09/8/5 第55回中央医療社会保険協議会薬価専門部会議事録 1 日   時  平成21年8月5日(水)11:09〜12:13 2 場   所   はあといん乃木坂 フルール(B1F)  3 出 席 者  遠藤久夫部会長 牛丸聡委員 庄司洋子委員 森田朗委員          対馬忠明委員 小島茂委員 北村光一委員 小林剛委員          藤原淳委員 中川俊男委員 渡辺三雄委員 山本信夫委員           長野明専門委員 禰宜寛治専門委員 松谷高顕専門委員 <日本製薬団体連合会>          長谷川閑史意見陳述人          <米国研究製薬工業協会>          関口康意見陳述人                          <事務局>          外口保険局長 唐澤審議官 佐藤医療課長 宇都宮医療課企画官           磯部薬剤管理官 他                 4 議   題   ○特許期間中の新薬の薬価改定方式について ○遠藤部会長  それでは、委員の皆様御着席ですので、ただいまより第55回中央社会保険医療協議会 薬価専門部会を開催したいと思います。  まず、委員の出欠状況について御報告をいたします。  本日は全員の方がお見えになっております。  また、前回、7月15日の薬価専門部会で、日本製薬団体連合会が提案している特許期 間中の新薬の薬価維持特例に関して、その必要性等につきまして、製薬業界トップの方に 再度御説明いただくことになりました。この件に関して、日薬連にお願いいたしまして、 御都合等を伺ったところ、本日は長谷川閑史武田薬品工業株式会社代表取締役社長、及び 関口康ヤンセンファーマ株式会社取締役会長のお二人に御出席をいただいております。よ ろしくお願いいたします。  それでは、議事に移らせていただきます。  本日は、特許期間中の新薬の薬価改定方式についてを議題といたします。  前回の当部会におきまして、事務局から提出された論点案などについて議論いたしまし たが、冒頭に述べたように、特許期間中の新薬の薬価維持特例をなぜ導入する必要がある のか、製薬業界トップの方から、製薬企業の経営状況等も含めて御説明をいただく必要が あるのではないかということになりました。  本日御出席の長谷川社長及び関口会長からまず御説明をいただきまして、その後議論に 入りたいと思います。  それでは、御説明のほどよろしくお願いいたします。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  御紹介いただきました、武田薬品の長谷川でございます。  ただいま遠藤部会長からお話がありましたように、前回の中医協に日薬連会長、製薬協 会長ともども出席をし、私どもの立場を御説明、委員の皆様の御質問にもお答えいたしま したが、いまだ論議を尽くしていない点があるとのことで、本日このような場を設けてい ただいたことを感謝申し上げる次第でございます。  前回も申し上げましたとおり、必要であれば何度でも説明にお伺いする用意はあります ので、今後とも遠慮なくお申しつけいただければ幸いであります。  本来でありましたら、日薬連、製薬協の代表が出席すべきところでありますけれども、 よんどころない事情により出席できないということで、竹中日薬連会長及び庄田製薬協会 長の御指示により、これらの組織を代表して出席するということになった次第でございま す。  本日はお手元にお配りしておりますレジュメといいますか、資料に基づいてお話を大体 15分ぐらいでまとめてさせていただきたいと思います。  次のページ、グラフを開けていただきたいと思います。1ページ目になるのですか。  研究開発型製薬企業は、内資、外資を問わず、グローバルな研究開発競争に直面してお り、国内企業の研究開発費も、ここでごらんいただいておりますとおり、増加はいたして おります。これは医薬品研究開発費の高騰に加え、各社とも競争に勝ち残るために一定規 模以上の費用を研究開発に投じていることにもよるものでありますし、また医薬品産業そ のものも技術革新の壁にぶつかっておりますし、レギュレーションも厳しくなってきてお りまして、そういった意味からいきますと、成功確率も非常にハードルが高くなっている、 あるいは要求される資金の規模も膨大なものになっている。それらこれらが相まって、こ ういうことの背景にあります。  では、次に3ページのほうをごらんいただきたいと思います。  製薬企業の研究開発費の比率及び額の高さについては、これまでも申し上げてきたとこ ろでございますが、研究開発比率は業種によって異なるので、一概には申し上げられませ んが、例えば装置型産業においては多額の設備投資を行い、生産性、効率性を上げること によってコスト競争力を高め、リターンを求めるビジネスモデルでありますが、一方、医 薬品産業は研究開発型の期間、すなわち投資期間が長く、成功確率が低いといった特徴が あります。ハイリスク、ハイリターンタイプのビジネスモデルでございます。一般的に言 えば、製薬企業の研究開発費のうち約6割が開発費であり、残りの4割が研究費というの が平均的なところだというふうに思われますが、4割の研究費のうち、2、3割は外部研 究機関への研究委託や共同研究に割かれているものと、平均的には思われます。  大ざっぱに申し上げまして、一製品にかかる開発費全体の約1割がフェーズI、約2割 がフェーズII、そして残りの約7割がフェーズIIIに投下されているものと思われます。し たがって、開発後期の製品が失敗に終わると、コスト面でも製品戦略面でもダメージは大 きいわけでございます。近年の規制強化、あるいは技術革新に伴うこの段階での中止やさ らなる追加試験の要求に伴う追加コストと承認の遅れは、企業にとっては大変大きな負担 にはなってきております。  次、お願いします。4ページ目でございますが、製薬企業はグローバルな研究開発競争 を勝ち抜くために、これまでもさまざまな施策を実施して生き残りを図ってきました。こ こにお示しいたしましたのはその例の一部でございます。特に2000年代に入りまして、 各社の経営統合も行われたほか、武田薬品におきましても、医薬外事業を10年間かけて 譲渡してきましたし、従業員の雇用や労働条件を確保しつつ事業譲渡を行うということは、 それでも同じ会社で一緒にやってきた従業員の方に転籍を要請するということで、経営者 にとってはまことにつらい決断ではあったわけでありますけれども、そういったいわゆる 事業の再構築を経て今日の姿に至っております。  ここに挙げてきた施策を実施するに当たっては、各社の経営者はそれぞれに大変な思い をしながら実施してきたと思われますし、今後も研究開発費、高騰するものを賄うために は、継続してこういった事業の体質強化を行っていく必要があるというふうに考えており ます。  次に、5ページをお願いいたします。前ページに述べましたような施策に加えて、体質 強化のための人員適正化削減策も講じたことによりまして、ここにお示ししておりますよ うに、製薬企業の従業員数は減少してきております。それでも、産業全体では14万人、 国内企業だけでも10万人規模の雇用を日本国内に創出しておるのが実態でございます。  その次のページ、6ページをお願いいたします。企業が生き残るためには、環境変化を 先取りし、みずから変化していくことが求められるわけでございますが、国内企業はより 多くの研究拠点、生産拠点を日本に置いており、これは対外資との比較でありますが、医 学・薬学等にかかる科学技術基盤の向上、非常時の対応体制の整備といった面でも貢献を しているというふうに自負をいたしております。  国内企業がなくなって外資系企業だけになったらどうなるかとの御質問があったとのこ とでございますが、この質問に単純にお答えするとすれば、約10万人の雇用と約4,0 00億円の税収が失われるということになります。もちろん、失われた雇用や税収の一部 は外資系の企業が埋め合わせることになると思いますが、それは喪失分の半分にも達しな いのではないかというふうに思われます。外資の場合は生産拠点も持ちませんし、またト ランスファープライスということで、日本に落ちる利益よりも本国に落とす利益のほうが 多いとか、いろんな事情がありますので、大ざっぱにいけばその辺が当たらずといえども 遠からずということではないかと思います。  加えて、日本の誇ります科学技術の重要分野の一つであり、欧米のみならず、アジアに おけるシンガポールや中国、インドなどでも国家戦略として力を入れておりますライフサ イエンス分野で、日本は大きく後れをとることになることも懸念されます。さらには、日 本製薬企業大手4社、武田、アステラス、第一三共、エーザイは、平均すると50%以上 の売り上げ及び利益を海外で上げており、海外で稼いだ利益をOECDの中で最も法人税 率の高い日本に持ち帰って納税をしているという点では、そういった意味での貢献もして いるというふうに自負しております。  なお、現行制度のままでいけば、5年から10年後には経営が成り立たなくなるという ようなことを業界側委員が述べたように聞いておりますが、経営者の観点から見て、その ような相関関係、この制度がなければ我々はつぶれるということを申し上げるつもりは一 切ございません。そのために制度改定を提案しているわけではございません。先ほど申し 上げましたとおり、既に売上利益の半分以上海外で上げている企業もあり、仮に国内市場 から淘汰されても生き残りは図れると思います。我々は自分たちの将来がお先真っ暗だか ら薬価制度改定を提案しているわけではございません。新薬メーカーとジェネリックメー カーのすみ分けを促進し、それぞれのビジネスモデルの中で体質強化をしていくことによ って、日本企業にとって本当の競争相手である海外企業とグローバル市場で闘って勝ち取 った富を日本に持ち帰ってくることによって、日本の繁栄にも貢献できるとの思いから、 こういう提案を申し上げているわけでございます。  次のページをお願いいたします。7ページです。この図は、大手10社のパイプライン の状況を示したものでございますが、前臨床段階のものは情報が開示されていないので捕 捉はできておりませんが、臨床段階にあるものだけを見ましても、各社多くの新薬候補を 有しております。1臨床件はフェーズI、II、IIIという3段階のハードルをクリアして、 ようやく申請にこぎつけることができるわけでございます。2号側の先生方には申し上げ るまでもないことでございますが、一般的に後期の臨床試験ほど必要とされる症例数も多 く、先ほど申し上げましたように、臨床開発全体の7割ぐらいがフェーズIIIで費やされる というのが実態であろうと思います。  また、フェーズIIやフェーズIIIの後期臨床開発は、申請しようとする地域ごとに、日米 欧、それぞれ別々に行う必要もあるケースが多くございます。国際同時開発が理想ではあ りますが、現実にはどの地域でどの製品を優先して開発するかについては、市場ごとの投 資効率を見て企業としては決めざるを得ないという状況もございます。日本は世界の市場 の約10%を占めており、国単位で見ると世界第2位の市場であり、決して無視はできま せんが、米国市場と比較すると4分の1以下であり、またレギュラトリー面では単一化し ております欧州市場と比べても3分の1ぐらいであります。さらには、BRICsに代表 される新興国は著しい成長を示している中で、外国大手製薬企業から見た日本市場の魅力 度、優先度は相対的に低下してきているというふうに言わざるを得ないと思います。外資 系企業から見た市場の魅力度や優先度は、市場の規模のみならず、治験や承認のスピード、 製品上市後の投資回収のスピード等、イノベーションを促進するような仕組みになってい るかどうかも重要なファクターであります。この点については、お隣におられます関口さ んからも再三述べられているところでございます。  次のページをお願いいたします。8ページでございますが、日本企業の経営者として、 また日本人として、日本国内に早く上市することによって、少しでも患者の皆様のQOL 改善に貢献したいとの思いはやまやまでございます。しかしながら、一方で株主から合理 的、効率的な投資も要請されているところであります。ここにお示しいたしました、いわ ゆるドラッグ・ラグの解消には、治験環境の整備や審査の迅速化など、政府も既に取り組 んでいただいているところでございます。審査の迅速化のために、PMDAの240名の 増員を官民協力して進めているところでございますが、製薬業界といたしましては、増員 分の人件費全額を審査手数料の倍増という形で受け入れているということも、できれば御 認識いただければ幸いでございます。製薬企業が日本における開発着手を早めて、日本に おいても欧米並みのスピードで新薬を上市し、患者の皆様及び医療に携わっておられる皆 様の期待にこたえていくためには、これらの施策に加え、今回提案している薬価維持特例 は必要というふうに考えます。後ほど、それについても若干つけ加えさせていただきます。  次のページをお願いいたします。未承認薬問題の解消は、製薬企業の社会的責任の一環 として取り組むべき課題ではございますが、これまでの製薬業界の取り組みは十分ではな かったと批判されてもやむを得ない点があったことは事実と思います。各企業の投資基準 に満たないため、採算をとるのが困難なことから、未承認として残っているのが大部分で あるというふうに判断はいたしております。この問題を個別企業の判断にゆだねていては 解決が難しいとの判断から、製薬協メンバー全企業の参加のもと、支援センターを設置い たしたところでございます。  この点に関しては、業界として当然のことであるとの御指摘もあったように聞いており ます。そういう点がなきにしもあらずということは理解いたしますものの、世の中には当 たり前のことが当たり前のように行われていない事例は事欠かず、また企業経営者として も当たり前のことを徹底してやることの難しさを日々苦労しているのが実態でございます。  私事で恐縮でございますが、私は山口県の片田舎で三代続いた開業医の次男であります。 私が小さいころ、父は夜間往診があるたびに私を車の助手席に乗せて連れていくのが常で ありました。子ども心にも、父の職業の意義の大きさとともに、大変さも感じたものであ ります。  このように、一昔前の田舎の開業医にとっては当たり前であった往診も、今は地域医療 も厳しくなり、あるいは交通の利便性も改善したことによって、必ずしも当たり前ではな いようにもなっているとも聞いたりしていますが、私が医者にならなかったのはそのせい では決してなくて、勉強が嫌いで成績も芳しくなかったことからであることは、念のため に申し添えておきます。  余談ではありますが、官民対話を通じて、現在業界として官民協力によるパンデミック ワクチン対策にも取り組んでおることも最後に申し添えさせていただきます。  最後に、今回の提案の趣旨は、新薬と後発品の役割分担を明確にし、公的で貴重な医療 財源を合理的、効率的に配分したいという考えに基づくものであります。したがいまして、 この制度が実際に採用され、浸透していけば、新薬の開発が促進され、ドラッグ・ラグの 縮小にもつながり、結果、新薬メーカーはより特許保護期間中の新薬のプロモーションに 力を注ぐことになり、結果としてジェネリックサイドと新薬サイドのすみ分けも促進され るというふうに私は考えております。それは欧米型に近い市場構造であり、そのことによ って、少なくとも欧米並みに新薬の上市を早め、国民の皆様の要請にもこたえられると思 います。  これはタイミングの問題でありまして、なぜ今でなければいけないかという御質問もあ ったように聞いておりますが、私どもとしては、これは業界のエゴとか、業界のためだけ ではなく、医療産業、医薬品産業全体にとって、我々としては進むべき方向であるという ふうに確信をしておりますし、厚生労働省がお出しになりました産業ビジョンにも沿うも のであるというふうに考えております。  したがいまして、できるだけ早く実施していただくことが、産業のみならず、国益にも かなうというふうに私どもとしては確信をしておりますので、そのことを斟酌賜れば大変 幸甚に存じ上げます。  以上でございます。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  関口会長、何かございますか。 ○米国研究製薬工業協会(関口)  米国研究製薬工業協会の委員長をしております関口でございます。  本日は、アメリカの製薬企業だけでなく、ヨーロッパの企業のグループのほうも代理い たしまして、外資の立場から一言だけちょっと御説明をさせていただきたいと思います。  前回、6月3日のこの薬価専門部会の際に、ファルマから提出させていただきました資 料をお配りしておりますので、そちらをちょっと見ていただきたいと思います。  4ページをちょっと見ていただきたいと思います。棒グラフが3つ載っているページで ございますが、ここで示させていただきましたのは、一番左の棒グラフが、1つの新薬物 質の承認取得に必要な、その候補物質数ですね。これがどうなっているか。右肩上がりに ずっと増えているということは、1つの新薬を見つけるために必要な候補物質がどんどん 増えているということで、開発リスクがどんどん高くなっている、難しさがどんどん増し ているということを示してございます。  中ほどにある棒グラフが時間でございます。これも単純に右肩上がりで、要するに新薬 を開発する時間がどんどん伸びているということでございます。  そして、右端にございますのがコストでございます。2006年で約13億ドル、約1, 300億円で、さらにこのコストは近年もっと高まっているというふうな状況でございま して、新薬開発におけるリスク、開発期間、コストといったものが非常に今急増している ということが見ていただけるかと思います。  そしてまた、このことは、我々が新薬の投資資金を回収するための特許保護期間、これ がまた短くなっているということもございまして、さらに状況は厳しくなっているという ことでございます。  こうした中で、我々外資系製薬企業も、このほかに、研究開発はこれだけ大変だという ことのほかに、さまざまな、今世界的な事業環境の変化というものに直面してございます。 例えばこのたびの経済危機もございますし、北米市場での新しいオバマ政権の医療政策、 こういったものも非常に今後どうなるかということで懸念されております。  それから、大型製品の特許切れというものが数多くございまして、最新のIMSという ところの調査結果でも、北米市場は、今年は多分マイナスであろうと。これから5年にわ たっても、北米市場が1%から3%ぐらいの成長になってしまうだろうと。そういったよ うな状況の中で、外資系の企業もどこに投資をするべきか。そういう中で厳しい経営環境 の中で、どこに投資をすべきかということを、今、一番頭を痛めているというところでご ざいます。  そういう中で、ではどこに投資をするかということになりますと、その優先順位、一番 リターンが期待でき、コストが比較的少なくて、そしてリスクがある程度計算できると、 こういうコストとリターンとリスクといった、この3点を考えて、企業は投資の優先順位 を決めていくということになってまいります。  そういう中で、私ども外資系の製薬企業におきまして、日本の事業、日本のビジネスを 預かっている者としましては、近年、本社の考え方の中で、日本のプライオリティーが下 がっているということを確実に感じているわけでございます。その中で、やはり今回お話 し申し上げているような薬価制度というものが、より開発投資に見合う、そこにかかるコ スト、そこに伴うリスク、そういったものに見合うものになっていかないと、投資の優先 順位が下がってしまう。これが今、私ども外資系で仕事をしている者にとって最大の懸念 であり、事実、アジアの諸国、新興国市場のほうに投資が向かってしまっているというこ とが現実として起きてまいっております。  それで、次の5ページをちょっと見ていただけるとお分かりだと思うんですが、今申し 上げたようなことで、外資系の製薬会社も研究開発領域を絞り込むということで、より少 ない資金でより大きな効果を上げるために、既にこういった取り組みをしております。  それから、人員削減というようなことで、下のほうに書いてございますが、グローバル 全体で1,000人以上の人員削減をしている企業はもうほとんどの外資系の企業が行っ ております。  そして、その上に書いてございますが、特にそういう中で、日本の研究開発拠点、ある いは生産拠点の統廃合ということも現実には行われておりまして、下に述べてございます ような会社さん、特に昨日はちょっと万有さんの研究所を売却するということが新聞紙上 にも載りました。そして現実にこれ調べてみますと、ある……そうですね、この場合です から申し上げますけれども、中外さんを除きましてはすべての外資系の会社が、実は私ど もも含めてなんですが、研究所を閉めていくということになっております。ですから、そ れぐらい、今の外資系の日本市場に対する見方が厳しいものになっているということを御 理解いただけるのではなかろうかと考えます。  もう一つ、ドラッグ・ラグということがございます。これを解決しなければならないと いうことも非常に重要なことでございまして、今、当局のほうでも非常に強く推し進めて いただいています世界同時開発、これが我々もドラッグ・ラグを解消するための一番いい 方策かと思うんですが、御案内のとおり、世界同時開発をするということは、その開発が 成功するかどうかが、従来のようにある意味でラグがあって、欧米である程度成功したも のをやっていくのと比べるとはるかにリスクが高くなるわけです。ということは、それだ け日本に投資した場合のコストが高まっていく。それだけのリスクが高くなってくるわけ で、そのリスクに見合うだけの、やはりリターンというものが期待できないと、日本に対 する投資という判断が非常にやはりプライオリティーが下がっていって、厳しいものにな っていくと。そういった状況もあるということを御理解いただきたいというふうに思うわ けでございます。  それでは、実際に薬価とそういう開発の判断とに本当にどれだけの関係があるのかとい う、そういった御懸念もあろうかと思いますので、6ページを見ていただきたいと思うん ですが、これは私どもファルマで調査をした結果でございます。これは外資8社ないし4 社の企業、製薬企業、全体の売り上げのほぼ40%を占めることになると思いますが、そ ういった企業に聞き取り調査をした結果でございますが、この主要12社で過去10年に 開発をスタートしたんだけれども、やはり薬価に対する懸念から開発を途中でストップし た、あるいは上市を見送ったといったような製品数が23あったということでございます。 その23の内訳がそこに書いてございますが、欧米の平均薬価を100とした場合の相対 的な数字が出ておりますが、どの数字を見ても、極めて日本の薬価は低いということが御 理解いただけるかと思います。  そしてこの話は、現実には、もともと薬価が低いから開発やめようよといった製品は入 ってございませんので、もっと多くの製品が薬価等の関連において開発を見送り、あるい は開発したけれども、途中でストップといったようなことになったということが可能性と してあるということが示唆されているのではないかというふうに考えているわけでござい ます。  そういったことで、今、我々から見ますと、日本市場の魅力というのが非常にやはり落 ちてきているということを感じておりまして、そのことが本社の投資判断ということにお きまして、日本における投資のプライオリティーを下げていく。そうしますと、日本にお ける開発というものが先送りされてしまう。そういうことになりますと、まさに我々が何 とかドラッグ・ラグというものを払拭して、日本の患者さんに一日も早く、最も画期的な、 非常に有効性の高い新薬をお届けしたいと思っているわけですが、それがなかなか難しく なってしまうということのほかに、また日本におけるそういう研究、治験、生産施設の空 洞化ということにもつながって、これはやはり日本にとって非常にまずいのではなかろう かと。こういったことを解決するにおいて、今回業界として提案させていただいておりま す新しい薬価制度の導入を、ぜひとも御理解いただきたいというふうに考えておる次第で ございます。  ありがとうございました。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  ただいまお二人から薬価維持特例が必要である理由ということについてお話しいただい たわけですけれども、何か御質問、御意見ございますでしょうか。  中川委員、どうぞ。 ○中川委員  ありがとうございます。長谷川社長の御意見を聞いて、違う審議会にいるような気がし ました。  すみません、余計なことを言いました。  外資系メーカーだけになったら困るのが、今までのちょっと御説明とは違って、10万 人の雇用と大幅な税収減になるということが最大のことだというふうにおっしゃったと思 うんですけれども、そういう理解でよろしいんでしょうか。 ○遠藤部会長  長谷川社長、お願いいたします。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  基本的にはそれで結構でございます。薬自体は日本の企業しか出せないものは出せなく なりますけれども、他社が全く何もできないという薬は少ないわけでありますから、その 分は外資が多めになることになると思いますから、結果としてはそういうことの御理解で 結構でございます。 ○遠藤部会長  中川委員、どうぞ。 ○中川委員  私は今まで外資系メーカーだけになると、日本国民に対する薬剤の供給体制が支障を来 すのかという質問に対して、明確なお答えがなかったものですから、そういうことであれ ば余り支障はないというふうに理解してよろしいのでしょうか。 ○遠藤部会長  長谷川社長、お願いします。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  薬の供給だけという点で考えれば、どこまで外資が日本の企業のような形で提供できる か、あるいはきめ細かなサービスができるかは別にしまして、代替ということであればそ れは可能であります。ただ、もし万一、例えばパンデミックのようなものが起きたときに、 当然自国民を優先するということになりますから、国内にそういうメーカーがなければ、 そういったときにはパニックになることもあり得るかと思いますけれども、通常の状況で あれば、恐らく外資の大手が大部分のギャップを、結果としてドラッグ・サプライという 点では埋めるだろうと思います。 ○遠藤部会長  中川委員、どうぞ。 ○中川委員  私は、今までの実感というか、体験といいますか、医療に身を置いてきた者として、外 資系メーカーのこれまでの薬剤供給に対しては信頼感を持っているのです、実は。日本の 医療保険制度の中でしっかりそのルールを守ってやってきてくれたのだなと思っていまし て、ですから私は何度も聞いているわけです。  そこで関口さんにちょっとお伺いしたいのですが、日本市場の評価が下がっていると。 コスト、リターン、リスクですか。それは日本の薬価制度が問題なのだという御説明でし たが、だんだん本社が投資をしなくなっているという、投資という理解は、意味がどうい うことなのか。日本人への薬剤は日本国内で開発しなければならないというふうに聞こえ たのですけれども、私は必ずしもそうではないのではないかと思っているのです。もう少 し説明していただけますか。 ○遠藤部会長  関口会長、お願いします。 ○米国研究製薬工業協会(関口)  日本の、我々が投資と申し上げておりますことにおいて、1つだけ申し上げたいのは、 薬価制度は1つの理由だということで、それがすべてではないということを1つ申し上げ ておきます。  それから、投資という意味で申し上げましたのは、新薬を開発するには治験というのを やらなければいけないわけでございます。その治験というのにはもう大変な費用等がかか るわけでございますが、それが投資ですね。それから、大きな、日本で事業を展開するに はかなりの多くのMRの人とか、そういう者も使っていく。これも、ですから投資という ふうにとらえて、日本で開発から販売まで含めて事業展開していくということに対して、 本社から見ると、それは日本に投資をしているという意味になりますので、日本で事業展 開すること、そのことがまさに投資であり、そしてその新しい薬の開発をどういう順番で やるかということで、さっき投資のプライオリティーというふうに申し上げました。 ○遠藤部会長  中川委員、どうぞ。 ○中川委員  ということは、薬価維持特例というよりも、治験の在り方、その見直しということで、 大部分の問題は外資から見ると解決されるのかなと思いますが、いかがでしょうか。 ○米国研究製薬工業協会(関口)  いえ、そうではなくて、今の薬価ですと、日本での投資判断をするときに、まずコスト がどれだけかかるか。そうするとやはり治験にかなりコストがかかっているとか、時間が かかって、それはそのとおりでございます。でも、今度リターンを考えたときには薬価を 考えます。ですから、そこでどれだけのリターンが返ってくるのかは薬価になります。で すから、治験だけ解決すればいいというわけではなくて、それに見合うものとしての、新 薬に対してどれだけの薬価をつけていただけるかということがトータルで評価されて初め て投資判断になりますので、治験のところだけが解決すればいいというふうにはならない ということでございます。 ○遠藤部会長  中川委員、どうぞ。よろしいですか。  ほかに御意見、御質問ございますでしょうか。北村委員、どうぞ。 ○北村委員  さまざまな御説明、どうもありがとうございました。  今伺っておりまして、私も今、これからの日本経済というのはどうも従来のような空洞 化だとか、工場が外へ出ていくという次元ではなくて、外資と日本の資本が一体となって、 世界の市場の中でどこに投資をし、どこで生産をするという時代に大きくこれから変わろ うとしているなという印象を受けておりますが、きっと製薬業界さんも同じような状況に あるのではないかなと思います。  そのときに、今、長谷川社長さんがおっしゃった、きっと外資だけになると、外資がき ちんと生産をやって、供給を、責任を果たしてくださるというお話、私もそうなのかなと も思いますが、その前提が治験とか、今、日本の国内のさまざまな規制とか慣行とか、い ろいろなものが外資にとって非常に魅力的でない部分が是正されて初めて、外資にとって 日本の国民の人が必要とする薬品とかそういうものが供給されるのかなというふうに思い ますので、本当にそのような隘路が打開できるのかどうかというのは、私ちょっと疑問に 感じるのですが、もしよろしければ。 ○遠藤部会長  お願いします。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  私は、この説明を申し上げましたときに、単純に申し上げればというふうに申し上げた のであって、こういう日本の製薬企業がこの国からなくなったらどうなるかということの 論議自体がいかほどの意味があるかということを私は考えているわけです。と申しました のは、1つは先ほども申し上げましたように、やっぱり雇用の問題と同時に、特に大手の 4社は売り上げの5割、利益の5割を海外から上げて、稼いで持ってきて、日本で税金を 納めて、国保に貢献をしているわけであります。そのトータルが今ですと、年間四、五千 億円とかそのぐらいになるのではないかと、最低限でも思いますし、産業として見れば、 自動車、電気、それから機械に次いで、納税額としては大きい産業であります。  今、北村先生がおっしゃいましたように、外資の方が形の上では薬は相当埋めていただ くことになると思いますけれども、日本の企業がやっていることをそのまま全部代替でき るというふうには思いませんし、特に一番大事なのは、先ほどもちょっと申し上げました が、パンデミックになったときに、ワクチンを日本の企業はつくれないと。今、厚労省は、 大変申しわけありませんけれども、最初2,400万人分を1,700万人分ぐらいしか 結果としてできないから、差は輸入しなければいけないとおっしゃっておられますが、こ ういう輸入をするときに、やっぱりそれではお金持ちの国が輸入して、後進国に回らなく てもいいのか、あるいは世界の先進国は全部自分の国で賄っていると、こういう状況の中 で、そういうことがなくていいのかと、こういうことも考えますと、私はああいうふうに は申し上げましたけれども、本音は絶対に日本における製薬メーカーは必要であると固く 信じておるわけでありますし、またその存在意義も十分あるというふうに、今御説明した ことで理解いただけると思います。  加えて、ライフサイエンスというのは、先ほども申しましたように、これからまだまだ 伸びる産業であります。そのライフサイエンスの日本人による研究開発の芽が途絶えると いうことになれば、それは日本にとっても大きな痛手であるというふうに思います。日本 の国は年間20兆円ぐらいの食料とエネルギーと資源を輸入しなければ、この生活が維持 できない国であって、それをどこから稼ぐかということになれば、やはり企業がしっかり 頑張って金を稼いで税金を納めない限り、その原資は出てこないというのも事実でありま す。  ちょっとそれましたけれども、ありがとうございます。 ○遠藤部会長  小林委員、どうぞ。 ○小林(剛)委員  今回の資料の中で、8社の売上高、営業利益が示されております。先ほど、利益を半分 以上海外で上げている企業もあるという話がありましたが、売上高、営業利益、これに占 める診療報酬にかかわるもの、このウエートというのは各社によって違うのでしょうが、 大体どのぐらいあって、年々それがどういう傾向にあるのか、増える傾向にあるのか、あ るいは減る傾向にあるのかというのがお分かりになればちょっと教えていただきたいと思 います。 ○遠藤部会長  長谷川社長、お願いします。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  御質問の趣旨は、医療用医薬品の売り上げと、そこから来る利益がどのようになってい るかということでございますか。 ○小林(剛)委員  はい、さようでございます。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  ここにお示ししておる数字は、これ連結の売上高でありまして、当社を例にとりますと、 1億5,000万円の売り上げになっておりますが……1兆5,000億円でした、失礼 しました、1桁間違えております。1兆5,000億円の売り上げで、3,000億円の 営業利益になっておりますが、医療用医薬品は1兆2,000億円弱でございます。ただ、 利益のほうは、これ余り正確ではないかもしれませんけれども、9割方、医療用薬品から の利益というふうにお考えいただいて、そう大きく間違っていないと思います。 ○小林(剛)委員  国内の製薬企業の研究開発を推進することの必要性は十分理解できるところですが、医 薬品の研究開発に関しては、産業振興等の観点から、税制だとか税財源、こういったもの からも支援されていると思われます。そういった性格を持つ新薬の研究開発のための費用、 これを患者負担あるいは保険料負担に影響を及ぼすような診療報酬でどこまで対応すべき かというのは、これは今後の議論になると思いますが、十分慎重に議論すべきだと考えて おります。 ○遠藤部会長  御意見ということでございますね。  山本委員、失礼しました、どうぞ。 ○山本委員  御説明ありがとうございました。  今日のお話を伺っておりまして、実は私、今日決心してきたことが少し揺らいでおりま して、どうしようかな、悩んでおるのですけれども、外資と内資の話を長谷川社長がされ て、外資はこうだ、内資はこうだ、どうも立場が違っているお話のように見えますし、ど ちらが日本の方で、どちらが外国の方なのかよく分からないお答えのようでありますけれ ども、いずれにしましても、中川委員とのやりとりの中でも、先ほどの北村委員とでもそ うですけれども、そもそも、最後にお話になったように、国内の中にそうした産業が必要 だということについては、多分御認識をされているのだろうという理解でよろしいのでし ょうか。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  当然そうです。 ○山本委員  ですよね。そうしますと、薬価そのものがそうしたものを支えるという意味では、外国 で食べられるから別になくてもいいよという言いようについては、いささか私の決心を狂 わせるのでありますけれども、少なくとも日本の国内で外資にせよ、内資にせよ、そうし たものを開発したものが医療の現場で使われて、なるべく早く使われる環境をつくってい く。それを担保していくのが、もし医療の分野であれば、先ほど小林委員が言われたよう に、別の決算の予算はともかくとしまして、薬価の部分で言えば、こうした薬価基準のつ け方ということであれば、そのことがあってもなくてもいいのだという御主張は、いささ か私には納得できないので、そこはあってもなくてもいいのだったら、なぜ提案をされた のかという疑問が1点生じます。多分お言葉の違いだと思いますが、努力につきましては 十分に理解をしておりますが、そのあたりはいかがでございましょう。 ○遠藤部会長  長谷川社長、お願いします。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  私が御説明しましたときに、単純に申し上げればといった言い方がどうやら問題と誤解 を呼んでおるようでありますが、日本がだめになって、外資だけになったらどうなるかと いう御質問に単純にお答えしただけでありまして、その場合に企業経営者としては、日本 はだめでも海外で食っていけるから心配しないで大丈夫、そのようなことは全く考えてお りません。私どもは医薬品産業として、国内の企業が医療の工場、あるいは患者様のQO Lの改善にこれまでも貢献してきたし、これからも十分貢献できるというふうに考えてお ります。  例えば、売り上げの順番からいきますと、世界で今ベスト100品目の中で、日本オリ ジンの薬がどのくらいあるかということを見ますと、13品目ございます。これは、日本 のGDPの比率は世界の10%弱でありますし、人口の比率に至っては4%か、何かその くらいだと思いますから、そういうことからいきますと相当頑張っているということであ りますし、今後もそのことをやっぱり続けていくことが産業としての使命であるし、その 結果、やっぱり医療にサービスを提供すると同時に、企業の正当な事業活動の結果として 納税をするということを、今後もぜひ進めていきたいということでありまして、私の言い ようが誤解を招いたようであれば、それはおわびして訂正させていただきます。 ○遠藤部会長  山本委員、どうぞ。 ○山本委員  わかりました。そういうことであれば、それを踏まえて考えると、今回のこの資料を拝 見する限り、少なくとも前回も同様な議論があったと思うのですけれども、企業としては どういうお立場かというと、やはり大変苦しんでいらっしゃる中で、しかも必要な社会的 な責任を果たすためにどうするか。せめてその医薬品を、新しいものを早く市場に出すた めの費用を担保するための薬価制度を維持できるのであれば、それも1つの提案だ。ただ、 その反対給付としてさまざまな提案をされているとすれば、よく御苦労されている中で、 大変つらい中でされているのだなというのは、なかなか社長のお立場では言いにくいので ありましょうけれども、そこはよく理解したつもりであります。  前回も議論がありましたけれども、新しいやり方ですので、直ちに全部のものをという のはいささか乱暴に過ぎるかもしれませんけれども、少なくとも今まで、去年、おととし から議論した中で、一度は試すという、医療の30兆円を超えるお金の中で試すというの はいささか乱暴に過ぎるかもしれませんが、そうしたものを試してみる、あるいはただ慎 重に進めるという意味では、試してみる必要性はあるのではないかという理解をいたしま す。ただ、1点、この資料にもありますように、一番最後のページにありましたまとめの 部分の5つの項目につきまして、そこはまとめでありますので、きちんと担保していただ けるのかなということが1点ございます。  もう1点はイノベーション、あるいは未承認薬、あるいは未承認効能につきましても、 十分に解消に向けて努力をされているということであれば、その辺を評価した上で、そこ は試してみてはいかがかなという気がいたします。  ただもう1点、それとは別にちょっとお伺いしたいのですが、それと同時に、後発品の 話になりますので、余り聞いてはよくないのかもしれませんが、1つお伺いしたいのは、 なぜこの時期に配合剤を開発されるのか。しかも、こういうことを提案しつつ、かつなぜ 特許切れ間際なのにという企業のお立場というのは、いささかどういう理由なのかなと。 そこが実は私にはなかなか理解できにくくございまして、なぜというところと、どうして そういうものが出てくるのだというのを、ぜひ教えていただきたいなと思うのですけれど も。 ○遠藤部会長  わかりました。そうすると、最初のお話では、このまとめ、あるいはこの未承認薬の問 題解消について、これは本気で積極的にやっていただけるのですねというようなことを山 本委員はおっしゃいましたので、その辺について、まずお考えをお聞きしたいということ。  次いで、配合剤、このところに急に出てきているのではないかと、その話と、今議論し ている、こういうタイミングになぜ配合剤が出てくるのかと、その辺についてのお考えが あればということでありますので。  では、長谷川社長、どうぞ。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  まず、まとめに挙げておりますいずれの項目につきましても、私どもは真摯に対応して いくということを、この場で改めてお誓いを申し上げます。例えば未承認薬について、結 果としてどこも手を挙げなかったらどうするのだというふうな御懸念もあろうかと思いま すが、もし不幸にしてそういうことになれば、どこか大手がやはり結果としてやらざるを 得ないということもあり得るかなというふうに腹はくくっております。  それから、もう一つの配合剤の問題につきましては、これは製薬協、日薬連というより は、私の私見というふうにとらえていただきたいのですけれども、私の理解するところに よりますと、配合剤そのものが日本で承認されるようになったのはつい最近のことであり ます。2005年以降ぐらいでしょうかね。だと思います。したがいまして、それ以降、 治験をやったりするということを一生懸命各製薬メーカーが、そういうことがゴーになっ てやり出したものでありますから、当社の例えば治験などは、途中でちょっと予定の結果 が出なくて、もう一回やり直したりしましたものですから、そういったことがあって、た またまこういうタイミングになって、それが結果として特許切れの対策か、あるいはジェ ネリックを抑制することになるのではないかというふうに理解をされる不幸な結果になっ ている部分があると思いますが、メーカーの立場からいきますれば、今後は新薬の開発の 段階から、当然患者様の利便性も考えて、合剤がアディショナルベネフィットを提供でき るのであれば、並行して開発する、あるいは直ちにその開発の承認をスタートする、そう いった形にすることによって、今のような形でぎりぎりに出るということは、恐らくほと んどなくなるのではないかというふうに、私は私見としては考えております。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  山本委員、どうぞ。 ○山本委員  前段のほうは理解させていただきました。  合剤に関してですけれども、先ほどのプレゼンテーションの中で、長谷川さんが医師の 御家系だというので、多分薬局のことはきっと御理解いただけないのかなと思って聞いて おったのでありますが、私、ずっと薬局の親でありますので、薬屋しか分かりません。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  親戚が薬局です。 ○山本委員  ありがとうございます。そういった意味で言えば、今のお話、もともとのスタートから 目的を決めた配合剤というのはあり得るのかもしれません、将来的に。ただ、今出ていま すのはそうではなしに、あっちを持ってきて、こっちを持ってきて、足して2で割るみた いな計算になっていますので、そうしたことからすると、今現に市場にある単剤で十分に 対応できるものではないかと。にもかかわらず、そうしたものを開発されるのはいろいろ 御事情があるのだろうと思うのですが、そこで先ほどの薬局の事情なのですけれども、少 なくとも大変な負担を私ども抱えなくてはならない。後発品を使う中で、後発品使用促進 という中で、少なくともここでも遠藤先生から、薬局がボトルネックだぞという御指摘を 受けたように、大変厳しい環境におります。その中で、少なくとも現在の配合剤は市場に あるものを使えば済むのではないかという気がいたしますので、そうした薬局の在庫の負 担、その大変さもぜひ、もし御親戚がおられるのでしたらお聞きになられまして、そうし たつらさも感じていただきたいのと。  もう1点は、もう少し節操のあると言うとちょっと言葉が過ぎますが、節度ある開発を していただけないだろうかと。少し、さすがの天下の武田さん側にしてはちょっと品がな いなという気がいたしますので、ぜひそのあたりにつきましてはお考えいただきませんと、 なかなかお手伝いをするにしましても、それが大変な、要するにマイナス要因になる可能 性が大きゅうございまして、現にかなり問題になっておりますが、そこはぜひお考えいた だきたいと存じます。 ○遠藤部会長  長谷川社長、何かあれば。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  ごく簡単に、山本委員、あるいは多分ここに御出席のほかの委員の方も同じ御懸念を持 っておられるであろうということがよく分かりました。したがいまして、自社のみならず、 製薬協、日薬連にもこの御懸念をきちっと伝えて、できるだけそういう懸念を惹起するよ うな開発はやらないようにということを、改めて私のほうから責任を持って伝えさせてい ただきたいと思います。 ○遠藤部会長  よろしくお願いいたします。  順番ですので、藤原委員、どうぞ。 ○藤原委員  素朴な質問になるかと思いますけれども、企業は市場原理といいますか、基本的には競 争の中にあると思います。この薬価維持特例というのは、安定的な収入をこの仕組みの中 で求めるということになるわけなのですけれども、これでは市場の評価、要するに効率化 のメカニズムが働かないというところは、我々大きな懸念をしているところであります。 こういった疑問を持っておられる方は多いのではないかと思いますけれども、そこのとこ ろはどういうふうにお考えなのか。もしこれが企業の育成という観点なら、少しこの場で この話を議論するのは、少しちょっと違う部分があるのかもわからないなという思いで聞 いておりますけれども、そういったところを教えていただきたいと思います。 ○遠藤部会長  長谷川社長、お願いいたします。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  もともとこの提案をさせていただいたときから、業界として申し上げておりますのは、 トータルのコストを増やす、あるいは効率性を損なうという意図は全く持っておりません。 医療費の中で薬剤費の比率を増やしていただきたいということを、本制度をもってお願い しているつもりは全くございません。  結果として、特許保護期間中のものの薬価維持特例を実施していただく一方で、すみ分 けをして、ジェネリックサイドのほうの促進をしていただく。あるいは私が申し上げまし たように、それがうまく回っていくようになれば、新薬メーカーは当然、特許保護期間中 のもののほうが長期収載よりももうかるわけでもありますし、患者様にとっての便宜性も、 クオリティ・オブ・ライフの改善にも貢献できるから、そちらをプロモートするというこ とになって、恐らくジェネリックへのシフトもそういう形で結果として加速されるのでは ないかというふうに思いますから、私どもといたしましては、そういうことによって、全 体のバランスが今よりよりよい形になるということを願っておるわけでありまして、決し て効率性を損なうようには、我々としては考えておりません。 ○遠藤部会長  藤原委員、どうぞ。 ○藤原委員  少なくとも、そういった維持特例になった段階で、競争ということは一応避けられると いう状況になると思います。  それから、後発医薬品の件なのですけれども、一定期間が過ぎたらすぐ、これはここで も何回も出た話ですけれども、お答えになる方がちょっと違いますので、改めてお聞きし たいと思うのですけれども、こうした大企業の先発医薬品が、非常にこれは品質もいいし、 安定供給もできるし、いろいろなところで知られているという状況の中で、値段を下げた ときにはやはりそこで競争に、今、日本の国で後発品を育てるということで、30%を目 標に今やっているところなのですが、それとも競合してしまうような状況が起きるという こともありますけれども、その辺についてお答え、教えていただければと思います。 ○遠藤部会長  長谷川社長、よろしいですか。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  まず、一度確認をさせていただきたいのですが、薬価からどれだけディスカウントして 売るかという、価格決定権は医薬品の卸さんにございまして、メーカーにはございません。 したがいまして、この薬価維持特例ができたら、メーカーが例えば指示をして薬価の差を 少なくするとか、そういうことは影響力としては行使はできないということが1つ。  それからもう一つは、これはもうアサンプションでありますから、専門委員のほうから も何度も説明申し上げたと思いますが、大きな市場、例えば生活習慣病的な市場で幾つも の製品があれば競争が激しいわけでございますから、結果として価格である程度勝負をす るという部分が卸さんの立場で出てきて、不幸にして、結果としてはそれは薬価維持特例 の範囲に入らないというケースが出てくるのではないかと我々は想像しておりますけれど も、この辺は山本先生がおっしゃったように、慎重にやっていく中で見極めていただくと いうことも、それは結果としては必要ではないかと思います。  それで、もう一つの藤原先生がおっしゃった点は、私ちょっと質問の趣旨がよく分かり ませんので、もし、もうちょっと明快に言っていただければお答えするように努力します。 ○遠藤部会長  藤原委員、もう一度お願いいたします。 ○藤原委員  多分、表の中でも、だから新薬として切れたときに、後発医薬品として値段を下げると いう状況になるわけですけれども、これについては、これまでるる説明があったのですが、 要するに今の後発医薬品メーカーと、先発品が後発医薬品に落ちたときに、要するに値段 が急に下がるということ、今は徐々に下がっているかと思いますけれども、そういったこ とで、後発市場においても先発メーカーが独占的な状況に陥るということは、それは何% か差はあるにしてもあり得ることなので、そういったことは今後、今、後発メーカーをあ る意味では後発医薬品を使おうということで、国としても目標としてやっているわけなの ですけれども、それは後発医薬品をそういった形で市場の薬品の価格を下げることにつな がらないのではないかなという懸念があるわけで質問したわけです。 ○遠藤部会長  よろしいでしょうか、中身について。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  ええ、もうございません。それについては長期収載品、あるいはジェネリック品の値決 め、あるいはそのスプリットといいますか、差、これについてはもちろん業界も意見を申 し上げますが、最終的にはこういうところ、あるいは行政でお決めいただくことでありま すので、結果として我々はそれに従って市場で競争するということだけでございます。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  ほかにございますか。小島委員、どうぞ。 ○小島委員  質問というより意見です。  今日はありがとうございました。改めて、今回の薬価維持特例を導入するに当たっての 目的ということについて伺うことになりまして、理解をしたところであります。  その中で、私、あるいは患者、利用者の立場からすると、やはりドラッグ・ラグ、ある いは未承認薬の解消問題、これをどう進めるかと。それに資するようなことであれば、や はりこういう維持特例ということも検討してもいいのではないかというふうに思っている ところであります。  そういう意味では、長谷川社長が最後に未承認薬の解消の問題について、もしこの導入 制度を入れて、なければ引き受けるという強い決意を御説明いただいたということを重く 受け止めたいというふうに思います。これは薬価特例制度を入れたからといって、未承認 薬を義務付けるというわけにはいかないと思いますので、そういう決意なりを伺ったこと は、重く受け止めておきたいというふうに思っております。  あと、これは事務局のほうへの要望ですけれども、今、社会保障審議会のほうの医療部 会、医療保険部会のほうで診療報酬改定の基本方針を検討する、つくるということをまと めていろいろやっていますが、その場でも、まさに未承認薬、あるいはドラッグ・ラグの 解消に向けて薬価制度をどう考える、あるいはどういうふうに維持するか、あるいは診療 報酬、まさに薬価ですね、どういう役割を果たすかというようなことについても、診療報 酬改定の基本方針の中に、そういうこともぜひ検討をしていただければ、そういうことが 1点、方向性を示せば、それを受けて、まさに最終的にこの中医協で今回のこの特例制度 の問題についても検討できるというふうに思いますので、ぜひそこは事務局のほうで御検 討いただければと思います。 ○遠藤部会長  大きな制度改正になりますので、薬価の問題でありましても、できれば両部会での議論 の中に入れてほしい、そのことを検討してほしいという小島委員の意見でありましたけれ ども、いかがですか、事務局、何かそれについて。  検討するというお答えしか、多分。 ○事務局(佐藤医療課長)  という御意見をちょうだいいたしましたので、また機会を見て。 ○遠藤部会長  よろしくお願いいたします。ありがとうございます。  中川委員、どうぞ。 ○中川委員  今までのお話を聞いて思いました。薬品メーカーであろうが、医療機関であろうが、再 生産、再投資のための費用が、収益が必要であるということは十分に理解できます。しか しその一方で、医療機関は再生産のための財源の確保に困難を極めているのですよ。この 薬価維持特例を導入することで新たな医療費財源、国保も含めて、保険料も含めて、新た な財源が発生するということは間違いありません。  そこで、国内メーカーが必ず残らなければいけないということを、そういう前提の上で お話を聞いても、どうしてもこの薬価維持特例を導入しないと国内メーカーが生き残れな いと。新薬開発能力が低下するという説得力のある説明が、やっぱり私はまだ得られてい ないと思うのですよね。  長谷川社長さんがさっきおっしゃいましたが、やはり武田薬品工業はもちろん薬価維持 特例を導入しなくても堂々とやっていけるのだろうと私は見ているのです。1つの理由は、 資料の1ページに8社の経営状態、経営状況を示されておりますが、例えば恐縮ですが、 2008年の武田薬品工業の1兆5,383億円の54.3%が海外医療用医薬品の売り 上げですよね。いわゆるグローバル、連結の決算で、連結の業績で日本国内の薬価維持特 例の導入を求めるという説得力は甚だ無理だろうと。やっぱり連結前の何らかのデータを もって、説得していただきたいなと思いますけれども、それはまずちょっと無理なお願い だと思います。やはり現状の全国の地域医療が医療費抑制のために崩壊している今の状況 の中で、やっぱりこれは薬価維持特例を導入というのは極めて困難だろうと、私は率直に 思います。ぜひ、その辺のことをもう一度御検討いただきたいなと思っております。 ○遠藤部会長  これは中川委員の御意見ということになりますので、なかなかお二人にお答えいただく ということは難しいと思います。  ありますか。では、関口さん。 ○米国研究製薬工業協会(関口)  答えではないのですが、薬価維持特例が日本企業の経営ということも1つの要素ではあ っても、私どもは一番大きいのは、先ほどお話出てございましたとおり、ドラッグ・ラグ、 そしてそういう新薬が日本の患者さんにタイムリーに提供できる、そういうためにも、私 ども外資の立場で申しますと、本社に対して、そういうことを説得して、日本の患者さん のために、この新薬をタイムリーに開発させてほしいと。それを実現する意味で非常に大 きいという視点がございます。  それからもう一つ、先ほどもちょっと非常に日本に外資があったらどうとか、なかった ら外資だけでいいかどうかということに関しましては、やはり私もこういう立場でどうい う発言をしたらいいのか分からないのですが、日本の科学技術がやはり世界に対して、日 本の科学者、薬学者がつくった薬が世界の患者さんのために、実は今、多くの恩恵をもた らせている薬剤が数多くあるのですが、それがなくていいというのはやはり残念だという 思いがございますし、それから、民族差はほとんどないということが言われているのです が、そういう中でも、日本人という民族に対して、やはり少し工夫したものがあるという ほうが望ましいという場合もございますので、そういう意味からいいましても、患者さん のことを考えたときに、日本の企業がなくていいというのは、やはり大変残念なことでは なかろうかと、そういうふうに思っておりました。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  長谷川社長、よろしいですか。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  特にございません。 ○遠藤部会長  わかりました。  北村委員、どうぞ。 ○北村委員  一言、先だって、NHKのテレビでジェネリックの放送を随分、教育テレビなんかもさ れておりまして、視覚、味覚、触覚で非常にきめ細やかな対応、患者さんのことを思って されているのを見させていただきました。私も製造業にちょっとタッチした関係で、世界 の製造業の中で、日本メーカーというのは受ける側の患者さんとか、お客様の立場に立っ て非常にきめ細やかな製品がつくれる、世界で非常に希有な国だろうと思います。まさに その一例だろうと思います。  そういう意味で、やはり厳しい国際競争をこれからますます闘われるのでしょうが、日 本の国民自体が多少過剰品質を求めるところがありすぎるところもありますけれども、で もやはりこの日本の国民のために、日本の患者さんが望む薬品を提供していただいて、そ して医療の先生方と連携をされて、日本の医療充実を図っていただきたいと。  これは私の個人的な見解で間違っているかもしれません。この薬価維持特例というのは、 恐らく、もう今、関税というのはほとんど撤廃される世界情勢の中で、医療業界に日本で 残っている、ちょっと関税的な性格を持っている部分で、私たち製造業の世界から見ます と逆に不思議で、ですからこれは世界ルールの共通化の入り口というふうに私は理解して いるのですけれども、勝手な個人見解で失礼しました。 ○遠藤部会長  ありがとうございます。  ほかにございますか。  本日、非常に率直な意見交換ができたというふうに思っております。また、未承認薬の 問題についても、強い御意思を御表明いただいたということでありますが、また一方で、 先ほど中川委員からお話がありましたように、この費用負担、費用が拡大することについ てはどう考えるかという問題もありますので、今後、本日議論されたようなことをベース にしながら、前回ですか、事務局から検討の資料も出ておりますので、そういったことを 総合的に考えながら、当然そうなってくると、当初予測した財政シミュレーションとまた 違った形のものが出てくる可能性がありますので、そういったものを出しながら、総合的 に、また御議論を重ねていきたいと思いますけれども、そのような形で進めさせていただ くということでよろしゅうございますか。  では、そのようにさせていただきたいと思います。専門委員につきましても、その過程 でさまざまな資料の提出を求めることもあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。  それでは、本日の薬価専門部会、これにて終了いたします。  お二人の御参加につきましては、どうもありがとうございました。よろしくお願いしま す。 ○日本製薬団体連合会(長谷川)  本日は、こういう機会を与えていただきまして、どうもありがとうございました。 ○米国研究製薬工業協会(関口)  ありがとうございました。 ○遠藤部会長  ありがとうございました。  それでは、次回につきまして、事務局から何かございますか。 ○事務局(磯部薬剤管理官)  また次回の開催については、日程調整でき次第、追って連絡させていただきたいと思い ます。 ○遠藤部会長  よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。 【照会先】 厚生労働省保険局医療課企画法令第二係 代表 03−5253−1111(内線3276)