09/08/06 第41回独立行政法人評価委員会調査研究部会議事録 独立行政法人評価委員会調査研究部会(第41回) 開催日時:平成21年8月6日(木)9:59〜12:35 開催場所:中央労働委員会講堂 出席者 :田村部会長、鈴木部会長代理、岩渕委員、田宮委員、市川委員、酒井委員、中村委員、政安 委員 ○田村部会長  それでは定刻になりましたので、ただ今から「第41回厚生労働省独立行政法人評価委員会調査研究 部会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠に ありがとうございます。  本日は清水委員、武見委員がご欠席です。  本日の議題は、お手元の議事次第のとおり、労働安全衛生総合研究所の平成20年度業務実績に関す る個別評価を行います。どうぞよろしくお願い申し上げます。  評価官室のほうから何かございますでしょうか。 ○政策評価官室長補佐  最初に理事長からのご挨拶をいただき、それから始めさせていただきたいと思います。 ○労働安全衛生総合研究所理事長  この4月に、労働安全衛生総合研究所の理事長を拝命いたしました、前田豊でございます。よろしく お願いします。  今日のご挨拶は、配付しました資料の1-4という、パワーポイントの資料を若干見ながら、説明かた がたご挨拶させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。  資料1-4は後ほど詳しく説明があると思いますが、初めの3頁ほど、紙にして裏表2枚が私の挨拶部 分となってございます。  1頁ですが、私ども研究所は、労働安全衛生総合研究所です。委員の先生方は既によくご存じのこと かと思います。統合いたしまして、いまは4年目に入っておりますが、この評価年度が3年目になりま す。理事長名荒記俊一となっておりますが、これは評価をいただく年度が昨年度でしたので、荒記の 名前をここに書かせていただております。職員数は昨年度末で117名。平成20年度の予算が約28億円。 研究所の目的が、「我が国で唯一の『産業安全及び労働衛生』分野における総合的研究機関として、 『職場における労働者の安全と健康の確保』に資するための調査研究」ということになっているのは よくご存じのことかと思われます。  研究所の経緯が初めに書いてありますが、産業安全研究所と産業医学総合研究所が平成18年4月に 合併して、現研究所になったのですが、産業安全研究所は、昭和17年「厚生省産業安全研究所」とし て設立とありますが、この設立のときには、少し研究所として珍しい経緯がありますので、簡単にご 紹介いたしたいと思います。  と申しますのは、産業安全研究所が設立のときには、昭和15年、伊藤一郎という一個人が当時のお 金で50万円、今の金額でおおよそ10億円程度になるかと思いますが、それを寄付するので、国に産業 安全研究所と博物館を創ってほしいと申し出たということがきっかけで、それを基に、そのほか財界 から募金を集めて加えた110万円余のお金で、厚生省に研究所が設立されたのが始まりです。  産業安全研究所としては、産業災害を減らすために動いているということは、所員の間に広くなじ んでいるということをご理解いただきたいと思います。  産業医学総合研究所は、昭和24年「労働省けい肺試験室」として設立ということで、その当時の必 要性から、特別なエピソードではなく、順当に設立されたものです。その後統合されたことは、よく ご存じだと思います。  当研究所は、平成22年度末までに、まだ時期は正確には決まっておりませんが、労働者健康福祉機 構と新たに合併することが決定されております。合併の話は今回の話題ではないので、詳しくは今回 は省略させていただきます。  次の2頁は研究所の組織で、この絵はこれまでもよくご覧になったものと同様と思われますが、1つ 特徴的に変わっているのは、安全研究領域、健康研究領域、環境研究領域と、3部門の研究領域に分け て、その内部を再構成しているということです。それ以前は、産業安全研究所、産業医学総合研究所 という旧研究所のものをそのまま下部組織として残しておりましたが、それが変わっているというこ とが1つ大きな変化になっております。  次に3頁の研究所の活動に関しては、ここの絵のとおりです。調査・研究活動がメインですが、そこ からどのような成果物が出るか、普及はどうしているかというようなことをチャートにしたものです。  4頁以降は、別途、研究企画調整部長のほうから詳しく説明がありますので、私から申し上げません が、平成20年度におきましては、研究所内の運営方針として、前荒記理事長の方針というか、指示で して、研究所としては、災害調査の促進、重点研究推進協議会の活動の推進、Industrial Health誌・ 労働安全衛生研究誌の充実を図るという、この3つを大きな目標として実行してきております。結果と して、今回、24項目の評価項目について、自己評定はSが7項目あることになっております。  具体的には、あとで述べますので簡単に申し上げますと、評価項目の5番目の「労働現場ニーズの把 握と業務への積極的な反映」という項目、これは先ほど申しました重点研究推進協議会の活動などが 非常に効くということでS評定になっています。  6番目の「プロジェクト研究」については、質量ともに充実しているはずだということで、自己評定 をSにしております。  12番目の「原著論文・学会発表等の促進」についても、原著論文が目標値をはるかに高いレベルで 出されたということで、S評定。  13番目、「インターネット等による研究成果情報の発信」という項目で、HPへのアクセスが大幅に 増えたほか、いろいろな情報発信をしているということを見ております。  16番目「労働災害の原因の調査等の実施」。これは当研究所の1つの目玉ですが、これも着実に実 施しているということです。  17番目「国内外の労働安全衛生機関等との協力の促進」。これは先ほども申しました労働安全衛生 重点研究推進協議会、それと調査の実施、「Industrial Health」「労働安全衛生研究」誌の刊行など に諸々の貢献があります。  21番目「運営交付金以外の収入の確保」については、大きく収入が増えているというようなそれぞ れの理由があり、S評定を付けました。つまるところ、これらの業務が昨年度の当労働安全衛生総合研 究所で重点的に力を入れて業務を推進し、成果を得られたと考えているところです。  今回の評価については、前年度の評価ですので、おおよそ簡単に前年度の状況で、特に目立つもの を申し上げまして、私のご挨拶並びに紹介とさせていただきます。ありがとうございました。 ○田村部会長  ありがとうございました。これからの進め方として、労働安全衛生総合研究所の個別評価について は、評価シートの個別項目を4つのグループに分け、グループごとに評価を行ってまいりたいと思いま す。  まず、グループ1、「効率的な業務運営体制の確立、労働現場のニーズに沿った研究の実施」(評価 項目1〜7)について評価を行いたいと思います。所要時間は、法人からのご説明は20分、委員の評定 と質疑15分、合計35分で進めてまいりたいと思います。それでは法人からの説明、よろしくお願いい たします。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長  それでは、研究企画調整部の豊澤が説明いたします。資料は評価シート1-1-(1)で、ただいま前田の ほうから説明しました資料1-4を使ってご説明いたします。  まず、パワーポイントのスライドの4頁、「効率的な業務運営体制の確立」ですが、「柔軟な組織体 制の実現と効率的な業務運営」ということで表にしております。  組織体制ですが、平成20年度は、産業安全研究所と産業医学総合研究所の統合3年目ということで、 平成19年度までありました研究所長体制を完全に廃止し、3研究領域長中心体制へ移行しております。 それとともに領域長補佐も導入して、研究領域で研究を統括する体制に整えました。また、国際情報 ・研究振興センターは、平成19年度までは国際情報・労働衛生研究振興センターという名前でしたが、 これの改組を行い、実質的に安全衛生両分野の研究の推進を図る組織といたしました。  次に、労働者健康福祉機構との統合が2年後に控えておりますが、労福機構との意見交換、情報交換 を行い、シナジー効果を図るための準備を着々と進めております。  また、効率的な業務運営ですが、各種の規程を統合いたしますとともに、利益相反審査・管理委員 会規程、動物実験審査委員会規程等を整備いたしました。  両研究所は1時間半ほど離れた場所にあることから、TV会議システムを前年度に導入し、平成20年 度は本格的な稼働をいたしました。統一内部評価会議などメインの会議で10回ほどこのTV会議システ ムを活用しました。  また、決裁者が両地区にまたがる場合、決裁に非常に時間がかかるという問題がありました。それ で、決裁の電子化について検討を始めて、機器の導入など、必要な措置を行いました。  「資質の高い人材の登用」ですが、JREC-IN、UMIN等で積極的な募集を行い、応募された20名の中 から、平成21年1月1日付けで2名を採用、平成21年4月1日付けで3名を採用いたしております。5 名のうち4名は博士号取得者です。  右側の欄ですが、研究管理・総務部門の一元化を図っております。また、「外部委託の推進」とし て、和文学術誌の編集業務等を入札により外部委託する等、業務の効率化を図っております。  平成19年度に引き続き、効率的な業務運営体制の確立について確実な進展があったということで、 自己評定をAにさせていただいております。  5頁は「研究管理システムの充実」です。業務会議、研究討論会等は平成18年度(1年目)で統合さ れております。約40の項目について業務責任者を指名し、進行管理を行っております。  研究評価基準・個人業績評価基準の統一は平成19年度(2年目)に行われ、平成20年度(3年目) は前年度の反省を踏まえ、研究者の事務量の負担の軽減、事務の簡素化など、改善・充実を行ってお ります。  内部研究評価会議についても、平成19年度に統合され、右下の欄に記述しておりますけれども、平 成20年度は災害調査ヒアリングを実施しています。内部評価会議等において労働安全・衛生に関する 統合的な災害調査の内容・進捗状況の報告を求め、進捗管理を行っております。  外部評価についても、平成19年度に統合されましたが、20年度はそれの改善・充実を行っておりま す。平成20年度は、外部の委員を共通委員と専門委員に分けて、実質的に突っ込んだ専門的な評価が できる体制に整えております。その評価結果が青いファイルの中の資料9にあります。この外部評価結 果についてはHPでも全文を公開しているところです。  プロジェクト研究発表会、これは新規に平成20年度に開催したのですが、左下の欄にありますよう に、目的として、「プロジェクト研究等の成果等の対外的な紹介、質疑応答を通じた労働現場のニー ズ把握及びそのニーズに沿った研究の推進」としております。発表課題は、プロジェクト研究、イノ ベーション25研究、GOHNET研究の19課題です。  また、各種内部規程の整備ですが、先ほど申し上げました利益相反審査、それと動物実験審査委員 会規程等を整備いたしました。  プロジェクト研究発表会を新規に開催したこと、それから業務・研究・災害調査の進行管理の方法 を改善し充実を図ったことから、自己評定をAとさせていただきました。  次は6頁「業務運営の効率化に伴う経費節減」です。経費節減には節約という面と外部資金の獲得と いう2つの方法がありますが、まず資金獲得についてです。平成20年度の科研費等の競争的資金には 前年度比600万円増の8,500万円です。これも添付資料3に一覧があります。受託費は、民間からの4 件を含む政府受託も含めて8件、5,700万円となり、近年で最高額を記録しております。これも添付資 料3の裏側に一覧表を載せております。平成20年度は、合わせて14,200万円の外部資金の獲得があり ます。  その他の自己収入の確保ですが、施設貸与、著作権料、特許実施料で、平成20年度は前年度と比べ て格段に増加しております。  また、経費節減についてですが、随意契約の削減及び競争性のある契約の増加ということで、下の 表ですが、随意契約の件数及び金額とも、平成18年度から着々と減少しております。また、新たな省 エネ対策として、研究棟別の光熱水道料を月次報告し、各研究グループに対して注意喚起を行ってお ります。また、先ほど説明しましたTV会議や電子決裁システムの検討を図っております。  外部資金の獲得額の増加、自己収入の増化、経費節減についても努力した結果が現れているという ことから、自己評定をAとしております。  続いて、7頁の評価項目4「効率的な研究施設・設備の利用」です。使用状況の把握と効率的な利用 を図りました。具体的には、先ほど申し上げました省エネ対策として、研究棟別の月次報告による注 意喚起を行い、清瀬地区(材料棟を除く)の電気使用料が前年度に比べて8%減少しております。「材 料棟を除く」と書いておりますが、材料棟では、プロジェクト研究で金属の長寿命領域の疲労評価の ために大型試験機3台が、昼夜・土日もすべて運転稼働している状態です。特殊な事情ということでそ れを除いておりますが、そのほかについては減少しております。登戸地区についても着実に減少して おり、平成17年度に比べて1.5割の減少が見られております。20年度には施設の小型化、省電力型施 設の導入を図りました。具体的には静電気特性測定用環境試験室、低温実験室の施設について、施設 の小型化、電力消費の効率化を図りました。そのほか施設管理担当者による施設利用状況のモニタリ ング等を行っております。  「研究施設・設備の共同利用、有償貸与」についてですが、共同利用や貸与可能な施設・設備につ いて、HPで公開するとともに、研究所公開や、研究所主催のシンポジウムでパンフレットを配付する など、積極的な広報活動を実施し、示差走査熱量計、風洞実験装置等高額機材を大型施設の有償貸与 に結実しております。有償貸与額は平成20年度は約70万円となり、過去2年と比較して増加している ところです。  光熱料の節約に努め効果を上げたこと、新規施設の小型化・効率化を図ったこと、有償貸与額が増 加したことから、自己評定をAとしております。  8頁の評価項目5は「労働現場ニーズの把握と業務への反映」です。私どもは、労働安全衛生重点研 究推進協議会における平成20年度の最重点課題の1つと捉え、重点研究領域・優先研究課題の検討を 行いました。具体的には、1,500人のアンケート調査を基にした産業安全分野の重点4研究領域・24優 先研究課題の新規策定を行いました。また、衛生分野では、有識者ヒアリングを基に重点3研究領域・ 18優先研究課題、これは平成12年度に制定したものですが、それの見直しを行いました。  また、シンポジウム、研究交流会等の開催を通じて、労働現場のニーズの把握に努めました。具体 的には、労働安全衛生重点研究推進協議会シンポジウムの開催、客員研究員研究交流会の開催、産業 医科大学との研究交流会の開催、業界団体等との意見交換・情報交換等を通じた現場ニーズの把握で す。  業界団体との意見交換会の例として、「ナノマテリアル製造・使用現場における安全衛生管理の取 組み」について、ナノビジネス推進協議会と行いました。「統合生産システムを事例とした機械安全 対策等」は日本工作機械工業会・安全環境委員会と行いました。このような意見交換会を通じて、現 場のニーズの把握に努めているところです。  また、学会参加等を通じた将来生じうるニーズ等の把握ということで、国内外の学会への参加を推 奨して、384名の研究員が参加しております。  「行政ニーズの把握と業務への反映」ですが、私どもの研究所は、ミッション型の研究として厚生 労働省からの意見・情報交換会を通じた行政ニーズの把握に努めております。厚生労働省からの要請 を受け、平成20年度は17課題の行政支援研究を実施し、4課題の委託研究を実施しております。例と して、「足場からの墜落防止措置に関する研究」、「ボイラー及び圧力容器における電気安全装置の 在り方に関する研究」、「振動レベルの高い手持ち動力工具の防振対策の促進に関する研究」です。 例えば足場の墜落については、規則改正に結実しましたし、ボイラーと振動レベルについても、通達 レベルの成果に結実いたしました。  下の図は行政委託研究の結果ですが、このようにわかりやすい図を入れた「荷役作業時における墜 落等災害防止マニュアル」を作成いたしました。  シンポジウムや意見交換会などを通じて、労働現場のニーズの把握に積極的に努めたこと、行政ミ ッション型の研究所として行政ニーズに応えて、21の研究課題を積極的に実施し、成果を上げました ことから、この項目についてSを付けさせていただきました。  次は「労働現場のニーズ及び行政ニーズに沿った調査及び研究の実施」として、プロジェクト研究 についてご説明いたします。9頁で、評価項目は6です。  左のピンクの欄の「行政ニーズ等を明確にした上での研究課題の設定」ということで、プロジェク ト研究11課題を行っております。プロジェクト研究は、「研究方向及び明確な到達目標を定めて、重 点的に研究資金及び研究要員を投入する研究」と位置づけております。また、イノベーション25は、 「成長に貢献するイノベーションの創造のための政府の長期的戦略指針『イノベーション25』に基づ いた研究」ですが、5課題を前年度に引続き実施しております。次のGOHNET研究は、当研究所が世界 保健機関(WHO)の指定研究機関になりましたことから、「労働者の健康推進に関するWHOアクション プラン」に登録している研究3課題を、平成20年度から開始いたしております。  「研究員・人員の重点的投入」ですが、左下の図のとおり、毎年、上記3分野の研究に、総合研究費 の4分の3、研究職員数延べ80〜90人を重点的に投入しまして、研究を推進しているところです。  11課題をご説明すると長くなりますので、いくつかご説明いたします。「先端産業における材料ナ ノ粒子のリスク評価に関する研究」の実施により得た知見等を研究所のHPに「職場におけるナノマテ リアル取扱い関連情報」として公表し、多くのアクセスをいただいております。また、研究者が厚生 労働省の専門家会合に参画し、「ナノマテリアルに対するばく露防止等のための予防的対応につい て」、これは平成21年3月31日付けの通達ですが、この策定に知見を提供しているところです。  また、「石綿の職業ばく露経路及びそのリスクに関する研究」においては、この研究により得られ た知見等を基に、研究者が「石綿小体計測マニュアル」を策定し、公表しております。同マニュアル は、中央環境審議会が取りまとめた「(中皮腫及び石綿による発がんの)医学的判定に係る資料に関 する留意事項」に引用されるなど、石綿小体の計測に関する標準化に大きく貢献しているところです。  また、「危険・有害物規制の調和のための統一的危険・有害性評価体系の構築に関する研究」です が、化学物質の爆発安全性の指標として、熱流量の生データと、恣意性の少ない評価方法とを「反応 性物質のDSCデータベース」としてHPに公開し、データベースの利用者は、爆発安全性評価を簡便に 行うことができるようなシステムを構築しております。これも多くのアクセスをいただいておるとこ ろです。  プロジェクト研究の数例を説明したいと思います。まず1つが、「材料ナノ粒子のリスク評価に関す る研究」です。この粒子というのは、1万分の1ミリメートルより小さい大きさの物質ですが、「ナノ 対策のむずかしさ」ということで、真ん中の赤で囲った図がありますが、じん肺対策として労働環境 で管理した粉じんの粒子の大きさと比べると、ナノ物質由来の粉じんは大きさが50分の1、質量が12 万分の1ということで、検出するためには測定装置の感度も12万倍必要ということでしたが、このプ ロジェクト研究で調査した結果、ナノ材料由来の粒子は多数固まった形で空気中に存在するというこ とがわかりました。じん肺対策の対象粉じんの粒子に近い大きさということから、測定や対策で、い ままでのじん肺対策の技術が応用できるということが判明いたしました。  こういう結果を論文に発表するとともに、研究者以外の実務家にも役立ててもらうために、研究所 のHPで順次公開しているところです。現在アンケート調査結果と工場の現場調査結果1件を掲載して おります。通達に結実しました件については先ほどご説明したとおりです。現場調査の公表結果は、 環境省の「工業用ナノ材料に関する環境影響防止ガイドライン」にも引用されております。  次は、11頁の「危険・有害物規制の調和のための統一的危険・有害性評価体系の構築に関する研 究」です。GHS(The Globally Harmonized System of Classification and labelling of Chemicals) という世界的な状況に対応した研究ですが、当研究所では化学物質の反応情報について、約1,000件近 いデータを所有しております。このデータを整理するとともに、反応開始温度が研究者によりまちま ちになる、線の引き方によりまちまちになるというものを当所で統一的に評価し、それをHPに掲載し て、事業場にデータを提供し、末端の現場、作業所で取り扱う化学物質がどのような危険性をもって いるかが即座にわかるようなシステムを構築しております。ここに反応開始温度と反応熱が即座にわ かるような表示が例示されていますが、このようなシステムを構築している研究です。  12頁は、「多軸全身・手腕振動曝露の人体への心理・生理影響の評価方法に関する研究」です。こ れはイノベーション25研究として実施している研究です。厚生労働省に設置された「振動障害の防止 に係る作業管理のあり方検討会」へ、作業現場での振動曝露状況の測定データの提供や、振動レベル について(ISOの規格の考え方)の資料を提供しており、その結果、それが結実いたしまして、つい先 月、7月10日に新指針として通達が出ております。  このようにGOHNET研究3件を平成20年度に新たに開始したこと、内部・外部評価を受けて軌道修正 をしつつ、当研究所が総力を挙げて、19課題に対して着実に成果を上げているということで、この評 価項目にSを付けさせていただきました。  このグループの最後ですが、13頁「基盤的研究」です。基盤的研究というのは、国内外における労 働災害、職業性疾病、産業活動等の動向を踏まえて、長期的視点から労働安全衛生上必要とされる基 盤技術を高度化するための研究です。  これについて65課題を実施しております。そのうち7題は萌芽的研究と位置づけ、将来のプロジェ クト研究に結びつく研究を行っております。例えば、右側の図の初期放電の検出による静電気火災・ 爆発災害の予防技術の開発で、平成22年度に開始するプロジェクト研究です。写真の横に「現状」と 「次期プロ研」と書いておりますが、現状ではこういうプラントで運転中に放電が起こり、粉体等に 引火し、爆発・火災が起こるという事故が多くありました。これをプロジェクト研では、運転中に金 属容器内に小さな放電をモニタリングして、放電があるかないかの判断をし、着火性放電がある場合 には輸送速度を低下するとか、酸素を窒素に置換するとかの方法で安全化を図るということを考えて おりますが、この中で核となる金属容器内の放電モニタリングについて、この基盤研究の「放電によ り発生する電磁パルスの検出技術に関する研究」で、平成17年度から平成20年度にかけて実施し、そ の方法を確立しております。プロジェクト研究にそれを応用する予定です。  また、基盤研究65課題については、添付資料8の28頁〜70頁において、研究概要、背景、目的、 結果などを掲載しております。たくさんありますので、一つひとつご説明できませんので、ご覧いた だければと思います。  この基盤的研究については、プロジェクト研究と同様、研究目的、実施スケジュール等を記載した 研究計画書を作成するとともに、内部研究評価会議において、事前・中間・事後評価を実施している ところです。  研究成果の社会の還元例として2つ上げましたが、電動ファン付き呼吸用保護具の性能評価に関する 研究結果から、同保護具の構造規格を制定するとともに、型式検定を行うことの必要性が認められ、 国による制定作業が進むことになりました。  また、サーボプレスの急停止時間の決定に関する研究では、データ等が、サーボプレスに関する新 規のJIS規格制定に当たっての基礎資料として活用されました。基盤研究では、421件の学会発表があ ります。このようなことから自己評定をAとさせていただきました。以上です。 ○田村部会長  ありがとうございました。委員の皆様におかれましては、評価シートへの評定等の記入をお願いい たします。併せて、質問等ございましたら、適宜ご発言いただきたいと思いますが、いかがでしょう か。 ○酒井委員  ご説明ありがとうございました。2点ほどお伺いしたいのですけれども、いま、ご説明いただいた中 で自己評価Sがいくつかあって、特に評価項目の5番と6番がS評価になっているのですけれども、い ま伺っていて、例えばニーズ把握を、こういった重点研究推進協議会をやって、ここで言いますと、 従来の重点3研究領域・18優先研究課題が4領域・24課題になったとご説明があったのですけれども、 そのことは非常にそれで納得いくことです。しかし、このことと、その次の頁の皆様方のプロジェク ト研究、その研究一つひとつについて、全体で評価ということも理解できるところですが、この関係 のようなことはどうなっているのですか。つまり、こういったことで検討された結果、領域を広げ、 課題が増えたことが、例えば行政に反映するとか、皆様方のプロジェクトにきちんと反映して、ここ で挙げられた課題自身、領域自身がどのプロジェクトにきちんと繋がっていっているのか、もしくは、 そういったことが産業界に対してどんなPRがされていて、こういったようなS評価であるニーズ把握 が実際の研究活動とか産業活動にうまく適応しているのかどうか、そのあたりを説明していただける とありがたいなということが1つです。  もう1つは、簡単なことなのですけれども、基盤的研究が65課題、そして萌芽的研究が7課題とあ ります。これは私たちからすると非常に多いように思うのですけど、これは個人研究なのですか、そ れとも、これ自身もチームで行われることなのでしょうか。これだけの多くのことをもう少し絞って やらないで、こういう非常に多くのもので基盤研究が行われる意義はどのようなところなのか、簡単 に説明していただければと思います。その2つです。 ○田村部会長  2点のご質問について、ご説明いただけますか。 ○労働安全衛生総合研究所理事  1点目ですが、8頁の労働安全衛生重点研究推進協議会の件は誤解がありまして、再度説明させてい ただきますが、産業安全分野については、いままでまったく重点領域、重点研究会がなかったわけで す。これは、新規に作っている途中です。ですから、まだingでして、表題の白枠の中にありますよう に、平成20〜21年度でして、昨年度から開始しております。最終的には、今年度の終わりまでに産業 安全の分野については重点4研究領域・24優先課題の策定を終えて、研究所のHPで国民の皆さんのご 意見を伺った上で、方針的なものを作っていこうというものです。  前提として言い忘れましたが、この重点的な研究領域・優先研究課題については、我が研究所のみ ならずオールジャパンとして、日本全国として、労働安全衛生分野でこういう研究を重点的に、社会 経済情勢の変化においてやるべきだということで、今後10年ぐらいをターゲットにして、いま作りつ つあります。労働衛生については、平成12年度に既に、21世紀初頭について重点3研究領域・18優先 研究課題を既にもう作っておりますので、これは見直しです。この安全と衛生それぞれやっておりま すが、最終的には今年度中にドッキングしまして、今後10年間におきます産業安全衛生両分野、トー タルな両分野におけるオールジャパンとして、日本の研究機関、大学、我々の研究所、企業の研究所 も含めまして、労働安全衛生全般について重点的に研究すべき領域を示していきたいということです。 これが、今年度末の予定です。ですから、我々のプロジェクト研究も、その中から選んでいくという 関係にあります。以上です。 ○酒井委員  確かに誤解があったようなのですけれども、平成12年に労働衛生領域で作っていますよね。それを 発展させるという意味よりは、安全と衛生両面をきちんと総合的に踏まえて、新しく、いまご説明が あったような課題設定をされているということですか。 ○労働安全衛生総合研究所理事  衛生は当然発展いたします。といいますのは、平成12年に作ったのは21世紀初頭をターゲットです から、今回作るものは2010年から2020年ぐらいの間のものですので、当然、いままでのものからリバ イズして発展的な内容になると思います。安全は新たに作るということです。 ○田村部会長  2点目はいかがですか。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長  2点目について、基盤研究の数が65件でかなり多いのですけれども、平成18年度には83件ありま す。プロジェクト研究に重点化するに従いまして、順次数を減らしていまして、現在65件になってお り、重点化を図っているところです。今後、更に重点化を図れるかと思いますけれども、基盤研究の 領域として、中期目標にも定められました16項目があります。16項目について、それぞれ過不足のな い研究を実施していかなければいけないということで、65の研究をどのぐらいに絞っていいのか戦略 的に考えていきたいと思います。また、基盤研究はチームでやったり個人でやったりそれぞれです。 ○労働安全衛生総合研究所理事  いまの基盤研究の件なのですけれども、いま豊澤部長のほうから説明した面がここ数年強まってい るわけですけれども、もともと基本的には、基盤研究はプロジェクト研究がいちばん重要なのですけ れど、プロジェクト研究を進める上での基盤的技術を常に養っていき、それを研究者として磨いてい かないといけない。そういう立場で基盤的研究が存在しています。だから基本的には、いままでは1人 1題が大部分だったわけです。ただ、技術もより高度になってくると、1人の技術だけでは十分ではな い面がありますので、ここ数年はもう少し技術を高度化させるためにより絞ってきたという流れです。 ○田村部会長  ほかにご質問、あるいはコメントありますか。 ○中村委員  6頁の「業務運営の効率化に伴う経費削減」のところなのですけれども、数値目標があげられている わけですが、これ自体が妥当であるかどうかは別にして、評価の視点の中では、一般管理費が15%、 事業費が5%の減額を目標にしろと言われていると。それから、人件費については5%以上の削減。そ れに対してのここの特記事項があるのですが、これらはほぼ計画通りと考えてよろしいですか。まだ、 そこまで至っていないと読める数字かと思うのですがいかがですか。 ○労働安全衛生総合研究所総務部長  総務部長の飯野です。人件費につきましては、計画中に対しまして3.7%の減です。一般管理費が 4.7%減、業務経費につきましては5.6%減で、ほぼ目標を達成しています。ただ、一般管理費につき ましては、もう少し努力が必要だと認識しています。以上です。 ○田村部会長  ほかにいかがですか。 ○田宮委員  酒井委員のほうからもご質問があったことに関連するのですけれども、ニーズ調査が評価が高いと ころで出ているので、気になるのです。教えていただきたいのは、1,500人の方にアンケート調査をし てニーズを把握したことが強調されているように思うのですが、1つは過去のことで、私も新しく委員 になってわからないのですが、このようなことをされたのは今回が初めてで、これが1つ売りになるの か、新規性がどの程度なのかをお伺いしたいのです。それと、回収率が60%程度かと思うのですが、 これがジェネラライズ・オールジャパンということですと、対象者が研究者ですとか、労働安全の方 ですとか、いろいろな職種に分かれているようですので、もしおわかりになれば、どの程度のジェネ ラライズを考えていいのか、参考のためにも回収率がどのような感じでどういう分野の方が答えてい らしたのか、もう少し詳しく教えていただきたいと思います。  もう1つは聞き逃しかもわかりません。GOHNET研究3つというのがどれだったか、わからないので 教えてください。 ○労働安全衛生総合研究所理事  1点目。まずは、1,500人のアンケートですが、詳しい数字が手元にありませんが、ほぼ6割ぐらい の方から回収しています。対象は、研究者はもちろん、企業の方、産業安全コンサルタント、いわゆ る安全関係の業務に研究ないし実務に従事されている方に対してアンケートを出しまして、たしか6割 ぐらいの回収率だったと考えています。  そのときに、いろいろ自由意見で書いていただいているものがありますので、かなり時間をかけて 分析をしまして、現在、重点4研究領域・24優先課題を原案としては作っておりまして、今年の3月 に学識経験者、労使を交えた1回目の協議会がありまして、ご意見をいただきました。今後、さらに安 全分科会、衛生分科会でそれぞれ専門の方のご意見を伺い、さらに、国民の皆様からHPでコメントを いただいて、新規性の高い、これから10年間本当に何がいるのか、なるべくアンテナを高くしてご意 見を伺っていきたいと考えています。1点目は以上です。 ○労働安全衛生研究所理事長  田宮先生の質問の中に、アンケートが今回初めてのものかという質問があったと思いますが、これ は初めて行ったものです。 ○労働安全衛生総合研究所理事  平成12年に労働衛生について調査したときは、 アンケートというよりも、全国から50名ぐらいの委員に集まっていただいて、何回も討論をしていた だいて決めさせていただきました。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長  GOHNET研究ですけれども、資料のご説明が不十分で申し訳ありませんでした。添付資料8の24頁か ら、GOHNET研究について詳しく説明しておりますけれども、1番目が「職業性疾病・職業性ばく露のア クティブ・サーベイランス-ウェブ情報システムの開発と活用」。2番目としまして、「中小企業にお ける安全衛生リスク評価と効果的なマネジメントシステムの確立」。3番目として、「ヘルスケアワー カー及びその他の労働者の職業性健康障害」。この3課題を実施しました。 ○市川委員  細かい話ですけど、いまのGOHNETの例えば最初の題ですが、「職業性疾病」云々で、外部評価等の 点数を見ると、例えば非常に悪くなっていて、それに対して一応説明がついていて、責任者が異動し たとかいうことが書いてあるようなのですけれども、結局、それに対しての答えの文書を読ませてい ただくと、でも大事だからこれは継続するのだという文書になっているわけですけれど、その辺の関 連です。それが1点と、どういう外部評価に対してレスポンスするときに、自分たちの考えがあるのと、 相手に対して全体のGOHNET自身の持っている中での評価で、必要性を判断してそう言われているのか ということが1点。  添付資料の9のいろいろな外部評価の結果を見させていただくと、例えば事前評価の中でも、「その 意図がよくわからない」とか、あるいは「普通」という評定がかなりついているものもあるのです。 これはいろいろな見方があるので、研究所としての見方でもよろしいかと思うのですけれども、事前 にいろいろ問題があるのではないのかという指摘事項もいくつかついていると思うのですが、そうい うときに、所内での対応はどうされたかということだけ教えていただけますか。 ○労働安全衛生総合研究所理事  そのGOHNETの件でご説明させていただきます。GOHNETがいちばん評価が低くなったのは、サーベイ ランスシステムを作ることはしっかり作ったのですけれども、問題はサーベイランスシステムを活用 する、日本全国の主として対象となる産業医、もしくは現場での労働衛生担当者の方々の幅広い協力 が得られなかったことがいちばんのネックだったわけです。ただ、再来年には労働福祉機構と統合す ることになるわけですので、その対象となる母集団が同じ組織の中に存在できることから、そのよう な面で統合を視野に入れた準備という位置づけでは、やはりこのままと。要するに、十分活用されて いないから潰すべきだという意見よりは、所内的には体制を十分整え、準備としては大いに役に立つ のではないかという考えの下で、さらに体制を充実させるということで今年は進めさせていただくこ とになっております。  事前評価に関してですが、現在私どもの研究所では、特に登戸における化学物質の問題、これは長 年労働衛生上は非常に重要な問題だったわけですが、近年、化学物質そのものの種類が多くなったこ とから、ある特定の1つをやることにどのような意味があるかという非常に厳しい指摘を受けたわけで す。まず、我々の体制としては何千も対象とすることはできないですが、あるモデルとしてこれをタ ーゲットにすることは、このような労働衛生上の問題を解決するための1つの視点を提供できるという スタンスで説明させていただき、そのような対応で納得していただいたということです。 ○市川委員  そういう研究が国民にとって非常に大事であるということですね。 ○労働安全衛生総合研究所理事  要するに、単に化学物質、これをやるというのでは十分ではないという指摘を受けたわけです。 ○田村部会長  それでは次の第2グループに移らせていただきます。グループ2は「学際的な研究の推進、研究項目 の重点化、成果の積極的な普及・活用」で、評価項目8〜13について評価を行います。所要時間は、法 人からの説明15分、委員の評定と質疑で15分の合計30分です。グループ1で時間がだいぶ超過して おりますので、なるべくコンパクトにやりたいと思います。ご協力をよろしくお願いいたします。ま ず、法人からの説明をお願いいたします。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長  14頁の評価項目8「学際的な研究の実施」から始めます。「学際的」の意味するところは、通常は学 問分野の枠を超えて、複数の研究者が共同して研究するということですが、私どもの研究所は2つの 研究所が統合されたことからそのシナジー効果を考え、少し狭い意味で「労働安全と労働衛生の両知 見を活用する」という意味で学際研究を捉えており、ここではそのようなことで記述しております。 平成18年度の2研究所統合時に、人間工学・リスク研究グループを発足させました。平成19年度には 環境研究領域を設置し、学際的研究の拠点を拡充しております。内部・外部評価において、学際的な 視点からの評価を実施しており、そうした努力の結果、次のような学際的研究が始まり、成果を上げ ているところです。  1つがプロジェクト研究で、「第三次産業小規模事業場における安全衛生リスク評価法の開発に関す る研究」です。主に登戸地区で行われている研究ですが、清瀬からも研究員が参加して共同で研究を 進めております。販売業、飲食業、貨物運送業等の小規模事業場で活用できる安全と衛生の両面のリ スクを評価するためのチェックリストを作成しております。これは外部評価を受けておりまして、学 際的視点の評価ではS評価1名、A評価3名、B評価6名でした。「中小企業に受け入れられるリスク 評価法の確立は重要なテーマである。継続した研究が必要である」という評価をいただいております。  次に、プロジェクト研究のGHS研究は、「危険・有害物規制の調和のための統一的・有害性評価体系 の構築に関する研究」です。これは清瀬地区を中心に行われている研究ですが、登戸からも研究員数 名が参加しており、化学物質の危険性・有害性を評価するための試験方法の提示及び関連するデータ ベースのHPでの公開を行っております。こちらも外部評価を受けておりまして、学際的視点について は、S評価2名、A評価4名、B評価3名といった高い評価を受けております。「工学系と労働衛生系の 研究者の協同によって高い研究成果が上げられることを期待する」という評価をいただいております。  このように内部・外部評価委員が学際的視点で評価を行うことによって、研究員のインセンティブ が高まる方策を講じていまして、実際にプロ研やイノベーション研究、厚生労働省科研費の研究で、 実質的な安全と衛生の共同研究が始まっていることから、自己評定をAとさせていただきました。  15頁は「研究項目の重点化」です。プロジェクト研究への重点化を図っているところでして、平成 20年度はプロジェクト研究、イノベーション25研究、GOHNET研究で19課題。先ほど説明しましたが、 基盤研究は平成18年度の83件から65件と減少させているところです。  全研究課題数に占める基盤的研究課題数の割合は、平成20年度で77.3%まで減少しております。  中期計画目標として基盤研究の年平均研究課題数を前期中期計画期間中の年平均研究課題数に比べ て20%程度減少させるという目標がありましたが、平成18年度〜平成20年度の平均課題数は72件で すので、減少率は約30%で、中期目標をクリアしております。  基盤的研究の中でもプロ研を目指す研究として萌芽研究を実施しておりますが、積極的に7課題を実 施しているところです。  この項目については、基盤的研究の課題数を20%以下にする削減目標を実質30%減少させたことか ら、自己評定をAとさせていただいております。  次に、16頁で「研究評価の実施」について説明いたします。内部研究評価・外部研究評価を実施し ておりますが、内部評価の対象は、研究所で実施するすべての研究課題です。科研費等競争的資金に 関する研究、国・企業からの受託研究を含むすべての研究について実施しており、右の表のように、 事前評価、中間評価、事後評価を行っております。事前評価と中間評価・事後評価では評価項目が違 っており、事前評価では「学術的視点」「行政的・社会的視点」「実現可能性」「研究成果の活用」 「学際的視点」「総合評価」を行っておりまして、中間評価及び事後評価では「目標の達成度」「学 術的貢献度」「行政的・社会的貢献度」「研究成果の公開度」「学際的視点」「総合評価」を行って おります。  また、個人業績評価も行っており、平成20年度はプロジェクト研究、イノベーション研究、GOHNET 研究の27課題について外部評価を実施いたしました。  外部評価の委員は15名で、産業安全・労働衛生の研究者、労使関係者で構成されております。  「評価結果の反映」として、研究計画の再精査、場合によっては変更を求める、研究企画調整部で は研究予算の増減を行う、昇任、昇格等の人事、表彰に反映させております。外部研究評価結果につ いては、全文をHPで公開しているところです。  平成19年度終了のプロジェクト研究の4課題についての外部評価結果は、この図に示すとおり、概 ねS、A、Bが多いものの、C、Dという厳しい採点もされており、この厳しい評価を基に、研究計画の 再精査・変更を行っているところです。また、評価については3段階評価で、役員、領域長、研究グル ープ長が評価に当たっており、公正・中立性を担保しております。  評価システムの改善を図り、すべての課題について内部・外部評価を統一的に実施していることか ら、自己評定をAとさせていただきました。  17頁は「成果の積極的な普及・活用」の「国内外の基準制定・改訂への科学技術的貢献」です。 「国内外の基準制定への貢献」として、ISOやJIS等の国内外の基準制定等に関する委員会への研究職 員の派遣を積極的に進めております。平成20年度は、基準制定に関わった研究員が22名、基準制定の 委員会数は61委員会と、格段に増加しております。  これについての資料は、添付資料7の6頁に61の委員会が記載されておりますが、これらに参画い たしました。基準制定等に貢献した例として4例ほど挙げておりますが、 (1)として「機械振動-神経 損傷の評価のための触覚振動知覚閾値-第1部:指先における測定方法」及び「機械振動-神経損傷の評 価のための触覚振動知覚閾値-第2部:指先における測定結果の解析と解釈」の制定に貢献しております。 また、(2)としてサーボプレスの安全要求事項に関するJIS原案の策定。(3)として、日本産業衛生学会の 「許容濃度等に関する委員会」におけるフェノール、クロロベンゼン等7物質の許容濃度等の新設及び マンガン等2物質の許容濃度等の改正。(4)として挙げたICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の光 学放射に関する許容基準の制改定等に貢献しているところです。  「行政からの要請等に基づく基準制定への貢献」については、先ほど説明しましたように、委託調 査で4件の研究を実施しております。これはすべて企画競争入札で獲得したものです。  また、行政支援研究としては、厚生労働省等の要請を受けて17課題を実施しておりますが、先ほど 説明しましたように、法令、構造規格、通達等の制定、改正等の基礎資料として活用されているとこ ろです。  この項目に関しては、ISOやJISの基準制定のための委員会数が61件と、前年度と比べて倍増した こと、行政ニーズに対応した研究を実施して法令・通達等の基礎資料として活用されたことから、自 己評定をAとさせていただきました。  18頁で行政支援研究の一例をご説明いたします。行政からの要請を受けて、私どもの研究所では 「足場からの墜落防止措置に関する調査研究会」を設置し、足場等からの墜落防止措置の充実と強化 について調査研究を実施いたしました。  ちょっと見づらいのですが、左の図は足場の概略図です。街なかでよく見られる足場ですが、「魔 の三角形」と呼ばれている所から労働者が墜落し、被災する事故が相次いでおります。また、手すり についても、労働安全衛生規則では「75cm以上」という60年前に制定された規定で、現状と合わなく なってきていることから、手すりの上から人が落ちるということがありました。これについて、私ど もの研究所では、写真のような実験や解析を行い、右側のように、筋かいの下に「中さん」を入れた り、手すりを85cm以上にすべきであるという提言をして、その場合も、下に「中さん」を入れるとい った、足場の規則改正のための措置について成果を出したところです。それが平成21年3月2日交付 の労働安全衛生規則改正に結び付いております。  次に、19頁の評価項目12「成果の積極的な普及・活用」の「原著論文、学会発表等の促進」です。 「論文・学会発表等」については、添付資料10に役職員の研究業績等一覧を示しておりますが、原著 論文が127報と過去2年度の1.5倍となっております。英文による原著論文及び原著論文に準ずる学会 発表の出版物は113報となりました。論文発表等は347報、講演・口頭発表は319件となりました。過 去3年の累計では、論文発表は中期目標で5年間の達成目標が850報でしたが、3年目で既にそれを上 回り、921報を達成いたしました。また、講演・口頭発表も同目標1,700件の63.3%となり、3年目の 目標ラインである60%ラインをクリアしております。  また、平成20年度の「受賞等」ですが、口頭発表、論文等について9件の受賞がありました。論文 作成による情報発信というのは、私どもの研究所の最も重要な任務の1つと考えており、労力を注いで おりますが、その労力と成果を総合的に判断・勘案しまして、自己評定をSとさせていただきました。  次に、20頁の評価項目13「インターネット等による研究成果情報の発信」ですが、アクセス数が前 年度の154万件から340万件と倍増しております。  右側に研究所のHPの1頁目がありますが、このようにいろいろと新しいデータを掲載しております。 例えば、「ナノマテリアル取扱関連情報」等社会的関心の高い問題に係る各種情報を網羅的に掲載し たり、先ほど説明した「反応性物質のDSCデータ」等、データベースを公開しております。  また、平成20年度はメールマガジンを12回発行しましたが、すべてHPに掲載しております。研究 所の動向を記事にした「研究所通信」は和文学術誌の中に掲載しているのですが、同時にHPにも掲載 しております。  「研究成果の公表・一般雑誌等への寄稿」についてですが、特別研究報告として36〜38の3報があ り、それぞれ7、8編の論文がありますが、全論文をHPに掲載しております。  さらに、技術指針TR-No.43の「工場電気設備防爆指針」の要約をHPに公開しているところです。  また、「Industrial Health」を年6回発行し、全文をHPに掲載しておりますが、同時に「J- Stage」にも公開されております。和文学術誌も年2回発行しておりますが、全文をHPに公開しており ます。また、労働安全衛生対策普及センター公開セミナーを7回実施したのですが、スライド等のすべ ての資料が右下の欄からたどれるようになっておりまして、参加しなくても内容がわかるようになっ ております。  このように社会的関心の高いデータや、私どもの全刊行物をすべてHPに掲載した結果、アクセス数 が大幅に増加したと捉え、自己評定をSとさせていただいております。以上です。 ○田村部会長  ありがとうございました。委員の皆様は評価シートへ評定等の記入をお願いいたします。なお、質 問等があれば、適宜ご発言をお願いいたします。 ○鈴木部会長代理  評価シート(12)についてですが、非常に優れた学会発表等の結果を拝見いたしました。添付資料10 の21頁からの原著論文のリストを拝見して気付いたことを2、3質問させていただきたいと思います。  まず、原著論文の28は、著者がすべて外国人ですが、この研究はどのような経緯かということをお 伺いしたいと思います。また、67、68、72、73、74は、掲載された頁がこのリストには記載されてい ないように見受けられますので、その辺をお伺いしたいと思います。 全般的なコメントですが、もう少し標準的な表記方法に統一して示していただくと大変ありがたいと 思います。  同じく原著論文102〜120は、労働安全衛生総合研究所特別研究報告となっております。先ほど実際 のものを拝見しましたが、労働安全衛生研究との違いがもうひとつ分からなくなってきているのです。 昨年でしたでしょうか、お伺いしたときには、従来からあったSRRに査読制を導入し、外部からのレフ ェリーも入れて、レベルアップして労働衛生研究にしたというご説明を聞いた記憶があります。ただ、 今もSSRはどうも続いているようです。誤解があるかもしれないので、ここではっきりさせていただき たいと思います。  次に、添付資料36頁から始まる「報告書」というカテゴリーがあります。ここでは22や23のよう に、何とか報告書、頁数、独立行政法人労働安全衛生総合研究所となっていますが、この報告書はど のようなものか。添付資料11の刊行物一覧では、このような報告書は挙がっておりません。説明を受 けたらよくわかるのではないかと思いますので、これもこの機会に質問したいと思います。 ○田村部会長  いかがでしょうか。 ○労働安全衛生総合研究所理事  10-23の28)の原著論文の説明をさせていただきます。28の著者の最後にあるMohsen Vigehは、イ ラン国籍の私どもの研究員でして、イランとの共同研究なのでペルシャ語の論文になっているという ことです。 ○労働安全衛生総合研究所理事長  順不同になるかもしれませんが、労働安全衛生総合研究所特別研究報告というものの位置づけがよ くわからないとのお話でしたが、産業安全研究所時代は研究報告と特別報告という別個のものでした。 研究報告はSが付かないRRと呼んでおりまして、特別研究報告はプロジェクト研究の成果報告集とい うことでSpecificのSを付けたものでした。RRと呼んでいたものは、通常の基盤的研究などの成果を 発表していたものですが、それに査読制として外部からの人を取り入れて、いまの『労働安全衛生研 究』という雑誌に様変わりさせたものです。特別研究報告と「特別」が付いているほうは、現在のと ころ、旧来と同じ形で発行しております。机上にあるものがそれです。ここにある「労働安全衛生総 合研究所特別研究報告」は、そのような意味でプロジェクト研究に特化した研究についての報告集、 といった位置づけで現在も続いているものです。 ○鈴木部会長代理  そうすると、労働安全衛生研究に投稿するか、SSRにするかというのは、プロジェクト研究かどうか といった基準で決めるのですか。 ○労働安全衛生総合研究所理事長  現状はプロジェクト研究の成果で、私どもの研究所が発行するものに出そうとするときは、特別研 究報告というものに自動的になっております。この形式については現在検討中でして、プロジェクト 研究で行った研究成果についても、和文誌と呼んでいる『労働安全衛生研究』に書くような形にしよ うかといったことを検討しておりますが、まだそこの段階まではいっておりません。 ○鈴木部会長代理  報告書の位置づけについてはいかがでしょうか。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部首席研究員  10-37の22)、23)の私どもの研究所で出している報告書は、厚生労働省に企画書を出し、受託した事 業です。その事業に関して、年度末に厚生労働省へ報告するという意味での報告書ということでここ に出しております。 ○田村部会長  その他何かあればお願いいたします。 ○市川委員  評価項目13の、インターネットのHPのアクセス数が倍増したというのは本当に素晴らしいことで、 全体としても自己評価をSとされています。細かいことですが今後の話として、倍増したということの 内訳がHP上で読めるかどうか知りませんが、例えば「Industrial Health」あるいは和文学術雑誌など を掲載したことによって増えた部分というのは、例えば来年度になっても変わらないわけですが、こ ういった試みを次から次へとすれば増えていくかもしれない。いや、そうではなくて、本当はナノマ テリアルなど国民が必要としている新たな情報を出したから増えた、という理解をしてSとされたのか。 私どもにはHPの数というのは、何とも読めないところがあるかなということで、ちょっと細かい話で 恐縮ですがお尋ねしました。 ○田村部会長  いかがでしょうか。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長  国際情報センターの業務を引き継いだことで、基本的にはその分も340万件の中に入っております。 研究員がやっているものですから詳しい分析はできていないのですが、新しい情報に対してのアクセ スが多かったということですので、それが貢献していると考えております。 ○酒井委員  評価シート(10)について教えていただきたいと思います。平成19年度終了の4課題の外部評価結果 ということで、概して素晴らしい評価を受けているわけですが、C、D評価があるというご説明でした。 これは1〜6の、いわゆる達成度のところなのか、貢献度の評価なのか、その他の評価なのかといった 辺りの補足をいただけますか。また、これは終了時の評価になっていますが、中間評価等でこういっ たことを皆さん方が予見できなかったのかどうか。ある意味で修正がかかっていたかどうかというこ とを簡単に教えていただきたいと思います。 ○労働安全衛生総合研究所理事長  添付資料9に、プロジェクト研究の評価の個別のものについては、どの項目についてSが何人、Aが 何人といったことがすべて出ているのですが、それをそのまま出しますと分量が多過ぎて非常に読み づらいので、このような形で整理させていただいております。中間評価は統合後は毎年行っておりま すので、中間評価の結果を見て、それからてこ入れするなどといったことはチャンスとして当然ある わけですが、具体的なその辺の努力については研究企画調整部が結構やっていたはずですが。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部首席研究員  毎回、外部の評価委員の方々に評価していただき、その結果に基づき、結果に対しての修正という か、内容の見直し等の指導等は、研究のほうでそれぞれのプロジェクトに対してその時点では指導し てきております。ただ、その時点で指導しても、その研究がすぐに論文という成果につながりにくい ということがありまして、最終の終了プロジェクトであっても、その時点での評価は悪く出てしまい、 論文を投稿した後のずれ等が少し出るといったことがタイムラグ的に起こっておりまして、評価が悪 くなっている、C、Dといった成果として見えるのが少ないことで悪くなっているというケースが出て おります。ただ、お金もかかっているのでそれだけでは済ませられませんから、一応その後も指導し て論文につなげていただくということでやっております。その結果、研究発表や論文へつながってい るという形になっております。 ○田村部会長  よろしいでしょうか。その他何かあればお願いいたします。 ○田宮委員  評価項目11ですが、行政からの要請に対する対応というのは非常に重要だと思いますし、いろいろ なさっていることは分かるのですが、ちょっと気になることがあります。それは行政支援研究が「以 下のものを含め17課題」と書いてあり、出ているものは安全系のような感じがいたします。もし、17 課題がどこかの添付資料にありましたら教えていただきたいと思います。それから行政支援研究の性 質がよくわからないのですが、内容的に安全系のものになりがちなのか、できれば安全と衛生両方の ニーズにきちんと応えているのかということを知りたいので伺っております。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長  申し訳ありません。今回の添付資料には行政支援研究一覧を付けていないのですが、安全、衛生関 係両方の研究でして、先ほど申しました「振動レベルの高い手持ち動力工具の防振対策の促進」「電 動ファン付き防じんマスクの性能基準の制定」「虫さされ死亡災害防止における蜂アレルギーの血液 検査の有用性に関する研究」等、衛生関係の研究が5件あります。その他の12件は安全関係の研究で す。 ○田村部会長  後日、行政支援研究の項目等を出していただくことは可能ですか。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長  もちろん、可能です。 ○田村部会長  それではこれは提出していただくということでよろしくお願いいたします。その他何かあればお願 いいたします。  ないようですので、次にグループ3の「成果の積極的な普及・活用の残り、労働災害等の原因の調査 等の実施、国内外の労働安全衛生機関等との協力の推進、公正で的確な業務の運営」(評価項目14〜 20)の評価を行いたいと思います。所要時間は法人からの説明に15分、委員の評定と質疑に15分の合 計30分です。まず、法人からの説明をお願いいたします。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長  パワーポイント21頁、評価項目14から説明いたします。まず、「講演会等の開催」ですが、中期計 画に沿って安全衛生技術講演会を年3回開催しております。テーマは「建設業の労働災害防止」です。 この内容は資料12にありますが、墜落・倒壊防止、土砂崩壊防止、リスクアセスメントの他、石綿ば く露や振動、感電など、労働安全と衛生の両方を含めた講演を1日かけて実施しております。参加者は 420名、参加者の満足度は63%でした。例年、大体60%前後の満足度ですが、今回も同じような満足 度を得られたということです。  平成20年度から、労働安全衛生施策を新たに企画・検討する上で重要性の高いテーマについて、国 内外の有識者を招聘し、公開セミナーを7回開催しております。これは添付資料13にあります。「高 齢化に伴う労働災害の防止対策」「人体振動に関する新EU Directiveの戦略」等を実施しております。  また、研究協力協定を新たに締結した、カナダのローベル・ソウベ労働安全衛生研究所との共催に よる、「ナノ物質の労働安全衛生面における」をテーマとしたワークショップの開催等、他機関との 共催による講習会を3回ほど開催いたしました。  下の表のように、平成20年度は平成19年度に比べ、講演会数が17件と倍増しております。  研究所の一般公開については、平成20年4月の科学技術週間に、清瀬地区、登戸地区において一般 公開を行っております。参加者数は例年とほぼ同じ298名、満足度は92%でした。  また、国内外の大学・研究機関、業界団体・民間企業等39件の見学希望に応じております。  安衛研主催の講演会等の回数が飛躍的に伸びたことから、自己評定をAとさせていただいております。  次に、22頁の評価項目15「知的財産の活用促進」に移ります。「特許権の取得・活用促進」という ことで、平成20年度の登録総数は33件、そのうち実施許諾数は3件です。TLO扱いの平成20年度新規 出願は2件で、総出願件数は7件です。新規の意匠登録は1件、総意匠登録数は4件でした。  平成20年度の特許登録で新しいものとしては、写真に載せていますような車椅子転倒衝撃吸収装置 で、ヨーロッパの特許を取得いたしました。イギリス、フランス、ドイツ及びスウェーデンの4カ国に おいて特許効力が発生するための移行手続を行っております。  特許に関しては添付資料15にありますが、15件の特許を特許流通データベースに登録するなど、特 許権の実施促進に努めております。特許実施料は、1件ですが、51万2,000円の収入を得ております。  特許に対する「支援体制の整備」としては、相談員を配置し、研究職員からの相談等に応じるとと もに、研究評価において特許権の取得を評価内容の1つとして位置づけており、特許の取得促進に努め ているところです。  この評価項目については、ヨーロッパ特許を取得し、4カ国へ移行をしたこと、30万円ですが特許実 施料が増加したことから、自己評定をAとさせていただいております。  次は、23頁の評価項目16「労働災害の原因の調査等の実施」です。労働災害の調査は、図に示して ありますように、重大な労働災害が発生した場合、厚生労働省等の要請を受けて研究職員を派遣し、 災害発生原因を科学的に分析・特定し、結果を厚生労働省等に報告するというものです。その結果、 再発防止対策や制度改正等を含めて事故防止に役立てられております。  平成20年度は化学プラントの爆発災害、クレーン倒壊災害、土砂崩壊災害等14件の災害調査を実施 しました。また、警察署、労働基準監督署からの依頼を受けて、温泉施設の爆発災害等に係る14件の 鑑定を実施しております。また、労災給付に関する鑑定は石綿繊維の有無、これは死亡した方の組織 をいただいて石綿の数・種類を特定するものですが、そのような鑑定を6件実施しております。これに ついての詳細は、添付資料16に示しております。また、都道府県警察本部の全国会議において、当研 究所の鑑定書が原因解明に役立ったことから、好事例として紹介されております。下に、平成20年度 の災害調査等の件数がありますが、35件を実施しております。  平成20年度に、「労働災害の災害調査等の改善に向けた取組み」を実施しております。改善に向け た取組みを行うために、労働基準監督署に対してアンケート調査を実施いたしました。その結果、災 害調査・鑑定等について「役立った」とするものが、それぞれ約90%、残りは「何とも言えない」と いう所に○が付いておりました。コメントとしては、「できれば2、3カ月で報告書がほしい」といっ たことがありました。  そのような結果を受けて、作業の迅速化を図るために、内部評価(ヒアリング)において災害調査 中の事例について発表・質疑応答を行い、進行管理を行うシステムを導入いたしました。また、研修 会では法知識、依頼元の要望等を説明し、質の改善に努めております。  「災害発生状況等の分析」については、厚生労働省の委託事業として、新たに労働者死傷病報告の うち3万4,000件及び機械災害の約1万4,000件について電子データベース化を行い、中央労働災害防 止協会の安全衛生情報センターのHPに公開しているところです。  災害調査は受動的側面もあり、件数は減少したものの、ミッション型の研究所の最重要任務として 多くの労力を注ぎ、35件の調査を実施いたしました。また、顧客調査としてアンケート調査を行い、 相手方のニーズに積極的に応えるために研修会を開催したり、ヒアリングで進行管理等を行うなど、 改善のアクションを起こしたこと、都道府県警察本部で好事例として紹介され、当研究所の災害調査 が役に立っているということから、自己評定をSとさせていただきました。  次に、24頁の評価項目7に移ります。日本の労働安全衛生研究の方向を示すという目的で、「労働 安全衛生重点研究推進協議会」の開催をしております。これは先ほど説明したとおりのことですので 簡単にお話します。添付資料4にありますように、協議会で専門家からの意見をいただき、平成21年 度中に、新たに産業安全分野と労働衛生分野を統合した「労働安全衛生重点研究領域・優先研究課 題」を策定し、公表する予定で作業を進めております。  また、3月に「重点研究推進協議会シンポジウム」を開催し、最新の研究課題、「安全衛生の新しい 課題にいかに対応するか」といったパネルディスカッションを実施いたしました。この成果も取り込 んで、平成21年度中に「労働安全衛生重点研究領域・優先研究課題」を策定したいと思っております。  「学術誌等の発行」ですが、国際学術誌「Industrial Health」を年6回刊行いたしました。これに ついては、投稿論文数が前年度比で約40%増となる176件の投稿がありました。欧米からの投稿割合 は25%を超え、特集号では40%を超えました。国内の他の英文誌と比べ、格段に高い値となっており ます。  また、「J-Stage」にも全論文を公開しておりますが、ダウンロード数は前年度5万件のところ、平 成20年度は7万件と格段の増加を見ることとなり、国際的にも高い評価を得ていると考えております。  また、昨年度創刊した和文誌「労働安全衛生研究」を年2回刊行するとともに、それぞれ10編等の 論文がありますが、インターネット上にも報告しております。「工場電気設備防爆指針」の発行や、 住宅生産団体連合会との共同の研究で、「低層住宅建築工事におけるリスクマネジメント推進アクシ ョンプログラム」などを会員に配付するなどの活動を行っております。  この項目については、平成21年度にオールジャパンの労働安全衛生研究の方向を示す優先研究課題 を示す作業を研究所の重要な業務と位置づけ、着実に作業を進めていること、それから「Industrial Health」の投稿数、ダウンロード数が増加するなど、国際的評価が着実に高まっているということを 勘案いたしまして、S評価を付けさせていただきました。  次に、評価項目18「労働安全衛生分野における国内外の若手研究者等の育成への貢献」です。  「連携大学院制度の推進」ですが、すでに、7大学において20名の研究職員が連携教授等として任 命され、大学院で研究・教育に対する支援を行っております。表にあるとおりです。  連携大学院協定に基づき、4大学から6名の大学院生を受け入れて、指導を行っておりますが、その うち1人、北里大学の大学院生は、研究所での論文執筆、論文の指導を行って、医学博士号が授与され たところです。  「研究職員の派遣・若手研究員の受入れ等」ですが、東京大学、北海道大学等23大学・機関に対し て29名の研究職員が客員教授、非常勤講師等として教育支援を行っております。  また、日本学術振興会の外国人特別研究員1名、厚生労働科学研究費によるリサーチレジデント1名 をはじめ、内外の大学・研究機関から43名の若手研究者を受け入れて、研究指導を行っております。 これについて、下のグラフがありますが、平成18年度は29名だったものが、平成19年度は35名、平 成20年度は43名と着実に増加しております。  労働政策研究・研修機構の産業安全専門官研修、労働衛生専門官研修、中国安全衛生科学技術強化 プロジェクトのカウンターパート研修等、多くの研究職員を講義等に派遣しているところです。  博士過程の学生を受け入れて、医学博士号を取得させたということ、若手研究員の受入れが平成18 年度から着実に増加して、43人に至ったということから、自己評定をAとさせていただきました。  評価項目19の26頁に移ります。「研究協力の推進」ですが、「新たな研究協力協定の締結」として、 マウントサイナイ医科大学(アメリカ)と研究協力協定を結びまして、石綿による健康障害防止につ いて共同研究を開始したところです。  また、カナダのローベル・ソウベ労働安全衛生研究所と研究協力協定を結びまして、ナノマテリア ル及び振動障害防止の2つの分野で共同研究を開始したところです。  平成21年2月には、カナダ大使館において、「ナノ物質の労働安全衛生面に関する研究」をテーマ にワークショップを開催しているところです。  そのほか、「国際的な研究協力の推進」として、韓国産業安全保健研究院(OSHRI)と共催で、平成20 年11月にソウル市において、「国際産業安全衛生シンポジウム」を開催しております。  米国の国立労働安全衛生研究所(NIOSH)が策定する「労働と健康安全リスクに関する教育プログラ ム」への協力もいたしております。  また、研究職員の派遣として、英国安全衛生研究所(HSL)へ6カ月間、研究員を派遣するとともに、 中国海洋大学から中国の国費留学生として大学院生を6カ月受け入れております。  そのほか、「共同研究、研究員の相互派遣」ですが、共同研究の比率は、中期目標15%に対して39 %、研究員の派遣又は受入れ数は、中期目標20人に対して67人となっております。  新たに2つの研究所と研究協力協定を結びまして、それぞれ共同研究を始めましたこと、共同研究員 の相互派遣数が目標を大幅に上回った実績を上げたということで、自己評定Aとさせていただきました。  次に、評価項目20に移ります。「公正で的確な業務の運営」です。「情報の管理」として、個人情 報保護管理規程を改正し、個人情報保護管理者や保護担当者を研究所の実態に合わせて追加専任する など、体制の整備を図りました。総務省が主催する個人情報保護に関する研修会等へ職員を派遣する など、知識及び技能向上に努めました。平成20年度の情報公開請求は0件でした。  「研究倫理」については、外部の有識者、これは大学の学識者や一般の立場を代表する近隣の小学 校の校長などを含む、研究倫理審査委員会を開催しまして、10件の研究計画について厳正な審査を行 いました。その結果、条件付き承認となった7件について、研究結果の変更、被験者からの同意書等の 整備を図ったところです。  その下に、研究倫理の審査件数がございます。審査件数は10件行いまして、承認が3件、条件付き が6件、変更勧告が1件となっております。  また、動物実験に関する指針、動物実験委員会規程等を抜本的に見直して、平成20年度は7件の動 物実験について厳正な審査を行いました。審査の結果、全件とも研究計画の修正が必要とされて、今 年度、委員会で再審査することになっております。例えば、動物愛護の観点から、動物の殺し方につ いて修正が求められております。  科学研究費補助金取扱規程に基づき、不正使用防止対策に取り組んでおります。説明会の開催や取 得物の実態調査等を行っております。利益相反審査・管理委員会規程の整備に努めました。  法の「遵守状況の把握」ですが、業務責任者を配置し、法令の遵守に関する啓発・モニタリング活 動を行っております。新たにHPに不正通報窓口を設置して、研究所外部からの通報をメールで受け取 れるようにしております。現在のところ、その通報は0です。  セクハラ等社会的に問題になっている事項をテーマとした職員研修会を開催して、職員の意識啓発 ・トラブルの未然防止を図っております。  平成20年度は、動物実験委員会規程の大幅な見直しを行い、厳正な審査を開始したということと、 利益相反審査管理委員会規程の整備を新たに行ったことを踏まえて、自己評定をAとさせていただきま した。以上です。 ○田村部会長  ありがとうございました。委員の皆様におかれましては、評価シートへの評定等の記入をお願いし たいと思います。併せて、質問等がございましたら、ご発言いただきたいと思いますが、いかがでし ょうか。 ○田宮委員  2点お伺いします。評価シートの14番、安全衛生技術講演会の参加者が、去年と比べて半分ぐらい になっているのですが、何か理由がおありなのか。評価シートの27頁にある表ですが、何か理由があ れば教えていただきたいというのが1点です。  もう1点は、評価シート項目の16番の「災害発生状況等の分析」は、やはり、この研究所ならでは のデータの集績と、それに基づく分析で非常に意義のあることだなと思っております。今回、具体的 にその分析に基づいた報告などもされているようで、これは重要なことだと思うのですが、いままで こういう分析というのはなされておられましたか、それとも、今回初めてこのようにされたのか、非 常に良いことだと思うので、その辺を教えていただきたいと思います。 ○労働安全衛生総合研究所理事  まず、1点目ですが、安全衛生技術講演会の参加者が、若干人数が減っている理由です。これはテー マを建設業という業種に限定したというのが大きな要因です。ご存じのように、公共工事がピーク時 のおそらく4割方に減っておりまして、建設会社は非常にシビアでして、かなり我々も建災防という建 設業労災防止協会の支部を通じて、受講勧奨に努めたのですが、残念ながら、建設会社側がリストラ で人を減らしていると、かつ、数少ない人間で仕事をしている中で、講演会へ行くのはなかなか時間 が取れないという、ちょっと建設業に特殊性があったということが言えると思います。  2点目の労働災害の原因調査の分析は、従来からずっとやっております。特にSにした点というのは、 先ほど申し上げたように、顧客ですね。顧客というのは、労働基準監督署や警察。警察も業務上過失 致死障害の立件のために鑑定とか、捜査関係事故照会が来ますので。いわゆる顧客の満足度が非常に 高いということが明らかになったということと、先ほども言いましたが、内容をここでオープンには できませんが、県警本部の全国会議で、うちの研究所は、特に材料の強度や材料の破壊についてのノ ウハウはすごいものがある、ということをすごくPRしたそうです。  実際上の話として、労働災害由来の分野での、例えば材料が破壊した事例についての観点などもあ りますので、そういうものの顧客満足度からSにした、従来からやっている事項です。かつ、顧客満足 度が更に上がったということでSにしているわけです。以上です。 ○労働安全衛生総合研究所理事長  いま理事が報告いたしましたが、23頁の評価項目16の下のところ、「災害発生状況等の分析」と書 かれているものは、委託事業として新たに立ち上がったものです。我々が従来から災害調査をいろい ろやって、その中身について個別のものについて解析はして報告しているわけですが、それとはまた ちょっと別のものです。 ○田宮委員  そうですね。かなり、全数の疫学的な分析なので、いままでになかったかなと思って伺ったわけで すが。 ○労働安全衛生総合研究所理事長  逆に、数が多い反面、一つひとつの個別のデータはだいぶレベルが低いわけです。そういう意味で、 統計的な処理などの分析になるわけです。  個別の事故については、どういうプロセスでこれが事故に至ったかということを解析していくとい う、性格の違ったものです。 ○田宮委員  全体のほうは、今回が初めてということですか。 ○労働安全衛生総合研究所理事長  これは「国委託事業」と書いてあるように、もともと「労働者死傷病報告」という、いわゆるマル 秘書類ですので、我々は直接は今は扱えないというので、委託されて初めてできる。それが始まった ということです。 ○田宮委員  そうですね。いままでマル秘なので、この分析ができないと伺っていたことを覚えていた気がしま したので、伺いました。それが可能になって、委託として実現したということですね。 ○労働安全衛生総合研究所理事長  はい。 ○田宮委員  はい、わかりました。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長  ちょっと補足いたします。特に、機械災害の1万4,000件については、私どもの研究所の研究業績か ら、必要な項目について新たに抜き出して、その項目についてもデータ分析をしております。全部で4 万8,000件については、キーワード検索もできるようになっておりまして、使用者にとって有効なもの になっていると思います。 ○田宮委員  はい、わかりました。 ○中村委員  同じ23頁で質問させていただきます。ここのところは非常に高く評価されるところだと思うのです が、いわゆる労働災害の災害調査と。私が非常に素晴らしいなと思ったのは、アンケート調査を実施 して、高い水準で役に立ったという評価をいただいたと。さらに、そうでもないようなところの意見 を注視して、進行管理を実施したというご説明をいただいたと思うのですが、具体的に、どの段階で 内部評価会議における発表・質議応答というのはやられているのですか。いわゆる進行管理というの は、どういう形でなされているのか、ちょっと教えてほしいのです。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部長   説明が不十分だったのですが、評価シートには記載しているのですが、グループ部長等会議で、こ れは2週間に1回程度開かれるのですが、そこで進行管理を行っています。すべての災害調査について どういう進捗状況であるかというのを報告して、各部長が進行管理を行ってもらえるような体制にし ております。  内部ヒアリングについては年に2回ですので、数が少ない分は、部長等会議の報告で進行管理を行っ ているということです。 ○労働安全衛生総合研究所理事  ちょっと補足いたしますと、そこに労働災害調査分析センターという組織がございますので、そこ のセンター長は、日々どの調査が遅れているかというのを把握しておりますので、個別に調査担当の 研究員を呼び出したりしながら、ある意味では、日々そういう管理をやっていると言っても言い過ぎ ではないと思います。 ○中村委員  ありがとうございます。 ○酒井委員  評価項目17番の「Industrial Health」ですが、確かに投稿数は非常に増えていまして、非常に結構 なことだと思うのです。それに対して、掲載論文数が逆に減っているということは、査読の基準を変 えられたということなのでしょうか。それが1点です。  評価項目20番の「研究倫理審査委員会」ですが、これはどのくらいの頻度で行われているものなの か教えてください。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部首席研究員  「Industrial Health」の審査基準は何も変えておりません。投稿された分に対して、担当者が査読 者を決めて、もともと持っている査読基準に基づいてお願いしてやってきております。  投稿数が増えているのは、J-Stageとかに、1960何年代からカレントまでのが全部掲載されるように なりました。例えば、検索エンジンに引っかけてパブメドなどで「Industrial Health」が出た場合、 J-Stageをフリーで、PDFで皆さんが論文を読めるようになりましたので、その分、広く広がって、い ろいろな国から投稿されてくるようになりました。その中で、やはりレベルの高い論文もあれば、低 いのもあるということで、その問題が多少出まして、掲載論文数の中でリジェクトさせていただくの が増えたということで、減ったところがあります。 ○労働安全衛生総合研究所理事 いまの「Industrial Health」の追加ですが、ここ数年、お蔭で投稿数が増えてきたのですが、それ以 前は、70程度でなかなか増えない現状がありました。そういう意味で、どうしてもある程度レベルが 低いものでも掲載して、ある意味ではエンカレッジするという視点でやっていたのですが、最近は、 お蔭様でこのようにどんどん上がってきたということで、ある程度レベルを上げないと、今度は逆に インパクトファクターを上げる必要もあるというご指摘も出てきています。その辺で、ちょっと変わ り目だということもあります。  倫理委員会の件ですが、倫理委員会は、外部の専門家及び一般を代表する方をも招いて開く必要が ありますので、そういう全員が集まる会議は年1回です。ただし、当然、年度途中に倫理審査を要求し てくる課題がありますので、そういう課題に関しては、簡易審査として、書面審査を行って、外部の 委員の方々には、その結果をお伝えして承認していただくということで、実際の会議は開かない形で でも、一応、倫理審査は進めているという現状です。 ○鈴木部会長代理  評価シート35頁の(3)「研究協力の促進」のウに「企業等の産業医、研究者等との研究交流」という のがあって、遺伝子研究会というのが上がっております。これはどういう趣旨の研究会なのか、規模 はどの程度なのか、さらに主催なのか共催なのか、といったことをご説明いただきたいと思います。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部首席研究員  ここでのストレス研究会、遺伝子研究会、人体振動勉強会というのは、研究所の登戸地区の研究員 が全部代表を務めまして、その中で定期的に月1回、あるいは週1回開催をしまして、外部の企業等へ も全部インフォメーションを出して、どなたでも参加していただける形で、関連する研究テーマの討 論を行うという会議になっております。 ○鈴木部会長代理  前理事長さんは、こういう遺伝子研究は政策ミッション型の研究所にはふさわしくないと、評価委 員会の評価も低いので、これから切っていく、ということをはっきりおっしゃったと記憶しておりま す。新理事長さんはどんなご見解なのか。やはり、目先というか、現時点での問題に対応するだけで は、時代が変わっていったときに取り残されてしまう可能性もある。やはり、少し先を見据えた、こ ういう研究もミッション型研究所といえども、いくらか必要なのではないかと私は感じているので、 ご質問します。 ○労働安全衛生総合研究所理事長  突然の質問であれですが、私としては、ミッション型研究所の研究というのは、筋トレ研究という ものかなと考えております。筋トレ研究という意味は、ある目的を達成するために、スポーツで言う と、競技とはちょっと違うところで、筋トレをして体力を付けて技能を高めなくてはいけないと。そ ういうことをするのは、直接試合で勝つものではないが、それをやらないと試合には勝てなくなる。 そういう意味で、基礎学力を高めるというのに近いと思いますが、そういう部分も当然必要であると は考えております。  ただ、大学の研究とはちょっと異なりまして、基礎体力それ自身を目的とする研究はあり得ないだ ろうと考えております。あくまでも、応用を将来見据えた研究であるということが必要だろうと思っ ておりますが、あまり近視眼的に、今年すぐ役に立つというようなことばかりを追うのはいかがかと いうように考えております。 ○労働安全衛生総合研究所研究企画調整部首席研究員  ちょっと追加で、前理事長とこの研究会をやられていた主催の方との間での研究内容での理解の差 というのがありまして、理事長はああいう表現をされたと思います。基本的には、やはり労働衛生現 場におけるいろいろな物質の人体への影響に関して、遺伝子レベルでの発現とかを見ていく研究は必 要であろうということで、現実、いまも研究員はおりますし、今後も今年の採用に向けても、実質、 これをやられた方が定年退職されるに向けて、うちの研究所としては、さらに必要ということで、い まの理事長の段階で、次の人も補充していくというのが決定されています。いま言われました目先で はなくて、やはり、もう少し体のほうでこういう研究は必要ということで、今後も続く状況にはなっ ていると思います。それはいまの理事長の決定で動いていますので大丈夫だと思います。 ○労働安全衛生総合研究所理事  基本的に、安全衛生とは全く将来的に無縁であろうという研究であれば必要ないと思うのですが、 少しでも可能性があるものは、ベーシックなところは押さえておかないと、将来急に問題になったと きに、我が研究所が遅れを取るということになると思いますので、安全衛生と関連性を有するであろ うというところについては、今年の新規採用職員についても、こういう分野について広げたり、新し い分野で職員を採ったり、そういうふうな配慮をしております。 ○田村部会長  それでは次のグループ4、「財務内容の改善に関する事項」(評価項目21〜24)についての評価を行 いたいと思います。所要時間は、法人からのご説明は10分、委員の評定と質疑は15分、合計25分と いうことで進めていきたいと思います。それでは法人からのご説明をよろしくお願いします。 ○労働安全衛生総合研究所総務部長  パワーポイント資料の28頁です。評価項目21になります。財務内容の改善につきましては、「運営 交付金以外の収入の確保」というのが大事だと考えております。その1番目としては、「競争的研究資 金、受託研究の獲得」というものです。競争的研究資金につきましては、文部科学省及び日本学術振 興会科学研究費補助金合わせて17件。そして厚生労働科学研究費補助金につきましては11件。環境省 廃棄物処理等科学研究費補助金で1件。計29件。合計8,500万円の競争的研究資金を獲得したところ です。  また、民間企業からの受託研究の4件を含みまして、受託研究につきましては8件、5,737万円の受 託研究を獲得したところです。  下の表をご覧ください。平成20年度につきましては、合わせて37件。合計金額1億4,200万円強の 研究資金を獲得したものです。平成19年度の総額と比べますと、46%アップ。金額にしますと4,500 万円のアップです。実際、平成18年度から平成20年度までの3年間を見ましても、合計で110件、総 額で3億7,000万円の研究資金を獲得している状況です。  科研費による研究の具体例につきましては、上の☆印をご覧いただきますと、例えば、「基礎工事 用大型建設機械の転落防止に関する研究」、また、「アスベスト廃棄物の無害化処理品の生体影響評 価に関する研究」等々ございます。また、民間企業の受託研究の例につきましては、ここでは3点ほど 掲載させていただいております。  もう1つ、運営交付金以外の収入の確保としては、「自己収入の確保」という点があります。右上の ○です。やはり、施設の有効利用という観点からも重要だと考えております。現在、私どもとしては、 研究施設・設備の有償貸与を一層促進するという観点から、貸与可能な施設・設備を研究所HPで公開 をしております。併せて、各種講演会・交流会等でも積極的に広報をしております。  この結果、下のほうの表ですが、平成20年度では、施設貸与で4件、699万円。これは平成19年度 と比べますと4.7倍です。著作権料につきましては、3件で76万4,000円。特許実施料、先ほど22頁 の評価項目15でもご説明しましたが、1件で51万2,000円。平成20年度におきましては計8件、197 万5,000円です。平成19年度の総額と比べても、87.4%アップ、92万円の増額ということです。3年 間の総計で考えますと24件、全体で395万円の自己収入の確保でした。  このように運営交付金以外の収入を相当程度確保することができて、研究を推進することができた という観点から、私ども自己評定としてはSとさせていただいております。  次に29頁、評価項目22番です。財務内容の改善につきまして、もう1つ、私どもとしては「予算、 収支計画及び資金計画」というものがあります。第1点目は、「施設経費の節減」ということです。こ れは7頁の評価項目4とも関連しておりますが、やはり、研究施設、研究室の効率的な利用を促進する という観点から、光熱水料の経費の節減を掲げております。光熱水料はいままでなかったのですが、 各研究棟ごとに把握できるようにメーターを取り付けて、その研究棟ごとに把握した結果を、私ども 所内で開催している部長等会議に報告をして、まず各部長さんに現状を知ってもらい、そして経費の 節減を働きかけた次第です。  それと併せて、平成20年度に本格稼働した静電気特性測定用恒温恒湿施設、また、平成20年度に改 修した低温実験室につきまして、施設規模の小型化や電力消費の高効率化を図った施設にしたもので す。  もう1つは、「研究経費の節減」というものです。これは研究設備・機器の購入、保守管理・メンテ ナンス等を毎年度行ったものですが、実際、研究設備、機器の特殊性というものはありますが、特定 の業者にしかできないとして、これまで随意契約を行っていたものを見直しまして、仕様書を作成し て競争入札を積極的に導入しました。その結果、経費の節減を図ったものです。  このような効果からしまして、「全体予算」としても、平成20年度の予算、収支計画、資金計画は、 本日お配りした資料の中の「財務諸表」、「計算報告書」のとおりですが、下に全体として、当初予 算額に対する執行率は、人件費につきましては96.4%、一般管理費については98.4%、業務経費につ きましては、先ほど申し上げたような随意契約から一般競争入札の導入、競争的な購入を導入したこ とによりまして、88%という達成で終えることができました。  このように一定の成果が上がったという観点から、自己評定としてはAということにさせていただき ました。  30頁は評価項目23番、「その他業務運営に関する事項」です。「人事に関する計画」ですが、やは り研究所としては、資質の高い研究員をどうやって確保するか、ということがいちばん重要なポイン トではないかと考えております。  「新規研究員の採用」につきましては、まず、研究者人材データペース(JREC-IN)や大学病院医療情 報ネットワーク(UMIN)への登録、さらには80を超える大学への公募案内の通知、学会誌への公募掲載 等、産業安全と労働衛生の研究を担う資質の高い任期付研究員の採用活動を行ったところです。  前年度に採用内定した5名を、平成20年4月1日付で採用するとともに、平成20年度の公募に応募 した20名の中から、平成21年1月1日付で2名を任期付研究員として、また、女性2名を含む3名を、 平成21年4月1日付採用予定者として内定したものです。この3名と2名、合わせて5名のうち、博 士号取得者が4名ございましたので、今後の活躍を私どもは期待しているところです。  下の表をご覧いただきますと、この3年間、全部で70名近い応募者数がございまして、各年平均を 取りますと20.3名の応募があったというものです。  次に、採用した研究員ですが、「研究職員の昇任、昇給、昇格」です。平成19年度に統一した清瀬 地区・登戸地区共通の業績評価基準に基づきまして、1点目は研究業績、2点目は対外貢献、3点目は 所内貢献、4点目は独法貢献の4つの観点から研究職員の評価を行いまして、その結果を昇任、昇格等 の人事に反映しております。さらに、優秀研究者表彰(2名)・若手研究者表彰誰(3名)に反映させ たものです。  評価につきましては公平性、適正性を確保するため、研究職員の所属部長等による第1段評価、また 領域長による第2段評価、地区担当役員による第3段評価ということで、3段階の評価方式としたもの です。  「人員の指標」としては、平成20年度当初の常勤職員数は119名であり、平成20年度末の常勤職員 数は117名でした。  「人件費総額見込み」としては、10億3,200万円であったところです。これは予想に比べて2,200 万円の節減となったところです。  このような人事に関する計画を持っておりまして、昨年度の給与水準を比較しますと、研究職につ きましては、下のグラフの緑の表ですが、対国家公務員との関係では92.2、他の法人と比べますと 91.8という状況です。事務職につきましては、対国家公務員との関係におきましては95.1、他の法人 と比べますと88という水準で終えたところです。  次に31頁、評価項目24です。素晴らしい研究を進めていくためには、優秀な研究職員の確保と同時 に、施設・整備の改善を進めていくということが必要だという観点から、毎年度、計画的に施設・整 備を進めているところです。右の表で赤字になっているところが平成20年度措置済みのものですが、 これら中期計画及び年度計画に沿いまして、経年劣化の著しい研究設備を改修したものです。  上のほうは、統合生産システム安全性検証施設の改修でした。労働者が安全に作業を行うための最 後の砦というもので考えますと、やはり、安全制御装置というものが非常に重要だと言われておりま す。ところが、この安全制御装置というのは、研究室の中と違って実際の作業現場ですと、例えば、 暑い所や湿度の高い所、また振動がある所で安全制御装置設備を使っているわけですが、湿度、圧力、 振動、その他ガス、そういうものの安全制御装置が、作業されているような場所でちゃんと働くかど うか、複合的な影響が調べられるような装置になるように改修いたしました。下の写真の奥のほうに 並んでいる設備です。このような設備の改修工事を行ったものです。  もう1つは、下の2つ目の赤字ですが、低温実験室の改修を行いました。この低温実験室は、低温と 言いましても4℃の実験室です。動物の組織から蛋白質を取り出して分析を行う実験装置ですが、蛋白 質をスリープ状態にする。生命状態を止めた状況で実験が行えるような低温実験室の改修工事を行い ました。これにつきましても、省エネ化が行われるような実験設備に改修工事を進めた次第です。  それと併せて、登戸地区の研究本館は、昭和50年の竣工ですので、33年経過したということで、耐 震上問題があったということから、耐震改修工事に着手をしたということで、昨年度設計を終えたと ころです。  これらの施設整備につきましては、施設費の年度当初見込み額2億5,000万に対して、実績は2億 3,500万円ということで、総額で1,600万円節減することができました。1,600万円が節減できたもの につきましては、国庫にお返しした次第です。  最後になりますが、監事監査につきまして一言ご説明をさせていただきます。今日は机上配付させ ていただいております。  私どもの法人におきましては、監事は、常勤の業務監事1名と、非常勤の会計監事、公認会計士、税 理士の資格をお持ちの方1名、計2名の監事がおります。やはり、私ども日常的に監事との連携が重要 であるという認識を持っております。特に業務監事におきましては、常勤の監事さんでいらっしゃい ますので、例えば、平成20年度におきましては、年4回の役員会、また平成21年度は年6回の役員会 にご出席をいただきまして、事務方から業務の説明を行っておりますが、それ以上に、業務全体を把 握していただくことが必要だと考えております。このため、例えば、毎週金曜日の午後に、部長会議 を開催しておりますが、この部長会議に出席をいただきまして、業務面のさまざまな状況を把握して いただくとともに、監事として、例えば、こういう点を工夫したらどうかとか、こうやったら良いな どのいろいろなご指導と言いますか、アドバイスを常日頃いただきまして、それで業務改善の1つにし ているという状況です。  会計監事につきましては非常勤監事さんですが、年間10回近く、私どもの法人にお越しいただいて、 年間の予算の施行状況や経理状況の問題点、留意点について、その都度、指導やアドバイスをいただ いて、業務の改善に努めているところです。両監事からは、期央・期末の監査を受けて、お配りして いる資料の報告をいただいております。  今回の監査結果につきましては、会計監査人あずさ監査法人の監査の方法及び結果は相当である、 また、事業報告書は、法令等に従い、法人の業務運営の状況を正しく示している、理事の業務遂行に 関しては、不正の行為または法令等に違反する重要な事実は認めていない等の報告をいただいており ます。これらのさまざまな指導、アドバイス、報告を踏まえて、両監事に対しまして、現状、改善状 況について説明を行っている次第です。  相当、駆け足、早口で恐縮でしたが、以上です。 ○田村部会長  ありがとうございました。それでは委員の皆様におかれましては、評価シートへ評定等の記入をお 願いいたします。質問等ございましたら、併せて、適宜お願いしたいと思いますが、いかがでしょう か。 ○中村委員  評価シートの43頁、新規研究員の採用について確認したいのですが、この研究員のいままでの業績 とか、社会的な貢献を見ると、もう少し応募者があってもいいのかなという気がするのですが。任期 付研究員の応募者数が20名とか、あるいは24名、17名とか。もう少し公募する時期をずらすとか、 早めにするとか、何とかすると優秀な人材がたくさん集まってくれるのではないかという気がしてい るのですが、いまはどうなっているのか、今後はどういうふうにお考えか、お聞かせいただければと 思います。 ○労働安全衛生総合研究所総務部長  いま先生がご指摘のとおり、昨年度の採用時期は秋頃だったものですから、もう少し早めたほうが いいということで、今年度は考えまして、公募の案内を5月下旬から6月にかけて行いまして、今年度 は49名の応募をいただいたところです。時期を早めること、また、周知の内容などにちょっと工夫を して、昨年比2.25倍近い募集を得ることができたということで、一定の成果があったのではないかな と考えている次第でございます。ありがとうございました。 ○中村委員  安心しております。ただ、たぶん内定を出すのは7月か8月になってしまうと思うのですが、そうす ると、やはり、そこまで待っていられるかというようなこともあるので、ほかと横並びで、もう少し 早めたほうが優秀な人材が採れるのではないかという気がするのですが。是非、良い人材を採って、 今後のためにやっていただきたいと思います。 ○労働安全衛生総合研究所理事  私は昨年の採用にも立ち会ったのですが、前理事長は非常に準備に万全を期する方で、本当はもっ と早く採用の公示をしたかったのですが、何やかんやいろいろ評価基準や採用基準等を決めるのに時 間がかかりまして11月になりました。  今年ももう少し早くしたかったのですが、今年は人事異動で研究部長も総務部長も4月に代わった関 係で、急いだのですが、やはりこの時期になってしまったということです。来年はおそらく2人とも留 任だと思いますので、もっと早くできると思います。 ○中村委員  安心しました。ありがとうございました。 ○市川委員  小さいことかもしれませんが、評価シートの項目の21番、「運営交付金以外の収入の確保」という ことで、大変努力をされて上がっているということはよく分かるわけです。これがS評価というのは、 私はいつも気になるのですが、これを単純に見ると、受託研究が件数以上に金額が非常に増えたとい うことになるかと思います。要するに、大型のお金が入ってきているのかなというように、勝手に想 像します。  そういたしまして考えると、それはそれでいいと思うのですが、問題は、受託研究をされることの 内容が、いままでの通常業務の中での負担量というのか、どれだけのことになっているのかという問 題です。要するに、科学研究費とか、そういう競争的研究の場合には、たぶん、自分たちが置かれて いる研究の延長線上に収入が入ってくるというのは分かるのですが、受託研究の場合には、これが非 常に増えることは結構な話ですが、増えれば、一般的な印象としては負担量が非常に増えるので、通 常業務に対してはあまり影響がないのか、あるいは件数に対して、非常にいい受託研究ができたのだ という、たまたまと言っては悪いですが、この組み合わせが非常によかったからという評価でいいの か。Sとされたからには、もう1つ別の理由があるのかなという気がして、細かい話ですみませんが。 ○労働安全衛生総合研究所理事  受託研究内容で、特に民間の受託研究を見ていただきますと、やはり、自分の所には適当な機器が ないとか、そういう意味で、民間が足りない部分を、我々の研究員には負担になりますが、負担にな るにもかかわらず、やはり、旧国研、今は独法ですが、国内で唯一の労働安全衛生の専門機関として の貢献度が増えたと。民間からの受託が増えたということは、それだけ民間からのニーズに応えられ たということでSという判断をしたわけです。以上です。 ○田村部会長  ほかにございますか。記入のほうはよろしいですか。記入について、評価官室のほうから何かござ いますか。 ○政策評価官室長補佐  記入が終わっていない委員の方につきましては、この部会終了後、この場にお残りいただいて書い ていただいても結構です。また、評価シート及び評価記入用紙をお持ち帰りいただいて記入されても 結構です。もしお持ち帰りになる際には、事務局に一声かけていただきたいと思います。提出の期限 は、大変短くなって恐縮ですが、8月10日(月)までにE-mailまたはFAXにてご提出いただければと 思っております。よろしくお願いいたします。 ○田村部会長  それでは、本日の議事は以上ということにさせていただきます。次回の開催等につきまして、事務 局からご案内をお願いいたします。 ○政策評価官室長補佐  次回の開催は、8月17日(月)午後1時から、場所は厚生労働省専用第21会議室となっております。 議題は、医薬基盤研究所、国立健康・栄養研究所及び労働安全衛生総合研究所の総合評価等となって おります。よろしくお願いいたします。 ○田村部会長  それでは、本日は以上ということにさせていただきたいと思います。長時間にわたりまして熱心な ご審議をいただき、誠にありがとうございました。 (了) 照会先:政策統括官付政策評価官室 独立行政法人評価係 連絡先:03−5253−1111(内線7790)