09/07/30 第1回「日本人の食事摂取基準」活用検討会議事録 第1回「日本人の食事摂取基準」活用検討会 議事録 1.日時:平成21年7月30日(木) 15:00〜17:00 2.場所:法曹会館 高砂の間 3.次第 (1)食事改善、給食管理における活用方法について   (2)その他 ○河野栄養・食育指導官 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第1回「日本 人の食事摂取基準」活用検討会を開催させていただきます。  まず、開催に当たり、健康局総務課生活習慣病対策室、木村室長よりあいさつ申し上げ ます。 ○木村室長 厚生労働省生活習慣病対策室長の木村でございます。本日の第1回目の「日 本人の食事摂取基準」活用検討会の立ち上げに際し、ここにおられる委員の皆様方におか れましては、快く委員をお引き受けいただきまして、また本日、大変お忙しい中、このよ うにお集まりいただきまして本当にありがとうございます。心より御礼申し上げさせてい ただきたいと思います。  さて、「日本人の食事摂取基準」は、言うまでもなく健康な個人、または集団を対象と いたしまして、国民の健康維持や増進、そしてまた生活習慣病の予防といったことを目的 として、エネルギーや各栄養素の摂取量の基準をお示しするものでございます。  これにつきましては、今年5月に「日本人の食事摂取基準」策定検討会において最終報 告書がとりまとめられ、公表させていただいているところでございます。  この報告書の特色につきましては、第1点として、非常に多くの文献、約1,300本程度 の最新の学術論文などを最大限に活用いたし、科学的根拠に基づいた策定が行われたとい うこと。  第2点として、策定の基礎理論だけではなく、栄養指導あるいは給食管理などに活用す ることが重要であることにかんがみまして、活用の基礎理論という新たな項目も立て、そ れぞれの記述が行われたことが特徴であると考えてございます。  こういった取り組みにつきましては、国外を見ましても、いまだこのようなことをしっ かりやっている国々はないと聞いてございまして、そういう意味で、我が国はこの分野に おいて先端的な取り組みをしているという自負を持っているところでございますけれども、 何よりも今後、これが食事の改善や、あるいはまた給食管理に適切な活用方法を具体的に 提示することによって、より活用されていくことが望ましいことから、本日お集まりの検 討会を設置、開催させていただいたところでございます。したがいまして、その観点から、 どうぞ忌憚のない御意見を賜りますよう、何とぞよろしくお願い申し上げる次第でござい ます。  そして、本日は文部科学省の担当官の方にも学校給食摂取基準に定める基準ということ もございますので、お越しいただいてございます。その点、何とぞよろしくお願い申し上 げます。  そして、この検討会でございますけれども、今回の検討会も含めまして、本年度、3回 程度開催することを予定してございまして、また内容によっては、その検証作業が必要な ものにつきましては作業部会もあわせて設置し、そこで細かなところは検討させていただ くことにしてございます。  そして、この検討会の最終的な目標としましては、適切な活用方法について、その考え 方や具体的な留意点といったものをお示しするということ。そして、食事バランスガイド がございますけれども、今般の改定を踏まえた検証、更には国民健康・栄養調査の食事調 査についての課題といったものを検討していただくということが検討内容になろうかと思 います。  いずれにしましても、このようなことを通じ、今後のエビデンスに基づいた体制づくり に、より活用させていただきたいと思ってございますので、何とぞその点を踏まえた御検 討のほどよろしくお願い申し上げまして、まずは会議冒頭のごあいさつにかえさせていた だきます。本日は何とぞよろしくお願いいたします。 ○河野栄養・食育指導官 本日、座長選出までの間、進行を務めさせていただきます栄 養・食育指導官の河野でございます。よろしくお願いいたします。  それでは、委員の先生方の御紹介をさせていただきます。着席して失礼させていただき ます。  資料1の2枚目に構成員名簿が付いておりますので、これに従いまして御紹介させてい ただきます。  女子栄養大学教授、石田裕美委員でございます。 ○石田委員 よろしくお願いいたします。 ○河野栄養・食育指導官 東京大学大学院教授、佐々木敏委員でございます。 ○佐々木委員 よろしくお願いいたします。 ○河野栄養・食育指導官 西洋フード・コンパスグループ株式会社メニュー開発調理指導 部メニュー栄養管理担当部長、佐藤愛香委員でございます。 ○佐藤委員 よろしくお願いいたします。 ○河野栄養・食育指導官 奈良女子大学教授、伊達ちぐさ委員でございます。 ○伊達委員 よろしくお願いいたします。 ○河野栄養・食育指導官 独立行政法人国立健康・栄養研究所健康増進プログラムリーダ ー、田畑泉委員でございます。 ○田畑委員 よろしくお願いします。 ○河野栄養・食育指導官 神奈川県立保健福祉大学学部長、中村丁次委員でございます。 ○中村委員 よろしくお願いいたします。 ○河野栄養・食育指導官 お茶の水女子大学大学院教授、山本茂委員でございます。 ○山本委員 よろしくお願いいたします。 ○河野栄養・食育指導官 青森県立保健大学教授、吉池信男委員でございます。 ○吉池委員 よろしくお願いいたします。 ○河野栄養・食育指導官 なお、国立健康・栄養研究所栄養疫学プログラム国民健康・栄 養調査プロジェクトリーダー、由田克士委員におかれましては、少し遅れるということで ございます。  また、オブザーバーとして文部科学省スポーツ・青少年局学校健康教育課学校給食調査 官、田中延子調査官でございます。 ○田中学校給食調査官 よろしくお願いいたします。 ○河野栄養・食育指導官 それでは、続きまして座長の選出を行わせていただきます。 ○木村室長 これにつきましては、誠に事務局の方からの提案で僣越なのですけれども、 今般の「日本人の食事摂取基準」検討会の委員でもございますし、また管理栄養士の養成 にも非常に尽力されておられます神奈川県立保健福祉大学の中村委員にお願いしたらよろ しいかと思いますが、いかがでございましょうか。よろしゅうございましょうか。 (「異議なし」と声あり) ○木村室長 ありがとうございます。それでは、中村委員、座長をよろしくお願いいたし ます。 ○中村座長 中村でございます。それでは、指名をいただきましたので、これから座長を 務めさせていただきたいと思います。よろしくお願いしたいと思います。 ○河野栄養・食育指導官 議事に入る前に、事務局より資料の確認をさせていただきます。  お手元の資料、議事次第を1枚おめくりいただきまして、座席表がございます。  資料1、「日本人の食事摂取基準」活用検討会開催要領。  資料2、「日本人の食事摂取基準」活用についての検討事項(案)。  資料3、「日本人の食事摂取基準」活用の基礎理論について。  資料4、特定給食施設等における栄養管理のあり方について。  資料5、給食施設における食事摂取基準の活用の現状について。  資料6、食事バランスガイドについて。  資料7、国民健康・栄養調査の概要について。  参考資料1、お手元の方に冊子で2010年版の「日本人の食事摂取基準」を置かせていた だいております。  参考資料2、ブロック別普及啓発講習会について。 以上でございます。不足等ありませんでしょうか。 (「はい」と声あり) ○河野栄養・食育指導官 引き続きまして、本検討会の開催要領について御説明いたしま す。  資料1をごらんいただけますでしょうか。  目的のところに書いてございますとおり、2010年版は、平成22年度から26年度まで5 年間使用することとなっております。  冒頭、室長のあいさつにもございましたように、活用の基礎理論を踏まえ、食事改善並 びに給食管理における適切な活用方法について検討することを目的として開催することと されております。  検討内容につきましては、2010年版食事摂取基準における活用の基礎理論を踏まえまし て、食事改善における活用方法の検討、あわせて給食管理における活用方法の検討を行う こととされております。  検討会の庶務につきましては、健康局総務課生活習慣病対策室が行うこととなっており ます。  このほか、検討会の運営に関して必要な事項は、座長が健康局長と協議の上、定めるこ ととされております。  また、構成員名簿をもう1枚おめくりいただきまして、「(参考)」としまして、食事 バランスガイドの検証につきましては、若干作業が関わってまいりますので、吉池委員を 中心にしまして、ここに記載しております5名の委員の先生方で作業を進めていただくこ とになっております。以上でございます。  なお、本検討会は、会議及び議事録を公開とさせていただきますので、よろしくお願い いたします。  それでは、これ以降の進行につきましては、中村座長にお願いいたします。 ○中村座長 ありがとうございます。  では、本日の検討事項(案)について事務局から御説明をお願いしたいと思います。 ○河野栄養・食育指導官 資料2、活用についての検討事項(案)をごらんいただけます でしょうか。検討事項として幾つか案として挙げさせていただいておりますので、御説明 させていただきます。  まず、1点目の給食管理における活用方法については、給食管理における食事摂取基準 を踏まえたPDCAサイクル(計画、実施、評価、調整)の実施について。また、国で定め る給食基準の根拠の明確化ということで、学校給食のように、1日3食のうち1食を提供 する場合もございますので、そういった基準の根拠について。  2点目としましては、食事改善における活用方法についてということで、主に国レベル でのものとなりますが、推定エネルギー必要量の変更に伴います食事バランスガイドの見 直しの必要性に関する検証について。また食事摂取基準の適応に向けた国民健康・栄養調 査(栄養摂取状況調査)の課題についてとなっております。  なお、国民健康・栄養調査につきましては、本日、資料7に「国民健康・栄養調査の概 要について」ということで、栄養摂取状況調査票を抜粋したものを添付しておりますので、 そちらの方をごらんいただけますでしょうか。  調査客体は、無作為抽出された300単位区内の世帯及び当該世帯となっておりますが、 当該世帯については「当該世帯員」の誤りでございます。平成19年調査ですと、約3,500 世帯、9,000名弱の客体となっております。  調査項目は3項目ございまして、中ほど「2)栄養摂取状況調査票」につきましては、 1日調査となっております。  具体的な調査票は、1枚おめくりいただきまして、2ページ目以降に一部抜粋というこ とで御提示させていただいておりますが、例えば3ページ目をごらんいただきますと、各 世帯ごと、更に世帯員ごとに記載する形となっておりまして、「7 身体活動レベル」で は、身体活動レベルを把握する項目でありますとか、更に1枚おめくりいただきまして、 4ページ目に「食物摂取状況調査」ということで、料理名、食品名、使用量、廃棄量、更 には、それぞれの世帯員への案分比、残食分も含めまして記述するような内容となってお ります。以上でございます。 ○中村座長 ありがとうございました。それでは、ただいま説明にありました事項を検討 するに当たりまして、基本的な内容について、その考えや現状の説明をお願いいたします。  まず最初に、「日本人の食事摂取基準」活用の基礎理論について、佐々木委員から御説 明をお願いしたいと思います。先生、よろしくお願いいたします。 ○佐々木委員 それでは、資料3をごらんください。「食事摂取基準(2010年版)−適確 で積極的な活用に向けて」と書きました。10分程度のお時間をいただくことになりますが、 先生方におかれましては、もう十分に御理解いただいている内容で、もう一度ここで申し 上げることはほとんどないと思います。簡単にサマライズ、まとめをさせていただきたい と思います。  1ページ目の下をごらんください。  基本構造ですが、御存じのように総論と各論に分かれております。活用は、総論の2つ 目に活用の基礎理論というところに書かれております。しかし、あくまでも基礎理論であ り、活用を考える上での理論が書かれていると御理解ください。  しかしながら、活用の基礎理論を御理解いただくためには、策定の基礎理論を御理解い ただかなければなりません。そして、策定の基礎理論並びに活用の基礎理論の上に各論、 すなわちエネルギー、並びに34種類の栄養素の数値、並びにその数値根拠が記載されてい るわけでございます。  このようなことを考えますと、総論の策定の基礎理論をまず初めに読むこと、その次に 活用の基礎理論を読むこと、この2つを御理解いただいた上で、各論のうち、必要な部分 を優先して読んでいただく、このような読み進め方をしていただければ、理論を正しく、 そして柔軟に理解していただき、そして現場で使っていただけるのではないかと考えてお ります。  2ページ目に参ります。  これは、活用の基礎理論の目次を取り出したにすぎません。その中で太字ゴシックにし ましたもの、ここが今回、一つの目玉でありまして、どのようなところに活用するのかと いうことの整理を試みました。すなわち、食事改善(個人に用いる場合)、食事改善(集 団に用いる場合)、そして、これはその上の2つのどちらにも属しません。ただし、若干 のオーバーラップはあると思うのですが、3番目に給食管理を挙げてございます。  活用に当たりましては、この3つの分類のどこに位置するのかということをまず初めに 考え、そして決めていただき、それぞれの活用の理論並びに用い方ということを考えて実 践に移していただくのがよかろうと考えております。  食事改善(個人)の1つ上に、食事調査等のアセスメントにおける留意点というところ がございます。この部分の内容を、その下のこまに取り出しました。下をごらんください。  食事調査等のアセスメントにおける留意点でございます。目的:アセスメント、そして 計画、そして実施、そして調整等がございまして、もう一度アセスメントに戻る。すなわ ち、アセスメントから始める。そして終わりはなく、ここがサイクルとして回っていくと いう考え方でございます。あくまでもアセスメントありきという考え方と理解していただ ければと思います。  ただし、アセスメントの内容、程度に関しましては、今後、先生方に御議論いただけれ ばと考えております。食事摂取基準2010年版の中では、基本的なことが記載されておりま す。  その中で、アセスメントでの注意点としまして、その下のところに食事調査が挙げられ ておりまして、アセスメントの誤差を中心としまして記載がなされております。はかると いうことには必ず誤差が伴います。したがって、誤差を理解した上でアセスメントを行い、 その結果を評価し、それを計画に持っていってほしいという考え方でございます。  そのほかのアセスメントに関しましては、その下にタイトルのみ挙げてございますが、 説明は省略させていただきます。  次のページをごらんください。  3ページ並びに4ページに食事摂取基準2010年版の活用の3つの使い方に関するまとめ の表を抽出してまいりました。ただし、大きさの関係で文章は一部省略してございます。  3ページ上の表が食事改善(個人に用いる場合)を目的として食事摂取基準を用いる場 合の基本的な考え方というタイトルになってございます。  ここで注意していただきたい、読み取っていただきたいことは、この表の構造でござい ます。行を見ていただきますと、エネルギーの摂取の問題、不足の問題、過剰摂取の問題、 生活習慣病の一次予防に分けられてございます。列をごらんいただきますと、そこにどの ような目的、そしてどのような指標を用いるべきか。これは策定の基礎理論に書いてござ います。その次、評価方法をどうするのか。ここがアセスメントでございます。そして、 そのアセスメントの結果を受けて、ここでございますと食事改善の計画と実施をどのよう にするのかということが、この構造で書かれております。  ただし、何度も申し上げますが、基礎理論でありまして、これですべてというものでは 当然ございません。  下のこまをごらんください。  これは、構造は全く同じでございまして、食事改善(集団に用いる場合)でございます。 構造は全く同じでございますが、集団でございますので、中に書かれている文章は集団に 用いる場合のためとなっております。しかし、同様に列を見ていただきますと、第3列は 食事摂取状態の評価。ここもアセスメントから始めましょう。その結果に基づいて、食事 改善の計画を立て、実施いたしましょうという流れになってございます。  次の4ページ目をごらんください。  3つ目の活用は給食管理でございますが、給食管理に関しましては、先ほどのような構 造の表の前に、もう一つ表が挟まっております。これが4ページ目の上の表でございまし て、給食管理を目的として食事摂取基準を用いる場合の作業手順の基本的な考え方です。  ここも先ほどのアセスメント、そしてそれを評価し、計画を立て、実施し、調整し、見 直しをかけてという流れが、給食管理ということを念頭に文章化されているものとお考え ください。  例えば左、第1列、基本事項、第1行、第2行を見ますと、(1)食事を提供する対象集団 の決定と特性の把握、これはまさしくアセスメントでございます。そして評価し、食事計 画を決定しと進めてございます。したがって、これはアセスメントから始める考え方を、 給食管理でどのように用いるかの概念を書いたものであると御理解いただければよいので はないかと考えます。  ただし、これは何度も申し上げますが、基礎理論でありまして、実践に移すときにいろ いろな解釈、考え方、特例のようなものを付記し、そして実践に移していくことが必要で あろうと考えております。  そして、4ページ目の下でございます。  これが、先ほどの個人に用いる場合、集団に用いる場合に対応する、給食管理に用いる 場合の表でございます。ここでも目的があり、評価があり、そして食事計画の実施という ことになります。ただし、給食管理、ほかの目的と少々様相を異にいたします。したがっ て、表の構造がやや異なりますが、全体構造としては、先ほどの2つの表の構造とほぼ同 じであると考えてよろしいかと思います。  上の部分が4ページ目の下、そして下の部分が5ページ目の上になります。  したがいまして、これらの表並びに本文の意味するところを十分に考え、そして理解し、 そして実際に活用するためにはどのように進めていくべきかというところを決めていく。 そして、その理論を更にしっかりしたものへと向上させていくというのが、この検討委員 会の役目ではないかと考えております。  5ページ目の下をごらんください。  実は、これは私が説明会等で用いているスライドの一部から抜粋してきたものでござい ます。例えばたんぱく質というものを見ますと、ややもするとたんぱく質のページを開こ うとなるのですが、ここではこういう問題形式で問題をつくってございます。  食事摂取基準から見て、推奨量以上の給食献立は悪いことかと書いてございますが、給 食の献立において、食事摂取基準から見て推奨量以上のたんぱく質をその中に入れること、 そういう献立を計画することは、食事摂取基準の考え方からいってよくないことなのかど うか考えてみましょうという問題でございます。  通常は、ここで食事摂取基準の推定平均必要量、推奨量、耐容上限量というものの説明 をいたしまして、さあ、答えはどうでしょうか。そして、どういう給食をつくりますかと いうことへ進んでいくのですが、今日はそれが目的ではございませんので、省略させてい ただきます。  ここで申し上げたかったことは、たんぱく質を考える場合に、策定の基礎理論のこの図 の意味を知っているということが不可欠になるということでございます。  次のページをごらんください。6ページの上でございます。  人によって重要な栄養素はたくさんあるわけですけれども、先ほどたんぱく質を挙げま したので、今度はエネルギーを産生しない栄養素の一つとしてカルシウム、全く同じよう なことが書いてございます。ここも問題でございまして、食事摂取基準から見て、推奨量 以上食べると、更によいことはあるか。  これも活用していく上、例えば食事の指導をしていく上、そして給食献立を計画する上 において、カルシウムの量をどう考えるべきかということを考えてつくった問題でござい ます。  これもカルシウムのページを開いていただくのではなく、総論のページを開いていただ いて、図を見、文章を読み、それから答えを導き出してほしい。そして、その後にカルシ ウムの章を見ていただき、そこに数値を入れていただきたいという考えでつくったもので ございます。  総論、そして基礎理論といいますと、現場から離れたものと考えられるかもしれません。 実は、全くそうではないと私自身は考えております。このような基礎の理論の上に実態が ある。そして、その実態を私たちは改善していこうと考えて、そのためには基礎の理論を、 食事摂取基準の活用に携わるすべての人が理解していただきたい。勿論、学術のレベルで はございません。活用のレベルにおいてでありますが、理解していただきたいと考えてい ます。  最後でございます。「活用に向けて(試案)」と書きました。これは、私の個人的な考 えでございまして、それ以上のものではございません。活用していただくであろう実務者 に対して、そして食事摂取基準を中心としまして、このようなエビデンスを構築していか れるであろう研究者に対して、そして食事摂取基準の考え方を広めて伝えていただける教 育者、伝達者の方に対して、3つに分けました。  最初は実務者に対してですけれども、もう何度も申し上げました。総論を読んでいただ きたい。これを実現したいということです。そして、ただ漫然ではございません。食事摂 取基準の考え方に関する説明会を通して、考え方を理解する。現場の方は、実情をよく御 存じです。そこに考え方というものが付けば、恐らく正しく活用していただけるものと私 個人は期待しております。  もう一つでございます。アセスメントをするために、アセスメントということは、そこ に測定がありまして、データがつくられるわけです。そのデータの収集の方法について習 得する必要がある。そして、収集したデータを正しく分析する方法が必要である。その学 習を個人に求めるのは難しいと思います。そこで、そのためのシステムづくりができない かと考えてございます。  その次、研究者であります。食事摂取基準2010年版をごらんいただきますと明らかなよ うに、活用のところの参考文献が他の章に比べて著しく少のうございます。具体的な活用 方法につながるような研究を奨励し、その研究を増やしてほしいと考えます。  しかしながら、それは科学性の高いものでないと使うわけにはいきません。そして、そ れは原著論文でございます。しかも質の高いものでございます。やはり日本全体の健康を 担うものでございますので、質の高い原著論文になる研究を特に奨励していただきたいと 考えます。  そして、教育・伝達者に対してですが、これから活用のマニュアルや、それに付随する 教科書等、いろいろつくられると思いますし、そうであってほしいと思います。そのとき に、活用方法の解説等には、参考文献やエビデンスレベルなどを付記していただけるとあ りがたいと思います。これは、厚生労働省におきます医療系の他の診療・治療等のガイド ライン、並びに医療系の我が国の学会の診療・治療等のガイドラインの執筆方法が現在そ のようになってございます。健康を担う一つのガイドライン、そしてその活用という観点 から見ましても、科学性の担保は必要なのではないかと考えております。  しかし、活用におきましては、現時点のエビデンスから見て困難な部分が多いだろうと 思います。これは、この1年間の検討委員会における必要、やるべき事項ということより も、もう少し将来、未来を見据えた考え方も含めてのことであると御理解いただければあ りがたいと思います。私からは以上でございます。 ○中村座長 先生、どうもありがとうございました。御質問、御意見は最後にまとめて、 議論の中で行いたいと思います。  では、引き続きまして、「特定給食施設等における栄養管理のあり方について」、由田 委員の方から御説明お願いしたいと思います。 ○由田委員 遅れて参りまして申しわけございませんでした。それでは、資料4をごらん いただきたいと思います。私と石田委員の方から提出させていただいたものでございます。  特定給食施設等における栄養管理のあり方につきましては、平成15年に健康増進法が施 行されまして、その第21条第3項の基準がございます。それに基づき、健康増進法の施行 規則第9条が設けられております。その中には、「特定給食施設における栄養管理の基 準」という形で、求められるべきものが示されております。  実際のものにつきましては、かなり細かく書いてございますので、ここではその要点の みをお示ししております。  まず1番目に、特定給食施設の利用者の身体状況を定期的に把握し、これにより適当な 熱量及び栄養素量を満たす食事提供、品質管理を行い、評価も行うということが示されて おります。  次に、献立につきましては、身体状況、日常の食事摂取量、嗜好等に配慮する。  それから、献立表の掲示、栄養成分表示、栄養に関わる情報提供を行う。  また、必要な帳簿等の適正な作成と整備をする。  さらに、衛生管理を行うということで、既に1)から2)のところで、かなりの部分に ついてあるべき方向が示されていると私は考えております。  この健康増進法の施行規則が出されて、ほとんど同じタイミングで「日本人の食事摂取 基準(2005年版)」が策定されております。このことによりまして、従来の栄養所要量に 基づいた、ある一定の数字に合わせる対応というところから大きく転換しまして、事前事 後を含めて対象者を適切にアセスメントする。また、その状況に応じ、より望ましい栄養 管理を目指すという方向に変化してきていると考えています。  これに基づきまして、実際の特定給食施設等の指導をいたします各地方自治体の条例や 規則等も、大部分がこれに沿った対応に改められております。ですので、実際の特定給食 施設等に求められる栄養管理というのは、既に方向としてはかじが切られているというこ とになります。  これを少し言いかえますと、「日本人の食事摂取基準」を根幹としたPDCAサイクルに 沿った栄養管理であるとも言えると思います。  ただ、実際にこの状態が各特定給食施設に十分浸透しているのかどうなのかということ については、まだまだ改善の余地があるのではないかと考えております。  次に、1ページ目の下のグラフをごらんいただきたいと思います。  このグラフは、平成15年度に石田委員が主任研究者を務められました「特定給食施設に おける栄養管理の実施状況とその基準に関する研究」の一環で、全国の約500施設を対象 に調査を行わせていただいたものです。調査時期は、平成15年12月から翌年2月という タイミングでございましたので、先ほど申し上げました、いわゆる栄養管理の基準という ものが出て、それほど時間が経過していないタイミングでございます。  これをごらんいただきますと、給食を計画するために利用者に対して何らかのアセスメ ントを行っていますかという問いに関しまして、各施設の種類ごとに回答を示しておりま す。例えば体重や身長など、一つ以上の項目で、何らかのアセスメントを行っているかと いう問いに対して、利用者全員に対して行っている施設、一部の利用者に対して行ってい る施設、それから全く何も行っていないものが、施設の種類によってかなり大きく異なっ た状況となっていることがおわかりいただけると思います。  2ページ目の図2をごらんください。各施設の種類別で給与栄養量、給与栄養目標量を どのようにして算定、もしくは決定しているのかということについてもお尋ねしておりま す。条例等が十分浸透していなかったということもあるかもしれませんが、利用者のアセ スメント結果をもとに、国や都道府県等の示す算出方法に従って決定している施設。それ から、国や都道府県の示すある一定の値に合せている施設。それから、施設独自の基準に 基づいているところ。それから、全く考慮していないところまで、かなりのばらつきが出 ている状況であることが確認されております。  それから、その下、図3でございますが、身体状況等の把握についてはどのようにして いるかという問いについて、これは複数回答でお尋ねしております。  これによりますと、診療記録(カルテ)などによって情報を得ている。検診(健診)の 成績を使っている。看護記録を使っている。他部署が収集したデータや資料を2次利用し ている。それから、給食部門が独自にアンケート調査を実施している。その他という結果 で、こちらについても、施設の種類によってかなりばらついた状況であることが認められ たことがおわかりいただけると思います。  3ページ目については、現在は調査時点よりもかなり各自治体、具体的には保健所等の 指導が浸透していることでありますが、例えば、介護保険制度、栄養ケアマネジメント等 が改められていまして、このような対応をとることで何らかの報酬が得られるという枠組 みに変わっておりますので、これに連動して望ましい対応をとっている施設が増加してい るものと考えられます。  しかしながら、この4年間に、必ずしもこのような国や地方自治体が示した方向のとお りにはなっていないという給食施設もあると考えられますので、2010年版の活用に関して も、このような状況も踏まえながら望ましい活用のあり方について、改めて考えていく必 要があるのではないかと思います。 ○中村座長 どうもありがとうございました。石田先生から、何か追加の説明はあります か。 ○石田委員 少しだけ追加させていただきます。特定給食施設における栄養管理のあり方 を考える上で、考慮しなくてはいけないと思っていることについて述べさせていただきま す。  それは、特定給食施設と一言で言っても、種類や規模によって栄養管理のあり方が異な るということだと思います。先ほど佐々木先生の御説明資料の4ページにありました給食 管理を行うときの手順というか、その基本的な概念を御説明いただいたところで、実践に 移すときに特例等々を考慮して考えなければいけないという御指摘があったとおりのこと でございます。  その1つは、人数の規模が給食施設によって100食以上から数千規模まで非常に多様で あるということで、個人の特定が可能な状況など、給食施設の種類や給食施設そのもので 異なるということです。したがって、集団の中でだれが不足しているのか、あるいは過剰 なのかということが、わかる場合とわからない場合があるということで、それによって活 用の方法を考えていかなければいけないということです。  次に、特定給食施設ということで、継続的に給食を提供するというところですが、利用 者によって継続性が異なるということです。毎日食べている、しかも3食給食を食べてい るというケースもありますし、週のうちの何日間か、それもお昼だけというケースもあり ますし、特定の季節に限って給食を食べるというケースもあります。したがって、習慣的 な摂取量に給食がどのぐらい寄与しているのかという寄与率が利用者によって違ってくる ところをどう考慮していくかということに一つの課題があると思います。  それから、対象者の特性が異なるということです。給食施設はおよそライフステージに 合せて集団が形成されています。例えば保育園給食、学校給食、事業所給食、高齢者の福 祉給食といったことがあります。また、対象者の健康状態、健康な人から疾病を有する人 までということで、対象の身体の状況が異なりますので、活用の状況が当然異なってくる だろうということです。  このように、PDCAサイクルの基本的なあり方が同じでも、アセスメント、計画、実施、 この実施というのは、調理と食事提供ということになります。そして、評価する。これら のための方法論とか、そこで求められるスキルは恐らく給食施設の種類等によって大きな 違いが出てきます。しかし、例えば養成校でこれを十分サポートし切れる教育できている かと言われますと、必ずしも十分にできていない部分があります。それは、時間数の問題 とか、それをサポートする研究が不足しているところに依存していると思います。その辺 りを佐々木先生の御指摘のように進めていくことが重要だろうと思っております。以上で す。 ○中村座長 ありがとうございました。  では、引き続きまして「給食施設における食事摂取基準の活用の現状について」、佐藤 委員から説明をお願いいたします。 ○佐藤委員 それでは、資料5に沿いまして御説明させていただきます。  給食施設と申しますと、今、石田先生の方からもございましたが、学校、病院、福祉施 設など、さまざまな施設がございますが、本日は私が実際に担当しております事業所給食 施設についての現状を、給食会社の管理栄養士の立場でお話させていただきたいと思いま す。  では、早速資料に沿いまして説明させていただきます。  こちらは、ある会社の社員食堂の1週間のメニュー表でございます。AセットとBセッ トと、セットと呼ばれる定食が2品のほか、どんぶりやめん、小鉢などを提供しておりま す。  これらのメニューは、調理法や主素材が偏らないように、また和食や洋食、中華などの バラエティーを持たせ、より多くの社員の方に社員食堂を利用していただくために計画さ れたメニュー表でございます。  この中でどのメニューを選ぶかというのは、利用者個人の意志でありまして、組み合わ せも自由なカフェテリア方式でございます。更に、この社員食堂で食べるかどうかという 選択もございまして、社員食堂ではなく、外食やコンビニなどといった昼食を選ばれるケ ースもございます。  このような中、さまざまな健康に対するアプローチを行っております。そのうちの1つ が次のページの資料の「リ:コレクトメニュー」です。社員食堂でさまざまな栄養情報を 提供する中で、難しいことは言わないで、これを食べれば健康になるというメニューを出 してという御要望が多く出てまいりました。更に、そこには、健康になるけれども、おい しくて量があるものというリクエストも付いてございます。  そこで生まれたのが、このリ:コレクトメニューです。下部に示しましたように、エネ ルギーなどの5つの栄養素の基準をすべて満たしていることがリ:コレクトメニューの条 件になります。これらの基準設定のベースは、「日本人の食事摂取基準」でございます。  更に、次の資料では、このリ:コレクトメニューを提供している食堂にて1か月、リ: コレクトメニューを食べていただくというモニター制度を実施し、その結果を学会で発表 したものでございます。  20名のモニターの方が1か月の間、リ:コレクトメニューを食べ続けることにより、緩 やかな減量が見られ、モデル的なメニューを実際に喫食することにより、食事の適正量の 目安を理解されるという波及効果も期待できる結果となりました。  このほか食堂では、利用される社員の方に栄養健康情報の提供も行っております。次の 資料がその1例になります。  実際には、上段と下段を両面印刷しまして卓上メモとして活用しております。メニュー に栄養価表示をしておりましても、自分が1日に何カロリー食べればよいかの目安がわか らないという方が多くいらっしゃいましたので、こちらも食事摂取基準をベースに1日当 たり、また昼食1日当たりの目安カロリーをわかりやすくお示ししました。このほかにも、 食事バランスガイドをベースに、何をどのように組み合わせて選べばバランスがよい昼食 になるのかを示したものなど、具体的な内容を示しまして、一般の栄養の知識が余りない 方にもわかりやすく使える情報となるようにしております。  以上、資料に沿いまして事業所給食の現状についてお話させていただきましたが、現場 の管理栄養士としての意見を申し上げますと、実際に食事を決めるのは喫食者御本人であ るため、まず一番大事なことは、一人ひとりに食事の選択力を付けていただくこと。その ための働きかけをすることが事業所給食では大切なのではと思っております。  また、更に現状では、事業所給食施設のほとんどを給食会社が受託運営している現状を 考えますと、委託をしている施設側からの働きかけも重要となります。給食委託について、 施設側の健康管理部門の方が積極的に関わられるとか、給食提供以外の社員の健康教育に ついても、食堂を運営する給食会社に業務委託するなど、施設側からの働きかけにより事 業所給食の管理栄養士が専門性を生かせる範囲が広がることと思っております。私からの 報告は以上でございます。 ○中村座長 ありがとうございました。では、最後になりますが、食事バランスガイドの 検証について、吉池委員から御説明をお願いしたいと思います。 ○吉池委員 資料6をごらんください。  食事バランスガイドは、2005年7月に公表されたもので、2004年夏ごろ、すなわちちょ うど今から5年ほど前から検討が始めらたれものであります。  食事の推奨をする方法としては、まず第1に栄養素レベル、これは食事摂取基準がベー スとなるわけです。2番目に、食品群別。例えば6つの基礎食品や3色分類というのが従 来使われています。更に、より実際の食生活の姿に近いアプローチということで、食事バ ランスガイドでは、料理レベルで食べる内容をあらわしております。  食事バランスガイドの栄養学的根拠の部分は「食事摂取基準」にあり、2005年に食事バ ランスガイドを作成したときも、2005年版の食事摂取基準との関係についての検討を行い ました。ただし、食事バランスガイドそのものは、厳密な定量性をうたったものではあり ませんので、ある程度の幅を許容しながらも、特に食事摂取基準2005年版の推定エネルギ ー必要量などとの関連を考慮して、サービング数を決め、またほかの主要な栄養素につい ての確認作業をしました。  2ページ目をごらんください。  今、申しましたエネルギーにつきまして、カバーできる基本的範囲としては、1,600キロ カロリーから2,800キロカロリーぐらいの幅を想定し、サービング数の調整で6歳以降の 国民はカバーできるのではないかということで、フローチャートを作成しました。  この際、身体活動レベルにつきましては、低い、普通以上という区分を12歳以上につい て付けているわけですが、この辺につきまして、今回、食事摂取基準2010年版の推定エネ ルギー必要量あるいは身体活動レベルの振り分けに基づいて、もう一度確認作業をする必 要があると考えています。また、主要な栄養素についての一とおりの確認作業が必要と思 っております。  これらの確認作業だけではなく、より積極的に食事摂取基準をベースとして、食事バラ ンスガイドが多くの場で活用できるということを考えますと、2005年度版では、6歳以上 をカバーするという形では書かれておりますが、主には成人以上を対象としての使用を想 定しておりました。今回、種々の作業を行うに当たりまして、より積極的に子ども、より 具体的には児童生徒に適用できるかについて検討も行っていったらどうかと考えておりま す。  4ページ目をごらんいただきたいと思います。今、エネルギーに合わせるということを 申しましたが、食事バランスガイドそのものが料理としてあらわすために、糖尿病の単位 計算、食品交換表などと違いまして、エネルギーを厳密に定量的にとらえるものではあり ません。その例として、下の図1にありますように、同じ料理区分の中でもエネルギーが かなりばらつきがある中でサービング数を当てはめていくという困難さはありますが、こ の辺についてももう一度検証をしていく必要があるだろうと思っております。 ○中村座長 どうもありがとうございました。  では、一通り御説明いただいたわけですが、資料2を見ていただきたいのですが、本日 のこの委員会の検討事項が設定されているわけですが、これに沿って、本日は最初ですか ら、御自由に御意見をお伺いしていきたいと思います。少し意見を交換したいと思います。 時間が約1時間ございますので、何か御意見があったら。 ○伊達委員 質問させていただいてよろしいでしょうか。 ○中村座長 質問もいいです。どうぞ。 ○伊達委員 2005年版と比べまして、給食というのが説明の中で独立したというのは、前 は利用のときには集団と個人というレベルでの活用の形だったのが、そこに給食というの が今度明確に分けて書かれたということは非常に利用しやすいと思うのですけれども、報 告書の「活用の基礎理論」の「目的から見た活用の基礎分類」というところで、目の前に 複数の人がいても、食事摂取基準の評価、食事指導などを個別に行う場合は、個人として 扱うので注意を要するという説明がありますが、これと、石田先生が説明されました、給 食の施設でも100食以下から数千まであるというように、すごく幅がありますので、その 辺をもう少し段階別に整理する必要はないのでしょうか。  佐々木先生にちょっとお尋ねしたいのは、顔が見えたら個人として扱うというところを もう少し詳しく御説明いただけませんでしょうか。 ○佐々木委員 この人と特定ができたら個人。 ○伊達委員 小さな職場だったらこの人とわかるけれども、大きな職場だったら何千人も いて、とてもわからないというところなので、それを実際に使っていくときに、何かもう 少し、それをどうしたらいいのかというのが必要ありませんか。 ○佐々木委員 全体の集団としてというか、人の集まりの数の大きい小さいが定義ではな いのです。定義は、何か行動を起こす側、受ける側ではなくて、指導でもよし、給食でも よいのですが、出す側が受ける側を個人として特定できるかできないかにあると思います。 たとえ人数が多くても、特定できれば、それは個人として扱ってよろしい。  現実的には、全体の人数が多くなって、扱う人当たりの労働者の数が総体的に小さくな る。逆に言うと、労働者1人当たりに対して扱う人が多くなると、人の特定は困難になる と思います。ですから、給食管理においては、個人対応すべきとも集団対応すべきとも決 めるわけにはいかないということで、今回、給食のところだけ個人からも集団からも分け て整理されることになった。 ○伊達委員 規模で、例えば大きな集団でも社員カードのようなもの、IDカードを入れて 何を食べたかというのがわかるようなシステムになれば、それは個別対応と言うのですか。 ○佐々木委員 できれば。 ○伊達委員 そういう指導というか、アセスメントをして、何か評価できれば個人対応と。 ○佐々木委員 そこもすべきではなくて、できるか否かという視点で考えた方がいいと思 うのです。個人対応できる。そして、それをすることに意味があると考えれば、個人対応 していただくことが正しいのではないかと思います。  でも、それと現実との間でどのような理論をつくり、どういうシステムなりテクニック をつくっていくかということを、現実の方から見て考えていく必要がある。これは個人な のですか、集団なのですかということを勿論考えてほしいのですが、それで完全に二分す るというのは、給食を考える上で難しいだろうなと思います。 ○中村座長 石田先生、何か意見ありますか。 ○石田委員 個人が特定できるというときに、アセスメントするためにどの程度の情報が 得られるかというところも関係してくると思います。身長、体重だけがわかるのか、もっ と深く身体の状況がわかるのか。そして、勿論食事の摂取状況がわかるのかといった、ア セスメントできる項目によっても、恐らくアプローチの仕方は違ってくるので、何かまと めて集団とか個人という仕分けではできない。 ○伊達委員 給食は給食の部類の中の、すごく幅がある形での対応するということですか。 ○石田委員 その中でも、個別にかなり対応できる給食もあると思います。 ○伊達委員 だから、給食は給食で独立して幅広いもので、それぞれの対応をすべきです ね。 ○石田委員 すべきだというか、まずは整理するということだと思います。 ○中村座長 そうすると、今回の活用の中で、こういう給食のモデルのときには個人で対 応すべきだという指針が出せそうですか。 ○石田委員 もう一つ、給食はつくるということも考えなくてはいけないので、1対1対 応が経営的に、あるいは人的資源的にできるのかといった、給食を出す仕組みと同時に考 えなければいけませんので、そこのところの判断は、専門職、管理栄養士がいて、どうい う方法論があって、自分のところはどういう給食が出せるのかにあわせて、自分たちが組 み合わせていけるようになるべきだと思います。  そのためには、アセスメントとか給食の出し方としては、こういうことができ得るので はないかという方向性が、ある程度のパターン分けで出てくることが、使いやすいことに はつながると思います。 ○中村座長 そのときに考慮すべき要因はこういうことだという提案はできる。 ○石田委員 はい。 ○山本委員 活用していく上で、個人と集団はとてもわかりにくいところがあるのです。 今、先生方の説明を伺っていると、個人と集団という分け方の背景は、相手がどの程度わ かっているかということですが、単純に基本は個人とすればいかがでしょうか。 ○中村座長 いかがですか。 ○伊達委員 私もすごく不思議というか、一般のこれを活用する専門家がどのように対応 したらいいか迷うのがそこかと思ったのです。今、先生がおっしゃった、本当に言葉の使 い方だけで変えると言うなら、どうしたらいいのかと迷うのではないか。それをもう少し はっきりと示せないのか、示さなくていいのかがわからない。 ○中村座長 由田先生、いかがですか。 ○由田委員 今いろいろなお話があったのですけれども、多分100人相手の人がいても、 200人いても、一番身の丈にあったものをお出しできることが実は本当は一番望ましいと 思います。ただ、そこに得られる情報であるとか集団の特性がどこまでわかるのか。ある いは、一口に集団と言ってもさまざまな集団の考え方、とらえ方がありますので、すべて の個人に向けてということはなかなかできないという限界がありますから、そこの状況に 応じて、このレベルまでわかるのであれば、ここら辺のところまでは目指してください。 でも、一番のゴールはその先にありますという形で、少なくともこの辺りまではちゃんと 見てくださいという、ある程度の目安をお示しすることができれば、それは非常にいいの ではないかと思っています。私は個人としてそういうふうに思っています。 ○山本委員 結局、私はこの個人か集団という言葉を使う側がどう判断していくかと考え ていく場合、由田先生が言われたことも、伊達先生が言われたことも、結局、個人とか集 団と言わなくても、できる範囲で個人にしておいて、わからないところは、それはわから ないのだから集団としてやや大まかな対応にするというだけのことで、それだけでいいの ではないかという気はするのですが。 ○中村座長 どうですか、御意見どうぞ。 ○吉池委員 まず、給食施設以外での整理を考えたときに、「個人」と「集団」という概 念があって、それぞれの考え方を示すことは大事だと思います。基本的にはフリーリビン グ、すなわち、自由に生活して食事している人のアセスメントであり、その推奨というこ とで、「個人」と、ポピュレーションとしての「集団」については、区別がつくと思いま す。  今度は、給食ということを考えたときにPDCAサイクルということが全面に出されて、 そのPDCAサイクルがどのレベルで回るのか。要は、一人ひとりの個人についてPDCAサ イクルが回るのか。そうではなくて、職域の食堂、3食か1食かわかりませんけれども、 一人ひとりを同定せずにPDCAサイクルが動くのか。あくまでPDCAサイクルがどういう レベルで回るのかということを考えながら整理していけばいいのではないかと私は思いま す。 ○山本委員 そのときは、集団でやろうとしても、個人のデータがなければ集団のデータ はとれませんね。 ○吉池委員 例えば学校の例を挙げますと、1食です。それについてのアセスメントをど こまでどうするか。それに対して、個々についての介入なのか、それとも学校の給食とい う機会を利用して、いわゆる「集団」に対するアプローチなのか。要はPDCAサイクルが どこで動くかということによると思うので、そこはもう少し具体的な例を示しながら整理 しておけばいいのではないかと私は思います。 ○山本委員 問題は、現場の人たちがわかりやすいかどうかということだけだと私は思い ます。今の言葉遣いというのは、そこを少し複雑にしていないかという気がするのです。 ○中村座長 ほかにございますか。田畑先生、いかがですか。何か御意見ありますか。 ○田畑委員 食事摂取基準の考え方自体は集団でできていますので、やはり概念としては、 個人と集団という考えがあった方が良いと思います。例えば、推定エネルギー必要量につ いては、個人においてはそのエネルギーを摂取した場合に不足している場合と過剰な場合 がある。一方、集団では、不足している人の割合と、過剰な人の割合と言うことになりま す。食事改善というようなことを考えた場合、個人と○○市市民というような集団では、 アプローチの違いもありますので、それは分けて考えた方がいいと思います。 ○中村座長 個人と集団を分けて考えた方がいい。 ○田畑委員 そうです。 ○中村座長 ほかに何か御意見ありますか。 ○山本委員 今のはアセスメントの話ですよね。集団の栄養状態とか、そういうもののア セスメントをするときに集団という使い方をする。あるいは、個人をアセスメントすると きにも個人。給食の方ではなくて。 ○田畑委員 改善するときも同じ。 ○山本委員 指導のときにも。 ○田畑委員 改善方法もちょっと違うのではないかと思います。 ○山本委員 余り参考になるかどうかわかりません。今の特定健診、特定保健指導の国家 的な事業の中でも、相手は個人です。これだけの大人数に対して個人で対応している中で、 あえて集団という言い方をする必要があるのかどうか。一番最初のところは、個人を改善 していくという健診を行って、それで個人に対して特定の指導をやっていくわけです。で すから、それは既に個人ではないか。 ○中村座長 佐々木先生、山本先生の御意見をどうお考えですか。 ○佐々木委員 恐らく個人か集団かということが分けられるのであれば、活用の基礎理論 において、3番目に給食を分ける必要はなかったのではないかと思います。そこができな いから、3つ目がつくられたのではないか。  そして、石田先生の御意見にもありますように、個人が見える場合から見えない場合ま で、いろいろなバリエーションが給食の中にあり得る。私は恐らくその次が重要だと思う のですが、その間のグレーゾーンがたくさんあり得る。そうすると、0(ゼロ)か1かの 議論ではなく、また0(ゼロ)か1かの対応ではなく、これは極めて個人に近いアセスメ ントが可能で、極めて個人に近い管理が可能だという場合から、その逆まである。  そして、今、自分が管理している人たちは、あえて「集団」と言わずに「人たち」と言 いますが、自分の技量、そして許された労働範囲において、その右から左までのどの辺り に位置するのかということを、それぞれの栄養士、管理栄養士と、その管理者が考え、決 定することができれば、具体的な行動、正しい行動につながるのではないか。  そういう意味で、個人か集団かという議論ではなく、個人とは何か、集団とは何かとい う理解が必要だと思いますが、どちらなのですかという答えの求め方をあえてしない方が よいのではないかと感じています。 ○中村座長 集団がいても、個人で対応するのが理想的だとしても、現実的には給食とい う一つの産業の中で考えれば、できないこともあるというのが石田先生の御意見ですね。 労働力の問題とか。100人いたら、100人に1人ずつ手づくりでつくればいいのでしょうが、 そんなことはできないから、100人を束ねて給食をしなければいけないという現実もある ということ。 ○石田委員 そういう話と、さっき吉池先生が整理してくださったように、個人の食事改 善と集団の食事改善と給食という3つのカテゴリーをごちゃごちゃに議論しない方がいい かと思っています。それが今すごく交錯しているように思いますが。 ○中村座長 山本先生の意見は、集団というのは個人の集まりだというので、個人を目指 した方がいい。だから、集団のアセスメントもやる必要がない。 ○山本委員 現場は、非常にわかりにくい。今、佐々木先生が言われたように、もうグレ ーゾーンだらけなのです。そうしたら、特別に分けておく必要があるのか。 ○吉池委員 給食現場から1回離れて、理屈の上かもしれないのですが、目の前の個人に 対する食事改善、栄養教育があります。これは「栄養教育」の科目で教えます。一方、こ こで言う「集団」の食事改善は、科目から言うと「公衆栄養学」で専ら教えます。そこは クリアーに分けて勉強する必要があります。  では、給食の現場でどうなのかといったら、両方の要素をいろいろ組み合わせて考える という整理でよろしいのではないですか。 ○山本委員 では、特定健診、特定保健指導の中で、集団指導するときと個人対応の指導 をするときに、それは別々なことでやってしまいますか。 ○吉池委員 そこでの日本語の「集団」という言葉が余りよろしくなくて、あえて「公衆 栄養学」の話でしょうと言ったのは、ポピュレーションアプローチと言われるような介入 手法を想定したときの集団。むしろ、ポピュレーションという言葉を使った方がよいのか もしれません。特定健診、保健指導で8人集めてグループ指導するというのとは、ちょっ と違う話ではないかと思います。 ○山本委員 佐々木先生が言われた人数がどうかということよりも特定できるかどうかと 言うことでしょうか。 ○中村座長 個人の情報がどのぐらい手に入るかということですね。ちょっと話がずれる のですが、山本先生、外国での活用の現状というのは調査されたことがありますか。 ○山本委員 アメリカは全然やっていません。アメリカは、DRIsをスタートした。スター トしたけれども、DRIs自体は使っていません。 ○中村座長 それはどういうことですか。 ○山本委員 DRIsを使っていないわけです。学校には栄養士が少ない、病院の栄養士も使 っていない。だから、国自体もNIHも使う方向は出していない。学校給食の元締めの方も、 どうして使わないのと聞いたら、どんどん変わっていくから使えない。もっと待ってから 使うという感じで、現実は使っていない。さっき室長が言われたように、そういうのは日 本の方が更に進んでいると私は思っているのです。  もう一つ、私、アメリカの病院の連中、アメリカ人に自分たちはDRIsを使っているか と質問すると、使っていると言うのだけれども、使っていないですね。彼らが行っている のは数字合わせだけ。例えばカルシウムの必要量が1,000mgから1,200mgになったら、新 しい食事摂取基準が1,200mgになっているから近づけている。それを彼らは勘違いして、 新しい食事摂取基準を使っていると言っているのであって、概念は全然新しくなっていな い、それがアメリカの現実だと私は思いますね。だから、日本の方が進んでいると思うし、 アメリカは参考にならないと思っています。 ○中村座長 では、日本で考えなければいけないですね。 ○山本委員 そうだと思います。ここでしっかりと考えて、独自のいいものを出していく べきだと思います。 ○中村座長 世界に発しなければいけない。 ○山本委員 そうだと思います。 ○中村座長 個人と集団の議論に。給食管理に関してはどうでしょうか。いいですか。い ろいろな条件があって、結論的には個人と集団に分けられないから、第3の軸として給食 管理というのが設定されて、それはグレーゾーンも含めて、幾つか考慮しなければいけな い点があって、それは現場の管理栄養士、栄養士が考慮して、その裁量のもとでどういう 方法をとるかという方向のまとめ方になるのですかね。由田先生、そんな感じで。 ○由田委員 私は今、座長が言われたような方向だと思います。要は、それぞれの対応で きるレベルでどうベストを尽くしていくのかということだと思います。  それから、先ほど私から、情報提供をさせていただきましたけれども、お出しした食事 を食べてくださる方々の特性や情報を何も知らずして食事を提供することはよくないこと です。医師が診察もしないで投薬するようなものですので、情報はできるだけ詳細に把握 した上で、それに基づいたお食事を出すという基本的なところはきちんと押さえておく必 要があります。個人とも集団とも分けられないなかなか難しい解釈や対応が必要になると 思いますので、第三極として給食という整理をしているのだと理解しています。それに応 じた活用方法の検討が求められると思います。 ○中村座長 どうぞ。 ○伊達委員 今、佐藤委員がおっしゃったカフェテリア方式の給食というので、そうなる と組み合わせとか、そういうところが大切なのだというお話でしたけれども、これはフリ ー・リビング・ピープルの選択力を持ってもらうのと一緒だと思うのです。  ですから、ここで言っている給食というのは、自由選択というものが入らないところの 給食というのを考えているのではないか。要するに、相手にとってこれがよいと思って提 供していても、実際その人たちが食べているかどうかわからないし、だから残食調査をし て、その人たちの口までちゃんと到達しているかどうかということを調べなければならな いという考え方のようですので、やはり定食Aとか定食B程度までで、選択力のないもの を給食というのでくくっているのかと思ったのですけれども、どうなのですか。 ○中村座長 佐藤委員、どうですか。 ○佐藤委員 相手が見えない中でお料理を出すのは、診察をしないでということ、確かに そのとおりだと思うのですが、実際の事業所給食の現場でいいますと、選ばれるのは個人、 御本人ですので、給食施設と一括りにしましても、状況がいろいろあり、違ってくるので はと思います。  そんな中で、集団に対するポピュレーションアプローチと個人に対するものは、可能性 は非常にあると実感しております。例えばポピュレーションアプローチで申し上げますと、 企業様の健康診断の結果を何らかの形で私どもも知ることができて、そこから一緒に改善 目標を立てて、それに見合ったメニューや情報を提供していくということ。  それを効果的に推進するためには、予算の問題、その担当者はだれがやるのかという業 務の組み込み、それを継続するためにどういう仕組みをつくっていくのか、そのやった結 果をどう評価していくのかという体制づくりが大切になります。そして、施設側、会社側 の十分な支援を受けた全社活動として進めていく。現場の栄養士だけでは限界があります ので、このような体制を作り、広げていけばポピュレーションアプローチの可能性は広が っていくのだろう、そして現場で携わっております栄養士の専門性が更に広がっていくの だろうと思います。  一方、個人では、先ほどお話もございました特定保健指導に我々がどういう形で携わっ ていけるのか。また、先ほどモニターのお話をさせていただいたのですが、そのようなモ ニターに賛同いただける事業所において健康管理部門と連携させていただいて、改善成果 をデータ収集していくということも可能性としてはあるかと。その収集したデータをどう 分析するのか、またそれをどう企業と一緒に取り組んでいくのかという課題はたくさんあ るとは思いますが、そういったことでPDCAサイクルができるのではないかと思います。 ○山本委員 資料3の3ページ目の下に2つ表があるわけですけれども、表の枠の中で 「栄養素摂取不足の評価」。例えば右端の推定平均必要量もなるべく不足しない形でやっ ていけと書いているわけですけれども、その下のポツには目安量になるようにやれ。目安 量と推定平均必要量とは全然意味が違うわけです。目安量に近いのは、推定平均必要量で はなくてRDA、推奨量の方なのです。EARは、半分の人たちを満たすものである。  そして、この文章を見ていくと、半分の人を満たすだけではなくて、更によりたくさん、 しっかり食べなさいということは、結局RDAを目指しなさいというポツの上側の「推定平 均必要量を下回って摂取している者の集団における割合をできるだけ少なくするための計 画を立案」。これをRDAに近づけると一言で言ってしまってもいいし、下の方では、目安 量というのはAIという言葉だけれども、RDAに近い意味だと思います。  それから、4ページ目の下の表のところも同じことが書いてあるのです。一番下の枠の ところ、推定平均必要量、推奨量、目安量と書いていますが、ここも同じことが書いてあ ると思います。結果的には、RDAとかAIという国民の大部分を満たす量を目指していけ ばいいのだ。そうしたら、それは個人だろうが、集団だろうが、全部同じことではないか という気がするのですけれども、それはどうですか。 ○中村座長 佐々木先生、どうですか。 ○佐々木委員 本文をゆっくり読んでいただかないと、多分わからないと思います。済み ません。 ○山本委員 この短い文章です。この数行の。 ○佐々木委員 私、申し上げましたように、今日は表だけ取り上げてありますので、そこ で説明を十分にするのは難しいのではないかと思います。 ○中村座長 どうぞ。 ○吉池委員 もう一点心配していることがあります。より実務的なこととして、ポピュレ ーションと個人の話はちょっと置いておきまして、今日、文科省の方も来られているので、 「食事摂取基準」の37ページ、一部の食事を提供する場合と補足事項が書いてあります。  石田委員からも、先ほど1食の提供ということについてのお話がありました。この議論 の中でも、いわゆる給食施設といってもさまざまな状況がある。そのバラエティーをきち んと認識すれば、原則としての「個人」と原則としての「ポピュレーション」をうまく組 み合わせてPDCAサイクルを回すということについて、私は総論的にはそれほどの困難さ を感じていないのですが、特に学校給食などの1食を提供する場合にどう考えるのかにつ いて、その1食において、具体的に給食で何%給与するのかということは、実務作業とし て課題が生じてくると思うのです。  今回、文部科学省の方では、どのような考えで給食の提供を検討していくのかというこ とは大きな問題だと思うので、ここで伺っておきたいと思っております。 ○中村座長 いかがですか。 ○田中学校給食調査官 学校給食は、1日のうちの1食ということで、3分の1、33%を 基本として提供しましょうということで今はやっております。しかし、スポーツ振興セン ターがとりました1日分の調査においては、お昼は30%程度という数字が出ていますので、 その出た数値が本当に使えるのかどうか検証した後、現実としての30%として示していく のか。それとも、例えば子どもたちに夜食が多い、おやつが多い。これを指導して減らし ていって、間食を補食として考えるのか、それによってどちらにするかということを考え ていかなければいけないと思っています。現状は33%。1日の食事のうち1食という。  それはどういうことかというと、給食は食育のための教材という見方をしたときに、1 食分の望ましい量を子どもたちに知らせることが必要なので、現在は1食としての33%と いうのを見せている。しかし、それをそのままやっていけば残食が出るということにもな りますので、そこら辺の兼ね合いをもって、今、委員会を立ち上げていますので、その中 でどうするかということを検討してきているところです。 ○中村座長 現実は30%ということは、単純に3で割るよりも夜が重くなっている。 ○田中学校給食調査官 おやつです。 ○中村座長 おやつが出ている。 ○田中学校給食調査官 朝・昼・夕の食事だけで、ほとんど必要なエネルギー量を満たし ているという数字なのです。例えば脂肪は、余分な分は間食だというデータが一部出てい るので、それが果たして使える数字なのかどうか、もう一回検証してみたい。 ○中村座長 どうぞ。 ○山本委員 例えばエネルギーを見たときに、学校給食の現場というのは日々活用を行っ ているわけですけれども、残食が出る、あるいは足りないという現実の姿が出てくるわけ ですね。そうしたら、それを見ながら量を33%にするのか、30%にするのか、25%にする のか見ていって、朝と夜という数字をとる調査も必要でしょうし、それで最終的な栄養状 態、体重の変化とかを見ないといけないと思いますけれども、3分の1がいいのか、たん ぱく質は40%で、カルシウムは50%に、足りないからそうしている。そうすると、食文化 までゆがめてしまうケースも起こりかねないのです。食物繊維は物すごく高くなってしま う。この前下がりましたけれども。  それを、食文化を考えながら、その中でどれだけ最大限満たすことができるか。それで 健康問題が起こるようだったら、それは考えていかないといけない。学校給食というのは、 不足の部分を補うという役割も持っていると思いますので、そういうところから判断して いくということで最終的に決まるのだと思うのです。 ○中村座長 どうぞ。 ○吉池委員 今、学校給食の方の話を伺ったのは、例えば1食だけの提供で、しかも学校 の現場において、個人に対してPDCAサイクルを回すというのは、現実的ではないと思い ます。したがって、一部の対象者について、調査研究的に丁寧に3食の摂取を調べること によって、ポピュレーションのアプローチとして学校給食がどういう意味を持つのか。場 合によっては、プラスの個人指導もあるのかもしれませんが、基本的にはそういうポピュ レーションアプローチとしての学校給食の役割の検証を、今後積極的に行う方向になれば と思います。  それが佐々木先生がおっしゃった、今後の研究の一つの課題だと思っています。そうい う意味で、学校給食は、ポピュレーションアプローチとしての給食のマネジメントの良い モデルになるかと思っています。 ○中村座長 石田先生、学校給食で何か御意見ありますか。 ○石田委員 学校給食というか、最初の伊達先生の質問にちょっと戻ってしまうのですけ れども、ここで考える給食管理のところを、みんなが同じ給食を食べることを想定してい るのか、選べる食事を想定しているのかということの議論を少し整理した方がいいという ことだったと思いますが、多分両方見ていかなければいけないのが現実だと思います。  給食というのは、結果的に自由に選べる食事だったとしても、用意されたものからしか 選択肢がないわけです。出されたものの中から選ぶ。そこにどういうものを出しておくか ということで、脂質量の多いものばかり出していれば、どうしてもそういうものしか選択 できないわけです。ですから、カフェテリアの中でも脂質量を全体的に低い方にシフトさ せるようなものしか出さなければ、結果的には摂取量は低い方向へ動いてしまうのです。 ですので、どういうものを出すかということを当然提供側は考えるわけですので、それは 同じものを食べようが、選ぼうが、給食としては両方見ていかなければいけないというこ とが1つあります。  それから、今の学校給食の議論でいけば、同じものを提供して、みんなが同じものを食 べていますが、学校給食の配食システムというのは、食缶で盛り付けを子どもたちがやっ ている。それは、先生たちによってなるべく均一にという指導もされているケースもある だろうし、それぞれ個人が食べられる量に調整しなさいと御指導されている、いろいろな ケースがあると思うのです。  そうすると、同じものが提供されていても結果的に摂取量が違います。ですので、その 辺りが集団として上手に調整できているケースがあると思います。すなわち、子どもたち が盛り付けするところで個人差を上手に調整できているケースもあるだろうし、それがう まくいっていないケースもあると思います。そのところをもう少し調べながら、集団とし て、例えばEARより少ない者たちの割合を、給食をどう出すことによって少しでもその割 合を減らせるのかとか、そういう考え方でも検討していく必要があるだろうと思いますが。 ○山本委員 その点に関して、まさにそのとおりなのです。それは、クラスの中に小さい 子もいるし、大きい子もいる。学校によっては、スポーツ学校もあるし、勉強ばかりして いる受験学校もあって、活動量が全然違う。ですから、それはそのクラスあるいはその学 校の個々の全体的な状態を見ながら、エネルギーの基礎代謝から活動強度とかを計算して いって、多分この学校はこの程度のエネルギーが必要だろうということは、A校とB校と C校では変わってくる。  そして、提供した結果、どれぐらい食べ残しが出たり不足が出るか。そういうのを評価 していって、最終的にそれを決めていけばいいのであって、それをやっていくのはこれか らの管理栄養士、学校栄養職員だと思うのです。それは、きちんと研究という形で出して いって、みんなに報告することによって、更にまた多くの人たちがそれを検討して評価し ていくという形をとっていくことになるのではないかと私は思っているのです。 ○田畑委員 食事摂取基準の考え方ですと、半分の人は足りて、半分の人は不足というこ とですから、残している人たちが食べたくなくて残しているのか、要らないから残してい るのかということについても見ていかなければいけないと思います。私たちが子どものと きは、案外大きな子がたくさん食べて、小さな子が食べないということがあったのですけ れども、残食があるないということだけで判断されると、食事摂取基準の考えは残食が出 るのは当たり前という考え方でやっていますから、そこのところはどうすればいいのかと いうことも含めて調査しなければいけない。 ○山本委員 まさにそのとおりだと思うのです。単純に好き嫌いだけの判断ではなく、た だ単にエネルギーを3分の1にするだけではなく。例えば朝食抜きの子どもだったら全部 食べてしまいます。そういうことも総合的に配慮の上で、クラスとして対応していかない としようがないと思いますけれども、どれだけが必要だという形の最善の結論を出す努力 を学校の現場の栄養士はやっていかざるを得ないということだと思います。 ○田中学校給食調査官 現実問題として、できるのかできないのかということはちょっと 置いておいても、望ましい方向というものは示しておく必要があって、力のある栄養教諭 は確実にそれをやっていけるように指導していくということは大事だと思います。  ただ単に出しているだけではなくて、本当にそれが子どもたちに必要な量が提供されて いるのかどうかという。残食を見るのみではなく、やり方としてはあると思います。継続 してやれと言ったら、ちょっと難しいかもしれませんけれども、ある何日間か、この学校 の1クラスか2クラスにおいて、食べ始める前に計量して、食べ終わったときに計量して ということで、個人の摂取量を出して評価することはできなくはない。 ○中村座長 時間があと20分なのですが、2番目のバランスガイドの検証の問題と国民健 康・栄養調査の課題について、ちょっと議論を進めたいと思います。  バランスガイドに関して、吉池先生、何か御意見ありますか。 ○吉池委員 先ほど申し上げたとおりで、エネルギー摂取の観点から田畑先生からコメン トいただければと思います。 ○中村座長 どうぞ、田畑先生。 ○田畑委員 エネルギーの観点ですけれども、特に成人においても少し変わった部分があ ります。一番問題である推定エネルギー必要量の推定法ということにおける身体活動量の 定量法について改善していかなければならないと思います。  更に、子ども向けということでつくるとするならば、今までは「普通」と「高い」でし たけれども、今回は始めて「低い」というのが入りましたので、それは先ほどの給食につ いても多分影響を与えられるかもしれませんけれども、食事バランスガイドについても 「低い」というものも考えていかなければならないことになります。  更に、積極的な方向としては、これぐらい運動しているとこうだよという、積極的な運 動と食事の融合したような指導法みたいなものが入れば、よりよいものになると思います。 ○中村座長 ほかにバランスガイドの見直しに関して御意見ありますか。 (「異議なし」と声あり) ○中村座長 では、国民健康・栄養調査の栄養摂取状況調査の課題について。 ○由田委員 よろしいですか。 ○中村座長 どうぞ。 ○由田委員 事務局の方で資料7を御用意いただいております。それを見ていただきます と、現在、行われております国民健康・栄養調査の中の栄養摂取状況調査がどういうふう にして行われているかということがおわかりいただけるかと思います。  1ページ目の「4.調査時期」は11月であり、特定のある1日について調査していると いうことです。  食事摂取基準に示されている指標の数値は、習慣的な摂取量について示されていますが、 国民健康・栄養調査の成績は、特定の1日ということですので、同じレベルの数値ではな いと考えられます。  普通に考えましても、平日と休日あるいは祝日では食べるものが違うということもあり ますので、1日だけではかなり限界があると考えられます。  いろいろな調査の枠組みでありますとか、さまざまな問題はあるのかもしれませんが、 習慣的な摂取量ということであれば、最低2日間ぐらいの調査を実施できれば、習慣的摂 取量を推定することが可能であります。このような方向にシフトできれば、現状よりも国 民の習慣的摂取量に近い結果が得られるのではないかと思います。  ただ、それにすぐに移行できるかどうかは、さまざまな難しい問題がありますので、調 査のデザインとか調査規模、あるいは調査の時期や季節なども含めて、今後の検討が必要 なのではないかと思います。 ○中村座長 今の御提案に対して、御意見いかがでしょうか。どうぞ。 ○吉池委員 その当時、まだ「国民栄養調査」だったと思いますが、パーセンタイルで分 布を示すようになったのは、2005年版が出る前のことです。第6次改定のとき既にEAR という概念が出されて、集団についての分布の評価と必要性が言われはじめましたので、 まだ10年まではたっていませんが、かなり古くからパーセンタイルで分布を示してきまし た。しかし、先ほど由田委員がおっしゃったように、1日だけの調査であることの限界は 常にあったわけです。  その後、厚生労働省の研究班で、2日あるいは3日という連続しない摂取量調査をして、 それらのデータをもとにして習慣的な摂取量の分布を推定するという作業をしてまいりま した。また、一部の県民健康調査などで2日間の調査という試みもしてまいりました。  そのようなことから、2010年版が今回出されまして、そろそろ習慣的な摂取量の分布を 評価するということに向けて、具体的に進まなければいけない時期なのではないか。そう しないと、厚生労働省が2010年版で「集団」、すなわちポピュレーションの評価として、 このような形が基本線だと言いながら、国民健康・栄養調査がそれに対応していないとい うことは、その評価そのもののことだけでなく、教育的な配慮を考えると、きちんとした 対応が望まれるのではないかと思っています。 ○中村座長 どうぞ。 ○佐々木委員 まさしくそのとおりで、せっかく食事摂取基準2005年版、2010年版に 「習慣的」と書いてあるのに、日本人の習慣的な摂取量がわからないというのは、どう使 ったらいいのかというところで使えなくなってしまうことになるだろう。それを考えます と、お二人の先生の御意見、非常に重要で、そのための具体的な方法を考えるべきときだ と思います。  ただし、1日に対して2日にすると、対象者の負担も増えますし、必要経費も増えます し、対象者の負担が増えるということは、恐らく協力率は落ちます。といういろいろなこ とを考えますと、かなり慎重にデザインを考えることが重要で、極めて大切なことですの で、慎重かつ有意義な方向に進める必要があるだろう。それが食事摂取基準2010年版とし て、将来どう使っていくのかというところをかなり決定づけるものではないかと思います。 ○中村座長 では、伊達先生。 ○伊達委員 1日というのは、平均値的には複数日としたときと同じに出るかもしれませ んが、相当幅広く評価してしまいますので、この中でも言われているように、離れた2日 間ということが何とかできるような方法を考えないと、せっかくここまで出ているのにと いう気持ちで、是非ともそういうものを考えたい、考えなければならないと思っておりま す。 ○中村座長 どうぞ。 ○山本委員 皆さんが言われているように、精度を上げるためには1日というのは確かに 短いと思います。それで、いろいろないい方法が検討されているようですけれども、毎年、 栄養調査に入っていくのは大変です。2日〜3日とか、もう少し習慣的なものを見るよう にするかわりに、毎年やっていかないといけないものなのかという辺りの検討もされては いかがでしょうか。アメリカも10年に1回、多くの国が5年に1回という形です。そうで もしない限り、2日〜3日という調査はとてもハードになってしまう気がするのです。 ○伊達委員 協力率もいいような方法といったら、また人数が増えて、毎年といえばすご いですね。考えないとだめかもしれません。 ○中村座長 離れた2日間をとれば、習慣的なものが出るという研究は進んでいるのです か。 ○伊達委員 はい。ただ、私の経験では、調査日が長くなるとアンダーエスティメートが 多くなるので、相手の協力の負担が大き過ぎると余計介入がかかってしまうということが あります。最初は2日ぐらいまでしかできないだろうと思います。それでも容易なことで はないと思います。 ○中村座長 そうですか。どうぞ。 ○吉池委員 ここでも評価として「個人」か「ポピュレーション」かという状況によるの ですが、個人を対象として診断的に習慣的な摂取量を、例えばコホート研究のベースライ ンとして使うには、2日間というのはまだまだ少ないと思います。  それに対してどういう考え方で2日以上となっているかというと、これはあくまでポピ ュレーションの評価ですけれども、1日調査である限りは、個人の中でどの程度変動する かの情報が0(ゼロ)です。2日間の調査にすることによって、個人の中でどの程度変動 し得るものかという情報が得られます。それを用いることで、その個人がどうだという診 断ではなく、ポピュレーション全体の分布型において個人内の変動を加味すると、習慣的 な分布型を推計することができます。  米国などでの国民健康・栄養調査でも、例えば1日目は面接で24時間思い出し法をし、 更にその後、電話で1日あるいは2日間の聞き取りを行い、補完的に情報を得ています。 それは、あくまでも個人の診断のためではなくて、集団としての分布を評価する意味です。 現実的なことを踏まえながら、集団としての評価がし得るような調査設計を考える必要が あると思います。 ○山本委員 ちょっと質問していいですか。 ○中村座長 はい。 ○山本委員 吉池先生に質問なのですけれども、いずれにしても1日2日で個人の習慣的 なものを出すというのはとても難しいと思うので、例えば集団の状況を把握人数が多けれ ば一日でも十分という風に考えることはできないのでしょうか。 ○吉池委員 1日で人数を増やしても意味がありません。個人の中でどう変動するかの情 報は、少なくとも2点情報が必要です。分布を見るために、個々人のことは、ある意味で は興味の対象外となります。ある一個人の中でどのぐらい変動し得るものかの情報を得る ためには、1人に対して、少なくとも2点のデータが必要ということです。 ○山本委員 そうですか。また教えていただかないと。 ○中村座長 この栄養調査の方法を考えようという方向性はあるのですか。 ○河野栄養・食育指導官 今日の御議論も踏まえて、国民健康・栄養調査の企画解析検討 会の中でも精度管理のワーキンググループを設けておりますので、そういった中での御議 論を踏まえて、いろいろな角度から御提案いただいて、また改めて国民健康・栄養調査を どうするかというのは議論する方向になるのではないかと考えております。 ○吉池委員 このこととは違うことでもよろしいですか。 ○中村座長 はい。 ○吉池委員 厚生労働省の御担当に伺いたいのですが、いろいろな議論の中で食事摂取基 準をきちんと理解し、活用できる人材の育成、要は教育が大事だという話がありました。 私も昨年度から管理栄養士の卒前教育を担当するようになって、一生懸命やろうとしてい るわけです。食事摂取基準を現行の科目の中で、あるいは更に言うと、現実的な縛りとし ては、管理栄養士の国家試験の出題基準なるものがあります。そうしたときに、食事摂取 基準を卒前教育の中でより積極的に教育が展開でき、その達成度の評価をはかるという意 味で、今後、管理栄養士の国家試験のガイドライン等の見直しが積極的にされる予定があ るのかということを伺いたいと思います。 ○河野栄養・食育指導官 現行のものにつきましては、平成14年の養成カリキュラム改正 のときに、あわせて国家試験のガイドラインについても大幅に見直した経緯がありまして、 その後、手当てというものをしておりませんので、今後、機会に応じて変えていくような ことは考えたいと思っております。 ○吉池委員 ちなみに、日本栄養改善学会では、管理栄養士養成課程のモデル・コア・カ リキュラムというのを長年検討してまいりまして、もうすぐ公表されます。そこでは食事 摂取基準は独立した項目立てとしており、どの教科で教えるかは別として、できるだけ理 論的であり、応用につながるような教育の枠組みは検討しましたので、その辺を御参照い ただければと思います。 ○中村座長 時間が来てしまいましたので、本日の会議はこれで終わりにしたいと思いま すが、本日の会議を踏まえまして、更に御意見がございましたら事務局まで御連絡してい ただきたいと思います。  それでは、閉会に当たりまして事務局の方から一言お願いいたします。 ○木村室長 本日は、長時間にわたりまして大変御熱心な御討議を賜りました。先ほどか らずっと聞いておりまして、非常に本質的な問題についていろいろな立場で有意義な御意 見賜ったことを本当に感謝申し上げたいと思います。  会議の冒頭に御案内申し上げましたように、当会議、本年度、あと2回開催させていた だく予定でございます。その中で、先ほどの御議論も踏まえて、更なる充実した御議論を 賜りまして、私どもとしては、それらをあわせて今後の施策に十分生かしていきたいと考 えてございますので、その点を何とぞよろしくお願い申し上げまして、本日の会議を終了 させていただきたいと思います。  本日は誠にありがとうございました。 ○中村座長 これで本日は閉会させていただきたいと思います。御協力どうもありがとう ございました。 照会先 厚生労働省健康局総務課 生活習慣病対策室(2343)