09/10/18 平成21年度第3回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会議事録         平成21年度第3回薬事・食品衛生審議会          医薬品等安全対策部会安全対策調査会               日時 平成21年10月18日(日)16:00〜             場所 中央合同庁舎5号館専用第18〜20会議室 ○事務局  定刻になりましたので、大野委員と内山委員が遅れているようですが、特に 連絡は受けていませんので、間もなくおいでいただけるものと思います。平成 21年度第3回の安全対策調査会を開催させていただきたいと思います。本日は 休日にもかかわらず、先生方には大変申し訳ございませんでした。御出席あり がとうございます。本日の調査会は従前の取扱いと同様、公開ということで行 わせていただきます。カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、 マスコミ関係者の方々におかれましては、御理解、御協力をお願い申し上げま す。また傍聴者の方々におかれましては、傍聴に際しての留意事項、静粛を旨 とし、喧騒にわたる行為をしないこと。また座長及び座長の命を受けた事務局 職員の指示に従うことなどの厳守をお願いします。  それでは本日、御出席の先生方の御紹介をさせていただきます。本日、御出 席いただいている安全対策会の常任の委員の先生方を五十音順で御紹介させて いただきます。東京大学医学部小児科講座教授の五十嵐先生です。国立医薬品 食品衛生研究所副所長の大野先生は遅れていらっしゃいます。東京医科歯科大 学歯学部附属病院薬剤部長の土屋先生です。獨協医科大学特任教授で当調査会 の座長でございます松本先生です。  続きまして本日、御出席いただいている参考人の先生方を、同じく五十音順 で御紹介させていただきます。東京都健康・長寿医療センター感染症科・研究 検査科部長の稲松先生です。国立病院機構三重病院院長の庵原先生です。日本 大学医学部精神医学教授の内山先生です。虎の門病院薬剤部長の林先生です。 国立成育医療センター妊娠と薬情報センター長の村島先生です。自治医科大学 小児科学教室教授の桃井先生です。東北大学加齢医学研究所抗感染症薬開発研 究部門教授の渡辺先生です。本日、委員は、遅れていらっしゃるのは大野先生 ですが、全員御出席の予定です。参考人のほうでは岩本先生、岡部先生、神田 先生、工藤先生、埜中先生、名取先生が御欠席と承っています。  続いて事務局の御紹介をさせていただきます。医薬食品局長の高井です。大 臣官房審議官(医薬担当)の岸田です。安全対策課長の森です。同じく安全対策 課安全使用推進室長の佐藤です。安全対策課課長補佐の野村です。血液対策課 長の亀井です。独立行政法人医薬品医療機器総合機構から安全管理監の松田で す。安全第二部長の池田です。最後に私が安全対策課課長補佐の堀内です。よ ろしくお願い申し上げます。議事に入らせていただきますので、カメラ撮りは ここまでとさせていただきます。よろしくお願いします。医薬食品局長の高井 より、御挨拶を一言申し上げさせていただきます。 ○医薬食品局長  今日は休日にもかかわらず、御出席いただきましてありがとうございます。 今日はテーマとしてインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンについてです。 ホットなイシューですけれども、よろしくお願いしたいと思います。 ○事務局  以降の議事進行を松本先生、よろしくお願いします。 ○松本座長  よろしくお願いします。事務局から審議の際の申合せ事項について報告して ください。 ○事務局  薬事・食品衛生審議会薬事分科会審議参加規程について、御報告申し上げま す。本日、御出席をいただいている委員の方々の過去3年度における関連企業 からの寄附金・契約金等の受取状況の御報告です。本日の議題は季節性及び新 型インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチンに関わるものですので、議題1 に関しては調査品目となる季節性及び新型インフルエンザワクチンの製造販売 会社である、学校法人北里研究所、財団法人化学及血清療法研究所、財団法人 阪大微生物病研究会、デンカ生研株式会社、および競合品目として新型インフ ルエンザワクチンの輸入が予定されているグラクソ・スミスクライン株式会社、 ノバルティスファーマ株式会社から、議題2に関しては、調査品目である肺炎 球菌ワクチン(ニューモバックスNP)の製造販売業者である萬有製薬株式会社、 及びその競合品目と考えられる7価の肺炎球菌ワクチンが申請されておりまし たけれども、先週の金曜日、16日に承認されています。そちらの承認を取得さ れたワイス株式会社から、過去3年度における寄附金等の受取りについて申告 をいただいています。  なお、競合品目、競合企業につきましては、事前に各委員に資料をお送りし 確認をいただいています。各委員の申し出の状況から、今回の審議への不参加 の委員はいませんでした。なお、五十嵐委員がグラクソ・スミスクライン株式 会社から50万円超500万円以下の受取り、ノバルティスファーマ及び萬有製薬 から50万円以下の受取りとの申告がありましたので、議題1に関しては議決に は参加いただけないことになります。土屋委員がノバルティスファーマ株式会 社から50万円以下の受取りの申告がありましたので、お知らせします。  また参考人の先生方におかれましては、稲松先生が萬有製薬株式会社から50 万以下の受取り、庵原先生が学校法人北里研究所、財団法人化学及血清療法研 究所、財団法人阪大微生物病研究会、デンカ生研株式会社、グラクソ・スミス クライン株式会社及び萬有製薬株式会社から50万以下の受取り、内山先生がグ ラクソ・スミスクライン株式会社から50万円超500万円以下の受取り、林先生 がグラクソ・スミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社及び萬 有製薬株式会社から50万円以下の受取り、村島先生がワイス株式会社から50万 円以下の受取り、渡辺先生がグラクソ・スミスクライン株式会社及び萬有製薬 株式会社から50万円超500万円以下の受取り、ワイス株式会社から50万円以下 の受取りとの申告がありましたので、お知らせ申し上げます。 ○松本座長  説明がありました審議の際の申合せ事項につきましては、よろしいでしょう か。特段ないようですので、競合品目、競合企業の妥当性を含めて了解いただ いたものとします。ありがとうございました。次に事務局から本日の資料の確 認をお願いします。 ○事務局  資料でございますが、本日の議事次第、本日の委員・参考人の一覧、その次 のページから2ページにわたって配布資料の一覧がありますので、これを参照 いただきながら御確認いただければと存じます。資料1はインフルエンザワク チンの使用上の注意の改訂の関係で、資料1が調査結果報告書、それに関連し て参考資料1-1が改訂案の対比表、参考資料1-2は国内インフルエンザワクチン の添付文書、参考資料1-3は米国の添付文書の記載状況との比較表です。参考 資料1-4は参考としている文献等の概要、これらが資料1関連です。  資料2の関係は、資料2の調査結果報告書、参考資料2-1がチメロサールの関 連文献等、傍聴の分については実際の文献等の添付を一部省略しています。 参考資料2-2は国内外のワクチンのチメロサール含有量に関する状況、参考資 料2-3が参考とした文献等の概要、これらが資料2の関連です。資料3の関係は、 資料3の調査結果報告書、参考資料3-1が学会からの要望書、参考資料3-2は萬 有製薬からの要望書、参考資料3-2の別添として厚めの資料を綴っています。 参考資料3-3はニューモバックスNPの審議結果報告書です。これらが資料3の関 連になります。資料4の関係は、新型インフルエンザワクチンの副反応対応の 方針関連資料です。資料4がいま申し上げた資料で、これに関連して参考資料 4-1が対策推進本部の事務局長事務連絡、参考資料4-2が安全対策課長通知によ る産婦人科医会への通知になっています。参考資料4-3はインフルエンザHA ワクチン(H1N1株)の安全対策等についての通知の写しです。  参考資料5の関係で、参考資料5-1が、今回の新型インフルエンザワクチンの 接種実施要領の通知、参考資料5-2が、10月2日時点で厚生労働省のホームペー ジに掲載している新型インフルエンザワクチンのQ&A、参考資料5-3は、先 週末の金曜日に開催された新型インフルエンザワクチンに関する意見交換会に 提出されている国産ワクチン、新型インフルエンザワクチンの臨床試験の中間 報告速報の資料です。参考資料5-4は、「接種について」を見ていただくため にという横書きの資料です。参考資料5-5は、接種スケジュールの目安です。 一部、傍聴の方の分で配布を省略しています文献などもありますが、関連する 資料は著作権等に関連するものを除き、審議終了以降、速やかにホームページ に掲載を予定しています。足りないものや落丁などがありましたらお申し出く ださい。以上です。 ○稲松参考人  私の所属する病院は4月から病院名が変更になっています。東京都健康長寿 医療センターにしてください。 ○事務局  訂正をさせていただきます。 ○松本座長  資料のほうがよろしいようでしたら、早速、審議に入りたいと思います。資 料1に基づいて事務局から説明をお願いします。 ○事務局  資料1ですが、インフルエンザワクチンの妊婦並びに同時接種に関する使用 上の注意の改訂の関連です。参考資料1-2に季節性のインフルエンザワクチン HAワクチンの添付文書があり、22ページに新型の添付文書が付いています。 新型のほうは冒頭に枠囲みをしていますが、本剤は、季節性インフルエンザワ クチンと同じ生物学的製剤基準に準拠し製造されたものであることから、季節 性ワクチンと同様の添付文書の内容の位置づけになっています。従って使用上 の注意の記載は、両剤とも同じようなものが記載されていますので、今回改定 については両製剤について共通して御検討いただきたいと思います。  資料1に戻って説明させていただきます。本日、御検討をお願いするのは、 この新型インフルエンザワクチンの接種事業は、明日より接種が開始されるこ とになっていますが、医療従事者が明日からで、そのほか小児、妊婦の方、基 礎疾患をお持ちの方々が優先的な接種を行う対象であるとの議論を、8月、9月 に専門家の諮問委員会や意見交換会で議論しましたが、例えばお子さんの場合 には、季節性のインフルエンザも2回の接種が必要になりますので、新型と合 わせると4回別々に打つことが必要なのか、同時に打てるのかという質問があ ったり、また妊婦の方については、現在の添務文書では原則として接種しない こととする記載があることから、優先的に接種するという考え方との整合性に、 添付文書の内容がそぐわないのではないかという質問を頂戴し、これらについ ての記載の内容を整理しておきたいということです。  資料1で、これまでの経緯については今まで申し上げたところですが、1ペー ジのIIの1に妊婦への接種についてのこれまでの経緯が書かれています。3段落 目で、平成21年10月2日に「新型インフルエンザワクチンQ&A」が厚生労働 省より示され、インフルエンザワクチンは一般的に妊娠中の全ての時期におい て接種可能である旨が記載されている、とあります。これは国立感染症研究所 や国立成育医療センターで、既にこういったインフルエンザワクチンに関する 見解が述べられているものを引用しています。  2ページで、今回の妊婦と同時接種に関する機構における記載内容の調査で すが、1の(1)の妊婦に関しては国内外のガイドライン等の状況がどうなってい るかです。国内の学会ガイドライン、国立感染症研究所、国立成育医療センタ ーによる情報提供等では、妊婦は接種不適当者とはせず、希望する者において 有益性が上回ると考えられた場合には投与することができる。あるいは妊娠中 のインフルエンザワクチンは母子共に有用なワクチン接種であるという記載が、 既に我が国の国内でもされています。  「一方、米国では」というところですが、1.妊婦のインフルエンザ罹患時 の合併症や入院リスクが高いこと。2.不活化ワクチンが、理論的には妊婦・ 胎児に対して感染リスク等の影響を及ばさない。3.妊婦約2000例調査で出生 時に異常を認めていないことから、米国では不活化ワクチン接種が推奨されて いる。むしろそういう状況にあるということです。また新型インフルエンザワ クチンについては、欧州、米国、豪州及びWHOでも優先接種対象者として挙 げられています。  2ページの(2)の根拠データですが、インフルエンザHAワクチンは非常に古 くから使われているワクチンであるが故に、かえって新しいデータがあまりな いというものです。古い論文も多く、根拠として十分であると言えない面もあ りますが、国立成育医療センターにおいては現在、次の知見が紹介されており、 参考とすることが可能です。妊娠4カ月までにインフルエンザ不活化ワクチン 接種を受けた母親から生まれた650人の児において、大奇形、小奇形の発生率 が増加していない報告があります。また第1三半期に不活化インフルエンザワ クチン接種を受けた子どもにおいて先天奇形発生率の増加は認められなかった との小規模な研究報告がある。同センターにおいて2002年の開設以来、シーズ ンあたり150名前後の妊婦へのワクチン接種を実施していますが、副反応、胎 児への影響が見られていないこと。3ページの上から二つ目のパラグラフの 「また」以降の副作用の報告状況においても、妊婦についての報告は1例であ り、非重篤であって出生児の異常に関する報告はなかったというものです。  これらの状況から、「以上のような」から始まる段落の4行目の後ろぐらい からですが、一律に妊婦へのインフルエンザワクチンの接種ができないと解さ れる記載は、適当ではないということです。ワクチン接種を希望する者に対し、 リスクを上回るベネフィットがあると考えられた場合、接種できることを理解 しやすい記載とすることが適切との判断をいただいています。新型インフルエ ンザワクチンについても、季節性ワクチンと同じ製法によるものですので、同 様の見解が適用できるものと考えられるということです。  3ページの中ほどの2.の同時接種については、国内のインフルエンザの予防 接種のガイドラインなどにおいて、他のワクチンの接種を一定期間あけること が推奨されてはいますが、医師が必要と認めた場合、同時に接種を行うことが できると記載されているものもあり、実務的にも、同時接種が必ずしも禁止さ れているわけではないということです。3ページの下から4行目、米国において は、CDCからインフルエンザワクチンは他のワクチンとの同時接種が可能で あることが示されている。  4ページで2行目の後段からですが、アジュバントを含まないスプリットHA ワクチンのものであり、欧州で新型インフルエンザ用に承認されたワクチンに おいて、免疫補助剤等が含まれているものなど、諸外国の情報評価にはワクチ ンの種類の考慮も必要であると述べています。  5ページで、同じく同時接種の副反応報告については、これらの症例はなか ったということです。以上から、国内でも季節性ワクチン及び国産の新型イン フルエンザワクチンは、米国同様、不活化スプリットワクチンであり、現時点 で同時接種を不可とする根拠は見あたらない。よって医師が必要と認めた場合、 同時に接種することができると記載することが適当と判断し、IVのいちばん最 後には改訂が適切であると判断していますが、これまでのデータが限られてい ることから、今後、行われる接種における情報収集の継続が必要と判断されて います。  具体的には参考資料1-1です。左が現行、右が改訂案です。カラムが二つあ りますが、上段が用法及び用量に関連する接種上の注意で、2の他のワクチン 製剤との接種間隔の最後に「ただし、医師が必要と認めた場合には、同時に接 種することができる」とし、括弧して他のワクチンとの混合接種はできません と記載しています。  接種上の注意の6に、妊婦、産婦、授乳婦等への接種がありますが、右のほ うの2行目にある「接種しないことを原則とし」の部分を削除します。この改 訂案と改訂理由に対する調査報告書について、御審議をよろしくお願いします。 ○松本座長  ありがとうございました。ただいま事務局から、インフルエンザワクチンの 同時接種及び妊婦接種に関する取扱いについて説明していただきました。何か 御質問、御意見等ございますか。 ○稲松参考人  2ページの事実関係が少し違うのです。実際上はアメリカ、その他、いくつ かの基準で安全に使えるという報告がかなり出ていて、それに合わせて国内の 施設が若干の検討をして、その結果がいろいろなガイドラインになっているわ けです。ガイドラインと実際の添付文書との違いは、そこで出来てきているの です。だから話の順番としては、欧米での安全性の報告があり、日本のいくつ かの施設で追試してオーケーで、安全性が現時点でほぼ確認されたから使うと いうのが、話の筋ではないでしょうか。 ○松本座長  事務局、よろしいですか。 ○事務局  御指摘のような経緯だと思います。 ○松本座長  ほかに御意見はございませんか。この点に関して村島先生、何かコメントは ございませんか。 ○村島参考人  いま、先生の御指摘がありましたとおり、我々は7年前にオープンした病院 ですが、妊婦はハイリスクであるという海外のデータと、安全性についてもた ぶん大丈夫だろうという情報があったために、妊婦さんを守る立場から接種を 推奨してきました。毎年、大体150〜200人ぐらいの妊婦さんが受けてきて、こ れはしっかりとした疫学研究としてはないのですが、治療を要するような副反 応は見られていませんし、妊娠経過及び赤ちゃんへの悪い影響と思われる事象 も経験していません。  2年前に、季節性のインフルエンザワクチンを接種した125人の妊婦さんを対 象に、妊娠中であるということでワクチン効果があるのかどうかを、ファース トアウトカムとした研究を行いました。その結果、90%の妊婦さんに十分な抗 体ができるということと、胎盤移行性もよく見られたという結果を得られてい ます。この論文では、でセカンドアウトカムではありますけれども、お母さん 自身及び赤ちゃんへのアドバースエフェクトは認めなかったと言及しています。 この論文は最近、『ジャーナル・オブ・メディカル・バイオロジー』にアクセ プトされました。 ○松本座長  ありがとうございました。ほかに御意見はございませんか。 ○庵原参考人  現在の論点とは少し異なるのですが、バングラデシュのデータで、妊婦さん にワクチンを接種して、その後に生まれた子どものインフルエンザ罹患のデー タがあります。インフルエンザワクチンを接種した人たちのほうが、していな い人から生まれた子どもよりも、明らかに出生後のインフルエンザワクチン罹 患の率が少ないというデータが出ています。  ということは、先ほどおっしゃったように移行抗体も十分いって、その移行 抗体による感染予防効果があるということです。いま現在、ワクチンは6カ月 未満の子どもには打てないことになっていますので、その年齢層をカバーする 意味でも妊婦さんへのワクチン接種は、インフルエンザをコントロールする意 味でも大事な要件であると私は思います。 ○松本座長  ありがとうございました。有効性に関しては非常にいいことだということで すね。あと安全性について村島先生の御意見では、今のところは大丈夫だとい うことです。 ○村島参考人  大体、年間150〜200人で6シーズンですので、約1,000人近くの接種の中で、 経験的には安全だろうと考えています。 ○松本座長  妊娠時期にもあまり差がなく、安全性があるということでよろしいわけです ね。ほかに御意見はございませんか。稲松先生、よろしいですか。 ○稲松参考人  そういう意味で、添付文書案の「妊娠中の接種に関する安全性は確立してい ないが」というのが、何らかの不安を持つ文章なので、「現時点では安全性を 危惧する意見はないので」とか、ちょっと国語の問題ですけれども、そこまで 踏み込んでもいいのではないかという気がします。 ○松本座長  安全性が確立していると踏み込めますか。村島先生、今までの御研究からい かかですか。 ○村島参考人  妊娠と薬情報センターで仕事をしていて感じるのは、ほとんどの添付文書は 確立していない文言になっていて、大体、確立するのはかなり難しいことだと は思うのです。ですから、確立していないという表現の中にも本当にピンから キリまであると考えます。その中で、このインフルエンザワクチンは確立して いるに近いと、考えますので、現場の先生たちの判断をサポートすることを考 えれば、もう少しマイルドな表現のほうがいいかなと私も考えます。 ○松本座長  マイルドな表現で何か適当な言葉がありますか。確かにすべての条件で安全 性が確立されているわけではないので、このような表現にならざるを得ないの ですが、もう少し妥当性のある表現方法があれば教えていただければと思いま す。いかがでしょうか。 ○村島参考人  先ほど先生がおっしゃったような表現が妥当かなと考えます。ほかの先生方 のお知恵を拝借したいのですが、「安全性は確立していない」のではなくて、 「リスクを示唆する報告がない」という表現では、いかがなのでしょうか。 ○松本座長  かなり微妙なところなのですが、事務局、いかがですか。 ○安全対策課長  ただいまの御議論は、私どもは常日ごろ、こういう妊婦への投与の話の議論 の際に毎度やっている話でもあります。今回の場合も臨床現場ができるだけ混 乱しないように、不安を煽らないように正確な情報をお伝えすることが大事だ と、その御趣旨はごもっともだと思います。  いまの御議論からしますと、妊娠中の接種に関する安全性が確立しましたと までは、さすがに言えないということなので、ひとつのテクニカルなやり方と して、この安全性が確立していないというのはそのまま残して、その後に、妊 婦に投与した場合、致死的な影響や出産に影響するという情報はないと、海外 の添付文書にはこのような記載があり、それを一部、ここに挿入するというや り方はできるかもしれません。ただ、こう書いた瞬間に、その後に何かの研究 が出てきて、ないと言い切っていることが事実と相違してしまうところが少し 悩ましいので、ここはかなり慎重に考えないといけないと思いますが、いかが でしょうか。 ○松本座長  これは簡単に言葉を作るのは、かなり危険性があるかと思います。稲松先生、 いかがですか。何か適当な言葉はありますか。 ○稲松参考人  行政上のテクニック的なことはあるのだと思いますが、初めにこの添付文書 が作られた時代から比べて、欧米のデータがずいぶん蓄積され、国内のデータ もある程度蓄積され、それを反映する形をここに出してほしいということなの です。 ○安全使用推進室長  参考までに、本日配布資料の参考資料1-3を御覧ください。これは米国のイ ンフルエンザワクチンの添付文書の記載です。このカラムの下段の部分に妊婦 投与関連ということで、左側が現行の日本の添付文書、右側が米国の添付文書 になっています。仮訳で日本語を付けていますが、アメリカの添付文書の構成 も、こういった動物実験等の成績等が得られていない。安全性は確立していな いに相当する部分がまずあって、その後ろに、妊婦に投与した場合に致死的な 影響や出産に影響するという情報はないと、こういった記載になっています。 いま森課長が申し上げた部分は、こういった部分を少し参考にさせていただけ るのかなと思っていますが、これはあくまで現時点での情報ということですの で、そこは少し限定的に書くことになると思います。 ○松本座長  林先生、どうぞ。 ○林参考人  ここの記載についてですが、もともと添付文書の記載要領のほうが、その対 象ポピュレーションに対して注意が必要な場合に、根拠を示して記載すること になっていて、従来からなかなか踏み込んだ記載が難しいということは理解し ています。ただ、今回、非常に突っ込んだ議論がされていて、現場に勤務して いる者としては、可能であれば判断の根拠になる情報を、若干でもここに理由 として提示することはテクニカルには可能だと思うので、追記していただく方 法が好ましいと感じています。それは議論の方向と一緒だと思います。  その際に、ここに記載してある方法のほうがいいのかどうか、皆さんで御議 論いただきたいのですが、「妊婦に投与した場合、致死的な影響や出産に影響 するという情報はない」というのは、例えば自然経過の中でもそういうことが 起こり得ると思います。つまり接種していない人でも何らかの妊娠に関したト ラブルが起こることはあるので、「それ以上にワクチンが増大させたという証 拠はない」と記載するか、あるいは、「併せて妊婦対象に相当数の接種実績が あるものの頻度を増大させた情報はない」と書いたほうが、万が一、次に1例 出た、3例出たと偶発事例で出た場合にでも、その情報がないと言ったことと の整合性が、いかがなものかという意見が現場から出るかもしれませんので、 その頻度が上がることはないという方向で記載するのは、現場にとっては大変 好ましいことではないかと思います。 ○松本座長  ほかに、何かこの点に関し御意見はございますか。 ○渡辺参考人  ただいまの林先生の示された方向性が、私ども臨床家にとっても非常に有益 だと思います。自然経過よりも、それを増強させたという情報はないと言って いただけると、非常に使いやすいと思います。 ○松本座長  そういう情報はあるのですか。 ○村島参考人  事務局の資料にありましたように、650例での対象との比較で、リスクが有 意に上がるということを否定した研究結果があるはずなのですが、事務局の先 ほどのは何ページでしたか。 ○安全使用推進室長  参考資料1-4の4ページの6で言われている、2000例の件かと思います。確認 いただけますか。 ○村島参考人  資料1の2ページのいちばん下で、先ほど事務局から説明があったと思います が、たぶんこの650人ということになると思いますが、1977年と古くはありま すが、出典がしっかりした、コントロールと比較した研究があります。 ○松本座長  ほかに御意見はございますか。これを参考にしてということですか。言葉で はどういうふうに表現しますか。 ○渡辺参考人  資料1-1の右下です。妊娠中の接種に関する安全性は確立していないが、妊 娠あるいは出産に対して自然経過で見られるものより、このワクチン接種が、 そういったものを増強したという情報はないので、と一言加えればよろしいの ではないでしょうか。 ○安全対策課長  提案ですが、参考資料1-4の2ページの4で、これは成育医療センターの提供 されている情報の中に入っているものとして、ここに650人の児において大奇 形、小奇形の発生率は増加しなかったと報告されていますと、1977年のBirth Defects and Drugs in Pregnancyを引いています。この文献が、要するに影響 が増えていないことを示す報告としてあるので、内容としては増えていない報 告がありますということを書き、それでこの文献を参照し、何を拠り所にして 増えていない報告があるのかをここに明記しておく。「ない」と言い切るのは なかなか難しいので、こういう研究報告では「ない」とされていますというの を、拠り所として明記しておくことにしてはいかがですか。 ○松本座長  それでいいと思います。文章をまとめてみてください。 ○五十嵐委員  やはり数が少ないですから、「小規模ながら」という言葉は是非入れていた だきたいと思います。 ○松本座長  「安全性は確立していないが」というのは残すわけですからね。 ○林参考人  私も安全性が確立していると言うには、難しい面があると思いますので、本 文はそのままにして、この記載要領でも理由を書くことができることになって いると思いますから、理由欄に、これこれの報告があり、増加は見られていな いが、現時点ではまだ確立しているとまでは言えないと理由を書けば、割と本 文の文言をいじらなくても、臨床家は理由が分かればそれで対処できるのでは ないかと考えます。 ○松本座長  稲松先生、いかがですか。そういうことでもよろしいですか。なかなか確立 していると断定するのは難しいところがある。村島先生、いかがですか。それ くらい言えれば、それに越したことはないですけれども。 ○村島参考人  そうです。先生方がおっしゃるとおりで、安全性を確立するというのはどこ までいっても難しいと思います。リスクがあることを否定することは、ある程 度N数が溜ればできるのですが、安全であるという証明は、たぶんいつまで経 ってもできないと思いますので、先生方のいまの御意見でまとめていただくの が、いちばんいいかと思います。 ○松本座長  事務局、何か文書は作れますか。 ○稲松参考人  行政的なテクニカルはいろいろあると思いますので。 ○松本座長  行政的なテクニックというより、むしろちゃんとした。 ○庵原参考人  1点、質問ですが、安全性の確立と言ったときには、何パーセントまでの数 字を持ってくれば安全性の確立と言えるわけですか。0.00何パーセントとか、 そういう定義みたいなのは存在しているわけですか。 ○松本座長  そういうのは、いかがなのですか。そういうのはないのではないか。 ○庵原参考人  そうなると、未確立という言葉を使わざるを得ないと思います。 ○松本座長  確立しているとは、なかなか言いづらいですね。ある意味で否定するほうは 楽ですけれども。だからといって逃げになっても困るのですが、一応。 ○五十嵐委員  予防接種の場合は、通常、3万人とか10万人というレベルで非常に重篤な事 象が起きていないことが、世界的な常識ではないかと思います。まだ3万人と か10万人の妊婦さんへの投与の集積がない今の時点では、ちょっと慎重になら ざるを得ないのではないかと思います。これが数年してデータが蓄積されれば、 もう少しはっきりとしたことが言えるのではないかと思います。 ○松本座長  いかがですか。 ○稲松参考人  ある意味で、これまでそういうデータの蓄積が十分なされなかったというか、 逆に添付文書があまりきついので、こういう治療をすると叱られるので報告さ れていないところがあり、その意味で今後、少し表現を緩めて症例を集めて、 安全性を確立していただきたいと思うわけです。 ○安全対策課長  事務局としては今の議論を受け、本文はこの原案としておき、その後に「な お」として、小規模ながら接種により奇形の発生等が自然発生よりも上昇しな かったとの報告があるとして、77年の文献を引用する格好で、後ろに、どうい う情報があるのか、ないのかについて付加的な説明を付け加えることにより、 もう少し何が分かっているのかについて明示するようにしては、いかがでしょ うか。 ○松本座長  そうですね。安心して受けられればいいわけですから、いかがですか。稲松 先生、それでよろしいですか。 ○稲松参考人  私は、それでよろしいと思います。ただ、CDCが方向転換したときに、も うちょっと内緒の資料があるのかなと思った。 ○安全対策課長  情報提供はオープンになっている、根拠のはっきりしているデータでさせて いただきたいと考えています。 ○松本座長  よろしいですか。ほかに御意見はございますか。 ○庵原参考人  二つ、コメントがあります。一つはインフルエンザワクチンでギランバレー が問題になるときの発症頻度が、あの時はたしか100万人の8〜10人ですので、 ということは少なくともインフルエンザワクチンに関しては、100万人ないし は300万人規模のデータがないと、安全であるとは言い切れないだろうという のが一つです。  もう1点、アメリカのCDCは、原則として不活化ワクチン妊婦に接種する 場合は、第1三半期を避けるほうが好ましいという文章を入れています。一方、 いまの御議論ならばインフルエンザワクチンはいつでもいいということになる のですが、その点の御検討をお願いしたいと思います。 ○松本座長  それにつきまして、最初に村島先生にお尋ねしたのですが、その辺について は安全性があるという返事だったものですから、よろしいかと思ったのですけ れども、この点についていかがですか。 ○村島参考人  ギランバレーについては、そもそも妊婦だからという問題ではない。 ○庵原参考人  ギランバレーの議論をしていないのです。インフルエンザワクチン接種を、 第1三半期を避けるかどうかというところの問題です。 ○村島参考人  それは2004年からCDCの方で、避けるというのは撤廃されています。どの 時期でもとなっていますので問題ないと思います。 ○松本座長  期限を設けるというのも、なかなか難しいのです。ほかに御意見はございま せんか。 ○土屋委員  違うことですが、確認です。同時接種することができるというのを、用法・ 用量の接種上の注意のところに入れるのはいいのですが、本体の用法・用量の ところの記載に、1〜4週間の間隔をおいて2回注射すると書いてあって、接種 間隔は4週間おくことが望ましいと言い、同時のときはこう、他のワクチンの 場合はこうと言うとき、この本文部分の1回、またはおよそ1〜4週間の間隔を おいて2回注射するという言葉は、このままでいくのでしょうか。 ○事務局  これは、このワクチンそのものを用法として2回接種する場合の間隔です。 ○土屋委員  2回接種する場合は、4週間おくことが望ましいのですよね。望ましいと言い ながら、上では1〜4週間と言っている。そこはよろしいのでしょうか。 ○事務局  先生御指摘の部分は、参考資料1-2の1ページの左下を御覧いただくと、用法 ・用量の部分で本剤の2回接種について、2回目については1〜4週間の間隔をお いて2回投与と書いてあり、用法・用量に関連する接種上の注意のところには、 免疫効果を考慮すると4週間おくことが望ましいと書いてあります。この部分 の御指摘ということですね。 ○安全対策課長  ここの話は、接種の現場のお話を紹介いただくと、よろしいのではないかと 思いますが、厳密に4週間の間隔でやりなさいとしてしまうことが、現場的に は非常に困難を生じることが事情としてあって、実際に次にいつ来られるかに 関しては、なかなかきっちりと4週あけてから来なさいと言うのが難しいとい う話もあって、1〜4という幅のある形になっていると認識しています。  ただ、効果の点で、免疫が十分上がってくるところから言うと4週ぐらいあ いていたほうがいいと、ここには書いています。効果を十分出す観点では4週 だけれども、2回打つ必要があるのに、1カ月後はもういないとか来られない時 にどうするかを勘案して、1〜4週の幅が書かれていると思いますので、これは ある意味、しようがないと私どもは理解しています。それが現場的に、むしろ 誤解を招く懸念があるということでしょうか。 ○土屋委員  どっちを原則にしておくかの話だと思います。現実に2回投与をやるときに 間隔は現場の判断でというのは、そうだと思いますけれども、添付文書上、1 〜4週間間隔をおいてと書いておきながら、望ましいのはこっちだと言うのだ ったら、望ましいほうを先に書いておき、だけどこういう場合は、こうでもい いという書き方もあるのかなということです。 ○松本座長  差し当たりは、現在のこの改訂案でよろしいですか。ほかに御意見はござい ませんか。事務局から何かありますか。ただいまの議論を踏まえた上で、季節 性及び新型インフルエンザワクチンの同時接種、妊婦への投与の取扱いに関し ては、先ほど事務局が読み上げた改訂案のとおりで、よろしいですか。採決し なければいけないのですが、五十嵐先生は議決に参加できません。いま大野先 生がお見えになっていないので、土屋先生だけなのですが、最終的に確認だけ させていただきます。 ○事務局  同時接種に関する改訂については、参考資料1-1のとおり、妊婦、産婦、授 乳婦等への接種に関しては、改訂案どおりの内容にプラスして、「なお、小規 模ながら、接種による奇形の発生率は自然経過より上昇しないとする報告があ る」として出典を明記するとさせていただきたいと思います。御確認いただけ ればと思います。 ○松本座長  ありがとうございます。土屋先生、そういうことですが、よろしいですか。 ○林参考人  細かいようですが、いまのは季節性と新型と両方同じ記述でいいという確認 でよかったのでしょうか。 ○松本座長  事務局、そうですね。 ○事務局  そうです。 ○松本座長  よろしいですか。大野先生がおられませんが、よろしいですか。 ○稲松参考人  輸入のものについては、まだ日本人に。 ○松本座長  事務局、それに関してコメントいただけますか。 ○安全対策課長  今日、ご議論いただいているこの時点においては、輸入のワクチンはまだ現 存しません。これにつきましてアジュバントが入っているといった議論が、こ れまでされていることは御存じのとおりですが、今日のこの御議論は、輸入の ワクチンでいま存在していない状態のものについては議論していないというこ とです。そこはまた少し、別に分けて考えなければならない点がいろいろある と思いますので、輸入ワクチンの評価をする際に、また改めてということかと 存じます。  ちなみに、新型インフルエンザのワクチンで現状の国産のものについては、 添付文書案を従来の季節性のワクチンと基本的に全く同じ内容にしています。 これはデータがないので、製法上は全く同じ作り方をしていることに鑑みて揃 えてあります。その上で、今後得られてくる知見によって修正するところはあ るだろうと思います。ですから最新の情報は公開し、現場に提供することを併 せて明示していますので、今日の御議論は一応、国産の新型ワクチン、プラス 従来の季節性のワクチンに対して、御判断をいただいたということです。 ○松本座長  ありがとうございました。そういうことですと、土屋先生はご異議がないよ うですので、添付文書の用法及び用量に関する接種上の注意の項を、先ほど事 務局が読み上げたように変更すると。 ○村島参考人  細かい文言ですが、奇形の発生という言葉はやめ、先天異常という言葉にし たほうがいいと思います。 ○松本座長  よろしいですか。先ほど事務局が読み上げたような改訂案のとおりに変更す ることは、了承されたということにさせていただきます。ありがとうございま した。事務局、今後の予定について説明してください。 ○事務局  こちらの議題の関係については、いま御議論いただいた改訂内容を製造販売 業者に連絡させていただき、また併せて新型インフルエンザ対策推進本部から も、本改訂内容を都道府県等、接種実施医療機関等へ周知いただく予定です。 ○松本座長  ありがとうございました。次に資料2のインフルエンザワクチンに含有され るチメロサールの安全性について、事務局よりまず説明をお願いします。 ○事務局  それでは議題1の二つ目になりますが、インフルエンザワクチンにおけるチ メロサールの安全性の説明で、まず本調査会で取り上げさせていただく背景に ついて安全対策課から説明させていただき、後ほど資料2の調査結果報告書を 総合機構より補足説明いただきたいと思います。  インフルエンザワクチンに限らずですけれども、マルチドーズバイアルの細 菌汚染による健康被害防止の観点から、ワクチンには保存剤がずいぶん昔から 使用されています。その代表的なものがチメロサールであることは、ワクチン をお使いの先生方にはよく存じ上げていただいていることですけれども、今回、 新型インフルエンザワクチンとして明日以降、接種事業が開始されるインフル エンザワクチンについては、先の議論でもありましたように、国産に関しては 従来の季節性と全く同一の製法、組成で製造されていますので、今回、新型イ ンフルエンザワクチンにおいて、新たにチメロサールが配合されたとか、ある いはその配合量が増加しているものではありません。  しかしながら、今回、接種事業を開始するにあたり、従来の季節性インフル エンザワクチンは予防接種法上は定期の二類とし、高齢者の方を中心に接種し ていたものです。一方で今回の接種事業においては、小児、妊婦、基礎疾患を 持っておられる60歳未満の方々などが、優先接種順位の高い集団として事業が 予定されていることから、事業そのものもこれまでと位置づけが異なっていま す。接種の対象となる集団の方々ですが、もちろん任意で打っておられる方も いて接種率も近年上がっているようですが、それでも定期の対象ではない方々 は接種をしない方の方が多いということです。季節性インフルエンザワクチン を恒常的に接種していない方々にとっては、今回、新しくインフルエンザワク チンを打っていただくことになりますので、改めてインフルエンザワクチンに ついての御説明が必要となります。  また、これに関連して、予防接種を行う実施医療機関の先生方や、国及び地 方自治体などにおいてこれまで担当していなかった方々が担当になって新規に 新型インフルエンザワクチン接種事業を進めておりますが、いろいろな御質問 をいただいております。「チメロサールというものが入っているが、安全性は 大丈夫なのか」という御質問も、ほかの質問と併せて頂戴しています。  チメロサールの使用は、冒頭申しましたとおり、過去に遡って随分長い間使 われていますので、これまでに国際的にも一定の評価が共有されております。 そういう中で安全性の評価が行われるとともに、できる限り水銀全体の使用低 減化という流れの中で、ワクチンでもそういう取組みをするべきであるという 流れで、これまで進められてきております。  国内のインフルエンザワクチンでも、2000年代前半にチメロサールの含有量 は大幅に減量され、あるいは近年、一部の製品では別の保存剤に切り替えられ たり、プレフィルドシリンジなど、チメロサールを含まなくてもいいワクチン も準備されております。今回の新型インフルエンザワクチンの接種事業におい ては、マルチドーズバイアルが多くなるため、チメロサール含有ワクチンが一 定の量供給されることになります。当省としてもこれまでに、今の国内的・国 際的評価、ならびに新型インフルエンザワクチンに使用するワクチンそれぞれ での保存剤の使用有無、あるいは安全性評価に対する考え方など、情報収集に も当然努めてまいりますが、情報提供なども必要だと考えており、Q&Aなど での解説等もしているところです。  今回、これらのチメロサールに関する知見を整理して本調査会に御報告し、 これまでに行われている安全性の評価を再確認いただき、今後の接種事業での さらなる情報提供に活用していくために、調査報告をさせていただくというも のです。  前置きが長くなりましたが、こういう経緯でお諮りしているもので、中身の 説明は機構からお願いします。 ○安全第二部長  それでは、話がありましたように、調査結果について御報告します。資料2 です。IIの「これまでの経緯」にありますが、チメロサールは抗菌作用のある 水銀化合物です。安全対策課から説明がありましたように、かなり古くからワ クチンの保存剤として使われてきたものです。  体内で分解され、エチル水銀が生じるというものです。このチメロサールに ついては、1990年代に自閉症等の発達障害との因果関係が指摘されたことがあ って、その後、種々研究が行われてきたようですが、これらの研究も含めて、 現在ではWHOとか、米国、欧州の規制当局等でも検討が行われ、現在のとこ ろは因果関係について否定する見解が主になっているという状況です。  ただ、こういう懸念が示されたときを境にして、日本も含めて各国でチメロ サールについては低減していこうという動きになっています。日本においても 低減がなされているという話は、今、紹介がありましたので改めて述べません が、今回、いろいろ状況が変わっていることも含めて、調査報告をということ で、今回まとめたということが書かれています。  調査の内容は2ページ目からです。調査の内容としては、まず関連文献の評 価、国内の副反応報告について見たもの。WHO等を含めて、各国の評価状況、 対応状況を見ました。それから、日本の関連学会の見解についても調査して、 ここに報告しております。  まず関連文献の評価についてですが、チメロサールと自閉症等の発達障害と の関連については、種々報告がされているということは先に述べましたが、主 要なものについて、2004年の米国IOMの調査報告において評価をされている という状況です。  IOMの調査報告については、本日の参考資料にも付けております。参考資 料2-1になりますので、適宜御参照いただければと思います。  こちらで評価された結果として、チメロサール含有ワクチンと自閉症との因 果関係については、得られている根拠からは否定されるということ。それから チメロサールと自閉症が関係するという生物学的メカニズムに関しての仮説は、 単なる仮説にすぎないという結論となっています。  IOMの調査報告の中では、種々チメロサール含有ワクチンと自閉症のみで なく、MMRワクチンと自閉症の関係についても評価をされているわけですが、 この中でチメロサール含有ワクチンと自閉症との因果関係についての評価を見 ますと、対照を置いた観察学的研究、生態学的研究等、数カ国において行われ ており、これらの概要等、IOMにおける評価については、別表1と書いてあ りますが、参考資料2-3の別表1にまとめておりますので、御参照ください。  こちらで評価されている内容を見て、この結論については支持し得るのでは ないかと考えております。また、この評価が2004年に行われているということ ですので、その後の関連文献はないかということで、一定の条件で検索をして 抽出したところ、4報ほど抽出され、これについて内容を論文で確認しました。 この内容については、参考資料2-3の別表2にまとめています。詳細について はこちらの報告に書いておりますので割愛しますが、全体として、因果関係に ついての新たな知見をもたらすものはなかったと判断しました。以上によって、 文献の評価からはIOMの結論を覆すような知見は得られていないのではない かと判断しています。  国内の副作用報告状況についてですが、平成16年4月1日以降、本年9月30日 までに報告された副作用報告について見たところ、チメロサール含有の有無に かかわらず、自閉症等発達障害と関連する副作用報告は認められておりません。  報告書は3ページの上の方になりますが、各国規制当局等の評価、対応状況 について、こちらにまとめております。WHOにおいては、本日2006年のステ ートメントを参考資料2-1に付けておりますが、そちらにおいてもチメロサー ル含有ワクチンに曝露された乳幼児、小児、成人における毒性エビデンスはな いという内容の結論になっています。  米国においては、先ほど関連文献の評価で申しましたように、IOMが2004 年に因果関係については否定する報告を出しており、2009年のCDCのACI PにおけるMMWRの中でも、科学的根拠から見て、神経発達障害等のリスク を高めるということは記載されていないという内容と、4つ目の・に書いてあ りますが、妊婦や小児を含めてインフルエンザワクチンの有益性は、ワクチン 接種によるチメロサール曝露の仮説的なリスクに基づく懸念をはるかに上回る ということがまとめられております。  次に、EUの状況です。EMEAの見解として、本問題に関する見解の最新 のものは2004年と思われますが、この中でも最新の疫学的研究ではチメロサー ル含有ワクチンと特定の神経発達障害との関連は示されていないということ。 チメロサール含有ワクチンの接種は、乳幼児を含めて顕著に有益性があること を再度強調するということが書いてあり、チメロサール含有ワクチンによる何 らかのリスクが仮にあるとしても、有益性がリスクをはるかに上回るというこ とが述べられています。  オーストラリアとカナダの状況についても調べましたが、ほぼ類似の状況で、 WHOといった国際機関、各国規制当局において、自閉症等発達障害とチメロ サール含有ワクチンの関係については、いずれも否定をしています。ただ、水 銀の曝露を予防的に低減するという対応をいずれも推奨している、ないしは採 っているという状況です。  4番目として、日本の関連学会の見解について書いておりますが、2004年6月 に日本小児神経学会、日本小児精神神経学会、日本小児心身医学会が共同で声 明を公表しています。その中でも、自閉症の原因が水銀中毒であるということ を積極的に肯定する根拠は乏しいということ。自閉症とチメロサール含有ワク チンとの間に明確な関連性は見出されていないということが書かれています。  総合評価として、機構ではこれまでの知見を踏まえて、チメロサール含有ワ クチンと自閉症等との因果関係を示す根拠は得られていないと判断しておりま す。また、臨床的には局所における過敏反応の報告等はあるようですが、自閉 症等との因果関係に関する評価、他の規制当局における対応状況等を鑑みます と、特にマルチドーズバイアル等においては、チメロサールを添加しない場合 の病原体汚染によるリスクを比較すると、チメロサールにより起こるかもしれ ない有害反応のリスクは、相当に低いのではないかと考えております。  一方で、予防的観点から、日本でもチメロサールの減量・除去が進められて いることは、先に説明のあったところですが、このような低減の努力について は、水銀の曝露量を低減させるという観点から望ましいということで、引き続 きチメロサール除去・低減に向けて努力を続けることが適切ではないかと結論 しております。以上です。 ○松本座長  ただ今はインフルエンザワクチンに含有されるチメロサールの安全性につい て、事務局から説明をいただきましたが、御意見、御質問等はありませんか。 稲松先生、この件に関して何かコメントはありませんか。 ○稲松参考人  これは桃井先生のほうが御専門ですので、先に。 ○桃井参考人  自閉症とチメロサールの論議が長らく続いたことは御存じのとおりです。 2003年のデンマークでの長期に亘る発症率の調査報告などでも関係は否定され、 その他幾つかの疫学的研究で否定されてきました。両者の関係は極めて限局し たハイリスクの遺伝子を持つ者に関しては何とも言えないけれども、疫学的に は否定をされたと考えています。この点は患者の母親からよく質問を受ける事 項ですので、こういう大規模調査がすでにあって、疫学的には否定的であると いうことがもう少し広く行き渡ると大変ありがたいと思います。 ○松本座長  ということは、チメロサール含有のワクチンをする場合に、小児や妊婦に改 めて同意を取る必要はもちろんないと理解してよろしいですか。村島先生、何 かコメントがありますか。 ○村島参考人  今まで妊婦に使われていて、先ほどの650例の報告も1977年のもので、あの ころはもちろんこれは使用されていたわけです。そういう中でのデータがあり ますので、特に妊婦だからということでコメントはありません。 ○松本座長  ほかに御意見はありませんか。ただ今の御議論を踏まえて、資料2の調査結 果の報告のとおり、インフルエンザワクチンに含有されるチメロサールの安全 性については、現時点では諸外国と同様に、明らかな毒性が認められるもので はないと考えてよろしいですか。 ○土屋委員  はい。 ○松本座長  ということですが、事務局はどうしますか。 ○事務局  それでは、こちらについては、今、御説明した資料2の調査結果報告書を本 調査会の資料として公表させていただきますとともに、事業においてもQ&A などでよく寄せられる御質問への回答集を作っています。チメロサールに関す るQ&Aについても、現在、掲載しているものを、さらに詳細に分かりやすく 情報提供するようなQ&Aを作成してまいりたいと思います。 ○松本座長  よろしくお願いします。それでは、次の議題の「肺炎球菌ワクチンについて」 に進みたいと思います。肺炎球菌ワクチンについて、資料3に基づいて事務局 から説明をお願いします。 ○事務局  それでは、肺炎球菌ワクチンの議題について、御説明いたします。資料3が 調査結果報告書ですが、参考資料3-1、参考資料3-2、参考資料3-2の別添とし て厚い資料が付いています。経緯を御説明するのに、参考資料3-1学会印を黒 く塗り潰しています4学会から連名の要望書を説明したいと思います。  肺炎球菌ワクチンは、今度7価が承認されましたので、ややこしくなりまし たが、23価が現在発売されておりますが、肺炎球菌ワクチンの関連は萬有製薬 から販売されている肺炎球菌ワクチンとしては昭和63年からすでに発売されて います。学会要望書は2ページ目にあります。米国で当初認可されて以降、世 界各国で広く使用されているということになっており、萬有製薬によれば、現 在、世界38カ国で承認販売を行っているということですが、米国では本ワクチ ンは接種の勧告がすでになされており、65歳以上では65%以上、すでに接種さ れています。  本邦では、2002年ごろまでは年間1,000名程度の接種で、非常に接種が普及 していなかったのですが、2002年以降では、年間28万人前後が接種されていま す。これは定期予防接種のワクチンではありませんが、現在、百数十の市区町 村で助成制度が導入されており、導入した自治体で疫学的なというのでしょう か、医療経済的効果も見られているということが述べられています。  2ページの12行目ぐらいの段落ですが、予防効果が5年以上持続するという ことが認められておりますが、不活化ワクチンですので、上昇した特異抗体濃 度が時間の経過とともに低下し、高齢者や呼吸器、循環器に基礎疾患を有する 人では、特に低下しやすい傾向にあることも報告されていることから、これら 特異抗体濃度の低下が肺炎球菌性疾患の重症化リスクの増加につながるおそれ があるといった免疫学的な状態にある方々では、抗体水準を維持するために再 接種の必要性はあるということが述べられています。  しかしながら、現在の23価の前は14価であったわけですが、14価の肺炎球 菌ワクチンを2年以内に再接種した場合に強い局所反応が発現したということ で、国内の現在の再接種禁忌と同様に、米国はじめ海外でも当初は再接種が禁 忌とされていたということです。  しかしその後、4年以上の間隔を空けて再接種した場合には副反応の発現率 が増加しないことが確認され、CDCは5年経過した場合の再接種を条件付き で1997年に認めていると述べられており、現在では、米国、欧州、オーストラ リアほか承認販売されている36カ国の中で、再接種をすべて禁止しているのは 我が国だけという状況になっています。  学会の要望としては、接種が2002年以降、大幅に伸びていることから、これ らの方々の中には高齢者やハイリスクの方など切実に再接種を必要とする方々 が出てきており、3ページにあるように、国内においても臨床研究として再接 種の検討が複数行われ、その結果が報告されてきたということがあり、それら の成績報告では、著しい局所の副反応が認られておらず、全身性の重篤な副反 応も認められていないことから、これらは海外での再接種に関する知見とも矛 盾しないことが述べられております。  したがって、3ページのいちばん下にあるように、「接種不適当者」の記載 事項(1)について、(2)以上は本剤の接種を受けた方ですが、削除を要望します ということが述べられています。  さらに左下の6ページですが、今回は4学会からの連名要望書ですが、感染症 学会では再接種問題検討委員会を立ち上げて、本ワクチンの再接種に関するガ イドラインを作成いただいております。  その6ページでは、再接種の必要性あるいは海外の状況などが述べられると ともに、7ページの中ほどに、接種対象者ということで、学会で考えているも のですが、初回接種から5年以上経過した次に示すような肺炎球菌による重篤 疾患に罹患する可能性が極めて高い者及び特異抗体濃度が急激に低下する可能 性のある者を対象として、学会としては再接種の必要性をガイドライン化され ます。  さらに1)、2)、3)に挙げているそれぞれ具体的な方に加えて、ただし再接種 時の年齢が10歳以下である鎌状赤血球症、いろいろそのあと記載があって、こ れらの方々については前回接種から3年後に再接種を考慮することが推奨され る。もともとこのワクチンは先般承認された7価のものと違って2歳以下の方に は使えないということで、2歳以上を対象としているということが述べられて います。8ページには、再接種時の注意事項などもガイドラインに盛り込んで いただいています。  これを受けて参考資料3-2では、承認を持っている萬有製薬からも同じく要 望書が出されました。先に改訂内容を御説明したほうがよろしいかと思います ので、参考資料3-2の別添の厚い資料です。1ページめくると改訂案が出てきま す。接種不適当者(1)〜(7)が左の原稿にあります。(1)が学会要望にも記載の あった過去に本ワクチンの接種をしたことのある者を削除する。(3)の放射線、 免疫抑制剤等で治療中の者又は接種後間もなくそのような治療を受けている者 では、十分な免疫応答が得られないことが知られているので投与しないこと。 本来は併せてこういった禁忌もありましたが、今回、再接種が必要となる方が、 まさにこういった免疫抑制剤等の治療中の方なども一部入ってきますので、こ れらの本剤再接種の禁忌を解除に合わせて、全面的な接種不適当者からは削除 する。  2ページの用法・用量の改訂案では、これは学会要望では直接なかったかと 思いますが、本ワクチンに関しては、海外などではインフルエンザワクチンと 同時接種が行われており、同時接種のデータもあることから、同時接種の扱い を明確に記載したいということです。  3ページの接種要注意者の(7)の改訂案として、過去に本ワクチンを接種した ことのある者ということを、接種期間だったり、副反応の発生状況、あるいは 必要性を考慮する必要がありますので、要注意者として、さらに4ページの重 要な基本的注意の(4)に新たに過去5年以内に、多価肺炎球菌莢膜ポリサッカラ イドワクチンを接種したことのある者では、本剤の接種により注射部位の疼痛、 紅斑、硬結等の副反応が、初回接種よりも頻度が高く、程度が強く発現すると 報告されています。本剤の再接種を行う場合には、再接種の必要性を慎重に考 慮した上で、前回接種から十分な間隔を確保して行うことというのを挙げてい ます。  5ページが改訂案の最後で、接種不適当者から削除した免疫抑制剤等との関 連ですが、ほかの不活化ワクチン、インフルエンザワクチンなどでは、このよ うな書き方になっていますが、免疫抑制的な作用を持つ製剤の投与を受けてい る者については、本剤の効果が得られないおそれがあるので併用に注意するこ とを、併せて記載をするという改訂内容になっています。  資料3に戻り、これらの学会ならびに製造販売業者からの要望書がありまし たが、これらの改訂内容に対する調査結果報告書が資料3です。経過等は申し 上げたとおりですので、2ページの2.に、インフルエンザワクチンとの同時接 種についての本邦の状況、海外の状況等を述べています。同時接種に関しては、 これまで先ほどのインフルエンザワクチンと同様に、特段同時接種についての 記載は行われていなかったというのがこれまでの状況です。  3ページのいちばん上の米国の添付文書では、ACIPの提言もありますが、 インフルエンザワクチンとの同時接種による各々の副作用(副反応)の増加、抗 体産生の低下が認められないことが記載されており、むしろこちらのほうは実 際のエビデンスがあるということです。  IIIの「機構における調査」ですが、再接種については、(1)として、学会報 告にあった報告等が1)、2)、3)の大石、高山、川上らの報告によるもので、症 例数については限りのあるものですが、それぞれ軽症なり、特記すべき副反応 がなかったということになっています。  (2)の国内の副作用報告の状況においても、再接種に関しては51例111件があ りましたが、重篤とされたものは3例5件だったと。いずれの症例も回復してい るが、うち2例については前回接種時から5年以上を経過した症例であったとい うことです。  4ページはACIPの肺炎球菌の再接種の勧告を引用したもので、アメリカ では学会の要望書にあったような内容などが推奨されています。これらの状況 から、4ページの中ほどですが、機構としては、「以上の情報より」の4行目で、 本剤承認後に得られた情報について検討を行ったところ、再接種時の日本人に おける安全性・有効性の報告が得られた。これらの報告の範囲では問題がない と結論されており、再接種について問題となる点が報告されていない。  ただし、副作用報告としては、5年以上経過した症例でも、注射部位の局所 反応等の副反応が報告されていますので、一定の割合の患者で注射部位反応が 認められる可能性は引き続き存在するものだということから、本剤再接種のベ ネフィットが注射部位反応の発現等のリスクを上回ると考える場合には、再接 種は許容できるのではないかということです。  接種不適当者として挙げられていた放射線、免疫抑制剤等で治療中の者又は 接種後まもなくそのような治療を受ける者などについては、再接種の対象に入 ってくる方々にも一部ありますので、今般、これを接種不適当者から削除し、 これらについても削除することが適切と考える。なお、今般、接種不適当者よ り削除したいずれの対象についても、本剤投与に際してはリスクベネフィット をバランス相関した上で、投与の要否の検討をすることが必要と考えるという ことです。  5ページの2.が同時接種の方ですが、(1)に本剤の本邦での承認以降、1)の2 番の報告が公表されています。1)はインフルエンザワクチンとの同時接種によ って、大半は中等度の一時的な副作用であった。2)では、同時接種による有効 性と安全性が得られたという報告です。  (2)は、ACIPのガイドラインにおいて、同時接種の推奨等が述べられて いるとともに、2)では日本感染症学会の提言で、「新型インフルエンザへの対 応について」の中で、肺炎球菌に対するワクチン接種の必要性等が述べられて おりますが、同時接種が許容されることが望まれているという状況になってい ます。  3)は、米国の現在の新型インフルエンザに対するQ&Aでは、不活化H1N1 へのワクチンと肺炎球菌ワクチンとの同日接種が提言の中に含まれており、国 内では同時接種に関するガイドラインはこれまではありませんでしたが、一方、 同時接種を不可とする根拠もなかったということです。  また副作用報告の国内の状況においては、インフルエンザHAワクチンとの 同時接種では重篤1例、非重篤1例の計2例2件ありましたが、感染性心内膜炎発 症例では、投与後2カ月後に発症しているということで、因果関係不明とされ ています。  これらの情報から同時接種に関しては、本邦での新たなデータは確認できな かったものの、海外データでは新たな2報の文献が示されていること。承認審 査時に検討されている文献も含め、海外でのデータなどから、本剤とインフル エンザワクチンの同時接種は有益であるとの報告が複数なされているというこ と。安全性上の懸念が記載されている報告についても、処置を必要とするよう な重篤な副反応については、併用時と非併用時で特段差が認められていないこ とから、VIの総合評価として、下記を遵守した上で本剤の再接種を可能として 差し支えないという判断をしています。  放射線、免疫抑制剤で治療中の者又は接種後まもなくそのような治療を受け た者については、ACIPの治療ガイドライン等で再接種の対象とされている ことから、併せて、接種不適当者より削除することが適切と判断したというこ とで、6ページの黒ポツ三つは記載のとおりですので、読上げは省略します。  同時接種についても、医師が必要と判断する場合に同時投与して差し支えな いという判断をしています。なお、注射部位の反応が一定の割合で発生する可 能性も想定されることなどから、それらに対する対処法などについても、関連 学会と協力し、適切に情報提供していくことが、今後、本邦でも必要で、重要 であることを述べています。資料の説明は以上です。 ○松本座長  ただ今は肺炎球菌ワクチンについて、事務局から説明をいただきましたが、 これに関して、御質問、御意見等はございますか。渡辺先生、何かコメントは ありませんか。 ○渡辺参考人  私は、参考資料3-1の感染症学会からの要望書をまとめる検討委員会のまと め役をやらせていただいたのですが、今、御説明がありましたとおりで、日本 での再接種は、これまでは行ってはならないことになっていましたので、ほと んど行われておりませんで、ここにあるように、大石先生、高山先生、川上先 生のものが、まとまったものとしてはこれだけしかありません。私自身はやっ ていますが、この中に少し含まれております。再接種で若干副作用の発生率が 上がるようですが、その種類に関しては、初回接種と異なったものは全く見当 らないということで、安全性に関しては同じような、あるいはさらに注意を同 様に行っていけば問題はないと考えています。  また、同時接種に関しても、諸外国ですでに行っていることでもあり、これ に関する特別な問題点もなさそうだということも、今、御報告をいただきまし たし、このとおりお認めいただけると非常にありがたいと思います。 ○松本座長  実際使われる頻度は高いのではないかと思います。稲松先生、何か御意見ご ざいませんか。 ○稲松参考人  私はこのワクチンの国内導入のときから、いろいろ話を聞いています。当時、 妙な縛りがあるなと。一生に1回しか使ってはいけないのなら、50歳のときに 打つのか、60歳のときに打つのか、70歳のときに打つのかという論議をしてい た覚えがあります。  そのときの話で、アメリカではまだ安全性が確認されていないから、今はこ うしているが、先々はまた変更の可能性があるというお話でした。  当時、これはアメリカからのメルクからの薬ですので、それの当時の添付文 書に沿った形で日本の添付文書を作ったという日本のデータがあったわけでは ありません。そういう経過ですので、ある意味では向こうがそれなりの根拠を 示して再接種可という結論を出したわけですから、それに合わせて日本も当然 変えてもいいような気がしながら、一向に変わらないので、私どもは大変困り、 今、渡辺先生がお話したようなことがあったわけです。私自身は患者の求めに 応じております。 ○松本座長  同時再接種に関しては御異論がないということですが、ほかのインフルエン ザワクチンとの同時接種に関してはいかがですか。 ○稲松参考人  これについても私自身はいけないと書いてあるからやっていませんが、別に 問題がないような気がしております。 ○松本座長  ほかに御意見はございませんか。同時接種、ならびに再接種に関して、よろ しいでしょうか。御意見を伺っておりますと、肺炎球菌ワクチンに関しては、 感染症学会や企業の要望にある見解のとおりに、諸外国の状況も考えて、再接 種に関しては一定の期間を置き、リスクベネフィットを考慮した上で行うこと ができる、として問題はないと考えてよろしいですか。  ということで同時接種に関しても、御意見、御異論がないようですので、よ ろしいのではないかと思います。ということですが、事務局はいかがですか。 ○事務局  それでは、ただ今の御議論を踏まえまして、今回の肺炎球菌ワクチンの接種 上の注意については、御要望書をいただいております日本感染症学会などへの 本調査会の検討結果をお伝えするとともに、製造販売業者に対しても、要望の とおりの改訂をしても問題ないという旨を連絡させていただくことといたしま す。以上です。 ○安全対策課長  すみません、1点。今回、感染症学会等からいただきました要望書には、単 に再接種もできますということだけではなくて、接種の際、再接種の際に注意 深く行うのだということでガイドラインを付けていただいております。伺って いるところでは、これからこのガイドラインを学会の方でも公表をしていただ けるという話ですので、今後、今回の添付文書改訂に伴って、現場に対する情 報提供をする際には、このガイドラインの内容等を十分活用させていただきた いと考えております。  今回のことで、決して現場の注意が緩むというようなことにはならないよう にしたいと考えておりますので、ここは学会の御指導もいただいて行ってまい りたいと考えておりますので、一言申し上げさせていただきました。 ○松本座長  渡辺先生、よろしくお願いします。 ○渡辺参考人  この件に関しては、このガイドラインを実はホームページ上に公開すること を準備しておりまして、明日以降、数日中に掲載できるものと思います。簡単 にダウンロードができるようにしたいと思います。 ○松本座長  よろしくお願いします。それでは、最後に議題3の「その他」について、事 務局から説明をお願いします。 ○稲松参考人  その前に、免疫不全状態にある患者の削除に関してはどうなるのでしょうか。 ○松本座長  免疫不全は接種不適応者の部分から削除し、要注意者とします。 ○稲松参考人  禁止しているのは、実はインフルエンザワクチンに、これに似た条項があり まして、過去に免疫不全と言われた人は打ってはいけないことになっています。 以前、病院で打ったときに、それの書類を医師会に出しましたら、例えば、リ ウマチでステロイドを大量投与の経験があって、問診票に過去に免疫状態が悪 いと言われたことがあるとか、HIVの患者はどうするかとか、そういう論議 があって、インフルエンザのときの免疫不全条項がちょっと気になっているの ですが。 ○松本座長  事務局、答えられますか。 ○事務局  先生、それは参考資料1-2というのがあります。1ページでもよろしいかと思 いますが、右半分に接種上の注意がありますが、1.接種要注意者として、(4) に「過去に免疫不全の診断がなされている者及び近親者に先天性免疫不全症の 者がいる者」というのがあります。こちらは左のいちばん上にある接種不適当 者ではなく、要注意者の位置づけですので、打ってはいけないという方ではあ りません。 ○稲松参考人  区役所から免疫不全の例だけ突き返された覚えがありますので、今後そのよ うなことがないように指導してください。 ○松本座長  それでは、議題3の「その他」について、事務局からお願いします。 ○安全使用推進室長  本日のその他事項ですが、2点ありまして、一つは資料4の関係で、新型イン フルエンザワクチンは明日から接種がスタートしますが、それに対する副反応 対応についてというものと、もう一点は、国産の新型インフルエンザワクチン ですが、小規模ながら臨床試験の結果が出てまいりまして、それについての御 紹介ということで、本日は2点御紹介させていただきます。  初めに今後の新型インフルエンザワクチンへの対応ということで、資料4に ついて御説明をいたします。こちらの対応方針については、副反応モニタリン グに関する研究班ということで、成育医療センターの加藤総長を班長とする厚 生労働科学研究の研究班にも御意見をいただきながら作成したものです。  資料4ですが、最初にイントロが書いてあります。1ページの下のページ番号 2番の部分ですが、今回の「新型インフルエンザの特徴について」という基礎 的なことが書かれており、2ページ目のページ番号3と4とありますが、明日か ら接種がスタートする新型インフルエンザワクチンに関する接種事業において は、こちらの接種スケジュールの目安に沿って優先的な接種対象者の順番、供 給等が行われるといった形になってまいります。  こういう形で接種スケジュールが、現在新型インフルエンザワクチンの事業 の中で作られているわけですが、このスケジュールに沿っていった場合に、こ れだけ短期間の中で大勢の方にワクチンが接種されるという状況ですので、今 回の新型インフルエンザワクチンの副反応報告等の取り扱いについては、従来 のものに加えて、多少私どもの方でもいろいろな新しいものを取り入れたり 等々、接種の拡大に備えた対応をしていきたいと考えているところです。  3枚目の上、5ページに「新型インフルエンザワクチンにおける副反応報告の 取り扱い」という例があります。通常、薬事法の下ではメーカー等からいただ く副作用報告、これはもともと医療機関から来るものですが、そういう枠組み と、医療機関から来る副作用・副反応報告の枠組みという、オレンジ色で書い てある部分が二つの情報源ということで対応しているところですが、今回の接 種事業において、予防接種の実施要領という中で、医療機関から報告されるも のについても、今回、薬事法における副反応報告とみなすような形としており ます。これにより、医療従事者が、従来予防接種の方で書いている副反応報告 と薬事法上で出していただくものが重複しないような形で対応いただけるよう な形の対応をとらせていただいて、より迅速な情報の把握ができるような仕組 みを構築していこうということで、こういったものを実施要領の中に盛り込ん でおります。  それと下の方の絵ですが、この「副反応への対応の体制」という部分で、こ ういった副反応報告を集めていくという状況だけではなく、「初期2万例コホ ート調査」と書いてありますが、接種が始まる最初の2万例の医療従事者につ いてのコホートを作り、その中での副反応の発生率、発生頻度等をきちんと精 度高く把握していく。これによって重篤な副反応が接種事業初期の段階で発生 していないかどうかという部分を確認していくこと。  また、それによって、今後基礎疾患を有する方とか、接種対象が広がってい く中での副反応を評価する上でのコントロールデータにしていくという形での 調査を付け加えています。また、何か重篤な状況が発生した場合に、現地にチ ームを派遣する。評価のために副反応のベースラインデータの収集を行うとい うことを、全体的な副反応報告の体制に加えて対応することを考えています。  ページ番号7と8は、接種スケジユールと副反応報告の調査報告です。この表 の左側に接種対象ごとの開始時期、それから供給すればすぐに消費されるとし た場合の累積接種ドーズです。結構短期間に接種されるドーズの回数が増えい く想定の下で、最初に国立病院機構病院の御協力をいただいて実施する2万例 のコホート調査では、医療従事者で実施したデータは、大体11月中旬ぐらいに 出てきていますので、そこで健康成人のコントロールデータを作ると同時に、 初期2万例でも重大な副作用の懸念がないかという部分を確認しながら、接種 事業を進めていくこととなります。  また、2週間ごとに副反応の発生頻度の報告をまとめていくような付加的な 作業をしていき、この接種が拡大していく段階、段階において、重篤かつ低頻 度の副作用等が発生していないかという部分を具さに観察していく。それによ って安全対策を緊急に打つ必要があるかどうかとか、接種事業の継続について の可否を検討していくという進め方をしていこうというものです。  8ページにその発生頻度分析を速やかに把握ということで、副反応報告の件 数を分子として、実際の納入数量とか、あとはもう少し正確に1カ月ごとに医 療機関からの接種人数を出していただき、そういうものを分母にしながら、副 反応の発生頻度を正確に、短期間に把握していく形で対応していこうというこ とです。  9ページ、10ページですが、そういう副反応報告や製造業者から提出される ような安全性の報告に基づき、専門家の先生方に評価をいただき、2万例の調 査等も含めながら、安全性についての評価をいただいて、対応していくという 流れになってくるかと思います。  10ページに「その他の課題」と書いてありますが、ギランバレー症候群等の 低頻度な重篤な副反応の把握という部分があって、今回、接種後症状発生まで の時間というのは、実施要領に基づく部分ですが、従来7日であったのを21日 まで観察期間を延ばしているとか。接種医療機関以外の医療機関に対しても、 副反応報告の協力を実施要領の中で要請をしている部分があります。  あとは妊婦・先天異常に関する情報の把握ということで、日本産婦人科医会 の先天異常モニタリングの御協力をいただいて情報を得ていったり、「妊娠と 薬情報センター」の成育センターほか、14の協力機関による事業の中での情報 を得ていくという対応も、併せて行っていくこととしています。  その他、こういった副反応評価は、どうしてももともとのベースラインのデ ータがないと適切に評価できないという部分もあって、そういったものも研究 班の中で整理をして集めていこうという対応をとる予定です。  次のページは、今、申し上げたことのまとめで、速やかに情報を把握でき、 評価できる体制を作っていく。また、専門家の評価を定期的に行っていく。そ の中で本調査会の先生方にも、今後、御協力をいただくことになると思います ので、よろしくお願いしたいと思っております。  現地調査とか、併存する研究班によるいろいろな研究を同時に行っていくと いう体制で検討しているところです。  その他、報告基準とか、国立病院機構病院で実施する2万例のコホートの副 反応調査、先天異常モニタリングの体制等々の資料を参考資料に付けてありま すので、御参考までに紹介をさせていただきます。事務局からは以上です。こ れについて、何か御意見等がありましたら、よろしくお願いします。 ○松本座長  何か御意見、御質問はございますか。五十嵐先生、何かコメントはございま すか。 ○五十嵐委員  結構です。 ○松本座長  先生は、加藤研究班の一員であられる立場から、何か一言ありませんか。 ○五十嵐委員  これと一緒に出してもらいます。 ○庵原参考人  国立病院機構病院は2万人の登録を終了しています。ですから、来週早々か らこの研究に入るという、そういう準備段階になっていますので、それだけ報 告させていただきます。 ○松村座長  ほかにございませんか。事務局から次をお願いします。  ○事務局  それでは、参考資料5-3に基づきまして、国産の新型インフルエンザワクチ ンの臨床試験の中間報告(速報)について御紹介させていただきます。  こちらについては、国産の新型インフルエンザワクチン接種開始に先立って 200名の健康成人を対象に、国立病院機構病院4施設で実施をいただいたもので、 免疫原性についての臨床試験を実施したものです。先週金曜日、16日ですが、 新インフルエンザワクチンに関する意見交換会で、この結果を速報で御紹介し ており、その資料の中から安全性を中心に御紹介します。  今回、1回目接種の3週間後の結果を速報ということでいただき、200名の健 康成人男女20歳代から50歳代(59歳)までの方について接種が行われました。 最初のページの中間報告の下から二つ目のポツを見ますと、副反応については、 接種者全体のうち45.9%に見られました。こちらの詳細については4枚目、横 のスライドですが、1回目接種後の安全性情報という横の表を御覧いただきた いと思います。今回は15μgの皮下注、30μgの筋注2種類の投与方法があり、 それぞれこの時点で安全性情報の回収ができている15μg群97名、30μg群99名 の集計ということで出ております。  局所反応については、15μg群の皮下注の方が若干多く出ており、全体とし て58.8%。うち発赤が39.2%、腫張が18.6%、疼痛が37.1%といった局所の反 応が見られております。  全身反応は、この中で左の方にありますが、発熱、体調変化、頭痛、倦怠感、 鼻水などが出ております。この中で発赤、腫張については、次のページにそれ ぞれ重症度別のものがあります。このような形でA、B、Cと重症度を分けて 結果があります。  特記すべき有害事象は、次のページに重症度が高度であった2例について紹 介されています。まず1例目ですが、27歳の女性についてアナフィラキシーが 起こりました。こちらについては1回目の接種の15分後から、咽頭違和感、咳 嗽が出現したということで、60分後、無処置ですが咳嗽が消失したということ です。当日から吸入の増量、当日・翌日にキプレスの頓用などをしております。 この方については、4、5歳ごろから小児喘息があって、25歳からも喘息治療中 という既往のある患者でした。  2ページですが、36歳の女性で中毒疹がありました。この方については、投 与されてから8日目に全身の発赤が出現し、その後、増強、掻痒感も出現し、 皮膚科を受診し、プレドニン等で加療しています。10月8日の段階で軽度発赤 の瘢痕が残っている状況です。この方もアレルギー歴として、アレビアチンに よる中毒疹の経験があるという既往の方でした。  なお、参考資料5-4はインフルエンザの意見募集時の参考資料です。この中 の12ページに「インフルエンザやその他のワクチンの副反応」ということで、 こちらについては季節性のインフルエンザワクチン、定期の接種ですので、対 象としては65歳以上、その他の方ということで、多少今回の投与の対象の方と 異なっていますし、また報告基準などが必ずしも合致しているわけではありま せんので、厳密な比較という点では困難ですが、御参考までに季節性のインフ ルエンザワクチンの副作用の状況となっております。  今、申し上げたような形で速報の段階でこのような副反応の状況が把握され ておりますが、明日からの接種に向けて、先ほど資料4で御説明をしたような 方針で、副反応について注意をしながら実施をしていくことになると思います。 ○松本座長  御質問、御意見等はございませんか。 ○稲松参考人  数が少ないのですが、抗体上昇率の年齢差というのはあるのですか。 ○庵原参考人  分析がまだ十分行われていないのですが、一般的に20〜30歳代をひと括りに し、それから40〜50歳代をひと括りにしますと、20〜30歳代の方が抗体価は高 い傾向があります。統計的にどうかというのはまだ分析をしていないのですが、 全般的にそういう傾向があります。  それから、それは不活化ワクチンすべて、生ワクチンもこの傾向があります が、一般的にワクチンというのは、年齢が若い人ほど反応が良くて、だんだん 高齢になるにつれて反応が鈍くなります。先ほどの5-3の参考資料の2枚目に、 ヨーロッパのインフルエンザワクチンの効果判定基準が付いていると思います。 その基準を見ますと、60歳以上の方が緩いのです。ということは、それだけ反 応が鈍くなっていますので、緩い基準で当てはめているというのが現状です。 ですから、一般的に言われることは、20歳代、30歳代のほうが抗体反応が良く て、40歳代、50歳代が悪くて、60歳代以上になると、さらに悪くなるというの が一般的な現象です。 ○松本座長  ほかに御意見等はありませんか。 ○庵原参考人  副反応のことでついでに報告しておきます。一般的には皮下注と筋注を行い ますと、皮下注の方が局所の副反応は高くて、筋注になると副反応の出現率は 下がってきます。今回の研究においては、15μgは皮下注で行いましたが、30 μgは量が多いので、副反応のことを考えて筋注で行ったというのが1点です。  さらに言いますと、なぜ15μgと30μgを置いたかというと、この時点ではH 1N1のパンデミックウイルスに関しては、多くの人は基礎免疫がないだろうと いう考えでした。ということは基礎免疫から作っていくためにはスプリットワ クチンですと、H5N1の開発経験から、1回45μgを2回打たないと基礎免疫は できないというデータがあります。しかし、45μgを最初から持っていくわけ にいかないので、諸外国は15μgと30μgで二つのアームを作って行ったのです。  ですから、30μgを2回打っても抗体反応が上がらないというのがいちばん悪 いストーリーで、いちばんいいストーリーは、H1N1の日ごろのソ連型にかか っていると免疫の基礎ができているので、15μgでも1回で上がるだろうという のが一番いいストーリーでした。今回の研究をやり出したころに、ちょうどオ ーストラリアのCSLとノバルティスから出たデータによりますと、1回でい いというデータが出てきましたので、今回もそれと匹敵するようなデータが出 るという解釈です。 ○松本座長  ありがとうございました。ほかに御質問等はありませんか。事務局、ほかに 何かありますか。 ○事務局  特にはございません。それでは、本日の配付資料などは、文献等の著作権の あるものを除いて、速やかに厚生労働省のホームページで掲載させていただく ことにいたします。  また、最後にも申し上げましたが、明日以降、開始されます新型インフルエ ンザの関係の接種事業で出てまいります副反応の評価については、本調査会と 健康局の専門家会議と合同でお願いすることになると思いますので、先生方に はお忙しいところ申し訳ありませんが、引き続きよろしくお願いいたします。 ○松本座長  全体を通じて御発言はございませんか。ないようですので、それでは本日の 第3回の安全対策調査会をこれで終了いたします。長い時間、活発な御議論あ りがとうございました。 照会先:医薬食品局安全対策課 電話番号:03−5253−1111