09/09/15 第26回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録      第26回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会               議事録                          平成21年9月15日                          厚生労働省 9階省議室 ○長岡補佐 それでは、定刻になりましたので、まだ先生が1名お見えでないですけ れども、ただいまより第26回「厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会」を開 催いたします。  本来であれば、ここで上田健康局長よりごあいさつを申し上げるところでございま すけれども、現在、別の会議に出席をしておりますので、この部屋へ到着次第いたし たいと思いますので、よろしくお願いいたします。  続きまして、今回委員会の改選がありましたものですから、改めて委員の先生方を 五十音順に御紹介したいと思います。  それでは、座席に沿いまして、まずは東邦大学医学部腎臓学教室教授の相川厚先生 でございます。  財団法人国際医学情報センター理事長の相川直樹先生でございます。  特定非営利法人日本移植者協議会理事長の大久保通方先生でございます。  国立成育医療センターこころの診療部長、奥山眞紀子先生でございます。  社団法人日本臓器移植ネットワーク医療本部長の小中節子先生でございます。  岡山大学大学院医歯薬総合研究科心臓血管外科教授の佐野俊二先生。後ほどお見え になられます。  公立学校共済組合近畿中央病院委員長、白倉良太先生でございます。  上智大学大学院法学研究科教授、町野朔先生でございます。  長野県立こども病院院長、宮坂勝之先生でございます。  日本私立学校振興・共済事業団東京臨海病院院長でございます、山本保博先生でご ざいます。  山梨大学学長特別顧問、貫井英明先生でございます。  本委員会の委員長でございます、東京大学大学院医学系研究科教授、永井良三先生 でございます。  それでは、皆様、よろしくお願い申し上げます。  本日は、本委員会の委員17名中、今、佐野先生はまだお見えでございませんが、 定足数を満たす11名の御出席を賜っておりますので、ここで御報告をさせていただ きます。  次に、事務局の職員を紹介させていただきます。  上田健康局長は後ほど参りますので、その際に御紹介申し上げます。  まず、疾病対策課長、難波でございます。  臓器移植対策室長、峯村でございます。  臓器移植対策室室長補佐の竹内でございます。  同じく、大竹でございます。  私、長岡でございます。よろしくお願い申し上げます。  次に資料の確認をさせていただきます。議事次第のペーパーをごらんください。配 付資料のところをごらんいただきたいのですが、まず資料1といたしまして、1−1、 1−2と2枚紙を付けてございます。  1ページ目が表になっておりまして「臓器移植の実施状況」。  資料1−2が普及啓発の状況について書かれた資料でございます。  資料2は、資料2−1、改正についての年表風の資料が1枚。  めくっていただきまして、法律の概要が資料2−2。少し細かい資料でございます。  資料2−3は、少し向きが変わりまして、横表でございます。比較表ということで ございます。  資料3は、別紙を含めて3枚となっております。普通のA4の紙が2枚と、最後、 別紙ということで横表の絵が描いてございます。  もしも、途中不備等がございましたら、事務局までお伝えください。よろしいでし ょうか。  それでは、議事進行を永井委員長にお願いいたします。  報道のカメラの方は御退席をお願いいたします。 (報道関係者退室) ○永井委員長 それでは、早速議事に入りたいと思います。  議事の1点目は報告事項でございます。最近の臓器移植の実施状況について、事務 局より御説明をお願いいたします。 ○長岡補佐 では、引き続き、私より御説明を申し上げます。  資料1−1をごらんください。臓器移植法に基づきます臓器移植の実施状況につい てでございます。  (1)の部分ですが、臓器移植法の施行後、平成9年から今年の3月31日までのデー タでございますが、脳死判定事例が82例、うち臓器提供事例が81例となってござい ます。その下に表が付いておるかと思いますが、細かいのですべての説明はここでは 省きますけれども、見方を御報告申し上げたいと思います。  心臓を例にとりますと、14名と書かれている部分があるかと思います。これが昨年 度、平成20年4月1日から平成21年3月31日までに行われた提供の件数でござい ます。  括弧書きが65名となっておるかと思いますが、これは臓器移植法施行後、平成9 年からの累計の数となっております。また、右の方を見ていただきまして、待機患者 数のデータとして載せてございますが、これは心臓ですと128名と載っておるかと思 います。これが今年の3月31日時点におきます、登録されております待機患者の数 ということとなっております。この表、1点補足でございますが、脳死下での提供、 また心停止下での提供を足し合わせた数字となっておりますので、御注意願います。  それでは、簡単ではございますが、資料1−1を終わりまして、資料1−2にまい ります。今度は普及啓発の状況ということで、1枚紙をまとめてございます。  厚生労働省におきましては、臓器移植に関する正しい知識の普及啓発ということを 行ってまいっておるんですが、そこで順次説明を申し上げます。  1番目が、いわゆるドナーカードの配布状況でございます。1つ目の○がドナーカ ードでございますが、これまで1億2,000万枚強配布をしておるところでございます。  その次の○ですが、臓器提供意思表示シール。これは保険証ですとか、免許証に張 ることができるシールでございますけれども、これも3,930万枚配布をしておるとこ ろでございます。  2番目が、そのほかに平成15年から被保険者証、これは健康保険の被保険者証の 余白を各保険者の判断によって、臓器提供の意思表示欄とすることなど、適宜使用し て差し支えないということとされておりまして、現在、保険者においてはシールを張 っていただくですとか、欄を設けるといった取組みがだんだん出てきておるという状 況になっております。  3番が、臓器移植に関する教育用普及啓発のパンフレットについてでございます。 これは平成16年からの取組みでございますが、移植医療に対する認識と理解を深め るため、意思表示できる年齢を今は15歳としておりますけれども、15歳に達する中 学校3年生向けにパンフレットを作成しまして配布をしておるということでござい ます。  4番目が、公共広告機構を活用した普及啓発。これはテレビコマーシャルですとか、 ポスターを平成17年度から公共広告機構の協力を得て実施しておるということでご ざいます。  5番目でございます。臓器提供意思登録システムについてでございます。これは先 ほどの1番のドナーカードとはもう一つ違った方法でということで始めたものでご ざいますが、平成19年3月より、社団法人臓器移植ネットワークのホームページに おきまして、臓器提供意思登録システムが稼働いたしました。これによって、インタ ーネット上で臓器提供の意思を登録することが可能となっておるところでございま す。  以上でございます。 ○永井委員長 ありがとうございました。本件、報告事項で特段議論を要する事項で はないと思いますので、本日の本題に進みたいと思います。  御承知のように、さきの国会で臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律が可 決、成立いたしております。本日は、改正法の内容をまず確認し、施行に向けた今後 の検討の進め方について御議論をいただきたいと思います。  初めに、臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律の概要につきまして、事務 局から御説明をお願いいたします。 ○峯村室長 それでは、臓器移植対策室長の峯村でございます。よろしくお願いいた します。  お手元の資料2−1という資料に「臓器移植法の改正について」というタイトルが 付いてございますが、これに沿いまして、今回、国会で成立いたしました改正法の内 容について、その経緯も含めて御説明をさせていただきます。  我が国におきます死体からの移植法制につきましては、昭和33年、角膜移植に関 する法律が最初にできまして、その後、昭和54年に角膜及び腎臓の移植に関する法 律が定められたところでございます。  その後、脳死体からの移植に関しましては、現行法の制定に至るまでさかのぼりま すと、この資料の一番上段に書いてございますが、臨時脳死及び臓器移植調査会での さまざまな脳死・臓器移植に関する議論までさかのぼることができるのではないかと 考えてございます。  平成4年1月に臨死脳死及び臓器移植調査会、いわゆる脳死臨調で答申が出されま して、脳死体からの臓器移植といったものは認められる。その答申を踏まえまして、 議員立法でさまざまな案が制定時も出されたわけでございますが、最終的に平成9年 6月、現行法の臓器の移植に関する法律が成立したところでございます。  その内容は、本人の書面による意思表示と、家族の同意の2つを要件として、脳死 判定及び臓器の摘出を行うことができるということでございます。そのほかに、臓器 売買の禁止ですとかさまざまな規定は設けてございますが、こういった内容に基づい て、我が国において脳死下での臓器移植を進める際の根拠法ができ上がったというこ とでございます。  この法律、平成9年10月に施行されているわけでございますが、その施行に当た りまして、附則の中に見直し規定が設けられておりました。法施行後、3年を目途と して、制度全般についての検討を行うという規定が置かれていたところでございます。 その後、施行までの期間は非常に短かったわけでございますが、施行後、第1例目の 脳死下での脳死判定・臓器提供が行われましたのは、平成11年の2月でございます。 これが第1例目ということでございます。  この第1例目からこれまでの間、脳死下での臓器提供は81件ということでござい まして、まだまだ件数的には着実に積み重ねておりますけれども、水準的には臓器移 植を求める希望者の数にはなかなか達していないという状況でございます。  また、本人の書面による意思表示を前提としておりますが、その書面による意思表 示が有効にできる年齢として、民法の遺言可能年齢を参考として、15歳以上の意思表 示を有効とするということにしておりましたことから、15歳未満の者の意思表示が有 効にできない、いわゆる脳死判定・臓器提供が認められないということが現行法の内 容となっているところでございます。  移植の状況、またその後のさまざまな議論を踏まえまして、改正法を議員立法で提 出する動きが具体化してまいりました。平成17年8月でございますが、与党の有志 議員によりまして、2つの臓器移植法の改正案(A案、B案)が衆議院に提出された ところでございます。  A案は今回成立した改正案でございますが、B案は意思表示を有効とする年齢を3 歳引き下げるという内容の改正案でございました。  その後、平成19年12月に、野党有志議員によりまして、臓器移植法の改正案のC 案が衆議院に提出されたところでございます。  C案は脳死の定義を厳格化する、あるいは生体移植等についての規定を明文化する といった規定を設ける内容でございますが、3案が衆議院に提出されまして、その後、 小委員会での参考人質疑を経ながら継続審議という扱いで推移をしてまいりました。  この間、国際的な動向といたしまして、平成20年5月、昨年の5月でございます が、国際移植学会がイスタンブールで開かれまして、死体ドナーを自国で増やして、 自国での臓器移植を増やすことを呼びかけるイスタンブール宣言をまとめる動きが ございました。  また、WHOにおいて、本年5月の総会で指針の改訂を行う、それに基づいて臓器 移植に関する議論を行うという動きもございました。このWHOの議論につきまして は、新型インフルエンザの影響によりまして、来年度5月以降に延期という取扱いに なっているところでございます。  こういった動きを経まして、今年の4月以降、審議が非常に急速に進みまして、平 成21年、今年の5月、与野党有志議員によりまして、臓器移植法改正案のD案が衆 議院に提出されました。これは小児への移植の道は開けますが、本人意思が不明な場 合の臓器提供については認めないという内容の法案でございます。  以上、4案について、衆議院の厚生労働委員会で審議が行われ、本会議において中 間報告及び討論がなされた結果、6月18日に採決が実施されまして、A案が可決と いうことになりました。  A案が参議院に送られたわけでございますが、その後、野党有志議員によりまして、 新たな改正案が参議院に提出されました。子ども脳死臨調の設置等を内容とする法案 でございます。また、7月、与野党有志議員によりまして、修正A案が参議院に提出 されました。これは脳死の定義について現行法どおりとするとの改正を行うものでご ざいます。  以上、A案と合わせて3案について参議院の厚生労働委員会での審議を経まして、 本会議で採決が実施され、13日にA案が可決、成立いたしました。その後、7月17 日に改正法が公布されたわけでございます。  改正法の具体的な内容でございますが、臓器の移植に関する法律の一部を改正する 法律概要というのは次のページに付けてございますけれども、法律の概要はわかりに くいところがございますので、横表の形でまとめたものが一番おしまいのページに載 せてございます。この内容についてお話しをさせていただきます。  臓器の移植に関する法律について、現行法と改正法を対比して比較したものでござ います。施行の順番に従いまして改正法の内容が書かれてございます。先ほど申し上 げましたとおり、改正法は今年の7月17日に公布されたわけでございますが、2つ の段階を経て施行される形になってございます。  第一段階目の施行とされるものとして、親族に対する優先提供の規定がございます。 現行法では、15例目の脳死判定・臓器提供の際に、親族への優先提供の取扱いが議論 になりまして、当面見合わせるという扱いになっておりました。実質禁止という扱い になっていたわけでございますが、改正法におきまして、親族に対する臓器の優先提 供の意思表示を認めるという規定が設けられたところでございます。  この規定につきましては、公布の半年後ということで、来年の1月17日に施行さ れることになっております。それ以外の規定につきましては、公布から1年後という ことで、来年の7月17日に施行されることになります。来年7月17日に施行される 内容でございますが、大きく4点ございます。  1点目は脳死判定、臓器摘出の要件でございまして、現行法では先ほど申し上げま したとおり、本人の生前の書面による意思表示が絶対的な要件であったわけでござい ますが、この要件に加えまして、本人の意思が不明な場合、拒否の意思表示をしてい ない場合にという前提が付いてございますけれども、家族の書面による承諾で臓器提 供・脳死判定を認めるという内容の規定が新たに盛り込まれたところでございます。  また、小児の取扱いにつきまして、現行法では15歳未満の脳死判定・臓器提供は できない取扱いになっておりましたが、この点につきましては改正法の規定に基づき まして、年齢に関わりなく脳死判定、臓器提供が可能となったということでございま す。  また、現行法には規定として設けられていない被虐待児への対応、普及・啓発活動 等の規定が新たに設けられております。  被虐待児への対応といたしましては、虐待児が臓器提供に紛れ込まないようにする ための方策を検討するという規定が、附則の規定として設けられてございます。  また、普及・啓発活動といたしまして、運転免許証等への意思表示の記載はこれま で根拠法令がないということで、免許証の中に意思表示欄を設けるということが難し かったということがあったわけでございますが、これについてもその根拠規定として 意思表示の記載を可能とするとの規定が設けられたところでございます。  改正法の内容につきましては以上でございまして、お手元に改正法の参考資料とい たしまして、参考資料1として現行法、参考資料2として現行法の施行規則、参考資 料3として現行のガイドラインがそれぞれお手元に用意してございます。  また、法律の新旧対照表は参考資料4ということで、下に現行法、上に改正法の法 律の条文を対比した条文をまとめた資料が付けてございます。  また、参考資料5として、国会での議論ということでどのような議論がなされたか ということで、後ほど検討課題の議論をさせていただくわけでございますが、詳細な 資料、参考にも資するということで、参議院本会議及び衆議院本会議における中間報 告から抜粋した形で主な質疑をまとめた資料を付けさせていただいてございます。  改正法の経緯及び内容についての説明は、以上でございます。 ○永井委員長 ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、御質問、 御意見おありの方はよろしくお願いいたします。  1つよろしいでしょうか。親族への優先提供については、早目に施行ということで ございますが、この考え方はどういうことでしょうか。 ○峯村室長 具体的にこれだけ施行時期が早まった理由というのについては、明確に は私ども把握はしていないのでございますが、法律の考え方としてやや施行までの検 討期間がそれほど時間を要さずにできるのではないかという考えがあったのかもし れませんけれども、これは私ども行政側の推測でございますが、そういった背景では ないかと考えてございます。 ○永井委員長 いかがでしょうか。  どうぞ。 ○相川(厚)委員 東邦大学の相川です。私は臓器移植ネットワークの東日本の実務 委員長をしていますので、実務委員会というのが2か月に1回開かれております。  親族からの優先提供が以前より問題になっておりまして、実際、1年ごとにどのぐ らいそういう件数が発生するのかということを調べたことがあります。  年間3〜4件の件数の方が、脳死下で提供する場合に親族に提供したいという意思 があるという大体それぐらいの件数がございました。だから、そういうことが影響さ れているのかもしれません。 ○永井委員長 いかがでしょうか。何か御質問、御意見はございますでしょうか。 ○相川(厚)委員 もう一つ、追加しますと、家族への優先提供ができない場合には お断りになる方がもうほとんどで、脳死下の提供もしないという御意見、お考えをお 持ちの家族の方が多いんです。もし御家族に腎臓を1つでも提供していただけるので あれば、場合によっては心臓とかほかの臓器も提供したいというような要望があった ことは事実でございます。 ○永井委員長 それは御本人がそういう意思を表明していらっしたということでし ょうか。 ○相川(厚)委員 脳死下での場合もそうですし、心停止下の場合には心臓、肺とい うわけにはございませんが、もう一つの腎臓はほかの方にという御要望があった。 ○永井委員長 いかがでしょうか。よろしいですか。  そうしましたら、上田局長が御到着ですのでご挨拶をお願いいたします。 ○上田局長 どうも済みません。国会業務で遅れてまいりまして、また議論の途中に 割り込んで申し訳ございません。一言ごあいさつを申し上げます。  委員の皆様方には、本委員会に御参集いただきまして、誠にありがとうございまし た。  もう既に説明がございましたように、臓器移植につきましては、平成9年10月の 臓器移植法施行から現在までに脳死判定が行われた事例が82例、そのうち臓器提供 に至った事例は81例でございます。  徐々に移植医療の実績は積み重なってきていると考えております。このような中で さきの国会におきまして、本人の意思が不明な場合であっても、家族の同意により脳 死判定・臓器提供を可能とすることなどを内容とする臓器移植法の改正法が成立した わけでございます。仔細については先ほど事務局から少し説明をしているところでご ざいますけれども、この法改正によりまして、新たに15歳未満の小児からの臓器提 供などが可能になるということでございます。  私どもといたしましては、制度の適切な運営のための厚生労働省令やガイドライン の改正、制度の普及・啓発の在り方などについて検討していきたいと考えております。 委員の皆様方の御協力をいただきたく、改めてお願いを申し上げる次第でございます。  また、こういうことから委員の皆様方におかれましては、国民の関心の高い本件に つきまして、法施行の期限もありますが、十分に議論をいただくため、忌憚のない御 意見をちょうだいしたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたしまして、私 のあいさつと御礼に代えさせていただきます。  どうぞよろしくお願いを申し上げます。 ○永井委員長 どうもありがとうございました。では、資料2についてよろしいでし ようか。  御質問、御意見がございませんでしたら、続きまして、改正法の施行に向けた検討 の進め方につきまして、事務局より資料の説明をお願いいたします。 ○峯村室長 それでは、改正法の施行に向けた検討課題及び検討体制につきまして、 資料3に基づきまして説明をさせていただきます。  まず、改正法の施行に向けた検討課題といたしまして、1ページ目に大きく5つの 課題を掲げてございます。この課題は、改正法の今回改正された内容を踏まえて、施 行に向けて検討をすべき課題ということで、私ども事務局の方で取り上げたものでご ざいまして、言わば今後この委員会を始めとする審議の検討の際のたたき台というこ とでございます。  したがいまして、つけ加えるべき課題等ございましたら、それは遠慮なく御意見を ちょうだいできればと思ってございます。  検討課題として、まず施行が一番早い親族への優先提供に関する課題が1番目とし て掲げてございます。  親族への優先提供に関する課題といたましては、大きく3つの課題を掲げてござい ます。まず1点目として、親族の範囲についてということでございます。  先ほど今回の法律改正に基づきまして、親族の優先提供の規定が新たに設けられた というお話をいたしましたが、法律の条文上は、親族に対し当該臓器を優先的に提供 する意思を書面により表示することができるという規定にとどまっておりまして、親 族の具体的な範囲については、明文上の規定は置かれておりません。  したがいまして、この範囲をどのように考えるかということを検討しないといけな いということでございます。国会での審議等でこの点につきましては、提案者の議員 の方から、一親等及び配偶者、すなわち親子と配偶者というふうにかなり限定的に考 えているという答弁がございましたが、そういった法律改正の提案者の意思も踏まえ つつ、この親族の範囲についてどう考えるのかということでございます。  一親等ということでございますから、兄弟は二親等でございますので、兄弟等は含 まれないという扱いになろうかと思います。  また、親子、配偶者ということですと、養子の扱いはどうするのか。事実婚の扱い はどうするのかといったこともこの親族の範囲の検討の際の課題として出てくるの ではないかと考えてございます。  また、親族への優先提供意思の取り扱いについてということでございますが、これ は具体的にこの提供意思の表現の仕方について、どのように取り扱っていくかという ことについて議論しないといけないのではないか。  例えば親族への優先提供について、特定の親族を名指しして、それだけに限るとい う形にするような意思表示がどうなのか。あるいは先ほど相川委員からの話がありま したが、親族以外には提供を認めないというような意思表示があった場合、それをど う見るのかといった検討もしないといけないと考えております。  また、3番目はあっせん手続についてということでございますが、優先提供する親 族については、例えば事前にネットワークのレシピエント登録を必須とするのかどう かといったあっせんの手続についても課題として議論する必要があるのではないか と考えております。  引き続きまして、2番目として、小児からの臓器提供に関する課題でございます。 この部分がこの改正法の国会審議でも非常に大きく議論がされたところでございま すが、そこには3点課題として掲げてございます。  まず1点目は、小児の脳死判定基準についてということでございます。現行の臓器 移植法に基づきまして法的な脳死判定をする基準といったものは定めておりますけ れども、小児の脳死判定につきましては、国会での議論等を踏まえまして、小児の特 性とも加味しながら、どのような基準で脳死判定をしていくのか、あるいは臓器提供 をするのか、そういう議論をしていくということが課題としてまず挙げられると考え ております。  また、2番目として、被虐待児の取扱いということで、実際に虐待に遭ったお子さ んが脳死判定の現場に紛れ込まないようにするための方策。どのような方策を講じて 虐待児の紛れ込みを防ぐのか。また、虐待の対応の定義といったものについてはどう 考えるのかといったことについても議論をする必要があると考えております。  3点目でございますが、これはやや法律論的な話になりますけれども、15歳未満の 子どもさんにつきましては、有効な意思表示ができないということになっております が、拒否の意思表示は法律上可能とされております。  したがいまして、拒否の意思表示の在り方についてどのように考えるのかといった 課題について、議論をする必要があると考えているところでございます。  3点目でございますが、本人が意思表示していない場合における臓器提供に関する 課題とございますが、今回、本人意思が不明な場合に、家族の承諾で脳死判定・臓器 提供を認めることになるわけでございますが、その際、本人の意思表示が不明である ということについての確認について、どのような手順で確認をするのかということに ついて検討する必要があるのではないかと考えております。  また、2番目として、有効な意思表示ができない者の取扱いについてとございます が、現行のガイドライン上、例えば知的障害者につきましては、有効な意思表示がで きないということで、当面、脳死判定・臓器提供を見合わせるという取扱いにしてい るところでございますが、今後も引き続きそういう取扱いを継続してよろしいかどう かということについての議論をする必要があると考えているところでございます。  4点目は、普及啓発に関する課題ということでございますが、1点目は臓器提供意 思表示カードについてでございます。意思表示カードについては、その表示内容につ いて優先提供等も新たに認められたことを踏まえて、どのような形での意思表示カー ドの内容にするかといった議論をする必要があると考えております。  また、意思表示登録システムについてということで、現在、インターネットで意思 表示の登録を受付けるシステムが稼働しておりますけれども、拒否の意思表示といっ た内容についても、今回そういった点、あるいは優先提供の意思表示、そういったも のについてのシステム上の対応をどうするのかといった課題についても議論する必 要があると考えてございます。  また、普及啓発の対象者と啓発方法についてということで、例えば現在、15歳の中 学生について、学校現場でパンフレットを配っているというような取組みをしている わけでございますが、今後、小児への脳死判定・臓器提供が行われるということを踏 まえて、そういった年少者への普及啓発といったことについての取組みをどのように 考えていくのか。例えばそういったことも課題として議論する必要があるのではない かと考えてございます。  また、普及啓発の内容についてということでございますが、さまざまなパンフレッ ト等で脳死なり臓器提供の仕組み、そういった点についての普及啓発をしてきている わけでございますが、国会でのいろいろな議論、また小児の脳死判定が行われるとい うことを踏まえて、普及啓発の内容についてより適切な、さまざまな議論を踏まえた 内容に基づいて普及啓発の内容を決めていくということを議論する必要があるので はないかと考えております。  最後、5点目といたしまして、これはその他ということでほかにもいろいろ論点が あるということを考えておりますが、とりあえず2つの課題を掲げてございます。  1点目は、ドナー適応基準及びレシピエント選択基準の見直しについてということ で、これはネットワークにおきまして、公平な観点から臓器提供の移植の対象者を選 ぶ際の基準に、今回優先提供なりあるいは小児の脳死判定が認められていたことを踏 まえて、その基準についても見直す必要があるのではないかという論点でございます。  また、2番目の臓器移植に係る体制整備については、例えばコーディネーターの体 制をどう考えるのか。あるいはそのコーディネーターに限らず、臓器移植に関わる体 制全体について、どのような体制を構築していくのか。そういった論点についても議 論する必要があるのではないかと考えているところでございます。  検討課題として、今、1番から5番まで掲げさせてございますが、その検討課題を 踏まえて、具体的な検討の進め方ということで、次のページの検討体制というところ に移りたいと思います。  現行法の施行の際の議論も踏まえながら、今後の議論について以下の体制で検討を 実施することにしてはいかがかということで、進め方についての案を書いてございま す。  1点目でございますが、重要事項につきましては、厚生労働省からの諮問等に応じ まして、この厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会で審議をするということで ございます。したがいまして、今回の改正法の議論に伴いまして、省令あるいはガイ ドラインの見直しといったことが行われるわけでございますが、その最終的な内容の 決定については、この臓器移植委員会で審議をして決定をするということでございま す。  2点目の内容でございますが、この委員会での審議に当たりまして、個別の専門的 なさまざまな観点からの検討につきましては、事務局において設けた作業班、この作 業班で論点を整理して、方向性をある程度明らかにした上で、その内容をこの委員会 に報告をして審議をしていただくという進め方にするということでございます。  また、医学的な知見の収集が必要な事項、小児の脳死判定基準等、そういった医学 的知見の収集が必要な事項につきましては、厚生科学研究に基づく研究班での審議も 活用するということでございます。  さまざまな専門的な検討が必要になりますので、このような体制で検討を行うこと としていかがかということでございます。  次のページに体制図を載せてございますが、その体制図について説明をさせていた だきます。  今、申し上げた内容を1つの絵として示したものでございますが、主な検討課題と して一番左に、先ほど申し上げた1ページ目の課題を載せてございます。その検討課 題について、専門的な検討を行う体制として、作業班と研究班で論点の整理を行って いただくという体制でまず考えております。  作業班といたしましては、親族の範囲についてどのように考えるのか、あるいは意 思表示の内容についてどう考えるのかといった法律的な議論が主に内容となる意思 表示等に関する作業班を1つ置きます。  また、普及啓発に関する作業班ということで、ドナーカードの様式なり、あるいは 普及啓発の方法や内容について論点を整理していただく作業班、普及啓発に関する作 業班といったものを置かせていただくということにしております。  臓器ごとによる作業班ということで、親族優先や小児からの臓器提供に伴いまして、 レシピエント選択基準を議論する作業班を臓器ごとに7つの作業班を設けて議論を するということでございます。  小児の脳死判定基準、臓器提供施設の体制の整備について、知見をまとめるといっ たことで、厚生労働科学研究の研究班での検討も行うということでございます。  こういった内容について、逐一、厚生科学審議会のこの委員会の方に検討内容がま とまりましたら報告を受けまして、その内容についてこの委員会で審議をして、その 上でパブリック・コメント、おおむね1か月ほど要すると考えておりますが、それを 経て省令、ガイドラインの策定をするということで進めていきたいと考えてございま す。  作業班は大体10名以内の人数の作業班になろうかと思いますので、全部で9つの 作業班、研究班、この臓器移植委員会、合わせておおむね100名程度の陣容でこれか ら議論を進めていくということになろうかと思っております。  2ページ目に移りまして、改正法の施行に向けたスケジュールでございますが、施 行期日が、先ほど申し上げましたとおり2段階に分かれているということでございま して、改正法の中でまず優先的に施行がくる優先提供の部分について議論の開始をし たいと考えてございます。  1月に改正法を施行するということを考えますと、年内に省令やガイドラインの案 文を固めるというスケジュールで議論しないといけないと考えております。パブリッ ク・コメントで大体1か月ほど要するということを考えますと、この臓器移植委員会 での議論も委員の皆様大変お忙しい中非常に恐縮ですが、月1回程度のペースで議論 をし、その間、各作業班と厚生労働科学研究班をかなりの頻回のペースで動かすとい うことで議論を進めることにしていきたいと考えております。  また、年が明けましてからは小児の脳死判定の在り方等を含めた全体の施行に向け た議論を進めまして、7月17日の全面施行に向けて検討を進めていきたいと考えて おります。その際もおおむね月1回程度のペースで議論していくということで私ども は考えておりますので、非常にハイペースの議論になりますけれども、よろしくお願 いをしたいと思っております。  若干長くなりましたが、改正法の施行に向けた検討課題及び検討体制に関する説明 は以上でございます。 ○永井委員長 ありがとうございました。では、ただいまの御説明に関しまして、御 意見、御質問等ございましたら、お願いいたします。  山本委員、どうぞ。 ○山本委員 親族の範囲について御質問させていただきたいと思います。  我々、救急の現場にいると、こういう親族とか、後から何で手術したとか、どうな ったんだと怒ってくるのは、もうお亡くなりになった後、あるいは手術をした後、結 果の後から出てくる方がトラブルになることが多いと感じております。  その中で、もしこういう親族というのが後から出てきて、私はそういう意見ではな かったというようなことが起こってきたときに、では親族というのは具体的には、今、 親、配偶者とありましたけれども、親戚と親族の違いはどこにあるのかとか、親類と いうのは何なのかとか、地方によってそれは違うんだろう。  東京などは非常に希薄になっている。ところが、地方に行けば、この親族という定 義がまた違うのではないか。いろいろなことを考えますけれども、これは法律的には どうなっていって、今回のこれはどういうところを当てはめようとしているのかどう か、その辺についていかがでしょうか。 ○峯村室長 臓器移植対策室長の峯村でございます。この点についてまさしく作業班 で論点の整理をして検討していただくことになるわけでございますが、今、先生がお 話しになりました、親族の範囲あるいは親類とかといった法律上の定義の話でござい ますが、臓器移植法上、こういった内容について規定がございますのは、脳死判定・ 臓器提供の際に承諾を与えます家族、遺族といった内容が法律上の規定としてござい ます。  その範囲につきましては、ガイドラインにおいて規定がされておりまして、かなり 広い範囲で認められております。また、ガイドラインの中ではございますが、生体移 植につきまして生体移植の範囲といったものについても規定をしてございます。これ は六親等以内の親族を基本として規定されていたかと思います。  今回、優先提供として法律に盛り込まれた際の親族というものにつきましては、定 義規定が置かれておりません。また、家族、遺族とは別の表現になっておりますので、 法律上はその範囲については別途の定め方をする必要があるのであろうと考えてお ります。  また、その範囲につきましては、国会等で質疑に対する回答という形で先ほど御紹 介をいたしましたけれども、提案者の議員の方から、一親等及び配偶者という一つの 考え方が示されております。言わば、限定的に認めようという提案者の意思であった と私どもは理解をしております。その際に、親族の範囲を提案者自身に沿って決めて いくことで基本的にはそういう方向で議論していくのかと思いますけれども、親族の 範囲について現場の状況も踏まえまして、どのような範囲で認めるのかという論点の 整理は作業班できちんとしないといけないだろうと。その際、確認の方法は当然ある と思います。いろいろな論点が出てくると我々は考えております。  当然、医療現場での確認ということも踏まえまして、できるだけ混乱が起きないよ うに、また問題が生じないような仕組みを検討していかないといけないと考えており ます。 ○山本委員 法律的には親族というのは、定義はないんですか。 ○峯村室長 民法上の親族という規定と臓器移植法の親族規定とはリンクして規定 されているかという点については、必ずしも明確にリンクをしてそれを引いてくると いう考え方にはなっていないと理解しております。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。  町野委員、どうぞ。 ○町野委員 私は法律ではございますけれども、刑法でございまして、余り民法の方 はあれではないんですが、お話にありましたとおり、親族という言葉がほかの法律あ るいは法令の中で使われたときは民法のそれに従うという原則が基本的にあるんで す。それがまず1つありまして、したがって生体移植の場合の親族というのも、これ は法律ではありませんで、もともとは移植学会のガイドラインですけれども、それも 法律上のそれに従ったものになっているということなんです。  遺族については法律上の定義はないということがあります。したがいまして、意思 表示といいますか、脳死判定に同意する、あるいは臓器提供に同意する、どの範囲の 人がそれにできるかということについては非常にブランクといいますか、全員のもの が必要かということはない。  ただ、親族ということでおおむねまとめた上で、これは前にガイドラインをつくら れたときにお考えだろうと思いますけれども、その中の1人の人が例えば異議を申し 立てたことについては、恐らく現場としてはこれをOKするわけにはいかない。そこ はネットワークの方にお伺いになった方がいいだろうと思いますけれども、そういう ことがあるだろうと思います。  今回非常に問題なのは、優先提供の範囲を親族という言葉を使って法律が表現して いるということです。だから、これだけをもしそのままやりますと、親子ばかりでは なくて、あるいは配偶者の範囲外のおじさんとかそこらについても一応文言上はもし これが民法の親族の範囲だとするとそうなっているわけです。それを国会答弁の中で は、その2つに限っているということで、ではこれはどうなのかということが1つ問 題です。  だから、それは最後に御説明がありましたとおり、恐らくここで使われている親族 という言葉は、必ずしも民法の親族と一致するものでないという了解でなければこち らは絞ることができない。  もしこれが民法上の親族の概念と同じであるという前提に立つならば、それを行政 的なガイドラインで絞るということは法律違反ですからそれはできないという話に なると思います。ですから、その辺の議論がまず必要だろうと思います。  以上です。 ○永井委員長 ほかにいかがでしょうか。  宮坂委員、どうぞ。 ○宮坂委員 長野の宮坂です。検討体制の3ページのところに書いてある、小児の脳 死判定基準についてですけれども、御承知のようにたしか平成9年ですから、竹内先 生を中心に小児脳死判定基準という非常に立派なものができているわけですが、ここ での取り扱いはそれをどうするかということを検討するのか、または全くゼロから脳 死判定基準をつくろうというお考えなのか、その辺をお聞きしたいと思います。 ○峯村室長 これまでに厚生科学研究に基づきまして、6歳未満の脳死判定基準につ きまして竹内先生が中心になってとりまとめられております。それについては、私ど も1つの知見として考えているところでございますが、国会での審議等を踏まえて、 特に今回小児の脳死判定の基準につきましては、そういった竹内先生の知見も1つの 知見として考えつつ、小児脳死判定基準についての検討を進めていく必要があるので はないかと考えておりまして、今回研究班での議論をするということで考えていると ころでございます。 ○永井委員長 貫井委員、どうぞ。 ○貫井委員 一応、研究班の代表で、小児脳死判定基準も検討することになっており ますが、判断基準を全く新しくこれから検討するというのは現実的ではないと思いま す。来年の7月に実際に法律が施行されるわけですから、2〜3月ぐらいまでに現場 が混乱しないような判定基準をつくりたいと思っています。当然、竹内基準、その後、 平成18年でしょうか町野先生が代表者だった研究班で、小児脳死判定基準をもう一 度再検討しているんです。そういうしっかりした基準がありますので、それを基にし て問題点を更に検討して、しっかりした基準をつくりたいと思っております。 ○永井委員長 どうぞ。 ○相川(直)委員 先ほどの親族のことに戻ってよろしいですか。相川直樹です。  実は、親族に関しましては、結果的にこのような法律ができたということですけれ ども、以前この委員会でもいろいろな意見が出たことを記憶しております。  今、町野委員がおっしゃったようなことは非常に大事なことですし、また、相川厚 委員が現場のことで少しお話がありましたけれども、特にこれについては施行日が早 くなっておりますので、作業班でかなり慎重にしっかりしたものをつくっていただき たいと思っております。  先ほどの法律の趣旨説明においては提案者が一親等というお話がありましたが、ご 説明の中でも、では養子をどうするのかということもありますけれども、場合によっ ては養父ですね。逆に臓器を希望する人が親になったり子どもになったりというよう な実際の問題が出てきて、倫理的にも問題が起こることがあり得るのかなと思ってお りますので、ここに関してはいろいろな状況を見つつ、ガイドラインなどをしっかり つくっていただきたいと思います。  特に私はよく知りませんでしたが、町野委員からお話がありましたけれども、民法 上の親族の定義を適用するのかどうかということ。血族と姻族というのがございます ね。血族と姻族に関してもしっかり分けていかないといけませんし、臓器移植を必要 とするような病気が発病してから姻族になったりとか、養子縁組をしたとか、いろい ろなことが考えられますので、その辺のところもしっかり作業班で検討していただき たいと思います。 ○永井委員長 大久保委員、どうぞ。 ○大久保委員 本当に親族の優先提供は日数がないので急いでやっていただきたい と思います。親族の範囲もあるんですけれども、実は年齢の問題も非常に大きいと思 うんです。今までの法律においては、意思表示ができる年齢ということで15歳以上 という規定になっております。今後、優先提供についての年齢制限をどうするのかと か、反対に提供を受ける側の年齢はどうするのか。年齢の問題についても是非御議論 をいただきたいと思っています。  私は実は親族の優先提供についてはここで10か月ぐらいずっと議論をしましたけ れども、そのとき反対をさせていただいた一番大きな問題は、移植を必要とする子ど もさんがいる親御さんが、子どもさんのために自殺をするのではないかとか、非常に その心配をしたものですから、そういったことも含めて年齢の危惧もされますので、 是非年齢も含めて議論をしていただきたいと思っています。 ○永井委員長 小中委員、どうぞ。 ○小中委員 現状の家族の臓器提供承諾につきましては、法律の中に二親等と同居し ている親族という表現を中心しながら総意をまとめるという形が書かれております ので、現在におきましては、先ほどお話がありました、血族、姻族を含めた戸籍とい うことを中心にしながらお話をして総意をまとめていただいているというのが現状 になります。  今回、どのような形で決められるかわかりませんが、例えば養子のことであります とか、事実婚でありますとか、さまざまなことが検討された結果決められることでは あるかと思います。続いて私どもが現状で手続的に非常に困りますのは、本当に法に 定められました、ガイドラインに定められました範囲なのかどうかということを確認 するということが非常に難しいことになるだろうと思っておりますので、昼夜を問わ ずこういう状況は出てまいりますので、昼夜、休日を問わず確認できる方法というと ころを御検討いただけますように、どうぞよろしくお願いいたします。 ○永井委員長 相川委員、どうぞ。 ○相川(直)委員 混乱しているかもしれないんですけれども、親族に対する優先提 供の親族の範囲と、家族が承諾するかどうかというところの家族あるいは親族とは、 やはり区別して討論をした方が混乱しないと思います。 ○永井委員長 いかがでしょうか。提供について御意見いただければと思います。  町野委員、どうぞ。 ○町野委員 これは作業班に振られたときも、どうやって考えたらいいかというのを ある程度ここで決めておいていただきませんとかなり混乱するだろうと思うんです。  1つ問題は、先ほど申しましたとおり、まず提供先の親族というのを立法者の意思 としてというか、議事録などを見まして、恐らく国会の議論ではこの説明に対してそ れでは狭過ぎるというような異論はなかったということです。そうすると、それが立 法した方の意思なのであって、ここで言われている親族という言葉というのも、民法 にいう親族と同じではなくて、非常に近いものに限ろうというのが立法者の意思であ るというぐらいの理解がまずないと、そしてそれに従って作業するんだということで ないということになると、新たに全部親族ということで、民法と同じだということで 作業しますと到底まとまる話ではない。だから、それをここらでまず確認はしておい た方がよろしいのではないかと思います。 ○永井委員長 その場合にはどういう定義の仕方がありますか。 ○町野委員 これは独自の問題という、民法の定義には従わないという話だろうと思 います。 ○永井委員長 大久保委員、どうぞ。 ○大久保委員 12年前に最初の法律ができたときに、15歳未満の話がありましたね。 先生も御議論された。あのときもたしか国会で15歳以上という答弁が出ていました。 それを尊重する。勿論、民法上の問題もあったと思うんですけれども、国会答弁で提 案者が国会の中でちゃんと言明したことについては最大限尊重するというのが一番 の筋だと思うので、今回の法律についても優先提供については本当に限定したところ で認めようというのが立法者の趣旨ですので、やはりそこは国会答弁における配偶者 と一親等というのは尊重すべきだと思います。 ○永井委員長   町野委員、どうぞ。 ○町野委員 私もそのように思うんですけれども、意思表示年齢については、別に法 律の中にないんです。意思表示をすることはできるという、要するに表示したときに は提供を受けることができるというのがあるだけです。  だから、その解釈はいろんなところで委ねられておりまして、例えばもし15歳と いうのが国会で出たものだとして、それが本当に正しい解釈か実は問題があるわけで す。裁判上、それを採用するとは限らないですから。大体採用するだろうとは思いま すけれども。  こちらの方の親族の優先提供の方では2つ問題があって、これは恐らく前にかなり 疲労困憊の議論を重ねたときの例というのは腎臓の提供だったと思いますけれども、 提供先として指定されたのがおじさんか何かでございまして、一親等でも何でもない、 かなり遠い関係にあるわけです。そのときにネットワークに登録はしていなかったと いう段階でそれを認めたというケースがあって、それはもうやらないようにしようと いうのが恐らく立法者の意思だということでございます。  今のようにネットワークの登録を必要とするかどうかについて、これを必要とする という具合にしたとしても、別に優先提供の基本原則に劣るわけではないですから、 これを登録しておけばその人を優先することもあり得るよという話ですから、それは OKな話なんです。問題は、親族と法律の条文で書かれているのに、それを親子とか 配偶者という具合にしてしまって、これで法律に違反しないかという問題で、この点 はかなり大きな問題なんです。  ですから、ここの方で定義を、つまりここで言われている親族の定義というのは民 法のそれではないというような考え方をとらない限りは、なかなかガイドラインとい いますか、そちらの方もやり切れないところがあるだろうという話です。 ○永井委員長 山本委員、どうぞ。 ○山本委員 私も全く同感でございますけれども、ここで親族というのは2つだとい うことをガイドラインに載せても、それは民法上親族というのは違うといった場合に、 ここのガイドラインというのは世間では通用しなくなるのではないでしょうか。 ○永井委員長 いかがですか。 ○町野委員 ですから、ここで言われている親族というのは民法上の親族ではないと いう解釈なんです。それをとらない限りは無理であろうと。だから、それがもし受け 入れられなくて、世論が余りにも狭過ぎるというのだとするならば、これは不当だと いうことになるでしょうけれども、国会でやられた議論の中ではこのような狭い範囲 での、言わば近い関係の人について認めるということについて、異論はなかったとい うことを踏まえた上で議論すべきではないかという話だろうと思います。 ○永井委員長 いかがでしょうか。その基準は時代に応じて変えることはできるでし ょうか。そのときの手続がどうなるのか。 ○大久保委員 確かに難しいとは思うんですけれども、国会だけではなくて、いろん なところで立法者が特にこの優先提供に対しては配偶者と一親等に限るということ を何度も強調をしていたということが多いと思うし、おっしゃったように、それに対 して反対の意見が、優先提供自体が反対という方はいらっしゃいましたけれども、一 親等と配偶者に限るということを反対してもっと広げようといったことを国会、それ 以外のところでも出たという記憶は、私もいろんなところへ行って話をしましたけれ ども、ほとんどないので、そういう意味では先生がおっしゃるように、ここの親族に ついては臓器移植法に限るということで、立法者の考え方を踏襲するのが一番いいの ではないかと思います。 ○永井委員長 どうぞ。 ○峯村室長 参考資料5の冒頭にも付けさせていただいておりますが、親族への優先 提供については、公平性の観点という臓器移植法の基本理念があるわけでございます が、これとの関係で反しているのではないかという御質問、意見がありまして、それ に対する答弁として、先ほど申し上げましたような提案者の答弁があったということ であります。  その答弁のやりとりについて異論がなかったかどうかというよりも、むしろそれで 議論が終わってしまっているといった方が正確なのかもしれません。深い議論はされ ていないという状況の方が正確だと我々は考えております。 ○長岡補佐 補足をさせていただきますが、法律上親族と申しますと、民法上でござ いますが、先ほど御議論に出ましたが、血族が六親等です。姻族で三親等ということ になっている。これが民法の一般的な親族の解釈だと。  もう一方で、こちらの臓器移植法の国会における審議におきましては、一親等また は配偶者に限ってこれを認めるという形で、これは国会の御議論ですので、どうなっ ているんでしょうかという形で質問がなされて、それに対する回答がなされたものが 今の一親等と配偶者ということでございまして、その後、特段再質問ですとかといっ たことがなくそのまま議論が進みまして、最終的に改正法が国会で可決をされたとい う経緯になっておるということでございます。  先ほど相川委員から分けて議論すべきという家族の範囲なんですけれども、これは 確かに親族とはまた違った文言になっておりまして、家族または遺族は先ほど小中コ ーディネーターから御説明があったとおり、基本的には二親等、同居の親族といった ものの中から、いわゆる喪主になられる方がその方々の総意をまとめてくださいとい う形で実務が回っておりまして、これについても国会で触れる機会があったようなん ですけれども、その是非については、国会の質問は特段なかったと記憶しております。  以上です。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。 ○相川(厚)委員 東邦大学の相川でございます。先ほどお話ししましたように、日 本臓器移植ネットワークの実務委員会で、これも以前のおじさんの問題で問題になり まして、少なくとも登録をしていない患者さんに移植するのは間違いではないかとい うことが1つ。  もう一つは、シンプルに実務をしていくには、少なくとも一親等、親子関係、婚姻 関係というものでない限り、現場ですぐ脳死下の対応をするということは非常に難し いことになるのではないかという非常に実務的な話がございました。  だから、実務委員会の中では、できれば立法者の思案どおり、親子関係、一親等、 婚姻関係にある方ということに限定していただきたい。その方が実務的に非常に混乱 しないで臓器移植の実務ができるという検討がございました。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。 ○相川(直)委員 これも是非作業班で検討していただきたいんですけれども、国会 審議の場では「その範囲を親子と配偶者の限定しつつ、親族への優先提供を認めるこ とにした」との答弁が5ページに書いてありますが、実際に今度は指定する場合、つ まり優先されるレシピエントを指定する場合には、「親子」とか書くのでしょうか。 実際には具体的な名前を指定する場合が非常に多いのかなとも思いますし、あるいは 一親等ならばだれでもやってくださいと、後は配偶者1人しかいませんから、配偶者 と一親等とか書く場合もあるんでしょうけれども、実務的には実際に病気で悩んでい る人、臓器提供が必要な方を具体的に指名するような形になるのかなとも思います。  そのようなところもどのようにしたら現場で混乱しないかということも含めて、作 業班でよく検討していただきたいと思います。 ○永井委員長 家族性の病気で子どもが2人とも心筋症という状況もあり得ます。そ ういうときにどのように考えるかですね。いわゆる指定、指名ということができるの かどうかということも多分課題になると思います。  奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員 先ほど年齢のことが出たんですけれども、年齢のことで1つ。 ○永井委員長 その前に親族のことをお願いします。 ○奥山委員 親族に関係するのですけれども、ここで言っているドナーの方とレシピ エントの年齢をということはきちんと定義をしていただかないと、それこそ親族が一 体どこの範囲かということにも関係してくるだろうと思います。  もう一つは、先ほどは親族と家族は違って、提供する方の家族の方の話は二親等で あり、喪主がまとめるということをおっしゃっておられたし、ガイドラインにもそう 書いてあるのですけれども、対象に子どもが入ったときには、喪主がまとめるという のは非常に危険だろうと思っています。  やはり個人の方々の意見をきちんと聴取しないと、父親に母親が引っ張られて自分 の意見が言えないということはかなり多いので、その辺はきちんと考えていかなけれ ばいけない範囲かなと思いました。 ○永井委員長 家族の同意の問題はまた後で議論したいと思います。  親族のところは今までの御意見をお聞きしますと、配偶者と一親等を基本とすると いうことで、後はワーキンググループにお願いしてよろしいでしょうか。更にワーキ ンググループの中でもいろんな議論が出てくると思いますが、ここの委員会としては 立法側の意思を尊重するということにしたいと思いますが、委員の先生方、そういう 理解でよろしいでしょうか。 (「はい」と声あり) ○永井委員長 それでは、また町野先生が委員に入られると思いますけれども、よろ しくお願いしたいと思います。  それでは、ただいまの御発言にありました家族の同意における家族の範囲です。こ れについて御意見をお伺いしたいと思います。これは立法の意図というのはどの辺に あったのでしょうか。これに関する記録は残っていますか。 ○峯村室長 今、奥山委員の方からお話のありました家族の範囲について、特段議論 はなかったかと理解しております。ただ、実務の話といたしまして、先ほど小中委員 の方からも話がありましたけれども、遺族及び家族の範囲に関してガイドラインで規 定がございます。参考資料3の中にガイドラインの規定がございますけれども、それ の第2のところに遺族及び家族の範囲が書いてありますが、原則として二親等、配偶 者、子、父母、孫、祖父母及び同居の親族の承諾を得るものとする。  その承諾を得た上で喪主及び祭祀主宰者となる。これは法事等を主宰する方という 理解でございますけれども、そういった方々がその総意、全体をとりまとめるんだと いう内容でございまして、小児の場合についても、この形で進めるのかどうか、どち らにしても明確な議論は国会ではされていませんでしたけれども、現状の取扱いはそ ういう取扱いになっているということでございます。 ○永井委員長 奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員 その場合の父母というのは、親権者という意味でしょうか。 ○峯村室長 ここで書いているのは親権者という意味と理解しています。 ○永井委員長 相川委員、どうぞ。 ○相川(直)委員 今のご説明の中で更に検討していただかなければいけないのは、 現行法では、本人の生前の書面による意思表示があって、家族が拒否しないというと ころですね。今度の改正法の中の本人の意思が不明あるいは拒否の意思表示をしてい ない場合であって家族の書面による承諾があることというときの「家族」と、現行法 の家族が拒否しない場合の「家族」については、今回の改正法では本人の意思が不明 なときに限った場合ですけれども、「家族の書面による承諾」というところはかなり 違うことになるかもしれません。  ですから、そのときの現行法でのガイドラインの「家族」がそのまま本人の意思が 不明であり、「家族の書面による承諾がある」の「家族」と一致してよいのかどうか ということも慎重に御検討いただきたいと思っています。 ○峯村室長 それも含めてまた議論を作業班の中で検討させていただきたいと思い ます。 ○永井委員長 町野委員、どうぞ。 ○町野委員 確かにおっしゃるとおりなんですが、現在の法律では本人の同意が原則 ですから、家族がそれに対して異議を申し立てない以上OKなので、それはセカンダ リーなものだという扱いなんです。だから、遺族が仮にだれもいなかったときについ ては、現行法では反対する人がいない以上は、本人がイエスと言っている以上提供で きるという。しかしながら、実際の運用では、遺族の積極的な承諾を要求しておりま すし、書面も承諾書ということにたしかなっているはずですね。  ですから、これは法律違反だという説もあるんですけれども、そういうことになっ ている。そういう運用をされていて、しかし大きな反対というのは今のところないよ うに思います。そのように考えますと、要するに現行法の下では、遺族のオプティン グインを要求しないにもかかわらずオプティングインのような運用がされている。そ うだとすると、今回この法律が変わって書面による同意を要求したということになっ ても、恐らく同じ運用でいくのではないかと思います。ですから、先生がおっしゃら れるのは非常に法律的な議論で、その法律的な議論をそのまま詰めてもう一回見直す かという話になるかと思うんですけれども、そこらもこの場で整理しておいていただ くというか、大体の意向がわかっていないとかなり難しい話になると思います。 ○永井委員長 大久保委員、どうぞ。 ○大久保委員 実際に恐らく小中さんの現場だとそうだと思うんですけれども、本当 に二親等とかといって同居の親族だけだと言っても、実際にはかなり広い、その場に 来られた方は全部含まれますよね。御家族というか親戚の方が来られて、それまで含 めて、そうなると二親等を越えて四親等の方でも強行に反対されたら提供されていな いと思うんです。  だから、なかなかとりまとめると言っても、実際に今やっているように家族の総意 ということは今でもそうでしょうけれども、これからも同じような形になるのではな いかと思っているんです。  実際の現場としてはどうなんですか。 ○永井委員長 小中委員、どうぞ。 ○小中委員 大久保委員がおっしゃったように、実際の現場では総意ということです のでかなり広い範囲のところまでいっています。六親等までかという数え方をしたこ とはございませんが、二親等と同居親族に限っていないです。総意というとりまとめ をしております。 ○永井委員長 相川委員、どうぞ。 ○相川(厚)委員 実際、現場では、臓器提供の話があったときに、ある意味では親 族の方が1人大反対をすればまず提供には至らないことが今の時点ではすべてだと 思います。  実際のフランスとかスペインではオプティングアウトの国で、臓器提供の反対の意 思を示していない限り摘出ができるという法律になっている国でさえ、臨床の現場で は法的には摘出していいんですけれども、臨床の現場においてもし家族が反対すれば 摘出を強行するという医師はまず現実上いないんです。だから、日本でもそのような 臨床医がいるとは思えないんですけれども、普通は法律にこう書いてあるのに、その 法律を盾にとって、1人でも反対している、こうではないかと言って摘出してしまう ことは現場では普通あり得ないことだと思います。  実際、第2のところに書いてある、ただし前記の範囲外の親族から臓器提供に対す る異論が出された場合にも、その状況などを把握し、慎重に判断することと書いてあ るこの文言自身がある意味ではそういう意味が含まれていることだと解釈いたしま す。 ○永井委員長 山本委員、どうぞ。 ○山本委員 最初に、用語の意味の委員先生方の共有化というのがとても大事になる のではないかなと思ってお話ししたんです。例えば親族というのは何なのか、家族と いうのは民法上何なのか、皆さんにある程度の情報はお渡しして共有化をしていこう ではないか、その上でガイドラインをつくっていくということがとても大事になるの ではないかなという気がしていますけれども、事務局、いかがなものでしょうか。 ○峯村室長 今回の議論の際には、山本委員がお話しになったような、基本的な共通 認識の材料の資料が不足していたかもしれませんので、そういう議論の材料になるベ ースとなる資料等についてはこちらで検討して、また作業班での議論も踏まえながら、 各委員の方にお送りしていた上で見ていただくというようなやり方も含めて対応し ていきたいと思います。 ○山本委員 ありがとうございます。その議論の過程で少しずつ変わってきたのはそ のまま出していただければ、一番上のところで今回議論をしようではないかとなると 思いますので、過程も含めて是非お願いをしたい。  以上です。 ○永井委員長 奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員 その際に少し考えておいていただきたいのは逆の例で、例えば両親がま だ共同親権の段階にあって、母親と子どもが一緒に住んでいて、お母さんしかその場 にいない、お父さんは行方不明だというときに、探し出してでも同意をとらなければ いけないのかというようなことも出てくるのかなと思ったので、子どもの場合も含め てもう一度考えていただきたいと思いました。 ○永井委員長 今のガイドラインでは問題が起こってくるだろうと思います。特に子 どもが対象になった場合ですね。 ○奥山委員 そうですね。だから、今の解釈のような問題をどうするのかというとこ ろと同時に、先ほど言いましたように強い父親に周りが引きずられていて、話を1人 ずつ聞いていくとかなり違っていたことも経験しています。ですから、そこのところ も喪主に全部とりまとめさせるということが本当にいいのかどうか、子どもの場合も 含めて検討していただきたいということでございます。 ○永井委員長 町野委員、いかがでしょうか。 ○町野委員 これは恐らく現場で非常に苦労されているところだろうと思いますけ れども、喪主がとりまとめると書いたのは、その当時の議論ではこれしか書きようが ないという話だったんです。大体実際の現場ではどのように動いているかということ は、恐らく小中委員が後で御説明いただけるだろうと思いますけれども、例えば提供 者が夫であったときに、恐らく妻の意見というのは非常に重要視されるだろう。キー パーソンは彼女になる。だから、とりまとめるのが彼女になる格好になって、お子さ んが亡くなられたようなときについては、恐らく両親だろうということになるだろう。 それでおじさんとかおばさんとかおじいさんというところは中に入りますけれども、 キーパーソンにはならないだろうというようなことで、それぞれの場に応じて、やは り亡くなられた方との近しい関係の下でいろいろ考えられているのが現場ではない だろうかと思います。  多くの国では、このとき同意権者というのは大体特定されておりまして、順位がど んどん下がっていくという。最初は配偶者、次に子どもとかそういう具合になってい るわけです。ところが、これが日本ではそのようなことができないということで、こ れは比較法的に見ても非常に異例な状態でして、韓国のように家族関係が強いところ でも、あそこでも順番で決まっているというところなんです。このやり方というのは 日本だけなんです。  しかし、これはどうしようもないので、日本のこれを崩すことはできないのでこう いう書き方になっているので、まさに現場の方で今のような先生の危惧を、それは多 くの人が危惧されて、前からずっとこの議論があるんです。危惧されているところで すから、現場の方でその点のガイドラインといいますか、書ききれないところは運用 でやっていただくというのがいいのではないかと思います。 ○永井委員長 奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員 運用といえば運用なのですけれども、例えば必ず第三者が両親に個別に 意見を聞くことということが入っていれば比較的しっかりと意思判断ができると思 いますが、1人だけで大体進んでいってしまうのです。先ほども出ましたけれども、 後になって母親は実は違った気持ちだったというのが結構出てくるものですから、そ の辺が危惧されたというところです。 ○永井委員長 小中委員、どうぞ。 ○小中委員 現状について少し具体的にお話しできればと思いまして、私たちが意識 して行っておりますのは、提供された後に御家族の中で不協和音が起こらないかとい うことと、提供したことに対してしなければよかったと思われないかということを常 に頭に置きながら御家族にお話をさせていただいて実際の提供まで関わっていくわ けなんですけれども、そういう場合の中でどのように確認をするかといたしますと、 勿論大勢の方にお話をさせていただいて、その中で非常に情緒的になってしまうんで すが、御家族の表情なり言葉じりなどを一人ひとりから意見を伺って、理解の様子や 承諾の様子を聞くということを一つ基本にしているということがあります。  先ほどの長い間音信不通の方というのは、必ずどの事例にも出てまいりますので、 その方に対して確認をするということを私どもの方で促すということは必ずしてお ります。後で知って、そこで家族間の問題に生じるということは大きなことになりま すので、そこも意識をしております。  もう一つは、時間をかけるということ。お話をさせていただいて、それから少し時 間を置いて承諾までつながるという、時間をかけるということも一つの私たち手続の 中で行っていることなります。  当然ながらコーディネーターだけでは限りがありますので、提供病院の主治医の方 や看護師のスタッフの方々からも、あの方の表情はこうだったとか、あの方はこうい う言葉を発せられたというようなことは共有しながら、最後の提供しなければよかっ たということに結び付かないように、大勢の方々、チームの中で確認は承諾の後も行 っていくというようなのが現場で行っている状況でございます。 ○永井委員長 そうしますと、家族のところというのは、基本的にはガイドラインの 線ですが、もう少し子どもに対する第三者からの聴取も今回のワーキンググループで 御議論いただきたいという方針かと思いますが、いかがでしょうか。  町野委員、どうぞ。 ○町野委員 恐らく前回までは本人の提供の意思表示がなければ提供できないとい う大前提がありましたので、その限りでは家族の総意というのはそれほど大きなとい いますか、それが1つはあったわけです。  今度はそれがないですから、しかしながら家族の側といいますか残された人たちが 本人の意思を考えながら、しかも自分のあれでどう判断しなければいけない、かなり 重要性を増してくるわけで、そういうようなところで本人の意思表示がなかったとし ても、どういうような意思を持っていたかということを知り、更に家族の方の意思は 積極的にこれで間違いないということを確かめるというのは昔と変わってきたのか なという感じはするので、そこらも含めた上でコーディネーションのやり方から、も しかしたらガイドラインの書き方も少し変わってくるのかなということも思います けれども、作業はどちらがやられるか私は知りませんけれども、それを思います。 ○永井委員長 大久保委員、どうぞ。 ○大久保委員 今まで拒否の確認というのはほとんどないわけですよね。もう同意だ けですから。今回は恐らく拒否はしていたか、していなかったかというのはすごく大 事になってきますので、その辺の問題はすごく大事になってきますので、コーディネ ーターは今まで以上に神経を使わないといけないようになってくると思うので、その 辺をできれば現場が混乱しないようにできるだけガイドラインには書き込んでいた だいた方がいいのではないかなというように、具体的に奥山先生がおっしゃったよう に第三者のあれを取るとか、個別に面談をするとか、いろんな形でもう少し書き込ん でいただいた方が現場の方はやりやすいのではないかなと思います。  先生は大変でしょうけれども、先生がつくるのかわからないのかな。 ○永井委員長 相川委員、どうぞ。 ○相川(厚)委員 私は移植学会の広報委員長も務めておりますが、幾つか移植学会 の方に疑問が寄せられました。その一つは、自分は親族がいないんだけれども、臓器 提供したくない。したくない意思をちゃんと表示するにはどこに表示したらいいのか。 したくないのに臓器を摘出されたらかなわないというものがございました。だから、 意思表示は臓器提供意思カードに記載をしていただければ臓器摘出はされなくて済 む。ただ、ずっと持っているわけではないとおっしゃるので、それでしたらネットワ ークの意思表示の登録のところに拒否という欄がございますので、そこに登録をして いただければコンピュータ上なると。  あともう一つは健康保険証、運転免許証です。拒否をされた方の情報提供も必要だ と思います。それが多くの国民に伝われば、嫌な方はそこのどれかしらにチェックを していただければ、ある意味でスクリーニングは簡単になりますので、できればその 情報も提供していただいた方がいいのではないかと考えております。 ○永井委員長 大体よろしいでしょうか。  町野委員、どうぞ。 ○町野委員 法律の方の確認ですけれども、拒否の意思表示というのは書面によらな くてもいいんですよね。この改正法を見ますと、使用されるために提供する意思を書 面により表示している場合、及び当該意思がないことを表示しているとありますから、 書面によるというのは後段にはかかっていないという理解でよろしいわけですね。 ○峯村室長 これにはかかっていないと理解しています。 ○町野委員 つまり、これは提供の意思についてはきちんと証拠に残っていなければ いけないけれども、ノーという意思というのは尊重されるべきだから、書面になくて もいいではないかという発想なんです。書面があればそれは非常にあれなんですけれ ども、そこらも少し共有を図る必要があるように思います。 ○永井委員長 山本委員、どうぞ。 ○山本委員 そうなりますと、不明という表現の中には、拒否のものも入っていると いう解釈になりますか。 ○町野委員 私は立法者ではないので難しい話ですけれども、私の理解は、基本的に は本人の意思が中心で決められるべき問題である。だから、恐らくドイツ辺りもそう いうあれなんですけれども、そちらは通知方式というのがありまして、本人がどうい う意思を持っていたかまず最初に知る。それが書面によるか否かもしれません。それ がわからないことについて親族に聞いてみる。親族もそこら辺がわからないときに初 めて親族の承諾で取れる。そういうあれですから、まず本人の意向がどこにあるかを 確かめるということを中心になって進まなければいけないという話だろうと思いま す。  したがいまして、後で意思表示能力のないものの扱いが先ほど議論がありました。 そのときも例えば精神の方に障害があったり、そういう人たちについても、やはり今 のような考え方でいかなければいけないだろうと思います。つまり、意思表示が有効 であるとか、民法上の有効性だとかそういう問題とは別の問題ですから、本人の自己 決定の問題ですから、それを尊重しようということだろうと思います。 ○山本委員 私の意図するところは、意思表示が不明という中に、意思表示カードを 持っていないというのはすべて不明になっている流れにはなってしまいますね。そう すると、その中には拒否をしている皆さんも混じってしまっているわけですね。 ○峯村室長 理論的に言えば、拒否をしようとしている方も混じっているかもしれま せんし、提供しようと思っている人も混じっているかもしれせん。そこは不明という ことですからわからないということでございます。 ○山本委員 意思表示カードを持っている人は持っているので出てくるんですから、 不明という中では。 ○峯村室長 潜在的提供者が入っているかもしれませんし、潜在的拒否の方が入って いるかもしれません。そこはわからないということでございます。  事務局から先ほどの町野委員の発言を踏まえつつなんですが、たしか拒否について は様式を問わないという考え方なんだと思います。それについては書面を必ずしも法 律的にも要求はしてない。それは必須要件ではない。ただ、拒否の意思表示の仕方と して、一番表示のしやすいやり方を考える必要があるのではないかという理解は私ど もしておりますので、そういったことを含めて作業班で検討していただきたいと事務 局としては思っています。 ○永井委員長 町野委員、どうぞ。 ○町野委員 まず確認したいのは、書面でノーと言っていない以上すべて、例えば口 頭でノーと言っていても不明な場合であるということではないという話ですね。 ○峯村室長 そうです。 ○町野委員 ですから、ノーの意思表示は書面に残しておかなければいけないという わけではない。それをまず確認しなければいけない。例えばノーと言っているのは社 会に対して何か言っているわけではなくて、親に対して、配偶者に対してノーと言っ ていたということが配偶者とかそちらの証言でわかれば、これはノーと言っていたの で不明ではないという話ですね。 ○峯村室長 そうです。例えば映像で残っていても構わないですし、必ずしも文書で なければいけないということではないと思うんですが、ただ、拒否の意思表示の仕方 として一番スムーズに確認ができるやり方というのもある程度考えないといけない のではないかなという問題意識で申し上げたわけで、法律上の効果としては、例えば 申し上げたように近親者に常日ごろ言っていたということでもノーだということに なると思います。 ○永井委員長 大久保委員、どうぞ。 ○大久保委員 ノーに関しては年齢制限がないんですよね。全くないですよね。それ も確認だけ。 ○峯村室長 はい。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。今の件は大体煮詰まってきたと思いますが、事 務局の方で今日の御意見をとりまとめていただけますでしょうか。 ○峯村室長 わかりました。 ○永井委員長 そのほかの点でいかがでしょうか。  例えば啓発のところですけれども、こういう啓発活動に国はどう関わるのか、関わ るべきでないのか、どういう姿勢で臨むかというのはどうでしょうか。そういう問題 については、手続的なことを社会に対して教えておいていただかないといけないと思 いますが、この啓発活動の位置づけについていかがでしょうか。 ○峯村室長 啓発については勿論、臓器移植法上は国・地方公共団体それぞれ含めて その内容について周知を図るという使命はあると思いますので、例えば施行の内容に ついての周知といった点については、法律の執行機関として十分な時間をできる限り とって、内容について現場についての啓発をしていくということは求められるんだと 思います。  また、一般的にドナーを増やす、ドナーの方への周知あるいは移植への理解を求め るといった点については、関係機関と協力しながら進めていくことになるんだろうと 考えております。 ○永井委員長 奥山委員、どうぞ。 ○奥山委員 先ほどの年齢のところで1つ確認をさせていただきたいのですけれど も、親族への優先提供の意思表示ということに関しては、15歳以上と考えていいんで しょうか。つまり、意思を書面に表示している15歳未満の子どもがいたとしても、 それは意思表示にならないと考えてよいのしょうか。 ○町野委員 それは事務局の方からあれだろうと思いますが、私は今の感じでは、本 人の承諾があるときは取れる。そのときは15歳があれだという前のあれですし、そ れは現在でも本人の承諾があったときについては、遺族の反対がない以上取れるとい う原則はまだあるわけですね。それが生きているわけですからそれにプラスされたわ けですが、そのときの意思表示の能力というのは、もし15歳ということを維持する ならば、先生のおっしゃられるようなことになるだろうと思います。  承諾の意思と併せてそのことを表示するわけですから、そのときに意思表示能力の ない人間は提供先の指定はできないという話ですから。 ○奥山委員 15歳未満の子どもは、提供先の指定はできないと考えてよいですか。 ○町野委員 と思います。 ○峯村室長 事務局の理解は、そこは確認をしないといけないと思うんですが、基本 的には町野先生と同様の考えと考えております。  なおかつ、もう一つ、本人の意思が不明な場合、例えば何も残さなかった場合に、 家族が優先提供を表明することもできないと考えております。 ○永井委員長 ほかにいかがでしょうか。  大久保委員、どうぞ。 ○大久保委員 恐らく普及啓発というのは、室長がお話しされたように2つあると思 うんです。今回の法律が変わったということをどう一般国民の方に御理解いただくか ということが大きな問題。  もう一つは、当然この法律というのは臓器移植が増えて、1人でも多くの患者さん を救うというのが大きな目的だと思います。それに沿ったための理解、臓器移植に対 する臓器提供に対する理解を深めるための普及啓発、この2つが恐らくあると思う。 ところが、少し内容が違ってくると思うんですけれども、両方についてこれは勿論、 国、関係機関を通じて、ネットも含めてでしょうけれども、しっかりやっていただく のはこの法律内容に書かれていることだと思うので、是非国の責任としてしっかりや っていただきたいと思っています。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。  町野委員、どうぞ。 ○町野委員 この場でできるだけ考えをまとめて、虐待児の取扱いなんですけれども、 これは恐らく現行法の下でもし虐待によって死亡した子どもがいるということにな りますと、これは異状死ですから届出をしない医者は処罰をされるという前提ですね。 ですから、まず最初のところで虐待児を見逃さないということは、いわゆる犯罪によ る死亡であることを見逃さないということにまず帰着する、そういう了解でよろしい ですね。子どものときについてだけ特別ということではないわけですね。 ○奥山委員 必ずしもそうではないと思います。なぜならば、監督の不行き届き、ネ グレクトです。でも、それは形としては事故死なのです。  もう一つは、これは我々相当虐待に関する者たちで議論したのですけれども、なぜ 虐待を受けた子どもを省くかという大原則をどう考えるか。そのことは、恐らく子ど もの意思を反映する代諾者としての倫理的な資格と考えるべきではないか。そうする と、普段明らかに虐待をしていた親が、そのことによって亡くなったのではない形で 亡くなったときに、代諾する倫理的な資格があるだろうかというところを議論してい ます。  ということで、必ずしも刑法上の問題になるから警察に届け出ることがすべてだと はならない。もう一つは、見抜けるか見抜けないかということもありますけれども、 ミュンヒハウゼンみたいな問題もありますし、必ずしも全部が警察に行くべきものを 見逃すなということだけではないだろうと考えています。 ○町野委員 これは非常に難しい問題で、後段の方は私もかなり大変な問題だろうと 思います。前段の方について申しますと、要するに犯罪による死亡ですから、例えば 業務上過失致死の場合でも、ネグレクトの場合でも、これは入りますという理解です。  これは異状死の概念でございまして、厚労省が一応解釈をしていますけれども、い ろいろやっていますが基本はそういうことですから、最初の入り口のところで同じ問 題だろうと思います。 ○奥山委員 確かに警察に異状死として届け出る問題と、それが立件できるからどう かという問題とか、その段階を見てもいろいろとあると思います。  立件できるかどうかは明らかに立件できないとしても、虐待児は虐待児です。例え ば母親とか父親がやったかわからない、日時が特定できなければこれは立件できませ んから、それに関しては明らかに立件できないから虐待ではないとは言えないのです。  届け出るかどうかということに関して、全例は今届けていないというのが現状なも のですから、それはなぜかと言えば、虐待は今度その議論になったときにお話しした いと思うのですけれども、結局は医療でできるのは疑いなんです。最終的には疑いの 段階です。それをどこの部分まで入れるかというのは非常に大きな問題になってくる んだろうと思いますけれども、全例届けるかどうかはまた違った問題ではないかと思 います。 ○町野委員 この議論はどの作業班でやるんですか。 ○貫井委員 一応、小児の脳死判定基準の中で議論せざるを得ないだろうと思います。 虐待の専門家の先生にもお願いして入っていただいておりますので、小児学会あるい は関係者の先生方から資料をいただいて、一応案をつくりたい。ただ、話を聞いてい ると、大変ですね。  直接虐待された小児が亡くなられてきた場合はある程度わかりますけれども、今度 は親の承諾で移植ができるときに、親の責任といいますか権利といいますか、今のお 話のようなことになってくると、単純に医学的な判断だけではできなくなる。そこら 辺は町野先生たちにやっていただくしかしようがない。  医学的に虐待か虐待ではないか、という判断をしなければならないのも大変なんで す。なかなか判断ができないという専門家の御意見もありまして、どうしたらいいか なと思っているわけです。それ以外にも先ほどのお話ですと、直接のそういういろん なものがなくてもネグレクトでほっておいたら勝手に事故で亡くなられたときに、親 はそんな権利はないという意味の法律論があるということで、私たちにはとても処理 することができません。  だから、そこら辺は法律的な議論を是非していただきたいと思います。 ○永井委員長 山本委員、どうぞ。 ○山本委員 この法律の成立してくる過程の中で、虐待というものの範囲というのは、 一番先に委員長がこの範囲の問題も非常に大きいんだという話を少ししておられた のでございますけれども、疑いという、あるいは未遂というのか、自殺というのは死 んだ人は自殺既遂でいいけれども、未遂の中は死ななかったものはみんな未遂なのか、 あるいは未遂の中というのはやろうとしたんだけれども、やらないで終わっているの もみんな未遂になるのか、これはもう言い出したら切りがない。  そこのところはどういう議論だったのかというのはいかがでしょうか。 ○永井委員長 事務局、いかがでしょうか。 ○峯村室長 虐待の定義なり対応についてどの範囲まで考えるのかという議論につ いては、例えば現在、虐待防止法に基づいて虐待の定義というのは1つされている例 もございますけれども、それと全く同一に扱うのかどうかという点も含めて、そこま での範囲に関する議論というのは十分されなかったのではないかなと考えておりま す。  ですから、我々としてそこは当然医療現場での確認の話と、法律的な検討の部分と 両方にまたがる話ではないかな。  研究班での3ページ目の表では、厚生労働科学研究の研究班では体制の話と脳死判 定基準等と書いてございますけれども、実は虐待についての研究班で、医療現場に紛 れ込みを防ぐためのチェックの仕方をどうするのかといった内容について、小児科の 先生も含めて議論をしていただこうということで考えておったんですが、当然法制的 な議論になるとそこは全体の作業班の間、あるいは委員会との間での連携を図りなが らそこは議論していく必要があると我々は思っております。 ○永井委員長 町野委員、どうぞ。 ○町野委員 私が言い出したのは、要するに問題を少し整理しておこうという話でご ざいまして、死亡ですけれども、例えば私は子どもを虐待して勉強ばかりさせておる、 その過程で死んだといったときについてはそういう問題ではないですよね。ただ、親 としてこういうときにOKするだけの倫理的な地位があるかという問題はいろいろ 問題があり得ましょうけれども、したがって、要するに犯罪と思われる疑いがあるこ とで死亡したとき、とにかくこれは犯罪であるわけですから、親がやろうとだれがや ろうとそういったときに疑いがあるときはまず警察に届け出なければいけない、それ が異状死体の届出義務である。  そして警察に行きますと、警察は捜査をしなければいけませんから、刑事捜査が進 行している間は移植の手続に入れないという話です。ですから、そこのところでまず かかりますから、それ以上に一体何が必要とされてくるかということを私は知りたか っただけなんです。 ○奥山委員 例えば親がパチンコ屋さんでパチンコしている間に子どもが死んだと いう事件があります。実際には駐車場で遊んでいて子どもがひかれた。そうしたら、 ひかれた方の事件かもしれないですけれども、これは親のネグレクトですね。一体、 ネグレクトで子どもが亡くなった場合に、全部過失と取れるかというと犯罪としては 取れないことが結構あると思います。  でも、親の責任としての問題というのは出てきて、それが虐待防止法上はネグレク トに入ると思います。 ○町野委員 恐らく今のようなことで死亡したということが現場でわかりましたら、 これは異状死体として届け出ないといけないと思います。 ○奥山委員 その場合は届けるでしょうけれども、例えばミュンヒハウゼンシンドロ ームのように病気をずっとよそおってきて最終的に亡くなった、その場合はわからな いですね。もう一つは、ネグレクトで体重が減ってきていたというような状況があっ ても、それで気づかなければわからないんです。必ずしも異状死ととらえるかどうか わからないですし、現実、異状死として届けるかどうかというのはわからない問題は あるだろうと思います。  ただ、先生がおっしゃるように、例えば身体的虐待で明らかに頭蓋内出血で亡くな ったとかというときはまず届けると考えても良いと思います。 ○宮坂委員 長野の宮坂ですけれども、今のことですが、2つポイントがあるような 気がするんです。  1つは先ほど貫井先生がおっしゃいました小児脳死判定基準と基本的には虐待は 関係ないわけです。これを明確にしておかないと議論が一緒になってしまうんだと思 うんです。  町野先生が分類されたように、明らかに現場では多くの異状死というか、虐待に関 係するようなものが現場で恐らく警察に届けるなり医者に届けるなりして、とても臓 器提供の話には多分ならないと思うので余り大きな問題にはならないと思うのです けれども、整理はしておく必要があると思います。 ○永井委員長 貫井委員、どうぞ。 ○貫井委員 小児脳死判定基準というのは、神経学的な基準だけではなくて、除外例 とかいろんな基準があるんです。一連の基準の中の除外例のところに、虐待児の除外 というのを入れなければいけないわけです。今までは15歳未満の小児とか知的障害 者とか、原因不明の疾患の患者さんは除外する。その関連で小児脳死判定基準のとこ ろでもやらなければいけない、議論をしなければいけないと考えております。 ○永井委員長 宮坂委員、どうぞ。 ○宮坂委員 それは臓器提供ということに関わるからそうなるのであって、脳死判定 基準そのものは関係ないと思います。 ○永井委員長 よろしいでしょうか。 ○貫井委員 法的脳死判定は臓器提供を前提として行われるもので、関連はあると思 います。 ○永井委員長 今の点も少しワーキングで議論していただくことにいたしますか。 ○峯村室長 はい。 ○永井委員長 体制全体について御意見はございますか。  もし御意見がございませんでしたら、検討課題、検討体制につきましては御指摘の あった点に留意して事務局で改正法の施行に向けた検討を進めていただきます。この 委員会とのいろいろな調整については座長にお任せいただければと思います。  事務局、そういうことでよろしいでしょうか。  ワーキングのメンバーはこれからですか。 ○峯村室長 これから発令の準備も含めてとりかかりますので、準備を進めたいと思 います。 ○永井委員長 ということで、大体時間になりましたので、今日はここまでにしたい と思います。  最後に事務局より連絡をお願いいたします。 ○峯村室長 改正の施行につきまして、本日御了承いただきました案に沿いまして、 検討を進めていきたいと考えております。  また、各作業班での検討の進め方及びその検討結果につきましては、本委員会でそ の報告をいたしまして、先生方から御意見を賜りたいと考えておりますので、このと おりよろしくお願いいたします。  次回の日程につきましては、各先生方の日程を調整させていただきまして、決まり 次第また文書にて連絡を差し上げる次第にしておりますが、大変お忙しい中恐縮でご ざいますけれども、かなり短い期間でまた開催という形になりますので、日程の確保 方、どうぞよろしくお願いいたします。 ○永井委員長 それでは、これで終了させていただきます。  どうもありがとうございました。 (照会先)  健康局疾病対策課臓器移植対策室 (03−3595−2256)