09/10/01 第1回臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班議事録     第1回臓器提供に係る意思表示・小児からの臓器提供等に関する作業班 1. 日時 10月1日 13:00〜15:00 2. 場所 経済産業省別館 1038号会議室 ○長岡補佐 それでは、ただいまより、第1回「臓器提供に係る意思表示・小児からの臓 器提供等に関する作業班」を開催いたします。  本作業班は、さきの国会で臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律が成立したこ とを受けまして、その改正法の施行に当たり、臓器提供に係る意思表示及び小児からの臓 器提供などに関し、専門的な観点から検討を行うことを目的としているものです。  本日は初回の会合でございますので、まず、班員の先生方を五十音順に御紹介させてい ただきたいと思います。  まず、神戸大学大学院法学研究科教授の手嶋豊先生、本日は御欠席でございます。  次に、明治大学法学部教授、新美育文先生です。  続きまして、上智大学法学研究科教授、町野朔先生です。後ほどいらっしゃいます。  次に、神戸大学大学院法学研究科教授、丸山英二先生でございます。  続きまして、東北大学大学院法学研究科教授、水野紀子先生。後ほどいらっしゃいます。  続きまして、立命館大学法学部教授、本山敦先生。  続きまして、明治学院大学法学部教授、山本輝之先生。本日は御欠席でございます。  以上7名で今後の作業班を進めていきたいと思いますので、御活発な議論をよろしくお 願いいたします。  また、本日はオブザーバーとしまして国立循環器病センター名誉総長の北村惣一郎先生、 信州大学教授の久保惠嗣先生、千葉労災病院院長の深尾立先生の3名の方に御出席をいた だいております。  続きまして、事務局の職員を紹介させていただきます。  健康局疾病対策課臓器移植対策室室長の峯村でございます。  同室室長補佐の竹内でございます。  同じく大竹でございます。  そして、私、長岡でございます。よろしくお願いいたします。  では、作業班の開催に先立ちまして、当班の班長でございますけれども、新美先生にお 願いしたいと考えておりますが、班員の皆様、よろしいでしょうか。 (「異議なし」と声あり) ○長岡補佐 それでは、これより新美班長に議事進行をお願いしたいと思います。  新美班長はお席に移動してください。 (新美班長、議長席へ移動) ○長岡補佐 新美班長、一言お願いします。 ○新美班長 新美でございます。皆様の進行役を担うことになりました。非常に重要な問 題でありますので、慎重かつ活発に御議論いただければと存じます。  それでは、これから議事に入ってまいりたいと思います。  まず初めに、事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○長岡補佐 では、資料の確認をいたします。  これから議事に入りますので、報道のカメラの方は御退席をお願いします。 (報道関係者退室) ○長岡補佐 では、資料の確認をさせていただきます。  本日、配付資料は資料1から資料4まで、参考資料は1から5まで付けてございます。  順に確認いたします。  資料1「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律の概要」。これが2枚付いてござ います。  次に、資料2−1ですが、「厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会について」と題 した資料が3枚ございます。  次に、資料2−2「改正法の施行に向けた検討課題及び検討体制について」と題する資 料ですが、これが3枚ございます。  資料3−1「親族への優先提供とレシピエント選択記述の関係について」。これも2枚付 いてございます。  資料3−2「心臓移植希望者(レシピエント)選択基準」。これが3枚でございます。  最後、資料4でございますが、「親族への優先提供の意思表示について」。これが合計7 枚でございます。  あと、参考資料としまして1から5まで。参考資料の1、2、3、これが現行の法律、 法律施行規則、ガイドラインになっております。  参考資料4、これが今回改正になりました一部改正法の新旧対照表となっております。  最後でございますが、参考資料の5、これはさきの通常国会における主な質疑をまとめ たものでございます。  以上、資料の確認でございます。おそろいでしょうか。途中、不備等がございましたら、 事務局までお申し付けください。 ○新美班長 それでは、資料等を御確認できたと存じますので、早速、議事に入りたいと 思います。  先ほど事務局の方から御説明がありましたように、この作業班は、さきの改正臓器移植 法の施行に向けて臓器移植委員会で審議がなされたわけですが、そこで専門的な観点から 検討が必要な事項については、作業班で議論を詰めた上で臓器移植委員会において審議を するということになりました。そこで、我々作業班のTORを確認する意味でも、事務局 の方から臓器移植委員会についての議論の中身について御紹介をいただけたらと思います。  それでは、事務局の方からよろしくお願いいたします。 ○長岡補佐 それでは、資料1、資料2を説明したいと思います。  まず、資料1ですが、臓器移植委員会について説明する前に、さきの通常国会で成立し ました改正法の内容を概観したいということでお付けしたものでございます。2枚目に分 かりやすい図を用意してございますので、それを用いて説明します。  2枚目の図は、現行法、改正法の比較表となっております。主に改正の内容について、 これを用いて説明したいと思います。  まず、一番最初の部分ですが、改正法で親族に対する優先提供、これは現行法では、ガ イドラインにおきまして、当面見合わせるとなっているのですが、これを認めるというこ とで改正がなされております。この部分が施行の日ですが、公布日から6カ月後、平成22 年1月17日から施行になります。  次が脳死判定・臓器摘出の要件の改正でございます。改正法においては、現行法の本人 の生前の書面による意思表示があり、家族が拒否しない又は家族がいないこと、これに加 えまして、改正法の2つ目の○、本人の意思が不明又は拒否の意思表示をしていない場合 であって、家族の書面による承諾がある。この場合には脳死判定、臓器摘出ができること とされました。  次に、小児の取扱いでございますが、現行法ですと、15歳以上の意思表示を有効とする とガイドラインで取り扱っておりましたので、15歳未満からの臓器摘出というのは認めて こなかったわけでございますけれども、改正法では年齢に関わりなしということになりま したので、小児からの臓器提供が可能となったということでございます。  次に、被虐待児への対応というところですが、これは改正法で新しく、虐待を受けて死 亡した児童から臓器が提供されることのないよう適切に対応することとされております。  最後、普及・啓発活動についてでございますが、これも改正法で新たな条文が入りまし て、運転免許証などへの意思表示の記載を可能にする等の施策を講ずることとされており ます。  これらが交付の日から1年後ということで、平成22年7月17日から施行となります。  以上が改正法の概要でございます。  続きまして、資料2を用いまして、先月の15日に開催された臓器移植委員会について説 明したいと思います。  1ページ目は、その議事概要に入る前に、委員会の位置付けなどについて説明する資料 となっております。順に説明します。  まず、臓器移植委員会における検討の1つ目の○のところをごらんください。  厚生労働省においては、臓器移植法の運用に当たりまして、法に基づく手続などについ て、厚生労働省令やガイドラインを定めております。これらを定める際には、専門家の意 見を伺うために、臓器移植委員会、これは厚生科学審議会の下に設置された委員会でござ いますが、そこにおいて議論をお願いしているということでございます。  次に、さきの通常国会で一部改正法が可決・成立いたしまして、来年1月の親族優先提 供に係る部分から順次施行となるということになっております。  その改正法の施行に向けては、まず、年内にも親族優先提供、これは来年の1月からの 施行ですが、その実施に必要な事項について、ガイドラインなどを改正していくことが必 要となってまいります。その改正に当たっては、臓器移植委員会などにおける専門家の御 議論をお願いするとともに、パブリックコメントを経た上で行うということとしておりま す。  では、2枚目にいっていただきまして、第26回臓器移植委員会、先月15日に開催され た委員会の議事概要について説明したいと思います。  1つ目の○ですが、先月の15日、一部改正法の施行以来初めての委員会を開催しました。  次ですが、委員会では、今後の施行に向けた検討課題を提示するとともに、課題ごとに 作業班、研究班を設けて、専門的な検討の方針をお示ししまして御了承を得たところでご ざいます。  次の資料2−2がその委員会に提出して議論をお願いした資料でございます。 検討課 題と検討体制についてまとめたものが、資料2−2の3ページ目、最後のページにござい ますので、これを参照していただければと思います。  この横長の表でございますが、左に主な検討課題、これは親族への優先提供を初めとし て5点挙げられておりますが、それにつきまして専門的な検討を行う体制を作るというこ とで、各作業班、研究班を設けて検討を行うということをお示ししておる資料でございま す。  この作業班は、検討体制の一番上のところに示されている、意思表示等に関する作業班 (仮称)となっておりますが、これは小児からの臓器提供等についても法律上の課題があ り、それについても取り扱うということにしましたので、今回は「臓器提供に係る意思表 示・小児からの臓器提供等に関する作業班」ということで正式名称を定めさせていただい ております。  この作業班において、例えば、ここに挙げられております、親族の範囲ですとか、15歳 未満の者による拒否の意思表示の取扱い、有効な意思表示できない者の取扱い、こういっ たものなどの法律面での課題について議論を行うということで作業班を設けさせていただ いておるということでございます。  この作業班の議論は、先ほどの臓器移植委員会に報告をいたしまして、委員会での審議、 パブリックコメントを経た上で、省令やガイドラインを策定してまいりたいと考えている ところでございます。  それでは、2−1の方に戻っていただきまして、3つ目の○のところ以下を説明します。  臓器移植委員会では、今後検討を要する課題について、作業班等で検討を行う際に留意 すべきと考える点などについて、各委員からの御意見をちょうだいしたところです。  その審議の過程で、親族優先の部分でございますが、その対象となる親族の範囲につい ては、各委員より国会における提案者の答弁を尊重し、親子と配偶者とすべきであるとい う意見を出されております。これはその次のページ、別添1というところですが、このよ うな答弁がなされておるということでございまして、その答弁を尊重して、親子と配偶者 としてはどうかといった御意見をいただいているところでございます。  今後はこのような臓器移植委員会の御意見を踏まえながら、この作業班におきまして、 詳細な検討を行って、ガイドライン案などを作成しまして、再度、臓器移植委員会の方に 報告して御議論をいただくという流れで進めてまいりたいと考えております。  以上、資料1と資料2の説明です。 ○新美班長 どうもありがとうございました。  それでは、ただいまの説明につきまして、御質問あるいは御意見がありましたら、御自 由に御発言いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。  特にございませんか。いただいたTORを見ますと、親族の範囲等に関するのが1月の 中旬までにガイドラインを作るということですので、この作業班のTORとしては、相当 ハイピッチの作業が求められるということだと思いますが、その御確認をしていただけれ ば結構かと思いますが、よろしいでしょうか。  ほかに特に御質問、御意見ございませんでしょうか。どうぞよろしくお願いします。 ○北村参考人 親族の範囲ということについて、親子、配偶者というのはもう既に決定し たこととして解釈するんですか。それとも、この法律家の委員会でも再度御検討されるこ とになるんですか。 ○新美班長 事務局の御意見を伺いたいと思いますが、提案者の説明理由がそのまま法律 になる、あるいはガイドラインになるということはございませんが、国会でどういう審議 をされて、どういう了解の下で成立したかというのは、我々が作業する上での重要な資料 になるということだと思いますので、その点を事務局の方から御説明いただけますでしょ うか。 ○峯村室長 事務局の方から説明をさせていただきます。  まず、親族の範囲につきましては、法律上、親族とだけしか規定がございません。その 内容について確定をする必要があろうかと考えております。  臓器移植委員会での議論等を御紹介いたしますと、民法上の親族という規定をその場合 そのまま準用するのか、あるいはそれとは別な形でこのガイドラインの中で親族の範囲に ついて規定をするのか、そういった道筋をどちらで考えるのか。臓器移植委員会での議論 といたしましては、とりあえず提案者、いわばこの法律は議員立法でございましたけれど も、提案者の国会での答弁では、親族の範囲について、親子、配偶者という内容で答弁が されていたと。そういったことも踏まえまして、民法の親族の規定をそのまま準用すると いうことではなくて、この委員会、あるいは作業班の中で、具体的にどのような範囲で確 定をさせるのかという議論をしていこう。その際に、提案者の発言といったものも十分踏 まえながら議論をするということでこの作業班の方に検討の依頼がされたということでご ざいますので、範囲については、またこの作業班の中で、そういった今までの議論を踏ま えつつ、再度御議論をいただくということになろうかと思います。 ○新美班長 ありがとうございます。  北村先生、それでよろしいでしょうか。 ○北村参考人 はい。 ○新美班長 そういう意味では、冒頭述べましたように、親族の範囲については、どうす るかは我々の作業の中で詰めていくということですけれども、国会答弁での提案者の説明 というのは1つの大きな資料だという位置付けでよろしいかと思います。  あと、ほかに御質問、御意見ございましたらどうぞ。よろしいでしょうか。  それでは、続きまして、具体的な論点に入ってまいりたいと思います。  まず、臓器提供のあっせん手続に関して、レシピエントの選択と親族への優先提供の意 思との関係について、事務局から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いしま す。 ○長岡補佐 それでは、資料3−1、資料3−2に基づきまして説明をします。  まず、資料3−1をごらんください。「親族への優先提供とレシピエント選択基準の関係 について」と題した資料でございます。このレシピエントというのは、臓器提供を受ける 方のことでございます。  まず、最初の部分でございますが、1番のところです。現行制度下でレシピエントを選 択する際には、平成9年の通知でございます「臓器提供者適用基準及び移植希望者選択基 準について」に基づきましてレシピエントの選択を行っておるところでございます。  法改正によりまして、親族への優先提供の意思を表示することが可能となるということ なんですが、この意思をレシピエント選択基準の過程においてどのように位置付けていく のか、これを検討する必要があるということでございます。  次に進んでいただきまして、レシピエント選択基準でございますが、これは、法律の基 本理念である「移植術の実効性の担保」、それと「移植機会の公平性の確保」を具体化する ものとして、基本的には医学的見地から定められた基準ということであります。  資料3−2ですが、これは心臓のレシピエント基準、現行のものでございますけれども、 これをお付けしてございますので、これを参照しながら説明したいと思います。  資料3−2を見ていただきますと、レシピエント選択基準には「適合条件」、「優先順位」、 この2つの項目があるということが分かるかと思います。これを、これは心臓でございま すが、臓器別にこのような基準を設定しておるところです。  基準の見方ですけれども、適合条件、腎臓の場合は前提条件と言いますが、適合条件に 合致することが、まず移植術を受ける前提ということでございまして、適合条件に合致す るレシピエントが複数存在するという場合には、2番の優先順位の項目に従って、その順 位を決定していくという仕組みとしております。  それでは、このような仕組みをもとに、親族優先提供の場合の親族をどこに位置付けて いくのかという点について、資料3−1に戻っていただき、3番の考えられる案という部 分をごらんください。  親族への優先提供の意思表示については、基本理念のうち、移植術ではなく、移植機会 の公平性について特例を設けるものだと考えられます。  優先提供を受けることとなる親族は、レシピエント登録をしていることが前提となり、 その上で臓器提供者が親族への優先提供の意思を表示しているという場合には、医学的に 適切な、実効性のある移植と認められる範囲内で、優先順位を1位とする。優先的に取り 扱う。つまり、資料3−2で申し上げますと、1の適合条件を満たしている際には、2番 目の優先順位のところで優先的に、いわゆる1位として取り扱うということが適当ではな かろうかということで考えているということでございます。  これは※で、最後、国会での答弁を付けてありますけれども、次めくっていただいて2 ページ目ですが、下線のところですね。途中から読み上げますが、親族への優先提供の意 思表示の規定を設けることとしておりますが、この場合におきましても、その意思の表示 を踏まえた上で、最終的な血液型が適応するかなどの条件に照らし合わせて順位が判定さ れることになると想定しているというような答弁もございますので、まずは、適合条件に 合った方、その中で優先順位のところで親族を優先的に取り扱うというのがよいのではな いかということでこちらに記させていただいております。  以上、資料3の説明です。 ○新美班長 どうもありがとうございました。  それでは、ただいまの御説明につきまして、まず御質問をいただきたいと思いますので、 よろしくお願いいたします。どうぞ、丸山さん。 ○丸山班員 資料2のところでも関係するんですが、資料3の今最後に言及されました国 会での答弁、特に提案者の発言なんですが、これは、関係する発言はこれ1つなんですか。 それともほかにもあったのですか。先ほどの親族の範囲などについては、河野議員以外の 発言もあったんではないかなという気がするんですが。 ○新美班長 議論の前後がどうなっているか。 ○丸山班員 それもありますし、ほかの方が発言されているところがあって、その中で一 番分かりやすいというか、そういうのを出されているのか、それとも、調べてもこれ1つ しか、それぞれ1つしかなかったというものなのか、ちょっと教えていただければと思い ます。 ○長岡補佐 確認できる範囲でございますけれども、親族の範囲の部分ですけれども、こ こにつきましては、この答弁以外にも答弁がございました。一方で、今回、資料3−1で 付けております医学的な血液型などに具体的に言及されておる答弁、これはこの答弁しか 私は確認をしていないところでございます。 ○新美班長 よろしいでしょうか。 ○丸山班員 ありがとうございます。 ○新美班長 ほかに。どうぞ、本山さん。 ○本山班員 もしかしたら現行法の問題でもあるのかもしれないんですが、今、考えられ る案のところに、事前に臓器移植ネットワークにレシピエント登録していることが前提と なるということなんですけれども、小さな子どもがレシピエントになるときには、登録と いうのはどういうふうにされているのでしょうか。 ○新美班長 子どもがレシピエントになる場合ですね。 ○本山班員 レシピエントになると。例えば小学生とか。 ○新美班長 どうぞ、これは事務局の方から。 ○峯村室長 小さな子どもは、現行法の下では国内で移植というのが難しいということも ありますので、移植適用年齢以下の方について、15歳未満の方について登録をされている 例は非常に少ないと思われます。ただ、各臓器ごとに各医療機関の主治医、基本的には主 治医を通じて臓器移植ネットワークに対して登録を行うという基本的な流れになってくる と思います。臓器によってはいろいろ学会がその際にもう一度判断をするとか、そういっ たやり方をしている場合もあるわけでございますが、基本的には患者さんの医療機関の主 治医の方からネットワークの方に対して、緊急度なり待機期間なり等を勘案して、情報を 登録するということでございます。 ○本山班員 登録の法的性質ということは私にはよく分からないんですが、基本的に親が 代わりにやっていると考えていいんでしょうか。当然お医者さんに連れていって、そうい った登録が必要だと言われれば、恐らく親がやると思うんですけれども。 ○峯村室長 未成年でございますので、親権者が代わって行っていると考えております。 ○新美班長 よろしいでしょうか。 ○本山班員 はい。 ○新美班長 今、御説明についての質問がありましたが、今日はせっかく臓器別作業班の 班長の先生がいらっしゃっていますので、先ほどのレシピエント選択基準の改正を行って いく際に、どういう点が議論になりそうなのか、なってきたのか、事務局の説明に補足し ていただくことがございましたら、御発言いただきたいと思います。よろしくお願いしま す。北村先生。 ○北村参考人 今、御説明いただきましたように、心臓関係では、心臓移植と心肺同時移 植というのが現在行われておるところでありまして、それぞれの選択基準、適合基準と、 今御説明ありましたように、優先順位があります。この新しい法律でも、適合条件を医学 的なこれを守っていただかないと、移植術そのものの成功、あるいは効果というものにも 問題がありますので、ここは適合条件に合ったとき、優先順位の選択において第一義的に 考える位置付けという事務局の案に賛成です。  ただ、あと、基準そのものの詳細な、小児が入ってきたり、赤ちゃんが入ってきたりし ますと、見直しがあるところがあるかもしれませんが、それは各部会で個々の別のところ でやられると思いますが、位置付けとしてはそれでいいのではないかと思います。 ○新美班長 適合条件と優先条件とを分けて、適合条件にがまず第一と、そういう御意見 だということですね。  あと、ほかに御質問。どうぞ、久保先生お願いします。 ○久保参考人 私は呼吸器、肺の方の担当をさせていただきましたけれども、全く同感で して、適合条件はしっかりと守った上で、親族への優先順位はどうするかと。ただ、1つ、 疾患による緊急度というのもありますので、どうしても早く移植をしないと助けられない という方も当然いますので、そことの整合性をどういうふうに付けるかというのも重要な 議論になるのではないかと思います。 ○新美班長 分かりました。  それでは、深尾先生、お願いします。 ○深尾参考人 膵臓の班ですけれども、我々も医学的適合度が優先して、その次が親族優 先と。膵臓の場合には、緊急性というのはさほどないものですから、心臓、肺とはちょっ と違うかと思いますけれども、この緊急度の場合、ほかの臓器ではかなり頭が痛いもので はないかと思っております。 ○新美班長 ありがとうございます。  今、補足をしていただきましたが、それも含めて御質問ございましたらよろしくお願い します。では、町野さん、お願いします。 ○町野班員 短く何点か確認ですけれども、これは脳死のときばかりではなくて、心臓死 の場合も共通の基準であると考えられていますけれども、これは恐らく法律の趣旨はそう だろうと思いますけれども、医療の方から見まして、移植の方から見まして、この点につ いて何か修正といいますか、別に考える必要があるかということがをお伺いしたいという ことと、それから、もう一つは、各臓器共通でこのような優先順位が第1のところに位置 付けるということですけれども、恐らく心臓だとか肺とか、あるいは腎臓、それぞれにつ いて、もしかしたら違った考え方をとり得るのかなとも思いますけれども、それは区別す る必要はないのかということがもう一つ。  それから、もう一つは、例えば、腎臓について2つ出るといったときについて、親族優 先のときに、片方の腎臓だけ移植して、もう片方は普通のネットワークに乗っけるとか、 そういうことまで考えられるのかどうか。あるいは、肝臓についても同じような問題が生 じ得ると。部分的にそれぞれ分けるとか、そういうことはあり得るのかということについ て、それはまさに医学的な考え方とかそういうことでいろいろあると思いますけれども、 お考えをお聞かせいただけたらと思います。 ○新美班長 では、幾つかあるうちの、脳死でない場合の心臓死の場合のことについても 適用されるけれども、それはどう考えるのかという点については、まず、これは事務局の 方からどう考えているのかというのを。 ○峯村室長 まず、適用の範囲ということであれば、これは優先提供に関しましては、臓 器移植法の条文の中に設けられておりますので、脳死に基づく移植以外に心停止下での移 植、腎臓と角膜でございますけれども、それについても適用がされると考えております。 したがいまして、心停止下での移植においても、優先提供の意思があれば、親族に対して 優先的に提供するという仕組みになるのであろうと私どもは理解しております。 ○新美班長 ありがとうございます。  今のことに絡むわけですけれども、例えば腎臓が典型的ですけれども、2つある腎臓、 両方ともに優先移植ということにして、別々には考えないということなのかどうかという ことなんですが、この点はお医者さんの方、まず、医学的な方でそういうことがあり得る のかどうかということと、あるいは事務局の方で法的にどうするかということを少し議論 の土台になるように御説明いただけたらと思います。  では、深尾先生、お願いします。 ○深尾参考人 膵・腎で、腎臓は私は関係しますから、そういう場合は、双子の子どもさ んがいて、親が亡くなった場合は、ちょっと頭が痛いですね。どちらを優先するのか、こ れは双子の場合には両方とも優先せざるを得ないのではないかと私は思っていますけれど も。 ○新美班長 では、問題の設定は、町野先生が出したのは、1人の人に脳死なり心臓死の 患者さんが出たと。2つ腎臓があるけれども、1つは親族に優先するんだけれども、もう 一つはどうするかということなんですが。 ○深尾参考人 その場合、親族に、例えば膵臓の悪い人と腎臓が悪い人がいた場合に、法 律上はやはり優先されざるを得ないのではないかと思いますけれども。 ○新美班長 そうすると、今言ったように、腎臓は2つとも植えた方がいいという御判断 ですか。1つだけよりも。 ○深尾参考人 2人の人に1つずつ。 ○新美班長 じゃなくて、例えば。 ○深尾参考人 腎臓の場合には普通は1個しか植えませんから、お二人の患者さんに植え ることになりますね。同じ条件の親族がおられた場合には、2人の親族にあげることにな るんだろうと思います。 ○新美班長 それと同時に、親族は、植えてほしい患者さんは1人だけと。そのときに、 両方の腎臓について植えた方がいいという判断はあると思うんですが、両方とも腎臓がや れたら。しかし、一方の腎臓でもよろしいと。1個の腎臓でも。その場合に1個の腎臓だ け植えるのか、2個とも優先的に植えるのかということになるかと思うんですが、その辺 はどう。 ○深尾参考人 2個植えるということは、提供者が子どもさんなんかでもし腎臓が小さい 場合ですね。やむを得ず2個植えることはありますけれども、普通は1個でいいものです から、余りその辺は考える必要はないと思うんですけれども、極めてまれな場合ですね。 ただ、今回は子どもさんの提供が認められますから、その場合には2個一緒に植えざるを 得ないということもあるかと思います。 ○新美班長 子どもからの提供のときはあると。 ○深尾参考人 その場合ですね。 ○新美班長 そうすると、大人、私ばかり議論してはよくないんですが、もう一つの場合 は、1個で済むときに、余った1個はどうするかという議論ともつながるので、それは普 通に一般の人に回すということでよろしいかどうか。 ○深尾参考人 当然そういうことになると思います。 ○新美班長 町野先生、質問の趣旨からしていかがですか。何か。 ○町野班員 それは皆さんどう考えられるか。1つの考えは、2つともその人にやるべき だという考えもあり得るわけですけれども、今のような議論をしましたのは北村先生でし たか、以前、1つは優先提供、もう一つはネットワークに乗せるということを提案された 時期がかつてあった。 ○北村参考人 それは現行でも少し配慮されているようですけれどもね。脳死からではな くて心臓死の方。 ○新美班長 どうぞ、お願いします。 ○久保参考人 心臓と肺を同時に移植しないとだめな方もいるわけですね。その場合に、 ドナーの方が心肺というふうに2つ○を付けてあって、そうすると、心臓と肺だけ別々に すれば、心臓1人、肺が2つですので、3人の方に植えられるわけですね。それを親族の 方が心肺でしかだめという場合に、この法律でいくと、親族の方に優先されるとならざる を得ないですね。どういうふうにお考えでしょう。 ○北村参考人 親族のレシピエント側の方が心肺同時移植の適合者として登録されている 場合で、親族から出た場合は、やはり法律が上位になると思いますね。逆に、レシピエン トの親族の方が心臓あるいは肺臓だけでいける患者さんであって、そして別に心肺同時移 植の待機者が存在する場合ですが、心臓と肺を両方登録していますが、どちらかが1位と いう形で優先されていますよね。その場合においても親族優先で心臓と心肺の方が別の方 がおられても、親族の方が心臓あるいは肺臓だけでおられた場合は、親族の方に、下の方 に回るという形になるのではないかと考えますが。 ○新美班長 今の確認ですが、心肺同時移植の場合には両肺とも植えなければいけないん でしょうか。 ○久保参考人 そうですね。心臓と肺と両方。 ○新美班長 肺も両方。 ○久保参考人 両方。心臓も1つ。 ○新美班長 ワンセットでということですね。 ○久保参考人 そうです。 ○新美班長 分かりました。片肺だけ移すということ、植えるということはないというこ とですね。ありがとうございます。  どうぞ、深尾先生。 ○深尾参考人 付け加えますと、膵腎同時移植がありますけれども、膵腎同時移植と腎臓 だけ希望する場合がありますね。その場合には、膵腎同時移植を優先するということに今 のルールではなっております。それは、膵腎同時移植の方がよりクォリティ・オブ・ライ フがよくなる可能性が高いということでそうなっているんですけれども、親族優先にした 場合に、その辺がどうなるか。例えば腎臓が1個しか使えないという場合に、膵腎同時移 植の優先度を下げて、腎臓を親族の方にあげてもいいのかどうかというところは、ちょっ と倫理的に悩ましいところがございます。 ○新美班長 その場合、膵腎同時移植の場合には、腎臓2つを植える必要はないと。膵臓 と腎臓1個でよろしいということですね。 ○深尾参考人 そうです。1つはほかの方にいくことになります。 ○新美班長 心肺同時移植と膵腎同時移植ではちょっと違うということは押さえておく必 要があるわけですね。  ほかに御質問、御議論ございますでしょうか。どうぞ、町野さん。 ○町野班員 先ほどの私の2つ目の質問で、すべての臓器について同じような第1順位と いうことでいいのかというお話なんですけれども、素人考えですけれども、例えば、心臓 などについてはずっと長いこと待機期間がある人がいるわけですよね。それがぽこっとこ こで優先されて親族の方にいっちゃうというのと、腎臓なんかの場合とちょっと違うので はないかというのを素人考えで持つんですけれども、そういうことはありますでしょうか。 ○新美班長 いかがでしょうか。どうぞ、北村先生お願いします。 ○北村参考人 おっしゃるとおりで、それは飛び越さざるを得ない。どうしても優先順位 の上に立つ法律という位置付けを、先ほどもあったとおりで認めるのであれば、どんな条 件、どんな長くなって、どんな重症であろうとも、親族のレシピエントの適合条件が合っ ておれば、飛び越して親族にいかざるを得ないのではないかと。こういう法律があるのは 世界的には非常に少ないそうでして、WHOの方もそういうことを国際的には認めていな いことですので。ですけれども、それは飛び越すというのが法律の趣旨だろうと思います。 ○新美班長 ありがとうございます。  どうぞお願いします。 ○久保参考人 内科医なので、質問させてください。虚血の許容時間というのがあります ね。これはかなり優先順位は高いですか。 ○北村参考人 これは幸いなことといいますか、日本は非常に狭くて、しかも施設が7施 設に限られておりまして、一番離れておりましても受け入れる施設は、九州は福岡という 一番本州に近いところにもなっている関係で、今のジェット機を使ったチャーターシステ ムで実際に問題になったことは無いと思います。これを遵守するために順位を入れ換えた ことはないように思うんですが、ネットワークに詳細を聞かないと、1例ぐらいあるのか もしれませんけれども。ですので、今、心臓移植の部会で、現状を踏まえて許容時間の4 時間というのを適合条件にするのか優先条件として残すのか、少なくとも望ましいという レベルにして、考慮する範囲にとどめて適合条件にするというふうに移動も考えられるの ではないかと思います。 ○久保参考人 適合条件の方に挙げておけば。 ○北村参考人 挙げておいて、そして望ましいとする。 ○久保参考人 そうすると、優先順位が親族が1番目にくるわけですね。 ○北村参考人 おっしゃるとおりです。 ○久保参考人 そうすると、非常にすっきりして分かりやすいです。 ○北村参考人 それは事務局の方も考えておられるところでして、我々も心臓移植の部会 において検討しますとお答えしているところです。 ○久保参考人 分かりました。 ○新美班長 ありがとうございます。  今の虚血許容時間について事務局と話したときも、臓器によって置いてある場所も違う し、むしろ適合条件の方に繰り込むことを考えたらいいのではないかという話をしたこと がございますけれども、今の北村先生の御説明で私自身は納得したところですが、ほかに 御質問。どうぞ。 ○町野班員 もし虚血許容時間を最初の適合条件の方に入れると、これには親族は優先し ないということになりますけれども、そういうお考えなんですか。そういう前提ですか。 ○北村参考人 条件が望ましいとなりますので、その1つ1つのケースにおいてコンサル テーションが行われておりますので、それで適切かどうかを医学的に判断する。そういう 意味で、望ましい条件に戻しておけば、いろんな新しい事態に対してもそれは現場におけ る医療的判断に基づいて行わせていただきたいというところです。 ○町野班員 法律的というか、実際に余り問題は生じないという話ですね。 ○北村参考人 実際的には生じていないと思います。 ○町野班員 分かりました。形式的に言うと、虚血許容時間の前に優先するということで さっき位置付けだったわけですよね。それが虚血許容時間には優先しないということに一 応形式的になるわけですから、かなり考え方は違ってくるんだなと思ったんですけれども、 余り実際に相違はないという話ですね。 ○北村参考人 そうです。実際、もう既に4時間超えている症例が現在まででも十数例あ るそうです。しかも、これは医学的な問題で、どんどん保存時間の延長ということは実際 起こっておりますし、現状の日本の国内においては克服できる条件になってきているよう に思いますので、望ましいレベルの適合条件にしてはどうかということで検討させていた だきたいということ。まだ決まっているわけではございませんけれども。 ○新美班長 ありがとうございます。  ほかに御質問、御意見ございますでしょうか。丸山さん、お願いします。 ○丸山班員 先ほど、腎臓は片腎を植えると。そして、肺は両肺を植えるということなん ですが、肝臓については、大人のドナーが出た場合、子どものレシピエントで2人に植え るということはあり得るんですか。それとも、これはレシピエントが大人であっても2人 に植えるということはありえるのですか。あるいは、レシピエントが大人であれば、さす がにドナーの肝臓全体をお一人に植えるのが医学的には望ましいということなんですか。 ○深尾参考人 肝臓は私の範囲外ですから確実なことはいえませんけれども、大人の肝臓 を子ども2人に植えるということはあり得ますね。半分に分けて。これは世界的に盛んに 行われていることです。しかし、子どもの肝臓を大人に分割で植える、それは余りないと 思います。 ○丸山班員 大人を大人にの場合はいかがですか。 ○深尾参考人 大人を大人に分割して植えるということも、はっきり私は言えませんけれ ども、あったような気もしますけれども、これは確認しないと分かりません。 ○丸山班員 典型的には大人の健康な方のドナーが出た場合に、小さい子どもの場合だと。 お2人のレシピエントという場合に問題が出てくる。 ○深尾参考人 大人から子どもの場合には幾らでも実際に盛んに行われています。 ○新美班長 ほかに御質問ございますでしょうか。  事務局の方。 ○長岡補佐 今のお話を伺っておりますと、レシピエント選択の際のまず親族という法的 な問題、それから、臓器の分割、2つ腎臓があるといった問題がございますので、まず、 1点目としては、例えば、先ほど深尾参考人から御指摘がありましたが、例えば親族。こ れは後ほど議論しますけれども、親族という形で意思が表示されておって、その方が双子 でしたという場合、どう扱うのかですね。これもまたレシピエント基準の中で、例えば医 学的な観点から優先順位という項目がありますので、そこで決めていくとか、いろいろや り方があるかと思います。また、腎臓の関係も2つあるとかといったことは、主に医療技 術的な議論になるかと思いますので、この作業班と各臓器別の作業班で、連携しながら基 準作りというものをしていったらよいと思いますので、そういった形でお願いできればと 考えております。 ○新美班長 そうすると、ガイドラインも臓器別できめ細かく作っていくということを想 定するわけですかね。 ○峯村室長 ガイドラインというよりもレシピエント選択基準としてどのように変えてい くかということになろうかと思います。 ○新美班長 分かりました。  あと、ほかに御質問、御意見ございましたらお願いします。  今、基本的にはレシピエント選択基準の中で、親族優先というものは適合基準ではなく て優先順位のところの筆頭に位置付けるということで御議論いただいておりますが、そし て、そのうちの虚血許容時間については適合条件の中に入れるかどうかは作業班でまた御 議論いただくというところまで詰まってきていると思いますけれども、その点でなお御意 見、御質問ございましたら、よろしくお願いします。  基本的にはそのような方向で作業を進めるということでよろしいでしょうか。  それでは、最後の時間にまた御議論があれば伺うことにして、とりあえず今のような前 提で御議論を進めていきたいと思います。  それでは、あと、レシピエント選択基準で論じておくべきところはございますか。事務 局の方、何かございましたら。 ○峯村室長 特段今の時点ではございませんので、また各作業班で連携しながら詰めてい きたいと思っております。 ○新美班長 それでは、続きまして、親族優先提供の意思表示に係る論点について、個別 論点、議論があるわけですが、その前に論点全体について事務局から御説明をいただきた いと思います。よろしくお願いします。 ○長岡補佐 それでは、資料4の1ページ目に基づきまして、全体像についての説明をし たいと思います。「親族への優先提供の意思表示について」と題された紙でございます。  まず、I番目のところ、これは改正法が施行された後の規定を書き入れております。こ れは来年1月17日から施行される条文でございます。ここで6条の2としまして、親族へ の優先適用の意思表示というものが設けられておるということでございます。  この条文を少し分解して要件としたものがII番「親族への優先提供の意思表示を行うた めの要件」というところに記してございます。  順に読み上げますが、まず1番目に、移植術に使用されるための臓器を死亡した後に提 供する意思を書面により表示している者又は表示しようとする者、2番目がその意思の表 示に併せて、3番目、親族に対し当該臓器を優先的に提供する意思を書面により表示する ことができるというものが6条の2の規定ということでございます。  この法規定をどう扱っていくかということで、III番の「検討課題」というものをお示し してございます。  まず、1番目ですが、表示方法についてです。ここは現行制度下では、主に臓器提供意 思表示カード、これはドナーカードと言われるものです。又は臓器提供意思表示シール、 これは免許証ですとか保険証などに張るシールで、カードと同じように書面で意思表示を するものです。また、臓器提供意思登録システム、これは社団法人の臓器移植ネットワー クのホームページから入っていくシステムで、ウェブ上で臓器提供の意思を登録して、そ の意思表示の内容が後ほど書面で送られてくるというシステムでございます。こういった ものによって意思表示を現在行っておるんですが、親族への優先提供の意思を表示するに 当たっては、どのような点に今後留意してくべきなのかということで1番目として挙げて あります。  2番目が表示の内容についてというところです。親族優先提供の意思表示に併せて、例 えば提供先を親族に限定する、親族でなければ提供しないという意思を示すなど、いろん なことが考えられると思いますが、そういった親族への優先提供に附随して示された意思、 こういったものがあった場合に、どのように解釈をして取り扱っていくのかという点が挙 げられるかということで、2番目として挙げてございます。  3つ目が親族の範囲。これは先ほども議論になりましたが、国会審議においては、一親 等と配偶者に限定するという提案者からの答弁がございましたが、臓器移植委員会におい てもそういった提案者の意思を尊重するとの意見が出されている、こういった状況の中で、 どのように詳細を考えていくのか。  また、その中で事実婚ですとか養子ですとか、例えば一親等と言われましても養子がい る。配偶者と言われましても事実婚の方もいらっしゃるということで、これらの方をどの ように取り扱っていくのかということが課題になってくるかと思います。  最後は「親族の確認方法について」ということです。脳死下での臓器提供、これは現場 で親族関係の確認をするということが必要になってきますが、それほど時間もない中で、 どのような確認をしていったらよいのか。これは法律上、実務上、どのような確認をすれ ば十分足りるとするのかということについての御議論をお願いしたいと思います。  以上大きく4点の検討課題について御検討をお願いしたいと考えております。   ○新美班長 ただいまの御説明は、一応この作業班で検討すべき課題、4つ挙げていただ いたということです。更にこれをこれからブレークダウンして議論していくことになると 思いますが、これ以外に4つの課題以外に出てきたときには、逐次それについては議論し ますけれども、当面この4つを、来年の1月までに間に合わせるべく議論していくという ことになります。  それでは、まず、第1番目のテーマの表示方法について、議論をする前提としての事務 局からの御説明をいただきたいと思います。それではよろしくお願いします。 ○長岡補佐 それでは、1枚おめくりいただきまして、「表示方法について」と書かれた資 料をごらんください。これは1枚でございます。  親族優先提供の意思表示は、対象となります親族には、直接臓器が提供されるというこ とで、大きな影響を与えるという効果がありますので、その運用に当たっては、例えば表 示された意思の確認を慎重に行っていくといったことなどの必要があるのではないかと考 えております。  また、親族優先提供の意思表示は、臓器提供の意思表示と併せて行うものとされている ことを踏まえますと、これまでの意思表示手段、いろいろございますが、そういったもの を活かしつつ、どのように表示していくのかといったことを考えていくことが現実的では なかろうかと考えます。  これらを踏まえまして、表示の方法について留意すべき点はないのか、御議論いただき たいと思います。  順に、以下2つ挙げてございますが、この2つは、意思表示を簡便に行うために現在提 供しております2つのツール、これについて記載しているものでございます。  まず、1つ目が、これがいわゆるドナーカード、またシールでございます。  現行法の運用においては、これを書面において臓器提供に係る意思表示を行う手段とし て、ドナーカード、シール、こういったもの配付しているところでございます。このドナ ーカードなどについて、例えば自筆で親族への優先提供の意思表示も併せて記入するとい った運用とした場合に、問題点とか留意すべき点、こういったものはないのだろうかとい うことで挙げてございます。  ※の部分ですが、例えば、現行のドナーカードもございますので、まずは新たに親族優 先提供の意思表示欄を設けたドナーカードの発行というものがあるかと思いますが、現行 ドナーカード、これも現在お持ちになっている方はかなりいらっしゃいますので、そのド ナーカードの余白に親族優先提供の意思を記入するということで有効とすることが考えら れるということで記してございます。  次、2番目ですが、先ほども紹介しました臓器提供意思登録システムでございます。こ れはドナーカードに加えて、第三者であります社団法人日本臓器移植ネットワークが運営 するシステムで、臓器提供の意思を登録しまして、その内容を記載した書面の発行を受け、 本人が携帯すると。これは法律上、書面で意思表示をして、それを持っておるということ になっておりますので、登録をした後、書面の発行というものがなされるものでございま すが、このシステムの中で親族優先提供の意思表示の登録も可能とするといった運用をし た場合、何か問題点ですとか留意すべき点はなかろうかということで挙げてございます。  以上、表示方法についての説明でした。 ○新美班長 どうもありがとうございます。  それでは、表示方法について御質問、御議論をいただきたいと思います。どうぞ御自由 に御発言ください。どうぞ水野さん。 ○水野班員 遅刻いたしまして申し訳ございませんでした。東北大学の水野でございます。 専門が民法の特に家族法を専門としておりますので、これが一番気にかかります。つまり、 今までとある種パラダイム転換が起きておりまして、今までは移植を受ける側には、すべ て用意が整ってからしか情報がいかなかったわけですが、親族提供という事前の情報があ るということになりますと、移植を受けるレシピエントの側で期待をしているという事態 が生じます。つまり、期待をしている者がしかるべく受けられなかった、期待どおり受け られなかったということになりますと、当然のことながら損害賠償請求が生じるという事 態がありえます。  それから、遺言法を扱っている人間であればだれでも知っているわけですけれども、遺 言という死者の意思は、期待している人間が複数いるときに扱いが非常に難しいものでご ざいます。つまり、期待している者が複数いる場合、例えば、生活習慣病であるとか、あ るいは体質に基づくような疾患でしたら、子どもたちが複数同じ病気にかかっているとい うことは十分考えられると思うのですが、そういう複数の者から遺言者に対する働きかけ があることが考えられます。  それから、通常の財産の遺言の場合でも、遺言者自身も非常に意思が揺れます。子ども たちのうちだれに残そうか。そして、子どもたちごとに違う遺言を書いてしまって渡して しまうという事態もございます。臓器移植カードを、それぞれの子どもたちにおまえの名 前を書いたからと別々に渡してしまうということも考えられます。  遺言の場合、よく使われる様式には、自筆証書遺言と公正証書遺があります。自筆証書 遺言の場合にも、家裁の検認等の証拠保全保護がかまされているものではあるんですが、 それでも簡単に自分だけでできるがゆえに、非常に紛争が多く、生じます。公証人に高価 なお金を払って作る公正証書遺言の方がなぜ使われるかといいますと、こちらの方が事後 の紛争が少ないのです。つまり、意思を確認する手間とお金をかけて確実性を持たせる意 味があり、お金を払って公正証書にした方がそれだけ紛争が少ないので、公正証書遺言の 数が非常に伸びております。自筆証書遺言は遺されていても、その後、なまじ遺したがた めに紛争が生じてしまうということが非常に多くございます。  今回の表示方法の御提案を拝見しておりますと、これは非常に怖いという気が直感的に いたします。恐らくドナーカードに記載をするということだけですと、何枚もドナーカー ドが出てきて、子どもたちがみんな自分の名前を書いたドナーカードを持っているという ことも考えられます。その先後もはっきりいたしませんし、どれが本当の意思なのかとい うことをめぐって大変なことになりそうな気がいたします。  しかも、意思確認の段階で、従来でしたら、もめましても、その結果、もらう側には何 の情報もいきませんので、意思確認のところでもめて、うまく移植につなげなかったとい うことでしたら、何の問題も表沙汰にならずに終わるわけですが、今度は受ける側が全部 その情報を知っていて期待をしておりますので、意思確認のところでお医者さんがどれが 本当か分からなくてということで、もたもたして時機を失するということになりますと、 それをめぐって現場の医師が非常に困るということになってしまいかねません。つまり、 それほど死者による指名の意思確認というのは、生きている側に何らかのメリットを残す ような遺言は、とても扱いが難しゅうございます。  2ページで御提案いただいたこの表示方法は、そういう遺言を扱っている人間から見ま すとどれもとても危なくて、現実問題にはならないように思います。もっと非常にしっか りした手続をかませて、確かにドナーである意思を遺す者が確実にその人であり、かつ、 彼の遺した意思は、その手続にのっとったものであれば安心できるし、手続にのったもの が確実にこの人に遺すという意思を彼が遺していたことを第三者がきちんと証明できて、 かつ、その証明は複数とれないというシステムにしておかないと、とても現場でお医者様 が使い物にならなくて、現場のお医者様に非常に御苦労をかけるような気がいたします。 ○新美班長 どうもありがとうございます。  家族法の権威である水野さんの御意見ですので、相当大きな問題だと思いますので、何 か今の点を踏まえて御質問、御意見ございましたら。どうぞ町野先生。 ○町野班員 実際、現場で何が起こるかということがかなり大きな問題だろうと思います けれども、確かにこれは新しい問題でありますけれども、まずいろいろカードが出てきて 混乱するという話。前は要するに本人の意思表示が事前になければだめだというので、そ のときをめぐっても幾つかあり得たんですけれども、現場の混乱はこの点は余りなかった ということだろうと思います。それは、後でネットワークの方とかそこらから。  それから、この次の問題は、したがって、優先の意思表示ですね。例えば子どもにやる とかそういうことがあったときについて、それが別々の意思があったとき、どうするかと いう話だろうと思いますけれども、そのとき恐らくは、どっちが先に書かれたか分からな いとか、あるいは片方があれだというときには、それはなしとして扱うということになる んじゃないでしょうかね。実際に。今までのやり方は、私が聞いている限りでは、疑わし い場合は移植しないというやり方を今までやってきたように思いますけれども、周りから 批判を浴びるような格好ではやらないということに、ちょっときついぐらいそれをやって きたと思いますから、その点は大丈夫じゃないかと私は思いますが。 ○水野班員 その点が崩れてしまうということなのです。今までそれができたのは、疑わ しい場合は移植しないことにしましても、移植を受ける側は何もそういうことがあったこ とを知らなかったので、だれも文句を言いません。今回は、移植を受ける側が期待してお りますので、もめて疑わしくてもらえなかったということになりますと、自分の受けた被 害は甚大だという紛争が生じます。そこがすべて違ってきてしまうということでございま す。 ○町野班員 それはまさに見通しの問題ですけれども、それほど大きく私はならないので はないかと実は思っておりますけれども、期待してずっと親が死ぬのを待っているとか、 そういう人たちというのは余りいないのじゃないかと私は思いますが、別のところへいっ てしまったとか、例えば、そのときに優先提供で子どもだということで親父が死んだと、 そのことを知ったとしますよね。しかし、乗っけてやったところで医学的な適合性から見 ると、やはりこれは優先させることはできないという結論になることもあるわけですよね。 そういうときも同じ問題が生じますので、生じたとしても、ある範囲で私はやむを得ない というところだと思いますけれども。 ○新美班長 どうぞ。 ○水野班員 なまじそういう紛争をさんざん扱っておりますので、親が1人で、子どもが 1人で、全然もめない、周囲の親族も賛成というケースは、むしろどちらかというと少な いような気すら私はしております。そして、たとえそういうふうにもめるケースが10件に 1件あったとしても、そのもめたときの事後の負担は大変なことになるだろうと思います。 そして、先後関係が問題になるだけではなくて、偽造もあり得ますし、変造もあり得ます し、もめたときに、じゃ、移植しないことにしようという結論によって解決をすることが できていたこれまでのパラダイムが、すべてそれは失われているという前提でお考えいた だければと思います。 ○町野班員 それは少々ですけれども、理解できますけれども、例えばもし形式的にどこ かできちんと公正証書遺言みたいな格好で登録しておかなければいけないということにな りますと、そのような様式に従っていないで書面によって意思表示をしたときについて、 これは無効だということになると、今度はその本人が怒り出すという話は当然ありますよ ね。そのように形式的に考えた方が、法的安定性とまでは言わないけれども、無用の紛争 を防ぐことになるのかどうかというのは、私はどうもどちらもかなり問題があるような気 がして、水野先生の御提案のようにすることで解決がつくのかな。むしろかえってまずく なるのではないかという危惧があるんですけれども。 ○水野班員 そういう形の1つしっかりしたルートを作っておいたら、そのしっかりした ルート以外をすべて無効にするかどうかというのは、これはまた別の判断だと思います。 でも、少なくとも1つしっかりしたルートを作っておけば、現場の混乱ははるかに少なく なると思います。本当に遺したいと思う人が、かつ紛争が予期されるような場合には、そ のルートに遺します。現在でも自筆証書遺言は簡単に自分一人で、たとえば私が今、この メモ用紙紙の裏に署名捺印して自筆で書けば有効になりますが、それくらい簡単にできる ものですけれども、それでもどうして自筆証書遺言でみんなが動かないのかといいますと、 危ないからでございます。公証人に頼んで公正証書遺言にしておくと、本当に確実にそれ が実行されるということで、公証人を煩わせて大変なお金をかけながら、皆さん使うわけ です。今度は、そういうお金もかかりませんし、登録のシステムの準備をしていただけれ ば、恐らく本当に遺したいと思う方は、それを利用なさると思います。それがなかったと きに、いわばもめるという、そのリスクはもちろんございます。残りますけれども、1つ しっかりしたものがあるとないとで、現場のお医者様の苦労はまるで違ってくるだろうと 思います。将来的には特に。更に、そういうシステムを作り上げておけば、将来のオプト アウトのきちんとした登録にも生きてくるだろうと思いますので、このあたり、今、手間 を惜しんで見切り発車することが後々ますますまずくなってしまうのではないかなという 気がします。 ○新美班長 どうぞ。 ○町野班員 よろしいですか。なにか刑法と民法で論争しているような議論なんですけれ ども、この問題は、要するに現場は混乱するかという話が1つあるので、それは私はそれ ほどのことはないと。あと、要するに期待権といいますか、もらえると思っていた人につ いてどうという話がありますけれども、これは後で親族の範囲をどのように考えるかとい うこととかなり関係いたしまして、もし親族一般という具合に広げますと、かなりの人間 が中に入ってきますから、そういうことがありますから、もしこれを限定すると、あるい は意思表示の方法として、先ほど御議論ありませんでしたけれども、例えば親族一般とい う具合に親族に私の腎臓を与えるとか、例えばそういうようなことを認めるのか、あるい は、親族のうちのだれそれにと特定するかとか、いろんな問題がありますから、意思表示 の内容としてどっちを認めるかということとも関係いたしますので、私はもし仮に、先ほ ど議論に出ておりますとおり、親子とか夫婦だけに限るということになれば、それほど大 きな問題は起こらないだろうという具合に思いますけれども、もちろんそれは考え方で、 2人子どもがいてどうのこうの、そういう話はあるだろうと思いますけれども、程度の差 ということはあると思います。期待権の問題についてはそれほど大きな問題はないし、問 題がゼロというわけではないことは私も承知しております。  それから、もう一つは、現場で混乱が起こるかということも、ルールを決めさえすれば、 それは混乱が起こることは私はないだろうと思うんですよね。ルールさえ決めておけば。  そして、もう一つ、最後の点は、これから確かに言われたとおり、書面による意思表示 の内容というのは、従来、これがなければ臓器の摘出はできない。脳死の場合だけだった ですけれども、それぐらい決定的なものであったわけですね。そのときでも、これについ て余り混乱が起こっていないということ。それはもちろん受益者というのが余り期待され ていないということもありますけれども、現場では少なくとも混乱は起こっていない。こ れから生ずる問題というのは、書面による意思表示が重大だとされることのうちの一つは、 先生がおっしゃられるとおり、このような親族優先提供の意思表示ですね。もう一つは、 オプトアウトの、それも先生が言われるとおりです。これについては考えていかなければ いけないのは確かでございまして、このところでも、だから、意思表示の内容として現在 のところは臓器提供の意思表示カードで家族の名前がなくても恐らくセーフということで 今扱っていますけれども、これをどのように考えるかは考えなければいけないかもしれな いですね。運用の問題として。何らかの証人みたいなものがもう一人必ず必要とするかと か、そういうことがあり得るだろうとは思いますけれども、だから、現在はこれでいいの ではないかと。見切り発車だと言われますけれども、問題がないところではこれでいいの ではないかと思いますけれども。 ○水野班員 そこのところは繰返しになりますが、今まで問題がなかったことの大前提が これで崩れているということを御理解いただければと思います。ここにもほかにも御専門 の方がいらっしゃいますが、民法学者なら大体御存じだと思いますけれども、1,000万の 遺産がありますと、兄弟仲は壊れます。そして、骨肉の争いというのは非常に壮絶なもの でございます。そして、むしろプラスのものを取り合うだけではなくて、あんな親不幸な 息子に親父の腎臓をやっていいのかというような、脇の人間まで出てくるというのが親族 間の紛争の嫌なところでございます。ですから、紛争の火種は非常にたくさんございます ので、かつ、受け取る側でそれを予期しているということになりますと、今まで大丈夫だ ったということを根拠に見切り発車の予期はおよそ通用しないのではないかと思います。 ○新美班長 今の水野さんの、私も民法学者の端くれですけれども、町野先生言うように、 これまでなかったから大丈夫だというのは、ちょっと状況が違うのではないかと思います。 というのは、これまでは、何か問題があったら移植そのものがゼロになってしまうわけで すね。ところが、今回仮に、極端な例は、親族優先の意思表示がだめになった場合には、 これは第三者にいってしまうということになるわけです。いかなくしてしまうんですか。 ○町野班員 それはまだ議論が残っているところだと思います。それは決まっているわけ ではない。 ○新美班長 決まっているわけではない。それも含めて、すべてだめにしてしまうという こともあり得るわけですかね。そうすると、多くの場合は親族優先提供をまず書くと思う のです。それが確認できなかったら全部だめになるというと、ドナーカードは大半が効力 ないということになってしまう可能性が高いと思うんです。要するに、優先提供の意思が 確認できなければ、全部無効にしてしまうという選択肢はないわけではないけれども、そ れをやったらドナーカードはほとんど効かなくなるというのが私の懸念ですけれどもね。 ○町野班員 それは先の方で議論する。 ○新美班長 ええ、先の方で。今言ったことも含めて、丸山さん、何か御意見あったらど うぞ。 ○丸山班員 水野先生の御意見、説得的だと思うんですけれども、相続の場合は、財産を 持っている人すべてについて生じて、相続人に相続分なり遺留分なりがあって保証されま すけれども、この臓器移植法の場合は、ドナーが、提供できるということで、指名された 人に権利はないんですね。そのあたりが少し違うかなということが、期待権という点から は違うのではないかということを感じました。  それから、もう一つは、町野先生がおっしゃった前提条件のところで、かなり医学的に もらうことが可能な人が絞られるというところも、相続の場合とは違いはないことはない と考えますが。 ○新美班長 水野さんばかり矢面に立たせて。 ○丸山班員 これはまた後で議論するんでしょう。 ○新美班長 後で議論すると思うんですが、ただ、選択基準に合わないからあなたはだめ ですよというのと、優先順位でだめですよというのでは、全然受け止め方が違うと思うん です。医学的にだめだと言われたら、あきらめられるでしょう。いかに優先順位が高くて も。でも、医学的適用条件は一緒だというのに、なんで私を優先されないの、というのは どうやって説明するのか難しいと思います。権利じゃないとおっしゃいましたけれども、 他を排除するというのは権利性が極めて強い。仮に単なる期待だといって済ますことがで きるのかどうか。 ○丸山班員 それは分かるんですけれども、相続人の立場とは違う。ドナーに指名された レシピエントの立場というのは、それほど権利性は相続人に比べると確実ではないという か、その点はあると思うんですね。 ○新美班長 どうぞ。 ○町野班員 慎重といいますか、もうちょっときちんとしなければいけないというその懸 念は私は分かるんですけれども、水野先生の今言われましたとおり、例えば登録制度を作 っておくと。しかし、これに適合しなかったらもうだめだという考え方はとらないので、 1つのルートをある程度確立して、そっちに誘導するような方向ということになるだろう と思うんですよね。そういうものとしては先生は何をお考えですかね。例えばこれですと、 意思表示カードを使うという1つのルートと、登録システムを使うということを考えてい るんですけれども、これ以外といいますか、これについて何らかのものをプラスするとい うことをお考えなのかどうかとか、そういうことを何か具体的にお考えはございますでし ょうか。 ○水野班員 町野先生がともかく1月のデッドラインを目指して可能なことと考えていら っしゃるのはよく分かるのですが、ちょっとここは抜本的な手が必要だと思います。つま り、本人であるということを確認し、かつ本人の意思だということを確認する手続をどう してもかませざるを得ないと思います。ですから、これらの意思カードに何か書くので何 とかなるという気がいたしません。一番いいのは、中立の機関で本人の写真付きの身分証 明書か何かを持っていって、確実に確認して、それを登録するというところです。もし臓 器提供意思登録システムがコンピュータ上でなくて、実際に人間が会ってこういうふうに 確認するということでしたら、それはあり得るかもしれませんけれども、そういうのを1 つ作らざるを得ないだろうと思っております。もし1月まででぎりぎり何かほかのという ことでしたら、ともかくその方が持っている、ほかには2枚なくて、かつ、本人が確実に 分かる書面に書かれている、例えば免許証に書かれているというようなことだと、ぎりぎ り何とか可能かもしれないという気はいたしますけれども、これは大変なことですので、 今ここで少し頑張って制度化した方がいいだろうという気がしてなりません。そうでない と、見切り発車にしてしまって、後の紛争が起きたときに、また全部ひっくり返ってしま うということになりかねないのではないでしょうか。今、丸山先生が、お金のことではな いからと言われましたけれども、ひょっとする、お金よりも適合した腎臓がもらえるかど うかという利益の方がはるかに当事者にとっては大きなことであるということがあります から、それをめぐって当然事後的に思いも、損害賠償として請求する金額も高くなります ので。 ○新美班長 どうぞ。何かありますか。 ○峯村室長 若干事務局の方からもお話をさせていただきますが、今、水野先生からもお 話がありましたとおり、お話があった趣旨を忖度すると、親族への優先提供の意思表示に つきましては、これまでの臓器提供の意思表示とは異なって、法律上の用語で言えば遺言 ですね。遺言に近いものだろうと。遺言の世界であれば、自筆で行う自筆証書遺言と公証 人をかませる公正証書遺言と2つあって、紛争防止のために遺産相続の現場でも第三者を かませる非常に慎重なシステムが実質的にはとられているというお話がありましたし、そ の中には多分いろいろ家族間のトラブル、あるいは意思表示方法が十分かどうかといった 点について懸念だったと思っております。  事務局として若干考えを申し上げますと、まず法律上の規定で申し上げますと、臓器移 植法上、優先提供の意思表示について書面で表示をすることができるということで、その 様式性については規定がされていないということでございまして、書面が何であるかとい うことについての規定はされていないという前提を我々として考えないといけないだろう と思っております。  したがいまして、例えば、かなり限定的なシステムだけでそれをよしとするのかどうか というのは、法律の趣旨と比べてどうなのかということについての判断をしないといけな いだろう。要は、紙に書いたただのドナーカード以外の書面であれば認めるというのは、 法律上の趣旨というふうに考えますと、そこを限定するのがいいのかどうかという判断を しないといけないだろうと思っております。  また、そういったことと併せて運用面で考えないといけませんのは、意思表示の手段と して、平成9年の臓器移植法施行以来、累計で1億4,000万枚近いドナーカードというも のが、今、所持されていると。所持率8%ということですから、1,000万枚に近い所持状 況があるのではないかと思っておりますけれども、こういった現状を考えると、現状、ド ナーカードの仕組みを有効としないというのは、なかなか一方では難しいところもあるの ではないか。したがいまして、例えば複数枚出てくるような場合をどう防ぐのか、あるい はカードが偽造されるといった場合をどのように防ぐのかという点について考えていくと いうのも1つの現実的な方法ではないかと考えております。  あと、第3点目、3つ目の話として、脳死判定、臓器摘出に至る道のりでは、当然本人 の意思、優先提供の場合は本人の意思表示が要件でございまして、意思が不明な場合は優 先提供自体がされないわけでございますけれども、その場合、併せて家族、ガイドライン 上は二親等までの親族と同居の親族、更に、異議を申し立てた場合には慎重に行うといっ た仕組みがとられていて、最後に、そういった家族の総意を得て承諾を要求するという仕 組みになっておりますので、そういった仕掛けなり、それが1つの安全弁という形で、そ れを前提として考えた上で、全体の議論をどうすればより現実的、なおかつ紛争が少ない やり方ができるかといった点を御検討いただければと思います。 ○新美班長 今の説明を踏まえて、ちょっと確認したいんですけれども、これは親族の優 先提供の意思表示がなされているときに、遺族がそれは嫌だと言ったらどうするんですか。 それは優先提供はない。 ○峯村室長 それはできないという形になろうかと思います。 ○新美班長 拒絶権はあるわけですね。 ○峯村室長 拒絶権はあるということでございます。 ○新美班長 優先提供についても。 ○峯村室長 そうでございます。いわば本人の臓器提供についての拒絶権、また、優先提 供についての拒絶権とがあると考えております。 ○新美班長 そうすると、それは移植自体を拒絶するということと、優先提供も拒絶でき ると。どちらでもいけるということですね。 ○峯村室長 はい。 ○新美班長 分かりました。 ○丸山班員 そういうことはあるんですか。 ○新美班長 家族でもめたときはあり得るわけでしょう。遺族の範囲が明確であればいい ですけれども。 ○丸山班員 それは、摘出しないという選択だけで、ネットワークに提供しましょうとい うのもなくなるんじゃないですか。 ○新美班長 通常はそうかもしれませんけれども、これはあいつにやるのだけは嫌だと。 公平にやるということも論理的にはあり得るわけです。 ○丸山班員 逆の論理もありますよね。彼にはあげたいので提供しようと思っていたんだ けれども、それを遺族全体が拒むということになったので。 ○新美班長 提供一切をやめるというね。 ○丸山班員 一切やめるのが本人の意思であって、それを特定の親族でなくて、ネットワ ークの方に提供するということになると、本人の意思に反するという場合もありますよね。 ○新美班長 それはありますけれども、それは後ほど、それをどうするかということも議 論しなければいけないと思います。これは全部絡むんですけれども、優先提供するときに、 適合条件は満たしたけれども、優先のところでもめたというと、一切それは臓器提供は無 理ということになるわけですね。そういう解釈の仕方もあり得ると思います。 ○町野班員 あり得るだけで、ちょっと議論しなければ。 ○新美班長 それはまさに議論しなければいけないですね。  表示方法ですけれども、今、議論の論点というのは、第三者による偽造とか変造とかい うような問題を防げるかどうかということと、本人確認がきちんとできるかどうかという ことが一番の論点となってきているということなんですが、これは、偽装・変造、あるい は第三者の介入を排除するということになると、登録システムを使うことでは可能でしょ うか。第三者による偽造とか変造というものを排除するということは、臓器提供の意思の 登録システムでは可能になるわけでしょうか。 ○峯村室長 本人だけがパスワードに基づいて提供して、複数枚、少なくとも妥当化され るというカードに起因するような問題は生じにくいと考えております。 ○新美班長 登録システムを使えば、本人がきちんと管理している限りは偽造・変造の可 能性はないと。一応今のシステムは、本人にパスワードを与えて登録するということにな っているのですか。ちょっとその説明をお願いします。 ○峯村室長 正確な手続についてはあれですけれども、基本的に本人のパスワードに基づ いてアクセスをして、登録をして、それに対してネットワーク上の情報が保管されて、そ れによって後ほどカードが本人に対して送られてくる。もちろん送られているカードはカ ードとして本人が書くわけでございますけれども、記録として本人が優先提供についてこ ういう方にあげるという意思表示をしたというのは残りますので、複数カードを排除する ということはそれによってできるということでございます。具体的には、インターネット に対して臓器提供の意思と個人情報を登録した後に、IDとパスワードがその本人に与え られますので、それでやりとりをするという仕掛けになっております。 ○新美班長 一応、時の前後とか偽造・変造、偽造はちょっとあるにしても、一応そこで 担保はできると。問題は本人確認の問題ですね。今はパスワード、なりすましが出てきた ときに、それを防ぐ手立てがあるかどうかですが、それは残念ながらないという理解でよ ろしいですか。そうすると、システムから発行されたカードに本人が署名するということ で本人確認が成り立つという理解になるんでしょうか。 ○長岡補佐 そのとおりです。署名以外の部分は、いわゆるプラスチックでできたもので、 あらかじめ印字されておりますので、そこから何か書き加えるとか、そういったことはで きないようなカードになっております。 ○新美班長 先生、お願いします。 ○深尾参考人 臓器提供の意思は、括弧に勝手に書き込めばそれでいいんじゃなかったで すか。全部登録する必要はないと思いますね。それから、公的な配布されているもの以外 でも、文書で遺言みたいに書くものでも有効になっていますし、全部登録はされていない んじゃないですか。登録するシステムもありますけれども、一番初めはそういうことをや っていましたけれども、それだと登録する人が少なくなってきたので、いろんなところで カードに書いていればいい。あるいは免許証に張り付けるものに書いてあればいいという システムだと私は理解していましたけれども。 ○新美班長 これまで、それでも是認できたのは、最後は家族が決定権を持ちますので、 そこで一応歯止めがかかってとれていたんですけれども、今回そうはいかなくなるのでは ないかというのが一番のポイントだと思います。従来のような扱いとは考え方を変えない とまずいのではないかということは、水野さんのおっしゃるとおりなんですね。ですから、 その意味では、本人が本当に優先提供を言ったかどうかというのは、それなりにきちんと 確認をしておく必要が出てくるということなんです。  どうぞ。 ○町野班員 しかし、今、御意見がありましたとおり、全部登録されなければだめだとい うことはとうていできないので、書面そのものとネットのそれについて偽造とかそれを避 けるような方策を考えるのが筋道なのであって、これだけだということには私はいかない だろうと思うんですね。ただし、何回か御議論が出ていますとおり、コンビニに置いてあ るカードへそのまま、夜帰って飯を食いながら署名するというだけで足りるという制度で これからいいのかというのは、確かに水野先生がおっしゃられるとおり、かなり問題なの で、それはかなり考えなければいけない。  それで、今現在あります、事務局から説明がありましたとおり、提供意思表示カード、 これだけ普及しているんだから、これを使ってやるべきだというのも分かりますけれども、 このままこれを同じでいいかというのはもう一つ別の問題だろうと思います。ということ で、私は登録は必ずしなければいけないということはできないだろうと思います。 ○水野班員 臓器提供の意思をこれまで登録しないでカードだけで幅広く承認するという のは、それは問題のないことであったと思うのです。そのことと、今回出てきてしまった のは、受け手の指名ということがもたらした根本的なある種の転換がありまして、受け手 が指名されて、受け手が指名されていることを知っていて待っているということがすべて の根本にあることになりました。今まで、私は大体自説はオプトアウトですので、幅広く 認めいって、それから、これまでの遺族の拒否権もドナーカードの簡便化というのもすべ て否定するつもりはありません。ただ、それが前提としていた世界が親族の指名によって 崩れてしまったということをお考えいただきたい。とりあえずは親族の指名の部分だけど うすればいいかということをお考えいただければと思います。 ○新美班長 水野さんの意見だと、親族優先の部分についてだけ慎重な方法を考えろとい うことでしょうか。ドナーカード一般は使ってもいいけれども、親族優先については特別 なシステムがない限りは認めないという方向でどうだという意見だと思いますが、その点 はいかがですか。今仮に考えられるとしたら、登録制度、登録システムを少し整備して、 親族優先の場合には、それに登録しない限りは認めないと。それ以外は通常のドナーカー ドでも十分だという御趣旨と理解したんですが、その点についていかがでしょうか。 ○町野班員 そういう御趣旨ですか。つまり、登録というのは、基本的には意思表示を併 せてやるということになっていますから、大体一緒にやられるという話なんですけれども、 そのときに、登録について、親族優先提供の意思表示があるときについては登録のシステ ムじゃなければだめだということですか。それとも、先ほどから議論に出ていますとおり、 偽造とか、あるいは同一性について誤りのないような保証がされていれば、登録しなくて もいいのではないだろうか、そういうシステムができていれば、ということではないんで しょうか。 ○水野班員 それはこれから御議論いただくことになるのだろうと思います。 ○新美班長 カード全般については別だと。更に議論する。それは別だと。 ○水野班員 今、町野先生がおっしゃったのは、親族優先の部分ですね。親族を優先しな い臓器提供意思については、これまで全然問題はないと。カードだけでももちろん全く問 題はないと思います。親族優先という意思の部分だけを、登録しないとだめとするか、そ れについても登録以外でも有効とするかというのはこれから御議論がある。 ○町野班員 いや、登録というか、レジスターまで必要かどうかというのが、更にこれか ら議論しなければいけないという話ですよね。問題は、非常に変なカードが出てきて、訳 の分からないことを起こるのをとにかく避けなければいけないという話ですよね。その手 段として何があり得るかということをこれから議論しなければいけない。登録というのも その一つのそれであろうということですよね。分かりました。 ○新美班長 では、丸山さん、ありましたら。 ○丸山班員 先ほど水野先生のおっしゃった、ドネーションの意思表示と親族に限った提 供先の意思表示を分けるというのはいいアイデアだと思うんですが、後者の方だけ紛争が 生じないような、不正が起こらないようなシステムに乗せると。前者のドネーションの方 は広くなされるように、これまでのシステムを基本的に実施すると。6条の2の提供の意 思表示に併せてというところを緩やかに解釈すれば可能かなというあたりが今後検討しな ければならないところで、そこがクリアできれば、個人的にはいいやり方ではないかなと 思いますが。  どうぞ、先生、お願いします。 ○深尾参考人 現実に親族にそういう移植を必要とする患者さんがいない場合には全く問 題ないですね。実際に水野先生がおっしゃるような問題になる場合に、複数の対象患者さ んがいる場合に問題になるので、そういう場合にだけ何らかの方法できちんとした登録を すればいいのではないかと私は思うんですけれども。1人だったら問題にならないですね。 要するに2人いた場合に問題になるわけですから、そういうごく限られた場合だけ、パス ワードなんか、いろんな方法でもってきちんと登録したらどうかと私は思うんですけれど も。 ○新美班長 どうぞ。 ○北村参考人 カードのような場合、親族への提供という項目で付ける場合は、現在、自 分の親族の中にそういう移植の必要のない場合でも書き込めるわけですかね。そうします と、例えば自分の息子、親は大体先に死にますよね。そうしたら、角膜等は、息子がもし も、娘がもしも病気になっておれば、その子にやってくれという意味で書けるのか、現在 レシピエントとして登録して待っている人がない場合には無効にするのか、無効なのか、 そこはどうなっているんですか。 ○新美班長 レシピエント登録が必要だということで、その辺は。 ○峯村室長 前提としては、レシピエントの登録が前提になるのではないかと思っており ます。したがいまして、意思表示がされた親族の方について、病気の方がおられて、その 方がネットワークに対して移植希望というレシピエント登録をしていた場合に、初めて移 植としての道筋ができるという理解でございます。 ○新美班長 お願いします。 ○長岡補佐 補足をしますと、まず、意思表示をする時点、ここでは親族への優先提供の 意思表示はできると書かれておりますので、その際には特に問題はなかろうと。その際に、 先ほどのケースですと、お子さんが白内障であろうがなかろうが、あげるのであれば親族 を優先してくださいという意味合いですので、それは構わないと考えます。  一方で、実際、脳死又は心臓死になって提供の場面が生じた場合に、レシピエントの選 択をするという現実的な運用の世界なんですが、問題が生じるんですけれども、その際に は、レシピエント登録をされていない方については、その選択からは外すということで運 用せざるを得ないのではないかということで、先ほどのような提案をさせていただいてい るということでございます。 ○新美班長 ありがとうございます。  そうすると、レシピエント登録との先後関係も問題になってくるわけですね。要するに、 現に臓器を摘出するときに登録があるかどうかということで問題になってくるわけですね。 ○町野班員 それがなければだめだということでしょう。 ○新美班長 なければだめだ。それはこれまでの説明で。それを変えることはちょっと考 えられないということですよね。臓器をキープしておくことはできないと。要するに、摘 出した時点で移植の登録、移植をするということが大前提だということですね。 ○久保参考人 これは、ドナーの方が親族に別に病気があろうがなかろうが、親族以外は だめということは可能なんですか。そういう意思表示は。 ○新美班長 それはまた後ほどで議論することになると思います。 ○久保参考人 それともう一点、レシピエントとして、移植が必要な方が自分の家族にい た場合に、その親族は、このような法律ができるとプレッシャーになるのではないかと思 います。ドナーに登録しないと家族の中で何を言われるか分からないとかいう非常にプレ ッシャーがかかってきて、そういう人に対してどうするのか、全く素人の発想で申し訳な いですけれども。 ○新美班長 今おっしゃられたような問題というのは、生体間、生きた人同士の移植のと きにしばしば指摘されてきている問題ではありますね。  どうぞ、先生。 ○北村参考人 この場で申し上げるのが適切かどうか分からないですけれども、もう一つ、 親族への提供の場合の負の面と申しますか、考えられる点です。医療の現場で子どもから 思春期に入って普通の治療を何度も繰り返して、移植以外、これ以上ないという患者さん は結構おられるんですね。そのときに、例えば母親が、私、死んでやりたいという気持ち のようなうつ病の感覚を持つ人は、現場では少なからずあると。私の責任でこういう子ど もを産んでしまったというのかですね。そうしたら、これがある種の故意による死亡とか 自殺的な問題を誘発する点をどう抑えるのかということを法律化の中でもある程度決めて いただくことが必要なのか。警察に任せるとか、刑事性がないかどうかの判断でよいとい うのもあるのかもしれませんけれども、親の自殺を誘発するということをどう防御してい くのかは大事なのではないかなと。特に心臓などは生体移植ができませんので、死んでや ってくれというような場合をどう防御するかを是非考えていただきたいなと。 ○新美班長 非常にある意味で深刻な問題指摘だと思いますが、これは移植全体の問題、 特に親族優先の場面が出てきたときには全体にかかってくる問題だと思いますので、また 我々の議論の中で繰返し出てくるだろうと思います。 ○町野班員 確認がしたいんですけれども、恐らく、立法者といいますか、国会での答弁 の中では、ネットワークに登録していない人間についてはこれは対象としないと。しかし、 法律の中に何も書かれていないんですよね。そして、実際に昔はこれでやったわけですよ。 登録されていなくても。だから、恐らく今のように、登録しておかなければだめだという ことになるのが私は少なくとも望ましいと思いますけれども、これは今のようなことで合 意が得られたということでよろしいんでしょうか。この場で。それはかなり重大な決定で すので、ちょうど国会答弁の中でも、親族の範囲は、例えば一親等とゼロ親等に限るとい うような答弁がなされて、そのとおりするかということが1つの問題であると同時に、こ れももう一つの決定ですから、それをちょっと確認をしていただきたいと思います。 ○新美班長 この点については、皆さんごくごく当然だというつもりで御議論なさってき たと思いますけれども、ネットワーク外で移植をしたというときには、臓器移植法外の問 題になってくるのではないかと思うんですけれども。 ○町野班員 まだそう扱っていなかったですか。 ○新美班長 ええ。 ○丸山班員 移植の前に登録を急遽したんじゃなかったですか。 ○町野班員 そのときに急遽ね。 ○丸山班員 登録はあったことはあったので。 ○町野班員 そういうのを認めろというわけでしょう、これから。かなり重要なあれです から。 ○新美班長 その辺は了解事項ということでよろしいでしょうか。御意見ございましたら お願いします。どうぞ、丸山さん。 ○丸山班員 意見ではないんですが、自分で考えろと言われるかもしれないんですが、そ ういうことでガイドラインを定めて、後で意思表示時にレシピエント登録がなされていな かった者から損害賠償請求訴訟で、ガイドライン違反だけれども、法律にはそういうこと は書かれていないということで負けないかどうかというところが問題じゃないんですか。 ○新美班長 どうぞ。 ○深尾参考人 各臓器のガイドラインには全部レシピエント登録されている中から選ぶと いうことになっていますから、私は問題ないんだろうと思うんですけれども。 ○丸山班員 今の登録は、優先提供先の意思を表示するときに登録されていることが必要 という方針。 ○新美班長 いやいや、臓器移植そのものはレシピエント登録しておかなければいけない というのが現状なんですね。移植を受けるレシピエントの登録は、この法律のもとで移植 を受けるときに不可欠なんです。今は。 ○丸山班員 それはそうなんですね。ですけれども、今のここに。 ○新美班長 親族優先の場合ですか。 ○丸山班員 親族優先の場合は、意思表示のときに登録を。 ○新美班長 これは先ほどありましたように、臓器を摘出するとき。 ○丸山班員 それはもう。 ○新美班長 そのときまでにレシピエント登録が必要だということを言っていたわけです。 ○丸山班員 それは大丈夫だと思います。 ○新美班長 レシピエント登録があるという大前提を変える必要があるかどうかというこ とですが、これは臓器移植そのものの問題ですけれども、それは了解しているということ でよろしいでしょうか。どうぞ。 ○本山班員 私もその点は了解はしているんですが、ただ、先ほどちょっと丸山先生がお っしゃったように、一般的な気持ちとしては、まず親族に、具体的に病気の親族がいるか いないかは別として、もし親族に優先ということであれば、まず親族だったらあげたいな という気持ちが働くんじゃないかと思うんですね。そのときにレシピエント登録していな いとだめなんだという話になってしまうと、最初そういうことに気付かなくて、ドナーカ ードを書いたときに。後ですごく裏切られたようなことをドナーが思い至ることがあるの ではないかというのをちょっと危惧するんですけれども。 ○新美班長 そうすると、そのときに移植を希望しているということを、登録していない けれども、実は移植を希望していたということですかね。そういう場面をどう扱うか。ど うぞ。 ○深尾参考人 登録していないと選択のしようがないんですね。登録していない人が急に やりたいと現れてきて、登録されている人とそこであわててクロスマッチなんかをいろい ろやって選ぶというのは現実的になかなか難しいのではないかと思うんですけれども。 ○新美班長 よろしいでしょうか。 ○町野班員 本山先生の先ほどのあれとはちょっと違う。そうじゃないですね。今の議論 じゃなくて、親族優先提供の制度があるということを知らずに普通提供しますと言ったの を、後からこれがあるじゃないか、何で先に教えてくれなかったということについてどう 思われるかという御質問ですね。そして、それについては、その後でしても構わないとい うのが法文の趣旨ですから、知ったときにそれをすれば大丈夫ですから、それは大丈夫だ と思います。 ○新美班長 ほかにいかがでしょうか。表示方法について、大分外堀は埋まったけれども、 中身についてまだ具体案は出ておりませんが、時間の都合もありますので、今までの御議 論をとりあえず大枠をまとめていただいた上で、最終的な作業の際に役立てるということ にしたいと思います。ちょっと事務局の方でまとめていただけますか。 ○長岡補佐 先ほど来の議論でございますが、まず、水野先生から、親族優先提供という のは、これまでとは大きくパラダイム転換があるという御指摘をいただいております。そ の中で、ドナーカード、それから、特に先生から御示唆がありましたのは、お一人が必ず 1枚持っていらっしゃるカードに、なかなか偽造ができないような仕組みを考えるとか、 いろいろな工夫があるかと思います。そして、先ほど御示唆のありました免許証ですとか、 これはお一人1枚お持ちになっていて、基本的には身分証明書として使えますから、恐ら く携帯をしていて、通常ほかの方には余りお見せしないというものでございますので、こ ういったものに誘導しようかと。これはほかにも普及・啓発に関する作業班も設けること としておりますので、そういったところでも何らかの方策がとれないかということで少し 考えてみたいと思います。  もう一つ、これも町野先生からの御指摘もございましたが、1月を見据えて、それから、 これまでの書面という法律上の要請、もう一つは、現行のドナーカードの普及状況、こう いったものを見ながら、まずできること、それから、システムの整備、これは少しお時間 がかかりますけれども、将来的にはシステムでいかにご本人の確認をしていくかというこ とについて、もう少し検討する必要があるのかなということでお話を承っておりますので、 ここは、この作業班、又システムに誘導するなど、いろいろ考えられますので、ここは普 及啓発の班も含めて検討した上で、再度臓器移植委員会での御議論をいただいて、これは ガイドライン事項になりますか、又は普及・啓発の中での活動になるかはちょっと今判別 できませんけれども、対応をとっていきたいと考えております。 ○新美班長 今のまとめで1つ座長として指摘おきたいのは、誘導するという表現では生 ぬるいのではないかと思います。水野さんの発言の御趣旨は、始まった時点できちんと一 本化されたシステムがないと大混乱が起きますよという指摘だったと思います。その辺は 押さえておく必要があるのではないかと思います。具体的にどうするかというのは現実問 題とのすり合わせになると思いますので、最終的に混乱が起きても構わないという腹を決 めて誘導という方法をとるのかもしれませんけれども、今、水野さんの指摘は、そういう 意味では混乱を相当程度懸念されているということは押さえておく必要があろうかと思い ます。 ○町野班員 これは確認なんですけれども、条文で言うと6条の2の意思表示の要件です ね。書面による意思表示。これも書面ですけれども、こちらについては別の、厳格なもの を考えなければいけないだろうと。それに対して6条の第1項第1号の意思表示について は、従来どおりのこれでいいと、そういうあれですよね。ですから、ガイドラインとかそ れで、しばらくしたら、6条の2のところで焦点を合わせたそれになるという話でよろし いですね。 ○新美班長 そうです。方向としてはそれで。  どうぞ、水野先生。 ○水野班員 先ほど北村参考人の御発言にもありましたように、相手があるというのは全 然違います。親族間とは限ってありますが、本日は議論になりませんでしたけれども、養 子まで広がってきますと、当然相手があるときには臓器の買い手が養子になるという売買 の可能性が出てきます。養子縁組ではなく実の関係に規制してでさえ、ひょっとすると兄 弟の間でどちらが多額の金銭を支払うかということがあるかもしれません。つまり、本当 に親族優先提供というのは全然違った要素が入ってしまって、ある意味パンドラの箱を開 けるような要素が入っておりますので、慎重に規制しないといけないと思います。 ○町野班員 私もそれは全く同じで、私はこの立法は不当だと実は思っておりまして、そ れはずっと反対していたということは皆さん方は御存じだろうと思いますけれども、だか ら、その中で、しかし、法律ができたので、こんなの知らんよと言うわけにいかないので、 ある以上はきちんとそれを尊重していかなければいけないだろうという話ですね。なるべ く弊害を避けなければいけない。先ほどの北村先生が言われた自殺の問題というのは、だ れの頭の中にもずっと残っている問題なんですよね。だから、そこらを考慮しながら進ん でいかなければいけない。パラダイムの転換と言うには、かなり筋の悪い法律だと私は実 際に思います。 ○新美班長 ありがとうございます。今のこと余り記録に残すと。 ○町野班員 結構です。 ○新美班長 残していいですか。私も全く同じ発想を持っておりますので、反対は今さら できませんけれども、具体的な制度設計においては、さまざまな負の部分についてはきち んと焦点を当てていかなければいけないと思います。  それでは、表示方法については、今のまとめを受けて、更に最終的な詰めに向かってい きたいと思います。今日、最終的な結論までいきませんけれども、大体大枠は埋まってき たかと思います。  では、ちょっと時間の超過になりますけれども、表示内容について、とりあえず事務局 から説明していただき、質疑応答くらいまでは済ませておきたいと思いますので、よろし くお願いします。 ○長岡補佐 では、資料4の3枚目です。「表示内容について」と書かれた紙について説明 したいと思います。  今、議論になっております第6条の2、親族優先提供の規定の運用に当たって、提供先 を例えば親族に限定すると。親族でなければ提供しないといった意思など、親族への優先 提供に附随した意思が示されるというケースがあるかと思いますが、この場合、6条第1 項、6条の2の両規定を解釈をして、どのように取り扱っていくのかといったことについ て検討する必要がなかろうかということでまとめております。その下に3つのケースを今 想定して書いておりますので、順に説明したいと思います。  1番目ですが、これは、まず、6条第1項の臓器提供の意思表示、これはあるんですが、 その次の6条の2の部分ですけれども、特定の親族へ提供する意思又は親族間で優先順位 を付けるといったような意思表示がされた場合、これは特に6条の2の親族への優先提供 の意思をどのように解釈して取り扱っていくのかという問題があるだろうということで挙 げております。  2つ目でございますが、これも臓器提供の意思表示はあるということですが、ただし、 優先とならない範囲。どこまでの範囲かというのは後日議論になるかと思いますけれども、 それで決まった範囲を超える、優先とならない範囲の親族に提供したいという意思が示さ れていた場合はどう取り扱うのか。これも6条の2の親族優先提供の意思の部分が問題に なるかと思います。  3つ目でございますが、これは、親族以外には提供しないと。親族優先というよりは親 族限定の意思表示がされていた場合、これはどうするか。※印で記しておりますが、現行 では、第三者ということで意思表示をすることになっておりますので、提供先を指定、こ れは親族ですとか第三者に限らずですけれども、提供先を指定している場合には、有効な 意思表示とはせずに、提供は見合わせるという現行のガイドラインで定めて運用している というところでございますが、このような、今後の法改正の後、限定的な意思表示が示さ れた場合にはどうするかというところです。  これは、6条第1項の提供意思がそもそも示されているか、少し疑義があるというとこ ろと、もう一つは、6条の2の意思表示は、優先というよりは親族への限定提供であると いうところが議論になろうかと思います。その際に、6条の2の意思表示、それから6条 第1項、大もとの意思表示、この双方についてどう取り扱っていくのか。限定というのを 6条の2でどう扱うのか。6条の第1項では、限定ですので、そもそもその他の方への提 供がない、拒否しているということなのか、それとも、そこは書かれていない、分からな いという形にするのかといったことなどが考えられると思いますけれども、それをどう解 釈していくのかという問題があろうかと考えております。  以上です。 ○新美班長 ありがとうございます。  論点についての説明をいただいたわけですが、今日は中身に入る時間はとてもありませ んので、とりあえずこの論点についての御質問をいただいて、次の課題を浮かび上がらせ たいと思いますので、どうぞ御質問いただければありがたいと存じます。どうぞ。 ○町野班員 この問題に入る前に、先ほど、例えば、親族だれか優先提供の意思表示があ ったと。しかし、それをやったところが不適合であってできないといったときは、一律に これからネットに乗せないという話になるのかという話はまだ、これ、前提のところです けれども、それをまず議論する必要があるように思います。 ○新美班長 どうぞ。 ○本山班員 ちょっと確認なんですが、こういった議論というのは、国会などでは全く出 ていなかったということなんでしょうか。 ○峯村室長 特段この点につきましては国会でやりとりはなかったと記憶しております。 ○新美班長 町野先生のご発言についてですけれども、確認しておきたい事項があります。 それは、親族について適合条件が外れた場合にはネットに乗せない、つまり第三者には回 さないということにするのか、しないのかという問題ですよね。それはまず確認しておく 必要があると思います。 ○町野班員 先ほど御意見ありましたとおり、これから恐らくはこういう制度があるとい うことだったら、みんな書くだろうという話ですよね。こういうとき、人がいないといっ たときに、病人も出なかったといったときに、全部だめというのはちょっと考えられない 話なので、恐らくそういうときは乗っけると。普通のとおり、移植することができるとい う前提だろうと思いますけれども。 ○新美班長 優先条件の中に入れたというのはそういう趣旨だと私は考えていて、適合条 件に合致したら、とりあえず移植の対象としては考える。あと、優先順位として親族を優 先するけれども、それが外れたらほかの方に回るという理解だろうと思うんですが、それ でいいかどうかですね。ここで確認できるかどうかということです。全部親族に対して適 合条件がだめだったら、一切だめということにするのかどうかですね。 ○長岡補佐 ここは法律上ですと、6条と6条の2というのがございまして、6条の2の 部分が、今、新美班長の御指摘ですと、満たされないという場合に、6条と6条の2の関 係をどうとらえるかという問題になるかと思いますので、そこは是非御議論をお願いした いと思います。 ○新美班長 いかがでしょうか。 ○丸山班員 新美先生のおっしゃった、ドネーションがなされる際に、提供先の指定をす る人が多くなるであろうということなんですが、私はそういうイメージじゃなくて、これ は例外で、特に、今、患者を家族なり親族なりの中に抱えていらっしゃる方の場合に、例 外的と言うとちょっと少な過ぎるかもしれないんですが、少数しか出てこない、あるいは 少数しか出てほしくないことだと思うんですね。ですから、少し最初のところで事務局か らの説明にもあったんですが、臓器提供意思表示カードにも親族への優先提供先を記入す る欄などを設けなくてもいいのではないかと思うんですが……。余り6条1項に係る書面 にそういうところを手厚くすると、6条の2での優先提供先の意思表示をすることが、そ れが基本だという扱いになってしまうのではないかということで、そのあたりの認識がち ょっと気になりました。 ○新美班長 おっしゃるとおりで、カードにそこまで優先提供の書く欄があるということ になると、優先提供の意思表示をするところに誘導してしまうのではないか。 ○丸山班員 勧めているような感じですね。 ○新美班長 それはおっしゃるとおりなんですけれども、これは事実認識の問題、あるい は予測の問題で、また後で議論したらいいと思うんですが、学生に医事法なんかを講義し て、学生諸君に「諸君なら、どうするの」、と言うと、家族なら提供してもいいよという答 えは結構多いんですね。一般的には嫌だけれども、家族なら提供するという意見は、結構 学生の中では多い。一般化できるかどうかというのは問題あるかと思いますけれども、私 の感触としては、家族への優先提供ができるならば、とりあえずドナーカードに書いてお こうかという人は潜在的には多いのではないかと思っただけなんです。これはもう少し予 測の問題としては議論しておく必要があると思います。カードの書式の問題にもつながり ますので、それは議論をしてまいりたいと思います。  あと、内容についての議論するための前提として確認しておきたいようなことがござい ましたら、お願いします。どうぞ。 ○町野班員 先ほど事務局の方で彼が言ったことが恐らく基本だろうと思うんですけれど も、6条の2の方が無効になった、意義がなくなったときは、6条の1項の1号の意思表 示は残らないのかという問題ですよね。それは恐らく残って、その上に6条の2がくっつ いている、そういう理解でよろしいわけですね。だからこそ親族優先提供の意思が生きな かったときについても提供することができるという論理になるはずですから。そういうこ とでよろしいですね。 ○新美班長 いや、それは意思表示の問題としてそう言えるかどうか。 ○町野班員 そう見なければいけないという話です。法律はそういう制度でできていると いう話なんですね。そして、そう見てはいけないのが、例えば表示内容について、3号の 場合です。親族以外には提供しないという意思が表示されていたときについては、親族に 提供できないならだれにもあげませんよという意思がここにあるという具合に読むわけで すよね。そうじゃない以上は今のような一般原則だという理解になると思いますけれども。 ○新美班長 特則がだめなら一般原則に戻るということは通常言えることですけれども、 意思表示の解釈というのは当然にはそうはならない。 ○町野班員 だから、3号のあるときだけそう解釈しなさいと。 ○新美班長 それはもう少し詰めた議論をしておかなければいけないと思います。ですか ら、条文の構造と意思解釈というのはちょっと違うということは理解しておく必要がある だろうと思います。  例えば我々、ある行為を無効だと言うときに、一部だけ無効にするという議論と、一部 だけじゃなくて全部無効にするんだよという議論と両方あるんですね。それは、無効にす る理由がどういうものなのかということを読み込むわけですので、条文の構造だけでは説 明がつかない。むしろ社会的な意思あるいは普通の人はどういうつもりで意思表示してい るのかということをきちんと踏まえなければならないと思います。ある意味で我々が議論 する中で一定のフィクションを重ねることになるかもしれませんけれども、きちんと議論 はしておく必要があるだろうと思います。 ○町野班員 その点はおっしゃるとおりですけれども、ここにある3のときは、明らかに そういうものだということですよね。 ○新美班長 それはまだ今日議論していませんので、そういう御意見があるということを 踏まえて、次回議論しておこうと思います。 ○町野班員 いやいや、つまり、先ほどのあれで、優先提供の意思表示が活きなかった、 活かされなかったとき、そのときに全部ナッシングになるのかどうかという前提がありま すから、それはまずここで決めておかなければ先に進めない話だろうと思います。 ○新美班長 要するに、優先提供について効果が指定された場合に、残り部分を活かすか どうか。ただ、効果の否定のされ方もいろいろあるんですよね。例えば、家族以外だめだ というような表示の効果の指定と、家族の中でこの者だけだという指定の仕方といろいろ な指定の仕方があるわけです。家族の場合に、この人に提供したいという名前が、特定の 固有名詞があったときに、その後、生まれた子どもを見たらどうするのかとか、いろんな 場面がありますので、当然に効果否定したから全部無効というわけにもいかないし、ある いは一部無効の形でいくのかといういろいろな議論があります。優先提供についての意思 表示が無効になったら、根っこから否定するということもあるのかないのかも含めて、場 合に応じて議論しておく必要があるだろうと思います。  あと、意思表示の内容についての理解を深めるための御質問等がございましたら。よろ しいでしょうか。  司会の不手際で大分時間も過ぎておりましたので、今日はとりあえず初回ということで、 皆さんの頭の中をちょっと揺さぶっていただいたということに留めたいと思います。大分、 特に1の問題については外堀は埋められたと思いますので、それなりの成果は得られたと 思います。  今日は多分後の方に予定も入れられている方もいらっしゃると思いますので、余り長引 くことは避けたいと思います。次回以降の日程について、少し事務局から御説明いただき たいと思います。 ○峯村室長 今日は、真剣かつ活発な御議論ありがとうございました。次回以降の日程に つきましては、また各委員の先生方の日程を調整させていただきまして、文書で送らせて いただきますので、お忙しいところ、大変恐縮でございますけれども、日程の方よろしく お願いいたします。  また、次回につきましては、今回議論がまだされていない部分も含めて、論点について 班長の方からの指示の下で議論を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたし ます。 ○新美班長 どうも今日はありがとうございました。今、ありましたけれども、こういう 議論はだんだんふくらんでいきますし、奥が深いということになると思いますので、今日 はちょっとしり切れとんぼの感がないわけではありません。次回は日程を確保して、後ろ の時間を気にしなくてもいいような時間帯に取れたらと思います。ですから、30分、40 分くらい延びてもいいような、司会のまずさをエクスキューズするのかもしれませんけれ ども、時間の幅を持ったような形での日程調整をさせていただきたいと思います。  それでは、今日はどうもありがとうございました。 <照会先> 厚生労働省健康局疾病対策課臓器移植対策室移植普及係 川崎・佐藤(内線2365)