09/07/10 第1回へき地保健医療対策検討会【議事録】 日時 平成21年7月10日(金) 13:00〜 場所 全国都市会館2階ホールA ○救急・周産期医療等対策室長(中山):定刻となりましたので、ただいまから第1 回「へき地保健医療対策検討会」を開催いたします。委員の皆様方には、本日大 変お忙しい中、遠方よりご出席を賜りまして誠にありがとうございます。開催に あたりまして、厚生労働省、外口医政局長よりご挨拶申し上げます。 ○医政局長(外口):医政局長の外口です。本日は大変お忙しいところ、へき地保健 医療対策検討会にご参加いただきまして誠にありがとうございます。第1回の検 討会の開催にあたり、ご挨拶申し上げます。    我が国のへき地保健医療対策は、昭和31年度から「へき地保健医療計画」を 継続的に策定し、現在で第10次のへき地保健医療計画を推進しているところで す。これまでの間、各都道府県においてへき地医療支援機構の機能強化による医 師確保、へき地医療拠点病院を中心とした巡回医療の実施、遠隔医療等による医 療情報システムの強化、広域的な診療体制の構築等に取り組んできたところです。    現在進行中である、第10次のへき地保健医療計画は平成22年度末までの計画 です。当期計画の最終年度を迎えることとなります。このため、これまでのへき 地保健医療対策の成果や問題点等を総括して、第11次の計画の策定について検 討することとしています。つきましては、是非とも皆様方のお知恵をお借りいた しまして、へき地に生活する住民の方々に対して、より適切な医療の確保が図ら れるような方策に取り組んでいきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお 願い申し上げます。    この検討会、今年度末を目途に一定の結論をとりまとめていただきたいと考え ています。短い期間ではありますが、委員の皆様には何とぞよろしくお願い申し 上げます。ありがとうございました。 ○救急・周産期医療等対策室長:続きまして、委員の皆様を五十音順に紹介いたしま す。第1回ということですので、お名前を紹介した後に、時間の関係もあります が、簡単に一言ご挨拶いただければ幸いでございます。社団法人日本医師会常任 理事の内田健夫委員です。 ○内田委員:内田です。よろしくお願いします。地域医療、公衆衛生等を担当してい ます。この会も初めてですが、医師会の立場として発言させていただければと思 います。よろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:三重県健康福祉部へき地医療総括特命監の奥野正孝 委員です。 ○奥野委員:奥野です。よろしくお願いします。この3月まで、通算17年間勤めた 離島の小さな診療所を辞めまして、4月から県庁、へき地の病院での診療、へき 地の病院での学生研修医の教育と、3つの役割を仰せつかっています。県庁での 役所勤めで、いままでの診療所では病院に紹介していた立場なのですが、今度は 紹介を受けて、初めての電子カルテ等々、混乱する毎日ですが、何とか踏ん張っ てやっていきます。どうぞよろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:自治医科大学教授、地域医療学センター長の梶井英 治委員です。 ○梶井委員:初めまして。梶井と申します。全国のいろいろな地域の方々と交流させ ていただいている日々でございます。皆様のご意見が反映されるような方向に、 私自身も意見を言わせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:木村先生が遅れていますので、高知県へき地医療支 援機構の澤田努委員です。 ○澤田委員:こんにちは。私は、高知県のへき地医療支援機構の専任担当官を勤めて いる澤田と申します。支援機構は県庁の健康福祉部医師確保推進課にあります。 もう1つ併任として、高知医療センターという600床規模のへき地医療拠点病院 の医師としての身分も併任しています。よろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:愛知県半田保健所長の澁谷いづみ委員です。 ○澁谷委員:澁谷です。よろしくお願いします。全国保健所長会の会長をしています。 ○救急・周産期医療等対策室長:北海道保健福祉部地域医師確保推進室看護政策グル ープ主査の神野雅子委員です。 ○神野委員:神野です。私は北海道のオホーツクで約20年ほど、保健所の保健師と して保健活動をした後、3年前から現在の看護政策グループに所属し、看護職員 確保対策を担当しています。どうぞよろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:自治医科大学教授の鈴川正之委員です。 ○鈴川委員:鈴川です。よろしくお願いします。私の専門は救急ですが、厚生労働科 学研究の、持続可能なへき地医療のあり方に関する研究班の主任研究員をやって いる関係で、この検討会でお話をさせていただければと思います。よろしくお願 いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:全国離島振興協議会からは、会長の高野宏一郎委員 が本日ご欠席で、代理として渡邊東専務理事がご出席されています。 ○渡邊委員代理:全国離島振興協議会の事務局長をしている渡邊です。佐渡の市長は 公務の都合で出席できませんので、代理で出席させていただきました。    離島というのはまさにへき地医療の最先端を行っていまして、島を持っている 市町村の首長は医師や看護婦の確保に日々悩んでいるわけです。島の住民も高齢 化していて、通院も大きな課題になっています。ここで様々な問題をご披露しな がら、よりいっそう充実されたへき地医療対策が検討されることを期待していま す。どうぞよろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:続きまして、青森県西北五地域医療研究会代表の対 馬逸子委員です。 ○対馬委員:青森県五所川原市からやって来た対馬です。どうぞよろしくお願いしま す。西北五地域というのは、主に青森県津軽半島の先端から秋田県能代までの地 域をいいます。中心地からは3時間もかかるような所までの地域なので、何とか いい方向に進めるようにしたいと思います。まったくの住民だけの研究会なので、 皆さんにとってはちぐはぐなことを言うかもしれませんが、どうぞよろしくお願 いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:長野県訪問看護ステーションしらかばの土屋いち子 委員です。 ○土屋委員:土屋です。長野県の看護協会に所属していて、訪問看護ステーションを 12年間、13年目に入りましたが田舎でやっています。いろいろ問題は抱えてい ます。ここの委員会も初めてでよくわかっていないのですが、参加していきたい と思います。よろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:社団法人日本歯科医師会理事の角町正勝委員です。 ○角町委員:日本歯科医師会の角町です。この度、初めてこの会に参加します。今日 ご一緒している長崎大学の前田先生らと一緒に、20年ほど現場の地域保健活動 をやってまいりました。その中で、かつて歯科の立場では歯の問題しか語ってい なかったので、理解しにくい状況が現場に多くありましたが、最近は口の問題を 生活の障害の問題と関連づけながら、しっかりと現場の方々の支援をしなければ いけないと、一貫して言い続けました。本席では、口の障害もへき地の方々にと っては、生活の質に関わる大変な問題であることを認識しながら、現場の先生方 にご理解いただけるように、歯科の立場で発信したいと思います。よろしくお願 いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:京都府立与謝の海病院長の内藤和世委員です。 ○内藤委員:全国自治体病院協議会常任理事の内藤です。私、自治体病院の代表とし て意見を述べさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:福井県おおい町国保名田庄診療所長の中村伸一委員 です。 ○中村委員:中村です。田舎の福井県のさらに片田舎のへき地の診療所で17年目を 迎えます。私がここに来ているということは、福井県のへき地医療支援機構から 代診が来ていることになります。私がこの会に出席できるかどうかが、福井県の へき地医療支援がちゃんとできているかどうかのバロメータになります。ちょっ と無理してでも皆勤賞を狙っています。よろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:岩手県藤沢町長の畠山博委員です。 ○畠山委員:岩手県の藤沢町長の畠山です。よろしくお願いします。岩手県の最南端 にあたるのですが、まさに典型的な東北の農山村です。人口わずか9,500人の町 です。東北で共通していますが、高齢化率が33.67%で、高齢化が大変進行して いる町です。そういう中で、特にお年寄りの安全・安心のためには、保健、医療、 福祉、これが町の大変重要な課題です。3つの包括ケアということで、医療、福 祉の関係者の皆さんとスクラムを組んで、この課題に一生懸命取り組んでいると ころです。よろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:長崎大学教授の前田隆浩委員です。 ○前田委員:こんにちは。前田です。平成16年5月1日に長崎大学に設置された寄 付講座、離島・へき地医療学講座を担当しています。その拠点として、離島の五 島列島の福江島という所に研究所を置いています。私はそこに常駐して、いま離 島に住んでいます。五島からやってまいりました。よろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:読売新聞東京本社編集委員の前野一雄委員です。 ○前野委員:読売新聞の前野です。読売新聞は17年前から医療ルネッサンスという 連載をやっていて、私は昨年まで医療ルネッサンスを担当していました。医療ル ネッサンスは主に医療現場のリポートなのですが、それだけ、そこの部分での、 医療従事者の頑張りだけではどうしようもならない所まで医療が来ているとい う認識に立ちまして、昨年10月に読売新聞が社を上げて医療改革提言をまとめ ました。それを踏まえて意見を言わせていただければと思うので、よろしくお願 いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:鹿児島県霧島市立医師会医療センターの三阪高春委 員です。 ○三阪委員:鹿児島からやって来た三阪と申します。私、第9次へき地保健医療計画 の際に、鹿児島県のへき地医療支援機構の立上げに関与して、非常に多くの問題 点に直面して、いろいろな経験をしました。現在は地域の中核病院で支援する側 なのですが、皆様ご存じのように、地方の中核病院は非常に疲弊した状況になっ ています。私はその現場から、問題点なり何か情報発信できればと思います。よ ろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:東員病院長・三重大学客員教授の村瀬澄夫委員です。 ○村瀬委員:村瀬です。私は昨年まで信州大学にいて、大学病院の医療情報部長・教 授として、遠隔医療を中心に取り組んできました。遠隔医療学会を立ち上げて、 地方における医療の情報化に取り組んできましたが、なかなか思うように進まな いというもどかしさがあったり、現場での医師の不足とか疲弊をいろいろ肌身で 感じることがあり、いま現在は三重県員弁郡東員町というへき地で、認知症を中 心とした医療の情報化に取り組んでいます。この会で、いろいろな形で勉強させ ていただけたらと思いますので、よろしくお願いします。 ○救急・周産期医療等対策室長:島根県健康福祉部医療企画監の木村清志先生、いま 遅れていらっしゃいます。また、社団法人地域医療振興協会理事長の吉新通康委 員は本日ご欠席の連絡をいただいています。また、オブザーバーとして、総務省 自治財政局地域企業経営企画室、同じく、総務省情報流通行政局地域通信振興課 及び文部科学省高等教育局医学教育課より、それぞれ担当官にご出席していただ いています。    続きまして、事務局職員をご紹介いたします。医政局担当大臣官房審議官の榮 畑です。医政局指導課長の三浦です。医政局指導課医師確保等地域医療対策室長 の武田です。そして、私が医政局指導課救急・周産期医療等対策室長の中山です。 どうぞよろしくお願いします。    次に、当検討会の座長についてお諮りいたします。座長には自治医科大学にお いて地域医療学センター長を勤められ、地域医療に関する研究や教育にあたって おられる梶井委員にお願いしたいと考えますが、いかがでしょうか。                  (異議なし) ○救急・周産期医療等対策室長:ありがとうございます。それでは、梶井委員に座長 をお願いいたします。座長席へお移りください。以降の進行は梶井座長にお願い いたします。 ○梶井座長:梶井です。ただいま本検討会の座長を仰せつかりました。円滑な運営に 努めてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。    あらかじめお断り申し上げておきますが、この検討会は公開になっています。 ですから、議事録については厚生労働省のホームページで公表することになって いますので、その点についてあらかじめご了解願います。それから、意見交換に ついては、ご発言のある方はあらかじめ挙手をお願いしたいと思います。指名さ せていただきますので、その後にご発言願えればと思います。    最初に、事務局から資料の確認をお願いしたいと思います。よろしくお願いし ます。 ○医療確保対策専門官(馬場):医療確保対策専門官の馬場です。どうぞよろしくお 願い申し上げます。    それでは、資料の確認をいたします。お手元に配付した資料ですが、まず資料 1からご確認をお願いいたします。    資料1「第11次へき地保健医療対策検討会について」です。資料2「へき地保 健医療対策の現状について」です。資料3「平成21年度予算におけるへき地保 健医療対策の概要」です。資料4「へき地保健医療対策検討会(第10次)報告 書《概要》について」です。資料5「第10次へき地保健医療計画等の策定につ いて」です。資料6「第10次へき地保健医療計画に対する、都道府県の取組状 況について」です。この後ろに資料6の関連資料となる別紙1から9までありま す。資料7「先進的取組を行っている都道府県の取組状況」で、高知県から島根 県まであります。資料8「厚生労働科学研究により実施したへき地医療に関する 研究事業」です。    最後に、参考資料として「第10次へき地保健医療対策検討会報告書」があり ます。    少々早く説明を申し上げましたが、皆様の資料の中に何か不足などはありませ んか。ないようでしたら、これで終わりとします。 ○梶井座長:ありがとうございました。最初に、本日の議事の流れについて、事務局 よりご説明をお願いいたします。 ○医療確保対策専門官:第1回へき地保健医療対策検討会、議事次第の最初の頁をご 覧ください。本日の議事については大きく4つに分けています。まず最初に、事 務局より検討会の趣旨説明をいたします。    次に、へき地保健医療対策の現状について、事務局より説明いたします。これ は、今後へき地保健医療対策について議論をいただくにあたり、これまでの経緯 や現状等について認識を共有していただくために行うものです。最初ですので丁 寧にご説明したいと存じますが、時間の都合もありますので、ある程度ポイント を絞った形になろうかと思います。    次に、現在進行中の第10次へき地保健医療計画を踏まえた取組状況について です。詳細は改めてご説明いたしますが、へき地保健医療対策については、平成 18年度から22年度まで、第10次へき地保健医療計画に基づいた事業が各都道 府県に実施されています。これに対する国としての評価、さらに、先進的な取組 みを行っている高知県、三重県、長崎県、島根県の4県の取組みについて、今日 ご出席していただいている委員からのプレゼンテーションをいただきます。    最後に、へき地に関する厚生労働関係研究班報告について、鈴川委員よりご報 告をいただきます。    これらの評価や報告により、へき地医療の課題が明らかになってくるかと思い ます。その後、この検討会で検討し、議論していくべきことについて意見交換を 行っていただき、今後の議論の方向性やゴールのイメージ、第2回会合以降に検 討していただくべきこと、調査を行うべきこと等について、委員のご意見を集約 していただけたらと考えています。以上です。 ○梶井座長:ありがとうございました。まず、議題1の「検討会の趣旨説明」と、議 題2の「へき地保健医療対策の現状について」をあわせて事務局からご説明をお 願いします。 ○医療確保対策専門官:まず資料1からご説明します。「第11次へき地保健医療対策 検討会について」です。へき地保健医療対策は、へき地における医療供給体制の 整備が他の地域に比較して遅れている実情があって、へき地の住民が適切な医療 を受けるための施策を推進し、へき地における医療水準の向上を図ることを目的 としています。現在進行中である第10次へき地保健医療計画は来年度末までの 計画で、平成23年度より始まる第11次の計画を各都道府県において策定します が、それに向けて、今後のへき地保健医療対策のあり方を検討することを目的と して、この度開催となりました。検討スケジュールですが、本日を皮切りに4、 5回の検討会の開催を予定していて、本年度中に報告書の取りまとめを予定とし ています。    次に、資料2「へき地保健医療対策の現状について」です。上のほうに※で「へ き地」とはと、定義があります。最初なので、もう一度こちらを説明します。「へ き地」とは、交通条件及び自然的、経済的、社会的条件に恵まれない山間地、離 島その他の地域のうち医療の確保が困難であって、「無医地区」及び「無医地区 に準じる地区」の要件に該当するものをいいます。    その下に表がありますが、無医地区数、人口、共に減少を見ております。「無 医地区」の定義ですが、こちらも医療機関のない地域で、当該地域の中心的な場 所を起点として、概ね半径4kmの区域内に人口50人以上が居住している地域で あって、医療機関まで通常の交通機関を利用して片道1時間超を要する地域とな っています。    2.「へき地の保健医療対策の推移」です。医政局長からお話がありましたとお り、「へき地保健医療計画」に基づき、昭和31年度から5年ごとに年次計画を立 てて、それぞれ地域の実情に応じる対策を行っています。4頁の第10次計画が、 平成22年度までということです。    次、3.「現在の取り組み」です。(1)は、へき地医療支援機構の概要ですが、都 道府県単位で設置し、へき地診療所等からの代診医の派遣要請等、広域的なへき 地医療支援事業の企画・調整などを行うとなっていて、現在、全国に39カ所あ ります。    (2)は、へき地医療拠点病院です。その概要としては、都道府県単位での指導・ 調整の下に「へき地診療所」への医師派遣、「へき地診療所」の無い無医地区等 を対象とした巡回診療等を行う。全国に257病院があります。(3)はへき地診療 所です。こちらも、無医地区において診療所を整備し、地域住民の医療確保を図 る。1,063カ所あります。    次の頁ですが、都道府県別の整備状況が書かれています。埼玉県、千葉県、神 奈川県、大阪府、こちらですが、おそらく無医地区のない地域となっています。 以上でございます。 ○梶井座長:ありがとうございました。 ○医療確保対策専門官:資料3「平成21年度予算におけるへき地保健医療対策の概 要」として、(1)から(3)のへき地医療支援機構の運営、へき地医療拠点病院等の 運営、へき地医療を担う医師の支援、こちらがつけられたものですが、もちろん 交通費とかになっています。(4)のへき地巡回診療の実施、また、4頁ですがIIの 医療施設等設備整備費、医療施設等施設整備費等こういったものも補助金として 使われています。以上でございます。 ○梶井座長:以上の事務局の説明について、何かご質問はありませんか。よろしいで すか。    それでは、議題3に移りたいと思います。議題3「第10次へき地保健医療計 画を踏まえた取組状況等について」ですが、説明者は、全体評価が事務局、先進 的な取組事例紹介が4県の委員の先生方、研究班報告は鈴川委員となっています。 今後の検討会の議論の流れや内容を考えていく上で、非常に重要な報告だろうと 思います。残念ながら、時間も限られていますので、全体評価に10分、その他 の各報告は5分程度としていただきたいと思います。それでは、全体評価の報告 をお願いします。 ○医療確保対策専門官:次の資料4から説明します。資料4は「へき地保健医療対策 検討会報告書《概要》について」です。最後の頁に参考資料として第10次の報 告書がありますが、そちらの概要で1枚紙としているものです。こちらで検討し た内容ですが、3番のへき地保健医療対策検討会報告書の概要の4つ目の○の所 に、具体的支援方策として(1)へき地医療支援機構の強化、(2)情報通信技術によっ て対応するための組織の確保、(3)へき地・離島医療マニュアル、(4)実効性のある 計画作り、これについてまず具体的な支援方策を検討されました。    また次の○ですが、医師確保に対する新たな方策として、(1)医師のキャリア形 成におけるへき地・離島勤務の評価など、医師への動機付け、(2)医学部定員の地 域枠の拡大など、地域における医師の確保、(3)地域医療支援病院の制度を活用す るなど、へき地・離島を支援する医療機関への動機付け、など多面的な支援方策 について検討が行われました。    資料5は「第10次へき地保健医療計画等の策定について」ですが、平成18 年5月16日に各都道府県に、厚生労働省より指針が出されたものです。国が示 す策定指針に基づき、都道府県ごとに地域の実状に応じたへき地保健医療計画を 策定することとするということになっています。    6頁の上から4行目にイ 策定事項があります。こちらは(ア)(イ)(ウ)(エ) とあります。(ア)医師を確保する方策、(イ)医療を確保する方策、(ウ)診療 を支援する方策、(エ)へき地医療の普及・啓発、これらにおいて策定をしてい ただきたいということが、策定事項に盛り込まれています。8頁から11頁に、 具体的な対応方法の例示などが書かれておりますので、こちらは割愛させていた だきます。これに基づきまして資料6をご覧いただきます。    資料6は「第10次へき地保健医療計画に関する都道府県の取り組み状況につ いて」書かれたものです。本資料は、第10次へき地保健医療対策の策定指針の 「策定事項」の各項目について、各都道府県で策定された第10次へき地保健医 療計画の内容を分析し、事務局で評価を行ったものです。    左側ですが、先ほど説明しました(ア)医師を確保する方策、(イ)医療を確 保する方策、(ウ)診療を支援する方策、(エ)へき地医療の普及・啓発、と国が 示した指針があります。それに対して右の欄ですが、こちらは具体的な取組例を、 後ろの別紙にもありますが、そちらのほうから例を引っ張らせていただき、それ に対して評価を行ったのがこちらのグラフです。    まず項目別の前に計画の策定についてですが、実際へき地保健医療計画を策定 していただきたいというのが国の示した方針でしたが、実際にへき地保健医療計 画を行った所は29都道府県で67%でした。では各項目に移ります。    (ア)医師を確保する方策におきましては、指針においては「協議会」を通じ て医師確保の取組みを進めることとしていましたが、現在取り組まれている所は 8都道府県と少ない状況でした。    次に、へき地医療を担う医師の確保について、医師養成の仕組みとして最も多 く都道府県が示した取組みは、自治医科大学卒業医師の活用にあるということが 書かれています。自治医科大学の活用につきましては、定着率が課題になってい ますが、義務年限終了後もへき地勤務を継続していた者は、約3割にとどまって います。指針では、へき地医療への動機付けを行う仕組み等を具体的に記載する ことが書かれていますが、下記の具体例にありますように、いくつかの都道府県 に限られているのが現状です。修学資金貸付制度は、多数の都道府県で行われて いますが、養成対象をへき地勤務医師に限定したものはごく一部でした。    次は、(イ)医療を確保する方策です。指針におきましては、無医地区に診療 所を設置することや、へき地医療拠点病院の強化について言及されておりますが、 各都道府県でもその整備については、国の補助制度を活用して実施しているとこ ろです。この先ですが、診療体制についてのみならず、交通機関等を活用した広 域的な診療体制の構築について書かれておりますが、従前より行われている巡回 診療の他に、患者を医療施設まで輸送するバスの導入などが行われているのが現 状です。    (ウ)の診療を支援する方策ですが、指針においては住民ニーズのある診療科 の設置や情報通信技術の具体的な活用方法等、医療の質を確保する方法や代診医 の確保等の医師の待遇を向上するための方法を具体的に記載するとありますが、 情報システムの活用については、遠隔医療の導入などの取組みが認められます。 代診医の確保の方策につきましては島根県や高知県で具体的な取組みが見られ るほか、いくつかの都道府県で実現に向けた検討が行われているに止まっていま す。    (エ)は、へき地医療の普及・啓発です。指針においては医療従事者に限らず 都道府県の住民に対し、へき地医療について周知を図るための計画を具体的に記 載するとあります。住民に対する情報提供は、その多くはインターネットを通じ て行われていますが、特に青森県や三重県などにおいては、「へき地医療通信」 のような機関紙の発行を通じて、広く住民に普及・啓発を行っています。これを 議題に載せまして、皆様にご議論いただけたらと思います。    別紙1「平成19年度へき地保健医療対策関係単独事業調査での主な事業」で す。別紙2「都道府県別の第10次へき地医療計画での主な取組み」です。別紙3 から5は、平成19年度の現況調書で、別紙3が「へき地診療所」について、別 紙4が「へき地医療拠点病院」につきまして、別紙5が「へき地医療支援機構」 についてです。別紙6は「ドクターバンク、奨学金・地域枠の状況」です。別紙 7は「自治医科大学の卒業生の状況」です。別紙8は「地域医療関連講座(寄付 講座)一覧」です。別紙9は「遠隔医療モデルプロジェクト」です。以上です。 ○梶井座長:ありがとうございました。ただいまの事務局からのご発表、ご説明に、 何かご質問はございますでしょうか。たくさんの資料で、すぐには目は通しきれ ないかもしれませんが、いかがでしょうか。 ○澁谷委員:先ほどの中に、別紙2のへき地医療計画での主な取組みがあったのです が、これはへき地医療計画を作った所ということだと思うのですが、実際にへき 地医療計画を作った所は先ほど少ないということで、全体の医療計画の中でへき 地ということを取り上げて作られた県が多いという説明だったかと思います。そ うしますと、へき地医療計画以外の医療計画の中で、それぞれの都道府県がどん なふうにへき地を取り扱っているかということを、何かまとめたものとか調査し た資料というのは、ありますでしょうか。 ○救急・周産期医療等対策室長:特にそういうものは、用意しておりません。 ○梶井座長:澁谷委員どうぞ。 ○澁谷委員:そうしますと、全体像をちょっと見ようと思うと、通常の都道府県の医 療計画の中でどのようにへき地医療が扱われているかということも、どこかで1 回各都道府県の医療計画を見てみる必要もあるのではないかと思いますが、その 辺、事務局のお考えはどうなのでしょうか。 ○救急・周産期医療等対策室長:事務局としては、この場で必要な方向性が出されれ ば、用意させていただきますし、それは次回なり次々回なりに整理させていただ くことは可能です。 ○梶井座長:それでは、澁谷委員からのご提案もありましたので、次回に準備してい ただけますでしょうか。よろしくお願いします。そのほかございませんか。 ○内田委員:資料2のいちばん最後に、へき地における医療提供体制の整備状況の中 に、無医地区数が載っています。これが全体の数から言うとだんだん減ってきて いるという説明がありましたが、都道府県によって、かなり無医地区の解消に向 けての取組みに温度差があるのではないかという気もしますので、その辺の資料 がありましたらお示しいただければと思います。    もう1つは、ここで見ますと北海道が圧倒的に数が多いわけですが、これはや はり何か事情があるのでしょうか。 ○梶井座長:事務局、いかがでしょうか。 ○救急・周産期医療等対策室長:まず1つ目のご質問ですが、基本的に今回示した資 料で、厚生労働省が各県に依頼した調査がすべてということで考えていますので、 一応ここに書いてある各計画なり事業の内容が、各県の取組状況ということにな ります。    もう1つ、北海道につきましては、北海道の神野委員にご説明していただいた ほうがよろしいかなと思います。 ○神野委員:北海道には21箇所の2次医療圏があります。北海道の広さを紹介する ときに必ず申し上げることなのですが、1つの2次医療圏の面積が、東京都、あ るいは埼玉県ぐらいの広さを持っています。札幌や旭川といった都市部以外の地 域は、その2次医療圏に少ない医療機関しかないため、医療機関まで遠い、いわ ゆるへき地といった地域が多く、このような無医地区が大変多い状況になってお ります。 ○内田委員:もう1つだけお願いします。資料2のいちばん後ろの頁ですが、無医地 区数が平成16年12月現在というようになっています。このあとにたぶん臨床研 修制度がスタートして、医師不足が非常に大騒ぎになったというように認識して おりますので、直近のデータがもしあれば、いただければと思います。 ○救急・周産期医療等対策室長:無医地区調査につきましては5年に1度ということ で、予定では今年11月にやる予定にしております。 ○梶井座長:この検討会もその頃続いていれば、また一度見せていただければと思い ますが、内田委員よろしいでしょうか。確かに知りたいところは、いろいろあろ うかと思います。    もう1つは、やはり都道府県のそれぞれの特性とか背景というものも、先ほど 神野委員からお話がありましたように、あろうかと思います。その辺りもこの検 討会の中で、どんどん出てくればいいなと思っています。よろしくお願いします。    ほかにもご質問、ご意見はございますでしょうが、先進的な取組みについてこ こでお話をいただきながら、それも踏まえて、また活発なご質疑をいただきたい と思います。最初は高知県の取組みにつきまして、澤田委員からお願いしたいと 思います。よろしくお願いします。 ○澤田委員:それでは、着席にて発表させていただきます。資料7のいちばん最初の 頁をご覧ください。「高知県におけるへき地医療対策」、特にへき地医療機関に特 化した形での、そこでの医療医師確保と医学教育についてご説明いたします。先 ほども述べましたが、私は県職員としての支援機構の立場と実際にへき地診療所 の代診をするへき地医療拠点病院の医師としての立場と、両者を併任した形で勤 務しています。    次頁です。本日ご紹介させていただく医師確保の1つのモデル的な形として高 知県へき地医療協議会という組織があります。構成メンバーとして34のへき地 勤務医師と、彼らの派遣を受ける11カ所の市町村、そして県の三者が三位一体 の関係でバランスよく組織を形成しており、年に1回総会があって、幹事会が4 カ月毎に行われています。    次頁には、詳細な構成を示しています。まず市町村については、首長さんが正 会員として、直接総会にご出席いただけることが特徴です。県は、主管課である 医師確保推進課及びへき地医療支援機構が主体となっており、私もこの中に入り ます。医師部会としては、へき地医療に第一線で従事している医師が34名、大 学関係として家庭医療学講座の教授、顧問指導委員として臨床研修指導施設の病 院長が正会員となっています。右の図に示しているのが実際に派遣されている医 師数でして、青い色で示しているへき地医療拠点病院が5カ所あり、なかでも特 徴的なのは、写真に載せている3カ所の病院で、そこに医師を政策的に集中させ ていることです。そんな大きな病院ではないのですが、へき地の第一線にあえて 拠点病院として指定をしまして、そこに総合医を5人、5人、4人という形で集 中させることにより、研修医や学生教育は勿論のこと、周辺のへき地診療所への 支援も可能となり、この施策が有効に作用をしていることを示しています。    次頁です。この協議会で各々が果たす役割としましては、県としてはどこの市 町村へ派遣されても、医師の給与等に格差が出ないように均てん化することが大 切です。人事も医師34名に対してヒアリングやアンケートを通して、要望をで きる限り尊重して人事を決める。また、あと1年経ったら次はここに行けるとい うように、診療所にずっと行きっ放しということではなくて、偏りのない人事、 キャリアパスをイメージできる人事を目指しております。    あと市町村は、県と医師部会が決めた案を基本的には受けていただくという形 で、割愛での採用をお願いしています。また、へき地診療所では週1回の高次医 療機関での研修日を確保していただくようお願いしてあります。    次頁です。34名の医師についての内訳ですが、自治医大卒業医師が31名で、 うち義務年限内が17名、終了者が14名と、ほぼ同数になってきています。その ほかに高知大学の卒業医師2名、その2名以外にも累計5名の高知大学の卒業医 師が、この組織で育っています。あと今年度から愛媛大学の卒業医師1名も参加 しています。将来地域枠で育った医師でへき地医療をやりたいという方が出てき たときに、この組織が受け皿になれたらと期待を持っております。    次頁は、実際の協議会に対する市町村の負担額です。県からの補助金が890万 円で、医師を5名受け入れている所は、大体290万円の負担金となっています。 逆にこれぐらいの負担金で医師が継続的に確保できているとも言えます。    いちばん上の6名というのは、5名の医師の派遣を受けている病院が、1名の へき地診療所を管理委託しておりまして、1プラス5で6名という形になってい ます。そこでも340万円という負担金で、協議会全体でおよそ3,300万円の年間 予算で運営がなされています。これによって下の方に示すように、へき地勤務医 師の定期研修や後期研修の負担金、へき地診療所の医師赴任旅費、学生実習、IT 関係の整備なども賄うことができています。    次頁です。協議会設置によってもたらされたものとして、先述の通り、自治医 大以外の卒業医師をこれまでにのべ6名受け入れできたことが大きいです。その 他自治医大の後期研修プログラムからも2名の受入れ実績があります。あと市町 村職員の身分を持って、県外の非常に有名な研修病院で在籍出向の形で後期研修 を受けられるようになりました。また、ヘリ搬送や画像伝送等を含めた救急搬送 の体制も整備されました。次の頁をお願いします。    先ほど示したへき地診療所、拠点病院は、すべて高知県へき地医療情報ネット ワークという光ファイバー網で結ばれておりまして、情報収集や人材育成にもつ ながっています。へき地医療の現場における医学教育については、次の頁で説明 します。    高知県をこのように4つの医療圏に分けまして、へき地診療所、福祉保健所、 拠点病院という組み合わせでグルーピングを行い、初期研修医をこれらのグルー プにそれぞれ派遣調整にしています。次頁は今年度分のものですが、35名の研 修医を支援機構のほうで交通整理する形で振り分けて、研修期間が重ならないよ うに、1施設に1名ずつの切れ目のない継続的な派遣になっています。    次頁が、派遣調整のイメージ図です。研修医が派遣されるように工夫していま す。1クールで2人ずつ派遣するわけですが、一人の研修医は拠点病院の院内で 研修を行い、もう一人の研修医は外で、へき地診療所と福祉保健所の研修をし、 クール半ばで両者が入れ替わるといった形で支援機構が派遣調整をします。    次頁です。今後地域枠の先生方がどんどん育ってくることになるわけで、大学 と連携した形で臨床実習などの取り組みも進めていかなければならないと考え ています。この図のように本県では大学の家庭医療学講座と組んで、自治医大の 学生はへき地での実習とし、地域枠の学生については、特定診療科の先生方との 親和性を高めるという意味で、地域にある中核病院での実習環境を提供していま す。これらを円滑に実施するためにも大学との連携は不可欠であり、今後こうい う形でへき地医療と特定診療科をつなげていく役割も、支援機構として求められ てくるのではないかと思っています。    最後の頁はまとめですが、そのままお読みいただければと思います。2番に挙 げた点については後でディスカッションをお願いできればと思うのですが、現場 の医師と行政とのパイプ役として、県の主管課にこういうへき地医療の勤務経験 を持つ臨床医が配置されるということが、大学との連携、へき地の第一線との連 携という点で、大きな意義をもつのではないかということをご提言させていただ きます。以上です。 ○梶井座長:ありがとうございました。ご説明とご提言をいただきました。続きまし て三重県の取組みにつきまして、奥野委員にお願いしたいと思います。 ○奥野委員:奥野です。よろしくお願いします。先ほども紹介のときにお話をさせて いただきましたが、現在役割を3つ持っておりまして、本庁のほうで三重県全体 のへき地を見渡す役割。それから、へき地の病院で内科の医師としてへき地の医 療を維持していること。もう1つは、へき地の病院の中で研修医や学生等の研修、 教育に責任を持っているという3つの立場で仕事をやっております。    三重県としては「へき地支援機構」ができまして、基幹病院からの代診医派遣、 ドクタープール制度を実施し、ドクタープールの対象者は現在3名ほどおります。 修学資金の対応ですが、これも当初はへき地に限定して勤務をお願いしたいとい うことでは人が集まりませんでした。その縛りを外しまして、県内にどこでも勤 務してもいいよというような修学資金の内容にしましたところ、今度は逆に非常 に応募が増えまして、いまは年間で50から60。今年は60前後の定員に対して 80の応募ということで、うれしいと言いますか、それでもこれが6年間で50人 でも300人ですから、その人たちを追いかけるだけでも大変なのですが、その辺 のことをやっております。    今回の話としては、従前のことは別としまして、一応この4月から新たに考え 出したものを、若干紹介させていただきたいと思います。名前を「ポジティブ・ スパイラル・プロジェクト」と付けまして、いまはネガティブなスパイラルで、 どんどん負の連鎖で悪循環になっていますので、それを何とか断ち切ってポジテ ィブにいかないかなと、そういうような意味合いで付けさせていただきました。 次頁をお願いします。    一応基本的に3つの大きなことを考えまして、いちばん上に示したのはバディ ホスピタルシステムと名前を付けまして、短期的課題への対応を考えたというこ とです。右に示したのが中期的視野での対応として、地域医療研修センターとい うものを設置しました。実は私は、いまこのセンター長をしております。左の下 に示したのは長期的視野ということで、医学部教育等のことを充実させようと。 この3つの短期的、中期的、長期的ということで、これらを回していけばという ことを考えて4月から実施し始めました。    次頁ですが、バディホスピタルシステムとは、都市部の大きな病院と医師不足 で疲弊している地方の小さな病院が手を組んで、お互いの医療を高め合おうとい う仕組みです。これはまだ思ったようにはうまくいってないのですが、右の下の ほうの1つは、山田赤十字病院という大きな500床の病院から、へき地にある 200床弱の尾鷲総合病院という所に、研修医、後期研修医、それを指導する医師 を派遣して、それで地方の病院を支えるという仕組みです。当然そういうときに は費用が生じるわけですが、それを県のほうで負担していこうという仕組みです。 この中で大きな病院の院長先生に図らずもお話をしていただいたのは、大きな病 院ですといまはフルマッチで人気のある病院ですが、そうすると自分たちで医師 が養成できるぐらいの病院になっているわけです。    ただ長い間そこだけで育っていくとまずいと。こういった地方の病院である一 定期間学ぶということは、井の中の蛙になることなくいろいろな所を経験してい ただけるということで、積極的に、一般的にはなかなか大きな病院から小さな病 院の支援というのは難しいのですが、そういったことを言っていただけまして、 1つのグループとしては、前向きに進んでおります。    次頁は、医学生の教育についてです。これはご存じのとおりで、大学のほうに 地域枠、一般枠等ということで出来上がりまして、地域からの推薦で地元大学へ、 今年は6名入学いたしました。それに対して各市町から、宝くじの助成金で作ら れた市町村振興基金の一部をその大学にお渡しして、そこで地域に向かっての教 育を、教員の充実であるとか、カリキュラムの整備ということをやっていただこ うということです。    その中で1つ大事だと感じて進めたいと思っておりますのは、卒前から、地域 枠とか一般枠の方も含めて、市町から講師として教育に参加していただく。それ から、学生との協働作業でその市町での事業に加わっていただく、そういったこ とをこれから考えてやっていけたらと思っております。    最後の頁ですが、地域医療研修センターというものを三重県の県施設として、 へき地に位置する紀南病院、これは一部事務組合の公立病院なのですが、約280 床の小さな病院に、センターというものを設置いたしました。これのコンセプト は、へき地でへき地に働いてもらえる医師を育てたい、ということです。つまり、 医師を育てる場合に、まずは立地だろう、へき地という所で育ててみたいという ことです。そのコンセプトは、いちばん下に「へき地は医者をステキにする」と 書きましたが、自治医科大学の卒業生や先生方、あるいは、かつてへき地で短期 間過ごした先生方とお会いしたり、お話したり、あるいは、いろいろな機会に情 報をお伝えいただいたりして、地域で若いときのある一時期を過ごしたことが、 後のその医師の形成にとって非常に役に立っているということが、いろいろな言 葉からも、数字からも出てきておりまして、それを確信するに至って、こういう 所でやっていけたらと思ったわけです。    このロケーションというのは、実は小さな隔絶した、人口約5万の地域で、そ の中に1つの病院、1つの医師会、それから1つの保健所、行政単位としては一 部事務組合ですので、病院を支えているのが3つの市町なのですが、形としては 非常にシンプルで、地域医療というものを展開していくのに適している所ではな いかと考えました。それから、自治医科大学の卒業生たちが過去30年にわたっ てずっと勤務し続けているという地の利もありまして、こういう所で研修を受け ていただこうということで、いま年間で、臨床研修の1カ月コースの人たちが約 20数名、それから3カ月コースを取っていただいた方も2〜3名。地域は三重県 内、東京、大阪等から来ていただいております。ただ残念なことに、今年の臨床 研修の見直しで、実は管理型の研修病院で毎年頑張って取ろうとしまして、定数 を2とか3とかでお願いしていたのですが、過去の実績が全くゼロでありました ので、来年以降の募集ができなくなってしまいまして一同ちょっとショボッとし たのです。しかし、気を取り直しまして1カ月コースとか3カ月コースをしっか りやる。それから後期研修の、3年目以降の先生方を何とか採っていきたい。そ のようなことでこれから頑張っていきたいと思っています。 ○梶井座長:続きまして前田委員から、長崎県の取組みについてご紹介願いたいと思 います。 ○前田委員:長崎県は離島と半島で構成された県と言ってもおかしくないような地形 をしております。9つの二次保健医療圏で構成されておりまして、県南部、県北 部、それから離島の医療圏が高齢化率も高く、医療の確保が厳しい状況となって います。    長崎県の特徴としましては、有人離島が54個ありまして、県民の約1割が離 島に住んでいるという点があげられます。    1頁の「離島・へき地医療関係機関MAP」を示しています。ここにバックグ ラウンドが赤で白抜きの病院が島に9つ、本土に2カ所ありますが、これが今年 4月に合併統合されまして「長崎県病院企業団」に再編されました。離島にある この9つの病院が離島医療の中心的な役割を担っています。    この中でも対馬いづはら病院、上五島病院、五島中央病院、壱岐市民病院(医 療圏外)、この辺がいわゆる地域中核病院として機能しております。    このほかにも公設診療所が57個あります。23個が公設公営で常勤医のいる診 療所で、5つが公設民営の診療所になります。この他に出張診療所が29カ所あ りますが、これは近隣の医療施設から医師が定期的に出張をしてきて診療がなさ れている診療所です。こういう工夫があって、長崎県の無医地区も4カ所と少な く、離島だらけの県にあって、なかなか健闘しているのではないかと思っており ます。    次頁です。これはどこも一緒なのでしょうが、本土都市部にドクターが集中し ておりまして、県北部、県南部、それから離島は医師が非常に少ない地域となっ ています。ちなみに長崎県は、都道府県別で言いますと全国で7番目に医師の多 い県になっています。が、離島のほうは非常に医師が少なく、医師の偏在は大き な問題となっております。    次頁です。これまでの長崎県の離島・へき地医療対策の歴史ですが、昭和40 年代に整備が進みました。昭和43年に、長崎県離島医療圏組合が創設されまし たが、これが長崎県の大ヒットだと思っております。それまでは離島の自治体毎 に病院を運営していたのですが、これですと限界がありますので、離島の自治体 と長崎県が一体となって病院を運営するという組合制度が導入されたわけです。    その後昭和45年に、修学資金制度を創設し、47年に自治医科大学への派遣制 度が始まりました。そして、この2つの制度で育てた県の養成医を離島医療圏組 合の病院に派遣していったという経緯があります。派遣が始まったのは昭和53 年ですが、下のグラフにありますように、派遣が始まってから徐々に医師数も増 えまして、今では全体で100人を超えるような医師集団になっております。    最近の動きでいきますと、第9次へき地保健医療計画が各都道府県の「へき地 医療支援機構」の構築を決定いたしましたが、それに従って長崎県も、平成15 年度に「長崎県へき地医療支援機構」を設置いたしました。しかし、長崎県は離 島が多いため県独自の強化策が必要だということで、平成16年度に「へき地医 療支援機構推進事業」を創設いたしました。    推進事業の事業内容は、主に2つで、「離島・へき地医療支援センター」の設 置、そして「離島・へき地医療学講座」の開講になります。これは後ほど紹介い たします。    あとは、患者さんの搬送に関してドクターヘリの導入を平成18年12月に行っ ております。それまでは海上自衛隊のヘリと県の防災ヘリとで運用していたので すが、ドクターヘリを18年に導入し救急搬送体制を強化いたしました。そして 平成21年からは離島医療圏組合病院と県立病院が統合されて長崎県病院企業団 が創設されました。    次頁です。長崎県の養成医制度についてご説明します。先ほど申し上げたよう に、奨学資金の貸与制度は昭和45年に始まりました。これまでの貸与者総数が 144名で、そのうち68名が返還されております。現在の貸与学生数は20名で、 現在の勤務医総数が32名、うち離島の病院に勤務している方が16名おります。    自治医大への派遣制度の開始は47年ですが、これまでの貸与者総数が94名で、 そのうち7名が返還しております。現在学生数が16名、勤務医が36名、うち離 島の病院に勤務している方が25名ということになります。右の表に、どのよう な病院にどのような医師が派遣されているのかを示しておりますかが、奨学資金 貸与制度と自治医大への派遣制度で41名がいま離島の病院に勤務しているとい うことになります。    キャリアデザインを見てみますと、自治医大の義務年限が9年ですが、長崎県 の修学資金制度の義務年限は12年と少し長くなっております。    次頁です。平成16年4月に、へき地医療支援機構の推進事業で設置された離 島・へき地医療支援センターは、常勤医の派遣、代診医の派遣、しますけっと団 斡旋紹介、医療支援、へき地医療支援計画策定等会議を所掌、というような業務 を受け持っております。    まず常勤医の派遣業務ですが、これは、東京や大阪などで定期的に説明会を開 催して、離島で勤務する意欲のある医師をリクルートします。そして県の職員と して採用して、要請のあった公立の診療所へ派遣するという業務です。2年を1 単位として1年半離島勤務をしますと半年間の有給の自主研修を保証するという 特徴があります。この実績は下に書いてありますが、これまでに延べ9名を派遣 しており、現在は2名が勤務中です。もう1つは別の医師斡旋事業として、この 制度に乗らなくても、市町村の要請に従ってドクターを紹介するという事業を行 っています。今までに22名の斡旋実績があります。それから、センター長が代 診医をする、あるいはセンターに登録されたドクターが代診医をするという活動 も行っており、その実績が下のほうに書いてあります。    次頁です。「離島・へき地医療学講座」は、長崎大学大学院に設置された長崎 県と五島市による寄附講座です。平成16年に開始された5年の時限付きの事業 でしたが、今年3月に、21年度から5年間の継続が決定いたしました。寄付金 額としましては5年間で2億500万円のところが、10年間で4億500万円の予 定になりました。担当教員は2人です。    活動内容は教育と研究、そして診療応援ということになります。いま教育のほ うに力を入れておりまして、卒前教育として平成16年から、長崎大学医学部の 5年生全員が離島で実習を行うという地域医療教育を始めました。さらに平成17 年からは医学部6年生の希望者を対象にした高次臨床実習を、平成18年からは 薬学部4年生全員を対象とした実習を開始しました。現在では長崎大学医学部の 1年生、2年生、5年生、6年生、それから薬学部、歯学部の全員が離島で実習を 行う部局横断型の地域医療一貫教育を進めております。    あとは他大学からも離島での実習を希望する学生がやってくるようになりま して、五島で毎年行っている特別セミナーの参加者を合わせますと他大学から毎 年50〜60人が来島していることになります。結局、平成20年度までの5年間 で教育した実質の人数は862人です。    こうした離島実習の卒業生が管理型の臨床研修指定病院である離島の中核病 院に研修医として勤務するようになりまして、現在このような実績になっており ます。ちなみに、平成16年に始めました5年生の離島実習の第1期生のうちの 1人が、五島で研修を行った後、平成20年度に厚生労働省に入省しております。    次頁です。離島での実習は、ここに示したとおりさまざまな施設の協力を得て 行っております。    次頁です。先ほども申し上げましたように、離島医療圏組合の9病院、それか ら県立の2病院が統合されまして、今年4月に長崎県病院企業団に改組され、医 師数が129名、病床数が1,524床の病院団になりました。対象人口は25万人に のぼります。この統合により、人事なども含めて効率的、そして弾力的な運営を 図るということになっております。    最後に救急搬送の取り組みですが、平成17年度までは自衛隊ヘリと県の防災 ヘリだけで救急ヘリ搬送が行われておりました。この頃の年間搬送件数は200回 強で、ほぼすべて離島からの病院間搬送でした。平成18年12月にドクターヘリ が運航を始めましたが、この真ん中辺りにある、バックグラウンドが赤で白抜き の表の中での「出動回数」を見ていただきますと、年間に400回以上の出動回数 があります。そして、下から2つめの表にはドクターヘリ以外のヘリの出動回数 を上げておりますが、これを合わせますと平成20年度では600回近い出動回数 があることになります。ドクターヘリは病院間搬送だけではなくて現場にも飛び ますので、ドクターヘリの出動先にも注目していただきますと、現場と病院間搬 送が約半々という状況になっております。以上、長崎県の取り組みについて、簡 単に説明いたしました。 ○梶井座長:続きまして木村委員に、島根県の取組みについてご紹介をお願いいたし ます。 ○木村委員:資料7-4を見ていただきながら、島根県の地域医療の現状と医師確保対 策ということで話させていただきます。    若干自己紹介をさせていただきますと、私の仕事の正式名称は、健康福祉部医 療企画監です。私も、先ほどの3名の委員の方と同じように臨床医であります。 私は自治医科大学の4期生です。健康福祉部の中に医療企画監という職名を今年 から作っていただいたのですが、それまでは、この括弧書きの「医師確保対策室 長」。健康福祉部の医療対策課の中に医師確保対策室というものを平成18年度に 作り、私が室長をしておりまして、現在も室長も兼ねております。全国的に言い ますと、へき地医療支援機構の仕事を医師確保対策室がやっております。私を含 めて7名でこの室は動いておりますが、あとの6名は事務職員です。私の前職が 県立中央病院の総合診療科部長でしたので、現在もその総合診療科で、週1回の 外来、それからへき地診療所等への代診をやっております。いま8〜9割方行政 のほうで仕事をさせていただいております。    次頁に島根県の地図を書かせていただきました。これは中国地方にあるわけで す。下に東京都の地図と比較しておりますが、面積は東京の3倍ございます。松 江。いちばん右が「安来節」の安来。それから、ずっと左のほうへ行っていただ きますと津和野まで、下のほうに時間と距離を書いてありますが、東西190km、 安来、津和野間230kmということになっております。国道9号線と山陰本線が走 っているわけですが、海岸線から少し入った所は80%山間地、中山間地です。 産科医がいなくなったということで有名になりました隠岐島が松江市の北のほ うにございます。島根の人口は73万人程度、その中に57病院があります。しか し、東京は643病院です。    次頁です。人口当たりの医師数ですが、おそらく今日発表をなさった3名の委 員の県も同じように、人口の少ない過疎地域を持った所というのは、人口当たり の医師数は多くなります。島根県も、人口10万人当たりの医師数は日本で9位 です。これはあえて医師数密度、面積当たりの医師数を出しております。東京と 比較しておりますが、東京はこういう大きな輪です。全国平均が100k平方メートル当たり 74人、島根県の平均が29人です。また地図が出ているのですが、松江医療圏と いうのが黄色い所。隣が出雲医療圏。松江に県庁がございまして、出雲に島根大 学医学部附属病院、それから、私も勤めております県立中央病院がございます。 なので、この2つが島根県の中の面積で4分の1、人口が6割、医師数が7割で す。右の下のところで医師数を見ると、大体直近のところで、これは勤務医師と いうことではなくて、すべての医師免許を持った方の3師調査のデータですが、  平成18年には1,900人、2,000人弱の医師がおります。    医師数で見ますと、平成14年、16年、18年で見て89名の医師が増えており ます。7医療圏ございますが、先ほど話しました松江医療圏、それから出雲医療 圏以外の5圏域におきましては医師数自体が減っております。実は平成18年度 から、我々のところが中心になりまして全県下の勤務医師の調査をやっておりま すが、平成18年、19年、20年で年間に大体10人ずつ病院勤務医師数は減って おります。つまり、島根県において、大雑把に言うと年間に20名ずつぐらい医 師は増えておりますが、病院勤務医師数は大体10人ずつ減っております。    それによってどういう状況が起こっているかということについては、代表的な ところだけを書きましたが、マスコミをにぎわせた隠岐のほうから見ていただき ますと、産科医がいなくなって一時分娩が取り扱えなくなってしまいました。し かし、何とか1名自治医科大学卒業医を育てまして、現在1名で、助産師さんに よる分娩取扱いが行われております。精神科のほうも、常勤医は県立こころの医 療センターの協力を得まして県のほうから派遣して、隠岐で何とか産婦人科も、 精神科も入院医療がなされています。    最近では、どこの県も同じでしょうが、県西部の大田、江津、浜田、益田、そ れぞれの病院でいろいろな状況が起こっております。ここ数年間で松江、出雲以 外のほとんどの都市で病院勤務医師の数が減って、今大変な状況が起こっており ます。機能連携ですとか、いろいろな対策をとり始めておりますが、なかなか間 に合っていないのが実情です。    次頁に移ります。それに対して我々県といたしましては、現在はこの真ん中に 医師確保対策室がございますが、「医師を〈呼ぶ〉〈助ける〉〈育てる〉」というこ とで対応しております。《助ける》というのが地域医療支援なわけですが、これ は少し古くから行われておりまして、代診医の派遣。私も含めまして年間に、い わゆるへき地診療所等へ100日程度代診を行っております。先ほど話しました産 婦人科とか精神科とか、そういうのも代診で送る。それから、女性医師の出産・ 育児に伴う代診も含めますと、いちばん多いときで年間600日ぐらいの代診をや った年もございます。ただ、小病院の総合医を送るような代診に関しましては、 年間100日±30ぐらいのところで推移しております。そしてドクターズヘリ。 これは県の防災ヘリを使っています。長崎県のような本来のドクターヘリは今よ うやく検討を始めようとしているところですが、平成10年から、これも隠岐を 中心に、救急患者を乗せ、本土側の医師が同乗いたしまして救命救急センター、 島根県立中央病院、それから松江赤十字病院に転送しておりますが、隠岐を中心 に100件程度。西部でも、数件はいろいろなことでやってはおります。今後、ド クターヘリを導入に向けて検討を始めたところです。    あとは画像伝送等もやっておりますが、今日は時間がございませんので省かせ ていただきます。    それから《呼ぶ》ということで〈赤ひげバンク〉という、島根県もしくは島根 大学医学部附属病院出身者で県外にいらっしゃる医師のネットワークを作って おります。島根県とゆかりのない人でもいいわけですが、戻りたいとか、島根県 で勤務したいという方に関しましては、私を中心に積極的に出かけていって面談 をする。それから、県の費用で地域医療視察ツアーということで、早速病院を見 ていただいたり、生活環境を見ていただいたりして、いわゆる病院とのマッチン グを行っているところです。そこに実績を書いておりますが、平成18年度に医 師確保対策室を作りましてから、確保実績で言いますと8名、11名、9名。大体 10名程度のドクターに島根県に帰ってもらうなり、赴任していただいたりして おります。島根県出身者、もしくは島根大学医学部出身者が6割を占めておりま す。また、その分母になります出張面接に関しましては30〜50名、そういった ところで県外に出ていってお話をさせていただいております。    先ほど来話しますように、こういった努力をしましても10名程度帰っていた だくということで、それでも県内の勤務医師はまだ10名減っております。    先ほど長崎県の前田先生のお話にもありましたように、自前で育てていくこと が大事だということも数年前から認識しておりまして、医学生向け奨学金が平成 14年度から開始されております。それから、島根大学におきましては地域枠推 薦入学という制度を設けております。これが他県と少し違うのは、出雲、松江以 外の所で育った人を対象にしております。全県一区ではございません。松江の優 秀な高校の人たちを排除するという意味ではありません。田舎で育った人が松江 の高校に通っているのはOKなわけですが、どこで育ったかというようなところ をポイントにしております。地域の学校で、成績が高校時代にあまり良くなくて も、医学部に入ってから育てていこうと、地域医療を今後将来的にやっていきた い人たちに対して、地域医療に目を向けた教育をしております。    《育てる》の真ん中のところ〈研修医等定着特別対策事業〉。(1)学生・研修医 への働きかけは平成14年度から、そして(2)魅力ある研修病院づくりは17年度か ら始めています。    次頁です。奨学金は今3通りのものを持っておりますが、これは平成14年度 から開始しておりまして、貸与者が、今年度の方も含めて、総勢92名となって おります。緊急医師確保対策枠等も出来ましたので、今年はこの3つのもので 28名の枠を持っております。いま5年生が10名おりまして、徐々に増えていま すから、あと2年ほどしますと、学年で10名以上の卒業生が出てまいりますの で、あと4、5年何とか耐えれば、島根県内の勤務医の減少もようやく止まるの ではないかという希望を持ちながら日々仕事をしているところです。    次頁に進みます。先ほど話しました研修医等定着特別対策事業の主立ったもの を書いておりますが、20年度からは島根大学に委託して、我々と一緒になって 実施いたしております。主には学生・研修医への働きかけ、それから、魅力ある 研修病院づくりということで、研修病院のレベルアップを図るように、我々も協 力しているところです。    その中で学生・研修医への働きかけのところでは、地域医療実習や地域医療セ ミナーなどをやっております。それから、魅力ある研修病院づくりということで、 プログラム発展講習会、研修指導医の講習会。これはアドバイザーとして名古屋 大学の伴教授、それから本日座長をなさっております自治医科大学の梶井先生に お世話になっているところです。私からは以上です。後ほどご質問等にお答えし たいと思います。 ○梶井座長:4名の委員の先生方のご説明が終わりましたが、引き続いて、厚生労働省 科学研究班の報告を鈴川委員よりお願いいたします。 ○鈴川委員:簡単に説明しますが、封筒の中のCD-ROM、それから資料8、へき地保 健医療に関するアンケートの報告書、さらに現在行っているアンケートの概要が 入っておりますので、参考にしながら聞いていただければと思います。    私は平成4年に自治医科大学に赴任しまして、平成6年から、救急に関するへ き地・離島の確保に関する研究等をやらせていただきました。平成16年度から 持続可能なへき地等における保健医療を実現する方策ということで、第10次の へき地保健医療対策検討会に合わせて、全国都道府県へき地市町村、それから診 療所長とへき地拠点病院を対象にしたへき地保健医療に関するアンケート調査 を行いました。それが最終報告書としてお手元にあります。今回も同じようなア ンケートをやっているわけですが、いくつか参考になるところがありますので、 例示だけ簡単にさせていただきたいのです。詳しくは後で是非見ていただきたい のです。    最終報告書の45頁からが診療所のアンケートなのですが、55頁に問15で「診 療所の活動について、行政の支援、協力の体制はいかがですか」とあります。4 分の3以上の医師があると答えているのですが、支援がないというのも13%あ ります。問16でも同じように、意見が反映されていると思うか、思わないかと ありますが、これについては、全く反映されていないという人までいらっしゃる ということが分かります。    診療所に勤務している医師に、できるだけ長く働きたいのか、それとも、もう 辞めたいのかというところと、十分な支援等があるかどうかということの関係を 表にして64頁に示していますが、へき地・離島で働いている医師たちで早く辞 めたいという人たちは「行政の支援・協力がない」「自分たちの意見がなかなか 通らない」というところで統計的に有意差を持って割合が高いということがこれ で分かってきました。    また、卒業年度や出身大学で検討した表もありますが、早期退職を希望する医 師の割合は、出身大学とも、卒業年数ともあまり関係がない。それ以外の因子が あるのではないかということをいま考えています。    このような調査を行った後、これをまとめて「へき地・離島の保健医療サービ スを担う医師の研鑽等のためのへき地・離島医療マニュアル」、これは先ほど厚 労省のほうからご説明があった資料4の第1頁の下の(3)「へき地・離島医療マニ ュアル」というのが報告書の概要にあります。それは概要に出てくるマニュアル そのものなのですが、そういうものを作成しています。その後、へき地・離島保 健医療の策定に関する事例集を作り、へき地・保健医療の対策に資するものを作 ってあります。またその後、へき地・離島のミニマムリクワイアメントというこ とで、へき地・離島の保健医療のあるべき姿というものを発行しました。それら すべてがこのCD-ROMに入っておりますので、後で参考にしていただければと 考えております。    我々は平成16年にやった調査の21年度版をすでに行っており、全国の市町村 の診療所にも配付していただいて、市町村からの回答をいただいたところです。 最終的なアンケート結果は、この検討会の最中にご報告できると思いますが、検 討会が前回と比べて半年以上早く始まっているものですから、まだ準備ができて いませんでしたので、新しい報告を後ほどさせていただきたいと思います。その ほかに、へき地拠点病院にも同じアンケートをやっておりますので、これも後で ご報告させていただきます。    医師全体の総合診療、及びへき地勤務に対する考え方に関する調査も現在進行 中です。卒前教育、初期臨床研修、後期研修、実際のへき地勤務の経験等によっ て、へき地勤務に対する考え方にどういう違いがあるかということを全国の2大 学、へき地拠点病院2つ等、アンケート調査をかなり大々的に行っています。詳 しい内容について一つひとつ説明する時間がありませんので、かなり端折りまし たが、報告書とCD-ROMを見ていただきたいと思います。 ○梶井座長:4県の取組みと厚生科研の研究事業について今ご説明願いましたが、何 か質問はございますか。 ○内田委員:いまのご報告の中でちょっと感じたのは、診療科ごとの偏在ということ です。診療所の医療体制については、総合的な診療能力を持った医師を養成する ことで対応されているのだと思いますが、へき地の拠点病院における診療科の偏 在あるいは不足。例えば救急医療、それから小児科とか周産期産婦人科等、比較 的専門的な医療が求められるところに対する診療科の偏在といったようなこと については、それぞれの地域でどういう対応をされているか、あるいは、どのよ うに困っていらっしゃるのかという現状をお聞きしたいのですが。 ○梶井座長:先ほどご報告いただきました委員の方々、どうでしょうか。 ○奥野委員:小児科、産婦人科に関しましては、地元大学に全く頼っております。そ れから、地域の小さな病院においては、救急専門医というよりも、一般の内科医、 外科医がジェネラルに、24時間365日救急対応しているというのが現状です。 専門家は大学に頼っております。 ○内田委員:大学派遣ですか。 ○奥野委員:派遣です。 ○木村委員:専門診療科に関しては、島根県の場合、地図を見ていただくと郡部のほ う、山のほうからだんだんと減っていって、自然に集約化されていっているとい うのが実情です。    中国地方には5県あって、5つの国立大学医学部プラス川崎医大があるわけで すが、島根大学はいちばん後から出来た大学です。「1県1医大」ではあっても、 実際に、かつての医局の派遣というのは、鳥取大学にも、山口大学にも力を借り ています。他県の大学の講座等にも、実情をお話したりしながら、今調整を図ろ うとしているところです。島根大学自体とも、そこのところの関係はかつてより よくなっていますが、十分でない部分もあるというのが実情です。 ○澤田委員:本県の場合も、先ほどご紹介したへき地の医療機関に関しては、こうい う協議会等の取組みで、いま何とか医師を確保できている状況にあります。高知 市内は医師や医療機関が一極集中しておりまして、ある意味過剰であると言って も過言ではありません。    いま問題になっているのは、へき地と、県庁所在地である高知市との間にある 中核的な病院における医師の確保です。それらの病院は今までどうしてきたかと 言うと、ほとんどは大学からの医師派遣によって医師が確保できていたわけです。 これが、平成16年の新医師臨床研修制度も少なからず影響していると思うので すが、地方の大学では、特に研修医が非常に少なくなってきているのです。2年 間医局に新人医師が入ってこないということで、各医局は医師が不足するため、 地方に派遣していた第一線級の医師の多くを大学に引き上げる。そんな悪循環で、 地方では特に専門医は非常に不足しているという状況に陥っています。 ○前田委員:長崎のほうも一緒で、長崎大学から派遣している場合が多くあります。 離島という特殊事情から、本土よりも離島は残すという紳士協定、と言ったら大 げさですが、そういった方針を持っておられる教授もおられます。    もう1つ、長崎県の場合、対馬や壱岐は、長崎よりもむしろ福岡県や佐賀県の 文化圏、生活圏に入りますので、福岡大学や佐賀大学などから専門医が派遣され て来ているという状況もあります。    また、県の養成医が専門医教育を受けて専門医になって赴任しているケースも 多く、だいたいこの3点で対応されています。 ○梶井座長:まだご質問はあろうかと思いますが、時間も限られておりますので、こ の辺にさせていただきたいと思います。    今日は事務局から、第10次へき地保健医療計画に関する都道府県の取組状況 をご説明いただき、その後に4県の取組みをご説明いただきました。それから、 鈴川委員から研究事業の報告もいただきました。これですべてが分かったわけで はないと思いますが、こうして一堂に会して、まだ第1回目ですので、全体像を 少し共有しようではないかということでスタートしたわけです。まだまだ全体像 の共有は難しいかもしれませんけれども、10次の様子を皆様に思い描いていた だきながら、11次計画に向かって、この検討会としてどういう方向に持っていけ ばいいのか、そういう1つのビジョンを持ってこれから進めていきたいと思いま す。今日も時間が少なくなりましたが、今後のビジョンはどういう方向づけをし ていけばいいかということで自由討論をさせていただきたいと思います。活発な ご討論をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○前野委員:いまの4県からのお話で、自前で医師を育てるというのは着実であると 思います。その具体策として、地元の大学に対して地元枠を作るというのは有効 な手段だと思うのですが、片方で大学本体に伺うと、必ずしも積極的ではない。 むしろ、それに対して消極的な大学は少なからずあるわけです。4県を含めまし て地元枠、地域枠というのはどういう形で効果を上げているのか、上げていない のか、その辺の評価をした上でそれをさらに推進するのか、効果を上げるために どういう改善が考えられるのか。方向性として示すことが必要ではないかと思い ます。 ○梶井座長:ただいまのご意見について、ほかの委員の方はいかがでしょうか。 ○澤田委員:おっしゃるとおりだと思います。現在、奨学金制度とか地域枠というこ とで、各都道府県でどんどんお金を出して医学生を育てている状況にあると思い ます。この制度がはじまって、まだ2、3年ですから、これから卒業までまだ時 間も残されています。例えば県などが地域枠の学生に対して何のアプローチもし ないで、そのまま放置していると、ストレートで入学した学生と同じように育っ ていく、いわゆるメジャーな流れにのっかっていくのではないかと思うのです。 どういう形であれ、学生実習とか面談機会を増やすなど、いろいろな形でフェイ ス・トゥー・フェイスの接触機会を作って、とにかく関わりを持つということが 非常に大切だと思います。大学では特定診療科、いわゆる産婦人科、小児科、救 急、脳外科等を目指す医師の育成部分を担い、へき地医療支援機構は、いわゆる へき地医療に特化した医師の育成に関与するという形が一つのやり方です。この ように両者がうまく手を組んで地域枠学生に対してアプローチをし、ストレート で入った学生と全く同じ教育をするのではなく、少し特別なカリキュラムとか課 題を与えて関わりを持ちつつ、プラスアルファの教育を提供していくことが大事 なのではないかと思います。 ○村瀬委員:お話を聞かせていただいて、キャリアパスというか、キャリアデザイン というか、地域医療講座の先生方もそうですし、自治医大の先生方もそうですし、 新たにへき地医療をやってみようと思って入ってきた先生方はみんなそうだと 思うのですが、それぞれの先生方が、自分自身が将来どこでどういう形で仕事を していくかということについては、かなり不安が強いのではないかと思うのです。 大学の医局講座制にはいろいろご意見もございますが、医局講座制の中で動いて いると、将来どうなるか、ある程度見える部分があります。しかし、へき地へ新 たに飛び込んだ場合、例えば気が変わったら、果たして途中で辞めることができ るのかなど、わからないことが多いように思います。大学の入試で面接をさせて いただくと、へき地で働いてみたいという方はすごく多いのです。ただ、へき地 で働いてみたいというのと、一生へき地医療に身を捧げますということとの間に は、かなりギャップがあるのかなと思うわけです。    今日お話を聞かせていただいて、いま現在それぞれの地域で人を育ててみえる 中の先生方というのは、どちらかというと、県立病院の職員として派遣されてい る、地域医療の中にどっぷり浸かっているという、非常に志の高い方だけを対象 にする形になっているがゆえに、2年とか4年ぐらいだったらへき地で働いても いいなという方をうまく取り込めていないのではないかという気がしたのです が、そういった点はいかがなのでしょうか。 ○奥野委員:私が先ほど少し話をさせていただいたのですが。長く勤めるというのは よろしいのですが、若いときのある一時期、例えば3カ月でも1年でもへき地と いう場所で勤めていただくということは、とても意味があることだと私は思って おります。基本的に、長く勤める人を探し出すというのは非常に難しい話です。 しかし、短い間勤務していただくというのはとても良いことです。ただ、キャリ アパスです。その後どうなるのだと。あるいは、昔ですと医局制度がありました が、今は基本的に全部自分で将来の道を決めていかなければいけないということ で、非常に不安な方が多いのです。    この前びっくりしたのですが、私は公務員として、医師としてずっと働きたい。 どういう科をやりたいとか、どういう病院に行きたいというより、むしろ、そう いう考え方でアプローチしてきた方もいるぐらいです。ですから、へき地という ものの前に、こういうコースに来たらいろいろなコースがあって、途中で辞めて も、こうなれる。辞めてもいいのだけれど、ここだけは勤めたらどうかと、そう いうプログラムが必要である。あるいは提示することが、先を選んでいただくた めには大事なことではないかと思います。 ○梶井座長:教育のこと、それからキャリアパスのことが出ましたが、そのほかには どうでしょうか。 ○内藤委員:これまで10次にわたるへき地保健医療対策では、もちろん自治医大の 存在も大きかったと思うのです。それぞれのへき地診療所等への医師確保という 面では効果があったと評価はしております。しかし最近になって、特に新しい医 師臨床研修制度が出来てからいちばん問題になっている部分というのは、へき地 の診療所を支える地域の中核的な医療機関等で医師の引き上げ問題が起こり、運 営が困難になっていることです。一方、そういった病院というのは大部分が自治 体病院です。地域医療を支える自治体病院については経営的な基盤の脆弱性とい うのが問題になっております。現在、公立病院改革プランという形で、経営状況 を一定の収支バランスのとれた形にしなければ、というような側面もございます。 また一方では、診療報酬上の問題もございます。へき地の診療所を支えるための 中核病院をきちっと支えていかないと、点として診療所等への医師を確保できた としても、地域全体の医療としては支えることができない。点だけではなくて、 それぞれの医療圏全体を面で支えるような仕組みを作っていかないと、地域医療 が成り立たなくなるのではないかと私は考えております。 ○梶井座長:大変貴重なご意見を、ありがとうございました。そのほかにはございま せんか。 ○角町委員:ちょっと視点を変えて歯科の立場で状況をお話して、お考えいただけれ ばと思います。私どもは現場で、在宅や施設での訪問診療を行っています。そこ はまさに無歯科医地区です。そういう状態はおそらく、離島・へき地と言わずと も、いろいろな場面にあるわけですが、それを離島・へき地という領域に特定し た場合に、まさにそこにはもっと深刻な問題が蓄積されていて、それを当たり前 のように受け止めてしまっている住民の方々がいるのではないかと思うわけで す。現在離島・へき地の問題を全国各地区でいろいろな形で調査あるいはモデル 事業の実践をされていると思いますが、歯科的な問題について考慮された地区は あるのでしょうか。また、今後そういうことまで含めて、医療のトータルの形と して、口の問題に関するレベルまでの医療を地域の中でうまく提供してあげると いうような連携、地域のさまざまな小さな歯科の医療機関を含めてネットを構築 していくような、そういう仕組みも合わせてお考えいただくと、最終的には地域 の中で、本当の意味の安心・安全を確保できるのではないかと思います。 ○渡邉委員代理:実態を十分理解していないので変なことを言うかもしれませんが、 医師の確保ということで、自前で育てるということと、リクルートということが あると思います。リクルートにつきましては、全国的な取組みというのも出てい るようには思いますが、現実の実態を見てみますと、先ほどのお話のように、各 県ごとにやっておられるような所が多いのではないかという気がするのです。本 当に少ない所では、離島の横道を飛び回って探してくるというような実態もある わけです。そういうことをしていますと、結局はこのアンケート調査にあります ように、一度離島に行ったら、なかなか戻れないのではないか、次の人が来るま で何とか頑張りたいけれど、というようなことになってしまうのではないかと思 いますが、もう少し全国的な取組みを。とりあえず斡旋センターを設けるという 程度ではなくて、もうひとつ踏み込んだ取組みが今度は必要ではないかと感じま した。 ○内田委員:1つは意見、1つは提案です。まず意見です。先ほど内藤委員から大変 貴重なご意見をいただいたと思っています。この10年間の医療費の削減、それ から新医師臨床研修制度とか、さまざまな外的要件も加わって地域医療がズタズ タになってしまった。それで、そこのところの立て直しとして4次とか5次の医 療計画、特に5次の医療計画ではへき地も含まれていますし、救急も入っていま すが、そこのところをどう地域で支えていくのかということの計画を立てるよう に出ていました。しかし、現実には金もない、人もいないということで計画の立 てようがない。あるいは、ほぼ破綻しかかっている所がかなり増えています。    それで、今回補正予算で通りました地域医療再生計画、これが非常に大きなイ ンパクトを与えると思っています。これは地域特性も生かしながら、100%の補 助ですので非常に使い勝手がいいのです。残念ながら、全医療圏にこれが行きわ たるわけではないのですが、当面非常に必要となっている、あるいは行き詰まっ ている医療に対してそこを賄うという形での手当てができるのではないかと、期 待はしております。ただ、診療報酬で十分手当てして健全な運営ができるという ことが本来のあり方ではないかと考えています。    次は提案です。今回お話を伺いまして、地域の貴重な情報がたくさんこの場に  出てきております。最初に申し上げた資料2の最後の表で、あまり取組みが進ん でいない、あるいは医師がいないという都道府県もあって、地域による温度差が かなり強いということも実感しております。ですから、この貴重な情報が集まっ ていることについて情報提供をしていただく。こういう取組みをしたら本当に進 むのだとか、そういうことがこの検討会の中から発信していければ本当に素晴ら しいと思っています。よろしくお願いいたします。 ○中村委員:へき地医療支援機構は、都道府県によって、非常にうまく運営されてい るところから、そうでないところまであります。それらを調査して、タイプ別に 分類した方がいいと思います。協議会を定期的に開いて、代診医も十分に派遣し、 教育からスカウティングまでやっているすごい県から、某病院の医師一人分の人 件費に消えてほとんど機能していない県まで、いろいろあるはずです。それらは、 どうしてそのような状態であるのか、きちっと分析する必要があると思います。 ○澤田委員:へき地を支える病院への支援、これは非常に大事な部分だと私も思いま す。それはまさにへき地診療所に対して代診医を派遣するへき地医療拠点病院の ことを指すわけですが、そこが今、財政的な基盤も脆弱となり、医師も非常に不 足する状況に陥っています。それで医師を派遣せよと言っても、なかなか難しい 話なのです。でも、そこに何とか国からの補助金等の支援をいただいて、そうい った厳しい中でも医師を派遣すれば、休業補償に相当するような費用を、できれ ばいま以上に手厚く支援していただきたい。それを制度的にやっていただくと、 支援機構として拠点病院に対して医師の派遣をお願いするに当たっても、非常に 依頼がしやすいわけです。現状では、多くの拠点病院は、自治体病院としての使 命を果たすべく必死で医師を絞り出していただいているといった、過酷な状況に ある拠点病院が非常に多いわけです。そんな状況でも頑張って医師を派遣し、代 診医を出している拠点病院には、手厚い財政的支援を何とか制度的にお願いした い。    全国でも差はあると思うのですが、実績に応じてそういう資金的な援助を国と しても是非考えていただきたいと思います。 ○梶井座長:休業補償のことを考えてほしいということですね。そのほかには、いか がですか。 ○奥野委員:これはデータとして欲しい部分なのですが。へき地医療といいますと、 皆さんはどうしても、へき地の診療所のイメージがあると思うのですが、実は、 へき地の診療所というのは意外と充足されていまして、例えば私の県ですと、へ き地診療所の空きはないのです。今へき地で非常に医師不足と言われているのは、 中小病院です。へき地医療の議論をするときに、イメージ的にはへき地診療所が ポンと出てくるのですが、是非そこを数字として、へき地診療所はどれぐらい充 足していて、へき地の病院はどれぐらいであるというふうにしていただく。診療 所というのは意外と優先的に配置していただけるのかもしれませんけれども、希 望される方がいらっしゃる。病院医療で疲弊された方が結構応募されたりする。 特に西日本などでは埋まっているのではないかと思いますので、これからへき地 医療のことを議論する上で、診療所とか病院とかというのを少し頭の中で分けら れたほうがいいので、できればそういう資料があればと思います。 ○鈴川委員:皆さんのご意見は非常にごもっともな意見だと思って聞いていました。 私たちの研究班でやっていて今まで出ていないので言うと、例えば「都道府県が へき地医療に対して何が必要ですか」という設問をした回答と、それを下ろした 市町村で「何がへき地医療で必要ですか」という設問の回答には結構温度差があ るというのがこのアンケート調査で出ています。そういうことをドクターに聞け ば、また別な温度差があると思うのですが、その辺をうまくまとめていくものと して、へき地の協議会なのか。私は、支援機構がきちんと機能するかどうかとい うのがその温度差の解消にもつながるのではないかという気もしますし、そうい う視点で1つ話があってもいいのかなと思いました。 ○前田委員:大変勉強になると思いながら聞いております。総務省のガイドラインな どが出されて、各県で地域レベルでの医療体制の見直しがどんどんなされており ます。へき地の中小病院で医師を積極的に確保するということと、こうした見直 しとが逆行する可能性もあります。ので、こうしたガイドラインなどとの整合性 も考えていくべきではないかと思います。    もう1つは、教育の件で先ほどお話がありましたが、地域枠で入学させまして 特別プログラムを課すという方向性も必要だと思いますが、地域医療はそういう 地域枠入学者に任せておけばいいという論調になることを私は非常に危惧しま す。ですから方向性としては、今まで大学が充分に取り組んでこなかった地域医 療教育の全体的な底上げをしていくことを考えていくべきではないかと思いま す。 ○梶井座長:ありがとうございました。まだご意見はあろうかと思いますが、時間が 多少オーバーしております。    ここで皆様のご意見を私なりにまとめてみたいと思います。いま前田委員、そ れから前野委員からも出ましたが、医師の育成をどうするのだということ。実は、 医学部、医科大学は80ございますが、その80の医科大学、医学部の教育の中で 地域医療が必修、必須となったのです。モデル・コア・カリキュラムというカリ キュラム、全大学はそれに従う、その中にこれが入りました。そういう意味では 地域枠の学生だけではなくて、全学生にそういうことを経験させる、そういうチ ャンスがこれからどんどん出てくると思います。実際に臨床研修ではそういうチ ャンスもございます。    いずれにしましても、医師の育成ということで地域枠の学生たちがどういう進 路を歩むかというのは、これからまだ少し時間がかかろうかと思いますが、どう 育てるかという部分では、各大学の地域枠の現状とか、教育の現状とか、それを 是非データとして私たちに見せていただいて、そこを議論してもよいのかなと思 いました。    次に、へき地医療支援機構の強化についてです。これは木村委員、澤田委員、 それから鈴川委員から出ましたけれども、実際に9次、10次とへき地医療支援 機構について盛り込まれていたわけですが、この間に都道府県による格差がかな り出てきているのではないかというようなこともございました。    もう1つ。今日の澤田委員、それから木村委員のように、へき地医療支援機構 の専任担当医師のあり方といいましょうか、どういう役割、機能を持たせるのか という意味で、これも是非、今後議論していく必要があるのではないかと思いま した。休業補償の件も出ました。このようなことを議論しながら、今後のへき地 医療支援機構の強化について、是非、今後議論していきたいと思います。    次にキャリアパスの問題です。これは村瀬委員から出ましたが、安心して勤務 し、生活できるシステムの構築をしていくことによって、医師だけではなくて、 医療関係者がへき地に勤務する、あるいは勤務したいという環境を作るという意 味では非常に大事であろうと思います。これについても、今後議論をしていきた いと思います。    それから、継続性という問題があります。従来は、そこでずっと医療をやって いくのだということが言われていたのですが、逆に、短期間でもいいからそこに 関わっていただく。大事なことは、うまくパスしていく、バトンタッチをしてい く。そこに新たな継続性、1人ではない、集団による継続性というのが生まれて こようかと思います。この辺りについても、今後の1つの議論の課題かなと思い ます。    内藤委員からは、へき地の医療機関はへき地の診療所だけではなくて、そこを 支える病院の問題もあるというお話がありました。確かに今、へき地の診療所に は、医師がむしろ集まり始めております。しかし、そこを支える病院の医師が減 っている。ですから、これは地域の面としてどういうふうに今後充足していくか。 診療所だけではなくて、病院も合わせて考えなければならないのではないか。こ れはやはり11次に向けて議論すべき大きな内容かと思いました。    角町委員からは、歯科診療のネットワークということも出まして、これもやは り重要な問題だろうと思いますので、今後協議していきたいと思います。    それから、医師のリクルート、あるいは医師の支援体制、これはもう市町村だ けではなかなか困難でありますし、都道府県単位でも難しい部分があるだろうと いうことで、これをネットワーク、全国的な取組みとしてどのように位置づけて いくかというようなお話もありました。    というようなことで、私自身が皆様のお話を伺いながら、今後へ向けた議論の テーマとして、こういうことがあろうかなと思いました。もちろん、これから議 論していく中で新たなテーマが出てくるかもしれません。それはしっかりと、皆 様方とともに、より実りある計画が打ち出せるように議論を深めていきたいと思 います。    これは事務局へのお願いです。先ほどいろいろご意見がありました中に、澁谷 委員から、都道府県の医療計画について、是非拝見したいということがございま したので、ご準備をよろしくお願いいたします。それから、へき地医療支援機構 の評価ということが中村委員から出ました。これは39の機構があろうかと思い ますが、そこに今後どのようにアプローチしていくかということは、少しご検討 願いたいと思います。まだ時間はありますので、是非、この検討会のいずれかの 段階でその結果を皆様に見ていただければと思います。    内田委員からは、全国の事例集的なものを作ってはどうかということが出まし た。この検討会の委員の先生方にもそういうことを次回にでもご説明いただいた り、ご紹介いただいたりしながら、先生方のところだけではなくて、いろいろな ネットワークをお持ちでしょうから、そういう中で、こういう例もある、こうい う例もあるというふうに出していただければ、いろいろな成功事例が。あるいは、 こういうところでうまくいかなかったという失敗事例といいましょうか、そうい うものが出てくる。 ○鈴川委員:事例については、CD-ROMに事例集が入っておりますので、数年前の ものですが、少し参考にしていただければと思います。 ○梶井座長:ありがとうございます。是非持ち帰ってご覧いただければと思います。 それ以外にもございましたら皆様、どうぞ積極的に出していただければと思いま す。    奥野委員からは、へき地診療所あるいは、それを支える病院の充足率、そうい うデータも示していただけないかということでした。こういうデータを示してほ しいということに対して、可能なものに関して是非お示しいただければと思いま す。    もう1つは私から皆様へのお願いといいましょうか、私の勝手な意見なのです が、今日も出ていましたように、47都道府県に同じことをやっていただこうと しても、それは無理だと思うのです。ですから、事例集も示しながら、それぞれ の県の特性に合った、へき地医療の確保・充足を目指すような、そういう取組み を11次では各県に投げかけていただければと思っております。そういうことも 見据えながら、これから検討していければと思います。へき地医療支援機構があ まり機能していないけれども、県としては非常に充足している、充実していると いう県もございます。それは例えば、その地元の大学が本当にへき地医療を一生 懸命やってくれている、そういう大学もあります。今後そういうことも議論の中 に含めながら、皆様のより深い議論を進めていただければと思います。    最後は私の勝手な意見を言ってしまいました。今日は私の進行が十分ではあり ませんでしたので、10分オーバーしてしまいました。申し訳ございませんでし た。それでは次回以降の連絡について、事務局からご説明をお願いいたします。 ○医療確保対策専門官:第2回の会合の日程につきましては、8月下旬から9月上旬 の辺りを目安として、今後再度調整をさせていただきたいと存じます。また、本 日の議事録につきましては、原案が完成し次第、各委員にご確認いただいた後、 厚生労働省ホームページにて公開させていただきます。 ○梶井座長:本日は長時間にわたり、ご議論ありがとうございました。次回もよろし くお願いいたします。 (了) 照会先:厚生労働省医政局指導課  救急・周産期医療等対策室   助成係長:田川 幸太  電話:03−5253−1111(2550)