09/10/29 第1回肝臓移植の基準等に関する作業班議事録            第1回肝臓移植の基準等に関する作業班 日時 平成21年10月29日(木) 16:00〜 場所 経済産業省別館1036号会議室 ○大竹補佐 ただいまより「第1回肝臓移植の基準等に関する作業班」を開催いたします。 班員の先生方におかれましては、本日はお忙しいところお集まりいただき、誠にありがと うございます。  本作業班は先の国会で「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律」が成立したこ とを受けまして、改正法の施行にあたって、肝臓移植における移植希望者(レシピエント) の選択基準、また、臓器提供者(ドナ)の適応基準を検討することを目的としております。 本日は第1回目の会議です。また、いくつかある臓器毎のワーキンググループでも、最初 の会議です。班員の先生方のご協力をよろしくお願いいたします。  まず、班員の先生方のご紹介をさせていただきます。東京医科歯科大学の有井滋樹先生、 順天堂大学附属静岡病院の市田隆文先生は、本日はご欠席のご連絡をいただいております。 熊本大学の猪俣裕紀洋先生、京都大学の上本伸二先生、大阪大学の梅下浩司先生、本日少 し遅れているようです。順天堂大学の川崎誠治先生、東京大学の國土典宏先生、福岡大学 の向坂彰太郎先生、国立感染症研究所の佐多徹太郎先生、北海道大学の古川博之先生、国 立成育医療センターの松井陽先生です。続きまして事務局の紹介をさせていただきます。 峯村室長、長岡補佐、井原主査、最後に私、大竹と申します。よろしくお願いします。  班長の先生ですが、私ども事務局としましては、当班の班長を有井先生にお願いしたい と思います。皆様方のご承諾を得たいと思います。よろしいでしょうか。                  (異議なし) ○大竹補佐 それでは有井先生よろしくお願いいたします。これよりの議事を有井班長に お願いいたします。報道のカメラの方等いらっしゃいましたらご退席をお願いします。 ○有井班長 よろしくお願いいたします。まず初めに事務局から資料の確認をお願いいた します。 ○大竹補佐 お手元に資料を配付させていただいています。1枚目が本日の議事次第、2 枚目が班員名簿、資料1は臓器移植に関する法律の一部を改正する法律の概要、資料2-1 は厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会について、資料2-2は改正法の施行に向け た検討課題及び検討体制について、資料3-1は親族への優先提供について、資料3-2は親 族への優先提供とレシピエント選択基準の関係について、資料4は肝臓移植希望者選択基 準(案)、資料5は肝臓臓器提供者(ドナー)適応基準の法改正に係る主なご意見、以上が 本日の資料です。参考資料が3点ございます。参考資料1は肝腎同時移植と親族優先の関 係について(案)、参考資料2は肝臓移植希望者(レシピエント)選択基準(現行)、参考 資料3は肝臓臓器提供者(ドナー)の適応基準(現行)、以上です。 ○有井班長 よろしいですか。落丁・乱丁等ございましたらおっしゃっていただきたいと 思います。  それでは議事に入ります。本作業班におきましては、改正された法律の施行に向けた厚 生科学審議会疾病対策部会での審議に当たり、専門的な観点から検討が必要な事項につい て議論を行うことが目的です。まず法改正の概要と、先般行われた臓器移植委員会につい て事務局から説明をお願いいたします。 ○大竹補佐 それでは資料1に沿いましてご説明します。その前に梅下先生がご到着しま したので、ご紹介させて頂きます。大阪大学大学院の梅下教授です。  それでは資料1についてご説明します。本作業班を開催する前に、法律の概要というこ とで、先般の国会で成立した法律の概要を説明します。1枚目が概要で、2枚目はわかりや すく表にしてありますので、ご覧ください。左が現行法、右が改正法となっております。  大きく変わったことは項目別に5点あります。1点目は「親族に対する優先提供」です。 現行法では、親族に対する優先提供は「当面見合わせる」とガイドラインに規定していま すが、今般の法律改正において、臓器の優先提供を認めるということがなされました。施 行日は来年の1月17日で、本作業班としてはまずここを優先的にご議論いただきたいと考 えています。  2点目は「脳死判定・臓器摘出の要件」です。現行法では「本人の生前の書面による意 思表示があり、家族が拒否しない又は家族がいないこと」が要件となっています。改正法 においては、「本人の生前の書面による意思表示があり、家族が拒否しない又は家族がいな いこと」は現行法と同じですが、「又は」以下の、「○本人の意思が不明(拒否の意思表示 をしていない場合)であり、家族の書面による承諾があること」ということで、本人の意 思が不明の場合においても、「家族の書面による承諾があること」と変わっています。  3点目は「小児の取扱い」です。現行では「15歳以上の者の意思表示を有効とする」と なっています。それ以下の意思表示は有効としない、とガイドラインで明記しています。 改正法におきましては、「年齢に関わりなし」となっています。  4点目は「被虐待児への対応」です。現行法では規定はありませんが、改正法において は、「虐待を受けて死亡した児童から臓器が提供されることのないよう適切に対応」と記載 されております。  また、「普及・啓発活動等」に関して、これまでは規定はなかったのですが、改正法にお きまして、「運転免許証等への意思表示の記載を可能とする等の施策を行うこと」となって おります。2点目以下は来年の7月17日に施行となっております。以上が法律の概要です。  資料2-1をご覧ください。こちらは本作業班の位置づけを説明します。まず1点目は、 厚生科学審議会疾病対策部会の臓器移植委員会の検討ということで、厚生労働省は臓器移 植法の運用に当たり、臓器移植法に基づく手続等について、臓器移植法により委任を受け た事項について定めた厚生労働省令(脳死判定基準等)、また、運用上必要な事項について 厚生労働省はガイドラインを定めています。こうしたことを定める際には専門家の意見を 聴くため、厚生科学審議会の下に設置した、臓器移植委員会において議論をお願いしてい ます。  先般の国会で一部改正法が7月13日に可決・成立し、来年の1月の親族優先提供に係る 部分から順次施行となります。具体的には先ほどご紹介したとおり、親族優先提供に係る 部分が1月17日から、また小児からの臓器提供等に係る部分が7月17日から施行という ことになります。  こうした改正法の施行に向けて、年内にも親族優先の提供の実施に必要な事項について ガイドライン等の改正が必要となります。また、改正に当たっては、臓器移植委員会等に おける専門家のご議論をいただき、パブリックコメントを経た上で決定するということに なります。  続きまして2頁目です。こうした背景から、臓器移植委員会の開催準備を進め、本年9 月15日に初めての委員会を開催させていただきました。その委員会の中で、今後の「検討 課題」を提示するとともに、課題毎に作業班、研究班を設置し、専門的な検討を行うとい う方針をいただきしました。具体的には意思表示等に関する作業班。こちらに関しては、 親族の範囲、あるいは15歳未満の者による拒否の意思表示等の法的事項について検討をし ています。また、普及啓発に関する作業班として、ドナーカードの様式や普及啓発の方法 についても検討を進めていただいています。また、本作業班の位置づけなのですが、臓器 毎による作業班の中でドナーの適応基準及びレシピエントの選択基準をお決めいただきた いと考えております。さらには研究班を設置いたしまして、小児脳死判定基準等の検討を 進めていただいています。  また、親族への優先提供、小児からの臓器提供、普及啓発など検討を要する課題を、作 業班等において検討する際に留意すべきと考えられる点等について、各委員からご意見を いただきます。また、ここがポイントなのですが、「親族」の範囲について、各委員より、 国会における提案者の答弁を尊重し、「親子と配偶者」とすべきとのご意見が出されており ます。今後は臓器移植委員会のご意見を踏まえて、作業班において詳細な検討を行い、ガ イドライン案を作成し、委員会に報告するということになっています。  続きまして資料2-2をご覧ください。こちらが、今後改正法の施行に向けて、必要な検 討課題と検討体制です。「検討課題」のIは、親族への優先提供に関する課題、IIは、小児 からの臓器提供に関する課題、具体的には脳死判定基準、被虐待児の取扱いについてです。 IIIは、本人が意思表示をしていない場合における臓器提供に関する課題。IVは、普及啓発 等に関する課題。Vは、この作業班での課題なのですが、臓器移植の実施に係る課題とし まして、ドナーの適応基準やレシピエントの選択基準の見直し等がございます。  2頁目は「検討体制」ですが、3頁目をご覧ください。これが私が先ほど説明した部分を 図式化したものです。いちばん右に厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会という審 議会があります。こちらに報告していただくために、検討体制、さらにその左に主な課題 を対応させていただいています。  まずは、臓器移植に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班におきまして、 親族の範囲等を現在議論いただいています。また、普及啓発に関する作業班、さらには臓 器毎に関する作業班があり、この中に、これが本肝臓移植に関する作業班がございます。 そして、厚生労働科学研究費研究班としまして、小児の脳死判定基準や臓器提供施設の体 制整備、あるいは虐待を受けた児童への対応ということで、現在研究を進めております。 こうした各々の課題を整理しまして、厚生科学審議会疾病対策部会臓器委植委員会にご報 告をしていただくという手はずになっています。  また2頁に戻っていただきまして、3の「改正法の施行に向けたスケジュール」ですが、 施行期日というのがありまして、公布の日から起算して1年を経過した日と定められてお ります。つまり今年の7月に公布されましたので、来年の7月17日に施行ということにな ります。また親族優先に関しては、公布の日から起算して6カ月を経過した日ですので、 来年の1月17日ということが規定されています。このため、まずは近々の課題である、親 族の優先提供に係る事項について、各作業班からのご報告を踏まえて、残された論点につ いては順次検討をしていただくということになっております。下にスケジュールがありま すが、7月17日に改正法の公布がありまして、その後様々な検討を進めています。来年に なりましたら、以下の順序で施行されるということです。以上です。 ○有井班長 どうもありがとうございました。ただいまのご説明についてご意見等をお願 いしたいと思いますが、いかがでしょうか。たぶん今日、どうしても決着をつけなければ いけないのは、親族優先が1月17日ですので、時間がありませんので、今日骨子は作らな いといけません。明文化しないといけないという作業が今日のいちばんの目的だと思いま すが、いかがでしょうか。一応親族優先の作業班では、新聞報道などで見られたと思いま すが、一親等と夫婦間、親子と夫婦間ということで、これはまだ本決まりではないのです が、一応そういう形になるだろうと考えていいのでしょうか。 ○峯村室長 いま有井先生からお話がありましたとおり、27日の法律の作業班におきまし て、一通り3回ほどの議論を踏まえまして、親族の範囲に対する議論をして、結果を取り まとめました。11月2日に開催される予定の臓器移植委員会に諮って、そこでまた論議を 深めていただくことになっております。内容につきましては、親族の範囲につきましては 親子及び配偶者を基本とするという意見が大勢を占めております。また、養子につきまし ては、特別養子縁組という家庭裁判所が絡む養子に限るのが適切ではないか。また、事実 婚につきましては、移植の現場での確認がなかなか難しいということがありまして、いま の法律の扱いですと、法律婚と同様に扱うということになっていますが、今回の移植の場 合におきましては、法律婚のみに限るという方向で臓器移植委員会でまた論議していただ くということになっています。 ○有井班長 法律婚。 ○峯村室長 法律婚でございます。 ○有井班長 事実婚ではないということですね。 ○峯村室長 事実婚は認めないということです。 ○有井班長 ご意見ございますか。 ○古川班員 質問ですが、日本は生体移植が多いので、移植学会のほうでも親族の提供範 囲は、生体の場合は血族六親等、姻族三親等と決めています。そういうことを考えると、 合理的にいくなら、それと同じ範囲にしないと、脳死ができなかったから生体にいかざる を得なかったということになってしまう可能性があるので、本来ならば生体と同じ範囲に するのが正当かなと思うのですが、私が聞いた範囲で一親等と配偶者ということで、ほぼ 決まりという話を聞きました。でも日本のように生体が多くて、生体のドナーの危険性を できるだけ減らすという方向で考えれば、合理的に考えると、生体で範囲が決まっている 血族六親等、姻族三親等に範囲としてはすべきではないかなと思います。  有井班長からアメリカはどうなのですかと聞かれたのですが、アメリカは全く範囲がな くて、広い範囲で友達でもいいというようなことで、意思表示はいつでもいいような話で した。 ○有井班長 そういうのは議論になったのでしょうね。 ○峯村室長 1点目の生体の関係ですが、今回は法律の構成として、臓器提供の意思表示 をする際に、それに併せて優先提供の意思の表示、親族への優先提供の意思表示をするこ とができるという記述となっています。法律上は親族という形で規定されています。した がいまして、その点について、民法の親族の範囲は、先ほど古川先生からお話がありまし たとおり、生体の移植の場合も民法の親族の範囲と同様に扱っているわけですが、血族六 親等、親族三親等という扱いになっているわけです。それとの関係でみた場合に、現行の 脳死下心停止下もそうですが、移植法の世界では、親族の優先提供というのは、15例目以 降ガイドラインで見合わせということで禁止してきた経緯があります。その中で、こと臓 器移植の死体臓器の扱いにつきましては、臓器売買の有償性の懸念等も踏まえて、民法の 親族の範囲よりもできるだけ狭くするべきではないかという基本的な考え方があります。  その中で一体どこまで狭めるのかということにつきましては、法律の提案者の意向とし て、共に生活をする中ではぐくまれた愛情、その基礎となるところを中心において、範囲 を決めるべきではないかということで、国会での議論では、親子及び配偶者という見解を 国会の場で答えられているわけですが、作業班の議論としましても、民法の親族のいちば んコアな部分を考えると、親子と夫婦間が一体となって、家族を構成していくというのが、 いちばん小さい単位ではないか。今回は従前、死体臓器の扱いにつきましては、公平性と いう観点から、指定というのは認められていなかったわけですが、今回新たに認められた ことについて、当面できるだけ厳格に扱うべきではないかということです。  アメリカの場合ですが、古川先生からお話がありましたとおり、私どもはあまり情報は ないのですが、いま世界で指定ができる制度をもっている国は、我が国のほかに韓国とア メリカと伺っています。(韓国の詳細はまだ確認していないのですが)アメリカの場合は、 親族ということではなくて、指定ができるという仕組みになっています。その際、ただし、 個人名の指定ということで、人種間、例えば黒人以外にはやらないでくれといった、倫理 上問題になる指定はできないという扱いになっていたかと思います。生体の場合の扱いよ り若干今回の扱いはかなり狭い扱いになるわけですが、作業班での議論としては、いま申 し上げた議論の結果、配偶者及び親子という範囲に決まったということです。これで決定 するわけではありませんので、また委員会の場で議論されるということです。 ○有井班長 たぶん、これは私の推測ですが、生体と脳死とは全く一緒にはできない。脳 死の場合は、基本的にはパブリックの臓器であると。生体の場合は当然あるサートンパー スンに行うわけで、スタンスは生体とは基本的に違う。脳死のボランティア精神に多少で もインセンティブを与えようという部分ではないかということです。そのインセンティブ の範囲は、やはりいちばんわかりやすい親子ぐらいがいいのではないか。 ○古川班員 生体肝移植はいまどこの施設でも、例えばここは肝臓ですけれども、二親等 か、三親等、四親等ぐらいの範囲で皆さん考えているので。 ○有井班長 生体はね。 ○古川班員 生体はものすごく危険を伴うわけです。だからむしろドナーを傷つけたくな いというのがあるのでやりたくない。そこに非常に強いポイントがあるので、そういう意 味では、有井班長が言われるのとはちょっと違うのかなと。少なくとも一親等ではなく、 二親等ぐらいに広げてもいいのかなと、私自身は思っています。 ○峯村室長 一応、付随意見という形で、二親等といいますと、お祖父さんと孫、兄弟が 入ってくるわけですが、兄弟については、いまは現行で認められていませんが、現場で実 際に指定をしたいという声がありましたので、それを付けた形で、親の委員会のほうでま た議論していただくと。医学的適応という観点ですと、配偶者よりも兄弟のほうが近いと いう議論等々が背景にあると思うのですが、付随意見という形で、それも併せて移植委員 会に上げて議論していただくということになっております。 ○猪俣班員 実際生体間移植をやっていると、兄弟というのは特に成人間になると、非常 にややこしい面が多いと思うのです。それは、おそらく優先のところでも、兄弟のそれぞ れの配偶者の問題が絡んだりして簡単ではないので、脳死の場合ではちょっと現実的では ないのではないか。ただ祖父母から孫へというのは、生体でも親子以上に強いというとき もあり得るので、非常に情緒的な話で申し訳ないのですが、私自身は、これは認めてもい いのではないかなという気がします。これがもう決まっているものであれば、やむを得な いと思います。 ○向坂班員 議論の前にお聞きしたいのは、全体のコンストラクトというか、例えば我々 肝移植のグループですが、模式図が先ほどありましたが、スキーマの中で、我々もこの全 体についてもやっていくわけですか。 ○有井班長 我々基本的にはレシピエント、ドナーの適応。最初に資料4、資料5に基準 があるのですよね。ここにうまくいまの親族優先をはめ込む案を作るということです。い ま赤で1つの案として書かれているわけです。こういう形で確定するということですよね。 レシピエント、ドナーの適応基準をもう一度法改正に伴って見直そうということが我々の 班の重要な目的です。 ○向坂班員 法を全部やる。 ○有井班長 違います。そうではないです。かなり医学的な観点ということです。ただ、 そうは言っても、我々現場の人間から不都合なことが法律の専門家に出されると、やはり この作業班としても、多少疑義を発言するというのはオーケーですよね。 ○峯村室長 はい、差し支えありません。 ○川崎班員 医学的な観点から言うと、生体間移植だと、親族の特に親子間ではHLAが結 構合っている。それだからこそ成績が悪いのではないかと想像されるような疾患がありま す。例えばPSCとかは、こういったことでかえって不適切な移植が行われる可能性がある と。 ○有井班長 それは医学的に重要なことです。 ○川崎班員 そういう注釈が我々の作業で付けられるのかどうか。 ○有井班長 それは付けられます。むしろそれが重要なところです。 ○川崎班員 それから、現実的にこれは珍しいことですよね。一親等で脳死になって、ご 病気の方がいるという。非常に何年に一度もたぶん起こらないようなことを。 ○有井班長 そうなのですけれども。 ○川崎班員 激しく議論するというのも、何かむなしい気がするのですけれども、逆にネ ガティブな面は十分に議論されたのかと。性善説に立てば、一親等は愛情が深くて、一方 でネガティブな面もあって、そこら辺の検証が本当にできるのか。そこは本当に。 ○有井班長 特に幅が広がり過ぎると、非常にその辺の検証が難しくなる。だから一親等 ぐらいだということだと思うのですが。 ○上本班員 確認なのですが、親子間というのは、通常は血のつながった戸籍上の親子な のですが、血はつながっているけれども、別れた親子、血はつながっていないけれども、 戸籍上の養子。それは全部オーケーですか。 ○長岡補佐 いま法律婚というものを前提としておりますので、離婚されると法律婚では なくなりますから、そこは外れます。親子の場合も、現在のところ養子といいますのは、 主に相続を目的として、縁組をすることが多いものですから、どうしても臓器売買などの 危険性もあるということで、養子は省いて考えるということが、法律家の議論で上がって きています。 ○上本班員 いわゆる普通の親子というか、血がつながって、籍が入っている親子という ことですね。 ○長岡補佐 そういうことでございます。 ○上本班員 いわゆる連れ子さんというのは。 ○有井班長 連れ子さんは駄目です。 ○長岡補佐 それも、細かい法律の議論になりまずが、連れ子で再婚される場合といいま すと、通常は当然には親子にはならずに、養子縁組をすることになりますので、その場合 は駄目ということになるかと思います。 ○國土班員 資料4の2枚目ですが、赤の字をどうするかということを議論するとおっし ゃったのですが、親族を優先するということがなくなることもあり得ると、そういう意味 ではないのですか、その議論はしないと。 ○有井班長 親族優先というのは、それは動かない。 ○國土班員 それはもう動かないのですね。ただ。 ○有井班長 親族の範囲をどうするのかと。 ○國土班員 その範囲については、臓器別に変わることもあり得るわけですか。いま基本 的には。 ○有井班長 それはどうなのですか。変わらないのですね。だから足並を揃えなくてはい けないのですね。だから、ここはあまり深くやっても。 ○國土班員 基本的に、私の意見を言わせてもらうと、これに反対なのですけれども、本 当は削ってほしいぐらいなのですけれども。肝臓というのは、腎臓と違って、生命の維持 に必須ですので、ちょっと違うと思うのです。家族だから今回譲りましょうという形の臓 器ではないのです。  それからアメリカのように年間6,000例もやっているような国と同じように、アメリカ だったらその方は親族だから、次のドナーがまた出るでしょうから、待てるのでしょうけ れども、日本の場合はどう考えても、近い将来はそんなにすごく数が増えるとは考えられ ないので、緊急度とかそちらを優先すべきだと思うので、そういう意味で言えば、できる だけ範囲を狭くしておいたほうがいいと思います。 ○有井班長 両論はあるわけで、ここはこれぐらいでいいですかね。ただ、資料3-2の中 に怖いことが書いてあるのです。「特に生体移植の行えない心臓移植における、親族の自殺 の誘発について懸念が示された」。非常にレアなのですが、そういうことまで。 ○川崎班員 でもそういう事件が1件でもあったときに。 ○有井班長 範囲が広がり過ぎると非常にその辺も。 ○川崎班員 いや、だから狭めるということはやめるということなのですよ。私も國土先 生の意見に賛成で、これ自体は本当に誰が考えたものなのかと、個人的には思います。 ○國土班員 そのぐらいレアですよ。 ○川崎班員 だから、なぜそれをわざわざ入れるのかなと。 ○有井班長 それは、もう決まったことなので、ここではやめておきましょう。 (○大竹補佐 先生方のご意見は拝聴して。) ○有井班長 だから私は脳死を提供するのだという人に対する1つのインセンティブだと 思いますが、少なくとも少しぐらいはということしか考えられないと。 ○上本班員 話を聞いたところでは、民法の財産権とか、そういうところの人たちが主張 したとおっしゃっていました。 ○有井班長 それは喧々諤々になるので、(えいやあと)一親等で、おそらく心臓もなるの ではないかと思いますので、この作業班としては、一応いいということでよろしいですか。 ○松井班員 いいと思います。範囲を狭くするということで賛成です。 ○有井班長 次に移ります。資料の3-1、3-2です。 ○大竹補佐 それでは、資料3-1、3-2について、事務局から説明いたします。まさに先ほ ど議論した所と関連する部分です。このような法律、あるいは選択基準が如何に決まって きたかを紹介します。  資料3-1でございます。まず1点目、今般の法律改正の第6条の2で、親族に臓器の優 先提供を認めることが規定されています。読み上げさせていただきます。  「移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提供する意思を書面により表示してい る者又は表示しようとする者は、その意思の表示に併せて、親族に対し当該臓器を優先的 に提供する意思を書面により表示することができる」という一文になっています。  また、2番として、本規定にかかる国会審議の抜粋で、代表的なものを2点紹介します。 これは、5月27日の衆議院厚生労働委員会で、河野太郎議員が提案者として答弁したもの です。「いわば、命の受け渡しをした親子、あるいは配偶者といった家族の中で(略)、ガ イドラインで、親子及び配偶者に限り、事前にそうした方がレシピエント登録をされてい る場合、そして、ドナーになる方が書面にその意思を明確にしている場合に限り、親子及 び配偶者に対しては親族の優先提供を認めるということで、かなり厳しい枠をはめて、そ の中に限り優先提供をこれは心情を考えて認める」というご発言をなさっています。  また、同じく7月7日の参議院厚生労働委員会の山内議員が、同じく提案者ですが、前 半略させていただきます。後半、下線部です。「A案におきましては、親族への優先提供の 意思表示の規定を設けることとしておりますが、この場合におきましても、その意思表示 を踏まえた上で、最終的には血液型が適応するかなどの条件に照らし合わせて順位が判定 されることになると想定しており、決して順位の判定が恣意的に行われることはないと認 識しております」という答弁があります。  続きまして、資料3-2を紹介します。これは、先般まで3回行われた、「臓器提供に係る 意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班」、いわゆる法律的な部分の解釈の作業班 ですが、参考人として、コーディネーターの方々等、医療従事者も加わり、親族優先の選 択基準における取扱いについて議論が行われました。その結果として、「親族への優先提供 の意思がある場合、レシピエント選択において優先順位の第一位として取り扱うことを基 本とし、臓器毎の作業班において検討を行うこととなった」ということです。そして、本 日10月29日、本作業班を開催いたしました。今作業班の中での主なご意見として、1点 目、「優先提供を受ける親族は、予め、レシピエント登録されていることを前提とすべき」 という発言がありました。また、2点目として、「親族優先は、レシピエント選択基準の優 先順位を第一位とするのが妥当ではないか」というご意見がありました。また、「法律に規 定されており、医学的緊急度などよりも優先されると解釈される」というお話がありまし た。また、「同時移植希望者よりも単独での移植を希望する親族が優先されると解釈される」 というご意見がありました。さらには、「虚血許容時間の位置づけは、臓器毎の作業班にお いて検討を行ってはどうか」というご意見がありました。さらには、先ほど川崎委員のご 懸念もありました、その他、親族の優先提供に伴う、移植を必要とする方の親族に対する 心理的影響とか、あるいは、特に生体移植の行えない心臓移植における、親族への自殺の 誘発についてご懸念がされていたところです。以上です。 ○有井班長 ただいまのご説明についてご意見等があれば、ご発言をお願いいたします。 ○上本班員 ということは、1枚目の山内委員の発言はくつがえされたわけですね。とい うことで、医学的緊急度も外すということなので、血液型等々を勘案することはないわけ ですよね。 ○大竹補佐 血液型が適応するかどうかの条件に照らし合わせて順位が判定されますので、 そこの医学的な部分を重視しなければいけないというご発言です。 ○上本班員 おそらくこの後で問題になってくると思いますが、医学的な優先というより 危険性として、先ほど話が出たGVHDという問題があります。これは親族になると必ず起こ ってくる問題で、そこの危険性を乗り越えて優先権を与えるのか、敢えてかなりの危険性 をおいてどうするかだろうと思います。 ○有井班長 それは後ほど、資料4の所でご議論していただきたいと思います。それで、 資料3-1、3-2はいかがですか。資料3-2の上から3つ目の○にある、「優先提供を受ける 親族は、予め、レシピエント登録をされていること」ということですね。こういうのはそ の作業班で大体決まったわけですね。 ○峯村室長 そういうことです。 ○有井班長 主なご意見と書いてありますが、実際はこういう形で。 ○峯村室長 はい。 ○有井班長 それとか、親族優先は選択基準の優先順位の第一位です。これもさっきの、 この親族が一親等と配偶者。それと、原則として、法律に規定されている医学的緊急度な どよりも優先されるわけですね。後でもう1回、ここを作業班で詰めたいと思います。そ れと次も、同時移植希望者よりも単独での移植を希望する親族が優先されると解釈される。 この辺をまた検討しなければいけないと思います。  次に、本題の、レシピエントの選択基準について検討を行いたいと思います。これが資 料4です。現在の基準、及び改正法の内容を踏まえた基準(案)について、事務局より説 明をお願いいたします。 ○大竹補佐 それでは、資料4に沿って選択基準(案)を紹介します。現行の基準はこの 黒字で、それに赤字で修正案を加えるというものです。現行の基準は、ネットワークに登 録された患者を選択するための基準です。また、1番の適合条件、それから2番の「優先 順位」と、大きく2つの項目があります。  まず1点目の適合条件に関しては(1)〜(4)ですが、ほとんど変わりがなく、ただ1点、 (4)の搬送時間において、「肝臓を摘出してから12時間以内に血流再開できることが望まし い」という一文をつけました。  また、優先順位ですが、(1)の医学的緊急性と(2)のABO式血液型は変わりありません。 ただ、3番の具体的選択方法として、「適合条件に合致する移植希望者(レシピエント)が 複数存在する場合には、優先順位は以下の順に勘案して決定する」としています。(1)とし て、優先すべき親族を優先することを第1番目に挙げます。また、(2)は変わっていないで すが、2.の(1)(2)の合計点数が高い順とする。具体的には、医学的緊急性とABO式血液型 の合計点数が高い順とします。ただし、これらの条件が、同一のレシピエントが複数存在 した場合には待機時間の長い者を優先するとあります。(3)としまして、(1)又は(2)で選ば れたレシピエントが肝腎同時移植の待機者であって、かつ、臓器提供者(ドナー)からの 肝臓及び腎臓の提供があった場合には、当該待機者に優先的に肝臓及び腎臓を同時に配分 する。なお、選ばれた肝腎同時移植の待機者が優先すべき親族でない場合にあって、腎臓 移植希望者(レシピエント)が優先すべき親族である場合には、当該腎臓移植希望者が優 先される、としました。  また、(4)の記載です。(3)により、肝腎同時移植希望者が選定されたものの、肝臓が移 植に適さないことが判明した場合には、選択基準で選ばれた腎臓移植希望者に腎臓を配分 する、と記載されています。  大変恐縮ですが、わかりにくい部分があろうかと思いますので、(3)の記載について、参 考資料に沿って説明いたします。  参考資料1をご覧いただきたいと思います。まず1点目、肝腎同時移植の待機者が優先 すべき親族であった場合です。これは考え方がシンプルでして、臓器提供者からの腎臓の 提供の数や腎臓移植希望者の優先すべき親族の該当にかかわらず、肝腎同時移植に対して 優先的に腎臓が配分されるわけです。表にありますとおり、肝腎同時移植の希望者がR1 として、これがまた親族の該当がありとする場合には、まずは2つあるうちの腎臓のうち、 1つはこの同時移植希望者にいきます。また、2つ目の腎臓に関しては、腎臓移植希望者が それぞれの順位に沿って得るという表です。また右は、1つしか腎臓がない場合がありま すので、その際には肝腎同時移植希望者にいく、ということです。  ここと相違するのが2ので、肝腎同時移植の待機者が優先すべき親族でない場合です。 この場合は従来と変わって、肝腎同時移植の待機者が優先すべき親族でなく、腎臓移植希 望者が優先すべき親族の場合、当該親族に対して優先的に腎臓が配分されます。つまり、 肝腎同時に待機している方々が親族でない場合は、例えば、お父様が亡くなって、お兄さ んと妹さんがそれぞれ優先すべき親族である場合、まず1つ目はお兄さんにいき、2つ目 は妹さんにいく、その2人はレシピエント選択基準に沿ってということです。また、腎臓 が1つしかない場合は、これもレシピエント選択順位に従って腎臓がいくわけです。  それから、(2)として、父から子という形ですが、腎臓移植希望者のうち1名が優先すべ き親族である場合、まず1つ目の腎臓は親族である腎臓移植希望者の所にいって、もし2 つ目が利用可能な場合には肝腎同時移植希望者の所にいくわけです。これが今回の変わっ た点で、文章として表わすと(3)のようになります。  また、資料4に戻って、4番「その他」という記載があります。この「その他」に関し ては、「ABO式血液型の取扱いや優先順位の点数付け等、当基準全般については、今後の移 植医療の定着及び移植実績の評価を踏まえ、適宜見直すこととする。また、将来ネットワ ークが整備され、組織的にも機能的にも十分機能をした場合は、改めてブロックを考慮し た優先順位を検討することが必要である」という記載をしました。以上です。 ○有井班長 ありがとうございました。  レシピエントの選択基準については検討を行いたいと思いますが、先生方、ご発言はい かがですか。 ○松井班員 適合条件の所のABO式血液型に関することです。アイデンティカルだけでな くてコンパティブルの待機者も候補者として考慮するとありますが、小児、特に乳児の場 合には、アイデンティカルでもコンパティブルでもない場合にも適用として考えるべきで あるかと思います。また、2歳を越えるような場合でも、小児の場合にはリツキサンを使 うといったことで成績もかなり向上しているので、その点も注意すべきかと思います。 ○有井班長 血液型をどうするか、いろいろなご意見があるようでして、インコンパティ ブルをいまはまったく外しているわけですが、そこの所をディスカッションしたいと思い ます。  まず先に、親族優先をどのようにここに織り込むかを討議したいと思います。いまの法 律を踏まえて、従来の選択基準を考え直すとこういう形になるだろうというのが厚労省の ほうから出されたわけで、これに対して討議したいと思います。先生方、ご意見、ご発言 をお願いいたします。 ○國土班員 資料4を拝見すると、2の優先順位よりも1の適合条件のほうが優先する条 件になるわけですね。 ○井原主査 山内議員のご発言を踏まえると、医学的な適合条件を満たさない患者さんま で優先して移植するのは大変危険ではないかということなので、あくまでも適合条件を満 たした上で、優先順位づけをして、1人ずつ移植を受けるかどうかの意思を確認していき ますので、適合条件を満たした場合には親族を優先的に位置づける形で案を作っています。 ○國土班員 質問になりますが、例えばこの中に、医学的緊急度が9点の人は優先する形 で入れることは可能なのでしょうか。 ○井原主査 基本的に、親族に対して優先的に提供することができると、法律上の規定に なっていますので、その点は法律の作業班でも医師の方に参加していただいて、ご発言も いただいたのですが、やはり法律上規定されているということはそれなりの重みがあるわ けで、資料3-2の下側の上から3つ目の○にあるように、「法律に規定されており、医学的 緊急度などよりも優先されると解釈される」という形でご意見をいただいてはいます。 ○國土班員 一応駄目だという理解ですね。 ○有井班長 そうすると、要するに今回の法律は、たとえ1点でも、親族ということは9 点よりも強いわけですね。 ○井原主査 ただ、先生方から、例えばPSCであるとか、1点のような方が移植を受ける ときの安全性についてご指摘があろうかと思いますが、選択基準はあくまでも、ドナーが 発生したときに、いちばん最初に、移植を受けるかどうかという意思確認を行うための順 位づけになります。これまでの事例でも、その方の全身状態や原疾患によって、今回は移 植を見合わせるという選択肢もありますので、優先順位が1位になったからといって、必 ず移植を受けなければいけないものではない点はご確認いただきたいと思います。 ○有井班長 でも、親族が脳死になるチャンスはそんなにないわけだから、それを逃がす と、待っていても、もう1点、3点の人は回って来ないですよね。そうでしょう。 ○井原主査 点数だけでいえばそうです。 ○有井班長 レアな話をしているのですけど。だからやはり、この思想は、何にも増して 脳死者の意思を尊重すると、親族を優先してほしいという脳死者の意思を最優先すること ですね。そういうことでしょう。9点の人は、目の前で死にそうな人がいても、この人に あげたいという、脳死者の意思を大事に考えるわけですね。 ○川崎班員 脳死になっても逆の意思は、親族優先をしないで、いちばん病んだ人にあげ てくださいという意思は通用するのですか。 ○有井班長 それはきっとドナーカードが変わるのでしょう。 ○井原主査 そうです。ドナーカードの様式についても考えています。 ○有井班長 親族優先に○をつけるか。 ○川崎班員 ○をつけなければ普通に。 ○有井班長 そうです。 ○井原主査 あくまでも第三者への提供意思があって、それに合わせて、親族に優先的に したいという思いはできることになっていますので、優先する親族がない場合も優先提供 をしたいという意思表示可能です。 ○川崎班員 それがあるなら、その辺が絶対に外せないことです。 ○井原主査 そこが大前提なのです。第三者への提供の意思があることが大前提で、それ に併わせて、もし自分が亡くなったときには、ご家族が移植を必要とすれば、優先的にあ げたいと思えばお聞きすることができる、という位置づけになっています。 ○國土班員 1つだけ質問していいですか。参考資料1の2の(1)の場合ですが、親族が2 人いるわけですね。その優先順位はどうやって決めることになっているのですか。 ○井原主査 それは基本的に、親族の中で医学的な順位づけになろうかと思います。例え ば、肝臓でいえば緊急度と血液型です。 ○國土班員 同じ親族の場合は医学的に決めるわけですか。話合いではなくて、親族が決 めるわけではないのですか。 ○井原主査 親族として同列と。その中で、医学的緊急度の観点から順位づけをしていく 形になります。 ○峯村室長 いま、井原主査からの話のとおりでして、複数名の親族がいる場合、話合い とかそういうことではなくて、同列に並んで、その適合性や優先順位づけは医学的な内容 に従って判断するわけです。 ○有井班長 それと、指名はできないのですよね。親族優先に○をやる。親族優先だけの 言葉ですよね。そこから踏み込んで、長女にとかいうのはないわけですね。あるいは逆に、 この人にはいやだとかいうのではないですね。 ○井原主査 はい。 ○古川班員 遺言を残しているかもわかりません。例えば、それこそ親族にあげられなか ったらもう、言葉上、あげませんと、臓器は提供しないということもあり得るわけですね。 ○大竹補佐 その議論もされましたが、本人の意思として、親族以外にはあげないという ことであれば、それは臓器提供の意思そのものがないものとして取り扱うと考えておりま す。 ○有井班長 だから、それはないということですね。 ○大竹補佐 はい。 ○有井班長 いいですか。この同時移植はなかなかややこしいですね。 ○猪股班員 すみません。先ほど松井先生のお話だったのですが、適合条件に合わなけれ ば親族提供に入ってこないわけですよね。ですから、先ほどの不適合を入れるだけ入れて おけば、その後は患者の主治医の医学的判断だと思いますが、不適合を入れておかないと、 不適合の人は自動的に親族優先の対象から外れてくると思います。 ○有井班長 いまからその話に移ります。では、一応この文言はいいですね。 ○川崎班員 赤はそのままということですね。 ○有井班長 このままですね。この辺は読んでもなかなか理解しにくいのですが、こうい うことなので、日本語で書くのはなかなか難しいのです。多分、当たり前のことが書いて あります。  そしたら、いまPSCの話とか、上本先生からGVHDの話とか、あるいは、松井先生からイ ンコンパティブルの話が出ましたので、今度は親族優先ということが入ってくると、そこ の所をもう1回見直す必要があると思うので、そこを議論したいと思います。まず上から、 ABO型のインコンパティブルでも適応から外すという、いまの考えはどうでしょうか。実 際は不適合とされているわけですね。ルーティンにないにしても。例えばどなたかの意見 で、ABOを2点にして、次を1.5にして、インコンパティブルを0.5にして、点を与えたら どうかという意見もあります。 ○川崎班員 わざわざ変えなくてもそのままいけると思いますが、要するに、待っている 人がコンパティブル、圧倒的にアイデンティカルが多いはずです。だから、インコンパテ ィブルまで絶対に回ってこないというか、アメリカでも。だって、血液型の比率は決まっ ているわけではないですか。A、B、O、AB、それぞれ決まっていて、ドナーも同じような率 で出てくるわけですから、その率を無理矢理変えると、例えば、OをAの人やBの人にや ってしまうと、Oの人が受けられなくなるので、脳死は基本的にアイデンティカルなので す。そういう原則です。もちろんインコンパティブルは生体ではできますが、おそらくそ こまで考える必要はないのではないかと思います。それだけ待っている人が圧倒的に多く て、そんな所までいかないわけです。 ○向坂班員 同感ですが、親族優先の所が。 ○猪股班員 そうなのです。特殊なのです。本当に議論をしたくないくらいですが、あり 得るというか、それはいいと思います。 ○上本班員 ええ。ただ、先生、血液型不適合の、成績はよくなっていますが、いま保険 外診療なのですね。ですので、それを明記するというのはつじつまが合わなくなることが あると思います。 ○有井班長 どうしましょうか。不適合ですが、保険外でもあります。要するに、いまは 親族に限った話です。 ○上本班員 そうなのですね。おそらく松井先生がおっしゃった、子どもは保険診療だけ でいけるというのは医学的にあるのですが、そこまで細かく分けると、確かに2歳までの 子どもは例外であるということは可能だと思います。これを機会に保険診療を認めてもら うとか。 ○有井班長 問題は親族の場合で、いまの血液型の原則はいいですね。親族優先が生じた 場合に、血液型がインコンパティブルであった場合は進むのか駄目なのか。 ○川崎班員 この議論は狭隘の極みのような気がします。 ○古川班員 アメリカに聞いたら3%ないと言っていました。指定ができるとして、向こ うのプログラム。この一親等で、このように配偶者だと、おそらく日本ではほとんど出な いと考えたほうがいいかなと思います。 ○川崎班員 しかも、その中の不適合を議論するというのは、あまり。 ○有井班長 そうは言っても、この作業班ではせざるを得ない。 ○上本班員 親族間だったらあるかもしれませんよ、親子間で。 ○川崎班員 あるかもしれないが、そこだけインコンパティブルの議論をするのはどうで しょうね。しかも2歳以下に限るとか、そういう条件をつけると。 ○上本班員 そうですね。子どもの場合は保険診療だけでできますからね。 ○川崎班員 ここに埋め込むというのは、また相当ややこしくなります。 ○有井班長 そこは継続審議でいいのですよね。 ○川崎班員 1人を考えれば何でもしてあげたいのですが、日本の移植医療全体を考えれ ば悲惨な状況なのです。だから、1人を考えて基準をどんどん追求すると、理想に走ろう としても、結局全体としてはまだなのですから、そういう意味で、こういう議論は狭隘の 極みと言っているのです。だから、この中で規定するというのは、何となくピンとこない というか。 ○有井班長 それは持越し事項にして、問題点を浮き彫りにしていきたいと思います。 ○向坂班員 ほかの委員会でも同じような形になりますか。 ○有井班長 同じような横並びの話です。ただ、肝臓の場合が、インコンパティブルはい ちばんトレラントですよね。 ○古川班員 腎臓が進んでいます。 ○有井班長 心臓はほとんどないですね。 ○古川班員 腎臓でかなり議論になっていますね。 ○有井班長 それはペンディングにして次に進みます。もう1つは、血縁者だからといっ て、必ずしもよくないという病気があります。それはPSCとか、あるいは組合せによって はGVHDが起こりやすいという話も現実にあります。ただ、適用基準とは少し距離がありま す。 ○古川班員 肝臓のGVHDは海外ではほとんど報告がないのです。問い合わせたら、1〜2% はあるらしいのですが、あまり考えてないらしいのです。ここまで生体が進んできた日本 では、GVHDにかかったらほぼ100%死ぬ合併症であることがわかってきてしまったのです。 現在は生体ではGVHDが起こる組合せがわかっていますので、その組合せではほとんどやら ないのです。やってもGVHDが起こる可能性は60〜70%で、発症したら死ぬということで す。 ○有井班長 ドナーがホモの場合ですね。 ○古川班員 ドナーがホモで親子間になると、子どもが親のHLAが全然見えないと。 ○有井班長 移植した臓器が。 ○古川班員 非常に危険な状態です。 ○上本班員 親子間はきちんとHLAをやればいいと。 ○古川班員 HLAは心臓とか腎臓でやっていますよね。だからHLAが出たときに、もしもA、 B、DRがホモであった場合には、子どものHLAの型によっては、非常に危険な状態になる ということですね。これは、それを押してまでやるのはないのではないかと思うのですが。 ○有井班長 だからHLA検査をして、ドナーがホモの場合には、やらないという形に持っ て行ったほうがいいという意見ですね。親族優先からは外さざるを得ないと。 ○上本班員 そうですね。それを現場の判断に任すとしたら、わかっていない人がいたら、 いいですとやって、その結果最悪になれば。 ○古川班員 ホモの人からもらった場合は必ず死んでいます。 ○有井班長 それも文言をどうするかは考えなければいけないのですが、今日はそこまで はいかないと思います。それと、PSCの場合は、そういうことを理解しておくということ であって、ここに書くということとは少し違いますよね。 ○川崎班員 それは患者に対すると。 ○古川班員 稀ですが、PSCでも非常に重症で、早く移植が要るという場合に、緊急避難 的にやることがあり得るかもしれないので、その移植がいいかどうかというのは、レシピ エントがどのくらいの重症かにもよります。本来は再発してくるので、京大がいっている ように、5年、10年で、グラフトはほとんどないということですから、本来はやるべきで はないのですが、主治医の判断というのが。 ○有井班長 GVHDとはちょっと違う話になります。それでは位置付けとしては、レアです がGVHDはそのような形で織り込まなければいけないと私も思います。 ○向坂班員 それはこの班から出て、ほかでもそれを提言として強調してもらったほうが いいのではないですか。 ○有井班長 そうですね。合同委員会のようなものはあるのでしょうか。 ○大竹補佐 ないです。 ○有井班長 どこかで摺合せは必要ですよね。少なくとも書面上は。 ○峯村室長 臓器別の作業班についてはこの肝臓移植の作業班がいちばん最初に開かれて いますので、引き続き臓器ごとにそれぞれ開かれます。今回この場で出た、HLA型ホモの 場合の取扱いを適用基準上どうするのかといった議論も、今後の個別の作業班で私どもか ら報告させていただく扱いはできると思います。  1つ確認させていただきたいのですが、HLA型ホモの割合は、比率はどの程度なのでしょ うか。かなり稀なことなのでしょうか。 ○上本班員 実際の生体の現場で危険はわかっているので、ドナーは全部調べていますが、 そんなに珍しいというわけではなくて、20〜30人に1人ぐらいでしょうか。印象としては そのぐらいで、50人に1人ぐらいかな。極めて少ないというわけではないと思います。 ○井原主査 確認させていただきます。HLAに関しては、現時点では選択基準には採用し ないが、必ず検査し、登録していただくことが、適合条件に記されていて、GVHDが重篤な 状況になり得るというのは、ホモの場合に限られるのでしょうか。 ○有井班長 そうです。 ○井原主査 それ以外にもGVHDで危険な状況になることはあり得るということであれば、 必ず禁止するというよりは、移植の適用を慎重に検討してくださいと記載するのが、親族 の方が第1位になったときに、HLA型を合わせて移植をするかどうかの判断を先生方がし やすいのか、「必ず禁止する」という記載のほうが望ましいのでしょうか。 ○上本班員 その程度なのですが、ひょっとしたら悪いかもしれないというのではなくて、 ほとんど成功しないという確率なので、これを患者の判断に任せるとした場合、患者が十 分に理解していたらいいですが、ちょっと悪いのかというぐらいで受けてしまったら、そ れこそ取り返しのつかないことになります。  つまり、通常はHLAが合っていれば少しいいからということで決めるのですが、これは 逆で、HLAが合っていると極めて悪いから、除外しましょうということです。 ○有井班長 (3)のHLA型のところに一筆文言を加えたら、済むのだろうと思うのです。 ○上本班員 問題はレシピエントのHLAというかドナーのHLAなのです。 ○有井班長 ああ、そうか。でも、ここに一応そのような文言を書くことはできます。 ○井原主査 ドナーになった方のHLAは通常の手続きの中で検査をしますので、例えば「優 先すべき親族を優先する」というところに、「ただしHLAの適合度を確認し、ホモの場合に は移植を行わないこととする」というような記載がいいのか、これまでのお話を伺ってい ると、「ただしHLAの適合度に応じ、移植の適用を慎重に検討する」という記載であれば、 先生方がHLAを見比べて、危険を判断していただけるのかなとも。 ○古川班員 たぶんホモ以外のケースでは、こういう型だからGVHDが起こりやすいという のは出ていないと思うのです。いろいろな組合せでやってみて、ホモだけは本当に悪いの だが、ほかに変えてみてもわからないので、実際は非常にマイナーなインコンパティビリ ティで起こっている可能性があるのです。だから、ホモだけは駄目だと言っておいて、あ とはわからないです。 ○上本班員 細かいことを言ったら非常に細かくなるのですが、非常に稀なケースで、ド ナーがホモで、レシピエントもホモということがあるのです。それは起こらなくて、拒絶 も起こりません。ただ、レシピエントが、3カ所のうち1カ所がヘテロだったら、起こる と思います。 ○川崎班員 勘案するなんて言わないで具体的なほうがいいと思います。 ○井原主査 いちばん正しい医学的な表現となると、「HLAの適合度を検査し」。 ○有井班長 ドナーがホモ。私は、それはレシピエントの基準のところに書いていいと思 うのです。レシピエントにはなれないと。 ○猪股班員 A、B、DR、3カ所全部書かないと。 ○有井班長 そうですね。DRとA、Bすべてがホモ対応と。 ○井原主査 「ホモ対応の場合には」と。 ○有井班長 ドナーがホモ対応の場合。 ○國土班員 この場合のレシピエントというのは全般を指すのでしょうか、親族のレシピ エントだけでしょうか。 ○井原主査 すべての方です。 ○猪股班員 親族用ということで、もう1つ作らなければいけないのではないですか。 ○峯村室長 いま考えているのは、どちらの場所で書くのかということはありますが、い まは3の「具体的選択方法」の「優先すべき親族を優先する」の部分に、「ただし」という ことで、「ドナーのHLA型がホモの場合はやめる」という文ではいかがかと。 ○有井班長 それでいけますね。いいですね。その文を入れてください。 ○峯村室長 また確認の意味で。 ○有井班長 (4)で、搬送時間が、前は「12時間以内に血流再開しなければならない」で したか。 ○井原主査 「血流再開できること」です。 ○有井班長 「できること」で終わっていたのですか。 ○井原主査 はい。この点は手術になるので、厳密にそう断言するのは難しいのではない かと。基本的には虚血許容時間は肝臓の場合は12時間となっていまして、そのために搬送 時間は必ず10時間以内には搬送できるルートをネットワークで検索をしていて、これまで の事例でも、最大でも6時間半程度で移植施設に搬送できるようになっています。手術と いうことになるので、一定の時間で断言するのは難しいのではないかということで、表現 を「望ましい」という記載に変えています。 ○古川班員 搬送時間だけではなくて、レシピエントに時間がかかったらどうしても長く なるので、その部分も考えると。我々も胆道閉鎖後の症例で、ものすごく時間がかかった ものがありました。 ○有井班長 成績は、血流の再開は最高で何時間になっていますか。 ○古川班員 UWは最高36時間まではいけるのですが、大体24時間ぐらいを限界としてい ます。 ○有井班長 先生の経験で、血流再開まで何時間ですか。 ○上本班員 数は少ないですが、生体でもレシピエントの手術が非常に難渋した場合には 12時間を超えることがあります。 ○有井班長 血流再開までに12時間を超えることはよくあるのですか。 ○上本班員 よくはありません。 ○川崎班員 初めにこのようにしたのは、初期は成績をよくしようとしただけですよ。 ○有井班長 この「望ましい」という文言は適切ですね。 ○川崎班員 はい。 ○有井班長 ここはこれでいいとします。2番の「優先順位」、3番の「具体的選択方法」 も、「親族優先」の文言を入れた形はこれでいいということで、原則はこれでよろしいでし ょうか。 (異議なし) ○有井班長 あといろいろなご意見をいただいたのを踏まえてですが、1つはMELDスコア を組み入れたらどうかということです。あるいはドナー、レシピエントの年齢制限の問題、 アルコール性の肝硬変の問題がありました。あと松井先生、小児の問題もいろいろとあり ますね。 ○松井班員 そうですね。 ○有井班長 虐待などはまた別の委員会になるのでしょうか。 ○大竹補佐 はい。別の研究班でやっていただいています。 ○有井班長 ただ、小児の場合には、下の年齢制限はどうなるかというのがありますね。 ○松井班員 レシピエントということでしょうか。 ○有井班長 小児ドナーです。 ○井原主査 ドナーの脳死判定基準については、別途研究班で議論いただいています。 ○有井班長 再移植の問題はありますが、先生方に次のときに熟考していただいて、ディ スカッションして決めなければいけません。資料4は決定でよろしいですか。 ○松井班員 待ってください。医学的緊急性のときに、「ただし、先天性肝・胆道疾患」と ありますが、この「治療的意義を持つ時期患者の日常生活」のところに、できれば成長障 害を入れていただきたいのです。「治療的意義を持つ」というところに入るかもしれません が。 ○有井班長 具体的にどういうことですか。 ○松井班員 「肝臓移植が治療的意義を持つ時期及び患者の日常生活に障害が発生してい る状態」、そのほかに「成長障害がある」ということを考慮してほしいということです。 ○有井班長 「成長障害を考慮の上」ということですか。 ○松井班員 はい。抜けてしまいがちなので。 ○有井班長 読み上げますと、「肝臓移植が治療的意義を持つ時期及び患者の日常生活に障 害が発生している状態及び成長障害を考慮の上」ですか。 ○松井班員 そうしていただけるとありがたいです。 ○有井班長 それでいいですね。ドナーにいきます。資料5の説明をお願いします。 ○大竹補佐 資料5「臓器提供者適応基準の法改正に係る主なご意見」です。1として、「以 下の疾患又は状態を伴わないこととする」と記載しています。(1)から(4)までありまして、 全身性の活動性感染症から、悪性腫瘍となっています。  2として、「以下の疾患又は状態を伴う場合は、慎重に適応を決定する」とあります。現 状では(1)から(10)まであります。病理組織学的な肝臓の異常、生化学的肝機能検査の異常、 重症の糖尿病や過度の肥満、重症の熱傷、長期の低酸素状態、高度の高血圧又は長期の低 血圧、そしてHCV抗体陽性に至るまであります。  こうした現状に加え、先生から事前に、網羅的に羅列するのではなく、「高度の全身性疾 患」などと記載してはどうか、先天性の代謝性肝疾患の保有の可能性のある者を追加して はどうか、3年齢についての制限を設けるかどうかという意見をいただいています。備考 として、「摘出されたドナー肝については、移植前に肉眼的、組織学的に観察し、最終的に 適応を検討することが望ましい」と記載しています。 ○有井班長 ドナーの適応基準について、法改正の点も踏まえてご意見をお願いします。 まず、1のHIV抗体、HTLV-1抗体、HBs抗原、クロイツフェルト・ヤコブ病は、佐多先生 から何かご意見はありますか。 ○佐多班員 2002年にディスカッションがあったときには、ATL、クロイツフェルト・ヤ コブ、HCVの3つが問題になりました。最終的に、ATL、CJDについては、ディスカッショ ンのあとに、このような形で落ち着きました。HCVについては、最初は1の中の(2)に入っ ていたのですが、短期予後はあまり変わらないというご意見があって、慎重にやるという 意味で、2の(10)に落ちたということです。今回、特にご意見がないのであれば、このま までよろしいのではないでしょうか。再燃の問題とか、オカルトHCCの問題が出てくるの で、外すわけにはいかないと思います。 ○有井班長 いかがでしょうか。HCV抗体、HBC抗体など、よろしいでしょうか。 ○向坂班員 HCV抗体ではなくてRNAにしたほうがいいのではないですか。 ○有井班長 RNAです。いまRNAで全部やっています。 ○佐多班員 RNAはすぐにわかるのですかね。 ○有井班長 2番の(10)にHCV抗体があるので、また議論しなければなりません。1はこれ で。 ○梅下班員 基本的にドナーは少ない状態なので、問答無用で排除するのはできるだけ減 らすべきだと思います。HTLV-1抗体はどうでしょうか。レシピエントが陽性の場合もある でしょうし、これも一元的に排除しないと駄目でしょうか。 ○有井班長 これはどうしましょうか。 ○佐多班員 前にそういう議論がありまして、どうしようかという話になりました。あま り問題にはならないのではないかというご意見もありましたが、エビデンスはありません でした。移植をしてもHTLV-1抗体陽性の人のドナーが入ったとしても、あまり問題になら ないというはっきりした報告がなかったのです。それがもしあるのであれば、それは考慮 されるということになると思います。 ○梅下班員 長期的には発症する方がおられるのですが、発症しない方もおられます。こ れはインフォームド・コンセントの上で、2にいってもいいのではないかと思っています。 ○有井班長 科学的根拠といったら大げさなのですが、次回までに何かデータの提示をお 願いできますか。 ○梅下班員 はい。 ○佐多班員 大体1,000人に1人くらいですか。特に、移植によって悪化したという報告 があると、まずいと思うのです。外すなら外すなりに、理由を付けておかないと、説明が できなくなってしまいます。 ○梅下班員 九大からとか、結構報告はありますので、その辺をまとめます。 ○上本班員 悪性腫瘍ですが、実際の現場ではどうしているのでしょうか。例えば早期胃 癌があって、5年経過した人、あるいは非常に悩ましいのは、乳癌だけれどもステージ1 だったとか、そういう人たちは、すべて悪性腫瘍の既往があるということで除外している のですか。 ○古川班員 これは治癒したと考えられるものは除くので、ステージ1だったら治癒した と考えていいのではないですか。 ○上本班員 現場で判断する人が、その時点で判断してしまうわけですか。 ○古川班員 これだったらそういうことですよね。 ○上本班員 これは非常に曖昧というか、現場は混乱しないのでしょうか。ある意味では、 クリニカルコンサルタント用のガイドラインがあるとか。あるいは大腸癌でもステージ2 で手術したら、ほとんど再発しないという状況があるので、いまの梅下先生ご意見と同じ ように、広く取ることを考えると、再発はゼロにはできないと思いますが、どこかで決め ておいたほうがいいのではないかと思っています。 ○有井班長 いまのこの文言だと非常に曖昧で、ステージ2の大腸癌を持っていても、い まだったら現場の医師が「これは治癒したのだ」といったらいけるわけですよね。 ○古川班員 ただ、この問題は流動的で、ここで規定を作ってしまわないほうがいいかな と思います。ファジーにしておくほうが変えやすいし。 ○上本班員 どこかで必要があると思うのです。現場の医師は責任を持てと言われたら、 再発したらえらいことになるので全部ノーにするかもしれないですね。 ○有井班長 いろいろなデータはありますか。 ○上本班員 移植ではないと思うので、現在の癌の治療成績などを参考に、どこかで作る 必要があるのではないでしょうか。可能性があるものはすべて排除するとなってくると、 本来の脳死臓器移植の理念と異なりますからね。 ○有井班長 それを決める委員会は、ドナーの適応基準ですから、ここしかないのですよ ね。 ○大竹補佐 このガイドラインを変える機会はそうそうあるわけではないので、その時代 によって進捗状況があると思うのです。その部分で、先ほど古川先生がおっしゃられたよ うに、フレキシビリティをどう残しておくかということがあります。ただ、ここではこの ガイドラインを決めるということですが、さらにそこの解釈というのを先生方にお考えい ただくことはあろうかと思います。 ○佐多班員 付記に「上記の基準は適宜見直されること」とあります。きちんとした科学 的なエビデンスが出たときに変えましょうという話だったのだと思うのです。だから、1 番は絶対禁忌になっては駄目で、そこで違う成績が出た場合には、その時点で変えましょ うという考え方だったと思います。 ○古川班員 適宜がなかなか変わらないのが問題なのです。この臓器移植法案も12年変わ っていないのです。いまはあまり規定を作らないほうがいいと思います。また12年変わら ないと思います。現場の人間が、ネットワークやメディカルコンサルタントの中で相談し て決めていく。肝臓だけの問題ではなくて、これは全体の問題なので。 ○上本班員 それはそれでいいのですが、誰の目にも見えるような形にしてもらわないと。 ○古川班員 もちろんそれはそうです。 ○有井班長 上本先生、このグループではなく、第三者機関でここを詰めてほしいという ことですか。要するに移植をやらないと。 ○上本班員 おっしゃるとおり、このグループではないと思うのです。 ○有井班長 ドナー適応基準のこの委員会に、それを答申してもらえばいいですね。ドナ ー適応基準を作るところはここしかないですからね。 ○井原主査 「以下の疾患又は状態を伴わない」という禁忌の項目に関して、移植医療に 伴う危険性ということで、HCV抗体を除いては、ほぼ各臓器同じ並びになっていますので、 特に悪性腫瘍は伝播の問題など、いろいろとリスクもあると思いますし、肝癌なり乳癌な り、それぞれの悪性腫瘍に対する治療の進歩も非常に変化が大きいものだと思いますので、 ここで一律にすべて規定するというのは難しいと考えています。ただ、貴重なご指摘だと 思いますので。 ○有井班長 それも横並びで、ほかの臓器移植班と摺合せをしていくということですね。 文言としてはこのままでいくと。 ○梅下班員 クロイツフェルト・ヤコブ病が駄目なのはよくわかるのですが、その疑いと いうのは、どこまでになっているのでしょうか。 ○井原主査 手元にはないのですが、別添の通知を出しています。「ヨーロッパなどへの渡 航歴を含めて検討する」としている、通知が出ています。 ○有井班長 疑い条件が別添にあるわけですね。 ○井原主査 はい。 ○上本班員 非常に少ないケースなので、渡航歴があるくらいでこのドナーは駄目ですと いうのは、ご検討いただければと思います。 ○上本班員 暫くいたというだけで私も輸血できないのです。輸血の場合は実際にうつっ たら大変なことになりますが、移植の場合は全然出ていないですよね。 ○有井班長 クロイツフェルト・ヤコブの場合は、梅下先生はデータは出せますか。ある いは佐多先生はデータを何かお持ちですか。 ○井原主査 この点も佐多委員からご指摘がありましたが、安全性を考慮して、輸血血液 行政と同じ仕組みでということがありますので、科学的な安全性の部分をもう一度。 ○佐多班員 臓器移植委員会で最終的にはディスカッションがあって、それで決まった段 階です。その後、いま輸血で4例、血液製剤で起きているので、これを外すのはいまの時 点では難しいです。  それと、最近の研究では、時間はかかりますが血液から検出できるのです。これを外す のはかなり無理があるのではないかと思います。何か成績があれば別ですが、ないと思い ます。むしろポジティブのほうの成績が出てくるのではないかという気がします。 ○有井班長 わかりました。クロイツフェルト・ヤコブなどは、厚生労働省のほうから見 解は出るわけですから、それはそちらに任せて、(4)も各臓器との移植の横並びを考えなけ ればいけないということで、ここではあまり触れないことでいきます。  2番の「以下の疾患又は状態を伴う場合は、慎重に適応を決定する」というのが、現行 では10個記載されていますが、これをどうするかの議論をします。この赤い文字はどうい うものですか。 ○大竹補佐 こうした意見があったということで、我々が付け加えたものです。 ○古川班員 この意見を出したのは私なのですが、重症の糖尿病、低酸素状態など、高度 の全身疾患でまとめたほうがいいと。ほかの臓器との横並びを考えると、こんなにたくさ ん出しているのは肝臓だけなのです。例えば心不全も入るし、言い出したら全臓器のもの を入れなければいけないので、それはまとめたほうがいいのではないかと思ったのです。 ○有井班長 古川先生の案は、(1)、(2)、(3)、(4)は残すのですよね。重症糖尿病も高度 な全身疾患に含めるということですかね。 ○古川班員 はい。 ○有井班長 過度の肥満、重症の熱傷、このように個別に書くのはいかがなものかと。 ○川崎班員 あるいは「その他」。 ○有井班長 (10)で終わっているのはまずいと思うのです。「その他」的なものがないと。 だから1つの案は「高度な」ということで大括りにするのと、いま川崎さんがおっしゃっ た意味は、(11)なら(11)として、「その他の高度な全身性疾患」という形と。私はそれでも いいのかなと思います。具体的にあったほうが意味がわかりやすいと思います。 ○向坂班員 これは二重の解説という観点で、4つ増えるぐらいだったら。 ○有井班長 このHCV抗体の(10)に関しては、いまは変わっているのですよね。いまは HCVRNAですよね。 ○松井班員 はい。 ○古川班員 ただ、すぐは出ないです。ドナーが出てすぐにパッと検査ができるのは、抗 体でないと。何時間かで結果が出ないと。 ○有井班長 レシピエントがHCV抗体がプラスの場合は。 ○古川班員 プラスの人にプラスからあげるというのが。 ○有井班長 それはOKですよね。これは慎重に適応を決定するというので、そのときは慎 重に適応を決定してOKということでいくわけですね。ここもあまり触わる必要はないです かね。 ○松井班員 陽性なら調べるということになりますね。  先ほど有井先生のおっしゃったHBC抗体ですが、アメリカでは調べるのです。私の経験 では、B型肝硬変の人だから、HBC抗体陽性だからよかろうという実例を知っています。 ○有井班長 上本先生が得意なところですか。 ○上本班員 ないですね。HBC抗体を調べておかないと駄目です。 ○有井班長 そしたら(10)の次の(11)に入れておかないといけません。HBC抗体ポジティ ブの場合は、慎重に適応を決定するということですね。(12)が「その他の高度の全身性疾 患」ということですね。ほかにご意見はないですか。いいですか。そのようにします。 ○國土班員 先天性の代謝性肝疾患。 ○有井班長 先天性の代謝性肝疾患の保有の可能性のある者は、松井先生。これを(12)に 入れて、(13)は「その他の高度の全身性の疾患」とします。 ○松井班員 はい。 ○佐多班員 具体的にどのようなものが入るのでしょうか。 ○古川班員 「その他」が入っているのがここだけになります。 ○有井班長 そうですか。 ○古川班員 ほかの臓器と並べたときに、あまりにたくさんあるのがおかしいかなと思っ ただけで。 ○有井班長 でも、並べて悪くはないでしょう。 ○古川班員 具体的と言えば具体的です。もっと書けるのです。 ○有井班長 だから、「高度な全身症状」という、包括的な言い方は必要だと思います。い ままでこの10個でよくいけていたというのが不思議なぐらいです。 ○古川班員 ほかはもっとシンプルです。 ○有井班長 悪くはないと思いますが。 ○井原主査 確認させていただきます。先天性の代謝性肝疾患というのは、それである程 度疾患は限定されると考えてよろしいのでしょうか。移植のレシピエント登録の場合は、 先天性肝・胆道疾患や先天性代謝異常症という形で、それぞれ疾患の区分がされているか と思うのですが、それを実際に先生方に想定していただく上で、どのような記載がいちば んわかりやすいかなという点なのですが。 ○松井班員 先天性代謝性肝疾患は結構たくさんありますし、これからも新しく出てくる 可能性があるので、一つひとつ挙げていくときりがないので、こういうものがあったら慎 重としておいたほうが現実的ではないかと思います。 ○有井班長 チェックリストの中には実際の病名が出てきますか。 ○松井班員 これがあったら考えるということでいいのではないでしょうか。これはどん どん増えていくし、きりがないです。 ○猪股班員 家族歴をチェックするとか、そういうことになるのですか。 ○松井班員 そうですね。 ○猪股班員 例えば肝機能異常があれば、また引っ掛かってくるでしょうし、ドナーの情 報として伝えるときに、可能性があるものという根拠は、基本的には家族歴と。 ○向坂班員 あるいは明らかに診断されている。 ○猪股班員 「慎重に適応を決定する」だから、レシピエントサイドの判断が入るわけだ から、いいとは思います。川崎先生に細かいと言われるかもしれませんが、先ほどのドナ ーのHLAのホモのことは、ここに書いておいてもいいのかと思います。滅多にないとは思 いますが。 ○上本班員 親族限定ですから。 ○上本班員 いや、そういうことは通常の組合せでも、まずあり得ないでしょうね。 ○川崎班員 そのほうが確率的にはあるかもしれません。 ○上本班員 いままでは確率的に非常に低いから挙がってこなかったのですが、親族なの で途端に上がってきたのです。 ○古川班員 そこに挙げてしまうと、HLAを必ず全例測ったものを参考にしなければなら ないとなるわけです。 ○猪股班員 ドナーのデータは、HLAは来ないといけないとなります。 ○古川班員 ほかの臓器も全部やるのが当然なので、それは構わないと思います。ただ、 そこが作業的に変わります。 ○有井班長 脳死の場合はいま全部やっているのですか。 ○古川班員 肝臓は気にしていないです。 ○有井班長 やっていないということですか。 ○古川班員 やっていないというか、必ず腎臓とか、ほとんど提供があるので、提供を決 めるためにHLAは必要なのです。HLAは必ずやっています。 ○有井班長 ドナーですよ。 ○古川班員 ドナーです。 ○上本班員 教えてくれといったら教えてくれると思います。 ○有井班長 腎臓を取る人たちは必ずやっているわけですね。 ○古川班員 はい。 ○有井班長 それを教えてもらっているわけですか。 ○古川班員 いや、いまは全然気にしていないです。 ○有井班長 親族のレシピのほうにきちんと書くと。いいですか。これで最終ではないの で、明けにやらなければいけないのですね。1月に。  松井先生、乳幼児のことについてで、虐待などはここではいいのですね。 ○松井班員 別だと思います。 ○有井班長 年齢で制限を設けるかどうか、これもいろいろと議論があると思うのですが、 いかがでしょか。ドナーの年齢、レシピエントの年齢も含めて。 ○松井班員 いまはないですので、現場で判断されていると思うのですが。 ○有井班長 それはドナーですか。 ○上本班員 ドナーです。私たちには直接かかわってはこないのですが、アメリカの状況 を留学生に聞いてみましたら、公的な記述はないらしいです。最高齢は91歳まで使ってい るので、設けなくてもいいのかなと思うのです。その都度肝生検すると。 ○有井班長 レシピエントにはドナーの情報は一切入らないのですか。 ○上本班員 全部入ります。 ○有井班長 レシピエント年齢とかも入りますか。 ○上本班員 入ります。 ○松井班員 これを書いたのは私なのですが、ほかの臓器はドナーの年齢制限は書いてあ るので、一度議論しておいたほうがいいかなと思います。なぜ肝臓はないのかと。ほかの 臓器は理由があるのだろうと思うのです。 ○有井班長 心臓なんかはありそうですね。 ○井原主査 50歳です。ただ、望ましいという形で、それぞれ年齢で一律ということでは なくて、コロナリーの状態を見ながら判断されていると聞いています。 ○上本班員 肺はなかったですか。 ○井原主査 肺が70歳です。 ○上本班員 「望ましい」ですね。 ○有井班長 やはりそのような表現ですかね。 ○向坂班員 ドナーになったら、肝臓はいいけれども心臓は捨てられるのかな。 ○有井班長 ここでそこまで決めなくてもいいと思うのですが、年齢制限はどうでしょう か。これも今度議論をしたいと思うので、先生方にはデータを集めていただいて。 ○古川班員 実際にアメリカで使っていましたね。80歳代でも肝臓の機能を見ながら、肝 機能が上がらなかったら使いましょうとかいうことで、使っていました。ただ、ドナーは 年齢がいったほうが、あとのプライマリーノーファンクションとか、弱いので、それはあ ります。 ○有井班長 最終的には「望ましい」という形に落ち着くのかなと思いますが、何歳で望 ましいか。 ○古川班員 肝臓は年齢のない臓器と言われていますから。 ○川崎班員 柿のようにポンと落ちるわけではなくて、徐々に悪くなるのです。病理の先 生に言わせると、肝臓の寿命は200年と言われています。心臓は50年です。 ○有井班長 どうして心臓は50年なのですか。 ○井原主査 冠動脈の動脈硬化性病変が進み出すのが50歳という。 ○古川班員 腎臓とか心臓は動脈硬化で必ずやられるのです。肝臓も動脈硬化を起こすこ ともあるのですが、門脈支配もあるので、あまり影響しないことがあります。肝臓の動脈 硬化はそんなにはないです。 ○有井班長 これは次回に持ち越しますが、いろいろな意見は伺っておきたいと思います。 あと小児ドナーの年齢については、松井先生から何かお考えはありますか。 ○松井班員 これは難しいです。脳死判定にかかわります。猪股先生はどのようにお考え でしょうか。 ○川崎班員 肝臓固有の問題ではないですよね。 ○有井班長 そうですね。これも横並びですね。 ○井原主査 脳死判定を行う年齢についてではなく、その臓器が移植に適するかどうかの 基準についてご検討いただければと思います。 ○梅下班員 医学的にはないですね。 ○猪股班員 今回はレシピエントの基準に関してだけで、サイズマッチングは全然考えな くていいのですか。レシピエントの主治医の判断で、全部任せておけばいいということも ありますが、先生が大変かなと。 ○古川班員 アメリカは、レシピエントの登録をするときに、ドナーは体重は何キロから 何キロまでだったらいいという枠を必ず申請しているのです。日本もそれをやるようにし たらどうなのかと思います。原則的には、例えば、何もなければレシピエントは体重の2 分の1から2倍くらいの範囲ですが、レシピエントがそれを変えたい場合は変えられるよ うにして、申請を出しておけば、それより外は全部除かれます。  アメリカはレシピエント側も肝臓の大きさを測っているのです。レシピエントの肝臓の 大きさ、体重を見ながら、この人は合いそうだからということで選んでいたのです。アメ リカはものすごく太った人とか、中でもものすごく差が大きいので、そのようにしている のかなと思ったのです。いまのところは日本でそのようなことはないのですが、小児が入 ってくると、体重などである程度は制限するほうがいいのかなと思っています。 ○松井班員 ボディウエイトレーションとかやっていますよね。 ○猪股班員 いや、大きすぎるというか、子どものドナーが出たときに、大人に上げると いう逆の場合です。これは小さすぎるから断わるという人が続いてくると、時間が大変か なと思うのです。 ○有井班長 特に小児ドナーの場合ですね。 ○川崎班員 個々の症例の登録のときに規定するほうが現実的ですよね。 ○古川班員 それがいちばんいいと思います。主治医側が規定して、ここからここまでと 言ったほうがいいと思います。 ○有井班長 それはここに書くのではなくて、どこかでそのようなことがわかるようにし なければいけません。 ○古川班員 ネットワークに登録すると動けるという。 ○有井班長 ネットワークに書く書類に、そのような項目を入れておくということですか。 ○古川班員 はい。 ○猪股班員 そうであれば、事実的な年齢制限はここに書かなくてもいいのではないかと 思います。 ○有井班長 下はですね。 ○猪股班員 はい。 ○有井班長 いまの流れは、上に関しては設けなくてもいいということですが、また次回 に決定したいと思います。  最後に「備考」です。「摘出されたドナー肝については、移植前に肉眼的、組織学的に観 察し、最終的に適応を検討する」となっていますが、これはいいですね。  いまの議論を踏まえて、レシピエント選択基準及びドナーの適用基準については、現時 点での改正案の作成をお願いしたいと思います。 ○大竹補佐 わかりました。本日ご議論いただいた内容を踏まえて、また事務局から案を 提出させていただきます。これから各臓器の作業班が始まるので、その中での議論と整合 性を保つ部分があると思いますので、そうしたことを随時ご相談させていただければと思 っています。 ○有井班長 それと非常に重要な問題で、国が法律を作っただけで現場に丸投げされると 困るのです。法律に伴ったインフラの整備なり、手当を平行してやってほしいと思います。 例えばそのコーディネーターなど、いろいろな意味でスタッフも不足しているのだと思い ます。あるいは我々が毎週やっている適応評価委員の委員長の負担についても、全くボラ ンティアでやっています。いまでも数は相当多いのですが、これがどんどん増えると大変 なことになる。長妻大臣にも。法律を作っただけで、我々に丸投げされると困るのです。 ○峯村室長 ご意向は十分に承りました。体制整備はしっかりやらせていただきます。ま た、いまお話にありました学会レベルでやられている適応評価のようなあり方についても、 臓器毎の、先生方のご意見も伺った上で、どういった形で進めたらいいのかも。いままで そういった議論もしていなかった経緯がありまして、それは申し訳なかったと思っており ます。また引き続き、必要なご意見がありましたらお寄せいただければと思います。 ○有井班長 国としてはこのような法案を作ったということは、とにかく脳死をやりたい というか、そういう方向にいっているわけですよね。 ○峯村室長 臓器移植対策室という立場から言えば、移植医療の推進は基本にあります。 それは適正なレシピエント、ドナーの選択の下でやるということですが、そういった中で の必要な体制整備、それはコーディネーターだけではなくて、もっと広い意味で体制整備 について目を向けていく。 ○有井班長 どれだけ増えるかは想像もつかないのですが、長い目で見たら現場の外科医 の負担が増えることは間違いありません。そのときに、いまの体制では移植外科医は疲弊 し切ります。ボランティア精神で何とか持っているのです。手術は大体夜中で、翌日は普 通の業務をやるのが日本の外科医です。その辺も何とかお願いします。 ○峯村室長 そこを受け止めた議論をいままでしていなかったので、今後ともいろいろな 意見をちょうだいして、考えていきたいと思います。 ○向坂班員 脳死の臓器提供施設に対して大きなものをしないと、進歩すればするほどチ ェック項目も増えて、彼らは本当に疲弊していきます。 ○峯村室長 それ以前にレシピエント登録等を含めて、移植医療にかかわる皆様方の数も 非常な数になりますし、その中で負担をできるだけ軽減できる形で知恵を出していきたい と思います。またよろしくお願いします。 ○有井班長 是非お願いします。今日はありがとうございました。 【照会先】  厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室  代表 : 03(5253)1111  内線 : 2366 ・ 2365