09/09/03 第4回今後の看護教員のあり方に関する検討会議事録 第4回 今後の看護教員のあり方に関する検討会 日時 平成21年9月3日(木) 15:00〜17:00 場所 厚生労働省共用第8会議室(6階) ○島田課長補佐 定刻より若干早い時間ですが、先生方もお揃いですので、これより第4回「今 後の看護教員のあり方に関する検討会」を開催いたします。委員の先生方におかれましてはご 多用中のところ、当検討会にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。  本日は、澤本委員よりご欠席の連絡をいただいております。また本日、看護教員の継続教育 の現状について、話題提供をしていただくために、千葉県立幕張総合高等学校の福村知加子様 にお越しいただいております。なお、医政局長の阿曽沼は所用により本日は欠席しております。 ご了承ください。  続きまして、配布資料の確認をさせていただきます。「議事次第」、資料1「これまでの委員 の主な意見」、資料2「主な検討課題と論点」、資料3「これまでの議論のまとめと今後の方向性 (案)」、資料4「看護研修研究センターにおける看護教員の継続教育について」、資料5「都道 府県による専任教員再教育事業について」、資料6「福村参考人資料」、資料7「齊藤委員資料」、 資料8「野本委員資料」。以上です。乱丁・落丁などがございましたら、事務局にお申し付けく ださい。  では座長、議事の進行をよろしくお願いします。  ○永山座長 それでは、本日も活発なご議論をよろしくお願いします。議事に先立ちまして、 資料1について、事務局より説明をお願いします。 ○島田課長補佐 資料1「これまでの委員の主な意見」として、第1回から第3回までの委員の 皆様方からいただいた意見をまとめております。中を開きますと、斜めの文字なっている所が ありますが、これについては第3回にいただいたご意見を追加しております。枠組みについて はこれまでと同じですので説明を省略します。以上です。 ○永山座長 それでは、本日の議事ですが、議事次第に従って、まずは1回から3回まで行い ましたので、中間的に「これまでの議論のまとめと今後の方向性(案)」ということで議論を行 いたいと思います。それから次の検討課題の「看護教員の継続教育について」の検討を行うこ とにしております。そこでこれまでの委員の意見を基にして、看護教員養成のあり方に関する 資料を事務局に作成していただきましたので、その説明から入りたいと思います。それでは、 お願いします。 ○島田課長補佐 資料3を説明します。いま座長からお話がありましたように、前回「これま での議論の整理(案)」を示して、それに基づいて、さらにご議論いただきましたが、そのご議 論を踏まえて、事務局では「これまでの議論のまとめと今後の方向性(案)」を作っております。 これを作った事務局としての考えは、教員養成について次年度から国の政策として、どう取り 組むかを、ここでご議論いただいたことを検討材料として議論を進めてまいりたいと考えてお り、そういった考え方でまとめをしております。Iから順に読み上げます。  題は「これまでの議論のまとめと今後の方向性(案)」です。 I.「はじめに」。平成20年7月にまとめられた「看護基礎教育のあり方に関する懇談会論点整 理」において、看護基礎教育の充実に向けたどのような方策を進める上でも共通する課題のひ とつとして看護教員の質・量の確保が指摘された。これを受けて、平成21年3月の「看護の質 の向上と確保に関する検討会」中間とりまとめでは、看護教員の専門性を高めるための看護教 員の継続教育や、看護教員が臨床現場で実践能力を保持・向上するための機会の確保、高度実 践能力を持つ看護職員の活用など、養成機関の創意工夫が必要であることが示されたところで ある。これを踏まえて本検討会は、看護教員の資質の維持・向上に向けた現状と課題を把握し、 看護教育の養成と継続教育の推進、看護実践能力の保持・向上に関する方策について検討する ことを目的として設置され、これまで3回にわたって議論してきたところである。ここに看護 教員養成のあり方に関するこれまでの議論をまとめた。  II.「看護教員に求められる資質・能力に関して」。1.看護教員の資質・能力に関する課題。 看護基礎教育の充実のためには、看護教員の質の向上が不可欠であり、質の高い看護教育を実 施することができる看護教員にはどのような資質・能力が求められるのか、まず整理し、目標 を示すことが必要である。  看護教員には臨床実践能力と教育実践能力のどちらも必要であり、そのバランスが重要であ り、その両方を補い合うシステムを作ることが重要という意見があった。  その一方で、看護教員が臨床実践能力を維持することは困難であり、臨床を離れている看護 教員に一律に臨床実践能力を求めるのは無理がある。看護教員は、自らの臨床実践能力を維持 することが優先されるのではなく、臨床実践の場で誰に学生を委ねたら優れた指導をしてもら えるかを見極め、その臨床実践の状況を教材として学生に説明できる能力が求められるという 意見もあった。  2.看護教員に求められる資質・能力。(1)求められる資質。多様な学生の個性を尊重する人権 意識。人間として、看護職として、教員としての魅力。(2)求められる能力。[1]臨床実践能力。 [2]教育実践能力、時代の要請に合ったカリキュラムを作成する能力。学生の体験や、臨床実践 の状況を教材として学生に説明できる能力。多様な学生に対応できる指導力。カウンセリング 能力。コミュニケーション能力。自らの専門領域の教育のみでなく、全ての領域とのかかわり を意識して教育展開するマネジメント能力。看護教員に求められる資質・能力の目標設定や評 価、強化すべき能力等については、今後の議論を踏まえて、さらに整理する。  III.「看護師等養成所※における看護教員の要件に関して」。看護師等養成所に※が付いてい ますが、3章の最後、3頁の上に書いてある厚生労働大臣の指定する看護師等養成所ということ で区別を明記しています。  2頁に戻り、III.の1.看護教員の要件に関する課題。看護基礎教育を充実するためには、看護 教員の質と量の双方を充実・強化させることが必要であり、看護教員の要件についても質と量 の観点から議論することが必要である。大学卒や大学院修了の看護職員が増加する中、これら の看護職員の看護師等養成所の看護教員への活用を推進することが考えられる。  2.看護教員の要件の見直しについて。看護教員には一定の臨床経験が必要であるが、看護教 員の確保の観点からは現行の要件における5年の臨床経験年数を3年に緩和し、その一方で必 要な臨床経験の業務内容を明示し、質の確保を図るべきという意見があった。一方、現在の臨 床現場の看護師の状況から考えると、臨床経験が3年では学生を教育することは難しいと思わ れることから、臨床経験年数は5年以上を維持すべきという意見もあった。看護教員確保の観 点から、大学や大学院等での教育内容のうち、看護教員の要件の対象とする履修内容を拡大し、 大学卒や大学院修了の看護職員の看護教員への活用が推進されるようにすることが必要である。 どのような要件の教員であっても、教員としての基礎が作られる新任期の研修が重要である。 そのため、新任期の研修体制を構築し、看護教員の質の確保・向上のための方策を講じること が必要である。新任期の研修も継続教育の一環として位置づけられるものであり、その実施体 制等については、今後、継続教育に関する検討の中での議論となるが、新任期研修の質確保の ためには、看護教員の要件等を踏まえて標準的プログラム等を国が提示することが望まれる。  IV.「看護教員の養成に関して」。1.看護教員養成講習会について。(1)実施体制・方法。[1]現 状と課題。看護教員養成の約8割は都道府県による看護教員養成講習会(以下、講習会)が担 っているが、受講希望者の減少等により、開催基準である定員30名以上を満たす受講者数を、 1県で確保するのが困難であるために開催しない県が多い。また、講習内容や方法等について も、講習会修了の基準や評価などが実施要領に示されておらず、実施状況は多様となっている。 このように、看護教員の養成は、量的にも質的にも平準化していない状況である。講習会開催 県が限定的であることから、現在の実施方法では受講を希望しても物理的な問題や家庭の事情 により受講できない人の状況は改善されない。また、すでに看護教員となっている者を研修に 出すと欠員状態となり、教育体制に支障が出るため、講習会に参加させることが困難な状況に ある養成所もある。さらに、新任の看護教員は実際に教育していく中で迷いや悩みを多く抱え ているが、そのような新任者を支えるための仕組みは十分ではない。  [2]当面の改善策。看護教員の養成を全国的に平準化するためには、講習会をブロック単位に 調整した上で開催するなどの仕組みが構築されることが必要であり、その調整は国が行うべき である。その際には、他県からの受講者を受け入れやすくするため、開催県に対して財政的な 支援を行うべきである。また、保健師養成所及び助産師養成所の看護教員の養成についても考 慮する必要がある。看護教員の確保の観点から、看護教員を養成する課程を看護系大学の専攻 科や大学院等に設置することが望ましく、これを推進するため、財政面も含めた支援が必要で ある。その場合、北海道から九州までの各ブロック内で、少なくとも1大学以上が実施するよ うに調整・推進することも実現に向けた1つの方策として考えられる。  一方、すでに教員となっている未受講者の受講を促進するためには、代替要員の確保など、 養成所に対する国の財政支援が求められる。また、新任の看護教員を支えるためにはメンター やスーパーバイザーの設定など多様な方法が考えられるが、このような養成後のフォローアッ プ体制について、前述の新任期の研修体制構築と併せて検討することが求められる。  (2)講習会の質の充実・確保。[1]現状と課題。現行では8カ月で900時間の講習会を実施して おり、つめこみ教育になっている。講習会を受講することにより、教員としての姿勢や態度に 変化が見られ有益である一方、教員業務のすべてが含まれてはいないので、すぐに活用できる ことを教育することも必要である。看護教員に求められるものは時代とともに変わってきてお り、それに伴い講習会の教育内容にも変化が求められている。看護教員には学生を育む教育学 や教育論の視点が不足しているとの指摘もある一方、講習会の企画・運営は、いわは「丸投げ」 となっており、講習会を企画する都道府県担当者が、看護教員の養成に必要な教育内容につい て把握し、理解できるような仕組みになっていないことも指摘されている。  [2]当面の改善策。講習会において十分な講習成果を上げるためには、教育内容を整理すると ともに、ゆとりのある期間を設定すべきである。また、看護基礎教育カリキュラムの改正に合 わせて、講習会の教育内容を見直す必要がある。講習会の質の確保・向上のため、看護教員養 成における教育内容を見直すとともに、受講者の評価やプログラムの評価なども含めた看護教 員養成のためのガイドラインを早急に作成することが必要である。また、ガイドラインには教 員養成のための教育内容を示すだけでなく、教育目標として看護教員がどのような能力を身に 付けるべきか。また、講習修了の基準を示すべきである。さらに、講習会を企画する都道府県 担当者への情報提供や企画に関する相談体制を構築することが必要であり、こうした支援を国 が行うべきである。  2.今後の看護教員養成について(中長期的な視点に立った改善策)。より多くの受講希望者が 就労を継続しながらでも受講できるよう、通信制やeラーニング導入について検討する必要が ある。eラーニング等を活用することにより、知識の習得に関しては講習内容を統一すること ができ、これにより教員養成の質を確保することができる。また、教育時間を単位制とし、受 講者の状況に応じて複数年にわたって断続的に履修できるようにしたり、放送大学等の活用も 求められる。受講者の利便性を高めるためには、近隣の看護系大学での科目履修を「教員養成 課程」の一部として認定できるようにすることも考えられる。新任の看護教員が実際に教育を 始めてから抱える悩み等に対応するため、新任期のフォローアップ研修等の実施が求められる。 また、看護教員の質を確保し、教員自身の意欲の向上を図るためには、教員養成講習会を修了 したことを公的に認証し、更新制とし、さらには看護教員の教育における専門性を評価する仕 組みを構築することについても検討する必要がある。  現在、看護学生を教育する者を育成する講習会には、実習取得者講習会・看護教員養成講習 会・看護教員再教育研修・幹部看護教員養成課程等があり、これらを連動させることにより看 護教員のキャリアパスとして示すことができ、看護教員養成講習会修了者の自信につながると 考えられる。そのため、これらの講習会を連動させ、さらには学位取得につながるようなコー スとして再構築することが求められる。  3.看護教員養成における今後の方向性について。都道府県が実施する看護教員養成講習会に 対して、国はこれまで講習会の実施要領を示し、補助してきたが、全国的に見ると質・量とも に格差が生じ、必ずしも効果的な制度運用が行われてきたとは言い難い。看護基礎教育の充実 に向け、看護教員の質・量の充実は極めて重要な課題であり、質の高い看護教員養成の体制整 備を図ることは急務であり、国は、こうした体制整備を支援すべきである。  一方、看護教育については、現在、厚生労働省の複数の検討会で議論されているところであ るが、看護教員に係る中長期的な視点に立った改善策についても、これらの検討会における議 論を踏まえ看護の質の向上と確保を図るため、連動性を持った効果的な政策を検討すべきであ る。以上、読み上げました。 ○永山座長 ただいま事務局から説明がありましたが、ご質問、ご意見等をお願いしたいと思 います。 ○安酸委員 2頁ですが、求められる能力の[2]の教育実践能力の2行目に「教材として」と書 いてあるのは「教材化して」と訂正していただけたらと思います。 ○永山座長 2頁(2)求められる能力の[2]の2点目の「学生の体験や臨床実践の状況を教材化し て」ということに訂正をお願いしたいということですが、ほかはいかがでしょうか。 ○井部委員 1頁の標題の付け方ですが、IIの看護教員に求められる資質・能力となっていま す。資質と能力ですが、資質とは、広辞苑によりますと、生まれつきの性質や才能となってい ますので、あえて資質を入れないで能力でいいのではないかと思います。 ○永山座長 いかがでしょうか。ずっとこの表現は使ってきたという状況もありますが。 ○井部委員 コンピテンシーという考え方からすると、能力と訳すのがいいのかどうかわかり ませんが、資質という先天的なものではなく、学習によって習得していくことができるものと いう意味合いで、資質というのを振り回さないほうがいいのではないかと私は思います。 ○羽生田委員 私は辞書を引いていないのでよくわかりませんが、今までにいろいろな所で資 質の向上という言葉が使われています。生まれつきの能力はもちろんですが、それを基礎とし ての資質というものの向上は図れるものという理解でいたのですが、辞書の説明では、生まれ つきのものだけで終わってしまうものですか。 ○井部委員 私は前から資質というのはどういう意味で使うのかと気になっていました。広辞 苑によりますと、生まれつきの性質や才能、天性とか資性とかと説明してあって、それしかな いのです。広辞苑を信じればの話ですが。 ○羽生田委員 それ自体を向上させるということはできるものという理解でいままでいたもの ですから、そういう意味から資質という言葉が出てきてもあまり違和感なく読んでいたのです。 ○齊藤委員 都立看護専門学校でも、教員の資質向上委員会というのを作って活動してきまし たが、今年から名前を変えることにしました。その理由は、先ほど井部委員が言われたのと全 く同じで、資質というのは生まれつきのものなので、それを向上させるというのではなく、FD 委員会に変えていこうかということで、いまは検討しています。 ○永山座長 少し議論が揺れるかと思います。ほかにご意見はいかがでしょうか。 ○中尾審議官 いまの言葉に関してですが、1頁の2の(1)に求められる資質、2頁の(2)に求め られる能力ということで仕分けをして書いていますので、資質というワーディングをもし変え るのであれば、(1)の部分に相当するものをどのように呼べばいいかということもご意見をいた だかないと。能力だけでいくと、(1)と(2)のカテゴリー分けを整理し直さなければいけないの かもしれません。 ○永山座長 それでは、少し時間をかけて検討するということでよろしいですか。そうしない と整合性とか、ちょっと立ち止まってしまうのではないかと思いますので。 ○島田課長補佐 「まとめ」には書きましたが、資質というかは別として、こういったどうい う能力や、いまは資質と言わせていただきますが、それを看護教員に求められるのかは、今日 も継続教育についてのご議論をいただきますので、そこでまた出てくるかとは思っています。  いま審議官が申し上げたように、果たして資質に当たるものをどのように整理していけばい いのかについて、先生方からここで若干ご意見をいただいて、さらに最終的にどうまとめるか については、継続教育での議論も踏まえてまとめていきたいと思いますので、ご意見をお願い します。 ○永山座長 それでは、それに関連したご意見を承りたいと思います。 ○井部委員 1頁の下の「求められる資質」は2行ありますが、「多様な学生の個性を尊重する 人権意識」は明らかに能力だと思います。しかし、「人間として、看護職として、教員としての 魅力」と言われると、もともと備わっているのか何というのか、先ほどの資質の部分かと思う のです。そうすると、人間として看護職として教員としての魅力をどうやって教えるのか、あ るいは学習するのかという点では、非常に難しいと思います。その意味でも能力という言葉に 限定して、人間としてという視点は、あらゆる職業に必要な基本的な要件ですので、私はいち ばん下の人間として看護職と教員としての魅力というのが座りが悪いと、思いました。 ○永山座長 それでは、関連のご意見を伺います。 ○後藤委員 教育のところでよくそう言われると思います。生まれつき持っているのは変わる か、変わらないかということだと思います。生まれつき持っているものが資質であるとしても、 教育というのは人の行動変容を起こすし、そのことが特徴ですから、行動が変容することによ って、その人がもともとやさしい人なのか、人にはあまり思いやりが持てない人なのかという ことも変わっていくという大前提に立って、教育というのはあるような気がするのです。  そういう観点からいえば、資質という言葉は普通に使っていますよね。ですから先生がおっ しゃることもよくわかるのですが、あまりそこにこだわらなくてもいいのかと思います。普通 に思う資質ということでいうと、この前も言いましたが、学生でもこんな子が看護師になって もいいのかなというのが、ある教員に触れたことによって変わっていくのが現実にあるのです。 そうすると、資質がもともとあったのだろう。つまり、人間はもともと善であると考えるか。 それが発揮されるみたいなことがあるとすれば、資質にこだわらなくてもいいのかという気が するのです。先生が言われるように能力という言葉で全部表現してしまってもいいのかもしれ ませんが、資質・能力というような気がするのです。 ○永山座長 ほかにいかがでしょうか。 ○佐藤委員 先ほど「人間として看護職として教員としての魅力」についてご意見がありまし たが、確かにこの検討会のこれまでの全体の流れからすると、異質な印象を受けます。このこ とをあげた理由は、これまでのご意見の中で、臨床実践能力と教育実践能力のどちらも必要で あるというご意見もありましたし、多様な学生に対応できる指導力あるいは学生を育む教育学 や教育論の視点が不足しているというご指摘もありましたので、教員一般に共通に望まれる基 本的な資質をこのように表現してみました。 ○永山座長 それでは、資質について、ほかにご意見はいかがですか。 ○安酸委員 私もいままで資質・能力ということで、あまり違和感を持たずに来たのですが、 いまの井部委員の発言を聞きながら考えると、本当に前提なのです。外してもいいのではとい う気に、今はなっています。能力ということで今回の報告書をまとめるとするほうが、むしろ シャープになるかなという気がしています。 ○岩本委員 能力と資質についての捉え方は先ほどから言われているとおりだと私も思います し、ここで求められるというのは、教員からすれば獲得するということだと思います。そうだ とすれば、やはり能力という表現の仕方でいいのではないかと思います。 ○永山座長 ほかにいかがですか。 ○後藤委員 言葉の言い回しだけになってしまうのかもしれませんが、自らの資質を高めてい かれるような能力ということだと思います。そういう意味で資質・能力というのがあるのでは ないでしょうか。自分が生まれつき持っていた能力を自ら高めていかれるような能力を持つ必 要がある。自分を開発できない人が他人を行動変容することは、教育学では、とても難しいと いう視点に立っているのではないかと思います。ですから、看護職員に求められる能力と、も しまとめるのであれば、資質を高められる能力とか、そういう言葉をこのどこかに盛り込むみ たいなものだと思います。もし厳密にこだわるのであれば、自分の持って生まれている資質を 高める能力は絶対必要だと思います。資質をまるで削るのには抵抗があります。 ○永山座長 ほかにいかがでしょうか。 ○井部委員 つまり、私はポツで資質・能力といつも並べてセットで使うということはあまり にもよく考えられていないのではないかと思いますので、文章の中にいま言われたような文言 を盛り込むのはいいと思いますが、常にセットで資質・能力、資質・能力と使わないほうがよ く配慮された報告書になるのではないかと思います。 ○永山座長 そうですね。すっきりするのではないかという意見ですね。 ○羽生田委員 いまのをまとめた形でいうと、IIで「看護教員に求められる資質・能力に関し て」とありますが、「看護教員に求められる能力と資質向上」ですね。資質と能力を並列ではな く、「求められる能力と資質の向上」ということです。私は資質自体は生まれながら持ったもの であっても、当然訓練、修業によって向上するものと思っていますので、資質という言葉を使 ってもいいと思います。「求められる能力と資質の向上」という能力と別にポツではなく、そう いう表現に変えればいいのではないかと思いました。 ○永山座長 どうでしょうか。まだ少し議論の余地があるようにも思いますが。それでは、少 し考えていただいて、違う意見もおありのようですので、少し進めてもよろしいでしょうか。 そこのところは、少し議論の余地ありということで。 ○佐藤委員 5頁の上から3行目の最後に「複数年にわたって断続的に履修できる」という表 現がありますが、断続的というとまとまりがないような印象を受けますので、はっきりと「分 割履修」と表現したほうがよろしいのではないかと思います。  4頁の下から2行目の「より多くの」云々から5頁の6行目までに、受講者に配慮した講習 のあり方が記述されておりますが、このことはなるべく早い段階で実現に移していただきたい と思います。  ただ一方で、あまり受講者に配慮しすぎて、いろいろな方法で講習を受ける形にすると、例 えば分割履修をした場合に、それぞれ修了した証明をどこで、誰が、どのように行うか、ある いは全部が修了した段階でそれをどこで誰が認定するのかという事務的なコントロールや全体 を通しての管理体制をどのように行うかが課題になると考えます。このことをこの報告書に盛 り込むかどうかは別にして、そういう事務的な課題が1つ出てきます。  それから、3.に、今後の方向性、中長期的な内容が書いてありますが、教員養成は将来的に は看護大学あるいは大学院の役目として考えられないのか。これはたぶん文部科学省との調整 が必要になるのだろうと思います。考え方として、例えば平成の初めごろには看護系の大学が 10数校でしたが、人確法の制定を契機に飛躍的に増えて、現在は200校に近い看護系の大学が 設置されているわけですから、十分にその役目を果たせる状況にあるのではないか。また大学 院も、大学を卒業していなくても同等の学力があれば、22歳を超えた段階で大学院の入学資格 があるわけです。資料1の中にこのことの記述はありますが、むしろこの3の今後の方向性の 項の末尾辺りに、そのようなことを書き込めないのかどうかということです。 ○永山座長 短期的に早々に解決しなければいけないことと、中長期的に解決しなければいけ ないことと、少し振り分けも必要かと思います。その整理はこれからになるかと思います。 ○羽生田委員 中長期的な話として、佐藤委員が言われた話はそういう方向もあるかなと思い ます。その場合に、それを支える周りのいろいろな状況を整理しないと、大学を出て教員にな るという方が、いまのままだったら増えるはずがない状況です。ですから、財政支援も含めて、 それをきちんと支援できる体制がなければ、そういう形にはなかなか行けないということも一 緒に書いていただかないと、それがいいということばかりを書かれても駄目だと感じますので、 その辺もご配慮いただきたいと思います。  いまのお話、いままでの議論もそうですが、養成所の教員という話だけなのです。いろいろ な中に出てくる看護大学の教授を含めた講師陣というか、それについては一言もない。これは 素晴らしいものだという前提の下に話が進んでいるということでよろしいのでしょうか。  というのは、いまのお話にも通じますが、大学で看護教員の養成も継続研修とか、そういう 話も常に大学でという話です。大学でいま教えている方々は、何がよくて、いまきちんと教育 ができているという前提で話になっているのか。そのいい所は何か。それをいまの養成所の教 員に活かす算段はないのか、というところも一度考えていただきたいような気がします。 ○永山座長 ご意見としてありがとうございます。後半で継続教育で大学教員のFD等々の話も 出てまいりますので、そこでまた議論を深めさせていただいてよろしいでしょうか。 ○井部委員 この報告書の2頁に「看護師等養成所※における看護教員の要件に関して」とい う見出しが付いているので、この続編があるのではないかと思うのです。つまり看護系大学の 教員の要件あるいは継続教育といったようなことは続くのではないかと思うのですが、どのよ うな構成でこのまとめを作ろうとされているのでしょうか。 ○野村看護課長 今回のまとめは、資料2に論点整理があります。この論点整理を目次みたい に見ていただければと思いますが、資料2の「主な検討課題と論点」で、1、2、3となってい ます。今回は1についてのこれまでの議論のまとめをしたところですので、継続教育について は、この中には入っておらず、これからの議論と思っていますので、続編として2のまとめが 議論が終わったあとに出てくることになると考えています。  ですから、教員の要件について規定があるのは養成所のみがありますで、そういう書き方を していますが、継続教育については、このまとめのあとに続編としてつながってくるという整 理になってくると思います。○永山座長 そういう意味でいいですか。 ○井部委員 つまり、2頁のIIIの看護師等養成所というのは、ここに注があって、厚生労働大 臣の指定する看護師等養成所と限定しているわけですので、看護系の大学の教員に関しては、 この報告書には入れないということになるのでしょうか。管轄が違うからそうならざるを得な いのかとも思うのですが、そこはどうなのでしょうか。 ○野村看護課長 教員になるための要件という入口については、厚生労働省の指定をしている 養成所の教員だけに限定しております。しかし、それ以降の養成、例えば新任教員研修とか、 継続教育などについては、大学も高等学校も含めた議論になっていくと思っています。  入口としての要件について厚生労働省指定の養成所だけに限っているというのは、この要件 という書き方が指導要領にありますが、それが厚生労働省の養成所だけにかかっている内容で したので、そこに限定していたということだけです。そこだけを取り出して議論したので養成 所だけになったということです。 ○永山座長 ちょっと微妙ですが、よろしいですか。 ○井部委員 しつこいようですが、そうすると、項目のIVの「看護教員の養成に関して」は、 養成所、看護系大学すべての看護教員の養成に関して対象としていると考えるということでし ょうか。 ○野村看護課長 説明がまどろこしくてすみませんが、IVについても、IVの1にありますよう に、教員養成講習会ということについてのまとめですので、教員養成講習会という規定は養成 所の教員にのみかかっておりますので、そこのことについて議論しているので養成所だけにな っています。大学についてはこういった講習会の規定がありませんので、触れていません。 ○井部委員 そうすると、先ほど羽生田委員が指摘された看護系大学の教員に関しては、どこ にも触れないということになるのでしょうか。 ○野村看護課長 1頁の教員に求められる資質・能力については、大学の教員も含まれている 整理になっています。それと今日の後半で議論を予定している継続教育については大学の教員 を含めて議論することになると思います。 ○永山座長 よろしいですか。何かすっきりしないような状況ですが、井部委員、いいですか。 ○井部委員 別に文部科学省で看護系人材の育成に関する検討会が開かれているので、そこで 看護系大学の教員に関しては検討されると考えてよろしいのでしょうか。 ○野村看護課長 文部科学省の現在開かれている検討会で検討されるのかどうかは承知してお りません。されるのかもしれませんし、内容についてはそこまでは承知しておりません。 ○永山座長 ほかにご意見いかがでしょうか。 ○羽生田委員 いま私が申し上げたいちばんの趣旨は、大学を出た方はそのまま大学の教員に なれるわけですね。それには何の要件もなく、大学を出れば大学の教員になれるわけですね。 そうなっていくには、養成所を出て、看護教員の養成講習を受けたり、いろいろな講習を受け て教員になるのと、大学を出たのと、大学を出たのがそのまま教員になって、それでいいのだ ということであれば、教員養成の中にそのいい部分を取り入れるとはできないのかということ です。どこが違って、こういうことをやれば看護教員の資質の向上、能力の向上につながると いう大学のいい所を教員養成の中に活かせるという話は出てこないのかなという意味で申し上 げました。 ○永山座長 厳密には後ほど野本委員から大学の教員の設置基準等の内容の説明がありますの で、そこでお聞きいただければと思っています。その中で羽生田委員のような意見は今まであ まり出てこなかったでしょうか。  ○安酸委員 大学を出たら即大学の先生になれると認識していないものですから、ご意見の意 味が理解しにくいところがあります。 ○永山座長 それでは、時間もまいっておりますので、継続教育のところで詳しく説明があり ますので、そこで若干議論をさせていただきたいと思います。それでは、いまいただいた意見 を踏まえて事務局で必要な修正文を作っていただき、最終的な確認は一応座長の私に一任して いただくということでよろしいでしょうか。たぶん文言でいろいろあると思います。 ○井部委員 先ほど佐藤委員が言われた最後に、大学とか、大学院の修了の人たちの方向で行 くということは、5頁の3に是非付け加えていただきたいと思います。  それから当面といったり、中長期といったりしていますが、私はかなり短期で当面を捉えて いただきたいと思います。制度の改革を必要としますが、10年も20年も「当面」にならない ようにということです。  それから当面の改善策の中に、先ほどもありましたように、財政的な支援、カリキュラムの 平準化は、是非強力にやっていただきたいと思います。 ○永山座長 貴重なご意見ありがとうございました。是非盛り込ませていただきたいと思いま す。  それでは、次に本日の後半の議題である看護教員の継続教育について、進めさせていただき たいと思います。まず論点等を確認したいと思いますので、事務局より資料の説明をお願いし ます。 ○島田課長補佐 資料1から説明します。先ほどこれまでの委員の主な意見ということで、1 〜3回のご意見をまとめたということをご案内しましたが、これまでも継続教育については、 委員の先生方からご意見をいただいております。それを少しご紹介しますと、3頁以降です。  「看護教員の継続教育について」ということでご意見をいただいていますが、例えば【各教 育機関での継続教育の現状と課題について】では、○の2つ目にありますように、病院と学校 のユニフィケーションは身分の保証や給与の関係などの問題で実践できないところが多いとい った課題とか、その下の大学等では教師教育という意味でファカルティ・ディベロップメント の取り組みが義務づけられているが、さらに看護実践能力を活かせるようなFD等の取り組みが 必要である、といったご意見。  それから、1つ飛ばして、大学が養成所も含めた看護教員を集めて公開講座等の講習を開催 し、専任教員の継続教育を担っているところもある、といったご意見もいただきました。さら に2つ下ですが、新人教員には即実践が求められており、その現状は過酷なので指導教員や助 言システムを用意しているところもある。その下に、大学院修了等、キャリアアップした看護 教員たちは大学へ流れてしまう。学習を積んだ教員が養成所で能力を発揮しながら教育に当た るという環境が整っていない。下から2つ目に、養成所でも大学や大学院のように、看護教員 のFDの義務化が必要である。その下で、国の制度として看護教員の質の保証については、看護 教員養成講習会とは別な仕組みが必要である、といった意見がありました。  次頁ですが、資質については先ほどご意見をいただいたところですが、【教員に求められる資 質と評価について】もご意見をいただいています。いろいろいただいておりますが、主な意見 としては、下から2つ目の、新任の看護教員が実際に教育を始めてから抱える悩み等に対応す るため、新任期のフォローアップ研修等の実施が求められる。その下で、看護教員の教育にお ける専門性を評価する仕組みの構築が求められる、といったご意見をいただいております。  さらに【自己研鑽について】ということで、継続教育に関するご意見もいただいています。 臨床での自己研鑽を研修として位置づけるなど、自己研鑽の機会を組織的にシステムとして確 保していくことが必要。その下の【今後の継続教育のシステムについて】のご意見ですが、看 護教員の成長を新任、中堅、ベテランといった段階別モデルを作成して対応するとよい、とい うご意見。大学が行っている講習等の教員の継続教育を各都道府県で行えるよう体制化する必 要がある。看護教員のキャリアアップやユニフィケーションのシステム化を考える必要がある。 こういったご意見をいただいております。  次に資料2です。先ほど看護課長からも紹介がありましたが、資料2は前回、前々回とも示 しておりますが、主な検討課題と論点をまとめているものです。本日はいままではこういった 継続教育についてのご意見をいただいていますが、課題2の看護教員の継続教育についてご議 論いただくわけです。その論点として、現状を踏まえ、看護教員の新任時期から連続した継続 教育の仕組みをどのように考えるか。看護教員の資質を高める継続教育にはどのような内容が 必要か。看護教員の継続教育の方法としてどのようなことが考えられるか。看護教員の実践能 力を高める方策にはどのようなものがあるかといった論点についてご議論いただきたいと考え ています。以上です。 ○永山座長 それでは、今までいくつも意見をいただいて、論点をまとめたものを説明してい ただきました。本日の検討会では、まず国、都道府県が実際に行っている継続教育の現状につ いて、委員の皆様と共通認識をしておきたいと思います。そこで事務局に国ならびに各都道府 県で行っている継続教育の内容についてまとめていただきましたので、ご説明をお願いします。 ○岩澤所長 それでは、資料4です。看護研修研究センターにおいて実施しております看護教 員の継続教育について、2点ご説明します。まず看護幹部教員の養成課程です。これは昭和52 年度から開講しております。教育目的は、看護学教育における指導的役割を果たす能力を啓発 するということで、そこに書いてある4つの教育目標を掲げ、1年間の研修をしております。  教育目標ですが、看護学教育について専門的知識を学び、看護学教育に適用する能力を啓発 する。2点目は、管理運営に関する概念を理解し、教育効果を高める能力を啓発する。3点目は、 教育上の問題の分析を行い、研究を企画し、それに必要な解決方法を見出して実践する能力を 啓発する。4点目に、地域において他の看護教員の育成指導を行える能力を啓発するというこ とです。この教育目標が達成できるよう、別紙1に教育科目、別紙2にこの教育内容の構造を 示しております。32単位、900時間で組まれています。  入学資格は業務経験5年以上で、教員になるための研修等を修了し、かつ専任教員の経験3 年以上の方を対象にしております。定員は40名で実施しておりますが、この春までの修了生 774名がおります。  2つ目の継続教育については資料4-2です。センターにおける看護教員の再教育講習会は、 平成6年度から実施しておりますが、平成14年度から「看護基礎教育における医療安全教育推 進について」というテーマで実施しておりますので、ご紹介いたします。目的は、社会・看護・ 医療の動向を捉え、時代に即応した看護教育を推進するため、医療事故予防に関する最新の知 識を踏まえた教育課程の編成のあり方を学び、教員としての資質の向上を図るということで、5 日間の研修をしております。  具体的には、今年のプログラムは次の頁にある別紙1のとおりです。講義と演習からなって いますが、演習を中心にして進めております。定員は100名ですけれども、今年度の受講生は 83名でした。このテーマで平成14年度から実施しておりますけれども、これまでの修了生が 677名です。センターの教官と外部の講師で教育は実施しております。以上です。 ○永山座長 引き続き各都道府県による専任教員再教育事業の実施についてお願いいたします。 ○島田課長補佐 資料5をご説明いたします。都道府県において専任教員の再教育事業を行っ ている所です。資料5は、都道府県に実施していただく際に、その事業の実施の仕方を通知と してお示ししているものの抜粋です。これは、看護職員資質向上推進事業の実施についてとい う通知の抜粋です。看護職員資質向上推進事業実施要綱の中に、専任教員再教育事業について 書かれています。  1番はこの事業の目的です。「この事業は、近年の少子高齢化の進展や疾病構造の変化による 医療の高度化・専門分化に対応し、国民の要望に応じることができる資質の高い看護職員の確 保に資することを目的とする」ということで事業を実施しております。  その中に、専任教員再教育事業があります。「看護職員養成については、医療の高度化・専門 分化に対応できるよう、その教育内容の向上を図るため、逐次カリキュラム改正等が行われて いるところであり、資質の高い看護職員の養成を図るため、専任教員の再教育研修を実施し、 看護職員の資質の向上を図る」ということで事業が行われております。  4番は実施主体ですが、この実施主体は都道府県になっております。「また、事業の目的の達 成のために必要があるときには、都道府県は事業を関係団体に委託することができる」という ことで実施されております。  次の頁では、実際にどのような実施をするのかということで、これも通知としてこういうも のがあるということでお示ししています。実施方法としては、1回当たり5〜10日間程度、年3 回程度、1回当たりの定員は35人程度ということで、都道府県の実情に応じて計画をしていた だくことになっております。研修会の例としては、看護教育内容の向上に資するものというこ とで、例がアからクまで書かれています。在宅医療の推進、インフォームド・コンセント、チ ームケア、看護倫理、医療安全といった内容があります。2番は、看護教育方法の向上として の内容として、魅力ある看護教育、自己学習能力の向上、教育教材の工夫といった内容も例と して掲げております。  資料5-2は、平成20年度に実際に都道府県でどういう専任教員の再教育事業が行われたかを まとめたものです。平成20年度は、青森から沖縄まで実施をしていただいています。日数にも 幅があったり、内容も都道府県の考え方で計画をすることになっております。実施期間、実施 対象者の数、テーマもさまざまな状況になっております。  1頁の下のほうに、兵庫県での実施例があります。兵庫県での事業内容は、[1]新人の専任教 員研修、[2]中堅の専任教員研修、[3]すべての専任教員研修という区分で行っている所もありま す。実施方法については、講義であったり、演習まで含めてやっている所もあるという状況で す。以上です。 ○永山座長 ただいまの事務局からの説明と、看護研修研究センターからの説明についてご質 問、ご意見がありましたらお願いいたします。 ○井部委員 資料5-2の再教育事業の表を見ますと、会場が青森の場合は弘前学院大学、神奈 川の場合は神奈川県立保健福祉大学の2箇所は県が主催でやっていて、たまたま会場として大 学を使ったということですか、それとも大学に委託をしているのでしょうか。 ○永山座長 具体的な運用はわかりますか。 ○島田課長補佐 県が実施し、場所だけ大学を使っているという所もありますし、県が委託を して事業を実施している所も両方あります。 ○林正委員 資料5-1の1頁の5 国の補助のところで、予算の範囲内で補助するものとすると あります。そうすると、予算が決まっていて、たくさんの都道府県が手を挙げたときには、配 分などで問題が生じる場合もあるのですか。それとも、都道府県のほうがそれを見越した上で 手を挙げるから、それほど問題は生じないのでしょうか。実態はどのようになっていますか。 ○野村看護課長 いま現在の実態は、予算を超えるような事業が出されるという状況ではあり ません。逆に、想定している予算より少ないような事業の出し方をされています。 ○佐藤委員 都道府県の事業ですが、現在福島県で看護教員養成講習を実施しています。その 講習に、過去にこの講習を受講して修了した人たちも聴講可能として受講の案内をしています。 うちからも毎回交替で聴講に出かけていっていますが、それとこれは違うのですね。 ○島田課長補佐 佐藤委員がおっしゃっておられるのは、教員養成講習会のほうということで すか。 ○佐藤委員 はい。 ○島田課長補佐 教員養成講習会ではないです。 ○永山座長 国と、各都道府県の継続教員ということで説明をしていただきました。続いて、 実際に各養成機関で看護教員の継続教育として実施している取り組みの現状と課題について、 それぞれの立場からの発表をお願いいたします。本日は、5年一貫校から福村先生、養成所の 代表として齊藤委員、大学の代表として野本委員にお願いしております。時間は7、8分と限ら れた中ですけれども、よろしくお願いいたします。質疑は、3人の発表後にお願いいたします。 最初に、千葉県立幕張総合高等学校の福村先生からお願いいたします。 ○福村参考人 5年一貫教育を行っております、千葉県立幕張総合高等学校看護科・専攻科の 福村です。資料6を使い、5年一貫校における看護教員の継続教育についての実際例を説明さ せていただきます。  5年一貫教育は、高等学校教育の中に、看護教育を位置づけて行っているのが特徴です。で すから、看護教員も教育職員免許法に基づく、看護教員の免許を持って教育活動を行っており ます。教員の研修も、看護に関する研修だけではなく、高等学校教員として必要な研修が数多 くあります。  研修の種類は大きく分けると1のように分かれます。次の資料で1つずつ説明させていただ きます。教育委員会の悉皆研修ですが、教員の研修は文部科学省において基本的な研修が体系 化され、それを受けて各都道府県の教育委員会が実施しております。その基本となる考え方は、 教員は教職経験やライフステージごとに、学校で担わなければならない役割があり、それらの 役割を果たすための必要な資質・能力を備えるためには段階的な研修が必要であるという考え 方です。  これに沿って、最初の研修となるのが初任者研修(法定研修)です。初任者研修は、教育公 務員法に基づく法定研修で、新規採用の教員が、採用の日から1年間、実践的指導力と使命感 を養い、幅広い知見を得るため、学級や教科・科目を担当しながら、実践的な研修を実施いた します。研修時間は、校内300時間以上、校外25日以上に及び、校外の研修には社会福祉施設、 社会奉仕などが含まれます。  5年経験者研修です。法定研修ではないのですが、学級経営、学習指導及び生徒指導等に関 する研修、並びに教科指導等に関しても、実践的指導力の向上を図るために実施されておりま す。  10年経験者研修は、教育公務員法に基づく法定研修です。10年の経験者ですから、その教員 の能力、適性に応じ、得意分野を促すことを狙いとしております。各教員の希望や、主体的な 計画が尊重されます。研修時間は、長期休業中に校外で20日、授業期間中に校内で20日ほど 実施されます。研究事業や教材研究は必ず内容に含まれます。  次は新しい研修ですけれども、教員免許更新のための研修です。平成19年の改正教育職員免 許法の成立により、平成21年4月から教員免許更新制度が導入されました。この更新制度の狙 いは、10年毎に最新の知識技能を身に付け、教員として必要な資質・能力を保持することです。 研修時間は30時間以上で、文部科学大臣の認定を受けて大学等が開設する、免許状更新講習の 受講と修了が必要になります。  千葉県高等学校教育研究会看護部会の研修というのは、5年一貫校の2校で年に2回研究協議 を重ねております。内容は資料にあるとおりで、研究事業、教材研究、カリキュラム研究など の研究協議と、必要時に専門領域の講師を招き、講習等を実施しております。  校内における研修は、年間を通じて定期及び日常的に行っております。看護の授業はチーム・ ティーチングが多いため、授業内容や方法について、日々教員同士で検討しております。また、 授業の成果は定期の試験や提出物だけでなく、臨地実習における生徒の行動や記録にも現れま すので、教員間で情報交換を重ね、校内の授業の改善に役立てております。  産業教育に関する指導者向け研修は、1年に1回ぐらいのものが多いですが、全国的な研修 であり、貴重な機会となっております。どれも専門領域の第一人者である先生の講演や講習が あり、プログラムの内容も精選されており、日々の教育活動にすぐ役立つ研修となっておりま す。毎年全員が受講することはできませんが、受講者は帰校後、資料を教科全員に回し、質問 に答えるなど、その内容が伝わるよう努力しております。  次は個人の希望による研修です。短期のものが多いですが、長期の研修としては、総合教育 センターによる1年間の研修があります。1年間の長期研修は、基本的に研修希望者が、研修 場所、研修内容を計画して実施します。実際の例では、専門領域の資質の向上を図るため、医 療現場の研修や大学等の研修を受けることが多いです。また、千葉県では5年一貫教育が始ま るときにも、各教員に4カ月の研修が認められ、それぞれ現場研修等を計画して実施しました。 短期間の研修は教育関係のものが多く、最近の傾向では特別支援やIT関係が増えております。  県総合教育センター以外の研修については、看護協会(全国・都道府県)、看護学会、専門領 域の現場研修、出身校の卒後研修、国立保健医療科学院(医療安全など)の研修があります。 また、勤務時間終了後に大学院に通う教員もおり、各自が常に自身の資質の向上に努めており ます。  最後に、教員研修センターや県教育委員会が行っている研修です。指導者、管理者向けの研 修で、中堅以降学校運営の主な担い手として、資質の向上を目指すため、多様な内容を含む研 修が実施されています。看護教員も経験を重ね、現在教頭や校長として学校運営に携わってい る教員もおります。  各教員がどのように研修を受けているかを説明します。看護教員全員が日々、又は定期的に 行っている研修が、校内の学習指導部及び教科の研修と、県内の高等学校教育研究会の看護部 会です。  決められた時期に必ず行う研修として初任時、5年目、10年目、及び10年毎の免許更新時の 研修があります。推薦や人数制限のある研修は順番に受け、研修を受けた教員は、その内容を 全員に周知徹底するという方針で、全員の資質向上につなげています。個人研修は、長期研修 はなかなか受ける機会を得られないので、短い研修で各自自分の専門性を高めたり、高等学校 教員として必要な指導内容に関する研修を希望し、実施しております。指導者・組合者向けの 研修は、校長推薦などにより研修者が選ばれて実施しております。  それぞれの研修の関係性ですが、5年一貫校において、教員としての資質の基本となるのは 高等学校教員としての研修です。その次に看護教育に関する知見をしっかり持ち、その上で各 自の専門領域における看護研究を深めております。看護教員によってその背景はさまざまです ので、各自自分の日々の教育活動を内省し、より必要を感じる分野の研修を優先して計画し、 実施しております。  現在の5年一貫校における継続教育の現状です。日々の地道な研修活動に関しては互いに刺 激し合い、協議を深め、充実していると思われます。しかし、看護教育のカリキュラムはここ 数年変化が非常に速く、新たな内容も増えています。これらに対応するには短期間の集中的な 研修では、理解はできても教える段階までにはなかなか至らず、今後授業の質の確保が課題で す。  そのため、今後の継続教育に関する課題として、必要な研修を体系的に、また必要な期間し っかり行えるよう、長期の研修の機会が確実に保障されることが、教育の質の確保と向上のた めに必要ではないかと考えております。専門領域の現場研修も、免許更新のための研修と同様、 一定期間毎に数カ月から1年の期間が必要なので、今後も教育委員会等へ強く要望していきた いと考えております。このための代替教員の確保も同様に要望していきたいと考えております。 以上で、5年一貫校における看護教員の継続教育に関する本校の実践例を終わります。 ○永山座長 引き続き齊藤委員からお願いいたします。 ○齊藤委員 資料7で説明させていただきます。都立看護専門学校の取り組みとして、最初に 概要を説明させていただきます。3年課程の看護師養成所として7校体制をとっております。1 学校の養成規模は、1校1学年80名で、総240名です。1校18名の教員定数×7校で、都立全 体で126名の専任教員がおります。昨年度は新人教員は3名でした。これは教員養成講座未受 講者で、前にお示しいただいた教員の要件のウに当たる臨床経験のみで、同等の力があると認 められる者というところで、病院から異動してきた教員です。新人教員以外は、全員教員養成 講座修了者です。また、全員が指導要領専任教員アということで、臨床経験5年の該当者にな ります。その中の幹部教員養成課程修了者は14名おり、教務係長は全員修了者になります。  取り組みで7項目挙げております。この項目の一つひとつについて説明させていただきます ので、これは目次という形でご覧いただければと思います。1番の、都立看学の教員研修につ いては、都立看学7校で持っている資質向上検討委員会で作成したものです。今年度からFD委 員会と名称を変えております。その中で、教員に必要な4つの能力ということで、看護能力、 教育能力、研究能力、マネジメント能力を抽出いたしました。この4つの能力を伸ばす研修の 体系化ということで、後ろに綴じております表をご覧ください。これは、都立看護専門学校職 場研修体系図です。これは、先ほどお示しいたしました教育能力、看護能力、研究能力、マネ ジメント能力の4つの能力を、どういう研修で伸ばしていこうかという体系図を作ったもので す。  教育能力向上については、教育技法研修ということで、IとIIを組んでいて、Iのところで は最新医療事情研修、IIのところでは各校で7つの研修が行われますけれども、それぞれの学 校で職場内研修という形で研修を組んでおります。後ほど、この中の臨床研修についてのご報 告と、研究能力向上から枝分かれしている研究調査の中にある授業研究についてご報告させて いただきます。  次の頁は、専任教員のキャリア別達成目標ということで、先ほどの4つの能力を表側に置き まして、表頭にキャリア別の区分をし、それぞれの目標をここに設定しております。例えば1、 2年の新人教員であれば、達成目標は看護教員として基礎的な実務能力を養うといったものを 設定しております。あとはご参照いただきたいと思います。  スライドの2頁に戻ってください。4つの能力をどのように評価していくかということです。 この評価の仕組みについてはまだ検討段階です。教員は年度当初に研修計画を立てて、結果は 後で述べます自己申告のところで自己評価、報告という形をとっております。  次は、先ほど一部ご紹介させていただきました授業研究についてです。これは、学校を越え た各看護学領域での横断的取り組みによって、専任教員個々の教育能力の向上を目的に、平成 15年から開始しております。研修期間は月1回幹事校に専門領域の教員が集合し、運営してい ます。成果としては、公開授業による授業研究、教材研究、看護診断や形態機能学などを導入 する時には、共通の教案作成など、都立7校のスケールメリットを生かして授業に反映させて おります。下の表は、平成21年度の幹事校の一例です。例えば基礎看護学は板橋看護専門学校 が幹事校となっておりますが、ここの学校にほかの6校の教員が集まって授業研究をするスタ イルをとっています。  臨床研修についてご紹介いたします。これは、最新の診療の補助技術、日常生活の援助技術 などを、実践を通して教員の実践能力を高め、その経験を看護教育に活用することを目的とし ております。これも平成15年から設置していて、研修のメニューとして2つ、長期臨床研修(3 カ月)と、短期臨床研修(8〜12日)ということで設定しております。研修実績としては、長 期臨床研修は28名(延べ)、短期臨床研修は142名(延べ)、この研修については5年に1度の 悉皆研修としております。成果としては、看護診断を実際に展開してみたり、術前術後の看護、 終末期看護といったことを実践しております。自分の臨床能力の確認とか、実習指導のポイン トの理解、スタッフとのコミュニケーションが取れるといった成果を上げております。  次は研修ではないのですけれども、専門領域の認定制度を都立では設定しています。これは 教員の専門性を高め、看護教員の質の向上を図るために平成16年から設置しております。教員 全体の中で認定者は84名です。認定基準は、論文と教育経験、臨床経験、そして学会の所属を 基準にしています。認定後は人事異動・担当科目・学会派遣などの考慮をしております。  それぞれの研修などを、教員一人一人がどのように1年間の中で受けているかということに ついては、新人教員Aのモデルを示しております。新人教員研修については4回計画しており ますので、4月、7月、11月、3月に、それぞれ7校の新人教員が集まって研修をしております。 新人教員の8月のところでは、先ほどの教育技法研修II*ということで、今年度は形態機能学を 入れましたが、これについて研修を受けております。さらにプリセプターによる指導というこ とで、1年間授業案・実習指導・学生指導・学校行事といったものについて指導体制をとって おります。  講義については、6月に本講議がありますので、5月ごろに模擬講議という形で指導しており ます。実習指導については、1クール目はプリセプターについて指導の実際を見学し、2クール 目以降は一人立ちということで、年間13クールの実習指導をしております。中堅職員のB、C についてはご参照いただきたいと思います。  次も研修ではないのですが、教育の自己点検、自己評価の実施ということで、学校運営評価 の実際を教員の参加で行っております。この各項目が教員の活動の振り返りにもなるというこ とで、学校運営の参画意識が高まっております。また、授業評価についても、フィードバック 等を通し、自分の授業の振り返りができております。  人事考課制度については、職員一人ひとりの能力を最大限に活かすことを目的に、東京都全 体で実施しておりますが、毎年管理職による組織目標の提示により、学校の目指すところを全 職員で共有しております。中身としては、教育活動・学習支援・就職支援・施設設備の整備と いったところですが、この組織目標を受けて、教員個々が職務目標の設定と達成度合いの自己 採点を行い、学校管理者と教員との自己申告面接によって共通理解を深めております。  次の頁は業務分担と組織支援です。養成所の教員は、実習指導と講義の2つの授業を常に抱 えていて、さらに会議や授業準備・採点といった過密スケジュールが常態化しておりますので、 学校業務全体の調整によってオーバーワークを防ぎ、教員の能力を最大限引き出す努力をして おります。中身についてはご参照いただきたいと思います。  新人教員の支援ということです。新人教員が教育活動で戸惑うのは、実践者から看護教育者 としての役割が変化することにあると考え、下の3つの体制に取り組んでおります。1番目は、 プリセプターの配置による役割意向への支援。2番目は業務の調整、できるだけ講義を遅い時 間に設定したり、実習指導の1クール目は、他の先輩教員のモデルを見せるといったことをや っております。3番目は新人教員の研修ということで、年3、4回の集合研修を組んでおります。  次の頁は、養成所教員の継続教育の課題ということでまとめました。これは、本部から説明 がありました内容と重複しておりますので省かせていただきます。以上です。 ○永山座長 最後に野本委員からお願いいたします。 ○野本委員 資料8に基づいて説明させていただきます。大学におけるFD活動の現状というこ とで、個別な状況というよりは少し大学全般にわたっての話になります。いままでのお二方よ り随分抽象的な話になってしまうと思います。  大学におけるFD(Faculty Development)ということで、どのような考え方で行われているの かを最初に確認させていただきます。大学の理念、目標や教育内容、教育方法を改善するため の組織的な取り組みということで、この概念はアメリカ、イギリス辺りが先行していて1800年 代ぐらいから始まっています。我が国には2000年ごろに文部科学省が検討を始め、それらを踏 まえてFDの定義等が書かれております。  その中では、教員相互の授業参加の実施、授業の方法についての研究会の開催や、新任教員 のための研修会の開催等を挙げることができるということで、これらの内容をFDの中に含める ようにということで、FD活動が始まっています。  広義の意味でFDというのは授業のことだけではなくて、2枚目のスライドの下のほうに書か れておりますように、研究、教育、社会的サービス、管理運営の側面、各側面すべてを含めて 開発ということなのですが、主に次の頁の大学設置基準のところを見るとわかりますように、 現在の大学のFDというのは、授業の内容、方法の改善を図るための組織的な研修及び研究の実 施に努めなければならないというところを根拠にして行われておりますので、やや狭義なFDの 活動に偏っている部分が多いのではないかと思っています。  その上がFD活動の焦点ということで、文部科学省の絹川先生の報告に基づいて出されている ものがあるのですけれども、このような内容をFDの活動としていくようにということで行われ ており、これは大学全般的な動きとしてのFDの方向性です。  これに加えて、私たち看護系の大学がどのような形で行われるかということを検討していか なければならないのですけれども、全般的な大学の傾向として、先ほどのFD活動の焦点のとこ ろに書かれております13項目のうち、7番のアセスメント、学生による授業評価、同僚教員に よる教授法評価等は、かなり多くの大学が取り組んでいます。9番の教員の研究支援もかなり なされています。それらを含め、現在自己点検評価、これは学校教育法の自己評価、認証評価 等を受けるというところに基づいて行われておりますので、FD活動はここへ結び付けていくと いう形で展開されています。  看護系に限って言いますと、先ほどの話の中にも出てきましたが、最近は指定規則等の改正 等があり、カリキュラム開発について、大学の理念・目的を理解するためのワークショップ等 も開催されている状況にあります。3番の教員の教育技法等に関してですが、大学に関しては 先ほどのお二人の説明ではかなり詳しく計画的に行われている状況が報告されましたが、これ はかなり各大学に任されている部分があります。それぞれの大学で企画・検討しながら、集合 研修で行われている部分と、実践的に、つまりOJT的に行われている部分と両方の側面から進 められていると思います。  次の頁は、そういうFDを行っている大学教員の資格に関してです。学校教育法第92条に教 授、准教授、助教、助手、講師が大学の教員として書かれています。赤字で書いている助手に 関しては、職員として置かなければならないとはなっているのですけれども、教育職員という 形ではなくて、学校職員という形で法律上は位置づけられておりますので、基本的には、法律 の中では教員の枠組みの中に含まれていない状況にあります。平成19年度から、かつての助手 が助教と助手の2つの職員に分かれました。この助教、助手の先生辺りがかなり実習指導等に も携わっておりますので、単位認定等には携わらないにしても、助手の先生方も、学生の指導 等にはかなりかかわっているものと思われます。  それらの職員に就くためにどういう条件が必要なのかということですが、大学設置基準で教 員の資格として、その下の表に示されているような要件が提示されております。これらの要件 と共に、下に書きましたような大学における教育を担当するにふさわしい教育上の能力を有す るということが教員の資格となっております。  看護系の大学に関しては、教育を担当するにふさわしい教育上の能力ということで、それぞ れの実践領域、実践経験、どういう専門領域で実践してきたのか、研究を積み重ねているのか ということが考慮されて教員になっていると思います。設置の段階では、文部科学省の審査を 受けてということになりますが、それ以降は各大学の教授会等の検討によって、大学の教員は 採用されていくことになります。大学によってふさわしい教育上の能力とする基準をどの程度 にしているか、というのは少し違いがあるのではないかと思います。  教授から助教のところに当たる職員になるためには、博士あるいは修士の学位を持つことが 条件となっている職位がほとんどですので、現在博士、修士を取るためにどういう教育課程が あるかを次の頁に示しております。関東、中部、近畿辺り、九州にも多いのですけれども、教 育課程は全部で113課程ありまして、それらの定員は修士課程が1,865人、博士課程が369人 ということで、全国的に現在200校近くになろうとしている大学の数からしますと、修士、博 士の学位を取るだけの人数というのは全国的に少ない状況にあると言えると思います。  これらの修士課程、博士課程の教育も、修士課程が我が国では1979年から教育が開始されて おりますし、博士課程も1988年からということですので、修士課程の教育30年、博士課程の 教育20年という歴史の中で、それぞれの学位を取っている人を考えますと、大学の職員として の人数とすれば非常に少ない人数になっているのではないかと思います。それだけが修士、博 士を取る道ではないので、必ずしも現実がどうかというところはこれだけではわからないので すけれども、このような状況にあります。  次に看護系の大学でどのようなFDが行われていて、どのような現状にあるのかということで す。次のスライドは、主に安酸委員が看護系大学協議会のFD委員会を担当されているときの調 査の結果です。研究能力の向上に向けてということで、研究費の確保・環境の整備、外部資金 を獲得するための研修会、さまざまな研究についての研修会・学習会・発表会の開催、修士・ 博士課程への就学の機会の確保、学外・学内の共同研究・研究プロジェクトの推進、若手教員 への研究活動の支援が行われているということが調査結果として明らかになっています。  看護系大学のFD活動についての課題ということで、平成19年度に開催されたシンポジウム で確認された課題は、看護師養成教員教育にかかわる教員、大学教育(高等教育)にかかわる 教員としての能力の向上に向けた活動をFDとして実施していかなければならない、要するに、 看護学教員として、あるいは大学教員としてという二側面から能力の向上に向けた活動が必要 であるということ、現在は教員不足ということもありますので、それに対する準備教育、若手 教員・新任教員の教育能力獲得のための活動が必要不可欠であろうということを確認しており ます。  次の頁は井部委員が中心になってまとめられた、平成20年度の授業活動報告書の中に、FD 活動の現状について書かれているところから抜粋したものです。これは、FD委員会の組織率は 95.8%です。2008年から、大学におけるFD活動が義務化されましたので、2003年から2007年 ですけれども、その準備も含めてFD委員会を組織し、FD活動を行っている現状があります。 教育能力の向上のための研修会、カリキュラム評価・開発に関する検討会というのはかなりの 大学で行われていますけれども、研究能力向上のための研修会が6割程度、新任教員を対象と した研修会が46%、大学運営・組織開発については39%ということで、この辺りのFD活動に は、まだまだ十分ではないところがあるのかということが確認されています。  そのほかに、先ほどお話しました学生からの授業評価、教員相互の授業参観(ピアレビュー) に関しては、各大学で授業評価表が作成され、その評価に基づいて学生からの授業評価を受け たり、教員間で授業を互いに参観し合って、アフターセッション等で授業の良かった点、改善 すべき点等をディスカッションするという形で、FD活動が行われています。しかし、この評価 結果の活用方法は各教員に任されるというところのほうが多く、これらをどういう形で評価に つなげていくか、あるいは授業改善につなげていくかというところが現在の重要な課題になっ ています。  あくまで学生は教育の専門家ではありませんので、そういう意味では学生からの評価をどの ように授業に活かすかということに関しては、教員がその辺りの知識を持っていなければ、う まく改善していくことはできない可能性があります。そのために、大学によっては自己点検評 価に活用したり、授業改善に向けた研修会ということで、お互いに学生からの評価を受けて、 どのように授業を改善したかということを発表し合ってお互いにディスカッションし合ったり、 授業評価の活かし方ということで学習会を開催したりというケースもあるということがわかり ました。  最後になりますが、上のスライドは看護系の大学と限らない、看護学教員の継続教育に関す る研究を抜粋したものです。どういう研究がなされていて、研究成果が出されているのかを調 べた研究によると、看護教員の継続教育に関する研究内容は9つのカテゴリーに分類されるよ うな研究が推進されていることがわかりました。これらを見ますと、FDの実態を調査していた り、研修に対する感想や、学びの内容を書いたりという研究はありますが、FDをどういう形で 進めていったらいいのかということに関する研究成果は十分に産出されていません。そのため にFDをどのように進めていったらいいのかということは、かなり手探りの部分も大きいのでは ないかということが言えます。  その下は、FDの企画・運営に携わる看護教員が直面している活動上の問題ということです。 これは看護系大学、あるいは短期大学のFDの運営・企画を担当している教員9名に面接調査を 実施した結果です。9名ということで非常に対象者が少なく、もしかすると全体は反映してい ない可能性もあるのですけれども、FDに対する教員の抵抗感・消極的な態度、十分な知識を持 ってFDが企画・推進できないということが問題になっており、FDのための予算などもなかな か確保しにくいということが問題として挙げられています。  そのような中で、今後看護系の大学においてFD活動をしていく上での課題ですが、看護系だ けの単科大学もありますが、総合大学の中で看護系の学部、学科が置かれている大学等もあり ます。その中でFD活動として看護系の教員に対してどのようなFDを進めていくかというとこ ろは課題かと思います。私が所属している大学は、学部は1つなのですが、看護学科と臨床検 査学科の2学科があり、それぞれの教員に対するFDというものは、それぞれにニードが少し違 う部分があります。FDの企画とか推進という意味においては非常にさまざまな要望があったり して、どういう形で企画していくのかというところに難しい問題を抱えていると思います。  1つは看護系の大学の教員が、大学院の修了生等というのは非常に数も少なくて、もしかす ると教員としての準備が十分に整っていない教員もいるということで、そういう方々のニード に応えるFDプログラムを提供していく必要性が1つあるのではないかと思います。それから、 看護系の大学の特徴に応じた教授活動に必要な知識や技術、即ち看護系の学校では実習が必要 になってきますが、実習という重要な授業が適切な形で展開されるためには、それなりの知識・ 技術が必要になってきます。これらを修得するためのFD活動が必要ではないかと思います。今 の段階で、教員としての準備教育をFDだけで補うことは限界があるので、この辺りをどのよう にしていくかということが非常に課題ではないかと思います。  そして本来のFDの目的である、自己点検評価の結果に基づく教育活動の改善というところに 向かうためには、大学におけるFDを企画・運営するための知識が必要でありますし、教員の個々 の自立的な活動というものも重要になってくると思います。大学の中では、かなり自立という ことに委ねられているところが多々ありますので、その辺りとFD活動との兼合いも検討してい かなければいけないと思っています。以上です。 ○永山座長 ただいまの3人からの発表は、それぞれのお立場からのご意見でしたので、ある 意味では情報交換と言ったらいいのでしょうか、そういう場になったのではないかと考えてお りますが、ご質問がありましたらお願いいたします。 ○林正委員 都立のシステムについてお聞きします。資料の3頁の下のほうに、看護実践能力 の向上、臨床研修として、長期と短期の臨床研修について説明があります。この場合代替の教 員はどのようにして確保するのでしょうか。 ○齊藤委員 代替教員についてはおりません。4月早々の段階で、長期に行く教員、短期に行 く教員をそれぞれ決めます。短期については、長期休業中の期間に行くということで、職務に はあまり影響はないのですが、3カ月となった場合には、授業分担の調整をしたり、担当部署 の調整をしたりということで、人数は減員のままやっています。  臨床研修をするとなると、どうしても技術的なことを実践する上で、患者にさまざまなケア を提供していくことになりますので、兼務発令を出す形で実践しております。兼務発令という のは、都立病院だけを研修先にしているのですけれども、それをしないと病院での看護師ケア の実践は非常に難しいですので、それを出す形で行っております。 ○林正委員 確認ですけれども、兼務発令が出るということは、ここの長期の場合は原則とし て都立病院でということですか。 ○齊藤委員 はい、そうです。そして所属は学校になります。 ○佐藤委員 都立の先生にお伺いします。「都立看護専門学校の取り組み」の内容は体系的に、 緻密にできていて感心しております。大学と高等学校は国又は都道府県の法令といいますか、 規則で義務化された研修がありますが、養成所の場合には、国や都道府県の法令、条例等でこ の資料の中で義務化されているものがあるかどうかをお伺いします。 ○羽生田委員 それぞれ非常に素晴らしい継続研修ですけれども、これはその地域で、いろい ろな学校の専任教員なりが参加をする形というのが、大学でも都立もそうなのですけれども、 実際にいろいろな学校から集まってきて同様のシステムができ得るものですか。一つひとつの 学校で、こういう研修のシステムを組んでやっていますよね。都立の場合はほかの学校も一緒 に入ってということになりますか。いまの都立の学校の場合には、都立の学校全体でやってい るわけですか。 ○齊藤委員 都立は7校ありますので、その7校がそれぞれ別々の教育活動をしているのです けれども、1校に集まって集合でやっているのは授業研究とか、そういうスタイルのものがあ ります。そして、先ほどの臨床研修については、各校独自で病院との調整をしながら進めてお りますので両方あるということです。 ○羽生田委員 県単位でもいいのですけれども、養成所の専任教員の継続教育というのは、い ま3つのそれぞれの一貫教育と、都立の養成所、それから大学とありましたけれども、その良 いところを最後のFDというシステムが、県単位で十分取り入れていけるのではないかと見なが ら聞いていました。非常に難しい面もありますけれども、1つの学校だけではなくて、地域で 看護教員を継続教育というシステムに組み込んでいけるというものだろうとお聞きしていたも のですから、それが拡大していけるものかどうかというところをお聞きしたかったのです。 ○永山座長 それぞれ組織の設置主体が違いますので、課長から何かご意見はありますか。 ○野村看護課長 実際にやられている所で可能性があるかということを是非ご意見を伺いたい と思います。 ○永山座長 それでは、それぞれの所で可能かどうかということですので、発表順に福村先生 からお願いいたします。 ○福村参考人 可能というのは、本校の場合は高等学校教育に位置づいていますので、地域の 養成所ということでしょうか。県の教育委員会が主催しているものは、教員免許を必ず必要と しての研修ということになりますので、今回ここで説明させていただいたことも、内容をいか に共有できるかということになるのかと思いながら発表させていただいていました。システム 的にはかなりいろいろな違いがあるかと思います。ですから、うちの場合の研修を養成所と共 有というのは立場的に難しいと言わざるを得ないかと思います。 ○齊藤委員 養成所同士のブロックを作ってFDをやっていくというのは可能ではないかと思 っています。それで授業研究とか、学校評価も進んでいる所と進んでいない所があるのではな いかと思うのです。それは、その学校、学校でできる状態とできない状態があるので、何校か で組んでやっていけばできるのではないかと思っています。 ○野本委員 私の大学ではというか、私は地方ですので学校もそんなに数がたくさんないです。 例えば県立の専門学校は1校しかありません。それ以外の学校というのは私立です。大学は2 校ありますが、そういう中で組織的に組んで継続教育という形にはなかなかできていない部分 があります。今の段階では、私どもの学校が中心となり、県下の看護学校の先生方に呼びかけ て学習会を開催し、その学習会に是非ご参加くださいというようなことをしています。私たち が開いている研修会を公開にして、先生方もご参加いただいて結構です、というような形での 継続教育の一部みたいなことを行うことはできているかと思います。  それぞれ設置主体も違いますし、教育課程も違い、進学コースの課程もあれば、レギュラー コースの課程もあるしというところで、数少ない学校が協力していくというのは難しい部分も あって、なかなかシステマティックにはいかないのですが、その一部というのはなんとかやっ ていけるものだと思っています。 ○永山座長 まだほかに意見もあろうかと思いますが、時間が迫ってきております。本日の論 点は資料2の看護教員の継続教育の4点について、お三方からの報告を受けて少し議論したい と思っていました。この課題については、次回9月30日にも継続して議論したいと思います。 本日は情報交換ということで、まとめをしておいていただくということでよろしいでしょうか。 是非これだけは聞いておきたいということがありますか。 ○安酸委員 継続教育の中で、講義を聞いて共有してわかった気になるところまでは結構いき ます。実習に行くという所もありましたけれども、演習的なところで教材化のことや具体的な かかわり方まで計画したほうが質の保障にはなる。FDの義務化に関しても、レクチャーを聴い て、FDをやったことにする、形骸化するというのが陥りやすいところなのです。実際に本当に 力が付くようなシステム化ということの検討が必要だろうと思っていますので、その辺りに関 してのアイディア等も話せればいいかなと思っています。 ○永山座長 内容の検討ということですね。 ○後藤委員 民間の看護師の養成所では、このような継続教育を組織立ってやるというのは1 校だと非常に難しいということなので、日本看護学校協議会などが中心に集まって研修すると いう仕組みを利用する。実際の教育活動の中でのOJTで、先輩が後輩にみたいな形にならざる を得ないです。  例えば都立だとか、大学での仕組みだとか、5年制の一貫教育の学校の仕組みも伺いました が、養成所に開放していただく。どのように開放できるのかというのは先ほどお話がありまし たけれども、是非連携を図っていただくような仕組みを考えていただけると非常にありがたい ということです。都立のところでもありましたけれども、民間の養成所では研修に出ている間 の代わりの教員の確保が非常に難しいです。研修に出すために代わりの教員を出してくれるよ うな、ナースバンクのような教員のバンクのような仕組みがないとなかなか動きにくいという ことがあります。代わりの教員を派遣する仕組みみたいなこともシステムとしては考えていか ないと結構難しいという感じがします。 ○石渡委員 都立の専任教員のキャリア別達成目標というのが非常にわかりやすくて、先ほど から議論にありました資質・能力というところもかなり明確に出ているかなというところがあ りました。看護師のキャリアラダーというのも、全国的に共通のものというのは難しいところ があります。しかし、ある程度の共通ベースはなんとなく了解している部分がありますので、 専任教員も段階的にどこまでの能力という辺りのところが、指針などで出てくると、その後の 継続教育の論議につながりやすいのかと思いながら聞いていました。 ○永山座長 キャリア別達成目標等のラダー的なものも提示されておりますので、次回に参考 にしながら議論を深めていきたいと思います。そろそろ時間がまいりましたので、継続教育に ついては次回も引き続いて議論をしていきます。次回の日程等について事務局から連絡をお願 いいたします。 ○島田課長補佐 ただいま座長からお話がありましたように、次回の検討会は9月30日の15 時から開催する予定です。場所については今回と同様共用第8会議室です。正式なご案内は別 途お送りいたしますのでよろしくお願いいたします。 ○永山座長 それでは、これで第4回の今後の看護教員のあり方に関する検討会を閉会いたし ます。本日はお忙しいところをご出席いただきましてありがとうございました。 照会先 厚生労働省看護課 島田(4167) 関根(2594)