擬似的に無作為割付、RCTのような処 理を行う、プロペンシティスコア法、日本語に訳すと傾向得点法という方法を適用しま した。これがその結果です。結論から言うと外傷の発生率を、タミフルを投与された患 者とそうでない患者とで比較したところ、予想に反してタミフルを投与されたインフルエ ンザ患者のほうが、診療開始3日以内の外傷の発生率が低かった。これは全部で14 万件もあるので、統計的に有意と出ましたが、この下の半分は傾向得点法によってタ ミフルを投与される確率が低いものから大きいものまで、過去のレセプトの病名で分 類したものです。例数は減るので統計的有意性には達していませんが、タミフルを投 与された群のほうで外傷の発生率が低いという傾向は一貫して見られた。結論として は、タミフル投与者により外傷が多発しているという傾向は見られなかった、という結 論です。最後は私の研究の紹介をさせていただきました。以上です。 ○三澤安全第一部長(医薬品医療機器総合機構) PMDA安全対策第一部長の三 澤でございます。本日は、私どもの取り組みを説明させていただく機会をいただきまし て、ありがとうございます。  まず、最初は、最近の医薬品の安全性をめぐる状況です。新しいタイプの医薬品や ドラッグ・ラグの解消ということで、販売開始時において安全性情報が少ないということ、 それから安全性評価、非常に難しい案件が出てきているということを背景に、事後対 応型の安全対策から予測予防型の安全対策への転換を目指し、私どもPMDAでは 種々取り組ませていただいております。  また、リスクマネジメント制度の導入、ICHのE2E、市販後の安全監視計画の導入 などを背景とし、自発的な副作用報告による安全性評価の限界などから、大規模電 子診療データベースの活用を私どもの大きな課題として掲げ、取り組んできているとこ ろです。  PMDAは発足後、今年が6年目で、第二期中期計画の中で、安全対策を強化する こととしており、その中の目標の1つとして診療情報データベースのアクセス基盤の整 備、それによる副作用の発現頻度調査や薬剤疫学的な解析を実施できる体制を構 築することを掲げて、業務を進めているところです。その中で、私どもの安全対策部 門の組織の強化もいたしました。スタート時は約40名の職員から、今年度は、さらに 100名を増員する予定で、安全対策部門の職員を増員するとともに、今年の7月から 二部体制にしました。私どもの安全第一部では、診療情報の二次利用に関する仕組 み作り、それを利用した薬剤疫学的手法を導入した調査、分析といった業務を進めて いくこととしています。  この電子診療情報が私どもの安全性監視の仕事の中の位置づけをご説明します。 私どもの業務の一つは、安全性の問題、問題がありそうだということを安全性に関す る懸念、すなわちシグナルとして検出することですが、その情報源として「副作用の自 発報告」があります。例えば、症例表のレビュー、ラインリストを見て問題点をキャッチ するとか、あるいは自発報告のデータベースをコンピューターに計算させて、データマ イニングを行い、シグナルを検出しています。その後、実際に本当に安全対策措置が 必要かどうかを判断するために、シグナルの強化をしていくわけです。これは、例えば 各種文献でありますとか、海外の措置、FDAやEMEAが取った措置等を参考にし、 さらに副作用報告を詳しくレビューした上で、シグナルの強化をしていくということで す。  そこで電子診療情報は、今度はその検出されたシグナルを強化し、さらにそのシグ ナルを実際に検証することに使います。例えば、副作用の発生割合がどれぐらいであ るとか、あるいは実際にどのぐらいの規模の患者さんに使われているかとか、そうし た情報をこの電子診療情報を活用して得ていきたいと考えています。さらに、その先 に実際の仮説の検証ということで、電子診療情報や薬剤疫学的な調査、試験を自ら 行うか、あるいは企業が行ったものについて評価し、リスク因子の定量的評価を行っ ています。  次のスライドは、電子診療情報データベースの活用により可能となると考えられる安 全対策です。まず、その使用者数などの分母情報が得られて、副作用の発生率の評 価、比較が可能になる。それから安全性問題の把握と評価が、リアルタイムに可能に なる、即時性ということです。さらに評価能力の強化ということで、いろいろな患者背景 別の分析が可能になるということと、それから分析対象となる患者数が飛躍的に増加 することで、より正確なリスクの評価ができるということです。既知の副作用であっても、 その発生リスクの増加も、この電子診療情報で把握することができると私どもは期待 しています。また、さらに有害事象が医薬品によるものか、あるいは原疾患によるも のか等の評価についても、この電子診療情報の活用により、さらに正確な評価ができ ると期待しているところです。  検討体制ですが、こちらの懇談会と、それから藤田先生が班長をお務めになってい ます厚生労働科学研究、そちらとの連携、あるいはその成果を活用させていただきつ つ、私どもPMDAの検討会は、既存の医療情報データを活用した試行と、それを踏 まえた業務への導入方策の検討を進めてまいりたいと考えています。  私どもの検討会は、この懇談会の構成員であられます山本隆一先生、藤田先生に もご参画いただいていますが、座長は開原成允先生で、今年の7月から検討を開始 いたしております。電子診療情報データベースへのアクセス基盤の整備として、既存 のデータを使って実際にどのような解析ができるのか、あるいはどこまでできるのかと いったことについての検討を進めているところです。  もう1つは、こうしたデータベースを使い、添付文書の改訂や、いろいろな警告、ドク ターレターなどの発出等の実際の効果といいますか、医療現場での実施状況につい ても把握する、調査するといったことを、この電子診療情報データベースを使って行っ てまいりたいと考えています。  それ以外に、私どもで集めております副作用報告のデータベースの活用方策、ある いは再審査に基づいて行われています使用成績調査のデータの活用といったものに ついても検討を進めているところです。この点については、後でご説明いたします。  検討においては、まずこの電子診療情報の二次利用の基盤構築として、例えばレ セプトデータベースへのアクセスに必要な体制、あるいは環境の整備を検討する。そ の上で、実際にその副作用の発現頻度や発現リスク、発現傾向等を解析するために 必要なスタディデザインでありますとか、そのスタディデザインに基づいて解析を行うた めのデータセットをどのように作成していくか。ここに書いてありますような分野の先生 方に検討会にご参画いただきまして、検討を進めています。  このスライドは、私どもが検討対象とするデータソースですが、これ以外にも患者レ ジストリーとかいろいろな可能性はあります。まず、私どもとしましては2011年に公開 が予定されていますレセプトのナショナルデータベースをどう活用していくか。それから DPCのデータ。病院情報システム、これは、電子カルテやオーダリングシステムなど を含めた病院のシステムを指しますが、これを対象として、検討を進めています。それ 以外に、先ほど岡本先生からもご紹介がありましたが、韓国をはじめ欧米、あるいは 台湾等で実際にデータベースが活用されていますので、そうしたものもどういった活用 がされているかということも含めて調査した上で、私どもの検討に活かしていきたいと いうことです。  その他、副作用の報告データベースですが、これを私どもはいまラインリストという 形で公開しています。これを、研究者の方々がより活用しやすい形で公表する方策に ついても検討をいたします。使用成績調査は、再審査に基づいて行われます使用実 態の調査です。このデータについても、市販後の安全対策に活用していくという観点 から検討を進めている状況です。  少し実例をお話したいと思います。この電子カルテのデータ、いわゆる病院情報シス テムのデータと、DPCのデータがどのように活用できるかについて、昨年度私どもで 試行調査を行いました。実際には国立病院機構の東京医療センターのご協力を得て、 電子カルテのデータとDPCのデータを実際にいただいてきまして、ここに書いてあり ますように注射用抗菌薬と偽膜性大腸炎の関係等について、調べてみました。この中 で全部は紹介できませんので、注射用抗菌薬と偽膜性大腸炎の関係について紹介し ます。  これは、そのデータの抽出方法です。対象患者の基準は、平成19年に入院した患 者で、20歳以上で、抗菌薬の注射剤を処方されたという方です。偽膜性大腸炎のケ ースの特定基準として、まずそういう診断名がついているというのが1番。実際に原因 菌であるC.diffcile菌が同定されたというのが2番、それから偽膜性大腸炎について はバンコマイシンが処方されるということで、この対象期間中にバンコマイシンを処方 された方というのが3番。この1から3までの条件のどれかが当てはまって、なおか つ、その事象が処方開始から処方終了プラス3日間の間に起きたものということで調 べてみましたところ、この対象患者数としては約7,000名でしたが、実際にこの基準に 当てはまった患者が55件ということで、この調査では発生率が0.76%になりました。 これは文献等でいわれている発生割合に近いものです。  この55名をケースの判断基準のどれに当てはまったかを分類したのが表の3です。 このような形で、すべての基準に合致した者が9名、それ以外に最初の2つだけ合致 した者が12名。いくつかの基準を設けて拾っていくということで、この場合には、偽膜 性大腸炎の副作用の発生率が把握できたのではないかと考えています。  これと同様な調査を、DPCのデータでもやってみたのですが、DPCのデータはレセ プトのデータに近いものです。こちらでやった場合には、これほどの数が拾えなかった ということで、この調査に限って言えば、実際の電子カルテのデータが、この場合の副 作用の把握には非常に有効であるという結果でした。  この調査は1つの病院での調査でしたが、これを複数の病院からデータをいただい て、調査を行うためには、それぞれの病院から標準化したデータをいただいてくる必 要があります。しかし、それぞれの病院にはオーダーメードした電子カルテのシステム が導入されていますので、病院ごとの電子カルテのシステムを統一するということは 非常に難しいです。異なった電子カルテのシステムの中から、標準化したデータセット を抽出するという方法は、SS-MIXという形で、電子診療システムの中から標準化し たデータを抽出する方法が開発されていますので、それを活用して川上先生のおられ る浜松医大も含めた5つの静岡県の病院にご協力いただきまして、それぞれの病院 から標準化したデータを抽出して、いまご説明いたしましたような調査をしてみることを 検討中です。  将来的には、複数の病院の情報システムから標準化したデータをいただいてきて、 PMDAで必要なデータを収集してデータセットをいただいて、解析して安全対策に活 かすといった取り組みをしたいと考えています。この仕組みを活用しますと、使用成績 調査を、例えば病院の電子カルテのシステムから一部の結果を入力していただくだけ で、それ以外に必要な情報は電子カルテから抽出することで実施できます。それから 例えば、副作用の自発報告などにも活用できるのではないかということで、将来的に はそうしたものも検討を進めていきたいと考えています。  この診療情報の活用については、皆様ご案内のように、FDAが先駆的に取り組み を進めておりまして、詳しい経緯はご説明しませんが、電子診療情報の安全対策への 活用のためのセンティネル・イニシアティブが進められています。私どもも、FDAの取 り組みについていろいろな情報をいただいて、私どもの取り組みにも活用したいという ことで、既に、センティネル・イニシアティブの担当者の方々と電話会議等、あるいは 直接訪問したりして、情報収集に努めているところです。センティネル・イニシアティブ の骨子は、ここに書いてあるとおりで、2012年7月までに1億人のデータへのアクセ スを確保する。そのために公的団体や学会、民間団体とのパートナーシップを進めて いくということです。  FDAは、診療情報の活用をアクティブ・サーベイランスと呼んでいますが、そうした アクティブ・サーベイランスの導入によって、監視能力を強化する。この新しい監視シ ステムは、既存のシステムに置き換わるものではなくて、増加・充実させるものである としています。FDA自体がデータを保有するのではなくて、既にある保険請求のデー タベースを有する保険会社や、電子診療録を有する者との連携・協力によりFDAが データベースにアクセスをするということです。データは、データ所有者に留まり、FDA がデータ所有者等に対して解析を依頼するというような仕組みを取ると伺っています。  私どもの今後の取り組みですが、レセプトデータについてはナショナルデータベース の公開の前に市販の小規模のデータベースを利用して、実際にレセプトデータベース でどんなことができるかといった特徴について検討したい。病院情報システムについ ては、いまご説明しましたように、複数の病院から標準化したデータをいただいてきて、 解析して、どんなことができるのかといった特徴について検討していきたい。海外のデ ータベースについても、ご説明したとおりです。これ以外に、副作用のデータベースに ついてはラインリストの公表の項目や方法の見直し、研究者等による解析が可能とな る公表方式ということで検討を進める。それから使用成績調査については、医療機関 の先生方にご苦労いただいてやっている調査でもありますので、その結果のフィード バックのあり方、安全対策への一層の活用のための方策を、データベース化を含め て検討を進めてまいりたいと考えています。  最後になりましたが、レセプトのナショナルデータベースの研究目的での使用の範囲 等の検討が進められていますが、私どもPMDAとしても是非このナショナルデータベ ースを医薬品の安全対策に活用させていただきたいと考えています。病院情報システ ム、電子カルテのデータについては、今後私どもが安全対策に活用していく上で、医 療機関の皆様のご協力をいただければと考えています。私からのお話は以上です。 ○座長 ありがとうございました。 ○安全対策課長補佐 ここで、事務局よりお詫びを申し上げたいと思います。本日お 配りした資料に、資料1-1と1-3-1に、一部落丁がございまして、いまここで差替版を 配付させていただいています。大変申し訳ありませんでした。 ○座長 よろしいですか。では、配付いただいている間に先へ進ませていただきます。 3番目として、日本製薬団体連合会及び日本製薬工業協会の山本構成員にお話を伺 うことにいたします。 ○山本(尚)委員(日本製薬団体連合会・日本製薬工業協会) 日薬連・製薬協から 来ています山本といいます。よろしくお願いします。本日は、私からこのような形で発 表させていただきますのは、あくまで、製薬業界という立場に立ってではなく、公衆衛 生全体への寄与を想定したという立場でお話をさせていただきたいと思います。  例えば、アメリカなどはHMOのようなレセプトを持った保険者が、電子カルテの情 報を付加情報として保有している。一方で、我が国はレセプトはレセプトで独立してい る。それから電子カルテの情報は個々の病院、一般の診療所でありますとか、大きな 病院というような所にデータが散在していることから、日本独自のデータベースの連携 のあり方を考えなければならないと考えた、という視点に立って今日のお話をさせてい ただきたいと思います。今日お示しするのは、あくまでも我々が知り得ているデータの 情報の種類をこういう形で連携ができるのではないかというところです。これに関して、 構成員の先生方々からご意見をいただければと思います。  本日の目的ですが、あくまで先ほど申し上げましたとおり、国民の健康増進を大きな 目的として、かつ、個々の情報データベースに関して、個々ではなく、いかに連携する ことによる価値を最大化できるかというところに視点を置いています。また、もちろん 公衆衛生の観点で、その連携の重要性を重点的にお話を差し上げたいと思います。  まず、こちらは自動的に集積されるデータベースの種類と、それからその特徴をお 示ししています。先生方にとっては、釈迦に説法の内容ではございますが、レセプトデ ータベースという類のものは、情報がリンケージすることが容易であって、かつ、膨大 なデータが拡充されているという特徴があります。一方で、データの精度に関しては、 レセプトの丸め申請がありますので、個々の詳細な日付単位ではお示しできないとい うところになるかと思います。それからもちろん検査の結果自体が含まれない。あくま でレセプトは請求を第一の目的としてきていることから、診断名自体を単純にアウトカ ムと定義してしまうと、過大評価あるいは過小評価になりやすいというところの限界点 があると思います。これが決して悪いわけではなくて、第一義的な目的が請求であっ て、診療に必要な条件のもとに蓄積されるよう、尊重することは当然であります。  一方で、診療記録のデータベースに関しては、検査結果を含んでデータが網羅され ている面が長所です。限界点としては、規模が必ずしもレセプトデータベースと比較し ては大きくはない。また転院することなどによって、我が国ではデータが散在してしまう ので、追跡が困難です。それから個々の病院でカルテの仕組み等のカスタマイズがさ れている観点で、コーディングやフォーマットといったところが必ずしも一律ではないと ころがあります。  次に、今回は複数のデータベースの連携のモデル例を、大きく3つ持ってまいりまし た。1つは、まず中央統合型データベースと定義をしています。こちらは、データをセン トラルにすべて集めてしまう。データ自体を個々のサイト、あるいは保険者からすべて 集めてしまうという形です。2つ目は、分散型データベースと申しまして、個々の医療機 関などにデータを置いておくのですが、セントラルで共通のプロトコールのアプローチ をかけることによって、すべてデータが同じ条件での抽出が可能であるという形です。 3つ目が、データベースのネットワークという形です。こちらは、個々の研究者、研究申 請者がWEBなどを通じて、各サイトの情報にアクセスできるというところです。大きく 3つあります。  どれがいいということを申し上げるわけではないのですが、例えば統合型のデータベ ースはそのデータを外に出すこと、医療機関の外に出すことによってのセキュリティの 懸念、それから患者さんや医療機関の先生方に配慮すると、必ずしも中央に集める ほうが一律にいいとは限らない。一方で、病院の散在しているデータのリンケージをし ようとするときに、同じ患者さんであるというリンケージをすることについては、セントラ ルにデータを集めないとなかなか難しいことも、また逆に考えられると思います。  一方で分散型データベースやデータベースネットワークという形は、個々のサイトに そのまま情報を置いておくということが利点な反面、リンケージによってのデータの重 ね合わせというところが実際的には難しいという限界点もあります。  冒頭申し上げました、我が国で医療情報データベースの連携というのはどういう形 が考えられるかというところで、大きくレセプトデータベースを基盤としたものを1つ、も う1つが診療情報データベースを基盤とするものという形でお示しをしたいと思いま す。  ここにありますのは、少し見にくいのですが、真ん中のところに、高確法のレセプトデ ータベース、先ほど来出てきてますとおり、国が作られるという形のレセプトデータベー スです。先ほどお示ししたように、ここには検査値などが含まれていないといったこと や、それから月単位でまとめられる処置、あるいは投薬のデータしかない点を、例え ば、下のDPCのデータは入院患者に限定されるという反面、日付のデータを補完で きる利点が生じてきます。  また、特定健診データなどには、一般集団を含めたバイタルサインであるとか、臨床 検査値といったデータがここに保管されている。これをリンケージすることによってレ セプトデータベースに欠けている検査値の欠点を補っていくことが可能である。  あるいは、人口動態調査があります。こちらには死亡データ、死因を特定したデータ がある。こちらの情報には2003年1月頃から、氏名や生年月日といった情報を網羅 しているので、リンケージが可能な情報がここに電子的に含まれていると聞き及んで います。細い矢印でつないでいるところをリンクをしていっての価値の最大化を図るこ とが可能であると思います。  また、予防接種や乳幼児検診といったところは、いま電子化された情報というわけで はないのかもしれませんが、今月19日から始まっているようなインフルエンザのワク チンの安全性検証に対しても、この連携が、世の中に有用であると私は思っています。 そうしたことから、こうした保険適用外のところの情報に関しても、電子化する必要性 を議論する必要があるのではないかと考えます。  その他、レセブトデータベース自体には含まれない症状あるいは副作用の経緯など の詳細な情報が、副作用・感染症報告には含まれています。そうした情報を拡充する ところで、情報の補完であるとか、あるいは副作用・感染症の症例集積または個々の 報告症例によってのシグナルといった、安全性の懸念が生じているというところで、逆 にレセプトデータベースでの検証に移行するところに大きく連携する。また、あるいは レセプトデータベースから、先ほど三澤部長からもお話があったSS-MIX等、例えば 電子カルテから共通で情報を吸い上げてくるといったインタフェースを通じて情報の拡 充などもすることができます。また、このレセプトデータベースで上がってきている報告 名、これ自体の実際の診療記録の表現型はどうであるかといったバリデーションスタ ディの可能性もここにあると感じています。  ここが大きな部分ではあるのですが、一方で、補完的には電子カルテの情報から、 例えばいま学会主導でやられているような疾患登録であるところのリンクであるとか、 それが相互にレセプトデータベースや、それから死亡小票といったところとの連携を 果たすことによって、いま個別にデータのウエアハウスあるいはデータベースを構築す ることによっての大きなワークロードがかなり軽減していけるのではないかと考えてい ます。こちらが、1つレセプトデータベースを基盤としたモデル例です。  こちらは電子カルテのネットワークです。分散型研究ネットワークとタイトルをさせて いただいています。こちらは具体的な事例をお示しできているわけではないのですが、 といいますのも、いま我々が考えているのは、現存で、1人の患者さんが掛かり付け 医の先生に行ったり、あるいは大きな病気をしたら総合病院などに行くといったことか ら、複数の病院に掛かっていると考えられる患者さんも、大勢いらっしゃると思いま す。  地方団体であるとか、自治的な団体レベル、都道府県レベルや、あるいは市町村 の単位の医療ネットワークという形、そうした所で閲覧を目的として、医療機関相互内 の閲覧を目的としての構築のされ方はしていると思います。しかしながら、それを二次 活用するといった観点ではまだ考えられていないと思います。そうしたところで、二次 活用の想定も含めることによって、ある所に住まれている患者さんが、その地域でネ ットワーク、あるいはデータウエアハウスを作られることによって、医療情報が散在し ても、そうした形でネットワークを組まれて、その中で二次活用の体制を構築していけ ば、アメリカの掛かり付け医にデータが集まっているという体制を、日本で実際に実装 することなく、地域単位でならば、それが実現可能で、目的を達成し得るのではないか と思います。  その観点で、先ほど三澤部長からもお話があったようなSS-MIXといった共通のイ ンタフェースを使うという手立てもあります。あるいは、実際に総務省と厚労省と経産 省で実装されているパーソナルヘルスレコード、こちらも閲覧が第一の目的になって いて、右下のように、パーソナルヘルスレコードと呼ばれる患者さんが実際に自分の 個人カルテを作るというところの目的も1つですが、その上にある医療機関用診療情 報保管データベースというような所に、もし医療情報が集約されてくるとなれば、そこを 二次活用する方策はないのかというところに視点を持っていく必要性もあるかと思い ます。私自身はこの内容を、実証事業自体の詳細まで知り得ているわけではありませ んが、この辺りの活用可能性というところも、是非この懇談会の中で議論をしていけ ればと考えています。  そうしたことから連携が実装されれば、もちろん我々がいま従事しているような医薬 品や、医療機器の副作用や安全対策といった面もそうですが、2番目のビュレットに 示していますとおり、疾患に関する疫学情報、あるいは臨床研究に対しての寄与も大 いにすると考えられます。あるいは、有病率や発症率等、それから行政の方が調べて おられるような人口動態調査に関しても、この範疇でカバーできていく部分も多いと思 います。お医者さんや医療機関に従事されている方々の、我々がいまやっているよう な使用成績調査の形のものを重複して医療情報をさらに書くのではなく、いまある現 存の情報を二次的に活用することによっての効果は大きいと考えています。  このスライドが私からの最後になります。いくつかの点を並べています。要するに、 現存する情報を最大活用しようというところを申し上げたい。いまあるものから始めて いこうというところで、新しいシステムなどを導入することになりますと、当然その医療 機関の方々の負荷になる。そうしたことを我々をはじめとして、望んでいるわけではな いですし、当然二次活用する立場というのは、一次的に必要なものの中での活用を目 指すものですので、そうしたことは決して強制されるものであってはいけないと思いま す。行政の方が、国側の目標としているところで、保健医療分野の情報化に向けての グランドデザインであるとか、それから平成18年はIT戦略で、例えば平成22年度 末までにほとんどの200床以上の病院に、病院情報システムを電子的に入れるとい う目的がありますが、これがなかなか実装されていかない原因自体を突きとめていく ことが必要です。あるいは、導入する必要性といったところを明確にしないといけない と考えます。ただ便利なだけではなくて、これが必要不可欠なものだという説明責任を 果たさなければ、こういったことは進まないのではないかと考えております。  そういうことを踏まえて、この後、事務局の方から今後のディスカッションのポイント などをお示しされると思います。まずは構成員の先生方の中で、ゴールを明確に、具 体的に定めることによって、その後に何が問題となってくるかというタスクや、それに 対してのスケジュールなどを決めていくことが重要だと思います。もちろん医薬品の安 全性にかかわらず、やはり迅速に対応できる体制というのが必要です。各々問題が あると思いますが、金銭的な問題も含め、研究の透明性や、医薬品だけでなく臨床研 究全体に寄与するような仕組みをこれから考えていくことが必要です。また法制面の 整備などもしていかないといけないと思いますが、まずはゴールを皆さんで共有するこ とによって、この先議論が進むことを期待しております。  最後に、今日はスライドでお示しさせていただきましたが、1-3-2はその後、今回の スライドの内容を含めた我々からの提案という形で、補完的に見ていただければいい と思います。もしご不明な点があったら、そちらをご覧いただければと思います。私か らは以上です。 ○座長 ありがとうございました。ただいまの3人の先生方のご発言に対して、質問あ るいはご意見等をお願いいたします。 ○藤田委員 岡本先生にお願いしたいと思います。医薬品の安全対策にきちんと情 報が適切に利用されれば、受けることのできる機会利益というのは、かなり大きなも のであろうと思います。逆に言えば、実際には目に見えないかもしれないけれども、利 用されなければ不利益が起きているというように思っております。その意味で、今日の 韓国のご報告では、医薬品の安全対策については2歩も3歩も、情報をきちんと利用 するシステムが進んでいるというように受け取りました。  三澤部長の報告の中にもありましたように、私ども厚生労働科学研究では、データ ベース構築についてやっております。岡本先生も分担研究者ですし、その話の中に出 てきた東大の薬剤疫学教授の久保田先生も分担研究者ということで、研究班で詰め てもいいかと思いながらお聞きしたいと思います。韓国のほうでは電子化されて、その レセプト情報が活用されているということですが、その法的な根拠というのをご存じで したらお願いしたいと思います。たぶん国民健康保険法、あるいは施行規則だけでは ないような気がするのです。ほかにこういった二次利用を促進できるような根拠をご存 じでしたら、教えていただきたいというのが第1点です。 ○岡本参考人 スライドにもありますように、法的根拠というのは、国民健康保険法に はっきりと書かれております。この中では医療費の適正性の審査だけではなくて、医 療の適正性も評価するということが書かれているのが1つの基本です。  では、献血された血液が安全かどうか、献血者のリストと調剤レセプトをリンクして使 っていいという根拠はどこにあるのかというと、先ほども説明しましたように、最初にや ったときは、どうも法的根拠はなかったようです。私も「住民登録番号というのがある けれど、それをどこまで使っていいのか、いけないのか」と現地の方にもいろいろ尋ね ました。回答は「まず登録番号の方を国が作ってしまって、その活用ルールについて の法的整備は遅れていて、登録番号を使った後でおかしいじゃないかと言われて、問 題になるケースが結構ある」と聞いております。  非常に感心したのは、「赤十字と審査評価院が献血者の情報を、同意もなしにやり 取りするのはおかしいじゃないか」という指摘を受けたときに、「それはまずいからや めましょう」というのではなくて、「それだったら法的根拠を与えよう」と前向きな対応を とったということです。血液製剤管理法という法律を、逆に改正することによって、法的 根拠を付与して前向きな対応をした、という点は評価できると思います。ただ、いま質 問がありましたように、現在の韓国の個人情報利用の状況は厳密にチェックをすると 「法的に問題がある」というケースは、やはり残っていると思います。 ○藤田委員 久保田先生からお聞きした血液製剤管理法というのは、私も知っている のですが、提供実績のところで二次利用がなされていますね。ここのところについてお 聞きしたいと思ったのです。 ○岡本参考人 二次利用というのは。 ○藤田委員 研究目的でのデータ提供の申請についてです。それほど多い件数では ありませんが、提供がなされているという点です。 ○岡本参考人 私も国民健康保険法などをいろいろ見たのです。日本と同じように、 国民健康保険の法律があって、それに基づいて施行規則があります。それはこのス ライドの5番目ぐらいに書いてありまして、これをそのまま訳しました。ご覧のように、 この文言を見た限り「審査評価院はこういう審査をして結果を公開する」というように 書いていますが、外部利用に関しての規定はないのです。では審査評価院が外部利 用を認めているのは、どういう根拠に基づいているのかというと、私が調べた限りでは、 どうも法律や告示では見当たりませんでした。おそらく、これは保健福祉部という日本 の厚労省のような所の判断に拠っているのではないだろうかと思います。 ○藤田委員 その点は後日、もう一度情報収集をするということでいきたいと思いま す。  もう1点は、昨年か一昨年でしたか、日本薬剤疫学会がシンポジウムを開いたとき に韓国のパク先生が、将来HIRAのデータベースは、いろいろな所とのリンケージと 言いますか、情報交換を行う予定と。死亡のデータ、日本で言う人口動態調査、死亡 小票とのリンケージ、がん登録等とのリンケージ、あるいは病院のデータベースとのリ ンケージ、そういう話を将来的な構想として出されていたと思うのです。その辺につい ての情報はありますか。 ○岡本参考人 まず、がん登録に関して決定的に違うところは、韓国ではがん登録が 法制化されていて、人口動態統計、死亡小票とのリンケージはもうはっきり法的根拠 を持ってやっているそうです。これはがんセンターの方が科学院で講演されたときに、 はっきり言っておられました。ただ、先ほど中皮腫という特殊ながんの統計を紹介しま したが、これと人口動態統計とがん登録とのリンケージに関しては、いろいろな文献な どをサーチした限り、今のところ見当たらないというところです。ですから、それを可能 にする法律ができたかどうかに関しても、まだわかりません。 ○座長 ほかにいかがでしょうか。 ○佐藤委員 3人の先生方に共通することかと思いますが、先に感想を述べさせてい ただきます。先週、国際薬剤疫学会のアジアンミーティングが、台湾で開かれて参加 してきました。その中でエビデンスに基づいたディシジョンメーキング、こういうデータを どのように行政のディシジョンメーキングに結びつけていくかというセッションがあって、 いま名前が出た韓国のB.J.パク先生が発表されていました。  このパク先生の発表では、フェニルプロパノールアミンと頭蓋内出血の問題がアメリ カで問題になり、韓国でもこの薬が使われていることから薬剤疫学研究が行われまし た。ただ、アメリカでは食欲抑制薬として、かなり高用量のものが使われていたけれど、 韓国ではそういう使い方より、むしろ風邪薬の中に少量入っているという問題を、 KFDAとしてどのように考えるかということに関するエビデンスを得たいということで、 PPAを含む風邪薬と頭蓋内出血の関連を自ら調べたところ、その関連があったとい うことで、KFDAはそのデータに基づいて、PPAを含む製剤の回収を決めたというこ とです。この研究はHIRAのデータベースを使ってはいないのですが、先ほど機構の 方のお話を伺って、日本の行政もまさにエビデンスに基づいたディシジョンメーキング をするつもりで、この懇談会を立ち上げたのかと私は理解しております。  私の質問は、HIRAのソーシャルセキュリティナンバーについてです。岡本先生の 資料で言いますと、住民登録番号ですか。これが今、藤田先生が言われたレコードリ ンケージに必須のものではないかと思っております。先ほど山本構成員が言われたレ セプトのデータベースと医療のデータベースをリンケージするときに、日本でも何かそ ういうものを結び付ける番号のようなものがないと、非常に大変だと思うのです。  実は、日本の政府の「IT戦略」というホームページがあります。その中の今年7月 に出された「e-Japan」という報告書の中に、日本でも住民登録番号に当たる社会保 障番号、まさにソーシャルセキュリティナンバーを導入すべきであるということが、はっ きり書かれています。ただ、日本では住民基本台帳などの番号を付けるときも、国民 総背番号制についての懸念というのが問題になったわけです。韓国では住民登録番 号を使うことに関して、国民の合意はどのような形でできているのかというのを教えて いただきたいのです。 ○岡本参考人 これは随分古くからあるもののようです。特に韓国の場合、まだ戦争 状態が続いているという特殊な事情もあって、昔はプライバシーに対する認識というの も、国民の間にあまりなかったようです。何よりも、社会保障ではなく、国家安全、国 家保安という必要性があったので、わりと超法規的に人口動態や出入国記録といっ たものとのリンケージも行われていたようです。  しかし、これは国際的にもそうですが、韓国においても政治情勢も変わってきて、国 民の間から、プライバシー保護のために無制限に国がやることに対して反対という意 見が、だんだんと強くなってきているそうです。しかし韓国国民にとって住民登録番号 というのは、生まれたころからあるものなので、少なくとも「これをなくしてしまえ」という 声はないそうです。ただ、その活用が人口動態統計や出入国記録といったものとのリ ンケージが進むと、もちろん医薬安全対策には非常にいいわけですが、先ほどの血 液製剤の例でもわかるように、いくらいいからといってどんどんやることに対しては、や はり反対の意見がだんだん強くなってきています。住民登録番号はもう日常のことな ので当たり前だけれど、無制限なリンケージに対しては、だんだん警戒心というか、反 対論が起こりつつあるというように私は理解しております。 ○佐藤委員 そうしますと、先ほどの法制化のようにきちんとルール化した上で、目的 を限定して使うということでしょうか。 ○岡本参考人 そうする以外に方法はないと思います。先ほどの血液製剤はまさにい い例で、法的根拠で法改正で対応したということです。 ○座長 ほかにいかがでしょうか。丸山先生、いまの住民登録番号の問題は、日本で はどういうように考えたらいいですか。 ○丸山委員 すぐには答えが出せません。個人的に考えるところはあるのですが、先 ほども佐藤委員のご指摘にありましたように、これまでの経緯を踏まえると、軽々には なかなか難しいのではないかと思います。 ○山本(尚)委員 岡本先生にお聞きしたいのですが、私が知り得ている範囲だと、韓 国では、今日、先生にご紹介していただいたとおり、基本的にはアカデミアから研究申 請をするという形だと認識しています。その前に、例えば医薬品の安全対策などは待 ったなしで、かなり迅速な対応が求められると思うのです。そういったところの迅速性 というのが実際にはどういう状況なのか、ご存じでしたら教えていただきたいのです。 ○岡本参考人 あまり多くを知っているわけではありませんが、少なくともAcitretin の件に関して言うと、驚くほどの迅速さで対応しています。私が最初に総務省の研究 班で訪問して調査をしたのが、2006年の1月ぐらいでした。ちょうどそのときに対応さ れた審査評価院の担当者が、出来たての資料を「これがデータベースを使ったいちば んホットな例だ」ということで見せられたスライドがこの件だったわけです。単に対策を 取っただけではなくて、誰から採血された血液がどの病院で誰に投与されていたか、 ということを瞬時に編み出して対策を取ったと聞いたときに、あまりの迅速さというか、 おそらく日本ではとても不可能なことですから、ショックを受けたのが正直な感想で す。 ○我妻委員 審査評価院の話です。法的根拠だけではなくて、新しい建物であるとい うことをご指摘されたので、いつごろ、どういう経緯で創設されたかという点が1点です。 もう1点は迅速性という形で、例えば、ある薬害等があった場合に、迅速に対応すると いうことも必要ですが、逆に言うと遡ってどの程度までのデータを蓄積しているかとい うことで、場合によってはかなり遡ってどの時点から発生していたかということも、当然 考慮しなければいけないと思うのです。どのくらいの年数のデータを蓄積されているの か。先ほどテラバイトという話をされていましたが、保存期間として何年ぐらいなのか。 半永久的であれば、そういう形でお答えいただければと思います。この2点をよろしく お願いいたします。 ○岡本参考人 この質問に関しては調査しましたので、自信を持って答えられます。 まず審査評価院は、西暦2000年の7月に誕生しました。これは韓国の医療保険制 度が統合一本化されたのと同時に、制度改革の一環としてつくられたわけです。それ までは医療保険連合会が保険者の立場で審査をしていました。審査評価院が設立さ れた事情としては、医療団体のほうから、保険者が一方的に審査をするというのは中 立ではない、保険者から独立した中立的な機関をつくれ、という要求がありました。同 時に、それだったら単に審査だけではなく、医療の質の向上と医療費の合理化もしよ うではないか、ということでつくられたという事情があります。  それから、蓄積するデータについてですが、もちろんその気になれば、2000年以降 のデータを全部蓄積することも可能です。しかし、ここでも先ほどから何度も出ている プライバシーの問題があります。それは別にハードディスクの容量の問題ではなくて、 やはり国民のデータを永久に蓄積するというのはおかしい、という指摘のためのようで す。それで一応は5年間だけ蓄積して、それ以前のものは消去している、というように 聞きました。本当にそこまでやっているのかはわかりませんが、そういうわけで一応5 年間は保存しているというのが回答です。 ○望月委員 岡本先生にお聞きしたいのです。HIRAのデータベースというのは、レ セプトのデータベースということでよろしいのですね。そうしますと、先ほどの山本委員 のご説明だったかと思いますが、レセプトですと検査値などが見られないとか、デメリ ットもあると思うのです。韓国ではレセプトデータベース以外に、ほかのものとのリンケ ージとして、折角ソーシャルセキュリティナンバーというものがあるので、そういうことを するような試みはやっていらっしゃるのでしょうか。 ○岡本参考人 全くご指摘のとおりです。日本のレセプトと体裁もよく似ていますし、含 まれる情報は一緒です。ですからヘモグロビンA1cの検査をしたということはわかって も、その値がどれだけだったのかということは、このデータベースをもってしてもわかり ません。優れているところは、病名のICDコーディングを厳格にさせているということ です。それをちゃんとしなかったら受けつけない、というぐらい厳しくやっているのです。 だからこそ先ほどお見せしましたように、単にがんの悪性新生物だけではなくて、中皮 腫などの細かいところまで把握できるわけです。  しかし、同時に、いわゆるレセプト病名もあるので、コーディングがどれだけ正確か に対して疑問があるという点でも、ある程度日本と似ております。完全に匿名化も暗 号化もせずに個人情報で集めていますから、審査評価院はその気になったら、韓国 内のどのようなものともリンクすることは技術的には可能です。公式的には出入国記 録、例えば外国から帰ってきた人がインフルエンザになったというようなものも、やろう と思えばできるのでしょうけれども、少なくとも私が文献、学術論文などで発表されて いるものを見た限りでは、そういうものが発表されたものは見当たりませんでした。 ○望月委員 今日のお話全体をお聞きしていて、いろいろな所にいろいろな形の医療 情報、医療関係のデータベースというのが存在していて、それがうまくリンクが図れれ ば、もっと有効活用できるのだろうというところで、いろいろなリンケージの試みがある のだろうと思います。住民登録番号のようなリンケージのやり方以外に、何かあるの ではないかと先ほどから思うのです。山本委員のお話の中で少しあったように思うの ですが、そういうものがなかったときに、名寄せをしていく技術というのは何かあるの でしょうか。 ○山本(尚)委員 具体的には、レセプトデータベースで活用されているハッシュ関数 というのを活用するのが、いま現在されているルールの中ではいちばん近道ではない かと思います。その前提で、レセプトデータベースの範囲でのリンケージを目指したと ころです。そうでありながらも、もちろん限界点はあります。私が先ほどお話した病院 情報システムとの表現型の確認、それをいわゆる「バリデーションスタディ」と呼ぶなら ば、それを実際に逆に戻って確認するというのは、いまの現状ではできないということ です。  そのために、やはり佐藤先生や岡本先生がおっしゃっている個人識別子が必要に なってきます。そうでなければ、レセプトデータベースにある診断名の妥当性と言った ら変ですが、今日の三澤部長のお話にもあったように、実際にアウトカムを定義する のは、やはりデータベース研究では極めて難しいと思うのです。一方でばく露は、内容 が正確であると考えられます。先ほどバンコマイシンの処方などがありましたが、ばく 露の定義をするときに、例えば診断名だけでなく、そういったところの定義をする場合 のデータベース全体を研究するときの前段階の確認というのが、極めて重要です。そ れをやらなければ、やはり間違ったアウトカムが世間に出て行って、かえって患者さん にとっては不幸になると思います。そういった観点でリンケージ自体はできると思うの です。やはり考えたときに必要性が叫ばれるのは、アウトカムの定義などが必要なと ころだと思います。 ○座長 何もかもこれで完結しなくてもいいだろうと思います。いろいろな情報を集め るツールとして役に立てば、更にそれをポリシュアップすることによって、必要な知識 が生まれてくるということではないかと思うのです。私から三澤部長にお伺いしたいの は、PMDAとして医薬品のいろいろな検討をされていらっしゃいますが、医療機器に ついてはいかがでしょうか。 ○三澤安全第一部長 医療機器については診療情報のデータベースとは別に、ステ ントのレジストリーを開発しています。実際にいま調べているのはDESです。薬剤溶 出ステントとベアメタルステントとバイパス手術と比較して、特に遅発性の血栓症を視 野に入れて、安全性を評価するしくみを作るための調査を進めています。今後進める こととして、補助人工心臓がこれから承認されてまいりますので、そのレジストリーを つくって、実際の人工心臓の安全性や性能といったものを評価するためのしくみ作り の検討も進めています。 ○座長 まだいろいろご質問はあろうかと思いますが、今日の議論を踏まえて、少し 論点を整理しながら、さらに議論を続けたいと思います。それでは議題の(2)にまいり たいと思います。事務局のほうで、今までの論点を整理した資料の説明をお願いいた します。 ○安全対策課長補佐 それでは事務局より、資料2の「主要な論点(たたき台案)」と、 参考資料1の「米国の医療情報に関する個人情報保護に関する法規について」を、 続けてご紹介させていただきます。  まず、1枚目の下のほうをご覧ください。「目指すべきゴールの設定」から「その他」 まで10点、事務局のほうで「主要な論点(たたき台案)」を作成いたしました。まず1 番目、「目指すべきゴールの設定」です。まず、おおもとのゴールとしては、医薬品等 の安全対策の一層の向上というのがあります。その中で、スピード、網羅性、情報の 質の向上というのがある中で、社会の中でどのようなメリットがあるのかという大きな 項目があります。その中で疫学研究の促進が必要であるということと、さらにデータ利 用のルールの整備や基盤整備というのが必要であるのではないかという論点があろ うかと思います。  その下が「データベース活用による効用の提示」です。これはデータベースを利用し た結果、どのようなメリットが生じるのかということを、国民に分かりやすく提示する必 要があるということ、それによって患者の安全・安心につながるのではないかと。これ については具体的な事例を充実させるべきではないかと考えております。  次の頁が「想定される調査研究の形態、情報基盤のあり方」です。これには大きく分 けて2つあります。1つが上のほうのレセプトデータベース等、ナショナルデータベース です。2つ目が下のほうにある電子カルテ由来情報などです。これは例えば各病院の 電子カルテによる院内の医療情報システムです。これには各々2つの場合があります。 データを抽出してから外部でデータベース化して解析するものと、もう1つが内部でデ ータを解析してから、結果を外部で取りまとめるものです。その各々のデータベースに ついては、匿名化の場合と非匿名化の情報の場合と、両方のパターンを想定しており ます。これらが将来的に連結できるかどうかというのが、1つの大きな論点です。その ときに外部の統合データベースを構築する場合、誰が何のために構築するのか、そ れが研究者自身であるのか、調査研究のテーマごとであるのか、統一的なものである のか、そういったことについて検討すべきではないかということがあるかと思います。  次が「各形態の疫学研究倫理(個人情報を含む)の整理」です。これには疫学研究 倫理指針への適合性と倫理審査があります。これも個人情報保護の観点から、どの ような調査目的であるのか、患者の同意の必要性、匿名化と外部提供といったものに ついての論点があろうかと思います。以下、「疫学研究倫理指針」から抜粋しておりま す。1つ目が診療と研究で倫理指針の4頁からです。ここでは診療情報の収集・集計 し、解析についてどのようなことがあるのかと。その下に、臨床の場における疫学研 究ということで5頁にあります。医療行為について、有効性・安全性の評価ということ があります。  参考として指針の21頁に、他の機関等の資料の利用、あるいは個人情報の取扱い というのがあります。その中の[1]、当該資料が匿名化されていることについて、その 中で連結不可能な匿名化又は連結可能な匿名化であって、対応表を提供しない場合、 こういったことはどうなのかということがあります。さらにその下の(5)に個人情報という のがあります。これも生存する個人に関して、特定の個人を識別することができるも のも論点になるのではないかと考えております。  下のほうにあるのが、アクセス可能な「データの種類毎のメリット・デメリットの整理と 研究計画の指針」です。この図自体は、第1回の段階でもご紹介させていただいたも のです。まず利用が検討されている電子医療のソースとしては、レセプトやDPC 、電 子カルテ等があります。レセプトのメリット・デメリットはここに書いてあるとおり、メリッ トとしては網羅性、デメリットとしてはアウトカム情報に欠けるということがあります。電 子カルテについては、メリットは正確性、デメリットは数に限界があったり、医療機関 の協力が必要であろうかと思います。  その下にあるのが、この活用によって可能な安全対策の研究事例です。これは第1 回と同様に、3つの場合があります。こういったことを踏まえて研究指針を作成する必 要性についても、考慮するかどうかといった論点があろうかと思います。  次の頁が「データ利用の技術基盤整備及び普及」です。ここに書いてあるとおり、デ ータ交換の標準として、例えばHL7といったものがありますが、これをどうするか。そ の調査研究のための臨床データの様式を標準化するかどうか。そして用語の標準と しては、日本ではあまり利用されていないようですが、国際医療用語集として知られて いるSNOMEDとか、医薬品の副作用に用いられるMedDRAといったものについて どう考えるか。その上で、大きな統合データベースが必要であるかどうか、各医療機 関の有するデータを広く活用する方策をどうするか、データの突合の期間が必要かど うかといった論点があろうかと思います。  次が「実証的な調査研究」です。これは誰がどのような研究を実施するか、その成 果を踏まえて普及をどうするかといったものです。  次に「データ提供機関の理解と協力」です。これは医療機関やレセプトのデータの保 有機関等から、どのように理解と協力を求めるかです。  次に「データ連結等技術的手法の開発」です。先ほどハッシュ関数の話がありました が、研究の進捗状況をどう考えるかといったことがあります。  最後の論点が「その他」として、第1回の議論を踏まえて、患者の自己決定権と公益 のバランスをどう考えるか、医療情報の保存期間をどうするか、統合データベースを 構築する場合に、大規模な予算、財源をどうするか、研究費の従来の枠組みを超え た支援が必要ではないか、客観的な医療報道をすることが重要ではないかといったこ とについても論点があろうかと思います。  続いて参考資料1、米国の医療情報に関する個人情報の保護に関してご紹介させ ていただきます。米国では日本と違い、さまざまな医療サービスが得られ慣れて、分 散化しているといった現状があります。そのため、さまざまな種類のデータを活用した り、開示に関する法規が求められて、1996年に通称「HIPAA」と呼ばれている、「医 療保険の総合運用性と説明責任に関する法律」といったものが制定されております。 タイトルが1と2と分かれております。タイトル1というのが、従業員が転職又は失職し た場合の本人、家族の保障・保護についての規定で、本懇談会とは関係ありません。 タイトル2に関しては、業務管理簡略化に関する規則というものがあり、プライバシー やセキュリティに関する規則といったものが謳われております。  主にプライバシーとセキュリティがどうなっているのかということが、次の頁に書かれ ております。まずプライバシー規則に関しては2002年に、医療従事者、医療保険者、 データセンター等が対象となっており、医療情報保護の適切な取扱いと利用と開示に ついての規定があります。同時にその個人の自分自身の医療記録の取得・検証等に 関する権利を規定しております。一方、セキュリティの規則に関しては、電子的な秘密 保持を確実にするための業務的、技術的、物理的なプロセスを規定しております。  その後、いろいろな動向があったようです。最近の動向ということで、2008年から今 年にかけてのものが最後の頁にあります。まず去年の12月、「個人の特定が可能な 医療情報の電子的交換のための全国規模のプライバシー及びセキュリティの枠組 み」といったものがあります。ここで電子医療情報をネットワーク上でやり取りするとき のプライバシーや、セキュリティを保護する方法などについて規定したガイドラインが 出ました。  次に2009年2月、オバマ政権下で2014年までに、全アメリカ国民の電子医療情 報を作成するという目標が立てられました。米国経済再生法の下で「経済的及び臨床 的健全性のための医療情報技術に関する法律」通称「ハイテク法」と呼ばれているも ので、ここでHIPAAの施行・罰則に関する強化や、情報漏洩のときの本人への通知 などの規定が制定されております。  その後、今年の7月にアメリカの保健社会福祉省(HHS)のセベリウス長官が、従来 バラバラになっていたセキュリティとプライバシーの規則を、OCR(公民権室)に移しま した。業務の重複の排除や効率の向上のために、この両方の規則を1つの室に所管 するといった措置を行ったようです。 ○座長 それではご質問をお願いします。 ○佐藤委員 いまのHIPAA法についてです。これは、データベースにおいて個人情 報をそのまま保持して、必要に応じて研究者にも提供するということを規定した法律で すよね。だからこそ個人の特定が可能な医療情報を電子的に交換することも、実際 上行われているわけです。昨年12月に枠組みができたというのは、まさにそういうこ とをやるという前提での枠組みだと理解していますが、それでよろしいでしょうか。 ○安全対策課長補佐 まさにおっしゃるとおりです。同時に最近の潮流として、ネット ワーク上でいろいろな情報が利用されるということも踏まえて、最近の技術の動向も 踏まえて、今回、こういったガイドライン的なものを新しく整備したという背景があるや に聞いております。 ○座長 いままでは連結不可能でないとやり取りができなかった、というように理解し てよろしいですか。 ○副座長(山本隆) HIPAAのプライバシースタンダードができたときに、私は毎月ア メリカに行ってこれに関係する仕事をしていたので、お答えできると思います。日本の 個人情報保護に関するルールと最も大きな違いは、使うほうのケースをものすごくたく さん挙げているのです。例えば学術目的の中でも、こういう目的であるというのがあっ て、その一つひとつにかなり詳しい条件とルールが設定されています。もちろん同意 のルールも設定されていますが、何も連結不可能、匿名化でなくても使えるような状 況も設定されています。  ただ非常に詳しいルールですので、一概に出来る出来ないというのではなくて、場合 によってだいぶ違います。アメリカには医療以外、プライバシーに関する法制というの がないのです。医療だけにあって、それが相当詳しく書いてある。逆に2002年にでき たときはよかったのですが、あまりに詳しすぎて、新たな要求、例えば健診情報とどう カップリングするかというような話になると、健診情報に関しては全くルールがないの です。医療情報にはものすごく詳しいルールがあって、それをどうするかという問題は 起こってきているようです。 ○座長 確かにHIPAAには除外規定のようなものがいろいろ書いてあります。研究 者にはかなり使いやすいのではないでしょうか。どのような論点でも結構ですので、ご 質問をお願いします。 ○藤田委員 「主要な論点」についての話です。レセプトについては全国民の情報を 集めるということで、略称「高齢者医療法」に基づいて集めているわけですが、二次利 用をする場合、これだけでいいのでしょうか。先ほど法的な根拠についてご質問しまし たが、日本でそれを束ねる法律は統計法だろうと思うのです。今年度から、行政のた めの統計から国民の財産としての統計に大きく変化をして、従来の目的外使用という のではなくて、二次利用を前提として利用できるような形になっています。そういう意味 で、レセプトというのは非常に膨大な情報を国民から集めるものですから、本来ですと どういう形で公表していくのかということをきちんと決めて、その上で、統計法における 基幹統計として位置づけていただいて、二次利用の促進をしていただくと。統計法が かぶれば、罰則規定等もきますので、個人情報保護も指針だけではなくて、もっと強 い形で責務を負わせることができるわけです。ですから、そういう枠組みの中でやって いかないとと思いました。 ○座長 つまり研究なのか行政的な仕事なのかという、その辺の仕分けも問題になっ てくるということですか。 ○藤田委員 それは統計法の中でも規定されていると思います。行政、あるいは行政 機関等がやるものと、学術的な研究目的でやるものという仕分けは、きちんとされて おりますのでと思います。 ○副座長 私も全く同じ意見です。高確法に基づいて作ったデータベースというのは、 もう利用に限界があるというのが1つです。もう1つは、いまのナショナルデータベース、 レセプトデータベースは、「匿名化」とか「非匿名化」という言葉があまり合わない構造 になっています。つまりハッシュを持っているということです。ハッシュというのは必ず 1対1になるものではないので、同じデータが突合できる保証はないのです。なおかつ、 かなりの確率で違う値になりますから、個人の履歴を追うことは不可能ではない。そう いう意味では匿名化としても不十分で、識別できるデータとしても不十分で、非常に中 途半端な構造になっています。  それはなぜかというと、高確法に基づいてやっているというところが大きいのです。 統計法に基づけば個人を識別できる状態のまま、政府がそれを集めて、なおかつ、 それを安全に利用できるように対処できるという意味では、国民に対して非常に説明 がしやすい仕組みとなり得ると思うのです。いまハッシュ化しているのは、保険者がハ ッシュ化してその値を集めてきますから、誰がこれをやっている責任者かというと、保 険者になるわけです。全国にたくさんある保険者が、それぞれのデータを自分たちで ハッシュをかけてやっていくのですが、もし、このことで誰かに被害が起こったら誰が 責任を取るのかというと、非常に説明のしにくい状況になっていると思うのです。  いまからレセプトデータベースに変えるということは、多分できないでしょうけれども、 もし、ここで検討されてこれから追加されるようなものがあるとすれば、これはやはり 統計法に基づいてしっかりと守れる、なおかつ、しっかりと利用できるデータベースの 構築を進めていくべきだろうと考えております。 ○丸山委員 今日のこれまでの議論というのは、活用の側面に力点が置かれていて、 それに対する個人の権利のほうが、あまり前面に出てきていないように思います。先 ほど韓国のご報告のときに聞けばよかったのですが、例えば、精神疾患やHIV感染 は、HIV感染については、最近はスティグマの度合が少し下がってきたかと思うので すが、かつてのエイズや精神疾患のようなスティグマの度合の高い疾患に関するレセ プト情報や電子カルテの情報というのは、活用ということでは追跡が1つのキーポイン トとなると思うのですが、患者本人にすれば、あまり知られたくないというか、全くその 情報を消してもらえるような、医療を受けたいという人もいるのではないかということが 気にかかっています。  先ほど事務局のほうから、患者の自己決定権と公益のバランスというお話もありま した。私がいま申しているのも、患者の自己決定権なりプライバシー権の話に収めて 考えることが可能ですが、もう少し、精神疾患などの具体的なイメージを念頭に置くと、 追跡、あるいは突き合わせによって有意義な解析をするという側面とは反対の側面に ついて現実的な認識が可能になり、バランスを考える必要があるというのが理解しや すくなるのではないかと思いました。もし可能であれば、先ほどの韓国の議論あるい は藤田先生のご研究などで、そういうスティグマを伴う疾患に関するデータについての 議論が出てきていないのかという辺りを教えていただければと思います。「自分で調べ よ」と言われるかもしれないのですが、今回でなくても今後、教えていただければと思 います。 ○座長 岡本先生、もし韓国の状況をご存じでしたら。 ○岡本参考人 もちろん一口で「傷病名」と言っても、高血圧という病名とHIVという 病名とは、全然意味が違うわけです。おそらく韓国民の中でも、心情的な問題はある だろうと思います。ただ、私の調べた限りでは、そこまで韓国の中では議論になってい るというのは存じ上げておりません。 ○辻委員 それに関して、若干の情報提供があります。この種の疾患登録というのは、 デンマークなどの北欧がかなり進んでいます。デンマークの事例を紹介いたしますと、 患者登録データベースというのがありまして、精神疾患を含む全ての外来・入院患者 について個人の識別番号、国民総背番号のようなもの、や診断名などが登録されて います。それを活用した例としては、精神疾患の登録とがん登録とをリンケージさせて、 どの精神疾患でどのがんが多いか少ないかというデータは、もうたくさんの論文が出 ております。それと、もう1つのスティグマで言いますと、先天性奇形というのも1つの スティグマかと思います。デンマークでは先天性奇形が発生すれば、行政の担当の方 が実際に親の所に行ってインタビューをして、そのデータをすべてデータベース化して いるということを聞いております。 ○座長 希望しない場合には、除外されるというルートもあるのですか。 ○辻委員 デンマーク人と話していますと、「そういうものは答えるものだ」というような 気持で大雑把に肯定的に考えています。「登録という形で誰かに見られていること、プ ライバシーの問題は考えないのか」と聞くと、「この制度は生まれる前からあった訳 で・・・」という感じで、文化的に認められている部分があります。 ○佐藤委員 2点あります。1つは今の個人情報の保護のことです。私が先ほどから 社会保障番号にこだわっているのは、通常、データを活用するときには、むしろ社会 保障番号だけを付けて、氏名や住所などは削除して活用するようにすれば、万が一 その番号が漏れたとしても、それをパッと見てもそれが誰なのかわからないわけです から、被害の程度はかなり少なくて済むでしょう。それを使う人自身が外に漏らさない までも、使う人自身も番号だけではそれが誰かわからないですから、そういう意味で はだいぶ問題の度合を少なくできます。そういう番号を使うことによって、問題の度合 を少なくできるのかと思って意見を述べさせていただいた次第です。おそらく医療や福 祉に使うために特化した番号を付けることで、住民基本台帳などに対するイメージと は別のものとして、もし何かの合意形成ができるのなら、とてもいいのではないかと思 っております。  もう1つは、論点に関係する提案というか。論点の中で言いますと「データの種類毎 のメリット・デメリットの整理と研究計画の指針」です。この図を見ていて私がとても気 になったのは、「発生した異常な行動の発生割合」ということで、有意差なし、有意差 ありというグラフが2つあります。論点の2枚目のグラフです。ランダム化比較試験の 場合、バイアスや交絡というのはランダム割付けによって制御されています。あとは統 計的なランダムエラーだけが問題になるので、統計的な有意性を検定すれば、白黒 はっきり付けられるわけです。疫学の場合はバイアスや交絡をよほど吟味しないとい けなくて、そちらのほうが問題としてはずっと大きいので、有意かどうかであまり白黒 付けられないのです。むしろリスク比なりリスク差の大きさそのものを見て、それがど の程度なのか、もしバイアスがあったとしても、この範囲ぐらいで収まるのではないか という見方をしていくことが必要です。そういう意味では難しい点があります。  データベースを使ってこういう比較をする場合も、おそらく2通りのタイプの研究があ ります。1つは、アメリカのセンティネル・イニシアティブがやろうとしている、かなり自動 化された方法でリスク比などを出す方法です。これは、あくまでもシグナルの生成を目 的としています。そこから見られたものはシグナルというか、仮説にすぎないわけです。 そこで、同じデータベースを使うにせよ、今度は仮説の検証を目的としてきちんとデザ インされた、比較観察研究によって確かめていくという2段階のステップが、おそらく必 要になると思うのです。そのどちらのためにデータベースをどう使うかというところを、 区別されるといいのではないかと思います。そういう意味ではレセプトデータベースも、 病名が多少いい加減でも、とりあえずシグナルの生成には使えるのかもしれないとい うことです。仮説の検証のためには、やはり病名の正確性をきちんとバリデーションス タディしてからでないと、仮説を検証して結論を得ることはできないだろうと思います。 その辺についても少し整理されてはいかがかと思います。 ○川上委員 もし可能なら「主要な論点」で検討するか、加えていただきたいと思った のは、「目指すべきゴールの設定」とか「データベース活用による効用」と言ったときに、 いまは疫学調査で研究成果を出してそれを社会に返すことを通じて、集団としての患 者群や社会全体に対する効用を説明するということを主に議論していると思うのです。 逆に、一人ひとりの患者さん、目の前の患者さんに対する効用としての使い方もある のではないか、ということを入れていただけると良いのではないかと思います。  例えば、投薬が既に別の機関でなされていたり、投薬している所と検査機関が違う ような場合に、投与後初期で防ぐことができる医薬品の有害反応があったときに、こう いう方法で突き合わせることによって有害反応を起こさない、あるいは起こっても重篤 化させないというようなことで、一人ひとりの患者さんの治療に活かせるのであれば、 ナショナルデータベースや、それがまた各病院が持っている検査データや電子カルテ とリンケージしたときに、すごく大きな意味を持つのではないかと思います。 ○藤田委員 いまの点については薬剤疫学会からの要望書の中で、何か個別の大き な問題が起きたときは、個人を同定して対策に使えるようにという要望を入れていま す。頭にあったのは薬害肝炎で、汚染された血液を投与された患者さんがわかれば、 対策も迅速にできるだろうという話です。ただ、それは個人情報がなければできない 話ですよね。具体的に対策を効率的に実施するためにも、やはり情報というのは必要 です。あるいは使用禁忌の薬剤が、いろいろな医療機関を受療することによって、 個々の患者さんにとっては投与されているということがあります。それが集団としてわ かったとしても、対策は立てられません。そういった事例というのは多々、個別の対策 を立てるために必要なことというのも出てくるだろうと思います。 ○辻委員 今日の話は、基本的にはレセプトベースの話ですが、先ほどから何度か 出ていますように、レセプト情報ではアウトカムが把握できないとか、「レセプト病名」と も言われるように、病名の正確性・精度の問題が非常に重要になってくると思うので す。そういった意味で、その情報の裏を取ると言いますか、ほかのいろいろなデータベ ースとのリンケージは欠かせないものかと思います。  例えば、人口動態死亡表とのリンケージとか、がん登録、その他の疾患登録とのリ ンケージ、そういったところまでご検討いただければと思います。具体的に死亡表で言 いますと、アメリカですと、ナショナル・デス・インデックス(NDI)という形でデータベー ス化されています。研究目的でリクエストをするとすぐにもらえるのですが、NDIの中 でリンケージした後のものだけを渡すので、プライバシーの保護は徹底されているわ けです。実際にNDIでは申請者からお金を取っているわけですが、そのお金で大体 マネージできてしまうのです。ですからスタッフも3人ぐらいでできてしまうぐらい、そん なにお金がかからなくても運営できるようなシステムができています。この守備範囲か どうかは別として、その辺のところまで検討せざるを得ないのではないかと思いますの で、よろしくお願いします。 ○山本(尚)委員 新統計法を有効活用するというのが、たぶん一つの方法だと思い ます。私の理解の中では、新統計法の中でデータを直接ハンドリングできる権利とい うか、許可された団体が行政か統計センターであるかというように理解しました。国の 中に集まってくる情報が中心となるとも考えられますが、ヨーロッパなどではENCePP といったファーマコビジランスの専門家や、疫学の専門家を中心とした研究グループ、 パートナーシップをつくったり、センティネル・ネットワークの中でもFDAが入ってのパ ートナーシップという第三者的な形もあると思います。実際にどういった形で実用性が できていくかというのに合わせた法律のマッチがなされていけばいいのではないかと 思います。 ○座長 まだご議論はあろうかと思いますが、とりあえず今日の議論を整理させてい ただいて、次のときに論点整理の紙を配らせていただきたいと思います。今日の懇談 会はここまでということで、事務局から何か連絡事項はありますか。 ○安全対策課長補佐 まず連絡事項の前に、もう一度お詫びを申し上げたいと思い ます。本日、配付資料等で一部不手際がありまして、大変申し訳ありませんでした。  今後ですが、本日の議事録については、ご出席の皆様の了解を得た上で公表させ ていただきますので、よろしくお願いします。次回の懇談会は勉強会ということで、11 月19日の木曜日、夜6時から8時までです。ハーバード大学のDr.チャンをお迎えし て、アメリカの状況についてのお話を伺う予定になっております。Dr.チャンの主用言 語は英語ですが、逐次通訳を入れるようにしております。  第3回の懇談会は、12月14日の月曜日の18時から20時を予定しております。 いずれも2週間前には厚生労働省のサイトに掲載することにしております。今回ご指 摘いただいた論点について、また議論が深められるような議題を座長とご相談しなが ら、いろいろ考えていきたいと思っております。 ○座長 それでは今日はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございまし た。 照会先:医薬食品局安全対策課 電話番号:03−5253−1111