09/06/22 第2回内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会議事録        第2回内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会 日時 平成21年6月22日(月) 17:00〜 場所 合同長舎5号館6階共用第8会議室 ○医療安全推進室長 それでは定刻になりましたので、第2回「内服薬処方せんの記載方法の 在り方に関する検討会」を開催させていただきます。委員の皆様方におかれましては、大変 お忙しいところご出席をいただきましてありがとうございます。 初めに本日の委員の出欠状況についてご報告いたします。森山寛委員より欠席のご連絡をい ただいております。前回、事務局のほうをご紹介できなかったのですが、外口医政局長、岡 本参事官です。 以降の議事進行につきまして、楠岡座長、よろしくお願いいたします。 ○楠岡座長 それでは開始したいと思います。本日はお集まりいただきましてありがとうご ざいます。まず最初に、本日の配付資料の確認を事務局のほうからよろしくお願いします。 ○医療安全推進室長 お手元の配付資料の確認をさせていただきます。議事次第、座席表、 委員名簿のほかに、資料1として「第1回の検討会の主なご意見」、資料2として「処方せんに 関する法令の規定について」、資料3-1として「隈本委員提出資料」、資料3-2として「岩月 委員提出資料」、資料3-3として「嶋森委員提出資料」以上でございます。資料の欠落等あり ましたらご指摘いただければと思います。 ○楠岡座長 よろしいですか。それでは議事に入らせていただきます。前回の会議では、委 員の皆様方から様々なご意見をいただいたところでございます。今回は、まず資料1及び2に つきまして、事務局よりご説明いただきます。その後、患者の立場から隈本委員、薬剤師の 立場から岩月委員、看護師の立場から嶋森委員に、お一人20分程度で現状の課題、論点を踏 まえた上でご意見をいただきたいと思います。 まず最初に事務局から資料1及び資料2の説明をお願いします。 ○医療安全推進室長 資料1をご覧いただきたいと思います。これは第1回の検討会の主なご 意見ということで、議事録等から事務局の判断でピックアップさせていただきました。内容 について説明することは省略します。1番目ですが「処方せんの記載方法」全般についての 様々なご意見がありました。2番目ですが、この問題を考えていく際には、「医療情報システ ム(オーダリングシステム)等について」も考えていく必要があるということ。3番目に、 「教育」ということで医学教育、薬学教育の場の実態を踏まえて進めていく必要がある。4番 目は、資料2にも関係しますが、「処方せんに関する通知」について、その現状等を十分踏ま える必要があるのではないかというようなご指摘がありました。5番目は、いわゆる「過渡期 の対応」ということで、新しい案を作っていくにしても、過渡期ということをどのように考 えるかということについて、様々なご意見をいただきました。 資料2ですが、若干時間をいただいて説明させていただきます。資料2は処方せんに関する 法令上の規定が現在どうなっているのかということを整理せよというご指摘がありましたの で、各法律、その下についております通知等について改めて整理したものです。まず、「医 師法・歯科医師法」という医政局所管のものですが、医師法第20条に「医師は自ら診察しな いで処方せんを交付してはならない」ということが書いてあります。22条ですが、「医師は 患者に対し、治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認める場合には、患者又は現にそ の看護に当たっている者に対して処方せんを交付しなければならない」ということが書いて あります。歯科医師法についても同様の記載があります。この医師法の下に省令があります が、医師法の施行規則21条です。これは「医師は患者に交付する処方せんに、患者の氏名、 年齢、薬名、分量、用法・用量等を記載しなければならない」ということです。歯科医師法 につきましても同様の記載があります。1日量処方でなければいけないとか、1回量処方でな ければいけないということについては、特段の定めはないということです。 3頁目は「薬剤師法」です。薬剤師法につきましては、第23条に(処方せんによる調剤)が あります。「薬剤師は、医師、歯科医師又は獣医師の処方せんによらなければ、販売又は授 与の目的で調剤してはならない」というのがあります。以上が医師法、歯科医師法、薬剤師 法です。詳細なことについて言っているわけではないというご理解をいただければと思いま す。続きまして「健康保険法」ですが、こちらでは、健康保険法の法律そのものではなくて、 施行規則の第54条ですが、「薬局から薬剤の支給を受けようとする者は、保険医療機関等に おいて診療に従事する保健医又は医師もしくは歯科医師が交付した処方せんを当該保険薬局 等に提出しなければならない。」さらに厚生省令で「療養担当規則」です。これは「保険医 療機関及び保険医の療養担当規則」というものですが、処方せんの交付に当たって、処方せ んを交付する場合には、様式第2号、又はこれに準ずる様式の処方せんに必要な事項を記載し なければならないというものがあります。この様式第2号というのはどういうものかといいま すと、4頁ですが、上のほうに公費負担者番号などがありまして、患者さんの氏名、処方とい う所は空白でございまして、特段の定めはないというものです。 続きまして5頁ですが、「保険薬局及び保険薬剤師の療養担当規則」というものです。保険薬 剤師は保険医等の交付した処方せんに基づいて調剤を行わなければならないということが書 いてあります。 次に「診療報酬請求書等の記載要領等について」という通知が出ております。これは昭和51 年ですので、30年以上前に出された通知ですけれども、これは保険局医療課長からの通知で す。そして、ここに別紙1と次の頁の中ほど以下に別紙2が付いています。通知の本文は鏡 のようなもので内容的にはこの別紙1と別紙2が重要になってきます。この別紙1は、「診療 報酬請求書等の記載要領」いわゆるレセプトの記載要領のことを書いてあります。これはレ セプトなのですが、(24)ア(ア)入院分についてということで、どのような記載を書くとい うことが書いています。適用欄に所定単位当たりの薬剤名、投与量、投与日数等を記載する こと。これはあくまで請求の観点からのものです。 続きまして別紙2というものがあります。「診療録等の記載上の注意事項」というのがありま す。そこに第5というのがありまして、処方せんの記載上の注意事項というものが書かれて おります。7として、「処方」欄についてということで、(1)医薬品名は原則として薬価基準 に記載されている名称を記載することとするが、一般名による記載でも差し支えないと。そ の点については、前回の検討会でもご指摘があったと思います。 (2)で内服薬については1日分量、内服量滴剤、注射薬及び外用薬については投与総量、屯服 薬については、1回分量を記載することというように、1日分量で書くことと書いてあります が、同時に、(3)のところで、用法・用量は1回当たりの服用量、1日当たりの服用回数等々 を記載することという ことです。したがってこのとおり解釈しますと、例えば1日60mgの 薬があって、分3で1回当たり20mgということになりますと、その60mgという数字、1回当た りの20mg、1日当たりの服用回数が3回、この3つの要素をすべて書かなければいけないとい うことになっておりまして、保険局の医療課に改めて確認をしましたが、そういうことで書 いてくださいということだそうです。  ただ、現状は、若干、実際にはそうなっていないように見受けられます。以上です。 ○楠岡座長 ありがとうございます。ただいまの資料1、資料2の説明に関しまして、何かご 質問等ございますか。 ○花井委員 前回の議論の中で、いわゆる診療報酬上の記載に関する定めに規定され、ある 種、それに引きずられる形で処方せんとしても1回分量を書けないという規定になっていると いう認識は違っていたという理解でよろしいですか。 ○医療安全推進室長 1回分量を書き、通知の中で1日量を書きなさいということを言ってい るわけです。したがって同時に1回量も書くべきということをこの保険局通知の中では言っ ています。 ○花井委員 そうすると、通常の認識としては(2)に書かれている1日分量を書きなさいとい うところに引きずられて、実態はそうなっていると、こういう理解でいいですか。 ○医療安全推進室長 実態は(2)は見ているのだけれども、(3)は若干軽視されているところ があるのではないかと思います。 ○花井委員 厳密に法、もしくはそれに準ずる通知、省令等の条文上は、それを規定してい るわけではないと、こういうことですよね。 ○医療安全推進室長 通知上は1日量で60mg、1回当たり20mg、それを1日3回と。20×3は 60の、3個を全部書きなさいということを言っているわけですが、現状では60mg分3と書い てあるから、60÷3というところはありますが、答えの20というのは書かなくてもわかるの で書いていないということだと思いますが、通知上は、そこは答えの20mgも書いてください ということになります。 ○花井委員 わかりました。 ○楠岡座長 よろしいですか。いま花井委員のおっしゃったところは非常に大事な問題で、 もし昭和51年からそれが徹底していれば、あまり問題は起こっていなかったかもしれないと いうことはあります。この通知は私も今回資料を見て初めてそんな通知があったというのを 知ったほどで、たぶんほとんどの方はご存じなかった可能性があると思います。1つは、歴 史的経緯として、それ以前がどうだったかというところもあります。通知は出たのだけれど も、昔のままの慣性で、前回にも話がありましたように、先輩から書き方を習うようなもの だったので、そういう通知が出て、やり方が変わったということがあったとしても、先輩の 先生方は昔のやり方を教えるので、そのままずるずるといっていたということもあったかも しれないと思います。この辺は、今回初めて出てきたことですので、次回以降で少し議論の 対象にしていきたいと思います。 ほかにございますでしょうか。 ○齊藤委員 確かに(3)に1回当たりの用量を書けと書いてあるわけですから、研究案の趣旨 はそういう意味では既に合理化されているというか、通知になっているわけなのですが、1日 分量を書く必要が本当にあるのか。そこが問題なのです。そういうことで、次回以降の議論 だと、いま座長が言われましたけれども、1日分量は書かなくてもいいのではないかしらと。 それは前回の議論のときもあったのですが、入院患者の食事が朝飯だけ食べる人もいるし、 朝昼食べる人もいるということで、個別のことを記載して、診療報酬上点数を得ているわけ です。だから1日何食食べているなんていうことは、実際問題としてあまり関係ないのかも しれないです。よく考えてみると。その辺が次回以降のテーマなのかもとも思います。 ○楠岡座長 たぶん(2)までは皆さん方の頭にあって、(3)で例えば1回量というのは非常に自 明のことだから省略できるということで、習慣的に省略されていたものが、いろいろ複雑な 状況になってくると、省略されきれない問題が出てきているのが現状ということも考えられ ます。 ○齊藤委員 むしろ(3)がそのまま重要で、(2)は本当にいるのかしらという、そういう関係か もしれないです。 ○楠岡座長 ほかによろしいですか。保険局の診療報酬等に絡んだところの通知の中の別紙 に処方せんの書き方がある。本来処方せんの書き方はすべての医師、薬剤師、歯科医師にか かわることなので、もっと医師法とかそういうところに関連してあるべきにもかかわらず、 診療報酬のところにあるがために、あまり目に触れてこなかったというのも1つ問題点として あるのかもしれません。この辺のことも含めて今後検討課題に入ってはどうかと思います。 よろしいですか。確かに通知があったというのはわかったのですが、この通知がどうしてき っちり伝わっていなかったのかということが、今回の議論の1つの中心といいますか、問題 点として1つそれがあります。今後新しい書き方を決めた場合には、この二の舞はしないよ うに、全員がきっちりそれを認識できるようにしておかないと、せっかく新しいやり方を作 っても、それが広まらないままということになってしまいますといけませんので、ある意味 1つ教訓的なものかもしれないと思います。よろしいですか。できましたら、今後の本検討 会での議論を踏まえて、いまの通知等の見直しも含めて検討していく必要があるというとこ ろで、次の議題に移らせていただきます。 本日は3人の委員の方から少しプレゼンをしていただくことになっております。まず最初に 隈本委員から、患者の立場ということで現状の課題、論点を踏まえた上でご議論いただきた いと思います。資料は3-1です。隈本委員、よろしくお願いいたします。 ○隈本委員 はい、よろしくお願いします。私としては患者の立場からということで、委員 の先生方はよくご存じのこともあるかと思いますが、この委員会の議事録を国民が読んでい るということもありますので、多少当たり前のことも含めて発表させていただきます。この 検討会の資料を見ていただきたいのですが、今日の流れとしては処方せんの記載方法の問題 が、どれほど事故につながっているか。これは患者の立場、あるいは報道の立場からそこを 知りたいなと思っています。そして、この医療事故防止についての考え方と、抜本的なシス テム的な対応の必要性について述べたいと思います。 次の頁を見ていただきたいのですが、実はいま我々が把握している処方せんの書き方のミス による事故事例は、研究班のご努力で、ある程度集めていただいたわけですが、システム的 に収集しているものはこのご覧の医療事故報告です。2004年10月からスタートしまして、義 務化されたのはおよそ270病院です。しかし、これはご存じのとおり、病院数では全国の3%、 自発的に入っているものを含めても6%から7%、ヒヤリハット報告でもせいぜい4分の1程 度しか入っていませんで、全国の病院が網羅されているわけではない。これぐらいしか我々 は知らないということをまず前提としておくべきだと思います。この医療事故報告制度が始 まってから4年半近く経つわけですが、全部の報告は1病院当たりの年間の件数が4.6件で す。いちばん大きい病院は1,000ベッドを超える病院なのですが、そこから来る、要するに 重大事故に限らず、医療事故という報告を求めたケースで、年間4.6件ですよ。これが報告 の現状なのです。 こう次の頁を見ていただきます。こういうときにはいつも斜めに見るのですが、例えば去年 の件数別の病院数を見てみると、51件以上の報告をしている病院は3病院ある中で、0件と いうところが69病院あるわけです。同じ報告基準で、片方は51件以上、もう片方は0件と いうのが、これほどばらついている調査だということを、まず認識していただきたい。そし て、総括しますと、自発的報告制度ですので、仮に報告義務が果たされなかったとしても、 その事実を知る方法は調査側にはない。自発的報告制度の特徴として、いろいろ争ったあげ くこれがミスであるということがわかるような、高度なミスは報告されずに、わかりやすい ものばかりが報告されるということです。つまり我々としては、事故がどれぐらい起きてい るか、その実態を知らないと考えたほうが妥当だと思います。 次の頁です。ただ、実際の頻度はどれぐらいかということで、一度だけシステマティックな 調査が行われたのが、医療事故の全国的頻度に関する研究です。このときには30病院を無作 為抽出したのですが、18病院から協力が得られて、合計4,389のカルテを分析し、退院後に どれぐらいの有害事象が起きたかというのを調べた。欧米ではもうかなりやられていますが、 日本では唯一です。この分析の結果をご覧いただいたとおり、全4,389のカルテのうち、有 害事象は441件、医療事故に当たるものは251件、そのうち医療側に何らかの問題があった、 つまり回避可能性があったという、「医療過誤」に当たるものは108例ありました。その結果 「死亡が早まった」のは7例、つまり、1/627の確率で、医療側に何らかの問題があって死亡 が早まったケースがあるということです。 次の頁を見ていただきますが、これを全国の退院患者数に単純に換算しますと、年間2万 4,000人が医療側の問題で亡くなっているという計算になります。これをニュースマンはそ う表現してしまうのですが、例えば500人乗りのジャンボ機がほぼ毎週墜落しているのと同 じ現象です。私は医療が危険だと申し上げたいわけではなくて、つまり人・物・金をつぎ込 んで対策をやる価値のあるものだということで。例えば5,500人ぐらいが年間交通事故で亡 くなっていますが、そこに掛けられる警察官の努力、道路交通の改善の努力と、その4倍ぐ らいをつぎ込んでも全然惜しくないというのが、この医療安全であると私は思っています。 次を見ていただきたいのですが、ところが医療従事者の忙しさは、どんどん増加して、しか も医療の複雑さも増加しています。薬剤名、医療機器名は、毎年増加の一途をたどっていま す。コミュニケーションの不足もよく言われます。こうした状況の中で、間違いやすいシス テムは、とにかくできるだけ無くしてかないと、医療がどんどん複雑化しているわけですか ら、間違えないようなシステム作りも同時に進めていかないと安全性は保たれない。 次の頁ですが、これは私が去年イギリスとアイルランドで取材をして来たのですが、医療安 全について取材をしてきたのですが、このオックスフォードのラドクリフ病院のリスクマネ ジャーのGustafsonさんに提供していただいた写真です。この写真を見て私も感動したので すが、彼の話によると、高度な訓練を受けた射撃の名手が細心の注意を払って打てば、ちゃ んと上の的に当たります。しかし、その人が極度に慌てていたり、気が緩んだりしていたり、 あるいは疲れていたり時間がなかったり、同じにいくつもの的に打たなければならないとし たら、もしかしたら、この支えている兵士に当たるかもしれない。実はいまの医療現場の状 況というのはこういう状況だということをGustafson氏は言っています。 次の頁ですが、例えば高度な訓練を受けたプロも、香川県の病院では、それまで1,000例以 上の体外受精を扱っていたベテラン医師が、受精卵の取り違えをしたかもしれないというこ とで中絶をするケースがありました。おそらく一生に一度しか起こらないようなミスです。 これは、高度に訓練を受けた細心の注意を払って行うプロでも、何らかの原因があると、事 故を起こしてしまう可能性があるということを示しています。 また医療と離れてしまいますが、高度な訓練を受けたプロもということで、皆さん将棋をご 存じであれば、二歩というのがあるのですが、これはもうものすごく初歩的な反則なのです けれども、日本で言えばプロ棋士というのは、超エリート集団で、全身全霊を掛けて公式戦 で闘っているにもかかわらず、NHK将棋トーナメントの2000年以降に二度、この二歩が発生 しました。たぶん一生に一度ぐらいしか棋士人生の中で犯さないようなミスですが、実は500 局の中に2度発生しています。これも当たり前のことなのですが、釈迦に説法だと思います が、次のスライドを見ていただきたいのですが、例えば50年に一度しか事故を起こさないよ うな会社員が、その日に事故を起こしてしまう確率は1万2,500分の1。ですから、客は安心 して99.992%の安全性で物を買えます。ところが、同じ能力の社員が30人いる会社では、そ の日に無事故の確率は99.76%に低下します。しかし、それが1年間続くわけですから、365 乗にすると、41.6%の確率で一生に一度しか犯さないようなバカなミスをする確率があると いうことです。 徳島県の病院では、「サクシゾン」と入力したつもりで実際には「サクシン」が投与された 事故がありました。これは、次のスライドですけれども、もうこの病院では富山県で起きた 事故を教訓に、サクシゾンを薬剤リストから削除しています。しかし、その入力した当直医 は、その事実を知らなかった。ただし、「サクシ」と入れたら、「サクシン」が出てくるシ ステムそのものはそのまま放置しています。薬剤部は、オーダーを受けたときに、200mgいっ ぺんにオーダーが来たのですけれども、何に使うのですかと聞かずにそのまま出しました。 この事故後の対応は、まず病院が謝罪する。県が再発防止を指導する。警察が捜査に入り、 医師等の事情聴取する。県も再び立ち入り調査をして、サクシゾンに続いてサクシンも削除、 劇薬や毒薬を処方する場合には、必ず電話をしましょうという決まりを作りました。非常に いい対応のように見えますが、なぜこんなところで警察が一生懸命入ってしまうのかという ことも含めて、非常に疑問が残ります。つまり、このやりかたに、事故を起こした人を責め て、みんなで気をつけましょうという発想がないかということです。まず基本的には司法側 の発想は、事故を起こした人を責めて罰すれば、みんながそういうことをしなくなって再発 防止ができるという考え方です。医療側にも若干似たような発想があって、もちろんそうい ったことはよくない。つまり人を責めるような調査はよくないということは、よくわかって いるのだけれども、医療側にも我々は高度な訓練を受けたプロなのだから、失敗は許されな いのだと。もう1回教育しようとか、気をつけようとか、さらに訓練を積み重ねるという発 想があるような気がします。 次の頁を見ていただきたいのですが、これはわざわざ2つの製薬会社が、同じチラシを作っ て、サクシンとサクシゾンを並べて絶対に間違いないでくださいというチラシを配っていま す。でも、私は考えるわけです。こんなに言ってチラシを配っても、事故は何年かに1回起 きています。それは富山県で起き、今度は四国で起きました。そのたびに患者が傷つき、そ れをやってしまった医療者も傷つく。同じお金をかけるのなら、サクシンかサクシゾンどち らかをやめてしまったほうがいい。名前を変えるなり、どちらかを発売中止にするほうが、 ずっといい。このほうが何年かに1回人が死に、医療者がとても傷つくという事件が起こら ずに済むはずです。 次の頁を見ていただきたいのですが、システム的な対応の成功例があります。これは塩酸リ ドカインというのが10%液と2%液があった時代、取り違えの注射ミスが様々な病院で多発 してました。これは1つの例ですが、ある大学病院で2%製剤を使わなければならなかったの に、誤まって10%製剤を注射して患者さんが亡くなりました。看護師は「点滴用と書いてあ りますが」と言ったのですが、この研修医は2種類あることを知らなかった。そのときの薬 瓶にはこの図のように書いてありました。希釈確認、急速静注×、上に10%点滴専用、急速 静注不可と。もうこれでもか、これでもかと注意書きがしてあるわけです。ところがもとも と2種類あるということを気がつかない人は、いくら注意書きをしても駄目ということにな ります。 それまでにも、新聞データベースを検索してみると、これだけの数、地域的にもものすごく 離れた場所で、毎年のように同じようなキシロカイン10%を2%の取り違えが起きています。 そのたびに患者さんが亡くなっています。 2005年秋に、メーカーがこの10%製剤を全面販売中止にしました。つまりこの病院には10% 製剤が存在しなくなった。そうすると、2006年以降、取り違え事故の報道は0になりました。 当たり前のことなのですが。こういう事故の原因を完全に絶ってしまうシンプルな対応が絶 対に必要だということを教えてくださるわけです。何しろそれまでの間、ほとんど毎年1人 か2人ぐらいの割合で人が亡くなっています。それが2006年以降、同じミスは起こらなくな ったということに、それだけのお金をかけたのです。つまり10%キシロカインを売らないよ うにすると、ある程度の経済的損失があるわけですが、それを上回るだけの人命を救う力が あったということになります。これは例えば輸液チューブを点滴チューブに入らないように 形状変更するなどの対応と同じです。麻酔ガスの分野では、もう随分昔からピンが合わない と絶対にほかの種類の薬は入らないとか、フールプルーフというか、そういう考え方が既に 取り入れられています。是非この薬の処方せんの間違いということで、もし事故が多発して いるのであれば、フールプルーフというか、間違えようと思っても間違えられないというシ ステムに変えていくべきなのではないか。我々が知っている以上に事故が起きている可能性 があって、我々の知っている事故情報の収集というのは、あくまで氷山の一角に過ぎない。 そのたびに患者が傷つき、医療者も傷ついている。高度なプロとして、失敗は許されないと いう考え方は、とても高潔で、とても心意気はよしと思うのですけれども、失敗したときに 更に訓練をしたり、注意したり、チラシを配ったり、注意喚起をしたりするということでは やはり駄目で、システム的、抜本的対応が必要だと思います。 最後の頁ですが、前回も申し上げましたが、早くやっていただきたい。今回は法律上の問題 も、どうもなさそうだということであれば、1日も早く1回量、総量表記ということに統一し ていだいて、いまこれを拝見して、処方せんは自由に書くというスタイルになっていますが、 例えば薬剤名、1回量、mg×1日何回と。もうこの四角を埋めなければ、処法できないような そういうものにしてはどうでしょうか。あるいは新ルールでありますよということを伝える ために、当面ですが、「@」を使ってみてはどうでしょうか。これは新ルールでは、「@」 がついていれば、これは1回量ですよということが強調されるようなシステムを考えてはいか がでしょうか。もう1つ、追加させていただければ、いま処法せんに病名が書いていないこ とによって、現場の薬剤師さんから、疑義照会がしにくい、何か問題点を気づいたときにで も、言いにくい、あるいは気づきにくいといった問題がありますので、もし処方せんの様式 を変えるのであれば、病名、つまりその薬を投薬したいお医者さん側からの疑いの病名をち ゃんと書くようにしてはどうかというのが1つです。また、疑義照会は、処方せんを受けて、 調剤する薬局が、お医者さんに疑義照会がしたいと思ったときに、電話をしても、診療時間 内に電話をしなければいけないのにもかかわらず、診療時間内はお医者さんが大変お忙しい。 そうすると、電話をしてもうまく疑義照会ができない。時間外にまとめてやるといったこと が現状としてあるそうです。疑義照会によって、ようやくいまのわかりにくいいろいろな多 様な書き方が、安全を保っているということであれば、疑義照会のしやすさということも、 この委員会で是非ご検討いただきたいなというのが私の意見です。以上です。 ○楠岡座長 どうもありがとうございました。全体的なディスカッションはまた後程時間を 取りますので、まず初めに、いまの隈本委員のご発表、コメントに直接関係したものがあり ましたらご質問お願いいたします。いかがでしょうか、よろしいですか。ないようでしたら、 後程まとめてのところでディスカッションをさせていただきます。どうもありがとうござい ました。 それでは引き続き、2番目の資料3-2で、薬剤師の立場から岩月委員にご発表をよろしくお願 いいたします。 ○岩月委員 日本薬剤師会の岩月です。発表の機会を与えていただきありがとうございます。 資料3-2に基づき説明いたします。1頁目の下から、先ほどご説明もありましたように、現在 処方せんの記載に関する法律上の規定はすでにございます。処方せん交付規則(第21条)に は、「患者に交付する処方せんに患者の氏名、年齢、薬名、分量、用法、用量、発行の年月 日等を記載しなければならない」となっております。また健康保険法におきましても、保険 医療機関及び療養担当規則において、先ほど別紙にありましたとおり、医薬品名は原則とし て薬価規準に記載している名称を、内服薬については1日分量を記載することとなっておりま す。この薬価収載に記載されている名称について、薬剤師は先ほどのお話からもおわかりい ただけるように、かなり敏感に反応するところですが、商品名が書いてあり、規格用量があ り、剤形が書いてあるのがルールでありますが、現場では必ずしもそれが徹底されていない ようです。 これは、医師の能力の問題ではなく、医療機関に存在するコンピュータ上のマスターの問題 です。では、すべての医薬品を全部マスターに載せればいいかというと、かえってそれが先 ほどのように名称の間違いとか、事故を誘発することに繋がるという懸念もあり、ほとんど の医療機関はご自身の採用医薬品しかマスターに入れていないということが多いようです。 逆に薬局はどんな医療機関から処方せんがくるかわからないので、私のような小さな薬局で あっても、コンピュータのマスターには注射も含めて全部の薬剤が入っております。ここが 大きな違いです。したがいまして、病院で発行すると、例えば複数規格があるものであって も1規格しか採用がないということであれば、オーダリングの中で規格単位のない名称出さ ないということは、仕組みとしてできてしまうことがあるようです。 2頁目で、医師に対する規定が先ほどからありますように、医薬品の名称は、薬価収載名、 または一般名で書きなさいということですが、現実問題として、いま一般名で処方せんを書 いていただく医師の方は非常に少なく、極わずかと言っても間違いないだろうと思います。 内服薬ではありませんけれども、例えば、薬価収載名は、目薬のようなものに関しては、5ml 容量のもの1本で薬価収載されているものは、何々目薬2本必要であれば2本と書く。ml単 位の薬価収載されているものに関して言うと、何々目薬10mlで薬剤師は換算して、それが5ml 包装であれば2本だなと理解するということで、薬価収載名で記載するというルールを守れ ば当然そういった違いが出てくることになります。このケースでも病院の中でマスターを全 部mlに統一してあれば、そのように出力をされるということになります。分量についても内 服薬は1日分量で先ほど1回量とか全部書くことになっているのだから、どれかを外しても いいのではないかという指摘がありましたけれども、内服薬と屯服薬の表記方法が違ってい る場合の理解度の問題があります。わかりにくいケースとして、毎日飲むけれど屯服薬とい う指示のもの、たまにしか飲まないのに内服薬という指示もあるわけで、これは1回量で記 載するのか1日量で記載するのかによって、そのことがわかるようになっているということ もあります。用法、用量については1回当たりの使用量、1日当たりの使用回数及び時点とい うことで掛け算表記をするのか、割り算で表記をするのかということになるかと思います。 いまのところは投与日数も含めて記載がしてあると思います。下のほうに一般的な内服薬の 場合で、剤形と規格単位があります。1日に1回しか飲まないものであればこのように、14 日分ということで、我々薬剤師は掛け算を1回したことによって、総量を出すという作業を しております。これが1回量表記になると掛け算を2回することになり、薬剤師的には計算 が面倒かと思ったりすることがあるかもしれません。 顆粒剤に関しては2gとしか書いてありませんけれども別のご指摘がありましたように、力価 表示の場合と製剤表示の場合では、これも実は薬価収載名で記載することがルールになって おりますので、薬価収載に力価名が書いてあるというものは、いま括弧書き表記以外のもの はありませんので、力価だけで表示をするのは現行上でいうと、保険上ルール違反となりま す。 一方で、薬局側はどういう規定があるのかと申しますと、3頁上ですが、医薬品名は当然保 険請求する場合には薬価収載名で保険請求をします。用量に関しても内服薬は1日用量。先 ほどから申しておりますように、屯服薬は1回の用量と回数を合わせた全量で保険請求をす ることになっております。薬剤に関しては、1日分と、日数を掛けて金額を出すという仕組 みになっています。(1剤)と書いてありますが、これは話をすると少し面倒なので省きます けれど、大まかに言うと、服用時点が同じものを1剤として計算しますので、これについて は服用回数とか、服用時点ということが保険上の請求上の問題で、意味をもっているわけで す。 また、これは薬剤師にとって大きな問題でもありますし、実際に薬を受け取られた患者さん にとっても非常に大きな問題だと思いますけれども、現在処方せんに記載された患者さんの 氏名、用法、用量、その他厚生労働省で定める事項を記載しなければならないとしか書いて ない薬袋というお薬を入れる袋についての書記の仕方が、現状ではまちまちということがあ ります。どういうことかと言うと、朝、昼、夕の食後、1日3回の服用するお薬が出た場合、 1日3回毎食後服用という1つのお薬の袋に入れてお渡しすると、患者さんがそれを朝と昼と 夕とに分けて自分で飲むということになります。朝食後、昼食後、夕食後という袋を3つ用 意すると、患者さんはそれぞれの袋から出して飲めばいい。一長一短がありまして、朝も昼 も夕も一緒だからといって私は常に朝の袋から服んでいきますという患者さんもいらっしゃ るので、一概に服用時点ごとに袋にすると、それが医療安全とか利便性の向上に繋がるかと いうと、そうもいかないこともありますし、飲み忘れの問題もあり、問題点があるように思 います。 その他、影響がある事項に関しては、いわゆるレセプト用のコンピュータとか、自動分包器 とか、電子薬歴、これはすべて割り算のロジックで動いておりますので、1回量表記になる と全部掛け算のロジックに作り直すということになります。ちなみに自動分包器というのは 大変賢くて、不均等のように3錠を1日2回に分けなさいというところは、1.5錠ずつで自動 的に割り算をしてしまいますけれども、朝1錠、夕方2錠という服用方の場合にはそのよう に指示をしてやれば自動的に機械が動いてくれるという賢い機械です。それにしても全部割 り算のロジックで動いているということになります。現状と問題点は、現行の健康保険法で は、院外処方せんについて1日分量を記載することが既にルールが設けてあります。しかし ながらルールどおりに記載されない場合もあることから、まずは現行ルールがきちんと守ら れるような仕組みが必要ではないかと、その後1回量で記載するのか、1日量で記載するのか は別として、仮に1回量に決めてもルールを守らなかったら同じじゃないのということがあ るので、まずルールがどうしたら守られるのかの議論していくのが必要ではないかと思いま す。 散剤の表記の場合は製剤量か成分量かの判断がしにくいのですが、これについても、いま言 ったようにルールがあるにも関わらず、そのルールが必ずしも徹底をされていないことにな ります。先ほど疑義照会のお話がありましたけれども、現状では発行側の遵守不足と言いま すか、ルールに則ってない処方せんをルールの形に当てはめるという作業が実は疑義照会と いうことになると思います。その上で整理をした上で実際に調剤をすることになります。疑 義照会というのはそういった役割があり、ルールの単純化という観点からすればそういうル ールの徹底をすることも大事だと思いますし、それからそのルールに関わる人間を制限する。 例えば資格のない人間が調剤をするとか、資格のない人間が処方するということはやはりあ ってはならないことです。これはいまの院外処方せんのルールでは、院内についてはほとん どの病院で院内処方せんという形で、処方せんによってオーダーが出されていると伺ってお りますけれども、当直時間とか、時間外とか、緊急の場合には口頭指示とか、注射伝票とか いう形でルールに則らない仕組みが存在しているようです。したがいまして、ルールを作る 以上は統一化、単純化ということをひとつ頭の中に入れておいたほうがいいのではないかと 考えます。薬剤師としては病院薬剤師も開局薬剤師も同じだと思いますのでそのような観点 から院内も院外も同じルールが必要ではないかと考えます。 最後のスライドでは、想定される課題として、いまの現行ルールを変更する場合には、移行 期の長い短いに関わらず、新旧の記載方法が必ず混在することになります。したがってルー ルが徹底をされたという前提であっても2種類併存することになりますので、かえって危険 性が増すのではないかということが懸念されます。記載方法を変更するのであれば、一番大 事なことは患者さんであって、薬剤師が間違えようが患者さんが正しければ事故にならない ということもあるわけです。患者さんが一番間違えないということが一番大事ですので、先 ほど申しました薬袋の記載方法も含めた、いろいろな波及することを考えた上でルール化を 考えなければならないと思いますし、もしその2種類が併存することになると実際に調剤す る薬剤師は、かなりの負担が強いられるだろうということが容易に想像されることになりま す。 下の枠のレセコンなどの関連機器について、先ほど申しましたように全面的なシステム改修 になりますし、費用の面でもかなり負担がかかるだろうというのと、全国一斉にこの対応が 可能なのかどうかということも、考えておかなければならない問題です。処方せんの記載方 法に関するルールの統一化については、1回量か1日量かの以外に、これは前からも申してお りますが、例えば特殊な服用を要するお薬がかなりありますけれども、そういったものに関 しては、レセコンのベンダー段階で統一した表記ができるようにするようなことも考えてお かないと、せっかくルールを決めたのにも関わらず、特殊な服用を要するお薬に関しては全 く野放しということも十分考えられます。いまの現行ルールをベースとして、まず統一化を した上で、1回量記載へ一斉切り替えをするのが、安全上一番正しいだろうと思います。た だし、現実問題にその一斉切り替えが、例えば明日から全部やるというのはシステム上不可 能であるなら、2者併存方式を取るということであるなら、明確な対応方策を考えておくべ きだろうと思います。 先ほどからも人命に関わるとか、ミスとかいろいろなことが出ておりますけれども、いまの ルールの中で、とにかく守らなければならないことが、守られていないという実態があり、 その守られていないことを補完するための仕組みが、いろいろなところであるというのも実 態ですので、いまの仕組みの中で何が一番大事なのかを考えた上で変更するなら変更するこ とと、きちんとした枠組みを波及する問題までも含めて、検討した上で手をつけるというこ とを、我々薬剤師としてはお願いをしたいところであります。以上です。 ○楠岡座長 ありがとうございました。 いまの岩月委員からのご発表に関してご質問等ございますか。 ○齊藤委員 確認ですが、(2)の記載と、(3)の記載がありましたが、(2)については1日量を と書いてあり、(3)には1回量と書いてあり、ただ1回量のほうは必ずしも書かなくてもすむと いうような状況が現実にはあると。先生のお考えでは(3)もきちんと書かせると、(2)を活か したままで、という手順になりますか。決められたことが守られていない実態があるという のは、つまり(3)がきちんと実施されていないと。だから手順としては(2)と(3)を同時に徹底 すべきであると、そういうご意見と考えていいですか。 ○岩月委員 現にあるルールが、どうやったら守られるかという検証も必要だろうと思いま す。やってみたけどもどうしてもここの部分が書けないとか、どうしても忘れてしまうとい うことであるなら、それは仕組みが多分悪いのだろうと思いますので、まずそのことが徹底 されるかどうかの検証は必要だろうと思います。そういう意味で申しますと、いま先生から ご指摘いただいたように、いまのルールをどうやって徹底するのかがまず検証されるべきで はないかというのが私どもの薬剤師の考え方になります。さらに申しますと、必要でない情 報というのは多分ないだろうと思うのです。ミスを防ぐという観点からすると。例えば1日量 も書く、1回に必要な量も書く、それから全量も書くとか。やはり、どうしたら最もミスがな いのかということは単純化するとミスが減るということでもないと私は思いますので、そう いったことも含めた検討が必要だろうと思います。 ○隈本委員 本日、佐原さんのほうから発表された(3)については、薬剤師の皆さんは十分ご 存知で、ただし、そうなってない処方せんも自分たちの専門的能力でなんとかしているとい うことでよろしいのですか。それとも1日量であるという考え方がかなり世の中に広まってし まっていて、その1回量と回数も書かなければいけないということが伝わってないというふ うなご認識ですか、それはどちらでしょうか。 ○岩月委員 現実の処方せんは、1日量で記載されているのがほとんどですので、単純に1日 量で記載されてあるという、単純と言いますか、前提の元に割り算したときの1回量が多け れば当然疑義照会ということになると思います。 ○隈本委員 そうではなくて、つまり認識されていないことが本来なら(3)で1回量も回数も 書かなければいけないということが薬剤師の中で認識されていないのか、本当はそのルール があるけれどもそのルールが守られていないのか、それについてはいかがでしょうか。 ○岩月委員 すべての記載がないと疑義照会の対象になるかということでよろしいですか。 ○隈本委員 ではなくて、通知は1日量というのではなく、通知は1日量と1回量と回数を書 けというふうに書いてあるのが、薬剤師の中では常識になっていないというか、もちろん日 本全体の医療界の中で常識になっていないという認識でよろしいのですか。つまり1日量を 書くものだと誤解をしている。あるいはルールはあるけれどもそれはなかなかできないので やっていないということですか。 ○岩月委員 すみません。1日量なのはいまの保険上のルールですので、1日量が記載されて なければ、これはルール違反の処方せんになりますので、薬剤師は調剤ができないことにな ります。疑義が解消しないかぎり。したがいまして、現行では1日量が書いてあれば1回量が 書いてなくても服用回数が書いてあれば割り算をして、1回量が推定できますので疑義が発 生しないということになります。 ○土屋委員 医師法施行規則は、薬名、分量、用法、用量を書けということを決めています。 そして、分量には1日量を書きなさいというのが保険のルールであって、先ほどの(3)は用法、 用量のところにいろいろ1回でも書いていいよという話になっているのです。そもそもこの 分量というのが、実は医師法施行規則と歯科医師の施行規則、ここだけに出てくる言葉です ので、難しいのですが、少なくても分量の記載に関するルールは1つしかないというのが基 本だと思います。いまの施行規則と、保険の解釈を考えると、分量というものが1日量で書 きなさいと明確に明示してあり、その用法用量という欄のところでは1回量を書くと書いて あるけど、分量について言えば、規定は内服薬について言えば1日量というのが現行の規定 であるというように理解をしておりまして、今回研究班で出したのは分量の記載を1回量に するということを提言しているということになります。 ○隈本委員 でも用法、用量は書けと書いてあるのですね、同じルールの中に。ということ は分量と用法、用量を書けといって、用法、用量というのは1回量と掛ける何回ですよという ことを書けと書いてあるわけです。現状は、そのことが伝わっていないという認識でよろし いのでしょうか。つまり用法、用量もちゃんと処方せんに書きなさいというルールが伝わっ ていない。あるいは割り算でわかることは、掛け算でもわかるわけです。つまり1回量と回 数があれば当然1日量もわかるわけですね。いまの論法で言うと。割り算ができるから書か なくていいということであれば、掛け算をすればわかるわけですよね。逆から言うと。 ○岩月委員 あくまでも私が申したのは、いまのルールの中でやっているのでそうなるとい うことです。ルールが変われば当然やり方が変わるということになります。 ○花井委員 まずいくつかの整理があり、いわゆる医師法、医政局また、省令上の話と、そ れから保険上の話ですね。いま論点になっているのはおそらく保険上の扱いのルールの中で、 先生の発表によると1日分量が記載していることがすでにルールとしてあるので、それが規 準として回っているという整理だったのですが、そのルールを守っていないものはルール違 反だということです。実は今回の調べたことによると、それだけ書いてあっても、用法、用 量を書いてないものはルール違反であることは間違いない、現状ルール違反だとも言えるわ けです。 逆に保険の法律ないしそれに順じた通知・省令の中で、例えば用法・用量だけはちゃんと書 いてあって分量は書いていないものについては、ルール違反として弾けというルールが存在 するのですか。たぶん、存在しないのではないかと思うのです。そういう意味では、ルール 上そうだという話は違っていて、事実上ルールは全部書かなければいけないというルールの 中で、実態として1日量の分量さえ書いてあれば、要件は満たされるのだという実態に動か されているという説明が正しいと思うのです。そういう理解なのですか。もしそういう理解 でなければ、保険上、レセプト上は別なのかもしれませんが、1日量の分量だけは絶対書い ていなければ弾くという別のルールがあるはずですが、それはあるのですか。 ○土屋委員 医師法施行規則は分量を書けと言っておりますので、分量が書いてなければ当 然疑義照会の対象になると思います。要するに、錠数が書いてなくて、あとから用法の所に いくら書いてあっても、分量は施行規則で必須項目になっておりますから、そこは少なくと も書いてなくてはいけない。用法・用量の所は、いろいろな書き方があって、そこでは抜け ている話であっても、おそらく自明のことだからと省略をされることが多かったという過去 の実例があるということです。 ○花井委員 医師法施行規則は置いておいてほしいのです。保険上のルールにおいてそれが どうなっているかを確認しておきたいのです。つまり、保険者が、もしくはその支払い機関 がそれは弾くのだという話があるかとか、保険上で決まっているルールはどのようにルール 化されているのかが、いまの説明とこの紙とは明らかに矛盾しています。どちらにしろルー ルはそう書いてあるから、そこは整合性を整理してほしいのです。私が理解できないのかも しれませんが。 ○楠岡座長 処方せんは医師が発行して薬局が受け取るので、保険者は処方せんを見ないわ けです。要は、結果としてどれだけ薬が使われたかという形で請求が行くので、支払い側か らすると1日3回に分けて飲もうが4回に分けて飲もうが、1日の量さえ一定に決まっていれば いいというのがいまの基本の請求のルールです。問題は、それでは実際に患者さんも困るわ けです。どう飲んでいいかわからないので、そこは処方せんに書きなさいという話になって いるのですが、そこはコミュニケーションが取れれば、問題なくお互いに解釈できれば、い まのところはそれをいちいち疑義照会という形ではかけない。例えば1日3錠で3回で分3 で飲みなさいと言われれば、均等にとは書いていないわけですが、錠剤は普通は分けられな いから1回1錠だろうという自然な解釈があって、みんな納得したのを、仮に薬剤師が本当 に1回1錠ですね、と疑義照会をかけたら、あの薬剤師は何を言っているのかという話にな ってしまうので、そこはいままであまり問題にならずに、お互いの理解の範疇が一致してい たのでそのまま来ていたという、まさに先ほど花井委員がおっしゃった、そこはお互い理解 できているからいちいち問合せもしないし、書かなくても済んでいたという状況があると思 うのです。 ○花井委員 そこは私も理解しております。私が言っているのは、そうなっているのだけれ ど、分量について書いてないものはおかしいだろうということになっていますが、例えば用 法・用量だけが記載されているとしても、それは駄目だという強行規定である通知や省令が 存在するのかと質問しているのです。それが隈本委員の疑問の中心ですね。 ○隈本委員 そうです。割り算でできることは掛け算でできるはずだという意味です。 ○医療安全推進室長 通知等で出ていますのは、今日ご紹介したものを踏まえて、これ以上 問題になることはないと理解しております。 ○花井委員 実態で動いているということですね。庶務連動というか。 ○嶋森委員 医師法も歯科医師法も、施行規則には、処方せんには分量だけではなく用法・ 用量を書くようになっていると思います。ですから、療養担当規則のものだけではなくて、 施行規則にも両方書いてあって、分量だけが強調されているのはなぜかという疑問を皆さん お持ちだと思うのです。このルールを徹底すれば、分量を書いて掛け算できれば用法・用量 で割り算ができる。割り算ができれば掛け算もできるというのは同じ論理で、それが分量だ け強調されていま残っているということについて、なぜなのかを是非お聞きしたいと思いま す。 ○楠岡座長 結局、分量と用法、用法というか1日回数になると思いますが、用法と用量とい う、その3つはお互い結びついていて、1つが仮に欠けたとしても、残り2つが書かれていれ ば、もしそこに乖離があれば、むしろそこは疑義照会の対象になるようなところですが、い ままでは3つのうちの2つが揃っていればそれでオーケーというか、ほぼ了解でいままで来 ていて、確かにルール上はその3つを書かなければいけないことになっています。けれども、 3つを書いてかえって食い違いが出るよりも、2つで十分だということでいままで来ていると いうのが状況だと思います。 ○花井委員 ということは、分量を書いていても、別に問題はないわけですね。分量だけ書 いていて、他の用法・用量は。 ○楠岡座長 仮に分量がなくて用量・用法が書いてある処方せんが来たときに、薬剤師は調 剤してしまうと思うのです。新たに疑義照会をかけなくても、当然この分量はこれだとわか れば、それを疑義照会するかどうかは現実的には考えにくい。オフィシャルなコメントとし ては「当然します」という話になるかもしれませんが、実際は3つのうちの2つが決まったあ と1項目が自動的に決まるときには、仮に分量が抜けている処方せんがあったとしても、現 実はどうかというと、調剤に行っている可能性は十分あると思います。ただ、最後の保険請 求は分量になってきますので、それは当然中では計算してやっていると思います。 ○江里口委員 これは非常に難しい問題で、日本独特で、医師法、歯科医師法で規制された 中で動けば非常に単純なのですが、日本は皆保険で、保険のルールともうひとつ、医師法の ルールと2つ別のルールがあるわけです。10頁の参考の「記載例1」にも出ていますが、適用 欄記載のところに1日量が出ていて、「1錠」と書いて「3×12」とか、こういう表示があるわ けです。そこは必ず1錠を3回、12回分というような表記になるので、電算機で書くとこの ように書いてありますが、これを手書きのレセプトで書くと、上の「レンドルミンD錠0.25mg、 3×12」という表示で従来ずっとやられていたわけです。 最近レセプトで1回の用量を書かないと弾かれる可能性が高くなったので、最近こうなって きて、過去は1回量を記載しないでレセプトを書いていたようです。保険のルールと医師法 のルールとの整合性が、ペーパーで書くときのレセプトでのルールに、カルテ上も常に慣用 的になってきたのではないかと思うのです。ですから、最近このように用量・用法をきちん と1回量でも書くような記載になっておりますので、将来的にはそういうミスが、若い先生 たちはなくなるのではないかと思いますが、我々ぐらいの年齢の人たちは、実は昔のレセプ トは、ほとんど1日量3×12とかという形でしか書いていなかったような気がするのです。 最近はその辺の齟齬がなくなってくるのではないかと思います。 ○岩月委員 掛け算か割り算かというのは私が言い出したわけですが、次に「記載例2」を見 てください。これは薬局の保険請求の明細書ですが、2行目の5月18日、「内服」のフルイト ラン錠2錠分3、朝・昼食後と書いてあって、これは当然疑義照会の対象になります。1回1錠、 3回服用と書いてあって、朝と昼という指示が来ていれば、どのように使うのかなとなります ね。これも疑義照会の対象なのです。したがって、単純に割り算だからわかっているとか、 掛け算だから間違いないということではなくて、疑問が生ずれば、その疑問を正さないと調 剤ができないという仕組みがあるということを申し上げたかっただけです。 ○隈本委員 私の質問は、岩月委員のおっしゃっている現行ルール1日量記載をベースとして 統一化し、それがある時期に1回量といった標準化に行くというご提言の基本になるのは、 現行ルールが1日量記載であることが基本の論拠となっているわけですが、現行ルールは決 して1日量記載ではなくて、分量については1日量だけれど、用法・用量で1回量と回数も 書くというのが現行ルールなのですから、現行ルールとして統一した場合、この委員会は解 散していいことになりますね。つまり、1日量、1回量、回数が、現行ルールを完全にみんな が守ってくだされば、標準化しなくてもほとんど標準化と同じ状態になるわけではありませ んか。という意味では、現行ルール1日量記載をベースとしてやったあと新しいルールを決 めて、そこへ移行するという順番では、現行ルールの認識が違うのではないかということで 質問したわけです。現行ルールは決して1日量だけで書けと書いてあるわけではない。用法・ 用量も書けと書いてあるし、用法・用量には1回量等回数であると書いてあるわけですから、 現行ルールが1回1日量という認識をスタートに対策がスタートしていくと、それは現行ル ールの読み違えということになりませんか。 ○岩月委員 1日量記載なのか1回量記載なのかということで言うと、すべて書かなければい けないという意味では、現実には実施されていないというのはご指摘のとおりだと思います。 先ほど座長からもお話がありましたように、例えば現行で錠剤であれば2錠を3回に分けな さいと言われると、分けようがないわけです。したがって、疑義の対象になります。私ども が薬剤師法という法律で仕事をしているのは、薬剤師は疑義が解消されない限り調剤しては ならないことになっています。書いていなくても、それが一般的な調剤や医師の指示の通念 上から言って、3錠分3と書いてあれば、1日の量を3回に分けて服むのだというのが常識で すから、そこが書いていないからといって、直ちにいまは安全性が担保されないという議論 にはならないと思います。現にそれで問題は起きていませんから。したがって、2錠を3回に 分けなさいといったときや、4錠を3回に分けなさいといったときには当然疑問が生じます。 それが何も書いていないのは、おっしゃるように用法が書いてないと私どもは理解します。 ですから、いまのやり方で安全上問題があるのか、1回1錠と書いていないことがそんなに安 全上問題なのかというと、現場の薬剤師は、そのことに関してだけ言えば安全上問題がある とは全然思っていません。 ○隈本委員 つまり、私の理解ですが、いま分量は1日量で書き、用法・用量は1回量と回数 で書くというルールになっているのを、研究班の提言は、分量を1回量にして単純化しては どうかという提案だと理解しています。ということで言えば、現行ルールが1日量であるか ら、それを1回量にしようというのではなく、単純に現行ルールの分量が1日量なので、そ れを1回量にして単純化してはどうかというご提言だと思うのです。そうすると、1日量をベ ースとしてもう1回統一化し、そのあと頃合いを見て1回量に変えるという論理で、この検 討会が進んでいっていいのかなというのを疑問に思います。 ○齊藤委員 岩月委員がおっしゃることもわかるのですが、まず処方せんの書式で疑義が発 生しない構造にしたいと。先ほど言われたように、2錠を分3と言うと疑義になりますね。そ うではなくて、1回1錠、1日2回と書けば疑義が発生しないから、薬剤師の方にとっても疑義 照会をする必要がなくなってくるわけです。 もう1つは、そういう誤りが発生しにくいといっても、飲み方が1週間に1錠とかそういう ものもあって、そのために事故が発生した悪性腫瘍薬、リウマトレックスなどがあるわけで す。いままでの書き方、1日量で書くという記載そのものは、毎日飲むという前提でできた 書き方なのです。だけど、そういうものがあると紛らわしいわけです。だから、医療関係者 全員が紛らわしさから解放されようということが第一歩です。5日に1錠飲むとか、そういう ことがあるのに、すべて毎日飲むという前提で1日量を書きなさいという書き方を認めるこ と自体、疑義の発生の余地を残すし、考えるだけでも注意をそういうことへ向けなければな らないので、ほかのエラーを招く可能性もあるのです。人間の意識は安全なところだけ、明 快なことだけやっていればいいけれど、これはどうかしらと思いながらやっていると、ほか のことで手落ちが起こってくるわけです。だから、ファジーな世界で生きることはやめまし ょうと、これが研究班の意見なのです。 ○楠岡座長 最終的にゴールをどうするか、そのプロセスをどうするかは今後の議論になっ てくるかと思いますが、これまでのご議論の中でもどこに問題があるのか、現行ルールも意 外ときっちりできているのだけれど、実際上はそれをガチガチに運用しているわけではなく、 かなり省略等が入ってきていると。その現実が少し問題を起こしているところもあるという 認識ではないかと。例えば、3錠分3のときはさすがに1回1錠とは書いていないですが、3 錠を朝2錠、昼1錠という、いわゆる不均等投与をする場合には必ず用法・用量を書いてい るわけです。そうすると、どういうときは書いてどういうときは書かないかという辺りが、 いままでは常識の範囲という話だったけれど、だんだん常識の範囲を超える薬が出てきてい るときに、常識どおりでいくとややこしいというか、勝手にこうだろうと推測すると問題が 起こってくる。先ほどの、1日だけの不均等ではなくて日が不均等で、要は1週間に1回とか いう問題が出てきたときにどうするかという問題になってくるかと思います。 ○齊藤委員 少し方向が変わるのですが、「内服薬」と「屯服薬」という言葉がありますが、 厳密に考えると、これは果たして内服なのか屯服なのか、処方する当人がわからないのです。 厳密明快な内服と屯服の定義はあるのでしょうか。 ○岩月委員 それを私に答えろというのは。 ○齊藤委員 認識を伺っているだけで、それはないのですと。何となくお腹が痛いときに飲 みなさいというのが屯服で、熱が高いときに飲みなさいというのが屯服でということがある けれど、それを内服と言ってもかまわないのなら、どうして同じことを言うのに2つ違った言 葉が出てくるのかなという疑問があるので、それについては明確にわからないというのであ れば、それもまた私としては担当するところなのですが。 ○岩月委員 先ほどから何回も申し上げていますが、わからない場合には調剤をしません。 毎日服用しているにもかかわらず屯服という指示があれば、薬剤師は当然おかしいと思いま すので、それは疑義照会をします。 ○齊藤委員 だから、疑義照会をなくそうというのが研究班の意見なのです。 ○岩月委員 お言葉なのですが、疑義をなくすためにルールを作るのではなくて、そもそも いまおっしゃったように出しているほうが意味がわからないと言えば、それは疑義にも何に もならないわけですから、そこは明確にどういう指示をするのかというルールを作りましょ うということで、私は何も1回量をすべて否定しているわけではありません。現状のあるルー ルの中で、何が守られていなくて何が守られているのかを明確にして、手順を踏んでいくべ きではないかと申し上げているつもりですので、そこはご理解いただきたいと思います。 ○隈本委員 1つだけ誤解があると思うのですが、疑義照会をしなくなることが目的ではなく て、最終的には医療安全の目的です。というのは、いま日本医療機能評価機構の医療事故報 告制度で挙がっている事故は、すべて疑義照会の必要がなさそうな、割り算しても割りきれ るようなもので起きているのです。つまり、「リン酸コデイン60mg3×」と書いてあって、そ れは3で割れるので、医者は20mgのつもりだったが、薬剤師の方は60×3と。掛け算のほう は必ずできますから、そういうことで起こっていて、疑義照会をしなくてもいいだろうと思 ったところで事故が起こっている。そういう意味では、疑義照会は本来「この患者さんにこ の薬が必要なのですか」とか、「薬の飲み合わせがありますけど」という高度な質問をする ためのものであって、「これは何と書いてあるのですか」と聞くのは、同じ疑義照会の中で もなるべくないほうがいいものです。ただし、疑義照会がないような、つまりこれでいけそ うと、このまま処方できそうと思ったものの中に、コミュニケーションのミスがあって間違 って処方されるのをどうしようかというのがこの委員会であって、計算すればわかるとか、 割り算をすればわかるとか、掛け算をすればわかるということを申し上げているわけではな いのです。割り算もできるし掛け算もできる、何の疑義照会もなさそうに思ったが、実は医 者の考えていることと調剤をした人の考えることが違っていたというのを防ぐための方法を、 みんなで考えましょうという委員会だと思うのです。 ○岩月委員 先ほどの件ですが、屯服薬というのは、レセプト上の屯服薬は内服に限られて いるという考え方だと思うのですが、内服であれ外用であれ、本当は「屯用」なのだと思う のです。だから、ここで言えばずっと連続して使うものが「内服薬」であって、内服薬のう ちで連続で使わないものを「屯服薬」と定義しているのだと思います。ただ、外用だってこ ういうときに使いましょうという、要するに用法なのです。その辺りの混乱ももともとあっ て、そういった意味で言えば経口投与剤と外用剤と注射剤という分け方が本来であって、屯 服というのはあくまで使い方の話ですので、そこがルール上いろいろと混ってしまっている ところに混乱の原因もあるのではないかと思います。 ○齊藤委員 疑義解釈については、私は疑義解釈を避けろと言ったのではなくて、2錠分3の ような、初歩的な疑義解釈をしなければならないような構造そのものを変えましょうと言っ ているわけです。そこは誤解のないようにしていただきたいと思います。 ○隈本委員 私もそう思います。 ○楠岡座長 少しディスカッションが先へ行ってしまいましたので、嶋森委員の発言を先に お伺いして、また総合のディスカッションをしたいと思います。 ○嶋森委員 私の話は、皆さんの議論が先に済んでしまったことも多いと思います。 私は看護の立場からどんな問題が生じているか、具体的な事例も含めてお話したいと思いま す。先ほど隈本委員から日本の十分ではない報告制度についてお話がありましたが、日本医 療機能評価機構で平成19年の1年間に報告された薬剤に関する事故の件数を見たところ、98 件あります。指示段階での間違いが30件あって、そのうち量の間違いが18件あります。指 示受け、準備段階が21件、実施段階33件と、量の間違いも含めて、指示段階と実施段階で の間違いが多いことがわかります。 事故の内容ですが、特に共有すべき事故事例として載っている事例を拾ってみたら、1つは 似ている薬剤名の例えば、「ニューロタン」と「ニューレプチル」などが間違っています。 また「スローピット」と「スローケー」など、薬効は全然違うのですが、名前が似ているも のの間違いがあります。 もう1つ、小児の場合にシロップ剤の処方の際に、で小数点を入れ忘れて、「10倍投与」に なったというのがあります。処方を書くときに小数点を含む処方についての書き方も検討す る必要があると思います。 また、座薬の処方で「半量」という処方があるのですが、1個挿入してしまった事例があり ます。処方を受けて薬剤部で払い出す際に、座薬のようなものは半分ずつ払い出せないので、 1個単位で出るのですが、投与するとき、その半分という用法が使用する時点まで伝わらな くて間違ってしまう。これは処方せんの問題ではないのですが、薬を使用する時点まで、用 法の注意が届く仕組みが必要ではないかと思います。 アトロピン末1.5mgの分3の処方をグラム単位で硫酸アトロピン原末を処方して1,000倍量 の投与になった事例があります。これもよくあるようで、このルール化も必要だと考えられ ます。 他科受診したときに、1日3回に分けて内服するように処方したのが、3倍量の処方になった 事例でも、ずっと問題になっている「×3」と「3×」の問題で生じています。 オーダリングのシステムはあっても、オーダリング上ではできないような処方の場合、手書 きで書く時に、勘違いをして、2mgを20mgと処方したという事例があります。また、これは 単なる勘違いなのですが、0.3gと処方すべきところを3gと。これは300mgが3錠といういつ も使っている薬の量が頭にあって、医師が忙しいとか、他に気を取られていて、勘違いした ということです。ノルバスクを1錠と入力したつもりが5錠と、これも入力ミスですが、こ ういうことが起こっています。アレビアチン内服分3を掛け3と勘違いしたという事例があ ります。それから、前回と同じ処方を出すつもりで医師が前の処方をコピーしたら、1年前 の処方であったという事例があります。これは処方せんの問題ではないのですが、実際にこ ういう問題が起きているということが、日本医療機能評価機構へ報告されています。 前回、病院以外に在宅ケアや訪問看護ステーション等での問題があるという話がありました ので、少し在宅等で働いている看護職や専門看護師から意見を聞きました。デュロテップと いうパッチの、貼り薬があるのですが、これが新しい製剤に変わったときに、同じものが、 外見も同じようで名前も同じなのに、薬効が違うものが出てきて、以前使っていた薬剤との、 薬効の違いがわからなくて困るという話がありました。このようなことが起きない工夫が必 要ではないかということでした。これはがんの専門看護師からの意見です。 また、モルヒネの使用量でmgかmLかによって薬効が違ってくるのですが、この間違いがあ るということです。mgかmLかということや、包装や錠剤の色が用量によって異なるなど、い くつかの用量が異なる製品がある薬剤の場合の注意も必要です。モルヒネの処方で、医師が 誤った処方をしてしまって、薬効の効果判定をしている看護師が気がついて医師と相談して いたところ、量が違っていたことが発見されたということです。在宅で取扱い可能な薬剤の 種類、用量、包装形態が記載されている伝票を使って、このようなことが起きないような工 夫をしているということでしたので、処方せんの記載に一定のルールを設けるという、先ほ ど隈本委員がおっしゃったような工夫も必要かと思われます。 在宅や地域で間違いが起こりやすいケースとその対策なのですが、内服で間違いやすいのは、 先ほども出ていましたが、朝と夕内服とか、内服する時間によって量が異なるもの。また貼 付薬等、長時間投与するもの、先ほどの抗がん剤で1週間に1日とか2日しか服用しない薬 剤と同じようなものですが、そういうものについては非常に間違いが生じやすいと言ってい ます。これは処方せんというよりも使い方の問題として、何か工夫が必要だろうということ を言われました。 「包括指示」という言い方をしていますが、先ほどの屯用と関わってくるのですが、痛みが 強いとか下痢とか便秘がある時に、事前に1回の用量を決めて処方を出していただいて、患 者さんの状態によって必要量を投与するようなことがあります。このような包括指示によっ て看護師に投与量の判断が任されている薬剤ですが、がんの末期の患者さんに用いる痛み止 め等はこのような使い方が多いわけです。こういう場合には1回の使用量が明示されていれ ば、これを何回使うかということで間違いが生じにくいのですが、1日2回を分2で出すとか、 分3で出すと言うと、薬袋に書かれている量が1日量で、1回は3×だから3で割った量だな と計算しながら投与しなければいけなくなるので、1回量を明示するのがわかりやすいし、 間違いは生じないのではないかと思います。内服薬、軟膏剤、うがい剤、貼付剤、吸入剤な ど、治療の副作用が起こり得ると予測されている場合や症状によって投与量が変わる場合は、 特に1回量のほうがより良いのではないかという意見でした。 処方せんの記載に関わる法令上の規定については、先ほどお示しいただいたとおり、薬剤分 量、用法・用量等が書かれていて、これについては先ほどから議論になっておりますから、 いいと思います。 現状の課題ですが、前回も申し上げたように、看護師の間には「3×」と「×3」を十分理解 していない者が多い。これは看護師だけではなくて、医師もだというのがこの事例を検討し ていてわかりましたので、謎かけみたいなことはやめたほうがいいと思います。在宅看護で は患者の状態によって内服薬の量を変えるということがありますので、是非1回量が明示さ れるような処方に変えたほうが良いと思います。 これも前回申し上げたのですが、薬液、水薬や散薬の賦形されている薬の量の書き方につい てですが、患者が内服する時や看護師が投与するときに量がわかるよう、用法についてのル ール化をして、おくすり手帳でもきちんと明記することなどが必要と思われます。 これまで随分議論になったのですが、日本語で3回に分けてとか1日3回とかきちんと記載 することが、事故防止、安全上必要で不可欠ではないかと考えています。在宅看護を受ける 患者への与薬に対応できるように、1回量の明示を基本とした処方せんにして、薬剤の使用 場面の多様化に対応することが必要なので、是非1回量にしていただきたいと思います。賦 形された薬剤や散薬の場合の処方量と調剤量が違っている場合、この注意書きが必要だと思 われます。処方せんの記載方法ではないけれど、調剤によって、医師の処方と処方された薬 剤の見かけが変わる場合の対処が必要ではないかと思われます。 このような改善案を提案しているわけですが、至急やらなければいけないこととして、1日 の処方か1回量の処方かを推測しないで、1日何mgとか1回何mgと書くことはすぐに必要だ ろうと思います。これは現行システムで対応可能ではないかと思いますが、1日量を書いた としても1回何mgとか1回何錠ときちんと書くということです。 1回量処方を基本とした統一的な記載法ということで、標準記載方法を決めて、あらかじめ 設定した適用開始時期に向けて体制整備を推進する必要がありますが、システムの整備に関 する時間が必要だと思われます。いま割り算でいっているものを掛け算にしなければいけな いとかです。これは是非システム会社の専門家の人に至急安く対応していただきたいと思い ます。処方システムの開始にかかる費用負担があると思いますが、これもヴェンダーの社会 貢献を期待して、早目に対応していただけたらと考えております。 ○楠岡座長 ありがとうございました。 ○齊藤委員 大変納得できる患者の受け止め方に関わるプレゼンテーションだと思うのです。 私が糖尿病の外来をやって半日に30人ぐらい患者さんを診るときに、ダオニールという血糖 降下薬を1日3錠処方しているので、「1日3錠飲んでいますね」と確認するわけです。そう すると、患者さんは1日というのを聞き落としているのかもしれなくて、1回という意味に取 って、「1錠しか飲んでいませんよ」と色をなす患者さんがいらっしゃるのです。「1日に3錠 でしょう」と言うと、「1日に直せば3錠なんだけど、1回かと思いました」という返事が返っ てくるので、口で言うときも常に1日で話しているのか1回で話しているのか、患者さんは1回 でも説明を常識的に考えます。何で1日でのことを言い出すのかなと、怪訝な顔をして見てい ますから、物事は1回を原点にして決めていかなければしょうがないと。嶋森委員 のお話を伺って私の外来の現場を思い出したので、追加させていただきます。 ○岩月委員 薬剤師がしゃべると1回量反対みたいに思われるのですが、そうではなくて、ル ール化が必要だと思っておりますので、それは誤解がないようにしていただきたいと思いま す。ただ、いまの嶋森委員のお話でいくつか確認をしておかなければならないのは、いわゆ る類似名称の問題と処方せんの記載のあり方に関しては、全く論点が違うだろうと思われる のが1点です。小数点のあるなしについても、力価単位なのか製剤単位なのかも含めて別の ルールの話だろうと思うのです。最後の患者がどう理解するかに関して言うと、処方せんの 問題もありますが、実際に患者が手に取る、先ほど私も言いましたが、薬袋をどう作るのか、 薬をどう作るのか。病院でもそうだと思いますが、1日3錠の薬を3錠1つの袋に入れてしま うと、看護師がそれを3つに分けなければ、病棟では与薬できないですね。ところが、1回分 ずつに調剤してあって、仮に1回分ずつ袋に入っていれば、患者の誤解も少なくなる。処方 せんの記載の仕方もあるかもしれないけれど、実際のアウトカムとして、患者がどういう形 で手にするのがいちばん事故がないのかということも同時に議論しないと、処方せんの書き 方だけで嶋森委員がご指摘になったことがすべて末端まで改善されるかに関しては、少し疑 問があると思います。 ○嶋森委員 それはそうだと思います。ただ、患者さんの場合は、薬袋に患者さんが理解し やすいように書いてあると、間違えにくいと思います。逆に病院の中だと処方されたとおり 薬袋に書いてあって、看護師が間違います。看護師なのだからもう少しちゃんと理解して、 間違わないようにしろとおっしゃるかもしれませんが、そういう問題はあるのです。前回か ら言っているように、賦形された薬の処方と出てきた薬との違いで、患者さんは自分で適当 に飲むので間違わないのですが、看護師は何mgと書かれたら計量器で測ってミリ数で使って しまうので、飲みすぎたり余ったりということがあるのです。病院の中でも薬剤師だけでな く、看護師も理解できるような、処方段階から間違いが生じないようなものが必要だと思わ れます。 小数点の話ですが、これは処方と関係ないという意味がよくわからないのです。処方される 先生が小数点を忘れるのですが、関係ないですか。 ○岩月委員 私が申し上げたかったのは、1日量なのか1回量なのかということとは関係なく て、小数点の問題は、先ほど申し上げたように力価なのか製剤量なのかということの対策だ ろうと思うのです。1回量か1日量かというのは、小数点のあるなしとは関係ないと思います ので、その確認をしたということです。 処方せんが直るか直らないかと同時に、実際に患者さんの手に渡ったときに間違いないよう にする調剤の仕方についても同時に議論しないと、処方せんの記載を変えても、現行では薬 袋の書き方のルール化はされておりませんので、先ほどから申し上げているように、服用時 点ごとに1つの薬で薬袋を作るのがいちばん間違いがないだろうと思いますが、7種類や8 種類出ていたら、忘れたり混在したりすることもあるだろうと思うのです。したがって、そ ういったことも全部含めてトータルの議論をしていただけると、大変助かると思います。 ○楠岡座長 嶋森委員からのお話の最後のところで、病院情報システム等の問題がありまし たが、これに関しては次回大原委員とヴェンダーの方にも参加をいただいて少し整理したい と思いますので、その点は次回に送りたいと思います。 岩月委員からのご指摘の薬袋の問題なのですが、私の考え方として、処方せんが薬剤師に行 くまでにきっちり間違なく伝わるというところと、患者さんへのサービスと言うとおかしい ですが、朝昼晩と飲む時間ごとに薬袋をまとめるのか、薬ごとに入れておいて、患者さんに 選んで飲んでいただくのか。あるいはいま1包化するというものもあります。利便性は患者 さんによっても違うので、薬袋にどう書くかと処方せんの書き方が当然つながっていないと いけないのですが、一義に決めてしまうと、逆に薬袋のサービスの仕方まで絞ってしまうと ころもあり得るので、そこは分けて考える必要があるのではないかと思うのですが、この点 はいかがでしょうか。 ○岩月委員 薬袋だけを取り上げるとか、処方せんだけを取り上げるのではなくて、最終的 に患者さんが間違えないやり方を、どの方法がいちばんいいのかを考えていかなければいけ ないという意味で申し上げました。1回量記載であれば、当然薬袋の作り方が変わってきます。 調剤指針という基礎ルールがありますが、これは法的に決められたものではなく、いわゆる 薬剤師の自主基準なのですが、内服薬の場合は服用時点ごとにまとめて薬を入れることがル ールになっています。したがって、そういったことも全部変えていかなければということで 申し上げましたので、それだけを取り出して申し上げたわけではないということはご理解い ただければと思います。 ○楠岡座長 ほかにございますか。 ○永池委員 2点あります。1つ目は、もう少し詳細な情報がほしい箇所ですが、3頁目のス ライドの6番です。新しいものが発売されて、従来のものとの混合を防ぐために医師はあえ てわかりやすく、自分が間違っているといけないから、(前○mgに相当)と書かれたと解釈 してよろしいのでしょうか。その際の規格や包装の変更に伴う誤りを少なくする工夫は、処 方する医師がその処方の成分を理解していれば、この書き方はしなかった。本来ならば書か なくていいものを、間違っているといけないから、あえて念のために書いたというものでは ないのですか。 ○嶋森委員 看護師が間違って力価の違うものを使っては困るということで、力価が高くな ったりするので、元の力価にすると何mgかというふうに書いているのだと思うのですが。 ○永池委員 つまり、そのとき新しい製剤の内容の成分を確認して書いていれば、間違いな いことだという指摘ですか。 ○土屋委員 販売名を構成する要素は、ブランド名と剤形と規格となっているのですが、こ の規格の数字の書き方についてのルールを名前の付け方のところで決めたので、それに伴っ て新しいものと前のものとで中身の量が同じになるにもかかわらず、名前に出てくる量が見 かけ上違ってしまったために、そこを補う意味でこういうことがされたのだと思うのです。 以前は規格を必ず入れるというルールになっていなかったのです。だから、先ほどの保険の 通知でも、もし同じ名前で、昔は1名称2物ということがあり、例えばセンセファリンカプセ ルというのは、125mgも250mgも薬価収載名はセンセファリンカプセルになったわけです。世 の中に2つ以上あるときにはその名前について、6頁の7の(1)の「なお、当該医薬品が薬価 基準上2以上の規格単位がある場合には、当該規格単位を記載すること」と書いてあるのは、 当時名前についてのルールでそういうことができていなかったため、1名称2物ということが いくらでもあったので、そのときには補いなさいというのが名前についてのルールだったの です。 ところが、医療安全上名前のルールを、935通知で3つの要素を決め、そのときには既存のも のはとりあえず触らないけれど、これから新たになるものはこの3つの要素が入っていなく てはいけないというルールにし、そのあとで既存のものも名前を変えましょうということで、 規格が入っていなかったものをみんな規格を入れるとか、販売名の変更をここ何年間でほと んど終えたのです。その結果、同じ量なのだけれど、当時書いた量といま決めている量が数 字上違ってしまって、中身は違うのですが、そこで表記するものの量の違いがあったもので すから、そこでそれの混乱を避ける意味で何々相当という言葉を使ったというのが、この薬 の場合は現実だと思います。 ○永池委員 そうしますと、これは適切なやり方であったということであり、今後もそのよ うな変更がある際には、何らかの注意が必要であろうというご指摘ですか。 ○嶋森委員 はい。 ○楠岡座長 デュロテップはいままであったパッチと新しいMTパッチで、皮膚に貼ったとき の放出速度を同じにするために製剤あたりの薬の量が違うわけです。薬としては異なる量を 含んでいるのだけれど、体内に入る量は同じなので、前と同じ量を含む製剤で投与すると少 なめになってしまう。だから注意してくださいという意味で、前のものだとこれになるのが、 新しいものではこちらになりますよと注意喚起するということで、別に名前の中に入ってい るわけではないのだけれど、あえてそれを加えているということです。 ○永池委員 1回量に変更する際に何らかの工夫もしなければいけませんよ、という1つの例 示ということで、製剤が変わったときにどうするかも考慮しましょうということでのご指摘 と解釈してよろしいわけですね。 もう1点あります。いま包括指示のことが少し出ておりましたが、包括指示をうまく活用し ていく例としては、おそらく屯用が馴染みのある処方の出し方かと思います。その場合の1 回量の指示の出し方は、どのように出されるのか。今回の例では1回量の指示は何々の薬を 明確に何mg書くとなっていたかと思うのですが、この点に関してはどのようになりますしょ うか。 ○土屋委員 先ほど申し上げましたように、屯用というのはあくまで用法ですので、例えば1 回1錠、1日3回、何日分というのが常態として使われるとします。しかし、このときには調 整するため、こういう条件のときには屯用でさらに1錠使いなさいというのが、本来想定さ れている使い方だと思いますので、1回量であろうが1日であろうが、そこは一緒と言えば一 緒です。おそらく、屯用という使い方を調整用に使うというルールだと思っていただければ と思います。 ○永池委員 この状態であればこれを使用しなさいという包括指示のやり方と、この状態で あればここまで用量を上げて使用していいですよというように、用量の上限を設定した指示 の出し方が考えられると思いました。この点について1回量にて処方する場合、どのような措 置が必要なのかということも検討すべきかと思います。 ○楠岡座長 そこになってくると、それは処方せんの中で解決できるのか別の指示が要るの か。おっしゃっている意味は、例えば痛みがあるときには1回1錠、1日3回までとか、そうい う上限的ものを付けるのかとか、そういうところまで処方せんに入れるのか。いまは痛いと きは1回1錠とだけ書かれていて、指示として1日3回までとか、2本立てになっているところ をどう整合させるかという問題があるのですが、そこは今後の議論が必要と思います。 ○土屋委員 患者さんの病状が短時間ごとに即応する場合は、医師法は処方せんを交付する 場合でない事例として挙げているのです。ですから、院内投薬や注射を考えていたので、こ の当時は注射とかそういう話はあまり今みたいになかったというか、医師法そのものはそう いうときには処方せんを交付することが難しいので、書くのが大変なので、こういうときは こう、ああいうときはああだと書き出すと難しいので、そういうときは処方せんを交付しな い事例として、8つある中の1つに医師法22条で言えば3番の病状の、短時間ごとの変化に即 応して薬剤を投与する場合には、処方せんを交付しなくてもいいという例外規定に当たって いるというのが本来です。ただし、入院している患者に対してそれをしないわけにはいかな いので、そこをどうするかというのが別の問題として存在しているということです。 ○隈本委員 これは最近どこかで出てきた話ですが、歯が痛くなったらNSAIDsを飲みなさい と言って渡された6錠を、なかなか痛みが収まらないので30分ごとに飲んでしまい、1日6錠 飲んでしまったという話を聞きました。要するに、それを屯用で渡すときにも、1日の最高 限度みたいなものを書くという配慮も、標準化をする議論の中では必要なのかなと思います。 ○土屋委員 そのような場合には、1日4回までとか、そういうことを薬剤師のほうで確認し て、患者さんにその情報をお伝えしていることが多いと思います。患者さんは実際痛いと、 どんどん飲んでしまうということはあるかと思いますが、一応そのようなルールでやってい ると思います。 ○伴委員 1つは質問と、もう1つは私がこの議論の進行を正しく理解しているかどうかの確 認です。1つは、薬袋というのがいままで結構出てきているのですが、それは薬の袋に何と 書いてあるかという意味ですか。 ○岩月委員 そのとおりです。 ○伴委員 というのは、最近、患者さんはいわゆる投薬説明書を大抵持っていて、この薬は 朝昼晩1・1・1とか書いてあるものを持っているので、袋を見て議論している患者さんはあま り見たことがないのです。みんな服薬説明書を持ってきて、私といろいろ議論する場合が多 いので、それを確認したかったのが1点です。 もう1つは、いま出てきている分量、用法・用量というのは、全部それぞれ書くのがいちば んわかりやすいだろうと。だけど、それを全部書くと面倒なので、2つを書いてあとは理解 に任せる、あるいは常識に任せるという判断でいままでやっていたのだけれど、それは危険 な時代になってきているということで、分量、用法・用量を全部書いたほうがよかろうと。 それは法律的に違う、あるいは省令的に違うものだとややこしいことをしなければいけない けれど、それはクリアしているということが今日明らかになって、あとはいまのままのルー ルで、1日の分量も書くけれど、用法も用量も書くやり方にするのか、あるいは分量も1日1 回の投与量しか書かないようにしようかと。こんな話がこれからのディスカッションだとい うことでいいですか。 ○楠岡座長 たぶんそれが共通の認識だと思いますが、よろしいでしょうか。 ○齊藤委員 ただ、いちばん最初に申し上げましたが、1日分量を書く必要が本当にあるのか どうかは疑問なのです。人間のサイクルは1日だという漠然とした原始時代からの流れを背 負っているのかなと思うのですが、どうして1週間量で書かないのですかと。1週間量で書い て、それを21に割ったっていいではありませんかということです。なぜ1日なのかというの は非常に疑問なのです。全く疑問の余地がないのは、人間が服用する単位の行動は1回なの です。だから、それについてきちんと書けば、それが必要にして十分だろうという認識なの です。 では、どうして3日分について書かないのですか、2日分について書かないのですか、なぜ1 日分で書くのですかというのは非常に疑問で、それを遡ると江戸時代の漢方薬が1日量を煎 じて飲んだからなのだというところに行き着くわけですが、そう考えている先進国は日本だ けなのです。 ○岩月委員 医薬食品局の方がいらっしゃるので確認したいのですが、いまの医薬品の承認 条件は1 回量で承認しているものもありますし、1日量でしか承認していないものがあると いうことはどうなのでしょうか。医薬品の承認条件が必ず1日量になっているのか、要する にどういう承認形態を取っているのかを確認したいと思います。 ○安全使用推進室長 承認する際に用法・用量を1日量で書かせているかどうかということ ですか。そこは特段の取り決めはないと認識しております。 ○楠岡座長 これは添付文書でも適用を取っている分が1日量で書かれたり1回量で書かれた りまちまちですので。 ○江里口委員 いまの議論は、機械に薬をあげているみたいな議論になっていると思います。 機関車に朝昼晩注油するのに、きちんとやればこの機械は10年保ちますよという感じなので すが、実際に我々が臨床現場では、特に臨床研修医がいちばん困るのは、「私は朝ご飯を食 べないんだよね」と。我々がよく出すのは抗菌剤が多いのですが、血中濃度を保ちたいため に、本来から言うと8時間ごとにきちんと飲んでほしいのですが、先ほど齊藤委員がおっしゃ ったように、人間の機能から言うとなかなか難しい。1日量だけを出すと、患者さんはうまく 分散してくれるという期待みたいなものがあるのですが、1回量だけを書くと、朝抜いたら、 この薬は余ったらどうするのかという疑問も出るので、先ほどの屯服を最高どのぐらい出す かということと同じように、この薬に関しては1日3回必ず時間をあけて内服という表示規 定みたいなものも、1回量の場合は何かいまとは逆のことで書かなければならない部分があ るから、なかなか1回量、1日量というのは人間のサイクルから言うと難しいのだなと。私も 研究班ではそれはあまり考えなかったのですが、今日の議論を聞いていると非常に難しくな ってきてしまったなと思います。 ○楠岡座長 確かに、いまのご指摘ではそうなのですが、患者さんは逆に1日これだけ飲ま ないといけないという意識があまりなくて、1回にこれだけ飲まないといけないという意識 です。1日3回毎食後と出していても、私は朝を食べないからと2回しか飲まないという人が 結構いたりするのです。だけど3回飲まないといけない、逆に言うと、朝を抜いたときには 昼に2錠飲んでくださいということは、別の指導も要るような状況もあるので、これは今後 の議論の中で考えていきたいと思います。 ○隈本委員 私は、途中で座長が整理されたところは正しいと思うのです。要するに、ここ で議論しなければいけないのは、医師から、あるいは歯科医師から薬剤師ないしは医療関係 者に行く情報伝達をどうするかという議論であって、そこから患者さんにどう説明するかと か薬袋にどう書くかは、別途薬袋に関する検討会ないしはその他の検討会を作っていただけ ればいいのです。ここでいま議論しなければいけないのは、現実に起こっている医師の処方 したいものと実際処方されるものとの間に齟齬が起きる原因が、もし書き方であるとしたら、 そこはどう改めるべきかという、そこのラインに検討会のターゲットがあることをみんな認 識して、それに関するいろいろな勉強をしたほうがいいし、実際患者さんに伝わるときにど うだという議論は大切ですが、いまは薬剤師に行くまでの、あるいは看護師に行くまでの情 報伝達をどうするかということに特化した議論をされたほうがいいと思います。 ○楠岡座長 ありがとうございます。今日は特に医師から薬剤師という話が多かったのです が、医師同士のコミュニケーションも、いま大きな問題はそこにありますので、とにかく医 療関係者全員が共通の解釈ができる情報伝達法をどうするかということに落ち着いてくるか と思います。短い時間ですが、いろいろ貴重なご意見をいただきましてありがとうございま す。次回から、少し幅広い視点から意見交換をつなげていきたいと思います。次回は特に安 全工学の立場から佐相委員に、医療情報システムの観点から大原委員に、今日と同じように お一人20分程度でご意見をいただきたいと思います。 また、医療情報システムヴェンダーの立場から、保健医療情報システム工業会JHISからもご 出席いただいて、ご意見をいただきたいと思います。それらを踏まえて議論を深めていきた いと思いますので、よろしくお願いします。  以上で予定の議題は終わりますが、その他何かございますか。よろしいですか。よろしけ れば、次回の日程について事務局からお願いします。 ○医療安全推進室長 次回の日程は、7月29日(水)午後2時から4時までを予定しておりま す。 ○楠岡座長 それでは、本日はこれで閉会したいと思います。お忙しいところご出席いただ きましてありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 (照会先)  厚生労働省医政局総務課  医療安全推進室   03−5253−1111(2579、2580)