09/10/13 第3回チーム医療の推進に関する検討会議事録 第3回 チーム医療の推進に関する検討会 日時 平成21年10月13日(火) 16:00〜18:00 場所 東京国際フォーラムG棟701会議室 ○永井座長   定刻になりましたので、第3回「チーム医療の推進に関する検討会」を開催 いたします。本日は、ご多忙の中をお集まりいただきまして誠にありがとう ございます。最初に、事務局から委員の出欠状況、本日お越しいただいてお ります先生方のご紹介、資料の確認をお願いいたします。 ○石川補佐   本日は、海辺委員、太田委員、瀬尾委員、竹股委員、山本隆司委員がご欠 席です。また、羽生田委員、大熊委員は遅れて出席とのご連絡をいただいて おります。  本日は、チーム医療の推進に関する話題提供をお願いしております虎の門 病院薬剤部長の林昌洋先生、医療法人近森会近森病院常務理事の川添昇先生、 聖路加国際病院がん看護専門看護師の中村めぐみ先生の3人の方にお越しい ただいております。  資料の確認をお願いいたします。議事次第、座席表、資料1として「諸外国 における看護師の業務について」と題した事務局提出資料、資料2として林昌 洋先生配付資料、資料3として近森正幸先生配付資料、資料4として中村めぐ み先生配付資料となっております。また、参考資料として「諸外国における 看護師の業務と役割に関する研究の報告書(抜粋)」を付けております。 ○永井座長   議事に入ります。本日の議題は、最初に前回の検討会で、諸外国における 看護師の業務範囲について議論が行われましたので、それについて事務局か ら説明をお願いいたします。次いで、チーム医療の推進を議論するに当たり、 虎の門病院薬剤部長の林昌洋先生、医療法人近森会近森病院常務理事の川添 昇先生、聖路加国際病院がん看護専門看護師の中村めぐみ先生から、それぞ れの取組みをご説明いただきます。その後、先生方への質疑応答を行い、チ ーム医療の推進について委員の皆様に自由にご議論いただきます。まず、事 務局から資料1の説明をお願いいたします。 ○石川補佐   前回の検討会から若干間がない中ではありますが、前回の検討会でご質問 のありました、「諸外国における看護師の業務」について、資料1及び参考資 料を用意させていただきました。参考資料は、平成13年度の厚生労働科学研 究として、兵庫県立看護大学の山本あい子教授を中心にまとめていただきま した、「諸外国における看護師の業務と役割に関する研究」の報告書の中から、 アメリカ、イギリス、フランス、ドイツに関する部分を抜粋させていただき ました。資料1は、これらをさらに要約したものです。本報告書については、 たいへん丁寧にまとめていただいておりますが、今日では若干年月が経過し ております。今後ご議論をいただく中で、必要に応じて情報を補足させてい ただければと考えております。  資料1では、米英仏独の4カ国における基本的な看護師資格と、そのアドバ ンスト又はスペシャリストの資格のそれぞれについて、業務範囲や業務に関 する医師の指示の要否を中心に、研究報告書を要約させていただいておりま す。  このほか、参考資料としてお出ししております研究報告書の本体では、各 国ごとに人口などの基礎データ、保健医療関係職種の概要、看護教育制度、 看護業務の現状と課題などの調査項目について、図表や法令の抜粋などを交 えながら、まとめていただいているところです。  資料1の1番目はアメリカです。アメリカでは、基本的な看護師資格の業務 範囲や業務に関する医師の指示の要否については、州法で定められているた め、各州ごとに状況が異なっています。一例として、カリフォルニア州にお ける基本的な看護師資格である「registered nurse」を取り上げております が、「registered nurse」は、認可クリニック内においては、免許内科医又は 外科医の指図に基づいて、薬物・器材の与薬・分配ができることとされてお ります。  一方、アメリカの「Advanced/Specialist資格」の業務範囲等についても、 やはり基本的な看護師資格と同様に、州法で定められているため、各州で異 なっています。先ほどと同じくカリフォルニア州の例で申しますと、「nurse practitioner」という資格があり、この資格は、内科医と外科医の監督の下 で、標準化手順又はプロトコールに従い、薬物・器材の供給・指図ができる こととされております。また、ニューヨーク州の例で申しますと、やはり 「nurse practitioner」という名前で、専門分野において、協働資格を持つ 免許医師の協力の下、業務契約書及び業務プロトコールに従うことを前提に、 病気や身体状況の診断及び治療手段を実施することができ、その一環として、 薬物・器材・免疫剤の処方や、看護師に対する免疫管理及びアナフィラキシ ーの緊急治療に関する非患者特定的な処方計画の処方と指図ができることと されています。要約いたしますと、このように、カリフォルニア州やニュー ヨーク州の「Advanced/Specialist資格」には、一定の医行為が認められてい るようですが、医師の監督とか、医師との業務契約とか、あるいはプロトコ ールに従うといった形になっていることがわかります。  2番目はイギリスです。イギリスでは、法律上、基本的な看護師資格の業務 範囲や業務に関する医師の指示の要否については、明確に規定されておりま せん。一方で、看護実践の実態として、死亡診断書への記載を除く死亡の判 断や宣告、看護師が管理運営を行う病棟や救急外傷部門における入退院の決 定、創処置・デブリーメント等については、看護師が判断・決定し、実施し ているということです。ただし、一般病棟における退院の最終決定は医師に よって行われているということです。  一方、イギリスの「Advanced/Specialist資格」として、いくつかご紹介を させていただきますと、「District Nurse」は、地区の保健局やコミュニティ・ トラストに雇用され、地域において看護ケアを実践する職種です。「General Practice Nurse」は、General Practitioner、いわゆる一般医の外科オフィ スやヘルスセンターに勤務したり、ヘルスプロモーションのクリニックを運 営したり、スクリーニング活動にも関わっています。「District Nurse」と 「General Practice Nurse」は、主にコミュニティケアで活躍する専門領域 の資格であるということができます。  これに対して、「Nurse Prescriber」という資格があり、この資格について は、限定的ではありますが、薬剤等の処方が可能であるとされております。 限定的と申しますのは、「Nurse Prescriber」が処方可能なリストというもの が定められておりまして、参考資料の48頁の中ほどより下に、「Nurse Prescriberは、」と始まる段落があります。この中で、「Nurse Prescriber's Formulary」のリストにある薬剤のみ処方が許されているという記述があり、 以下具体的な例示が列挙されています。そのほか、イギリスの 「Advanced/Specialist資格」として、「Nurse Specialist」、「Nurse Consultant」といった、大学院レベルの教育と実践経験を持つ者に与えられ る資格もあります。  3番目はフランスです。フランスでは、法令上、基本的な看護師資格の業務 範囲等について、いろいろと規定されております。例えば、「与えられた資格 により、通常、医師の処方又は指示、あるいは、その本来の役割に基づいて 看護を行う者は、すべて看護師若しくは看護師の業務を実践するものとみな される」、「看護実践には、分析、計画、実行、評価、臨床データ収集への貢 献、疫学と予防活動への参加、検査、保健衛生教育が含まれる」という規定 があるということです。同じく法令上、看護職独自の役割、医師の処方やプ ロトコールを必要とする行為、医師が側にいればできる行為、医師の介助者 として参加できる行為などが区分して具体的に列挙されております。参考資 料の37頁以下に法令が収録されており例えば、第5条、第6条、第7条、第8条、 第9条といった条文がそれに当たります。  また、基本的な看護師資格の国家免許を取得した後、病院での実務経験を3 年経れば、登録により「開業看護師」になることができることとされており ます。ただし、「開業看護師」は、病院では独自の判断で行われるような基本 的な看護ケアも、すべて医師の指示を受けて行うこととされているとともに、 患者が持参する医師の処方せんに記載されている行為を提供することとされ ております。  フランスの「Advanced/Specialist資格」としては、法令上、「麻酔専門看 護師」、「小児専門看護師」、「手術室専門看護師」等の規定があります。「手術 室専門看護師」のところに括弧書きで「≠PA」とありますが、これは業務内 容をみますと、いわゆるフィジシャンアシスタントではないという意味です。 このうち、例えば「麻酔専門看護師」については、法令上、麻酔専門医が側 におり、かつ、麻酔医が診察を行い、プロトコールを作成し、指示した後に、 患者に対して、全身麻酔、部分麻酔、麻酔医により装置が設置された後の麻 酔薬剤の再注入、麻酔医の主導によるプロトコールの実践、手術直後の覚醒 と経過観察を行うことができることとされております。具体的には参考資料 の37頁以下に収録されている法令の、40頁にある第10条に「麻酔専門看護師」 の規定があります。  4番目はドイツです。ドイツでは、連邦法上、基本的な看護師資格の業務範 囲や業務に関する医師の指示の要否については、明確に規定されておりませ んが、教育訓練目的として、「専門的、包括的、計画的な患者の看護」、「診断 及び治療処置に関する綿密な準備、補助及び事後作業」、「医師到着までの患 者の生命維持にとって必要不可欠な応急処置の開始」などの6項目が規定され ております。ただし、調査時点で法改正に向けた動きがあったということで、 今日では変更が加えられている可能性があります。参考資料の12頁に、連邦 法上の看護師の教育訓練目的として、6項目が掲載されております。  一方、ドイツの「Advanced/Specialist資格」である「専門看護師」につい ては、国家資格としては存在しておりません。州ごとに異なる規定がなされ ており、資格のタイプ、教育背景等も多様です。「専門看護師」の種類は、各 州を見ますと、集中ケア、精神看護、手術室看護、感染管理、麻酔看護、地 域看護、リハビリテーション看護、臨床指導、栄養管理、老人介護など約15 領域にわたっております。現時点では、州ごとに異なる規定がなされており、 その資格がないとできない行為とか、勤務できない領域が明確になっていな い状況であるということです。事務局からは以上です。 ○永井座長   ただいまの説明にご質問がありましたらお願いいたします。かなり細かく、 法律で行為、あるいは行為の範囲が決められていると理解してよろしいでし ょうか。 ○石川補佐   この4カ国で申しますと、フランスについては、かなり詳細な規定が置かれ ているようですが、その他の国々については、必ずしも詳細な業務の範囲に 関する規定があるというわけではないということだと思います。 ○永井座長   アメリカのように、PAはこれらの国には設置されていないのですか。 ○石川補佐   この調査では取り上げられておりません。 ○永井座長   わからないということですね。 ○石川補佐   これ以上の範囲のことについては承知しておりません。 ○島崎委員   EU国内でスペシャリストの移動というのは相当あると思うのですが、今日 の報告の基になった平成13年の調査では、あまり言及はされていないように 記憶しています。事務局あるいは看護の関係の委員の方々でもしご存じであ れば教えていただきたいと思います。EU国内で統一化するような方向に向か っているような動きはないのでしょうか。ちなみに介護の関係ですとハーモ ナイゼーションの動きがあるのですけれども、看護の領域では、そういう傾 向はないのでしょうか。特にSpecialistであるとか、Advanced nurseの関係 でそういう動向はないのか、教えていただきたいと思います。 ○野村看護課長   十分承知しているわけではありませんが、2年ぐらい前にICNの大会が行わ れたときにそのようなことついて情報交換がありました。そのときに、EUの 中での看護師の基礎資格として、看護師の資格を共通化していくようなディ スカッションがあるという話は聞いております。しかし、そうなったという ところまでは聞いておりませんが、そういう方向で話合いがされているよう です。 ○坂本委員   いま諸外国の話を伺ったのですけれども、変化としては、看護師が役割分 担においてより診療に専門的にかかわっていく傾向が高いのか、それともあ る程度はとどまっているのかがわかりましたらお願いいたします。要するに、 NPということで呼んでいるのかどうかわかりませんが、看護師がドクターの 診療にかかわって入っていく傾向がどんどん進んでいるのか、それともある 一定のところで止まっているのか。 ○野村看護課長   同じような時期での情報ですが、例えばカナダ看護協会からの報告などを 伺っていますと、医師不足を背景として、カナダにおいてもNPの資格を作り、 そういう方々が活躍し出したという報告がありました。そういうことが、い くつかほかの国でもあるのではないかと思いますが、直接聞いたのはカナダ から伺いました。 ○永井座長   チーム医療とはなんぞやという話になっていくと思うのです。私の理解で は、こういう役割分担をしつつ、かつ連携をしていく。そして全体の医療の 機能、レベルを上げていくということだろうと思うのです。ですから分担し て終わりというだけでは全く意味がないと思います。EUの調査の国で、一体 何人ぐらいこういう方々が養成されているのか、トータルと、毎年何人なの か。日本で認定看護師は、毎年何人養成されていますか、井上委員はご存じ ですか。 ○井上委員   認定は既に5,000人いて、専門が10年で300人です。 ○永井座長   そういう数のことも少し念頭に置いて議論する必要があると思います。イ ギリス、フランス、ドイツでこういう方が何人いるのか。おそらく、それは 教育体系の問題にもなってくるのだと思うのです。 ○石川補佐   先ほどの数ということですけれども、例えばイギリスについては、看護師 全体の数は参考資料の43頁に表があります。看護師の数が、当時で29万9,010 人であり、48頁では、スペシャリスト資格として限定的な処方ができる「Nurse Prescriber」という資格を紹介しておりますけれども、「[2]Nurse Prescriber」 の第1段落の最後のところですが、2001年9月までにこの資格を持った看護職 は2万2,000人以上に上るという記述があります。その他の国についても、そ れぞれ報告書の細部に、数の記載がおそらくあるのではと思います。 ○永井座長   こういうことから、教育体系、体制にかなり違いがあると、そう簡単にこ れだけの数を養成できるわけではないということがおわかりいただけると思 います。もちろん、長い歴史があって、こういう体制になってきたのだろう と思うのです。これは何十年、あるいは100年という期間に作り上げてきたも のなのでしょうか、それとも戦後の話なのでしょうか。 ○井上委員   アメリカでいえば、「nurse practitioner」は1960年代が第1号で、盛んに なったのはここ20〜30年です。専門看護師も同じようなものだと思います。 ○永井座長   PAもたしか1960年代だったと記憶しています。 ○井上委員  そうです、同じころに戦争の関係とかで医療従事者がたくさん必要になっ たり、クリントン開放政策のところで、地域の人たちが必要になったという ことかと思います。 ○永井座長  それでも約50年の歴史はあるということでしょうか。この件は後ほど議論 が戻るかと思いますが、本日おいでの先生方からチーム医療の推進に関する 話題提供をいただきます。まず、現場で薬剤師が果たしている役割について、 虎の門病院薬剤部長の林昌洋先生にお願いいたします。 ○林先生  時間を頂戴して少し説明させていただきます。資料2に基づいて、現場の薬 剤師の視点で、いまどんなことができていて、どんなことがありそうかとい うことをご紹介させていただきます。最初のところは、チーム医療に関する 絵ですので、特に改めて提言するような内容ではありません。以前は調剤室 にいて処方に基づく調剤をしていた薬剤師が、まさにチーム医療に参加して、 専門性を、薬剤師なりの得意なところをチームの中で活かしている具体例が あります、というのが本日のお話になるかと思います。  次の頁では、環境の変化について整理いたしました。実際に1965年ごろと 比べると、ここ50年で医療現場の薬剤師の仕事に大きな変化が生じてきて、 患者さんに良いアウトカムを出すための調剤を意識しようという動きが1970 年代に始まり、1980年代、2000年になるに従って、現場に薬剤師がいて、医 師と薬剤師が一緒に治療を考えるという状況が発生してきています。  一方で薬の最近の状況を見ますと、下のスライドにありますように、効果 は確かに高いのですが、新たな副作用が生じるような薬が分子標的薬等を始 めて、いろいろ開発され、現場に導入されてきていて、また抗がん剤に関し ては、高度なプロトコールが設けられて、一人ひとりに合った治療をうまく やり繰りしていく作業が発生してきています。こういう中で、本日この後ご 紹介する薬剤師の役割というのも、私どもの施設ではいくつか見えてきてい るように感じています。  次の頁には、虎の門病院の薬剤部の構成が載っています。薬剤部長の下、 調剤、製剤、倉庫部門といった補給、そして医薬品の情報を扱う部門は、歴 史的にも20年以上あったわけですが、ここ10年の間に大きな変化として出来 てきたのが病棟薬剤科といって、各病棟に薬剤師が行っていて、サテライト ファーマシーを中心に、医師と看護師の皆さんと一緒に仕事をしていくグル ープです。また、オペ室においても同様に、オペ室サテライトファーマシー があって、オペ室の麻酔医の先生や、外科の先生たちと一緒のオペ室薬剤師 の業務が進んでいます。  ここで薬剤師がやることについて1つは物の面、これは医薬品の原品を調合 したりする面です。一方で医薬品というのは通常のものと違い、安全で有効 に使うためには、使い方というか、投与量とか、投与間隔とかいろいろな問 題があります。一人ひとりに副作用が出ないように調整しているのが、主と して医師の皆さんの仕事だったのですが、少しお手伝いができている部分も 出始めています。  次の頁では、まず最初にこの輪の部分に注目してください。輪のいちばん 上側に、医師が最も正しい診断をして、医師が最適な処方をすると、薬剤師 が調剤をして、薬剤師が服薬指導、あるいは個人個人に合わせた服薬支援を して、ナースの皆さんや、医師の皆さんや、私たちも含め、患者さんも含め て正しく薬が使われていて、ただその結果として100人中100人に効くという 薬、100人中100人副作用がないという薬はありませんので、一人ひとりに合 わせて、ここで効果と副作用を再評価することになるかと思います。それを 次の処方にフィードバックして、治療がより良いものになっていくというサ イクルです。  この中で医師の皆さんが、診断も、処方も、副作用・効果モニタリングも、 処方フィードバックもみんな1人で行っていたところに負担感が大きかった のかと思います。いま私どもの病棟を見ますと、あらかじめPK/PD等で、つま り薬の効き目と、身体の中の薬物の血中濃度をうまく設計していくと効果が 最大限に、安全性が最大限になる薬については、ここで医師・薬剤師の処方 設計の協働作業が定着してきています。ベッドサイドに薬剤師がいますので、 主な副作用が出てきたときに、続けていいのかどうかを医師と相談しながら、 処方へのフィードバックの提案ができているのではないかということで、7項 目のこのサイクルの構成のうち、全部で6つについては病棟薬剤師もご一緒で きるのではないかという状況が生じてきているということをイメージとして 紹介しました。  つまり、以前は離れた薬局にいて、例えば薬にオーバードースがあれば、 量が多いですよと疑義照会していた能力を、チーム医療に参加して、その場 で薬の処方設計をしながら、先生方とご一緒すると、患者の様子も見えてい ますし、重症なのか軽症なのかみんなわかりますので、一緒に処方設計がで きるというイメージです。  その薬剤師の専門性はというと下の図になります。やはり体内動態学であ るとか、臨床薬理学であるとか、製剤学であるとか、医薬品情報学であると いったような、薬剤師ならではの、そういう薬に関連した学問を臨床適用す るという形で、薬剤情報、疾病情報、治療情報をみんなが共有しているのは チーム全員の問題でありますが、薬剤師は患者に会って何をするのかという と、そういうところをうまく活かして、患者の問題点を解決し、QOLを向上さ せようという動きが出てきているということです。  もう少し外に広く、全国に視野を取ってみますと、次の頁のように「安心 と希望の医療確保ビジョン」会議では、医師と薬剤師が協働して、医師の負 担軽減とともに、質の向上を図るようにしていきなさい、ということが報告 書にも書かれております。一方で、学術的な側面からは、日本学術会議の提 言が出ておりますが、これは大変重い提言と受け止めて、現場でも取り組ん でいるところです。多くの医学、薬学の専門家の先生たちが、チーム医療に おいて専門薬剤師はこんなことをやったらいいのではないかという提言をい ただいており、現場でもその内容を感じています。  次の頁の上側に、日本学術会議が具体的に何を言っているのかの抜粋があ ります。専門薬剤師については、特にここでは提言の[2]と[3]を挙げて説明し ております。その領域の医薬品の副作用・相互作用のマネジメントのための 臨床検査や、血中濃度測定のオーダーなども、場合によったら医師に代わっ て行ってもいいのではないかということを提言していただいています。いま、 現場では副作用が起こりそうかどうかということを、抗菌薬にしても、抗が ん剤にしても、循環器の薬にしても、薬剤師が「先生、検査しましょうか」 とお声がけして、手術から戻られたお忙しい医師に入力していただいている ようなケースもありますので、まさにこういうことは負担軽減に薬剤師がや らなければいけないし、一部ではそうした業務が進んできています。  [3]のところでは、副作用の重篤化回避や、治療に難渋する患者への対応に ついて、医師と協働のもと、処方の提案や、処方設計を分担してくださいと 提言されておりますが、これは現場でもまさにその動きが進んでいるという ことになると思います。  そういう作業を担う薬剤師にはどんな専門性があるのだろうかというと、 下の図のようにがん専門薬剤師、感染制御専門薬剤師、抗菌化学療法認定薬 剤師、精神科専門薬剤師等々そこに書きましたように、さまざまな専門薬剤 師が現在認定されてきており、右側に書きましたような学会、学術団体、職 能団体が認定を進めているところです。  次の頁で、虎の門病院の具体例を紹介させていただきます。抗菌薬の処方 支援チームにおける薬剤師の役割についてです。実際にMRSA、耐性ブドウ球 菌、緑膿菌とか、いろいろ治療に難渋する微生物が医療現場には存在してい て、うまく抗生物質を使いこなして生命を救っていく、感染症を治療してい くということですが、そういう場合に感染対策チームでプロトコールを作っ ております。そのプロトコールの範囲に則って、若い医師を含めて、現場の 医師が処方し、薬剤師も現場におりますので、血中濃度測定オーダー等を含 め、医師と協議をして、「先生、こういう処方でいきましょう」ということを 提案させていただいています。「重症例だからもうちょっと高めの血中濃度 を目指してくれ」と言われれば、そういう設計をしますし、そうでなければ プロトコール通りということで、処方設計、いわゆる処方の下書的なことを して提案したりすることもできています。  次の頁が、虎の門病院で実際に稼動している抗菌薬のバンコマイシンとい う、耐性ブドウ球菌に対する決定打になる、ファーストチョイスになる薬の プロトコールです。初回の投与量が決まっていて、その後採血日も決まって いて、腎機能に合わせてBayesian法等で薬剤師が処方設計をさせていただい ております。こういう職能を担うのは、いままでは病院薬剤師会の感染制御 専門薬剤師等が担ってきているように思いますが、日本化学療法学会でも、 抗菌化学療法専門薬剤師の認定が今年されると聞いていますので、さらにこ ういう方向に拍車がかかるかと感じております。  次の頁は、循環器チームにおける薬剤師の活動で、ワルファリンという抗 凝固薬に関連した例です。下側の図に書きましたように、治療上の重要性は 非常に高く、脳梗塞等で現在はおそらく100万人近くが使っているのではない かというデータもあるかと思います。血栓を予防しますので非常に重要な薬 です。一方で血栓を予防しますので投与量がオーバードースになると出血が 生じますので、これは大変危険な状態です。ここを、どううまくコントロー ルするかは、多くの循環器の先生が長年取り組んでおられますし、最近では いくつかの新しい提案もあります。  次の頁は、虎の門病院で薬剤師と医師が共同で開発した、内科系における ワルファリンの投与プロトコールです。日々のINRという血液の固まり具合を 調べる検査値を、そのまま高い、低いで調節していくと行きすぎてしまうこ とが多いので、過去3日間の変化量を積分したようなイメージで流し込んでい くようなアルゴリズム、投与プロトコールを作りました。  これを使う前と使った後を比較して見たのが下の図です。左側が、医師の 経験に基づいて、若い医師もベテランの医師もいろいろ処方されていた方た ちなのですが、日々うまく調節されていても、ときどきINRが高くなってしま って、出血傾向のある患者が生じていたところです。このプロトコールを導 入して、医師と薬剤師が共同開発したプロトコールで処方量を決めていくと、 薬剤師が処方の設計などをすると、ピタッと治療域に収まってくることが窺 えます。  ここまでのお話は、次の頁でまとめたように医師と薬剤師が共同で投与プ ロトコールを作ると、有効性と安全性の点で手間がかかる、問題点もある薬 物療法なのですが、院内でプロトコールを作成することにより、最適化がで きるのではないか。それは医師の負担軽減にもなるし、治療の質の保証にも なるのではないか。つまり、薬剤師が処方設計支援をすると、医師は最終判 断をしていただければいいというような仕組みもチーム医療の例としてあり ますということになると思います。これが、医師の負担軽減になれば、また これが医師と薬剤師の協働の1つのパターンかなということで紹介させてい ただきました。  次に、がん化学療法チームについてご紹介いたします。がん化学療法は、 既にどこの現場でもプロトコール、いわゆるレジメンに基づいて行われてい ると思いますが、ここではインフォームド・コンセント取得の件と、副作用 回避のための処方提案についてご紹介させていただきます。  次の頁は、がん化学療法が病棟で行われているイメージを書きました。通 常、施用に際して看護師が指示受けをされているかと思いますが、虎の門病 院では薬剤師が必ず指示受けを一緒にしています。そして、図の下のほうに オーダーが行くと、薬剤師がミキシングをして病棟に薬が上がってくるのは もちろんでありますが、病棟薬剤師が必ず全例施用前に患者に会い、インフ ォームド・コンセントの補充と、それから投与計画に対する再確認を行って います。下の図が、スケジュールと、がんの薬には副作用がありますが、副 作用は全部対策を打っていますということの説明資料であります。  次の頁は、その結果どうだったのかということがグラフになっています。 がんであって、初めて強い薬を使うことに不安感も多い患者さんですが、薬 剤師の説明を受けることにより4点、3点、2点、1点と約3分の2の方の不安感 が減っています。副作用の対策があることも、右下の図でよくわかっていた だけますし、左下の図ですとスケジュールもよくわかり、治療に取り組めそ うな理解がいただけています。  もう1つの、薬剤師の処方提案の件ですが、1,321件、半年ぐらいのがん化 学療法の内容を調べてみると、薬剤師が処方提案して、それがアクセプトさ れた件数が116件、約1割程度あります。いろいろな診療科であります。例え ば、プロトコール内で吐き気が強い患者、急性期の嘔吐には薬がプロトコー ルとして予め用意してありますが、遷延性嘔吐に薬をあらかじめ用意するの は、むしろ感染症への悪影響を考えて空欄になっているケースが多いのです が、そういうケースに合わせて薬剤師が投与しましょうということが必要で はないでしょうかという提案をしています。  次の頁に具体例があります。そういうことで副作用の対策が充実化し、実 は、これはがんにおいては副作用で「もうやめてください」という患者も少 なからずいますので、がんときちんと闘っていける環境を整備する意味でい うと、副作用対策の充実化は、治療効果の長さ、そして治療成果に直結して いる問題だと私どもでは考えております。  さらに、病棟の持参薬の話をちょっとご紹介させていただきます。次の頁 に持参薬の確認と、服薬計画書の作成とあります。患者が自宅から持ってく る薬はグチャグチャであるケースもあります。それを錠剤鑑別するのではな くて、ここにあるように入院中の検査や手術など、いろいろな医療行為の内 容と照らし合わせて、また重複投与がないか等も含めてチェックして処方提 案をします。そうすると、医師はそれに署名するだけでいいわけです。  次の頁の下側に、薬剤師の持参薬に関する処方提案があります。腎機能に 照らすと副作用が起こるほど量が多すぎたとか、入院して行う検査に照らし ては血小板を抑えてしまっていては危険だろうとか、いろいろな問題がわか ってきて、ここで入院中の処方の安全性も確保されているということです。  次の頁です。チーム医療における薬剤師の役割として、私どもで今回紹介 させていただきましたのは、薬剤師がチームに参加して患者面談して、副作 用をモニタリング、薬物療法の問題点を把握し、処方提案することで、医師 と薬剤師が協働することができますし、医師だけにここが依存しているより は負担感が少なくなるというのが1点です。また、院内プロトコールを作成し、 適正使用を推進することにより、薬剤師は体内動態に関するスキルで処方設 計を主にしますが、医師を支援している現場があるということの紹介です。 そして持参薬に関しては、多くの医療機関からの処方が混ざってくることが ありますので、入院中の治療に照らして、問題がないかをここで処方提案す ることが有効に生きてきているということです。がんのところでもご紹介し ましたが、薬剤師がICを補充する等のことも、インフォームド・コンセント を補強するということがあると、患者さんの安心にもつながりますし、医師 の負担もその点で軽くなることもあります。さらに、実際に添付文書や、血 中濃度の管理が必要な薬では検査も必要になってくるので、そういうところ も薬剤師なりに院内のプロトコール等に基づいて分担していければ、より医 師の負担が軽くなるかということも含め、チームでこんなことができていま すということと、現実にこんな考え方が、国内でされていますということの ご紹介をさせていただきました。ありがとうございました。 ○永井座長  ありがとうございました。質疑応答は最後にまとめてさせていただきます。 続きまして医療法人近森会近森病院常務理事の川添昇先生からお話を伺いま す。 ○川添先生  本日は、本来ならば院長の近森正幸がお話をしなければならないのですが、 どうしても外せない事態が出来いたしましたので、申し訳ありませんが、代 理で私が話をさせていただきますことをお許しいただきます。  これまで2回にわたって、大変レベルの高いお話をされているようにお伺い していました。また、先ほどは大変専門性の高い見地からの話をお伺いいた しました。私どものような、地方の民間病院が実践しているチーム医療につ いて、貴重なお時間を拝借することを非常に恐縮しております。私の職責は、 経営スタッフとして医療にかかわっていますので、チーム医療を展開してい く上でのキーパーソン的役割を果たしている看護を代表して、当院の看護部 長の久保田が対応しておりますので、補足説明等で発言させることをお許し いただきたいと存じます。  近森会病院グループの概要ですが、高知の駅のすぐそばにあって、4つの病 院と精神科デイケア専門の1つのクリニックを擁した病院グループです。本日 お話をするのは、その中核的な病院であります、近森病院338床の急性期病院 についてのチーム医療のことをお話いたします。あとは104床の精神科の専門 病院があります。ここの平均在院日数が80日前後と、非常に在院日数の短い 精神科医療を展開しております。近森リハビリテーション病院は180床ありま すが、ここは早くから回復期のリハビリテーションの専門病院で、中枢神経 系のリハビリテーションを専門に行っています。最近は、100床の整形外科専 門の近森オルソリハビリテーション病院を開設し、整形外科専門でリハビリ テーションを展開しております。場所は少し離れますけれども、社会医療福 祉法人を1つ持っていて、そこで障害者施設を運営しております。  本日お話する近森病院の概要としては、ICU、CCUの集中治療棟24床、HCUを 20床持っています。医療機能評価機構の更新も平成19年8月に行いました。地 域医療支援病院、臨床研修指定病院管理型、あとDPCの対象病院として平成18 年度から行っております。平成18年4月から入院基本料の7:1を算定していま す。病床稼働率は91.8%、平均在院日数は14日、地域医療支援病院の紹介率 は81.88%ということで、救急・急性期に特化した病院経営をやっております。  昨今の医療環境が激変していることに対し、病院の安定的な経営を行い、 質の高い医療を提供するために、さまざまな対応をすることが求められてい ることは、皆さんご高承のことと存じます。当院についても、このパワーポ イントのようなことをこれまで営々と行ってきましたし、今後もぶれなく行 っていこうと思っております。  20世紀までは比較的単純な疾患をもった患者が多かったのですが、21世紀 に入りますと、高齢者の増大とともに、複合的な疾患をもった、医療依存度 や介護必要度の高い患者が、救急医療を中心に急激に増加してまいりまして、 まさに医療環境にパラダイムシフトが起こったと言えると思います。非常に 高齢者が増えるとともに、介護必要度の高い患者が増え、臓器不全の患者が 増加しています。それに対して高度医療を提供するということで、医師、看 護師ばかりではなくて、専門性の高い多職種がチーム医療で対応しないと患 者は良くならないし、急性期病院としてやっていけなくなったと言えると思 います。  これに対して、高齢化の進むこの10年の近森病院の変化と、それに対応す るためのスタッフ増加のグラフを2つ示しております。高齢患者が非常に増加 している中で、手術件数を増やし、平均在院日数を短縮させ、病床稼働率を 上げていくには、医療スタッフの数を増やし、これからお話するチーム医療 の展開が必要であるといういわば前提の表とも言えます。特に、医師は10年 間で約1.5倍、コメディカルは2倍に増やしています。全体としてベッド数の2 倍以上のスタッフの配置を行っております。余談ですが、看護師は従来より 基準以上の配置をいたしましたので、7:1看護が新設されたときは、追加募集 をせずに認可をいただいたことを思い出します。この表をご覧になっていた だければ、いかに多人数でもって、老人を中心とした救急・急性期の患者に 対応しないと、病院の運営は成り立っていかないかということがおわかりい ただけると思います。  重症の患者の状況を図示したのが次の頁です。臓器不全の患者に、救命の ため根本治療を行い、回復のための栄養やリハビリチームの医療が行われる ということを図にしております。高齢者で、重症急性期の患者は、腎不全、 呼吸不全、心不全、敗血症、脱水、肝不全とさまざまな臓器不全をもってい ますが、それに対して手術等の根本治療を行うことはもちろん、回復に至る エネルギーに変換するために、骨格筋をたくましくし、合併症を防ぐために は、やはり栄養やリハビリテーションがますます必要になってきます。下に 書いてありますように、救命後回復するためには、食べて動くことが必要で、 食べて動かないと骨格筋が減少し、低栄養に陥り、免疫機能が下がる。高齢 者には慢性炎症が多いですので、感染症を併発し、衰弱して死亡に至るとい う形になろうかと思います。これに対してはチーム医療で対応することが必 要になると思われます。  それに対して当院では、チーム医療を4つのステージで考えています。1番 目に、急性期をサポートするチーム医療として、根本治療をサポートするた めのチーム医療。2番目に、急性期・回復期をサポートするチーム医療。救命 後の回復のため、早く家に帰すためのチーム医療です。3番目は、医師周辺業 務のサポートのチーム医療。4番目は、看護の質を上げるためのチーム医療。 この4つのチーム医療が挙げられます。  急性期治療をサポートするチーム医療として、医師同士のチーム医療とし て、呼吸器、糖尿病専門医等で、複数の医師が患者に対応するという、医師 同士のチーム医療を行う。薬剤師に関しては、先ほど虎の門病院の先生がお っしゃられたようなことが、近森病院でも徐々に行われつつあるということ です。臨床検査技師についても、心エコー、腹部エコー、内視鏡、カテーテ ル検査、手術のサポート等も展開しています。臨床工学技士についても、ER や手術室、CCU、ICUにおいて、24時間血液浄化ができる体制、人工呼吸・循 環のサポート等もチームによって行っております。透析チームということで、 緊急透析についても、看護師と一緒に緊急透析に対応するようになっていま す。機器管理センターの中で、機器管理チームが、病院機器の集中管理を行 っております。  急性期の回復期をサポートするチームとして、管理栄養士により、栄養評 価と栄養プランの提案と栄養サポート。リハビリスタッフ等において、病棟 での急性期リハビリテーションの実践を行っています。これは、非常に費用 対効果が大きいということで、診療報酬上で出来高払いでも評価されていま すし、薬剤等のコストダウンにもつながっています。  医師周辺業務のサポートのチーム医療ということで、医療ソーシャルワー カーの働きが重要で、転院・在宅へのサポート、社会資源の有効利用につい ても、医療ソーシャルワーカーが活躍しておりますし、我々は診療支援部と 呼んでおりますが、医事課や企画情報室、診療情報管理室等に、診療情報管 理士33名を配置し、DPCコーディングやチャートレビュー・書類作製のサポー ト、電子カルテのサポートを行っております。最近は、医師事務作業補助体 制加算が新設されましたが、医療秘書も9名配置し、カルテへの代行入力、カ ンファレンスの用意、研究・調査のサポートも行っております。  最後に、看護の質を上げるためのチーム医療として、感染対策、医療安全、 ここに書かれているようなチーム医療を、看護師が中心になって行っていた だいています。看護師やコメディカルがベッドサイドに行くというか、ベッ ドサイドで集中的に業務を行うために、その周辺業務について、外部委託の 活用を重点的に行っております。外部委託により、薬剤部、臨床検査室、臨 床栄養部の変化も、それぞれこのパワーポイントに書かれているようなこと が行われ、チーム医療に貢献しています。外部委託については、病棟でもか なり変化が行われ、ナースステーションからスタッフステーションへという ことで、病棟でさまざまな委託業務について、外部委託要員が頑張ってくれ ていますし、我々のコメディカルスタッフも、病棟で専門的に配置するとい うことになっています。  これらは、かなり早くから病院で取り組んだ背景として、急性期リハビリ ということが、近森リハビリテーション病院で回復期のリハビリテーション をスタートさせ、それから急性期のリハビリの展開ということで、特に脳外 科等については、サテライトの訓練室を病棟に設けたり、全医師が直接オー ダーして、早期リハビリを開始するということで、必要な患者すべてにリハ ビリを提供するということで、平成14年より365日無休のリハビリ提供が行わ れており、現在もPTが54名、OTが14名、STが3名という陣容で、脳血管、運動 器、呼吸器、心大血管リハビリ等を病棟で実施しております。チーム医療を 受け入れる病院風土が、急性期リハビリによってかなり加速してきたのでは ないかと思っています。  チーム医療で病院組織が変わるということです。これまでは医師が直接コ メディカル、看護師に指示を行っていたのが、最近は情報共有型チーム医療 ということで、NSTに代表されますけれども、医師が包括指示を行い、それぞ れのコメディカル、看護師が情報を交換し、すり合わせしながら、各自が専 門性を高め、最適なチーム医療が提供できるといった情報共有型のチーム医 療に変化してきているのではないかと思います。  チーム医療を推進するために必要なことと考えられますのは、やはり各職 種の専門性を高め、それぞれの分野で、医師と同等以上の実力を備えること が必要で、病院としてはその環境づくりに惜しみないサポートを行うことが 必要です。そうすることにより、現場の士気が高まることになりますし、そ れにはより多くの財源が必要で、診療報酬上の評価が不可欠となります。質 の高い効率的な医療を行うには、少数精鋭ではなく、多数精鋭でなければな らないと思います。看護師も7:1から6:1、5:1の基準を新設し、看護必要度に より、看護要員の傾斜配分を行い、効率的なサービス提供が可能になります。 薬剤師、医療ソーシャルワーカー、管理栄養士、事務員の病棟配属に対し、 人件費に対する診療報酬での評価もいただきたいと思います。あとは、医療 法上の標準人員や、診療報酬の施設基準以上の人員を配した病院についての 配置人員割合についての評価もしていただきたいと思います。私からは以上 です。どうもありがとうございました。 ○永井座長  ありがとうございました。最後に、急性期医療機関の現場で、どのように チーム医療が行われているかということで、聖路加国際病院がん専門看護師 の中村めぐみ先生からお話を伺います。 ○中村先生  私は、がん看護を専門看護師の立場から、急性期医療機関におけるチーム 医療の実際を少しお話をさせていただきます。チーム医療をどのように図式 化するかということでは、いろいろな表現の仕方があるかと思います。最も シンプルに表すならば、患者とその家族を中心に、さまざまな専門職種が、 直接的に関わるということだと思います。  次の頁をご覧ください。この図は、米国のM. D. Anderson Cancer Center というがんのアメリカでいちばんの専門病院ですが、こちらで提唱している チーム医療の図です。「患者満足度の向上をめざすがんチーム医療の基本」と なっておりますが、ここで特徴的なのは、患者を中心にアクティブ・ケアを 担当する者、ベースサポートをする者、コミュニティ・リソースと、広く患 者を支えていることが図式化されております。  それでは、チーム医療における看護師の活動に焦点を絞ってお話します。 下にお示ししたのは、当院看護部の組織概念図になります。中央には、患者 を下から支える感じでライン部門があり、その周囲にラインを支えるスタッ フ部門が表されております。その全体をサポートするナースを、当院では「リ ソースナース」と称しております。  次の頁をご覧ください。リソースナースの役割規定ですが、リソースナー スは看護の専門分野の知識・技術を活用し、看護職員や他の医療従事者への 啓蒙活動を行うとともに、必要時患者に直接ケアを提供することを通して看 護ケアの質保証に貢献する者を言います。実際には、直接実践、役割モデル となったり、患者に教育指導を行ったり、各専門領域に関する相談を受け助 言を行ったり、他部門との連絡調整役をするような者を言っております。  当院におけるさまざまなリソースナースの活動を紹介します。黒字で書か れているのが当院のリソースナース、そして、それぞれの活動を青字で示し ました。チーム医療に焦点を当てながら簡単にご紹介しますと、がん看護専 門看護師は医師、薬剤師とともに緩和ケアチームを結成しております。乳が ん看護認定看護師は、当院ではブレストチームの一員として活動しておりま す。また、化学療法看護認定看護師は、腫瘍内科医・薬剤師とともに回診を しております。皮膚・排泄ケア認定看護師は、褥瘡対策チームを結成して医 師とともに回診を行ったり、褥瘡発生率の算出や危険度などを評価し、これ らが当院でのクオリティーインディケーターの1つとなっております。また、 訪問看護師は定期的に病棟ラウンドをして、退院調整の手伝いをしておりま す。  次の頁をご覧ください。急性期領域の専門・認定看護師たちは、特に医師 や臨床工学技士、理学療法士らと連携して、呼吸療法サポートチームを結成 し、一般病棟で人工呼吸器を使っている患者に対するケアの助言などを行っ ております。また、透析看護認定看護師、糖尿病療養指導士、排泄機能コー ディネーターなどは学会認定になりますが、それぞれの看護師が専門的知 識・技術を活した専門外来を行っております。ここでは面談や指導を中心に 専門性を発揮しております。そのほか、小児看護専門看護師やインフェクシ ョンコントロールプラクティショナー、リエゾン精神看護師などが当院では 活動しております。また、特別な資格を取得していなくても、多職種で栄養 サポート検討会や摂食嚥下障害検討会などを立ち上げて、それぞれ専門性を 活した活動をしております。  次の頁をご覧ください。「専門看護師」「認定看護師」という言葉が出てき ましたので、この制度についてごく簡単に触れておきます。専門看護師、認 定看護師は、日本看護協会が認定している資格です。専門看護師と認定看護 師の違いですが、臨床経験はそれぞれ5年以上ということになっておりますが、 専門看護師は大学院レベルで2年間の専門教育を受けていなければなりませ ん。認定看護師のほうは、6カ月の専門教育ということになっております。そ の下に専門分野が書いてあります。専門看護師がいま10分野ありますが、専 門領域の範囲が広くなっております。それに対して、認定看護師は領域が絞 られ焦点化した部分に関しての専門性を発揮する形で、いま現在認定されて いる分野が17分野あります。人数はそこに書いてあるとおりです。  その下に教育および認定システムについても書かれておりますが、特徴的 なところは、5年ごとの認定更新制で、専門・認定看護師である以上は実績を 積まなければなりません。  次の頁をご覧ください。こちらにそれぞれの専門・認定看護師の年次推移 がありますが、ご覧のとおり、ここ数年、認定看護師、専門看護師ともに急 速に人数が増えております。これは社会のニーズを反映しているのではない かと思います。特に加算が取れる領域での活動が注目されるところかと思い ます。  よく専門・認定看護師と一般の看護師はどこが違うのかという疑問が出さ れますが、そこに言葉として少しまとめてみました。一般の看護師、いわゆ るジェネラリストというのは、経験と継続教育によって養った知識・技術・ 能力をその場その場に応じて発揮するのに対して、専門看護師、認定看護師 などを含めた専門性の高い看護師、スペシャリストと言われる看護師たちは、 エビデンスに基づいた知識をベースにして、直接的な患者ケアにとどまらず、 他の看護職やその他の医療従事者にも影響を及ぼす、リーダーシップを発揮 するところが違いかと思います。この辺りが、チーム医療への貢献につなが っていくと考えられます。  次の頁をご覧ください。これは参考までに当院における専門・認定看護師 の活動状況をお示ししたものです。当院では、それぞれの専門・認定看護師 が所属している部署を青色で示しましたが、このとおりそれぞれの専門性を 発揮しやすい部署に配属しているところが特徴的と言えるかと思います。  残りの時間で、一例として私、がん看護専門看護師が、病院の中でどのよ うな活動をしているかを少しご紹介しておきたいと思います。私自身は、横 断的活動をしやすくするために所属が看護管理室になっており、ある一定の 病棟・外来には所属しておりません。私自身がこれまで緩和ケアに携わって きましたので、サブスペシャリティとして緩和ケアに多くの時間を費やして おります。近年、治療と並行して緩和ケアを行っていくことが提唱されてい るので、私の病院では外来に力を入れており、私は外来を担当しております。 もちろん医師の補助業務も行っておりますが、緩和ケアに来る患者さんたち はいろいろな相談・悩みを持っておりますので、医師でなければ対応できな いことだけではありません。特に療養の場の選択や患者家族のメンタルケア に関しては、看護師が十分な時間を取って行ったほうが効率的なこともあり ます。そこで専門看護師面談枠を作り、いろいろなところから予約が入り、 対応しております。そのほか、さまざまな電話相談に対しても、まず専門看 護師である私が受ける形を取っております。  また、最近増えてきている緩和ケアチームの一員でもありまして、全体的 なコーディネーター役を果たしています。当院には緩和ケア病棟もあります ので、そこのサポートも行い、病棟・外来コンサルテーションが全体的に機 能するように気を配っております。そのほか、緩和ケア以外でも、がん患者、 家族のためのサポートプログラムを運営したり、看護師の教育や、当院も地 域のがん診療連携拠点病院になっておりますので、その役割を遂行するため のさまざまな活動を担っております。  次の頁をご覧ください。これは昨年度の当院の緩和ケアチームの依頼診療 科を示したもので、かなり多くの診療科と連携していることがおわかりいた だけるかと思います。これは正式に入力された依頼件数を示していますが、 このほかにカンファレンスを通してとか、病棟に回ったときに口頭での依頼 も多いのが実情です。  その下に、「緩和チームケアにおける主な職種の役割分担」をまとめてみま した。医師、薬剤師についてはこれまで十分なお話がありましたので、ここ では看護師に焦点を当ててみますと、看護師は患者さんのQuality Of Life、 全人的な視点からのアセスメントができることが特徴的かと思います。また、 患者さんの病状理解やさまざまな意思決定のサポート、薬剤の選択や対処方 法など医師、薬剤師がアドバイスをするわけですが、なぜその薬が必要なの か、なぜこのように判断したかを、それぞれの病棟の特徴を踏まえ、現場の ナースにわかりやすく説明を補充したりしております。その辺りが看護の特 徴と言えると思います。  最後の頁になります。「チーム医療を行う成果」についてまとめてみました。 多職種で行う、つまり複数の視点を得ることで、患者さんをそれだけ多角的 に見ることができると思います。また、話合いを持つことで総合的な判断が できます。患者さんを中心に目標を定めることで、方針の統一を図ることが できます。ある主治医が中心になって物事を決めるのではなくて、あくまで も患者を中心に話し合うことが可能になります。さまざまな職種が専門性を 発揮しますので、それだけ質の高い医療、そして、患者さん側から見れば多 くのニーズを満たすことができると思います。協働することで、お互いの職 種の理解が深まり、その分相互補完的に関わることができると思います。  最後に、このようなチーム医療を実現させるために、さまざまな専門性の 高いナースに期待される行動をまとめてみました。どうしても看護師は一生 懸命になりすぎて、自分自身がやりたいことが先立ちがちなのですが、個人 が何をやりたいということではなくて、各自が所属している組織の特性や状 況、求められていることを見極めて、ニーズに合致した活動ができなければ ならないと思います。また、EBMの時代ですので、根拠に基づいた知識・技術 を活用して、あくまでも患者にとって有益なケアを効率的に提供すること、 インフォームド・コンセントを含め倫理的な視点を持つことが重要だと考え ます。  専門領域においては、ある程度協議の上で看護師としての権限を持つこと が大事ですが、同時に限界を弁えることも大事で、自律と責任ということが 問われると思います。また、自己の役割や活動をある程度明文化することが 大事で、先ほどリソースナースについて紹介しましたが、私たちの病院では それぞれの専門ナースたちが自分たちがどのような役割をするかを提示して います。それとともに当院では目標管理ということで、半年に1度それぞれが 自分たちの行動を見直しながら自己評価を行っております。他職種の専門性 を理解して、それぞれの強みを活かして互いに支え合うこと、対立をせずに 他者を信頼して受け入れる風土が大事だと思います。そのために最も重要な のは、日ごろからのコミュニケーション、自分たちが調整役を取っていくと いう意識が大事かと思われます。昨今病院でもいろいろな取組みがなされて おりますが、そういった中で専門性の高いナースがリーダーシップを発揮し ていくことが、今後大変望まれていると実感しております。 ○永井座長  ありがとうございます。質疑に移りたいと思いますが、その前に私からい くつかお聞きしてよろしいでしょうか。いまの中村先生の聖路加国際病院の 例ですが、聖路加国際病院は何ベッドで、何人看護師さんがおられるのです か。 ○中村先生  当院は520床ありまして、1日外来患者数が2,500ということで、非常に外来 の患者が多いのが特徴です。正式な数を覚えていないのですが、600人近い看 護師がいると思います。 ○永井座長  いま近森病院と聖路加国際病院のお話を伺っていて少し違和感を感じたの は、この2つの病院が日本でトップクラスの看護師を抱えている病院だという ことです。1ベッド当たり大体1.2ぐらいですか。100床で120人。日本の平均 が大体0.1ベッドで0.5ぐらいではないでしょうか。国立病院機構が100床で、 50人から少し増えて55ぐらいになったかもしれませんが、大学病院で恵まれ ている所で、東大病院でいま1ベッド当たり0.8〜0.9の間ぐらいだと思います。 つまり、1ベッド当たり1.2人の看護師がいると、実際に病棟担当の看護師は 何人ぐらいでしょうか。手術とか外来に回っている看護師も結構おられると 思うのですが、おそらく100人は病棟担当になれるのではないでしょうか。 ○川添先生  100人近くいると思います。私どもはできるだけ外来患者を減らそうという ことで、ベッド数に対して1.1〜1.2倍ぐらいしか外来患者を取っていません ので、かなり病棟に配属できます。 ○永井座長  そうすると、100ベッドで100人の看護師が日勤や準夜や深夜を担当すると、 計算上、日勤30人、準夜20人、深夜15人ぐらい回ると思います。要するに、 とても恵まれている病院の例をお聞きしたなということなのです。チーム医 療のあり方を議論するときに、数の話なのか体制の問題なのか法的な限界の 問題なのか、いずれ整理していかないといけないと思うのですが、いまのお 話を伺っていると、トップの本当に恵まれた病院だからできるという面もあ るように思いましたが。 ○川添先生  看護部長が来ていますので。 ○久保田近森病院看護部長  補足しますと、338床のいちばん最初のベッドの中で、ICUとCCUが24床あっ て、それから44引かれますので、一般病床に回る看護師の数は7:1ぎりぎりで す。東大病院さんと変わらないぐらいの状況です。オペ室も比較的多いので、 一般病床全体では300人(1ベットあたりNs1程度)です。それでも恵まれてい ると思いますが、コメディカルがいないと回らないのが現状ではあります。 ○永井座長  要するに、今回の検討会は日本の医療をどうするかという視点が必要です。 今日はどなたにも、とても参考になったと思いますが、日本でいちばん恵ま れている状況の体制と、もっと現場で人が足りない所でどうするか、その辺 を整理して議論しないと、法律の問題なのか、単なる体制の問題なのか、病 院の運営や人件費で解決する話なのか、その辺についてご意見をお聞きした いと思います。 ○有賀委員  いま言われたように、そもそも論として、とてもたくさんの人が足りなく なってしまったのでこの手の議論をするのか、クオリティというか、患者に 良い医療を提供しようと思えばどういうことなのだろうという話なのか、論 理的には2つありますね。論理的には2つあるけれど、後ろのほうの議論こそ 大事なのではないかと思うのです。そういうことを詰めていけば、近森病院 で言うなら医師しかできないことは医師がやろうではないかと、そうでない 人たちが一生懸命頑張ればそれなりのことができるならそれはやろう、とい う話をいまお聞きすることができたのです。これは近森病院がえらく裕福で、 お金持ちだからできたという問題ではない。私は近森病院の先生方は近森先 生も含めて複数の方々を知っていますが、「良い医療をやろうと思ってやって きたらこうなったのだ」と考えるのが筋ではないかと思うのです。  したがって、HCUの問題も、HCUがあったほうがいいと思ったので一生懸命 やったら、たまたまHCUのお金がついたわけです。7:1もそうです。そういう 意味では、ここにお口のケアをしてくれる人がいます。でも、あの人たちは、 いま歯科医師が指示をしないとお金にならないですよね。 ○宮村委員  いや、医師の指示で。 ○有賀委員  できるのですか。前に近森リハビリテーション病院の栗原先生にお聞きし たときには、歯科医師がいないので単純に持出しだと言っておられました。 いまはそうなのかもしれませんが。確かに足りないから何とかしようではな いかという話は、それはそれでいいのですが、そもそも「良いことは良いこ と」なのだから、そちらを頑張ろうという話と「足りないから」という話と は行ったり来たりしないと、面白くも何ともない。 ○永井座長  ただ、問題は、1ベッドに1.2人の看護師を日本に遍く行き渡らせることは できないですね。 ○有賀委員  だから、いま言ったようにHCUやCCUがあって、ICUをやってそうなったので すよね。近森病院の先生が言っている意味はわかりますよ。私も近森病院に 行ったことがありますが、看護師がそこら中にあふれているなんて、そんな ことは全然ありませんから。 ○永井座長  でも、平均で、残念ながらいま日本の看護師はそこまでいっていないので す。それが問題なのです。それが医療崩壊を起こしているわけです。これだ け数が足りていれば、それほど問題は起こらない可能性があるので、マクロ で見たときどうなのかということなのです。それは単なるマンパワーの問題 なのか、現場で良いことだけやっていけばそれで絶対足りるはずなのか、マ クロで見たらたぶん足りないのです。だから、マクロとミクロを行ったり来 たりしながら議論しないといけないのです。 ○有賀委員  だから、日本全国そのようにできないから議論するのではなくて、日本全 国そのようにするためにはどうしたらいいのかという議論も一緒にやらない と。 ○永井座長  そうです。それにはいろいろな要素が絡んできて、病院の数なりベッドの 機能分担をどうするかという話も同時にしていかなければいけないだろうと 思うのです。いかがでしょうか。 ○川嶋委員  私も近森と聖路加のすごく進んだ、座長のおっしゃるような所のお話を伺 って感動しました。中村さんに質問したいのですが、専門看護師としては非 常に理想的な動きをしていらっしゃるし、聖路加の場合は環境も歴史も整っ ていると思うのですが、毎日の日常の中でナースが本当に専門性を発揮する 場合のジレンマというか、葛藤もおありではないかと思うので、先ほどはう まくいっているところをお聞かせいただいたのですが、何が問題なのかをお 聞かせいただけませんでしょうか。 ○中村先生  当院は在院日数が10日前後なので、看護師数は多いですが病棟・外来とも に忙しい状況の中でやっております。これだけいる専門性の高いナースたち も、それぞれがラインの中に位置づけされていて、私だけが看護部に所属し ていますが、それ以外の人たちは通常普通の勤務をしながら、その中で自分 自身の専門性を発揮しており、検討会なども時間外でやっているのがほとん どです。その中でいろいろやれることはあるのだけれど、自分たちの中では 十分専門性を発揮できていないという気持ちはまだまだあると思います。 ○川嶋委員  そういうこともですが、先生方にしても全員が全部理解してくださってい るわけではないのではないかと思います。チーム医療をする場合に、私たち は最も身近な医師との関係で悩むわけです。その辺の葛藤とか問題はありま せんか。 ○中村先生  当院では、病院全体がチーム医療への意識が比較的高いので、理解が得ら れないことはそれほどないと思います。医師たちも、看護師と協働すること のメリットを感じることで、比較的受入れがいいのではないかと思いますが、 認められるためにはそれなりに自分たちが効果を表していかなければいけな いのではないかと思っています。 ○永井座長  中村先生に、もっと質を上げるためには数が必要なのか、何か法律的に制 約があるのか、その辺についてお聞かせいただけますか。人数さえいればい ろいろな問題が片付くということなのでしょうか。 ○中村先生  私はそうは思いません。 ○永井座長  どういう点が問題だと感じていらっしゃいますか。 ○中村先生  ただ数が多いだけでは機能しないので、個々の看護師が専門職であるとい う意識を持って、ある程度責任を担う覚悟がないとチーム医療はできないと 思っております。ですから、多職種でのカンファレンスという場面がよく出 てきますが、そこでただいるだけで、自分たちが感じたことを医師に報告し ているだけでは意味がないので。 ○永井座長  意識の問題なのか、法的にそこまで責任が取れないからしないと言ってい るのか、そこはどうなのですか。 ○中村先生  いまの状況ですと、法の範囲ではそれほどの責任が課せられていないので、 確かに法的な面もあるとは思います。 ○永井座長  例えばどういうことでしょうか。 ○中村先生  診療報酬の面でもそうですが、看護師だけでやれること、判断できること がほとんど認められていないと言っていいと思うのです。ですから、やらな くても済んでしまう部分があるのではないかと思います。 ○島崎委員  いまのことと関連して、麻酔の使用判断に関する権限とか処方権といった 権限をもう少し看護師に与えてもいいのではないかという議論がありますが、 そういうことを感じることはありますか。 ○中村先生  個人的な意見ではなくて、看護界全体としては、いますぐに処方権があれ ばということではないと思います。看護師の場合、教育背景によるところも 大きいので、自分たちがどこまで専門職であるかという意識にも差があるの ではないかと思います。当院の場合、いま大卒と大学院卒の看護師が80%な のです。そうすると、自ずとある程度専門意識が高いので、考え方や行動に 違いが出てくるのではないかと思いますが、いますぐ処方権を持ちたいとい うことではないかと思います。 ○島崎委員  そういうことを申し上げているのではないのですが、例えば実際にやって おられて、その専門性も非常に高い、自分としてはそこまで十分できるのに ということをお感じになることはありますか、という趣旨の質問です。 ○中村先生  それはそんなにないです。いまの自分たちの権限の範囲でもやれることが たくさんあると感じています。 ○永井座長  近森病院の看護師さんはいかがですか。 ○久保田近森病院看護部長  最初の話がありましたが、もともと医師が、先ほども言ったように、近森 病院は100床当たり23人といういま以上に少ない状況の下で、いかに医師が足 らない部分をサポートしていくかと。そうすると、看護師の仕事自身も、い まの数でもずっと不足感があります。そういう状況の中で、どのようなシス テムを作っていくかという中でコメディカルが入ってきているわけで、その 中での医師・看護師関係に限ったわけではなく、いま看護師は調整の問題に 非常に追われているのが現実にあります。コメディカルが多すぎるために、 そこに対して自分たちが看護の本来の業務として、自分たちはこのような調 整係をするために看護師になったわけではないというジレンマを抱えている ナースがいたり、一方でそこにアイデンティティを求めて、調整することに よって患者中心の医療が展開できるのだとパラダイムシフトを起こして、理 事長は情報共有型のチーム医療を進めていこうとリーダーシップを取ってい るのが現実的なところです。 ○永井座長  いまの法律の枠組みの中で十分できるということですか。 ○久保田近森病院看護部長  はい。ぎりぎりのところで、包括指示を中心にではありますが。その中で、 先ほどの医師のインフォームド・コンセントの話なども過去の議論にあった と思いますが、もちろんその時間に至るまでの情報をどれだけ整理して、手 術に関しても急性期の場合でも医師に情報を伝達していって、インフォーム ド・コンセントの時間を最少限の中で患者さんに納得いただくかという関係 を整えるのも大切なチーム医療だと思っております。 ○永井座長  でも、まだ忙しいということは、もっと人がほしいということですか。 ○久保田近森病院看護部長  ずっと慢性的な不足感は感じております。 ○永井座長  何人ぐらい必要ですか。 ○久保田近森病院看護部長  それは先ほど話があったように、数だけではなく質の問題もあると思いま す。聖路加さんと違って、近森病院の場合は大卒の割合も急性期で10%です ので、その中に専門看護師もおりますが、認定看護師も養成途中という状況 ですので、もう少し質の高い、看護だけではなくもっとカンファレンス等々 で各職種と、先ほど川添のほうからお話したように医師と同等の議論ができ るような情報提供を、各部署でキーとなるナースが増えてきたときに、確実 にチーム医療によって医療の質が上がる方向を目指してはいますが、いまは 発展途上だと思っています。 ○坂本委員  本当に今の枠組みのままがいいのでしょうか。私は臨床の経験があります が、包括(指示)という用語の意味合いがまだ明確でないので、包括(指示) ということは置いておきます。例えば退院指示に関して、看護師は判断でき るにもかかわらず、先生方を探して退院指示を出してもらう。褥瘡などのケ アにについて看護師は褥瘡の薬がこれでいいのではないかと思っていても、 また先生に聞いて、褥瘡を診ていない先生に薬の処方をお願いしなくてはい けない。そういったことに対して、役割分担という話だけではなくて、看護 師・医師間で話し合いをしながら、看護師の判断である程度は行ってもいい よというところで、もう少し踏み込んでもいいのではないかと、私は考えて います。近森病院では本当にそう思っていないのでしょうか。 ○久保田近森病院看護部長  それは実際にも、褥瘡チームの医師から主治医に対してのサジェッション という形でしているので、退院指示等々についても若い先生が主治医だった 場合には、チーム・カンファレンスの中でそろそろ退院は大丈夫だからとい う形で上級医がサポートしていって、逆にコメディカルの意見を代弁する形 で退院指示が出ているのです。最終的に医師が指示を出していますが、それ は実現している印象があります。 ○坂本委員  食事のことですが、簡単に言うと、何でこんなことまでと思うぐらい、ド クターがすべて最初に食事せんを出さなくてはいけない。食事に関しては看 護師がほとんどわかっており、特別な治療食に関して以外はある程度の食事 せんを出せると思っているにもかかわらず、食事せんを出すたびに先生を呼 ばなくてはいけない。先生方は大変忙しいし、ナースも食事に関してはわか っているのに、食事せんを出せないというのは大変苦しいのですが、本当に そういうことはないのですか。 ○久保田近森病院看護部長  それはうちは入院時の包括セットの中でセット化されていますので、一発 でパッと入るので、最近はそれでもめることはないです。入院時決定をした ら、全部食事までセットになっているものが、どのセットでいくかが指示に なって、電子カルテで。 ○坂本委員  入院内の中での包括化ということですね。 ○久保田近森病院看護部長  包括化の中に入っているということですね。 ○西澤委員  いまいろいろな発表を聞いてすごく参考になったのですが、坂本委員から の質問とその答えを聞いて感じたのは、近森病院は医師の間での連携がすご くうまくいっていると。坂本委員がおっしゃっているのは、医師の間がバラ バラだから私たちは苦労しているという話につながると思っています。チー ム医療を考えたときに、近森病院は民間だからできるのかもしれませんが、 非常なリーダーシップの下でやられているのはすごく感心しております。21 頁ですが、この図の中で、これからはMDSだと書いてありますが、すべての職 種がチームを組んでやっていると。この図は何となく医師が包括指示で書い ているのですが、話を聞いていると、医師もこのチームの中に入っているの だなという印象を受けました。  1つお聞きしたいのですが、もう1つ今日のお話の中で大きくあったのはNST のことです。18頁に書いてありまして、省略しますが、いちばん最初に「20 世紀の医師、看護師中心の医療」から、下にいくとNSTはそれを大きく変える のだという話がありますが、これをもう少し具体的に教えていただけますか。 ○久保田近森病院看護部長  NSTに関しては、うちの理事長自身がNSTのカンファレンスにも週2回参加す るぐらいの熱心な状況でしています。うちのNSTがいちばん力を入れているの は、10年前、NSTを立ち上げる前に、集中治療室の風景が変わるよとおっしゃ っていたのですが、とにかく腸に対しても廃用を起こさないということで、 入院当初から腸吸収から栄養を、腸を使うことを徹底したことによって、多 臓器不全の患者さんも高齢の方も早い段階から離床が、リハも栄養状態も良 くなり、褥瘡に対しても良くなっていくと。美しくいかない場合ももちろん あるのですが、いちばん美しくいった場合がそういう状況であるというのが、 うちの理事長の持論ではあります。  近森病院がうまくいっているみたいな話ばかりすると、現場の人間に怒ら れるので、ジレンマを感じることも少し言わせていただきます。先ほどの中 村さんのご発表にもあったように、当院でも横断的なチームをやっておりま す。主治医に横断的なチームがNSTであったり緩和ケアであったりいろいろな 形で関わったときに、主治医にとってみたら既得権を侵されるようなイメー ジを持って、そういうチームに対して抵抗を示される医師も少なくはありま せん。それに対しては、病棟の師長やCNSが介入していって調整をしたりとい うことが、正直看護師の仕事を増やしていると言ってもいいというのが本音 です。しかし、もっと調整できる人数が増えれば、そういう人が少ないので、 看護部長自らも行って退院調整チームへ入らないといけないような現状です ので、そういう状況も理解していただきながら何とか現場を凌いでいるのが 民間病院の本音ではあります。 ○川添先生  私どもの病院では、予定入院の数はわずか35%で、あとは全部緊急入院で す。緊急入院で救急車なしで入院してくる患者が35%、緊急入院で救急車で 来る患者は30%です。3分の2が緊急入院という状況で、しかも65歳以上の患 者は66%ということで、非常に高齢化率が高く、まさしく野戦病院が総力戦 で医療を展開しているということです。それだけ見ると、ゆったり幸せだな というイメージなのですが、実は非常に多数制で患者に対応していかないと、 なかなかスムーズに病院経営ができない状況です。 ○永井座長  ご意見はいかがですか。 ○山本(信)委員  今日は薬剤の先生が見えて現場の事例報告をしているので、私が言うのも 変なのですが、近森病院もそうですし、聖路加病院のお話を伺っても、チー ム医療が大事だ、しかも、特に看護の方が具体的にご自分たちの専門性を高 めて、聖路加病院の場合にはリソースナースというナースもおられて、かつ それを使うまでに調整に終わってしまって、つまらないなという感じに聞こ えるのです。そういった意味では、先ほど、できないこと、やってはいけな いこと、あるいはやりたくてもできないことがあるというお話で、薬の面か ら見ますといろいろな所で薬が関わってきて、先ほどの林先生のお話の中で は、虎の門病院も決して全国的に見て当たり前の病院ではなくて、あとのお 二方と同じようにかなりハイレベルの病院ですから、そうしたことがどこで も起きるわけではない。しかし、調剤については薬剤師が責任を持つ業務で ありながら、なかなか病棟に入っていきにくいし、やりたくてもできない部 分がたくさんあったと思います。そうした部分でいま看護のお二人方がおっ しゃったように、やりたくてもできない、あるいはもう少し何を調整すると、 いまのお話にもあったように極めて良い状態で仕事ができる。人を相手にす る看護の方と処方の内容から医薬品を考える薬剤師とでは全く違うのでしょ うけれど、看護の方、患者さん、医師の方々と、どこかで協働するなり調整 をするなりということがあって、その結果虎の門病院では一定のプロトコー ルに乗ってこられたと思うのです。その辺りのご苦労というか、これから先 何か問題点はお持ちなのでしょうか。あるいは法律も含めてですが、何かや らなくてはならないことがあるのではないかと思うのですが、その辺りはい かがでしょうか。 ○林先生  いまご質問の内容を頭の中で整理しているのですが、1つ目は、従来型の物 を対象にしていた薬剤師がチームに参加していく辺り、あるいはプロトコー ルまで作って処方提案、処方設計するまでの間に何か抵抗があったか、なか ったかですが、私自身も29年前に病棟薬剤師をした経験がありましたので、 完全にどの病棟にも薬剤師がいて、薬剤師が会わずに退院する患者がいない というところを目指してやってきたのは、私が薬剤部長になってからです。 それは、急性期医療で抗がん剤にしても循環器薬にしても抗感染症薬にして も危険と背中合わせで患者さんを救っていかなければいけないという中で、 薬の部分を薬剤師にやってほしいというニーズがあったことと、昔からある 程度、11フロア中3フロア、4フロアと少しずつ業務の効率化を図りながら現 場への病棟薬剤師の定着を図っていった中で、医師の理解も得やすくなった し、看護師の皆さんの理解も得やすくなったという流れがあったと思います。  プロトコールに則って薬剤師が処方設計して、それに医師が納得してくだ さるかは、プロトコールを開発するときも、薬剤師がレトロスペクティブに 処方内容と治療アウトカムも解析しています。その中で薬剤師が医師にプロ トコールのご提案もしているので、おそらくそのプロトコールのほうがアウ トカムにつながるだろうということは医師の皆さんもご理解いただいている ので、感染症部の部長や感染対策委員長、あるいは循環器科の部長、もちろ ん院長もオーソライズしていただいて、それが院内プロトコールとしてある 程度認知されていますので、その範囲内で治療目標を決め薬物血中濃度を少 し高目に設定していくかどうかの議論に薬剤師が参加してご提案をしても、 現在は反発や違うのではないかと言われることはほとんどないと思います。 むしろ、もう少し強く菌をたたきたいのだけれど、どうだろうかという医師 からの要望の薬剤師による確認が、それは患者を目の前にしてやっています。 モニタリングセンターでBayesian法でパソコンを目の前にしてやっているの ではなく、患者のベッドサイドで医師と薬剤師が話し合っています。先日も 薬剤部長室に電話がかかってきて、患者さんからだったので、場合によって はお叱りだったらどうしようかなと思って電話に出たのですが、「前回もMRSA で入院したのだけれど、今回もMRSAの再発で、あれから何カ月も経っている のにまたMRSAらしいと医師から言われたので、前回の処方を設計した薬剤師 を私の所によこしてほしい」とご指名いただいて、患者さんにも薬剤師が見 えるようになってきているのかなと感じています。患者さんの様子を医師と 薬剤師が見ながら、ハイドレーションがどうかとかいうことも含めて重症度 を見ているので、今ではそこはお互いにストレスは全然ないのだろうと感じ ています。 ○永井座長  ちなみに、虎の門病院では薬剤師は何人配置されていますか。 ○林先生  いま常勤が29人で、非常勤が18人、全体で言うと47名です。 ○永井座長  そうすると、各病棟に配置する余裕はないですね。 ○林先生  先ほどご紹介したように、私どもは1フロアに1人の形で配置していますの で、看護単位で言うと2病棟に1人というイメージなのですが、診療科が割と 同じフロアに、例えば血液とか呼吸器とか似ている薬物を扱う診療科が2つか 3つぐらいずつ入っていますので、連携はしやすいと思います。 ○永井座長  NICUとか治験のための臨床研究の薬剤師等の対応はどうなのでしょうか。 ○林先生  治験センターは、別途治験センターがあって、こちらの治験事務局、コー ディネーター室にいま申し上げた人数とは別に薬剤師、ナース、検査技師等 の事務の方のチームがあって、CRCが約10名ぐらいいます。 ○永井座長  NICUはいかがですか。 ○林先生  当院では、NICU自体が今はお休みしています。 ○坂本委員  近森病院の方にお聞きします。院内の取決めとしてされているというのは、 具体的にどのようなところから取り決めて、どのようなことをしていいと決 めているのですか。また、それはどのような形でみんなに展開させて、どの ように運用しながら評価をしているのかということについて、何か具体的な ものがありましたら教えてください。 ○久保田近森病院看護部長  私も近森病院に来てまだ7年目なので、昔のことはわからないのですが、お そらく昔の状況から非常に医師が足らないので、医師をサポートしようとい う風土が病院全体にあったということは間違いなくあります。私が入った中 で、整理しないといけないというのをすごく感じたわけです。看護師も守ら ないといけないし、制度的なものもあるし、静脈注射にしても造影剤が入る ような静注も昔から看護師がしていたような病院ですから。そういった中で、 具体的に私が介入したのはクリニカルパスの婦長だったので、そういった形 で包括指示が可視化していって、どこまでが包括指示として認められるのか、 どれが適用基準なのか、どれが除外基準なのかを明確にしていって、適用で きる患者から包括的にできるということが、パスを作る過程によっていろい ろなコンセンサスも得られてきたし、電子カルテ化するプロセスの中で実際 に看護師にどこまで権限を与えるかという議論によって、具体的に言うと指 示受け、指示出しは基本的には看護師と医師の関係になっていますので、今 回電子カルテ化をするにあたっていちばんもめたのは、なぜコメディカルが 指示受けをできないのか、いまの電子カルテ化ではできないのです。  そういったシステム上の問題や運用的な問題を具体的に煮詰めていって、 基本的には指示を電子カルテ上で看護師が一括でまとめて情報共有すること を、1年前から始めていますが、いまはまだ電子化する中での情報共有の仕組 みがやっと軌道に乗ってきたのが現実です。その中で日々感じるのは、先ほ どワルファリゼーションの話がありましたが、うちも循環器が非常に多い病 院ですので、日々ワルファリンの処方のことはもめます。どうしてもいまの 急性期病院でオーダーしていっても、処方が重なる状況があるわけです。そ うしていってアラート機能も付けているのだけれど、先生方はすでにアラー トを無視して入力する癖が付いているので、そうすると同日投与などがよく あるわけです。それを最終的にどこで止めるのかということが、看護師の仕 事になってしまっているわけです。そんなところで、逆に無駄な仕事が発生 するというのが本音です。そこをシステムでどうかけていっても、忙しいか らで終わっていて、忙しいから口頭指示を受けないといっても口頭指示で回 っていますので、口頭指示で受けた後どう可視化して、お互いに守って、そ れをちゃんと先生に追認してもらうという習慣化をどうしていくのかが、む しろ私たちは遅れているのかもしれません。やってきたことをどう保証して、 どう形にしていくのか、皆さんはやる前に考えると思うのですが、うちはも うやってしまっているので、そこをきちんと整理していかないといけないだ ろうというのが現実的なところです。 ○坂本委員  それは文書化されているのですか。 ○久保田近森病院看護部長  文書化していたり、電子カルテ上の場合はいま言ったようにセット化され たものとか、基本的には文書管理システムに昔のエクセルで作ったようなも のが、手順とかクリニカルパス集とかいろいろな形で残っています。 ○坂本委員  もう1つ、食事のことはどのように決まっているのですか。 ○久保田近森病院看護部長  食事については、例えば心臓カテーテル検査の場合は低塩食の何グラム、 全がゆとかいうのが、年齢によってとかパターンがあって、詳しくは忘れま したが、整形の場合は何歳以上で糖尿病あり、なしとかパターンがあって、 どれを選ぶかが決まっています。研修の先生にこれを選ばないといけないよ と看護師が教えて入力しているのが、ERの現場では現実です。 ○坂本委員  そうすると、それは看護師が(判断はしているけれども、最終的な形とし ては)選んでいないわけですね。 ○久保田近森病院看護部長  選んでいないですね。そういう法的なところの指示は、最終的に電子カル テになることによって誰が入力したのかは明確になっていきますので、そう いうことは徹底するようにはしています。ただ、無駄な仕事かもしれません。 ○山本(信)委員  1つお聞きしたいのですが、虎の門病院のケースでは、今回はワルファリン と抗菌剤と抗がん剤の話ですが、たぶん他にもたくさんいろいろなものをお 作りになっていると思うのです。久保田先生が話された話によると、プレゼ ンテーションには薬剤師もその中に含んでいるというお話だったのですが、 いま示されたようなケースはそもそも薬剤師が何か言わなければいけない、 いまどれほどアラートを無視する先生がいるかわかりませんが、薬剤師は近 森病院ではその中にどんな形で組み込まれているのでしょうか。 ○久保田近森病院看護部長  もちろん、日勤帯では薬剤師がいるので止まるのですが、そういうことが 起こるのは大体準夜帯の就寝前とかの時間帯が多いです。看護師しかいない ような状況で起こってしまうのが現実です。  薬剤師の役割で先ほどおっしゃっていましたが、看護サイドから非常にニ ーズが高いのは、持参薬の管理です。最近持参薬管理オーダーも入ったので すが、そういったところで医師からの要望も強くて、看護師と協業していっ て具体的な作業を進めているのが現状です。 ○山本(信)委員  そうすると、虎の門病院は日勤帯はたぶんアラートが鳴っても止まるのだ ろうけれど、夜は鳴りっ放しという状態なのですか。 ○林先生  夜間の病棟薬剤師が何時何時でいるかについては、正規の勤務時間につい ては通常の施設と同じ8時半から17時15分になります。ただ、チーム医療をや っていると、たぶん他の病院もそうだと思いますが、ミーティングがあるの は朝の7時半からとか、夕方のオペが大体一段落した7時からということにな るので、それには参加していないと当然仕事にならないので参加します。病 棟で薬剤師が医師・看護師とコミュニケーションできる時間は、20時ぐらい までは看護師の皆さんとディスカッションできます。それは仮にセンター薬 局に戻って薬学的ケアの記録をつけていたとしても、病棟薬剤師全員が1人1 台PHSを持っていますので、「変な抗がん剤のオーダーが、いつもと違う話で 出たんだけど」「抗菌薬が違うんだけど」と言われれば、担当の病棟薬剤師が 患者の顔を思い浮べて、チーム医療の治療計画がどういう状態かわかりなが ら答えをできる状態になっています。それ以降の時間になりますと、当直者 がセンター薬局勤務者として一般的な薬物療法全般として対応することにな ると思います。 ○島崎委員  中村先生にお伺いします。専門看護師の方々の中でも考え方が多少違うの かもしれませんが、そういう前提でお伺いします。専門看護師の役割の中に 教育とか研究が入っていますね。いま直近で300人ちょっといらっしゃると思 うのですが、実際に臨床に携わっている方、臨床と言っても直接的のものと、 スーパーバイズ的な役割と違うと思いますが、ざっと見るとどういう割合に なっているのでしょうか。 ○中村先生  私も正確な数はわかりませんが、実際のところ専門看護師は臨床をやって いることが原則的になりますし、認定を更新していくときにはそれが必要な ので、たぶん300名のうちのほとんどが基本的には臨床現場で働いていると思 います。1996年に認定が始まりましたので、年齢的にも初期の者はキャリア アップの中で教育や管理のほうに行っている人もいるので、多少ばらつきが 出ていますが、ほとんどの方が何らかの形で臨床に携わっていると言えると 思います。 ○島崎委員  もう1つ、専門看護師と認定看護師の領域の決め方は、どういう関係になっ ているのでしょうか。 ○中村先生  特に認定看護師は、各学会等がここの専門分野について実績のある人たち がいるので認めてほしいと申し出て、日本看護協会がそこを専門領域として 認めるかどうかという発想なので、多少偏りがあったり若干重複したりして いるところもありますが、実績がある所から認めていっているのが現状です。 ○島崎委員  専門看護師で、例えばがんで言えば先生はがんの専門看護師で、サブスペ シャリティがあって、それぞれいくつかそれに対応する形で認定看護師は分 かれていますね。つまり、専門看護師と認定看護師の関係は、そういう包含 関係で整理していけるものなのか、そうではないのかという点をお伺いした いと思います。 ○中村先生  そこは病院によっても違うと思いますが、専門看護師は大学院を出ていて、 いまの現状ですと全体的にリーダーシップを発揮できる立場にあるので、狭 い領域で実践家として専門性を発揮するというよりも、病院の中でいろいろ なものを立ち上げたりしていくときに大きな力を発揮しているのではないか と思います。認定看護師のほうは6カ月間の教育で専門性も明確であり、5,000 人と数が増えているので、専門看護師と認定看護師の関係性が、必ずしも包 含的ではないと思います。 ○島崎委員  役割が違うと理解すればよろしいですか。 ○中村先生  はい。認定看護師は、現場の中で実際にその所属部署で力を発揮している のが現状ではないかと思います。 ○宮村委員  私は歯科医師でしたので、いままで2回は黙っていました。3回目も実は出 席しているのですが、あまりよくわからないところがあるのです。これは座 長が、初めからお聞きしていて、「チーム医療」という名前だけでもまず具体 的なことから話をして、総論的に持っていこうと言われました。なるほど、 そうだと思っていたのですが、わからない歯科医の私が、チーム医療という のは、そもそもチームとしてあるのはどんなものでも当たり前ですので、い ままで医療にチームがなかったのかどうか。なかったわけではないのだろう から、それに問題があったのか、あるいはそれ以上のものを作ろうとしてい るのか。3つ目は、医師不足もあるし大変だから、看護師の職能というか、業 権を拡大しようとしているのか。どこで議論をされているのかなとお聞きし ております。  ただ、議論はとても面白いです。医師の先生と看護師の先生方のバトルな のか、これからどうしようとされているのか、私にはわからないのです。私 が1つ言いたいのは、「チーム医療」の「チーム」だけの総論的なことを申し 上げると、普通チームというのは徹底的な監督者がいて、それと目的を同じ にして頑張ろうというものですので、ある種専門性に分かれて、我々もこれ が言えるのだとか、できるのだとか言うと、外から見たらそのチームはバラ バラになるだろうなという気がします。つまり、中村先生が最後におっしゃ いましたが、私は総合的な人間の集積のほうがチームが作れると思います。 専門性の集積というのは、チームは難しいのではないかと思っております。 総論的にです。まずは看護師と医師の業権を決めるのだということになれば、 私はしばらく聞いておこうと思っていますが、チーム医療と言ったら、常識 で考えればNSTだって、口で食べようと言うなら歯医者だって要るでしょうと か、歯科医の指示がないから口腔ケアが請求できないと有賀先生がおっしゃ ったことで、私はむしろ口腔ケアに歯科医が入るのは普通ではないかとその うち議論したいと思いますが、いまのところはここでこれから何をやってい くかがわかりませんので、座長に文句はありませんが、ここは医師と看護師 のバトルの場だとか、はっきり言っていただけるといいなと思います。 ○永井座長  そろそろ「チーム医療とは」という議論もしないといけないと思うのです が、チーム医療は非常に幅があって、看護師が抱えている悩みとこの間の外 科医が抱えている悩みと全く違うのです。ですから、いま少し事例をお聞き しながら、それぞれの現場でどういう問題があるのかをお聞きしている段階 です。今日は看護師中心に伺っていますが、前回は外科医の方においでいた だいているわけです。  チーム医療というのは、分担と連携の問題です。だから、全て状況によっ て違うわけで、救急でも救命救急士などという制度もできているわけですか ら、人数の問題なのか制度の問題なのか意識の問題なのか、これを少し整理 したい。それで事例を挙げていただいているのがいまの段階です。その中で 特に問題を抱えている所に対して、我々は何らかの解決策を提示しないとい けない。どこに問題があるのかと。数の問題であれば、これは保険制度の問 題かもしれないですね。ちゃんと経営が成り立つようにすればいいわけで、 意識の問題であれば内部で教育なり意識改革の問題になるでしょうし、制度 の問題だと話が大きくなってきます。ですから、現場それぞれで何がいま問 題なのかということをお聞きして、もちろんチーム医療とは何ぞやという議 論も進めつつ、個別の事例を聞いていくということだと思います。 ○坂本委員  私もまさにそのとおりだと思います。例えば、有賀委員が救急でこういう ことをしている、こういうことで悩んでいるということは、正直なところ私 たちは知りません。だから、有賀先生がおっしゃって初めて、私たちが考え ていることと少しずれがあるな、ということを話しながら詰めていくわけで す。ですから、この状況こそがいつものチーム医療で、お互いに自分達の仕 事だけしていたら、おそらくこれからの医療はやっていけない。だから、何 とかして相手のことを知って、ドクターや薬剤師や栄養士のことを知って、 看護もいろいろな手の内を見せながらやっていこうというのが、チーム医療 のスタンスとしてはいいと思うのです。  ただ、ドクターとナースのバトルという言い方は、決してしてもらいたく ないと思います。ここで一致してチーム医療をやろうということになったわ けですから、バトルという見方ではなくて、歯科医の方などがこのように入 っていくのだと、もっと患者に近寄っていける方法があるのだということで あれば、それは必ず言っていただきたいと思います。私たちが相手の手の内 をわかって、ああ、そうかというところもあると思うのです。そのような形 で進めていただければと思います。 ○永井座長  私も決してバトルとは思わないのです。むしろ今日は非常にうまくいって いるというお話をお聞きして、「何か問題はないのですか」と言ったら「あり ません」ということでしたから、それならそれでいいのかということになる わけです。 ○宮村委員  わかりやすく言うために、そういう設問をしただけですから。 ○有賀委員  聖路加の中村先生にもう1回お聞きしたいのですが、私は極めて個人的に、 しばしば聖路加病院にお邪魔しております。これは看護部の比較的上の先生 からお聞きしたのですが、病棟にドクターがいなくても私たちはできると。 できるというのは、本当にできるのだったら医者はいなくなっていますから、 いなくてもできる程度のことを私たちはやっているのだという心意気を言っ ているのだと思います。先ほど来、制度というか、看護師の職能という意味 で足りないところがあるのではないか、もっとほしいものがあるのではない かと言われたときに「ありません」とおっしゃっていますが、私はあるので はないかと思うのです。それはそう言っておられる看護師さんたち、いまは いらっしゃいませんが、感染科医の柴田さんのような方たちも、非常にシビ アに一生懸命いろいろなことを言っておられますから、お宅の病院の看護師 さんたちはその程度に思っているのではないかと思うのです。 ○永井座長  言わないと損なのです。うまくいっていると言うと、誰もケアしてくれま せんから。 ○中村先生  私も先ほどの発言に少し誤解があったと思うのですが、私が申し上げたか ったのは、いまの権限でも十分やれることはあるということです。先ほどの 坂本委員のご質問に対しては、私も非常に気にかかっていたのですが、現場 では食事や外出など、看護師がほとんど判断しているにもかかわらず、指示 として認められていないことは山のようにあって、我々の所でも約束事や取 り決めを作って対応しているのです。権限という意味で言えば、患者のQOLに 関わることについては看護師のほうがずっとよく見ているし、我々が判断し ている部分はたくさんあって、それを医師も本当に信頼しているのです。だ から任せられているところがいっぱいあるので、そこに関してはもっと、制 度や法的にも認めていただきたいです。これらに関連したジレンマは大変大 きいと思います。それは一言付け加えておきたいと思います。 ○永井座長  近森病院さん、最後に一言お願いします。 ○久保田近森病院看護部長  いまの話で思い出したのですが、以前の会議のときにも、包括指示のとき にありがちなのですが、これではおかしいと、井上委員もおっしゃっていま したが、「これでいくのですか」とナースが言っても、「これでいけと言って るだろう。いけよ」と言われて、いくしかない。いくしかないけれど、やは りおかしい。この人にこれをやってはおかしいというときに、最終的にいっ てしまうと看護師の責任なのです。それは包括診断の中でずっとついて回る ところで、「怒られてもいいから、そういうときは上の先生に確認してちょう だい」と私は常に言っているのですが、夜中の電話などで、指示受け、指示 出しという関係性の中で、常にそういう問題がついて回るのかなと。いくら 包括的にしていっても、それに適用しない患者が多くなってくるのが現実的 ですので、そこが信頼関係だけで果たしていいのかなというのが、私自身い ますごく疑問に思っています。ご検討ください。 ○井上委員  私は虎の門の先生の薬剤のお話を聞かせていただいて、本当にすごいなと、 こんなことができているんだと思いました。いまスライドの7番を見ながら話 しているのですが、薬剤師が関わっているのが処方設計、調剤、服薬支援、 モニタリング、処方提案のところなのですが、実は現場のナースはここにか なり関わっていて、例えばこの患者にはこれが効くのではないかとか、これ は多すぎるとか、効いていないみたいだとか、ナースがやっている部分では あるのです。ところが、それは全然表面に出てこないし、ある意味、心ある ナースしかやっていない部分がある。いま、プレゼンテーションのときにも のすごく丁寧な言葉で、たぶん医師に気を遣っていらっしゃるのだなと思っ たのですが、例えば処方設計のところなどは、薬剤に関して6年も学んでいら っしゃるのなら、勝手なことを言って申し訳ないのですが、たぶん医師より もいろいろな試みができるし、評価もできる部分があると思うのです。そう いうものを遠慮せずに出し合って、こんなことができる、あんなことができ るということを言っていったらいいと思うのです。  中村先生が、いまの権限や法の下でもできることはいっぱいあるし、まだ まだやりたいことはあるとおっしゃいましたが、それはそのとおりだし、看 護というのは本当に何でも屋なので、立場を変えて、少し切り口を変えれば 違う景色が見えてきて、最初に処方権がほしいというのではなくて、こんな 場面にこういう処方を、少し量を変える権限があればこんなこともできると か、そういうことは私たちのほうから言っていかなければいけないと思うの です。そこであれをやって良い、やってはいけないという論理ではなくて、 何ができるか、こんなふうに良くなるという提案を出し合いながらやる。  医師は最初から何でもできるから全部やらなければいけないし、最終的に 全部統括していないと気が済まない部分がおありだろうとは思うのですが、 そこは歩み寄りで、こんなことをやっていると。中村先生が提案したスライ ドは、おそらくリソースナースとして登場したから初めてできたことがたく さんあるだろうと思うのです。いままでのジェネラルだけだと、やっていな かったことがいっぱいある。それはすなわちケアの質の向上になっていくと 思うのです。ですから、そういうことをお許しいただければ、忌憚なく出し ていければ良いものが見えてくるのではないかと思います。 ○永井座長  この検討会は問題点を出すことが大事です。何が問題なのかということで す。時間がなくなってきましたので、大熊委員、最後に一言だけお願いしま す。 ○大熊委員  いまの井上委員のご発言に関連して一言。林先生にお伺いしたことをここ にメモしてあるのですが、「お忙しい先生に入力していただく」とか「ご提案 させていただく」とか林先生がおっしゃって、このような医師との上下関係 が、チーム医療のバリアだろうと思います。ほかの国に行くと、こういうこ とはあり得なくて、ファーストネームで呼び合うとか、そういう間柄なので、 その文化の壁をどう乗り越えるかも課題だと思います。 ○永井座長  ありがとうございました。最後に事務局からお願いします。 ○石川補佐  次回の日程ですが、11月2日(月)13時から15時、場所は未定です。追って ご連絡させていただきます。 ○永井座長 それでは、今日はこれで終了させていただきます。どうもあり がとうございました。 −了− (照会先) 厚生労働省医政局医事課 石川義浩、石川典子 (代表)03−5253−1111(内線2564、内線2563)