09/08/04 第14回政策評価に関する有識者会議議事録 政策評価に関する有識者会議(第14回) 開催日時:平成21年8月4日(火) 13:05〜15:12 開催場所:厚生労働省専用第21会議室 出席者 :高橋座長、阿部委員、梅田委員、川本委員、篠原委員、野川委員、本田委員 ○高橋座長  第14回政策評価に関する有識者会議を始めます。委員の皆様、大変お忙しい中お集まりいただきま して、ありがとうございます。  今日の委員のご出席状況ですが、堀田委員、森田委員、菊池委員はご欠席の連絡をいただいていま す。  事務局に人事異動があったようですので、ご紹介をお願いします。 ○政策評価官室長補佐  新しく着任した職員をご紹介します。労働担当の中野政策統括官です。 ○政策統括官  中野です。よろしくお願いします。 ○政策評価官室長補佐  生田政策評価審議官です。 ○政策評価審議官  生田です。よろしくお願いします。 ○政策評価官室長補佐  塚崎政策評価官です。 ○政策評価官  塚崎です。どうぞよろしくお願いします。 ○政策評価官室長補佐  最後になりましたが、政策評価官室室長補佐をしております安里でございます。よろしくお願いい たします。 ○高橋座長  今日は大きく5つほどあります。その中で政策評価の重要対象分野として、「医師確保対策」、政策 評価の実績評価案として「新型インフルエンザ対策」「非正規労働者の就職支援対策等の推進」の3つ のテーマについてご議論をいただき、その後省内のPDCAの取組等について事務局からご報告をいただ き、その後質疑応答とします。  議題1の医師確保対策は、平成20年度の重要対象分野にも選定されています。その経緯について前 回もご報告があったと記憶していますが、改めて事務局から簡単に説明をお願いします。 ○政策評価官室長補佐  説明します。ただいま座長よりお話があったとおり、今回の会議の議題1となっている「医師確保対 策」の政策評価については、経済財政諮問会議、総務省の政策評価・独立行政法人評価委員会におけ る審議を踏まえ、政策評価の重要対象分野とされています。具体的には、昨年11月26日に政策評価・ 独立行政法人評価委員会の審議の結果、医師確保対策と地震対策の2つが、平成20年度の重要対象分 野とされたところです。そして、「経済財政改革の基本方針2009」において、これら重要対象分野の 政策評価を推進することが明記されています。以上のような経緯を踏まえ、本日は医師確保対策の政 策評価について、ご審議いただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○高橋座長  まず医師確保対策について説明をいただき、その上で審議に入ります。担当課からの説明、それか ら委員の皆様からご発言をいただき、質疑を行います。担当課から15分以内でご説明をお願いして、 そのあと20分程度質疑の時間を取ります。よろしくお願いします。 ○医政局医事課長  冒頭15分は私から全体の説明をします。質疑の部分は、担当から詳しい説明をします。  資料1-2です。前回3月に、この問題についての厚生労働省の取組についてご説明しまして、貴重な ご意見をちょうだいしました。今回総務省に、総合評価書を提出することになっていまして、最終的 には9月末ぐらいに提出することになっています。したがいまして、この資料1-2は過渡的段階のもの で、中身は不十分な点が多々あります。今日はご指摘をちょうだいし、より相応しいものに仕上げて いきたいと考えています。  1頁です。今回特に2点について評価をすると総務省から言われています。1つは医師数の決定方法 です。要は、医師需給の推計方法に問題があったのではないかという観点から、さまざまなご指摘を いただいています。よりよい医師数の推計方法について考えるというものです。  2つ目は、医師の偏在の是正についてです。1つ目の医師数の推計が、どちらかというと総数の推計 に力点が置かれたものですが、総数の問題ではなくて、医師の診療科別、地域別の偏在について、ど のような原因があったのかの要因分析、それに対する政策の効果について評価をします。  3頁です。まずは医師数の決定方法についてです。(1)「必要な医師数の推計について」ですが、医師 の推計の前提となる必要な医師数の基準を明らかにしていく必要がある。それは総数だけではなく、 地域別、診療科別の数字も必要であるというご指摘をいただいています。  概要にあるように、医師の需給推計については、別途厚生労働省の有識者の会議から、今後高齢化 の状況、患者の診察動向以下、さまざまなパラメータをできるだけ考慮した、専門的な推計を行うべ きだというご指摘がありましたので、今年度、来年度の2年間で、医師需給推計の大幅な見直しのため の研究事業を研究者の方のご協力を得ながら進めているところです。結論的には、この研究の成果を 待つという状況になっています。  パラメータについては、総務省の評価委員会から指摘を受け、さまざまなものを挙げていますが、 説明は省略しますが、6頁をお開きください。下のほうの指標で、地域別、診療科別に見た必要な医師 数についての指標を出すようにとなっています。いまの段階では、地域の医療提供体制もあるので算 出は難しいと考えています。いずれにしても、分析、評価はさまざまなパラメータを使って今後、研 究、検討していくことを考えています。  (2)「医師配置標準と医師不足との関係について」です。これは総務省の評価委員にご関心をお持ち の先生がいらっしゃいまして、医療法で定められている医師の配置基準、配置標準が、長年見直され ていないので医師不足に結び付いているのではないかというご指摘で、その関係について検討せよと いうことです。  これについては、7頁にさらりと分析・評価を書いています。この医師配置標準は、事実上各病院に おける最低の医師配置基準になっているので、これそのものの見直しは難しい面はありますが、その ことが即医師不足に結び付いているという認識には立っていません。この問題については、引き続き 総務省の評価委員会と話を続けていきたいと考えています。  (3)「これまでの医師の需給見通しの推計方法について」です。つまり、これまでの推計方法は間違 っていたのではないか、新しい推計方法を考えるべきではないかということです。これも結論的には、 いま検討中という話です。これについて、総務省の評価委員会から、ご意見をいただいているところ ですが、さらにより詳しいパラメータ、より踏み込んだ分析をというリクエストをいただいています。 できるだけ要望にお応えしていきたいとは思っていますが、その一方で、医師需給の問題は正確な推 計を行うことも大切だと思っていますが、それ以上に、その推計結果を踏まえてどのような政策決定 をするのかが重要だと思っています。いま総務省のリクエストに応じて、真摯に評価書を作っていき たいと思っていますが、別途そういったことについての課題意識も持っています。  (4)「教育・訓練の拡充への対応策及びその効果の見込みについて」です。これについて総務省の評 価委員会の問題意識は、医師の数を増やすと、教育、訓練の質的な面で問題が出るのではないかとい うことから、その対応策について聞かれています。これは主として文科省で対応いただいています。 ここに書いてあるように、指導教員、設備についても、医学部定員増員に伴い、環境整備のためのご 支援を文科省でお取りいただいています。その結果として、10頁の中段の「分析・評価」で、教員数 は学生1人当たりで見ても増加していますし、共用試験の結果もよくなっています。今年に入ってから も医学教育の改善策の取りまとめも進んでいて、医師数増加に伴う教育訓練の充実の対応策も取られ ている状況と考えています。  次に10頁のいちばん下で、2つ目の柱です。「医師の偏在是正について」です。(1)で、病院勤務医 の過重労働、女性医師の増加など、さまざまな要因が医師の偏在にどのような影響を及ぼしているか を検証せよというのが最初にあります。これについてはいろいろデータを集めていますが、それぞれ について、偏在の問題にどのような影響を及ぼしているかの検証は難しく、まだ十分なご説明のでき る段階になっていません。そういったデータを集めるのが難しいというのが、率直な感想です。それ 以下、具体的な対策について、その効果の検証を求められているところがありまして、そこを中心に ご説明します。  16頁です。総務省の評価委員会から、具体的に示されている具体策についての効果の検証について です。まず、経済的インセンティブの付与がどのような効果を持つのかです。真ん中に、平成21年度 予算事業として、分娩手当、夜間・休日救急手当の実施状況があります。今年度予算から、まさに医 師に対する直接的な経済的インセンティブということで、産科、救急、へき地などの医師に対して、 手当を行う財政支援をすることとしています。これについては、産科関係では38都道府県、救急勤務 医関係では36都道府県が実施する見込みになっています。  2つ目の具体的な提案として、(3)で、地方勤務を一定期間義務付けることが、医師の地域偏在を是正 するための効果としてどうかということがあります。この関係で言うと、17頁の上から2つ目の表で、 「医学部入学定員の地域特別枠」というものがあります。近年大学での設定が増えています。この表 は未完成で、縦軸は、「全体」「国立」「公立」「私立」と書いてありますが、横軸が、医学部入学 定員を設定している大学が全体で37、検討中が9、未設定が34となっています。近年、多くの大学で 急速に特別枠を設定して、その後一定期間の地域勤務を求める取組が拡大しています。  このように、経済的インセンティブも、地方勤務義務付けも、効果を問われているのですが、施策 の取組が始まったばかりというのが、正直な現状です。おそらく大きな効果を期待できると考えてい るのですが、その効果の検証はもう暫く継続的な検証が必要だと考えています。  18頁です。3つ目の具体的な提案で、(4)で医療機関の役割分担の明確化、機能の集約化とあります。 地域によっては、似たような役割を担う病院が集積していたりして、非常に非効率であるといったご 指摘もありました。この部分についての施策の効果の検証が求められています。  これについては、18頁の指標の最初に「都道府県医療計画の実施状況」とあります。前回3月にも、 担当の者がご説明したかもしれません。医療法を改正して、各都道府県で医療計画を策定し、医療機 関の間の役割分担、連携を推進していただくことになっています。現在47都道府県中46都道府県にお いて、がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病あるいは救急医療、その他についての医療機関の役割分 担、連携体制について、計画的に推進する体制になっている状況です、少なくとも、各都道府県で、 医療機関の連携、役割分担の取組が大きく前進し始めている状況にあると考えています。  その効果はどうかですが、19頁の「分析・評価」の中段です。医療機関の認識として、多くの医療 機関が「患者紹介の円滑化が進んだ」「機能分化が進んだ」という回答をしています。それから、診 療所における初診、再診の患者数が増える一方、病院の外来患者数が減少傾向にあって、間接的です が、連携が進みつつあるのかなと考えています。以上、現段階における総合評価書の案についてご説 明しました。よろしくご審議をお願いします。 ○高橋座長  重要であり、いろいろな情報のある領域で、いろいろな議論の側面があります。総合評価書として いいものにするためのご意見をお願いします。これは専門の言葉で語られていると同時に、あらゆる 人が発言する権利のある領域なので、いろいろな意味でご意見をちょうだいできればと思っています。 ○篠原委員  説明資料6頁の「病床規模別にみた常勤医師1人当たりの患者数の推移」という表を見て、いろいろ な疑問を感じます。病床数の多いところは少ないとなっています。評価の関係で、労災病院とか国立 大学の附属病院で聞いたことがあるのですが、ワーク・ライフ・バランスで医師の状況はどうかを聞 いたら、もう滅茶苦茶ですと。それは独法化したこともあると思うのですが、臨床だけではなくて、 教育、授業もきっちりやらなくてはいけないということで、厳しくなっている。そういう意味からの 医師の勤務状況。おそらく多くの医師はオーバーワークになっていると思いますが、その辺の分析は あるのですか。 ○医政局医事課長  資料1-1の12頁をご覧ください。これは平成18年当時の調査ですので、少し古くなっていますし、 必ずしも経年で取っているわけではありませんが、当時の医師の勤務時間の実態について調査をした ものです。  左側が病院勤務の医師、右側が診療所勤務の医師です。上が、業務時間、滞在時間となっています。 下の※に書いていますが、業務時間は確実に労働時間と言えるような時間帯として、診療、教育、そ の他カンファレンスなどを入れています。滞在時間というのは、それプラス休憩時間、研修、研究と いった、実滞在時間まで含めて調べたものです。それを年代別、男女別に見たものです。  これで見ると、病院勤務医の特に若い方の、業務時間にしろ滞在時間にしろ、大変過酷な状況にあ ることが一目でわかります。この状況は必ずしも現段階において改善されていることではないと推測 していますが、データはいまこういったものを手元に持っているということです。 ○高橋座長  去年30代の女性の医師が、この問題を扱って面白い修士論文を書いたのですが、彼女の結論は、医 師は社会保障の制度を全く知らない。労働基準法などの基本を知らないで済ませるような環境があっ て、それは医師独特の専門職意識がつくり出したものだ。しかし、医師が特別の専門職だとは言って いられない時代だと。とりわけ彼女は女性医師ですから、結婚、出産を控えた途端にと。そういう問 題に対して、子どもを育てにくい、早く家に帰ることについて、非常に冷たい視線があります。一方 で確実に女性医師は増加しています。某私立大学の先生に聞くと、成績順に採ると、女性が圧倒的に 上位を占めることも伺いました。そこら辺の問題は大変だと思います。  だいぶ前に開原先生が需給予測のことをやった責任者でして、我々の時代の働き方を前提に需給予 測をやる時代ではないけれども、かなり大きな変化が起こっている。しかしながら、現場がそれをキ ャッチアップしていない。一方で、医師供給の抑止政策が続いてきました。  しかし、私は日本の医療制度は基本的には成績がいいと思っています。こんな低い対GDP投入量で、 これだけ寿命を伸ばしている。逆説的に言えば、日本の医療制度は世界に冠たる無駄のない医療です。 GDP費投入は、アメリカはとんでもなく高いわけです。それで、ちゃんと毎年寿命を伸ばしてきた医療 制度です。そのような意味では、キャンベルと池上さんの本も言っているように、非常に効率性の高 い医療なのです。それを無駄が多いと誰が言ったかと。データを見ていれば、そんな数字はどこにも 出てこないわけです。ミクロのレベルでは無駄と言いたくなるようなことはあるかもしれません。そ ういうことを含めて、医療というのは神話が多すぎると思います。ある種の神話、そのようなことが 横行している世界です。エビデンスでクリーンに議論することがしにくい領域なので、逆に政策評価 をするのは大事なことだと思っています。本田さん、いかがでしょうか。 ○本田委員  感想と質問です。医師の働き方、特に価値観がすごく変わってきています。平成18年の医師需給の 検討会にも参加させてもらっていて、その際に外部の有志で、若い研修医にアンケート調査をしまし た。大事にするものは何かという問いに対して、「キャリア」と同等もしくはそれ以上に、「自分の 家族」「生活」というのを挙げていたのです。それなので、働き方というものがだいぶ変わってきて いる中で、そのようなことをどう考慮して、今度この需給推計をされるのか。出てこないと議論でき ないということもあるのでしょうけれども、大変興味を持っています。  1つ質問です。医師数が足りないとか、数の議論が先走ってすごくされていて、実際にそうだとは思 うのですが、どれぐらい数を増やせばいいのか。地域の偏在のほか、診療科の偏在も言われています。 資料1-1の11頁の「休止届のあった医療施設の科」でもわかるように、いろいろなところがあります。 どれくらい増やせば、どれくらい適正にその科に進むのかなどが推計できるのか、そのような研究は できるのでしょうか。もしくは考えているのでしょうか。それとも、先ほど「政策的に何をするかが 大事だ」と言っていましたが、何をもって、何をしていこうかを考えているのでしょうか。それは特 段海外のように枠を設けなくても、もしくはアメリカ、イギリス、ドイツ、フランスはみんな違うや り方ですが、何かしらの枠なり、競争するなりして、みんなが好きなところに行けるとか、何でも科 を名乗れることになっているのは、先進国では日本ぐらいだと聞いていますが、そのようなことにま で踏み込んで考えようと何かの調査をされているのでしょうか。それとも、現状の中でインセンティ ブを付けて振り分けるという、現状の中でやっていこうという考えに基づいて調査をしているのでし ょうか。 ○医政局医事課長  もちろんさまざまなご議論はあるのですが、医師の総数を増やせばいまの医師不足感が解消される とは思っていません。ただし、医師の絶対数も不足していると思っているので、医師の絶対数をどの 程度、どのようなテンポで増やしていくべきかは、推計をしながら考えていきたいと思っています。  同時に大切なことは、医師の偏在対策だと思っています。あるいは医師の偏在対策そのものではな いかもしれませんが、医師不足に対して医師の総数を増やすだけではなく、ほかの政策との組合せが 必要だと思っています。  したがって、例えばチーム医療、つまり医療関係職種間の役割分担です。先ほど座長から少しあり ましたが、医師の独特な働き方はあったと思うのですが、おそらく診療科、病院によっては、どんど んチーム医療の体制が進んでいて、医師だけに頼らない医療のあり方が形作られて、必ずしも医師の 数を増やさなくても医師不足感を緩和し、より質の高い医療を提供するための取組を進めていかない といけないと思っています。それ以外の医師の足りない地域、医師の足りない診療科に対する施策を どうするかを考えなければいけないと思っています。  現在は、主としてインセンティブを前提にさまざまな施策を考えています。それは病院に対するイ ンセンティブも、医師に対するインセンティブ、場合によっては自治体に対するインセンティブもあ るかもしれません。先進国の中で唯一というご指摘もありましたが、医師が自らの意思でキャリアを 積んでいくことのできるメリットもあるはずですので、そういった日本ならではのメリットを活かし ながら、いまはインセンティブを使って偏在対策をやっていて、その効果を検証しながら、ひょっと するとその先の施策の取組があるのかもしれないと考えています。 ○本田委員  そういうやり方はなるほどとも思うのですが、インセンティブという中で、それぞれの医師が自分 がどのような方向に進んだらいいのか、キャリアアップの仕方も、全体のいまの動きとか、それこそ 社会保障の制度からいまの医師がどのようになっていて、どこにどれくらいいて、どの分野がどうな ってというのを、若い医師もこれからどの分野に進んでいこうかという方も、そのような情報は得に くい現実もあると思うので、そこを考える機会を提供するという、施策に通じるような検討、調査も 加えていただけるといいのかと思いました。 ○梅田委員  大きなテーマなので、難しいことは承知で申し上げます。この総合評価にいま求められているのは 何かを考えると、評価は大きく分けて、事後評価と事前評価の2つがあります。徹底した事後評価が求 められているわけではなくて、これから何をしていったら地域の偏在、診療科目の偏在が解消できる かということで、どちらかというと事前評価を主に求められていると思います。  そうしたときに、事前評価をしようとすると、必要な限りにおいて事後の分析もしないとできませ ん。いま説明された評価書は、総数については現在検討中と書いてあるので、あまり踏み込んでいな いということになって、それはそれでいいのかなとも思いますが、逆に偏在の解消のために、このよ うなことをしたら事前評価的にはある程度の効果が見えます、したがって、このようなことをやろう としていると、すでにやっていることもあると思います、そのような色合いをもう少し強めていただ けるといいと思います。そうしないと、いま求められている総合評価の趣旨に応えているのか。  総合評価ですので、決められていないので、どのようなやり方でもいいのです。総合評価というの は、そのときそのときで必要な評価をすればいいので、決められたパターンはないのですが、この医 師不足については、焦点となっているところは総数ではなくて、評価書では数字ではなくて偏在だと いうことで、それが今後の事前評価的にどうなるのかというのは、もうちょっと踏み込んでいただく。 その必要な限りにおいて、事後評価も必要なのではないかと思います。もう少し事後評価もしていた だいて、事前評価ももうちょっと踏み込んでいただくと、この評価書の意味が出るのかと思います。 この評価書の論旨の焦点がぼける印象を受けたというか、結局何が評価されたのかなと。あまり踏み 出していないというか、従来の白書の書き方に近いと。いやしくも政策評価というのができて、総合 評価書として書く場合は、もう少しそうしてほしいという希望を申し上げます。 ○医政局医事課長  先生のご指摘については、非常に悩んでおりまして、前回3月にご指摘をいただいたときの議事録を 拝見してから来たのですが、まさにこれまで10年間何をやってきたのかということの評価であれば、 それに焦点を当てた評価はあると思うのです。かつ医師不足問題については、そのことはとても大切 なのではないかという気は個人的にはしています。  今回投げられているテーマが、どちらかというとこれからの取組についてがメインになっていて、 それについての事前評価的になりかねない話だとは思っています。先生のおっしゃっているのは、さ らにその前提としてのこれまでの事後評価、例えばこれまでの10年なら10年なりの評価をベースに書 いてはどうかというご指摘です。  それはおそらく、なぜ厚生労働省は10年間医師不足の認識に至っていなかったのかというところに 行き着くのだと思います。それが単純に推計方法の問題ではなく、さまざまな要因があったはずであ って、それをこの書類に書くのは非常に難しいと直感的に理解しています。先生のご指摘はよくわか りますので、努力したいと思います。 ○高橋座長  非常に悩んでこれを作ったのは、話を伺いながらよくわかります。 ○阿部委員  2つあります。1つはいまの関連です。推計を評価することが、果たして政策評価として言えるのか どうかです。つまり、推計した結果が、いまの段階でいいのか悪いのかの評価は、我々はできないわ けです。たぶん、5年、10年経って、あの推計は間違っていたとか、当たってたということは言えると 思うのです。  それはなきにしても、例えば推計のやり方そのものをどうやって評価するかは政策評価ではなくて、 研究内容の評価になってくるので、ここに推計の方法をどんどん書くこと自体が、政策評価として馴 染んでいるのかどうかを疑問に思いました。お答えになれなければお答えにならないでいいのですが、 いま梅田委員がおっしゃったようなところをもう少しダイナミックに書いたほうが評価としてはよか ったのかなと、個人的には思いました。  もう1点です。16頁の「経済的インセンティブに対する医師の意識」で、数字を挙げているところ があるのですが、この数字が何を意味しているかが、ぱっと見てわからないのです。本文を読んでも よくわかりません。これは書き方なのですが、9月末の報告書ではこのようなところをブラッシュアッ プするといいのではないかと思います。ほかにもそういうところはあるので、その辺りをもう一度ご 精査いただければと思います。 ○高橋座長  ご指摘として受け止めてよろしいですか。 ○阿部委員  はい。 ○高橋座長  作成する側は非常に悩ましいし、世の中的には非常にホットで何でも言えるという中で、先ほどの 梅田委員のご指摘が大事かと思います。評価書としての使命を再確認していただいて、細かいデータ は手法の問題かと思うので、課題の所在を共有していただくことに力点を置きながら書いていただく ことかと思います。ほかにご意見はありますか。 ○川本委員  総合評価書で、医師数の決定数の過不足、地域偏在の問題がありますが、最初のところに「困難」 「困難」と出てくると、出発点でつまずいてしまうイメージの報告書になってしまいます。いま座長 からも話があったように、あまり細かくなくてもいいのですが、いろいろなパラメータを見ていただ いて、傾向的な指摘、方向性、状況把握としての大づかみなものもあったほうがいいのではないかと 思います。  16頁にもご指摘がありましたが、後ろのほうは対策が出ているわけです。このような手を打って、 このようになってきているというのがあるわけですから、前のほうで「何もわかりません」というイ メージより、きちんとある程度のことは書かれていたほうが総合評価書としてはいいと思います。 ○高橋座長  大事なご指摘をありがとうございます。 ○本田委員  19頁の辺りを見ていて、「分析・評価」を読んでいても、政策だからということかもしれませんが、 医療連携の部分で、医療機関がどうだこうだ、医師側がどうだこうだばかりで、それを理解して受療 していく、住民や患者の意識という部分に1つも触れていない感じがします。もう少し幅を広げるとい う意味でも、そういうことを書き加えてほしいと思います。 ○高橋座長  そうですね。需要供給という概念が、医療機関に対する医師供給なので、後ろに入っているのは、 住民なり患者というと、市民の医療需要の需要行動が大きく変化した。それとの関係で不足という話 がある。  余談になって恐縮ですが、大変有名になった榊原病院の小児科の問題は象徴的な話だと思います。 あたかも経済学の需要かのごとく、医療供給を扱ってきたわけです。求めがあれば応じるということ です。それはもう資源に限界があることがわかり始めると、利用構造を変えるということです。お母 さんたちが、どのようなときに医者にかかるかということです。そういう需要構造を変えると、構造 は変わってくる。あのエピソードは大変示唆的で、医療保険がフリーアクセスに近いために、しばし ば医療需要を市場サービスのように扱ってきました。これに対しては供給が当然追いつかないわけで す。そこがもう一方であると思っていて、そこら辺はここの範囲を超える話ですが、どこかで医療需 要の構造のあり方も大事です。逆に言えば、現実に過剰医療も行われているわけです。これは研究や 外の議論であって、そう言うのか言わないのかについては、意見が分かれるので、ここでは扱いにく いです。  ただ、従来前提としていた構造が大きく変わりはじめてきていて、そうなると、そこら辺のことを どう見通すかは、どこかで意識をしていただく必要があるかなと思っています。これは研究の世界、 世の中、政策当時者、教育機関があり、一方で医療は大変コストがかかります。医師養成は膨大なコ ストです。最近私はよく言うのですが、日本の医師養成コストは、言ってみれば医師の家計が負担し ています。1人について6,000万円から1億円ぐらいかかる養成コストを、医師の家計が負担している 構造があります。たぶん私立医大はそのような構造です。その場合に、それを抜きにした需要供給の 問題は考えられないとか、いろいろな要因がありまして、そんなにきれいな議論はできません。  そうすると、問題の所在をきちんと理解していただくメッセージとして、この総合評価書の機会を お使いいただく。先ほど梅田委員からご指摘がありましたが、そのようなことで整理をしていただく。 ○野川委員  17頁から18頁にかけての概要、分析・評価についてです。地方勤務義務付けによる医師の偏在を是 正するための諸施策、私の友人の医師が指摘していることですが、各大学での一定期間あるへき地等 での勤務を義務付ける形での教育は、具体的にある一定期間へき地で勤務することが条件になってい ますが、もちろん職業選択の自由もあるから、永久にそこにとどまるわけではない。そのことが、例 えば若い医師が、将来的に都会で勤務するためのポイントとして使うことになりがちである。自分は5 年間あるいは4年間、ああいうへき地に医師として勤務したから、自分は今後東京で医師をやっていく 資格がある。  こういうことで何が起こるかというと、まだ若くてあまり経験のない医師が、一定期間あるへき地 にはいるけれども、当然高齢化している地域が多いので、必要な経験を積んだ熟練医師の定着、しか も10年前、20年前のこの方の健康状態が、いまこうなっているという目で診られるような方の存在は、 おそらく若手医師3人の存在よりも、その地域にとっては大きな意味を持ちます。このような観点から は、このシステムの持つ意味は非常に低くて、それは医師の偏在について政策の評価に何らかの形で 反映されるべきなので、そのことが表現できる記述、あるいは今後どうしていくかについての方向が 見られないと、ある時期だけ数字としてへき地の医師が増えた。それは先ほど申し上げた、何年かい てすぐに去っていくような若手の医師が交替でいるにすぎないことになってしまう。それをオーソラ イズしていくということになると、政策評価のあり方としてもまずいのではないかという意見です。 ○高橋座長  医療と職務の難しさ。逆にどれだけ定着して、経験の豊かな医師に定着していただくか。私は山口 昇先生にその話を伺っていたとき、3年で帰るつもりだったけれども、面白くなってしまったとおっし ゃって、その面白くなってしまったというのは何なのだろうか。岩手のわりと有名なところですが、 そこは医療の確保に苦労はしているけれども、とにかく集めて、いい医師を確保できていると。その ようなところと、本当に確保が難しいというところもあって、医師確保の格差みたいなものがあって、 これは単に医師の数ではなくて、システムを扱わざるを得ません。いい診療が行われているところで は再生産ができると。システムの問題が後ろに控えていて、これも厄介な問題だと思います。今日の 意見も参考にしていただきながら、本来の総合評価の趣旨に合うようなものとしてブラッシュアップ していただくということで、この件は閉じさせていただきます。  続いて、議題2の新型インフルエンザの問題についてです。平成21年度の実績評価書について、テ ーマ選定によって事務局からご説明をお願いします。 ○政策評価官室長補佐  従来より本有識者会議では、厚生労働省における政策評価制度に関する基本的事項や具体的な評価 方法等について、多くの有意義なご意見をいただいています。本日は数ある評価対象の中から、時宜 に沿いまして、新型インフルエンザと、先般の経済状況を受けて、非正規労働者の就職支援対策等の 推進をテーマとして選びました。まずは新型インフルエンザですが、よろしくお願いします。                (所管課入替) ○高橋座長  担当課から15分以内でご説明をいただいて、また質疑をします。よろしくお願いします。 ○健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室長  新型インフルエンザ対策推進室長の正林です。PPTの資料に沿って説明します。資料2-1です。新型 インフルエンザH5N1について、今回のH1N1、その対策、秋と冬に向けた対策の構成でご説明します。  最初にH5N1についてです。もともと鳥の世界で流行るインフルエンザウイルスですが、それがヒト の世界に入ってくると、爆発的な拡大のおそれがあるだろう。かつては、1918年のスペインインフル エンザがありました。そのときは4,000万人の方が亡くなり、日本でも40万人弱が亡くなりました。 今回仮にH5N1が発生すれば、2,500万人の患者、死亡者も最大64万人ということが予想されます。  それに対してこれまで日本政府としては、行動計画、ガイドライン、総理をトップとした対策本部、 抗インフルエンザウイルス薬の備蓄、ワクチンの備蓄等の準備を進めてきまして、訓練も行ってきま した。  次の頁です。行動計画の概要です。目的は、感染拡大を可能な限り抑制し、健康被害を最小限にと どめる。社会・経済を破綻に至らせない。こういった2つの目的を掲げています。  予想される被害の想定も行った上で、段階に応じて、何をすべきかをまとめています。まず、未発 生期で、まだ出ていない頃は準備段階ですが、医療提供体制の整備、抗インフルエンザウイルス薬の 備蓄、プレパンデミックワクチンの備蓄です。  海外で発生した場合に最初にやるべきことは、検疫の集約化、停留の開始、ワクチンの製造開始で す。  いよいよ国内に入ってきた場合は、患者に医療機関に入院していただく、いわゆる隔離政策です。 学校は臨時の休業、事業者は不要不急業務の縮小です。  感染が広がってしまった場合は、ワクチンの接種、社会的弱者に対する支援です。小康期に入ると、 数カ月後に同じようなことが起きることが予想されますが、第二波に向けての準備です。こういった ことを行動計画でまとめています。  次の頁です。その行動計画をさらに具体的にまとめたものがガイドラインです。全部で10本のガイ ドラインを作っています。水際対策、検疫、感染拡大防止、医療体制、抗インフルエンザウイルス薬、 ワクチン、事業をどうやって継続するかをまとめたもの、家庭や地域でどうしたらいいか、一般の国 民に対してどのように情報提供を図るか、埋火葬という10本のガイドラインを整備して、こと細かに まとめています。  次の頁です。今回のH1N1というインフルエンザについてです。H5N1とH1N1の比較をしています。 H5N1のウイルスの方は、A型のH5、H7、H9の鳥由来のものを念頭に置いています。今回のH1N1はA型 ではあります。いずれにしても、世界中の人が免疫を持っていません。  症状についてです。H5N1は症状の予測は困難です。いま世界で起きているH5N1については、かなり 重篤化します。人にうつった場合に、大体6割以上の方がお亡くなりになっています。一方今回の H1N1については、いままでにわかっていることは、38度以上の発熱、咳やくしゃみといった呼吸器系 の症状、下痢や嘔吐の消化器系の症状が出ることがわかっています。  潜伏期間については、H1N1は1〜7日です。致死率についてはわかっていません。治療薬については、 H1N1はタミフル、リレンザが効くことがわかっています。ワクチンについては、季節性のインフルエ ンザを夏の間に造るわけですが、それを途中で切り替えて、いまはH1N1用のワクチンの製造を先月か ら開始したところです。  次の頁です。今回のH1N1の特徴ですが、免疫を持っていないので、感染力は季節性インフルエンザ よりは強いです。ただ、多くの感染者は、いまのところは軽症のままで回復しています。さらに、抗 インフルエンザウイルス薬がよく効くことがわかっています。  ただ海外の状況を見てみると、糖尿病やぜん息などの基礎疾患を持った方が、新型インフルエンザ に罹患した場合に重篤化したり、場合によっては亡くなっているケースが報告されています。  次の頁です。この2、3カ月間にどのような対策を講じてきたかです。最初に報告を受けたのは4月 23日です。アメリカで豚由来のインフルエンザのウイルスがヒトに感染したという報告を受けて、直 ちに検疫体制の強化を行いました。もう、マスコミで報道がされ始めていましたので、厚生労働省内 に電話の相談窓口(コールセンター)を設置いたしました。  WHOが、いよいよこれは新型インフルエンザだということで、WHOのフェーズでいうとフェーズ4と いうものですけれども、フェーズ4宣言を4月28日に出しました。これを受けて日本政府としては、 基本的対処方針を策定いたしました。それまで以上に検疫の体制を強化しております。5月に入ってか ら、感染はいよいよ世界にどんどん広がって、WHOはフェーズ5に上げています。国内においても、主 には検疫体制の強化であったわけですが、対処方針を改定したり、専門家の諮問委員会を立ち上げた りして、いつ入ってきてもいいようにという準備を進めております。  5月中旬に、兵庫、大阪で国内最初の患者が確認されました。このときには、主に医療体制を中心に、 その対策の強化を図りました。特に大阪、兵庫の場合は感染の拡大が非常に大きくて、学校の単位で はあったのですが、一遍に数百人の感染者が発生し、ある特定の医療機関はほとんどパンク状態にな りました。  日本全国で見ると、感染でこのように患者の数が多くて、非常にアップアップしている地域もあれ ば、まだまだほかの県では全く患者が発生していない地域と両方の地域がありましたので、全国をそ ういう2つのグループに分けて、それぞれ何をしたらいいかということを基本的対処方針にまとめて改 定をしております。  6月に入って、WHOはいよいよ世界に蔓延したということでフェーズ6に上げています。これに応じ て、国内では5月に作ってありました運用指針を、フェーズ6に伴って改定しました。特に、秋冬に向 けて国内での患者数の大幅な増加が起こることも想定し、社会的混乱を最小限にするための体制の整 備の重点シフトを行っています。  次の頁がその運用指針です。特に、いまは南半球が冬を迎えておりますので、ニュージーランドと かオーストラリアで患者の増加が起きております。国内においての見通しですけれども、おそらく海 外からの感染者の流入は止めることができないだろうということで、今後も患者の発生は続くと考え られます。それから、一部原因が特定できないような散発事例が6月の段階では発生していて、いつ全 国的な大規模な患者増加を見てもおかしくない状況であります。かつ基礎疾患を有する方々が重症化 する可能性があるので、これに対する対応が求められております。基本的な考え方としては、患者数 の急激で大規模な増加をできるだけ抑制し、緩和し、社会活動の停滞や医療供給への影響を低減させ るということ。  それから、適切な医療の提供、患者の大幅な増加の端緒を探知して対策につなげる。そして社会的 な混乱を最小限に抑えていく。そういう基本的な考え方のもと、最後の頁で、特に重症患者の増加に 対応するために、病床の確保、重症患者の救命を最優先とするような医療提供体制の整備。それから、 院内感染対策の徹底。そして、早期に探知するサーベイランス、このやり方もそれまでは一人ひとり の患者を見つけて入院させる、という意味のサーベイランスを行っていましたが、この段階では1つの クラスター、集団として早期に探知して、できるだけ規模の拡大を防いでいくというサーベイランス のやり方に変えています。それから、急激な感染の拡大を防止するために、学校でそういう集団発生 が見つかれば、学校の閉鎖をするといった感染拡大防止策、公衆衛生対策を講じるということです。 ○高橋座長  事態が非常に同時進行的ですので、将来の話も含んだ事業を実績評価という形でやっていただくわ けですが、委員の皆様からご意見、コメント等をお願いいたします。 ○野川委員  (1)から(4)までの対策を拝見して感じたのは情報の徹底です。つまり、国民一般の認知度・理解度の 向上が入っていないのが気になります。今回のインフルエンザの拡大に当たっても、初期段階で非常 に情報が錯綜しました。日本は、その点では高度な対応ができる国だと思っていますけれども、それ でも情報が錯綜して、それがマスクの売切れが続出したり、いろいろな波及的な影響を招きました。 その点をこの中にどのように組み込むのか、具体的には現在の段階ですと、一度いま軽くかかってお けば、秋冬に広がっても大丈夫だ、というような声があります。だから、いまのうちにかかっておい たほうがいい、どうせ軽く済むから、そうしたら秋冬になっても大丈夫だ、というような情報が正確 なのかどうかということも含めて、国民一般に対する情報及びそれに基づく正確な理解の向上といっ たことが加えられていいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。 ○健康局結核感染症課新型インフルエンザ対策推進室長  ご指摘をありがとうございます。おっしゃるとおりでありまして、4月の終わりのころは、私たちも 手探りでありました。アメリカとかメキシコで何かが起きているらしいぐらいの情報しかなかなか入 手できなくて、一方でマスメディアは現地の記者がいろいろなことを書くので、日本全体がかなり不 安な状態に陥ったと思います。あまり必要がないのに、電車に乗ったらほとんどの人がマスクを付け ているとか、そういった日本ならではの現象が見られました。正確な情報の提供というのはとても大 事なことです。  これまで何をしてきたかというと、1日大体2回ぐらい記者会見を定期的に行ってまいりました。そ こで私どもがキャッチした情報を、できるだけ丁寧に説明しながら、まずマスコミの方にご理解いた だいて、それを報道していただく、不必要に不安にかられる必要はないとか、国民の方にはもうちょ っと冷静に対応していただきたいといったメッセージを適宜発してきたところです。  ある段階から、だんだんその効果も出てきて、少しずつ日本全体が落ち着いてきたかなという感じ では思っています。ただ、今後はご指摘のとおり秋冬にというか、いまでも患者の数は増えています。 おそらく、だんだん寒くなるに従ってどんどん患者の数は増えていくだろう。場合によっては、季節 性インフルエンザと一緒に増えるかもしれませんので、ますます国民に対する情報提供は大事になる かと思っています。  確かにここには書いていなくて、ここには本当にポイント中のポイントしか書いていませんが、今 後もそういう国民にどうやって情報提供していくかというのはきちんと議論し、的確な情報提供を行 っていきたいと思っています。 ○本田委員  国民への正しい情報提供というところはとても重要だと思っています。一般国民という部分の一般 の部分と、特にいま海外で話題になっている重症化する基礎疾患をもっている人、糖尿病、ぜん息、 抗がん剤治療中の方、感染症を引き起こしやすい方といったポイントに絞った人に対する、徹底した 情報提供と、どういう対処を必要とするのかというのをちゃんと出すというのはとても大事だと感じ ています。  マスコミが言うのもなんですけれども、マスコミ頼りというよりは、どちらかというとそれを本当 に真剣に考えている関係の学会の方々、もしくは患者団体を上手に使って、徹底した正しい情報をと いうことで、変な混乱を招く必要はないと思うのですけれども、何かを知っていることが大事という ことを是非入れていただきたいと感じました。 ○高橋座長  今回のインフルエンザは、感染症全体のいろいろな広がりと深さみたいなものはそれぞれ違うわけ ですが、それをどう政策評価の中に折り込んでおくかという辺りの議論として、政策評価としてこれ を取り扱う場合の留意点等でお気づきの点があればお出しいただければと思います。 ○篠原委員  いま政策評価と言われたので少し離れているかと思うのですが、我が国の新型インフルエンザ対策 に対する経緯を説明していただきました。当然これの分析というのでしょうか、今回私は次の鳥イン フルエンザの演習だと捉えています。かなりかかわった人は同じように捉えています。いろいろな欠 陥がわかったと思うので、それの分析、それを踏まえた実績評価をする。  これはものすごく細かい話なのですが、成田空港で入国者に1枚の紙を配っています。私の知合いが オーストラリアから来たのですが、この人はオーストラリアで日本語を教えていて日本語はペラペラ の人です。この紙は、片面が英語で、もう片面が日本語になっています。これについて文句を言って いたのは、連絡先がどこも書いていないのです。確かに日本語で発熱外来と書いてあれば我々はわか るねと。ところが、外人は英語を読んで、発熱外来へご連絡くださいと書いてあっても全然わからな いのです。  情報が大事だというのは、私も質問しようとしていたのです。テレビを見ていると、最初にウイル スの専門家が出てきますので、興味はあるのです。ただ、我々としては対策がほんの一部です。1カ月 とか2カ月経ってくると大体出てきて、私たちはこういうことをすればいいのだと。そのように、国民 が本当に知りたいことが、意外とマスコミを通しても出ていないのです。厚生労働省は出しているか もしれないけれども、末端には例えば教育機関を通すとか、その辺まで分析しないと徹底しないので はないか。大阪にいた人の話を聞くと、かなりすごいパニックだったということです。次に鳥インフ ルエンザなどが来たら大変なことになるのではないかという気がするので、今回のをかなり分析した ほうがいいねと。  私がそのときに聞いたのは、食糧は2カ月と言われました。厚生労働省は2週間だったでしょうか。 なぜ2カ月かというと、鳥インフルエンザになれば、電気とか水道、ATMだって止まる可能性がある。 そういう可能性を言っていると、今度は本当のパニックになってしまいます。ですから、徐々に準備 をさせなければいけないのかという意味で、対策だけではなくて、準備も組み込んでいただければと いうことです。  突然2カ月というのはできないです。私も今回チョコチョコ買ってきたのですけれども、食糧という のは1週間分買うにしても結構大変なのです。そうすると、徐々に増やしていくのも大変だという気が するので、それに対する対応のステップまでやってくれれば非常にありがたいと思います。そこは、 厚生労働省の管轄外なのかなという気もしますが。 ○高橋座長  評価の視点にコミュニケーションというか、国民に対する情報提供と的確なコミュニケーションと いうのが大事だ、という視点の評価は相当大きく、委員共通のご指摘かと思いますので、その辺は留 意していただきます。進行中のテーマでしたが、ほかにはよろしいでしょうか。よろしければ次のテ ーマに移ります。 (所管課入替) ○高橋座長  次は非正規労働者の就労支援対策です。それでは、担当課から15分以内で説明をしていただき、質 疑応答ということで進めさせていただきます。 ○職業安定局首席職業指導官  職業安定局首席職業指導官の上市です。テーマ3の非正規労働者の就職支援対策等の推進のうち、非 正規労働者の雇止め等に対するハローワークの職業紹介等の取組についてご説明させていただきます。 資料3-1-(1)「非正規労働者の就職支援対策等の推進」の1頁から3頁及び資料3-2(1)「実績評価書 (案)」です。主に概要をまとめた前者に沿ってご説明申し上げます。  資料3-1-(1)の1頁です。昨年度の雇用失業情勢は、世界的に金融危機の影響等により、3月には有効 求人倍率が0.52倍、完全失業率が4.8%となるなど、その厳しさが増してきたところです。  このような情勢の中、左下の下線部分のように、昨年度は10月から3月までにおいて、非正規労働 者の雇止め数が約18万人となるなど、非正規労働者の雇止め等が大きな問題となりました。  資料3-1-(1)の2頁です。こうした情勢の悪化、非正規労働者の雇止め等の増加に伴い、ハローワー クにおける労働力需給調整機能の強化を図ることが一段と重要になっているところ、その取組状況、 まだ検討段階ではありますが各取組の実績を踏まえての見直し方針等をご説明させていただきます。  1番目は、正社員就職増大等対策費です。厳しい雇用・失業情勢の中、特に求職者のニーズが高い正 社員の求人が急減しているところで、そのニーズに沿った雇用機会を提供することは極めて重要です。 このために、ハローワークにおいては、本事業の実施により、正社員雇用のメリットなどの周知によ り、正社員求人の提出を促すとともに、求職者に対する企業説明会、面接会の実施等によるマッチン グ機能の強化等を図っているところです。本事業の取組の結果、正社員求人割合の目標44%に対し、 実績は46.2%となるなど、一定の成果が得られましたので、引き続き本取組を推進してまいりたいと 考えております。  2番目は、就職支援プログラム事業です。この事業は、雇用保険受給者のうち、特に早期の再就職意 欲が高い方であって、支援の必要性が高い求職者に対し、就職支援ナビゲーターを配置し、就職支援 プログラムによる求職者の個々の状況に応じた、体系的かつ計画的な就職支援を行うものです。能力 ・経験や、求職活動のノウハウの不足等により、安定した職業に就くことが難しい雇用保険受給者等 に対しては、この事業による個別支援が効果的でして、このプログラム対象者の就職率の目標73%に 対して、実績は76.4%と一定の成果が得られています。  3番目は、就職実現プランナー事業です。この事業は、就職実現プランナーを主要なハローワークに 配置し、早期再就職の必要性が高い方に対し、再就職を実現するための、就職実現プランを策定し、 早期再就職の実現に向けた個別総合的な相談援助を行うものです。この事業は、プラン対象者の就職 率目標65%に対し、実績は64.3%とほぼ目標を達成しておりますが、非正規労働者も含めた雇用保険 受給者が増加し、引き続き厳しい状況が続くものと懸念される中、これらの方に対する就職支援の一 層の充実を図ることが必要で、より効果的な事業運営が行われている就職支援プログラム事業との統 合を含め、さらなる効果的・効率的な事業運営のあり方を検討しているところです。  4番目は、非正規労働者の就労支援事業です。この事業については、ハローワークの非正規労働者に 対する就職支援のうち、特に重要であるところは資料3-1-(1)の3頁にもその概要を添付させていただ きました。本事業は、平成20年度の補正予算により開始されたものですが、派遣労働者等の非正規労 働者の雇用の安定を図るために、非正規労働者就労支援センター(通称キャリアアップハローワー ク)を設置し、安定就職に向けたさまざまな支援をワンストップで提供するとともに、非正規労働者 就労支援センター未設置の府県の主要なハローワークにおいても、非正規労働者就労支援コーナーを 設置し、同様の支援を行うものです。  平成20年度においては、北海道、東京、愛知、大阪、福岡の5カ所の非正規労働者就労支援センタ ーを設置し、その体制整備を図りました。今年度以降におきましても、非正規労働者の雇止め数が増 加しているところ、この事業については今年度の補正予算において、14県に同センターを増設するな ど、さらなる支援体制の強化を図ったところです。また、今後とも厳しい情勢が続くものと懸念され る中、非正規労働者の中には、生活のための資金や、住宅などのさまざまな生活支援が必要な方も少 なからずおられることを踏まえ、このセンター等については就職支援機能を強化するとともに、地方 自治体とも連携し、就職支援と生活支援を一体的に実施するなどのさらなる検討を行っているところ です。私からは以上です。 ○職業安定局若年者雇用対策室長  引き続きまして若年雇用対策関係について、職業安定局若年者雇用対策室長の田中からご説明させ ていただきます。資料3-1-(2)と資料3-2(2)ですが、基本的に資料3-1-(2)に基づいてご説明させていた だきます。  若年雇用対策の目標としては、若年者の雇用の安定・促進を図ることというのが大目標で、そのた めの対象の事業として、高卒就職ジョブサポーターによる新規学卒者のマッチングの推進。フリータ ーになってしまった方の常用就職の支援。若年者の試行雇用事業。平成21年2月から実施しておりま す、若年者等を正規雇用化しようということで特別奨励金。このような事業を実施しております。大 きな目標として若年者の雇用の安定・促進を図ることですが、個別にその目標に係る指標としては、 新規の高卒者の就職の内定率、それからハローワークにおけるフリーター常用の雇用者数、若年者等 トライアル雇用事業の常用雇用率の3つを掲げて施策を実施しています。  そこで現状ですけれども、12頁以降にデータの資料を付けさせていただいております。若者の雇用 情勢ですが、基本的に年齢計に比べて、相対的に失業率は高い状況で推移をしております。近年、雇 用情勢がよかったということで改善は図られてきています。しかしながら、昨年秋からの金融危機の 影響による雇用・失業情勢の悪化が、若者の雇用情勢にも非常に大きく影響を与えていて、平成21年 3月の新規高卒者の就職内定率は95.6%という数字になっております。高校生、大学生の内定状況です が、ここのところ数年改善が続いていましたので、そういう意味で昨年同期に比べて1.5ポイント、今 年度の卒業生については低下という状況になっています。  一方でフリーター数ですが、平成15年の217万人というのが数のピークでした。ここがピークで、5 年連続で減少しておりますけれども、フリーター層全体の減少幅に比べて、いわゆる年長フリーター と呼んでいる、25〜34歳層については、依然として減り方が少ないといいますか、依然として多い状 況にあります。  さらに、フリーターは34歳までですけれども、第1次の就職氷河期に正社員となれなかった方につ いては、その後年齢を重ねて、年長フリーターの年齢を超えて30代後半となっておりますので、施策 の方向としてはこのような層も取り込んだ上での施策の実施に心がけているところです。いずれにし ても、若年者については将来の我が国を担っていただく方ということで、その雇用の安定を促進する ための取組を進める必要性については依然として高いものと私どもは考えております。  次の頁は、実際の具体的な評価事業の内容の部分です。平成20年度のフリーター常用雇用化プラン ということで、フリーターの常用雇用を進めるということで進めてまいりました。フリーター数は、 平成20年が170万人と5年連続で減少しております。平成20年度の秋以降の雇用・失業情勢が非常に 悪化したわけですが、実績としても26.8万人ということで、ほぼ前年度と同水準の常用雇用は実現し たものと思っています。夏までの景気の回復の効果、その後悪化してからも各種対策を行ったことに よる効果が現れたものと考えております。  フリーターの支援ですが、実際にそのようなフリーターの方個々のニーズに応じて各種施策を組み 合わせて提供することが大事だと考えております。まず、早い段階から職業についての理解を促進し、 学校から職業への円滑な移行が図られること。それから、いろいろな課題を抱えている方がおられま すので、その一人ひとりの抱える課題に応じて必要な支援を行うこと。こういう観点を踏まえた施策 に取り組んでいるところです。今後、若年者の就職環境は厳しくなることが懸念されます。平成21年 度の年長フリーター、それから30代後半の不安定就労者といったところに重点を置き、フリーター等 正規雇用化プランということで推進をしていきたいと考えております。  次の頁は、個別の事業です。先ほど個別の事業として3つ申し上げましたが、1つ目は高卒就職ジョ ブサポーターによる、新規学卒者等のマッチングの推進です。高校生について、学校から職業への円 滑な移行を支援しようというものです。具体的には、ハローワークに高卒就職ジョブサポーターを配 置しております。このジョブサポーターが、実際に高校と連携を取り、在学中の早い段階から職業に ついての理解の促進とか、就職活動の準備、それから職場定着までの一貫した支援を実施するもので す。これの指標としては、就職内定率を用いています。評価としては、雇用・失業情勢の悪化という ことで、就職内定率は前年より低下いたしましたので、目標の達成、未達成ということでは未達成と 申し上げざるを得ない状況ですが、昨年の景気情勢が悪化して以来、内定取消しを受けた者も含めて 相談を強化するなど取り組んでまいりまして、実際に1人当たりの相談件数については前年度を上回る ような形で事業実施をしておりますので、効果的、効率的に支援は提供できたものと考えております。  今後も雇用情勢の悪化は懸念されます。平成22年3月、今年度末の卒業予定者についても非常に厳 しい状況が懸念される中で、こういうジョブサポーターが高校と密接に連携が取れるというところ、 学校訪問で1対1で支援ができるようなところを重視しながら就職支援を今後も強化していきたいと考 えております。  2番目の柱は、フリーター等の常用就職支援事業の推進です。これも、フリーターになった方の常用 雇用化ということで、ハローワークで支援対象者の課題に応じて、一貫した支援を実施するものです。 これも、指標としては、ハローワークにおけるフリーター常用雇用者数18万人としています、雇用・ 失業情勢の悪化ということで、就職環境が全体に厳しくなってきている中で、なかなか目標の達成に ついては厳しい状況であったというのが昨年の状況です。  昨年来30代後半、フリーターの上限34歳を超えてからも不安定就労層がいるということで、積極的 にこうした層に対象を広げ、事業の見直しを図っております。同水準の常用雇用は実現しているとこ ろですし、また1対1の担当者制でやってもらうということについては非常に有効ということもありま すので、今後はより就職が困難な年長フリーター層への重点を置いて施策を実施していく必要がある と考えております。  最後は、若年者等の試行雇用事業です。なかなか就職が困難な若年者をまず一定期間企業にトライ アルで雇っていただき、その間に適性とかお互いの相互理解を促進することを通じ、試行雇用が終わ った後の常用雇用への移行を図るものです。評価として、雇用期間中に、企業と若年者がお互いに理 解を深めることができたということで、約8割が常用雇用へ移行しており、高い効果があるものと考え ております。雇用・失業情勢が悪くなる中で、求人数が大幅に減少しておりますので、なかなか良質 なトライアル求人の開拓が難しい状況にはなっておりますけれども、今後もそうした雇用求人の開拓 に積極的に取り組んでいって、事業を進めていく必要があるものと考えております。私からは以上で す。 ○職業能力開発局実習併用職業訓練推進室長  職業能力開発局実習併用職業訓練推進室長の高森です。私からは、若年者に対する職業能力開発支 援ということで、資料3-1-(3)7頁、それから別添資料3-2(4)でご説明させていただきます。主に資料3- 1-(3)を使ってご説明いたします。7頁ですが、現状分析は先ほども説明があったとおりですが、付け加 えまして資料の14頁は、いわゆるニートの数の推移です。2002年に64万人に達し、その後若干の増 減はありますが、60万人強の数字で推移している状況です。また、いわゆる就職氷河期に正社員にな れなかった若者が、30代後半を迎える状況です。こういう状況を踏まえ、フリーター等に対して実践 的な職業訓練の実施、地域若者サポートステーション等による、ニート等の若者の職業的自立支援を 通じ、若者の働く意欲を引き出し、その能力の向上を図り、就業に結び付けていく施策の推進を行っ てまいりたいと考えております。  政策評価については時間の関係もありますので、主な評価対象事務事業ということで3点ご説明させ ていただきます。委託訓練活用型デュアルシステムの実施、若者自立塾事業、及び地域若者サポート ステーション事業です。  8頁は、日本版デュアルシステムの普及促進です。フリーター等の若年者に対し、専門学校等の民間 教育訓練機関での座学訓練、企業等における実習を一貫した形で講じることにより、実践的な職業能 力を付与し、安定就労へ移行を図る事業です。評価としては、訓練終了後の就職率73.8%と、平成19 年度に比べて若干下がりましたが、依然として高い水準を維持していると考えております。  9頁は、若者自立塾事業です。教育訓練も受けず、就労することもできないニート等の若者について は、朝決まった時間に起きるというような、生活習慣さえ身に付けていない若い人たちがいるわけで す。こういう若者の職業的自立を支援するために、合宿形式による集団生活の中で、生活訓練、労働 体験等を通じ、職業人、社会人として必要な基本的能力を獲得していただき、勤労観の醸成を図ると ともに、働くことについての自信と意欲を付与することにより、就労へ導く事業です。卒塾後6カ月経 過時点の就労率は55.1%と若干景気の状況の影響もありますことから減少しておりますが、卒塾後6 カ月経過後における行動変化率、注にありますように、卒塾後に就労、進学、復学、ハローワークへ の求職登録など、ニート状態を改善した者の率ですが、これは86.2%と、卒塾者のほとんどがニート 状態から脱しています。  10頁は、地域若者サポートステーション事業です。若者自立塾事業と同様に、ニート等の若者の職 業的自立を支援するものです。地方自治体との協働により、地域の若者支援機関からなるネットワー クを構築し、その拠点となる地域若者サポートステーションを設置し、専門的な相談やネットワーク を活用した誘導など、多様な就労支援メニューを提供する事業です。評価としては、利用者数の増加 による支援対象者への認知度の向上、あるいは利用開始から6カ月経過時点で56.6%の登録者が、よ り就職に結び付く方向へ変化したこと、また、27.9%の登録者が就労等の進路を決定したこと、など が挙げられます。  11頁は、事業全体の実施状況の評価です。雇用情勢が悪化し、有効求人倍率も大幅に低下したにも かかわらず、平成20年度においては、委託訓練活用型デュアルシステムの訓練修了後の就職率が高い 水準を維持しています。若者に対する職業訓練を実施し、職業キャリア支援を講ずることは、再就職 の促進を図る上で効果的であると考えております。また、ニート状態にある若者についても、地域若 者サポートステーション等を活用した、自立支援が非常に効果的であると考えております。  今後の課題としては、厳しい雇用・失業情勢が続く中で、非正規労働者が増大したことから、日本 版デュアルシステムについて、平成21年度より、職業能力形成機会に恵まれなかった者に対象範囲を 拡大して実施することとしております。また、ニート状態にある若者の職業的自立については、地域 若者サポートステーションによる、ニート等の進路決定者割合を、2010年度に30%とするという目標 に向けて、一層強化を図ることとしております。以上です。 ○高橋座長  いろいろ多岐にわたりますが、非正規労働者の就職支援対策の推進について、ご意見、ご質問があ りましたらお願いいたします。 ○梅田委員  1つ確認させてください。フリーターの問題を取り上げて、目標が平成22年で170万人、それを平 成20年度の実績で達成したということで、非常にいい結果が出ている事例です。このシナリオを読ん でいくと、予算規模を縮小するとなっています。それなりのシナリオができていて、その170万人の中 でも、30代後半に重点を置いてやりたいというのは、1つのモデル的なシナリオになっていると思いま す。  この目標はいつ決めたのかわからないのですが、今後170万人の目標というのはどうなるのか。要す るに、目標の置き直しということが理論上はあり得るので、その辺の実績評価上の扱いを聞いておき たいのです。 ○職業安定局若年者雇用対策室長  1点目ですが、この評価シートの中は若年者、高齢者、障害者等とすべてを含んだ全部として事業の 予算額の縮小ということです。フリーター支援の事業について、特段大きく事業の予算を縮小という ことではなくて、引き続き事業は続けていくということです。 ○梅田委員  私が言っているのは、資料3-2(2)の実績評価書の論理を追っただけの話なのです。そう書いてあるの で言っているだけです。資料3-2(2)で目標達成していますよね。 ○職業安定局若年者雇用対策室長  はい。 ○梅田委員  最後のほうを読んでいくと、予算規模を縮小すると書いてあるので私は言っただけの話です。これ は、評価書としてそれなりのシナリオはできているというか。 ○職業安定局若年者雇用対策室長  すみません、14頁のことを言っておられるのではないかと思うのです。 ○梅田委員  私は違うことを言っていますか。14頁はフリーターだけではなしに全体を言っていますよね。 ○職業安定局若年者雇用対策室長  はい、全体を言っています。 ○梅田委員  大きなシナリオとして、目標を達成したから、1つは予算を縮小するというのも1つのシナリオとし てあり得るのだけれども、私が確認しておきたかったのは、170万人という目標を今後どのように扱っ ていくのですかということを聞きたかったのです。 ○職業安定局若年者雇用対策室長  今後の雇用情勢の見込みもありますので、ここ数年は170万人という目標は維持をして施策はしばら く進めていきたいと思っています。 ○高橋座長  14頁の「評価結果の政策への反映の方向性」のイで、「施策全体として予算規模の縮小等の見直し を検討」の確認をされたということですね。 ○梅田委員  そうです。私が言いたかったのは、目標の再設定ということもあり得るのですよというか、そうい うことも評価上はあり得ますので、そういうことを検討されているのか、いまのお答えのように維持 を考えておられるのか、それは考え方ですので、どちらでも善悪はないです。維持というお考えです ね。 ○職業安定局若年者雇用対策室長  はい。 ○篠原委員  この4つに関連して質問させていただきます。いまは大不況ですが、その部分の分析とか、今後も組 み入れられていると思うのですけれども、その組み入れ方は非常に答えにくい質問ですけれどもどう されたのでしょうか。こういう質問はあまりよくないですか。 ○高橋座長  これはデータベースの話もあります。データが取れる、取れないみたいなのもあってなかなかです が、現実はここで想定していた新しい事態が起こっている場合にどう対応されるのかという意味を含 めた、やや一般的な質問です。答えにくい質問であることは承知ですが、何かコメントをください。 ここで書かれていた前提が、相当激変しつつあるので、これを評価書の中にどのように組み込むかど うか、これはかなりシビアに問われると思います。 ○職業安定局若年者雇用対策室長  おっしゃるとおり、全体の雇用・失業情勢が悪くなっていく中で、やはり常用就職の移行率とか、 就職内定率が前年より良くなることをセットしていた目標の管理としては非常に厳しいことは事実だ と思います。ただ、どういう目標がいちばんわかりやすくて、またその管理の面からもいいかという ようなことになると、まずこういうマクロの数字を使わなければいけないところもあるかと。ただ、 事業全体の考え方としては、例えば事業実施の1人当たりの相談件数などを見て効果を図るというよう な、この目標とは違った形での若干の補足的な部分にも使えるものがあるのではないかと思っていま す。 ○高橋座長  政策評価という制度の問題があって、これはある種の平時のシステムです。非常時のシステムでは ないというところがあります。 ○阿部委員  この後、PDCAサイクルについての議論があると思うのです。これまでやられた政策自体が、具体的 にどういうところが有効であって、どういうところは有効でなかったというのを、平時であってもそ れをちゃんと捉えておけば、この後何が有効になるかというのは見えてくるのではないか。そういう 意味では、その辺りはどういう施策が最も効率的だったのか。これは効率的でなかったとか、その辺 りをはっきりしたほうがいいと思います。 ○高橋座長  これは、一般的なサゼスチョンというか、示唆をいただいたということにさせていただきます。い ろいろ多岐にわたり、流動的なものですので、もし委員の皆様から発言がなければ次の話題に移らせ ていただきます。 (所管課入替) ○高橋座長  引き続きまして、厚生労働省版PDCAサイクルの実施、それから質の行政改革ということで、議題3、 4、5のテーマについて、厚生労働省の取組について報告をしていただきます。 ○政策評価官  3つの議題についてご説明させていただきます。1点目は、厚生労働版PDCAサイクルの実施について 概要をご説明させていただきます。資料4「厚生労働省版PDCAサイクルの実施について」の2頁にあ りますとおり、厚生労働行政の在り方に関する懇談会の提言が、今年の3月30日にまとめられており ます。◎の下のポツで書いてありますけれども、厚生労働行政全般について、計画・実施・検証・改 善を基本とするPDCAサイクルを組み込むこと。必要に応じ、的確な数値目標を設定すること、進捗状 況を適切に管理するとともに、状況の変化に対応するため、計画を柔軟に見直すこと。PDCAサイクル を回すための体制を確立することなどについて提言がありました。  これを受けて、その下の◎のところですが、厚生労働省改革の工程表においても、取組工程を示し て、これまでPDCAの全体像の提示、課室ごとの目標の設定などに取り組むとともに、このマニュアル を使って研修会を実施する、といったことをしてきました。  このPDCAサイクルを確立するためには、1頁にありますとおりポイントとして4つ挙げております。 (1)業務の中にあるPDCAサイクルを自覚し、改善の取組を明確化・共有化すること。(2)情報を共有し、 何が悪かったのか、何が良かったのかという真の原因を追求し、根本的な解決につなげること。(3)や り直し、繰り返しの失敗、重複作業を防止し、業務の効率化・負担の軽減を図ること。(4)計画的・明 確な役割分担による仕事を進めて、個人の負担の軽減、安心して職務遂行できる環境の整備につなげ ること。この4点を意識して行う。そのことにより、上に書いてありますとおり、業務の流れを変えて いくことが必要だと考えているところです。  PDCA全体の構成としては、同じ資料の3頁の3 PDCA全体構成という部分ですが、この図にあります とおりPDCAサイクルは業務全般で組み込まれるものであるということから、課室の目標を中心として、 省の単位、部局の単位、施策事業の単位、個々の職員の業務の単位でPDCAサイクルを機能させていく ことを想定しております。  具体的な事務・事業の塊ごとのPDCAを4頁の上の図にありますとおり、特にPDCAの「C」の検証・ 分析に当たっては、真の原因を考えるということが次の改善につながるということ。また、目標達成 されたかどうかに重点を置きすぎると、次の改善につながらないので、むしろ達成しなかったことを 率直に認めて本当の原因を探り、取り除くということが重要であると考えているところです。5頁以降 は具体的な進め方になっております。以上が1点目です。  2点目は、資料5「行政支出の無駄削減に向けた取組について」の第1の目標の1の段落にも少し触 れていますけれども、昨年12月に行政支出総点検会議において取りまとめられた指摘事項において、 各府省は目標の設定、予算の執行状況の調査・把握などの担当プロジェクトチームの無駄の削減のた めの取組について、既存の政策評価に関する会議を活用し、外部有識者からのご意見を聞き、指摘を 受ける機会を設けるべきであるというご指摘を受けました。これを受けて当省においては、この資料 にあるとおり本年3月31日に、平成21年度に取り組む行政支出の無駄削減に向けた目標、それから第 2のところにあるように、目標達成のための具体的取組を定めたところです。  この資料の第2のところにある具体的な取組の概要をご紹介いたします。1の無駄削減に向けた職員 の意識改革として、(1)「無駄削減」及び「業務効率化」に関する取組の人事評価への反映。(2)「無駄 削減」等に係る取組の職員からの提言募集などを実施することとしています。  2頁の2の行政支出等の見直しに関しては、(1)公益法人への支出については、下の部分で、平成21 年度の予算執行に当たっては競争性のある契約方式への移行等の見直しを行い、引き続き支出の節減 に取り組むこととする。(5)予算査定と政策評価との連携等に取り組むこととしています。  次の3で行政コストの節減・効率化の(2)実質的な競争性を確保するための取組を実施することや、5 頁の5 取組状況等の公表ということで、取組状況を公表していくこと、あるいは6 外部有識者からの 意見を伺っていくことを盛り込んでいます。  3点目の、「質の行政改革」に関する取組については資料6です。今後の行政改革の取組については、 コスト削減を目指す量の改革とともに、国民の満足度を高める質の改革を重視する、という総理の発 言を受け、質の行政改革を進め、国民の行政に対するニーズを把握し、行政の生産性を高めることに より、国民の満足度の向上を図ることとされ、各府省において業務工程改革を実施することとなって おります。  スケジュールは資料6の2.「『質の行政改革』に関する取組み方針」についてのところにあります とおり、2009年度については初動の年と位置づけて、各府省は3つ程度の対象業務を選定し、9月中に 各府省の業務工程改革に関する計画を定め、年内に結果を取りまとめるとともに、取組方針等を見直 して、3月までに平成22年度に本格実施を行うための計画を策定する。平成22年度については、本格 実施の年と位置づけて実施をし、平成23年度については業務工程改革を定着させる定着の年と位置づ けて、3年間で定着させていこうという計画になっているところです。  下の3.その他の○のところに書いてありますとおり、業務工程改革推進のための環境整備として、 表彰制度や業務工程改革提案制度の整備、あるいは人事評価等との連携を図るということも盛り込ま れています。質の行政改革については、厚生労働行政は国民へのサービスと極めて関係の深い分野で あることから、率先して取り組むべきであるということで、既に昨年末、厚生労働行政の在り方に関 する懇談会の中間取りまとめでの提案などを踏まえ、省内のプロジェクトチームや、さまざまな職種 の若手職員からなる業務改善委員会の設置を行っておりまして、厚生労働省改革工程表の策定、公表 が行われているところです。  このようなこれまでの取組を最大限活用しながら、質の行政改革のための検討体制を整備し、業務 工程改革に積極的に取り組んでまいりたいと考えているところです。説明は以上です。 ○高橋座長  3点について、厚生労働省でいま取り組まれている3つのテーマについての報告をいただきました。 政策評価といろいろな形でかかわりがあると思われるので報告をしていただきました。 ○篠原委員  これには「厚生労働行政全般」と書いてあるのですが、企画・立案と執行に分けた場合に、ここに PDCAとか行政とか、執行の関係はうまく適用できるのですが、企画・立案、本省の部分まで対象にな るのでしょうか。「すべて」と書いてあるから、比較的頭を使う業務も、ここの対象としてがっちり 入れてしまうのかということです。 ○政策評価官  全部を対象にしていくということです。 ○篠原委員  そうすると、多少違うと私は見ています。例えばシンクタンクとか、そういう所のをうまく使わな いと、執行方と同じようにやってしまうと無理があるのではないかという気がするのです。比較的い ろいろな改革を見ていると、頭を使う人たちも、工場の仕事的にやっているのがなんとなく多いもの ですから、企画・立案で頭を使うのは非常に難しいことを言われていて、ある意味ではコーヒーでみ んなでお茶を飲んでいるのは非常に有効だとも言われています。ですから、これは難しいという気が するのです。  2番目に、私も若いときからずっと新しい改革に携わっていて常に感ずるのは、教育の不足みたいな ものです。ここに書いてあるのですけれども、もっと時間を増やすというようなことはどの程度考え ておられるのでしょうか。これは、従来の研修計画の中に入れると書いてあります。私は、それでは 不足しているのではないかという感じがするのですけれどもどんなものでしょうか。 ○政策評価官  研修については、既にある程度やっています。今年度の後半においても、階層別に行っていくこと で予定しています。 ○篠原委員  我々監査法人の場合は、トップまで監査という業務に従事しているから上まで対象になっています。 民間を見ると、こういうのは下のほうの研修対象で、私は上のほうまで対象にすべきだと思うのです。 その辺も対象になっているのでしょうか。課長は当然かもしれないけれども、その上はどうかなとい う気もしないでもないのですけれども、どんなものですか。 ○高橋座長  私は自治体でいつもそう思います。トップと部長級が駄目だと、いくら下が頑張っても駄目です。 こういうのはいつも感じます。厚生労働省はどうでしょうか。とりわけ新しい政策領域がどんどん入 っています。日本の公務員の人事というのは、ジェネラリスト原則で機械的に回すと、俺のほうが知 っているなと、自治体で長く審議官をやっていると思うのです。再教育もしないと、PDCAの目標設定 が上から下りてこないという、そういう難題があります。いくらシステムを入れたところで、初発の インテリジェンスのレベルが不足しているとどうにもならない、ということを最近よく思います。 ○政策評価審議官  このPDCAについては、もちろん課長以下については研修等を組んでいます。幹部クラスについても、 幹部会議の場で研修というほど充実した内容かどうかは別にして、この中身の説明をして、省全体の PDCAについて理解を得ることについてはやっております。  それから、最初から全部といってもなかなか難しいと思っております。いま当面スタートしようと していますのは、各局ごとに1つぐらいモデルを選んでやってみて、それを応用していくというよう な手法でまずやろうというやり方を想定しています。企画部門も含めて、モデルの選び方は各局自由 ということにしないと、なかなか出てこないので、そういう形でやろうと思っております。無理のな い形でやろうと。  それから、第一線を使う業務というのは、大体数値目標の設定をするのを理想にしています。この 企画・立案部門だとなかなかその数値目標は難しいケースもありますので、それは弾力的に運用する ことも含め、いろいろな工夫をしていきたいと思っております。 ○高橋座長  予定の時間を超過しておりますが、ほかに何かありますか。 ○篠原委員  私は独立行政法人で8年経っています。提案制度を取り入れたらどうか。これは給与の制度を変えな いと駄目だというのですけれども、ここに提案制度とあるのですが、当然いちばん有名なのはトヨタ です。年間全部で30億円とか40億円使われているそうです。1件当たり5万円とか、多くても10万円 ということだと思うのですが、こういう部分はあまり考えていないというか、全省で考えているので すか。 ○政策評価審議官  2つありまして、第一線機関については、例えば労働関係の第一線機関で、ハローワークの職員に提 案してもらって、それを労働局のトップがチェックをして予算を付けるという取組は既にスタートし ております。これは、関係の職員の労働組合の評価も非常に高くて、職員のやる気を出していること と言われています。  本省レベルについては、質の行政改革のところに提案制度と書いてあります。これは、積極的に職 員に提案してもらうというのは、いまでも運用上はやっている部分もあります。これを積極的に制度 として導入するようにしたいと思っております。その制度の枠組みを早く作ってしまえということで、 いまその検討をしているところです。委員のおっしゃるように、これは非常に大事なことですので、 いろいろな工夫をしていきたいと思っています。 ○高橋座長  厚生労働省は厳しい状況だということを、いろいろな機会に、職員が、私は厚生労働省に勤めてい ると言いにくいという述懐を伺いました。そういう意味ではとても辛いことがいろいろ起こっていま す。何よりも大事な仕事をしていて、政策評価では省庁としての誇りはものすごく大事かと思います。 その辺はいろいろな形で頑張っていただきたいという、政策評価の前提の話かと思っております。8月 30日以降いろいろなことが起こるようですが、粛々といままで積み上げてきた大事な財産というか、 やり方というか、いろいろなシステムというのがありますので、そういうものをきちんと踏まえなが ら、新しい時代に対処していただきたいと思います。そういうことで本日は閉じさせていただきます。 どうもありがとうございました。 (了)   照会先:政策統括官付政策評価官室 政策評価第二係   連絡先:03−5253−1111(内線7780)