09/09/17 平成21年度第1回特定疾患対策懇談会議事録 平成21年度第1回特定疾患対策懇談会 開催日:平成21年9月17日 (木) 場所:中央合同庁舎第7号館 9階共用会議室1(903) 出席委員  飯島 正文  池田 康夫  内田 健夫   大島 伸一      ○金澤 一郎  木下 茂   桐野 高明   草間 朋子         葛原 茂樹  齊籐 加代子 齋藤 英彦   猿田 享男         辻  省次  林  謙治  槇野 博史   松井 陽       宮坂 信之                                 ○:座長 1 開会 2 議事    1 特定疾患治療研究事業における対象疾患について        2 その他     ・プリオン病、原発性肺高血圧症、特発性慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧型) の認定基準等について     ・難治性疾患克服研究事業について 3 閉会 ○金澤座長 定刻となりましたので、平成21年度の第1回特定疾患対策懇談会を開 かせていただきます。皆様方、お忙しい中をお集まりいただきまして、誠にありが とうございます。  それでは、議事に入ります前に、本当は大臣も含めてなんでしょうけれども、事 務局、委員の交代その他がございましたので、また、特別ゲストにもおいでいただ いておりますので、まず、事務局の方から御紹介をお願いいたします。 ○中田課長補佐 それでは、事務局の紹介をさせていただきます。  8月1日付けで着任いたしました難波吉雄疾病対策課長でございます。 ○疾病対策課長 よろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 4月1日付けで着任いたしました藤村陽一課長補佐でございます。 ○藤村課長補佐 よろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 7月24日付けで着任いたしました大竹輝臣課長補佐でございま す。 ○大竹課長補佐 よろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 最後、私4月1日付けで着任いたしました課長補佐の中田勝己と 申します。どうぞよろしくお願いいたします。  また、本日、健康局長につきましては、公務のため遅れて出席させていただく予 定でございます。  本日、委員の交代がございましたので、御紹介いたします。  新委員の御紹介でございます。 ○中田課長補佐昭和大学医学部皮膚科教室主任教授飯島正文委員です。 ○飯島委員 飯島でございます。よろしくお願いします。 ○中田課長補佐 早稲田大学理工学術院先進理工学部 生命医科学科専攻教授池田 康夫委員です。 ○池田委員 池田でございます。よろしくお願いします。 ○中田課長補佐 国立長寿医療センター総長大島伸一委員です。 ○大島委員 大島でございます。よろしくお願いします。 ○中田課長補佐 京都府立医科大学眼科学教室教授木下茂委員です。 ○木下委員 木下です。よろしくお願いします。 ○中田課長補佐 国立精神・神経センター病院院長葛原茂樹委員です。 ○葛原委員 葛原です。よろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 東京女子医科大学附属遺伝子医療センター教授齋藤加代子委員で す。 ○齋藤(加)委員 齋藤でございます。よろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 国立保健医療科学院院長林謙治委員です。 ○林委員 どうぞよろしくお願いします。 ○中田課長補佐 岡山大学 腎・免疫・内分泌代謝内科学教授槇野博史委員です。 ○槇野委員 槇野です。よろしくお願いします。 ○中田課長補佐 また、本日御欠席でございますが、新たに就任された委員を御紹 介させていただきます。  東京大学循環器内科教授永井良三委員、東京大学呼吸器内科教授長瀬隆英委員、 慶應義塾大学消化器内科教授日比紀文委員でございます。  また、本日は遅れて参加予定でございます国立成育医療センター院長松井陽委員 でございます。  本日欠席等につきまして、谷口委員、中村委員、矢崎委員から欠席の御連絡を受 けております。  松井委員、草間委員からは、遅れて参加する旨の御連絡をいただいております。  内田委員、森山委員につきましては、途中退席の御連絡をいただいております。  続きまして、本日の特別ゲストを御紹介させていただきます。  間脳下垂体機能障害に関する研究班でございます兵庫県立加古川病院院長千原和 夫先生です。 ○千原和夫氏 千原です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 同じく東京女子医科大学医学部第二内科教授肥塚直美先生です。 ○肥塚直美氏 肥塚です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)御担当の原発性高脂 血症に関する調査研究班 国立循環器病センター研究所 バイオサイエンス部免疫 応答研究室長斯波真理子先生です。 ○斯波真理子氏 斯波です。よろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 同じく名古屋市立大学大学院医学研究科基礎医科学講座生物化学 分野教授横山信治先生です。 ○横山信治氏 横山です。よろしくお願いします。 ○中田課長補佐 慢性炎症性脱髄性多発神経炎御担当 免疫性神経疾患に関する調 査研究班 近畿大学医学部神経内科教授楠進先生です。 ○楠進氏 楠です。よろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 肥大型心筋症・拘束型心筋症御担当の特発性心筋症に関する調査 研究班 国立循環器病センター内科心臓欠陥部門部長北風政史先生です。 ○北風政史氏 北風です。よろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 ミトコンドリア病御担当の特発性心筋症に関する調査研究班 国 立精神・神経センター病院名誉院長埜中征哉先生です。 ○埜中征哉氏 埜中です。よろしくお願いします。 ○中田課長補佐 リンパ脈管筋腫症御担当の呼吸不全に関する調査研究班 順天堂 大学呼吸器内科専任准教授瀬山邦明先生です。 ○瀬山邦明氏 瀬山でございます。よろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 同じく京都大学呼吸器内科教授三嶋理晃先生です。 ○三嶋理晃氏 三嶋でございます。よろしくお願いいたします。 ○中田課長補佐 重症多形滲出性紅斑(急性期)御担当の重症多形滲出性紅斑に関 する調査研究班 杏林大学医学部皮膚科教授塩原哲夫先生です。 ○塩原哲夫氏 塩原でございます。よろしくお願いします。 ○中田課長補佐 同じく、愛媛大学再生医療研究センター講師白方裕司先生です。 ○白方裕司氏 白方でございます。よろしくお願いします。 ○中田課長補佐 黄色靱帯骨化症御担当の脊髄靱帯骨化症に関する調査研究班 慶 応義塾大学整形外科准教授千葉一裕先生です。 ○千葉一裕氏 千葉と申します。よろしくお願いします。 ○中田課長補佐 本日遅れての参加でございますが、プリオン病御担当のプリオン 病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班 東京医科歯科大学神経内科助教 三條伸夫先生にもお越しいただく予定となっております。  以上でございます。 ○金澤座長 それでは、続きまして、資料の確認をお願いします。 ○中田課長補佐 お手元に資料がございます。  資料1 認定基準及び臨床調査個人票(案)  資料1−2 重症者基準及び軽快者基準(案)  資料2 認定基準及び臨床調査個人票の変更(案)  資料3 難治性疾患克服研究事業について でございます。  また、参考資料といたしまして、  参考資料1 経済危機対策(平成21年4月10日)  参考資料2といたしまして、こちらは本日御欠席でございますが、東京大学呼吸 器内科の長瀬委員から、リンパ脈管筋腫症(LAM)に関する意見をいただいておりま すので、配布させていただいております。  以上でございます。 ○金澤座長 ありがとうございました。  資料が足りない方は、どうぞお申し出ください。  それでは、ただいまから議事に入りたいと思います。  まず、第1議題であります「特定疾患治療研究事業における対象疾患について」 ということで、事務局から御説明をいただきまして、認定基準等については、後に 特別ゲストから御説明を頂戴することにしたいと思います。  それでは、どうぞ御説明をお願いします。 ○中田課長補佐 まずは、お手元の参考資料からで恐縮でございますが、参考資料 1をごらんいただきたいと思います。  参考資料1<経済危機対策(平成21年4月10日)より抜粋>という資料がご ざいます。こちらにつきましては、平成21年4月10日の経済危機対策として、こ こにございますとおり、「安心と活力」の実現−政策総動員の中で、難病患者に対す る支援として、難病患者の医療費負担を軽減するため、現在、医療費助成の対象と なっていない難病のうち緊要性の高い疾患(11疾患その他)について、医療費助成 の対象に追加する、ということでございます。  1枚おめくりいただきまして、2枚目でございます。「難病のうち緊要性の高い疾 患について」ということで、この時点でこちらにございます疾患を基本といたしま して、各研究班の方で認定基準を作成していただいたという経緯でございます。  3ページ目につきましては、既に御存じかと思いますが、「特定疾患治療研究事業 の概要」を、参考資料を添付させていただいております。  参考資料2でございますが、こちらは、先ほど申し上げました東京大学の長瀬委 員から、「リンパ脈管筋腫症(LAM)に関する意見」ということで、本日欠席いた しますので、意見書を提出したい旨の申入れがございましたので、皆様のお手元に お配りさせていただいております。概要といたしましては、LAMにつきましては、 特定疾患治療研究事業の4要件を全て満たしており、特定疾患治療研究事業におけ る対象疾患とするべきである。最後、LAMの認定基準につきましても、LAMの 認定については、肺に嚢胞を形成する他疾患を注意深く除外することが重要である。 提出資料では、その点が必須項目として明記されている、という御意見です。  続きまして、資料1−2をお手元に御用意いただきたいと思います。  本日議題となります資料につきましては、資料1「認定基準及び臨床調査個人票 (案)」についてはこの表紙にございます1〜11の疾患につきまして、各研究班の方 で認定基準等を作成していただきました。この後、各研究班の代表者から、それぞ れの認定基準について御説明いただきたいと思っております。  また、資料1−2につきまして御説明申し上げます。  資料1−2につきましては、重症者基準及び軽快者基準(案)を示したものでご ざいます。こちらにつきましては、下に※1で示しておりますとおり、「重症者基準」 につきましては別添1、これは2ページ目以降に基準表がございますが、このよう な認定基準を満たす患者につきましては、入院の一部負担、または外来等の一部負 担を生じない重症患者として認定されるというものでございます。こちらにつきま して、それぞれの研究班を通じまして意見をいただき、まとめたものが、上の表で ございます。この表の見方につきましては、例えば間脳下垂体機能障害の中で、P RL分泌異常症であれば、例えば眼の障害から、血液・造血疾患等障害が様々ござ いますが、間脳下垂体機能障害として、眼の障害が出てくるということで、その部 分に○が付いております。また、重症者基準で○と◎の区別でございますが、◎は その疾患の主要病態による障害者の基準、○については、二次的病態によって生じ 得る障害者の基準ということでございまして、主要兆候であれ、二次的病態であれ、 用いる基準は同じものを使っているという状況でございます。  ※2でございますが、軽快者基準でございます。こちらは別添2でございますが、 6ページ7ページ目でございます。現在、特定疾患治療研究事業における軽快者に つきましては、ここにございます1〜3の条件、「疾患特異的治療が必要ない」「日 常生活を営むことが可能である」「治療を要する臓器合併症等がない」こういうもの を1年以上満たした者を「軽快者」としております。7ページ目につきましては、 既に軽快者基準対象疾患の一覧でございます。  1ページ目にお戻りいただきたいと思います。こちらにつきましても、各研究班 の方から、「軽快者基準」に該当し得るかどうかにつきまして、御意見を伺いまして、 該当する場合につきましては、○という印を付けさせていただきます。こちらも併 せて御検討をいただければと思います。この中で、重症多形滲出性紅斑(急性期) につきましては、当疾患の病態に鑑みまして、劇症肝炎でも既に同様の措置をとっ ておりますが、対象患者は全て重症者とし、医療受給者証の有効期間は、原則とし て6ヶ月とするという取扱いとなっております。  資料の説明としては、以上でございます。 ○金澤座長 はい、わかりました。  今の時点で、内容ではなくて、説明に対しての御質問はございますか。  それでは、いよいよ特別ゲストによる御説明をいただきたいと思いますが、時間 が実は限られておりまして、かといって、疾患がたくさんあるところと1つしかな いところと同等に扱うわけにはいきませんので、まずは間脳下垂体機能障害に関し ましては、千原先生から15分、ちょっと数が多いですから。どうぞよろしくお願い します。 ○千原和夫氏 それでは、間脳下垂体機能障害について説明をさせていただきます。 1ページに、疾患概念が書かれておりますけれど、間脳下垂体機能障害は、腫瘍と か、炎症、そしてまた、血管障害、あるいは、まだ原因が特定できない原因不明の 特発性というものも含まれますけれど、そういったことが病因になりまして、下垂 体ホルモンの分泌異常を来して様々な臨床症状が出現し、そして、患者さんのQO L、ADLが損なわれる疾患でございます。  御存じのように、下垂体前葉には6つのホルモンがあり、後葉には2つのホルモ ンが存在します。そして、それぞれのホルモンの過剰状態、あるいは低下あるいは 欠乏状態によって病気が出てきます。したがいまして、I〜VIIまで疾病名が挙げら れておりますけれど、それぞれのホルモンの分泌過剰、低下を基盤として、疾病の 概念が確立されているわけでございます。  先ほどのホルモンの中で、下垂体後葉のオキシトシンだけは、確立された疾病概 念がございません。それ以外のものにつきましては、すべて病態がございます。そ して、分泌過剰は多くの場合、原因不明で発生します下垂体腫瘍が原因になります。  それでは、少し各論的なお話をいたします。  まず、PRL分泌異常症。分泌過剰症でございますが、これも多くはプロラクチ ン産生腫瘍が原因ですが、主要症状としまして、女性、男性ともにそれぞれ性腺機 能低下の症候が出てまいります。また、視力・視野障害が下垂体腫瘍による視神経 の圧迫で出現することがあります。それらの症候があり、、かつプロラクチンの血中 レベルが基準値を超えているということで、確実に診断ができます。プロラクチン 分泌低下につきましては、後でまとめて述べさせていただきます。  その次ですけれども、7ページをごらんいただきたいと思います。ゴナドトロピ ンの分泌異常症でございますが、分泌過剰につきましては、これも下垂体腫瘍から、 ゴナドトロピンが過剰分泌される場合がほとんどの原因です。ゴナドトロピンには LHとFSHがございますが、それぞれのホルモンの過剰が起こる。そのことによ って、女性では月経異常、男性では女性化乳房という症状が出てまいります。  検査所見としまして、かなり厳しい基準をつくっております。すなわち血中ゴナ ドトロピンのレベルが高いこと以外に、画像で腫瘍が確認できる、あるいは視床下 部に何らかの異常が認められるという画像での所見、そしてまた、手術をして組織 が得られた場合、その組織で免疫組織学的にゴナドトロピンの存在を証明すること、 これらのすべてを満たせば確実であるという診断基準にしております。  それから、次は12ページになります。バゾプレシンは下垂体後葉から出るホルモ ンです。まず、バゾプレシンの分泌低下ですが、これは中枢性尿崩症という病名に なります。、症状として、口渇、多飲、多尿、この3点すべてを満たすということ、 そして、検査所見では、尿量、尿浸透圧の基準、そして、水制限試験を行いまして、 尿浸透圧が300mOsm/kgを超えないという基準、そして、血中のバゾプレシンと血清 ナトリウムの比率を見まして、相対的にバゾプレシンの分泌が低下しているという 基準、これた4つの基準をすべて満たすこと、さらに、バゾプレシン試験に反応し て尿浸透圧が上昇する。その5つを加えたすべてのものを満たせば、完全型の中枢 性尿崩性と診断いたします。  しかし、尿崩症の主症状3つを満たし、あと検査所見で、尿量、尿浸透圧、また、 バゾプレシン試験で尿量の低下、浸透圧の上昇は認められるけれども、(4)番の基準 をクリアしていないという場合がございます。少し細かく書いておりますが、(4)番 の基準で、先ほどの申しましたナトリウムとバゾプレシンの相対的な割合を見まし て、基準値を超える場合に部分的中枢性尿崩症と診断をいたします。中枢性尿崩症 は、このように完全型と部分型に分けておりますけれども、いずれの場合にも治療 等が必要ですし、患者さんのQOL、ADLは同様に損なわれますので、両者を含 めてすべてを認可して頂く必要があると考えております。  それから、裏面ですけれども、ここにはバゾプレシン分泌過剰症について記載さ れております。脱水の所見を認めない。それから、検査所見として、そこに(1)〜(7)、 ナトリウム、バゾプレシン浸透圧がキーワードになりますけれど、設定された基準 をそれぞれ満たす。この(1)〜(7)すべてを満たしたものをバゾプレシン分泌過剰症と する基準をつくっております。  それから次の、18ページには、TSHの分泌異常症が記載されています。主症候 として、TSHは甲状腺を刺激するホルモンでありますので、甲状腺中毒症状が出 てまいります。そして、甲状腺の腫大が認められる。また、下垂体腫瘍でTSH産 生する腫瘍が基礎疾患でありますので、下垂体腫瘍が存在することを示す所見が得 られる。より重要なのは検査所見で、血中甲状腺ホルモンが高値で、かつTSHも 高値であること、そして、下垂体に画像上で腫瘍所見を認める、また、腫瘍を摘出 して、その組織中にTSHβあるいはTSHを免疫組織学的に証明することを基準 に盛り込んでおり、この(1)〜(3)をすべて満たす必要があるとしております。  それから、次23ページをごらんいただきたいと思います。クッシング病でござい ます。これは下垂体からのACTH分泌が過剰になり起こってくる病態でございま す。特異的症候、そして、非特異的症候、かなりいろいろございますが、1人の患 者さんですべてが揃うことはむしろ珍しいわけでありまして。特異的症候(ア)〜 (カ)のうちの1項目、そしてまた、非特異的症候のうちの1項目をそれぞれ満た し、(2)の検査所見で血中ACTH、コルチゾール値が共に高い。そして、尿中の 遊離コルチゾールが高値である。そして、少量および大量を用いるデキサメサゾン の少量・大量がございますが、デキサメサゾン試験で少量では抑制されないが大量 で抑制されるという基準を設けています。この(1)〜(3)をすべて満たすことが必要と しております。また、(4)と(5)は、血中コルチゾールの日内リズムの乱れ、また、D DAVPによるACTH反応、そのいずれかを満たす。また、24ページに他の疾患 との鑑別を示していますが、CRH試験やデキサメサゾン抑制試験など、大量のデ キサメサゾン抑制試験で抑制されることで副腎のものを除外します。それから、画 像診断として、MRIで下垂体腫瘍の存在を証明する。その3つがすべて満たされ れば、診断は確実です。ただし、クッシング病の場合に、しばしば下垂体腺腫が画 像上見つからないことがございます。その場合に、選択的静脈洞血サンプリングを 行い、ACTHの出所が中枢であるか末梢であるかを調べます。それによって中枢 性であるという結果が出ますと、クッシング病の疑いがほぼ確実であると判断でき ます。  次は29ページをごらんいただきたいと思います。先端巨大症。これは成長ホルモ ンの過剰分泌によって起こってくる病態でございます。主症候として(1)〜(3)。手足 の容積の増大、先端巨大症顔貌、巨大舌、このいずれかの項目を満たし、また、検 査所見で、成長ホルモンの過剰分泌を証明する。そして、IGF−1が高い。そし て、画像上で下垂体腺腫を認める。この(1)〜(3)をすべて満たすものを確実例としよ うという基準です。しかし、疾病の非常に初期でありますと、臨床症状が軽微でわ かりにくいという場合がございます。臨床症状が軽徴でも、IGF−1が高値で、 しかも、下垂体腺腫の画像所見がある場合には本症の可能性が高いということで、 疑いを持つべきという診断う基準でございます。  最後35ページになります。下垂体機能低下症でございます。下垂体機能低下症は、 下垂体前葉ホルモン、6つのホルモンがすべて低下するものを汎下垂体機能低下症 と申します。また、それぞれ3つあるいは2つというホルモンの組合せで低下する 場合もございますし、また、単独欠損症というそれぞれのホルモンのみが欠損する 場合がございます。したがいまして、それぞれのホルモンの低下を一つずつ項目と してつくっております。  まず、ゴナドトロピン分泌低下症であります。症状としては、性腺機能低下に基 づくいろいろな症状でございます。女性で月経異常、男性ではインポテンツ、性欲 低下、不妊などがございますし、身体所見として、陰毛・腋毛の脱落とか、性器萎 縮とか、乳房の萎縮等がございます。この項目の1つ以上。そして、検査所見では、 ゴナドトロピンの分泌不全を客観的に証明するということが重要だと考えておりま す。血中ゴナドトロピンの基礎値の低下に加えて、分泌刺激試験で得られた血中ゴ ナドトロピン頂値が非常に低いという所見、そして、ゴナドトロピンの標的内分泌 腺である女性では卵巣、男性では精巣から出る性ホルモンの低下、この3つのもの をすべて満たすものを確実例にする診断基準です。  それから、ACTH分泌低下症に関しては、症状は副腎不全という形で出てきま すけれども、全身倦怠感をはじめ疲労感、食欲不振、ときには意識を失うこともあ りますし、低血圧が起こる。検査所見としては、先ほどのゴナドトロピンと同じよ うに血中ACTH基礎値が低い。刺激をしても血中ACTH値が上昇しない。そし て、標的内分泌腺であります副腎皮質からのコルチゾール分泌が非常に低下してい る、それらをすべて満たすものを確実例と診断する基準です。  それから、甲状腺刺激ホルモン(TSH)分泌低下症を次に述べたいと思います。 症状は、甲状腺機能低下症の症状でありまして、耐寒性の低下、皮膚が乾燥する、 脱毛、そういった症状のうち1つがあり、そして、検査所見としては、TSHの基 礎値及び刺激試験後のTSHの頂値、そして、甲状腺ホルモンであるT4、T3の低 値、それがすべて満たされれば確実例とする基準でございます。  それから、成長ホルモンの分泌不全症に関しては、大きく小児と成人で分けて書 かれております。小児の場合の症状は、低身長です。そして、低身長がある場合に、 成長ホルモン分泌刺激試験を行いまして、2種類以上の刺激試験で血中成長ホルモ ン値が低下、基準値を満たしていない場合に診断できる。そして、成長障害がまだ 出てこない、非常に小さな子供さんの場合には、症候性低血糖であるとか、あるい は下垂体及びその周辺に器質性の基礎疾患があれば、成長ホルモン分泌刺激試験は 1種類で判断して良いとしております。 それから、成人成長ホルモン分泌不全症 について、小児期に既に成長ホルモン分泌不全が診断されているという場合や、頭 蓋内の器質性疾患、下垂体周辺の病変、あるいは下垂体の病変がある。あるいは、 その既往歴や治療歴があるという患者さんの場合には、小児の場合と同じように、 2つ以上の成長ホルモン分泌刺激試験で血中成長ホルモンが基準値に到達しない時 には確実例。また、頭蓋内器質性疾患があって、成長ホルモンを含めて複数の下垂 体ホルモンの分泌低下が既に存在することが証明できている場合には、成長ホルモ ン分泌刺激試験は1種類でよかろうとしております。  それから、プロラクチンの分泌低下につきましては、これは症状としては産褥期 の乳汁分泌低下が症状ですが、血中プロラクチンの基礎値、そして、刺激後のプロ ラクチン頂値が基準値よりも低いということで診断することにしております。  以上であります。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  御質問、その他がおありかと思いますが、ちょうど上田健康局長がお見えいただ きましたので、御挨拶をいただきましょうか。 ○健康局長 すみません、ちょうどきょうは大臣の初登庁の日でございまして、遅 れて参りました。この後もすぐに失礼をさせていただきますけれども、先生方には 本会に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。また、日ごろより難病 対策の推進に格別の御理解、御努力をいただいております。重ねて御礼を申し上げ ます。  難病対策も取り組み始めて以来30年以上経過をしております。医療技術の格段の 進歩により個々の疾患を取り巻く医学的な状況、社会的な環境も大きく変化をして おります。しかしながら、多くの難病の患者さんや御家族の方々の御苦労は計り知 れないものがございます。治療方法の開発等、研究の推進とともに、医療費の負担 に関しては、特定疾患治療研究事業の対象疾患への追加要望が出されているところ でございます。こういう中で、補正予算におきまして、特定疾患治療研究事業の対 象疾患が示されておりますが、各疾患の認定基準等について先生方に御議論いただ きたいということで本日この会を開催した次第でございます。限られた時間ではご ざいますけれども、会議におきまして、先生方の忌憚のない御意見をいただければ と、このように思っております。  以上、簡単ですが、御挨拶にかえさせていただきます。どうぞよろしくお願い申 し上げます。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  それでは、先ほどの千原先生からの御説明、何か御質問はございますか。  よろしいですか。  ありがとうございました。  それでは、次の疾患に移りたいと思います。斯波先生から、家族性高コレステロ ール血症の説明ということで、恐縮ですが、3分以内でお願いします。 ○斯波真理子氏 家族性高コレステロール血症は、小児期より著明な高LDLコレ ステロール血症を示します。冠動脈疾患、大動脈弁上疾患などを引き起こして、こ の病気は、スタチンと呼ばれるコレステロールを下げる薬は全く無効です。そのた めに、LDLアフェーレーシスと呼ばれる血漿交換療法が1週間に1回必要になり ます。ただ、それは1回に18万円かかって、保険適用になっても、かなり患者さん の負担が強いということで、私の患者さんでも何人か治療を受けていない、もう死 ぬのを待つばかりという人がいるために困っておりました。  この診断基準ですが、LDL代謝経路に関わる遺伝子の遺伝子解析、あるいはL DL受容体活性測定によってFHホモ接合体であると診断されるもの。これが確実 例になります。ただし、これをできる施設は日本の中でも限られますので、それ以 外の施設でもできるようにということと、難しい例もあるので、ほぼ確実例として、 空腹時定常状態の総コレステロール値が450以上、LDLコレステロール値が370 以上、あるいは小児期より皮膚黄色腫が存在するなど重度の高コレステロール血症 の兆候が存在し、薬剤治療に抵抗するものということで、これで診断は可能だと思 います。  以上です。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  何か御質問はございますか。  大まかに日本で何例ぐらいおられるのですか。これからもいろいろな疾患がある かと思いますが。 ○斯波真理子氏 100万人に1人ですので、120例。小児特定疾患の特定疾患の対象 が今は17例ですので、ほぼ100人となります。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  元へ戻ってお話をいただくと大変時間がかかってしまうかもしれませんから、一 言で言えれば。 ○千原和夫氏 間脳下垂体機能障害患者数は全体で約3万人ぐらいになるのではな いかなと思います。たくさんの種類の疾病がありますが、全体の概算で3万人ぐら い。 ○金澤座長 ありがとうございました。  それでは、続きに行きたいと思います。齋藤先生から、脊髄性筋萎縮症、それか ら、球脊髄性筋萎縮症の御説明を。これは2つありますので、6分以内ということ でよろしくお願いします。 ○齋藤(加)委員 脊髄性筋萎縮症は、47ページの御説明をさせていただきます。 この疾患は、国内の推定患者数は、10万人に1人ほどですから、全国で1000人ぐら いということになります。発症年齢と最高到達運動機能でタイプを4つに分けてい ます。I型は、生涯寝たきりの状態で、2歳ぐらいで呼吸器が必要という、ウェル ドニッヒ・ホフマン病と呼ばれています。II型は、寝返りまではできるけれども、 起立歩行ができない。III型は起立歩行ができるけれども、進行性に歩行ができなく なって、また車椅子になるタイプ。それから、IV型が成人発症というふうに分けて います。  47ページに書きましたように、脊髄性筋萎縮症は、脊髄性進行性筋萎縮症という 名前と脊髄性筋萎縮症という2つの名前、省略してSPMAとSMAという2つの 名前が、混在しています。神経変性班で検討いたしまして、ここにまとめましたよ うに、小児期発症の脊髄性筋萎縮症と、成人発症の脊髄性進行性筋萎縮症を総称し て脊髄性筋萎縮症(SMA)と呼んでいこうということを決めました。ICD−10 でも、「脊髄性筋萎縮症及び関連症候群」に「脊髄性進行性筋萎縮症」は含まれてお りまして、そのような形ですっきりさせようということになりました。  診断基準の内容を御説明させていただきますと、これは下位運動ニューロンのみ が障害される運動神経病です。主要項目に書かれているように、筋力低下、筋萎縮、 それから、舌、手指の線維束性収縮、それから、腱反射が出ないといった症状があ ります。上位運動ニューロンは認められないのが条件です。臨床検査所見としては、 筋電図を行い、神経原性変化を示します。survival motor neuronの遺伝子が脊髄 性筋萎縮症のうちの小児例では8〜9割、成人例ですと15%ぐらいで陽性です。こ の遺伝子が原因であります。これは保険収載をされています。診断基準といたしま しては、この主要項目の(1)の(1)(2)(3)を含み、それから、臨床検査所見、または 遺伝子診断ということで、診断を判定することにいたしました。  次に、球脊髄性筋萎縮症の御説明をいたします。これはお手元の53ページをごら んください。  球脊髄性筋萎縮症も、同じく下位運動ニューロンが主に侵される運動ニューロン 病です。これは原因がアンドロゲン受容体の遺伝子におけるCAGリピートの異常 伸長でございます。有病率は、10万人当たり1〜2人ぐらいですので、日本全国で 1000人ぐらいということになります。主に成人の男性に発症します。30〜60歳ぐら いの発症でございます。アンドロゲン不全症状としての女性化乳房や睾丸萎縮を示 します。診断基準としては、お手元の主要項目にありますような球症状、それから、 下位運動ニューロン徴候、腱反射の低下などを示します。この4つの項目の2つ以 上、それから、臨床所見、検査所見の4つ、また、遺伝子診断ができます。SMA と違いまして、アンドロゲン受容体遺伝子におけるCAGリピートの異常伸長は、 まだ保険収載はされておりません。これらの2番または3番を、または2番と3番 両方ということで診断をいたします。  以上でございます。 ○金澤座長 ありがとうございました。  何か御質問はございますか。 ○葛原委員 この2つの疾患は、私が神経変性班の班長のときに特定疾患治療研究 事業にぜひにということでお願いして、やっと実現したという点では、患者さんの 団体も含めて非常に喜んでいらっしゃって、非常にこれは有り難いことだと思って います。  これを拝見して、脊髄性筋萎縮症で3点、球脊髄性で1点だけ申し上げたいこと があります。47ページに国際的な表現に統一した。これは僕は非常にいいことだと 思うんですが、それで、せっかくSPMAという言葉をなくしたのに、49ページの 病型というところの真ん中辺りに病型の4のところに、脊髄性進行性筋萎縮症とい う病名が入っていますが、この概念にALSの脊髄型まで入ってきますので、この言 葉は思い切って削除した方がいいのではないかというのが第1点です。  それから、第2点は、47ページに戻りまして、主要項目の(1)の(2)の「下記の ような上位運動ニューロン症候は認めない」と定義されています。こういうのをS MAの定義に照らして、49ページの現症の真ん中辺の9に上位運動ニューロン症候 の「あり なし」が入っているところは、これは疫学調査ではなくて、診断がつい た人の調査票だと思うので、ここら辺のところはもうちょっと整理された方がいい のでないかということが第2点目です。  第3点目は、47ページの一番下のところの鑑別診断の(6)に、多発性神経炎 (遺伝性、非遺伝性)、多発限局性運動性抹消神経炎と、英語が付いてございますが、 これは60ページを開けていただきますと、きょう楠先生が御説明される慢性炎症性 脱髄性多発神経炎の上から6つ目ぐらいのところのA.病型と書いてあるところに 1.運動優位型ニューロパチー、3.多巣性運動ニューロパチー、これが正式の日 本語訳なので、こちらの方に合わせていただいて、この3つが脊髄性の意見です。  それから、球脊髄性のところでは、これは内容そのものには全く問題はございま せんけれども、53ページの一番上を見ていただきますと、球脊髄性筋萎縮症(SB MA)で、これは国際的な表記でSpinal-Bulbar Muscular Atrophyの略なんです が、次の54ページの参考事項の(7)を見ますと、疾患名についてbubospinal  muscular atrophy;BSMAこれは日本語なんですが、Kennedy病これこれと書い てありますので、どこかに国際表記のSBMAの元の名前のSpinal-Bulbar  Muscular Atrophyを入れておかないと混乱するのではないかと思いますので、この 1点。  以上です。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  これは先生が受けてくださればいいわけですか。 ○齋藤(加)委員 はい。訂正しておきます。 ○金澤座長 ただ、葛原先生、49ページの運動ニューロン症候の「あり なし」は、 もしも、ここに「あり」と書かれたら、おい、違うだろうと、こういうためのもの ではないんですか。 ○齋藤(加)委員 それを含めて入れてあります。 ○葛原委員 だろうと思うんですが、一般的には、特定疾患の調査票はこういうも のは最初から外して、こういう所見の項目は出さない形になっていると思うんです。 そこは考え方の問題だと思います。 ○金澤座長 それはちょっと検討を入れたらいいかもしれませんね。  どうもありがとうございました。  それでは、次にまいりましょうか。楠先生から、慢性炎症性脱髄性多発神経炎の ご説明を3分でお願いします。 ○楠進氏 慢性炎症性脱髄性多発神経炎chronic inflammatory demyelinating  polyneuropathy CIDPと言っています。CIDPは、慢性に経過する自己免疫 性の脱髄性の末消神経障害ということで、特異的な遺伝子とか、抗体とかそういう マーカーがありませんので、除外診断が重要になってきます。  主要項目として(1)の(1)と(2)です。これは慢性に経過するニューロパチーであ って、ほかの明らかなニューロパチーが鑑別できる。それから、(2)の(1)として脱 髄を明らかに示す伝導速度異常所見があるということが、これがマンデトリーの基 準になっています。この基準で、注1と書いてありますけれども、ここには4つの 脱髄を示唆する所見がありまして、これのうちの少なくとも1つを持っているとい うことを記したレポートを専門の先生にサイン入りで付けていただくことを担保と しました。さらに、サポーティブクライテリアとして、(2)の(2)〜(5)のうちの1つ を満たすこと。(2)の(2)〜(4)は、自己免疫性であることを示唆する所見です。(5)は 炎症性であって、しかも、脱髄があるということの確実な証拠になるわけですけれ ども、末消神経の生検できる場所は非常に限られておりますので、そこを採っても そういう所見は出ないこともありますし、最近は余り病理の検査が行われないとい う傾向にありますので、これもサポーティブクライテリアの1つとして入れており ます。  鑑別診断として、ここの2の(1)〜(4)がありますけれども、特に2の(1) の糖尿病とか、こういったものは、それがあったからといってCIDPが否定され ることはありません。糖尿病であってもCIDPの可能性は十分にありますので。 そういう意味で(1)の(2)で、「当該患者の多発ニューロパチーを説明できる明らか な」を入れて、糖尿病であってもCIDPという診断はできるという形にしており ます。  診断の判定としては、(1)の(1)(2)、それから、(2)の(1)を満たして、(2)の(2) 〜(5)のうちのうちの1つを満たすということで診断基準といたしました。 ○金澤座長 ありがとうございました。  大まかな患者さんの数を言ってください。 ○楠進氏 患者さんの数は、大体全国で2000〜3000人と考えられています。 ○金澤座長 ありがとうございます。  何か御質問はありますか。  それでは、次に北風先生から、肥大型心筋症と拘束型心筋症の御説明を、2疾患 ですので6分ということでお願いします。 ○北風政史氏 64ページをごらんいただきます。肥大型心筋症hypertrophic  cardiomyopathy HCMと言っておりますが、それの基本病態を書かせていただき ました。肥大型心筋症は、不均一な心肥大に基づく左室拡張機能低下を基本病態と する疾患群であります。下に分類と書いてございますが、a)〜e)の分類がござい ます。ただ単に心臓が肥大するだけでは、臨床的には余り問題になってこないので が、心臓が不均一に肥大し閉塞が生じる、もしくはだんだんと心臓が拡張していく、 そのような病態は将来的に心不全もしくは心臓移植適応症例になってくる可能性が ありますので、やはり難病として取り扱うべきだろうと考えております。  診断基準は、そこに書いてございますように、(1)の心臓超音波検査などの画像 診断、これがすべてになってまいります。これが必要条件でありまして、この中か ら鑑別診断をしていただきまして、高血圧性心疾患を鑑別してくるということにな ってまいります。その鑑別のためには、(3)の心筋生検、もしくは(4)の家族性 発生の確認、それから、遺伝子診断が有用であろうということでございます。です から、(1)の心エコーでほとんど診断がついてまいります。ただ、心エコーで心臓 が肥大しているというだけでは十分ではございません。と申しますのも、高血圧が 長く続くことによって起こってくる心肥大、これとの鑑別が非常に大事になってま いります。そのためには、今申しましたような遺伝子の検査、場合によってはカテ ーテルの検査、よって鑑別診断してまいります。  65ページを見ていただきますと、診断のための参考事項として、(1)〜(9)ま で書かせていただいております。先ほど申しましたように、ただ単に心臓が肥大し ているというだけでは余り大きな問題になってまいりませんので、66ページに書い てございますが、患者さんに症状が出てきた段階でエントリーしていただくことが 適切ではないかと考えております。大項目の(1)〜(3)まで用意させていただきました。 この病態では心肥大、心不全が来るということと、もう一つ、突然死を起こす可能 性が高いことがわかっておりますので、突然死を起こしそうな患者さんをピックア ップさせていただいてエントリーしていただくことが適切ではないかと考えており ます。大項目の(1)心不全、不整脈治療による入院歴をまずあげました。大項目の(2) は、心不全の存在。これはNYHAII度もしくは推定Mets6以下もしくは運動負荷 検査でpeak  O2<20ということにさせていただいております。大項目の(3)は、 1)〜8)まで用意させていただきましたが、突然死もしくは心不全のハイリスク の因子を1つ以上有するということでございます。特に、先ほど申しました不整脈 が問題になってまいります。それが1)2)3)ということでございますし、4) 5)6)は心不全を起こしてくるということでのハイリスクということであります。 7)8)は、遺伝子検査で予後不良とわかっている場合で、例えばトロボニンの異 常がある。このようなものはハイリスクと考えておりますので、そのような異常が 見つかればエントリーしていただくということになってまいります。  以上が肥大型心筋症でございます。  つづきまして、71ページを見ていただきますと、拘束型心筋症restrictive  cardiomypathy RCMと我々は略しておりますが、これは非常にやっかいな病態で ございます。左室拡張障害を主体とする、硬い左室、硬いというのは弾力性のない というような意味合いでございます。それに加えまして左室拡大や心肥大のない、 正常もしくは正常に近い左室収縮能、それから、原因がよくわからないということ であります。すなわち、ほとんど何もかも正常なんだけれども、心臓が硬くなって 弾力性がなくなってくる。このようなイメージでございます。やはり難病といえま しょう。その硬いという証拠のために何が必要かといいますと、心エコーの検査が 主体となります。それから、72ページ目を見ていただきますと、いろいろ診断のた めの参考事項と書いてございます。(5)の心エコー図では、左房拡大、心腔内血栓 と書かせていただいておりますし、(6)の心臓カテーテル検査で、冠動脈にも問題 がなくて、左室造影にも問題がなくて、右心カテーテル検査で左室の拡張障害、が あるということをお示しいただくということがRCMの診断の基本になってまいり ます。それともう一つ、RCMがあって、ほとんどの患者さんもRCMが見つかっ た段階で、症状がたくさん出てまいりますが、(8)にありますような、運動耐容能 での心不全の進展を挙げさせていただいております。クライテリアといたしまして は、73ページ4番、申請・更新時は、NYHAII度以上、運動耐容能peak VO2  20ml/min/kg未満ということをクライテリアにさせていただいております。  患者さんの数ですが、HCMは大体1〜2万人、RCMは数千人、大体1000〜 2000人と考えております。  以上でございます。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  何か御質問はございますか。 ○槇野委員 細かいことで恐縮ですけれども、64ページの鑑別診断のところで、「さ らに、特定心筋疾患」で(4)で「結合組織病」とありますけれども、これはできたら、 膠原病(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、皮膚節炎・多発筋炎、強皮症な ど)としていただけないかと思います。 ○金澤座長 よろしいですか。 ○北風政史氏 詳細に入れるということでございますね。 ○槇野委員 結合組織病ではなくて、膠原病としていただいて、その中で関節リウ マチ、全身エリテマトーデス、皮膚筋炎・多発筋炎、強皮症などと加えていただい たらと。 ○北風政史氏 わかりました。 ○金澤座長 ありがとうございました。  ほかに御意見はございますか。  それでは次にまいりまして、埜中先生から、ミトコンドリア病の御説明を3分で お願いいたします。 ○埜中征哉氏 77ページをごらんください。ミトコンドリアは、細胞が生きていく ために必要なエネルギーを産生する細胞内の小器官です。ですから、ミトコンドリ アに何らかの異常があると、エネルギーに大きく依存する臓器に何らかの異常が出 てまいります。そこにありますように、まず骨格筋は大きくエネルギーに依存して おりますので、手足の筋肉の力が弱くなります。あるいは外眼筋は眼球を動かした り、あるいは瞼を上げる、筋を外眼筋と呼びますが、外眼筋に筋力低下が見られる ことがあります。それから、そこの次に書いてありますように、中枢神経も非常に エネルギーに依存しておりますので、種々の神経症状が出てまいります。それから、 当然のことながら心臓とか、あるいは腎臓、肝臓のような臓器はエネルギーをたく さん使用しておりますので、そこに書いてありますような(1)(2)(3)の主要症状が出て まいります。  (2)ですけれども、ミトコンドリア病であることを裏付けるものには、代謝性 の疾患ですので、生化学的なもの、例えば乳酸値が高いとか、これは進行性に臓器 を侵していきますので、種々の形態学的な異常をとります。ですから、例えばMR Iで、(2)に書いてあります、大脳基底核、脳幹に両側対称性の病変というようなも のはミトコンドリア病に特有であります。それから、筋生検。筋肉のミトコンドリ アの異常、あるいは(4)の酵素異常、あるいは(5)のようなミトコンドリアDNA、核 DNAの異常も伴います。  診断基準ですが、ほとんどの場合は(1)の主症候は単独ではなく、多くの患者 さんは複数持っておられますが、その中のうち少なくとも1つ持っているもの。そ れから、(2)の検査・画像所見。そういうものの中から少なくとも2項目を持って いるものを確実例としての診断基準といたしました。そうしますと、ほかの例えば 筋ジストロフィーとか、いろいろな筋肉の病気だとか、あるいは中枢神経の病気が ありますが、この検査所見でそれが否定されて、ミトコンドリア病の特異性が浮き 彫りにされるということで、この(1)主項目と(2)検査・画像所見を確実例。 それから、疑い例は各々一個ずつというようなところで、十分スクリーニングでき るだろうと思っています。  それから、推定の患者数ですが、はっきりした数字はないんですけど、これは私 たちの研究所で一応いろいろな病気を診断している中から推定しますと、大体10万 人当たり2〜3人ということで、全国では2000〜3000人、数千人というところがそ の数ではないかと思います。  以上です。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  何か御質問はございますか。 ○葛原委員 2点ほど質問なんですが、1つは77ページの(1)の主症候の(3)です が、心伝導障害とか、心筋症とか、あとは全部「又は」になっているんですが、こ の表現ではこれは1個だけということになってしまのですが、このうちの1つ以上、 あるいは2つ以上合併することがあるかどうかということがあるのなら、ちょっと 表現が変わると思うんですが、それがどうかということが1つです。  もう一つは、78ページの3.の「ミトコンドリア病の診断」の下の「疑い例」の ところで、(1)の後の「かつ(2)(2)〜(3)のうち、1項目以上満たすもの」という ことで、(1)が抜けているのはどうしてかということをちょっと思ったんですが、こ れは理由を書いておかれた方がいいのではないかなと思ったので、その2点です。 ○埜中征哉氏 はい、わかりました。この「心伝導障害、心筋症などの心症状」、そ の中の少なくとも一個を満たすものということを私は考えています。ちょっとわか りにくいので、そこのところは。 ○葛原委員 これだと、1個しかないという具合に読めるのではないか。これのう ちのどれか。例えば1つ以上と書いてあれば、そうだと思うんです。これだと、1 個しかない、合併してないように読み取れるということです。 ○埜中征哉氏 1個以上ということですので、そういうふうにさせていただきます。  それから、「疑い例」で、なぜ(1)を外したかというと、乳酸値の値は必ずしもいつ も高いわけではなく、非常に変動するものですから、それを高ければ非常に疑わし いのですが、高乳酸値はほかの疾患でもいっぱい出てくるのですね。ですから、疑 い例のときにはこれは外そうということにしたのです。 ○葛原委員 非特異的なもので外すというと、ちょっと一言説明を入れておいた方 が、書く人にはわかりやすいのではないかと思ったんです。 ○埜中征哉氏 わかりました。ありがとうございます。 ○辻委員 79ページですが、検査所見のところで、1つは、ミトコンドリアDNA 検査とありますけれども、これはどの組織を使って、つまり、末梢血なのか筋肉な のかというところを記載する項目があった方がいいのではないかなと思いました。 検査対象によって検査結果の解釈がかなり違ってくることがあろうかと思いますの で。  それから、乳酸値とピルビン酸はセットで測ることが臨床では多いと思いますが、 ピルビン酸の項目があってもいいのかと思います。 ○埜中征哉氏 はい、わかりました。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  ほかによろしいですか。  では、次にまいりましょう。三嶋先生から、リンパ脈管筋腫症の御説明をお願い します。 ○三嶋理晃氏 ページ82をごらんください。  まず、リンパ脈管筋腫症。lymphangioleiomyomatosis LAMと省略しますけれ ども、この病態を簡単に説明させていただきます。LAMは通常生殖可能な若い年 齢の女性に発症しまして、場合によっては死の転機をとります非常にむずかしい病 気であります。LAMの本体は、平滑筋細胞(LAM細胞)の増生でありまして、 気胸、咳、労作時呼吸困難、乳び胸水などの呼吸器症状で初発することが多く、進 行すると呼吸不全に陥ります。日本におけるLAMの患者数は、現在400例余り登 録されていますが、まだまだ潜在患者が多くおられると思います。しかし、100万人 に最大限2人程度、2200〜2300人がマキシマムと推定されます。そして、LAMの 発生メカニズムがまだ未解明であること、現時点でLAMの進行阻止、または発症 を予防し得る治療がないこと、さらに、進行性の呼吸不全によって日常生活に支障 がで、生命予後も不良の場合が多いということで、LAMはこの特定治療研究事業 対象の4条件を満たしていると考えます。  LAMの診断基準にですが、LAMに一致する胸部CT所見があり、他の嚢胞性 肺疾患を除外できることが必須項目であります。胸部CT所見は、注2に示しまし たように、境界明瞭な薄壁を有する肺内多発性嚢胞が特徴的であります。また、鑑 別診断に挙げました疾患を除外することが必須ですが、CT所見や他の臨床所見で は鑑別で比較的容易であります。診断の種類として、診断の根拠から以下の3つに 分類します。先に挙げました必須項目に加えて、注3に示しますような病理診断が 確実な場合を診断確実例、病理診断がほぼ確実か、または乳び胸水中にLAM細胞 クラスターを認めるものを診断ほぼ確実例とします。しかしながら、一部の方は既 に呼吸不全が進行しまして、こういう病理所見を得られないこともありますので、 必須項目のみが満たされている場合を臨床診断例として、LAMを示唆する他の所 見、例えば結節性硬化症の合併などの有無で場合分けをしています。今申し上げま したいずれの場合も、特定疾患治療研究事業の対象としていただきたいと思います が、臨床診断例では、「臨床個人調査票」の「主治医意見欄」に病理診断ができない 理由など、必要と思われる意見を記載し、さらに胸部の高分解X線CT画像を提出 することを必要条件とします。  以上の提案を御審議のほどよろしくお願い申し上げます。 ○金澤座長 参考2の長瀬先生からの意見を併せて伺ってやっとわかったんですけ れども、これだけだとちょっとわかりにくいですね。82〜83ページだけ見ていると。 これを一緒にしてわかりやすくしていただいた方が。 ○三嶋理晃氏 わかりました。初めに、LAMの病状について、病態について、少 し説明の文章を入れたいと思います。 ○金澤座長 例えば女性ということは、この82〜83ページには余りないような。 ○三嶋理晃氏 男性も稀にはおられますので。 ○金澤座長 やっぱりそうなんですね。 ○三嶋理晃氏 ほとんど女性ですけれども、男性も稀にはおらます。 ○金澤座長 ちょっと併せた方がいいような気がします。 ○三嶋理晃氏 わかりました。 ○金澤座長 ほかにどうですか。  それでは、遡及性というか、訂正も含めてよろしくお願いします。  それでは、次に塩原先生から、重症多形滲出性紅斑(急性期)の御説明を3分で お願いします。 ○塩原哲夫氏 91〜92ページをお願いいたします。まず、ミスプリがちょっとあり まして。92ページの個人調査票の「重症多形滲出性紅斑紅斑」となっていますが、 これは「紅斑」は1つであります。  Stevens-Johnson症候群(SJS)とToxic epidermal necrolysis(TEN) は、共に重症多形紅斑に含まれる代表的な疾患であります。原因の多くは薬剤であ りまして、共に皮膚と粘膜のびらんまたは水疱を広範囲に認めます。びらんもしく は水疱の程度によって軽度のものはSJS、それ以上のものをTENと診断します。 発症率は、大体両者併せて日本全体で、年間200〜300人程度と考えられています。 SJSの方の死亡率は約10%であるのに対して、TENの方は約30%と考えられて います。両者の認定基準は、基本的には同一でありますが、どの程度の範囲の皮膚 障害があるかということによってTENとSJSに分かれます。このパーセンテー ジは、皮疹のピークになった状態でのパーセンテージですので、当初はSJSと診 断されたものでも、最終的にTENへ進展することはよくあります。これについて は参考事項に書かれています。皮疹の性状といたしまして、SJSの方は比較的限 局しているターゲット様(弓矢の的のような)紅斑であるのに対しまして、TEN では比較的融合傾向の強いびまん性の紅斑という差があります。このような皮膚の 変化の主体は、表皮の著明な障害でありまして。TENの方では、表皮が全層性の 壊死になります。両者とも、皮膚以外の粘膜として、口唇、口腔粘膜、眼粘膜、陰 部粘膜が侵されますが、特に予後の点で重要なのは眼粘膜の症状です。角結膜上皮 が欠損しますと、フルオレセインで面状に染色されますことから診断がつきます。 あるいは著明な偽膜形成が見られることがあります。このような所見のうち、SJ Sでは、主症候の(1)〜(3)を満たすもの、または発熱がない場合がありますので、(1) (2)(4)のすべてを満たし、また、(2)を満たすもの。あるいは、(3)を満たし、(1) の(1)(2)(4)の1つ以上の項目を満たすものとしています。これは眼症状だけが強くて、 皮膚症状がほとんどないものを対象にしております。それに対してTENでは、(1) の(1)〜(3)のすべてを満たすものとしております。TENでは、ときとしてSSSS と鑑別診断が難しいときがありますが、その場合でも、(1)の(1)〜(3)のすべてに (2)あるいは(3)があればTENと診断いたします。  「個人調査票」では、このような項目に加えまして、重篤度を別表で、点数を計 算して、6点未満をグレードI、6点以上をグレードIIとしております。  以上であります。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  どなたか御質問、御意見ございますか。 ○木下委員 眼科の木下です。特定疾患として、この疾患を6か月までを認めると いうことで、急性期を6か月までとするかどうかというところがありまして。実際 には眼科的な疾患ですと、6か月はちょうど境目になってきて、その後に悪化して くるというところがあるんですね。これは医薬品救済機構との関係があって、そこ にちょうどはざまのような期間ができてくる可能性がありますので、6か月とする のが本当にいいのかどうかですね。暫定的に6か月を急性期と言う考え方はあると 思うんですけれども、将来的にははもう少し長期に見ていただくのが実際には患者 さんの視点から言うと、非常に必要なことではないかなと思います。 ○金澤座長 飯島先生どうですか。 ○飯島委員 皮膚科の立場から発言させていただきます。まず1つは、急性期に非 常に医療費がかかる疾患でございまして。認定が例えば入院したところから直ちに さかのぼっての認定というふうにしていただかないと、これは審査を待っていたの では二月三月になりますので、6か月がいいかどうかという議論はまた後にすると して、入院からさかのぼりをお願いしたい。  それから、2つ目は、医薬品・感染等副作用被害判定部会の部会長で責任者をや っておりますけれども、これがそういった副作用の救済との併給の調整というので しょうか、この辺のところが多分実務上問題になってくるのではないかなと思いま すので、その辺の調整をよろしくお願いしたいと思います。  以上でございます。 ○金澤座長 ありがとうございました。  後半については、後からまた説明をしてもらいますが、最初の期間についてはど う思われますか。 ○塩原哲夫氏 期間は確かにそういう点はありまして、最近、外国で行われた予後 調査で、眼症状だけではなくて皮疹だけの場合でも、6か月〜1年の間の死亡され る例があるということが報告されておりますので、必ずしも6か月ということでは ないかもしれないなと思っております。 ○金澤座長 検討の余地はあるということですね。 ○塩原哲夫氏 はい。 ○金澤座長 わかりました。  では、どうぞ。 ○中田課長補佐 今回、重症多形滲出紅斑を6か月としたということでございます が、現在の通知において、劇症肝炎も同じ運用なんですけれども、劇症肝炎と同じ く照らせば、その病態に鑑み原則として6か月としておりますが、ただし書きとい たしまして、新規認定から6か月後においても、当該疾患が認定基準に照らして継 続している状態にあると認められる者についてはその限りではないということで、 6か月の認定を必ずしもそこで切るという扱いはしておりません。 ○金澤座長 それは最初に言わないからね。 ○中田課長補佐 あと、2点目の飯島委員からいただきました入院日へのさかのぼ りということなんですが、制度の趣旨上、もともと申請時からとなっておりまして、 そこのところがほかの疾患と並びでできるかどうかについては、またちょっと検討 をさせていただかなければいけないと思っております。 ○金澤座長 これは検討の余地がありますね。  何か御意見はございますか。恐らく委員の方々はおわかりいただけているとは思 いますが、実際には難しい問題があるかもしれませんね。 ○飯島委員 実際には、多分この認定作業が各都道府県レベルで行われますので、 どうしても認定が遅れ遅れになるということになりますので、できるだけ早くきち んと有効になるような手立てを事務局の方で考えていただければということをお願 いいたします。 ○金澤座長 そのためには、ちょっと妙なことを伺います。SJS、TEN、それ 以外でそういうものはありますか。 ○中田課長補佐 それ以外というのは、急性期に限っているということでしょうか。 ○金澤座長 いや、そうではなくて、さかのぼらないと救えないというものです。 ○中田課長補佐 制度的にはさかのぼって支給している例はございません。 ○金澤座長 いやいや、そういう意味ではなくて、病気の話です。 ○中田課長補佐 そういう似たような病気であれば、例えば劇症肝炎や重症急性膵 炎についても、こちらは非常に急性期で入院初期にはICUなどに入院する例はあ ると思います。 ○金澤座長 わかりました。多分、それの兼ね合いもないわけではないですね。あ りがとうございました。 ○葛原委員 神経疾患では、免疫性の神経疾患で最も医療費がかかるもは、重症筋 無力症の胸腺摘出とか、ステロイドパルスとか、免疫グロブリンのように、ワーッ とひどくなって入院して診断がつく病気の場合には、治ってから認定されるよりは、 さっきと同じ扱いを受けていただいた方が患者さんのためにはなると思います。 ○金澤座長 そういう方がどれぐらいいらっしゃるかということも1つはあるかも しれませんね。  ありがとうございました。  それでは、最後の御説明になります。千葉先生から、黄色靭帯骨化症の御説明を 3分でお願いします。 ○千葉一裕氏 黄色靭帯骨化症について御説明申し上げたいと思います。94ページ をごらんください。皆さんお気づきだと思いますけれども、「後縦靭帯骨化症・黄色 靭帯骨化症」というタイトルになっておりますが、この両者は、背骨を支える靭帯 が原因不明で骨化いたしまして、脊髄を圧迫して様々な神経障害を生じるという全 く同じ病態なのですが、黄色靭帯骨化症の方が患者さんが圧倒的に少ないという経 緯で、同じような症状で同じような病態なのに、後縦靭帯骨化症では医療補助を受 けられるのに、黄色靭帯骨化症では受けられないということがありましたので、今 回、認定が取れれば非常に患者さんにとって喜ばしいことだと思います。ですから、 この認定基準も、ほとんど従来のOPLL、後縦靭帯骨化症と同じものでございま す。この主要項目中の自覚症状ならびに身体所見も、後縦靭帯骨化症と同じで、(4) が骨化による脊柱の運動障害、残りは脊髄の圧迫による感覚障害、運動障害、痛み、 まひ、膀胱直腸障害などがございます。血液・生化学所見には原則的に異常は認め ませんが、現在、原因候補遺伝子が幾つかわかってきておりますので、将来、そう いったことが基準に入ってくる可能性がございます。画像所見も後縦靭帯骨化症と 同じですが、それに追加で黄色靭帯骨化に特有の椎間孔後縁に嘴状あるいは塊状に 突出する黄色靭帯骨化像がみられるという所見が追加されております。そのほかC T、MRIでも、黄色靭帯骨化による存在が追加になっております。鑑別診断は、 四肢、痛み、しびれ、まひなどを生じる諸疾患でございます。  認定の範囲ですが、症状が圧迫の程度によって軽い方から重い方がおりまして、 日本整形外科学会の頚部脊髄症治療判定基準がございまして、それで、上肢あるい は下肢の運動機能が2点以下としております。次の95ページをごらんいただければ わかりますけれども、2点とは、上肢機能ですとお箸で何とか食事ができる、下肢 機能ですと、階段は支えがないと登れないが、平地は何とか歩ける状態です。これ ぐらいの状態になりますと、手術をしないとまひが回復しないことはわかっており ますので、手術が必要と判断される2点以下を助成の基準としてございます。です から、「個人調査票」も、後縦靭帯骨化症と全く同じ内容・データですが、黄色靭帯 骨化症というタイトルが上に入っているだけでございます。  御審議をよろしくお願いいたします。 ○金澤座長 ありがとうございました。  いかがですか。何か御質問。 ○葛原委員 3点ほど申し上げます。1つは、後縦靭帯骨化症と黄色靭帯骨化症と いうと、レントゲン写真の診断だけで何の障害もない人もたくさんいらっしゃるの で、主要項目の前ぐらいに、こういうレントゲン所見があって、次のような障害を 持った人をこの対象にするというふうなことを一言書いておかれた方がよいと思い ます。私のところにも、この病名なのに、ほかの人は特定疾患を受けていて、私は 受けていないのはなぜかという質問をされたことがありますので、それをちょっと 最初に入れていただければと思うのが第1点です。  あとは、用語の問題で誠に申しわけないんですが、主要項目の(1)の(4)のとこ ろの「四肢の深部腱反射異常」は、今は「深部」が取れて「腱反射異常」というの が多分用語になっていると思います。、英語の“deep ten don reflex”の訳がそう なっているということです。  あと、2.の「鑑別診断」のところの3行目の「多発性神経炎」と書いてあるの は、これは「多発神経炎」か「多発ニューロパチー」です。恐らく「多発ニューロ パチー」の方が適切だと思ういます。英語の“multiple”の訳が多発性で、“poly” の訳が多発ですので、「多発ニューロパチー」とされた方が正確な言葉になります。  それだけです。以上です。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  用語集に載っておりますので、そこはよろしくお願いします。  ほかにいかがでしょうか。  よろしいですか。  それでは、一旦このことに関しては終わりたいと思いますので、改めて全体に御 質問をいただければと思います。 ○槇野委員 槇野です。先ほどの千原先生の間脳下垂体機能障害、個人調査票に関 してよろしゅうございますか。ちょっと意見を申しそびれていたんですけれども。 ○金澤座長 はい、どうぞ。 ○槇野委員 最初は、3ページのプロラクチン分泌異常症で、「発症と経過」のとこ ろがございますけれども、女性では、妊娠・出産歴を入れた方がいいと思います。 それから、「主症状」で、一番右のところが「視力障害」ですけれども、ナカテン 「・」をして「視野障害」も追加された方がいいかと思います。  それから、「検査所見」で「MRIまたはCTで」と書いてございますけれども、 CTは下垂体診断には不要で、MRIのみでいいのではないかと思います。それが プロラクチン分泌異常症の点です。  それから、続きまして、8ページのゴナドトロピン分泌異常症でございますけれ ども、これも「発症と経過」のところで、女性の場合は妊娠・出産歴を追加された 方がいいかと思います。それから「主症候」でございますけれども、3番目の「意 欲低下」は「性欲低下」の間違いではないかと思います。  それから、14ページのADH分泌異常症の「個人調査票」でございますけれども、 「発症と経過」のところに、飲水量と尿量を具体的に記載していただいた方がいい のではないかと思います。それから、「原疾患」でございますけれども、「悪性腫瘍 の既往」を追加された方がいいのではないかと思います。それから、「主症状」でご ざいますけれども、「意識レベル、嘔吐、嘔気」の追加をされた方がいいのではない かと思います。それから、2番目の「主要臨床症状」で、「多尿」「口渇」とありま すけれども、もう一つ「多飲の有無」についても追記をされた方がいいのではない かと思います。それがADH分泌異常症でございます。  続きまして、21ページの下垂体性TSH分泌異常症でございますけれども、21ペ ージの5番目に「甲状腺ヨード摂取率」がございますけれども、最近、甲状腺では、 甲状腺エコーが主体になっておりますので、そこに「甲状腺エコー検査・ドプラー 検査」を加えられた方がいいのではないかと思います。  それから、25ページのクッシング病のところでございますけれども、「主要症候」 のところに「糖尿」でございますが、これは非常にあいまいな表現でございますの で、「高血糖」もしくは「尿糖(陽性)」とされた方がいいのではないかと思います。 それから、右側で「デキサメサゾン抑制試験」がございます。現在は0.5mg、8mgで ございますけれども、以前は1mgで診断されておられましたので、古い症例もある かと思いますので、1mgも加えられた方がいいのではないかと思います。それから、 26ページの「病理」のところでございますけれども、そこに「副腎重量」と「下垂 体腫瘍」でございますけれども、下垂体腫瘍の方が重要でございますから、上に持 ってこられて、「副腎重量」は不要ではないかと思います。下垂体の病理だけがあっ たらよいのではないかと思います。  それから、31ページでございますけれども、先端巨大症の「個人調査票」で、「発 見契機」のところに、高血圧、糖尿病はよくあると思いますので、3番目の「頭痛」 の後に4番目「糖尿病」、5番目として「高血圧」として、「視力・視野障害」の前 に加えていただけたらと思います。それから、31ページの一番下の「合併症」がご ざいますけれども、10番目の後に、「大腸ポリープ」、「甲状腺腫瘍」と具体的に明記 されたらいかがでしょうか。  それから38ページがございます。下垂体機能低下症でございますけれども、右側 が「主要臨床症状」の最後のところ「頭痛」の後に、「浮腫」「筋力の低下」の症状 を加えられてはいかがでしょうか。それから、次の39ページの「TSH系」の検査 がございますけれども、「放射性ヨード摂取率24時間値」がございますけれども、 これは不要ではないかと思います。  すみません、ちょっと細かい点ばかり、重箱の隅をつつくようで、申し上げまし たけれども、参考にしていただけたらと思います。 ○金澤座長 とんでもありません。もっとほかにないですか。  ありがとうございました。  千原先生、今の点はどうですか。 ○千原和夫氏 参考にさせていただきたいと思います。  ただ、1点、デキサメサゾンの0.5mg、1mgのいずれが適切であるかについては、 研究班の方でかなり時間をかけて審議してきました。国際的には1mgを用いて判定 することになっていますが、日本人の場合、かなりのデータを集めた結果、0.5mgの 方が日本人のクッシング病の診断に適切であることが明らかになり、そのように決 めさせていただいております。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  ほかによろしいでしょうか。  辻委員、どうぞ。 ○辻委員 全般的なことでいいですか。 ○金澤座長 全般でいいですよ。 ○辻委員 更新申請の用紙の位置づけに関して少し感じていることがあります。現 場では、更新申請であっても書類の記載事項が膨大で、ある時期に集中して更新申 請書の作成が殺到しますと非常に負担があります。新規の場合には、認定基準を満 たしているかどうかということで重要な役割があると思いますが、、疾患の多くは、 恐らく一回認定すると、その後の更新申請時はあまり問題はないのだろうと思いま す。そうすると、何を調査研究するかということを明確にして、可能であればもう 少しシンプルなものに整理された方が現場的にはいいのではないかと思います。膨 大な記載項目があって、今回提出されている疾患に限らず、従前からのものについ ても、非常に負担が大きいように感じるものですから、ご検討をいただければと思 います。 ○金澤座長 ありがとうございました。  さっと見たところ、新規のものとほとんど変わらないですね、確かに。  今の御意見、いかがですか。  宮坂委員、どうぞ。 ○宮坂委員 全く賛成で、我々は7月の末になると、外来にこの書類が重なって、 夜中まで書いても間に合わないんですね。それが本当に疫学的研究に利用されるの ならばいいのですけれど、そこは全く検討されていないので、今の辻委員の御意見 に全く賛成です。 ○金澤座長 今のことをちょっとお話ししてください。 ○中田課長補佐 「臨床調査個人票」につきましては、議題3の方で、今後の見直 しについてということで課題を出させていただきます。そこで併せて御議論をお願 いできればと思います。 ○金澤座長 わかりました。では、必ず答えてください。 ○葛原委員 今のと関係した「個人調査票」の患者さんの基本情報の一番最初の二 重線から上がございますね。ここに関しては、最近は市町村などではここをきちん と書いてきてくれるところもあるんですが、医者の方にぽんと郵送なんかされます と、どこで生まれたとか、現住所がどうかとか、全くわからないんですね。医療保 険の種類も変わっていることがあります。ですから、この個人情報に関しては、「申 請者が埋める」こととするか、あるいは申請する地方自治体とかできちっと書いて きてくれないと、例えば介護保険を受けているかどうか、医師は全く知らされてな いわけです。申請者が書く部分と、医師が書く項目を分けることを徹底していただ けたらと思います。 ○金澤座長 わかりました。ありがとうございます。では、後で答えていただきま す。  では、どうそ、草間委員。 ○草間委員 間脳下垂体機能障害で、画像診断の項目としてが「MRIまたはCT」 と書いてあるところと「MRI」だけと書いてあるところがあるので、先ほどのお 話ですと、MRIだけないとすれば、どちらかに統一していただいた方がいいので はないかなと思いました。  それと、78ページに「注記」として、「画像診断については、放射線科による読影 レポートを添付すること」「病理検査については云々」と書いてあるのですけれども、 ミトコンドリア病だけに必要なのか、あるいは申請のときにはすべて画像診断の画 像あるいは病理診断のレポートを付けるとしたら、ここだけ注を付ける必要はない ような気がするのですが、これはいかがでしょうか。 ○金澤座長 これはちょっと大きな問題ですね。これをお書きになった埜中先生に 趣旨をちょっと御説明いただいて。 ○埜中征哉氏 特別な趣旨はなくて、もしそういうのがあったら参考になっていい なと思って付けただけですから、ほかのものに合わせることは別に構いません。 ○金澤座長 わかりました。 ○中田課長補佐 これは、各研究班によって読影レポートまで見ないと正確に判断 できないものは添付することとしております。これまで45疾患ありますけれども、 その中にも添付を求めているもの、求めないものがあって、この要否については、 研究班で御判断いただいているところです。なお、今回、慢性炎症脱随性多発神経 炎についても、神経伝導検査レポートについては添付するというところもございま す。 ○金澤座長 ありがとうございます。  これは共通しなくてはいけないことだというのは、ちょっと個々の問題ではある ような気がいたしますけどね。  ほかにいかがですか。全体を通して御意見を頂戴できればと思います。確かに、 非常に俯瞰的な御意見を頂戴しておりますが、ほかにどうですか。  よろしいですか。  それでは、次の議題に移りたいと思いますけれども、「その他」認定基準の変更に つきまして、2つの疾患について御説明を頂戴いたします。各々3分ぐらいで御説 明いただきたいんですが、三條先生、プリオン病の御説明をお願いいたします。 ○三條伸夫氏 資料の2の1ページからです。認定基準そのものには、ほとんど大 きな変更はないのですけれども、言葉の問題として。  これまでは、プリオン病、遺伝性、後発性、感染性に分けられていたのですけれ ども、その後の文献では、インフェクシャスとか、イアトロジェニックという表現 がacquireに変わってきていますので、それに合わせて「獲得性」という言葉に変 えているというのが1つ。  あと、「痴呆」という言葉がこの古いバージョンでは使われていましたので、それ を「認知症」に変えております。  2点目が、脳脊髄液検査。1ページ目でいきますと、2番の「検査所見」の(2) にありますが、「14−3−3蛋白陽性」という表現があります。14−3−3蛋白 は日本で測定がなかなか困難で、定量が全くできない状態だったんですけれども、 長崎大学でそれをやっていただいて、これまでのサーベイランスで診断された方々 の髄液検査のデータから陽性率がきちんとしたものが得られたということで、診断 基準の中に入れられるようになったということになります。  次のページの2ページ目の真ん中辺り線が引いてありますが、WHOの基準では 14−3−3蛋白で陽性のもので、前経過が2年未満であるものは、疑い例から、 ほぼ確実例というふうなことで診断ができたんですけれども、14−3−3蛋白が 測定できなかったために、日本では今までこの基準が用いられませんでした。それ を測定ができるようになりましたので、14−3−3蛋白の項目を診断基準の中に 入れました。  また前の1ページ目に戻りますが、(2)番の(2)の「総タウ蛋白の上昇」がありま すけれども、こちらも長崎大学の協力できれいな定量の検査ができるようになった ので、診断基準に入れることにいたしました。  次の変更点が、遺伝性のプリオン病で、3ページ目になります。欧米の遺伝性の プリオン病と日本の遺伝性のプリオン病では、サーベイランスの結果でタイプの割 合が全く違うということがわかりまして、これまではP102Lという遺伝子変異 の方が一番多いと。欧米のサーベイランスではそうなっているんですけれども、こ の1999年からの日本のサーベイランスの中で統計をとってみましたら、一番最初に 書きました180番が最も多くて、日本ではほぼ半数を占めている。その次に多いの が200番と232番ということで、その多いものを診断基準に書き加えたということ です。ただ、この3つの疾患、180番、232番、200番に関しては、これまでもきち んと診断をして、遺伝子検査等の中できちっとサーベイランスでは拾っておりまし たので、新しく患者さんの数が増えるとかそういうことではなくて、これまでどお りですけれども、診断基準として、ここに頻度が高いものをきちんと書こうという ことで書かせていただきました。  7ページ目になりますが、獲得性感染性プリオン病に関しては、日本で最も多く 発生しているヒト由来乾燥硬膜のクロイツフェルト・ヤコブ病ですけれども、この データも以前に、この文章が作成されたときにはわからなかったことがサーベイラ ンスの中でわかってきまして。潜伏期間がかなり長いもの、最高で30年近く潜伏期 間があるものがあることがわかりまして、平均年数が12年間ということがわかって、 それを書き、変更いたしました。  変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に関しては、まだ日本では1例しか確認され ていませんけれども、イギリスの方で報告された、あるいはWHOのホームページ で報告されている人数では、平成21年9月現在で210名ということで、その点も更 新いたしました。  以上です。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  何か御質問はございますか。  どうぞ、辻委員。 ○辻委員 改訂内容に対するコメントではないのでが、プリオン遺伝子の多型の検 査が書かれていますね。プリオン遺伝子の多型の検査は一定の意味がありますが、 プリオン病の家族歴が全くなくて、多型の検査をするつもりで検査をしたところが、 遺伝性のプリオン病の変異がたまたま見つかる例が少なからずあって、浸透率の低 い変異がかなりございますね。医療現場では、多型の検査ということで割と気軽に 出していて、結果的にそういうgerm line mutationが見つかってくるということが あるものですから問題となります。しかも、検査そのものは、しっかりした体制が できていて、お願いすればすぐやってくれるということがあるものですから、検査 を出すときに、その辺りの配慮なり説明なりそういったものを現場でしっかりやる ように指示しないと、遺伝性疾患に対する事前の説明とか、あるいはカウンセリン グなどなしに、通常の臨床検査と同じ程度の位置づけで出してしまうケースがまま あるのではないかと思います。結果がわかったときに、非常に問題になることがあ り、このようなことに対する配慮を何らかの形で行っておいた方がいいのではない かと常々感じています。 ○金澤座長 非常に大事な御指摘ですね。 ○三條伸夫氏 まさにおっしゃるとおりで、サーベイランス委員会とか、コンサル テーションの場合でもそれは問題になるのですけれども、班の方では、臨床心理士 の方にカウンセリングという形で御家族、あるいは患者さん御本人からお申し出が あった場合には対応する体制をとっております。ただ、検査の段階で、未発症の方 とかまで含めて検査に出されるケースは確かにあって、その後の問題もないわけで はありませんので、その辺りはホームページなり、検査を担当していただいている 先生にお願いして、その段階できちんとしたインフォームドコンセントをとってい ただくということをもう少し配慮していけるように伝えておきます。 ○辻委員 未発症の方ではなくて、発症している方の検査をするときに、一般の神 経内科医のレベルですと、十分な説明をできずに検査をしてしまっているというこ とがあるように思うんですね。だから、その辺りを注意喚起するような説明なりメ ッセージが一般の病院の神経内科医レベルでわかるようにしていただけるとよりと 思います。 ○金澤座長 これは神経内科の学会の方でも議論をしているところなので、もうち ょっと検討をした方がいいように思います。ただ、これは今ここではちょっと複雑 になってしまうので。どうですか。  しかし、非常に大事なことですから。発症者の診断ですから。  よろしいでしょうか。  それでは、次にいきましょう。三嶋先生から、原発性肺動脈性肺高血圧症と特発 性慢性肺血栓塞栓症の2つについて、あわせて4分で御説明をよろしくお願いしま す。 ○三嶋理晃氏 資料2のページ15が、肺動脈性肺高血圧症でございます。それから、 ページ25からが慢性血栓塞栓性肺高血圧症でございます。この2疾患は、1998年に 治療対象疾患として認められましたけれど現在の名前は、原発性肺高血圧症と特発 性慢性肺血栓塞栓症肺高血圧症型と呼んでおります。これを今申しましたような名 前に変更する件を御審議をよろしくお願い申し上げます。  まず、原発性肺高血圧症の名称変更の理由ですけれども、国際的には、2003年か ら既にこの名前は肺動脈性肺高血圧症という名称に変更されています。その理由は、 原発性肺高血圧症という大きくくくられていた病気の中に、近年いろいろなサブカ テゴリーがはっきりしてきて、ほかの左心不全とかそういう諸々のものを除外した もののカテゴリーとして、肺動脈性高血圧症にしようという国際規約がなされまし た。その後、厚生省の呼吸不全班が、有病率など、統計の国際的比較に関して、こ の分類でないと比較できなくなったというのが、今回、名称変更をお願いした契機 であります。  ページ15を見ていただきます。これに沿って診断基準改訂(案)を作成しました。 まず、右心カテーテルによる診断とともに、鑑別診断を綿密に行って、臨床分類す ること。ほかの疾患の除外診断が必要であることなどを明確にしております。特に 検査所見では、右心カテーテル所見をより重視しています。さらに、臨床分類は、 2008年のダキポイント国際会議でコンセンサスを得られた8疾患を挙げています。 除外対象疾患としては、この10年間の知見の進歩を反映したものになっています。  新規認定基準としては、今申しましたような事項を満たしていることを要件とし ていますけれども、更新時には、肺高血圧の程度は、新規申請時より軽快していて も、肺血管拡張療法などの治療が継続する必要がある場合は認めるという案であり ます。  次にページ25を見ていただきます。特発性慢性肺血栓塞栓肺高血圧型の変更に関 しましては国際分類が2008年から、慢性血栓塞栓性肺高血圧症へと変更したのに準 拠していますが、概念としては変わっておりません。ただ、認定基準の変更として は、昨今、胸部X線造影CTが飛躍的に発達しまして、いわゆる肺動脈造影所見と 同等以上の診断精度がありますので、これを重要所見としたことであります。  認定基準としては、新規認定時には、右心カテーテル所見、肺換気・血流シンチ グラム、そして、肺動脈造影または胸部X線造影CT所見の必要性を明記しており ます。そして、更新時には、肺高血圧の程度が改善していても、治療の継続が必要 なときには、更新可能とする案であります。  以上、御審議をよろしくお願い申し上げます。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  いかがでしょうか。何か御質問、御意見はございませんか。  世界の動向に合わせるということですね。どうもありがとうございました。  さっき聞こうと思っていて、やっぱり忘れたことがあったんです。それは千葉先 生ですね。黄色靭帯骨化症の大体の数を。 ○千葉一裕氏 OPLLの5%ぐらいと言われていますので、大体1000〜2000人ぐ らいだと思いますが、ただ両者を合併している方が多く、既にOPLLの方で認定 されている方もいるので、実数はもうちょっと少ないと思います。  あと、先ほどの葛原先生の御指摘なんですが、画像上OPLLがあっても、何で 自分は認定されないんだというのは、こちらの94ページの4.に一応書いてござい ます。画像所見で骨化巣があって、しかも、それが神経障害の原因となって日常生 活上支障となる著しい運動機能障害を伴うものと書かれております。その基準が日 本整形外科学会判断基準の上肢・下肢運動機能のいずれかが2点以下となっていま す。ですから、簡単に言いますと、手術対象となるような障害を有する方というこ とで御説明いただければいいんですが、それを明記してしまうと、全身状態が悪く て、手術を受けたくても受けられない方が助成を受けられなくなってしまうので、 一応この2点ということにさせていただいております。 ○金澤座長 はい、わかりました。ありがとうございます。  ほかに御意見はございますか。 ○葛原委員 クロイツフェルト・ヤコブのところでよろしいですか。 ○金澤座長 どうぞ。 ○葛原委員 さっきacquireの訳を「獲得性」という訳に今後されたということで、 それはそれでよくわかるんですが、獲得性というのは、プラスのイメージがある言 葉のような気もするんですね。普通はacquireの訳は、二次性、後天性と用語辞典 を書いてあるのではないかと思うんですが、これは獲得性という名前にしないとい けないのでしょうか。というのは、これは受け身形ですから、やむなく獲得させら れたという意味ですよね。だから、獲得性の何とかというと、自分の意思でやった という英語の受け身形の意味が全く出て、訳としては、(1)先天性、(2)二次性ないし は後天性、(3)特発性という、この3つぐらいが普通は病因として用語には載ってい るのではないかと思うんですが、そこら辺はいかがなんですか。 ○三條伸夫氏 すみません。「獲得性」ということは僕が言い出したことではないの で、申しわけないです。その辺りはまた持ち帰らせていただいて、検討をさせてく ださい。 ○金澤座長 参考のために伺いますが、ほかの領域ではいかがですか。「獲得性」は 余り使わないというのがこの辺で聞こえてきますけど。用語集ではどうなっている のでしょうね。 ○葛原委員 普通は、後天性が一番多くて、二次性でもいいところがある。だから、 特発性か二次性か先天性と、この3つが病因的な大枠ではないかと。内科の先生が いらっしゃらればわかりやすいと思います。 ○宮坂委員 免疫学では、acquire immunityと言うと、獲得免疫で、それは正常の ことなんですけど、病気ではacquireは辻先生のおっしゃったような訳になると思 います。 ○金澤座長 そういう強い意見があったということでお持ち帰りいただければと思 います。ありがとうございました。  それでは、次に、「難治性疾患克服研究事業について」事務局から、先ほどの宿題 をあるようですから、どうぞよろしくお願いします。 ○中田課長補佐 お手元の資料3をごらんください。「難治性疾患克服研究事業につ いて」でございます。  第1の「はじめに」ございますが、平成21年度から前年度比4倍増の100億円の 予算を確保し、新たに研究奨励分野等を設けて、これまで研究の対象となっていな かった疾患についても研究対象として拡大を図ってきたところでございます。  第2でございますが、「今後の難治性疾患研究事業について」でございまして、更 なるく充実を目的として、以下に論点を示させていただいております。  (1)「臨床調査研究分野の更なる充実について」でございます。これまで臨調調 査研究分野としては、130疾患を対象として、複数の類似疾患をまとめて組織した 38研究班において、原因の解明、治療法の開発の研究を実施しているところでござ いますが、複数の関連疾患を一つの研究班で研究を行うに際しては、各疾患の研究 成果をそれ以外の疾患に対して応用が期待できるものの、疾患によっては研究のア プローチが異なること等もあることから、効率的・効果的な研究を進めるために、 研究組織の在り方について今後検討してはどうかという提案でございます。  (2)「指定研究の設置について」でございます。「厚生労働行政の在り方に関す る懇談会」報告書にございますが、厚生労働行政の在り方として、政策が多くの国 民の理解と納得を得られるよう、企画立案の裏付けとなるような研究を推進するこ とが必要であり難治性疾患克服研究事業においても、この提言を踏まえて、指定研 究を新たに設けることとしております。  裏面の2ページ目でございますが、指定研究の課題の例として、社会医学研究や 基盤整備研究が指定研究になり得るのではないか。例えば、社会医学研究について は、ここにございますとおり、難病患者のQOL向上、自立支援に関する研究等、 また、基盤整備研究については、これまで行っております生体試料を利用できるよ うな提供体制構築に関する研究、未分類疾患の情報収集等に関する研究、または、 研究評価の在り方に関する研究等がふさわしいのではないかということで提案させ ていただいております。  第3「臨床調査個人票の取り扱いについて」でございます。こちらが先ほどの宿 題事項にお返しする形での御提案になると思うんですが、特定疾患治療研究事業に おきましては、重症で希少な特定疾患の研究を推進するために、患者の同意を得た ものについて、研究班において、臨床調査個人票を基礎資料として活用していると いう状況にございます。  ただ、このような研究を推進するに当たりまして、これまでの臨床調査個人票で は、患者個々人の治療経過を評価するための疫学調査ができないということでござ いまして、いわゆる連結不可の匿名化されている情報を今後、疫学研究に関する倫 理指針の下に、患者個々人の治療経過を調査できるように、臨床調査個人票の様式 を見直すということで、個人情報は保護されることには変わりませんが、連結可能 匿名化データとして、それぞれ患者個々人の疫学データも解析できるようにするこ とで、臨床調査個人票の有効活用を図っていこうという提案でございます。  ウで更なる提案でございます。これまで、各研究班で臨床調査個人票を取り扱っ ていただきましたが、今後は、それと併せて、一元的にデータを収集・管理いたし まして、疾患横断的に継続的なデータ分析を行い、疫学研究の推進を図っていきた いという提案でございます。端的に申し上げますと、臨床調査個人票につきまして は、それぞれの研究班で様々な使い方がされている中で、使い方についてそれぞれ 研究班について温度差があったところですが、ここではある一つのデータセンター 的な施設においてデータを一旦収集いたしまして、基本的なデータはそこで収集・ 分析をすると。例えばその疾患ごとの基本的な分析項目については、そういった施 設で継続して解析して、また、研究班のオーダーによって更なる疾患ごとの詳細な 分析が必要であれば、その研究班とコラボレーションしながら更なる疫学研究を推 進できるということです。こちらは、臨床調査個人票の内容自体を削減するという ような御提案ではございませんが、今の臨床調査個人票の有効活用についてをどの ようにしていこうかという御提案として、ここで述べさせていただいております。  以上でございます。 ○金澤座長 ありがとうございました。  後で聞きますが、少なくとも今説明された範囲での御質問。  どうぞ、猿田委員。 ○猿田委員 予算が前の25億から100億になったと。これが継続されるかどうかわ かりませんけどね。一番重要なことは、第2の(1)のところで、最後に、研究班 の組織を見直すといったときに38研究班の予算が変わってないんです。ですから、 その中でも本当に大切な班がありますから、そこにお金をちゃんと与えないとちゃ んとした研究が進まないということもしっかり考えていただきたいと思います。 ○金澤座長 ありがとうございます。  どうぞ、齋藤委員。 ○齋藤(英)委員 今お話があった指定研究を続けるのは非常にいいことだと思い ます。その中で、基盤整備研究で、生体試料の利用できる体制という話が出ていま す。過去にいろいろな研究班で検体を保存する試みが随分あったと思いますが、班 長がかわると途中で消えてしまったり、なかなか長続きしないんですよね。しかし、 難病のような臨床研究には、検体が非常に重要なことは、皆さんどなたも異存ない と思います。それをどこでどのように誰が保存するかということと、その財源をど うするかということをもう少し難病だけではなくて、もっと国家的な事業として、 省庁を越えて、文部科学省、厚生労働省それぞれあると思うんですが、そういう枠 を越えて考えていくべきだと思います。金澤先生に第4期の「科学技術基本計画」 の中にもし盛り込んでなかったら、是非盛り込んでいただきたい。国全体として本 当にきちっと、勿論インフォームドコンセントをとった試料をどうやって長期間恒 久的に保存していくかという体制を真剣に考えていただければと思います。   ○金澤座長 ありがとうございます。  今の点は、総合科学技術会議が生き残っておればなんですけれども、多少議論は しておりますが、大事なことだと思います。  辻委員、どうぞ。 ○辻委員 2点ほど提案したいと思います。第1点は、齋藤(英)委員から出たこ とに関連しますが、基盤整備研究ということで、生体試料を保管して、科学的な基 盤をつくるということは何よりも大切だと思いますが、その次のステップには、研 究基盤を活用して優れた研究を展開する必要があると思います。それをどこが担う かという問題は大きな問題だと思いますが、この特定疾患の研究にそれが馴染むか どうかという議論はあるかもしれませんが、重点的にそのバンクを利用して研究を することに関して、積極的に集中して進めるという、そういうポリシーが一つでき るといいのではないかという提案でございます。  2つ目は、縦断的に臨床個人調査票を分析するのは、過去に行われていてつくら れていて、私が班長のときには申請して、手続に則って利用したことはございます。 ですから、これまでの分析がなかったということではないと思うので、確認いただ いた方がいいと思います。その上での話ですが、当時問題になったのが、都道府県 レベルで入力が非常に悪い場合があること。実際には50%ぐらいしか入力されてな い場合もありました。ですから、密度の高い調査にならないところがあって、そこ をどうやってテコ入れするかという問題があるということが1つ。  それから、もう一つは、臨床調査個人票の限界といいますか、精度の問題があり ます。例えば同じ先生がきちんと書けばかなりいいのですけれども、記入する先生 が変わったりすることもありますし、大変忙しい中で急いで書くこともあるわけで すから。縦断的にデータを分析してみても、その精度はかなり限界があるかもしれ ないという認識をしておくことが、僕は必要なのではないかと思います。もし本当 の意味で縦断的な調査をするのであれば、むしろ研究班の方が主体的に行った方が いい場合もあるので、こういった臨床調査個人票を用いて縦断的に調査することに 関しては、その限界点と有用性を厳密に分析して、本当の意味で役に立つ分析をし ないと実は非常に難しいのではないかと、そういう問題を抱えていることを指摘し ておきたいと思います。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  では、池田委員。 ○池田委員 この研究事業は費用が非常に増額されたこともあって、私は国家事業 としての位置づけをもう一回確認する必要があるのではないかと思うんです。私自 身関係している幾つかの疾患について、欧米でやっとその機運が盛り上がって、幾 つかの国が一緒になってレジストリーをやろうという状況が出てきたりしているの ですけれども、日本では、本当に何年も前からこういう事業をやっているというと ころは誇るべきことだと思うんです。しかし、それについても、やっていることそ れ自体はいいのですけれども、実が上がってないというところが問題で、事業を実 施する方法を少しここで真剣に考えていく必要があるだろうと思います。その点で は、先ほど来、先生方がおっしゃっている患者さんの生体材料をどういうふうに収 集し、保存して使っていくかのか、システムの構築を考える必要がある。それから、 疫学データとしてこれをどういうふうに活用していくか。入力の問題もあります。 先ほどもありましたけれども、都道府県が実施主体なので、ある都道府県では、1 つも入力をしてないなんていうところが少なくありません。我々も非常に困った経 験がありますので、そのデータ入力の仕方も含めて、そして、これを疫学データと して有効に使っていくとすれば、先ほどもちょっと話が出ていましたけれども、新 規に申請するときの調査票と、更新のための調査票はおのずと目的が変わってくる わけですから、その様式を疫学データを収集するという視点でもう一回見直すこと も非常に重要なことではないかと思いますので、今回、この事業をどういうふうに 考えるかというテーマがあったので、非常にいいチャンスだと思いますので、その 真剣な議論をお願いしたいと思っています。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。  どうぞ、大島先生。 ○大島委員 生体材料の保存・管理・利用に関する話は、この問題を追求していき ますと、法律の 問題に必ずぶつかるんですね。この問題を自主的な研究に任せていたのでは、私は もう埒があかないと思っています。今のままでは限界が見えていますので、これは 法整備も含めてどうするのかというところまで踏み込んだ対策をたてないとだめだ と思います。そういったものを是非汲んで進めていただきたいとお願いしたいと思 います。 ○金澤座長 ありがとうございました。大事な御指摘をいただきました。  どうぞ、葛原委員。 ○葛原委員 最後に、臨床調査個人票の疫学研究に活用すると、私はこれは非常に 大事で、池田先生がおっしゃったように、ヨーロッパで最近やっと難病について始 まったという点から言うと、日本は昭和47年からですから、非常に長い歴史があり ます。しかし、疫学に利用するには、質と共に終点をはっきりさせるという点がど うしても大事だと思います。まず、最初のときの診断基準の精度の向上に関しては 検査データを付けるとかで精度を上げる。これは単なる医療費補助と考えて、研究 事業と思ってない患者さんとかお医者さんは非常たくさんいるわけですから、そこ のところをよく理解していただくことが必要だろうと思いますし、また、患者さん の方からも是非そういう点での御協力をお願いしたいと思います。  もう一つは、診断の精度以外に、これはいつ亡くなられたかは現時点ではわから ないんですね。ですから、もし縦断的にできるのでしたら、調査票が出なくなった ときに、病気がよくなったので出なくなったのか、それとも亡くなられたので出な くなったかということがきちっとわかるようにしておかないと、結局これはもう全 部しり切れトンボでどうしてしり切れトンボになったかがわからない個人調査票に なっています。縦断研究ではendopointが不可欠ですので、それを是非入れていた だきたい。これはそれこそ個人情報も含めてどうなったかということを問い合わせ るという作業がどうしても必要だと思うですが、それを是非私はお願いしたいと思 っています。  以上です。 ○金澤座長 ありがとうございます。非常に大事な御指摘であります。 ○草間委員 この指定研究の中に、社会学研究を入れていただいたのは大変重要だ と思います。特に難治性疾患に関しては、その原因の究明とか治療も大変重要です けれども、特にADLを高め、あるいはQOLを向上させることは大変重要だと思 います。現在ある38研究班の中に、特にこういったQOLあるいはADLに関係し たケアとか、そういった部分の研究班があるかどうかはちょっと承知していないの ですけれども、この委員の中では、多分私だけが看護系の関係だと思いますので、 看護の関係者の関与についてちょっと御説明させていただきたいんですけど。  現在、179校看護大学がありまして、大学院等も設置している大学も多いので、是 非、こういった難治性疾患の患者さんに対するQOLを向上する、あるいはADL を向上させるために、どういう研究的なアプローチがあるかというようなことを看 護あるいは介護、福祉に関わる教育者、研究者たちも何らかの形で寄与できればと 思いますので、是非、研究班を組むときに考慮していただければと思いまして、発 言させていただきました。 ○金澤座長 ありがとうございました。  齋藤先生、どうぞ。 ○齋藤(加)委員 先ほど辻委員が発言なさったプリオン病の遺伝子検査がござい ましたが、これに関しては、ほかの特定疾患全体的にも広げて言えることではない かと思うんです。私は、遺伝子医療センターで遺伝カウンセリングをここ数年間や っているんですが、例えば脊髄小脳変性症、肥大型心筋症、拡張型心筋症、そうい った遺伝子検査ができるようになってきたことで、今ここで特定疾患で認定される ために、単に検査の1つとして○を付けて、その家族にどういう影響が及ぶかとい う、診断が確定した後のいろいろな問題が無視されたまま、特定疾患を患者さんが いただいていいことだということで遺伝子診断がなされていくのは非常に危険です。 プリオン病の場合にも、私ちょうど経験したのは、患者さん本人の診断の後で、そ の子供が、自分が同じ遺伝子を持っている可能性があるということで非常に悩んで 話し合った経験があります。ですから、特定疾患の認定の前段階という形で、遺伝 子診断を実施するには十分な遺伝カウンセリングを行うことを条件として頂きたい。 例えば日本神経学会のガイドラインや、10学会のガイドラインはかなりパーシャル なので、遺伝子診断がこれだけ進んでいる状態では、それが及ぼす影響をきちんと 明記して、国家的な規模のガイドラインの上でやっていくことをしていただきたい と思います。 ○金澤座長 ありがとうございます。  一見個発性に見える疾患というところが実は肝でありまして。大変大事な御指摘 をいただきました。ありがとうございました。事務局によく説明してから、また改 めて御意見を伺うようにいたします。  大分時間がたってしまいまして、先ほどの答えをもらいたいんです。つまり、申 請の更新のときの時期が一致してしまうことに対する何とかコメントをもらいたい と思います。今はこうなっているからということでもやむを得ないんですが、何か 声を出してください。 ○中田課長補佐 ただいま議論に上がりました、先生方に非常に更新時の御負担を いただいている様々な要因をきょういただきましたので、それらを事務局で整理し、 検討をさせていただきまして、御相談申し上げたいと思います。 ○金澤座長 ありがとうございます。それでは期待していましょう。  これで大体議題は終わったのでありますが、何か事務局から何か。今後の開催も あると思いますので。 ○中田課長補佐 今後の予定につきましては、追って御連絡させていただきたいと 思います。  以上でございます。 ○金澤座長 どうもありがとうございました。皆さん方から、大変貴重な御意見を たくさん頂戴いたしたと思います。実は、本日は冒頭にもちょっと言いかけました けれども、大臣が決まられて、そう時間がたっておりませんで、局長も何か飛び回 っているようですが、つまり、大臣に対してまだ御説明が十分でない時期でありま す。これから、どういう対応をしなければいけないかというのは、ちょっとまだわ からない部分がありますので、とてつもないことでない限りは、恐縮でありますが、 座長の私に任せていただければと思いますが、よろしくお願いいたします。  それでは、きょうの議論はここまでということにさせていただきます。どうも、 皆さんありがとうございました。 (以上) (照会先)        厚生労働省健康局疾病対策課  中田・藤村   TEL 03(5253)1111 内線 2981・2351