09/07/09 第20回今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会議事録 第20回 今後の精神保健医療福祉のあり方等に関する検討会(議事 録) 1.日時:平成21年7月9日(木) 10:00〜12:30 2.場所:はあといん乃木坂 フルール 3.出席構成員: 樋口座長、伊澤構成員、上ノ山構成員、大塚構成員、小川構成員、門屋構成員、 坂元構成員、佐藤構成員、品川構成員、末安構成員、田尾構成員、高橋構成員、 谷畑構成員、寺谷構成員、長尾構成員、中島構成員、長野構成員、野沢構成員、 広田構成員、町野構成員、三上構成員、山根構成員、良田構成員   厚生労働省: 木倉障害保健福祉部長、蒲原企画課長、福島精神・障害保健課長、 塚本障害保健対策指導官、林課長補佐、野崎課長補佐、矢田貝課長補佐 4.議事  ○ 地域医療体制のあり方・入院医療体制のあり方について 5.議事内容 ○樋口座長  おはようございます。時間になりましたので、ただいまより第20回の「今後の精 神保健医療のあり方等に関する検討会」を開催いたします。構成員の皆様におかれま しては、ご多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。  それでは、まず本日の出欠状況等について、事務局からお願いいたします。 ○野崎課長補佐  本日の出欠状況等についてご報告いたします。まず伊藤構成員より、ご欠席とのご 連絡をいただいております。また、長尾構成員、町野構成員から少し遅れるというご 連絡をいただいております。  なお、木倉障害保健福祉部長、蒲原企画課長も、じきに参ると思いますが、所用に より少し遅れておりますので、予めご了承いただければと思います。  本日の出欠状況等については、以上でございます。  なお、クールビズ励行期間ですので、上着の着用はせず、暑さをしのいだ格好で臨 んでいただければと思います。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございます。それでは、早速議事に入りたいと思います。  本日のテーマは、皆様の議事次第にございますように、「地域医療体制のあり方・ 入院医療体制のあり方について」という総括的なテーマでございまして、まず本日の 進行でございますが、お手元の資料に関しまして、事務局から全体の説明をしていた だいて、その後にご議論をいただこうと思っております。  それでは、「地域医療体制のあり方・入院医療体制のあり方」について、資料に基 づいて、事務局から説明をお願いします。 ○林課長補佐  それでは、前回に引き続きまして「地域医療体制のあり方・入院医療体制のあり方 について」という議題につきまして、資料を説明させていただきます。  2ページをお開きいただきますと、「入院医療における病床等の機能(各論)」とな っております。また、本日、後ろのほうで、「目標設定について」、この2つの小さな テーマについてご議論いただきたいと思います。  病床等の機能の「総論」については前回ご議論いただきまして、3ページにござい ますような論点についてご議論いただいたところでございます。  4ページでございますけれども、「精神障害者の治療・生活の場についての検討」、 医療ニーズ、生活ニーズ、年齢など様々な状態像の方がいらっしゃるということは前 回もお示ししたとおりでございますけれども、こういった方々がどういった場で生活、 治療を受けられるかということについて、右側に例をお示ししております。身体合併 症を有する方は対応が可能な精神病床、一般病床、療養病床等で治療を受けられる。 また、精神症状によって入院治療を受けられる方については、精神病床で入院治療を 受けられる。それ以外のADL、IADL、あるいはご高齢の方はそういった状態像 に応じて適切な場で、外来在宅治療とともに適切な生活の場で生活をされる、こうい ったイメージではないかと考えております。  5ページでございますが、「精神病床入院患者の疾病別内訳の推移」で、最近の入 院患者数の推移を見ますと、統合失調症、認知症につきましては、大きくその動向が 全体としては合計はあまり変わっていないわけですけれども、統合失調症、認知症の 動向が変わってきておりますので、統合失調症、認知症、それ以外という3つに分け てご議論いただきたいと考えております。  7ページ、「精神病床の統合失調症入院患者数の将来推計」でございますけれども、 前回お示したのと同じでございまして、平成17年までは実績を示しておりまして、 19万6,000人の入院患者さんがいらっしゃいますけれども、ビジョンの終期に当たる 平成26年には、これが今の状況を延ばしていった数字としても17万2,000人まで減 少することが予測されており、その後もどんどん減少していくことが予測されており ます。  8ページのデータも以前にもお示しをいたしておりますが、精神病床入院患者の入 院状況として、「受入れ条件が整えば退院可能」という方がどの疾患でも一定割合い らっしゃいますし、また、居住先・支援が整った場合の退院の可能性を見ていただい ても、状態の改善、居住先・支援が整えばといった前提はございますけれども、近い 将来退院可能である方が相当数いらっしゃるという状況が明らかになっております。  9ページも前回の資料と同様でございますが、状態像ごとにその方々が、主治医の 方々に退院の可能性があるかどうかということについてどのように評価をされてい るかということを見たものです。身体合併症のある方や、下の分類の定義に示すよう な精神症状をお持ちの方は退院の見込みはないという評価を受けていらっしゃる方 が比較的多くなっておりますが、ADLやIADLの障害を持っていらっしゃる方に ついては、その度合いが低くなり、また、それらの症状がいずれない方々については 退院の見込みがないと評価される割合は一層少なくなっております。  この1〜5までの状態像の方々の患者数の割合が右の数字となっております。 10.5%〜22.1%、右の数字がこの5つの分類のそれぞれの患者さんの数の割合でござ いますけれども、これをもとに年齢階級別にこの分布を更に細かく見たものが下の10 ページの「症状等による分類ごとの患者数割合」でございます。  入院3か月以内の患者さんにつきましては、こういった状況とはまた別に入院治療 を必要とすることも考えられますので、別に集計をいたしまして、入院3か月以上の 方についてのみ1〜5までの集計をしておりますけれども、若い方であれば、入院3 か月以内の方が比較的多いのに対しまして、年齢を追うごとに(1)の身体合併症の方、 (3)のADLの障害をお持ちの方はむしろ増えていくといったような傾向がございま す。  この10ページのデータと、先ほどお示しをしました7ページの年齢階級別の患者 数の将来推計、このデータをかけ合わせて、今度状態像別に今後どのような患者さん の将来推計になるかというのをお示ししたのが11ページでございます。  分類の定義につきましては、今、前の2ページで見ていただいたものと同じでござ いますけれども、今後、患者さんの数が総体としては減っていくという中で、例えば (1)身体合併症をお持ちの方、(3)のADLのうちの高齢の方、(4)についてもIADLの 困難な方の中でも高齢の方については、これから当面の間、増えていく傾向があって、 その後、減っていくというようなことが予測されます。また、それ以外の状態像の方 については今後も減少が予測されるという状況でございます。  12ページ、検討1ということで、ここまでのまとめを示しております。 ● 統合失調症の入院患者数については、地域移行等の努力が現状通りであった場合、 今後減少することが予想される。 ● 一方、ADLやIADLの障害を主たる原因として入院しているなど、居住先や 支援が整えば退院できる患者が存在することを踏まえ、福祉サービスの供給量を 増加させ、また、精神科救急医療、訪問看護等の地域生活を支える医療の充実を 図り、入院患者数を、現状がそのまま推移した場合の予測値よりも更に減少させ ることを目途とすべきではないか。 ● 統合失調症の入院患者数は、平成17年に19.6万人であったが、具体的にはこれ を改革ビジョンの終期に当たる平成26年までに15万人程度まで減少させること ができるよう、各般の施策を講じるべきではないか。また、その達成状況も踏ま えつつ、平成27年以降においても、各般の施策を展開することにより、より一 層の減少を目指すべきではないか。 ● また、同時に、高齢精神障害者については、現にその多くがADLやIADLの 支援を要する状況であることを踏まえて、適切な生活の場を確保することが必要 ではないか。 といたしております。  次に認知症でございます。  まず入院患者数の状況、資料はこれまでにもお示しをしておりますが、15ページを ごらんいただきますと、精神病床に平成17年に5万2,000人、その他の病床も含め ると8万人余の方が認知症を主傷病として入院していらっしゃいます。  また、「認知症高齢者の日常生活自立度」II以上の高齢者の推計人数、これは要介 護認定のデータを用いて推計をしているものですが、例えば2005年には日常生活自 立度II以上の方が169万人である者が、今後2040年頃に向かって急激に増加してい くことが予想されております。  17ページが、介護保険施設や居住系の事業所の状況でございますけれども、その定 員数は近年伸びてきておりまして、合計すると約100万人ぐらいの方が介護保険系の 施設等に入所をしていらっしゃいます。  その方々の認知症の状況が、下の18ページでございますが、ランクIII以上という 方が、どの施設でも6〜8割ぐらいを占めるといったように非常に多くなっていると いう状況でございます。  19ページは、認知症による精神病床への入院患者の状態でございますけれども、横 軸が身体合併症の状況、縦軸がADLの状況でございまして、大まかなところとして は、身体合併症を有していて、その中でも特別な管理、すなわち入院治療が適当な程 度の管理を要する方が25%いらっしゃるということでございます。また、縦に見てい ただくと、ADLが直接介助を要する程度の状況であるという方が62.3%いらっしゃ るということでございます。そのクロス集計をお示ししております。  20ページが、退院可能性とその要因でございますけれども、精神病床に入院されて いる認知症の方で、退院の可能性はないと主治医が評価されている方が約4割いらっ しゃいます。この中でその理由を見ますと、セルフケア能力の問題と評価されている 方が約半分。そのほか迷惑行為、重度の陽性症状(幻覚・妄想)、他害行為の危険性 といった理由も相当数ございます。統合失調症の調査を同時に行っておりますので、 どうしてもその他のところは増えてしまっておりますが、いずれにしましても、セル フケア能力の問題のところが数多くなっておりまして、これは医学的に入院して治療 しなければならないというよりは、むしろ生活の場、その方の生活をどう支えていく かというような視点での入院となっている方も多いという状況が見てとれるかと思 います。  また、21ページ、今度は退院可能性があると評価をされている方がなぜ退院できな いのかという理由を見たものでございますが、転院・入所の順番待ちであるとか、家 族の了解が得られないといった理由の方が多い状況でございます。  22ページのデータも以前にごらんいただいたものです。身体合併症の状況としては、 4分の1ぐらいの方が入院治療が適当な程度の身体合併症をお持ちというお話をい たしましたが、その種類としては、循環器疾患、内分泌・代謝疾患、神経系疾患、呼 吸器疾患、消化器疾患等様々な身体合併症によるという理由が明らかになっておりま す。  23ページは、認知症についてご議論いただいたときにお示しをしたイメージでござ いますが、精神科の専門医療の役割としては、鑑別診断から治療導入のところ、BP SD、俗に急性期の治療をするところ、そして急性期の身体合併症の治療にかかわる ところ、このようなところが認知症疾患医療センターを始めとする専門的な医療機関 の役割と考えております。このほかにも地域医療において、認知症の患者さんの症状 への医療的な支援、身体疾患の診療等を支えていく部分、そして慢性期の身体合併症 を抱えられて、最終的にはお看取りするというところに至るまでの医療的な支援が当 然必要でございます。  また、介護の役割としては、施設あるいは在宅の事業所、様々な役割があるところ でございます。  24ページは、今の認知症の有病率に関する統計の状況でございますけれども、昭和 55年〜平成2年に行われた調査に基づく全国推計以降は認知症の有病率の推計が行 われておりません。先ほどの日常生活自立度についても、その定義が曖昧であるとい ったご指摘もあるところでございまして、現在平成22年度に向けて医学的な診断基 準に基づく有病率の把握であるとか、認知症に関する医療・介護サービス資源利用に 関する実態調査等が行われているところでございます。  これらを踏まえて検討(2)認知症に関するまとめでございます。 ● 我が国においては、人口の高齢化により、今後も認知症高齢者の増加が予測され る。 ● 認知症高齢者に対する支援については、(1)かかりつけ医による認知症に対する外 来医療、(2)ADLの低下やIADLの著しい低下に対する介護的支援の提供、(3) BPSD(認知症)の行動・心理症状)に対する介護的支援・医療の提供、(4)身 体疾患に対する医療の提供に大別される。 ● (3)のうち、BPSDの急性期に対する医療の提供が、精神科による専門医療の主 な役割として位置付けられている。 ● また、(4)については、BPSDが入院を要する程度にある場合において、BPS Dに対する医療の提供とあわせて、 (ア) 総合病院精神科、認知症疾患医療センター等の専門医療機関が急性期の 重篤な 身体合併症への対応を担い、 (イ) 精神科病院等が慢性期の身体合併症への対応を中心にその役割を担うこ とが求められている。 ● 一方、認知症を主病として精神病床に入院している患者数は近年増加しており、 その中には、退院先の確保待ちや、セルフケア能力の支援等のため、必ずしも入 院による治療を要さない者も存在する状況が明らかになっており、医学的に精神 病床への入院が必要な者は、入院患者のうち一定割合であるものと考えられる。 ● このため、平成22年度までのものとして現在行われている、認知症の有病率や BPSDの発生頻度等に関する調査を早急に進め、その結果に基づき、認知症の 専門医療機関の機能を更に明確化・重点化する観点も踏まえて、精神病床(認知 症病棟等)や介護保険施設等の入院・入所機能とその必要量等を検討すべきでは ないか。 ● その際、認知症高齢者の心身の状態に応じた適切な支援の提供を確保し、また、 精神科の専門医療を機能させるためにも、入院治療を要さない者が入院を継続す ることがないよう、介護保険施設等の生活の場の更なる確保と、認知症に対応し た外来医療及び介護保険サービスの機能の充実について検討するべきではない か。 ● また、あわせて、精神症状の面では入院を要する程度にないが、急性・慢性の身 体疾患のために入院を要する認知症高齢者に対し、適切な入院医療の提供を確保 する観点から、一般病床及び療養病床の認知症対応力の強化のための方策につい ても検討すべきではないか。 といたしております。  28ページからが、その他の疾患についてでございます。29ページに入院患者数の 推移を示しております。全体的に見ますと、平成8年以降、若干減少傾向にあります けれども、中を見ていただくと、例えば気分(感情)障害(躁うつ病を含む)の入院 患者さんについては増加してきておりますし、この間、外来患者さんについては、爆 発的に増加をしているという状況がございます。  それを踏まえた30ページのまとめでございますが、 ・ 統合失調症・認知症以外の疾患による精神病床への入院患者数は、近年やや減少 傾向にある。 ・ 一方で、この中には、気分障害など患者が増加している疾患や、依存症等、今後 も適切な治療・支援が不可欠な分野が含まれている。 ・ このため、統合失調症・認知症以外の疾患による精神病床への入院患者数につい ては、当面、これまでと同程度と見込むことでよいか。 といたしております。  ここまでが、3つに分類をした上での入院患者数についての考え方を皆様にお諮り する部分でございます。  それと密接に関連する論点として「福祉サービスの確保について」を、32ページ以 降にお示しをいたしております。  福祉サービスについては、昨年11月までに精力的にご議論いただきましたところ でございまして、その中で、様々よいアイディアをいただいて中間まとめに反映をい たしておりますけれども、今回はそのご議論そのものというよりは、福祉サービスの 確保の状況がどのようであるかということを中心に資料をまとめております。  33ページが「障害福祉サービス利用者に占める精神障害者の推移」でございまして、 全体の障害者のサービスの利用の人数としては、平成19年11月から1年半の間に 15%増えているのに対して、精神障害者の方は42%同じ時期に増えておりまして、精 神障害者のシェアが増えているという状況でございます。  居住系サービスについて見ますと、34ページのような目標を設定して、グループホ ーム、ケアホームの整備を進めておりまして、若干遅れぎみではございますが、平成 23年度には8万の定員数を確保するという目標で進めているところでございます。  35ページが、その中でどれだけの方が精神障害者であるかということでございます けれども、全体4万8,000人入所して利用されている中で精神障害者の利用者数は約 1万2,497人ということで、25.8%が精神障害者でいらっしゃいます。  36ページが「居住系サービスの推移(精神障害者)」ということで、障害者自立支 援施行前の利用者数と施行後の利用者数、これを旧体系と新体系合せたものを比べて おりますけれども、2年6か月で約1.5倍、6,000人分増えているという状況でござ います。  また、37ページが「日中活動系サービス、在宅サービスの推移(精神障害者)」で ございますが、こちらにつきましても、自立支援法施行前に3万人程度であったもの が5万5,000人程度ということで、2年6か月で1.8倍(約2.5万人分純増)をして おります。  また、居宅介護利用者数につきましては、38ページでございますが、障害者全体で 約10%増えているところ、精神障害者で約25%増えておりまして、これについても 精神障害者の利用が増えてきていると認識をしております。  39ページは、「就労系サービス」でございますが、こちらにつきましては、利用者 数が障害者全体で8割伸びており、精神障害者についても86%伸びているということ で、これも利用者数が伸びているということでございます。  40ページが「精神障害者地域移行支援特別対策事業(17億円)」、事業のご紹介は、 これまでからもいたしておりますけれども、その実績が41ページでございまして、 平成15年度からその前身となるモデル事業や退院促進支援事業を含みますけれども、 実施自治体数が増えてきておりまして、今年度はすべての都道府県で行われておりま す。また、圏域数としても、その割合が増えてきておりまして、事業の対象となった 方は、平成20年度では約2,000人の方が事業の対象となり、その中で745人が退院 をされているという状況でございます。  42ページ、「居住系サービス等の確保についての考え方」でございます。 ● 精神障害者に対する障害福祉サービス量は平成19年11月と比べると約4割増加 し、全サービス利用者延べ数に占める精神障害者の割合も平成19年11月の8.3% から平成21年3月には10.2%に上昇している。 ● 特に、居住系サービスについてみると、法施行後の約2年半の間で、精神障害者 の利用者数が、約1.5倍に増加(旧体系サービスからの移行分を差し引いて約 6,000人の純増)している。 ● 居住系サービス利用者に占める精神障害者の割合は上昇傾向にあるが、仮にこれ を26%で一定とすると、障害福祉計画における居住系サービスの整備目標(合 計:8.0万人分 平成20年度末比:3.2万人分増)が達成された場合、精神障害者 の居住系サービス利用者数は、平成20年度末よりも約8,000〜8,500人程度増加 すると見込まれる。 ● 今後、新たな目標値に基づいて統合失調症患者の地域生活への移行を更に進めて いくために、障害福祉計画に基づく障害福祉サービス見込量についても、その上 乗せについて検討を行うとともに、計画的な整備を一層進めていくべきではない か。  5つ目の「●」については、これまでにも書いているものと同じ表現でございます。  44ページからが、こういった各論の状況を踏まえて、目標設定をどのようにしてい くか、このビジョンの目標というものがあるわけでございますけれども、これを後期、 どのような目標に向けてやっていくかという論点でございます。  45ページが、精神保健福祉施策の改革ビジョンにおける目標値でございまして、基 本方針において、受入れ条件が整えば退院可能な者、約7万人について、10年後の解 消を図るということが書かれておりまして、目標値としては、(1)国民意識の変革の達 成目標として、精神疾患は生活習慣病と同じく誰もがかかりうる病気であることにつ ていの認知度を90%以上とするということ。  そして、(2)の精神保健医療福祉福祉体系の再編の達成目標として、各都道府県の平 均残存率(1年未満群)を24%以下。各都道府県の退院率(1年以上群)を29%以 上とする。  この目標の達成によって、2015年には約7万床相当の病床数の減少が促されるとい うことになっております。  まず(1)の国民意識の変革の達成目標でございます。46ページは、その達成状況の資 料でございますが、平成9年には、「誰でも精神障害者になる可能性がある」という 問いに対して「そう思う」と回答した割合が51.8%であったものが、平成18年には、 「精神疾患は誰もがかかりうる病気である」という問いに対して「そう思う」「やや そう思う」と回答された方は82.4%まで増えてきているということでございます。  しかしながら、47ページにございますように、疾患別の理解の状況はかなり異なっ ておりまして、例えば統合失調症のシナリオをお見せして、「その方がどのような病 気だと思いますか」とお尋ねしたところ、正しくお答えいただけた割合が4.8%とな っておりまして、他の精神疾患と比べても相当に低いという状況でございます。  48ページからが平均残存率、退院率についてのご説明でございます。48ページは この目標を設定したときのデータでございますけれども、1つ1つの点が各都道府県 の平均残存率、退院率でございまして、平均残存率を下げていく、横軸でございます が、左のほうに向けていく。そして退院率を上げていく、縦軸に向かって上のほうに 向けて動かしていくということで、各都道府県の状況を左上のほうに動かしていくこ とが目標となっております。  平均残存率・退院率の定義は49ページにお示ししているとおりでございます。  その達成状況でございますが、50ページに全国平均での推移を掲載しておりますけ れども、平均残存率については、若干年によるブレはありますけれども、減少する傾 向がございます。また、退院率につきましては、特に平成16年以降、上昇するとい う傾向となっております。  都道府県別にごらんいただきますと、51ページに平成16〜18年の平均残存率の平 均を掲載しておりますけれども、都道府県別にはいくらかバラツキがありまして、全 国平均では29.7%となっております。また、そのビジョン以前の平成13〜15年の平 均との比較をごらんいただきますと、多くの都道府県で平均残存率が低下する、改善 する傾向がございますけれども、一部逆に増加したという県もございます。  退院率についても、下をごらんいただきますと同様でございまして、ごらんのよう なバラツキがございます。また、変化を見ていただくと、多くの県で増加をしている のに対して、一部の県では逆に減少している県もございます。  この目標設定そのものが内在する課題を少し53ページ以降ご紹介したいと思いま すが、まず平均残存率につきましては、確かに減少してきているわけですけれども、 同時に新規の入院患者数が増えてきております。新規の入院患者数が増えていけば平 均残存率がいくら下がっても、在院患者数に与える効果という意味では打ち消し合う わけでございまして、平均残存率が下がったら、すなわち在院患者数が減るというこ とではないということがまず1つの課題でございます。  54ページ、〈疾病構造による影響〉でございますけれども、認知症疾患治療病棟の 残存率が精神病床全体よりも高くなっておりまして、それぞれの疾患について残存率 を下げるという努力が行われていたとしても、その疾病構造が変化していくと残存率 に影響が及ぶということもございます。したがって、目標の達成状況の評価に当たっ ては、原因の分析等を行うためには疾患ごとの状況をきちんと把握する必要があると 考えております。  55ページ、平均残存率・退院率の課題〈転院・死亡の取り扱い〉」でございますけ れども、右上を見ていただくと、退院率は過去と比べると少し上がってきていること をお話いたしましたが、その中で転院や死亡を退院に計上しない場合、転院や死亡以 外の退院についてだけ見てみますと、その上昇の度合いが少ないと申しますか、平成 11年、12年頃と平成18年の数字はあまり変わっていないわけでございます。  都道府県ごとに見ていただいても、下のグラフでございますけれども、横軸のすべ ての退院を仮に含めた場合の退院率が高いものの、点線で囲ったように、転院・死亡 を退院から除いた場合には、真の在宅への移行の割合はさほど多くないというような 県も見られているところでございまして、残院患者数の減少の状況を評価するために は、退院率だけを見ているというのは、それはどこに退院したかということも踏まえ ないといけないということでございまして、残院患者数が減っているかどうかをあわ せて見ていかないといけないと考えております。  56ページが「精神病床入院患者の状況」、いわゆる7万人問題が根拠となっている ものでございますけれども、「受入れ条件が整えば退院可能」と評価をされている患 者さんが、3年ほどの調査で約7万人いらっしゃるというものでございます。  特に統合失調症についてだけ見たものが57ページでございますけれども、統合失 調症の患者さんが19万5,000人入院されている中で、その中で「受入れ条件が整え ば退院可能」の方は4万3,700人ということでございます。7万人の中で統合失調症 の方は約4万人余ということでございます。  この7万6,000人についての評価でございますけれども、58ページ、このデータは 次のような特徴を有しております。  まず各調査年、3年に1回の10月のある特定の1日の入院の状況を調査している ということ。  それから「受入れ条件」について詳細な定義がなく、「受入れ条件」の考え方や「退 院可能」な判断が回答者の主観によっているということでございます。  このような特徴から、例えば入院医療の急性期への重点化や精神医療の質の向上に より、退院へのハードルが下がれば下がるほど回答者が退院できると思えるようにな ればなるほど、かえってこの数値は大きくなるといったことも予想されますし、また 患者調査は3年に1回しか実施できないこともあって、その結果の公表にも時間がか かるということがございますので、今後の目標値としては、より客観性が担保され、 かつ施策の効果を速やかに示せるような新たな指標を用いてはどうかと考えており ます。  59ページ以降が、精神病床数に関してのデータでございます。  病床数は若干減少傾向にあるものの大きく変わっていないわけでございます。  60ページが「医療計画における基準病床算定式の変更」、これはビジョンに基づい て行われているわけですが、平均残存率や退院率の目標値をこの算定式に加えること によって、基準病床の数を減らしていくという取組が行われております。  具体的には61ページでございますが、平成20年の既存病床数と基準病床数の状況 でございますが、既存病床数が基準病床数よりも多くなっている。つまり病床過剰に なっているという県が大半を占めております。  平成20年に多くの県で医療計画が見直しをされておりますけれども、その前後で、 先ほど60ページでお示しした基準病床算定式によって病床数を見直しておりますの で、62ページの上半分にありますように、このときの見直しによって基準病床数が減 少した県が非常に多くなっております。  その結果として、62ページの下にございますように、グレーのところで、それまで は病床不足であったという県が14都道府県あったのですが、基準病床数が減少した 結果、病床不足となっている県は既に5つの県しかないということでございまして、 これ以外の県では、原則として病床の増加ができなくなっております。  63ページ、「精神保健医療福祉の改革ビジョン」における7万床をどう達成してい くかという当時の資料でございますが、基準病床数が減っていくということで、2010 年には基準病床数が31.7万床まで減るということを当時予測しておりました。現在 既に基準病床数については31万1,000まで減っているところでございます。  64ページが、病床数についてのまとめでございますけれども、改革ビジョンにおい ては、残存率・退院率の目標を達成することにより、基準病床数が減少することをも って病床数の減少が促されるとしておりました。  平成18年4月の新たな算定式に基づいて、各都道府県において基準病床数の見直 しを行った結果、平成20年4月時点での基準病床数の全国の総数は、改革ビジョン で示した2010年時点の推計を下回る水準となっています。  一方、精神病床数そのものはほとんど減少していないということもございます。  各都道府県の医療計画においては、「基準病床数」として、改革ビジョンで示した 必要病床数と概ね同等な値が設定されておりますので、各都道府県においては、これ を基に入院医療体制を構築していくこととなるため、この基準病床数については、今 の目標を前提として施策を推進するということでよいかということでございます。  また、疾患別の状況の把握や、他の目標の策定・進捗状況等を踏まえて、将来的に、 医療計画の基準病床数算定式の更なる見直しについても検討を行うこととしてはど うか。  このようにまとめております。  ここまでのまとめが、残り4ページでございます。「目標の達成状況の評価・目標 設定に関する考え方」でございまして、まず目標の達成状況でございますが、「国民 意識変革の達成目標」については、一定の成果が認められておりますけれども、統合 失調症に関する理解が遅れているなど精神障害に関する国民の理解が未だ十分でな いと考えております。  次に「精神保健医療福祉体系の再編の達成目標」でございますが、平均残存率の趨 勢としては減少傾向にあり、また退院率の目標についてはビジョン策定後、上昇傾向 にあるということです。  これらの指標、特に退院率については転院等の頻度と関連があり、転院等を退院に 計上しない場合には、その上昇の度合いは小さくなるという制約がございます。  改革ビジョンでは、上記の目標の達成により、精神病床数の減少が促されるとして おりまして、平成20年4月時点での基準病床数の全国総数は改革ビジョンで示した 2010年時点での基準病床数の試算を下回る水準となっているものの、改革ビジョン策 定以降、精神病床数そのものはほとんど減少しておりません。  なお、データの制約によって、最近のデータがわからないというようなことについ ては留意が必要でございます。  66ページ、「現在の目標設定の評価」でございますが、 ● 精神疾患に関する普及啓発については、精神障害者の地域移行を円滑にする、早 期支援に結びつけるといった効果は期待されますけれども、現在のような国民一 般を広く対象とする普及啓発の目標では、その効果を把握することが難しいと考 えております。 ● 在院患者数は新規入院患者数にも影響を受けるため、平均残存率、退院率による 目標は、必ずしも在院患者数の減少の指標とならないおそれがある。 ● 疾患によって患者の動態が大きく異なっている一方で、平均残存率、退院率など、 精神病床全体を包括した目標設定のみでは、統合失調症、認知症等、様々な分野 の施策の効果が反映されにくく、進捗の管理が難しいとの指摘がある。 ● 改革ビジョンにおいて、10年後の解消を図るべきとした「受入れ条件が整えば退 院可能な者7.6万人」の指標については、3年に1回の頻度で行われる患者調査 における主観的な調査項目に基づいており、これを経年的な施策の根拠とし、そ の効果や達成状況を適時に把握することは困難である。 ● 精神病床数については、入院医療の急性期の重点化や長期入院患者の地域移行な ど、その減少に資する施策を講じてきたものの、都道府県による医療計画に定め られた基準病床数の達成に向けた取組や、個々の医療機関による患者の療養環境 の改善、人員配置等の充実を通じた医療の質の向上のための取組を直接に支援す る施策は十分に講じられていない。  これらを踏まえて、67ページが、これからの目標設定についての考え方でございま す。 ● 改革ビジョンの前期5年間の取組を踏まえ、後期5年間において改革ビジョンの 趣旨を更に実現できるよう、特に精神保健医療福祉体系の再編のための取組を強 化すべきとの認識の下で、具体的目標についても、施設の実現に向けた進捗管理 に資するよう、以下のような観点から見直すこととしてはどうか。  ◆ 統合失調症、認知症の入院患者数をはじめとして、施策の体系や、患者像(入 院期間、疾病、年齢)の多様性も踏まえた適切な目標を掲げるべきではないか。   ・「受入れ条件が整えば退院可能な者」に代わる指標として、「統合失調症による 入院患者数」を、特に重点的な指標として位置付け目標値を定めるとともに、定 期的かつ適時に把握できる仕組みを導入してはどうか。   ・認知症については、書いてございますとおり、現在は調査がまだ行われており ませんので、数値目標は設定できないわけですが、スケジュールを明らかにして、 適切な目標値を定めることとしてはどうかと考えております。  ◆ 障害福祉計画における目標値に(退院可能精神障害者数)についても、上記の 「統合失調症による入院患者数」に係る新たな目標値や、障害福祉サービスの整 備量に関する目標との整合性を図りつつ、見直しを行うべきではないか。  ◆ また、医療計画の「救急医療等確保事業(5事業)」における目標値等を踏ま えつつ、地域ごとに、精神医療体制を構築する際に活用できる目標設定について も検討を行うべきではないか。 ● 上記のアウトカムに関する目標に加え、施策の実施状況等のプロセス評価につい ても適切に組み合わせて、より効果的に施策の進捗管理を行うべきではないか。 ● 精神病床数については、改革ビジョンに基づき設定された、医療計画における基 準病床数を誘導目標として引き続き掲げるとともに、都道府県や個々の医療機関 による取組を直接に支援する具体的方策について検討することとしてはどうか。  68ページが新たな目標、平成26年度までのイメージでございますけれども、まず、 Iの改革ビジョンにおける目標値目標、平均残存率、退院率については、基準病床数 算定式の基礎となる指標でございますので、今後もこれは継続して用いていくことを ご提案しております。  また、IIの部分でございますが、新たな目標値として統合失調症による入院患者数: 約15万人を掲げ、認知症に関する目標値については、平成23年度までに具体化する というスケジュールを掲げております。これらの目標に加え、施策の実施状況に関す る目標、より具体的なものを今後設定するというイメージを例として示しております けれども、こういったものを設定するという考え方として、普及啓発の施策に関して も具体的な施策との関連、また、それぞれの領域との関連が重要でございますので、 このレベルで設定をするということではあろうかと考えております。  以上、私どもから、今回、目標設定等について、たたき台となる案をお示しいたし ておりますので、これを踏まえて先生方にご検討いただければと考えております。 ○樋口座長  どうもありがとうございました。かなり中身の濃い分析と、これまで行ってきたデ ィスカッションも踏まえて、最終的には、今後5年間、平成26年度までの新たな目 標設定というのが最後のところで書かれておりまして、今日は全体をご討議、これか らいただきたいと思っております。1つ1つ区切ることはないと思いますので、全体 を通してのご意見をいただいてまいりたいと思います。  1つだけ、予めお断りをさせていただきますが、いつもの会場ですと、多少余裕が あって、30分とかというのをとれているのですが、ここは次の予定があるので、12 時半には必ずここをあけてくれと言われているそうでございますので、その点だけは ご協力のほどよろしくお願いいたします。  それではどうぞ。どうぞ、長尾構成員。 ○長尾構成員  広田さんの激励を受けておりますが。いろいろ広範に資料を出していただいている のですが、35ページ、36ページ、37ページのあたりですけれども、これを見させて いただくと、自立支援法になって急激にサービス量が増えたという報告、居住が1.5 倍になっているというお示しで、いかにも自立支援法で非常に効果が上がっているよ うなデータが示されているのですけれども、実際に自立支援法になってからの我々の 実感としてそういう感じが持てていません。  以前の検討会の中でも、社会復帰施設の状況等をプレゼンさせていただいたときの 私の調べた部分で、36ページのグループホームですが、障害者自立支援法施行前とい う部分が、四千八百なにがしになっているのですが、精神保健福祉資料、いわゆる630 調査の18年の部分を見てみますと、これが7,657になっているということがありま すので、その差は約3,000あるわけですね。そういうものがあるので、実際これを現 実的な数字として本当にこうなっているのかということが若干疑わしい。  それから、37ページの日中活動系サービス、これも非常に増えている。ある部分は これは増えているかもしれませんけれども、これについても、小規模作業所、これは 恐らく各自治体単位でこれまで補助がされていた分が、これには含まれてないのでは ないか。そこから就労継続支援Bとか、そういう例に行った部分が相当あるのではな いか。そういうことからいえば、この数字もちょっと疑わしいのではないか。こうい う部分と、そういう地域生活支援事業の部分を含めて、データとして、本当に事実が どうなのかということをもう少しきちんと調べていただきたい。  それから、確かに増えているところもあるのかもしれないのですけれども、実態と して、私の居住区の部分はほとんどそういう状況ではない。兵庫県でも神戸市にも確 認しましたが、これはほとんど増えてない。どこで増えているのだということがある ので、そういう全体の部分も地域別の全国集計でこれだけ増えましたよという全体の 各地域でこれだけ増えているのだというようなことをきちんと把握して示していた だかないと、これは非常に誤解を生む。いかにもこれが増えているような錯覚を、自 立支援法で厚労省のほうは、これだけ進みましたよと言いたいのかもしれないけれど も、これが事実なのかどうかということを確認したいと思います。  それから、目標設定で各疾患別に分けていくというのはある部分ではいいと思うの ですけれども、統合失調症の15万人程度という数字が出ていますが、本来、目標設 定は、本当はこうこうこういうものがあって、居住の部分とかサポートの部分とか、 いろいろな施策はこれだけあって、それによってこれだけになりますよというのが本 来の目標の立て方だしやり方だと思うんですね。ただ単に目標設定だけがぽんと出て きて、それに向かって努力しましょうというのではなく、本当はこれこれこういうこ とをやるから、これだけにしましょうというのが本来のやり方であるので、そういう こともいかがなものかというふうに思います。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。どうぞ。 ○田尾構成員  いろいろなデータありがとうございます。この努力に敬意を払いたいと思います。 ただ、これを読んでいても、どこかかゆいところに手が届かないもどかしさを感じま す。例えば11ページの統合失調症の将来推計ですけれども、過去5年間も統合失調 症の入院患者は減っているのですが、病床はほとんど減ってこなかった。49ページに 飛びますけれども、平均残存率や退院率の厳密な計算をしていただいていますが、結 局平均残存率や退院率を上げたり下げたりしているのが、転院とか死亡退院だという のでは全くお話にならないと思います。  60ページからの医療計画の算定式ですけれども、各疾患の病態像から適正な入院患 者を割り出すというよりは、先に適正病床数を定めるという方向は私は評価したいと 思っています。ただ、この算定式は非常に頭のいい人がつくったもののようで、正直 難しくて私には十分理解できないのですけれども、61、62に続くページですが、大半 が病床をオーバーしているという地域なのですよね。でも62ページで、青森、神奈 川、静岡、5県ぐらいは病床をまだ増やせるということになるのですね。この節、い くら何でもそれは何かおかしいのではないかと思います。  こういう数値目標立てると必ず増やしてくるところが出てきます。それに対してオ ーバーしているところに対しては、どの程度の強制力を持って減らしていくかについ ては全く触れられていない。増やしてもいい地域があって、それ以外の過剰地域は増 やせないだけという現状維持というのだったらば、今後精神病床はかえって増える可 能性があるのではないかというぐらいに危惧されます。  青森県がどうして不足しているのかと不思議に思ったのですね。人口万対病床数は 33なのです。この計算式だと入院率というのが計算に影響していて、不足ということ になるのだそうですけれども、これは何か実態にそぐわないような数値だと思います。 神奈川や滋賀県は人口万対16、17ぐらいですし、愛知、静岡だと万対19ぐらいで、 これらの県がむしろ理想的な県なのであって、決して足りないということでは私はな いと思います。それ以外の病床過剰地域に対してどの程度の強制力を持って適正病床 に近づける指導をするのか、そのあたりまで明確に示していただきたいと。そうでな いと、これも絶対絵にかいた餅になってしまうように思います。  2015年までに都道府県に適正病床数に近づけるためにどのような行政指導をする のか、実行できない地域に対してはどのようなペナルティーを課すのかぐらい検討し ていただきたいと思っています。もちろんペナルティーだけではなくて、精神科病院 が自ら病床削減を目指すような、そういう政策誘導も積極的にお考えいただきたいと。  先ほど長尾先生がおっしゃいました福祉事業所の増加ですけれども、私が自立支援 法になった実感です。福祉事業所は非常につくりやすくなりました。今までは補助金 でしばられていたのですね。各区市町村がもう税金がないから、これ以上つくらない と言われたらそれっきりできなかった。ですけれども、自立支援法になってニーズが あれば行政は増やさざるを得ないのですね。例えばグループホームを利用したい、利 用する状況があると、それを訓練等給付で断ることができなくなっているのです。だ から、これは卵と鶏の関係で、長尾先生は資源がなければ出せないとおっしゃいます けれども、出てくれば、その人たちのニーズに応じて地域資源は増やせるのですね、 今の法律では。私はこの自立支援法の供給が自由になったという点に関してはすばら しい点だと思っていますので、もっと期待したいと思っています。  人口万対精神病床の世界の比較のグラフがありますが、あれはあまりにも有名です けれども、緻密な計算は計算としてもっと明確に単純に世界で第2位の国と同じレベ ルまで病床数を減らすというような目標を設定できないのだろうかと思います。第2 位の国でも人口万対15です。決してそれでも世界的に少ない数値ではないです。2015 年までに、日本全国の精神病床数をそこまで下げるというぐらいの意気込みのある目 標、施策を立てていただけないものかなと思っています。この1年間、検討会に出て きた者として、それが強い願いです。  最後に認知症の問題ですけれども、これは日本の今後の精神病床がどうなっていく か、大きな方向性を左右する問題だと思っています。今回は22年の調査まで棚上げ になってしまった形ですけれども、ここでも何度も議論されましたように、また過去 そうなってきているように、統合失調症の減ったベッドを認知症が埋めていくという 危険性を大きくはらんでいると考えられます。以前にも申し上げましたけれども、世 界の先進諸国では認知症を精神病床で見ている国はないと思います。認知症の方にと ってよいモデルはもっとほかの方法があるのだと私は思っています。  勉強不足でここで提示できないのが残念ですが、私が知っている精神病院は、ある いは認知症専門病床というのは、集団処遇、あれが認知症の方にとってとてもよい環 境とは思えないと感じています。BPSDのように、精神病院に入れる理由はいくら でもつくれます。ですけれども、出す方法をきちんと決めておかないと、結局認知症 も統合失調症などと同じ社会的入院が多く占めるという現状がもう既に起こってい ます。前例があるのですから、同じ轍は踏まないでいただきたいと思います。水際で 認知症の方にもっとよい条件処遇を考えていただきたいと思っています。介護保険の 施設に入所するよりも、下手をすると精神科病院に入院するほうが安上がりになりま す。これは非常に危険な状況だと思っています。ぜひそうならないように、今後のご 検討をお願いしたいと思っています。  以上です。 ○樋口座長  長野構成員。 ○長野構成員  済みません、時間が後になると迫るので少しお時間いただけたらと思います。前回、 人の再配置というところで少し資料を提示させていただいたと思うのですが、私たち の地域で10年以上かけて取り組んでいるのはこの部分だと思うんです。特に24、25 ページあたりの認知症のこととか、先の課題として統合失調症のことは、実はあと書 き方とかいろいろあると思うのですが、大体方向性は出ているのだろうと思った上で、 次のところを、さっき田尾構成員の発言にもありましたが、そのあたりを少しお話し をしたいと思います。  平成8年、9年にダウンサイジングの方向でいくと決めたときに、まず一番初めに とにかく取り組んだのは、病棟を見渡して、高齢の精神障害者の方、長くホスピタリ ズムの中で、いわゆる幻覚、妄想はほとんどないけれども、行く場所がないという方 のことであったりとか、認知症の方、あと寝たきりの方、これはそもそも精神科病院 が診させていただく方々なんだろうかというふうなところから実はスタートしまし た。去年イタリアに行ってまいりましたけれども、そこでもここからスタートしたの だという話を聞いて、ああ、なるほどなと思ったのですけれども、実はそこからスタ ートしています。  ただ、一方で、私たちがずっと診させていただいた方を、ほかに任せてしまうこと は逆に仁義に反するのではないかということも迷いましたが、ここからスタートしよ うというふうにして取り組みました。寝たきりの介護の方や認知症の介護の必要な方 は特養であったりグループホームであったり、老健ということが主な受け皿になって きましたし、高齢の精神障害者の方は、今、制度としてまだ残ってはいますけれども、 養護老人ホームが随分受け皿として、していただいた覚えがあります。今でもずっと 連携をしております。  その中でぶち当たった課題は老人施設の中に精神科入院をされている方に対する 偏見が物すごく強かったのですね。ある老人施設、特養の相談員は、「先生のところ に入院している人はちょっと」と言って面接にも来なかったことがあります。激怒し て呼びつけましたけれども、会ってから考えてくださいということですね。こういう ことが今も全国で起こっているのではないかと思うのですね。入院をしていた方、精 神科入院歴のある方はちょっとと言われたのですね。これはあり得ない。  そこでやったのは、そういうふうにどんどん働きかけていくこともそうですけれど も、ドクターの回診だけではなくて、病棟ナースも含めて老人施設にどんどん入って 行く。自分たちが退院して受けていただいた方のところには行って、私たちの病院で はこういうふうにしていたよということも含めて伝えるところからスタートをして、 老人施設の中で、そういう方々の対応力をどんどん高めていただいたことが大きな効 果を奏したのではないかと思います。  あと一方で、地域づくり、認知症の啓発であったりとか、介護保険導入のときのケ アマネジメントに関して、私たちがど真ん中で言おうということで真っ先に勉強をし てイニシアチブをとらせていただきました。このことは地域で支えるという意味で大 きなことではなかったかなと。だからケアマネージャーも早くから採りましたし、そ うすることで地域の支える仕組みの中に、精神科医療がど真ん中に入れたということ はスタートラインとしてとてもよかったかなと思っています。  そうこうしていると、平成15〜16年頃からでしょうか、逆に認知症・痴呆の啓発 がどんどん進んできて、今まで家庭で表に出ていなかった人たちが逆に表に出てくる ようになってきて、課題がもっともっと浮き彫りですし、深刻な状況が出てきました。 そうなってきたときに、それまでの対策ではおっつかなくなってきたのですね。入院 しか受け皿のない認知症の方々がどんどん登場し始めました。準備ができてないもの ですから入所には入られない。それはどんなことかというと、精神症状いわゆるBP SDの方もいらっしゃるし、ずっとどこにも相談をしてないから急に今は対応しなけ ればいけないという緊急の方が出てきたり、これは老人施設では対応できなかったん ですね。常に満床ですので、入所待ち100人だ、200人だと言われると、精神科は常 に受け入れられる状況にしているので精神科にしか入れなかった。もう一つは、先ほ ど田尾構成員から出た経済的理由ですね。生活保護とかも含めて医療に関しては非常 に手厚いので医療なら入れるという方があまりに多くて、してきました。  そういうふうに地域を駆けずり回っていると、病院の中に認知症の方の比率がだん だん上がってきたのが平成15〜16年ぐらいからです。その当時は完全に精神科病院 は認知症の方の受け皿としては将来も必要だろうと思って、初めに提示したユニット の取組、認知症の方を50人の大規模処遇では見られないということで、試行的に15 人のユニットをつくって、中で密に見るなんていうことをやり始めて、これは将来的 にも要るのだろうなというふうに完全に事業計画の中にも位置付けて考えてきまし た。  そうしながらやることは、更に施設の対応力向上。介護保険が進んで新しい施設が どんどんできていく中で、やっぱり精神はね、精神の方は私たちの対象じゃないのよ、 なんて言う方が結構出てき始めてしまったので、できるグループホーム、できるグル ープホームへどんどん入って行ってリエゾンと、どうしても行けないときはいつでも 受け入しますよという体制の下でやってくると、意外と認知症グループホームの中で も結構きちんと見てくれるようになってきました。  ちょっとここで矛盾点、1件見直さなければいけないと思っているのは、認知症対 応型の共同介護の中に、入所の対象者の基準の中に精神症状の安定した方、治療中の 方は対象にならないとはっきり書かれているのですね。そういうことの中で、グルー プホームが、言葉悪いのですけど、精神は対象ではないから、と平気で言ってしまう ところがあって、施設の中のきちんとした外の受け皿の部分の対応力をしていかない と入院というのは絶対に必要になってきてしまうということだと思います。  あと、それと同時に地域で入院しなくていい仕組み、在宅サービスの連携、ケアマ ネ、ヘルパーさんで知らない方は当然いらっしゃいません。地域啓発、集会所、住民 レベルでの啓発、これも地域の集会所100か所超えて回っています。そうしながら、 どうしても足りない機能の部分を認知症専用デイサービス、地域密着のデイサービス や小規模、多機能を立ち上げながら徹底的に地域の中で早めにサービスを利用してい きましょうよいうふうにしていきました。そうすると認知症というのは確実に進んで いくものなので、早期からフォローしておけば、いつ頃入所が必要になってくるとか、 どんな場合に入院が必要になってくるというのが予想がつくので資源の用意ができ るのです。  一番精神科に入院が必要なのは突発的な方で、その突発的なものを予想していけば、 小さな地域だからできるのだろうとは思いますけれども、予想していけば、急な入院 が本当に減ってくる。地域の在宅との連携で一番重要だったのが精神科訪問看護の認 知症の方に対する介入だったのですね。現場にケアマネージャー、家族、いろんな方 と行く。ほかの施設にもどんどん寄っていく。在宅で支えた方が特養に入ったら、グ ループホームだったら顔出しに行く、この精神科訪問看護の役割がとても大きかった と思います。  あともう一つ大事なのは医療につながっていない方のフォローというか、予想なの です。これはあっていいことかどうかわからないのですけど、介護認定審査会を通じ て随分情報が入りました。認知症のことの認定審査会は私どものところに来ます。当 然無記名ですけれども、あとどれぐらい、どんな方がいらっしゃるのだという地域の 把握ができたのですね。そうすると精神科入院がこれぐらい要りそうだとか、こうい う人は介入しておかないとということが見えてくる中で、包括支援センターと月2回 定期的にずっと相談事業所を設けて、そういう方が路頭に迷うことのないようなサポ ートをしていけないかということを当然試行錯誤中ではありますが、今もあります。 特養がどこも入所待ちというのはたくさんあるのは当たり前になってきていますか ら、そういう予防的な、いざというときに困らない対応がとても重要だと思っていま す。  そういうことを続けてきた結果、今、精神科の中の私たちの病院のところの、認知 症の方の緊急受入れは皆無になってきましたね。ほとんどないような状況です。でき るだけほかで処遇ができることが可能になってくるということです。ただ、残ってい るのは、1つ、地域の中は随分小さな地域ですので見えてきたのですけど、ほかの地 域、隣町から急にとかという、こういうケースは路頭に迷っているのはどうにもなら ないのでという受入れが残っていたりとか、そうして1回入院されてしまうと、実は、 今、特養とか、皆さんそうなんですけど、各施設が入所の緊急度を決めていきます。 介護度といわゆる緊急性、在宅で見る方がいらっしゃらないから早くというふうに順 番が繰り上がっていくものですから、精神科に入院されている方の順番は最後、後に 後に後になっていきますね。それで1回入院されて、申込みしても、これはなかなか 順番が回ってこなくて、ほかの地域の方で、居ざるを得ないという方が出てきていま す。  あともう一つ、BPSDの気質性の方とか激しい高次機能障害の方とかで突発的な 予想不可能な暴力がある方がどうしても一部いらっしゃるような気がします。あと、 もう一つ、先ほどの経済的理由ですね。老人施設のところであるのは、私たちの町で も、田舎の貧しい町なので、あまりホテルコストを高く設定しているところはないの ですが、少なくとも年金暮らしの方はグループホームに入れないです。生活保護の方 はグループホームには入れるのですね。更に行くと医療機関だと入れる。そういった 経済的な手当てが国の制度上古くから手当てのついているところは手厚くなってい るので、そんな意味合いで残っている方がいらっしゃる。まだ当然ゼロには全くなっ ていないのですけど、そんな状況が見えてきております。統合失調症のことを一生懸 命やりながら、本来どういうふうにするべきか、これから10年構想を立てる、10年 最低でもかかるのではないかと思っていまして、そういうことを思っています。  最後まとめというか、施策としてどんなことかというと、二の轍という言葉が出ま したが、次の社会的な認知症の入院の方をつくり出さない仕組みが要ると思うのです ね。今の介護保険の認知症の方を支える仕組みとして量も質も足りないと思うんです。 精神症状ある方の介護保険施設内の対応力であったり、今、一生懸命やっているとこ ろは大分技術は上がっているのですけど、底上げが必要だと思いますし、量が決定的 に足りない。  あと、精神科医療との連携が徹底的に足りないのだろうなというふうに思います。 精神科医療もどんどんアウトリーチでリエゾンをしにいくべきだと思うし、どんどん 使ってもらうべきだと思うのですけど、精神科医療の担うべきは、介護保険の施設の 中で精神症状のある方々がどれだけ豊かに安心して暮らせるかというところの役割 が精神科医療、今、BPSDの対応とか緊急の対応とか鑑別診断だけで言われてくる のですけど、常にかかわりながら状態像を判断しながら、リエゾンをしていく役割が 精神科医療の一番大きな役割ではないかと現場で思っております。  そのためにはマンパワーが決定的に足りません。精神科医療側ももちろん足りない のですけれども、実はグループホームの責任者とも話していても、かなり見てくれま す。経営者が3日、4日泊り込んでも見てくださるのですけれども、特養では一部精 神科医療との連携加算みたいなものがついていますが、例えばグループホームにそう いう方が連携をしなければいけない方、基準も要ると思いますけれども、グループホ ーム側にもそういう精神症状のある方の精神科医療との連携加算みたいなものがつ いてくると、また踏ん張る施設が出てくるのかなと思っております。  以上でございます。 ○樋口座長  どうもありがとうございます。では、坂元構成員。 ○坂元構成員  今の長野構成員のおっしゃることはもっともだと思います。特に病院から介護施設 への移動といっても、現実に田尾構成員がおっしゃったのですけれど、価格差が非常 に大きいことがあります。介護施設より医療施設のが安く済むというのが現実です。 自治体では国の一定の基準に従って特別養護老人ホームをつくるときにその補助金 の審査を行います。一定の率の補助金を出すということです。現在国のほうは特別養 護老人ホームに関しては個室化を非常に進めております。これはアメニティの観点か ら個室が望ましいという考え方はよく理解できますが、特に都市部では個室化を進め ると当然非常に価格が高くなって、はっきり言えば年金生活者には入所が難しい価格 設定になってきているところもあります。それで病院から高齢の精神障害者を退院さ せて介護施設に移しても、当然そこには大きな価格差があって、それを推し進めるこ とは現実的にはかなり難しいと思われます。例えば夫婦2人の年金生活者で2人とも 特養に入れる人はまずほとんどいないと思うのですね。これは大きな問題であると思 います。  個室化を進めないと国の補助金の率も非常に悪くなってくるということで、どうし ても個室化を進めなければいけないのですけれども、価格が高くなってしまうので、 多床室の部屋も用意しなければいけないということです。こういう矛盾もあって、こ の価格差に目をつむって、在宅生活が難しい高齢の精神障害者の退院促進を一方的に 進めてもなかなか難しいものがあるというのは、実際現場で自治体の職務をやってい るとそれは非常に感じます。そういうクレームは非常に多いです。  例えば民間の優良老人ホームに入っても、大体月額いくら、入るときに一括でいく らと設定されているのですけれども、ほとんどの方は医療費が別途かかるということ を大体ご存じないので入所します。それで民間の優良老人ホームに入ったまま、例え ば病気になったときに入院すると、老人ホームを払い続けながら入院費も払い続ける という、この現状をほとんどの方が理解できていないのではと思います。特別養護老 人ホームの場合は、施設によって違うのですけど、3か月の間は取らないとか、ただ、 3か月超えたら権利がなくなりますよとか、施設によって様々だとは思いますが、病 院と介護施設との連携は非常に悪く大きな価格差が生じていることが大きな問題で す。  以上です。 ○樋口座長  小川構成員。 ○小川構成員  2点、意見を述べたいと思います。1つは、65ページのところで、下から2つ目の 「●」の改革ビジョンのところで、精神病床数そのものはほとんど減少していないと いうような書きぶりがあって、66ページの一番下の「●」のところにその理由が書い てあるのだと思いますが、68ページの新たな目標値ということで入院患者数が約15 万人という形で今後は考えていこうという事務局からのお話がございましたけれど も、15万人というのは、15万床と考えていいのか、これは質問をしたいと思います。  なかなかベッドが減らせないというのはなぜなのかということで、66ページで書い てあるのが療養環境の改善とか人員配置の充実を通じた医療の質の向上のための取 組を直接に支援する施策が十分に講じられていなかったからだといった評価がされ ているのだと思います。ですから今後ベッドを15万床まで減らすということであれ ば、ここの施策もきちんと対応しないといけないということです。  私は何度も言っているので、また繰り返し言うのもあれですけれども、一般病床並 みに人員配置基準を改めるべきだということと、当分の間という、いつまでか期限を 明示されてない人員配置基準も残されているのですね。それはきちんと期限を切って 本則に戻していく。また、本則自体も一般病床、看護の配置でいうと、一般病床3対 1ですけれども、精神のほうは4対1ですね。医療法の施行規則のほうの話ですけれ ども、そこもきちんとやっていくことが必要だと思います。あと1看護単位が70床 とかという病棟が認められているのですね。しかも畳部屋とかというのがあるのです よ。そういうことはもうやめましょうようという当たり前のことだと思いますけれど も、一般病床と同じような施設基準が当然あるべきだと思っております。そういうこ とを通じて認知症の方は15万床へということで考えていくということであれば非常 に理解ができると思います。  もう一つは、認知症の方ですけれども、もう既に一般病床においても、いわゆる急 性期の一般病床にも認知症の方は多く入ってきております。一般病棟の入院基本料で 7対1という基準も設けられましたけれども、看護補助加算というものが認められて いないと。やはりそういう認知症の方の対応も含めて、見守りでいいから、そういう スタッフがほしいという意味で、看護補助加算というものも一般病棟の入院基本料で 認めていただきたいということも診療報酬上ありますけれども、もう既に一般医療の 中での認知症というのが非常に多くなっているということからすると、身体合併症を 行うということはまさにそうですね。一般医療を行っていくわけですから、精神病床 も一般病床並みに、あるいはそれ以上に体制を整えていくということだと私は思うの ですけれども、そういう理解でよろしいのかどうかというのはぜひお聞きをしたいと 思います。  精神を持っている方の身体合併症はなかなか引き受け手がないというのは実はあ りまして、ある地域の病院なのですけれども、ホームレスの方とか生活保護の方が集 中してその病院に入っている。かなり死亡率が高いような病院も実はあるのですね。 そういうところをきちんと体制を整えていくこともしなければならないと思います。 これは一般病院の話ですけれども、奈良県の山本病院の話もございました。また、埼 玉の朝倉病院事件ですね。これは外科医が精神病院経営をしたという問題ですけれど も、診療報酬の不正請求という形での罰則なのですね。だけど、山本病院は治療上の 必要がないのにカテーテルを入れたと。あるいは朝倉病院の場合は、治療上必要だっ たかどうか疑わしいけれども、IVHをばんばんやったと。だけど、傷害罪というこ とでは立件できないわけですね。そういう意味で非常に精神医療の質を高めていくと いう意味でも、質の面からのアプローチも必要だと思います。これは監視体制という ことになるのだと思いますけれども、人をきちんと揃えて身体合併症医療をやってい ただきたいと思います。  以上でございます。 ○樋口座長  今のところの質問に関して。 ○林課長補佐  2点ご質問の部分だけお答えをいたしますけれども、15万人と15万床の違いは、 まず今回は疾患別に設定をしておりますので、全体の病床数というよりは、そこの入 院している患者さんの中の統合失調症の入院患者さんの数ということで数を示して いるので「人」ということになるという点。  そして定義上どこが違うかということで申し上げますと、病床利用率が一定程度、 必ず100%ということではなくて、急性期の入院が増えれば、空いている病床が出た りとか、あるいは許可病床ではあるけれども、実際には使っていない病床があったり というような病床利用率が100%ではないという部分がありますので、そこの部分の 差は一定程度はあると考えております。  もう一つ、人員配置を引き上げるべきという考え方についてですが、これは前回ご 議論いただきまして、3ページにございますように、医療の質の向上を図るために人 員基準の充実を図るべきではないかということ。そして患者の状態像や病棟の機能に 応じた評価の検討、将来的な医療法における人員配置標準の見直しといったことにつ いてご提案をし、ご議論いただきまして、一部慎重にというご意見もあったものの、 前回の検討では多くの皆様方にご賛同いただいたのではないかと議論を拝聴いたし ておりました。 ○小川構成員  それに関して。 ○樋口座長  どうぞ。 ○小川構成員  一般病床と精神病床の人員配置の問題ですけれども、身体合併症医療を行うという ことは一般医療を行うわけですね。更にまたそれにプラス認知症が入るわけですよね。 そういう意味では一般病床と同等もしくはそれ以上に考えていくという方向で考え ていいのかどうかということを質問したかったのです。 ○林課長補佐  精神病床だからということかどうかわかりませんけれども、精神病床の中でも状態 像や病棟の機能に応じた人員基準の評価を検討するということでご提案をしており まして、そこはそういうご意見を十分に今後踏まえていくものだと思います。 ○矢田貝課長補佐  先ほど長尾構成員から福祉のデータについてのご質問がありましたのでそこだけ 簡単にお答えさせていただきます。 ○樋口座長  どうぞ。 ○矢田貝課長補佐  障害福祉課でございますけれども、確かにご指摘のとおり、例えば36ページのデ ータなどを見ていただきますと、自立支援法施行前の福祉サービスのデータというの はどうしても月単位の箱払いでやっていたものが多うございましたので、例えばこの グループホームの数字も、これは18年10月1日現在の後から調査して数字を使って いるものと、こうしたもので統計データを基礎にしてご説明させていただいておりま す。  ただ、その上の35ページのグラフなどを見ていただきますと、自立支援法になっ てからは、要は使途払いで、しかも国保連のデータで、しっかりしたデータが毎月毎 月出てまいります。例えばグループホーム、ケアホームで言えば、19年11月に比べ て精神障害者の方が1万519人が1万2,000人となったという数字であったり、もし くは次のヘルパーの数字を見ていただきましても、これは毎月単位で精神障害者の方 が何人使っているかというデータがしっかり出てきて、例えばヘルパーであれば19 年11月以降、25%増えているという数字は、これは給付費に基づく毎月毎月のデー タでございますので、そうした意味では自立支援法になって、こういうシステムがで きたことで、こうした実態についてもわかるようになってきているという状況でござ います。  各地域ごとの分析も必要ではないかというご指摘でございますが、こうした国保連 での支払いのデータでございますので、これは当然各都道府県ごとでの分析も可能で ございます。具体的には、23年度までの各地方自治体では障害福祉計画をつくってお りますので、今後24年以降、この場での議論も踏まえて24年以降、福祉サービスを どう増やしていくのかというような議論も各地方公共団体でやっていただく必要が あると思いますけれども、それはこの国保連のデータ、各地方自治体が毎月の支払い データのトレンドを見ながらきめ細かくご検討いただくとともに、先ほど田尾構成員 からもございましたけれども、自立支援法になって、義務的経費になって、精神も使 えるようになって増えているということ。もしくは現在法改正出しておりますけど、 ケアマネジメントの強化であったり、地域高支援という新たな地域懇のための支援の 充実というような地域生活者の福祉サービスの充実というようなことも加味しなが ら、また、各地域ごとでの実際の利用状況のデータなども見ながら、更にはこの検討 会における議論、そのことも踏まえて、福祉サービスの充実を図っていくよう各地域 でも検討をいただくことになると思いますし、私ども国全体としても検討していく、 そんなことで進めていきたいということでございます。 ○長尾構成員  今、お話あったように、自立支援法後のデータというのはそれなりの個別の分がず っと出ているので、若干増えているといえばそうなのだと思うのですけれども、私が 言ったのは自立支援前のことなのですね。グループホームの利用者数、これは約7,000 台ほどの分が、これは630調査の分であったと。日中活動の場にしても、小規模作業 所についてはデータとしてはここに挙がってないわけですね。そういうものが隠され ていると言ったらあれですけど、実際表へ出てない部分は、これはどう考えられてい るのかということをお聞きしたいのです。 ○矢田貝課長補佐  数字の違いとか、そこは済みません、今、どうしてそういうふうに違うのかという ことは直ちに答えられない。向こうが答えられるみたいなので向こうに答えていただ くということで、確かに、また小規模作業所などからの移行、例えば39ページのグ ラフ見ていただきますと、これは就労系サービスの利用者数全体ですけれども、確か に、20年4月にどっと利用者数が増えている一因の中には、そういう支払いなりがな かった小規模作業所から移行した分、4月を機にこっちの施設の認可取ってやったか らという部分は確かに出てきている部分もあるかと思いますが、そうした各地域ごと でどれだけの小規模作業所の利用者がいたか、そういうことも含めて、今後更にどう していくか、検討していく必要があるというのはご指摘のとおりだと思いますし、そ のために実際どうだったかということを、各地域でも私どもも詳しく調べて検討して いく必要があるというのはご指摘のとおりだと思います。 ○樋口座長  野崎課長補佐。 ○野崎課長補佐  36ページの図についてのご指摘ですけれども、確かに、以前にこの検討会でお示し したグループホームの利用者数は、長尾構成員がおっしゃったように七千数百という データだったと思います。これはどういうことかというと、自立支援法施行前に、国 庫補助の対象となっているかどうかでデータが違いまして、今、この36ページでお 示ししている4,800というのは国庫補助対象のみをカウントしたものです。そのほか に国庫補助対象でないものも630調査においては計上しています。逆に言うと、その 差が大体3,000ぐらいだということですね。  一方で、右側ですけれども、右側も確かに個別給付になっているもの、あるいは地 域生活支援事業であるものについては入っていますが、一方で都道府県単独でやって いるような補助事業についてはカウントされていません。確かにそこは正確に把握す べきだというご指摘だと思いますが、実際に全く給付とか補助の対象になっていない ものについてどこまで把握しきれるのかという部分も課題としてはあると思います けれども、現時点では、施行前、施行後、それぞれきちんと国庫補助、個別給付の対 象となっているような事業についてカウントして、それをもって、この36ページの 図をお示ししているという整理のものでございます。そこは確かにご指摘のような課 題はあるとは認識しております。 ○樋口座長  簡単にお願いします。 ○長尾構成員  済みません、何回も。確かに個別給付の部分でいろいろデータが出てきている中で、 例えば36ページの施設入所支援というのは障害支援施設ですよね。ですから純粋の 精神の我々の分野でいう人はほとんどこういうものには恐らくは当たらないんです ね。例えばいろんな個別給付のデータと個々のデータは、精神か知的か身体かという 形で1か2か3で出てくるのだろうと思うのですけれども、重複したときに、精神と 知的あった場合に精神のほうとか、知的の部分も精神で上がってくる人も中にはあっ たりするので、そういう部分がデータとしてどうなのかというところも、これは両方 の動きがあるので何とも言えないと思いますけれども、その辺も含めていかがなのか。 ○野崎課長補佐  重複障害かどうかということについては少し確認させていただきたいと思います が、ただ、実際施設入所支援で精神障害者の方というので、施設入所支援の事業所を 新たに立ち上げているという事例もあると聞いておりますので、必ずしも195すべて が重複障害であるということではないと思います。障害の種別について少し確認をさ せていただきたいと思いますが、そこは今、お示しできないので、申し訳ございませ ん。 ○樋口座長  それでは上ノ山構成員からいきましょう。 ○上ノ山構成員  今の話の流れで少し質問させてください。グループホームの入所者数が老人の場合 は13万人ということが17ページに出ています。認知症の方の行き場所がなくて困っ ていて、例えば特養なども入所に何か月待ちというふうなことが非常に起こっている わけで、そういう状況の中でも一応13万のグループホームが確保されているという ことです。  一方、先ほどの36ページの表でいきますと、グループホーム、ケアホームが1万 2,000でしょうか。この差というのは妥当とお考えなのでしょうか。それは障害の部 分と老人福祉の問題とではこの程度の差があって仕方がないと考えたらいいのでし ょうか。ちょっと確認させてください。 ○樋口座長  林補佐。 ○林課長補佐  比べるのがなかなか難しい問題だと思いますけれども、もともと対象となる母数の 人口も違いますし、一概にどちらが多いかということは言えるものではないと思いま すが、いずれにしても精神障害者のグループホームの数は今後伸ばしていかなくては いけないという認識は持っております。 ○上ノ山構成員  そういう受け皿の問題が非常に大きな問題になるのですけれども、どうしてもベッ ドの削減ということがテーマになります。入院治療中心から地域生活へという流れの 中で議論していった場合に必ずベッド数の削減の問題が出てくるのですけれども、ベ ッドを満床にしないと経営が維持できない体制を維持したままではベッドが削減で きるわけがないと思います。ですからこの議論はいくらベッドを削減するかといった ことを議論続けていてもむなしいというふうに思います。だから目標を何万床にする とか、そういったことを言っても数字の遊びのような印象を受けます。  具体的に精神医療をどういうふうにしていくのかということをはっきり語らない と、これはおかしいのではないかと思いますし、ベッドを削減するといっても、これ は例えば経営者の経営努力によって削減させるものなのか、あるいは国がそのように 誘導してきて、このような体制をつくってきたわけですから、その責任を国としてど のように考えて、どのようにそれを果たしていくのかということをもう少し明示した ほうがいいのではないかと思います。  具体的にはこのような議論の流れでいきますと、結局入院病床をこのまま維持する のはやはりまずいであろう。その後、転換先をどのように考えていくかということな のですけれども、今ある病床のスタッフを地域に移行させて、それをどのように有効 に活用していくのかということがある程度はっきりしないと、安心してダウンサイジ ングしますよというようなことは言えないと。だから、このような地域のシステムを つくっていくことを明確にした上で、ダウンサイジングの具体的なスケジュールを示 していくことが望ましいのではないかと思います。  そのために、地域ではどういうことをするかということですけれども、結局は外来 治療の充実ということになると思うのですが、そこに対して、どのようなマンパワー を投入し、その程度をどのようにつくっていくのかということが明確になってないと いけないのではないかと思います。  最後の68ページに、課題というような形で出されていますけれども、目標として 羅列的に挙げておられますが、その中では、例えば「治療中断者等への危機介入を行 う多職種チームの整備目標:○○単位で1チーム」とか書かれていますが、このよう なことをもう少し具体的にはっきり書かないと安心してダウンサイジングできない と思います。だからそういう危機介入チームとか、そういう訪問チームのあり方とか、 あるいは早期支援のあり方とか、そういったことについてがどのようなイメージで語 られているかということが大事かなと思います。  そういう観点から言いますと、今日出された資料は非常に充実はしているのですけ れども、外来医療の充実という点に関しては何も書かれていないと。外来医療に関し ては、一言ぐらいは外来医療に関しても充実していかなければならないということは 書かれていますが、その中身が書かれていないと思います。入院治療から地域へとい った場合に非常に誤解されやすいのは、入院治療が終わったら、あとは地域の福祉で それを充実すれば、このシステムが完結するかのような誤解が与えられてしまうとい うことです。必ず地域での外来医療がベースにならないと、このシステムが維持でき ないということが確認されなければいけないと思います。現在でも外来で行っている、 例えば心理教育であるとか、認知機能に対するリハビリテーションの問題であるとか、 そういった様々な外来での活動に関する評価がきちんとなされていかなければいけ ないと思います。  ケアマネジメントに関しても、今はケアマネジメントは福祉のケアマネジメントと いうことが中心的に言われていますけれども、本来は医療を含んだケアマネジメント であるべきという点が語られるべきではないかと思うんです。そういう意味において は、医療機関の側においてもケアマネジメントが進んでいくような、そういった制度 設計がなされるべきであろうと。それは外来においても、そういうケアマネジメント を、入院中からもそうですけれども、そういったことを視野に含んだ提案というのが あってしかるべきであろうと思います。そういう意味で、外来機能の強化ということ に関して、ぜひ視点を加えていただきたいと思います。  以上です。 ○樋口座長  門屋構成員。 ○門屋構成員  少しまとまった話をしようと思って、先ほどから手を挙げていたのですが、今のお 話の最後の部分にちょっと反応をしてしまいまして、そこのところからお話しをと思 います。  ケアマネジメントが医療の中でもというのは、ケアマネジメントそのものは地域生 活を支える方法論として現在あると思います。福祉、医療というふうに分けるのでは なくて、医療の必要な人が生活をする上でケアマネジメントで、医療も包括した形の ケアマネジメント、これがごく当たり前の話と私は認識していますので、地域の側が 医療の方々と連携をきちんととってやる。これは先ほど長尾先生の話の中にもありま したけれども、高齢者等も実は高齢のケアマネージャーと障害のケアマネージャーが 連携して、むしろ高齢の方々が精神に対して偏見があるというお話もありましたけれ ども、やりにくいという話から、我々のところではダブルマネジメントといって、精 神のほうのマネージャーがむしろ高齢の方々と連携してダブルマネジメントをする という方法をずっとやってきているわけですね。ですからそこのところだけは誤解の ないようにしていただきたいということで、それを1点だけ申し上げておきます。  実はもうそろそろ、前回、私、ビジョンについての評価をという余計なことを言っ たこともあって、今回の資料は大変詳しくいろいろとお書きいただいたことについて 大変感謝をしています。整理としては大変整理をされたなというふうに私自身の中で も資料を見て、自分の頭の中も整理できたつもりでいます。整理できた中の総論的な ことになりますが、よく受け皿がないから退院ができない、あるいは今の話の中にも ありましたけれども、退院はするのだけれども、ベッドがある限り入院が起こってし まう。現実に減らしたい病床でいえば、8,000床ぐらいこの10年間に減っているにも かかわらず、6,100床以上は実は一般病院の精神科である。たった1,700ぐらいが精 神科病院のベッドの減り方である。これは異常だと思うのですね。  先ほど合併症の問題もありましたが、合併症の問題からいくと、一般病院の精神科 を残すべきということがあるべきなのに、そこの部分がそがれていると、こういう現 実もこの数字は示しているわけですね。なおかつ1988年に精神保健法ができたとき に、それなりの社会復帰施設、受け皿づくりができたわけですね。にもかかわらず、 受け皿ができたからといって病床が減ったのではなくて、その後、数千床ベッドが増 えたままの状況で今に至っているわけですね。1981年以前のベッドにはいまだに減っ てないわけです。ですから受け皿の問題は、実は田尾構成員も言いましたけれども、 もう既にニードがあれば、それに対してでき得る、それこそグループホームなんてい うのは本当に市町村が頑張ってすぐにつくってくれるわけでして、そういう人たちが 出てくれば当然資源はつくれるような状況に条件整備だけはできたと思うのですね。 ですから、もうその受け皿づくりの話はやめにしていただきたい。  もう一点、今のお話の中にもありました、どういう精神医療が日本にとって必要な のだという議論はやっぱりすべきだと思うのですね。これがどうやっても、ここでは 語られてないですよね。ばらばらだと思うのです。それをどこかで小さな部会でも開 かないと、私はどうも語られないような気がするのですね。そこのところをできるの かどうかわかりませんけれども、それができないで数字合せになってしまうと、私は また同じことが起こってしまうと思います。24%、29%は、今、29%、23%と逆転し ているようですから、そのことの方向性について、平成16年9月以降に、17年以降 でもいいのですが、国がそれに近づける政策は何かあったのかということも実はお尋 ねしたかった1つでした。具体的に目標を掲げたのだけど、自然になるわけではない ので、自然にならないというこの5年間の数字が今の24%が29%にしかとどまって いないとか、こういう状況にあるわけでして、政策を立てるのであれば、こういう形 でビジョンを描くのであれば、それに近づける努力の具体的な施策が出てこないとい けないのに、どうも出てこなかった結果がこうなのではないかと私は思うのですね。 そこのところももう少し進展のある議論を望みたいと思います。  以上です。 ○樋口座長  それでは、大塚構成員、伊澤構成員の順番に。 ○大塚構成員  田尾さんや門屋さんに賛同します。病床削減の目標値を検討するにあたって、検討 会の当初に、各疾患別に、例えばどのぐらいの病床数が必要なのかを語るべきではな いか、検討するべきではないかということをたしか門屋構成員がおっしゃったと思い ますが、それは難しいのではないかといろいろお話も出ていたと思うのですけど、こ の間の資料でいろんなことが本当に整理できるようになってきたと感じています。  具体的な目標設定のあり方が、今まで基準病床率みたいなところの算定でやってき たけど、こうなってしまった、このようにしかなってなかったということの反省も今 回少し書かれていたり、退院率については、ようやく転院や死亡のことについてしっ かりここに書き込んでくださってよく見えるようになったというか、考え方がきちん と示されたと思いました。  一方、残存率も、新規入院者が数値をひっくり返してしまうのだというお話があり ましたが、すごく率や割合という話は実態を見えにくくしていて、実際に新規入院者 が多くなるという話のときにも、例えば新規入院者と言われている人たちには、転院 先から戻ってくる方たちも多くいるし、すごく回転が早まっている層で地域に生活が 定着していないまま、また戻って来られている方たちもいらっしゃるわけで、私たち が目指すのは、残存率や退院率ということよりは、本当に地域の生活を長く定着して 行える、その期間がどのように持てるか、どのように定着率があがるか、そこでまた 率を出すのも矛盾している感じですが、あえて言うなら、そのほうが指標として重要 ではないかと思っています。  そういう中で、突然、退院可能者数が主観的な調査に終わっていたので、そこを新 たな指標に切り替えようみたいな表現がされていますけれども、これがいい指標でな かったという反省はいいと思うのですが、突然退院可能者数の調査をすることをやめ るとかということではなくて、このことの主観的なところをどうやったら客観的に持 っていけるか精神科医療のありようのばらつきの改善についてしっかり考えていく ということのほうが必要だろうと思います。  この間、統計で出されているように、例えば統合失調症の4割以上がIALDも含 めて支援をすれば、近い将来退院可能だと出ているわけです。19〜20万の方で4割と いうことになると、8万人ぐらいがそういう支援がちゃんと整えば退院できることに なるわけですね。これについては、割と早い時期に、末安構成員もどういう治療とか どういうリハビリケアとかが必要なのかということをきちんと検討するべきではな いかとおっしゃっていたと思うのですが、今、門屋構成員が言われたことと同じよう に、精神医療の中で、近い将来退院可能な人がそれだけの割合いるのですから、5年 近い将来というのは5年ぐらいのことを想定するのだろうと私は思いますので、そう すると4割ぐらいの方は退院可能なのです。そうすると15万という数自体が少なく 感じられ、私はもうちょっといけるだろうと思っていまして、そういう組み立ての仕 方をすべきだと思います。認知症の統計のところでも、いみじくも林課長補佐が今日 の説明の中で、5割ぐらいの方は必ずしも入院を要さない人たちではないか、セルフ ケア能力のところの支援が必要ではないかとおっしゃいました。それは医療ではない ところの支援策を整えていけば可能だと、入院を要さなくてもいいかもしれないとい うことですので、そこのデータに基づいて、支援のあり方とかリハビリのあり方を整 えていくことをしっかり検討する段階なのだと思うのです。数値目標そのものよりも、 数値目標を立てた中身について議論していく段階だと思っています。  そう考えたときに、医療機関を経営されている方々は、病床削減というと経営の危 機への危機感があるのだと思うのですが、しっかり医療や支援を行っていくときには これだけの人員配置や構造が必要なのですということをむしろ積極的に要望してい ただきながら、みんなで考えていくというあり方がいいのだろうと思います。また、 医療観察法についてはこことは違う場で検討がされると思いますが、私自身、医療観 察法の制度を見ている中で、必ずや多職種チームが手厚い人員配置で治療やリハビリ を行っているということの中で確認できる成果があるわけですね。それが精神医療の 中で汎化されていくべきで、すべての患者さんにそれぐらいの多職種チームの体制と かそうした内容が整えていかれるようなことを予算措置とともに考えていくことが 大事ではないかと思っています。それは前回の検討会のときに上ノ山先生もおっしゃ っていましたけど、実質的に残っている精神科医療の特例の撤廃も含めてきちんと書 き込んでいくべきだろうと思っています。  門屋構成員は障害福祉サービスの受け皿のところの話はもうやめましょうとおっ しゃいました。けれども、今日もずっとこのデータについて何人かの方がいろいろご 意見されたり質問が出ていましたが、自立支援法になって確実に伸びているのは事実 だと思いますし、これが伸びてなかったら問題なのですが、伸びていることのデータ だけを見て評価にどうしてもつながらないのですね。先ほど矢田貝課長補佐もおっし ゃいましたけれども、障害福祉計画に基づいて各地域できちんと綿密なものが出され ていると思いますので、社会保障審議会の障害部会でもこれが議論になっていました けど、需要に対して必要な数字に対して、どこまで来たのだということと、どう足り ないのだということと、どのように整備していくのだということのほうが検討しなけ ればいけない、確認しなければいけないことだと考えています。居住系も精神障害者 の分は2万人分ぐらいになるというお話でしたが、先ほどの統合失調症のデータから しても、8万人がもし退院できるとしたときに、全員が全員、居住系サービスを使う 必要はないでしょうが、そのうちの50%と考えても全然足りないわけです。4〜5万 人分は必要になっていくわけですね。それも今の時点で切っていますので、持ち家に 帰られる方、家族と同居される方の家族の高齢化率とかいろいろなことを考えますと、 また更にもっと必要数が増えてくるということもあるかと思うのですね。  そういうこともあわせて考えなければいけませんし、今日認知症のところで経済的 な問題が出ましたけど、居住系のサービスをどれだけ整えても、経済的な状況で活用 できない、利用できないという方もたくさんいらっしゃいます。そういうところで言 いますと、これは今回の検討にはなかなか上りせんでしたけれども、例えば居住系サ ービスの整備に伴って、障害ゆえの住宅手当みたいな、そういうこともあわせて考え ていくことができないだろうかということを感じています。  そんなこともあわせた目標数値の設定が細かくなっていくと、病床削減、受け皿と いうところと、地域でどうやって暮すかということが合わさって具体的な検討ができ るのではないかと思っています。68ページの一番最後に書いてある具体的な(例)記 の目標数値のところを、ここの検討会で詰めることは、門屋構成員おっしゃるように 無理なのでしょうか。少しは具体的な数字を検討する時間をきちんととっていただけ ればいいなと思います。  以上です。 ○樋口座長  それでは、伊澤構成員どうぞ。 ○伊澤構成員  門屋構成員が後段のところでお話になった精神科病床の今後のあり方に関する検 討については、そこをしっかり切り取りながら深めていくような、そういう特別な機 会が必要ではないかと非常に強く思っております。本あり方検討会のような総花的で 網羅的に課題を扱う場では焦点化しづらいといいましょうか、そういったことが感じ られて、この問題についてのみピンスポットで扱う特別委員会というか、そういう組 織を設置して、それの諮問機関として立ち上げていくような、その強さを持ちながら、 精神科病床の削減と時代状況を踏まえた病床の有効活用法、その辺の見きわめも含め た検討をするような機会を持っていただきたいと強く思います。  その諮問機関からの答申をもって、空論かもしれませんが、時限立法のようなもの を立ち上げながら、そういったものも駆使しながら、予算的にも瞬間最大風速的につ ぎ込みながら病床の削減と必要な施設整備や設備整備も盛り込んだ展開を一挙に進 める、そういった進め方はどうなのでしょうかと思います。  それから、大塚構成員もおっしゃっていましたが、同時にそのことを進めつつ、地 域支援体制につきましては引き続き増強・拡充の方向で進めていかなければならない と思います。その際に精神保健医療福祉全体の財政フレームが97対3という割合で なかなか地域活動のほうに十分に回っていない。この辺の枠組みや構成もしっかり変 えながら進めていく必要性があるのではないかと思っております。  以上です。 ○樋口座長  それでは、末安構成員どうぞ。 ○末安構成員  今、お話があったことの続きでは、病床数もそうなのですけど、今まであまりここ の場では議論されなかったのですが、医療提供の地域偏在や格差という問題が患者さ んや家族の中ではずっと語られているのですね。この議論の先には限界が明確にある のですが、しかし、こういう場所で議論しなかったら、ほかには、どこでもそれは議 論できないのですね。今、がんの患者さん方が医療提供体制の格差について政府にい ろいろお願いをしたり調整をしたりということを大学の医学部との連携、そういうこ とも視野に置いてやっていらっしゃいますけれども、私どももそういう議論はどこか でしなければいけないのではないかと思います。  なぜ、そういうことを考えなければいけないかといいますと、ずっと病床数のこと、 精神病床の総数もそうですが、1病院当たりの医療提供の有効性と限界とか、そこで 提供される医療内容、それはもちろん医学の分野に関してはそれぞれ学会がイニシア チブをとって先進的に進めていくという建前はあるのですけど、でも実際それはそこ に全部任せれば安定的な医療が提供されるのか、患者さんというか、国民が安心でき るのかといったら、そう単純な話ではないと思うのですね。そういう議論もしていた だきたいということを基本的な考え方としてぜひ確認していただきたいのですね。  その理由は、今日も認知症の話があったのですけれども、認知症疾患医療センター が現実には多数は精神病院に併設ですね。それで一方で認知症の方たちにも居住の確 保と言っているわけです。それは入口のコントロールはしているのですが、実は出口 のコントロールが現行制度の中では全くされてないのです。しかも認知症疾患医療セ ンターも、この中でも報告があったと思うのですが、かなり地域偏在がはっきりして いるわけですね。それは、いつまでに、どうなるのかというところは国民には何も知 らされてなくて、それはやれるところから手挙げてもらうしかありませんという、そ れが限界ですという話になっているのですけど、限界で国民はがまんするしかないの か、患者の側はがまんするしかないのかという議論はどこでもされてないですね。そ ういう人たちの不安や不満はどこが聞けばいいのだろうかということをこういう場 でも考えていく必要があるのではないかと思います。  居住系ということで言うと、今日の報告の最後の指標のところにも、国民意識の変 革のところがすごく達成目標として困難だということなのですが、ある程度の認知度 は得られたけれども、肝心なところが得られないということのその限界もそれとあわ せて考えてみる必要があると思うのですね。期待できないものに対して一般的に人は 関心持たないわけですね。ですから期待持たれるようにするにはどうしたらいいかと いうことを考えていかなければいけない。個々の医療機関はすごく努力されていると 思うのです。いろんな投資をされて環境をよくしていくことをやっていらっしゃいま すが、先ほどお話がありましたように、東京が先に全部変わるとは言い切れないかも しれないですけれども、畳部屋に、破れたところにはガムテープ貼って過ごしていら っしゃる患者さんがおられると。そういうことを医療監視などでは、そこまでは言及 できないとおっしゃられて、相当ひどい内部告発がないと変われないというような現 状が今でも続いています。  また一方で、例えば「友愛訪問員」というような言い方しているようですが、地域 で困っていらっしゃる方に民生委員さんなどと一緒になって精神障害だと思われる ような方や虐待があると思われるような方のところに全く知識のない人たちがボラ ンティアで病気の人たちの発見とか、何らかの支援ができないかというようなことを やっていらしていて、そういうことに対して、こういう場では何の支援も考えられて いかない。最終目標のところに、国民の理解を更に高めていくというようなことを考 えていくのであれば、実際に動いている部分に知識や経験や資金を投入できるところ が何らかの援助や計画を示すべきではないかと思っております。  それから、もう一点だけ、新たな目標値を策定するという部分に、これはまだたた き台ということは理解できるのですが、この中の議論ではあまりなかったのですけど、 当事者の方がどのように参加していただけるかということは考えるべきだと思いま す。いろいろ意見はあったと思いますので、例えば外国が一番いいとは思いませんが、 新しいサービスの施設をつくる場合には、一定程度、当事者の回復された方の職員と しての登用ということを制度化している国はあるわけなので、それは国家政策でない と絶対にできませんので、民間だけ努力してくださいということでは全くできないと 思いますので、指標として示すべきではないかと思います。もちろんこれは民間でや っていらっしゃるところはあるわけですが、それは民間の努力にしかすぎなくて、そ れを後押しするのが制度設計をするときの重要な課題になるのではないかと思いま す。  もう一点だけ、障害福祉課から出されている資料の中で、実際に地域移行になった 方の統計が平成19〜20年の1年間で出ているのですが、4,754人。そこの中で公営住 宅に移られた方が2%なのですね。自立支援法ができるときに、居住支援サポート事 業を相当苦労して国のほうでも、住居の獲得のところへの支援というのはかなり無理 がありますと言われたのですが、当時建設省に相当努力もしていただきまして、公営 住宅法を改正していただきました。自立支援法の改正に先立って、当時の障害福祉課 の皆さんや精神保健課の皆さんが交渉していただいて、自立支援法の成立以前に公営 住宅法の改正で精神障害の方の、精神障害が事由で入ることができるようになりまし た。ところが実際には2%、4,754人の中では行っていらっしゃらない。この中で精 神障害の割合も実はわからないのですけれども、障害者全体で見ても2%だと。公営 住宅が一番いいということが言いたいのではないですけれども、公営住宅だと自治体 や国のコントロールがきくわけですね。  民間住宅で、今まで民間のサポートしている人たちが民間で何とかやってきた部分 があるのですけれども、大きく動くときには公的な力を使っていただきたいわけです。 どうしても使っていただきたい。そのためにサポートの施策もできたと。しかし、そ れは機能してない。これはどうしてだろうかということは、いろんな評価はそれぞれ に、先ほどの診断や治療の評価もそうですが、認知症の方の入口だけでなくて、出口 の問題ということもそうですが、小さなところというか、当事者の方たちが一番安心 できる出口といいますか、そこに光が見えるようなものを施策の中にどうしても盛り 込んでいただきたいなと思っております。 ○樋口座長  ちょっと待ってください。そっちへ回りますから。高橋構成員が先に手を挙げてお られた。 ○高橋構成員  少しこれまでの議論の脈略からすると外れるかもしれませんが、私、尾上の跡を継 いでここ何回か参加させていただいていますが、率直に思うことは、7万人とか7万 6,000人という数字が「条件さえ整えば」という形で挙げられてきていますが、先ほ ど大塚構成員はもうちょっと増えてくるのではないかというようなことで十何万人 という話もされていたと思うのですが、私は逆にこれが現実的な数字かなというのが ちょっと疑問に思っています。7万6,000人の算定の仕方というのが、先ほどもちょ っと説明にあったように、主治医の判断が大部分だと思うのですね。例えばこの方が、 「条件が整えば退院可能ですよ」と言われている患者さんご本人が、自分がそういっ た対象になっているということをご存じかどうかということですね。  何でそんなことを言うかというと、実は私は沖縄の那覇市の医療法人におります。 もともと入所授産施設をずっとやっていましたが、去年の4月に移行しました。そう いう中で、退院とか、私たちの入所授産施設のほうから退所される方の次のすみかと してのアパートを検討したときに、例えば入所授産施設30名いる方のアパートを民 間で探すのは非常に困難だということで、アパートを法人のほうにお願いしまして、 もちろん医療法人ですので、医療法人では建てられませんので、関連のところにお願 いをして、こういう方がいらっしゃるのでアパートを建てていただけませんでしょう かという交渉をしまして、一昨年、全部で53世帯ぐらいですか、新しく新築でアパ ートをつくったのですね。  そういう中で、そういう計画が立って、それを進めていく中で、開放病棟の患者さ んあたりも非常に興味も示されて、それで何回も見学会をしたり、そういうので非常 に盛り上がってきたわけですね。そういう中で、これはひょっとしたらすぐ埋まって しまうし、これは選別をどうやってしようと、優先順位どうやってつけていこうとい うことで非常に困ったなと思っていたのですね。  ところが実際には完成して1年半以上たちますが、どうなっているかというと、結 局まだ十何ルーム空いているのですね。家賃が高いかというとそうではなくて、那覇 市の福祉事務所の住宅補助の金額3万2,000円というところに設定しています。保証 人も要らないというような形での利用をしていただいていますが、なかなか入居者が 増えなかった。現実的に言うと、入りたいという思いはあるのですが、実際にアパー トができました。移れますよとなったときに、いろいろ現実的な問題、自分の問題と して患者さんたちが受けとめたときに、ほとんどの方が、やっぱりやめます、という 形でやめてしまう。何でと聞くと、光熱水費の問題ですね。沖縄は暑いですからクー ラーも完備されています。だけど、使ったら使っただけ電気代が出てしまうのですね。 そうするとクーラーついていてもなかなか使えないとか、あと食事の問題であったり、 そうすると病棟にいたほうが安上がりだとか、楽だとか、そういったところに行って しまうという問題もあります。ただ、そういう中からも少しずつ体験ルームをつくっ て、そこで体験宿泊をしてもらいながら、3回、4回と繰り返しながら、それで入居 までこぎ着けた方もおりますが、それの費用も実費がご家族とかご本人さんに負担し ていただいてという形でのものになってしまっていますので、ですからそういうので 非常に苦労しているところなのですね。  例えば、今、7万6,000人という数字が出ていますが、7万6,000ルーム、今、す ぐに完備して、できました、さあどうぞ、右へ倣えで入ってください、と言っても、 なかなかそうはいかないというところがあると思うのですね。ですからそれのタイミ ングを図りながら、医療の側でも、そこへのシミュレーションというか、イメージを どうつけていくかとか、体験利用というのが非常に効果を出しているので、そこのと ころへの経済的な裏づけというか、そこは補助出しますよといったこともしていただ かないと、ハコモノができたからそれで解決するという問題では当然ないと思います。  福祉サービスの点でいくと、例えばホームヘルプとか、そういうのもきちんと準備 して調整してやっているのですが、そういうのを受けることに対しても面倒くさいと か、そういった非常に現実的な問題になったときに、そのあたりが非常にイメージで きないというところでなっていきますので、ともすれば「条件が整えば」というとこ ろがハードの問題だけになってしまっているのではないか。ご本人さんたちの気持ち とか、そういったところまで十分考慮されて、この数字が出ているのかというところ は、私はそこまでも考えてこの数字を読み込んでいかないといけないのではないかと 思っています。少しそれは私の偏った考え方なのかもしれませんが、現実に今、毎日 そういった形で部屋も埋まらないというようなところで苦労していろいろ働きかけ をしているのですが、そこについていかないという現実があることをお知らせしたい と思って、貴重なお時間ですが、少し発言をさせていただきました。検討をよろしく お願いしたいと思います。  以上です。 ○樋口座長  では、こちらサイドへ回りますので、中島構成員から。 ○中島構成員  大きく分けて今日の議論は統合失調症と認知症の対応と、最後に目標設定というと ころになっておりますけど、流れとしては、厚生労働省としては非常に意欲的な方向 を出そうとしておられるのはよく伝わってまいります。ただ、20ページ等の認知症の 方の内、退院可能性はないという部分で、説明でセルフケア能力の問題が半分あると いうことをおっしゃられました。また、迷惑行為を起こす可能性、可能性ですが、こ れが60%、要するに退院できるというほうへ入れるべきですよね。その他の中の半分 ぐらいも退院できる可能性があるというほうへ入れるべきだろうと思います。  そうすると退院の可能性はないというのは、2割ぐらいしかないのではないかと思 うのです。見ている側の方の印象でアンケートをとると、どうしてもこうなってしま うところを、統計を読むときには、厚労省の方はわかっておられると思いますが、皆 さんぜひよろしくお願いしたいと思います。  また、統合失調症につきましては、人員配置、人手が治療の手段であるわけですか ら、人員配置は一般科並みに最低限する。そこに様々なコメディカルの専門家をプラ スアルファでつけていくぐらいのことをやらないと、今の人員の基準の中ではとても 今以上に努力することが難しいのではないかと思います。  認知症につきましては、23年度までに具体化ということで、先延ばしになっていま すけど、今、すぐできることがあります。認知症であるにもかかわらず、自分がどこ へ入院しているかもわからなず、どこへいるかわからないのに、「任意入院」の方が いっぱいおられるのですよ。これは大問題だと思うのです。法を正しく運用して医療 保護入院にきちんとすることは、今すぐやらなければいけないことだろうと思います。 将来というか、2〜3年後にはBPSDを伴わない認知症の方は強制入院の対象には ならないということを、きちんと決めるべきだと思います。そうしないとベッドが空 いておれば常に受け皿になってしまう。空いておれば困っている人を受け入れてしま う。空いたところはどんどん削っていく、こういうことをきちんとやっていただけれ ば、うまくいくのではないかと思います。よろしくお願いします。 ○樋口座長  それでは、野沢構成員。 ○野沢構成員  広田さんの時間をとらなければいけないので手短に3点ばかりですけど、66ページ の普及啓発、バリアフリー宣言のようなものでは効果の把握は困難だと、全くそのと おりだと思うのですね。最も効果のある普及啓発というのは、実際に本人を見てもら うこととか、本人と話してもらうこと、触れ合ってもらって一緒に暮すことが何とい っても普及啓発ですね。よく地域でいろんな障害者のグループホームをつくろうとい うときに、地域住民から反対運動が今でも起きます。ところがよくよく見てみると本 気で反対している人はほんのひと握りです。多くの人はどうでもいいと思って、本当 は応援したいなと思っているような人も多いのですね。声が大きいものだからみんな が反対しているように見えてしまうだけであって、しかも実際に運営が始まるとうそ のようにそんな反対運動はなくなってしまうのですね。自分たちの日常生活の視野の 中に障害のある人たちが入ってくるとなれてくるのですね。自分が知らないものに対 しては過剰に警戒心や嫌悪感を催すものであって、それが知るようになってくれば、 そういうものは薄れてくるのですね。そういうことは強く思います。だから実際にあ れこれ頭で普及啓発を考えるよりも、本人たちも地域へどんどん出て行ってもらうこ とが何といっても一番だということを強調しておきたいと思います。  もう一つは、自立支援法になってからどのぐらい増えたというデータがいくつか出 ていて、こんなに増えたのかなと思ってびっくりしたのですね。自立支援法は物すご い単価が低くて、みんなひいひい言いながら赤字出して大変な目に遭いながら、職員 の給料もぎりぎりのところで抑えてやっているのにもかかわらず、これだけ増えてい るということに私は驚きを感じました。この4月からいろんな加算がついて随分みん な楽になって、事業がやりやすくなったねと、これは蒲原課長のおかげだと言う人が 多いのですけれども、ますます増えていくだろうと思います。しかも、今、国会に出 ている改正法案では、グループホーム、ケアホームはもっと補助がつくようになると いうことで、今の伸び率よりも恐らく急カーブで増えていくのではないかということ を感じております。  先日、一部上場企業の500社に障害者の雇用についてアンケートをやったのですけ れども、これは知的障害なのですが、知的障害者を一度でも雇ったことがあるという 会社ほど「もっともっと雇いたい」という答えが返ってきています。200人も300人 も障害者雇っているけれども、全員身体障害だという人たちのところは、知的や精神 はね、という答えなのですね。食わずぎらいであって、実際にまず実物と触れてもら うと、いかに自分たちの考えていたよりも普通なのかということがわかってもらえる と思います。  3点目なのですけれども、これは審議会のときにも思ったのですが、施設を経営し ている人、病院を経営している人にとっては、今、現に利用している利用者、障害者 を守らなければいけないですし、自分たちの職員を守らなければいけないですから、 それは少しでも定員に満たなかったり、単価下げられたりすることに対しては非常に 反対するのは当たり前のことだと思うのですね。そういうところにもインセンティ ブ・優先になるのは当たり前で、ここの検討会でいろんな立場の方がおられて、この 点について総意を得ることは私は不可能ではないかと思っているのですね。先ほども 国が政策誘導して病院をいっぱいつくってきたではないか。今さら減らすことに対す る責任はという話がありましたけれども、それは経営する側からしてみるとそれはそ うだろうと思うんですね。ただ、患者とか障害者側から見れば、逆に国の政策誘導で 病院をいっぱいつくってきて、そちらのほうに誘導されて地域での生活を奪われてき たわけですよね。彼らにとって、地域での生活を奪われてきたことに対するどうやっ て国が責任とってくれるのだということを私は強調したいです。今こそ国の責任にお いて地域での生活というものを保障してほしいということを訴えたいと思います。 ○樋口座長  それでは、広田構成員、いいですか。 ○広田構成員  先に。 ○樋口座長  では、山根構成員。 ○山根構成員  すでに皆さんが発言されたことですが、2年余り検討してきて、再編といいながら 数値目標だけが最後に決まるのであれば非常に寂しいなという思いをしております。 7か年戦略の時点では数値目標を上げることによって、大きく体制を変えることがで きたと思うのですが、今は、皆さんがおっしゃったように、具体的にどうするかとい うことを検討しないと、数値目標はハコモノか、つじつま合わせになってしまうこと が危惧されます。例えば「退院外泊」という言葉をご存じの方、いらっしゃいますか。 今年に入っても何人かの方から聞いたのですが、1年以上入院している人で、1週間 以上の外泊をし、「退院外泊」と称して退院したことにして新たな入院として処理す るのだそうです。そうすると退院率が高まる。一方では、精神科の入院数が増えたと いうことにもなります。  ベッド数を減らすというときに、経営防衛のようなものが大きく影響しているよう に思います。もし病院そのものが経営不安がなければ、日本の精神科病床数はいくら 要るのかということを病院を経営されている人たちに聞いてみたいのです。多分、今 の3分の1ぐらいでいいのではないかというお答えが出てくるのではと思うのです。 40年ぐらい前に施策的にやむを得ず安かろう悪かろうをしたわけですが、いいものを 少なく、それでいいのではないでしょうか。病床削減数の7万あまりも、認知症で埋 めさえしなければ死亡退院で減っていく数値ですから。  私たちは残された何か月かで数値目標は決めなければいけないと思うのですが、そ の達成のためにどういうシステムにするのか、病棟はどういう形にしたらいいのか、 ということを具体的に話せるような場が必要です。もしここの委員会でそれができな いのだったら、どこかでそれをしないと、この2年あまり、職場を離れたり、職能団 体に迷惑かけながらここに出席しながら、何をしたのだと、責任を問われそうで怖い ですね。多分これから後の半年はそういうことを詰めることをするのだろうなと期待 はしているのですけれども。  実際に授産も現場の経験からは利用者は減っています。出来高払制みたいになりま したから、少し安定して働きに行く利用者がいると、保護費が減るから次の人を探さ なければなりません。病院でも退院をするとベッドの稼働率を高めろといわれます。 稼働率を高めるということは入院をさせろということで、それが病院の年間目標とし て挙がってくるのですから、おかしいことだと思います。そういうことをしなくて済 むような体制をつくるのが本当の再編だと思います。それは同じ財布の中でどう使う かということを工夫するだけでもできると思います。 ○樋口座長  広田構成員、待ってください。その前に、品川構成員が前からずっと手を挙げてお られたのを横並びで見えにくかったので、先に。 ○品川構成員  済みません、一言だけ。地域の受け皿のことについての数値がいろいろ示されて、 居住のグループホーム、ケアホームというところの数値が多いとか少ないとかという お話があるのですけど、実際の我々、このグループホームの中には、実はグループホ ームを体験して2年以内で通過型という東京都の制度も利用されて、地域の一般のア パートでほかのサービス、日中系のサービスを利用しながら暮らしていらっしゃる方 が大勢いらっしゃいます。現にこれがずっと継続ではなしに、グループホームの数、 ケアホームの数値というのは動いておりますので、その辺だけご理解いただきたいと いうことと、それと地域の受け皿というのはインフォーマルなサービス、隣のアパー トの大家さん、お向かいの商店、いろんなものが地域の受け皿のサービスにつながっ ているのが、都市部だけかもわかりませんが、そういうふうな時代が来ております。 済みません。 ○樋口座長  それでは、最後、広田構成員。 ○広田構成員  みなさん、もう少し大きい声ではっきりと義務教育程度の話をしていただきたいと お願いします。  それから、私、一部300円、活動支援センターで、この冊子を何千部もつくってい ますが、ここでは無料で出させていただいて、厚生労働省から出るお金1回来て1万 7,000円ぐらいですから、赤字ですけど、ぜひお読みいただいて次回臨んでいただき たいということと、今日の続きを次回やっていただきたいということです。門屋構成 員がさっきお話した受け皿の話はもうやめようよというのは何か理由があると思い ます。その理由をきちんとお話していただきたいです。絶えず統計をとっているのは、 「条件が整えば」、その条件というのは、北海道と私が暮す横浜とは違うし、そうい う統計のとり方はやめよう。入院治療が必要ない人は何人いるのでしょうかという統 計がほしいとずっと私は話しています。  それで、先日、厚生労働省の幹部職員にお会いしまして、「精神医療の被害者をよ く国の委員に入れていただきました」ということで厚労省で発言しまくっているので すけど、病床削減の施策は展開したかといったらしてないということです。  それで長尾先生に前回、「きちんと日精協の考えを述べてください」と言ったら、 全く異なるお話をさっきしていましたから、これは次回きちんと回答を持ってくる。 本当に皆さんもここまで出ていながら言っている人と言わない人がいるけど、ベッド は何床必要なのか。  私、おとといは神戸にいましたが、昔から知っている記者がこう言っていました。 「広田さん、統合失調症って『詐病』と言われないの」と言うから、「池田小学校の 宅間さんみたいに、悪いことをしていろいろ『精神分裂病』と言いわけした人は『詐 病』と言われるけど、私は被害者だから、詐病じゃなくて誤診じゃないの」と言った ら、「いや、宅間はしっかり誤診と出ているのだけど」と。そういう話ですから、統 合失調症を啓発するなんていうのは「私の人間性を見て」というここの7ページを読 んでいただくとわかりますが、私、たった広田和子だけでも5人の精神科医のうち、 3人は、精神分裂病、躁うつ病、非定形精神病という病名を言って、30代後半でディ スコに踊りに行っているのだから、思春期症候群という医者と、広田さんは病気では なくて今人生の危機と、これだけ分かれるくらい非科学的あいまいなのが精神科医療 です。  そして科学だといって、この7月4日に、82歳の松田大樹さんが82歳を、死なれ る前に私命がけで南区に呼びました。で、私は言いました。「MRIで映って、うつ だ、統合失調症だとあなたが治せているとしたらノーベル医学賞もの、もしかしたら 稀有の誇大妄想か」と。田辺さんという、朝日の記者たちが「変人だ」という元朝日 の記者も呼びましたが、ほかの人に聞いてみたら、「あの人はあまり熱心過ぎて変人 なのだ」ということでいろんなことがありましたけど、会場に2人の医者に来てもら ったのです。来てよ、来て来て、精神科医が来なければ困るといって来てもらったら、 医者は「参考になった」と言っていました。ここに来て参考人で話してもらいたいけ ど、いろんな医者の団体が反対するから呼べないでしょう、ぜひいろんな医者の団体 で呼んで勉強して検証してほしい。自分と違った考え方の人の勉強もしないと、ただ、 同じ考え方の人で集まっていても、それだけでは勉強にならないと思います。  それと、私、6月いっぱいで神奈川県の精神保健福祉審議会の委員を神奈川県がお りてくれということでいろんな根回しをされていました。本人に言わないで周囲に、 「広田さんは横浜に住んでいるから大都市特例の横浜だから外れてもらう」と、よそ の団体の人が先に知っていました。それで聞いたら、「課の総意だ」というから、そ この管理職に聞いたら、ほかの理由でした。そういう意味で本音を発言すると、地方 自治体、特に神奈川県は遅れていますから委員から外します。なぜ外すかというと、 精神というのは精神病院協会との関係の中で、私のようにベッドを減らそうとか、「い くら人口万単位16床でも、神奈川県内に社会的入院はいるわけですよ」と言うと、 数字が出てくるけど、「広田さん、この数字を外に出さないでください」と、こうい う言い方をされる。そういう足かせがあるわけです。言論の自由もない。  そういう中で、まさに、長尾先生、今日遅れてもきてよかった。もし休んだら、前 期入院患者ではなくて、社会的入院という文言を入れてほしいと私が発言したけど入 らなかった社保審の最後の障害者部会のときも休んだから、確信犯かと。今日来たか ら、あれは偶然だったと。だけど、全然的確な発言はしてない。次回やってもらいた いということで、みんなの話聞いていると、少なくとも、まず最初は12万床削減だ ろう、私もそう思います。私、政治力はどうか知りませんが、人間性は普通の中年男 性でした、小泉純一郎さん。小泉総理にお会いをしたときに、「アメリカのようにホ ームレスを出してはいけないので、ちゃんと予算をつけてください」という話をして いますが、そういう意味で言えば、野沢さんが、帰らないでここにいてくれています から、本当に隔離収容施策を国が謝罪し、精神病院関係者も謝罪し、マスコミもあお るにあおったわけですから、謝罪し、謝罪したときにすぐ弁護士は、広田さん謝罪し てもらって金を取ろうよということになりますが、お金を一人一人が取るのではなく て、まさに啓発ですよ、国民に。社会的入院者というこの国の国内の拉致被害者を国 がつくってしまった。それでもうけさせていただいた精神病院の関係者がいる。そし て、あおったマスコミがいるという形でばっと謝罪をやれば、それが最大の啓発で、 そして本当に優秀になれたかもしれない人なのに、精神病院の中に若年の時から長年 いたために、まさに認知症のような状態になってしまった人もいるでしょうから、そ ういったいろんな使い方ができるわけです、謝罪というのは。  そういうことをぜひやっていただきたいと思いますし、そういう時期が来ていると いうことで、私はいわゆるベッドを減らして、小川忍さんやいろんな方が言っておら れるように、ほかの医療と同じようにしたい。前に発言しましたが、母が言ったのは、 精神病院に偏見があったから、自分が精神病院に行きたくないと言ったのではないで す。私の被害を目の当たりにしていたから「姉ちゃん、私は精神病院にだけは行かせ ないで」、こういうせりふです。だから安心してかかれる精神医療があって、初めて 人を紹介できるということなのですね。この続きは次回やりたいと思います。  とにかく長尾先生次回お願いしますね。それから、精神病院協会に対して地方自治 体も言えないのですよ、病床削減を。病棟転換と厚労省も何年か前に打ち出してしま ったのだけど、私はこう思いました。今日、寝坊してタクシーで来たのですけど、思 いました。そうだ、空いた病棟をフリースペースに、国でも地方自治体でも借り上げ て、そこに通院患者が行く。そして入院患者もそこに来てピアサポートができると。  私、日精協のいろんな病院に出かけて行って、本当に患者さんと触れ合わせていた だいて、前にも言いましたけど、2時間、たばこ休憩もトイレ休憩もとらず、40〜50 人の仲間と話ししていたのです、みんながどんどん発言して。それってピアサポート ですよ。退院する気になりますよ。1週間に2〜3回しかお風呂に入れない。看護師 がこの間言っていました。私が病院に職員研修で呼ばれて、「太陽も見られない入院 患者を広田さん、切ない」、「それは、あなた、私に言うせりふじゃない。末安さんに 言いなさい」、「末安さんは偉すぎて言えません」、そういうことなのです。各職能団 体の方々。  そういうことですから、次回続けてやっていただきたいということで、この辺で終 わりにします。厚労省の誰がいいとか、何とかかんとかではなくて、国が謝罪すべき ときが来ていて、それはお金をもらう謝罪ではなくて、高らかに精神障害者の施策を 国が方向転換すること。それは政権をどちらが担おうと必要だと思います。  以上です。 ○樋口座長  ありがとうございました。まだまだご発言の希望の方、いらっしゃったと思います けれども、時間が12時半厳守ということでございますので、本日はこのあたりで終 了をさせていただきたいと思います。  事務局から次回の日程等について説明をお願いいたします。 ○野崎課長補佐  次回第21回は7月30日(木)10時〜12時半で、場所は航空会館を予定しており ます。本日とは場所か異なりますので、ご注意ください。  また、第22回ですが、8月6日(木)15時半〜18時、場所は同じく航空会館を予 定しております。8月の検討会ですが、8月6日、この第22回のみということを予 定しております。  日程は以上です。  本日は、お忙しい中を長時間にわたり、ありがとうございました。  以上で終わります。 ○樋口座長  ありがとうございました。終わります。 【照会先】  厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部  精神・障害保健課企画法令係  電話:03-5253-1111(内線3055、2297)