09/07/29 第53回独立行政法人評価委員会労働部会議事録 独立行政法人評価委員会労働部会(第53回) 開催日時:平成21年7月29日(水)13:03〜18:45 開催場所:厚生労働省共用第7会議室 出席者 :井原部会長、篠原部会長代理、堺委員、今村委員、寺山委員、宮本委員、小畑委員、      本寺委員、松田委員、中村委員、川端委員 ○政策評価官  定刻になりましたので、ただいまから第53回「厚生労働省独立行政法人評価委員会労働部会」を開 催いたします。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがと うございます。本日は、新しい任期のもとでの第1回会合となりますので、後ほど委員の皆様方に部会 長をご選出いただきますけれども、それまでの間、政策評価官の私、塚崎が議事進行をさせていただ きます。私は、昨日付で政策評価官を拝命いたしました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 事務局を紹介させていただきます。室長補佐の安里です。  委員の皆様方をご紹介させていただきます。皆様には、先に辞令を郵送させていただきましたが、 厚生労働省独立行政法人評価委員会委員又は臨時委員として本年6月30日付で厚生労働大臣の任命が 発令されています。また、午前中に開かれました、委員会総会におきまして、皆様方の労働部会への 分属が正式に決定しております。五十音順にご紹介させていただきます。資料1-1をご覧ください。井 原哲夫委員です。今村肇委員です。堺秀人委員です。篠原榮一委員です。寺山久美子委員です。宮本 みち子委員です。小畑史子委員です。川端大二委員です。中村紀子委員は遅れてご出席です。松田憲 二委員です。本寺大志委員です。新任は中村紀子委員です。  議事に入ります。(1)部会長、部会長代理の選出です。最初に部会長の選出をお願いいたします。資 料1-3-1に基づき、選出手続をご説明させていただきます。厚生労働省独立行政法人評価委員会令第5 条第3項において、「部会に部会長を置き、当該部会に属する委員の互選により選任すること」とされ ています。したがって、委員の皆様方からご推薦をいただけますでしょうか。 ○今村委員  この部会が担当する独立行政法人の数は非常に多く、なおかつ組織の見直しなどが控えていて、大 量かつ多様な難題があります。午前中の会議で独立行政法人評価委員会の委員長にもなられました、 井原委員のご見識、ご経験をおいてほかに部会長として適任の方はいらっしゃらないのではないかと 思いますので、井原委員を推薦させていただきます。 ○政策評価官  ありがとうございました。ただいま今村委員から、井原委員を部会長にというご推薦がありました けれども、皆様はいかがでしょうか。 (異議なし) (井原委員は部会長席に移動) ○政策評価官  ありがとうございました。それでは井原委員に部会長をお願いいたします。以降の議事進行につき ましては井原部会長にお願いいたします。 ○井原部会長  ご指名でございますので、部会長を引き続き務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。 部会長代理を指名させていただきます。部会長代理は、厚生労働省独立行政法人評価委員会令第5条第 5項において、「部会長に事故があるときは、当該部会に属する委員のうちから部会長があらかじめ指 名する者が、その職務を代理する」こととされております。したがって、私が指名することとされて おります。これまでのご経験、ご見識から、篠原委員に部会長代理をお願いしたいと思いますがよろ しいでしょうか。 (異議なし。篠原委員は部会長代理席に移動) ○井原部会長  議題に移ります。平成20年度業務実績評価にあたっての評価方法の変更について、まず評価の進め 方について説明を受け、その後昨年度からの変更点について説明を受けます。事務局から説明をお願 いいたします。 ○政策評価官室長補佐  この後に行います個別評価の手順についてご説明いたします。資料1-5-1に、労働部会における個別 評価項目に関する評価の進め方をまとめてあります。各法人のすべての個別評価項目に関する評価を 行っていただきます。(1)各法人の理事長が年度業務実績の概要・重点事項について説明をいたします。 その後、評価項目全体を4つ程度のパートに分け、法人の担当部長から業務実績及び自己評価を説明し、 委員からの質疑応答の後、委員の皆様に評定用紙へ評価を記入していただきます。記入が終わりまし たら、次のパートの説明を行うという形で進めさせていただきます。評価の際の留意事項を点線の中 にまとめてありますので、ご参考にしていただければと思います。判定基準はこれまでどおり「S」 「A」「B」「C」「D」の形で行っていただきます。  2.各委員の評定については事務局で集計いたしまして、総合的評価の際に個別項目に関する評定を 確定させていただきます。このため、総合評価のときに評価を修正することは可能です。また、当該 部会において個別項目に関する評価を踏まえた総合的な評価について、起草委員が提案し、審議の上、 評価書を決定いたします。  資料1-5-2は、厚生労働省独立行政法人の業務実績に関する評価の基準を付けてあります。資料1- 5-3は細則になりますが、部会として、平成16年1月に決定し、同年5月に改定しております業務実 績に関する評価基準細則を付けておりますので、ご参考にしていただければと思います。 ○井原部会長  ただいま事務局から説明がありました、起草担当案のとおりでご了承いただけますでしょうか。 (了承) ○井原部会長  ありがとうございました。次に、昨年度との変更点を説明していただきます。 ○政策評価官室長補佐  資料1-6-1の評価方法の変更については、午前中に行われました独立行政法人評価委員会総会で了承 いただいたものです。内容をご説明いたしますと、そもそも我々部会において評価をいたしました内 容を、総務省に置かれております政策評価・独立行政法人評価委員会(政・独委)に提出し、そちら の委員会でもう一度評価するといいますか、二次評価を行い、それをまた厚生労働大臣のほうに二次 意見という形で通知するという形を採っております。総務省に置かれている政・独委がどのような観 点で評価をするかというものを、評価の視点として本年3月に取りまとめたものを入手しております。 こちらについては、資料1-6-2として付けてあります。また資料1-6-3として、その評価の視点に基づ いて、政・独委のほうでより具体的にどのように運用していくのかという資料も付けております。  今回、評価の方法を変更したいということなのですが、これは政・独委の評価の視点のほうが、あ らかじめこういう形で手に入りましたので、せっかくですので個別の法人の評価をこの労働部会で行 うにあたっても、評価の視点の項目に政・独委の評価の視点を盛り込んで、併せて評価をしてしまい たいということです。具体的な評価の仕方としては、資料1-6-4の評価シートの中に、評価の視点とい う項目の中に下線を引いた箇所があります。この各項目の評価の視点の中に、政・独委が打ち出した 評価の視点も入れてしまって、従来どおり実績を○×評価していただきます。全体の評価としては、 項目ごとに「S」「A」「B」「C」「D」と付けていただくという形になっております。  昨年までは、政・独委の評価の視点の取りまとめが遅くて、評価シートに盛り込むことはできなか ったのですが、今年は事前にわかりましたので、そのような形を採らせていただきました。また、評 価をする際に参考になるようにと、昨年度と似たような資料として、政・独委関連の評価項目を括り 出した資料を別途付けております。どのような資料かというのは、資料1-6-5にまとめて参考に付けて おります。これから始まる法人ごとの評価の際にご活用いただければと思います。  机上配付資料として、政・独委の評価の項目が、我々の評価シートの何頁に入っているのかという のをわかりやすくまとめたものを配付させていただきます。これはどのようなものかというのは、資 料1-6-6のいちばん最後のほうに、モデルとなる形式を添付しておりますのでご覧いただければと思い ます。以上です。 ○井原部会長  ただいまの説明に関し、ご質問等がありましたらお願いいたします。 (特に発言なし) ○井原部会長  総会では、この点に関して質問が出まして、各法人によって特質が全然違うのだから、評価の方法 も視点も変わって当たり前なのではないかという意見も出ました。私たちとしては、政・独委に対し、 政・独委の評価というのはより高次の評価であるべきだという主張をしてまいりました。今回出てま いりました評価の視点は大変細かいということです。そういう意味からいうと、必ずしも我々の主張 とはちょっとずれているという感じも受けるわけですが、一方こうした視点も必要であると思ってお りますので、事務局からの説明のとおり政・独委の評価の視点も踏まえた評価をお願いしたいと思い ます。  次の議題に移ります。今後のスケジュールについて事務局から説明をお願いいたします。 ○政策評価官室長補佐  資料1-8で、主に8月までの労働部会の開催スケジュールをお示ししております。8月24日までに、 本日を入れまして4回、予備日を1回予定しております。予備日は、各法人の個別評価が時間内に終わ らなかった場合等に行うことを予定しておりますが、皆様もご多忙でございますので、なるべく行わ ないように進めてまいりたいと考えております。  労働者健康福祉機構については、平成20年度で、第1期中期目標期間が終了したため、中期目標期 間全体の評価である最終評価を行う必要があります。このため、他の法人とは別に、平成20年度の評 価を決定する総合評価を8月11日に行い、24日に最終評価とさせていただきます。過密なスケジュー ルではございますが、なにとぞご出席のほどよろしくお願い申し上げます。 ○井原部会長  今年度第1回部会ですが、本日行う事項は以上となります。ここまでのところでご質問、ご意見があ りましたらお願いいたします。 (特に発言なし) ○井原部会長  それでは、これから労働政策研究・研修機構の個別評価を行います。個別評価に入るため、法人及 び法人所管課の入室がありますので、ここで5分ほど休憩を取ります。 ○政策評価官室長補佐  開始時刻は1時半とさせていただきますので、お時間になりましたらご着席いただければと思います。 (休憩) (法人及び法人所管課入れ替え) ○井原部会長  再開します。労働政策研究・研修機構の個別評価に入ります。最初に稲上理事長からご挨拶と、年 度業務実績の概要の説明をお願いいたします。 ○労働政策研究・研修機構理事長  理事長の稲上です。どうぞよろしくお願いいたします。私ども労働政策研究・研修機構の平成20年 度の業務実績につきましてご説明申し上げます。平成20年度は第2期中期目標期間の2年目に当たっ ております。私どもは人員・予算など一方でスリム化を進めながら、労働行政をリードすることがで きるような、質の高い調査研究を目指しまして、役職員一同努力してまいりました。以下資料2-5に基 づいて5つの事柄についてご説明いたします。1番目は労働政策研究、2番目は労働行政職員の研修に ついて、3番目は労働関係情報の収集と整理、4番目は成果の普及と政策提言、5番目は効率的な業務 運営、これら5つの大きな柱に沿ってご説明いたします。  まず、労働政策研究については資料2-5の3頁です。平成20年度は、研究員の数が前年度に比べて 3名削減となり32名となりました。19のサブテーマからなるプロジェクト研究と、8つのテーマから なる課題研究について計画どおり研究活動を行ってまいりました。その研究成果の活用状況として、 経済財政諮問会議や労働政策審議会など、政策の企画・立案プロセス等における引用件数は540件に上 り、第1期の年平均325件を大きく上回り、過去最高を記録いたしました。  また、厚生労働省との連携強化のため、局長・審議官クラスとの意見交換の場として設けておりま すハイレベル会合のほか、政策担当者との意見交換の場である政策研究会なども数多く開催してまい りました。さらに、私自身政策統括官との意見交換の場を持ち、その結果を受けて、研究員と政策担 当者との間で、具体的な研究テーマに立ち入った調整やすり合わせなどを行ってまいりました。  労働政策研究にかかわります具体的な数値目標は、3頁の左の欄にあります。1点目は、外部評価を 受けた研究成果のうち、A以上の割合が全体の2/3以上になること。2点目に、プロジェクト研究につ いては、労働政策の企画・立案に貢献したという意味で、厚生労働省から高く評価された研究が全体 の80%以上となること。3点目の課題研究に関しては、要請元の厚生労働省から高く評価された研究が、 全体の90%以上になること。こういう3つの数値目標を与えられております。結論から申しますと、 これらの数値目標のすべてについて目標を達成することができました。  プロジェクト研究と課題研究の具体的なことについて、左のほうに少し細かく研究テーマ、サブテ ーマとなっておりますが、これがプロジェクト研究です。右側の列が課題研究です。どういう具体的 な課題研究であったのか、あるいはプロジェクト研究の中身が何であったのかということは4頁に記し てあります。  5頁は、労働行政職員に対する研修について記しています。これも中期目標・計画に基づいて実施し ておりますが、これにも数値目標があります。研修生のアンケートで「有意義である」という評価が 85%を上回ることが数値目標として与えられております。私どもは、平成20年度は、実務に必要なノ ウハウの教示、実務に即した演習時間の拡充など、研修内容の充実を図ってまいりました。  それから、課外活動の時間を利用してワークショップ、私どもの中ではイヴニングセッションと呼 んでおりますが、そのワークショップを開催し、研修生の理解を深めるよう努力してきております。 その結果、受講生による「有意義である」という評価は85%という数値目標を大きく上回って96.7% に達しております。  3番目の項目は、6頁の情報の収集と整理についてです。国内労働情報の収集と整理については、政 策の企画・立案や、政策論議の活性化に貢献する意味で、収集・整理した情報が白書等で引用された 件数が100件以上になることという数値目標を与えられております。その結果ですが、行政の白書、経 済財政諮問会議をはじめとする審議会の報告書等に、合計して184件引用され、年度目標を大きく上回 ることができました。  次に、海外情報の収集と整理については、プロジェクト研究との関連性や、喫緊の政策課題との関 係を考慮いたしまして、ポジティブアクションに関する諸外国の取組み事例調査など、4つのテーマに ついて情報の収集と整理を行いました。さらに、各種統計のデータ分析、加工作業の1つとして、労働 力需給の推計を行っております。その成果は、厚生労働省社会保障審議会年金部会において活用され、 平成21年年金財政検証における経済前提の重要な基礎データとして役立てていただきました。  4番目の柱は、7頁の研究成果の普及と政策提言についてです。ニュースレターという呼称で毎月発 行しております『ビジネス・レーバー・トレンド』というものがあります。それから、週に2回配信し ておりますメールマガジンについてですが、いずれの場合も読者アンケートを取っていて、「有益で ある」という回答が95%、あるいは98.1%に上り、それぞれの80%以上という数値目標を大きく上回 って高い評価をいただくことができました。  また、ホームページについてですが、キャリアマトリックスについては年間約2,400万件というアク セス件数を記録いたしまして、前年度の実績1,850万件を大きく上回るということで、過去最高のアク セス件数となっております。さらに調査研究成果へのアクセス件数も170万件を超え、過去最高水準に なっております。労働政策フォーラムについても、参加者アンケートにおいて「有益である」という 回答が9割を超え、80%以上という数値目標を大きく上回ることができました。  5番目の柱は、8頁の業務運営の効率化等の取組みについてです。業務運営の効率化については、第 2期中期計画においては、平成23年度までに、一般管理費を15%以上、業務経費を25%以上、人件費 を14%以上それぞれ大幅に削減するよう求められております。このことを踏まえ、平成20年度は省資 源、省エネルギーを徹底いたしました。通信データ回線の見直しを行い、回線料を削減するなど、さ まざまな業務効率化、経費削減に努力してまいりました。その結果として、光熱水料は、法人設立以 降6年連続して、対前年度比でマイナスを達成することができましたほか、通信データ回線料も対前年 度費で25.1%削減することになり、一般管理費については、当初予算に比べて8.5%の削減を行うこと ができました。今後ともこうした取組みを重ねていくことにより、第2期中期計画の経費削減目標を達 成してまいりたいと考えております。  次に、人員の抑制についてです。第2期末の常勤職員数を115人とするという、人員指標の達成に向 け、業務の見直し等を積極的に行い、人員削減に努めてまいりました。その結果、平成20年度末の職 員数は117人となり、平成20年度計画の125人を上回る人員削減を達成することができたと考えてお ります。  また、一般競争入札については、積極的な導入を図りました結果、一般競争入札の割合は、対前年 度比で件数、金額ともに増え、競争の透明性・公平性を高めるとともに、経費の節減を行うことがで きたと考えております。  さらに、コンプライアンスの拡充と強化にも力を入れてまいりました。計画的にコンプライアンス 研修を実施するなど、内部統制の徹底を図ってきたところです。  以上大急ぎになりましたけれども、平成20年度の業務実績全般についてその概要をご説明申し上げ ました。  引き続き、個別の評価シートに沿って総務部長から詳しい説明をさせていただきます。 ○井原部会長  ありがとうございました。これからの進め方ですが、労働政策研究・研修機構の個別評価について は、評価シートの個別項目を4つのグループに分けます。グループごとに評価を行っていきたいと思い ます。グループ1は、「労働政策研究」及び「労働行政職員研修」の項目についての評価を行います。 所要時間は、法人からの説明が25分、委員の評定と質疑が20分、合計45分となっております。それ では、法人から説明をお願いいたします。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  総務部長の畑中です。私からは資料2-1-[1]に基づいてご説明申し上げます。2頁からの評価シート3、 これは労働政策研究についての評価シートになっています。先ほど理事長からも話がありましたよう に、私どもは平成20年度において、プロジェクト研究として19のサブテーマを設定しました。課題研 究については8つのテーマを設定しました。  2頁のロの研究の実施体制の1つ目の○にありますように、私どもこの間、研究員の数も抑制してき ています。平成20年度は前年度に比べて3名減の体制でしたけれども、一応計画どおり合計27の研究 テーマについて、計画どおり実施することができました。  3頁は、こうして実施した調査研究の成果についてです。昨年度については、前年度の521件を上回 る、過去最高の件数の540件という引用件数、これは白書やさまざまな国の審議会への報告書への引用 件数が、昨年度は540件ということで、過去最高になりました。  具体的には、3頁のニの1つ目の○の[1]研究成果の行政等における引用状況に詳しく書かれています。 3頁から5頁にわたって縷々紹介してあります。主立ったところをご紹介いたしますと、3頁の下のほ うで審議会・研究会における報告書等への引用のところで、経済財政諮問会議5件とあります。経済財 政諮問会議のさまざまな専門調査会、それから4頁にわたっては本会議でも私どもの調査研究の成果が 活用されたところです。4頁の中ほどでは、労働政策審議会、やはり労働政策研究ですので、ここでも 多数活用されたところです。4頁の下のほうで、社会保障国民会議でも17件、私どもの調査研究成果 が活用されました。  5頁の[2]審議会等への参画状況が載っています。私どもの研究員が、さまざまな国の審議会や研究会 にそれぞれ参加し、政策の企画・立案に貢献したところです。前年度の58件を上回る延べ65件という ことで、さまざまな審議会に参加しております。こうした研究成果の活用状況等を踏まえ、6頁でこの シートの自己評価を「A」という形にさせていただきました。  8頁からは、評価シート4ということで、これは研究に当たっての厚生労働省との連携等についての 評価シートです。8頁のイの1つ目の○の[1]ハイレベル会合と記載されています。これは、理事長をは じめとする、私ども機構の幹部と、政策統括官をはじめとする厚生労働省幹部の方を参加メンバーと する、ハイレベルの意見交換の場です。昨年度も1回開催しております。そのほか[2][3]という形で、さ まざま厚生労働省の政策担当者との意見交換の場を持ったところです。  [5]で、私ども昨年度は理事長自ら厚生労働省の政策統括官と会見し、平成21年度以降のプロジェク ト研究のあり方等について、かなり突っ込んだ議論をいたしました。そうした意見交換を踏まえ、平 成21年度のプロジェクト研究のサブテーマの選定に当たり、厚生労働省との間で綿密なすり合わせを 行いました。その結果として両者の考え方をいろいろ意見交換いたしまして、例えば非正規雇用など、 重要度の高い21のテーマを選定したところです。  厚生労働省との連携については、以上のように非常に密接な形の連携を進めてきましたが、そのほ かの研究機関、特に海外の研究機関との連携についても、昨年度は計画どおり実施してまいりました。  9頁の[1]日韓ワークショップとありますが、これは韓国労働研究院、私ども機構のように韓国にも労 働の政策研究機関がありますので、こことの連携。[2]中国労働社会保障研究院との連携。9頁の[4]オー ストラリア国立大学豪日研究センターとの連携もしっかりと行ってまいりました。こうしたことを踏 まえ、10頁でこのシートの自己評価を「A」とさせていただいております。  11頁は評価シート5です。これは、政策研究の成果の取りまとめと、それから評価方法についての 評価シートです。私どもの研究については、成果の取りまとめにおいて、11頁のイの冒頭に書いてあ りますように、必ず一連のピアレビュー、具体的に言うと内部研究員による、所内研究発表会、それ から内部研究者等による査読(レビュー)を行い、質の高い成果の確保を目指しているところです。  具体的には、イの(イ)のところで、平成20年度に取りまとめた研究成果は下の表にあるとおりです が、全部で54件あります。これは、研究員1人当たりに換算しますと1.69件となり、第1期の平均で ある1.47件を大きく上回る、量的にも高い水準の成果を出したところです。  研究の評価についてもしっかりと行っており、具体的には11頁の下のほうに書いてありますように、 内部評価、外部評価の2つをやっています。内部評価については、内部の研究員2名、それぞれの研究 成果ごとに、研究員2名が5段階でしっかりと評価します。外部評価については、外部の有識者の先生 方に評価を行っていただきます。  資料2-6の14頁の上の段が、総合評価諮問会議委員、その下に平成20年度リサーチ・アドバイザー 部会委員という表があります。研究成果の外部評価においては、リサーチ・アドバイザー部会の先生 方に、それぞれの研究ごとに2名ずつ厳正な評価をいただいているところです。労働法、労働経済、経 営、人事労務管理、社会学、心理学それぞれの代表的な労働関係の先生方に厳正な評価をお願いした ところです。  資料2-1の11頁のロの1つ目の○ですが、評価に当たっては具体的に5つの評価項目を策定してお ります。ここに掲げましたように、趣旨・目的、研究方法、研究成果の水準、研究成果の有益度、政 策への貢献度といった5つの視点から厳正な評価を、内部評価、外部評価とも実施しております。こう した実績を踏まえ、評価シート5についても、12頁のように自己評価を「A」とさせていただきました。  14頁は評価シート6です。これは、研究成果についての具体的な数値目標の達成状況についての評 価シートです。先ほど、理事長からもご案内がありましたように、私どもの研究成果については、リ サーチ・アドバイザー部会において、2/3以上が高い評価を受けないといけないという数値目標があり ます。この数値目標に対し、14頁のイの3つ目の○の表のように、平成20年度においては外部評価20 件のうち2件が「S」、13件が「A」ということで、A以上を獲得した件数が全部で15件、75%となり まして、2/3以上が高い評価を受けるという数値目標もクリアいたしました。  私どもの研究成果については、厚生労働省の労働政策にいちばん関連の深い担当部局から、政策に 役立っているかどうかという視点から評価もいただいております。これについても、やはり数値目標 があります。具体的には14頁の[3]平成20年度計画のところに、プロジェクト研究については、労働政 策担当部局による評価として、80%以上高い評価を受けなければいけない。また、課題研究について も、90%以上の高い評価を受けないといけないことになっております。結果は15頁のハのところにあ りますように、それぞれプロジェクト研究、課題研究ともすべて「政策に役立っている」という評価 をいただきました。こうした数値目標の達成状況を踏まえ、評価シート6については、15頁にありま すように自己評価を「A」とさせていただきました。  17頁は評価シート7です。これは、優秀な研究者の確保、研究水準の向上という評価シートです。 17頁の業務の実績の欄のイのところで、昨年度については任期付の研究員を公募し、2名の採用内定を 行いました。イの4つ目の○で、先般評価委員会の皆様からも、研究員の能力開発、そのためのインプ ットの機会が非常に大事だというご指摘を受け、このことに関しては関係の学会、それぞれの研究員 に関係深い学会、37学会への参加、また学会の会議への参加について、積極的に奨励、支援を行って きました。  17頁のハは研究員の業績評価制度です。私どもは研究の水準、質・量ともに高い水準を維持するた めに、研究員の業績評価を導入しております。これを、昨年度もしっかりと実施し、研究水準の確保 に努めました。18頁では、研究水準として関連専門誌の論文が23件、査読論文が6件という形で結果 が出ました。こうした状況を踏まえ、ここのシートについては計画どおりということで、18頁の自己 評価としては「B」とさせていただきました。以上が、政策研究5つのシートについての説明です。  20頁は評価シート14です。こちらは、労働行政職員に対しての研修の評価シートです。平成20年 度においては、21頁から22頁にかけて実際に行った研修の一覧が書いてあります。研修のコース名と、 それぞれの参加人数、有意義度の回答率が書いてあります。この合計については22頁に記載してあり ますが、全部で80コースで、参加人数延べ3,476人の研修を実施いたしました。  研修に当たっては、さまざまな創意工夫を凝らしております。具体的には20頁の研修内容の充実を 見ますと、まず研修の手法、あるいは研修のプログラム、教材の改善を行ったところです。具体例と してここに4つ書いてありますが、さまざまなプログラムの改善等を行ったところです。次の黒ポツは、 特に力を入れたところとして、実務に必要な知識、ノウハウの教授、実務演習といったものをなるべ く取り入れる方向で実施いたしました。具体例は[1]から[3]に書いたとおりです。  こうした努力をいたしました結果、22頁の下のほうの○に記載しておりますように、研修生からの 有意義度として、「有意義である」との回答については、年度計画85%が目標数値ですが、それを大 きく上回る96.7%の方から高い評価をいただきました。  23頁ですが、私どもの研修については研究との連携が非常に大事になってまいります。研修と研究 との連携という観点でいうと、23頁のロのところで、研究員の研修への参画状況です。平成20年度に おいては前年度の76名を大きく上回る92名となりました。また、(2)ですが、私どもはイヴニングセ ッションを実施しています。これは、研究員が自らの研究成果を研修生に伝授し、その研修生から現 場の率直な意見を伺う機会として、イヴニングセッションを、研修の課外活動として行っております。 このイヴニングセッションを、昨年度は全部で11回開催いたしました。そのほかにキャリアガイダン スツール講習会なども開催いたしました。  こうした研修と研究の連携も、研修生の高い評価につながっていると考えております。こうした状 況を踏まえ、24頁にありますように研修の評価シートの自己評価を「A」とさせていただきました。以 上です。 ○井原部会長  これで、第1グループの説明が終わりました。ご質問があればお願いいたします。その間に、評価の ほうを記入していただければと思います。 ○松田委員  労働政策研究はかなり成果を上げていると思いますが、自主研究を廃止してしまいました。そうい たしますと、これは厚生労働省の意向に沿ったことだけやると。そうなりますと、専門的な能力を持 った研究者の視野がどんどん狭くなるのではないかと思いますが、その点はどうですか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  私ども自主研究は廃止になりましたが、プロジェクト研究というところでかなりの程度研究員の自 主性が発揮できると考えております。プロジェクト研究は大きな7つのテーマが厚生労働省からあらか じめ与えられております。その7つのテーマ1つずつについて、そのテーマ自体は非常に抽象的なテー マになっておりますので、さらに具体的なサブテーマが大事になってまいります。このサブテーマの 選定に当たりましては、やはり日ごろの研究員の問題意識や研究成果を基にし、私どものほうからこ ういったサブテーマを研究してはどうかという提案を厚生労働省のほうにいたします。厚生労働省の 問題意識も踏まえ、最終的に7つのプロジェクト研究のテーマに対し、先ほど申し上げましたように平 成20年度は19、1つのプロジェクト研究当たり3つから4つぐらいの具体的なサブテーマを決定して おります。  こうしたサブテーマの選定に当たり、私どもの研究員が蓄積したいろいろな知見が反映されると考 えております。むしろ、それを反映していかないと、良いサブテーマにはならないのかと思っており ます。 ○松田委員  前年よりも、テーマがかなり減っていますよね。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  減っています。 ○松田委員  減っていて、自主研究もなくすと。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  テーマの数は、確かに前年より若干減っていると思います。研究員の数も3名減った関係もあります。 全体的には先ほどご紹介いたしましたように、研究成果としては30数名の研究員で54件出しています ので、量的には1人当たりで考えますと、昨年度とほぼ同様の水準を確保しているのかと考えておりま す。 ○川端委員  2つ伺いたいのですが、リサーチ・アドバイザーあるいは学会派遣等々で研究員の学術的研究能力を 高めるということを非常に強く打ち出されておりますが、研究所の成果はそれだけでいいのか。もう 少し実践的研究の部分にある程度ウェイトを置く必要があるのではないかということが1つです。  もう1つは研修ですが、研修修了後のアンケートで非常いい結果を出しています。私も以前、研修を やっておりましたが、研修の宿命みたいなもので、そのときは大体高いのです。本当に役に立つかと いうと半年、1年後に再びアンケートをとるという手法をよく使います。もう1つは、職場の上司にア ンケートをとり、現場でいかに実践性の上で効果があったかをおやりになったことがあるのかどうか、 あるいは今後おやりになる予定があるのかをお聞かせいただきたいと思います。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  まず、研究のほうの話です。委員がご指摘のとおりで、学術性だけでは私どもの研究は不十分だと 考えております。あくまでも政策研究ということで、政策の企画・立案に貢献しなくてはいけません。 これが非常に大事な視点だと思っております。  その意味で、先ほどご説明しましたように、厚労省との連携を非常に大事にしておりまして、さま ざまな形で厚労省の問題意識を意見交換の中で十分吸い上げていく。先ほど説明したようなハイレベ ル会合や、各部門と各担当部局との間の意見交換などを綿密に今後もしっかりやっていく必要がある かと思っています。  研修についてはご指摘のように、研修のフォローアップは非常に大事なのかと思っています。ただ、 具体的には研修の半年後のアンケート、あるいは1年後のアンケートは、残念ながら、まだできており ません。その代わりこの研修計画を立てるに当たって、厚労省の関係部局と綿密な打合せをしており ます。先ほど申し上げましたように、研修というのも実務的な研修が多いものですから、その成果が きちんと出ているかどうかは厚労省の担当部局がよく把握していると思います。その担当部局の意見 も踏まえて、綿密な打合せの上に、毎年度の研修計画を変更したり、改善したりして行っております。 そういう形で何とか研修の実を上げる努力を今後もしっかり行ってまいりたいと思っています。 ○今村委員  3つほど伺いたいと思います。1つは、研修のフォローアップに関係することかもしれませんが、8 頁のイの[3]厚労省政策担当者との勉強会とか、その上の政策研究会とありますが、これはこのとき限 りなのでしょうか。つまり、その後、政策決定に影響を及ぼすという点では、人と人とのつながりが すごく重要だと思いますが、その結果として、どのぐらいコミュニケーションが向上しているかが書 いてないような気がするのですが、それはどうでしょうか。  レビューのところですが、文章を読みますと、12頁の評価の視点で「所期の研究成果が得られてい るか」と書いてあります。変な質問の仕方をしますと、なぜこのように質の高い成果ピアレビューで 評価が高いのかということの可能性の1つとして、リジェクトされるプロセスがあるのか。つまり、テ ーマを決定して評価をしていくプロセスで、当然我々はジャーナルに応募してもリジェクトされるこ とがありますが、そういうのがないので、それをどのように絞り込んでいるのか。あまりにも成果が 高いので、その辺を若干お聞きしたいと思います。  3つ目は、17頁のロの外部人材の登用は、だいぶ人数が減っています。研究員も3人減っていますが、 そうした中で前年度並み、あるいはそれ以上の成果を発揮されていることとの因果関係は、かなり生 産性が上がっているということでよろしいのかどうか。その辺のご努力の背景なども、もう少し説明 いただければと思います。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  まず、8頁の政策研究会、厚労省等の勉強会という点ですが、実は私どもが恒常的に意見交換をして いるのは、[2][3]というよりも、[4]とか[5]で書いた部分で、日常的には各研究部門といちばん関連の深 い厚労省の担当部局が、少なくとも研究の初めの段階、中間の段階、とりまとめの段階の3つの段階で は綿密な打合せをしております。  また、全体としては[5]で書いたように厚労省の統括官室との連携も行っております。この辺りが非 常に恒常的な意見交換の場とお考えいただき、それ以外に政策研究会や勉強会はどちらかというと、 単発的に行っておりますが、これがきっかけになって、私どもも厚労省の問題意識を勉強するいい機 会かなとは思っています。  12頁のピアレビュー、成果のとりまとめのプロセスの段階ですが、実は私ども内部評価において、 あまり出来が良くないものについては、もう一度中身をよく検討していくということもありますので、 外部評価のリサーチ・アドバイザー部会にかける、かけないというプロセスもあります。そういう形 で、そんなに数は多くないのですが、ある程度のレベルに達しないもので外部評価まで行き着かない というものも中にはあります。  17頁の幅広い外部人材の活用ですが、これは延べ人数が平成19年度においては、研究の質というか 中身的に外部の研究員あるいは外部の関係者がどうしても多くなる研究が、たまたま数多くありまし たので、今回の平成20年度の人数は、さほど少なくなったとは考えておりません。前年度が非常に多 かったのかと思っています。いずれにしても外部の方々からの研究参加も非常に大事な観点だと思い ますので、必要に応じてしっかりとやっていきたいと思っています。 ○寺山委員  17頁の「優秀な研究者の確保と研究水準の向上」のイの育成型の任期付研究員の採用です。具体的 には2年の契約で、2名内定したということですが、この方がどのような研究をなさる計画なのか。あ るいは今どのような状況なのかを教えていただきたいと思います。  それから、この研究員が3名減った分というのは、私も非常に心配しておりますが、今後、任期付き の研究員を、このように育成していくと考えてよろしいのでしょうか、それとも言葉は悪いのですが、 使い捨てというか、2年経ったら、また。最近は職業的なリサーチ・レジデントも増えており、応援団 的にあるのも事実なので、この辺に非常に関心がありますので、お答えをお願いします。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  任期付研究員は育成型の任期付研究員ということですので、現在は3年間の任期で行っていますが、 3年間の中でそれなりの業績を上げていただいた方については、パーマネントの研究員になっていただ くという仕組みです。ですから、任期付研究員の採用についても、そういう可能性のある方を念頭に 置いて採用を行っております。今後ともそういう方向でやっていきたいと思っています。 ○寺山委員  研究員のいまの状況ですが、何歳ぐらいで、学位としてはどういうバックグラウンドを持っておら れるのですか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  これは任期付研究員のそのときどきの私どもの部門の状況に応じて、いろいろ研究する分野という のでしょうか、専門分野はそれぞれそのときに応じて違ってきますが、今回の2名については、私ども の研究の性格として、労働の現場の実態の把握を主に中心に置いておりますので、その辺りというこ とで社会学系統の方にそれぞれ入っていただく。 ○寺山委員  お二人とも社会学ですね。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  厳密に言いますと、1人は社会学系統です。もう1人は人事労務管理をすごく専門的にやってこられ た方で、年齢は30歳前後で、博士課程修了者です。 ○寺山委員  若干業績もあると。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  そうですね。ある程度の業績もあります。 ○宮本委員  1つだけ伺いたいのですが、研究員をかなり減らした中で成果を上げているということなので、時間 的に一杯一杯かもしれません。たしか去年も出たかと思いますが、JILPTの場合には科学研究費を受け る研究機関になっていませんね。その辺りの位置づけ。  それから研究者としての評価をする上で、いわゆる外部の学会活動、学会での発表の辺りはどのよ うに評価をされているのかについて伺いたいと思います。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  まず、学会との関係です。これは評価シートにも書いてありますが、基本的にはそれぞれの関連す る学会への参加については奨励をするということで、学会が主催する会議などについても、どんどん 参加してくださいと。全部で37の学会にそれぞれ研究員が入っております。そういう形で学会の最近 の動向などもしっかりつかんでいただきたいと思っているところです。  科研費については、私どもももちろん科研費を取るためには、実際にいまの基準、成果の数などの 中で、若干足りないところはあります。ただ、ある意味で本当に取ろうと思えば取れるぐらいの水準 の、科研費の対象団体になるぐらいの水準はもちろん十分あるかと思っております。  1つあるのは、予算との関係というか、私どもは基本的には交付金という形でお金をいただいている ところもあって、そこの中で厚労省の関心なども踏まえて研究を行っているという性格もあり、科研 費という形の研究のあり方との関係の考え方の整理を十分していかないと、ちょっと矛盾が生じてく る可能性もあるのかなというところが、若干心配なところです。 ○宮本委員  その辺りの整理はされていないということですか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  いま検討中という形です。 ○井原部会長  よろしいでしょうか。                  (各委員了承) ○井原部会長  それでは、中村委員がおいでになりましたので、自己紹介をお願いしたいと思います。 ○中村委員  前の審議会がありまして遅れてしまい、申し訳ございませんでした。ポピンズコーポレーションの 中村と申します。23年ほど前に育児支援の会社を創りまして、現在、保育と介護のサービス事業を行 っております。  厚労省の関係では能力開発審議会の総合部会の委員もしております。いままで国として、言ってみ れば生産工場の人材育成に力を入れていた日本の労働政策が、これからはサービス業のほうにも転換 をして、サービス業で働く人たちの人材開発について、もう少し考えるべきではないかという話を、 そういった委員会でもしました。今回はこの委員会ということで、私も勉強しながら、それなりに企 業という立場で質問等をさせていただければと思っております。どうぞよろしくお願いします。 ○井原部会長  それでは、第2グループに移らせていただきます。「労働事情・労働政策に関する情報収集」の項目 です。所要時間は、法人からの説明20分、委員の評定と質疑は15分で合計35分となっています。そ れでは、説明をよろしくお願いします。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  続きまして、27頁の評価シートの8からご説明いたします。評価シート8は、労働事情・労働政策 に関する情報の収集・整理です。私どもは、まず国内労働事情の収集・整理も行っています。この国 内労働事情の収集・整理に関しては、27頁のイを見ますと、さまざまなモニター制度、アンケート、 ヒアリング等を有機的に組み合わせて行うことにより、労働の現場の実態の把握をしっかり行ってい ます。  ちなみにアンケートという形での情報収集については27頁のイの[2]ですが、4つの黒ポツの、日本 企業における留学生の就労、派遣労働者の問題、労働CSRの問題、施設系介護労働の雇用管理の問題と いう、当面する重要な政策課題についての調査を行いました。また、昨年度においては、金融危機に よる急激な雇用情勢の変化も非常に大事な観点でしたので、[3]に記載したように、実態把握も機動的 に行ったところです。  28頁のロに、こうした情報収集の成果の活用状況についても数値目標があります。毎年100件以上、 さまざまな所で引用されるという数値目標がありますが、この数値目標を昨年度は大きく上回る184件 の引用がされました。具体的にロの○に記載しておりますように審議会・研究会の主立ったものをご 紹介しますと、例えば、厚生労働省の有期契約労働者の雇用管理の改善に関する研究会、内閣府の社 会保障国民会議、内閣府の経済財政諮問会議などの資料として、情報収集の成果が活用されたところ です。  28頁の(2)ですが、国内の労働情報の収集と並行して海外の労働情報の収集・整理も行っています。 海外の労働情報の収集・整理においては、主要国の国別の情報収集と課題別、テーマ別の情報収集を 行っております。  課題別の情報収集については28〜29頁にかけてあり、具体的には29頁の[1]〜[4]です。ポジティブ・ アクション、公共職業訓練、最低賃金制度、外国人労働者受け入れ制度で、いずれも大事な労働政策 の課題です。こうした課題について課題別の情報収集を行いました。海外情報を収集した成果では29 頁の○の[1]を見ますと、一般の新聞、雑誌の引用件数が昨年度を上回る39件になりました。また、厚 生労働省の行政官アンケートでも、政策立案の参考資料として22件が活用されたといった成果を出す ことができました。こうした状況を踏まえて29頁ですが、評価シートの自己評価も「A」とさせていた だきました。  32頁の評価シートの9は、統計データの収集・整理についての評価シートになっています。まず32 頁の(3)ですが、私どもは労働についての統計情報を収集・整理して労働統計データベースを作って蓄 積しています。こうした情報をさらに分析・加工して労働統計加工指標あるいは国際比較労働統計資 料など、独自の統計情報も作成しています。  具体的に申しますと、32頁の(3)のイの[1]にありますように、海外関係については「データブック国 際労働比較2009」を作っています。国内の労働統計加工指標としては[2]ですが、「ユースフル労働統 計2009」を作っています。この統計の加工情報「データブック国際労働比較」「ユースフル労働統 計」のいずれにおいても、評価として96.7%の方から「有益である」との評価をいただいています。 具体的には32頁のロの[1]をご覧いただきたいと思いますが、利用者のアンケートで96.7%の方から有 益との評価をいただいています。  33頁の[2]を見ますと、労働力需給の推計も私どもは行っており、この推計結果については、社会保 障審議会の年金部会において、年金財政検証の経済前提として活用されました。  説明が若干前後して恐縮ですが、32頁のイの[5]です。当機構で実施したアンケート調査の個票デー タを一般の研究者に提供していくデータアーカイブ事業を開始することとしております。これは今年 度から、このデータを公開する予定ですが、昨年度、その準備作業を行ったところです。  33頁の[3]ですが、私どもの統計データベースへのアクセス件数も61万件ということで、高いアクセ ス件数をいただいています。  33頁の(4)は図書資料の収集・整理です。私どもは労働政策の研究に役立つ図書資料の収集を行って おり、収集した図書については労働図書館という形で一般の研究者への公開も行っております。  33頁のロの[3]は国立情報学研究所に複写相殺制度というのがあります。これは図書館のネットワー クの中での複写相殺制度ですが、当館についての受付と依頼状況は、制度に加入したのが平成17年度 で、それ以来、受付が依頼を大きく上回っており、昨年度も複写の受付が1,745件に対して、複写依頼 が242件で、相殺すると受付のほうが上回っています。これは私どもが非常に有益な図書資料を収集し ていることの証左ではないかと考えています。  34頁です。図書資料の収集だけではなく、さらに、私ども機構の研究員が行ったものに限らず、調 査研究成果あるいは論文のデータベースづくりも行っています。平成20年度についてはこれらのデー タベースの拡充も図ったところです。こうした実績を踏まえて34頁の自己評価ですが、「A」とさせて いただきました。   続きまして、36頁の評価シートの10で、研究者の海外からの招へい・派遣についての評価です。先 般ご説明したように、一昨年の独法整理合理化計画の中で、海外からの招へい・派遣については、ま ず内容的に政策研究に直接効果があるものに限定しなさい、人数も極力縮減するようにという閣議決 定がされています。それに基づいて昨年度も研究者の招へいについては、その内容を厳選して、1名の 研究員だけを招へいすることにしました。具体的には、36頁の下のアメリカ労働統計局のエコノミス トをお招きして「日本とアメリカの『求職者向け労働市場情報』の比較」というテーマで、約4カ月の 滞在期間の中で研究を行っていただきました。  37頁の研究者の派遣ですが、(2)にありますように、ミシガン大学への派遣も含めて4名の派遣者を 厳選しました。(3)の海外の研究機関等とのネットワークの形成ですが、我が国の労働問題については、 ほかの国々と共通する課題もかなり多くなってきております。こうした状況を踏まえますと、海外の 研究機関とのネットワークも非常に大事になってくると考えています。  こうした観点から具体的には、37頁の(3)の[1][2]を見ますと、OECDの地域経済・雇用開発プログラム とか、EU財団主催の国際ワークショップにそれぞれ研究員が参加してネットワークづくりを行ってき たところです。37頁の[4]を見ますと、当機構に対しては海外の研究機関等から、さまざまな問合せあ るいは資料の要求が来ております。こうしたことを誠実に対応していくことも、海外のネットワーク づくりという観点で大事だろうということで、昨年度は、前年度93件を大きく上回る181件で、こう した要請に対応してきたところです。  37頁の(4)の英文情報の整備ですが、私どもの研究成果、もっと広く我が国の労働関係情報を海外に 発信していくことも海外の研究機関等とのネットワークづくりという観点では、非常に大事な仕事で あると思っております。そうした観点から、さまざまな英文情報を整備しております。具体的には[1] は、私どもの研究報告書の要約を英文として提供しています。また38頁の[3]の日本の労働問題の最近 の状況に関する基本的データとその分析をまとめた「日本の労働問題と分析」を、私どもは毎年作成 して提供しています。こうした点を踏まえて38頁の評価シートについての自己評価も「A」としました。 以上です。 ○井原部会長  それでは、第2グループについて評価を行っていただきたいのですが、その間、ご質問があれば、ご 発言いただきたいと思います。 ○寺山委員  36頁の研究者等の招へいですが、限られた枠ということで1名だけで、テーマ及び招待者をかなり 厳選したと思われますが、このテーマに至ったプロセス、この方がもたらした成果は、いまの時点で はまだわからないかもしれませんが、わかる範囲でお答えいただきたいと思います。  それから、研究者の派遣も4名ということですが、こちらの方々もいろいろな所に行かれたわけで、 それぞれどのような成果を我が国にもたらしたのでしょうか。個人的な能力アップだけではなく、お 聞かせいただきたいと思います。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  まず研究者の招へいについてですが、プロセスということで申し上げますと、実は研究者の招へい は、昨年度は公募をして、公募をした中から私どもの研究テーマにいちばんふさわしい方で、かつ実 績もあって、滞在して研究していただいたことによって、私どもの研究内容に非常に貢献しそうだと いう方を、応募された中から厳選し、残念ながらこの1名だけということです。  もちろん冒頭に申し上げましたように、独法の整理合理化計画の中では、極力人数を絞りなさいと いうことがありましたので、閣議決定との関係で言えば、せいぜい毎年1名か2名ということです。も しほかにいい方がいれば2名ということもあり得たのですが、残念ながら1名だけになったということ です。  成果については、この研究テーマ自体が、アメリカと日本の労働市場の比較という形で、私どもも アメリカとの違いを認識することによって、労働市場情報をどういう形で出していけばいいのかにつ いて、いろいろ貴重な知見を得られたと考えております。  また、この研究員は、例えば私どもが全米のキャリア開発学会に出張したときなどにも、向こうの 人的なネットワークを紹介していただいたりという形で、広い意味でキャリア開発についての国際共 同研究の基盤づくりに一定の成果があったのではないかと思っています。  研究者の派遣ですが、中でもいちばん成果があったかと思われるのが、ミシガン大学に長期派遣と いうことで1名の研究員を派遣しました。テーマは「個人請負という働き方の可能性」で、この研究員 は個人請負、いわゆる雇用の多様化の問題意識の中で、個人請負について、アメリカと日本との比較 みたいなことも行っていただき、こうした観点での研究の進化に役立ったのかと思っています。  EU財団のワークショップに研究員を派遣しましたが、EU財団とのネットワークづくりにも、こうし たワークショップに参加することによって貢献できているのではないかと思っています。  それから先ほど申し上げた全米のキャリア開発学会に1名派遣して、アメリカとのキャリア開発とい う点での共同研究に一定の成果があったと考えています。 ○寺山委員  大体派遣の場合には、向こうに行って学んでくる、あるいは発表してくることが多いですね。その 中で、中国からの招へいで、講師になって派遣されたというのは、新たなとてもいいことだと思いま すが、こういうニーズはいっぱいあるのでしょうか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  そうたくさんというわけではないかなとは思いますが、特に中国については、私どもの制度を勉強 したいというニーズはあるようですので、今後も出てくる可能性があるかと思っています。 ○寺山委員  旅費などは向こう持ちですね。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  この研究者の派遣は、基本的にはうちで持つことになっていますが、要請があった場合には向こう との話合いになるかと思います。  ○今村委員  37頁の海外の研究機関とのネットワーク等に関する問題ですが、先ほど海外等の問合せに関しても、 誠実に対応しておられる、海外の研究機関ともネットワーク的に提携して研究をやっていると。お聞 きしたいのは、オファーは随分あると思いますが、海外からのオファーに研究機構として応えるのに 現状で十分であるかどうか。逆にいうと、先ほどからリジェクトのことばかり聞いていますが、オフ ァーをリジェクトするパーセンテージはどのぐらいなのか。非常にもったいない話がもしかしたら起 きているのではないかなということを伺いたいと思います。  具体的に言いますと、例えば、あるOECD系の研究機関から、日本の政府系の研究所に研究のオファ ーをしたら断られたので、何とかしてくれという相談を個人的に受けているのですが、ちょっともっ たいない感じがします。その辺は現状で十分なのかどうかを伺いたいと思います。 ○労働政策研究・研修機構  坂井と申します。海外からのオファーは、確かに非常にたくさんあります。ただ、私どもの持てる 資源というか、先ほど成果のほうで、研究員の数でご説明していますが、手いっぱい抱えている研究 員が多くて、そこでテーマがピタリと合うものについて、かつ研究員が意欲を示すという、いくつか の条件が揃うものを、私どもの国際研究部の立場としては、できれば年度計画に載せるような段階で、 予算もかかることですから、年度の途中ではなく、初めの段階で計画を立てる。いま先生が言われた ように、確かにお断りせざるを得ないケースが多々あります。  ただ、最低限、共同研究とか、そういう踏み込んだ形のものは非常に時間もかかりますし、お金も かかりますが、例えば1日のワークショップとか、今年度もすでにありましたが、国際学会に日本のこ のことについて報告してくれという、テーマと当該の研究員の業務量との勘案で可能なものはできる 限り進めるようにしています。 ○井原部会長  よろしいですか。 ○中村委員  2つあります。1つは、日本の労働政策のバンクのような役割を果たされていると思いますが、いま 図書資料などの収集・整理という部分で、労働図書館というものがあります。ただし、この労働図書 館が前年度に比べて、利用者が減っている、来館者数も減っているという問題点が書いてあります。 それに対する施策をある程度打ったとは書いてあるのですが、その成果がまだ見えてないのか、ある いは最近はe-図書館ということで、そこの場所に行かなくても適切な情報が入るような仕組みが必須 だと思いますが、その辺について今後どうお考えなのかをお聞きしたいのです。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  まさに委員がおっしゃいましたように、私どもの情報については、私どもの研究成果についても、 すべてホームページでご覧になることができますし、蔵書データベースとか、調査研究成果のデータ ベース、論文データベースなども作っておりまして、これもホームページデータベースという形で図 書館に行かなくても利用できます。このようなことが実際に足を運ぶ方が少なくなってきている基本 的な要因としてはあるかと思っています。 ○中村委員  もう1つは、36頁に海外の方が来られて、日本とアメリカの求職者向けの労働市場情報の比較を研 究され、それに関して日本側もかなりそこの研究から知見を得たというお話でしたが、得た知見はど ういう形になって一般の研究者等々に流れていくのか、そのルートはどういう形になっているのでし ょうか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  私どもはこの方の研究の中で、アメリカの労働市場情報というか、具体的にはいろいろな職業情報 の提供の仕方とか、この辺りの違いをいろいろ勉強させていただくことになりました。後ほどご説明 することになるかと思いますが、私どもは総合的な職業情報データベースも作っております。これも 利用者が非常に多いのですが、こうした職業情報の提供の仕方について、今回、研究していただいた 成果を、そこにまずは直接反映するということがいちばん大きかったのかと思っています。 ○中村委員  日本というのは、ものすごく変わっていっている中で、このような大変貴重な研究調査をされてい る所の情報とか、データが瞬時に一般に公開されていく、もしくはいわゆる研究者だけではなく、も う少し広く国民に向かって、何らかの広報みたいなものはどうなのでしょうか、あまり必要はないの でしょうか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  実はその辺りは次の成果の普及で詳しくご説明しようと思っておりますが、やはり非常に大事な観 点だと思っており、ホームページとか、さまざまな形で、私どもの研究成果なり、いろいろなものを 瞬時に提供することに心がけております。また具体的には後ほどご説明したいと思います。 ○井原部会長  よろしいでしょうか。                  (各委員了承) ○井原部会長  それでは、次に第3グループです。いまおっしゃったように「研究等の成果の普及・政策提言」の項 目についての評価を行います。法人からの説明が20分、委員の評定と質疑15分で、合計35分となっ ております、法人から説明をお願いします。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  それでは、40頁の評価シート11の研究の評価の普及・政策と提言についてです。私どもは成果の普 及の手法として、ニュースレター、メールマガジンの2つを発行しております。まず、ニュースレター ですが、これは『ビジネス・レーバー・トレンド』というタイトルの雑誌を毎月1回発行しております。 内容は、研究成果、情報収集の成果で、特にそれぞれの時代というか、状況に応じた適切なテーマを 選んで情報提供に努めております。  メールマガジンですが、これも私どもの研究成果、情報収集成果だけではなく、幅広く労働問題に ついてのさまざまな情報を併せて毎週2回情報を提供しております。  『ビジネス・レーバー・トレンド』、メールマガジンについても、それぞれ数値目標があって、具 体的には41頁をご覧いただきたいと思います。まず『ビジネス・レーバー・トレンド』については、 読者アンケートで80%以上の方から「有益である」という評価をもらうのが数値目標になっておりま すが、昨年度は95%ということで、この数値目標を大きく上回ることができました。  メールマガジンについては41頁の下のほうで、やはり読者のアンケート調査で、数値目標としては 80%以上の方から「有益である」という評価をいただくということですが、98.1%の方から「有益で ある」という評価をいただいたところです。  なお、『ビジネス・レーバー・トレンド』は41頁の[3]に書いてありますように、先般、新聞・雑誌 の記事データベース提供会社の「日経テレコン21」から、私どもの『ビジネス・レーバー・トレン ド』について、恒常的に記事の内容を提供してほしいという依頼があって、今年の7月から順次データ の提供を行っているところです。これも『ビジネス・レーバー・トレンド』が、さまざまな所で認知 度が増してきたことを反映しているかなと考えています。  メールマガジンの読者数について、40頁の下のほうに記載してあります。読者数についてもメール マガジンは数値目標があって、2万4,500人以上の読者数を確保するというのが数値目標になっていま すが、昨年度の読者数は2万6,611人で、この手のメールマガジンとしては、かなり読者数の多い結果 が出たと考えております。  続きまして、42頁の中ほどからホームページ、データベースについての記述があります。先ほど申 し上げたとおり、私どもの研究成果については、発表と同時にホームページにサマリーと全文を掲載 しております。ホームページの公表した調査研究成果についてのアクセス件数も昨年度を大きく上回 り175万7,859件ということで、昨年度を8万件上回るアクセス件数になりました。  43頁ですが、私どもはやはりホームページの情報提供の一環ですが、そのキャリアマトリックスと いうものを作っております。これは何かと言いますと、500ぐらいの日本の代表的な職業について、そ の詳しい内容や職業に就くためにはどうしたらいいかといったことを、ネット上で情報提供を行う総 合的職業情報データベースを作っております。このキャリアマトリックスに対してのアクセス件数は、 昨年度の1,849万件を大きく上回り、今回は2,389万6,901件といった成果を上げることができました。  それから43頁です。私どもは政策論議の活性化という観点から、研究専門雑誌も発行しております。 この『日本労働研究雑誌』についても、やはり有識者アンケートにおいて、92.4%の方から高い評価 をいただいております。こうした成果・実績を踏まえて、この評価シートの自己評価を45頁に記載し ており、自己評価を「A」とさせていただいたところです。  続いて48頁、評価シートの12です。これは労働政策フォーラムについての評価シートです。この労 働政策フォーラムを労働政策研究の向上、労使実務家の方々など、国民各層における政策論議を活性 化しようということで、毎年6回程度開催することになっております。昨年度は7回開催いたしました。 毎回、多数の参加者を得ることができ、平均しますと約200人ぐらいの参加を得ることができておりま す。また、開催内容や企画内容もさまざまな創意工夫を凝らすことにより、7回の平均として、91.3% の方から高い評価をいただいております。この政策フォーラムについても、やはり数値目標がありま す。80%以上の方から満足度の評価をいただくということですが、昨年度は91.0%ということで、数 値目標を大きく上回ることができております。  具体的なフォーラムの状況をいくつかご紹介申し上げます。まず49頁のほうに、7回までの内容が 書いてあります。第1回目は5月13日に開催しました。これはちょうど昨年のサミットの際に、G8労 働大臣会合というものが開かれました。ここには各国の労働大臣、各国の労使関係者が参加したわけ ですが、この機会をとらえて労働政策フォーラムに、各国の労働組合のトップの10人近くの方々に、 講師として参加いただきました。例えば、国際労働組合総連合(ITUC)という組織の書記長、OECDの労 働組合諮問委員会(OECD-TUAC)という組織の事務局長、あるいはAFLCIO(アメリカ労働総同盟産別会 議)の会長といった主立った方々に、講師という形でパネルディスカッションをしていただきました。  テーマとしては「グローバル化と労働組合の『いま』−主要国の経験と対応−」といった形で、フ ォーラムを開催いたしました。結果として、参加者の満足度は100%ということで、各国の労働組合の 代表者の話を生で聞くことができる、非常に貴重な時間だったという評価をいただいております。  同じく49頁ですが、第3回は「高校生のキャリア教育と就職支援を考える」というテーマで、フォ ーラムを開催いたしました。具体的には第一線の教育現場で進路指導に携わっている教師にパネラー になっていただいて、教育行政との連携という観点で、一歩踏み込んだ内容のパネルディスカッショ ンを行ったところです。参加者の満足度も96.0%ということで、高い評価をいただきました。  50頁には第7回のフォーラムのことがあります。背景としては今年3月ということで、世界的な経 済危機による雇用の悪化が懸念されるという状況の中で、まさに3月という非常に忙しい時期ではあっ たのですが、機動的な開催を試みました。若干満足度は下がりますけれども、こういうタイミングで 機動的にこうしたフォーラムを開催するということも、非常に大事なことであると考えたところです。 こうした実績を踏まえて、50頁の労働政策フォーラムの評価シートについても、自己評価を「A」とさ せていただきました。  続いて52頁は、評価シート13です。評価シート13は、労働教育講座事業についての評価シートで す。私どもは広く労使実務家等を対象にして、教育講座事業を実施しております。これは適正な対価 を得て実施しているものです。具体的には総合講座と専門講座の2つを実施しております。まず総合講 座ですが、52頁の○の2つ目にあります。受講者数が428名ということで、前年度388名を大きく上 回り、過去最高の受講者数を得ることができました。また受講者の満足度も89.4%ということで、前 年度を上回る実績を残すことができました。  53頁は専門講座についてです。専門講座には「労働法コース」と「人事管理・労働経済コース」の2 つのコースがあります。それぞれ50名ずつという少数精鋭での定員を設けております。ゼミナール形 式で行っており、内容の充実を図りました。受講者満足度も90.9%ということで、昨年よりはやや下 回りましたが、9割を超える方から高い評価をいただきました。こうした実績を踏まえて、53頁の自己 評価は「A」とさせていただいたところです。 ○井原部会長  いま第3グループについての説明を伺いましたが、この点については評価シートへのご記入をお願い するとともに、ご質問があればお願いしたいと思います。 ○篠原部会長代理  成果の普及という面でご質問させていただきます。最近、マスコミで非正規などの労働問題が、い ろいろと大幅に取り上げられるのですが、そういう際にはこういう研究論文があるとか、サマリーを 提示するとか、研修をするとか、そういうことはやられるのですか。というのは、マスコミはちょっ とレベルが低いのではないかというか、とんちんかんな感じもあるので、そういう面での努力はされ ているのでしょうか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  昨年の秋ぐらいからは特に顕著ですが、実はマスコミからも、やはりさまざまな問合せがきており ます。マスコミとしても記事を書く際に、実際に非正規の状況がどうなっているのかということにつ いては、やはり私どものほうにいろいろな問合せがきております。そこはきちんとお答えするという 形でおります。ただ、それが実際に新聞記事になる場合もありますし、ならない場合もあります。そ うしたことがあって、先ほど初めのほうにもご説明したように、新聞・雑誌等で私どもの調査・研究 成果が、かなり活用されたという状況があります。 ○松田委員  53頁に、第57回東京労働大学講座というのがありますね。初めて受講者の満足度が4%近く下がっ ているのです。これは受ける人の知的レベルが低いのか。毎年同じということはないと思うのです。 受ける人のレベルがどういうようになっているのか、それは事前に調査するのですか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  基本的に受ける人のレベルのチェックということはしておりません。具体的には参加申込みの早い 者順という形で、定員に達し次第打ち切るということになっております。 ○松田委員  そうすると、満足度もあやふやなものですね。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  確かに満足度だけで教育講座の内容が、すべて図れるわけではないのではないかと思っております が、やはり一つの指標としては、満足度というのも大事なのかと思います。ただ、ご指摘のように満 足度が高いからといって、本当に内容的にそれだけで素晴らしいのかというところは、確かに言い切 れないところがあるのではないかと思います。 ○今村委員  2点お伺いします。まず50頁の「評価の視点」のいちばん下の所に、「労働政策フォーラムは多数 の有効な参加者を集め開催しているか」ということに関してです。政策論議の場となるかどうかとい うキーワードがありますが、ただ「フォーラム」と言っても、これは一方的に聞くだけではないかと 思うのです。つまり、横のつながりとしての政策論議の場となっているのかどうか、参加者の横の間 の議論ということに関してのなお一層の技術革新というのですか、工夫をしておられるのかどうか。  もう1つは53頁の「評価の視点」で、「教育講座事業を適切に実施したか」というのがあります。 いまの松田委員の質問と関連して、潜在的なニーズに対して十分対応しているのか、掘り起こしてい るのかということです。つまり、講座で提供している科目というか内容以外に、もっとニーズとして、 JILPTとして対応できる内容があるのではないかと思うのです。その辺のニーズ調査については、どの ように検討されているのかどうか。この2つを伺いたいと思います。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  まずフォーラムにおける政策の連携ということですが、確かにこのフォーラムは、どちらかという と聴衆と講演者というか、パネラーという形ですので、参加者相互の連携という形に、直ちにつなが らないというのはご指摘のとおりかと思います。フォーラム自体の参加者数も大体200名前後というこ とで、非常に多数の参加者ですので、参加者同士の連携まで図るというのは、直ちには難しい面があ るかと思っております。ただ先ほどもご紹介した第3回目の「高校生のキャリア教育と就職支援」につ いては、参加者の中に実務家である教師なり、いろいろな方が参加しておりますので、たぶんその参 加者とパネラーとの間に、何らかのコミュニケーションが生まれた可能性はあるのではないかと思っ ております。  例えば第4回では、「高度外国人材」というテーマでフォーラムを実施しました。ここでは関係省庁 の方々も多数参加しております。その関係省庁の方々は、日ごろからある程度の連携はあるのではな いかと思いますが、一応私どものフォーラムにも、そうした方々にも参加していただいているという 状況です。  それから労働教育講座事業の潜在的なニーズということですが、おそらく労働教育ということに関 しては、非常にいろいろなニーズがあるのではないかと思っております。私どもがやっている教育講 座事業は、主に労使の実務家を念頭に、例えば企業の人事担当者や労働組合の幹部の方といった方々 を念頭に、ある意味で非常に体系的に、しかもある程度細かい点というか、専門的なことも含めて事 業を行っております。ただ「労働教育」と言った場合に、いまの状況の中ではほかにももう少し、一 般の労働者に対しての労働教育とか、そういったことについてもいろいろなニーズがあり得ると思っ ております。  ただ、もしそこまで広げるということになりますと、おそらく呼びかける対象者や講座の内容もだ いぶ変わってきて、別のものをつくらなければいけないという形にもなるのではないかと思います。 その辺りで、実はこの教育講座事業というのは、あくまでもその他の事業というか、どちらかという と私どもの社会還元事業といった形で行っておりますので、ウイングを広げるということについては、 かなり慎重な検討が必要ではないかと思っております。 ○宮本委員  いま第1から第3グループまで伺って、お金も人も減らされる中で、相当奮闘されているということ がわかります。評価が今のところ全部Aですが、強弱とか、あるいはJILPTとしてのポイントというか、 この辺りがいちばんという何かがあるのではないかという感じがしているのです。その辺りはいかが でしょうか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  JILPTとしての自己評価は一応ご説明したとおりですが、実は総合評価諮問会議という外部評価機関 が、私どもの平成20年度の各事業のいろいろな業績についてご議論いただいたときには、総合評価諮 問会議としても最終的に私どもの自己評価を一応了承いただいたところです。しかし議論の中では、 例えば評価シートの12の成果の普及については、AではなくてSでもいいのではないかといったご指 摘もいただきました。 ○宮本委員  私も伺っていて、成果の普及の辺りは、大変力を入れていらっしゃるというか、利用者として見て も充実しているので、その辺りはSがあってもいいのではないかと思いました。つまり全部Aというよ りは、何かここはというところがあってもいいのではないかという感じはいたしました。 ○井原部会長  あとはよろしゅうございますか。                 (各委員了承) ○井原部会長  では記入のほうもよろしゅうございますか。                 (各委員了承) ○井原部会長  それでは次に、第4グループに入りたいと思います。「効率的な業務運営」の項目についての評価を 行います。所要時間は、法人からの説明が15分、委員の評定と質疑が10分、合計25分となっており ます。それでは法人からの説明をお願いいたします。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  それでは55頁の評価シート1をご覧ください。評価シート1は業務運営の効率化についてです。ま ず55頁の(1)の1つ目の○、省資源・省エネルギーの取組みです。私どもは昨年度も昼休みの執務室一 斉消灯、あるいはセンサー式照明の導入といったことで、さまざまな省資源・省エネルギーを推進い たしました。この結果、電気料金、水道料金、ガス料金といったいわゆる光熱水料を、前年度4.0%削 減ということで、これは法人発足から6年連続で、対前年度比マイナスとなりました。また、ペーパレ ス化の推進についても、反古紙の利用あるいは必ず両面印刷をするといったことに取り組み、前年度 比で12.6%の用紙の削減ができました。これもやはり法人設立以降、6年連続しての削減を達成するこ とができました。  55頁の(2)の一般競争入札の導入状況ですが、これも平成20年度は件数で67.9%でした。前年度が 55.5%でしたので、これを大きく上回って、一般競争入札を導入したところです。56頁をご覧くださ い。56頁の最初の○に、「随意契約見直し計画」の達成状況が書いてあります。私どもは随意契約見 直し計画において、平成22年度までに件数ベースで、平成18年度の54.6%から87%まで、随意契約 の導入割合を増やすことになっておりますが、この件数ベースで言うと約8割方、この計画が達成して きています。あとは平成21、22年度で、この計画がほぼ達成される見込みがあります。  56頁の(3)の情報通信技術の活用による効率化ですが、まず1つ目の○にありますように、機構とイ ンターネットをつなぐ回線の変更作業などを行って、通信データ回線料も対前年度比で25.1%削減す ることができました。また(3)の○の3つ目にありますように、メール便の一括活用等により、郵便料 金も大幅に削減することができました。  56頁の(4)は人件費改革です。具体的には57頁にあります。給与構造改革については、国家公務員 の給与構造改革を踏まえた見直しを毎年度しっかり行うとともに、実は私どもは平成16年度から平成 18年度にかけて、大幅な給与制度の独自の見直しを行いまして、これを現在も続けているという状況 があります。昨年度はさらに人事院勧告を踏まえて、給与水準を据え置いたという状況があります。 この独自の見直しの内容としては、例えば常勤役員の報酬月額を10%削減するといったことで、これ を継続しているということです。  こうした取組みの結果は、57頁の(5)にあります。まず一般管理費については平成20年度予算に対 して、決算で8.5%の節減を図ることができました。また、人件費についても平成20年度予算に対し て、決算では8.2%の節減といった形になりました。こうした実績を踏まえて、58頁の業務運営の効率 化のシートの自己評価は、「A」とさせていただきました。  続いて、60頁の評価シート2です。これは業績評価制度の運用についての評価シートになっており ます。業績評価制度について、私どもでは内部評価と外部評価の2つを実施しております。まず内部評 価ということでは、60頁の(1)のイにありますように、理事長のリーダーシップの下、毎月経営会議を 開催しており、ここで毎月の業務実績報告を各部から行っております。それから、四半期ごとに年度 計画の達成状況を把握して、イの[2]にありますように、四半期ごとに中間評価を行うこととしており ます。  外部評価については、総合評価諮問会議というものを設定いたしました。これは外部の各界の有識 者の方々にメンバーになっていただいております。具体的には資料2-6の14頁の上のほうをご覧くだ さい。総合評価諮問会議委員ということで、約10名の各界の代表的な方々にそれぞれ委員になってい ただいており、年2回、評価をいただいております。3月に、平成21年度の事前評価を行っていただ きました。また、若干年度はずれますが、平成20年度の業務実績報告の事後評価については、先月6 月に総合評価諮問会議で行っていただきました。先ほども申し上げたように今回の自己評価について は、総合評価諮問会議の中で一応了承をいただいたものです。  それから60頁のハの[2]をご覧ください。この評価委員会では昨年度も、さまざまなご指摘をいただ いたところですが、こうしたご指摘については、速やかにその対応策を検討してきたところです。例 えば、「厚生労働行政をリードするような質の高い研究を期待」するとか、「研究員の長期的な育成 やモチベーションの向上」を図るべきであるといったご指摘がありました。これらに対しては理事長 のリーダーシップの下で、しっかりと検討を重ねた結果、具体的な対応策をそれぞれ打ち出してまい りました。例えば、研究の質ということに関して申し上げますと、非正規雇用について部門横断的な 調査研究を行うといったこと、あるいは研究員のモチベーションの向上ということで言えば、研究員 が蓄積してきた成果を単著・単行本として刊行できるような制度を作るといったような、具体的な対 応策を取りまとめたところです。  続いて61頁です。私どもは業績評価の一環として、有識者等を対象にしたアンケートも行っており ます。ちなみに、このアンケート結果ですが、有識者アンケートにおいて、機構の業務活動全般につ いての評価を伺ったところ、94.9%の方から高い評価をいただきました。こうした実績を踏まえて、 評価シートについての自己評価は62頁にありますように、「A」とさせていただきました。  続いて、63頁の評価シート15です。これは予算あるいはその他業務運営に関する重要事項について の評価シートになっております。このシートについては63頁の(2)の交付金債務をご覧ください。昨年 度もかなりの額の交付金債務が積み上がりました。要するに、これは交付金としていただいたけれど、 いろいろ節約などをしたことにより余った金額というように考えていただければと思います。さまざ まな努力、一般競争入札の推進や人件費の見直しの継続、さまざまな業務の効率化の結果として、昨 年度は対前年度13.8%ということで、前年度を上回る交付金債務が出てきたということです。これは そうした効率的な業務執行の裏返しだと考えております。  それから64頁の下の所に、その他業務運営に関する重要事項というのがあります。このその他業務 運営に関する重要事項の大事な点としては、コンプライアンスの問題があります。65頁をご覧くださ い。コンプライアンスについても私どもは非常に力を入れて実施しております。昨年度はコンプライ アンス研修の拡充・強化に努めたところです。具体的に申し上げますと、研修を4回行ったうちの2回 は、それぞれの分野の外部の専門家に講師をお願いして実施しました。また、内部講師によって研修 を行う場合でも、まずコンプライアンスの推進担当者自らが外部専門機関の研修に参加して研鑽を深 めた上で、きちんとその成果を職員に伝達するといった方式を採りました。  また、(4)の[2]ですが、私どもはコンプライアンス委員会というものを定期的に開催しております。 平成20年度はこのコンプライアンス委員会で、コンプライアンスの推進状況を評価・点検したのです が、きちんとチェックリストを作り、適正な点検を行ったところです。  それから福利厚生費の見直しという点が、65頁の(5)にあります。私どもの法人は発足以来、必要最 小限の福利厚生に限定しております。具体的には職員の健康の保持・増進を目的とした産業医の選任、 あるいは健康診断などの費用に限定しており、いわゆる保養施設の設置運用等の経費というのは、一 切支出しておりません。なお、国費を財源とした、雇用・能開機構との合同の厚生会というのがあり ます。この厚生会への支出によって実施していた「文化・教養・体育事業の補助」事業も、平成20年 度は執行を停止して、平成21年度からは廃止ということになりました。こうした状況を踏まえて、評 価シート15についても自己評価を「A」とさせていただきました。  続いて68頁の評価シート16は、人事についての評価シートです。このシートに関しては68頁のハ の人員の抑制をご覧ください。実は私どもの第1期末の常勤職員数は134名おりましたけれども、一昨 年の政・独委の第1期から第2期に移行するに当たって、総務省の独法評価委員会のほうから、第2期 において常勤職員数を19名減らせという指示がありました。全部で19名ということですが、実は定年 退職者だけでは、この19名というのは満たされない状況があり、この間、厚生労働省からの出向者の 引上げをかなりの数行いました。  それとともに、もちろん業務の簡素化といったことにも努めました。特にハの3つ目の黒ポツをご覧 ください。事務職に関して言いますと、出向者の引上げや定年退職で平成19年と平成20年の2期で、 累計10人の人員減が生じたわけですが、事務職に関しては新規採用をこれまで一切行ってきておりま せん。業務の大幅な見直し、あるいは定年退職者の活用という形で、この削減に対応してきたところ です。なお、4つ目の黒ポツをご覧ください。定年退職者の有効活用という観点で言いますと、定年退 職者の再雇用制度を見直して、定年退職者で再雇用された方に対しても1年ごとに、その業績評価を実 施するということにさせていただいたところです。  それから69頁をご覧ください。こういう定員の削減という状況の中では、やはり職員の能力開発に 力を入れる必要があります。そういう観点で昨年度も引き続き、職員の専門的ないし資質の向上を図 るという意味で、社会人大学院就学支援制度、あるいは自己啓発制度といったことを運用して、職員 の専門的な資質の向上に努めてきたところです。こうした実績を踏まえて、70頁の自己評価はやはり 「A」とさせていただきました。  それから評価シート17、72頁ですが、これは施設・設備の整備状況についての評価シートです。法 人本部においては空調の設備更新、給配水の設備更新、大学校の厚生棟の外壁・屋上防水工事等を、 それぞれ計画どおり実施したところで、このシートについては自己評価を「B」とさせていただきまし た。  以上が評価シートの説明ですけれども、併せて監事の取組みということで、資料2-4の監事による業 務監査について、一言ご報告を申し上げたいと思います。業務監査については1頁をご覧いただきます と、まず全部門を対象に業務監査を行いました。監事監査としては、期中と期末のそれぞれに監査を 行いました。監査の方法は書類監査、面接による聴取で行いました。  具体的な監査内容は、その後の2頁から4頁までに書いてあります。ポイントとしては5頁に、「監 査結果に基づく所見」というのがあります。まず、その内容をご紹介申し上げます。平成20年度の計 画については、「計画の業務を着実に実施し、年度計画に盛り込まれた数値目標等は、ほぼ達成され たと認められる」とあります。それから(1)として、今後も引き続き、効果的かつ柔軟な研究業務の運 営、具体的には関係研究部門・研究員による横断的連携等について、一層の工夫を加え、的確かつ機 動的な調査研究を推進していただきたい、とあります。(2)としては、業務の効率化・簡素化を含め、 業務のさらなる工夫・改善を図るなど、実効ある成果に結び付く諸対策を推進していただきたい、(3) として、効果的な個人情報保護対策の推進に努め、漏えい事案発生ゼロを目指していただきたい、と あります。以上です。 ○井原部会長  これですべての説明が終わりました。委員の皆様は評価シートへのご記入をお願いいたします。そ の間、ご質問があればどうぞ。 ○松田委員  64頁の(4)の財務指標についてです。これは人件費の比率が、平成18年からは約4%ということで、 平成17年度からは5%上がっているのですよ。人件費比率はわずかではあるがということで、減少は1 つもしていませんよ。人員は毎年どんどん、どんどん減っているのに、どうしてこれは5%も高くなっ ているのですか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  平成17年度から平成19年度にかけてですね。 ○松田委員  あるいは平成18年度から平成20年度でもいいですよ。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  1つには、やはり退職金の支出というのが大きな要因としてあったかと思います。退職者が平成18 年度から平成19年度にかけて、若干増加しています。この関係が、やはりこの比率を押し上げたので はないかと考えております。 ○松田委員  もう1つは、このラスパイレス指数を見ると、皆さんの所は地域や学歴によって高いですよね。これ を差し引いても平成23年には抜本改正をして、給与体系も全面見直しをすると書いていますけれども、 どういう見直しをするのですか。完全な成果主義に持っていくのですか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  ラスパイレスの見直しというのは、具体的にラスパイレスの部分でしょうか。それとも。 ○松田委員  全体的です。このラスパイレスは104.5%でしょ。ほぼ近いですよね。それを今度は平成23年には 99%にして、人件費を抜本的に改正すると。ですから、どういうような改正をするのか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  非常に技術的なことで申し上げますと、今回の104.8%というのも、ほぼ均衡しているというように 私どもは捉えております。と申しますのは、やはりラスパイレスについては年齢構成などにより、多 分にかなりの変動が出てまいります。ですから、ほぼ均衡しております。もちろん引き続き給与構造 改革なり、人件費の削減に努めていき、さらにこのラスパイレスが低くなるように努力したいと思っ ておりますが、大幅な見直しというところまでは、実は具体的にまだ検討はしておりません。 ○松田委員  それはいいのです。平成23年度には国家公務員の給与構造改革を踏まえて、給与体系の抜本的見直 しをするということですが、どういう見直しをするのか、それを聞いているのです。いまのような給 与体系では成り立ちませんよ。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  すみません、大幅な見直しというのは。 ○松田委員  時間が経ちますから、これは宿題にします。 ○労働政策研究・研修機構理事長  いま松田委員がご指摘なのは、正確な場所はどこでしょうか。いま表現なさいました。 ○松田委員  資料2-2の15頁に書いていますよ。それから、その続きが17頁です。ちゃんと書いているじゃない ですか。自分たちで作ったのでしょ。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  確かに15頁に、99.7%という数字があります。ただ私どもは、やはり大幅な見直しといったところ までは、なかなか難しいのではないかと思っております。今やっている努力プラスアルファーをやっ ていくということなのかと思っております。 ○松田委員  それでは減りません。99.7%というのは、大改革をやらなければできないのですよ。いまの国家公 務員など、年功給でしょう。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  はい。少なくとも国家公務員のいろいろな削減に応じて、私どももしっかりと削減していくという ことはやってまいります。この辺りは、もうちょっとよく検討してみたいと思います。 ○井原部会長  そのほかにどうぞ。 ○川端委員  2つ質問させてください。人事制度の中で、業績評価制度と能力評価制度がありますね。いまは非常 に厳しく、人も減らしお金も減らしという中で、モラルアップに心がけてくださいというのが、前回 の委員会の意見だったのです。この2つの制度の中に、モラルアップに関するものには例えばどういう ものがあるのですか。また、人事制度以外でどういうことをモラルアップでお考えになっているのか、 これが1つ目です。  もう1つは、コンプライアンスについて研修を行い、チェックリストでチェックするということです が、先ほどの監査の結果を見ていますと、コンプライアンス違反的な例があったやに見えるのです。 もしあったら、それをご紹介していただきたいのと、マニュアルはお作りになっているのかという点、 この2項目についてお願いします。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  まず、モラルアップということに関しては、さまざまな能力開発ということも、やはり対応策の1つ としてあります。それ以外に研究員の研究成果の蓄積を、それぞれ単著・単行本という形で刊行でき るようにしてあげることで、研究へのモチベーションを高めるといったことも考えております。これ は実際に制度としてやっていこうということになっています。 ○川端委員  まだ、そういう本は出ていないのですか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  新たに制度を作ってから、まだ実際には出ておりませんが、過去にも例があることはあります。コ ンプライアンスについて言えば、やはりコンプライアンス委員会で点検を定期的にやっております。 その際にはマニュアルと言うよりは、チェックリストを作っております。個人情報保護とか、いわゆ るセクハラとか、パワハラとか、私どもにはさまざまなコンプライアンスの項目がありますので、そ ういったことについてのチェックリストを作っております。 ○川端委員  チェックリストは管理者だけではなくて、各職員本人にも渡っているのですか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  チェックリスト自体は別に秘密事項ではありませんので、もちろん職員が見ようと思えば見られま す。ただ、積極的に「これがチェックリストです」という形では配付しておりません。それでも、例 えば主要な項目についてはコンプライアンス研修みたいなものをやっておりますので、何が大事であ るかということについては、職員にわかってもらう努力はしております。 ○川端委員  その違反例みたいなものがもしあったら。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  違反例というのは特にないと思いますが、先の監査の所見の中にあった個人情報保護の点というこ とでは、指摘があったかと思います。やはり私どもの場合、例えばアンケート調査などで個人情報を 扱う可能性が非常に高いものですから、一旦それが出てしまうと、JILPTの名誉が非常に傷ついてしま うということで、特に気を付けてほしいと。 ○川端委員  そういう例があったわけではないのですね。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  はい。 ○今村委員  いまの質問に非常に関連します。該当箇所は62頁の「評価の視点」の1番目、「全事業を対象とし た業績評価の制度が機能しているか」のところで「理事長のリーダーシップによる業務運営の推進 (中略)理事長自ら全役職員に向けて訓示を行うなど」という箇所と、65頁のいまのコンプライアン スの問題で、研修でチェックリストをやっているということと、70頁の「評価の視点」の「業績評価 に基づく人事制度が機能しているか」というこの3つは、実は非常に関係していると思うのです。  まず、訓示等によって業績の外部評価によるフィードバックを全職員が共有できるのかどうかとい うフィードバックの問題ですね。それを業績評価の人事制度にどう結びつけていくかです。つまり業 績評価に結びつかない限り、職員は経営目標というのを共有しようというインセンティブは起こらな いと思うのです。  その辺の関連づけと、コンプライアンスの問題でいま出たように起こってしまったら困るわけです から、研修でいいのかどうか、チェックリストでいいのかどうかという問題が、さらに残ると思うの です。通報制度というか、ちょっと分かりませんが、そういった仕組みづくりというのが、たぶん必 要ではないかということについては、どの程度対応されているかというのが2点目です。  3点目は、それと若干関係するのですが、モラルアップの問題ということで言うと、65頁の(5)の福 利厚生費の見直しという所です。これは削減されているだけですね。福利厚生というのは、そういう 意味では従業員のモラルというか、インセンティブを向上させるために重要な要素でもあると我々は 教えられてきたのです。それを一方的に減らしていいのかどうか。もっと言えば、この評価項目には ないのですが、賃金などが減らされている中で、組織内のインターパーソナルなリレーションシップ といった部分での満足度の向上、モラルの向上というのが、たぶん必要ではないかということもあり ます。この3つは関連しているので、簡単で結構ですからお答えいただければと思います。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  まずは1点目、業績評価と個人の評価と組織の評価との関係です。個人の実績評価を行う前提として、 それぞれの各組織・部門で、いま何が求められているのかというところをはっきりさせて、その組織 ・部門の目標を確定します。あとは担当者も決めて、その担当者ごとに個人それぞれの目標を、年度 の初めに設定するという仕組みになっております。それぞれ1年が終わったときにその業績の評価をす るとともに、その評価に基づいて個人の業績も併せて評価するということで、連動させる形にしてお ります。  2点目の内部通報制度についても、私どもは一応の仕組みをつくっております。内部通報をした人間 には不利益を出さないなど、一連の規定も設けております。  モラルアップということでは、福利厚生ではないかもしれませんが、一つ大事だと思っているのが 自己啓発です。これは私どももかなり奨励しております。社会人大学院就学支援などもそうですが、 それ以外にももうちょっと単発的に自分の能力を高めるためのセミナーとか、いろいろな高額な図書 を買うとか、講座を受けるといったことに対しては、できるだけ支援をしていこうと。費用の問題は いろいろありますが、そういう形でモラルの向上も図っているところです。 ○中村委員  57頁の給与水準についてはいろいろな部門の担当の方が、かなり削減しておられますね。それ以外 にも効率化ということで、いろいろなコスト削減にも取り組まれていて素晴らしいと思ったのですが、 1点言葉としてなかったのが残業代です。お役所関係の方というのは、よく夜まで煌々と明かりがつい ていることがあるのです。給料をいくら減らしても残業代ということでオンされていけば手取りは変 わらない、あるいはプラスするわけで、平成20年度は前年度に比べて、残業代は大体どのぐらい減っ たのか、もし数字がわかれば。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  具体的に正確な数字は今、ここではお示しできないのですが、残業時間自体はやはり減っておりま す。先ほど監事の報告がありましたけれども、監事のほうからも、とにかく残業を減らすようにとい う指示もありましたし、私どももできるだけ残業はしないようにという働きかけをしております。中 には残業の多い職員もおります。そこについてはなぜ残業が多いのかといったことを、きちんと担当 者とその上司からヒアリングを行って、状況の改善を図るといった形で、残業の縮減ということに関 しては、常々頭に置いて行っております。 ○中村委員  もう1点は、理事長以下、月1回の経営会議において毎月、業務の進捗状況などを確認するとありま したが、要するにこれは年間ベースの事業計画が立てられて、毎月、月次管理というのがされている と思うのです。その月次管理はどの辺ぐらいのところまで精密に。要するに何日ぐらいに出て、それ をどう評価されているのですか。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  これは大体毎月、前の月の実績をきちんと評価するという形になっております。ですから大体第3週 か第4週ぐらいに経営会議を行って、その前の月のものを評価しています。 ○中村委員  ということは月末で締めて、その翌月の3週目ぐらいで前の月を評価するという形ですね。これは民 間企業から比べると、かなり遅いのです。いま民間は大体1週間目、早ければ本当に翌日に出てくるぐ らいの速度でやっていますから、もうちょっと早められるといいかもしれません。というのは、前月 に起こった何かを評価して、それを直そうとしても、もう今月は3週間が終わってしまっているわけで すから、マネージメントしようにも時間が経ちすぎてしまっている可能性もありますよね。  最後に63頁です。平成19年度と平成20年度の損益の推移で、必ず赤字を出されているのです。前 のところは運営費交付金債務の精算のために特別に利益が出たようですが、平成19年度、平成20年度 と、損益で言うと決算が赤字です。しかも平成20年度はたった18万円ですよね。これはちょっと格好 悪くありませんか。もう達成しましたと。お役所関連の機構では、黒字を出すと次のときに補助金が 減らされるのではないかという危機感があるかどうかはわからないのですが、これからの独立行政法 人としては、きちんとプラスを出したというところは評価されるべきものなのです。赤字を出すから と言うよりも、さらに努力をして予算を少しきちんと残したということを、我々としては評価したい ほうなのです。そのようなことで、今後はよろしく。 ○労働政策研究・研修機構総務部長  はい、わかりました。月次の評価に関しては、確かにご指摘のようなことも考えなければいけない のかと思いますので、その辺りのスケジュールなどについては、よく検討していきたいと思います。 ○中村委員  お願いします。 ○篠原部会長代理  節減努力というのは実は全部、運営費交付金債務に行ってしまっているのです。ですから、ちょっ と見ると何がどうかわからないのです。これは会計制度の問題だなと思っているのですが、損益計算 書の赤字は、今回の財務ヒアリングでも私は質問するつもりです。ほとんど意味がないということを 中心に、私は質問しようと思っています。 ○井原部会長  よろしいですか。では私のほうから感想を申し上げたいと思います。いろいろな委員の方のご意見 も踏まえますと、常勤職員の数が減っている、もちろん研究員も減っている、お金も減っているとい う中で、並行的に目標とする数値だけを高めていきますと、必ずどこかで限界がくるということは、 もう目に見えているわけです。どうすればいいかと言いますと、JILPTの使命というのは、もともとは っきりあったわけですし、どうすれば社会に対して貢献できるかという理念もあったと思うのです。 そういうものを踏まえて、やはり事業のバランスというものを考えていかないと、変なことになるの ではないかという感じを強く受けました。これは中期目標を作る段階で、そういう検討をきちんとや って、そしてこういう方向にJILPTを持っていくということをやるべきだったのだろうと思いますし、 すでにやったのかもしれません。  そういうことはあるのですが、もう1つ、長期的には今後の次期の中期計画の作成に向かって、また はその前の段階でも、おそらく単にバーッと網羅的にやっていきますと、変なことになると思うので す。ですから、すべての項目を、バランスという意味の中には、有機的につなげていくということが あります。いままでの中でつながっているのは、研究と研修というのがつながっているわけでしょ。 つなげたということでしょ。そういう形でつなげて、全体としてJILPTの機能を高めていくという意識 を持って、計画的にやっていってくださればというのが私の感想です。それだけですので、お答えは 必要ありません。  では、評価は終わりましたか。事務局からいいですか。 ○政策評価官室長補佐  それでは10分休憩を入れて、4時20分から労福機構のほうの審議をいただきたいと思います。よろ しくお願いいたします。                   (休憩)             (法人及び法人所管課入れ替え) ○井原部会長  労働者健康福祉機構の個別評価に入ります。最初に伊藤理事長からのご挨拶と、年度業務実績の概 要の説明をお願いします。 ○労働者健康福祉機構理事長  労働者健康福祉機構の理事長を務めております伊藤でございます。よろしくお願い申し上げます。 私ども、労働者健康福祉機構、独立行政法人に移行をしまして、まる5年を経験いたしまして、4月か らは第2期の、新しい中期目標の下で、業務の推進に当たっているところでございます。これまで、そ の間委員の皆様方からは、大変貴重なご意見、ご助言等をいただいてまいりまして、心から感謝申し 上げたいと存じます。  私どもが展開しております労災病院、そしてその車の両輪の関係にあります産業保健推進センター、 また賃金の立替払い等の諸制度につきましても、お蔭様をもちまして、大半は中期目標を達成し、後 ほどご説明申し上げますが、一歩直前まできたというものもありますけれども、そういう段階まで来 れましたことを、本当に委員の皆様方のご助言のお蔭というふうに受け止めさせていただいておりま す。  目下、私ども労災病院につきましては、この労災病院のネットワーク全体としても、またそれぞれ の地域におきましても、勤労者医療の中核的役割を果たそうということで、いろいろと情報の発信等 々にも努めてまいっておりまして、また、それと車の両輪の関係で、産業保健推進センターが、それ ぞれの職域段階での勤労者の健康確保対策を進めております。  目下ご案内のとおり、働く人々の健康状況と言いますと、心身ともにいろいろと厳しい状況にもご ざいまして、そういった面から私どもの労災病院あるいは産業保健推進センターに対するいろいろな ニーズも高まりを見せているというふうに実感をいたしておるところでございます。  また、賃金の立替払制度につきましても、サブプライムローンの破綻に端を発しました昨年来の金 融危機、そして世界的な不況の反映を受けまして、立替払いの件数も、制度発足以来の最高水準に近 いところにきていまして、中期目標で定められている、早く処理すると、30日以内に処理するという ことを何とかしようということで、日夜審査業務等に当たっておるところでございます。  業務各般にわたりますけれども、私のほうから、労災病院の問題につきまして、2点ほど現況を報告 申し上げて、挨拶に変えさせていただきたいと思っています。  労災病院は、労災病院のネットワーク全体としても、それぞれの地域でも、勤労者医療の中核的役 割を果たそうということで業務推進に当たっているわけです。その土台をつくるために2つあると思っ ています。  1つは、中核的役割を果たす以上、必要な勤労者医療に関する情報の発信基地にならなければいけな い。そのような見地から、労災疾病13分野の研究を積み重ねてきています。そうしたところから出て くる研究成果については、それぞれの地域の労災保健の指定医療機関、さらには海外も含めた学会等 にも広く出してきていまして、大学や他の医療機関からも、かなり注目を浴びる成果物も出てきてい るところです。  こうした研究を重ねて、そこで積み重ねられた知見等の医療資源を発信していこうという気運は、 労災病院全体にかなり広まっていまして、医師のみならず、予防医療等に従事している保健師、看護 師も含めて、そうした予防医療等の研究にも、輪を広げ始めています。大変成果が出てきていると思 います。  私ども、こうした土壌がほぼ確立されてきていますので、今後も研究活動からくるいろいろな情報 の発信に努めていきますが、これを土台に新しい方向にも踏み出していこうと思っています。  というのは、目下働く人々の職業生活の継続を脅かす要因としては、疾病の面から見ますと、やは り疾病構造の変化です。高齢化も進んでいまして、圧倒的にがんであり、脳卒中であり、心筋梗塞あ るいは糖尿病の問題で、これらの疾病を見ていきますと、医学も進歩し、がんであれば放射線治療、 化学療法等の技術も進歩し、相当程度職業を継続しながら、少なくとも辞めなくても済む治療体系が 出来上がってきているがんも相当多いです。それにもかかわらず、大半は辞めたり、離職を余儀なく されている人も、相当数いるわけです。これは13分野でも研究しています、糖尿病による網膜障害の 人たちも、同じようなことが出てきています。何とかこの13分野の新たな発展先として、こうした疾 病についても、職業と両立させ、あるいは元の職場に戻ることを支援していけるような治療体系の確 立に向けた研究と、その成果を活かして、主治医のそうした治療体系、治療成果を企業に理解させて いくつなぎ役としての体制、こうしたことのモデル事業も含めて、いままでの13疾病分野の研究の成 果、そこで培われた土台を、そのようなところにも広げていきたいと考えています。  もう1つ、中核的役割を果たすために必要なこととしては、経営基盤の確立です。労災病院も独立行 政法人という政策使命を負っていると同時に、1医療機関です。とりわけ労災病院については、その診 療活動等々の費用については、すべて診療報酬で対応する。医療機器、施設の建替え、電子カルテ等 を含むシステムの整備も、すべて国からの財政支出はなしになって、診療報酬から行うこととなって います。そういう意味からも、通常の医療機関の1つであり、その医療機関が先ほど申し上げたような 政策使命を支えていくためには、なおさら経営基盤がしっかりしていないといけないということです。 独立行政法人発足以来、少なくとも我々の医業活動を通して、減価償却費は出しきろうということを 目標にやってきました。これが第1期の中期目標でいう、収支相償の意味だということで、各病院の意 識をそこへ向けていただいて、対応してきました。  そうした意味で申し上げると、この期間に診療報酬のマイナス改定、医師不足の極端な進行、看護 師を巡る獲得競争の激化等、大変厳しい局面もありましたが、独立行政法人移行直前の平成15年度に 減価償却費を出しきれないで、191億円の欠損を出していたところ、医業活動を通じて減価償却費を出 しきれないという意味では、平成20年度時点では7億円の欠損というところまで圧縮してきました。 他の医療機関が経営状況を悪化させていく中、現場の医師をはじめスタッフの方々が活発な医療を展 開してくださったと感謝しているところです。  ただ、後ほど詳しく申し上げますが、私どもをはじめ、労働関係の27ほどの団体が加入している厚 生年金基金です。金融危機に端を発した世界的な不況の中で、厚生年金基金の資産が、相当目減りし ています。私ども、平成19年度は5億円を費用計上して、損益上は欠損のほうに回るわけですが、平 成20年度はさらにそれが加速されまして、36億円の厚生年金基金の資産目減り分、これは私ども国立 病院機構とは違った側面ですが、公務員ではないので企業会計基準に則って、財務処理上費用計上す るということで、最終的な財務諸表上出てくる欠損額は、平成20年度は43億円の欠損です。先ほど申 し上げた7億円の欠損にプラスすると、43億円の欠損となります。平成19年度に比べて、わずかなが らの前進ということですが、減価償却を出しきって、次の医療機器の整備、施設の建替え、電子カル テの整備等に費用を回していくためのキャッシュフローを作っていくという意味では、ほぼ減価償却 費を出しきるところの直前まできている状況だろうと思います。  私ども、今後こうした勢いを加速させながら、国の財政支出に依存しない形での病院、いい病院と いうのは、質の高い安全な医療を展開しているだけではなく、将来に向かっても、それができるだけ の体力を持たなければいけない。それが減価償却を出しきることなのだということで、意識は相当徹 底してきているので、引き続きそうしたことを推進しながら、労災病院の使命を果たすべき体力作り に邁進していきたいと思っていますので、引き続き委員の皆様方から、私どもの業務内容の審査、そ してそれを通してのいろいろなご意見、ご助言を賜れれば、大変ありがたいと思っています。よろし くお願い申し上げます。 ○井原部会長  これからの進め方です。労働者健康福祉機構の個別評価については、評価シートの個別項目を4つの グループに分けて、グループごとに評価を行っていただきます。先ほどと同じような形で行います。  まずグループ1は、「業務運営の効率化」及び「業績評価の実施等」の項目について評価を行います。 所要時間は法人からの説明が10分、委員の評定と質疑に20分、合計30分です。法人からの説明をお 願いします。 ○労働者健康福祉機構総務部長  総務部長の楪葉と申します。よろしくお願いします。資料3-1-[1]、資料3-7をご覧ください。まず 資料3-7はポンチ絵ですが、これで概略を説明させていただき、資料3-1-[1]の評価シートに戻って説 明します。なお、資料3-1-[1]の評価シートの「理由及び特記事項」欄の一部について、説明の便宜上、 先に委員の皆様にお送りした時点からさらに修正を加えています。よろしくお願いします。  資料3-7の1頁の「施設に対する本部の運営支援・経営指導体制の強化」です。いちばん上の箱の最 初のポツをご覧ください。平成20年度は、医師不足と看護師不足が同時に進行する中で、診療報酬の マイナス改定、さらには世界的な不況の深刻化に伴う年金基金資産の運用環境の一層の悪化、こうい った逆風の中で、病院長との個別の協議を重ね、収入の確保を図るとともに、材料費の削減、投資の 計画的な抑制、あるいは業務経費の2%カットといったことを行い、支出を極力抑制したところです。 収支相償を達成することを病院運営の基本方針としたところです。  IIの箱の抜本的経営改善の推進をご覧ください。特に上から3つ目のポツ以降です。平成20年度か ら、8病院から10病院に拡大した経営企画課を中心とした経営改善に取り組みました。また、当機構 の理事長から各院長に対して、収支相償を達成すべき年度であることについて、指示文書を発出して います。  平成19年度は、4月、5月、6月の第1四半期の実績を見ていたわけですが、平成20年度は4月と5 月の実績に基づいて、早期に「年間収支推計」の策定を指示しています。なお、計画達成に懸念のあ る病院については、役員が直接出向いて指導を行っています。  さらに具体的な本部の病院に対するサポートとして、[2]です。1つ目のポツの労災病院間の「医師派 遣制度」です。こういったことにより、医師不足問題に取り組んできたわけです。その箱の中のいち ばん下ですが、認定看護師等に係る資格の取得を組織的にサポートしたところです。  2頁にその内容をより詳しく示しています。昨年度に引き続いて、経営改善推進会議を隔週で開催し ています。また、病院から上がってくる報告を分析して、指導、支援、提案を密接に行っています。  右下の箱の経営目標実現に向けた取組みの収入関係の[1]です。患者数の確保について、地域医療連 携の強化、長期休暇・年末年始の救急受入体制の充実を図っています。支出関係の[7][8][10]です。[7]は 職員賞与の0.35カ月カットをはじめとした総人件費の抑制を行っています。[8][10]は後発医薬品の共同 購入、医療機器の共同購入により、経費の削減に努めています。  3頁の「新たな人事・給与制度の導入」です。左のほうの流れと、右のほうの流れがあります。まず 左ですが、施設別業務実績を給与に反映させています。右のほうは、管理職に対する「個人別役割確 認制度」を導入しています。その取組みの効果の1例として、表があります。職員の満足度・看護師離 職率というものがあります。職員の総合満足度は50.7%から、平成20年度には54.7%と高まりを見せ ています。看護師の離職率についても、平成19年度同様の水準となっています。いちばん下の箱の更 なる取組みとして、年功的な給与上昇の抑制に向け、現在労使間で協議中です。  4頁は、平成16年度以降の取組みを並べたものです。平成20年度は、平成19年度に実施した管理 職手当の定額化や平成17年度からの賞与支給月数の0.3カ月カットを継続しています。さらに、医師 以外の期末手当支給月数を、6月期0.2カ月カット、12月期0.15カ月カットをして、削減しています。 なお、平成21年度においては、6月期は医師も含めて、0.2カ月カットとしています。  5頁です。一般管理費・事業費等に関する交付金に関する部分です。ドラム缶の左上ですが、一般管 理費で、平成19年度は198億円、平成20年度は191億円で、3.4%の節減となっています。下の事業 費も同様に1.8%の節減となっています。  いちばん右の箱は5年間の改善率です。一般管理費は平成15年度比で15.1%の節減、事業費は11.0 %の節減ということで、中期目標を達成しています。  6頁です。「医療リハビリテーションセンター及び総合せき損センターの運営費交付金の割合の低 下」を示しています。平成19年度は交付金率が1.0%、これが0.4ポイント低下して平成20年度には 0.6%となっています。5年間の改善率は、5.6%から0.6%ということで、5.0ポイント低下していま す。これも中期計画を達成しています。  7頁の「業績評価制度による具体的改善効果」です。バランス・スコアカードについては、左の箱の BSCによる業務実績評価に書いてあるように、1,000の部門において行っています。こうした中で改善 の1例を挙げると、真ん中の箱の労災病院事業BSCの部分をご覧ください。左上の利用者の視点のいち ばん上のポツです。患者からの高い評価ということで、82.5%の患者から満足したという回答をいた だいています。財務の視点からは、キャッシュフローの改善があります。対前年度比36億8,800万円 の改善をしています。質の向上の視点では、DPC対象病院の増です。平成19年度は9施設から平成20 年度は19施設と増やしています。外部有識者による評価ですが、平成19年度から年に2回開催してい て、平成20年度も行っているところです。  資料3-1-[1]の評価シートをご覧ください。7頁です。評価に入る前に参考までに申し上げます。真ん 中の欄の実績の上から3つ目です。これは給与水準で、事務・技術職員が対国家公務員指数99.2とい うことで、対平成16年度比3.6の減です。国家公務員を下回る水準となっています。病院医師につい ては、対国家公務員指数117.3です。下のほうに書いていますが、現在の給与水準は医師の確保の観点 から必要な水準であると考えています。さらにその下に参考とありまして、民間と比較した場合に、 対民間月例給与指数では84.7ということで、民間に比べてかなり低い水準になっています。病院看護 師について、対国家公務員指数は103.4で、ほぼ横並びです。  評価シートの5頁をご覧ください。評価項目1です。平成20年度は極めて重要な年ということで、 職員一丸となって、業務運営の効率化を強力に進めたところです。一般管理費、事業費等の効率化も ありましたので、自己評価を「A」としています。  9頁の評価項目2です。これは労災病院の再編の関係です。すでに平成19年度までに実施している ので、平成20年度は自己評価をしていません。  12頁の評価項目3です。各部門ごとにBSCの評価を用いた内部業績評価を実施し、PDCAをさらに用 いた効率的な業務運営を進めています。また、業績評価委員会を年に2回開催するようになっています。 自己評価は「A」としています。グループ1は以上です。 ○井原部会長  グループ1が2つですね。いま説明のあったグループ1に関して評価をしていただきますが、何かご 質問はありますか。 ○堺委員  2点お伺いします。1つが、4月、5月の実績を基に、年間収支推計と、それを各病院に還元すること を始められました。スピードを上げるという点でいいことだと思っています。実際にこれを行うと、 医療収入はわかりますが、支出は材料費その他、特に年度変わりの部分もありますし、4月、5月です と集計が困難ではないかと思うのですが、その辺はいかがでしょうか。収入だけでしたら押さえられ ると思うのですが、収支となると、4月、5月というのが、少し難しいような気もするのですが、その 点はいかがでしょうか。 ○労働者健康福祉機構理事長  おっしゃるとおりで、4月、5月は、まず患者数の動向、診療単価の動向、そして総収入を見ていき ます。5月の数字で、収入のほうは早めに出てくるので、その辺でまず病院の動向を見ます。  支出のほうは、収支全体になると、そこからまた1カ月くらい遅れてデータが揃うので、収支まで含 めてやるとなると、遅れることは事実です。私どもは平成20年度は、収支相償に向けて一定の成果を 出さなくてはいけない年度で、これが次の5年間の建物の整備等を厚生労働省に認めてもらえるかどう かの踏み台となるということで、だいぶ急ぎました。まず総収入の変遷を見ながら、病院で対応すべ きこと等を指摘して、今後の残された期間で何をやっていくかの協議に入った次第です。それをやり ながら支出面が出てくれば、支出面での対応を追加する形で作業に入ります。 ○堺委員  もう1つは、医師確保のために医師の処遇を改善するという部分です。給与がもちろん本命ではあり ますが、そのほかにも医師のモチベーションを上げる手段というのは、いろいろあろうかと思います。 例えば治験を獲得した場合に、治験の費用を医師個人には還元できませんが、そこの部署に還元する とか、若手医師のサポートをするとか、いろいろあると思います。何か給与以外のサポートはお考え でしょうか。 ○労働者健康福祉機構理事長  勤務が大変になっているだけに、医師のモチベーションが非常に大事です。医師の中には、金額の 多寡よりもそういう苦労を病院長が見てくれているという気分が、非常に大事な面がありまして、各 病院に医師活動奨励費というものを予算計上させています。  この医師活動奨励費は院長の裁量で、例えば交代、夜間あるいは救急への対応等に、相当精力を使 ってきた医師、あるいは治験等で相当熱心に取り組んでもらった医師、その治験の契約を医師個人に 渡すわけには規則上いかないものですから、そのような部分を医師活動奨励費で見ています。そうい う形で、院長が相当な裁量を発揮しながら、医師活動奨励費で、奨励賞的な様相で、病院の必要とさ れる部分の活動に対して報いている形をとっています。それは給与とは別の形ですので、院長に裁量 を発揮させているところです。 ○川端委員  管理職に対する個人別役割確認制度というのは、具体的にどのようなことをやるのか、そして誰が 作るのでしょうか。 ○労働者健康福祉機構経理部長  これは管理職を対象としたもので、その年度が始まるに当たって、管理職に自分の役割に応じた課 題を設定させます。病院によって異なるのですが、それをどのくらい達成したかを上司によって2回か 3回評価をします。例えば診療科の部長でしたら、副院長が行います。それが医師ばかりではなく事務 職もということで、そういった制度です。 ○川端委員  目標管理制度とは違うのですか。 ○労働者健康福祉機構経理部長  目標管理制度とは呼んでいませんが、かなり近いものとご理解いただいて結構です。 ○川端委員  目標は管理者自身が作るのですか。 ○労働者健康福祉機構経理部長  左様でございます。 ○寺山委員  医師不足、医師対策が大変なことはよく理解できて、昨年度も強く感じました。看護師の離職率が1 割だということです。それと労災病院の看護学校がいくつかありますが、そこからの供給ということ で、医師の不足とは基本的に違うのではないでしょうか。その辺の現状はどうなっているのでしょう か。 ○労働者健康福祉機構理事長  看護師の不足も相当厳しくなっています。労災看護学校は9校ありますが、大体30〜40人の定員で、 労災病院全体として採用するのは、例えば平成20年度ですと980人ぐらいの新規採用をしますから、 労災看護学校だけではとても充足できません。事務局、看護部長をはじめ、全国の看護学校、大学を 含めて行脚しながら応募を呼び掛けて、採用活動をします。それがかなり熾烈に進めているところで す。 ○寺山委員  病院間によって、看護師不足の地域格差はありますか。 ○労働者健康福祉機構理事長  看護師確保のしやすいところ、看護師確保の難しいところという地域差は、歴然とあります。全体 的に都市部のほうが有利です。都市部周辺から都市に流れるために、確保が厳しいです。東京周辺で あれば、千葉県はかなり難しいです。鹿島までいくと、地方という感じが出てきまして、看護師確保 にかなり苦労します。そのような地域差はかなりあります。 ○寺山委員  私は看護職も含めて医療職の養成に当たっているのですが、看護師については学校を増やしても増 やしても足りないという、慢性不足があります。いつになったら充足するのだろうと昔から思ってい ます。労災もそうなのですね。 ○労働者健康福祉機構理事長  看護師不足は大変大きな課題ですが、全国平均の離職率が13%近くで。 ○寺山委員  それよりはいいですよね。 ○労働者健康福祉機構理事長  10%ぐらいまでは下げてきているのですが、それでも毎年相当数を新規採用していかないと。 ○寺山委員  逆に離職しない看護師については、年齢はどうなっているのでしょうか。若い看護師が辞めてしま うのでしょうか。 ○労働者健康福祉機構理事長  若いうちに1つの離職の山がきます。中堅層も確保しておかないと、異動します。比較的高年齢層に なってからが、動かない形です。ときどき労災病院から他の医療機関に転職して、また戻って来る人 もいます。若いうちは、管理体制、教育体制がもっといいものがあるのではないかということで、異 動するところはあります。  ただ、先生のおっしゃるような、養成しても養成しても、全体として足りないという背景の1つは、 診療報酬体系の中で7対1等々が出てきたこともありますし、これが病棟単位等で行える弾力性があれ ば、また少し違うと思います。それとライフ・ワーク・バランスというか、育児、出産の過程での離 職、あるいは夜勤に回れないということで、やはり夜勤体制を組むために必要な看護師確保は、募集、 採用のほかに、勤務体制でライフ・ワーク・バランスをどうサポートするかが我々の課題だと思って います。 ○寺山委員  医師と同じように、かつて労災にいた看護師をリクルートして、再教育をしてお願いするようなシ ステムはやっておられるのでしょうか。 ○労働者健康福祉機構経理部長  労災病院としてはナースバンクは整備していませんが、各病院は地域ごとに活用しているかと思い ます。 ○寺山委員  昔からの問題なので、着実に打つ手は打っていただきたいと思います。 ○中村委員  医師不足、ナース不足は労災病院だけでなく、全国的にあると思います。それを解決するためのい くつかはすでにされていることがわかったのですが、さらに研修医に、より多く労災病院に集まって いただいて、トレーニングするということで、例えば私の知っているある病院は、全国から研修医を 集めるために病院の近くに研修医のためのアパートをつくって、家族づれでいらっしゃいということ をしています。それから、いますごく女医はいるのですが、結局軽いような診療にいってしまって、 実際に必要な部分に女医がきていません。これは子どもの問題があります。  ナースについても、先ほど新人のところがあって、中堅のところでも山があるということでした。 中堅については、おそらく子育ての部分で激務に耐えられない。育児と両立できないということだと 思います。労災病院は、ナースや女医のための子育て支援策は何をしているのでしょうか。  3つ目が、NPと言って、アメリカでは医師と看護師の間にある、日本では診療ナース、その辺が、い ま経済特区で、大分県からこれを特区の中でやりたいというのが出てきています。それをいま厚生労 働省とやり合っているわけです。このような、新しいやり方だけれども、医師の大変さと、ナースが キャリアアップをしたいというところで、ちょうど真ん中ぐらいの新しい制度を取り入れて、医師不 足、ナース不足を解決したいという、先駆的な取組みについては、今後どう考えられるか。いかがで しょうか。 ○労働者健康福祉機構総務部長  ナースと女医の確保についてです。資料3-7の35頁です。左のほうに「医師の確保」と出ています。 特に女性という観点からすると、(3)医師の働きやすい環境作りということで、育児のための短時間勤 務制度は平成20年3月から導入しています。小学校就学前の子の育児のために8時間勤務が困難な医 師について、短時間勤務として1日6時間以上及び宿日直勤務、待機勤務等を免除するものです。  ナースの関係は36頁をご覧ください。真ん中の箱の左に「看護師の確保に向けた取組」とあります。 就職説明会の開催など、いろいろあるわけですが、いちばん下の○に働きやすい職場環境の整備とあ ります。院内保育所の計画的整備とあり、現在全国で14カ所ありますが、そうしたことを講じていま す。 ○労働者健康福祉機構経理部長  ナースプラクティショナーですが、追加させていただきますと、当機構では認定看護師、専門看護 師の資格をサポートしていくということで、諸々の取組みをして、年々資格取得者が増えている状況 にあります。 ○中村委員  いまの医事法の「医師の指示の下」の中に、看護師の裁量を少し増やしているだけですよね。アメ リカでいっているNPというのは、もっと高度なものです。 ○労働者健康福祉機構理事長  先生のおっしゃられた点で、お答えしていないことがあるので補足させていただきます。臨床研修 医、特に初期臨床医の確保、さらには後期研修生の確保には精力を上げているのですが、労災病院の 場合には、立地そのものがかなり地域に偏ったものになっているので、宿舎等はほぼ完備しているの です。ですから、そのような形でHP等も活用しつつ、確保に当たっています。  さらには、研修医のアンケート等を取って、彼らがどのようなことを考えているかは常時把握に努 めているのですが、指導体制が彼らの関心事で、そのような指導医の研修等も開始して、指導医に当 たる先生方の研修も特別体制で中央に集めて、研修を年2回やっています。相当な参加率で集まってき ますし、そのような形でマッチング率を高めるように、さらに努力はしていきたいと思っています。  NPの問題については、先生からお話がありましたように、医師の勤務状況を緩和していくためにど うやるべきかというのは、厚生労働省でもいろいろな形で議論を進んでいるようです。ただ、いまの ところは制度の問題、医師の業務範囲と看護師の業務範囲の問題、それにまつわるいろいろな安全の 問題等について、我々が単独でやるには壁があって、その辺の議論の動向を見ていかなくてはならな いと思っています。  医師の業務緩和については、事務補助体制の整備をしながら、診療報酬とも結び付けていくような 努力とか。看護師も相当の業務量があるので、看護と他の部門との業務範囲、例えば採血を検査部門 もこなしていくとか、そのような形で看護師が看護業務に専念できる姿を、業務範囲を整理しながら やっていこうとか、いろいろな形で、より忙しい部門がある程度緩和されていくための工夫は積み重 ねてきています。そういうことをもう少し積み重ねながら、一方で先生のおっしゃるようなNPの議論 がどのように展開して、医療安全等も担保する形で、どのようにやっていくか。おそらく教育体制等 も絡んでくると思うので、そういうものの様子をもう少し見ながら、対応していきたいと思います。 ○井原部会長  よろしゅうございますか。次にグループ2に移ります。「労災疾病にかかる研究・開発」から「健康 診断施設の運営」までの項目についての評価です。所要時間は、法人からの説明が25分、委員の評定 と質疑が20分、合計45分となっています。法人からの説明をお願いします。 ○労働者健康福祉機構総務部長  資料3-7の8頁をご覧ください。勤労者医療の概念、柱である労災13分野疾病研究、予防医療、地 域医療連携の概念です。その中で私どもが力を入れている、13分野の疾病研究について、関原先生か らポイントをご説明します。 ○労働者健康福祉機構総括研究ディレクター  労災疾病13分野の医学研究について説明します。ポンチ絵の資料04-02をご覧ください。ここには 13分野のうち、メンタルヘルス分野の成果が記載されています。その成果は、インターネットを用い たメンタルヘルスチェックシステム及び脳血流SPECTを用いたうつ病の客観的診断法を開発しています。  04-03の感覚器障害分野です。この分野では、糖尿病の労働者では就労の継続のため、十分な治療が できていない現実が明らかになりました。今後、就労と治療の両立を可能とする体制を構築する必要 があると考えられます。  04-04の過労死分野です。年間の残業時間が500時間を超えると、メタボリック・シンドロームのリ スクが増大することが明らかとなっています。今後残業に際しての職場でのメタボリック・シンドロ ーム対策が必要と考えられます。  04-05のアスベスト関連疾患分野です。これから我が国で増加する中皮腫の救命率を高めるためには、 現在29.6%のStageI及びIIでの早期診断率をさらに高める必要があることが明らかとなりました。  04-06の物理的因子による疾患分野です。理・美容師の接触皮膚炎の原因となってい理美容製品をパ ッチテストを用いて解明しました。この研究成果が、労働基準法施行規則第35条専門検討会の議題と なっています。  04-07の働く女性のメディカル・ケア分野です。深夜、長時間労働時にはメラトニンの分泌が上昇し ないことを解明しています。  04-08の産業中毒分野です。産業現場で問題となった有害化学物質の新たなばく露評価法を開発して います。  04-09のリハビリテーション分野です。脳血管障害発症時の所見から、治癒後の職場復帰の可能性を 予測する方法を開発しています。  04-10のせき髄損傷分野です。日本人の頚椎及び頚髄の標準値を設定しました。  04-11の筋・骨格系疾患分野です。労働者の腰痛の発症要因として、作業姿勢、作業動作、作業環境 に加えて、心理、社会的要因が関与していることを解明しています。  04-12の粉じん等による呼吸器疾患分野です。この分野では経時サブトラクション法、CT3次元表示 法、FDG-PET、3つの新しい画像診断法を開発しています。  04-13の職業性外傷分野です。手指切断時の重症度スコアから、治癒後の復職の可能性を予測する方 法を確立しています。  04-14の振動障害分野です。この分野では振動障害の客観的診断法としてのFSBP%法を確立していま す。  04-15は成果の普及状況をまとめています。学会発表が539件、うち国外が54件、論文が224件、 うち英文が53件、本プロジェクトが国際的にも評価を受けていることがおわかりいただけると思いま す。また、冊子・出版物を40冊作成しています。先生方のお手元に置いてありますので、お目通しい ただければと思います。これらはインターネットのHP上でも公開していまして、アクセス件数も年々 増加し、平成20年度は21万件に達しました。5年間の合計は約50万件に達し、数値目標の10万件を 大幅に上回っております。以上が13分野研究のご報告です。  続いて、予防医療センターの活動状況についてご報告します。資料05-01をご覧ください。予防医療 センターでは、過労死予防対策、メンタルヘルス不全対策、勤労女性の健康管理対策の3つの事業に取 り組んでいます。本年度は、これらの事業の質の向上及び利便性の向上に取り組みました。  まず質の向上について、05-02をご覧ください。メタボリック・シンドロームを予防、解消させるた めのハンドブックを作成しました。これをテキストとして、個別指導、講習会で使用しています。お 手元にこの冊子が置いてありますので、ご覧いただければと思います。  利便性の向上は05-03をご覧ください。個別指導、講習会を行う時間帯の見直しを行い、勤労者の利 用しやすい平日17時以降及び休日に開催、また勤労者のニーズに応じて企業へ出向して、個別指導、 講習会を行いました。これらの対応により、より多くの方々に予防医療センターをご利用いただける ようになっています。また、予防医療センターでは、さらなる質の向上のための研究も活発に行って います。  05-04をご覧ください。メタボリック・シンドロームについての、予防医療センター共同研究を行い、 新たな発症要因として、職場のストレスが関与していることを解明し、国際学会で発表しています。 また、個別研究も行っておりまして、代表的研究73件の抄録集を作成しています。お手元にお配りし ているので、ご覧いただければと思います。  最後に中期目標の達成状況、05-05をご覧ください。過労死予防対策の指導を中期目標期間中、64万 人に行い、目標の2.7倍の実績、またメンタルヘルス不全に対しては、心の電話相談を9万4,000人に 行い、目標の1.7倍の実績、勤労女性に対しては女性保健師による生活指導を1万7,000人に行い、目 標の2.4倍の実績を上げることができました。以上です。 ○労働者健康福祉機構総務部長  資料の28頁です。「勤労者医療の地域支援の推進」です。左上の箱で、平成20年度数値目標と実績 とあります。患者紹介率は実績53.1%、症例検討会・講習会参加人員の実績は2万404人、受託検査 件数は2万9,713件ということで、目標をすべて上回っているところです。また、真ん中の上のほうで すが、これは地域の病院や診療所にアンケート調査をしたものです。診療や産業医活動に有用であっ た旨の評価です。有用だったという評価が76.8%でした。  29頁です。地域医療支援病院あるいはがん診療連携拠点病院の指定あるいは承認取得には力を入れ ています。左上の箱ですが、地域医療支援病院の承認取得の推移です。平成20年度においては、12施 設の承認を得ています。また、がん診療連携拠点病院ですが、平成20年度においては11施設の指定を 受けているところです。真ん中の上の箱に平成21年度の状況があります。地域医療支援病院について は3施設を予定しています。また、がん診療に関しては、新たに2施設の申請を予定しています。  30頁です。労災病院の目指す医療を柱立てしたものです。詳しくは31頁以降です。31頁の「急性期 医療への対応」です。私ども、急性期医療の対応に力を入れています。まず看護体制の充実です。い わゆる7対1看護は平成20年度は5施設となったわけですが、平成21年度には新たに3施設導入して います。右のほうのグラフです。平均在院日数の推移です。平成20年度は15.4日で、平成16年度の 18.6日からかなり圧縮してきたところです。  真ん中左の棒グラフです。救急患者受入体制の強化で、5年間で33万1,591名で中期計画をクリア しています。また、地域医療連携強化についても、順調に増やしてきています。  32頁の「医療の高度専門化[1]」です。いちばん上の学会等への積極的な参加です。平成20年度学会 認定医数が1,104名、専門医数が1,361名、指導医数が630名です。専門センター化によるチーム医療 の推進です。これもいちばん下の3行目で、平成20年度の専門センター数が137です。最後の箱の高 度医療機器の計画的整備で、平成20年度には73億円を投入しているところです。  33頁は労災リハビリテーション工学センターの関係です。右の箱に活用状況、普及状況を示してい ます。研究成果の一例として、吊り上げトレッドミル等の関係を紹介しています。これは今年度末の 廃止に向けて準備を進めているところです。  34頁は共同研究開発の状況についてまとめたものです。35頁は、先ほどご指摘のあった点で、優秀 な人材の確保ですが、医療の質、安全の確保を前提に、人材の確保・育成に努めてきた次第です。医 師の確保については、(1)労災病院間での医師派遣で、平成19年度は24名、平成20年度は27名です。 (2)医師募集活動で、いちばん上のポツはホームページでの公募、1つ飛んで研修医募集ガイドブック の作成等を行っています。(3)は育児のための短時間勤務制度です。  右の箱は医師の育成関係です。(1)指導医講習会の実施、(2)初期臨床研修医集合研修の実施をして いて、その下にありますが、平成20年度は2回実施していて、受講者の満足度は80%以上です。  36頁です。次に看護師の確保・育成です。確保については上のほうの箱になりますが、就職説明会 の開催、看護職員募集ガイドブックおよびポスターの作成、1つ飛んで、看護系大学や看護師養成所へ の学校訪問、さらに働きやすい職場環境の整備ということを行っているわけです。下の看護師育成に 向けた取組みですが、キャリアアップのサポート、看護系大学や大学院進学への奨学金の貸与等を行 っております。  右の箱の全国労災病院の看護師ですが、新規採用数が933名、平成20年度が834名でした。先ほど 申し上げた看護師の離職率ですが、平成20年度は10.3、全国平均が平成19年度の数字で12.6です。 その下の認定看護師ですが、平成21年度の有資格者が91名です。下に平成20年度、平成19年度と数 字が書いてありますが、順調に増やしているというところです。  次に37頁の労災看護専門学校ですが、そこにおいては勤労者医療というカリキュラムを取り入れて おります。真ん中の箱に書いてありますが、勤労者医療概論、その下に例えばメンタルヘルスマネジ メントといったものを含んでいるわけです。下のほうの労災看護学生の合格率です。平成20年度は 97.1%の国家試験合格率でした。参考ですが、全国平均では89.9%ということで、全国平均を上回っ た数字を出しているわけです。  次に38頁です。これは先ほど関原先生からご説明いただきました13分野について、臨床評価指標検 討委員会を開催して、医療面の評価を行っているものです。労災病院の中で、右の箱の下の※です。 「A:優れている」が10疾病、「A':優れているが一部課題を残すもの」が5疾病となっております。  次に39頁の外部評価の関係です。真ん中の表ですが、外部評価機関による病院機能評価、これは日 本医療機能評価機構で行っているわけですが、平成20年度においては30の病院が受審して30の病院 が認定を受けている、といった結果になっております。右下の箱ですが、患者満足度です。先ほども ちょっと数字を紹介しましたが、平均で82.5%です。ここに書いていないのですが、平成17年度から の数字を申し上げますと、平成17年度は78.9%、平成18年度は78.7%、平成19年度は80.6%、平成 20年度は82.5%ということで、順調に上がってきたのではないかと考えております。  次に40頁ですが、医療の標準化ということで、いわゆるクリニカルパス、DPCといった医療の関係 です。右上のグラフは、クリニカルパス件数および適用率の推移を示しております。クリニカルパス の見直し、あるいは統合を進めたことから、件数自体は減少しておりますが、クリニカルパスの適用 率は86.8%まで高まってきているわけです。その下のグラフは、DPC対象病院に向けた取組状況で、青 色の対象病院の所です。これも先ほど紹介しましたが、平成19年度9病院だったものが平成20年度に は19病院まで増えているということです。  次に41頁の「安全な医療の推進」ということです。左の箱ですが、上から順に全労災病院共通の 「医療安全チェックシート」による取組みをやっております。さらに、真ん中の箱ですが、「労災病 院間医療安全相互チェック」の実施ということです。右の箱にその概念図が書いてありますが、A労災 病院、B労災病院、C労災病院、これが相互にチェックするといったものです。さらに、いちばん下で すが、データの公表も行っているわけです。  続きまして、42頁はIT化の推進です。右上の箱ですが、労災病院におけるIT関連機器等の整備状 況です。オーダリングシステムが29施設、平成20年度新規導入が1施設です。参考までにオーダリン グシステム導入割合、400床以上の病院ですが、労災病院においては15施設あって100%達成している と。全国平均では72.9%と、これは厚生労働省の平成17年調査になりますが、そういった数字です。 また、電子カルテシステムですが、3施設、平成20年度に新規導入が1施設ということです。  続きまして、43頁の「行政機関への貢献[1]」ということです。まず、アスベスト関係で、ここは非 常に力を入れているところです。左上から、アスベスト小体計測の実施です。平成18年度から平成20 年度にかけて、全国10カ所のアスベストブロックセンターにおいて、計1,189件の検査を実施してお ります。下のアスベスト疾患センターの設置です。これは平成17年からの数字ですが、相談件数は3 万9,161件、健診件数が4万4,086件ということで、そういった大きな数字を出しているところです。 さらに3つ目の箱のアスベスト関連疾患診断技術研修です。平成18年度から平成20年度にかけて、全 国延べ69カ所において開催しており、医師等延べ3,065名の方が研修を受けておられるということで す。また、いちばん下のアスベスト関連疾患の新規事業ですが、これは新しい調査を受託して、その 臨床データの収集・解析等を行っているということです。  次に44頁の「行政機関等への貢献[2]」です。真ん中やや上の箱ですが、アスベスト以外でも国の設 置する委員会に積極的に参加しております。真ん中やや下の二重線の箱ですが、新型インフルエンザ への対応に係る体制整備を平成20年度に準備して、平成21年度においては発熱外来の設置が12病院、 さらには成田の検疫所に職員を派遣しているところです。真ん中下の棒グラフは、労災認定の意見書 の作成です。この迅速化に努めており、平成15年度は29.3日かかったところですが、平成20年度に は16.2日と、13.1日の短縮を見ているところです。  続きまして、45頁の「医療リハビリテーションセンターおよび総合せき損センターの運営状況」で す。ここでは、社会復帰率と患者満足度が指標となっております。真ん中の色が付いた所の左側、医 療リハビリテーションセンターですが、社会復帰率は平成20年度は80.4%、患者満足度84.5%です。 総合せき損センターは、社会復帰率が84.8%、患者満足度85.6%と、目標値である80%を超えている ところです。  46頁は新聞記事です。コピーしただけで、雰囲気という感じですが、総合せき損センターにおいて、 手術からリハビリ、そして社会復帰までの一貫した医療が新聞に取り上げられた事例です。  次に47頁の海外勤務健康管理センターの業務の概要ですが、具体的には48頁です。どういったこと をやっているかというものですが、左の箱の平成20年度の重点的な取組み、(1)海外派遣労働者へのサ ービスの向上ということで、健康診断、相談対応等々をやっているところです。(2)企業の健康管理ス タッフ等への情報提供ですが、研修会・講演会等をやっているところです。右のほうの平成20年度実 績ですが、センター利用者1万7,047人、満足度調査はイとロがありますが、イはセンター利用者、ロ は海外循環健康相談者で、90.2%、95.5%です。ホームページアクセス件数についても7万3,806件と いうことで、目標を大きく上回る数字を出しているところです。  評価シート、資料3-1-[1]の29頁の下のほうの評価項目4ですが、13分野の医学研究については、先 ほど関原先生からご説明がありましたとおりです。お手元に研究開発の成果物である報告書や冊子の 一部を置いております。国際的にも非常に高い評価を受けております。また、インターネットアクセ ス件数は、目標の5倍となる約50万件ということで、高い研究、あるいは普及の成果を上げておりま す。こういったことから自己評価を「S」としております。  次に34頁の評価項目5です。勤労者予防医療センター事業についても、関原先生からご説明があり ましたとおりです。すべての事業において、中期目標を早期に達成しております。さらに高い平成20 年度目標も、クリアしているところです。さらに、利用者ニーズ調査結果に基づいて、夜間、あるい は休日における指導等を大幅に増加させて、利便性の向上を図っております。また、お手元にありま すような多くのテキストを作成して、その活用を図っております。さらなる質の向上のため、共同研 究、個別研究を行い、国際的にも高い評価を得ております。その結果、88%という高い利用者満足度 を得ています。こういったことで、自己評価を「S」としております。  次に38頁の地域支援の関係、評価項目6です。体制整備の一環として、平成20年度、特に力を入れ た分野で、患者紹介率も増加しておりますし、地域医療支援、あるいはがん診療連携拠点病院も大幅 に増加したということで、自己評価を「S」としております。  次に46頁ですが、評価項目7の高度・専門的医療の関係です。病院機能評価については93.8%と、 全国の28.8%に比べて高い認定率を得たということ。また、患者満足度も、前年水準を約2%上回る 82.5%となったことから、自己評価を「A」としております。  次に51頁の行政機関等への貢献、評価項目8です。ここも大きな課題であるアスベスト問題につい て、その健診や相談のほか、産業医を対象としたアスベスト研修を積極的に実施しております。また、 労災の意見書作成については、平成20年度は16.2日ということで、先ほど申し上げたように平成15 年度に比べて13.1日の短縮を行っております。以上により、自己評価を「S」としております。  次に52頁のいちばん下、評価項目9です。医療リハ・せき損センターの運営ですが、社会復帰率、 満足度ともに目標数値をクリアしておりますので、自己評価を「A」としております。  次に56頁、評価項目10ですが、海外勤務健康管理センターの運営についてです。この海外勤務健康 管理センターですが、こちらも利用者数、ホームページアクセス件数等で、大幅に目標をクリアして おり、自己評価を「A」としております。また、厚生労働省の封筒に入っておりますが、業務マネージ メント等に関する意見募集の結果が出ております。7月24日現在の参考というものです。このセンタ ーの関係の意見が出ていることを紹介させていただきます。グループ2は以上です。 ○井原部会長  ということで、第2グループの説明が終わりました。委員の皆様は、評価シートへのご記入をお願い いたします。質問がありましたらお願いします。 ○堺委員  3点お尋ねします。いちばん最初は関原先生に質問させていただきます。海外への学会発表、あるい は論文発表は随分増えてこられたと思います。アスベスト以外の分野でも、そうなっておられると思 いますし、そういう研究に対する評価が高まっておられると感じますが、外部からの研究に対する評 価のもう1つの指標が外部研究費の獲得なのです。こうなってきますと、外部からの研究費の獲得も増 えておられるでしょうか。 ○労働者健康福祉機構総括研究ディレクター  これは、主として労災疾病の13分野研究の研究費を使っております。ただ、ほかの文部科学省の科 研費などというものとか、あるいは海外との共同研究での一般の財団等のグラントも、ポツポツ取れ るようになってきているのではないかと思います。と申しますのは、最初スタートした段階では全く 実績がなかったわけですが、幸いにも海外の学会にもアクセプトされてまいりましたし、それぞれの 分野の一流誌でも論文が通るようになっておりますので、その実績に基づいて、そういうものがだん だん積み重なってきているのではないかと思いますので、今後は我々独自の研究費、プラス先生がい まおっしゃったような外部の研究費が取れるようにやっていきたいと考えております。どうもありが とうございます。 ○堺委員  次ですが、地域医療支援病院やがん診療連携拠点病院が増えてきておられますし、また7対1やDPC もこれから増えてこられると思います。それに加えて、いろいろな種類の特定入院料がありますが、 それの獲得もきっといろいろやってらっしゃると思います。それやこれやをひっくるめて、入院単価 はこのところいかがでしょうか。増えておりますか。 ○労働者健康福祉機構医療事業部長  ちょっと手元に数字がありませんが、労災病院の平均が現在4万5,000円ぐらいですか。ただ、非常 にばらつきがありますので、平均で4万5,000円ぐらいです。 ○堺委員  精神科とかリハビリをお持ちですし、そういうものを入れてということだというように理解します。 ○労働者健康福祉機構医療事業部長  高い所では6万円、安い所は3万5,000円という、病院の機能によってばらつきがあるということで す。 ○堺委員  3番目が看護学校の学生の行く先についてなのですが、労災病院の看護学生の就職率は非常に高いと いうように私は理解しております。一般的に申しますと、4年制大学の看護の学生は、必ずしも看護の 現場ではなくて、非常に多様化してらっしゃると、私は理解しています。それから、看護専門学校の 場合は、都市部はともかくとして、そうでない郡部等では、看護学校そのものが定員割れを起こして いるような現象も起こっており、現在の労災看護学生の進路と申しますか、卒業されてから看護の現 場には、いままでと大体同じぐらいの割合の方が進んでいらっしゃるのでしょうか。それとも、これ が減りつつあるのでしょうか。 ○労働者健康福祉機構医療事業部長  370人の定員のうち、途中で進路変更等で実際卒業される方は、330か340ぐらいの方なのですが、 99%、全部労災病院に行くということになっています。若干、労災病院に就職されない方というのは 進学されると。ただ、その進学される方も、保健師なり助産師なりを取ったら、また労災病院に来る ということになっています。 ○寺山委員  関連質問で看護職の話ですが、いろいろな事情がありますが、若者が少なくなっているということ で、どこも学生の確保が大変だと思うのです。労災系9つの専門学校では、統廃合して大学か、数校に するなどというような、4年制の大学を目指すということは考えたことがあるのでしょうかという質問 が1つです。  大体、専門学校は看護だけではなくて、リハビリテーションのほうも専門学校から短大も駄目で、4 年制大学へという流れなのですが、それが1点です。それから、伺うと13疾患に対する研究取組みを 拝見して、私も非常に素晴らしいものができたなと思っているのです。昨年も質問しましたが、医師 の先生方がほとんど研究者で、それ以外の看護職とか、労災病院で放射線技師の先生方が結構やって おられますが、それ以外のチーム医療の中での研究への参加の触発みたいなものが引き続き行われて いるのかどうか。今年のあれを見ても、やはり医師の研究能力のほうが高いせいもありますから、そ れもありますが、リーダーシップの下に是非研究へのお誘いというか、チームとしてやらせていただ きたいということが2点、質問も含めてです。  3番目なのですが、勤労者医療の地域支援ということです。これは前から思っているのですが、労災 病院それぞれの特徴があって、30あるのですが、全部ここで発表を伺ったり、資料を見せていただく と、それぞれの病院についてどうなっているのかということが、何をどのようにやってきて課題は何 かということを、トータルに総括する前のもう1つ下のデータをもう少し知りたいと思います。地域支 援とおっしゃるからには、なおそれぞれの地域の特徴があるので、それぞれの所が見たいということ があります。独立行政法人も国立病院それぞれが評価されているし、今度は国立高度専門医療センタ ーというのでも評価されるということで、労災病院一つひとつをトータルに評価することの前に、そ の辺のところを是非お教えいただきたいと。これは来年からで結構ですけれども、これはお願いです。 以上3点です。 ○労働者健康福祉機構理事長  最初の看護学校の4年制への移行ということを検討したことがあるかという件ですが、問題意識は相 当持っています。やはり3年制のままで、これからの少子化の下で生徒の安定的な確保ができていくか どうかということと、これからの急性期医療を担う看護師の養成として、先ほどNPの話もありました が、3年制で対応していけるかという問題意識はかなり持っています。ただ、独立行政法人として、業 務範囲が限られている中では、学校法人としてのそういう大学への移行というのは、実際上、制度的 に業務範囲の関係もあって、制約があって無理でして、目下はそういう制約の中で勉強はするけれど も、ちょっとすぐの対応にはなれない。3年制の専門学校として、どう魅力を増していく工夫をしてい くかというのが現状だろうと思って、その辺をいま考えているところです。  2番目に、いろいろな研究についてのお話がありましたが、今日は労災13疾病分野の臨床研究の成 果等についてお話申し上げましたが、このほかに研究としては、先ほどちょっと触れましたが、予防 医療センターの方々が医師・保健師等も含めて、メタボリック等々の研究をしてくださっている。も う1つ、私どもは優秀な研究を表彰する制度を持っており、これは労災疾病に限らず、もっと幅広い形 でいろいろな研究に先生、あるいは看護師部門、それからコメディカルの部門も取り組んだ者につい ては、院長先生方に集まっていただいて、論文等を審査して表彰していくという形で奨励する。さら に、もう少し病院の機能向上するための視点からの研究についても、費用を出して奨励していくとい うものをやっていて、その辺はかなり医師の他部門の参加も増えてきております。  最後に地域それぞれの労災病院、30それぞれ持つ特徴等も含めて、個々にデータ、資料、さらには 個々の病院ごとの評価ということの話がありました。個々の病院の特徴等をご理解いただける資料に ついては、ちょっと工夫させていただきたいと思っています。ただ、いままであまりその点に触れて いませんのは、どうしても病院のあり様について収支相償ということから中期目標が入ってきたもの ですから、そうした収支がどうということについての視点から、個々の病院を評価していくと。こう いう視点が強いことを、正直我々は警戒をしておりました。  労災病院の生い立ちとしましても、旧産炭地域等に多く立地されてきた、あるいは鉱山のあった地 域に設置されてきた。それぞれ生い立ちの中で、例えば北海道中央労災病院ですと、じん肺に相当偏 った、いまなお北海道の中でのじん肺のメッカになっているわけですね。あるいは北海道中央労災病 院せき損センターですと、落盤等でのせき損の患者を中心に育ってきまして、いまは北海道からヘリ コプターが飛んでくるせき損のメッカになっている。そういう所はかなり専門性が強いために、収支 は良くありません。  しかし、労災病院全体としてそれを支えていって、例えば横浜労災などという大都市部のほうは、 そうしたところも含めてある程度収益を上げてもらう形。全体として、労災病院がそういう専門性の ために収益性という点では悪い病院も、労災病院の使命上どうしても抱えていくと。こういうことを 我々はある程度腹を括って、そういう専門的な病院も抱えているわけです。そこを収支という点で個 々の病院ごとに評価されていくと、専門性を捨てざるを得ないというジレンマに陥りますので、その 辺もご理解いただきながら、個々の病院のデータ等については工夫して、その辺も含めてご理解いた だくような資料を工夫したいと思っております。 ○労働者健康福祉機構総括研究ディレクター  いま先生からご指摘いただいたコメディカルの件ですが、医療がドクターだけではできないと同じ ように、私どもがやっておりますのは臨床研究ですので、医師だけではできなくて、やはりコメディ カルの方の協力というものが非常に大切なのです。先生方のお手元に13分野のサマリーの冊子があり ますが、これに研究者一覧表が添えてあります。もちろん医師が圧倒的に多いのですが、32名のコメ ディカルの方が参加してくださっています。例えばアスベストの問題が大きな問題になったときに、 胸膜プラークというものを診断する画像のうまい方法がなかったわけです。そうしたら北海道中央労 災病院の放射線科の本田技師が、先ほどちょっと私から紹介させていただきましたが、三次元のCT画 像を作ることをやってくださいまして、非常に的確な診断ができるようになっております。  それから、メンタルの部分では、うつ病の客観的診断、いまはいろいろなアンケート調査をやって、 総合的な判断で精神科の先生が診断を付けているわけですが、頭の写真1枚でうつ病の状態がわかるよ うになれば、こんな素晴らしいことはないわけですね。そういうことにも放射線技師の方がチャレン ジしてくださいまして、SPECTという脳の血流を示す技術を使って、大体、緩解期には血流が増えてく るとか、そのようなことがわかるようになっております。  それから、先生のご専門の分野の看護師の方ですが、働く女性のメディカルケア分野というのがあ って、看護師の方が深夜、長時間労働をなさいますね。そうすると、月経の異常等が起こるものです から、それがどうして起こるかということに、看護師の方たちが問題提示をして、研究を提言してく ださったのです。それで、和歌山労災と愛媛労災の看護師の方たちが自ら試験台といいますか、ボラ ンティアになってくださって、おしっこを集めてくださったり、血液を採ったり、唾液を採ったり、 非常に献身的な協力をしてくださって、いろいろな新しい事実がわかってきております。そういうこ とで、今後も是非コメディカルの方たちにたくさん参加していただいて、みんなでやる研究を進めて いきたいと考えておりますので、また先生からもいろいろご助言・ご支援をいただけたらと思います。 よろしくお願い申し上げます。以上です。 ○寺山委員  期待しております。よろしくお願いします。 ○井原部会長  それでは、よろしゅうございますか。 (各委員了承) ○井原部会長  それでは、次にグループ3に移りたいと思います。「産業保健関係者に対する研修・相談」、それか ら「産業保健に関する情報提供」および「産業保健助成金の支給」の項目について評価を行います。 所要時間は、法人からの説明5分、委員の評定と質疑20分の合計25分となっております。それでは、 法人からの説明をお願いいたします。 ○労働者健康福祉機構総務部長  資料3-7、ポンチ絵の49頁ですが、産業保健推進センターの概念を示しております。写真のほうで すが、左上の助成金の支給はいちばん最後に説明いたします。その下の相談対応、研修が1つの柱。さ らに右のほう、図書・VTR等の貸出し、右下の情報提供、こういった情報提供関係がもう1つの柱とし てあります。  次の50頁ですが、「研修・相談事業の質及び利便性の向上による活発なセンター活動の展開」です。 真ん中やや右の成果の点線になっている箱ですが、(1)研修実績の向上です。実施回数が3,439回です。 中期目標に対して累計が1万5,255と、中期目標1万回を大幅に上回っているところです。1つ飛んで、 (2)研修改善の取組み例です。満足度ですが、92.1%と、中期目標80%を上回っているわけです。(3) 相談実績の向上です。産業医等に対する専門的相談ですが、相談件数が1万3,770件です。中期目標4 万8,000件に対し、累計件数6万5,030件です。満足度99%ですが、これも中期目標80%ということ で、いずれも中期目標を上回る状況にあります。  51頁の「提供する情報の質の提供」です。これは(1)の主要活用事例という箱のいちばん上のメンタ ルヘルス関係のことをご紹介したいと思います。箱に書いてありますが、「メンタルヘルス対策につ いて何をしたらよいか、企業担当者のマネージメント不足が最も多いことが明らかになった(福 井)」、福井の事例です。右の活用ですが、「精神科医と産業医や企業の保健スタッフと連携を図り、 平成21年4月、『福井産業保健推進ネットワーク研究会』を設立した」といった活用例になっている わけです。また、いちばん左下にホームページのアクセス件数が書いてありますが、中期計画112万件 以上に対して、累計件数が448万件というように大幅な増加を示しております。  52頁は、いまほど紹介した福井の事例が新聞にて紹介されたものです。  53頁ですが、産業保健推進センターにおいては、助成金を2つ扱っております。小規模事業場産業 保健活動支援促進助成金、さらに自発的健康診断受診支援助成金ということです。こちらの指標です が、手続きの迅速化ということです。下から2つ目の表です。各々の助成金ですが、平成16年度から 受付から支給までの日数が書いてあります。平成20年度においては、中期目標である45日以内に対し て、小規模事業場産業保健活動支援促進助成金は44日ということで、達成しているわけです。その下 のほうの中期目標25日以内ですが、平成20年度は26日となっております。これは原因がありまして、 予算が足らずに年度を跨いで支給になった結果によるものです。こうした要因がなければ、括弧内の 24日、中期目標は達成したということです。  それでは、評価のほうです。評価シートの62頁、評価項目11です。産業保健関係者に対する研修・ 相談ですが、研修・相談事業、どちらも目標値を大きく上回っております。また、満足度も90%を上 回る高い数値ということで、自己評価を「A」としております。  次に67頁、評価項目12です。産業保健に関する情報の提供ですが、ホームページのアクセス件数の 大幅な増加、あるいは産業保健関係者との連携による共同調査といったことを活発に行っております。 自己評価を「A」としております。  次に73頁、評価項目13です。産業保健助成金の支給ですが、これは支給業務日数が減ってきており ます。それで、中期計画を上回っておりますので、自己評価を「A」としております。なお、予算枠に ついては、平成19年度、平成20年度と2年連続で超過したことから、平成21年度は増額を図ってい るところです。グループ3は以上です。 ○井原部会長  以上でグループ3の説明が終わります。委員の皆様は、評価シートへの記入をお願いいたします。質 問がありましたらどうぞおっしゃっていただきたいと思います。よろしいでしょうか。 (各委員了承) ○井原部会長  それでは、次にグループ4に移りたいと思います。「未払賃金の立替払」から「人事、施設・整備に 関する計画」の項目について、評価を行います。所要時間は、法人からの説明20分、委員の評定と質 疑20分の合計40分となっております。それでは、法人からの説明をお願いいたします。 ○労働者健康福祉機構総務部長  またポンチ絵ですが、54頁の「未払賃金の立替払業務」です。まず、真ん中上の太字の箱です。2つ 箱がありますが、そのうちの上のほうです。次の55頁からもうかがえますように、請求件数が平成19 年度、平成20年度と大幅に増加しております。これは世界的な大不況ということですが、平成21年3 月には月間史上最高の申請件数となっているということです。真ん中やや上の太字の箱ですが、こう した中で、平成20年度の取組みとして、原則週1回払の堅持、審査業務の標準化といったものを進め たところです。平成20年度においては支払いまでの期間が29.1日と、中期目標である30日以内を達 成しているところです。  続きまして、56頁ですが、「リハビリテーション施設の運営業務」の関係です。こちらでは、社会 復帰率が指標となっております。いちばん上の箱、社会復帰率の向上、中期目標は25%以上というこ とですが、平成18年度26.0%、平成19年度30.4%、平成20年度32.6%ということで、中期目標を上 回っているところです。また下のほうの箱ですが、評価機関からのご指摘を受けてその見直しを進め て、平成20年3月をもって北海道、広島の作業所2カ所を廃止しております。こちらについては、整 理合理化計画のほうで、在所者の退所先の確保を図りつつ、縮小・廃止という記載がされているわけ ですが、今後の対応について検討を進めている次第です。  57頁の「納骨堂の運営業務」です。平成20年度は天皇・皇后両陛下に行幸啓いただいたわけです。 右のほうの満足度調査ですが、中期目標80%以上と書いております。総合評価が91.3%、慰霊式が 91.7%、納骨堂が89.8%と、いずれも90%程度の高い水準となっております。  続きまして、58頁の「労災病院における経営基盤の確立」です。財務の関係です。損益の状況を年 度ごとに左から並べております。いちばん左、平成15年度は当期損益191億円のマイナスだったわけ ですが、平成16年度から平成20年度の5年間の当期損益改善額として148億円あったわけです。平成 20年度は、当期損益43億円のマイナスとなったわけです。改善額4億円であり、当期損益43億円と なったわけですが、この損益の理由を簡単に示したものが右下の箱です。平成19年度以降に発生した サブプライムローンや世界的な金融・経済危機の影響による厚生年金基金資産の減少分に見合う費用 の増が36億円ありました。これを除いた医業活動に限って見れば、7億円の欠損まで改善するという ことです。太字ですが、収支相償に向けた医業活動上の努力は着実に成果を上げていると書いてあり ます。平成15年度比96.3%の改善率ということです。あくまで医業活動に限って見ればということで す。  詳しく見たものが次の59頁と60頁です。まず59頁ですが、「労災病院における経営基盤の確立 [2]」です。平成20年度は、中期目標期間の最終年度に当たることから、あらかじめ病院長との個別協 議を重ね、より効率的な医療の提供を呼びかけるとともに、機器整備等の投資的経費についても計画 的な抑制を図るなど、収支相償に向けた取組みを強化したところです。その結果、各病院の収支面に おいては、平成19年度に比べ、大幅な改善を見たところです。しかしながら、損益においては、平成 19年度以降に発生したサブプライムローン等の影響による厚生年金基金資産の運用利回りの悪化に伴 う年金資産の減少相当額を、会計基準に則りまして、退職給付費用として計上(合計170億円のうち平 成20年度計上分が24億円)したことに加えて、平成20年度においても、金融危機の影響により厚生 年金基金資産の運用利回りの悪化が加速したことから、さらに12億円を計上して、24+12の合計36 億円の退職給付費用を年金資産減少分に見合う費用として計上したものです。  このため、平成20年度の当期損益は、平成19年度の△47億円に比べて、△43億円と、4億円の改 善にとどまらざるを得なかったものですが、これら平成19年度以降に発生した年金資産の減少分に見 合う費用計上を除いた医業活動に限って見ると7億円の欠損まで改善しており、収支相償に向けた医業 活動上の努力は、着実に成果を上げつつあると、こういった文章にしております。  続きまして、60頁です。「労災病院における経営基盤の確立[3]」ですが、左のほうに平成19年度の 箱があって、次に平成20年度の箱があります。平成20年度の箱ですが、経常損益△41億円、その下 に経常収益があります。経常収益ですが、医療連携強化・上位施設基準の取得等、あるいは高度・専 門的医療の推進により収入の確保に努めてまいりました。他方、下に小さく書いてありますが、下の 診療報酬のマイナス改定のほか、上の平均在院日数の短縮など、医療の効率化がマイナス要因となり、 前年度比経常収益は14億円の減少となったわけです。  その下の経常費用です。給与費の削減等により、こういった部分を大きく改善したわけです。下に 退職給付費用の増と書いてありますが、厚生年金基金資産の減少による費用の増により、結果として 前年度比8億円の改善となったわけです。真ん中のいちばん下ですが、結果として当期損益は△43億 円となりましたが、厚生年金基金の資産の減少に見合う費用の増加を除けば、経常損益が△5億円、臨 時損益が△2億円ということで、計△7億円となるということです。これは着実に経営活動の成果が現 れ、収支相償に大きく前進したものと考えております。  「参考」となっておりますが、61頁はサブプライムローン、あるいは金融・経済危機の影響による 平成20年度の費用増36億円と、平成21年度以降も続く費用増について説明したものです。年金資産 の実績運用率が△19.9%ということで、大幅に悪化しております。いちばん下の(4)ですが、平成21年 度以降も49億円の影響が出るということを示しております。いずれにしても、最近、景気判断の上方 修正もあるわけです。今後の経済情勢の改善が強く望まれるということです。  続きまして、62頁の「人事に関する計画」です。1の人事に関する計画ですが、交付金事業に係る常 勤職員数です。平成19年度745名から25名削減して、平成20年度は720名としているところです。 2-1の職員の活性化や能力開発に向けた新たな人事施策の展開です。看護師、技師等について、[1]「労 災病院間派遣交流制度」による人事交流です。平成18年度から平成20年度まで数字を並べております が、30名、33名、34名と増加しているわけです。また、「労災病院間転任推進制度」による人事交流 ですが、これも同様に数字が増えてきているところです。  続きまして、63頁の2-2の優秀な人材の確保ですが、特にここでは[4]の仕事と家庭の両立支援とい うことに努めているわけです。先ほどからも委員からご指摘がありました院内保育所の整備・維持、 あるいは勤務体制の配慮、育児のための医師短時間勤務制度、育児休業・短時間、介護休業・短時間 等です。また、産前休業8週としているところです。  続きまして、64頁の営繕の関係です。平成17年度に保全情報システムを開発しており、工事の集約 化を図っております。また右のほうですが、省エネ対策です。例えば「環境配慮型プロポーザル方 式」の導入を行っております。以上です。  評価シートの76頁、評価項目14、未払賃金の立替払です。この未払賃金については、経済情勢が急 激に悪化して、高い水準の請求件数となっております。そうした中で、中期目標の平均30日以内を達 成しております。自己評価を「A」としているところです。  次に79頁、評価項目15です。リハビリテーションの作業所については、社会復帰率が目標である 30%を超えるとともに、前年度水準も上回ったことから、自己評価を「A」としております。  次に81頁、評価項目16、納骨堂の関係です。こちらは高い満足度を得ているということで、自己評 価を「A」としております。  次に85頁、評価項目17、財務の関係です。平成20年度は収支相償に向けた取組みを強化しました。 その結果、病院の収支面においては大幅な改善を見たところですが、他方でサブプライムローンの破 綻、あるいは金融危機等の影響により、平成19年度に比べて4億円の改善幅にとどまったところです。 しかしながら、医業活動に限れば、平成15年度の191億円から7億円の欠損まで改善しました。平成 15年度比で96.3%の改善となっております。ということで「B」評価としております。  次に87頁ですが、下から3つ目ぐらいのポツ、これは政・独委からの指摘があった点で、若干ご紹 介したいと思います。医業未収金については、平成20年度末の医業未収金409億のうち374億、約92 %ですが、これは保険者にかかるもので、請求後1、2カ月後には必ず支払われるものであるというこ とです。また、個人の未収金については、発生後1年以上のものについては民間の事業者にその回収を 委託しているところです。  90頁、評価項目18、短期借入金です。これはポンチ絵では説明しませんでしたが、適正な建物と資 産の譲渡手続を行っております。そうしたことから、自己評価を「B」としております。  次に94頁、評価項目19です。交付金人員の削減については、計画どおりに行ったことと、営繕関係 でも建物の機能の維持に努めております。自己評価を「A」としております。なお、追加事項で95頁の 真ん中の欄ですが、随意契約というものが書いてあるかと思います。これも数字が書いていないので、 恐縮でございます。口頭で説明いたしますが、随意契約の関係ですが、平成19年度は一般競争入札の 割合が54.5%でしたが、平成20年度においては73.6%まで、約20ポイント高まってきています。こ ういった状況にあるということです。また、こうした一般競争入札が増加する中で、1者応札は平成20 年度においては0.9%ポイントの増加にとどまっております。以上です。  それでは、監事室長から監査報告について説明いたします。 ○労働者健康福祉機構監事室長  当機構の監事室長でございます。ポンチ絵はありませんが、平成20年度の監事監査の状況について 説明をしたいと思います。独立行政法人通則法に基づきまして、平成20事業年度における財務諸表、 それから予算の区分に従って作成された決算報告書および機構本部と各施設の業務の状況について、 書面並びに現地での実施監査により監査を行いました。平成20年度の監査に当たりましては、理事会、 その他重要な会議に出席するほか、役職員等から事業報告を受け、重要文書を閲覧するとともに、労 災病院につきましては10カ所、労災看護専門学校につきましては1カ所、勤労者予防医療センターに つきましては5カ所、産業保健推進センターにつきましては8カ所、計24カ所の施設、それから機構 本部におきまして実地監査を実施いたしました。 監査対象施設におきましては必要な書類の提出を 受けるとともに、施設の視察、質問、証憑の閲覧、その他監査手続におきまして十分な協力を得て実 施しております。  監査の結果は、「監査報告書」として財務諸表に添付されておりますけれども、本日の資料3-3の 63頁ほどにございます。財務諸表につきましては会計基準に準拠して作成されまして、したがって貸 借対照表それから損益計算書等は正しく表示されております。決算報告書も予算の執行状況を正しく 表示しておりまして、業務は機構法並びに業務方法書等に基づきまして、適正に実施されていると認 められたところであります。特に平成20年度の監査に当たりましては、「整理合理化計画」を踏まえ、 その指摘事項も十分視野に入れまして、監査の調査の重点項目として監査を行っております。  具体的には「整理合理化計画」の指摘ポイント等を押さえた調書、点検表等を当監事室が作成をい たしまして、事前にその調査表を各施設に送付して、作成させた上で現地での実地調査を行っており ます。「整理合理化計画」における指摘の内容につきましては、従前から厳格な監査を行っていると ころではございますが、その趣旨を踏まえまして、昨年9月に機構理事長に対しまして、「整理合理化 計画に基づく監査について」という通知を、監査項目に加えることにいたしました。追加項目を具体 的に申し上げますと4点ほどございますが、随意契約見直し計画及び入札・契約の適正な実施状況等、 それから保有資産の見直し状況等、給与の水準に関しまして国民の理解が得られる説明等、それから 関連法人等との契約状況及び情報公開の状況、以上の4点でございます。  監査の結果につきましては、本日の資料3-5「監査報告書」の9、10頁ほどに記載がございますので、 後ほどご覧いただきたいと思います。まず、随意契約の見直し関係につきましては院長会議それから 事務局長会議、会計課長会議等、各種会議で各施設に対しまして具体的な指示がなされ、業務指導も 適切に適宜に行われておりまして、随意契約の件数、金額は先ほどの説明もありましたように、大幅 に低下しておりまして、評価をしております。  それから給与水準につきましては、平成20年度につきましてはラスパイレス指数におきまして、事 務・技能職員の水準は国家公務員の水準を下回っておりまして、適切なものと評価しております。ま た、医師・看護師につきましては若干上回ってはおりますけれども、全国的な医師不足、看護師不足 がある中で、医療の質の向上、安全の確保に十分配慮しながら、高度な専門技術を備えた優秀な人材 を確保する必要があり、また、地域での需給状況等を考慮すると、やむを得ない範囲であるというふ うに思われますけれども、今後とも給与体系の年功的な要素の見直しを含め、労使間で協議中という ことでありますので、今後とも適切な給与の水準の確保に向けて努力していただくとともに、引続き ホームページでの公表等につきましてお願いをしているところでございます。  それから情報公開の状況関係につきましては、機構のホームページ上には財務諸表等の必要な情報 は公表されております。保有資産の見直し関係につきましては、平成20年度は労災保険会館を譲渡す るなどをしておりますけれども、機構が保有する資産の有効な活用について検討を行っておりまして、 評価しております。簡単ではございますが、平成20年度の監査の報告は以上でございます。 ○井原部会長 これでグループ4の項目の説明、それから監査報告書の内容の説明が終わりました。委員の皆様、評 価シートへ評価のご記入をお願いいたしますと同時に、質問がありましたら、どうぞおっしゃってい ただきたい。 ○篠原部会長代理  まず、2点教えていただきたいのです。説明資料の61頁で、サブプライムローンが36億負担増にな ったと。財務諸表を見ますと、損益計算書を見ますと、たしか退職給付費用とかこれに入ってしまっ ていると思うのですが、何ゆえ臨時損失にしなかったか。というのは、私にとっては、おそらく皆さ んにとっても、このサブプライムローンの損失というのはこういう説明を受けなきゃわからないので すね。財務諸表ではわからない。だから、どういう検討をされて、臨時損失にしなかったか。いわゆ る経常費用のほうに入れてしまったか、その辺の検討結果を教えていただければ、まず1点目です。 ○労働者健康福祉機構経理部出納課長  当然その世界的な金融危機等の影響で発生しました損失でございますので、当機構としましても臨 時損失で計上したいと考えておりました。そこで、当機構の監査法人でございます、あずさ監査法人 のほうと協議を行いまして、その結果、退職給付費用につきましては給与費であると、給与の中の一 部であると。要は、退職給付費用ですから、給与費の中の一部であるので、これについては経常損益 の中での計上になるという回答をいただきましたので、当機構としましても、経常損益の中での計上 をしたということでございます。 ○篠原部会長代理  私は、大いに疑問なのですが、これ言ってもしょうがない。2点目、運営費交付金債務が過去使用し ないものが約12億で、おそらく今期も通常やれば3億ぐらい、15億ぐらいは使用残としてありますよ ね。私の理解では、これは国庫納付が原則だと思うのですが、国庫納付がたったの2千万ということは、 法律で返さなくていいという特別な何かあるのでしょうか。これ、ほかの独法にはそういうのがあっ て、積立金とか準備金みたいにしているのですが、ここの独法ではそういう特殊な特別な法律がある のですか。 ○労働者健康福祉機構経理部出納課長  機構は交付金で行っている本部等勘定という勘定、それと自前で行っています病院勘定がございま す。これにつきましては省令で区分された勘定でございまして、法律上は法定1勘定ということで整理 をしております。したがいまして、交付金を原資で行っています本部等勘定で、運営費交付金債務残 高を収益化した格好で16億という利益が出ておりますけれども、病院勘定で333億円という欠損が出 ておりますので、合計しますと法人全体では欠損ということになります。現在内部留保にしておりま す、これにつきましては、21年度以降国のほうへの返還等も含め、検討しているところでございます。 ○篠原部会長代理  その処理も、ものすごく単純に考えれば、16億を補助金として病院事業に入れたという形になりま すよね。私は、ここがもともと変だと思っているのは、病院事業とそれ以外の事業というのは法律で 分けるべきなのだと思っているのですが。一緒のために、これ、一生懸命に見てもよくわからないの ですよ、正直言ってよくわかりません。いま言ったような部分で分けてあれば、明らかに見れば補助 金として病院事業に16億入れたというように理解できるし、おそらく一般の人もそう理解するのでは ないかと思います。 ○労働者健康福祉機構経理部出納課長  省令に基づき、明らかにその交付金の残額と病院勘定の部分の資金と区分して経理をしております ので、それについては病院勘定のほうに交付金残高が流れたということはございません。 ○篠原部会長代理  これも議論してもしょうがないものかな。次に、理事長に質問したいのですが、昨年度、制度改訂 としての予算管理を質問させていただいたのですが、たしか去年ですか、政・独委のほうから、全体 の予算管理としては内部管理というか、経営管理としてもその予算制度を確立しないとうまくいかな いだろうということで、内部管理としての予算制度をどの程度進捗したか、あるいは考え方を簡単に 教えていただければ。 ○労働者健康福祉機構理事長  昨年度、先生からご指摘受けた点でございますけれども、交付金等について収益化する際の考え方 でございまして、いままで費用進行基準で淡々とやってきたのではないかというご指摘を受けており ました。実は、私ども予算管理につきましては、圧倒的に金額の多い病院事業につきましては、年度 が始まる前に運営計画を、いわば膝詰めで作って。その進捗状況を、先ほどご説明しましたように、 常にフォローし、病院でもバランス・スコアカードとそれをPDCAで回すサイクルの中で常に見直して、 場合によっては予算執行をとめるとか。特に機器投資とか何とかは、こんな成績ではこれは駄目だよ というようなことが出てくるわけですね。そういう土壌というのはかなり育ってきているわけです。  交付金の部分で、病院事業は交付金ございませんのであれでございますが、交付金のほうについて 先生からご指摘を受けたような費用進行基準でやっている点につきましても、私ども、そういう交付 金の分野についてもバランス・スコアカード、PDCAのサイクルは回しています。先生がおっしゃるよ うな形へ、期間進行基準なり業務達成基準へ移行していく土壌は次第に出来上がってきているのでは ないかということで、よく点検させていただきました。そういうことで、20年度は、全体については まだ行っておりませんけれども、大きいほうで看護学校の交付金、それから予防医療センターの交付 金、これらについてはまず期間進行基準のほうに移行しようということで実施いたしました。ほかの 交付金関係につきましても引き続き、そういう先生がおっしゃられたような視点で、どこまでこれが 出来るか、常に検討をしながら対応していきたいというふうに思っています。 ○篠原部会長代理  たしか、この労働部会は5法人あるのですが、昨年度の8月18日ですか、費用進行基準以外を採用 してくださいとお願いしたのですが、労働者健康福祉機構しか20年度は採用してくれなかったのです ね。ですから、逆に言えば、ありがたいというか、進んでいただいたということで感謝申し上げます。 全体の制度としてはいま100ぐらいあるのですけれど、20法人しかいないということは、ある意味で いろいろな問題点があると、私は思っているのですよ。それの改善をすればいいと思うのですが、な かなかやってくれない。というのは、いろいろな問題があることは私も十分承知の上で、費用進行基 準以外を採用してくれということをお願いしているんですよね。それは、そちらでも十分検討して、 入れられたもんじゃないなという感じの感想がありながらも、この評価委員会であまり文句言うから 入れているかなと。ただ、やはり外部に対して、先ほど内部管理で質問させていただいたのは、費用 進行基準だと制度的には予算管理してないよということを言われても、弁解できないと思うのですね。 きちっと予算を管理しています、それも民間のような管理をしていますと、従来の財務予算制度での 管理ではないよということを言えるために、是非という感じがあるので、よろしくお願いします。 ○中村委員  いまと同じ所なのですが、サブプライムローンで36億円というのが、20年度出ましたですよね。そ れに対して、もう1つが年金の運用収益率が見込めないということで、パーセンテージを下げたことに よって12億、合わせて24億と12億で36億です。今後7年間、償却24億が継続するわけですね。そ れから、もう1つ、ちょっとここ教えてほしいのですが、運営費の年金の運営率を1.5%下げて、2.5 %にしたことによって、要するに20年度は12億出てしまったわけですね、その補完しなきゃいけない お金が。ところが、その下に、また同じように、年金の資金の実質運用率が19.9と悪化したために、 いわゆる予測と実測値の間に177億の乖離が生じて、これがまた7年間毎年、要するに当たり前の費用 として入ってきてしまっていると言うのですが、この12億円と、この25億円、177億円割ることの7 の、25億円の関係は、どういう関係なのでしょうか。要するに、前の話、その上のほうでいきますと、 24億円と12億円ですから、毎年36億円のマイナスでいいのかなと思ったのですが、下には49億円と なっていますね。この関係を説明していただけますか。 ○労働者健康福祉機構経理部出納課長  24億円につきましては、この61頁の文言にも書いてございますとおり、退職給付計算をやる際に予 測値というのをお出しします。その予測値と実際値の間に乖離が177億円出たと。これは数理計算上の 差異というものでございますけれども、これについてはある一定の期間、平均残存勤務年数のある一 定の期間をもって償却するということになっています。一括償却もございますけれども、当機構にお きましては平均残存勤務期間が7年間でございますので、7年間で徐して、毎年費用を計上するという ものでございます。  また、この12億円につきましては期待運用収益率ということで、当初、昨年度4%の率を見込んで 運用収益を出したのでございますが、昨今の世界経済の危機で4%の将来的なその運用益が見込めない だろうということで、1.5下げて、2.5にして約12億円の費用と。12億円の費用というのは、それは 当該年度の損益にヒットするものでございまして、したがって24億円が7年間にわたって発生すると。  それから次の19.9%の運用益の悪化に伴う25億円の影響でございますが、これも未認識数理計算上 の差異というものでございまして。これについても、平成20年度に177億円乖離が出ましたので、こ れについては21年度以降25億円の償却をやっていくと。したがって19年度に発生した170億円、そ れから20年度に発生した177億円、この償却が合わさって、21年度は49億円の償却費用が発生する というものでございます。 ○中村委員  今後6年間それが続くわけですよね、49億円というのが。 ○労働者健康福祉機構経理部出納課長  はい。 ○中村委員  そうすると、ここに1枚足りないのは、この49億円というのが具体的に見えているところで、では どういう改善策をするかと。要するに、コスト削減とか、そんな光熱水費だけではどうしょうもない 所ですよね。その自助努力というところが、このペーパーどこを読んでもあまり出てきてないのです が、新たな事業というのは考えていらっしゃいますか。 ○労働者健康福祉機構理事長  これは私どもを含めて27団体が加入している厚生年金基金の資産目減り分でございまして、これは どの企業も厚生年金基金を抱えている所は出てくるわけですね。これを病院の事業コストを削減する ことで、これを回復していくということは、私ども出来ないと思っています。というのは、やはりこ れは今後の景気回復の中で、本来は厚生年金基金というのはある程度運用益を生んで、将来の我々の 年金をちゃんと確保していくもので、こういうふうに目減りすることが異常で。本当は今後の景気、 経済回復の中で、ある程度この本来49億円計上していかなくてはいかんところが、ある程度回復して くることを期待しているわけです。これを医療。 ○中村委員  話の途中で申し訳ないのですが、経営というのはそんなに甘くないと思うのですね。要するに、回 復するだろうというその期待値で経営をしちゃうということは、大変リスクが大きいと思うのですね。 だから、もしこのまま続いたとしたら、もしくはこれ以上にまたパーセンテージが下がっていったら どうしょうかということで、先手、先手でその新たな事業を作り上げていくということをしないと、 非常にこう聞いているとね、ああ、大丈夫かなっていう感じになるんですけれど。 ○労働者健康福祉機構理事長  我々に出来るのは、我々にこういう事態に追い込まれますと、独立行政法人は法律で業務範囲が決 まっていますから、病院事業以外の収益というのはありませんので、むしろ。 ○中村委員  新たな事業はできないのですか。 ○労働者健康福祉機構理事長  できません。 ○中村委員  納骨堂、何かこういう事業したり、それから先ほどメンタルヘルスのあれがものすごく良い形で出 てましたよね。だから、あれをさらに事業化していくとかということは、できないのですか。 ○労働者健康福祉機構理事長  これは、要するにこの病院事業として受けとめていくことは出来るのですが、出来ないので、結局 は病院を廃止して、費用を減らすかという話しかないわけですね。 ○中村委員  それは限界がありますね。 ○労働者健康福祉機構理事長  だから、それをやるのかという話になってくるわけですね。 ○篠原部会長代理  さっきの関連で、追加で質問したいのですが、いまのサブプライムローンを上に入れたということ は、経営責任ということですよ、それを宣言したということですよ。やはり自分たち以外の部分があ ったと思うのです。その部分だったら、私は臨時費用に持ってくる。だから、あそこに入れたという ことは、先ほどの言ったものは当然負わなくちゃいけない。あれは経営の失敗だと宣言したことと、 私は同じだと思いますよ。だから臨時費用にすべきだと言ったのです。やはり自分たちの明らかに環 境で負ってしまったのだから、その部分って、私たちもあるねと。民間ならそれも負わなくちゃいけ ないけど、公で病院事業をやっているのだったら、その部分はやはりちょっと外したほうがいいので はという気が、私はあるのです。 ○労働者健康福祉機構理事長  先生のおっしゃる趣旨はよくわかりますし、我々1つの事業体として職員を抱えている。その職員の 将来の年金の資産がこういう形になっていくということは、これは非常に不安でもあるし、組織を預 かる者としてはものすごく責任も感ずることは事実なのですね。ただ、我々の独立行政法人が企業会 計原則に則ってこういう形を作られてしまいますと、では、これを病院の医療事業で返せるかという と、医師や病院のスタッフがいくら頑張ったって、その診療報酬という他力で決まる収入しかないわ けですから。こういう診療報酬が将来の年金資産を確保する分の余力も含めて、診療報酬体系や何か が出来上がってくれば、もちろんあるべき病院従事者の将来の年金というのは確保できるわけですけ れども、そういう仕組みには診療報酬はなっていないわけです。 ○篠原部会長代理  損益計算書は、原則経営努力の結果が出るので、いま言ったいろいろな要因がありますけれど、基 本的に経営努力がわかるように書いてください。ということは、さっき言った退職給付のある部分は、 経営の努力を超えているのだから、私の理解ですが、独法会計基準の、臨時費用に持っていくべきだ と私は思っています。だから、私は今回それは指摘しようかと思っている。やはり変ですから。一般 の人が変だと思うでしょう。いわゆる会計基準があるからいいよという話じゃなくて、基本的に私が 理解している分だと、損益計算書はなるべく経営努力がわかるようにしようと。そうすると、それは 経営の失敗と見るか、その辺はあるけれども、やはり私たちが見て、ある部分は経営努力以外の部分 ですねと。それはやはり明示したほうが、よりわかりやすいと、私は思っているのですけれど。 ○労働者健康福祉機構理事長  わかりました。その辺は先生ご指摘の問題点については、我々は監査法人とも、そういうご意見が あったことを含めて、よく処理の仕方については対応いたします。ただ、是非ご配慮いただきたいと いいますか、病院事業の医師をはじめ、スタッフの活発な活動がなされているかどうか、そういう意 味の評価の基準として、このサブプライムローンから始まる金融危機によって、これは我々だけでは ない、全体の国の厚生年金自体も相当な資産目減りをしている中で、これを病院事業の活発さの評価 基準に入れることについては、やはりそこはそういう形で評価すると、医師もたまったものではない ということになるだろうと。そこは是非ご配慮いただきたいということを、ご理解いただきたい。そ れは組織を預かる者としては将来に対して大変責任も感じますし、不安も感じている。何とかしなく てはいかんという、他力本願だけでは本当は済まない課題であることは、よく承知をいたしておりま す。監査法人とはまたよく相談いたします。 ○松田委員  最後の質問ですが、随意契約ですね、50%から18%のように大幅に減りましたけれども、これは金 額にすると、まずは200数十億円あるのですよね。それで件数にすると600件ぐらいあると。大体207 億の随意契約を、30台、つまり30億円台にできるかできないか。つまり18%でしょう、18%のこの件 数を少なくとも5%台にできるかできないか。お答えください。 ○労働者健康福祉機構理事長  圧倒的に、この随意契約の本数が多いのは病院事業の特徴でもあるわけですけれども、病院事業と していままでかなり国の方針に従って、18%というところまで随意契約を下げてきております。これ から先、さらにどう下げるかというのは個々の契約の種類ごとの積み上げだろうと思うのです。一本 一本、随意契約になじむかどうか、かなり審査をしながら積み上げて、この18%をさらに引き下げ努 力をすると。例えば、病院の場合、いろんな特殊事情があります。随意契約の見直しを増やしていく ということで院長会議を開いて呼びかけますと、院長からものすごい反発が出ます。というのは、何 が反発で出るかといいますと、例えば呼吸器、人工呼吸器をまた発注する、頼む。これを競争入札に する。そして操作方法が違う呼吸器がいろいろ入る。これは、医療事故のもとになるわけですね。す ると、ある程度どこかで医療機器というものが操作方法を統一したいというのは、医療側からすると 当然の思いです。これは随契できるかどうかという話も、当然出てくるわけですね。そういう類の契 約が、おそらく18%を割って、さらに下回っていくときにはかなりあるのだろうと思っています。そ この一つひとつを吟味して、医療安全等々を考えながら、あるいは患者への満足度や何かも考えなが ら、我々18%をどこまで下げられるか。さらにチャレンジはしていきますが、この18%まででも、正 直相当工夫を重ねて、随意契約を減らしてきているということについてはご理解いただきたいと思っ ています。 ○松田委員  ですからね、どこまで努力できるかということなのですよ。そういう理屈をつけたら何もできない んですよね、それ。 ○労働者健康福祉機構経理部長  いま先生のご指摘のとおり、随意契約、これを削減しようということで、いま努力しております。 ただいまの目標としましては、平成21年度を目処にしまして11.1%までをまず目標にしようというこ とで、努力しております。理事長が申し上げましたように、随意契約の中に医療機器の保守が特定の 業者に限られるとか、そういったものがございまして、なかなか難しい点もございますが、それ以外 で随意契約から一般競争入札に変えられるものも多々あるのではないかということで、当面というか、 平成21年度を目処にしてまず11%まで改善しようというような取組みを、いましているところでござ います。 ○堺委員  質問ではなくて、意見です。2つあります。まず、先ほど来お話が出ています、この病院勘定の損益 計算書を拝見しますと、やはり補助金収益、これはしょうがないことなのですが、既に独法化してい る公立病院とか、あるいは大学病院と比べると、随分少ないなというのが一目でわかります。これは 制度上仕方がないことでありますが、そういうことです。それから、この退職金の話も先ほど来出て おりますけれど、私は知らないのですが、独法に移るときにそれまで勤務していらした方の退職金積 立は、積み立てて貰えたのかどうか。もし、積み立てて貰えていないとすると、それは過去の分をか ぶっていることになるのですが、そこは私存じませんけれども、もしかぶっているとすれば、負担に なっていると思います。  そういうようなことを考えますと、今日の午後の、前の機構のときに話が出ましたけれども、年度 の業務実績の評価ではありますけれども、中期目標、中期計画で論じるべきことというのも随分ある のではないかなという感じがいたします。それが1点です。  それから随意契約のお話がよく出るのですけれども、これはこういう公的な病院では、逆に許され ないことだというふうに、私は理解しているのですが。もしも純粋に民間であれば、むしろ随意契約 のほうが安くできます。建物にしても、それから高額な医療機器の購入にしても直接交渉をして、場 合によっては外国の本社と直接交渉をして、随意契約するというのを民間ではできますが、こういう 準公的な病院では、それは制度上できないことなので、まあ仕方がないかなと。仕方がないで終わっ ては、本当は経営上いけないのですけれども。随意契約はすべて高くて、競争入札がすべて安いかと いうと、そうではないということを申し上げたいと思います。以上です。 ○篠原部会長代理  いま堺委員の言ったことで、私も感じるのは、いまの財務諸表というのはその経営努力が損益計算 書にきちっと出るようになってない。私たちも、ここではあまり議論をされたことがないのですよ。 本当はこうなっているからと言って、報告しなくてはいけない義務があると思っているのですが、出 来ないのは、やはり先ほどのサブプライムローンのような突発的なものも入っている。ほかの財務諸 表もみなそうなのですね。ですから、出来る方向に持っていってください。いや、ここに出るように。  これは、先週もある学会で、使いものにならんと私は言ったのですが、やはり評価という観点から 使いものになりません。だって、突発的なもの入ってしまったらね。だって経営陣だって嫌でしょう、 というか、やはり1年間努力してやった部分が明確になって、それで、自分たちの限界を超えた部分が こうですよって、我々に示せれば、これは細かい説明を受けているから、経営努力も一生懸命やって いますねと。だけど、ホームページ等に載ったら、わからないと思いますので、我々もそういう意思 だし、経営陣もそういうように、わかるように努力していただければなと。 ○井原部会長  それではよろしゅうございますか。                 (各委員了承) ○井原部会長 今日の議事は以上となりますけれども、この評価シートの記入及び次回の開催等につ いて、事務局から説明をお願いいたします。 ○政策評価室長補佐  長時間にわたって、ありがとうございました。評価シートの記入につきましては、本日2法人の審議 をしていただきましたが、まだ記入が終わっていない方はいらっしゃいましたら、この後、会場にお 残りになって書いていただいても結構ですし、またお持ち帰りいただいて、郵送やメール等で、メー ル、ファックス等で提出していただいても結構です。お持ち帰りになる場合には、一声事務局のほう にかけていただければと思います。  次回の開催ですが、8月7日(金)午後1時から、場所は省内の専用第21会議室となっております。 次の議題は、雇用・能力開発機構の個別評価、それから高齢・障害者雇用支援機構の個別評価、その 他となってございます。8月24日までの開催の案内を、前半でもお知らせいたしましたが、ご出欠の 案内、紙を入れてございますので、もしこの場でスケジュールがおわかりになる方は提出して、お帰 りいただければと思います。持ち帰って、スケジュールがいまわからないという方は、それぞれ開催 案内に連絡いただきたい期限を入れておりますので、その日までにご連絡いただければと思います。 ありがとうございました。 ○井原部会長  本日は以上とさせていただきます。長時間にわたり、熱心なご審議、誠にありがとうございます。                                           (了)      照会先:政策統括官付政策評価官室 独立行政法人評価係     連絡先:03−5253−1111(内線7790)