09/10/27 第3回臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班議事録 第3回 臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班 日時 平成21年10月27日(火) 15:30〜 場所 経済産業省別館1111号会議室 ○長岡補佐 定刻になりましたので、ただいまより第3回「臓器提供に係る意思表示・小 児からの臓器提供等に関する作業班」を開催させていただきます。議事に先立って資料の 確認をさせていただきます。資料は「親族優先提供に係る論点についての整理」です。参 考資料として「親族の範囲について」「脳死した者の身体からの臓器提供の標準的なフロー チャート」です。また、第1回作業班の際の参考資料をファイルに綴じて、各班員の机の 上に置いておりますので、議論の際にご活用いただければと思います。以降の議事進行は 新美班長にお願いいたします。 ○新美班長 前回までの会議で、非常に密度の濃いご議論をいただきました。その中で親 族への優先提供の意思表示に関する諸課題については、概ね議論の俎上に載せることがで きたかと思います。そこで、本日はこれまで2回の作業班において、皆さんから出されま した意見を取りまとめた資料を基に、さらに議論を深め、本作業班としての意見ないしは 見解を集約していきたいと考えております。なお、前回に引き続きまして、参考人として 日本臓器移植ネットワークのコーディネーターである芦刈淳太郎さんと、大宮かおりさん に参加していただいております。実務に携わる立場からのご発言をいただければと思いま す。  議事に入ります。過去2回の議論の中で、親族への優先提供の意思表示に関する論点に ついてご議論いただきました。その中で、最後に議論が中途となっていた、親族の確認手 続については、事務局を通じて皆さんのご意見をいただき、資料にまとめていただきまし た。事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○長岡補佐 資料の6頁の4番です。前回の作業班では、親族の確認の方法としては、公 的証明書によることがよいのではないか、という部分から議論を始めております。その場 合に、公的証明書が入手困難なことがある。そういう場合にはどうするか、ということの 議論に入るところで終了となったかと記憶しております。本日は、この点について事前に 各班員からご意見をいただいておりますので紹介いたします。  検討課題の部分ですが、公的証明書が入手困難な場合のあっせん手続ということで、そ の場合の論点は、このような公的証明書が入手困難な場合、どのような条件下でレシピエ ント選択の開始を認めるかというものです。ここでいただいた各班員のご意見を大きく2 点挙げております。1点目は、その時点で提示可能な公的証明書、これは写真入りの免許 証やパスポートを確認し、それを基礎として手続を開始し、事後的に公的証明書によって 追完する方法が考えられるのではないか。2点目は、親族からの証言を得た上で、それを 基礎として手続を開始し、事後的に公的証明書によって追完することが考えられるのでは ないか。こちらのご意見についてこれからご議論いただくわけですが、その際に参考資料 の2枚目の「標準的なフローチャート」が参考になるかと思いますので、併せてご覧いた だきながらご議論を賜れればと考えております。 ○新美班長 ただいまの説明を基にご議論いただきます。これまでにいただいた意見は、 とりあえず入手可能な公的証明書、あるいは親族からの証言でまず確認し、事後的に公的 証明書で追完する。いわば公的証明書が完全に揃わなくても、さまざまな資料で確認でき る範囲で、親族の確認ができた段階で手続に入っていくということでいいのではないかと いうご意見だと思います。その点についてさらにご意見がありましたらお願いいたします。  例えば、現時点の実務で、遺族であるかどうかの確認をすると思いますが、それはどの ようにしているかをお伺いいたします。 ○芦刈参考人 現在、家族に関しての確認は公的証明書で確認しているわけではありませ ん。家族の関係を、それぞれの証言によって確認している状況です。 ○新美班長 公的証明書でなくても、家族だということで現場に駆けつけます。その方々 の意見の中で、どなたが中心人物で、どなたが関係者かというのは自ずと大体わかってく るということでよろしいですか。 ○芦刈参考人 はい。 ○新美班長 そのときに、最終的な同意なり何なりを得るのは、誰か1人中心人物を決め てまとめていただくことになるのですか。 ○芦刈参考人 そうです。祭祀主宰者になり得るキーパーソンの方に、中心になって承諾 をいただきます。 ○新美班長 それを行うときに、何か不都合なり何なりを経験されたことはありますか。 ○芦刈参考人 特にありません。離婚した家族がいたり、事実婚の家族が同席することは ありますが、主たる承諾者にはなり得ないということで、それはほかの親族の方に主たる 承諾者になっていただくことは配慮しています。 ○新美班長 その現場で、親族関係がどういうものであるかは事実上把握できると。公的 証明書を特に取らない現状でも大体わかるということですか。 ○芦刈参考人 はい。 ○新美班長 いまの現場の実状を併せてご意見がありましたらお願いいたします。 ○町野班員 確認なのですけれども、このフローチャートを拝見いたしますと、コーディ ネーターが来られて、そこで提供意思の確認を遺族にします。家族への説明と意思確認承 諾書作成というのがあって、その段階で一般の場合はネットワークのほうへ行くわけです ね。 ○芦刈参考人 はい。 ○町野班員 そこのところで、同時に親族優先提供の意思表示が見つかった。そして家族 もそれでOKと言っている段階で、そこで既にネットワークのほうに行くのでしょうか、そ れとも親族関係を確認してからということになるのでしょうか。 ○芦刈参考人 行くというのは、出向くということでしょうか。 ○町野班員 ネットワークのほうへ連絡が行くときに、提供意思を持っていますというこ とで、遺族も承諾されました、ということでネットワークのほうに行って、そこでレシピ エント選定の準備に入るのですか。 ○芦刈参考人 ネットワークに連絡が入る時点は、上から4つ目のネットワーク・コーデ ィネーターの説明を聞く意思があるかどうかの確認の時点ですから、承諾をするかどうか というより、話を聞くという時点で連絡が入ります。それで家族が説明を聞いた後に承諾 ということになります。 ○町野班員 つまり、ここのところで提供の意思を持っているということで、それで準備 に入るのが、家族への説明と意思確認承諾書作成、その時点でもう1回それが行くわけで しょう。つまり、最初のところで意見を聞く気持があるかということだけであって、それ は承諾ではないですから、後のほうで承諾の意思表示があって、それで提供されることに なります、ということの承諾はここで行くわけですね。 ○芦刈参考人 はい、そうです。一度で説明と承諾までいただくこともありますし、説明 した後に家族の方が少し時間を置いて考えるということで、時間を置いて承諾ということ もあります。 ○町野班員 それで承諾されることになるのですが、そのときに親族への優先提供の意思 があったときに、そのことも併せて、その時点でネットワークのほうに承諾の意思がある ということを伝えるのでしょうか。つまり、提供の意思を持っているけれども、親族優先 ですと。指定された親族の中で、ネットワークに登録していなければ駄目だという前提で 始まっていますから、次には本当に親族関係があるかどうかという話になるわけですが、 その確認はどちらがするのかということです。ネットワークのほうですることになるので すか。 ○芦刈参考人 まず臓器提供施設に出向いたコーディネーターのほうで、親族優先提供の 希望があるということを家族から把握し、その時点で実際に相手先の親族が登録している かどうかも含め、誰ということを把握しないと確認できませんので確認します。それで、 ネットワークのデータベースと照らし合わせて、そういう方がいるかどうかの確認は必要 になります。 ○町野班員 それで問題になるのは、公的な書類をどこが探すかということです。コーデ ィネーターがネットワークを介して探すということになるのでしょうか。 ○芦刈参考人 公的な書類を、ネットワークが探すか、コーディネーターが探すか、それ とも家族が探すかということでしょうか。 ○町野班員 つまり、どこかでなければいけないという話なのですけれども、実際にやる のはネットワークがやるということですか。 ○新美班長 ネットワークでは入手不可能です。戸籍は取れないです。 ○芦刈参考人 ネットワークではできないです。 ○町野班員 それでは、どこがやるのですか。 ○芦刈参考人 これは私の意見ということになりますけれども、家族の方が入手するのが いいと思います。 ○町野班員 家族にやってもらうということですか。 ○芦刈参考人 はい。手続として、それは家族が役所に行って入手するものであって、第 三者が入手できるものではないと思います。 ○町野班員 そうすると、臓器提供の意思表示がある。してくれるかもしれないというの で、コーディネーターが出向く。そこのところでいろいろ説明した上で、承諾の意思があ るという話になる。その段階で承諾書をすぐ作ってしまうかどうかは別として、とにかく そこのところで親族優先提供の意思表示があったときには、そのことも併せてネットワー クのほうに連絡が行く。同時に、ネットワークのほうでそのような人が登録されているか どうかを見て、もしあったときには、提供者との親族関係の有無については、家族の方に その書面を入手してもらう。これは、戸籍謄本を探してもらうことになるという段取りで 理解してよろしいでしょうか。 ○芦刈参考人 おそらくそういう段取りになるのではないかと思います。現実は、そのタ イムフレームの中で、戸籍謄本が入手できるのかどうか、というところが1つ大きな問題 になります。 ○町野班員 医学的なことなどを聞きたいのですけれども、時間がかかる場合というのは、 土日などではできないということですか。 ○芦刈参考人 戸籍謄本の入手そのものが、例えば夜間、休日などの場合に入手できるの かどうか。時間的要素もありますけれども、もう1つは、本籍地から入手しなければいけ ないという問題が出てきます。東京で入院していて、家族がみんなそこに集まっている状 況の中で、北海道から取り寄せないといけないということも発生してくると思います。 ○町野班員 土日だとか休日の対応、あるいは夜間の対応というのは特例でやってもらう ことはできないのでしょうか。それは、これからの問題だろうと思いますけれども、絶対 に不可能ですか。 ○芦刈参考人 特例がなければ、現実的にその時間内で入手するのは不可能だと思います。 ○町野班員 いまそれはできないという話だろうと思いますけれども、将来やらなければ いけないのかと思うのです。 ○峯村室長 ネットワークの場合は、まだこの実務が発生しているわけではありませんの で、なかなかお答えにくい部分があるかと思います。短い時間で、しかも土日・休日とい うように、公的証明書を取ることが難しい場合に、どのような取扱いをするのかという点 について工夫していかないといけないだろうと考えます。特に関係性というのでしょうか、 親族関係を確認するというのは、親族優先提供の際の基本になりますので、その際の確認 のときに基礎となる公的証明書を入手することが短い間にできない場合にはどのような仕 掛けで講じていくのかということを検討する必要があると伺っております。 ○町野班員 論点にありますとおり、入手困難なときとありますから、そのときに何か代 わりの手段を使うという話なのです。入手困難な場合はどのような場合であるか、という 問題を議論しておかないことにはこっちに入れないということです。あとは、どれぐらい の時間を待つことができるかということですが、それはどうなのでしょうか。 ○芦刈参考人 この流れの中で言いますと、承諾をいただいた後に、法的脳死判定を2回、 6時間の間隔をあけて行います。その手続のために、法的脳死判定を遅らせるということ になってしまいますと、それは2回目の脳死判定の終了時刻は死亡時刻になりますので、 恣意的に操作をすることになりかねないです。そういうことを考えずに、法的脳死判定を 2回行って、その後にレシピエント選択は死亡確認後、レシピエント選択移植施設への連 絡を行います。その時点までの、いままでの平均時間は大体10時間以上になります。 ○町野班員 この箱でいうとどこになりますか。 ○芦刈参考人 真ん中の、家族への説明と意思確認承諾書作成のところから、2つ下の死 亡時刻の確定、レシピエントの選択、移植施設への連絡の横並びのところまでの平均を取 りますと10時間ちょっと、10時間以上になります。ですから、レシピエント選択、移植 施設への連絡の時点で、その親族の方が候補になっているかどうかということが明確にな るわけですが、それまでの間に公的証明書が入手できればいちばんベストです。当然書類 で確認できるのがベスト、理想的ではありますが、現実で10時間を考えますと、夜で、朝 一番にその書類を取り寄せるというのがギリギリで、例えば週末や連休に差しかかってし まいますと、現実はその時間の中では困難になってくるのだと思います。 ○町野班員 家族への説明と意思確認承諾書作成ができないと、次の法的脳死判定に入ら ないという話ですから、そのときまでに証明書が来るか来ないかここでストップしている ことになるのですね。 ○芦刈参考人 公的証明書が確認できなければ、承諾書を作成してはいけないという手順 になるのであれば、いま先生がおっしゃったとおりです。 ○町野班員 つまり、少なくとも法的脳死判定に入れないということですね。 ○芦刈参考人 はい。 ○町野班員 つまり、本人の承諾書があったとしていいかもしれないけれども、親族優先 提供ということであると、そちらの親族に優先提供のことをするわけだから、そのための 現行法では、脳死の場合、臓器提供ができるときについてであって、心臓死の場合も同じ ですから必ずしもあれではないけれども、とにかく脳死判定に入れないということですね。 ○芦刈参考人 逆に言いますと、脳死判定承諾書、臓器摘出承諾書の2つを家族に署名し ていただいて、その2通に関して受理すれば、第三者への臓器提供に関しては進められる ことになりますので、法的脳死判定に入ることは可能です。 ○町野班員 それが私はちょっと疑問なのだけれども、それでいいのか。親族の中にAさ んがいて、この人がネットワークに登録されている。その人に提供のための脳死判定の手 続に入っていいのか。まだ親族かどうかもわからないわけでしょう。 ○芦刈参考人 親族優先提供というのは、第三者への提供が前提であって、親族は優先さ れるという可能性がある、それを希望するということで、一階部分と二階部分という考え 方をしますと、一階部分に関しては進めるという考え方もできる。それは、コーディネー ターが判断することではないと思います。 ○町野班員 それは、ここできちんと議論しておかなければならない問題だとしますと、 いまのようにその方が親族かどうかわからないけれども、親族でなかったときについては、 そちらは空振りに終わって、一般的なネットワークに乗るのだから、いずれにせよ臓器移 植はできるのだから脳死判定に入れるということで、待つ必要はないという話になります ね。 ○新美班長 いまの実務を前提とすれば、そういうふうだというご意見ですね。 ○町野班員 まだ、それは実務として現れていないので、それを確認しなければいけない という話だと思います。それによって、公的証明書がなければ駄目かどうかということの 議論というのはかなり変わってくるという話ですね。 ○芦刈参考人 はい。 ○新美班長 ほかに確認しておくこと、あるいは意見はありますか。 ○水野班員 議論の前提を確認すると、ここで親族の確認が必要になっているのは、親族 に承諾するかどうかというのを聞く対象の親族ではなくて、レシピエントとなる親族との 関係ですね。私は、締切りに遅れて意見を送ってしまったものですから会議資料の書面に は出されていないのですが、それは慎重に公的証明書で立証させるのが原則だろうと思い ます。もし時間がなくて駄目だということならば、駄目でもしようがない。親族提供のド ナーになる人は、戸籍謄本をいつも持っているというぐらいでないと駄目ということにな るほうが安心だと思います。  これは繰り返しになりますが、ドナーカードで意思確認というようなシステムでこれま で安全にやれていたのは、臓器が誰に行くかということは誰にもわからない、どちらも匿 名で、それを偽造するインセンティブがまるでないいう状況が条件としてあったからです。 今回の改正で親族提供が認められたことにより、偽造のインセンティブがいっぺんに生じ てしまいました。どなたかが脳死状態になりそうだということになると、その親族にレシ ピエント候補者がいるときには、危ないと言って病室に呼ばれたときに、ドナーカードを 偽造して、病室の枕元の引出しに滑り込ませることは誰でもできることになります。  親族提供が可能になったがゆえに、これまでとは意思確認の方法はガラッと変わってし まったと考えています。偽造、変造、なりすましなどの危険も山のように出てきてしまい ました。親族優先提供を覆せないのだとすると、できるだけ親族優先の意思確認というの はハードに要件をかけておくほうがいいと思います。これまでも、親族優先意思の部分と いうのだけは、少なくともネットワーク登録という形で、事前にきちんと登録をさせるの が原則だというふうにしないと危ないと申し上げてきました。  ここでの考え方として、親族関係をどうしても立証できないと、それは気の毒だという よりも、それぐらい重たいハードルをかけておかないと、少なくとも親族提供の部分は実 現できないというふうにしたほうが安心という気がしております。証明書でサインをさせ て、後で追完させるよりも、公的証明書がそこで入らなければ親族には行かない、だから ドナーは親族優先にしたいのであれば、戸籍謄本ぐらいはドナーカードと一緒に持ってい るぐらいのほうが安心でしょう。これは、丸山先生がいらっしゃったら、またご異論のあ るところだろう思いますが。 ○新美班長 そういうときは、多くの場合通常の実務ですと6カ月以内に取り寄せたもの というような制限をかけることが多いのですが、ここでは古くても構わないというのが水 野さんのご意見ですか。 ○水野班員 そこまでは詰めて考えておりませんでした。 ○新美班長 とにかく、戸籍謄本があればいつの時点のものでも構わないというぐらいで すかね。 ○本山班員 気になるのは、主たる承諾者になり得る親族と、レシピエント登録をしてい る親族が重なっているときに、その人に承諾をさせていいのかどうか。いま、優先提供さ れる親族は狭くしようと考えていますけれども、親がドナーで、子どもがレシピエントの ときに、親が事故で脳死状態になって、子どもが駆けつけてきた、それで子どもがレシピ エント登録をしていたときに、その子どもの承諾なり何なりでゴーサインというのでいい のかどうかというのが気になっています。 ○新美班長 いまの点は、手続としてレシピエントたる者が承諾の主になっているような ときにはどうなるのかということです。いまは完全に分離されているからいいとして、そ ういう可能性はゼロではないときにどうするかという議論もあるわけです。 ○町野班員 いまの問題については、どうなるのだろうかというシミュレーションですよ ね。これは、いままでのところ、いろいろな所から伺っていると、承諾権者として適当で ない人間は外れていることになっていたと思うのです。それは、プライバシーの問題もあ るから出てこないのですけれども、将来の問題としてどうなるのか。事実上は外れた上で、 そのことがわかった上で、コーディネーターは把握しているわけですから、そのようなこ とで同意を取り付けられるのではないかと思うのです。「俺はどうしても審議に入りたい」 と言われたときにどうするかという問題もあります。法律的にそれが除かれるかというと、 その解釈は難しいけれども、実際の運用ではそうなるのではないかと思います。その辺の 実務はよくわからないのですけれどもどうなのですか。 ○芦刈参考人 実際上は、ほかに主たる承諾者になり得る親族・家族がいればその方にと いうことになります。親族に当たる近い人が1人しかいない可能性も出てきます。そうい う場合に、レシピエントの候補になり得る人は駄目だというふうに一概にしてしまうと、 現実に手続を進められないという矛盾に陥ってしまうのです。 ○町野班員 理屈としてはそれもありますね。いままでに、同意する親族が1人だけだっ たことはありますか。 ○芦刈参考人 通常の臓器提供の中ではあります。 ○新美班長 しかも、承諾しなければレシピエントの選択もしないわけですから、登録し ているだけで外すなどということはちょっと無理です。当事者になるかどうかも言えない わけです。例えば、自分の臓器に適しているかどうかも全然わからないときにですから、 それは祭祀主宰者であるかどうかで区別せざるを得ないのではないですか。登録している だけで外すということはしていないですよね。  だから、いま本山さんが出した問題も、親族優先提供の意思があるとしても、まさにレ シピエントの選択そのものの手続は始まっていないので、可能性があるというだけであっ て、利害の当然の当事者と言えるかどうかは、かなり詰めた議論をしないとまずいという 気がします。 ○町野班員 ただ臓器提供のそれですから、その前にレシピエントが決まっていないから できないという話は、理屈としてはないのですよね。そのときに、もしかしたら私が貰え るかもしれないというようなときにどうするかという話です。先ほどの話のようなことで いいと思うのですけれども、親族優先提供の意思表示というのは、まず最初に一階があっ て、すべての人に提供する意思を持っていることだとするならば、そこのところで進めな いという理屈はないだろうと思うのです。だから、そこでは開始すると考えざるを得ない のでしょう。そのときに、もしかしたら私は貰えるかもしれないという人間をどうするか という問題です。それをまとめるのはガイドラインによると、誰か1人がまとめるという 話ですから、もしそのような人が夫だとか、そういうところでまとめるような人間だとす ると、確かにその人から外れてもらうようにコーディネーターがおっしゃるのではないか。 そして別の人になってもらうわけですが、別の人がいないときには先ほど言ったように問 題ですけれども、別の人になってもらって、その人の中でまとめてもらう。もちろん本人 が貰いたいという意思を聞くこともあるだろうと思いますけれども、そういうことでまと める方向になるのではないか、というのが現場を知らない私のイメージです。 ○芦刈参考人 例えば、配偶者に移植が必要であって、子どもがいるということであれば、 子どもに承諾者になっていただくということは現場では当然可能です。 ○町野班員 私が聞きたいのは、自然発生的にまとまって、誰かがまとめて話をコーディ ネーターとするというのではなくて、コーディネーターと話し合いながら、おそらくそう いう格好になっているのが現状ではないかと思うのです。 ○芦刈参考人 そうです。逆に言うと、その配偶者が移植を受ける可能性があるので、息 子さんが主たる承諾者になりますか、ということを家族に問いかけることもあります。 ○町野班員 取りまとめの役を果たしてもらうかという話になる。 ○芦刈参考人 はい、そうです。 ○町野班員 本山先生、そんなことでいかがですか。 ○本山班員 もう1点は、いままで優先提供される親族がドナー登録をしていることが前 提でしたが、駆け込み登録というのはさせないということなのでしょうか。 ○新美班長 医学的な必要性がまずあるわけだから、駆け込み登録は駄目というわけには いかないのではないですか。移植が必要な病状であるということが第一にあるわけですか ら、それを駆け込み登録だから駄目というセリフは出せないです。 ○本山班員 脳死に至るような事故が発生した段階で、レシピエント登録がされていない としても、脳死判定までにというか、レシピエントの選定がされるまでに、レシピエント 登録をしておけば、それは対象になり得るということでいいのでしょうか。 ○町野班員 フローチャートで、いちばん最初にネットワークへ行くのは、家族への説明 と意思確認があって、承諾書が作成された段階で行くわけですから、その時点までに登録 されていれば事実上乗るというわけですね。ネットワークのほうの実務として、レシピエ ント登録までの時間はどのぐらいかかるのですか。 ○芦刈参考人 どこから登録と捉えるかですけれども、ネットワークに書類が届いた段階 から登録をするというのはそれほどかかりません。腎臓以外の臓器に関しては、その評価 が必要になってきます。中央でその評価の委員会があり、その中を通さないといけません ので、その手続は1日とか2日で終わるものではないです。データを揃えて、そこに送っ て評価をして、その結果が返ってくるということですので、通常では1週間とか2週間は 少なくともかかるような状況です。 ○町野班員 名前を登録するだけでは済まなくて、その人の医学的なデータである、血液 型だとかRHだとか、その辺を全部コンピューターの中に入れ込む作業が完了していないと、 家族がOKをして、ネットワークに行ったときにそれはできないという話ですね。だから、 駆け込みといっても、明日から大丈夫という話ではないだろうということですね。 ○芦刈参考人 そうです。 ○山本班員 親族の公的証明書の件なのですが、これはレシピエントのほうの情報からで もいいわけですよね。 ○新美班長 親族関係が確認できればです。 ○山本班員 レシピエントが登録するときに、公的証明書を一緒に登録させることは考え られないのですか。提出させる。 ○新美班長 いま、レシピエント登録にはそういうデータは入っているのですか、入って いないのですか。 ○芦刈参考人 入っていません。 ○新美班長 入れるとなると、レシピエント登録のところに戸籍謄本なり何なりの情報を 入れておけということを要求したら相当な作業になりますか。 ○山本班員 PDFファイルか何かで入れておけばいいのではないですか。 ○芦刈参考人 公的証明書の登録をするということと、本人の意思表示ということがセッ トと考えられますよね。 ○山本班員 レシピエントのほうですよね。 ○新美班長 ドナーのほうで、親族の証明もしなさいという形で捉えると、レシピエント 登録では難しいということです。 ○芦刈参考人 事務的には煩雑になります。例えば、公的証明書だけをレシピエントのほ うに登録していれば、それで完了しているという、非常に大きな誤解が発生する可能性を 実務上は危惧します。 ○新美班長 ドナーのほうに合わせておけというと、水野さんのように、いつでもいいか らとにかく取っておけという意見が他方では考えられる。それが大きな負担になるかどう かということです。 ○町野班員 私は、山本意見というのはあまりよくないように思います。もし全員がこれ をやるようになったら、みんな親族優先提供のほうに振れてしまいます。 ○山本班員 しかしながら、これがある以上やるわけです。 ○町野班員 そちらのほうに誘導するかどうかの問題です。やるほうの問題としてはかな り圧迫を感じます。 ○山本班員 実際既に圧迫になってしまうのではないか。 ○町野班員 例えば私がドナーカードを書くときに、私の妻がレシピエント登録をした。 そのときに親族のほうがそれを全部出しているという話になると、それで私のあれが振れ ることはないだろうか。しかし、出しても出さなくても同じだと、登録しているというこ とだけでそうなるのだと言えばそうかもしれないです。いま一瞬ちょっと思ったのだけれ ども。 ○山本班員 そういう危惧は確かにあるかもしれません。 ○新美班長 ただ、レシピエントの親子、あるいは配偶者であれば、親族優先が認められ るとなれば、そちらに振れるのは放っておいても振れると思うのです。 ○本山班員 いまの話は、前から水野先生がおっしゃっているように、親族優先提供の意 思表示をどういう形でさせるかということとすごくかかわっているのではないかと思うの です。前から話が出ていたように、どこかできちんとコンピューター上でアクセスをして、 それできちんと登録させて、場合によってはそのときに郵送か何かで戸籍謄本もネットワ ークに送って、それが全部揃ったことによって、親族優先提供の意思表示がされましたと。 小さなカードに親族優先提供をしますというようなものをイメージするのか、非常に高い ハードルの手続をイメージして、その中にそういう公的証明書も取り込んでしまうのかと いうことによって、かなりやり方は変わってくるのではないかという気がいたします。 ○新美班長 いまの議論の方向としては、町野さんが提起したように、入手困難な事態と は何なのかというところから始まっていると思うのです。水野さんの意見だと、入手困難 な事態は避けられると。優先提供の意思表示をするのだったら、あらかじめ謄本を用意し ておけというやり方が1つある。それを認めないとするならば、現実問題としては、遠隔 地だとか、休日が重なったときには、入手困難な事態が出てくる。そのときには、いまの 意見では、とりあえず手続を進めて、追完ということでどうだろうかというふうに意見が 分かれていたと思います。 ○町野班員 その前に、本当に入手困難なのかということです。休日でもできないことは ないのではないかという話なのです。 ○新美班長 これは戸籍実務ですから。 ○町野班員 もしやる気があるのなら、そこまでやることだってできるだろう。それは役 所に対して無理な注文だと言われるかもしれませんけれども。それから、遠隔地であって 原本は届かないにしても、ファクスでも大丈夫だろうと思います。それは現在のシステム で本当に不可能なのかということが1つです。水野先生が言われるように、いつも持って いろというのはかなり難しい話だと思うのです。出てこなかったら諦めるという話はなか なか言えません。 ○新美班長 そのときには、いま言ったようにレシピエント登録ではなくて、ドナー登録 でなければいけないと言えば、ドナー登録のときに出させておくという手はあります。 ○町野班員 そうすればいいのですけれども、しかし今回はドナー登録のほうについては、 一遍に間に合うような状況ではないですから、それも将来のことを見据えるという話は確 かにありますけれども。もし、いまのようなことで休日でも電話をかけて、すぐファクス を送れば済むような話にしておけば、問題はほぼ氷解するわけでしょう。  いまのことはあれだろうと思うけれども、次にどこの手続が止まってしまうかというこ とです。先ほどの議論では、この四角の中で、家族への説明と意思確認承諾書の作成のと ころで、親族の優先について、親族関係についての何かあれがないということになると、 法的脳死判定には行ってもいいのではないかという意見でした。そして、法的脳死判定終 了で、死亡時刻の確定までいってしまっていいということになるわけですね。もし、ここ からまだ進められるという話になると。そうすると、法的脳死判定の下の四角のところか ら出ているところから見て、親族関係の確認ができていないということだと右側に行くと ころで止まるのですか。 ○芦刈参考人 止まるといいますか、そこまでで止めるかどうかです。そこで止めなけれ ばいけないという議論であればその辺になります。 ○町野班員 止めなくていいのですか。止めないでいくと、ここに行って、そこから先は レシピエントを誰か決めなければいけないですから、それをやっていいという話は絶対に ないですよね。この時点でやったところ、親族とされている人間についてはクリアして、 次には移植できますという話にならざるを得ないですから、そうなったときにインフォー ムド・コンセントの手続に入ったら取り返しがつかないです。止めるとしたらその前とい うことになるので、おそらくこの時点で止めざるを得ないのでしょうね。そういう理解で よろしいですか。  そちらのほうのあれもあるだろうと思いますけれども、困難であったときにどの時点で 不都合が生ずるかということです。困難な場合があるかのということが1つと、何か改善 できないだろうかということが1つと、どういう不都合が生ずるかということが2つ目の 問題で、その2つは分けなければいけないだろうと思います。そして、止まったときにど ういう不都合が生ずるかという話です。 ○芦刈参考人 実際に止まったときの不都合としては、最も不都合なのは、提供される本 人の状態が悪くなって、循環動態が維持できない。 ○町野班員 レシピエントのほうですか。 ○芦刈参考人 ドナーのほうです。それで提供できなくなるということが起こってきます。 ○町野班員 ドナー管理のほうで問題が生ずるというのは、脳死の場合どのぐらいの時間 ですか。つまり、法的脳死判定で、死亡時刻の確定から、次の手続に入るまでの間、臓器 にもよるでしょうがどれぐらいは許されるのですか。 ○芦刈参考人 通常これまでの81例を見てみますと、平均で10時間程度は、循環動態と しては維持されていますので、それぐらいの時間は許されます。それが2日とか3日にな ってくると、現実的に維持はできないことになります。 ○町野班員 法的脳死判定のほうに入って、そして死亡時刻の確定までは入れるが、その 後で止まり得るわけですね。親族関係が確認できないときには止まらざるを得ないわけで すね。 ○芦刈参考人 これは手続のことですから、どの時点で止めるかというのは。 ○町野班員 前のところで止めてしまおうということも理屈に合わないだろうというのは ご指摘のとおりです。法的脳死判定から、レシピエントの選択、移植施設への連絡、この 時点で確定できていないのに行ってしまうと具合悪いのではないでしょうか。ここは止め ざるを得ないのではないですか。 ○新美班長 いまのは、どういう資料で確認するかということで、公的証明書がなければ 確認できないという立場をとれば、町野先生のおっしゃるとおりです。 ○町野班員 それはそうです。だけど、確認できないときはどうするかなのです。 ○新美班長 確認できないときにはどうしようもないです。ですから、いろいろな証拠資 料で確認できたらどういうかというのと。 ○町野班員 そうではなくて、証拠資料でも確認できないときもあり得るわけです。 ○新美班長 それはあります。 ○町野班員 仮にどの時点で止まるかということがいちばんの問題なのです。止まったと きにどれぐらいのタイムアローワンスがあるかという問題です。だから、どのようにして 確認するかというのはまた別の問題なのです。 ○芦刈参考人 公的証明書が確認できなければ、レシピエントの選択、移植施設への連絡 はできないというルール決めをするのであればその時点で止まります。例えば法的脳死判 定に入ってはいけないというルール決めをすればその時点で止めることになります。どの 時点で何を確認しないといけないかということが決まった段階での話になると思います。 ○町野班員 親族関係を証明する証明書等が必要とされるのは、最初の家族への説明どう のこうのです。この時点で手続は止まるわけではないという話でしたよね。止めなくても いいのではないか、それはおそらくそうだろうと思うのです。 ○峯村室長 それは止まるのではないですか。 ○芦刈参考人 公的証明書の確認ができなければ、承諾書をいただかないと手続は。 ○峯村室長 承諾書がいただけませんので、この段階で止まると思います。 ○町野班員 私が言っているのは、家族への説明と意思確認の承諾書作成の時点で、親族 のそれがなければ止めますか。 ○峯村室長 この時点で家族承諾が取れないと。親族関係が確認できないということであ れば、基本的には止めざるを得ないのだと思うのです。ただし、そういう確認をする後で、 先生方の意見で出てきているものとしては、何らかの形で公的証明書等で確認ができたり、 あるいは遺族、家族の証言等で確認をして、その上で追完するということであれば進むこ ともあり得るということなのだと思います。 ○町野班員 要するに止まるわけで、それが先ほどから議論しているところなのです。も し親族への優先提供の意思を持っていると。しかし、そのときに親族でなければ提供でき ないかというと、そうではないだろうという話ですよね。 ○山本班員 確認できなくても、第三者に回る可能性があるわけです。 ○町野班員 あるわけですから、ここでストップする理由はないのではないかという意見 があったので、私もそれはそうだと思ったのです。その点をご議論いただくことが必要で はないかと思うのです。私が申し上げようとしているのは、もしこの時点で止まらないと いうことだと、止めなくてもいいということだとするならば、最終いつまでに間に合えば いいかという話に次はなるわけです。そうしたときに、承諾書作成から法的脳死判定に入 って、法的脳死判定が終了までの間平均でどれぐらいかかっていますか。 ○芦刈参考人 終了までの間は10時間ちょっとぐらいです。 ○町野班員 法的脳死判定終了まで10時間ぐらいかかって、その先は止めざるを得ないだ ろうと思うのです。向こうに行ってしまったらえらいことですから、これは止めざるを得 ない。10時間ぐらいのタイムアローワンスが仮にあるとすると、20時間あるわけです。そ れはかなりきついですけれども、そうすると最初の時点で始まって、その時点からあれを 取り寄せて、手続をやってみて、それで間に合わないということがあるのかなということ がもう1つのあれなのです。もし間に合わないことがあるということになると、次に追完 などの問題が出てくるのです。追完できるからいいではないかという議論はないだろうと 思うのです。ベストなのは、戸籍謄本だとかそういうものがあるのがベストなので、それ をまず探すのが道ではないか。その点は水野先生と同じ意見なのです。 ○芦刈参考人 いま先生がおっしゃったように、ベストだという状況を考えますと、法的 脳死判定が終了して、移植施設に連絡、つまりレシピエント候補に連絡をするまでの間に、 公的証明書によって親族関係が確認できる、ということがベストなのは間違いないです。 そこで確認できなければ止めるのか、そこは入手困難な場合を例外として認めるのかとい うことにはなるかと思います。 ○町野班員 室長のような考え方を仮にとると、もっと早い時期になければいけないです から、これはかなり大変です。そこから先は法的脳死判定にも入れないのですから。 ○山本班員 いまのお話だと、20時間以内ということですね。その間に取れないというこ とはあるのですか。 ○峯村室長 それはあり得ると思います。 ○町野班員 いまの状態では、おそらくそれはあるでしょう。 ○峯村室長 シルバーウィークとかゴールデンウィークとかであれば取れないです。 ○町野班員 だから、それをなんとかできないかという話です。 ○新美班長 いま、戸籍事務は基本的に市町村ですね。 ○本山班員 基本的には本人か家族、あるいは職務で弁護士とか。 ○山本班員 休みには取れなかったですか。 ○本山班員 戸籍は取れないです。住民票なら取れるかと思います。 ○町野班員 いまやっているのを変えるかどうかでしょう。現状を前提にして議論すべき かどうかということが1つあります。 ○本山班員 机上の空論かもしれないのですが、私は、レシピエントの選定というのは順 位で何人かが出てくるものだと理解していたのです。もしそうだとすると、この人は証明 はされていないけれども、親族であろう人を含めてリストを出すのと、その人を除いてリ ストを出すというのはたぶんできますよね。 ○芦刈参考人 現時点ではできないですけれども、そういうふうに設計すればできます。 ○本山班員 選定しましたということをレシピエントに連絡するかどうかは別として、作 業だけすることはできるような気がするのです。 ○町野班員 それが、実際にはどうなっているか。 ○芦刈参考人 おっしゃるとおり、内部的にそういう作業はできます。 ○町野班員 もしその考え方をとると、いまの書類がなくてストップする場面というのは、 レシピエント選択、移植施設への連絡まで行ってしまっていいということですか。これは できないでしょうね。 ○芦刈参考人 その前までです。 ○町野班員 そうだとすると、私が先ほど言ったことですよね。 ○芦刈参考人 ただそのリストはできているので、その証明書が確認できれば、すぐ次に 移れるということです。 ○町野班員 だから中で一度あって、候補者の順位が付いていて、ただ具体的な施設への 連絡はまだ行く前であって、それが確定したところで行くわけですから、そこのところは 書類が揃っていないのなら止めざるを得ないのではないかというのが私の意見です。だか ら、止まるのは先ほどの法的脳死判定終了、死亡時刻の確定から、右への矢印のところで 止まるというイメージかなと思ったのです。前の法的脳死判定との間のところで止めるべ きだという考え方もあります。それは、いちばん最初に確定しておかないと、どういう具 合になるかということです。 ○水野班員 町野先生のご質問というのは、第6条の家族の承諾というのが、第6条の2 の親族への優先提供まで含んだ上での承諾でなくてはならないかどうかということですか。 家族が反対していないということですよね。 ○町野班員 ここのところでそれはできるだろうと。 ○水野班員 私も、OKでいいと思うのですけれども、先ほどの室長の回答だと、家族の意 思確認承諾書の中身が、第6条の2についてまで含んだ意思確認だという解釈だったらこ こで止まってしまうわけです。 ○町野班員 そうです。だから、そういう解釈ではないだろうというのは前回も議論した ところで、一階と二階の議論なのです。 ○水野班員 私もそうではなくていいと思っているのですが、ともかく家族としては臓器 提供をしてもいいというだけの判断で手続を先へ進めてもいいとは思います。 ○町野班員 それでもせいぜい10時間ぐらいですから、やはり先ほどの問題は残るのです。 行政のほうとしても、これからいろいろやってくださるとは思うけれども、どうしても間 に合わないということはあり得るだろうということは考えておかなければいけないです。 そのときに駄目としてしまうか、それとも追完を認めるのかという話になるのだろうと思 うのです。 ○水野班員 私は、駄目でいいのではないかと思っているのですが、通らないかもしれま せんけれど。なるべくこの部分はハードルを高くしないといけないでしょう。進めていく しかないとは思いますが、これはトラブルがいろいろ出てくるだろうと思います。本山先 生が先ほど言われた利益相反の問題だけではなくて、親族たちも、親族優先というのが当 然目の前にちらついているときに、それを拒絶するのか、承諾するというのかという選択 は、いままでのような純粋な承諾の意思ではなくなってしまいますので、大変難しい問題 がたくさん出てくるでしょう。この間の議論で、親族の範囲を限り、親族の中での順番は 完全に医学的なもので決まるという意見が優勢だったものですから、私が当初抱いていた、 すごい悲惨な、長男と、次男と、三男が大喧嘩するという地獄のような事態はどうもなく なったようなので少しはホッとしています。それでも「こいつに行くのならいやだ」と言 ったということの、言われた側の問題というのがあります。逆に、一般提供だったら、お 父さんの身体をそんなことに使うなんて耐えられないと言って断るはずだったのが、お兄 ちゃんが「お前、まさか承諾しないということはあり得ないだろうな」と言ったがために、 泣く泣く承諾したのだけれども、そのことのPTSDとか、そちらのほうの問題も出てくるだ ろうと思います。ですから、コーディネーターのご苦労はこれまでの比ではなくなるだろ うとは危惧しています。 ○町野班員 そのときに、公的証明書があれば、少しは楽になるという話ですか。それも、 少しはなくなるかなと。戸籍にもちゃんと載っている親子ではないかとか、それは少しあ るでしょうね。 ○水野班員 それと、ドナーカードの滑り込ませというような事態も考えられますし、い まは何が起こるか予期ができない状態です。パラダイムの転換が起こって、いままでの運 営が全部通用しなくなってしまいましたので、できるだけ弊害を少なくする方向で努力す るしかありません。これならば大丈夫だ、ということは絶対に言えないのですが、できる だけ親族優先というのはリジットにリジットに設計をしていって、事前にみんなが覚悟を していて、はっきりわかっているというシステムを作り上げていくしかない。それだと弊 害は少し減らせるのではないかと考えています。 ○新美班長 いまのお話ですと、結局は親族優先提供をするかどうかの判断の時点までに は、公的証明書は用意しておきなさいということになりそうですね。いま言ったように、 事実の確認で持っていって、後で公的証明書が出てこなかったときに、一体どういうふう に考えるのかという問題にも絡むわけです。いつまでに出せばいいという問題ではなくて、 結局出てこないということも理屈ではあり得ますので、そのときにどうするかということ です。 ○町野班員 私は、いつまでというのをまず確認してもらいたいと思います。最初のある 時点だとするとかなりきつい話なのです。いずれにしても問題が起こることは確かですけ れども、それは前提問題としてやっておかないと。10時間は大丈夫だろうという話にもし なるとすると、10時間の間に努力して何ができるかという話です。もし、これが最初の段 階で何かしようとすると、かなり緩い資料で認めざるを得ないという話にどうしてもなっ てしまうだろうと思うのです。 ○山本班員 一階の部分があるわけですから、先生が言われるように、私もレシピエント の選択までいけるのではないか。 ○町野班員 選択の前までですね。 ○山本班員 選択の前まではいけるのではないか、というのが論理的だと思います。 ○町野班員 そうしたときに謄本が間に合わないことがあり得る。これから行政もいろい ろ努力するだろうと思いますが、やり方として、これは官庁ではないけれども、何か法律 の手続に従ったあれですから、もうちょっと便宜を図ってしかるべきだとは思います。だ けど、それは一遍にできる問題ではないのかもしれないので、それは考えなければいけな いのです。代わりのものとして何が考えられているのですか。写真入りの免許証とパスポ ート。これは何のために。写真が入っているということは、同一性というのは、本人であ るということがわかるというのですが、親族関係の確認は含んでいないですよね。 ○峯村室長 各個人個人、これは班員の先生方のご意見ということでご紹介をさせていた だいておりますので、要は簡便に入手できるその時点での証明書で、とりあえず確認をす るのか、あるいは親族からの証言なり、あるいは何か書面での記載をした上で手続を進め る、というご意見が多かったということです。その際に、公的証明書、戸籍抄本等のよう なものを追加をしていただくというイメージです。写真入りの免許証、あるいはパスポー トについては、それ単独で関係性がわかるのかというところがあるのですが、それを複数、 来られている家族の間で突き合わせることによって、関係性を可能な限り確認をしていく ということを、先生方の意見として出されているということです。 ○新美班長 免許証は、ICになったら本籍は直ちには表示されないので、前の免許証です と本籍地が出ているから、本籍地が一緒であるということであれば、戸籍の同一性が確認 できるだろうということですね。ただ、いまおっしゃられたように、親族関係というのは、 そこでは当然には出てこない。本籍地が一緒だということしかわからない。 ○町野班員 写真が入っているかどうかということは、簡単に言うと同一性の確認ですよ ね。要するになりすましで、私が水野先生になりすますなどというので、写真を見ればわ かる、違うではないかという話なのです。それだけなので、それはおそらくこんなものが なくても間違えることはないでしょう。どうですかね。 ○芦刈参考人 現実的には、通常の医療現場の中の1つと同じ延長線上にありますが、病 院に入院されている患者は保険証を持って入院をして来られて、それでカルテを作る。我々 はカルテを確認していますので、そういった意味では本人確認はしていると考えられます ね。 ○町野班員 同一性の確認はできて、そこから辿って、これだから同一性の確認ができる この免許証の人だということになると、親族関係も例えば住所とかいろいろなところから 話を総合して何とかできると、そういう話ですよね。やはり謄本だとか、それに代わる。 ○芦刈参考人 代わりにはならないです。 ○町野班員 代わり得るのではなくて、それを認識させるような、本当に親子かなとか。 ○芦刈参考人 同一であれば可能性はありますけれども。 ○町野班員 そうですね。だから、ずっと一緒に住んでいて、謄本を取ってみたら実は違 うということはあり得るわけですよね。それはちょっとどうしようもないという話ですね。 ○水野班員 一緒に住んでいる家族であれば、住民票で大丈夫なわけですね。それで立証 は可能ということになりますね。 ○峯村室長 そうですね。 ○水野班員 そうすると、住民票はいつでも取れるでしょうか。 ○峯村室長 住民票は休日でも取れる。 ○水野班員 そうすると、住民票が一緒でない親子の場合に、立証が戸籍謄本しかないと いうことになりますか。 ○芦刈参考人 住民票に関して1点確認なのですが、私が知識不足なのですが、例えばこ の前にありました養子ですとか、そういった関係はどのように表示されるのでしょうか。 確認は現実できますか、できませんか。できないですか。 ○新美班長 それは識別は不可能ですね。 ○芦刈参考人 そうしますと、住民票では不十分になりますか。 ○水野班員 住民票の続柄表示は、どうなっていましたか。 ○町野班員 子です。 ○水野班員 全部、子だけですね。養子と実子は区別つかないですね。 ○町野班員 日本は戸籍制度がちゃんとしているから、これほど完璧なものはない。おそ らく、これを頼りにすればいいので、これに代わるものはなかなかないですよね。いずれ にせよ、あとからそれを出してもらうことは絶対必要ということになるだろうと思うので すが、その前にいつゴーサインが出るかという問題で、これがいちばん現場で困られると ころだろうと思いますから。ここで2つポツがあるのですが、あとのほうのポツは周りの 証言だけをやると。これだけだと、これはかなりおっかないですね。そうすると、上のほ うがそれほど大きな意味があるかどうかわからないけれども、少しやりやすいのかなとい うことです。 ○峯村室長 いまネットワークの方が来られていますが、現場で確認をされている内容と して考えると、ドナーについては当然、入院施設のほうで本人の確認についてもされてお ります。当然その情報はネットワークのほうにも来る形になっている。レシピエントにつ いては、なりすまし等を防ぐためという観点で、ここの1番目のポツに書いてあるように、 写真入りの免許証やパスポートで本人確認という形で、そこを確認をさせていただく。そ の情報についても、あとを追ってネットワークのほうには来る形になる。その上で関係性 を類推する作業を行うということです。その上で、可能な限り関係性を推定した上で、手 続を進めるというのではどうかというのが班員の先生方の意見だったと考えております。 ○町野班員 つまり、ドナーの同一性とレシピエントの同一性の確認は、なくてもやらな ければいけない話でしょう。親族提供とは直接の関係はないのですよ。だから、親族関係 を証明することについては別なので、それがいま非常に問題なのですよね。 ○峯村室長 それを前提として、なおかつ2番目のポツに書いてある親族からの証言。当 然、関係性は名入りの証明書等で可能な限り推定はするのですが、なおかつ証言を踏まえ て、補強していくという形でやったらどうかというご意見だったと理解しております。 ○水野班員 そうすると、1番目のポツというのは、なりすましの問題に対応するので、 いわば親族関係については何も確認しないということですから。 ○町野班員 ただ、それだって例えば同じ住所だとかそれで、「かな」という程度なのです よね。 ○峯村室長 補強の材料にはなる。 ○町野班員 そうですかね。いろいろ事件を見ていると、そうでもなさそう。同じ所に住 んで、親子と思ったら違ったというのがかなりあります。若干の手掛かりという程度です よね。だから、もし認めるとなると、上のだけでも十分でなくて、下のほうも入らなけれ ばいけないという話ではないでしょうかね。免許証を持っていれば大丈夫という話では、 なかなか行きづらいだろうと。 ○水野班員 それはそうです。最低限2番目も入らなくてはいけないと思いますが、でき れば公的証明書がいちばんいいなと思います。 ○峯村室長 当然、両方セットでやっていくというのが望ましいのではないかなと思って います。 ○水野班員 公的証明書がなければ駄目というのは、やはり過激でしょうか。 ○町野班員 過激でしょうかと質問です。それは現場のほうに。 ○水野班員 できるだけハードルを高くするほうが安心のような気がするのですが。 ○町野班員 ただ、前にも申し上げましたが、生体移植のときは、そんなに緊急性がない 場合がありますから、要求しても、なりすましも、もちろんあり得るのだし、そういうこ とを考慮して、かなり慎重に進めるという可能性はあったわけですね。こっちの場合はど うもそうではないので、脳死の場合は特にそうですね。心臓死の場合はどうなのですか。 死亡の宣告から、もっと長いのですか、短いのですか。 ○芦刈参考人 事例によりますので、呼ばれた、連絡が入った直後に心臓が止まってしま うという事例もありますし、何日も、1週間、2週間などということで、長い事例もありま すので、これも一概に言えないです。レシピエントの選択のところまでということを考え ますと、採血をして、HLAの検査の結果が出るまでの時間を考えますと、7、8時間ぐらい の時間になりますので、その時点でレシピエントが候補として上がるということになりま す。 ○町野班員 主に腎臓が問題なのですが、腎臓の場合のほうが脳死の場合よりも、待機時 間というのはむしろ短いと理解して、よろしいですか。つまり、10時間は少なくとも脳死 判定があって、片方は心臓死判定があるから、死の判定があってから、脳死の場合につい ては10時間がせいぜい待てるということで、これがタイムリミットだという議論ですが、 例えば心臓死、腎移植の場合については、どれぐらいになるのでしょうか。 ○芦刈参考人 その心臓死までの時間というのは、もうこれは不確定ですね。それで、そ の心臓死のレシピエント選定までの時間を考えますと、7、8時間ですので。 ○町野班員 それはむしろ短いわけですよね。 ○芦刈参考人 はい、10時間よりも短いです。 ○町野班員 ですから、いま脳死のことしか我々は頭の中にないけれども、むしろ状態と して現れ得るのは、腎臓だとかそちらのほうの臓器の場合。前のときもそうだったわけで すから、そっちのほうなので、もうちょっと時間的には切られると。脳死の場合について は慎重に、心臓死の場合は慎重でなくていいという議論はないですから、やはり同じに考 えなくてはいけないと。というと、やはりリミットは死の判定から7、8時間というところ ですかね。 ○新美班長 まず整理をしていくと、水野説のように、あらかじめないと駄目という、要 するに法的脳死判定にも入らないという意見。 ○町野班員 いやいや、法的脳死判定ではなくて。 ○新美班長 でも、ドナーの親族優先提供の意思表示をしたら、持っておけという趣旨だ ったでしょう。 ○水野班員 それはそうですが、レシピエントの選択のところまでは進んでいいというこ とです。そこでウィークデーではなくて、戸籍謄本が取れないから、親族優先については 駄目というのは、やむを得ないと思います。それを嫌だと思うぐらい強い意思でもって、 きちんと謄本を用意しているような方でないと、親族優先という部分については、ともか く駄目にしようということなのです。 ○新美班長 要するに親族提供をするためには、もうその時点で提供するかどうかの判定 のときには、公的証明書がなければ駄目ということになるのですね。 ○水野班員 公的証明書は、レシピエントの選択のところまで行ってから、その間にちゃ んととってあったのが出てきたと、お父さんが持っていたのが引出しの中から出てきたと いうことだったら、それでOKでしょう。家族への説明と意思確認承諾書のときに、戸籍謄 本がなければ駄目とは申しません。 ○芦刈参考人 そこまで出てこなければ、第三者のほうに回るという。 ○水野班員 第三者のほうに回るということです。 ○町野班員 心臓死の場合のフローチャートというのはここにはないけれども、死の判定 のあとは同じと考えていいわけですね。 ○芦刈参考人 そうですね。法的脳死判定のところが心臓死に代わるということですね。 ○町野班員 心臓死の判定になって、そこから先は同じなので、だから止めるべきだとす るのはそこから先だと。親族優先提供の意思表示があって、親族関係の確認のための書類 がなかったら、どこで止めざるを得ないかというと、そこだと。 ○芦刈参考人 1つ違うのは、法的脳死判定のところが心臓死に代わりますが、実際にレ シピエントの選択、移植施設への連絡は、心臓死の前に行っています。実際に心臓死した 時点で、摘出チームが病院で待機をして、すぐに摘出ができる状況にしないと、現実的に は提供に至らないです。 ○町野班員 わかりました。レシピエントは、そこからあとでもいいわけですね。 ○芦刈参考人 そこからあとの場合もあります。 ○町野班員 可能性はあると。 ○芦刈参考人 はい。 ○町野班員 ということは、要するに摘出の段階でかなり早くからなるわけだから。 ○新美班長 摘出のときに、まだレシピエントが決まっていないということはあるのです か。 ○芦刈参考人 決まっていない場合もあります。 ○新美班長 タイムラグはどのぐらいですか。 ○芦刈参考人 おそらく8割以上は、摘出の段階でレシピエントは決まっています。先に 摘出になった場合、レシピエント選定はHLAの結果を待ちますので、その組織適合性の結 果が来る前に心停止が来してしまったという状況の場合は、先に摘出に入ってレシピエン ト選定を待って、選ばれたレシピエントの移植施設に搬送することになります。 ○新美班長 そうすると、心臓死なり死亡判定を待って、それでゆっくりとレシピエント 判定をするということは、あまり考えていない。 ○芦刈参考人 そうですね。 ○新美班長 ほぼ同時並行的には進めることは進めるということですね。そうすると、あ まり時間的余裕があると思っては困ると。 ○芦刈参考人 そうですね。余裕はないですね。 ○新美班長 そうしますと、いまの話ですと、レシピエント選定の前までには公的証明書 が必要だという見解と、そのあとでも追完されればよろしいという考え方が2通りあると 思いますが、その点はいかがですか。追完という意味では、基本的にはレシピエント選定 のあとでも、補ってもらえればいいと捉えればいいと思うのですけれども。 ○本山班員 追完ということは、追完がいつされるかという問題もありますが、追完がさ れない状態のままで、当然、摘出、移植に至って、至ったあとから追完されることもあり 得るわけですよね。結局、追完されないこともあり得るわけですね。 ○新美班長 それはある。 ○本山班員 そうすると、やはり尻抜けになってしまう可能性があるなと。追完というこ とだけだと、歯止めがきかなくなるようにも見えるのですけれども。 ○町野班員 だけど、追完されないことはないでしょうね。戸籍がどこにもないというこ とは。 ○新美班長 いや、だから起こるかということもある。 ○町野班員 いやいや、だから追完できなかったということは、実は違っていたというこ とでしょう。 ○本山班員 そういうことです。 ○町野班員 ですから、追完できないというよりは、そういうリスクを覚悟するかという 話ですよね。要するに治癒できなかったという話ですからね。それはしょうがないのでは ないですか。そのようなリスクを背負い込むのが絶対認められないなら、もう水野先生の ような見解になるし、ということですよね。だから、それが過激でしょうかという話にな るので、先生も過激になるかなと。 ○水野班員 親族提供意思をどのように確認していて、登録させていくかということとも、 パラレルな問題ではあるのだと思います。先ほど山本先生が言われたように、親族提供意 思登録をいろいろ工夫して、厳しく厳しくするということだと、ここをそれほどこだわら なくてもいいかもしれないですが、前提としてそれは保障されていなかったと思います。 たとえばドナーカードに親族優先で○をつけるだけいうような意思表示はとんでもない方 法で、とても採用できないと思いますが、それでもOKだという判断すれ現在ではありえて、 そういう甘い意思表示は一切許されないという前提ではなかったように思います。そうだ とすると、あとのところをできるだけ厳しくしないととても危ないという危惧が、私の判 断の背景にはあります。 ○新美班長 いま言ったようにリスクをゼロにするということが必要だというか、要する に親族でない者に結果として優先提供されてしまったというリスク、可能性が低いにして も、それをのむかどうかというのが1つです。これが大きな方針決定で、ゼロリスクでい くというのは、いまの段階では私は現実的ではないのではないかという気がするのですけ れども。そのゼロリスクでないということの非難の矛先は、真っ先にネットワークに向か うことになると思うのですが、そのときにどこまで手を尽くせば、ネットワークとしてエ クスキューズできるかという問題だろうと思うのです。ですから、それがきちんとエクス キューズできないようだったら、初めから厳格に公的証明書がなければ進まない、という ことにいくしかないと思うのですけれどもね。 ○町野班員 いずれにせよ、それはやはり問題が起こりますよ。厳格にそれでやらなけれ ばいけないということで、親子であることははっきりしているのに、どうして駄目だった かという、それは起こりますから、これはどっちもリスクはあるのですよ。だから、ゼロ リスクでいけというのは、慎重論の論者が言っただけであって、慎重論だろうと実はその ときに何かやっているわけですよね。 ○水野班員 そういう意味の攻撃は親族提供を認めた段階で不可避です。すごい圧力がこ れからネットワークにかかるだろうと思います。その圧力から現場を出来るだけ守る手続 きを設計することえを設計することを考えるべきで、圧力に負けるのもやむを得ないとい うことでは、臓器移植システムは崩壊するでしょう。 ○新美班長 そういう意味では、基本的には事実としての親族の有無の確認といいますか、 それはできるかどうかの問題で、いまの話ですと、証言を聞いたり、さまざまな付属書類 を見ることで、相当程度、親族の関係というのは埋まると。公的証明書というのは、いわ ば駄目押しで、あとで見るということになると思うのです。要するに、まさに公的証明書 というのは、証拠の価値として見ると。それが絶対的な証明ではないというように捉える ならば、先ほど来、元に戻りますが、さまざまなパスポート等と、要するに本人確認です ね。本人確認のための資料と親族の証言。これも複数の親族が出てくるでしょうから、そ の証言で納得するしかないということになろうかと思いますが、その辺はいかがですか。 ○町野班員 私は、もうそれしかしょうがないのかなと思います。ただ、やはりガイドラ インを作るときに、コーディネーターの方がどの範囲でしなければいけないかを明確に書 いておかないと、このままではおっかなくて、誰もできないですよね。 ○芦刈参考人 いまおっしゃったように、どこまで確認をすれば十分なのか。そこの確認 が不十分なら、コーディネーターが確認不十分だったということを責められる。私だけで はありません。ほかのコーディネーターも含めて、そうやって責められる可能性はあると いう状況は非常にやりづらいですね。結局は、リアルタイムで本当に公的証明書を確認で きないというのであれば、それはそのリスクは背負わざるを得ないのですが、最小限にす るためにはどうしたらいいのかということになります。 ○町野班員 同時に、結局いまのようなことになるとしても、公的証明書といいますか、 戸籍抄本だとか、その入手のあり方について、やはり行政のほうでも努力を何か。それを まずやることが必要だし、先ほどの山本先生のご提案のように、あのときは悪い考えだと 思ったけれども、もしかしたらいいのかなと思うようになったのですが、レシピエント登 録のときに、これから提出してもらうというのは、1つあり得る話かなという具合に思い ます。それらを考慮した上で、こういうところかなと思います。過激になれなくて申し訳 ないです。いつもだと、水野先生以上に過激だと私は思っているのですけれども。 ○水野班員 過激に激しくしておく方が、コーディネーターの方のご苦労が、むしろ減る のではありませんか。ここでその線を決めてしまえば、「ともかく公的証明書を出していた だかないことには駄目なのです。そう決めているので、いたしかたありません」とコーデ ィネーターが言えるということで、負担は減るだろうとは思うのです。 ○新美班長 いまの考え方ですと、基本的にはすべてのレシピエントにそれを要求するこ とになるわけですね。 ○山本班員 むしろそのほうが合理的なのではないかという、いまのご議論を聞いている と。 ○町野班員 ただ、これから謄本を付けなければレシピエント登録を認めませんというわ けにいかないですからね。ですから、事実上これからお願いするという話であって。 ○水野班員 そのことのデメリットとして、町野先生が最初に言われたように、レシピエ ントが登録時に親族関係の公的証明書を出すとしたときには、その親族に親族優先提供の 圧力等をかけておくという問題は出てくるかもしれません。いずれにせよ、かかるでしょ うけれども。 ○芦刈参考人 レシピエント側に公的証明書の登録ということになりますと、レシピエン トから見ますと、親子・配偶者の範囲で考えますと非常に限られていますが、それでも数 人いますので、数枚の公的証明書が必要になったりということも考えられますし、親子関 係、ドナーとなり得る方が登録をされていませんので、その公的証明書が誰のどういった 意図なのかということは全くわからない状況の中で、ただ書類が送られてくるという状況 が、事務的なところで想像されるのです。そうなりますと、このドナーのこの公的証明書 がこのレシピエントとつながっているということを、全部確認をしていく作業が発生して きて、この証明書では駄目だとか、いいということを、また連絡をしなければいけないと いう状況も発生してくるのかなと思います。ですから、かなりマンパワーが必要なことに なります。 ○水野班員 親族関係の関係を事前登録で確保するという制度設計だったら、レシピエン トではなくて、やはりドナーだと思います。ドナーが親族優先意思を登録するシステムの 中に組み込んでいくということが妥当でしょう。 ○新美班長 それはいますぐには難しいということですから、将来の制度としてはそちら へ向けるとして、当面のところでは多少の穴があることに目をつぶって、どうするかとい うことになると思うのです。これまでのご意見を伺った範囲で、さらにどこまで関連資料 と親族関係の確認のための各証言を得るかというのは、なお程度問題として難しい問題が あるなということですかね。具体論ではなくて、方法として、こんなことと、こんなこと をしなさいというのは、皆さんに意見で出してもらった2点で攻めていくしかないと。そ れをどの程度やるかというのは、まだちょっと詰め切れていないという気はするのですけ れども。どこまで証言を集めるかどうかというのは、ちょっといまの段階では詰め切れな いですよね。これはガイドラインにどの程度それを書き込むべきかという問題にもなるの ですが、そこまで詰めるべきだとは、事務局としては考えているのですか。 ○峯村室長 ガイドラインには、当然、親族関係の確認の内容については書き込む必要が あるのだろうと考えています。その際、親族からの証言といった場合をもし想定するので あれば、複数の証言を得て、また実務上は何らかの文書での確認というのでしょうか。そ ういうのをお願いした上で手続に入るということは想定されて、我々としていま頭に浮か ぶというか、想定している内容ということになります。 ○新美班長 ちょっとそれ以上は、ここでは詰め切れないですね。 ○町野班員 これからガイドラインを作られるときは、結局、臓器移植委員会のほうのそ れを得た上で作るわけですから、その段階では実務的な詰めというか、書き方をどうする かというのは、おそらく現場で相談された上で、もう1回出てくる話だと思うので、ここ のレベルではこれでいいのではないかなと思いますけれども。 ○新美班長 いかがですか。確認方法としては、いま事務局から言ってもらったようなレ ベルでやっていくと。なお、実務的な方策については、移植委員会のほうでの議論も踏ま えて詰めていくということになりそうですが、そのような了解でよろしいですか。この「親 族の確認方法について」というのは、最後もう一遍、事務局のほうでまとめて、それで確 認をいただくということにしましょう。 ○峯村室長 いま出た意見としては、1つは各班員の意見という形で出させていただいた、 何らかの書類で確認をする、あるいは親族からの証言を得た上で確認した上で手続を開始 して、事後的に公的証明書を追加していただくという考え方もありましたし、またあらか じめ親族優先提供の意思を表示する方は、親族関係にかかわる公的証明書をレシピエント 選択のときまでに示せる状態にしておくということでお願いをしておく、という意見があ ったかと思います。そのほかに、レシピエント登録という話もありましたが、大きな議論 としては、いまお話があった2点だったと理解をしております。 ○新美班長 親族の確認方法については、いまのようなまとめでよろしいでしょうか。こ の問題については、いま言った方向で作業班の意見として、とりあえず押さえておきたい と思いますが、よろしいですね。一通りこれで意見集約をしていただきましたら、確認の 意味で、これまでご議論いただいたところを再度、振り返ってまいりたいと思います。ま た資料に戻りますが、1の「親族の範囲等について」から、ご説明をいただいて議論にし ていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○長岡補佐 資料は、これまでご議論いただいてきた4点について、各班員のご意見をま とめたものとなっております。順序は、1の「親族の範囲等について」、3頁の「意思表示 内容について」、5頁の「意思表示方法について」、この3点について順次、説明していき たいと思いますので、よろしくお願いします。  まず、1頁の「親族の範囲等について」は、検討の課題として3点、1つ目が「親族の範 囲」、2つ目がそれに関しての「養子」、それから「事実婚」の扱いということでご議論を いただいていたかと思います。論点ですが、「親族の範囲」部分からですが、臓器移植法に おいての「親族」の範囲について、制限を加えるとした場合、根拠も含めてどのような範 囲を考えるのか。それから、立法者意思で示された「配偶者及び親、子」と考えてもよい のかといったことを論点として、議論をいただいたかと思います。  次の右側ですが、「作業班の見解」ということでお示しをしております。1点目ですが、 民法における親族の範囲、これはその成立ちから広く設定されており、法的な権利義務を 与える範囲、これとしてはなかなか合理的な基準ではなく、これと同様にする必要はない のではないかというご議論をいただきました。2点目ですが、さらに臓器売買の防止等の 観点からは、範囲をできるだけ狭く解したらどうなのかということで、ご議論をいただき ました。この上で、3点目ですが、家族概念の最小単位としては「婚姻関係」と「親子関 係」が考えられることから、立法者による「配偶者及び親、子」との解釈は妥当ではない のかというご議論がありました。次ですが、このような形でかなり明確になっている立法 者の解釈を変更する十分な理由は見当たらないのではないかとのご議論をいただきました。 なお、※の部分ですが、移植医療の現場においては、兄弟への移植希望事例もあるといっ たことに配慮すべきではないかというご意見もいただいているところです。  次は「養子」です。論点ですが、以下の3点を踏まえ、どのように考えるかということ です。まずは、法律上、養子は「嫡出子」としての身分を取得し、血族間におけるのと同 一の身分関係を生じる。2つ目が臓器移植の基本原則、これは移植機会の公平性、任意性、 有償性といったところです。3点目は提案者意思ですが、強いきずなで結ばれた家族とし て自然に持つ心情への配慮。こういった3点を踏まえ、どのように考えるかということで、 ご議論をいただきました。  作業班の見解ですが、2点ご議論をいただいたと思います。成年養子を広く認める現在 の日本の養子縁組制度の下では、臓器売買等の危険性を考えると、養子については限定的 に取り扱うべきではないのかといったご議論をいただきました。2点目ですが、要件が厳 しく、実方の親子関係を終了させる特別養子縁組については、親族優先提供の範囲に含め ることとして差し支えないのではないかということで、ご議論をいただいたかと思います。  2頁の「事実婚」です。事実婚も、以下の3点を踏まえ、どのように考えるかという論 点が挙げられていたかと思います。1つ目が同居・協力・扶助義務など、夫婦の実質があ れば保障する必要がある、こういったものは事実婚にも認められること。2つ目は、相続 権など、取引の安全等を考慮し、画一的に決まる必要があるもの、これについては事実婚 には認められないこと。3点目は提案者意思ですが、先ほどの強いきずなで結ばれた家族 として自然に持つ心情への配慮。これらを踏まえどのように考えるかということで、ご議 論をいただきました。  議論の点ですが、右側に2点挙げております。1点目は、事実婚は法律婚と同様の権利 を認めるという流れにある。配偶者に含めないとするのは難しい。しかしながら、臓器移 植の場面において、事実婚は確認が困難であるということから、法律婚に限定すべきでは ないだろうかというご議論をいただいております。もう1点は、法律上の地位を差別する 趣旨ではないということですが、臓器移植においては法律婚に限定すべきではないかとい うご議論をいただいているところです。 ○新美班長 いま事務局のほうで、これまでの議論のほぼまとまったところについてご紹 介いただきましたが、なおこの点を議論すべきところがあるということであれば、ご意見 をいただきたいと思います。いまの意見は、「配偶者及び親、子」に限ると。子については 特別養子に限る。配偶者については法律婚に限る、事実婚は現実には難しい。そういう集 約ですが、いかがでしょうか。 ○水野班員 反対するわけではありませんが、「事実婚は確認が困難であることから」とい うことだけだと、十分に反論ができるかなという危惧は持っております。 ○新美班長 これは、移植の現場でという限られた時間での確認ということなのですけれ どもね。 ○水野班員 例えば住民票で「妻(未届)」と書いてあるものについて、なぜこれでは確認 できないのかという議論が出てきたときに、例えば「妻(未届)」という記載が十分安定的 なものではなく、なされているからだ等か、そのように事務局のほうでご説明いただく必 要があるかもしれません。夫婦別姓が通ればこのままでもいいような気がするのですが、 それが通っていない状態で氏、名前を失いたくないために事実婚でいる人々から、何らか の批判はきっと来るだろうと思います。それは相当、正当性はあるとは思っておりますの で、事務局のほうでご準備をいただく必要はあろうかと思います。 ○新美班長 その辺りの困難であるということの事情を、もう少しきちんと整理しておい たほうがいいということですね。 ○本山班員 私自身が考えていたのは、水野先生がおっしゃったこともそうなのですが、 重婚的内縁、いわゆる重婚的事実婚ですよね。配偶者が2人出てくるという場面もあるし、 実際に最高裁の判例などでは、おじと姪の事実婚というのがあるわけで、もし事実婚をそ ういったものに含めてしまうと、おじさんと姪の間で臓器提供を行えるのですかという話 になってしまうので、そういったのはレアケースだということはわかっていますが、現実 的に当事者が事実婚だと言って暮らしているパターンというのはいろいろなパターンがあ り得て、中にはそういった親族関係であるものが、事実婚だというように自分たちは思っ ているというケースもあるのです。そういった事実婚という外延の曖昧さということから しても、やはり今回はここに含められないのではないかと思っています。 ○新美班長 結論的には水野さんも反対されているわけではないし、どういう理由をつけ るかということですので、いまの本山さんの意見も踏まえて、事実婚については当面は見 送るということ、現時点では難しいだろうということで、集約させていただくということ でよろしいですか。ほかにご意見はありますでしょうか。 ○町野班員 私はそれで結構だと思うのですが、この中で売買の可能性ということが言わ れています。おそらく、これは生体臓器移植のときは十分あり得るけれども、こっちでは むしろ売買というか、お金のやり取りとか、経済的インセンティブで動くというよりは、 やはり自分にほしいとか、ただそれなので、これはあまり理由にはならないのではないか なと少し思います。  第2に、結局、今回のものは丸山さんが言われていたけれども、かなり親族という言葉 でやられたので、しかも前のときの経緯がありますから、これで結局前の、つまり臓器移 植委員会の決定、ガイドラインのそれを覆して、前のほうの要するに親族に優先提供でき るのだということをそのまま立法化したのだという具合に、受け取り方がかなりあるだろ うと思うのですね。丸山先生辺りはそう考えられているけれども、実はかなり考え方が変 わったということをやはり確認しておかないと、これは結局、親子に限るし、兄弟に限る し、親子の中に養子が入らない、事実婚は駄目ということです。それから、親族の範囲も それだけ狭めてしまってそうしているということが、どういう思想的な基盤を持っている かということは、やはり考えておかなければいけないと。私は臓器移植委員会でも、まだ これからいろいろ問題は出てくるだろうと思います。そこで、国会のときに示された考え 方というのは、1人の方の考えだから、それがすべてではないかもしれないけれども、や はり非常に近い関係で、生命共同体みたいなところに限定すべきだろうということは同時 に、これは法的な枠組みの中である生命共同体だという意識があるだろうと思うのですね。 だから、好きな人にあげられるという権利があるわけではないという。これは丸山さんが いないところで何回も言ってもしょうがないのですが、まさにそういうことだろうと思う のですよ。それは私の感想ですが、もちろん結論は私はこれで結構だと思います。 ○新美班長 それは前に議論したように、処分権があるわけではないという共通認識は得 られているかと思いますので。だから、丸山さんもそれを承認しながら、提供者の意思を 尊重するという名の下でおっしゃっているのですが、その辺の議論がまだ丸山さんとの間 では少しずれがあったということは、そのとおりです。いま町野さんがおっしゃったよう に、どういう理念なのかというのは、意見をまとめるときに少しきちんと書いておいたほ うがいいとは思います。結論的には、いまのような集約でよろしいでしょうか。いまの点 は確認する必要はないですかね。ここでまとめていただいた方向で集約ができたというこ とにしたいと思います。  続きまして、意思表示内容について、これまでのご意見をまとめたものをご紹介いただ きたいと思います。 ○長岡補佐 3頁の2、「意思表示内容について」です。これについては、検討の課題が5 つほどありまして、1つ目が特定の親族を指定することができるかどうかということです。 これが範囲内、範囲外ということで2つあって、親族へ限定提供という意思ができるかと いうことが次のものです。それ以外に年齢の関係が2つですが、親族優先提供の意思表示 が可能となる年齢、その意思表示に基づき臓器提供を受けることが可能となる年齢、これ ら5点について議論をいただいてきたと思います。  順次ご紹介しますと、1番目は特定親族、これは範囲内の方への指定ができるかどうか というところです。論点は大きな論点が1つあって、親族優先提供の意思表示内容として、 「親族」とのみ表示することとするのか、また特定の親族を指定する意思表示も認めるの かどうかということでした。これについての作業班の見解ですが、親族優先提供の意思表 示は、移植機会の公平の特例であることや、運用上のトラブルを防ぐ必要があることなど を踏まえて、親族提供の意思は、単に「親族」と表示することとすべきではないかという ご意見をいただきました。  論点に戻りますが、実際に特定の親族を指定する意思表示があった場合、どのように解 釈し取り扱うかといった観点についても、論点として挙げてあるかと思います。そこにつ いては、見解の2番目以降ですが、特定の親族を指定した意思表示があった場合には、順 位付けがある場合も含めて、指定された親族を含む親族一般への優先提供意思と解すべき ではないかという議論がありました。  3点目は、これは多くないというご議論がありましたが、優先提供の対象親族が複数人 となる場合です。この場合は、レシピエント選択基準に従って、医学的に優先順位を決定 すべきではないのかという議論をいただいております。最後に※として、なお、本人意思 の尊重を貫徹するというような立場から、特定の親族を指定した意思表示や、親族間で優 先提供への順位付けをした意思表示があった場合には、それを認めるべきではないのかと いったご意見もあったところです。  次は親族名、これは範囲外の方の親族名を指定された場合ということです。この論点に ついての見解ですが、親族優先提供の意思は無効として、臓器の提供意思は有効と解すべ きではないのかというご議論をいただきました。このため、一般的な臓器提供プロセスに 移行すべきではないのかというご議論でした。  次の頁の親族限定提供の部分です。これについては、親族への提供意思のみが表示され ている場合、これは限定提供意思ですが、この場合はどのように解釈し取り扱うか、とい うことで議論をいただきました。議論の内容ですが、親族優先提供の意思表示は、臓器提 供の意思表示に併せて行うことができるとされていることから、親族以外の第三者への提 供拒否の意思が明確に認められる場合には、親族への優先提供意思の前提となる臓器提供 の意思がないと解して、臓器提供プロセスに移行すべきではないというご議論をいただい ております。※ですが、先ほどの本人意思の尊重を貫徹するという立場から、親族のみへ の優先提供の意思表示も認めるべきではないか、というご意見があったということです。  その下の年齢の所です。1つ目が、親族優先提供の意思表示が可能となる年齢について、 どのように考えるのかという点です。これについては、親族への優先提供の意思表示は、 臓器提供の意思表示に併せて行うことができるということとされておりますので、現行法 の解釈のとおり15歳としてはどうだろうか、というご議論をいただいております。  最後ですが、親族優先提供に係る意思表示に基づき、臓器提供を受けることが可能とな る年齢について、これはレシピエントの側ですが、どのように考えるかということです。 これについては、臓器提供を受ける年齢について、現行法上は特に制限はないということ から、親族優先提供に係る意思表示に基づき、臓器提供を受けられる年齢も特に制限を設 けるべきではない、というご議論をいただいております。以上です。 ○新美班長 意思表示内容については、いま言ったような方向で、従来議論が収斂してい たということのご紹介ですが、なおご意見がありましたらお願いいたします。 ○本山班員 4頁の親族限定提供の所ですが、この場合だと二階を認めないし、一階も駄 目といった理解だと思うのです。臓器提供プロセスに移行すべきでないということは、も しこういった形でドナーカードみたいなものが出てきた場合に、おそらく病院からはネッ トワークに連絡はいくわけですよね。コーディネーターの方が駆け付けると。カードを見 ると、「誰々にしかあげません。ほかの人にはあげたくありません」と書いてあると。でも、 その段階でも、コーディネーターの段階で、これだったら臓器提供はできませんよという ことで、お断りすると。したがって、脳死判定にも何もいかなくて、あとは脳死判定をし ないのですから、心臓死を待っていただくということになるという理解で、よろしいので しょうか。 ○町野班員 いまのときは心臓死からの臓器提供もできないでしょう。 ○本山班員 だから、その場合、臓器提供はあり得ないということなのですね。 ○新美班長 ですから、ドナーカードへの書かれ方如何によるわけですよね。「絶対に嫌だ」 とか、「親族だけで他には渡さない」というような表記があれば、そうなるのですが、ドナ ーカードはややぼかして書いてあることが多いものですから、それ以外の場合には結局は ご家族に説明をして、対応をすることになるわけですね。 ○本山班員 私は、こういう親族限定というのは、結構出てくるのではないかと思ってい るのですが、その辺は先生方の認識はどうでしょうか。想像の話ですけれども。 ○町野班員 わからないですね。 ○水野班員 私はドナーカードによる意思表示でということについて、ずっと危惧をして おりまして、全部この親族優先提供部分は登録にして、それ以外は駄目ということにした いのですが、現在の段階で曖昧なものはいろいろ出てくると思うのです。それはできるだ け優先意思表示であると解釈をすることにして、明瞭に「限定」とあったときには、それ はこの前の段階までは新美説と町野説の間で、やや心が揺れていたのですが、その後考え まして、はっきり町野説、ここでまとめていただいた案のほうがいいと思うに至りました。 それはこれが周知されましたら、限定意思というのはすべて駄目になってしまうというこ とがはっきりしますので、そのほうがいいだろうと判断をいたしました。  それから、条文的にも第6条の2の前提になっている意思は、第6条の提供意思という ものが入っているという読み込み方の条文上の説明のほうが、説得力があります。これを 臓器提供を無駄にしない実益からという議論の仕方をすると、丸山先生のようなご意見に 対して抵抗しきれないかもしれませんが、条文の内在的な解釈として、それしかあり得な いということで筋を通すほうが、一番危険な事態、すなわち限定意思提供をかなえてしま う危険に対して、ガードできるだろうと思います。限定提供意思が臓器提供を不可能にす ることが周知されれば、親族だけしかあげないという意思表示は減るだろうと思われます し、それでもそういう意思表示をするということであれば、これは駄目だ、提供意思がな い、オプトアウトだということで、筋を通していいと思います。 ○峯村室長 これは事務局から補足ですが、水野先生と町野先生のおっしゃったことに尽 きるのですが、ここの2行目にも書いていますとおり、「親族以外の第三者への提供拒否の 意思が明確に認められる場合」ということで、第三者に対する提供自体を完全に拒否して いるというような、そういう明確な意思表示がされていた場合については、もともと法律 の構成上も、臓器提供の意思に併せて優先提供の意思を表明することができるという構成 になっています。そこは、優先提供を含めて、臓器提供の意思がそれについては認められ ないという扱いで、整理せざるを得ないのかなと思っております。  ただ、本山先生がおっしゃいましたように、例えば子どもにあげるとか、親にあげたい とか、お父さんにあげたいと、そういう場合を限定と捉えて全部ノーとするという趣旨で はありません。いま水野先生がおっしゃいましたとおり、そのような曖昧な部分について は、可能な限り親族優先ということで拾って、親族優先のプロセスのほうに回していく。 もう第三者にはあげないという、明確な意思表示が認められる場合については、このよう な取扱いにしてはいかがかという趣旨です。 ○町野班員 これも、おそらく多くの人の予想と違う結論なのですね。だから、そのこと はやはり理解しておかなければいけないのでというのは、臓器移植委員会のほうで私が出 て説明を求められるときの話で、先ほどからずっとこれがありますので、あとどうなるの かなと、かなり頭を抱えているところなのです。ただ、これはあまり突飛なあれではなく て、世界的な常識だということなのですね。イギリスで前に特定の人にあげるというので、 それは親族のほうから出た希望であったわけですが、そのことについて政府の委員会が問 題にして、今後こういう何か条件を付けられたものは、一切ネットに上げないということ で決断したわけで、これが実は世界基準なのですよ。イギリスが世界かどうかわからない けれども、そういう先例があって、多くはこれが妥当な考え方と、皆さん思ったわけです よ。ですから、日本が別に無情な世界というわけではなくて、こういうことでやはり臓器 移植というシステムが成り立っているのだということですよね。  もう1つあるのは、その人が親族以外にあげたくないということを言っていたときにつ いては、誰にも回さないというのは、要するにネットにも上げないわけですが、それは本 人の拒絶権を重視するということでもあるわけです。私は、これが妥当なので、この理解 を得られるようにこれから努力をしなければいけないと思います。確かにこれを認めない ことによって、臓器の提供は減ることはあるだろうと思います。周りの人に聞いてみても、 「親ならあげたいけれども」と、例えばそういう人はかなり多いわけですよね。しかし、 もしそのことができることになりますと、増える代わりに非常な問題が起こるという話だ ろうと思います。 ○新美班長 全体にこの意思表示の内容についてまとめていただきましたが、特に付け加 えるべきところがあればお願いします。なければ、これで作業班の意見として集約ができ たというようにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、これもあえて確認 を求める必要はありませんので、以上にしたいと思います。  続きまして、表示方法について、これまでのご意見をまとめたものを事務局のほうから 紹介していただきたいと思います。 ○長岡補佐 5頁の「意思表示方法について」です。これの検討課題の部分です。まず、 大枠ですが、従来の臓器提供の意思表示と比較し、親族へ臓器を優先的に提供する意思表 示について留意すべき点はないか。これに対しまして論点として、親族優先提供の意思表 示をドナーカードに記載することとした際に留意すべき点はあるか。更に「臓器提供意思 登録システム」で行うこととした際に留意すべき点はないかと、この2点が論点でした。  これについて作業班の皆様からいただいたご意見が右の部分です。順にご説明しますと、 1つ目は、親族優先提供の意思表示は、表示相手に利益をもたらすため、期待を生じさせ ることから、親族関係のトラブルや偽造などの危険があるのではないかという意見をいた だいております。2つ目は、偽造や複数枚作成を防止するために、1人1枚を所持する運転 免許証などに記載するのが望ましいのではないかという意見をいただきました。3つ目は、 ただし、現行のドナーカードへの記載を無効とすることまでは困難ではないのかという意 見もいただいております。  次に、ドナーカードがはらむこのような危険性を考慮すると、親族優先提供の意思表示 を行う際には、本人の意思表示内容をより確実に実現できるよう、臓器提供意思登録シス テム、これへの登録を原則とすべきではないかという意見をいただいております。なお、 現行の臓器提供意思登録システムにつきましては、本人確認をより厳格にすることも検討 すべきではないのかという意見も併せていただきました。以上です。 ○新美班長 この点について、現在こういうまとめ方をできるのではないかということで すが、ご意見がありましたらお願いします。  運転免許証への記載というのは、もう事実上ゴーサインが出ているのですか。 ○峯村室長 まだです。 ○新美班長 可能性としてはいかがですか。 ○峯村室長 いま関係省庁と調整をしているところですが、もちろん、法律に根拠が明示 されておりますので、できるだけその法律の意図に沿うような形で調整を進めていきたい と考えております。 ○新美班長 そういう情報をもとにこういうまとめ方になっておりますが、いかがでしょ うか。 ○町野班員 これもおそらく将来で、登録制度の問題ですね。これはやはりどこかで議論 をせざるを得ない。水野提案が、私は完全に賛成するわけではないですが、とにかく従来 のやり方でも、もしかしたら、本人がオプトインを重視する考え方では、あれでも緩すぎ るという考え方があったぐらいですから。ましてこれからは何が問題になってくるかとい うと、オプトアウトの意思というのは尊重しなければいけない、これは絶対ですよね。そ れからいまの親族優先提供の問題。だからこの2つのことを頭の中に置いた上で、将来ど のような登録とか、そういう意思表示の確認方法が適切であるかについては検討する必要 がある、その是非も含めてですね。これは報告書の中に入れておいていただいたほうがい いように思います。この考え方がかなり変わったということが1つあると同時に、これか ら重視されるのは本当はアウトのほうなのですね。本人、あげたくないということを言っ ているのにという話ですから。あと、優先提供の先ほどのような問題もありますので、そ の2つを同じようにやるのがいいのか。水野案というのは結局そうですよね。その提供意 思表示と同じようにこれをやっておけばそのアウトのほうも大丈夫だと。 ○水野班員 アウトの準備になるだろうと。 ○町野班員 そういうことですね。全部なるのですが、同じようなシステムでいいのかと いうことはわからないですよね。それが私はまだわからない。現場で何枚かカードが出て きたとか、いろいろインコンプリートな問題があったりしたときについては、大体いまま では、厚労省と連絡を取りながら処理していたと私は理解しております、そうでなかった ことがあるのかもしれませんが、これでどのような不都合が生じているかとか、将来何が 予想されるかということも含めた上で、私たちはかなりちゃんと、将来やらなければいけ ない問題、将来というか、臓器移植が変わった以上は、何かやらなければいけない問題で はないかと思います。これを是非、報告書の中に、座長にお願いいたします、入れておい ていただきたいと思います。 ○新美班長 おっしゃるようにオプトアウトというものが、これまで以上に重要な問題に なってきますから、親族優先提供だけではなくて、人間の意思というのはころころ変わり ますから、提供意思を最新のものとしてどのように確認するかというのは重要な課題です から、この辺は十分、今後の課題として、本当は現在の課題でもあるのですが、その辺を どうするかはきちんと対応しておく必要があるだろうと思います。これは、解決はこうだ というのはすぐ出ませんが、問題として、いま町野先生がおっしゃったようなことがある ということは明記しておく必要があると思います。 ○水野班員 オプトアウトの意思表示を大切にするという意味でも、こういう親族優先提 供が、簡単にできるのは問題で、先ほどの町野先生のご説に従えば、世界水準では認めら れないはずの優先提供意思が認められてしまったということの弊害は、これからたくさん 出てくると思います。「現行のドナーカードの記載を無効とすることは困難」というこの1 行が、私はかなり気になっているのです。ドナーカードの親族優先に丸をつけたものが、 先ほども言いましたように、脳死状態になった、危篤状態になった方のベッドサイド机の そばに滑り込まされることが考えられます。本人の意思はオプトアウトだったかもしれな いのに、臓器提供することになってしまうというような事態もありえます。現行ドナーカ ードへの記載というのはとても危ないということをご認識いただければと思います。  ドナーカードだけだったときには、現場の方も非常に困るだろうと思うのです。いちい ち厚労省に問い合わせて、こういうドナーカード、怪しげなものが出てきましたがどうし ましょうか、という手続をかませるぐらいの運営であれば、本当にそういう意思を持って いる方は、この事前登録システムのほうに乗ってくださるだろうと思っております。どの ように誘導するかはなかなか難しいのですが、もしこの「無効とすることは困難」という ことであるとすれば、有効かもしれないけれど、その場合はいちいち厚労省に問合せがい くというぐらいのガイドラインになっていると、誘導はきくだろうと思いますし、また、 それぐらいのことにしておかないと危ないと思います。 ○本山班員 現行ドナーカードは、特にフォーマット等はいまのところいじる予定は何も ないという理解でよろしいのでしょうか。 ○新美班長 カードについては別途作業班が検討中です。ですから、新カードが仮にでき たとしても、旧カードはこれからでもまだ生きているわけですので、それに記載されたと きにどのようにするのかということで、それを無効というのは事実上難しいのではないか。 要するに、完全切替えというのはありえませんので、現行カードに優先提供の意思が書き 込まれたときに一体どうなるのかということで、一概にノーと言うわけにはいくまいとい うことだと思いますけれどね。 ○本山班員 これは可能性の問題ですが、もし新しいカードができるとした場合に、その ときに、いま水野先生がおっしゃったように、選択肢として親族に提供します、しません、 丸をつけてください、みたいなものになる可能性もあるということでしょうか。 ○峯村室長 内容についてはこれからまた議論していかないといけませんので。当然ここ での、意思表示の内容も当然踏まえて議論をしていくことになろうかと思います。優先提 供に丸をつける、つけないという形になるかという点も含めて、内容についてはまだ、今 後検討することだと思っております。 ○新美班長 そういう意味では、ここで懸念を表明した事項についてはより一層慎重な検 討をして、カードの中身が、フォーマットが決まっていくということだと思います、 ○町野班員 法律には書面としか書いていないので、それをここで限定するわけにいかな いという話が1つですよね。ですから、古いカードだろうと新しいカードだろうと、要す るに書面として使えれば、それで結構ということにならざるを得ないという話だろうと思 います。だからそこから、前に山本先生が言われたときに議論したのですが、日記に書い てあるときはどうするとか、そういう問題が依然としていろいろなところに残っているわ けですよね。ですからやはりいちばんの問題というのは、現場の人たちと同じで、この臓 器移植についての、システムのいわば信頼性を損なうような事態が生じないようにと。お そらくそれが唯一の、最終的な目標だろうと思います。 ○山本班員 あれも記入漏れでかなり問題になって。 ○町野班員 そのとき班長は、それだったからご存じだろうと思うけれど。 ○新美班長 表示方法についてこういう意見ですが、いま言った問題点の追加、ないしは 確認ということがありますが、ほかにご意見ありますでしょうか。ここでは、登録システ ムを原則とすべきではないかという方向性が示されているのですが、これを強く打ち出し て実現性は、何年後ぐらいにどれぐらいの確率になりそうですか。予算のこともあるでし ょうが。 ○峯村室長 現行登録者数は4万か5万ですか、5万弱だったかと思いますが、正確な数 字はまた確認します。臓器移植法の改正の議論を踏まえて、数字的には少し上がってきて いるということですが、今後当然、このシステムに対する登録者数を増やしていくという ことは、我々として普及啓発の中の大事な要素でもありますし努めていかないといけない と思っています。 ○新美班長 1つは、カードがある意味でかなり怪しげな場合もあるということにします と、カードをやめて登録システムのほうに移っていくということもあり得るのですよね。 要するに、これだけITの技術が進んで、コストもだいぶ安くなってくるということになり ますと、カードにかける予算と、登録システムを維持運営していくコストがどのくらいな のかという、見合いの問題も出てくると思いますから、その辺も含めて少しある意味で実 現させ得るかどうかを、真剣なフィーザビィリティの調査をしておく必要があるのではな いかという気がします。  あと、この表示方法について、現状すでに発行されているカードについては、直ちに無 効ですよというわけにいかないので、そういう点も配慮せざるを得ないということです。 ○町野班員 法律では書面としか書いていないわけですから、登録制度に移行するという のはそれなりの法律の改正とかが必要だと思います。そのようなことも含めた上でやらな ければいけない。それと、私が申し上げたのは、やはり意思確認とか、その点についての 信頼を損ねるような事態は生じさせないようにすることが大切なのであって、必ずしも登 録制度が、いわば原則ということになるかどうかは議論しなければまだわかっていないと ころだと思います。だから最後の報告書を、どういう格好で上げていただくかについては、 やはりいまの点を考慮の上ご議論いただけたらと思います。  要するに問題は、いまのようなドナーカードの普及というのは、非常に簡便に意思表示 ができるということで、これがかなりいろいろな所で使われてきたことは確かなので、こ のメリットはやはり重視しなければいけないということはある。しかし他方では、この危 険性というのもないわけではない。いままでやってきたわけだし、まして今度の場合は親 族優先提供とかそういう問題が生じているので、さらにこの問題は複雑になっている。そ ういう事情を踏まえた上で、これからの意思表示のあり方について、法改正も含めてと言 いますか、何をやったらいいかということを検討していかなければいけないということだ ろうと思います。 ○水野班員 一般的に匿名のレシピエントに対するドナー意思というのは、ドナーカード、 現行のものでなんの問題もなかったと思います。親族優先という部分の意思表示について は、危惧するところが非常に大きいということです。 ○芦刈参考人 登録システムに関してですが、登録をされた方に対して、その登録した内 容の意思表示カードが記載されたものをご本人が登録した住所に送っていますので、書面 は登録システムでも届くということになります。 ○新美班長 意思表示こそが大事だということはそのとおりなのですが、いま言ったよう に、いわばコントラクトアウトをするときの意思確認の手段がないわけですね。それをど うするかというのがいちばん大きいので、カードでは対応しきれないということがありま すので、システムなどの運用を考えざるを得ないのかなという気はします。 ○本山班員 いまの点をコーディネートの方に伺いますが、カードを住所地に送ったとし ても、ご本人がそのカードを持っているかどうかわからないですよね。登録のほうは残っ ている、カードはどこへ行ったかわからない、といった場合はどうされているのですか。 ○芦刈参考人 いまは書面による意思表示という形になっていますので、そのカードがな いと、有効な意思表示とみなしていません。 ○町野班員 将来、書面による意思表示がなくても、不明であるときにといいますか、そ のときも遺族の承諾でそれができるという話ですから、その点の比重は少し下がっている ということだと思います。だから他方では、アウトのほうが比重がむしろ高まっていると いう状況だろうと。それと親族優先というのが、インの上にくっついている親族優先です から、その限りでオプトインのほうも高まっている。そういうような構図になるわけです から、その中でどのように考えていかなければいけないかという問題があるわけです。 ○新美班長 いかがでしょうか。この辺はいま言った意見のほかにあれば出していただい て、それを集約の中に入れておきたいと思います。基本的には、ここに書かれている骨格、 意思表示の方法については、こういう問題、現状認識があるということは共通意見になる かと思いますが、さらに先ほど来の注意事項を加えてて意見の集約にしたいと思います。 丸山さん、一言も言わせないとあとで、俺は言えなかったというのもあれですから、どう ぞ。 ○丸山班員 いまの点については、先ほど到着してから、町野先生が指摘されたように、 書面によりという規定になっているので、親族優先に関しては登録システムが私はいいと 思っていたのですが、また、いまの、登録システムだけでは有効とは扱っていないという 現状の取扱いもあるようですので、登録システムのみによる運用ができないのは仕方がな いかなと思いますが。 ○新美班長 登録システムだけで有効にしないというのは、いまは電子カルテでも電子書 面でも、全部書面の中に入れているのですよね、政府のあれで。なんで登録システムで登 録したら駄目というのですかね。デジタル化されていても、書面であることは間違いない。 それは政府の統一的な扱いですけれども。 ○町野班員 それが統一的な扱いかどうかはわからない。この文書に書いてある書面とい うのは、そのことを意識していなかったことは確かですから。もちろん解釈はあり得ます が。 ○新美班長 そうであるならば、書面は自由に、こんなものが書面だという指定はできそ うですよね。 ○町野班員 それはそうです。ただ、書面というのは定義の上では、紙などの上に固定さ れたものが残っているというのが普通の定義なので。 ○新美班長 それはいまは普通ではないでしょう。裁判でも、証拠書類と言ったときには デジタル化したものでもかまわないですよ。 ○町野班員 書類はね。 ○新美班長 書面でもそうですよ。 ○町野班員 いや、それは新美説として承りますが。 ○新美班長 いや、新美説ではなくて多数説だと思いますが。 ○町野班員 いや、この臓器移植法の解釈についてでしょ、それについては新美説として 承りますが。 ○新美班長 できたときにはそういうものがなかったから書面と言って。そういうのは想 像していなかっただけで、それに固定するということはなかったと思うのです。 ○峯村室長 例えば情報公開文書の中で行政文書の扱いについては、新美先生がお話にな ったとおり電磁的な記録媒体も含めて扱っているのですが、従前、この臓器移植法の意思 表示として、書面による意思表示という場合については、紙媒体という扱いをしてきた経 緯があります。その点についてもまたいろいろご意見を伺いながら検討していく必要があ ると思いますが、従前の取扱いはそういうことです。 ○新美班長 ですからそれを、1つの問題としてはありますよということだけで、特に変 えろというつもりはありません。 ○町野班員 念のために伺いますが、遺言書もいまは電子ファイルでいいのですか。 ○新美班長 駄目。 ○町野班員 駄目ですよね。ですから結局、書面とか、それによって差があるという話な のですよね。 ○新美班長 ほかにいかがでしょうか。では、この意思表示方法について、まとめていた だいたのはこれで確認されているということで、あと、出てきた意見について少し紹介し ていただけますか。 ○峯村室長 あと、この作業班としての取りまとめ、委員会への報告の際に、今回の臓器 移植法の改正に伴いまして、親族優先提供やオプトアウトといいますか、いわゆる拒否の 意思表示といった新たな内容が生じてきたことを踏まえて、提供意思表示のあり方につい て検討すべきであるという意見がありましたので、それは、文章をまた整理をした上で追 記をさせていただきたいと思っております。 ○新美班長 よろしいでしょうか。いままではどちらかと言うと、提供するということだ けを中心にやってきたけれども、オプトアウトとか優先提供の問題を考えると、もう少し 細かい表示方法、あるいはそれにふさわしい表示方法を検討すべきだということで、提言 が加えられたということでよろしいでしょうか。  これで一応、事務局でまとめていただいた論点の整理について、ほぼご議論いただいた わけですが、何か、さらに全体にわたって、ご意見等がありましたらよろしくお願いしま す。丸山先生、途中の新幹線で考えてきたことがあったらどうぞ。 ○丸山班員 それほど勤勉ではありませんが……。1つ、いまの頁で気になったのですが、 普及啓発の委員会で、その臓器提供意思表示カードの書式を変える際に、親族への優先提 供の欄を設けるという方向なのですか。ちょっとそれを教えていただければ。 ○新美班長 それは現状としていかがですか。 ○峯村室長 現状については、今回の改正を踏まえて当然、親族優先提供もそうですし、 拒否の意思表示というのでしょうか、そういったものを含めて、どのような様式を考える かということをこれから検討するという、いまそういう段階です。様式の内容については、 普及啓発の作業班で、ここの作業班の懸念なり問題意識も共有した上で、議論をしていく ということになろうかと思います。 ○新美班長 よろしいでしょうか。ほかにご意見ありますでしょうか。いま全体について、 こういう方向で集約していきますということで、1つずつ確認を取ってご了承を得たとこ ろです。ここで一応、この班の方向性が定まったと考えられますので、ここで一区切りと して、これまで上がってきた、大きく挙げて4つの論点について、この作業班の検討結果 を取りまとめて、事務局から臓器移植委員会に報告していただくという段階に入りたいと 思います。その報告資料につきましては、いま読み上げました集約された意見をもとにま とめることになりますが、それについての取りまとめは、事務局と私とが協力して行うと いうことでご一任いただけたらと思いますが、それでよろしいでしょうか。  それではそのような方針で、報告資料は事務局と私とで作成します。もちろん、全く皆 様方に知らせないわけではなくて、まとめる段階で確認、あるいは微妙な点で確認したほ うがいいということがあれば、皆さんにご照会した上で取りまとめ作業を進めたいと思い ます。それでよろしいでしょうか。  それでは臓器移植委員会への報告は、いま言ったような段取りで進めさせていただきた いと思います。あと、今後のスケジュール等について事務局からご紹介いただきたいと思 います。 ○峯村室長 先生方の活発なご議論、誠にありがとうございました。今後のスケジュール としては、次回の臓器移植委員会は11月2日、来週の月曜日に開催する予定になっており ます。本日のこの作業班における意見を踏まえまして、検討状況を事務局から臓器移植委 員会に報告して、そこでまた議論を深めていただくということにしたいと思います。また 今後とも、この作業班での議論も引き続きお願いしたいと思います。よろしくお願いいた します。 ○新美班長 どうもありがとうございました。本日の議論はここまでとしたいと思います。 次回以降の開催日程については事務局から案内があると思いますので、よろしくお願いし ます。 ○峯村室長 一通り、優先提供に関わる部分を中心にご議論いただいたわけですが、次回 以降の日程については、各先生方の日程を調整させていただいて事務局から連絡させてい ただきます。お忙しいところ恐縮ですが、日程確保等についてよろしくお願いしたいと思 います。どうもありがとうございました。 ○新美班長 今日も司会の不手際で20分ほど時間オーバーをしましたが、ご協力ありがと うございました。これで終了したいと思います。 【照会先】  厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室  代表 : 03(5253)1111  内線 : 2366 ・ 2365