09/07/30 第21回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会議事録 第21回 今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会(議事録) 1.日時:平成21年7月30日(木) 10:00〜12:30 2.場所:航空会館 大ホール 3.出席構成員: 樋口座長、伊澤構成員、伊藤構成員、上ノ山構成員、大塚構成員、小川構成員、 門屋構成員、坂元構成員、佐藤構成員、品川構成員、末安構成員、田尾構成員、 高橋構成員、寺谷構成員、長尾構成員、中島構成員、長野構成員、広田構成員、 町野構成員、三上構成員、山根構成員、良田構成員   厚生労働省: 木倉障害保健福祉部長、藤井企画課長、中島障害福祉課長、福田精神・障害保 健課長、 塚本障害保健対策指導官、林課長補佐、野崎課長補佐、伊藤課長補佐 4.議事  ○ 精神保健福祉法に関する課題等について 5.議事内容 ○樋口座長  それでは定刻となりましたので、ただいまから、第21回「今後の精神保健医療福 祉のあり方等に関する検討会」を開催させていただきます。構成員の皆様におかれ ましては、大変暑い中、御多忙のところお集まりいただきまして、ありがとうござ います。  まず、事務局から報告事項をお願いいたします。 ○林課長補佐  おはようございます。報告いたします。  このたび、人事異動に伴い、事務局に異動がございましたので、この場をお借り して御紹介させていただきます。  はじめに、企画課長の藤井でございます。 ○藤井企画課長  藤井でございます。よろしくお願いします。 ○林課長補佐  続きまして、中島障害福祉課長でございます。 ○中島障害福祉課長  中島でございます。よろしくお願いいたします。 ○林課長補佐  続きまして、福田精神・障害保健課長でございます。 ○福田精神・障害保健課長  福田でございます。よろしくお願いいたします。 ○林課長補佐  なお、福島前精神・障害保健課長より、皆様に一言御挨拶をさせていただきます。 ○福島前精神・障害保健課長  おはようございます。7月24日付けで結核感染症課に異動いたしました福島でご ざいます。1年11か月間課長をしておりまして、この検討会では、去年の4月から ですね。大変お世話になりまして、ありがとうございました。取りまとめまで至ら ずに異動するのは残念でございますけれども、これまでの議論はいろいろな形で施 策に反映できると思いますし、また、次の施策に反映していただけるものと期待を しているところでございます。  これからの仕事につきましては、新型インフルエンザをはじめとする感染症対策 ということになりますけれども、いろいろな形で、また構成員の先生方とも御縁が あると思います。今後ともの引き続きの御指導をよろしくお願い申し上げまして、 簡単でございますけれども、退任に当たりましての御挨拶とさせていただきます。 どうも、大変お世話になりまして、ありがとうございました。   (拍手) ○樋口座長  それでは、本日の構成員の出欠状況について、事務局からお願いいたします。 ○林課長補佐  本日の出欠状況等について御報告をいたします。  谷畑構成員、野沢構成員より、御欠席との連絡をいただいております。また、町 野構成員につきましては、遅れてお見えになるということでございます。  本日の出欠状況等につきましては、以上でございます。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、早速、本日の議事に入りたいと思います。  お手元の議事次第にございますように、本日は、「精神保健福祉法に関する課題等 について」でございます。  本日の進行でございますが、いつもと同じように、まず、資料につきまして、一 括して事務局から説明をいただきまして、その後、皆様の御意見をいただきたいと 思っております。  では、資料に基づいて、事務局から説明をよろしくお願いします。 ○野崎課長補佐  それでは、資料に基づきまして説明をさせていただきたいと思います。少しでも 長い議論の時間を取っていただきたいと思いますので、駆け足の説明となると思い ますが、御了承いただければと思います。  まず、2ページからは、総論でございますが、「精神保健福祉分野における制度改 正の経緯」ということで、3ページに年表が付いてございます。大きく申しますと、 昭和25年に、それ以前の精神病者監護法と精神病法の廃止・引継ぎという形で精神 衛生法は成立し、その後、ライシャワー事件、宇都宮病院事件等を経て、あるいは 種々の改正を経て、昭和62年に精神保健法となり、平成7年には精神保健福祉法と なっております。また、その後、関係する制度として、平成15年の医療観察法の成 立、あるいは平成17年の障害者自立支援法の成立というものを経て、その都度、必 要な改正をしてきているということでございます。直近の改正という意味では、平 成17年の自立支援法の改正に合わせたものとなっております。  4ページでございます。「障害者自立支援法施行後3年の見直しに併せた対応」と して、国会の状況によって現時点では廃案となっておりますが、障害者自立支援法 等の一部改正法の中で、特に精神保健福祉法に関連するものとしては、真ん中から 下ですね、精神科救急医療についての体制を都道府県で確保するとか、あるいは精 神保健指定医の協力の関係であるとか、そういったことを規定していると。あと、 精神障害者の社会復帰のための支援と、そういうことで各種規定を設けているとい うことでございます。  5ページでございますけれども、先ほど、自立支援法の制定に伴う改正が最も最 後だと申し上げましたが、その際に参議院で附帯決議が出されておりまして。その 中の精神保健福祉法に関連する部分ということでございます。1つは、その医療計 画とあいまって、精神病院における社会的入院患者の解消を図るとともに、それら の者の地域における生活が円滑に行われるよう、必要な措置を講ずること。それが 1つで、もう一つが、精神保健福祉法に基づく医療保護入院の適切な運用について、 精神医療審査会の機能の在り方、保護者の制度の在り方等、同法に係る課題につい て引き続き検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を速やかに講ずること。と いうことが平成17年に出された附帯決議の内容です。  その附帯決議を受けて、まず、その最初の項目については、障害福祉計画に基づ く福祉サービスの提供体制の確保、あるいは地域移行支援特別対策事業の実施等に よって対応している。一方、その後半の部分につきましても、医療保護入院の適切 な運用を図るための定期病状報告の様式の見直し等の対応を行っているということ でございます。  以上が総論の部分で、6ページ以降が各論になります。  ここからは大きく3つに分けておりまして、「入院制度・精神医療審査会」が1つ、 「申請・通報制度、移送制度」が1つ、もう一つが「入院中の処遇について」とい うことになっております。  7ページからは、まず、「入院制度・精神医療審査会」についての各論となります が、大きくは、8ページにもございますように、我が国の入院制度は4つあるわけ ですが、その中で主なもの、任意入院、保護者の同意による入院、措置入院という ことで、3つに分けて、その制度改正の経緯をたどっているものでございます。細 かい説明は省略させていただきますが、簡単に申しますと、保護者の同意による入 院、あるいは措置入院については、昭和25年の精神衛生法の成立時点から存在して いて、また、任意入院については、昭和62年の精神保健法になったときに、新たに 創設されている。その他、それぞれの制度について、適宜見直しを行っているとこ ろということでございます。  9ページにいっていただきますと、「入院形態別の在院患者数の推移」を見たもの でございますが、1999年、2000年辺りを境に医療保護入院が少し増加をしてくる傾 向にあって、一方で任意入院の割合が減少してくると、こういう状況に今はござい ます。  10ページは、「入院形態別・在院期間別の患者割合」を見たものです。任意入院、 医療保護入院で5年以上、特に5年以上割合が最も高いのが任意入院だということ になっております。  11ページが、さらに、「入院形態別の患者の状態」を見たものです。まず、その左 上の「処遇の状況」を見ていただきますと、任意入院では開放処遇が多いわけです が、それでもまだ56%となっておりますが、また、その下の部分で、「居住先・支援 が整った場合の退院可能性」で、退院の可能性6か月ぐらいの期間で近い将来退院 の可能性はないというふうにされた方のその理由を見たものがその右側でございま すが、措置入院では「他害行為の危険性が高い」「陽性症状(幻覚・妄想)が重度」 「自傷行為・自殺企図の危険性が高い」というものが上位3つになっていまして。 医療保護入院、任意入院では、どちらも「セルフケア能力に著しい問題がある」が 一番多く、「陽性症状(幻覚・妄想)症状が重度」が2番目、3番目として「迷惑行 為を起こす可能性が高い」となっております。  12ページは、それでは各国の入院形態がどのようになっているのかということで すが、まず、比較的我が国に近いと考えられるフランスの入院制度から説明をさし あげますと、入院形態は同意入院と措置入院の2種類となっていて、同意入院は、 患者の患者の任意ではなく、患者を取り巻く「周囲」の任意で申請される。誰でも 申請者になることができる。その対象としては、病識がなく、自発的な治療を拒否 する患者ということで、我が国の医療保護入院の患者に少し近いということですね。 措置入院は、県知事等による行政処分となっております。オランダ、イタリアにつ いては、簡単に申しますと、非自発的入院については、自治体ないし裁判所が関与 する形で行われているということでございます。  以上が、入院制度の総論でございますけれども、14ページ以降がそれぞれの入院 制度に関するものです。  まず15ページ、措置入院に関してのものですが、15ページのデータを簡単に申し 上げますと、折れ線の方ですが、都道府県によって新規の措置入院者数と、あるい は棒グラフのその時点の措置入院者数の水準が、人口万単位で比較しておりますが、 県によってかなりばらついているという状況にあります。  また、16ページには、措置入院の判断基準を簡単にお示しをしておりますが、後 ほども出てまいりますけれども、自治体等からは、判断基準をもう少し明確化して ほしいと、そういった御意見もいただいております。  18ページからが「医療保護入院・保護者制度について」ですが、まず19ページで、 医療保護入院制度の法的性格を整理しております。まず、制度趣旨としては、精神 障害においては、本人に病気であることの認識がないなどのため、入院の必要性に ついて適切な判断をすることができない場合があるということなので、それを受け て、保護者の同意の手続を通じて精神障害者本人の利益を厚く保護しようというも のが制度の趣旨となっております。  一方、その法的な性格を見ると、1つは、本人にとってどういう性格を持ってい るのかというところが最初の○でございますけれども、「本人の同意に基づかないと いう意味において、本人にとっては強制的な性格を有している」と。もう一つの○ は、それでは入院の契約がどうなっているかということですが、「保護者と精神科病 院の管理者との間に成立した診療契約に基づくもの」として整理をされるというこ とでございます。  20ページが、その医療保護入院の届出数の年次推移を見たものですが、この折れ 線の方を見ていただきますと、人口10万単位の入院届出数は右肩上がりとなってい るということです。  21ページは、それを年齢別の推移を見たものですが、まとめて申し上げると、65 歳以上の医療保護入院者数のみが近年増加傾向にあって、その他の年齢階層では減 少傾向にあるとなっております。  さらに、医療保護入院増加の背景を見るために22ページを見ていただきますと、 医療保護入院者数、左側の疾患分類別にどういう割合になっているのかということ ですが、統合失調症圏の患者さんで医療保護入院の約6割を占めており、また、認 知症の関連で約2割となっております。 枠囲いしてある部分は、その疾患での入院患者全体に占める医療保護入院の割合と なっておりまして、統合失調症では、36.4%が医療保護入院の患者さんとなってい て、認知症では5割を超える患者さんが医療保護入院となっているということでご ざいます。  右側が、その疾患分類別に見た医療保護入院者の推移でございますけれども、認 知症での増加が非常に顕著であるという状況になっております。  23ページが、さらに、認知症について入院患者全体に占める割合で見たものです。 一番上の折れ線が、認知症患者の入院患者全体に占める割合で、増加傾向にあるわ けですが、それとパラレルの関係にあるのが認知症での医療保護入院による入院患 者の、入院患者全体に占める割合が増加傾向にあるということになっているという ことです。  以上が医療保護入院の現状でございますが、24ページ以降は、保護者制度につい て見たものです。保護者の内訳を見ると、兄弟(姉妹)が最も多く30.6%、続いて、 両親が26.2%、配偶者が16.5%、子が14.7%という割合になっておりまして、市区 町村長の保護者になっているケースが7.7%となっております。  25ページが保護者制度の概要となっておりますが、簡単に申し上げますと、患者 の医療保護を十分に行おうとするという要請と、患者の人権を十分に尊重しようと いう要請の両者の間にあって保護者制度が位置づけられております。その保護者に 法律上与えられた主な役割で言うと、まず(1)の治療を受けさせる任意入院と通院患 者を除く精神障害者に治療を受けさせること。また、同様に、任意入院、通院患者 を除く精神障害者の財産上の利益を保護する。また、その(6)で、医療保護入院の同 意をすることができる。また、(7)で退院請求等の請求をすることができるというこ とで、その役割が与えられているということでございます。  保護者制度に係るこれまでの制度改正の経緯を取り出してまとめたのが26ページ になります。もともと昭和25年の精神衛生法の公布から、保護義務者制度、昔の監 護義務者制度を見直したり、さまざまな見直しを行っておりますが、平成11年改正 の自傷他害防止監督義務の削除が最新の改正でございます。  27ページでございますけれども、関連する法律の規定として、民法の七百十三条、 七百十四条を添付しております。七百十三条で、精神上の障害により自己の行為の 責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責 任を負わないことが規定されていて、七百十四条では、本人がその責任を負わない 場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者が、その第三者に 加えた損害賠償する責任を負う、ということが規定されております。  28〜30ページが、関連する制度として、成年後見制度に関する資料を付けさせて いただいております。  29ページを見ていただきますと、法定後見制度の内容となっていて、成年後見制 度は、財産上の管理、財産に関する法律行為を行うことを主に念頭に置かれて制度 設計をされていると言えるのだろうと考えております。  また、参考として、31ページに任意入院患者に同意の再確認を求める仕組みにつ いて、平成18年に導入した通知でございますけれども、その制度の仕組みを付けさ せていただいております。  32ページからが精神医療審査会に関するものでございます。  昭和62年改正において創設された制度でございますけれども、主な役割としては、 医療保護入院の届出を受理し、また、措置入院患者、医療保護入院患者に係る定期 病状報告、また、その患者からないし家族からの保護者からの退院・処遇改善請求 について、その審査を行うことを業務としております。その組織については、平成 11年、17年の改正で適宜見直しが行われているということでございます。  36ページでございますけれども、その審査会における審査の状況について、デー タをお示ししたものでございますが、定期報告、退院等請求の審査状況を見ると、 医療保護入院の定期報告が86,000件、そのうち審査の結果、他の入院形態への移行、 ないし入院継続不要とされたものは合わせて5件となっております。定期報告(措 置入院)を見ますと、審査件数が2,700件ぐらいあるわけですが、他の入院形態へ の移行が適当とされるものが12件となっております。退院請求、処遇改善請求につ いては、それぞれ入院または処遇は不適当というふうな審査結果となったものがそ れぞれ4%、9%というような状況となっております。  実地審査の状況を見たものが下でございます。(参考)を見ていただきますと、実 地審査件数の割合としては、措置入院者全体の約7割の方に審査を行っている。ま た、医療保護入院では4%強ぐらいだということになっております。  37ページが、定期報告、退院等請求の件数の推移を見たものです。医療保護入院 の増加を背景に、その定期報告の件数が上がってきているということでございます。  また、38ページが精神医療審査会の状況です。審査会1回当たりの平均審査件数 という一番右側を見ていただきますと、少ないところでは20〜30件ぐらいのところ から、多いところでは100件を超える水準までそれぞれ、もっと少ないところでは 1桁というところもございますが、いろいろ精神科病院の所在の状況とか、地域性 はあると思いますが、それでも、1回当たりの事務処理の量はかなり都道府県によ ってばらつきが見られているという状況にございます。  以上、まとめて39〜40ページに、「現状と課題」と「検討」をまとめさせていた だいておりますが、まず、「現状と課題」です。最初の○ですが、医療保護入院患者 数ないし入院患者全体に占める割合が増加に転じているわけですが、現在では、入 院患者数全体の約4割を占めるに至っている。その背景には、認知症入院患者の増 加などがあると考えられ、今後の高齢化の進行に従ってこの傾向が強まる可能性が あると認識しております。また、その在院期間は、先ほど申し上げたとおりでござ います。  措置入院についての現状としては、人口当たりの措置入院患者数が都道府県によ って大きく異なっており、その判断基準について、一層の明確化や、事例集の提示 等を行うべきだという意見を都道府県からいただいているということです。  医療保護入院については、本人の同意に基づかないという意味において、本人に とっては強制的な性格を有しており、指定医による診察と保護者の同意という手続 により入院が可能となっている。我が国では、大きく3種類の入院形態がございま すが、国際的には、行政庁ないし司法による処分としての強制入院と、本人の同意 に基づく任意入院の2種類に分けているところが多い。  また、これまで検討会でいただいた御意見の中で、医療保護入院制度や保護者制 度については、本人が入院を拒否している場合に、保護者が入院に同意することに よって、本人と家族との間に葛藤を生じるケースがあるということであるとか、あ るいは保護者となる家族の負担感が強いこと等から、その見直しを求める意見がご ざいます。  また、現行の医療保護入院の中においても、その保護者の判断能力が疑われるケ ース、例えば保護者自身が認知症である場合とか、あるいは保護者としての適格性 が疑われるケース、例えば保護者が虐待やDVを行っている場合等の取扱いについ て明確化を求める意見がございます。  任意入院についても、認知症高齢者や未成年による同意の有効性に関する意見が ございます。  最後に、精神医療審査会については、その都道府県によって運用状況にばらつき がございます。定期病状報告等を契機に、入院形態の変更に至っている事例が少な いなど、その機能が十分に果たされていないおそれがある。また、その都道府県等 からは審査事務の増加や委員の確保の困難により、迅速な審査が難しいといった意 見もいただいております。  以上を踏まえて、「検討」ですけれども、まず最初に、総論として、「入院医療中 間ら地域生活中心へ」という改革の基本的方向性を具体化していく観点から、諸外 国における例も参考にしつつ、今後の入院制度のあり方についてどう考えるか。  各論に入りますが、措置入院制度については、判断基準の一層の明確化等、現場 においてより適切な判断が行われるような方策についてどのように考えるか。  医療保護入院制度については、現状において入院患者数が全体の約4割を占める という状況になっておりますが、また、その入院制度は、地域移行の取組や未治 療・治療中断者に対して迅速な医療的支援を行う枠組みとも関連すると考えられる が、これらを踏まえて、医療保護入院制度のあり方についてどう考えるか。  併せて、保護者が虐待やDVを行っている場合、ないし離婚調停中である場合な ど、保護者適格が疑われる場合の対応を含め、現行の医療保護入院制度の適切な運 用のための方策についてどのように考えるか。  また、保護者制度については、保護者が認知症患者など自ら処遇改善請求や退院 請求を行うことが困難であると考えられる入院患者の権利を擁護する役割を担って いるという側面もあり、また、その未治療・治療中断者に対してアウトリーチによ る医療的支援を行う枠組みや成年後見制度等の他制度とも関連すると考えられるが、 これらの点や医療保護入院制度とうの関係も踏まえて、そのあり方についてどのよ うに考えるか。  また、任意入院の認知症高齢者や未成年者に対する適用について、成年後見制度 等民法との関係も踏まえて、どのように考えるか。  また、精神医療審査会については、本人の同意に基づかない入院の要否等につい てチェック機能を果たすことが期待されておりますが、都道府県等における事務量 の制約という観点も踏まえつつ、その機能を十分に確保するための方策について、 どのように考えるか。  以上が、入院制度・精神医療審査会に関するまとめでございます。  42ページからが、申請・通報制度、移送制度に関するものでございます。  43〜44ページで、「申請・通報制度の概要」をまとめてございます。44ページに 基づいて簡単に説明を申し上げます。被通報者に関する考え方として、法律上、自 傷他害のおそれがあることが明記されているものは、24条の警察官通報、26条の2 の精神科病院の管理者、26条の3の指定通院医療期間の管理者等による通報となっ ております。また、24条の一般人による申請でございますけれども、ここについて は、法律上明確には規定されていないわけですが、基本的な考え方としては、29条 の自傷他害のおそれのある状態であることを要件とするということを考え方として ございます。その他のものについては、基本的には、自傷他害のおそれがある状態 であることを要件としていないという状況にあるということでございます。  45ページが、申請通報の届出件数の状況を見たものです。ここでポイントを申し 上げると、それぞれ申請ないし通報から診察に至った率が書いてございますが、特 に26条の矯正施設の長からの通報を見ていただきますと、件数は2,000件ぐらいと 多くなっておりますが、実際に診察に至った率は8%に満たないということで、こ こについては何らかの手立てを求める意見を都道府県からいただいているところで ございます。また、そのほかの診察実施率については、23条で7割ぐらい、警察官、 検察官で5割強等となっております。  また、都道府県別に申請・通報届出件数とその診察件数の状況を見たものが46ペ ージでございます。申請・通報届出件数総数に占める診察を実施した割合について は、都道府県によってかなりばらついているということでございます。  47ページは、参考までに警察官職務執行法の条文を付けさせていただいておりま す。  また、48ページからは移送制度の概要となりますが、大きく申し上げまして、移 送制度には3つございます。措置診察のための移送、措置入院のための移送、医療 保護入院等のための移送となっておりますが、このうち後者2つ、措置入院のため の移送と医療保護入院等のための移送については、これについては法律上明確な根 拠がございます。措置診察のための移送については、法律上に移送の根拠自体はな いわけですが、措置診察の規程が27条にございますので、その一環として移送を実 施することができるという考え方をお示しをしております。また、措置診察に当た っては、その指定医、及び都道府県の職員が必要な限度においてその対象者の居住 する場所に立ち入ることができるという権限を規定をされているということでござ います。  49ページは条文でございますので省略いたしまして、50ページが、措置診察が実 際どこで行われているかということを見たデータでございます。(1)が、措置診察の ための移送によらずに、実際、1次診察、2次診察とも通報地まで指定医が診察に 出向いて、そこで診察を行っている自治体の数でございますけれども、64自治体の うち34自治体となってございます。(2)〜(4)は、1次診察、2次診察のいずれか、あ るいは両方について、何らかの移送を行った上で診察をしている自治体の数となっ ているものでございます。  51ページが、法34条に基づく移送の実績ですが、これは以前、15回の検討会に 提出した資料でございますので、詳しい説明は省略いたしますが、移送制度の実績 は上がっておらず、また、体制の整備もまだまだ十分に整っていないという状況に あるということでございます。  以上を踏まえまして、52ページに申請・通報制度、移送制度のまとめをさせてい ただいております。まず、左側の「現状と課題」ですが、検察官通報、保護観察所 の長の通報、及び矯正施設の長の通報については、法文上、自傷他害のおそれの有 無について明記されていない。特に矯正施設の長による通報については、通報の届 出があった件数のうち診察を実施した割合は1割にも満たないという実態がある。  また、移送制度については、措置診察のための移送について法律上の根拠を明確 にすべき。また、医療保護入院等に係る移送についてその基準が明確でない、等の 意見があると。  また、その最後ですが、申請・通報制度、移送制度については、警察との関係等 についてさまざまな御意見をいただいているわけでございますが、関係機関との連 携の状況やその運用は都道府県等によって多様と考えられる。  以上を踏まえまして、「検討」でございます。矯正施設の長による通報等の被通報 者については、措置症状を有していない者についても通報を受けることにより都道 府県等が支援の対象として把握できるという側面も有していると考えられますが、 被通報者の範囲を限定することの影響も踏まえた検討が必要ではないか。また、通 報主体の範囲等、申請・通報制度のあり方についてどう考えるか。  また、措置診察のための移送について法的根拠を設けることについては、措置入 院のための移送、29条の2の2に基づく移送ないし、34条に基づく移送のいずれも、 行政処分や入院の要件を満たす場合に適用されるものであるということであるとか、 あるいは現行制度においても、措置診察のための居住場所への立入りが認められて おり、訪問により措置診察が可能であること等を踏まえてどのように考えるか。  また、未治療・治療中断者に対し、アウトリーチによる医療的支援を行う枠組み を検討することと併せて、法第34条に基づく移送について、患者の症状に応じた適 切な運用が行われるよう、基準の更なる明確化や関係機関との連携のあり方につい て、どのように考えるか。  最後に、申請・通報制度、移送制度については、各都道府県等において関係機関 との間で実務上どのような連携体制を構築するかが重要と考えられ、まずは、それ を促していくことが必要ではないか、というまとめにさせていただいております。  54ページからは、最後の柱でございますが、「行動制限・入院中の処遇について」 でございます。55ページは、隔離・身体拘束の割合を見たものでございますが、在 院患者に占める隔離・身体拘束を受けている患者の割合は、これもこれまでのデー タと同様、県によってかなり大きくばらつきがあるということでございます。  56〜58ページは関係条文になりますので、省略いたしますが、59〜60ページには、 医療観察法という制度が平成17年から施行されておりまして、それによる入院者と 措置入院者の拘束状況を比較した資料となっております。約1年半ぐらいの間に、 隔離・拘束を受けた方が、両制度においてその状況に差があるのかというものを見 たものでございます。60ページを見ていただきますと、隔離・拘束の実施状況につ いては、有意に医療観察法入院で低いという状況になっております。1つは、サン プルが25名ずつということで少ないものの、統計上有意なデータとなっているとい うことでございます。なお、(注)に書いてございますが、医療観察法入院では、入 院決定前に2か月の鑑定入院が行われていることを踏まえて、この研究では、一応 措置入院者についても、60日以降の状況を調査していることを付け加えさせていた だきます。  61ページは、精神病床以外の病床に精神疾患を主傷病として入院している患者さ んが近年増えてきているというデータをお示ししているものでございます。  62ページですが、任意入院患者の開放処遇の状況について、各都道府県、指定都 市によってかなりばらつきがあるという状況になっております。  以上を踏まえまして、64ページに「現状と課題」「検討」としてまとめさせていた だいております。  まず「現状と課題」から申し上げますと、在院患者に占める隔離・身体拘束の割 合は、都道府県等によって大きく異なっており、その指導も都道府県等によって統 一されていないとの指摘がある。  2番目として、医療観察法対象者と措置入院患者を比較した研究においては、病 室の個室化や治療ステージに応じたユニット等の病棟の構造、手厚い人員の確保や 多職種によるチーム医療等の医療の内容が、拘束等の減少に資する可能性があるこ とが示唆されている。  一方で、精神疾患を主傷病としながら精神病床以外の病床に入院する患者数が増 加しているという状況もある。  また、任意入院患者については、現行制度上は開放処遇を原則としつつ個々の患 者の病状に応じて閉鎖処遇を行うことも可能となっておりますが、実際には、閉鎖 処遇を受ける任意入院患者が多くみられているという現状にございます。  それを踏まえた「検討」としては、処遇の基準や指導監督基準等の見直し、ない し病室の個室化や個々の患者の病状に応じた多職種による個別処遇の実施、手厚い 人員の確保等、隔離・身体拘束の最小化を図るための取組についてどう考えるか。  また、認知症や身体合併症の増加等を背景として、今後、精神疾患を有する者が 精神病床以外に入院することが更に増加することが予想されるが、こうした患者の うち、特に精神症状により行動制限を必要とする者に対する処遇について、どのよ うに考えるか。  最後に、任意入院患者も含め、個々の患者の病状の変化等に対応して適切な処遇 が実施されることを促す方策について、どのように考えるか。  ということで、以上、大きく3つの柱について御説明を申し上げました。事務局 からの説明は以上でございます。 ○樋口座長  ありがとうございました。  ただいまの説明、かなり広範な領域にわたって精神保健福祉法に関する課題でご ざいますけれども、制度そのものの改正の経緯、それから、入院制度も、措置入院、 医療保護入院、それから、精神医療審査会に関すること、あるいは申請・通報制度 のこと、移送制度のこと。かなり多岐にわたる課題について今説明をしていただき ました。  それでは、これから質疑に入りますけれども、特に大きく分けて4つほどの項目 がございますけれども、順を追ってということはいたしませんので、どの課題等に ついても御質問あるいは御意見を頂戴できればと思います。よろしくお願いいたし ます。いかがでしょうか。 ○田尾構成員  今回は、精神保健福祉法についてということで、細部まで見ていくと、いろいろ 申し上げたいことはたくさんあるんですけれども、2点に絞って申し述べさせてい ただきたいと思います。  1点は、もう既に「現状と課題」として39ページに挙げられていますけれども、 医療保護入院についての入院同意が保護者家族の役割であるということですけれど も、各国の入院形態と比較して、12ページか何かにほかの国の入院形態がありまし たね。強制入院の同意者が家族であるという国は欧米先進諸国ではないと思います。 これは即刻改善していただきたい。「現状と課題」にも書いてありましたけれども、 当事者との関係が悪くなってきますよね。それに、民法の監督義務まであるんです ね。私これをしみじみ読んだのは初めてですが、27ページにありますけれども、こ ういうものまで負わされるとすると、家族は人生のすべてを障害当事者に捧げなけ ればならないようなことがまま起こってきます。それは当事者にとっても決して望 ましいことではないことですし、お互いに不幸な結果をもたらす。法律で規定され なくても、家族が家族であろうとすれば、ほかの病気と同じで、身内の力になろう とするのは当たり前のことです。その自然な感情を超えて、法律で家族に負担を強 いるのはおかしなことだと私は思います。  ですから、逆に、今度は家族の反対があるから退院できないというような現象も 当然起こってきます。私たちの退院促進の事業でも、家族の反対が非常に強いケー スも多くて、それを押し切って退院につなげようとする病院は非常に少ないです。 家族の説得に非常に労力を要するということが起こってきます。こういう不幸な状 況はもうそろそろ終わりにしていただきたいと思っています。強制入院の同意は、 きちんと行政で行えるような仕組みをつくってもらいたいですし、27ページの民法 は即刻廃止してもらいたいと思っています。  もう一点は、医療審査会ですが、これも経験的にもデータを見ても、入院患者さ んの権利擁護の機能を果たしているとは余り言い難いような気がしますけれども、 1点改善するとすれば、委員の中に当事者を入れていただきたいと思います。ある 当事者が、専門家は本当の意味での当事者のアドボケーターにはなれないと言って いましたが、それが事実かどうかは別にしても、専門家の集団では、どうしてもお 互いに気を使うというか、バランスをとろうとするメカニズムが働いてしまいます。 葛藤を回避しようとする。精神医療審査会の委員に必要なのは、学識経験などでは なくて、本当の意味で当事者の立場に立って発言できる人ではないかなと思います。 この時代、当事者本位の活動が重視されてきていますし、入院中の精神障害者のア ドボケーターを当事者が行うことは重要な意味があると思います。是非、当事者を 委員に加えていただければなと思います。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  ほかには。はい、どうぞ。良田構成員。 ○良田構成員  前回、何も言わなかったので、これは私の勝手なんですけれども、前回の部分も 併せて、少し意見を述べさせていただきたいと思います。いつもこの会議に出ます と、自分の団体を背負っておりますものですから、自分が言いたいことをまず考え ることに夢中になりまして、皆さんの意見をなかなかじっくりと聞くことがなかっ たものですから、前回はしっかり皆さんの意見を聞こうということでおりました。  精神科医療に関してですが、任意入院であっても信頼する主治医が急性期病棟の 担当だったりすると、本人も主治医もほかの先生の病棟に入院はしたがらないし、 させたがらない。医師と患者の信頼関係があります。  ですから、この問題は理屈じゃないんですね。気持ちの問題もある。この気持ち の問題も含めて、医療のあり方をどうするかということは、この会議などではとて も決められないことですし、じっくりとみんなが納得できる医療のあり方を検討し ていただきたいなと私は心から思います。  それから、スーパー救急の病棟は、入院費が非常に高いです。2週間ぐらいの入 院でも、10万円ぐらいです。高額療養費分はすぐに超えてしまいます。親というも のは医療費のほかに、着るものも余りボロボロのものを着せたりするのはかわいそ うですから、みんな新調してあげたりもします。入院させるということは、とても 経済的に負担があるんですね。高額療養費があるじゃないかとおっしゃる方がいら したら、私は非常に共感性のない、想像力のない方ではないかと思うんですね。高 額療養費であっても、食事代は、2週間で12,000円位必要です。1か月いると 25,000円位払うわけですね。それに、テレビを見るのも何にしても全部プリペイド カードで本人もお金が要ります、雑費も要ります。そういうものを全部負担してい くんですね。医療費を上げて、医療の質を上げていこうという議論もここで何回か あったわけですけれども、これはあんまり簡単に考えないでいただきたいです。負 担する方は大変なんですね。ただし、私は医療はよくならなければいけないと思っ ています。任意入院はともかくとして、強制的に本人が同意してないような入院は、 基本的には公費ですべきだと思っています。そうじゃないと、いつまでたっても、 社会的な受け入れがなかなか進まないだろうし、それから、入院も減ってこないだ ろうと思います。真剣度が違うのではないかと私は思っているわけです。  私は、これはちょっと極端なのかもしれませんけれども。しかし、家族が入院費 を支払ってくれる、あるいは本人が年金から支払うことが前提になっているような 医療制度はおかしいのではないかなと思っているわけです。これがまさに今の入院 の数が減らないし、それから、社会的入院者の受け皿もちっとも進まないというよ うな状況になっているのではないかと思っています。公的なお金で入院費を払うと なると、そこは違ってくるでしょう。  それから、精神保健福祉法のことですけれども、この法律は非常に前近代的な性 格を持っていると思うんですね。要するに入院することが中心で、家族から本人を 預かってあげるから、治療をしてあげるから、家族はしっかり入院費を払って、そ して、治療に協力しなさいよと、そういうふうに言っているものだと思うんですね。 これは私は、もうこんな時代じゃないと思うんです。入院の必要がある、家族が契 約をするのではなくて、本人自身が医療機関と契約をして、そして、治療を受ける というような時代にあるんだと思うんですね。この資料に書いてありますけれども、 入院自体は、保護者と精神科病院の管理者との間に成立した診療契約に基づくもの は、これはもうあってはいけないことだと思っています。こういう医療のあり方は ないのではないか。  それから、保護者制度ですけれども、これは家族会はずっと保護者制度の撤廃を 言ってきましたけれども、改善はされませんでした。医療導入入院を先の全国組織 のときに、かなり大幅な見直しをして、かつ、この法律が誰の権利を守っていく、 誰の権利を保障する法律なのかという条文の書き方ですね。これは、精神病院の管 理者にはできるではなくて、精神障害者は誰にすることができるという、そういう 観点からかなり大幅な提案をしたんですけれども、移送制度という形で返ってきて、 結果的には不本意な形になったことが私は記憶があります。移送制度は、措置入院 のこともありますけれども、基本的に、病状が悪くなってしまった人をどうするか という問題なんですね。つまり,危機介入をして、病院に入院するような状態にし ないという発想ではなくて、結局は、病院に搬送する最終的な目的を持ったような ものは、これは時代的な今の考え方からすれば、おかしい考え方ではないかなと思 っております。  ちょっと話が移送に行ってしまったのですけれども、保護者制度のことに戻りま すと、先ほど田尾さんからも言っていただいたんですけれども、私は、この法律は 家族ができないことを法律に決めていることだから、全然意味がない法律だと思っ ているですね。例えば任意入院でもない、通院も自らやってない方の治療を受けさ せる義務は、素人の家族ができるはずがないですね。病気の認識もないし、自分か ら入院するという意思も持てない、いろいろな認識が不足している、その人たちに 治療を受けさせるにはどうやったらいいのでしょうかということはこちらが専門家 の方に聞きたいんですね。それを家族がやりなさいと言っている。これだけでも全 く不可能なことなんです。なおかつ、民法の714条は、それができなかった家族に、 損害賠償請求はできるというふうにしているんですね。これは家族を追い詰める以 外の何ものでもない法律だというふうに、私は今家族の立場から言っております。 後からまたほかの方から御意見があるかと思いますけれども、これは絶対に廃止し なければ意味がない、廃止しなければならないと思っています。  一番大事なのは、前回の資料にもありましたけれども、入院をしなければならな い状態にさせない。しっかり家族をサポートして、当事者にもきちんと地域で医療 を充実させて、危機介入をして、あるいは早期に介入をして、入院に至らないよう な、そういう手当をしていくことが大事なんだと思うんですね。いつまでも、状態 が悪くなってしまって、入院させるにはどうしたらいいかということになって、そ れで家族に頑張れと言っているのでは、もうこれは限界です。  なおかつ、資料には、民間移送会社の問題があったと過去形にしていますけれど も、これは現在進行形です。民間移送会社はますます繁盛しておりまして。私は、 先日「もう2回目の利用です。1回15万払っている」という家族の話も聞いていま す。それは、病院のソーシャルワーカーはまだしも保健所の保健師からそれを使い なさいというふうに紹介を受けているんですね。こういうことがまだ行われている 非常に情けない状況であることを、私は強く皆さんに訴えたいなと思います。  あんまり言いたいことがたくさんあるので、全くまとまらなくなってしまいまし たけれども、とりあえずこの辺で終わりたいと思います。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、ほかにいかがでしょうか。  はい、どうぞ。佐藤構成員。 ○佐藤構成員  医療費の負担について、私の方からも一言申したいんですけれども。私のところ は救急・合併症入院料というスーパー救急に準じた病棟を運営しておりますけれど も、これはある程度高額療養制度を使うと、それほど自己負担は増えないわけです ね。過去に、措置入院の経済措置と言いましょうか、措置入院を経済措置的に運用 をして、そのことによって精神科の入院はほとんど自己負担がないという時代があ ったわけですね。そうしますと、そのことによってむしろ入院期間が長期化すると いう問題があったのではないでしょうか。また、市町村によっては、入院医療費の 自己負担分を市町村で補てんするという制度があります。そういうことがある程度 入院期間の長期化に関係しているのではないかと思うわけですね。そうしますと、 措置入院とか、保護者による医療保護入院という問題はちょっとありますけれども、 ある程度の適正な負担をしていただいて、なるべく入院期間を長期化しないで、早 く、短期間で入院を切り上げていただいて、地域へ戻るというふうなことを考えて いただくことも必要ではないかなと思うんですね。  以上です。 ○樋口座長  ほかにいかがでしょうか。  品川構成員。 ○品川構成員  今、良田構成員から、家族の立場からのお話があったんですけど、私たちが今地 域で支援されている方は、そういった家族関係が途絶えたり、病気とか、お亡くな りになったということで、地域での一人暮らしをやむなくされているような方、ア パートの一人暮らしとか、グループホームでの暮らしとかがあるんですけど。そん な方であっても、いざ入院となると、どうしても家族の同意が必要になって、私た ち福祉の従事者が通院で一緒に病院に行って、入院をお願いしますと、本人も承諾 されて、なかなかそこのところからは家族の方でないといろいろな手続が何もでき ないんですよね。本当に日ごろ毎日のように私たちがお世話して、支援させていた だいているのに、このいろいろな入院の制度の中では、私たちの立場では何も役に 立たない。そうすると、何年も連絡のとれない、関係の悪化している家族の方に来 ていただいて、また、そこでなおさら関係が悪化して、ますますその先の退院が、 次の退院のときは絶対協力しないからというふうなことに至ってしまうのが現状な んですよね。家族のいる方はまだいいといふうなあれもありますが、なかなか一人 でも難しい。この制度がある限り、ほかの誰も代わり得ないことがよく起きてきて います。  それと、移送とか、いろいろな私たちの手にも負えない、本当に受診につなげな いといけないような状況になったときにも、私たちは、今までは健康福祉センター の方にいろいろ相談してしいたんですけど、どことは言えないんですけど、そこの 方から「交番に行って相談しなさい」というふうなことをお話しされたりするんで すけど。日ごろからお世話をしていて、断薬とか、治療の中断によって受診を本当 にしないといけないような状態になったとき、私たちではどうしても連れて行くこ とができないし、何ともできないときに、交番に行ったり、警察にお願いというよ り相談に行くというのが何かちょっと情けないような思いがしますので、その辺り は行政の何らかの支援体制みたいなものが欲しいなと思います。 ○樋口座長  伊澤構成員。 ○伊澤構成員  何人かの方が保護者制度についてお話しされたので、ちょっとくどくはなってし まうのですけど。やはり私も長年これがずっと規程としてあって、そして、家族の 方たちに対する多大なる負担、心理的プレッシャー、そして、御本人にとりまして も、意欲の減退といいましょうか、保護者がいなければ自分の暮らしは成り立たな いといいますか、そういうふうな気分に陥ってしまうことを進めてしまうものであ るし。同時に、保護者がいなければ何もできない人という社会や世間の目ですよね。 そういう目線が非常に偏見や差別を煽る材料にもなっているのではないかと強く思 います。長年これがずっとあるわけで、部分修正はありましたけれども、思い切っ てここで撤廃の方向で大きく舵取りをしていただきたいと思います。それが1つで す。  それと、きょうの資料にありましたけれども、そういう権利擁護とか、見守りも 含めまして、保護の目線で精神の方たちを支援していくときに、成年後見制度は非 常に大きいと思うんですね。きょうの資料にちょっと出ておりますけれども。それ が制度化されて数年たちますけれども、年次の推移も含めまして、どれくらいの精 神の方の申請と適用といいますか、実際の動きの中身といいますか、そういったも のが見れるような形で資料をお示しいただきたいなと思っております。今後のアド ボケイトを考えていったときに、成年後見制度は非常に重要だと思いますので、そ こをしっかりと深めてみたいというところが1つあります。  それと、院内の処遇に関して少しお話ししたいんですけど。私は、日々、地域移 行とか、退院促進の活動も担っているんですが、いろいろな病院に入らせていただ いて、そこで長期入院、療養の方にお会いする機会が非常に多くあります。そうし たときに、お話しする中でいろいろと驚くことがあるんですね。例えば自分の主治 医がわからないとか、あるいは入院の形態をその方自身は知らないというようなこ とがあったりとか、あとは、その方は形態は知っているけれども、任意入院してい るんだけれども、こんなに行動規制があるんだろう、何であの人は外出できるのに、 自分はできないのだろうみたいな、そういうところの区別されている気持ちといい ますか、そういう違いがわからないというか、十分な説明を得られてない、受けて ないと、そういうインフォームドコンセントの不十分さも非常に感じるんですけれ ども、そういうふうなことですね。お医者さんと面接・診察がないとか、それが数 か月に及んでいる場合もあるというようなぐあいに、ちょっと驚きを持って受けと めてしまうことが結構ありまして、この辺りは一体どういうことなのかなと思いま す。ちょっと聞いた話ですが、国連の被拘禁者に対する処遇のガイドラインの中に、 最低基準として、1日1回は、1時間ぐらいの屋外での運動を保障することが定め られているらしいんですが、それを守っている病院は余り多くないというふうな話 も聞いたりもします。こういったこととの兼ね合いも含めまして、先ほども御説明 がありましたけれども、院内処遇における、あるいは接遇における基準とかガイド ラインの見直し、あるいは徹底ですね、その辺は大きく進めていただきたいなと思 っています。  それと、最後なんですが、今回ちょっと議論に出ておりませんが、あえて申し上 げたいのは、実は障害者の定義の問題なんですよね。これは精神保健福祉法の第5 条には、「精神疾患のある人」ということで精神障害者のことを規定しているのです けれども、ところが、精神保健福祉法の上位に位置する障害者基本法では、身体・ 知的・精神の障害を有するといいますか、生活あるいは社会生活を行う上で相当な 制限を受ける者ということで、要するに障害者という規程でもって見ていこうとい う、そういうふうな目線があります。そういう意味では障害者基本法と精神保健福 祉法上の障害者の定義が微妙にずれているというか、ねじれているというか、そう いうふうな問題などもあると思いますので、その辺の整合をどう図るかというとこ ろも、きちっと視点として持つべきではないかなと思っております。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  それでは、坂元構成員。 ○坂元構成員  入院費の件ですけれども、自治体の立場からすると、例えば措置入院の場合、そ れが長期化につながることは好ましくないと思いますが、一定の期間は措置入院と いう性格上、それは無料化が望ましいと考えております。例えば感染症予防法の中 では、勧告で入院させる場合は、全部無料です。ただし、審査会が、72時間を超え る段階で1回審査しております。審査が厳しいので、早く退院させるべきという方 向性を示す場合が多いです。例えば今回の新型インフルエンザでも、これは入院勧 告で、この間の費用は全額負担されました。入院を長期化させない基準や審査をち ゃんとして、法律で入院させる以上は、この費用は無料化すべきではないかという 考えを持っています。  以上です。 ○樋口座長  それでは、大塚構成員。 ○大塚構成員  幾つかあるのですが、まず全体的なことを1つ申し上げさせてください。  良田さんからも出ましたけれども、精神保健福祉法の体系そのものについて、ど こかで一度しっかり検討していただきたいと思っています。障害者自立支援法がで きたことで、今まで精神保健福祉法の中に入っていた障害福祉に関する部分がほと んど抜けてしまって、手帳や精神保健福祉センターのこととか残っておりますが、 ほとんどが入院手続に関することを中心になってしまいました。入院手続制度に関 すること、また、精神保健制度に関すること、それから、障害福祉に関することと いうことが、このまま精神保健福祉法というくくり方で今後どういうふうに位置づ けを整理していくのかは、かなり大きなことだと思うんですが、どこかで検討する べきではないかと考えます。  それから、入院制度のことについてですが、諸外国に見習って、非自発的入院と 自発的入院の2種類に分けていいのではないかと考えます。措置入院については、 今までどおり行政処分として、公費医療ということではないかと思うんですが、措 置入院について、地域格差が大変激しいということが従来から言われていましたが、 ここのところについて、「現状と課題」では、判断基準について少し事例収集等をと ありますが、一方で、措置解除とか、措置入院期間というところも非常に格差があ って、措置入院で15年そのまま入り放しみたいなこともあるわけですから、例えば 措置解除に関する実態についての格差のところも、事例分析などをする必要性があ るのではないかと考えます。  それから、医療保護入院ですが、その意味合いを考えると、ご本人が入院の判断 ができない、難しい際の治療導入的な意味合いが非常に大きいと思うんですね。そ の治療導入機能というところをかなり意識して、そこを基本とした制度に転換して いくべきなのではないかなと考えます。そうだとすると、治療導入の機能を持たす 入院として、例えば2週間とか4週間とかというかなり短期間のところで、その後 どうなったかという見直しをかけるということによって、入院形態が変わっていく というような手続を組み込めないだろうかと考えます。それが医療保護入院ではな く、応急入院の対応法を充実させていくべきなのかとか、そのあり方についてはま だ整理ができないのですが、意味合いをしっかり確認して、変えていくべきではな いかと考えます。ただ、そういうことを担保していくためには、急性期治療を担う マンパワーの整備が必要ですし、疾患別の治療ガイドラインの策定なども必須にな っていくのではないかなと考えます。  それから、後半に、医療観察法との比較で、隔離・拘束のことが出ていましたが、 これはその資料に示されているとおりだと思いますので、これだけの人員とか、ア メニティとか、治療体制があれば、隔離・拘束が短くなることが保証されるのであ れば、当然ですが、そこの体制を整備していくことは是非対応をしていただきたい と思います。  保護者制度につきましては、私どもも家族の負担になるこの撤廃については、従 来から要望をしてきたわけですが、一方で、どこかに患者さんの権利を擁護してい く、そういう機能を何らかの形で保障していく必要があると思っていて、非自発的 入院の方々で、措置入院ではない形が残るとすれば、そこは自治体が保護者機能を 担うことを検討できないかと考えます。そのときは圏域ごとに、例えば権利擁護セ ンターみたいなものを設置して、自治体の保護者機能をきちんと補完するシステム を構築していくことが必要だろうなと思っています。今も、区長同意、市長同意な どは、医療保護入院の場合に、まったくご本人を知らない方々が同意の押印をして いて、面会に来られるシステムがあるわけでもありませんし、身上監護を担ってい るわけでもありませんし、病院の中でどのような状態になっていても知らないまま になっていることもあるわけです。例えば権利擁護センターみたいな保護者機能の 中で、訪問型のアドボケイトを設置していくとか、病院への立入権を与えるとか、 処遇改善の請求権、退院請求権の付与が検討できないかということを考えます。  最後に通報のシステムについてです。私自身が病院に勤めていたときに、非常に 実感を強くしたことに、矯正施設からの通報は、先ほど、実際に診察が1割に満た ないという話がありましたけれども、ほとんどの通報内容は外来で十分に対応でき る方々であって、居住の場がないことによって精神科病院への入院の通報が入って いるという実態が非常に多かったと思っています。ここは実態からきちっと見直し をかけていくべきだろうと思っています。被通報者の要件の見直しによって何とか ここはできないかということと、この間、法務省と厚労省共管で、そういう方々の 出所支援が少し制度化されていますので、そういうことでも改善できることがある のではないかと考えます。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  最初のところで、言われた体系そのものの検討は、おそらくこの会ではなくて、 改めて精神保健法の改正にかかわる何らかの検討会なり、そういうものがつくられ るというようなことを聞いていますので、そういう体系についての話は、ここでは 御意見はいただくとして、改めてそういうことは検討されることになると思います。  はい、どうぞ。 ○末安構成員  今の体系の話で言うと、精神ですね、それについて1点だけお話ししたいんです けど。今、開催してもしなくてもいいという言い方ではないんですけれども、そう いう位置づけになりました前回の改正ですね。実際、厚生労働省ではどういうふう に把握されているのかわからないんですけれども、東京などでも3年くらい開かれ なくて、遅滞なくいろいろ進んでいくのですけれども、自立支援法ができたことと か、情勢が変わっているのに、精神保健福祉サービスを、地方の時代と言われなが らも、検討をする場所が、都道府県によってはですけれども、なくなっていること がありまして。これは市町村の側も、市町村で独自に福祉計画に入れたりとか勿論 しますけど、県がどう考えるかというのが止まったところで自分たちで考えるとい う。要するに、国がどう考えるか。都道府県が抜けて、市町村というふうに。都道 府県では勿論福祉計画に入るんですけれども、でも、日常起こる問題を検討する場 所がないんですね。これは、体系を再検討するときに、是非入れていただきたいこ とだと思います。これも都道府県によってはそうされていますけれども、当事者の 方を委員とするということを条例で明文化しているところもありますけれども、そ のことも前提にして、精神の義務化をしていただきたいと思っております。  きょうの検討に関連しては2点ありまして。1つは、自立支援法の改正に伴って 附帯事項で付いて法改正が前提なんですけれども、法律の運用がどのように行われ ているかという評価をもとに考えることが必要だと思うんですけれども、きょうで 言うと、51ページの移送ですけれども。移送制度ができるときに、相当いろいろな 議論があって、一言で言えば、濫用されないようにという議論が強くあったと思い ます。つまり、強制入院の入口にならないようにという慎重論もたくさんありまし たし、その反対意見もあったと思います。実際、実施評価を見ると、相当格差があ る。全く使われないところもある。また、一方、毎月のようにという言い方も変で すけれども、毎月のように使っているところもある。34条が、当初つくろうとした ときの役割を果たしているのかどうかということは考える必要があるのではないか と思っていまして。この間、このあり方検討会で、地域サービスをどう充実させて いくか。その場合、患者の利益は何か。精神障害者の利益は何だろうかと考えてき たときに、もう精神障害者になっている方のことを前提に考えてきましたけれども、 この中の議論でもありましたけれども、まだ精神障害者かどうかはわからない。し かし、医療サービスも福祉サービスも届いてない人をどうするかということは、こ の法律は精神障害者になった方、患者さんというふうなことを前提に考えています けど。国の法律ということで考えれば、その方が患者さんかどうかはわからないと きにどうするかということは放置できないテーマではないかと思うんです。アウト リーチとか、アクトの話が出ている一方で、それに対する手段は、現行制度の中で 何とか考えていこうかというふうになっているわけですけど。基本は申請だとして も、例えば要介護認定や障害支援区分の判定も、基本的に市町村の権限になってい るわけですよね。精神の場合は、精神ということだけで枠取りすることは難しいか もしれませんけれども、どこでそれをやるのか。それから、こういう今のような時 代に、迅速性は何で確保されるのか。スピードということで考えれば、それはどこ で判断すればいいのかというところが議論されてこなかったと思うので、私はその 入口の1つは、この34条、移送制度は、移送するという前提になっていますけれど も、移送するかどうかの判断をするために慎重に調査しろということが告知にも書 いてあると思うんですけれども、その慎重に判断するというところでかなりいろい ろなことができるのではないかと思います。特に家族のない方、あるいは、家族が あっても、家族の判断が御本人の判断に左右されている場合もありますし、その逆 のもありますし。ですから、そういうことを専門家の目が入るべきだと思います。 ですから、34条の運用の仕方といいますか、つくったときの慎重さは大事なところ だったと思うんですけれども、その結果、ほとんど使われないような法律になって いる。では、その使われてない都道府県では、無用のものなのかといったら、そう ではなくて、先ほど来出ているような、ガードマン会社にお願いするとか、人を3 人付けると50万円になるそうですけれども、外来にチラシが4社ぐらい置いてあっ たりとかするわけですよね。それはいわば必要悪だというふうに簡単に切り捨てて いいものかどうか。そういうものを選ばざるを得ないような状況にある人たちにつ いてどう考えていくかということは、国家の政策としては考えておく必要があるの ではないかと思います。  それから、もう一点、きょうはこの資料にはなかったんですけれども、以前出て いた調査でも、隔離・身体拘束が増加していることがきょうの評価の中にはないん ですけれども、増加しているということがあります。これも法律の評価ということ で考えていくと、国民にとって好ましいことではないと思います。私ども看護師に とっては人ごとではない問題でして。私どもの団体では、「行動制限最小化」という 認定を設けて、国にも「行動制限最小化」の診療報酬をお願いしているわけですけ れども、何とかそれを減らしていきたい。しかし、現実には、指示ができる医師の 数とか、それから、私どもは認定の看護師の数を要請していますけれども、その数 がなかなか追いついていかないとか、そういうことを考えていくと、今までの法改 正の中で、例えば通信・面会の自由のガイドラインを国が告知出されまして、その ときと同じような、一律に、例えば何分おきに、これは監査のときによく話題にな るんですが、ある県では30分おきが頻回だと、ある県では15分だというようなこ とがあるわけですけれども、30分がいいか、15分がいいかが問題ではなくて、今の 段階で日本の国の精神医療の現状とか、それから、隔離・拘束が増えているという 現状を踏まえた場合には、どういう姿が、今の時点で国としてはこう考えるという ガイドラインを都道府県が迷ったり、個別の病院が混乱しないようなガイドライン は示すべきではないかと思います。本来、そういうのは学会がやるべきだという意 見をもしお持ちだったら、学会にそういうガイドラインを出すべきだということを 指示すべきではないかと思います。勿論、学会というか、学問領域とか、職能領域 の専門性はあるかもしれませんけれども、それは国の考え方と、その専門領域と話 し合うという余地があっていいと思います。そうでなければ、今の段階で現場が混 乱しないような、あるいは患者さんの利益は何かということを基準にして明確なも のを出していくことが必要ではないかと思っております。 ○樋口座長  それでは、上ノ山構成員。 ○上ノ山構成員  先ほど、精神保健福祉法に関する議論が今後まだ続くとお伺いしましたので、少 し安心したんですけど、最初は、今回で終わりというふうなニュアンスの話として 受け取っておりましたので、ちょっと不安でした。精神保健福祉法に関する議論は、 どうしても入院制度の議論が中心になってしまいますので、入院させないために、 どのような形のことをするかとか、そういうことだとか、あるいは精神障害の定義 の問題だとか、そういうことを含めた全体的な精神保健施策にかかわる法改正をお 願いしたいと思っています。まず、それが1点ですね。  それから、きょうの議論について言えば、大体結論は決まっているような気がす るんですけれども、保護者の問題にしても、これは矛盾点が非常に多いですし、こ れは改めていかなければなりませんし。それから、身体拘束の問題に関しても、こ れは非常に問題が多い。ただ、身体拘束の問題に関して、医療観察法のデータを持 ち出して、身体拘束はよくない根拠ができたというふうに言うのは、余りにもデー タが不足して、1人があったというだけのデータですので。逆に言えば、医療観察 法の場合は、そういう身体拘束が必要でない程度の人しか入院させていないという、 無用な制度の可能性もあるということなので、これは何ら身体拘束の不要に関する 根拠にはなっていないと思います。人と手間をかければ、身体拘束は必要ないのは 当たり前の話なので、それをちゃんと医療観察法に関連するような議論ではなくて、 本来の精神保健福祉法の枠の中で、人、それから体制を保障していくことをやって いけば済む話だと思います。身体拘束に関してはそういうことですね。  それから、移送のことに関しては、私もどうしてこれが全然普及しないのかと疑 問に思うんですけれども、ふだん入院が必要なときに、どうしても移送する人がい なくて非常に困ることがあります。例えば保健所に頼んでも、先日も、この家族は、 息子さんは遠くて働いていて、その息子さんが何曜日なら休みを取って来れるんだ けれども、それまで待っておれない緊急性があるから、そういう制度を利用できな いかと言ったら、家族がそういう休みを取れると言っているんだったら、それはこ の制度を利用する必要はないのではないかということで、そういう緊急性はないの ではないかという形で却下されました。要するに、家族のふだんの生活を犠牲にし て、それを前提にした上で制度設計が成り立っているという、そういう問題がある かなと思います。  それから、移送に入る前には、ふだんからの調査といいますか、保健所の関係者 の当事者とのコンタクトが非常に大事なわけで、そういうコンタクトが非常に少な くなっている状況であるから、そういうややこしい移送などという制度を使いたく ないという行政側の判断が行われる可能性が高いと思うんです。保健所再編の煽り を食って、非常に人員が少なくなっていて、こういうややこしい制度を使いたくな い、できたら家族でやれるものならやってください、あるいは病院間とか診療所間 でやれるものならやってくださいというふうな感じになっているのではないかなと 思います。これは非常に重要な問題でして、地域医療をどのように今後充実させて いくのかを考えた場合に、保健所におけるマンパワーの充実だとか、ふだんのコン タクトをちゃんと充実させていくような方向での施策が必要になってくるのではな いかと思います。  この移送の問題に関して、どういうわけか保護者との関係で問題提起をされてい て、勿論、出発はそうだったのでそうかもしれませんが、未治療・治療中断者にア ウトリーチをしていくという地域医療の充実という観点からも移送の問題を議論す るというふうな、ちょっと二段構えの問題提起になっています。この移送問題とア ウトリーチと若干かみ合わないところがあるかと思います。入院のための移送とい う問題だけではなくて、アウトリーチは、ふだんの地域生活を支援していくために、 その患者さんの生活の場に出向いて、どのように生活を支えていくかということが 要点ですから、これは移送の問題とは必ずしも関連しない。ただし、ふだんのコン タクトを非常に重視するという観点で言えば非常に関連してくるので、若干ねじれ た問題提起になっていますけれども、移送の問題を契機に、ふだんの地域医療にお けるマンパワーの充実と、そして、それを支えていく外来医療の充実という点で議 論が進めばいいなと思っています。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。  では、町野構成員。 ○町野構成員  いろいろ保護者のことが問題にされておりますけれども、私は少し問題を整理す る必要があるように思います。1つは、医療保護入院と保護者制度との関係ですけ れども、これは、保護者がいなければ医療保護入院が成り立たないような解釈がさ れるようになっているのは、かなり裁判所の見方に問題があるように思います。19 ページに紹介されております判例ですね。この判例はどういうところへ出てきたか といいますと、具体的に言うと、医療保護入院といいますか、当時は、同意入院と 言っていたわけですが、同意入院が強制的に精神障害者を入院させる。だから、こ れは憲法違反だと、国際人権規約違反だということに対して、いや、契約を前提と しているからそういうことはないのだということを言ったのがこの判例です。した がって、これは必ずしも一致するものではない。  その前には、昭和48年に東京地方裁判所の判決が別のコンテクストで出ておりま して。それは診療録の開示を求めた精神障害者の権利を肯定したものです。このと きは、第三者のためにする契約ということで、保護義務者と病院との間の契約があ って、その受益者が精神障害者だという契約であって、ここのところでは、いわば カルテの閲覧権を肯定するためにこの法制がとられたにすぎない。要するに、契約 の成立の有無、その成立という問題は、これは直接的には強制的に入院させること と連結しているものではないのです。だから、保護義務者の存在を認めなければ強 制入院ができないという話ではないということにまず気をつけるべきだろうと思い ます。  もう一つの問題は、監督義務の問題でございます。保護義務者制度をなくせば、 監督義務が免れるかというと、これは必ずしもそうではないということに気をつけ なければいけない。といいますのは、戦後の判例では、保護義務者として選任され ていない者であっても、監督を実際に行っている親とか配偶者等、そういうものに ついては、これを714条の責任を認めているということが1つあります。したがい まして、保護義務者制度をなくしたからといって、家族の負担が直ちに免れるとい うわけではないということにも気をつけるべきです。  第3に、714条の義務は、かなりの程度限定されてきております。すなわち、平成 何年かの改正で、一般的な監督義務が取れたということになっております。しかし、 これによって完全に714条の責任者が免責されるわけではなくて、監督義務という ものが取られたことによって、いわば一般的に精神障害者を見張ってなければいけ ないということはないのだということになったのだけでありまして、精神障害者が 何らかの他害行為に出る可能性はかなり高いというような危険性があったときにつ いては、依然として義務が存在するというぐあいになっております。これは平成18 年度にその趣旨のことを確認した判決が出ております。そして、さらにこのように 考えてみますと、714条を通じての義務といいましても、結局のところ、709条の一 般の不法行為の責任の場合の義務と余り違わなくなっているという話でございます。 そう考えてみますと、不幸な事故が起こったときに、被害者の側の損害を誰が補て んするかという問題でございます。これはただの災難であるとしてあきらめてしま えというわけには到底いかないような状態です。このようなことを考えなければ、 保護者制度を撤廃するかどうかという問題とはなかなかいかないだろうと。では、 保護義務者が負担しない、家族が負担しないということになるならば、病院が負担 するのか。病院が負担しないことになると、その他害行為を防止できなかった地方 公共団体が負担するのか、あるいはどこも負担しなくていいのか。その問題を考え ておかなければならないだろうと思います。  それから、もう一つの問題は、先ほど田尾構成員が指摘されましたとおり、医療 保護入院の場合、退院させようということを、病院側が退院が適当であると。しか も、その受入先も別のところにあるといったときも、家族はそれを拒否するとなか なか退院させられないということがあります。これは悪い意味での、いわば医療保 護入院を民法上の契約的構成と考えていることによるものだと思います。これは現 在でも法律論としては成り立たない議論になることは明らかなわけでございます。  以上のように、保護義務者制度については、法律的なことではいろいろ手繰って いきますと整理はできるところであります。しかし、いずれにいたしましても、現 在の問題は、全体的な患者さんたちの医療について在宅へ誘導するというのが現在 のやり方です。このことをもう一回、病気とか疾病とか精神障害とかのそういうこ とによって考えていかない限りは、これを一律に誘導するという現在のやり方の中 で、保護者制度を全部廃止してしまえということはかなり難しい話だろうと思いま す。したがって、いわば国連の準則等で出ておりますパーソナル・レプレゼンタテ ィブのようなものを立てるということは私は必然だろうと思いますけれども、その ようなことを考えるにしても、これはいずれも、今は医療を受ける、サービスを受 けることについての補助、あるいは代行の範囲にとどまるものでございまして、具 体的なサービスを家族が提供しようと、それから、パーソナル・レプレゼンタティ ブがそれを提供しようという話ではないわけですから、このことも考えておかなけ ればならないだろうと思います。  以上です。 ○樋口座長  どうぞ。 ○長尾構成員  町野構成員からは、法的な問題でいろいろ整理して教えていただいて、ありがと うございました。  最初にも座長の方から言われたように、精神保健福祉法の問題点がいろいろ出さ れているということですけれども、今回のことでこれが決定されるということでは 全くないと。今後、これは十分に精神保健福祉法に関するまた別の会というものが 構成されて、しっかり論議されないとこれはできない問題であるということで、こ れはそういう確認でよろしいですね。 ○林課長補佐  具体的な会ということがまだ決まっているわけではありませんけれども、ここで ということではなくて、何らか機会を設けていかないといけないと考えております。 ○長尾構成員  はい、わかりました。  先ほどの保護者の問題に関して、いろいろ説明をいただいたのですけれども、こ の中で、後見制度のことが若干進められるような方向で書かれている部分もあるん ですが、ただ、成年後見制度と言いましても、これを本当に持っていこうとすると、 その鑑定費用とか、その後見人が、多くは弁護士がなるのかどうかは別としまして、 その費用とか、地域生活支援事業で全部支給するとか、補てんすることができると 書いてありますが、これはほとんど無理な話ではないのかと。そういうことが実際 にできるのかどうかということがあるかと思いますし。  先ほどの移送制度の問題も、これも非常に多くの問題が出て、実際はほとんど活 用されてない。そこに投ずるマンパワーとか、県の職員とかそういった人たち、保 健所等の職員がきちっとそういうことができるだけの体制を本当はしくべきだろう ということがありますので、そういうことを担保しないで言うことは難しいだろう と思います。  それから、64ページの部分でいろいろ検討項目として出ていますけれども、一番 下の入院患者の閉鎖処遇が大分多いというデータもさっき出ていましたが、これは データの取り方として、任意入院でも、閉鎖病棟に入院している人は結構あると思 うんですけれども、閉鎖病棟に入院していても、それは開放的処遇をすることにな っていますので、このデータの取り方として、開放的処遇であっても、閉鎖病棟に 入っているから閉鎖処遇とされている部分が結構あるのではないかということもあ るので、その辺のことが実際にきちっとした処遇をされなければいけないわけです けれども、その辺のデータの取り方も1つはあったのかなと。  それから、その上の●ですが、認知症、身体合併症状の増加云々で、精神病床以 外に入院することのときの行動制限ですね。これの処遇をどうするのかということ は、これは今は全く一般病床では、精神保健福祉法がかからないことになっている わけです。これはそこにまで精神保健福祉法を及ぼすという意味なのかどうかとい うことをちょっと質問したいと思いますし、先ほども医療観察法と措置との差は、 人員基準であるとか、個室化とかということもありますけれども、確かにマンパワ ーをしっかりかけて、ハード面もしっかりよくすれば、それはよくなることは勿論 ですけれども、それとともに非常にコストも高くなっていくということがあります。 その辺のものをきちっと担保しながらどういうふうにしていくのか、それの負担を どうやってやっていくのかと、そういうことが財源問題等も含めてきちっと論議さ れなければいけないのではないかと思います。  以上です。 ○樋口座長  それでは、今の質問については。 ○野崎課長補佐  64ページの論点について御質問がありましたけれども、ここについては何らかの 方向性を持って書いているわけではございません。データ上はそれこそ一般の精神 病床以外の病床に入院される精神疾患の患者さんが増えている。ほとんどが認知症 の方が多いんですけれども、増加している現状があって、そこについてさまざまな 影響もあるでしょうし、あとは、そういう患者さんがどういう患者さんなのかとい うことも、必ずしもデータからでは明らかではないので、いろいろな影響であると か、実態であるとか、そういうことを踏まえて、御意見いただきたいという趣旨で ございます。 ○樋口座長  はい、どうぞ。中島構成員。 ○中島構成員  精神保健福祉法の見直しについては、別途やられるということなので、あまり言 っても仕方ないんですけど。1つは、医療保護入院は廃止するのがよいと思います。 保護者については、患者の権利擁護に限って規定していく。それができない場合は、 自治体の第三者機関が保護者に替わって擁護する、というような形をきちんとつく っていかないと、非常に不明確な制度のままで行ってしまうのではないかと思って おります。  それから、もう一つは、認知症の方の入院について、これは精神保健福祉法の中 の第2部というようなことでも結構ですし、別の法律によってやっていかないと、 認知症と他の疾患は随分性質が違いますので、これを一律の規程でやることには無 理があると思います。現在、認知症の内約半数ある任意入院は、法律を正しく運用 すれば医療保護入院に切り換えなければいけないわけで、その辺りのこともお考え になって、将来的にどうするかということを、大きな枠組みのところで考えていた だきたいと思います。  それから、もう一つは、入院が長期化している方の中で、医療保護入院も長期化 していますが、任意入院の方がより長期であるというところが、1つの非常に大き なポイントだろうと思うんですね。つまり、セルフケア能力がないために入院して しまっている。ほかに行くところがないというのが最大の問題でございまして、こ れを社会的入院と呼ばないでどう呼ぶのだmというようなことになろうかと思いま す。あまりけんかを売るつもりはございません。  もう一つは34条の問題ですが、今後、十分広げていかなければいけない訪問診療 のことですね。アウトリーチと言ってもいいんですけど、そういう流れの中でこの 34条を位置づけ直すことがこれから必要になるのではないかなと思います。  もう一つは、さまざまな問題が、根本的に人手が少なすぎる。逆に言えば、入院 患者が多すぎるということでございますけど。この人手の少ない中で、こういう隔 離・拘束という問題も多発してくるわけですし、抜本的に人員を増やすという方向 へ向けての政策の切り換えが、現在最も必要とされていることではないかと思いま す。医療観察法は、入院しなくてもいい人が入っているような話がありましたが、 そうではございませんで、医療観察法の病棟でも、ちゃんと看護師や医師は殴られ ております。御心配なさらないようによろしくお願いいたします。 ○樋口座長  はい、どうぞ。 ○長野構成員  きょうは本当に重い話題というか、現場でやっている者からいきますと、絶対こ うだというふうにも言い切れないことが余りに多過ぎて迷っておりますが。ただ、 基本的に医療保護入院というところで言えることは、1つは、御本人の立場からと 言っても、治療というところでは必要なときもあるのだろうと思いますけれども、 脅威になるという意味では十分な制度ではない。保護者、家族に関しても非常に問 題がある。もう一つ、精神保健指定医にとってもかなり問題のある制度だろうと思 うんです。日々奮闘して、日々迷っておりますが、治療者でいたい、少なくともパ ートナー、もしくはワンダウン下のところで支援者でいたい主治医が、さまざまな 条件で、管理という責任のもとで強制力を発揮しなければいけない医療保護入院を させていただいた患者さんと、あと治療関係をとり直すのにどれだけエネルギーを 使わなければいけないかというようなことを含めて、三者に不十分な制度というこ とははっきり言えると思うんですね、指定医のあり方も含めて。  田舎でやっていますと、措置入院でさえ、場合によっては2次診察そのまま主治 医なんていうことが起こり得る、マンパワーの不足から、敵と味方を同時にやるな んていう二枚舌を使わなければいけないという、昔は、教育の中で、必ず後でわか ってくれるから、始めはいいんだとなんて教育された覚えがありますけど、それは 全く違う。医師を信じていただけない。けれども、誰か指定医で入院させていただ いて、指定医じゃなかったときの方が随分楽で、先輩が入院させてくださって、後、 味方として治療をさせていただくと。そういうふうな問題なので、将来的に絶対に この制度のままではいけないと思うんですが、そこに行くまでに、今回もたくさん 意見が出ておりますけれども、行政の人権擁護というところの本当に現実的なマン パワーであったり、体制不足であったりとか、あと、警察も含めた危機介入の弱さ であったりとか、ありとあらゆる問題を将来像をはっきり、とにかく今回のことで 将来像はこうあるべきなんだということをはっきりさせて、10年単位とか20年単位 で民法から見直さなければいけないということだろうと思いますので、具体的な方 策を一個一個とにかく直していく、変えていくという方向をこの場である程度確認 できると本当に有り難いかなと思うのと、そこに向かって仕事をしていけるという か、ふだんやっていけるので。そうしないと、医療保護入院をどんどん適用しなけ れば逆にいかなくなったりとか、もう右往左往していて、どっちに向かっているの か今現場もわからないというのが現状だと思うので、将来像としてはっきり像を描 けると本当に有り難いかなと思います。  あと、少し現場の細かなことで言いますと、身体拘束、先ほどの話題のところが ありましたが、精神保健福祉法に取り込むことは絶対あり得ないとは思いますが、 特養も含めて高齢者の施設は、身体拘束ゼロということは本当頑張っていますが、 ただ、ちょっと行き過ぎているというか、何のための身体拘束ゼロかわからなくな っていて、現場が回らなくなっているというのも見受けられるんですけど、そうい うところ。あと、一番心配なのは、内科・外科も含めた一般病院の中での全く管理 をされない、外部評価の入らない、日常的な身体拘束、ここをとても心配をしてい て、まだ精神保健福祉法で規程がある方がましかななどと逆に思ったりするぐらい 恐ろしいというか、危なっかしいことが起きているので、その人権擁護という観点 で、公的にそこの現場に常に行けるような仕組みが絶対ないと、保健所は本当いら っしゃらないし、自治体はありとあらゆる事業を抱えてアップアップしていますし、 どうやったらいいんだというのが10年、20年単位でないと考えられない状況にある し。けれども、これは根本の問題なので非常に問題なんだろうなと思うので、今回、 あり方検討会で、是非、将来はこうあるべきだというようなのを出せないかなと私 自身は思います。 ○樋口座長  山根構成員、どうぞ。 ○山根構成員  皆さんから幾つか重なった意見が出ましたので、少し現場の方から考えてみます と、医療保護については、中島構成員がおっしゃいましたが、認知症の方をどうす るかがかなり問題になってくると思います。入院が必要であっても、精神疾患で入 院なさっている方と認知症の方とでは、対処が違いますので、これはきちんと分け ていただきたいと思います。それと、任意入院の方が在院日数が増えているのは、 本当にそうです。以前は、受け入れがないという理由の社会的入院はありましたが、 今は、このまま帰ったら家族に迷惑をかけるし、帰ってみても居場所がない、いわ ゆる新しい社会的入院が増えているように思います。退院を受け入れないというこ とではなくて、退院したいけれども、退院する場所がない。確かに社会資源は増え ていますが、従来が非常に少なかったから大きく増えているように見えているだけ で、本当の必要数からすると、とてもまだ足りないのが現状だと思います。そうい う意味では、病床数を減らし地域へというのであれば、地域で生活できるような資 源とか、援助がきちんとできれば、余り無理をしなくても病床数も減らせるのでは ないでしょうか。病床数が減れば、今いる病院のスタッフをいい形で重点的に再配 置ができる、といった別な視点から考える必要があるかなと思います。  それと、閉鎖処遇が45%もあるのは、これは病棟そのものの構造があるので、た またま入っているのが閉鎖かもしれない。実態がもしわかればお知らせをしてほし い。私どものところは完全閉鎖なのですね。なぜかというと、本人がどんな状態で も受け入れますよ、そのかわり、本人の意思で動けるようになったら、自由に外に 出れますという形をとられています。鍵も、普通の鍵ではなくカード式ですから、 自由に出られる方が、詰所の前に来られたらボタンを押せばロックが開くという、 そういうふうな形で、精神的な鍵をかけないという工夫をしています。それは、そ ういう全閉鎖にすることによって、どなたの安全も保障しますよということができ るわけですね。その辺を踏まえて、単に閉鎖かどうかというよりも、どういう形で 処遇をされているのか。もし、それがわかれば、資料があればお教え願いたいんで すが。 ○樋口座長  その点については、何か。 ○林課長補佐  先ほどのデータについては、記載要領上は、処遇でどうなっているかということ で見ていますので、閉鎖病棟に入っているかということを聞いたものではないとい うことです。ただ、その現場において誤って書かれた可能性があるということにつ いてはもしかしたらあるのかもわかりません。  それでは、実際に処遇がどうなっているかという統計があるかということについ ては、統計としては残念ながら持っておりません。開放的処遇といっても、おっし ゃるように、私どもが足を運んだ病院の中でも、カードのキーでいつでも出られる ようにしているというところから、場合によっては前日に届け出た場合に限って出 られるというようなところまで、非常に幅があると思いますので、一概にどうなっ ていると言えるものではないのではないかと思っております。 ○樋口座長  それでは、佐藤構成員。 ○佐藤構成員  先ほど、末安構成員から、身体拘束が増えているのではないかという御指摘がご ざいましたけれども、恐らく救急入院料病棟とか、そういうところでかなり増えて いるのではないかと思うんですね。我々のところでも、救急合併症入院料病棟です けれども、救急患者さんをたくさん扱っていますと、身体拘束を多用しないととて も入院医療が維持できない状態ですね。  カナダのバンクーバー総合病院を見に行ったんですが、ここは身体拘束を全くや っていませんでした。そのかわり、身体拘束をしないで、保護室の前に看護師が1 人付いている。看護師の人数はどうなっているかというと、我々のところは2対1、 これでも一般の精神科病院に比べると多いと言われていますけれども、そこでは1 対2でした。20床の病床に対して40人の看護師がいるんですね。そういうことから 見ますと、身体拘束を行わないでも、ずっと監視するというだけでも、人権を守る ことになりますから、精神科の救急急性期治療をしっかり行うためには、高配置の 医師や看護師配置が必要なのではないかと思いました。  医療保護入院制度ですけれども、これは実質的には救急の現場ではかなり破綻し かかっていると思うんですね。良田構成員もおっしゃいましたけれども、まず、保 護者が高齢化しているんですね。高齢化していて、保護者はいらっしゃるけれども、 字が書けなかったり、認知症化していいたりされている方もいますし、破綻してい る家庭が結構多いんですね。離婚していたり、別居中だけれども、ほとんど連絡が とれないというふうなことですね。こんな場合も非常に困ってしまいます。それか ら、市町村長の同意による入院も、これは全く形式的なあれですよね。届出だけで すから、市町村長の代理の者が見に来るということでもないわけですね。こういう ところからして、実質的にも破綻しかかっている制度なわけですから、12ページの 各国の入院形態についてというところを見ると、フランスの制度が似ていると言い ましても、これはかなりあいまいなものに見えますけれども、オランダ、イタリア 辺りは、医療保護入院制度が始まる前は、日本と比べるとかなり敷居が高いなとい う感じがしましたけれども、今見ると、裁判官も医療観察法などを通じて、精神疾 患、精神障害に対する認識とか馴染みが深くなっておりますので、オランダ、イタ リア辺りの制度は、日本でもかなり適用できるのではないかと思いますね。裁判所 が絡んで、家族に負担をかけない形での非自発的入院というものを早急に整備して いく必要があるのではないかと思います。  それから、もう一点、移送制度ですけれども。これは本来はかなり必要性がある と思います。家族の力だけでは連れて行くことはできなくて、都道府県がこれを実 践できない理由の1つに、物理的なパワーといいますか、連れて行くだけの人力が 用意できないということがあると思うんですね。警察の方は、こういう制度ができ たので、これは厚労省管轄でやってくれ、私たちは一切やらないと手を引いたと聞 きますけれども、これは大きな問題でありまして、同じ公務員同士ですから、新た に都道府県でそういうパワーを用意するというよりも、しょっちゅうあるわけでは ないので、そういうときはちゃんと裁判所の許可を得てというようなことも必要か もしれませんけれども、警察と共同しながらやれば、これはある程度きちっと法的 な整備をすれば利用できる制度ではないかと思いますので、この辺りの整備は必要 かと思います。  以上です。 ○樋口座長  坂元構成員、どうぞ。 ○坂元構成員  佐藤構成員に先に話してもらってよかったのは、移送制度の問題です。現場の自 治体での実態を言いますと、端的に言えば、警察署の署長、もっと言えば、そこの 係長さんクラスの意向によって移送に協力してくれる場合と協力してくれない場合 があって、また、署長さんが替わると対応も替わります。これは実際現場での移送 に関しては、自治体によって実に様々であるという実情があります。自治体の職員 も、患者移送に関して特別な訓練を受けているわけではない。女性の担当者も多い という現状を考えると難しいところもあります。この移送の問題は、警察側からは 「人権問題であるから警察は移送には関与できません」と言われてしまうのですけ れども、本当に警察による移送が人権問題は何なんだろうかと思うことがあります。 訓練を受けていない自治体の素人が患者を移送させて、例えば患者に怪我をさせる かとかの危険もあります。このようなことが本当に人権的であるのかないのかと思 います。  この資料の50ページを見ていただければ一目瞭然だと思います。警察での保護の 段階で、1次診療を行っている自治体が34自治体、つまり、それ以外の自治体は、 警察官通報を受けて、警察に患者さんが保護されて、そこから病院への移送に関し ては、48ページの措置入院のための移送ではなくて、この上の移送に関しては、身 体拘束、つまり行動制限をしてはならない、あくまでも任意の搬送ということにな ります。現実には、警察官通報があった患者さんを、そこで診察をしてないから、 病院まで行動制限をできないのは、場合によっては患者さんにとっても非常に危険 な場合もあると思います。ここの運用が非常にあいまいになっております。1つの 大きな理由は、以前にも申し上げましたが警察署まで鑑定に来てくれる指定医の方 が見つかりにくいという事情があるということで、全国衛生部長会では、指定医の 要件としては、できるだけ、措置業務や救急業務をやることを更新の条件に入れて いただきたいと要望したのは、自治体現場として現実にはこういう現状があるとい うことです。同じ患者さんに対しても、自治体によってこれだけの差があるのは大 きな問題ではないかと思います。警察から病院に移送する以上は、1次診察は必須 であろうと思われます。しかし、それが義務化されていないということで、自治体 によって対応がバラバラな現状になっていると思われます。警察等の協力ですべて 警察官が病院まで連れて来てくれる自治体もあります。ただ、この自治体のやり方 は、厚労省側の見解によると、法律的に問題があるという解釈をいただいたのです けれども、実態はこれだけの混乱があるということです。この辺の移送の実態に関 しても、ちゃんとしたシステムの確立が、私は人権という観点からも是非必要だと 思います。  以上です。 ○樋口座長  伊藤構成員、どうぞ。 ○伊藤構成員  中長期的な検討という点も含めまして、3点あります。1つは、通院措置です。 再発・再入院の重要な要因に治療中断があります。重度精神障害の方に限定するこ とが必要ですが、通院を促す法的枠組みを検討することは意味があると思います。  2つ目は行動制限についてです。行動制限を少なくする努力は、意識の高い多く の医療機関で、また、先ほど末安構成員がお話しされましたが、職能団体で既に努 力をされてきています。ただ、パーソナルスペースの確保、人手、そして充実した プログラムが、行動制限の減少と密接に関係します。先ほど、医療観察法の研究成 果が報告されましたが、海外での研究も大体同様で整合性のあるもので、一般化で きると思います。短く、そして、濃厚にするというインセンティブが必要と思いま す。  3つ目は、任意入院の患者さんの開放処遇です。例えばイタリアでは、病床が少 ないこともありますが、基本的に開放病棟で運用し、1人でも強制入院の患者さん が入ると病棟に鍵をかけることになります。病院評価の仕事に10年以上関与してお りますが、基本的な視点は、任意入院の患者さんが出たいと思うときに自由に出ら れるかです。閉鎖病棟であれ開放病棟であれ、任意患者さんに開放処遇がなされて いるかどうかが、実効上は大事だと思います。  以上です。 ○樋口座長  それでは、広田構成員お願いします。 ○広田構成員  やっと目が覚めたんですけど、坂元さんの意見で目が覚めたんです。人権はどう なるんだと。この場合の人権は誰の人権かなと思って。一昨日も警察のある人と飲 んでいたところ、非常に自信喪失していたから、「人間なんて、そんなに自信たっぷ りに生きられる日本人なんて少ないのよ、失敗を重ねながら生きていけばいいんじ ゃないですか」と別れましたけど。私は、ここに冊子を出させていただいたように、 ちょうど10年前に、不登校のイベントの実行委員長をやっていまして、警察に協力 を要請したことをきっかけに、「私、精神障害者なんです」と、最初から精神障害者 と言ったら協力してもらえなかったかもしれませんけど、協力を取りつけた後から、 私が警察署に現れて「精神障害者なんです」と言ったところ、その人が「広田さん、 署の保護室で精神の人を保護していますが、早急に医療的保護を受けないと患者さ んの人権にかかわりませんか。なぜ、24時間精神科救急医療がないんですか」と聞 いて、「あらっ」と。警察が精神障害者を治安の対象者として収容したがっていると この10年間ぐらい聞いてきたけど、警察が「精神障害者の人権」という言葉を使っ たことにカルチャーショックを受け、そして、警察署の中に保護室というのがある ことも知りませんでしたから、そういうところに患者がいると。しかも、1日を超 えていることも随分あったと。1日を超える場合には、その1日超えるごとに警察 は裁判所に許可を求め、そして、そこで許可を取って保護していたと。その間、全 くの医療的保護はなかったという時代が続いてまいりました。  私はこれがおかしいと思って、ここに川崎市さんのことも87ページに書かせてい ただいていますけど、川崎市さんは、私が現れるまでは、精神科救急医療の仕事は 県の仕事だということを現局長も認識しておられて、私が現れたことによって民主 党の団長も市議会で去年も同じ質問をしたら、現局長が県の仕事だと答えたじゃな いかと。そうじゃなくて、平成8年から川崎市の仕事だろうということで、ものす ごく怒っていましたけど。そういうふうに警察が何でもかんでもやらざるを得ない 状況の中でやってきたために、精神科救急医療が遅れたことを、神奈川県警本部の 担当者が、県・川崎市・横浜市の会議の中で公式的に発言したそうです。それを受 けて、県の人は責任を感じたと。その方が、警察がやってきたから遅れたと。それ は結果として患者さんが医療につながる時間を遅くしたということで、患者さんの 人権にもかかわる。そして、何回か申し上げていますが、神奈川県警の課題は、不 祥事ではなくて、うつの時代に入っている。これは恐らく全国の都道府県県警そう だと思います。そういう中で、私は警察官の人権は誰が守るんでしょうねという話 をしていますから、「広田さんしか守ってくれる人はいません」というふうな笑い話 のようなことがありますけど。  そういう中で、今日いろいろな方が最初のうち発言を控えておられた。私は、こ れだけの資料を昨日夜いただいて、ここで侃々諤々(かんかんがくがく)出るのか なと思ったら、相変わらず先延ばしの話が出て、この実態を国民が知ったら、税金 の無駄遣いだと怒るだろうなと思いながら聞いていました。  そういう中で、とても不思議な光景というか、いろいろな光景、さっき長野構成 員、山根構成員も現場のお話というふうに切り出されていましたけど。私も、先週 の土曜日、とある横浜市内の警察署に10時ごろ行きました。そうしましたら、いわ ゆる「死にたい」という電話を81歳の離れている親にかけ続けた方がいらっしゃい ました。57歳です。親はたまらなくなって電話線を抜いたと。そうしましたら、御 本人は救急隊を呼んだ。救急隊は「死にたいなら病院へ行きましょう」と言ったら、 本人は「行かない」ということになって、救急隊から警察が電話を受けた。警察が 御本人を保護してきた。私は帰ろうと思ったけれども、そのままそこにいて、どう なることかと思って見ていました。結果的に、警察は24条をかけました。私にも聞 かれました。「24条でしょうか」と。彼女のこの状況が、感情なのか、いわゆる精神 症状なのか、私にもわからない。確かに自傷他害の感じはするけど、わからない。 私もかなりいろいろな危機管理の介入をしていますから、年間何百人という方に会 います。でも、わからなかった。かけてみた。かけてみたらば、神奈川県は24条の 窓口とソフト救急と分けています、千葉と違って。「母親の話を聞きたい」と。夜中 です。24条窓口の電話番号を教えられないからでしょう。多分母親の方に電話しま した。長い時間をかけて協議した結果、24条窓口は、それを24条不実施にしました。 どういうことが起きたかというと、24条窓口から警察の方に、ソフト救急の窓口の 電話番号を教えると。それならば私もいつも知っています。なるほど、24条を不実 施にして、ソフト救急を警察に教えたのかと。警察は言われたとおりソフト救急に 電話をかけました。そうしましたら、またソフト救急が母親と話をしたいと。夜中 の3時です。夜中の3時に、81歳の高齢者、しかも、別居中です。そこに電話をか けさせるソフト救急窓口。そして、結果が出たのが3時50分です。私はいろいろな 救急隊の現場や警察の現場へ行きますけれども、いつも2時には帰るようにしてい ます。ところが、その日は当直の警察官も、前半は神奈川県警の場合は2時から7 時まで寝ます。ところが、みんながこの成り行きを見たいと。衛生行政がやる気が あるのか我々は見たいと言うから、私もつき合って、私も見たいと思っていました。 ただ、私は睡眠薬が効いてきたから、ぼんやりと今のような状態でいました。それ で、3時50分にソフト救急に却下されて、そして、警察官はがっくりして疲れ果て て、私も疲れ果てて、一番元気だったのはその御本人だった。ということで私は帰 りました。翌日誰かの電話で2時に起こされました。警察の昨日の当直に電話しま した。いました。「どうした」と聞いたら、「あれからもっとひどくなって、保護室 に入れざるを得なかったんですよ、広田さん」「そう、あなたたちも大変だった。寝 られたの?」と言ったら、女性の方でしたから、女性警察官は全く一睡もしない状 況で徹夜をしたと。  こういう現状です。これが日々です。日々こういう現状の中で警察は、何度も言 っていますが、昔は「マル精」と神奈川県警と言っていました。東京都は「マル 神」ですね。今は、メンタル・ディスオーダーだのMDと言う。これを私の仲間た ちもです。この前、中島先生というわけのわからない先生が言っていましたよ。精 神保健医療福祉改革の行方で対談したら、私がこの国が、富士山から石油が降って くるわけじゃないから、そんなに金のかかる話ばかりしていいのかと。ただでさえ 749兆円の赤字国債が出ていると言ったら、中島先生が、「別に日本人が国債を買っ ている間は何も心配することない」と。「これがロシアでも買ったら国を取られるん だから、そのとき心配するんだ、いいんだ」というふうなわけのわからないことを 言っていましたが。この中で私仲間にこういうことを言った。よく言われているこ とはこういうことです。  精神科救急にしても、病床を削減して、長尾先生も、前回も今回も私の質問には ぐらかして答えませんが、病床を削減して、本当に医療を必要としている人が24時 間安心してかかれる。しかも、警察を通さないで普通に救急車で行けるように、要 保護や措置にならないで、危機回避できるような救急体制をつくっていく。そのた めにも警察・消防以外の行政が24時間空いていて、私は、24条になる前に、適切な 医療や福祉につなげることをやった方がいいと思う。警察には犯罪者を逮捕しても らえばいいと思う。警察は犯罪を解決するところで、明治時代の精神病者看護法以 来続いている警察官が患者を見張るところではないということをはっきりさせた方 がいいと多くの仲間が言っているんですね。つまり、警察から手を引いてほしいと 多くの仲間が言っている。多くの仲間が措置入院も医療保護入院も反対です。  さっきからお話を伺っていると、医療保護法の保護者規程の家族が大変だという 話がたくさん出てきています。これだけのことをやらせられたら大変だと思います。 でも、実際には、私、ソフト救急もいっぱい一緒につき合って行きますけど、例え ば交番に来て暴れている仲間がいます。お巡りさんは私がいるから交番を貸してく れて「広田さんがいるから出かけるね」。暴れている人を止めようと思うから大変な ことになるんで、暴れている人は暴れてもらうと。暴れ終われば疲れる。疲れたと ころで「ちょっと休息入院してくる」と言うと、大体本人が「はい」と言って、ソ フト救急の窓口に電話をする。そうするとこういうことが起きます。「本人を出して ください」暴れることは終わったけど、ちょっと躁状態っぽいんです。そうすると、 窓口が「本人にかわってくれ」と言う。本人が出る。そうすると「広田さん、任意 入院で入りますけれど、医療保護になる可能性があるから、保護者が必要だ」と言 うわけです。何回かありました。保護者を呼んで、救急車を呼んで、行き先へ行く。  そうしますと、私はどうしてそういう本音がきょう聞けなかったのかと残念なん ですけど。患者のためとか家族のために何も医療保護入院があるんじゃなくて、病 院の処遇の中で、いわゆる入院患者が、いなくていいような入院患者ですよ。さっ きのここの何ページかで、セルフコントロールができないというのが半数近く出て いますが、精神病院のあの中でどうやってセルフコントロールできるかと。セルフ コントロールしたら、本当にこの患者はうるさいということで保護室に入れられた 時代があったのに、患者は自分の意思を出せない。出せないような構造にしておい て、すべてを患者に責任を転嫁する。非常におかしなさっきのような状態だと思い ます。  そうしますと、いわゆる医療保護入院の被害者は患者ですよ。私は、措置入院、 任意入院嫌いですよ。サバイバーです。嫌いだけど。でも、救急隊の現場、警察の 現場、それから、保健所からも紹介が来る。いろいろなところから来ます。今度、 8月1日に青森に行きますけど。何と青森で4組の人と会うんですよ。それは警察 に相談に行った元殺人犯の方です。警察に相談に行った。警察が区役所に行くよう に言った。区役所は施設に行くように言った。施設から「困った、広田さん」と私 のところにぐるっと回ってきまして。その関係で私は青森県に行きます。今度、11 日には山形県に行くんです。これも警察・消防・区役所・施設・民生委員・町内 会・弁護士まで大動員して、山形へ今度行ってきます。危機管理の相談員はそうい うことなんですね。  そういう中でどう考えても、本当に患者としては、サバイバーとしては、任意入 院だけど行きたいと。でも、それは行けないんじゃないかというのがあると思いま す。そのときに、さっき私は皆さんに聞きたかった。ここに医者が7人ぐらいいる んですよ、小川忍ちゃんのこの本の中身によると、確かに医者は多すぎると思いま す。誰が多いかは自分で考えていただきたいと思いますが。そういう中で、医者が 現場でやっていて、何のための医療保護入院だと。私が使っている医療保護という のはとても大切なんです。たまたま、これもとあるほかの警察へ行ったときです。 家庭内暴力があったと。行ったんだと。「ちょうどいいところへ広田さんが来た」と いうことで。「じゃ、御家族にお話を伺いましょうか」と言ったら、その警察の当直 の人が「今、民間の相談員がたまたまうちの警察に来ましたから、よろしかったら、 御家族の方お話を聞いてもらったらどうですか。とっても御家族に理解のある方で すよ」という紹介をされたんです。御家族から電話がかかってきて、1時間お話を 伺いました。「現場はどうなっていますか」と言ったら、本人はワープロを打ってい ると。だけど、お巡りさんが3人張りついている。2、3時間お巡りさんが張りつ いて、本来は泥棒を捜しに行かなければいけないお巡りさんが、患者のために3人 張りついているわけです。私、そこに張りついていてそうやっていてもしようがな いから、御本人と家族と、それから、警察官全部引き揚げてきたらどうですかと。 それを当直主任に話した。そして、来られた方がアスペルガーの方でした。何か月 もお風呂に入ってないからすえたような臭いがして、ズボンでもシャツでも穴だら けです。そういう状態で来て、話し相手がいないということがよくわかりましたね。 警察の記者席に向かい合って座って「あなたは今まで何していたの」という話をし ていたら、ずっとその人は2時間ぐらい語り続けていましたね。それで、私は「あ なたのお話はすごくわかりやすいわね」と言ったら、ものすごく信頼されて、それ で、一緒に手をつなぎながらお風呂に行って、そして、「翌日病院に行きましょう」 というところまで約束を取りつけたのが2時です。それで、私は帰った。弟さんは 疲れ果てて、警察のベンチで寝ていた。御本人は記者席で寝たわけです。翌日帰っ て「どうなった」と聞いたら、翌朝「一旦家に帰る」と、そのアスペルガーの方が おっしゃった。だけど、当直の人が「広田さんと約束したでしょう。ちゃんとこの まま病院に行くと約束したでしょう」と言ったら「わかりました」ということで、 弟さんが付き添って病院に一旦入院した。私は大体そういうとき名刺を2枚渡しま す。1枚は御本人に。「何かあったら連絡してね」と。1枚は医者に渡してね。「こ の患者さんをよろしくお願いします」。11時ごろ起きましたら、御本人から「大変で す。広田さん、昨日の○○です。入院させられましたから、弁護士を紹介してくだ さい」と電話がかかってきたら、「何入院になったの」と聞いたら、「医療保護入院 です」と言うから、「今、あなたにとって医療の保護が必要だと私は思うわよ」と。 そうしたら「はい」と言ったんですね。「これ以上のことが何か起こったらまた電話 して」と言ったら「はい」と言って、やがて、その人は外泊して、今はもう退院し ているんですね。  そういう意味で「医療保護」という名前はとてもいいと思います。だけど、それ が本人のためなのか。私が使っているのは、御承知のように本人のためですね。だ けど、本人のためなのか、任意入院で入院させて、入院中にこの人の処遇を少し制 限しようとするときに使われているのが医療保護入院というふうに、私は認識せざ るを得ないと、たくさんの相談者とかかわりながら思っています。医者の方が、医 療保護入院をなくして、措置入院と任意入院だけで行くというなら、それはそれで どうぞ。そうじゃないと。どんなに日精協が反対しようが、ベッドを削減して、マ ンパワーを増やして、そして、点数を上げて、そのための日比谷で集会を開くなら、 呼び掛け人は広田和子がなっていいよと、あちこちの病院の院長に言っていたら 「広田さん、うれしいことを言ってくれていますね」と言っていますが、本当にそ ういうことが実現して、それでも医療保護入院が必要なときの保護者が、それはや っぱり家族が外さなければ、それは家族に負担がかかるのではなくて、日本のおく れている精神医療の中で、多くの仲間が被害を受けています。  この間の日曜日も浜松から人が見えました。「心の病は脳の傷」の講演を聴きに来 た人が泊まって、そして、その先生のところへ行ってきました。これからどうなる かというのを報告しますと言っていましたけれども。そういう中で、彼女もまた精 神医療の被害者だったんですね。親が泣いたんです。「私死にたかった」って。それ は娘に責められたと。親はよかれと思って入院させた。ところが、娘は傷ついて 「親の責任だ」と騒いだと。騒がれ続けている。こういうふうな厳然として、精神 医療の被害を受けたというふうなトラウマを持つ精神医療の中で家族が保護者にな ることは、家族関係をとても不幸にします。そして、寺谷さんが「広田委員が傷つ く」と言うけど、そんな傷つき方じゃなくて、家族は本当に傷ついている。不幸な 関係にしている。1日も早く、安心して利用できる精神医療にしなければいけない。  それから、坂元構成員はこういうところで言った方がちょうどいいんです。女性 しかいないと言ったって、同じ行政と言ったって、何が同じ行政ですか。8時半か ら5時15分で終わる行政と、交番だって24時間ですよ。うちの近所の交番もそう です。「全当直で何時間眠れたの」「一睡もしていません」帯革(タイカク)と言っ てピストルを付けたベルトを付けて、あれも重いです。あれだけは付けさせてもら えませんけど。そして、防塵チョッキという後ろと前が刺されないように、ガサガ サ音がするんです。泥棒が逃げるようなガサガサ。それを付けたままの状態で横に なったり、それを付けたままの状態で椅子に座って、交番の行政机の裏にあるコミ ュニティルームというところでこうやっているんですよ。そこに110番が入って きて何が起きるかというと、夏ですよ。少年がプールで泳いでいると。何で110 番されるんだと。少年がプールで溺れているならわかるけど、少年がプールで泳い でいると言っては出かけて行く。そして、この間のTBSですよ。何で10時45分 に花火を上げてはいけないのか。私は全然わからない。警察が注意したと言うけど。 そういうふうに社会がギスギスして、草なぎ君が全裸で歩いたか騒いだら、つかまえ て、どうだっていいようなことを何でもかんでも保護したり、つかまえなければい けなかったり、注意しなければいけないようなギスギスとした社会の中で、自傷他 害が増えるわけですよ。自傷他害の要件は時代とともに変わると思いますよ。昔み たいにのどかな時代だったら、私の仲間もパンツ1枚で岡村から根岸の山まで飛ん で行ったそうですけど。「あらあらって、みんながあのお兄さん何って広田さん言わ れたよ」と。そういうのどかな時代から、今は花火まで言われちゃうと。そういう 時代の中で、警察にこれ以上やるのはやめた方がいい。警察は犯罪を解決するとこ ろだし、犯罪を防止するところですよ。それを多くの仲間が言っている。やめても らいたいと。明治から100年続いているんですね。やめてもらいたいと。そういう ことです。  女性しかいないって、男性の患者なら男性が行くべきですよ。警察は、逆に女性 がいませんよ。これを読んでいただけばわかるように、女性の患者が川崎市内であ りました。全裸になって、それを見守って対面監視している男性の若い警察官です よ。そんな姿ですよ。それを見て、警察官に啓発だ、理解だと言ったって、全然お かしい。やっていることが、とにかく「同じ行政」なんていう言い方はやめた方が いいと思います。あちらは特別公務員です。厚生労働省も特別かもしれません。夜 中までやっていますから。「同じ行政」なんて、坂元さんが何時までやっているか知 らないけど、今度夜中の12時ごろ私お宅へ訪ねますから。そういうことで、軽々し く、今までやってもらっていたから、安直にやってもらうことは反対だし。例えば 34条は、34条の移送までいかなくてもいいと思います。いかなくてもいいけど、さ っき末安構成員が言っていたけれど、つまり、そのことで慎重に調査する権限を持 ったわけですよ。いろいろな警察やいろいろな区役所を私は回っているけれど、安 直にね。要するに、何か起こったというと、区役所がすぐ警察に相談に行ったり、 警察に照会するわけですよ。この間もそうですよ。本当にあちこちへ行って「警察 を呼ぶぞ」とか区役所が言っているんです。呼ぶんじゃないでしょう、あなたたち の方が引き取るでしょうと思うんだけど、何でもかんでも警察に言って、そして、 悪者にしている。その保護者の家族と同じです。そこが何かつくるかどうか知らな いけど、私、さっき田尾構成員やいろいろな方が、精神医療審査会に当事者を入れ ると、いい話だと思います。私もここに入っています。でも、実際に私が2009年に 社保審の障害者部会に入った後で、厚労省は3つの検討会を立ち上げて、当事者を 入れていますが、1人は入水自殺しています。ここがカットします。1人はつぶれ たままです。そういう状況の中で、私この前、神奈川県に、精神保健福祉審議会に ものすごい根回しされて降ろされましたね。別に根回ししなくても、私に言ってく れればいいんですよ。「神奈川県は、申しわけないけど、広田さんの発言が時代の先 を行っているから、ついていけないから、ちょっと降りてください」と言えば、「わ かりました」「病院協会の方が嫌がっているから降りてください」と言えば「わかり ました」とそれは降ります、その程度ですから。それを根回しするわけだから、精 神医療審査会はもっとエネルギーを使うから、それをやりこなせる当事者なんてつ ぶれちゃう。今、私ここに来ていたって、広田和子63歳になって、ここにいるほと んどの方が年下だけど、精神障害だから「御苦労様」と言われるんですよ。そんな ことは地域に住んでいたらありませんよ。「あの人は精神障害者だから、お疲れ様」 なんて、そんな言い方はしないんです。つまり、精神障害者言葉をこの業界人が使 っていく中で、それでいて、外に向かっては「正しい御理解を」と言っているわけ ですよ。ですから、私は、この間、県の委員会でこう言いました。オオカミに育て られた少年はオオカミ少年になる。ヒギンス教授に大事にされたイライザは貴婦人 になった。精神病院の中の患者も、オオカミのような看護師や医者やソーシャルワ ーカーにつき合えばオオカミ少年になる。自傷他害が増える。ヒギンス教授のよう なスタッフに出会えれば、貴婦人になって退院できるかどうかはわからないけど、 人と人とのかかわりはそういうことだと思います。マンパワーが少ないけれど、同 じ人間として自分がもし相手の立場だったら、こんな形でいいのだろうかというふ うに思いながら働き、プライドを持ち、そして、病床を削減し、マンパワーを厚く し、診療報酬を上げると。  前回、私は門屋さんにも質問をしたんですね。要するに、門屋さんはいわゆる受 け皿と社会的なのは違うというお話をされていた。そのお考えを伺いたいと思う。 私は、上ノ山さんが延々とさっき何を話したかよくわからなかった、はっきり言っ て。もう少し手短に、センテンスをきちっとお話しされないとわからないんです。 はっきり言うと、社会的入院の解消には、申しわけないけど、福祉の社会資源も、 クリニックや診療所はなんにも寄与してないと思う。できたけれど。そういう意味 で、今ある社会資源をもっときちんと活用して、本当にいろいろな旧作業所とか、 グループホームを回っていますけれども、入る人を選んでしまっている状況がある。 大変な人を引き受けようと広田和子もいれば、選んでしまっている状況もある。か くかくお金がないこの国でない神奈川県でも、横浜市の中田さんに言いに行こうと 思ったら、昨日辞めていましたけど。そういうことですから、やれることをやる。 そして、人まかせにしない。特に34条の慎重に調査する権限を地方自治体が持った んだから、そこでなるべく24条にいかないようにした方がいいと思います。それと、 24条ではなくて、23条の法文を24条と同じようにすればいいと思います。私、こ の原稿で、実は、24条で警察に任せるのではなくて、23条で行政がやった方がいい と、最初そういう原稿を書いたんです。私の親しいある生活安全課長という神奈川 県警の人に見せたら、「広田さん、23条は自傷他害要件じゃないから、そんなことを 書いたら、人権の人たちに叩かれますよ」と言われて、なるほどと思って、法文を 読んだら、23条は自傷他害要件じゃなかったけど、この説明を聞くと、23条は自傷 他害だったら、そこでそのまま同じ文言に入れて、なるべく警察にかかわらないよ うにした方がいいと思います。安心して利用できる精神医療にして、そして、何制 度で入院しても、本人が、私がおなかが痛くなって、盲腸で手術して帰ったときに 誰も恨まない。感謝した。恨むような精神医療を1日も早くやめること。そして、 ここに来て「またほかでやるんですよね」なんてわけのわからないことを言ってな いで、長尾先生だって。2万円以上プラスもらっているわけですから、新幹線代を。 きちんと言うし、日精協は社会的入院をどうするのかという回答をまだしてないん ですよ。そういうことで、きちんと真剣にね。私、毎回毎回命懸けで出て来ますよ。 だから、もうすこしちゃんと力を入れて、国民に向かってこの会議は公開で開かれ、 そして、議事録は全国に出るわけですから、真剣にやって、それぞれがやるべきこ とをやるということで、まとめです。 ○樋口座長  ありがとうございました。  大分時間が迫ってきておりますが、御発言はよろしいですか。 ○広田構成員  門屋さん、前回おっしゃった、いわゆる受け皿として。 ○樋口座長  それは次回でもいいわけですね。 ○広田構成員  次回もまたやるんですか。 ○樋口座長  次回も時間があります。 ○広田構成員  了解です。 ○樋口座長  どうぞ、良田構成員。 ○良田構成員  今、広田さんがおっしゃった中にあって、私も気づいたことで言い忘れてしまっ たことがあったんです。私は、この会議はとてもバランス悪いなと思うんです。と いうのは、先ほど広田さんが、当事者の方がいろいろ市議会なんかでぐあい悪くな ったりなさった方がいらっしゃると言っていたんですけど。私も毎回ここへ来ると、 とても緊張します。仲間がいないんですね。家族は1人だけなんですね。広田さん は頑丈な方だから、1人で頑張っておられますけれども、命懸けでおっしゃるのは そうかもしれません。  私、サービスを提供される側の専門家の方がいらっしゃるのは勿論結構なことな んですけれども、利用している人たちの家族や当事者が半数ぐらいいてやっと対等 な話ができるのではないかなと思ったんですね。私1人ではとても言い切れません。 言いたいことはたくさんあっても、ほかの方に気も使いますし、頭がそれほど回り ませんので、言い切れないんです。もっとこの構成のことを考えていただきたいの が1つと。もし、団体を通さなければなかなかそういう人が見つからないというこ とでしたらば、当事者の方のヒアリングを1回しかやってないんですね。家族のヒ アリングもやっていませんし、それぞれヒアリングをもっとやって、うんざりする ほど当事者、家族の話を聴いていただきたいと思いました。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。今後の運営について、また参考にさせていただきたい と思います。  それでは、時間でございますので、本日はこの辺りで終了とさせていただきます が、最後に事務局から、次の日程等をお願いいたします。 ○林課長補佐  次回、第22回でございますけれども、8月6日(木)の15時半から18時めどで、 場所は、今回と同じく航空会館を予定しております。傍聴の方々、最近、ホームペ ージの更新が事務的な都合で遅れておりまして、大変御迷惑をおかけしております。 8月6日、来週行いますので、傍聴の御希望につきましては、案内が出る前でも、 お申し込みいただいて結構でございます。  構成員の皆様におかれましては、お手元に、これまでの検討会において事務局と して提示させていただいた検討の方向性と皆様に御発言いただいた御意見との対応 表を、「これまでの検討会における主な意見」としてまとめた紙でございますけれど も、これを配付しております。また、これまでの検討会の議事録を配付させていた だいております。次回の検討会において、これまで御発言いただけなかった点等に ついて、追加で総括的な御発言をいただける時間を設けさせていただく予定として おりますので、つきましては、これまでの議事録等を御確認の上、事務局作成の主 な意見をまとめた紙について、漏れているところ、修正すべきところ等がございま したら、短くて恐縮ですけれども、週明け月曜日ぐらいをめどに事務局宛てに御連 絡をいただきたいと思います。  次回の議題は「医療の質の向上について・その他」ということとしております。 また、いただいた御指摘を踏まえて修正した対応表は、次回の検討会の後半の議論 のところで、正式な資料として配付させていただいて、また御議論をいただきたい と考えております。  以上でございます。 ○樋口座長  どうも、以上で、本日の検討会を終了させていただきます。お疲れ様でございま した。 【照会先】  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部  精神・障害保健課企画法令係  電話:03-5253-1111(内線3055、2297)